○西村章三君 私は、民社党・民主連合を代表いたしまして、ただいま提案をされました
所得税法等の一部を
改正する
法律案外三
法案について、
中曽根総理大臣並びに関係大臣に
質問をいたします。
まずその第一は、
法律案提出の経緯についてであります。
さきの通常
国会で
売上税など
税制改革関連
法案はすべて廃案となり、今後の
税制改革については、与野党
税制改革協議会の場で論議を進め、
国民の合意が得られる
改革案をまとめるという約束をしたはずであります。また、
税制改革協議会で合意なきものは
国会に提出しないことが公党間の申し合わせであったのであります。にもかかわらず、
税制改革協議会が結論に達しないまま、
協議を継続中に
政府・自民党が一方的に
法案提出を強行したことは、公党間の約束を公然と踏みにじり、民主主義のルールを否定するものであり、断じて容認できないものであります。(
拍手)
およそ民主政治は、何よりも政治に対する
国民の
信頼と政党間の信義の上に成り立つものでありますが、
国民や野党の主張には一切耳を傾けず、強引に事を運ぶこのやり方は、
中曽根総理のいわば常套手段であると言っても過言ではありません。私は、今回の
法案提出を直ちに撤回し、
税制改革協議会に論議を差し戻し、
協議を尽くすことが本来のあるべき姿だと
考えますが、
総理から納得のいく答弁を求めるものであります。(
拍手)
第二は、
減税額の上積みについての今後の与野党交渉に対する
政府の姿勢について伺います。
さきに申し述べましたように、今回の
法案について、我々はその手続、
内容の両面にわたって反対であります。しかし、我々は、内需の
拡大や
勤労者の
重税感の解消からして、今や
減税の早期先行実施が焦眉の課題となっていること、また、我が党は話し合いの政治を党是としていることの二点から、
さきの与野党幹事長・書記長会談で与党より示された修正
内容と、今後なお
減税の再上積みについて真剣に
努力するとの約束を是として
審議の再開に踏み切ったことは周知のとおりであります。しかし、この約束にもかかわらず、既に当事者である竹下幹事長みずから、これ以上は難しいと言っているようでありますが、自民党が約束を破り、誠意ある姿勢を示さないという事態が生ずれば、再び
国会審議が混乱することは必至であり、その責任は挙げて
政府・与党にあることは当然であります。(
拍手)我々は、そのような事態が起こらぬように自民党が誠意ある回答を速やかに示すよう強く求めるものであります。
そこで、自民党総裁でもある
中曽根総理に伺いたいのでありますが、
総理は、
さきの八月七日の自民党よりの修正回答についてどう
考えられているのか、また、その際、竹下幹事長が
減税の再上積みについて真剣に
努力すると約束したことについては、
総理としてどのように受けとめられておるのか、明確なる答弁を承りたい。
あわせて大蔵大臣にもお伺いをしておきますが、あなたも
減税のさらなる上積みという竹下幹事長の約束を実行に移す用意があるのかどうか、お答えをいただきたい。
第三は、
税制改革の全体像についてであります。
提出された
法案の
内容は、抜本
改正とは言いがたいものにとどまっており、極めて遺憾であります。
税制改革においてまず手をつけることは、不公平
税制の是正であります。
政府・自民党が相も変わらず取りやすいところから取るという安易な増収策に固執していることは、
改革の視点がいまだ定まらず、すべてが中途半端で、到底容認できるものではありません。
私ども民社党は、マル優の限度額管理の
強化、株式のキャピタルゲイン
課税、
土地税制などについて徹底的に論議をし、不公平
税制を根本的に是正せよと一貫して主張してまいりましたが、
政府・自民党は、マル優
制度だけを悪者にして、これさえ廃止すれば事足れりとして我々の要求を無視したのであります。なぜ、マル優が
原則課税で、株の利益は
原則非
課税でいいのでありましょうか。また、首都圏を
中心に
狂乱地価、異常と言われているにもかかわらず、抜本的な
土地税制の
改革が先送りでいいのでありましょうか。これでは正直者がばかを見ることになり、一億
国民を財テクや投機に追いやるものではありませんか。それが自民党の政治でありましょうか。私は、こういうことがあっては断じてならないと思います。
国民の自由は尊重しながらも、その一方で社会的公正が貫かれるようにするのが政治の責任であります。
そこで、具体的にお伺いをいたしますが、株の利益に対するキャピタルゲイン
課税、
土地税制の
改革など、いわゆる不公平
税制の是正について、今後
政府は取り組む決意があるのかどうか。もしあるとするならば、その中身は何なのか、いつまでにそれをやるのか、ここで明確にお示しを願いたい。もし明確なる答弁が得られない場合には、もはや
政府には不公平
税制是正の方針はなく、これを野放しにするものと断ぜざるを得ませんが、ここではっきりとお答えをいただきたいのであります。(
拍手)
また、あわせて答弁を求めたいのは、
政府がマル優
制度を
原則課税にするだけで他に不公平
税制是正に着手しないとするならば、
政府が言う
減税のための
恒久財源とは一体何かということであります。それは、死んだはずの
売上税を再びよみがえらせることしかないと
考えられますが、
総理並びに大蔵大臣の答弁を求めたいと思います。
第四は、マル優
制度の廃止についてであります。
マル優
制度において、現在一部で巨額の不正
利用が行われているのは明らかであります。我々もこの不正防止のために最大限の
努力をしなければならないと
考えております。しかるに、
政府は、その一事をもってマル優
制度自身を廃止しようとしておりますが、これはまさしく本末転倒であります。
もともと
我が国の
