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1987-09-02 第109回国会 衆議院 文教委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年九月二日(水曜日)     午前九時三十分開議 出席委員   委員長 愛知 和男君    理事 北川 正恭君 理事 高村 正彦君    理事 中村  靖君 理事 鳩山 邦夫君    理事 町村 信孝君 理事 佐藤 徳雄君    理事 鍛冶  清君 理事 林  保夫君       逢沢 一郎君    青木 正久君       井出 正一君    古賀 正浩君       佐藤 敬夫君    斉藤斗志二君       杉浦 正健君    谷川 和穗君       渡海紀三朗君    松田 岩夫君       渡辺 栄一君    江田 五月君       沢藤礼次郎君    中西 績介君       馬場  昇君    有島 重武君       石井 郁子君    山原健二郎君       田川 誠一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 塩川正十郎君  出席政府委員         文部大臣官房長 古村 澄一君         文部大臣官房総         務審議官    川村 恒明君         文部省初等中等         教育局長    西崎 清久君         文部省教育助成         局長      加戸 守行君         文部省高等教育         局長      阿部 充夫君         文部省高等教育         局私学部長   坂元 弘直君         文部省学術国際         局長      植木  浩君         文部省社会教育         局長      澤田 道也君         文部省体育局長 國分 正明君         文化庁次長   久保庭信一君  委員外出席者         厚生省保健医療         局感染症対策室         長       伊藤 雅治君         林野庁林政部林         産課長     高橋  勲君         通商産業大臣官         房企画室長   土居 征夫君         通商産業省機械         情報産業局情報 近藤 隆彦君         処理振興課長         文教委員会調査         室長      高木 高明君     ――――――――――――― 委員の異動 八月二十五日  辞任         補欠選任   山原健二郎君     藤原ひろ子君 同日  辞任         補欠選任   藤原ひろ子君     山原健二郎君 同月二十六日  辞任         補欠選任   逢沢 一郎君     熊谷  弘君   井出 正一君     染谷  誠君   佐藤 敬夫君     渡部 恒三君   石井 郁子君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   熊谷  弘君     逢沢 一郎君   染谷  誠君     井出 正一君   渡部 恒三君     佐藤 敬夫君   寺前  巖君     石井 郁子君     ――――――――――――― 八月二十日  河内飛鳥地域遺跡保存に関する請願左藤恵  君紹介)(第四九六号)  同(原田憲紹介)(第四九七号)  同(石橋政嗣君紹介)(第五九五号)  同(中山太郎紹介)(第五九六号)  大学審議会設置反対等に関する請願山原健二  郎君紹介)(第五四四号)  盲・ろう・養護学校寄宿舎における防火設備等  の整備充実に関する請願田中美智子紹介)  (第五四五号)  大学審議会設置反対等に関する請願中西績  介君紹介)(第五七三号)  同(山原健二郎紹介)(第五九七号)  大学審議会設置反対に関する請願中西績介  君紹介)(第五七四号) 同月二十八日  四十人学級の早期達成等に関する請願井上一  成君紹介)(第六五七号)  同(近江巳記夫紹介)(第七一二号)  同(中野寛成君紹介)(第七四四号)  同(原田憲紹介)(第七四五号)  河内飛鳥地域遺跡保存に関する請願北川石  松君紹介)(第六五八号)  同(中山正暉紹介)(第六五九号)  学校教育における珠算教育強化に関する請願  (中山正暉紹介)(第六六〇号)  公立学校女子事務職員育児休業制度適用に関  する請願石井郁子紹介)(第七一〇号)  私学助成大幅増額等に関する請願藤田スミ君  紹介)(第七一一号)  大学審議会設置反対に関する請願石井郁子  君紹介)(第七四三号) 同月三十一日  学校教育における珠算教育強化に関する請願  (伊藤茂紹介)(第八六三号)  公立学校女子事務職員育児休業制度適用に関  する請願有島重武君紹介)(第八六四号)  同(馬場昇紹介)(第八六五号)  大学審議会設置反対に関する請願外一件(中  沢健次紹介)(第九四七号) 九月一日  カラオケに係る著作物使用料規程を白紙に戻  し、音楽文化発展に関する請願安藤巖君紹  介)(第九八〇号)  大学審議会設置反対に関する請願外二件(池  端清一紹介)(第九八一号)  同外一件(石橋大吉紹介)(第九八二号)  同外一件(上田卓三紹介)(第九八三号)  同外二件(奥野一雄紹介)(第九八四号)  同外二件(川崎寛治紹介)(第九八五号)  同外一件(河上民雄紹介)(第九八六号)  同外二件(河野正紹介)(第九八七号)  同外二件(串原義直紹介)(第九八八号)  同(上坂昇紹介)(第九八九号)  同外四件(佐藤徳雄紹介)(第九九〇号)  同(坂上富男紹介)(第九九一号)  同(沢藤礼次郎紹介)(第九九二号)  同(清水勇紹介)(第九九三号)  同外一件(田口健二紹介)(第九九四号)  同外十五件(馬場昇紹介)(第九九五号)  同外十一件(村山喜一紹介)(第九九六号)  同外二件(村山富市紹介)(第九九七号)  同(上田哲紹介)(第一一二八号)  同外一件(大原亨紹介)(第一一二九号)  同外六件(川崎寛治紹介)(第一一三〇号) 同(沢藤礼次郎紹介)(第一一三一号)  同外七件(嶋崎譲紹介)(第一一三二号)  同外一件(辻一彦紹介)(第一一三三号) 同(水田稔紹介)(第一一三四号)  同外三件(村山喜一紹介)(第一一三五号)  同外四件(山口鶴男紹介)(第一一三六号)  同外一件(山下八洲夫君紹介)(第一一三七号  )  河内飛鳥地域遺跡保存に関する請願藤田ス  ミ君紹介)(第九九八号)  学校教育における珠算教育強化に関する請願  (虎島和夫紹介)(第九九九号)  同(中尾栄一紹介)(第一〇〇〇号)  同(平沼赳夫紹介)(第一〇〇一号)  同(吹田愰君紹介)(第一〇〇二号) 同月二日  学校教育における珠算教育強化に関する請願  (今枝敬雄紹介)(第一一五九号)  同(大塚雄司紹介)(第一一六〇号)  同(梶山静六紹介)(第一一六一号)  同(小杉隆紹介)(第一一六二号)  同(左藤恵紹介)(第一一六三号)  同外十三件(坂田道太紹介)(第一一六四号)  同(玉生孝久紹介)(第一一六五号)  同(塚原俊平紹介)(第一一六六号)  同(戸塚進也紹介)(第一一六七号)  同(中村喜四郎紹介)(第一一六八号)  同(中山利生紹介)(第一一六九号)  同(丹羽雄哉紹介)(第一一七〇号)  同(額賀福志郎紹介)(第一一七一号)  同(山崎拓紹介)(第一一七二号)  同(伊吹文明紹介)(第一二八二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 八月二十六日  教育費父母負担軽減等に関する陳情書外一件  (第五五号)  義務教育施設等整備促進に関する陳情書  (第  五六号) 九月一日  教育費父母負担軽減等に関する陳情書外三件  (第一〇六号)  義務教育施設等整備促進に関する陳情書  (第一〇七号)  社会教育社会体育事業充実拡充に関する陳  情書  (第一〇八号)  学校図書館充実に関する陳情書  (第一〇九号  )  国公立幼稚園教員待遇改善等に関する陳情書  (第  一一〇号)  埋蔵文化財の発掘に関する陳情書  (第一一  一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  文教行政基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 愛知和男

    愛知委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤徳雄君。
  3. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 きょう私に与えられました時間は極めて短時間でございますので、幾つかの点をまとめてまいりましたから、端的にお尋ねをいたしますので、どうぞお答えの方もそれに合わせてわかりやすく、簡略にお願いしたい、こう思います。  高校野球が終われば夏休みも終わり、こういう印象を国民皆さん皆お持ちになっているわけでありますが、あの暑い中をきびきびした躍動のドラマとでもいいましょうか、私も全部を見るわけにいきませんでしたが、何回かテレビを見たわけであります。特に塩川文部大臣のごあいさつどもテレビ拝見をいたしまして、いいごあいさつをなさったな、こう思っておりました。練習が少ない割には始球式も、すばらしいとは言わないまでも、まあまあ大変な努力をされた投げ合いだったなというふうに拝見をしたわけであります。どうぞ、ああいうすがすがしい気持ち教育全体にみなぎるように、ひとつ私ども努力をいたしますが、大臣初め文部当局も、これに対応するような状況づくりをぜひしてほしいということを冒頭申し上げておきたいと思います。  質問通告のないまま、甚だ恐縮なのでありますが、最初に一点だけ大臣にお伺いをいたします。  先般、私ども、党の文教部会を開きまして、文部省の方から係の方においでいただいて、概算要求についての御説明を承りました。それはそれで結構なのであります。いずれ私の同僚議員がその問題については質問するはずでありますから、全体的な問題ではなくて、この前にも問題になりました栄養職員事務職員国庫負担法適用除外の問題が、新聞などを拝見いたしますと、大蔵当局がまた構えているというふうに伺うわけであります。これは大臣答弁の中でも明確にされておりますとおり、明らかに栄養職員なり事務職員というのは基幹職員であるということを位置づけられた答弁を思い起こしているわけでありますが、またぞろ適用除外などがかけられることを非常に懸念をするわけでありますけれども、ひとつ大臣の心構えと考え方冒頭お伺いしたい、こう思います。
  4. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 この問題につきましては、昨年同様、我々といたしましては、学校運営における基本職員であるという位置づけはちっとも変わっておりませんし、また予算折衝におきましても、昨年同様、これは堅持してまいりたい、こう思っておりまして、その気持ちにはいささかの相違もございません。
  5. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 どうぞひとつ、ただいまのお答えのように頑張り抜いていただきたい、こうお願いをするところであります。  さて、問題の第一であります。御承知のように、この臨時国会大型補正予算が通過をいたしまして、内需拡大に向けたその対応法案絡みでかなり進められていることも事実であります。いわば緊急経済対策につきまして二、三お尋ねをいたします。  その第一は、本臨時国会で決定をされました大型補正予算の中における緊急経済対策のうちに、文教関係に織り込まれました事項は一体何でしょうか。
  6. 古村澄一

    古村政府委員 今回の補正予算の中に盛り込まれました要素は二つございまして、一つは、公共投資拡大という観点から教育研究用施設整備あるいは設備整備ということで金額といたしまして一千二十七億円、それから第二点目に、外国製品購入促進ということで、教育研究用機器等あるいは病院診療用機器等外国からの購入経費が二百六十七億円、合計いたしまして千二百九十四億円が今回の補正予算に国費として盛り込んだわけでございます。  内容は、公共投資等拡大でいいますと、公立学校施設整備費が三百六十三億円、それから国立学校施設整備につきましては三百二十二億円、社会教育社会体育施設整備費で三十八億円、教育研究用機器等設備で二百四十七億円、病院診療用機器等設備で四十一億円、その他の施設が十六億円。それから外国製品購入ということで全体は二百六十七億でございますが、その内訳は教育研究用機器等設備が百六十九億円、病院診療用機器等設備が三十六億円、学術図書購入費が三十二億円、美術作品購入費が三十億円、合わせて総体千二百九十四億円ということでございます。
  7. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 御承知のとおり、諸外国との貿易摩擦の激化、円高ドル安、これによって生じておりますさまざまな問題は極めて政治的にも解決が迫られている問題であります。特に輸出産業関連中小企業の不振は大臣も御承知のとおりでありますが、倒産、それに伴うところの失業、そういうものが極めて大きく出されておりまして、まさに雇用不安が増大していると言っても過言ではない状況がたくさんあるわけであります。このような現状を克服するための内需拡大、これは日本の経済産業発展にとりまして、国民生活充実等にとりましても極めて重要な課題だと思っているところであります。  それで、特に私は教育との関連について二つの問題を提起して大臣見解を承りたいし、そして文部省対応見解お尋ねしたいと思います。  その第一であります。先般、私は、木材関係につきまして二、三度、山の現地調査に入ってまいりました。そして、民有林山林所有者あるいはそこに働いている労働者、もちろん国有林の問題を含めてでありますが、私の地元であります東白川郡の棚倉町、古殿町、そしていわき市の山林現地を見て回りまして、幾つかの意見を託されてまいりました。つまり、特に昭和五十三年以降木材の価格が暴落している、そのことによって山の手入れ植林等に意欲を失っている、こういう意見が共通して出されました。あるいはまた後継者がいない、そしてまた、間伐しても利用度がなく売れない、木造校舎建築の見直しあるいは建築促進、そして文部省指導強化ができないか、そして間伐材を利用した児童生徒用の机やいす木材で使わせていただけないか、そしてまた国産材の全面的な活用をお願いしたい、こういうさまざまな意見が出されました。  まず最初に、農水省の方はいらっしゃっておりますか。こういう関係者の要望について、そのほかたくさんあるだろうと思いますが、特に山と緑を守るという観点に立って、あるいは内需拡大という観点に立った場合に、どのようにこの種の問題を受けとめられているのか御見解を承りたいと思います。
  8. 高橋勲

    高橋説明員 国産材を中心に木材需要拡大を図っていくことは、我が国林業木材産業活性化していく上で極めて重要であると考えております。このために森林・林業木材産業活力回復五カ年計画というものをつくりまして、これに基づいて木造建築物普及促進のシンボルとなるようなモデル木造施設の建設、それから中央地方を通じて木材需要拡大活動促進する、木材新規用途開発実用化等緊急対策を講じておるところであります。それから関係省庁に対しましても木材利用促進について協力をお願いしているところでありまして、文部省関係では学校施設木造化内装本質化等について積極的に取り組んでいただいておるところでございます。
  9. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 それでは、文部省の方にお尋ねをいたします。  木造校舎建築基準はどのようになっておられますか。
  10. 加戸守行

    加戸政府委員 学校建築に対します補助といたしましては、六十一年度でございますけれども鉄筋建築と同様に木材建築単価を引き上げまして、現在のところは鉄筋木造いずれを問わず同一の基準を適用しておる状況でございます。
  11. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 先ほど現地の方の意見を申し上げて、お聞きになったと思いますが、木材を利用した机、いす教材教具奨励をするという考えはありますか、ありませんか。
  12. 加戸守行

    加戸政府委員 学校建築につきましては、こういった木材使用に対します要請あるいは学校環境ソフト化人間化と申しますか、そういった視点で、六十年八月に、教育助成局長通知をもちまして木造建築奨励を推進しているところでございます。  机あるいは設備等木材化といいますか、そういった観点につきましては、具体的にそういった通達あるいは基準等のような形での奨励は特段のことは行っておりませんけれども現地でどのような教材を使われるかというのはそれぞれの市町村あるいは学校において御判断いただくことでございますけれども、そういった木造の、あるいは木による教材教具というものの使用がだんだん各市町村においても考えられていっている状況だと理解しております。
  13. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 私の手元に「林業 福島」という冊子がございます。これは福島県が出しているものでありまして、特に最近でありますけれども、私の選挙区でありますが、伊達郡川俣町立川俣小学校で、まさに木造で、すばらしい体育館建築されました。この冊子の中に、冒頭、町長さんが幾つかの点を書いていらっしゃるわけでありますが、ちょっと御紹介いたします。「今回使用した集成材は、強度・均質性耐久性耐火性に優れ、寸法安定性寸法精度信頼性が高く、複雑なトラストの天井にならず、スッキリした体育館に適した大空間を得ることができました。」と述べております。そして、「使用した木材は、北海道産のえぞ松、とど松を主要構造材として」とも紹介をしているわけであります。近隣からいろいろ視察が絶え間なく来ているようでありますが、まず木材温かみと申しますか、そういうものが雰囲気として非常に感じられるということで好評であります。  これは体育館の例でありますけれども、全国にそういう事例幾つかあると思いますが、そういう紹介できるような事例がありましたらお知らせをいただきたい。そして、まさに木材の不振にあえぐ今日の不況の状況を克服するためにもぜひこの点について目を向けるべきだ、こういう考え方に私も立つわけでありますが、木造校舎建築に対する文部省考え方指導方針等がありましたらお示しをいただきたいと存じます。
  14. 加戸守行

    加戸政府委員 先生、先ほどおっしゃいましたように、木造建築等児童生徒温かみ潤いを与える環境である、あるいは木材需要拡大というような視点からの各方面からの声もございまして、五十九年度のいわゆる補助単価といたしましては、学校建築におきます内装仕上げを本質化するという場合の補助単価かさ上げ措置を講じたわけでございます。また六十年八月には、先ほど申し上げましたような局長通知をもちまして、木造建築奨励通知を出させていただきました。さらに六十一年度におきましては、従来から極めて低かった木造建築単価鉄筋単価と同様に大幅に引き上げるというような措置を講じさせていただきますと同時に、いわゆる木の教育研修施設に対します補助制度を創設しまして、学校環境木造化促進によって潤いのあるものとするような措置を進めておる段階でございます。
  15. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 大臣見解はいかがでしょうか。
  16. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 木材を利用して人間温かみを与えるということで、木材建築が非常に注目されてきておりまして、先ほど助成局長が申しましたように、建築単価を同一にするとかいろいろな施策を積極的に進めておりますが、最近非常に喜ばれておる施設として、京都府に亀岡市というのがございます。そこの公民館は全部木造でやりまして、これが非常にユニークな建物であると同時に、木材活用を非常にうまく、その材質を適所にうまく使っておる一つサンプルとして非常に研究されてきております。私はこういう例を木材業者——私も木材政治連盟役員をやっておりますので、そこへお願いしたりしております。  それともう一つ、これは地方自治体でも努力していただきたいと思うのですが、大阪府に、二年前からでございますが、中学生に木材に親しむ講座を特別につくりました。それは大阪府下木材団地というのがございまして、それは集材することと加工することと販売とが一体となった団地でございますが、その中に団地側が、木材の加工とサンプル、いろいろな見本、そういう木材教室というのをつくりました。これが年間四、五万人の学生の見学コースになっております。こういうことから非常に認識を変えてきておると私は思っておりますが、そういうことにつきましても、各地方ごとの特色を生かしてもらうように今後も指導を続けていきたいと思うのでございます。
  17. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 木材関係役員をやられているそうですから、ぜひひとつ促進方をお願いしたい。これは何も私どもの県だけでなくて全国的な問題であります。特に国産材使用するということは非常に重要な意味を持っておりますし、そういう意味でも、文部省はもちろんのこと、大臣も今後とも御努力をお願いしたいということをお願いして、次に入ります。  さて次の問題は、学校教育へのコンピューター導入の問題であります。これは最近新聞幾つか報道されて、国民関心を呼んでいる内容であります。とりわけ電機業界は、御承知のとおり輸出の問題をめぐりまして大変な状況に今達してきているわけであります。いろいろ電機産業労働組合等に連絡を私もとらせていただきまして、いろいろな資料もいただきました。それで、幾つかの点についてお尋ねをし、文部省考え方をお聞きしたいと思います。  まず最初に、御承知のとおり臨教審の第一次答申には次のように出されております。「改革の基本的考え方」「(八)情報化への対応」の中で述べられている中身というのは次のことであります。すなわち「二十一世紀に向けて情報化という新しい時代を迎えつつある。我が国がこの歴史的変化に柔軟に対応し、物質的、精神的に豊かな社会を築いていくためには、教育システムもそれに対応したものに改善されていかなければならない。」こう述べられているわけであります。明後日、臨教審皆さん参考人としておいでいただいていろいろ意見の開陳をするわけでありますが、今日、学校教育へのコンピューター導入については関心が非常に強いし、それと同時に、やがて高校大学、そして社会人になったときを想定した場合にコンピューターが操作できなければ仕事ができない、そういう状況に実は来ているのではないだろうかという感じさえするわけであります。冒頭文部大臣のこれについての御見解お尋ねいたします。
  18. 西崎清久

    西崎政府委員 先生御指摘のとおり、これからの情報化社会に備えまして、初等中等教育においても情報的なマインド、資質を養う、それからまた、学校教育におきまして、教育機器としての情報機器でございますが、これを活性化のために利用する、これは大変大事なことでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、既に高等学校段階では、職業教育関係昭和四十五年から機器導入を図り、そして教員研修等を行っておるわけでございます。問題はこれからの小学校、中学校普通科高校におきまして、コンピューター導入し、情報的な考え方のもとに教育をどういうふうに展開していくかということでございまして、今後の課題といたしましては、教育内容における情報機器の位置づけ、それから先生方研修の問題、それから設備導入の問題、多々あるわけでございます。  内容の問題につきましては、私ども指定校等を設けていろいろ研究もしておりますし、今後予想される課題としてのいろいろな内容面での各教科・科目における扱いを来年の学習指導要領で盛り込んでいきたいというふうに思っておるわけでございます。  それから設備関係につきましては、助成局、私ども協力いたしまして、何と申しますか、導入についての糸口としていろいろな研究のための導入も今努力しておる最中でございます。  研修につきましても、来年度の予算にも若干の計上をしておりますが、今後ともこの点についての、教育問題についての大きな課題として私ども重点的に検討を進め、努力をしたい、こういうふうに考えております。
  19. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 政府は、昭和六十年度の予算に新教育機器教育方法の開発として、これは新規事業でありますが、二十億一千三百万円を盛り込んだはずでありますが、間違いございませんか。そしてまた、それらについての使途の内容はどういう状況になっておるのでしょうか。
  20. 加戸守行

    加戸政府委員 昭和六十年度の予算におきまして、新教育機器教育方法の開発事業に要する経費といたしまして、二十億一千三百万円の経費を計上いたしております。このうち若干、教育方法の開発研究というようなソフトの問題としましての委託費等が一千百万円でございまして、残りの二十億二百万円はいわゆる教育機器購入費補助という形で執行しているわけでございます。  現在、小中学校あるいは高等学校におきまして、教育用に活用されておりますパーソナルコンピューターあるいはワードプロセッサー、さらにはビデオディスクといいましたような新しい教育機器使用いたしまして、教育方法の開発が行われているわけでございます。そういった教育方法の開発等を行います学校あるいは市町村に対しまして、当該学校購入します機器についての、小中学校でございますと二分の一、高等学校でございますと三分の一の補助率をもちまして補助を行っておるわけでございます。  具体的には、六十一年度の場合でございますと小中学校八百七十七校、高等学校二百五校、特殊教育小学校四十四校、合計千百二十六校に対しまして、パーソナルコンピューターが七千四百六十四台、ワードプロセッサーが七百四十台、その他のビデオディスク等が二百十二台というのが具体的な予算の執行状況でございます。
  21. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 昭和六十年三月二十九日に、文部省社会教育審議会教育放送分科会が開催をされたはずであります。その際に行われました討議の内容、概要で結構でございますが、もしおわかりでしたらお知らせをいただきたいと思います。
  22. 澤田道也

    ○澤田(道)政府委員 今お話がございましたように、昭和六十年度から機器が現場に入るという状況にあったわけでございますが、当時は社会教育審議会の教育放送分科会と言っておりましたが、五十八年度から準備をいたしておりまして、三月二十九日に「教育におけるマイクロコンピュータの利用について」の報告を出したということでございます。したがって、五十八年からの会議のまとめを六十年三月二十九日に報告を出したということでございます。ちなみにこれは六十年四月からは教育メディア分科会というふうに名前が変わったわけでございますが、その内容は、第一に教育界においても情報化ということを無視できない、現場においてもいろいろ、ある意味ではスプロール的にというか、熱心な先生研究をしたり、熱心な子供がいろいろいじったりしておるけれども、そういう時代であるという認識をまず現場が持つことということと、それについて現在先進的な研究はどういうふうなものがあるかというようなことの概観、さらには、進歩が激しい中ではございますが、当時における一種のマイクロコンピューターを扱う教師等に対する研修のカリキュラム、大体そういうものが概要で、報告書を出したわけでございます。  意義としては、中央の、文部省の公的な機関で、公的な文書としてマイクロコンピューターを取り上げたということが、現在考えれば一つの大きな意義だと考えております。
  23. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 学校教育コンピューター利用についての形態、三つ挙げておりますね。それから利用に際しての総論的な考え方を五つ挙げております。今おわかりですか。おわかりでしたらお答えください。
  24. 澤田道也

    ○澤田(道)政府委員 先生は六十年五月に早速御質問をいただいて、前局長が答えておりますので、あるいは私よりも御記憶が詳しいかと思います。  現物を持ってきておりますけれども、先ほど省略いたしましたが、例えば利用の仕方に、コンピューターの場合であれば一種のCMI的な使い方、つまり成績管理とかそういう意味での使い方、あるいはCAI的な使い方、これも学者によっていろいろ違いますけれども、CAI的な使い方というと、教育そのものをコンピューターを使って、コンピューター・アシステッド・インストラクションを使ってやるやり方、そういうことがあるとか、その他、今先生がおっしゃった五つ、三つということはちょっと私、すぐわかりませんけれども、当時における、もちろん通産省、郵政省の役所の方も入っていただいて、国立教育研究所あるいは情報についてのいろいろな大学先生も入っていただいて分類をし、現場に啓蒙の資料として差し上げて、現在も利用されておると考えております。
  25. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 時間に限定がありますから、それ以上言及はいたしません。いたしませんが、特に利用に際しての総論的な考え方の第一番目に、学校教育本来のねらいを達成するものであることということが記載をされているわけであります。このねらいを逸脱いたしますと、これはとんでもない方向に行ってしまう危険性がありますから、いずれこの質問の中で見解も述べたいと思いますけれども、どうぞそういう点について御留意をいただいて御指導をお願いしたい、こう思っておるわけであります。  さて次に、教育におけるコンピューター利用についての意義は何ですか。お答えください。
  26. 西崎清久

    西崎政府委員 コンピューター導入におきまして小中高の学校教育の問題でございますが、やはり発達段階の問題としてこれをとらえる必要があるというふうに私どもは考えておるわけでございます。  先生御指摘のように、マクロに分けますると、御指摘もございましたが、教育内容面での情報活用能力の育成という問題が一つ、それから教育方法面での学習指導における情報手段の利用、これが第二、それからこれは学校経営の問題として、学校教員の職務の支援、合理化というふうな問題、学校教育コンピューター導入する場合にはマクロに分けますとそういうことでございます。  しかし、先生御指摘のようにコンピューター導入する場合の意義は何かということを突き詰めて考えますと、小学校の発達段階では、何と申しますか、子供がコンピューターになれ親しむというところが基本ではないかというふうな考え方一つございます。それから第二として、中学校ではどうだろうか。これは社会科等の教科の中で、コンピューターとは何か、情報化社会におけるコンピューターの意義をどういうふうに考えるか、そういう意義を理解させるとか、数学とか理科の教科の学習指導コンピューターをいろいろ利用するとか、中学校の発達段階になるとそういう面での意義はあろうかと思うわけでございます。さらに高等学校に参りますと、これは職業科で、プロパーでございますが、工業科あるいは商業科ではまさに職業教育としてコンピューター活用、それを操作する能力の育成、こういう点で、将来職業社会に出た場合にすぐ役立つようにというような教育が必要でございますし、さらには普通科高等学校においても選択科目等で情報に関する教育というものが行われるべきではないか、こういうふうな考え方を私どもは現在検討中でございまして、それぞれの発達段階におけるコンピューター導入の意義を本来の教育内容面でとらえてちゃんと位置づけていくという作業が必要だ、こういうふうに考えておりますので、この点の検討を進めまして、来年の教育課程の改定にその線をはっきり示せるように今努力をしておる、こんな段階でございます。
  27. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 先般、文教委員会愛知委員長を先頭にいたしまして東北各地を視察をしてまいりました。岩手県に入りまして農業高校に行きましたら、すばらしい実験をやっておりますね。顕微鏡を使ってあるいはコンピューターを使って、そして分析あるいは栽培、まさに十年前では考えられないような非常に発達した状況というものを私どもは見てきたわけであります。これは非常に大切な問題だなというふうに受けとめてきたわけでありますが、しかし、それにいたしましても、我が国における学校コンピューターの利用状況というのは非常に少ないんじゃないかというような感じがいたしますが、利用状況の現状がおわかりでしたら明らかにしてください。
  28. 西崎清久

    西崎政府委員 私どもは、昭和六十年度に、コンピューター導入しております小中学校約千八百校についてコンピューター利用の調査をいたしたことがございます。  そのコンピューター導入した学校でどういうふうに利用されているかにつきましては、まず第一点は、学習指導に利用しているという割合が五四・九%でございます。それから教員の職務の支援、合理化等の学校経営等に利用している割合というのが八四%、これは小学校でございます。それから中学校では、学習指導の利用が三九%、学校経営等での利用が九四%、こういうふうな考え方でやっておるようでございますが、これを見ますと、まだ学習指導の面でコンピューターを大いに活用してというところはなかなか難しくなっておる。それはなぜかということでございますが、やはりソフトウェアの問題、それから学習指導におけるコンピューターのリレーションの問題、いろいろ検討課題が多うございまして、この点について、導入はしてもなかなかそれが学習指導で一〇〇%活用できるという段階ではなくて、なお今後研究・検討が必要だ、こういうふうな段階ではないかというふうに承知しております。
  29. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 これはイギリス、ヨーロッパですが、さらにアメリカ等、かなり普及していると聞いているわけですけれども、簡単で結構ですから、諸外国初等中等教育へのコンピューターの普及率はどういうふうになっておりますか。
  30. 西崎清久

    西崎政府委員 まずアメリカで申し上げますと、小学校では八二%、中学校では九三%、高校が九五%というふうな数字がございます。これは一九八四年でございます。これは一校に五台とか十一台とか十六台とか、そういうふうな数字で、数字にはばらつきがございます。それからイギリスでございますが、イギリスは小中ともほぼ全校に普及しているという数字でございます。ただしそれは一校に一、二台というものも含めてというふうに私ども承知しております。フランスは一九八五年以降の設置計画で小中高とも一〇〇%導入するということでございますが、これはやはり一校に一台というものも含めてというふうな一〇〇%の計画というふうに承知しております。  ただ、その利用の状況につきましてはいろいろ各国とも苦労しているようでございまして、その辺につきましては、導入はしてもそれが本当に学習指導においてどういうふうに活用され、効果を上げているかについては、まだなかなか的確な結果が総合的には出ていないような感じを私どもは持っております。
  31. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 通産省の方、いらっしゃっていますか。——八四年の末に通産省が、小中高校へのパソコンの導入補助、それから教員研修教育用ソフト開発の機関の設置などの具体策をもって、文部省に協力を要請したはずであります。中でも、義務教育段階からコンピューター教育のあり方について協議を呼びかけたとありますが、簡単で結構ですからその事実をお知らせください。
  32. 近藤隆彦

    ○近藤説明員 教育分野におきます電子計算機の利用につきましては通産省としましても大変関心を持っておりまして、これからの情報化社会の中で、さまざまな情報手段を主体的にしかも適切に使っていただくためには、そのような能力というものをできるだけ早い段階から教育していただくということが必要だと思っている次第でございます。  そのような意味で、特に初等中等教育段階におきますコンピューターシステムの導入というものにつきましては大変期待をしているわけでございますけれども、政策的にもまたいろいろ配慮していかなければならない点がございます。例えばできるだけ使いやすい、教育用に適したコンピューターにするとか、あるいは互換性のあるようにするとか、そういった問題がございます。  そういった意味で、私どもとしましても、文部省と協力をしながらこのような問題を解決していきたいというふうに考えておりまして、おっしゃいますように五十九年ごろからいろいろ御相談をさせていただいておりまして、そのような共通の認識のもとに、昨年の七月に共管でコンピュータ教育開発センターという財団法人を設立しまして、このような問題に取り組んでいこうということになっている次第でございます。
  33. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 重ねて通産省の方にお尋ねをいたしますが、八五年六月十三日に、通産省にあります人材開発問題研究会が、二十一世紀の産業社会対応できる創造的な人材をつくるための教育体制づくりが必要である、こう報告書はまとめているはずであります。高度情報化社会に備えて小学生のころからパソコンを使った教育をするようにと提言をしておりますが、若干内容に触れて御説明いただきたいと思います。
  34. 土居征夫

    ○土居説明員 通産省では、人材問題の重要性ということから、ただいま御指摘のありました人材開発問題研究会、各界の有識者による研究会を設置しまして、今後の我が国産業における人材開発、人材活用のあり方について幅広い観点から検討していただいたわけでございます。  この報告書におきましては、特に技術革新とか情報化、国際化あるいはサービス経済化といった大きな社会構造の変化の中で、新しく日本人に要求されるいろいろな能力という観点から、今後の人材開発・活用にかかわる問題点、解決のための方策というものを御指摘いただいたわけでございます。特に高度情報化社会への移行という観点からは、今後国民の情報活用能力の確保等々の問題が指摘されまして、こういった問題を解決するための方策として、初等中等教育等へのコンピューター導入とかソフトウエアの開発等々、あるいは企業内における情報処理教育充実などが提言されたわけでございます。  この報告書の趣旨は臨時教育審議会の答申にも十分生かされておりますし、当省としましても、文部省等とも協力して、今後ともこういった情報化社会の到来に対応した各種の施策の展開を図ってまいりたいと考えております。
  35. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 教育でありますから、機械に使われてはいけないということは私も重々承知をしております。そういう意味では、これに対しての弊害がないかといったら、やはりありますね。  文部省は資料をお持ちかどうかわかりませんが、社団法人日本事務機械工業会というのがございまして、そこで現場の教師を対象にしていろいろアンケートをとった集約があります。これであります。これはもしなかったら、いつか入手されて御検討された方がよろしいかと思っているわけでありますが、とりわけその中で指摘をされているいわゆる現場の先生方意見なんですが、例えばこういうことを言われております。漢字の書き方がわからなくなる、あるいは日本語の理解が不足をする、筆順がわからなくなってしまう、あるいは文字の理解が早くなるなどというのもありますけれども幾つかの問題が実は羅列をされているわけであります。先ほどのお答えですと、そういう面も来年の学習指導要領に盛り込むんだということをおっしゃられておりましたけれども、こういう基礎的な面を重視してかからないと、逆に機械に振り回されてしまって基礎教育が成り立たないという心配もございますから、そういう点について十分御配慮をいただきたいと思っているわけであります。  それからいま一つは、私も教育関係の出身でありますだけに、教育現場をときどきお邪魔していろいろな施設を見せていただいたり、先生方意見を承ってくるわけであります。特に教育機器の問題については、新しく開発されて次々にいいものが出てくるものですから、もっといいものが出てくるはずだという考え方が先行して、買い控えをするというような状況も出てくるわけであります。この弊害は何かというと、統一規格がないところに問題があるのではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。
  36. 西崎清久

