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1987-07-16 第109回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年七月十六日(木曜日)     午前九時三十分開議 出席委員   委員長 砂田 重民君    理事 今井  勇君 理事 野田  毅君    理事 浜田 幸一君 理事 林  義郎君    理事 吹田  愰君 理事 上田  哲君    理事 川俣健二郎君 理事 池田 克也君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    愛野興一郎君       甘利  明君    伊藤宗一郎君       石渡 照久君    上村千一郎君      小此木彦三郎君    小渕 恵三君       越智 通雄君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    亀井 善之君       小坂徳三郎君    鴻池 祥肇君       左藤  恵君    佐藤 敬夫君       斉藤斗志二君    桜井  新君       志賀  節君    田中 龍夫君       西岡 武夫君    原田  憲君       福島 譲二君    細田 吉藏君       松野 幸泰君    村田敬次郎君       村山 達雄君    山下 元利君       井上 一成君    井上 普方君       加藤 万吉君    川崎 寛治君       菅  直人君    細谷 治嘉君       草川 昭三君    坂口  力君       冬柴 鐵三君    水谷  弘君       宮地 正介君    木下敬之助君       楢崎弥之助君    安藤  巖君       岩佐 恵美君    柴田 睦夫君       中路 雅弘君    正森 成二君       矢島 恒夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣         通商産業大臣臨         時代理     中曽根康弘君         国 務 大 臣 金丸  信君         法 務 大 臣 遠藤  要君         外 務 大 臣 倉成  正君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 塩川正十郎君         厚 生 大 臣 斎藤 十朗君         農林水産大臣  加藤 六月君         運 輸 大 臣 橋本龍太郎君         郵 政 大 臣 唐沢俊二郎君         労 働 大 臣 平井 卓志君         建 設 大 臣 天野 光晴君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     葉梨 信行君         国 務 大 臣         (内閣官房長官後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 山下 徳夫君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)         (国土庁長官) 綿貫 民輔君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      近藤 鉄雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)     三ッ林弥太郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 稲村 利幸君  出席政府委員         内閣官房長官 渡辺 秀央君         内閣参事官         兼内閣総理大臣         官房会計課長  川原崎守彦君         内閣官房内閣安         全保障室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障室         長       佐々 淳行君         内閣法制局長官 味村  治君         内閣法制局第一         部長      関   守君         内閣総理大臣官         房審議官    本田 秀司君         警察庁刑事局長 仁平 圀雄君         警察庁刑事局保         安部長     漆間 英治君         警察庁警備局長 新田  勇君         総務庁長官官房         審議官     新野  博君         総務庁人事局次         長         兼内閣審議官  田中  史君         総務庁行政管理         局長      佐々木晴夫君         総務庁行政監察         局長      山本 貞雄君         総務庁統計局長 三浦 由己君         防衛庁参事官  瀬木 博基君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       依田 智治君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁経理局長 日吉  章君         防衛庁装備局長 山本 雅司君         防衛施設庁施設         部長      鈴木  杲君         防衛施設庁建設         部長      田部井博文君         防衛施設庁労務         部長      山崎 博司君         経済企画庁長官         官房長     保田  博君         経済企画庁調整         局長      横溝 雅夫君         経済企画庁国民         生活局長    海野 恒男君         経済企画庁物価         局長      冨金原俊二君         経済企画庁総合         計画局長    星野 進保君         経済企画庁調査         局長      勝村 坦郎君         環境庁企画調整         局長      加藤 睦美君         環境庁企画調整         局環境保健部長 目黒 克己君         国土庁計画・調         整局長     長沢 哲夫君         国土庁土地局長 片桐 久雄君         国土庁地方振興         局長      澤田 秀男君         国土庁防災局長 三木 克彦君         法務省民事局長 千種 秀夫君         法務省刑事局長 岡村 泰孝君         法務省訟務局長 菊池 信男君         法務省人権擁護         局長      高橋 欣一君         外務大臣官房外         務報道官    松田 慶文君         外務省アジア局         長       藤田 公郎君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省欧亜局長 長谷川和年君         外務省中近東ア         フリカ局長   恩田  宗君         外務省経済局長 渡辺 幸治君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         外務省国際連合         局長      中平  立君         大蔵大臣官房総         務審議官    長富祐一郎君         大蔵省主計局長 西垣  昭君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省理財局次         長       藤田 弘志君         大蔵省証券局長 藤田 恒郎君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         国税庁次長   日向  隆君         国税庁税部長 伊藤 博行君         文部省初等中等         教育局長    西崎 清久君         文部省学術国際         局長      植木  浩君         文化庁次長   久保庭信一君         厚生省健康政策         局長      竹中 浩治君         厚生省保健医療         局長      仲村 英一君         厚生省児童家庭         局長      坂本 龍彦君         厚生省保険局長 下村  健君         農林水産大臣官         房長      甕   滋君         農林水産大臣官         房総務審議官  吉國  隆君         農林水産省経済         局長      眞木 秀郎君         農林水産省構造         改善局長    鴻巣 健治君         農林水産省農蚕         園芸局長    浜口 義曠君         農林水産省畜産         局長      京谷 昭夫君         農林水産省食品         流通局長    谷野  陽君         食糧庁長官   後藤 康夫君         林野庁長官   田中 宏尚君         水産庁長官   佐竹 五六君         通商産業大臣官         房審議官    末木凰太郎君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         通商産業省立地         公害局長    安楽 隆二君         通商産業省機械         情報産業局長  児玉 幸治君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         総括審議官   林  淳司君         運輸省運輸政策         局長      塩田 澄夫君         運輸省地域交通         局陸上技術安全         部長      清水 達夫君         運輸省港湾局長 奥山 文雄君         郵政省通信政策         局長      塩谷  稔君         労働大臣官房長 岡部 晃三君         労働省職業安定         局長      白井晋太郎君         建設大臣官房長 高橋  進君         建設大臣官房総         務審議官    田村 嘉朗君         建設省建設経済         局長      牧野  徹君         建設省都市局長 北村廣太郎君         建設省道路局長 鈴木 道雄君         建設省住宅局長 片山 正夫君         自治大臣官房長 持永 堯民君         自治省財政局長 矢野浩一郎君         自治省税務局長 津田  正君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ――――――――――――― 委員の異動 七月十六日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     石渡 照久君   小此木彦三郎君    甘利  明君   越智 通雄君     佐藤 敬夫君   海部 俊樹君     鴻池 祥肇君   武藤 嘉文君     斉藤斗志二君   坂口  力君     草川 昭三君   児玉 健次君     矢島 恒夫君   柴田 睦夫君     安藤  巖君 同日  辞任         補欠選任   甘利  明君     亀井 善之君   石渡 照久君     宇野 宗佑君   鴻池 祥肇君     海部 俊樹君   佐藤 敬夫君     越智 通雄君   斉藤斗志二君     武藤 嘉文君   草川 昭三君     坂口  力君   安藤  巖君     岩佐 恵美君   矢島 恒夫君     中路 雅弘君 同日  辞任         補欠選任   亀井 善之君     小此木彦三郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件 昭和六十二年度一般会計補正予算(第1号) 昭和六十二年度特別会計補正予算(特第1号) 昭和六十二年度政府関係機関補正予算(機第1 号)      ――――◇―――――
  2. 砂田重民

    砂田委員長 これより会議を開きます。  昭和六十二年度一般会計補正予算(第1号)、昭和六十二年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和六十二年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水谷弘君。
  3. 水谷弘

    水谷委員 まず冒頭、本委員会におきましてココム違反問題について種々御議論があったわけでございますが、昨日また昨晩あたりいろいろな報道がされておりまして、どうも政府の中における意見、見解不一致報道されているわけでございますが、総理見解でいくべきであると後藤田官房長官の御発言があり、さらにまた今までの省庁間のいろいろな連携の中に大変すれがあったような報道等も見られるわけでございます。  国民の側から見まして、中曽根内閣のもとで、総理のもとでそれぞれの各省庁また閣僚がお互いに重大問題に対しては心を合わせて真剣に取り組む、これは当然国民がそういうことを期待しているわけでございますが、これらの伝えられているいわゆる見解不一致について明確になさっていただきたいと冒頭質問をいたす次第でございます。
  4. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先般来の閣僚答弁にニュアンスの差がありまして、やや混乱を呈しまして御迷惑をおかけいたしました。私は、ここでも御答弁申し上げまして、疑いが濃厚である、そういうことを答弁いたしまして、私が今まで得た知識において総合的に判断した答弁をここでしたわけです。  そこで、通産外務両省に対しまして、私の答弁中心にして両省見解調整するように、そういうことを指示いたしまして、そして調整の結果、文書にしたものを倉成外務大臣がきのう朗読したわけで、私はそれを政府統一見解である、そう申し上げましたが、これはいわゆる正規の手続を経た統一見解というようなものではございませんが、私の答弁中心にして両省調整した結果でございまして、事実上の統一見解と申して差し支えないと思います。そういうことで、あの考えで一致しているということを重ねてここで申し上げる次第でございます。
  5. 水谷弘

    水谷委員 倉成外務大臣の御答弁と若干違うわけでございます。外務大臣も今の総理の御答弁のとおり了承なさっているわけでございますか。
  6. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま総理の御答弁で尽きていると思います。
  7. 水谷弘

  8. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 私がこの問題で記者会見等でいろいろ御質問を受けて新聞に出ているような発言をしたことは否定はいたしません。ただ、私が申し上げておるのは、その席でも、これは疑いが濃厚であるという総理大臣答弁が一番自分は適切と思う、こういうことを申し上げておる。しかし、それじゃ外務大臣答弁はどうかということになると、外務大臣も別段因果関係を認めておるとは言ってない。というのは、証拠がない、こう言っているのですから、証拠がないものを認めるわけはないので、そこはよく発言の中身を見でいただければ、必ずしも因果関係というものを認めたわけではないんだ、だから総理答弁とそれほどの食い違いがあるとは自分は思わない。  それから、統一見解云々については、今総理のおっしゃったとおり、事実上両省庁答弁のすり合わせをやった、こういうことであろうと思います。したがって私は、やはり総理大臣が一昨日ですか答弁なさった、いろいろな状況から疑惑が深いという答弁が今日でも一番適切である、かように考えております。
  9. 水谷弘

    水谷委員 紳士協定に違反する行為を行ったその疑いが濃いということでございますが、いずれにしても、この事実については真剣に究明をされて、西側陣営の大事な問題でございますので、これはひとつしっかりとした対応をしていかなければいかぬと思います。  一つ外務省に、昨年の末からことしの春にかけて米国政府からいろいろ事件の説明、因果関係についても見解を聞いてこられた外務省当局が、その段階、いわゆるいろいろなものを聞かれたその段階で、これは通産大臣通産省また防衛庁、いろいろ各省庁間の連携をとって、すぐさまこの問題に対する対応について動き出しをなさったのかなさらないのか、その点だけ確認をさせていただきます。
  10. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 本件につきましては、昨年の末にある程度の話が一般的にはございまして、春ごろからいろいろな、より若干詰めた話がございました。その段階、いずれの段階におきましても関係省庁とは御連絡を申し上げております。その話し合いはなおアメリカと累次、政府側から御答弁申し上げておりますとおり話し合いを続けているというところでございます。
  11. 水谷弘

    水谷委員 まだ申し上げたいことはありますが、この問題はこれで質問を終わりますけれども、いずれにしても、国内の問題もそうでございますが、国際的な信義に関する重要な問題については、これは本当に問題が生じたその初期出動、火だって早く消せばすぐ消えるわけです。と同時に全力を挙げて一つの問題に取り組む、そういう姿勢をぜひ内閣の中に確立をしていただきたいと申し上げておきます。  それからアメリカ貿易の問題でございますが、十五日のワシントンの発表、これは相当各方面から注目をして、この五月は一体どうなるか、これは最大関心事であったわけでございますけれども、この発表を見ますと、赤字が一転して八・一%ふえた、こういう結果が出てきたわけでございます。総理、これは一カ月の結果がそうなったからといってここで論ずることは不適当であるかもしれませんけれども、その状況をどのように御判断なさいますか。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 発表によりますと百四十三億九千八百万ドル、これは五月の貿易赤字でございますが、二月からの趨勢を見ますと、二月が百五十億ドル、三月が百三十六億ドル、四月が百三十二億ドル、五月が百四十二億ドル、今回の分析を私はまだよく読んでおりませんが、輸入の方で石油価格が上がったとかいうようなことがあるいはあったのかと思います。  まあ大きく見ますと、少しずつ縮小の方向に向かいながらジグザグのコースである、傾向としては縮小に向かっていると考えでよろしいのではないかと思っております。したがって、昨年のアメリカ貿易赤字は千六百六十億ドルでございますけれども、今年は千五百億ドル台になるのではないかという観測は、やはり今でも大体正しいのではないかと思っております。
  13. 水谷弘

    水谷委員 次の質問に移らしていただきます。  今度の国会にもエイズ法案が提出されておるわけでございますが、我が国エイズ患者は、厚生省エイズ調査検討委員会報告によりますと、女性三人を含む四十三人、感染者は二百五十五人、欧米に比較して大変少数にはとどまっております。そういうわけでございますので、したがって、現段階での医療資源を十分に活用した適切な対策をとる、早くこの対策に踏み出す、本格的に対応するということが非常に大切であります。そこで、その対策に乗り出す、いよいよ法制定をしてそれに乗り出すわけでございますが、そこで大変心配な、重大な問題がございます。  私は何点か御質問をしたいわけでございますが、まず最初に、プライバシー保護法案、仮称でございますが、この制定についてお尋ねをいたします。  性病については、常に人権プライバシー保護と二次感染防止との板挟みに入るわけでございます。この両者を同時に進めることは非常に困難でございます。すなわち、強く規制すると患者がかえって水面下に潜行して実態がつかみにくくなる。一方、密室性の高い行為規制をかけるのはプライバシーに立ち入るということになる。また、我が国の現行の法体系を見ると、人権プライバシー保護については極めて不十分であります。エイズ対策に不用意に取り組むと、そのまま家庭崩壊社会的差別人権問題等を惹起するおそれがあるわけであります。したがって、この感染源感染経路の把握、これは医師患者との個人的な信頼関係を基盤とした任意の健診と、その前提として徹底したプライバシー保護があって初めて成り立つわけでございます。  我が党としては、政府に、エイズ対策の大前提として、人権プライバシー保護のため、特別立法としてのプライバシー保護法案の策定、これが必要ではないかと私は主張したいわけでございますが、見解をお伺いをいたしたいと存じます。
  14. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 エイズ対策につきましては、御承知のように、エイズ対策に関しまして関係閣僚会議を設置をし、二月にはエイズ問題総合対策大綱をつくりましてこれを推進をいたしておるところでございますが、まず第一には、「正しい知識の普及」というようなことを中心にいたしまして五つの柱で進めておるわけでございます。そういう中では、その前提として、またその基本として、あくまでも患者等人権擁護ということを最大の守っていかなければならないこととして推進をいたしておるところでございます。  これらの対策推進するために、エイズ予防法案というものを現在国会に提出をさしていただいて御審議を仰ぐことになっておるわけでございますが、この法律におきましても、かつてないような人権保護観点をそれぞれの条項に入れまして、プライバシー保護に特別の配慮をいたしておるつもりでございます。  大まかな点を挙げさしていただきますと、まず第一には、感染予防の点につきまして、医師感染者等保健医療上の信頼関係に基づく指導というものを第一義にいたして進めてまいる。そういう観点から、医師報告等につきましても氏名の報告はしないでもいいということにいたしておるわけでありまして、行政の介入というものは必要最小限のものにとどめてまいろう、こういうようなことにいたしております。またなお、感染者等行為規制行為制限等につきましても、これまでの伝染病予防法とか性病予防法とは違いまして、非常に軽いもの、また罰則のないものとさしていただいておるということでございます。第二番目には、この予防対策にかかわりました公務員また医師医療関係者、また、その他のこの予防事業にかかわった人たちに対する守秘義務というものを、通常の守秘義務よりも重くこれをかけておるところであります。第三点といたしましては、国及び地方公共団体等におきましては、感染者等に対する人権保護、そしてまた国民一般においても感染者等についての人権を守る、差別や偏見を持たないようにしなければならないという規定を置かしていただいておりまして、今回の予防法につきましてもこのように人権保護ということを最大のベースに置いて考えさしていただいておりまするので、このエイズ予防法の御成立をいただき、そしてエイズ蔓延防止対策推進してまいる中で、私どもも、今先生がおっしゃられましたようにプライバシー保護ということをいっときとも欠かすことのないように対応してまいらなければならない、このように考えておるところでございます。
  15. 水谷弘

    水谷委員 大臣、このエイズ予防法案の中のいわゆる人権プライバシー保護に対する各種の規定で十分であろう、私はそういう立場に立ちませんので、今申し上げましたような特別立法必要性を申し上げているわけでございます。いずれにしても、本日上程される精神衛生法の問題もそうでございますが、常にこの人権と対立する関係にあることは、これはいろいろなことが全部そうでございまして、我が国におけるプライバシー保護人権確立の法というかその整備がほとんどいろいろな面でおくれている。そういう面から見ますと、この一つだけを申し上げるというわけではございませんが、特にこのエイズ対策についてはほかのものとは全く次元が違うということで申し上げているわけであります。  この点は、総理にぜひお伺いをしておきたいと思います。総理も、エイズ対策については真っ先から真剣に取り組んで今日まで来られた御努力は私ども知っております。いよいよ法律がこれででき上がるかどうかという今一番重要なときに、一番守らなければならない人権プライバシーの問題について、総理の御見解を伺っておきたいと思います。
  16. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 エイズの問題は貴党において最初にお取り上げになりまして、自来世の中が非常に注目した次第でございますが、我々の方も事態の重大性を認識いたしまして、政府内部におきましても特別に今取り上げておるところでございます。  先般、ベネチア・サミットにおきましてもこの問題が各首脳から取り上げられまして、これに関する見解の表明において一致いたしました。それは、対策等について十分協力し合うということでございます。現に我が国からも調査団を欧米に派遣いたしまして、欧米のやり方等につきましてもいろいろな調査を進めたところでございます。  そういう総合的な結果を経まして、いよいよ立法ということでやっておるところでございますが、何といっても一番大事なのは、この問題に対する研究、あるいはこれに対応するだけの医療というのをいかに早く見つけ出すかということでございます。それと同時に、起こってくる患者に対する対応でございまして、その点で非常に大事なのは、おっしゃられるとおり人権擁護の問題でございます。この感染防止とか、あるいはこれらに対する研究その他を進めでいくということと人権の問題とをいかに調和させるか。やはり感染を広げるということは許せません。そういう意味においてその調和点をどこに見つけるかという点において、各国ともそれぞれその国情に応じたニュアンスによってやっておるところでございますが、我が国におきましては、やはり特に人権問題というものを重視する必要がある。そういうような経験にかんがみまして、そういう点に特におもんばかりをした法案作成ということに今後も努力してまいりたいと思う次第でございます。
  17. 水谷弘

    水谷委員 もう一点、厚生大臣にお伺いいたします。  治療、研究及び国際協力についてのことでございますが、現在、エイズについての原因ウイルスの発見、拡大検査の実施、感染経路などの実態、これがかなり解明されていますが、予防、治療薬とも研究開発途上にあるわけでございます。有効なワクチン開発は早くて五年以上かかる、このように言われているわけです。  そこでお尋ねいたしますけれども、エイズの発病、それから予防、治療、研究の現状についてどうか。もう一つは、国際協力の問題でございますけれども、国連のWHOを初め国際協力を進めていっていただかなければなりませんが、特にその中でも、日米主導で医者や学者など広範な専門家による国際共同研究機関、こういうものを設置をして、法的、社会的問題等のガイドラインを策定したり、また定期的に情報交換したり、相互交流を実施したり、こういうことを日米主導で行いながらアジア・アフリカ諸国を中心としたエイズ防衛対策というものを検討されてはどうかと思うわけであります。あわせて、我が党の坂口政審会長が十四日の本委員会において国立免疫病センターの設立についてお訴えしたわけでございますけれども、この国際機関と同一機関にしてもこれはよろしいのではないかとも思っているわけでございますが、この二つ、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  18. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 ただいま総理からも御答弁をいただきましたように、エイズ対策の究極は、この研究開発によって現在その予防、治療に有効な手段が見出せない状況を打開をしていくということが最も大事なことであるというふうに考えております。本年度の予算におきましても、エイズの研究費といたしまして昨年に比べて三倍の予算を計上をし、この研究に邁進をいたしておるところでございますが、ちょうど本日、エイズの専門家会議におきましてこの研究のあり方についていろいろ御議論をいただき、その報告をけさほどちょうだいをいたしたところでございまして、その専門家の方々の研究に対する御報告をつぶさに精査させていただきまして、本年度の研究、また来年度へ向けての研究に万全を期してまいりたいというふうに考えております。  第二点の国際協力の点でございますが、これは政府の総合対策大綱の五つの柱の中にも一つ確立をさせていただいておるところでありまして、国際協力が非常に重要であるということを認識をいたしております。今お話がございましたように、WHOにおけるエイズ特別事業に対しても日本は大きく参加をいたしておりまするし、また日米の医療協力につきましても、これまで進めてまいりました医療協力の分野に新しくエイズ部会というものを追加して医療協力をいたしてまいろうということを今話し合っておるところでございまして、近々にその方向に日米間で話し合いがつくことだと考えております。そういうような形で国際協力も推進をいたしてまいりたいと考えております。  第三点の免疫病センターの件につきましては、この前も御答弁申し上げましたが、このエイズはまさに免疫異常にかかわる疾病でございますが、同時に、ほかにも免疫異常にかかわる疾病が幾つかございまして、現在も六つの研究班をつくりまして治療、研究等を今進めておるところでございます。これを一体のものとして免疫病センターという形でやっていくことがうまくいくのかどうかというような点について、私どもとしてはそれぞれの疾病についての研究をそれぞれ推進をし、そして連携をとっていくということの方がいいのではないかというふうに今まで考えてまいったところでございますが、先日来の御提言もございますので、もう一度よく勉強をさせていただきたいと考えております。
  19. 水谷弘

    水谷委員 ぜひ積極的にお取り組みをいただきたいと思います。  次に、総理にお伺いいたしますけれども、本委員会答弁の中で特に公共投資の問題について総理はこのように御答弁をされました。  公共投資の乗数効果が高度経済成長時代から比べて落ちておるということは、これは事実であると思います。今の段階に即しましては、やはり重点的に傾斜配分をする。例えば輸出関連産業あるいは地域、あるいは大型の鉄鋼とか造船とか、あるいは石炭であるとか、あるいは北海道や沖縄や九州、四国あるいは日本海沿岸、そういうような地点に対して重点的に傾斜配分をする。もう一つ考えることは、減反によってかなりの打撃を受ける農村地帯、それも重点的に選んで公共投資というものを考えなきゃいけない。そういう形によって我々は現在の日本全体の均斉ある景気の回復、内需拡大というものに進めてまいりたいと思っております。このように述べておられます。これは六十二年度予算から特に重点配分、傾斜配分について配慮されたということでございますけれども、六十二年度当初予算、そしてまた今回の補正、これらを見ましても、私だけが申し上げているわけではなくて、やはり今までの縦割り行政、それぞれの縄張りといいますか、長い間醸成されてきたものはそう簡単に取り外すことはできない。みんなが一斉に手を挙げてくる。緊急経済対策といえども、総理がおっしゃっているようにこういう政策的なアクセントというものをなかなかつけづらい。この事情は私はよくわかっております。そういうことをわかった上で、特に情報通信に対する今後の新しい産業、既にもう新しいというか完全にこれは軌道に乗りつつあるわけでございますけれども、しかし日本列島全体を考えた場合、東京を中心にした大都市等における情報通信基盤の整備というのはかなり進んでおりますけれども、全国レベルにおいてはまだまだこれからやっとスタートをするという状況でございます。  この新しい産業として位置づけられていく情報通信の果たす役割について一々ここで申し上げる必要はないわけでございますが、今後宇宙通信衛星、また光ファイバー、さらにはいろいろなソフトの研究、超電導、IC、そういう大変に基礎的な研究ももちろんでありますけれども、この基盤づくりというのは非常に重要になってくるわけであります。郵政省の予算を見てみますと八億ちょっとしかいわゆる事業費の位置づけがされておらないわけでございます。しかし、NTTとかNHK、これらの独自のいろいろな事業によってそれが補完されているわけでありますが、いわゆる政府レベルでもっと本格的に取り組んでいくべき情報通信のそういう整備というものは必要だろう、こういうふうに考えるわけでございます。そういうところにももっと思い切って、特にNTTの売却益、この一部を社会資本整備でということになっているわけでございますので、これは十分な御配慮をされてしかるべきではないのかな、こう思っております。まず総理の御見解をお聞きしたいと思います。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 公共事業等の傾斜配分につきましては、事業執行官庁において十分配慮していただいておると考えておりますが、現に、例えば生活関連施設についての配分等を見ますと、今年度当初、下水道、環境衛生等のシェアは一五・七でございますけれども、補正後のシェアが二〇・五と、かなり顕著に従来の配分からいろいろ新しいニーズを執行官庁で考えていただいておると思います。  その次に、通信衛星関係で、殊にNTT株の売却代金による社会資本整備勘定の使い方でございますが、基本的には通信衛星関係の中では、やはりテクノポリスにしましてもあるいはテレトピアにしましても、いわゆる民間の仕事によるところが多い。そのための各地域の整備、面的開発が必要になるということは御指摘のとおりであると思います。したがいまして、それはこの社会資本整備勘定で十分に各地方で御利用いただきたいと考えておりまして、今関係官庁と各地方公共団体とが御相談中で、公共団体の意向をくみながら執行官庁において使っていただきたい。この補正予算におきましては、何分にも最初のことでございましたので、その分の関連は少ないわけでございますけれども、六十三年度予算におきましては開発銀行等々を通じてかなり大きなものを用意することができると思いますので、その方面に傾斜的に使っていただくことができるようになると思います。
  21. 水谷弘

    水谷委員 ひとつしっかりと配分の方も重点的に取り組んでいただきたいと思います。  そのほか、やはり地方に対する、不況地域はもちろんでありますけれども十分な対応をしていただくことやら、また、円高不況の中で苦んでおられる中小零細企業者の皆さんに対する特に緊急的な施策についての十分な配慮、そういうものも、していらっしゃらないと指摘しているわけじゃありません、しかし、さらに御努力が必要ではないかと申し上げておるわけでございます。  ここでもう一つ、減反等で大変な農村地域についてもということの総理のお話がございますので、私、その中でも特に、土地代も要らない、それからまた昨年の農政審の報告書の中にもございますように、新しい日本の農業の展開をしていく上で一番立ちおくれているのは、いわゆる基盤整備の問題であります。これからの新たな農政を展開していく上でやはり国が重点的に力を入れていくことはこの基盤整備、構造政策を推進する上でネックとなっているのは実はこの基盤整備の問題でございます。規模を拡大しようとしていても、分散している土地を幾ら拡大しても何のスケールメリットは起きてこないわけで、そういう意味で、私は五十八年度を初年度として策定された第三期土地改良長期計画、この事業の進捗状況についてちょっと御指摘を、時間がありませんので詰まった議論はなかなかできないのでございますが、昭和六十二年度予算の補正後の、今回のこの補正後の事業実績、これを農水省から出していただきました。推定で補正後一体どうなるかということで出していただきましたが、ことしは五十八年からちょうど中間年、五年でございまして、ですからかなりの進捗状況でなければいかぬわけでございますけれども、事業費ベースで二八・六、特に農地整備の中の水田の整備率からいきますと、面積ベースでいきますと一八・八という、もう五年経過しているにもかかわらず、大変この進捗状況は低いわけでございます。これについては、いわゆる造成費、事業費の増高という問題もございますし、私は、ここにも東京の地価の狂乱というような、土地代は要らないとはいうものの、そういうものの影響も出てきているのかなと考えるところはございます。  いずれにしても農林水産大臣、これ本当は大臣に私はお聞きしたいのでございますけれども、大臣はもうこの状況はよくおわかりになっていますので、私も農林水産委員会におりますので、そちらで議論をやっておりますから改めて大臣に伺う必要はないと思いますが、これからまたいよいよ六十三年度の予算編成の本格的な時期に入るわけでございますけれども、これを含めて、総理、今後とも二十一世紀を見据えた、日本の二十一世紀の未来像にどのように政策誘導していくか、そこにぴったりフィットするような公共投資の重点配分について、総理の御見解を伺っておきたいと思います。
  22. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは先般来申し上げておりますように、輸出関係が非常に不振な地域とか、あるいは地場産業、あるいは地域的な、北海道とかあるいは九州とか、四国とかあるいは日本海沿岸とか、あるいは減反が特に致命的に響いてくる農作地帯とか、そういう全部に目をみはりまして公共事業費の傾斜配分をやるように特に指示しておるところでございます。今申されました各省間の縄張りからくる既成事実の上にまた乗っていってはいけないということはまさにそのとおりでございまして、今のような重点項目を決めまして、各省が行う場合におきましてもその重点に従ってやる、そういうふうに指示しておるところでございます。御趣旨を体しまして今後はさらにそれを徹底するように努力いたしたいと思います。
  23. 水谷弘

    水谷委員 次に、農業問題について御質問したいと思います。  昨日、川俣先生もお触れになりましたけれども、私も実は同じような考え方に立っていまして、いわゆる価格支持の問題とか予算に対する比率とかいろいろ調査をしたり検討したりしてきております。そういう中で、日本と欧米先進諸国の国民総生産、農業総産出観、国家予算、それで農業予算、こういう比較のスタンスもあるのかな、こう私は思っております。これは八五年の数字でございますけれども、我が国国民総生産三百二十兆七千億、そのうちの農業総産出額が十一兆七千億、これの比率は三・六%になります。西ドイツの国民総生産は百四十九兆、農業総産出額は五兆一千億、この比率は三・四%でございます。  さてそこで、国家予算に占める農業予算の比率を日本と西ドイツを比べてみますと、日本は五十三兆四十五億の国家予算に対して二兆六千八百億、五%の比率でございます。西ドイツの場合は国家予算が二十兆八千億、うち農業予算は一兆二千億で五・七%になります。私は、過保護であるとか予算の面から見てもいろいろな指摘等がなされているわけでございますけれども、余り当たっていない批判だなといつも余り相手にしておりませんけれども、そういうふうにつぶさに実態を調べれば調べるほど、いわゆる財政的な面から見ても政府の施策の面から見ても、格別農業が過保護であるという議論はどこから見ても成り立たないな、こういうふうな基本的な考え方に立っております。かといって、国際的な内外価格差のこの問題について、この努力を少しでも惜しんだならば、格差是正の努力を惜しんだならば、大多数のお客様である消費者の皆様方、そういう皆様方の御理解が得られない。その御理解が得られなければ農業は産業として自立はできない。国民が合意されるいわゆる農業の生産性向上やらさらにはこの価格差に対する御努力、本当に血のにじむような努力を現在もされておりますけれども、より一層していっていただかなければならない、こういう見地に私も立っているわけでございます。  そこで、先ほども、総理がおっしゃった答弁の内容を私申し上げましたが、確かに七十七万ヘクタールのこの減反というのは大変な問題でございます。三分の一です。耕地の三分の一は――今までは開田をして水田にしなさい、政府が一生懸命指導をして、そして開発をして水田にした、もう十数年間かかっている事業のところで、事業半ば、畑だったのを水田にしている最中に米はつくるなよ、こういうことが全国にある。そういういろいろな状況の中で七十七万ヘクタールが今米をつくれない。それでもなお米は、ことしも平年作でいったら政府の持ち越しは二百五十万トンぐらいになるのではないのかな、いろんな心配もしておる。また第三次の過剰が来なければいいな、ここまで生産調整をしていてもまだこういう状況。ことしは三十一年ぶりに米価が五・九五%引き下げられた。さらにそれだけじゃないわけです。六十二年度当初予算の中でも、いわゆる奨励補助金についてもカットはあった。今農家に対するいろいろな状況がある。  そこで、今何を一番農家の皆さんが心配しておられるか。我々は確かに国民的ないろいろな要請があって、そろそろ農業も、やはり一つは国土保全とか環境保全、国土の大切なそういう機能を果たす役割、農業がそういう側面は持っているということは主張するけれども、しかしもう一面、産業として自立しなければならないというお考えになっていらっしゃるわけです、農家の皆さんは。ですから、いろいろなそういう環境の中でも御苦労されながら一生懸命取り組んでおられる。  そこで一番大事なのは、こういうときにアメリカは、いよいよ九月にまたRMAがUSTRに対して、日本に対する米の問題について再提訴するという方向で動いている。さらには牛肉、かんきつの問題、十二品目の問題、二十二品目の問題等々、いわゆる日米貿易の中で、さらにいろいろな日本の農業を取り巻く大変な状況がこれ以上起きてくるのではないのかな。我々が一生懸命努力をしょう、真剣に取り組もうと思っているやさきに、もたそういうものが降りかかってきたら、おれたちはもうできないぞ、これ以上できないという、特にこういう声は、全国稲作経営者会議というのがある、本気になって規模も拡大して生産コストもどんどん落として、そして新しい稲作の方向を求めておられる、そういう本当にすばらしい方々の中から、現在の国境措置といいますか、いわゆる国際貿易における農産物貿易の問題についてしっかりと対応してもらいたい、こういう声が非常に強いわけでございます。  そこで、この間のOECDの閣僚理事会、加藤農林水産大臣、私はこの間の農林水産委員会でも、大臣、よく頑張ってこられましたねと率直にそう申し上げた。そしてまたサミットでも総理は、この問題について明確な、農業の持っている多様な性格をとらえられていろいろなお話をされた。また、今回の臨時国会における冒頭の所信表明演説の中でも、私は今まで総理の所信表明演説をいろいろ聞いておりましたけれども、農業問題でこんなに割かれたことはもしかしたら初めてかなということで、これは総理も大変、今まで農は国の基だとおっしゃっておったけれども、いよいよ本格的にそういうお考えに立たれてきているのかなと、私は生産者の皆さんだけではなくて、国民の一人として本当にそのように心強く思っております。  そこで、二国間の交渉ですから、けんかをするわけじゃないわけでございまして、お互いに我が国における農業の問題、また現在日本がどのような農政を推進しているか、それらを本気になって土俵の上に出して、いわゆる牛肉、オレンジの枠の問題についても、また十二品目の問題についてもしっかり議論をしていただきたい。米についてだけは私は絶対許してはならぬ。一部に加工用原料米くらいはいいじゃないか、大体三十万トンくらいで最終的に話し合いをつけたらどうだなんという議論がある。けしからぬ。これは、米の我が国における特別なことくらいは、友好国であるアメリカに対してこちらが誠意を尽くしてお訴えをしていって相手に通じないわけはない、そういうふうに考えておるわけでございますが、全体として、この日米農産物貿易についての政府の今後の取り組みについてお答えをしていただきたい。
  24. 加藤万吉

    加藤国務大臣 国民的不安あるいはまた農民の不安というのは、今水谷委員がおっしゃいました一つは内外価格差をどこまで是正していくのかということに対する問題であります。それから、同じく今おっしゃいました米あるいは牛肉、オレンジあるいは十二品目について今後どうなっていくのか、こういう不安があると思うわけでございます。  そういう農産物貿易全体の問題につきましては、まず米の問題があります。米のことにつきましては、私は本会議におきましてもあるいは農林水産委員会においても申し上げておるわけでございますけれども、米は日本国民の主食であり我が国農業の根幹をなすものである。また水田稲作は国土や自然環境の保全上不可欠の役割を果たしておるのみならず、我が国の伝統的文化の形成とも深く結びついていることなどなど、極めて重要な作物でございます。  また、農政審の報告を尊重しなくてはならぬのは当然でございますが、この農政審の報告にも、生産性の向上を図りつつとありますし、今後とも私としては、国会における米の需給安定に関する決議等の趣旨を体しまして、国内産で自給する方針を堅持していく考えでございます。したがいまして、米問題についての二国間協議は考えておりません。  次に、牛肉、オレンジでございますが、牛肉、かんきつにつきましては一九八七年度、本年度の都合のよい時期に関係国と協議をする予定になっております。今後とも牛肉、かんきつをめぐる我が国農業の実情等について相手国に十分説明し、その理解を求めていく考えであります。いずれにしましても、我が国としては、輸入自由化は困難であると考えております。  それから十二品目でございますが、十二品目は、水谷委員御存じのとおり、現在ガットのパネルの場で審査が行われております。我が国としては、米国側が提起しておりますガット上の問題点に対しまして、総力を挙げて反論を行っているところでございます。そしてまた、あわせて二国間協議による現実的な解決についても引き続き努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。農民並びに生産者の不安というものをそういう外国間交渉を通じて解消していくように最大限努力していかなくてはならぬ。  また、全体的に言いますと、私は、先ほど水谷委員もおっしゃいましたように、生産者の皆さん方にもどうぞ血を流してください、内外価格差の是正には真剣に取り親んでください、国民、消費者、納税者に見放されたら生産というものは存在しませんということを訴え、また消費者、国民、納税者の皆さん方には農民の、生産者の置かれておる今日の苦しい立場というものをぜひ理解してやってほしいということを、あらゆる方法を通じて今訴えておるところでございます。
  25. 水谷弘

