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1987-08-20 第109回国会 衆議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年八月二十日(木曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 玉沢徳一郎君    理事 近藤 元次君 理事 鈴木 宗男君    理事 月原 茂皓君 理事 保利 耕輔君    理事 松田 九郎君 理事 串原 義直君    理事 水谷  弘君 理事 神田  厚君       上草 義輝君    大石 千八君       大原 一三君    太田 誠一君       木村 守男君    菊池福治郎君       小坂善太郎君    田邉 國男君       野呂田芳成君    森下 元晴君       柳沢 伯夫君    山崎平八郎君       石橋 大吉君    田中 恒利君       竹内  猛君    辻  一彦君       野坂 浩賢君    武田 一夫君       藤原 房雄君    吉浦 忠治君       滝沢 幸助君    藤田 スミ君       山原健二郎君  出席国務大臣         農林水産大臣  加藤 六月君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      甕   滋君         農林水産省経済         局長      眞木 秀郎君         農林水産省構造         改善局長    鴻巣 健治君         農林水産省農蚕         園芸局長    浜口 義曠君         農林水産省食品         流通局長    谷野  陽君         食糧庁長官   後藤 康夫君         林野庁長官   田中 宏尚君  委員外出席者         環境庁水質保全         局土壌農薬課長 吉池 昭夫君         厚生省生活衛生         局食品化学課長 内山 壽紀君         通商産業省基礎         産業局化学製品         課長      阿部巳喜雄君         自治省税務局固         定資産税課長  佐野 徹治君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君     ————————————— 委員の異動 八月二十日  辞任         補欠選任   前島 秀行君     野坂 浩賢君   佐々木良作君     滝沢 幸助君 同日  辞任         補欠選任   野坂 浩賢君     前島 秀行君   滝沢 幸助君     佐々木良作君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中恒利君。
  3. 田中恒利

    田中(恒)委員 短い時間ですから簡潔に要点を中心に御質疑を申し上げて、政府施策方向をお示しをいただきたいと思います。  昨日も十二品目牛肉オレンジ等当面の農産物貿易につきまして各委員からいろいろな意見が出ました。大臣は、この問題については終始自由化はのめない、こういう言明をされておるわけでありまして、改めて大変御労苦が多いわけでありますが、この方向処理をしていただきたい。特に、当委員会幾たび農畜産物自由化枠拡大を含み、これ以上はすべきでない、こういう決議をいたしておるわけでありまして、この決議の趣旨を体して強力に粘り強い交渉を続けていただきますように冒頭に要請をしておきたいと思います。  私は、昨日各委員の御質疑を細かくお聞きをしながら一つ二つ気にかかることがございますので、この際私の意見も含ませて申し上げて、大臣局長の御見解を承りたいと思います。  一つは、これまでの幾たびかのこの種の交渉を通して懸念されました点は、我が方の交渉に臨む態度に乱れが出てくる、つまり農林水産省相当これについては見解を持っていらっしゃるわけでありますが、時により官邸あるいは外務省、通産省、さまざまな各省間の特に農産物貿易については違った意味動きもなきにしもあらずであります。この点について、今回は非常に複雑であるだけに、腹を構えてまず政府内部のこの問題に対するまとまった意思を仕上げて臨んでいただきたい。特に農林水産大臣はその所管責任者として責任を持って今まで述べられた方向処理していただくように重ねてお願いを、御要請を申し上げておきたいと思うわけであります。この点についてまず一つ。  時間がありませんから続けてこの問題について第二番目は、今度の交渉は今までと違って非常にやり方が多角的というか複雑ですね。これまでは相手国との主として二国間協議でやったわけでありますが、今回は多国間協議というかガットというか、こういう場が入り込んでおる。品目によっては我が国は米の二国間協議には応じない、こう意思を示しておる。アメリカ自由化をしなければ十二品目では二国間協議に応じないと言っておる。あるいはガットでも審判の俎上に上っておる。そして、このオレンジ牛肉は時期が来たからいや応なしに何らかの話し合いをしなければいけない、こういう状態になっておる。その上にOECD閣僚会議理事会方向に沿ったサミットにおける分野の動きもある。こういうことを考えると非常に複雑で厄介であります。それだけに大変御苦労が多いわけでありますが、やはりこの基本的な立場というもの、重点というものはどこにあるのか。これはここでどうこうというわけではありませんが、私はやはり農林水産大臣OECDでコミュニケに盛られたあの考え、あの考え基本にして世界の各国とのいわゆる貿易のあり方、この問題が軸になって進められるべきだと私は思います。  ですから、私はむしろ二国間協議よりも、それは牛肉にしたってアメリカよりもオーストラリア、オレンジだってアメリカよりも果汁などはブラジルが圧倒的に多いわけでありますから、多国間にまたがっておるわけでありますから、そういう場が本来でなければいけないのではないかと思いますが、そのやり方はさまざまな手法が凝らされるわけでありますから、最も効果的な話し合いのできる方向で進めてもらいたいと思いますが、その辺のことについてももし大臣にお考えがございましたらお聞かせをいただきたいと思います。  そしてもう一つは、昨日の答弁で眞木局長さん、ともかく特にこのアメリカとの二国間協議、円満にこの話し合いの場に着いてもらうようにいろいろ御苦労されておるという御意見であったわけでありますが、これは現実的かつ円満な解決という言葉は何度か使われた。その言葉ニュアンスの中にやはり常識的な解決、そういうことになればテーブルに着くわけでありますから、これは自由化はいかぬ、しかし枠の拡大はしようがない、こういうことになってどんどん枠がふえて、実質自由化と変わらないような方向になっていく、こんな心配が依然とあるので、そういうニュアンスをかぎ取りますが、あえてここではとやかくは申しません。しかし現実的な常識的な解決処理をしたい、話し合いをつけたいということであれば、私などはやはり日本農業実態というものを前提に踏まえて、これ以上入れれば大変なことになるという状況品物によっても違うしいろいろあります。それから、一つ品物を崩せば流通というものは関連しておるわけでありますから直ちにそれが影響していく、こういうことになるわけですね。ですから現実的な解決策といってもそんなに甘いものではない、こういうふうに私は思います。だから、何となく枠を少々ふやしてというようなことで臨まれておるのじゃなかろうかという気がしておるものですから、この辺の場合には日本の農村、農業実態をよく踏まえて需給状況生産条件などを十分に踏まえながら、個々品目までは入りませんが、十分に検討してもらいたいということを要望意見として申し上げておきたいと思います。  以上の三つ気がついたものですから、私の意見を交えながら申し上げましたが、関連をして大臣なり局長で御答弁いただければ幸いであります。
  4. 眞木秀郎

    眞木政府委員 お答え申し上げます。  まず第一に、現在いろいろ懸案となっております問題につきまして外国交渉する場合のいわゆる政府方針なりやり方について統一をとっていくという話でございます。  御指摘のように我が方、政府として対外交渉に臨む場合には、それが農産物にかかわる問題でございましても、関係の省、例えば外務省とも十分打ち合わせをする必要があることは確かでございます。また、各省それぞれの立場がございます。対外協調といったものを重んじたいというようなところもございます。しかし我々といたしましては、常々申し上げておりますように、我が国農業の健全な発展調和のとれた形で守るべきものは守るという確固たる方針で、事前のそういう協議等尽くしましてそれから対外的な交渉に臨むという態度で臨んでおるわけでございます。今後とも御指摘の点に十分留意をしてやっていきたいと考えております。  それから第二の点で、米国との農産物協議なり交渉に関しまして、例えば十二品目は今ガットとそれからそれに追加して二国間の協議をやろうということを我々が主張しておる。牛肉かんきつは二国間、それからその他例えば米の問題については将来ガットニューラウンド多国間の場で取り上げられるということで、方針なり対応の仕方がさまざまであるという御指摘でございます。  この農産物貿易に限らないわけでありますけれども、こういう一般の貿易問題の案件処理につきましては通常二国間だけで行うか、あるいはガットという紛争処理あるいは多国間での取り決めなりルールをつくるという場で行うか、その二つやり方があるわけでございますけれども、御指摘のありました牛肉かんきつあるいは十二品目等につきましては、それぞれの問題が生じることとなった背景あるいはその後のアメリカとの話し合い経緯等の違いがございます。対応がこちらが違うということは、アメリカ側の要求もあり、アメリカ側から見てもまたさまざまであるということにもなっておるわけでございます。そういうことで、非常に複雑な様相を呈しておることはそのとおりでございますけれども、それぞれの問題につきましてやはりきちんとした対応方針により話し合いをつけていきたい、このように考えております。
  5. 加藤六月

    加藤国務大臣 冒頭おっしゃいました政府内部の問題でございますが、私は機会あるごとに倉成外務大臣にいろいろ農水省考え方あるいは農林水産委員会における各先生方の御意見等を十分にお伝えし、また国内外において外務省の皆さんにもいろいろお世話になるので、機会を設けてお願いをしたり、話をしたり、あるいはまた農水省としての意見を強く伝えるということを行っておるところでございまして、政府全体として足並みが乱れることのないよう一致結束して当たるように努力いたしておるところでございます。  先ほど経済局長からお答えいたさせたような経緯経過があります。基本的には、我が国国際化時代対応して、一層均衡のとれた国際経済関係形成に努めていくということが我が国全体としての重要な課題となっておることは田中委員御存じのとおりでございます。そういう中における農業問題あるいは農産物貿易問題というのがあるわけでございますが、改めて私が申し上げるまでもありません、農業は食糧の安定供給を初めとして国土、自然環境保全地域社会振興寺我が国経済社会の土台を支える重要な役割を担っておるという一つのはっきりした観点を持って折衝しておるわけであります。  それから、農産物貿易あるいは農産物市場開放問題、これにつきましても、昨年農政審の報告をいただきましてこれを尊重してまいらなければならないと考えておるわけでございます。そしてまた、ガットにおける新しい農産物貿易ルール策定作業等にも積極的に参加、貢献するとともに、その状況を踏まえて我が国農業の健全な発展との調和を図るということを基本に適切に対処してまいりたい。これが端的に申し上げまして基本的な考え方でございます。  そして、世界の情勢を冷静、沈着に見ながらやっていかなくてはなりません。個々の問題は先ほど局長が申し上げましたが、例えば十二品目はもう田中委員御存じのとおり、ガットの場にパネルを設けて、パネルの場で相当作業が進捗いたしておるわけでございます。これは予断を許さない場面になっております。したがいまして、そういう過程にありながらも、我々としては二国間の協議の場も持っておきたい、こういう気持ちがありまして、先般眞木局長アメリカに行かせた、こういう経過。それから、牛肉かんきつあるいは米の問題については今までお答えいたしておるとおりのところでございますので、よろしく御理解、御支援のほどをお願い申し上げます。
  6. 田中恒利

    田中(恒)委員 大臣が言われたような基本線でずっと進めてください。なかなか相手のあることですから、こういう公式の場で十分に詰めにくい問題もございますから、いずれ機会を見ていろいろな問題の発生ごとに取り扱わせていただきたいと思います。  主として六十年に改正いたしました果樹農業振興法の問題を中心に少し議論を展開してみたいと思います。  一つ温州ミカン、つまり特定作物として指定をしておりますが、この六十二年産生産出荷安定指針というものを政府は先般決定をいたしました。まず、ごく簡単で結構ですからこの内容をお示しいただきたいと思います。
  7. 浜口義曠

    浜口政府委員 ただいま先生お話しの本年度におきます温州ミカン対策でございますが、昭和六十二年産温州ミカンにつきましては、ことしが表年に当たるということもございますし、さらに本年の気候が年初から温暖に推移したという状況にございます。そういうことで、六月十五日の統計情報部公表の六十二年産ミカン開花状況によりますと、開花の数が極めて多く、生産量が前年産、これは二百十七万トンでございますが、それに比べまして大幅に増加すると見込まれるということでございました。一方需要につきましては、果汁消費天然果汁需要増高によりまして微増が見込まれますけれども、生果の消費量減少傾向にあるというようなことから、ほぼ前年並み程度だろうというようなことでございまして、そういたしますと、生産需要の間に著しく均衡を失するおそれがあるわけでございます。  また、生産者団体方々からも強い要請がございまして、ただいま先生お話がございましたように、改正果振法の第四条の三第一項の規定に基づきまして、法改正後初めて計画生産から計画出荷に至るまでの一連の措置を講ずることを内容とする生産出荷安定指針を定めたところでございます。この指針におきましては生産目標を二百二十万トンとしておりまして、当面これを達成するために産地において強力に摘果を推進していただいております。農林水産省といたしましてもこれに対する助成を行っているところでございます。  なお、計画出荷につきましては、この摘果と申しましょうか計画生産の動向を見まして適切に対処してまいる考え方でございます。これは同時にこの出荷指針の中に掲上させていただいておるという状況でございます。
  8. 田中恒利

