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国務大臣(
栗原祐幸君) 大変残念だというお話を聞きましたのは私は初めてでございます。私は、これは残念だというよりも、ぎりぎりの妥当な線であるというふうに自負をしております。
今度の
日米交渉で、私はワインバーガー
長官にざっくばらんに申し上げたんです。それは、私は理屈の通らぬことについてはだめだと。それからもう
一つは、愚直なほど誠実である、そういう
意味合いでこれからの私の話を聞いてくれと言って切り出したのです。あなたが六月に来たときにどういうことを言われたかというと、米国の航空機を主体として、それに
日本の技術を入れて開発をされたらいかがですかという話があったので、その点についてはいろいろと時間をかけて検討した。そして、F15、F16、F18、それぞれ検討してみたけれ
ども、現在までの検討の段階では、皆、帯に短したすきに長しである。したがって、せっかくではあるけれ
ども、今のままではこれは受け入れられない。そこで、私はワインバーガー
長官が来られたときにこういう提案をした。私は
アメリカの航空機を買うことに興味はない。さりとて、
日本でどうしてもつくらなければ承知ならぬ、そういうふうに考えていない。問題は、
日米の技術をどうアジャストするか、そしてよりよいものをつくっていくか。これはただ単にFSXのみならず、これからの大きな
日米のハイテクなんかの問題に
関係があるんだ、両方の技術をどうアジャストするかというところに問題があるんだ。航空機を買うとか、自分でどうしてもつくらなければならぬ、そういうところには私は焦点を置いていないんだという話をした。
そこで、そういう観点から、新規に共同でできないものかということを聞いたんです。それに対するワインバーガー
長官の答えが、これはムードまで入れますと、何と言いますか、非常に静かに、しかも友情にあふれたあれでした。それは、おまえの一方的な考え方だと言えばそれまでですけれ
ども、私はそうは思わない。彼が言うのには、
アメリカでも今、新規ということは非常に難しいことなんです。新規に何かをつくるということは、
アメリカだけでつくるにしても
日本だけでつくるにしても、あるいは
日米共同でつくるにしても、新規に開発するということは時間もかかるし、リスクも多いし金もかかることだから、既存の航空機を土台としてやられた方がいいと思いますよ、これは決して押しつけるんじゃなしに、私
どもの長年の経験からしてその方がいいと思いますよ、そういう話なんです。私は技術的な点はわかりませんし、ワインバーガー
長官も、私が行くについては、
向こうとしてもできるだけのことをしようという、そういう雰囲気だったんです。そういう話がございますから、ワインバーガー
長官のこの提言というものは非常に重大なものとして、重みのあるものとして受けとめざるを得ないわけです、何言っているんだというわけにはまいらない。
また、現に後でNORADというところに行きました。そこのコマンダー、これは空軍大将ですが、その方に会ったときに、彼がはしなくも言ったことは、もう
アメリカではATFなどと言っているけれ
ども大変難しいんだ。国防費を削られて、F15の二倍も三倍も開発費がかかるというので、ATFについての費用をどんどん削られようとしている。そこで
アメリカ空軍としては、既存の航空機に改良を加えていいものをつくっていく、そういう
方向に転換しつつあるんだ。今度
日本の方の技術も入れられて、
アメリカの飛行機がよくなるということは大変ありがたいという話もあったんです。ああワインバーガーの言っているのはこれかなというふうに思ったんです。これは話が前後しますけれ
ども、ワインバーガー
長官の話というのは、それなりに私には心に響いたんです。
そこで、しからばもう一回申し上げるけれ
ども、F15、F16、F18のうち、F18は
日本のパイロットが好まない。F18をやると金がかかり過ぎちゃう。したがって、これはお断りをする。
向こうは売りたいのかもしらぬけれ
ども、それはお断りすると一番先に断ったんです。15と16について、
日本の要求性能に合うようにあなたの方が応じてくれるかどうか、あなたの方が応じてくれるならば私の方も考える、
日本の要求についてできるだけのことはいたしたい、こういう話だったんです。
そこで今度は、それはありがたいが、
日本では
アメリカの航空会社に対するところの不信がある。一たん決めると値段が高くなったり、ああでもないこうでもないとクレームをつける、評判悪い、そういう
意味合いで、そういうことのないようにしてもらいたい。今度のFSXに対する粟原三原則の中で、
日米の防衛産業の圧力をこうむらないことと言っているんだ、あなたの方もそういうことでやってもらったと思うし、私の方も航空産業の方の影響を受けてない。ですから、今度忌まわしいようなことは
一つもないんです、これ。これからもそれをやってもらいたい。我々の方もしっかりやるけれ
ども、あなたの方の航空会社について適切な
指導をしてもらいたい。それは必ずやります、そういうことで、それでは15、16をもととして、
日本の性能に合うように
最大の御
協力をいただくということを前提として私
どもは作業を進めたい、こういうことできたんです。
したがって、私は甚だ残念であったという
気持ちは
一つもない。見方によると、自分みずからつくらなきゃ承知ならぬという人がいるかもしらぬけれ
ども、先ほど言ったように私はそういうことには興味がない。また、改良することによって
日本の技術が継承されるわけです、これ。そういう
意味合いで、自分で言うと大変恐縮でございますが、ぎりぎりのまあまあの妥当な線ではないかと考えております。