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1987-09-22 第109回国会 参議院 決算委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年九月二十二日(火曜日)    午前十時開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         穐山  篤君     理 事                 井上  裕君                 石井 道子君                 大島 友治君                 杉山 令肇君                 菅野 久光君                 峯山 昭範君     委 員                 井上  孝君                 板垣  正君                 沓掛 哲男君                 斎藤栄三郎君                 寺内 弘子君                 中曽根弘文君                 福田 幸弘君                 松尾 官平君                 宮崎 秀樹君                 守住 有信君                 佐藤 三吾君                 山本 正和君                 片上 公人君                 刈田 貞子君                 橋本  敦君                 関  嘉彦君    国務大臣        法 務 大 臣  遠藤  要君        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君        厚 生 大 臣  斎藤 十朗君        通商産業大臣   田村  元君        運 輸 大 臣  橋本龍太郎君        郵 政 大 臣  唐沢俊二郎君        建 設 大 臣  天野 光晴君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    葉梨 信行君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  栗原 祐幸君    事務局側        常任委員会専門        員        小島 和夫君    説明員        人事院事務総局        職員局長     川崎 正道君        内閣総理大臣官        房参事官     井上 達夫君        警察庁警備局長  新田  勇君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁教育訓練        局長       長谷川 宏君        防衛施設庁長官  友藤 一隆君        法務省刑事局長  岡村 泰孝君        大蔵省銀行局長  平澤 貞昭君        国税庁直税部長  伊藤 博行君        厚生省生活衛生        局水道環境部長  森下 忠幸君        林野庁長官    田中 宏尚君        通商産業省基礎        産業局長     鈴木 直道君        資源エネルギー        庁長官      浜岡 平一君        運輸省国際運        輸・観光局次長  宮本 春樹君        運輸省航空局長  山田 隆英君        運輸省航空局技        術部長      中村 資朗君        航空事故調査委        員会事務局長   藤冨 久司君        建設省建設経済        局長       牧野  徹君        自治省行政局選        挙部長      小笠原臣也君        自治省税務局長  渡辺  功君        会計検査院事務        総局第一局長   疋田 周朗君        会計検査院事務        総局第二局長   志田 和也君        会計検査院事務        総局第三局長   大沼 嘉章君    参考人        日本航空株式会        社常務取締役   十時  覚君        航空法調査研究        会代表幹事    宮城 雅子君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和六十年度一般会計歳入歳出決算昭和六十  年度特別会計歳入歳出決算昭和六十年度国税  収納金整理資金受払計算書昭和六十年度政府  関係機関決算書(第百八回国会内閣提出) ○昭和六十年度国有財産増減及び現在額総計算書  (第百八回国会内閣提出) ○昭和六十年度国有財産無償貸付状況計算書  (第百八回国会内閣提出)     —————————————
  2. 穐山篤

    委員長穐山篤君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和六十年度決算外二件の審査のため、本日の委員会参考人として航空法調査研究会代表幹事宮城雅子君の出席を求めたいと存じますが、御異護ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 昭和六十年度決算外二件を議題といたします。  本日は、昨日に引き続き全般的質疑第二回を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 官房長官がまだ見えてないようですから、法務省から入りたいと思います。  住民税不正流用の問題で、福団地検捜査中の苅田町の事件について、七月にこの委員会だったと思いますが、幾つか私は問題を取り上げたわけです。もう捜査に入って既に六カ月、私が取り上げた七月の時点から見ても相当経過があるわけでございますが、どういう状況になっておるのか、まず御報告をいただきたいと思います。
  6. 岡村泰孝

    説明員岡村泰孝君) お尋ね苅田町に関します一連事件でございますが、まず前の収入役に対します住民税の業務上横領事件につきましては、告発を受けました東京地検が本年六月二十九日福団地検に移送いたしたところでございます。その後、これに関連いたしまして福団地検に対しましていろいろ告発がなされているところであります。  すなわち、まず七月三十一日に苅田町議会から、尾形町長が百条委員会に正当な理由がなく出席しなかったという地方自治法違反の事実で告発がなされました。また八月二十九日には、苅田町から、尾形町長職員採用に当たって受験成績等その能力の実証に基づいて行わなかったという、地方公務員法違反の事実で告発がなされました。また同じ日に、苅田町から、同町職員三名が職員採用試験に関します文書を焼却したという公文書毀棄の事実で告発がなされたところであります。そしてこれに関連いたしまして、尾形町長からは八月三日、百条委員会に出頭しなかったという告発については、逆に謹告罪によります告訴を出しているところであります。  以上申し上げましたように、福団地検苅田町に関連いたします一連事件告発がなされているところでございまして、福団地検といたしましては、これらの告訴告発を受理いたしまして、事案の真相を解明するため現在捜査を継続しておるという段階であります。
  7. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私が七月に取り上げたときには、ちょうど東京地検から福団地検に移送するという直後でした。その際あなたが答弁なさったのは、この移送というのは逆に言って逃げの姿勢に入ったのではないかという私の質問に対して、あなたの答えは、そうじゃない、本格捜査に切りかえたんだと、こういう回答だったようですね、議事録を見ますと。  この住民税裏帳簿で、花房収入役の手でピンはねされておる。そうして、その金は当時の町長尾形自民党代議士町長室でその都度手渡しておったという経緯、こういったことについては、花房さんのこの供述や福岡銀行の伝票、それらを通じてあなたの方で押収しておるわけですが、克明に逐一に報道されてきておるわけですね。そして、今あなたがおっしゃったように告発が次々に続いておる。こういうような状態で、既に六カ月という経過を踏んで、どうも一寸先はやみみたいな答弁しか出てこないというのは一体どういうことなのか。もうそろそろ黒白とまでいきませんけれども、輪郭なりとも明らかにされてもいいんじゃないかというような感じがするんですが、いかがでしょう。
  8. 岡村泰孝

    説明員岡村泰孝君) 捜査具体的中身にわたる事柄については答弁をいたしかねるところでございますが、本件苅田町をめぐりまして相当長期間にわたっていろいろな経緯のもとに行われた状況にあるわけでございまして、関係者も非常に多数でございますし、金銭の相当長期間にわたります具体的な流れなどを確定するという作業も必要であるわけでございます。こういった捜査を行いますためには、やはり相当の期間を要するというふうに考えられるところでございまして、現在福団地検におきましてはこれらの捜査を継続しておるところでございます。
  9. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 もう既に、どうなんですか、そうなりますと告発を更けたのが七月三十一日ですか、町議会町長の方からですね。それらについては尾形代議士から事情聴取花房収入役事情聴取、こういったものについては具体的にやられておると、こういうことですか。
  10. 岡村泰孝

    説明員岡村泰孝君) 本件に関連いたしましてどういう方々を調べたのか、調べないのかという具体的な事柄につきましては、答弁をいたしかねるところでございますが、福団地検におきましては必要な捜査をいたしておるということで御理解をいただきたいのであります。
  11. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 今あなたの答えの中に出てなかったんですが、欠陥霊園告発に対する対応というのは、町のいわゆる町民税不正流用、さらに職員採用の不正、これとあわせて三本柱というか、三本の線で捜査が進められておると私は理解しておったんですが、そういうふうに理解してもいいんですか。
  12. 岡村泰孝

    説明員岡村泰孝君) 霊園問題につきましては、告訴あるいは告発はなされていないところでございます。しかしながら、霊園問題に関しましてはいろいろ新聞等においても報道されているところでございまして、福団地検といたしましてもそういったことは当然に承知していることであろうかと思っております。
  13. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 捜査中ですから、口がかたいわけですから、これ以上なかなか答弁しないだろうと思いますけれども、しかし、今もまたの中で言われておるのは、尾形代議士が現職の国会議員であるということを理由にして政治的圧力が加わって、検察庁自体東京地検から福団地検に移送したんじゃないかとか、もしくはそこに手心が加えられるんじゃないか、こういうようなのがしきりに私どもの耳に入ってくるわけですがね。  私は、今度の事件というのは、住民税を公職の収入役歴代裏帳簿で処理をしておるという、こういう悪質な行為ですから、いささかもここにそういう意味での不信が出るような捜査であってはならぬと思うんですが、そこら辺はひとつぜひきちっとしたけじめはつけられる、そういった捜査を期待しておきたいと思いますが、それは刑事局長として責任が持てますか。
  14. 岡村泰孝

    説明員岡村泰孝君) 御指摘のありましたような政治的影響といいますか、政治的圧力といいますか、そういうものがあったということは、私、全く承知していないところでございます。  本件につきまして、当初東京地検告発を受理いたしましたが、内偵捜査を行いました結果、犯罪地であり、かつ関係者多数が居住しております福団地検捜査するのが適切であるという検察自主的判断のもとに、事件福団地検に移送したところでございます。  今後とも、検察といたしましては、厳正、公平な立場本件事案解明のために必要な捜査を行うものと承知いたしているところでございます。
  15. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私もぜひそれを信頼しておきたいと思います。  それと関連して、これは苅田町の事件ではございませんが、九月十八日のサンケイ新聞の朝刊の社会面の下のコラムに「社会部発」ということで、司法担当丹治則男記者が、「犯罪報道についても「なぜ捜査当局発表で書き、容疑者の話を聞こうとしないのか」との批判は強いものがあり」「東京地検特捜部は十日、司法記者クラブ各社に対し「被疑者への直接取材は固くお断りする」と通告してきました。捜査妨害となる、というのがその理由でした。」という内容の記事が出ております。  この東京地検特捜部、公式であれ非公式であれ、実際にこうした取材の自由、言論の自由を抑制、妨害するような文書を配布したというのは事実ですか。
  16. 岡村泰孝

    説明員岡村泰孝君) 突然の御質問でございまして、私そういった事実関係を今調査いたしておりませんので、今の段階では私自身はそういう文書と申しますが、流したという報告は受けておらないところでございます。新聞報道にそういう記述があるのであれば、あるいは事実かもしれませんけれども、私今ここで何ともちょっと断言いたしかねるところでございます。
  17. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 大臣もひとつ聞いておいてもらいたいと思うんですが、その文書ここにあるんです。             昭和六十二年九月十日           司法記者クラブ加入各社殿              東京地検特別捜査部     ご 連 絡   当部におきましては、かねて  (1) 部長、副部長以外の検察官及び検察事務官等への取材  (2) 被疑者等への直接取材など捜査妨害となるような取材  (3) 当部との信義関係を破壊するような取材     等は固くお断りしてきたところですが、今般当部職員交替等がありましたので、この機会に改めて、上記のような取材報道活動をなされないよう重ねて要請いたします。      なお、上記事項に反する取材をされた社につきましては、不本意ながら、当部における取材をお断りする等の措置を探らざるを得ないこともありますので、申し添えます。  この文書はこういうふうになっておるんですが、これは検察庁被疑者疑いをかけられた人の言い分を一切封じ込める、こう言われても仕方がないんじゃないかと思うんですが、俗に盗人にも三分の理があると昔から言われておりますが、当然犯罪疑いを受けた人物にも言い分はあるはずで、仮に私たちが、また無実の一市民が何かの事件に巻き込まれ、逮捕されるような事態に遭遇したときに、自分の主張は全く聞いてもらえない。これは極めて怖いことですね。事件が摘発されたとき、これは公にされなきゃならないのは当然ですが、公共の利益、国民の知る権利、この観点からも、当然こういう問題については一方的な発表だ けで伝えられ、逮捕されるということは、私はいかがなものか。検察ファッショという批判が出ても免れないのじゃないか、こういうような感じがするんですが、いかがでしょうか。
  18. 岡村泰孝

    説明員岡村泰孝君) 犯罪捜査報道の自由と申しますか、取材の問題につきましては、いろいろの面でぶつかり合うところがあるわけでございます。犯罪捜査を行う立場といたしましては、被疑者はもとより関係人の名誉の問題もございますし、また捜査機関に対して協力をしていただくという面もあるわけでございまして、できるだけ隠密裏に証拠の収集を進めていくということが望ましいわけでございます。  しかしながら、一方におきましては、報道の自由、取材の自由というものがあるわけでございまして、捜査当局立場といたしますれば、余り騒がれますと、関係者等協力も得られない、自由な供述も得られないというような面もあるわけでございまして、この辺はいつも報道機関との間でいろいろぶつかり合うと申しますか、そういうような実情にあるわけでございます。  ただいま先生指摘文書によりますれば、特捜部といたしましては、捜査を円滑に行いたいという希望と申しますか要望を取りまとめて、そういうメモにして渡したものではなかろうかと思うのでございます。もっともこれに対しましては、報道機関側言い分もあろうかと思います。どの辺で適切に線引きをするかという問題でありますけれども捜査機関といたしまして、決して報道の自由とか取材の自由、こういったものを無制限に制限していこうという考えはないところでございます。
  19. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 大臣、どうですか。
  20. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) 佐藤委員からさきに苅田事件についても種々お尋ねがございましたが、事、住民税横領容疑という問題でもございますので、今納税思想に悪影響を与えるようなことがあってはならぬというような点で、厳正捜査を開始しているということで御理解をちょうだいいたしたいと思います。  さらに、ただいま報道機関に対する文書の問題、先生が今お示しになっておられるので、私は最初、そんなことはないだろうという考えを持っておったのですけれども先生が、言うのではうそじゃないな、こういうふうな感を持っております。そういうような点がございますけれども、今刑事局長からお答え申し上げたように、捜査上できるだけ余り公にさせたくないという、捜査熱心の余りにそのような文書が出たのだろう、こう思いますけれども、やはり捜査当局としても要請するならば要請するような文書でなければならぬ。言論の自由、また取材の自由を何か威圧するような文書を出すということは不適当だと私も思います。今後慎重な方向で処理していくように指導してまいりたいと思いますので、御理解願いたいと思います。
  21. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 これは、事実は刑事局長認めるわけだね、こういうのが出されておることは。そうして、この内容についても認めるわけでしょう、あなたの今の答弁はいかがですか。
  22. 岡村泰孝

    説明員岡村泰孝君) 委員メモに基づいて御質問になりましたので、私も委員を御信頼申し上げまして、そういうメモが行っているのであろうというふうに理解いたしたところでございます。ただ私自身は、先ほど申し上げましたように、今の時点では確認はいたしておらないところでございます。
  23. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうしますと、今大臣答弁のようなら私は我慢できるんですが、あなたの答弁のようなことでは、これは私はやっぱりまさに威圧報道の自由に対して圧力をかけると言われても仕方がない、そう思うんで、これはひとつきちっと、大臣が言われるように始末をつけてくれますかな。
  24. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) 先に刑事局長答弁いたした後に、法務大臣が今お答えを申し上げておりますので、法務大臣答えの方をひとつお取り上げ願って結構だと、こう思います。
  25. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 わかりました。それならそう理解したいと思います。  大臣、私がなぜそう言うかといいますと、この文書が出される直前に、日本画家平山郁夫さんという版画家をめぐる事件がありましたですね。このときに、たしか東京新聞だったと思うんですが、逮捕された版画家との一間一答みたいなことが出ておりました。その結果、これはひとつ刑事局長もよく聞いておってもらいたいと思うんですが、増井清彦次席検事ですか、これの公式記者会見からそのことを理由にして排除されておるんですね、排除されている。こういうようなことになりますと、まさにこの通達のとおりに威圧されておるんです。そういう事実があるから私は重視をしておるわけです。  だから、今大臣が言うことだから、最高責任者だから私の言うことを信用してほしいというなら、ここら辺をきちんとしてもらわないと、まさに空砲になったんではどうにもならない。そこら辺はいかがですか。
  26. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) 先ほど来申し上げておるとおり、もろもろ事件によっては報道機関に、これはしばらく報道を差し控えてほしいという場合には、報道機関事件によっては協力をしていただいていると、こう承知をいたしております。そういうふうな点で、要請要請としてやはりやるべきだと、威圧を加えるということは先ほど来申し上げているとおりでございまして、法務省が何と言おうと責任者の私がそのような気持ちでおりますので、御理解願いたいと思います。
  27. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ぜひひとつ、局長、それいいですね。やっておかぬと、大臣また一カ月したら、やめちゃったら終わりということになっちゃうから、それじゃいかぬから、私は念を押しておかなきゃいかぬと思うんで、念を押すまでもなく局長もうなずいておりますから。  取材が出ることは捜査の上でいろいろ差し支えが起こることかもしれませんよ。しかし同時に、やっぱり国民の側から見ると、あなたみたいに、苅田町のように全然もう六カ月たっても何も音さたがないと、やりおるのかやらぬのかさっぱりわからぬと、こういうことではかえって不信が出ますよ。やっぱり克明に新聞を通じて出てくるからこそ進展の状況をつかむことができるし、国民も真実をつかむことができるわけだから、そこら辺が両々相まって私は民主主義というものは保障されていくと思うんです。そこら辺はひとつぜひ、今大臣答弁のように、こういうことが法務省の中でまかり通るということのないように、くれぐれもひとつ念を押して確認しておきたいと思います。よろしいですね。
  28. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) よく了解いたしました。なおまた、法務大臣はかわっても大臣はかわっておりませんので、どうぞその点も御理解願っておきたいと思います。
  29. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 わかりました。検察庁は結構です。  官房長官が見えましたから、官房長官にひとつ質問を戻したいと思います。  きょう報道によりますと、天皇陛下手術をされまして、そしてそれに伴う国事行為臨時代行等の所要の措置の閣議が行われておるということも聞きました。私どもは、御高齢であるだけに心から手術の御成功を祈っておりますが、どうも報道だけでははっきりしませんのですが、きのうのテレビによりますと、官房長官の談話の中で、だが、沖縄陛下の訪問についてはもうしばらく様子を見たいみたいな発言があったんですが、私もやっぱり昨年腹を切りましたが、経験から言ってみても、また高齢という面から見ると、ちょっと無理な感じがしますよ。中曽根内閣になると何か天皇を利用する癖が間々私どもの目につくんですけれども沖縄県民の期待なり、さらにまた天皇自身国体出席の問題ですからありましょうけれども、やっぱり病気病気ですから、私は、この際ひとつ早く断念して、そして心の安らぎを与えられた方がよろしいんじゃないかと、こう思う んですがいかがでしょう。
  30. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 今回、陛下がお体の御不調で、従来内科治療をしておられたんですが、やはり外科手術の必要があるという診断が下されまして、本日御入院、恐らく手術が行われる予定になっておりますが、私どもとしては、手術がうまく取り運ばれて、一日も早く御快癒なさることを心から念願をしておるわけでございます。昨日も、そういう意味合いを込めまして、お見舞いを申し上げると同時に、今日までの診断経過というものをお伺いに私が宮内庁にお伺いをしたわけでございます。  その際、いろいろ話をいたしましたが、沖縄国体にお行きになられるかどうかということについては、何分にも御高齢であります。御病気はそう私は心配をすることもないのではないかと、必ず御快癒なされるということを確信をいたしております。ただ、手術をして、しかもそれが御高齢であるということは気にかかっておるんですが、そういう意味合いもあって、沖縄国体に行かれるかどうかということについてどのように扱うべきかという点について、十分配慮したつもりでございますが、やはり本日の手術の、割合簡単な手術であると、こういう話でございましたが、その結果を見まして、その上で、できるだけ早い機会に右左の決断をしようという大体心づもりでおるわけでございます。  したがって、今佐藤さんおっしゃったように、中曽根内閣が皇室を云々といったようなことは、これはいささかもさようなつもりはございませんので、ぜひその点についてはしかとひとつ御理解をしておいていただきたいと、かように思います。
  31. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 御高齢だし、沖縄はやっぱり来月といっても暑いですよ、御無理をなさらぬようにひとつぜひ早急な御判断をさしてあげた方がよろしいじゃないかと思いますから、お願いしておきたいと思います。  そこで、話は変わりますが、地価の問題で、これも二十日の夜ですか、NHKの特集で、官房長官も建設、国土庁長官も一緒に出られておりまして、私は拝見しておりましたが、そういう意味では、認識の面では私はそう変わりはないと思う。東京を中心とするこの大都市の地価の状況というのは、まさに狂騰、狂乱、これは四十九年以上だと私は思うんですね。  あの中でも出ておりましたが、やはり建設大臣も認めておられますように、この火つけ犯人は何といっても中曽根内閣、最大の失態であるということを建設大臣もあの席でも言われておりましたが、これは私はあの特集を通じても共通の認識になったんじゃないかと思うんですね。そうして政府、自治体が決断をすれば早急に対応ができたということも、これもやはり大体共通認識になってきつつあるんじゃないかと。  長官自身も、四十八、九年当時官房副長官をやっておって、あのときに全部各省集めて土地狂騰に対して対策をつくっておるんだと、非常に自信満々として発言なさった。そうして、もう既に省庁にも指示をして、例えば大蔵省は金融を抑えるとか、自治省は遊休農地のあれを点検するとか、こうやっておるんだということを盛んに長官自身も強調しておったわけですが、きょう大槻さんのいわゆる新行革審ですか、この中間報告の緊急対策という六本柱が報道されております、きのうこれを決めたようですが。大体この内容を見ると、長官が二十日のあのNHKの特集の中で言った内容がそっくりこう出てきている。  だとすれば、これは私はやはり内閣の責任でもってなぜ早く対応しなかったのかという当然の疑問が起こってくる。この点について長官自身どういうお考えなのか聞いておきたいと思うんです。
  32. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 土地の問題は、これはやはり放置できない最大の政治の大きな課題になっておるわけでございます。  今お話しのように、ポスト行革審で十月の十二日にとりあえずの措置についての御答申をちょうだいすることのできる予定になっておるその文書、これと、ついせんだってのあれは政治討論会でございましたか、もう一つNHKの特集の放送でございましたか、両方ございましたのでどちらで言ったのか忘れましたが、私の言っておるのと大体同じでないかと、ならば何で早くやらぬかと、こういうことでございますが、それは処方せんはだれが考えたって今こう言うよというのはすぐ出てくるんです。問題は、それが一体どういう段取り、手順で、そして国民理解を得ながらなし得るかどうかという点が一番厄介な問題であると、こう私は言わざるを得ないと思います。  といいますのは、一般論としては大変これは幾つぐらいの対策というのは出てくるんですね。しかし、いざということになってくると、これは第一土地持ちそれ自身が、世帯の数が四千数百万あるのかと思いますが、土地を持っておる数が三千万人、つまりは三千万世帯あるわけでございます。そのお互いの利害の衝突というものがあって、なかなかこれは対策を具体化するという段階になると容易でないと、そこをどう切り抜けていくかということが私は基本的な困難な場面であろうと、こう考えます。しかし、思い切ってやらなけりゃならぬ時期が来たなと、その時期が来るのに、私の過去の経験から見て、やはりこういう難しい課題に本当の意味で実効の上がるような手だてを講ずることができるのには十年を超す年月が必要であったのかなという感じすら持つわけでございます。  といいますのは、今言われておるような地価抑制の手段、方法は、全部昭和四十七、八年ごろに各省の俊秀を集めて連日のように地価対策を講じたときに出てきておった課題とほとんど対策が変っておりません。しかし、これ一つやろうとすると大変な実は当時抵抗があって、なかなか残念ながらできなかった。しかし、今回と前回の違いは、世論の盛り上がりがよほど変わってきたなと。だからこそ、今度こそ私はたとえ抵抗があっても、国民の少なくとも過半数以上の方は支援をしてくれるのではないかと、そういう時期が来たなと。ならば、この機会に思い切ってやはり政治がこれを取り上げて、これはもう討論会でも申し上げましたが、野党もありません、与党もありません、全部が手を組んでひとつ取り組もうではありませんかということを私は呼びかけたつもりでございますが、どうやらその時期が来た。  政府としましては、十二日にポスト行革審から御意見が出れば、それを政府部内で受けとめて、そしてできるものからどんどん着手をしていく、そしてなお先行きの問題は、この土地の問題だけは、土地とは何ぞやと、土地は自由な商品なのかどうなのかといったような基本にまでさかのぼる、こういう問題もあるわけでございますから、中長期の課題をさらに引き続いてポスト行革審で御検討願ったその上で、やはり中長期課題としても引き続いて政治の場で解きほぐしていくという努力をいたしたいと、かように考えておるわけでございます。  今、佐藤さんおっしゃったように、なぜおまえ早くやらぬのだと、こうおっしゃることはわかるんですけれども、怠けておるわけでは決してない、これは非常に難しい課題ですから、お互いにひとつ助け合ってやらさしていただきたいと、かように思うわけでございます。
  33. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 わかりましたが、私率直に言って、中曽根内閣が五年間の中でいろいろありますけれども、まさにこの土地問題については最大の失政だと、そう思っておるんです。それだけに官房長官の今の御答弁を聞きますと、並み並みならぬ決意は感じられるんですが、中曽根内閣の生命は余りにももう短い、だから、これはもう次期政権に渡していかなきゃならぬと、こういう気持ちがあるんじゃないかと思うんですが、私はやはり十月十二日に答申が出されたら、一つの道筋だけは中曽根内閣の手できちっと示す必要があるんじゃないかと、そう思うんで、この点いかがかというのが一つ。  もう一つは、やっぱり今度の場合、端的に言って東京一極集中が基本的に原因になっていますね。これは余りにも東京に人と物と金が集まり過ぎておる。この分散以外に私は中長期的にはなくならないんじゃないかという感じがしてしようがないんですが、そこで出てくるのが、いわゆる首都機能の移転をする遷都の問題も、当然その中長期的な検討の中に含まれてこざるを得ないんじゃないかというような感じがするんですが、ここら辺の問題についてはいかがですか。
  34. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 今の私ども考え方、総理のお気持ちもそうだと推察をしておるんですが、十二日にポスト行革審から答申があれば、それを十分政府部内で検討を関係省庁でさせまして、この内閣でその答申を最大限尊重するという閣議決定をさしていただいて、道筋だけはつけさしていただきたい、これは私どもの念願でございます。  それから、第二点の方の基本的な問題で、中長期にわたるという対策の中には、まさに今日の地価の上昇というのは都市機能の一点集中、殊に日本は政治も経済も文化もすべてが一点集中、東京集中でございます。フランス等と似ておるのかなと、アメリカなんかであれば政治あるいは金融あるいは鉄鋼その他の産業、これらがそれぞれ大都市に分散をしておりますが、日本は余りにも一点集中。しかもこれが国際化時代を迎え、情報化時代を迎えておるといったようなことから、需要と供給のアンバランス、ある部面におけるアンバランス、それが地方へ波及をしていく、こういう姿になっておるわけですから、そこで、中長期の課題でよく出てくるのがおっしゃる遷都論でございます。これも私はやはり検討すべき課題の一つであろう、こう思います。  それから、土地所有権について、所有権と利用権の分離の問題をどう考えていくのか。それができるのかできないのかといったような、これはなかなか憲法問題にも関連してくる厄介な問題があるわけですが、そういったような課題も恐らくや大槻さんのところでは御検討の課題として、中長期の課題として上がってくるのではなかろうかな、かように考えているわけでございます。
  35. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 わかりました。ぜひそういう点を含めて、中曽根内閣の最後はきちっとしてもらったらいいんじゃないか、こう思います。  そこで、自治大臣にお伺いしますが、この土地騰貴と関連して今作業中の固定資産税の評価がえですね、この問題が作業中ですから、もうかなり具体的に進んでおるんじゃないかと思うんですが、何といってもこの狂乱地価がもろにかぶるような結果は、これはつくってはいけないと私は思うんです。とりわけサラリーマン、勤労者の住宅ですね、ここら辺でまさに今悲鳴が聞こえるような感じがするんですが、鈴木都知事も狂乱部分は遮断して、表現的にちょっとこう聞いておったんですが、事実上三年間は固定資産税を据え置きをしたいという、据え置きになるように努力したいと、こういう表現だったと思うんですが、ここら辺について、作業過程でございますが、自治大臣としてどういうふうな基本姿勢のもとに対応なさっておるのか、あわせてお聞きしておきたいと思います。
  36. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) 来年度は固定資産税の評価基準の評価がえの年でございます。この基準を新しく決めなければなりませんが、適正な時価を求める、評価基準を決めて適正な時価を決めていくわけでございますが、売買実例価格に非常に異常な、正常と認められないような状況がある場合には、現実の売買実例価格そのままでなくて、これを修正して求めていって正常売買価格を定め評定するわけでございます。この不正常要素をどう認定するかということでございますが、この性質からいいまして具体的、画一的な基準というものはございません。個々の地域の具体的な状況に応じて、地価等に精通している方々の意見を参考にしながら個別に判断していかなければならないと思います。  なお、不正常要素の取り扱いでございますが、課税団体の間においてはできるだけ統一した運用ができるように、基本的な考え方については通達を既に出しているところでございます。その内容でございますが、需給関係のアンバランスに伴いまして買い急ぎであるとか、あるいは投機的取引における過度の期待価格、あるいは小規模土地の取引に伴います買い足しによります割高分等がございます。自治省におきましては、こうした観点から課税団体との間で基準値につきましての最終的な調整を行っているところでございます。  具体的にという御質問に対しまして余り具体的でございませんが、そういう考え方で対応している次第でございます。
  37. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 従来からも小住宅二百平方メートルですか、これについては二分の一、四分の一の適用とか、いろいろなこれは優遇措置がございますが、さらにそれを例えば四分の一を六分の一にするとか、こういう基準を変えて対応するのか、それとも今言ったように、基準はそこら辺はそのままにして、そして異常な値上がり部分についての影響をどう遮断するのか、そこら辺のところが、言うことと実際という意味でちょっと私どもはやっぱり胸に落ちないものですから、そこら辺をまずひとつお聞きしておきたいのが一つ。  それから、同時に、私はこのようなことでいわゆる大企業、企業の遊休地が、恩恵を受けるようなことがあってはいかぬと思うんですね。そこら辺の分離をきちっとしていかないと、かえって不当利得を増大させる、こういうことにもなるわけで、ここら辺についてもあわせてどのような措置をとられるのか、いかがでしょうか。
  38. 渡辺功

