○
説明員(
谷野作太郎君) それでは、私、
外務省の
アジア局で
審議官をいたしております
谷野でございますが、御
要請によりまして
東アジアにおける
緊張緩和の
問題並びに、
軍縮軍備管理の問題についてお時間をいただいて御
説明申し上げたいと思います。
まず、
東アジアということでございますが、通常私
ども念頭に置きますのは、
日本は別といたしまして、
中国、
朝鮮半島、
台湾、
香港、そしていわゆる
ビルマ以東の
東南アジア、そして
ソ連の
シベリア地方、モンゴル、大体こういった
国々あるいは
地域を
念頭に置きまして、以下の
お話を進めさしていただきたいと存じます。
簡単な
説明の骨子をお
手元に配付してございますので、それに目をお通しいただきながら
お話をしたいと思います。
まず、
アジアの
お話をいたします前に、若干
アジアとの対比におきまして
ヨーロッパの問題について冒頭
お話ししたいと思いますが、諸
先生も昨今の
新聞等で
御存じのように、
INFの問題を
中心に
米ソの間の
核軍縮の
交渉、これは一定の
進展を見せておることは御
承知のとおりでございまして、特に
INFの協定につきましては
早期妥結の
可能性が高まってきておるわけでございます。翻ってみまするに、
欧州におきましては六〇年代の末からいわゆる
欧州安全保障協力会議の
動きを
中心といたします
信頼醸成措置、あるいはいわゆる中欧の
相互均衡兵力の
削減交渉の問題、これを
中心といたしまして
通常兵器の
軍縮への
動きが定着しております。そして、
アメリカと
ソ連との間の
核軍縮の
交渉の
動きと並行いたしまして、これに刺激される形で
欧州での
軍縮・
軍備管理への
動きが強まってきておるわけでございます。そしてこのような
欧州の
動きは、
一つには
欧州におきまするいわゆる領土問題が基本的に
解決しておるという
現実、そして
二つ目にはNATOあるいは
ワルソー条約という
軍事ブロックの間の
対峙の
図式がはっきりしておるということ、そういった
理由を
背景にいたしまして以上申し上げたようなことが可能になったと考えられます。
これに対しまして、本日の
主題でございます
アジア・
太平洋の
地域におきましては、
一つには
我が国の北方領土問題を初めといたしまして未
解決の領土問題が実は各地に
存在しておるという
現実がございます。そして第二には、
軍事ブロックの間の
対峙といった
図式は以上御
説明しました
ヨーロッパほど実は明確ではないということ。そして、特に
中国という
アメリカあるいは
ソ連から離れた
自主独立の大きな国が
アジアには
存在するという事実がございます。そして第三点は、
朝鮮半島あるいは
カンボジア、そしてアフガン、こういった未
解決の
地域紛争を
アジアにおいては抱え込んでおるという事実がございまして、そういうことによりまして
軍縮あるいは
軍備管理といったことについての条件というものが
ヨーロッパに比べまして著しく未成熟な
状況にあるということを申し上げたいと思います。したがいまして、この
地域の
軍縮・
軍備管理を論ずるに当たりましては、まずこの
地域の
緊張緩和、紛争の
解決ということが私
どもは大前提と考えておりまして、そういう
意味から、
我が国といたしましても、
政治、
経済あるいは
経済協力といった
外交面に
努力を集中していくということが何よりも当面重要であるということが
政府の私
どもの
認識でございます。
以上申し上げましたような基本的な
認識に立ちまして、以下、
東アジアの
情勢を検討し、あるいはまたさらに、
アジアの平和あるいは
アジアの安定に向けての
日本の
役割というものを御
説明してみたいと存じます。
まず、
東アジアの
情勢について
お話をしてみたいと存じます。
概観いたしまするに、諸
先生も
御存じのとおり、
東アジアにはいわば
安定材料と申しますか、
緊張緩和への
動き、
要因が一方であります。
他方、しかしながら
不安定要素といいますか、
不安定材料、引き続き
緊張が持続しておるという
地域もございます。
そこでまず、前半の
安定材料ということについて
幾つかのポイントを
お話ししてみたいと思いますが、まず第一点は、お
手元にもございますが。何といっても
中国の近年における
経済建設を重視した
