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政府委員(
川崎雅弘君) 大変難しい御
質問でございます。しかし、
先生御高承のとおり
昭和五十九年の五月に対がん
関係閣僚
会議というのが内閣に設けられまして、そこで対がん十カ年総合戦略というのが定められております。その戦略の中の
一つに、三ないし五年を経過した時点でそれまで進めてきた戦略の妥当性等について評価をしながらまだ後期に向けて努力をしていこうという趣旨のことが入っておりますが、この専門家を含めましての総合的な評価がまだ行われていないという点で御
質問の後半の部分についてはなかなか難しいところがあろうかと思いますが、お許しをいただきたいと思います。
ただ、対がん十カ年総合戦略の中では、今御
指摘のがんの本態を究明するという観点から大きくは三つの課題がございまして、
一つは、そもそも正常な
人間の中のヒトの遺伝子の中に発がん遺伝子が組み込まれている、そういうヒトの発がん遺伝子をどのように見つけ出すか、そういう点が第一。
それから、
先生が後ほど触れられました成人不細胞白血病のウイルスあるいは微生物が生産しますたんぱく質に起因する発がんというような発がんの
メカニズム、さらに、その発がんが何によっていわゆるがん化するといいましょうか
促進されるか、あるいはそれの抑制がどうかというがんの本態と
メカニズムという三つの大きい課題を掲げて進めてきております。
これまでのところ、そういう
意味でヒト発がん遺伝子という点については、胃であるとか肝臓であるとか幾つかのがんの類型に従いまして遺伝子の発見がなされておりますし、それに伴いますがん遺伝子のアミノ酸とか塩基の配列といったようなものについても
研究のメスがようやく手が届くようになっております。それから、一部ではございますが、がん遺伝子が発現し、さらにがん化する、抑制機能が働かなくなる
状況でございますが、そういう
メカニズムの一部についても
研究の糸口が開けてきているというふうな評価を受けておりまして、これらの点は
我が国のこれまでの努力が国際的にも評価されているというふうに私
どもは承知をしているわけでございます。
しからば、がんはいつごろ見込みがつくか、こういうことでございますが、
厚生省あるいは文部省、それに私
どもいろいろ努力をいたしておりますが、がんの治療というような点からは最近の種々の診断
技術の向上というのがこの間にございまして、それに伴いまして早期発見が比較的従来に比べれば、もちろんがんのタイプにもよりますが、容易になってきております。そういう
意味で、がんに対する現在の治癒という観点からの
対応は格段の進歩をしているということになりますが、がんの本態を見きわめて適切に対症療法ではなくて原因にさかのぼっての治療というところまで話が進めるということについてはまだ全く見通しはついておりません。ただ、
科学技術庁で行っております
技術の未来予測というアンケート
調査をベースとします
技術予測の中では、有識者の方々の見通しては二十一世紀初頭にはめどがつくのではなかろうかというような予測もありますが、あくまでこれはまだ予測でございまして、なおこれから一層従前にも増して努力を続けていかなければならないと思っております。その
意味で
厚生省、文部省あるいは
科学技術庁三省庁がこの対がん十カ年総合戦略の中核部隊として現在努力をしてお
るわけでございますので、何とぞ御支援を賜りたい、かように
考えております。
それからもう
一つ、成人不細胞白血病の問題でございますが、
先生御
指摘のとおり、これは
日本の南西地域で多発をしております白血病でございますが、今
先生がおっしゃいましたように、高月
先生とか日沼
先生、三好
先生といったような
日本の学者のグループによってこれがウイルスによるものであるということでウイルスが一応確定をされておりまして、そのウイルスの名称も国際的に既に確定をいたしております。
そういう
意味で、ウイルスであることはどうも間違いはない。しかし、遺憾ながらこのウイルスの遺伝子構造がどのようになっているかとか、あるいはそのウイルスが入った場合にどうして実際的にこの白血病が生じてくるのかという発症といいましょうか、発病の
メカニズムというような点についてはまだまだ
研究に手が届いた
段階でございまして、有効な治療法というのは、極めて残念ではございますが、まだ発見されていないという
状況でございます。
本件につきましては、
科学技術庁におきましても
理化学研究所を中心といたしまして一歩でもその発病の
メカニズムといいますか、発症の
メカニズムが
解明できるように現在努力をしようということで、これは
振興調整費をいただきまして
共同研究で現在取り組もうとしている
段階でございます。
以上でございます。