    説明員(渡辺功君) ただいま御質問がございました、こうした異常な地価の値上がりということについて多くの方々がいろいろな御心配がある、これは事実であろうと思います。そこで、これに対応するのにどちらの方法でやるのか、こういう御質問がございました。  御指摘のとおり、現在でも二百平米までの住宅用地につきましては四分の一、それからそれを超えます住宅用地につきましては、一定の面積まででございますが二分の一の特例がございます。現在、その例えば四分の一の特例によりまして約一兆円の減収、軽減措置といいますか、そういうものが生じているわけでございます。  そこで、この制度は、評価がえに伴いましてもこの制度をそのまま維持いたしますというと比例的に効いてまいりますので、この制度は制度といたしまして、前段申し上げました、大臣からも御答弁申し上げましたように、現在の異常な地価というものの中に、固定資産評価基準で言うところの不正常要素というものが非常に含まれているんではないか。東京都あたりもそういうことを非常に意識いたしまして私どもの方に相談をしてきておりまして、そういった意見の調整の中からそういったものを厳格に考えていって、そして調整をとっていくということが最善ではないだろうか、こういうような考え方が一つあります。  それからもう一つは、今回の地価の状況を見ますというと、例えばかつての一億総不動産屋と言われた時代と違いまして、東京とか大阪とか、非常に全国的なベースからいいますとやはり特定の地域に特に非常に高くあらわれているというアンバランス問題がございます。その辺が先ほど委員指摘の、東京都におきましても東京都特有の問題としてどう対応できるか、これも一つの対応の仕方だと思います。全般的なこうした東京の状況全体を全国に及ぼすということは、必ずしも地価形成の状況から適当ではない場合もありますし、地方の公共団体、特に市町村の立場というものはやはり適正な評価がえによって基礎的自治団体である市町村の通常の財政需要というものを賄う、そういう御負担はいただきたいというところもあるものでございますから、そうした幾つかの要素、つまり非常にアンバランスである、あるいは非常に高騰ということが生じて、そこに異常な地価形成が行われていて不正常要素がある、こういったところに着目をして対応する、こういうことではないかというふうに考えております。
  39. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 作業中でございますから、今お伺いしますと影響遮断について御努力なさっているようですけれども、この問題と関連して財産譲渡税の問題とかいろいろございますけれども、罪のない善良な民衆にこういう、言いかえれば略奪みたいな狂乱地価を固定資産税にまで波及させるということになったんじゃこれは大変ですから、ぜひひとつ万全の措置をとって遮断するように私からも要請しておきたいと思います。  そこで、固定資産税についてはその程度にとどめまして、防衛庁に移ってまいりたいと思います。  まず、次期戦闘機の問題について長官にお伺いしておきたいと思うんですが、これは長官が来月訪米なさるわけですね、そこで詰めをしてくるというような報道がなされております。私どもいまだにこのFSXの要求性能が公表されておりませんものですから、どういう性能を持ったものをどういう状況下を想定して購入なさるのか、そこら辺が定かじゃない。したがって、そういう点がきちっとわかれば、それに必要な性能は何かというのも出てくるだろうし、そのためにどういうのがいいのかという物差しも出てくる。そこら辺がさっぱりわからないまま結論が急がれておるというような感じがしてならぬのです。ここら辺、長官が今度は、新聞報道によりますと詰めを行ってくるんだという前提で御出発のようでございますから、本音というか、長官の腹というのか、それをちょっとお聞かせいただきたいと思うんです。
  40. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) このFSXの問題につきましては、今度アメリカへ行きましてワインバーガー長官との間で話をすることになろうかと思います。  私の基本的な考え方というのはどういうことかといいますと、これはこの前ワインバーガー長官が来られたときに、向こうの方で米機を中心として日本の技術を入れてひとつ考えてみてくれないか、こういう話がございましたから、これは一つの選択肢として考えてみましょう、こういうことは申し上げたんです。  同時に、私がそのときに申し上げたのは、私はアメリカの航空機を買うことに興味はない、また同時に、何でもかんでも日本でつくらなければ承知が悪い、そういう気持ちはない。いわゆる日本の方の技術とアメリカの方の技術、こういうものをどうアジャストしていくか、そして両国のためになるか、また日本の防衛のためになるか、そういう観点からいろいろ考えてみたい、こういうことを申し上げたわけであります。  もう一つの私の原則というのは、やはり客観的に見てこれは非常に優秀だというものでなきゃいけないし、それから日米安全保障体制がございますから、少なくともアメリカ国防総省の理解を得ておかなきゃいかぬ。もう一つの問題は、両方の防衛産業の影響といいますか、圧力といいますか、そういうものは、これは排除しなきゃならぬ、そういう観点でやりたいということを向こうに申し上げたんです。そういう点に基づいて今事務的にいろいろやっております。まだ結論が出ませんが、どういう過程になるか、それを見た上でそれを踏まえてワインバーガー長官といろいろ話をしてみたい、これが私の基本的な考え方です。
  41. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 これは何ですか、今度の訪米によって事実上そこで話を詰めてしまう、こういう類のものですか。
  42. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) これは非常に重要な問題でございますから、そこである程度のアメリカ側の理解が得られた、こういうことになればそれに基づいて決定いたします。理解が得られない場合は、これはまた別でございます。あらかじめここで決めてこようというような気持ちはございません。
  43. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私は、今あなたのおっしゃったように、いろいろな条件もあるでしょうが、やはり今政府がとっておるのは専守防衛が基本ですから、その上での次期戦闘機という、ここら辺はきちんと踏まえておかないと、性能、性能と言うだけで、何か気がついてみれば戦闘爆撃機になって、朝鮮半島からシベリア一帯というような、そういう趣も言われておりますから、私はやっぱりそこら辺はあなたが行かれる場合にきちんと踏まえて言っておく必要がある。この点は一つ申し上げておきたいと思うんです。  そこで、時間の関係がございますから、もう一つ次の問題へ移ってまいりたいと思いますが、逗子の池子の米軍住宅の建設問題で、新聞等で言われておりますように、一部縮小した環境影響予測評価書、これを神奈川県に提出をしたようですね。この結果、手続的には評価書の公告によって建設着工が可能となった。そういう中で、逗子ではこの問題をめぐって富野市長が辞任をして、そして十月十一日に投票が行われる、こういう事態になっておるわけです。  この点に対して、一部新聞報道によりますと、防衛庁の方では市長選の結果を見る前に着工に入りたい、こういう報道がされておりますね。例えば施設庁の計画では、工事は防じん、防音のため高さ三メートル、長さ六百五十メートルの塀と二千メートルの工事用道路の建設、古い建築物約五十棟の解体などから着手する。そのための塀と建物の解体等の工事入札は十八日に終わって六社が落札した。工事用の道路の入札は二十四日に行われる。こういう報道が盛んにされておるわけでございますが、この点はいかがですか、そういうふうな状況になっておるんですか。
  44. 友藤一隆

    説明員友藤一隆君) 池子の米軍住宅の建設につきましては相当長い経緯がございますが、実は五十九年の六月に、当時の逗子の市長さんから神奈川県の環境影響評価条例を厳守することを条件の一つといたしまして協力する旨の御回答をいただいておりまして、当庁といたしましては、こういった地元の意向を尊重して、この環境影響評価条例による手続を現在進めておるわけでございます。  一方、この事業を争点といたしまして、地元では市長がおかわりになるというような事態もございまして、市では賛否両論、二分されるという状況が現出いたしまして、新しい市長等も出られたわけでございますが、神奈川県知事の呼びかけによりまして、この問題の話し合いの早期解決ということで、県、それから市、それに国が加わりまして三者会談を行いまして、これを足場といたしまして調停案を知事さんから提示をいただいてきたわけでございます。その調停案は、市の意向も十分取り入れた内容ということで評価書を私どもつくって現在手続を進めてきておるわけでございまして、こういった地元の意向は可能な限り十分私どもとしては取り入れて手続を進めてきておりますので、整々とこういった事業については実施を今後いたしていきたいということで考えておるところでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  45. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そこで、官房長官にちょっと残ってもらったのはそのことなんですが、市長は、その三者あっせん案に基づく案を、できれば市民投票に付したいということで議会の了解を求めたが、それができなかったものですから、したがって自分の辞任を通じて市民の意思を確かめようと、こういう挙に出たのが、今度の富野市長の辞任に伴う市長選挙であると私は思うんですね。その手法がいい悪いはともかくといたしまして、民主主義の原点に戻ってひとつ市長が辞職を決意してまで市民の意思を確かめようという、それが十月の十一日に行われる。  ところが、その前に施設庁の方が準備、手続その他が全部合法的に整ったから着工するんだと、これは余りにも私は、住民自治というか民主手続というか、そういったものを無視をする典型的な感じがしてならぬわけでございますが、これはひとつ防衛庁長官からまず聞いて、官房長官の御答弁をと思ったんですが、防衛庁長官答弁やってくれますか、それともいきなり官房長官答弁いただきましょうか。防衛庁長官、ひとつそれなら。
  46. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 端的に言って、これは非常に高度の政治判断を要する問題だと思っております。ただ、今の段階で工事着工しないということは申し上げられません。
  47. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 自治大臣にもお伺いしておきたいと思うんですが、たしか十六次の地方制度調査会で、大臣、私も地方制度調査会に行っているものですから記憶があるんですが、議会と長との意見が対立しているときに重要な事件等について住民投票制度の導入を検討する必要がある、こういう総理大臣に対する答申をまとめた経緯があると私は記憶しておるんですが、これはまさにこの逗子の事例を予見した私は答申だったと思うんですけれども、これらについて自治省としてどういう検討をなさり、たしかこれは十六次ですから、もう十年ぐらいたっておると思うんですがね。そして実践をしておるのか、ここら辺いかがなんですか。
  48. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) 先生おっしゃいますように、昭和五十一年の第十六次地方制度調査会の答申におきまして、住民投票制度の拡張に関する検討を行うよう提言されております。同時に、住民投票制度は現行の代表民主制に対します補完的な制度とするよう述べております。したがいまして、住民が直接に団体の意思を決定していこう、こういう住民投票制度につきましては、現行地方自治制度と矛盾をしないであろうか、あるいはこれを認めるとしましても、対象事項や投票結果の効力をどう考えていったらいいか等、検討する点が多々あると思う次第でございまして、今後さらに慎重に研究してみたいと考える次第でございます。
  49. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 自治大臣は、その意義は認めながら、さらにひとつ検討ということなんですが、検討する時間がなく、その問題を答えを出さなきゃならぬのが逗子の現実だと思うんです。  そこで官房長官に、これはやっぱり内閣を代表して、防衛庁長官に言わすれば高度の政治判断を要する内容だという前提がついておりますが、いろいろ防衛庁には防衛庁、施設庁には施設庁の言い分があったとしても、きょうは九月二十二日、そして、その問題をめぐって市長が市長職を投げ出して市民に是非を問う選挙、これが来月の十一日。これを無視をして、条件が整ったんだからということで工事の着工にかかる、これほど私は民主主義を否定するものはないんじゃないかというような感じがしてなりません。  同時にまた、地方自治というものは一体何なのかというものも改めて問い直される問題でもあろうかと私は思うので、私はやはりこの際、いろいろな問題があったとしても、せっかくそういう住民の意思が確かめられようとしておるんですから、そこはひとつ見届けて判断をすべきじゃないかと思うんですが、官房長官いかがでしょう。
  50. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 申し上げるまでもなく、やはり住民の意思というものは十分尊重しなければならないと思います。それがまた地方自治の本来の立場でもあろう。しかし同時に、国の政策というものについても住民に理解を求め、そしてまた、地方団体自身としても、国のそういう基本的な問題については十分国の意思というものを尊重してもらわなければならぬ。ここらの兼ね合いをどう考えていくべきかというような基本の問題も含んでおるように思います。  御質問の、選挙の前に工事に着手するのかしないのかといったような問題につきましては、先ほど防衛庁長官がお答えをいたしましたように、高度の政治判断を要する問題であることも当然でありましょう。そういう判断の上に立って右左が決められていくべきものであろう、今日どうこうという段階ではない、かように考えております。
  51. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 まあ結果的には何も結論はないわね。わかりました。  しかし、住民の意思が確認される土壇場の段階ですから、十分官房長官としては、きょうは言えないにしろそれは重視をしていく、そういう電波みたいなものを私も今感じましたから、官房長官、これで結構です。  そこで、防衛庁長官質問が続きますが、その前に私は自治大臣に申し上げておきたいと思うんですが、逗子は、今議論したように、議会に二度出して住民投票制度が通らなかったという経緯もございました。しかし、こういう事例というのは、例えば三宅島ですか、それもありますし、これから再々出てくるような感じがしてならぬのですよ。だとするなら、第十六次の調査会でも答申しておりますが、余り慎重過ぎてもいけないんであって、やっぱり少しスピードを上げて検討していただいて、やはり制度としてきちっとしておくことの方が民意を確かめる意味で必要なときが出てくるんじゃないか、こう思うので、ここら辺はぜひ住民投票制度というものの導入についで、ひとつ真剣なそして早急な検討をしていただきたいという点について、これはきょう答弁いただかぬで結構ですから、申し上げておきたいと思います。  そこで、三宅島の問題ですが、NLPですか、飛行場の問題についてお尋ねします。九月一日に警視庁機動隊が、二百七十人動員して、気象観測施設現場の座り込みを強行排除した、こういう報道とあわせて公務執行妨害で八人を集団逮捕したというのが流れておりますが、この経緯、これは施設庁ですか、どこになるんですか、説明いただきたいと思うんです。警察ですか、どうぞ。
  52. 新田勇

