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参考人(高榎堯君) 私、ここのあれにもございますように、毎日
新聞記者として三十数年国際政治というものを担当してまいりました。この三十数年とは一体何だったろうかと、今ちょうど五十五歳で定年になった日に思うのでございます。
私のやってきた仕事というのは、一九五五年ごろの
米ソの水爆実験が始まったころから、六三年に
米ソが突如として部分核実験禁止
条約という
条約、これはだれも予想しなかったんですが、結んだその八年間と、それから一九八〇年ごろからきょうまでの七年間、私はほとんど核の問題にかかり切りになったわけです。そして、私思いますには、
米ソが包括
交渉を始めるに当たって、コミュニケの中に核廃絶という
言葉が正式にうたわれたのを聞いて私
自身が非常に感動した覚えがあります。もちろんこれは
世界の反核連動に対するいろいろな思惑があるんでしょうけれども、それにしても
米ソの外相が
軍縮交渉を始めるときに、長期的に核廃絶を究極の目標にしてということをコミュニケの中でうたう時代がとうとう来たんだなと、非常に強い感銘を受けたわけです。
それから、その後、レーガン大統領の
SDI演説がございました。有名な今でも語りぐさになっていますが、一九八三年の三月です。レーガン大統領はその中で、もう
核兵器を時代おくれにして、まくらを高くして眠れる時代をつくってくれということを訴えたわけです。これにもいろいろ裏はあるんでございましょうけれども、大統領が
核兵器を時代おくれにするなどという
言葉を使ったのは実はこれが初めてでございます。
それから、そのころの
提案を見ますと、ICBMを一万
幾つあるのを六千に、半分に減らす、一体こんな
提案が過去三十何年間の
軍縮交渉の中であったであろうか、これも私の記憶においてはこれが初めてでございます。私の印象は今や二度目の核危機の終わりの初めがとうとう始まった、とうとう来たんだなという感じがするわけです。それ以後の動きというのは非常に早いのでございまして、先ほどからお二方の
参考人がお話しされているように、ことしになってからの動きは物すごく急でございまして、ゼロ
オプションがあっという間にダブルゼロになってしまって、きょうジュネーブの
軍縮会議で米国が正式にこのダブルゼロを受諾する演説をすることになっているというふうに
新聞報道ではなっております。ダブルゼロといいますのは、要するに
ミサイルを全部とけてしまおうということですね、簡単に言いますと。
つまり、
世界の流れは今や
核兵器離れ。これもちょっとあれから外れますけれども、もう
核兵器なんかの問題に構っている時代じゃなくなってしまったんじゃないか。今の
世界に余りにも問題が大き過ぎる、例えば経済問題とか途上国の累積債務とか、あるいは飢餓の問題とか異常気象とか、特に経済が大きいのでございますけれども。ちょっと失礼しました。それで
核兵器の時代を今や終わらせる時代が始まったというふうに私は考えておるわけです。
それで、少し具体的内容に入りますけれども、ここではっきりさせておきたいのは、
軍縮と
軍備管理という
言葉を二つはっきりさしておきたいわけです。よく
新聞なんかでは
軍備管理交渉のことを
軍縮、
軍縮と書く。そうすると
軍縮なんてこれはできっこないよ、こんなものはというふうにすぐなってしまうのですけれども、
軍縮じゃなくて実は
軍備管理なんですね。これは私は
新聞社で随分、三十何年教育したんですが、力及ばずとうとうだめでございまして、
軍備管理という
言葉は、
日本ではマンションなんかが管理というとすぐ飛びついて、管理がいいと高値だって売れるんですけれども、
軍備管理だけは全然売れないわけですね、これはどういうわけでしょうか。それで
軍備管理というのは何かといいますと、要するに双方の軍備を管理し合って
戦争の起こる
可能性を少しでも少なくしようという、ただそれだけの話でございます。ですから、ある場合には
