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1987-08-25 第109回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年八月二十五日(火曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 村山 喜一君    理事 青木 正久君 理事 伊吹 文明君    理事 二階 俊博君 理事 牧野 隆守君    理事 小野 信一君 理事 伏屋 修治君       川崎 二郎君    熊川 次男君       小杉  隆君    高村 正彦君       佐藤 一郎君    渡海紀三朗君       穂積 良行君    谷津 義男君       河上 民雄君    竹内  猛者       草川 昭三君    森田 景一君       北橋 健治君    岩佐 恵美君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      近藤 鉄雄君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局経済部長 柴田 章平君         公正取引委員会         事務局取引部長 土原 陽美君         経済企画庁調整         局長      横溝 雅夫君         経済企画庁国民         生活局長    海野 恒男君         経済企画庁物価         局長      冨金原俊二君         経済企画庁総合         計画局長    星野 進保君         経済企画庁調査         局長      勝村 坦郎君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第二課長   垣見  隆君         大蔵省国際金融         局為替資金課長 西方 俊平君         厚生省生活衛生         局食品保健課長 大澤  進君         厚生省生活衛生         局食品科学課長 内山 壽紀君         農林水産省経済         局農業協同組合         課長      嶌田 道夫君         農林水産省畜産         局牛乳乳製品課         長       窪田  武君         農林水産省畜産         局職人鶏卵課長 太田 道士君         農林水産省食品         流通局商業課長 中村 英雄君         農林水産省食品         流通局砂糖類課         長       紀内 祥伯君         農林水産省食品         流通局食品油脂         課長      増田 正尚君         食糧庁管理部企         画課長     日出 英輔君         通商産業省貿易         局為替金融課長 前田 正博君         運輸省地域交通         局鉄道業務課長 岩田 貞男君         運輸省航空局監         理部航空事業課         長       平野 直樹君         労働大臣官房政         策調査部労働経         済課長     澤田陽太郎君         建設省道路局日         本道路公団・本         州四国連絡橋公         団監理官    小松原茂郎君         建設省道路局有         料道路課長   松延 正義君         特別委員会第二         調査室長    岩田  脩君     ――――――――――――― 委員の異動 八月二十五日  辞任         補欠選任   奥野 一雄君     竹内  猛君 同日  辞任         補欠選任   竹内  猛君     奥野 一雄君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ――――◇―――――
  2. 村山喜一

    村山委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小杉隆君。
  3. 小杉隆

    小杉委員 最近また、円高が再び襲ってきているような傾向があります。その問題はきょうは触れませんが、現在まで経済企画庁も、また各省非常に努力をされまして、円高差益還元に努めてこられたわけですが、現時点におきましては円高還元状況がどのぐらいになっているのか、まずお伺いしたいと思います。
  4. 冨金原俊二

    冨金原政府委員 円高差益還元につきましては、政府といたしましては公共料金引き下げ等で累次の努力をしてきているわけでございますが、具体的に国民経済全体としてどれくらいの円高差益還元になっているかということにつきまして、企画庁として一つ試算をしております。これは全体数の把握はなかなか難しい面がございますけれども差益還元といたしましては、六十年九月のプラザ合意以降、急速な円高それから石油価格下落という二つの問題が起こったわけでございますが、その前の一年間を一応とりまして、その時点での輸入量が変わらないという前提のもとに、各期の差益状況を一応試算したという形で計算をしているわけでございます。一番現在の時点で発表しておりますものといたしましては、六十年の十-十二月から六十二年の一-三月期までの期間をとりますと、累計で約十八兆円の差益が発生しているという計算が出てくるわけでございます。  これに対しまして、差益還元仕組みといたしまして、計算方法といたしましては、これもなかなか難しい面がございますけれども、その前の一年間、つまり差益が発生します前の一年間、具体的に申しますと五十九年度においてどれぐらい消費者物価上昇しておったか。大体、この前まではかなり安定した物価上昇でございましたけれども、一応二%程度傾向的に物価上昇しているということでございます。したがいまして、その後六十年度以降ももし円高石油価格下落がなかった場合には、物価がその程度上昇したであろうという計算をいたしまして、それに対して実際には円高石油価格下落によりまして消費者物価は非常に落ちついてまいりまして、例えば昨年度は上昇率がゼロになったわけでございますが、そういった差がどれぐらいになるかという計算をいたしまして、それが広い意味での物価面に及ぼす差益還元であろうという計算をいたしましたところ、累計では約十一兆円ということでございます。したがいまして、差益還元の率といたしましては、これを割ってまいりますと約六割というのが、この一-三月期までの差益還元の結果であるということで、一つ試算として発表しております。
  5. 小杉隆

    小杉委員 答弁はなるべく端的にお願いします。  それから、還元率が約六割ということですが、その還元されない部分というのはどういう部分か、あるいはその理由は何か。そして、一〇〇%還元ということは非常に不可能かと思いますけれども、それに近づけるために一層の努力が必要と思うけれども、この点についてお伺いしたいと思います。
  6. 冨金原俊二

    冨金原政府委員 具体的にどの部分還元されていないかということにつきましては、なかなか難しい御質問でございますけれども、端的に申し上げまして、輸入材、素材の関係ではかなり下がってきておりまして、一つ試算でございますけれども産業連関表によりまして、各業種別、例えば農林水産物とか鉱産物とか石油製品といったような形で理論値計算してまいりますと、差益発生国内卸売物価に与える影響というのが全体で約八%程度という計算がされるわけでございますが、これが六十一年度の状態で実際に卸売物価が下がりましたのは五・七%ということでございますものですから、この時点だけをつかまえますと、こういった卸売物価の面でも円高石油安影響がまだ十分反映されていないのではないかという計算が出るわけでございます。  もちろん、期間経過とともに、その差益状況はさらにふえていくということは期待できますし、御承知のように需給関係価格が決まるという面もございますので、一概には言えません。それから、逐次消費者物価の方にも波及をしてまいりますが、やはり何と申しましても、一つ流通過程の段階である程度とどまっていることも考えられるわけでございまして、私どもといたしましては、円高差益還元をさらに進めるためにいろいろな努力をしてまいりたいと考えております。
  7. 小杉隆

    小杉委員 この議論を続けていくとまた長くなりますのでこの辺で切りますが、今の御説明の中で流通過程に問題があるということを指摘されました。そこで、特に円高差益を余り実感できない食料品あるいは航空運賃について、若干の質問をしたいと思います。  まず、麦の問題を取り上げたいと思います。  食糧庁資料によりますと、麦の逆ざやというのが年々増大の一途をたどっております。例えば、昭和五十七年から内麦においては一千億を超える逆ざやが生じ、これが年々ふえ続けまして、六十二年度予算では千五百三十八億円という数字になっております。これを埋めるために全体の約九割が輸入麦に頼っているわけですけれども、この輸入の麦による差益によって逆ざやを解消しているというのが明らかですね。昭和六十二年度の予算では外麦による利益が千五百七十二億円ですから、ほとんど内麦の逆ざやを補って約三十四億円の黒字ということになっているわけですけれども、この麦の政府財政負担というものを非常に重要視しなければいけないと思います。  現在の麦の価格というのは、最低価格を保障する仕組み、いわゆるパリティ方式ということで、そのことが現在の大幅な逆ざやの原因になっているわけですけれども、このパリティ方式昭和二十五年から二十六年当時の値段を基準としているわけです。農政審議会でもいろいろ答申を出しておりますけれども、この内麦の生産性向上ということが非常に急務だと思います。この生産性というものを生産者麦価に反映させることによって、政府売り渡し価格引き下げるべきだということですけれども、これについてはもっと強力に進めなければいかぬと思うのですけれども、これについて物価局なりあるいは食糧庁からひとつ見解を承りたいと思います。
  8. 日出英輔

    日出説明員 先生お話しのように内麦の問題でございますが、これにつきましては、近年農産物の内外価格差に多大な関心が国民各層から持たれているわけでございますので、私どもとしましては、現に進みつつあります生産性向上というのを価格に適切に反映させていく必要があると考えておりまして、本年産の生産者麦価につきましてもこういった考え方から銘柄区分Ⅱの一等、これは中位のものでございますが、これで四・九%の引き下げを行ったということでございます。  ただ、現在の生産者麦価算定方式は、先生お話しのとおり、いわゆるパリティ方式ということで、農業パリティ指数で伸ばした価格を下らざるものとするというような規定でございますので、この生産性向上がきちんと反映されないといううらみがございます。そこで、この生産性向上とさらに品質の改善という観点に立ちました適切な算定方式ということで、現在、麦価規定改正を内容といたします食糧管理法の一部改正案につきまして、国会で御審議を願っているところでございます。
  9. 小杉隆

    小杉委員 努力していることはわかりますけれども、それにしても、この資料によりましても、外麦トン当たり三万四千円で買い入れているものを八万一千円で売っている。一方、内麦の方は十八万三千円で買い入れたものを六万五千円で売っている。三分の一の値段に圧縮して売っているということですから、内外格差というのは非常に大きいわけでして、この点は経企庁もあるいは食糧庁、農水省も大いに頑張ってもらわないといけないということを、私は一つ強く要望しておきたいと思います。  穀物類に限らず、牛肉等食料品割高感も非常に強いわけです。経済企画庁が出した「物価レポート87」によっても、食料品東京ニューヨークを比較しますと、東京を一〇〇とした場合、ニューヨークでは食パンが六二、牛肉が三四、鶏肉が六三、鶏卵四九、ソーセージ八五、キャベツ六六、タマネギ四一、砂糖五三、食用油五八と、軒並み東京は高くなっているわけです。パリ数字を見ましても、これよりはやや高いですけれども、それでも東京の一〇〇に対して六〇台とか七〇台という数字で非常に低くなっている。外国人東京へ来て一番食料品が高いということを常に言っていることは、報道されているとおりでございます。  それから、きょうお配りした資料にも書いてありますように、右下に「牛肉価格内外比較」というのがありますが、日本を一〇〇〇とした場合にはフランスが五五五、イギリス六二五、西ドイツ四七六、アメリカ五〇〇。それからほかの都市と比べますと、東京が一〇〇〇といたしますとパリが六七〇、ロンドンは一〇五〇、ニューヨーク三四〇、概して外国に比べて日本は高いということでございます。こういう数字を見て私感ずるのですが、私は実際に海外へ行くと、自分でよく町の中をジョギングをしたり散歩をして、スーパーマーケットやなんかずっと何軒も何軒も歩いてみるのですけれども政府資料ですと二倍とか三倍程度ということですけれども政府の出している資料よりももっと、私がニューヨークなどを歩いてみますと大体七倍くらいというのが実感でして、これは足でちゃんと調べた私の実感ですから偽りはないわけなんです。これはもう統計数字にあらわれた以上の差があるのではないかと思うわけでございます。  そこで、今配付した資料の一番上の数字を見ますと、需要量というのは昭和五十年から六十一年までの期間に、十年間で大体二倍にふえているわけですね。なお、年々これはふえていく見込みがあるわけです。お米なんかと違って需要量はどんどんふえていく。どんどんというほどでもないですけれども、着実にふえていく見込みがあるわけです。生産量も少しずつふやしてきておりますが、輸入をここへきて、昭和六十一年度などは前年度に比べて三万トンもふやしているということですね。今まで食糧問題を考える場合に、よく日本国内農家に対する影響ということを私たちも深刻に考えているわけですけれども左下の「牛肉価格推移」を見ますと、例えば真ん中辺にある輸入牛肉東京都区部小売価格昭和六十年代に入ってから下がってきているわけですし、下の輸入価格を見ましても急激に下がっている。ところが国産牛肉は、むしろ横ばいかやや上がっているという推移を示しているわけです。  これを見ますと、輸入量をふやしても、国内産の肉の価格が大幅に下落をしてしまって国内農家に大きな打撃を与えるということはないのではないか。これは恐らく、畜産振興事業団なり食糧庁なりの努力でそうなっているんだと思いますけれども、この数字を見る限り、私は、もう少し輸入量をふやしてもそんな大きな打撃を与えないのではないかというふうに思うわけです。特に、安い牛肉を求める声というのは非常に根強いわけですけれども、この点についてのお考えをひとつお示しいただきたいと思います。
  10. 太田道士

    太田説明員 ただいま御指摘ございました牛肉関係でございますが、確かに先生お示しの資料左下輸入牛肉につきましては下がっておるわけでございます。これは御案内のとおり円高差益還元ということで、私ども三度にわたりまして事業団売り渡し価格を下げてきたという経過がこういう形であらわれてきている、私どもも実はそういうふうに感じておるわけであります。  ただ、今輸入牛肉国産牛肉にそう影響を与えていないのではないかというお申し越してございますが、これは御案内のとおり、畜産振興事業団価格帯国産牛肉価格を安定させていくという形で運用しておるということでございます。特にこの資料でごらんいただきますと、例えば五十五年から五十六年にかけましては国産牛肉価格は下がっております。しかし、五十五年から五十六年では輸入量は十二万トンで実はふえていないわけでございますが、下がっておるわけでございまして、やはり国内需給輸入というものをいかに調整していくかということが非常に大事なことであると実は私ども感じておるわけでございます。  ただ、一つ言えますことは、最近の牛肉国内需給につきましては、実は五十七、五十八の日米日豪交渉影響国内生産意欲を非常に減退さしたということがございまして、そのリアクションが最近あらわれております。牛肉生産というのは非常に長期にかかるものですから、そのリアクションが最近出てきて雌牛の屠殺が最近非常に減っておりまして、その意味から、そこからの生産が減っているということがございます。したがいまして、私どもはその需給状況を勘案いたしまして、実は日米交渉で合意しております年間九千トンふやしていくということを、さらに思い切ってことしの下期でプラス三万七千トンふやして国内需給安定に努めていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  11. 小杉隆

    小杉委員 日本の肉というのは、日本人の味覚にはやはりおいしいですよね。ですから、これからだんだん、輸入肉は少々まずくても、ボリュームがあって非常に安く買えるというふうなとらえ方をしている。それから、日本の肉は少々高いけれどもうまいというふうに、肉に対する考え方二つに分極化してきていると思うのですよ。ですからその点で、私は、畜産振興事業団が今の需給操作を通じて、安定価格の中に実勢価格を安定させるという仕組みで非常に努力をされていると思いますし、また、輸入牛肉の買い入れとか売り渡しを一元的に行うことによって価格安定を図っているというその努力は評価いたしますけれども、ともすると牛肉における価格安定制度というのが高値安定になりがちではないかという声を聞くわけなんで、この点は今最後答弁でなお努力をされているということですが、その努力を継続をして、ひとつ努力をしてもらいたいというふうに思います。  時間が大分経過しておりますので、ちょっと急ぎ足でまいりますが、次に、航空運賃の問題について伺いたいと思うのです。  私たち経済を支えるビジネスマンとかレジャーを楽しもうという国民の間で、航空運賃についてはさまざまな不満が渦巻いております。航空機のジェット燃料というのは昭和五十五年を一〇〇とすると、ことし、六十二年五月には八二・二というふうに下がっているわけなんですね。しかも、急激な円高もあった。ところが、そんなに航空運賃が下がらないじゃないかという実感があるわけです。これは、今相当努力をされているわけですけれども、まだ日本外国との間に方向別運賃格差というのがあるわけです。例えば、ロサンゼルスから東京へ買いますと二十五万六千四百円なのに、日本から買うと三十五万七千三百円と十万円も高い。ニューヨークは、向こうで買えば三十三万九千七百円なのにこちらで買うと四十九万六千九百円、十数万円という差があるわけですね。それから、ロンドンで買いますと四十六万千二百円が東京で買うと七十一万三千三百円。こういうふうに方向別格差があるわけですけれども、この現状をどう考え、また今後どう是正していくのか、航空関係運輸省ですか、伺いたいと思うのです。
  12. 平野直樹

    平野説明員 お答えいたします。  近年の円高傾向に伴いまして、通貨の弱い国発運賃為替レートで換算した場合に日本発運賃に対して相対的に安くなるという、いわゆる方向別格差現象が生じておるのは事実でございます。  この現象は、変動相場制のもとにおきましてはある程度不可避的なものでございますけれども、私どもといたしましても先生指摘のような状況にかんがみまして、昨年も総合経済対策の一環といたしまして七月、十月、十二月といったような時点におきまして、日米日欧日豪といったような路線について方向別格差縮小措置をとってきたところでございます。ことしに入りましても、七月十五日でございますが、日米路線におきまして日本発往復運賃を七・四%下げるといった措置をとったところでございまして、今先生のおっしゃいましたロサンゼルス、三十五万という数字は、もう少し安くなっているかとは思います。  また、今後の事柄といたしましては、ことしの十月の実施ということを目標にいたしまして、日欧路線について個人旅客バックキャビンを利用した場合に、安い運賃で乗っていただくというような制度の導入についても検討しているところでございます。  この方向別格差につきましては、今後とも長期にわたって相当格差が続く場合には、航空会社経営状況なんかを勘案しながらでございますが、できるだけこの縮小のための措置をとってまいりたい、このように思っております。
  13. 小杉隆

    小杉委員 ちょっと端的に伺いますが、今一ドル何円の計算でやっているのですか。
  14. 平野直樹

    平野説明員 日米の例をとらせていただきたいと思いますが、日本発運賃を未発の運賃で割った場合の一ドル何円に相当しているかというお尋ねであろうかと思いますが、ただいまのところ百七十六円ぐらいになっております。
  15. 小杉隆

    小杉委員 確かに、日本の円が安かったときには逆の現象が起こっていますよね。ただ、その差を私、ずっと各年度別のその一年間の平均のレートでちゃんと計算してみますと、確かに差がありましたけれども、今ほどの逆の差はなかったんですよ。ですから、これはIATAで協定をするわけなんで、なかなか諸外国が、日本は強いからというので共同戦線を張って実勢価格を下げさせないというあれがありますけれども、これはやはり日本もこれから内需拡大観光客をどんどんふやそうというようなときに、もっと運輸省努力をしてもらって、IATAなんかの会議でももっと発言をして、できるだけ実勢価格に近づける努力をして、日本の客が不利を受けないように努力をしてもらいたいと思います。  時間が極めて限られてまいりましたので、私はあともう一つ南北格差、特に北海道九州との間で最近非常に問題になっておりますが、これは改善する方向で今検討しているわけですね。一言で結構ですから。
  16. 平野直樹

    平野説明員 南北格差とおっしゃいましたのは、東京発北海道行きの運賃と、東京から例えば九州方面に行く運賃との間で、キロ当たりに直した場合に北が割高になっておるという問題でございます。  航空運賃キロ当たり運賃という制度はとっておりませんで、その路線需要量あるいは使用機材その他いろいろな事情を勘案しまして個別に設定しているものでございますが、北海道につきましては、飛行ルートが短縮されたというような事情がございますので、そういった事情を勘案しながら検討はしておるところでございます。
  17. 小杉隆

    小杉委員 これは、ぜひひとつ早くやっていただきたいと思います。  それでは、最後にちょっと有料道路の問題を、本当に時間がなくなりましたが、申し上げます。  今の高速道路料金計算というのはプール計算で行われているわけですけれども東名名神などはもうとっくに償却が済んでいるはずなのに依然として高い。私はしょっちゅう、ここ二十年くらい東京と神戸間を往復しているのですけれども、昔は新幹線と比較してどっちが安いか、どっちが得かというので計算しながら行くと、大体二人で行く場合は、車で行っても大体いいということだったのですが、最近は高速道路代ガソリン代が上がってきまして、三人でも何か新幹線で行った方が安いという感じがしているわけなので、非常に割高感が進んでいるわけです。  私は、もうちょっと料金計算方法を、そういう償却の済んだところはもっと安くする方法検討ができないかということ、それからそういった場合には、例えば償却はこのぐらい済んでいるのだということを利用者にもう少しPRをすべきじゃないか。例えばこれから有料道路を、今四千キロくらいですけれども、国道を全国に一万四千キロつくるので、この建設費を捻出するということはわかります。だけれども、全部プール計算ではなくて、やはり東名名神というようなものについては五割まではプール計算でいい、あとの五割については償却済みだということを考慮して、もっと思い切って下げるというような利用者サービスを考えるべきではないかと思うのですが、そこの点。  それから、道路施設協会が、ここにも詳しく収支明細を持っていますけれども、二年前には申告漏れだなんということで追徴金まで取られたような状況ですけれども、独占事業でこれからどんどんサービスエリアがふえていって、石油のスタンドとか売店とかいろいろな収入が上がってくるわけなんですが、その経理状況を見ますと、道路公団に納める占用料が少ないのじゃないか、もっとそういうもので収益を図っていくべきではないのかということが一つです。  それから、今度首都高速道路が九月から今の五百円から六百円に上がるのですけれども、これについても収支状況を見ますと、料金収入が千五百億円に対して経費が二千億ということで五百億ぐらい差があるのですけれども、例えば料金徴収なんかを機械化して、今全部人手でやっているわけですけれども、これを全部機械化したら八千人ぐらいの人員削減になると言われているわけです。もう少し機械化、合理化の余地がないのかということですね。  それからもう一つ、二輪車の料金が四輪車並みというのは納得できないということで、これも前から私は指摘しているのですけれども、これについての考え方。そういったことを伺いたいと思います。
  18. 小松原茂郎

    ○小松原説明員 私からは東名料金の問題と施設協会の問題、それから二輪車の問題についてお答えをいたします。  先生お話しのように、高速自動車国道は、昭和四十七年の道路審議会の答申に基づきましてプール制を採用いたしております。このプール制を採用いたしました理由は、高速道路と申しますのは各路線が連結して全国的な交通網を形成しているものでありまして、各路線は必ずしも独立したものではありませんで、また実際問題としても、路線の区分をいたします場合に幾分便宜的な面もございまして、その料金設定に関してなるべく一貫性、一体性を持たせることが適当ではないかということであります。  二番目の理由といたしまして、建設時期の違いがございます。それに起因いたします。地費、工事費あるいはそういった単価の違いによりまして建設費影響を受ける状況のもとで、事業採択の時間的な順序の違いから料金に差が生ずるという問題があります。そういった問題を回避いたしまして、あわせて借入金の償還を円滑にするという目的でプール制を採用したわけでございます。  このプール制の採用によりまして高速道路の整備につきましては、御案内のとおり、ネットワークの形成が進められてきておるわけでございますけれども、国幹道七千六百キロ、今度国会で御審議をいただいております追加路線の三千九百二十キロといったものを効率的に今後整備していきますためには、どうしてもこのプール制の維持を図ることが必要でございまして、東名名神といった非常に採算性のよい路線につきまして無料化を図っていくことは、非常に難しかろうと思っております。  ただ、先生二分の一というお話でございましたけれども、これから交通量の多くを望めない路線が整備されてまいります。こういった路線に対しまして、東名とか名神とかいった道路の先発路線からいわば上がりである内部補助ですね、内部補助がより物すごく多く過度に行われることを防ぎますために、六十年四月に道路審議会の答申をいただいております。その内部補助の額というのは、その路線料金収入と国費を合わせた額までとするということで、採算のよい路線からの過度の内部補助を防ぐという方策をとっているところでございます。  御案内東名名神につきましては、今後ともいろいろと一部区間の六車化あるいはサービスエリア、パーキングエリアの整備拡充、あるいは現在東名名神は非常に交通が渋滞いたしております、こういったものを解消いたしますために、第二名神、第二東名といった国幹道を追加決定する法案を現在出しておりまして、そういった形で緊急性の高い道路につきましても早期整備に努めてまいりたいと考えております。  二番目の施設協会の問題でございますが、高速道路の食堂などの道路サービス施設につきましては、一つは民間資金を積極的に活用いたすということ、それから食堂の営業者に対しまして適正な指導監督を行いますことによりまして、利用者によりきめ細かなサービス提供を図ることができるのではないかということで、その建設管理を道路公団以外の事業主体に行わせることが適当ではないかということから、現在その大部分を財団法人道路施設協会に行わせております。道路施設協会は、その収益にかかわりませず一定の占用料を道路公団に納めるというシステムになっております。したがいまして現在の制度では、食堂の売り上げの増加を図って道路公団の収入増に結びつけるというわけにはまいらないわけでございますけれども、この施設協会の収入もいわゆる営利企業のように配当金として外部に出てしまうものではございませんで、その収益は施設協会の運用財産といたしまして、新しい道路のサービス施設の建設に充当するということにいたしておるわけでございます。  そういった形で、高速道路の必要な施設の整備に還元されているわけでございます。これから採算性の悪い道路も建設していかなければならぬわけですが、それと同様に施設協会が行います。そういうサービスエリアの売り上げ、営業成績も非常に困難が予想されてくるわけでございます。そういった現在の協会の財務体質を今後継続いたしまして、そういった採算性の悪い場所につきましても、利用者が同じようなサービスを受けられる形で確保してまいりたいと考えているところでございます。  それから二輪車の問題でございますが、二輪車は四輪車より安くすべきではないかというお考えでございますが、現在高速道路の車種区分は普通車、大型車、特大車の三車区分になっております。車種間の料金比率は、普通車一に対しまして大型車が一・五、それから特大車が二・七五となっております。普通車の区分には、二輪車から総重量八トン未満の普通貨物自動車まで含まれておりまして、重量等から見て、著しい不公平を生じているのではないかという御批判も確かにございます。現在道路公団におきましては、料金徴収機械を従来のパンチカード方式から磁気カード方式のものに切りかえつつありまして、この切りかえは昭和六十三年度中に完成する予定でございます。この磁気カード方式によりますと、現在の車種区分を若干増加することが可能になってまいります。こういったことを契機といたしまして建設省におきましては、適切な車種区分はどうしたらいいか、あるいは車種間の料金比率はどうしたらいいかということにつきまして現在道路審議会に検討をお願いいたしているところでございます。二輪車の問題につきましても、この一環として現在検討いたしておりますので、その結論をいただきまして対処してまいりたいと考えております。
  19. 松延正義