    水谷委員 しっかりとお取り組みをいただきたいと思います。  今、ミルクの海とかバターの山とか、飢餓にあえいでおられる四億数千万のあの大変な皆さんにしてみれば言ってはならないような食糧過剰基調の中で、輸出国はその過剰の中でさらに輸出補助金をつけて輸出をしてくる、こういうような状況でございますけれども、私は、特に我が国がこれからの食糧安定確保ということを考えた場合に、いろいろ専門家の方々が議論をされておりますが、特にFAOの報告を見ても、一九九〇年くらいまでは世界的に食糧はなお過剰基調であろう、しかし中長期的に見て、この食糧というのは非常に不安定要因が多い、このように言われているわけでございます。  ちょうど七月十一日を国連は五十億人の日と定められた。二〇二二年ぐらいには八十億ぐらいになるのではないか。このような世界人口に対する人口増という問題。二〇〇〇年には六十億を超すのではないか、こういうふうにも言われております、これはまあ限定的に申し上げられる数字ではないかと思いますけれども。  さらに二番目には耕地面積、これはほとんど世界的にも伸びていない。さらには耕地の砂漠化という問題が各地に起きている。また、気象の専門家の先生方に伺いますと、二十一世紀までのこれからの十数年間というのは、地球気象的に見ると非常に変動の激しい時代になるのではないか、こういうような御指摘もあります。局地とはいえ、国際的な紛争等の影響等も考えられるわけでございます。さらにまた、アメリカの予測では、地球の温暖化という話がございます。二〇一五年、地球の温度が現在よりも二度から三度上昇する、そういうことによって、いわゆる農産物の生産地帯が北へ移動を行わなければならない、こういうような指摘もございます。  いろいろありますが、もう一つ経済的な側面から今度は考えてみますと、我が国は現在大変な黒字を持っております。金があるから安い農産物を輸入してもいいじゃないか、こういうような議論、これは非常に危険だ。いつまでもこのような経済的な繁栄というものが保障されるわけではないわけであります。そういう意味で、私たちはやはり基本的なものをしっかり国内で生産をすべきだ、その体制をしっかり確立すべきだ。と同時に、安定的に、もうエネルギーで半分輸入しているわけでございます。その安定的な輸入先、日米はもちろんでありますが、世界の食糧生産国、そういう国々と本当にこれはしっかりとした提携をとっていかなければならない、このように考えているわけでございます。時間の関係で、これらについては特別お答えは必要ございません。  農林水産大臣、五・九五%生産者米価が下げられたわけでございます。そこで大切なことは、これが消費者米価へと連動していかなければ、これは国民の皆さんの合意を得ることはできないわけです。大体年末に消費者米価引き下げの米審諮問、いろいろあって決まっていくわけでありますが、私はこれを前倒ししてきても消費者米価は下げるべきだ、こういうふうな考えに立っておるわけでございますが、大臣いかがでございましょう。
  26. 加藤万吉

    加藤国務大臣 水谷委員ちょっと冒頭お触れになりましたが、消費者米価は例年十二月に決定することになっております。したがいまして、まだ具体的には決めておりません。  まあ、そう申し上げましても、基本的な考え方を申し上げますと、先般の米審の答申におきましても消費者米価についての意見をいただいております。また、昨年いただいた農政審の報告の中にも、価格政策について、国民の支持を受けられる運用を目指すべきであり、内外価格差を極力縮小するように努めるべきであると指摘されております。したがいまして、今後の価格政策の基本的なあり方としては、可能な限り現に進みつつある生産性向上の成果を生産者価格に反映し、これを踏まえて消費者価格も適正に決定することにより、広く国民の理解と支援を得ていくことが必要であると考えておるところでございます。  まだことしのできがはっきりいたしておりません。十月にならないとそこら辺がはっきりいたしませんので、そういう問題等を踏まえ、全体的に考えていかなくてはならない。もう水谷委員御承知のとおり、売買逆ざやは解消することができましたが、コスト逆ざやの問題について、食管制度のあり方という問題等含めて検討していかなくてはならぬ、食管制度そのものは、ある面では国が持つものと消費者が持つものとの比率、割合というものを今後どのように国民的コンセンサスを得ていくかという大きな問題等があると考えております。
  27. 水谷弘

    水谷委員 ちょっと時間の関係で、どうしてもいろいろ前後して申しわけございませんけれども、去る六月二十二日から二十六日までの五日間、英国のボーンマスで開かれていた国際捕鯨委員会、IWC、ここで日本にとって大変厳しい決定が出たわけです。  日本が商業捕鯨再開への足がかりを残そうということから計画していた調査捕鯨、これについて事実上中止を迫る決議を採択した。この決定に対して日本の首席代表の斉藤達夫さんは、総会の最終日に、きょうの会議の進め方は常軌を逸している、決議は国際法に反しているばかりか科学的根拠もない、このように抗議されて、閉会前に席を立たれたようです。このお気持ちは私もよくわかるわけであります。この意思表明は、日本人の総意をほぼ代弁しているものと言っても過言ではない。このIWCの決定は私は容認することはできない、このような立場に立つものであります。  現在のIWCの運営のあり方、これは不正常としか言いようがない。IWCは、国際捕鯨条約に基づいて鯨類の適切な保存と捕鯨産業の秩序ある発展を図るべき、そういうことを目的にした機関なんです。しかし現在、例えばミンククジラの場合をとると、約二十六万頭もいると思われる、こういう鯨資源がある。そういう中で、わずか八百頭程度を調査のためにとることさえ許されない、こういうIWCのあり方は全くおかしいと言わざるを得ないわけであります。  さてそこで、この状況というのは多数の非捕鯨国が不明瞭な形で加盟しているわけです。我が国のような捕鯨国が真剣に訴えても余り意識も何もない、そういう形で加盟されているところがあるものですから、理解を示してくださるのはごく一部である。大半は科学的論議を尽くすというのじゃなくて、いろいろなそれ以外の力によって正論が押しつぶされる、こういうことがその中で行われているわけであります。したがって、我が国はもう一度IWCというものをよく検討し、そしてこのような無謀な決定を下すようなIWCからは、場合によっては脱退をしても構わぬというぐらいなそういう決意も考えた上で、独自に資源の保護を行って秩序ある捕鯨を続けていく、こういうふうにすべきだ、余りにもひど過ぎる、こういう意見が関係者の中から出ているわけです。  言うまでもなく、この反捕鯨国の中心アメリカでございます。したがって我が国は、今後とも捕鯨を続けていこうとすると、今度は捕鯨だけではなくて、前にもありました、商業捕鯨のストップをさせられたときにもやはり両方持ってきたわけでありますが、アメリカの二百海里内における我が国の漁業への規制を絡めてくる、いろいろな形で我が国に圧力をかけてくると思うわけでございます。  しかし、この件については基本的に私は二つの点を念頭に置いて対処しなければならないと思っておりますが、一つは、二百海里内における漁業と捕鯨のどちらをとるかということの判断については、今も申し上げましたが、かつて米国二百海里内で百万トンもあった漁獲量が現在ではわずか五万トン程度の枠しかもらえなくなってしまった。しかし、この枠は今後小さくなることはあっても大きくなることはないわけであります。それに引きかえて、鯨はアメリカの主権のもとにある二百海里内の漁業とは無関係でございます。対応の仕方によっては今後とも公海上で年間何千頭でもとり続けることができる、こういう貴重な資源である、こういうことをまず一つ念頭に置かなければならない。  もう一つは、反捕鯨国の中心アメリカでありますけれども、このような理不尽な方式が通用するということになると、そういうところで、もうとるな、日本はとるなと決めてしまったらとれない、それが通用する、このことが今度は、このような理不尽な方式が、サケ・マスの問題にしてもまた米の問題にしても、力で押せば日本は何とかなっていくんだ、こういうようなことになってはならない。鯨だけでは済まない。こういうことを考えて、この問題は他国の交渉にも影響を及ぼすのではないか、こういうふうに考えるわけであります。  そこで、今回のボーンマスの決議の際、日本のような捕鯨国の考えに対して理解を示した国、これはしかし変化が起きているのです。前回の商業捕鯨のときとは状況が違いまして、採決に対しても、賛成十五に対して反対八、いわゆる日本にとらせないことを決議するのに賛成が十五、反対が八、ただしここに棄権が五という、十三カ国は採決に賛成していないわけであります。今回の国際社会のこういう問題、それから鯨の問題、自分たちの価値観というものを最高に考えて、日本なら日本の民族に対するいろいろな立場を尊重したり、文化や食文化やいろいろなものの違いがある、そういうことを無視して強制するということについてぜひひとつ毅然たる態度をとっていくべきである、こういうふうに考えるわけでありますけれども、農林水産大臣並びに総理の御見解をお伺いしたいと思います。
  28. 加藤万吉

    加藤国務大臣 本年のIWC年次会合は反捕鯨色の濃い会合であり、特に我が国の捕獲調査に対し自粛勧告が行われたことは極めて遺憾であると考えております。また、この問題に対し、国会の各党の先生また国民各界の皆さん方が大変御活躍いただいたことに対して謝意を表する次第でございます。  今後の捕鯨問題につきましては、広く関係者の意見を闘いで取り組んでまいる所存でございます。
  29. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 農林大臣が御答弁申し上げたとおりでございます。
  30. 水谷弘

    水谷委員 これは本当に、関係者にとっても、また国民全体にとっても大変大事な問題でございますから、しっかりとお取り組みをいただきたいと申し上げておきます。  お手元にお配りいたしました資料は、これは「アメリカ、西ドイツ並の価格を仮定した場合の我が国の家計消費支出」という資料でございますが、これは本年の四月二十三日、経済審議会の経済構造調整特別部会が部会報告、いわゆる新前川レポートでございますけれども、これを行った際に経済企画庁が参考資料として公表されたものでございます。  この資料は、日本の物価水準がアメリカや西ドイツ並みに下がった場合、我が国の消費者の家計負担がどのくらい軽くなるかということを想定し試算したものでございますが、これによりますと、アメリカ並みの価格水準に下がった場合、資料の④にございますように、現在の七二%に我が国の消費支出がなる、二八%も負担が軽くなる、こういう結果が出ているわけであります。これは家計消費支出全体の場合であります。中でも、「食料」のところをごらんいただきたいと思いますが、食料の支出は、アメリカの費目別相対価格、日本を一〇〇にした場合、これがアメリカの価格水準に下がった場合四八%と出ております。五二%も負担が軽くなる、こういう数字が出ているわけでございます。  そこで、この四八%についての試算根拠はどうなっているのか。私はきょうも、これだけでは皆様方ごらんいただいてもこれは何にも検討のしようがないので、このバックデータが必ずあるわけだからぜひ経済企画庁提出していただきたいと申し上げました。しかし、どうしてか、この先の資料は御提出いただくことができませんでした。大変遺憾でございます。資料要求を拒否されている理由は一体何なのか、また、四八%をはじき出されたこの試算方法は具体的にどうなっているのか、御説明をいただきたい。
  31. 星野進保

    ○星野政府委員 お答え申し上げます。  技術的なことでございますので、私の方かるお答え申し上げさせていただきます。  基本的には、アメリカの労働統計局が出しております小売、サービス等についての価格と我が方の小売物価統計とを突き合わせまして、為替レートを百五十五円を使いまして、それぞれ換算し合いまして、それで我が国の家計の支出ウエートといたしまして全体を算出したということでございます。  なお、先生特に御指摘の「食料」のところでございますが、できるだけ対応できるような品目を対比したつもりでございますが、全体のカバレージといたしましては、品目数でほぼ三割ということでございます。
  32. 水谷弘

    水谷委員 お聞きのところでございますけれども、なぜ提出できなかったかという御説明がなかったわけでございますが、時間がありませんのでそういうことにかけておれませんので、先に参ります。  品目で三割ということでございます。こういう種の数字を計算する場合には、いろいろな国際比較ですからなかなか難しさがある、これは事実だと私は思っております。しかしながら、大切なことは、七割というのがカバーされてない、品目で。私の手元にあるこのデータのバックデータになるようないろいろな資料について私も分析をしてみました。ウエートのカバレージがどのくらいか、これも検討してみました。それからまた、どういうものをお比べになっていらっしゃるのかも検討してみました。いろいろしてみましたけれども、ここに、この表の(備考)の3のところに「アメリカの保健・医療、西ドイツの保健・医療及び教育は、日本と制度が異なり比較が困難なため、日本に対する相対価格指数を一〇〇とした。」こういうふうにちゃんと丁寧にここはこううたってある。三割しか比較できない。  これはできないはずなんです。食文化が全然違う。主食であるお米とか、また日本は野菜類をたくさん、海藻類とか、お茶もコーヒーなんかそんなにべらぼうに飲む人はいない、お茶がほとんど中心だ。それがコーヒーで換算してある等々、比べられない。要するに、日本人がアメリカの食生活をした場合、こういう前提にならなければ出てこないような数字のはじき方にこれは実はなっているのでございます。本当は詳しく御説明をしなければいけないのですが、であるならば、ここに、食料は三割しか比較できませんでしたよ、こういうことがうたわれて当たり前じゃありませんか。この数値について、農水省、これは食料を直接扱っておられるわけですから、農水省の見解を伺っておきたいのです。
  33. 吉國隆

    吉國政府委員 ただいまの先生お話しの資料につきましては、経済企画庁が先生のおっしゃいましたように研究会の資料として独自に算定をされたものであるというふうに承知をいたしておるところでございます。先生お話ございましたような方法論上のいろいろな難しい問題がございますので、私どもといたしましては、この試算については十分注意した取り扱いが必要であるということを経済企画庁にも申し上げておるところでございます。
  34. 水谷弘

    水谷委員 この数字というのは、今審議官がおっしゃったとおり、取り扱いに注意していただかなければならないと私は思っております。試算のカバレージが三〇・六というふうになっておる。約三割。そうなると、経企庁が算出した五二%ということとあわせてみますと、これは実際には一五・九%、食料全体で一五・九%程度しか消費者の負担を軽減することはできない、こういうことに。なってくるわけであります。  ここで一番大事なことは、生産者価格、庭先の価格、これが食料品という価格、食料という価格になってくる。その生産者価格が全体の食料の価格に占めるシェアというのはいろいろ検討しても二三%ぐらいなんです。農産物そのものの価格が食料品の価格に占める割合は二三%くらいなんです。ですから、こういう数字がひとり歩きをして外へ出てくると、日本の農産物が余りにも高過ぎるのでおれたちは食費を倍も払っているのか、こういうふうに消費者の皆さん方が数字がぽっと出ただけでそういうふうにお感じになるわけです。食料品というのは、生産者価格、いわゆる原料価格というのは二三%から二五%、そのほかに加工、流通経費がかかって価格が形成されていくわけであります。だから、全体の合理化、そういうものが必要になってくる。それにもかかわらず、こういう大事な数字というものを経企庁が、権威ある経企庁、私はそう申し上げたい、その権威ある経企庁がこの数字をひとり歩きで出してこられる。また経企庁長官もテレビでこの数字をそのまま使っていらっしゃる。  たまたま私が五月十四日の夜、NC9をぱっとつけてみましたら長官が出てみえておりまして、そこで、この食費は半分になるんですよ、こういうふうにおっしゃった。聞いておられた国民は、そうか、それはひどいな、日本の農産物はよほど高いんだな、こんなふうに短絡的にこの数字が歩き出しては困るな。そのためにも、現在各省庁がいろいろな数字を発表されるときには、発表される前に、例えば専門的な所管の農水省の皆さん、こういう統計でこういうのがこういうふうになろうとか、どうですか。この数字は、私は今「食料」を取り上げましたけれども、「交通・通信」とか「教育」、これらについても適切な数字ではないなといういろいろな指摘が実はあるのです。これは大変な説得力のある表になるのです。ですから、経企庁長官、今後もあることでございますから、こういうことに対すること、そして今後のこと、ひとつお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  35. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 この資料は、計画局長から御説明いたしましたように、経済審議会の経済構造調整特別部会に経済構造の指標をつくるに当たりましてのいろいろな基礎的な研究の一つの成果として報告をしたものでございます。  お話にございましたように、日本人の食生活とアメリカ人の食生活、家計全般そうでございますが、いろいろ内容もございますし、またレベルその他違いがございますから単純に比較はできないという御指摘は全くそのとおりでございますが、一つ前提を置きまして近似をしてみまして、そしてそれぞれの価格を現在の一ドル百五十五円というレートで計算をした結果こういうことになった、こういうことでございます。これも極めて相対的な数字であることは事実でございまして、一ドル百五十五円だからこういう計数になりますが、例えば前の一ドル二百四十円だった場合にはがらっと違うわけでございますので、あくまでも現在の為替レートとの相対的な数字であることも十分配慮して考えなければならないことだと思うわけであります。  そうは申しましても、経済構造の指針というのが日本の将来のあるべき産業構造、そして農業のあり方についての指針を中に含んだものでございますし、個々の農家の方々の所得は決して多くなくても生産性のことで結果的に高い農産物になっている場合もございますし、また、これも御指摘ございましたように、流通段階、加工段階でどれくらいの付加価値が加えられるかということもございますので、そうしたことを全部考えて最終的に結論を出さなければならない性質のものであると思うわけであります。さはさりながら、私ども、食料品の国際的な価格の比較をいたしますと、生産者段階もそうでございますし、末端の小売段階でもやはり高いのではないかな、したがって、私たちが名目的な収入が高まっても実体的な収入はそんなに高くない、外に円が強くなっても内に対しては極めて弱いんだ、こういう指摘もございますので、そうした指摘にもこたえながら、単純に絶対的な形としてこれは使いませんけれども、一つの方向として、食科価格を今後下げてまいるために必要な、まさに農業の構造改善、そして流通段階の構造改善が必要である、こういうことを示す数字としては私はそれなりの意味がある数字である、こういうことで発表させていただいた次第でございます。
  36. 水谷弘

    水谷委員 本当に認識が全くなくて、これから全部の時間をかけて本当は頭の中身を変えていただかなければならないと思うわけであります。  私が申し上げているのは、そういうことではないのです。円ドル百五十五円がどうのこうの、また相対的に比べたからどうのこうの、また農業の生産隆の問題についてこうだ、そういうことを私は聞いたんじゃないのです。さっき三割しか比較できなかったと言ったでしょう。できないのです。食生活が違うんだから。全然違うんだから。それを無理に比較してこの数字を出してきている。例えばお菓子だって食べる物が違うのです。向こうはチョコレートを食べるかもしれないけれども、こっちはまんじゅうを食べたり、おせんべいを食べたりするのです。そういうものは価格を比べようがない。お菓子なんて二割ちょっとしか比べてない。外食は一割七分しか比べてない。一七%しか比べてない。魚介類、日本型食生活の中ではお魚というのは占める率が非常に多い。向こうは肉でしょうけれども、こっちはお魚が多い。これは一五%しか比べようがない。もっとひどいのを申し上げましょうか。野菜なんかは一一%しかカバレージしていない。比べようがないのです。そういうことから出てきたこの数字について、今いみじくもおっしゃった。コストを下げさせる、農産物価格を下げさせる、そういうことをしていかなければならないから、そういうために、そう受け取られるような御発言をなさった。ちょっとまずかったのじゃないですか。これ以上時間がございませんので、もう一言だけ申し上げておきます。  これらの政府がお出しになる数字については、国内の議論だけではなくて、国際交渉の中にもこういうものは利用されてくるおそれがある。これは数字ですからひとり歩きするのです。どうかひとつこういうものについては慎重に検討をされた上で、ほほこういう傾向性があるという形でお出しになる場合についても、その取り扱いについてはよく御注意をいただきたい、申し上げておきます。  後藤田官房長官、十二日の朝日新聞の社説の中にこういう記事が載っております。「後藤田官房長官が最近、ある集会で当面の政治課題について講演した。」内容について、自民党の自由新報の伝えるところとして朝日の社説にこういうふうに書いてあるわけです。「銀座の土地が二億円するとか、小金井カントリーの会員権が五億円するとか。だれがいったい、まじめに働こうとする意欲がでるか。でるわけがない。」いわゆる地価の高騰の問題について、大変これは社会問題、このようにおっしゃっております。  この御認識はそのとおりだろう。この委員会においてもずっとこの議論が出てまいりました。私、このことについてもきょうは突っ込んだ議論をしていきたいと思っておりましたが、時間がございませんので何点かに絞ります。  特に、四全総を私中身を全部見さしていただいたわけでございますが、一読したぐらいではいろんなことを申し上げるということはできないかもしれませんが、この中でちょっと感じました大事な点は、どうも東京を中心にした百キロ圏、その中でも私は栃木に住んでいるから特別申し上げるわけじゃありませんが、首都圏の中でも北関東、特に総理の地元であります群馬、栃木、茨城、ここら辺に対する整備開発のプロジェクトといいますか構想というものが、現在都心がいろいろな機能の面でも、また地価高騰ということでも大変な問題を抱えている、次にこれが補完をするといいますか、首都の機能を周辺からきちっと支えながら、これからの役割を果たしていかなければならない北関東の役割、使命というものについて、もう少し建設大臣国土庁長官がしっかりと対応なさっていかなければならないのではないのかな、こういうふうに考えているわけでございます。  特に、きのうも委員から御指摘があったようでございますが、今の高規格道路であれ何であれ、全部東京を一点にして放射線状に道路がぱあっとなっております。今、群馬、茨城、栃木三県で既に計画もでき、そして事業が着々とその緒につこうとしている北関東横断自動車道、これはちょうどこの放射線をきちっと横断をして、今までの流れ、いろいろなものを東京一点中心主義からずっと違う流れに持っていって、そしてその中で新たな開発を行っていこうという大事な要素を持っている。  それからもう一つ、国営公園の整備について、国営公園、都市公園整備の法または規則、施行令等によってこれがどういうふうに整備をされていくかということは私もよくわかっておりますが、栃木県に渡良瀬遊水池国営公園、これは栃木、茨城、群馬、埼玉の数県にまたがる、歴史的にも大変重い場所である渡良瀬遊水池の問題がございます。これらについても、他のいろいろないわゆる政策の整合性があるかもしれませんがそれも含め、さらには東京都直下型地震の研究をされ、いろいろな提言をされている学者もおられますが、この首都東京にいろいろな変化が起きたときそれを補完する、千葉ももちろんそうでございますが、千葉、茨城、埼玉、栃木、この東京を取り巻く関東圏、こういう使命等も考えた上で特にこれからも力を入れていかなければならない、このように考えておりますが、その点について御見解を伺っておきたいと思います。
  37. 天野光晴

    ○天野国務大臣 お話の北関東自動車道の問題ですが、重要な路線でありますので、今度の高規格幹線道路に指定をいたしまして、できればこの国会中に法案を出す予定でありますが、国幹審の議を経て高速国道に編入した方がなお促進が早いのじゃないかなというような感じをいたしておりまして、そういう手続をとりつつあります。  問題は、東京都内のこの状態からいって、北関東は今まで重視されなかったのじゃないかなというような感じをいたしておりまして、その点は十二分踏まえて進めてまいりたいと思っております。こういう問題については局長から答弁させます。
  38. 北村廣太郎

    ○北村政府委員 御案内のように、国営公園は全国的に今整備中でございますが、二種類ございます。一つは国家的記念事業として設置する公園と、一般的に公益的な、国民に対するサービスとして設置する公園の二種類がございまして、一般的な国民サービスの公園は現在全国的に計画的に整備中でございます。  今御質問にございました渡良瀬遊水池、地元から非常に強い御要望のあること、また立地条件としてもかなりいい点があることは重々承知しておりますが、残念ながら、ただいまの計画の中に取り上げていない、こういう観点から、直ちにこれを整備に取りかかることは困難であるかと考えております。
  39. 水谷弘

    水谷委員 総理も、東京一点集中という問題についてはいろいろな答弁の中でおっしゃっておりますが、私は、東京都は国際金融情報都市として、これからも当然そういう方向で情報の集積等々これが商業的な利用についてはもっともっと高度に集積をされていくであろう、こういうふうに考えるわけでありますけれども、この機能分散と、それから権限を地方に移譲する、中央官庁のいろいろなものを積極的に地方へ配分をしていく、分配をしていく。多極分散型というこの基本的な発想といいますか、この理念を実行するためには、やはり今申し上げました物を、機関を移すだけではなくて、いわゆる権限も地方に大胆に移譲していくということ。  それともう一つは、それを進めるのには、やはり政府主導といいますか、いわゆる公共施設、そういうものが本格的に外へ飛び出していく。まず国が、また公共的な機関が、本格的にそれに対して対応しその姿を示し、そしてそれが具体的にしっかりと定着をしていく。そういう国の機関の地方への分散の中長期的な計画というものを明確に立てて、それに対する機能の、権限の地方への移譲等も考えながら積極的にこれを進めていきませんと、このまま、現在のように二十四時間利用、さらには一日で日本が交通が可能になる、また東京に対するいろいろな高規格の道路が、交通、情報が整備されてくる、いわゆる空港が整備されてくる、こういろいろと見てみますと、どうもその点については本格的に地方への分散を図っていただきませんと問題の解決はできない、このように考えるわけですが、最後に総理、一言お答えをいただいて質問を終わりたいと思います。
  40. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 四全総で示されておりますように、多極分散型に国土改造していくということは重要であると思います。したがいまして、これに即応するように示されました機能の分極化あるいは中央の学術、情報あるいは官庁系統もできるだけ地方に分散化促進を図る、こういうような線に沿いましていろいろ策定、努力してまいりたいと思っております。
  41. 水谷弘

    水谷委員 ありがとうございました。
  42. 砂田重民

    砂田委員長 これにて水谷君の質疑は終了いたしました。  次に、正森成二君。
  43. 正森成二

    ○正森委員 私は、まず最初に総理にマル優に関連してお伺いいたしたいと思います。  総理は、本会議で繰り返しマル優制度を非難されまして、貯蓄に補助金を与えている制度で、これで日本の貯蓄が増加し円高をつくり貿易摩擦の一つとなっているという旨を述べておられます。つまり、御論議の根本は、貯蓄に補助金を与えているものであるという御見解であります。  大蔵大臣に伺いますが、基本的にはこの総理見解を肯定しておられるわけですか。
  44. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が言いましたのは、外国からそういうふうに非難されている、そういう意味で申し上げておるのであります。
  45. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 特別に財政上の、税法上の特典を与えられておるということを、比喩的に言えばそういうことが言えるのではないかと思います。
  46. 正森成二

    ○正森委員 ところが、外国からそういうように言われていると言われますが、主にアメリカから言われていると思うのですが、アメリカはそれではどうかということを伺いますと、アメリカには州地方債では利子非課税制度がございまして、残高が、一、二年前ですが、二千百二十五億ドルで個人貯蓄の八・六%であります。額も少のうございますし、学者などの説によりますと、これは貯金をする人に対する援助というよりは、それによって州が比較的同じ信頼性のある人よりも低い金利で公債を発行することができるので、これはむしろ連邦政府の州政府に対する援助の色彩が濃いという説もございます。  しかし、いずれにせよ個人貯蓄に非課税制度があるわけですが、それは一応別にいたしまして、大蔵省に伺いますが、アメリカには住宅ローンや消費者金融の支払い利子所得控除制度があるんじゃないですか。
  47. 水野勝

    ○水野政府委員 アメリカにおきまして所得税が始まりましたのは一九二年のころでございますが、そのときに個人の事業用の借入金の利子か個人の生活用の借入金の利子か、そこらを区別することが困難であるということから、およそ負債の利子につきましては控除するという制度で始まったわけでございますから、そういう意味におきましては利子の控除ということはあるわけでございますが、これがいろいろな弊害が指摘されておりまして、昨年の抜本改革におきましても消費者金融利子、これにつきましては一般的に廃止する、住宅ローン利子につきましては二件目までに制限する、こんな改正が行われておると聞いておるところでございます。
  48. 正森成二

    ○正森委員 そのほかに私的年金制度に対する優遇制度がありますね。これは時間の関係から省略いたしますが、こういう制度があるわけですね。この制度は日本のマル優制度に比べて、さらに国家が優遇しておるものであると言われております。  それはなぜかといいますと、第一に年金基金への拠出金、これが所得控除されて退職後の給付金に課税されるから、納税を老後に繰り延べるという効果があります。これが第一点です。第二点は、通常勤労期に比べて退職後の方が所得が少ないので、勤労期の限界税率と退職後の限界税率の差だけ所得税が減税されるという効果があります。これは働いているときには三〇%とか二五%ですが、老後になりますと収入がございませんから、ゼロあるいは一〇%、一五%と下がる。それから第三番目に、年金基金の運用収益は課税されない。ですから、事実上利子所得が非課税になる。この第三点は、日本の非課税貯蓄制度と同じで、利子所得減税であります。こういう点を考えますと、私的年金制度というのは、我が国の非課税貯蓄制度に比べて税制上一層優遇されているというのがすべての人の認めているところであります。  そこで、そういうことを前提にいたしまして、日米のこの点での減税規模、あるいは言葉をかえますと総理が外国からそう言われていると言われた補助金というように言ってもいいんですが、これを比較しますと、お手元に出しました資料があります。これは「減税規模の日米比較」で、一応一九八四年であります。これは円高等で変わりますから、それぞれの国のGNPに対してどれぐらい優遇されているかということを比較したものであります。  これを見ますと、日本の場合は非課税貯蓄制度で二兆四千二百二十八億円、企業年金で優遇されておりますからこれが四千九百五十八億円、住宅ローン、これは優遇制度がございます。この間変わりましたが、五十九年では四百億ですね。全部合わせますと、二兆九千五百九十六億円でGNPの一%に当たります。ところがアメリカはどうかといえば、企業年金で四百四十一億ドル、IRAというのは宮澤大蔵大臣はよく御存じでしょうが、インディビデュアル・リタィアメント・アカウントの略であります。これが百十億ドルあります。ケオ・プランというのは自営業者に対するものでございますが、これが十四億ドル、住宅ローンが二百二十七億ドルで、今、主税局長が言った消費者金融が百二十七億ドル、全部で九百十九億ドルで、これはアメリカのGNPの二・四%に当たります。つまり、アメリカは日本に比べて、これらの点についてはるかに優遇しておる。実に二・五倍近い補助金といえば補助金を与えておるというように言ってもいいと思います。この点はお認めになりますか。
  49. 水野勝

    ○水野政府委員 負債利子の点につきましては、消費者金融利子につきましては先ほど申し上げたところでございます。  それから突然の資料でございますので、その計数等の根拠は私どもちょっとつまびらかでございませんので、個々に申し上げることはできないわけでございますが、アメリカにおきましては、それぞれその目的に応じましたいろいろな制度が講じられている。一般的に、貯蓄一般につきまして特別の措置を講じているという点が、日米基本的な差ではないかと思うわけでございます。
  50. 正森成二

    ○正森委員 基本的には私の主張を否定することができませんでした。これはある論文から引用したものですが、昭和五十九年までですから、念のために国会図書館で最近の分を取り寄せました。そうしますと、一九八五年、昭和六十年はアメリカはGNPの二・六%、昨年、一九八六年はGNPの二・七%、補助金ないし減税が行われておる。主税局長が、新しいレーガン税制で消費者金融の一部がなくなったと言われましたが、それを加味した一九八七年度、これはアメリカは米国予算書の特別分析編というところに減税がどのくういかということを載せることになっておるのですね。ですから、一目瞭然にわかる公的なものでありますが、それを見ますと、やや減りましたが、それでも九百八十七億ドルでGNPに比べて二・二%であります。  そうしますと総理、何か日本だけ補助金があるみたいなことを外国が言う、特にアメリカが言うとすればおかしいんじゃないですか。それを一向に手当てをしないでマル優制度を廃止するということになれば、その不均衡はますます増大するのではないのですか。  大蔵大臣、あなたはマル優制度についていろいろ言われますけれども、そして今主税局長は、アメリカはある特定目的に限って補助をしているのだと言いますけれども、日本の貯蓄というのは、老後に備える、つまり年金がもっと多ければ貯金しなくてもいいんですよ。家を建てたい、家が建つのなら貯金をしなくてもいいんですよ。そうしたらアメリカのIRAだとか住宅に対する利子控除と同じことじゃないですか。そういう手当てをしないで、それで日本だけはばっさりと同じ役割を果たしているマル優制度をなくすということになれば、これはもう不公平も甚だしいのじゃないですか。私はそう思いますけれども、いかがですか。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは正森委員が御承知でお聞きになっていらっしゃると思いますけれども、こういうことを言うわけでございますね。自分の国も確かに減免税制度を持っている、それはしかし、最近変わりましたけれども、例えば消費者ローンであったり住宅ローンであったり、つまり支出に対して、どっちかといえば消費に対して奨励をしている、こういうことだ、日本の場合には貯蓄の方を奨励している、そういう意味で方向が全く道なんで、アメリカも確かに制度は持っているけれども、なるべく使え、使えはおかしゅうございますけれども、まあ消費をするということについてどっちかといえば奨励をしている、日本はその逆だ、こういうことを時として言う、そういうことでございますね。
  52. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣答弁はいかにももっともらしいのですけれども、しかし論文を読んでみると、ちっとももっともじゃないのですよ。この関係を研究した学者が言っているのは、住宅に対して貯金を支出するにしましても、あるいは年金に対して支出するにしましても、それは全生涯サイクルを考えれば、住宅のために貯金すれば、それが必ず住宅を購入し、その借金の返済に充てられるということで、住宅に対する建設投資を奨励していることになるのです。年金にしましても、いずれは自分が老後になったら全部使うのです。順次使っていくのです。アメリカと同じことなんです。ですから、あなたが言われた論理というのは私に対する反論にはならないのです。  それだけでなしに、むしろアメリカがそれを必要としているということであれば、考え方を変えて、外国に言われないように、住宅なら住宅あるいは年金なら年金で不安がないようにする。それに対する支出は国家が特別に配慮するというなら、アメリカはGNPの二・五%もやっているんだから、日本は一%ですから、それと似たようなことをやるからマル優について考えよというなら、私は今直ちに賛成しませんよ、賛成しませんが、ある程度宮澤大蔵大臣の言うことも道理である、こうなりますけれども、あなたの言うことは全く道理がないじゃないですか。それで庶民の貯蓄に対する利子を削ることだけはすこぶる言い立てるというのは、総理、これは公平じゃないのですね。外国の制度を比較するのなら、こういう点をよく比較してやっていただかないと税制改革は誤るということになります。残念ながら我々は税制改革協議会に入っておりませんけれども、あるいは入れてもらえないと言った方がいいかもしれませんが、だからこういう国民の声が反映されないということになるのですよ。それは困りものじゃないですか。――反映すると言一でいるので、それで決めてくれと言ってないのですよ。だから我々がこの国会の正規な席で総理及び大蔵大臣にそういうことを申し上げているわけであります。  次に、私が申しますが、同じく資料に出しておきましたが、貯蓄、貯蓄といいますけれども、貯蓄とは何かということがすこぶる問題なんですね。貯蓄というのは一体どういう定義ですか。わかっているようで案外わからないのです。
  53. 水野勝

    ○水野政府委員 国民経済計算での貯蓄、それから個人家計調査的な貯蓄、それぞれあるわけでございますが、個人家計におきますところの貯蓄動向調査、そういったものにつきましては、それぞれの貯蓄種類別と申しますか、そういったもので負債とは別にそれぞれの蓄積された金融資産を主に言うものであろうかと思います。国民経済計算的に申し上げますれば、それはもう委員御承知のように、負債の減少もあり、積極的な金融資産の増加もある、それぞれの場合の使い方に応じまして、それぞれ意味があるのであろうかと思うわけでございます。
  54. 正森成二

    ○正森委員 一応の御説明ですけれども、わかったようでわからぬわけですね。学者の定義は、貯蓄とは、可処分所得と消費支出との差額、言いかえれば金融貯蓄と実物投資の合計から負債増加を控除した額として定義されるというのが学者の定義なんです。したがって、そのとり方によって経済企画庁がやっている家計貯蓄率とそれから総務庁がやっている家計調査とは違うのですね。  例えば、昭和六十年という新しいのを見ても、総務庁の貯蓄率というのは我が国の場合二二・九%です。ところが経済企画庁は一六・一%ですね。非常に大きく違うわけです。それはなぜかといえば、例えば分母について見ますと、企画庁ペースでは医療保険の無債部分や帰属家賃がカウントされているけれども、家計調査は実際の負担分だけである。あるいは分子について言えば、家計調査では生命保険料等の払込分が入っているが企画庁ベースには入っていないというような差から、こういう数字の差が出てくるわけであります。  そこで、日本とアメリカとを比べてみますと、日本は一六・一%でアメリカはほほ五%ですね。だから、一一%も違うということで、えらい日本は貯蓄が多い、こういうように考えられるわけですが、きのうからも質問がございましたけれども、住宅ローンの借金の分を入れるとかあるいは生命保険の分を入れるとかいうようなことで比較すると、実質はそんなに変わらないのです。  ですけれども、そのほかにも考え方がございまして、例えば実物投資という問題が出ましたが、実物投資には、住宅もありますが、そのほかにも自動車だとかあるいはテレビだとか、多かれ少なかれ五年、十年ともつものがあるわけですね。こういうものをどういうぐあいにカウントするかによって考え方が違ってくるわけであります。そこで、こういうものをカウントして、そして実際に比べてみると、その差はほぼ三%に縮まるのですね。そのことは知ってますか。
  55. 水野勝

    ○水野政府委員 自動車、テレビ、そうしたものまで貯蓄に入れてという、そういった意味での蓄積といったものにつきましては、私どももちょっと今までそうした考え方、分類というものは余り考えたことはございませんので、やや新しい考え方ではないか、それに基づきますところの計数といったものは、私どもは把握はいたしてないわけでございます。
  56. 正森成二