    西崎政府委員 先生御指摘の前段の方の学校教育の基礎、基本の問題に関連してでございますが、その弊害は特にワープロの問題として大きいと思います。やはりワープロをワープロとして子供たちに使用させる場合には、基礎、基本の、正しく文字を書く、筆順も覚えるというような問題がおろそかになるのではないか、そういう意味において、私どもは、ワープロをワープロとして小中高等学校導入することについてはいささか問題があるというふうに考えておりまして、コンピューター導入の問題はまた別の次元の問題として考えていきたいと考えております。  それから、後段のお話の標準化、規格化の問題でございますが、先生も御案内のとおり、小中高等学校、特に小中でございますが、そこに導入する程度の容量、大きさといいますか、その程度のコンピューターでございますと、各社の機能にはそう大きな差はない。しかし、フロッピーその他の互換性がないとかソフトウエアについての互換性がない、その点ではソフトウエアの利用においていろいろ支障がある、こういう問題が出てくるわけでございまして、通産省との協力のもとに、昨年コンピュータ教育開発センターを設置しまして、特にこの問題について財団法人として、教育界と財界と申しますか、メーカー側との協力のもとに、教育導入するコンピューターについて、機能の問題や付帯設備等操作の問題を含めて、できるだけ教育にマッチしたものをどういうふうに選んでいくか、メーカーにどういうふうに協力を促すかということについて、ただいま重的点に検討を進めておるところでございますので、できるだけそういう方向を私どもは促しまして、余りに多種多様なものがてんでんばらばらにできるということでないように努力をいたしたいと考えております。
  37. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 特に大臣に注文をつけるわけでもありませんが、中曽根内閣はあと二カ月であります。この二カ月の文部大臣の在任中に有終の美を飾る意味からも十分ひとつ前向きに御検討いただきたい、こう思っているわけであります。  さて、次の問題に入ります。インフルエンザ集団予防接種の問題であります。厚生省の方、いらっしゃっていますか。——後でいろいろお尋ねいたします。  まず第一は、インフルエンザの対策の法的根拠を示してください。
  38. 國分正明

    ○國分政府委員 インフルエンザの予防接種につきましては主として厚生省が担当しているわけでございますが、私から承知している範囲でお答え申し上げますと、御案内のとおり予防接種法がございまして、その第六条で、都道府県知事または市町村長が必要な場合にはインフルエンザ等の予防接種をやる、こういう仕組みになっていると承知しております。
  39. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 罰則規定はありますか、ありませんか。
  40. 國分正明

    ○國分政府委員 罰則規定はないと承知しております。
  41. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 罰則規定がないというその理由ですね。なぜないのか、いかがですか。これは後の質問にも重要な関連がありますから慎重にお答えください。
  42. 伊藤雅治

    伊藤説明員 昭和五十一年に予防接種法を改正いたしまして、その際に、予防接種を受けない人に対する罰則を削除したわけでございます。  この考え方といたしましては、予防接種は、それを受ける人の十分な理解のもとに進んで受けていただくということが予防接種のあり方として望ましいという考え方から、予防接種は罰則をもって強制するという性格のものではない、このような判断から五十一年の改正時に削除されたものでございます。
  43. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 なるほど、十分な理解をしていただくためにということですが、それはないことはないで結構なことなのであります。これは後で関連しますからまた質問します。  その次に、集団接種は学校で行いますね。その場合は、先ほど示されましたけれども、この法律の第六条に県または市町村、こうお話がございました。これは機関委任事務ですか。そうなんですか、そうでないのですか。
  44. 伊藤雅治

    伊藤説明員 機関委任事務でございます。
  45. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 それでは、七月二十八日に参議院社会労働委員会で我が党の糸久八重子議員の質問に対しまして、厚生省の政府委員答弁をしております。その答弁内容は「予防接種の集団免疫効果を確実に判断できる研究は存在しない」、こう言っておりますが、厚生省の方、確認できますか。
  46. 伊藤雅治

    伊藤説明員 先生がおっしゃっておりますように、仲村保健医療局長よりそのような答弁をさせていただいております。  集団免疫効果のことにつきましては、一般的に申し上げまして、集団に対して一定以上の割合の人々が予防接種により免疫を与えられたときには、ウイルスの伝播が制約されまして、二次的な効果として予防接種を受けない者も罹患を免れる、このようなことを集団免疫効果と言っておるわけでございます。  今般、厚生省のインフルエンザ流行防止に関する研究班の報告の中でこの点を検討していただいたわけでございますが、集団免疫効果に関しまして、地域社会のレベルで実際に検証した研究は少なく、わずかアメリカでモンド博士らの研究報告が一例あるのみである、このような現状でございます。しかしながら、この研究についても異論を唱える人もおりまして、インフルエンザの予防接種の集団免疫効果につきましては、科学的な方法で広く認められた報告はないというふうに、研究報告の結果、なっております。
  47. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 今厚生省の方がお答えになりましたように、明確な科学的根拠を示すデータがないところにどうして義務なんですか。おかしな話じゃありませんか。幾つかそのほかにありますから後で問題の提起をいたしますが、まずそこからお答えいただきましょうか。
  48. 伊藤雅治

    伊藤説明員 集団免疫効果につきましては今申し上げたとおりでございますが、また、インフルエンザ流行防止に関する研究班の研究報告書の中で、インフルエンザのワクチンの効果について子細な検討を行っていただいております。その結果、インフルエンザワクチンは、受けた人たちに対しては発症防止効果、それから重症化防止効果等、いわゆる受けた個人に対する効果が十分認められる、そのような結論が出されております。また、集団免疫効果については効果がないということを科学的に証明した報告もないわけでございまして、したがいまして、公衆衛生審議会の伝染病予防部会におきましてはいろいろその点を議論していただきまして、私どもその意見を踏まえまして、個人に対する重症化防止効果及び発症防止効果が認められるという点から、直ちに現在の接種体系を変更する必要はないというふうに伝染病予防部会の意見を受けて通知を出したわけでございます。
  49. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 ことしの八月六日に、厚生省保健医療局長名で各都道府県知事に「当面のインフルエンザ予防接種の取扱いについて」という文書を出しておりますね。その中身を見ますと、「社会全体の流行を抑止することを判断できるほどの研究データは十分に存在しないが、個人の発病防止効果や重症化防止効果は認められている。」こういう文言がございます。そうだとすれば、今あなたがお答えになられました、効果がないという科学的判断もないのだというお話ですけれども、効果があるという科学的根拠は何ですか。
  50. 伊藤雅治

    伊藤説明員 集団免疫効果につきまして、インフルエンザ流行防止に関する研究班の中で実は検討していただいたわけでございます。その結果、集団免疫効果があるという研究結果は、先ほど申し上げましたようにアメリカのモンド博士のものが唯一のものでございます。またそれと逆に、集団免疫効果がないということを証明した研究もまたないというのも事実でございます。私どもとしては、そのような研究の評価自体をこの研究班の目的としてやっていただいたわけでございまして、そのことを「インフルエンザ流行防止に関する研究班」の報告でまとめていただいたということでございます。
  51. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 それは参議院での糸久議員も触れられておりますから、私も会議録を読んで十分承知をしております。しかし、それは日本のものではないのですね。先ほどから御説明がありましたように、勧奨接種から義務接種に移った、そして今日の段階を迎えている、罰則規定が外されている、お答えのとおりであります。そういう変遷をたどってきているわけでありますよ。つまり私から言わせれば、厚生省というのは極めて不安定な指導しかできない、こういうことを言わざるを得ないのです。  かなり古い話かもしれませんが、アメリカの調査団が参りましたね、CDC。これの結論は何ですか。
  52. 伊藤雅治

    伊藤説明員 御指摘の調査団の報告書といいますのは、一九八〇年にアメリカの調査団が我が国のインフルエンザ予防接種のあり方について調査に来た調査団のことと思いますが、この調査団の報告書は、一九八〇年に、ジャーナル・オブ・インワェクティアス・ディジージズのスペシャルリポートという形で述べられております。  この報告書はかなり長いものでございますが、いろいろ日本の予防接種の考え方をアメリカと比較して書いてあるわけでございますが、結論の部分だけ簡単に申し上げますと、まず第一点といたしまして、流行株とワクチン株が一致したときはインフルエンザ様疾患がワクチン接種者で五〇%ないし九〇%減少することを示す調査結果はある、学童への集団接種を実施しなかった場合の流行状況がわからないので学童集団接種がインフルエンザの伝播、罹患率、死亡率に及ぼす効果については正確に推計することはできない、さらにその一番の結論といたしまして、この報告書は、日本の学校におけるインフルエンザの予防接種の効果については、「極めて有効であるとはいえないにしても、有意義なものであるかもしれない。我々には判断の根拠がない。」という形で結んでいるわけでございます。
  53. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 それでは、ちょっと文部省の方にお尋ねをいたします。  集団予防接種の効果を認める科学的根拠はこれまで厚生省から提示があった事実がありますか、どうですか。
  54. 國分正明

    ○國分政府委員 特にそういうお話は承っておりません。
  55. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 そうすると、法に基づいてやっているだけ、機関委任事務だからそれに基づいてやっているだけだ、こういうふうに理解してよろしいですか。
  56. 國分正明

    ○國分政府委員 免疫効果その他について、まさに医学上の判断の問題あるいは厚生行政上の判断の問題でございますので、私どもがとやかく言う立場にないわけでございますが、現在のインフルエンザの予防接種は予防接種法に基づいて実施されておる、こういうふうに承知いたしております。
  57. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 それじゃ、重ねて文部省お尋ねいたします。  副反応が出た事実を御存じですか、御存じありませんか。御存じだとすれば、その内容を示してください。
  58. 國分正明

    ○國分政府委員 極めてまれではございますけれども、重い副反応が生ずることがあるということは承知いたしております。厚生省からの御連絡によりますと、昭和五十二年度以降現在までの間に、重い後遺症を有する方あるいは死亡者を合わせまして十一名というふうに承知いたしております。
  59. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 どうも私は、機関委任事務だからそのせいかどうかわかりませんけれども文部省、集団接種というのは、あなた御存じのように、子供たちが学校で集団で接種されるのですよ。これに対して幾つかの副反応が出て重要な社会問題にもなっているのです。子供の命がかかっているのですよ。子供の命がかかっているときに、厚生省の受け売りでこれを実施している、法にあるからと言って。これはまさに官僚的じゃありませんか。大臣、いかがですか。
  60. 國分正明

    ○國分政府委員 インフルエンザの予防接種について種々御議論があり、また、現実にまれな例とはいえ副反応が起きているということは承知しておるわけでございます。このために、先ほども御質疑があったかと承知しておりますが、厚生省においていろいろな研究をされ、公衆衛生審議会で御検討いただいて、それに基づいて先般一つ指導通知を出され、それに基づいてインフルエンザの予防接種が行われる、こういう仕組みになっているわけでございます。また、今回示されました指導通知については、従来よりも、事前のPRであるとかあるいは親権者の意向であるとか、いろいろ確かめるような方途も工夫されておると思うわけでございますので、私ども学校におきます集団接種につきましても、この通知の趣旨にのっとって対応してまいりたいというふうに考えております。
  61. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 それでは、重ねて文部省お尋ねをいたします。  昭和六十一年十一月の日にちで、大宮市教育委員会が各保護者あてに文書を配付しているはずであります。その文書の内容を示してください。そして、文部省見解を出してください。
  62. 國分正明

    ○國分政府委員 御指摘の大宮市の「インフルエンザ予防接種の実施にあたって」という各保護者あての文書でございますが、これについて、かなり長うございますが要点を申し上げますと、インフルエンザ未然防止のために集団予防接種を市では実施しておる、ただこれについては非常に効果はあるけれども一方でいろいろな副作用が生じておる、そして、例えば発熱している者等々の者については予防接種を受けることができないというようなこと、そして、保護者の予防接種希望依頼書というようなものも添付されている、こういう内容でございます。  これは本年の八月六日に示されました厚生省の局長通知以前のものではございますけれども、専門的な面で例えば言い足りない面あるいは言い過ぎている面等あるのかもしれませんけれども、私ども見る限りにおいては、おおむねその趣旨に結果として合致しているものではないだろうか、こんなふうに考えております。
  63. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 教育委員会が自主的な判断に基づいて出した文書ですから、私はこれをとやかく言うつもりはありません。「インフルエンザ予防接種の実施にあたって」という表題でこういうことが書いてあるんです。「現在使用されているワクチンは、副作用の生じる場合があり、昭和五十四年、新潟・北海道・大宮でアレルギーショック・脳症等の健康被害が発生しました。したがって、現在健康状態のすぐれない方及び、」云々と、こうなって、その注意事項が掲げられているわけであります。まさにこれは親切なやり方だと私は思うのです。しかしこれを受け取った父兄は、もちろんさまざまな受け取り方があるだろうと思いますが、これは大変だ、こんな副作用を起こされてうちの子供がもしや死んでしまったらとんでもないことだ、こういうふうに普通の人は考えるじゃありませんか。逆に言ったら、ワクチンなんていうのはそんなに効かないんだから、こんな危険な副作用があるので、ひとつ十分御判断くださいよ、やるなとは言いませんけれども。こういうことを前文に掲載をして出してきたというのは、まさに教育委員会の賢明な判断だと私は思いますし、ここから読み取れるその中身というのは極めて重要視しなければいけない、特にワクチンが効果があるのかないのかの議論もあります。  時間がありませんからそう多くのことを申し上げられませんが、大臣、これは極めて重要な課題ですね。特に私も学校教育現場におりまして、保健主事の経験もありますから、やらせた経験もあります。専門家の方からも最近いろいろ話も聞きました。なるほど私が経験しましたように、何秒かにぱっ、ぱっ、ぱっとやっていくんですね。その子供が病気を持っていなければまた幸いですけれども、しかし問診票が果たして、基礎にはなるのでしょうが、そういう意味で信憑性があるのかどうかということも考えなければいけないというのが実はあるわけであります。感染したらどうするんですかという話も最近出ておるわけであります。大臣、いかがですか。今の大宮市の文書から関連いたしまして。
  64. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 非常に専門的な問題で、私は実はこの問題は全くわかりません。しかし一部では非常に社会問題になっておることも承知いたしておりますので、厚生省との間で十分に協議をするようにいたします。
  65. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 協議をするということですから、それを信じます。したがいまして、先ほど私が指摘いたしましたように、文部省が単に機関委任事務であるという受けとめ方だけでこの問題を流したとすれば、重大な社会問題の責任を負わなくてはいけないということを私は改めて強調しておきたいと思います。  厚生省の方、あなたもいろいろ御存じでしょう、今日問題になっている中身については。時間がありませんから触れられませんけれども皆さんの方で出された「インフルエンザ流行防止に関する研究」がありますね。この中には、専門家のお医者さんの賛成と反対の意見が随分載っていますよ。特に、私の感じですけれども、賛成だという意見はそう余りありません。余りありませんけれども、何かこう賛成のための賛成をしているヒステリックなとらえ方をしているのじゃないか、これは私の感じであります。しかし、反対もしくはその他の意見の中では、もっと効くワクチンができないかと皆異口同音におっしゃっていますね。つまり裏返しすれば、今のワクチンでは効かないんだということを言っているわけですよ。だから、義務接種であっても今は事実上、通達を出したように任意制に切りかえたような状況でしょう。そうだとすれば、私は、危険性のある、そして副作用の多いこのワクチン使用については、特に集団接種については任意制に切りかえる、今の義務制はやめるべきだということを考えているわけでありますが、検討する用意がありますか。
  66. 伊藤雅治

    伊藤説明員 私ども厚生省といたしましては、この研究班の報告を受けまして、先般、公衆衛生審議会の伝染病予防部会で御審議をいただいたわけでございます。「インフルエンザ予防接種の当面のあり方について」ということで御意見をいただいたわけでございますが、この審議の過程におきましては、インフルエンザワクチン接種そのものをやめるべきだという意見は全くございませんで、当面この六条の形で実施すべきだ、ただ実施するに当たってはその保護者や受ける人たちの意向を十分尊重するように実施すべきだ、こういうことでございました。  私どもといたしましては、そのほか幾つか残された問題もあるわけでございまして、この研究班の報告の中にありました賛否両論の意見、これらにつきましては、また今後の予防接種対策のあり方を検討する場合に十分有益な意見として参考にさせていただきたいと思っております。
  67. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 先ほど私が話しましたように、厚生省の文書通達の中にもあるじゃありませんか。集団の問題についての効果についてはいろいろあるけれども、個別については言い分もあるのだということを書いてありますね。そうだったら個別に切りかえなさいよ。文部大臣の方がよほどいい答弁じゃありませんか。まあ、あなたは大臣じゃないからしょうがないけれども文部大臣でさえ検討すると言っているのだから、省にお帰りになったら厚生大臣によく言ってください。子供の命にかかわる問題だから十分検討いただいてこの法律の改正、そして任意制に切りかえる、そういう状況に来ていることを強調したい、私はこう思うわけであります。  時間があればもっと深い突っ込みをしたいわけでありますが、あと五分しかありませんので次に移りたいと思います。厚生省の方、どうもありがとうございました。  質問通告にないことでお尋ねいたしますが、一九八七年七月二十一日、文部省の新任教員に対する洋上研修があったはずであります。助成局長、あなたは日教組問題をとらえましてかなりのことをお話しになっていますね。お話の内容とその意図についてお聞かせください。
  68. 加戸守行

    加戸政府委員 本年度から実施しております初任者研修の試行の一環といたしまして、文部省におきまして洋上研修を実施いたしております。七月二十一日から十日間、東京、釧路、富山、瀬戸内海を経由して東京へ帰るコースがございます。その五日目でございます。私が「当面する教育課題」という形で九十分でございますが、講演をさせていただきました。  主たる内容は、現在の臨教審答申の考え方、それを受けてのこれからの教育改革の方向といった事柄が中心でございますが、終わりの方だと思いますけれども文部省と日教組との不幸な対立の経緯、そういうことが今後あってほしくないという念願を込めて、各種の違法行為が行われた事実関係並びに今後そういうことがあってほしくないという私の願望を述べさせていただきました。
  69. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 述べることは自由だ、私はそういう言い方をしたくないのであります。なぜなら、これから二十一世紀を担っていく極めて若い先生方であります。ですから、自主的な判断も必要でありましょうし、いろいろな勉強もしてもらわなければなりません。そもそも、私どもは初任者研修反対の立場にもちろん立っておりましたけれども、ただ時間がありませんからそう突っ込めませんが、あなたがお話しなさった中身、私はここに持っているのです。ひどいですね、この中身というのは。極めて意図的、計画的じゃありませんか。職員団体、とりわけ日教組が果たしてきた役割というのは、いろいろな批判はありますけれども、戦後果たしてきた役割というのは非常に大きな部分がある、私はこう思うのです。例えば学力テスト反対闘争だって、文部省が強行した全国一斉学力テストが今日の教育の荒廃の原因を生んだことは否定できない事実ですよ。これに対して謙虚に耳を傾けることがあってしかるべきだし、むしろその種の問題だけをとらえて局長が強調されているようであります。まさに政治的中立をむしろ文部省自身が侵していると言わざるを得ません。いずれ臨教審の問題につきまして議論をいたしますが、十分今後とも留意をいただきたいと思います。(発言する者あり)自民党は自民党の考えがあるし、私も私の考えがあるわけであります。どうぞ、意見の開陳をすれば結構な話であります。  あちこちになって大変恐縮でありましたが、ちょうど与えられた時間が終わりでありますので、以上をもって私の質問を終わります。    〔委員長退席、鳩山(邦)委員長代理着席〕
  70. 鳩山邦夫

    ○鳩山(邦)委員長代理 中西績介君。
  71. 中西績介

    中西(績)委員 私は概算要求を中心にいたしまして質問を申し上げたいと思いますが、先般の強行採決に当たってとられた委員長と——委員長がいませんから大変残念ですが、委員長並びに文部大臣がしかもその現場における指揮をとるかのような発言をなさったということについて、私はあの際に注意を申し上げたはずですが、大変遺憾に思っております。今、自民党の委員皆さん文部省主導型で行っているというのをあのことがまさに示しているというように私は感じました。考えてまいりますと、あのときにも申し上げておきましたけれども、筑波大学法案で五十五時間、放送大学で二年半、六十三時間に上る論議をいたしてきたわけです。しかもこれは一つ大学問題で、当時の大学行政の流れの中にわずかの変更があれば、このように内容的にも突き詰めた討論がなされたのです。ところが、残念なことに、今度の場合には大学全般にわたる問題として、この審議が十時間足らずで、しかも動議で審議を打ち切るというこのやり方は、まさにみずからが議会制民主主義を否定するという立場に立つもので、こうなりますと、私たちは今この文教委員会の存在すらも疑わしくなってくるわけです。むしろ我々議員側が毅然としてこれに立ち向かわなくてはならぬのに、行政から要請があればそれに従うごとき院のあり方については、私は絶対に許してはならない、特にこれに賛成をなさった方々に反省を求めたいと思います。これはこれで打ち切りますが、本当に審議には十分時間をかけてやるというこの基本は、絶えず持ち続けていただきたいと思います。  そこで、概算要求に関しまして質問を申し上げますけれども内容を見ますと、歳出予算が一般会計で八十二億三千八百万円、六十二年度と比較しますと〇・一八%の伸びでしかありません。ということになってまいりますと、いよいよ予算を確定する十二月の段階におきましては、〇・一八%の伸びでは六十二年度当初予算の維持すらもできないのではないかと思いますけれども、この点どうでしょう。
  72. 古村澄一

    古村政府委員 御指摘のとおり、八月三十一日に概算要求を取りまとめ大蔵省に提出いたしたわけでございますが、総額、一般会計で概算要求額が四兆五千八百十九億七千八百万円、御指摘のとおりに前年度比八十二億三千八百万円の増でございました。  これは、政府全体の厳しい財政状況の中におきます概算要求基準というものもございますし、あるいはそういった中でできるだけの予算を組み上げるというのが私たちの姿勢でございますが、そういった中で組み上げた予算でございます。したがって、これから年末のいわゆる査定の段階までに、私たちは、要求したものを極力全額取っていくという姿勢で邁進いたしたいというふうに思っております。
  73. 中西績介

    中西(績)委員 ところが、今極力努力するということを言われておりますけれども、この概算要求について、評論家なりあるいはいろいろな立場に立つ人がそれぞれ論評いたしております。ODAだとかあるいは防衛費だとか特別枠を持っておるものが前面に出、しかも内需を高めるというために公共事業費がうんと伸びる、こうすることになってくると福祉と教育にしわ寄せがされるだろうということを大体みんな予測をしておるのですね。この予測が間違いだということを今確認してよろしいですか。
  74. 古村澄一

    古村政府委員 そういった一つの見方というものについて私は論じるつもりはございません。福祉と教育にしわ寄せがされるのかされぬのか、それは一つの見方だと思いますが、いずれにしても、概算要求基準というのは、ことしは投資的経費の従来からかかりましたマイナスシーリングをゼロシーリングにしたということで、文部省の枠としてはその点膨らんでおります。それから、先ほど佐藤先生の御質問のときにお答えいたしましたが、この国会で成立しました大型補正予算の中で、千三百億円の文教予算が一応成立いたしております。こういった点でいわゆる施設設備整備の方が先取りされております。そういうこともありまして、来年度の概算要求をつくりますときにはそういったものを総体を見ながら概算要求をいたしております。いわゆる文教の整備について何とか前進できる予算が概算要求として組み上がっているというふうに私は考えております。
  75. 中西績介

    中西(績)委員 しかし、六十兆円を超える概算要求だけれども、五十六兆円ぐらいで抑えたいというのが大蔵の考え方でしょう。四兆円近くの抑え込みがあるだろうということを言われていますよ。今は六十兆を超えている概算要求でしょう。そうなると、私は先ほど申し上げるように、公共事業とかいろいろなものの伸び率を抑え込むわけにはいかぬという一般的な空気が醸成されておると思うのですね。そうしたときに問題になるのはここですよ。  そこで、私は大臣にお聞きしたいけれども、私がこの委員会におきまして今まで主張してまいりましたのが、文教予算を特別枠として、例えば防衛費、ODAというものに類似する取り扱いをすべきだということを主張してまいりました。森、松永、海部三大臣、そして、先般のこの委員会におきましても塩川大臣にそのことを申し上げ保て、今までの大臣同様に特別枠としてこれを努力していくということを約束されましたけれども、その約束されたことは具体的にはどう進展をしておるのか、政府間における論議の過程の中でどのようにこれが取り扱われておるのか、これについてちょっとお答えください。
  76. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私が答弁いたしましたときには、特別枠として要求するという表現でなかったように思うのですが、しかし、この分に、つまり臨教審答申等を踏んまえて教育改革を進める場合に特別な配慮をしてもらわなければ困るということを絶えず言ってきたことは事実でございます。  そこで、今心配していただいておりまして、私たちも強力な応援団体ができた、応援の力ができたと思うのでございますが、そもそも今回の補正予算の際にも、実は文教に予算をつけるかどうかということは大問題であったわけでございます。私たちが願いましたことは、要するに、今まで教育改革を政府はやかましく言いながらそれに対する財政的配慮はなかったではないか、特別な配慮をするというならば、こういう補正のときに、堅物と申しましょうか、実際ハードの面の金はこういう際につけてもらいたい、土地代も要らないし直ちに内需拡大につながるものだからそれをつけてもらいたい、だからといって、その補正でつけた分が来年度差し引かれるということになればこれは困る、だからこの分は追加をしてやってもらいたい、こういう要求を重ねてやってまいりました。でございますから、先ほど官房長が言っておりますように、六十三年度の枠をたとえ少しでも上積みをして堅持するということは、その分が、ハードとソフトに分けました場合に、かなりソフトの分に傾斜して来年は使える。ここに、今まで至らなかった、文部省としてやろうと思っていてもなかなかできなかった、例えば科研費であるとか私学の助成であるとかあるいはまた教員の定数の問題であるとか、そういうソフトの面に積極的に使いたい、こういうことを私は思っております。  でありますから、予算の単年度そのものの数字から見ましたら私だって大変な不満を持っております。しかし、予算全体といいましょうか資金全体として見れば、六十二年、それから補正、六十三年としてずっと眺めてきましたら、まあ努力をしてきたかいがあったということも思っておるのでございますが、六十三年度に際しましてもさらに一層の努力をして、いやしくも教育改革を進める中において、教育財政がこれではひどいじゃないか、削減されておるじゃないかというような事態には絶対しないということを、皆さんもひとつ応援していただきたい、こう思うのであります。
  77. 中西績介

    中西(績)委員 今お答えいただいた、来年度分、六十三年度分のハードの面におけるこれを補正予算でというこのことは、従来私たちも、施設設備充実費などについても内需を拡大する最も手やすな部分としてこれが重要だということを主張してまいりましたけれども文部省の今までの答弁は、逆に、校舎などが余っている関係もあり、地方からの要求が少ないからこれで十分だというようなことで、今まで我々の質問に対して切り抜けてきた経緯があるのですね。しかしそれはおくといたしまして、そのことを具体的に実現をしていただくことになったことに対しては、私たちも皆さんと一緒に大変喜ばなければならないことだと思います。  しかし、先ほどからるる申し上げておりますように、大臣は特別枠ということではなかったと思うと言うけれども、今まで私たちが一つずつ、防衛費、軍事費なりあるいはODAなどの費用が特別枠になっておるではないか、それと同様の取り扱いをすべきだという主張をしてきて、各大臣もみんな賛同していただいておったという経緯があるわけですね。ですから、そういうやりとりではなしに、実質どうなるかをかけて、この〇・一八%の伸び率が逆に削減でもされるということになりますと今までの努力がまた水泡に帰すわけでありますから、この点はぜひ頑張っていただきたいと思います。  そこで、先ほどお答えいただいた中に、義務教育国庫負担の中で栄養士あるいは事務職員の問題、昨年と同様に堅持してまいりたいというお答えがありました。そういたしますと、今度ペアの分があるのですね。この分は何がしかの手だてをしなくてはなりませんけれども、これは何で手当てをするつもりですか。そして、予想される金額はどれくらい予想していますか。
  78. 古村澄一

    古村政府委員 ペースアップの分は、国立学校公立学校合わせまして四百六十億円ぐらいの金が必要になるというふうに思いますが、これをどういう手当てをするかというのは大蔵省との間の予算の折衝を通じてやっていくわけでございまして、今の段階で、これについて財源はどこからどう動かすとかいうことを言える段階ではありません。あしからず御了承ください。
  79. 中西績介

    中西(績)委員 そうなりますと、結局詰めの段階になってまた問題になってまいります。そうすると、今一般会計四兆五千八百十九億七千八百万円、この中で四百六十億をどこかを割いて引き当てなければならぬという問題が残っているわけですね。ということになってまいりますと、この点をまだ言う段階ではないというような言い方でありますけれども、これが今度手当てされると、結局〇・一八%の今ある伸び率がこれによって相殺されていくという形になる可能性があるわけですし、こう考えなければなりません。ですから、先ほど頑張られると言われたことに対して私は評価をいたしますけれども、この四百六十億の手だてを含めてどうするかということが明らかになってこないと、我々としては、今随分文部省は頑張ったし、本当に特別枠に近い努力をしてもらったという評価にはなかなかなりにくいと思うのですね。ですから、この点だけは忘れないようにしていただきたいと思うのです。  そういう一つの中の例といたしまして、初中教育に関して出てまいっておりますけれども、定数等でいつも問題になりますが、どうも要求しておる中身を見ますと、今度の場合に配置率の改善一万一千六百四十六人、四十人学級が四千二百四人ということになっています。ところがこれを見ますと、四十人学級一つをとってみましても、大体あと四年ですから、三、四、五、六の六十六年までですから、一年間に五千人以上消化をしないと当初の目標を達成することはできません。四十人学級についてはそういうことになるわけですが、それが今度は四千二百四人しか要求をいたしておりませんので、結果はどうなるかというと、あと三年で毎年七千人以上これを達成しないと目標達成にはならない。あるいは配置率についても同じようなことが言えるわけですね。二万七千五十四人の配置率を達成しなければならぬわけですが、今の一万一千幾らでいけばよろしいのですが、今までの場合には三分の一くらいに削り込まれてきていますよ。六十二年度が三千人くらいしか手当てをされておりませんから、そうなってくると、一年間に六千七百六十二人ぐらいずつあとの三年間は補充をしなければ達成できないという状況になるわけであります。この点、将来に向けてこの三年間にそれだけの見通しがあっての話なのですか。この点お聞きします。
  80. 加戸守行

    加戸政府委員 教職員定数改善計画につきましては、十二カ年計画の第八年次を迎えまして、これから第九年次分の要求に上がるわけであります。御承知のように、途中段階におきまして臨調答申に基づきます実質的な凍結抑制措置が五十七、五十八、五十九とございまして、そういった形で進捗状況が甚だおくれているわけでございますが、現在のところ、残りました目標達成のために必要な教職員増員定数関係が五万五千ございますけれども、なおそれと相関いたしますけれども、六十三年度以降の児童生徒数の自然減に伴います教職員定数の自然減が五万二千名見込まれておりますので、こういった六十三年からの後四年間におきまして、自然減を勘案し、従来の計画を着実に達成するという考え方で、とりあえず六十三年度につきましては、自然減が予定されております一万五千九百名の教員の減数の中で一万五千八百五十名の要求をさせていただきまして、残り六十四、五、六という形でそれぞれの自然減を勘案しながら段階的に進めてまいりたいと考えているわけでございます。
  81. 中西績介

    中西(績)委員 自然減があることはもう何回もお聞きいたしましたので、これは十分理解をいたします。しかし、そうだといっても、昨年の場合に同じように自然減があったけれども、要求額に比べてわずかの三千百人しか配置率の改善等については手だてされておらないという実態があるわけですね。しかも、私が一番心配をしておる四百六十億という人件費増、この分をどこかで平準化しなければならぬわけですから、そのときにねらわれるのはやはりさっきの義務教育国庫負担、あるいはこういう定数のところでやられるのではないかということを懸念しておるわけです。  なぜ私はこのことを申し上げるかというと、今までの行革審の答申の中に必ず定数問題が入ってきたでしょう。これに沿って皆さんがやっていったという経緯があるわけですね。ですから、それを踏ん切ってなおかつ補完しなければならぬという今、わずかしかあと残る年限が迫っておるということもあって、一挙に何万名もということにはならないわけですから、その枠内でというなら、ことしはどんなことがあってもこの一万一千六百四十六人の配置率、あるいは四千二百四人のこれを達成しておかぬと、将来的に、それで行ってもなおかつさっき申し上げたように四十人学級の場合には七千人以上これから補てんしないと不足するという実態があるわけでしょう。だから、こうした点を考え合わせていきますと、この出されておる分について、先ほどからの全体の問題とあわせてぜひ確保するということがなければ、これは困難な状況になってくるだろうということを危惧するからあえて申し上げさせていただいたわけなのです。この点はぜひ、今言われたように自然減があるからということで私たちが大船に乗っておることができるようにしていただきたいと思います。それだけ確認をしておきたいと思います。  特にその中で私がなお懸念をしますのが、一般教員の中で同和加配百五十人というのがございます。ところがこれは、昨年十二月の段階におきまして削減計画までつくったことを私は今思い出すわけであります。まさかこれは削られることはないだろうと思っておりましたけれども、削減計画までつくらせられたということになりますと、これは文部省並びに大蔵省も知った上ですということになってまいりますと、これは今言う配置率の改善の中の一つの例ですけれども、百五十人についてまた再びそのようなことが、六十六年までに三千人という要求で、ずっと百五十人ずつつけていけば三千人になるわけですけれども、この分を逆に削減するという計画を立てたと言われるけれども、立てたことが事実であったかどうか、そしてそのことがどのような経過の中で消えていったのか、そしてことしは絶対にそれをさせないという決意、この三つをお答えいただきたいと思います。
  82. 加戸守行

