○上原康助君 私は、ただいま
趣旨説明がなされました
防衛関係法案に対し、
日本社会党・
護憲共同を代表して、中曽根
総理初め
関係大臣に質問いたします。
本論に入る前に、昨日のロッキード裁判控訴審判決について伺います。
公務員の最高
地位にある
総理大臣の犯罪として、田中元首相に対し再び実刑判決が下されました。元首相の盟友として、中曽根
総理はどのように受けとめておられるのか。抜本的な政治倫理確立のための
措置とあわせて明確な答弁を求めます。
初めに、私は、
我が国防衛力整備の
基本にかかわる「
防衛計画の大綱」と中期
防衛力整備計画の
関係についてただしてみたいと存じます。
総理、
政府は、一九七六年十月に、ポスト四次防として基盤的
防衛力構想という新しい
考え方を取り入れた「
防衛計画の大綱」を
閣議決定いたしました。そして今日までこの大綱に基づいて
防衛力の
整備がなされてきましたが、大綱の
基本ともいうべき基盤的
防衛力構想は完全になし崩しにされてきたと言わざるを得ません。
この構想の特徴は、脅威対応論の立場をはっきりと否定した
防衛戦略であります。ところが、中曽根
内閣は、一方で基盤的
防衛力構想を堅持すると言いながら、実質的には
米国の対ソ戦略を後押ししながら脅威対応論に立った
防衛力の
整備を進め、大綱にある正面装備の
整備目標などいわゆるうまみのある部分だけを中心に、
防衛力の
増強を図ってきたことは紛れもない事実であります。
本来、基盤的
防衛力構想、「
防衛計画の大綱」、
防衛費の一%枠は三位一体の
関係にあり、これらが
防衛戦略、
防衛政策、
防衛コストを形成して、
防衛力の肥大化を抑える歯どめの役割を果たすべきはずであったのであります。ところが、中曽根
内閣は、軍備
増強への足かせとなっていたこの三位一体の歯どめを取り払うためにあらゆる手段を駆使してきました。その結果が、一%を破棄したことであり、残りの基盤的
防衛力構想や「
防衛計画の大綱」をも公然と放棄することを画策したのであります。
そこで、次の
基本的な諸点をただしておきたい。
その一は、
我が国の
防衛力整備の
基本は何かということです。
政府は現在でも基盤的
防衛力構想を遵守しているのか。目標としている
防衛力の
整備は平和時の
防衛力以上のものを目指しているのか。
その二は、
政府はこれまで、大綱水準の達成が目標で、別表を含む大綱の見直しは考えないとの見解を繰り返し強調してきましたが、一九八五年九月
閣議決定された中期
防衛力整備計画は、質、量、予算面とも明らかに大綱を上回っております。したがって、大綱は実質上改定されたものと見るのが妥当ではないのか。それを否定するならば、そもそも達成すべき大綱水準とはいかなるものなのか。さらに、
政府は、中期防後も大綱は見直さないと確約できますか。
その三は、中期防で
防衛力整備のあり方を再び五年間の総額明示方式に切りかえた理由は何か。また、五年間の総額十八兆四千億円を確保するためには、
防衛費の平均伸び率は七・九%と試算されている。目下の財政経済状況下で、引き続きこの
防衛費の突出が可能か。総額の減額修正も考えておられるのか、それとも総額をさらに上回ると見ているのか。
その四は、中期防以降、すなわち一九九一年からの
防衛力整備のあり方をどうするのか。引き続き五年間の総額明示方式をとるのか、それとも単年度方式に戻すのか。
その五は、軍事費の定量的歯どめの必要性を認め、再びGNP一%枠を尊重していくお考えがあるのか。当面、次年度の
防衛予算をいかように考えておられるのか。大蔵省はいうところの六・七%要求を認めるおつもりなのか。
以上の諸点について、明確かつ具体的な答弁を
総理並びに
関係大臣に求めます。(
拍手)
次に、中期
防衛力整備計画と
防衛改革
委員会の研究についてお尋ねいたします。
現在、
防衛庁が
防衛改革
委員会のもとに
設置している洋上防空体制研究会及び陸上
防衛態勢研究会と中期防とはどのような
関係にあるのか、またこの二つの研究会はどのような研究を行なっておるのか、明らかにしていただきたい。いうところの三
自衛隊の基幹部隊の再編・統合等もやろうとしているのか。
また、大綱には洋上防空という概念はなかった。これは中期防に初めて登場した概念であります。
防衛庁は、この洋上防空確保のため、シーレーン