    田中(恒)委員 今お話のあったようなことで、ことしは表作でもあるということで今のところ二百六十万トン収穫があるだろう、こう言われておる。そこで、これを二百二十万トンということで四十万トンは摘果、つまりもぎ取って捨てるというわけですね。温州ミカンは既に二割ぐらいの減反、転換をやらせておるわけですが、それにまたことし摘果で四十万トンということで、今現場では摘果作業が行われておりますね。私自体お盆休みに二、三時間自分のところのミカンをもぎ取ってきたわけですが、正直言って、百姓が今までつくって、もうこのくらいになった、もう色がつくような段階だ、それを三つあるのを一つにして二つを捨てるわけですから、それはなかなかやり切れぬものであります。ですから、摘果という作業はなかなか予定どおりいかぬという結果が例年のあれで出ております。しかし、ことしは相当力を入れていらっしゃるから、私どもの県なんかでは、飛行機で上から摘果摘果と毎日おらんでおる。そういう状況ですからある程度進むと私は思います。  それは、やはり今の果樹の危機というものを敏感に受けとめておりますから、いい品物を出すためには適当な量を出さなければいけないということでやっております。皆一生懸命やっておる。農家というか百姓気持ちになってみればまことにやりきれない気持ちでやっておるわけです。そういうことでやっておりますが、しかし、いわゆる計画生産をやって、そしてその次の段階計画出荷をやる、これは法律で決まっておるわけですが、これをやれば大丈夫なのかという保証があるのかどうか、この問題なんです。  昨年は、御承知のように裏年ではあったが二百十四万トン台のあれがありました。これは、今まででは物すごい不作であったわけです。従来の例からいくと一割収量が、市場出荷が減りますと、逆に大体一割ぐらい値段が上がっておった。これがずっと続いておった。逆に、昨年は一四、五%から二割ぐらい減ったけれども値段は同じように減った。これは戦後初めてであります。こういう状況が出ておる。しかも、それは果振法に基づく計画的な生産出荷の体制の中で起きておるということがあるわけなんですね。そこで、この法律に基づく生産出荷というものをやっても効果がないのではないかという心配一つは出てきておるわけであります。それに答えなければいかぬわけであります。一体、このとおりやっていけば恐らくこの程度価格水準になるだろうという想定でこの計画がつくられたものかどうか、これをやれば大丈夫だと言い切れるのかどうか、局長さん、この点いかがですか。
  9. 浜口義曠

    浜口政府委員 ただいま先生お話しのように、農家方々が丹精込めてつくられたミカンを、生育状況がかなりいい状況において生産計画的に調整するということにつきましては、それぞれの育成された農家方々痛みといったものがあることは十分承知しているところでございます。  私ども、そういう意味におきまして全体の需要供給のバランスを考えながら、特に、これまた先生指摘のような、昨年は二百十七万トンというような数字であったにもかかわりませず価格が低迷したということがございます。これの原因等につきましては、需要供給ということでございますけれども、具体的な、ミカンの大きさが、小さかったとか、あるいはこれはやや間接的なものであろうかと思いますけれども、昨年風邪が大いにはやったというようなこともございまして、そういうものの影響もあるんだという説をなす方々もいらっしゃるわけでございますが、複合的な意味において価格が低迷したわけでございます。そういう意味におきまして、今回におきましては、先ほども触れましたように、生産者団体方々が一方では現実の苦しみ、痛みを持ちながらも、どうしても立派な大きなミカン、良質なものを生産者として供給していこうという意欲に燃えられまして、みずからの発意によりましての御陳情もあったわけでございます。  これを受けまして、私どもといたしましては、この段階につきまして、先ほども触れましたように、六十年におきましては計画出荷という段階だけでしたけれども、改正していただきました果振法に基づきまして摘果から出荷に至るまでのトータルな意味におきまして制限をしていただこう、摘果をしていただこうということでございます。  摘果についてはなかなか難しいということも見込まれますが、これも先生おっしゃったように各地域において今盛り上がっております。そういった摘果を見た上で、さらにこの七月八日に出させていただきました指針等につきましては、計画出荷というものの二段構えになっているわけでございます。私どもといたしましては、第一段階の現在ピークに盛り上がっておりますこの摘果運動といったものを十分にやっていただきまして、その上でのこの二段構えという形で一応の去年以上の成果を得るべく期待といいますか、見込みまして、現在の中央果実基金等からの助成等もさせていただいているという状況でございます。
  10. 田中恒利

    田中(恒)委員 これは果樹だけではありませんが、自由価格形成をする農産物については後でいろいろな理由をつけて、こうであった、ああであったと言われるわけでありますが、大きな問題は、いわゆる急激な果実品輸入増、これがやはり大きな柱だと思うのです。政府の方は余り言わないわけだけれども。しかし、もう言わないというわけにはいかぬのじゃないでしょうか。我が国果実の総生産量は恐らく五百四十万トン程度だと思います。ことしどうなるかわかりませんが、昨年は百四十万トン台の輸入になっておる。この一年間にさらに物すごい速度で入っておりますね。これはもちろん円高という経済環境の中で。恐らくことしは百五十万トンを超して百六十万トン台ぐらいまで上がるのではないでしょうか。そうなると、日本果実生産の約二七、八%から三〇%近い量が輸入果実で占められるということになる。商品の価格は、大体三分の一の市場シェアを持てばほぼ価格決定権を持つと言われておるぐらいであります。そういう状況市場全体に広がっておるということなのであります。ですから、この点を見落として需給計画とか出荷計画とか生産計画とかいったってなかなか効果が出ないというところがやはり問題なんです。極めて単純です。しかし、その単純な原点を見失うと、いろいろなことをやっても成功しないと私は思うのです。やり方はいろいろありますよ。ありますが、そこのところを押さえて考えてもらわなければいかぬと私は思う。  私たちは、先般の果振法改正の際にいわゆる第五条を追加をいたしまして、外国果実輸入によって国内の果実生産者に重大な影響を与える場合には、各号の施策をとってもなお克服できない場合には政府は適当な措置を講じなければいけない、こういう法律をつけておりますね、もう一々条文を読みませんが。私は、この条文について政府見解を聞かなければいけない。どういう事態になった場合であるが、あるいはどういう条件の場合にこういうものが考えられるのか。今日この一年間に、例えばグレープフルーツなんかは昨年の六月に二万八千百六十一トン入っておった。これがことしの六月には三万三千五十九トン入っておる。約五千トンぐらいふえておる。バナナは、昨年の六月には六万六千四百七十八トン入っておる。これがことしは七万七千七百三十七トン、六月に入っておる。ちょうど一万トン上回っておる。キウイフルーツは、昨年六月は六千百七十八トン、ことしの六月は一万二千百十三トン、これは二倍以上であります。こういう状態が今起きておるわけですね。だから果物屋に行ったら外国果物の方がよほどシェアが大きくなっておる。こういう状態を踏まえて、この果振法五条というものはどういうふうに考えたらいいのか。私は、この際改めてこの条文についての政府見解をお聞きをしておきたいと思います。
  11. 浜口義曠

    浜口政府委員 先生指摘の改正果振法の第五条の条文関係でございますが、外国産の果実または果実製品輸入によって国内産の特定果実が著しく低落または低落するおそれがあり、その結果、果実生産出荷に重大な影響を与えるおそれがある場合において、果振法に基づく生産安定に関する措置によっては事態を克服し得ない場合には、政府事態を克服するため相当と認められる措置を講ずることを定めたということでございまして、昭和六十年の改正果振法の際、国会におきまして加えられた条項であるということから、極めて重要な規定だというふうに認識をしております。  ただいま先生おっしゃったようにその現実需給といったようなものにおきまして、御指摘のとおり現状の需給の一方の方で、国民の生活多様化というようなものから熱帯果実等々の輸入といったものが相当入っておることは事実でございます。そういったようなものにおきまして、先ほど申し上げましたように今回の温州ミカンにおいては、昨年二百十七万トンという状況でございましたけれども需要といったものを二百二十万トン、これにつきましては先生指摘のこういったミカン等をめぐる果実の動向あるいは国民の動向というものも踏まえて考えたわけでございます。  この条項は先生も御指摘のとおりでございまして、条文にありますように、果振法の出荷の安定に関する措置によっても事態を克服しない場合において講じられるものというふうに理解をしております。全体の中におきまして、需給計画の中に、果実をめぐる状況というものを十分私ども思いを込めたつもりでございますが、現段階におきましては、当面需要に見合った生産を確保するという、摘果を強力に推進することにしております。また農家方々もそれをめぐって、これも先生が御指摘でございますが、意欲を燃やしていられるわけでございます。そういう意味で、出荷目標量に即した安定的な出荷を総体的に考えていくということが現段階で一番重要ではないかというふうに考えるものでございます。
  12. 田中恒利

    田中(恒)委員 逃げたいのだろうけれども、私、今の答弁ちょっとわからぬのですよ。あなた方の方で出荷計画をせられて、去年もやった、ことしもやった、去年も失敗した、失敗という言葉がいいか悪いか別にして、効果が出なかった。逆に、去年は戦後初めて出荷は減ったが、価格は同じように減った、こういうことになっている。ことしこれをやってまた同じような事態になれば、小玉が多かったとか質がどうであったとかということよりも、私が今言ったように、三分の一からの外国果物が入ったこの影響が出てきておるということは事実だと思うのです。その現実を認めて、国内施策として何らかの対策を立てないと、国際的に外国との競合がますます激しくなるのですから、体質を変えていくためにそういう条件をつくらないとだめだ。この法文は、そういう意味で国内の措置をさらに強化をせよという意味なんですから、そういう意味でこの条文について農水省内部でもっと検討をして、そしてことしの状況などを勘案して、やはりどうしても今の出荷安定計画だけではやれないということが一年、二年と積み重ねて証明されたら、あなたのところは大胆にこの法案に基づく措置をすべきだと思うのです。大臣どうですか。
  13. 浜口義曠

    浜口政府委員 今私申し上げましたように、この国会におきまして改正されました条項の意味、その趣旨というものを十分私ども受けとめているわけでございます。ただ、先生がおっしゃったように、温州ミカンに関連いたしましての去年からことしの経緯ということを踏まえまして、私ども、昨年につきましては裏年であったということで発動はしていなかったのですが、ことし初めて、改正果振法を議決していただいた後、生産摘果を含む出荷までの一連のものをきちっと決めたわけでございます。私どもこういう中で、現実の足腰の強い生産というものを踏まえまして、現状の厳しい状況対応していきたい。その上で、私ども十分この条文というものについての精神を踏まえて事態対応していきたいというふうに考えているものでございます。
  14. 田中恒利

    田中(恒)委員 私時間があと三、四分しかありませんので、実はこれ詰め切れませんが、事情不鮮明であればいろいろな角度から資料や対案というか考え方を出して議論したいと思いますよ。これ、よほど考えておいてもらわないと、今の時点が発動せにゃいけぬかどうかというような問題は別にして、こういう状態、こういう局面が出た場合には考えざるを得ないというような程度まではやらないと、これは何にもならないのです。そんなことで済む問題ではないと思うのですよ。  ですから、この条文については十分担当部局で考えてもらいたいし、これは政治的な要素もないことはない。私もよくわかっているがね、大臣。これはどう見たって果実についてはこういう異常な状態だし、また輸入がこれからふえますよ。この半年、一年の間に急増しますよ。そういう状態を踏まえて、早く国内の体制をつくり上げることに力を入れてもらいたいと思うのですよ。  第一、この前のオレンジ牛肉自由化のときに四十五億の緊急対策事業というのをつくって、基金をつくったでしょう。聞くと、その基金がまだ三十何億残っておるというわけだ。そんなみみっちいことでこの危機を乗り切ることはできないでしょう。これは恐らく緊急対策事業ということで出たんだから、今度はもう次の交渉に移っておるわけですから、その間にいろいろな手を尽くして、対応力を強めるような体質をつくらなければいけないが、金利も一年に一億ぐらいついておるはずですから、ちびちび細かく見てみたら、どこの県に二百万だ三百万だ、こんなことで消費拡大とか品質向上とか、そんなものがそんな程度の補助金でできるんじゃないのですよね。その辺はもっと思い切った考え方でやってもらわないとこれは乗り切れないわけですよ。そういう点がございますから、あわせて指摘をしておきたいと思います。  時間が余りありませんから流通局長さんにお尋ねをしておきますが、私は生鮮食料品全体として物の流れがこの数年の間に相当変わってきたと思うのですね。私は卸売市場法の改正を、たしか今の事務次官が市場課長さんのころに一緒にやった経験があるのですが、そのときから中央卸売市場一本の価格形成は問題がある、市場流通というものを強めて、そして中央卸売市場価格均衡せにゃいけないということを言った一人ですけれども、確かに今日量販店というものが進出をしておる、宅送というものが異常な形で伸びてきておる。これは米にしても畜産物にしても果実にしても、農村の食料品というものの非常に大きな流通ルートをつくってきておるのですね。こういう体系の中で今日の市場流通というものを改めて行政的にも再検討もしてみにゃいけぬ時期に来ておると思うのです。  例えば中央卸売市場というものは、その日に入った品物はその日に市場へ上げて、そこで競りをして、その競りでもって価格を決めるというのが市場の原則でしょう。ところが今日神田にしても、中央卸売市場、地方都市を含めて入ったもののうち大体三割と言われている。あるいは四割、人によっては五割と言う。それはもう前日に既に入荷されて、量販店が行っておる、こういうものができるような状態になっておるのですね。だから競り取引というものは空洞化しておる。その日入った品物が全量市場に上場されていない、こういう状況が出ておるわけですね。いいものは先に売れておるわけですね。いいものは先に売れておるわけだから、残った品物はやはり低い値段の競りの価格になりますよ。それが全国の農畜産物市場価格として翌日新聞に発表されていく、こういう状況になっておるわけですからね。こういう問題などについてメスを振るっていかなければ、今日の流通体系の合理化はできませんよ。  これはいろいろ問題はあるけれども、農民、生産者が取る農業の収入というのが三二%から二八%になり、二五、六%にもなっておるんじゃないでしょうか。そして流通のコストがどんどん膨らんで、付加価値がそっちへ入っておる。こういうものを変えないと、やはり国際対応力を強化して外国と太刀打ちできると言ったって、簡単にできない。市場流通の中にもその問題はあると思うのですよ。この点について担当局長さん、どういうお考えで臨まれようとしておるか、この際お聞きをして、これも一つの検討課題でありますが、十分に対策を立ててもらいたいと思っております。
  15. 谷野陽