路線、そこから来まするいわば穏健な、
現実的な
外交といいますか、
対外路線というものがございます。
中国は、御
承知のとおり七八年十二月の
党大会、党の
中央委員会がございましたけれ
ども、そこで
鄧小平主任の
指導のもとで、
国内建設を最重点といたしましたいわゆる
近代化政策というものを着実に遂行いたしております。そしてその結果、
国民の
生活水準も着実に向上しつつあるわけでございます。そして、そういった近年における
中国の
近代化路線のもとにおきまして
日本と
中国の
関係、あるいは
アメリカと
中国の
関係、
ヨーロッパと
中国の
関係が着実に
進展しておるわけでございますが、
日中関係あるいは
米中関係のこういった
進展というものが言うまでもなく
東アジア地域の安定に大きく寄与するものである、これは御異論のないところだと思いますが、そういった
関係の
進展というものも、
中国の側におきまするこのような
変化を
背景としてこそ私
どもは初めて可能であったのであろうと考えます。
次に、
安定要因の第二の点といたしまして、いわゆる
アジアにおける
巷間NICSと言っておりますけれ
ども、
新興工業国あるいは
新興地域といったものの出現がございます。具体的には
韓国であり、シンガポールであり、あるいは
台湾であり、
香港でございますが、人によってはこれを
アジアにおける小さな四つの上りもというような表現をする人もございますけれ
ども、いずれにいたしましても、こういった
アジアの
NICSが六十年代以降
先進国に比して非常に高い
経済成長率を達成してまいりました。そして近時におきます
世界経済の低迷のもとで、八五年には若干
成長率は鈍化いたしましたけれ
ども、八六年に至りまして円高あるいは
石油価格の低下、そして国際的な低金利の
状況のもとで
輸出増をてこといたしまして再び非常に大きな高
成長の
状態を回復しております。
アジアの
NICSの
世界経済、貿易に占める
重要性ということが非常に増大しておるということにつきましては論をまたないわけでございますけれ
ども、こういった
諸国、
地域の今後のさらに大きなこの面での
役割が期待されるわけでございます。またさらに、この
アジアのNICにに加えまして、最近特にタイの
経済が非常に好調であるという事実がございまして、これも非常に明るい
材料と言えると思います。
他方、
不安定材料の
幾つかを考えてみますと、やはり第一は、よく指摘されるところでありますけれ
ども、
ソ連の軍事的な
増強というものがございます。
ソ連は、諸
先生も
御存じのように一九六〇年代の中期から
極東の
地域に
存在するすべてのいわば軍事的な分野におきまして顕著な
増強、
近代化に着手してまいりました。その
背景には中
ソ対立といったようなこと、あるいはオホーツク海の戦略的な
重要性の増大といったようなこと、あるいは
シベリア開発の
進展といったようなことがよく指摘されるところでございまして、いずれにいたしましても近年におきます
ソ連の
極東における
軍事力の顕著な例といたしまして、例えば今や千七百基前後になったと言われますSS20の配備、あるいは
ソ連太平洋艦隊の
増強、
航空兵力の
近代化、あるいは北方領土への
師団規模の
地上軍隊、あるいは
ミグ23約四十機と言われておりますけれ
ども、こういったものの展開、そして
最後に一九七九年から
ベトナムにおきまして軍事的なプレゼンスを維持してきておるということ、こういったことがよく指摘されるところでございます。
第二点は、昨今、
日本の新聞にもよく報道されます
朝鮮半島の
情勢でございます。
朝鮮半島におきましては、申すまでもなく
南北が非常に厳しい
状況で
対峙しておるわけでございまして、そういった
緊張した
状態というものは依然として継続しておるという
状態でございます。こういった中で、
委員各位も御
承知のように、明年
韓国におきましては二月に
政権の交代を迎えます。そして九月には
オリンピックの
大会が来るということでございまして、
朝鮮半島の
情勢は非常に重要な局面を迎えておるわけでございます。最近に至りまして、昨年の一月以来中断されておりましたいわゆる
南北間の
対話に関して若干の
動きも見られましたけれ
ども、現在はいわば再び膠着した