    ○正森委員 やや新しい考え方なんて言って、自分が勉強してなければやや新しい考え方なんで、そんな勝手なことを言ったらいけませんよ。――委員長、真剣に質問しているんですから、不規則発言をしないように言ってください。  例えば、ここに日本銀行の金融研究所の調査役の堀江さんという人が、「わが国における貯蓄の実態と今後の動向」というのをずっと前に書いているのですよ。日本銀行ですからね。その人がどう言っているかというと、これは実物投資の合計から負債増加を控除した額だ、しかし、実物投資をどう考えるかということで随分違うので、こう言っています。「耐久消費財購入を貯蓄(実物投資)に加える。」そして公平の観点から「住宅・耐久消費財等の実物資産の保有ないし使用に伴い生ずる地代・家賃、レンタル料等のサービス」これは帰属サービスと言うのですね。この「料金を所得に加えて貯蓄率を再定義してみよう。」ということで計算しているのです。  これは非常に合理的な考え方であります。つまりいろいろ投資するんだ、しかしながら、その帰属サービスで使ってますから、自動車なら五年で全部消費するのですから、広い意味での消費ですね。そういうぐあいに計算し直してみると、日米の差は約三%ぐらいに縮まる、こういうのですね。ですから、決して大きな差はないわけであります。  しかも、日本でそういうものがなぜ必要かといえば、これまで同僚委員からしばしば質問がありましたし、我が党の岡崎委員も言いましたように、日本は高齢化社会に備えて老後に備えなければならない。住宅を購入したいが、政府の施策がいいからか悪いからか知りませんが、土地が物すごく高くなって、住宅購入には金がかかるから、住宅ローンが高くなるというようなさまざまな理由から貯蓄せざるを得ないようになっているのです。現に労働省は千五百万円貯蓄がなければ老後はやっていけないのだということを発表したでしょう。これは岡崎委員質問しましたから、私はあえて申しませんけれども。そういう点を考えますと総理、あなたの言い分も国民全体から見ると決して納得ができるものではないのですね。しかも、私は中曽根総理のこれまでの答弁でどうしても納得できない点があるのです。しかし、私も総理発言で、いい御答弁のときにはごもっともであるということで、おとついの質問でも非常に敬服してその旨を述べておりますから、いつもかも総理に反対しているわけじゃないのです。  しかし、きのう総理がこう言っておられるのですね。二〇%出してもらえばもう自由だ、調べない。今までどおり貯蓄が続く。社会を安定させ、安心できる。ところが、野党の言うようなグリーンカードをやったりして懐へ手を突っ込むようなことをやると、銀行預金やあるいは郵貯は激減する。日本経済は大変だ。これ以上追及しない、納めてください、こういうことなんだ。速記録がございませんから、私が自分の席でメモしたので多少は不正確かもしれませんが、ほぼそういうことを言われたと思うのですね。総理、それはお認めでございましょうか。
  57. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ほぼそういうような趣旨のことを言いました。
  58. 正森成二

    ○正森委員 そこで、それは総理のお立場からはごもっともだと思うのですけれども、それは今行われている正常でないものをそのまま認めて、そしてそれに対してそれを正常化するという努力を全く放棄したものにほかならないというように言わなければならないと考えるわけであります。  そして、私はほかの外国の例も調べてみました。大蔵大臣、あなたの方に参るかもしれませんからよく聞いていただきたいのですが、例えばフランスではどうなっているかということを調べてみますと、フランスでは総合課税ですけれども、分離課税も認めております、高額の所得者や高額の貯金所有者には。まあ宮澤さんクラスですかな。その分離課税は、税率は四五%で日本の三五%より高いんですね。それだけでなしに無記名譲渡性預金というのがあるのです。これは無記名でもよろしい。総理が言われたように、この部分は調べませんからどうぞ御自由に貯金してくださいという貯金ですね。これが貯金全体の二四%を占めているのです、個人の。それについてはどうかといえば、そういう恩典を与えるから、そのかわり分離課税の場合は税率を高くして五〇%ですよということになっているのです。それだけでなしに、こういう場合には無記名貯金ですから恐らく相続税もかかりませんね。無記名でわからないのですから。正森成二はこれだけ貯金を持っていると言って、私の息子に相続させない。息子はそのまま無記名貯金のものを持って、それを引き出してみたり利子でやったり、私はそんな貯金持っていませんけれどもね。というようなことになったらいかぬというので、特別にこの場合には財産税に相当する額として額面の一・五%を課税することになっているのです。額面の一・五%といったら大きいですよ。利率が仮に一〇%としたら一五%ですから、八%だったら二〇%ぐらいかけるということですから。そういうぐあいにしてきちんとやっているのですね。総理のように、二〇%貧乏人からも大金持ちからも取って自由自在だから、これで今まで違法だったのが合法になるのですというようなそういう税制は先進国ではとっていないのです。  総理はそう言うと、またグリーンカードをやるのか背番号制をやるのか、だから懐に手を突っ込むというが、フランスではそうやっていないんですよ。銀行がちゃんと協力をして、本人確認については身分証明書のほかに居住証明書をとってコンピューターに入力、保管する。その結果、公式の発表では申告漏れはほとんどない。もし支払い利子の報告漏れがあれば、これは二〇〇%のペナルティーを取る、二〇〇%といったら二倍ですからね、物すごいペナルティーであります。こういうことをやっているのです。  ところが、今までの総理の本委員会での答弁あるいは本会議での答弁を見ると、今までゼロだったものは二〇%取る、本来なら総合課税すべきものを、我々は三五%の分離課税が金持ち優遇だと言っているけれども、それまでも四割もダウンして二〇%にして、今までは不正、違法だったけれども、これからは合法にするから自由にやってくれ、相続税も納めなくてもいい、脱税資金があってもそれはとがめません。そんなことでどうしてこれが最大の不公平税制の是正だと言えるのですか。
  59. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 他に不正があればもちろん調べるのは当たり前です。脱税であるとかあるいはそのほか非合法的な手段によってそういう貯蓄が生まれた場合には、それは当たり前じゃないですか。私が言うのは、平穏、公然として皆さんが貯蓄した、そういうものについては、今のような考え方に立った考え方よりも、いわゆる新型マル優というような新しい感覚に立った制度をつくったらどうか、そういう意味で申し上げておるわけです。
  60. 正森成二

    ○正森委員 いや、聞いている国民はそう思いませんでしたね。平穏、公然ともう税金を納めなくてもいい制度をつくるんだというようにとっています。  宮澤大蔵大臣、あなたもまた予算委員会で言われましたね。私はメモしていたからあるいは不正確かもしれませんよ。マル優制度を存続せよという野党の質問に対して、株や土地課税制度、でれば課税制度があって、その強化とか是正ということが問題なんだ、ところがマル優については全く課税がないんだ、こういうことを放置していいんでしょうか、こう答弁しておられますね。その骨子はそのままですか。
  61. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ほぼそういうことを申し上げました。
  62. 正森成二

    ○正森委員 宮澤大蔵大臣、私はあなたが頭脳明断であるということは敬意を表しておりますが、また一般的に国民が聞けば、ああなるほどと思われるかもしれませんが、あなたは基本的に比較すべからざるものを比較して、それで人になるほどと思わせるという非常に何かおかしな技術を持っておられるのですね。いいですか。株だとか土地課税制度と比較すべきものは利子課税なんですよ。だから利子課税なら原則は総合課税で、総合課税をやれば、不利益なものは五〇%、六〇%になればなるんだけれども、三五%という分離課税制度がある。そしてそのほかにマル優制度があって、この部分は非課税だ、こういうぐあいになっているのです。マル優は初めから非課税と決まっているのです。  こういう論理でいくのなら、株にいたしましても五十回以上の売買、二十万株は課税ですが、それ以外は全く非課税で野放してございます。土地について言うなら長期の譲渡についても二分の一は全く非課税でございます。残りは課税していますというのが比較の対象になるのです。もしマル優と比較しようと思えば、株についてはこれこれ以外は全く課税していません、土地については二分の一は課税になっていません、こういうのが比較の対象になるんで、もともと非課税にしているものと全体とを比べるなんというのは、これは論理学の初歩的な誤りを犯しているのですね。だけれども、それは冷静に考えないと気がつかないから、いや、なるほどマル優は悪いものだなと思う人があるかもしれないけれども、そんな言い方をすれば、土地が二分の一非課税になっているのはどうだ、株はどうだということになるので、私はあなたのレトリックのうまさについては敬意を表しますけれども、しかし、それが決して公正なものではないということを申し上げておきたいと思うのですね。  そして株について言いますと、例えばある論文では、六十一年三月時点で時価総額が五十三兆円余りで、個人の売却益が三兆三千億円ある、これに通常どおり課税すればうんと課税になるという説もあります。あるいは公社債や株について言えば、これは六十一年の合計ですが、株式の売買総額は百九十三兆円、公社債に至っては二千八百四十四兆円、合わせて三千三十七兆円でGNPの九倍に達します。これについてどうするんだ。有価証券取引税は取っておりますよ。しかし、それだって少なくて、利益については全然もう課税してないんですからね、事実上。そういう国民の声が出るのは当然ではないかというのが私たちの考えなんですね。  宮澤さんのお名前も出まして、大分辛抱されましたから、どうぞお答えください。
  63. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 少し混雑してまいりましたけれども、そのマル優との関連で株式のキャピタルゲインとか土地についてのお話は、これは質問者が御提起になったわけでございますけれども、私はその質問者の御提起は間違っていないと思うのでございますね。  私が申し上げましたのは、確かに、殊に株のキャピタルゲインの課税の仕方は非常に難しいので、前国会における政府提案でも強化をお願いすべくいたしました。それはやはり税務執行体制というものが整うに従いまして強化をしてまいりたいと考えております。株のキャピタルゲインや土地の譲渡所得は、本来これは課税をせらるべきものであって、税務の執行体制の強化に伴ってそれを強化しつつございます。それに対してマル便というのは、これは課税をし危いということになっておりますから、そこは問題があるんじゃございませんか。何となれば、資産所得であるという意味では両方が一緒でございますから、同じ資産所得であればやはり課税をする。そして、株のように執行体制が整うに従って強化をするということは、これは全部取れればまことにいいことでございますけれども、現実にはそれは行政としてできませんから、やれるだけのことをやっておるのであって、それが不十分であるから資産所得である利子は課税をしなくていいということにはこれはならない、こういうことを申し上げたわけでございます。
  64. 正森成二

    ○正森委員 御説明がございましたけれども、私どもは利子に課税しないでいいなどということは言っていないので、三五%の分離課税はもっと上げるべきであるとか、いろいろ提言を私どもの党はしております。  株の売買はなかなか捕捉が難しいと言われたでしょう。しかしそれは違うので、例えば一橋大学教授の野口悠紀雄という人がおります。この人は大蔵省の官僚だったのですね。それがやめて大学の教授になったので、税制改革については終始大蔵省や政府税調に協力的だった人です。それが論文を書いておられるのですよ、「金融財政事情」の六十二年一月十九日。どう言っておられるかというと、有価証券については、取引記録が残っているので、とくに情報処理技術が発達した現在では、他の所得に比べてむしろ捕捉が容易であるとさえいえる。  具体的には、売却が行なわれた時点で、売約価格の一定率の源泉徴収を行ない、購入価格の証明は納税者の義務とすればよい。購入価格の証明を納税者の義務とするというのは不動産のキャピタルゲインについて現にとられている方式である。こう言っているのですよ。不動産の場合は登記簿が税務署へ回ってくるでしょう。そうすると売り値が一遍にわかりますね。そうすると売った者は、実は売り値はこれだけあるけれども、おれが買ったのはこれだけだ、だから売買の差額はこれだけしかないんだという証明は売り手の側にあって、税務署がそれをチェックして課税するのです。だから、この野口教授が言っておられるのは、株の場合だってできるじゃないか。これは共産党が提案しているんじゃないですよ。大蔵省に非常に友好的な大学の教授、元大蔵官僚が言っているのです。それは主税局長なんかよく御存じですね。だから、そういう点も考慮しないで一方的な議論をなさるのは慎んでいただきたい。  時間がございませんので、税制協議機関の方に参ります。  総理に伺いたいと思います。総理は、繰り返し本会議で我が党の質問に対して、国会で決めたことだ、共産党が税制協議会に入ってないことを政府に八つ当たりしないでほしい、こう言っているのですね。そのたびに議場がわっと沸いて、何かいかにも総理は優秀な答弁をされたなという印象を与えているんですね。  ところが、事実は、私どもはそんなことを聞いているんじゃないのです。ここに総理の所信表明演説があるのですよ。その中で総理は、「これらの問題については、現在、衆議院に設置された税制改革協議会において、鋭意審議検討が進められているところであります。」というように言っておられるのです。だから、総理が言っておられるから、総理が「衆議院に設置された税制改革協議会」と言われるのは、いかなる根拠、認識に基づいて言っておられるのか、こう聞いているので、八つ当たりでも何でもないのですよ。あなたの言われたことについて、それをあなたはどういう根拠で言っておられるのですかというのだから、正当な質問じゃないですか。
  65. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いやしくも衆議院議長が中へ入りまして、そのあっせん案としてできたものを、共産党を除く各党が受諾して、有力政党の全部がそれに参加してやっている、こういう状態から見れば、それが衆議院の大体の意向を示すものと考えていいでしょう。全部とは言いません。大体の意向はそれで決まると見ていいでしょう。そういう重さを無視することはできないし、議院内閣制にありましても、政党各間のあるいは国会の動向というものは最大限に注視して、尊重していきたい、そう考えておるわけです。
  66. 正森成二

    ○正森委員 何か重さを無視することができないというようなことを言われましたが、今の発言は極めて重大ですね。大体、大方の動向が決まるような政党が一緒になれば、いろんなことをやってもよろしいというように聞こえてね。議会制民主主義というのはそんなものじゃないのですよ。そんな論理を突き進めれば、自民党が三百何議席とったら大方の動向は決まったというようなことを言えるでしょうし、大方の動向といえば、えらい失礼ですけれども、私どもだけでなしに、社公民と呼ばれる三野党のうちのどれかが欠けても、大方の動向は決まったというようなことを言い出せば、これは議会制民主主義というのは崩れてしまうことになります。  大蔵大臣、あなたも同じようなことを言われておりますね。大体補正予算について、これは欠陥補正予算ですね。売上税やマル優が廃案になったのに、それの歳出歳入についても是正していないのですからね。本来こんなことはあり得ないのです。それはなぜかと言うたら、あなたも税制協議機関で議論されておりますのでそれを待っている、こう言われましたね。それについて我が党が本会議質問をしたら、公党が集まって協議されておるのでございますから私的なものと言うのはいかがでございましょうか、こう言われましたね。そのとおりですか。
  67. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ここに議長あっせんの文書がございますけれども、「本院に税制改革に関する協議機関を設置し税制改正について検討を行うこと。なお、その組織、運営については、各党において速やかに協議すること。」とございますので、こういうことだと、これは議長によって設けられたと思っております。
  68. 正森成二

    ○正森委員 我が党は遺憾ながら直間比率の見直しというようなことは、今この予算委員会の論議でも、総理が、それは結局あの売上税のままではないかもしれないけれども、間接税導入ということだという意味のことを言われたように、その危険性があるのでそれは了承しませんでした。けれども、そのときに議長のところに我が党の金子書記局長などが参りまして、我々はこのままでは受諾できない、しかしここに書いてある各党の協議機関を置くとかあるいは各党が協議して設置するとかいうこの「各党」の中には、日本共産党・革新共同は入るのですかと聞いたら、議長は入りますと、こう言っているのですよ。そして我が党を除く動きがさまざま行われて、まさに決定寸前のときにもう一回行って、現在の時点ではどうだと言ったら、現在の時点でも前の見解は変えておりません、こう言っているのですよ。それなのに、一部の政党の間で六百万人の支持のある公党を除くというようなことはもってのほかであると言わなければならないのですね。  ここでもまた宮澤大蔵大臣、甚だ失礼でございますが言わせていただきたいと思うのですが、あなたは物すごく秀才なんですけれども、論理学の点からいうとちょっとおかしいんですね。例えば、公党が集まっておられるわけですからこれは私的なものとは言えない。そうすると、何か衆議院に設置された協議機関であるという論証ができたかのような印象を人に与え、御自分でもそう思っておられるらしいのです。しかし、私どもが高等学校のときに学びました論理学では、AはBではないということはAはCであるという証明にはならないのですよ。これは私、高等学校の一年生のときに小木曽という教授から習ったのですよ。素人はごまかされるかもしらぬけれども、AはBではないということはAはCであるという証明にはならないのですよ。それは論理学の初歩の初歩なのに、あなたの答弁を聞いておると、しばしばこういう誤りを犯すんですね。私は、宮澤さんは頭のいい方だから、恐らく誤りを犯しているんじゃなしにわざと言っておられるのだろう、非常にレトリックがお上手であるというように思っているのですけれども、しかしそういう考え方は誤りであるということを申し上げておきたいのです。――委員長、私が真剣に聞いているわけですから、不規則発言は慎んでください。私は今論理学を聞いているので、責任論を聞いているんじゃないんですね。責任論はまた別の機会で論ずる点があるでしょう。  そこで、総理、私はまじめな議論として、この問題は民主主義の根幹にかかわる問題だというように思うのですね。国会というところは、どんなに少数であっても、国会には我々より少数の会派が参議院なんかにはおられますけれども、しかし少数であっても議席を持っている限りは予算委員会質問の機会が与えられ、採決のときにはこれに参加する。私のような未熟な者の意見でも、あるいは参考にすべき点があれば参考にしていただくということが、私どもの背後にいる五百万人なり六百万人なり日本共産党に投票された日本国民に対する政府の責務じゃないですか。だからこそ、それを議会制民主主義は保障しているんじゃないんですか。  私は、学生時分に法制史の勉強のときに、十八世紀末の啓蒙思想家のフランスのボルテールの言葉を学んだことがあるのです。それではこう言っているのですね。私は君の意見には反対である、しかし君がそれを主張する意見は私の命をかけて守るというのがフランスのボルテールの言葉なんです。これは当たり前のことじゃないですか。  このボルテールの言葉だけでなしに、アメリカのホームズ判事、ブランダイス判事という十九世紀末から二十世紀初めにかけてあらわれた最高裁判所の非常に有名な評判のいい裁判官がおられます。その裁判官が、ハンガリー生まれの婦人でございますが、アメリカに帰化することを希望したんです。これはシュビンマー事件と呼ばれる一九二九年の有名な事件ですね。その中で、この婦人は平和主義者だったんです。だから、いざというときに武器を持って戦うという帰化についての宣誓はできない、こういうことを言うたのですね。そこで、この婦人の帰化を認めるべきかどうかという点が争われた場合に、ホームズ判事はこう言われたんですね。  これは、私は学生時分に学んだのですけれども、非常に感銘を受けたので今でも記憶しているのです。「憲法のなかに於て、いかなる他の条項より重しとすべき原則があるとするならば、それは思想自由の原則である。思想の自由とは、われわれの同意する思想の自由ではなくて、われわれの憎悪する思想の自由である。余はこの原則を確守しようとする限り、彼女を国内に入れ、生活を共にすることは許容さるべきであると考える。」こう言っております。  私どもは共産主義者ではありますけれども、たとえそれがフランスであれアメリカであれ、すぐれたものはすぐれたその文化遺産は継承すべきである、こう考えております。私は、自由民主党総裁としての総理がこういう原則、見解に立たれなかったことを極めて遺憾に思います。我々の見解総理から同意されようとかあるいは非常に喜ばれようとは私は思っておりませんし、そのことをまた要求もしません。しかし総理が、余はこの原則を確守しようとする限り、憎悪する思想であっても、日本共産党を税制協議会に迎え入れ審議をともにすることが許容さるべきであると言われていたら、これはもう名総裁、名宰相ですね。しかし、遺憾ながらそうではなかったということを私は残念に思いますが、これについての御所見をお願いします。
  69. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、正森君の御議論を予算委員会でいつも拝聴して、共産党ではあるが立派な議員であるな、さすが我が同窓であると非常に感銘し、心の中では称賛しておるところもあるのです。ですから、その点は御心配なく。しかし、あなたのお話をいろいろ聞いてみると、論理学的にはおもしろみがありますが、政治学的にはやはりここで八つ当たりを言っている、そういうことになるので、私の方を向いて言われないで、そちらの方を向いてどうぞおっしゃっていただきたいと思います。
  70. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどCとおっしゃいましたのは、コミュニストのCかなと思って伺っていたのですが……(正森委員「いや、違います。ABCのCです」と呼ぶ)私の申したいのは、そのCが入りませんとこの協議会というものはできなくなってしまうというのは、そのCというのが拒否権を持っているということになりますから、それは私は民主主義のルールに沿わないと思います。
  71. 正森成二

    ○正森委員 拒否権があるとかどうとかという問題ではないのですね。現に、私どもは予算委員会に入っていますし大蔵委員会に入っていますけれども、別に拒否権が与えられたというようなことはございませんから、それは相談で決まることであって、そもそも初めから参加させないというのは、これは今私が引用しましたホームズ判事の考え方だとかそういうものとは違うということだけ申し上げて、総理のために非常に遺憾であるということを私どもは申し上げておきたいと思います。  時間の関係で、次の問題に移らせていただきます。  きのうからココムの問題について非常に答弁が混乱いたしました。それで、きのうの夕刊、きょうの新聞にいろいろ出ておりますが、きょうの午前中のトップバッターの質問に対して、それを調整される総理発言あるいは後藤田官房長官発言がございました。後藤田官房長官、非常に御苦心の発言であったと思いますが、もう一度お聞きしても同じ答弁でございましょうから、時間の節約から、水谷議員でございましたか、答弁をそのまま使わせていただきたいと思います。  そこで申し上げたいのですが、特に私は外務大臣に、我が国の国益を守るという外交上の責務を持っている外務大臣として、また外務官僚にも真剣に聞いていただきたいというように思うのです。  それは、東芝機械がココム違反をやった、ひいては外為法違反をやった、これは一番最後で外為法違反が成立するかどうかという問題も論じますが、その問題と、それによってソ連の原潜の低音化が行われた、国防の安全に重大な危害を与えたということとは厳密に区別しなければならないのです。それは、さすが私ずっと質問を聞いていて、後藤田官房長官は法律家だからその点をいち早く気がつかれたなというように思って敬意を表しておきますが、その点を十分に考えませんと、外務大臣アメリカには、損害賠償で三億ドル請求しろ……(中曽根内閣総理大臣「三百億ドル」と呼ぶ)三百億ドルです。三億ドルくらいなら知れているかもしらぬけれども、三百億ドルというのはとんでもない請求ですね。新しい攻撃型原潜一隻つくるのに十八億ドルとか、それを三十隻つくらなければいかぬとか、いろいろ出ている。これはもうとんでもない議論ですけれども、そういう議論がもし出たときの我が国の対処にも関係することなので、軽率な発言をしてもらったら困るのですね、外務大臣。  そこで、いろいろの新聞やあるいは週刊誌にも出ておりますけれども、まず第一に、そんな低音化と因果関係なんか全くないのですよ。総理はとりなさなければいかぬという見地からでしょうか、濃厚な嫌疑があるということに意思統一されました。しかしこれは、官房長官はうなずいて聞いておられますが、政府統一見解ではないのですね。統一見解といったら官房がまとめなければいけませんけれども、通産とそれから外務が意見が違うので、そのすり合わせの結果、正規の統一見解という形でなしに総理が御見解発表になったというように私どもは理解しておりますが、因果関係という点では三つの点で因果関係がないと言わなければなりません。  これはいろいろなところに出ておりますが、まず第一に、ソ連の原潜の低音化は七〇年代末までに進水したビクターⅢなどで既に見られて、八〇年代初頭に進水した新型原潜ではその点は顕著である。そして、低音原潜の代表格であるシエラだとかマイクだとかアクラというのがあるけれども、シエラとマイクは八三年の六月から七月までに進水、最新のアクラも八四年の七月までに進水、太平洋艦隊に配備された。これは外務省も防衛庁ももちろん御存じでしょうが、米国海軍研究所の報告書「ソ連海軍ガイド」、英国の「ジェーン年鑑」に載っている事実ですね。そしてまた、きょうも報道されておりますけれども、既に一九七九年ごろ、アメリカでその点について広く論議されているのですね。だから、まず第一に、時期が著しく早いと言わなければなりません。  念のために、ここに図面がありますが、機械を輸出したのは五十七年の十二月から五十八年の六月ですが、部品に不十分な点があって、今度外為法でひっかかったのはこの後の部分なんですね。その前の部分は時効成立ですから、五十九年の六月二十日である。これを動かすにはコンピューターのプログラムが要るのですが、修正プログラムは五十九年の七月一日である。そして実際に稼働を始めたのは五十九年の末であると考えられる、こういうのですね。そうしますと、はるかもう四年も五年も前にソ連原潜の低音化が行われているのですから、時間的にまず因果関係がない。  それから第二番目に、場所がバルチック造船所と言われるのですけれども、バルチック造船所では原潜なんかつくっていないのですね、一九五〇年代のごく一部を除いて。ですから、そこでつくられるわけがない。  第三番目に、ソ連の原潜の低音化というのは、決してスクリューがどうこうしたというだけでなしに、蒸気タービンの減速歯車、冷却系統のポンプの設計変更、それからスクリューの設計変更、こういうものが重ならなければ、重ならなければというか重なった結果起こったので、スクリューの研磨機がよくなったとかそんなことだけじゃない。だから、一部にはスクリューが関係あるとしても、それは設計が非常に向上したというソ連の技術を褒めるべきであって、東芝機械がどうこうということは関係がないというのが説なんですね。  ところが外務大臣、きょうの新聞なんかを見ますと、外務省にはおもろい論理をする人がおると見えて、これをつかまえて、三つの複合原因だとすればスクリューの点も全く関係がないとは言えないのじゃないかというようなことを言って、無罪の証拠を逆に有罪に使おうという動きが外務省にあるのですね。官房長官はよく御存じでしょうけれども、世の中では、無罪を立証しなければ有罪であるなんて、そんなばかな原則はないのです。そんな原則を打ち立てられたら、私も総理もみんな有罪になっちゃうんです。何人も自分が無罪であるという立証はできないんです。そうでなしに、有罪であるという合理的な、疑いを超える程度の証明、証拠があって、初めて人は有罪になるんです。  総理、私がこう言いますと、あなたはまた、論理的、法律的に言って、政治的に物を言わない、こう言われるでしょうから、私が念のために言っておきますと、今言っているのは裁判の原則で、もちろん政治の原則ではありませんが、しかし政治の原則でも、損害賠償がどうのこうのとかあるいは人を処罰するとかいう場合には十分考慮されなければならない原則であります。しかも、東芝機械の関係者は現に訴追されているじゃないですか。そのときに、もちろん有罪かどうかは外為法の四十七条、四十八条違反とかそういう問題になるでしょうけれども、情状酌量に当たっては、これも刑に重大な関係がありますから、現に通産省は一年も共産主義圏との貿易を停止するという、かつてない重い処分をしているでしょう。それはやはり安全保障に重大な関係があったということを考慮しているわけですから、行政処分には重大な関係を持っているのです。そういう点については、慎重な上にも慎重でなければなりません。  そうだとすれば、私は東芝機械にも東芝にも共産党員ですから恩も恨みもありません、弁護しようなどとは思わないけれども、しかし、事の理非曲直は、たとえ相手が大企業であろうと何であろうとたださなければなりません。責任がないじゃないですか。責任のない者を無理やり責任者に仕立てて、そしてアメリカに対して屈従的な外交をとる、それでも日本の外務省であり、あるいは外務大臣ですか。
  72. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいまるる正森委員の御指摘は承りましたが、政府としての関係各省の統一の見解は、昨日から述べましたとおりのことでございます。
  73. 正森成二

    ○正森委員 総理、今言われたことを聞いても何のことやらさっぱりわからぬですね。何のことだかさっぱりわからない上に、私は黙視することができない問題があると思います。それは、アメリカ側がそういうことを日本に高飛車に要求される、そういう資格があるのかどうかという問題にも関係してくるわけでございます。  これは私が、ココムの問題について非常によく勉強され著作も発行されている人から直接に聞いて、自分自身で調べたことであります。私が手に持っておりますのは一九七六年四月十二日の米下院国際関係委員会の公聴会の記録であります。ここに英文の原稿があります。これを見ますと、ここでは当時のエドウィン・スピーカー国防省情報局副長官が証言しております。この中ではどう言っているかというと、一九七二年八月二十八日、米商務省はアメリカのブライアント社製の精密機械用研磨機百六十八台をソ連に輸出することを承認した、これは、違反じゃなしに承認してしまったのです。その結果、同研磨機がソ連のICBMのMIRV化、多弾頭化に関する何らかの問題点を解決し、その誘導装置の部品となる精密ベアリングなどの製造を可能にした、これはアメリカで言われているのですよ。そして、その結果、弾着精度、MIRV化が行われたのですからアメリカの本土防衛は非常に困難になった。しかも精密ペアリングがつくれるようになったのですから、だからそのことによってアメリカのサイロをねらうことができるようになるというようなことで大問題になったと言われているのです。しかも、何でこんなものを許可したのかというと、その背景としてスピーカー氏は、当時、イタリア、スイス、日本などのより優秀な研磨機の出現により米国内でブライアント社製品が競争に敗れる事態が生まれていたことを指摘。米国政府が同社救済のため同社製品の対ソ輸出をあえて認めた可能性を示唆しています。何でしたら、この英文をお読みください。私が言うたとおり書いてあります。  アメリカは、今のような証拠不十分な、原潜の低音化ところか、本土をねらわれるICBMのMIRV比とその弾着精度の精密化に随分貢献した機械を百六十何台も輸出しておる。しかもそれは、その会社が下手したらひっくり返って倒産するかもしれぬのを防ぐためだ。そんなことをやっておいて、因果関係も明らかでない日本の東芝やらその本社まで追及する。しかも、アメリカの国会議員は、東芝の製品を置いて、それをハンマーでたたきつぶす、あるいは首つりするんだといってロープを出す。一体政治家がすることですか、そんなことは。  私はあえて言いたい。日本の国会議員だって言うべきことは言うのです。私はアメリカ側に対して、自分の頭のハエを追え、こう言いたい。もし国益を重んずるなら答弁していただきたい。
  74. 倉成正

    倉成国務大臣 先ほど、ハンマーで東芝の機械を打っているという姿が写真に載ったりテレビで放映されたということについては、総理アメリカの友人から大変恥ずかしいことであるという手紙をいただいたというお話がございましたが、偶然か私にもそういう手紙をいただいております。したがって、そういうことは恥ずべきことだと思っておられるアメリカ人たちも大いにあると思います。  それから、他国についてココム違反がないかどうかということでございますが、これはいろいろそういう例はあるかと思いますが、具体的なことについては言及を差し控えさせていただきたいと思います。  私が先般から申し上げましたことは、昨日も申し上げましたとおり具体的には証拠は入手していないが、因果関係について濃厚な嫌疑があるという認識を政府として有しておる。したがって、因果関係について濃厚な嫌疑があるというのも、一定の因果関係が存在し得るというのも、内容としては同じことを述べたものであるという認識でございます。したがって、これは政府として認識の不一致はございません。
  75. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 因果関係があるとは言っていないのです。因果関係については濃厚な嫌疑がある、疑いがある、そういうことを言っているので、あると私は言ってはおりません。それは、まだ我々が証拠を握っているわけでもなし、現場を見たわけでもなし、そういうふうに断定すべき何物も今持っていないから言うのです。  しかし、諸般の情勢を見、またいろいろな我々が受けておる情報その他を見ますと、なるほどソ連の原潜の音というものは、七九年あるいはそれ以前から改良して減ってきていると思うのです。これはもう日進月歩ですから、国防の衝にある者は、一日も早く欠点を直そうとしてあらゆる努力を払ってその音を少なくしていると思うのです。それは今日も努力している。七〇年代も、八〇年代も、八七年も同じように努力している。それらの最近の趨勢全般を見ますと、七九年だけではない、今日に至るまで、かなりそういう顕著な結果が出てあるがごときいろいろな知識を我々は持ってきておる。そういう点を見ますと、東芝の問題が原因であるか、あるいはそうでないか、これはわかりません。総合的な努力で明らかに減ってきているとは思います。思いますが、少なくともスクリューというものは、あるいはスクリューに関係した部分が大きな一つの要素になってきていると推定するということは十分可能なんです。そういうような面から見まして、最近の情勢を見ましてこれは嫌疑が濃厚である、そう判断しておる。  しかし、これは因果関係だけの話であって、日本側の東芝がココム違反という重大な違反事件を起こしたことはもう厳然たる事実で、しかもその内容というものは、虚偽の申告によってやったので、過失でやったというような問題ではない。虚偽の申告によって、そういうことでやったということは、アメリカだけではない、日本の国防の利益を重大に侵害していることなんで、私は、だからこれは国民に対する裏切りであると言っている。みんな、新聞や何か読むと、アメリカに対する関係だけを論じているようであるけれども、それどころじゃないのです。我々が営々と努力している日本の防衛に対しても、これは重大なる脅威を与えているような結果になっているのではないかと私は推定している、それを私は言っておるのであります。
  76. 正森成二

    ○正森委員 嫌疑があるとか推定とか、トーンダウンされておりますが、しかし、それにしましても私は、日本の防衛に重大なる裏切り行為であるというようなお説には賛成することができない、因果関係の上からいいましても、それから法律論からいいましても。それは最後に申します。  栗原防衛庁長官、これは必ずしも御答弁は要りませんけれども、よく御承知のことだと思いますが、ジョン・ウォーカー事件というのがあったことは御存じでしょう。一九八五年五月に摘発されたアメリカのスパイ事件なんです。それで、調べが進むうちに、ポラリス原子力潜水屋の通信士などを勤めた経験のある元海軍准士官のジョン・ウォーカーと、息子で原子力空母ニミッツの乗組員マイケルら海軍関係者四人が、十七年間にわたってソ連の原潜探知システムに関する資料をソ連側に売り渡していたことが明らかになったのです。これに対してワインバーガー国防長官は激怒して、犯人たちを銃殺刑にすべきだと言ったということが報道されているのです。その結果、これらの報道によれば、ソ連側は十七年も前から自分の原子力潜水艦の音が大きくて米側にことごとく探知されていた、これは一大事だということで原潜の低音化に非常な努力をしたんだと。  そこで、これがおととしに発覚したので、ワインバーガーは、これが余りに大きな問題になってここだけに目がいくと、より高性能の攻撃型原子力潜水産の予算獲得あるいは北大西洋などに張りめぐらされた原潜探知組織、それを新しくする、膨大な金がかかる、それにはぐあいが悪い、どこかスケープゴートがないかというところへ、たまたま東芝機械のあのモスクワ支店長の垂れ込みがあったというのが筋だというのが、大方の識者が言っているところなんです。  そういうのに引っかかって、アメリカ側のそういう不手際、それは棚に上げて、実質的に責任のない東芝機械やらその親会社の東芝に全責任を負わせるというようなことがかりそめにもあるとしますと、繰り返して言うが、私はこの企業を弁護するのではないですけれども、罪のないものを罪人に仕立てるというようなことはしてはならないと思います。そのことを、御答弁は要りません、お聞きになっておいていただければ結構です。――お答えになりますか。
  77. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 私、別にワインバーガーをかばうつもりはございませんが、私の承知しているワインバーガーはそういうことをやる男じゃないと思います。私は正森さんもよく承知してますよ。総理同様、私はあなたを個人的には高く評価いたしますが、しかしそういうような推定をされるのは、俗に言うげすの勘ぐりではないか、こう思います。
  78. 正森成二

    ○正森委員 いろいろおもしろい表現をいただきましたが、これは私が発案して言っているのではなしに、そういうのを報道されているマスコミが、一カ所でなくて複数以上いろいろあるということを注意喚起のために言っているのです。  それから最後に、どなたが答弁になるのかわかりませんが、ココムの問題について、我が国の裁判で非常に問題になりました事件に輸出申請不承認処分取消等請求訴訟事件というのがあります。これは昭和四十四年の東京地裁の事件で、七月八日に判決が行われ、双方が控訴いたしませんでしたので確定しております。  ここではどういうぐあいに言っているかといいますと、これは結論から申しますと、当時行われました中国の北京と上海における見本市に十九台の機械を出品するということになったのに、それはココム禁止製品であるということで出品してはならないという処分があったのですね。それに対して不服を申し立てた事件でありますが、結果的には政府が勝訴したのです。国家賠償については故意過失がない、そういうことで勝訴はいたしましたが、しかしその理由の外為法の適用が有効か無効か、許されるかどうかという点については、政府は敗れておるのですね。その中で、こういうように判決は言っております。  まず、通商の自由というのは憲法上そもそもどこから由来するかということで、外為法四十七条について、同条は、単なる輸出自由という政策目標を掲げたものではなく、憲法二二条一項の規定により基本的人権として国民に保障されている営業の自由の内容としての輸出の自由という国民の権利とその公共の福祉による制限を具体的に規定したものというべきである。こう言っているのですね。つまりこれは、営業の自由の一つである、だからこれを制限するためには慎重な配慮が要るということを言っているのです。  そこで、ココムによってこれを制限できるかどうかという点についてはこう論じております。ココムについてずっと述べた後で、その申合せは、国際法上も国内法上も条約としての効力を有しないものというべく、したがつて、ココムの申合せ自体はココム統制物資の輸出制限をする法的根拠となしえず、国民に対しココム統制物資の輸出制限をなしうるためには、ココムの申合せの趣旨、目的に沿った国内法がすでに存在するか、新たな立法措置を要するといわなければならない。こう言って、昭和四十四年段階ではこの適用はできないという結論になっているのです。  ところが、政府はこれに対して控訴はしませんでした。結論で勝っているからかもしれません。しかし、その後十余年にわたってココム違反については一件も摘発されていないのです。そして一九八〇年に、この点を考慮したのでしょう、外為法の改正が行われました。しかし、その外為法では四十八条の改正は行われていないのじゃないですか。
  79. 畠山襄