    ○松延説明員 先生指摘の首都高速道路公団の料金改定の問題でございますが、ただいま八月七日付で首都高速道路公団から料金変更の認可申請がなされております。その内訳でございますが、東京線の料金を、高速葛飾川口線、これは東北道にアクセスする道路でございます、それから首都高速葛飾江戸川線の供用開始の日の翌日から普通車を五百円から六百円、それから大型車は千円から千二百円に改定するというものでございます。それで、料金改定の理由としましては、料金の額の算定の事業費としまして新規供用、先ほど申し上げました葛飾川口線、これは十六・五キロございます、これが千七百二十一億円、それから葛飾江戸川線が十一・二キロございますが、これが二千百三十八億円かかっております、計四千二百四十三億円、そのほかに既供用路線の改築に要する事業費、これは道路交通情報施設等、図形情報板とか路側放送、そういったものでございます。こういったものが三百四億円、その他いろいろな、宝町の改築でございますとか、そういったものがございまして、これが四十六億円、合わせますと三百五十億円、この一と二を合わせますと四千五百九十二億円が新たに償還対象につけ加わりまして、その結果現行料金では三十年で償還が不可能になっておる。このために料金の改定を行うものとしております。  現在建設、運輸省の方で審査中でございまして、先ほども先生、もう少し機械化、合理化してもっと経費を切り詰めるべきじゃないかということでございますが、現在、合理化という点では、大量の交通をさばくということで均一料金制をとっておりまして、なるべくアクセスタイムを少なく、オン徴収ですべて賄うという方法をとっております。  それから機械化につきましても、現在いろいろ勉強しておるところでございますが、現段階ではやはり人間の方が一番速いということになっておりまして、しかし今後この問題につきましてはさらに勉強を重ねていきたい、検討を重ねていきたい、こういうふうに考えております。
  20. 小杉隆

    小杉委員 時間をオーバーしまして済みません。言いたいことはありますが、これでやめます。
  21. 村山喜一

    村山委員長 次に、小野信一君。
  22. 小野信一

    ○小野委員 最初に少し辛口の質問をいたします。  我が国の経済を予測する場合に、識者の御意見をお聞きいたしましても、ある人は超円高で大不況になるだろう、ところが逆の識者は大インフレがやってくる、こう言う人もございます。一方では、幾ら円高になっても対外黒字は減らない、日本が世界じゅうから袋たたきに遭うだろう、こう予測しておる人があります。一方では、企業の海外への脱出によって日本の産業が空洞化するだろう。全く百八十度見通しの違う予測をするものですから、日本国民は大変困っておると私は思います。このような予測の混乱は、戦後四十年間の中にもなかったのではないだろうか、そう感じさせられるところでございます。  しかし、どんな困難があったとしても、経企庁、政府は、経済予測をしなければならないだろうと思います。例年のように、昨年の初めに政府は、昭和六十一年度の経済成長率を四%、経常収支黒字を五百十億ドルと発表いたしました。この内容は、政府が中成長を維持しますよということを国民に約束したことなんだろうと思います。同時に、国際収支の黒字均衡は前年よりも大きくはいたしませんよ、これも約束したことにほかなりません。ところが実際は、経済成長率は推定で二・五%、史上下から二番目の低成長になりました。経常収支も九百三十八億ドル受け取り超過となりまして、世界に例のない巨額に達しました。その結果失業率が三・二%、こうなってしまいました。当然海外からの批判も大きくなりました。  この約束を果たせなかったことについて、政府国民に対して、どういう理由で政府経済見通しを達成することができなかったか、申しわけございませんという話を私は不肖にしてまだ聞いたことがないのです。やはりこれは、政府経済見通しは当然民間企業の予測とは異なりまして、経済界の人々、消費者の皆さん、産業に関係のある皆さんに、約束でございますから、その約束が果たせなかった場合には何らかの理由の説明国民が納得するような方法を講じていただかなければならないんじゃないだろうか、私はそういう感じがしてなりません。  ところが、その責任の重大さを果たして感じているんだろうか、そういう感じを持つのはひとり私だけではないんじゃないだろうか、皆さんがそう思っているんじゃないだろうかと私は感じられてなりません。経済成長ができなかったことが、あたかも自然現象であるかのような錯覚を持っているんじゃないかとさえ、私は思われてなりません。  この政府の見通しとその結果との乖離の問題について、大臣は今どのようなお考えで私の質問にお答えしていただけるのか、所見をお伺いしたいと思います。
  23. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生指摘のように、昨年度の経済成長、GNP成長率、昨年の年初におきまして私どもが閣議決定をいたしました数字が四%でございますが、結果として二・六%になりまして、一・四%ばかり乖離があって、それをどう考えるんだ、なぜこうなったんだというお話でございます。  率直に申しまして、私ども年初におきましていわゆる為替レートが平均で大体一ドル二百三、四円程度推移する、こういうふうに考え、そのもとでいろいろな計算をしておったわけでございますが、御案内のようにその後さらに円高が進みまして、昨年、ことしの初めには一ドル百六十円、時には百五十円、こういう台にまで上がったわけでございますので、このことが企業の経済活動に相当影響を与えたのは当然でございまして、これも先生指摘でございましたように円高によって大変な不況が参る、こういう気持ちも一部経済界に招いたことは事実でございます。現実にその分だけ円の手取り収入が減ってきたわけでございますので、輸出を中心とした製造業関係者には大変なデフレインパクトを与えたことは事実でございますし、そういう状況の中で企業の設備投資が予想よりも下回って行われた、こういうことも事実でございます。  そんなことで、企業の設備投資の予測以上の減退という事実はございましたが、しかし、これも先生指摘でございましたように、今度は円高によって輸入関連やサービス関連はむしろそれだけ輸入支払い代金が減るわけでございますので、企業経営にとっても大変なプラスになりましたし、その結果卸売物価が下がり、消費者物価が安定して、これが一般消費者の実質所得のいわば増に結びついて、その結果もございまして消費がむしろ堅調に推移しておった。むしろ、私どもが予測した程度の消費の伸びは確保できたし、さらに住宅については、これは私は間接的な円高メリットと申しておるわけでありますけれども、資材価格が安定し、そして金利が下がり、また政府の施策もあって予想以上に住宅投資が伸びた。そして、昨年九月に総合経済対策を発表いたしまして、それに基づいた補正予算を御審議願い、成立させて実行しておりましたので、民間設備投資の下がった分は消費、住宅と、主として政府の公共事業の追加で補って、実はGNPに対する内需の寄与度は当初見通しが四・一%であったのに、振り返って計算をしてみますとその程度のGNPの伸びは実現をした。  したがって、内需においては私どもの当初見通しどおりの伸びを確保したわけでございますが、大幅な円高からくる外需要因が、輸出が低迷し、そして輸入がふえた、こういうことで、これは経済に対してデフレ効果がございまして、当初見通しが大体〇・二%ぐらいの外需要因であると思っておったのが、これは大幅に拡大いたしまして一・五%になる、結果的には二・六%のGNPの成長率になった。ですから、弁解がましく申し上げるわけではございませんが、私ども政府として操作できるのは内需ファクターでございますから、これはむしろ当初見通しを少なくとも多少上回るぐらいの実現をこの総合経済対策等によってやってまいったわけでございます。  二百三円から四十円、五十円もの大幅な円高に基づく外需要素がマイナスになった。これはしかし考えてみますと、従来日本は内需に比べて輸出をふやして、プラスとしての経済成長をしておったのが、むしろ内需である程度の伸びを確保したのが、逆にそこから、輸入をして、すなわち世界経済の成長に寄与をしながら、いわば昨年の経済運営をしたということでございます。日本経済政策の目標は二つあって、一つは内需の確保であり、一つは国際収支の改善でありますが、その両方ともある意味では目的を達した。ただ、外需の調整要素の面がむしろ強く出たということが結果的に二・六%の成長率でございますので、それでよかったとは申しませんが、しかしやるだけのことはやってまいった、こういうことを御理解賜りたいのでございます。  国際収支につきましては、いわゆるJカーブで数量的にはそういうことがございましたけれども、やはり円高分がドル価格に転嫁された分が加わって、当初見通しを大幅に上回る黒字になったということでございます。
  24. 小野信一

    ○小野委員 経企庁の大先輩の金森さんがある雑誌に書いておりましたけれども、民間調査機関の予測はこれは予測である、しかし経企庁、政府の予測は国民に対する約束だ、そのことをしっかり後輩の皆さんに確固たる信念を持ってもらわなければ困る、こう言っておりました。ただ、私もその事情は十分理解できるつもりでおります。今、民間主体の経済運営ですから、政府のコントロールできる部分というのはそれほど大きい部分じゃないということも、私は承知しておるつもりでございます。しかし、それにつけても、政府の見通しに対する政府の責任感は十分だという感じを私は持つことができないわけです。  これも金森さんが言っているのですけれども、あるいは現在の我が国の無責任ムードの一端が経企庁に反映しておるのじゃないだろうか、第二の理由は、やはりケインジアンと言われるニューエコノミストが非常に今の経済政策に対する自信を失って、我々がどう動いても日本経済を、世界の経済を動かすことができないのじゃないか、こういう自信のなさから来る無責任体制になっているのじゃないだろうか、こういう説明の仕方をしておりました。そのことを感じないわけではございませんけれども、それらを理解しながらも私は、政府経済見通しに対する責任だけはきちっと国民の前に明らかにする必要があるのじゃないだろうか、国民に納得できるような説明をすることが必要なのではないだろうか、そういう感じがしてならないのであります。大臣、いかがでしょう。
  25. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 私ども経済政策について決して消極的でもなければ、また、一部のケインジアンがそうだとおっしゃいますように絶望的でもないので、大変確信を持ってこれまでやってまいったつもりでございますが、あえて申しますと、先般発表しました本年度の年次経済報告にも書いてございますが、ことしの景気循環といいますか、いわゆる円高不況の特徴というものは、たまたま不況が一昨年のG5、九月から起こったのではなくて、いろいろな経済指標を分析してまいりますと、むしろ六十年の六月ごろから世界的な輸出の停滞、そしてそれを受けての設備投資の後退、在庫調整の始まり、そういうことで一昨年の六月から実は景気が下降面に入った、それをG5の円高でいわば上積みをしての景気後退でございますから、単純なる経済自然現象としての景気循環に多少意図的なG5の円高効果、ドル安効果が上積みをしてきた、したがって、それがこれまでにないような厳しい下降局面に入った、こういうことでございますので、そのことを御理解いただきたい。  それから同時に、円高によってかつてないほど急激ないわゆる経済構造調整が起こってきて、先生指摘のようないわゆる雇用のミスマッチ、そして一部の輸出関連企業の閉鎖みたいなことが起こってきたわけでございますから、そういう経済構造調整というものを内に含んだ景気循環である、かように考えるわけであります。  ただ、そういう中でむしろ調整が進んで、白書にも書いてございますように、今振り返ってみると、昨年の暮れからことしにかけて一応景気は底を打って、在庫調整も設備投資調整についてもだんだん調整が進んで、依然として水面下でありますから苦しいのは苦しいのだけれども、底を打って、上積みに切りかえてきた。そういう状況の中に、これも先生や皆さん国会で御審議いただいたいわゆる緊急経済対策、五兆円プラス一兆円の減税ということが上積みをして、私どもは決して手放しで楽観はできませんけれども、今順調に景気は上昇期に向かって進みつつある、これを何とか慎重に見守ってさらに効果的な政策を実現してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  26. 小野信一

    ○小野委員 総理府が五月の初めに発表した社会意識に関する世論調査というものがございます。これによりますと、日本は景気や物価、雇用、労働条件などで悪い方向に進んでおる、こう考えておる人々が大幅にふえております。この調査は昨年の十二月に行ったものですから、その後の円高はさらに進んでおりますから、この意識はますます進んでおるのじゃないだろうか、こう思われます。要するに、経済に対する不快指数が高くなっておる、こう私は判断いたします。ところが、この時点では、アメリカが債務国に転落をいたしました。我が国は逆に世界最大の債権国になりました。一人当たりのGNPも欧州諸国を次々に抜きまして、アメリカと肩を並べることになりました。国全体としては、経済大国の条件をどんどん書きかえて積み重ねております。ところが、国民の方は、日本経済は悪い方に進んでおるのじゃないだろうか、こういう意識が大きくなってきておる。これが総理府の社会意識に関する世論調査の結果でございます。  もしこうだったとするならば、経企庁はこの国の実態と国民意識との乖離に対して、経済政策としてきちっと説明なり政策を実現してこれを解消してやることが、現在の日本の政治の最大の任務ではないのだろうか、私はそう考えざるを得ません。  このごろ国民の意識の中に、日本は被害者であるという意識はだんだん薄れてきたことは事実だと私は思います。以前のようには高くないと思います。ところが、先進諸国の方は逆に、自分たちの方が被害者であって加害者は日本だ、安くていい製品と言うかどうかはわかりませんけれども、輸出で我が国の経済を、失業者を非常に大きく生み出しているのは、加害者は日本だ、こういう意識が非常に強くなっておる、これはもう間違いないだろうと私は思います。むしろ、これらの先進諸国と言われる国の人々から、なぜ日本がそれだけ経済大国になっておるのに、日本人の生活がよくならないのか不思議だという感じだろうと思うのです。ここが大変大切なことであり、そこに基本を置いた経済政策でなければ、いつでも国民の方の政府の政策に対する信頼は生まれないのだ、そう私は考えます。  この落差は一体どこから生まれたのだろうか、どうしたら解決できるのだろうか、やはりここに、今度つくられました緊急経済対策にしても、解決のための焦点が一つなければならないのじゃないだろうか、私はそう考えるわけです。そこで、今回の緊急経済対策はこれらの課題をどう解決しようとして、その内容をどのように組み立てたのか。今度の緊急対策は、今の総理府の世論調査のような意識とは関係ございません、景気の上昇と雇用だけです、こういう観点から立てたものなのか、やはり長期の我が国の経済政策の中で今やらなければならない日本の責務をきちっとその中に入れているのですよ、こういうことが含まれた対策なのか、その辺大臣の緊急経済対策を立てた考え方をお聞きいたします。
  27. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 総理府世論調査の分析につきましては後ほど事務局から答弁をいたさせますが、先生、世論調査はそういう調査になっているかもしれませんが、現実に国民の消費を見てまいりますと、先ほど申しましたように、いわゆる円高不況期間にも着実に前進を示している。私はよく言うのでありますけれども円高不況をもたらしたのはまさに為替レート円高である、そして輸出産業の不振やデフレを招いたけれども、片っ方でそういう中にあってむしろ日本経済を支えてきたのもある点から見れば円高のメリットでありまして、これが物価を安定させ、消費を拡大させている。着実に消費は伸びておりますので、こういう状況の中で産業調整が行われる。例えば、先生の選挙区から外れるのかな、あの新日鉄釜石が高炉がとめられるとか、いろいろな状況が起こってきますと、全体としての産業の雰囲気は決して明るいものではない。しかし、例えば奥さん方の家計支出を見てみると、物価は安定しておって、むしろ電力料金等は下がってきておる、気がついたら案外楽な消費内容であったなということになっておるわけですね。  ですから、まさに消費の面では結構生活は豊かになってきたのだけれども、なおかつ国民経済に対する不満はやはり住宅であり道路であり、その他の社会インフラと言われているものの整備がおくれておるし、いろいろなものがあって買ったけれども、いま一余計に物を買いたいと思えば、それは買ってきても持って帰るうちが狭くて置くところがないじゃないか、こういうものが国民の皆さんの生活に対する御不満になっているというふうに私どもは考えるわけであります。  したがって、問題は、全体としての景気を上げるためのこのたびの緊急経済対策でありますが、それは当面の景気対策であると同時に、まさに経済審議会の構造調整指針の中に示されているような将来の日本経済のあるべき姿に向かって、具体的に産業構造を調整していくための第一歩が今度の緊急経済対策に含まれている諸施策、例えば公共事業等の実行でございまして、まさに国民の皆さんの非常に大きな不満の種であります住宅に対して、住宅金融公庫を通ずる大幅な追加融資を実現していこう、そして社会的なインフラの整備のために、公共事業を当初ベースから事業量を二割アップしているわけでございますが、こうした公共事業の投資先につきましても、できるだけこれが土地代金等に食われないような方向に使っていこう、ということは、御案内のように東京は地価がべらぼうに高いですから、やはり大都市じゃなしにむしろ地方において公共事業を積極的に遂行していくことが、事業の効率を上げるだけじゃなしに、国全体が新しい大きなマーケットとして再生していくためにも必要ではないか、こういう観点からのこのたびの緊急経済対策であると御理解いただきたいと思うのであります。
  28. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 先生引用されました総理府の世論調査、十二月時点調査を引用されましたけれども、その後、国民のそういう景気の見方とか雇用の見方についてかなり改善してきているようでございまして、経済企画庁で消費動向調査というのを四半期に一遍調べておりますけれども、この状況をちょっと関連して御説明させていただきたいと思います。  消費動向調査の中で、消費者意識について調べておりますけれども、例えば国内景気につきまして、一年前に比べて十二月時点では、これは指数化しておるのですけれども、前期比マイナス一〇・七%、ことしの三月時点ではマイナス一〇・九%でしたが、六月時点ではプラス二三・五%とプラスになっております。雇用環境につきましても、一年前に比べての消費者の意識が、十二月時点ではマイナス九・一、三月ではマイナス七・二だったのが、この六月にはプラス一〇・六と改善しておりまして、そのほか暮らし向きとか消費生活の満足感等も、昨年中はマイナスが続いておりましたけれども、あるいは三月ごろまではマイナスが続いておりましたけれども、最近プラスの方向国民の意識としても出てきているというのを御参考までに御報告いたします。
  29. 小野信一

    ○小野委員 緊急経済対策の目的といいますか、わかりました。今度は時期について、立てた時期についての批判もあります。緊急経済対策が非常に遅かった、おくれを指摘する人もございます。同時に、本予算ができ上がらないうちに緊急対策をつくることもおかしいのじゃないか、これは当然やむを得なかったのだという指摘をする人もございます。もちろん、本来ならば、本予算は四月一日から実行されるべきはずなものがいろいろな事情でおくれておりますから、そのことも理解できます。同時に、増減税同額などという急がなくてもいい問題で国会が空転するものですからこの緊急対策がおくれたのだ、これは与野党ともに責任があるのじゃないだろうかという感じが私はしてなりません。もう一つは、財政再建年次を今のように繰り延べる、こういう形を早急にすれば、非常に早い時期にこの問題、緊急経済対策も提案できたのじゃないだろうか。こういう内容を勘案いたしますと、今回の緊急経済対策は少しおくれたのではないだろうか、こういう感じを持たざるを得ません。やはりその辺の判断も、これからの経済対策をつくる場合の参考資料にしなければならないわけで、大臣のそれらに対する判断をお聞きいたします。
  30. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 私どもが今年度予算を編成いたしましたのは、例年同じでございますけれども昨年十二月末でございますから、その段階におきましては、先ほど申しました九月の総合経済対策を発表し、それと同時に国会でも補正予算を御審議いただいて新たな公共事業の追加をし、さらには、関連でございますけれども前倒しで事業を進めよう、こういうことをやっておったやさきでございまして、三兆六千億という総合経済対策の規模はまさにGNPの一%を超える額でございますから、これが年度内に相当実行されるのであれば、当初四・〇%の経済成長率がそこまではいかなくても、相当それに近い線でいくのじゃないかというような判断を私どもとしてはしておったことは事実でございます。  ただ、昨年の暮れからことしの初めにかけて円高がさらに一段と進みまして、そして、二月のパリにおけるG5、四月のIMFの暫定委員会ですか、いろいろな一連の会議がございまして、大蔵大臣、日銀総裁も出席され、いろいろ国際的な通貨調整に努力されたわけでございますが、大勢としてさらに円高・ドル安が進んでくるという状況の中で、私どもはこのまま推移いたしますと、日本経済政策に対する国際的な不満が激化して、これがさらなる円高状況を招来しかねない。問題は、私ども国内政策に対して自信を持ってやることも大事でございますが、国際的な為替市場の動向を見ますと、まさに私どもが何を考えるか以上に諸外国日本経済政策をどう見るか、特に国際的な投機筋がどういうふうにこれを見て為替の操作をしてくるかということになってくるわけでございます。  そういう点から私どもとしては、そういう国内的な要素ももちろんでありますけれども国際的な要素も考えて、この際は前回を超えた思い切った緊急経済対策を、まさに緊急という名前をつけて実行していく必要があるのではないかということで、内々に党を中心として補正予算を含めての対策を検討しておったわけでございますけれども、国会で予算審議していただいている最中でございますし、ともかく何よりもまず当初予算を原案を通すことが緊急経済対策をするにしても第一歩であって、本予算すら通らないような状況ではますます将来に対するいろいろな思惑、不安材料になってきてしまいますから、ともかくまず本予算を上げていただくのが第一歩で、それから追っかけ補正予算審議をお願いするという、二段構えで国会の御審議をお願いしたということが実情でございます。
  31. 小野信一

    ○小野委員 それでは、緊急経済対策の効果についてお尋ねいたします。  非製造業は明るい、製造業は暗い、こう言われておりますけれども、この景気の二分極化の中で、この緊急経済対策はどのような影響を与えるだろうと予測をしておるかが第一点。  二つめは、六兆円を投入いたしましても輸入増加の効果が少ない。ある調査機関の発表によりますと、五、六十億程度じゃないだろうか、恐らく経企庁もその程度に見ているのだろうと思います。貿易黒字が昨年一千十四億ドルですか、これだけ莫大になりますと、五、六十億減少したからといったって大した影響がないのではないだろうか、精神的なものに限定されるんじゃないだろうか、そういう意見もございます。もし、緊急経済対策の効果が発揮されまして国内経済が回復したにもかかわらず、貿易黒字が減少しないということになりますと、海外からの圧力は大変大きくなるだろう。これは当然予想されるところであり、日本経済はやはり閉鎖的ではないのだろうかという批判が高まることもまた間違いないだろうと思います。要するに、そのような結果になりますと、日本は外圧を利用して我が田に水を引いたのだという批判が出てまいりまして、さらに円高が進むことになりますと、やはり今までの緊急経済対策の景気回復の前提が崩れるということにならざるを得ないと思うのです。こういう可能性はこの緊急経済対策に盛っていない、あったとしてもこれは絶対させない、こういう確信をお持ちなんでしょうか。
  32. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 緊急経済対策が国内経済に与える影響につきましては、減税を含めて六兆円という数字日本のGNP対比一・八%でございます。これが年内に完全に実施されるとなりますと、単純計算いたしましてそれだけでもGNPを一・八%、二%上げるであろう。昨年の総合経済対策相当前倒しということで考えてございましたけれども、これがいわゆる真水論を招来いたしまして、今回の緊急経済対策は六兆円。一兆円は減税であり、うち七千億は住宅金融投資でございますけれども、あとは全部国や県が責任を持ってやれる。ほとんど年度内に資金手当てをするものでございますから、実際の事業の消化スピードもございますけれども、ほとんどのものが年度内に実行されるということでございますので、GNPを押し上げる相当大きな効果を持っている。私どもは、これは事業の実行のスピードにもよりますけれども、一・五%プラスアルファくらいの内需、GNPを押し上げる効果を持つものではないか、そう考えていいと思っておるわけであります。  こうしたものが公共事業であり住宅であり、当然全部内需でございますから、したがって、輸出しておる企業に直接どれだけ影響するかという御質問だと思うのでありますけれども、従来と同じものを日本のいわゆる輸出メーカーがつくって何としても輸出をするという行動様式を踏襲される限り、その会社の需要増にはなりません、違うわけですから。だけれども、そういった会社の輸出関連の方々が従来の生産のパターンをこの際修正されて、内需向きに工場や労働者の方々に向けて新たな生産に転換されるということであれば、これは相当な事業を期待していいということであると思うわけであります。  第二に、国際収支の改善はどうなるのだという御指摘でございます。私どもは、緊急経済対策の中で十億ドルの政府特別調達というものも考えてございますので、これらをあわせて考えますと、少なくとも五、六十億程度の経常収支の改善効果があると考えておったわけでございますが、今回の白書にも出ておりますけれども、その後ずっと輸出の動きを見てまいりますと、私どもが考えていた以上に、円高によって輸出が低迷しておるのに引きかえて輸入相当な伸びを示しておる。  それで、もともと日本経済は、原料を輸入して加工して輸出するという加工貿易型でありますから、輸入は原料でありますからそうふえない、輸出は所得弾性値が高くあってどんどん伸びると思っておったわけでありますが、最近の貿易状況はさま変わりいたしまして、むしろ輸入が、しかも原材料や素材はそんなにふえておりませんけれども、製品、食糧がどんどんふえてきて、製品でも輸入全体に占める割合が四割を超えておる、食糧を加えれば五割、六割近くも輸入のシェアがふえて、どんどんふえておる。こういうことでございますので、また、最近のいろいろな為替の動きがございますので余り断定的に申し上げられませんが、私どもは当初に見通した百億ドルの貿易収支の改善は六十二年度において、六十一年度から経常収支の改善が百億ドル増せるだろうという予測をしておったわけでございますけれども、今のような輸入日本経済、消費構造がどんどん転換していきますと、六十二年度の経常収支黒字の減少幅は、当初見通しの百億ドルを超えてもおかしくないのではないかと私は考えておるわけであります。  問題は、全体はそうだけれども日米はどうかという議論が最後に残るわけでございますが、これはなかなか難しい問題でございますけれども、しかし私は、日米関係においても何らかの収支の改善が期待できると思っておる次第であります。
  33. 小野信一