    ○谷野政府委員 ただいま御指摘のように、最近の都市化や消費者行動の変化などに伴いまして量販店の販売額は大変増加をしてきておることは御指摘のとおりでございます。数字につきましてはいろいろ、量販店とか大型店とかスーパーというようなことで、定義がそれぞれの統計で異なっておりまして、必ずしも明確ではございませんが、総需要として二〇%から三〇%というものが、販売ルートといたしましてそのような形態を通って販売をされておるというふうに私どもも推計をいたしておるわけでございます。  これらの量販店におきます青果物につきましては、中央市場から仲卸を通じまして買い入れておるものが中心になっておるわけでございまして、仲卸が量販店をお客さんといたしまして競りに参加をいたしまして、これを量販店へ回す、これが中心になっているというふうに私は理解をいたしておるわけでございます。しかしながら量販店の販売額が増加するにつれまして、量販店サイドでは数量を確保したい、あるいは品ぞろえを確実にしたい、安定的に供給をしたいというような要請がございまして、このような流通実態にどのように対応していくかということはただいま御指摘のように新しい事態であろうというふうに私ども考えておるわけでございます。  市場法におきましても、当初御議論いただきました当時から、そのような問題が一部念頭にあったわけでございまして、貯蔵性があり規格性があるものなどにつきましては、市場法あるいは同規則におきまして一部例外の規定を設けておりますし、また予約相対取引の方法も一定限度で認めるような制度になったわけでございます。  私どもといたしましては、ただいま御指摘のようないろいろな新しい問題が出てきておるわけでございますけれども、消費地の実態生産出荷の形態あるいは品目別の特徴等というようなものを十分見きわめまして、まずただいま申し上げましたような、法に定められました諸制度の運用の的確な実施を図ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  しかしながら、ただいま御指摘がございましたように、市場法の考え方というのは競りが市場取引の原則である、これは御指摘のとおりでございまして、私どもといたしましても、市場に対する信頼を確保し、需給実勢に即した価格形成と迅速な物的流通を確保するために、これらの諸制度の運用に加えまして、事態の変化に即した流通関係施策の展開につきまして今後十分検討してまいりたいというふうに考えております。
  16. 田中恒利

    田中(恒)委員 終わります。
  17. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 野坂浩賢君。
  18. 野坂浩賢

    野坂委員 久しぶりに質疑をさせていただきます。  今の農業を取り巻く情勢は内外ともに厳しいということを加藤農水大臣は常に口にされております。そして、私は農政問題については素人なんだがというお言葉もありますけれども、私どもから見て、歴代の農水大臣と比べて、より以上農業に理解を持ちながら農家の経営の安定と農業の所得向上のために全力を尽くそうとする考え方に立っていらっしゃるんではなかろうかと思いますが、私の言っておることに間違いがあるかどうか、農水大臣、まずお答えいただきたい。
  19. 加藤六月

    加藤国務大臣 我が国の農政が置かれておる厳しい立場を十分認識しまして、何とかして農家の皆さん方が意欲を持ち、汗を流し努力していくことが報いられるようにしてあげたいと一生懸命頑張っておるところでございます。
  20. 野坂浩賢

    野坂委員 しかし、事志と違って、三月の乳価の価格の引き下げ、あるいは小麦四・九%、米五・九五%と相次いで農業所得というものは減少しつつあるというのが現状であるわけであります。農家にとっては極めて遺憾であろうと私ども考えております。これだけの米や麦の値段が下がってくれば、どうやって生き抜くかということを我々政治家も農業者自身も考えていかなければならぬということは当然であります。  そこで、七月の米価審議会の際にも農水大臣は、青空交渉でこう言いました。農機具や肥料の引き下げをやっていかなければならぬ、輸出価格や国内価格値段が違うということは断じて許せない、ぜひ解決をするということをマイクを通じてお述べになりました。その前に私どもは、野党の皆さん全体と加藤農水大臣のお部屋でこれらの農機具、肥料の値段問題をやったときにも、机をたたきながら激しくその点についての是正をやられてまいりました。この肥料なり農機具の輸出価格と国内価格の格差というものはあると判断をしてお話しになったわけでありますから、今日までどのような対策を立て、どのような実効が上がってまいったか、その点についてお伺いをしたいと思うのであります。
  21. 浜口義曠

    浜口政府委員 具体的な数字でございますので私の方から簡単に御報告をさしていただきます。  先生指摘のように、農業資材等についての大きなウエートを占めております中に肥料がございますが、肥料につきましては、最近の円高等々を踏まえまして肥料メーカーのいろんな合理化の実行、あるいはそれに対します実需者といいますか農協系統の団体の総意というようなものから全農が交渉を行いまして価格形成が行われているわけでございます。  そういう意味で、例えば六十一年度におきましては、全体の中で肥料年度は七月から始まっておりますけれども、一〇%の引き下げを行っておりますし、さらに円高等の推移等を踏まえまして二%の実施というものが、期中改定がことしの一月から行われておるところでございます。さらに、この点に関連いたしましては、本年の七月におきまして六十二年度が発足をしたわけでございますが、それに関連しまして五%を上回る肥料の改定ということが行われております。  こういったような状況を踏まえまして、また一方、ウエートの高い機械等につきましても、輸入機械等につきましては五%を中心にいたしましての引き下げが行われている。あるいはさらに、安全フレームを農作業の安全から実施をしていただいたわけでありますが、それに関連いたしまして三%内外の引き下げというものも検討していただいたという状況にございます。
  22. 野坂浩賢

    野坂委員 浜口さんがお話しいただきましたのは私たちが農水大臣交渉する以前の経過ですね。例えばあなたがおっしゃったのを集約をすると、昭和五十六年に四・四、五十七年に七・一、五十九年に一・六、六十年に〇・三二、六十一年に一六・一六、この間の五・七、これですよ。そうでしょう。これは、農水大臣交渉する以前の経過をあなたは今お述べになった。私はそれ以後のことを聞いておるのです。そのときに、格差があるか、格差がある。それではそれを是正しようということが論議の焦点でなければならぬ。そこで農水省から資料をいただきました。私どもから見ると極めてあいまいで極めてずさんな資料である。しかしあなたと、農水大臣を含めて論議をするためには同じ資料でやらざるを得まい、こういうふうに考えております。  そこで、「農業機械及び肥料に関する資料」をお持ちだと思いますが、十ページの肥料のところをごらんいただきますと、硫安の国内価格は、昭和六十一年二万四千四百五十円となっていますね。FOBの単純平均値は八千三百十九円。輸出価格は約三分の一だ。そして尿素は、国内価格でトン当たり四万六千九百円、FOBの単純平均値は四万四千五百五十七円、ほとんど接近。これは輸入価格ということであろうからこれだけ接近しておると思うのです。  ところが、こういうことが書いてある。あなた方はなかなか抜け目がない。国内取り決め価格とFOB単純平均価格は今申し上げたようなことになりますが、両者を単純に比較することは極めて困難であるという理由をいっぱい書いておるのです。だからできませんよということであります。いわゆる輸出港渡しの価格の単純平均とか袋の問題とかありますけれども、それなれば、それを国内のような包装にしてやった場合には一体どの程度変わってくるのか、格差があるはずだ、それは幾らですか。
  23. 浜口義曠

    浜口政府委員 ただいま先生お話しの点でございますが、この具体的な肥料の比較の場合におきまして私ども書かせていただいておりますのは、日本価格と輸出価格におきまして、ここにありますようなデータの出所がまず違いますけれども、格差があるということでございます。  この格差があるということは、一つは硫安が国際商品だということで、これは前々から先生指摘のとおりのことでございまして、大臣も申し上げたことでございますが格差があるわけでございます。我が国におきます肥料の流通形態の大きなものは、まず硫安を単品で使うという形よりも高度化成といったものに数字で申し上げまして六割という形で使っておりまして、使っております我が国の国内のものと国外のものがまず違うということでございます。  それから、今先生指摘のような国内価格とFOB単純平均価格と書かせていただいておりますものは、もう一つつけ加えさせていただきますと、同じ硫安におきましても我が国の場合は純粋の白い色の粒状品でございまして、輸出の方は言うなれば、やや黒いと言っては悪いのですけれども色がついたような、粒状のものではない粉のようなものでございます。そういう意味で違っております。  ただ、先生指摘の点に関連してやや結論的なことを申し上げますれば、肥料の場合には国際価格の差があるということは厳然たる事実でございまして、そういったようなものの中におきまして、輸出価格でやっているものと同じようなものを国内で使うという場合には、これまた先生指摘のように同じような条件で国内で売るということでなければいけないということでございまして、大臣の御指示もあり、これにつきましては、同じような形態であるものについては同じようにやるということで全農を指導し、全農もこの点で対応するということになっております。
  24. 野坂浩賢

    野坂委員 袋の問題とか輸出港までだという議論。もう一つ非常にわかりにくくなってきたのは、外国に売り出す硫安というのはちょっと色が黒い、粒もあれば粉もある。しかし日本の場合は白く、ラインが二のものが三になっておる。したがって、原価に上乗せするんだということが言われておるわけです。原料は同じだ。  そこで、それらの諸条件を勘案し計算をしてかぶせていくと、例えば昭和六十年を見ていただきますと、FOBの単純平均価格は一万三千三百二十八円です。これに今あなたがお述べになりました諸条件の格差を入れますと八千四百円、これは一ドルが二百四十円のときですよ。そうすると、国内の換算価格というのは二万二千三百五十円になる。そうすると、国内価格の三万円と比べて約八千円の差があるのじゃないのか、なぜそれだけ下げることができないのか。あなた方は、比べることは困難だ、品物が違うし運賃形態なり運送経費も違う、そのことだけを言って単純比較をさせない、だからやむを得ぬじゃないのかということだけでは今は逃げられぬ。これだけ農業情勢は厳しくなった。農家の皆さんにどうメリットを与えるか、そのためには農機具も肥料も安くして生産費コストを下げるということを我々は考えていかなければならぬ。それだったらそのとおりの計算をして、厳密に言えば七千三百円、この程度違うのじゃありませんかということを申し上げておる。六十一年の場合、先ほど言いましたように二万四千四百五十円なんです。国内価格も下がってきた。しかし、FOBの場合は八千三百十九円、三分の一だ。諸条件の格差をその中に入れると約五千七百円。そうすると一万三千円で、約一万六百円も違うじゃないか。この辺をなぜ直さぬのか、なぜ指導しないのかということをお聞きしたい。
  25. 浜口義曠

    浜口政府委員 私どもるる申し上げております点は先生指摘のとおりで、具体的な肥料におきます国際価格動きと国内の問題の中の背後に、運送賃の算入の仕方とか包装形態とか代金の支払い等々があるわけでございます。一方では、先ほど御報告を申し上げましたように六十一肥料年度あるいは六十二肥料年度から価格が大幅に下がっております。今先生指摘のように、この差額については従来から国際商品というものと国内向けの固有の商品の間の格差がありますので、そこにつきましては我が国流通の中におきまして国際的なものと同じものを実際に使いたいという人がもしあるとすれば、ことしから輸出品と同等の国内向けの取り扱いを開始する、そういうことに系統の方でも決めていただいたということでございます。そういう意味で前々から申し上げましたように、一方では国内生産というものを値引きをするという努力をしておりますけれども、もし外国のものと同じようなものを使いたいという農家の方がいらっしゃれば新たにこれから系統でも同等のものを使う、こういう形になったわけでございます。
  26. 野坂浩賢

    野坂委員 もう時間がありませんので多くを申し上げることはできないのですが、私は率直に申し上げて、今まで使いなれた硫安は白い粒状のものがいい、なかなか輸出のものは使わないということを知っておるのですよ。しかし、同じ原料でやるのですから、それに合わせた工程から考えてみて積算の根拠を出すということで、その格差を引っ張り出してもらいたいということが一点。  それから、今お話があったわけですけれども政府が原価を聞いてそれを承認するのですね。例えば肥料価格安定臨時措置法というものがあります。国民の皆さんは政府のこの原価について余り信用してないですね。その原価に基づいてこの安定措置法というものができておる。こういう時代になってくると、私は肥料二法案はもう廃止した方がいいのじゃないか、むしろ廃止すべきだと考えておる。そのことが生産農家にはプラスであろう、またひいては消費者にメリットがある、こう考えておるわけでありまして、この点は農水大臣、十分御検討をいただかなければならぬと思いますが、いかにお考えでしょうか。
  27. 加藤六月

