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1987-08-26 第109回国会 衆議院 法務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年八月二十六日(水曜日)     午前十時六分開議 出席委員   委員長 大塚 雄司君    理事 井出 正一君 理事 今枝 敬雄君    理事 太田 誠一君 理事 熊川 次男君    理事 保岡 興治君 理事 坂上 富男君    理事 中村  巖君 理事 安倍 基雄君       赤城 宗徳君    稻葉  修君       佐藤 一郎君    稲葉 誠一君       小澤 克介君    橋本 文彦君       冬柴 鉄三君    安藤  巖君  出席国務大臣         法 務 大 臣 遠藤  要君  出席政府委員         法務大臣官房長 根來 泰周君         法務省民事局長 千種 秀夫君         法務省刑事局長 岡村 泰孝君         法務省矯正局長 敷田  稔君         法務省人権擁護         局長      高橋 欣一君         法務省入国管理         局長      小林 俊二君  委員外出席者         国立国会図書館         総務部長    藤田初太郎君         警察庁刑事局保         安部少年課長  平沢 勝栄君         警察庁刑事局保         安部保安課長  上野 治男君         外務大臣官房審         議官      赤尾 信敏君         外務省アジア局         南東アジア第一         課長      小野 正昭君         文部省初等中等         教育局中学校課         長       辻村 哲夫君         文部省初等中等         教育局職業教育         課長      菊川  治君         農林水産省農蚕         園芸局普及教育         課長      杉本 忠利君         通商産業省通商         政策局総務課長 関野 弘幹君         通商産業省機械         情報産業局電気         機器課長    横江 信義君         最高裁判所事務         総局刑事局長  吉丸  眞君         最高裁判所事務         総局家庭局長  早川 義郎君         法務委員会調査         室長      末永 秀夫君     ――――――――――――― 八月二十六日  外国人登録法の改正に関する陳情書  (第四九号  ) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  裁判所司法行政法務行政検察行政及び人  権擁護に関する件      ――――◇―――――
  2. 大塚雄司

    大塚委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所吉丸刑事局長早川家庭局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大塚雄司

    大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 大塚雄司

    大塚委員長 裁判所司法行政法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  5. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 きょうは一般質問なので、二、三の点について私が常々考えておりますというか、疑問に思っていることなどを中心にお聞きをしたいと思うのですが、一つは、刑法の百九十九条で人を死に至らしめた者はということで、死というものの定義について、法律そのものでは別に規定していないわけですね。日本の場合は心臓停止説ですか、呼吸停止説ですか、そういうのが通説になっていて、ずっとそれで来ているわけですけれども、死についていろいろな考え方があって、それを細かく規定している刑法典というものは現実には先進国の中であるわけですか。
  6. 岡村泰孝

    岡村政府委員 アメリカの一部の州などにおきましては、死の定義を置いているところがあるというふうに承知いたしております。
  7. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはどこのあれでどういうふうに定義をしておりますか。
  8. 岡村泰孝

    岡村政府委員 例えばアメリカのアイオワ州の刑法典によりますと、死とは次の基準により決定される状態をいう。医師意見により医療通常基準に基づいて自発的な呼吸及び循環機能が不可逆的に停止したと表明された者は死亡したものとみなされる。人工的な維持手段によりこれらの機能停止したとの決定ができない場合は、二名の医師意見により医療通常基準に基づいて自発的な脳機能が不可逆的に停止したと表明された者は死亡したものとみなされるというような規定が置かれておるところであります。
  9. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、日本の場合は従来ずっと、あれは正式には何と言ったらいいのですか、呼吸停止説というのですか、心臓停止説というのですか、どういうのが正式のあれになりますか。
  10. 岡村泰孝

    岡村政府委員 いわゆる心臓死というふうに言われているところでございまして、自発的な呼吸及び心臓鼓動不可逆的停止と瞳孔の散大という三つの徴候によって心臓死というふうな判定が行われているところであります。
  11. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 水戸地検高橋晄正さんたちだと思うのですが、告訴ですか告発ですか、された脳死に関連をする事件がありましたね。そのときの検事正は今は横浜の検事正になってしまっていますね。だから、これは随分前の話ですね。あるいはその人のもう一つ前かな、ちょっと忘れましたが、もう随分長い間かかって、新聞などによりますと、この前最高検にみんな集まって、水戸地検担当検事まで来て協議をしたというようなことが伝えられておったわけですが、これは率直に言うと、まずそういう事実があるかないか。そういう事実というのは、最高検にみんなが集まって協議した事実があるかないかということからお聞きしたい、こう思うのです。それは現在、一体どういうふうな点が問題で、どうなっているのですか。
  12. 岡村泰孝

    岡村政府委員 お尋ねの筑波大臓器移植告発事件と言われるものでありますが、昭和六十年の二月十五日に十七名の告発人から東京地検に対しまして、筑波大学附属病院医師三名を被告発人といたしまして、殺人死体損壊虚偽公文書作成によりまして告発が行われたわけであります。  ところで、本件につきましては、犯罪地及び被告発人の現在地がいずれも茨城県下であるというような事情を考慮いたしまして、昭和六十年の六月二十七日、水戸地検事件を移送いたしたところであります。  その後、昭和六十年の十二月九日に十五名の告発人から水戸地検に対しまして、筑波大学附属病院医師三名を被告発人といたしまして、臓器の提供を受けた者が死亡したということにつきまして、傷害致死罪によりまして追加告発がなされているのであります。  これらの事件につきましては、現在水戸地検において捜査中でございます。捜査の過程におきまして必要に応じて上級庁協議すると申しますか、そういうことはあり得るところでございます。
  13. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私は最初から水戸へ出したのかと思っていたが、そうでしたね、移送したわけですね。それで多少おくれたというか、あれだと思うのですが、それは最終的に、普通の場合は、主な事件についてですけれども、水戸地検ならば東京高検会議をしてそこで結論を出すので、最高検まで行って、そしてみんなが集まって協議をするということはちょっと考えられないわけですね。あるいは私の読み違いですか。最高検に集まったというのは、これは間違いですか、東京高検ですか、どっちですか。
  14. 岡村泰孝

    岡村政府委員 新聞記事をあえて否定するわけではございませんけれども、必要に応じて高検協議する、あるいは最高検協議するということは行われているところでございますので、特に本件についてのみ最高検で行ったというわけでもないと思っております。
  15. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 普通は、告発事件にしろ、特別な事件のまた特別な事件でなければ最高検へ来るということはないですね。東京高検へのあれでもなかなか普通はないので、その所属の地検なら地検だけで決めてしまうのが普通なわけですが、それはそれでいいのですが、一体どこが問題なんですか、問題は。
  16. 岡村泰孝

    岡村政府委員 端的に申し上げますと、死の判定時期と申しますか、いつをもって死というふうに認定するかという問題であろうかと思います。
  17. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうですね。そうすると、その死の判定時期については今世界的にどういう流れがあるのですか。通俗的には今言った心臓死とそれから脳死というふうによく世間で言われていますね。そうすると、その脳死というのは具体的にはどういうことをもって脳死というのですか。脳死という言葉法律的な用語なのか、医学的な用語なのか、通俗的な用語なのか、ちょっと私もよくわかりませんけれども、そこのところはどういうふうに理解をしたらよろしいのですか。
  18. 岡村泰孝

    岡村政府委員 脳死とは、抽象的に申し上げますと、脳機能が不可逆的に喪失された状態をいうというのが一般的な解釈であろうかと思います。ただ、すべての脳の機能の不可逆的な停止をいうのか、あるいは重要部分であります脳幹機能不可逆的停止をいうのかというような点につきましては、必ずしも意見が一致しているわけではないように承知いたしております。
  19. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、その脳死ということあるいは心臓死ということによって、どっちをとるかによって日本法体系の中ではどこに影響してくるわけですか。民法に影響してくる、刑法に影響してくる、その他もちろんありますけれども、民法では相続の問題その他出てくると思うのですが、それについて、今言ったようにどこにどういうふうに影響してくるかということが第一点ですね。  それから現実に、この告発された事件というものは現在どういうふうになって、いつころどういうふうになる見込みなんですか。
  20. 岡村泰孝

    岡村政府委員 いつ死亡したかということにつきましては、ただいま御指摘のありましたように相続の問題にも関係があろうかと思います。また、殺人という刑法上の問題にいたしましても、いつ死亡したか、殺人既遂になるのかどうか、既遂時期がいつかというような点も含めまして、いろいろ法律の各般の分野にまたがる問題であるわけでございます。  また第二の、告発事件捜査状況でございますが、現在捜査を継続しておるところでございまして、今のところ、いつごろ処理できるかという具体的な見通しは申し上げかねるところであります。
  21. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 常識的な質問なんですが、脳死をとった場合と心臓死をとった場合とでは、死の時期というのはどちらの方が時間的に早くなるというふうに考えられるのですか。場合によって違うのですか。
  22. 岡村泰孝

    岡村政府委員 これは通常脳死の方が死の時期としては早いということになると思います。
  23. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、脳死という考え方現実にはどこから出てきたのですか。日本の場合ですよ。外国の場合は別として、日本ではどこからだれが言い出してきた——だれが言い出してきたというと言葉が悪いかもわからぬけれども、どこから出てきたのですかね。
  24. 岡村泰孝

    岡村政府委員 従来でございますと、脳機能が不可逆的に喪失される、いわば脳死という状態があらわれますと、その後間もなく自発的な呼吸及び心臓鼓動が不可逆的に停止するに至っていたわけでございます。ところが、医療技術が進歩いたしまして、脳死状態になった者に対しまして人工呼吸器などを用いまして酸素や栄養を供給することが可能になったわけでございます。そうすることによりまして、脳死状態ではありますけれども、一定期間心臓を活動させておくということが可能となったわけであります。そういうような点で脳死という問題が一つは起きてきたということが言えるのでございます。
  25. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この前当委員会でヨーロッパや何かに視察に行ったわけですが、そのときに参事官が同行されているいろ説明といいますか、当たられたわけですが、その方は法務省の中で脳死の問題の担当なんだ、それで関係省庁が八つぐらいのようにちょっと聞きましたけれども、それが集まっていろいろ協議しなければならないので、この問題はなかなか大変な問題だ、こういうお話をしていたわけですが、それは個人的にしたというよりも、そのことは一般的に常識になっていますね。そうすると、この脳死の問題で法務省としてとっている態度といいますか、それはどういうものであって、各省庁にわたるというのは、わたるからどうなって、それを法務省としてはどういうふうに、リードというと言葉は悪いかもわかりませんが、今後この問題に対処していくことになるのですか。
  26. 岡村泰孝

    岡村政府委員 この脳死問題につきましては、死の時期をいつと判定するかということにつきましては、国民生命観とか倫理観などとも深くかかわってくる問題であるわけでございます。また、死の判定時期につきましては、多くの法律分野にも影響を及ぼすところであります。しかしながら、基本的にはやはり死の判定時期といいますものは医学の問題というふうに考えられるわけであります。したがいまして、まず医学分野で十分な議論が尽くされて、そこで大方の合意ができ、これを踏まえましてまたいろいろな角度から議論が行われれば、おのずと国民考え方も決まってくるもののように思われるわけであります。  法務省といたしましては、こういった各界の議論動向などを見守りながら、いろいろな角度から検討を続けなければいけないというふうに考えておるところでございます。また、先ほど申し上げましたように、死の判定時期は法律の広い分野にかかわってくる問題でございまして、法務省だけの問題でもございませんので、関係する省庁が集まって今いろいろ勉強をしていこうということもやっておるところであります。
  27. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 関係省庁が集まって勉強するということですが、それは一体何を勉強するのですか。ちょっとよくわからないのですが、何を勉強するのですかね。
  28. 岡村泰孝

    岡村政府委員 先ほど申し上げましたように、基本的には医学の問題でございます。医学界におきましても、いろいろ議論をしておられるところであります。中間的な報告なり意見を述べておられるところもあると聞いておるわけでございます。こういった動きについて理解を深めるということが一つあるわけでございます。  またもう一つは、先ほど申し上げましたように、関係省庁がいろいろ死の時期によりまして影響する問題を抱えているわけでございまして、それがどの辺まで広がってくる問題であろうかというようなことも踏まえていろいろ勉強していこうということであります。
  29. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 理解を深めていろいろ勉強して、その結果法務省としてはどうするのですか。
  30. 岡村泰孝

    岡村政府委員 これは、先ほど申し上げましたように、基本的には医学の問題であるという点があるわけでございます。したがいまして、関係省庁が集まりまして、そこで死の時期をいつにするかということを関係省庁だけで結論を出そうというわけではないわけでございます。やはり医学界動向国民合意と申しますか、国民考え方がどこにあるか、こういった問題を踏まえて死の時期というものを考えていかなければいけない問題であるわけであります。
  31. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 死の時期を考えていかなければいけない、そうすると、それは立法を必要とするということなんですか。じゃ、死はこういうふうに、例えば脳死日本の国としてとるならとるということは一体どこでどうやって決めるのですかね。一つ立法がありますわね。それは立法になじまないのだ、こういうことになってくれば、どこでどういうふうにするのか。あるいは裁判所の中で決めなければならぬか。裁判所の中で決めるといったって、具体的な事件があって初めて裁判所の中で決められるので、具体的な事件がないのに裁判所の方で決めるわけにいきませんわね。争点になってきて初めて結論が出てくることですわね。  じゃ、具体的に脳死なら脳死という方向に進もうということになってきて、理解を深め勉強して、それが国民の感情でもあるし、それが医学的にも正しいということになってきたときに、立法を必要とするのですか。あるいは立法しないで、そういうふうな形で、どういうふうにするのか知りませんが、専念するというわけにもいかぬでしょうけれども、自然にそういうふうになってきてしまうのでしょうかね。どういうふうになるのですか。
  32. 岡村泰孝

    岡村政府委員 世界の動きを見ましても、法律でもって死の時期を定めている国と、脳死をもって死と認めるという扱いにはしているけれどもそれは法律を設けるには至っていない国、すなわち法律を設ける必要はないという判断をいたしている国とに分かれるわけでございます。したがいまして、脳死問題につきましては、脳死をもって死と認定するかどうかということが一つの問題でありますし、また、仮にそれが認定されるといたしましても、法律をもって規定するかどうかということも一つの問題であるわけでございます。その辺を含めて、いろいろ検討しなければいけない問題であるというふうに考えておるわけであります。
  33. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私はもう一つ疑問に思いますのは、このごろよく、例えば尊厳死だとかあるいは安楽死とか、こう言われますね。そうすると、尊厳死という考え方安楽死という考え方は一体どういう考え方なのか、両者は一体どういう関係にあるのか、安楽死の中の一つの形として尊厳死というものが考えられるのか、あるいは全然関係がない、別個の観点からのものなのかとか、いろいろな見方がありますわね。そこら辺はどういうふうに理解をしたらいいのでしょうかね。
  34. 岡村泰孝

    岡村政府委員 安楽死とは、死に直面いたしまして耐えがたい苦痛にあえいでいる人に、その嘱託あるいは承諾のもとに医学的処置などを施して楽に死亡させるということであるというふうに言われておるところであります。  ところで、尊厳死といいますのは、本人の生前の意思などに基づきまして、死亡への末期症状に至ったような状態あるいは植物人間となりまして生命維持装置などによらなければ命を延ばしていく道がないような場合に、そのような処置を施さないか、あるいはこれを取りやめて自然な死につかせるということが尊厳死であるというふうに言われているわけであります。したがいまして、両者はやはり違った考え方であろうというふうに思われます。
  35. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 安楽死というのは日本じゃ、あれでしょう、森鴎外先生が初めてやったわけでもないでしょうけれども、「高瀬舟」の中に出てくるわけですね。尊厳死というのはアメリカの中で近ごろ出てきた考え方ですわね。日本の場合に尊厳死というものを仮に認めたという場合、いろいろな状況があると思うのですけれども、そうなってくると、それはどういうふうになるのですかね。違法性阻却されるというのか責任性阻却されるというのか、どういうふうになるのですかね。ちょっと私わからないものですから、どういうふうに理解したらいいのでしょうか。
  36. 岡村泰孝

    岡村政府委員 この問題につきましては、医療行為のあり方といたしまして、社会通念上許される限界というものとも関連してくる問題であろうかと思うわけでございます。したがいまして、個別の案件に応じまして判断されるべき事柄であろうかと思うのであります。
  37. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは個別の案件において判断されるのですが、その場合は、僕もよくわからないのですけれども、違法性阻却ということになるのですか。あるいは責任性阻却ということになるのですか。これはどういうふうになるのですか、ちょっと僕もそこら辺のところはよくわからないのですけれども。
  38. 岡村泰孝

    岡村政府委員 やはりこれは個別の案件に応じて慎重に判断されなければいけない事柄でございまして、一般的にはちょっと申し上げがたいところであります。
  39. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ゼミナールならばここで、尊厳死の場合に、じゃ違法性阻却の場合はどういう場合だとか責任性阻却の場合はどういう場合だとかということを普通聞くのですけれども、それはあれしますが……。  そこで、今の問題の中で次から次へと、殊にアメリカなどを中心としていろいろな新しい考え方が出てくるわけですね。だから、法務省だけではないのですけれども、やはり絶えずよく勉強していっていろいろ対処していただきたい、こういうように思います。  国会の中でもそういう議員連盟をつくりましていろいろ勉強会はやってはいるのですけれども、いろいろ問題があると思うのですが、今の筑波大学関係の被告発事件ですね、どうもよくわからない。というのは、どうしてそんなに長くかかるのかわからないのですがね。大体のめどはわかりませんか、いつごろになるだろうかということは。
  40. 岡村泰孝

    岡村政府委員 先ほど来から申し上げておりますように、死の時期をいつと認定するかといいますことは非常に難しい問題であるわけでございます。そういったものをいろいろ検討しなければならないわけでございまして、そういう意味において、すぐに処分という見通しは恐らくないのではなかろうかというふうに思っております。
  41. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 では、別のことについてお聞きをしたいと思うのですが、いずれ外国人登録法の審議があると思いますので、その中でまた質問し、詳細なお答えは願うことになると思います。  昭和六十二年の、これは六月となっているのですが、あるいは七月に入ったのかもわかりませんが、東京地検八王子支部に対して、告訴人小平市の朴信泳被告訴人警視庁小平警察署内小平警察署警察官二名、いずれも氏名不詳となっておりまして、これは代理人がずっとついておるのですが、告訴の趣旨は、「被告人らの」——被告人と書いてあるが、被告訴人ということかな、「この後記告訴事実記載の行為は、特別公務員職権濫用罪に該当するので早急に捜査のうえ、厳重に処罰されたい。」  告訴事実が、   被告訴人らは、警視庁小平警察署司法警察員として、東京小平市小川町二丁目一二六五番地一号の警視庁小平警察署に勤務しているものであるが、共謀の上、告訴人に対する外国人登録法違反外国人登録証明書携帯義務違反)を捜査することに仮装して同人逮捕しようと企て、昭和六二年四月二二日午前一時ころ、東京小平市大沼町一丁目一九〇番地先路上において、告訴人に対し職務質問を開始した上、同人外国人登録証を所持していないことを聞知するや、現行犯逮捕必要性があきらかにないにもかかわらず、同人外国人登録法違反が成立するとして同罪容疑で、同人の両腕を後手にしでねじ上げた上、約三〇分間以上にわたり同人の顔面を路上に押しつける暴行を加える等して逮捕し、もって、その職権を濫用して同人逮捕したものである。  罪名及び罰条「特別公務員職権濫用罪 刑法第一九四条」、事実経過は、事件の発端、それから被告訴人らの逮捕暴行小平署への連行、指紋採取等の強要、釈放、告訴人心境等ずっと書いてあって、それから法律上の問題点として、「一、本件逮捕は、特別公務員職権濫用罪刑法第一九四条)に該当する。」それから「二、逮捕に引続きなされた一連の行為」は、「逮捕が違法である以上全て違法である。」というようなこと、それからずっとこう書いてあり、「登録証の常時携帯及び提示義務の違憲、違法性」等ずっとこう書いてあるわけなんです。  この告訴はどういうふうにして受理されておって、現在までどういうふうに進行しておるか、こういうことについて御説明願いたいと思います。
  42. 岡村泰孝

    岡村政府委員 御指摘の内容の告訴につきましては、本年七月一日に東京地検八王子支部告訴を受理いたしまして、現在八王子支部捜査中であります。
  43. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この告訴人朴信泳という人も、何か事件として立件はされたのですね。「外国人登録法違反として送検され、御庁に係属中である。」となっていますが、これはどうなったのですか。
  44. 岡村泰孝

    岡村政府委員 御指摘の件につきましても事件の受理をいたしまして、昭和六十二年五月二十八日に起訴猶予の処分をいたしております。
  45. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは外登法の審議の中でも、この問題についてもちろん詳しく聞きますし、それから一般的に不携帯の場合の処分についてもお聞きするわけなんですが、大体最初の段階ではほとんど起訴猶予になっておるというようなのが通例であるように私ども聞いておるのですが、早急にこの事実関係をお調べ願いたいということが第一点。  それからここに「法律上の問題点」というようなことでずっとこう書いてあるわけですね。こういう点についても、これは十分答えていただきたい。答えていただきたいという意味は、当委員会で答えるということももちろんありますけれども、結論を出すときにこれは十分説明をしていただきたいというか何というか、明らかにしていただきたい、こういうふうに思うわけです。  そこで、質問一つは、従来はこの不起訴処分というのは、絶対にその内容というものは明らかにしませんわね。それから、交通事故とかその他の事件の場合に不起訴の書類を取り寄せても、これは出さないですね。不起訴のだから出さないですね。このごろは不起訴の理由すら明らかにしない場合もなきにしもあらずかな、そういうのがありますね。ところが、事件によっては不起訴にした場合や何かよく説明しているところがありますね。それはどういうわけなんですか。元来不起訴は秘密なんだというのでしょう。それをどうして外部に明らかにして説明するのですか。
  46. 岡村泰孝

    岡村政府委員 これは公益の必要上と申しますか、そういった点を考慮いたしまして、相当と認められる範囲で、極めて概略ではありますけれども、簡単にでも不起訴の理由を説明する場合があるわけであります。
  47. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、公益上の理由があるというのなら、不起訴の書類でも、裁判で交通事故その地やっているところはありますね、必要なときに取り寄せを申請したって絶対出さないでしょう。不起訴だから秘密だからだめだと言って出さないのじゃないですか。実況見分調書なんかは出す場合なきにしもあらずかもわからぬけれども、ほとんど原則として出さないわけでしょう。それは、不起訴の場合でもそれを公開して説明する場合は、根拠は条文でいうとどこにありますか。あるいは規則が。
  48. 岡村泰孝

    岡村政府委員 刑事訴訟法の四十七条に「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない。」という、この規定があるわけでございます。捜査記録、不起訴記録もまたこの訴訟に関する書類というふうに解されますので、不起訴記録につきましては、この四十七条に従いまして原則といたしましてはもう公にはいたしていないところでございます。ただ、交通事故に関しまする実況見分調書等いわゆる代替性のないものにつきましては、このただし書きの規定に基づきましてこれを一部お見せする場合もあり得るところであります。
  49. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この告訴事件については、とにかく詳細に調べていただきたい。それは、八王子支部は大きな支部ですから検事も十四、五人おられるのだと思いますが、いろいろあるのでしょうけれども、調べて厳正に処理をしてもらいたいということですね。これは詳しい点は、法律上の問題点を含めまして外登法の審議の中で質問をさせていただきたい、こういうふうに思います。  そこで、もう一つの問題は、近ごろ少年犯罪全体がどういう傾向にあるか。一時非常に低年齢化したとか、それから横ばいであるとか、いろいろな動きがあったわけですが、近ごろはいわゆる無職の少年の人が非常に犯罪としてふえているといいますか、そういうふうなことが時々言われておりますので、最初に、少年犯罪全体が現在どういうような傾向にあるか、こういうふうなことを御説明を願って、それからその法律的な問題点、二、三に入りたい、こういうふうに思います。
  50. 岡村泰孝