    ○小野委員 先月、大臣は景気の底入れを宣言し、先日景気の回復を宣言いたしましたものですから、私も非常に喜んでおる一人でございます。同時に、この景気回復を安定成長に持っていくことがこれからの課題でありますけれども、現在の景気の特徴は、大臣、皆さん十分御承知のとおり、地域によって格差があるということになります。これがやはり大きな問題になることは間違いございません。例えば、六月の百貨店の売上高を見ましても、東京地域は前年対比で七・四%伸びました。ところが、大阪は三・六、仙台二・四、福岡二・一にとどまっております。特に北海道、東北、四国、九州は、農業地帯を中心としたこれらの地域はほとんど回復いたしておりません。同時に、重厚長大型産業のあるところはまことにひどい状況でございます。むしろこれらの地域と東京との格差はますます広がっていく、地域格差の拡大が予想されるところでございます。今度の景気回復のパターンの中に、全国がバランスのとれた成長をしていただくということが当然加味されなければならないだろう、私はこう思います。むしろ極端な話ですけれども、いつか本会議の壇上で建設大臣が、東京は自立て回復できる地域なんだから、予算は自立て回復できない地方に重点的に配分すべきだ、こういうまことに思い切った提案をしておりましたけれども、やはりそれくらいの方向転換というのか重点的な配分が必要になってくるだろうと思います。  そこで、この六兆円の緊急経済対策は、この地域格差のアンバランスに対してどのような配慮を持って作成したのか、その方針をお聞かせ願いたいと思います。
  34. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生指摘のとおり、私どもは、景気が回復局面に入った、こういうことを先般の月例経済報告で申し上げたわけでございますが、一つの不安材料は為替がどういうことになるか、こういうことでございまして、円高がさらに進むような状況でありますと、せっかくの企業家の楽観的な心理に対して微妙な影響を与えかねないわけでございますので、前提は為替が安定をするということが一つであると思うわけであります。  第二点として、そういうもとで景気がますます着実なものになっていくための条件は、都市を中心とした景気の回復がどれだけ地方に浸透するか、本当に地方に浸透をしてまいればこれは相当な力強いものになる、こういうことでございます。  そこで、景気が地方に浸透するための最大の条件は、先ほどもお話ししましたようなインフラの整備でございまして、道路、交通、都市環境の整備、下水道その他から、地方における道路交通網の整備というものが地方に対する景気のいわば伝播力を強めてまいるわけでございます。そういうものが整備されてまいりますと、例えば東京のマンションブーム、住宅ブームというものが、単に大都市だけではなしに地方の住宅建設ブームに広がっていけば、本当にそれこそ内需主導型の経済成長が本年度から来年にかけて実現する、こういうことでございますので、先ほど申しましたように、今度の緊急経済対策でもそうした地方を重点的に予算の配分を考えてございますし、来年度の予算につきましても先般来概算要求基準を閣議で決定いたしまして、少なくとも事業量については、本年度当初プラス補正予算の水準までNTTの株の売却代金等をうまく使いまして確保していこう、こういうことでございますので、そういう地方のインフラ整備を、緊急対策、そして本予算の執行、さらに来年度予算の実行、こういう三段構えで進めていかなければならないのじゃないか、大蔵大臣、建設大臣ともそういう線でいろいろ御相談申した次第でございます。
  35. 小野信一

    ○小野委員 労働省、おいでになっておりますね。この六兆円の財政措置が我が国の雇用にどんな影響を与えるのか、具体的に数字計算していると思うのですが、もしお持ちであれば発表願いたいと思います。同時に、六十年度と六十一年度の我が国の輸出総額を比較してみますと、六十一年度は六兆六千六百億減少しております。この輸出額の減少は一六%になりますし、全産業で八十八万六千人の雇用に影響を与えておる、こういう数字がある調査機関で発表になっておるのですけれども、この二つ、労働省は正しい数字と理解していただけますか。
  36. 澤田陽太郎

    ○澤田説明員 お答えいたします。  緊急経済対策による雇用拡大効果につきまして数量的見通しは行っておりませんが、今回の緊急経済対策は政府経済見通しの達成に大いに資するものと理解しておりますので、そうした意味経済見通しにおきます雇用者数の増加、六十一年度実績見込みに対しまして六十二年度は六十五万人増加となっておりますが、これに大いに効果があるものと期待しております。  それから、後者の輸入増加関係影響につきましては、私ども計算はいたしておりません。  以上でございます。
  37. 小野信一

    ○小野委員 委員長資料を大臣に届けたいのですが、よろしゅうございますか。
  38. 村山喜一

    村山委員長 はい。
  39. 小野信一

    ○小野委員 縦型の第一表「一九八六年の対前年輸出減少分が雇用に及ぼす影響分析」、こういう項目がございます。これは八五年と八六年の比較でありますけれども、全産業の輸出減少が六兆六千億円、減少率で一六%でございます。雇用への影響が八十八万六千三百十五人、製造業に与える影響が六十万二千六百人、こう計算されております。横書きの方の資料を見ていただきますと、その輸出減少の雇用に与える影響と今回の公共投資五兆円による雇用誘発効果、六十七万三千百二十七人、減税一兆円による雇用誘発が十一万九千四百十八人、合計七十九万二千五百四十五人。前の資料の輸出減少の雇用に与える影響八十八万六千三百十五人と比較いたしますと約九〇%補充しておりますから、やはり六兆円の緊急経済対策が雇用にかなり大きな影響を与える、こう考えて間違いないだろうと思います。  問題は、横書きの方の公共投資五兆円による雇用誘発効果を産業別に見てまいりますと、繊維、材木、化学、鉄鋼、金属、一般機械、電気機械とずっと並んでおります。その人数と(B)の一兆円による雇用誘発を足したものを(C)といたしますと、輸出減少分六兆六千六百億円による雇用減少分と比較いたしました雇用バランスが最後の欄に書いてございます。こうして見ますと、下の方の三分の一は非常にプラスに作用いたしておりますけれども、三分の二の上の部分は公共投資五兆円による雇用誘発効果によっても、輸出減少分六兆六千六百億円による雇用減少分を補てんすることができないでおります。したがって、マクロの数字では緊急経済対策はかなり大きな効果を与えておりますけれども、産業別、地域別に見ますとその効果にばらつきがあって、むだな投資とは言いませんけれども、本当に必要なところに公共投資がいっていないことがこの数字から理解できます。私は、緊急経済対策というものは、地域によって産業によって緊急を要するところに公共投資が配分されることが当然であり、そのことが緊急経済対策の目的なんだろうと思うのです。  そこで、長い方の第二表、昭和六十二年度当初予算の配分割合を見ましても、治山治水に一七・六%、道路整備に二八・九%。六十二年度補正予算、これはいろいろなものを加えて集計してみました。この割合も、補正予算の割合と当初予算の割合がほとんど変わっておりません。だとすると、緊急経済対策という名称はつけておりますけれども、当初予算方向を踏襲しただけで、緊急予算、緊急経済対策にはなっていないのではないだろうかという感じがしてなりません。したがって、経企庁とすれば、予算配分は大蔵省でやることは十分承知しておりますけれども経済の緊急性にかんがみて、予算配分に対して経済を背景とした分析から当然物を言っていいはずだと私は考えます。そういう基本方針を大蔵省にきちっと述べただろうと思いますので、その内容を少し御説明願いたいと思います。
  40. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生、大変貴重な分析の結果をお示しいただきましてありがとうございます。これは非常に参考になる数字でございますので、私ども検討させていただきます。  ただ、問題は、マクロとしては六兆円で、新たな雇用創出効果と輸出減によるところのマイナス雇用効果は多少足りませんが、一応バランスしているけれども、内容を産業別に見るといろいろ問題があるではないか、まさに産業、雇用ミスマッチという問題が非常に明確に先生資料には出ているわけです。  そこで、あえて申し上げますと、三角が立っているというのは、上から繊維であり、化学であり、そしてその次が鉄鋼でしょう。あとは、一般機械、電機、自動車、輸送機械、精密機械等々を考えていきますと、まさにこれらの業界というのは輸出依存型業界でございまして、製品の二割、三割、四割、五割、社によっては七割、八割を輸出に依存しているという産業でございますから、やはりこういう輸出依存型産業が雇用を回復するためには、率直に言って輸出を伸ばすことが重要になってくるわけでございますが、それをしたのではまさに国際経済調整ができなくなるわけでございます。そうした輸出に向かっている自動車を国内でもっと買うか、輸出に向かっているテレビを国内でもっと買うかということになってまいりますと、もうテレビも自動車も、これで十分だとは言いませんが、相当日本国内の消費マーケットも満たされているような状況でございますから、そこにまさに産業構造転換というものが必要になってくるということだと思うわけであります。  ですから、三角が立っている産業はまさに輸出主導型産業であり、逆に今度は三角の立っていない産業というのは内需主導型の産業でございますから、輸出主導型の産業から内需主導型の産業に労働者がかわってくるだけでなしに、会社自体も構造転換してくるということこそが望ましいわけでございます。大変貴重な資料でございまして、それこそいかに内需主導型への構造転換が必要かということをいみじくも示したすばらしいデータだというふうに思うわけであります。  そう考えてまいりますと、先生からいろいろ御質問ございましたように、決して公共事業の配分率が現状のままでいいということではないので、こういう輸出主導型産業を内需主導型に持っていく場合に転換しやすい産業は何かといったら、やはり住宅であり下水道というものでありますから、私どもは、住宅、下水道により予算の配分をふやすようにということを大蔵省に対し、また建設省にも言ってまいっております。片一方で農業の構造改善を考えた場合に、これも大変だよ、そうすると、農業の基盤整備も決してばかにできないので、むしろ進めるべきだよという議論もございまして、公共事業のいろいろな配分になりますといろいろな議論もございますので、従来の率を変えることはそう簡単ではございませんが、少なくともNTTの株売却代金を使う分についてはある程度の色をつけて配分していきたい、かように考えているのが実情でございます。
  41. 小野信一

    ○小野委員 少なくとも総合経済対策あるいは緊急経済対策の場合には、当初予算の配分とは異なった割合で配分される方が常識的であり、普通の考え方だと思うのです。緊急経済対策予算割合が当初予算と同じだというのでは、納得できる説明にはならないだろうと私は思います。したがって、今大臣がおっしゃっているように、今中央と地方との経済格差が大変大きくなっておりますから、その問題について経企庁として十分配慮をいただきたい、私はそのことを第一にお願いしておきます。  同時に、今までのように、景気が悪くなったから土木事業さえやればいいのだという考えもまた改めていただいて、大臣が言うように、産業基盤の整備、インフラの整備を第一にする。そこに住んでおる人たちが遠いところまで出ていかなくとも、三年後、五年後には郷里で生活ができるのだ、仕事にありつくことができるのだという希望を与えるような政策をきちっとしていただきたい。そのようなことがなければ、私は政治に対する不信が大きくなっていくような気がしてなりません。その意味で、予算配分の割合が大きな意味を持つものだと私は考えますので、一層の御奮闘、御精進をお願いして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございます。
  42. 村山喜一

    村山委員長 次は、竹内猛君。
  43. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私は、先般公表された経済白書に関する点について若干農業の面についての問題と、それから農林水産委員会で継続的に質問してきた全国生乳連の取り扱い、この二点について質問をします。  まず最初に、先般経済企画庁経済白書を公表した、あるいはまた物価レポートを出しましたが、その中で、農業の問題がしばらくぶりにかなり取り上げられてきたということはいいことだと思いますけれども、しかしその中で食糧の問題に関連をして、ともかく外国に比べて食糧が高過ぎる、そしてその原因の中には食管法がぐあいが悪い。あれの見直し、合理化あるいは政府によるところのいろいろなものの制限、それから競争の原理の導入、こういうようなことが書いてありますね。これは具体的に、そういう指摘は何も別に白書がやらなくても、前々から世間から言われることであって当たり前のようなことになっているが、果たして将来、この食管法というものをどういうようにしたら一体いいのかということについてお聞きをしたい。先般、農林水産委員会でお尋ねしたら、どうもはっきりしなかった。これは長官も山形の農村から票をもらって出ているんだから、まさか農村に背を向けるようなことは言わないだろうと思うが、どうですか。
  44. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 国際比較をいたしまして日本の商品が高いとか安いとかという議論は、まず大前提がどの為替レートかということでございまして、為替レートが例えば一ドル三百円と一ドル百五十円では、まさに日本の産品の価格が倍半分違うわけでございますから、為替レートが非常に変動しているような変動相場制状況のもとでは、一概に決めつけられないということは私は言えると思うわけであります。ただ、そういうことはそういうこととして、今のレート計算をしてみると日本の農産物が一般的に高いということになりますし、米についても高い、こういうことになっております。  そこで、よく議論がございますが、日本経済大国であっても生活大国ではない。円で国際的にもらっている所得と実際円の使いでと比較いたしますと相当な差があって、数字で言えるような実質的な生活はしていない。その大きな理由が、一つ食料品が高い、住宅が高い、エネルギーが高い、こういうことをよく言われるわけでございますので、政府といたしましても、そうした国際的に高いと言われている諸物価ができるだけ適正、安い価格で供給できるような対策を講じていくことも必要なことであると思うわけであります。  ただそのことは、そうした食糧なりまたエネルギーなり等々の生産、サービスに従事していらっしゃる方々の収入減を意味するようなことがあってはならないわけでございますので、そうした産業の従事者の方々の収入増を確保しながら、結果的に末端価格の低下をどうしたら図ることが可能か、これが私どもよく言う構造政策の基本である、かように考えるわけであります。  そういう観点から我々いろいろ考えたわけでございますが、先生指摘ございました食管制度についてあえて申し上げますと、基本的な考え方としては食管制度というものは、戦中戦後、米の供給が足りない状況において農家の方々に米の生産をお願いをして、ある意味では半ば強制的に米の集荷をする、そして限られた米でございますからそれを公平厳正に消費者の方々に配給をする、そのための最低の生産費とそして消費者価格を設定する、こういう基本的な枠組みの中で考えられた制度でございますので、現在のように米が過剰状況であり、そして消費者ニーズが拡大をしている、こういう状況のもとにおきましては、このニーズに即応するような自主流通米の拡大や集荷、販売その他による競争条件の導入等々、いろんなことを考えながら、その米が絶対足らなかった状況制度を米が多少過剰的な状況の中で、どういうふうに生産、流通、販売を通じて適切な制度に改善をしていくかという努力を私どもはしていかなければならないのじゃないか、かように考える次第でございます。
  45. 竹内猛

    竹内(猛)委員 その辺までのことは、これはもうしばしば議論になったことでありまして、確かに食管法ができたとき、昭和十七年以来何回かこれは改正をしてきたわけですが、今の経済白書が言うように、いろいろな制度的な制限も加えたり、それから競争の原理が入ったりという形になると、食管というものは一体やめてしまうのか、それとも食管は根幹を残して運用について創意工夫をするのか、どこでそれはやるのかという点についてやや具体性が欠けている。その点はどうなんです。
  46. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 食管制度を廃止すべきかどうかという、こういう御議論については、私どもは、依然として米は日本の主食でございますのでこれが適正価格で安定的に供給される、その供給が確保されるということは絶対必要な条件でございますから、今の食管制度を変えるということはないと思うわけであります。ただ先ほど申しましたように、その制度は変えないながら、現状の状況にどういうふうにこれをうまく改善して円滑な運営を図ることができるかということに、まさに政策的な配慮を今後もっともっとしていかなければならない、かように考える次第でございます。
  47. 竹内猛

    竹内(猛)委員 続いて、米が高いということを言う人がいますね。この間も米の話をしたら、米とコーヒーを比べたわけですね。コーヒーは大体一杯三百円ぐらいしている。米は、一日三食米を食べたとして一体幾らになるか、長官わかるか。幾らですか、米の方は。
  48. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 何か七十円ぐらいになるんじゃないか、こういう計算をしておりますが……。
  49. 竹内猛

    竹内(猛)委員 大体御明答だと思うんだけれども、そうすると、この間は物価課長はこういうことを言った。いや、米は米、コーヒーはコーヒーというけれども、それは確かに品物は違うんだけれども、金を出すのは一つのがまぐちでしょう。同じ人ですよ。だから、品物は違っても同じ人が出すんだから、コーヒーに対して三百円払うのは余りにも簡単であって、米は七十円だ。それが高いということは、おかしいのじゃないかなという感じがするわけですね。確かにそれは、生活程度がかなり低くて生産は随分旺盛にできるような東南アジアとか、そういうものと比べれば米は高いかもしれないけれども日本のような品質を持ついい米がそういうことであるならば、米というものはそれほど負担にはならないだろうということについては、やはりしっかり考えてもらわなくちゃならないことであるし、なお問題になるのは、生活の中で確かにレジャーあるいは教育費、医療費、こういうものがかなりかかっていることは事実なんだ。そういう点についても考えてもらわなければ、米をすべて敵にするということはよくないことだと思うのですね。  消費者は何を一番問題にしているかというと、食糧の安全性ですよ。それからその次には品質、新鮮。それから確実に入手ができるということ。その次がやはり価格ですね。価格がやはり適当な価格であってほしいということについては要望している。価格が一番先にくるということに今問題があるのでしょう。安くさえあればどこでつくっても、物でさえあればそれでいいんだ、そうなれば安いところから買った方がいいじゃないかという財界や一部評論家の言うとおりになってしまう。これはいけないと思うのだけれども、その点について長官、どうだろう。
  50. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生、最初にコーヒーのお話がございましたが、私は、日本のコーヒーの値段はこれこそ国際的にばか高いと思うのですね。日本に参る外国人が、日本の一流ホテルのコーヒーを飲んで目玉を回しておるわけでございますから、これはちょっと、ほかの値段で何が高いといったって日本のコーヒーぐらい高いものは世の中にない、これは多少オーバーでございますが。ただ、それは一杯のコーヒーの値段じゃなしに、日本における喫茶店の特殊なムード、雰囲気みたいなものを買っている面がございまして、アメリカでスタンドで飲むコーヒーなどは五十セント、一ドルなんてとんでもないので、私、最近アメリカへ行って飲まないからわかりませんが、一ドルなんてことはないですね。恐らく五十セントか二十五セントじゃないかと思うのです、コーヒー飲んで。だから、それはああいう荒っぽいコーヒーと、日本のようなしょうしゃな雰囲気の中で静かに恋人とムードを楽しみながら飲むコーヒーとは一概に言えない。ですから、コーヒーが高いから、コーヒーの値段で米は安いじゃないかという御議論は、コーヒー自体が私は問題だと思います。  まあ、そういうことはそういうこととして、私は、家計全体に占める米の支出の割合がそんなに多くない、今七十円じゃないかというお話をいたしましたけれども、そういうことから考えてみると、殊に最近いろいろ物が豊富でございますから、問題はこれから米の質だと私は思うのですね。多少高くてもおいしい米なら、どうせ我々は余り何杯も食べませんから、一杯か二杯の米なら、おいしい米なら多少高くても喜んで買うというのが、今の非常に多くの国民のお米に対する意識じゃないかと思いますので、そういう点から、やはり品質の向上ということに今後さらにその関係者は御努力をいただく必要があるのじゃないか、こういうことでございます。
  51. 竹内猛

    竹内(猛)委員 大体そういうことでしょう。おおむね大変な食い違いがないように思います。  そこでもう一つ、農業という問題について、物でさえあれば、安くさえあれば、どこから来ても構わないんだという考え方がこのごろは横行しています。これは危険ですね。日本の農業が果たす役割というのは、単に新鮮にして良質なものをつくるだけじゃなしに、水と緑、空気の浄化、こういう国土の保全という社会的な役割をしている。この役割は農業の肥培管理、特に水の場合においては水田で八十数億トンという水を管理しているわけです。だから、米の輸入が盛んになって水田をどんどんやめてしまうというようなことになれば、もっと災害が起こることは明らかだし、緑もそうですね。そういう点で、最近農林水産省が山の活用ということを言い出したことは結構なことだと思うのです。  それからもう一つは、何といっても地域社会の運営ですよ。これはもう昔から農業が伝統的に米や地域に応じた産物をつくって、伝統的なものをつくってきた。そういう伝統的なものをつくってきた農村が今過疎になっている。これはやはり大事にしていかなければ政治とは言えないと思うのですね。この点、長官どうかな。
  52. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 私も全く先生と同じ意見でございまして、もしも日本に水田がなかりせば、日本列島の生態学的な調和が崩れてしまう、こういうふうにも考えておりますし、水田を初め農業というのは、そういう日本列島の生態学的な健全さ、調和というものを維持するためにも、単に必要な食糧の供給ということだけではなしに、どうしても維持しなければならないことじゃないかと思うわけであります。問題は、そうしたものの社会的コストをだれがどういう形で払うのかという議論になるわけでございまして、それを農産物の価格という形で払うのか、それともそれ以外の財源を別途考えて維持していくのか、そういう必要な食糧を確保するということと、日本列島の生態学的な自然的な調和というもののコストをどういう形で負担するかという議論について、農業の存在の意義についてもっと国民的な理解、コンセンサスを得る必要があるというふうに私どもは考えておる次第でございます。
  53. 竹内猛

    竹内(猛)委員 白書に関してはそのくらいにして、次には、先般来、七月二十九日、八月十九日の二回にわたって、全国生乳需給調整農業協同組合連合会、随分長い名前ですが、これを全国生乳連と言っています。これに関する諸問題について私は質疑をしてきましたし、同じことに関連をして公明党の草川委員も主意書によって質問をしました。この間に熊本県には中原酪農連の組合長の七億円を超える不正事件が起こり、そのうち四億一千万は政治家百三十人に五十万から三千万寄付したという、そういうことが起こっております。そのような問題も起こしながら、この問題が取り上げられてきましたが、先般、全国生乳連が文書によって農林水産大臣に、団体協約に関する締結の問題で勧告をしてくれ、あるいはまたそういうことについても要請をしました。私の質問に対してもそうですけれども、これに対して農林水産省の課長の方から、生乳連はそういう権限がないのだ、こういうような答弁がされております。したがって、課長から、この答弁の背景にある、どういう理由でそういう資格がないのだということについて説明をしてもらいたい。
  54. 窪田武