    加藤国務大臣 野坂委員から今提案を承ったところでございます。今後よく検討してまいりたいと思います。  また、それと反面に、ちょっと申し上げておきたいことは、米価のときに野党の皆さん方との折衝をさせていただきました。私は、トラクター、肥料の問題に先生方の方から触れられましたからお答えしておったわけでありますが、そのときに私はいろいろ意見を承り、担当局の方にその指示をおろしたわけでございますが、誤解があってはいけませんからこの席をかりてもう一度申させておいていただきますと、要は専業農家が使うトラクターあるいはまた兼業農家の使うトラクター、あるいはそれに対する売れ行き、コスト、それらのものが生産者米価に及ぼすウエートの高さ等々のお話をいたし、そのときに私は、たしか冷房つきのトラクターが一番よく売れるようになっておるのが不思議だということを一つは申し上げたと思います。それから輸出用のものは、あれは農業用に使うのではなくして、ガーデントラクターらしい。そしてタイヤもつけない、いろいろ機械もつけない、あるいはロータリーもつけない。そして港渡したということでの差も相当あるようでありました。もし輸出価格と国内の農家に渡す価格とに勉強してみて大変な開きがあるなら、これはゆゆしき問題であるからやってみます、こう言いました。  はっきり申し上げまして、この席をかりて申し上げますが、差はない。今の数字その他はよく知っておりますが、トラクター、農機具については差はないということを、この席で私は申し上げておかないといけないのではないか。  それから肥料の問題についても今いろいろお話があり、御提言がありました。その中で私も頭に残っておるのは、我が国には梅雨という特殊なものがあって、それに伴う問題等いろいろあるというお話をあのときにいたしたと思うわけであります。  ただいまの御提言は、今後検討させていただきます。
  28. 野坂浩賢

    野坂委員 せっかく農水大臣がトラクター問題についても言及がありましたので。今の我が国状況というのは急速に機械化が進んでおるわけです。二十年前と比べて、田植え機等は三万二千台というのが約五万台になっておりますし、トラクターの乗用というのは一万九千台が四十二万三千台になっておる。非常な伸びが示されておりますので、しかも米の値段シェアといいますか、占める率というのは農機具は三一%を占めておる。同じ資料で、浜口局長の方からちょうだいしておるのですが、全国の平均の農家の購入価格は、十五PSが今百三十二万一千円ですね。三十五PSの場合が二百七十六万円、FOBの単純平均値というのは三十PS未満で六十八万一千円、大体この三十五PSの国内価格と比べると、四倍ですね。四分の一なんです。今も加藤農水大臣が、価格は変わらぬ、冷房してあるしフレームがついている。タイヤや電装品、部品、こういうものでなかなか比べようがないから、まあ一応こういうふうに本体を報告をしておくという格好です。  見てみると、やっぱり四倍というのは高過ぎるんじゃないのか、だれもがそう思いますね。一遍、部品等組み合わせてみて、格差はどの程度あるかということを局としてやはりつかんでもらいたい。そうしなければ、いや、大体これはやり方が違うんだから比べようがないんじゃないかとか、しかし、二百七十万と六十八万一千ということになれば、これほどの価格差で部品が約三倍にもなるだろうかということに、私はなるだろうと思うのですね。だから、これらの問題については再検討して、国際価格と国内価格を、同じようなところまで一応持っていって格差を比べてもらいたい。私は、硫安をいろいろの学校の先生に頼んでありましたら、先ほど申し上げましたように、ざっと一万円くらいの開きがあるんじゃなかろうかというふうに資料が出てまいったものでありますから、トラクターについてもぜひ御検討と、さらに深くこれらの問題の深部に入って調査いただき、格差解消、輸出価格並みという格好にしていただくようにお願いをしておきたいと思います。  時間が来ましたから、ごく簡潔に申し上げます。食公害の問題についてまずお尋ねをしたい、こう思うのです。  食公害といいますのは、農水大臣や担当の皆さんはよく御存じだと思うのですが、この間アメリカのたばこが一億六千万本日本に入ってきて、農薬の残留度が高いということからお返しになったですね。そして廃棄処分にされた。これほど厳しいというのが現状であります。  そこで、きょう私が質問をしたいと思いますのは、この間八月六日に、淡路島の洲本市にあるモンキーセンターに参りました。多くの仲間の皆さんとも一緒でありましたが、ここで起きた現象というのを、自民党の皆さんもおいででありますから、一応詳しく御報告をして御理解をちょうだいしたいと思うのであります。  まず、あそこのモンキーセンターの中に奇形猿がたくさん歩いております。手も足もないですね。これは三十一年前に大分県の高崎山で発生をしてから、発生率というのは〇・四なんですね。それに対して、この淡路島のモンキーセンターで生まれたのは三百二十頭のうち七十頭が手や足がないのです。サリドマイド児ですね。そして、最悪のときには、この淡路島では四〇%の奇形猿が出てきた。全国平均で一〇%という格好です。  なぜそんなに奇形猿が出始めたかということであります。これは手と足に集中してあらわれております。はっておりますね。ころん、ころん、ころん、ころん、転んでおります。これは遺伝か環境がということが議論になりまして、日本獣医畜産大学の和秀雄助教授あるいは大阪大学の中南先生、これらが研究をされましたが、遺伝ではないということだけは明確になった。やっぱりそれは疑惑じゃないか。何を食ったかといいますと、外国の、アメリカの小麦を食い始めてからそういう奇形猿が出始めたのです。何を食わしておるかというと、小麦と大豆、外国から入ったもの。それに地元でとれる、今田中さんが言ったミカンを食っておるのです。その中で出てくる。ただ、人間と食う物は同じなんですが、違うのは、我々は煮て食うあるいは加工してうどんやパンで食っておるということが言えます。ここの猿はみんな、生で食っておるのですね。そこで出てくるのではないかということで、いろいろと解剖して調べてくれと言ったら、マラソンという農薬、スミチオンという農薬、これらが随分出てきたというんですね。スミチオンというのは六・四PPM、マラソンというのは三・六六PPM、こういう残留度というものが体内から検出をされた。ところがいまだに原因がわからぬのです。なぜかというと金を出さぬからであります。自分が私的に研究はできるけれども、これだけの差で、例えば熊本県の水俣病のときでも、人間に行く前にネズミがほとんどやられておるということを知りながらも調査はしなかったのです。人間に出て初めて出てきた。同じことを言っているんですね、政府は。  環境庁、おいでですか。あなたのところはえさが悪ければえづけをやめればいい、こう言っているのです。実に明確な言葉ですね。そして厚生省の皆さんも、今二人くらいしかそういう係がおらなくてとっても難しい、人間にかかわり合いが出たらやるけれども、それまではできぬ。予算がないというんですね。そして厚生省もえづけに問題があり、えさづけをとめたらいいではないか、こういうことを言っていらっしゃるけれども、そうじゃないのです。今申し上げたことはみんなテレビに出ました。「奇形ザルは訴える」ということでテレビに何回か出ていますね、ごらんになったと思いますが。こういう猿ばかりおるのです。だから人間にかかわり合いかないとは言えません。そしてその解剖をするに金がなくてできない、これでいいだろうか。スミチオンの場合はうどんに出た、マラソンの場合はビスケットにたくさん出た、そう言われておりながら、人間に余りかかわり合いかないから、金がないという理由だけで私はそれらの問題を放てきするわけにはならぬ、人間にかかわり合いが出てまいりました。だからそういう点については、一遍淡路島のモンキーセンターに、そう遠くないですから行って、大学の先生の話を聞いて、スミチオンやマラソンにそういう結果が出ておるというのが本当に現実なのですから、原因の究明と同時に、人間の生命にも影響があるかないかということを十分に調査をしていくべきではないか、私はこういうふうに思いますが、農林省の立場、厚生省の立場、環境庁の立場から、時間が過ぎておりますのでもうこれ以上質問することはできませんが、誠意ある御答弁を期待して私の質問を終わりたい、そう思います。
  29. 後藤康夫

    ○後藤政府委員 お答え申し上げます。  私ども食糧庁は輸入小麦につきまして用途ごとに直接特定の加工業者に売却をいたしておりまして、このモンキーセンターに向けて売却をした実績ございません。したがいまして、このセンターが輸入小麦を原麦のまま相当まとまった量を恒常的に入手してえさとして使っているということはちょっと考えにくいわけでございます。かねてこのお話がございましたので、私どもとしましても同センターに対しまして小麦の入手先なり現物を見せていただきたいということを数回にわたって要請をいたしたところでございますが、協力が得られませんで、使用されている小麦がいかなるものか確認ができない状況でございます。  なお輸入に際しましては、農産物検査法に基づきます輸入小麦の検査規格に合っているかどうか、これは国の検収検査も兼ねてでございますがやっておりますほかに、御指摘の安全性の問題もございますので、食品衛生法に基づいて決められております基準、それからまたEDBにつきましても暫定残留規制値が規制をされております。そういった安全性につきましても、厚生省さんの方で必要なチェックをしておられますけれども、食糧庁といたしましても輸入に際してサンプルを抽出いたしまして農薬残留の検査を行っております。現在までのところ基準値に適合しないものが輸入をされたということはないというふうに私ども考えておるところでございます。
  30. 内山壽紀

    ○内山説明員 小麦につきましては、現在食品衛生法に基づきましてBHCとかDDT等の残留基準を設けましてその農薬残留にかかわります安全性の確保を図っております。しかしながら、食品輸入の増大などに伴いまして基準を拡充する必要があるという考えから、昭和六十年度から残留農薬の実態調査を行いまして、今規格基準整備のための計画を年次計画的に進めております。御指摘のスミチオンとかマラソン等を含めまして残留農薬基準につきましては、関係省などの協力を得ながら今後農薬残留実態等の把握に努めまして、国際基準等を踏まえながら規格基準の拡充を図っていきたいという考えでございます。
  31. 吉池昭夫

    ○吉池説明員 農薬につきましては登録制度になっているわけでございますけれども、この登録に際しましての安全評価については環境庁が所管をしておるわけでございます。その際に先生指摘ございましたような催奇形性の試験、こういうものを十分検討を加えて評価をしている、こういうことでございます。したがいまして、今後とも科学的知見の集積を図って安全評価については万全を期していきたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  32. 野坂浩賢

    野坂委員 時間がありませんから質疑ができませんが、今の答弁についてはそれぞれ不満であります。したがって、原因探求をして人間とのかかわり合いを調査をする。したがって、現地調査等を十分に行うと同時にその原因究明をされることを強く三省の皆さんに要求をして私の質問をこれで終わります。ありがとうございました。
  33. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 滝沢幸助君。
  34. 滝沢幸助

    滝沢委員 大臣、御苦労さまです。委員長初め委員の皆さん御精励、敬意を表します。日本農業がかつてない危機に直面しておりますときにその衝に当たられる加藤大臣の労を多とするものであります。  実は私は、民社党のアメリカ農業調査団の一員としまして去るほどアメリカに渡りましてリン農務長官、トレイシー大統領特別補佐官、ウォリス国務次官初め九人の方々にお会いしまして日本農業の実情を訴え、アメリカ側のおっしゃることも承ってまいりました。しかしその姿勢は、政府がいろいろと御苦労されておりますものに対しましてむしろこれを鞭撻し、激励し、かつはいかほどなりともお手伝いをいたそうという志よりするものでありまして、出発に先立ちまして農林省、通産省、外務省、それぞれ御意見を承った上で参上したことでありますから、その意のあるところをお酌み取りいただきまして、この機会をおかりしましていささかの大臣に対する御報告を兼ね実情も申し上げて、そして所信を承りたい、こういう気持ちで本日時間をおかりしたわけであります。委員長、御配慮ありがとうございます。  さて、私たちは、まずリン農務長官にお会いしました。この間に実は問題の七月二十一日の上院における包括貿易のあの法案が七十一対二十七という決定的数字をもって可決されたという状況のもとであります。しかもこれに対して上下両院の協議会等を開き、そして出てきました結論に対して大統領が拒否権を発動するものかどうか。しかし、拒否権を発動したときにこれが覆されるおそれなしとしないこの状況でございますから、極めて深刻なる状況であります。  しかし、このときにリン長官が結論的におっしゃることは、アメリカ日本に向かいまして決していかほどの農作物、何トンの米を買えと言っているのではない、あるいはまたアメリカの農作物だけを買えと言っているのではない、要するに日本市場を開放していただきたい、こういう結論であります。実は私たちは、日本アメリカ産の農作物の輸出の三分の一を買っているじゃありませんか、もう十分でございましょうというふうに率直に申し上げているわけでありますが、全然これは通用いたしません。こういう状況のもとでありました。  ところで大臣、いろいろと御苦労されているわけでありますが、これら農作物自由化を求めてきておりますアメリカに対しまして今日まで御努力されたその結論と今後の展望を一応御披瀝願いたいと存じます。
  35. 加藤六月