状況に立ち戻っております。非常に遺憾なことであると考えておりますが、それとともに
朝鮮半島の問題でよく指摘されますのは、やはり近年におきまする
ソ連と
北朝鮮の間の
軍事協力の
進展、よく
ミグ23の供与の例が引かれますけれ
ども、こういった
軍事協力の
進展がまた注目されるところでございまして、
西側はもとより
中国といった国も実はこの点について注目し心配もしておるというふうに
承知いたしております。
第三点は、
カンボジアの
情勢でございます。
インドシナにおきましては、七八年に
ベトナムが
カンボジアに大量の
軍隊を進駐させるという事態が起こりました。自来九年目に入りますけれ
ども、
カンボジアの問題は依然として
トンネルが見えない未
解決の
状況が続いておりまして、これまた
東南アジアの平和と安定というものを考えます場合に、大きな脅威となっておるわけでございます。最近も
幾つかの
動きがございましたけれ
ども、軍事的にも
政治的にも
解決のめどが立っておらないという
状況であろうかと思います。
そして、
不安材料の
最後にやはり
フィリピンの
状況というものを挙げなければいけないと思います。
確かに
アキノ政権成立以来一年半になりますが、この間、右あるいは右からのいろいろな
政治勢力から挑戦を受けながら、
国民の
アキノ大統領に対する圧倒的な支持を
背景にいたしまして新しい憲法をつくり、そして議会の選挙におきましても圧倒的な与党の勝利ということで、それなりの
政治的な体制の
枠組みづくりに成果をおさめてきたわけでございます。しかしそのやさきで、御
記憶のように、先日も
フィリピンの一部の
国軍筋によるかなり大がかりな
クーデター、結局未遂に終わりましたけれ
ども、
クーデターの
未遂事件というものが発生いたしました。今後対外的な債務の問題あるいは失業の問題をどうするかという問題、それから
アキノさん自身が非常に御熱心であると言われます
農地改革の問題、いろいろ
政治、
経済、社会問題、課題は山積しておるわけでございまして、こういった問題に有効な手を打って
一つ一つ着実に問題を
解決していくということが望まれるわけでございます。
フィリピンとの
関係でもう
一つよく話題になりますのは、例の
フィリピンにあります
米軍の
基地の
存在でございまして、これが存続することが
アジア・
太平洋地域の平和と安全の見地から重要というふうに考えられるわけでございますけれ
ども、
他方、九二年に至りますと
米比基地協定というものが期限切れの
状況を迎えます。そして、この
基地を存続させるか否かということについていろいろ
フィリピンの中でも
議論がございましたことは実は各
委員も
御存じのとおりでございまして、
アメリカ等は、かつ
アメリカのみならずほかの
周辺の
アジア諸国もその成り行きに非常に大きな
関心を持っておるということでございます。
以上申し上げましたように、安定的な
材料それに対しまするに
不安定材料、
緊張緩和へ向かう
動き、それに対しまするに
緊張が依然厳しく持続しておる、こういった二つの
状況が激しく交錯しておるというのが今日の
東アジアの実態、姿であろうかと存じます。そして、今さら改めて申し上げるをでもないことでございますけれ
ども、実はこの点も私は
ヨーロッパと非常に違うところだと存じまするが、
アジアにおきましては
政治はもとより
社会体制を非常に異にした
国々、歴史的にも社会的にも、そして文化的にも宗教的にもいろいろ
背景を異にした
国々が混在しておる、これがまた
アジアでございます。
しかりとすれば、
我が国といたしましては、
東アジアに対する
外交というものは、そういった
東アジア地域の持ちまする
多様性といったものをやはり十分に
念頭に置いて、
一つ一つ細かい手の行き届いた
外交を展開していかなければいけないということが第一点に挙げられると思います。そして何よりも、以上申し上げました不安定な
材料、
緊張の
要因は早さに及んでその芽を摘み取るという
努力、そして
他方安定材料、
緊張緩和の
要因はできるだけこれを拡大していく、育てていくということが我々が
努力すべき
方向でなかろうかと存じております。
さて、以上申し上げた
幾つかの点で、特に
委員各位に御
関心があろうかと思います
朝鮮半島の問題、
カンボジアの問題、そして
中国の問題についていま少し詳しく