    説明員(新田勇君) 警察から申し上げます。  三宅島につきましては、防衛施設庁の方から八月の末に警備要請というものが出ておりました。警察の方でも事情を調べましたところ、反対をする住民の方と防衛施設庁職員等の工事関係者との間で不測の事態の発生も予想されるということから、三宅島警察署のみでの対応は困難と感じ、機動隊を出動させたというのが出動の経緯でございます。
  53. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 この件で、栗原防衛庁長官が七月二十一日の閣議後の記者会見で、島の人は純情だ、特定のイデオロギーを信じ込んでしまう云々ということで発言が出されて物議を醸しておるんですが、これは現地は四千三百人の人口のうち八五%以上の人が反対しておる、こういう実態を無視した発言だということで、現地で大変怒っておるんですが、今度の機動隊の導入によって私は警察に対する島民の不信というのは非常に強まってきたんじゃないかと思う、島民の不信というのが。一体警察行政がこれによって支障を来さないのかというぐらいに私は心配しておるわけでございますが、この点は警察庁としてどういうふうな理解なのか、同時にまた防衛庁長官として、いまだにそういう認識なのかお伺いしておきたいと思います。
  54. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 私が申し上げたのは、特定のイデオロギーを持った勢力という意味です、にいろいろと言われておる、それが私の言うたことです。これは今もそう思っております。  それからもう一つは、島の人たち八五%云々と言いますけれども、それはある時点に、ある調査で出たことだ。私どもの言うのは、こちらの方の言い分もよく聞いてくれ、よく話を聞いた上で判断してくれ、こういうことを言っているんですけれども、しかも東京都の方も、東京都の議会で質問のあった場合に都知事がそう言っているんですよ、まず国の方の意見を聞くべきじゃないかと。それにかかわらず、いや聞く必要ない、こういう態度です。私は、住民の意思というのも非常に重要ですけれども、同時に、国がどう考えているかということも十分聞いていただきたい、そういう過程を経ないで、ただ八五%反対だというようなことは、これは好ましくないと思うんです。したがって、この気持ちは今でも変わっていない、こういうことです。
  55. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) 国家公安委員長としてお答え申し上げます。  警察といたしましては、住民運動が平穏に行われる限り何ら関与するものではございません。違法行為が行われる、あるいは行われるおそれがある場合に、警察の責任といたしまして必要な措置をとっている次第でございます。  今回の場合につきましては、警察は慎重に対応していたところでございますが、越軌行為がありましたために必要な警察措置をとった次第でございます。
  56. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 大臣ね、あなたはさっき八五%の人が聞いてくれない、こういうことに対する御不満も言われておったようでございますが、逆に言えば、三宅島の皆さんから見ますと、なぜ三宅島なのか、こういう疑問は消えないと思うんですよ、率直に言って。  しかもそのために機動隊を入れて強行するようなことをやれば、これはもう文句なしにこじれますよ、それは話し合いじゃないんだもの、実力行使だもの。あなたにすれば座り込んだからやらざるを得なかったと思うかしらぬけれども、しかし、権力を持った者がそういうことをやったら、もうそれはどうしようもないこじれになる。その一つの見本が何かと言えば成田ですよ。成田がそれでしょう。いまだにやっぱり鳥取県警本部と同じぐらいの警察官が常時警備しなきゃならぬ、こういう民間空港が世界のどこにありますか。こんなばかげた状態が。こういうことがまた三宅島に起こらぬとは限らぬ。そこら辺はやはり特定なイデオロギーによって吹き込まれたからそうなったんじゃなくて、それは島民の感情が基本ですよ、理解が。そこがきちんとしておれば、どんなイデオロギーを言ってみてもそれは排除されますよ。  だから、そういう意味であなたの発想というのは、考え方というのは、私はやっぱり問題があると思う。そこを取っていかないと島民の中には溶け込まないんじゃないかと思う。そうしてむしろ、なぜ三宅島なのかということについて私も疑問を持っているんです。三宅島じゃなくたっていいじゃないですか。例えば今の技術からいえば、浮体滑走路ということもできないことはないじゃないですか。そういう方法もあるでしょうし、もっともっとここら辺の問題について検討をし直してみるということが必要じゃないかと私は思うんで、ここら辺についてあなたは余りにもかたくなな感じがしてならぬのですけれどもね、そこら辺もう少し島民の気持ちになって物を考えてみる、そういう必要もあるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう。
  57. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) これはもうたびたび繰り返した問題ですけれども、なぜ三宅島が、そういう説明はよく聞いてもらいたいと思っているんです。ですから、これから施設庁長官からもなぜ三宅島かということをひとつお聞き取りいただきたいと思います。  それからいま一つは、今浮体工事というのが出ました。浮体工事をやったらいいじゃないかと、浮体工事を。これは私どももそれでできれば別にどうこうないですよ。ところが、そういうことについては事実問題としてこれは非常に難しいと、そういう検討もなされておるわけです。ただ、余りにもその声が非常に多い。これ今度アメリカに行ったときにワインバーガー長官にそういう声があることを伝えてもらいたい、こういうあれがありましたから、これは明確に伝えましょう、こう言っているんですよ。ですから佐藤さん、私を知っておるでしょう、私はいいかげんなこと言いませんよ。三宅島にしなきゃならぬと、私が聞いてみてもこれはそうだなと思うんです。そういう意味合いで施設庁長官からの話を聞いていただきたい、こう思います。
  58. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 時間がないから、施設庁長官からゆっくり聞く時間がないんだよ。ただ私は、あれは航空母艦に対する離着訓練でしょう、長官。そうだとするなら、例えば古手の航空母艦を買ってきて、それで離着訓練をやってもよければ、さっき言ったように浮体滑走路だってできぬことはないと私は思うんですよ。それは施設庁長官はどういう説明するか知りませんが、そこら辺はもう少し私はやっぱり広い選択を、考え直してみるチャンスじゃないかと思う。  このまま突き進んでいきますと、再び小さな成田になりますよ、三宅島は。そうなったときに、合成田がいい例でしょう、どうしようもないじゃないですか、あれ。警察はいい迷惑ですよ。本当は警察は全部引き揚げて運輸省の役人かなんかがかわりにやればいい、どんなものか。そういう意味では政治のボタンのかけ違い、このボタンのかけ違いというのがどんなに後々まで尾を引いて迷惑するか、国民の皆さんの負担にかぶさってくるか、そういうことを考えると、私はこの際もう少し防衛庁長官が施設庁長官に任せずに、せっかく今度アメリカまで行くんですから話をして、そして三宅島問題をひとつ決着つける、こういう高度なまさに政治判断ね、これをひとつやるべきだと思うんですが、いかがですか。
  59. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 航究母艦を買ってどうのこうのと、まあ、あれでしょうけれども、私どももありとあらゆることをいろいろ考えているんですよ。ですから、そこら辺はこちらの思いつきで言ったり、意地で言っているんではないということは御理解いただきたいと思います。
  60. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 時間がありませんからいいです。
  61. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 まず私は、住宅ローンの問題から伺わせていただきます。  庶民が今、これほど首都圏で土地が高くなり、そしてそれにつれて住宅、マンション等が高くなってまいりますと、やはり住宅ローンというものを活用しなければ庶民の夢であるところの我が家はなかなか購入できないというのが実態でございます。この住宅ローンに庶民が非常に関心があることはよくおわかりのところでございますが、まずここ過去三年ぐらいの間の住宅ローンの利用件数それから金額あるいは新規貸し出しの状況等を大蔵省の方からお述べいただけますか。
  62. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 住宅ローンの推移でございますが、日本銀行で集計しております。それによりますと、五十九年度末で残高で十七兆三百十七億円。それから六十年度末で十七兆九千八百五十二億円。六十一年度末で二十兆三千百二十五億円というふうになっております。
  63. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 庶民はこの住宅ローンを頼りにマイホームを手にするということになるんですけれども、当初予定をしていたような計画を立てても、なかなかそれが時間を経過するとその計画どおりにいかない事情等も出てくるわけですね。住宅ローンの貸し倒れの問題、こうした事故件数がどのぐらいになっているのか掌握しておられるかどうか。昨年十一月の日本住宅会議の報告では千人に二人マイホームを手放すというふうなデータもありますし、それから十二月の金融財政事情研究会の調査でも非常に住宅ローンを返していくことが厳しくなっていくために、さらに消費者信用ローンを借りてそしてそれで返しているというような実態も報告されておりまして、やはり庶民にとっては雪だるま式の借金をしているというような実情もあろうかというふうに思いますが、貸し倒れの状況はどんなふうになっていますか。
  64. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 今御質問の趣旨が、いわゆる住宅ローンの利用者がローンの返済が困難になりましてそれが滞るという場合と考えますと、そういう計数についてでございますが、大蔵省としてはそういう計数をとっておりません。しかし、いろいろ金融機関に聞いてみましたところ、人数で申し上げますと都市銀行の場合に例えばローンを借りている人の約千人に一人ぐらいがそういう状況になっているというふうに聞いております。ただ、これは都市銀行の場合でございまして、これ以外の金融機関あるいは住宅金融会社というのがございますが、そういうところになりますとその人数がもう少しふえてくるというふうに考えられるわけでございます。
  65. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 そこで、この住宅ローンの金利の問題でございますけれども、ここ一連の公定歩合の引き下げによって住宅ローンの金利も今最低のところにあるということで、借りかえの話等も出てきているわけですね。本屋さんに並んでいる住宅雑誌とかあるいは新聞の広告特集欄のようなところで、今一番住宅がお買いどきとか、あるいは借りかえが非常に有利であるというような住宅雑誌なんかたくさん出ております。そういうものに喚起されてみんな消費者、庶民がローンの借りかえを一生懸命考えるわけでございますね。しかし、ローンの借りかえをするについては種々条件があろうかと思うんです。この辺のところを銀行局の方でどういうふうに考えておられるのか。例えば、金利差がどのくらい出てくると借りかえた方が得なのかとか、あるいはまた残存期間がどの ぐらいあればこのぐらいの金利で借りかえた方がいいとか、あるいはまた融資残高の問題等もありますね。個人の返済能力等もありますでしょう。いろいろ含めて銀行等では新たな返済計画を立ててあげる、こういうことになるんでしょうけれども、この辺の目安を、そういうことで非常に心が動いている消費者に対してひとつアドバイスをしてあげていただきたい。
  66. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) この借りかえの問題につきましては、金融機関も最近はローンを借りている人の立場に立ちまして、できるだけその要望にこたえられるように努力をしているわけでございます。ただ、これにつきましては、例えば固定金利制のものと、それから変動金利制のものがございまして、かつまた借ります期間もいろいろの種類がございます。それから、金利も昔借りた高いのもございますし、最近のように低いのもございますし、それから借りてきて後の経過期間の長さもいろいろあるわけでございます。したがいまして、具体的にどのような場合に借りかえを行った方が有利であるかという点につきましては一概に申し上げられないわけでございますが、金融機関といたしましては、最初に申し上げましたように、そういう中でできるだけ利用者の要望にこたえられるよう努力しているということでございます。  ただ、問題は、固定金利から固定金利へ借りかえる場合、この場合は例えば過去に非常に高い、比較的高い金利で借りているものを、金利が安くなったからというので低いのに借りかえますと、金融機関の資金のコストからいいますと逆ざやになってしまうわけでございまして、そうしますと、結果的に金融機関の経営がもたないという問題も起こります。したがって、固定金利から固定金利への借りかえ、これについては金融機関としても非常に慎重に対応せざるを得ないという点は御理解いただきたいと思います。
  67. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 さまざまな情報を総合してみますと、これ銀行局さんの方がおっしゃらないで私が言うのはおかしいんだけれども、現在借りている金利が八%以上、例えば八・三四とか九・六なんというのがありましたね、そういう時期がありましたね。八%以上ある場合とか、あるいは金利差が一%近くあればとか、それからローンの残り期間が十年以上ある場合とかというふうに、いろいろ住宅専門雑誌なんというのに書いてあるんですね。そうすると、消費者はこれを一生懸命見て、自分の条件に合わせて借りかえた方が得なんだろうかというようなことをやはり一生懸命考えるわけです。目安は何ですかと、どんなところで考えればいいですかというふうなことを私も聞かれるときがあります。率直に言って、今言われたとおり、これを銀行に行って相談をするということになりますと、銀行は借りる側の立場に立って計算してくれるんではないんですね。やっぱり貸す方の側に立って資金計画を立ててくれるんですね。この辺が非常に苦情が来ております。今言われたように、固定から固定への乗りかえはほとんど不可能だとおっしゃいました。そのとおりです。固定から固定にかえたいわけですよ。ところが、これはほとんど不可能で、条件によって固定から変動型ローンにはかえられる場合がある、こういうことなんですけれども、これでよろしいですか。
  68. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 固定から変動型の場合は、金融機関としてもお申し出があればできるだけ応じるようにしていると聞いております。
  69. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 今のように比較的低金利の時代には、先々金利が上がったときにすんなり金利が上げられるから、そういうことでしょう。それで金利の高いときには固定から固定へ一生懸命勧めるんじゃないんですか。消費者の側に立ってこういう住宅ローンをやっぱり勧めていただきたいのね。苦情が来ていますよ、非常に来ています。  それで私お伺いしたいのは、借りかえる場合に前に借りていたものを、例えば同一銀行にしましょうか、同じ銀行で借りかえる場合、今の固定から変動でもまず仕方がない、借りかえようとします。そこで手数料幾らかかりますか。
  70. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 金融機関の場合について申し上げますと、例えば全額借りかえる場合でございますが、三年以内の場合は三千円、それ以降はずっと減りまして、七年超の場合は免除ということになっております。それ以外に、契約変更喜代として二百円、それから事務手数料代として五千円、合わせて五千二百円という金額をいただいているということでございます。
  71. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 今取引している銀行では応じてくれない、それで銀行をかえて金利の安い方に庶民としては乗りかえたい、こういうときに、今まで借りていた銀行へはどういう手数料がかかり、これから新たに借りようとする銀行へはどういう手数料が幾らかかりますか。
  72. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) まず、従来借りておりました金融機関には、先ほど申し上げました例えば三年以内の場合三千円というような手数料がかかるわけでございます。それから新しい金融機関からは、新たに抵当権の設定が行われますので、その費用等がかかるわけでございます。
  73. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 もうちょっと親切に教えてくださいよ。普通一般的に見ても、つまり新しい方の銀行からは、新規に契約結ぶわけですから新手続をとると一緒でしょう。新手続をとるときには諸般の手数料によって四十万から五十万はかかるというふうにみんな思っているのよね。最低でも二十何万というんですよ。今おっしゃったのは登録免許税、これ〇・四%でしょう。それから司法書士手数料、印紙代、銀行様の側でいえば契約変更手数料というのが恐らくあるんだろうと思う。コンピューターなど入れかえしたりする、いろいろなあれがあるんだろうと思う。そういうのを含めて、そのほかにいわゆる保証料等々を入れればかなりの額になるわけで、そういうものが現場でどれほど動いているかは掌握しておられないんですか。
  74. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 今委員からお話がございましたように、先ほど申し上げましたこの変更契約書で二百円、それから事務手数料で五千円で五千二百円、それ以外に先ほど申し上げました抵当権の設定でございますが、これは債権金額掛ける千分の四、それから登録免許税等がかかるわけでございます。あと、保証料も新たに保証を変えますので若干かかるということになろうかと思います。
  75. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 この保証料の中身を教えてください。
  76. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 保証料の中身といたしましては、管理手数料が一件三万円、それからあと管理保証料といたしまして、融資金額と融資期間に対応して、例えば百万円につき、十年借ります場合は八千五百円程度かかるわけでございます。
  77. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 この保証料というのは貸し倒れのときの一つの抵当になるわけでしょうけれども、これは民間住宅ローン制度一覧表の中に書いてあります。「団体信用生命保険の保険料は貸付金利の中に含まれている」というふうに書いてあるんですね。今の保証料というものはひっくるめて金利の中に入ってしまうんですか、どうなんですか。
  78. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 保証料につきましては別途いただくということになっておると思います。
  79. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 団体信用生命保険の保険料は貸付金利の中に含まれている。私はこれは金利の中に入っているというふうに思うんですけれどもね。  御相談が来たのがたくさんあるので一つお見せしますと、これは返済額が八万五千六百四十五円、これは九百六十万を二十年で借りているんです。そして利率が六・七二、そして保証料率一・四四というのが入っているんです。だから、六・七二で見るとまあまあかなと思うけれども、この保証料率を足すから八・一六になってしまうんです。そして、この返済額の中に元金返済とそれから利息の返済額とそれに保証料返済額というもの、合わせて、トータルして八万五千六百四十五円この方は二十年間納める、こういう形式になっている。そうすると、保証料というのはその料率の中に入っているんじゃないですか、利率の中 に。どうでしょう。
  80. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 先ほどおっしゃいました保証料のうち、その生命保険料の部分は、この内訳を見ますとおっしゃるように金利の中から支払っているというふうになっております。
  81. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 私文句言っているんじゃないの。教えてちょうだいと言っているんだから親切に教えてくださいよ。これやはり大事な問題なのね。  それで、これはもう一つ、れっきとした都市銀行ですけれども、これ六十二年九月三日に契約していて利率八・三四ですよ。高いよね、これ。利率八・三四なの。だけど、私は今の論理から言うと、いわゆる保証料というものもみんなこの中に入っているんじゃないかというふうに思うんです。そうすると、住宅ローンの金利は六・六六とかそれから四・七から四・二になったとかいろいろ言います。だけど、基本的にはその中にこの手の保証料というようなものが入ってくると、表でうたっている住宅ローンの金利とはおよそ違ったものが出てきているのではないかというふうに私思うのでこれお尋ねしているんですけれども、こういう現実が現場にあること御存じありませんか。
  82. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) それは委員のおっしゃる土おりでございまして、例えば住宅ローンの固定型で申し上げますと、現在六・三%という金利がまずございまして、これに保証料その他等を加えましたものがいわゆる実質金利になるわけでございます。ただ、保証料等々は金融機関によって、あるいはその借りる期間、短い場合十年ぐらいから、それから長い場合は二世代ということで最近たしか三十年のものまでございますから、そういう長さでこの保証料を割った場合に一体どうなるか。それはおのおの違いますが、恐らくそういう数字を金利計算いたしましても、これ手元に資料は今ございませんが、一%にはならないのではないかというふうに、一%でございますね、恐らく三十年借りるような場合は、先ほどおっしゃいました三十万あるいは四十万とかかるわけでございます。そうしますと、それを三十年間にならすわけでございますから、年間には一万円とか二万円とかそういう数字になる部分もあるわけでございます。それから毎年保険料のように掛けていく部分も、生命保険でございますね、これも金利計算いたしますので、非常に複雑な計算になるかと思いますけれども、それをすべて年割で利率として計算した場合、恐らくこの六・三というものに乗せる利率といたしましては八%を超す高い数字には現在においてはならないと考えております。
  83. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 銀行からお金を借りる場合は土地、家、まず家を建てるんだから土地を持っています。これから建てようとする家、これはみんな担保になるわけでしょう。局長、よく聞いてください。担保になるわけでしょう。その上に生命保険掛けるということは今も担保にするわけね、そうですね。あと担保にするの何ありますか。
  84. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 大変御質問が細かいので、私も今わからない点があるかと思いますが、大部分はローンをしたお金で取得しました家にかかっている分がコストとして大部分でございまして、生命保険料の部分はコスト的に見ますと非常に少ない金額ではないかと考えられるわけでございます。
  85. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 局長、大分細かく話がなってきたと言うけれども、銀行ぐらい細かいところないんですよ。返済計画の原資の計算なんていうのは物すごく厳しいし、細かいんですからね。今さっき三十年物も出てきたとおっしゃっていましたけれども、そのとおり出てきたけれども、普通私たちが試算する場合は二十年物で大体計算するんです。二十年物で計算しても、今二十年物は長期のローンとして扱って、個人向け融資も結構なお客さんになってきたわけ。だから、やはり市中銀行では原資なんかも、例えば所得のほかに、おばあちゃんがいるとそのおばあちゃんの年金まで足してくれて、返済能力があるかないかというような、そういうあれを入れてくれるようになっていて、話はだんだん細かくなっているんですよ。だから私の質問が細かくなるのも仕方がないわけ、現場が細かいんだから。  それで保証料の話なんだけれども、この保証料、今言われたように最高でやはり三、四十万になるわけ。そうすると、今度はさっきの借りかえの話に話を戻しますよ、借りかえの話に。そうすると一つの銀行から、ここでは借りかえさせてくれないので、別の銀行に乗りかえて金利の低いのに切りかえる場合、こちらへはさっき言ったように五千二百円なら五千二百円、三千二百円なら三千二百円払いますね。そして新しい方には新規の手続だから全く新たな契約を結ぶのと同じだけの経費がかかるわけでしょう。そのとき、前の銀行に払ってあった保証料と、今回新たに契約結ぶ銀行との間でその保証料ダブりますけれども、これどうなりますか。
  86. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 今委員が御質問の趣旨は、恐らくいわゆる未経過保証料ということだと思いますが、これは残存返済期間に応じまして返還するというふうになっておりますので、ダブるということはございません。ただ、御存じのように、非常に技術的なお話で恐縮でございますけれども、元利均等で返していきますので、最初の方が非常に元本部分が多くなるわけですので、例えば二十年の期間の場合、十年ということになりますと、その積数で計算しますと、残存の保証料の方が半分以下になるということはございます。
  87. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それは返すのは当然ですけれども、それでね、これは一般の民間住宅ローンの場合ですけれども、約款に期限前返済のことが書いてありますけれども、ここでは違約金のような形になって取られるわけね。それがですね、大体解約金が残額の二%。そうすると、一般の民間の住宅ローンを借りていた人が、余りにも金利が高い、それで、低金利になったところの分に切りかえたいというときに、こちらには違約金を二%取られ、こちらとは新規に今度契約を結ぶからということになると、ここですごいお金がかかるわけ。これ、どうですか。
  88. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 先ほど御答弁申し上げましたように、繰り上げ返済の場合の手数料といいますのは五十三年以来据え置かれておりまして、例えば三年以内に全額繰り上げの場合は三千円とか、三年超五年以内ですと二千円というふうになっておりますので、普通の企業がお借りする場合の期限前返済の場合はそういう違約金取っている場合があるかもしれませんが、住宅ローンの場合は今申し上げた金額というふうになっていると我々理解しているわけでございます。
  89. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 そういうふうになっていません。ここに住宅金融専門会社八社の繰り上げ返済手数料が全部出ていますけれども、なっていませんよ、そういうふうに。それで、これ二%という額だって違うじゃないですか。五千円や三千円の話じゃないんですよ。
  90. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 私が先ほど来御答弁しておりますのは銀行、金融機関の場合でございまして、それ以外にいわゆる住宅ローンを扱っている住宅金融会社がまあ最近随分できてきたわけでございますが、その場合は、繰り上げ返済の場合に、特に期間か三年以内に繰り上げるというような場合は、おっしゃるように返済元金の二%を取っている会社もあるわけでございます。ただ、この表等を見てみますと、五年以内になりますと一万円、五年超になると五千円というふうに急激に違約金の金額は減ってきておりますので、そういう意味では、最終的には金融機関と同じような負担に、長くなればですね、なると考えられます。
  91. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 だから、私が言いたいのは、何が言いたいかといいますと、やはり低金利の中で庶民が夢に見ていたマイホームをせめてこうした制度を使って手に入れたいというふうに思い、今までの高金利に泣いていた人たちが少しは楽にと思うでしょう。だけど、それがなかなか可能じゃないということを申し上げたいんですね。さらに言うならば、話が本当に細かくなって申しわけないんだけれども、同一銀行の中でも、例えば固定から変動へでもいいですよ、切りかえするとするで しょう。それがその機会にその返済期間をもうちょっと延ばしたいとか、新たに返済の仕方、額をもうちょっと、苦しいから小さくしたいとか、延ばせば小さくなるわけだ、というふうな契約をし直すと、これ新たなことになっちゃうわけだ。そうすると、最初の契約時と同じようなものが取られる。これ、ものすごく不合理な話で、どう見ても借りる方の側の論理は一つも入っていないということになっているんです。答弁要りません、もう。銀行局長に聞いていると、ようわけわからなくなるから。  大蔵大臣にちょっとお尋ねいたします。  非常にこの低金利の中で、これがやはり内需振興策に住宅建設などということを通して大きに関与していけば一番いい傾向だと思うのね。だけど、この低金利の中でそれを上手に庶民が乗ろうとすると、やっぱりいろいろあるんですね。やはりこういうのは大蔵省あたりからもっとしっかり現場の御指導をいただかないと私はいけないと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  92. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 技術的な問題ですので、私からその前に御答弁申し上げたいと思いますが、同一金融機関の中の場合ですと、いわゆる同じ金融機関が担保権等を設定しておりますので、通例はそういう意味での新たな負担は必要ないと我々考えておりますが、委員がおっしゃるように、そういう意味で新たにまた負担を求めるということになりますと、恐らく考えられますのは、担保権の設定期間を大きく延ばした場合に、変更のための手続を登記所にやる必要があると考えられますので、その費用等は実質、実績に応じて徴求しているということはあろうかと考えるわけでございます。
  93. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほどからの御質問を私は非常に関心を持って伺っておったわけでございますけれども、実はそういうことが国民にとっては一番大事なことで、役所がどっちかといえばなかなか手の回らないといいますか、わからないと申しますか、局長は専門家でございますけれども、恐らくきょうの御質問についてはちゃんと事前に通告をいただいて、勉強をしてお答えはしておりますけれども、なかなかそこまでわかり切らぬというような種類のことについてお尋ねがあって、しかしそれは国民にとっては実は非常に大事なことで、いろいろな雑誌や何かが情報として出ておるわけでございます。そこで役所としては、ですからこういうところで法令の違反があっては困るとか、あるいはいろいろ独禁法違反のような協定があってはいかぬとかいうことはよく見ておるわけでございますけれども、今のようなところまで、つまり借りる方の立場に立って役所が物を見れるかといいますと、それはやはり現実の問題としては消費者行政の立場から、例えば国民生活局というようなものがあって、そういうところから私ども役所同士の間で、これはおかしいとか、こうしなきゃということを言ってもらうことによって役所の行政が機能をしていくということが現実ではないかと思っております。  それで、しかし一番やはり基本は、金融機関でありましてもお客様にサービスをしなきゃならぬのでございますから、自由な競争があって、競争の中でそういう条件がつくられていくというのが一番大事なことではないか。過当競争がありますと困るのでございますが、金融機関でございますから、そうでない限り、やはり自由な競争があって今度はこういうこともできるようになったと、さっき三十年のことの御指摘があったんですけれども、そういうことは私ども一生懸命努力をさせていただかなきゃならぬと思っております。
  94. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 やがて金利の自由化というような時代もやってきますと、やっぱりこの辺のところの監督、これは非常に大事なことだというふうに私は思いますので、お願いをいたします。  それから大臣、あわせてお伺いしたいんですけれども、民間の金融機関の住宅ローンの金利が十月一日から引き上げられると。これは長プラとの連動で上がるんだと、こういうことなんですが、これは現行変動型が四・九が五・二になり、固定型が六・一二から六・三になる、こういうことが言われておりますけれども、この実施はなさるんですか。
  95. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) この住宅ローン金利の改定につきましては、一定のルールを金融機関において決めております。そして、長期プライムが委員がおっしゃいましたように変動がありました場合には、一定の期間を置きましてその変動幅に応じて改定するということで今までもやってまいったわけでございます。したがいをして、一定幅の長期プライムの変動があればそのルールに従って今後も上げ下げを行っていくということでございます。
  96. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 低金利時代ということで、非常に庶民がそれを使ってマイホームというようなことが傾向として出てきている中で、こういうことは水を差すようなことで私どもは大変遺憾に思っておりますし、これは現場でもやっぱり仕事にいささか差し支えるかなという声が出ていますよ。だから私は、こうした時期に金利の引き上げなどということをするべきではないというふうに申し上げておきます。  ここで出てくるのが公庫ローンの方の話でございますが、建設大臣にお伺いいたしますけれども、住宅金融公庫の金利は私の在任中は絶対引き上げしない、このように言明なさっておられますけれども、これよろしゅうございますか。
  97. 天野光晴