    ○窪田説明員 お答えいたします。  先生の今の御質問でございますが、確かに全国生乳連の方から私どもに対しまして、酪振法十九条の三によります国の交渉に応ずるような勧告を出せという要請がございました。これにつきまして私どもは、現在の酪農関係につきましては、県段階におきまして指定団体というものを設けております。これは、県の酪連なりあるいは経済連が一つだけ生乳を一元集荷、多元販売ということで認めておりまして、それぞれに、経済連におきましては全農、県酪連におきましては全酪連という全国団体が上部団体として、全国的な需給調整の機能を果たしているところでございます。そういう状況のもとにおきまして、酪振法の法律におきましては生乳の販売を行う団体について、各メーカーに対して交渉に応じてくれということを言った場合に、それに対して国の方で特に必要と認める場合には、交渉に応じなさいという勧告をそこでできるわけでございますが、全国生乳連につきましては、実際に生乳の販売をする機能を定款上有しておらないわけでございまして、生乳の販売の機能を持っていない団体が農林大臣の方にメーカーとの交渉に応ずるように勧告してくれと言われても、それに対して国として交渉に応ずるよう勧告することはできないと申し上げているところでございまして、もちろん自主的にいろいろな活動をされることは結構でございますが、国として生乳の販売機能を有していない全国生乳連に対してそれを支援することはできないとお答え申し上げたところでございます。
  55. 竹内猛

    竹内(猛)委員 今答えがあったけれども、実際今までの経過の中では、専門農協である全酪連、総合農協である全農、これを連ねた中央酪農会議があったわけです。現在の全生連に対する認識についてはまだそのまま私は了解をしないけれども、全農、全酪連、中央酪農会議の機能についてちょっと説明してもらいたい。
  56. 窪田武

    ○窪田説明員 お答えいたします。  今先生指摘のとおり、それから先ほど私が御説明いたしましたように、県段階においては指定団体というのがございます。これは県の酪連なり県の経済連でございます。それぞれその上部団体としまして、県の経済連の上部団体としては全農がございます。さらに、県の酪連の上部団体としては全酪連がございまして、それぞれ全国的な生乳の販売調整をやって需給調整をやっているところでございます。さらに、それを幅広くカバーする県段階における指定団体の指導機関といたしまして中央酪農会議という社団法人がございまして、これは生乳の販売はしておりませんが、指導団体として生乳の需給見通しなりあるいは需給に見合った生産計画の推進とか生乳の需要拡大等、幅広い活動をしているところでございます。つまり、全国段階には、全酪連と全農、それに中央酪農会議という指導機関がそれぞれ存在しているところでございます。
  57. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私はこの前から質問をして、八月七日の回答を見ながら土曜、日曜にかけて現地を視察をしてきました。いろいろ相談をして話し合いをしてきた。現地はほとんど混乱をしていないうまくいっている、こういうふうな回答だけれども、現地の状況は、乳量は確かにふえたかもしれませんが、かつては四十万戸あった酪農家が現在は七万戸に減ってしまっている。しかも酪農家の借金は、北海道、東北、南九州を含めて非常に多い、こういう状態の中でやめていく者が多い。酪農家は、それほど愉快に生産をしているわけじゃない、借金のために苦労をしている。そういう中で、乳価の決定に関する自分たちの意見、要求というものをまじめに取り上げてくれる団体がないのですね。そこで、どうしても自分らにかわって交渉をしてもらいたい、少なくとも憲法二十八条には団結権、団体交渉権というような基本的な権利が保障されているはずだ。労働組合はできているけれども、農民は一種の生産労働者ですよ。そういうものに対する権利が全く無視されている。それじゃ一体だれがこれをやるのか。全農なり全酪にあるいは中酪にそういう権利があるかないか、その点について説明してもらいたい。
  58. 窪田武

    ○窪田説明員 ただいま御指摘の全国段階におきます全農なり全酪連におきましては、県段階における指定団体である県酪連それから経済連同様、農協法に基づく協約を結ぶ権限がございます。
  59. 竹内猛

    竹内(猛)委員 団体協約を結ぶ権利はないでしょう。ありますか。
  60. 窪田武

    ○窪田説明員 全国段階といたしまして生乳の販売の機能を有しておりますので、協約を結ぶ権限はございます。
  61. 竹内猛

    竹内(猛)委員 それでは一体なぜ、今から四、五年前に全農、全酪連があるにもかかわらず、ここに全国指定団体乳価対策委員会というものをつくってメーカーと交渉したときに、これは独禁法に違反をするということで公取がこれに対して警告したのか。そういうものがあるなら別に警告することはないじゃないか、自分たちがやればいいじゃないか、やってないところに問題があるのでしょう。そのことについて公正取引委員会から聞きたい。
  62. 柴田章平

    ○柴田政府委員 今御質問の件でございますけれども、五十七年の一月に中央酪農会議にあてまして私どもから警告をいたした件がございます。  その警告の中身でございますけれども、例えば牛乳の小売価格の決定であるとか特売をさせないようにすることであるとかさらに生乳の取引価格を決めるとか、そのような行いが、実は中央酪農会議、それから雪印なり明治なり森永といったメーカー、そしてまた全国農協直販株式会社あるいは酪農業協同組合連合会といったような方々の間で会合が持たれて、そのような指導、指示が出ておりまして、そういった行為全体についてはやはり独占禁止法上カルテルに当たり、あるいは不当な取引制限に当たるということで、私ども中央酪農会議に対して警告をいたしました。
  63. 竹内猛

    竹内(猛)委員 中央酪農会議が、今も話があったようにやがてはミルクボードというようなものをつくってイギリスのような形でやっていこう、自主管理をしてやっていこうということについて、メーカーの方からこれはかなわぬということでいろいろ話があったと聞いている。じゃ、中央酪農会議がそういうことをできなくなったとするならば、さっき課長が言ったように、全農なり経済連なり全酪が憲法二十八条による団体交渉権を要請することができるならなぜそういうものをやれないのだ、それはどうですか。
  64. 窪田武

    ○窪田説明員 先ほども説明いたしましたように、全国段階の販売機能を有する団体は全農と全酪連系と二つございまして、それがそれぞれの傘下の県の指定団体のためにいろいろな行為ができるわけでございますが、それのつなぎとして指導機関として社団法人の中央酪農会議がございまして、その中央酪農会議が五十年代の後半にいろいろ御指摘を受けたということでございますが、その中身によりまして、協約と申しましても価格そのものをばしっと決めちゃうともちろんおしかりを受けるわけでございますが、その態様によりまして種々の協約を結ぶことができるということでございます。
  65. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これは、どうしても理解ができないですね。  そうすると、生乳連は今から二年前、六十年に農協法によってつくったものなんです。その生乳連を認めるときにいろいろトラブルがあった、意見があった。どういう意見があったか、ちょっとここで明らかにしてもらいたい。
  66. 窪田武

    ○窪田説明員 全国生乳連の設立につきましては、設立手続等適正でございますし、それが農協法上の要件を満たすものといたしまして、六十年の四月に認可されたわけでございます。この設立に当たりまして、畜産局といたしましては実態上の問題から、先ほども先生が御指摘のとおり、需給関係価格まで全部決めるということになりますといろいろ問題がありますし、また、従来の指定団体制度のもとにおきまして全農、全酪連、中央酪農会議ということで一応機能はそろっておりますので、それとの重複の問題等ございましていろいろ議論をしてきたところでございますが、結果といたしまして農協法上の要件を満たすということで認可されたと聞いております。
  67. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この農協法上の解釈によると、物を持っているものは直接に団体協約が結べないということになっているのでしょう。そういう解説をしているのだけれども、それは違うのかな。どうですか。
  68. 嶌田道夫

    ○嶌田説明員 物を持っているという先生の今のお話ですが、ちょっとその意味定かではないのですが、農協自身は組合員のために団体協約を結ぶ権利があるということで、これは農協法で規定されております。
  69. 竹内猛

    竹内(猛)委員 それならなぜ生乳連というものを認めて、その生乳連はどういう仕事をやるということについて全国的な位置があるのか、その点についてはどうなんです。
  70. 嶌田道夫

    ○嶌田説明員 生乳連の設立に当たりまして、今窪田課長の方から言いましたように、いろいろ内部で問題があったというふうには私ども承知しております。  農協法上、農協の設立認可の申請がありましたときには、これは法律に書いてある事項を満たしておりますれば認可するというようなことでやってきておりますし、それからその際の定款でございますが、これも当時の関係団体等の調整によりましてなったと承知しております。現在生乳連の定款におきましては、「会員又は会員の組合員の経済的地位の改善のためにする団体協約の締結」「会員又は会員の組合員の生産する生乳の販売に関する調整又は会員の生産する牛乳、乳製品の需要増進に関する事業」等となっております。
  71. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この点は、ちょっとまた後でもう一遍問題にします。  それならば、この生乳連というものは四十七の指定団体の中で現在二十一。そしてそれに参加の決議をしながら、いろいろな圧力や圧迫で参加できないところが四つ五つある。乳量においては現在三五%ぐらいか、そういうような形になっていて、参加しているものもあるし参加していないものもあるという形になって非常に混乱をしています。だから、全国のものが参加しないからそれは認めない、こういうことなのか。それともそれに対しては、それは邪魔になるからああいうのはもうやめた方がいい、私生児みたいに考えているのか、これは一体どうなんですか。
  72. 窪田武

    ○窪田説明員 先ほどから申し上げておりますように、全国の牛乳の酪農団体におきましては全農系と全酪連系とがございます。そのうち、本件の全国生乳連の会員となっております団体は、全酪連系の団体のかなりの部分が全酪連と全国生乳連と両方に加盟しているという結果に相なっているわけでございまして、私どもといたしましてはそれぞれの機能につきまして、先ほど来申し上げましたように指定団体制度を基本とする全体の全国団体における対応について、既存の団体とも十分よく相談をして、それぞれの機能が発揮できるようにしたいというふうに考えております。
  73. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この中に、生乳取引の文書化についてということがありますが、従来から指導してきたところであり一現在では相当整備されているが、一部には未整備となっているものもある。これには指定生乳生産者団体及び乳業メーカーの双方に相応の事情があり、機械的に適用することは難しい面もある。しかし、契約の文書化は取引近代化の要請であるので、今後とも契約の文書化のために推進の努力を続けたいというふうに考えている、こうなっている。取引の近代化ということについては、一体どういうことが近代化と言えるか。
  74. 窪田武

    ○窪田説明員 ここに言っております取引は生乳の取引でございます。生乳の取引につきましては、生産者の方は先ほど申し上げましたように指定団体が中心に交渉の当事者になっておりますし、買う方は乳業メーカーでございます。この両方が、それぞれ対等の立場において適正な価格なり取引条件を決めるということが好ましいわけでございまして、その場合に、むにゃむにゃやっているのじゃなくて、ちゃんと文書契約においてそれぞれの契約条件が明らかにされるということが、近代化の一つのポイントではないかというふうに考えております。
  75. 竹内猛

    竹内(猛)委員 その中で、文書契約が結ばれない、機械的にはやらない、こういうふうに言っているんだ。今の答弁は対等にやることがよろしいと言っているけれども、対等じゃないじゃないか。メーカーにみんな勝手にやられているじゃないか。いいですか。この文書によれば、存続の期間とか生乳の販売の価格及び数量、生乳その他の契約、いろいろな付随するものもある。しかも、生乳を渡す場所までも決めてあるのに、最近のメーカーは、乳業者というものは生乳を持っているから弱いんだ、今は夏だから飛ぶように売れるかもしれないけれども、弱いから、気に入らないものは受け取らないと言われたらしようがないじゃないか。現地へ行ってみると、ある生産者は、きょうはAという市へ、その次にはBという町へ、その次にはCというところへ持っていけというふうに指導される。それについて一つも文句は言えない。そんなにやられ、しかも価格については百十六円という建て値がありながら、また、その県外にはそれに二円プラスしているけれども、現在は百十六円なんというのは実際の取引になっていないでしょう。今は九十七円ぐらいじゃないかな。僕らのところは九十七円だ。岩手県では丸めて八十円です。  こういうように県別に価格が違い、地域別にも業種別にも違っているというようなこんな格好になっていて、集荷だけは確かに一元集荷になっている。価格は県別に違うし用途別に違う。五つの用途があるでしょう。加工原料乳、飲用乳あるいは発酵、学校給食その他、こういうように価格が違う。こういう状況のもとで、一体酪農生産者が本当に安心して自分の経営ができると考えているのか。これはそうじゃないでしょう。やはり一つの団体がまとまって、そしてメーカーと協約を結んで交渉をする、そしてその中で自分たちの言いたいことも言わせてもらうし、相手の言うことも耳を傾けるということでなかったら、これは近代的な生産関係じゃないでしょう。どうですか。
  76. 窪田武

    ○窪田説明員 生乳取引につきましての生産者側の当事者でございますのは、県の段階における指定団体でございます。これは先ほど来御説明しておりますように、一元集荷、多元販売ということで、その点ではその指定団体が一手に引き受けているところでございまして、メーカー側といたしましても、そこから乳をもらわない限りは商売がやっていけないという意味で、不足払い法の制定によりましてその地位を強化したところでございます。  ただ、実際の問題といたしまして、先ほど来御指摘がございますように、例えば文書化がなかなか進んでいないというところにつきましては、私どもといたしましてもいろいろ事情を調べているところでございます。中にはいろいろなメーカー側の事情もございますが、指定団体の方で相手先がたくさんございますものですから、値段の問題とか取引の条件につきまして余りほかに知られたくないという事情もあるようでございまして、双方の種々の事情によりまして文書化が進んでいないところがあるというのは御指摘のとおりでございます。今後ともこれらについては、明朗な取引になるように指導してまいりたいというふうに考えております。
  77. 竹内猛

    竹内(猛)委員 近代的な取引というのは、やはり憲法二十八条の精神に基づき、農協法の十条一項十一号あるいは酪振法の十八条二項、あるいは十九条の三、ちゃんとこういうような法律が規定をしてあるし、農協法についても、こんなことはみんな知っていると思うけれども昭和二十二年の第一回国会の農協法をつくるときに、当時の農林大臣は社会党の平野力三大臣であったが、このときに北海道の北二郎という議員が、「農林大臣はわが農民党の質問に対して、憲法二十八条に基いて、農民の団結する権利と団体交渉権につきまして、農業協同組合を通じてやるというようなことを言われましたが、この法案に基きましては、非常に範囲が狭いように思うのでありますが。」これで平野農林大臣が「この法律(注 農業協同組合法)によります範囲、法案の精神は、非常に農民の自主性を基本的に考えており、この点においてはかなり広範なるものであります。」北委員は「ではどうしてこの法律案に憲法第二十八条に基く団体交渉権が明示されておらないのか。」農林大臣が、「法律の建前から申しまして、農業協同組合は、素直な意味において当然団体交渉権はあるのでありますから、この点はこの法文の精神において御了承願いたいと思います。」こういうふうに言っておる。  それからもう四十年もたっているけれども、農業協同組合以外には酪農家を集めて団体協約を結んで交渉したということは余りない。要するに物を売ったり何かという取り扱いはしているけれども、つまり権利の行使ということはやったことがない。そういうことがありますか、あったら教えてください。
  78. 嶌田道夫

    ○嶌田説明員 今先生が言われましたように、農協法では十条一項十一号で農協の団体協約、農民の経済的地位の改善ということで決められておりまして、この規定に基づきまして、農協は従来から種々のものにわたりまして団体協約をやってきております。農協以外でやった例があるかという御質問でございますが、私の方、ちょっと十分調査しておりませんので、今のところ承知しておりません。いずれ調べてみたいと思っております。
  79. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私がこの問題を非常に重要に考えているというのは、せっかく全生乳連ができて二十一の団体が加盟をしてやっておるのにまるっきりまま子のように相手にしない、玄関払いをくれる。法律のもとにできた同じ団体が、一方においては玄関払いをくれてしまう、相手にしない、こういうことではおかしいじゃないかということで、ひとつ現地調査をしなければならない。どこの地域でどういうような文書契約をしておるのかいないのかということで、これは農林委員会にも関係をするから農林委員会でもやるけれども、ぜひそういうことはしなければならぬと思う。あなた方が問い合わせた中でどこかにそういう例がありますか。文書契約がうまくいっているところあるいはいっていないところ、どうですか。
  80. 窪田武

    ○窪田説明員 文書契約の通報につきましては、県の知事段階に通知されているところでございまして、全体像について私ども必ずしも十分把握しておりません。現在、調査中でございますが、一部の県において調査が済んだところにおきましては、契約をきちんと結んでおると聞いております。
  81. 竹内猛

    竹内(猛)委員 だんだん時間が来たから先に行きますけれども、脂肪を三・二から三・五に上げたということはどういう手続で、どういう順序でこれをやられましたか。私たちもその手続がよくわからないうちに、いつの間にか三・五に決まった。三・五に決まって、実際価格は仮に九十七円にしてみても、その中で脂肪が〇・一多ければ八十銭追加されるし、少なければまた八十銭マイナスになる。農家の手取りが一キロについて二円四十銭値下げになったことは、脂肪の引き上げによって明らかなんです。そうすると、日本の全体の生乳というのは七百万トン、その中の二円四十銭を原料乳といい何といい引くわけだけれども、そうなると百六十億ぐらいのものが現実に酪農家の手取りが減ったという形になる、値下げになるのですね。これは一体どういう手続でそういうふうにやりましたか。
  82. 窪田武

    ○窪田説明員 御案内のとおり、加工原料乳の乳脂の脂肪率の基準につきましては、畜産物価格の決定の際に政府の方で決定しておるところでございますが、加工原料乳以外の生乳の取引につきましては、生産者、メーカー双方の問題といたしましていろいろ話し合いが進んできたところでございます。御案内のように三・一よりも三・五の方がおいしい牛乳である、消費が拡大するんじゃないかということで話し合ってきたところでございますが、具体的には今年度の指定団体とメーカーとの間の生乳の乳価交渉の中で決められてきているところでございます。
  83. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この問題についても、やはりある団体と農林省とそれからメーカーとの間でいろいろと懇談をした中から出されたものであって、それを後で制度化したという話がずっとちまたに伝わっているのである。だから、もっと明朗にやっていかなければ、これは農家自体がもう百六十億の欠損をしていることは明らかなのだから、それはえさが下がったということとは別なんだ。えさが下がったのは、何も農林行政がたくましかったから下がったわけじゃない。これは円ドルの関係なんだ。話が違うのだ。えさが下がったからどうだのこうだの、そんなことは、話は違うのだ。  そこで、じゃこの大手メーカーの実態は一体どうかというと、大手メーカーというのは大体明治、雪印、森永、この三社ですね。この三社の実態というものを見ると、大体三三%の収入率が、六十年の場合は四三%ですか、まあ三三から四〇と非常に大きいわけで、市乳の販路についても四四・八となっている。それから、五十八年からのそれをずっと見ても四四、五十九年が四三・五、六十年が四三・二というふうにやはり四〇%以上。それから占有率というか、それは雪印が圧倒的に高いわけで、それから決算におけるところの内部留保についても雪印が三六・三、配当率が一三・二、五十二年の一〇・九からずっと一〇%を下がったことがない。  こういう中で、酪農家は一時間七百円程度の所得で営々として酪農をしている。一方では、内部留保はやり、配当はやり、なおかつどんどん市場というか、収入率を高めている。こういう状態は、やはり大手支配、大手三社の支配に酪農がなっていて、それの言うことを聞かなければ動きがとれないという実態じゃないか。一体、あとの群小のメーカーというものは、それに追従していかざるを得ないような状態になっている。こういうような実態というものは正常じゃない、こういうふうに思うけれども、これはどうですか。この辺は長官からも聞きたいと思います。
  84. 窪田武

    ○窪田説明員 ただいまの御指摘でございますが、確かに酪農家の方々は、乳価が実質的に下げられているという大変な苦しい経営であることは間違いございません。ただ、関係ないとおっしゃいましたけれども、えさの価格等が非常に下がってございますので、実際の経営につきまして格段に悪くなっている、ここ一、二年悪くなっているというふうには思っていないところでございます。  また、メーカーの方も、確かにこれは乳価の方の原料価格は若干下がっておりますが、それと同時に小売の価格の方も下げざるを得ないということになっておりまして、全体の食品産業の中におきます乳業メーカーの利益率が非常に高いというわけではないというふうに、むしろ低い方であるというふうに考えております。  さらに、交渉のどちらの立場がどうか、こういうお話でございますが、先生もおっしゃるように、生乳という観点でいうと生産者の方が弱いというふうに見えますし、また一元集荷、多元販売という観点から見ますと、生産者団体であります指定団体の立場もかなり強化しているということでございまして、私どもといたしましては、生産者の方だけが特に弱いというふうには考えておりません。ただ、いろいろな生産者団体、指定団体の形態がございますので、それぞれの県の実情がそれぞれ違っておりますので、今後ともこういう指定生産者団体の機能の強化というものに十分意を尽くしてまいりたいというふうに考えております。
  85. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 突然の御質問でございますので、よく私も細かい事情は存じ上げておりませんが、おっしゃるようにえさが安くなったわけですから、牛乳の生産原価も下がってくる、そういうことだと思いますが、ただ、実際の酪農農家の方々の実態を考えてまいりますと、乳価につきましては、えさの値下がりは値下がりとして、メーカーの買い入れ価格についてはそれなりの配慮があっていいのかなという感じでございます。
  86. 竹内猛

    竹内(猛)委員 時間がないから、あと経済局にお伺いします。それから警察庁に。  経済局は、同じ農林水産省でも、ちゃんと文章によって契約が行われているかいないかということを常例によって各農政局を通じて調べている。だから、経済局からそのことについて聞きたいし、それから熊本の中原酪連会長のその後の問題。十九日に質問をしたときに、警察庁の方からは直ちに捜査をした、九州の方に出ていって調査をした。聞くところによると、現在熊本には酪連の会長が二人いる、判こも二つ持って大変混乱している、あるいは福岡に殴り込みをかけたというようなことも聞いている、というようなことがあり、大変地元が混乱をしているから、これは早く解決しなければ、迷惑するのは酪農家なんだから、そして世論を騒がすことはよろしくない。そういう点について、経済局の方からその二点、警察庁から一点、お伺いしたい。
  87. 嶌田道夫

    ○嶌田説明員 先生言われました第一段の文章の件ですが、ちょっと私の方よく把握していませんので、牛乳乳製品課長の方から後刻お答えしますが、熊本酪連の問題につきましては、その後の経緯でございますが、八月十五日に熊本地裁に監事三名から中原会長理事の職務執行停止、それから中原氏の職務執行停止期間中は倉岡理事を職務代行者に選任することを求める仮処分申請がなされております。  いずれ裁判所によりまして判断がなされるものと考えておりますが、県酪連内部におきましても、県酪連の正組合員であります組合長会議によりまして臨時総会を開催しまして、会長問題について結論を出したらどうかというような意見が現在大勢を占めたということを聞いております。  また、県酪連の会長問題につきましては、私ども基本的には組合内部の問題であると考えておりますが、先生指摘のように、本問題によりまして、組合員農家の乳代であるとか職員の給料の支払いなどにつきまして支障が出るというような事態は、極力避けなければいけないと考えております。  このようなことから、これまでも県酪連及びその取引先でございます県信連等に対しましては必要な指導を行ってきたところでございまして、今後とも必要によりましてその指導を行っていきたいというふうに考えております。
  88. 垣見隆

    ○垣見説明員 ただいま先生指摘の件につきましては、八月三日に告発を受理して、熊本県警察におきまして捜査をしているところでございます。また、その捜査の過程で各種の問題が生じておることは十分承知をしておりまして、それぞれ現地で捜査を含めた措置をしているところでございます。
  89. 窪田武

    ○窪田説明員 先ほどの生乳取引契約につきましては、法律制定当初から生乳取引契約例というものを示して、その実効を期しているところでございますが、現在まで県から提出されている契約書、これは早い時期に提出したものですから優良事例かもしれませんが、これによりますと、いろいろな取引条件等についておおむね具備しているというところでございます。
  90. 竹内猛

    竹内(猛)委員 時間が来たからこれで終わりますが、警察の方には大変御苦労でも早急に捜査をしてほしいし、それから今の全生乳連の問題については、まだいろいろな法律上の問題にも食い違いがある。  そこで、これは農林水産委員会の問題になりますが、集中審議を要求して、全酪、全農、メーカーそれから全生乳連の代表からの参考意見を聞きながら処置しないと、一つの法律をめぐってあれがある、これがあるということで混乱し、末端が、指定団体がそれぞれ混乱をするようなことがあれば、迷惑するのは酪農家だから、そしてしかも酪農家が泣いているのに、うまくいっているんだと、それはうまくいっているところもあるかもしれないけれども、多くのところでどんどんやめていくというこの事実を見たときに、あるいは借金が重なっていくところを見たときに、決して全部が円満にいっているとは思えない。だから、そういう点では法律の体制を整理していく必要があるということで、現在までの答弁については大変不満の意を表して、終わります。
  91. 村山喜一