    加藤国務大臣 民社党議員団が先般訪米されまして日本の主張を堂々としかも執拗にやっていただいたことに対しまして、私は心から敬意を表し、また感謝を申し上げる次第でございます。議員外交というものを身をもって実践していただいたということで、本当に感謝いたしております。  アメリカと折衝をする場合は、滝沢委員も御経験されたと思うのでありますが、政府、議会、議会も上院、下院、そしてまたそれぞれの委員会、これでやるのが大変骨が折れる中でおやりいただいたと思うわけでございます。そういう中で我が日本としては今までいろいろ委員会で申し上げてきておるわけでございますが、農業というものは各国それぞれの特殊性がある。そしてまた各国それぞれの国境保護措置を講じておる。それは、国土、自然環境保全し、あるいは地域の活性化等々もろもろの関係がある。これを認めた上でお互い折衝しなくてはならないのだということ。そしてまた、ある面で申し上げますと我が日本世界最大の農産物輸入国であり、世界農産物貿易に最大に貢献しておるのは我が日本である。こういう立場外国との折衝の際には私、基本的な姿勢として貫いていき、また農林省のそれぞれの関係者もその線に従って必死の努力をしてくれておるところでございます。
  36. 滝沢幸助

    滝沢委員 ありがとうございました。  そこで、リン長官との会談は四十五分にわたりましたが、そのようなことでありました。しかし私はここにいささかの希望のようなものを持ちましたのは、トレイシー大統領特別補佐官に会いました感じにおいては、議会と国務省そして大統領府と三つそれぞれにいささかのニュアンスの差があるように受け取りました。特に議員の諸君に会いますると、実は彼らが率直に申し上げておりましたことは、皆さんも日本の議員さんならわかるでしょう、私たちは選挙区の要求、要望、圧力に従わざるを得ない、こういうことを申しておりました。特に米の生産地から出ておられる議員の方々にそういういわばくどきを聞いたわけであります。大統領府といたしましては、これらにつきまして例の包括貿易法案のごときもまことに困ったものだという言い方をしているわけでありまして、これがさっき申し上げました大統領の拒否権ということにもつながってくると思いますが、この間の事情を考慮しまするときに、あの議会の大きな圧力、そして決定的な数字、これに対しましていささかまた違う感じの国務省、さらにそうしたことよりももっと日本との関係、西側の協調と団結ということにウエートを置いて考えている感じの大統領府というものを考えまするときに、大臣どうでしょうわ、これは日本政府・与党、野党挙げて、官民挙げて取り組むときに、私はやはり一つの局面が開けるのではないかという感じもするわけであります。  ただしかし、全体の感じとして私が反省をいたしてまいりましたのは、アメリカにとりまして決して米だけではなくて、申すまでもなく例の工業生産物等にもつながってきまするし、また防衛につながってきまするし、いわば四十数年間の戦後というものの総反省の上に立った一つのことというふうに聞いたわけであります。その言葉が実は、例えば自由化をいたしましたときに日本の皆さんがアメリカの米がだめだと言って買ってくださらないならそれも仕方がないのです、いわゆる経済競争自由の原理に立とうではないかという言葉になってきていると思って帰ったのであります。そのような意味におきまして、大統領の特別の政治的判断というものに期待を寄せることは望みないものでありましょうか、あるいは一縷の望みは託することができましょうか、いずれでありましょう。
  37. 加藤六月

    加藤国務大臣 上下両院それぞれあの法案をまとめたわけでございますが、承るところによりますと、この九月八日から両院議員協議会が開会せられる、そして上院、下院の協議会へ出席するメンバーも大体内定したようでございますが、今までになく数が多い協議会になるようでございます。そういう中で大統領府が果たしてどこまでイニシアチブがとれるのか、我々はそれに期待する面もたくさんあるわけでございますけれども、反面、我が日本としてもそれに対してどういう協力をして大統領のイニシアチブがとれるのかということを考えなくてはいけないというのが一点でございます。  それから、ちょうど今アメリカ議会はどうも自然休会中のようでございまして、承るところによりますと、今月末にかけてアメリカの議員団がそれぞれ三組ないし四組我が日本に来られるようでございます。このときに我々もあらゆる方法、手段、機会を通じて日本立場というものを説明し、理解と納得を得るように努力をしなくてはならぬ。これは政府だけではなくして各党の、先ほど感謝申し上げましたが、ひとつ議員外交の面も十二分に発揮していただきたい、こう思うわけでございます。またある面ではアメリカ側に言うべき点、アメリカ農業政策あるいはまたアメリカの保護措置あるいはアメリカはかつて世界のパンかごと言われておった、シェアが下がった原因等についても日本側から言うべき点は言わなくてはならぬ。要は日本は、国際国家日本として国際協力、国際協調する中でこれから生きていかなくてはならぬわけであります。そして、冒頭申し上げました日本基本立場、特に農業に対する立場というものも強く持っていかなくてはならぬ。ここら辺で大変厳しい、難しい、困難な選択の場に日本は今置かれておる。国民、政府、国会挙げてこの問題に真剣に取り組むためにあらゆる手段、方法を講じなくてはならぬと考えておるところでございます。
  38. 滝沢幸助

    滝沢委員 ありがとうございました。そのようなあらゆる機会を通じまして政府が御苦労されていることにつきまして、我々単なる批判的立場ではなくて、野党としての責任をも果たそう、いわゆる外交は水際という姿勢に立っての志でありますから、どうぞひとつお手伝いできまするように用いてちょうだいしたいと思います。  そこで、先ほど私は、アメリカにとりましては農作物はつまり工業生産物の半面である、ないしは防衛そのものに対しての側面であると申し上げたのでありますが、反省しまするところ、日本におきましては、例えば自動車産業に働いていらっしゃる皆さんは消費者という立場に徹底していらっしゃいまして、これが農作物、つまり農民の生活と一体だというふうになかなか理解しにくい面がございます。いわんや、防衛費がGNPの一%云々と言われておる中で、これと農作物交渉とのかかわりのごときは何人もこれを顧みざるところでありますが、その点、私はアメリカに渡りまして日本の姿勢というものをいわば反省させられて帰ったのであります。いかがなものでありましょうか。  特に、ウォリス国務次官にお会いしました。いろいろ四十数分にわたって話している中に、我々は食糧安保、これは農家の皆さんおっしゃっており、あるいはまた政府においても理解されていることかもしれませんが、これを申し上げましても全然通用しませんね。私は政治家の一つの信念といたしまして、食糧、教育そして防衛、この三つだけはいかなる事態があろうとも自前でなくちゃいかぬ、よその国の支配を受けてはいかぬという信念でありまするが、しかしこれはなかなか今通用しない。実は党内においても通用しない面もありましているのでありますが、しかし、私はこれは譲らざるものと信じているのであります。  ところで我々が食糧安保、つまり日本は、自分の米が高かろうが安かろうが、いざというときのためにせめて主食ぐらいはみずからこれを確保しなければならぬという姿勢だというふうに申しますると、向こうから返ってまいりまする言葉は、直接には言いませんが言外に、そうならばどうして大事な防衛そのものをアメリカにおんぶしているのか。つまり、イラン・イラクのあの厳しい状況の中で、石油を運ぶ船すらもアメリカが守っていてあげるのだから、いわゆる安保体制の中で米のことも、食糧のこともひとつ安心してアメリカに任せなさいよということでございますわな。これは直接には言いませんが、そのようなニュアンスであります。  さらには、ならばそれほどに日本が安保ということを考えて食糧のことを考えるならば、どうしてココム違反のごときものが出てくるのか。例の機械をたたいたり焼いたりしたのは本当にどうかと思うけれども、これはアメリカ内でも余り評価を得てないようでありますが、しかし、それにしてもこのアメリカの姿勢というものはやはり私たちは厳しく受けとめなければならぬことだと思います。大臣、食糧安保というものは、食糧をただ単に農政の上で生産過剰だから安保という言葉をかりてこれをおっしゃっていることなのだろうか、それともいわゆる真に国を守るという立場でこれをおっしゃることなんだろうか。もしもそうだとするならば、先ほど申し上げました防衛そのものないしは例のココム違反、こういうことについて、本当は日本国内には余りどうとも思っていないというのが普通の認識じゃありませんか。こういうことについてアメリカがどうも納得いかない面があるのじゃないでしょうかね。いかがなものでしょう、ひとつ大臣の感じられたところをおっしゃってちょうだいしたいと思います。
  39. 加藤六月

    加藤国務大臣 私は閣僚として、農林水産大臣として初めてOECD閣僚理事会に出たわけでありますが、そのときに二十四カ国の閣僚理事会でまとまった言葉の中に、フードセキュリティーという言葉をはっきり入れました。アメリカも代表は閣僚数名、それにベンツェン財政委員長等々もおいでになっておりましたが、全体で合意したのは、フードセキュリティーという言葉をあの宣言文の中に入れるのに合意したわけであります。そのフードセキュリティーという言葉日本語で翻訳した場合には食糧の安定供給という言葉で翻訳をいたしたわけで、食糧安保という言葉はとらなかったわけでございますけれども基本的に考えなくてはならないのは、我が日本世界先進国の中で食糧の自給率が一番低い国である。それとまた今度は農産物農業を見る場合に、輸出を中心とした農業をやっておる国々の立場と、自給率が低くてそして輸入相当頼っておる国の立場というもの、これはおのずからあるわけでありまして、そこら辺の問題をはっきり言わないとアメリカの方はなかなか理解しない。  そしてもう一つは、これはこういう席で申し上げていいかどうかわかりませんが、私は参議院の予算委員会で若干触れたことがありますが、アメリカ貿易管理法ないし農業法の中には、いろいろな条件が整えばいつでも輸出禁止ができる法律がある。ここら辺の問題は、日本の国民に対し安定的に食糧を供給していく責任のある立場の者にとっては納得いかないということも、実はアメリカ側に対しては言っておるわけでございます。そこら辺、私も農林大臣として行ったとき以外にも随分厳しい言葉を受けております。おまえの国の工業が進出してきておれの会社はつぶれた、おれの子供は安全保障条約のもとに三沢へ行って日本を守ってやっておる、日本の政治家ならおまえはこのことについてどう考えるかという言葉もたびたび聞いたことがあります。そういう中で日米農産物交渉というのをやっていかなくてはならぬ。そこで、民社党の議員団の先生方が本当によく我が日本の主張をやっていただいたということについて、私一人よりか多くの関係の皆さんがたくさん行ってやっていただいて、それぞれの立場で強くおっしゃっていただくということが、今私は日本にとっては一番大切なときに来ておるのではないだろうかと思います。  それから話が後先になりますが、国民の主食を中心とする食べ物に対するある程度の備蓄ということは、あるいは安定供給ということは、これは中曽根総理も本会議でおっしゃっておりますが、政治の原点であります。安定供給を怠るようなことがあってはなりません。私たち日本は今飽食の時代でありまして、そういう点に対する感覚が薄らいでおるのではないかという気持ちもありますけれども、この安定供給していくという政治の原点だけは、私は夢寐にも忘れてはならない、その立場で今後農政を、あるいは外国との折衝をやっていこうと考えておるところでございます。
  40. 滝沢幸助

    滝沢委員 どうも御苦労さまです。  そこで、時間がなんでありますが、私たちはカリフォルニアの米の生産実態も拝見してまいりました。時間がないですからくどくどしく申しませんが、結論としまして、仮に市場開放されましたときに、日本人が食べるに適する米というのは極めて少量なものでありまして、これはアメリカにおいてすら、売り出したら二週間で売り切れるというものであるということを言っている。さらに、これは増産をしろといってもなかなか増産体制はない、水不足であり、かつは農作技術の問題もある、こうおっしゃっているようでありますが、ならば、逆に言うと、輸入をのんでも大したことないのかな、特に、いわゆる日本人が食べ得る米の値段日本のコシヒカリとを比べれば大体倍半分、これに対して輸送費をかけ、かねがねしますると似たり寄ったりの価格になって、仮に日本の店頭にあらわれた場合にどうなのかというようなことも考えられるわけであります。つまり一面大変楽な感じもしまするけれども、しかし、一たん入ってきますると、今大臣が言われましたように、かつて十年前に大豆が、安心しておりましたら、大豆はことしは売りませんと言われて参った日のことも考えられるわけであります。  どうでしょう、仮に政府アメリカの圧力のもとに農作物、特に米等の輸入をのむとするをらば、ことしは何トンというような言い方でなさるのだろうか。そうならば、先ほど冒頭申し上げましたように、アメリカはそう言っているのじゃない、全面的に自由ということをやってくれと言っている。ニュアンス相当違うけれども、仮にそれらのことが克服されて百万トンなら百万トンということになったときに、減反はさらに農民に強化されるものであろうか、いろいろなことが案じられるわけであります。結論的には、この米の輸入に対して拒否し得る自信が大臣おありかどうか。仮に不安だとするならば、それがのまれる形はいかがなものが想定されるか、その結果減反等に及ぼす影響はいかがなものであろうかということでありますが、どうでしょうか。
  41. 加藤六月

    加藤国務大臣 米問題につきましては、たびたび本会議並びに衆参両院の農水委員会でお答え申し上げておりますが、二国間の協議をする考えはありません。もう米の重要性については私が改めて申し上げるまでもございませんが、この席ではっきり申し上げておくのは、二国間協議考えておらないということでございます。  それからまた、民社党の議員団もおっしゃっていただいたようでございますが、衆参両院における自給決議というものが本会議決定しております。国権の最高の決議機関であり、唯一の立法機関である国会での決議であるわけでございますので、国内産で自給していく方針を今後とも堅持していく考えでございます。
  42. 滝沢幸助

