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参考人(
山地進君) 責任の問題とそれから償却の問題、この二つでございますけれ
ども、これはこの二つの問題を御
理解いただくためには若干その衆議院の御
質疑等とも関連するかもしれませんけれ
ども、先物予約をしたときの
状況を若干御
説明をしたいと思うんです。
と申しますのは、ちょうど先物予約を私
どもがしょうとしていたときは二百四十円の
為替であったわけで、さきの予算
委員会でございますか、宮澤大蔵
大臣がそのころの
状況を御
説明になっている記事を読ませていただきますと、G5というのが行われてそれから逐次御
承知のように円高になったわけなんですが、G5のときに宮澤大蔵
大臣の
言葉をおかりすると、一割ぐらい円高になればいいなと思ってたというのが、その当時の
方々の御
認識であったかと思うんです。
ところで、私
どもの
経営を見ますと、ドルに関しましては非常に偏った、支出が多くて
収入が少ないという
状況でございまして、その支出の多いのは、先ほど来御
質問のございました
航空機を購入する、一機一億ドルもするものを購入するものでございますんで、当然片
為替といいますか、非常に支払いが多いような
状況になっているわけです。そうすると、これだけのドルが二百四十円、これがまた幾らになるかわからないというような
状況で
航空機の購入をいたしますと、さっきから御
質問のありましたように、少なくとも償却ということで
経営を圧迫していくことになるわけでございますので、この
為替変動にどう対処していくのかというのが、輸入をする
企業、石油とか鉄鋼とか、そういったところのすべての共通の悩みであったわけでございます。
当時石油審議会等では、一体こういった
為替問題についてどう対応するかということはかなり広範に御議論があって、やはりヘッジというものをした方がいいだろうというような議論があったという記録があるわけでございます。私
どもの
経営といたしましても、そのときに一体どうやったらいいのかというようなことを考えておりましたときに、たまたまその市場の方に長期先物予約というのがあったわけです。
よく十年というのは長いじゃないかという御
質問があるわけでございますけれ
ども、普通の
為替の予約というのは支払いが割と期近にあるものについてほどよいものを買っていくというのが普通の先物予約なんですが、そのころにアメリカの金利と日本の金利差というものをからくりの手段にした先物予約の長期のものができたんです。しかも長期のものが十年のものが逐次下がっていくんじゃなくて、最初からぱっと
平均的に下がるというような長期先物予約というのが導入されたわけです。それまではせいぜい五年というようなのが先物予約であったわけです。
そこで、
経営の
立場から言うと、そういう先物の長期予約をすると
経営の安定ということが得られるということがあるわけですね、変動にさらされない。じゃ変動にさらされないのは一体どれぐらいしたらいいんだと。全部すれば、これはもうギャンブルといいますかね、かけになると思うんですね。投機になると思うんです。そこで
経営としては、三分の二は従来どおりにしておいて、三分の一だけヘッジしたらいいんじゃないか。そうするとどういうことが起こるかというと、三分の一を長期の十年物の先物予約をいたしますと、仮に円安になった場合にはその三分の一は親孝行してくれるわけですね。三分の二は円安の被害を受けるわけです。ところが、逆に円高になった場合には三分の二については円高のメリットを受けるわけです。ところが、三分の一長期先物予約をしてそれよりもさらに円高になった場合には損をする。しかし、これは何にもしないというのも
一つの投機だと私は思うんですね。そこで
経営としては、三分の一を安定させて今後の
為替の変動に対応しようというのは
一つの
経営の判断でございまして、これは石油業界等あるいは鉄鋼業界等、輸入業界で広範に取り入れられている話でございます。
そこで、結果的にはどうなっているのかといいますと、
航空機の購入代金についてそれを充当いたしますと、仮に三分の一円高になって、言ってみればやらないときょりも損したということになるけれ
ども、三分の二は円高になってそれで
航空機は安く購入できるわけですね。したがって、恐らくこの
数字をお示しすれば、円安のときょりも円高になったときの方が先物予約をしてあっても
航空機の購入代金は安くなっているわけです。これはドルに対して変わらないところあるいはドルの国に対して日本の
企業というのはそれだけ円高になっている部面については非常に優位に立っています。その三分の一をヘッジした分についても
平均的に申しますと、私
どもの十年間の三十六億ドルの
平均は百八十五円ぐらいでございますので、これは二百四十円のときにアメリカの
企業と
競争していることから考えればかなり有利な
数字になっているわけですね。
したがって、日本の円高というのは、
航空機に関しますればアメリカの
企業に対しては
競争力が強くなる
要因になっているわけです。そこで私
どもの方がそういった判断をして、実際には御
承知のように円高になって先物予約をしなかったことに比べれば、六十一
年度について百億円
為替上の損をしたことになるわけでございますけれ
ども、それを私
どもとしては
航空機の購入代金に支払いを充てますと、これは充てるということは会計法上適法なことでございますのでこれを充てますと、これは十年間償却でございますので百億だったら年間十億でございますけれ
ども、初
年度はたまたま
航空機の購入が
年度末の方に偏っているために支払い額がそれほど多くございませんものですから、六十一
年度について申しますと、期間計算をする
関係で三億円ぐらいの
為替差損があったということでございます。
これは、私
どもの生産手段というのは主としていえば
航空機でございますし、かつ、先物予約というのが
平均的に長期的に見て
為替の変動にどう対応するかという趣旨から考えても、
航空機の償却に充てますと、今後どういうふうに
為替変動があるかわかりませんが、初
年度の購入代金については十年間に分散される、次
年度以降についても円高、円安の幅が分散されるという
意味ではヘッジという思想に合うということで、私
どもは償却資金に充てているわけです。
以上のようなことから申し上げまして、私
どもとしては
経営が円安か円高か非常に不分明なときにおいて、
一つの
企業を防衛する手段として選択した判断であって、これが円安になるか円高になるか、どっちかにかけたということではございませんので、責任問題は起こらないというふうに考えているわけでございます。