    岡村政府委員 一般的なことを申し上げますと、最近の少年犯罪は戦後第三のピーク期にあると言われておりますように、数的に見まして高い水準を維持しているところであります。  その特徴的な傾向といたしましては、一つは、非行の低年齢化の傾向が続いているということが言えるわけであります。二つ目は、両親もそろい、経済的には問題のない中流家庭の少年による犯罪の割合が増加しているということが言えます。三つ目に、万引きとか自転車などの乗り逃げなど遊び的な要素の強い犯罪がかなりの割合を占めておるということが言えるところであります。四つ目に、覚せい剤等の薬物乱用事犯が引き続き多発しておるということが言えるところであります。五つ目といたしましては、いわゆるいじめに関連する事犯が相当数発生しておるというようなことが言えるところであります。
  51. 早川義郎

    早川最高裁判所長官代理者 家庭裁判所で受理したのを非行少年で見ますと、昭和五十年には無職少年というのは一万一千三百七十八人であったものが昭和六十年には三万二千四百十人と、三倍近い増加になっております。パーセンテージで申しますと、昭和五十年には非行少年全体の七・八%であったものが現在では一三・二%、こういう数字になっております。
  52. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは大臣、失礼な言い方かもわかりませんけれども、あなたの極めて常識的なあれで結構なんですけれども、日本の場合ほかの国と比べてどうなのかということ、これは政府委員の方から後でまた御説明願いたい、こう思うのですが、どうしてこういうふうにふえてきているのか。殊に、今のお話でもありますように、今無職の人というのがふえていますね。これはどこに一体原因があるのだろうか、それが一つですね。それに対してどういうふうにしたらいいのだろうかということですね。これは極めて常識的な形でどういうふうにしたらいいかということをひとつお答えをお願いしたいと思います。
  53. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 この問題については法務大臣としてお答えするまでにはまだ私の勉強が足りないのでございますけれども、今ここで先生のお尋ねに対して家庭裁判所の数字や何かを承知いたして、一つ日本国内の生活環境と申しましょうか、そういうふうな点や、先生御承知のように薬物乱用事件の問題とか、そういうふうな点が少年犯罪を非常に増加の傾向に陥れているというような点も考えると、これは警察、法務当局で取り締まるだけの犯罪防止ではとても問題にならぬ、こう思うわけであります。これは文部省を初め厚生省、総務庁とか各省庁一体になって、日本国として今高齢化社会を迎えようとしているときに少年犯罪が増加するということになると将来の日本ということに非常に懸念を感じますので、本気になって対策を講じていかなければならぬな、今この場において私の思いつきでございますが、そういうような点がひしひしと感じられるという点でございます。
  54. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 矯正局長、あなたは少年院が所管ですね。私も時々少年院へ行ったりしておるのですが、今少年院に入っている人、収容少年ですね、これは全体としてどのくらいいて、初等、中等、特少とかいろいろありますけれども、そういう中で職業というか、そういうようなものはどういう人が入っていて、今少年院の抱えておる問題というのはどういう点にあるかということをひとつ御説明願いたい、こう思うのです。
  55. 敷田稔

    ○敷田政府委員 まず、御指摘のように少年院には初等少年院、中等少年院、特別少年院、医療少年院と四つございますが、少年院自体の新収容者の比率から見ますと、幸いに若干人数は減ってきております。  その中でまずどのような学歴を持った者が入っているのかということから見ますと、中学校の卒業生が圧倒的で、五九・五%でございます。これは昭和六十一年の統計でございますが、例えば五十六年の四九%から徐々にふえてきておりますので、中学校卒業生がふえてきているということ、それから高校中退生が二四・五%でございまして、これは例えば昭和五十六年は三四%でございましたのがだんだん減ってきまして二四・五%にきているということ、したがって、学歴的には低下してきているということが言えようかと存じます。  それから、先生御指摘の職業を持っているか職業を持っていないかという問題につきましては、無職少年の比率は少年院の場合、昭和六十一年で五八・九%でございます。五十五年はこれが五三%でございますので、やはりこの比率も少しずつふえてきているということが言えようかと思います。これが有職、無職あるいは学歴から見ました現在の少年院の動向でございます。  これにつきまして、問題点を何を考えているのかというお尋ねでございますが、私どもといたしましては、この少年院の出院者がどの程度の再犯を犯しているのかということ、その再犯率によって私どもの処遇のあり方が果たしてよかったのか、改善すべき点はどこにあったのかということの反省の資料とするわけでございますが、統計的には常に少年院の再犯率を把握できるという状態ではございませんで、特別の調査をいたしませんと把握できないわけでございます。法務省にございます法務総合研究所と矯正局と共同しまして時折それに対する調査をいたしておりまして、最近の調査は、昭和五十五年中に退院あるいは仮退院をいたしました少年につきまして四千人を選びまして、その後の五年間にどの程度の再犯率を犯しているかという点を調べたわけでございます。これによりますと、逮捕だけされているというのが三五%、それから施設つまり少年院あるいは刑務所に収容されているというのが三三%、それから五年間に全然再犯を犯していないというのが三二%、こういう数字となっております。  これを外国と比較いたしましてどうであるかということでございますが、少年院自体がどの程度の者を入れるのか、つまり犯罪性のどの程度進んだ者、あるいは年齢的に、日本の場合御承知のように二十歳未満を入れておりますが、外国の場合に十八歳未満あるいは十三歳、十四歳でありましても凶悪犯を犯しました場合は成人と同様の処遇をしているところがございますので、その点から見ますと、比較は困難でございますが、私自身の印象からいたしますと、日本の少年院は比較的うまくいっているのではないかと思われます。しかしそれにしましても、施設的に、例えば単独室が少ないとか、あるいは職業補導に従事いたします技官の数が少ないとか、あるいは職員数と収容者との比率を比較しますと、やはり日本の方がまだ職員数の比率が少ないとかいうような点は指摘できると思います。
  56. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私が常々疑問に思っているといいますか、率直に言うと困っている問題としては、近ごろ実務家なり学者なりいろいろな方の論文を読んでみますと、少年法とデュープロセスの問題がいろいろ問題になってくるわけですね。  私の疑問というのは、デュープロセスということを非常に強く言ってくるならば、結局そのことによって少年審判の構造というものも変わってきざるを得ないのじゃないか。そうなってきたときに、果たして少年の人権といいますか、それが本当に守られるのかどうかということが疑問なわけですね。といって、また逆に、デュープロセスというものを今のような形で、度外視はしていないにしても、ある程度違った形で進んでいくという形になってくると、やはりいろいろな問題点は確かに出てくる。その一つの接点というものをどこに求めたらいいかということが実際にいろいろ悩みといいますか、そういうふうになってきておるのですがね。  例えば一つの問題として、まず観護措置で鑑別所へ入れますね。元来は、これは十四日ですね。ところが、十四日でやっているところはないので、あと十四日ですから二十八日収容するわけですね。そうすると、少年審判というのは、大体二十八日間の二十五日目ぐらいから始まるわけですよ。二十五日、二十六日、二十七日、二十八日、最後の四日間ぐらいでないと裁判官は日にちが入らないわけですよ。問題は、家裁の裁判官が少年審判もやっている、家事審判もやっている、家事調停もやっている。そうして、実際に関与するのは、私の経験では、もうどんな人でも最後の一週間というか、最後の三、四日ぐらいに日にちが入っちゃっていて、それでこの日にちは、二十八日間で終わりだから、とにかく動かせないから何とかこれに合わせてほしい、こういうふうなことになるわけですな。それで、時間となると大体三十分しかとれないということですわね。一時間とれる場合はない。三十分ぐらいでしょう。そこで、それは迅速性が必要だということになってくるのだけれども、最初の十四日間というのはどこから出てきたのですかね。これはわからないのですよ。今十四日間でやっていることはありませんわね。もう十四日延ばすのは当たり前な話になっちゃっているでしょう。  それで、鑑別所へ入って、鑑別所で鑑別所の報告を書きますね。これは矯正局長も聞いておいてほしいのですけれども、大体鑑別所で意見をつけるでしょう。刑事処分相当と意見をつけると、家裁で大体ワンランク落として少年院送致ということになる。それから、鑑別所で少年院送致という意見をつけると、大体家裁では保護観察ということになるのではなかろうかというような偏見があるのですよ。これは偏見ですよ、いいですか。鑑別所の方が意見が強い。それで、家裁に来ると、率直に言えば意見がやわらかくなるということになるのですね。  私の疑問は、どこから十四日というのが出てきたのか、なぜ鑑別所で意見をつけなければならないのか、わからないですね。家庭裁判所ではそれを一体どの程度参考にしているのか、これもよくわからない。私は、とにかくそれを基準にして何かワンランク下げるのじゃないかと言って家裁の調査官と話したら、いや、このごろはそんなことはありませんよと言っていたけれども、その言っていたことが正しいか正しくないか、これはわからないのですけれども、基本にさかのぼると、少年法をつくるときに、これは法制審議会にかけたのですか、かけなかったのですか、まずそれが一つですな。そこら辺から始まってくるのですな。  それから、十四日というのは一体どこから出てきたのか、なぜ鑑別所で意見をつけなければならないのか、その意見がどの程度参考になっているのか、どうもよくわからない。どうも執行の段階で、収容された後で鑑別所の意見というものは少年院では重視しているらしいのですよ。家裁は余り重視しないらしいんだな。私の方は偏見かもわからないですよ。そこら辺のところを、全体を含めてひとつお聞かせ願いたいと思うのですよ。  疑問を続けて言ってしまいますと、もう一つは、急ぐために、今言ったように二十八日間の最後のころにみんな審判が入るわけです。そこで、例えば少年院送致になれば、これは抗告したって、もう執行停止はないからそのまま打っちゃうわけでしょう。きょう行くとは言わぬけれども、あした行っちゃうんだというわけですね、少年院へ。そういうわけでしょう。そうすると、抗告したって何の意味もないわけですよ。確定していないのに、抗告しているのにどうして身柄が打っちゃうのか。これは一体憲法との関係でどうなんですかね。三十一条との関係でどういうふうになるのか、私はわからない。  それからもう一つ、私も気がつかなかったのですが、抗告申し立て書を出しますね。抗告申し立て書を出すと、普通の裁判なら控訴申し立てで、不服だから控訴を申し立てますということですわな。そうすると、控訴趣意書は大体記録が届いてからですよ。届くまで普通一カ月かかりますね。届いてから大体一カ月ですね。難しい事件はもっと長いのですけれども。ところが、抗告申し立ての場合は、抗告の理由をちゃんと書いてあれしていないと、これはだめだというので棄却か却下になっちゃう、こういうことらしいのですね。普通なら抗告を申し立てて、後からちゃんと理由書を出せばいいのじゃないかと思うのですが、これはそうじゃないのですね。どうもそこらのところ全体を含めて、デュープロセスの問題として、今の少年法は確かに問題はある。問題はあるけれども、デュープロセスをずっとつっついていったら、もっと強化していったら一体どうなるかとなると、また逆の立場も出てくるのじゃないかというのは私も疑問があるのですけれども、そこら辺全体を含めてどういうふうに考えたらいいのか、まず最高裁側からお答えを願いたい、こう思うのです。
  57. 早川義郎

    早川最高裁判所長官代理者 問題点は非常に多岐にわたりますので、全部お答えできるかどうかわかりませんが、私どもとしても、少年審判の教育的な機能と司法的な機能の調和ということについてはいろいろと考えておりますが、やはり結論と申せば、両方調和するように運用上工夫をしていくしかないと考えております。  最初の、少年鑑別所送致の期間が原則は十四日間、二週間で、また更新によって四週間まで認められる、それで裁判の方はぎりぎりに入るという、現在大体三週間過ぎたあたり、試験観察等の関係もございますので若干のゆとりを残して、三週間過ぎて二十四、五日ぐらいの間にやっているのが多いと思います。これは、一つには裁判官が多忙ということもありますが、もう一つには、少年鑑別所における鑑別の必要からどうしても三週間程度は必要である、そういうことがあります。また、調査官の方でもいろいろと少年の環境面、交友関係、学校関係等々にわたって社会調査をしなければいかぬ、そのためにどうしても三週間程度の期間は必要であるということで、少年法は本来は二週間を原則としていますが、原則と例外が逆転して、更新が通常的な形になっている。ただ、特に年少少年や何かで、長期にわたって身柄観護を続けることが相当でないという者については早目にやる、そういうケースも、ございます。  なぜ十四日間という期限が設けられたのか、これは私もつまびらかにいたしませんが、一つには、未決勾留が十日間、あの辺が念頭にあったのではないかと思われますし、それからもう一つは、少年鑑別所に送致する場合には鑑別請求をあわせてするということで、鑑別の必要からそういう日数が出てきたのだろうと思われるわけでございます。  私どもとしましては、少年審判というのは対立的な当事者構造ではなくて、少年の健全な育成に関心を持つ保護関係者等々が寄り集まって、いわば一種のケースカンファレンス、そういった形で審判を和やかに進めていきたい、そういうことで保護関係者の意見というものはなるべく聞いて、それを審判に反映させていきたい。そういうことで、心身の鑑別をつかさどる少年鑑別所の意見というものは非常に貴重な意見として私どもとしても尊重し、それを十分参酌しながらやっているわけでございます。現に社会調査の過程におきましても、少年鑑別所の技官と調査官とはかなり密接に連絡をとり合って、意見を交換などもしておるわけです。そういうことで、少年鑑別所の意見がきつくて、家裁の意見が、処分がワンランク落ちるという、そういったことは現在そう際立った形ではないのではないかというふうに考えております。  あと、抗告の問題になりますが、確かに刑事の場合と異なりまして、少年審判の場合には抗告申し立て書にあわせて抗告の理由も簡潔に明示しなければいけない、こうなっております。少年審判の場合には必ずしも原稿に基づいて処分を言い渡す必要がございませんで、むしろ審判を開いて少年の弁解を聞いた上で、その後で特に非行事実に争いがないような場合には引き続いて保護処分の言い渡しあるいはその他の処分の言い渡しをする、そういうことになりますので、決定言い渡し時には決定書が作成されてない場合が多いわけでございます。ただし、抗告期間というものは言い渡しから進行いたすわけでございます。二週間ですから比較的期間は短いのですが、少年審判規則によりまして、保護処分の言い渡しをするときには趣旨を十分説明し、また、その理由をわかりやすく理解させなければならない、こうなっておりますので、それを聞けば大体不満のある者は抗告できるのではないか。しかも、明示しろとはいいましても、そう事詳細に書けということではないわけで、非行事実をやっていないとか処分が重いとか、それをある程度具体的に書けば抗告理由としては適法ということになりますので、それほどの負担というものを当事者には与えていないのではないか、このように考えております。  あと、話が前後いたしますが、少年法制定当時の状況を私どもはそう詳しく勉強したわけではございませんが、法制審議会にはかかっていないと思っております。
  58. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私の疑問は、抗告を申し立てるということは、確定してないのですよ。確定してないでしょう。確定してないのに連れていっちゃうわけですよ、少年院へ。これはやはり収容なんでしょう。収容となると、これは憲法三十一条との関係で——それは法律に基づいているのだから、少年法に基づいてやるから、あるいは家事審判法に基づいて収容するのだから、違反ではないと言えるかもわかりませんけれども、確定していないのに収容しちゃうというのはおかしいじゃないか、こう思うのです。これは迅速にしなければいけないということかもわかりませんけれども、確定するまでは入れられないということになると相当長くかかるかもわからぬということになるのでしょうけれども、どうもそこら辺のところはちょっと納得できない感じがするのですね。  それからもう一つは、少年が、いやそういう事実はやってないのだと言って争っているときに、場合によっては争ってなくても、その事実は仮になかったとしても、虞犯だということでそれは処理でまるということになってくると、虞犯というのは犯罪を犯すおそれがあるということでしょう。犯罪を犯すおそれがあるからといって公権力で収容しちゃうということは、これは保安処分じやないですか。一種の保安処分ではなくて、保安処分そのものではないかと思うのですがね。そうなってくると、これは問題なんじゃないかと私は思うのですがね。どうもよくわからないですね。例えば本人が実はやってないのだと言ったときに、やっていなくたって、いや非行があるんだ、やっていなくたって、そこに捕まってきた、疑われていること自身、それに近接する事柄が非行なんだとか、あるいはそのこと自身が虞犯になるんだというのでやられたのじゃ、これはたまったものじゃないと私は思うのですがね。だから、そういう点、一体どうなるのか。  それから、よく再審ということを言うのですが、再審ということが少年法で当たるか当たらないか、私はちょっと疑問に思うのですが、いずれにしても問題は確かにあると思いますけれども、警察なり何なりが送ってきた記録は予断を持つからということで、普通の刑事裁判じゃ起訴状一本やりで読まないわけでしょう。それを全部読んじゃってやるというところにどうもおかしな点があるのですがね。そういう点全体を含めて、時間がありませんのであれなんですが、私の質問も率直に言うと今歯切れが悪いのです。それは、今言ったようにそれを余りやかましく言うとかえって逆になってくるのじゃないかということが頭の中にあるものですから、歯切れが悪いのですよ。ですけれども、デュープロセスとの接点をどう考えていくかということ、今言ったようなことについて一応御説明を願って、質問を終わります。
  59. 早川義郎

    早川最高裁判所長官代理者 先ほどの御質問の中で一点お答えを落として失礼いたしましたが、確かに抗告には執行停止の効力がございませんが、これはなぜかといいますと、やはり少年事件処理の、あるいは少年処遇の迅速性の要請ということで、抗告審に事件が係属中いつまでも少年の教育的な処遇ができないということではよろしくない、そういう配慮であろうと思うわけであります。ただ、保護処分が取り消されるような蓋然性が高いような場合には原裁判所あるいは抗告裁判所は執行停止をすることができる。その制度の活用を考えることで、ある程度の解決はつくのではないかと考えております。  それからもう一つ、虞犯の関係ですが、これは結局保護処分の性格論にかかわってくるのだろうと思いまして、刑罰類似のもの、そういう受けとめ方、あるいは少年に対する制裁であり非難であり応報である、そういうことになりますと、犯罪事実がないにもかかわらず罪を犯すおそれだけで処分をすることはけしからぬ、こういうことになろうかと思いますが、やはり保護処分の本質というのは保護であり教育である、少年の健全な育成を図るためのある意味では少年についての利益処分である、そういう受けとめ方をしますと、必ずしも犯罪事実に限定されないということになろうかと思います。ただ、人権保障の観点から、旧少年法におきましては、単に罪を犯すおそれのある少年という形で非常に抽象的でありまして、その裁判官の認定というものが、犯罪的危険性に関する認定というものが誤る、そういうおそれもありましたが、現在の少年法三条一項三号は虞犯行状というものをかなり具体的に明定しておりまして、そういった形で絞りをかけている、そういった面はあろうかと思います。  第三に、再審の問題でございますが、確かに現行少年法には刑訴四百三十五条以下のような形での再審の規定というものはございませんが、少年法二十七条の二の保護処分の取り消しの規定というものがある程度再審的な機能を果たしている。非行事実がない場合には二十七条の二によって保護処分を取り消しまして、不当なといいますか、非行事実がないにもかかわらず保護処分を継続するということはそれによって防止できる、そういう制度になっております。
  60. 大塚雄司

    大塚委員長 坂上富男君。
  61. 坂上富男

    ○坂上委員 坂上富男でございますが、一時間一般質問をさせていただきます。  昨夜は大変遅くまで委員部や政府委員の皆様方に御足労や御労苦をおかけをいたしまして、質問の準備をさせていただいたわけでございます。ありがとうございました。せっかく御協力をいただいたのでありますが、全部質問ができるかどうかわかりません。せっかくお出かけをいただきながらお答えをいただけないというような結果が出るかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。  まず最初に、不動産登記を電算化するための準備がなされておるわけでございます。今どのような程度の進行状態になっておるか、それからこの見通しがどういうふうになっておるのか、ある程度詳細にお答えをいただければありがたいと思います。
  62. 千種秀夫

    ○千種政府委員 不動産登記制度のコンピューター化という問題のお尋ねでございまして、不動産登記法の改正ということも申されたかと存じます。  私どもの所管しております登記制度をコンピューター化するという研究はかなり古くから行われておりますが、いわゆる円滑化法と言っておりますけれども、コンピューターによって登記制度を運用していくための政府の義務を規定いたしました法律が三年前にてきたわけでございますが、それとともに特別会計というものを創設していただきまして、そのコンピューター化の仕事がここ二、三年の間急激に進んでまいりました。今私どもは最大の努力を傾けてその実現に取り組んでいるわけでございますが、これには技術面と法制面と運用面、さらには全体の事業面といったそれぞれの問題がございまして、それがいろいろ絡んでいるわけでございます。  最初に御質問になりました法制面の不動産登記法の改正ということにまず絞ってまいりますと、登記のコンピューター化というのは全体で十五年くらいかけての大事業と私ども考えておりまして、最初のうちはいろいろな面で実験的要素も非常に強うございますし、一遍にたくさんの庁がコンピューター化するということは非常に難しい。例えば各ブロックに一庁ずつコンピューター庁をつくって実験をし、その中でいろいろ問題点を整理して、さらにそれを拡大していく、こういうことを考えております。  そういう意味からいたしまして、当分の間は数の少ない庁でコンピューター化を行っていくことになろうと思いますので、法改正につきましても最小限必要な改正をして様子を見て、いろいろな問題をまた整理して、二次改正、三次改正というようなことになっていこうかと見通しているわけでございます。そういう意味で、来年には最小限必要な不動産登記法の改正をさせていただきたい、今そういう準備を進めているところでございまして、来年の三月をめどにその案をまとめていこうというふうに考えております。  一方、技術面におきましては、ここ二、三年来システム開発と申しますか、コンピューター化のための開発を進めてまいりまして、今年度いっぱいにぜひともそれを完成すべく、目下最大の努力を傾けております。その見通しといたしましても、不動産登記制度につきましては、来年の三月をめどにシステム開発は一応終わるだろうという見込みを持っておるわけでございます。  同時に、これは運用面という問題がございます。これは現実にそのコンピューター化庁で仕事をするのは職員でございますし、申請書を出すのは一般の庶民の方あるいは司法書士その他の関係業者の方々でございますから、こういう問題についてそれぞれの理解を得、スムーズに、円滑にその業務を遂行していかなければなりません。そういった面の運用面でのいろいろな打ち合わせ、PR、そういうものもあわせて行っていかなければならないわけでございます。しかし、これは法改正ができ、システムが完全に完成した段階に初めてはっきりしたことがわかるものでございますから、今はその予想を立てつつ、皆さんに御理解をいただくような準備を進めているわけでございます。  それから、総合的な事業面ということになりますと、これは全体として十五年もかけて行う仕事でございますから、どのような形によってそれを全国に広げていくかというような難しい問題がございます。例えばコンピューター化する場合には、現在の登記簿を全部コピーをとってコンピューターに打ち込むという移行作業がございます。移行作業をするについては、移行作業をする専門の会社なり機構なりというものをこしらえまして、あるいはそれを一般の業者に請け負わせて専門の業者にそれを行わせる、でき上がったものを登記所に入れる、そういうようなやり方を考えていかなければなりません。そういう運用面の技術の面と、それから実際にそれを行う組織なり人、そういうものについてもあわせてこれは研究をしておりますが、これはだんだんと拡大していく経過の中でつくっていくことでございますから、目下のところはまだ構想の段階でございます。  そういうことで、まとめて申し上げますと、来年度には少なくとも最小限の法改正、そして何庁かは具体的に活動を始める、こういう段階に来ておるわけでございます。
  63. 坂上富男