防衛の一層の拡大、そのためのP3Cの百機体制、OTHレーダー、早期警戒機の導入、要撃機の追加、エイジス
護衛艦など巨額を要する装備の調達を計画しております。これらの高価な攻撃的
兵器を次々と装備しようとすることは、大綱水準を大きく逸脱しているばかりか、専守
防衛の枠組みを踏み越え、
憲法をも全く否定した集団的武力行使への道を開く際限なき軍拡路線にほかなりません。
政府は、大綱と中期防のこれらの矛盾点をいかように
説明しようとするのか、
総理と
防衛庁長官の御見解を求めるものであります。
さて、中曽根
内閣誕生後、五年近い今日までの政治の足跡は、文字どおり
日米の軍事同盟を
強化しつつ、東側
陣営を敵対視し、
日本の軍事
強化に一段と磨きをかけようとするものでしかなかった。このことは、しばしば指摘されてきましたように、
国民生活と密接にかかわりのある予算は軒並み大幅に削減しながら、軍事費だけは実に三六%も異常なほど突出させてきたことを見ても明らかであります。
そして、中曽根
内閣の致命的軍拡志向は、
日本が軍事大国にならないあかしとして、三木
内閣が一九七六年に
決定し、自来十年にわたって堅持され
国民的合意となっていた
防衛費の対GNP一%枠をしゃにむに突破させたばかりか、宇宙への核軍拡をもたらす
米国の
SDI計画への参加、
米国内への
INFの新たな配備
提案、対米武器技術供与の緩和、軍事機密を盾にした国家秘密法の制定
促進など、
日本の目指すべき平和福祉国家にことごとく逆行して、
日本の軍事大国化と対米追随の諸政策をとってきたではありませんか。
また、今日見られる
米国の膨大な財政・貿易赤字は、
日米間の経済摩擦、貿易不均衡のみで生じたものではないのであります。これは積年の
米国自体の内政、財政、外交面の諸政策の失政にも大きく影響していることは明らかであります。
米国政府と議会は、円高・ドル安問題を初め、みずからのやるべきことを棚に上げて、目に余る
日本たたきを反復していることを断じて黙視するわけにはまいりません。(
拍手)
日本国民は、米側の言い分に耳を傾ける見識と冷静さを持つべきだが、議事堂前に報道
関係者を集めて、
日本の電化製品をたたき壊す愚劣な行動を容認したり、内政干渉がましいことをされても、なお米側の言い分のみを受認するほど愚直であってはならない。
安保体制やココム
違反を質にした
米国のこのような対日姿勢は、歴代自民党
政府、とりわけ中曽根
内閣の過分な対米約束と決して無
関係とは言えないのであります。(
拍手)次期
FSX問題など、軍事、経済面で次から次と対日要求を強めている米側の圧力にどう対処していくのか、
総理並びに外務大臣の決意のほどを伺うものであります。
次に、
予備自衛官の件についてお尋ねをいたします。
予備自衛官を千五百人も増員しなければならない理由をもっと
説明されたい。あわせて、陸上
防衛態勢研究会で
検討されている今後の
予備自衛官制度の
内容についても明らかにしていただきたい。
自衛官未経験者を採用することによって
予備自衛官の大幅増員をもくろんでいるようだが、その目的は何か。法的
措置を含めて明確な答弁を求めます。
次に、在沖米海兵隊のクラブ従業員の大量解雇問題について重ねてお尋ねいたします。
既に明らかなように、今回の解雇通告は、すべての在
日米軍
日本人従業員の雇用の根幹を揺るがす重大問題であり、雇用主である
政府の責任も極めて重いと言わなければなりません。しかも、去る一〇八
国会で、最近の
日米両国を取り巻く
経済情勢の変化、すなわち円高・ドル安によって、在
日米軍経費、なかんずく労務費が急激に逼迫している
事態にかんがみ、在
日米軍従業員の安定的な雇用の維持を図るためとして特別協定が承認され、新たに百六十五億円余の
日本側負担が追加されたやさきであります。したがって、今回の解雇通告は、特別協定の
基本理念と
政府間合意の信義をも踏みにじる暴挙だと断ぜざるを得ません。
解雇通告は遺憾であるとか、ウェッブ海軍長官に再
検討を求める程度で済ませる問題ではないのであります。なぜ白紙撤回を求めることができないのですか。解雇通告がなされてから既に一カ月にもなんなんとするが、
政府はこの理不尽な不当解雇をどのように撤回させようとしているのか、これまでの
経過と今後の
見通しについて、