兵器をふやしたり減らしたりいろいろコントロール、調整するわけです。
そして第二度目の核危機、八〇年からの危機で一体何が起こったのかということを一言で申し上げましょう。要するに安定性が失われたわけです。
最初の第一次冷戦のときは、米国の核独占の中で社会主義圏がイデオロギーということでもって、イデオロギーと
核兵器の闘いだったと思うのですけれども、今度はそうじゃなくて
アメリカ、
ソ連ともがテクノロジーの進歩の中で
自分たちの核抑止の体制がぐらついてきたということが基本的な原因で、この点が全然違うと思うのですね、一度目に比べれば。なぜそうかといいますと、簡単に例え話で申し上げます。
西部劇がございますけれども、あの西部劇の決闘の場面を思い浮かべていただければ非常によくおわかりになります。カウボーイがピストルを腰に下げているということは、それ自体それほど大して危険でも何でもないのですが、ただお互いに近づいてきて敵意を持った瞬間というのは、どっちが先に抜くかわからないわけです。先にちょっとでも早く、一秒でも〇・一秒でも早く抜いた方が相手を倒すかもしれない、これが実は核
ミサイル時代の現実でございます。つまり、
アメリカはあれだけ
核兵器を蓄積しながら、
ソ連もあれだけキューバ危機以後
核兵器を蓄積しながら、安心して眠れなくなったというのが八〇年代の危機だと思うのです。それが先ほど申し上げましたレーガン大統領の演説によくあらわれている。つまり、
ソ連の
ミサイルの命中精度がどんどん
向上したために
アメリカの報復力である地上のミニットマン
ミサイルの基地が破壊される、これは実際に破壊されるかどうか知りませんけれども、計算上そうなるわけです。計算上の危険が生じたということはこれは
世界のセントラルバランスにとって大変なことでございます。
それに対して、
ソ連の方はほとんどが大陸間弾道弾を地上に置いていますから同じ危険が生ずる。しかも
ソ連の
ミサイルは大きいですから、
SS18なんというのは
弾頭十個もつけて三十分で飛んでくるんですから、
アメリカの不安感というのは大変なものでございます。
ソ連の方も相当の不安感を持っていた。今どのようにして
アメリカと
ソ連を安心させるかということが基本問題になっております。この問題は残念ながらジュネーブの包括
交渉ではまだ解決の糸口がついていない。ですから基本的に
軍縮時代が始まったということは言えませんし、まだ危険な
状態が続いているわけです。しかし、それに対する終わりの初めが始まったというのはこの
INFでございます。
INFというのは、今申し上げました
状態の
欧州版の小型版でございます。つまり
ソ連が
SS20などという
ミサイルを何かたくさん並べ始めたので、
米ソの核
均衡した中で
西ヨーロッパの安全をどうするのかということになって、
西ヨーロッパが、
西ドイツだったと思いますけれども、特に
SS20というものの危険を一九七七年ごろから非常に強調した。それに対してそのときの
アメリカと
ソ連の
態度というのは実に何か腰の据わらない
態度ですね。
アメリカの方は
自分の方から、それじゃパーシングとか
巡航ミサイルを
ヨーロッパに持っていこうなどというふうに考えたわけじゃなくて、要するにシンボルとして非常に目につきやすい格好のいい
ミサイルを少し持っていこうということで、
巡航ミサイルは当時使い道が全然なかったらしいのですが、持っていこうということになったと思います。それに対して、
パージングⅡなんという新型
ミサイルがあるからひとつ持っていったらどうだというようなことで適当に
ヨーロッパに持っていく、その程度のことだったらしいのです。つまり
ヨーロッパを安心させるためにそういうことをした。
ヨーロッパの方でも、そんなものを実際に使われたら
自分のところが戦場になることは知っていますから、要するに
自分たちの団結とそれからソビエトに対する
防衛の決意を表明するためにああいう
ミサイルを持ってきたというような感じでございます。しかし、それが当時の史上最大と言われる
反核運動を招いたわけです。数百万の人がデモに立ち上がって大変な空前の