    加戸政府委員 昨年の予算編成直前でございましたか、自由民主党の中に地域改善対策特別委員会というのがございまして、そこにおきまして同和加配教員に対します見直しの御意見等があり、御議論が闘わされたと承知をいたしております。  政府といたしましては、御承知のように十二カ年計画を進めておるわけでございます。確かに同和加配につきましては、各年度におきます乏しい財政状況、苦しい中にありましても毎年度百五十名ずつの措置をいたしておりまして、六十二年度までの十二カ年達成計画の全体平均が三〇%でございますが、その中にありましても、同和加配教員につきましては七〇%を超える著しく突出した改善率になっているという状況等もございます。しかしながら、政府としての十二カ年計画を進めておるわけでございますので、六十三年度以降におきましても、全体のバランスの中で考えながら、昭和六十三年度につきましても同和加配については百五十名の従来どおりの要求を出させていただいておる次第でございます。
  83. 中西績介

    中西(績)委員 自民党の中の同和対策に関する小委員会なりそういうところで削減計画というのは立てられたのですか。文部省はそれに関与したんじゃないですか。
  84. 加戸守行

    加戸政府委員 同和改善対策特別委員会におきましてそういう御議論、見直しの御議論があったということでございまして、計画が立てられたとは承知いたしておりません。
  85. 中西績介

    中西(績)委員 それでは、そのことの計画は昨年十二月に私たちはそのようにお聞きをしておったんですけれども、それがないものとして確認ができましたし、この点はぜひそのように措置していただきたいと思います。  ほかに事務職員の問題あるいは栄養職員、いろいろ論議したい点がございますけれども、時間が限られておりますので、きょうは一括して、内容的にぜひ大臣の先ほどの御答弁のように頑張っていただければと、こう思っております。  次に、同じ概算要求の中を見ますと、留学生にかかわる問題でありますけれども、簡単に説明あるいは答弁をしていただければと思います。  この予算を見ますと、六十二年度が百四十五億四百万円で、六十三年度概算要求百八十二億三百万円という、六十一年から六十二年二四%増、そして今回も相当な伸び率を示しておることは、これは多とするところであります。  ところが御存じのように、十三年後、二十一世紀に向けては十万人を目標とすると言われておりますけれども、一九八五年の調査におきましても、米国では三十二万、フランスで十一万、西独あるいは英国で五万人以上、じゃ現在この日本の場合にはどうかというと、一九八五年調査でいきますと一万五千九人しかその実態はないということです。もちろん現在では一万八千人を超える数にはなっておりますけれども、相当の伸び率を示しておることは事実です。しかし、このように国際的に対比をいたしましても余りにも劣っておるということを、今改めて私たちはこれを反省しなくてはならぬと思っています。しかも宿舎等を見ましても、四分の一の方が整備された宿舎に入居しておると言われておりますけれども、甚だしいものについては三畳の間に入れられておるとか、だからいろんな家具等が廊下に並べ立てられておるというような状況で、しかも、現在で言うならば残る一万三千五百人の皆さんは下宿あるいはアパートで非常に困っておる。それを受けて今回の場合には、円高による三五%の円高措置、それから授業料減免の問題、これは私費の留学生でありますけれども、あるいは入居一時金の補助金が家賃二カ月・平均六万円を補助するというような、新たに六十三年度には概算要求をなさっています。このことは一応の評価をいたしますけれども、先ほど申し上げるように、一九八五年の調査においてはうんと格差があり過ぎるし、余りにもひど過ぎる、こういうことを言わなくてはならないと思います。  特に、日本人の場合二万人が外国に留学生として行っていますね。それに比べて受け入れる側はこれよりも以下であるというところにまた一つの特徴があります。しかも、これも二万人のうちアメリカだとかヨーロッパが九割を制すると言われていますね。それと同じように、日本に今来ておる一万八千、六十一年度、一九八六年は一万八千六百三十一人ですが、アジアから日本に来ておる留学生が八割以上、欧米からの留学生はわずか一〇%、しかも、このアジア諸国の留学生の渡航先をずっと見てみますと、日本がずっと下位になっておる。こういう全部についてずっと分析をしてみると、この留学生に関しては日本が国際的に経済的に大国だと言われる国としてふさわしくないということをこのことは指し示しておるし、こうした結果が出るということは今までの何かが問題があったのではないか、こう考えます。そうした点について、何かお気づきの点がございますか。
  86. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 確かに留学生政策は日本ではおくれてきておったと私は思っております。経済摩擦、貿易摩擦ということが非常に経済上の大きい問題になって、国際上からも問題になって、同時に日本も留学生政策に本腰に取り組もう、こういうときになってきたのではないかと思っておるのです。  それでは、なぜ日本の留学生政策がなかなか顕著な効果を示さなかったかといいますと、一つは言語にあると思うのです。今来られます留学生の方々も、やはり一番苦労しているのは何かといいましたら、言葉になれるということ、これが、円高もございますけれども、日本語の習得というのが非常に大きい留学生にとっては負担になってきておる。ヨーロッパ等におきましてはお互い言語が同類の系統にございますし、またそれらは初級の学校において、つまり自分らの義務教育としても習得してきている者が多いものでございますから、そこに非常にハンディキャップがあるということが一つ。  それからもう一つは、日本の大学にも私はよくお願いするのでございますが、日本の大学で卒業いたしましても、なかなかそれにふさわしい資格の取得が難しい。特に大学院で勉強いたしましても、その資格は博士号とかそういう資格がなかなかとりにくいということ。そしてさらには、帰国いたしましても、それぞれ東南アジア系が多いものでございますから、なかなか就職の機会等にも恵まれない。そういういろいろな条件が重なってきておると思うので、したがいまして、これからの留学生政策というのは、ただ単に受け入れてその生活をある程度面倒を見るということだけではなくして、先ほど言いました日本語の教育、それをどういうぐあいにして事前に勉強してもらうか、就職をどういうふうにするか、そういう総合的なものをかみ合わせた留学生政策というものをとっていかなければならぬと思います。全部はできませんので、とりあえずは生活に関する面のお世話だけは努力改善したい、こう思って、今年から授業料の引き下げ等をやったようなわけであります。
  87. 中西績介

    中西(績)委員 今言われました言語のハンディキャップという問題でありますけれども、これはどういう措置をすればそのことが解消できるかというと、今現存しておる日本語の大学院の場合は六カ月で八カ所、大学にこの研修をするところがあるのだそうですけれども、あるいは学部の場合には一年間、東京外国大学の日本語学校、府中にあるようでありますけれども、そうした施設等についても、これは完全に少数であるし貧弱であるということが言えるわけですね。と同時に今度は海外における、経済的には進出をしておるわけですから、そうしたものと合わせて、やはり経済進出と同比率ぐらいに、そうした日本の文化あるいは日本語を含めて理解をしていただくというような制度、まあ聞くところによりますと、中国だとかマレーシアからの留学生に対しては派遣前に現地でそうした措置をとっておるところだってあるわけです。これは制度上いろいろな問題があるでしょう。しかし、そうしたことだってできるわけですから、来年度の予算はこの程度になっておりますけれども、こうした問題等をぜひ考えていただかなければならぬのではないか。あるいは資格の問題等につきましても、特に技術だとか理科系統、化学系統あたりの問題については技術的な問題ですから直接これが用立てるということでもって、非常に多く東南アジアあたりから来ているようですけれども、ただ問題は、文科だとかこういう問題になってまいりますと、来ておる人たちが逆に年限が短いということが明らかになっているものですから、そのことを完全に習得をして今言うように資格なりなんなりを取るという体制が非常に弱い。ですから、そうした面における本格的な調査を一回外国でやるとか、文部省直接できないけれども、どこかに委託してでも、外国に委託してでも、各国に向けてそうしたものをやっていくというような措置が必要ではないか。  それから、今までの追跡調査によって、特に私が心配するのは、十数年前東南アジアで反日運動が起こったときの中心に座っておるのが日本留学生であったということを考えたときに、何が問題なのかということの十分な摘出をしておかないと、ただ単に金があるから金をくれてやればという考え方でやったのではこれは大変な問題を逆に引き起こしていくのではないかということを感じます。ですから、まず数をふやすということも一つ、そしてそういう敷衍する幾つかの問題を科学的に調査をなさってこれをぜひやっていただくということが一つ。  それからもう一つは、これは提案でありますけれども、御存じのように政府開発援助費が昨年六千五百七十九億円という膨大な額になっています。そして私たちが指摘をしましたように、マルコスの方に四百億を超える金が渡されておったという事態を見てみましても、これを我々は指摘をして、結果は、カナダはおととし直ちに取りやめたのです。日本の外務省あるいは通産省はこれを取りやめなかったのです。こういうむだな金をODAで消費しておるという事実があるわけなんです。こういうことを考えますと、私は少なくとも、こういう関係からすると、最も実効があり最も確信のできる、人的なものを援助していくということが大変重要ではないか。六千四百九十二億もあるのだったら、少なくともそのうちの一千億ぐらい回してでも、さっき言ったような今までの反日運動が起こらないためにも、そして、私たちが今外国に行って話をするときに余りにも少なくてこの話を持ち出せないのですね、こうしたことから考えましても、ODAから一千億ぐらい、そして科学的な調査からあらゆるものをやってみて、もう一度根本的に、ただ単に十三年後には十万人だという呼び声だけでなしにやってみる必要があると思うのですけれども、こういう点についてのお考えはどうでしょうか。
  88. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 ODAの六千億というお話でございますが、この中には貸付金も入っておるものでございまして、したがいまして、それを除きます費用の中で効率的なことを考えなければいかぬだろう。  実は私からも提案しておるのでございますが、ODAという金の性質をどう見るかということ、そしてそれの使う対象をどうするかということ、そしてその配分の基準とかいうものを根本的に見直してくれぬかということを我々は要求しておるのです。文部省でもODA予算としての枠の中で配分はございますけれども、私はこの点はもう少し政府部内で議論してやってもいいのではないかという感じがしております。  おっしゃるように、留学生政策の費用というものはODAでやろうということ、これは政府として合意に達しておりますが、これにつきまして私は、先ほども申しましたように、ただ金さえくれればというそんな気持ちでは絶対におりません。そうではなくして、やはり学生が社会人として、またその国へ帰ったら国家的にも有為な人材になってもらうような、そういうことを思っておるわけでございまして、その意味において私は総合的に努力していきたい、こういうことを先ほど申し上げたようなわけでございます。  最近におきましては大学当局もこの受け入れに非常に積極的に取り組んできてくれておりますので、先ほどのお話がございました博士号の問題等についてもさらに突っ込んで話をしていきたいと私は思っております。  それから、日本語修習の問題でございますが、これは現地でやるものとこちらでやるものとありますが、現地でやるもの、これを何とかしてこの要員をふやしたいと思っております。それにふさわしい希望者というものの選考等が非常に難しい点がございますけれども、とにかく現地へ出向いていって日本語を勉強してもらうということが一番留学生にとって有利な体制になるだろうと思って、今後とも努力を進めていきます。
  89. 中西績介

    中西(績)委員 海外のものを拡大するという問題は、例えばボランティアあたりで海外に行く人だっておるわけですから、そういう人たちをどんどん吸収して援助していくという体制に入ればできない仕事ではないだろうと私は思います。  私は特に、貸し付けの問題が今出ましたけれども、この貸し付けの場合も問題があるので、これは教育の問題もこの中に入っていますから、ただそのときに教育施設だとかいろいろな問題で枠をはめられてしまうと困難ですから、この枠を逆にふやして、教育施設とともにふやしておいて、今度は貸し付けなら貸し付けの中身についても、こっちが規制をするのは大変よくないと思いますけれども、例えば外国の政府から派遣される留学生がおるわけですね。しかし、財政的に厳しいものですから六十一年度では八百九十五名しかいないという状況にあるわけでしょう。ですからこの分を、同じ貸し付けでもそういう教育面だとか人材開発だとかなんとかでやっていただくということも、お互いのコンセンサスの中でやっていきさえすれば、教育の分野における施設だけでなしに人材を養成するという意味で、広い意味での教育ということを拡大していけば可能じゃないかと私は思うのですね。  時間がございませんので、きょうはこの分について細かくは討議できませんけれども、こうした点等を十分勘案していただいて、大臣が在任中にでもそうした方向に向けての目をあけていただくようにぜひ御努力いただければと思います。この点についてはこれで打ち切りますが、いずれにしましても今国際的にこうした問題が最も大きく問題視されておりますだけに、ぜひこの点についての施策を推し進めていただければと思います。  そこで、私はこれと同様に、諸外国に比べて大変恥ずかしい状況にある奨学金の問題について一、二の質問を申し上げたいと思います。  奨学金も留学生と同様に、我々外国に一昨年参りました際に、いろいろなところで、文教委員の派遣の際に奨学金問題を聞いてみると、もう恥ずかしゅうて物が言えぬ。しかも、日本の実態を言うと向こうの方は理解しようとしないのです。そんなばかげたことがというのが先に立ってしまうのですね。それが今日本における奨学金の問題だろうと思います。  そこで、この奨学金を諸外国と比較してみますと大変な状況にあるというのは、私がここで申し上げるまでもありません。これの形としてはアメリカ型、西欧型とそれから社会主義諸国の型、それとうんと並み外れた日本型がある、こう考えていいんじゃないでしょうか。アメリカ型に近いと言う人もいますけれども、大体そういう型になっている。ところがその基本は、支給形態を見ると、給付制というのが根っこに据わった上で日本を除く各国は全部それがつくり上げられておるというところに大変な特徴があるし、それから受給しておる数からいたしましてもこれがまた大変な差があるということ。さらにまた、給付制になっておるけれども、授業料の徴収の有無を見ますと、大学の場合は、アメリカのみは授業料を取っておりますけれども、他の国はこれを免除しておるという状況ですね。  ですから、こういうところを考えますと、日本の奨学金というのはいち早く経済大国並みに国際性を維持するという立場に立って考えるべきではないかと思うのですけれども、この点はどうでしょう。
  90. 植木浩

    ○植木(浩)政府委員 日本の留学生制度をもっともっと充実整備しなければいけないということは先ほど来お話があったようでございますが、奨学金について申し上げますと、私どもが持っているデータでは先生が今お話しになった印象とはかなり違うわけでございます。  例えば、日本の国費留学生の奨学金の金額は大学院レベルで十七万六千五百円でございます。これをアメリカのフルブライト……(中西(績)委員「いや、奨学金一般のことを言っているのだ」と呼ぶ)留学生ではございませんか。——それは失礼いたしました。私は留学生の続きで、ちょっとそちらで考えていたものですから、それはどうも失礼いたしました。
  91. 阿部充夫

    ○阿部(充)政府委員 ただいま手元に詳細な資料を持っておりませんけれども、奨学金の制度、仕組み等につきまして、日本が貸与制ということを中心にしているというのは世界でも珍しいケースではあろうと思っております。ただ、日本育英会の奨学金制度をつくりましたのは戦時中でございますけれども、その際からこの問題、貸与制にするのか給費制にするのかというのは大きく議論が分かれた点でございまして、そのときの考え方といたしまして、貸与制にして返してもらう、返してもらうそのお金がまた後輩の奨学金として活用されるということが、やはり教育的にも意義がありそれなりの重要性を持っているのではないかという考え方がとられたのだと思っております。現在そういう仕組みで、数年前にはそういった無利子貸与制のほかにさらにつけ加えまして有利子の貸与制度も加えるということで、奨学生の対象をふやすということに努力をしておるわけでございますが、このたびの臨教審の答申等におきましても奨学金制度の充実ということが言われておりますし、特にまた大学院レベルについての奨学金制度というのはもっと根本的に考えるべきだというような御指摘もいただいておるわけでございまして、私どももこれはこれからの検討の大事な課題一つである、かように考えておるところでございます。
  92. 中西績介

    中西(績)委員 私は、先ほど申し上げましたように、今学術局長の方から言われました点については数の上で随分差があるということを申し上げたのです。しかも国費の留学生が非常に少ないということですね。留学生の奨学金というのは、この中身というのは確かに大体比肩する状況にあると思うのです。私が申し上げておりますのは、ちょっと質問の仕方が悪かったかと思いますが、このような大学における奨学金問題については、金余り国日本が、貸し付けによってすれば皆さんが勤勉になるというような従来からの考え方を依然として踏襲しておる。投資すればそのことが必ずはね返ってくるというような、こんなことで教育という問題はよろしいだろうか。枠をはめなくても、もうちょっと自由であっていいんじゃないかということが我々の中にはあるのです。しかも外国の場合にはそれが徹底されておるのじゃないだろうか。ですから、歴史上の違いがあるということはわかりますけれども、現在国際的に物を考える場合に、そういう従来からのしきたりだとかなんとかを乗り越える時期に来ておるのではないか。こういうことを考えたときに、もう一度、アメリカ型、西欧型あるいは社会主義型という分け方がいいかどうかわかりませんけれども、これに類似するくらいの進展を図っていただきたいと思うわけです。ですから、先ほども言われておりましたそうした内容についてはぜひ御検討をいただくようにお願いを申し上げたいと思います。これは関係当局あたりとも関連づけて討論をしていただかないと、ただ単に文部省だけという限った枠の中だけでなしに、今多くの問題がありますだけに、日本の実情をどう海外に示していくかあるいは理解をさせるか、そうした点等からいたしましても、留学生問題あるいは奨学金というのはぜひそうした視点からの御検討をお願いしたいと思います。  そこで、そうした見地からいたしますと、地域改善のための大学進学奨励費が八二年、昭和でいいますと五十七年に、御存じのとおり地域改善対策特別措置法というのができたときに、これが給付から貸与制に変えられました。ところが、このときの瀬戸山大臣等を含めまして皆さんは、もし大学に進学する率が停滞したり落ち込んだ際には再検討しなくてはならぬということを、この委員会の場であるいは予算委員会分科会の中でも確認をしてきたところです。ところが実態を見ると、いろいろとり方によって差がありますけれども、私が持っておるものを見ますと、人数からいいますと、一九八二年、五十七年にこの法が制定され給付制から貸与制に変わったわけでありますけれども、その前年はこれだけ給付されておったわけです。国公立が千七十人、それから私立が八千三百人あったわけであります。ところが給付から貸与に変わった途端に、だんだんこれが削減されまして、八五年、国公立は千七十人、これは変わりませんけれども、私立の場合が六千九百人に落ち込んでしまう、千四百人の差が出てきております。給付制のころは落ち込むのではなくてむしろ一%くらいずつずっと上昇を続けてきておった。人員も大体三百人くらいずつずっと上昇を続けておったのですけれども、それが今度は逆に落ち込み始めて、わずか四年間で千四百落ち込んでしまった。ですから率からいいますと現在大体一九%台。ところが一般の場合には三〇・四から三〇・五%程度進学しています。ですからその差は一〇%以上。これはずっと上昇しまして縮小してきたのですけれども、これから以降逆に減ってきておるという状況が出てきています。  こうしたことを考えますと、この点については約束どおりに再検討されたかどうか、この点どうですか。
  93. 阿部充夫

    ○阿部(充)政府委員 ただいまの先生のお話にもございましたように、昭和五十七年度に制度の切りかえを行ったわけでございます。その後、進学率の状況等について調べておるわけでございますけれども、これも御案内のように、従来の調査の方法が必ずしも正確でない、より正確なものをとりたいということで、昭和六十年度に新しい調査方法に変えまして、その数値をとったわけでございまして、それが先ほど先生おっしゃいました進学率、全国平均が三〇・五%に対しまして対象地域の進学率が一九・一%という状況であったわけでございます。その後、昭和六十一年度の数値が出ておりますけれども、これも全国平均で三〇・三%、全国平均は若干下がっておりますが、これに対しまして対象地域の進学率は一九・一%ということで、前年と全く同じ数字になっておるわけでございます。  わずか一年間分のデータしかございませんので、この変化の傾向というのを今の段階ですぐにどうこうと言うことは大変難しいと思いますが、そういう点につきましては、さらに今後ともその状況等を見ながら、また都道府県関係者考え方ども聞きながら見守り、あるいは問題点を考えていきたい、こういうふうに思っている次第でございます。  ただ、そういった中でも、奨学金制度の充実は大事でございますので、私ども昭和六十二年度におきましても国公立二千円、私立三千円といったような貸与額の増額を図ったわけでございまして、今後ともこの制度については十分配慮をしてまいりたい、こう考えておるところでございます。
  94. 中西績介

    中西(績)委員 今まであった調査方法を変更いたしまして一九・一%と今言われましたね。じゃ、その前年はそういう調査、同じ傾向の調査をしたとしますならばこれは減っていったのではないかと私は思うのです。というのは、別の調査でそれが実施されましてから、八二年が一七・六%あったものが八四年には一六・七%に落ち込んでおるわけですね。そして今度は、今言う八五年に調査方法を変えて一九・一になったわけですから。そしてそれは、今度は同じように全く伸びずに昨年はまた一九・一という数値になっておるわけですから、停滞し、落ち込んでいることは事実なのです。それで私があえて先ほどの数を申し上げたのはそこにあるのです。  そこで、この法の発効したその年の前年の一九八一年、昭和で言いますと五十六年には国公私立を合わせまして九千三百七十人あったものが、その明くる年、法が発効したときにはもう既に私立が四百人減になっておるのですよ。国公立はずっと昨年まで変わらずに来ているのです。ところが、今度私立の方はどれだけになっているかというと、先ほど言うように一昨年までで千四百人も落ち込んでしまっている。法が制定されてから一年だけで四百人落ち込んでいるわけですから、率の方も、今申し上げているように一年だけでなしに、私の申しておることからしますと相当長い年月を見れば、ここ数年間、六、七年間の流れを見たら随分減退をしておる、こうした実態があるということをもう一度文部省皆さんは理解をする必要があるのではないか。その上に立って、私たちは、これが実施された時期を考えていただくとわかるように、こんなに差があったものが一〇%程度にようやく追いついているのですよ、それがまた減退をする。こういう状況を何としても考えていただかなくはならぬと思うのです。ですから、これが実施された、昭和で言うと五十七年当時に大臣が約束された「検討します」ということを、もう一回私は要求をいたします。減退しておることはもう事実ですから、この点を阿部局長あたりが中心になって数値を精査していただいて、ぜひやっていただければと思います。  それとあわせまして、今度高等学校にこういう状況が出てきているでしょう。これは私、驚いたのですよ。なぜかというと、さっき言われた同和対策特別委員会委員会皆さんは、この高等学校の奨学金については現状維持でいくべきだと、八人の自民党の皆さんですよ、そういう結論を出されたということをお聞きして私は安心をしておったところが、だれがやったか知らないけれども、これを貸与制に切りかえたのですよ。しかもこの前の大学のときは、地域改善対策特別措置法という法律が制定をされたときに切りかえた。今度、もう法律の名前が長いから短くさせていただきますと、地対財特法なるものが制定をされた途端にまた同じように高等学校でこれをやった。このことは、先ほどから私がるる申し上げているように、留学生と奨学金が国際的に見て非常に劣っておる、そういう条件の中で、これを大学の奨学金に続いて一般についてもぜひ考え直していただきたいというときに、そしてこれを検討すると言っておるのに、検討もせずに高等学校の分を——これは大変な数に上るわけであります、数を見ますと、八五年で言いますと高等学校の場合には大体三万六千八百人に上っておるのですよ。そしてその状況はどうなっておるかというと、これが制定をされた一九六六年、今をさかのぼること二十年近くになるのですが、ようよう設けられたときは千五百円で二千七百三十人だったのです。そのときには部落の進学率は幾らだったかというと三〇%ですよ。一般が六〇%をはるかに超えていました。そしてこの二十年間でようやく三万六千八百人になり、その率からいたしますと、もう私がここで申し上げるまでもなく、八七%を超える状況にまでなってきたのです。一般の場合には九四%を超えていますね。そうすると、皆さんに報告を求めると、これがようやく六・何%の差になってきたのですということを言いますけれども、なぜ今あえてこれをやめなくてはならぬのか。これは私、どうしても納得がいきません。なぜやったのか、この点についてお答えいただきたい。    〔鳩山(邦)委員長代理退席、委員長着席〕
  95. 西崎清久

    西崎政府委員 本件については、先生は経緯その他、大変お詳しいわけでございますが、このたびの高校に関する進学奨励補助事業を貸与制に切りかえた経緯を、簡単に私どもの方での把握を申し上げたいと思います。  一つは、先生御指摘の新法を制定する前提として、昨年の暮れに、総務庁に置かれております地域改善対策協議会におきまして、「今後における地域改善対策について」ということで意見具申が行われ、若干長文でございますので詳細は省略いたしますが、この意見具申の中で、今後の地域改善対策に関する特別立法の考え方というものが示されておるわけでございます。その中の要点、関連部分をひとつ申し上げますと、これらの地域についていろいろな財政措置を行うということは必要である、しかし一方、国民に対する行政施策の公平な適用ということから考えれば、やはりできるだけ一般対策の中でそれをすることが望ましい、結局は国民の税負担だ、こういうふうな二つ考え方を中で示して、そしてこの地域改善対策に対する財政措置については全般的に見直すべし、こういうのが基本原則に一つございます。  それからもう一点、今先生御指摘の奨励費に関連する部分といたしましては、個別事項として、個人給付的事業については原則として廃止するという方針が出されまして、自立、向上に役立つものについては段階的に一般対策へ移行できるよう検討するというふうなことで、いろいろ個人給付的事業についての整理、見直しというのが加えて対策として上がっておるわけでございます。私どもは、この地域改善対策協議会の意見具申が出ましたプロセス、それから昨年暮れの予算折衝のプロセスを通じまして、政府部内でいろいろな検討が重ねられたわけでございますが、結果といたしましては、この高等学校進学奨励費については廃止することなくしかし全般的な政府施策の方針に基づいてこれは貸付事業に切りかえて存続をさせようというふうな結論に達し、予算計上をし、本年度の事業といたしましては、四月から九月の半年は給付で行う、十月以降から貸与制に切りかえ、その間、都道府県におきましては条例措置等を講じ所要の対応策を講ずる、こういうふうなことに相なったということでございまして、先生いろいろ御指摘の点はございますが、全体政府方針の問題として、こういうふうな事情として貸与制に切りかえたことを御説明として申し上げたいと思います。
  96. 中西績介

    中西(績)委員 今聞きますと、先ほど答弁をいただいたときには自民党のそうした小委員会なりで討論をして措置をした、こういうふうに言われましたね。ところが今回の場合には、自民党の中におけるそうした小委員会なり検討委員会では、継続をすべきだという結論を出したのですよ、直接我々はその人たちから聞いているのですから。だのに、一晩にしてやったということになれば、今の答弁からすると文部省がやったということになる。  それで、私は先ほどからるる奨学金についてあるいは留学生についてわざわざ取り上げてやったのは、国際社会に向けてどうするということを皆さん盛んに口では言うわけです。政治家も言うし、行政の皆さんも言う。ところがそれに対して見た場合には、外に行って発言のできぬような状況にあるような中身について今たった一つ給付として残っておったものを、行革審が言ったかどうか知らぬけれども、あるいは協議会の皆さんが言ったかどうか知らないけれども、少なくともこの問題についてもう一度再考を促すくらいの皆さんの姿勢がなぜなかったのかということが私は一番不思議に思えてなりません。  なぜなら、お考えいただけばわかるように、高校の進学率は、先ほど私が申し上げましたように、一般の場合が九四%をはるかに超える、ところが、これが二十年間で、半分以下であったものを、三〇%であったものがようやく八七%を超えるところまできている。今なお六・八%なりの差が依然としてこれが縮まらないできている。九四%を超える高校進学率というのは、我々が言うようにもう準義務化しておるではないですか。高等学校というのはもう大部分が行っており、特別の人が進学しないという状況です。私は義務教育にということで随分皆さんとこうして討論をした際には、行きたくないという人がいるから、そういう人を考えれば、これは義務教育とすべきではないという論議を展開するじゃありませんか。特定の人です。ほかの人は全部高等学校に行きたいし、行っている。そのときに、同和地区には差があるのに、これに追いついたというなら、私はああ、よかったということである程度納得できる。しかし、二十年かかって今なおこれなのに、どうして今これをしなくちゃいかぬかということなんですよ。その金額は幾らですか。同和対策というものの真髄をあなたたちが知らないからこういうことを平気でやるのです、私に言わせると。ここに一番の問題があるんじゃないですか。  この準義務教育的な性格を持つ高等学校について、少なくとも差があって、二十年かかってもそこまできておらないものをなぜ打ち切る。これはまた、大学より以上に大きな影響が出ることは必至ですよ。私は実際にその中に入って知っているからです。二十年で返す、二十分の一、そしてそれが免除の額に達しておるかどうかとか、一々行政だって大変でしょう。あなたたちがやるんじゃないから平気かもしらぬけれども、これは大変ですよ。  そうした意味で、今まで申し上げてきたように、大学を検討してもらうということ、その基本は何かといったらやはり依然として給付制ですよ。そのときに、準義務的な高等学校のものを何でこれをしなければならぬか。だれだれから言われたということで理屈を立てることは大変な誤りだと私は思うのですよ。少なくとも皆さんが同和対策というものの本質をもう一回やり直していただいて、勉強していただいて、その中身がどうなのかということをもう一遍やり返していただきたいと思うのです。これが一つ。  それからもう一つは、実施要綱を見ますと、これは継続すると言っているけれども、五年でしょう。「六十七年三月三十一日限り、その効力を失う。」とあります。打ち切るということになっています。この点と、今引き続きやると答えられたこととの関連は何ですか。  ですから、一点目については大臣にぜひこの点についてお答えいただきたいし、二点目については局長の方からお答えいただきたい。
  97. 西崎清久

    西崎政府委員 二点目の先生の御質疑の、この貸与制にかかわる実施要綱で五年ということで要綱の有効期限を切っておるわけでございますが、先生つとに御承知のように、このたびの新法は五年の時限立法になっておるわけでございます。同和対策にかかわる各種施策につきましては、やはり新法に基づく事業として実施をするというふうになっておりますので、私どものこの高校進学奨励費にかかわる貸与事業についての取り扱いも、やはり新法に基づく事業としての性格を持っておりますので、実施要綱についてもこのような形にしておるわけでございます。  先の話といたしまして、五年後の話という問題は、やはり新法が期限が切れたときに全体の政府の総合政策としての対策が法制度としてどういうふうになっていくか、こういうことの問題の一環として考えなければならないというふうに思うわけでございます。  それからもう一点、これは大臣からもお答えあると思いますけれども、同和対策事業の重要性ということは私どもも十分承知しておるわけでございます。しかし、個々の同和対策事業は各省がそれぞれ分担をしておりますけれども、総合的な政府施策としてこれをどう考えていくかということは、やはり総務庁を中心として政府としての対応ということになるわけでありまして、その基本は地域改善対策協議会でいろいろ意見具申が行われ、政府として全体の姿を整えて、各省が分担をしてこれを実施するということに相なったわけでございまして、いろいろな経緯はあるわけでございますが、そういう事情にあることを御理解いただきたいというふうに思う次第でございます。
  98. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 同和対策は総合的な地域対策とあわせて実施されておるものでございまして、それだけに政府はこれには今までからずっと変わらざる重点政策として取り組んでまいりました。したがいまして、今後におきまして、貸与制になったとはいえ、この指導充実を期して、進学が容易にといいましょうか、進学が十分可能になるような実質的な指導を、地元の教育委員会等、あるいはまたこれは知事部局も絡んでまいりますが、地元の関係者と協議いたしまして積極的に進めていく予定であります。
  99. 中西績介

    中西(績)委員 終わりますが、さっき局長答弁で、新法があるので同和対策でもこれをやっておるので云々という答弁がありました。ところがこの中身というのは変わらぬですよ。一般と変わらぬ。同和対策という名は付してありますけれども、地域云々という名は付してあるけれども内容をずっと検討していきますと、全く変わりはない。だから、もうこれは一般に移したと同じような感覚でしか私は受けとめることができない。ですから、今そうおっしゃるから私はあえてそのことについて言うわけです。  それからもう一つ大臣、地域との関連、それから地方自治体との関連、それはそのとおりだ、そこが大変苦労するようなことをやるので、それでぜひ残してほしいということを言っておるにもかかわらず、そして自民党の皆さん、政策を担当する皆さんもこれは残そうと言っておるのに、政府がそうした態勢に立ったということは、結局今出てきております、私から言わせるとようやく近づきつつあるものを、今度はまだその差を拡大してもいたし方ないという前提に立っておると言わざるを得ない。なぜなら大学は既にそうなっています。しかし、大学の方がまだならないはずなんです、高等学校の方がまだ問題があるのですから。だからこれはさらに拡大します。ですから、私はもう答弁は要りませんけれども、後でまた別の機会にやりますが、この点についてもう一回検討しておかないと、これは逆にもっと開いていきます。そのことを私は宣告いたしておきます。以上です。     —————————————
  100. 愛知和男