    国務大臣(天野光晴君) ことしの補正を組むときに、緊急経済対策というものを立てまして組みました。その中に住宅というものを明記してなければいいんですが、大きな柱の一本に住宅公庫の二万五千戸をふやすというのが載っております。去年どことしと比較して、募集の率は余りよくありません。その中において、金利を上げれば募集が多くなるというんならこれは結構なんですが、普通常識的に言ってこれは多くなるものじゃないと考えております。  そういう観点から、私は緊急経済対策を、これはアメリカに自民党の総務会長が行って御了解を願ったものですから、その緊急経済対策から住宅金融公庫の分だけ外すという声明があれば上げても結構ですと、こう申し上げておるんです。  私、常識的に言って、こうした金融の金利ですが、これは来年度上げるのが常識だと、大蔵大臣には申しわけないですけれども、そういう考え方を私は持っておるんですよ。  特に今度の場合は、今言ったように我が党の緊急経済対策を中曽根内閣が取り上げてやったわけでありますから、この実行をするうちはだめだと、こう言っているんです。しかし、私はいつまでも大臣やっておるわけじゃありませんから、あと一カ月で終わりますから、そういう点で発令は私が政令を出さなきゃこれは上がらないんですから、私の在任中は政令は出しませんと、こう断っておるだけでございますから、今の段階では現状維持でございます。
  98. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 建設大臣お忙しいようで、何か大変引っ張りだこのようでございますので、あわせて次の問題に移る冒頭で、ちょっと順序はよくないんですけれども、私は次に建設資材値上がりの問題についてお伺いいたします。  昨日、この建設資材値上がりの問題、同僚委員からも一部出ておりました。そのときに大臣が予算の八〇%前倒し、そして緊急経済対策五兆円、こういうものが出てくれば当然この手の資材不足は当然なんだというふうに自分は思っていたと、したがってこれは私の責任だから、私の在任中に全部責任を持って解決しますときのうおっしゃっておられましたけれども、今言われたように、在任はあと一カ月とかおっしゃっていましたが、これいかがなものでしょうか、解決できますか。
  99. 天野光晴

    国務大臣(天野光晴君) これは隣に担当大臣田村通産大臣がおりますからお話があろうと思いますが、その内容については私の方の直接扱うものじゃないんですね、通産省で扱う品物になるわけでございますから、そういう観点で通産大臣協力しないと言うんなら、簡単なものは私の方で直接輸入してやりますよと、こう私は言っているん、 でありますが、通産大臣大変御協力順って二〇%増産をするということになったようでありますから、大体何とかいけるんじゃないかなというような感じをいたしております。
  100. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 予定の公共事業等に支障を来さないでも大丈夫だということですね。
  101. 天野光晴

    国務大臣(天野光晴君) 大丈夫だとは言い切れませんけれども、大体やっていけるんじゃないかということです。
  102. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 建設大臣ありがとうございました。  建設資材の問題について引き続きお伺いいたしますが、この問題については、「建設関連資材の価格抑制のための緊急対策に関する質問主意書」を、我が党としても近江議員の名前でお出しをいたしております。したがいまして、我が党にとっても非常に関心のある、そして重大な問題だというふうに考えておるわけでございますけれども、これについて、まず現在どういう状況になっているのか、棒鋼あるいはH形鋼、それからあとヒノキはどうも解せないんですが、ヒノキと型枠用合板ですね、それぞれについて現在の状況を御説明ください。
  103. 鈴木直道

    説明員(鈴木直道君) 最初に建設資材の中の鋼材関係について申し上げたいと思いますが、価格につきまして御紹介いたしますと、一般に鋼材の市況柱代表的な業界紙が発表いたします鉄鋼問屋の仲間取引の価格が一般に使われますので、それで申し上げます。  かねがね御存じのとおり、不況業種でございまして、鉄鋼価格は非常に低迷しておりましたのですが、例えば本年の三月の数字で申し上げますと、棒鋼につきましては三万三千五百円でございました。それが昨日の価格を申し上げたいと存じますが、五万二千円という数字になっております。  もう一つH形鋼でございますけれども、いずれも建築用に使われるものでございますけれども、三月末の価格水準がやはり五万三千五百円でございましたが、同じように昨日の価格水準は六万五千円ということで、八月ごろから上昇してきているというのが現状でございます。
  104. 田中宏尚

    説明員(田中宏尚君) 林野庁関係のヒノキと、それから合板の価格動向でございますけれども、ヒノキの製品につきましては、正式の統計調査といたしまして八月段階のしか農林水産省の統計情報部でまだ正式に集計できておりませんが、この八月段階のと三月のどを比べてみますと、三月では一立方メートル当たり九万七千三百円でございましたものが、八月には十七万二千七百円というふうに上がっております。しかし、八月の旧盆明けから価格が反落に転じまして、最近時点では十五万円前後というところまで落ちてきているわけでございます。  それから一方、合板でございますけれども、合板の特に建築と絡みます型枠用合板でございますけれども、これにつきましては本年の三月に一枚当たりで千百七十円のものが、九月上旬に千四百二十五円という段階まで上がりましたけれども、関西を初めとして最近価格がかなり下がり始めまして、最近時点、全体でも千四百十五円ということでピークを過ぎて、ここのところ特にインドネシア合板であるとか、こういうものの輸入というものが相当ふえる傾向にありますので、峠は過ぎたというふうに認識しているわけでございます。
  105. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 高騰の峠は過ぎたということなんだろうと思うんですけれども、通産大臣にお伺いいたしますけれども、通産大臣は九月四日ですか、九月四日の閣議後で建設資材の実態調査を約束されておりますね。それから公共事業関連物資の需給等対策委員会もおつくりになられているわけですが、通産省として今の動向をどのようにお考えになられますか。
  106. 田村元

    国務大臣(田村元君) 九月四日の閣議でありましたが、天野建設大臣から建設資材の安定供給を求める発言がありました。帰りましてすぐに私、その日のうちに実態調査を命じたわけです。九日に省内に公共事業関連物資需給等対策委員会というのをつくりまして、主要な建設資材の需給動向等についての調査を実施いたしております。現在までの調査結果によりますと、小型棒鋼、それからH形鋼というのが実需の増加、あるいはメーカーの、ある程度のメー力ー、夏季減産するわけですね、などから価格が上昇しております一方でセメント関係等は横ばいの状態のようであります、生コン等につきましても。こういうことでありますので、小型棒鋼、それからH形鋼につきましては需給の引き締まりを背景にして卸やユーザーから納期のおくれや品薄を懸念する声が非常に高まっておりました。十分調べてみましたが、いわゆる買い占めとか売り惜しみというのは調査をした限りにおいては事実は出てこなかった。一部の悪徳業者による買い占め、売り惜しみで内需拡大の効果が損なわれてはならない、相当ひどい買い占めが行われており、その結果市場に出回っているものが高値少量になっているようだというのは、これは私が言ったのが若干ちょっと舌足らずになっておるんですが、というような声が強いから厳しく検討しなさいと、こういう指示をしたわけです。  それから、先ほど鈴木局長の方から御説明がありましたが、六十年の九月に棒鋼につきまして五万五千円、それが三月末で三万三千五百円、ほとんど六割ぐらいに吹っ飛んだんですが、それが九月十九日に五万二千円ということに戻ってきた。それから、H形鋼につきましては、六十年九月に八万二千五百円であったのが、三月末には五万三千五百円で、九月十九日には六万五千円ということでありますが、これはいわゆる戻り歩調ということを言う人もありますが、各業界ともに非常に厳しい合理化を行っておりますから、過去の五万五千円とか八万二千五百円というものが、現在それを基礎にして戻り歩調という表現を使っていいかどうか、もっと安くなっておるはずなんです。厳しい合理化をした上で過去の高値にこれを合わせますともっと下がっておるはずなんですね。ですからそこいらは十分踏まえてなおも検討しろと、それから流通過程において売り惜しみやそういうものがあるかどうかもっと徹底して調べると、今のところはそういう事実はないようだと、こういうことでございます。
  107. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 けさ日本経済新聞でも社説でお書きになっていらっしゃいましたけれども、私もこの言い分には大変同感でございまして、実は六月九日の新聞で建築資材、便乗値上げ防止をしなければならないというようなことを金丸副総理がおっしゃっておられるんですね。六月ごろからこういう兆候があったことをやはり踏まえて、そういう話が閣内に出ていたというのにもかかわらず、それが手が打たれていなかったということで、けさのこの経済新聞の社説でも対応のおくれが原因ではないかというようなことをお書きになっていらっしゃいますけれども、私もいささか感度が鈍かったんじゃないかなというような、したがって対応がおくれているのではないかなというふうなことを思うものの一人でございますけれども、いかがでございましょうか。
  108. 鈴木直道

    説明員(鈴木直道君) おっしゃったような状況につきましても、私ども常に状況の実態につきましての把握に努めておりまして、おっしゃったような七月の段階におきましても、当然業界関係者に対しましてはその趣旨の徹底は図っているわけでございます。ただ、鋼材関係の市況の動向をずっとフォローしてまいりますと、非常に低迷度がひどうございまして、在庫減らしをしたりいろいろな形で業界はその立て直しの努力を続けていたわけでございますけれども、八月に至る段階まで市況の回復の兆候は余りございませんでした。しかし、先ほど大臣もおっしゃいましたように、ちょうど夏でございますか、夏休みのための大幅な減産をしておりましたそのさなかに需要の先駆けみたいな動きが出てまいりまして、それが流通段階での価格の上昇に移っていったという点が現実でございますので、我々といたしましてはやはりこういう段階におきましては流通量をふやすとい うことが非常に重要でございますので、緊急に各社に増産を要請して先高感といいますか、先に上昇するという動きを減らすという努力をしているのが現状でございます。
  109. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 大蔵大臣にお伺いいたしますが、昨日この建築資材値上がりの問題が一部論議に出ましたときに、大臣は小型棒鋼あるいはH形鋼あるいは型枠材、生コンなどの値動きを見ていると、この程度のものでは今日の物価安定基調が崩れる要因にはならないと思うというふうにおっしゃっておられましたけれども、これはそう確認さしていただいてよろしゅうございますか。
  110. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 刈田委員が長年こういう問題につきまして大変に御尽瘁でいらっしゃることは、私よく存じ上げているんですが、私は基本的に思っておりますことは、一番大事なことは市場経済が健全に働くことであると思っております。ここしばらくの間日本経済は非常に不況でございましたから、あるいは不況カルテルがあり、あるいは操短があり、あるいは輸入について事実上いろいろな対応をして輸入が余り大きくならないようにというようなこといろいろやってまいりました。これはある意味ではやむを得なかったのかもしれません。しかし、それらはもともと本当の姿ではないのでありまして、そういうことがなくなっていくことが本当の姿であると思っています。それで自由な市場経済が動けば、日本経済はこれだけ大きゅうございますから、ちょっとやそっとでインフレなんかにはなりっこないというふうに私は強く信じていまして、今通産省が言っていらっしゃることも結局そういうことをすべきなんだと言っておられるんだと思うんでございます。ですから、もっともっと原則論を言えば、そういう操短であるとか不況カルテルとかというものは、価格が回復してくれば自然に実は操短を解いていきます。それは当たり前のことでございますが、そういうふうにみんながコスト割れでない生産をできるような体制になりますと、日本経済というのはとてもインフレなんていうものをちょっとやそっとで起こすようなそういうちゃちなものでないというふうに思うものでございますから、私の申しましたことは価格について余りあれこれ言いますと、じゃこの辺でカルテルをやめようとか、増産に入ろうとかいう先行きについて生産側に不安を与えましたら、これはかえって逆効果になるということを考えてのことでございまして、現実に今のようにそういう一種のこれ経済の変わり目でございますから、例えば合板について不況時代に凍結しておったものを放出するとか、あるいは今のように緊急に二割の増産を指導されるとか、今それは大事なことだと思いますが、本来的には市場経済に戻っていく姿と思っております。
  111. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 建築ラッシュというものは資材の不足を伴う、こういうことになりますし、一方で建築廃材の問題が私一つ大変気になりますのでお伺いをいたしておきます。  時間もありませんのでお伺いいたしますが、いわゆる産業廃棄物というものでございますけれども、この産業廃棄物の現状は今どんなになっていますか。
  112. 森下忠幸

    説明員(森下忠幸君) 最新の状況につきましては、昭和六十年度の排出量につきましてただいま調査中でございますが、前回五十七年度に行いました全国の調査によりますと、昭和五十五年度の排出量でございますと、全国合計で二億九千二百三十一万トン、それぞれの廃棄物ごとに内訳出てございますけれども、合計といたしましては二億九千二百三十一万トンという数字でございます。
  113. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 要するに伸びているんでしょう。ふえているんでしょう。
  114. 森下忠幸

    説明員(森下忠幸君) これはその前の五年に比べますと若干減っております。これはいろいろ工場の生産工程が合理化されまして廃棄物を出さないような工程を組むとか、あるいは産業構造が変化いたまして廃棄物をたくさん出すような業種が変わってきているというふうなこともございまして、一概にどちらの方向とも申せませんけれども、ここの前々回と前回の比較では減っております。一番新しいデータは今調査中でございます。
  115. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それは厚生省で五年ごとにしか数値をとっていないからそういうことになるので、今日、今の時点での産廃というのは大変なものだと私は思うんですね。その辺のところを何とかお伺いしたいと思うんだけれども、まだその数字はないというのが実情なんですね。そこで実態から伺った方がいいと思うんです。  警察白書によりますと、六十一年の廃棄物処理法違反で検挙された件数が三千八百五十三件、いわゆる公害事犯というんですか、犯罪、この中の九四%が廃棄物処理法に触れているものだというふうなことが書かれております。その中でも不法投棄がさらにその八割を占めている、こういう現状でしょう。この不法投棄の実情等一々伺いたいんだけれども、時間がないので私が申し上げてしまいますと、建築廃材が七四・六、建築木くずですか、これが九・一とかということになっていて、捨てる場所は山林とか原野に捨てている。そして、これ白書で見て言っているんですよ。その原因は、不法投棄をする理由は経済的理由による、つまり処理経費節減のために失礼だけれどもそこの原っぱへ捨てちゃった、こういうことになっているわけですね。よろしゅうございますか。
  116. 森下忠幸

    説明員(森下忠幸君) まず排出する事業者側、例えば建設業界におきまして、十分この廃棄物を御自分の責任できちんとした処理業者にやらせるという意識を徹底していただくことが必要だと思いますが、建設廃棄物に限って申し上げますと、建設現場が各所に点在しておりますので処分場までの距離が遠くなる、それからさまざまな種類の産業廃築物がまざって出てくるというふうなこともありまして、どうも扱いが難しいということでそういうことが起こるのではないかという感じがいたします。
  117. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 質問をはしょりますけれども大臣、この廃棄物処理法というものの中の産業廃棄物の規定の中に残土、土は入っていないんですね。ところが、今のような公共事業ラッシュで大変に都市部で穴を掘りますね。そうすると残土が出るわけです。私もこの間狭山地区にちょっと視察があって行ってきたんですけれども、そこの地域で東京都の緑地確保のためのフィンガー計画というのがあるんですが、そのフィンガー計画の一角に朝目が覚めたら山ができていた、こういうような状況が現実にあるんです。これは残土というものが産業廃棄物の中に認定されてない、入ってないわけね。汚泥は入っているけれども、残土が入ってないんですね。この廃棄物処理法の考え方も、やはり入ってないということは罰則がないわけですから、この辺のところは今後やはり一々指導していかなければならないと思うんですけれども、これいかがでしょうか。
  118. 森下忠幸

    説明員(森下忠幸君) 建設系の廃棄物と申しますと、今おっしゃいました建設残土、それからコンクリートのかけらなどの入りましたいわゆる建設廃材、こういったものは量も大変多うございます。それで、これをきちんと今後始末していただくためには、何といいましてもこの関係の業界の方からもお知恵をかりながらやっていかなければならぬということで、既に私どもとしては木くずを、建設事業に伴って、要するに建物の解体に伴って出ます木くずを産業廃棄物に指定いたしましたときに、そういうものを排出する事業者におきましてもちゃんとコストがかかるわけですから、そのコストを十分織り込んで仕事をしていただきたいということを既に通知をしておりますが、さらにこの産業廃棄物の不法投棄防止対策調査を実施いたしましていろいろやっておりますが、本年の八月に、社団法人日本廃棄物対策協会というのがございますけれども、ここに依頼いたしまして、建設廃材など建設事業等から排出されます廃棄物の適正処理をいたすために建設・解体工事廃棄物処理研究会というものをつくりまして、この結果によりまして今後さらに指導を強化するとか基準を変えるとか、こういったことを考えていきたいと思っております。
  119. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 今この都内、首都圏の建設残土は葛西沖と羽田沖に埋めていますね。そこがもういっぱいになる状況ですね。今後やはりこれ国の関係で私はこういう残土の捨て場所をだれが設定していくのか、これ厚生省さんなのかどこなのかちょっとよくわからないんですけれども、やっぱり残土の処分についてかなり真剣に考えないと大変問題が後々出てくるのではないかなと、特に公共事業との絡みでこれから大きな問題になろうかというふうに思うんですが、これはどこですか。建設省さんですか。
  120. 牧野徹

    説明員(牧野徹君) 建設残土のおただしでございますが、まずボリューム的なことを申し上げておきますと、例えば一番問題になるのは、先生よく御承知のように首都圏が全国の中で問題になりますが、首都圏で例えば五十年度は四千二百万立方メートルございました。それが十年たった六十年度では約二割強ふえまして五千二百万立方メートル。さらに、私どもの粗っぽい推計で恐縮ではございますが、さらに十年たった七十年度ではどうなるかという私どもなりの勉強をしましたところ、やはり七千三百万立米ということで、だんだんふえていくという状況にあることは御指摘のとおりでございます。  さてそこで、ただいま先生のあれは羽田沖の埋め立てというようなことですが、この建設残土の処理につきましては、ほかの埋め立てに使うとかいろいろな有効利用をやりますが、最終的にどうしても年々処分しなければいかぬ量がふえる。これは結局山林の方で宅地造成の方に使うか、やっぱり海に捨てるわけでございます。その海に捨てる量を申し上げますと、例えば先ほど申し上げました六十年度五千二百万立方メートルのうち約九百万立方メートルは海面処分をしております。その九百万のうちで最大のものは先生お話しのように羽田沖の処分地でございまして、これは新聞等にも出ておりますが、六十五年度には既にもう満杯になってしまうという、計算上そうなるわけでございますが、そういう状況にございます。  さて、そこでどうしても御指摘のように、内需を振興して公共工事なりあるいは民間建設工事を進めると、この残土はもう不可避的に出てくるわけです。それをどこにきちんと適切に処分するかというのはなかなか問題でございますが、これは現行法でどこが一元的に責任があるとか義務があるということには、私の理解ではないと思います。ただ、実際問題として出てくるものですから、例えば首都圏で言えば東京都とか神奈川県等は地元の自治体で残土対策連絡会議などを設置して、いろいろ研究をもう既に始めておられます。つまり六十六年度以降の対策でございますね。私どもも、やはり公共工事を所管する者の一員として、それに伴って不可避的に出てくる残土処理ですから、ほっておくわけにはいかないということで、私どもも積極的にそういう調査、検討には参加しますし、自分たちでも研究をしている。言ってみれば、これは発注者あるいは具体的に仕事を受ける業者、あるいは地元の公共団体、皆が総がかりで適切な処分方法を模索していく、そういうことになるのではないかというふうに考えております。
  121. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 厚生大臣、済みません、お忙しいのにいつまでもお引きとめして申しわけないんですけれども、私は個人的な見解として、建設ブームで企業が大変活気がついてきて、経済が動くということは大変ありがたいんだけれども、こういう廃棄物処理なんかの被害を国民が受けていくことは大変迷惑な話なんですね。だからやっぱりそういう産業廃棄物等も含めて、こういうものの処理方というものは、やはり厚生省がきちっと指導していかなければならないし、物と次第によっては、例えばこうした産廃の中に先般お話ししたアスベストなんかもまた出てくるわけですよね。そういうふうないわゆる有害物というようなものもまた産廃の中にあろうかと思います。そういうものも含めまして、こういう産業廃棄物の処理方について、やはりきちっと御指導をしていっていただかなければならないというふうに思うんですけれども、その辺の御決意を伺って終わらせていただきます。
  122. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) ただいまの建設廃材等にかかわります処理につきましては、先ほど水道環境部長から御説明を申し上げましたように、ただいまその研究を進めていただいておるところでございまして、これらを踏まえて適切に対処いたしてまいらなければならないと考えておりますし、また産業廃棄物全般にわたりましても、社会経済情勢が変化をいたしてまいるに伴いまして、日々産業廃棄物の質とか量とかいうものも変わってまいるわけでございます。  これに対して私どもといたしましては、基本的な今後の取り組み、またこれから具体的に措置していかなければならないというような問題につきましては、生活環境審議会産業廃棄物専門委員会においてただいま検討していただいておりますが、ここの検討をまって適切に対応いたしてまいらなければならないと考えております。また現在のといいましょうか、通常の場合を考えましても、やはりこういう不適切な処理に対する指導監督というものを強めて、また排出者の責任においてきちっとやっていただく、また廃棄物処理業者の健全な育成というようないろいろな観点から取り組んでまいらなければならないと、こう考えておるところでございまして、これからも一生懸命やってまいります。
  123. 橋本敦

    橋本敦君 きょう私は、去る九月四日、自治省が官報で六十一年の政治資金収支報告書を出しておりますが、それに関連をしてお伺いをしたいと思います。  まず自治省に伺いますけれども、今年度の政治資金収支報告書、大きく見ましてどういう特徴的なことが見られるかという問題でありますが、どうお考えでしょうか。
  124. 小笠原臣也

    説明員小笠原臣也君) お答えを申し上げます。  去る九月四日に公表いたしました自治大臣所管の政治団体に係ります昭和六十一年分の政治資金の収入総額が千六百七十五億八千九百万円ということになっておりまして、これは過去の最高の額になっております。この過去の最高の額になりましたのは、私ども考えでは六十一年には衆参同日選挙がございましたので、そういう関係で額が伸びたものだというふうに理解をしております。
  125. 橋本敦

    橋本敦君 特徴的なことと言えばそれだけではなくて、自民党の皆さんの関係で見るならば、いわゆる衆参同日選挙だけではなくて、ニューリーダーと見られる皆さん方のそれぞれの派閥での政治資金集めというのが非常に特徴的に大きく進んでいる。その中でもいろいろ問題になりましたいわゆる政治家のパーティー、これによる収入が非常に大きなウエートを占めている、こういうことが報告書を通じて見られると思うのですが、いかがですか。
  126. 小笠原臣也

    説明員小笠原臣也君) パーティーのことについてのお尋ねがございましたので、私どもが承知しております数字についてだけ申し上げますと、自治大臣所管の政治団体から報告をされました昭和六十一年分のいわゆるパーティー収入は総額で八十七億七千三百万円ということになっております。
  127. 橋本敦

    橋本敦君 それを、安倍派それから宮澤派それから竹下派、中曽根派、いろいろありますが、派閥的に見るとどういう数字になりますか。
  128. 小笠原臣也

    説明員小笠原臣也君) 私どもは自治大臣所管の政治団体から報告がありましたものをそのまま公表するということになっておりまして、その政治団体がいかなる派閥に属するものであるかどうかということについては公式の分析をいたしておりませんので、その点についてはお答えしかねるわけでございます。
  129. 橋本敦

    橋本敦君 その点は政治資金収支報告書はだれでも見れるわけですから、新聞記者の皆さんも我々ももちろん見ているわけで、そういう立場新聞等の分析によって出ている数字も出ているわけですから、概括的に言うならば各派の資金調達でパーティー収入のウエートはこれは派閥的に見ると安倍派が十五億一千八百万円、これはトップ、宮澤派六億一千七百万円、中曽根派五億九千三百万円、こういったように数字は一応出ていることが新聞等でも明らかですね。こういう数字がこれを分析すれば当然出てくるんですが、私はこういうパーティーでの資金集めという問題が最近大変、「我も我もパーティー過熱」と新聞が書くように非常に広まってきているということについて、本当に政治はそれでいいのかという観点から聞いていきたいと思うのです。  例えば八五年六月に「人間二階堂進君を語る会」というのがいわゆる二階堂パーティーとして行われまして、その収益は十億五千七百万円と報道されている。八六年十月に安倍派パーティーということで清和会会長就任祝賀会、このパーティーの収益が十二億円と言われている。八七年三月、宏池会の三十周年パーティー、これは宮澤先生のパーティーと、こう言われているわけですが、大蔵大臣のパーティーですが、十億円。今度は竹下幹事長のパーティーが八七年五月、これは竹下登氏を励ます会ということで行われて二十億。八七年の七月に二階堂パーティー、これがまた行われまして、十億円とこう言われている。  言ってみれば、一夜にして十億、十二億、二十億という金が政治資金としてそのパーティーで動くということは、まことにこれは大変なことではないか。どんな仕事でも事業収益でも、一夜で二十億、十億ということはほとんど考えられないでしょう。そういうことでこれは大変国民批判も受けていることになるわけですが、大蔵大臣いらっしゃいますのでお伺いさしてほしいんですけれども、この宮澤パーティー、八七年三月、実際収益はどれくらいで経費はどれくらいで利益はどれくらいあったのか、報告を受けていらっしゃいますか。
  130. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 宮澤パーティーとお呼びになられましたが、私どものグループは宏池会と申しておりまして、ちょうど三十年になりましたので会としてのパーティーをやらせていただきました。あちこちから御参加をいただいて、いろんな意味で物心ともに御迷惑なことだと思いながら、ちょうど三十年になりましたのでやらせていただいたわけでございます。  詳細の収支については、私ただいま、報告を受けたに違いございませんが、正確な数字を申し上げる記憶がございません。
  131. 橋本敦