    ○坂上委員 私はまだほとんどこの勉強をしておりませんので、あるいは幼稚な質問なのかもしれません。  一つは、例えば新潟の法務局で沖縄の登記簿謄本がとれる、沖縄の商業登記簿謄本がとれる、こういうような話を聞いておるわけでございますが、そういうふうになるのでございましょうか。  それから、司法書士の先生方で、これも私と同様余り勉強していない人の御意見だろうと思うのでございますが、銀行あたりの端末機を利用して非常に自由に登記簿謄本がとれるというようなことになると僕らの商売が上がったりになるのだが、そういう点はどうなるのだろうというようなのを時折聞くこともあるわけでございます。  そこで、この間もこの委員会で行政書士さんの出入国管理に関する事務手続についてお願いをいたしまして、入管の方では行政書士会と今十分な話し合いをしていただいておるそうでございまして、ありがたいと思っておるわけでございますが、司法書士あるいは土地家屋調査士さん、そういう関係団体とのお話も今後はできるだけ誠意を持ってひとつ法務省で当たっていただきたい、こんなふうにも思っておるわけでございます。  簡単でございますが、三点ばかり。
  64. 千種秀夫

    ○千種政府委員 第一の、よその庁からコンピューターでよその庁の登記簿謄本がとれるようになるかというような問題でございますが、これは先ほど申し上げました法制面と技術面との両方の絡みがございまして、どのような登記制度にするかということは民事行政審議会という大臣の諮問機関に諮って検討をしていただいているわけでございますが、その検討の総合的な結果がもうすぐ出るわけでございますが、その審議の過程におきまして大体まとまったところを申し上げますと、コンピューター化する以上はなるべくよその庁のものがとれるような便利なサービス機構をつくるのが好ましい。ただ、それを全国的なものとして、例えば東京から北海道というように広域にやりますと、やはり全体の技術的な組織をかなり、例えばラインを太くしなければいけないとか、それからできた結果が非常に東京事件が集まるとか、そういう予測しかねるいろいろな要素がございますために、当面はある局の管内だけで相互的に利用できるようにしよう、すぐには他管内、ブロックの他管内といいますと東京から北海道というようなところまではすぐにはできるようにはならないのではないか、そういうことが予想されております。  それからもう一つ、よその端末を利用できないかということは、ただいまの御質問はその結果困るというような御質問のようですが、端末を利用させてほしいという希望もまたあるわけでございます。コンピューターの性格からいたしまして、それは端末を置くと非常に便利になりますから、いろいろな御要望はあるのでございますが、不動産登記情報というものは非常に大事なものでございまして、我々の今の技術からしますと、いわゆるよそから侵入者といいますか、端末を利用して情報を変更してしまうようなおそれがないとは言えませんので、当面の間は端末をよそに出さないという方針でいくべきであるというような議論になっておりまして、その点は必要に応じ、また、技術の開発に応じて考えていくということになっております。したがって、当面そういうおそれはないと考えております。  それから運用面でございますが、やはり関係する司法書士あるいは一般の方々は急に手続の上で重大な変化が起こりますと困るわけでございます。特に最初は序数も少ないところでコンピューター化するわけでございますから、ある登記所へ行ったら全然手続が違ったというようなことになりますと非常に困る。特に登記所へ行く前にこれはコンピューター化庁か普通の庁かということを知らないと仕事にならないようなことになりますと、業者の方もお困りになりますので、なるべくそういうことがないように考えつつ、また、そういうことによって生ずる違いについては十分協議をして、また説明もして、時間をかけてPRをしていきたい、こういうふうに考えております。
  65. 坂上富男

    ○坂上委員 ぜひひとつ関係団体としょっちゅうお話をしていただきまして、後から大変だというようなことがないように要請しておきたいと思います。  それから、これは一言でいいと思うのでございますが、国鉄が民営化するに当たりましての登記所職員の皆様方の労働強化について大変心配をしておったわけでございます。四月から実施されてもう半年でございますが、依然として登記所職員の不足が言われているのじゃないかと思いますけれども、その後どんなような状況でございますか。  それから入管の関係でございますが、日本外国の皆さんがお出かけいただくということも大変結構なことでございますし、日本人が出かけられるのもこれまた大変結構なことなんだろうと思うのでございますけれども、これもまた職員の皆様方が大変な労働強化に見舞われていると聞いておるわけでございますが、人員の状況がどうなのか。  それからまた刑務所職員の皆様でございますが、この間も私は拘置所を少し見させていただいたわけでございますけれども、これもなかなか大変な状況のようでございます。特にこの三つの役所が現況どんなようなことで、依然として人員不足であることも間違いないと思うのでございますが、これに対する対応を少しお聞かせいただきましょうか。
  66. 千種秀夫

    ○千種政府委員 まず登記所のことについての御質問でございますから、私から申し上げます。  最初に国鉄の事件についての御質問でございますが、国鉄の事件につきましては、実は昨年来そういうことが問題になりまして、登記所は特に忙しいものでございますから、法務局に十分連絡をとらせて、特別にまとまって来て仕事に差しさわりのないようにということで、各鉄道管理局と登記所の管区局を中心とする各局で打ち合わせをして、スムーズに出していただくような方法をとってまいりました。そのために、特別に国鉄事件が山のように来て差しさわりがあるというような申請の状態ではないようで。ございます。  一方において、実は登記所の場合は、最近首都圏、東京でございますと東京各出張所、周辺でございますと横浜、千葉、浦和、関西でございますと大阪、特に大阪の特定の出張所でございますが、周辺の神戸あるいは京都、こういうところに集中的に都市型の事件が増加してまいりました。これは、例の土地問題あるいはマンションが上がるということで不動産の異動が非常に激しくなりまして、東京の大きな出張所でございますと前年比二〇%以上の増加というようなことになってまいりました。そういう中で国鉄問題はそれほど目立たなくなってしまったということにもなっているわけでございます。そういう意味で、登記所の増員問題というのは、今の経済取引の関係を反映いたしましていろいろなところにますます需要ができてきております。実はけさの新聞にも載っているような状況でございまして、私どもも非常に憂えているわけでございます。  ただ、増員ということになりますと、これは後ほど全体の問題として申し上げる場があるかと思いますが、やはり公務員の総定員法の枠という政府の方針もございますし、法務省の中におきましても法務局だけでございませんものですから、いろいろな関係で皆さんの御努力をいただきまして、御協力のもとに法務局は割合面倒を見ていただいているというのが現状でございます。それでも足りないものですから、来年度は特に都市圏の集中的に事件の伸びたところに対しては、緊急対策ということで登記のできるOBの人たちを賃金で雇うような特別な要求もさせていただこうと考えております。
  67. 根來泰周

    根來政府委員 ただいま御質問の組織だけではなくて、法務省各組織におきまして業務量が増加しております。また、その内容も非常に複雑困難化の傾向が顕著であります。一方におきましては政府の定員抑制方針があり、また、国民の側からも公務員の増加に対していろいろ批判がございます。その中で財政当局の格別の理解、配慮をいただいておるわけでございますが、御指摘のように人手不足は深刻でございます。  これらの対策といたしまして、職員の能力の向上を図るべきことは当然といたしまして、第一に、来年度におきましては本年度と同様、シーリングというのがございますが、増員要求枠いっぱいの五百二十九人の増員要求をして、その確保に全力を尽くしたいと考えております。法務局は百九十九人、矯正関係は百六十七人、入管関係が二十四人ということでございます。これは別途計画削減がございますが、増員要求はそういう形でやりたい、そしてその確保に努めたい、こういうふうに思っております。それから第二に、これまでと同様政府間の部門間配転ということとか旧国鉄の職員の受け入れということによって、一人でも多くの人員を確保したいというふうに考えております。  しかしながら、ただいま民事局長が申しましたように、現下の情勢にかんがみまして、増員だけでは大きな期待ができませんので、省力機器の採用とか業務処理の機械化をさらに推進していきたいと考えております。例えば法務局の自動謄本作製機のごときものを大幅に導入するとか、矯正施設において総合警備システムを導入するとか、入管における不良外国人のコンピューターによるチェック装置の導入等の拡大ということでございます。それから業務の一部について、外部委託あるいは賃金職員の応援によって緊急的に事務処理の推進を図りたいというふうに考えております。また、法務局の窓口整理等について賃金職員を充てるとか、繁忙地域とか繁忙時期にOBの応援をとるとかということで対処したいと考えております。
  68. 坂上富男

    ○坂上委員 民事局長は大蔵省が大変面倒を見てくれているとおっしゃっておりますが、しかし実際面になりますと職員が重労働によってこれをカバーし、またサービス面におきましても、国民あるいは外国人と接する部分も大変多うございますから、サービスが悪いと言っているわけではございませんが、もっともっと向上してしかるべきことだろうと思うものでございまするから、ひとつ大いにこういうようなことのないように期待をいたしておきたいと思います。  さて、ちょっと趣旨が違うのでございますが、人権擁護局にお願いしたいのでございます。  特に農村に参りますと嫁不足でございまして、これは人権という立場から見まして——確かに人権擁護局の仕事というのは予防と同時に侵害、こういうようなことが問題なんでございましょうが、まさに人権というのは基本的人権、生まれながらにして持っておる権利、これを擁護するということが任務なんでございますが、農村を回りますと、ほとんど嫁さんがいない、三十五歳以上の皆様方がすっかり嫁さんをもらうことをあきらめなければならぬというような状況に追い込まれているというようなことを、私たちは目の当たりに見ておるわけであります。だから、私たちが回っていきますと、先生、ひとつ嫁さんを心配してくれればおまえさんのために一生懸命動くからというようなお話をしょっちゅう聞くわけでございますが、遺憾ながら私も嫁さんを連れていくわけにもいかぬというような状況でございます。  そこで、私はこういうものをどこが取り扱っているのだろうかと思ってお聞きをいたしましたら、どうも余り取り扱っておる省庁がないようでございます。たまたまこの間、建設委員でございまするから、山村振興法という法律があります、この山村振興法の適用に基づく山村における嫁不足の実態についてお聞きをいたしました。そういたしましたら、大体男子の結婚の平均年齢が二十八・一歳なのにかかわらず、三十五歳以上で結婚できない諸君が二六%、場所によっては三五%、ひどいところに参りますと四九%、半分ももらえないというような状況がどうも出ているのじゃなかろうかと思います。  これは大ざっぱな数字でございますが、そんなようなことで、一体これについてどういうふうな対応をしますかとお聞きをいたしましたら、大変失礼でありますが、国土庁担当でございまするから、政務次官が、四全総に基づくいろいろの計画を充実することによって農村をよくすれば、自然に嫁さんがふえるという御答弁をいただきました。それから、大変失礼でございますが、農水省、同じ方がお見えかもしれませんが、杉本普及教育課長さんでございましたでしょうか、これもまた実は御答弁をいただいたわけであります。農業後継者の花嫁対策はどうなっているのかという話については、農林水産省としては花嫁問題に直接対応する施策は講じていないが、農業後継者対策等の一環として、県市町村段階における交流会の開催や相談活動等に助成している、こんな程度の答弁でございます。私は白々しい、こういう返答をいたしたわけでございますが、人権擁護局の立場から見られまして、まず、どのようにこういうことをお考えになっておるか。率直な話、笑い事ではありません、大変なことでございまして、まさに憲法の生存権、幸福追求の権利、こういうことが僕はやはり基本だろうと思うのでございます。ひとつ、しかるべき省庁、お答えいただければありがたいと思います。
  69. 高橋欣一

    高橋(欣)政府委員 ただいまお話がございましたような、いわゆる農山村における嫁の不足の問題というようなことは、私どももマスコミその他の情報を通じて承知しておるわけでございますけれども、さて人権擁護局といたしまして、お嫁さんの世話をするというわけにもまいらぬわけでございます。人権擁護の仕事をする組織といたしまして、御承知のとおり各市町村に人権擁護委員というのが置かれておりますし、法務省の出先機関であります地方法務局あるいはその支局において人権業務を取り扱っているわけでございまして、具体的な人権問題という形で、そういった委員とか法務局の諸君のところに何か御相談でもございますれば、それが果たして人権問題になるのかどうかというような観点から御相談に乗ることはあるいはできようかと思いますが、人権擁護局といたしましては、この問題についてはその程度の答えしかできないのは申しわけございませんけれども、この辺で御勘弁願いたいと思うのです。
  70. 坂上富男

    ○坂上委員 この問題を人権の問題としてとらえていただくところに大変な前進があるのです。それはそれで大変結構な答弁ですよ。  さてそこで、嫁不足で、とうとう東南アジアの女性を特に農村部のお嫁さんとして全国各地で迎えているわけでございます。これは大変結構なことなんです。ただ、これらの人たちが大変寂しがっておる。それはそうでしょう。私の聞いた話でも、例えば沖縄の人が私らの新潟県に来たわけです。十メートルも雪が降っているものだから、びっくりして沖縄へ帰っていったわけでございます。この雪は三年ぐらいたったら消えるのだろうか、こういう話です。雪というのは、十メートル降っても四月、五月になれば消えるのです。だけれども、やはりそういう感覚なんですね。でありまするから、まず農水省の後継者、花嫁対策の観点から、フィリピンなりタイなり台湾なり韓国の人なりが、私たち農村の青年の諸君のお嫁さんになってくれてきておるわけです。これは一体どれくらい日本におられるのか、おわかりでございましょうか、農水省の方は把握しておられるでしょうか。今度はそういう意味での御質問をしたいと思います。  それからもう一つでございますが、今言ったように大変寂しいのです。だから、こういう人たちをどうやって私たちが守ってやるかということが大事なんであります。せめて、来てくれた人をまずどうやって守ってやるか、そういう人たちに、日本の農村の花嫁になったらいいわよということを知ってもらうということがまた大事なんでございます。そんなような意味におきまして、人権擁護局の任務というのももっとあると私は思うのです。農水省、まず、そういう把握をどうしておるか、また、今言ったような部分をどうしておるのか。  それからもう一つ、これは私は人身売買とは言いませんけれども、私の知っておるそれなりの人が二百万ぐらいであっせんをしているのです。二百万出しても花嫁さんになってくれるのがあればありがたいものだから、結構それに頼っておるわけであります。そんなような実態もあるわけでありまして、ではそういう人身売買を取り締まりましょうかでは困るのでございます。それほど困っておるということを私は申し上げたいのであります。  そんなような意味で、まず農水省がどの程度把握をなさっておるか。それから人権擁護局では、またそういう観点からやはり目を当てるべきなんだろうと僕は思うのでございます。そして大臣、そういう状況でございまして、仙台もなおのこと、新潟以上にひどいのじゃないかと思いますよ。どんなようにこういう対応をするのか。しかも、各省庁どこもないのです。やはり最後になりますと、人権のとりでである法務省が声を大にいたしまして、施政の中で、政治の中で取り組まなければならない、私はこう思っているのでございますが、あるいは、いや、ここへ行けば一発で解決するんだよというのがあれば、またお教えいただければ結構でございます。ひとつ御答弁をいただきましょうか。
  71. 杉本忠利

    ○杉本説明員 東南アジア等からの花嫁がどのくらい来ているかという問題でございますけれども、私ども、新聞あるいは事例的に承知している程度で、全国的な調査はいたしたことはございません。
  72. 坂上富男

    ○坂上委員 今言ったような問題は、どう思っているのですか。
  73. 杉本忠利

    ○杉本説明員 私も検討の課題だというふうに思っておりますが、例えば花嫁を今先生おっしゃったような特殊な機関で御紹介して、紹介のもとに農村に花嫁に来たという場合と、それから個人で行って、あるいはいろいろな機会を通じて海外から花嫁をもらってきているという問題の両方があるというようなことで、私どもまだそこまでの実態の調査をしていないわけでございますけれども、御指摘のようなことで実際東南アジア等の女性が農村に入って、かつ農業に従事しておるということであれば、あるいは現実にそうであろうと思うのですが、当然その方々に対しても例えば普及所等からのいろいろな技術やあるいは経営の指導あるいは生活習慣になじむようなことということで、私どもいろいろ御援助はできるというふうに考えております。
  74. 高橋欣一

    高橋(欣)政府委員 私ども人権擁護をつかさどる機関といたしましては、憲法の保障する人権を守るという観点から、人権意識の普及向上ということについての啓発をするという職責を担っているわけでございますけれども、しかし各人権機関の具体的な現場におきましてどういうことをするかということになりますと、具体的な案件として提起されてまいりませんとなかなか動きにくい面がございますので、ただいま委員が例に挙げられましたような例えば外国人妻の問題なんかに関しまして、これは具体的な人権問題になるのではないかというような相談などが先ほど申し上げました人権擁護委員とかあるいは出先の法務省の人権担当機関に提起され、相談がありますようなときには、これは事と次第によっては人権問題となり得るものと思いますので、その都度適切に対処していきたい、このように考えております。
  75. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 私どもの手元にございます在留外国人統計、一番新しいのは昭和六十年版でございまして、昭和五十九年末の数字でございますが、その数字によりますと、日本人の配偶者等として我が国に在住している外国人総数は三万三千余りでございます。そのうち二万一千余り、二万二千近くがアジア出身者でございます。その中で、御指摘のございましたフィリピンは三千名足らずでございます。その後またふえているということも大いにあり得ることでございますけれども、この辺が大体の概念を把握する基礎になろうかと存じます。
  76. 坂上富男

    ○坂上委員 大臣、ひとつ。
  77. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 今それぞれ法務省局長からお答えを申し上げておりますけれども、先生御指摘の点については人間の人権といいましょうか、希求に対するこたえといいましょうか、そういうような点からやはり大変重大な関心を持たなければならぬ、こういう感じを持ちます。  それに我が国は、御承知のとおり、釈迦に説法みたいな話になりますが、高齢者社会を迎えつつある。その対応策としても、片や独身者が多いというようなことであっては、予算面のみで高齢者社会というのは対応するものではなく、やはりこれから国民の皆さん方にも子供さんをたくさんつくってもらうということも高齢者に対する対応ではないかな。  こういうふうな点を考えますると、法務省の立場として、私が今ここで思いつきでの答えになるのでその点は御了承願いたいと思いますが、一つは、今人権擁護局長からお答えいたしておりますけれども、法務省のもろもろの機関として、人権擁護委員会とかさらにまた社会を明るくする運動の推進母体がございます。そういうような点で、また防犯関係の団体もございます。そういう団体等にも呼びかけをして、要請をして御努力を願うということは、やはり社会を明るくし、犯罪をなくするという点にも大きな関係があります。さらにそれぞれの人間の人権に、希求にこたえるという姿勢からいっても意義があるのではないかな、こういうような点を感じておりますので、私自身としてはそれぞれの団体の代表者と協議をしてみたい、こういう考えを持っております。先生の追及のみではございませんで、個人的な話になりますけれども、我が宮城県においても農村地帯が全く頭を痛めているという現状でもございますので、急速に協議してみたい、こう思っております。
  78. 坂上富男

    ○坂上委員 時間がありませんので、読み上げるだけ読み上げます。これは六十二年七月十二日の私の地元の新聞、新潟日報さんの記事でございます。「深刻山村の嫁不足 仲人役も役場の仕事?独身男性思い切実 娘さん定住の特効薬には…」こういうような表題が出ておるわけでございまして、私は言うのです、何々町と何々町が日本同士で姉妹都市として提携したなんて言うのですが、もうそんなの古いと。例えば私の町見附市とタイのどこどこの町と国際都市の提携をした、そういう時期に入るべきだろうと私は思っておるわけでございます。そういうところからの交流の中で、お互いに交流を深めることによってあるいは新しい血が日本の中に入るということもこれまたいいことでございますので、確かに人と人、個人の問題あるいはプライバシーの問題ではありますけれども、もうここへ来ますと人権問題だろうと私は実は思っておるわけでございます。  そんな意味におきまして、ぜひひとつ大臣に御期待を申し上げ、これは一朝一夕にして役所が立ち上がれる問題でもありませんが、あらゆるところで私は火をつけながら問題を提起したい、こう思っておるわけでございます。まさにこのことが農村の崩壊、農村のスラム化、こういうことに通ずると私は実は思っておるわけであります。農村がそういうことになれば日本の崩壊につながる、こう思っておるわけであります。憲法などを空念仏に終わらしてはならぬと思っておるわけでありまして、生存権、幸福追求の権利、文化的な生活を営む権利などと言っておりますが、細君一人いない人生なんてあったものでないわけでありまして、どうかひとつお力を御発揮いただきたい、こう思っておるわけでございます。  さて、今度は図書館にお願いをしたいわけでございますが、下山事件、帝銀事件、三鷹事件、松川事件、こういうものは戦後私たちの日本の中に起きた問題であります。松川事件は、幸いにいたしまして被告人とされた人たちは無罪となりました。帝銀事件は獄中において、私は無罪であると叫びながら平沢氏が亡くなりました。それから下山事件、これは自殺なのか他殺なのか、あいまいもことしてまだ決着がついていないのではなかろうかと思います。松川事件は、一体犯人はだれなんだということもわかっておりません。そんなようなことから、国立国会図書館は——GHQあるいは国務省は三十年たちますと関係文書を公開しておるわけでございますが、帝銀事件においては昭和二十三年六月二十六日付から同年十一月八日までの四カ月分が完全に欠落をしておった。あるいは下山事件では、自殺を推定される未発見の写真や、他殺説をとり自殺説報道にいら立つGHQ文書もあったといわれ、自殺他殺いずれかの決め手になる文書としては隠されたままである。また旧関東軍細菌部隊については、石井四郎元部隊長を捜せというタイトルがあっただけで、中身はすっぽり抜けていた。こういうような記事が載っておるわけでございまして、この文書は、GHQの参謀第一部が陸軍省にあてた手紙があって、米本土に文書を持ち帰る際、業務上必要な資料は国務省へ渡すとした手紙だそうでございます。明らかにこういう重大部分の内容がどこかで抜き去られておる、こういうふうに言われておるわけでございますが、国会図書館の方、もう少し要領よく今言ったような問題点、御指摘いただければ、説明をお聞かせいただきたい、こう思っております。
  79. 藤田初太郎

    ○藤田国立国会図書館参事 お答えいたします。  国立国会図書館では、昭和五十三年からワシントンの方に職員を派遣いたしまして、GHQ関係文書を、これは国立公文書館に所蔵されているものでございますけれども、マイクロフィルムで組織的に収集してございます。組織的にと申しますのは、向こうで公開になったものを選択しないですべて各部局ごとに集めているということでございます。民政局、御承知のようにGHQは戦後の改革に非常に大きく影響いたしましたので、戦後史の研究にとって重要な史料ということで、プロジェクトとして国立公文書館との協定に基づいて収集をしているわけでございますが、当初民政局、憲法等について影響のあった民政局から始めまして、部局ごとに収集いたしまして、先生今御指摘のように参謀部の資料もマイクロフィルムで収集して研究者に公開したわけでございます。  今先生の御指摘のありましたいろいろな戦後の事件につきましては関心も深く、参謀部の資料が収集された暁にはそういう資料がかなりあるのではないかという期待といいますか、そういう考え方もあったわけでございますけれども、実際にこちらに到着しました資料を見てみますと、そういう点が今御指摘のようにかなりないということがわかりまして、これについては今御指摘のように、GHQの参謀第一部の書簡から、米本土に持ち帰る際に、振り分けをする際に、国務省の方に持っていく分があったということをこの書簡が示唆するものではないかということが考えられるということでございます。
  80. 坂上富男

    ○坂上委員 欠落、大体どんな程度に欠落があるか。
  81. 藤田初太郎

    ○藤田国立国会図書館参事 今までそういう意味でわかっているのは、六十二年三月三日の毎日新聞の記事として報道されておりますこういうようなところでございますけれども。
  82. 坂上富男