    愛知委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  文教行政基本施策に関する件、特に臨時教育審議会の教育改革に関する第四次答申について、来る四日、参考人として元臨時教育審議会会長岡本道雄君及び元臨時教育審議会会長代理石川忠雄君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  101. 愛知和男

    愛知委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四分休憩      ————◇—————     午後一時三分開議
  102. 愛知和男

    愛知委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。杉浦正健君。
  103. 杉浦正健

    ○杉浦委員 御紹介いただきました杉浦でございます。時間が限られておりますので、単刀直入に質疑に入らせていただきます。  実は、私は、去る八月二十六日から三十一日まで院のお許しを得まして、ジャカルタでこの八月二十七日から二十九日まで開催されましたASCOJAと略称されております元日本留学生アセアン評議会、エーシアン・カウンシル・オブ・ジャパン・アラムニの十周年記念第七回総会に、福田赳夫先生の随員として参加して帰ってきたばかりでございます。三百人を超える元留学生が参加しました大変な盛会でございまして、実に深い感銘を受けて帰ってまいったわけでございます。塩川文部大臣はこのASCOJAができましたときに官房副長官をなさっておられて生みの親であられたと伺っておりますが、出席の御予定であったところを国会の御都合で参加できなかったということで大変残念であられたと思いますが、その中で若干要望も伺ってまいりましたので、まずこの関連幾つか質問をさせていただきます。  まずASCOJAについて御存じない方もおられるかもしれませんので若干御説明をさせていただきますと、この元日本留学生アセアン評議会と申しますものは、ASEAN地域、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ブルネイ、この六カ国で構成されておりまして、戦中戦後この地域から日本に留学をされた方は、文部省のお話によりますと、留学生が約二万六千人、短期の技術研修生を含めますと約八万人に上るというふうに伺っております。そのうち約二万人がこのASCOJAのメンバーシップに参加されているというふうに伺っておるわけでございます。  これらの地域におきましては、終戦直後の昭和二十八年に既にインドネシアで留学生の会、ペルサダと言っておりますが、会が結成され、同じ年にタイ国でも会ができておったわけでございます。その会がこのASEAN地域全域に結成され、その評議会ができましたことにつきましては、いろいろ経過があり、また福田赳夫先生が大変な御尽力をなさっておられるわけでありますが、それは省略をいたしまして、一九七七年六月、昭和五十二年にこの全地域の元日本留学生が相集いましてこの評議会を結成し、年々、年を追うに従って隆盛をきわめまして今日に至っておるわけでございます。  昭和五十六年には、これらのASEAN地域の留学生の動きに対応いたしまして、国内においてもそれを支援すると申しますか、協力するべく財団法人アジア留学生協力会、会長は小山五郎氏でございますが、設立せられ、塩川文部大臣もその理事に御就任なされておりますが、福田赳夫先生が名誉会長という財団法人ができまして、支援活動を行ってまいっております。  今回、十周年記念ということで小山会長、長谷川周重顧問、経団連のインドネシア協力委員長でございます植田三男氏初め四十名の各界の代表団が、このASCOJAに参加した次第でございます。  私は、この総会に出席いたしましてまず胸を打たれましたのは、議長団に並んでおります五人の各国代表のうち三名がいわゆる南方特別留学生出身の方々であったということでございます。南方特別留学生というのは、戦争中の昭和十八年並びに十九年に、当時東南アジアの各地から二百十名と言われておりますが、各地域の優秀な青年を選抜いたしまして、十代後半の若者でありますが、日本に招致をして教育をしたわけであります。彼らは日本において終戦を迎えたわけでありますが、日本の敗戦という事実に直面して、失意のうちに帰国をして、今まで非常に肩身の狭い思いをしておったようであります。しかし、日本が平和国家として経済大国として国際社会において発言力を増すに伴いまして、最近は非常に肩身の広い思いをしておられるようでありまして、実に多数の方が参加しておられ、活気に満ちておられたわけでございます。国会議員も四名ほど、実業家として成功された方もたくさんおられるわけでありまして、文字どおり各国においてリーダーとして活躍しておられるように拝見いたしました。私は、それを申し上げたかったのは、私どもの先人、戦争中の方々がまいておいていただいた種が、四十数年後の今日に至って大輪の花を吹かせておるということをまず第一に申し上げたかったわけでございます。  教育というものは時間がかかり、お金がかかるわけであります。それが国際間の問題になりますとなおさらそうでございまして、一部においては、日本に留学された方が帰国されて、日本のことをとかくよく言われない方がいるというふうに伺っておりますが、何と申しましても、ともかく日本に長期間留学して、日本で生活し、勉強するということによって、彼らが日本の歴史、伝統、社会すべてにわたってよく理解しておることは間違いない。よく言う、言わないは別として、これは事実でありまして、そういう方々が長い年月、祖国へ帰って、その中で活躍をし、高い地位に上り、日本との関係においで必ずいい役割を果たしてもらえるということは、申すまでもないことだと私は思うわけでございます。  それからもう一つ、南方特別留学生とは別に、壇上の代表五名のうち二名は、国費留学生の第一回とか第何回目とか、とにかく初期に日本に留学された方々であります。私どもの先輩が、終戦直後のあの廃墟に近い状態の中で、いち早く国費留学生制度を設けて東南アジアから留学生を迎えられたということは、私は当時学生でございましたが、それが現在大変すばらしい成果となってあらわれておることを目の当たりにしてまいったわけでございます。  そういう意味におきまして、現在文部省におかれて留学生受け入れ十万人計画という目標を立てられて努力されていることを伺っておるわけでございますが、大いに御推進願いたい。十万人と申しますと、アメリカは三十万人を超えておるわけでありまして、大体ヨーロッパ並みの水準に近づくということに相なりましょうか。本来ならば三十万人とか五十万人とかいう目標を立てるべきかもしれませんが、とりあえずは十万人程度ということに相なろうかと思います。文部省としても今後とも大いに御努力を願いたいと思うわけでございます。  まず第一に、その点につきまして大臣の御所見をお伺いしたいと存じます。
  104. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 ASCOJAの十周年大会に参加していただきまして、貴重な経験をしていただきましたことに私も敬意を表したいと思います。  あれはちょうど十年前でございまして、私たちは第一回をフィリピンに参りましてあの結成大会をやったことが、ついこの前のような感じがいたします。  この団体と申しましょうか国際会議を通じまして、私は、いろいろな留学生政策について、日本に対する要望なりあるいは日本で留学してきた方々が現地へ帰ってどういうふうに活躍されておるかということを逐一知り、接触するのに、非常にいい機会だと思っておるのでございまして、先人が開かれましたこの留学生制度というものを、国策の一つとして私はやはり推進していくべきだと思っておるのでございます。  同時に、この留学生政策というのは、ただ単に留学、学問・教育を通じての話だけではなくして、外交上、またお互いの国で平和を維持していくという、その意味においても非常に重要なことだと思っておるのでございます。  ついては、今まで政府がいろいろやってまいりました留学生政策を、今後は本当にそういう国と国とのつき合いの一環としての重要なところに位置づけをして、留学生政策をさらに見直し、充実していきたい、その気持ちを強く持っておるものでございます。  特に、参加されたときに意見が出たと思うのでございますが、ASEAN諸国におきます大学、高等教育機関の整備というものにどうしても日本の力を借りなければというのが彼らの国の言い分でございまして、そういう留学生政策を遂行していくと同時に、日本が現在持っておる経済の力を発展途上国における高等教育機関の充実にも貸していき、相互に交流を深くするということが今後の重要な課題ではないか、私はそう認識いたしておるところでございます。
  105. 杉浦正健

    ○杉浦委員 先にお答えをちょうだいしてしまったわけでありますが、実は参りましてびっくりしたと申しますか感激したわけであります。実は、インドネシアの支部、チャプター、ペルサダと申しますが、そこで、その支部の名前を冠しましたペルサダ大学という大学を創設しております。その同窓会が主体となりまして各方面の協力を得て去年の秋に設立をしたようでありますが、現在百名ほど学生がおるわけであります。現在のところはまだ小規模な、そう言うと大変失礼ですけれども、日本の小学校の規模にも足りないような感じの大学ではありますが、実に意欲的な計画を持っておるわけでございます。  私ども、福田先生初め、見学をいたしてまいりました。彼らASCOJAの評議会では、インドネシアに続いて各国でも自分たちの力で大学を創立しようという動きがございます。それから、日本との間で人物交流の計画、いろいろと計画をいたしております。ただ単に日本に留学生を派遣するだけではなくて、むしろ積極的に日本の青年を自分たちの国に留学生として受け入れよう、そういうような計画も持っておるようでございます。  そういった計画の日本側の協力の窓口は、先ほど申しました財団法人アジア留学生協力会でありますが、この会合の席上で、ペルサダ大学に対しまして、今年度図書、LL機器等約五千万円の協力をするという計画が披露されまして、大変皆さんの喝采を博しておりましたが、財団法人アジア留学生協力会の諸活動並びにペルサダ大学その他のこれから計画されるでありましょう諸計画に対しまして、日本政府としても可能な限りの協力を惜しまないことが大切だろうと思われますが、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  106. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私は今、そういうASEAN各国に対しまして、各大学が個別にJASCAAに協力をというお話がございますのを、ぜひそれぞれの国で統一してほしいということを願っております。現在、それが実ってまいりましたのはタイでございまして、タイにおきます各大学がタマサート大学を中心といたしまして基金をつくろう、日本が援助をして共同でその基金をつくり、それを今後日本とタイとの学術交流の窓口にしていこう、そして同時に、その基金から得られる果実をもって同国内におきます各大学に対する奨学資金を給付する、こういう構想が出てきております。これは各国それぞれの事情がございますから、これを画一的に申すことはできないと思うのでございますけれども、そのように、何事を進めるにいたしましても、ただ金を出せばいいという発想ではなくして、何を望んでおるのか、そしてどういうところに力を貸せと言っておるのかということを的確につかんで、お互いが協力するということが大事なことだと私は思っておるのでございます。  その意味におきまして、我々もただ留学生を受け入れるだけではなくして、こちらから出ていって共同で研究しよう、そういう意味における留学をこれから日本はやらなければいかぬだろう。日本は今までは、いわば受信の方ばかりの留学でございましたが、これからは発信をしていく方に立った留学政策も同時に必要なのではないか、こういうことを痛感しておるところであります。
  107. 杉浦正健

    ○杉浦委員 福田先生が常々、福田ドクトリンの根幹として、心と心の交流ということをおっしゃっておられるわけでありますが、特にアジア地域の諸国につきましては、過去の戦争におきまして大変な迷惑をかけたわけでございますので、文部省としましても、特段の御配慮をいただいて、交流を深めていただきたいということを念ずる次第であります。  ひとつ要望としまして、現在の円高で私費留学生が、送金額が目減りして非常に困っている人が多い、国費の人に対する小遣いの送金についてもしかりなので、何とか御配慮願いたいという要望が出されておりましたので、御回答は要りませんけれども文部省当局としても可能な限りの御検討を願いたいと存ずる次第でございます。  たくさん申し上げたいことがありますが、時間に限りがございますので、次の質問に移らしていただきます。  四全総におきまして、国土の機能の一極集中から多極分散ということが言われておるわけでございます。首都機能の地方への移転ということが必要であろうかと思いますが、私は私の持論として、大学こそ最も移転を検討してよろしい分野ではなかろうかというふうに思うわけであります。東大、東工大を初め、国公立の大学だけで相当都内にあるわけでございます。私立大学は中央大学、早稲田大学等、移転を済ませたところ、移転を計画しておるところもございますが、文部省としても真剣に検討していただきたい。移転先も、大学先生のアルバイト等の関係があるのかもしれませんが、しかし、都心から五十キロないし百キロ圏には広大な土地がございますし、筑波学園都市の先例もあります。あれが計画されたころは荒唐無稽だと言われたわけでありますが、現在はあの筑波学園都市は大成功であったという評価を得ているわけでありますので、東京大学を筆頭といたしまして、百キロ圏前後へ移転することを文部省として真剣に御検討願ったらいかがかと思っておるわけでございますが、大臣の御所見はいかがでございましょうか。
  108. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私は最近大学との間で懇談をいたしたいと思っておりますが、その席にもそのことを提案いたしたいと思っております。おかげをもちまして衆議院では大学審議会の設置を決めていただきまして、今参議院にかかっておりますが、この審議会ができましたら、そういう学園の場所づけの問題なんかも当然の問題としていろいろな意見を聞いてみたいと思うのです。  地方分散が私はやはり大事な問題になる。八王子が今新しい学生の町といいましょうか、学園都市として発展しておりまして、非常に活気が出てきております。この経験からいいまして、学校当局者並びに八王子の市長等から聞きますと、やはり何としても都心との情報の交換が容易であるということ、その一番の要件はやはり交通の便利さということをぜひやってほしい。つまり学校だけが外へ出ていったらいいというのではなくて、外へ行っても都心におけると大して変わらないほどの迅速性を確保したい、それは一にかかって通信・交通、それから生活環境整備、それにかかってきておるような感じがいたします。学校を誘導する前に、そういう基盤づくりと申しましょうか、環境整備をしてやるということが、学校をして地方分散への考えを持つことになるだろう、こう思うのでございまして、そういう点も学校からの意見もいろいろと聞いてみたいと思っております。  仰せのように、学校の郊外への分散ということは都心の状況を非常に変えてくる、望ましいことだと思っておりまして、積極的にこれを推進していきたいと思います。
  109. 杉浦正健

    ○杉浦委員 ぜひとも第二、第三の筑波学園都市を御計画いただきまして、大学が東京都心になければならない基本的理由はないと思いますし、現下の東京都の周辺における土地高騰の現況から見ましても、国公立大学の用地が供給されるだけでいろいろな意味でかなり緩和されると思いますので、御推進願いたいと思う次第でございます。  時間が余りございませんが、次に、教育改革の推進につきましてお伺いいたします。  臨教審は、御承知のとおり第四次答申を取りまとめられまして、三年にわたる活動を終えられたわけであります。臨教審の出された提言の内容は膨大かつ多岐にわたるものでございまして、具体化につきましては検討を要するものも多いと思いますが、速やかに実施手順を定められまして、着実に教育改革を推進すべきであると私も考えておる一人でございます。大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  110. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 それは全く仰せのとおりでございまして、私たちも早速文部省内に教育改革実施本部を設けまして、現在、臨教審からいただいた答申を精査いたし、さらにそれにつけ加えて、新しい時代への対応を考えようということで懸命に努力いたしておるところでございまして、ぜひこれは国会の力もかりなければならぬと思いますので、そのときの御協力もお願い申し上げたいと思っております。
  111. 杉浦正健

    ○杉浦委員 教育改革の分野においては、私個人の意見かもしれませんが、一番改革を要するのは大学ではなかろうかと思うわけでございます。諸外国との比較におきましても、小中高校課程の教育につきましては相当進歩もしておりますし、整備もされてきていると思うわけでございますが、大学はどうも一番おくれておる。大体大学生が大学へ入って勉強しない、しなくても卒業できるというふうに言われるわけであります。そういう大学の、高等教育の計画的整備ということは、将来二十一世紀を目指しての日本の教育改革におきまして非常に重要ではなかろうかと考えておるわけでございます。文部省としても、ぜひとも計画的に高等教育の改革につきまして計画を立てられまして、御推進いただきたいと思いますが、大臣の御所見はいかがでございましょうか。
  112. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 仰せのとおり、当然大学の改革は今回の教育改革の一番重要な問題の一つであると私は思っております。それをただ文部省だけのリードで改革をやっていこうといたしましても、やはり学問の自由を保障し、学園の自治を尊重するという立場からいいますと、いろいろな方々の意見を聞いて、大学の合意を得、そしてまた国民も納得するような改革を進めていかなければならぬ。その一つの中心となるのが大学審議会でございまして、それを現在提案さしていただいておるのでございますが、この事実を見ていただきましても、文部省として、教育改革の第一着手の一番重要な問題は何か、やはり大学の改革にあるということを意識して取り組んでおるということをお察しいただければ幸せと思います。
  113. 杉浦正健

    ○杉浦委員 大学審議会等創設についての一部法改正、先回お通ししたわけですが、大学につきましては、場所によってはつくり過ぎるというような批判もあると思うのでございます。正直に言って、このような大学をつくっていかがかなと思うような大学もあるわけでございまして、大学の設置につきましては今後とも慎重にする必要があるのではないかと私は個人としては思っておるわけでございますが、大臣の御所見はいかがでございましょうか。
  114. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 大学でも、種別しまして国公立、私立といろいろあると思うのでございますが、国公立につきましてはその設置目的を明確にしておりまして、要するに設置目的に合致するように活力ある活動をしておるかどうかということが問題だと思うのでございます。私立学校におきましては、それぞれ建学の精神、学園設立の趣旨というものをちゃんと持っておると思うのでございまして、やはりそれを中心にして大学が自覚を高めていただく、そのような方向に持っていくのが文部行政としての重要な役割であろう、こう思っております。やはり要らぬ大学はない、全部必要な大学なのだ、けれどもそのような設置あるいは建学の精神に沿うかどうかということを絶えず見直して、その目標に向かっての努力をしていくということが大事な政策だと私は思うのであります。
  115. 杉浦正健

    ○杉浦委員 時間が余りございませんので、最後に一つ大学入試の問題についてお伺いいたします。  大学入試の改革は、国民にとっても大きな関心事でございまして、避けて通れない緊急の課題でございます。今春の大学入試は、グループ分けによります複数受験のメリットを提唱しておったわけでございますが、いわゆる足切りが三万人あったこと、いわゆる水増し合格、入学者の定員割れなどの混乱があったわけでございます。国立大学協会におきましては、既に六十四年度以降の入試の抜本的改善策につきまして定員分割方式を含めまして種々検討されているというふうに伺っておるわけでございます。大学入試の改革案につきましては、完璧なものはないと思いますが、受験生の身になって、より合理的なものとなるように文部省当局初め関係者が全力を尽くすべきだと考えておりますが、大臣の御所見はいかがでございましょうか。
  116. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 御承知のように入学試験というのはやはり選抜でございますから、そこに選抜に合格する者と不合格の者ができることはやむを得ない。これを全部平等にしろということは到底不可能なことでございます。そこで、おっしゃるように気遣いということが大事なのでございまして、ただこれを一片の答案用紙だけで当落を決めるというのではなくして、やはり受験生全体をテストしてやるような、そういう配慮の行き届いた試験をしてほしいと我々は願っておることと、それから一回限りの受験のチャンスではなくして、できるだけ受験のチャンスを数たくさん与えてやってほしい、そして自分の選択についてもっと幅広い選択ができるようにそういう指導もしていかなければならぬのではないか、こういうことを考えておるのでございまして、入試の改善につきましては学生の気持ちをそんたくした改革を進めていかなければならぬというこの基本は変わりないと思っておりますので、御了解いただきたいと思います。
  117. 杉浦正健

    ○杉浦委員 お伺いしたいことがたくさんございますが、時間も参りましたので終わらせていただきます。  ただ、教育は私どもの子孫を育てていくいわば国家百年の大計でございますので、非常に長期的な見地に立った息の長い努力が必要なわけであります。文部省関係者には大変御尽力いただいておるわけでございますが、今後とも予算面等におきましてもひとつ大いに塩川大臣に頑張っていただきまして、我が国教育が将来にわたって万全でありますように御努力いただくようお願いし、私どもも一生懸命努力してまいりたいと思っておる次第でございます。どうもありがとうございました。
  118. 愛知和男

    愛知委員長 鍛路清君。
  119. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 鍛冶清でございます。  きょうは時間をいただきまして、五点にわたってお伺いをいたしたいと思います。限られた時間でございますので、ひとつ要約して、要点をお答えいただければと思っております。  一つは自然教室推進事業とそれに関連して洋上研修の問題、それから二番目には生涯学習体系移行ということについての問題、三番目に留学生問題、四番目に教育課程審議会の問題、最後に大学入試の問題、この五点について若干お尋ねをいたしたいと思います。よろしくお願いをいたします。  最初に、自然教室推進事業と洋上研修の問題でお尋ねをいたします。  自然教室推進事業は昭和五十九年度から文部省で実施されておるわけでございまして、これは私にとりましても、この前身であるセカンドスクールというものが国土庁で行われておりまして、私は実際現場を見に行って、これは大変いいのではないかということで、文教委員会文部省に御提案申し上げたことがございます。そういういきさつからこの問題を取り上げさせていただいたわけです。  この自然教室推進事業は、児童生徒の心身ともに調和のとれた健全な育成を図るという上では大変意義ある施策として認めでいいのではないか、私はこういうように思っておるわけですが、これまでの簡単な経過を、できればよかった点、悪かった点を含めて簡略にお答えいただき、今後の充実策、どういうふうにしていくかということについて大臣からお答えいただければと思います。
  120. 西崎清久

    西崎政府委員 初めに、私の方から概略申し上げたいと思います。  先生御指摘のとおり、自然教室は自然との触れ合い、それから先生と生徒、生徒同士、人格形成、いろいろな面で非常に効果のある授業でございまして、五十九年度から事業を開始いたしまして、当時は四億程度でございましたが、六十二年度は五億七千万、この厳しい予算、毎年減額あるいはゼロシーリングの中で着実に増額をいたしてきておる次第でございます。  実施の学校を申し上げますと、五十九年度当時は千三百校余でございましたが、本年度はもう二千校をちょっと超えるというふうに広がってきておりますし、参加人員は約三十二万人というふうになってきたわけでございます。この点私どももより拡充をしたいということで、来年度の予算といたしましても、予算上の実施校の積算としては千三百校余でございますが、来年度は百七十校ぐらいふやす要求をいたしたいと思っております。  それから最後に、先生、いろいろ問題がありはしないかという御指摘でございますが、実は私どももこの実施につきましては五泊六日ぐらいでの実施が好ましい、実際にやった効果をアンケートで先生や子供たちからとりましても、やはり三泊四日よりは五泊六日がいいというふうなあれが出ておるわけでございます。ただ、現実の実施としては三泊四日というケースが非常に多うございます。この点は私どももなお指導を拡充してまいりたいと思っておりますが、なぜ三泊四日かという点については、経費の問題であるとか全体の年間の授業計画の中で自然教室授業の日数をどの程度とれるかとか、いろいろ個々の実情があるようでございまして、現実には三泊四日というケースも多うございますけれども、私どもは、授業の性格から申しまして、ぜひ、当初考えておりますような五泊六日程度の若干の長期的なアレンジでの授業の実施ということで勧奨し、努力を続けていきたい、こういうふうに思っている次第でございます。
  121. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 今、五泊六日以上が好ましいがそれ以下の実施が非常に多いと言われておりましたが、これは内容的に、パーセントでも数字でも結構ですが、どれくらいの比率がわかればお知らせをいただきたい。
  122. 西崎清久

    西崎政府委員 六十二年度の実施予定校をもう既に私どもとっておるわけでございますが、小中学校合わせて申し上げますと、三泊四日という学校数が約千八百校弱でございます。それから四泊五日が約二百校、それから五泊六日が約八十校、丸めた数字で申し上げますとそういう形でありまして、三泊四日が約八〇%くらいという形になっておる次第でございます。
  123. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これは先ほども長い方がいいというようなことをおっしゃったのですが、具体的にはどういう点で非常に効果があるというふうにお考えなのか、わかっておればお答えをいただきたいと思います。
  124. 西崎清久

    西崎政府委員 先生御案内のとおり、この事業は、やはり学校所在地あるいは住所地域から離れまして、青年の家あるいは少年自然の家という、離れたところに移動して、そして自然に親しむ、施設で授業を行う、こういうことでございますから、やはり往復に日数をとられるという点がございます。したがいまして、三泊四日ということでありますと、やはり往復日数の関係でなかなか生徒のあるいは児童の落ちつきと申しますか、行った先でのいろいろな計画を組む際に少し制約がある、こういう点がまず一つございます。  それから、やはり施設に行ったときにいろいろな新しい環境の中で計画を組みたい、学習を組むとかスポーツを組むとかそれから地域との交流を図るとか、いろいろな授業あるいは交流と授業を組み合わせてやることがこの授業の成果を高めるゆえんでございまして、やはり五泊六日くらいの長さをとることがいろいろな授業に子供が参加できるというふうな面で、もう一つ申し上げれば、今申し上げたようないろいろな授業を多種多様に組み合わせてやることが短い日数ですと若干困難である、こんな感じがしておる次第でございます。
  125. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 私がいろいろ聞いたりしておりまして、今言ったようなこともあるのでしょうが、やはり五泊六日とかそれ以上とかいうと学校先生方がちょっとしんどいところがある、事故なんかが起こると大変だとか。それから経費の点とかもございましょうが、本当に教育効果があるものならば、これは長がろうとも当然取り組んでみるという姿勢を持っていただきたいのでありますけれども、仄聞するところでは、どうもちょっと敬遠をしてしまう。そういう経費とかなんとかに名をかりるのかどうか知りませんが、そういう傾向も若干あるのではないかなという気がするわけです。また、授業計画にしても長くなって、泊まり込みでやるわけですからいろいろなことが起こりますので、それで渋っているという向きがあるというふうに聞いているのですが、そういう点についてはいかがですか。
  126. 西崎清久

    西崎政府委員 先生御指摘のとおり、本事業については、宿泊施設の利用科というのは多くの場合無料というケースが多うございますけれども、移動に要する経費であるとかさまざまな経費が必要でございますから、先生が第一に御指摘のように、経費面での問題というのは、国の補助事業ではありますけれども地方負担分がございますので、それぞれの地方公共団体における財政の状況等で制約があるということは事実あろうかと思うわけでございます。しかし、そこは一つのバランスの問題として、補助事業だけで各市町村がやるということではなくて、これは一つの誘い水、インセンティブとしてとらえていただいて、授業がいいことであり、効果があるということであれば、やはり市町村努力してやってほしいというのが私ども気持ちでございまして、そういう面を少し乗り越えながらやってほしいということを、なお今後も勧奨したいというふうに思っております。  第二に先生御指摘の、管理者あるいは指導者としての先生方の負担が大変ではないか。これは事実あろうかと思います。そういう点でも、常日ごろからの生徒の規律の問題その他、学校運営上の種々の配慮が必要なわけでございますから、先生方も大変ではありますけれども、やはり教育効果等の関係でぜひそこを乗り越えて積極的にやっていただきたいという気持ちは私どもも強いわけでございますので、そういう点についても十分これからまた指導してまいりたいというふうに思っております。
  127. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これはあるいは先刻御承知でもあろうと思いますが、私も、セカンドスクールを最初に日本で始めたとき、残念ながらそのときは文部省はやっておりませんでした。だから私は多少皮肉を言ったのでありますけれども、わきの方がやって肝心の方がやらないというのはおかしいじゃないかと言ったことがあるのですが、これは神戸の川池小学校というところが、町中の小学校でございますが、あのときはたしか六泊七日だったと思いますけれども、国土庁の呼びかけに応じて全国で三校、公立学校では一校だけが、やろうということで、五十三年でございますから随分前です、大方十年になるのですけれども、実施をいたしました。私はその事実を、ちょうど質問しようと思っていろいろ資料を調べておるときに、たまたま目にしまして、非常に感動したことを覚えているわけです。今とまた違いますから、十年くらい前ですと、ああいうふうに六泊七日も学校を離れて、そして泊り込みで、しかも授業もその中でやりながら、田舎のいろいろなところも実地に勉強しながら、体験学習をやりながらやるということについては極めて反対が多かったと思うのです。特に先生がやりたがらない、組合が反対する、父母が反対する、いろいろなところの反対がある。教育委員会ももちろん反対。とにかく事故が起これば危ないからやめろ。こういう中を、やるということで取り組まれた。私はそれに感動いたしましたので、どなたがどういういきさつでこういうことに取り組んだのだろうということで、実は現地に行っていろいろお聞きしてみたわけですが、結局は、そこの当時の校長先生が大変勇気のある方で、すばらしい決断力を持っていらして、まず先生方に呼びかけ、二カ月、三カ月かけてコンセンサスをつくりまして、そして、その当時は五学年の子が全部行ったのですけれども、担当する先生方が本当に力を合わせて半年間、秋に行きましたが、四月に入りましてから半年間、秋のその六泊七日を、極めて有効に本当に楽しく、しかも効果あるものにするために、表現が大げさになるかもしれませんが、それこそ必死で取り組まれたというお話も伺いましたし、いろいろなところでそういうことを聞いて感動した覚えがあるわけです。  結果をいろいろお聞きしてみますと、先ほど局長の御答弁の中で八割以上が三泊四日で実施しているようでございますけれども、三泊四日というのが一番変わるところだそうですね、泊まり込んでやっていると。先生もくたびれる、子供もくたびれる、そしてもう帰りたい、やめたい、しかしやらなければいかぬという微妙なところだそうでありまして、それを乗り越えてやってみて初めて子供との真のつながりができたし、自分たち自身も本当にその中から学ぶことができたし、本当に教育といいますか、いい形での効果あるものが実を結ぶことができたというふうに、これは実感としてしみじみおっしゃっておったわけです。  だからそういうことからいきますと、三泊四日だけでやめてしまうということは、費用の面があるからそうだとかいう次元の話ではないであろう。やはり日本の将来をどう担っていくかという子供の、しかも心の面を含めて非常にいい形で教育ができるわけですから、素人の私がこういうふうに申し上げるのは恐縮かもわかりませんが、そういう点にしっかり着目をして、単なる指導するということではなくて、同じやるのならば五泊六日以上でぜひやれ、必ずやるという形で推進をしていただきたい。また費用の点で多少問題があるなら、これはひとつ文部省の方でお考えいただいて、多少なりとも補助する金額もふやすとかいう努力はぜひしていただきたいと思うのです。  あのとき僕はもう一つ感心したのは、餓鬼大将ができましたね。やはり自然の中にほっておきますと子供というのは自然にそうなるらしいですね。その姿を見ておりましたら、成績の悪い、いつも小さくなっておった子が、おれの出番が来たと言わんばかりに出てきまして、みんなを集めて号令をかけて、頭のいい子もそこではかなわないというようなことで、非常に好ましい形ができておったような気がするのです。聞きましたら、当時その学年は川池小学校の中で一番手数のかかる学年だったそうですが、帰ってから一番手数のかからない学年になった。私は昨年でしたか、七年ぐらいたってからでございますが、その子供たちが今ちょうど大学に試験を受けて入ってまるまる一年、二年ごろにたしかなっていると思いますが、そういう状況も実は聞いてみたのです。そうしましたら、私はびっくりしましたけれども、たった一週間でしたけれども、子供たちがそのときに得た教訓なり思い出なり培ったものを大学に入るまで持ち続けておるということなんですね。その一つの例は何かというと、人間関係が極めてよかったというのです。その行った連中とは違う人で高校時代に友達になっておった人がおりまして、そういう人の話なんか聞きますと、そのときに行ったグループというのは、まあ勉強の方はいまいちであった、こういうことでございますけれども人間的なつながり、また人に対する気配り、そういう点では自分がほかでつながっておった友達と違って気持ちよくつき合いができた、いまだにずっとつき合いをしておるというようなことがあります。  全体を一人一人追跡調査したというわけじゃございませんけれども、そのときに本当に先生が一生懸命になった、必死になった、それが子供に伝わって、そして事故があったらどうしようかというようなことがあったけれども乗り越えて、むしろ無事故で終わることができた。  話が前後して恐縮ですが、そのときに先生方が、子供を親から切り離すということで、特に親にそこの研修場先には絶対に面会に来させないということを前提にやったというんですね。これは私は非常に見識だったと思います。そのときに、親に子供さんのことを、持病が我々の知らないところであるのではないか、何か癖があるのではないかというようなことで、父母の方々に子供一人一人の注意事項を出してもらいましたら、全員が、一番少ない人で四項目ぐらい、多い人は八つも九つも親の注意書きがあった。すぐ風邪を引きやすいとか、偏食があるとか、夜おねしょをするとか、夜は突然起きて夢遊病者みたいに歩くとか、とにかくいろいろなものが重なっておって、それを見たときはもうやめようかと思ったというんですね。事故が起こったらどうするか。しかし、ここまで来たのだからやめるわけにいかぬ。とにかく真剣な取り組みで、現場にも何回も足を運んでやられておったということを後からお聞きしました。それでまた新たな決意で、起こったときは起こったときだ、とにかくここまで来たんだから後戻りできない、頑張ろうというので先生方が本当に本気で頑張った。ところが、後で言っておられましたけれども、不思議に事故が一つもなかったというんですね。やはり一生懸命になると子供にもそういうものが伝わるし、事故がないということにつながった。そして、今申し上げたように何年かたって何人かに私はいろいろとお聞きしてみたのですが、今申し上げたようなことは一つの例でございまして、ほかにもいろいろあったんだろうと思いますが、学校の中で余り人間関係がよくないと言われておったクラスがその一週間で変わってしまった、それが持続しておったということですね。私はそれを聞いて大変うれしい思いがしたんです。そのときの先生にもお会いしたりしましたけれども、大変喜んでおられました。  そういう意味で、私があえてこれをまた再び取り上げてここで申し上げておるのは、私、昨年もお聞きしましたら三泊四日が多いということでございました。そういう意味では非常に残念だったわけです。せっかくやられていい効果が出るものであるなら、もう一つ踏み込んでそこまでどうしてやれないのか。財政的な面なら何とかしてひとつそれは考えてあげていいのではないかということが一つございます。  さらには、さっき私は仄聞するというふうにも申し上げましたけれども先生方がどうもそれ以上は耐えられないとか、長いとどうもしんどくてしょうがないとか、そういうことが大分あるというようなお話もお聞きします。これは極めて残念です。だとするならば、私の方では、しりをたたいてでもとにかく行け、行ってみればまた喜びが出て帰ってこられるのだろうと思うのです。そういう取り組む姿勢が、学校先生方もたくさん仕事を抱えて大変だと思いますけれども、わずかの期間でも人間が一生懸命になったときには、本当にそれがお子さんにとりましては一生につながる重大な影響を与えるのだということ、だからそのとき担当した先生は、この前お会いしたときも断言していましたけれども、そういうことにしっかり先生が腹を据えて取り組んで、子供と一緒にそれをクリアしますと、いじめとかなんとか起こるわけはないとまで言われておりました。それくらい先生方が一生懸命になる。その中で子供が一緒になるときに偉大な教育的効果があらわれるものだなと私は今痛感しているがゆえに、あえてまたここで取り上げて申し上げておるのでございますので、そういう意味で、三泊四日とか余りけちけちせずに、ひとつ思い切ってそういうことにしっかり取り組んでみる。普通の日は時間に追われて大変だということもあるかもわかりませんが、これに取り組むときはとにかくこれに集中してやってみるということがまたほかの面で大きく開けていくことにつながるのではないかなというふうな思いで申し上げておるわけでございますので、この点についてもう一度御答弁をいただきたいと思います。
  128. 西崎清久