    橋本敦君 少なくとも、収益は十億円ということが報道されている。そういったことであったことは大体そうなんでしょう。
  132. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そこまでは至らなかったと思いますけれども、ただいま正確に記憶いたしておりません。
  133. 橋本敦

    橋本敦君 大臣ね、そのときの券は一枚三万円だったというように聞いておりますが、そうですか。
  134. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そうであったと思います。
  135. 橋本敦

    橋本敦君 何枚ぐらいこれはお出しになっておったんですか。
  136. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そういうことを覚えておりますとお答えができるんでございますけれども、しっかり記憶をいたしておりません。
  137. 橋本敦

    橋本敦君 少なくとも、千枚や二千枚ではなくて三千枚、四千枚という数が出たのではありませんか。
  138. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 正確に記憶をいたしておりません。
  139. 橋本敦

    橋本敦君 十億円だとすると四千枚ぐらい出ることになるんですね。  その会場は大変盛会だったようですが、何人ぐらい入る会場で何人ぐらいお越しになったんですか。
  140. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 記憶をいたしておりませんのでお答えはできないと先ほどから何度も申し上げております。
  141. 橋本敦

    橋本敦君 いや、そのパーティーはあなた自身もお出になったわけですからね、三十周年パーティー。だからそこに何人ぐらい集まったのか、何人ぐらい入る会場であったか、これはその場にいらっしゃったわけですから御記憶の範囲でしょう。いかがですか、大臣
  142. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私もおりましたけれども、何人だというようなことはおっただけでわかるものではございません。間違ったことを申し上げてもいけませんので、正確な記憶がないということを申し上げているんです。
  143. 橋本敦

    橋本敦君 だんだん大事なことが明確にならないような答弁になって、これはおかしいと思うんですけれどもね。大体二千人集まったとか三千人集まったとか言いますよ。そういう見当ぐらいわからなければおかしいんじゃありませんか。私が、大臣、言うのはね、いいですか、券をお出しになったその券を買ってくれた人が全部入れるような、そういうようなことではないパーティーが問題だという意味で聞いているわけで、質問の意図もおわかりだから私は逃げておられるんだと、こう思いますけれどもね。一晩十億とか十二億とか二十億とか券を二千枚三千枚、こういうように出しますと、そんな人が全部集まるような会場だってこれは考えられないし、また実際そう集まってないですよ。だから初めから、券は買ってもらうけれども全員来てもらったらそれはもう困るわけですから、初めからそれは全部集まってくださるということを予定しないでどんどん券を売るという、そういうパーティーになっておる、こういう実情を私は率直にやっぱり議論すべきだと、こう思うんですよ。一切そういうようなことはない、買った人は全部来てもらって全部入れます、飲食もちゃんとしていただけます、そういうことは断言できますか、宮澤大蔵大臣どうですか、あなたの御経験から。
  144. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) どうも私はそういうことの専門家でないのでお答えができません。
  145. 橋本敦

    橋本敦君 それは専門家がどうかということよりも、こんなものは専門家というのはおかしいんで、パーティー屋が専門家というのはおかしいわけで、それは専門家でなくて、実際問題として当のそのパーティーの責任をあなた自身は宏池会三十周年で果たされた一人なんですから、それが答えられないというのはおかしいですよ。  自治大臣伺いますけれども、こういうパーティーばやりということで、今私が指摘したように、来る人が全部来てくれるというようなことは予定しないで、とにかくどんどん券を売って大変な収益を上げているという実態があるということは、自治大臣はどうお考えですか。
  146. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) 私も、実は去年の秋おそく、パーティーをやらせていただきました。初めてでございますが、券を関係者が皆さんにお願いして買っていただきましたが、買っていただいた方には皆さん来てほしいと、こういうことで呼びかけたと記憶しております。ただ、御都合が悪くて来なかった方もいらっしゃるだろうと思います。
  147. 橋本敦

    橋本敦君 自治大臣ね、あなた自身のことを言っているんじゃないんだよ、いいですか、たくさん届け出があった、正式なその届け出。そういうことの中で、一晩で十億二十億というような数字も出ているぐらいで大変な数が出ているわけですよ。いいですか。  それじゃね、聞きますけれどもね、これは自治省答えてください。このパーティーで政治資金収支報告書を検討して、大体必要経費を引きまして、利益率がどれくらいになっているか、これはわかりますね、どうですか。この点については参議院の予算委員会でも答弁されていますから、もう一遍重ねてはっきりと言ってください。
  148. 小笠原臣也

    説明員小笠原臣也君) お答え申し上げます。  自治大臣所管の政治団体より報告をされました昭和六十一年分のいわゆるパーティーにつきましては、収入が先ほど申し上げましたように八十七億七千三百万円でございます。一方、支出の方は十五億八千七百万円というふうに報告をされておりますので、その差額は、七十一億八千六百万円ということになるわけでございます。その収入に対する割合は八一・九%と、こういうことになり ます。
  149. 橋本敦

    橋本敦君 だから、平均して一回パーティーやったら八一%もうかるんですよ、大変なものですよ。全部来てくれたということじゃなくて、来ない人がたくさんいるということでこういうことになってくるというのは、この数字からもう明らかなんですね。  それで、実際問題として、一体こういうようなパーティーを行うということについて券をどういうふうに販売するのか、これもまた問題です。例えばですよ、このパーティー券は、日経ビジネスによりますと、「パーティー券の流れ方は大きく二つに分かれる。」こう書いて、「大蔵、商工、農林などいわゆる族議員がパーティーを開く場合は、それぞれの所管官庁を通じて全国銀行協会、日本証券業協会などの業界団体へパーティー券が回され、各業界団体はこれを交通整理して関係企業に振り分ける。」こういうことになると、こう書いてある。それからまた、毎日新聞によると、パーティー券をさばくのに「一番力があるのは役人出身。まず省庁の審議官クラスと謀り、課長クラスを使って外郭団体に券を割り振らせる。外郭団体はさらに関係企業の担当者に割り振り、」こうして券をさばく、こう言っていますね。それから、これだけではありません。「代議士は毎日何をしているのか」という本があるらしいんですが、小牧ひろしさんという新聞記者が書かれた本でこういう記事もありますね。「政務次官や国会の各種委員長を務める頃となると、いっぺんにパーティーが開ける状況が生まれてくる。」、こういう記述から始まって、「官庁の中でも頼りになるのが大蔵、通産、運輸のご三家である。続いて農林水産、建設、郵政といったところだが、これらの官庁はともかく関連業者に声をかけて手際よくパーティー券の販路をとりまとめてくれる。」こうなっていますね。こういうことで、役所を使ってパーティー券をさばくということが非常にやられているということが生々しく報告されているんですね。新聞によりますと、「最近の特徴は、役所や業界のルートを使うなど、パーティー券の売り込みの方法が、以前に比べて格段に巧妙になっている点だ。「目に余る」と批判の声をあげ始めたのは、パーティー券を大量に押しつけられる経済界の首脳陣だが、売りさばきに一役買わされている中央官庁の幹部の間にすら「何とかなりませんか」との悲鳴が聞かれる。」ようになった、「業界と関係の深いある省庁の国会担当課長のもとには、昨年来、国会議員本人や秘書から業界団体へのパーティー券あっせん依頼が殺到した。」こういう状況が出ているわけですね。これは私は大問題だと思うんですよ。まずこういったことでこういう政治家のパーティー券の販売を官庁を通じて業界に割り当てるとなりますと、これはもう政治の癒着は大変なことになってくることはもう目に見えております。また、癒着があるからこれをやるということにもなるんでしょうね。  そこで聞きますが、もしもこういう新聞報道になされているとおり多数の枚数のパーティー券を役所を通じて売りさばくということを役所がそのあっせんなり仲介なりあるいは紹介なり、こういうことをやっておると、こういうことになりますと、私はこれは公務員にとって政治的行為を禁止する人事院規則に違反するという事態がはっきりこれは出てくるのではないかと思うんですが、人事院の方はどうお考えですか。
  150. 川崎正道

    説明員(川崎正道君) 一般職の国家公務員につきましては、国家公務員法あるいは人事院規則で一定の政治的行為が制限されております。いかなる行為がでは政治的行為に該当するかということでございますが、これは最終的には個々具体的なケースごとに判断をしなければならないと、このように考えております。あえて一般論で申し上げますと、一定の政党あるいは政治的団体を支持する目的を持ちまして金品を求め、あるいは受領し、あるいはこれに関与する行為、これは政治的行為に該当すると思います。ただ、先ほどから申し上げておりますように、個々具体的なケースがその政治的行為に該当するかどうかにつきましては慎重に判断をしなければならないと思っております。一義的には任命権者が事実関係をよく御確認の上、判断されるべき事柄であろうと、このように考えております。
  151. 橋本敦

    橋本敦君 今おっしゃった政治的行為の禁止に関する人事院規則は人規一四の七、それの六の三号ということですね。
  152. 川崎正道

    説明員(川崎正道君) そのとおりでございます。
  153. 橋本敦

    橋本敦君 ですから、報道されているようなことが事実とすれば、こういうパーティー券を業界に割り当て、あっせんしたり、援助したり、これに関与する行為というのは人事院規則で厳しく禁止されている行為に該当するおそれが十分あるということが今の答弁でも明らかになったわけですね。ですから、こういったことについて政府は襟を正して、いやしくも各省庁の公務員がこういう政治家のパーティーの券の売りさばき、こういったことについて業界へのあっせんその他、こういうことは一切やってはならぬということは、公務員の規律として厳しく示達をする必要があると私は思いますが、官房長官いかがですか。
  154. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 最近のパーティーのあり方が非常に過熱しておるということで、各方面でいろいろな御批判の声があることは承知をいたしております。そのこと自体はやはり私自身は節度の問題かなというふうに考えておるわけでございますが、御質問の公務員がこれに関与するということについては、申し上げるまでもありませんが、公務員は政治的に中立でなければなりませんし、今人事院当局から御答弁を申し上げたようなやっちゃいかぬ行為が決まっておるわけでございますから、それに反するようなことがあってはならない。同時にまた、公務員はやはり国家権力の一部を担って仕事をするわけでございますから、それだけにいわゆる綱紀の厳正といいますか、そういう心構えでおらなきゃならないといったようなことは、これはもう申し上げるまでもないことでございます。  そこで、昭和五十四年でございましたけれども、総理大臣の指示でいわゆる励ます会のような種類の政治資金といいますか、援助資金とでもいいますか、こういった際のパーティー券の、言葉は悪いですな、これ売りさばきというのもおかしな話で、お願い、あっせんですな、これ。あっせん。それについては、公務員だって自分の同級生なんかが仮に国会議員に立候補するといったときに自分のポケットマネーを出して行くの、これは私は一向差し支えないと思いますね。だからケース・バイ・ケースではあるんですけれども、一般的にはやっぱりよくないですよ、これは。そこで自粛すべしという通達が出ているんです。自粛すべしと。五十四年です。それを私は各省庁は守っておるものと理解をしております。(「ないらしいんだ」と呼ぶ者あり)それが私にはわからぬ、最近私もやったことがないから。わからないんですが、そういううわさも聞きます、やっているなという。  しかし、私はやはり五十四年の自粛通達が出まして、その通達の出しっ放しじゃだめですから、各省庁の官房長の会合でこれまた申し合わせができているんです。その申し合わせの中で、これは公の金を使っちゃいかぬことは初めから決まっている話ですね。それから、今おっしゃったあっせんですか、これはやらないと、こういう申し合わせになっております。  だから、私の今お答えできるのは、その五十四年の総理大臣の指示と各省官房長会議における申し合わせが守られておると、かように理解をいたしておりますが、もし橋本さんおっしゃるようにどうも最近それはあかぬぞという実態が証拠をもって明らかになるとするならば、まことに遺憾なことでございますから、改めて私どもの方で検討をしまして適切なる処置は講じたい、こう思います。
  155. 橋本敦

    橋本敦君 大蔵大臣、もうお出かけの時間でございますから最後に一言聞きますが、自治省の収支報告書で明らかなように、利益率が八〇%あるんですね。これは事業として八〇%利益があれば当然税の対象になるんですが、この場合は税とは全然関係がない、つまり課税対象に八〇%も利益が上がってもこの政治家のパーティーというのは税の対象には全然ならないというのもおかしいと国民考えておりますが、大臣はいかがお考えですか。
  156. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) この点は法律的にはきちんとしてあると考えておりまして、いわば後援会がそういうパーティーをいたしますときには、これは人格のない社団ということでございますから、税法上は人格のない社団が収益事業を営む場合には法人税の対象になります。ただ、その収益事業とは何かということは、物品販売業等々三十幾つ列記をしてございまして、いわゆるパーティーをやるということは、人格のない社団でありましてもそれは収益事業に当たらない。したがって、法人税の課税の問題はないと考えます。  それから、そのパーティー似収入でございますが、これを政治家個人に配分するというときには今度は政治家個人にとってはそれは雑所得となるはずでございますが、その雑所得と、それから政治活動のためにその中から費消された金額との残額がなければ雑所得の課税は起こりませんし、残額がございますと雑所得の課税が起こる。それから個人でいたしました場合には、今最後に申し上げましたその例がそのまま該当するということでございます。
  157. 橋本敦

    橋本敦君 それで聞きたいんですが、大蔵大臣、最後の一言です。  今までこういったパーティーをやって、そして収益があって、そしてあなたがおっしゃるように、政治家が雑所得として所得申告した例というのはあるんでしょうか。私はないとお聞きします。
  158. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それはだれか政府委員がおりますと思いますが、私どもは大体支出超過のことが多いんでございますんで、どうでございますか。政府委員が知っておるかもしれません。
  159. 橋本敦

    橋本敦君 あるかないか。
  160. 伊藤博行

    説明員(伊藤博行君) お答え申し上げます。  政治家から提出していただいております申告書の中には、給与所得のほかに利子所得、配当所得あるいは不動産所得、あるいは雑所得等々各種の所得が含まれております。雑所得の中にも講演料とか原稿料等々いろいろございます。したがいまして、先生おっしゃるような申告書の中でそういうパーティーのものというふうな特記がしてあるのかないのかということでございますけれども、私どもの集計上はそういう形での集計をしておりませんので、承知しておらないという点を御理解いただきたいと思います。
  161. 橋本敦

    橋本敦君 結果、わからない。行方不明になっていくんですよ。大臣がおっしゃるように経費ということでどんどん落とせば、結局税の対象となる雑所得にも当たらぬということになる。大臣結構でございます。  それからさらに、この問題について政治資金規正法との関係で言うならば、届け出義務は全くないのかあるのか。この点、自治省どうなんですか。
  162. 小笠原臣也

    説明員小笠原臣也君) パーティーが行われます場合に、いろいろな方が主催をされることがあるようでございます。政治団体が主催をされる場合はこれはすべて政治資金規正法によってその収支を報告していただく義務があるわけでございます。ただ、それ以外に政治団体ではなくて実行委員会あるいは記念会というような形とか、あるいは発起人が全部集まっておやりになったとか、政治家個人がみずからおやりになったとか、いろんな形があるようでございまして、そういう場合は報告の義務はないわけでございます。
  163. 橋本敦

    橋本敦君 実際に新聞報道でも、昨年都内で開かれた政治家のパーティー七十件について収支報告書を調べて見ると、報告されているのはたった二十五件、三五・七%。あとは報告がないという記事もあるし、それからまた、さらに別の報道では、これは都内のホテルで開かれただけですから、全体として見ると実際は開催団体数で自治省届け出の三倍以上こういうことがやられているだろうという報道もある。だから、結局この点でも非常に不明朗に野放しになっていく。そういう状況があるでしょう。  そこで、もう一つ聞きたいのは、政治資金規正法では、政治献金と寄附について一企業については上限額がある。それからさらに、二十二条の関係で同一人に対する寄附は百五十万円を超えてはならないという制限がある。こういう二つの制限が主な制限としてあることは間違いないですか。
  164. 小笠原臣也

    説明員小笠原臣也君) 御指摘のとおりでございます。
  165. 橋本敦

    橋本敦君 そうすると、このパーティー券一枚三万円として、これを会社等が交際費ということで二百枚、三百枚買い取る、あるいは一企業で九百枚も割り当てられたという話も新聞に出ておりますが、そういうふうに買い取って、それでそのパーティー券の収益が今言ったように政治家に行くと、こうなりますと、一体それは、百五十万円というこういう制限も、それから一企業の限度額も超えるということになっても届け出がなければわかりませんし、仮に届け出があっても、今言ったようなそういうような資金の出だとか、企業別の収益が全部来るわけじゃなくて、何枚売れたということしか来ないんですからこれもわからない。自治省はどうですか、この二つの制限についてこのパーティーとの関係で超えているか超えてないか判断することができますか。
  166. 小笠原臣也

    説明員小笠原臣也君) パーティーによる収入というのは、これは寄附ではないという考え方になっております。  先ほど御指摘のありました総枠規制あるいは個別規制というのは、あくまでも政治活動に関する寄附についての制限でございまして、パーティーは寄附ではないという考え方になっておりますので、その規制の対象にならないわけでございます。
  167. 橋本敦

    橋本敦君 そうすると、いよいよ政治資金規正法はざる法どころか、これはもう寄附の対象とも考えないということだから、寄附と思う人は届けるならそれは届けていいが、届けない人があったってもうどうにもならぬし、今言った二つの大事な政治資金規正法の制約も全く検討する意思もなければ、しようもないということになりますから、この政治家パーティーというのは、これはもう政治資金規正法の脱法行為としては堂々とやられているということになりますよね。  今あなたは、これは寄附と考えないと、こう言いましたが、例えば、五十四年十二月十三日の決算委員会、これは九十国会ですが、ここで緒方信一郎政府委員がこう言っていますよ。   政治家の励ます会のパーティー券の購入につきましては、そのパーティー券の価格が社会常識の範囲内のものでありまして、その購入枚数も出席を前提としました妥当なものである限りは政治資金規正法上の寄付には該当しないというふうに考えております。  いいですか、こう言っている。この見解は今もとっている見解ですか。
  168. 小笠原臣也

    説明員小笠原臣也君) そういう見解に基づきまして寄附ではないという考え方になっておるわけでございます。
  169. 橋本敦

    橋本敦君 はい、わかりました。  だから、私は初めに言ったでしょう、もうこの見解で処理できませんよと。一晩で十億、二十億の収益、新聞報道されている。政治資金規正法の届け出でも、十億、二十億でなくても、あなたがおっしゃったように八十何億パーティーの収益が上がっておるわけで、利益率が八割、こういうこともあなたおっしゃるんですが、一晩で十億というのを一枚三万円で考えますと何枚出さなきゃならぬか、見当つくでしょう。二千枚、三千枚、四千枚とこう出るんですよ。だから企業も悲鳴上げる、各省庁も悲鳴上げるということで、先ほど私が言ったようなことが新聞にもどんどん出てくるんです。どんな大きなホテルでも三千人、四千人が全部集まって飲食できる、こんなことは考えられませんしね、当然出席が予定されない人にも券 を買ってもらうということで大量の券が売られているという実態は、これは現実にあるんですよ。今やっておる政経パーティーというのは大体そういうことですよ。そんなものはとても入り切れるものじゃないんですよ。  そういう実態について、自治大臣、こういう見解を自治省がとるというならば、実態に合わせて今言った寄附でないというような見解が正しいかどうか、これは調べなきゃいけません。自治省としては、この私が問題にしている政治家のパーティーについて、本当に政治資金規正法上の寄附とみなすかみなさないか実態を調べて、さらに重ねて検討、判断すべき事態に来ていると、私は思う。大臣、どうですか、
  170. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) 自治省といたしましては、パーティーの実態については調査をしておりませんで、ただいまは把握しておりません。  ただ、パーティーにつきましては、最近各方面からいろいろの御批判も出ておりますので、どう対処するべきか検討を進めてまいりたいと考えております。
  171. 橋本敦

    橋本敦君 どう検討するか検討するということですが、今私が言ったような実態を踏まえて、これは本当に厳しく検討しなきゃいけませんよ。これは寄附でないというそんな単純な考え方でおったら、それは今の過熱パーティーの実態には全然そぐわないところか、これはもう政治資金規正法のざる、抜け、空洞化を自治省自体が野放しにするということになりかねませんよ。だから、今自治大臣がおっしゃった検討は、実態を踏まえて厳しくやってもらうことを私は強く要求しておきたいと思うんです。  そこで、次の問題ですけれども、これは郵政大臣にかかわる問題であります、  これはどういうことかといいますと、民間放送関係、これの自民党の国民政治協会への寄附が、今度の政治資金の報告書によって集計いたしますと、一千五万九千円ありました。これを献金している民放各社は三十七社ございますが、全部私が言うわけにまいりませんが、全国では、朝日放送、テレビ東京、日本放送、フジテレビ、文化放送等から始まって、各地方局も含めましてかなり有力放送事業者が献金をしております。自治省は、この放送関係、今私が言った国民政治協会へ一千五万九千円あるというこれは把握しておられますか。
  172. 小笠原臣也

    説明員小笠原臣也君) 御指摘の民間放送三十七社につきまして昭和六十一年分の収支報告書に上り調べましたところ、国民政治協会へ一千五万九千円寄附がなされております。
  173. 橋本敦

    橋本敦君 そこで、今度は総理府に伺いますが、政府の広報番組で民放へ出している金ですね、これはどのくらいありますか。
  174. 井上達夫

    説明員井上達夫君) 総理府の広報室では、政府広報を実施する媒体としまして、テレビ、ラジオ放送を利用しておりますが、昭和六十一年において広報室がテレビ、ラジオの番組等を通じて広報活動を実施するに要した経費は、約四十一億七千万円でございます。
  175. 橋本敦

    橋本敦君 もう一つ伺いますが、政府が支払った経費四十一億七千万、それで実際に放送してその経費を受けとった各社、いろいろありますが、今私が指摘した自民党の国民政治協会に寄附をしている三十七社、これは全部政府の広報番組をやっているかどうか調べてほしい、こう言って名前も全部お渡ししたんですが、確認していただけましたか。
  176. 井上達夫

    説明員井上達夫君) 昨日三十七社のリストをいただきまして、六十一年度中に総理府広報室が提供したテレビ、ラジオ番組等を放送した放送局であるかどうかということをチェックいたしましたが、三十七社において総理府の提供番組が放送されております。
  177. 橋本敦

    橋本敦君 したがって、総理府の提供番組を放送し、そしてその費用は受けとっているわけです。  そこで、自治省に伺いますけれども、政府から補助金を受けとっているような関係企業、これは政治献金することは政治資金規正法で厳しく禁止されていますね、二十二条の三で。
  178. 小笠原臣也

    説明員小笠原臣也君) 政治資金規正法二十二条の三で「国から補助金、負担金、利子補給金その他の給付金の交付の決定を受けた会社その他の法人は、」その交付の決定の通知を受けた日から一年間「政治活動に関する寄附をしてはならない。」と、こういうことになっております。
  179. 橋本敦