総理並びに
関係大臣の明確な答弁を求めます。
加えて、
政府に何度でも訴えたいことは、復帰して十五年たっても、狭い沖縄に
日本全国の米軍専用基地の七五%が集中して存在し、核搭載機B52のたび重なる飛来、激しい爆音、米軍、
自衛隊の演習による相次ぐ
事件、事故等によって、沖縄県民は今なお軍事基地の重圧に痛めつけられております。
総理、一体沖縄は国策によっていつまで重い犠牲を背負っていかねばならないのですか。沖縄が
日米安保のくびきから解放されるときは来るのですか。せめて、危険きわまる軍事演習やB52の飛来をやめさせるとか、筋の通らない解雇を撤回させる程度のこともできないのですか。
総理の誠意ある答弁を求めるものです。
さて、一歩誤れば大惨事につながる米軍並びに
自衛隊による
事件、事故が青森県、沖縄県と相次いで起きております。特に沖縄本島周辺は、陸海空ともまさに戦場さながらの様相を呈しております。去る二十三日には、那覇の南東百三十キロの洋上で、マグロはえ縄漁船がミサイルのような爆発物の被害を受ける
事件が起きました。
自衛隊機と推定されるが、真相はいまだに解明されておりません。それだけでも県民に不安と恐怖を与えたのに、今度はまた、二十七日午後八時過ぎ、那覇の北西約百キロの海上で、マレーシア船籍の貨物船が、米海軍のFA18ホーネット戦闘爆撃機が発射したホーネット弾の被弾を受け、乗組員一人が重傷を負い、船は自力航行ができなくなる
事件が起きております。
総理、相次ぐこの二つの
事件は何を物語っているとお考えですか。沖縄の空と海もまだ返還されていないのです。沖縄近海の上空には、沖縄本島を取り巻くように大小十五の米軍訓練空域が設定され、当然のことながら、その影響は海域にも及んでおります。この米軍が訓練をする空域で一部を
航空自衛隊が共用している。したがって、
自衛隊が加わった分、沖縄の空と海の危険性は復帰前よりも増しているのです。
しかも、明らかに米軍か
自衛隊による
事件、事故であるにもかかわらず、因果
関係を否定したり隠ぺいしようとする言動があることは、これまた絶対に許せるものではありません。また、
自衛隊の
事件、事故である場合、制服がびほう策を講じようとする態度は、シビコンの面からも極めて重大と言わねばなりません。危険きわまりない軍事演習の即時中止と真相の解明、沖縄周辺の訓練空域の解放を強く求めるとともに、両
事件に対する
総理並びに
関係大臣の御見解を伺うものであります。
最後に、
総理は、去るベネチア・
サミットで
INFのアラスカへの新たな配備を
レーガン大統領に
提案し、そのタカ派ぶりを遺憾なく発揮してみせました。しかし、ゴルバチョフ・
ソ連書記長の新
提案によってその必要性はなくなりました。このことは、
総理のパリティ論理がいかにひとりよがりのものであったかを証明しております。
総理、今や反核・
軍縮は天の声であり、
世界人類の切実な要求となっております。被爆国
日本の首相として、
米国のみに肩入れすることなく、すべての
核兵器をこの地球上から廃絶することこそ国際外交舞台でやるべきことではないでしょうか。(
拍手)
米ソの二大核超大国の果てしない核軍拡競争によって
世界を核戦争の恐怖にさらし、自国の経済を破綻に導きつつあることを思うとき、軍備を抑制してきた
日本の選択がいかに賢明であったかがわかるし、我が党が果たしてきた役割が大きかったことを物語っております。先行き不安があるとはいえ、今こそ
日本はこの崇高な教訓を生かし、
憲法の理念に基づいた戦後民主主義体制を持続していくべきであります。
総理、お得意の
日本の国際的役割分担も
理解できないこともありませんが、西側、特に
米国との軍事同盟による役割分担でなしに、
ソ連、中国、朝鮮民主主義人民共和国など体制の異なる諸国とも共存共栄していく道こそ、国際国家
日本としての役割でなければなりません。(
拍手)
米ソの核廃絶、
軍縮への機運が高まりつつある今、
米ソの包括的
軍縮交渉を成功させ、
米ソ首脳会談が早期に実現することによって新たな国際平和秩序を確立することこそ、緊急にやるべき重要外交課題だと考えますが、
総理並びに外務大臣の御見解を求めて、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣中曽根康弘君
登壇〕