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和田一仁君 私は、民社党・
民主連合を代表して、ただいま
議題となっております
所得税法等の一部を
改正する
法律案及びその
修正案に
反対の
討論を行うものであります。(
拍手)
反対する第一の
理由は、
本案には
税制改革の
ビジョン並びに
基本構想がなく、ただ小手先の
改革に終わっているという点であります。
税制の
抜本改革を言うならば、その全体像、将来像を明らかにすべきではありませんか。
国民の求める
税制改革は、何よりも
現行の不公平を
是正することであります。この点を
出発点といたしまして、
経済社会構造の
変化や
国際化に即応した時代に適合する
税制度を確立することが重要であります。
しかるに、今回の
改革は、余りにも拙速で未熟なものと断ぜざるを得ないのであります。
所得税率は十二
段階の
改正になっておりますけれども、ライフサイクルの中で
税負担の
平準化をいかにするかの
観点に基づくならば、この
程度では甚だ不十分であります。将来的には、旧
政府案で示された六
段階程度への
改革の
ビジョンを確立するのが筋であります。にもかかわらず、何らその手順を盛り込んでいないということは、極めてずさんであると言わなければならないのであります。
また、
法人税の
改革が見送られたことも大きな問題であります。
産業の
空洞化が懸念されている今日の
状況においては、
法人税減税についても抜本的な
対策を早急に講ずべきではありませんか。しかるに、
本案では
法人税改革の位置づけが欠落しており、全くお粗末なるものであると断ぜざるを得ません。
反対する第二の
理由は、
減税の
規模が小幅なものにとどまっている点であります。
我が国経済は、
勤労者の懸命の
努力や血の出るような
合理化によってようやく回復の兆しが見え始めております。しかしながら、
円高不況の後遺症はまだ多くの
産業に暗い影を残しております。また、
我が国の貿易黒字は依然として巨額に達しており、世界じゅうでジャパン・パッシングのあらしが吹き荒れておるのであります。
我が民社党は、
内需拡大を推進するため、少なくとも二兆円
規模の
所得減税の先行を
実施すべしと強く主張してまいりましたが、
政府・
自民党は、わずか一兆五千億
程度の
減税しかできない、二兆円などとんでもない、ないそでは振れないと我々の要求を退けたのであります。
減税財源はあります。
昭和六十一年度
決算剰余金は、補正予算に回す分を差っ引いても約一兆三千五百億円あります。さらに
NTT株売却益は、国債整理基金への繰り入れ予定額、補正予算に回す額の両方を除いても、およそ二兆五千億円あるのであります。これらを合計すれば、実に三兆八千五百億円の
減税財源があるではありませんか。私は、
政府・
自民党のかたくなな態度は、
国民の切なる願いを無視するものとしか見えないのであります。
反対する第三の
理由は、
マル優制度廃止が強行される点であります。
我々は、
非課税貯蓄の
限度額管理の強化をも含めて、
不公平税制のトータルな論議を展開せよと提言してまいりました。しかるに、
中曽根内閣は、
マル優制度だけを突出させまして、安易な
財源確保のため
マル優廃止を強行しようといたしております。このようなやり方は断じて容認できるものではありません。私は、
マル優制度は存続せよと強く主張するものであります。
しかし、仮に
修正の論議を行うというのであれば、
マル優の対象年齢を六十五歳以上から六十歳以上に引き下げること、あるいは住民税
非課税の低
所得者にも
マル優の恩典を残すこと、一般財形には一〇%の軽
減税率を適用することなどが
最低の
修正でなければならないと考えております。しかるに、
政府・
自民党は、このような論議にさえ応じようとはせず、ひたすら
マル優廃止を貫徹せんとするのであります。
反対する第四の
理由は、
キャピタルゲイン課税がないがしろにされている点であります。
勤労者が額に汗して稼いだ給料には極めて過酷な税が課せられておるのに、電話一本、ぬれ手にアワの株式売却益が
原則非課税になっているのは、一体全体どういう考えからでしょうか。これはまさに不公平の最たるものであります。このまま放置しておくことは絶対に容認できないところであります。
政府は、
経済活力に支障を来すとか、検討してもむだであるとか強弁しておりますけれども、現に米国など先進諸国では、株式の売却益は
原則課税となっているではありませんか。要するに、やる気がない、怠慢のそしりを免れないと思うのであります。
反対する第五の
理由は、
総合課税の道が閉ざされておる点であります。
昭和二十四年、カール・シャウプ博士らが現在の
税制の道しるべをつくりました。そして
我が国は、このときの勧告をもとといたしまして、包括的
課税ベースに立った
総合課税を理想として税体系を整備してきたのであります。その後、幾多の例外事項が設けられまして、
総合課税は骨抜きにされてまいりましたが、
総合課税の心臓部分という大事な部分は何とか維持されてきたのであります。しかるに、今回の
マル優廃止による一律
分離課税は、
総合課税に背を向け、これを否定し、葬り去るものと言わなければなりません。断じて許されないものであります。
我々は、カード
制度導入などの具体案を示しつつ、
マル優の
限度額管理強化とともに
総合課税の実現を強調してまいりましたが、
政府・
自民党は、これを非難し、あげくの果てに、我々民社党の主張するカード制は世の中を暗くするなど、
反対のための情報を広げるという極めて卑劣な戦術をとったのであります。
以上、私は
反対理由を述べましたが、最後に、我々の主張する
税制改革の
ビジョンを示しておきたいと思います。
税制は全
国民にかかわる最重要課題であり、二十一世紀を展望しつつ、十分時間をかけて論議すべき重大なテーマであります。従来のように、官僚や与党の部会だけで密室で論議するというようなこそくなやり方ではなくて、
国民各層の参加と
合意を得つつ進めるものでなくてはならないと考えるのであります。そして
国民が切に求める
不公平税制の
是正を
改革のスタートとすることであります。
有価証券、土地、
利子、
法人税の
租税特別措置などについて抜本的
見直しを行い、
他方では行政の効率化を進めることであります。
以上を前期の
改革とするならば、その後は、さらに税の公平を徹底的に追求すると同時に、
高齢化、
国際化社会が進行する二十一世紀の
ビジョンを確立して、行
財政改革、
福祉政策の拡充、生活先進国の達成など、他の課題と有機的なコンタクトを持たせながら、あるべき税体系の姿を時間をかけて形成していくことが、
税制改革の本来の道筋であることを強調いたしておきます。
以上申し上げまして、私の
反対の
討論を終わりといたします。(
拍手)