お話ししてみたいと存じます。
まず、
朝鮮半島の問題でございますけれ
ども、いわゆる
南北の
対話、これは一九七三年の
赤十字本
会談そして
南北の
調節委員会会談というのがございましたけれ
ども、これを
最後に
金大中事件が起こりましたり、例の
ラングーン事件が起こりましたりいたしまして、本格的な
会談はその後行われておりませんでした。しかしながら、その後、御
記憶だと思いますけれ
ども、八四年の九月に
韓国は大変大きな水害の被害をこうむりまして、これを契機といたしまして
北朝鮮の方から
救援物資の提供をしてもいいという
動きがございました。
韓国側もこれを受けるということで、
南北の
対話の機運が急速に高まりまして、八五年に入りまして
赤十字会談あるいは
経済を
主題とする
経済会談あるいは国会の間の
会談、これは
予備会談でございましたけれ
ども、そういったものが開かれ、また
スポーツの面でも
オリンピック等との
関係で
IOCの仲介によります
スポーツ会談というものが開催されました。私
どもはこれが順調に
進展することを期待して見守っておったわけでございますけれ
ども、八六年に至りまして
北朝鮮は、例の
米韓両軍の
合同演習、チームスピリットを
理由に
対話を一方的に延期するという
措置をとりました。そして現在は、
御存じのように
オリンピックとの
関係で
スポーツ会談というものが
スイスで細々と続いておりますけれ
ども、それ以外の
会談、
対話というものは一切中断された
状況でございます。
そういう
背景で、
南北の
双方の間から
対話の再開に向けまして実はいろいろな
提案も出されておりまして、詳細な御
説明は省きますけれ
ども、軍事問題の
会談をやろうとか、あるいは
兵力削減の
会談をやろうとか、あるいはそういったものも含めて幅広い
外相会談をやろうとか、いろいろな
提案が行き交っております。先日も、社会党の田辺前
書記長が
北朝鮮御訪問中に、御
記憶のように北側から
兵力削減に向けての大きな
提案が投げかけられたということもございました。
ただし、
南北のこういった
提案を子細に検討いたしてみますと、私
どもはこういう感じを持っております。北の方はどうもやはり軍事問題に焦点を絞って、なかんずく
朝鮮半島からの
米軍の
撤退というものに大きな
関心が向けられておるやに見受けられます。
他方南の方は、そこに至るまでの
南北間の
信頼の回復であり、
信頼の
醸成であり、そしてそのためには、まずは
南北で国連に同時に入ろうではないか、あるいは
南北それぞれ
周辺の
諸国に承認してもらう、いわゆる
クロス承認と申しますが、そういったより幅広い
信頼醸成のための
措置というものがとりあえずの当面の
関心事のように見受けられます。北はこれに対しまして、そういったことこそ
南北の朝鮮といいますか、
朝鮮半島の分断につながるものと言って非常に反対しておるわけですけれ
ども、いずれにいたしましても南と北の思惑といいますか、考え方といいますか、
立場といいますか、依然大きな
隔たりがあるということでございまして、なかなか
トンネルの先が見えてこないということでございます。
朝鮮半島の問題といいますのは、もちろん
国会等でもいろいろ御
議論がありまして、
政府からも御答弁申し上げておりますけれ
ども、やはり第一義的には
南北の両当事者の直接の
対話によって平和的に
解決されなければならないということが
我が国政府の基本的な
立場でございます。そしてそういう観点から、
政府といたしましてもできるだけ早い機会に
意味ある
対話が再開されるということを強く期待しておるわけでございまして、またその
環境づくりのために必要とあれば、
要請を受けて
関係国と緊密に
協力しながら、できることがあれば
日本としても積極的に貢献していきたいというのが
政府の
立場でございます。
さて次に、
北朝鮮の
相互兵力削減の
提案がございましたが、これは細かい内容は御質問に答える形でお答えすることにいたしたいと思いますが、要するに
南北の
兵力を段階的に
削減しておく、そしてやはり行く行くは
米軍の
朝鮮半島からの
撤退ということを眼目にいたしております。これに対しまして
韓国の方は、
南北の
外相会談というものを
提案いたしまして、先ほど申し上げましたように、国連の