    西崎政府委員 先生御指摘のとおり、自然教室事業の実施においては、学業指導だけでなくて、知徳体と申しますけれども、人格形成全体に生徒指導、生活指導の面で大いに効果があるわけでございます。でありますからこそ、私どもとしても、実態は三泊四日であるということにもかかわらず、五泊六日であるべきだという姿勢を崩しておりません。実態は、申し上げましたとおり約八割程度がまだ三泊四日でございますけれども、ここ数年私どもは、いや実態はそうかもしらぬけれども五泊六日でなきゃいかぬよという姿勢を崩さずに指導しているわけでございますので、お話の趣旨を体して、指導課長会議その他いろいろな機会を通じて、各県にその点についての配慮を促すという努力はぜひ続けさせていただきたいと思っております。  それから全体の予算につきましても、ことしは五億余でございますけれども、来年度は六億余というふうに、こういう時期にではございますけれども、相当な金額増ということでやっておりますので、努力をいたしてまいりたいと思っておる次第でございまます。
  129. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これはぜひお願いいたします。こういうところは文部省は少し厚かましく言ってもらってもいいのではないかと私は思うのです、余り変なところには言わずに。大変嫌みな言い方で恐縮でありますが、言うべきときはきちっと言って、こういうことこそ私はやっていただきたいなと思っております。  そこで、これに関連してちょっとお願いを兼ねて御質問申し上げるのですが、同時に、ふるさと交流学習促進事業というのもやっておられるようでございますが、これはぜひ全国的に実施、実現をしていただきたいということと同時に、今後特にふるさと交流や自然教室推進事業と同じ一環として船舶を利用した航海授業、いわゆる洋上学校構想というものをぜひ実現をしていただいて、これを実施していただきたい、こういうふうに思うのでございますが、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  130. 西崎清久

    西崎政府委員 先生前段お尋ねのふるさと交流学習促進事業でございますが、この事業の趣旨は、都会地の学校と山村、漁村の学校、あるいは海辺の学校と山の学校、いろいろな学校が、地域、環境を異にする児童生徒があるわけでございますので、相互交流をし、相互訪問をするとか手紙の交換をする、作品の交換をする、そしてお互いのところに行って宿泊する、こういう形でそれぞれの地域なりあるいは環境の違いに基づく体験をする、こんな事業でございます。  これは私どももそれぞれの都道府県に研究委嘱費を出しまして、それぞれの県で市町村学校までおろしてそれぞれの学校の組み合わせを県ごとにやっていただくというふうなことで、六十、六十一で約百九十校ほどやってもらっておるわけでございます。九県でございました。ことしと来年の二カ年でまた新たに六、七県で実施をお願いしたいと思っておるわけでございまして、これはこれとして、自然学習とはちょっと違いますけれども、異なった環境を相互にという趣旨でこれからも相進めてまいりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。  それから後段の洋上学校の件で、先生方の方でいろいろな御研究があって、もう既に予算委員会等でも御質問をいただいておりまして、私ども研究をいたしております。御案内のとおり、青山学院では初等部で小学生、六年生でございましたか、かなり経費はかかりますけれども、百二十人を乗せてやっておる、大変効果が上がっておるというふうなことも承知しましたし、それから滋賀県では、琵琶湖でフローティングスクールというので、県の事業で小中学校集めてやっておるというのも承知しております。さらに、その後いろいろ調べておりましたら、茨城県が社会教育事業として大洗から岩手県の方へ船を走らせて、あの辺の牧場その他に連れていく、これは社会教育事業で親も乗せる、ちょっとまた違うのでございますが、いろいろな計画があることを今いろいろ調べておる最中でございます。  ただ、私どもまだ検討段階でありますと申し上げるゆえんは、一つは、小学生の問題でございますと安全管理の問題をどう考えるか、それから健康管理の問題がどうか、それから、自然教室は山でこれはおっこちる心配はないのでございますけれども、船でございますから、安全管理で管理者側の陣容の問題をどう考えるか、それから最後には、洋上研修といった場合に、確かに人格形成で効果ありと思うわけでありますけれども、具体にどのような学習の内容をセットし、効果をどういうふうに予測するか、もう少し私どもとしても実態に即して研究を進めたいというふうに思っておるわけでございまして、この辺につきましてはもう少し時間をいただけないかというふうに思っております。  この洋上研修というのは、仮に小中学生について考えるとすればどの事業が近いかと申しますと、ふるさとの方よりは自然教室の方に近いのではないかというふうに私どもは思っております。自然教室の場合には行く先が山である、それから洋上研修は海で、ただ船が動いているというところの違いがございますが、ふるさとよりはむしろ自然教室の方に概念としては近い、こんな感じを持っておりますので、ちょっとつけ加えさせていただきます。
  131. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 先ほど健康管理等の話もございましたけれども、セカンドスクールのときにも行ってそこらあたりもお話を伺ったことがあるのですが、先生方も一番心配していたようですね。ところが、行ってみたら極めてよかったということですね。船ですと酔ったりなんかすることもあるかもわかりませんが、そこらあたりは恐らく杞憂に近いものになるのではないかなという気がするわけです。安全ということについて注意はしなければいかぬと思いますが、思い切ってやはり行う、やってみるということが、しり込みしてやらないよりは、危険といったらおかしいですけれども多少あるとしても、それをやるところに教育的な効果がむしろ大きいのではないかなという気も私はしますので、そういう点も含めてぜひこれは実現をしていただきたい、こういうふうに御要望申し上げておきたいと思っております。  それから、先生の初任者研修のときに洋上研修をやられたようです。ちょっと角度を変えてのお尋ねですが、この効果というのはどういう形のものがあったのか、いい点、悪い点、参考までに簡単にお聞かせをいただければと思います。
  132. 加戸守行

    加戸政府委員 本年度、初任者研修の試行の一環といたしまして、文部省の方で洋上研修を開催したわけでございます。  七月二十一日から三十日に実施したものは西日本のブロックでございまして、十七県市の教職員三百七十二人を対象といたしまして、十日間、東京、釧路、富山、瀬戸内海を経由して東京へ帰るというコースでございました。  その内容といたしましては、一つが講義でございまして、教育、科学技術、国際経済、文化、音楽、スポーツ、情報化社会等々の一般教養的な各般にわたります研修講義がございます。それから講師を囲みましての班別のミーティング、さらにテーマは各班が自主的に選びました班別の自由討議を行います班別ミーティング、こういったような形、それからさらに、船で寄港いたしました釧路と富山におきまして、教育・文化・産業施設を視察していただく、こういった内容の盛りだくさんなものでございます。  十日間の研修でございまして、私ども自画自賛でございますが、大変充実した、実を上げたと考えているわけでございます。  ちなみに、三百七十二名全員に対しまして無記名のアンケートをお願いいたしましたところ、船をおりるときにアンケートを出していただいたわけでございますが、洋上研修に参加する前に、洋上研修参加を希望していた数字が四一%、参加を希望してなかったという数字が二二%もございました。しかし、この洋上研修に参加した結果として、参加してよかったという回答が八七%でございまして、参加しない方がよかったというのがわずか一・七%、具体的には六名でございます。その六名の理由も、船酔いしたというのが二名、船上の生活が不便であったというのが二名、それから学校行事で学校を離れるのがつらかったというのが二名でございまして、そういった点では、受講者本人の感想ではございますけれども、極めて充実した、成果の上がったものだというような評価は得られたと思います。  アンケート自体には書いてございませんが、受講生個人個人のお話といたしましては、班別の構成をいたしました関係もございますし、また宿泊した部屋も各学校段階あるいは県段階を超えた組み合わせをしましたものですから、他府県の先生方と一緒に十日間語り合えたというのが一番有効であった、そういうような感想が多かったようでございます。
  133. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 参加しない方がよかったという人を差別しないように、よろしく……。  この洋上研修、大人も行って大変よかったようですが、子供の方がなおさら感銘が深いだろうと思います。ひとつ文部省あたりで船までつくってやってみるというぐらいの意気込みでやっていただくことを御要望申し上げまして、次に移らせていただきます。  生涯学習体系への移行についてお尋ねいたしたいと思います。  臨教審は先月の二十日に任務を終わられたわけでございますが、その答申の大きな柱の一つは「生涯学習体系への移行」ということでございました。これは私どもは大変いい評価をいたしておるわけでございますが、これに対応して文部省は、この具体的な取り組みを始めておられるようであります。取り組まれておるその内容等について差し支えがない限りお聞かせをいただければと思います。
  134. 澤田道也

    ○澤田(道)政府委員 御承知のとおり、最終答申の中で社会教育局を母体として生涯学習局にということでございますので、私からお答えさせていただきます。  臨時教育審議会の最終答申を受けて、八月二十一日に文部省教育改革実施本部、本部長文部大臣の第一回会議が開かれました。そこで、「教育改革に関する当面の実施方針」というものを決めた次第でございます。  細かく分ければ、その中に、新たに実施するもの、計画的拡充をするものがございますが、その中で生涯学習についてのことを拾いますと、生涯学習体系への移行に積極的に対応するために、中央においては社会教育局を改組して、仮称でございますが生涯学習局を新たに設置すること、また地方におきましては、全都道府県に、知事部局、教育委員会一体となり、また民間の方々にも入っていただいて、生涯教育推進会議を設置する、それからスポーツ、文化を含めて生涯学習基盤の強化に今後ともさらに力を入れて拡充をする、抽象的でございますが、まずそういうこととともに、文部大臣から、本部長から制度、財政とともに、さらにそこに情熱を込めて中央地方ともに努力するようにという御激励をいただいた次第でございます。
  135. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 生涯学習体系、生涯学習社会をつくるにつきましては、いろいろとやらなければならぬことがたくさんあると思いますが、その中で特にきょうは一つだけ伺っておきたいのは、やはり地域における拠点というものが非常に大切になるであろうというふうに思います。そういう意味での基盤づくりの一環として、生涯学習体制を推進するために、小中学校、この学校というものを生涯学習の拠点と位置づけて今後展開を図っていくべきではないかと思いますが、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  136. 澤田道也

    ○澤田(道)政府委員 臨時教育審議会の答申においても、家庭、学校、地域の連携をさらに図れという御指摘を生涯学習の関係でいただいております。それから、学校施設を所管する教育助成局におきましても、学校開放について、これまでは特に体育局関係を中心に、さらには近ごろは図書室その他、一般の校舎も含めて学校開放についての予算が組まれております。しかし、そのことももちろん重要でございますし、学校中心に地域の生涯学習体制をつくっていくことはもちろん重要でございますが、生涯学習ということが強化された一つは、学校だけが学習の場でないということでございます。そういう意味では、民間もあれば、また戦後四十年、特に非都市部においては現在もそれなりの活動を続けております公民館を中心とした社会教育施設の活動もございます。そういう意味で、学校開放を進めますことは、ある人に言わせると子供の遊び場でなくて大人の勉強場、大人の体を鍛える場になる、子供の遊び場というものを自然なままでとっておくことも大事である、そして、大人はまた公民館なりあるいは民間のカルチャーセンターなりそういうものを活用しながら全体の生涯学習体制の基盤をつくっていかなければならない、そういうことを省内で相談をしながら、プロジェクトチームもできておりますし、先生のおっしゃるように学校というのが一つの単位であることも事実でございますが、公民館でも三百三十平米以上、条例に載っているもので約一方、いわゆる地域公民館というものを加えますとその五十倍もあるわけでございますので、学校と連携を保ちながら進めていきたいと考えておる次第でございます。
  137. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 生涯学習体系につきましては、我々の方でも随分といろいろ議論を交わし検討をいたしました。今度機会がありましたらゆっくりまたやりたいと思いますが、このことについて最も大切だと私ども思うのは法体系の整備でございまして、この整備をやられるという方向はお考えのようではありますが、もう一つ踏み込んで、やはり生涯学習ということになりますと文部省がメーンになるのかもわかりませんが、各省庁にわたる分野というのが随分ございます。そういう意味から、先ほど答弁の中でもちょっと言われておりましたように、ただ文部省一局だけでは非常にやりにくい面もあるであろう、そういうことを考えますと、生涯学習、生涯教育について基本法的な意味合いを持たした生涯教育促進法、これは仮の名前で私どもはそう言っているわけでございますが、こういったものを制定をし、これを基本に置きながら関係の法令の見直し、整備をやる必要がある、こういうふうに考えておるわけでございますが、この点について大臣、どういうふうにお考えでございましょうか、ひとつお答えをいただきたい。
  138. 澤田道也

    ○澤田(道)政府委員 公明党の政策の中に今お示しの法律のお話が出ていることも私どもよく承知をしておりますし、参考にさせていただきたいと思います。  先ほどの実施本部での決定事項の中に、臨教審の答申を受けまして「社会教育に関する関連法令の見直しに着手する。」ということが入っております。その中で、関連法令の見直しの中で新しい法令というものがどのような時期にどのような姿で必要か、またよその省との関係がどうなるか、これはかいつまんで申せば、例えば今までの臨教審その他からいえば教育基本法というのは一応そのままということになっております。そうすると、教育基本法の中に「社会教育」という言葉もあれば「公民館」という言葉も「学校教育」と同時にあるということを一方では踏まえるとか、さらには社会教育法につきましてあるいは学校教育法につきましても、完全に現在運用できる範囲で十分に運用しておるか、変に遠慮しておって、例えば教育関係団体、いろんな民間の事業につきましても、こちらがいろいろ資料を提供してもらったり、あるいはそういうことが現在の社会教育法でもできるとかということについてきちっとやっておるかどうかとか、そういう運用面も点検をしながら、しかし社会教育法なり各種学校、専修学校その他の法令を見直しながら、新しい法律についてもその関係で検討していきたいと考えているわけでございます。
  139. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 大臣もちょっと立ち上がろうとなさっておられましたから、この生涯学習についてやりとりしましたことをひっくるめて、大臣のお考え、所見を承りたいと思います。
  140. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私は、この生涯学習というテーマに対しまして二つの大きい波及効果が出てくると思っておるのです。また同時にそれが目的だろうと思うのですが、一つは学歴社会の弊害を除去するということをねらっての生涯学習、一方ではそういう体制もとっていかなきゃならないと思うのです。それから、一方から申しまして、何といいましても寿命が延びた、それに伴いまして社会活動の期間が長い、それと同時に、社会的にあるいは生活の中で自分自身を有益に使いたいという欲望を満たしていく意味における生涯学習と、二つあると思っておるのです。  先ほど来局長説明しております社会活動、そしてまた自己研修という意味における生涯学習体制というのは、生涯学習局というようなことでつくろうと思っておりますが、これは各省といろいろな関係ができてまいりますので、それを文部省が中心となってやっていきたい。その際に、私個人の考えでございますけれども、ハードの面は各省それぞれ今までやっておりますいきさつがございますのでそれを尊重していかなければいけない、ソフトの面については文部省が中心となって所管事項としてやっていくべきではないか、こう思うのであります。  一方、弊害の要するに学歴偏重社会是正の問題につきましては、私は、高等教育機関の中にそういう制度を入れるものを企画していかなければいけないだろうと思っておるのでございまして、全部が全部生涯学習体系として組み立てられるものじゃないように思いまして、そういう点はもう少し整理して対応策を考えていかなければならないだろうと思うのであります。
  141. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 それでは次に移らせていただきます。次は留学生問題でお尋ねをいたしますが、特に日本語教育、日本語学校のあり方について御質問を申し上げたいと思います。  まず、日本に来ておられる留学生、国費留学生と私費留学生とございますが、国費留学生はともかくといたしまして、私費の留学生の方の日本語教育というのは大変困難なことがあるようです。お国で勉強してこられる方もありましょうが、大半はこちらに来てから一年間ぐらいは日本語学校に入って勉強されておるという現実があるようでございます。この日本語学校というものは今民間で二百四校ぐらいあるとお聞きしているのですが、この教育内容について、基準がないためにそのレベルが非常に落差が激しいというふうなことでもございます。場合によったら私塾的なものでもできるというような感覚もございまして、こういう点でいろいろな問題があるというふうに聞いておるわけでございますが、これに対してやはり何らか手を打つ必要があるのではないかと思います。この点についてお尋ねをいたします。
  142. 植木浩

    ○植木(浩)政府委員 日本語関係の機関といたしましては大学とか短期大学等もございますが、今先生がおっしゃいましたようなそれ以外の日本語学校、各種学校、専修学校、あるいは法人等が設置しております学校、こういったものもたくさんあるわけでございます。文部省といたしましては、これらを含めまして教育内容の水準の向上ということで、例えば教材の開発というようなことにも尽力をいたしておりますし、また日本語教育研究協力校を指定いたしまして、日本語教育の教授法、教材の開発等の振興も期したりしております。それから、たびたび申し上げておりますが、そういったところで日本語を教えられる先生の能力の向上に資するということで、日本語の教員検定をぜひ今年度中に実施をしたいということも計画をいたしております。  そういうことによりまして、民間の日本語学校を含めまして教育内容の向上、充実を図りつつあるということでございます。
  143. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 日本語を学ぶ留学生の受け入れのための協会と申しますか、こういうものとして大きく二つあるということを聞いておるのですが、一つは全国日本語教育機関振興協会というところですね。ここに加盟されているのが大体二十九校くらいあると聞いております。もう一つ外国人就学生受け入れ機関協議会というものでございまして、これには百十一校が加盟されておるというふうに伺っているのです。  留学している方々やそういうことで苦労されている方々のお話を伺いますと、日本語を学ぶ学校について、前者の全国日本語教育機関振興協会というのは文部省が強く関連を持たれているようでございまして、後者の外国人就学生受け入れ機関協議会というのは、どうも法務省が出入国の関係で、日本語を習いたいという人にはこういうところを紹介か何かされているようです。ところが、ここらあたりがどうも余り仲がよろしくないような話が伝わっておりまして、法務省サイドに聞くと、文部省が肩入れしている全国日本語教育機関振興協会にある二十九校の仲の学校にはどうもいかがわしいのがありますよ、あんなのよろしくありませんよという話があるということも聞くのですね。それから文部省の方は、そう言っておられるかどうか知らぬけれども、どうも法務省の百十一校の中にはちょっとよろしくないのがあるようですよというようなこともあったりして、留学生の間にも、そういう話をあちこちで聞きますと、極めてうまくないという印象を与えるのではないかなという心配をしておるわけでございます。  こういう点についても、法務省サイドあたりともよく連携を保ちながらこういった問題に対応をされていく必要があるのではないかというふうに思いますが、この点についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  144. 植木浩

    ○植木(浩)政府委員 ただいま先生がおっしゃいました全国日本語教育機関振興協会、文部省関係の団体でございますが、これは日本語教育の水準の向上を目的としているわけでございまして、専修学校、各種学校を中心に結成をされているわけでございます。一方、法務省関係の外国人就学生受け入れ機関協議会、これにつきましては、先般、日本語学校へ就学ピザを取得して入国して実際には就労していたというような例があったことを契機にいたしまして、入国管理の円滑な運営に寄与するということで、法務省の方でいろいろとこういった団体を設立された、こういうふうに伺っておりまして、それぞれ目的が違うわけでございます。  しかしながら、先生が今おっしゃいましたように、日本語教育を受ける学生の立場というをのを十分配慮しなければいけませんので、またそれぞれの団体両方に加盟している学校どもあるということもございますので、目的は違っておりますけれども文部省、法務省、両団体がよく連絡をとって、さらに指導充実してまいりたい、このように考えております。
  145. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これはできれば大臣お答えいただきたいのですが、留学生受け入れ十万人計画ということがございます。これにあわせて、受け入れて教育をしてお帰りをいただくということもさることながら、実は帰られる方々が相当な学歴、学力をつけて帰られますと、それぞれ頑張られる中で、経済界の中心に座られたりないしは行政の中心に座られたりというふうな、それぞれの国の中核で頑張っていらっしゃる方があるとか、だんだんそういう人ができてくるであろうし、現在もそういう傾向にあるというふうにもお聞きしております。ここらあたりの方々と連携をとりながら、むしろしっかりとした交流を深めていくことがより以上に大切な視点ではないかなというふうに私は思うわけでございまして、これに対するかっちりとした施策を講じていった方がいいのではないかと思っておるわけでございます。これについて大臣のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  146. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 当然、そういう方々の御協力をいただくというのは非常に結構だと思っております。同時にまた、日本から各国へ駐在員として出っ張っておる多くの方がおられまして、その中に非常に教育に熱心な方もおられまして、そういう方の協力なんかもしていただければと思っておるのです。  要するに私が見ておりますのは、外地で、例えばバンコクあるいはジャカルタ、マニラというところで、だれがその中心となってそういうことをシステマチックにやってくれるかということ、これが一番問題だと思うのです。私は、この点につきましては外務省にもひとつ厳しいお願いをしようと思うたりしておるのでございますが、そういうようなものが一体となって効果を出していかなければいけない。ただ、文部省が認定しております日本語学校、日本語研修所といいましょうか、研究施設だけを当てにして頼りにしておるということでは、ちょっと数の面で足らない、そういうことを今痛感しておるのでございます。
  147. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 この点については、ひとつ強力に推進をお願いいたしたいと思います。  次に移らしていただきます。大分時間も迫ってまいりましたので、教育課程審議会の問題で簡単に御質問を申し上げますから、簡略にお答えいただきたいと思います。  最初に、教育課程審議会の審議日程はどういうふうになっているのか、また、この秋かことし末近くに答申が出るというふうに伺っております。これは、教育内容につきまして大変な重みを持った審議会答申でございますから、その後の指導要領の改定とか教科書の問題とかにいろいろ絡みが出てくると思うのですが、この点につきまして、今後の教育課程審議会の審議日程と同時に、その後の今申し上げたようなことについての日程、どういうふうにスケジュールを組んでやっていらっしゃるか、お伺いをいたします。
  148. 西崎清久

    西崎政府委員 先生御指摘のとおり、今後の教育課程の帰趨を占うものが教育課程審議会の答申でございまして、大変大切な問題でございます。  日程的には六十年、一昨年の九月に諮問をいたしまして、昨年の十月に中間まとめを出したことは御案内のとおりでございます。中間まとめを昨年十月に出しました以後、初等教育、中学校教育及び高等学校教育という三つの分科審議会を設け、さらに社会あるいは国語、数学というふうに教科等の委員会を別に設けたわけでございます。  ことしは、年当初から今日、夏にかけまして、教科別にそれぞれの教科課程の今後のあるべき姿について取りまとめを行っている最中でございます。  今後の段取りといたしましては、九月、十月、十一月、十二月と集中的に教育課程審議会の分科会、総括部会等を開きまして全体を詰めまして、本年十二月末には答申ができるだけいただけるようにというお願いをして、会長以下、運営についての御配慮をいただきたいと思っておるところでございます。
  149. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 その後の、今申し上げたような指導要領とか教科書についての流れというものはどういう形になりますか、大体わかっておればお聞かせをいただきたい。
  150. 西崎清久

    西崎政府委員 本年十二月末に教育課程審議会から答申をいただきました後のスケジュールでございますが、予定といたしましては、来年の秋には学習指導要領を幼稚園、小学校、中学校について告示をしたい、来年の秋でございますね、学習指導要領をつくりたい。それから、高等学校につきましては一年おくれでございます。六十四年の春に告示をする。これで指導要領関係は出そろうわけでございます。  そういたしますと、教科書の編集が一年、検定が一年、採択が一年、こういうふうになるものですから、小学校について申しますと昭和六十七年から全面実施、六十八年から中学、六十九年から高等学校につきましては学年進行で実施、幼稚園は必ずしも教科書でやるわけでございませんので、六十五年から実施。  ただ、つけ加えて申し上げますれば、教科書ができてから新指導要領の趣旨を改めてそこから始めるということではいけませんので、指導要領が出た後、教科書の編集期間中三年間、例えば小学校で申しますと移行措置ということを実施いたしまして、現行教科書に基づいてではありましょうが、新教育課程学習指導要領の趣旨ができるだけ実施できるようにということで、移行措置として努力をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  151. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これは大切な問題ですから、内容等についてはまたの機会にお伺いするとして、一つだけお伺いしておきたいのです。  前回の場合は、教育課程の改善についてはメインテーマといいますか、流れの中で一つのバックボーンとして、ゆとりと充実ということがぴしゃっと言われていたわけですね。これは極めてわかりやすいし、なるほどなと思ったものですが、余り結果はよくなかったみたいですけれども、これは現場での責任もありましょうが、大いにゆとりと充実ということはしなければいかぬと思います。しかし、一つのメインタイトルといいますかテーマといいますか、そういうものがぴしっと出て、教育課程審議会の答申もこれをメインにいろいろやっているのだということがわかったわけでありまして、やはりこういう形で、実際の教育関係の専門家の方々におわかりいただくのも大切ですけれども国民皆さんにもそういうことがわかりやすくアピールできるような意味を含めて、そういうものがひとつぴしっと出てくるのがいいのではないかと思うのです。  今回の教育課程の改善内容については、いろいろいただいたものや何かを見ると確かに柱があるのですが、もう一つ何かぴりっとした感じがない、一貫性が余り見えてこないというような気がするのですけれども、そういう点について、今回の教育課程審議会の改善内容というもの、中間答申が検討されて最終答申に恐らくはなってくるのだろうと思いますが、その点どういうふうにお考えになっているのか、この点だけひとつお伺いをいたします。
  152. 西崎清久

    西崎政府委員 前回の教育課程改定のねらいと今回実施されておる教育課程の改定のねらいでございますが、確かに先生御指摘のとおり、前回の改定のねらいの一つには、ゆとりあるしかも充実した学校生活という柱が立ち、そのほか基礎、基本の問題、人間性豊かな児童生徒、この三つが立っておったわけでございます。  現在まだ教育課程審議会で審議中でございますが、昨年十月の中間まとめの改善のねらいとしてまとめられたもので私どもから申し上げますと、今回教育課程のねらいの大きな柱の一つは、これから社会が大いに変化していく、その変化に対応できる主体的な人間の育成でございますね、これはやはり一つの大きな特色になるのではないか。自己教育力ということもございますけれども、主体的に社会の変化に対応できる人間の育成。それからもう一つは、徳育を中心にして人間性豊かにという点でございます。やはり徳体知と言われるくらい、学業だけではなくて人間、人格一体的な学校教育でなければならないという点を今回の教育課程では特に一つの柱として、道徳教育なりあるいは高校段階では生き方、あり方の問題としてとらえていくという点がもう一つの特色であろうかというふうにも考えるわけでございます。そのほか基礎、基本の問題、これはゆるがせにできないということで、恐らくその点についても柱の一つとしてはお立てになるだろうと思います。最後にはやはり情報化社会、国際化の問題、これは今回の教育課程の問題の一つの柱になるであろう。こんな感じがいたしますので、もうしばらく審議を見守っていただければというふうに思うわけでございます。    〔委員長退席、鳩山(邦)委員長代理着席〕
  153. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 最後の問題に入らせていただきます。大学入試の問題でございます。  これは、六十四年度から国立大学学部の入学定員をAB分割するグループ分けの導入というものが、現在国大協あたりで検討がなされているようでございます。これはこの春導入されたAB分けをやった結果大変いろいろ問題が噴出したということで、その手直しにそういうふうにやるべきであるという方向にだんだんまとまってきていると聞いております。この方法でもし実施した場合果たしてうまくいくのだろうかというふうな気がもうひとつしているわけですが、この点についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  154. 阿部充夫

    ○阿部(充)政府委員 国立大学の入試の問題でございますけれども、国立大学協会におきましては、ただいまの先生のお話にもございましたように、ことしの春に実施をいたしました受験機会の複数化、その状況についての各種の反省等から、ABグループ分けの問題についてもう少し抜本的な改革を図りたいということで鋭意検討が行われておるわけでございます。  新聞報道等でもございましたように、その改善の方向といたしまして、各大学が入学定員を二つに分けてそれぞれいわば全大学が二度試験をするということで、AB分割などと称されておりますけれども、そういうような形というのも有力な一つの提案として検討されているということでございますが、まだそういった方向でというところまで明確に決め切られたわけではございませんで、他の改革方法等もあるかどうかということも含めて現在議論が行われているというさなかでございます。  私どもは、受験機会の複数化という点を真に有意義なものにすると同時に、各大学間のいろいろな思惑の問題等も、すべての大学が同じようにやるということであればかなり解決するのではないかという基本的なあれは持っておるわけでございます。しかしそれにいたしましても、実際にその方式をとる場合に、具体にどうやるかというやり方次第によってはまたいろいろな問題点あるいは検討すべき課題等も出てくる可能性もあると思うわけでございまして、現在、国大協の検討もそういうことも含めながらさらに詳細に検討していこうという姿勢ておりますので、私どもとしてはその状況を見守りながら、また必要に応じて助言等も行いたいということで、現段階はその状況を見守っているという状況にあるわけでございます。
  155. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これは当然文部省も責任がございますから、見守るということであると思いますが、新聞報道等によりますと、どうもこれは自民党の文教部会案と言われておるわけですけれども、この学部のAB分割入試というものがどうも決まりそうな気配で報道されているわけですね。  そこで、私どもが非常に心配しますのは、これは八月十六日の毎日新聞だと思いますが、社説の中にこういうふうに書かれているのですね。「今春、国公立大は受験日程を複数化するなど、入試制度を大きく変えた。それが不評で、また手直しをした。もともと、長期的な展望があっての改革ではなかった。事前の検討も不十分だった。そのために、わずか一回の試みで手直しに追い込まれたのである。」これは非常に厳しい言い方かもわかりませんが、当たらずといえども遠からずではないかと私どもも思うわけです。  そこで、こういうことがあっては受験生に対しても大変なことになりますし、あってはならないと思うのですけれども、またその手直し案として浮上してきているのが今言ったAB分割入試ということだと思います。これは見守るということでございますけれども、実施される可能性が強い中で、もしこれについて実施された場合には、アドバイスするにいたしましても、そのメリット、デメリットというようなものもやはり真剣に御検討はなさっておられるのだと思いますが、文部省として、現在この方式が採用された場合にどういうメリット、どういうデメリットが出てくるとお考えになっていらっしゃるか、その点お尋ねをいたしたいと思います。
  156. 阿部充夫