    橋本敦君 それで伺うんですが、この政府の広報番組を総理府から放送するように言われてその広報番組の放送をするということについては、この二十二条の三でいう補助金でも負担金でも利子補給金でもありませんが、「その他の給付金」ということに該当するおそれがありますか、ありませんか。
  180. 小笠原臣也

    説明員小笠原臣也君) 突然のお尋ねで、総理府が民放各社に対してどういうような契約をされておるのか、詳細に私ども承知をいたしておりませんのでお答えしかねますが、推察して申し上げますので、それはあくまでも対等の契約関係でございまして、ここでいう給付金というのは一方的な対価のない給付でございますので、これには該当しないと考えております。
  181. 橋本敦

    橋本敦君 そうすると、政治資金規正法上は問題はないというお考えですか。
  182. 小笠原臣也

    説明員小笠原臣也君) 政治資金規正法上は問題はないというふうに考えております。
  183. 橋本敦

    橋本敦君 だがしかし、私はそう解釈なさるだろうとは思って聞いておるんですよ。聞いてはおるんですが、しかし、政府の広報番組というのは対等の契約関係というけれども、しかし実際は各放送事業に対して政府広報を平等に、しかも国民に行き渡るようにそういう立場でずっとおろしていくわけですから、対等の契約関係でというようなことよりも、むしろ政府の広報事業の一端を担うそういう性格が私は強いと思うんですね。それに対して費用が四十一億出ているというわけですから、そういう点で今の自治省の解釈について私は本当にそうかどうかということに今後検討をしてもらいたいと、こう思っておるのであります。  その議論についてきょうは詰めませんが、もう一つ問題は、たとえそうであっても許されるかという課題が残るんです、といいますのは、放送事業というのは非常に大事な事業でございますから、わざわざ放送法という法律がつくられて、その第一条では「放送の不偏不党」、これは本当に厳しい原則的な放送法の目的として掲げられているわけですね。だからしたがって、「放送の不偏不党」ということは、これはもう各民放に対する国の指導監督という点からいっても、これは厳しくやるべき非常に大事な原則だと私は思うんですが、この点について郵政大臣はどうお考えですか。
  184. 唐沢俊二郎

    国務大臣唐沢俊二郎君) 今申されましたように、放送法第一条にも規定してございますごとく、「放送の不偏不党」というのは最も大事な原則だと考えております。
  185. 橋本敦

    橋本敦君 そこで、この放送会社が政府から四十一億受け取って政府広報放送を行う、その受け取った金の中からとは言いませんけれども、自民党の国民政治協会に年間一千万の寄附をやる。これは逆に言うと、仕事をもらって政治献金をするということになりかねないという話だけではなくて、放送事業の不偏不党という観点からいうならば放送事業をやっている者は特定の政党に対して寄附をするという、ましてや政府の広報を請け負っているという公的立場であるにもかかわらず自民党に、政府じゃないですよ、自民党の国民政治協会に献金をするということは、これは放送事業の不偏不党という点からいって問題がある、自粛すべきだ、やめるべきだというのが私は放送法の大目的からいって当然に指導すべきことだと、こう思うんですが、大臣のお考えはどうですか。
  186. 唐沢俊二郎

    国務大臣唐沢俊二郎君) 放送につきましてはおっしゃるとおりだとは思いますが、民放の事業運営ですね、これは民放の言論報道機関としての自主性を最大限に尊重してまいらなければなりませんので、こういう事業経営については民放経営者の自由に任されておる。そういう意味で、現行法でも一般放送事業者に対する規制は極めて少なくしてあるわけでございます。したがいまして、今お話のありました政党への政治献金というものは、これは放送事業者の自主性に任せるべきものだと考えております、
  187. 橋本敦

    橋本敦君 自主性に任しておるということでよいのかと、こういう質問ですよ。いいですか、言論、表現の自由に介入するなんてとんでもないことだ、それはやっちゃいけませんよ。しかし、不偏不党という大原則からしまして、政府の広報番組を受け取るという関係からあってますます不偏不党、中立を守らなきゃならぬのですから、だから自民党へのこういった政治献金については自粛するのが望ましい、あるいはやめるのが当然だというのは私はこれは大臣として考えていただくべきことじゃないか、こう言っているんですよ。自由でいい、何ぼやってもいいと、こういうことですか。とんでもないことじゃないですか。
  188. 唐沢俊二郎

    国務大臣唐沢俊二郎君) 放送につきましては不偏不党ということを申しておるわけでございますが、一方、憲法二十一条、放送法第三条初めいろいろな法律に決めてありますように、やっぱり言論の自由ですね、放送の自由、こういうものは非常に重要なわけでございます。したがいまして、郵政大臣というのは国務大臣の中で最も自由で民主的でなければならないと考えておるわけでございまして、こういう民放の事業経営につきましては最大限に自主性を尊重して民放経営者の自由にゆだねたいと私は考えております。
  189. 橋本敦

    橋本敦君 かみ合いませんな。自由に政治献金やっていいとおっしゃるわけですか。それはおかしいですよ。政治献金をやるということで特定政党と癒着がもし深まるということが進むなら、言論の自由その他というきれいごとじゃない、まさに政治資金を通じての政財界との癒着が、放送の不偏不党ということにも国民の信頼を失わせるということになるんですよ。  最後に、時間が来ましたから自治大臣にお話を伺って終わりますけれども、今度の政治資金の収支報告の非常に大きな問題は、私はやっぱり何といっても、パーティーばやりということに象徴されていますけれども、官界、財界を通じて政界との癒着が非常に深まっている、そういう心配と憂慮が如実にあらわれているということなんです。だから、基本的に私どもは企業からの政治献金は禁止して政治献金は個人の浄財に限る、こういうふうにすべきだ、こう思っておりますけれども、そこまでいかなくても政界と財界や官界との政治資金を通じての癒着については厳しく今後対処をするということで、しっかりその点についてはメスを入れながら厳しい対処をしていっていただきたいということを強調しておきたいと思いますが、最後にお考えを伺って終わります。
  190. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) 政治資金規正法が昭和五十年でございますか改正されまして、あのときに個人献金の優遇措置を導入したと思います。その個人献金がだんだんとふえてくることが望ましい、こういうことでございましたが、多少ふえておりますが予想していたほどにはなっておりません。そういう意味ではこれからも個人献金がふえる方向に行くように、これは国民の皆様方が政党活動を一人一人支えようという意識が高まることが前提でございますが望ましいと思います。  同時に、日本は資本主義社会でございますから、この資本主義経済社会を支え、さらにそれによりまして日本国の経済が円滑に発展するようにと、こういうことから各企業が一定の節度を持って政党に献金をすることもまた認められている次第でございます。癒着というようなことはもちろんあってはいけない、節度を持って企業献金も行われるべきであろうと考えている次第でございます。
  191. 橋本敦

    橋本敦君 パーティーについて。
  192. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) パーティーにつきましてはいろいろ研究をさせていただきたいと思います。
  193. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 午前の質疑はこの程度とし、午後二時二十分まで休憩いたします。    午後一時二十四分休憩      —————・—————    午後二時二十一分開会
  194. 穐山篤

    委員長穐山篤君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十年度決算外二件を議題とし、全般的質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  195. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 まず最初に通産省に対しまして、先般成立しました外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案につきまして質問いたしたいと思います。  この改正案につきましては去る八月二十八日の本会議で代表質問をいたしました。しかしそのときは、時間も限られておりますし、わずか十分間で話さなくちゃならないので、十分意を尽くしていない点もありますし、また大臣答弁でもよく理解できなかった点がありますので、改めて質問申し上げる次第でございます。  私が通産大臣質問した趣旨は、外為法にあります第二十五条及び第四十八条、国際の平和と安全の維持という言葉が使われているわけですけれども、もし私があの法案を起草するとすれば「世界の平和と国家の安全保障のために」というふうに書くはずだったと思うんですけれども、通産省は従来の慣例的な用語に従いまして国際の平和と安全の維持という言葉を使われたんですが、国際の平和と区別した意味の国際の安全の維持あるいは安全保障ということをどういうふうに理解しておられますか、そのことをまずお伺いいたしたいと思います。
  196. 田村元

    国務大臣(田村元君) 「国際的な平和及び安全の維持」というのは、今おっしゃいましたように既に使っておる言葉でございまして、特にこの言葉を新しくつくったというわけではございません。  この意味は、国際的な紛争の発生もしくはその拡大を助長するような取引または西側諸国の安全保障に重大な影響をもたらす取引などを規制するということで国際社会の平和と安全が脅威にさらされることがないようにという意味でございますが、今おっしゃいましたことは結局我々が考えておりますことと趣旨は同じであるというふうに私は理解しております。国際社会の一員である我が国の平和と安全を含めた国際社会の平和と安全ということでございますから、全く御趣旨と同じだというふうに考えております。
  197. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 今、大臣、国際の平和と西側の安全保障というふうなことを言われましたが、それだったら非常にはっきりするわけです。  しかし、いわゆる国際の平和と安全の維持あるいは安全保障という言葉が、従来国連規約、さらにさかのぼりますと国際連盟の時代から使われた言葉ですけれども、そういった連盟規約であるとか国連規約であるとかあるいは日米安保条約とか、そういった方で使われている言葉を無反省に、ただ今までも使っていたから今度も使うんだというふうな考え方であれば、やはり通産省は日本の安全の問題に対して非常に鈍感である。例えば今度の東芝機械の事件にしましても非常に反応が遅かったというふうなことが新聞にも書かれておりますけれども、非常に安全保障の問題に対して鈍感であると言われても仕方がないんではないかというふうに私は思います。  つまり、安全保障という言葉は国際連盟の規約にも書かれておりますけれども、これはやはりフランスが第一次大戦後ドイツの報復を恐れてドイツから侵略されないように、そういった安全を守るということを強く主張して、それ以来国際関係の用語として、セキュリティー、安全を保障するというふうな言葉が使われるようになってきて、それが国連憲章にもそのまま引き継がれているというふうに私は考えているんですけれども、つまり安全保障という言葉は、何をだれから守るか、そういう考え方だと思うんです。少なくとも国際の平和と安全保障というふうに並べた以上はそういうふうに解釈すべきだと思うんで、したがって何をだれから守るんだということをはっきり意識してこの言葉を使われたんでありますならば結構なんですけれども、先般の質問のときも通産省からレクチャーを受けましたけれども、どうもそういう意識が希薄であるように私は感ずるんですが、通産大臣、いかがお考えでしょうか。
  198. 田村元

    国務大臣(田村元君) この「平和及び安全の維持」といいますのは、一般論としての国際的な紛争の発生もしくはその拡大を助長するはうなという場合、それからいま一つは、または西側諸国のということを明確にここでうたっておるわけであります。うたっておるといいますか、規定を我々は解釈しておるわけであります。もう改正になりましたから前の外為法ということになりますが、第二十五条におきましても、第二項に「我が国が締結した条約その他の国際約束の誠実な履行又は国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるもの」というふうに書いておるものですから、それを引用した。極力、外為法はその対象を拡大することをしない、罰則のみに集中したものですから、急いだ面もございまして、余り大きな変化、変革を意味しない方がいいだろうというようなことからそういうふうになりましたが、趣旨としては、今おっしゃったとおりの趣旨というふうに御理解いただいて結構でございます。
  199. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 この国際の平和と安全の維持、インターナショナルピースアンドセキュリティーという言葉は、国際連盟以来慣用的に使われておりますけれども、学者によっては、今度この質問をするについて教えてもらったんですけれども、ハンス・ケルゼンという学者が「国際連盟の法律」という本の中で、これはインターナショナルピースだけでいいんだというふうなことも書いているようです。こういったふうに、ただ慣用的に今まで使われてきたものですから、国連規約なんかでも使われていると思うんですけれども、こういった慣用的に使われている言葉というのはよくその内容を吟味しないで、ただ、今まで使ってきたから今度も使うんだ、そういう安易な気持ちで使うことが非常に多いので、それで参議院の本会議でも、私はあえて文言の修正までは求めないけれども、その趣旨を十分理解してやってもらいたい、その意味で質問したわけでございます。  この外為法が改正されまして以来、各商社あるいは輸出関連会社では、それぞれ社内において、何と訳しますか、コンプライアンスマニュアルと申しますか、ココムの規定に違反しないようにという内部規約、それをつくっているそうでありますし、また、あるアメリカの外資系の会社は、どういうふうにコンプライアンスマニュアルをつくったらいいかということを各社から金を取ってゼミナールを開いて大分金もうけをしている、そういうふうな話も聞いたんです。  つまり、そういうふうにマニュアルだけをつくればそれでいいんだというふうな考え方になりますと、例えば、交通規則に違反するとお巡りさんにしかられるから、お巡りさんにしかられないようにしよう。本来、交通規則を守ることは自分の安全のために必要なんですけれども、その自分の安全のためということを忘れてしまって、ただお巡りさんにしかられないように、あるいはアメリカを怒らせないように、その方面だけに注意が向いてしまう、その心配があるわけです。  したがって、大臣にお願いしておきたいんですけれども、まず第一に、通産省の人々に対して、十分日本の安全保障の問題を考え直すように言ってもらいたいと思いますし、また通産省がそういった企業を指導する場合におきましても、これはアメリカを怒らせると困るからというふうな考え方ではなしに、日本の安全のために必要なんだ、その考え方をまず第一にたたき込んでもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
  200. 田村元

    国務大臣(田村元君) まさにそのとおりなんです。この外為法の改正も、何かというとアメリカの命令によってとか、アメリカのためにということを言う人がおりますが、我々はアメリカのためにこの法律の改正をお願いしたのではありません。まず、我が国の安全を守るために、つまり、我が国が紛争の種になる、あるいは侵略されるということからみずからを防がなきゃいけません。でございますから、我が国のためにというのが第一義でございます。そうして同時に、ココム加盟十六カ国の西側陣営の主要なる一員としての自覚、役割というものを考えて改正をお願いしたわけでございます。でございますから、今おっしゃったことと同じことを実は私は省内で役人たちに申しておるというわけであります。
  201. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そのことを特に強調いたしますのは、他方において、ココムの会議なんかにおいては、これは同じ自由主義諸国内の利害が相衝突する面が少なくないわけであります。アメリカのためにやっているんだということならば、アメリカのおっしゃることも御無理ごもっともと退かなくてはいけない。しかし、これは日本の安全のためにやっているんだという考え方であれば、アメリカと意見が違う場合においても日本のことを主張することができる。その意味で、私は、もし私が立案するならば、世界の平和と国家の安全保障のために云々という文句を入れただろうと思います。しかし、あえて文言の修正まではいたしませんが。  それに関連いたしまして、防衛庁長官にお伺いいたしたいと思いますが、つまり、日本の安全保障ということでありますならば、日本の自衛隊が独自に開発したような例えば探知技術であるとか、そういったふうな特殊の技能を開発したとしまして、それを使った、一般の同じ技術を使った汎用品が非常に売られているというようなこともあり得るわけです。現在あるかどうか知りませんけれども、あり得るわけです。やっぱりそういった技術なり製品が共産圏に流れていくということは、日本の安全のためによくないわけで、したがって、これはココムの場においても大いに主張して、ほかの国もやってもらっては困るということを言わなくてはいけません。  したがって、そういう意味においても防衛庁長官もこの外為法の問題に関しては、通産大臣は法令上できるんだということを言われましたけれども、単にできるだけでなしに、進んで意見を述べる、そのことをやっていただきたいと思うんですけれども防衛庁長官のお考えをお伺いしたいと思います。
  202. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 私は、外為法というのは、ココムと関連いたしまして安全保障に重大な関係のあるということをよく認識しております。したがいまして、この安全保障のために防衛庁として協力できるということにつきましては協力を推しまないつもりでございます。ただ、防衛庁といたしましては、しゃしゃり出て、おれがやるんだ、そういうような気持ちは持っておりません。
  203. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 もちろん防衛庁がしゃしゃり出てやるべきことではない。しかし、意見は堂々と述べていただきたい。  これに関連しまして官房長官にお伺いしたいと思いますが、これは後のペルシャ湾問題のときにも述べるつもりですけれども、去る七月三日のやはり同じ決算委員会の総括質問のときに、この外為法の問題あるいはココムの問題なんかも日本の安全に非常に関係のある問題であるから、安全保障会議でこれは議論すべき問題ではないかということを述べました。それに対してほぼ同感の趣旨の返事をいただきましたけれども、その後どういうふうに、安全保障会議は開かれなかったにしても、あるいは開かれたかもしれませんけれども、その意見が反映するように措置をとられましたですか。
  204. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 今回のココム違反事件に関連する対応策として、御承知のとおりに今国会で外為法の改正をお願いして、この法律の改正の成立と同時に関係閣僚会議を設置するということにいたしました。この問題はやはり我が国の安全保障という面に極めて密接な関連のあることでございますから、そのメンバーには、これは通産大臣は当然でございますが、防衛庁長官も入っていただく、かように措置をしたわけでございます。官房長官はもちろん入っております。  そこで問題は、安全保障会議が一方にあるわけでございます。安全保障会議は、これはいわば軍事的側面で国の安全保障を関係閣僚の間で協議をする、こういう機関になっております。そこで、安全保障という観点でのつながりをどうつけていくかという観点から、ココムの閣僚会議の下に局長レベルの関係省庁の幹事会を設けてございます。その中には、やはり内閣としては外政審議室長を正式メンバーにいたしておりますが、安全保障会議との関連を十分つけなければならぬということで、一つの役所の中から二人の局長を出すということについてはおれもおれもということもございますから、正式メンバーとしては外政審議室長を当てておりますが、この会議には安全保障会議の室長ですね、私の方の、これを常時出席をさせる、こういうことで両者の間の連携にそこを来さないような措置を講じておるつもりでございます。
  205. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 安全保障関係閣僚会議に安全保障室長も出席しているというお話ですね、それは非常に結構なことでございます。つまり、安全保障閣僚会議というのは常設の事務局がないわけですから、やはりそういったふうな問題を常時各方面から研究しているのは安全保障室じゃないかと思うし、また、その趣旨でおつくりになったんじゃないかというふうに私は思いますので、そういった安全保障室長の意見なんかも参考にして議を進めていただきたいということが一つでございます。  それから、中曽根内閣、あと一月ぐらいだというのが一般のうわさでございますから私もそれを信ずるわけですけれども、こういう関係閣僚会議にしましても、あるいは今度内閣におつくりになりました安全保障室あるいは外政審議室その他にいたしましても、やはりこれはその上に立って使う人がだれであるかによって、こういった機構というのはつくったまま形骸化してそのまま残っているというようなことが少なくないわけでございます。したがいまして、後藤田官房長官も長年中曽根内閣の閣僚としてお働きになりましたので、今度新しい内閣で続けてやられるかどうか知りませんけれども、恐らくやめられる、休みたいんじゃないかと思いますが、十分に後の官房長官にこの点は強く申し送りをしていただきたい、これは私の希望でございますが、いかがですか。
  206. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 御承知のとおり、日本の憲法は平和憲法という建前で、世界でも特異な私は憲法体制下で日本の政治行政の仕事は行われている、こう思います。この体制は、やはり我々としては尊重し、守り抜かなければならない基本の考え方だと思います。しかし一方、今日のような極めて緊張の度合いを増しておる国際情勢のもとで、なかなか日本に対するフリーライダーの批判論議というものは、これは増しこそすれ減退することはないのではないかという危惧の念も持っておるわけでございます。こういった中で、日本の平和と独立をどのように現在の憲法を守りつつやっていくのかということは、大変これからの国政運営上の重大課題であろうと。それだけに、今、関さんがおっしゃったような意味合いも込めまして、もう一月後には必ずやめますから、これは間違いありませんから、そのときには、次の方、どなたになられるか知りませんが、引き継ぎだけはきちんとさせていただくつもりでおります。
  207. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 外為法関係はそれで終わりまして、次にペルシャ湾の航行の安全確保の問題についてお伺いしたいと思います。  まず最初に運輸省にお尋ねいたしますが、日本国籍のタンカー、あるいは外国に移籍しているという船も含めればなおいいんですけれども、大体一年間何隻ぐらいのタンカーがペルシャ湾で原油の積み取りをしているか。それからまた、それに従事している日本人船員の数はどの程度あるかお伺いいたしたい。
  208. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 昨年七月から本年六月までの一年間におきまして、運輸省が承知をいたしておりますペルシャ湾に入湾をいたしました日本籍のタンカーは、延べにして三百八十八隻であります。また、これらの船舶に乗り組んでおりました日本人船員は、延べ九千五百十七名と承知をいたしております。
  209. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 これは質問では通告していませんでしたけれども、外国にリベリア船籍なんかで移籍している船がありますね、それはわかりますか。
  210. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 外国籍船は、タンカーにつきましては二百七十八隻です。ですから、タンカーといたしましては六百六十六隻であります。また、タンカー以外の船の方になりますと、日本籍船が百十二隻、外国籍船が三百十四隻、計四百二十六隻であります。そして、これらの船に乗り組みました日本人乗員数は、合計いたしますと一万六千百六十名でございます。
  211. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そういった日本のタンカー、あるいはタンカー以外のコンテナ船なんかも含まれているようですけれども、そういった船がこの二、三年間攻撃を受けた、あるいは日本人で亡くなった人もおるように聞いているんですけれども、その被害状況をおわかりでしょうか。
  212. 宮本春樹

    説明員(宮本春樹君) お答えいたします。  攻撃を受けた船舶は延べ十二隻でございます。死者は一名でございます。
  213. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 日本国籍の船が十三隻ですね。
  214. 宮本春樹

    説明員(宮本春樹君) 日本関係船舶です、
  215. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 亡くなった方は本当にお気の毒でございます。一人でございますけれども、攻撃を受けて随分危険な目に遭っているというふうなことは、私これ海員組合から資料をいただいたんですけれども、かなりあるようでございます。こういう日本船員の安全対策について運輸省はどういう対策を考え、あるいは実行しておられるか、そのことをお伺いしたいと思います。
  216. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) けさの報道によりましても、ペルシャ湾内におきまして米軍のヘリコプターがイラン籍船に攻撃を加えたという報道がなされておりまして、私どもが今ペルシャ湾情勢というものには極めて深刻な関心を寄せ続けております。  私どもとしては外務省、外交当局に対しまして外交ルートを通じて、日本人乗組員及び日本の商船隊を含めましたペルシャ湾内の船舶の安全航行の確保につき、関係国などに働きかけるように要請をいたしてまいりました。外交当局もまた一生懸命こうした努力を続けていただいております。また、ペルシャ湾内の内外の日本関係船舶の動静を把握すると同時に、この地域に関する情報を海運労使に迅速に伝達するなどの措置を講ずることによりまして、この地域における日本関係船舶の安全確保に努めてまいりました。  同時に、運輸省としては従来から関係省庁と海運労使の担当者をメンバーとするペルシャ湾安全対策官民連絡会というものを月一回程度開催をして、ペルシャ湾情勢に関する情報の交換を行ってまいりました。昨今の非常に緊迫した情勢の中で、本年五月から当該連絡会を必要に応じ随時開催することとしておりまして、本年九月の日信丸等の二隻の日本関係船舶の被弾した直後にも、この連絡会を緊急に開催をし、ペルシャ湾における日本関係船舶の航行安全確保対策に協議をしてきたところでございます。そして、このときには一時湾外において日本船は退避をし、湾内情勢の平穏化を待って湾内に入る。また在湾しておりました船で出航予定のものにつきましては、船団を組んで山湾させるといった対応をしてまいりました。  なお現在、しかしそのころよりもある意味ではもっと深刻な状況になっておりまして、私どもとしては本当に憂慮いたしております。政府としては、中曽根総理が日米首脳会談において言及をされましたように、今後とも日本関係船舶を含めた湾内の航行安全確保ということにつきましての、可能な限りの貢献をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  217. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 運輸省の努力は非常に評価いたします。しかし、依然としていろいろな危険が続いているわけでございますが、その場合の対策の一つとして、もうそんな危ないところには近寄るなというんで、ペルシャ湾には一切日本の船は派遣しない、日本関係の船は派遣しないということになれば、非常に安全だろうと思います。  それで、通産省にお伺いいたしますけれども、もし日本関係の船がペルシャ湾で原油の積み取りをやめたとした場合、ほかの条件は変わらないとした場合に、大体輸入原油の何%ぐらいが減少することになりますか。
  218. 浜岡平一