    ○畠山政府委員 五十五年の改正では四十八条の改正は行われておりません。
  80. 正森成二

    ○正森委員 なぜ私がそういう点を聞くかといいますと、きのうも答弁がございましたが、二十五条の二項で、「役務取引又は外国相互間の貨物の移動を伴う貨物の売買に関する取引であって、我が国が締結した条約その他の国際約束の誠実な履行又は国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるもの」これは主務大臣の許可を受けなければならない。こういうことで、我が国が締結した条約その他の国際約束等々の言葉が入っているのです。  ところが、今あいまいな答弁をしましたが、これは現在の六法全書ですけれども、昭和五十五年の改正でもこの点は四十八条に入っていないのですね。「前項の政令による制限は、国際収支の均衡の維持並びに外国貿易及び国民経済の健全な発展に必要な範囲をこえてはならない。」こういうぐあいに書いてあるだけで、国際約束の点は入っていないのです。それがまさに今通産大臣アメリカに行っている問題点の一つになっていると私は拝察しているのです。  なぜその点が改正にならなかったかといえば、役務の点については国際条約とかいうことは言っても、貨物の点についてまでそれを広げると、余りにも我が国の輸出の自由あるいは貿易の自由が制限されるということで、当時の通産省が、今よりはよかったのですな、全力を挙げて外務省に抵抗したのです。だから入らなかったのです。  いいですか。そうだとすると、今度の事件でも、二十五条はともかく四十八条を適用するなんということは事実上できないことなんですね、昭和四十四年の判決の趣旨からいえば。そしてまた私どもの根本の立場からいえば、果たしてココムが我が国が締結した条約その他の国際約束に入るのですか。今までの質問だって、秘密であって、国会には全然報告されない。きのう同僚委員質問をいたしましたけれども、外務省の仕事の内規として、十二カ国か何かについては本省に承認を求めるということは言うけれども、これはココムの対象国とは言えないというように答弁しているでしょう。  罪刑法定主義というのは一体何なんですか。こういうことをやったら罪になるが、こういうことをやったら罪にならないという根拠が法律に明定されておって初めて人は罪になるのでしょうが。それがこんなあやふやなことで人をしょっ引いて刑罰を科するなんというのはもってのほかじゃないか。そのことを昭和四十四年の東京地裁判決は言っているのです。そのことを考慮しないで通産省にしろ外務省にしろいろんなことを発言するということは、我が国の国益にも合致しないし、我が国民の基本的人権を守ることにもならない、そういうことを指摘しておきたいと思うのです。いかがですか。
  81. 畠山襄

    ○畠山政府委員 昭和四十四年の日工展判決についてお触れになりましたので、その点に関する私どもの立場を申し上げさせていただきます。  御指摘のとおり、その判決の傍論の部分で、外為法でこの目的で輸出を規制するのはどうかということで、それはいけないというようなことがございました。しかし、本論の部分では国が勝訴をしたわけでございます。したがって、これは委員御承知のことだと思いますけれども、私どもとしては傍論の部分について争う機会がございませんでした。  では、どういうふうにして考えているのかといいますと、確かにこの判決の中では運用について見解が分かれるとかいろいろ議論がございますけれども、この法律の中には、今御指摘になりましたように国際貿易の健全な発展ということが、外国貿易及び国民経済の健全な発展に必要な範囲であれば輸出を抑えることができるような趣旨のことが四十八条に書いてあるわけでございまして、その四十八条の解釈といたしまして、やはりこのココムの約束を守っていくということは先進自由主義諸国の大部分が参加しているものでございますから、これを無視しますとまた我が国貿易、経済の健全な発展に著しい支障を及ぼすということで輸出貿易管理令で規制をいたしているわけでございまして、輸出貿易管理令の違反は外為法にちゃんと、御案内のとおり「三年以下の懲役」と書いてございますので、罪刑法定主義にも反してないというふうに考えさせていただいたわけでございます。
  82. 正森成二

    ○正森委員 罪刑法定主義にも反しないしということであれば、恐らく今度も法律改正しないでいいんでしょうね。私、大蔵委員会に所属しておりますが、外為法改正が出てくると思いますが、もしそんな点が入れば、あなたの今の答弁を引用させてもらいますよ。改正をする必要がないのに何で屋上屋を重ねるんだ、こういうように言いますから。もう答弁はいいです。  きのう横田基地の判決がありましたね。その中で非常に我々が注目しなければならないことを言っているのです。それは騒音だけれども、米軍基地で、これは非常に公共性が高いんだという主張を国側がしたのに対して、  行政は、多くの部門に分かれているが、各部門の公共性の程度は、原則として、等しい。国防は行政の一部門であるから、戦時の場合は別として、平時における国防の担う役割は、他の行政各部門である外交、経済、運輸、教育等の担う役割と特に差異はなく、国防のみが独り他の諸部門よりも優越的な公共性を有し、重視されるべきものと解することは憲法全体の精神に照らし許されない。こう言っているのです。この司法部門の判断というものは私は厳に尊重されなければならないものであるというように思うのです。  そこで、ほかに質問がございますので総理に申し上げておきますが、総理、源義家が前九年の役に安倍貞任に送った「衣の館はほころびにけり」という言葉を知っていますか。
  83. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 よく知っています。
  84. 正森成二

    ○正森委員 これは義家が貞任を討とうと思って追い詰めたのです。それで、馬に乗って追いかけて弓でこうやって射ようとしたんだけれども、その前に、「衣の館はほころびにけり」こう言ったら、貞任が後ろを振り向いて、「年を経し糸の乱れの苦しさに」こう言ったので、余りにもその立派さに感心して、やっつけようと思ったんだけれどもやめたという有名な話ですね。  このココム違反事件での内閣の不統一ぶりを見ると、やはり「衣の館はほころびにけり」「年を経し糸の乱れの苦しさに」という感じがせざるを得ないのですね。総理も恐らく同感であろうと思いますが、これについて答弁を求めることはあるいは失礼に当たりますので、答弁は求めません。  そこで、大蔵大臣に伺いたいと思います。  その前に、経企庁長官、あらかじめ申し上げておきましたが、ことしの一月七日の読売新聞に「視界」という囲み欄があります。それをお読みになったと思いますが、私が一応その要旨を申しますと、  「このままじゃあ、経済企画庁は大蔵省の出店だ。何とかしなくっちゃいけない」――経企庁の近藤鉄雄長官が六日の会見で、顔面を紅潮させて、庁内事務当局の人員構成に不満をぶちまけた。  「次官、官房長が大蔵出身。次官はどうかわかりませんが。財政金融課長、物価政策課長と主要課長も大蔵が独占している。これでは経企庁の独自色なんて打ち出せない」。さらに、「だから、ぼくの任期中に経企庁を機構改革することにする」。こう言われて、  コトの起こりは昨年末に決まった六十二年度の政府経済見通し。元来、高成長論者の長官、新年には景気回復をと、六十二年度の実質成長率を高めに設定するよう主張した。しかし、次官、官房長ら〝大蔵組〟の抵抗にあって、あえなくダウンしてしまったのだ。この爆弾発言で庁内は動揺し、大蔵出身の幹部は「経企庁に来た以上、経企庁の人間として仕事をしている」と防戦に必死。これに対し、経企庁生え抜き組は長官発言に拍手を送っている。こう書いてあるのですね。これについての御感想をお願いします。
  85. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 ことしの初めといいますか、昨年の暮れに経済見通しを政府部内で決定いたしましたときに、当然経済企画庁は総合調整官庁でございますから、いろいろ経済関係各省の意見をもちろん聞きますし、その上でいろいろ調整作業をするわけでございますが、当然大蔵省や通産省やまた建設その他経済関係各省、それぞれ意見がございますが、同時に経済企画庁は景気担当官庁でもございますから、調整的な役割と同時に、どうしたら日本の経済を活性化するかということも当然一つの重要な政策ポイントになっているわけでございます。  そんなことで、六十一年度は円高の影響が強く出まして、私、ミスター四・〇%と予算委員会等で皆さんから言われたあれがありますけれども、どうも思うような経済成長が達成できないので、六十二年度は何とか政策よろしきを得て経済成長を上げたい、こういう気持ちもございまして、幹部ともいろいろ議論をしてまいったわけでございます。  ただ、いろいろな経済の指標を見てまいりますと、消費は結構堅調ですし、住宅投資も堅調ですが、問題は設備投資がどうなるか、円高がことしどうなるかということとの関係もございまして、これが一番議論が分かれたところでございますので、その中で結局その分を財政がどれだけカバーするか、こういうことで議論が進んだわけでございますが、結局大蔵省の財政再建の枠の中で、少なくともその時期は財政の果たす役割が必ずしも私が考えたほどのことはなかった、こういうことでございます。考えてみますと、先生のクォートにもございましたけれども、引用にもございましたけれども、特に経済企画庁の幹部が大蔵省出身によって占められているということも事実でございますし、やはりもう少し経済企画官庁として独自の判断で政策決定をすべきではないか。とすると、幹部が大蔵省からの出向者によって占められているということは、必ずしもその調整官庁として十分ではないという面もあるし、また、経済企画庁は大蔵省のいわば代弁をしている、こういうふうにとられる面もあるので、経済企画庁もだんだん優秀な幹部が育ってきておりますから、したがって経済企画庁生え抜きの幹部で重要なポストを占めるということも今後積極的に考えていく必要がある、こういう気持ちをお正月でございましたので私が発表した、こういうことでございます。
  86. 正森成二

    ○正森委員 時間の点がございますが、ここに大蔵省の内部の資料があるのです。できればこれを大蔵大臣にも事前に差し上げようと思いましたが、マル秘と書いてありますので、去年の十一月にこれを予算委員会理事会にお諮りいただいたら、マル部と書いてあるものは資料としてお配りするわけにはいかないということなので、残念ながらその内容を読ませていただきます。もし御疑念がおありでしたら、私の部屋などにおいでいただきましたら、どうぞ十分見ていただくことになると思います。  これを見ますと、六十一年の十二月二十五日、調査企画課というところがあるのですね。石坂という課長です。この課長はなかなかのものですね。この課長が作業手順ということで売上税の作業手順をずっと書いているんです。その四番目に、対EPAというのがあるのです。EPAというのは、宮澤さんは御堪能ですからあえて申しませんが、エコノミック・プランニング・エージェンシー、経企庁のことですね。こう書いてあります。  一、EPA内から、適当でない研究結果が出ない(公表はもちろんリークを含め)よう官房長に対しサーベイランスを依頼。  二、作業責任部局は、財政金融課とし、 調査局・研究所経済研究所のことですね。 は、極力かませないこととする。  三、出向各課長、各補佐に事前のレクを徹底する。増井補佐経由で説明文書を配付する。 こういう戦略をこの石坂という調査企画課長はやっているんです。それだけならまだしも、  それに基づいていろいろなことを大蔵省の希望するラインでやってもらう必要がある、などと言っておりますが、早速この二十五日に石坂課長は、大塚財金課長ですね、これに、  EPAから効果試算を出すということになった場合、所管は必ず財金課となるように計らってほしい。コントローラピリティの観点からだ。こう言っています。それに対して大塚財金課長は、了解こう言っているんです。いいですか、コントローラピリティーというのはコントロールできることという意味ですよ。事もあろうに、大蔵省の役人が経企庁をコントロールするために売上税の経済効果についての担当部局まで指図しておるという内容が二十五日に非常にはっきり出ているんです。  しかもその中で、いいですか、あなた怒らないで聞いてくださいよ。こう言っています。EPAの藤原という人物から大蔵省の大久保という人物に、  一、長官が経済効果を出せとぎゃあぎゃあ言っている。その下に「やかましく」と書いてあるんです。いいですか、近藤長官は赤ん坊扱いで、ぎゃあぎゃあ言っている、こう書いているんですよ。  二、研究所はモデルのタイプが違うのでリラクタントである。これは間接税が入らないからです。お粗末な結果が出ると、研究所の存立基盤にもかかわるからだ。  三、結局、調整局の財金課で所管することになった。  四、ところが調整局にはモデルがない。研究所のモデルを回してよい結果が出れば使いたいと局長は言っている。だめなら積み上げになる。こう言っているんですよ。やって、国会答弁に都合のいいものだったら使うが、何ぼ正確に調べても都合の悪いものだったら使わないということを言っているんです。  それで二十六日になると、この石坂というのはなかなかの男ですな、石坂調査企画課長から杉崎主税局調査課長の電話問答が載っています。これはこう言っております。  石坂 経済効果は非常に大事である。経済企画庁は今近藤長官に言われて作業をやっている。それを引きつけてこちらのラインに合わせさせなければならない。いいですか、  そのため、こちらが先行してやる必要がある。こう言っているんです。そして、こういう問答があります。  石坂 大蔵省としての数字をつくり、それを大蔵省のモデルの数字として出すのか、それともそれを経企庁に投げて経企庁の数字としてつくり直してもらって出すのか、ここまで言われでいるんですよ。そうすると杉崎は、  予算委員会考えれば後者だ。つまり、大蔵省がつくってそれを経企庁がつくり直す。そうすると石坂が、  そうすると、これからの手順としては、  一、財政金融研究所のモデルで数字を出す。  二、それをもとに定性的な文章をつくる。  三、それを経企庁に投げる。  四、大蔵からの出向者には数字を見せる。  五、これを踏まえて経企庁でも計算してくれということにする。  六、それを保田官房長に頼む。 こう書いてあります。それはその日のうちに実行されているのです。  ここにTPR応接録というのがあります。TPRというのはタックスプロパガンダの略で、これは尾崎審議官などが相談してこういうコードネームをつくったのです。  その中で、六十一年十二月二十六日、四時から四時二十分まで保田EPA官房長、増井補佐を訪問したことが載っております。石坂課長と杉崎課長、こう言っている。国会で、税制改革の経済効果について聞かれること等が予想されるので、前広にすり合わせをしたい。具体的には、  一、六十二年度経済見通しとの関連で聞かれる可能性もあり、財金課担当としてほしい。  二、当方の考え方(及び数字的なメド)を早急にとりまとめお示しするので、それに沿ったものにしていただきたい。官房長は、  調整局長には、既に担当するように依頼済み。こういうように好意的な返事をしております。  そしてその結果、二十七日になって財金課の藤原補佐、物価調整課の南木補佐から連絡があって、  売上税の税率が五%であるのに消費者物価が平年度で一・六%しか上昇しないのはなぜか。という問いを出して、答えを書いて、そして、  別紙のような説明ぶりをすることについて、コメントがあれば至急連絡ください。と言って、官房調査課の大久保に対して連絡しているのです。  これを見れば、大蔵省がEPAをコントロールして、EPAに大蔵の思いのままの数字を出させようとした、そしてそれは国会対策であるという経過は明らかじゃないですか。  大蔵大臣、あなたは、ことし二月、三月の予算委員会でしばしば、物価上昇は一・六%で大してございませんと言いましたが、その根拠はここにあるのですね。決して客観的な数字じゃないのです。こういうことでは経企庁の役割は果たせないんじゃないですか。  中曽根総理、いつから国家行政組織法に、経企庁は大蔵省の指揮監督を受ける、こういう文言が入ったのですか。そんなことじゃ、なっておらぬじゃないですか。  以上指摘して、私の質問を終わります。
  87. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私もしばしば経企庁長官をいたしまして、都合五年いたしましたので、その辺のことはよく知っておるつもりでございます。  まあ、これだけ大きな行政が動いておりますときは、水面下で役人がみんな一生懸命努力をしているのでありまして、時にはそれはぶつかり合うこともございます。ございますが、しかし、全体としてはみんな一生懸命やってうまく動いておるということを申し上げることができると思います。
  88. 砂田重民

    砂田委員長 これにて正森君の質疑は終了いたしました。  午後二時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十二分休憩      ――――◇―――――     午後二時三分開議
  89. 砂田重民

    砂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。井上普方君。
  90. 井上普方

    井上(普)委員 一昨日、本委員会におきまして、どなたでしたか、池田さんの質問に対し総理は、対外貿易摩擦なんというのは大したことではない、これは国の活力があらわれているのだから、そういうのはその場その場で解決したらよろしい、こういうような御答弁に私は承ったのですが、もう一度御真意のほどを承りたいと思います。
  91. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 例えば現在の状況を見ますと輸出が増大して、そして黒字が大いにたまった、それがまた不均衡を呼んで、そして国際摩擦を起こしている。またその原因には、外国からの指摘は、輸入障害がある、日本の輸入が十分でない、そういうようないろんな指摘が行われておりますが、何といっても日本の輸出力、生産性、こういうものが基本的にはあると思うのであります。あるいはまた、日本の経済構造自体が輸出になじむような形で馴致されてきている、そういう面も外国に比べてなきにしもあらずであります。これらはいずれも一つの産業バイタリティーの表現でもありまして、その生産性とか勤勉性というものは、これはそう捨ててはならない問題であります。しかし、一面において摩擦は解消しなければなりませんから、そういうものが起こるのを予見しつつ適宜これを回避し、そして国際調整を図っていくというやり方が大事ではないかと思う、そういう趣旨のことを申し上げた次第でございます。
  92. 井上普方

    井上(普)委員 ただいまの総理の御答弁を承りまして、私も同感するところがございます。  そこで、日本の産業空洞化の問題につきましてひとつ御質問をしたいと思うのでございます。  総理、今アメリカが純債務国に転落した、最大の債務国に転落した。あるいはまた考えでみますと、総理の好きな自由と競争のあるアメリカ社会、経済社会、しかも広大なる土地を持ち、かつまた資源もたっぷりしたあの国がなぜこのように債務国になったのか、ひとつあなたの御見解をお伺いしたいと思うのです。いかがですか。
  93. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 やはり少し遠因を尋ねますならば、いわゆるベトナム戦争の時代にアメリカとしてはかなりの出費があったわけでございますが、当時ジョンソン大統領の時代に、いわゆる偉大なる社会を建設するという大きなプログラムを同時にやられまして、しかも、そのための新しい財源措置というのは余り講じられなかったということが、アメリカの経済は御承知のように大きい経済でございますので、すぐにベトナムの出血が出てくるというようなことはございませんでしたのですが、後になってそれがやはりこたえたというのが遠因ではなかったかと思うのでございます。  その後、御承知のように大変にドルが高く評価されるようになりまして、そういう時代が続きました。ちょうど我が国が一九八〇年から八五年の間に大変に輸出がふえる、貿易黒字がふえるわけでございますが、この間ずっと円安・ドル高というものがアメリカ貿易収支の赤字を大きくしてまいりました。そのことは、一昨年の九月にプラザ合意によりまして、人為的にドルの価値を下げるということで一応終止符を打つわけでございます、ドルの高評価ということは。しかし、なおJカーブ等々の事情があるといったようなことで、今日に至るまで十分にアメリカの国際収支が改善をいたさずに、なお月々百数十値ドル、年間では千六百億ドル余りの赤字が続いておる。これが全部アメリカの債務国化に貢献をしておるといいますか、寄与しておるということでございます。  客観的に考えますれば、したがいまして、まず財政赤字縮小すべきであろう。それはグラム・ラドマン・ホリングスというような法律をもってこれを行おうという努力があるわけでございますけれども、グラム・ラドマンの予想どおりであれば、ただいま財政赤字はほほ千四百億ドルぐらいになっていなければならないはずでございますけれども、まだ二千億ドルのあたりを低迷しておるという感じで、十分な改善が見られません。貿易赤字につきましては、先ほど申しましたような理由で千六、七百億ドルというところから十分に改善しておらない。この両方がアメリカの債務国化に寄与したということであろうと存じます。
  94. 井上普方

    井上(普)委員 私もその債務国になったことにつきましてはおおむね賛成でございます。しかし、アメリカの活力がこのように落ちておる原因はやはり産業界にあるのではないかと私は思いますので、その産業界の分析を一体どうお考えになっておるか、その点を伺いたいと思います。
  95. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 簡単に申し上げることはできないことであるかもしれませんが、少なくとも、いわゆる多国籍企業等がアメリカに工場を持つよりはむしろ海外に工場を持った方が賃金等々の関係からしてはるかに効率的であるということ。また、ドルが不当にと申しますか、異常に高い時代にアメリカからの輸出というものはしたがって難しいわけでございますから、海外に立地をした方が得であるといったようなことが、やはり企業の米国内からの転出と申しますか、脱出と申しますか、そういうことがありまして、いわゆるアメリカの二次産業の空洞化といったようなことがその間に生じつつある、今日にそれが至っておるということはかなりの程度に私は真実ではないかと存じます。
  96. 井上普方

    井上(普)委員 私は、今のお話で、一つには、この産業空洞化がアメリカで言われ始めましたのは、一九六〇年代から言われております。これはアメリカの総同盟、労働組合の方から提起をされました。当時、多国籍企業が海外に生産地点を移すということで、失業との関連において言われたところでございます。  もう一つ、私が申すならば、アメリカ国家というのはベトナム戦争というあの無謀なる戦争をやった結果、社会的にもあるいは経済的にも大きな痛手をこうむっておる、このように私には思われてならないのであります。あるいは社会的に申せば、麻薬の蔓延とかあるいはまた風俗的にも相当乱れておるのも、遠因をたどればベトナム戦争にあるんじゃないかという感がしてならないのであります。しかしながら、この産業の空洞化ということがアメリカの活力については一番大きい問題ではないか、それがひいでは今日に至っておるのではなかろうかと思うのであります。  まず、一九六〇年から七〇年代に多国籍企業が出ていった、そして第二次産業がともかく競争力を失ってきた。ちょうど日本においては繊維工業あるいはまた鉄鋼の輸出規制が行われ、さらにはまた自動車の輸出規制も行われた、自主的にやらされた。しかし、そのときには、当時自民党あるいはまた今ここにおられる諸公の中では、アメリカの経済は今そういう部門が弱っているんだから、しばらく待ってやれば必ず回復するわ、そのときは公正なる競争ができるんじゃないか、こう申して我々に説得をしておったはずであります。  しかしどうでしょう。その後のアメリカの企業というものは、製造企業が販売会社になってきた。すなわちOEMというような形で、他国でつくった製品を自分の製品のごとくブランドをつけで売り出す販売会社的な性格を持ってきた。さらにはまた、何と申しますか、金もうけのために他の企業の買収あるいは財テクに走った結果、アメリカの有名な自動車会社なんかは財テクによって黒字を出しているというような状況になってきている。ここらに大きな原因があるんじゃないだろうか。また、もう一面言いますならば、生産会社、製造会社がサービス部門へ大いに進出してきた、第三次産業に進出してきた、いわば財テクあるいはそういうような面においてそうでございます。こういうようなのが重なり合いながら現在に至っておる。例えて言いますならば、IBMのパソコンは、部品では実は八〇%は日本あるいは韓国、シンガポールの製品だと言われております。  こういうような状況でございますので、今アメリカにおきましては、一昨年でございましたか、国際競争力をどうつけるかという大統領諮問が行われておるようでありますし、ことしもまた年頭の大統領教書におきまして、国際競争力をいかに確保するかということがレーガン大統領から報告されたやに承っておるのであります。  こういうような動きにつきまして、経済閣僚とし、また、次の総理を目指す宮澤さんとしてはどういうお考えでおられるか、承りたいと思うのです。
  97. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま井上委員のお説を承っておりますと、私が冒頭に十分ではございませんでしたが申し上げましたような認識とほとんど同じようなお考えをしていらっしゃるように存じます。  したがいまして、全体の認識はまさに私もそのとおりだと思っておりまして、やはり物をつくる、あるいはサービスをするということは、額に汗をしてそれだけの設備投資をしまして価値を生産することでございます。それに比べますと、財テクといったようなものにはそういう要素がございませんから、その段階におけるGNP効果は同じでありましても、次の再生産の段階で、片方は再生産に入っていけますし、片方は簡単には入っていけないという、そういう要素を持っておるのではないか。一国の経済が長い間成長を続けていくためには、やはり実体的な物の生産あるいはサービスの生産というものが基本になければならないのではないかと私は思います。  そのことは、しかしもっと端的には、おっしゃいましたように雇用の面であらわれてくるわけでありまして、第三次産業に雇用されれば、それで同じではないかと言われますものの、今日までのところ、やはり二次産業における雇用と三次産業における雇用では安定性がかなり違う、また、賃金の水準も事実問題としてアメリカなんかでもかなり違うということがございますから、そこから見ますと、産業の空洞化ということがやはり雇用の面では非常にはっきり出てくる、そういうことがあるのではないかと考えております。この点はアメリカでもいろいろ反省が行われているように存じますので、またそこから新しい動きがあるいは出てまいるのではないかと思っております。  他方で、これは全然違う観点のことでございますけれども、もしそういうことに、多国籍企業がOEMのようなことになってまいりますと、仮に日米間の貿易赤字、黒字がどうこうであると申しましても、日本の稼ぐ黒字の中にはあるいはアメリカ企業が稼いでおるものもあるかもしれないというように、国境を越えて企業が動いてまいりますと、従来の国と国との間の国際収支というものは今までの考え方だけでいいのかという新しい問題もあろうかと存じます。そうしますと、これは一見債務国になっているのでありますけれども、企業としてのアメリカ、企業の合計としてのアメリカというのは果たしてどういうことになっておるのかということはまた別の問題かもしれない、そこからは新しい問題が出てくる可能性があろうかと思います。
  98. 井上普方

    井上(普)委員 私もそのことをお伺いしたいと思っていたのです。大前研一さんの論文によりますと、日本にあるアメリカの多国籍企業、これの対アメリカに輸出しておる金額というのは三百億とも、またひどいのになってきたら四百億とも言われる数字がありますが、この点、どこかの役所で調べていますか。
  99. 杉山弘

    ○杉山政府委員 お尋ねが日本におります多国籍企業の米国向け輸出ということでございますが、私どもが実は調査をいたしております日本にございます外資系企業の企業動向についての調査の数字で見てみますと、ちょっと年次が古うございますが、昭和五十九年度で申しますと、外資系の比率が五〇%以上の企業八百九十四社を中心といたしまして調査をいたしておりますが、これらの外資系企業の対米輸出は、合計で九千二百九十四億円というふうになっておりまして、売上高に占めます比率ではおよそ七%、日本の全輸出に対しましては約二%ぐらいということになっております。ただしこれは悉皆調査ではございませんので、以上の点は御了解いただきたいと思います。
  100. 井上普方

    井上(普)委員 私の調べた数字あるいは大前研一さんの言っている数字とはこれは大分違うのです。私の調べたのですと大体三百億ドル、こういう数字が出されております。それで、大前研一さんの理論によりますと、日本とアメリカとの国際収支はそれらを含めるととんとんになるのじゃないか、こういう議論の展開が行われておるのであります。  それはそれといたしまして、さて日本の企業は一体どうだろうということを考えてみますと、ちょうどアメリカがたどったのと同じような趨勢をたどっておるのではないか。日本の製造業は多国籍企業に今転化しつつある。――いや、長年にわたって、先ほども承ったら経済企画庁五年もやられた方でございますので、宮澤さんは将来の総理を目指しておられる方なんで、むしろ将来の展望としてお伺いした方がいいと思うので大蔵大臣にお伺いしているのです。  これはもう非常にたくさん出ていっている。一九九〇年代になりますと、自動車産業におきましては、アメリカに進出した自動車会社は大体二百万台、九〇年代の終わりには二百九十万台向こうで生産すると言っています。あるいはまた電気製品会社、こういうのもまたどんどんと進出をしようとする。日本の製造業、第二次産業はまさに多国籍企業化しようとしておる。もうなっておると言っても差し支えないかもしれません。そして一方、まだ日本ではOEMというのは余り見当たりませんけれども、製造業の諸君がサービス販売会社になりつつあることもこれまた御存じでしょう。一例を挙げますと、トヨタが販売会社と製造会社を別々にしておりましたが、おととしですか一本にいたしました。製造会社が、企業が、これがまた販売会社に転化しつつある。もう一つ言うならば、日本の第二次産業も、これまた円高に苦しんで赤字を出さぬためにという理由で財テクに走っている。  ことしの決算をお調べになっていただきたいといって大蔵省に頼んであったのですが、製造業で財テクによって黒字になっている会社はどれくらいありますか。
  101. 伊藤博行

    伊藤政府委員 お答え申し上げます。  法人税の課税状況を把握するという観点から、私ども法人所得の動向については毎年統計をとっております。ただ、先生お話しのように、その法人所得のうち本業所得によるものが幾らで他方金融収支等によるものが幾らか、さらにその中で本業では赤字であるけれども金融収支等を加えることによって黒字転換したものはどうかという御質問でございますが、大変申しわけないのでございますけれども、法人課税という観点からの統計でございますので、その内訳までは掌握してございません。  ただ、法人所得の動向を見てまいりますと、世上言われている景気等の動きに比べまして法人所得の伸びは相当になっております。それからまた、業種別に見てまいりましても、言われているほど好況とは思われないような業種におきましても法人所得ベースではプラスになっておるというようなところから、先生お話しのようなケースも相当数あるということは想像できますけれども、件数的にどの程度かという点につきましては残念ながら承知しておりません。
  102. 井上普方

    井上(普)委員 経済企画庁は調べていますか。
  103. 勝村坦郎

    ○勝村政府委員 お答え申し上げます。  企業の割合として私どもちょっと数を数えてございません。ただ、大蔵省の法人企業統計の一-三月期まで出ておりますが、これの収支内容を分析いたしますと、特に製造業におきましては、営業利益ではなお大企業、中小企業とも減益の状況が続いておりますけれども、営業外収益と申しますか、これは営業外のコストでございますが、この減少幅が非常に大幅でございまして、一年間で二%余り改善しているのではないかと思います。これは今、先生おっしゃったようないわゆる財テク分も含むものでございます。それによりまして、経常収益の段階では、大体十-十二月期を底にいたしましてやや底入れ、一-三月期ではやや改善の兆候が見える、こういう状況になっているかと思います。  企業の比率は私ども計算しておりません。
  104. 井上普方

    井上(普)委員 私は、こういうことは経済企画庁で十分把握していただきたいと思うのです。それが将来の日本の産業政策に大きい影響を及ぼすだろうと私は思うし、また我が国の将来にとりまして大変大事なことだろうと思いますので、十分に監視していただきたい、このことをお願い申し上げておきます。  さて、今こういうような円高によりまして産業界はきゅうきゅう言っておる、苦しんでおる。これについて、中曽根さんお得意の諮問委員会をつくられて、前川さんが二回にわたってレポートを出されております。これを見ますと、たちまち今問題になっておる円高による構造不況産業が出てきた、これを一体どういうように転換したらいいかというようなことは、いかにも書かれております。その内容については私は不満なところがたくさんある、納得できないところがたくさんありますが、しかし一番大事なことは、日本の産業空洞化をどういうようにして防ぐかという視点が欠けておるのであります。  宮澤さんも今もおっしゃられたとおり、製造業というのは国の活力に相当する。アメリカのブリーナーという経済学者の言を見てみますと、こういうことを言っているのです。経済のダイナミズムは製造業がしっかりしないと維持できない。サービス産業は製造業に寄生しているにすぎない。サービス産業は現実的には製造業とともに浮き沈みするものだ。サービス経済はアメリカでこれまで達成してきたようなエネルギーあるいは繁栄、これを歴史的に支えることはできない。これを支える技術的進歩と規模の経済にサービス産業は欠けるんだということを鋭く喝破いたしております。それがまたおととしの大統領の諮問の答申の骨子にもなっておるように思われます。  そこで、日本の現状を見ますと、アメリカ経済がたどった道をたどっておるのではないだろうかというのは、これは単に私の杞憂であれば幸せであります。前川レポートを新しい句と二つ私は読んでみましたけれども、そういう視点が全然欠けている。ここに将来の危ないところがあるのじゃないかと思いますので、この点について、日本の産業に空洞化が忍び寄りつつあるのではないか、この点についての御見解を承りたいと思います。
  105. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは後ほど通産省の政府委員からぜひ所見をお述べいただきたいと思っておりますけれども、私は今見ておりまして、確かにこの二、三年そういう傾向が見られます。これは一つは、やはり為替レートの変動が非常に急激でございましたし、なかなか先を見通せないというところがございましたために、経営者としてはもう日本に立地することが不利なのではないかという判断をせざるを得ない。それもかなり急な変化に対応してというふうな部分が見えまして、これは、願わくは為替レートが安定していくことによりまして経営者としても再考をする段階が来ることが望ましいのではないか。近隣諸国でありますとか東南アジアへ立地をしてくれることは長い目で見ると大変結構なことでございますけれども、先進国、殊にアメリカへどんどん立地をしていくということは、例えば自動車なんかには御承知のようにああいう輸出割り当てがございますから、そういうコストの関連もあるかもしれません。  これはしかし、それならそのこと自身にやや不自然な要素があるわけでございますから、もともと余り急激な事情の変化でそういうことをどんどん将来に向かって考えていってもらうようなことであるのかどうか、落ちつきましたら少し考え直してもらえるところじゃないかと、実は半分希望もございますけれども、そういうふうに思っておりまして、時間をかけて徐々でございますとお互いのためにいいことではございますけれども、余りレートが急激に変化をしたことによってやや衝撃的にそういう動きがあるということは心配なことだというふうに思っております。  これは通産省の政府委員がきっと補足をしていただくと思います。ちょっとお待ちください。
  106. 杉山弘

    ○杉山政府委員 ただいま大蔵大臣からお答えをいただきましたことと私どもも同じように考えております。先生おっしゃいますように、これからサービス業のウエートが高くなってまいりますが、やはりペースには製造業がなければいけない。製造業が産業のバックボーンであるという意味におきましては、私ども全く同じような判断を持っております。  ただ、対外バランスの改善という問題を考えますと、これまでのように輸出を続けているわけにはまいりませんし、また輸入ももっとふやしていかなければいけないということになってまいります。そういうことになりますと御心配のような空洞化問題が起こってまいりますが、私どもといたしましては、そういう点につきまして、技術開発等をやりまして製造業の新しい分野をできるだけ開いていく、こういう努力が一方ではどうしても必要になってくるのではないか。  ただ、雇用機会の確保ということから考えますと、そういう努力をいたしましても、製造業の分野で、これからふえてまいります雇用を含めて製造業が中心になって雇用を確保していく、これは難しいのではないか。したがって、就業構造の面で見ますと、どうしてもサービス産業を中心といたしました三次産業分野で雇用の確保をしていかざるを得ないのではないか。先ほど先生御指摘のございました第二前川レポート等におきましても同じような構想が示されておりまして、生産金額の面におきましては実質ベースでは製造業はほほ現状を維持する、ただ、その間に生産性の向上等がございますので、就業構造といたしますと製造業のウエートは下がってまいりまして、三次産業、サービス業のウエートが高くなっていく、こういう産業構造にならざるを得ないのではないか。ただ、これは大蔵大臣もおっしゃいましたように、為替レートのできるだけ安定ということで時間をかけてやっていくべきものと思っておりますので、最近のような急激な円高ということについては、心配されるような海外投資等の加速化の傾向が見えておりますので、これは私どももできるだけそうでない方が望ましいと思っております。  それからなお、先ほど私御答弁の中で申し上げましたのは、あるいは先生の御質問と違ってしまったかもしれないのですが、外資系企業の私が申し上げました九千億強と申しますのは、全世界に対する輸出額でございまして、対米向けでございますと九千億ではございませんで約三千億円ぐらいというふうな感じになっておりますので、ちょっとつけ加えさせていただきたいと思います。
  107. 井上普方

    井上(普)委員 質問が飛び飛びになりまして、一貫性がないので恐れ入るのでありますが、しかし、今の雇用面の問題が出てくる、大切だと、そしてまた前川レポート――前川レポートの問題は後で論ずることにいたしましょう。雇用の面あるいは技術というものは、私も偉い技術屋さんに会うて聞きました。そうすると、技術というのはともかく生産地点において、現場においてこそ初めて技術革新ということが行われるんだ、これはアメリカにおいてはそうだったと。アメリカにおいて海外に移転した多国籍企業は、アメリカの国内の市場というものをよく知っているから逆にアメリカにどんどんと輸入してきた、そしてアメリカの産業を疲弊させたんだ、これが第一期のアメリカの空洞化であった。  話が飛び飛びになりますけれども、第二期のアメリカの産業の空洞化は、これはアメリカの産業、製造業がそれだけ力が落ちておるにもかかわらず減税あるいはまた膨大なる予算を組んだ、国内の需要を喚起した、それが外国からの貿易がどんどん入ってきて、例えば日本あるいはNICSの国から入ってきてさらに拍車をかけておるのが現状じゃございますまいか。しかもアメリカなんかは技術を海外へ移した、そこで技術革新が行われておる、その一つのいい例が日本IBMではなかろうか、こういうようなことを言われております。  今、日本が抱える問題は、前川レポートが示すように構造不況産業、これについてはある程度私は前川レポートというものは評価いたします。しかしながら、あの第二次産業を雇用の面でストレートにともかく第三次産業に吸収できるんだというのは大きな疑問を持たざるを得ない。もちろんミスマッチというような問題もあります。しかし、今不況産業でやめていく諸君は、若い労働力の諸君もありますけれども、定年前、こういうような方々がともかくその産業から離れておる。石炭しかりあるいは非鉄金属の諸君しかり、あるいはまた造船業しかりであります。こういうようなある程度中高年齢層の労働者の諸君がサービス業に転換するということはちょっと難しい。この間の本年度の通常予算にも三十万人の、これは十分に論議ができずに予算は通ったのでありますが、三十万人の雇用創出のための政府の金が出るんだと言っておりますが、一体今何をやっているのですか。ひとつその点お伺いしたいのです。
  108. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  三十万人雇用開発プログラムというふうに銘打ちまして、その中身としましては、今いろいろ問題になっておりますように円高その他緊急に、特定不況業種その他から出ております離職者対策としまして、産業間の移動を図るための就職の促進の一つの柱として、転換訓練に対する助成、それから企業内での余剰労働力その他の確保のための雇用調整給付金による休業、訓練に対する助成、それからさらに地域におきます雇用開発を促進するための助成制度等をもちまして、業種、それから地域での雇用の対策を図っていくということにいたしておるわけです。
  109. 井上普方