    ○坂上委員 日本にとりましては重大な事件でございまして、また、関係者もあらわれるとすればもう年をとっておられるということでございまして、本当に終戦後の重大事件解明の上において、日本人としてはどうしても必要なことだろうと思うのでございます。  今図書館がおっしゃいましたとおり、間違いなくこういう部分が欠落をいたしておるわけであります。もう三十年だったから公開されてもいいわけでございますが、公開されておちないわけであります。これは日本政府当局といたしましては、やはり国務省なりあるいはGHQにこれを要求する、公開の要求をする、あるいは真実あるのかどうなのかということも調査をするということは、これはやはり必要なんじゃなかろうか、こう思っておるわけでございます。  これはひとつ法務大臣、今おっしゃいましたような状況なんでございます。法務当局はいわば検察の立場に立ちまして、いろいろの事件捜査なさったわけであります。松川事件に至っては、大変長い間然草の人が獄中に呻吟をしたわけでございまして、そんなような意味においても、私たちはこの真相の解明というものはどうしてもしなければならぬのであります。それにはあらゆる資料を私たちは集める国民的な義務があるのじゃなかろうか、こう思っておるわけでございまして、できるだけアメリカと協力をいただきまして発表していただきたい、こう実は思っておるわけでございまして、大臣、ひとつそういう部分について、今どういうふうなお考えでもおありでしょうか。どうぞ局長でも結構でございますし、また、大臣もひとつ御決意もお聞きをしたいなと思っておるわけでございますので、御答弁いただきたいと思います。
  83. 岡村泰孝

    岡村政府委員 ただいまお尋ねのいろいろな事件は、戦後の我が国におきます重要な事件でございますが、いずれも裁判が確定し、あるいは時効が完成しておるというようなことで、我が国におきます刑事訴訟法に基づく手続といたしましては、もう完結済みということになっているところでございます。したがいまして、法務省あるいは検察といたしまして、刑事手続といいますか、刑事司法の観点から見まして、ただいま御指摘のありましたような資料についてアメリカに対して照会するとか、あるいはその提供を求めるとかということをするまでの必要はないように私は思っておるところでございます。
  84. 坂上富男

    ○坂上委員 大臣、いかがですか。
  85. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 今刑事局長がお答えしているのは、これは役所としての刑事局長としての立場でお答えを申し上げたということで御理解をちょうだいいたしたいと思います。  法務大臣としてという、これまた大変肩書がついておりますが、私としては、やはり日本の国としての、終戦直後の日本の犯罪やその他についての資料を、そういうようなものも収集しておくということは大切なことでないかな、こう感じております。しかし、法務省として要請していいか、また国会図書館自体に動いてもらうかというような点については検討させていただきたいと思いますが、委員のおっしゃるように、私自体もそういうふうな資料はぜひ日本に保管すべきだ、こういうふうな感じを持っております。
  86. 坂上富男

    ○坂上委員 ぜひ期待をいたしております。このことはまた全国民的な要望であると言っても過言でないと私は思いますので、ぜひひとついろいろのお立場を乗り越えまして、御検討の上で私の期待にこたえていただきたい、こう思っておるわけであります。  さて、時間がありませんが、本来的な質問がもうせっぱ詰まってまいりましたが、外務省、おられましょうか。——外務省、タイのネーション紙という英字新聞らしいですが、八七年六月二十日の新聞の記事をお送りをいたしておきましたが、これをひとつ日本語で読んでいただけましょうか。
  87. 小野正昭

    ○小野説明員 先生御指摘の六月二十日付のタイのネーション紙の記事でございますが、当方で訳しましたものを読み上げさせていただきます。タイトルは「訪タイ中の議員団、援助実施にあたっての日系業者偏重につき国会で質問することを約束」。   日本の野党国会議員一行は、タイ国内における日本の経協プロジェクトの実施に際してのタイおよび日本の建築技師および技術者の雇用問題を日本の国会において採り上げることを約束した。   タイ建築家協会の代表は、今週はじめ、日本社会党の二人の国会議員および他の役員に対し、これらの事業における建築技師および技術者の雇用が日本に偏向している旨の不満を示した。   PPセンター株式会社専務取締役チャワリット・チョンワッタナ氏およびパトラ株式会社専務取締役プラチャー・スックウドム氏は、「タイ人の誇りは、新しいタイ文化センターの設計および建設が日本の完全な主導の下で行われたことで著しく傷つけられた」と語った。両氏は、実際、タイの法律は、タイ国民以外の者が寺院のような文化的建築物を設計することを禁止しており、右禁止条項は、新しい文化センターの建築にも適用されて然るべきであったが、同センターがもともと会議場とされていたため禁止条項には抵触しなかった、としている。また、二人の建築家は、もし著名な日本の建築家が採用されたのであれば、自分たちとしても左程プライドを傷つけられなかったであろうが、実際にはタイ文化センターはほとんど無名の日本の建築家により設計されている旨指摘している。   更に、両氏は日本の援助による建築事業の雇用者の比率は日本人対タイ人が三〇対七〇であるが、所得の比率は七〇対三〇に逆転している旨の不満を示した。もっとも両氏は、日本が援助国として援助プロジェクトの実施にあたり一定の制約を設けることは受け入れている。   社会党調査団団長の本岡昭次議員と坂上富男議員は、日本国民は、援助が被援助国に利益のみをもたらすものであると信じこまされているため、問題の所在に気付いていない旨述べた。   六名の男性と七名の女性からなる一行は、主として人権問題に関する実態調査のためタイおよびフィリピンを訪問中である。一行は、今週はじめバンコックに滞在中、数多くの地元人権活動家および開発問題についてのボランティア活動家と会談した。   一行はクーロン・ト付近のスラム、ランシットの繊維工場およびいくつかの歓楽街を訪れた。   タイの人権活動家は、日本企業がタイの労働組合に種々の制約を課していること、およびグルタミン酸ソーダを過度に普及させていることに不平を述べた。一行は、また、児童労働および売春の問題にも関心を示し、関係者からは児童を雇う会社は小さな皮革工場、菓子工場、おもちゃ工場であり、あまり日本企業には雇われていない旨の説明を受けた。   一行は、日本に対するタイ側のこうした不平が適切なものであるかとの問いに対し、適切である旨述べた。国会議員たちは、今回の訪問はこの地域への初めての訪問であり、日本の行動からひきおこされる諸問題について、今回はじめて知ることができた旨述べた。但し、両議員は今回の訪問中指摘を受けた諸問題については、改めて事実関係を確認したいとしている。 以上でございます。
  88. 坂上富男

    ○坂上委員 これは本岡昭次社会党参議院議員と私が、六月の国会閉会中に、社会党といたしまして土井委員長の招聘状を持って、東南アジアで人権活動をやっておるボランティアの皆様方に、十一月下旬に社会党がアジア人権大会を神戸でやるものでございますから招待状を持っていきまして、そしてそれらの人たちの周辺の人権調査を、時間は余りありませんでしたが、させていただきまして、そのところにたまたまタイのネーション紙という英字新聞だそうでございますが、記者が立ち会われましてこういう記事がつくられておるわけでございます。  私たちは、最後の結びにありますとおり、今ボランティア活動をしておる、あるいは運動をしておる皆様方の話をうのみにしておるわけではありません。国に帰り、あるいはまた再度来るなどして事実関係を確認をいたしましてこの問題を本格的に取り上げたいということを申し上げまして、この問題を国会でもひとつ取り上げまして、本当に東南アジアの皆様方が人権侵害を受けているとするならば重大なことでありますので、国会でもその究明に努力することを約束をしてきた記事であることは間違いないのであります。  そこで、実は今指摘されました諸問題について、私は人権の立場に立って御質問をさせていただきたいと思って準備をしたわけでありますが、きょうはもう時間切れでございますので、これ以上質問を続けても時間がありませんので、一つだけ、まず事実問題として確認したいのであります。  タイの国におきましては、タイ人以外では寺院、お寺のような芸術、文化に関する建築は外国人にはさせないという規定があることを御確認をいただきたいということを依頼しておいたわけでありますが、外務省、いかがでございますか。
  89. 小野正昭

    ○小野説明員 お答えいたします。  先生御指摘の点でございますが、当方で調査したところでは、タイにおきましては一九七八年の外国人職業規制法というのがございます。この規制法の中でタイ国籍を有さない者が一定の職種に就業することが禁止されておりまして、禁止職種の中には建築業及び建築業における設計、仕様書作成、見積もり、助言業務が含まれております。  他方、同法第四条第五項は、タイ国政府と外国政府または国際機関との間で結ばれた取り決めに基づき任務または業務を遂行する者に対しては同法は適用されていないことを明記しておりまして、付言でございますが、政府間の取り決めによる経協、経済協力プロジェクトの実施に従事する本邦建築家等は同法の適用を受けないというふうにとりあえず考えられる次第でございます。
  90. 坂上富男

    ○坂上委員 援助の関係はそれでいいのですが、芸術、文化に関する建築については何と書いてあるのですか。
  91. 小野正昭

    ○小野説明員 とりあえず私どもで調査したところによりますと、今申し上げました禁止解除というものは、当該建築物が文化的建築物あるいは芸術か否かにかかわらず適用されると考えられるわけでございます。
  92. 坂上富男

    ○坂上委員 これは外務省の調査不足じゃないかと思うわけでございます。私はこの次にこの法律の条文を提出したいと思いますので、再度御調査の上、あるいは日本人も外国人から依頼をされて建築するという場合もあると思うのですが、日本の芸術、日本の文化にかかわる建築物についてはという、その国独自の芸術、文化の保存ということにかかわるわけでございまするから、私はタイもそういうような法律があるということを確認をし、実は今私の手元に送付されてはおりませんが、その条文は送付いたしますということをいただいておるわけでございます。まずこの前提に立って質問をしなければ、今これらの諸君が申し述べていることが何の意味もなくなることでございまするので、ぜひもう一度そういう観点から、タイの法律で芸術、文化に関する建築は全く別の法律が適用になるんだと私は理解をしておるわけでございます。私も資料を提出いたしたい、こう思いまするので御準備をいただきたい、こう思っておるわけでございます。  各省庁の方にもお願いをしておるわけでございますが、今言ったようなもろもろの問題点、また次回に私が質問をさせていただきたいと思いまするので、せっかくお出かけをいただきまして恐縮でございますが、質疑時間終了という通告でございますのでお許しをいただきまして、本日、私の質問はこれで終わらせていただいて、次にもこの問題を質問させていただきますことを申し添えまして、終わりにしたいと思います。ありがとうございました。
  93. 大塚雄司

    大塚委員長 午後一時再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時十分休憩      ————◇—————     午後一時十分開議
  94. 大塚雄司

    大塚委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。橋本文彦君。
  95. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 最近の世の中は想像もつかないことがたくさん起こりまして、ちょっとやそっとの事件ではだれも驚かないという風潮になってしまいました。だけれども、そういう中でもじっくり検討しなければいかぬなという問題がたくさんあるように思います。  ついこの間、警察庁の「少年非行等の概要」ということで、本年度上半期の実態調査が出ました。いわゆる無職少年の刑法犯というものが増加しておる、そういう記事を拝見いたしまして、きょう警察庁の方からこの概要をいただいたわけでございますけれども、同時に、そのときに行われましたアンケート調査もきょういただきました。この二つをざっと見た段階でございますけれども、大変厳しいなという思いがいたしております。同時に、アンケート調査に関しましては、これは初めてのものですけれども、中を読んでみますと非常に参考になる。これを、警察庁レベルではなくて、少年問題に関する各省庁が参考にして、大いに検討していただきたいという気持ちを持っております。  そこで、まず、無職少年という余り聞きなれない言葉でございますけれども、これはどういうふうに評価すればいいのか。私は、自分では一応十四歳以上の少年で二十歳未満、したがって、その対象は中学を卒業した人間あるいは高校生、大学生も含めて無職少年と言えるのかどうか、それから、一番問題になっているのは高校中退者だと思うのですけれども、その無職少年という概念、どこに重点を置いて考えるべきなんでしょうか。
  96. 平沢勝栄

    ○平沢説明員 お尋ねの無職少年についてでございますが、今回私どもで対象としましたのは、ことしの五月に全国で補導されました少年二千二人のうち、警察の少年係で扱いました九百九十人につきまして実態調査を行ったわけでございます。  その際、無職少年として私どもが考えましたのは、今先生がおっしゃられましたとおり、中学校を卒業いたしましてまだ二十歳まで至らない、こういった子供たちのうち現在失業中、休業中あるいは短期間のアルバイトについている、こういったことで定職についているとは言えない子供たちを考えたわけでございます。
  97. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 学校に通学している場合は無職ということに入らないわけですね。概要の方で大学生のそういう問題も書いてありますので、その場合には少年というレベルでとらえておる、そう理解していいわけですね。  この無職少年に関しまして、アンケート調査で一番心配したのは、こういう刑法犯を犯した少年たちが学校の先生方に対して大変不満を漏らしておる、そういうアンケート結果が出ております。要するに、教師が自分のことを親身になって相談に乗ってくれなかった、あるいは非常に一方的な押しつけがましい意見で、結局自分の進路が気に食わなかった、そういうことで犯行に至っているわけでございますけれども、こういうアンケートを目の前にしまして、文部省、どのように考えておられますか。
  98. 菊川治

    ○菊川説明員 中学校、高等学校におきます進路指導の重要性というものは、文部省も重大な課題だというふうに考えておるわけでございます。そのために、昭和五十八年に「学校における適正な進路指導について」という事務次官通知を出しまして、中学校等におきます進路指導、生徒の入学時から教育活動のさまざまな機会をとらえて進路指導を適切に行い、生徒がみずからの進路を主体的に選択する能力や態度が十分育成されるように努める必要があろうといったことを内容とします次官通知も出しておるところでございます。  それからまた、その進路指導の具体的な推進を図るための施策といたしまして、都道府県の進路指導主事を対象としました研究協議会の実施、あるいは都道府県におきましてその進路指導の中核的な推進者となります校長、教頭、進路指導主事等を対象としました中央講座、それからまた、それらの方が中心になりました都道府県講座の実施、さらにはその進路指導をどういうふうに進めていくかということでの進路指導の手引の作成、あるいは都道府県におきます進路情報資料の提供というふうな施策も講じておるところでございます。  そういったことを通じまして、中学、高等学校におきまして、本人の能力、適性、興味、関心等に応じて、また将来を見通した、三年間を通じた進路指導の充実というのが逐次図られてきておるというふうに思っておるわけでございますけれども、先生御指摘のように、先般の無職少年の非行に関連します実態調査等におきまして、より進路指導の充実を望む声が出ておるわけでございますので、そういったことも踏まえながら、今後とも一層中学、高等学校におきます進路指導の充実に努力してまいりたいと思っております。
  99. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 重ねて文部省にお尋ねしますけれども、今のいわゆる通達、非常に抽象論で具体性がないわけでございます。こういうアンケートが出ますと、そういう具体的な問題、特にどこに留意すべきかわかると思うのですけれども、こういうアンケートがあるのです。  とにかく無職少年の中学を卒業したときの成績、いわゆる上中下の「下」が六四・五%と圧倒的に多い。その下が「中の下」、この二つで八九・二%を占めてしまうとなっているわけですね。そして、こういう少年たちが自分の将来をどう見ているかということに関して、「学歴からみて自分の将来は良くない」これが二六・六%を占める。「学歴からみて自分の将来はあまり良くない」これが三三・八%。ほとんどが自分の将来に対しては望みを持っておらない、こういうデータ。約三分の一に匹敵する三四・三%が「学歴がなくても変わりはない」、これが一つの救いなんですけれども。成績が悪くて、しかも自分の将来に悲観的である、そういう少年が非行に走っていると実態的には言えるわけですけれども、そういうような成績が「下」の人あるいは中学で卒業せざるを得ない、そういう子供に対して文部省は具体的にどういう指導をしておるのでしょうか。
  100. 菊川治

    ○菊川説明員 先ほど御答弁で申し上げました昭和五十八年の事務次官通知の中におきましても、生徒の進路選択に当たっては、いわゆる偏差値のみを重視して行うのではなくて、学校の教育活動全体を通じて的確に把握した個々の生徒の能力、適性や進路希望等に基づいて行うべきであるということも言っておりますし、また先ほども申しましたように、そういった進路指導は、生徒の入学時から教育活動のさまざまな機会をとらえて実施すべきであるというふうなことで、通知によりまして指導をいたしておるわけでございます。  それからまた、そういった具体的な点につきましては、先ほども申しました進路指導の推進をしております進路指導主事等を対象とします中央講座、それをまた都道府県へ持って帰りましての都道府県講座等でそういった趣旨を徹底いたしておりますし、また、その内容的な具体的なものにつきましては、進路指導の手引、これを毎年文部省の方で協力者会議を設けまして検討しまして、それの具体的な内容につきまして手引書を作成して、それで各中学、高校等におきましての参考に供しておるわけでございますが、そういったことを通じまして、より進路指導が充実するようにというふうに指導をいたしておるところでございます。
  101. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 それでは、無職少年がふえているということについては、文部省はどのようにお考えですか。
  102. 菊川治

    ○菊川説明員 先般文部省の方で調査をいたしました六十二年度学校基本調査によりまして、六十二年の三月、中学卒業者の状況が出ておるわけでございますが、その中で、無業者という範疇に入ります者が一万九千百五十三名で前年から見比べまして二千人ほどふえてきておるということで、無業者がふえてきておるということにつきましてはいろいろ問題があり、そういったことも踏まえてこれから進路指導というものを、より以上に充実していく必要があろうというふうに思っております。
  103. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 文部省としては、無職少年の実態を把握しておられて、その対策も苦慮していると思うのですけれども、今のお話ですと昨年に比べて約二千名の無業者がふえた。このデータをもとにして、具体的に進路指導をどうするのかというのは非常に困るのですけれども、恐らく当然このようにふえるであろうというそれを前提にしてどう進路指導すべきなのかという議論はしていなかったのでしょうか。先ほどの質問でもお答え願えませんでしたけれども、私の質問は、通達があるのはよく知っております、具体的にこういうように、成績が悪くて、しかも中卒で働かざるを得ない、しかも働かない人がたくさん出てくる、これがまた非常に非行化に走っていくという現実を目の前にして、具体的にどのようなことをやってきたのか、どのような進路指導をしたのか、それをお尋ねしたいのです。まさかあなた方は、成績も悪いし中卒なんだから社会も入れてくれないだろう、会社もないだろうから、自分の道は自分で開け、そんなこと言ってないでしょう。それをどういうふうに具体的に進路指導しているのか、それを聞きたいのです。
  104. 菊川治

    ○菊川説明員 中学校、高等学校におきます進路指導の具体的な推進につきましては、文部省としましては、先ほど来申し上げておりますように、基本的には五十八年の通知に基づきまして、その通知は、本人の能力、適性、興味、関心等に応じた進路指導というものを早い段階から実施するようにということが主たる内容となっておるわけでございますが、そういった趣旨が徹底するように、先ほど来申しております進路指導主事の研究協議会あるいはその中央講座等におきまして、先生御指摘のように、最近では無業者がふえてきておるということもございますので、そういった面についての十分な配慮をするようにということもテーマに取り入れながら、研修の充実等を図ってきておるわけでございます。その後もその面の充実に関します資料といたしまして、本年六月には進路指導の改善充実についての調査研究結果をまとめまして都道府県にも通知したところでございますし、また、進路指導の手引というものにつきましても引き続き検討してきておりまして、そういった中で、先生の御指摘のような問題につきましてもその対応を検討していくということになろうかと思っております。
  105. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 残念です、具体的には一つもお答え願えませんので。  それから、いわゆる高校中退者がこれまた激増しておる、こう言われております。しかも、高校一年生の時点で中退者が多い。こういういわゆる無職少年もまた犯罪に走っている。この少年たちもやはり進路指導について教師に不信感を抱いている。さっきのは中卒ですけれども、高校中退等については文部省はどのようにお考えでしょうか。
  106. 菊川治

    ○菊川説明員 高校中退者につきましては、五十七年来調査をしておるわけでございますが、パーセントとしましては、五十七年が在籍者の二・三%、五十八年が二・四%、五十九、六十年度は二・二%ということで、在籍者に占めるパーセントとしましては五十八年をピークにその後下がってきておるというふうな傾向が出ておるわけでございますが、絶対数としましてはやはり六十年度におきましても十一万人を超える中退者が出ておるということで、これもまた大変な問題だというふうに考えておるところでございます。  なぜ中退するのかということを文部省の方で調査もしておるわけでございますが、それを見ますと、学校生活あるいは学業が不適応である、それから進路を変更したいということ、それから学業不振というふうな理由が出されておるわけで、そのほかに中学校、高等学校の授業が難しいという意見、それからまた、中学校の進路指導におきまして、もっと将来の職業や高校生活についての指導の充実を望むというふうな意見が出ておるわけでございまして、これにつきましても、そういった意見を踏まえて、中学校の段階におきましてもっとその将来、自分の能力、適性についての自己理解を深めるということと、それと関連しましての将来の職業、産業の動向等につきましての指導というものをもっと充実していく必要があるのではないかというふうに思っております。  それからまた、学業不適応とか進路変更、学業不振というふうなものにつきましては、高等学校自身におきますがイダンスの充実、進路指導の充実、それからまた高等学校でのカリキュラムにつきましての充実といった面についてこれから考えていく必要があるのではないかというふうに思っております。
  107. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 今学校側の方の対応をお聞きしたわけですけれども、無職少年のデータの中では、中学を卒業して働いておって、そして転職するという人も多い。そして無職少年になるわけですけれども、このときにその少年が自分の進路について、職場の仲間あるいは上司あるいは学校の先輩あるいは先生あるいは家庭に余り相談していないようなアンケートの結果なんです。ですから、自分一人で思い悩んで、自分一人で決断を下して、そしてやめてしまっている。そしてまた、こういう非行に走った、刑法犯に触れた、こんなようなデータに見えるのですけれども、本当に少年そのものが孤立無援であるという感じがするわけですね。  ですから、これは学校が悪いわけじゃない、会社が悪いわけじゃない、家庭が悪いわけじゃない、だけれども、みんながそれぞれどこかでその少年に対する関心というか、見守るという姿勢があれば、これは回避できると思うのですね。今本当に社会そのものが殺伐としているから、こういう一人で孤立する人ができるのかもしれませんけれども、そこに大変重要な問題があると思うのです。だから、この問題は警察あるいは法務省あるいは文部省というレベルではもう解決できないし、真剣にこれは——昔に比べれば出生率は大変低下しております。ですから、少年の数は全体的には少なくなっていると思うのです。だけれども、昔に比べて少年犯罪の数は極めて高いパーセンテージに上っている。将来を担う少年の実像がこういうふうな刑法犯に触れる数がふえてくるというのはゆゆしき大問題である、こう思っております。  なぜこんなことを私質問したのかといいますと、連日連夜必ず新聞で報道されないことはないといういわゆる貿易摩擦、経済摩擦が頭にあるのです、何のこっちゃと思うかもしれませんけれども。とにかく、今までアメリカの産業というのは非常に大きな力を持っておった。それがあっという間に日本の産業に追いつき、追い越されようとしておる。アメリカの産業が伸びたのはいろいろな見方がありますけれども、一つには品質管理、いわゆるQCといいますか、QC運動というような、あるいはTQCともいう場合もありますけれども、要するに職場における自分たちのポジション、どういうふうにして品質を高めていくのかということをやりまして、そして飛躍的に企業の実績が伸びてきた。それをいち早く採用したのが我が国の大生産業、企業と言われておりますけれども、我が国がアメリカのQC、品質管理理論をもっと見事に凌駕してしまった。  具体的に品質管理というのは何かというと、小さな職場のグループが個々の特性をお互いが議論し合って出してくる、その人の個性を見つめ合って引き出して、その上で仕事をしやすくするという、結局は品質管理ではなくて、どうも人間管理にあるような気がするのですね。  ですから、要するに教育の場でもどこの場でも、個人の個性をどこまで大事にするかという発想がないのではないか。ただこの人はこういうグループだ、偏差値はこうであるとか、そんなような形でもって一般論化されてしまっていて、本当にその人の適性というか、長所というのを見出せないと思うのですね。先ほど、通知によって本人の適性とか興味とかいうものに重点を置くべきだというけれども、本当にそういうことがあったんだろうかという気がするのです。要するに、この品質管理理論を教育の場でも十分に取り入れる必要があるのではないか、こんなふうに思って、この無職少年の実態について質問しているわけでございます。  これは一つ意見でございますから、それはとんでもない空論である、人間と品質を同一に見るのはけしからぬ、まさに人権侵害であるというかもしれませんけれども、そういう考え方、これにやはり真剣に我々は前向きの姿勢で取り組むべきではないか、こう思うのです。文部省いかがでしょう。
  108. 菊川治