同時加盟とか
クロス承認とか、そういう幅広いものを取り上げようということを言っておりまして、これが
韓国の現在の
立場でございます。
さて、そういうことで
双方の非常に大きな
隔たりがあるわけでございますが、
他方そういう
状況で、間違いなく実は来年の九月
ソウル・
オリンピックというものが迫ってくるわけでございます。これを一体どういうふう値しのぐか、どういうふうに
成功裏にこれを開催するかということに
関心が持たれるわけでございますけれ
ども、
オリンピックをめぐりましては、
ソウル・
オリンピックの
南北による共催を主張しております
北朝鮮の
立場に対しまして、それに反対いたします
韓国の
立場、この間で大きく妥協の見通しが立たないまま今日に至っております。これも細かい内容に立ち至るのは差し控えますけれ
ども、本年の四月に第四回の
会談というものが
スイスにおいて
南北間で持たれましたが、
IOCの
調停案として出しました種目の数、
北朝鮮で開催する種目の数を
IOCは
一つの
調停案を出したわけでございますけれ
ども、
北朝鮮はこれを不満といたしまして新たな
反対提案をいたしました。しかしながら、これに対しまして
IOCの方は今度は
北朝鮮の
提案を拒否するということで、これもまた合意に至っておりません。
そういうことで、
南北間の話し合いあるいは
東側諸国の
参加の問題につきましては、いろいろ今後も
動きがあろうかと思いますけれ
ども、これも
我が国といたしましては、八八年の
ソウル・
オリンピックが
政治体制あるいはイデオロギーを超越いたしまして世界のすべての国家の
参加のもとに
成功裏に開催されるということが強く期待されるわけでございまして、
政府といたしましてもこの
大会の成功のためにできる限りの
協力を惜しまない所存でございます。明年の
オリンピックが
中国、
ソ連、
東欧諸国はもとより、できれば
北朝鮮の
参加を得て開催にこぎつけるということができますれば、これは単に
スポーツの祭典ということのみならず、いわば
一大国際政治ページェントといいますか、行事になるわけでございまして、これが
朝鮮半島の
緊張緩和の大きな転機にもつながり得るということで、この
ソウル・
オリンピックの成功というものが強く期待されるわけでございます。
次に、
カンボジアの
情勢でございますけれ
ども、これも後ほどの御質問にお答えする形で御
関心の向きには詳しく
お話ししたいと思いますけれ
ども、要するに
民主カンボジアの側の
提案と、そしてこれに対する
ベトナムの
提案というものが行き交っておりまして、結局これもまた先がなかなか見えないという
状況が続いておりまして、冒頭申し上げましたように、この
インドシナにおける
緊張緩和の存続ということが
東南アジアの平和と安定のために
一つの大きな
不安定要因になっておるということでございます。
カンボジアの問題につきましては、御
承知のように
ベトナム軍十四万人とも十七万人とも言われますけれ
ども、これの
カンボジアからの
撤退、そして
カンボジア人の
民族自決の精神を柱といたしますいわば包括的な
政治解決が不可欠であろうと思います。
我が国といたしましても、
立場を同じくいたします
ASEAN諸国の
政治解決を目指すそういった
努力に
協力もし、これを支持していくという
立場でございまして、
他方ベトナムとは引き続き
日本政府としては
対話を維持して問題の
解決の
環境づくりに努めていきたいというふうに考えております。
さて、
最後に
中国情勢でございますけれ
ども、冒頭御
説明いたしましたように、現在
中国では
経済建設路線、
経済建設を重視する
路線というものが
鄧小平さんの
指導のもとに展開されております。先ほど申し上げましたように、こういった
経済の
建設というものを国の最高の施策、目標として据えまして、諸外国との交流も活発に進める、穏健な
路線を歩む
中国、こういったものの
存在は
アジアの平和と安定にとって極めて私
どもは大きな
意味を持つものと考えております。
既に述べたところでございますけれ
ども、
日本と
中国の
関係あるいは
米中関係の
進展があるわけでございます。かつまた、そういったことが
東アジアの平和と安定に大きく寄与しておるわけでございますけれ
ども、こういった