    ○阿部(充)政府委員 今春の受験機会の複数化につきましていろいろ御批判もあることも十分承知をいたしております。ただ、一般的に申しまして、受験機会を複数化したという方向そのものにつきましては、私は基本的にはマスコミその他の御支持もいただいておったと思うわけでございます。ただ、具体の実施の方法についていろいろな問題点等も生じてきたということであろうかと思いますので、せっかくのこの複数化の趣旨を生かしながら、しかも問題の少ない方式を考えていこうという中で、各大学全部がこのAB分割という方式を出されてきたわけでございますし、これは先ほども申し上げましたが、検討に値する有力な提案であると私どもも思っており、またその点は国大協にサゼスチョンをいたしておるわけでございます。  今、具体に考えました場合に、このAB分割方式をとりました場合には、受験生の選択の機会の複数化という趣旨が貫けるということが一つございますし、それからまた、従来のAB分割あるいは来年度、六十三年度入試についてのAB分割について、地域的なアンバランスあるいは専門分野別のアンバランス等々の問題も指摘されておりますけれども、全大学が二回やるという方式であればその問題も基本的に解決をすることもございます。また、ABどちらのグループに属するかということで、この春各大学それぞれがいろいろエゴでやっているんではないかという御批判を浴びたというようなこともございますけれども、全大学が平等にAB両方でやろうということであるとすれば、その問題も解決をしてくるというような意味で有益な点がございます。さらにはもう一つ、これは非常に大事なことだと思うわけでございますけれども、AB分割をやりました場合に、各大学が、自分の大学の一回目の試験と二回目の試験とについて同じような、例えば三教科とか四教科とかいう学力試験を課すかどうかという問題になりますと、これは二回に分けてやるならばそれぞれの試験のやり方をやはり変えるべきではないか、変えた方がいいということはいろいろな意見としても現実に出てきておりますし、またそういうことがやりやすくなってくるだろうと思うわけでございます。六十三年度入試についてこのAB分割を考えております大学のかなりの部分のところは、一回目の試験の場合には論文だけでやろう、二回目は従来と同じような学力の試験でやってみようというような形で、従来から大学の二次試験についていろいろ多様化すべきだというような批判等もあったわけでございますけれども、そういうことが二回に分けるということによってかなりやりやすいといいますか促進されてくる可能性が非常に大きいというような点で、私どもも大いに期待している面があるわけでございます。  ただ、実際に実施をいたすということになりますと、やはり業務量という面で、各大学とも、今まで一回で済んだものを二回試験をやらなければならないのか、それは大変だというような問題は当然ついてくるわけでございます。そういう意味でのいわばデメリットと申しますか、そういう点はございますけれども、こういう方向に決まるかどうかは別にいたしまして、やはり大学が自分のところの学生を選ぶということについて労を惜しんではならないと私どもは思うわけでございまして、業務量がふえるということは、大学の一番大事な仕事でございますから、大学の教官、職員の方々もそこの点は十分理解をして努力していただくという方向で解決すべき事柄ではなかろうかというようなことも感じておるわけでございます。  いずれにいたしましても、先ほどもちょっと申しましたけれども、実際にどういうやり方でやっていくのかというあたりになってきますと、これはまたいろいろなバラエティーが考えられるわけでございまして、その辺をどうしていくかによってまたいろいろ問題も出てくるかと思っておりますが、そういう点も含めまして現在文部省としても検討しておりますし、国大協の方でも検討されているというふうに承知をしておるところでございます。
  157. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これは今一つの点でいみじくももろ刃の剣になるということをおっしゃったと思うのですけれども、これは確かに大学サイドの善意に期待していい方をおっしゃっておられると思うのですね。私もそれはぜひ期待したいのですが、今回自民党文教筋が、これで言うことを聞かなければ議員提案で法律をつくってしまってやらせるぞというようなことがあったとかないとか新聞報道がされておりますけれども、そうされなければ動かないというのもまたよろしくないと思うのです。  実際に、前も私は申し上げたことがございますが、共通一次を導入したときに随分長い年月をかけてやった。これで本当にいい形が、あるいはより前進した形ができるぞということでやった。ところが、本当は共通一次だけではなくて二次との抱き合わせと言ったら悪いのですが、一次と二次が相まって大学入試というものがいい形で行われることが期待されておったと私は思うのです。あのときも善意を期待しておったと思うのですね。あのとき小委員会が持たれて、この衆議院の中でも議論されまして、私もそのメンバーで申し上げたことがあるのですが、二次試験が恐らく問題になるだろう、だから、こういうときこそ文部省が少し厚かましく二次試験のあり方を多様化して、本当に特色ある学生を、また学校自体が特色ある学校であり、我々の学校はこういう学生を望んでおりますよというのをあらわすためにも非常にいいんだから、むしろここらあたりは半ば強制的にでもやらせるくらいの思いでやったらどうでしょうかというようなことを申し上げたことがある。記憶しております。ところがやはり学問の自由、大学の自治というのがございまして、それは大学皆さんは良識あるからというようなことでのお答えだったと思うのです。期待しておったところが悪い方に出ちゃって、結局共通一次が悪者になって、やり玉に上がっちゃったところがあるような気がしているわけです。  現実にあのときに、二次の方が本当に対応が、今ぼちぼち起こってきております各大学での特色ある入試のあり方、学生に対して、こういう方はぜひいらしてください、共通一次がどうあろうとも、そこの点数はともかく、こういうことがあればちゃんと引き取りますよというような特色のある入試のあり方ができておれば—私は、ABグループ分けを今春やってみたり、またさらにこれが悪いからこうやるというようなことでは、これは子供たちが本当にかわいそうだと思うのです。親にとってもたまらない。我々としても、文教を担当しておって、一体これは何だ、本当に目まぐるしいという思いがするわけでありまして、大変残念で仕方がない。こういう思いはもう二度としてはならないということを痛感しているわけでございます。これはむしろ大学先生方が、あえてここで厳しく言わしていただけば、もう真剣に取り組まないんじゃないか。今週刊誌あたりも、さっき切り抜きを持ってきて、一番新しいのがありましてぱっぱっと拾い読みをしましたら、みなそういうことを心配していると見えて書いてあるわけです。手抜きをやるぞ、二回やったんじゃ大変だ、一回は集中するが、二回はもうそれこそ気を抜いて適当にやってしまうということがあるんじゃないかという心配をしているわけです。また、私もいろいろな大学先生と交流がございますが、そういうまじめな先生方のお話を聞いてみても、それを嘆いていらっしゃる方が多いですね。だから、大学自治の大きな部分を占めるこの入試問題、だとするならば、やはり大学先生が一生懸命取り組んでいただかなければならぬ、それがどうも期待できるのかなという気がいたしております。  この分割案、まあこの春に行われたものよりは私どもは前進した形だろうというふうには受けとめるわけだし、そう受けとめたいわけですけれども、この実施の仕方ではマイナスの部分がずっと大きいのではないか。さらには、これはABが、学部で言いましたら例えば百名の定員のところはちで五十名、Bで五十名でやるのかというと、必ずしもそれはわからないような気もするのですね。Aの方に、最初の方に力を入れて、後はまあ適当にといえば、それこそ八十名と二十名もあり得るかもわからぬ。そういう場合には、ずっと前の一期校、二期校というような感じで、二期校の人たちはレベルが下でどうにもならぬのが入ってきたというような形と同じようなことが繰り返されるということも考えられないことはない。極めてそういうこともあり得る。今お話がありましたように、細かいことはまだ詰めてないし、この案もまだ最終的に決まったわけじゃないですから何とも言えませんけれども、この形で実施された場合に、じゃ同じ学部をAもBも受けでしまうということもあるかもわからない。そうすると、そっくりそのまま前段も後半もそれこそ同じだけの受験生がわっと押し寄せてしまって、結局また足切りなんかもがたがたとやらざるを得ないとか、やりますよというようなことにもなりかねないんじゃないか、ますます混乱が起こる可能性もあるというふうな気がしているわけですけれども、そういう点についていかがでしょうか。  まだ挙げればデメリットとして考え得ることは大分あるような気がするのですが、こういったことは今局長からお答えになった、大学先生方がちょっと手を抜くのじゃないかということだけはおっしゃったけれども、そのほかに、私が今ちょっと申し上げたようなことも起こる可能性があるだろう。そのほかにもまだいろいろ各分野で指摘されておることもあるし、また考えられることもある。そういうふうなものがわかればここでお示しをいただきたいし、そういうことがこういう場でわかること自体が、またさらにそれをなくしていい方向に進んでいく方途ともなるのじゃないかというような気もいたしますので、先ほど検討も十分されているというお答えもございましたから、もう一つ立ち入ってお答えをいただければと思います。
  158. 阿部充夫

    ○阿部(充)政府委員 共通一次が始まりましたときのお話がございまして、私どもも鍛冶先生気持ちを同じくするものでございますが、せっかくの共通一次試験をやった、それに伴いまして各大学の二次試験は必ずしも学力一辺倒でなくてもう少し多様な方面から学生の能力、適性を見る、共通一次の方はそれまでに勉強した学力がどれだけ身についているかを見る、そういうことを総合して丁寧な入試選抜をやろうではないかという趣旨でございます。  そういう趣旨は十分理解をされておったと思いますけれども、従来の仕組みを逐次各大学で考えて変えていきますには、大学も非常に大きな人間の連合体でもございますので、いろいろ議論等にも時間がかかったケースもございましょうし、あるいは経験を積み重ねながらさらに反省して直してきたという例もあろうかと思いますが、徐々にではございますけれどもかなり進んできているとは思っております。ただ、もちろん満足できるような状態ではない、まだまだこれから二次試験については改善をしていただかなければならない、そういう点では各大学に対しましても私どもも実は口が酸っぱくなるほど御検討を御依頼しておりますし、かなりの大学でさらに具体に検討を重ねているという実態もあるわけでございます。  共通一次関係はそういうことでございますけれども、今回のいわゆるAB分割問題に関係いたしましては、先ほど来お答えしておりますように現在いろいろな点についての検討が行われております。  具体的にもう少し立ち入って申しますと、例えば問題点について申しますれば、例えば試験期日をどういうふうに設定するのかというような問題がございます。つまり、A日程とB日程を連続してやってしまって、各人がずっと両方受けて、最後になって一緒に試験の結果がわかるというような方式もございますし、分割式と申しますか、A日程をやってその合否の判定が行われて、しばらくたってB日程が行われるというようなやり方もあろうかと思います。あるいはまた、志望校を決定するのに、今でも言われておりますが、事前選択でいくのか事後選択でいくのかというような問題もある。いろいろな問題が実はあろうと思っておるわけでございますけれども、これらについて今メリット、デメリット等の文部省としての判断を申し上げるだけの固まった気持ちを私どもも持っておりませんので、その点はお許しいただきたいと思いますが、国大協ともどもこういった問題も含めての検討をしていきたい、こう思っておるわけでございます。  今回の国大協の改革に当たりまして、六十三年度入試をこれからやろうという時期に既に六十四年度入試の問題についてこういうことで検討しているということは、やはりこの問題について十分な議論を時間をかけてやった上でなるべく早く受験生に方針をお示しするということが望ましいのではないかというような見地で、ことしの春の入試が終わった直後からこの問題に国大協としても取り組んでいただいておるわけでございますので、そういった方向で十分議論がなされて適切な結論が出てくることを期待もし、また私どもとしても努力をいたしたい、こう思っております。
  159. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 私もそういうことで期待をいたしたいと思うのですが、なるべく早く受験生に示すという意味からいえば、今までの恒例からすると、大体は二年前の夏休みの前にはそういうものがちゃんと受験生にわかっているというのが通例だったようです。六十四年といいますとそれももう外れてきておるということで、一応また十一月か十二月か知りませんが国大協の総会か何かで方向が決められるということはお聞きしておりますけれども、それから大枠が決まってみても、またさらに今局長からいろいろお話があったような内容について相当詰めていく必要があるのだろうと思います。そうすると、その細かいことを詰めていって果たして少なくとも来年の夏休み前くらいまででも間に合えばいいけれども、間に合わないというようなことがあるとこれまた大変なことになるだろうというふうな気もするわけです。  実際にこういうふうになったからもうとやかく後戻りして言っても仕方がありませんけれども、私どもは極めて遺憾であるし、もう本当に腹立たしいような思いが実はするのですね。こんな大切なことをくるくる変えてしまっている。私は先ほど社説を読み上げましたけれども、私も同感の向きもありまして、ことしの春の決め方自体もちょっと早急ではなかったかというような気がいたしておるわけであります。  今度の分割案、今申し上げたところがもし決まったとしても、私は果たしてそれがいい方法がなというのは極めて疑問な点がある。したがってそういう意味で、参議院通過をいたしますと大学審議会というものが動き出すわけでございますけれども、こういう場所でしっかり腰を据えて入試の問題というものは考えていくべきではないかなというふうな気も私はいたしておるわけでございます。この点についてひとつお尋ねをいたしたいと思います。
  160. 阿部充夫

    ○阿部(充)政府委員 入試に関しましてはいろいろな局面がございまして、抜本的と申しますか非常に根本的な解決を図るようなことと、それから今の話題に出ておりますような各大学がどっちの日程でやるかというような細かい点、いろいろな点があるわけでございまして、私どもとしても、基本的な問題というものを常に念頭に置きながらも、しかしやはり当面直さなければならないような点について直していくというようなことも並行してやっていかなければならない面もあるのではなかろうか、こんなふうにも思っておるわけでございます。  入試の改革につきましては、臨時教育審議会の第一次答申でも新しいテストの実施というたぐいの指摘も出ておりまして、その中で国公私立の大学高等学校、その他の関係者によって協議会をつくってその問題に取り組めというような御指摘もございまして、第一次答申が出ました直後から、大学入試改革協議会というものを関係者によって結成をいたしまして、そこで種々議論をいただきながら進めてきておるわけでございます。  現在のところそういう体制で進んでおりますけれども大学の入試というのは、大学の入試だけを切り離して存在するものじゃなくて、やはり大学のあり方等と関連をしてくる問題でもございます。そういう意味では非常な大きな問題が背後にあるわけでございますので、先生の御指摘なども踏まえまして、当面入試改革協議会でやっておりますけれども、さらに大学審議会ができました暁には、より長期的な観点での検討も考えなければならない時期が来るのではないかというようなことも念頭に置いておるわけでございます。
  161. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 今、局長もいみじくもお答えいただいたので、私が最後に一番そこを申し上げたかったわけでございますけれども、どうも今は大学入試というものが切り離された形で盛んに議論されているという気がしてならないわけですね。そして、共通一次に始まっていろいろ悪い点だけあげつらわれて、そこの部分部分が変わる、そうしたらまたそこがいかぬということで変わる、そういうことで、一番根本のところが忘れられて、こうこう言っているという気がしてならないわけであります。  共通一次が出発した背景には、高等学校以下の教育にひずみが出てきた、難問・奇問が多くなってきたというのが一番わかりやすい形で言われておるところでございまして、そして共通一次になったのですけれども、やはりそういう点も、高校以下のこともしっかりそめあり方も踏まえながら、同時に大学改革、大学はどうあるべきかというそこの視点の中で入試はどうあるべきかということを考えなければ道を誤ってしまう。ただ単なる、手直しから手直しで、期待しておってこう行くはずだったのがやってみたら思わぬ方向に行った、またそこではまり込んで、そしてまたやった。森の中に入って、木を見て森が見えずという言葉もございますけれども、それと同じ形に落ち込んでしまうというおそれが多分にある。もう現にそういうところにはまり込んでいるのではないかというふうな気がしているわけでございまして、やはり原点といいますか大所高所の立場に立って、その視点からもう一遍しっかり大学入試というものを考えるときに来ているのではないか。  大学改革のあり方については、今のままではいかぬということは、私も含めていろんな方々が御質問申し上げた中で、大臣も取り組まなければならぬということは再々言っておられます。私どももそう思います。具体的には、ある程度の考え方を私たちも詰めてきてはおりますけれども、さらにもう一つ詰めて、これは一遍また大臣ともやりとりをやってみたいというふうに思っておりますけれども、そこの中にあって、大学はこういうふうにあって、しかも入試はこうあるべきだという視点、繰り返すようで抽象論のようですが、そこに視点を変えていくという、この点についてひとつ文部当局も腹を据えてこれは取り組むべきであるし、取り組んでいただきたい。  例えば、今の大学、高等教育そのもの自体がこれから二十一世紀をにらんでどうあるべきかというのは、どうも余り明確になっていないような気がします。一時、永井文部大臣の時代に八ケ岳構想というのがございました。次の海部文部大臣のときも、それを踏襲してやりたいというようなお話もあったのですが、そういう話も最近余り聞かれなくなってきた。何となくぼやけてきていますね。その中でやはり、日米教育比較の中でも、大学、高等教育に問題があるということは強く指摘をされている。私たちもそうだと思います。したがって私どもは、例えば八ケ岳構想を少し広げて、中核となる大学がやはり要るような気がする。しかし、これだけ高等教育の大衆化が進んでいますから、大衆化という意味での私学を含めた一つの大きなビジョンというものは、これはやはり要るだろう。だから、そういうものの大枠をもう一遍しっかり踏まえながら、その上で大学入試というのはかくあるべしですよということも必要じゃないか。極端に言えば、よく私ども申し上げているのですが、諸外国と同じように、入るはやすく出るはかたいという大学のあり方をやったらどうだということも再々申し上げたことがございます。例えばそういう方向で、今申し上げたことを一つの方針としてやろうということであると、もう大学入試のあり方もごろっと変わってくるわけですね。だから、これは一つの極論かもわかりませんが、そういうふうに大学自体のあり方、高等学校以下の教育のあり方、そこを両にらみしながら、日本の教育、二十一世紀をにらんで、最高学府の高等教育はどうあるべきかということを本当に真剣ににらんで、そして大学入試を考える、そういう視点大学審議会あたりでひとつ取り組みをやっていただいたらどうかということを私は申し上げている。  これは、私が申し上げるというのは口幅ったい言い方で恐縮ですけれども、ひとつ我々教育に携わる者として肝に銘じてやっていかなければならないのじゃないか。そうしないと、テクニックだけ、悪いところだけの手直しをと思っておったのが、中心から外れてとんでもないところでうろうろしておって、結局は受験生が泣く、日本の国もだめになるということにもなりかねないのじゃないか。どうもそういう入り口に今差しかかって入試というものは議論されているのじゃないか。こういうおそれを十分に抱いているわけでございまして、そういうことがないように、大学入試のあり方についてこれは御検討いただきたい。  最後にひとつ大臣の御所見を伺いまして、質問を終わりたいと思います。
  162. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 今鍛冶さんの熱烈たるお説を聞いておりまして、私がそれを言っているのと本当によく似ておるので、私も意を強うしておるところでございます。  確かに入学試験の制度だけで片づくものじゃございませんし、また、入学試験制度をこちらの文部省の方からああしろ、こうしろということをやりますと、学校自体も変になってしまいます。その点をよく見きわめて、ただ一点、大学当局としては受験生の人材の発掘というものを多様化してほしい。ただ一枚のペーパー、紙だけで当落を決めちゃう、それで判定するということはできるだけ避けていただいて、いろいろな角度から人間を考察してやってほしい、これを願っておるわけでありまして、折を見て大学ともよく話をしてまいります。
  163. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これで質問を終わります。
  164. 鳩山邦夫

    ○鳩山(邦)委員長代理 林保夫君。
  165. 林保夫

    ○林(保)委員 皆様、御苦労さまでございます。きょうは文教一般に関する質問でございますので、三つ四つのテーマでお願いしたいと存じます。     〔鳩山(邦)委員長代理退席、北川(正)委員長代理着席〕  過般来、大学審議会の設置に関係する法案審議そのほかの質問で、教育改革に対します大臣の意欲に今さらながら敬意を表しながら、やはりこれから国民の理解を求めなければならぬ、私もこういう立場にございますので、田舎へ帰って一生懸命関係者の御意見も聞いたりなんかしてまいりますと、新聞の見出しにはよく入っていますが、しかしなお内容については一体どうなんだろう、こういうことがございますので、一番にまずポスト臨教審と申しますか、手順及びその内容について、多少審議の経過も文部省皆さん知っておられますから、それらを踏まえましてのお答えをいただきたいと思います。その後、先の問題で六十三年度の予算に関係したものを一つお伺いさせていただく、こういうことでよろしくお願いしたいと存じます。  まず、大臣が過般、八月十九日に御答弁いただきました中で第一に申しておられました教育改革実施本部ですね、これはもう既にスタートしたと闘いでおりますけれども、その後どうなっておるのか、ひとつ事務局の方からこれからのやり方を含めましてお答えいただきたいと思います。
  166. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいま御指摘のございました教育改革実施本部でございますけれども、これは御案内のとおりに、このたびの臨教審の答申を受けて、文部省としてその関連する施策を総合的、積極的に推進をするということで、文部大臣裁定で設けられた、言うなれば行政上の推進組織でございます。これは、設置自体は先月の八月十八日に設置が決定されまして、臨教審の期間が終了いたしました八月二十一日に第一回の会合を開いた、こういうことでございます。  そこで、まず八月二十一日の段階では、この会のこれからの構成というようなことを議論いたしまして、そのテーマによって随時、専門部会と言っておりますけれども、そういうふうな専門部会を設置しよう。当面の専門部会、これからいろいろできると思いますけれども、当面は生涯学習でございますとか国際化とか情報化とか、そういう問題についての専門部会をつくろうということをお決めいただいたことが一つでございます。  それからもう一つは、大きなことは、当面の教育改革の実施方針と申しましょうか、我々文部省として教育改革に取り組んでいくために、当面とにかくどこから着手をするかということにつきまして御審議をいただきまして、当面の実施方針として全体で十五項目ほどの我々の取り組むべき課題をここで共通の意思確認をした、こういうことでございます。  その後、その実施本部自体は開いておりませんが、先ほど申し上げました専門部会の設置を決めていただきましたので、今週来その専門部会がそれぞれ、もう開かれたものもございますし、これから開くものもございますが、そういうところで逐次具体の実施の方針を検討していく、こういう手順で進めさせていただいておるところでございます。
  167. 林保夫

    ○林(保)委員 ただいまお話しになりました実施方針の十五項目を、差し支えなければ読み上げていただけたらありがたいと思うのでございますが……。
  168. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいま申し上げました実施方針は、当面の主要な事項ということでございますけれども、大きく分けまして新規の実施施策と従前から実施しております施策のさらに計画的な拡充を進めていくというもの、これが五項目、こういうことになってございます。  簡単に御紹介申し上げますと、新規実施施策としては、まず一つは、生涯学習の推進体制の整備ということで三つほどの事項を決めさせていただいております。  その一つは、全都道府県に生涯教育の推進会議を設置するなど生涯学習基盤の強化に努めるとともに、社会教育に関する関連法令の見直しに着手をするというようなことが一つ。それからもう一つは、民間活力の導入によるスポーツ・文化・学習活動の重点的な地域、我々の内部の言葉でスポカルゾーンというふうに言っておりますけれども、これからそういうものの整備に着手しようじゃないかというようなことが二番目でございます。それからもう一つは、生涯スポーツの振興という観点から、スポーツカーニバル的なものを六十三年度から開催したいというようなことでございます。  それから、次は初中教育の関係でございますけれども、その初中関係では全部で同じく三項目ございまして、一つ学習指導要領の問題でございますが、教育内容の改善のために新しい学習指導要領を六十三年の秋、高等学校につきましては六十四年の春でございますけれども、これを告示し、その後それぞれの年度に従って実施に移していくということが一つでございます。それからもう一つは、教科書の検定制度の問題でございまして、これは臨教審の御指摘にもございましたように、この次の教科書の編集から新しい検定制度でいくんだということでございますので、そういたしますと、六十三年度中には新しい検定の仕組みというものを整えておかなければならない、六十三年度中にこれはぜひやりましょうというようなことでございます。それから初中関係の三番目は、教員の資質向上の関係でございまして、御案内の初任者研修制度、既に試行に着手しておりますけれども、これをできれば昭和六十四年度から本格的に実施したい。そうしますと、そのための制度改正に関係する、これは法律事項でございますので、その法案を次期の通常国会にお願いをしたい、その準備をしましょうというようなこと。あるいはまた、これに関連をいたしまして、教員の養成・免許制度の改善ということで、現在これまた教養審で御審議をいただいておりますけれども、この関係の法律改正をこれまた次期の通常国会で御審議をお願いすべく準備をしたいというようなことでございます。  それから、その次は高等教育の関係でございますけれども、これについては二点ほどでございまして、一つは先般来御審議をいただきました大学審議会でございますけれども、これはともかく関係の法案が成立をさせていただければ早急に大学審議会を発足させて、大学問題についての審議に取りかかっていただきたい、こういうことが一つでございます。それから入試関係でございまして、昭和六十五年度から新しいテストを導入するということでございますので、その準備を精力的に進めるということでございます。そうしますと、これまたその関係の法案をこの次の通常国会にお願いするわけでございますから、そういう準備を進めるし、また同時に、受験生や高校に対する情報提供を六十四年度の入試から本格的に実施する、そういう情報提供のための準備もどんどん進めていきましょうというようなことでございます。  それから四番目が、文教行政の改革のことでございますけれども、これが二項目ございまして、一つは、先般来お話がございましたが、生涯学習体系への移行を図るということと、文部省全体の政策機能の強化を図るというふうな観点から、文部省の機構改革をやりたいということでございます。これは来年の、六十三年の七月から実施をするということを目途に、その機構改革の準備に取りかかるという点が一つでございます。それからもう一つは、地方におけるその体制の整備という観点から、教育委員会活性化ということでございます。その教育委員会活性化を図るということで、これはいろいろな手当てがあるわけでございますけれども、例えば教育長につきまして任期制を導入するあるいはこれを専任のポストにするということになりますれば、これはまた法律の改正ということで国会の御審議をお願いするということになります。そのための関係の法律案をこれまたこの次の通常国会にお願いしよう、そのための準備を進めよう、まあこんなことでございます。  以上が取りかかる十項目ということでございます。  なお、そのほかに、計画的に拡充をする施策としては五本ございまして、その一番目は、基礎研究の推進と大学院の充実ということでございます。科研費の充実等でございます。二番目は、国際化に対応した教育を推進していきたいというようなこと。三番目は、小中学校高等学校におきます教育条件の改善ということでございますけれども、いわゆる四十人学級、現在の教職員の定数改善計画をともかく前へ進めていこうということでございます。四番目が私学助成の問題でございまして、私学における特色のある教育研究の推進という観点から、私学助成を引き続き推進してまいりたいというようなこと。五番目が生涯学習の基盤整備、これは非常に幅が広いわけでございますが、スポーツや文化活動を含めてそういう生涯学習を促進するための基盤整備を引き続き進めてまいりたいというようなことでございまして、以上のようなことを決めていただく、こういうことでございます。
  169. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。  意欲的なお取り組みのように感じますが、これとまた九月一日に報道されました三専門部会、これは三つありますが、これは大体どんなことをおやりになるのか。これも項目だけで結構ですが、御面倒でしょうけれども、教えていただきたいと思います。
  170. 川村恒明

    ○川村政府委員 この専門部会でございますけれども、三つ予定をしてございます。先ほど申し上げましたようにこれで終わりというようなことではなくて、随時必要に応じて取り組んでまいりたいということでございます。  その一番は、生涯学習の問題でございます。生涯学習につきましては、例えば、臨教審でも再三御指摘をいただきましたけれども、民間の各種の教育産業への行政上の対応、取り組みをどうしたらいいのかというようなこと、あるいはただいま申し上げましたようなその生涯学習の基盤をどういう形で整備していったらいいのか、こういうふうなことがテーマになろうかと思っております。  それから、二番目の情報化でございますけれども、これは大変に幅の広い課題でございますが、例えば文教施設についてインテリジェント化をするということが臨教審の答申の目玉の一つになっております。そのインテリジェント化への取り組みの問題、あるいは現在情報処理の技術者が大変に不足をしているというようなことがございますが、実態としてどのように不足し、それに対して我々がどういうふうな対応をすればいいのか。情報処理技術者というのは、もちろん民間での再訓練ということもございますが、大学、短期大学、高等専門学校あるいは専修学校、最近特に専修学校等では大変意欲的に取り組んでいただいております。いろんなレベルの、いろんな分野の情報処理技術者の養成が進められておりますけれども、全体として我々としてどういうふうな養成確保方策を持っていったらいいのかというような点がまた課題になろうかというふうに思っております。  それから、三番目は国際化の問題でございます。国際化の専門部会でございますけれども一つは、これまた臨教審の答申でぜひ教育の国際化に関する白書をつくるように、つまり現在学校教育社会教育を通じていろいろな形で国際化の取り組みが進められておりますが、それぞれがお互いに都道府県、市町村が孤立をして自分らの努力でやっている部分もあるので、いろいろな情報を多様に交換しながら、新しい取り組み、工夫で、二十一世紀にふさわしい教育の国際化を進めようというふうなことがございます。そういう点が課題でございます。  さらに言えば、そのほかに、これまた臨教審でも指摘されておりますが、外国教育、これは中等教育レベルから高等教育レベルにかけての全体を一つ外国教育という観点で見直してみるとどうなるかという課題、そういうふうなことが当面の課題になろうかと考えておるところでございます。
  171. 林保夫

    ○林(保)委員 もう一つ文部省にお聞きしたいのでございますが、教育改革大綱を十月につくられるような報道が出ておりますが、これはどういうような内容になるのでございましょうか。
  172. 川村恒明

    ○川村政府委員 臨教審で四次にわたって御指摘をいただいた事項というのは、大変数が多いわけでございまして、内容的には重複をするものもございますし、それから非常に長期的な観点にわたるものもあります。あるいはごく目の前の当面の課題という形で示されたものもございます。それから、その実現に当たってはただいま申し上げましたような法律的な対応が必要なものもありましょうし、あるいは主として予算で対応する、あるいは行政上の運営改善というところで工夫ができるものもあろう、あるいはある部分で言われておりますようにそれは意識の改革の問題だ、入学時期のようにこれは国民の意識の問題だというふうに、課題も非常に幅が広いわけでございます。  でございますので、これだけ多数の示された課題について、これを一遍に直ちに同時進行でやるということは極めて困難なことでございますから、全体として一体どれだけの事項が示されており、大体の感じとしてそれはどういうふうな時間的な経過で対応したらいいのかというようなことを見る、こういうことが一つございます。  そういうことと同時に、先ほど申し上げましたような実施方針というのもこれまた一つの大綱的なものになろうかと思いますが、当面、それではこれとこれに取り組むという仕分けが要るということでございます。でございますので、私ども、現在臨教審の答申全体を整理して、答申全体についての鳥瞰図的なものをつくってみると同時に、その中で当面我々が対応すべきものはどういうものがあろうかというようなことで整理させていただいているわけでございます。  それで、その実現のためにはいろいろな方策があって、これは法律改正ということで国会で御審議をお願いしたいということもありましょうし、それから主として予算上の対応でいこうということもございますので、その辺のところを、できるだけ教育関係者が共通の理解が持てるような進め方の手順、段取りを整理したい、こういうことで考えております。  いつごろかという時期の問題になりますと、当面でいえば、先ほど申し上げました八月二十一日にお決めいただいた実施方針というのもまた一つの大綱かと思いますが、さらにもう少し幅の広いものをできるだけ早く整備するようにしたいということで作業を進めておるというところでございます。
  173. 林保夫

    ○林(保)委員 大変結構だと思いますが、これに伴いまして、先ほどお話がありました法律改正、あるいは新しい立法もあるのだと思いますが、これも段階がいろいろあると思うのですけれども、大体一年ぐらいでどれぐらいあるのでございましょうか、名前の羅列だけで結構ですから、予想されるようなものをお示しいただけたらありがたいと思います。
  174. 川村恒明

    ○川村政府委員 先ほど申し上げました中にも既に法律が四本ほど入っておりまして、教員の資質向上のための教育職員免許法の改正、あるいは初任者研修のためには教育公務員特例法の改正というようなことがございます。それから大学入試のための入試センターの整備については国立学校設置法の改正ということもございます。それ以外に、例えば臨教審の答申で申し上げますと、学校教育法関係の改正を要するものが幾つかあろう。それは例えば高等専門学校の名称を改める、あるいはその対象とする分野を拡大するというようなこと、あるいは六年制の中等学校をつくるべきだ、こういうようなことになりますと、これは現在の学校教育法の第一条の改正になろうかということもございます。それから、先ほどの生涯学習に関する法律、現行の社会教育関係の法律を見直すということになりますと、先ほども御議論がございましたけれども、そこはまた一つ新しい法律を制定することになろうということで、非常に多岐にわたっているということでございます。
  175. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。  そんなことで、これは大変忙しくなるなという実感を禁じ得ないのでございますが、さらに、大臣の御意思なのか中曽根総理の御意思なのか、もう一つ、内閣レベルで取り組まれる問題として、大臣の過般の御答弁にありました教育改革推進本部の御構想、それからまたテレビで報道されたと思いますが、明日、大臣もお入りになっていたかと思いますが、歴代文部大臣、自民党さんの要路などで何か画期的なものをおやりになるように聞いておりますが、大体どういう内閣の方のお取り組みになるのでございましょうか、承りたいと思います。     〔北川(正)委員長代理退席、鳩山(邦)委員長代理着席〕
  176. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 まずお尋ねの第一点でございますが、この教育改革を進めるについて、総理はかねてから政府、党を挙げてこれの支援体制をとりたいということをおっしゃっております。そこで、さしずめ政府閣僚の全員と自由民主党の主要な役員とでもって教育改革推進本部をつくろうという構想がございます。これは私は党の方にある程度了解を得てきでおるのでございますが、近く内閣にもそのことを図りたいと思っております。政府・与党一体となった教育改革推進本部、これはいわば応援団みたいなものでございまして、同時に小じゅうとみたいなもので、何かと、どこまでやっておるかということになるだろう、こう思うのであります。  一方、総理は、現在任期が五年近くになりまして、その中で、税制の抜本改革と教育改革は何としても、どの内閣であれ中心政策として推進してほしいということをかねがねおっしゃっております。そこで、臨時教育審議会が終わりました後、政府としてこの教育改革を政府の責任でやるのにはどういう体制がいいか、先ほど言いました推進本部は応援団的推進本部でございますが、そうではなくして、政府の中でどのような機構で教育改革の実質的責任者としてやっていくのがいいのか、当然これは文部省ではございますけれども教育改革をするために政府が国民との間に窓口を開くとすれば、その窓口はどういう格好がいいだろうか、それには内閣直属の審議会というものも一つ考え方であろうし、臨時教育審議会がそのようでございました。一方また、文部省の責任で教育改革を進めなければならぬということからいうならば、文部省の中にその窓口をつくって有識者の方に委員になっていただく。この二つの案があるわけでございます。  現在、そのことをめぐりまして、総理も一つ考え方を持っておられると思うのですが、私の方は文部省を窓口にしたものを中央教育審議会の改組によって窓口を開こうとしておるのでございますが、総理の意向は、どの内閣になろうが、内閣の中心政策として、一番重要な政策として教育改革の推進をやってもらいたいのだ。この意向をどんな形であらわしていくかということ、ここにあると実は思っておるのでございまして、この問題について話し合いをこれからもやっていかなければならぬと思うのでありますが、そういうことを考えますならば、総理の意向をそんたくいたしますと、むしろ自由民主党がそれをしっかりとキャッチするということが大事なのではないか。当分自由民主党から政権担当者が出るであろうことは間違いないだろうと思っておりますし、そういたしますと、やはり自由民主党が基本政策として教育改革に取り組むことを明確にするということが必要なのだろう、こう思うのでございます。そういうことについて、まず総理が自由民主党の歴代文部大臣経験者と一回意見を交わし、その上で自分の考え方を固めたい、こういうのが総理の気持ちであろうと私は思っておるのでございまして、いずれにいたしましても、総理と文部大臣との間の話でございますから、そんなに時間もかからないうちに方針だけはきちっと決めたい、こう思っております。
  177. 林保夫