    ○菊川説明員 これから学校教育におきまして、先生御指摘のように、お互いが相互にそれぞれをよく理解して認め合っていくということを学校教育の中におきまして実現していくということは大変重要なことであろうというふうに思っております。
  109. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 では、警察に聞きますが、いわゆる無職少年がふえているということをどのように評価いたしますか。要するに、今のアンケートでは自分の将来に対して悲観的である。にもかかわらず、仕事につかない。一体彼らはどこへ行くのでしょうか。このアンケートを見ますと、何とかなるわというような、そういう数字が出ておりますけれども、いわゆる暴力団、そういうところから手を差し伸べてくるのではないか、そういうことを心配するわけです。
  110. 平沢勝栄

    ○平沢説明員 今先生御指摘のとおり、無職少年は適切な対策を早期に講じませんと、今後ますます非行の泥沼に入る可能性が極めて高いと考えているわけでございます。したがいまして、警察としましては、少年の補導、少年相談等を通じまして、その無職少年の非行の防止に全力を挙げていきたいと考えているわけでございますけれども、先ほど来先生から御指摘ございましたとおり、警察だけで万全の対策を講ずることは不可能でございますので、こうした今回の調査結果を関係省庁にも提示しまして、一緒になってこの問題を考えていきたいと考えております。
  111. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 少年課長、この無職少年の激増ぶりを警察は具体的にどういうふうに見ておられるのか。抽象的にはよくわかるのですが、具体的にこういうことを警察は実は心配しているというような意見を聞きたいのです。
  112. 平沢勝栄

    ○平沢説明員 無職少年がふえているということにつきましては、異論の余地がないわけでございます。なぜふえているかということにつきましては、まだ詳しく警察として分析したわけではございませんけれども、社会的な事実としては、先ほどございましたとおり、一つには高校中退者が非常にふえているといったことがある。それからもう一つとしては、社会全体が豊かになりまして、職につかなくても親の援助等で生活ができるといったような現象もございます。それからもう一つには、簡単なアルバイトの職業がふえておりますので、必要なときにはいつでも収入を得ることができるといったような社会的な事実があるのではないか、このように考えております。  こうした社会的な事実の背景には、ではどういった現象があるかということでございますけれども、この点については今回の私どもの調査結果でもはっきりしたわけでございます。一つには、家庭あるいは学校で親や教師と子供とのコミュニケーションが十分に図られていない、それからもう一つには、少年自身も社会に対してかなり甘い考えを抱いているといったような問題点が浮かび上がってきたわけでございます。
  113. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 そういう問題点が浮かび上がってきて、その対策として警察は何を考えておるのですか。
  114. 平沢勝栄

    ○平沢説明員 警察として考えておりますのは、一つには少年相談活動の強化ということでございまして、進路決定時に適切な相談者がいない、そのために安易な進路決定をしているといったデータが出ておりますので、警察としてもそういった相談活動を強化していきたい。  それから二点目には、無職少年は再非行をするパーセントが非常に高いということでございますので、再非行防止対策について警察そのほか家庭裁判所といった関係機関と協力して適切な対策を講じていきたいと考えております。  それから三番目には、無職少年の中には非行集団、暴力団あるいは暴走族といった非行を犯す可能性のある集団に加入している者が一割を超えているわけでございます。したがって、こうした非行集団の解体、補導といったものにも力を入れていきたいと考えております。  それから四番目には、先ほど申し上げましたとおり、この問題は警察だけでは手に負えませんので、関係機関と協力いたしまして、一番重要なことはこうした無職少年を何とかして復職させる、あるいは場合によっては復学させる、これが重要でございますので、こういったことについて、これは先生の地元でもございます神奈川県警で一生懸命やっていることでもございますけれども、こういったことにつきましても関係機関と協力しまして力を入れていきたい、このように考えております。
  115. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 神奈川県警の話が出ましたけれども、これは何か民間のボランティアが、そういう問題を起こした少年のアフターケアをする、真剣になってその少年と話し合って、そして仕事につくように勧めておるというふうに聞いております。これはどこの県でもできるわけじゃないと思います、そういう篤志家がいなければできませんけれども。それが私がさっき言いました品質管理の問題、一人一人とマン・ツー・マンでじっくり話し合って、本当にその人の個性を伸ばしていくべきだ、そういうようなことを神奈川県でもやっているのかなと思っています。  さて、いよいよ、無職少年、無職少年で来ましたけれども、実際には無職少年のいわゆる凶悪犯化、殺人あるいは強盗、これはどのくらいあるのですか。また、現在どのくらいの伸びで来ておりますか。
  116. 平沢勝栄

    ○平沢説明員 刑法犯で補導しました無職少年は年々増加しておりまして、過去十年間でほぼ倍増しているわけであります。  本年上半期だけを見てみましても約一万八百人でございますけれども、昨年に比べまして三・五%ふえている、少年非行全体が横ばいといった中で無職少年のみがふえている、こういった数字が出ているわけでございます。内容的に見てみますと、無職少年が少年非行全体の中で占める比率というのは一二・六%ということでございますけれども、例えば罪種別に見てみますと、殺人の場合は五三・七%、強盗の場合は四〇・三%、脅迫の場合は三五・四%ということで、凶悪、粗暴な事件を起こす比率が非常に高い、この点が極めて特徴的でございます。
  117. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 その無職少年の犯した中で、殺人罪は何件ございますか。それから、強盗は何件ぐらいありますか。
  118. 平沢勝栄

    ○平沢説明員 本年上半期で見てみますと、無職少年が犯した殺人が二十二件、強盗が百二十四件、それから強姦が六十五件、傷害が六百三十件、恐喝が六百六十三件、こういった数字が出ております。
  119. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 少年の非行化、この上半期では全体的に減ったと言われております。その内訳は、いわゆる学校におけるいじめがなくなった、それから校内暴力が影を潜めてきたということでもって全体としては非行は減った、こう言われておるのですけれども、いじめが出ましたので今聞きますが、これは文部省にお聞きしたいのですけれども、いじめは本当に減ったのでしょうか。
  120. 辻村哲夫

    ○辻村説明員 文部省が調査しております六十一年度中のいじめの発生件数でございますが、今最終集計をまとめておるところでございますけれども、五万二千件余でございます。その前の年度、六十年度、これは四月から十月末まででございますけれども、その間のいじめの発生件数が十五万五千件余というふうに、県の教育委員会などを通しまして私ども承知しておるわけでございます。  そういう意味で、六十年度と六十一年度を比較いたしますと十五万件余から五万件余ということで減っているというふうに言えようかと思うわけでございますけれども、なお、この五万件余という数は現にあるわけでございますので、比較をいたしますと減っている、しかし、なお真剣に対応を考えていかなければならない現状に変わりはないという把握を我々はしておるわけでございます。
  121. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 いじめ等が少なくなったので非行の数が全体としてわずかに減った。だけれども、いわゆる無職少年の犯罪の増加率は急ピッチで上がってきている、特に無職少年がことしの上半期だけで二十二件も殺人を犯している、これは驚くべき数字だと思います。この二十二件全部の背景は大変でしょうけれども、概括的にいいまして、どうしてこういう殺人になってくるのか。強盗の場合には、無職ですから遊興費が欲しいとか動機があると思うのですけれども、殺人は何なんでしょうか。
  122. 平沢勝栄

    ○平沢説明員 殺人につきまして必ずしもすべてについて分析しているわけでございませんが、凶悪犯につきまして幾つかの事例を御紹介いたしますと、例えばことしの一月に警視庁が取り扱ったケースでは、中学三年生が約五人ほどで公園に野宿していた浮浪者をからかいまして、用意していた棒で暴行を加えまして脳挫傷などの重傷を負わせた、こういったケースがございます。(橋本(文)委員「それは無職じゃないでしょう」と呼ぶ)失礼しました。これは無職少年ではございません。  福岡のケースでは、無職少年八人が遊興費欲しさに、仲間の女の友達二人をおとりに車で俳回中の大学生をドライブに誘いまして、人けのないところで集団で殴打して金品を強奪した、こういったケースも、ございます。  殺人事件につきましては、大変申しわけありませんが、具体的なデータを持っておりませんので、ちょっと差し控えさせていただきます。
  123. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 強盗とか恐喝、これは無職ですから当然金品欲しさにという犯行の背景はわかるのですけれども、殺人罪の場合、どうして犯すのかちょっとその内容を知りたいなと思って質問しているのですけれども、わかりませんか、大体の傾向で結構ですけれども。要するに聞きたいのは、やはり金品欲しさから殺人になっているのか、そうじゃない、恨みつらみで殺しているのか、そんなような類型ができるのかということなんです。
  124. 平沢勝栄

    ○平沢説明員 まだ類型化しているわけではございませんけれども、幾つか別なケースがございますので、御紹介させていただきます。  五月に青森で起こったケースでございますけれども、無職少年の二人が少年相談所に侵入いたしまして、そこに入所中の中学二年生の十三歳の少女を連れ出そうとしましたけれどもご当直員に気づかれたということで、その当直員に暴行を加えまして、内臓破裂により死亡させた、こういうケースがございます。  それからことしの一月、静岡であったケースでございますけれども、十七歳と十九歳の無職少年の二人が遊興費欲しさに貴金属店に押し入りまして、ひすい等の指輪を強取して逃走したわけでございますけれども、店員に追跡されたということで殺害をしようと企てまして、持っていましたけん銃を発射しまして瀕死の重傷を負わせた、こういったケースも、ございます。  こういったケースから、全体はまだ詳しく分析はしておりませんけれども、遊興費欲しさあるいは少女と遊びたいといったことからたまたまその現場で犯行に及んでしまった、こういった結果が出ているわけでございます。
  125. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 矯正局長、こういう無職少年の凶悪犯化ということで今後の矯正をどうするのか、要するに一般的な矯正でいいのか、あるいは少年であるということで特別な対策をとることが必要なのか、その辺どうお考えでしょうか。
  126. 敷田稔

    ○敷田政府委員 御指摘のように、無職少年は、例えば昨年の少年院に新しく入った者の中で五九%を占めるというふうに、非常に大きな問題でございます。  一般論からいきまして職業訓練を施すことが必要な者が最も多いわけでございますが、中には十分な教科教育を施されていない者もおりますし、あるいは生活的に精神的に相当のひずみを持っている者もございまして、それによって生活指導課程あるいは教科教育課程、職業訓練課程、そのように分けておりますが、実態といたしましては職業訓練課程の方に行く少年が一番多い、このように思います。  その職業訓練課程によってどういう矯正訓練を施すかということでございますが、無職少年に共通する一番顕著な問題は、勤労意欲の欠如、それから職業生活に必要な知識や技能を持っていないということでございます。したがいまして、勤労意欲をいかに喚起するかということと職業生活に必要な知識、技能というものをいかに付与していくかという点に絞られてくるわけでございますが、職業生活に必要な知識、技能につきましては、免許、資格というものを一応取っていればそれなりの職業につける可能性の非常に高い職種がございまして、それを与えるということに非常に大きな力を入れております。一例を申し上げますと、昨年に全国の五十五の少年院を退院いたした者が五千九百四十三名いますが、その中で合計二千七百九十二名が何らかの資格あるいは免許を取得いたしております。一番多いのが例えば珠算、簿記でありますとか、溶接関係、大きな建設機械の運転技術とか、タイプライターとか、危険物取扱者の資格であるとかということでございます。  退院あるいは仮退院いたす者につきましてできるだけ職業のあっせん、補導というものを私どもは考えておりまして、少なくとも仮退院者につきましては職業についていない者は仮退院を認めないという方針でいたしております。それから見ますと、昨年三千五百五十四名仮退院いたしておりますので、全体で五千九百四十三名でございますが、長期といたしまして三千九百名余りが退院いたしました中で、この三千九百名の中の三千五百五十名余が仮退院をしていることは、相当の少年が職業を見つけて退院していっているということが言えますので、この点につきましてはやや明るい感じを持っております。  以上であります。
  127. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 やはりどうしても職業ということが大事なんですね。だから、こういう仕事につきたくないというような風潮が生まれるということは犯罪の温床であると思う。これは断言してもいいわけです。きょうは労働省を呼んでないのですけれども、これだけそういう働かない人がいる場合に、国の労働省が働け働けといって職業安定所から引っ張りに来るわけにもいかぬでしょうけれども、この辺は、総務庁の青少年本部ですか、これは労働省もかんでおると思いますけれども、どうなっておるのか、だれかわかる人おりますか。——いいでしょう、結構です。  先ほど警察の方は、この問題の対策といたしまして警察だけでは対応できない、これはもう当然と思います。この点について法務省はどうとっておるでしょうか。
  128. 岡村泰孝

    岡村政府委員 少年非行の問題でございますが、これの防止対策といたしまして法務省がかねがね考え、また、努力いたしておりますところの一つといたしましては、やはり少年非行をもたらすような有害な環境を除去する、そのためには暴力団犯罪なり風紀事犯なりといったものにつきまして適正に捜査処理を行っていくということが必要なことであろうかと思うのでございます。もう一つは、非行少年の改善更生に必要な矯正、保護を充実強化するということであるわけでございます。  また、これも法務省だけの力では到底なし得ないことでございますので、関係機関と十分連絡をとりながら、少年非行あるいはその再犯防止対策にさらに一層努力いたさなければいけないと思っておるところでございます。
  129. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 次に、覚せい剤に移ります。  新聞報道なんですが、昨年一年間で三百五十キログラムを押収した、大変な数であるというふうに報道されましたけれども、それがことしに入って既に四百七十二キロ、昨年の押収したキロ数を大幅に上回ってしまう。どれだけ押収するかわからない。史上最高の覚せい剤が出回っているわけでございます。これにつきまして若干お尋ねしたいのですけれども、この覚せい剤で検挙される人たちはどういう実態なんですか。報道によりますと、覚せい剤事犯そのものは減少傾向にある、でもブツそのものは大幅にふえている、犯罪者は減ったけれども量はふえているということなんですが、この実態をお尋ねしたいと思います。     〔委員長退席、井出委員長代理着席〕
  130. 上野治男

    ○上野説明員 お答えいたします。  御案内のとおり、覚せい剤というのは、終戦直後にヒロポンと言われたものが当時の世相というか、混乱の時代を反映してあったわけでございますが、その後ずっとなくなっておりまして、昭和四十五年ぐらいから次第に増加の趨勢を示したわけでございます。そして昭和五十六年に二万人を超す検挙人員を出しておりますが、その後今日までほぼ同じ数の、おおむね横ばいの状態になっておりますので、人員的に見まして若干減ってはおりますけれども、全体の流れとしては決して減っていない、むしろ非常に高い水準を維持しているということで、非常に危惧している次第でございます。  それで、今先生の御質問の中に、特にその中で覚せい剤の押収量が著しく増加しているということでございました。確かに、昭和五十年ぐらい、今から十年ぐらい前には年間を通じて三十キロとか六十キロとかの程度だったわけでございますが、先生御指摘のとおり、昨年は約三百五十キロ、本年は昨日現在で五百五十キロを超えている次第でございます。  これは、一つは終戦直後は国内で製造されたものでございましたが、十年ぐらい前は、大体旅行者に仮装した人たちが外国へ行って三キロとか五キロを身につけて、あるいは手荷物でもって持って帰ってくるということが多かったわけでございます。したがって、せいぜい三キロから五キロが一回で持ってこれる量だったわけですが、最近の事例でいきますと、多くは船舶を利用して洋上で取引をしたとか普通の輸入荷物の中に紛れて持ってくるというようなケース、最近五十キロ以上押収した事例でいきますと、一つは自動車のタイヤの中に入れてきた、あるいは大理石の置き物の中をくり抜いて覚せい剤を入れたもの、サーフィンボードの中をくり抜いてそれに詰めてきたもの、あるいは冷凍野菜のコンテナがございますが、その中に覚せい剤を入れてきたものというようなものもございます。  したがって、最近のように外国との行き来が非常に盛んになっている、あるいは大量の輸出入が行われているということになりますと、そういったような輸入貨物の中に紛れ込んで持ち込むというケースがどんどんふえております。したがって、一挙に大量のものが持ち込まれるということがあったわけで、私ども経験したことのなかった、百キロ以上の一時の押収なんというのはかつて経験したことがなかったわけでございますが、ことしは一挙に二百五十キロというケースが出ております。  そういうことで、最近のケースは、一つは製造が簡単で非常に原価が安い、そして輸入が非常に容易になってくるということで、大量のものが入ってきている。また、そういう見地から私どもで考えなければいけないのは、大量のものが入ってきているので、したがって値段も下がりつつありますので、それを売るために大幅に乱用者がふえつつあるということで、なるほど昨年の検挙数こそ決して多くないけれども、趨勢としてふえているということを非常に危惧している次第でございます。
  131. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 今のお答えの中で、輸入が極めて容易になったというのは密輸がということですか。非常に量が出回ってきまして、必然的に大量にまた売りさばかなければいけない、だから検挙者は少ないけれども、その乱用者はふえているんじゃないか、こういうことでしょうか。覚せい剤につきましては、一般の家庭の主婦までが覚せい剤中毒に侵されつつあるという形で、随分この二、三年新聞でも問題になっておりますけれども、そうすると今のお話を聞きますと、量的にも未曾有のふえ方をしている、すると乱用者はますますふえる、大変心配するわけですけれども、これはどういうような対策をとったらよろしいのでしょうか。
  132. 上野治男

    ○上野説明員 お答えいたします。  昨年の一年間で検挙しました二万一千何百人かの人員を分析してみますと、まず売る側、覚せい剤を売る側と買う側、それぞれ犯罪になりますので、売る側のかなりの部分が暴力団員あるいは暴力団に関係のある者、これは検挙者の大半を占めております。一方で、買う側というのは、暴力団関係者もおりますが、一般市民といいますか、普通のごく当たり前の生活をしている人たちが買うというのが非常にふえております。正確な数字ではないのですが、そのうち三〇%を超える者が女性または未成年というふうに考えております。あるいはもう少し高い数字になるのかもしれないというふうに考えております。  最近、大量に出回っている、値段が安くなっているという形のものの一つとしては、覚せい剤というのは御案内のとおり非常に習慣性が高い、一度やったらやめられなくなるということがございます。そういう面で、最初はただで上げる、打ってやる、だんだんそれが癖になって、一度覚えた味を忘れられないということになると、それに高く売りつけていくということが非常にふえてきております。したがって、最近特に未成年のようなケースの場合ですと、今後長い期間にわたって乱用のもとになるわけでございますが、ある面では同じことを繰り返す再犯者もふえているということが出てきております。
  133. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 乱用者がふえるし、また再犯者もふえるし、ですからその対策をどうしたらいいのでしょうかと聞いたのです。
  134. 上野治男

    ○上野説明員 いろいろな対策があろうかと思います。警察だけでなくて、関係の総理府ですとか厚生省とか、いろいろな省庁の人とも協力してつくっているわけでございますが、警察でまず一つに取り上げておりますのは、やはり覚せい剤の乱用を防止するには、覚せい剤を使ったらば明らかに損をする、あるいは覚せい剤を打ったり使ったりしたらば必ず捕まるということの実態を示していくということで、ともかく覚せい剤については量がいかに少なくとも徹底した検挙をするということが第一番の方針になっております。  次に、覚せい剤につきましては、もちろん中毒になるようなひどい者に対しては、例えば措置入院の制度とかいろいろな制度がございますが、それ以前に中毒にならないよう、あるいは覚せい剤の習慣性が強まらない段階で早期に断ち切っていく。今言いました検挙が一つになりますが、そのほかに私どもでその覚せい剤の怖さということをいろいろな手段を通じて広報啓発するということを前々から力を注いでいる次第でございます。いろいろな種類のパンフレットをつくりましたり、あるいは防犯協会とかいろいろな団体を通じて覚せい剤の怖さを国民に知ってもらうことに特に力を注いでいる次第でございます。
  135. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 覚せい剤の習慣性ということで今お話がありましたけれども、同時に再犯者が多いらしいですね。昨年、昭和六十一年度では再犯者が全検挙者数の五三・七%を占めているということ、捕まえてみると二人に一人は一回捕まった人である。今一生懸命啓発宣伝に努めるとかいうことを言っておりますけれども、実態はなかなか厳しいと思うのです。このいわゆる再犯防止についてはどのように取り組むわけでございますか。
  136. 上野治男

    ○上野説明員 再犯者につきましても新規の犯罪者にしても本質的には同じでございますが、いずれにしろ覚せい剤を使ったら損をする、使えば使うほど損をするということを検挙を通じて示していくというのが何よりも徹した考え方でございます。そして、最近私どもで検挙した中に、かなり中毒化している人あるいはそれに近い状態の人がたくさんおります。中毒になっている人につきましては、精神衛生法等でもって措置入院の制度というものがございます。それにつきましては保健所と協力してそういう入院措置を講じるということもかなりの件数ございます。しかし、私どもとしましてはそれに至らない、それ以前の段階で早くとめていくということが特に必要に考えております。  私どものいろいろのケースを見ますと、覚せい剤の乱用というのが健康に悪いだけでなくて、経済的にも大変な負担になります。常習的に使っている者だったら毎月三十万だ、五十万だという金を覚せい剤に使わなければいけないということで、それが次の犯罪につながる、次の非行につながるということもよくございます。そういう面で繰り返し取り締まっているわけでございます。特に再犯者とかあるいは覚せい剤の常習的な乱用者については私ども内部的にはいろいろな資料をつくり、そういう者を重点的に取り締まるというか、監視するということも制度として行っている次第でございます。
  137. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 矯正局長にお尋ねいたします。  今、覚せい剤の再犯者が昨年の場合に五三・七%だ、こういう覚せい剤犯罪を犯した人に対してはどのような矯正指導をしておるのでしょうか。
  138. 敷田稔

    ○敷田政府委員 矯正施設に入っております覚せい剤事犯者は、御指摘のように非常にふえております。数字を申し上げますと、この五年間を比較いたしますと、新受刑者の中で前回も同一罪名で、つまり同じ覚せい剤違反として入った者は、五年前が二八%でありましたのが昨年は四五%になっております。  こういうものは、先ほどの御質問の中でも指摘されておりましたように精神的あるいは肉体的な依存度の非常に高い物質でございますので、必ずしも長期ではない刑事施設における期間の間にどのようにしてそれを改善更生させ、薬との関係を断たしめるかということは、私どもにとりましても大変難しい問題でございます。いろいろ失敗を繰り返しながらも、よりよい方法を求めてやっているわけでございます。  一応現在行っております対策といたしましては、まず先ほどの密売と自己使用とを分けるということでございますが、私どもの方も、問題点が違いますので自己使用している者と密売者とを分けております。自分でそれを使用している者につきましては、何といってもそれが心身に害悪を加えるものであること、それから社会的にも大変な危険性を伴う行為であるということを理解させることが第一でございまして、どういう形で理解させるかと申しますと、いろいろな視聴覚器材を使いながら、例えばお医者さんを呼んでいろいろな臨床例を話すとか、あるいは経験者の座談会を催して、どんなに苦しかったか、それがいかに愚かなことであったかという経験談をお互いに語り合う。あるいは嗜癖者が入院しております病院などで禁断症状その他、あるいはその後の幻覚症状のあらわれている状態などを目の当たりに見せて自覚させる。それからまた自己使用に至ったその本人のいろいろのカウンセリングを通しまして、どのような状況でそれを使うに至ったか、その問題点を解明しました上で、それをできるだけ解決するような方法でさらにまた個人的なカウンセリングを続けていくというようなことをいたしております。  また、これは非常に意味のあることでございますが、暴力団からの離脱、つまり釈放後の暴力団からの離脱をいかに行うか、それからまた帰住先をどこに選ぶか、帰住先においてはそういうような誘惑に再び負けることのないような環境調整ができているのかどうかというようなことを、これは保護当局といろいろの連絡協調をいたしながら進めていっているところでございます。
  139. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 話が前後して恐縮ですけれども、売る側と買う側、二つに分けなければいかぬと言われましたので、確認したいのです。  売る側については、今言ったようなそういう禁断症状を目の当たりに見せるとかあるいは座談会、これは恐らく関係ないと思うのですね。それは警察が言っているように覚せい剤を取り扱っても結局は経済的には損をするよ、そういう思いを知らせる方がいいかもしれませんけれども、矯正局においては、売る側に対するいわゆる指導と、それから一般自己使用した、使っている人間と、対応が全然違いますね。今のお答えは使っている人の件ですね。だから、こうお聞きしましょう。検挙者数は全体の再犯者が五三・七である、それから現実に服役した人でまた同じ罪名で入ってくる人が四五%にふえた。その四五%の内訳は、売る側は何%なのか、使っている方は何%なのか、これは出ますか。
  140. 敷田稔