    井上(普)委員 今のはもう既に手がけられておると思うのですが、労働省、お伺いしますが、今六十万人と直言われる完全失業者の諸君、構造不況から吐き出されておる失業者の諸君あるいはされようとしておる諸君、これにどういうような訓練をするのですか。やはり次の違う製造業に持っていこうとするのですか、それともまたサービス業に持っていくにはどんな訓練をするのですか。訓練の内容をひとつお示し願いたいのです。     〔委員長退席、野田委員長代理着席〕
  110. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  おっしゃいますように、離職者としましてはどちらかといいますと中高年の方が多いわけでございまして、これらの方々の就職先としましてはやはり従来からの職種がいいわけでございますけれども、なかなかそういうところには参れないということで、以前の不況の時代には、製造業の一部がやられても自動車とか電機の関係で雇用吸収能力があったわけでございますが、現在のところ製造業全体での疲弊ということで、第三次産業その他を含めまして個々の数はそれぞれ集めながら、企業自体または専修学校自体等に委託して直接に訓練して、その場で就職していただくというきめの細かい形での就職促進を図っている次第でございます。
  111. 井上普方

    井上(普)委員 それは御努力するのは結構だし、それも大いに努力しなければいかぬと思います。しかしながら、これはなかなかミスマッチといいますか、問題があって解決がしにくいんじゃないだろうか。そしてまた、もう一点は、先ほども申しました技術の問題もあります。技術開発の問題もある。いかにして、ともかくアメリカの轍を踏まないためにも、多国籍企業化しないよう引きとめておくというような産業政策はあっていいんじゃなかろうかと私は思ったのでありますが、あるいは人によると、資本というのはそういうふうにとめておくわけにはいかないぞというような話もございまして、それは自由経済社会だったらちょっと難しいなというような話も承るのですが、産業政策としては何らかの手を打たなければならないと思うのですが、いかがでございますか。
  112. 杉山弘

    ○杉山政府委員 お尋ねのように、研究開発を含めて生産現場が全部海外に移ってしまう、ないしは大半が移ってしまうというようなことになりますれば、私どもも先生と同じような心配をするわけでございますが、現状で判断をいたしますと、私どもの調査いたしました限りでは、大体七割ないし八割の企業は依然として日本で研究活動は続けていくということを答えておりますし、現実の海外投資を見てまいりますと、例えば、電機産業等で現地生産が最近行われておりますのは、従来タイプのカセットラジオそれから白黒、カラーテレビといったようなものでございまして、まだコンパクトディスクのような高級なもの、さらにはビデオテープレコーダーのようなものは欧州では一部海外進出がございますが、米国ではまだほとんど現地生産がない、こういう状況でございますので、現状におきましては、まだ全体として見ますと先生御心配のような状況には至っていないのではないか。  ただ、これからの問題として考えますと、御指摘のようなことが現実の問題として出てまいる可能性なしといたしませんので、そういった点につきましては私ども十分実情把握をいたしまして、それに応じて機動的に対応していくべきだというふうに考えております。
  113. 井上普方

    井上(普)委員 ちょっとそれ、話が違うのじゃございませんか。八六年に出されましたジェトロ白書を見ますと、八四年末で海外の直接投資の残高は三百七十九億ドルある、そしてそれが七八年-八四年度の平均のスピードでいくならば、伸び続けるとすると二〇〇〇年には投資残高は三千億ドルに上る、そのうちで製造業は千百億ドル、製造業の海外生産比率二二・一%になる、製造業の海外雇用者数は二百八十九万人に達する、そして製造業の海外現地法人の売上高は四千六百億ドルと推計されるとジェトロの白書は書いてありますね。あなたのお話と大分違うように思うのですが、どうですか。
  114. 杉山弘

    ○杉山政府委員 海外投資のこれからの進展につきましては、実は今先生お話しのジェトロの作業は別といたしまして、私どもの方でもそれなりの想定はいたしております。昨年の秋に関係企業等を調査いたしまして、今後二〇〇〇年に向けて、累積ベースで年率一四%ぐらいの海外直接投資が製造業の分野で出てくるのではないかということで、かなりこれから海外直接投資というのは伸びていくというふうに私どもも考えております。そういう過程におきまして、国内の雇用活動の機会が失われていくということも先生御指摘のとおりでございます。  そういう点につきましては、先ほど申し上げましたように、製造業の分野におきましては、新しい技術開発成果等を取り入れました分野を切り開いていくというような政策的な努力もしないといけないわけでございますが、先ほども御答弁申し上げましたように、こういった製造業を中心に、海外直接投資なり輸入の拡大なりによって失われる雇用機会を製造業の場ですべてを取り返すということは難しゅうございます。おっしゃいますように、労働力の流動化についてはミスマッチ、いろいろ問題点はございますが、そういう点について政策的な努力を重ねまして、サービス業を中心としたところで全体としての雇用のバランスをとるような努力をしていかなければならないのではないか、かように考えておりますので、私ども、実は製造業の海外直接投資の影響について決して軽視をいたしているわけではございません。  私どもの試算によりますと、先ほど申し上げました累積ベースで年率一四%ぐらいの海外投資の伸びがございましても、いわゆる海外生産比率といいますものにつきましては、私どもは、西暦二〇〇〇年の段階で一〇%ぐらいになるのかどうか、これはむしろこれからの国内の生産の伸びその他いろいろ前提条件はございますが、その程度に考えておりますので、ジェトロのお示しの数字と私どもの考えでおりますことではちょっと差があるように思います。
  115. 井上普方

    井上(普)委員 今の答弁は、ジェトロの白書で、やはりこれはあなたのところより伸び率は一三%しか見ていませんよ。通産省は一四%と言い、ジェトロは一三%としか見ていない。それで二〇〇〇年には製造業は売上高において四千六百億ドル近くなるであろう、あるいはまた直接投資残高は三千億ドルになるであろう、こういう推計がなされておるのです。このジェトロというのは通産省の子分と言うたらいかぬけれども、出先じゃないのですか、現場の。それとあなたとの意見が違うのは、さっきの経企庁と大蔵省ではないけれども、変わってくるのは当たり前だけれども、ともかくそういうような数字が示されておる。そして、それはちょうど今アメリカの空洞化しておる産業の売上高とよく似ておるということをジェトロは書いておるのであります。ジェトロの白書ですよ。  こういうようなことを考えますと、私は先ほどから言うように、杞憂になれば幸いだがという前提でお話を申しておるのでございますけれども、しかし、アメリカは大統領が産業競争力諮問委員会というのをもうつくっておるのでしょう。そして国を挙げてといいますか、レーガン大統領も、自分の経済財政政策の失敗のためにこういうようにアメリカの競争力、活力が落ちたということを反省しながら、今大統領の諮問委員会をつくり、またことしの教書にも国際競争力ということをまず第一番に挙げてきている。ということになれば、我々も安閑とはしておれぬのじゃないだろうか、こう私は思うのです。  そこで、一体それじゃ今直接日本の――まあ書店を見てみますと、「ユダヤの謀略」とか、そういうような本が今ベストセラーになっています。そんなあほなことはないとは思いますけれども、しかし、私が考えるのには、やはり世界の基軸通貨であるドルの安定をさすことば日本経済にとっても重要な課題であるとは思います。しかしながら、一昨年の秋のあのG5の会議、二百四十円しておったのを円高に導こうではないかといって合意を示したあのG5、結果、今日の一ドル百五十円あるいは百四十円というもとを導いてきた原因はここにあるのじゃないだろうか。どういう見通しのもとに一昨年のプラザ合意ができたのか。この点まあ竹下さんはおられぬけれども、だれかひとつ、大蔵省なりあるいは通貨当局、御答弁願いたいと思うのです。
  116. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど来お話もございましたが、かなり長い時期にわたりましてドル高というのが続いておりました。そのドル高であるにもかかわらず、米国のいわゆるファンダメンタルズというものから見ますとアメリカは大きな貿易赤字を出しており、日本は、あるいはドイツは大幅な貿易黒字を続けていたわけでございます。そういった観点から見まして、例えばプラザ合意の寸前の円ドルレートがたしか二百四十二円だったと思いますが、これは円だけではなくて他の欧州通貨に対しましても、現在のドルの水準というものがいわば経済的ないわゆるファンダメンタルズというものとは合致していないということで、それぞれの国が経済政策の調整をするとともに、為替市場において協力をしてこの是正を図ろうというのがプラザ合意の内容であったわけでございます。
  117. 井上普方

    井上(普)委員 それは、それくらいはわかっていますよ。それくらいはわかっている。しかし、日本がその合意をするについては、一体どの付近までが許容範囲であるかという予測をして合意されたものだろうと私は思う。そういうようなことも全然なしに、ドルが高過ぎるわということでやったのですか。どうなんです、これは。
  118. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 お答え申し上げます。  どの辺の通貨レベルがファンダメンタルズかということは、各国、固定相場制度でございません。その都度その都度そこにつきまして各国が確固とした合意を持つということは、これはなかなかないわけでございます。その後のいろいろな諸会議におきましても、おおむねこの辺がという議論はありますけれども、大体この辺でいいじゃないかという議論は、当時においてはファンダメンタルズに合致させるために努力をしていこうというところでございまして、余り具体的なレベルは想定しておりませんでした。
  119. 井上普方

    井上(普)委員 ファンダメンタルズとは一体それは何だい。各国のファンダメンタルズにともかく合致させようといって、何を基礎にして、あちら側はどんな言葉を、どういうことを言っているんです。はっきりわからない。
  120. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 お答え申し上げます。  ファンダメンタルズは言うまでもなく経済的な諸条件でございますが、これを一つの典型的にあらわすものとしては、貿易収支あるいは経常収支というものがあるわけでございます。
  121. 井上普方

    井上(普)委員 一つとして貿易収支、それはそのときには日本は黒字だった。それじゃ、今のファンダメンタルズは、これは百五十円というのはそれを反映していない、こうお考えですか、反映しておるとお考えですか、どっちです。貿易収支はえらい黒字だけれども、まだまだいけるとお考えになっているんですか。
  122. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど一つの典型的な例として貿易収支あるいは経常収支を申し上げました。ただし、レートが非常に動いているときには、これはいわゆるJカーブというようなものがございまして、表面的な、例えばドル建ての貿易収支あるいは経常収支の動向がファンダメンタルズをとらえていると言うと非常に不正確になることがあります。現在のファンダメンタルズがどうかという、あるいは貿易収支の黒字が日本が続いているではないかというお話ございました。しかし、Jカーブというものを捨象しまして、例えば数量で見ますと、六十一年度におきましては、日本の輸出は数量では一・三%減っております。一三%程度輸入の方はふえておりますので、これは着実に為替レートの是正効果が貿易収支に出ているということは申し上げられると思います。
  123. 井上普方

    井上(普)委員 一つのメルクマールとして貿易収支があり経常収支がある、これはもうわかっています。しかしながら、果たしてその当時において、まあ宮澤さんもその後G5、G7に行かれたのですが、あなた方は一体どの付近が日本と均衡する為替レートだと、お考えは私は聞きませんよ、幾らだということは。しかし、一応の目安を誇って行かれたんじゃございませんか。そうでなければ、一体政府は何をしているんだと言わざるを得ない。その政府考えておるのよりもはるかに、ともかく去年からことしにかけまして宮澤さんはワシントンに飛び、あるいはまたG5の会議にパリまで行かれたようでございますので、日本の考えておったより以上にドル安が進行したのではないか、それで政府も慌てているのではないかと私は思うのですが、どうなんですか。
  124. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 プラザ会議において特定のレベルを想定して、そういう合意のもとにおきましてそこまで調整しようということはございません。ただ、状況といたしまして、大体二カ月ぐらいをこういうことでやろう、その後また協議していこうというような考え方でございました。
  125. 井上普方

    井上(普)委員 それは会議はそうでしょう。しかし、日本側として出席する方々には、円とドルとは大体どの付近までドル安にしていいなという腹づもりがなくて会議に出るばかはおらぬと私は思うのですがね。そんな腹づもりもなしに出ていくような通貨当局だったんですか。
  126. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、為替レートがどの程度が適正かということは、現在のように国際金融情勢が一カ月、二カ月単位で非常に変わってくるときにおきまして、あるいは現在のような変動相場制をとっている状況におきまして、どの程度と想定することはなかなか難しいということだけ御理解いただきたいと思います。
  127. 井上普方

    井上(普)委員 しかし、会議に出ていく以上は、宮澤さん、そうじゃないんですか。我々はこれくらいにしたいという希望、考え方を持ちながら出ていって、主張は主張としてしゃべるのが普通じゃないんですか。そうじゃなしに、もう行け行けさっさでやるものなんですか。どうなんですか、これは。こんな行き当たりばったりでやられたんじゃ、あなた、たまったものじゃないや。今言っているのは、横文字に言えばともかく人をごまかせると思ったのかしらぬけれども、ファンダメンタルズとかなんとかいうことを言いながら、何のことかわけがわからない。どうなんです。少なくとも、出ていく以上は、我々は国内においては大体これくらいという腹づもりがある。そして、それを主張していくという態度じゃないんですか。どうなんです。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは私も当時の経緯をいろいろな形であれこれ聞いております。その辺のことを申し上げた方がむしろ御理解を得やすいのかもしれませんが、一昨年の九月二十二日でございますが、このときに円が二百四十二円でございます。そこでプラザで集まりましたときに何となく一同が期待をいたしましたことは、実はこれが成功するかどうかということは皆が余り自信がなかったようでございますけれども、十月の初旬にソウルでIMFの総会がございますので、つまり九月の時点から申しますと二週間余り後でございますが、それまでに一割ほどドルが下げられればこれはなかなか成功ではないかということを関係者は一様に思っておったようでございます。  ところが、十月の七日ごろには二百十円台ぐらいになっておりまして、そこでソウルで集まりましたときに、意外にこれはうまく成功した。世間も余り信用しておりませんでしたから、こういくというほどは。うまくいったなという感じを関係者がみんな持って、この段階はまだまだみんながいわば幸せであった。余り皆、困った国はないと申せばよろしいのかもしれません。それで、暮れに、ちょうど十二月三十一日に二百円になっておりまして、この二百円ぐらいまではまず我が国としても、これは当初ねらったことが意外に早く成就してきたなと思ったようなんでございます。私も確たる証拠で申し上げることができないんですけれども、関係者の感じを聞きますとそうでございます。  ですから、その辺までは問題がございませんで、日米も利益が全く一致をしておったわけでございますけれども、その後二月に入りまして百八十円台になりましたころから、どうも我が国としては、これは幅が大きいというより余りに急である。つまり、九月二十二日から二月までわずか五カ月でございますか、二百四十円が実は百八十円から見ますと三割余りでございますから、これはちょっとという感じ。しかし、それから後は、御承知のようにずっと円が上がり続け、ドルがいわば下がり続けた状況で、サミットがございましたのは五月の初めでございますが、そのとき百六十五円ぐらいでございまして、このときには総理大臣がレーガン大統領に対しまして、余りに円の上昇が急なので、ドルの下落が激しいので、こういうことでは日本としてこれから、いわば今で申しますと内需振興等々でございますが、そういう役割を果たすのに日本経済にとって害があるということを総理大臣からレーガン大統領に話をしておられるところでございます。  しかし、どうもその段階では、今から顧みますと、アメリカ自身はまだ対日貿易赤字が減らないものでございますから、まだドルが下がった方がアメリカにとっては有利だというふうに考える人々がかなりあったように振り返りますと思えるわけでございまして、どうもそこらで日本が非常に困ってきているということ、その状況アメリカが望んでいる状況が実は必ずしも一致しないということになってまいったのではないかと思うのでございます。  私が就任いたしましたのは七月の末でございますが、その段階では百五十四円ぐらいでございますが、明らかにそういう状況でございますから、私がベーカー長官に対して、アメリカ貿易収支を減らす、財政赤字を減らすとすれば、そのデフレ部分は日本と西ドイツが担いでくれなければ困ると申しますから、それはまさにそのとおりであるが、このように急激な円の上昇というものは、日本の成長をむしろ阻害する要因になるので、あなたの言っていることそのものが実は達成せられないことになる、そのことを理解してほしいということを申しまして、その段階で初めて米国側も、これ以上の円の急激な上昇は確かに日本のためにはよくない、少なくともアメリカが日本に期待している仕事、任務に対しては確かにこれは有害かもしれないという認識がそこで一致したというふうに申し上げることができるのだろうと思います。  それで、その延長で十月の末にベーカー・宮澤の声明が出まして、これ以上の為替の大きな変動は好ましいことでない、共同介入ということになり、さらに翌年、今年でございますが、二月のルーブル会議で、ただ日米だけでなく全部の参加者にとってこれ以上の為替の変動は好ましくないということから、したがって全員が共同介入の合意をいたしまして、そういう認識は先般ベネチア・サミットで日本から中曽根総理アメリカはレーガン大統領等々各国の首脳の間で、為替の大きな変動は各国にとって望ましくない、逆効果である、したがって共同介入、政策協調、こういう経過をたどりました。  今、経過を申し上げたのでございます。したがって、最初の段階は、意外に早くプラザ合意というものが所期の目的を達するまでドルの下降があった。それはまさに、あれがなければ今非常に難しいことになっておったと思いますから、私は有効な目的を達したのだと思いますけれども、その速度が余りに早く、余りに急であったために、関係国、殊に我が国の経済に非常に大きな打撃を与えることになり、そして、そのことは昨年の夏以降関係国がみんな共同の認識をするに至って、これ以上の為替の大きな変動は好ましくない。大体こういう経緯であったと存じます。  したがいまして、井上委員のおっしゃいますように、初めからどういう計画であったかというお尋ねは御無理なお尋ねではありませんけれども、事の性質上、殊に相場に関しますので、みんながともかくまずドルを下げるということに最大限の努力をしてみようという努力は実りましたけれども、実はまた非常に短い間に大きな影響を他の通貨に与えましたために、いわばその後遺症の処理をその後に行うことになった、こういう経緯でございます。
  129. 井上普方

    井上(普)委員 今のお話を承っておりますと、その二百四十三円でしたかのときに合意した。そのときに、もう少し話し合いができておらなければ私はおかしいと思うのですよ。共同して下げようじゃないかというときに、余りにも日本は、それは一割が望ましいくらいのおつもりであったのかもしらぬけれども、アメリカは最初からそれをねらっておったのじゃないだろうかというのはひがみではございますまい。今のお話を承りますと、百六十二円くらいになったらアメリカも少し考え出したというお話でございますので、アメリカも最初からそういうような意図を持ってアメリカの通貨当局あるいはアメリカ政府はお考えになっておったのじゃないだろうかと私にはどうも考えられてならない。それはともかくといたしまして、今日までこういうような日本の不況、しかも失業者を大量に出す構造不況を来しておるこのドル安・円高の現状は、日本経済にとっても決して好ましいものではない。のみならず、これは中曽根内閣にとりましては、いろいろ中曽根総理はその成果をうたっておられるけれども、後世の史家はいかにも定見がないことをしたなと言わるる可能性があるように私には思われてならないのであります。  さてそこで、こういうような状況になってみて、今国内で一体何をなすべきか。もう時間がございませんので、その点についてお伺いをしてまいりたい。  一体、日本の円は強くなり、金持ちになった。しかし国民は金持ちになったような気分にはさっぱりなってない。ならぬのも当然であります。円高になり日本は金持ちになったんだというが、ともかく庶民大衆の生活には全然影響がない。ただちょっと電気、ガスが下がってきた、これだけじゃないか。今私は、中曽根内閣というのを考えてみると、中曽根さんというのは運のいい人だなとつくづく思っているのですよ。あなたが総理大臣になられてから物価は安定しておると言っていいでしょう。明治以来これだけ物価安定が五年も続いた時期というのは私はないと思う。さしずめ政治はしやすかったなと思うのですよ。  しかし、その物価水準というのは、これはすべて四十七、八年のあの石油暴騰あるいは五十四年の第二次石油暴騰、これに合わして政府諸君あるいは経済界は、すべて石油が上がったんだから物を上げなければいかぬだろう、こう言って公共料金を初め全部上げてきたのです。だから今高値で安定しているのだ。労働省が昨年購買力平価というのを調べておる。あるいはパリのOECDも購買力平価を調べておる。けさもそれの質問があったようでございますが、国民生活というものはきゅうきゅう言っておる。OECDで調べておるところによると、一ドル二百二十三円ぐらいが適当だというような数字まで出してきておる。しかし、物価を引き下げようという努力がないように思われてならないのでありますが、経企庁の長官、どうですか。
  130. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生もよく御案内だと思いますけれども、一年間、六十一年度、日本の卸売物価は一〇%下がってございますし、それから消費物価も前年度同水準でございますから、かつてなく安定をしておるわけであります。これは全体の傾向でございますが。  個別の商品につきましても、円が上がりましたのは対ドルでございますから、ヨーロッパ通貨等は余り円が上がってないわけでございますので、日本がドルで買っているものにつきましては相当な値下げでございますし、細かい数字はここにございますから全部申し上げることははしょりますけれども、輸入価格の変動と末端小売価格の変動の幅で、むしろ輸入価格の変動の幅の何倍も末端小売価格が下がっておる商品が相当ございます。  具体的なもの、例えばテニスラケットだとか、これが大体二五%、一・二五下がっておりますし、例えばハンドバッグなんかは一・四八ですから五割ぐらい下がっておるわけでございますし、万年筆なんかもやはり一・六二、もっと大きいのは、例えばコーヒーメーカーなんかは二・四二だとか、細かいもので相当下がっておりまして、しかもいわゆる円高の影響がないはずのヨーロッパ製品も全体の円高メリットが出てくる、そういうムードの中で相当な値下げもしでおる。したがって全体的に物価は安定しておりますし、また個別商品については相当な円高差益の還元、そしてプラスアルファの効果があった、かように私どもは考えております。
  131. 井上普方

    井上(普)委員 私は異なことを承ると言わざるを得ないのですね。先日私はイギリスとフランスへ行ってきました。今ポンド幾らしています。ポンド二百五十円ですよ。一フラン二十五円ですよ。これで円の変動がなかったというのはおかしいじゃありませんか。少なくとも去年はポンドは二百八十円していましたよ。私は、ともかく外国へ行って買い物をする、土産物を買うと、えらい買いでがあるな、円は高くなったなと欧州においても感じますよ。そういうことでございます。  しかし、もう時間の制約がございますから、国民生活に一番関係しておる問題について少しお伺いをいたしましょう。  これは農林水産省もそうですが、例えて言いますと、今水産物がどんどん七割、八割、ともかくほとんど輸入されている。これが市場に出ている。ところが一向に下がらない。幾らくらい下がったのですか、農水大臣、エビだけについてひとつお話しいただきましょうか。エビはどれくらい下がったのですか。
  132. 加藤万吉

    加藤国務大臣 エビですか。一キログラム昭和六十年九月から六十二年五月の間で六百六十三円下がっております。小売価格の変化は、六十年九月から六十二年五月にかけて八百六十円下がっております。
  133. 井上普方

    井上(普)委員 それはそのとおりのようであります。しかし元値はどれくらい、六百八十三円下がったというけれども、そのときの値段は一キロ当たり二千三円じゃございませんでしたか。(加藤国務大臣「二千二百三十円」と呼ぶ)二千二百三十円の方を使っているのですか。これは両方あるのですよ。ここにおたくが出した資料をちゃんと持っているんだ。そうすると、そのときに何%下がったかというと三割下がっているのですよ。ところが今、小売値段の方は八百六十円下がったとおっしゃる。それはそのとおり下がっています。しかし、これは前の値段と比較しましたら何ぼほど下がっているのです、一五%じゃないですか、いいですか。下がっておることは事実だけれども、これはドル安に対して余りにも反映する量が少ないと思うのですよ。あるいはタコにしてもそうです。あるいはまた、まあマグロは円建てで買うとるというからこれはなかなかでしょうけれども。サケにしましても、サケは大体パラレルになっています、小売価格と値下がりの率とは。しかし、ほとんどがそうでしょう。  特にまた割り当てを決めておるレモンであるとかあるいは果実ですね。こういうものについての値下がり率が非常に低い。通産省は今までそれをどんな業者が輸入しておるかということは一切秘密にしておったけれども、見てみるというと、割り当てをしておる通産省の言うことをともかく一番聞かなければならぬ種類のものが下がっていない。七〇%も卸値で下がっておるものもあるけれども、小売値においては二〇%しか下がっておらぬというようなのが出てくる。グレープフルーツのごときは、輸入価格は、これは五十八円下がった。そうすると三一・七%下がった。ところが、これは割り当てがあるから、六十二年の五月で見てみますというと、三十六円しか下がってない、五・九%しか下がってないでしょう、グレープフルーツなんかは。どうなんです。グレープフルーツの係の方、どなたかな。
  134. 谷野陽

    ○谷野政府委員 お答えいたします。  ただいま数字を挙げて御質問があったわけでございますが、輸入価格で下がりましたものと小売価格で下がりましたものの関係をまず申し上げたいと思いますが、これは目方当たりで計算をいたしております。そういたしますと、輸入が例えば二千何百円で入りまして、中間でいろいろこれを取り扱います経費がかかりまして、小売が例えば五千円ぐらいになるものもございます。そういたしますと、その中間経費につきましては、これは賃金でございますとか国内の運賃でございますとかそういうことでございますので、私どもは、目方当たりの輸入の価格が下がった分が小売で下がりますことをもちまして一つの指標にいたしておるわけでございます。かような計算をいたしますと、先ほど大臣の方からお答えを申し上げましたように、エビでございますと六百六十二円が八百六十円程度下がっておると、こういうことになります。  それから、レモン、グレープフルーツでございますが、これらもかような計算をいたしますと大体物に応じた値下がりがある、こういうことでございまして、この品物につきましては、現在いわゆる輸入割り当て制度の対象になっていないものをここに挙げておるわけでございますので、御理解をいただきたいというふうに思うわけでございます。     〔野田委員長代理退席、委員長着席〕
  135. 井上普方

    井上(普)委員 しかし、これは小売値において輸入価格だけ下がってない。それは中間の業者があり、それは日本の労働賃金が下がってないんだから、ある程度輸入価格に連動する比率であるとは私は申してない。しかし、グレープフルーツなんかは輸入価格が三一%下がっているんだけれども、その小売価格は五・九%しか下がってないでしょう。どうなっているんだと言うんですよ。  それから食用油。油にしても、大豆は四二・一%下がっているんです、輸入価格は。ところが、小売値段は一〇%しか下がってない。マーガリンもしかりです。チョコレートもそうですよ。チョコレートはアメリカからもあるいは欧州からもやかましゅう言われるけれども、カカオ豆は四二・六%下がっている。ところが、小売価格は六・九%しか下がってない。どうしてこんなアンバランスができるんでしょうか。企画庁長官、どうですか。だから国民は、円高になったけれども余り恩恵をこうむっていないという気持ちになるのは当然じゃありませんか。どうなんです。
  136. 谷野陽

    ○谷野政府委員 ただいま御指摘がございました内容のうち、いわゆる加工品の関係でございますが、御指摘のように、原料大豆の値下がりとそれから食用油の値下がりを率で計算いたしますと御指摘のような数字が出てくるわけでございますが、原料大豆は、大豆を搾ります際にいろいろとエネルギーでございますとかその他の償却費等がかかるわけでございまして、私どもはそのような、いわゆる原単位と申しておりますけれども、食用油価格の中に占める原料大豆の比率でございますとか、あるいはマーガリンの中に占める原料大豆の比率というものを計算をいたしましてこの値下がりの状況を監視をいたしておるわけでございますが、食用油につきましては、私どもはおおむね、そのような原単位を計算をいたしまして計算をいたしますと、現在の値下がりは十分これを反映をしておるというふうに考えておるわけでございます。  また、チョコレートにつきましても、カカオの豆以外にいろいろな、砂糖でございますとか牛乳でございますとかナッツでございますとかその他の副原料もございますし、またこれを加工いたします経費もございますが、これもおおむね反映をいたしておると思っておるわけでございます。  なお、製品のチョコレートにつきましては、多少輸入の際の月別の数字の変動がございまして、御指摘のような数字的な差が出てくる力もあるわけでございますが、これにつきましてはちょっと輸入のものの小売価格への浸透が一時おくれておりましたが、このところ急速に浸透を見ておりまして、おおむねその線に近づいてきておるというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  137. 井上普方

    井上(普)委員 次に製品のチョコレートを質問しようかと思ったら、先に言ってしまった。  しかし、チョコレートはどうなのかというと、チョコレートは製品輸入しているんですからね。製品輸入して、これが千二百七円下がっていますな、六十年九月と六十二年五月との差は。千二百七円下がっている。これは輸入価格でいいますと六三%下がっているんです。六三%下がっているけれども、小売価格は一五・五%でしょう、下がっているのは。これでできていると言われたら、それはアメリカもあるいはヨーロッパの諸国も、おかしいじゃないかと言われる証拠になりますよ。製品輸入ですよ。輸入価格が六三・〇%下がっている。小売価格は一五・五%しか下がってない。そしていわくには、はい、チョコレートはキロ当たり四百六十円下がりました、こう申すのが皆さん方の言い方なんでしょう。比率で全然おっしゃらない。どうするつもりなんですか。これは外国の諸君が日本の流通機構けしからぬと言うのも当たり前じゃないかと私は思うんだが、どうです、経済閣僚
  138. 加藤万吉

    加藤国務大臣 チョコレートにつきまして申し上げますと、具体的に町へ行って買っていただけばわかります。これは国産のチョコレートと輸入したチョコレートの相場を具体的に比較検討してあります。ほとんど同じ相場で売っております。そして、去年一年でいいますと約倍チョコレートの製品の輸入はふえております。  それからもう一つ、先ほど来の御質問で申し上げておきたいのは、そういうもののコストと加工、流通、販売経費、この違いというのが――大体一つの製品に占める原材料コストは、あるものは六%、あるものは二〇%、あるものは二七、八%が原料費であります。そして、あとはことごとく加工、流通、販売である。ここら辺を井上委員ぜひよろしく御理解いただきたいと思うところでございます。
  139. 井上普方

    井上(普)委員 農水大臣、私もそれくらいは知っているんだ。だから輸入価格が直接響けというようなやぼなことは私は言ってないつもり。しかし、チョコレートの製品は製品輸入しているんだから、製品輸入をして一年九カ月の間に六三%下がっている。ところが小売価格は一五%しか下がってない。これはヨーロッパの諸国が言うのは当たり前だと私は思うのですが、それをまた当然とあなたはおっしゃいますか。
  140. 谷野陽

    ○谷野政府委員 チョコレートについてお答え申し上げます。  この数字につきましては、私ども大変恐縮をいたしておりますのは、その注のところに、先生お持ちかと思いますが、書いておいたわけでございますが、輸入価格がその前後の月で大変動いておるわけでございまして、六十年の八月と比較をいたしますと六百二十九円の下落、それから十月と比較をいたしますと六百九十七円の下落でございます。この月だけは大変チョコレートの輸入の中で高級品がたまたま多かった月だというふうに私ども見ておりますが、実はこれにつきましては企画庁で、ある月の数字でそろえろという大変きつい御命令がございまして、私ども非常に特殊な月の数字をこういうふうに整理をせざるを得なかった、こういうことでございます。  六十年の八月と比較をいたしますと六百二十九円の下落でございまして、これは先ほど申しましたように、目方当たりで申しますと、四百六十円の下落に比べますとなおいま一歩下落の浸透の状況が足りないわけでございまして、その点につきましてはさらに検討をさせていただきたいと思っておるわけでございますけれども、先ほど申しましたように、非常に月のとり方によってこのように大きな変化がたまたま出てきた、こういうことを御理解をいただきたいというふうに思うわけでございます。
  141. 井上普方

    井上(普)委員 あなた、お役人がたまたま高かったものを書きますか、こんなのを。いかにももっともらしい数字を出してくるのがお役人の常じゃありませんか。これは農水省からやむを得ず出したんでしょう。しかも、先ほどの係官は得々としてチョコレートのことを言うたがら、私は聞いたんだ。これは言われるのは当たり前だと私は思います。  いずれにいたしましても、このように円高になったにもかかわらず、それが消費物価にともかく反映してない、これはさらに御努力をお願いしたいと思うのです。  それと同時に、先ほど来申しましたように、産業空洞化の足音が日本に襲いかかりつつあると私は思います。そこに出てくる問題は何だといえば、もちろん技術力もございましょうし、また雇用面での失業問題等々が今後我々に大きくのしかかってくることを覚悟しなければならない。中曽根内閣はもうやがて終わるのでしょうけれども、産業政策において、アメリカはあれだけ国際競争力を言っている、しかし日本はそれについて、前川レポートは何にもこたえられない、こういう面を見ると、私も肌にアワを生ぜざるを得ないのであります。せっかくの御努力を心からお願い申し上げまして、質問を終わります。
  142. 砂田重民

    砂田委員長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。  次に、冬柴鉄三君。
  143. 冬柴鐵三

    冬柴委員 まず、光華寮問題についてお尋ねをいたします。  本年は、日中国交正常化十五周年の佳節を刻む意義深い年であるとともに、日中両国民にとって忌まわしい蘆溝橋事件発生以来五十年の年でもあります。日中両国は一衣帯水の地理的関係にある上、二千年にわたる悠久の歴史を有し、日中友好親善の維持発展は、ただに日中両国及びアジアのみならず、世界の平和と安定に必須の要件となっていると信ずるのでございます。  今、日中両国間で大きな問題となっている光華寮について、私は弁護士でありますが、法曹の一員として、政府が三権分立の原則に立脚し、司法介入と解されることに極度に気を配りつつ、その解決に苦慮されている姿勢に対しましては、かねてより敬意を払っているものでございます。しかし、憲法七十三条には、外交関係を処理する権限は内閣に属する、このように明定しておりますので、本件につき行政固有の権限としてなし得べきことがあったのではないか、また、今もあるのではないか、このように考えるのでございます。  そこで、まず日中間の法律関係をきっちりと整理しておく必要があると思いますので、法制局長官にお尋ねいたします。  昭和四十七年九月二十九日発出した日中共同声明第二項は、「日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。」と規定しています。ここに中国という国と中華人民共和国政府ということが使い分けられていますが、中国とは何を指すのか。重ねて、日中共同声明発出によって失効いたしました日華平和条約第十条にも、「この条約の適用上、中華民国の国民には、中国の国籍を有するものを含むものとみなす。」と規定し、ここにも中国という国名が出てくるのであります。この中国と日中共同声明で言う中国との間には径庭があるのかないのか。まず、その二点につき御答弁をお願いいたしたいと思います。
  144. 味村治

    ○味村政府委員 日中共同声明第二項に、中国とそれから中華人民共和国政府と、この二つが挙げられておりますが、中国という言葉は、国家、国を指しておるわけでございまして、中華人民共和国政府というのは、これは我が国が中国の唯一の合法政府として承認いたしました政府を指すということでございます。現在の法律上、中国というふうに書いてある場合にはすべてそのように解釈されると存じます。
  145. 冬柴鐵三

    冬柴委員 次に、日本国政府がこの日中共同声明によって承認したのは何を承認したのか、国際法における意味を簡潔に御説明をいただきたいと思います。
  146. 味村治

    ○味村政府委員 これは講学上、政府承認と言われているものでございまして、中国の合法政府は中華人民共和国政府であるということを認めたものであります。
  147. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そういたしますと、この中国というのは五千年の歴史を有する国際法上の厳然たる主体、こういうものを指して、そしてこれに対して、ある場合には清朝とか、その後中華民国があり、そして現在、我が国との関係におきましては中華人民共和国が唯一のこの主体を国際法上代表する政府である、このように理解をしたらいいと思いますし、この関係は、政府の形態が変更しても国家自体は変更しないというグロチウス以来認められた国際法の原則である、このように理解いたします。  話を進めるために一つ例を、比喩を引かしていただきたいと思うのですが、ここに例えば甲野花子さんという女性がいまして、その名義で二月の家を所有していらっしゃった。この女性が乙野という人と結婚をして乙野花子と名前を変えられた。  法務省にお尋ねをいたしたいのでございますが、登記簿上、所有者甲野花子となっている名義を乙野花子と変更するにはどのような手続をとることになるのですか。また、その登記をするにはどんな書類を申請書に添付しなければならないことになっていますか。その点についてお尋ねをいたします。
  148. 千種秀夫

    ○千種政府委員 登記簿上、登記名義人の変更の登記の申請をする場合にはこれを証する書面が必要でございますが、お尋ねのような身分関係によって氏名が変わったという場合には、これは普通戸籍抄本を提出してこれをすることになっております。
  149. 冬柴鐵三