核兵器離れ、
核兵器に対する
反対、そして
欧州の中立化傾向が出てきたわけです。要するに
ヨーロッパから
アメリカ、
ソ連の
核兵器はもう出ていってくれと、それが八三年ごろの動きでございます。
ですから、私申しましたようにこの
INFというのは軍事的には何の価値もない
兵器です。要するに格好だけのものだった。
ソ連の方の
SS20も実はこれも格好だけで、余りにも有名になってしまった。
SS20というのは高精度、命中精度がよくて
弾頭が三つついていてすばらしい
兵器だなんて言っていますけれども、最近私が
アメリカの雑誌で読んだところによりますと、
SS20というのはどうも何か中途半端な
兵器らしいのです。もともとICBMをつくろうとして失敗して、上の方の小さい部分だけ取って並べたのが
SS20である、それから大して移動する能力もない、そして命中精度もそうそうリライアビリティーがないと。そして驚くべきことに、最近は大陸間弾道弾が進んでいますから、
ソ連の八五年から
配備し始めた
SS25という新型の大陸間弾道弾があるんですが、これの射程が可変射程になっていまして必ずしも
アメリカに飛んでいくわけじゃなくて、
SS20の目標としている
ヨーロッパの基地を大陸間弾道弾でたたけるようになってしまった。そして
SS25の方が性能がいいものですから
SS20なんて要らなくなってしまったわけです。ですからこんなものをゼロ
オプションで全部とけたって、軍事的にはどうということはないわけです。
アメリカの方もパーシング
ミサイルもそういうことで適当に
ヨーロッパのために持っておくものですから、どけでもどうということはない。
それが証拠に、一九八一年ごろに初期の
米ソ交渉が行われたときに、当時のクビチンスキー代表とニッツ代表が森の中で散歩しながら、その
米ソの緊張が一番高まっている最中にこの二人は、半分か三分の一に減らそうじゃないかということで個人的に合意したという有名な話があります。ですから私は
INF交渉というのは必ず成立すると思います。そしてこれは
米ソ両方の利益になるわけです。
アメリカの方としては、レーガン大統領は世間ではよく軍拡の大統領と言われますけれども、やはり八年務めて米
ソ関係の打開への道を開くということは、
アメリカの大統領にとって最も歴史に残る道であるし、どうしてもこの際
INFだけでも調印したいという気持ちがございましょう、それでリーダーシップを確立したいという気持ちがございましょう。ソビエトの方も例の
改革路線ということで今やロケットなんかに構っちゃおられないわけです。これができなければ、私は
ソ連のことをよく知りませんけれども、ああいう
改革の反動が出てくれば
ソ連の方もまた変わってくる。したがって、
ソ連の
軍縮の
姿勢というものもそういつまで続くかわからない。
ソ連の
軍縮提案というのはすごいのでして、
ゴルバチョフが出てきてから二年ほどの間に勘定をしてみますと二十五
提案をしています。その中には
自分たちの利益をねらった非常にマヌーバーのようなのも多いのですけれども、その中にはまじめなものもある。例えばこの春シュルツ国務長官がソビエトに行ったときに、
ソ連が例のダブルゼロを討ち出してきて短距離の
ミサイルをやめよう生言ったときに、
アメリカの代表団筋の話ですけれども、考えてみればみるほどこんなに西側にとって有利な
提案が一体あろうかというようなことを漏らしておられたように聞いております。結局、さっき私は西部劇の話をしましたけれども、要するに現代では何が問題かというとスタビリティー、いかにして安定を取り戻すか、いかにして安心するかということが問題である。しかし、これは
ソ連の
ゴルバチョフ氏も言っているんですけれども、今の
安全保障というのは片方が片方をおどかしたってだめなんだと。何しろ
核兵器の分量は今、よく冗談で言うのですけれども、六百億人を抹殺できるぐらいの
核兵器がある。地球上の人口は七月十一日に五十億になったばかりですから、六百億というとちょうど十二倍です。これは冗談ですけれども、地球上の人口が十二回破壊できるほどの