    ○敷田政府委員 それは各施設では把握しておると思いますが、私どもの方では覚せい剤取締法違反というだけでございますので、正確な数字は把握いたしておりません。しかし、一般的な印象からいたしまして、その大多数は自己使用の方でございます。
  141. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 刑務所の中においては、禁断症状を見せたり、医者から恐ろしさを聞いたり、あるいは体験者の座談会を聞いたり、それでやめようというような努力をしているようですけれども、現実的にはそれでもまた再犯を犯してしまう。本当に厳しいなという思いがいたします。といって極端に刑を上げるというわけにもいかぬでしょうしね。  覚せい剤につきまして国際会議あるいは条約締結という話があるのですけれども、先般法務省の人も行かれたようですが、概略わかりますでしょうか。
  142. 岡村泰孝

    岡村政府委員 麻薬に関します条約を作成いたしまして世界各国が共通の問題として麻薬対策を取り上げ、これに対して効果的に麻薬の犯罪防止のために協力し合おうじゃないかということで、現在、条約案の作成作業が行われているところでございます。これには法務省といたしましても会合のありますときには担当者を派遣いたしまして、十分条約の中身を詰めるように現在作業をいたしておるところでございます。何分世界各国それぞれの法律制度が異なっておりますので、余り異なった、日本法律制度にはないような制度を持ち込まれますことは日本の国内法との関係でも問題がございますので、そういう点は十分に議論し合い、世界各国が共通してとり得るような制度、そういったものをつくるように日本としても努力をいたしておるところでございます。
  143. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 この条約の問題なんですけれども、これは法務省のみならず外務省、警察あるいは厚生省、関係官庁が全部出席すると思うのですが、要するにこの条約をつくることによって麻薬の事犯が減るのでしょうか。
  144. 岡村泰孝

    岡村政府委員 犯罪防止対策といいますものは、世界各国、効果的な犯罪防止策を講ずることの必要性というものは痛感しているところでございます。現に効果的な犯罪防止策を講じるような努力はなされておるわけでございます。しかし一面、非常に実効性のあるもの、すぐに効果のあるような防止策というものもまたなかなか見出しがたいのも現実の姿であるわけでございます。ただ、麻薬条約ということで国際間の協力をさらに緊密にできるならば、麻薬犯罪防止のための実効も上がるものであろうというふうには考えておるところでございます。
  145. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 先ほどのお話のように、我が国では麻薬そのものは製造されておりませんね。ですから、全部海外から入ってくる。そういう意味では、大変な条約の実効性を期待できるのです。だけれども、実際には覚せい剤を取り締まるということについて、国によっては反対であるという国もあると思うのですよ。要するに、極論すれば麻薬製造を国の財政収入と考えている国も中にはあるでしょう。そういう国は当然その条約には反対するでしょうし、いろいろ国際間の思惑等もあるのですが、国際的に言ってまず麻薬を製造している国に対してどういう国際世論なのか、それは動きはあるでしょうか。
  146. 岡村泰孝

    岡村政府委員 麻薬条約におきましては、麻薬栽培を抑制させるということを一つの方向として具体化しようというふうに作業が行われているところでございます。
  147. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 ですから、その栽培抑制を困るという国はあるのでしょうか。
  148. 岡村泰孝

    岡村政府委員 どうも正面切って麻薬の栽培賛成である、麻薬栽培の抑制反対であるという声はないようでございます。
  149. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 アトランダムで申しわけございませんけれども、次に入管局長にお願いいたします。  昭和六十一年度版の「出入国管理」という本をいただいて、中身を読ませていただきました。どこの省庁でもそうなんでしょうけれども、非常に仕事の量がふえてきて、それに対応する職員の数が少ない、こういう声が聞かれるわけです。管理局のこの本の中でも、いわゆる国際化時代、それから我が国の旅行者の数が膨大にふえたこと、あるいは海外から入ってくる人、そんなことでめちゃくちゃに忙しい、それに対して職員の数が少ないという悲鳴に近いような記載がありましたけれども、正直に言って、職員の数と仕事の量について現場ではどうなんでしょうか。
  150. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 端的に申しまして、過去十年間に日本人の出国者も外国人の入国者も二倍ないしそれ以上増大しておりますし、また不正規業務の方では、退去強制の対象となる人間、退去強制の手続を経て送還された外国人の数は過去十年間に七倍に達しております。こういう状況の中で入管局職員の定数の増加はまことに微々たるもので、十年間に六名ふえただけでございます。こういうことで、空港の職員あるいは不正規業務の摘発に当たる職員の数の不足はまことに目に余るものが、ございます。  しかしながら、そういう中でなおかつ業務の実績を上げていく必要に迫られておるわけでございますので、このために入管当局としてはあらゆる合理化の努力を進めているということでございます。合理化の中には、職員の能力の向上といったこともございますけれども、オフィスオートメーション化の機器の導入あるいは摘発についての体系的な合理化、例えば集中的な摘発の月間を設けて、その月間についてはあらゆる努力あるいは職員を動員してこれに当たるといったような工夫、その他関係国との協力という面についても外務省を通じて努力をしておるということでございまして、ともかく職員の不足ということを御説明する材料には事欠かないのでありますが、そういうことばかり申し上げておっても問題の解決になりませんので、こういった枠内でなおかつ業務の成果を上げることにあらゆる知恵を絞っているというのが入管局の現在の実態でございます。
  151. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 今のお話にありましたOA化の問題は、具体的にはどういう分野なんでしょうか。
  152. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 コンピューターの活用ということでございます。これは出入国に関連する諸情報のコンピューターへのインプットあるいは在留状況に関するコンピューターへのインプットということでございまして、こういった情報は本局において統一的に処理いたしておりますが、現在さらに努力いたしておりますのは、本局におけるこういったデータを各地方局がオンラインで利用することができるように、コンピューターシステムのオンライン化ということを漸次地方に及ぼしているというのが現在の状況でございます。
  153. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 この五月に省令が改正されましたね。いわゆる申請取次制度というのが設けられました。これは九月から発足ですか。この申請取次制度は、学校あるいは大企業等々民間に委託するというふうに聞いております。いわゆる職員の数が非常に少ないという見地から出されたと思いますけれども、問題はないでしょうか。
  154. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 これもただいま御説明申し上げたような事務のふくそうといったことに対する対応の知恵のあらわれでございまして、この五月に省令を改正いたしまして、それまで在留中の外国人が在留期間の更新とか資格の変更の手続をする場合には本人が一々出頭することを求めておったわけでございますが、これを緩和して、一定の枠内においては免除することを可能ならしめるようにしたわけでございます。ただ、これを余りにも緩和いたしますと、在留管理が非常に疎漏になるという懸念もございますので、法務大臣が指定をした、在留管理上信用ができるというふうに認定をした一定の学校あるいは企業等が、それぞれの学校なり企業なりが抱えている外国人の在留管理上の申請について、法務大臣が承認をした職員をしてその在留管理上の申請を代行させることができることにするわけでございまして、企業ないし学校の認定、あるいはその学校、企業に常勤的に勤めている特定の職員の認定、その二つの承認を通じて誤りなく取次制度が運用されるようにということを確保しようとしているわけでございます。
  155. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 これもことしの二月の新聞報道なんですが、法務省外国人の単純労働者に門戸を開放するということに備えて、入管局内にチームをつくって検討しているというのですが、これに対して労働省が断固反対していると言っています。法務省がこういうプロジェクトチームを発足させた主な趣旨は何ですか。
  156. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 御指摘の記事は多分に誤解を招く面がございます。と申しますのは、入管局として現在検討しておりますのは、もし将来単純労働力の導入ということが関係省庁あるいは関係国内各界の見解のもとで認めざるを得ないといった状況になった場合に、入管当局としてはこの問題に、それに伴う悪影響を排除しながらどのように対応することができるであろうかというメカニズムを研究しているということでございまして、導入するかしないか、すべきかすべきでないかということについての研究を行っているわけではございません。もちろんそれも関連の問題として検討の対象にならないというわけではございませんが、検討の中心はあくまでそういう国内世論が形成された場合に入国管理上の観点からどのように対応することができるかというメカニズムの研究をしているということでございます。そのメカニズムという観点からも、いまだ結論を得るという段階には至っておりません。
  157. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 もう時間がありませんけれども、法務省そのものは不法就労の摘発は強化しているわけですね。そういうさなかにこういうような新聞報道があったものですから、あれっというような感じは確かにいたしました。本来ならば入管関係、いわゆる外人の不法就労の問題あるいは外人の刑法犯、この実態をお聞きしたかったのですけれども、時間がなくなりました。  三本まとめて法務大臣に御意見を聞きたいのですけれども、無職少年の刑法犯の激増化かつ凶悪犯化、これは当然矯正局に関係してきます。それから覚せい剤の大量な押収率。それから、検挙されていないけれども乱用で大変たくさんの市民が巻き込まれてくるという現実。それから話が変わりまして、外人の刑法犯あるいは不法就労等々の問題がありますけれども、将来を考えてのことで私が一番心配をしている無職少年の刑法犯の激増化、凶悪犯化について、大臣どのようなお考えをお持ちでしょうか。
  158. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 今橋本委員の御質問の内容をお聞きいたしておって、無職少年事件が多発しているということに対してはまことに遺憾である、憂慮にたえない、こう私もひしひしと感じさせられるわけでありまして、先ほどの答弁の中でも申し上げておるとおり、高齢者社会を迎えようというときに、今少年というのは金の卵のような、日本の国としては大切な立場にある次代を担う人たちだ、こう思います。その少年が非行に陥るというようなことに対しましては、法務省としては、この再発とか非行防止のためにはもろもろの対策を講じておりますけれども、ただ単に捜査処理のみで法的に犯罪が防止できるかどうか、懲罰や何かだけで一体防止できるかというと、先生御承知のような状態で、今日の社会において無職少年が非行に走るということは、やはり有害環境にもある。その有害環境が最近特に進んだということは、先生先ほどお話しのとおりに、円高、貿易摩擦等によって企業も大変縮小されているというような点で、どうしても弱者が追い出される傾向もあるのではないかな。そういうような点等も考えられる。薬物の乱用とか、それから今日日本の国はやはり物が豊富になったというか、豊かになったという傾向もございます。そういう中においての無職少年の立場というのは非常に微妙な点があるな、こう思います。  さような点で、先ほど来の御質問、各省庁の答弁を承知いたしておりますけれども、これは法務省とか警察庁とか文部省だけの問題ではなく、私は先ほどの答弁にもお答え申し上げておりますけれども、各省庁と緊密な連携をとって、協議協議を重ねて、何としても、再発防止はもちろんですが、非行の多発ということに対してはやはり絶対防止していかなければならぬなというような感を持っております。そういうような点で、今もろもろ経済関係については民活の導入とか何かということで大変民活論が出ておりますけれども、私はこういうふうな問題こそ民間、国民、総動員して、これからの少年を守っていく、非行に走らせないというような運動を展開したい。今もそれぞれ警察庁は警察庁として、法務省法務省として、その運動を推進しておりますけれども、さらに各省庁が一体になってその運動を展開していくというようなことも大切なことで、そういうような点で努力をしていきたい。そうして、先生の御質問の中の少年事件、薬物問題、そのような問題に対しても次第に鈍化させ皆無にしていくということが大切だ、こう感じております。
  159. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 ぜひ英知を結集して対処願いたいと思います。終わります。
  160. 井出正一

    ○井出委員長代理 安倍基雄君。
  161. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 きょうは二つの問題、特に後の方の問題を中心にお聞きしたいと思います。  最初は簡単に御回答願いたいのですが、国選弁護人の報酬をちょっと上げてくれという動きもいろいろございまして、聞いてみますと、通常の場合には、民間であれば大体最初手付金二十万、それから終わったら二十万、四、五十万の報酬がある。ところが、国選弁護人の場合にはせいぜい四、五万だという話もございまして、これは一方の話を聞いただけですから、私も両方の意見を聞いた上しゃないと取り上げられないという話もしたのですが、ただ、国選弁護といえば大事な問題でもある、ちょっと格差が激しいんじゃないかという気がいたしました。この点、国選弁護人の報酬についてどう考えているのかということをまずお聞きしたいと思います。
  162. 吉丸眞

    吉丸最高裁判所長官代理者 委員から御指摘がございましたとおり、刑事裁判を適正に運営するに当たって国選弁護人の活動は大変重要なものでございます。そういうことで、私どもといたしましても、国選弁護人の報酬につきましてはその活動にふさわしい額を確保するように、かねてからその増額に努力しているところでございます。確かに、私選弁護の場合の報酬、これはそれぞれの事件によっていろいろあるだろうと思いますが、それとの間にある程度の格差があることは否定できないところだろうと思います。しかし、近年は御承知のとおり財政事情が非常に厳しい状況でございまして、そのような中で、私どもといたしましては財政当局の御理解を得て一般の公務員の給与改定率よりも手厚い引き上げを実現してまいったということでございます。今後ともこの増額につきましては最大限の努力をいたしたいというふうに考えております。
  163. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 何かえらい件数も多いらしいのですよね。だから、本人の負担能力があるなしをもっと厳しく認定して、負担能力がある場合には民間でやらせる、負担能力がない場合には国がやる、そのかわりにいわば報酬を上げてやるというような考えが一応妥当なんじゃないかと私は思います。何かえらい国選弁護の数が多くて、話を聞くと、暴力団なんか安い方がいいからというわけで、どうせ罪になるんだからという調子で国選弁護に来ちゃうという話もありまして、この辺いささか問題であるなと思うので、基本的にはそういう要件を少し厳しく査定して、そのかわりやる者には要するにたくさんきちっとやるというのが妥当な方策ではないかと私は思うのですが、この点について大臣のお考えはいかがですか。その前に、事務当局が一応答えられてもいいですよ。
  164. 吉丸眞

    吉丸最高裁判所長官代理者 確かにたくさんの事件の中には、おっしゃったように被告人は私選弁護人をあるいは頼めるのではないかと思われる事件がないわけではございません。ただ、これは全体から見るとやはり少数であるということでございますし、手続上の問題といたしましては、国選弁護人というのは公判の始まる前に裁判所として一番最初の段階でつけるわけでございます。その段階では御承知の起訴状一本主義等の関係がございまして、裁判所被告人の資力とか生活状態などに立ち入って調査できないという事情もございます。そういうことで、裁判所といたしましては被告人から請求があり、それが一応もっともらしいと見られる場合にはともかく国選弁護人をつけて公判の準備をさせ、公判の結果被告人は資力があるとわかりますとその国選弁護人に支払った報酬等を訴訟費用として被告人に負担させる、そのような運用をいたしておるところでございます。
  165. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今の御説明ですが、後から追徴するということがきちっと行われていればいいけれども、一般には、さっきお話ししたように、民間であれば四、五十万、国選であれば四、五万というのはちょっと格差が大き過ぎるな。だから件数を絞って、それでその分だけ高くしてやる。被告の最初のときにはわからないということでありますけれども、その程度の審査ができないわけではないと思うので、時間がもったいないから大臣の御感想でいいです。
  166. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 これは全く私の感想だと思ってお聞き願いたいと思うのですが、私も先生のおっしゃるように、交通事犯や何かでどうせこの事犯はこうだというのを、大変金も持っておるし資産もあるという人が国選をつけて国の金で弁護をしてもらっているというような点もあるやに聞いておるものですから、いずれこういうような点は所得によって制限して、それこそ後ででも所得の幾ら以上の人には返してもらうとか何かして、今まででも金は少なくても充実した弁護をやっていただいておると思いますけれども、ある程度弁護士さんにもその給与も満足していただくような方法を講ずるということもどうかな、こう感じておりますが、いずれ最高裁の方と相談してみたいというのが私の感想でございます。
  167. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 そういった御答弁をいただきまして、私も特に味方をするというわけではないけれども、常識からいって、特にきちっとした弁護をしてもらうためにはそれなりの報酬を与えてもいいのじゃないか、そのかわりに件数が余り多かったらおかしいから、審査をきちっとすべきだと思います。この点は時間もあれでございますから、せっかくそういった御答弁をいただいたものですから、この辺で打ち切ります。  第二がココムの問題。実は、この問題、私ども連合審査をすべきであるという申し入れをしておったわけでございますけれども、何かえらい時間がないということで、きょうは商工委員会の方でもう採決してしまうというような話を聞いておるのですが、私は、この問題はもうちょっと慎重審議すべき問題ではなかったかと思っているのです。私自身、東芝機械事件はけしからぬと思っていますよ。けしからぬと思っているけれども、余り日本のあれが、言われたらだあっとスタンピードしてしまうという感じが非常に強いのです。このいろいろな背景についてまた外務省からお聞きしたいと思いますけれども、その前に、法務委員会ですから、法体系の中で、外為法の改正で刑が変わりました。それがいわゆるほかの列との整合性を持っているのかどうか、欧米諸国と比べてどうであろうかということをちょっとお聞きしたいと思うのです。  これはむしろ法務省の問題ですね。御存じのように三年から五年に変わる。これは一々質問して答えを聞くと時間がかかってしまうから言いますけれども、米国では十年以下の禁錮、英国では二年以下の禁錮、フランスでは三年以下の禁錮、西独では三年以下の懲役、カナダでは五年以下の禁錮、ノルウェーでは今六カ月のものを今度の問題が起こって五年にする、すぐアメリカにしゃっとおじぎをしてしまったわけですけれども。今度日本の場合、要するに三年を五年にするということでございまして、今までの三年というのは横並びでして、まだ西独、英国なんか二年でやっているわけですが、今度急に五年にするわけです。当然国内法との整合性があると思います。この辺が当然、諸外国と比べてどうのこうのという話はむしろ今お話ししたものですから、いいかどうかという問題はありますけれども、急にぼっと上げるのだったら国内法からしておかしくないのかどうかという問題がまず第一点でございます。これはむしろ法務省にお聞きしたいと思います。
  168. 岡村泰孝

    岡村政府委員 国際的な平和及び安全の維持を妨げると認められるような貨物の輸出あるいは海外への技術提供についての違反行為といいますものは、我が国の対外取引の正常な発展あるいはまた我が国経済の健全な発展を阻害するおそれが強いのでございまして、今回の法律改正は、このような違法行為に適切に対処いたしましてその再発防止を図るという見地から、罰則の強化等所要の措置を講じようとするものでございます。  事態の重要性にかんがみますとき、我が国の国益を害するものと認められる貨物等の輸出入に関します他の法令の罰則規定に照らしましても、今回の改正が我が国の法律体系の中でバランスを失したものになるとは考えられないところでございます。例えば、貨物等の違法な輸出入に関しますほかの法令の罰則規定について参考までに申し上げますと、特許権などを侵害する物品等の輸入禁制品の輸入あるいは文化庁長官の許可を受けない重要文化財の輸出につきましては、いずれも五年以下の懲役に処するということになっておるわけでございます。また、覚せい剤とか大麻とかの輸出入につきましては、さらに重い法定刑が設けられているところでございます。こういった点を考えますならば、今回の罰則の強化が国内法上バランスを失するものとは考えられないところでございます。     〔井出委員長代理退席、委員長着席〕
  169. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 一覧表をつくってもらっていますから、どれがどれとわかるのですけれども、ただ日本の場合には、例えばスパイ防止法だってないのですよ。要するに、私は今スパイ防止法をすぐつくれと言うわけではないけれども、そういうことさえも十分規定されていない、そこにアメリカさんからぽんと言われたらすぐノルウェーは六カ月を五年にいたしますと同じように、日本の場合には恭順の意を表して三年であるところを五年にしたということしか実際のところ考えられないわけですよ。少なくとも西欧並みでいいのじゃないか。やり方さえきちっとしておけばこれでいいのじゃないか。何でわざわざ急に五年にしたのか、非常に疑問に思うのですよ。これは国内法との整合性、今整合性ありませんとも法務省は答えられないと思いますから、今度はむしろ外務省の方にお聞きします。  今度の三年を五年にしたというのは、アメリカさんを怒らしたら困るなというのがまず先に立った改正にすぎないわけですよ。実は、雪見さんという経済学者、彼が有名になる前、私が当選した直後に僕のところへ来たのですよ。ちょうどこれから貿易摩擦が大変になる。余り普通の政治家と会うと利用されるからというわけでね。それで会ってみたら、たまたま彼の弟が私の学んだペンシルバニア大学というところでやはり計量経済学、こんなことをやっておるわけで話がいまして、いろいろ議論をしたことがある。ところが、私はその後市場開放反対論なんというものを出していますから、ちょっと音信が、しょっちゅう会ったわけではないのですけれども、ただ彼の見方というのは私は非常に参考になる。  外務省の方にお聞きしますけれども、雪見さんが「プレジデント」に掲載した論文、これは当然読まれていると思います。そこで二つの点を指摘しているのですね。一つは、中曽根さんがアメリカに行く直前に、大分前ですよ、手土産にこの事件を持っていった。私はそのとき直感したのですよ。ちょうど予算が成立したかどうか、あのころで、それがやはり一番大きな問題になった。それからもう一つは、彼の表題は「「東芝」は嵌められた」、こう言っているわけです。東芝と東芝機械、これは別個な存在なんですね。東芝の社長がぱっと謝ったというとき、これは変なことをしたな、こんなことをしては大変だなと私は直感した。ということは、もしそういうことをすれば、三菱電機でも日本電気でも子会社がちょっとやると全部責任をかぶされちゃうわけですよ。  海外に駐在した人は、いろいろほかの連中と接触してそれなりの理解——私は学生として二年半フィラデルフィア、ペンシルバニアにいたのですよ。そのとき一緒に起居をともにしていましたから、向こうは全然赤裸々な格好でつき合う。そのときに感じたことは、アメリカ人は理屈が通れば割合とそれに素直に従う。ところが、こちらが言うべきことを言わないで引き下がると寄ってたかっていじめるわけです。私はいじめたことはないけれども、たまたまサザンというか、アメリカでは南部にいる連中はばかにされているわけですよ。それが寄ってたかっていじめられている。本当に情けないくらい気の毒だ。それを見まして、アメリカというのはきちっと言うべきことを言わなくて、ただぱっと頭を下げるととんでもないことになるという印象を非常に強く持ったのです。  あるいは外務省の方、私の文芸春秋に書いた「中曽根流ゴメンナサイ外交」というのを読まれたかと思いますけれども、そのときもいろいろ指摘したのでございますけれども、第一に雪見さんの「プレジデント」に掲載した論文についてどうお考えになるか、お聞きしたいと思います。
  170. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 私も雪見先生は非常に著名で、尊敬すべき方だと思っております。ただ、今の「プレジデント」の論文の幾つかの箇所につきましては必ずしも賛同しがたい点があると思います。  具体的には、今先生が指摘されました点で、一つは中曽根総理が訪米された際に東芝事件を人身御供あるいは手土産に持っていかれたという点は全く根拠がないことで、私たちとしては全く同意することができない点だと思います。  もう一つは、これはいわゆるアメリカの陰謀であるとか、日本の特に大きな企業との競争を脅威に感じていわゆる日本たたきをやっている、あるいは東芝がその一環としてはめられたという点につきましては、もちろん私たちはアメリカの政府とかアメリカの議会あるいはアメリカの世論の動向を完全に把握しているわけではありませんけれども、私たちは必ずしも東芝がはめられたというふうには思っておりません。今度の東芝機械のココム違反事件というのは非常に遺憾なことでありまして、これはあくまでアメリカがこれを問題提起しているから深刻であるということではなく、あくまで日本の問題であるというふうに認識をしております。日本の安全保障の問題あるいは日本を含む西側全体の安全保障上非常に大きな問題であるというふうに思っています。それだけに、私たちとしてはこの再発防止策を強化しなければいけないというふうに思っています。  最後の東芝と東芝機械とは別の会社であるということは同感でありまして、東芝機械がココム違反を犯したからといって東芝本社も罰すべきであるという考えは私たちとっておりません。
  171. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 外務省の立場としてそう言わざるを得ない点もあると思いますし、また雪見さんの見方も、それは内部まで立ち入ったことではないわけだから、わからない要素もあると思いますよ。  だけれども、ではちょっとお聞きしますけれども、あなたは東芝と東芝機械とは全く別個のものであるという判断を言われましたが、子会社と親会社と言うときに、例えば役員を派遣して経営にタッチしているとか、そういう非常に密接な関係の親会社、子会社がある、ただいわば株を持っているという場合もある。私は、この東芝と東芝機械の関係を必ずしもはっきり知っているわけではないけれども、どうも日本の場合と外国の場合の親会社、子会社の関係というのが若干観念的に違うのかなと。私がむしろ事前にレクチャーを受けて聞いたらいいのですけれども、その辺は通産の方に聞くべきなのか外務の方に聞くべきなのか、通産の方でもちょっと御説明願えませんか。
  172. 横江信義