貯蓄率が高いのは、病気や不慮の事故への備え、老後への蓄え、子供の
教育費の積み立て、
住宅の
取得という四つの理由に基づくものが大半であり、それらは、いわば
政策の欠如、政治の貧困の結果と言っていいものであります。(
拍手)急速な
高齢化の進展一つをとってみても、これからもその
必要性は十分あると言わざるを得ません。また、
国民の
貯蓄の五〇%以上は、生命保険や
住宅ローン支払いの積み立てなど、いわゆる
契約的、義務的
貯蓄であり、自由に使えるものではないのであります。問題は、
貯蓄そのものより、それを有効に投資に振り向けさせてこなかった
政府の
経済政策のあり方にこそ問題があると言わざるを得ないのであります。(
拍手)
その意味で、我々は、マル優を
原則廃止ではなく
原則存続に戻し、限度額管理の徹底に
努力すべきであると
考えるものであります。
さきの与野党幹事長・書記長会談における自民党の回答は、若干手直しが見られたものの、その
基本はあくまでも変わっておらず、その意味で、我々はマル優
制度廃止の撤回を求めるものであります。
この
基本的
見地に立ってお伺いをいたしますが、まず限度額管理について、今回の
制度によっても当然必要となりますが、
政府としてどうするのか、どのような具体策を持っているのか、明確にお示しを願いたい。あわせて、今回の管理に当たっては番号やカードを一切用いないのか、また、用いないとすれば、それで管理が十分できると
考えているのか、その根拠は何なのか、お伺いをいたします。
さらに、
財形貯蓄についてでありますが、自民党の第一次の修正案では、年金と
住宅にかかわる
部分については従来どおりの非
課税に戻すとありましたが、さらに一歩進めて、
一般の財形についても二〇%
課税という原案を手直しするのが公平だと
考えるのでありますが、その用意はあるのか、お尋ねをいたします。
また、今回の
法案によって、
利子課税について総合
課税の大
原則が打ち破られるとしたら、これは大変なことであります。
さきの自民党回答によれば、「
利子課税制度のあり方については、総合
課税への移行問題を含め、五年後に
見直しを検討する。」とありましたが、この
内容は、何らかの形で総合
課税への道を残すと受けとめているのか。以上の諸点について、
総理並びに大蔵大臣の答弁を承りたいと思います。
第五は、
減税の規模と
内容についてであります。
大幅
所得税減税の先行は、
我が国が諸外国に向かって声高に宣言した国際公約であり、内需の
拡大を推進し
日本経済を立て直すためには一刻の猶予もならない最重要課題であります。我々は、今
年度は二兆円を超す
減税を先行させよと強く主張してまいりましたが、今回提出された
政府案は一兆三千億円、これに修正上積み分を加えましても一兆五千億円の
減税しか実現できないものであり、極めて
不満足であります。
今、サラリーマンの
税負担に対する
不満はこの上もなく大きくなっております。
昭和五十二年から
昭和六十一年までの十年間におきまして、サラリーマンの平均給与はわずか三六・二%しか伸びておりません。にもかかわらず、平均納税額は何と九四・九%も伸びているのであります。これでは、働けど働けど
生活楽にならずというのは当然のことであります。
御承知のとおり、今
年度の
減税財源については問題はないはずであります。
昭和六十一
年度の決算剰余金は、
補正予算に繰り入れる分を除きましてもおよそ一兆三千五百億円もあります。また、NTT株売却利益も当初見込みを三兆円程度上回ると推定をされております。したがって、この際、
政府は
減税額をさらに大幅に積み上げるとともに、重税にあえぐ中堅
所得層にきめ細かな
配慮を盛り込んだ
内容に改めるよう強く求めるものでありますが、
総理及び大蔵大臣の
所見をお伺いいたします。
第六は、地方税についてであります。
抜本的な
税制改革を追求するからには、
国税のみならず地方税についても十分な
配慮がなされなければなりません。しかるに、今度の
改正案においては、国と地方間の税源配分、地方税に対する地方自治体の自主性の
強化等の重要な問題が先送りされ、満足すべき
内容が盛り込まれていないことは納得のできないことであります。これらの諸点については今後どう取り組んでいくのか、
政府の方針をお尋ねいたします。
最後に、私は、
中曽根総理に特に申し上げたい。
申すまでもなく、
税制の抜本的
改革に当たっては、何よりも
改革の
基本理念と
税制の将来ビジョンを明確に示すことが大切であります。ところが、今日まで
政府・与党によって進められてきた
改革論議も、また今回の提出
法案も、すべては、先ほども指摘をされたごとく、
財政当局が当初から企図していた、初めに大型
間接税の導入とマル優
制度の廃止ありきの大衆増税路線を単にオーソライズしたものにすぎず、
税制の将来ビジョンと
基本理念を欠き、結果的には
国民に選択の道を閉ざしたものとなってしまいました。
現行税制の
ゆがみ、ひずみ、不公平、不公正など
税制の抜本的
改革は
国民最大の関心事であり、共通の課題であります。したがって、今後
税制改革を進めるに当たっては、何よりも
国民の十分な
理解と協力が不可欠であります。そのためには、慎重にして、かつ、ガラス張りの論議の中で、
国民に選択の道が明らかにされることが最も重要であります。拙速に走らず、論議をオープンにするこの姿勢こそ、
税制改革の成否を決するものであると私は強く確信をいたします。
政府・与党におかれましても、今後の
改革論議に当たっては、従来の拙速かつ強引なやり方を謙虚に反省され、この
基本的な姿勢を堅持され今後に臨まれるよう強く要望いたしまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣中曽根康弘君
登壇〕