    冬柴委員 すなわちその名義人表示変更登記というのは、甲野花子と乙野花子というのは名前は異なるけれどもその実体は同一の女性である、こういうことが前提となって単なる表示の変更という登記が許され、その登記は、今お述べになりませんでしたけれども、乙野花子さんからの一方的な申請で、一人しかいないわけですから一方申請で名前が変わったということだけを、いわゆる不動産とは離れまして、名前が変わったということだけを証する書面を添付することによって行われる、このように理解できるし、そのように不動産登記法では規定がされております。  それでは話をもとに戻しますが、四十七年九月二十九日日中国交正常化当時に、先ほど法制局長官が御説明されましたいわゆる中国、このようなものが所有していた我が国領土内の不動産にはどんなものがあったか、時間を節約するために私の方から調査したところを述べることといたします。  まず、東京都港区元麻布三丁目にいわゆる公使館敷地という形で九筆の一団の土地が一つありました。中華民国という名義で登記がされた不動産でございます。その次には、大阪市西区西本町一丁目周辺に六筆のこれまた一団の土地がありまして、これは宅地ということで中華民国の名義になっておりました。三つ目が本件の光華寮で、京都市左京区北白川に三筆の一団の土地で、中華民国となっておりました。その次が四番目で、横浜市中区山下町六十三に一筆の土地で、宅地として土地がございました。  そのほか、法制局長官が言われた、中国に帰属するものと理解できるものに、満州国所有名義の不動産が東京都港区元麻布三丁目に二筆の一団の土地がございました。地目は大使館敷地となっております。六番目には、蒙古連合自治政府という名義の土地でございまして、これもやはり東京都港区南麻布五丁目に一筆の宅地としてありました。  まだあるかもわかりませんけれども、外務省、このようなものがあったことはお認めになりますか。
  150. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 ただいま委員がお挙げになりました不動産が存在しておりました。
  151. 冬柴鐵三

    冬柴委員 この土地につきましては、中華民国名義の不動産につきましては、本件光華寮を除きましては、いわゆる大使館の土地、それから大阪の土地、横浜の土地、いずれも先ほど比喩的に申しました名義人表示変更登記が経由されておりまして、ただ満州国と蒙古連合自治政府につきましては、つい最近でございますが、所有権移転登記がなされておりますが、それは間違いありませんか。
  152. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  153. 冬柴鐵三

    冬柴委員 しからば、なぜにこの本件の土地に、光華寮につきまして名義人表示変更または所有権移転登記が経由されなかったのか。また、各不動産の間に登記の日付がばらばらになっているわけですけれども、それにはいろいろ理由はあると思うのですけれども、どのような判断、どのような基準からこのような手続がとられたのか、その点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  154. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 ただいま委員がお挙げになりましたうちの一から三まで、すなわち在日東京の大使館、それから二番目の大阪総領事館、土地建物、それから第三番目に横浜総領事館、この三つにつきましては、日中間の国交の正常化に伴いまして、これらの外交領事財産を継承いたしますものが中華人民共和国政府であるということは国際法上も非常にはっきりしていることでございますので、国交正常化をしました後、中華人民共和国駐日大使館から当該土地建物を所轄する法務局に対して登記名義人表示変更の嘱託が行われまして、今私が冒頭に申し上げました、非常にはっきりしているということで、外務省といたしましても、これらの土地建物に対する中華人民共和国政府の所有権を確認するというような協力を行いまして、登記名義が変更されたわけでございます。  それから四は光華寮でございますからこれは別にいたしまして、五と六、旧満州国武官室跡地及ビ蒙古連合自治政府公館、この両者につきましては、委員御承知かと思いますけれども、戦後非常に長い間我が方の政府が管理をしておりましたけれども、不法占拠者がおりまして、この立ち退きの問題でいろいろと手続、実は訴訟を起こしていた経緯もございますけれども、きれいな――きれいなといいますか、この不法占拠者全部を立ち退かせまして、きちんとした形になった段階で中華人民共和国駐日大使館が登記名義の変更を行った。そのために、今御指摘のように時期がちょっとおくれております。満州国武官室跡地の場合は、登記名義の変更は結局いろいろな手続を下しまして、六十一年の九月に行ったという経緯がございます。
  155. 冬柴鐵三

    冬柴委員 御答弁の中で、大阪の土地は領事館と言われましたか。それから横浜も領事館と言われたのですか。
  156. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 正確を期しますために、大阪の土地は在大阪総領事館、これは大阪市西区阿波堀通りというところです。それから横浜のものは横浜総領事館用地ということでございます。
  157. 冬柴鐵三

    冬柴委員 その上に領事館が建つでいたのですか。領事館として使用されたことがあるのですか。
  158. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 横浜の土地についてのお尋ねでございましたならば、領事館は建ってはおりませんでした。
  159. 冬柴鐵三

    冬柴委員 大阪の土地は領事館が建って使っていたのですか。それからあわせて、満州国の所有の土地もその目的に従って使用をされていたのかどうか。蒙古連合自治政府についても同じことをお尋ねいたします。
  160. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 大阪の方は総領事館として用いておりました土地建物でございます。横浜は先ほど申し上げたとおりでございます。それから、満州国のものは満州国武官室の跡地ということでございます。それから、蒙古の方は蒙古連合自治政府の公館の土地及び建物ということでございます。
  161. 冬柴鐵三

    冬柴委員 それでは法務省にお伺いいたしますが、中華民国名義だった土地についての登記はどのような登記手続がとられたのか。その嘱託人はだれであったのか。そしてまた、それに添付される書類、先ほど個人の場合は戸籍謄本等を挙げられましたけれども、それにかわるものはどのようなものを要求されたのか、その点についてお教えいただきたい。
  162. 千種秀夫

    ○千種政府委員 先ほどお話が出ました大使館の不動産につきましては、中華人民共和国の大使からの嘱託でございまして、これには登記名義人の変更を証する書面といたしましては外務省の外務次官の証明書が添付されております。その証明の内容でございますが、文言といたしましては「別紙目録記載の不動産の登記名義人の名称は昭和四十七年九月二十九日、中華民国から中華人民共和国に変更されたことを証明する」という文面になっております。
  163. 冬柴鐵三

    冬柴委員 この質問を通じて、外務大臣、それぞれの不動産について外務省としてその所有権の帰趨について判断をされていらっしゃる。それは、ぼくは当然のことだと思うのでございますけれども、光華寮についてはそのような判断をなされたのかどうか。そこが一番問題だろうと思うのでございます。  昭和六十二年二月二十六日付、言い渡された大阪高等裁判所の判決の中に、証拠によって認定した事実、裁判所が認定した事実にこのようなことが書かれています。「昭和四九年日本との国交回復以降今日まで六次にわたる外交折衝を通じて、日本政府に対して、本件建物が中華人民共和国政府の所有に帰すべき国有財産である旨の主張を行ってきたうえ、昭和五七年七月には、本件建物の改修工事に際して」中華人民共和国は「工事費用一〇〇〇万円を出損した。」このようなことが証拠によって認定されており、また同じ判決文の中で、被告側の主張は、この六回という認定に対しては「十数回にわたり」「一貫して」、このようなことが書かれているわけでございまして、少なくとも六回の正式な外交折衝があったということをこの判決がうかがわせるわけでございますが、外務大臣、外務省としてはこういう主張があったのかどうか、それに対して外務省としてはどのような対応をされたのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  164. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 ただいま委員御指摘のとおりの文言が判決の中に記されております。  中国との間の外交当局間におきまして、中国側は、昭和四十九年以来累次にわたりまして我が方に対しまして、光華寮は中華人民共和国政府の所有に帰すべき中国の国家財産であるという主張を行ってまいりました。これに対しまして、これが御答弁になるかと思いますが、我が方からは、光華寮のごとき外交領事財産とはみなし得ない財産に関する問題は、最終的には法律上の問題として裁判所の判断にゆだねられるべき問題であって、現に光華寮の場合には係争中でございましたので、係争中の問題であり、三権分立の体制下で司法手続にのっとり争われている民事訴訟に対して行政府の立場から介入をしましたりすることはできない、こういうことを申しております。六回ないし十数回といろいろございますけれども、何回というふうに判断なさったかというのは裁判所が御判断になったことかと思いますけれども、累次にわたりいろいろの話し合いを行ったということは事実でございます。
  165. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私は、すべて司法権は裁判所に属する、これは憲法七十六条にそのように記載されています。ところが一方、憲法七十三条二号には、外交関係を処理する権限は内閣に属する旨も明定しているのでございまして、三権分立、行政が司法係属中の事件に云々することは決して望ましいことではありませんし、またやるべきことではない、このように思いますけれども、この七十三条に基づく内閣の、すなわち外務省の判断はどうだったんだろうか。これをせずに、係属中だから裁判所の判断にゆだねますということは、むしろこのような複雑な事例につき裁判所を巻き込んでしまうことになるのではないか、現にそうなっているのではないか、このように思うわけでございます。  すなわち、この七十三条に基づいて行政は積極的に光華寮の所有権の帰趨について内閣としての否権的判断をなすべきであったと思われますし、またそれを基礎にして中華人民共和国と、かくかくしかじかの学説あるいは考え方に基づいてこれについては内閣としても意見できないんだ、このようなことを堂々と言って、十数回とか十五年にわたる交渉とか、そういうことは避けるべきではなかったのか、このように私は考えるのでありますが、外務大臣、その点いかがでしょうか。
  166. 倉成正

    倉成国務大臣 日中国交正常化以前、当時のいわゆる中華民国政府が本邦において所有していた外交領事財産でない光華寮のごとき財産の帰属については、事例に即して当該財産の取得の経緯、日時、使用目的、使用形態等を考慮して具体的に判定さるべきものであり、最終的には司法手続の中で裁判所が決定すべき問題であるというのが、政府の従来からの立場でございます。
  167. 冬柴鐵三

    冬柴委員 中曽根総理、今のやりとりをお聞きになっておわかりではないかと思いますけれども、内閣として七十三条二号に基づきまして、それぞれほかの土地についてその所有権の帰趨を判断したのと同じように、本件土地についても早く、裁判所に係属中だからその結論を待つというんではなしに、行政府自体の判断に基づく外交交渉をすべきではなかったか、このように思うわけでございます。  いずれにしましても、私は、本件は日中両国の二千年に及ぶ長い歴史観に立って対処すべきだったのではないかとも思われるわけでございます。唐や晴代には我が国は十数次に及ぶ遣唐使を派遣しまして、これには延べ数千人の留学生や留学僧が随行しています。そして長く中国の地にとどまりました。これらの留学生や留学僧を通じて我が国は律令制度や首都の造営、仏典、仏寺、仏像から儒教思想、漢字、詩歌、美術工芸、音楽、天文暦法、医学と、広範な文物を惜しみなく与えられ、それを基礎として我が国独自のけんらんたる文化を形成し得たのではありませんか。しかし、近世に至り、中国は半世紀にわたる数次の侵略のために疲弊しまして、今官民挙げて近代化に努力を重ねていられるところでありますが、我が国は今こそ享受している繁栄を中国の近代化のために提供すべき立場にあるのではないか、このようにも考えるわけでございます。  そこで、光華寮問題の解決ということを離れまして、この事件を機会に、学生の都でもある京都に日中友好会館などを建設する、そこに留学生の寮を併設する、このようなことも考えられると思うのでございますけれども、この問題の最後としまして総理のお考えをお伺いしたい、このように思います。
  168. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日中関係につきましては、累次にわたり公式に言明しておりますとおり、日本の対外意思、国家意思は一つである、それは中国は一つであり、二つはない、中華人民共和国政府、これが我々が承認している政府である、そういうことを厳然と申し上げているのでありまして、これはいささかも揺るぎはありません。この両国関係が共存共栄していくということは世界やアジアの平和の基礎であるという点、全く同感でございます。  ただ、光華寮の問題については甚だ苦慮しておるところでございますが、ほかの代替のものをつくったからといってこの問題が解決するとは思いません。そういう代替し得るような性格のものではないと私は思うのでございます。ですから、別の政策で友好を強化するということは強化いたしますが、この問題は今裁判所に係属しておる問題で、そういう意味からも、ちょっと行政府としてはなかなか手の届かないところに行っておるものですから、いろいろ推移を見つつまた検討していきたい、そう思っておる次第なのでございます。
  169. 冬柴鐵三

    冬柴委員 次に、弱い立場にある人たちに温かな政治の光を与えていただくために、精神薄弱児者の福祉と無資力者のための法律扶助の二点について、順次お尋ねをいたしたいと思います。  実は、私には昭和三十六年生まれの長男がいますが、生後一歳前後に脳髄膜炎にかかりまして、その後の後遺症により残念ながら精神薄弱児になってしまいました。この子が小学校に入学した昭和四十年代の初頭には、小学校には特殊学級がありませんでした。その後の急速な福祉施策の充実によりまして、小学校の四年以降及び中学校は特殊学級、高校は養護学校高等部、卒業後は府立の授産施設へと通いまして、身辺処理も可能となり、五十八年には民間企業に就職をし、現在まで四年間無遅刻無欠勤で動続することができるまでになりました。このようなことから、私は知恵おくれの子を持つ親たちの会である大阪の池田市の手をつなぐ親の会の会長を四十八年から六十年までの十一年余り務めさせていただき、数々の貴重な体験をすることができました。  ことしは国連障害者の十年の中間年に当たりまして、政府におかれて障害者対策に関する長期計画を策定されて五年、この間着実に成果を上げられましたけれども、完全参加と平等の目標に到達するためにはなお格段の努力が必要である、このように痛切に感じるわけでございますが、そこで順次質問と提言をいたしたいと思います。  まず厚生大臣に、障害者の歯科診療の実情について御説明をお願いしたいと思います。
  170. 斉藤邦彦

    斉藤国務大臣 心身障害児者の皆さんにおかれましては、一般的に歯磨きが不十分であるというようなことから、虫歯とか歯槽膿漏に陥りやすうございます。また痛みを的確に表現しにくいとか、また口をあげて診療させるということになかなか抵抗があるというようなことで、歯科診療については特別な配慮が必要であるというふうに考え、これに対する施策を推進をいたしておるところでございますが、まず歯科診療におけるこういった心身障害児者の皆さんに対する診療報副の歯科診療点数の特別な点数を設けておるというようなことが第一点であり、またそういった特別な配慮をしなければなりませんので、かなりベテランの歯科医によって行われるということも必要でありますので、各都道府県とかまた歯科医師会等が設置をいたしております口腔保健センターにおいてこれを専門的、集中的に行っておるというようなことでございます。  同時にまた、心身障害児者の方々への歯科保健、予防の普及というような観点から、歯科衛生士の養成につきまして、その養成所の教育の一環といたしまして、身体障害者の施設等を巡回いたしまして巡回臨床研修事業というようなものを行い、歯科衛生士の勉強とともに障害者の方々へのそういった知識普及、啓蒙を行うというようなことなどを含めて歯科診療の施策を進めておるところでございます。
  171. 冬柴鐵三

    冬柴委員 まず、私が親の会の会長に就任した当時から、この会員のお母さん方から、子供が歯痛を訴えてもどこの歯医者さんでも診てもらえないという申し出が多々ありました。昭和五十六年ごろ会員全員に歯科診療の実態についてアンケート調査を行った中で、ほとんどの母親がこのような悩みを経験していることが明らかになり、その欄外のコメントにこんなことが書かれてありました。  夜中子供が歯痛を訴えて泣きますので、夜があけるのを待ちかねて歯科医へ行きましたが、子供が怖がって口をあけない為どことも診療を断わられました。そして最後に尋ねた親切な歯医者さんが、大阪のある公立の福祉センターの中に障害児の歯科診療所があるので紹介状を書いてあげましょうと言われたので、これを戴きタクシーで駆けつけました。受付で暫く待っていたら名前を呼ばれ、この時間に必ず来てくださいと言われ一枚の紙を渡されました。その紙を見たら、約三ケ月先の日付と時間が書いてありました。  このようなことがわかりまして、飢餓と肉体的な苦痛からの解放は人道問題の基本である、そのような考え方から私ども親の会では、何とかしなければならない、このような思いからこのアンケート書きを持って地域の歯科医師会の会長さんに協力を求めました。会長は全会員にこの事情を説明して協力を求めましょうと約束をしてくださいまして、その結果、小さな都市ですけれども、十二名の歯科医師が私の診療所で診てあげようというような申し出をしてくれました。親の会は市長に対しまして、このように手のかかる我々の子供を診てもらった場合には、保険診療報副以外に若干の助成金を支出していただきたい、このような陳情をいたしまして、昭和五十八年度以降、わずかな額ですが、これが実現をいたしました。自来、この池田市では、知恵おくれの子供が先生があらかじめ指定してくださった診療時間外の時間にその診療所に赴きまして、顔見知りとなった先生の指導のもとに、先ほど厚生大臣がおっしゃいましたように、歯磨きの指導から歯垢、歯石取りまでやっていただきまして、ついには抜歯や虫歯の治療までが現在円滑に進められているわけでございまして、皆が大変に感謝をしている、このような状態がございます。  先ほどの答弁にありましたように、従来障害者の歯科診療問題は大変解決困難な問題でありまして、一つの県の中心に障害者の歯科診療施設をつくっていただきましても、県の端からそこまで行くのに何時間もかかる、それを何日も通わなければならないという、お母さん方にとっては大変な苦痛が伴うわけでございます。しかし、今のような方法をとりますことによって、支出は少なくて、しかも心の通ったいい診療ができる。このような工夫がこの障害者対策にはぜひ必要だと思うのでございます。そういう意味で、こういう方法を全国的に広めていただいたらどうか、その呼び水として国の方としても若干の助成を考えられてはいかがか、このように思うわけでございますけれども、厚生大臣からよろしくお願いしたいと思います。
  172. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 心身障害者の歯科診療の社会保険診療報酬の点数につきましては、先ほど申し上げましたように特別な加算をいたしておりますが、例えば非常に歯科診療が困難な心身障害者に対しましては初診時及び再診におきまして九十点、すなわち九百円の加算をいたしておりますし、また特別な抑制具を用いて診療しなければならないような場合、その措置、また手術、麻酔等幾つかの項目につきましては通常の点数の五割増しで点数を算定をするというような特例措置をとっておるわけでございます。でありますので、この上に特別な助成をということよりも、やはり歯科医師の皆様方に十分御協力をいただくように、歯科医師会を初め関係者の皆様方に私どもも積極的に要請なりお願いをしてまいるということが大事でありますし、また、診療報酬点数等につきましてもそのときに応じて適正に改善をしてまいるということで対応してまいりたいというふうに考えております。
  173. 冬柴鐵三

    冬柴委員 一層の御努力をお願いしたいと思います。  次に、幼稚園、小学校、中学校において軽度の精神薄弱児が健常児と混合して教育を受ける機会が多くなってまいりました。文部大臣、そういう特殊学級におきまして障害児何人に対して一人の教員をつけることになっているか、その点について。それと、この特殊学級におきましては精神薄弱児のうち軽度の人が通うことになっておりますが、その軽度と重度との区別といいますか、その点についてお尋ねをいたします。
  174. 西崎清久

    ○西崎政府委員 ただいま先生お話のございました第一点でございます。特殊学級につきましては、心身の障害のある子供たちでございますから、やはり手厚くやるという必要がございまして、昭和五十五年時点におきましては一学級が十二人でございます。これを小中学校の四十五人を四十人学級にする計画、十二カ年計画の中で一緒に十人にしようという計画を今進行中でございまして、六十六年には全国で十人になるであろう、これが第一点でございます。  それから基準の問題でございますが、これは学校教育法の施行令にございまして、特殊教育の諸学校、これは盲、聾、養護学校でございますが、特にお話の養護学校につきましては、介助を必要とするような重度の精神薄弱の子供さん、あるいは中度の精神薄弱であってもやはり他人の助けで身辺の事柄を処理することができる者、IQも通達等で若干触れておりますが、そういう方は養護学校へ、非常に軽度の方で自立できるような子供さんたちは特殊学級へ、こういうふうな法令の定めと局長の指導、こういうふうな分け方になっておる次第でございます。
  175. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ただ、軽度といいましても、いわゆる情緒障害とかあるいは多動性、よく動き回るという子供が一人教室に入りますと、とても十二人の障害児を一人の先生が見るということは不可能でございます。そういうことから、各市におきましては介助員を、この介助員制度というのは盲学校、聾学校あるいは養護学校にはつけるようになっているようでございますけれども、特殊学級にもこのような介助員、これはボランティアの婦人を常勤嘱託として一年限りということで雇用する、そのような方法で、その人は障害児の教室内における身辺の介護を担当される、そして担任の先生は学級運営を担当される、このようなことで障害児がその学級に入っても円満にできる。現に私どもの池田市では、市の単費でこの介助員を二十名雇用しておられます。そのような工夫があってしかるべきだと思うのですけれども、その点について文部大臣の方いかがでしょう。
  176. 西崎清久

    ○西崎政府委員 ただいま先生お話でさいましたが、現在の教育法制の立て方といたしましては、先ほど申し上げましたように介助を必要とするような重度、中度の子供さんたちは養護学校へ、そして自立できるような軽度の方々は特殊学級へということで、五十四年に養護学校の設置義務をして以来、随分養護学校を増設してまいったわけでございます。したがいまして、それの判断でございますね。その判断におきまして、やはり自立できる子供さんたちを特殊学級へ収容するという現在の立て方から申しますと、制度的に介助員を国が措置するということは非常に困難でございます。ただ、先生御指摘のように地域地域によりましていろいろな判断で例外的に特殊学級にいろいろな子供さんが入る、そして市町村の判断において非常勤等介助員を措置しておられるという実情は私ども聞いておるところでございます。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕
  177. 冬柴鐵三

    冬柴委員 総理、養護学校も随分つくっていただきましたけれども、どうも地域密着性といいますか、大分遠いのですね。ですから、やはり目の前の小学校に自分の子供を通わせてやりたい、特殊学級がある以上。したがいまして、相当手数のかかる子供が特殊学級に通うという事例もありますので、この点につきまして、このような一律に、養護学校には介助員を置くけれども特殊学級には置かない、十二人に一人の先生を置くという、そういうことでなしに、もう少し前進した考え方をとっていただきたいと思います。  次に、義務教育終了後の障害者の社会参加についてお伺いしたいわけでございますが、障害者の受け皿としての精神薄弱者の適所または収容授産施設の絶対数が不足していると思います。これにつきましては随分前進をしていただきまして、過年度二十六カ所全国でつくっていただく、画期的なことでございますけれども、全国かる見ますと数が不足いたしております。そこで、このような認可を得ずに、国の補助とか助成がなしに、いわゆる無認可と言われていますけれども、ミニ授産所が地方公共団体あるいは親の金あるいは篤志家の手で全国にはつくられているのですが、その授産所の数と収容されている人数について厚生省からお答えいただきたいと思います。
  178. 坂本龍彦

    ○坂本政府委員 ただいまお尋ねの無認可の精神薄弱者のための授産施設をお答えする前に、法律に基づいて認可を受けている精神薄弱者のための授産施設についても御説明をさせていただきたいと存じます。  こういった施設には収容形態のもの、それから適所形態のもの、両方ございますが、両方合わせまして昭和六十一年十月一日現在で全国で四百二十一カ所、定員が一万九千三百六十一人となっております。  次に、お尋ねの無認可で経営をしているいわゆる小規模の作業所でございます。これにつきましては、無認可ということもございますので、厚生省で正確には把握をいたしておりませんが、社会福祉法人全日本精神薄弱者育成会が調査をいたしました。その結果、いろいろな種類がございますが、主として精神薄弱者を対象としていることが明らかになっている施設につきましては、昭和六十一年九月三十日現在で四百二十三カ所と聞いております。このうち、無認可ではございますが国から補助をしておるところもございまして、その対象箇所数は昭和六十二年度で百六十八カ所になる予定でございます。したがいまして、これらの施設のうち、国の助成を受けていない小規模作業所ということになりますと、大体二百五十カ所強、こういう状況になるわけでございます。  また、収容人員につきましては、個々の小規模作業所によりまして人数にいろいろと開きがありますので、実態必ずしも明確でございませんが、仮に一カ所平均十名あたりと仮定をいたしますと、ただいま申しましたように二百五十カ所強の十人で大体二千五百人程度というように推計されるわけでございます。
  179. 冬柴鐵三

    冬柴委員 無認可ですからつかみにくいということではありますけれども、このミニ授産所の開設につきましても、またその作業運営につきましても、最近の円高・ドル安ということで受注作業が物すごく減りまして非常に経営が困難になっているということは新聞等で報道されているとおりでございますので、その中心者の苦労は筆舌に尽くしがたいものがございます。なお一層の助成措置を考えていただきたい、このように強く望む次第でございます。  精神薄弱者問題の最後に、一番大きな問題として親亡き後の保障についてお伺いをしたいと思います。  政府の努力によりまして、障害基礎年金一級月額六万四千八百七十五円、それから二級五万一千九百円が支給されることになりました。また重ねて扶養保険制度の改正によりまして、保護者の死亡によって月額二万円、または掛金によっては四万円の年金受給の道も開いていただきまして、従来に比して画期的な進展を見たのでございます。  しかしながら、障害者にはもう排便の世話から三食の世話まで要する重度の者もまれではございませんし、軽度の者でも、その親、なかんずくその母親は四六時中その世話に忙殺され、みずからの幸せを追求するいとまなく年老いでいくというのが常でございます。まさに宿業としか説明がつかないような境遇でございまして、しかし、このようなけなげな母親の願いは一つでありまして、私の死後もこの子が生き続けていける道を開いてほしい、また私がこの子を残して安心して死ねる社会をつくってほしい、このような血の叫びなのでございます。  厚生省にお尋ねしますけれども、このような叫びにこたえられる制度が現在あるかどうか、その点についてお尋ねをいたします。
  180. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 ただいま先生の御指摘の点はまことにごもっともだと私どもも認識をいたしております。就労されておられる方々につきましては、通勤寮とかまた福祉ホームという形で対処をいたしておりまして、これらの施設を今後も拡充いたしてまいらなければならないと考えております。また、その他の方々については、精神薄弱者援護施設等におきまして、生活自立また就労へ向けての訓練等を含めてこういった施設で対応をいたしておりますが、こういった施設も今後とも拡充をいたしてまいらなければならないと考えております。  これまでの精神薄弱児者の施策につきましては、どちらかといえば児の施設についておおむね整備ができてきたのではないかというふうに考えております。同時にまた、児の施設にも年がいきまして者になっておる方々も収容されておるということが非常に多いわけでございますので、児の施設から者の施設に円滑に転換をしていただくとか、また者の施設を今後重点的に整備をするとかいうようなことについで特に配慮をしながら、精神薄弱者の対策について今後とも力を入れてまいる覚悟でございます。
  181. 冬柴鐵三

    冬柴委員 今厚生大臣から示された方向だと思うのですが、出生率の減少ということで余裕の生じました各施設の転用、また従来の大型なコロニー、このようなものを保護者の死後障害者を終身収容できる施設に転用する等の施策を早急に御検討いただきたいと熱望する次第でございますが、この点につきまして、重大な問題でございますので、総理の御所見をぜひお伺いしたいと思うのでございます。
  182. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 障害者の問題につきまして冬柴さんが非常に献身的に御努力していただいていることに敬意を表する次第です。  いろいろ今お話を承りましたが、政府側の施策においてもまだ十分ならざるものが多々あるように思います。御趣旨を体して大いに努力いたしたいと思います。
  183. 冬柴鐵三

    冬柴委員 最後に、無資力者のためにする法律扶助制度についてお尋ねをしたいと思います。  私は、先ほど申し上げましたように、昭和三十九年以来、昨年衆議院議員に当選するまでの約二十二年間弁護士事務所を開業してきたものであります。弁護士時代にも常に感じていたことでありますけれども、議員になって一年、強く感ずることは、いかに多くの国民が法律問題について専門家である弁護士に意見を求めたいと強い希望を持っているかということでございまして、これは国会議員のすべてが感じていられることじゃないかと思います。  今日のように法による支配が国民意識の間に浸透いたしまして国民の権利意識が高まっている時代において、権利を侵害され、被害を受けた国民がその回復を裁判所に求めたい、このように思うのは当然であります。その主張が裁判所で果たして通るのかどうか、このような判断を専門家である弁護士に判定してもらいたい、また訴訟手続がとれるものなら代理をしてとってもらいたい、このように希望するのも当然であろうと思います。  ところが、弁護士に依頼する資力に欠けるためにそのようなことができずに泣き寝入りになってしまう国民がもしあるとするならば、これはゆゆしい問題であろうかと思います。最近社会的に問題となっている霊感商法あるいはちょっと古くなりましたが豊田商事事件等の被害、これは被害者が決して金持ちではありませんで、主として御老人や低所得者層の人々に生じたということも本件に無関係ではなかったようにも思います。  日本国憲法三十二条には「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」と定め、十四条には。「すべて国民は、法の下に平等であって、」「経済的又は社会的関係においで、差別されない。」このようにも定めております。これを実質約助ェに保障するためには、国が無資力者のために弁護士に依頼するにつき必要とされる費用につき援助の手を差し伸べ、ある場合は立てかえ、また返還を求めることが無理な場合にはこれを福祉施策として給付する、そのような考えがあってしかるべきでありまして、このような制度を法律扶助制度と申しております。ところが、我が国はかかる国民の基本的人権にかかる問題につきまして基本法を持っておりません。先進国中、法律扶助法未制定の国は全く我が国一国のみでございます。このような点につきまして法務大臣のお考え、所感を伺いたいと思います。
  184. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 先生にはいつも弱者救済のために大変御活躍、感謝を申し上げます。  先般の法務委員会でも先生にお答え申し上げておるわけでございますけれども、法律扶助に関しては各国それぞれ国情に応じた法制度を持っているということは承知をいたしておりますが、我が国は先生御承知のとおり、法律扶助制度は補助金によって運営してきておる、それが定着した、こう申し上げてもいいのではないかな。そのような点で相当の成果も上がっておると承知をいたしておりますが、さらに私どもとしては、先生御指摘のようなそういうふうな制度がなくとも、この補助金によって一人も欠けなく権利を保持する、裁判をやれるというように今後とも一層努力していきたい、こういうふうな考えを持っており、法務省自体としては、今新たに制度をつくるかどうかということに対しては、大変私からそんな話をしてはどうかと思いますけれども消極的です。しかし、先生から何回もそのようなお話を承知をいたして、私としても改めて省内において検討させてみたい、このようにお答え申し上げておきます。
  185. 冬柴鐵三

    冬柴委員 総理、法制度は今法務大臣がおっしやいましたように違いますけれども、したがいまして一律には申し上げられません。しかし、先ほど申しましたように先進国ではすべてこの法律扶助法という基本法を持っておりまして、特にイギリスではサッチャー首相が一九八四年、昭和五十九年ですけれども、国費から三億ポンド、一ポンド三百三十円と換算しましたら実に一千億円をこの制度のために拠出をしているという事実がございます。今法務大臣、確かに助成していただいているわけですけれども、この六十二年度予算で我が国は八千四百万円でございますので、一億円に到達しておりません。この制度に取り組む姿勢に格段の差があるように思えてならないわけでございまして、折しも本年は憲法発布四十周年というときでもございます。日本国憲法の一つの大きな柱である国民の基本的人権擁護の実質的保障のために、法律扶助に関する法制度確立のために格段の御努力を、いろいろ事情はありましょうけれども、お願いをしたいと思うのでありますが、この点についての総理の御答弁をいただいて私の質問を終わりたいと思います。
  186. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 法務大臣答弁したとおりでありますが、よく検討をさせます。
  187. 今井勇

    ○今井委員長代理 この際、草川昭三君より関連質疑の申し出があります。冬柴君の持ち時間の範囲内にてこれを許します。草川昭三君。
  188. 草川昭三

    草川委員 私はまず最初に、最近問題になっておりますところのオートマチック車、いわゆるAT車の事故の実態について御報告を申し上げて、政府対応を求めたい、こういうように思います。  最近、オートマチックの自動車の急発進、急加速事故が連日のように報道されておりまして、私自身も利用者の一人として、国民の多くの方々がその安全性に対する不安をたくさん抱いているのではないかと思います。このような中で、警察庁が本年の四月から指定自動車教習所においてオートマチック車による教習を二時間義務づけておることは一応評価をしたい、こう思います。しかし、国内で販売される乗用車の主流が今オートマチック車になっているわけでございまして九百五十万台、しかも、全体の五七%になるということでございまして、教習段階におけるカリキュラムの一層の充実はぜひ今後とも拡大をしていただきたいと思います。この点については今後の検討をお願いするということで、本日は、一日も早く我々国民が安心をしてオートマチック車を利用できるようその急発進原因の徹底究明を求める立場から質問をしたいと思うのです。  そこで、最近、急発進の原因について、今までどちらかといいますと人為的なミス、いわゆる運転操作のミスとして片づけられていた点が多いわけでありますけれども、私は必ずしもそうではない、こう思うのです。  その具体的な例を一つだけ申し上げますけれども、昭和五十九年一月七日、東京の世田谷で起こった事故であります。事故を起こした車両というのは最近しばしば急発進が指摘をされている外車でございますけれども、運転者は免許証を取得して四十年、外車販売会社の動続三十五年のベテランの社員でありますから、車に対する知識は非常に豊富だ、当然その事故を起こした外車の取り扱いにも熟知をしておるという条件があるわけであります。事故はこの運転者の勤務する外車販売会社の新車発表会の席上で起きたわけであります。あるお客がその外車販売会社の新車発表会の会場に来まして、そのお客は今まで自分が乗っていたところの乗用車の下取り価格の査定を申し出たわけです。  そこで、前記のベテラン社員が査定のためにブレーキを踏んだままエンジンをかけた。そしてレバーをパーキングからドライブのDへ入れたのです。ところが、飛行機の爆音のような異常なエンジンの音を発して暴走をした。車はそばにあった物置を壊してその先にあるブロック塀に当たってとまった、こういうことでございまして、これは明らかに操作ミスとは言いがたい事故だ、こういうことになるわけでありますし、また横にいたところの別の査定員も操作ミスではないという証言をしているわけであります。  このような事例は実はたくさんあると思うわけでございますけれども、私は構造上から見てオートマチック車が暴走するはずはないということは理解をするわけでありますけれども、現実にそれが暴走しておるわけでございますから問題だ、こういうことを言っておるのですが、運輸当局の徹底的な解明を求めたいわけであります。  そこで、運輸大臣にぜひお伺いをしたいわけでありますけれども、今のような急発進事故というのは非常にふえておる、こういう現状で、私必ずしもすべてが運転操作ミスにあるとはどうしても思えません。そこで、その原因がどこにあると認識をしているのか、ただいまのところの運輸省の御見解を賜りたい、こういうことでございます。
  189. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員が御指摘になりましたようなケースを私どもも耳にいたします。そして、オートマチック車の急発進、急加速に係る事故につきまして今まで調べさせてみましたところ、車両の構造あるいは装置の欠陥が直接的に事故の原因となった事例というものは確認をされておりません。  しかし同時に、御指摘のように急発進、急加速の事故及び苦情事例の中に、少数ではありますけれども運転者の誤操作ということだけではどうやっても説明のつきにくい事例があることも事実であります。
  190. 草川昭三

    草川委員 今大臣の方から、説明できない事実があるという御答弁でございますから、これは運輸省としても相当御研究なすった御答弁だと評価をします。  そこで、二番目にお伺いをしたいのは、オートマチック車の急発進事故は現在までのところどのくらい発生しているのか、それをぜひメーカー別に発生件数を明らかにしていただきたいわけであります。また、このうちに自動定速走行装置、いわゆるオートクルーズというのがあるのでございますけれども、それが装着されている車の事故は何件ぐらいかお伺いしたいと思います。
  191. 清水達夫

    ○清水(達夫)政府委員 お答え申し上げます。  オートマチック車の急発進、急加速にかかわる事故及び苦情につきましては、私どもが直接苦情として受け付けたものを含めまして、各メーカーから四半期ごとに調査報告をさせているところでございます。私どもが把握をしているものはこの調査報告の件数でございますが、五十八年一月から六十二年三月までの間に百七十八件となってございます。  御質問のこれのメーカー別内訳でございますが、トヨタが三十四件、日産が五十四件、本田が二十四件、三菱二十一件、マツダ十四件、ヤナセ十七件、その他十四件となってございます。  それから、次に御指摘のございました自動定速走行装置が装着されているものがこの百七十八件の中で二十六件ございます。  以上でございます。
  192. 草川昭三

    草川委員 今それぞれ百七十八件のメーカー別の内訳が出ました。ヤナセの場合の十七件というのはワーゲンであり、アウディであり、ベンツだ、こういうように思いますし、その他十四件は鈴木、ダイハツ、富士、いすゞ、ボルボ、BMW、フォード、こういうところの細かい数字だと思いますが、私は、これを今度は車種別に明らかにしていただいて、また当委員会等にそれが報告されるようにぜひ早急にお願いをしたい、こういうように申し上げる次第でございます。  そこで、三番目にいわゆるリコール、欠陥車でございますけれども、その未回収車両が事故を起こした、こういう例があるようでございますが、回収については一層徹底するようにぜひお願いを申し上げたい。この点についての御見解を賜りたいと思います。
  193. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 現在、リコールの対象台数として把握をいたしております五千七百三十二台のうち未回収の台数は五百六十二台、回収率が九〇・二%までおかげさまで参りました。しかし、リコール対象車両の回収は、これは従来から一刻も早い回収を図るために機会あるごとにメーカーを指導してまいったところでありますし、いやしくもこれは未回収車が事故を起こすというようなことがあっては大変なことでありまして、さらに一層の指導の徹底を図ってまいりたいと考えております。  また、ここで委員に御報告を申し上げておきたいと思いますのは、運輸省として、本年度の車検の際に、リコール対象車両につきましては回収済みか否かをチェックする機能を検査システムに付加することといたしておりまして、これが明年一月四日から動き始めるわけであります。ここで私は回収率の向上が図られると信じておりまして、こうした点もこの機会に御報告をさせていただきます。
  194. 草川昭三