    ○横江説明員 先生おっしゃいました親会社と子会社との間の影響力あるいは緊密さという問題でございますけれども、これはそれぞれの会社間の関係で非常にさまざまなものがあろうかと思います。欧米と日本と比べてどうかというところは私たちはっきりした見解を持っているわけではございませんが、一概に欧米の方が緊密である、あるいは日本の方がそうでもないというようなことを言うのはなかなか難しいことではないかというふうに一般論としては思っております。  また、東芝と東芝機械との関係について申しますと、東芝は先生御承知のように東芝機械の過半数の株式を所有している、あるいは三名の役員を派遣しているということで、いわゆる親子の関係にあるということは全くの事実でございますけれども、先ほどの外務省の御答弁あるいは先生の御意見ございましたように、この両者が全く別個の法人であるということも事実でございますし、通常の経営管理と申しますか、日々会社の経営の幾つもの決定が行われておりますけれども、その中で親会社の東芝が一々何かをするということでは全くない。そういう意味で、独立して運営されている、あるいは東芝と東芝機械はそれほど緊密ではないという先生の御理解は正しいものではないだろうかというふうに考えております。
  173. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 この問題は非常に大事でして、この辺を完全に向こうに主張しませんとほかの企業グループに波及するわけですよ。三菱というのは一つの大きな企業グループ、そのどこかがやったら三菱系は皆たたかれる。日本電気関連のがまたやられる。この辺の主張がどうも少し日本側は足らぬのじゃないか。日本というのは、謝ればたちまち許してくれるという観念があるのです。ところが外国の場合には、謝ると、そらおまえが悪かったろうと言われるのですよ。私はそこの点つくづくと学生時代に体験したわけです。  確かに東芝の問題は、この前もちょっと本当に因果関係があるのかどうか、東芝機械の潜水艦の問題、あの辺になるとなかなか灰色の面もあるのです。灰色の面もあるので、証拠を出せと言っても、向こうは軍事機密だ、この辺非常に難しいところですけれども、日本としてはもっともっときちっと頑張るところは頑張るべきじゃなかったかと思う。  ただ、言われたらノルウェーがぱっと頭を下げて、六カ月から五年。日本の国会も大賛成。これは民社党が賛成してしまったらしいものだから、今さら私が言ってもあれなんですけれども、そういうスタンピードしては困る。もっともみにもんで、三年を無理に五年にしなくても、きちんと管理しさえすればそれで十分だったのじゃないか。何も欧州を超えてまでも恭順の意を表する必要もなかったのじゃないかという点と、これからの企業、日本というのは企業グループですから、東芝と東芝機械との切断をきちんとやるべきだったんじゃないか。私ははっきり覚えてないけれども、中曽根さんあたりも、東芝機械がやられたときに、東芝あたりもけしからぬというような、一緒にちょうちんを持ってあおったような感触を受けているのです。  この点ひとつ、私は外務省と通産の方にお願いしたいのであります。これからそういう企業グループというような問題が起こったときにはきちっと、違うんだ、東芝機械はああいうことをやったかもしれぬけれども、東芝の問題じゃないということをきちっと言ってほしいのですよ。その点ちょっと、もう一度外務と通産の、いわば従来における主張ぶりをお聞きしたい。
  174. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 私たちは東芝の親会社と子会社との関係の前に、今アメリカ議会で出ております東芝とノルウェーのコングスベルグという会社の制裁法案、ガーン法案と言っておりますけれども、自体がそもそも望ましいものじゃない、遺憾なものであるということでいろいろと指摘しております。  例えば、アメリカの憲法上ああいう遡及効果を認めるようなものがいいかどうかとか、あるいは今先生御指摘のように、全く別の会社であるにもかかわらず、ただ同じ企業系列あるいは同じグループであるというだけで、当該子会社だけでなく親会社あるいはそれ以外の子会社全部を罰するというようなことは望ましくないということで、今の貿易包括法案の中にはそれ以外にもいろいろと望ましくない保護主義的な条項がいっぱいあります。それらも含めまして、アメリカの政府、議会関係者に在米大使館を中心にして強く働きかけているところであります。  例えば一例を申しますと、松永大使から各行政府の担当の大臣のみならず議会関係者、例えば上院議員百名全部に対して手紙を出しまして働きかけをやっておりますし、下院議員につきましても、有力企業を中心に大半の方にアプローチして、特に九月に再開されます米議会におきまして、こういう条項が少しでもまず削除されるように、どうしても何らかの形で残る場合には大幅に緩和されるように一生懸命努力しておりますし、今後ともやりたいと思っております。
  175. 横江信義

    ○横江説明員 私ども通産省といたしましても、ただいま外務省から御答弁がありました基本ラインと全く一緒でございます。不正輸出に関与していない東芝に対してはもちろん、あるいは東芝機械に対しても、米国が制裁法を制定するということについては、通産大臣みずからも反対の意を表明してございます。これは訪米の際その旨を強く表明してきているところでございます。今後ともそういう方向でいきたいと思っております。
  176. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それから、会社の対応、グループの問題とは別に、従来諸外国においていろいろなココム違反の問題があったわけですね。これはさっきも私、民間の人間と話したのだけれども、こうやって通常、許可を申請したときにうそをつかなければすぐに途中ではれちゃうわけですよ。処罰にもならない。恐らくどこかでうそをついて、そこでもって後でわかっちゃったということが通常だと思うのですよ、ほかの国で罰せられているココム違反事件は。そうでなかったら、申請の段階でちゃんとうそをつかないで持ってくればすぐそこでもってスクリーンされちゃうわけですから。となると、わかる、発覚する動機というのが、アメリカの諜報機関から通報があるとか、特別調査を本当に巡回的にやっているのかどうか、いささかちょっと疑問なので、日本だってなかなか、書類審査が今度の場合には九軸か何かのものを軸の少ないような格好で持ってきたわけです。  そうすると、ほかの国でいろいろ違反事件というのがぞろぞろある。必ずその前後には、恐らくアメリカとの情報交換というか、話があったんじゃないか。となると、アメリカとの間で常に、米国のことはどうでもいい、どうでもいいというか本国ですから、イギリスやフランスやカナダとか、私はちょっと事例を出して、もう既に手元にございますけれども、それは当然何らかの形でアメリカからの通報とか接触とかいうことで発覚して処罰しているのじゃないかと思われるのですよ。その面からいうと、今度の日本の対応というのはもっともっと上手というか、そういうふうにできたじゃないか。  それとの関連で、これはココムじゃないけれども、昔、シベリア・パイプラインという問題がありましたね。あのときは、これはココムじゃないけれども、シベリアにパイプラインを敷くなんというのはソ連の国力にすごい影響するところですよ。それをたしか西欧の会社が受けて問題が起こったときに、その国の政府が米国側の要求を突っぱねたというような話もあるような記憶があるのですけれども。そういう点から見て、今度の東芝機械をかなり擁護するわけじゃないですが、ココムそのものが一時期相当緩和というか、デタントで、まあいいやというような調子で来た時期もあるわけですよ。  だから、今度の東芝機械事件というのは、ココム規制を強化しようというアメリカのいわば大きな戦略ですね。これは雪見さん以外に、最近出た「エコノミスト」に何かそれらしき者の論文が出ています。ちょっと名前、持ってこなかったのですけれどもね。アメリカのそういう対ソ戦略、特に何か北極の氷を割って出てくるソ連の潜水艦があって、大分脅威を受けているとか、それの関連で予算をアメリカ政府としては議会に要求して通さなければいかぬとか、いろいろな要素が絡まって、そこにいいえさを持ってきたというような感じの要素があるかのごとく聞いているのですよ。だから、過去における西欧諸国の対応ぶりを見ると、事前にうまくやったのかあるいは言うべきことをきちっと言っているのか、パイプラインの事件なんかどうなっているのか。それとの関連で、日本の場合には言われた途端に、はいわかりましたと言うような懸念が非常にあるので、その点についてちょっともう一遍、その辺の差を、日本というのはそんなことはないんだというのだったら、その主張でいいですけれども、外務省からお聞きしたいと思います。
  177. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 西側諸国の対応ぶりですけれども、まずココム関係の違反につきましては、各国ともそれぞれの国内法制に従って、もし違反が発覚すれば厳罰に処しているというふうに伺っております。私たちが調査したところでは、アメリカの場合は当然ですけれども、イギリスにおきましても過去二年余りの間で約十五件くらいの違反摘発事件がありまして、違反が証明された企業につきましては懲役及び罰金またはいずれかの刑罰を科せられております。そのほかフランス、カナダ等におきましても、数は少ないですけれども、同じような刑罰の例を承知しております。  先ほど先生が申されましたシベリア・パイプラインの輸出に当たっては、西欧諸国はアメリカを突っぱねたということでございますが、これは一つは事情が違いますのは、パイプラインはココムの品目ではなくて、通常の貿易の一環としてやって、しかもあのときの問題は、アメリカがヨーロッパにある子会社に対して影響力を行使しようとしたという点が一番問題かと思います。これは国際法で言う域外適用の問題があったと思いますが、日本政府も同じように、アメリカ政府が公権力を日本国内で行使しようと思う場合には、域外適用という原則に基づきまして、あくまでアメリカのそういう意図を排するように努力をしております。  こういう違反事件につきましては、一つにはそれぞれの国で違反を摘発することがありますし、日本自身、かつてアメリカの通報を受けるまでもなくココム違反を犯した企業を罰したケースがあります。これは刑事罰あるいは通産省の行政罰のケースもあります。今言われましたように、アメリカ等からの情報に基づく違反摘発ということもありますが、いずれにしましてもこれは、情報は確かに外国から来るかもしれませんが、あくまで日本法律に照らして対処するというのが基本原則でございます。
  178. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私は、シベリア・パイプラインがココム物品じゃないということは当初からわかっておって、そのことを言ったはずですけれども、はっきり言いましてパイプラインの施設というのはソ連の経済というか、軍事力に対する影響力が非常に大きいわけですよ。さっきのグループ問題とともによく言われることですけれども、高度技術になってきますと、民間用か軍事用がわからないグレーゾーンというのが続々出てくるわけです。パイプラインだって、もちろんこれは全然ココム物品じゃないかもしれない、民間用とも言えるけれども、ソ連の国力の増大にはべらぼうな役割を果たす問題であるわけですね。  でありますから、特に私がこれから懸念していますのは、グレーゾーンがある、しかも第三国を通過すればわけのわからぬものは幾らでもあるわけです。そういったときに、もちろん厳しくする必要もあるけれども、グレーゾーンに一つ一つ口を入れ始めたら、もういわゆる東欧貿易などは全然できない話になってくる、しかも第三国に対する貿易も難しくなってくる、この辺の運用が非常に難しい問題をはらんでいるわけです。今度外務省が共管にしてくれという話で、最後には重要な話は相談するというようなことになったわけですけれども、アメリカから言われて、そのたびごとに外務省が通産省にぎゅうぎゅう言って締めていくという話になってくると、私は別に外務省を信用しないわけじゃないけれども、何となく外務省の姿勢、言われたらはっというような姿勢が目につくので、これは非常にある意味からいうと行き過ぎになる可能性もあるのじゃないか。えらい外務省の悪口ばかり言って悪いけれども、私は外務省にはいろいろ知り合いもいるし、友人もいるから余り言いたくはないのですが、例の「中曽根流ゴメンナサイ外交」というのを読んでおられますか、今度の改正がこういう非常に大きな問題をはらんでいる。  もう通ってしまうものですから、私も今から委員長に連合審査をやらしてくれ、大蔵とやらしてくれと言って反対と言おうと思ったら、途端に民社党が賛成と言うものだから、私は何とも言いづらいのですけれども、アメリカというのは国会と政府のタッグマッチで来るのですよ、国会があれだから何ともならないよとか。日本だってもうちょっとそれをやりなさいよ、ぼくはそう言っているのだ。幾らでもタッグマッチのあれをやってやりますよ。本当に東芝機械問題というのは、確かに東芝機械そのものはあれかもしれないけれども、ノルウェーと同じようにだあっと全面降伏して、これから言われることについてはいはいと言い始めたら、日本の独自性はどこにあるのだ。本当に因果関係があったのか、非常に濃いと言っているが、本当だったらその証拠を見せろともっと開き直っていいわけですよ。確かに長期的にはソ連のあれには役立ったかもしれないが、それに似たようなことは幾らでもある。さっきのパイプラインだって、相当ソ連のあれにはなっているわけですからね。  私がきょうここへ立った趣旨は、この法案を今からつぶせというわけではないのです。これからの運用についてよほど慎重にしなければいかぬ。第一はやはり企業グループの問題。第二はグレーゾーン、民間であるのかあれであるのか。高度技術というのは非常に難しい問題で、それをどう扱うか。第三国経由のものがあったらどこまでチェックできるか。私が聞くところによりますと、中国に対するのは別の規制になってどんどん緩やかになっている。中国を通じてソ連に行くことはないと思うけれども。この辺のいろいろな問題を考えますと、その運用を非常に慎重にしてもらわなければいかぬ。そのときには、今までのようにアメリカに言われたらはっというような態度ではまことに困るわけですよ。その点、念を押す意味で、私は外務省と通産省の答弁を聞きたいと思います。
  179. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 ただいま先生が御指摘になりましたように、今度の外為法改正に当たって、六十九条の四というところで、通産大臣は必要なときには外務大臣の意見を求められる、あるいは外務大臣は国際的な平和及び安全の見地から特に必要な場合には意見を述べられるという条項が入ったわけですが、いわゆる自由貿易をいたずらに阻害するという意図は毛頭なく、あくまで自由貿易が原則でありますけれども、やはり日本の安全保障あるいは西側の安全保障の見地から、少なくともココムの参加国の間で申し合わせた輸出規制についてはきちっとやる、その規制さえ守られておれば、あとは東西貿易も含めて自由貿易をどんどんやっていただくというのが大原則であります。今度の外為法の改正によりまして、さらに輸出管理はきちっとなりますけれども、貿易を阻害するつもりは全くありません。  それと今のグレーゾーンの問題につきましては、西側の技術も東側の技術も常に進歩しておりますので、古くなった技術あるいはソ連やソ連圏の諸国が持っている技術をいつまでも規制する意味はありませんから、ココムにおきましては毎年ココムリストのレビューが行われております。特に日本は緩和に向けて一生懸命努力している方です。ただ、どんどん新しいハイテク製品ができておりますので、それらの品目、特に戦略性の高い品目につきましては、同時に新しく追加していくということはやむを得ないことかというふうに思っております。  いずれにしましても、アメリカに言われるから輸出規制をやるということではなくて、あくまでも日本の安全保障、西側の安全保障、あるいは西側国際社会の一員として日本が何をやるべきかという日本独自の基準に基づいて対応するという方針でおります。
  180. 関野弘幹

    ○関野説明員 アメリカとの通商問題にかかわる日本の対応について、アメリカのしたたかな戦略に対してもっと主張すべきことを主張すべきではないかという先生の御指摘でございます。  通産省といたしましては、日米貿易摩擦問題に対しては冷静かつ着実に対応していくことが最も重要だというふうに考えておりまして、自動車部品等の個別の問題あるいは内需拡大、輸入拡大等について今後とも適切に対応していきたいと考えております。しかし同時に、アメリカに対して必要な意見を主張するということはおっしゃるとおり重要でございますので、例えば東芝制裁法案につきましては、ココム違反の制裁というのはそれぞれの国がみずからの責任で行うべきものであって、他国の違反に対して一方的な制裁を科すことについては反対であるという意見を明白に表明しているところでございます。  ただ、今回の事件というのは、アメリカ側は西側の安全保障について大きな影響を生じかねない重要な問題であると受けとめているものでありまして、我が国の認識もこれと全く同様でございます。今回の事件はむしろ我が国みずからの問題として受けとめるべき問題だというふうに考えておりまして、政府、産業界それぞれが再発防止に全力を挙げるべき問題だと考えている次第でございます。
  181. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 もう時間もございませんからこれで打ち切りますけれども、法務大臣の御感想を聞くのもちょっと場違いかと思いますが、今までの議論を聞かれての御感想を最後に一言お伺いして、おしまいにいたします。
  182. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 先生先ほど御指摘のとおり、この問題は、商工委員会で間近に採決しようというときに法務大臣がとやかく申し上げるとかえっていろいろと影響を与えると思いますけれども、閣僚の一人として先生に申し上げますると、東芝機械と東芝との問題については、政府自体としては、外務大臣も通産大臣も総理も一体になってこれは全く筋違いであるという点で強く抗議しておることは、先生も新聞、テレビで御承知だろう、こう思います。  ただ、これは私の私的な感覚で申し上げると、アメリカの会社というのは、社長、取締役、専務、監査役というのは別個にして、大株主のオーナーが陰の方に隠れていていつでも社長なり役員の首をすげかえるというような点もございますので、日本も東芝機械と東芝との関係をそんなような印象で受けとめたのではないかなという感じもございますけれども、ココムのこの法の問題については、国内として今までココムについて忘れておった、先ほど先生のおっしゃるように半分忘れておったような印象で、改めて認識を深めるためにもこの際法の改正をしておくべきだという点もあったと思いますので、中曽根さんがアメリカに追従するためではないということをひとつ閣僚の一人として弁解させておいていただきたいと思います。
  183. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 まだ言いたいことがございますけれども、時間も来たものですから、これで質問を打ち切ります。
  184. 大塚雄司

    大塚委員長 安藤巖君。
  185. 安藤巖

    ○安藤委員 東京地方検察庁がこの八月の四日に、日本共産党幹部会委員であり国際部長の緒方靖夫氏宅電話盗聴事件で不法不当にも起訴猶予処分をいたしました。この盗聴事件は、プライバシーはもとより、言論、表現、思想、信条、結社の自由及び通信の秘密など基本的人権をじゅうりんする卑劣きわまる犯罪行為であります。しかも、本件は憲法及び警察法にも反して、電話盗聴という違法行為を警察組織の重要な部分である警備警察組織が行ったという、民主主義社会では絶対に許されてはならない事件であります。さらに、公党の幹部、政党の活動を盗聴という犯罪行為で探知しようとしたもので、議会制民主主義の根幹を破壊するものであります。この起訴猶予決定は、この権力犯罪を将来にわたって免罪しようとするものであって、断じて許されません。まず最初に強く抗議をいたしておきます。  そこで、刑事局長にお尋ねいたしますけれども、この盗聴事件について犯人が特定しておりながら強制捜査をしなかったのは何かほかから圧力があったからではないかとも思うのですが、この点どうですか。
  186. 岡村泰孝

    岡村政府委員 強制捜査を行うかどうかにつきましては、当該事件捜査いたしております東京地検捜査全体の中で判断すべき事柄でございます。  本件につきましては、東京地検といたしましては、氏名の判明いたしました現職警察官につきましても任意捜査で取り調べを行うのが適切であるという判断のもとに、逮捕という強制捜査に至らなかったものと承知しているところでございます。  また、本件に関しまして何らかの裏取引と申しますか、あるいは圧力といいますか、そういうものがあったからそういう結果になったのではないのでございまして、あくまでも東京地検の自主的判断において、それが本件の適切な捜査であると考えてそういたしたものと承知いたしておるところでございます。
  187. 安藤巖

    ○安藤委員 非常に重大な事件ということで、一般の国民の皆さん方も、後で識者の意見なども紹介いたしますけれども、当然これは強制捜査されるに決まっておる、そして初めの段階でわかってきた二人の警官は逮捕されるに違いないと思っておったのですよ。検察当局でもそのことは篤と御承知のことだと思うのですが、この被疑者の逮捕、それからそればかりではなくて、警察庁警備局さらには神奈川県警及び被疑者宅などの家宅捜索を含めて、本当に強制捜査をすべきものであったと思います。検察の首脳がこの事件発覚の当初、国民に納得してもらえる処理をする、こういうふうに言っておられるのですね。この起訴猶予処分というのは全く国民は納得していない。国民の納得する処理をすると言っておられたその約束を裏切ったのじゃないですか。その点はどういうふうに考えておられますか。
  188. 岡村泰孝

    岡村政府委員 国民の納得が得られる処分を行うという発言をしたかどうか、私承知いたしておらないところでございますが、いずれにいたしましても、本件につきましては東京地検といたしまして適正に捜査を行い、また、適正に処理を行ったものと承知いたしておるところでございます。
  189. 安藤巖

    ○安藤委員 なぜ強制捜査をしなかったのかということをいろいろ新聞記者の皆さん方がお尋ねした際に、いろいろの弁解をしておられるようですけれども、ここは国会なんですよ。そして、衆議院の法務委員会です。普通、こういうような重大犯罪で、しかも実行犯がわかったというような場合は、まず実行犯を逮捕する。しかも、全般的な経過からすると指揮者がわからないのだ、不起訴理由の中に一つそういうようなのが入っておるようでありますけれども、指揮者がわからないというのなら、それこそその実行犯を逮捕して厳しく取り調べることによってその指揮者をきちっと突きとめる、これが本来の捜査のあり方じゃないですか。私も長年弁護士をやってきましたけれども、そういうふうに検察当局はやってきたはずです。今回は全然違うのですよ。この辺はどういうふうに思っておられるのですか。
  190. 岡村泰孝

    岡村政府委員 あらゆる事件について強制捜査が行われるわけではないのでございまして、検察当局といたしましてはケース・バイ・ケースで、その事件に応じまして適切な捜査方法、すなわち強制捜査を行う場合もございますし、任意捜査を行う場合もあるわけでございまして、それは事件に即応いたしまして検察が適切に判断するところであると承知いたしております。
  191. 安藤巖

    ○安藤委員 最初に申し上げましたように、この盗聴事件は非常に重大な事件です。まさに強制捜査に踏み切って捜査を貫徹する、そしてきちっと起訴する、これが本来の行き方だと思うのですよ。ましてや、これは自治大臣が国会の答弁で捜査については協力すると約束しているのですよ。ところが、この約束にもかかわらず警察の方が逆に、例えばあの問題の二〇六号室からいろいろな証拠物件を運び出してしまう、裁判所が証拠保全に出向いたにもかかわらずそれを妨害する、あるいは名前の出てきた警察官をどこかへ隠してしまう、こういうようなぐあいに警察の方が組織的にこの盗聴事件を隠そうとしていた、こういうような事実が出てきておるわけです。となれば、これは余計強制捜査せぬことには事件の核心に迫っていけない、これは当然のことだと思うのですが、そういうようなことも考えなかったのでしょうか。
  192. 岡村泰孝