アメリカあるいは
日本との
関係の
進展ということも
中国側における好ましい
変化があって初めて可能であったわけでございまして、今後とも
我が国を初めとする
西側の対
中外交も、できる限りそういった
中国側の現在の
近代化路線というものを支援し、これに
協力していくという
方向で
努力を展開すべきものと考えます。
そういう
中国で、本日の
主題は
軍備管理・
軍縮ということでございますが、百万人の
軍隊を適宜縮小するという大胆な
措置がございました。この
削減によりまして、現在、
中国人民解放軍は四百二十万人から約三百二十万人程度になったものと見られております。そのねらいは
軍備費の
削減によります
国家建設の強化、あるいは大量の復員兵を
経済建設に向け得るというようなこと、あるいは
軍隊の精鋭化による戦闘力の強化というようなこと、そして平和
中国というもののイメージアップというそういったことが
背景にあったのではないかと見られております。
中国との
関係で若干中ソ
関係について
お話しいたしますと、
中国と
ソ連との間には、依然としていわゆる
中国が出しております三つの障害というものがございます。中ソ国境地帯に展開された
ソ連軍の
存在、そして第二点は、
ベトナムに対する
ソ連の支援、そういったことを
中国側は非常に問題にしておりまして、それについての日に見える改善がなければ中ソ
関係の基本的な良好な
関係への回復というものはないということを
中国側は言っております。第三点は、言うまでもなくアフガニスタンにおける
ソ連軍の
存在でございます。
しかしながら、さはさりながら、最近は中ソ間で実務的な
会談も始まっておりまして、若干そういう
背景を受けまして留学生の交換も進み、貿易も伸びておるようでございまして、両国のこういった
関係の改善というものが今後ともある程度進むと思います。決して五〇年代の、御
記憶のような戦略的な
関係に中ソが復帰するというのはなかなか難しいと思いますけれ
ども、ある程度の改善は引き続き進むであろうと見られておりまして、こういった中ソ
関係の改善というものは、やはり
東アジアの
緊張緩和というものに非常に大きく寄与するわけでございまして、
我が国としても基本的に歓迎すべきものであろうかと思います。
さて
最後に、そういうことを申し上げた上で、しからば
日本といたしまして
アジアの平和と安定のためにどういう
役割があろうかということを簡単に御
説明したいと思います。
まず、
アジアの平和と安定ということを考えます場合に、やはり何といっても軍事面とそしてそれと同様重要な非軍事面の問題があろうか思いますが、まず軍事面の問題について
お話しいたしますと、
アメリカは七〇年代前半において
ベトナムから御
記憶のように軍事的に撤兵いたしました。そして、以後七〇年代末ごろまでは米国の国防
努力は
ソ連とは対照的に、実は抑制されたものであったと思います。しかしながら、近年、例のデタントというものを十分に利用し切った形で
ソ連の
軍事力の強化というものがございました。そういうものに対応いたしまして、
アメリカもこの
地域における抑止力の
信頼性の維持強化に努めておる
状況でございます。
東アジアの
諸国が何をもっていわゆるその
国々への脅威というふうに観念するか、そしてその上に立って各国がこの安全保障政策の根幹にどういうことを据えるかということは、もちろんその国国によって少しずつ異なるところでございます。しかしながら、近年におきます
ソ連のこの
地域における軍事的な進出というものは、もちろん一部の社会主義
諸国は別でございますけれ
ども、インドネシアあるいはマレーシアといった、いわば非同盟の中立
路線を標榜する
国々にとっても無
関心ではあり得ないところでございまして、これに対する有効な抑止力としてこの
地域におるけ
アメリカの軍事的な
存在というものは引き続き期待する気持ちが強いように見受けられます。
そして
他方、冒頭申し上げましたように、
アジアの平和と安定、こういったものは以上申し上げました軍事的な面だけには実は限られないわけでございまして、それにはそのほかに
政治の問題、
経済的な問題というものがございます。
東アジアの
諸国が当面しておりますいろいろな脅威、チャレンジ、挑戦というものは、ひとり