    草川委員 大臣にもう一つ、今のお言葉にさらに延長した形になりますけれども、今後の運輸省におけるオートマチック車の急発進、急加速に対する対応について、ぜひ定期検査、車検等の問題も含めましてお答えを願いたい。
  195. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 急発進、急加速の原因究明につきましては、日本自動車工業会に対して調査を指示をいたしました。しかし、それだけでは責任が済むとは考えておりませんし、さらに中立、公正な立場からの原因究明を図るため、当省附属の交通安全公害研究所に対しまして、車両構造上の原因究明についての試験、調査を依頼をいたしたところであります。また、急発進、急加速防止のための車両構造上の対策につきましても、先般日本自動車工業会に対しまして検討の指示をいたしました。  運輸省としては、オートマチック車問題の社会的な重要性にかんがみまして、その徹底した原因の究明と同時に、車両構造上の対策に今後とも全力を挙げて取り組む所存であります。
  196. 草川昭三

    草川委員 ぜひその方向でお願いをしたいということでございますが、総理に最後に本問題について御質問しますが、今私ども申し上げましたように、オートマチック車の急発進事故の原因が童自体にある可能性が明らかになってきておるわけでございますが、事故原因が運転操作のミスではないだろうかということで、現在罪を償っている方々が過去随分おみえになるわけであります。そういう方々の中にも車自身の原因によって事故が発生したということもあるわけでございまして、このような人たちの名誉回復のためにも徹底したこの原因の究明を行っていただきたいと思うわけでございますが、先ほど来の私どもの質疑についても含めて総理の御見解を賜りたい、こう思います。
  197. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり科学的に原因を徹底的に究明することが安全の確保並びに運転者の安全あるいは名誉に関して大事なことであると思いまして、運輸省等を通じまして徹底的な原因の解明に努めるようにいたします。
  198. 草川昭三

    草川委員 ありがとうございました。  あと、時間の許す限り、危機管理の問題について主として総理の御見解を賜りたい、こう思うのでございます。  ちょうど一年前になると思うのでございますが、省庁縦割り行政の弊害の是正あるいは内閣調整機能の強化をねらった内閣官房の機構改編が行われて一年になると思うのです。改編前に比べて各室のトップと言われる優秀な官僚の方々が総理の直属の手足となって動いているのが目立つというように、非常に評価をされている面もあるわけであります。  これはよく言われるわけでございますが、トップダウン方式あるいは大統領的な政治手法、こういうものが新しい官房組織の運用に色濃いと評価をする方々もあるわけでございますが、私、実は一つの疑義があるのでございます。新しい官邸もどんどんできるような計画が進んでいる、あるいは政府専用機の購入、あるいは今申し上げましたような内閣強化、あるいはハイジャック等の危機管理マニュアルも一月に完成したというように聞いておりますけれども、このような一連の動きというのは、実は昭和五十九年でございますか、中西報告という、「危機管理の現状と対策」というものに盛られている内容が今着実に実施をされているように私は思うわけであります。この中西さんの危機管理については大変総理の御意向が強かったというように思うわけでございますが、今一年を過ぎて、改めて総理、振り返られて、非常によかったのか、あるいは非常に満足しておみえになるのか、まだまだ不十分なのか、御感想を賜りたい、こう思うのです。
  199. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まだ一年の経験でございますから、十分批判したり評価するには時間が短過ぎると思いますが、各室長等々一生懸命よくやってくれていると思います。  初め心配されたのは、例えば国際関係、外務関係については外務省と摩擦を生じはしないかとかあるいは屋上屋を架することになるのではないか、そういう心配がありましたが、そういうことはないように思います。  それで、今のように時代のテンポが非常に速くて次々に新しい問題が起き、しかも今までなかったような新しい問題が出てきている、こういうときにおきましては、やはりああいうような機能、部局を首相の周辺に置いて、そして、てきぱきと調査を行いあるいはそれに対する対策考える、そういう機構は必要のように思います。
  200. 草川昭三

    草川委員 私が今から実は申し上げたいのは、ちょうど一年前に衆参の内閣委員会で、この安保室なり会議ができることについていろいろな議論があって、後藤田官房長官答弁も随分読まさせていただいておるわけでございますけれども、主として私どもの側からは、とにかく国会というものに報告をしていただきたいよ、あるいは事前によく相談してくださいよという意味での危機管理なり、今総理が御答弁なすったような問題点についての提言というのがあったように思うわけであります。まだ一年でございますから、そんなに大きな摩擦というのですか問題点は明らかになっておりませんけれども、それでも随所にちょっと心配をするような事件があります。事件というか問題があります。  大変恐縮でございますけれども、佐々淳行さんという安保室の室長がおみえになりますけれども、非常によく頑張っておみえになるわけです。私どももいろいろな雑誌だとか本なんかも拝見をさせていただいておるわけですが、ことしの五月の十一日にアジア調査会の講演で熱弁を振るっておみえになるわけです。海外勤務をする以上、官民合同の安全保障体制というか危機管理体制をつくっておくべきと考える、このようなことについて近く生産性本部でも議論をなされるようでございますし、今のところは「アジア時報」にもきちっと出ておりますから、本当は佐々さんにここで御答弁を願うといいのですが、非常に長い御答弁が予想されますので、ちょっとこれは御確認して――本当はさっさと答弁していただくといいのですが、(笑声)なかなかそうもまいりませんので、ちょっと時間があれば後でお伺いをするということにしておきましてはしょります。  実は海外邦人の保護というのは本来は外務省の所管ではないか、いわゆる領事業務の最たるものではないだろうか。だから、これはもう外務省の設置法上の問題でもあるので、わざわざそこまで危機だ、危機だと言うことは、それはいろいろな背景があるから、若王子さんの問題もありますからわかりますけれども、さりとて外務省の所管にまで口を出すことがいかがなものかという気がするのですが、この点外務大臣、どうでしょうか。
  201. 倉成正

    倉成国務大臣 海外における邦人の保護は、まさに御指摘のとおり外務省の所掌事務でございます。しかし、これについていろいろ各省から御意見をいただいたり御協力をいただいたりすることは当然のことだと思います。
  202. 草川昭三

    草川委員 いろいろな御意見があるけれども、いわゆる所掌業務というのは明確でございますから、余りそのことにまで危機だ、危機だと言うことが果たしていいかどうか。もっと訴えるとするならば違う形で御注意をなされた方がいいのではないかというような、こういう気がいたします。  そこで、国土庁にちょっとお伺いをいたしますけれども、この一年の間に伊豆の大島の噴火による一万五百人の緊急避難が行われました。あれは総理も大変力を入れられていたようでございますが、私どもも東京都、それから国土庁、実によくやられたのではないかと思います。いわゆる災害対策基本法に基づく非常災害対策本部が事故なく対処したという意味ではこれを評価したいわけでございますが、やはりこの安全保障室との御関係をちょっと申し上げますと、この安全保障室の万からも、御関心があるわけでございますから当然なことでございますが、国土庁にいろいろと物を言われたようでございます。  この物を言われたのが当時の新聞にも若干こう出ておりますけれども、例えばこれは新聞記事を引用させていただきますけれども、その室長の方は、「大噴火の時点から待機態勢に入っていたが、同室からの協力打診に国土庁側が「自然災害はわが方が責任をもって対応する。安保室が入ってくればかえって混乱する」と反発する声も上がったほどだ。」という記事があるのでございますが、その記事の中身がどうのこうのという意味ではなくて、ああいう自然災害の場合と安保室との関係というのはやはりきちっとしておく必要があるような気が私はしてなりません。そのあたりは国土庁、どのようにお考えになられておるのでしょうか、お伺いしたいと思います。
  203. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 昨年の伊豆大島噴火の際には、十一月の二十一日の夜半に緊急の閣議決定をしていただきまして、噴火対策本部をつくり、私が本部長になりまして、二十一省庁の皆様方の御参加を得て、大島町あるいは東京都とも十分連絡をとって、非常にスムーズに対処したわけであります。この間、官房長官とは絶えず私は連絡をいたしておりましたので、今おっしゃいますような何かちぐはぐとかぎくしゃくした、そういう感じは一切持っておりません。
  204. 草川昭三

    草川委員 自然災害については国土庁、本当に自信を持ってやっていただいて結構でございますし、いわゆる安保室は安保室なりにそれなりの関心を持つというのは当然のことでございますが、いわゆる行政上の建前ということをきちっとその都度していきませんと、危機管理、危機管理ということが前面に出過ぎますと、私はかえって混乱が起きるという心配を申し上げるわけでございます。特に危機ということについては議論がどうしても抜きになるわけでありますし、国会審議なんというのはどうしてもなくなっていくわけでありますし、また、そのときの最高地位にある首相が直接強力な権力というのを行使する、こういうことになるわけでありますから、一歩誤りますと批判的な言動というのは制限されるということになるわけであります。あるいは国民は施設や財産の提供、労働力の提供というものも強制されるようなことがあるわけでありますし、報道関係の取材制限というようなことだって出てくる可能性があるわけであります。そういう意味で私どもは、危機管理のあり方というものをよほど歯どめをかけていかなければいけない、こういう立場を持っておるわけであります。  そこで、総理にここでお伺いをしたいわけでございますけれども、これは内閣法制局長官が、昭和五十年五月の国会で、現行憲法のもとにおいて非常立法ができるかという質問に対して法制局長官が、公共の福祉を確保する以上、する必要上の合理的な範囲内において国民の権利というものは制限できるという趣旨の答弁が、当時の吉國長官からあるわけであります。     〔今井委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、私どもも、非常に重要なことでございますから、その後憲法学者である小林先生なんかにも昨日いろいろとお話をさせていただいたわけでございますけれども、いろいろなお話を聞いておりますと、確かに五十年当時は公共の福祉ということが非常に表に出た時代があるのだが、それは人権人権がぶつかり合ったときにそういう問題が出てくるので、今のような状況になってくると、学界の定説というのですか多くの意見というのは、やはり人権というものが優先するのだ、公共の福祉というものがその上に来るものではない、こんなようなお話をお伺いしたことがあるわけでございますが、総理は国家緊急権というものについてどのようなお考えを持っておみえになるのか、お伺いをしたいと思うのです。
  205. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 おっしゃる国家緊急権というのがどういうものか、中身はわかりませんが、しかし、例えば石油危機がこの前起きまして、洗剤だとかトイレットペーパー大騒動が起きましたが、ああいうようなとき、また石油がもうなくなるというようなときにこれを配給制にするとか、そういうような状況のもとにおいて、あのとき緊急立法をやりました。私は通産大臣でしたけれども、たしか国民生活安定緊急措置法、もう一本つくりましたが。ああいうようなことはやはりやっている実績もあります。それから災害対策基本法、これもやはり緊急事態に対するいろいろな処理だろうと思います。  しかし、緊急とか危機の押し売りというのはよくない。そういうのは全くそういう事態が構成要件として満たされたときに発動さるべきもので、なまはんかで行われるべきものではない。ですから、そういうことは私は公共の福祉、利益のためにやれると思うのです。将来どういうことが起こるかわかりませんが、可能性を否定するものではない、それは事態によります。だが、しかし、緊急という今の思想は昔の非常人権とかあるいは戒厳令とかそういうものを意味するとすればそれはできない、そう思います。
  206. 草川昭三

    草川委員 今、戒厳令だとか非常人権の戦前の旧憲法のことでございますが、そういうものはとれないとおっしゃいましたので、これは一つ総理の基本的なスタンスとしてお伺いをしておき、それからさらに、国家緊急権というのはどういうものかというとらまえ方についての疑問がございましたけれども、それはまさしく、今というよりずっとここ最近、憲法学者の方々がこのことについての大変な議論をなすっておられるところでございまして、それがどういうものか。例えば石油危機のときの制限程度のものなのか、もっと大きなものになるのか、それが、私が前段で申し上げましたように、いわゆる中西報告が提議をされた当時のいろいろな危機管理というのは非常に大げさに出たわけですよ。それで、余り大げさに出るから少し引っ込めろというような感じの経過があったと思うのですよ。  ところが、実際はその私的諮問機関の報告と公的報告というのが同じ形で出ておるのですが、我々議会側ではどうなったんだろうかと思っておるその提言が、現実には着実に生きてきているわけです。だから私は、そういう一つの流れから見ると、今日のような状況の中でよほどしっかりしておきませんと、今申し上げましたように、一方では、張り切るお役人の方々は非常に張り切った御発言がなされていく。ひとり歩きが怖いわけですよ。しかもそれは、世論をそういう形で巻き込んでいくとするならば大変なことになると思うのでございますが、どうやら時間が来たようでございますので、最後になりますが、大蔵大臣に。  これはもう大蔵大臣の所管ではございませんが、宮澤さんは新しい未来を担うという意味で非常に将来の展望をいろいろと訴えておみえになるわけでございますが、中曽根政治の継承の中でも基本的に官邸を強化していく方向なのか。それで、トップダウン方式は多分いい点は採用するとおっしゃるんじゃないかと思うのですが、いわゆる私が心配しているような危惧の、官邸が強化をされるということを引き継いでいかれるのか。あるいは、それぞれの省庁のことは要らぬ心配をするなと言われるなら、それでいいのですよ。要らぬ心配せぬでもいいとおっしゃるなら、私は大いに期待をして宮澤さんの今後に陰から拍手をいたしますから、どうぞ御答弁を願いたい、こう思うのです。どうでしょう。
  207. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは中曽根首相のもとに非常に各省うまく最大限の効率を発揮して動いてまいったと私は思いますので、そういうことはだれがやりましてもやはり引き継いでいくであろうと思います。
  208. 草川昭三

    草川委員 以上で終わります。
  209. 砂田重民

    砂田委員長 これにて冬柴君、草川君の質疑は終了いたしました。  次に、菅直人君。
  210. 菅直人

    ○菅委員 前回の暫定予算を審議したときの予算委員会に引き続きまして、前回も土地問題を少し取り上げたのですが、それ以降ますます土地問題の重要性が高まっているという感じがいたしますし、この問題を中心質疑をしていきたいと思います。  きょう午前中の質疑の中でも同じ引用が出ておりましたけれども、朝日新聞の七月十二日の社説の中で、後藤田官房長官の言葉として、  「銀座の土地が二億円するとか、小金井カントリーの会員権が五億円するとか。だれがいったい、まじめに働こうとする意欲がでるか。でるわけがない。もはや経済問題を通りこして重大な社会問題になっている。土地を所有しているものと所有していないものとの所得格差ほど不公平はない。なにも自分の努力で値上がりをしたわけではない。その隣にお上が道路をつくってくれたおかげで高くなっただけの話ではないか」  長官の憤まんは、多くのサラリーマンの憤まんである。こういうふうなかなり長い引用を含めた社説が出ております。私も全くこの点は同感なんですが、後藤田長官に、こういうことを実際にも考えられておられると思うのですが、これを含めて土地問題に対する認識をお聞かせをいただきたいと思います。
  211. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 官房長官というはっぴを着ておる者の発言としては少し言い過ぎたかな、こういういささかの反省も込めてお答えをいたしたいと思います。  しかし、やはり現在の一部地域における地価の高騰というものは、放置することは許されない政治の大きな課題の一つであろうと私は思います。率直に、やはり経済問題の域を超えてきつつあるのではないのか、こういう点を心配をするわけでございます。やはり土地というものは、あなたが既に御承知のとおり生活の基盤であるし、また生産活動の基礎をなすものでもあるわけでございます。したがって、土地というものについてはその性格は一体何であろうかといったようなことから真剣に検討をして、思い切った対策をやらなければならない時期に来ておると私は思うのです。  そこで、中曽根総理もその点を非常に御心配になって、この際ひとつ思い切った施策を打ち出さなきゃなるまい、それについてはやはり衆知を集める必要もあろうということで、行革審に専門の部会をつくって精力的に検討していただいて、その上に立って間違いのない土地政策を、これはもう与党も野党もないと私は思いますよ、そこまで来ておると思う、そこで、ひとつ根本的な対策国民のために打ち出そうではないか、こういう体制を今政府としてはとり始めた段階でございます。  なお、私は菅さんにおべっかを言うつもりはないけれども、しかし、あなたは土地問題を非常に勉強なさって、台湾における土地の税制、つまり台湾は、私の承知しておる範囲では、孫文ですかの、土地は国民共有のものであるという、この基本原則に立ってあの国では土地税制ができておると思います。私は、完璧に今行われているとは思わぬけれども、ああいうのも一つの有力な手段であろう。そして、それをあなたは今一生懸命勉強なさっておるのですから、せっかくきょうのこの御質問でございますから、それは専門がおりますから、そちらの方にひとつお聞き取り願いたい、こう思います。
  212. 菅直人

    ○菅委員 長官の方から決意のほどとあわせで、後ほど私の方からも話をしようと思った台湾税制との問題まで含めてお答えをいただきましたが、今これを参考資料としてお手元に配っていただいていますが、ぜひ総理大臣にもちょっと見ていただきたいのですが、一ページ目に現状の一番典型的な数字を幾つか挙げてみました。二ページ目には税制の問題の戦後の動きをずっと並べてみました。三ページ目には戦後の重立った政府とあるいは政府にかかわる審議会の答申を挙げてみました。四ページ目に私自身の提案を掲げてみたわけです。  まず、一ページ目の方から、特に総理にこれを含めてお伺いをしたいのですが、最初の図を見ますと、これは東京の平均地価で百平米を買うのにどのくらいお金がかかるか、今六千七百二十七万かかるという数字なんですね。大体今の年収の十倍かかるというのがこの表からわかるわけです。やはり同じ東京都の前年度の上昇の比率は、六十二年度は何と九〇%値上がりをした、ほぼ倍になったということが言えるわけです。  またこの右側に、三千万円といえば何とかサラリーマンの中でローンで賄えるぎりぎりといいましょうか、ある程度の、いわゆる親の遺産とか抜きにして何とかなる金かと思うのですが、それでどの程度のところが日本あるいはニューヨークとかボンとかロンドンとかパリで買えるかというのを、ある機関が発表したものをそのまま孫引きをしたわけですが、小さい字ですけれども、とにかく日本ではやっと、ここでいいますと常磐線北小金駅七分というところに行って見つかった。しかし、これはもう多分今ごろは三千万じゃなくて、もう数カ月たちましたから五千万ぐらいになっているんじゃないかと心配するわけです。ニューヨークだったらちょっと離れれば二千平米ぐらいはある。ボンだったら二、三家族は十分住めるぐらいだ。ロンドンでも豪邸が買える。パリにはそんな高い家はないというふうに書かれております。  こういうことを含めて総理にお伺いをしたいのですが、私は、土地政策の目標というのは何にすべきか、そのことがはっきりしないと、いろいろな政策が掲げられても何が目標かがはっきりしなければ議論がかみ合わないと思うのです。  そこで、私は、やはりサラリーマンがといいましょうか自分で稼いでいる人が、もちろんサラリーマンでなくても自営業でも構いませんが、親の財産とかなんとかがない人でも、まじめに働いてまじめに収入を得ている人がその年収の大体三倍から四倍程度で適正な住宅を持てる、もちろんそれが土地つき一戸建てであるかマンションであるかということは選択の余地があると思いますけれども、そういう状況を東京を含めて実現をするということが目的になるべきだと思うわけです。  そういうことに対することを含めて新行革審に諮問をされているわけですけれども、総理はあと数カ月が在任期間というふうに大体常識的には理解をされるわけですが、在任期間中にその土地問題について突破口を開こうというおつもりなのか、いや、これは後の人にやってもらおうということも含めてやられているのか、そのことも含めて土地問題に取り組む決意のほどを聞かせていただきたいと思います。
  213. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり政治に小休止もありませんから、在任中にできるだけの最大限のことはやっておきたいと思います。
  214. 菅直人

    ○菅委員 それでは、少し具体的な中身に入っていきたいと思います。  これまで土地政策というと、国土庁、建設省ということが中心考えられているわけですが、私は、両省庁はもちろんですけれども、実は大蔵省あるいは自治省が関係をしている面も大変大きいと思うわけです。  そこで、まず大蔵省の宮澤大蔵大臣にお伺いをしたいのです。  大蔵省は、土地という面では、金融を通してのいろいろな問題あるいは譲渡益課税や相続税を通しての税制上の問題等々、かなり大きな土地政策にかかわる分野を管轄されておると思うわけです。宮澤大蔵大臣には、そういう大蔵省の長としてもあるいは次期首班候補の一人としても、この土地問題についてどのように認識をされているのか、まず基本的な認識を伺いたいと思います。
  215. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは、先般、いわゆる新行革審に諮問を、諮問と申しますか御意見を出していただくということにしますにつきましては、私も官房長官にそれをそのようにお計らい願いたいということをお願いしていた一人でありまして、大変に深刻な問題であると思っています。私自身、十年ぐらい前になりますでしょうか、大都市においては、殊に東京でございますけれども、所有権というものはこれはもう尊重しなければならないものでありますが、しかし、公共の福祉ということのためには正当な対価を払うことによってある程度の制約をするということは、これは一般的に可能なことでございますから、その場合に所有権と利用権というものの関係をどのようなふうに考えるかというようなことが問題の中心ではないかということをかつて問題提起いたしましたが、今も同様なことを考えております。
  216. 菅直人

    ○菅委員 そういう中で、問題が少し細かくなりますけれども、昨日、一昨日もありましたが、現在中央信託の土地転がしによって、一つは不当な脱税容疑ということで国税庁の調査が入っているというふうに聞いておりますが、単に脱税というだけではなくて大手の銀行が積極的に土地転がしにかかわっている、多分これは氷山の一角ではないかと思いますが、今それが表に出てきているわけです。こういう問題について、大蔵省は銀行からいろいろと報告を受けておられると思うのです。この中央信託問題について中央信託からどのような報告を受けておられるのか。特に使途不明金の問題、あるいは投機抑制のために貸し付けを自粛するようにということを指導されてきたはずなんですが、それに対してどのように答えているのか、そのことをお聞かせいただきたいと思います。
  217. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 金融機関のいわゆる土地関連融資につきましては、先般来お話し申し上げておりますように、投機的、反社会的な土地融資は厳に慎むようにということで通達を出しております。それに従いまして通達の中で、半年ごとに各金融機関から土地関連融資の数字について報告を求めているわけでございます。現在、それにつきまして各金融機関から報告が出てきておりまして、そういう中で、中央信託銀行についても大蔵省といたしまして話を聞いているということでございます。
  218. 菅直人

    ○菅委員 その内容はどういう内容ですか。
  219. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 これは個別の金融機関の個別の取引の問題でございますので、従来もこういう事案がありました際にお断り申し上げておりますように、具体的な内容については答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  220. 菅直人

    ○菅委員 具体的でなくても、じゃ指導に従っているのですか、どうですか。基本的に指導に従っているわけですか、この中央信託は。そういう報告ですか。
  221. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 具体的に中央信託がということでは申し上げられませんが、その点につきましては詳しく聞いているわけでございます。その内容については、現在中央信託等から具体的な内容を聞いている、調査中だということでございます。
  222. 菅直人

    ○菅委員 水かけ論を余り繰り返しても仕方がありませんから国税庁にお尋ねしたいのですが、脱税容疑ということで調査をされているようです。今調査中ということでなかなか難しいかもしれませんけれども、脱税ということが明らかになった場合それに対してどういう対応をされるおつもりか、あるいは現在言える範囲でどういう状況か、お聞かせをいただきたいと思います。
  223. 日向隆

    ○日向政府委員 都心部の土地の売買に関連いたしまして金融機関が融資等を行い、これに関連して多額の利益を得た複数の法人及び個人が脱税をいたしました。目下、東京国税局が査察調査を行っているところであります。  この事案は、委員も御指摘になりましたが、現在鋭意東京国税局で調査中でございまして、これを東京地検に告発するかどうか現時点では未定でございますけれども、一般論として申し上げますれば、偽りその他不正な行為により税を免れることを企てたことが明らかになり、またはその脱税行為について刑事立証をするための証拠収集が行われれば東京地検に告発することになると思われます。
  224. 菅直人

    ○菅委員 同時に、この事件は脱税とともにあるいはこの中心メンバーとされている人物周辺で、その利益が乱されている可能性も一部報道機関などの報道では指摘をされているわけです。そういうことがもし事実だとすれば、これはあるいは背任、横領といった脱税とはまた別の刑事事件にも発展する可能性があるわけですが、警察庁はこの事件についてどういうふうに見ているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  225. 仁平圀雄

    ○仁平政府委員 現在は国税当局の調査の推移を関心を持って見守っているところでございますが、警察としてもこの種事案につきましては十分な関心を持って情報収集を行い、違法行為があれば厳正に対処したいと考えておるところでございます。
  226. 菅直人

    ○菅委員 それでは、この中央信託の問題は一応これでおきまして、本論の土地制度全般の問題についてもう一度話を戻したいわけですが、大蔵省として最近この土地に関しては、さきの国会では譲渡益課税のいわば改正案というものを提出をされたり、あるいは最近買いかえ特例についてそれを少し変えようというような報道も出されておりますが、こういった問題について、土地政策にかかわる問題についてどのような対応をされようとしているか、あるいは最近された政策も含めて説明いただきたいと思います。
  227. 水野勝

    ○水野政府委員 土地に関します税制といたしましては、土地の取得の際の課税、保有に際しましての課税、それを譲渡したときの課税といろいろな段階があるわけでございますが、私どもといたしましては、主としては譲渡したときの課税を対象として扱っているわけでございます。  この譲渡課税につきましては、土地税制の観点からいたしまして、供給の促進あるいは投機的な取得の抑制、有効利用の促進、こういった観点が主題となるわけでございますが、譲渡益課税といたしましては供給の促進、それから投機的取得、仮需要の抑制、こういった観点が主となっておるわけでございまして、古くは昭和四十四年に供給の促進ということから一律分離、しかもその税率を二年ごとに上げていくということを行ったこともございます。その当時といたしましては相当な譲渡があったわけでございますが、それの上限の税率まで参ったときには一転して供給が、売却が激減したというようなこともございまして、こうしたやり方が果たしてよかったかどうか、いろいろ議論のあるところでございます。  現時点におきましては、一応は十年を超える土地につきましては、これは四千万までは二〇%、それを超えるものは二分の一課税、十年以下のものにつきましては総合の一割増し、そういった税制を導入しているわけでございまして、これによりまして長期の土地の譲渡につきましてはその税額が明確になる、切り売りの防止が行われるという観点から供給の促進に役立っているものと考えておるわけでございますし、また短期の譲渡所得につきましては普通の課税以上の御負担をいただくということで仮需要の抑制のお役に立っていると考えているわけでございますが、最近の土地情勢からいたしまして、今般、さきの通常国会におきましては、委員からのお配りの資料にもございますように、この十年という区分を五年といたすとか、これによりまして供給の促進を図ろうとしたところでございます。また、二年以下の土地転がしにつきましては、従来の重課に対しましてさらに一層重課をするという改正もいたして御提案したところでございます。  また、御指摘のございました買いかえにつきましては、これは事業用買いかえと居住用買いかえがあるわけでございまして、どうもこの買いかえにつきましては、これがかえって仮需要を呼ぶという御指摘、御批判もございまして、四十四年改正ではかなり縮減したところでございますが、やはりこの課税の性質からいたしまして、この買いかえを全く制限するということも問題のあるところでございましたので、五十七年以降は買いかえの範囲を広げてきております。しかし、これがやはり最近の仮需要を高めているという御指摘も少なからず見受けられるところでございますので、今般の政府原案では、普通の事業用買いかえにつきましては、その買いかえの範囲を二割圧縮するという御提案もいたしておったところでございます。
  228. 菅直人

    ○菅委員 大蔵大臣はこういう面も詳しいのかと思いますが、この二ページ目に今の主税局長の言われたことのまとめを、これも主税局からいただいた資料をもとにまとめたわけですが、戦後、譲渡益課税だけ見ても、よくこんなにも変わるものだと思うのですね。そのときそのときの理屈が見事にあるのです。しかし、そのときそのときは理屈になっているんですが、後から聞いてみると、それが本当に整合性があるかどうかというと全くわからないのです。  今も主税局長言われていましたけれども、例えば昭和四十四年から五十年の間というのは分離課税です。その前の四十二年まではいわゆる総合課税です。割とシンプルだったのです。それが総合課税だと土地を売る人が少ない。だんだん土地が値上がりをして土地を売る人が少ないから、分離にすれば税金は安くなるから売る人ができるだろう、所得税でいえばわずか一〇%です。いわゆる土地成金と言われる人が、松下幸之助さんのような、ああいう高額所得者を超えてどんどん多くなったのがたしかこの年だったと思いますが、一〇%、そして二年ごとに五%ずつ引き上げればどんどん売るだろうということで、ある意味では非常に軽い税率をとったのです。  今度は五十一年になったら一転して、なぜ今度は変えたかというのを見てみますと、当時の税制調査会の資料を見てみますと、余りにも不公平だ。つまり、同じ十億の所得があってもこれだとわずか一億とか一億五千万、二億税金を払えばいい。これでは余りにも不公平ではないかということで、またこういうややこしい、二千万までがどうこうとかありますが、総合課税に一部戻したわけです。それで五十一年から五十四年までやって、どうもこれではきつ過ぎるといって、今度は二千万を四千万円に変えたり、あるいは総合課税の割合を、五十七年になったら四分の三を二分の一にした。今回の改正案、今廃案になっておりますが、十年の長期というのを短期にすれば、緩めることによって譲渡が出るんじゃないかということでまた緩めてきているわけですね。  一方短期の方は、先ほどの投機的なものを抑えるからといって少し強くする。今回は、二年以下はもっと厳しくする。どういう現象が出るかというと、厳しくすることに私は必ずしも反対ではないのですが、厳しくしてしまえば結局は土地取引がとまるのですね。別に土地の供給がふえて安くなるのではなくて、土地取引が単にとまるだけなんです。そういう意味では、これが本当の土地政策になっているかといえば、私は残念ながら対症療法と言わざるを得ないわけです。  それから現在の、先ほど言われた買いかえの問題も、私は東京三多摩が選挙区ですが、まさに都心部で地上げによってお金を何億、何十億と持った人が買いに入りますから、あっという間に二倍、三倍になっていくわけですね。では買いかえ特例をやめたらいいのか。あるいは買いかえ特例を、別に買いかえなくたって免税にしたらいいのか。そうすれば多分物すごい不公平ができてくるでしょうし、また同じような問題が出てくる。つまり、この譲渡益課税だけ見ても、何か行き当たりぱったりというか、基本的な理念なくてあっちへ行ったりこっちへ行ったりしていると言わざるを得ないわけですね。  ついでにもう一つ指摘をして見解を聞いておきたいのですが、実は相続税です。最近こんな現象が報道もされておりますし、私も地元で見ております。  つまり、土地をたくさん持っておる人が自治体に土地を貸すのです。そこをグラウンドとか公園にして使っているのです。固定資産税は自治体が減免をしているのですね。それを返してくれという事例が大分ふえているのです。なぜ返してくれと言うのか。返してくれたらブルドーザーでもう一回掘り起こして畑にする、田んぼにすると言うんだ。田んぼは少ないですが、果樹園にすると言うのですね。なぜかというと、持ち主のおじいちゃんが大分年になった、相続が起きるかもしれない。そうすると、更地だと相続税が非常にかかるけれども、農地という地目にしておけば相続税が二十年ですか、非常に猶予されるから返してくれ。自治体は本当に困っているのですね。  あるいは逆に、ほんのちっぽけなといいましょうか、三十坪とか五十坪とか七十坪とかの住宅を持っている人が、自分の子供一人か二人だから、じゃ、息子か娘にやろうかと思ったら、異常な暴騰で、五十坪の土地でも二億円だ三億円だとなったら相続税がめちゃくちゃにかかって、とてもサラリーマンの所得から払い切れないから売らざるを得なくなった。数千坪あって売るなら私は構わないと思うのですが、五十坪の土地を子供に譲れないほど異常に高くなるというこの相続税というのも、現状として何か矛盾が起きていることは事実なわけです。  どうでしょうか大蔵大臣、こういった今の相続税のあり方あるいは譲渡益課税のあり方について、何か見解ありましたらお聞かせください。
  229. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 土地の譲渡益課税が過去においてこれだけ変遷したということを、今昔委員がこの資料でお示しになりまして、確かに私もこういう記憶がございます。それで、この問題で非常に苦労されました大蔵大臣としては非常に御経験の長かった水田さんが、かつて私に言っておられましたことは、土地についてのこの譲渡課税というのは補完的な意味で大事なことではあるけれども、実は余りあれこれ動かすということは、実際は土地取引というものにどうもプラスの結果にならないように自分考えているということを言われまして、それは確かに私はそういう要素があるだろう、つまり、強化すれば高い価格が影を潜めるようですが、実は取引がなくなるのであって、それでは事を解決したことにならぬわけでございますから、私ども大事には考えておりますが、補完的なものというふうに認識すべきだと思います。  それから、第二段目に言われましたことは、これはいかにも自治大臣の御所管でございますから、そういう事例を私どもよく耳にいたしますが、私としては自治大臣の御答弁に譲るといたしまして、第三の問題は、それは何百坪という土地を親からあるいは先祖から受け継がれたのならいいですが、そうでない、何十坪ぐらいの単位で相続税が払えないために出ていかなければならないというような現状がどうもここへ来ましてかなり深刻になっているということを存じておりまして、そういうことはやはりいけないだろう。実は、政府の税制調査会では相続税について、これは昭和五十年に改めたそのままでございますので、殊に土地については問題があるという指摘がございましたのですけれども、いろいろな意味で今回改正を見送っておりますが、これは、実は長くは放置できない問題だというふうに思っております。
  230. 菅直人

    ○菅委員 実は、今宮澤大蔵大臣の言われた土地税制は補完的だという御意見、これは税調の意見でもあるわけですが、後ほどこの問題、非常に私は重要な問題だと思うので、保有税の問題をあわせてまた議論にしたいと思いますが、とりあえず今度は自治省にお尋ねをしたいと思います。  土地税制の二本の柱は、言うまでもなくこうした譲渡益課税と保有税、いわゆる固定資産税等になるわけですが、今固定資産税についていろいろな議論があります。例えば、土地の値上がりが上がり過ぎているから、土地評価を余り上げないで下げるという議論があります。しかし一方では、土地の値上がりそのものを抑えるためには、固定資産税というのはできるだけ時価に近い方がいいんだ、逆に時価に近ければ負担ができなくなるから、そんな高い土地に値がつかない、あるいは値がついた場合は負担がありますから、それだけの活用をする、あるいは自分が活用できなければ売りに出る。つまり、保有税に対しては全く二つの考え方が今議論されている。私はこれは自治大臣にお尋ねをするしかないのですけれども、この固定資産税、いわゆる土地保有税というものが地価に対してどのような影響を与えるというふうに考えておられるのか、その点の見解をまず聞きたいと思います。
  231. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 固定資産税についての御質問でございますが、固定資産税は制度創設の経緯からいたしましても、税源の普遍性や税収入の安定性に富みます市町村の基幹的な税目として位置づけられておるわけでございます。また、このような観点から、固定資産の所有者、だれが持っているかというような区分、あるいは課税標準の大小、これは面積等でございますが、等のいかんを問わずに、原則といたしましてその資産価値に応じて課税される物税であるという仕組みをとっておりますので、土地政策的な観点からこの税を仕組むことの是非につきましては慎重に検討すべきものであると考えております。  なお、土地の投機的取得の抑制と土地の供給促進を図るために昭和四十八年度に特別土地保有税が創設され、一定規模以上の土地の取得及び保有に対しまして土地の取得価額に基づき課税されているところでございますが、いずれにいたしましても、土地政策におきまして土地税制が果たし得る役割は、これまでの税制調査会の答申でも指摘されておるように補完的、誘導的なものにとどまり、おのずから限界があると考えるものでございます。
  232. 菅直人

    ○菅委員 何か似たような言葉が出てきましたね、大蔵大臣と。だけれども、私が質問したことについてのお答えにはなってないんですね。  これはなかなか難しい問題だと思います。あえて聞きますけれども、保有税、いわゆる固定資産税という言い方でもいいですが、固定資産税は大変地価に対して影響は大きいと私は思うのです。あるいは土地政策に対して非常に影響は大きいと思うのです。しかし、その影響の仕方がどっち向きに影響するかという議論そのものが全く煮詰まってないのですね。それをお聞きしているのです。固定資産税を所管している自治省としてはどういう影響が出るとお思いですか。  例えばここに最近の日経新聞、今月の十五日に、固定資産税の負担を抑制するために余り地価評価を上げないでいこうというようなことを検討しているというような記事も出ています。一面なるほどと思います。しかし一面、この中にも小さく、国土庁や建設省は地価を静めるためには固定資産税を思い切って引き上げてくれと言っているというふうなことも書いてある。自治大臣、あえて聞きますが、固定資産税の地価に対する影響について例えば検討しているのか。補完的だとかなんとかじゃなくて実際やっておられるわけですから、もし検討されているとすればどういうふうな見方をされているのか、もう一度お答えいただきたいと思います。
  233. 津田正

    ○津田政府委員 今固定資産税が地価に与える影響ということでの御質問でございますが、これは税の性格からいいますと、地価に応じて固定資産税が決まってくるわけでございまして、税の理論としてはあくまでそういうことだと思います。
  234. 菅直人

    ○菅委員 だからどうだって言うんです。それは、地価が決まってから税金が決まるから別に影響しないということはないでしょう。何言っているんです、一体。
  235. 津田正

    ○津田政府委員 土地の評価が地価の動向で変われば固定資産税も変わってくるということで、むしろ土地の状況というものが固定資産税に反映する。それで先生おっしゃるのは、その上に立って、では固定資産税の税率を重くするのか軽くするのか……(菅委員「税率じゃないですよ、評価ですよ」と呼ぶ)評価は全国的な均衡をとって、かつ納税者の負担に適正に応じてやっておるわけでございます。
  236. 菅直人

