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稲葉(誠)
委員 私が常々疑問に思っているといいますか、率直に言うと困っている問題としては、近ごろ実務家なり学者なりいろいろな方の論文を読んでみますと、少年法とデュープロセスの問題がいろいろ問題になってくるわけですね。
私の疑問というのは、デュープロセスということを非常に強く言ってくるならば、結局そのことによって少年審判の構造というものも変わってきざるを得ないのじゃないか。そうなってきたときに、果たして少年の人権といいますか、それが本当に守られるのかどうかということが疑問なわけですね。といって、また逆に、デュープロセスというものを今のような形で、度外視はしていないにしても、ある程度違った形で進んでいくという形になってくると、やはりいろいろな
問題点は確かに出てくる。その
一つの接点というものをどこに求めたらいいかということが実際にいろいろ悩みといいますか、そういうふうになってきておるのですがね。
例えば
一つの問題として、まず観護措置で鑑別所へ入れますね。元来は、これは十四日ですね。ところが、十四日でやっているところはないので、あと十四日ですから二十八日収容するわけですね。そうすると、少年審判というのは、大体二十八日間の二十五日目ぐらいから始まるわけですよ。二十五日、二十六日、二十七日、二十八日、最後の四日間ぐらいでないと裁判官は日にちが入らないわけですよ。問題は、家裁の裁判官が少年審判もやっている、家事審判もやっている、家事調停もやっている。そうして、実際に関与するのは、私の経験では、もうどんな人でも最後の一週間というか、最後の三、四日ぐらいに日にちが入っちゃっていて、それでこの日にちは、二十八日間で終わりだから、とにかく動かせないから何とかこれに合わせてほしい、こういうふうなことになるわけですな。それで、時間となると大体三十分しかとれないということですわね。一時間とれる場合はない。三十分ぐらいでしょう。そこで、それは迅速性が必要だということになってくるのだけれども、最初の十四日間というのはどこから出てきたのですかね。これはわからないのですよ。今十四日間でやっていることはありませんわね。もう十四日延ばすのは当たり前な話になっちゃっているでしょう。
それで、鑑別所へ入って、鑑別所で鑑別所の報告を書きますね。これは矯正
局長も聞いておいてほしいのですけれども、大体鑑別所で
意見をつけるでしょう。刑事処分相当と
意見をつけると、家裁で大体ワンランク落として少年院送致ということになる。それから、鑑別所で少年院送致という
意見をつけると、大体家裁では保護観察ということになるのではなかろうかというような偏見があるのですよ。これは偏見ですよ、いいですか。鑑別所の方が
意見が強い。それで、家裁に来ると、率直に言えば
意見がやわらかくなるということになるのですね。
私の疑問は、どこから十四日というのが出てきたのか、なぜ鑑別所で
意見をつけなければならないのか、わからないですね。家庭
裁判所ではそれを一体どの程度参考にしているのか、これもよくわからない。私は、とにかくそれを
基準にして何かワンランク下げるのじゃないかと言って家裁の
調査官と話したら、いや、このごろはそんなことはありませんよと言っていたけれども、その言っていたことが正しいか正しくないか、これはわからないのですけれども、基本にさかのぼると、少年法をつくるときに、これは法制審議会にかけたのですか、かけなかったのですか、まずそれが
一つですな。そこら辺から始まってくるのですな。
それから、十四日というのは一体どこから出てきたのか、なぜ鑑別所で
意見をつけなければならないのか、その
意見がどの程度参考になっているのか、どうもよくわからない。どうも執行の段階で、収容された後で鑑別所の
意見というものは少年院では重視しているらしいのですよ。家裁は余り重視しないらしいんだな。私の方は偏見かもわからないですよ。そこら辺のところを、全体を含めてひとつお聞かせ願いたいと思うのですよ。
疑問を続けて言ってしまいますと、もう
一つは、急ぐために、今言ったように二十八日間の最後のころにみんな審判が入るわけです。そこで、例えば少年院送致になれば、これは抗告したって、もう執行
停止はないからそのまま打っちゃうわけでしょう。きょう行くとは言わぬけれども、あした行っちゃうんだというわけですね、少年院へ。そういうわけでしょう。そうすると、抗告したって何の意味もないわけですよ。確定していないのに、抗告しているのにどうして身柄が打っちゃうのか。これは一体憲法との
関係でどうなんですかね。三十一条との
関係でどういうふうになるのか、私はわからない。
それからもう
一つ、私も気がつかなかったのですが、抗告申し立て書を出しますね。抗告申し立て書を出すと、普通の裁判なら控訴申し立てで、不服だから控訴を申し立てますということですわな。そうすると、控訴趣意書は大体記録が届いてからですよ。届くまで普通一カ月かかりますね。届いてから大体一カ月ですね。難しい
事件はもっと長いのですけれども。ところが、抗告申し立ての場合は、抗告の理由をちゃんと書いてあれしていないと、これはだめだというので棄却か却下になっちゃう、こういうことらしいのですね。普通なら抗告を申し立てて、後からちゃんと理由書を出せばいいのじゃないかと思うのですが、これはそうじゃないのですね。どうもそこらのところ全体を含めて、デュープロセスの問題として、今の少年法は確かに問題はある。問題はあるけれども、デュープロセスをずっとつっついていったら、もっと強化していったら一体どうなるかとなると、また逆の立場も出てくるのじゃないかというのは私も疑問があるのですけれども、そこら辺全体を含めてどういうふうに考えたらいいのか、まず最高裁側からお答えを願いたい、こう思うのです。