    村山委員長 午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ――――◇―――――     午後二時一分開議
  92. 村山喜一

    村山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。草川昭三君。
  93. 草川昭三

    ○草川委員 公明党・国民会議の草川昭三であります。  まず最初に、近藤企画庁長官に景気問題についてお伺いをいたします。  経済企画庁や日銀それから大蔵省は、景気は底入れをしたのではないか、こういうことを言っておる。一つの宣言もしておみえになるわけですね。これを受けまして私どもも本当に底入れをしたのかということを考えるわけでありますが、一面、日本、アメリカ、ヨーロッパ、こういうところでは物価がしり上がりに同時進行しておるというようなニュースもあるわけであります。あるいはまた、きょうも朝からテレビでやっておりますように、ここ最近の急激な円高、こういう状況を見ますと、それが景気に少なくともプラスには反映しないのではないか、こう思うのでありますけれども、一体景気は相変わらず回復局面にあるのかどうか、まず大臣にお伺いしたいと思います。
  94. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先般報告いたしました経済白書の中でも分析したわけでございますけれども、今回の我が国の景気循環の特徴というのは、実は円高が六十年九月からプラザ合意を契機にして進んだわけでございますけれども、実はその前から、既に世界的な貿易の関係、設備投資の頭打ち、在庫調整が始まって六月くらいから下降局面に入ったのに、いわば上乗せしての円高であり、それに基づいての輸出関係企業を中心とした円高デフレ進行、こういうことであったわけでございますけれども、私どもの景気判断をしておりますディフュージョン・インデックス等いろいろのデータをそろえてみますと、そうした下降局面が昨年の暮れからことしの初めにかけて統計的には底を打ったような形になっておりまして、いわゆる設備投資もいっときの過剰状況から底を抜けてきてむしろ上向きになってまいったし、在庫調整も進んで、いよいよこれから在庫上積みの方向になっておる。  そんなことで、従来も一貫して消費が堅調でございましたし、住宅も堅調で、消費、住宅関連の産業はそれぞれ採算を維持してまいったわけでございますけれども、それに対しまして輸出関係の企業もいわば円高一年半の間の生産調整等々が進みまして、これも一応前進の方向に切りかわりつつあるという状況で、依然として水面下でございますから企業収益は苦しい面もございますが、上向きになってきた、それに今回の緊急経済対策がいわば後押しをするような形に今進みつつございますので、景気はいよいよ回復局面に入りつつある、こういう分析をしておるわけでございます。  ただ、先生指摘のように、ここ数日間の円レートの動きにつきましては、私ども百五十円前半くらいのことでいろいろ分析しておったわけでございますが、今四十円台まで上がってまいりまして、これは円の安定というものを前提としての企業家心理に、円高がさらに戻ったということで、マイナスの効果を持つ面も多少はあるかなという感じもいたします。しかし、基本的に、今申しましたように、全体としての設備投資の調整、在庫調整が終わって、そして上向きになっていて。それにこの緊急経済対策が後押しをしておる、こういう状況でございます。  今回の円高現象も、円高というよりはむしろアメリカの国際収支の赤字が改善しない、またアメリカのGNPも四半期で見てまいりますとどうも当初考えたような形では進んでない、多少下方修正、こういうようなアメリカの要因による、むしろ円高というよりは国際的にはドル安の現象というふうに見られる面もございますので、景気のことでございますからそう手放しに楽観はできない状況ではございますが、今後慎重な政策を進めて、緊急経済対策の実行を進めていけば、景気はこれから回復局面で進行し得るもの、私どもはかように判断をしているわけでございます。  物価につきましても、御指摘のような問題も確かにございますが、日本の場合はある意味では円高現象がむしろ物価的には安定の方向に働くわけでございますし、先ほど申しましたように手放しの楽観というわけにはまいらないかもしれませんが、今の状況を慎重に進めてまいれば、景気の回復局面をさらに今後一層前進させることができる、かように考えておる次第でございます。
  95. 草川昭三

    ○草川委員 今長官の方から、私が問題提起をしたことはあるけれども、多分景気は上向くであろうというお話でございますが、たしかこの発言をなされたときに近藤長官は、対ドルレートは幾らくらいが望ましいか、百五十円くらいだろう、こうおっしゃったやに新聞報道で私ども拝見をしておるわけであります。その数日を経ずして百四十円台きりぎりのところまで切り上がっていくわけでありますから、私は、一般国民の立場から言うならば、経済企画庁の見通しというのは楽観過ぎるのではないか、こういう批判をせざるを得ない、こう思うわけであります。そういう意味で申し上げたわけでありますし、それからいち早くインフレの芽は摘む必要がある。経済白書の中にも出ておるわけでありますけれども、特に日本の農業価格政策というものは非常に手厚い保護のもとに行われている。事実アメリカの方からもかなりの強い批判があるわけでありますけれども、きょうは少しその問題について二、三点問題提起をしてみたい、こう思うわけであります。また後で長官の見解を賜りたい、こう思います。  一番最初に砂糖の問題についてお伺いをしたいと思うのですけれども砂糖の半製品であるところの原糖の輸入価格というものが国際相場の低迷と円高・ドル安の中でこの三年間に半値くらいに下がってきておるわけです。それが一体どのように消費者の方にはね返っておるかという問題を提起したいわけでありますけれども国内砂糖価格というのはほとんど変わっておりません。細かい数字は「物価レポート」の中にも出ておりますけれども、きょうはその議論ではなくてアバウトな大きな流れだけを申し上げますが、自給率三割強の国内産の砂糖の保護に差益のほとんどがつぎ込まれていく、いわゆる糖価安定制度というものがあるからそういうことになるのではないか、こういうのが私の基本的な考え方なんです。  この内外価格差の拡大に精糖業界からも非常に強い不満も出ておりまして、制度の見直しが出ておるわけであります。特に私は実は愛知県の出身でございまして、愛知県は中小企業の菓子業者が非常に多いのです。そういう菓子業界の方々が、もうたまらぬ、消費者からは、円高だからもっと安くあんパンであろうと和菓子であろうとビスケットであろうと手に入るはずだ、何でこんなに高いんだと言われる。今申し上げましたように、そういう価格支持の制度があるためにどうしても安くお砂糖が入らぬのだ。韓国に行くと日本の二割で砂糖を使える。安い小麦がある。私、実はあんパンのあんこは日本でつくっておるものだと思っておったら、草川君よ、あんパンなんというのは今はほとんど韓国か中国か台湾ですぞ、いわゆる製品輸入ですね、ドラム缶にあんこを詰めて持ってきたのがパンに入るのだよ、あんパンのあんこですよ、こういう話で驚いております。これは後で具体的な数字を農林省から出してもらってもいいのですが、そういう意味で、砂糖というものが高いために逆に製品のあんこが入ってくる、いわゆるビスケットのようなものも入ってくるというので、日本国内生産がだんだんダウンしてくる。大きなメーカーは材料が安いところの台湾、韓国、中国の方へ進出するということになる。いわゆる空洞化現象というのが始まるので、雇用の面でも非常に減少する。これはひとつ真剣に考えろというところへ来ておるわけであります。  そこで、まず農水省にお伺いをしますが、海外に比較して国内砂糖価格が非常に高いということ、この事実は具体的に、日本と米国あるいはカナダ、英国等さまざまな国がございますけれども、その比較を一回お伺いしたいと思うのです。その比較の数字を長々と言っておりますと時間がございませんので、まず一番最初に、製品輸入のあんこがどの程度対前年度比率で伸びておるのかという数字だけお伺いをしたいと思います。
  96. 増田正尚

    ○増田説明員 砂糖のあんこにつきましては、そのものの輸入データはございませんので、それに近いと思われます調製した豆で見ますと、六十一年以降輸入が増加いたしまして、六十一年には前年比四五%の増加になりまして、ことしに入りましても上半期には対前年同期比五割程度の増加となっております。
  97. 草川昭三

    ○草川委員 長官、今のように結局あんこの製品輸入は前年度に比べて四割から五割近く増加をしておる。それが現実に我々が食する食パンだとかあんパンだとかいろいろなものに入ってくることになるわけであります。  ここでまず砂糖の流通とそれにかかわる税金の関係を申し上げたいと思うのでありますけれども輸入糖の流れというのは、豪州だとかキューバだとかナタールだとかタイから商社の買い付けで日本に入ってきます。まず精糖会社にこれは売られるわけですが、ここで関税というのが払われます。関税がトン当たり四万一千五百円ですか、最近の値段はわかりませんけれども、これが払われる。それから蚕糖事業団の方にこれが買い上げられる。これも、ごく最近の数字はまた違っておりますけれども、平均価格三万円弱というようなところで買われる。それが精糖会社に行き、精糖会社で加工費が五万円から六万円、五万六千百六十七円と言っておりますが、そういうものが加わる。そして、製品となって出荷をされる。すると、ここで消費税が約一万六千円かかる。これが代理店だとか特約店だとか小売店へ行くわけですね。そうしますと、小売価格というのがトン当たり二十六万一千円、キロ当たりにしますと二百六十円になるわけです。ところが、今定期市場という先物市場があるわけですが、我々が買う一キロ二百六十円というのが先物取引で一体幾らぐらいで値段がついておるかといいますと、例えば十一月限というのですが、十一月に引き取る砂糖値段は十七円です。これは私数字を間違えたんじゃないか、百七十円対二百六十円だと思ったら、実際の小売価格、我々が買うのが二百六十円ですが、いわゆる定期相場、これは専門家の人たちですから、これに付加価値が入るわけですけれども、十七円という相場がついておるものを我々が二百六十円で買わなければいかぬわけです。そんな乖離があるものを買って中小企業がまんじゅうつくったって売れるわけはないですね。ここら辺はよほど真剣に考えませんと、物価政策の面から見ても国民生活の面から見ても問題があり、農林水産省の方も、おくれた農業を保護する目的でできたさまざまな規制が今や国民生活の重荷になってきておるということを私は一遍真剣に考えてもらいたいわけなんです。いわゆる過保護農政の余得を受けてきたところの関連業界も、かえって今のような規制が続くとマイナスになってしまう、角を矯めて牛を殺すというのですか、そういう状況になっておるので何とか考えてほしいという言い方になるわけでありますが、農水省、そのあたりはどういうようにお考えになりますか。
  98. 紀内祥伯

    ○紀内説明員 今先生指摘のとおり、私どもの所管しております砂糖につきましては、現在国際的な砂糖需給事情が非常に緩んでおるということもございまして国際的な砂糖値段が安いということもございますが、外国砂糖に比べるとかなり高いということは否めない事実であろうというぐあいに認識しております。その場合に、現在の円高基調のもとで、先ほど食品油脂課長から御答弁申し上げましたように、製品輸入が非常にふえておるということでユーザーの方々が非常にお困りになっておる。私のところにも愛知県の商工会議所からも御陳情がありまして、親しく御意見を伺いました。私ども砂糖行政を預かる身といたしましては、何といたしましてもそういうお客様に対してなるべく安い価格で、納得の得られる価格で供給するというのも私どもの大きな責任の一端であるというぐあいに認識はいたしております。  ただ、御案内のとおり、北海道のビートあるいは鹿児島県、南西諸島あるいは沖縄におけるサトウキビと申しますものはその地域におきまして極めて重要な基幹的な作物でございまして、これまた生産を維持しなければならないという面もあるわけでございます。私どもとしましては、その両者の調和を図るという意味で、この三年ばかり、先ほど御指摘のありました百九十四円というのが精糖の卸価格でございますが、二百二十三円ばかりのものを百九十四円ということで、卸売価格ベースでは三十円程度低減を図ってきておるということは御理解を賜りたいと思うわけでございます。  ただ、先ほど来御指摘がありますように、現在ユーザーの方々が非常に困っておられる。これにはユーザーの方々の経営体質の強化その他いろいろな面もあると思いますが、原料価格が大きなウエートを占めるということは私ども十分認識をいたしておりまして、さらに、沖縄、北海道その他で生産性向上を図りまして、できる限りのコストダウンというものを図ってユーザーの方々になるべく安価な価格で供給したいというふうに思っておるわけでございます。
  99. 草川昭三

    ○草川委員 農水省としても現状は御認識になってみえるわけでありますけれども、六十年度の国内産の補助金等の費用というのはトータルで九百六十五億ですか、それから、これは二年前の数字でちょっと古いのでございますが、調整金の収入というのは六百六十九億円、交付金が二百六十億円。ですから、蚕糖事業団の方の金それから補助金、いわゆる一般会計ですか、いろいろと組み合わせがあるわけでありますけれども国内産糖は一キログラム当たり約百円の補助になっていますね。大体そんなところだと思うのです。ですから、基本的に蚕糖事業団のあり方をもう一度見直してみて、それで国内産で補助を充てるところは充てる、そしてユーザーの方々にはもっと大胆な規制を外してしまうというようなことを考えないと、従来の延長線では先ほど申し上げたようにかえって重荷になってしまうのではないか、こういうことを私は言いたいわけです。  そこで、現在国内砂糖価格を安定させる目的で積み立てであるところの糖価安定資金というのは去年の三月末で九百七十二億だと言っておりますが、ことしの三月末には千億を超える約千百五十億ぐらいになる、こう言っておるのですが、これは具体的にどの程度の金額になっておりますか。ただいまの現状をお知らせください。
  100. 紀内祥伯

    ○紀内説明員 御指摘のとおり、本年三月末で千百五十億程度に相なっております。
  101. 草川昭三

    ○草川委員 これは昭和四十年の初めにできた制度でありますが、それから実際これが稼働をしたというのですか動いたというのは一回か二回でしょう。でございますから、もう千百五十億も現実にたまっているわけですよ。だったら、それを価格を下げる方に使うのか、あるいは生産農家の方にもっと合理化をするための何かの知恵を出すように与えるのか。いつまでも九百億だ、千億だなんというのは、今財政再建上、蚕糖事業団が抱えていると大蔵省が持っていっちゃいますよ。私が大蔵省ならそういうことを言いますな。いいかげんにくれよ、こう言いますよ。だから、そんなことになったら元も子もないわけなので、そこは農林省は本当に真剣に砂糖価格を下げるためにこれを見直すという気になるのかならぬのか、お答えを願いたいと思います。
  102. 紀内祥伯

    ○紀内説明員 先ほどお答え申し上げたとおり、ことし三月末で千百五十億ということでございますが、委員今御指摘のとおり、過去に二度放出したケースがございます。最初が第一次の石油ショックのときでございまして、このときには結果といたしまして約二千億ちょっとの金を放出いたしております。それから第二回目が五十五年から五十六年にかけまして二百億という金を放出いたしております。  それで、この安定資金は、下限価格を下回るときに積み立てておきまして、砂糖の相場は上下の変動が非常に激しいものですから、上限価格を突破したときにこれに充てまして糖価の安定を図るという目的で徴収をいたしておる金でございまして、私どもとしては過去の二千億を放出したケースもございますし、これから糖価が先ほど御答弁しましたように現在需給が緩んでいるということから申しますと直ちに上がることはないとは思いますが、基本的にはやはり法の定めるところによって運用していくのが筋ではないかというぐあいに思っております。  ただ、先ほど来御答弁しておりますように、国際的な砂糖値段が安いということもございますので、私ども、昨年も安定上下限価格を大幅に下げまして安定資金が余り多くないような水準まで下げておりますが、そういった国際糖価の動向を十分に反映いたしました安定上下限価格の設定ということを行うことにより低糖価に向けての対処といたしたいというぐあいに思っておるわけでございます。
  103. 草川昭三

    ○草川委員 私も素人ですから、さっき言ったように原糖をトン当たり三万円で買ってくるわけですね。それを加工し、今言うように安定資金だとかいろいろなものをつけて、その金というのは結局メーカーが負担をすることになるわけですが、そういうものを与えていきますとキロ当たり二百六十円になるといいますが、それはトン当たりで見ますと二十六万一千円になるわけです。すると、二十六万程度のものが配給をされるというのですか売られていくわけですが、ざっと計算をしただけでも十倍近いわけでしょう。だから、原糖と白い砂糖とを比べるな、農水はこういう意見ですよ。比べるなど言うけれども、我々にしてみれば、黒い原糖からそれが見る見る間に十倍にもなっていく。事実、それで高い高いと言ってメーカーは困っておるわけですから。  また、全国のPTAの方々でも、今学校給食のパンがまずいから子供が残すのですよ。なぜ残すかというと、これは小麦粉がまずい、こう言うわけですね。一番悪いパンで学校給食がつくられるからという、円高差益がなぜ反映しないのかという、こういう議論だってあるわけです。あんこでも同じことなんです。だから、私は、国民生活を守るためにも砂糖の流通問題については農水もいま少し反省をしてもらい、従来のしがらみにこだわることなくやっていただきたいし、物価を担当する企画庁も一言あってしかるべきだと思います。見解を承って、次の問題に移りたいと思います。答えてください。
  104. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生のおっしゃることはよく私も理解するわけでございますが、同時に、これも先生よくおわかりのように、北海道のビートといい沖縄、南西諸島のサトウキビといい、それぞれ地域住民の経済にとって大変重要な生活の手段でございますので、そういった方々の従来の御苦労に対してもそれなりの評価、そして今後の生計も考えていかなければならないということで今のような制度をつくっているわけでございます。こうした制度を今後どこまでやっていくか、直接に関係した方々も決してそういうことで豊かな生活をしていらっしゃらないわけでございますので、そういうことを考えながら、物価政策の面から、また農業政策の面から、地域政策の面からも、何とか前向きに今後とも政府として対応すべきだ、かように考えておる次第でございます。
  105. 草川昭三

    ○草川委員 だから、私は、知恵を使って今の千百億を何らかの方法で取り崩せ、それを考えるべきだ、また国際情勢が急変をするということは考えられない、先ほどお話があったように二千億も一遍に放出するというような事態ではないということだけを申し上げて、生乳の方に移りたいと思うのです。  午前中竹内委員の方からも御質問があったようでございますが、農水省の答弁はちょっと私聞きかねる点がたくさんあったので、御発言はひとつ明確にしゃべっていただきたいと思うのです。  そこで、まず生乳取引の適正化に関して私二回ほど質問主意書を出しておるわけです。それは酪農家の現状というのが非常に苦しいではないか。全国で酪農家の方々は随分たくさんお見えになったようでございますけれども、最近非常に減ってきた。しかも酪農家は一戸当たり平均千二百万円くらいの大変な負債をしょっているというように聞いておるわけでありますが、そういう方々の立場に立って質問をしたいと思うのです。  まず、酪農家推移、十年間に四十万戸から八万戸に減った、こう言っておりますが、少し具体的な数字をお聞かせ願いたいと思うのです。
  106. 窪田武

    ○窪田説明員 お答えします。  酪農家の戸数は、先生指摘のとおり逐年減っておりまして、五十年当時十六万戸だったところが六十一年二月には七万九千戸になっております。
  107. 草川昭三

    ○草川委員 その減った最大の理由は何ですか。
  108. 窪田武

    ○窪田説明員 戸数の減少の原因といたしまして、原因というか実態というかを申し上げますと、比較的規模の小さい階層が酪農から脱落しておりますし、また経営者の高齢化なりあるいは後継者不足等の労働力不足によるものが大体過半を占めているのが現状でございます。
  109. 草川昭三

    ○草川委員 結局もうからないから、経営が維持できないからやめたということになるわけですね。それに対して、酪農家が納めるメーカーの方は大変利益を上げておるのではないかという質問を午前中竹内さんがなされたのではないですかね。そうしたら、答弁された食品油脂課長か加工食品課長かどちらかちょっと私忘れましたけれども、他の食品会社に比べると利益率はそんなによくないというような答弁をなされたように私聞いたのです。それで私が言いたいのは、大手乳業三社の利益というのは、これは七月三十日の日本経済新聞の見出しだけ読みますよ。「今期、最高益を更新」乳業大手三社、これはどういうように農水省は理解をされてみえるのですか。「雪印が増益確実になるなど三社そろって最高益を更新する」こういうことが書いてある。もう一つのでも、「原料安で収益最高に」と書いてある。「トップの雪印伸びる」とか、これは日経産業だとかいろいろな新聞でございますが、これはつい最近のものなのですが、農水省はどういう立場からその大手三社はそんなに利益率が高くないと言うのか。私はもし比べるならば酪農家の立場に比べてもうかっているのかもうかってないのかという質問をしているのに対して、食品産業、証券会社のような高いところと比べればそれはもうかってないですよ。そういうことを聞いているわけじゃないのです。酪農家の問題を取り上げているときに、それを受けて配給する大手メーカーは非常に利益を上げておるじゃないか、こう言っておるのに、しかもこれは五十三年以降十年間で配当率一〇%を割った例ないのでしょう。内部留保三〇%でしょう。中身は非常にいいわけですよ。だから酪農家が聞いたら今の農水省の答弁なんか怒っちゃうわけですよ。農水省は酪農家のことを考えていないのか。それから、そんなメーカーのことを野党からたたかれると、メーカーを守る役所なのか。その基本的なスタンスをちょっとお聞きしておきたいと思うのです。
  110. 窪田武

    ○窪田説明員 先生指摘のとおり、大手乳業メーカーの最近の経営実態は、収益性が向上していることは確かでございます。ただ、ほかの食料品製造業に比べまして低いと申し上げたのは六十一年度までの話でございまして、ごく最近のことにつきましては正確な数字は承知しておりません。  それから酪農家の経営実態と大手乳業メーカーの経営の収支の利益率とどっちがどうなんだというふうな御質問でございますが、午前中にも御答弁いたしましたが、酪農家につきましても、確かに実質的に手取りの乳価は下がっておりますし、それから生産調整をやっているということで規模の拡大もなかなか思うようにいかないということで、非常に苦しい経営であることは御案内のとおりでございます。ただ、それと乳業メーカーの収入と支出との間でどちらがどうなのだ、こういうことになりますと、なかなか比較する数字等もございませんが、感じといたしまして、おっしゃるように最近の状況から見ますと酪農家の経営は大変苦しいということは十分に認識しているつもりでございます。
  111. 草川昭三

    ○草川委員 最後のことだけ言えばいいのですよ。あなた、ただが多いのですよ。だから、こういう委員会ですから、我々は農水省が一番の窓口ですから、酪農というのは我々のように週休二日制もないわけですね。三百六十五日ですから、牛に、おい、ちょっとあした休みだから休んでくれと言うわけにはいかないわけです。出るものは出るわけです。メーカーにそれを納入すると、メーカーは今非常に難しい注文をつけるわけです。いろいろな難題に近いものをつけてくるから、酪農家の人たちは何とかメーカーと対等に話ができるような団体交渉権というのをつくりたい、こう言っているわけです。それが午前中から問題になっている組合の、全国生乳需給調整農業協同組合連合会の発足になっていくわけです。これを素直に農水省に聞いてくれということを言っているわけです。そうすると、私ども質問主意書に対して、そんなものは十九条の三で対象外だ、もうあんな組合なんか相手にするな、おたくの方はこう言っているのでしょう。それは農水省は認めておいて、酪農家の経営が今苦しいということを認めたのだから、認めたら話し合いを聞いてやるという態度になりませんか。私は、そういう農水の態度というものが、ぐじゅぐじゅしたような答弁しておりますけれども、もっとはっきりと、苦しいなら苦しい、大手メーカーはつい最近利益を上げておるなら上げておる、それでいいのですよ。そういう基本的なことがなぜできないのかということなんです。  これは二番目の質問になりますけれども、いわゆる指定団体であるところの各県の県酪連がたしか四つだと聞いておりますけれども、県知事あてに団体協約の締結についての申し出をやっているわけです。これは事実としておたくの方も認めておると思うのです。けれども、県知事に私が聞いてみると、そんなことは全国の話だから全国で話を決めてもらわないと、県知事に持ち込まれても困る、こう言っているわけです。それで県知事もちょっと私の地元のメーカーを呼んで、おい、困っておるから何とか話し合いならぬか、文書化した方がいいだろう、文書できちっと締結しなさいよ、こう言うと、これも親会社のことですから地元の工場と話し合いをすると言ったってやれません、こう言っているわけです。  農水省に聞きますけれども、あなたの方は課長名で全生乳に、部分的には文書化なり協約はできておる、こう言ったわけでしょう。事実竹内さんにもそういう答弁していますね。それでは、期限、どういう期間、あるいはどういう量、どういう脂肪率、そういう具体的な条件をつけて大手三社と文書化した例が何件あるか、ここで答えてください。これは質問主意書にもありますけれども
  112. 窪田武