    ○菅委員 お聞きいただければわかると思いますけれども、結局固定資産税が地価に対してどういう影響を与えるかということに対して全く何にも答えてないわけです。つまり、考えることを拒否しているのです。私、この間ずっとやったんです、自治省と。そのことになったら今のような答えだけです。固定資産税というのはあくまで自治体の財源なんだから、土地政策なんかからぐちゃぐちゃ言ってくれるなという言い方だけです。もう考えること自体を拒否しているのです。しかし実際は、例えばさっきも特別土地保有税で投機を抑えると言っているじゃないですか。投機を抑えるというのは、べらぼうにどんどん買っていくのは、固定資産税、特別保有税をかければ投機は抑えられるという考えなんでしょう。特別保有税の趣旨をちょっと一遍言ってみてください。
  237. 津田正

    ○津田政府委員 今先ほど答弁で、私、固定資産税中心で申し上げておったわけでございますが、いわゆる政策税制として御指摘の特別土地保有税があるわけでございます。これは昭和四十八年に設けられたわけでございますが、これはまさしく三%という取引に係る税、あるいは一・四%という保有に係る税ということで設けられておりまして、まさしくこれは土地の保有コストを増加させることによって土地供給を図る、こういうような政策税制として持っておるわけでございます。
  238. 菅直人

    ○菅委員 それと固定資産税と同じような性格を持たないのですか。
  239. 津田正

    ○津田政府委員 固定資産税はあくまで市町村の基幹的な税制でございまして、もちろん固定資産税の中にも政策的な意味を持たせることができるわけでございますが、土地供給の促進というような意味では特別土地保有税が担っておる、かように考えております。
  240. 菅直人

    ○菅委員 これ以上水かけ論をやっても仕方ありませんが、つまり特別土地保有税の場合は売買価格に対して一・四%保有税をかけるわけですよ。固定資産税の場合は、売買価格が幾ら高くなっても、自治省あるいは各自治体独自の評価額に対してかけるわけですよ。評価額というのは売買価格からいえば物すごく差があるわけですね。三年置きにこれを変えようというのが来年迫っている。しかし、余り一遍に上げたら大変だろうからと抑えようとする。私はあと全体の提案もしますけれども、例えば百坪、三百三十平米とかあるいは二百平米とか、狭い土地を自分が住むために持っている人に、今の値上がりの負担をがばっとかぶせるのは私も反対です。現実にも地方税法の中にそういう四分の一にするとか二分の一にするというのがありますが、私は、何分の一という考え方ではなくて、場合によったら定額制にしていって、その定額の率を場合によったらある時期に多少変えていくということで、土地の値上がりと全く別個に、例えば三百三十平米までは固定するというやり方がいいと思います。しかし、一般的に評価を上げないでいくというのが果たしていいのかどうか。  例えばことしの三月七日に東京大田区蒲田のすぐそばに四千八百二十二平米の土地が出ました。これはたしか国鉄用地ですね。それに対して六百五十六億円で桃源社という会社が落としているわけです。大田区はこの土地がぜひ欲しかった。そこでいろいろと申し入れたけれども、入札に応じてくれということで第三セクターを使って二百数十億で入札をした。ここに書いてありますように「第三セクター、四百四十六億円も下回る」、足せばわかりますが、多分二百十億で入札したのでしょう。桃源社が六百五十六億円で入札をして、もう一社あったようですが、当然高い方に落ちたわけですよ。私は、こういうふうなことが可能なというのは-では、この六百五十六億に対してちゃんと固定資産税を一・四%かければ年間十億ですよ。これは簡単にはその土地を持ち続けることはなかなか大変です。大きなビルでも建てて利用すれば別ですが。つまり、土地転がしにとっては保有税というのは実は非常にボディーブローのように効いてくる問題だと思うのです。ですから、私は、個人が住んでいる土地については、ある大きさ以下については減免措置をとることは大いにやるべきだけれども、そうでない土地については時価に、法律にも時価と書いてあるわけですが、時価にスライドさせた方が、近づけた方が土地に対する、地価に対する抑制効果がある。さっきの局長ですかだれですか、土地の値段が決まってから税率が決まるからそんなことは関係があるのかないのかわからないみたいなことを言っていましたけれども、そんなばかな話はないわけであって、買うときには毎年とれだけ金がかかるかということは当然持ち越し費居として考えているわけですから、そういうことを考えればそうした方がいいと思いますが、自治大臣、いかがお考えですか。
  241. 津田正

    ○津田政府委員 先生おっしゃるように、六百億の取引があれば、特別土地保有税はその取引価格掛ける三%の税負担あるいは保有分一・四%の税負担がかかるわけでございます。そういう意味におきまして、固定資産税が基幹的な税目であると同時に、政策税制としての特別土地保有税というものを機能させておるわけでございます。
  242. 菅直人

    ○菅委員 全く答えになっていませんけれども、幾ら聞いてもだめでしょうから、だめだということをまずよくわかっていただきたい。  もう一度大蔵大臣にも、これはまさに大蔵大臣というだけでなく、十年前に平河会というところでたしか政策を出されて、利用権と所有権の切り離しというようなことも提案をされているわけですが、私は、大蔵省が所管をしている譲渡益課税、相続税と今の自治省が所管をしている固定資産税を含む保有税全般について、土地政策における根幹だろう、後ほど建設省、自治省が所管をしている他の問題についても触れたいですが、根幹だろうと思っているわけです。  補完的という言葉が二重に使われるのですね。ある人は、重要なのはわかっている、しかし、あくまで建築基準法とか都市計画法とかあるいは国土利用法があっての補完的なものだという言い方と、今の自治省のように、補完的だということによって土地政策とは関係ないんだということに、完全にそこを遮断してしまうことにこの言葉を使っているところもあるわけです。そういう意味で補完的という言葉は理解によっては非常に幅が広いですが、大蔵大臣にもう一度お尋ねしたいのですが、土地税制が土地政策にとって極めて重要な役割を果たすというように私は思うわけですが、大蔵大臣はいかがお考えですか。
  243. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど自治省の政府委員のお答えを聞いていまして、固定資産税というのは地方にとっての非常に固有の大切な財源であって、その上にいろんな意味での別の保有税があるんだ、こういうふうな考え方をしておられるように答弁を聞きました。それは税という観点からいえば私はそのとおりであろうと思うのでございます。ですけれども、これだけ土地の問題が大きくなってまいりますと、税の見地からは仮に一つの見地があっても“土地、地価抑制、安定といったようなことに国税も地方税も無関係ではないわけでございますから、そういう観点から考えてみる必要があるだろうと私は思います。  税制調査会で、これは国の税制調査会でございましたけれども、短期譲渡とかいうようなことをいろいろ検討していただいて、それは土地価格との関連からも考えていただいておるには違いないのですけれども、やはり税というのが主たる観点でございますから、そういう意味では行革審等において土地問題、地価問題から国税、地方税のあり方を見ていただくということは有益なことだと私は思います。決して縄張り意識にとらわれてあれこれ申すつもりはございません。これだけ土地問題が大切なときでございますから、それはいいお考えがあれば採用させていただかなければならない、そんなような考え方をいたします。
  244. 菅直人

    ○菅委員 片手落ちになってはいけませんから、自治大臣にも同じことを、つまり土地税制が土地政策にとっては非常に重要な役割を果たすのではないかと思いますが、いかがですか。
  245. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 大蔵大臣の今のお話にもございましたし、また政府委員答弁にもございましたが、固定資産税が先ほど申し上げたような意義を持っておりますし、特別土地保有税が地価の抑制にある程度効果を持っていると思っておりますが、地価というものはいろいろな要素がございまして、国土の利用の方法あるいは土地利用の方法あるいは取引のあり方あるいは都市のあり方、それに対してまた供給をどうするかというような問題とか、各般の問題が総合されて地価というものに出てきているわけでございます。一体三年前に東京都の地価、都心部の地価が安定していたのに、二年前、ことしと急激に上がってきたのは何か。それは税制が変わったからではないわけでございます。そういう外部的ないろいろな要因もございますので、総合的に検討していかなければ地価の抑制ということは成功しないのではないかと思う次第でございます。  もちろん土地税制、特に自治省といたしましては、固定資産税など地価抑制に第一線に出て使うということはいかがかという態度は一貫しておりますが、それにしましても地価抑制にもいささかの効果はあるはずである。そういう意味で、実は最近高騰してまいりました大都市におきます地価抑制のために、固定資産税が高過ぎるからこれを減免してくれという御要請を都道府県知事からも受けておりますけれども、それもある程度限界がある。一定の限界を持ちながら、節度を持ちながら、この税制を運用していきたいと考えている次第でございます。
  246. 菅直人

    ○菅委員 今、最後のことは、ちょっと内容的には先ほどから言っているように議論が分かれているわけですね。自治省も何もまだ正式見解がない。つまり、固定資産税を安くする方が土地が安くなるのか、高くする方が安くなるのか、こういうことがある程度共通認識にならなければ土地政策なんというのは幾らやってみたってその場しのぎで終わると思います。  あと、建設省にお伺いしたいのですが、建設省として、地価対策あるいは先ほど申し上げたサラリーマンが適正な負担で討ち家を持てるようにするという政策、大きな枠組みでも結構ですが、どういう政策をこの間やってこられたか、あるいは今後やろうとされているか、お聞かせください。
  247. 天野光晴

    ○天野国務大臣 土地が値上がりして困っているのは、ごく最近、特に東京都内の都心部が中心でそうなっております。それですから、現在、この始末をするためにはいろいろ方法があると思いますが、私はやはり需要供給のバランスをとることが一番大切だと思います。そういう点で、値上がりをしている東京の都心部には、強いて言えば汐留の国鉄の土地ぐらいきり今ありませんよ。そういう点で、工夫して需要供給のバランスをとれば、私は、大丈夫、今の土地の値上がりの状態からいけば値下がりすると思います、それは。  というのは、御承知だろうと思いますが、私は、今度の土地の値上がりは、日本が世界の経済的な中心の国になったということで、いわゆるロンドンとニューヨークと東京というふうに仲間入りをしたために、いわゆる事務所ビルが足りないということであるのだというふうに聞いております。それですから、その事務所ビルをいっぱいつくればいいのですよ。つくる場所があるのですよ。これは笑い事じゃないのです。これはそんなことじゃどうにもなりません。それですから私は、要するに国鉄の空閑地を利用する、そういう格好でやれば十二分に今の暫定的な措置はできる。暫定的な措置ができたら、その間、何といいますか、国土利用計画法でうたっている、今の四全総でうたっているように、都心の人口を何とか排除するような政策を政治の上でやるというのが当然だと思います。――いや、おかしくないです。それはここで議論をしているわけじゃありませんからやりませんが。  例えば、特別土地保有税の問題が今出ました。あれは私がつくったのですよ。目的が違うのです。あれは土地め値上がりを抑えるということよりも買いだめを抑えるためにつくったのです。ところが、その買いだめを抑えるためにつくったのが地方の都市の財源になって、今では地方の都市の財源だからやめるわけにいかないというような状態じゃありませんか。これは何といったらいいかな、いわゆる家も建てられないような土地、山を買ったのにも保有税をかけている。目的が違うのです。ですから十年間でそれを打ち切りにしたはずであります。そういう点で適当に使うから、お役人様はいろいろ使い方が上手ですからね、そういう点で私は土地保有税だって非常に問題点があると思うのです。  ですから、私は、やはり皆様方の御協力を得て、現在の土地の始末をするのには霞が関ビルが八本あれば大体間に合うそうでありますから、そういう点で東京駅の再開発を提案しているわけであります。これは十二本以上建ちます。ですから、これをやれば、いわゆるビルディングの土地を買う要するに土地ブローカーはなくなります。五十坪か三十坪ぐらいの買いだめをしているよりも、あそこに一挙にできるわけですから。そういう点で建設省としては、私もいつまでもやっているわけじゃありませんからね、そういう点で今考えているのは、当面の問題としてその問題だけは決めたいと思っております。中曽根内閣、半年なんてあるような話だけれども、そんなにはありませんよ。それですから、短い期間ですから、これは何といっても始末をつけるつもりでございますから、その点御了承願います。
  248. 菅直人

    ○菅委員 あと、まさに土地問題で言えば、主管官庁はもちろん言うまでもなく国土庁だと思うわけです。今までにいろいろと大蔵省、自治省、建設省の話もありましたし、また国土庁自身もいろいろ土地政策をやっておられることはもちろんなんですけれども、私は国土庁長官に、もっと国土庁が権限を含めて強くなって、まさに土地政策全般のイニシアチブを持って、本当に土地の値上がりが抑えられ、かつ有効な住宅なり必要なオフィスが供給されるようにする力を持ってもらいたいということを期待も含めて、この土地政策についてどのような決意で臨んでおられるか、伺いたいと思います。
  249. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 菅先生は土地の問題に非常に取り組んでおられる、その御努力に先ほど官房長官から敬意を表するというお話がありましたが、私も、先般の中央公論に御発表になりました論文も読ませていただきましたし、さきの通常国会における論戦において、また本日の御見識の発表を聞きながら、土地に取り経んでおられます。その情熱には心から敬意を表する次第であります。  土地の問題につきましては、国土利用計画法と税制面において当面この問題を鎮静化させようということで努力をしておるわけでございます。東京都等ともさきに連絡をとりながら、実は国土利用計画法の第十二条、第十三条、いわゆる土地を凍結するということができる条項があるわけでございますが、このようなものをもしも発動したならばどうなるかというようなことまでもいろいろ論議をしながら、その弊害が余りにも大きい、当面はやはり監視区域というような小規模の取引を届け出制によってチェックをしながら鎮静化させていこうということで合意をいたしまして、さきに東京都の条例もつくっていただいたわけであります。  さきの国会におきましては、おかげさまで監視区域を盛り込んだ国土利用計画法の改正を通過させていただきまして、この八月一日からこれがいよいよ発効するわけでありまして、東京都等も既に五百平方メートルを三百平方メートルに切り下げたわけでありますし、各都道府県におきましてもこれに対応して準備を進めておるところであります。これについて、この監視区域のチェックによりまして相当の効果があるということを期待いたしておるわけでございます。  ちなみに、東京都におきましても、五百平方メートルに二千平方メートルから切り下げただけで、昨年の十二月から本年の六月まで八百三件の届け出があったわけでありますが、そのうちで百八十七件の指導をいたしております。それは、値段が高いということで取りやめた売買もありますし、地価を下げた場合もありまして、いわゆる指導率は二九%ということであります。これがさらに三百平方メートルに切り下げられれば、指導率はさらに高まるものだと思っておるわけであります。  また、もう一つは、先ほど主税局から説明のありましたさきの国会に出しました土地税制につきましては、やはり一般の税制の中に埋没をいたしまして、きょう御主張になっておりますような地価抑制のために非常に効果があるということが何か忘れ去られまして、ついに廃案になったわけであります。もうちょっと菅先生にも頑張っていただいてあれは通過させていただいておると相当効いたのではないか。実はそのアナウンスメント効果は相当あったというように聞いておるわけでございまして、今回の国会にも提出をする予定でございますので、一日も早くこれを通過させていただくことによって大きな効果を得たいと考えておる次第であります。
  250. 菅直人

    ○菅委員 国土庁長官の方から、具体的に届け出制の強化をやって東京などである程度の効果が上がっているということと、あわせて規制区域を指定するというやり方をとることまで検討したけれども副作用が大き過ぎるからやめたということもありました。私は、これはまさに個人的な見解ですけれども、この東京の値上がりを見れば、実は変な言い方ですが、私が都知事だったらこの十二条を発動して、少なくとも半年ぐらいは地価を、いわゆる十二条というのは御存じだと思いますが、ある区域を知事が指定すればあらゆる土地売買が許可制になるわけです。私はある時期にこの国土利用法を知りまして、こんなに強い規制を先輩議員の皆さんがよくつくられたなということを思ったわけですが、そういう意味では、こういう土地の異常な高騰のときこそ、こういう手段を限定的な期間を設けて使うべきではなかったか、そうしてその間にいろいろな手当てをして外していくということをやるべきではなかったかと今でも思っているわけです。  同時に、この問題が出ましたから少し個別的な問題になりますが、今遷都論とかいろいろあります。実際に遷都が一週にできるとは思いませんが、少なくとも東京のような国際化、情報化に対応できるかなり大きな都市を東京以外に幾つかつくるということが必要だと思うわけですが、そのときも同じ問題が起きると思うわけです。つまり、何かつくろうと思ってもそこへつくろうという発表をしただけで、土地が値上がりするだけではなくて土地を売らなくなるのですね。そういう意味で国土庁長官にもう一度、つまり今度の四全総の問題でもありますけれども、地方に中核的な国際化あるいは情報化に対応するような都市をつくる、その場合に国土利用法十二条の適用を思い切って考えてみたらどうか。もちろんこれは知事の権限ですから、各自治体との十分なる協議が必要だということは重々承知をしておりますが、そういうやり方で思い切った新しい都市の再開発と同時に分散を図っていくということをやったらどうかと思いますが、いかがお考えですか。
  251. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 さきの百八国会で特別保養地域の整備法案、つまりリゾート法というのを通させていただきました。このときも、今度地方にリゾート地域を展開すると、それによって地価が上がるんじゃないかということで、これはぜひ地価が上がらないようにしなければならぬということで、いわゆる六省庁におきましてそのことをまず前提にこの法案を通させていただいたわけでありまして、ただいま御指摘のように、各地方に核都市をこれからつくっていかなければならないと思いますが、その地価抑制には十分各自治体において留意をしていただきたいというふうに考えております。
  252. 菅直人

    ○菅委員 少し話がわき道にそれますが、今東京の地価上昇によっていろいろな人が困っている中で、円高と並んでやはり留学生が住宅事情に非常に困っておることは御承知だと思います。中曽根総理はいつまでですか、いわゆる十万人構想というのを提案をされておりますが、現在留学生に対して国が施策としてどのような援助を行っているのか。国費留学生の場合はかなりの手当てがされておりますが、私費留学生については必ずしも十分な手当てがされてないように思いますが、この点について、文部省にちょっとお尋ねをしたいと思います。
  253. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 おっしゃるように、十分な手当てはできておりません。特に住宅につきましては、留学生会館をつくるとか、あるいは最近におきましては経済同友会の会員企業の寄宿舎を提供してもらって、これで四百戸ほど確保するというようなことをやっておりますが、これからまず住宅の確保、これに全力を挙げていきたいと思っておりますし、同時にあわせて、私費留学生の授業料の軽減措置についても、これから取り組んでまいりたいと思っております。
  254. 菅直人

    ○菅委員 これは私からも、総理外務大臣にも、あるいは将来の人たちにもお願いしたいのですが、文部省という枠組みだけではなくて、やはり国際交流という枠組みからも、場合によったらアジアや多くのアフリカの国々から来る留学生に対しては、海外援助という観点を逆に見れば、留学生に対するフォローというのも非常に重要な要素だと思うので、その十万人構想だけがひとり歩きするのではなくて、それに対する手当でもぜひ十分に配慮をいただきたいと思います。  多少時間が少なくなってきたので二、三の問題をあれしますが、農林大臣、今住宅事情が非常に厳しい中でセカンドハウスの方に、何といいましょうか、都内にはマンションに住んで、狭いマンションだけれども、週末にはちょっと広い縁の中で過ごそうというような動きがあります。また一方では、私はヨットは余り乗りませんからわかりませんが、ヨットを持っている人の話を聞くと、係留をするのに物すごいお金がかかるというのですね、つまり船をとめておくのにですね。日本はこんなに海があるのに、なぜこんなに高いのだろうというふうに思うわけです。  これは水産庁、運輸省、いろいろ関連があると思いますが、農林省として国有林を活用したりあるいは海面を活用したりして、そういったセカンドハウスやそういったウオーターフロントの開発というものをもっと積極的にやったらどうか、いわゆるレジャー、余暇の問題、労働時間短縮の問題があるわけですが、一カ月間休めと言われてもどこに行ったらいいのだというのが、多分都市にいる人たちの思いだと思うのです。安定的に一カ月間で十万とか十五万ぐらいの費用で遊びに行って楽しくできるような施設というのは、私はやはり緑と水のそういうところだろうと思うのですが、そういうことについての農林省としての取り組みを伺いたいと思います。
  255. 加藤万吉

    加藤国務大臣 先ほどのお話でございますが、東京二十三区はまさにコンクリートジャングルになりつつあります。そういう中で、はだしで大地におり、緑と自然に触れ合う場所というものをどうしてもこれからの国民、今日の国民に確保しなくてはならないということは、全く同感でございます。  国土面積の約二割を占めております国有林野を国土保全の公益的機能確保に配慮しつつ有効に活用していくことは、大変重要であると思います。現在、いろいろこういう要望にこたえるためにやっておりますが、先ほどおっしゃいました滞在施設、ログハウス等の用地提供等を行います「ふれあいの郷」整備事業を昭和六十年から推進しておるとしろでございます。また、同じくそういう趣旨に基づきまして、国有林野事業の一環として、野外スポーツの場と人と自然の触れ合いの場等を整備するヒューマン・グリーン・プランを新たに実施することとしたところでございまして、今後とも国民の要請にこたえるため、国有林野内資源の効果的な活用、農山村地域の振興等に十分配慮しながら、こういうものをやっていきたいと思っておるわけでございます。  本年度においてもいろいろな分野において、「ふれあいの郷」問題あるいはまたヒューマン・グリーン・プラン等を大々的にやっていきまして、国民に自然との触れ合い、緑の大切さ等々を大いに楽しんでいただくようにやっていこうと努力しておるところでございます。
  256. 菅直人

    ○菅委員 運輸大臣にはあわせて、先ほども建設大臣の方から話がありましたが、私ももう一方では、JRの駅の空中権などを使って、外国の都市を見ると、ほとんど都心部にも住宅があるわけですね。そのことは通勤ラッシュというものに対する対応にもなっているということを考えると、例えば中央線、山手線あるいはそういう都心の駅の上に全部かなり大規模なものを開発するということも可能なんではないかと思いますが、そのこともあわせて運輸大臣にお伺いしたいと思います。
  257. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 建設大臣が大変どうもうな意見を述べられましたので、少々私もショックを受けておりますが、本来、しかしせっかくJRをつくり民間会社として発足をさせております建前からいきますと、その上空を含めた有効活用というのは、私はその土地の所有権者である鉄道会社の経営判断の問題だと考えております。そして、一般論として、駅あるいは駅周辺の上空の有効活用というものが、これは会社経営の多角化の一環として、今後の検討課題の一つであることは間違いがないと思いますが、その具体化に当たっては、計画の内容、採算性と同時に、現実に鉄道を動かしながら行う工事になってくるわけでありますから、そうした点での技術的な検討などの総合的な判断が必要なものだと私は思います。  ただ、東京駅周辺につきまして、私どもも同意をし、国土庁の予算を使ってのフィージビリティースタディーを進めておることは御承知のとおりでありまして、建設大臣の御意見を私どもはそうした形で受けとめておるわけであります。  また、もう一点御指摘を受けました公共用のマリーナの問題は、確かに海洋性レジャーが普及すればするほど、現実に大変必要を感じてきているものであることは間違いがありません。現在第七次の港湾整備五カ年計画の中で、港湾整備事業として約三十カ所の公共用マリーナの計画を進めております。  また、前国会において成立したいわゆるリゾート法あるいは財投等を活用することによっての民間マリーナの整備もぜひ促進をしたいと考えておりますが、マリーナだけに限定をしないで、ウォーターフロントと先ほどまさに委員が御指摘になりましたような発想から、私どもはレクリエーション港湾というものを考え、整備をすることを描いておりまして、現在九十港程度を想定しておることも御報告をしておきたいと思います。
  258. 菅直人

    ○菅委員 いろいろと計画が進んでいるということで、次期内閣、それぞれ運輸大臣も農林大臣もまた重要な役目をやられる可能性が高い皆さんですから、ぜひ頑張っていただきたいと思います。土地問題の最後に、私が参考資料として皆さんにお配りをした中に私からの提言というものを六項目にまとめてみました。これについては、もうこの間いろいろな機会に申し上げておりますので細かいことは省略をしたいと思いますが、先ほど官房長官の話もありましたように、台湾の土地税制を参考にしまして、五月の初めには実際に現地に調査に行きまして、向こうのいろいろな役所の人と話をして、現状も調べてまいりました。もちろん全部がうまくいっているわけではありませんが、一番感じたのは、やはり土地に対する一つの理念が明確になっている。その理念に基づいて政策体系をつくっていって、最後、数字はそのときに応じていろいろと変わっている。  その理念は何かというと、孫文が三民主義の中で言っていることに基づくわけですが、結局都市における土地、つまり土地の値段というか土地の値上がりというのは、これはあくまで公のことによって値上がりするんだ、だからその値上がりのいわゆるキャピタルゲインを個人のものにするということはおかしいんだ、公に戻すべきなんだといういわゆる漲価帰公という言葉で考えられている、そのことが一つです。  それからもう一つは、できるだけ土地というのは平均的に使うべきだ、平均的に活用しようじゃないかという考え方が一つです。それに基づいて、例えば固定資産税が、たくさん土地を持っている人は累進課税で高くなるなんていうのはなぜ出るかといえば、平均的に使うにはそうやっていいじゃないかという考え方で出ていると思うのです。あるいは土地増価税というものが、日本の場合は譲渡益課税ですが、なぜ出てくるがといえば、やはりキャピタルゲインはちゃんと公に戻すべきだ、そしてその基準をどこに置くべきかということで、地価の自己申告制度という制度を導入をしている。すべてが日本にそのまま適用できるとは私は思いませんが、少なくともそういう土地に対する理念の面では日本が参考にすべきところは非常にあって、それに基づく政策を考えないと、結局はその場しのぎなり、あるいはこの三ページ目にもあったように、たくさんの答申を私は読みましたけれども、非常にいいことが答申に出ています。ですから、新行革審も多分立派な答申が出ると思いますが、下手をすれば単なる言葉で終わってしまう危険性があるのではないか。  最後にもう一度、この土地問題について総理にそういうことを踏まえて、再度土地に対する取り組みについての決意をお聞かせをいただきたいと思います。
  259. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あなたの六項目、さっき拝読いたしましたが、よく勉強されていることに敬意を表します。ただ、私がちょっと見た感じだけでも、例えば超過益の累進による徴収ですが、申告制によってその超過した分を公に帰する、理念はいいと思うのですけれども、実際はいろいろな専門家が土地を転がすというような場合を考えてみると、果たしてそのようにうまくひっかかってくるか、向こうの方が頭のいいところもあるのじゃないか、そういうような感じも、私のような者が考えても感ずるようなこともなきにしもあらずです。しかし、その発想の端緒というものは、私は非常に貴重なものがあるように思っております。  土地の問題については、特に東京とか大都市が今問題で、全国的に見たらまだそれほどというものではない。急を要するのは、その火つけのもとになったところを鎮火させるということであると思うのです。そういう意味において、ともかくこれ以上の値上がりはもう抑えてしまうということ、徹底的に抑制するということ、やはり税制が有効ではないかと思うのです。それはこの前の狂乱のときにも、やはり土地保有税というものをつくることによって、あれはあれが端緒で鎮静化したのです。今天野君がいろいろ言ったときに実際やったことです。今回の東京等の場合を見ても、そういう意味で税制というものによって頭打ちをやらせる、とりあえずそれで頭を抑えてしまう。それと同時に、今度は供給をふやしていって、そうすると今度は値が下がってくる。両方急を要してやる必要がある。そういう意味で、新行革審においてもいろいろ至急検討を願いますし、政府としてもやりたいと思うのです。  先般、この間の議会で土地重課、そういうことをお願いしたのですけれども、法律が成立しませんでした。今税制協議会においていろいろ御論議願う対象になっているかもしれませんが、政府としても、やるべきことは早くやる必要がある。税制協議会の方の動向を我々は見守ってまいりますけれども、しかしこの前のああいうような問題は急を要しますから、必要に応じてやるときにはやらなければいかぬだろう。これは野党の皆さんにもいろいろお願いをし、お話もして、そしてやる必要がある、そういうふうに感じておる次第でございます。
  260. 菅直人

    ○菅委員 土地問題をやれば切りがなくあるわけですが、一応これにとどめまして、ちょっと予定のあれですが、公害健康被害補償法の改正が前国会で継続審議になっておるわけです。さきの国会でも議論になりましたように、これは大変自治体が数多く反対をしております。私も、これは十分に自治体の意見も聞きながら、あるいは被害者の意見も聞きながら慎重に対応して、間違ってもこういうことが強行されることがないようにと強く思うわけですが、環境庁長官の所見を伺いたいと思います。
  261. 稲村利幸

    ○稲村国務大臣 関係地方団体からの意見を拝聴いたしましたが、指定地域の解除につきましては、中公審において現時点における可能な限りの科学的知見を踏まえまして、慎重に御審議いただいた結果に基づくものでありまして、地方公共団体の意見も十分検討した上で、指定地域をすべて解除することは妥当である、こういう考えに至りました。  また、地方公共団体からは、今後の大気汚染防止対策等につき強い要望が寄せられましたが、これにつきましては、大気汚染による健康被害を予防するための施策を積極的に推進することにより万全を期することとしたい、こういうふうに考えております。
  262. 菅直人

    ○菅委員 以前と同じ答弁ですが、十分にこれは慎重に検討いただきたいと思います。  最後のといいましょうか、もう一つの問題として、昨年、老人保健法が大幅に改正をされて、特に加入者按分率が八〇、そして今年度は九〇となってきているわけです。そのことによっていわゆる拠出金の負担が大きくなっている健保組合は、単年度の収支では、つまり積立金を取り崩さなければやっていけないという状況がもう既に数多くの健保組合で見られているというふうに聞いております。厚生省として、このような事態をどのように把握をしておられるか、そして、これから六十四年までが九〇、そして六十五年になれば一〇〇%というふうになることがさきの改正で決まっているわけですが、こういった健保組合の今後の財政見通しについてどのように対応しようとしているのか、意見をお聞かせいただきたいと思います。
  263. 斉藤邦彦

    斉藤国務大臣 今先生がおっしゃられましたように、昨年の老人保健法の改正をしていただきましたことによりまして、健保組合からの老人保健の拠出金の増がなされておりまして、いろいろと御迷惑をおかけをいたしておることを感じております。しかしながら、幸い六十二年度の健保組合の予算を拝見をいたしますと、保険料率に影響を与えるというところまではまだ行っていないようでございまして、そういう中で対応が可能な状態に現在あるということであります。しかしながら、今後、老人医療費の増大を中心といたしまして、医療費全体の増大が見込まれるわけでございまするので、この健保組合の財政に支障を来さないように、例えば老人保健法の激変緩和の減額措置等、いろいろなものを駆使し、また健保組合の共同事業等を推進をするというようなことをいたしまして、財政上の支障を来さないよう、全力を挙げて対応をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  264. 菅直人

    ○菅委員 もう一方、この老健法の議論の中で、国保制度というものについての問題点なり今後のあり方が議論をされ、現在、国保について、それの委員会がつくられているということを承知しておりますが、国民健康保険問題懇談会ですか、この中でどういった方向が話し合われているのか。例えば一部に報道されているような保険者を市町村から都道府県に変えるといったようなことも議題になっていると思いますが、その方向なり内容についてお聞かせをいただきたいと思います。
  265. 斉藤邦彦

    斉藤国務大臣 医療保険の中で国民健康保険の果たす役割は非常に重大でありまするし、これからの本格化する長寿社会にあって、その国民健康保険が一層安定的に運営されるために幅広い議論を合いただいておるところでございます。  今御指摘のございました国保問題懇談会、この五月に設置いたしまして、四回ほど検討を進めていただいております。まさに医療保険制度全体の中における国保のあり方を幅広く検討していただいておるわけでございますが、具体的に申しますと、例えば国保における加入者の年齢階層のアンバランスというようなことからくる問題点、また地域におけるアンバランスにおける問題点、こういったものが中心となってこれまで議論をしていただいておるところでございます。先ほど先生が触れられました国と地方との負担のあり方という問題も当然こういった根本的な検討の中にこれから出てまいることだと思っております。
  266. 菅直人

    ○菅委員 もう一つ、その国保問題あるいは老健法や他の保険制度を含めて、今後昭和六十五年というのが一つの焦点になりつつあるのではないか。つまり老健法の中でも、六十五年に按分率を一〇〇%にする中で支障を来したときには何らかの対応をするといったような附帯決議もついておりますし、また、これは私は必ずしも賛成ではありませんが、かつて自由民主党と医師会の間で、いわゆる一元化といいましょうか、そういった問題についてある種の覚書が取り交わされている中に、昭和六十五年という期限があるわけですが、そういうことを含めて、今後の日本における医療保険制度のあり方というか、さらに何らかの改革を意図しているとすれば、どういう問題を解決するために必要だと考えておられるのか。まだ多少の時間はありますけれども、現在の時点における厚生省の考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  267. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 医療保険全体の一元化に向けての取り組みにつきましては、政府といたしましても、昭和六十年代後半のできるだけ早い時期ということを目標に置いておるわけでございまして、これまでに健康保険の一割負担をお願いをいたしましたり、また老人保健法の改正をお願いをいたしました。いよいよこの一元化へ向けての取り組みを開始しなければならない、こういうことで、本年一月から社会保険審議会に医療保険全体の抜本的な一元化へ向けての取り組みを御検討をお願いいたしまして、この中に基本問題等小委員会というものをつくっていただきまして、今鋭意御検討をいただいております。そして、先ほど申し上げました国保問題懇談会も、その医療保険制度の中の最も先に手をつけていかなければならない大きな問題でございまして、この国保問題懇談会も五月から動いていただいておるということでありまして、この両方の検討がちょうど交わってくるようなことによって一元化へ向けての構想をはっきりさせてまいりたいと考えておりますが、いずれにいたしましても、なお医療保険制度が今後将来の本格化する長寿社会において耐え得るような負担と給付の公平というような観点からの取り組みをいたしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  268. 菅直人

    ○菅委員 もうあと時間が三分程度になりましたので、一問程度になるかと思いますが、INFと対ソ外交についての問題を多くの委員の皆さんから首相に対するあれがありました。  私は、実は先月の二十九日から一週間弱ソ連に行っておりまして、ソ連のペレストロイカの問題を中心に各方面の皆さんといろいろと話をしてまいりました。私が感じたのは、ソ連が経済的に若干低迷をしている。その原因がいろいろな意味での生産現場を含めたモチベーションというか刺激のなさ、いわゆるノルマ制なんかを含めたそういう硬直した官僚的なあり方にあるという認識を彼ら自身が持って、かなり大胆な改革を目指そうとしている。グラスノスチと言われる情報公開も、当初は私自身もどこまでやるのかなと思っておりましたが、チェルノブイリなんかの報道を見てもかなり思い切って公開制度をやってきている。そしてゴルバチョフ演説をいろいろ見ておりましても、ある意味では、そうしたペレストロイカを推進していく上では軍備拡大競争に、何と言いましょうか、ソ連の言い方からすれば、それに巻き込まれるのは嫌だ、少なくとも軍備拡大競争をやるのはもう避けたいということをかなり率直に言っているように受けとめておりましたし、また実際に向こうで話をいろいろな方から聞いてもそんな感じがいたしました。  そういう点で、私は従来の日本政府がとってきた対ソ外交というものの見方が、少し状況が変化をしているというふうに見るべきではないか。ヨーロッパの国々、例えばイギリスのサッチャー夫人などもかなりそういった見方をしているというふうに伝えられております。そういった意味で、ゴルバチョフ政権以前と以後のソ連観について、総理の見方がどんなふうになっているのか、もう時間が最後になりますので、それについての御所見を伺いたいと思います。
  269. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私はチェルネンコ氏の葬式に出席して、そのときにゴルバチョフ氏と約一時間十分ばかりテータテートで会談をいたしました。そのとき得た印象を国会で御報告した次第ですが、そのときも申し上げましたが、西欧型の我々と対話のできる指導者が新しく出てきた。それで、恐らくソ連の内部の経済的な行き詰まりあるいは社会的行き詰まり、それから対外、外交政策の世界的な行き詰まり、これを打開するには新しい方法をもってしなければ打開できない。そういう意味においてソ連共産主義が始まって以来の一つの中興の祖といいますか、共産主義自体のイノベーション、そういうものを心がけて登場しつつあるのではないか。二十年ぐらいの持ち時間をかけて彼はやっていくかもしれぬ。  そういう用意を持って我々は見守っていく必要がある、と申しましたが、最近見ていると、言っていることとやっていることが必ずしも一致してない点があると思うのです。演説は非常にやっています。例えばウラジオストク演説というのでアジア・太平洋の隣人であるとかおっしゃいますけれども、しかし軍事力を非常に増強して、平和を欲しているけれども、軍事力は増強され、北方四島からはまだ兵力も撤収しない。依然として変わりませんね。むしろアジアにおける軍事力は増強されつつある。そういう意味において、言っていらっしゃることと実行することが果たして一致するのか。  これは、この間のベネチア・サミットにおいても、ゴルバチョフ政権というものの性格の分析をみんなでやり合った中に、いろいろな考えが出てきた中にありました。各国の首脳部も実績を見ている、そういう状況だろうと思うのです。そういう感覚を持って私も見守っていきたい。しかし、ソ連と日本は隣人同士ですから、善隣友好で良好な関係確立したいし、ゴルバチョフ氏が日本へ来られるなら歓迎したい、こういう考えは一貫して変わっておるものではありません。
  270. 菅直人

    ○菅委員 終わります。
  271. 砂田重民

    砂田委員長 これにて菅君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十七日午前九時三十分より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十四分散会