核兵器があるということです。
それで、
核兵器の分量というよりも、要するにいかにして安定を保つか。そして、さっき申しましたように
ヨーロッパの場合、
ミサイル、
SS20とかパーシングとかというものが非常に近い距離に置いてありますから飛行時間が十分がそこらしかない。どっちがが先に引き金を引いたら十分後にはどっちかにおっこってしまいます。そうしますと、それがうまく制限されればいいのでしょうけれども、制限されないと、今の核
戦略ではどんどんエスカレートして全面
戦争になってしまうかもしれない。結局、
米ソ間の政治的緊張が
緩和すればこういう
兵器はむしろ有害な
兵器である。軍事的価値がないだけではなくてかえって危険、スタビリティーという観点から、つまり
軍備管理という観点から見て極めて有害な
兵器になってしまう。それが証拠に、第一次冷戦のときも
ソ連に対して
アメリカは
欧州大陸に、当時の古い
ミサイルですけれども、ソーとかそれから中型の大きな
巡航ミサイルを持ち込んでいるわけです。今と同じような形になっているわけです。しかし、それが六三年の部分核停
条約以降徐々に
撤去されてしまったわけです。意味がないし、危険だからです。
それで、核
軍縮の見通してございますけれども、
INF交渉で一番問題になっているのは、さっきも
参考人がおっしゃったように
検証の問題でございます、いかにして
検証するか。しかし、これに対しても
ソ連は今や非常なオープンネスを示しておりまして、以前、戦後の
軍縮交渉の中では立入
査察などという
言葉は全く受けつけなかったんですが、最近は
原則的に受け入れるようになってきている。そのほか最近では人工衛星によるナショナル・テクニカル・ミーンズといって、自国の人工衛星による
検証手段というのが非常に進歩しておりまして、これを使っただけでも相当な
検証ができる。これもちょっと冗談でございますけれども、ある国の人工衛星がある国の上空を飛んでいたということがあるんですね。そのときジュネーブで
アメリカと
ソ連の代表が
交渉していたんですけれども、その人工衛星の写真がそこへ行って、君の国のICBMのサイロのふたがあいているよなんということを言ったというような話があるんです。いや、実は掃除していたんだとかなんとかと。それほどまでに今は写るようになっているわけです。
それで、
検証問題というのは一〇〇%の
検証はできませんので、これに余りこだわりますと
協定は成立しません。しかし、九十何%というようなことでお互いに了解すれば
検証は可能であります。そして、
INF協定ができればそれをもとにして、今度
米ソが一番恐れている相互のICBMを半分に減らすということです。さっきから私は、
INF協定が軍事的には意味が別にないのだと言いましたけれども、政治的意味というのは大変大きいと思います。
米ソがつまり
ミサイルをある地域だけではありますけれども、全部やめるということ。その流れの中でICBMの半減ということになりますと、もちろんICBMを半分に減らしても、さっき言いましたように、地球を何回も破壊するんですから結局同じことですけれども、しかしその政治的なインパクトというのは大変な大きさがあります。
ソ連はしかもその中で大型
ミサイルも減らす用意があるということを言っておりますから、
アメリカの方もうんと安心できるし、
ソ連の方もうんと安心できるようになる。
私はまだ自信はございません。しかし、ここに
一つの演説があります。この演説は「アームズネゴジエーションズウィル ビー タフ ロング」、つまり
軍備管理交渉というのは非常にこれからも厳しいものであろう、そして長引くであろう、しかし
ミサイルの大幅
削減は可能であるということをはっきり言い切っている演説があります。これは一九八六年、去年の十一月十七日、シカゴ。シカゴといいますと、ちょうど原爆が誕生したシカゴ大学のキャンパスで