    ○林(保)委員 これからの問題であろうこともよくわかりました。しかし、なお大臣、私ども国民的な立場から申しますと、文教行政の責任者がちゃんとしていなかったからこそ、やはり臨教審でやらなければならなかったという問題もございますので、一自民党に限らないで、国民的な基盤でひとつやっていただくように、この点だけはひとつ御要望申し上げておきたいと思います。どの大臣が悪かったと言うのじゃございませんけれども、そういう自覚のもとにやらなければならぬと思います。  そうすると、まだ内閣の方は審議会の設置は決まっておらないと理解してよろしゅうございますか。     〔鳩山(邦)委員長代理退席、北川(正)委員長代理着席〕
  178. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 先ほど言いましたように、私たちはもう総理の気持ちは十分わかっておりますし、また、私たちといたしましても、ごらんのように臨教審が終わると同時に文部省が自発的に実施本部をつくって、本当に死に物狂いで取り組もうという決意をしてかかっておるのでございますから、その間の関係を見て、審議会の必要ありやなしや、また、あるとするならばどんな方向がいいのかということを決めたい。とにかく教育の改革をしていく実際の責任者は文部省であるということには変わりはない、これを踏まえて、どのような形で政府がこれに対応するかということになってこようと思っております。
  179. 林保夫

    ○林(保)委員 各省庁に関係する問題が多うございますし、大所高所から御検討されるのは賛成だと思うのでございます。と同時に、また文部省の方、今大臣がおっしゃられましたように中央教育審議会そのものでこれは受け入れるのでしょうか、何か手を加えなければいかぬのでしょうか、文部省の側の事務当局はどのような御発想で大体いかれるようになっておりましょうか。
  180. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 これは、私がただ一つの構想として持っておるものです。というのは、設置法の中に中央教育審議会というのがございますし、文部省がやはり責任者であるということ、この自覚をしっかり持っておりますだけに、当然中央教育審議会にもお諮りしなければならぬだろうという意味で申したのであります。したがって、政府としては、このポスト臨教審のキャッチをするところはどこにするかということについては、先ほども説明申しましたようにまだ決まってはおりません。そういう結論がついてこなければ、文部省対応というものも今後とり得ないということでございます。ですから、臨教審が解散された後の政府としての推進をどのような格好にするのかという考え方ですね、形はなかなか出てこないと思いますが、考え方だけは早急に決めなければならぬ。その考え方を決めるについて、総理があすかあさってか、聞いておりますのには、歴代文部大臣意見を聞いて、そうしてさらに文部大臣とも相談しよう、こういう手順になってくるということでございます。
  181. 林保夫

    ○林(保)委員 時間の関係で、臨教審内容につきましては後回しにさせていただきまして、先へ進みます。  やる以上は、やはり予算が伴うことでございますので、六十三年度の文部省所管概算要求はかなり意欲的におやりになったと聞いておりますし、それにしては伸び率がちょっと低いような印象も得ますけれども、お考え、数字、そして重点項目はどういうところにございますか、御説明いただければと思います。
  182. 古村澄一

    古村政府委員 概算要求を一昨日大蔵省に提出いたしましたが、その内容は、概算要求基準という政府統一方針が出てまいります、その概算要求基準の中で要求をつくっていくという結果になりますが、総額といたしましては、六十二年度の当初予算額に比べまして八十二億円増の四兆五千八百二十億円という予算を要求いたしたわけでございます。  その中で重点的ということでございますが、臨教審が終わりまして、今まで四回にわたります答申が出たわけでございますので、その答申の実施というのはやはり大きな目玉になるということでございます。  その中でも、取り上げて申し上げますと、例えば初任者研修試行の拡大、四十人学級の推進、私学助成の充実、基礎研究の拡充、生涯学習の基盤整備、留学生施策の推進、あるいは今言われております情報化への対応といった、かなり多岐にわたりました、重点を押さえました予算概算要求を提出いたしたということに相なるわけでございます。
  183. 林保夫

    ○林(保)委員 内容的には、資料もちょうだいして、こういうことかなということでわかるわけでございますが、大臣臨教審関係で七千幾らという数字が新聞報道なんかで出ていますよね。そうすると、たしか増額が〇・一八%でございましたか、ちょっと少ないように思うのですが、大臣の御印象はいかがでございますか、この来年度予算の要求については。  特に、過般、臨教審の解散パーティーのときに、総理及び皆さん方が、もう予算はたっぷりつけるぞ、こういうようなお話がありましただけに、どうも少し遠慮されたのではないかなというような感じもいたしますが、新年度予算、来年度予算に対する大臣の取り組み及び御所見を伺っておきたいと思います。
  184. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 ああいうパーティーでは皆さん勇ましいことをおっしゃる——私はあのパーティーでは予算のことには触れませんでした。しかし、私は教育の予算というのは、確かに予算は不足しております、私も随分と予算をくれということでやかましく言っておりますが、同時に、文部省の中でいろいろな経費がございますが、これも効率的なものに一回再検討する必要もあるように私は思っておるのです。したがって、教育改革を制度的に改正するに伴って同時に予算の内容をずっと見ていくこと、これを効率的と言ったら語弊がございますが、与えられた予算を有効に使うということを考え直していくことも教育改革の一端になってくる、私はそう思っております。  そこで、私は六十三年以降の趨勢を見ますならば、今までのハードの面に使ってまいりました教育投資というものは漸減していくのではないかと思うのです。むしろこれからふやしていかなければならぬのはソフト面における予算なのであろう。戦後四十年の教育投資をずっと見てまいりますと、ハードに使ってきたウエートというのは非常に大きかったと思うのです。これが今後以降は漸減していって、その分だけはどんどんソフトの方にかわっていくということになれば、文教政策の案が非常に上がってくる、質も変わってくる、こう見ておるのであります。そこで、さしずめ六十三年度におきましては教育行政の事業、つまりトンカチの、ハードの方の事業ではなくして、そういう新しい教育行政の方の事業の芽を積極的に出していきたい。ですから、これは金額がどかんとつくという問題よりも、その事業を政府に認めさせていくということの方が大事だろう、私はこう思っておりまして、そこに全力を挙げて努力いたしたい、こう見ておるのでございます。  ですから、予算の総額から見ましたら確かに少のうございます。少のうございますが、六十三年度に消費すべきはずであったハードの面のものは六十二年度補正予算である程度は充足されてきておりますので、この分に対する六十三年度における金額相当額はソフトの方に転用させていきたい、こういう考えでおるわけであります。
  185. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣が大体満足しておられるようですので、それはそれで結構だと思いますし、それから多様な対応ということで、ハードからソフトへの考え方、質の転換というのも、時代の趨勢として、教育内容充実させるということからもやはり大事なことだろうと思います。  それと、私どもこういう場合にそれが実地に一体どうなるのだろうかということになりますと、我田引水ではございませんが、やはり地元の方の予算要求を見れば一番よくわかるので、この間これを取り寄せてみました。岡山県の場合を項目だけ羅列してみますと、文部省関係として、同和教育の推進、そして公立文教施設整備事業の促進、三番目が教職員定数の確保、義務教育費国庫負担制度の堅持、青少年を対象とする芸術鑑賞事業の充実、国指定史跡等購入のための財政措置の拡充、社会教育指導体制の整備学校給食における米飯給食及び牛乳飲用の推進、それから私学の振興について、岡山大学整備充実について、国立技術科学大学の設置について、こうありまして、具体的に新しい、世間の常識のいわゆるプロジェクトは何があるだろうかと思って問い合わせをしてみたわけでございますが、率直に申し上げましてちょっと寂しい感じがするのですね。  では具体的にはどんなのがありますかというと、これはまた文部省さんに地元の問題だけに余計お世話になると思うのでございますけれども、先ほどの岡山大学の場合でございますが、総合大学院の人文社会研究科の設置、それから農業生物研究所の改組、それから今出ておりました岡山県の津山に国立の技術科学大学をつくっていただきたいという要望。そして、私学の方になりますけれども、岡山理科大学大学院基礎理学科、そして理学部に生物化学科、百人と聞いておりますけれども、これらを来年四月。それから、この系統の私学でございますけれども、高梁市に吉備国際大学というものをつくりたい。さらに細かいものもございまして、例えば私の地元の総社で武道館をつくりたいという、にもかかわらず指定史跡の買い上げという懸案のものが今度出ていないとか。それから玉野ではプールの整備をやりたいとかいう。県及び地方からの陳情や電話で拾ってみますとこのほかにもございますけれども臨教審で前を見てやろうというにしては、何か我がふるさと、寂しいなという感じを禁じ得ないのでございます。これはいわゆる行政改革による財政の緊縮、これにならされているということから来ているせいもございましょうし、また、地元の場合は瀬戸大橋という大きなプロジェクトがございますので、格別そちらを重点に県や地元も要望したということもあるのでございますけれども、今申し上げました諸点について大臣の御所感をちょっとと、それから事務当局に、岡山県は世間並みなのかあるいは欲が大きいのかというような点、印象としてでも結構ですけれども、これは私ども実地にわかる体制の中でございますので、お話しいただきたいと思います。
  186. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私は先日岡山へ参りました。そのときにも知事とわずかな時間でございましたが話をいたしました。そのときに私は申し上げたのですけれども、県並びに市の教育委員会の意識を根本的に変えなければだめだと私は思います。依然としてそんな感覚を、と言うたらえらい失礼でございますが、要するに教育委員会が今学校の守り役になってしまって、教育全体をどうするかという考え方が、地元における教育をどうしようというよりも、まず学校の守りを中心にして、そして自分に任されている文化活動といいましょうか、遺跡だとかなんとかをやろうとか。——大学の方は幸いにいたしまして非常に積極的に考えてきておると思うのです。私は、だからこの際に、教育委員会が、特に生涯学習体系をとるということ等を見ましても、もっとソフトな面といいましょうか、そういう面にもっと目を向けてくれなければいかぬ。例えば児童生徒コンピューター教育にこういうことをやりたいというような提案があってもしかるべきだと思うのです。それが教育委員会から出てこない。これは文部省が抑えておるのかどうかわかりませんが、私が感じますのに、義務教育課程におきます。そういうコンピューターという要するに先端技術を駆使した教育というものが、非常に日本はおくれているように思うのです。そういう意識を持ってこれから六十三年度以降そういうものを進めていかなければならぬだろう、私はこう思っておるのです。そういう取り組みを、まず地方の教育委員会教育の中身を変えていくんだという意識をしっかり持ってくれないと、依然として言ってきますことは、同じようなことはかり言ってきているという感じでございます。私はそのためにも、できれば、私の任期もちょうど午後五時ごろのことですから後はよくわかりませんが、しかし全力を尽くして、教育委員会の人に一回集まってもらって、教育委員会のあり方、責任というものをもう一回自覚してもらいたい、こんな気持ちを非常に強く持っておるところでございます。
  187. 林保夫

    ○林(保)委員 文部省側の御答弁は結構でございます。  大臣のお言葉、私の選挙区でございますだけに、ともかくいろいろなものをよろしくお願いしたいということだけお願いしておきまして、大臣のそういう御意思、もう知事さんとお話しになられて私がくちばしを挟む余地はございませんので、そういうお言葉を私なりに受けとめまして、私もこういう立場でございますので、実際に私学、それから岡山大学を初め大分見てみましたが、際立って、先ほど申し上げました岡山理科大学なんか大臣ごらんになってびっくりされると思いますけれども、八階建てのビルの中にずらっとコンピューターを全部入れまして、それで学生が喜んで勉強しているという図もございます。それですべていいというわけじゃございませんけれども、そういうものの中で、私学の大学院なんかを御認可いただいて、今やっていると思います。そういう芽を、今おっしゃいました行政の面から、まさに先ほどおっしゃられましたような芽を出していくような形でやっていかなければならぬと思いますので、これからもひとつ御関心をぜひお寄せいただきまして、よろしくひとつお願いしたい、このように考えます。
  188. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私が先ほど申したのは、岡山の大学教育、高等教育機関というのですか、これに対する意欲は非常に高いと思っておるのです。また、そのほかのいろいろな教育施設整備、それには岡山は非常に積極的だと思います。そういう感じを私は持っております。ほかと比べたことはございませんが、積極的であると思っております。ただ、願わくは教育が、そういう施設も大事だけれども、より以上に教育のソフトの面について変えなければいけないのではないかということ、この前お会いしたときにはほかの役所の者もおりましたけれども、そういうことをあえて私は申したということでございます。
  189. 林保夫

    ○林(保)委員 文部大臣の御所見でございますので、大事にしたいと思います。  昔から教育県という合い言葉があるのですけれども、県内だけで教育県と言っておってはだめなのですよ。よそから見て教育県だと言われるようにならなければいけません。私は生まれ育っておりますので、岡山県を褒めもし、悪口も言える立場でございますので、そういう実情だろうと思います。ありがとうございました。  さっき途中にいたしました臨教審の答申の内容につきまして二、三点伺います。  一生懸命に改革案を読んでいる人がおられます、学校関係あるいは教育関係の皆さんで。それでわかりにくいというような点のところがございます。実はその一番は、私もそう思いますし、大臣もそう御指摘されました教育委員会のシステム化についで、これをどういうふうにきっちりやるか。過般来二度も大臣に御質問した中で、どうも教育委員会はフィルターの役割で、しっかり文部省の通達なんかも通していないという問題もあるということで、例えば例としては悪かったのですが、国歌や日の丸の問題を私は取り上げたわけであります。そこで、今後これをどういうふうな構想に持っていったらよろしいのか、どういう改革なり方向なりをお考えになっておられるか、お話しをいただきたいと思います。
  190. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 これは全く私個人の考えだけで恐縮でございますが、まず教育長がその責任を明確にすることだと思うのです。これは知事部局から、というよりも知事さんが、ころころ適当に任期が来たら役所の者の首のすげかえと同じで、異動と同じようにやっている、このこと自体がもう既に責任が逆になってきておる。それと教育委員でございますが、本当に教育に情熱のある方、そして経験のある方がこれをしっかりとつかまえてもらって当たってもらわなければいけないのではないか。私はまずそういう教育長、教育委員の任免のあり方、これに根本の問題があるような感じがしてならぬのです。  それと同時に、教育委員会の仕事を地方行政、地方の何か教育法ですか、あるいは地方自治法とかいろいろな面で縛っておりますが、この教育委員会を縛っておる法令関係等も一回見直す必要がある。仕事ができるような、できぬようなことになっておるのではなかろうかなと思うたりもします。  それと同時にもう一つ教育予算のあり方というもの、組み方、これが私は各自治体によって相当違うと思うのですが、個々の教育予算の組み方を変えてもらいたい。というのは、私が見ておりますのは、国の方が決まった分に対してまず先にそれをつけるということが教育予算の組み方で、幾分かの分は教育委員会の言っている独自、単独事業の方に少しつけよう、恐らくこういう手法をやっておるということ、そこに予算の、財政上から見ても、教育委員会があれもやりたい、これもやりたいと思っておっても、できないようなことになってしまっておるのではなかろうか。  そういうものについての解明を一回しなければならぬときに来ておると思います。
  191. 林保夫

    ○林(保)委員 ほかにありますので、もう少し詰めたいのですけれども。  それから、この答申の中でできることとできないこと、先ほども川村審議官が御丁寧におっしゃいましたけれども、やはり時間をかけなければできないという問題もいろいろあると思います。その中で、私が歩き回りまして際立って関心を呼んでおりますのが三つございます。単位制高校の問題、それから六年制中学校の問題、それから私立の義務教育課程であるにもかかわりませず小中学校をつくるというか進めているという、この三つの問題なのです。本当は一時間ずつ時間をとってやりたいのですけれども、時間がございませんので、御示唆をいただきまして、国民の理解のもとにやらなければならぬという役割を私も担いまして、皆さんにこういう問題だというふうにやりたいと思いますので、事務当局の方からその是非について、できる、できない、これはだめだということであれば、それなりにはっきりとおっしゃっていただければありがたいと思います。
  192. 西崎清久

    西崎政府委員 ただいま先生から、三点についてのお話がございました。  まず第一点の六年制高等学校に関する取り扱いでございます。臨教審の答申の趣旨は先生御案内のとおりでございまして、中等教育段階で継続的に内容を保障するというふうな制度化の問題でございます。私どももこの点につきましては鋭意検討を進めておるわけでございまして、この六月の段階で四十七都道府県、それから十政令指定都市を個別に全部呼びまして、六年制高校についての私どもの検討の課題等を示し、都道府県の取り組み、今後の見通しをいろいろ相談し合ったわけでございます。現在のところ四十七都道府県、十政令指定都市におきましては、今直ちに六年制高校に取り組むについては非常に困難であるという話でございます。  その理由は幾つかあるわけでございますが、一つは、高等学校生徒の全体のピークが六十四年でございます、県によって多少違いがございますが。そして、高等学校生徒が減り始めるのが六十五年からである。都道府県は、いろいろと今後検討したいと思うけれども、まず減少期の問題としてとらえてこの問題の対応が必要であるということが一つございます。それからもう一つは、やはり六年制高校の形態の問題、入学試験のあり方の問題、通学区域との関係、私学との関係、普通科あるいは職業科の問題、専門課程をどういうふうに取り扱うか。  六年制高校につきましては、先生もいろいろ御案内だとは思いますが、課題がたくさんございます。それらの一々についても県としても検討したい、私どもも検討いたさなければなりませんので、もう少し私どもは時間をかけながら検討いたしたい、こういう点が六年制高校の現状でございます。  それから単位制高校につきましては、同時に四十七都道府県、十政令指定都市と協議をいたしまして、高専につきましては来年度からでも少し発足について検討しようという県が数県ございます。私どももそれに合わせましてできるだけ早く制度化について検討して、いろいろ地方財政措置との関係もございますので今鋭意詰めておる最中でございますが、これはひとつ前向きに取り組んでまいりたいと思っております。  それから、第三点の私立小中学校の設置促進の問題でございますが、これは私学として全体をとらえますれば、義務教育の私学と高校大学の私学につきまして国の行政責任の対応は異なるわけでございまして、私どもはやはり、義務教育は国、地方公共団体、公の責任において義務教育の妥当な規模と内容を保障するという責任がございますので、まず行政の責任としては公立小中学校について努力をするというのが一つの姿でございます。ただ、民間私学の小中学校の設置ということが都道府県知事の認可であるわけでございまして、その点については、それぞれの公共団体、知事の責任においての認可が行われることは、これは当然これからも行われるわけでございますけれども、行政として私立の小中学校の設置促進をどういうふうに図るかということについては、まず公立小中学校について責任を持つという立場からいたしますと、なお検討課題であろうというふうなのが現状の考え方でございます。  以上でございます。
  193. 林保夫

    ○林(保)委員 実態はお話のような形だろうと思います。また、臨教審のねらいはねらいとしてそういうものを進めていこうということもあろうかと思いますので、また議論はこの次にさせていただくことにいたします。  ことしの初めでございましたか、乱塾に対応する義務教育課程における課外教育充実させるという通達を出されたと思いますが、それがどのように進んでおるのか、この臨教審の答申を踏まえて、民間活力の導入という中に塾も入るのだろうかどうかという感じもいたしますが、その辺の関係をこの機会に少し整理してお話ししておいていただきたいと思います。
  194. 西崎清久

    西崎政府委員 時間の関係もありまして簡単に申し上げますが、塾が非常に隆盛をきわめておる、こういう点の現状にかんがみれば、公教育は責任を児童生徒に対して、特に義務教育については大いに奮起して十分な努力をしなければならない、これがまず課題でございます。  そこで、本年の一月末でございますが、まず学校教育における努力課題として、受け持ちの先生としては、児童生徒がどういうふうに塾に通っているか、みずから実態をまず把握すべきではないか、そして、なぜ自分の受け持ちの子供たちが塾に通っているのか、学力が低いのならば自分たちで努力をするという姿勢を示してもらいたい、そして、それは本来の授業時間の中で、個別指導その他で大いに努力してほしい、そして、それで時間が足りない場合には、必要ある場合には補習等にも応じて、子供たちの学力向上にも努力してもらうべきではないか、こんな趣旨の通知を出したわけでございます。  これは都道府県教育長等に出しておりますが、小学校長会、中学校長会とも昨年の夏から半年かけていろいろ協議をいたしまして、都道府県は市町村市町村学校にそれぞれ通達を流す、そして、それぞれの学校がそういう趣旨に沿って一歩前へ出るというふうな態勢で取り組んでおるところでございますので、私どもは、それぞれの個々の先生がそういう趣旨で努力をして、学校教育の責任を全うしてもらうように努力してほしい、こんな態勢でなおフォローしてまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  195. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。また関連して、次々と委員会で聞かせていただきたいと思います。  大臣、いろいろそういう問題があると思います、できることとできないこと。それで、私なりにこの機会に改めて教育基本法を読み直してみたのです。そういたしますと、「平和的な国家及び社会の形成者として、」というまくら言葉がございまして、今度の臨教審の答申が、個性重視、生涯学習への移行、国際化への対応ということになっておりますと、臨教審発足当時いろいろ問題があり、今は大分静まったけれども、なお非行、いじめ、学内暴力、いろいろありますよね。それが余りにも個性重視の立場から来ているのじゃないだろうかという批判があるわけです、わがまま勝手でという。大人の世界で言えば、民主主義、個人主義を履き違えているというようなことからも来ていると思います。もう一本欲しいと思って、これを読んでみますと、二十一世紀の日本及び世界を担う子や孫をつくるのだ。そうすると大臣、もう一つ何か欲しいのじゃないでしょうかね。  実は、これは私なりの恥ずかしい体験で恐縮なのですけれども、アメリカにウォルター・リップマンというすばらしい記者がおりまして、何年間か書き続けているのが「公共の哲学」ということで、時事通信で本を出した。あれくらいは言ったらどうだねと、きのうもちょっとつぶやきましたら、文部省皆さんも御熱心ですね。十一時ごろ、林先生、時事通信に尋ねましたけれども、絶版になっていて本が入りません、今度帰ったときは下さい。さっき、朝会いましたら、いやあ、何とか見つけました、と言っておられましたけれども。結局何かといいますと、アメリカは自由の天地、それからフロンティア精神、その中でゴールドラッシュもあり石炭ラッシュもあって、いろいろありまして、公害やいろいろな問題がありましたね。その中で、やはりこの一点だけは外してはいかぬ、人間は一人で生きているのじゃないのだから。こういうような視点で書かれていると私なりに不勉強ですけれども理解しておりますけれども、その辺を教育の中でどのように取り入れていくかというのがまさに二十一世紀の教育一つ視点だろうと思います。必ずしも国歌とか日の丸とかあるいはよく言われているありふれた言葉でなくて、これは「公共の精神」と言ってもいいし、私は「公共の哲学」と言いたいのですけれども。  もう一つ臨教審の答申の中で欲しかったと思うのですが、大変な教育費の父兄負担になっておりますね。これをどのように軽めていき、まさにあれは教育基本法にもあったと思いますし、憲法上から言ってもいいわけですけれども、家柄、門閥、あるいは経済的な理由によって差別を受けないで教育ができるようにしなければならぬということになっておりますね、現実にはなかなかできないというわけですが。大臣も、かわられることはないと思いますけれども、もしかわられても、そういう視点でこれからもぜひひとつ御指導いただきたいなという気持ちを込めまして、最後に大臣の御所見を承りまして、質問を終わりたいと思います。
  196. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 教育基本法は、占領軍当時、占領軍の理想主義といいましょうか、そういうものの思想から出てきたものだ、それはそれなりに一つの指針としての意味があると私は思うのでございますが、おっしゃるように公共の精神と申しましょうか、それは戦後四十年間、確かに希薄だったと私は思っております。時と所によりそのことは出てはおりますけれども教育の基本の中に公共の精神というものは確かに薄かったと私は認識いたしております。そういうことをこれからの徳育教育の中に盛り込んでいく、そういう改正をしていかなければならないのではないか、これからの努力によってそれは補い得られる、私はこう思うのでございます。  それと、もう一つ私たちが心得なければならないのは、先ほどおっしゃった、個性尊重というものが放任の個性尊重になってはいかぬ、自己が確立して初めて個性が尊重されるのであって、そのことをよく教育の中に取り込んでいくべきだ、私はこういう気持ちを持っております。
  197. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。  私の党でも、教育憲章ぐらいつくったらどうだという提起もしたこともございますし、今もそういう考えもあるのでございます。そこらを二十一世紀にどのように対応していくかという中で、いろいろな要望が出ておりますので、しっかり私どもも勉強して対処したいと存じます。  終わります。
  198. 北川正恭

    北川(正)委員長代理 石井郁子君。
  199. 石井郁子

    石井(郁)委員 きょうは、幾つかのテーマに絞って質問したいと思っております。  初めに、大和飛鳥と並んで大阪府下の河内飛鳥と言われる古代遺跡群の保存問題について質問いたします。  この河内飛鳥については、関係市町村はもとより大阪府議会でも長年にわたって議論されており、国会でも取り上げられ、社会的問題、関心を呼んできております。そこで初めに、この河内飛鳥について文化庁はその価値をどのように認識されているでしょうか、伺っておきたいと思います。
  200. 久保庭信一

    ○久保庭政府委員 大阪府の太子町、羽曳野市の丘陵地帯に広がる河内飛鳥地域でございますが、これは古墳時代後期の古墳が多数存在する地域でございまして、特にその南部に位置しております一須賀古墳群は、二百数十基の円墳から成っている地域でございます。この一須賀古墳群につきましては、大阪府が既に昭和四十五年から四十八年にかけまして古墳百二基を含む二十九ヘクタールを買収いたしまして、「近つ飛鳥風土記の丘」として公開しております。これにつきましては、文化庁もその整備に助成をしておるところでございます。  なお、この近隣に、先ほど申し上げましたとおりの一須賀古墳群が存在しておるわけでございます。私どもも重要な遺跡地域だと認識をしておりますが、この地域につきまして現在開発計画がございまして、その開発の許可につきまして大阪府が現在調整中でございまして、私どもも地元でございます大阪府の教育委員会対応しておるのを見守っておるところでございます。
  201. 石井郁子

    石井(郁)委員 非常に価値のある遺跡だと思うのですね。そういう点で、大阪府議会でもことしの三月に請願が採択されております。ちょうどこの国会に、河内飛鳥を遺跡として保存するという運動を長年取り組んでおられます河内飛鳥を守る会から、保存の請願が出されております。この点では、各党も紹介議員になっておられると思うわけですが、私も先日、現地調査してまいりましたし、景観が非常にすばらしくて、今お話しのように群集墳という点でも大阪の三大群集墳の一つ、古代国家の形成過程を知る上でも重要な拠点と言われているところであります。大阪府ではここを将来文化ゾーンとしても考えていくということも言われておりますけれども、そういう点で、この保存につきまして今は教育委員会対応を見守っているというお話でありましたけれども、文化庁として既にこういう請願が出されているわけですから、どのように対応されようとしているのか、もう一度お尋ねをしたいと思います。
  202. 久保庭信一

    ○久保庭政府委員 文化庁が直接に国が公有化をするとかというのではなくて、現在の文化財保護法に基づきまして行っております史跡等の整備につきましては、必要があれば文化財保護法に基づいて史跡に指定する、それから史跡に指定したものについて地元で必要があればそれを公有化する場合に国が助成する、そういうことになりますので、まず地元である大阪府がその開発業者と今調整をしておる部分がございますので、それを見守った上でその後の扱いについて考えたいということでございます。
  203. 石井郁子

    石井(郁)委員 太子町や地元住民の意向もあるわけですけれども、ここで一つ伺っておきたいのですけれども、史跡指定をする場合に地権者の同意というのはどういう形で前提になるのか、この問題を伺っておきたいと思います。
  204. 久保庭信一

    ○久保庭政府委員 文化財保護法に基づきますと、特に地権者、その土地の所有者等の同意が前提となっている制度ではございませんが、制度を円滑に運営するために現在では地権者等の同意を得た上で指定をする、その方がその後の保存が非常に円滑にいくということで、そのように運営をしておるところでございます。したがいまして、まだ調整中のところがございますので、まだそのようなことには入っておらないわけでございまして、あくまで地元である大阪府の教育委員会の調整の結果を見守っておるという段階でございます。
  205. 石井郁子

    石井(郁)委員 大阪府の方では、先ほど請願が出されていることは申し上げましたけれども教育委員会の方でも国指定を要望するという点は出されているのじゃないでしょうか。
  206. 久保庭信一

    ○久保庭政府委員 大阪府の方から、この地域の史跡としての指定についての要望が出ているところでございます。
  207. 石井郁子

    石井(郁)委員 それでは、文化庁としてそれに対してどのような対応をされるかは、文化庁の方の問題でございますね。
  208. 久保庭信一

    ○久保庭政府委員 一般的な意味での要望は出ておりますが、指定となりますと、地域をかなり明確に区切って指定ということになりますので、そのようなことについては地元の地権者との開発に伴う調整が現在行われておるわけでございますので、それを見守っておるということでございます。
  209. 石井郁子

    石井(郁)委員 私は先ほど申し上げましたように、現地も見てまいりましたし、全面的な保存がこの河内飛鳥については必要だと考えておるわけです。そのためには国なり自治体なりが買い上げる方法が一番いい、今はそれしかないというふうに考えております用地元の住民もそのことを大変望んでいる。というのは、一部の山が荒れほうだいになっていたり、そういうところがあります。そういう点で、自然も含めて面としての保存をする、それが遺跡の価値を本当に生かすことにもなると思うし、また開発との調和という問題もありますけれども、開発か自然・遺跡保存かという二者択一ではなくて、開発との調和をしながら文化財の保存、復元を考えていくということだと思うわけですね。そういう点で、本当に遺跡の保存という問題は、ここで開発で全部壊してしまえばまさに後世に悔いを残すことになるわけですから、国が責任を持って保存できるように十分かつ慎重な対応をしていただきたい。既に、どの程度史跡として保存できるか、するかという点では一定の詰めの段階に入っているのではないかと思うのですけれども、再度、文化庁のもっと積極的なお考えをお聞かせいただきたいと思うわけです。
  210. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 いい質問をしてくれました。ありがとうございました。  これは私ども本当の地元のところなんです。これで何と五年かかっているのです、本当のところ。十分御存じだと思うのです。これはなぜこんなことになってしまったかというと、大阪教育委員会もふにゃふにゃ、ふにゃふにゃやっていてふがいない、ちっとも決めようとしない、文部省に相談に行っても、文部省も地元で地元でと言って逃げてしまう、それがこうなってしまって、途中で土地が何遍も転がしになってきた。こういう状態なんです。そして、残っている方々は、これは下手なことをしたらおれたち売るにも売れず何にもならぬぞ、その土地を殺してしまわなければならぬだろうという不満がある、不信がある、そういうのが交錯しておるのです。  これはいい質問をしてくれたので、私もまたこれをきっかけに大阪府を呼んで、早急に片をつけるようにしましょう。方針をそうしましょう。これはいい質問ですよ。こんなものをほっといて—本当にほうってあるんだ、無責任な。これがもしつぶれてしまったら、おっしゃるようにこんな貴重な史跡は戻りません。六年前ですか、町長選挙がありましたときに、開発か保存かで大選挙をやったのです。それからすぐに片をつけるといって、町長はずっと大阪教育委員会に行っているが、大阪教育委員会はふにゃふにゃ、ふにゃふにゃ逃げてしまって、調和を調和をはかり言っている間にこういう事態になってきた。これは私はよくわかっております。やりますから、これは百遍の答弁よりもどうするかということなんです。
  211. 石井郁子

    石井(郁)委員 さすが地元の文部大臣でありまして、よく御存じでいらっしゃいますし、私も大臣から初めてお褒めをいただいたと思います。そういう点で、本当に地元の大臣といたしまして、大臣の任期がどのくらいかという問題もありますけれども、特段の御尽力をお願いしておきたいと思います。  それでは次の問題ですけれども、障害児教育について質問いたします。  この点では二つの問題があるのですけれども、まず聴覚障害児の早期教育、これは三歳未満の教育のことですけれども、この問題を伺いたいと思います。  この問題では、昨年、同時選挙の前になるのですが、百四回国会において我が党の藤木洋子議員が文教委員会で取り上げております。そのときの政府答弁がございますので、私はまずそのつながりといいますか、そのフォローという形から伺いたいと思います。  二点ありまして、一つは、言うまでもありませんが、三歳未満児という教育学校教育法の対象になっていないという点で、とりわけ障害児教育という点でも、医療機関が対応しているという点での厚生省との関係ですね。それで厚生省との連絡調整が必要だという御答弁をされております。この厚生省との連絡調整がその後どうなっているでしょうか。  もう一つは、一方で幼稚部がございますね。聾学校の幼稚部の教育の一環として、教育相談という形で、既に二歳児あるいはもっと下の子供たちの教育をしているという実態が大変広く進んでおります。そういう実態を踏まえて、法体系の見直しということは大仕事だけれども、現実的な対応として補助制度の検討を考えてみてはどうかというふうに述べておられます。そういう点で、この検討がどうされているでしょうか。  この二点をまず伺いたいと思います。
  212. 西崎清久