    説明員(浜岡平一君) 昭和六十一年度ベースで申し上げますと、日本の原油輸入は全体で三百二十三万バレル・パー・デー・でございます。そのうちホルムズ海峡を通ってきたと考えられますものが約百八十万バレル・パー・デーでございます。比率にいたしまして五六%程度ということになるわけでございます。このうち日本船籍の船によりまして輸送されたものが、私どもの承知しておりますところでは約六三%ぐらいでございます。したがいまして、この二つの数字を掛け合わせますと、日本の原油輸入量の約三五%が減少する可能性があるという結果になろうかと存じます。
  219. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 もしホルムズ海峡を通る日本関係の船は全部とめてしまうということになって、今お話しのように三五%原油の輸入が減少するといたしまして、今備蓄しておりますですね、民間の会社なんかにも備蓄さしている。この備蓄で今までと同じ規模で操業するとして何カ月ぐらい続けていくことができますか。
  220. 浜岡平一

    説明員(浜岡平一君) 現在日本が持っております石油の備蓄量、製品ベースに換算をいたしまして百三十八日分でございます。このうち四十五日分ぐらいはプラントを動かしますための操業在庫というぐあいに一応考えるべきかと存ずるわけでございます。したがいまして、クライシス等に対応しましてかなりフリーに使える量は九十七日分というようなことになろうかと思います。  ただいまお尋ね状況を想定をいたしまして、実際上はほかの供給ソース等もあるわけでございますが、すべて備蓄の放出で対応するということにいたしますと、全体の三分の一がカットされるわけでございますから、利用可能の備蓄量の約三倍の日数、三百日近い日数に対応することができるということが算術的には言えようかと存ずるわけでございます。
  221. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 官房長官にお伺いいたしますけれども、先ほど官房長官も言われましたように、日本はいわゆるフリーライダーであるという非難が高まりこそすれ減るということはない。日本の政府としてこのペルシャ湾の安全航行あるいは日本人船員の安全、そういう問題を含めてどういう対応策を現在検討中でございますか、またどのような方策が可能でありますか。
  222. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 先ほど運輸大臣がお答えいたしましたように、やはり外交的な努力ということを中心に考えざるを得ないわけでございます。もちろんホルムズ海峡を通過しておる原油の我が国総輸入量に占める割合、さらにはまた総エネルギーの中で占めておる油の依存率等から見れば、先ほどのお答えのように三割余りがぺルシャ湾に依存しておる、こういうことを考えますと、やはり日本としては、あのペルシャ湾の情勢に対しては可能な限りあらゆる私はやはり努力をしなきゃならぬ、こう思います。  ただ、日本は御案内のように、非軍事的な面においての最大限の努力というものを中心に考えざるを得ない、ここへいきなり海上自衛隊の船を出すということは、これは集団自衛のおそれもありますし、とてもじゃないが自衛隊の根拠法規といったようなものから見てもこういうことはできないわけでございますから、まずやはり非軍事的分野における協力、これを考える。その基本は何かといえば、やはりペルシャ湾の航行安全ですから、イラン、イラク両国に対する自制を促すと同時に、この根源はこのイラン、イラクの戦争でございますから、イラン・イラク戦争の和平へ向けての努力に日本なりの外交努力を重ねていく、それには国連における平和維持への努力に日本としての最大限の協力をしていくと、こういうことを我々としては現時点においては考えざるを得ません。  なお、また船に乗っておる方の安全をどうするかということは、先ほどもちょっと運輸大臣答えせられたかと思いますが、やはりいろいろな情報を船舶に対して伝達をしてあげるとか、いろいろなことをやって当面をしのいでいかざるを得ない。まことに、考えてみればまどろかしいなといったような感じをどなたもお受けになると思いますけれども、これが私は今我々のやり得る限度ではないのか、軍事面における協力というわけにはまいらないと、かように考えておるわけでございます。
  223. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 ペルシャ湾の船に対する危険は、単に空からの機銃掃射とかあるいはロケット弾の砲撃とかそういうことに限らず、浮遊機雷なんかに接触して損傷を受けるという事故もたしかソ連船なんかもその事故を受けたように思うんですけれども、そういう事故も起こっておりますですね。その場合に海上自衛隊の持っております掃海艇を派遣するのは、これは軍事行動ではないんじゃないかと思うんですが、防衛庁長官にお伺いいたしますが、まず第一に日本の自衛隊、そういう能力を持っているかどうかということと法的に可能かどうか、そのことをお伺いしたいと思います。
  224. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) まず、能力についてでございますが、我が国の掃海能力というのは、第二次大戦の後非常に我が国周辺にたくさんの浮遊機雷その他遺棄された機雷がありましたので、それを引き続き掃海をしておったということで、掃海能力そのものについていえばかなりのものを持っております。  なお、ペルシャ湾へどうこうという問題でございますが、これは先般来申し上げておりますように、公海上等に遺棄されているような機雷、そういったものを危険物として除去するということは、これはどこの公海であってもできないことはないということでありますが、自衛隊として現在ペルシャ湾に掃海艇を派遣するという考えはございません。
  225. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 考えがあるかないかではなしに、私が聞いたのは、能力があるかということと法律上差し支えないか。法律上は公海においてもそういう掃海することは一向差し支えないということですね。そのとおりですね。
  226. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 公海にあるすべての機雷が除去できるかどうかということになると、またいろいろ問題があろうかと思います。例えば状況が、ある国が公海上に機雷を敷設することがその国の自衛行動であるということでやっておられる、そういったものについて我が方が掃海をするというようなことはある意味の武力行使になるという場合もあり得るんではないか。したがって、先ほど来申し上げたように、公海上にどこの国が所有権を主張するものでもない、その種の遺棄されたような危険物としての機雷がある、そういったものを除去することは何ら法的に問題がないというように申し上げたわけであります。
  227. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 ペルシャ湾の機雷がどこの国のものかはっきりしないというふうな問題もあるんですが、その問題を考える場合にやはり法律的に可能であるということと、政治的に賢明であるかどうか、これはやはり区別して考える必要があるだろうと思います。  しかし私は、どのような方策をとるにいたしましても国民の世論の支持を受けなくちゃいけない。その世論を喚起する一つの方法として私今ここで質問しているわけですけれども、一方においては、先ほどお話がありましたように、外交的な努力を重ねていく、これは当然のことです。しかし、今までも随分各国が外交的な努力を重ねてきたんですけれども、一向におさまる様子はないわけであって、といたしますならば、やはり日本として単なる外交的努力、イラン、イラクの休戦を促進するような外交的な努力だけでなしに、それと並んでやはり何らかの対策を講じなくちゃいけないだろうと思う。もし日本の国民が掃海艇の派遣でも、これもそういう危ないところに使うのは一切御免だというふうな考え方であれば、あるいは町人国家に徹底いたしましてお金だけは払います、そのお金の払い方もいろいろの方法があるだろうと思いますけれども、お金で払う。そういうこともありますでしょうし、あるいは先ほど通産省に質問いたしましたけれども、もう一切石油は要りません、ペルシャ湾の石油は要りませんから、耐乏生活いたしますから、エレベーターがとまっても構わないから、あるいはテレビが薄くなっても構わないから我慢します、というんであれば、私はそれでもいいと思いますが、やはりこういう問題について新聞を見ておりましてもいろいろなニュースは報道されますけれども、それじゃ日本としてどうしたらいいのかという問題についての論議が非常に欠けているように思うんであります。その意味におきまして政府といたしましても、こういう方策をとればこういうメリットとデメリットがある、こういう方策をとればこういうデメリットがあるんだということを、やはり国民に率直に訴えて国民の世論を喚起することが必要ではないかと思うんですけれども官房長官の御意見をお伺いしたいと思います。
  228. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 関さんの御意見は私なりに理解はできます。そういう世論というものを背景にしなければ何事もできないのが今日の状況ですし、また今回の問題というのは非常に重要な問題をはらんでおりますからなおさらそうだと、おっしゃる意見はよくわかります。  しかし、ここで考えなければならぬのは、日本の自衛隊というものは、その根拠はどこにあるんだ、これは憲法九条、国の自衛権というもの、これは憲法といえども否定できないではないか、だから自衛権として当然自衛のために必要な最小限度の武力は持つことは認められると、こういう根底に立っておるわけですね。この枠をはみ出る武力行使ということは私はできないと思います。そうすると、今日のペルシャ湾の海域が一体どういう海域だというならば、これはまさに私は交戦海域だと認めざるを得ない。ここへ日本の海上自衛隊が一体派遣ができるのかできないのかということはよほど慎重なる、法律判断も必要ですけれども、これこそ私は日本の将来の運命に関する大きな問題をもはらむということでございますから、これは軽率には法律的にどうだから出ていいだ悪いだとかいったことではないのではないか。もう少し真剣なる議論がなければ軽々にやるわけにはいけない。それはなるほど警察活動であるならば行けるのかもしれませんね、理論的には。武力行使は私はペルシャ湾では無理だと思います、これは幾ら何でも。そうすると、警察活動でそれじゃ行く、しかし行く先は現在既に交戦海域と認定せざるを得ないよ、戦が行われているよ、そこへ出たときに相手方が、たとえ機雷の除去であっても、これは敷設した国は、日本は我が方に対して武力行使に出たと、こう判断をせられて相手方が武力攻撃をこちらにしかけてくる、そのときにそのままギブアップするわけにはいきません、こちらは。そうなると結果はどうなるんだといったようなことも、これは本当に真剣に論議をしなければならぬ課題であって、私は、そう簡単に結論を出すべきではない。しかし、いずれにいたしましても、日本は平和国家として現行憲法のもとで必要最小限度の自衛力ということで自衛隊が認められておるんだと、これを忘れるというわけにはまいらぬ、こう考えるわけでございます。
  229. 菅野久光

    ○菅野久光君 昭和六十年度の決算審査に当たりまして、何としてもこの年に起こった日航一二三便のような大事故を二度と起こしてはならない、事故防止のためにでき得ることをなさねばならないのが私たち政治にかかわる者の責務であるという思いで、航空安全制度確立のために質問をいたしたい、このように思います。運輸大臣、たびたびかかわることになりまして、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。  今お手元に「ある日の午後六時三十分時の瞬間交通図」をお配りいたしましたが、自衛隊機を除いてレーダースコープに映し出された管制下の航空機は二十四機です。日本の空は、この図には載っていませんが、最近ふえている小型機の問題もあって、過密航空の時代であるわけでございまして、言わずもがなでありますが、航空安全ということが大変重要な課題であることをまず、御認識にはなっていると思いますけれども、御認識いただきたい、このように思います。  本論に入る前に、日航一二三便にかかわることについて一点だけお尋ねをいたしたいと思います。本年六月十九日に運輸省航空事故調査委員会が最終報告書を運輸大臣に提出しましたが、この報告書に対して遺族でつくる8・12連絡会が行ったアンケート調査では、非常に不満足三〇%、不満足六五%と回答されております。そして無記名五%、したがって無記名の五%を除くと全員が不満を抱いていることが明らかになっております。この点について運輸大臣、それから事故調査委員会、日航はどのように受けとめておられるか、そのことをまずお尋ねいたしたいと思います。時間の関係もございますので、ひとつ簡潔にお願いいたします。
  230. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は運輸大臣として、運輸行政というものの最重点事項といえば安全の確保だと考えております。それだけに、私は事故調から提出をされました報告書というものを非常に厳しいものとして受けとめました。そして、いずれにもせよ修理のミスというものが発見されず、それがあれだけの大きな事故を引き起こしたということについて、本当に残念な気持ちがしてなりません。今後ともにこうした事故を起こさないような努力をしていかなければならぬとみずからに言い聞かせております。  ただ、その後、今委員から御指摘になりましたような御遺族の方々の声というものを私もさまざまな角度で耳にいたしました。御遺族の心情としてはさもあらんと思うものもありますが、私は事故調の諸君はその能力の限界までの努力をしてくれたものと考えておりまして、この報告書の内容を極めて重く受けとめております。
  231. 藤冨久司

    説明員藤冨久司君) 航空事故調査委員会は、航空事故の原因を究明するための調査を公正な立場で科学的に行いまして、将来の航空事故の防止に寄与することを目的として業務を行っているものでございます。今回の日航機事故の調査につきましても、こういった観点から航空事故調査報告書を作成し、運輸大臣へ提出いたしますとともに、公表いたしたものでございます。  そこで、先生ただいまおっしゃいました8・12連絡会の報告書に対する感想の件でございますが、私ども新聞紙上で拝見いたしておりますが、委員会といたしましては、報告書に記載いたしました事項、さらにはその内容委員会立場についてできる限り御説明をすることによりまして御理解を得るようにしてまいりたいと考えているところでございます。
  232. 十時覚

    参考人(十時覚君) お答えを申し上げます前に、一昨年、痛恨きわまりない一二三便の事故を起こしましてまことに申しわけなく、深くおわび申し上げる次第であります。亡くなられた方々の御冥福と、けがをなされた方々の一日も早い御回復を心からお祈り申し上げます。  さてお答えでございますが、かけがえのない人命をお預かりいたします航空会社の者といたしまして、本報告書の御指摘を厳粛に受けとめ、二度とこのような事故を起こさない体制づくり、安全を確立することが亡くなられた方々に報いる道と決意を新たにいたしております。会社の安全対策に万全を期するために現在関係部門で報告書の内容につきまして詳細な検討を進めておりますが、現時点までの検討結果では、これまで会社が行ってまいりました安全対策並びに現在実施しつつあります諸対策、これは報告書に記述されている問題点をカバーしているものと判断いたしております。本報告書でなされた勧告、建議、所見などにつきましては、運輸省の御指導を得ながら諸施策の具体化を図ってまいります。会社といたしまして今後とも事故の再発防止、安全運航体制の一層の強化のためさらに積極的に取り組んでいくとともに、社会の信頼を回復したいと念願いたしております。
  233. 菅野久光

    ○菅野久光君 大臣からも、遺族の人の心情から見ればそういうふうに言われることも理解できる旨のお話もありましたが、こういうような報告書になるのは事故調のあり方そのものにも問題があるのではないかということは、これは私自身もいろいろ考えるところありますが、起きた事故の究明も非常に大事ですけれども、まず事故を起こさない対策をどうするかということがきょうの私の主題でありますので、航空安全報告制度の問題にこれから入りたいと思います。  事故調、日航の方は結構ですが、最後まで聞いていただければなおいいんじゃないかというふうに思います。  安全報告制度については、日本で最もよく研究し、実際にこれを実施し、みずから分析手法も開発して学術的にも実績を上げている航空法調査研究会の代表幹事であります宮域雅子さんに、本日御多忙の中、参考人としておいでいただきました。本当にありがとうございます。  具体的な質問に入る前に、宮城さんの研究歴について簡単にお話しいただきたいというふうに思います。
  234. 宮城雅子

    参考人宮城雅子君) 航空法調査研究会の代表幹事でございます宮城でございます。本日は、本決算委員会におきまして参考人の御指名をいただき、光栄に存じます。  航空法の研究を始めましたのは昭和三十八年ごろで、私の最初の国際的論文は一九六六年、すなわち昭和四十一年、国際民間航空機関の空中衝突条約草案の求償訴訟に関する論文で、アメリカのサウザン・メソジスト・ユニバーシティー刊行の「ジャーナル・オブ・エア・ロー・アンド・コマース」に掲載されております。その後、昭和四十二年、CPAL、BOAC等の連続事故を契機に研究会を設立いたしまして、以来約二十年間にわたり航空法調査研究会を主宰して今日に至っております。  その間いろいろとございましたが、昭和五十五年、「航空機事故防止のための提言」及び昭和五十八年、「航空の安全確保のための提言」等を運輸大臣に申し上げ、日本における安全報告制度の確立を目指して研究を行ってまいりました。
  235. 菅野久光

    ○菅野久光君 今、宮城さんが代表幹事をやられております航空法調査研究会が有斐閣から出しました「航空法務研究」という、こういう冊子ができておりまして、今お話がありましたように運輸大臣関係者にこれを、提言を含めてお配りしたということで、きょう持ってこられて、大臣にぜひ上げてくださいということですので、ひとつ受け取っていただきたいと思います。(資料を手渡す)  それでは時間もございますから、早速お聞きしたいと思いますが、まず、安全問題について基本的にどのようにお考えになっておられるかお聞きいたしたいと思います。
  236. 宮城雅子

    参考人宮城雅子君) 当会が十数年にわたって安全問題を取り上げてまいりましたのは、航空をめぐるいかなる実体法上の法律論争も、究極は安全の問題に帰着すること。また安全は一企業、一分野の利益にとどまらず、広く公共の利益、福祉であると考えているからでございます。  日本の航空旅客数は、年間延べ約六千万人、総人口の約二分の一に相当し、航空運送はまさに国民の翼となっております。しかし、航空に限らず、現代科学の進歩は人間社会に多大の貢献をしている半面、一たび事故が発生すれば図り知れない損害をもたらすことも否定できません。  ところで、従来とられてきた安全対策の手法は、事故調査を基礎とするもので、ハード面ではかなりの成果を上げ得たものの、同種事故の再発防止にしか役立たず、しかも事故や災害が発生してから開始される点で決定的な限界がございます。そこで、安全確保のためにはいかにして事故を未然に防止するかに視点を転換する必要があり、その方策の検討が社会的要請となってくるわけでございます。  安全報告制度は、事故を予見、予測して、これを未然に防止するための手法でございます。我々は、事故に至らない不安全事象、つまり「冷やり」とか「はっ」としたことを、アクシデントに対しインシデントと呼んでおりますが、事故はこのインシデントに潜在している危険要因が種々の条件下で競合、連鎖し、決定的事態に至ったときに発生すると考えられております。安全報告制度は、日常業務中に経験されるたくさんのインシデントの情報を集めて、人間の過誤の態様と背景要因との関係を明らかにし、潜在的危険要因を発見して、これを除去、回避するための方策を講ずることを目的とするシステムでございます。  アメリカ連邦航空局は、一九八〇年、死亡者の出た航空機事故の九二%はいずれかの段階で人的要因、つまり人間の過誤が関与して発生している旨を発表し、事故原因は従前主流を占めていた機械的原因から人間的原因に移行していることを明らかにしております。同様の傾向は特に先端技術産業に共通しており、スリーマイル島、チェルノブイリ両原発事故も人間のささいな過誤によって起こっております。過誤を犯した者がだれであれ、社会の一員である以上適正な法の手続により法律上の責任を負うのは当然でございますが、このような措置だけで安全は達成できません。各人の努力、訓練はもとより大切でございます。しかし、多くの人間は同様の条件下においては類似の反応を示すことが人間の本来的特性で、この点に着目しなければ人的要因による事故は防止できません。また、我々は安全の原点は事実を謙虚に直視する態度であり、安全は本来的に厳正さを要請するものであると考えております。
  237. 菅野久光

    ○菅野久光君 次に、昭和五十五年に、先ほどお話がございました航空機事故防止のための提言、それから五十八年の航空の安全確保のための提言を運輸大臣等に提出されました。その中で指摘された安全報告制度の組織上の必要要件に言及されておられますが、それをもう一度ここで簡単に説明をしていただきたいと思います。
  238. 宮城雅子

    参考人宮城雅子君) 先ほど申し上げましたとおり、特に先端技術産業の分野においては常に新しいタイプの潜在的危険が発生している反面、人間のささいな過誤が大事故の引き金になっております。  したがって、事故を未然に防止するため最も重要な情報は、人間の過誤がかかわるインシデントの具体的な事実情報ということになります。安全報告制度の成否の第一の鍵は、この事実情報をいかにして収集するかにかかっております。このような人間の過誤がかかわった情報の提供は、報告者の高い安全認識がなければならないことはもちろんでございますが、それだけでは報告されません。  日本の主要航空会社の中には、名称は違っても安全報告制度は既に設けられております。また、運輸省の中にも報告の道は開かれております。しかし、今日改めて安全報告制度の必要性が論議されるのは、これらがほとんど機能していないからにほかなりません。報告は年間を通じ一けた台であるとか、最近はほとんどないとも伺っております。かつてアメリカでも、連邦航空局がこれを実施しようとして失敗しております。その原因は明らかで、監督官庁や航空会社が関与しているからにほかならず、インシデントの経験がないからではございません。これら前者の轍を踏まず、真に効果的な安全報告制度を実現させるための組織上の不可欠な要件として、当会が二回にわたる提言の中で指摘したのは、独立性と総合性でございます。  第一の要件である独立性は、監督官庁及び報告者の属する企業や機関、航空の分野について申せば航空会社、運輸省から実質的に独立した組織、機関でなければならないということでございます。実質的と申し上げましたのは、形式的、法律的には航空会社、運輸省と別個、独立の組織、機関であっても、人的あるいは財源的にこれらと密接な関係がある場合は不適切だからでございます。  その理由の一は、人的要因インシデントは、報告者らの過誤がかかわった事実の情報ですから、報告者らに対して社内処分、人事考課、免許の停止等の処分権、人事権を持っているところに対して、真実の情報が提供されないのは、むしろ人情の当然でございます。また、重大な過失がかかわっているような情報を国の機関が受け取られても、処分をめぐって処理に窮されるのではないかと思います。  実質的独立性を要する理由の二は、安全報告制度は潜在的危険要因を除去するための改善措置の勧告、提言が重要な機能の一つだからでございます。事故防止の最後のとりでとなるのはパイロットらでございますが、航空機の運航はシステマティックに行われており、そのいずれの段階に瑕疵があってもパイロットの判断、操作に重大な影響を及ぼします。  航空機の調達、整備、運航は航空会社の責任によって行われておりますが、運航と深いかかわりのある空港及び航行援助施設の設置、管理、あるいは航空交通管制業務は運輸大臣または公共団体が行っております。安全報告制度の重要な機能の一つは、改善勧告であり、実際上これらについて改善措置が必要となる場合が多く、適切な措置を強く要請するためにも実質的独立性が不可欠なのでございます。  第二の組織上の要件である総合性は、情報の収集と分析を多角的に行い、研究も一つの組織で行う必要があるということでございます。現代の産業は広範囲にわたって関連する分野が多く、相互に深いかかわりがございます。例えば、パイロット側の過誤の少なくとも三分の一は航空交通管制の指示、助言と深いかかわりがあり、整備も等閑視できないことなどから、乗務員のみならず、運航に深いかかわりのあるすべての側面から人間の過誤に陥る要因を解明する必要がございます。一側面からのみのアプローチや、一企業内の実施では、効果的機能は期待できないのでございます。  また、独立性を保障するためにも、独自の研究部門を持つことが不可欠で、これを総合して行う組織でなければ公平、公正を期し得ないのでございます。
  239. 菅野久光

    ○菅野久光君 長い間の研究の成果で、今いろいろお述べいただきましたが、安全報告制度の組織上の要件として、実質的独立性と総合性が不可欠であるということについては今のお話でよくわかりましたが、その後航空法調査研究会では提言に述べた基本的構想のもとに実施をし、他では容易に収集できない人的要因のかかわるインシデントリポートがたくさん報告されておると聞いておりますが、その実情を簡単に述べていただきたいと思います。
  240. 宮城雅子

    参考人宮城雅子君) 二回にわたる当会の提言に対し、航空界はおおむね趣旨は肯定されながらも、日本における実現は不可能、つまり絵にかいたもちとの見方が支配的でございました。そこで当会は昭和五十九年より財団法人トヨタ財団の研究助成を得て提言に述べた構想のもとにこれを実施いたしました。日本の定期航空全六社の全乗務員、成田空港乗り入れ外国航空会社の一部の乗務員及び全航空管制官を対象に、順次計四回の調査を行い、その結果人的要因インシデントを具体的に記述した千件を超えるリポートを受け取っております。報告者の態度は極めて率直であり、かつ詳細な記述が多かったことが特徴的で、それだけに我々に一種の圧迫感を持って迫るものがあり、身の引き締まる思いというか、肩に荷のめり込む思いがいたしました。千件以上のこの種リポートがいかに大きなものであるかは一九八二年から三年にかけ、英国航空医学研究所が、軍用及び民間小型機も含め収集したリポートが百五十件、スウェーデンが一九七六年から四年間にわたって収集したリポートが三十件であったことと対比していただければ御理解いただけるものと思います。当会に報告されたリポートの中には昭和五十二年一月、アルコールの影響下で行った操縦操作と機体の着氷により離陸直後に墜落し、本人も死亡した事故の機長がその数年前にも飲酒して無謀な操縦操作を行い、副操縦士がはっとしてテークオーバーして事故に至らずに済んでいたこと、また昭和五十九年四月、那覇空港進入時の事故と全く類似のインシデントを同社内の他の乗務員が経験していたことが明らかになっております。これらは安全報告制度が効果的に機能していれば防止できた事故で、安全報告制度の社会的必要性がこれによっても実証されたものと考えております。
  241. 菅野久光