アメリカのシュルツ国務長官が演説されているわけです。それで、シュルツ国務長官も、問題はスタビリティーということを非常に強調されておられまして、今やスタビリティーがいかに崩れてきたか、それを復元するためにはどうすればよいか、そのための第一歩は
INF削減である、それで、
INFを
削減すれば
欧州のスタビリティーが少し回復する、次いで取りかかるのは長距離
ミサイルの問題であると。
そして、長官はその中で
一つ注目されることを言っているんですけれども、これからの核
戦略というのは一体どういうふうになるんだろうということです。それに対してシュルツ長官がこの中で述べておられるのは、これからは
巡航ミサイルのような
兵器が
中心になるんではないだろうか。
巡航ミサイルというのは、御存じかと思いますけれども、何か羽が生えて、ジェットエンジンがついていて、低空を飛んでいくおもちゃみたいな
兵器です。さっきこういう
兵器は使い物にならないと言ったんですけれども、最近ではエレクトロニクスが進歩している。エレクトロニクスが進んだためにこういう
兵器もかなり有効に使えるようになってきたわけです。こういうものでお互いに抑止力を保てるんではないか。それで、何しろ飛んでいく速度が遅いですから大陸間弾道弾ほど危険はない、しかも遅いですからそれほど先制攻撃の危険もない、だからいいのじゃないかということをおっしゃっておられるんですが、これについてはいろんな
議論があるようです。
今の
米ソの
INF交渉、それから
米ソの大陸間弾道弾
削減の中で
一つだけ欠落しているのが実はこの
巡航ミサイルなんです。航空機に積む
巡航ミサイルは
戦略兵器の中に入っておりますけれども、艦艇に積むあるいは潜水産に積む
巡航ミサイルは
米ソとも排除してしまっている。つまり、これを逆に言いますと、
米ソともそういう艦艇、軍艦に積むような
巡航ミサイルならば、
巡航ミサイルは次の
段階だということ。今のところ増強をすることを認めているわけです。それで
アメリカの方が今、海軍六百隻建艦計画で
巡航ミサイルをどんどんふやしておりますし、
ソ連の方も何か新しいものをどんどんつくっておるようです。どうも今のままでいきますと、ICBMで対立する時代から
巡航ミサイルでもってお互いに抑止力を確保する時代が来るんではないかという見通しが
一つあります。ただし、そうなると言うのじゃありません、それは
一つの見方ですから。
それから、今非常に注目されるのはテクノロジーの進歩です。さっき申し上げましたけれども、八〇年代に入ってからの
米ソの不安定化というのが
ミサイルの命中精度、ペアリング等とかその精度の
向上によってもたらされた。今や技術革新というのは
通常兵器の
分野でもどんどん進んでいるわけです。それが
通常戦力の問題にも
影響してきまして、ことしになってから
アメリカのワインバーガー国防長官は
通常兵器の、ここにも
新聞の切り抜きが二、三あるんですけれども、未来のハイテク
戦略とか
通常戦力の「非核
防衛構想前面に」と、要するに
防衛というものを
核兵器を抜きにして
通常兵器のバランスによってあるいは
通常兵器のハイテクによって確保できないかという考え方がことしになってから極めてはっきり出てきております。
実は私、
欧州にしょっちゅう参るんですけれども、
ヨーロッパでも随分前から出ておりまして、行くたびに新しいテクノロジーを使ってお互いに相手を挑発しないで、
日本で言う昔ありました専守
防衛というやつですね、こっちから
ミサイルで相手を攻撃するんではなくて、向こうから
ミサイルが飛んでくればそれは待ち伏せしてネズミ取りみたいに撃ち落としてしまおう、そんな
防衛構想。しかも、射程の長い
兵器は一切禁止して、それで国境には非常に射程の短い
兵器だけを持っていく、射程の長い
兵器というのは全部とけてしまう、そして非常に先端技術を活用して
防衛をできないかという論議が盛んに行われております。現に
ヨーロッパでも最近、戦術用の
ミサイルを撃墜する
ミサイルの
研究が非常に進んでいるわけです。
それで、今度の
INF交渉につきましても、
INFが
撤去されたら一体