ソ連からの軍事的な脅威のみではないということもまた明らかでございまして、それらは実は貧困の問題であり、あるいは国によっては
国民の統合の問題であり、そして
政治的、社会的な安定の問題でございます。そしてまた民主化の問題でございます。そういうふうに
政治、
経済、社会万般にわたるわけでございまして、こういった多様な問題に的確に対処し得てこそ、初めてこれらの
諸国はみずからの強さを高めまして外からの脅威に有効に対処できるというふうに思いますし、また、実はそこに
日本に期待される
役割というものがあろうかと思います。
そこで、まず
政治の面でございますけれ
ども、これはいろいろな
日本の
政治的な
役割というのはございましょうけれ
ども、ごく例示的に申し上げますと、
一つは
新聞等にも報道されました
中国と
韓国との間の
関係の改善といいますか、
進展といいますか、そういうものを
日本としても
韓国等の
要請を受けてある程度お手伝いできるのではないかということがございます。事実、中曽根総理御自身も、八六年十一月に
中国にいらっしゃいましたときに、そういった
中国との
関係の
進展を望む
韓国側の気持ちというものを
中国側にお伝えになったようなことがございました。
第二点は、何といってもやはり私
どもは安定した良好な
日中関係の
存在というものがあろうかと思います。それに向けての
日本の
努力というものがあろうかと思います。本年はたまたま日中の国交正常化十五周年でございますが、十五年間
日中関係は間違いなく着実に発展してきたと思います。貿易面、
経済協力の雨その他の面で大きく発展してまいりました。人的な交流も非常に盛んでございます。最近に至りまして、
委員各位にも御心配をいただいております
幾つかの問題がありますけれ
ども、さはさりながら、基本的には私
どもは
日中関係は良好な安定した
関係を維持し得ておるものと思います。
そして、こういった安定した良好な
日中関係の
存在というものが、
アジアひいては世界の平和と安定にとって極めて重要な条件となっておるというのが
日本はもとより
中国の
認識でもあろうかと思います。したがいまして、
我が国といたしましては、今、
中国が進めております
近代化建設への
努力に対しまして引き続き精いっぱいの
協力を行っていく、これがあるべき方針であろうかと思います。
第三点は、
経済問題ではやはり何といいましても
日本の市場の開放、そして
東アジアへの投資を活発にするということであろうかと思います。これら
諸国から
我が国への輸出といった面では、まだまだ
日本がなすべき
措置は多々あるような気がいたしますし、また、これらの
諸国が
日本からより活発な投資というものを期待する気持ちも非常に強いわけでございます。そういったことが非常に引き続き今後とも重要であろうかと思います。
最後に、それに等しく重要なのは、やはりこれらの国に対するいろいろな
意味での
経済協力であろうかと思います。
東アジアは、歴史的にも
政治的にも
経済的にも、そして文化的にも
我が国にとりまして非常に重要な
国々でございますし、しかるがゆえに
日本の援助にとりましては最重点の国でございまして、八六年では実績ベースで何と二国間の
政府の開発援助、
日本が行っております開発援助の約四三%がこれらの
地域に向けられておるということが言われます。ただ、やはり
経済協力の面でもいろいろまだ改善すべき点はあるわけでございまして、そういった面を引き続き
政府としては精いっぱい
努力していかなければいけないと思います。
以上、長々と申し述べましたけれ
ども、やはり
我が国は
東アジアの
国々とともに、いわば平和と繁栄を目指す、あるいは分かち合うよき隣人の
関係というものを構築しなければいけないと思います。
他方、
我が国は間違いなくこの
地域におきましては
経済の面あるいは科学技術の面でぬきんでた
存在、
立場にあるわけでございます。したがいまして、そういう
意味からもこれらの
国々の
日本に対しまする厚い期待というものも大きいわけでございます。
我が国といたしましても、この
地域の平和と繁栄のために今後とも
我が国の国力、そして国情にふさわしいやり方で貢献していかなければいけないと思っております。
委員各位の御
指導、御支援をお願いいたしたいと思います。どうもありがとうございました。