    ○窪田説明員 ただいまの契約の実態につきましては、特にこの届け出が都道府県の知事の方に行くことになっておりますので、現在都道府県を通じまして調査している段階でございまして、そのうち特に大手との間がどうだという点に絞って調査しているところでございます。
  113. 草川昭三

    ○草川委員 ちょっともう一遍言ってください。
  114. 窪田武

    ○窪田説明員 調査中でございます。
  115. 草川昭三

    ○草川委員 農水省の役人は農水省では大きい声で話をしているのです。指導しているのです。この国会で大きい声でわかりやすく言ってくださいよ。  要するに調べておるのか調べてないのか。そんなのはすぐわかるでしょう、四つの県なんだから。四つの県に電話をかけたってすぐわかるでしょう。
  116. 窪田武

    ○窪田説明員 御指摘の四県につきましては、県の担当者及び関係農業団体の担当者双方に照会をしているところでございます。
  117. 草川昭三

    ○草川委員 照会、こういうふうなんですよ。委員長にも聞いていただぎたいのですが、照会中なんて、こんな行政遅滞はないですよ。我々が質問主意書を前に出したのに、一体何日になりますか。酪農組合だって、さっき言われたように非常に苦しいわけだから、大手と話し合いをしたい、こう言っているわけでしょう。しかも建て値というのがあるとかないとかという言葉もあるのですけれども、実際は牛乳を搾乳するわけでしょう。それでボンベに詰めるわけでしょう。それを飲用あるいはその中には加工あるいは学校給食用だとかといろいろあるわけです。値段が全部違うわけです。しかし、牛乳に色がついているわけじゃないですね。最初の一時間分だけは飲用だ、後の三十分の分だけは加工だぞ、値段が違うぞと牛にしゃべるのですか。現実にそんなことできないでしょう。だからトータルでくるわけです。そういう中でその他という名目でメーカーが安く買いたたいているわけです。だから、それは百二十円かそうではなくて八十何円で非常に安いもので納入せざるを得ない。だからトータルで、牛屋さんにしてみれば、いわゆる酪農家にしてみれば、とにかく一週間なり十日なり一カ月、納入したものが一体幾らで仕切られるかわからぬわけです。わからぬから文書化してくださいよ、中小企業を守るために文書化が必要だ、こういうことを言っておるのに、それに対して農水省は、文書化については望ましい、近代的な要因として認めると言いながら、具体的にそういう方々が組合をつくって、農協の組合をつくって認可をもらってメーカーと団体交渉したいと言うと、相手にするな、こう言うのでしょう。そんな整合性のないことが一体通ると思うのですか。そうでしょう。  ちょっと農水省をやめて一遍公取に聞いてみましょうか。  公取さん、全国の中小企業だと、中小企業団体法だとかいろいろなものがあって親会社との団体交渉が認められておる。そういうのを見て農協の場合も応用されておるわけでありますが、大手乳業メーカーと指定団体である県酪連、この場合は愛知県だとか何々県ですが、県酪連との生乳取引契約は文書化されていない。私が今言ったように文書化されていない。取引上優越している地位にある大手乳業メーカーが文書化を拒絶するということは独禁法上問題になるおそれがあると私は思うのです。こうしたことを防止するためには契約の文書化を進めるべきと考えるけれども、これは公取としてはどのようにお考えになりますか、お答え願いたいと思います。
  118. 土原陽美

    ○土原政府委員 大手乳業メーカーと県酪連との取引実態がどのようになっているか私ども十分承知はしておりませんけれども、一般論で言いますと、取引上の優越した地位にあると認められるものとそうでないものとの取引において契約が文書化されますということは、取引の透明性を高めますし、取引の適正化につながるものと考えられますので、望ましいと考えております。
  119. 草川昭三

    ○草川委員 ここでもう一回農水省にお伺いしますが、現実には大手の三社の大メーカーと具体的に文書化しているという例はないのですよ。それはあるかもわかりませんけれども、細かい文書はあるかもわかりませんが、期間だとか、あるいは三・二が三・五%に引き上げられる、脂肪分を上げるというのですか、そういうようなことについてもきちっと契約されていないわけですよ。だからそれは早くやらなければいけない。ところが大手の方は強いから受け付けないわけですよ。受け付けないからこそこういう運動が起きておるわけですよ。だから、農水省としては今後どういうように指導していきますか。
  120. 窪田武

    ○窪田説明員 先生のお言葉でございますが、生乳の取引につきまして、午前中にも御答弁をしたのですが、既に調査報告が来ているところもございまして、例えば北海道につきましては、生乳の取引契約書がそれぞれの項目について定められているということでございます。ただ、――ただと言うとおしかりになるかもわかりませんが、必ずしも全部がそういうことではない。そういう取引の契約化が、文書化が進んでいないところもあるので、それにつきましては今後とも十分指導してまいりたいというふうに考えております。
  121. 草川昭三

    ○草川委員 だから、今の答弁の中でも、私が質問しておるように、期間別取引数量、用途別取引価格、それから今言った三・二から三・五とかいう乳質基準、こういうのを明記した契約の文書化というのが現在何件あるのですか、こう聞いたら、北海道に今あるというのをようやく言ったわけでしょう、一件。その北海道にあるというのも、期間別取引数量とか用途別だとか乳質基準というのがきちっと明記されていますか。
  122. 窪田武

    ○窪田説明員 明記されております。
  123. 草川昭三

    ○草川委員 それは三社ともですか。
  124. 窪田武

    ○窪田説明員 三社ともでございます。
  125. 草川昭三

    ○草川委員 そうすると、それはいつ北海道は決まりましたか。
  126. 窪田武

    ○窪田説明員 北海道は基本取り決めというのをやっておりまして、それは六十一年に更新されたと聞いております。
  127. 草川昭三

    ○草川委員 そうしたら、それをなぜ全国に波及をするように具体的に行われていないのか、お伺いしたいと思います。
  128. 窪田武

    ○窪田説明員 生乳取引の契約の文書化につきましては、契約取引例というものを各県に流しまして、それによって文書化するように指導しておるところでございまして、それにほぼ沿った形でただいま申し上げましたように北海道ではやっておりますが、その他の県についてもやっておるところでございますが、一部の県においてはまだやっておりませんので、これについては今後とも指導してまいりたいと思います。
  129. 草川昭三

    ○草川委員 一部の県ではなくて大多数の県がそうなんですよ。そこを間違いないようにしておいてもらいたいし、生乳等の取引については、酪振法の第十八条で契約の文書化ということが明確に書いてあるわけでしょう。そういう文書化をしなければいけないという酪振法第十八条、「生乳等の取引」という項をきちっと起こしてあるわけですから、それは監督官庁である農水省の立場がきちっとしていないから、監督がきちっとしていないからこういうことになるのだ、私はこう思うのですよ。とにかく酪農家というのは非常に地位が低いから、我々も労働組合と同じように団体交渉権をひとつとろうじゃないかといって、せっかく農水省が農協法に基づいて認めた団体があるにもかかわらず、その組合は、おまえだめだと言って排除しておるわけでしょう。その排除しておるというのは、それは経済行為を伴わないからだめだ、こう言うのですが、そうではなくて、細かい、一銭幾らだとか事業活動をするというのではなくて、酪農家の立場から、大手の乳業メーカーと対等でひとつ団体協約というのを結ぼうじゃないか、対等性ということをぜひ農林省は考えてくれよ、県考えてくれよ、こう言っておるのに対して、おまえら相手にしない、徹底的にやってやろうか、つぶしてやろうか、こういうことを言う。これは私、具体的に今後例を出しますからね、おたくたちがしゃべったことは。きょうは言わぬけれども。そういう農林省の態度というのは私は許されぬと思うのです。あくまでも全生連のこの農業協同組合を農水省はつぶす気かどうか、お伺いしたいと思います。
  130. 窪田武

    ○窪田説明員 全国生乳連は農協法に基づき成立した団体でございます。それで、酪農関係の団体につきましては、県段階の指定団体、それから全国段階にそれぞれ全農、全酪連という農協法に基づく団体が既にございます。それらは生乳の販売機能も調整機能も有しているところでございます。それに社団法人の中央酪農会議というのがありまして、それが全体を指導しているという体系になってございます。  それと今回の全国生乳連との関係につきまして、関係団体でよく話し合っていただきたいというふうに考えておりますが、特に全国生乳連につきまして、私どもは全国生乳連が自主的な活動によりましてそれぞれの活動をされることにつきましては別に何とも申し上げているわけではございません。ただ、先般来は、酪振法十九条の三に基づきましてこれにつきまして農林水産大臣が乳業メーカーに交渉しろという勧告をせい、こういうことでございますので、それは酪振法の法律から見まして、販売事業を行っていないというところでそれを国の方の力をかりて乳業メーカーとやれということには法律上まいらないというふうに申し上げているところでございます。
  131. 草川昭三

    ○草川委員 そうすると、あなたの今の答弁については、私ども、法律ができたときにさかのぼって一回議論しなければいかぬことがあるのですよ。法律ができたときは全国生乳連ができるようなことを考えていない当時のことですからね。しかし、従来の形の、今言われたその他の団体では交渉するということが無理であろう。いろんな経過があるわけですね。公取との関係があったから、団体交渉をやろうじゃないかといってこれは生まれたわけですよ。だから、自主的に交渉することは認めると今言いましたね。ただ、国の力をかりるのは困る、だから断ったのだ、こういうことですが、自主的に運動するということは認めるわけですね。
  132. 窪田武

    ○窪田説明員 既存の関係団体とも十分連絡をとって自主的に活動されることについてはとやかく言うつもりはございません。
  133. 草川昭三

    ○草川委員 農林省は既存の団体のことを非常に気にしておりますね。その既存の団体との関係については、既存の団体は時によっては自分がメーカーの立場から生乳を買うという立場もあるわけですよ。同時に売るという立場ですから、純粋な意味で大手のメーカーと交渉したい、対等で交渉したいということを素直に言っておるかかる組織というのは、農水省としては逆に育てなければいかぬわけですよ。それを嫌うということがおかしいといって我々は盛んに問題提起をしておる、こういうことでございますが、これは押し問答になりますので、もう時間が余りございませんのでこれで終わります。  そこで、最後になりますが、商品取引の問題についてお伺いをしたいと思うのです。  これは、商業課長がお見えになりますが、商品取引問題のあり方については豊田商事事件以来ずっと何回か問題提起をしておりまして、つい最近も大阪の悪質海外先物取引会社の幹部が詐欺で逮捕されておりますね。また、私がずっと取り上げております生糸市場におけるルール違反の取引については、蚕糸価格安定制度を悪用していわゆる仕手の商品を蚕糖事業団が買い上げて多くの批判を浴びる。これは決算委員会でも附帯決議が出ておるわけでありまして、非常に重要な問題だということで言っておるわけであります。  私がなぜ先物問題について取り上げておるかといいますと、開放経済の今日の体制の中で国際的には先物市場の役割というのは非常に重要視をされているわけであります。通産もありますし、大蔵省も先物をやっておりますけれども、特にその中では農水省所管の先物市場の実態は非常に前時代的でおくれている、このまま放置をすれば時代から取り残されて崩壊することは明らかであるという立場で私は言っておるわけですが、最近取引所の方も、生糸、乾繭の取引所でありますが、ようやくルール違反の取引員を処分をしておるわけであります。しかし、その内容は十分とは言えません。より厳正な態度というものを示さないと、のど元過ぎれば熱さ忘れるというようなことで、つい最近も、きょうのですか、テレックスかなにかを見ますと、規制緩和をするというニュースが流れておりますが、これではハエを追ってもまたすぐハエが来るというようなことで、本当に国際的に立ちおくれるのではないかと思うのです。  そこで、私は八月七日の質問主意書で、今回の生糸・乾繭取引所における規定違反行為は、委託者が取引員に要求して行ったものか、それとも取引員が委託者の方に持ちかけたのかどうかという質問をしました。そうしたら、農林省の方は「特定の個人の意思によりなされたものであると判断した。」という答弁でありますけれども、特定の個人というのは具体的には一体どちらを指すのか。取引員の方がお客の要求をルール違反として知りながら、手数料稼ぎのためにどんなことでもやるよと言ってやっておるのか。また取引員がお客をだまして多額の資金を取引につき込ませる場合であっても、いずれにしてもルール無視の行為がいとも簡単にやれるという業界の体質が悪い、問題だ、私はこういうことを言っておるわけであります。農水省が認可をしている取引員であり、いうところの商品取引所法という法律に基づいているわけでありますけれども、先ほど来申し上げておるようにルール無視の取引が行われている、こういうことは徹底的に糾明したいわけでありますが、今の質問について、どちらが最初に持ちかけたものか明らかにしていただきたいというふうに思います。
  134. 中村英雄

    ○中村説明員 取引所から聞いておるところによりますと、受託契約関係の書類につきましては整っていたと聞いておるわけでございます。  それで契約締結前後の事情ということになると思いますが、それにつきましては必ずしも明らかではございませんが、取引員から委託者に持ちかけたという事実は現在までのところ確認できていないと聞いておるわけでございます。取引所におきましては、処分された商品取引員が受託した複数の委託口座にかかる取引は、諸般の状況から同一人の意思によって行われたものと判断したと聞いておるわけでございます。
  135. 草川昭三

    ○草川委員 書類は整っておるといいますけれども、それはやはりメーキングしたものなんですよ。我々が何回か指摘しておるわけです。だからメーキングをする前の段階を明らかにしないとだめですよということを豊田商事事件以来ずっと私ども農水に言っておるのですが、表面的なことしか農水の方は調べていないから事件が解決していないということになるわけです。そういう答弁では、いつまでたっても業界は変わらぬと私は思うのです。一部のプロの投機家だけが取引所に通うことになるわけであります。そのプロの投機家のところへ素人が入ると損をする、こういうことになりまして、ますます先物取引は危ないからというのでお客が減ってくる。逆に大蔵省所管の国際先物の取引については世界第二位になってしまう。通産省所管の工業品取引所の場合は、この八月には過去最高の出来高を記録している。農林の方だけがおくれているわけでありますから、これはプロだけ参加しろ、素人は来ないでくださいよ、我々はばくち場だということを言うならそれはそれなりに農水所管の取引所の性格は出るわけですが、そうじゃないわけでしょう。  だから、私がここで何回かこういうことを言っておりますのは、業界の良識ある人々から、農林省の対応がまずい、腰が重い、だから、よその省庁のように、通産のようにあるいはまた大蔵のように、もし不正なことがあったら徹底的にやりなさいよ。あらかじめそういうポテンシャルがあるならばそれを事前に摘み取るというので、大蔵省でも、きのうアメリカから審査委員というのが来ておるでしょう。そういうように国際化を背景にどんどん事態が進んでおるのに、農水省の対応が非常に悪い。きちっと処分をしていないからくどくどとこういうことを言わざるを得ないと思うのですが、もう一度答弁をしてもらいたいと思います。
  136. 中村英雄

    ○中村説明員 我が国における商品取引につきましては、リスクヘッジ等重要な機能を果たしておることは事実でございますし、近年における経済の国際化、ソフト化の中でこれらの機能が充実を求められているということでございます。ただ、商品取引の現状につきましてなお改善を要する点があることも事実でございます。このため、農水省におきましては、本年三月以来、先物取引に関する学識経験者の参集を得まして研究会を開催し、先物取引の今後のあり方について検討を行ったところでございまして、今後これらの検討内容も参考にいたしまして、商品先物市場の新たな展開のための環境整備、取引所機能の充実、商品取引員の体質強化を図りまして先物取引の健全な発展に努力をしてまいる考えでございます。
  137. 草川昭三

    ○草川委員 改善の事実を認めるということですが、これは私どもが国会で何回か取り上げておる中で出てきたわけですけれども、現実に農林省の市場管理の取り組みのまずさで、最近こういう例がありましたね。最近小豆相場で大量の買い注文があってトラブルがあった、これはいかぬというので、買い占めを仲介したあるいは受託した取引員が四月に三日間営業停止処分を受けておるのです。しかし、その後、処分を受けておるにもかかわらず一向に効果が上がらないために、七月二十八日の納会では大量の買いが集中して二時間半にわたって前代未聞の立ち会い中断の事態が出ておるわけです。これは営業停止処分は意味がなかったということ、弱いということ、なめておるということなんですね。あるいは当局の指導は中途半端だった、泥縄的な行政だと言わざるを得ないのです。  私どもが今言ったようなことを言いますと、農水省は、商品取引所に対して適正な受託を行うよう指導している、こういう答弁を繰り返しておみえになりますけれども、規則に従って必要な措置をとったと聞いているというようなことでなくて、直接乗り込んでいって、毅然とした姿勢が必要だと思うのです。過日商工委員会で、小豆取引については東京穀取から事情を聴取するという答弁を中村さんしておみえになりますけれども、その後どういうような対応をしたのか、お答えを願いたいと思います。
  138. 中村英雄

    ○中村説明員 東京穀物商品取引所の小豆市場の七月限の納会におきまして、売り方と買い方の売り買いの希望枚数が一致しないために立ち会いを一時中断いたしまして、市場管理委員会を開き、市場管理に関する諸規則に従って必要な措置をとったと承知しておるわけでございます。このようなことが繰り返されることのないように、今後各限月の建て玉の状況に応じまして機動的に委託臨時増し証拠金を増徴するなど、一層適切な市場管理を行うよう取引所を指導しているところでございます。
  139. 草川昭三

    ○草川委員 だから私が言ったように、一層適正な受託を行うよう指導するという、私が言ったことを今そのまま読まれたような答弁なので、それでは悪いですよ、もっと毅然とした態度をとってくださいということを言っておるわけです。  日本の場合は、こういう違反行為があったときには、その事実を調査し、処分するのはその取引所の理事会がやっておるわけです。ところがその理事会の顔ぶれを見ると、取引所の役員なんです。当然のことながら同業者なんです。いわゆる業者なんです。業者の仲間ですから厳しい処分ができるわけがないのです。また、その場その場の取引所の売りと買いという立場があるわけですから、本当の議論ができぬわけですね。ですから、私は、この際取引所の市場管理委員会に当業者以外の第三者を入れて市場管理をすべきだと思うのです。また、処分をする場合には別の機関を取引所につくって、当業者以外の第三者だけの市場管理をした方がいいのではないかという提案をしたいと思うのです。アメリカでは先物取引を監督するCFTCという機関があるのです。この委員が来ていますね。この委員長以下各委員は大統領が上院の同意、承認を得て任命するという非常に権威のあるものなんです。ですから、CFTCというのは、この投機、相場を操ることあるいは市場を支配する、こういうことによって先物の価格形成がゆがめられることのないよう監督することにあり、広範な権限が与えられていると言われておるわけです。何よりも他人の手をかりることなく農林省自身が強い指導力を発揮することが必要であるが、現実の市場管理の実態を見るとき、私は非常に難しいとは思いますけれども、第三者の機関が必要になってくる。今申し上げましたようにアメリカからそういうのが来て既に大蔵省との間で話し合いが今行われているわけでありまして、ぜひこのアメリカの例に倣って――日米協定へ先物取引で交渉にデービス理事という人が来ておるわけですね。こういうようなものも参考にしていただいて、信頼性を高めて、先物取引市場というのに国際的な立ちおくれのないように農水省もしていただきたい、こう思うのです。これは農水省に答弁を求めてもあれでございますので、以上私が述べましたことについて経済企画庁の方から、牛乳の問題についても、あるいはまた私がきょうそれぞれ、今の商品取引の問題、流通の問題等についても申し上げたわけでございますけれども、どのようにお考えになっておられるのか、最後に長官からの意見を聞いて質問を終わりたい、こう思います。
  140. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生から大変貴重な御指摘ございまして大変参考に聞いておったつもりでございますが、私ども、これからの経済運営の基本的な姿勢というのは、円高差益にも見られますようなそうした経済発展のメリットを広く一般国民還元することでなければならないと思いますし、同時に、経済のいろいろな仕組みの中でそうした合理的な経済運営の妨げになっていて国民生活の充実や安定に障害になっているようなことにつきましては根本的に改革を進めていくことが必要ではないか、かように考えておりますので、今いろいろ先生の御指摘のような点につきまして十分に検討させていただきたいと思っておる次第でございます。
  141. 草川昭三

    ○草川委員 以上で終わります。
  142. 村山喜一

    村山委員長 次に、北橋健治君。
  143. 北橋健治

    ○北橋委員 民社党・民主連合の北橋でございます。  長官並びに政府委員におかれましては、午前中から引き続いての質疑、大変お疲れだと思いますが、どうかよろしくお願いを申し上げたいと思います。  先般、経済企画庁は景気回復宣言をお出しになられたわけでございますが、地方都市の出身である私、地元の経済状況をつぶさに見てまいりまして、とても景気が回復して上向いているという状況にはございません。特に、北九州は新日鉄八幡を初めとする鉄鋼の城下町として栄えてきたわけでございまして、異常なほどの急激な円高によりまして現在の雇用情勢というのは警戒水域から危険水域に入りつつあるようなそういう感がしております。そういう見地から、現在の通貨行政並びにマクロの経済運営につきまして、早急にそういった雇用情勢をにらんだ思い切った政策の確立が不可欠だと考えておりまして、その見地から以下諸点について経済企画庁並びに関係省庁のお考えを聞かせていただきたいと思います。  まず第一に、マネーゲームというものについて長官の御所見を聞かしていただきたいのでございますが、例えば本屋に行きましても、これは地元のみならず東京でもそうでございますけれども、マネープランづくり、マネープランというコーナーがどこにでもございまして、黄色か赤の帯状で金融、証券、そういった関係の本がたくさん出ております。そしてまた、現在も、証券市場を見ましても、個人投資家、株式市場にもかなり関心を持って一億総投資家の感がするほどに証券市場は過熱化してきております。そういった昨今のマネーゲームといったものの過熱化、そういった最近の社会現象について、長官、どのようにごらんになっておられますでしょうか、お伺いをいたします。
  144. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 マネーゲームに入ります前に、先生最初御指摘ございました景気に対する見方でございますけれども、私ども先般経済白書を報告したわけでございますが、その中で説明しておりますことは、今回の景気というのは、六十年九月のG5ということから起こったのではなしに、むしろ世界経済の現状や全体としての国内的な設備投資の過剰現象、在庫調整というようなことが起こった六月からでございます。そこから景気が下降局面に入ったのに対して、G5でいわば円高デフレが上積みになったということが現下の今回の厳しい景気調整であった、こういうことに考えるわけでございます。  そうしたものが、最近のいろいろなデータを分析してみますと、どうも昨年の暮れからことし初めにかけて設備調整も大体底を打って、これから多少上向きに変わっていくな、在庫調整も底をついてこれから前に進んでいく、そんなこと。また、輸出関連の企業も非常な影響を受けましたけれども、こうした新しい事態に適応して、高品質化が進むもしくは内需転換が進むという形で調整が進んできて、先生指摘のように依然として水面下でございますが、息が苦しいけれども、いっときのような下降から底を打って上向きに向かいつつある。これに新たな今度の緊急経済対策を上積みをして後ろ押しをしてきているから、経済のことでございますからいろいろな状況がございますけれども、これからは景気局面が明るい方向に展開をするのだ、こういう認識をしているわけでございます。ただ、これが地方にまいりますにはいま一でございまして、同時に、そうした景気が地方に浸透するために必要なのがまさに今度の緊急経済対策による社会インフラの整備だと思っているわけであります。  そういう中での景気循環の過程で御指摘のマネーゲームというのが大変なブームといいますか活況を呈したわけでございますけれども、お金が実体的な経済に流れないでそうしたマネーマーケットに流れるのは、一つ円高によって消費者物価が安定し実質所得の増大、片っ方では将来に対する多少の余裕から、消費は伸びておりますけれども相当の貯蓄が消費や投資に回らないで残って、それが支出先といいますか投資先を証券市場を初めとするようなマネーマーケットに向かってきたのだ、こういうことでございまして、そうしたマネーじゃなしに実体的な投資の方向国民の貯蓄を積極的に振り向けるような状況をつくる必要がある、かようなことを考えている次第でございます。  しかし、同時に、そうしたお金が証券市場、マネーマーケットに集中することによって日本における低金利状況というものが出てまいったわけでございまして、こうした金利安状況というものが、一部においては消費者ローン、また住宅ローン、リフォームローンという形で消費の拡大、住宅投資の拡大にも向かってまいりましたし、また、輸出関連の企業については設備投資が積極状況ではなかったけれども、いわゆる非製造業関係の流通、サービス業界において低金利を活用しての積極的な設備投資が進む面でもあったし、また一つ見方では、円高不況で設備調整や雇用調整といった厳しい経営、運営を迫られておる企業が、そちらの方に手持ちの株や土地を売却することによって資金繰りをすることができた、こういう面もあったと私どもは考えるわけでございます。  いずれにいたしましても、今度の緊急経済対策で、相当な国債の発行をする、そしてNTTの株の売却代金も積極的な公共事業に向ける。これもすべてマネーマーケットからの資金の調達でございますから、そういう形でこれからは低金利状況というものを積極的な、建設的な方向に向けるための措置をいろいろ考えて進めてまいりたいということでございます。
  145. 北橋健治