    岡村政府委員 東京地検といたしましては、本件の事案の内容その他捜査の進みぐあい、そういったものをいろいろ総合的に判断いたしまして、逮捕という強制捜査には至らなかったものであるというふうに承知いたしております。
  193. 安藤巖

    ○安藤委員 まさに強制捜査をするべき事件だというふうに私は思うのです。  そこで、いろいろあるのですが、幾つかの内部告発があるのです。内部告発の内容から見ますと、部外者では絶対にこれはわからぬ、部内者でなければわからぬ、そういうような信憑性の高い、だからそういう意味で内部告発というのですが、その内部告発は、地検特捜部にも、あるいは警察庁にも、それから告訴告発人の方にもこれは出されているものなんです。だから、検察当局としても篤と御承知のはずだと思うのですが、警察庁の幹部の名前が明らかになっているわけなんですね。組織犯罪の解明には、こういうような幹部、そしてその幹部の所属している組織に対する捜査というのはどうしてもなされなければならぬと思うのです。この点についての捜査というのはなされたのでしょうか。
  194. 岡村泰孝

    岡村政府委員 東京地検といたしましては、必要な捜査は行ったところでございますが、捜査の具体的な中身については申し上げかねるところであります。
  195. 安藤巖

    ○安藤委員 具体的に申し上げれば、警察庁の中野分室、これは普通サクラ班というふうに言われているそうですが、このキャップをしておった、最近異動されたそうですが、堀貞行警視正もその一人なんです。それからさらに、同じく警察庁の公安一課の課長補佐永井警視、さらに警察庁の間藤、前川の二人の技官、こういうふうに具体的に名前が挙がっているのです。これらの人はこの盗聴を神奈川県警に要請をしたり、あるいは指導をしたりした人物、まさに首謀者というふうにこの内部告発ではされているのですよ。  こういう人をきちっと取り調べないと、あるいは取り調べたかどうかとはっきり言えぬというようなことでは、これは本当に捜査を尽くしたか、こういう疑問をどうしても持たざるを得ないのです。一般の新聞の論調でも、あるいは一般の国民の皆さん方でも、どうして神奈川県警が警視庁管内の盗聴事件をやったのかということはもう極めて疑問だということにもなっているのですね。その辺のところも、こういう人たちをきちっと取り調べればわかってくると思うのです。今私は明確に、具体的に名前を挙げました。こういう人たちに対して捜査をしたのかどうか、はっきりとお答えいただきたいのです。
  196. 岡村泰孝

    岡村政府委員 先ほど申し上げましたとおり、本件につきましては不起訴処分となりまして、現在付審判請求ということで、裁判所の審判に付することが請求され、裁判所が審理するという段階でございます。そういった点からも、捜査の具体的な中身の事柄については申し上げかねるところでございます。
  197. 安藤巖

    ○安藤委員 本当にきちっと捜査をしたというのであれば、少なくとも今私が申し上げましたような人たちに対してやりましたというのが筋だと思うのです。ところが、そういうようなことも今おっしゃったような理由でお述べにならないということは、やはりまともな捜査は行われていなかったのだなという疑惑を一層国民の前に深くするものとしか言いようがないというふうに思います。  そこで、起訴猶予の理由、これは新聞の報道によりますといろいろあるのです。幾つかの新聞を総合してみましたが、大体同じような項目がありますから、ほぼ間違いないと思うのですが、盗聴した目的が自分の利益を図ったのではない、これが起訴猶予にした理由の一つに挙げられております。そうなると、昔の話を言って恐縮ですが、例えば義賊の鼠小僧次郎吉、これは貧乏人のために金持ちから金を盗んできてばらまいてやれ、こういうようなことで全く自分の利益を図っておるのじゃない、こういうような行為はみんな無罪か起訴猶予か、こういうことになってしまうのじゃないですか、そういうことでいいのですか。
  198. 岡村泰孝

    岡村政府委員 不起訴の理由といたしまして個人的利欲に基づくものでないということが挙げられているところでありますが、それが全部の理由ではないわけでございまして、不起訴の幾つかの理由のうちの一つであり、そういったいろいろな理由を総合いたしまして起訴猶予という処分をいたしたということであります。
  199. 安藤巖

    ○安藤委員 これからその理由については一つ一つお尋ねしていきます。  それとの関連で、これも一つの理由ですから、これを理由の一つだというふうにおっしゃる以上は、先ほど私がお尋ねしたそういうことも一つの理由になってくるのではないか、こうなるのですよね。  それで、この実行した警察官、あるいは指揮指導、計画をしたもっと上部の警察官などももちろんそうですが、この実行した警察官は、この盗聴に成功すれば手柄になって出世をできるというようなことも考えていたのじゃないかと思うのです。こうなると、全く個人の利益を図ったのではないとは言い切れない面があるのじゃないのかなというふうにも思っておるのです。  それからもう一つの起訴猶予の理由として、指揮命令をした者が特定できない、だから実行犯だけ処罰すれば酷だ、これもその理由の一つに挙げられておるのですが、こうなりますと、暴力団の組織絡みの暴力事件、下っ端の暴力団員が実際の暴力を振るうというような場合、あるいは麻薬犯罪で実際にヤクを取引するヤクの売人、こういうのは上の方からの指示に従って実行するわけですよ。そういう場合に、上の方を追及しないで下だけ罰するのは酷だということになって、これは見逃すのですか、起訴猶予ということにするのですか。そんなことはないでしょう。その点どうですか。
  200. 岡村泰孝

    岡村政府委員 ただいま御指摘の点は、一般論として申し上げますとやはりケース・バイ・ケースということでございまして、事案に即して起訴あるいは不起訴という処分を行うということになると思っております。
  201. 安藤巖

    ○安藤委員 事案に即してケース・バイ・ケースと言いますが、今私が申し上げておる二つ目の起訴猶予の理由、これでいけば、私が申し上げました暴力団の麻薬取引の関係については、どうしてもそういうことになってくるのですよ。  それから、実行した、実行犯となっておる二人の警官、これは警官ですから、こういう盗聴行為がいかぬことだとわかっておったはずです。しかも、法を厳正に適用するというのが警官の仕事ですよね。そういうことがわかっておって、そういう職務の人間がそういうことをやったということは、まずそのことだけでも見逃すことができない、とてもじゃないが起訴猶予なんということでは済まされない、そういう問題でもあると思うのですが、その点はどういうふうに考えておられるのですか。
  202. 岡村泰孝

    岡村政府委員 東京地検といたしましては、およそ三つの理由を具体的に挙げまして、これらのものを総合いたしまして、本件については起訴猶予の処分に付したというふうに聞いているところでございます。  そのおよその三つの理由といたしましては、第一が先ほど来御指摘のありました個人的利欲に基づくものではないということ。それから第二の理由は、現職警察官二名を含みます神奈川県警警備部公安第一課所属の複数の警察官によって行われた疑いがある。ところで本件の被疑者両名につきましては、犯行の首謀者あるいは責任者的立場にあるとは認めがたいということ。三つ目といたしましては、警察当局におきましては本件について遺憾の意を表し、被疑者両名に対し相応の懲戒処分を行うとともに、このような不法事犯の再発防止に努めることを約し、また被疑者両名の上司等の更迭なども行いまして、本件を契機として警察当局がみずから情報収集活動のあり方を見直し、これを是正する趣旨で右のような一連の更迭等が行われたというふうに認められ、これらのことを通じて今後本件のような事犯が発生しないことを期待し得ると認められること。こういった諸般の事情を総合いたしまして、被疑者両名につきましては盗聴未遂、電気通信事業法違反で起訴猶予という処分をいたしたと承知いたしているところであります。
  203. 安藤巖

    ○安藤委員 起訴猶予の理由についてはまだこれからもちゃんとお尋ねしますからと先ほど言いましたから、そんなに先走りしなさるな。  そこで、私が今お尋ねした実行犯である二人の警官が、警官であるから、そして違法であることを知っておるにもかかわらず行った、この点はどうなるのかという私の質問には全然答えになっていないのじゃないですか。
  204. 岡村泰孝

    岡村政府委員 先ほど申し上げましたように三つの事情を総合いたしまして起訴猶予処分に付した、こういうことであります。
  205. 安藤巖

    ○安藤委員 全くよくわからぬですね。結局、本件をきちっと捜査をして起訴する、とことんまで捜査をするということになったら警察組織の根幹を揺るがすことになる、えらいことだということで事件をもみ消したものとしか言いようがないと思うのです。だから、これは警察、検察当局が自浄作用が全くないということをみずから暴露したものだというふうに思います。  そこで、先ほど神奈川県警の複数の警察官というお話がありましたね。そして、ほかに指揮命令をしている者がある、二人は実行したのだ、こういうお話が今ありました。となると、おっしゃるとおりとして実行犯である二人以外に警察官がまだおる、そういう点では実行犯である二人の警察官の個人的な行動ではない、いわば組織的な犯罪だ、こういうような受けとめ方を検察当局としてはしておられる、こういうことですか。
  206. 岡村泰孝

    岡村政府委員 組織的犯行かという点でありますが、東京地検といたしましてはこれを組織的犯行とまでは認定していないところであります。すなわち、起訴猶予にいたしました被疑者両名を含むさらに複数の警察官によって行われた疑いはぬぐい切れないところがあるということでございます。しかし、そうだからといって直ちにこれが、例えば神奈川県警の公安一課が組織的に行った犯行であるというところまでは認定していないのであります。
  207. 安藤巖

    ○安藤委員 少なくとも、この実行犯と目されておる人たち二人だけが勝手にやったのではない、そのほかにまだ数名の人たちがおるんだ。神奈川県警警備部の公安一課がぐるみとしてやったのではないにしても、二人が勝手にやったのではないんだ。そういうようなことですね、今おっしゃったのは。私は今お尋ねしたとおりを言うたのですが、違うならまた後で答弁のときに言ってください。  先ほどおっしゃった起訴猶予の理由のうちの一つにも、この二人は責任ある者ではない、指揮者というわけでもないと。そういうようなことからすると、またほかに指揮者、責任者というのがあったということを踏まえての話なんですよね、これは。だから私はそういう意味で、二人が勝手にやったのではない、そういう意味では組織的な犯罪ではないのか、こういうふうにお尋ねしておるわけです。もう一遍どうですか。
  208. 岡村泰孝

    岡村政府委員 先ほども申し上げましたように、起訴猶予にいたしました被疑者両名を含む複数の警察官によって本件犯行が行われた疑いがぬぐい切れないということと、起訴猶予にいたしました被疑者両名が本件の首謀者あるいは責任者的な立場にあったとは認められないということであります。
  209. 安藤巖

    ○安藤委員 だから私が今大体まとめたことと同じようなことだと思うのですが、とは認められないというのは、ほかに首謀者、指揮者があってやったんだ、こういうことを言外に言っていることになると私は思うのですがね。ところが、これは新聞の報道ですが、警察庁の方は個人的な先走り行為だというようなことを言っているというのがあるのです。こうなると、検察庁の認定している事実とは違うということになりますね。
  210. 岡村泰孝

    岡村政府委員 検察の認定は、先ほど来私が申し上げたとおりであります。
  211. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、指揮者あるいは責任的立場にあった者ははっきりしない。それをはっきりさせなければ本件はわからぬわけですよ。どうしてきちっと強制捜査をされなかったのか。そこがわからないんだと言っておられるのです。わからなかったらなぜそれをやらなかったのか、これは当然出てくる疑問じゃないですか。もう一遍お尋ねします。
  212. 岡村泰孝

    岡村政府委員 御指摘のような点につきましても捜査はいたしたところでありますけれども、最終的には、今申し上げましたようなおよそ三つの事情、こういったものを総合勘案いたしまして起訴猶予という処分にいたしたということであります。
  213. 安藤巖

    ○安藤委員 どうしてもわからないですね。指揮者、責任者がわからぬ、ではなぜそれをやらなかったのか、当然出てくるあれですわ。だから、今の刑事局長の答弁は全然もう答弁にはなっていないと断ぜざるを得ないと思うのです。  ところで、先ほども更迭人事があったというようなことも挙げられて、人心一新ですか、人事の刷新ですか、それも起訴猶予処分の理由の一つだとおっしゃったのですが、警察庁並びに神奈川県警のこの盗聴事件に関連しての人事は引責人事だというふうに見ておられるのでしょうか。
  214. 岡村泰孝

    岡村政府委員 本件を契機といたしまして、警察当局がみずから情報収集活動のあり方を見直し、これを是正するという趣旨で行われたものであるというふうに判断いたしているところであり、ます。
  215. 安藤巖

    ○安藤委員 これは七月二十八日の地方行政委員会で山田警察庁長官が、疑惑一掃のため人事を刷新した、こういうふうに述べておるようですが、その前に、これは予算委員会あるいは地方行政委員会での質問に対して、定期異動を早めたものだ、こういうような言い方をしておるのですね。そうしますと、今おっしゃった今度の盗聴事件に関して今後こういうことのないように人事を刷新したのだというようなこととはまた違うことになるわけですね。定期異動を早めただけだというような話とはまた違ってきますね。
  216. 岡村泰孝

    岡村政府委員 山田警察庁長官の国会委員会での答弁でございますが、御指摘のような答弁もありましたけれども、昭和六十二年七月二十八日の衆議院地方行政委員会におきましては、要するに警察の行う情報収集活動は適法妥当な範囲で行うべきものであって、国民からいささかの疑惑も招いてはならない、こういった点を踏まえて人心を一新して国民の期待にこたえる警察活動を展開すべく人事の刷新を図ったという趣旨の答弁をしているところであります。
  217. 安藤巖

    ○安藤委員 だから、山田警察庁長官の答弁はがらっと変わっているのですよね。前は定期異動を早めただけだと言って踏ん反り返っておられた。ところが、現職の警察官が盗聴事件の嫌疑を受けて検察庁の取り調べを受けた、だから国民に疑惑を受けた、それを何とかするために、疑惑を一掃するために人事異動を行ったのだ、こういうことですね。  だから、そうなると、この盗聴事件で警察官が関与している疑いを持たれて取り調べを受けた。関与している疑いを持たれなかったら取り調べを受けないわけですからね。そして現に起訴猶予になっておるわけです。起訴猶予というのは、事実関係はそのとおり犯行がある、しかし先ほどおっしゃったようなあれこれの理由からもってこれは猶予にするのだというだけのことですから、事実関係は存在しておるわけです。これはちゃんと検察庁が認めておるわけです。となると、この盗聴事件に関連して現職の警察官が関与した疑いで取り調べを受けた、これを原因としてそれに対する国民の疑惑を一掃するためだということになったら、やはり本件に関連しての疑惑を一掃するための人事だということになるのじゃないですか。
  218. 岡村泰孝

    岡村政府委員 先ほど来申し上げたように、検察といたしましては、これら一連の異動は、本件を契機といたしまして情報収集活動のあり方を見直し、是正する趣旨で行われたものであるというふうに判断をいたしているのであります。
  219. 安藤巖

    ○安藤委員 警察庁の警備局長の辞職、それから先ほど言いました堀貞行中野分室の責任者、この人は科学警察研究所、いわゆる科警研の総務課長に転任をしているわけですね。私が先ほど来首謀者の一人ではないかと言った人ですよ。これも今あなたがおっしゃったような趣旨の異動だ、あるいは辞職だ、こういうふうに見ておられますか。
  220. 岡村泰孝

    岡村政府委員 警備局長の異動については、私が申し上げましたような趣旨に理解をいたしているところであります。もう一人の方の異動はいつごろだったでしょうか。あるいは不起訴処分後ではなかったでしょうか。その辺のところ、ちょっと私何とも申し上げかねるところであります。
  221. 安藤巖

    ○安藤委員 この盗聴資金のもと、これは公金で支出されたというようなこともいろいろ新聞にも報道されておりますけれども、そういうことといい、それから今お尋ねし、お答えをいただいた人事の異動といい、やはり結局はこれは一神奈川県警の問題だけではなくて、警察庁ぐるみの組織的犯罪だということを私どもは考えておるわけです。そういうふうに断ぜざるを得ないと思うのです。だから、検察庁はそれを知っておったと思うのですよ。それを握りつぶした。これが本件のこの起訴猶予処分だというように私どもは断ぜざるを得ないわけです。  そこで、先ほど来おっしゃってみえておったもう一つの起訴猶予の理由に、警察の方からの再犯防止の誓約があった。これは聞くところによりますと文書が二度にわたって、だから二通の文書が出されているというふうに聞いておりますが、それはどういうような内容のものですか。
  222. 岡村泰孝

    岡村政府委員 再発防止に努めるという趣旨の文書でございますが、これは神奈川県警本部長が東京地検検事正あてに提出いたしました書面でございます。  これにつきましては、東京地検におきまして本件処分を決定するに先立ちまして捜査の結果、神奈川県警本部警備部公安一課に所属する二名の警察官が関与していたことが判明いたしましたので、この事実を神奈川県警に通報いたしますとともに、神奈川県警としての対処方針をただしたところであります。これを受けまして神奈川県警から本件について遺憾の意を表し、事件に関与した警察官に対しては相応の懲戒処分を行うとともに、再発防止に努めるという趣旨の書面の提出があったのであります。  もう一点でありますが、お尋ねでありますので御説明いたしますと、先ほど来申し上げました警察庁山田長官の七月十四日の国会答弁の趣旨につきまして必ずしも明確でありませんでしたので、私の方から警察庁に対しましてその真意を尋ねたのであります。それに対しまして警察庁から、これらの人事異動というものは現職警察官が盗聴に関与したということで取り調べを受けるに至ったことを踏まえて関係部門の人事を刷新し、人心を一新して警察のあり方を見直し、是正すべき点は是正して国民の信頼を得るようにいたしたい、こういう観点から行った異動であるという趣旨の書面をいただいたということであります。
  223. 安藤巖

    ○安藤委員 やはり先ほど私がお尋ねしましたように、定期の人事異動を早めただけだ、そんな答弁じゃおかしいじゃないか、もうちょっとはっきり何とかならぬかということを東京地検の特捜部の方から山田長官の方に問い合わせで、それで、いや実は人事の刷新のためにこうこうこうやったのだ、本件盗聴事件と関連があるのだというような内容のものを出させて、そして何とか格好をつけて起訴猶予、こういうふうになったといういきさつが今のお話でよくわかりますね。  それで、再発防止に努める、だからもうこれで絶対こんなことは行われないというふうに東京地検の方はお考えになったのだろうか。本当に反省して、これから日本共産党に対する情報活動は違憲、違法なものであるから絶対やりませんと書いてあったのですか。ないでしょう。それから被害者である緒方靖夫氏に対して、あるいは私ども日本共産党に対して、申しわけない、謝りますということが書いてあるのですか。そういうことがきちっと書いてなかったら、今後絶対やらぬという保証には絶対にならぬじゃないですか。どうしてこれが再発防止の保証になるとお考えになったのですか。
  224. 岡村泰孝

    岡村政府委員 まず、文書のやりとりにつきまして若干補足いたしておきます。  御承知の一連の人事異動につきましては、新聞等におきましては、いわゆる本件に関連いたしました異動である、辞職であるという趣旨の報道がなされていたのでありまして、それに対しまして警察庁が国会で主要ポストについて必要な人事の刷新を図ったという趣旨の答弁をされましたけれども、その趣旨が必ずしも明確でなかった、新聞報道等と違うといいますか、新聞報道と違う趣旨のようにも受け取れておった。その点で、真意がどういうものであるかということを尋ねた。その結果として文書をいただいた、こういうことであります。  その次に、再発防止という点でございますが、これは神奈川県警の本部長が提出した書面でありまして、この文書によりまして再発防止に努めるということを確約しております以上、そのとおり実行されるものと検察は判断をいたしているものと承知しております。
  225. 安藤巖

    ○安藤委員 これは一般の新聞が大々的に報道しておりますように、警察、検察庁の裏取引というふうに言っておりますが、やはりそうだなとの印象を余計深くせざるを得ないところであります。  そこで、アメリカのウォーターゲート事件では、御存じだと思うのですが、ニクソン大統領、大統領が辞任しておるのですよ。そして、その事件中心人物、中心人物ですよ、七人のうち重い者は六年八カ月ないし二十年の懲役刑、これは不定期刑ですから。それから、もみ消し工作に関連した者八人のうち重い者は二年六カ月ないし八年の懲役刑。私ここに一覧表も持ってきておりますけれども、それから盗聴に関与したという人物六人のうち重い者は二年ないし六年の懲役刑、こういう結果になっているのですよね。本件盗聴事件もこのウォーターゲート事件と同じような性格の犯罪だというふうに思うのです。  そこで、これはまさに中曽根内閣自体の責任も免れないと思うのですよ。向こうは大統領が辞任しているのですよ。そこで大臣、関係ないことないですよ。中曽根内閣自体の責任だと私は申し上げておるのです。大臣はどういうふうに責任を感じておられるのですか。
  226. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 先生からは、この問題についてはしばしば御質問がございました。私自身厳正に対処させたいというようなことでお答えを申し上げておるわけでございまして、その点で、先生今御承知のとおり、一部現職警察官が、先生からは御不満のようでございますが、起訴猶予の処分を受けたということは、一部警察官のみならずして、警察官が地検捜査の対象になったということ自体、国民の警察に対する信頼を損なうようなことになったということは否めない事実である。そういうふうな点で、事件は起訴猶予ということではございますけれども、やはり法は健在なりという点で、私は検察陣がよくやってくれたという点で認識をいたしております。
  227. 安藤巖

    ○安藤委員 ちっとも重大性を認識しておみえにならぬなという印象を深くいたしました。アメリカのウォーターゲート事件は、先ほど申し上げましたように大統領辞任にまで追い込まれた大事件なんです。  そこで、その関係で、時間がありませんからごく簡単に申し上げますけれども、言論界、簡単に二つだけにしますが、例えば毎日新聞は社説で、「憲法が保障している通信の秘密を侵すものであり、プライバシーの権利をじゅうりんするものであることはいうまでもない。」「公の存在である政党に対する権利の侵害は、議会制民主主義に対する挑戦である。」「不起訴としたことは、国民の期待を裏切るものだといわざるを得ない。」こう言っています。朝日の社説は、「ことが重大だというのは、法秩序を守るべき立場にある警察が、盗聴という違法、違憲の行為を犯そうとしたことである。」と指摘した上で、この起訴猶予という決着はまことに不透明なものと言わざるを得ない、こういうふうに言っているのですよ。  それから、これも時間がないから省略しますけれども、評論家の室伏哲郎さんとか佐藤忠男さんとか、あるいは中央大学の刑法専門の渥美東洋さんといった学者の方々も、これは一種の政治決着である、そして「起訴しないのは感心しない。たとえ末端の警察官でも、正当な根拠もなく、人の行動を盗聴によって監視したのだから、起訴して裁判所で全容を明らかにすべきだった。また、もっと徹底した捜査をすべきだった。」こういうふうに言っておられるのですよ。  こういうようなことからすると、この問題はまさに警察庁長官、自治大臣の責任にもなる問題なんです。だから、こういうようなこともきちっと受けとめていただいて、重大な犯罪なんだ。先ほどの大臣の答弁はだれかがおつくりになった原稿だろうと思うのですが、先ほど来私がいろいろ事件の内容がこうだというふうに申し上げておる内容がちっともわかっておらないのじゃないかというふうに思うのですようんうんとうなづいておられますが、最後にもう一遍どうですか。今、世論を背景にして私は申し上げておるのですが。これは国民の声ですよ。
  228. 岡村泰孝

    岡村政府委員 本件につきましては、検察が自主的な判断に基づいて行った起訴猶予処分でございますし、また、検察に与えられました訴追裁量権の適正な行使として、検察が諸般の事情を考慮いたしまして起訴猶予という処分をいたしたものであることを御理解いただきたいのであります。
  229. 安藤巖

    ○安藤委員 断じて理解はできませんということを申し上げまして、私の質問を終わります。      ————◇—————
  230. 大塚雄司

    大塚委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  外国人登録法の一部を改正する法律案審査のため、参考人の出頭を求め、意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  231. 大塚雄司

    大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選、出頭の日時につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  232. 大塚雄司

    大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る二十八日金曜日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時九分散会