ヨーロッパの力のバランスはどうなるんだということが去年あたりから問題になっております。それについてもいろいろあるんですけれども、今まで
NATOとワルシャワ
条約というのはバランスが崩れていて、ワルシャワ
条約軍が非常に優勢だというようなことを言っておりました。本当にそうかというのがあるんですが、最近のタイム誌なんかを見ますと、確かに全体として見ればワルシャワ
条約軍の方が優勢だけれども、一番重要な中部
欧州の正面にある
兵力というのは、兵員数にしても戦車の数にしてもそんなには変わらない、一応バランスはとれている、しかも西側の方がはるかに
兵器は高度化しているというようなことが書いてあります。
通常兵力の
分野におきましても、例のMBFRという
交渉がもう十三年間長引いて一歩も進展しないのですが、最近になって少しずつお互いに話し合いの土俵ができつつあるような
状態です。
通常兵力の問題というのは必ずしも戦車の数がどうのじゃなくて、お互いの
兵力の構成が一体防御用にできているか、攻撃用にできているかというようなところから
議論しなきゃいけない。最近はそういう
議論もお互いに少しは始められる
状態になってきたというようなことが言われております。
それからもう
一つは、
欧州軍縮会議で、去年でしたか、相互の軍事演習というのを通告するというふうな
協定ができて、これも非常におもしろいのですけれども、結局奇襲攻撃をなくするために相互の軍隊の移動とか演習を事前に通告する、そしてオブザーバーも入れるということで話し合いがついてきている。つまり、
通常兵力を使ってスタビリティーを確保するという動きがどんどん目立ってきているというように思います。私はこういうようなものは極東でも大変
参考になるのではないかと思います。ただ、極東の場合はさっき申しましたように海域が
中心であります。さっき私は
巡航ミサイルの話を申し上げましたけれども、極東は
巡航ミサイルがかなり来るのではないかというような予想があるので、これはちょっと問題だと思いますけれども、それに対してどうするかということです。
もう時間もありませんけれども、私が申し上げたいことは、
核兵器の時代はもうこれでおしまいにしたい。このことを一番よく知っているのは実はホワイトハウスとクレムリンではないかと私は思います。何か最近は西側同盟国、東側同盟国、それから
日本、そういう国の核に対する意識が全くお。くれてしまって、これもしょうがありません、
自分たちがやっているわけじゃありませんから。そしてそういう
米ソが一番核の危険を感じて、そこから何とかして逃れようとしているのが現状である。私たちはできればそれを少し支援してあげたいというふうに思うわけです。
それからもう
一つ、これもちょっときょうのテーマから外れますけれども、我々は核
戦略とか核
軍縮の問題については今やもう完全におくれてしまって、国内にも十分な民間の
研究機関もありませんし、私みたいな個人がこんなところに出てきてしゃべらなきゃならぬ
状態でございますから、それでもおわかりかと思いますけれども、今やこんな問題に取りかかるよりも、むしろこれからの
安全保障問題ということについて大きな目で見ていきたいと思うのです。さっきも申しましたように、この地球というのは今や生存が問題になっております。人口の増加、食糧の不足、経済危機、途上国の累積債務、そういった問題で
日本が
安全保障-結局例えばアフリカなんかでも今や経済成長どころじゃなくて、経済がどんどん低下しておる、成長率がマイナスになっている国がたくさんあるわけです。そういう
状態をほうっておきますと、やはり
世界全体がまたさっきのスタビリティーというようなものが不安定化しますので、そういう観点で
日本が句か平和
軍縮外交というものを展開できないかというふうな気持ちがするわけでございます。
非常に粗雑なお話で失礼しましたけれども、質問があればということで、この辺で終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。