    ○北橋委員 長官のお話にもございましたように、より建設的な前向きの投資の方にお金が流れていくような政策努力が必要、全く同感でございます。その一つの方策といたしまして、通産省の方におかれましても今検討されておるやに聞いておりますけれども、いわゆる日本版マーシャル・プランという考え方でございます。要は、マネーゲームあるいはアメリカの国債の購入等海外に流出をしているそういった資金を日本が主体的に責任を持って日本並びに近隣諸国の繁栄のために前向きに投資をしていくような、そういった環境づくりが今必要になってきているのではないか。その一環として、今でも円借款によって東南アジアに対する経済協力というものは経済企画庁の御努力もあって推進されておるわけでございますが、ひとつこの際思い切って、民間資金を含めて、そういった国内の金余り現象の中でその資金を有効に使うという見地から、中国を初め東南アジア、そういった日本と安全保障、外交上極めて重要な関係を持っている諸国に対する強力なインフラ整備投資に振り向けていく。もちろん、民間資金をそちらへ流していくためにはリスクを越えていかなければなりませんから、政府としてもそれなりの保証といいますか債務保証というものが必要になってまいりますけれども、そういった日本版マーシャル・プランのような思い切った資金を前向きの建設的な方向に振り向けていくという方策について、経済企画庁、何か御検討されておられますでしょうか、お伺いします。
  146. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 今回の緊急経済対策におきましても、いわゆるODA援助倍増を七年間を二年繰り上げて進めようということとか、さらに二百億ドルの資金還流計画を、世界銀行その他国際金融機関、さらには海外経済協力基金、そして輸銀等が軸になりまして、民間資金の協力も得ながら進めていこう、こういうことを考えておりますし、またアフリカ諸国に対しては五億ドル援助を新たにしよう、こういうことを考えてございます。  ただ、日本はこれまでの黒字基調から対外経済債権を、国際債権を累積いたしまして、既に二千億ドルを超える巨額のものを持っておりますし、これからその経常収支黒字の幅をできるだけ縮小していこう、こういうことで努力をしておりますけれども縮小はしても、依然として黒字である限り、それは対外債権の毎年毎年の累増でございますから、これをどういうふうに国際的な資金還流計画の中に持ち込むか、取り込むかということが、実はいわゆる経済大国、国際債権大国日本の非常に大きな政策課題である、かように私ども考えております。  ただ、そうはいいましても、集まっているお金はみんな民間のお金でございますから、今それこそニューヨークに流れてニューヨークにおけるマネーゲームに走っているということも、それは民間は民間なりの採算ベースを考えての話であると思うわけでありますけれども、これを世界経済全体のより調和ある発展のために流そうとするためには、長期で低利で、場合によってはリスキーな金にもなるわけでございますので、利益追求型の民間資金をそちらの方に向けるのには一工夫も二工夫もしなければならない。そのためには投資の手法だとか金利、税制上のいろいろな措置も考えなければならないと思うわけでありますけれども、いずれにしても、日本のこうした貯蓄の蓄積が積極的な世界経済の発展にうまく還流していかなければ、日本が蓄積したいわば対外債権すら結果的にはデフォルトになってしまう。日本の対外債権が債権として実効あるためにも、世界経済全体としての経済発展計画を考えて、それを日本が推進する立場でなければ、それは日本の対外債権も場合によってはまさに回収できなくなってしまうわけでございますので、真剣に考えていかなければならないと思っている次第でございます。
  147. 北橋健治

    ○北橋委員 考え方としては、経済白書をことし読ませていただきましても、日本版マーシャル・プラン、そういう言葉を使うかどうかは別にいたしまして、前向きの方向に少しでも資金が還流するような御努力の跡を読み取ることができるわけでございます。  それで、今長官のお話にもございましたけれども日本の機関投資家はかなりの資金をアメリカの国債購入の方に振り向けているわけでございますが、現在、残高はどれぐらいになっておりますか、そしてまた、政府としては日本の機関投資家がアメリカの国債を大量に購入しているその方向を是認され奨励されているのかどうか、大蔵省でしょうか、政府のお考え方をちょっと聞かせてください。
  148. 西方俊平

    ○西方説明員 私は国際金融局の方でございまして、この仕事を直接責任を持って担当しているわけではございませんけれども、聞き及んでいるところをちょっと御紹介したいと思います。  数字につきましてはちょっと手元にないのでございますけれども、これは御承知のように機関投資家の方で毎月相当量の外国の国債、特にアメリカの債券について購入があるような実情でございます。これは奨励しているとかしていないとかいうようなことではないわけでございますけれども、いろいろな信用力とか利回りの関係とかそういうようなことで投資家の選好に基づいて行われているのが実情でございます。
  149. 北橋健治

    ○北橋委員 銀行に勤めている私の先輩のお話を聞きますと、いわゆる行政指導というもので、特にこうしてほしい、ああしてほしいというお話はありませんけれども、みんなそろって仲よくアメリカの国債購入に走らないとぐあいが悪いような雰囲気があるということは聞いているわけでございますが、きょうは大蔵委員会ではございませんし突っ込んでお伺いすることはありませんが、特に政府として奨励しているわけではないという話でございます。  ただ、最近、日米のエコノミストの中にアメリカ経済の将来を憂うる意見がかなり強まってきているやに聞いております。本屋に行きましても「ドルが紙になる日」とかいう本が最近はすごく売れているのだそうでありますが、アメリカの著名なエコノミストの中でも、アメリカ経済はこれからも大丈夫というのが大体半分、かつての世界恐慌の前夜に非常に似通っていると悲観論を主張する学者、エコノミストが半分ぐらいいるということで、ドル暴落、経済恐慌の予測をするような意見もあるわけですけれども政府としてはこういったいわゆるドル暴落論についてどのような見解を持っておられますでしょうか。
  150. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 私もさっきちょっと、日本の対外債権が気がついたら回収できなくなってしまう時代だってあり得ますよということを申し上げたわけでございますけれども、それは、日本がまさに輸出志向でがむしゃらに輸出をして外貨を稼いで、しかもそれを適当に還流をしない、そういう状況を続ければ、世界経済の調和ある発展が阻害されてしまって、大変な事態が起こる可能性は私は十分あると思うわけでございます。しかし、まさに世界経済、特にG5やG7等に代表されておりますような世界的な責任ある国家の財政、金融、通貨の首脳が常時集まりましていろいろな意見の交換をしながら政策調整をする、そして国際収支のバランスを何とか回復しようとして努力しているわけでございますので、こうした国際的な通貨調整という体制ができていることが、よく言われます二九年代の世界恐慌の状況とは基本的に制度的、体制的に違う。あの当時は、国際的な協調はおろか、国内的にも単純な金本位制的な発想であって、そうした国内的な恐慌に対する措置制度としても十分に体制が整っていなかった、こういうことでございますが、そうした経験を踏まえての最近の国内的な経済体制、国際的な政策協調体制というものが進んでおりますので、言われますような二〇年代から三〇年代にかけての恐慌のようなことは起こるような客観的な状況ではない、私はかように考えております。しかし、現在の最大の問題が先進国間の国際収支のアンバランスであり、そしてアメリカを含む一部の先進国、そして発展途上国の累積債務の増大というような状況は決して軽々に考えるような状況にないので、やはり真剣にそれぞれの通貨当局が対応しなければならない問題である、かように考えている次第でございます。
  151. 北橋健治

    ○北橋委員 長官の御答弁にもございましたように、一方においてドル暴落論をとる悲観論者もいるけれども日本を初めとする先進国の経済運営が過ちがなければ大丈夫、こういうことになろうかと思います。そのためにも、今マネーゲーム、あるいは米国の債券の方に日本の資金が流れている状況というのは基本的には余り好ましくないのではないか。やはり国内の社会資本の充実並びにそういった経済的な基盤の弱い途上国に対して思い切って日本が先導的立場をもって前向きにその資金を還流させていくという努力が今後ますます必要になってくると考えておりますので、ぜひ一度日本版マーシャル・プランという思い切った壮大な計画というものを日本の国家戦略として打ち立てていただきたい。経企庁がぜひそういった経済戦略を立てていただきたい。そのことを御要望しておきたいと思います。  続きまして、通貨の問題について順次お伺いをしてまいります。  第二次製造業を初めとして今雇用情勢は非常に苦しくて、危険水域に入ろうかという産業界におきましては、二年前のG5以降の日本政府の通貨行政に対して不信感に近い気持ちを持っております。下手に通貨をいじったからこそ投機的な要因が拡大をして、必要以上の、日本経済のファンダメンタルズを逸脱したような高水準の円高に異常なほどのスピードでなってしまった。それがためにうまくいくはずの構造転換もなかなかうまくいかない。そして勤労者の中には本当にいつ自分が会社をやめねばならないだろうか、そういう影におびえている企業城下町というものが地方にはたくさんあるわけでございます。  そういった意味で、私としましては、日本経済のファンダメンタルズを適正に反映した水準、と同時に、日本の産業構造の転換が円滑に進み、失業率が異常なほど高くなるというような事態を招かないような、そういった通貨の方向に持っていけるような政策努力が必要かと思います。もちろん大蔵の国際金融局からのレクチャーでも、政策当局が通貨について作用し得る力はほとんど皆無に近いという意見もあろうかと思います。しかし、今日まで二百四十円から百四十円まで来た経過を振り返ってみると、幾度か重要な時点において円高を促進するための口先介入というものを大蔵大臣を初めとして関係閣僚がされてきております。重要なポイントのところで、これは日本経済のファンダメンタルズを逸脱しているのではないか、ちょっと高過ぎるということをはっきりと言っておけば、必要以上に異常なほどのスピードでここまで円高にならなかったのじゃないか、そのように考える一人でございます。  その見地から、ことしの春に大蔵省と通産省が、投機的な為替取引を自粛してほしい、そういう行政指導を行ったと聞いておるわけでございます。今百五十円からはるかにまた百四十円台、百三十円台をうかがおうという高水準になってきているわけでございますが、大蔵、通産省の方にお伺いいたします。ことしの行政指導の効果をどのように見ておられますでしょうか。端的にお答えいただきたいと思います。
  152. 西方俊平

    ○西方説明員 先般五月の措置は、為替相場の安定を図る見地から、主要な市場関係者に対しまして投機的取引について自粛をお願いしたわけでございます。それで、こうした措置は、事柄の性格からなかなか判定しがたいわけでございますけれども、いろいろ市場関係者からの感触では、それなりに効果を持っているというふうに私ども考えております。
  153. 前田正博

    ○前田説明員 急速な円高の進行が我が国の産業に与えます影響の重大性にかんがみまして、通産省といたしましても、円高の行き過ぎを抑え、為替相場の安定を図る見地から、去る五月に自粛要請を行ったわけでございます。つまり、為替取引の規模の大きい市場関係者に対しまして、例えば商社や家電、自動車、石油といったところに対しまして、大局的な見地に立って実需に基づかない投機的取引を自粛するよう大蔵省とタイミングを合わせて要請いたしました。  ただ、この要請の効果につきましては、これをはっきり明言することはなかなか難しい面もあるわけでございますが、ただいま大蔵省の方から御答弁ありましたと同じように、私ども、市場参加者の自主的な協力を通じまして市場の不安定な要素がそれなりに減ったのではないかというふうに見ております。
  154. 北橋健治

    ○北橋委員 大蔵、通産の方の御説明では、それなりに効果があったという総括になるんだろうと思います。もちろん円とドルの為替の水準というのは人為的にそれほど操作のできるものでないことは十分承知しておるわけでございますが、最近また円高に戻りつつありまして、これにはもちろん経済的な諸要因がありますので、行政指導をそれをもって云々する気はないわけでございますが、やはり投機的な動きというものは為替市場においては依然としてあるんじゃないだろうか、そういう意見はまだ強くあるように私は思うのでございます。これまでの数カ月間の実績を見て、今後大蔵、通産として関係者に対して為替取引の投機的なものの自粛をさらに強力に推進していくべきではないかと思いますが、当局のお考え方をお伺いしたいと思います。
  155. 西方俊平

    ○西方説明員 ただいまの措置はことしの春の五月にやったばかりでございます。それ以降も、最近急激な相場の変動等がございますので、先生からお話ございますように、引き続きましてこの措置は生きている、こういうふうに考えております。
  156. 前田正博

    ○前田説明員 五月に要請を行いました関係者からは私ども引き続きその後の状況も尋ねておりますけれども、今までのところ特段の投機的な動きに出たところもございませんし、引き続き要請の趣旨を生かしてまいりたいと考えております。
  157. 北橋健治

    ○北橋委員 きょうはあらかじめ行政指導をされた関係者の方から為替相場への対応について数字的なものをお示しいただくように要望しておりませんでしたので、とりあえず、大蔵、通産の通貨当局の方に対しては後ほどまた改めて適切な時点でお伺いをするということで、引き続きその行政指導の効果が発揮されますように督励をお願いしておきたいと思います。  大蔵省の方に続けてお伺いをしておきたいと思います。これはあくまで新聞報道でございますので事実の真偽はわからないわけでございますが、これまでG5あるいはG7において各国の通貨当局者が議論をする場合に、公式的には大体一ドル何円くらいの水準に持っていくというものを決めてはおらないというふうに私どもも伺っておったわけでございますが、ある新聞報道によりますと、外電としてベーカー米国財務長官の意見というものが伝えられておりまして、公の場において語ったものではございませんけれども、ことし初めのG7におきまして今後各国の通貨当局が緩やかな目標相場圏のようなものを設定する、ドルと円の関係でいいますと、大体一ドル何円から何円くらいまで、もちろんその域を離れたからといって義務的に通貨当局が介入をするというオブリゲーションを課したものではないと聞いておりますけれども、緩やかな一定の目標を定めて各国が協調していこうという話ができているんだ、こういう報道がされたわけなんですが、これは事実でしょうか。もし事実だとすれば、大体どのような相場を念頭に置いてこれまで政府は対応してきておられるのでしょうか。
  158. 西方俊平

    ○西方説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のような緩やかな目標相場圏というのでしょうか、そういった新しい通貨制度につきまして、これまで蔵相会議やなんかで合意されたという事実はございません。それで、例えばことしの二月二十二日にルーブル会議が開かれたわけでございますけれども、それ以降一連の蔵相会議等におきまして、為替レートの一層の著しい変化というのは各国における成長及び調整の可能性を損なうおそれがある点で一致いたしまして、為替レートの安定を促進するために各国が緊密に協力していくことが合意されたわけでございます。そういうことはございましたけれども、具体的に特定の相場を念頭に置いたというようなことはございません。
  159. 北橋健治

    ○北橋委員 アメリカの議会ではございませんのでそれ以上お伺いしようがないわけでございますが、あながち全くのうそでもないだろうと推察しておるわけでございます。よく世間で言われておりますのは、宮澤・ベーカーG2の会談においては一ドル二百円ぐらいが合意されたのではないかといろいろ言われておるわけでございまして、政府は公式にはそういうものはないとおっしゃっているわけでございますが、ないということであるならばそれ以上質問はいたしかねますので、結構でございます。  ただ、これまでもこの委員会におきまして日本経済のファンダメンタルズを適正に反映させる水準はどのくらいなんだろうかということは経済企画庁長官にも幾度がお尋ねをした一人でございますが、そのときに長官の口からこのあたりが一番いいということはなかなか言いにくいということで今日まで来ておるわけでございます。ただ、実際に今度の経済白書を見ましても、円高というものが日本の産業構造にどのようなインパクトを与えているかをかなり詳細に検討を進められているわけでございますが、その産業構造の転換の現場、特に雇用されている立場の者から見ますと、これは大変厳しい状況になっているわけです。経済企画庁のマクロ経済試算なんかを見ますと、第二次製造業の落ち込んだ分はサービス業、第三次産業でカバーされるというのですが、少なくとも私の住んでいる地方都市においてはそのような円滑な雇用の異動というものは到底期待できないような厳しい状況にございます。  これまで私は通産省の事務当局ともいろいろと議論をしてきたことがございますが、日本の産業構造が国際化の波の中で前川レポートというものを円滑に具現していくためには大体常識的なところ一ドル百八十円くらいではないだろうかという話をいろいろと議論の中で聞くわけでございます。現に、G5があった当時、アメリカのヤイターやボルドリッジの議会における公式的な見解では、大体一ドル百八十円から百九十円くらいが妥当ということをアメリカの政府当局者は言っておった事実もございます。そういう意味におきまして、今の水準というものは余りにも異常ではないか。下手に為替をいじったからこそ投機的な資金が流れ出てきて、それでもって大変な事態になろうとしているのではないか。マクロで見て何とかうまくいくのとわけが違いまして、実際の現場で見てみると大変な雇用不安というのが起こっている。そういう見地から、適切な水準というのはもっと円安の時点にあるのではないだろうかと思うわけですが、長官、率直にどのようにお考えになられますでしょうか。
  160. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 私前にもお答えいたしましたように、何円が適正レートかというのはなかなか難しいわけでございますし、計算の仕方もいろいろあるわけでございます。ただ、白書の中でも、そういいながら、百八十円ではない、百七十円ではない、百五十円前半ぐらいで一応経済が底を打って、輸出関連の企業といえども、輸出商品を整理して、高付加価値で円高分が転嫁できるようなものにだんだん整理しながら、片っ方で内需の方向に工場や労働力といった生産資源を振り向けつつあるという経緯の分析をしているわけでございますが、私いろいろ会社関係の方々とお話をして思いますことは、会社の経営にとって円高でない方が望ましい、すなわち、百五十円、百六十円、百八十円が望ましいのだけれども、もっと困ることは上がって下がってという乱高下ですね。これでは経営としてのやりようがないということでございます。低い方が望ましいけれども、また戻ってしまってはもとのもくあみなので、むしろどの水準で安定をするか、安定できる水準はどこかというようなことが企業経営上からは問題ではないかというふうに判断するわけであります。  そう考えてまいりますと、最近百三十円台にも一時上がった円が、百四十円、百五十円前半になってまいりまして、その時点で白書は書いているわけでございますが、低ければ低いほどいいよということでなしに、むしろ安定させようとすれば、百五十円前半ぐらいのレートで安定さえしていけるなら、それに基づいての一つの経営計算ができるということではなかったかと思うわけでございます。それが現在百四十円台まで円高になってきたということは、あえて申しますが、私ども経済政策というよりもむしろアメリカの貿易収支の赤字が改善をしなかった、そして、アメリカのGNPの成長率も下方修正せざるを得なかったというようなアメリカ側の要素によっての円高というよりはドル安の現象でもございますので、なかなか対応が難しいわけでございます。私どもとしてはその水準はなかなか言いにくいわけでございますけれども、安定できる水準で今後経済が運営されるようにいろいろ努力をしていく必要があると考える次第でございます。
  161. 北橋健治

    ○北橋委員 為替相場の安定を図るという趣旨には全く賛同しますけれども経済企画庁の白書を見ましても、日本の産業構造が円滑に転換をしていくことが望ましいということを大前提として議論されているわけでございます。そうしますと、一ドル大体この程度の水準が望ましいとかいう為替の水準については何もお考えはないのでしょうか。
  162. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 重ねて申し上げますが、これが水準だと決めつけるのはなかなか難しいわけでございますが、緊急経済対策の発表、そして補正予算の通過、成立によってまさに政府のイニシアチブによって内需主導型の経済運営へ大きく変わってきているわけでございますので、私どもとしては、こうした内需によって輸出に回っておった生産力、労働力が内に向いてくることによってうまく転換をすることができれば、少なくとも百五十円前後ぐらいの水準で相当期間レートを安定させることは不可能ではないのではないか。ただ、あくまでも相手もあることでございますから、なかなか我が日本政府だけのことでは対応しかねる面もございますということであります。
  163. 北橋健治

    ○北橋委員 質問通告には出しておりませんでしたけれども政府のお考えをちょっと聞かせていただきたいんですが、相手のあること、まさにそのとおりでございます。やはり交渉事はカードがなければ交渉にならないわけなんですが、日米の通貨の問題に限ってみますと、日本にもカードがあるのではないか。もちろんそれを下手に行使しますと大変なことになりますけれども、アメリカの経済というのは日本の資金というものがかなり国債の購入という形で支えているわけでございます。そういった意味で、日本の機関投資家がアメリカの国債を大量に購入しているという現状は、まさにこれはアメリカに対するカードになり得ると思うのですが、そういったものを通じてアメリカに対して適切な水準に持っていくということを主張されるお考えはないんでしょうか。
  164. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 アメリカに対する資金の流出はまさに円高を抑制する効果を持つわけでございますから、逆にアメリカに対する資金の供給がなされないとなればこれは円高がさらに進む、こういうことになってくるわけでございます。ですから、これはなかなか我が方としても一つのジレンマでございまして、レートを安定させようとすれば資金が行かなければならない、それで、資金が行けば行くほど今度は価格を維持するためにいわばさらに資金の流出を加えていかないと円がさらに上がってしまう、ドルが安くなってしまってむしろ投資家は為替損を受ける、こういうことになるわけでございますから、そういう一つのジレンマに日本が落ち込まないためにも、むしろ経常勘定において日米間の貿易収支の黒字が改善する、だから資本勘定でお金が流れるのじゃなしに経常勘定でアメリカの赤字の減少という形で資金がアメリカに歩どまる形がより健全な円ドルレートの安定のための施策なのであって、そういう意味で積極的なアメリカの輸出拡大、そして日本からすればアメリカからの輸入拡大ということについて、これまでもいろんな手を尽くしてまいったわけでございますが、今後ともより積極的に取り組んでまいらなければならない、こういうことだと思う次第でございます。
  165. 北橋健治

    ○北橋委員 時間が参りましたけれども最後に一点だけ長官にちょっとお伺いしておきます。  先ほど大蔵、通産省の通貨の当局の方は、行政指導によって相当の効果があった、そして投機的な取引というのはかなり影を潜めた、そういう趣旨の総括があったわけでございますが、本当になくなったんでしょうか。経済企画庁の長官として現在の為替取引においてかつて指摘されたような投機的なものの要素が全く消えたとお考えでしょうか、その一点をお伺いして質問を終わらせていただきたいと思います。
  166. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 これは政府の政策的な意図として、やっぱり最終的に投資するかしないかということは、売るか買うかということは、これは個々の関係者、業者の判断でございますから、それの枠を与えるということは私は不可能である、かように考えますが、しかし、同時に、この為替の乱高下によって最終的にだれが得をしたれが損をするか、こういうふうに考えてまいりますと、それは最終的には世界経済の混乱というもので得をする人はだれもいないわけでございますので、そういう点で私は、おのずから政府の行政的な考えとか指導というものに少なくとも良識ある日本関係者の方々は従っていただけるもの、かように考えております。
  167. 北橋健治

    ○北橋委員 ありがとうございました。
  168. 村山喜一

    村山委員長 次に、岩佐恵美君。
  169. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 最初に私鉄運賃の問題について質問をいたします。  さきに関西大手私鉄五社とそれから京成電鉄の運賃値上げが行われました。関東の大手私鉄についてもこの秋にも値上げ申請が行われるのではないか、そういう報道もされているわけでありますけれども、今円高為替差益還元あるいは原油値下げの還元ということで電力料金など下がってきている中で私鉄の値上げというのはこれは道理がないというふうに思うわけでありますけれども、大手私鉄のことしの三月期の決算がどういうふうになっているか、ちょっとお示しをいただきたいと思います。
  170. 岩田貞男

    岩田説明員 お尋ねの六十一年度の大手私鉄の十四社でございますけれども、これは鉄軌道の部分だけ申し上げます。  経常損益で十四社で三百二億円余りの黒字を計上しております。ただし、法人税を払いましてあるいは配当所要額を差し引きますと、約七十三億円の赤字ということになっております。
  171. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 今私が問題にしている関東大手七社の決算、これはどういうことになっているか、ちょっとお示しをいただきたいと思います。
  172. 岩田貞男