    西崎政府委員 先生御指摘の、障害者教育のうちの聴覚障害児への対策の問題でございます。  まず一般的な御説明として申し上げますれば、先生御指摘のように、三歳児−ゼロ歳児は学校教育の対象ではございません。しかし、やはり私どもは、これらの障害児の学校教育への対応の前提として、早期に治療なり早期の判断と申しますか指導というものが必要であるということは、かねてより痛感しておるわけでございます。そこで二つ、現在施策を講じておるわけでございますが、一つは、現在都道府県レベル、政令指定都市レベルで、全国に二十五カ所の特殊教育センターというものがございます。この設置促進を今慫慂しておるところでございますが、特殊教育センターの機能として、やはりゼロ歳児から三歳児の者でも、聴覚障害児も含めていろいろな相談に応じて、できるだけ学校教育につながる年齢段階までの指導も含めて相談に応じ、適切なアドバイスができるように、これを一つやっておるわけでございます。  それから、先生御指摘の第一点の厚生省とのつながりの関係で申しますならば、この特殊教育センターは学校教育だけで機能するというよりも、福祉の問題と医療の問題あわせて機能することが大切でございますので、地域の総合的なセンターとして三つの機能をあわせ持つ同じ場所でこのセンターをつくるということの相談も各省でいたしまして、現在北海道や北九州市では同じ棟で、入り口は別でございますけれども中は廊下でつながっているというふうなことで、医療、福祉、教育ということでこのセンターが実現を見ておるところがあるわけでございますので、これからどんどんと、各省とも相談しながら、こういう先生御指摘の聴覚障害児の早期の相談に応じられるようなセンターの設置に努めてまいりたい、これが第一点でございます。  それから次に、第二点の幼稚部との関連でございますが、ゼロ歳から三歳までの子供がどこに入るかといえばまず幼稚部でございます。そこで、私どもとしては特殊教育小学校で、聾学校でございますが、聾学校の幼稚部でも、地域の特性や保護者の要望等を勘案して保護者や本人に対する教育相談や指導が行われるように、実際問題としての指導をやっておるわけでございまして、ゼロ歳から三歳だから相談に応じないということではなくて、できるだけみずからの持ついろいろな知識あるいは判断を保護者や本人について及ぼすようにというふうなことをやっておるわけでございます。  先生御指摘の補助の問題あるいは法体系の問題については、まだ私ども必ずしも措置を講じておるわけではございませんけれども、実際の問題としての幼稚部のいろいろな先生方のかかわりにおいて、この点についての実際的な適応をしていきたいというふうに考えておる次第でございます。  以上でございます。
  213. 石井郁子

    石井(郁)委員 特殊教育センターが二十五カ所という点では、一都道府県に一つずつもないわけです。全国一都道府県に一つずつもないわけですから、これではとても足りないということもあると思うのですが、それはそれとして、こういう特殊教育センターも大いに今後ふやしていっていただきたいというふうに思うのですが、きょう私は、主として幼稚部が行っている教育相談の実態、それに対する補助といいますか、それについて少し突っ込んで伺ってみたいと思うのです。  幼稚部が行っているその教育相談の実態については、文部省としてはどのように把握されているでしょうか。つまり学校でどのようにやりくりをして行っているのか。実際公認化されてないわけですから、いろいろ大変な実情の中で教育に取り組んでおられるわけですけれども、あるいは全国的なそういう状況ですね、ちょっと文部省がつかんでおられるその実態を伺いたい。
  214. 西崎清久

    西崎政府委員 この点は、先生最初に御指摘のとおり、ゼロ歳から三歳までの幼児については学校教育体系からは別の体系でございまして、その点から申しますと、文部省の職務権限の問題としてとらえれば、しゃくし定規に申しますならば、対象外ということに相なってしまうわけでございます。しかし、それはやはり特殊教育なりあるいは今御指摘の聴覚障害児の学校教育へつながる前提として考えれば、少し手を伸ばして、むしろ就学時における適切な判定を行うためにも、余力ある限りと申しますか努力してでも、ゼロ歳から三歳前の幼児についても保護者や本人の相談に応ずることが必要ではないか、こんな気持ちでやっておるわけでございます。したがいまして、これを真正面から予算の問題、制度の問題として取り上げるということはいかがかということもございまして、私どもは慫慂はしておりますが、実際の問題の実態調査等は正式には行っていないという状況でございます。
  215. 石井郁子

    石井(郁)委員 やはりそこら辺に一つの問題があると思うのですけれども、現場ではこの聴覚障害児の早期教育というのは、これは聾教育自身が大変伝統のある分野ですから、非常に教育の方法もいろいろ開発されてきております。特に早期発見がまず最近大変可能になってまいりました。もう言うまでもありませんけれども教育は言葉から始まるように、三歳までに言葉を覚えるかどうか、言葉の教育ができるかどうかが決定的に重要になっているわけですから、そういう点で早期教育の重要性が言われているわけですね。既に、全国で幾つかのそういう聾学校で、教育相談という形で二歳児を受け入れる、あるいはもっと一歳児を受け入れるなどしてやっていらっしゃるわけですけれども、しかし、これはちょうど私の地元大阪でございますけれども、聞いてまいりましたところが、まず教員は早期教育相談をしても加配がありませんから、定員へしわ寄せが非常に大きいという問題があります。それから予算についても、公的予算措置がないために、備品とか消耗品など非常にしわ寄せが大きい。また施設設備についても、そういう年齢に応じたものがございませんから、そういう点でも非常に困っている。それから、公的に受け入れていないために在籍措置ですね、就学奨励費などの支給がありませんし、また保護者の負担も大きい、例えばスクールバスで通うにもパスの負担が親にかかってくるという問題だとか。そういう点で、非常に公的保障のない中でいわば努力をしながら早期教育のために幼稚部の先生方が御苦労されている、こういうことになっているわけですね。そういう実態は全国がなりあると思うのです。今局長の方からこういうゼロ歳から三歳までの教育が必要だという点はお認めになっていらっしゃるわけですから、ぜひともそれが保障されるような措置を講じるためには、まず実態についてつかんでいただきたい。それはいかがでございましょうか。
  216. 西崎清久

    西崎政府委員 先生御指摘ではございますが、私どもの現在考え方として申し上げますならば、やはりゼロ歳から三歳児までの幼児の早期発見なり早期治療という問題は、かなり経験を積み、専門的な知識も必要ですし、親御さんの立場も考え、本人の状況も判断できるというふうな人たちがこれに当たるのが一番望ましいであろう。そういう考え方に立ちますと、行政の努力として今後私どもがどの部面に力を入れるべきかと申しますと、先ほど第一に申し上げました特殊教育センター、こういう一つの組織で、これは本来相談事業というものを業務にするわけでございますから、そういう本来の業務を持っておる組織で、ゼロ歳から三歳までの幼児についていろいろと相談にも応ずるというところ、二十五カ所で若干少ないという御指摘もございますが、これをもっとより広げて、そういうように努力するというのがまず第一着手ではないかというように思うわけでございます。  それとの裏返しで申し上げますならば、幼稚部における相談業務というのは本来の幼稚部における教育で、それがまず本来の先生方のお仕事でございますから、その点について支障があるようなゼロ歳から三歳までの仕事を無理やり付加するということはいかがかというふうにも思いますし、それを付加することについての法的な、あるいは条件的な問題としてはいささか問題もないではない。こういうことから申しますと、私どもはやはり、特殊教育センターという一つの組織なりの方向で、今先生御指摘の大事な問題だと思いますから、そっちの方で努力をするというふうな方向をこれからもとりたいというふうに思っておるわけでございます。  御理解をいただきたいと思う次第でございます。
  217. 石井郁子

    石井(郁)委員 それはまた最初に戻ったような形になりまして、あれかこれかではないわけですね。両方必要なんです。今、とりわけ長い伝統と非常に専門的な蓄積を持っているのは、聾学校の幼稚部の実践なんですね。ですから、これは文部省も御存じだと思いますけれども、自治体において既に予算を計上しているところもあるのじゃございませんか。それはいかがですか、御存じですか。
  218. 西崎清久

    西崎政府委員 今私が申し上げておりますのは、国の行政の姿勢と申しますかポジション、スタンスとして申し上げておるわけでございまして、それぞれの幼稚部なりそれぞれの幼稚部の先生方がいろいろそういう面での御努力をされる、もちろんそれはそれで必要なことでありますし、そういう点が可能であればぜひそうしていただきたいということは、もちろん私どもの頭にもあるわけでございます。  そういう意味から申しますと、地方自治体で仮に予算が計上されているところがあるとすれば、それはそれとしてその地方公共団体の御判断でございますから、その点については私どもがとやかく申し上げるところではございません。  ただ、国の問題として、この点について、あるいは予算、制度として幼稚部のゼロ歳から三歳までの対応についてどうかということでお尋ねであるとすれば、それはむしろ特殊教育センターの方での仕事として努力すべきではないだろうか、こういうことを申し上げた次第でございます。
  219. 石井郁子

    石井(郁)委員 これは、現場にいる先生からすると効果が目に見えるわけです。三歳になるまでに早期教育を受けた子供と、放置というのは悪いですけれども教育を受けずにきた子供とでは、三歳以降の教育がまるで違ってくるわけですね。そういうのを見ている側にとりましては、早期教育は何としても実現したい、それは当然のことですね。  この点では私も実は見てきているのです。見事に教育の効果は違いますね。五歳児が曲を演奏してくれたのですけれども、三歳未満で教育を受けた子供と三歳から初めて教育を受けた子供とでは本当に全然違う、差が出ているのですね。ですから、教育というのはそういうことだと私は思うわけですけれども、そういう実践をしているところについて、国としてはそういう方向はそちらが今重点ではないというような言い方で、どう言ったらいいのでしょうか、そういう努力を無にするようなことは許されないと思うのですね。再度お願いしますけれども教育相談のそういう実態、それからそういう教育の効果について文部省としてぜひとも把握していただきたい、ひとつそう思います。  それから、既に先生方があるいは親と協力をしながら現実に三歳未満の教育を行っているわけですけれども、そういう点の補助制度、これは前百四回国会のそういう御答弁があるわけですから、何らかの補助制度がやはり考えられてしかるべきだ、既に地方自治体で補助制度が行われているという点からしても、国としても当然考えるべきだというように思います。そういう点で強く要望したいのですけれども、いかがですか。
  220. 西崎清久

    西崎政府委員 先生御指摘の二点でございますが、聾学校における幼稚部で、先生方が自分の本来の仕事以外にゼロ歳から三歳児までの父母なり本人なりについていろいろ御努力をされている、これはとうといことですし、効果も上がることですし、大変結構なことであるということは私どもは再々申し上げているところでございまして、そういう実情について悉皆調査ができるかどうかということについては個別の問題でございますから、私ども特殊教育に関するいろいろな会議もございますし、指導部課長会議もございますから、折に触れてそういう実情などは聞く機会もあろうかと思いますので、私どもも個別の問題として認識してまいりたいと思っております。  第二点の制度の問題として補助をするかどうかという点は、文部省のポジションの問題としてはなかなか難しい問題があるということをお答えせざるを得ないわけでございまして、特殊教育センターの方につきましては補助制度を持っておりますし慫慂もしておるわけでございますし、医療、福祉、教育について三者一体になった特殊教育のセンターはより設置を奨励してまいりたい、それについては補助もしていくということは拡充してまいりたいと思っておりますので、そちらの面での努力は今後もなお続けてまいりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  221. 石井郁子

    石井(郁)委員 障害児教育のもう一つの問題は、今度は上の方に行きまして、後期中等教育の問題でございます。  小中学校が義務教育化いたしまして、そこは問題は一応終わったわけですけれども、今は高等部に入学したいという要求が大変高まってきております。今、ここの問題が障害児教育学校教育一つの焦点になっているかというふうに思うのですけれども、初めに養護学校高等部への進学希望者数、また実際の入学者数、そういう点で数値がございましたら伺っておきたいと思います。
  222. 西崎清久

    西崎政府委員 先生御指摘の盲・聾養護学校全体の高等部への進学率でございますが、六十一年三月現在で申しますと、進学者が四千五百四十六人でございまして、卒業者が七千八百九十人でございますから、全国平均で申しますと五七・六%というふうな進学率になっております。  この進学率は県別にかなり違います。これはあるいはもう御承知かと思いますけれども、私も今拾ってみたわけでございますが、二〇%台というのが八県ぐらいございます。それから七割を超えているところが八割ぐらいある。県によって大変ばらつきがあるというのが実情である、こういうふうに考えております。
  223. 石井郁子

    石井(郁)委員 盲・聾の方は九〇%、かなり高い率だと思いますけれども、特に知恵おくれ、肢体不自由児の養護学校、そういうところの高等部の増設計画というものは文部省としてお持ちでしょうか。
  224. 西崎清久

    西崎政府委員 高等部の設置状況が県によってかなり違うことと、それから進学率が全国平均で五割台であるということの理由でございますけれども、私どもが考えますに、昭和五十四年に養護学校が義務化されて、養護学校義務化に伴う施設整備その他で、各都道府県が大変苦労したわけでございます。そういう点で、各都道府県の財政状況の問題として高等部の設置がなかなか進んでいない、国ももちろん補助はしておるわけでございますが、そういう問題が一つでございます。  それからもう一つは、これは県によって考え方が若干異なるようでございますが、社会的自立が可能な中度、軽度の障害の生徒を高等部に受け入れる、そういう考え方でそれに必要な高等部はつくる、こういう考え方の県があるのでございます。片や、いや希望する者であれば重度の者も含めてほとんど受け入れられるように高等部をつくるという考え方の都道府県もあるわけでございまして、高等部について、それを受け入れる障害の程度について各都道府県の考え方が若干異なっておるというのが従来の経緯としてもあるのではないかと思うわけでございます。主として財政事情の問題と、受け入れ生徒の障害の程度の判断の問題、こういうことでございまして、しかしいろいろな理由はあるわけではございますけれども、私どもとしては養護学校における高等部がこのように各県でばらばらであるということでは困るわけでございまして、これは助成の問題としても対応できるように予算措置を講じてまいるわけでありますが、これからの高等部の設置の促進については、文部省の姿勢としても努力をしてまいりたいと考えております。
  225. 石井郁子

    石井(郁)委員 そういう各県のアンバランスの問題が今出されておりますけれども、その一つの特徴の点で、これも私の大阪の問題を申し上げたいと思うのです。  文部省は御存じだと思いますが、非常に高等部への進学者が多うございまして、学校が今過密状態になっているというのが特徴であります。そういう点で、この過密状態というのは本当にちょっと驚くぐらいの内容でして、例えば当初学校規模を二百人ぐらいで建てているのですね。それが今四百人受け入れているということで、施設、そしてまた教育の保障という点からしても、いろいろな点で問題になっているということが出されております。この点では、養護学校を分離してほしいという問題、あるいは高等部の増設という問題は基本的には設置者から要求が出ないと困るわけですけれども文部省として、これもまた、こういう高等部の実態につきまして各県のことが出されましたけれども、とりわけ今問題になっている課題、過密の養護学校の問題ですね、そういう実態はつかまれていらっしゃるでしょうか。
  226. 加戸守行

    加戸政府委員 先生おっしゃいますように、確かに養護学校高等部の人数がだんだん伸びてきているという実態は状況把握いたしております。この問題につきましては、もちろん、先ほど初中局長答弁がございましたように、障害の程度、種類も違いますし、また地域の実態あるいは学校の実情等もそれぞれ異なるわけでございますけれども、特に大阪等におきましてはいわゆる高等部の人数がかなりふえているという状況にあります。全国的に見ますと、高等部の十学級以下のものが七三%で圧倒的多数でございますけれども、しかしながら、特に都市部等におきましては高等部の十一学級以上、極端な場合には三十学級というケースもあり得るところでございます。従来から、こういった養護学校高等部の過密化等に伴います地域の実態、実情に応じましてのいわゆる分離、新設ということにつきましては、私ども、都道府県におきます計画を把握いたしまして優先的に採択をする方向で進めているわけでございまして、例えば五十七年から六十一年までの五年間におきまして、養護学校だけの分離、新設四十六校に対しまして補助をしてまいった状況でございます。今後とも、各都道府県の実情を十分把握いたしまして、いわゆる適正な規模あるいは教育上の効果が上がるような方向への分離促進ということにつきましては、建築補助に関します限り最大限の努力をいたしたいと考えております。
  227. 石井郁子

    石井(郁)委員 ぜひそういう方向で今後とも取り組んでいただきたい、文部省に強くお願いをしておきます。  以上で障害児問題は終わりまして、概算にも関係いたしますので、国立大学の授業料の問題をちょっとお尋ねします。  先月末の新聞報道によりますと、六十四年度には大蔵省がまた文科系、理科系との授業料の格差をつけるという方向で検討を始めたということでございました。また授業料も三万から四万円アップするということの検討も始めているということが出されております。まずこの点で文部省はどのようなお考えなのか、お聞きしたいと思います。
  228. 阿部充夫

    ○阿部(充)政府委員 先般の新聞記事で国立大学の授業料の問題について取り上げられておりましたことは承知をいたしておりますけれども、もちろん財政当局等からは、正規のと申しますか、公式にも非公式にもこの問題についての申し入れは文部省としては受けておりません。  いずれにいたしましても、この授業料の問題は大事な問題だと私ども思っておりますので、諸般の状況を総合的に勘案しながら、申し入れ等があった場合、今後のことでございますが、仮定の問題でございますけれども、いろいろな状況等を勘案しながら、また国立大学協会等とも相談しながらこれは特に慎重な対応が必要であろう、こう思っております。
  229. 石井郁子

    石井(郁)委員 慎重な対応というよりも、これは国立大学の基本的なあり方というかそういうものを、格差の導入という点では根本から崩すことになると思うのです。そういうことでこれは絶対に賛成できないということで、文部省としてはやはりそういう態度で臨むべきではないかと思うわけです。既に前国会でそのような御答弁もされていたと思うのですけれども、重ねて基本的な姿勢を伺っておきたいと思います。
  230. 阿部充夫

    ○阿部(充)政府委員 仮定の問題についてお答えするのもいかがかと思いますけれども、御指摘のように、授業料の額そのものの問題と、それから学部別というような新しい仕組みをつくるかどうかという問題と、二つの問題が従来からあるわけでございます。特に後者の問題につきましては、かねてお答えしておりますように、国立大学のあり方あるいは使命、役割等とも関連してくる大変難しい問題だと私どもは思っておりますので、この点については我々としては従来からの方針で現在も考えているということでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  231. 石井郁子

    石井(郁)委員 授業料につきましても、この十年、入学金と授業料とが交互に上がってまいりまして、本当に今学生生活に対する圧迫というのは非常に大変なものになっております。とりわけ、学生もそうですけれども、授業料の値上がりというのは大学院生にも同じことなんですね。  この点で大臣に伺っておきたいと思うわけですが、今国会で大学審法案が大変議論になりました。例えば大学院の充実とか大学活性化とか、盛んにそういうことが言われておりましたけれども、学生自身が研究に集中できないこういう状況をつくり出していて、どうして大学活性化するだろうかという点で、文部省としてこういう授業料の値上げは絶対にやるべきではないということが一つであります。  それからもう一つ、授業料の問題では、公私間の格差の問題です。例えば私学の助成も抑えられてきている中で私学の授業料が高くなっている、その私学の授業料の高さに引きずられて国立大学の授業料も高くなっていくという点でも、文部省としてはこういう施策をとり続けることは非常に問題だと思うわけです。これは臨時行政改革推進審議会の中で、「私学との均衡等を考慮し、」ということで出ているわけですけれども、そういうことに乗るべきではないというか、そういう点でもっと文部省の根本的な施策を考えるべきだということについて、これは大臣に御答弁をお願いしたいと思います。
  232. 阿部充夫

    ○阿部(充)政府委員 授業料の額をどう決めるかというのは大変難しい問題でございまして、私どもとしては、社会経済の状態がどうなっているか、あるいは一般的な家庭の経済状況でございますとか、さらにはもちろん先生のお話にございました私学とのバランス、これも同じ国民が国立へも行き私立へも行くわけでございますから無視することのできない要件でございますし、さらには育英奨学制度の整備というようなこと等、いろいろ総合的に勘案をしながら検討していかなければならない事項でございますので、そういう点を考えながら今後対応していかなければならない、こう思っておるわけでございます。  ちなみに、国立大学の授業料を上げました場合には、これまでは授業料に見合うだけの奨学金は金額上対応するというようなことで、真に家計に困難があるような家庭の学生に対しましての配慮というのは、常にあわせて行うように努力をしてきているということを申し上げておきたいと思います。  それからなお、大学院生の問題でございますけれども、これは授業料面というよりは、むしろ逆に、現在の大学院生に対する育英奨学なりあるいは処遇の問題というような点から、臨教審でも指摘が行われておりますし、先般も国会でお答えをしたことがあったかと思いますけれども大学改革協議会、現在やっております中でも、そういう問題を議論していただいておりますので、そういう方向を踏まえながら、今後着実に方策を進めるような努力文部省としてもやってまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  233. 石井郁子

    石井(郁)委員 それでは、残り時間で最後に、私は君が代問題を取り上げたいと思っております。  この点では、大臣といろいろ論争もしてまいりましたけれども、最後の論争になるのかどうかということですけれども——まだまだですか。  ことしは、憲法施行、教育基本法制定四十周年でございます。戦後教育の出発点は、戦前の侵略戦争とその遂行に重要な役割を担った国家主義、軍国主義教育のきっぱりとした否定、二度と過ちを繰り返さないという国民の不退転の決意にあったと思うのですが、まずこの点で大臣の御所見を伺います。
  234. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 戦争が起こらぬようにこれからするという点においては、当然皆さんと一緒でございます。
  235. 石井郁子

    石井(郁)委員 臨教審の最終答申が出されました。この中で国旗・国歌の取り扱いが明記されているわけです。この点では、とりわけ大臣の御意向も強く反映したのではないかというふうにも新聞報道等で伺っているわけです。「学校教育上適正な取扱い」こういう表現で述べられているわけですが、このことはどう理解したらよろしいのでしょうか。義務づけるというような内容なのでしょうか。
  236. 西崎清久

    西崎政府委員 このたびの臨教審の最終答申では、国旗・国歌の取り扱いについて盛り込まれておるわけでございますが、その中には先生御指摘のように「国旗・国歌のもつ意味を理解し尊重する心情と態度を養うことが重要であり、学校教育上適正な取扱いがなされるべきである。」という表現があるわけでございます。  御質疑の「適正な取扱い」とは何かということでございますが、私ども承知しておる限りでは、臨教審の答申の審議のプロセスにおきましては、現在の学習指導要領における国旗・国歌の取り扱いも十分勉強され、そして現実の学校における国旗・国歌の扱いがどうなっているかということも勉強された、そういうふうないろいろな勉強の結果として、例えば指導要領の現在の取り扱いでは不十分である、なお指導の徹底を図るべきであるというお考えが、ここでの「適正な取扱い」という表現で出されたのではないかというふうに私どもは理解をしておるわけでございます。  したがいまして、総じて申し上げますれば、教育課程の扱いについても徹底を図るべきであるし、現実の学校における国旗・国歌の取り扱いについてもさらに徹底を図るべきである、こういうふうな御答申の趣旨であるというふうに私どもは理解をしておるわけでこぎいます。
  237. 石井郁子

    石井(郁)委員 行事については今までも言われてきているとおりでございますけれども教育課程の上でも徹底を図るという問題は、今度は教科書に君が代が国歌として登場する、こういうふうに理解してよろしいわけですね。  そうしますと、指導要領と教科書を含めてそういう位置づけになりますと、これは文部省の解釈でありますが、指導要領には法的拘束力があるということでございますから、非常に一律に強制をされるというふうに理解していいでしょうか。
  238. 西崎清久

    西崎政府委員 臨教審答申の趣旨は、先ほども申し上げたとおりでございますが、どのように具体的にその趣旨を取り扱うかということは臨教審はそれぞれ行政機関なりに任せておる、これは文部省の扱いになるわけでございます。  そういう段階で物を申し上げますと、まず指導要領の問題としては、教育課程の問題として国旗・国歌の問題をさらに徹底して扱う、現在不十分であるという御指摘もあるわけでございますから、それをどういうふうに扱うかということは、現在教育課程審議会でも並行して審議が行われておるわけでございまして、その結果は十二月末の教育課程審議会の答申にも盛り込まれるやに私どもは予測をするわけでございます。  その教育課程審議会の答申に基づきまして、私どもが来年の秋に幼稚園、小中学校、これは高等学校は翌年になりますが、指導要領をつくるわけでございますから、その段階で、教育課程における学習指導要領の問題として国旗・国歌をどのように取り扱うかということが決まる、こういうふうになるわけでございます。  それから、先生御質疑の教科書はそれではどうなるかということでございますが、教科書は指導要領に基づいて編集・著作されるわけでございますので、来年でき上がります指導要領に基づいて教科書は編集されるということになりますので、指導要領に盛り込まれた適正な国旗・国歌の取り扱いに基づいて教科書が編集・著作されるという運びになるであろうというのが私どもの現在の見通してございます。
  239. 石井郁子

    石井(郁)委員 指導要領に位置づけられ、そして教科書にも登場してくるということが予測されるわけですが、今お尋ねしていますのは、そうなりますと、教育の場で君が代を国歌として強制をしていくのかどうか。強制というようなことが伴うのかどうかということについて一点伺っているわけですね。  それから、関連しますのでもう一つですけれども、国歌君が代というものをどのように教えるのでしょうか、これはちょっと具体的にお尋ねしたいと思うのですね。大臣、例えば中学一年生に君が代を国歌として教える学校の教師はそういう立場に立たされるわけですから、大臣が教師だとしますと、どのように教えるのでしょうか。
  240. 西崎清久

    西崎政府委員 教育内容の問題でございますので、私どもからお答え申し上げます。  国旗・国歌に関して学校教育で教えることが大切であるということについては、私どももかねがね文部省の立場として申し上げておるところでございまして、この点は若干先生見解を異にするところであろうかと思うわけでございます。やはり日本国民としての自覚を児童生徒に持ってもらう、そして、日本国民としての自覚を持って国際社会でも信頼される国民でなければならぬ。そういう意味でいいますと、国旗・国歌というのは日本国のシンボルでございますし、それが制定法であるか慣習法であるか、従来からの国民に定着した一つ考え方として君が代、日の丸が国旗・国歌であるということは、私どもはもう当然のこととして前提にしておるわけでございまして、その点がちょっと先生と異なるところかもしれません。そういう意味から申しますと、君が代、日の丸を国歌・国旗としてそれぞれの発達段階に応じて小学生は小学生なりに、中学生は中学生なりに教える、これは私は必要ではないかというふうに思うわけでございます。  その点で申し上げますならば、今先生中学の例を申されましたが、現在、中学では学校行事のところには指導要領で載っておるわけでございますけれども、教科のところについては指導要領における扱いというものがない、この点などはどのように今後考えてまいるかというのが一つ課題なんでございますね。そういう点については、教育課程審議会なりの今後の御答申をいただきながら、私どもも考えてまいらねばならない点ではないか。では、現時点で文部省どう教えるのかということについては、若干個人的見解は差し控えさせていただかざるを得ないという次第でございます。
  241. 石井郁子

    石井(郁)委員 それではどういうことでしょうか。今の御答弁だと、文部省としての君が代の解釈というのを今持っておられないということなんでしょうか。君が代を国歌としてどう考えるかという話を私はしているのではないのです。今後国歌君が代を教科書や何かで教えていくということでございますね。あるいは指導要領にきちっと位置づけるということですから、それをどう教えるのですかということで大臣の御見解文部省の御見解、中身そのものを尋ねているわけです。
  242. 西崎清久

    西崎政府委員 御質問の趣旨を十分理解しないでお答えした点は恐縮でございますが、要するに君が代は「千代に八千代に」という言葉の意味の問題としての御質疑でございましょうか。——そういう点でちょっとお答えさせていただきます。  この点につきましては、やはり君が代の歌詞の問題として、私どもが現行憲法のもとで、日本国及び日本国民統合の象徴である天皇をいただく日本の繁栄を幾久しく願ったものとして理解すべきではないか、こんな考え方でございまして、君が代の歌詞の「君」という言葉についての御疑念がいろいろ先生おありかと思うわけでございますが、私どもとしては、日本国民統合の象徴である天皇をいただく日本の今後の繁栄というふうな意味で君が代の歌詞を理解すべきであろう。学校教育においても今後はこういうことで理解してまいる必要があろうというふうに思っておるわけでございます。
  243. 石井郁子

    石井(郁)委員 私のお尋ねしている意味がなかなか伝わらなかったようですけれども、実は君が代の解釈につきましては、戦前そしてまた戦後も教科書にきちんと説明が載せられているという点では、尋常小学の修身書というのがございますね。一九三七年に発行されているものですけれども、この中に実は戦前でも初めて解釈が載せられているのです。  そこでは、「「君が代」の歌は、「我が天皇陛下のお治めになる此の御代は、千年も万年も、いや、いつまでもいつまでも続いてお栄えになるやうに。」」こういう歌ですという説明がございますね。  一つは、この「君」は明らかに天皇陛下だということですが、この戦前の解釈を文部省は否定されるのでしょうか。
  244. 西崎清久

    西崎政府委員 先生御指摘の解釈は、国定修身教科書、尋常小学校修身書巻の四、昭和十二年という教科書に載っておる内容であろうというふうに思うわけでございます。  私ども国旗・国歌ということを現在の児童生徒に教える場合には、現新憲法下における日本国というものを考えるのが当然でございまして、その現在の新憲法下における日本の国民統合の象徴である天皇、君というふうなものが君が代の内容として考えられるべきであろう。したがいまして、今先生のおっしゃいましたかつての昭和十二年の教科書に載っている解釈は私どもはとらないところでございます。
  245. 石井郁子

    石井(郁)委員 内容を大変論議しなくてはいけないのですけれども、時間がありませんので最後に二つ伺っておきたいと思うのです。  その前に、今象徴天皇としての「君」という解釈が政府の公式見解としていろいろなところで出されておるわけですけれども、私どもはそれは余りにも単純な君が代の説明ではないかと思うのですね。象徴天皇の「君」を「君」として歌っているから憲法に反しないというのなら、これは全然説明にはならないと思うわけですね。つまり象徴天皇として書いたとしても、憲法第一条にあるわけですけれども、この憲法の精神は言うまでもなく国民主権、主権在民の精神ですね。そういう精神を憲法がうたっているのでありまして、その精神からすると、この「君」を天皇としたのでは矛盾するわけですね。その点が大きな前提となります。  時間がありませんので、最後に私は二つだけ問題提起として質問をし、お答えもいただきたいのですが、私がこの君が代問題で懸念をするのは二点あります。  一つは、戦前の経過を振り返ってわかりますように、学校教育の中で君が代を国歌として儀式そのほかで斉唱を義務づけてきました。このことが戦前の国家主義に連なり、そしてあの侵略戦争へ行ったという経過は、これは研究者はどなたもそう指摘されるところだと思うわけです。つまり、教育の中で何よりも国歌としての扱いが、法的根拠のない国歌を国歌として強制してきたということが一つです。私はそういう点で、学校あるいは教育を政治の道具にしてはならないと考えています。  その点で、この夏の中曽根首相の軽井沢セミナーの発言がまた大変重大だと思うのです。国家としてのまとまりを教育において教えていく、それには国旗や国歌が大事だ、その国家のまとまりのシンボルとして天皇があるという発言がございます。これはまさに戦前に教育の面で行ってきたことと同じ繰り返してはないだろうか。最初に申し上げました戦前の過ちを二度繰り返す、この道を歩んでいるのではないかということが第一点です。  もう一つの問題は、国歌を歌うかどうかという問題を強制できるかどうかということです。その点では、これは大臣もたびたびおっしゃっておりますように、国を愛するとか国歌を歌うというのは自然の感情であるべきだということがございますように、これは自然の内面的な感情に基づくものでなければならないと思います。そういう点で、国歌を強制するというのは、これも憲法に出ておりますように思想、良心の自由、信教の自由にかかわる問題でありますし、それにまさに反する問題だというふうにとらえざるを得ません。  この二点について、最後に大臣の御所見と政府の御見解を伺っておきたいと思います。
  246. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 第一点のあなたのおっしゃる国旗・国歌が軍国主義へ駆り出したというのは、話が逆さまだと思うのですよ。そうじゃなくて、軍国主義者が——確かに私は一時期、軍国主義者がおったと思いますが、その軍国主義者が逆に国旗・国歌をそのように悪用していった。だから、私はこれは悪用させてはいかぬと思うのです。  しかしながら、国旗・国歌に対する国民気持ちというものはもっと純粋なものだと思うのです。だって、皆さんがもし外国へ行かれて日の丸の旗、国旗が立っておったら、やはりそこへさっと走りますよ。あなただってそうだと思うのですよ。それはみんな同じだと思うのです。純粋な気持ちなんです。やはり国の象徴としての国旗なんですから、私はそれはやはり国民の自然な発露だと思うのです。  それから国歌にしても、今歌うな、歌うなということを一部の学校で言っているものですから、それで歌っていいのか、歌って悪いのか迷っている子供が随分あります。ですから、私が一緒に歌ったらついて歌っているのがたくさんいます。それは何も国家主義運動の一つとして歌っているのではなくして、やはり一つの儀式で、何か自分から同一の民族であり同一の国民であるという意識、同一感をとるという意味で言っているのであって、私はそんなに難しく考える必要はないと思います。  それから、よく、どないして教えるんだ、さっきあなたはおっしゃいましたが、これは簡単で、日の丸の旗を持ってきて、これが日本の国旗だよということを教えていけば自然に小さい子供はなじんできます。それは心配ないと思います。国歌にいたしましても、何か行事のあるときはこれを歌うんだなということから教えていけば、だんだんとそういうものになじんでいく。そんなに難しいことではない。  要するに、反対せんがために反対しているから、これで国旗・国歌というものが現在変な格好になってしまったのです。ずっと日本の国というものは連綿と続いておるのですから、純粋にこれを続けておれば何の問題もなかった、こう私は思っております。
  247. 石井郁子

    石井(郁)委員 二点目の答弁がございませんので、ちょっとお願いします。
  248. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 思想、信条の強制ということにはならない。私は、国民がみんなそれを尊重しようというものを尊重するんですから、別に賛成、反対と言う者、それは一部、あなた方は反対しておられることはありますけれども、しかし大部分の国民はこれでコンセンサスができておるのです。これを別に強制ということにもならぬと私は思うのです。
  249. 石井郁子

    石井(郁)委員 以上で終わります。
  250. 北川正恭

    北川(正)委員長代理 次回は、来る四日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十二分散会