    滝沢委員 アメリカ側も、二国間の協定等をいたさずに、いわゆるガットの場に期待しているようであります。しかし一面また、承ってきましたところで実は驚きに値しまするのは、我が国内におきましては、農家に対する補助金は全く過保護だという言い方をされて、いわば国の財政赤字の原因は挙げて農政補助金にありというようなことになっているのであります。しかし、アメリカに参りまして感じましたことは、アメリカでも米を生産調整している。生産調整をしている農家につきましては、向こうは大まかですから細かいなにをしませんで、五万ドルと言っていましたか、日本でなにしますと七百五十万円。私はよく数字を調べておりませんが、日本で何百万円という減反補助金をもらっていらっしゃる農家はまずないのではないかと思うのでありますが、いわばアメリカでも過保護、その国内の声は高いでありましょう。そこでガットに向かって、すべてのガット加入国が農業に対する補助金等をやめようではないか、こう新提案をされているのであります。これが合意されれば日本も、農家の皆さんの要求はよくわかりますけれども、国際的約束でありますから農業の補助金は切らざるを得ません、こうなるのでありましょうが、ここら辺のことについてはいかがなものでありましょうか。アメリカも、できるとは思わないけれども提唱しているものかどうか、日本はそうした場合に、ガット等の立場においてどう提唱されようか、その辺のことをひとつ漏らしてちょうだいしたいと思います。
  43. 眞木秀郎

    眞木政府委員 お答え申し上げます。  先般アメリカガットの新ラウンド、ウルグアイ・ラウンドにおける農業についての提案を行ったわけでございます。これにつきましては、ただいま委員指摘のように、これを提出した際のアメリカ大統領のコメントにもありますように、最も野心的なものであるというような表現がありまして、各方面の論評も、現実的ではないというようなものを中心にして、まず、アメリカガットにおける農業交渉を促進させるためにそういう提案を、論議を活発化させるためにしたものであるというような批評から、アメリカは今国内の農業不況のもとで大変多額の財政支出を強いられている、これを何とかしなければいけないということからこれは本気で考えているというようないろいろなコメントがございます。  これに対しまして、この問題につきましては、今後各国の提案がそれぞれ出た段階で議論が行われていくわけでございますけれども、我々といたしましては、この提案がガットの場で出されました際に、具体的な提案という形ではございませんけれども農産物貿易についての原則なりそういうものの考え方日本側として披露いたしました。  その精神と申しますのは、先ほど大臣が御説明申し上げましたように、OECDあるいはそれを裏打ちいたしましたベネチア・サミットの宣言等にもありますように、農業考える場合に、単に経済性だけではなくて食糧の安定供給、それから環境保全地域における雇用といった農業外の要因も考えて行うべきである、したがって、単にすべてを自由化するということでは不十分であって、現在ガットには、一定の要件のもとで例えば輸入制限も認められておるわけでございますけれども、この要件をもっと現実的で適用可能なものにする、そういう問題も取り入れながら議論すべきであるというような主張を日本としては行っているところでございます。したがいまして、今後もう一方の大国でございますEC等も提案をしてくると伝えられております。各国の提案が出そろいました段階で、我々といたしまして、いわば我々と考え方を同じくするような国々ともよく連携を図りながらその対処に誤りなきを期してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  44. 滝沢幸助

    滝沢委員 どうもありがとうございました。ひとつ頑張っていただきたいと思います。  大臣、いろいろと御意見を承りましてありがとうございました。時間の制約もありまして十分に意を尽くしたとは申せませんが、とにもかくにも、日々の新聞、テレビの情報を気にしながら不安におびえておられる農家方々が安心してその生業にいそしむことができ、しかも希望を持って後継者に夢をつなぐことができるような農政の展開を、特に焦眉の急であります。アメリカとの交渉等に当たってちょうだいしたいと思います。かつは、国民的合意のもとに、その国の食糧の自給体制の確立というものは、ただ単なる農政のことではなくて日本国政の基本であるというような面につきましてなお強調してこの衝に当たっていただきますよう、御健闘を期待したいと思います。  大臣、御苦労さまです。委員長、御配慮ありがとうございました。委員の皆様、ありがとうございました。
  45. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 水谷弘君。
  46. 水谷弘

    ○水谷委員 内外ともに大変厳しい農林漁業をめぐる情勢の中で、来年度、六十三年度の概算要求の作業を今鋭意進めておられるわけでございますが、昨日も大臣の御答弁がございましたけれども農政審の報告をいよいよ本格的に実現するために、これから我が国の特に農業についてはそれを担っていく担い手を中心に来年の予算の骨格を組んでいきたい、このような方向性について伝えられているわけでございますが、その具体的な概算要求の方向性、それについて最初に大臣にお尋ねをしたいわけでございます。  大変いろいろな報道がございまして、三十一年ぶりの米価の引き下げ、またそれ以外にも、昨日も食管法の一部改正についての審議がございましたが、内外価格差、いわゆる価格政策の中で国民が納得できる、理解ができるような価格誘導ということを中心にしていろいろな農産物価格がこれから切り下がっていくのではないか。そういう状況の中で、これは確かに内外価格差がございますので、生産性を向上させながらその価格を国民が納得できる方向に持っていくということは非常に大事なことでありますけれども、そういう大変な思いをされる生産者に対して六十三年度の農林水産関係の予算が、農家が一生懸命努力するに値する、政府も本気になって取り組んでくれているなという方向性が明確に出てこなければいかぬと私は思うわけであります。ところが、良質米奨励金なども二〇%から五〇%ぐらいは大蔵の方でカットさせるのだというようなことまで言われたりしておりますと、本当に今後どういうふうに希望を持って生産活動に従事していけるか、大変な不安というものがどうしても先に出てまいります。  そういう意味で私がお伺いしたいのは、一つは、担い手を中心にした編成を具体的にどうされるのか、さらに、言われている良質米奨励金の取り扱いについてはどういうふうに対応されていくのか、そして、六十二年度補正予算から導入をされてまいりました日本電信電話株式会社株式売却収入による国費償還型事業に関するいわゆる公共事業、これは基盤整備が中心というふうに言われておりますが、この基盤整備に対しては具体的にどう取り組んでいかれようとしているのか、そういう点を含めて概算要求に対する今の基本的な取り組みの姿勢について最初にお伺いをしておきたいと思います。
  47. 加藤六月

    加藤国務大臣 昨日もお答えいたしたわけでございますが、八月末の概算要求提出に向けて現在鋭意検討作業を進めておるところでございます。御質問になりました個々の問題につきましては担当の局長、長官からお答えいたさせたいと思いますが、いずれにしましても、農林水産業の体質強化ということと地域の活性化のための施策、これを円滑に推進が図られるよう最大限の努力をしていくのが一番大切である。そしてまた、今夏生産者米価を決めるときのいろいろな関連事業というもの、これらについても誠意を持って一つずつ実現していこう、先般の補正予算でもそれぞれそういう線を打ち出しましたが、六十三年度の概算要求においてもさらにそこら辺を努力していきたいと考えておるところでございます。
  48. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 来年度予算は現在鋭意作業中でございますが、担い手の育成に関しましては、今御承知のとおり中核農家と呼ばれておりますのは八十七万人ほどおります。三千市町村で割りますと、平均ですが、一市町村当たり二百人程度になっております。そういう人たちがどこでどんな経営をしながらどういう壁にぶつかって、またどういう農政に対するニーズを持っているかということを私どもそろそろ把握して、また、孤立しかかっているその人たちが横へ提携し合う、技術の研修なり情報の交換なりをし合って中核農家としてのいわば孤立感でなくて連携の強化を図る、そういうことが必要だろうと思っておりまして、中核農家なりその中核農家が組織している営農集団なりというものを把握するということで、各市町村ごとに認定というような手続を経てそういう中核農家なり営農集団をまずちゃんとつかまえてみようと思っております。  そしてまた、その経営の実態を洗って、今ある経営がどれほど資本装備の面あるいは生産費の面ですぐれているかという実態を洗って、それからその村その村の、いわば構造改善版での一村一品運動だと思いますが、その村での中核農家あるいは営農集団としての将来の経営手法としてはこうあるべきじゃないかということも考えていかなければいけないと思っております。  そして、そういう中核農家なり営農集団というものを片一方に置いて、片一方で、兼業農家なり老人農家の農地がありますから、兼業農家なり老人農家のためのいわば、有機農業でもいいですし、生きがいのための農業なんかをやりながら、片一方で、大規模な中核農家あるいは営農集団に兼業農家なり老人農家が土地を預けていく、その仲立ちをするような地域マネージャーも育成しなければいけないと思っております。そういうことを頭に置いて今予算の編成の作業をいたしております。  農業基盤の方では、六十二年度の本予算と並びこの間の補正予算で、一つは稲作の生産コストをできるだけ切り下げていくということから圃場整備にアクセントを置きました。五十アール、つまり昔で言えば五反歩以上の区画の圃場整備を進めるというようなことを考えてやっておりますが、引き続きその線を拡大といいますか、延長していく。それからもう一つは、前の国会で成立させていただきました集落地域整備法案の趣旨に基づいて、農村集落の排水改良などをしていく、農村整備を積極的にやっていくというようなことを考えておりまして、大区画圃場整備を含む圃場整備あるいは農村整備というものをことしの補正予算でいろいろアクセントをつけておりますが、そういうもののさらに延長線上に来年度の予算編成を位置づけたいと思って、今鋭意作業をいたしておるところでございます。
  49. 後藤康夫

    ○後藤政府委員 水谷委員のお尋ねの中にございましたように、財政当局が良質米奨励金について削減の意向を持っているというような新聞報道が最近行われましたこと、私どもも承知をしておりますが、この良質米奨励金を含めまして自主流通助成のあり方につきましては、今までもそういう考え方でやってまいりましたけれども、良質米の生産なり流通状況を十分見きわめながら、自主流通の健全な発展を図るという観点を基本にして私ども考えていくことにいたしておるところでございます。  その際、第一にこの良質米奨励金の取り扱いにつきましては五十九年産米、六十年産米の政府買い入れ価格のあり方とあわせましていろいろな議論が行われまして、六十年の十二月の予算編成期に、六十一年産米の良質米奨励金の縮減合理化が決定をされたということ、それから第二には、その後の六十一年の六月でございますか、行革審答申におきまして自主流通助成の縮減合理化が指摘をされているということ、それから第三には、食糧管理制度の運営改善の一環としまして食糧庁におきまして今米流通研究会を開催をいたしまして、自主流通制度運営の見直し充実や自主流通拡大等につきまして本年十月未を目途に幅広い検討を行っておるところでございます。その中で自主流通拡大のための自主流通助成の体系なり水準のあり方についても検討が行われておるところでございまして、そういったことを十分念頭に置きましてこの問題について慎重に検討をしてまいりたいというふうに考えております。  いずれにいたしましても、私どもの食管の関係の予算、それからまた水田農業確立対策の関係の予算は食糧管理費ということで、八月段階におきましてはまだ翌年度の需給その他についてのいろいろな見通しもなかなか立ちがたいということがありまして、枠取りだけいたしまして中身は年末にかけて詰めていくという形になりますので、先ほど申し上げましたような今後の自主流通のあり方をどう持っていくかということの検討を踏まえました上で考えてまいりたいと思っておるところでございます。
  50. 水谷弘

    ○水谷委員 自主流通助成措置についての今長官のお話がございましたけれども、いわゆるこの助成措置についての急激な変更ということは、鋭意努力をしておられる生産者にとっては大変な問題になるわけでありますので、本当に慎重に対応をしていただくように私から申し上げておきたいと思います。  それで、自主流通関係して今後五年くらいの間に、現在の自主流通米と政府米の流通比率、現在四四%くらいが自主流通、約四対六、これを五年後くらいには逆転させるのだ、こういう方向で取り組んでおられるというふうになっております。また、農政審の報告の中にも「自主流通米に比重を置いた米流通を実現していく必要がある。」そういう報告がなされておるわけですが、具体的にこれをどういうふうに推進をされていくのか。今話がありました全体の流通の問題を検討する、その中で自主流通米への助成措置について指摘されている縮減合理化、こういう方向で取り組むということでありますが、その政策の整合性、基本的にどういう計画でこれを持っていかれようとしているのか、長官。
  51. 後藤康夫