    ○菅野久光君 今の約千件ものインシデントリポートを収集されたというようなお話がございまして、外国の例を引き合いに出していかに多くのリポートを集められたかということを申されました。私もちょっと調べてみましたが、パイロットから運輸省に報告された、例えばニアミスですね、これの報告昭和六十年が一件、六十一年ゼロ、しかるに他方航空安全会議の調査によりますと、昭和六十一年の一年間にニアミスを経験したパイロットは七十二名、全運輸省労働組合が管制官を対象にした調査によると、期間は若干ずれて六十一年の六月から六十二年の五月までですが二百八十八名だと、この数は件数ではありませんけれども、運輸省に報告のあった一件とかゼロ件とは大きな違いですね。そういう意味では千件ものインシデントリポートを集められたというのは、これは大変なものではないかというふうに私も思います。まあ質の上でも数の上でも驚異的なほど人的要因インシデントリポートが報告された原因は一体何にあったんだろうか、またこの調査研究を通じて先ほどの組織上の要件のほかに安全報告制度を実施する場合に何が必要だというふうに考えておられますか、ちょっと具体的にお話しいただければと思います、
  242. 宮城雅子

    参考人宮城雅子君) この調査研究は目下継続中でございますが、ここで明確に申し上げられることは、第一に、報告者の安全に対する認識が非常に高かったことで、報告された方々のエアマンシップに対し敬意を表しております。第二に、関係各方面の中に理解者と協力者があったことで、その方々に深く感謝申し上げております。しかし、その基礎となったのは、当会が運輸省からも航空会社からも実質的に独立し、中立、公正な第三者の研究組織であるとの認識がなされていたこと。また、総合的に調査を行ったことが大きな要因だったと考えております。また、この調査研究を通じ明白になったことは、組織上の独立性と総合性を備えていればそれでよいというものではないということでございます。つまり安全報告制度にはソフト面の必要要件があるのでございます。  その第一は、報告者と報告を受ける側、すなわち分析者との間の信頼関係でございます。人的要因インシデントリポートは、報告者らの過誤がかかわった具体的な事実の情報ですから、両者間の信頼関係に基づいて報告者が自発的意思によって書いたものでなければ真実の情報は報告されません。例え法律によって報告を義務づけ、あるいは反対に一定の条件のもとに処分、処罰をしないものとしても、それでこの種リポートが得られるものではございません。この種リポートは単なる権威や権力、あるいは形骸化した組織では収集できないことを御銘記いただきたいものと存じます。従来日本において安全報告制度は実現不可能と言われてきたのも、一つにはこのような理由によるのではないのでしょうか。当会に報告された千件以上のリポートは、組織上の実質的独立性と総合性及び両者間の信頼関係が安全報告制度の不可欠な要件であることを何よりも如実に証明していると受けとめております、信頼関係を構成する要件は情報源の絶対の秘匿、分析者の分析態度と能力、情報の現場へのフィードバック、改善策の四つでございます。若干説明申し上げますと、人的要因インシデントの情報が重要なのはそこに記されている事実であって、だれが報告したかということはその詳細を確認するため以外に意味はなく、不当なせんさくや非難あるいは処分や不利益が報告者に対してなされることのないよう特に配慮しなければなりません。そして情報源の絶対の秘匿は組織上の実質的独立性によっても客観的に保障する必要がございます。また、冒頭に申し上げたとおり安全は公共の利益でございますから、分析の任に当たる者は自己の所属する立場の利益や個人のイデオロギーに左右されてはならず、中立 かつ公正に事実に対し謙虚に全人格を傾注して分析する必要がありますし、そのための客観的妥当性ある分析手法が必要でございます。内外を通じ従来の分析手法の中には適切なものがなく、当会は航空以外の他の分野にも汎用性ある分析手法として次のものを開発いたしました。それは一連の作業を情報受容、判断、操作の三つの時系列の繰り返しから成る情報処理活動として把握し、人間の過誤を九つのカテゴリーに分け、各時系列における計二十七の態様と背景要因との関連を個々のインシデントについて分析する手法でございます。そしてこの分析手法並びに分析結果の客観的妥当性は社会調査の統計学上の一手法である数量化三類によっておおむね裏づけ得たものと考えております。これは相互に関連し、複雑に絡み合った現象からインシデントの本質的な構造を明らかにするもので、分析の精度は数値によって示され、その分析結果を基礎に事故の予見、予測も可能となります。個々のインシデントの具体的内容の現場へのフィードバックは、他人の経験を自分のノーハウとして蓄積することによって類似の危険要因に遭遇したときの回避を容易にいたします。危険要因除去のための改善策の提言が安全報告制度の機能として最も重要であることはさきに申し上げたとおりでございます。  ソフト面の第二の要件は、継続的、反復的に行うことで、それによってとられた改善策が効果的であったかどうかを確認できると同時に、技術の進歩によって新たに生じてくる新しいタイプの危険要因を発見することができます。  第三の要件は、政府を初め関係各方面の協力と一般の理解でございます。組織上、実質的独立性は不可欠な要件でございますが、安全報告制度を実施する第三者の組織、機関に対する政府及び当該企業の理解協力はもとより必要でございます。特に留意しなければならないのは一般の理解で、一見いかにばかげたエラーの報告であっても、決して非難してはなりません。もし安全報告制度の本来の趣旨を没却して非難がなされるなら、二度とこの最も貴重な情報は提供されなくなって、潜在的危険要因は隠ぺいされたまま事故への道をたどることになります。そして、甚大な社会的損失を招く結果となるのでございます。  以上、主として航空の分野に関連して安全報告制度の必要性とハード面及びソフト面についての必要要件の大要について申し上げました。航空の分野については現在まで短期的かつ暫定的に当会がこれを行ってまいりました。しかし、ただいま申し上げたとおり、安全確保のためには長期的かつ継続的な実施が必要でございます。さらには、航空の分野に限らず、特に宇宙及び原子力産業、遺伝子工学等の先端技術産業において一たび事故が発生すれば甚大な損害を生ずること、安全は国民の利益、公共の福祉でありますから、世界の主要先進国の一つである日本においてこの長期的かつ継続的な実施は科学の進歩のためにも絶対に必要でございます。  最後に、当会に寄せられた報告者らの信頼と安全に対する熱意及び当会の研究成果をさらに発展させ、真に効果的に機能する長期的かつ継続的な安全報告制度を実現できる条件が関係各方面の御理解と御認識により整備されることを心から念願いたします。  時間の関係上割愛いたしました法律上その他の諸点につきましては、提出した参考資料をもって補足させていただければありがたいと存じます。
  243. 菅野久光

    ○菅野久光君 どうも私の時間の関係で大変急いでお答えをいただきまして大変恐縮でございます。  先ほど、二回にわたって運輸大臣等に提言をされておるということでありますが、その提言はどのようになっておるというふうにお思いでしょうか。
  244. 宮城雅子

    参考人宮城雅子君) 最近に至りましてようやく運輸省が安全報告制度につきまして認識されるようになったことは一応の前進であると受けとめております。しかし、当会が昭和五十五年に安全報告制度の必要性を指摘しこれを検討するよう提言申し上げ、五十八年にはさらに敷衍して詳細かつ具体的に安全報告制度について提言しているにもかかわらず、最近に至るまで何らの措置がとられず、その間日本のみならず世界に衝撃を与えた御巣鷹山事故、羽田沖事故、その他幾つかの事故が発生しております。その中には、航空安全報告制度が効果的に機能していれば未然に防止できた事故も幾つかあったはずで、これらの事故によって多くの人命が失われ、悲嘆に暮れた方々が多くおられることを非常に残念に思っております。
  245. 菅野久光

    ○菅野久光君 私も昨年の四月二十一日の当委員会でこの航空安全報告制度の問題について質問をいたしました。その中で「私どももこの安全報告制度の意義というものは十分認識しておりますが、運用上あるいはこの制度を十分機能させるための方式と申しますが、そういう点につきましては我が国の現状ではなおまだ時間がかかるのではないかというふうに考えておるところでございます。」というふうに、航空局技術部長ですね、答弁をされておりますが、「なおまた時間がかかるのではないか」と言っておられたんですが、ことしの七月二十七日の新聞によりますと「飛行機安全報告制度を検討」ということで報道がなされております。そこで、飛行機安全報告制度、この新聞によりますと運輸省が早期導入を目指して航空振興財団の協力を得て委員会を発足させるというふうにありますけれども、この委員会は運輸省の委員会ということになるのか、あるいは航空振興財団か、端的に答えていただきたいと思います。
  246. 中村資朗

    説明員(中村資朗君) 運輸省独自の機関ではございませんで、航空振興財団にお願いいたしました法人組織の中に検討会を設けたわけでございます。
  247. 菅野久光

    ○菅野久光君 そうすると、この委員会の調査検討によって航空振興財団がこの安全報告制度を実施するということを前提にしているということでございましょうか。
  248. 中村資朗

    説明員(中村資朗君) 現在の取り組みではそこまでの結論を得るつもりではございません。とにかく調査を実施をいたしまして、どういうことができるか、特に諸外国でまだ若干わからない点もございますし、問題点もいろいろあるということでございますので、そこら辺もう少し詰めた調査をまずやっていただく、そしてその結果を得た上で今後の組織の問題その他がありますれば検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  249. 菅野久光

    ○菅野久光君 航空機事故を防止しようというこの基本的な重要事項ですね、これについて、なぜ運輸省自身が検討しないのか、そこのところがちょっと私にはわからないんです。そこを端的に説明してください。
  250. 中村資朗

    説明員(中村資朗君) 運輸省といたしましては、事故に至らないようなインシデントというのは非常に大事だというふうに考えております。特に、今宮城さんからお話のございました人的要因、ヒューマンファクターというのが最近非常に脚光を浴びているわけでございまして、こういう面での調査がこれから必要であるということは認識をしておるわけでございますが、機材の一部の問題点その他につきましては現在異常運航報告というのを別途とっておりまして、それから本格的に機長レポートという関係では航空法上に報告制度が設けられておるわけでございまして、それで従来やってきたわけでございますが、今後の対応といたしましては、確かにおっしゃるとおり、ヒューマンファクターに起因するようなインシデントについても少しずつ前進を見ていろいろな施策をしていかなきゃいけない、こういうような取り組み方でございますので、現時点でまだ非常に新しい話でございますので、そういう意味では今まで取り組みがおくれていた、国としての取り組みができていなかったということでございます。
  251. 菅野久光

    ○菅野久光君 これはもう発足したんですか。
  252. 中村資朗

    説明員(中村資朗君) この九月から第一回の検討会をお願いしたところでございます。
  253. 菅野久光

    ○菅野久光君 先ほどの宮城さんの報告の中にも、独立性ということを非常に強調された、それが千件以上のリポートが集まった一つの大きな要因だということをおっしゃられたわけでありますが、そういったような経験、それから日乗連ニュースということで、これは操縦士で管理職を除いた全員がこれに加盟しているそうでありますが、ここでもこの運輸省等の行う安全報告制度には反対し、設立させない取り組みを行うということを決議されておりますね。そんな意味で非常にこの安全報告制度の問題については、つくり方を間違うと大変なことになるんではないかというふうに思います。それぞれの航空会社の中にこの安全報告制度をつくっても、実質的にそれが機能してないというのがこれが実態だというふうに私は聞いておるわけです。先ほど宮城参考人からいろいろな意見をいただきました。まことに傾聴すべきものだというふうに思います。安全報告制度の重要性にかんがみて、私も、中途半端な制度ができてはこれは取り返しのつかないことになるのではないかというふうに考えます。実質的にこの独立性と総合性を持ち、しかも信頼関係のある第三者機関によらなければならないのではないか、先ほどのお話を聞きながらそう思っているわけであります。  監督官庁であります運輸省から実質的にも独立する、それから報告者等からも信頼される、そういう組織、機関でなければこれは効果的な機能は期待できないということは明らかだというふうに思います。先ほども申し上げましたように、もう会社の中に、あるいは運輸省の中にこういったような報告の制度がきちっとできているけれども、それがずっと長い間です、機能しなかったということだけでもこれはもう明らかだというふうに思うのですね。この安全報告制度は一二三便の犠牲者の霊を慰めるためにも、また広く国民の福祉のため、そして日本の科学振興のために絶対に私は必要であるというふうに考えるわけでありますが、先ほどからの宮城参考人のお話、それから今申し上げたことなどを含めて運輸大臣、どのようにお考えか、ひとつお話を承りたいと思います。
  254. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) まず宮城参考人に心からお礼を申し上げます。  先ほどからのお話、私どもにも大変いい勉強になりました。そしてまたこの報告制度というものは確かに私は検討に値するものだと思います。ただ、先ほど来いろいろな角度から御論議がありましたように、現在この報告制度を実施している外国の実情を見ると、必ずしも効果的に機能していないと言われる部分もあります。また私は日本で実施をする場合に検討すべき問題点もさまざまであろうと思います。今たまたま運輸省とは全く別の組織というお話から私一生懸命になって考え込んでおりましたのが、仮にその別組織をつくった場合に国家行政組織法上の三条機関で設置をすれば完全な独立機関にはなりますけれども、逆にそれは非常に運営が困難だろう。かといって八条機関で設置をいたしました場合にはその機能に限界が生じると。果たしてどういう形であれば御提言のような組織図がかけるだろうか、真剣にちょっと本当に考えてみておりました。なかなかうまくはまりません。率直に申しましてなかなかうまくはまりません。したがって私はやはり十分研究をさせていただきたい。研究に値する提言だ、そのように感じております。
  255. 菅野久光

    ○菅野久光君 大臣から本当に今大変いい私は答弁をいただいたと思います。大変忙しい日程だということはわかりますけれども、ぜひ今宮城参考人からのいろいろなお話なども含めて、実のある安全報告制度というものを確立するために、大臣ならやってもらえるんじゃないかという私は思いもあってきょうはこういったような提言も含めての質問に立ったわけでございますので、これは私個人ということじゃなくて、先ほどもお話がありましたが利用者が延べ六千万人、日本国民の二分の一ですね、延べではありますけれども。二分の一者が利用しているということになれば、まさに非常に国民的な課題ではないかというふうに思っております。  これは今参考人のお話の中にもありましたけれども、先端技術産業、巨大システムにこの種の問題は共通の課題だと。そういった意味では公共の利益あるいは国民の福祉であるというふうに私も考えますが、これは運輸省が航空の問題は主体でありますけれども、こういったような巨大システム、例えば先ほどお話がありましたが原発の問題だとかあるいはこれから先端技術産業でいろいろなことが出てくるのではないでしょうか。そういった意味では内閣としてもこれは取り組まなければならない問題ではないかというふうに思います。  官房長官おいでですので官房長官のちょっとお話もお聞きしたいというふうに思います。
  256. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 先ほど来参考人の御意見を聞いておりまして、確かに航空機事故それから同時に原子力発電所あたりの事故あるいは先端産業、これから巨大なそういった大きな事故が発生するおそれが多分にある。そのときにアクシデントに至らざる前の段階で防止をするためには、小さな何といいますかインシデントというのですか、細かな積み重ねがもうたくさんあるわけですね。それを役所なんかのような従来のような組織の中では本当の姿が出てこないから対応策がとれませんよと、そこを考えなさいという御意見のように拝聴したのですが、間違いないでしょう、恐らく。  私も実は原子力事故でスリーマイル島の事故は直後に視察に参りました。確かにヒューマンファクター、小さな積み重ねですね、そういうようなことですから、やはり先ほど運輸大臣が御答弁なさったように、これは世界各国も今恐らくこういう問題については検討を進められておるんじゃないかと思いますが、そこらの検討結果も見ながら果たしてこれをどのような組織として組み入れていくかということは勉強、検討の課題としてひとつ今日の段階では受けとめさせていただきたいと、かように思います。
  257. 菅野久光

    ○菅野久光君 私もこの問題を、宮城さんの研究の成果を私なりに受けとめて、私のまた課題にもこれからしていきたいというふうに思っておりますので、ひとつよろしくお願い申し上げたいというふうに思います。宮城参考人、本当にお忙しい中ありがとうございます。  次に、ちょっと時間がございますので、自衛隊のニアミスの問題についてお尋ねをいたしたいと思います。八月十一日の高知の土佐湾沖合いで起きました全日空機と海上自衛隊機のニアミス、八月十九日の千歳上空の同じく全日空機と自衛隊機のニアミスについて調査経過ですね、これをひとつ明らかにしてもらいたいというふうに思います。時間もございませんので簡単にお願いいたします。
  258. 山田隆英

    説明員(山田隆英君) 高知沖及び千歳の二つのニアミス報告の件についての調査経過でございますけれども、このような短期間に二度の異常接近報告を受けまして、私どもの航空局にございます安全監察官という組織のもとで目下鋭意調査を進めておるところでございます。  まず高知沖の事案について申し上げますと、それぞれの関係者からの事情聴取を行いまして、それに基づきまして八月の二十八日に中間発表を行いました。それまでの調査の結果知り得た事実から航空交通安全確保に必要な措置ということで、私どもから防衛庁に対して申し入れを二点行いました。その第一点が「自衛隊機の訓練・試験飛行は、訓練・試験空域内において行うこと。」、それから第二点が「自衛隊機が訓練・試験飛行を行う場合は、防衛庁は、常時、レーダー及び対空通信により当該機を監視すること。」、この二点について厳格に遵守していただきたいという申し入れを同日付で行ったわけでございます。  それから千歳の事案につきましては、現地に赴きまして自衛隊の関係者それから全日空の関係者等から事情聴取を行っておりますが、さらに千歳の管制隊システムの担当者につきましてはレーダー機器の作動状況等につきましても事情聴取を行ったところでございます。それからさらにこれまでの事情聴取からは関係者の説明の中にそごがございますので、さらにそれを詰めるために二回目の事情聴取を最近行ったところでございまして、今後とも全力を挙げて両事案の解明を急ぐように努めてまいりたいということで、最終的に十月の中旬には結論を出したいということを目標にいたしまして現在調査中でございます。
  259. 菅野久光

    ○菅野久光君 空の上のことですから随分調査に時間がかかっているようでありますが、しかしニアミスについて自衛隊側が発表しているのと民間機の方が発表しているのとでは相当な差がある。これは空ですから差があることは私はやむを得ないと思うんですが、余りにも差があり過ぎるのではないかというふうに思わざるを得ないんですね。しかも、この間の高知の土佐沖の場合には訓練空域を逸脱しているにもかかわらず、逸脱してないような発表、それから千歳の場合もニアミスはないというふうに断言をしているというんです。ですから国民の側では、自衛隊機と民間機がニアミスがあったときに、その日に発表した自衛隊側の責任者の発言は次の日になったら必ず変わるぞと、こういうふうにみんな思っているんですよ、今。だから、またもうそつき自衛隊、なんという声が出てくる。これは先ほど宮城参考人のお話の中にも、事実に対して謙虚でなければならない。それは、その時点でそうは思っても、事実認識あるいは実態が違う。レーダーなんというものが今あるわけですから、あるところはずっとわかるわけですね。そういう事実認識の問題について全く国民をばかにしているというんでしょうかね、自衛隊のやっていることは間違いがないんだと言わんばかりのそういう責任者発表のあり方、これについては防衛庁長官としてどのようにお考えですか。
  260. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 私は、自衛隊に対して厳しく自己を見つめなきゃならぬということを常日ごろ言っておるんです。今回のこの事件につきましては、私自身も本当に謙虚に反省すべきことは反省せよと強く言っております。自衛隊というのは国民の生命を維持する、これが大きな使命でございますから、その自衛隊がいやしくもおごり高ぶっておるということのないようにいたしたい、こう考えております。
  261. 菅野久光

    ○菅野久光君 今の長官の御発言は、それは国民を納得させる発言だというふうに私も思いますが、しかし現場で実際にやっている人たちはどうも最近おかしいんじゃないかというふうに思わざるを得ません。  これは私が直接調べたわけではありませんから、又聞きですから正確には申し上げられませんけれども、いろいろな社会には例えば学閥だとか何閥だとかということがありますね。自衛隊の中にも制服組というのと、それから文官でしょうか、何と言うのか私は名前わかりませんが、そういうところの間にちょっと、何というんでしょうかね、意識の違いといいますか、そういうものが私はあるのではないかというふうに思わざるを得ないような話を、これは先ほど言いましたように私が確かめたんじゃないですから、又聞きですから、こんなことがあってはいかぬというふうな思いでちょっと言うんですがね。文官ですかな、文官の言うことには制服は拘束されないというような発言をしたやに私は聞いているんです、あることでですよ。もしもそういうような発言をした者がいたとすればどうなさいますか。
  262. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 文官と制服というものの対峙、これは自衛隊の統括責任者防衛庁長官なんです。いわゆる背広組はそれを補佐するわけでございますから、そういう意味合いで補佐の任務を全うしなきゃならぬと思っております。いろいろございますけれども、私は言っているんです、仲間意識でなあなあになっちゃいけないと。これは何もぎゅうぎゅう締めつけて士気を阻喪させる、そういうことはよくない、士気はどこまでもこれは起こさなきゃならぬけれども、同時に自分みずから厳しく反省をする、そういう意識だけは持たにゃならぬ、こういうのは、人間社会でございますから、神様、仏様じゃございませんから、その都度その都度これは強く指導しなきゃならぬ、こう考えております。
  263. 菅野久光

    ○菅野久光君 本当に強く指導をしてください。そうでなければかつての関東軍のようなことになりかねない、私はそういう言葉の中から感ぜざるを得ないわけです。いや、本当にそうですよ。首を振っておられますけれども、何かそういうような雰囲気を感じないわけにいかないような私は二つ、三つの事象にぶつかっているわけです。本当に手を振るような、そういうだれもがそんなことはあり得ないというようなこと、仮にそういうことを口にした者がいたら、シビリアンコントロールの関係からきっちりした処分をしなきゃならぬということは、これは私が申し上げるまでもないことだというふうに思います。  昭和五十九年度の決算で警告決議が行われたばかりなのに、今度のようなニアミスの問題がしかも何日も日を置かないで繰り返し発生していることは残念でありますが、警告決議について防衛庁がどのように厳粛に受けとめているのか、そこをお聞きして私の質問を終わりたいと思います。
  264. 長谷川宏

    説明員(長谷川宏君) お答えいたします。  御決議で例示されたものを含めまして、発生いたしました個々の事項につきましては、その原因を究明しながら再発防止策の徹底を期しております。  例えば六十一年の九月二日、T2の墜落事故、これは新田原で起こったものでありますが、これを皮切りに連続して事故が起こったわけでありますが、これにつきましては、例えばアフターバーナーの燃料片減りの是正手順を改善するというふうなこととか、異常な燃焼をする場合のエンジンの特性を再教育するとか、それからまた御決議にも書いてございますが、六十一年九月四日に百里基地で起こりましたミサイル不時作動、これにつきましては絶縁抵抗試験により品質が確認されたアンビリカルケーブルを使用するとか、そういうふうな措置を決めております。また六十二年三月九日に起こりました陸上自衛隊の上富良野演習場におきます演習場外の砲弾落下事故につきましても、第一特科団長の通達あるいは陸幕長の通達によりまして安全対策を指示しております。また最近ではことしの三月のF15の百里での事故あるいは四月十日の三沢でのF1の事故につきまして、それぞれ対策を講じておるところでございます。
  265. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 以上で昭和六十年度決算外二件の全般的質疑は終了いたしました。  次回の委員会は十月十五日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時八分散会