    岩田説明員 ちょっと七社分について今計算をしなければ出てこないのですけれども、既に運賃改定がなされました京成を除く事業体につきまして、六社になりますけれども、今の数字で申し上げると百九十三億円の経常損益の黒字、以下配当所要額を差し引けば十六億円の黒字ということになっております。ただ、京成につきましては、経常損益で五億六千万円の赤字でございまして、当然配当はしておりませんけれども、その他若干の法人税等を払いまして、最終的な収支では五億八千万円の赤字となっております。
  173. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 今説明があったように、これから値上げを予定をされるというような会社については大変黒字を計上している。これも税金対策などいろいろ差し引いてそれで控え目に見積もった、控え目に計算をした、そういう中でこういうことが明らかになっているわけであります。  ちなみに、いわゆる内部留保ですね、税金対策等でいろいろと積み立てているお金、これを私の方で六十二年の三月期決算で試算をしてみました。例えば、東武では五百十七億二千二百万円、西武は二百九十五億二千九百万円、東急が九百二十九億一千六百万円、京王帝都が三百二十五億三千八百万円、小田急が四百六十一億九千六百万円、京浜が四百三十一億一千三百万円、今赤字だと言われている京成も内部留保は百九十七億六千三百万円、こういうぐあいになっています。全体トータルいたしますと三千百五十八億円の内部留保を持っている。これは大変大きな数字であるというふうに思います。  大手私鉄の値上げというのも消費者の生活に大変大きな影響を与えるものでございます。そういう点で、いろいろ新聞で値上げを取りざたされておりますけれども、一体どうなっているのか、その点について御説明をいただきたいと思います。
  174. 岩田貞男

    岩田説明員 私ども、実はその六十一年度の関係、今先生の御指摘になった会社を含めまして十四社あるいはその他の会社からもいろいろ経理内容を聞いたことは事実でございますけれども、その際を含めまして、今具体的に運賃をどうするとか、そういう話は聞いてございません。
  175. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 今為替差益還元など社会的に大きな問題になっています。こうした私鉄の運賃の値上げ、これは私などがいろいろ経理内容を見ても当然認められないものというふうに思っておりますけれども、長官、この私鉄の運賃の値上げについて、値上げがいろいろ取りざたされることのないように対応していただきたいというふうに思います。
  176. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生おっしゃいますように、電力、ガス、石油その他の円高差益還元の時期でございますから、こういったものを一般の国民に、消費者の皆さんにできるだけ適切に還元をする。したがって、公共料金等につきましても値上げよりはむしろ値下げを図るというような状況でございますが、今いろいろ先生指摘の私鉄の運賃改定の問題につきましても、そうした状況を踏まえまして、私どもも私鉄各社そして運輸省かる参りますいろいろな報告、事情を十分に考えて、これまでも安易に運賃値上げを認めるようなことはなかったわけでございまして、常に当初申請よりは相当切り込んできているわけでございますが、今後においてもそういうことで厳正な態度で物価政策として臨んでまいりたい、かように考えております。
  177. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 次は、手づくり食品の表示の問題についてお伺いをしたいと思います。  最近、消費者の本物志向に乗って手づくりと銘打った食品がかなり目につきます。ことしの二月、神戸の生活科学センターはハム、ソーセージ、調理済み食品、冷凍食品、調味料、菓子など多岐にわたる手づくり食品の試買調査を行っています。それによりますと、いわゆる手づくりに関する表示がまちまち、各種違います。例えばハムでいいますと、「手づくりハム」の場合「本手づくり」、「手づくり銘匠 HAND MADE ホワイトベーコン」、これは「良質の豚バラ肉を厳選し、じっくりと熟成させ、軽くスモークした高級ベーコン」、それから「手づくりの味 那須高原スモークドポーク 那須高原の厳選した豚肉をじっくり熟成させ、桜の木で燻製した手づくりの味をご賞味ください」、「手づくり ドイツ伝統の味エッセンフルト本場ドイツ(フランクフルト)の伝統の技術を生かした”エッセンフルト”は豚肉を十分に熟成した後”あらびき”に仕上げています。」「手づくり ポークあらびき シャウエッセン 本品は厳選した豚肉を十分熟成したのち肉本来の風味が生きる”あらびき”に仕上げています 天然香辛料で味つけし、スモークの香り豊かな……一本一本丹念に仕上げました」、それから「クリームスープコーン 手づくりスープの名作」というのがあります。これは商品名なのですが、「天然素材使用 合成着香料、合成着色料、合成糊料、合成保存料等は一切使用していません。天然の野菜を厳選使用した高級スープ」、「京のしば里 梅酢のさっぱりした酸味と手作りの素朴さが特徴です。」こんなふうにいろいろと手づくりの押し出し方が違うわけです。  これら手づくりの表示の内容というのは、神戸センターのまとめで、一つは「高級イメージ」、それから二番目に「食品添加物を従来のものより少な目に使った、または使わなかった」、三番目に「伝統的な作り方を一部取り入れた」、四番目に「一部”手”を加えた作り方」、五番目に「手間ひまかけた」、六番目に「家庭での手づくり料理を助ける」、七番目に「”手づくり”の指す意味が不明」、こういうふうな総括になっているわけでありますけれども、手づくりハム、ソーセージのメーカーは「製造機械の利用を必要最小限度にとどめ時間と労力をかけて製造し、JAS規格の上級品以上の品質を有する高級品」を手づくりと考えている、こういうような回答もあります。  一方、消費者の手づくり食品の受けとめ方、ここに関東地区婦人連絡協議会の「手づくりについての調査」という調査表があります。これによりますと、手づくりハム、ソーセージについて「食品添加物を使っていない」というふうに理解をしている人が二一・六%、「伝統的な作り方をしている」、そういう方が二〇・八%、「じっくりと時間をかけて作られている」が一七・五%、「機械を使わず丁寧に作られている」が一六・七%などとなっています。  公正取引委員会は、手づくり食品の表示について調査をしているというふうに伺っているわけでありますけれども、実態についてどのように把握され、また手づくり表示についてどのようにお考えなのか、お示しをいただきたいと思います。
  178. 土原陽美

    ○土原政府委員 先生から今いろいろと御指摘がございましたように、近年ハム、ソーセージにつきまして、手づくりと表示された商品が多数出回っているところでございますけれども、この表示につきまして消費者の方から、手づくりと本当に言っていいのだろうか、おかしいのではないかというような意見が種々私どもの方に寄せられたわけでございます。そんなことで、公正取引委員会といたしまして昨年来ハム、ソーセージの手づくりの表示について調査検討を行ってきたところでございます。その結果、ソーセージにつきましては、手づくりと表示された商品とそれ以外の一般品とを比べてみまして製造工程が基本的には変わりないということが明らかになりました。また、手作業の部分がどの程度あるのかといった観点から見ましても、手づくりというにはちょっと不適当な工程であるということが明らかになったわけでございます。そんなことで今月の十九日の日に、業界の団体であります社団法人日本食肉加工協会に対しまして手づくり表示の是正を行うように要望したところでございます。  協会の方では既にソーセージの手づくり表示をやめることを決めまして、できるだけ早く実際にも表示を是正していくということを私どもの方に報告しております。  なお、ハムにつきましては、現在まだ検討中でございますけれども、早急に結論を出したいと考えております。
  179. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 東京都地域消費者団体連絡会から再三にわたってこの問題に対して適切な対応を早くとるよう公正取引委員会に要望が出されております。この点について一部業界が受け入れたということでありますけれども、ハムや何かもかなり出回っていますし、また是正するといっても一体いつごろそういうものが消費者に届くのか、期間の問題もあると思うのですね。その点についてはどうなっているのですか。
  180. 土原陽美

    ○土原政府委員 ソーセージの表示については早急にということで、現在既にそういう表示をできるだけ減らしていくことを業界の方で進めていると聞いております。ハムの方は私ども自体まだ検討中でございますけれども方向としては余り適当ではないんじゃないかということで考えておりますけれども、できるだけ私どもの結論を出しまして、是正の措置が必要であるということであれば業界の方にそれも早急にやってもらうことを考えておりますし、またこういう手づくり表示以外のいろいろな表示につきましても適正化の方向で考えていく必要があるのではないかと思っている次第でございます。
  181. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 少し頼りない答弁という感じがしないわけでもないのですけれども、手づくりとそうでないものと差異がないということがもうはっきりしているわけでありますから、その点はどんどんやっていただきたいと思うのですね。そのことを強く要望をいたします。  長官、こういう問題について公正取引委員会が取り組んでいるわけでありますけれども、今申し上げたように、手づくりというと、今のグルメ志向にも乗りまして、消費者の皆さんはちょっと高めのものがいいのかしらということで出回ってしまうということでありますので、手づくりにとどまらないのですけれども、表示の問題、ちょっと高く売るために業界の方もいろいろ知恵を絞り出すのでしょうが、それに消費者が惑わされる。特にハム、ソーセージについては大手メーカーなんですね。神戸のデータでもいろいろ出ているのですけれども、そういう意味ではやはり企業の姿勢が重要だと思うのです。長官、消費者行政を担当される経企庁でもあります。公正取引委員会のこうした問題についてぜひ側面から促進をしていただきますように要望を申し上げたいと思います。
  182. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 まさに先生指摘のとおりでございまして、実体とかけ離れた広告をしていたずらに消費をあれするということは極めて問題でございますので、実体に即したような表示にすべきだと思いますし、こういう問題につきましても国民生活を預かる我が庁といたしても十分に検討いたしまして、いろいろな機会を通じまして消費者の方々がミスリードされないように情報提供、PR等をやっていきたい、かように考えております。
  183. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 次に、厚生省に食品添加物問題でちょっと伺いたいと思うのです。  六十一年四月四日に食品添加物問題についての課長通達が出されておりますけれども、この通達の内容をまず説明してください。
  184. 内山壽紀

    ○内山説明員 食品添加物についての的確な情報を提供しその啓発を行うことは厚生省としても大変重要なことと考えております。その一環といたしまして、「暮らしに役立つ食品添加物」という財団法人経済広報センターが発行したものができ上がりましたものですから、その内容を検討したところ、食品添加物の有用性及び安全性などについて一般の皆様が大変わかりやすく理解できやすい内容で記載されていることがわかりまして、それを啓発活動の一環といたしまして都道府県に参考までに送付したものでございます。
  185. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 これが「暮らしに役立つ食品添加物」というパンフレットですね。今私は内容を説明してくださいということを申し上げたのですが、課長は趣旨を説明されました。通達の内容を私の方で読み上げましょうか。それとも課長の方で読み上げていただけますか。
  186. 内山壽紀

    ○内山説明員 私どもの方が四月四日に出しましたものは、各都道府県の衛生部に、「今般「暮らしに役立つ食品添加物」というパンフレットが(財)経済広報センターから発行されました。内容について検討したところ消費者の方々に理解しやすいものとなっています。貴管下で行う食品添加物関係行事等の資料として使用できるものと思いますので、参考までに送付いたします。なお、パンフレットのご要望については日本食品添加物協会が取り扱いしていますので申し添えます。」という形で出してございます。
  187. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そして、このパンフレットは、経済広報センター、つまり経団連が出している資料ということであります。これは厚生省が一緒につくったのですか、それとも内容について事前に何か相談があったのでしょうか。
  188. 内山壽紀

    ○内山説明員 つくることについては私どもの方に特段の相談というものはございませんでした。しかしながら、私どもができ上がったものについて内容を見ますと、従前厚生省がパンフレットとしてつくりましたものと中身が大変類似しておりまして、その内容をさらに具体化したものというふうに私どもは考えております。
  189. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 私たちは、こういうパンフレットを消費者に薦める、これは本当に納得できないのですね。例えば食品添加物の積極面をすごく強調しているわけですね。例えば十七ページの「食品添加物がなくなると」どうなるか。「都市の豊かな食生活は守れません。もし、食品添加物がなくなると多くの加工食品が店頭から消えてしまい、今日わたしたちが当たり前と考えているような、いつでも、どこでも、さまざまな食品を安定した価格で入手することは困難となるでしょう。」「つまり、食品添加物がなくなると、今のような都市の食生活は成り立たなくなるといえます。」こういうような、まさに食品添加物をなくしたい、少しでも少なくしよう、少なくしている食品がかなり出回ってきている、そういう時期にこれはもう逆行するようなパンフレットだと思うのですが、その点どうですか。
  190. 内山壽紀

    ○内山説明員 私どもが理解しておりますのは、加工食品の進展には食品添加物が寄与している部分というのは相当あるのだということと、それから、いわゆる食品の広域流通にはやはり時間等がかかりますし、そのときには食品添加物の役割というものも決して少なくないのだということを記載した内容であるというふうに私どもは理解しております。
  191. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 これは加工食品でも食品添加物が使われていないものはたくさんあるわけですし、別に添加物がなくなったからといって加工食品が店頭から全部消えるというものじゃないわけです。そういう点でも非常に不正確です。  それから、その次の十八ページに、「科学が安全をまもる」という項で、「最新の科学で安全性を保証しています。」「食品添加物は、このように、その時代の科学の進歩に合わせて、安全性が常に確保されています。」こういう言い回しになっているわけであります。  しかし、これまで食品添加物として指定されたもののうち、既に五十三品目削除されています。削除理由というのは明らかにされていないわけでありますけれども、大体安全性に問題があって削除されたものがほとんどだというふうに理解をしていいと思います。例えば発がん性などが問題にされているタール系色素、これがこの五十三品目のうち十八品目あります。それからそれ以外でも、発がん性が問題になっている、そういうことで使用がされなくなった食品添加物というのが随分あると思います。  例えばニトロフラゾン、ニトロフリルアクリル酸アミドとかズルチン、チクロ、それから亜硫酸カリウム、過マンガン酸カリウム、クマリン、臭素化油、パラオキシ安息香酸、それからAF2、サリチル酸、ちょっと読み上げただけでも結構そういうものがあるわけであります。つまり、過去に安全性に一応問題がないということで指定をされたものについても、後で問題があるということがわかって削除をされるということがあるわけです。今の三百四十七品目の中でも、安全性が問題ない、常に確保されている、そういうことが本当に言い切れるかどうか。  例えば東京都の条例では赤色の二号、この安全性について疑義があるからアメリカではこれは禁止をされている。ですから、疑義があるから安全性をちゃんと調べたそういうデータを出しなさいと業界に言ったところ、業界はそれは出ませんということで東京都では赤色二号は今製造が中止されている、製造をされていない。ただ、使っているものは出回っちゃっている。そういう条例の限界があるわけですけれども、そういうことがあるわけです。  それから私は当委員会で何度も指摘をしてきているBHAの問題、プロピレングリコールの問題、OPP、ビフェニル、これらの問題、みんなおるわけですね。常に安全性が確保されているからどんどんお使いなさい、そういうような資料を一方的に厚生省がこういう形で消費者教育としてパンフレットを普及する手助けをする、私は大問題だと思うのです。その点どうですか。
  192. 内山壽紀

    ○内山説明員 先生が今言われましたところにつきまして私どもはこのように理解しているわけです。つまり、私ども予算措置あるいは日常の業務におきまして常にその安全性の確保ということは最重要事項として業務に取りかかっているところでございます。それで、いわゆる最新の科学で私どもは安全性のチェックをしているというように御理解いただければ、そういう形から、今先生が言われたようなものにつきましては、過去に安全性に問題があったようなものあるいは使用しなくても済むようになったというようなものは積極的に排除していくという形でこの内容については常にチェックをしているのだというように御理解いただきたいと考えております。
  193. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 しかし、実際には、このパンフレットを読んだら、安全性が保たれているんだ、今のものは大丈夫なんです、どんどんお使いなさい、それ以外に読めないわけです。むしろ私たちは、こういう食品添加物については、国会の論議では、食品添加物のずさんな使用許可あるいは食品公害の被害を生み出したそういう反省から一九七二年に食品衛生法が改正をされました。その際に附帯決議が付されています。これはよく使われる附帯決議であります。食品添加物の安全性については、その時点における最高の科学的水準により常時点検を強化する。食品添加物の使用は極力制限する方向措置する。とりわけ諸外国で有害であることが実証された場合には、既に使用を認めたものについても、速やかに、その使用を禁止する等必要な措置を講ずる。しかもこの附帯決議では食品添加物の使用については極力制限をする、こういうようなこともついているわけです。それなのに、安全性が常に確保されている、だから添加物は安心ですから、どうぞそういう理解を深めてください、こういう通達、こういうパンフレットを消費者に薦める通達、非常に不適切だと思うのです。こういう通達は直ちに撤回をすべきだと思うのです。  ある自治体では、この通達に基づいて、消費者団体の集まりに、消費者の集まりにその資料を配ろうとしたそうであります。消費者が抗議をしてこのパンフレットは配られないで済んだ、そういうことがあるわけです。消費者に抗議されて自治体が撤回をしなければならないようなこんな内容のものを厚生省が何で配れというような通達までわざわざ出すのですか。まさに食品添加物業界寄り、食品添加物をどんどん使いたい、そういう業界寄りではありませんか。私はこの通達は撤回をすべきだというふうに思います。どうですか。
  194. 内山壽紀

    ○内山説明員 今申し上げましたように、先ほどの国会の附帯決議にもありますように、常に科学的に現在の水準において見直しをするという業務を実施していることについてはぜひ御理解をいただきたいところだと思っておるわけであります。したがいまして、私どもが、ここに書いてあることについては、いわゆる最新の科学で安全性を保証しているということにつきましては私どものあれとしては間違っていることではないというように理解しております。したがいまして、これにつきましては、決して食品添加物について一たん指定したらしっ放しということではなくて常に見直しをしているのだというように御理解願えればというように考えております。したがいまして、このいわゆるパンフレットをそのように御理解いただければ、このものについての内容は問題がないというように考えておるわけでございます。
  195. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 大体今言ったように赤色二号についても、現在指定されているものだって安全論争があるのですよ。PGだってそうだし、あるいはOPPだってビフェニルだってBHAだってみんなそうじゃありませんか。そういう議論があるものが指定されているわけですね。科学の結果を待っていて総合して人類に何らかの影響を与えるということがわかった、これじゃ遅いんですね。だから国会の決議があるんじゃないですか。それを添加物をこんな肯定するような、業界がPRを一生懸命するのはいいですよ、それは業界が独自におやりになるのですから、それを厚生省がわざわざ業界がつくった、経団連がつくった資料をどんどん消費者の集会におまきなさいと各都道府県に通達を出す、つまり上からの指示ですね、こんなもの許されないんじゃないですか。今消費者団体は一生懸命、例えば「食品添加物のはなし」、日本生協連でこんなパンフレットを出しています。一生懸命消費者の啓蒙をやっているわけですね。国会の附帯決議に沿ったそういうものをやっているわけですね。これに水をかけるようなものじゃないですか。私は絶対許されないと思うのですね。強く撤回を求めます。長官、いかがでしょうか。
  196. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 食品添加物につきましては、いわゆる食品の衛生また安全性の面から食品衛生法によって規制されておるわけでございますが、私も実はこのパンフレットをきょう初めて見たのですけれども、私は素人でございますから科学的な権威を持って言えるわけじゃございませんが、さっと見て、食品の製造、加工また保存等々の過程でいわゆる食品添加物を利用していることは数多くあるのじゃないかと思いますし、食品添加物を使ったから一概にすべていけないということではないので、それが人体等にどういう影響を与えるかということにつきまして先生からいろいろな議論があるよというお話でございまして、全くそうだと思います。しかし、食品添加物が入っているものはすべて望ましくないというふうに断ずるわけにもいかないということであろうと思いますが、いろいろなことがございますから、慎重の上にも慎重に進めたい、こういうことでございます。  当庁におきましても、昨年十月に第十九回消費者保護会議を開きまして合成添加物の再点検計画の推進等を決定したところでもございますし、今後とも関係各省といろいろと調査しながら、やはり必要でしかも無害な食品添加物というものも当然あると思いますので、有害なものは当然排しますけれども、やはり必要なものは必要なものとしてそれはそれなりに効果といいますか効用を認めていかなければならないのではないかと思う次第でございます。
  197. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 それは長官が言われるように、食品添加物についてすべてがわかっているわけじゃなくて、いろいろな論争があります。だからこそ私たちも、再点検強化、その点検をちゃんとしなさいよ、悪いものは悪いということでちゃんと見直しをしなければいけない、そういうことを強化するようにということは求めていますし、それにこたえていただくことはいいわけです。ただ、問題は、こういう業界が出しているパンフレット、しかも消費者団体がこんなものまかないでくださいと言っているようなものを、消費者に啓蒙するためにまきなさいという通達を厚生省が課長通達で出す、私はこんなことはあってはならないというふうに思うのですね。消費者のものをまきなさいという通達を出せということも別に私は言いませんけれども、それはおかしいですよ、業界のパンフレットをまきなさいという通達、そこを私は言っているので、長官のその辺の御意見を伺っているわけです。
  198. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 私も素人でよくわかりませんが、これを見る限り、食品添加物の必要な場合もあるな、こういう感じもいたしますし、率直に言って、だれがつくったということもさることながら、内容の是非が問題でございまして、だれがつくったからどうこうということでは必ずしもないのではないかなというふうに思うわけでございます。内容について問題があれば、当然だれがつくったものであれ厚生省としては厳正に修正を求める必要がある、こういうことだと思う次第でございます。
  199. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 ちょっと長官、さっきから内容について問題があるわけですよ、消費者から見れば。私たちずっと食品添加物をやってきた、取り組んできた人間から見れば、問題があるわけですよ。議論があるところなんですよ。安全性が常に確保されているなんという、そんなふうに言えないわけですよ。時代の進歩に合わせて常に点検はしていますよ。しかし、常に安全性が確保されているなんて言えないんですよ。言い切れないんですよ。だから問題なんです。こういうパンフレットを官庁が、厚生省が、国がまきなさいと地方自治体に頭越しにやるということ自体、そういう通達を出すというのは前代未聞なんですね。こういうことはやめさせますとはっきり言っていただきたいと思うのですね。
  200. 内山壽紀

    ○内山説明員 先生一つ、業界というふうに言われるのですけれども、これはいわゆる国の認可法人であります財団法人がつくったものでございまして、そこについては私どもも重々気をつけてやっているということだけは御理解いただきたいと思います。
  201. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 私は、ちょっと時間がなくなりましたので、質問を保留します。  それで、アフラトキシンの問題について、お呼びもしてあるので、ちょっと伺っておきたいと思います。  アフラトキシン、これは輸入食品にしか出ないものですね。猛毒でこれを食べたら発がん性がすごくある、一〇〇%のもので、大変危険なものですね。輸入食品に対する検査の手続の簡素化ということで、輸入食品の安全性が非常に言われているとき、こういう中で国内に流通している食物から都立の衛生研究所の調査ではアフラトキシンが出ている。特に、ハトムギ、トウモロコシ、ピーナツ、香辛料のナツメグ、今のグルメのあれじゃないですが、そういう食品から出ています。ですから私は、こういう問題について、輸入の段階できちっとチェックをするということで本当に本腰を入れてみんなが不安のないように対応すべきだということと、それから微量汚染について新たに指摘をされているところでありますが、この点についても検討してこれから対応していってほしいと思うわけですけれども、この二点について簡潔に答えてください。
  202. 大澤進

    ○大澤説明員 御承知のようにアフラトキシンにつきましては、かねてから、特に当初ピーナツ類につきまして水際でチェックをし、もちろん一定の基準を設定いたしましてチェックし、排除あるいは積み戻し等に努めているところでございますが、その後、ハトムギあるいは香辛料等についても最近出ているというような実態もわかりましたので、それらのアフラトキシンが含まれているというものにつきましても水際でチェックするよう既に通知を出して対応しているところでございます。そういうことで、今後ともこれらの発がん性のあるカビ毒については、食品に含有あるいは残らないように排除に努めるよう努力してまいりたいと思います。  また一方、第二点の微量のものについてもこれまた御心配の御指摘があったわけでございますが、私どももできるだけそういう汚染されたものを排除していくという考えでは同じ考えで当たっているつもりでございます。ごく微量のものももちろん今日どんどんはかれるわけでございますが、私どももこういうものについてはできるだけ安全の観点から対応しなければいかぬということで、そういうがんの関係の専門家にもお伺いして、これらがどの程度人間の体に入ってくるか、毎日の食品の摂取量とかこういうものが関係するわけでございますが、そういう要素を考慮して検討いたしたわけでございますが、直ちにそのごく微量のものについて排除するという現実的な必要もないのではないか、こういう専門家の意見ももらっております。そういうことでありますが、しかし今後とも輸入食品というものはふえていくという状況にありますので、こういうカビ毒の規制、排除については万全の態勢をもって臨んでいきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  203. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 終わります。
  204. 村山喜一

    村山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十分散会