    ○後藤政府委員 今御指摘ございましたように、昨年の農政審議会の報告におきましても、自主流通制度は消費者にとっては食味のいい米を選択して購入ができる、生産者にとっては政府に売るよりも高い手取り価格が実現できる、それからまた政府にとっても米の管理制度に民間流通の長所を取り入れられるメリットがあるということで、自主流通に比重を置いた米流通の実現を図れという御指摘がなされているわけでございまして、これを受けまして現在米流通研究会の中で検討をいたしておるところでございます。  現在、まだ検討の過程でございますので、どのくらいのところを目指すのかということにつきまして研究会としての意見の集約も実はこれから十月にかけてやるところでございますので、まだ具体的なことはお答えを申し上げかねるわけでございますが、基本的な考え方といたしまして、自主流通と申しますのはそれを支えているいろいろな経済的な条件がございます。そういった自主流通を支えている経済的ないろいろな条件、この現状分析のもとに立ちまして、自主流通につきましての数量なり価格の設定の仕方の問題でございますとか、あるいはまた政府米の類別の区分でございますとか、自主流通米の格付基準というような問題、あるいはまた自主流通助成の体系とか水準の問題、あるいはまた自主流通に関連をしますいろいろな取引関係、商活動の活性化を促進するためにどういう手だてをとるかといった、そういうことの総合的な結果としてどの辺くらいまで自主流通が伸ばせるものかな、そういう中で政府米と自主流通米合わせまして、食管が本来担うべき需給なり価格の安定ということが全体として達成をされながら民間流通の長所も生かされていくという方向考えてまいる必要があると思っておりまして、いわば自主流通政府米の率が何%ということが先にありきということではなくて、予約限度の中で自主流通に回るものと政府米に回りますものとの分かれ方に影響を及ぼします諸要因をどういうふうに改善をしていくかということの中で、結果としてどのくらいの率を目指すことが可能であり、また望ましいかということを詰めていきたい、そういった考え方で今研究会で御議論をいただいているところでございます。
  52. 水谷弘

    ○水谷委員 今検討中ですからそれ以上のお話ができないのかと思いますけれども、現在政府米、自主流通米の流通比率は、自主流通がどんどん高くなっていく、いわゆる良質米を消費者が求めているわけですからそういう方向にいかざるを得ないのかなとは思いますが、しかし日本列島各地域において本当に良質米が生産できないところもたくさんあるわけであります。現在、天候にも恵まれ豊作がずっと続いております。過剰の中の議論を合しておりますから、一朝有事のときに食管法が果たす役割については、どちらかというと非常に軽く見られている部分がある。そうなってきますと、いわゆる良質米産地が突出していって、そうではない地域のいろいろな生産方面というものがどんどん抑圧をされるような方向にならないように、幾ら消費者がそういうニーズであるからといって、そういう方向にばかりいきますと食管法そのものの機能が将来において大変心配になってくるという議論も実はあるわけでありますので、実情に合わせていろいろな改革をされていくことは当然であるかもしれませんが、その点はしっかりと押さえてやっていっていただきたい、申し上げておきたいと思います。  今話がございましたように、現在米流通研究会で十月末をめどにいろいろ流通に対しての検討をされておられる、今その検討の中途段階ですから具体的なことについて伺うことはいかがかとも思いますけれども、報道の方が先にぼんぼん出ておりまして、またこんなこともおやりになるのか、こんなこともおやりになるのかという感じで私ども受けとめているわけです。ですから、まだ途中の段階かもしれませんけれども、この流通改革の現在いろいろ検討しておられるその中身、具体的に伺うわけではありませんけれども、どういう方向で現在検討されておられるのか。ことしの生産米から適用するような新たな流通ルートについてまで報道がもう出ているわけでございますから、お答えできる範囲内で結構でございますので、その点について伺っておきたいと思います。
  53. 後藤康夫

    ○後藤政府委員 米流通研究会を開催いたしまして、現在、自主流通米の先ほど申し上げました拡大の問題、それからもう一つ農政審議会で昨年御指摘のありました米の流通、すなわち集荷と販売でございますが、その両面に競争条件を一層導入して、集荷業者、販売業者の活発な活動が行われるようにするようにという自主流通米の問題と米の流通への競争条件の導入、この二つの問題を中心にいたしまして現在流通研究会で検討をしていただいているところでございます。  この研究会には、当然のことでございますが、かなり実務にかかわる問題もございますものですから、集荷、販売の関係方々、それに消費者代表の方でありますとか、あるいはまた米以外のいろいろな流通のお仕事に携わっておられる方、さらには論説とか学者の方々というような人にお集まりいただきまして検討をやっておるわけでございます。まだ途中過程でございますけれども、そういうことでさまざまな方にお集まりをいただいているものでございますから、中にはその検討過程の議論の内容の一部を新聞等の関係者の方にお話しになって、それが記事として、まだ固まらないうちに、どうもこういうことじゃないかというふうなことで報道されるというようなことが幾つかございまして、その辺は私、この席をかりまして、まだ最終的にそういうことが決まったということではない、研究会の取りまとめというのは十月を予定いたしておりますので、そういうものだということをこの際申し上げさせていただきたいと思うわけでございます。  それで、自主流通につきましては先ほど申したようなことでございますが、そのほかに米の流通に競争条件を導入するという点につきましては、これは米の流通の改善合理化というような視点をひとつ踏まえまして、その上で、集荷なり販売に携わる方々の指定なり許可の制度がございますが、そういうもののあり方の問題、これはまた新規参入の問題につながってまいるわけでございますが、そういった問題でございますとか、あるいは業務区域のあり方の問題でございますとか、それからまた大きく基本的なルートといたしまして政府米、それから自主流通米という大きな流れが今あるわけでございますが、それ以外に特定のものについて新しい流通ルートというようなことを考えてもいいのじゃないかというような御意見もあったりいたしまして、そういったことも含めて幅広い御検討を今いただいている、こういう状況でございます。
  54. 水谷弘

    ○水谷委員 長官おっしゃるとおり、いろいろな方がいらっしゃいますので、それが表に出ていくのでしょうけれども、その中で、先ほども申し上げましたように、販売の流通改革の一つとして特別栽培米、もう名前まで明確に出て、有機農法米、無農薬米などの名称で産直で取引きされている米が今度は正式に直接取引ということで話が出ておりますが、これは具体的に出てきているわけで、長官もこのことについてはかなり固まっているのではないかな、ここまで明確に出ているとなるとお答えをいただいてもいいかな、こういう感じがするのでありますが、いかがでございますか。
  55. 後藤康夫

    ○後藤政府委員 お答えを申し上げます。  近年、健康食品志向を背景としまして通常の栽培方法とかなり違った、つまり農薬とか化学肥料などを使用しない——使用しないというケースは私は割合少ないと思っておりますが、使用量を著しく減らして栽培をされるいわゆる有機米だとか低農薬米といったようなものに対する消費者の関心がかなり高まっております。実は流通研究会の中でも、消費者の立場に立たれる委員の方から、こういうものについて生産者と消費者の間で直接に取引をしたいという御希望の声がかなり強くございました。  これにつきましては、実は今の自主流通米の中でも、これは計算の仕方によりますけれども、私どもいろいろ食糧事務所等を通じて調べましたところでも、一万トンから二万トンぐらいの間で、有機米でございますとか低農薬米でございますとか、そういったものが自主流通のルートの中でちゃんと取り組まれております、主として農協と生協との提携というような形が今までのところ多いわけでございますが。  それで、そういった自主流通制度の中でそういうものについても十分対応できる仕組みになっておりますというお話も当初申し上げておったわけでございますが、自主流通ルートということになりますと、一次集荷業者、二次集荷業者、それから全国の指定法人、それから卸、小売、この辺のところをずっと了解をとって、少なくとも手続としてそこを通すという形のルートが特定をいたしておりますので、そういうところの了解をとるのになかなか手間もかかる。消費者の方々がおっしゃいますのは、最近とかくまがいものの有機食品みたいなものもあるので、自分たちはそういうものをあれしているのではない、もう少し小口で、本当に生産者のグループの方と消費者のグループとかなり契約栽培に近いような形で生産の仕方なり流通のさせ方についてきちんと計画をつくったものについて、自主流通米の建て値というようなことに必ずしもとらわれないで、そういう低農薬等の特別の方法で生産をされた、そしてまた例えば乾燥の仕方も自然乾燥でやるというようなものにつきまして、ある程度高い値段を払ってもそういうお米を食べたいというニーズがあるので、そういうものを満たす方法はないものだろうか。  それからまた、これは私、二、三県庁の部長さんなんかからもお話を聞いているわけでございますが、ことし米価が下がった、そして、稲作のコストダウンを図っていかなければいかぬということはこれからの稲作を考える場合の要請だけれども、平場のところに比べて中山間地というようなところの傾斜度が高いような水田でございますと、コンバインなどを入れてコストダウンを図っていくのがなかなか難しい、そういうところではむしろそういう立地条件を生かして、消費者サイド、都市の方でそういった低農薬米的なものに対するニーズが非常に強いのであれば、そういうところと結びつけることによって山間地の水田などを残していくことはできるのじゃないかというような話もございまして、今私ども考えておりますのは、こういった生産者、消費者等の要望に適切に対処いたしますために、現行の自主流通によります流通というものに加えまして、米の適正な流通を確保するという観点に十分配慮しながら、一定の条件のもとで小口なものについて、先ほど申し上げましたように生産者のグループ、消費者のグループがかなり密接に一つ計画をつくる、あるいは契約的な取り決めをやって流通をさせたいというようなものにつきまして、食糧事務所長の承認というような形で、その手続をどうするかというような細部を今詰めておるところでございますが、直接取引の道を開いてもいいのではないかという方向で具体的な仕組み等について現在関係者の御意見も聞きながら検討を行っておる、こういうことでございます。
  56. 水谷弘

    ○水谷委員 消費者の側に立ちますと本当に良質のもの、そして安全、安心できるお米、それが生産者の顔を見ながらいただける、こういうルートというものは非常に喜ばしいことであります。それは積極的に取り組んでいただいてよろしいかと思いますが、しかし食管法、全量管理、それから流通ルートの特定、こういうことで、今過剰ですから本当に心配ないわけでありますが、これがいろいろな条件の中で、どうしても米流通についてかなりの縛りをかけていかなければならないというときが来ないとは言えないわけであります。ですから、新規参入の問題やら臨時業者の参入やら、今回超過米についてもいろいろな対応をなさろうとしておられますけれども、それを実際に現場で運用していくに当たってはかなりしっかりとした対応をしていきませんと、米の流通そのものがめちゃくちゃになってしまうという心配も片方にはあるわけでありますので、ぜひこれについてはいわゆる競争と合理化、競争の原理を導入する、これは非常に大切かもしれませんが、本来の食管法が果たさなければならない使命を損なわないように、しっかりとした対応をしていくべきだと考えます。  大臣最後に、ことしも豊作になってまた米が大分余るのじゃないか。今農家の皆さん方が心配しておられるのは、転作面積七十七万ヘクタールがまたふやされるのではないかという心配が非常に大きいわけであります。これは前三年それから後三年、六年、水田農業確立対策、そのしっかりとした根幹をつくっていくに当たって、これ以上の転作面積の拡大というのは大変な障害になっていくわけであります。まずこれ以上の転作面積を農家生産者の皆さんにお願いすることはないのだろうと私は思いますが、大臣どうお考えになっておられますか。
  57. 加藤六月

    加藤国務大臣 昨年暮れ決定しました転作等の目標面積は、米の計画的な生産の確保ということと、稲以外の作物による水田の活用等を図る観点から関係団体方面の意見を聞き、対策前期三年間を通ずる米の需給状況に応じたものとして七十七万ヘクタールとしたところであるのは水谷委員御存じのとおりでございます。また、転作等目標面積につきましては、対策を的確かつ着実に実施する観点からはこれを極力固定することが重要であると考えております。  ただ、先ほどもお触れになりましたが、来年度以降の転作等目標面積につきましては、本年産水稲の作柄、在庫数量あるいは需要の動向等に応じましてゆとりある米管理の確保という点と、三度の過剰の発生を防止するという両面の配慮をしながら関係団体の意見を聞いて検討していかなくてはならないと考えております。
  58. 水谷弘

    ○水谷委員 以上で終わりますが、大臣、ひとつしっかり固定をしていくように、そのほかの対応をしっかり取り組んでいっていただきたいと申し上げて質問を終わります。
  59. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 藤田スミ君。
  60. 藤田スミ

    ○藤田委員 私はハウス栽培用のビニールの価格についてお伺いをいたします。  私どもが各地の農家を訪問いたしますと、必ずハウス用のビニールの価格が下がらないという陳情を受けるわけであります。このハウス用ビニールの価格というのは、ハウス栽培のコストとしては大きな比重を占めておりまして、農家としても関心が非常に高いわけであります。  そこで、農林水産省にお伺いしようと思いましたが、価格動向について聞いておりますのでこちらで言いますと、この塩化ビニール、五十七年には一メートル百三円で、六十年まで百三円という値が続きました。そして六十一年にやっと四円下がりまして、六十二年の五月に二円下げということで、今日、五十七年から六十二年にかけましては五・八%の値下げになっております。  他方、原油の価格の方は、五十七年に五万三千九百六円であったものが、五十八年には四万五千九百二十三円、五十九年には四万三千七百十三円、六十年には四万二千三百七十三円、六十一年には一万八千百六十七円、六十二年七月には一万六千六百六十九円と六九%も値下がりをしているのです。またビニールの原料になりますナフサの価格も、五十七年には五万八千二百五十五円だったものが、五十八年に五万二千八百二十六円、五十九年には四万六千六百二円、六十年には四万三千九百五十円、六十一年には二万百円、六十二年七月は一万九千五百円と、これも六六%の値下げになっています。  私はここで二つの問題があると考えます。五十七年から六十年にかけまして、原油もナフサも二〇%近く値下がりをしているのに塩化ビニールの方は全く下がっていない。なぜでしょうか。二つ目は、五十七年当時から現在までにナフサの方は六六%値下がりをしています。なのに塩化ビニールの方は五・八%しか下がらなかったわけです。通産省、お答えをいただきたいと思います。
  61. 阿部巳喜雄

    ○阿部説明員 御説明申し上げます。  農業用塩化ビニールフイルムは塩化ビニール樹脂を主原料とし、その他多種類の副原料を用いてフィルムに加工してつくられるものであります。また季節変動に対応してある程度の期間、相当量の在庫を抱えておく必要もある等流通経費もかかります。価格に占める原料費の割合は、私どもの聞いたところでは半分以下だということになっております。またフィルム加工に用いる原料も塩ビ樹脂等の原料でございますが、多くの化学反応工程を経てつくられるものであることから、ナフサ価格農業用塩化ビニールフイルム価格に占める割合は一割以下というふうになると推定されます。価格決定をもたらす要因については種々のものがあり、一概には言えませんが、仮に原料のコスト要因のみを取り出してみますと、ナフサ価格農業用塩化ビニールフィルム価格に占める割合は、先ほど申し上げましたように非常に小さいということが言えます。したがって、現在の農業用塩化ビニールフィルムの価格はナフサ価格の低下を反映したものだと私どもでは考ております。
  62. 藤田スミ

    ○藤田委員 そんなことで納得できると思いますか。そんなことだから私は円高差益の還元が農業資材に十分行われていかないということになると思うのです。大体、電力もガスも随分下がっているでしょう。鉄鋼も下がっています。金利も下がっています。配送コストも、軽油、ガソリンというものから考えると下がっているはずなんです。そういうふうになりますと、そういうものが十分反映し切っていない。農家の皆さんの不満、怒りというものの方が筋があるわけです。これは私は原価の洗い直しをもっと責任を持ってやってもらいたい。原油関連物質はほかのものでもたくさんあります。しかもビニールは、メーカーは三菱化成あるいは三井東圧といった非常に限られた大きな企業が独占しているわけです。したがって、このビニールの問題については、農水省としても、円高が十分反映できるように通産省ともう一度協力して原価の洗い直しをして、そして納得のいくものに指導していただきたいと私は考えますが、農水省いかがでしょうか。
  63. 浜口義曠

    浜口政府委員 ただいま通産省から原価の結果あるいは原料のウエートの問題というお話をされたわけでございますが、農林水産省といたしましては、先生指摘のビニールの問題は野菜、果樹のハウス栽培あるいは雨よけ栽培あるいはトンネルマルチ栽培、水稲育苗ハウス等、農業生産の高度化あるいは多様化にとって欠くことのできない重要な資材と認識をしております。今後ますます高度化あるいは多様化する需要対応いたしまして、農業生産性の向上あるいは農産物安定供給を図るためには、農業資材等の問題もございますが、農業用ビニールが適切な価格で安定的かつ円滑に供給されることが肝要であると考えております。  先ほどお話のほかに、農林物資全体におきましては、塩化ビニールの樹脂あるいはポリエチレンの生産量のそれぞれ四%程度ということも伺っておりますが、今後とも関係省庁と連携を図りつつ、関係業界団体の指導に努めてまいりたいと考えます。
  64. 藤田スミ

    ○藤田委員 次に、固定資産税の問題についてお伺いいたします。  先日の質問で、転作田に永年作物を植えた場合畑地評価であることを確認したわけですが、なぜ転作田に永年作物を植えたら畑地評価になるのかその理由を明らかにしてください。できるだけ簡単にお願いします。
  65. 佐野徹治

    ○佐野説明員 固定資産税におきます地目の認定の問題でございますけれども、転作田の場合に、前回御説明をいたしましたように、例えば大豆等の作物へ転作された場合でございましても、田の設備を存置している場合には原則として田と認定するという扱いをいたしておりますが、例外的な取り扱いといたしまして、稲から果樹等の永年性作物へと転作された場合に限りましては、永年性作物の通常の肥培管理の過程等にかんがみますと、耕地の形態が田の設備を残しておる場合でございましても、耕地の利用状態が永年性作物を栽培しておることによりまして、当該土地の本来の利用目的が永年性作物を植栽した時点におきまして、円として利用することから永年的に畑として利用していくことに変わったと認めることが適当であると考えておりまして、原則としてそのような場合には畑として認定していくということでございます。
  66. 藤田スミ

    ○藤田委員 つまり、永年作物を植えることによって肥培管理上水田とならないことが客観的に明らかになった場合というふうに理解をしてよろしいですね。——それでは、具体的なことをお伺いしたいのです。  同様に、客観的に畑地として確認できる転作田の自然土壌上で一般作物を植えている堅固なつくりのビニールハウスの場合は畑地評価にすべきではないでしょうか。もう一つ、当然のことながら、転作田で水利施設及びあぜが破壊等によってもう機能を果たさなくなったときは畑地評価であるべきですね。三つ目、転作田で畑作をしていて非常に高額な畑作専用農機具を購入した場合は畑地評価の参考にするべきではないかと考えます。この三点、一つ一つ具体的にお答えをください。
  67. 佐野徹治

    ○佐野説明員 まず第一番目のビニールハウスの問題でございますが、これは具体的にどの程度堅固なものであるかということによりまして判断は異なりますけれども、そのビニールハウスが内部で直接耕作している場合におきまして、それが相当程度に堅固なものであるということによりましてその土地が田としての性格が失われていると認めもれるような場合には、一般的には畑と認定することが適当であると考えております。なお、季節的にビニールを取り外すことが常態とされておりますような簡易なビニールハウスの場合には、これは簡単に田に復元し得るものであると認められます。また、いつでも田として利用し得る状態にあると認めることが適当であると考えておりますので、そういった場合には原則として田として認定するということではないかと考えております。  それから、水利施設、あぜ等が破壊されて機能しておらないような場合には、田に復元することが客観的になかなか困難であると認められる状況にございますれば、これは畑として認定するのが適当であると考えております。  それから、最後の農機具等の問題でございますが、前回もお話申しましたように、地目の認定と申しますのは、その土地の所有者なりがどういった機具を所有しているのかとか畑作の意思を有するのかといったことにかかわらず、その土地そのものの状況に着目して認定いたす性格のものでございますので、農機具の所有いかんということは地目の認定とは直接にはかかわりのないものであると考えております。
  68. 藤田スミ

    ○藤田委員 今の御見解は、客観的に畑作耕作が確認できる状況を評価の基本にしておられるというふうに聞くわけですが、転作田というのは国が主導しているだけではなくて、地域では農協が音頭をとってやっているわけですから、客観的な評価は十分できると私は考えるわけです。さらに、それでももし不十分だということならば、市街化区域内の農地と同様に、個人の畑作の営農意思を直接とっていけばこれで十分ではないか。自治省にしてみれば、そんな事務手続の大変なことはできないということでしょうが、農民の側から見ましたら、事務手続が大変だからといって高い税金を取られるのはたまったものじゃありません。自治省はその点をどう考えていらっしゃいますか。
  69. 佐野徹治

    ○佐野説明員 地目の認定の問題はその土地の現況に着目をいたすわけでございます。土地の利用の現況だとか利用目的だとかこういうことに重点を置きまして、土地全体としての状況を観察するということにいたしておりますので、その土地の所有者等の意思、そういったこととはかかわりませず、その土地そのものの状況に着目をするといったことでの認定がなされるべきものであると考えておるところであります。
  70. 藤田スミ

    ○藤田委員 宅地並み課税の問題についてお伺いをしておきたいのです。  先日、自治省の方から「長期営農継続農地に対する徴収猶予の運用実績等調査結果について」という文書が発表されておりますが、この際、簡単で結構ですが、概要をお示しください。
  71. 佐野徹治

    ○佐野説明員 この調査昭和五十七年の申告分、これは長期営農継続農地の制度ができました年度でございますけれども、この申告分に係ります長期営農継続農地につきまして、これは五年間たちますとその農地が保全されたかどうかということの確認を地方公共団体で行うことになっておりますのでその取り消しの状況、それから長期営農継続農地の面積の状況、その他地方公共団体のこれらにつきましての運用の実績等を取りまとめたものでございます。  これはいろいろな調査項目にわたっておりますが、時間の関係もございますので簡単に御説明させていただきますと、取り消し等の状況につきましては、五十七年度に認定された分につきましては毎年大体四%程度取り消されておりまして、五年間累積で大体一九%程度の取り消しになっております。  なお、長期営農継続農地の面積につきましては、その後の新たな申告、それに伴う認定分がございますし、また六十年度の評価がえにおきまして新たに長期営農継続農地として認定されたものもございまして、五十八年度から六十年度までは大体二%程度減少はいたしておりましたが、六十年度の評価がえ等もございまして、面積的には六十一年度末の分は当初の五十七年度より若干ふえておるという状況でございます。  その他、地方公共団体が長期営農継続農地の申告に係ります農地についてこれを認定いたします際には、必ず農地課税審議会の議を経るということに地方税法でなっておりますけれども、それらの運用状況がどうであるかということも聴取いたしましたが、営農が行われているかどうかの判断につきまして課税当局のみでは難しい面もあるので、農地課税審議会などの専門的な機関を積極的に活用する方策はないかというような意見がございました。  それから、毎年の現地調査をそれぞれ地方公共団体がどうしているかということにつきましての調査だとか、また、長期営農継続農地の認定等に際しましての営農を裏づける資料のようなものを実際にとっているのかどうか、こういったような調査もいたしたところでございます。
  72. 藤田スミ

    ○藤田委員 それで、私もその調査結果というものを読ませていただきましたが、一部の評論家や雑誌で、近郊農家の多くは宅地並み課税逃れのために営農を偽装しているという批判が繰り返し行われているわけなんです。自治省の方も長期営農継続農地はほぼ適正に運用されているというふうにおっしゃっておられるようですが、これだけは確認をしておきたいのです。そういうことでよろしいのですね。
  73. 佐野徹治

    ○佐野説明員 この制度につきましての地方公共団体の運用、すなわち保全確認の状況だとか毎年の現地調査状況だとか、こういった地方公共団体の制度の運用につきましてはおおむね適正に行われていると考えておるところでございます。  なお、現行制度上、長期営農継続農地として保全されていないことが明らかとなりました場合には認定が取り消されるのでございますけれども、今回の調査結果を見ますと、五十七年度の申告分に係ります長期営農継続農地につきまして、毎年度おおむね数%程度の取り消しがなされているところでございます。取り消しの原因といたしましては、宅地だとか雑種地へ転用された場合だとが所有権が移転した場合、相続があった場合等のほかに、肥培管理の状況が悪いということにより取り消されている例もあるところでございますけれども、地方公共団体によりまして取り消し原因別の統計をとっていない団体がございましたり、またとっていても区分がさまざまであるということもございまして、原因別の計数的な調査は行っていないところでございます。しかし、統計資料が整備されております幾つかの団体について見ますと、取り消しの原因のほとんどは相続だとか売買だとか宅地等へ転用されたことによるものでございます。  それから、地方公共団体の運用自体はおおむね適正に行われておると考えておるところでございますけれども先ほど調査のところでも少し触れましたように、長期営農継続農地の認定等に際しまして営農を裏づける資料を活用しておる団体はほとんどない、それから現地調査等の制度の運用につきましても団体によって差異が見られる、こういうようないろいろなことがございますので、その運用について地方公共団体を指導すべき点もございます。こういう点もございますので、今後この調査結果を踏まえましてより適正な運用がなされるように地方団体を指導してまいりたいと考えております。
  74. 藤田スミ

    ○藤田委員 もうこれで終わりますが、大臣、今回の自治省の調査でも明らかになりましたように、多くの都市近郊農民はおおむねまじめに営農を続けているということが明らかになりました。また、都市近郊農業の位置づけというのですか、その役割というのはもうこれも野菜の生産の基地あるいは緑資源、あるいは都市防災ということで私どもは何度も指摘をしてまいりました。最近は国土庁でも、農地の宅地並み課税をしても、都市基盤整備がなければ宅地供給に結びつかないという認識が持たれているわけです。したがって、大臣としても都市農業を守るために、少なくとも現行制度を守るということの決意のほどを聞かせていただいて終わりたいと思います。
  75. 加藤六月

    加藤国務大臣 市街化区域内農地は計画的に都市的な土地利用に転換されていくものでありますが、そこで農業を継続しようとする者がいる現状、市街化区域内農地が直ちにすべて宅地化されるという現状にもないという事情にかんがみ、昭和五十七年に現行の長期営農継続農地制度が法定されたところでございます。この制度は、農業をまじめにやっている農家に対する配慮、都市における緑地の確保という役割を果たしているところでございます。  最近、都市部の地価の高騰を背景に宅地供給要請が強まっており、この点からこの制度についても種々意見が出されているところでございますが、この制度のあり方につきましては、さきに述べたようなこの制度の役割と、宅地需要や都市施設の整備の状況を勘案しながら中長期的視点から検討すべきものと考えております。
  76. 藤田スミ

    ○藤田委員 終わります。
  77. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十九分散会