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1987-08-19 第109回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年八月十九日(水曜日)     午前十時四分開議 出席委員   委員長 玉沢徳一郎君    理事 近藤 元次君 理事 鈴木 宗男君    理事 月原 茂皓君 理事 保利 耕輔君    理事 松田 九郎君 理事 串原 義直君    理事 水谷  弘君 理事 神田  厚君       阿部 文男君    今枝 敬雄君       上草 義輝君    尾形 智矩君       大石 千八君    大原 一三君       太田 誠一君    菊池福治郎君       小坂善太郎君    田邉 國男君       谷垣 禎一君    中尾 栄一君       野呂田芳成君    長谷川 峻君       森下 元晴君    保岡 興治君       柳沢 伯夫君    若林 正俊君       五十嵐広三君    石橋 大吉君       田中 恒利君    竹内  猛君       辻  一彦君    武田 一夫君       玉城 栄一君    藤原 房雄君       吉浦 忠治君    滝沢 幸助君       藤田 スミ君    藤原ひろ子君  出席国務大臣         農林水産大臣  加藤 六月君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      甕   滋君         農林水産大臣官         房総務審議官  吉國  隆君         農林水産省経済         局長      眞木 秀郎君         農林水産省構造         改善局長    鴻巣 健治君         農林水産省農蚕         園芸局長    浜口 義曠君         農林水産省畜産         局長      京谷 昭夫君         農林水産技術会         議事務局長   畑中 孝晴君         食糧庁長官   後藤 康夫君         林野庁長官   田中 宏尚君         水産庁長官   佐竹 五六君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第二課長   垣見  隆君         防衛施設庁総務         部業務課長   金枝 照夫君         経済企画庁物価         局物価調査課長 伊藤 征一君         外務省アジア局         北東アジア課長 高野 紀元君         通商産業省基礎         産業局化学製品         課長      阿部巳喜雄君         海上保安庁警備         救難部警備第二         課長      児玉  毅君         自治省税務局固         定資産税課長  佐野 徹治君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君     ――――――――――――― 委員の異動 八月十九日  辞任         補欠選任   木村 守男君     今枝 敬雄君   佐藤  隆君     若林 正俊君   山崎平八郎君     尾形 智矩君   佐々木良作君     滝沢 幸助君   山原健二郎君     藤原ひろ子君 同日  辞任         補欠選任   今枝 敬雄君     木村 守男君   尾形 智矩君     山崎平八郎君   若林 正俊君     佐藤  隆君   滝沢 幸助君     佐々木良作君   藤原ひろ子君     山原健二郎君     ――――――――――――― 八月四日  米の輸入反対等に関する請願上原康助紹介  )(第二一五号)  同(小野信一紹介)(第二七五号)  同(水田稔紹介)(第二七六号)  同(沢田広紹介)(第三二一号)  同(田並胤明君紹介)(第三二二号)  同(永井孝信紹介)(第三二三号)  農業再建等に関する請願野坂浩賢紹介)(  第二七四号)  米の市場開放阻止農畜産物輸入自由化枠拡  大阻止に関する請願井出正一紹介)(第二  七七号)  同(小沢貞孝紹介)(第二七八号)  同(小坂善太郎紹介)(第二七九号)  同(中島衛紹介)(第二八〇号)  同(羽田孜紹介)(第二八一号)  同(宮下創平紹介)(第二八二号)  同(村井仁紹介)(第二八三号)  同(若林正俊紹介)(第二八四号)  同(小川元紹介)(第三二四号)  森林・林業の活性化国有林野事業再建に関す  る請願小沢貞孝紹介)(第二八五号) 同月七日  米の輸入反対等に関する請願小澤克介紹介  )(第三八三号)  同(関山信之紹介)(第三八四号)  同(高沢寅男紹介)(第三八五号)  同(土井たか子紹介)(第四一八号)  同(山花貞夫紹介)(第四一九号)  同(沢田広紹介)(第四八九号)  同(寺前巖紹介)(第四九〇号)  同外二件(松本善明紹介)(第四九一号)  米の市場開放阻止農畜産物輸入自由化枠拡  大阻止に関する請願矢島恒夫紹介)(第四  九二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  食糧管理法の一部を改正する法律案内閣提出  、第百八回国会閣法第六〇号)  大豆なたね交付金暫定措置法の一部を改正する  法律案内閣提出、第百八回国会閣法第六一号  )      ――――◇―――――
  2. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 これより会議を開きます。  第百八回国会内閣提出食糧管理法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石橋大吉君。
  3. 石橋大吉

    石橋(大)委員 まず初めにちょっとお断りをしておきたいのですが、きょうは、今委員長から触れられましたように、食糧管理法の一部を改正する法律案審議となっておりますが、私は、本件につきましてはごく基本的な問題点二つほどお尋ねをいたしまして、あと、私の出身県であります島根県を初め、日本海主要漁場を持っておる西日本、北九州各県にとってますます大きく、かつ深刻な課題となっております竹島領有の問題、日本海における韓国漁船不法操業の問題、二百海里の全面適用の問題などについて質問をさせていただきたい、こう考えております。関係各県や漁民の皆さんにとって極めて緊急かつ切実な課題でありますので、まげてひとつ御了解をいただきますように、初めにお断りを申し上げておきます。  そこで、まず初めに、食管法の一部改正についてでありますが、まず一つは、日本農業における麦作位置づけについてお尋ねをしておきたいと思います。  御承知のとおり、食管法においては、麦は米と同様政府の全面的な直接統制下に置かれてまいりました。しかし、御承知のように、一九五四年、昭和二十九年に調印をされたMSA協定によって大量の小麦輸入されるに及んで、その生産は急激に減少しました。そして、昭和三十三年の政府麦研究会は、この麦の急激な生産減少は「非能率的な限界生産が減少していく傾向もみられるので、この傾向を積極的に阻止する対策を講ずることは必要とは考えられない。」こうして、事実上麦類が一種の衰退作物として位置づけられたのであります。こういう位置づけを集大成したのが昭和三十六年の農業基本法に基づく価格政策であったと思います。  そこで、事実上畜産物、青果物を成長農産物として位置づけ、麦、大豆、なたねなどを衰退農作物として位置づけた上で価格政策が展開されました。つまるところ、圧倒的に競争力のある外国農産物国内市場を明け渡すという形でその後の農業政策が展開されてきたと思います。結果、小麦国内自給率昭和三十五年の三九%から昭和五十年に四%となり、同様に大麦、裸麦は一〇七%から一〇%に、大豆は二八%から四%に大幅に低下をいたしました。  しかし、その後、昭和四十七年の世界的な異常気象に端を発する穀物生産世界的大幅減産とソ連の穀物大量買い付け、引き続く昭和四十九年の世界的な天候不順穀物価格の上昇など食糧危機が叫ばれる中で、昭和五十年の食糧自給体制を強化するという農政審答申による路線転換によって、麦、大豆生産増大方向がとられることになりました。その後は生産奨励金交付水田裏作奨励金交付転作奨励補助金増額措置などによって作付面積収量もともに増大し、また自給率も高まってまいりました。特に、水田利用再編対策が始まった昭和五十三年以降、生産が急激に増加をしつつあるわけであります。しかし、転作作物としてしっかり定着をしたとは今日段階でまだ言えない状況ではないか、こう思うのであります。  そこで、今度の食管法改正でありますが、改正案は、生産者麦価算定方式について現行パリティ方式にかえて麦の生産費その他の生産条件、麦の需要及び供給の動向、物価その他の経済事情三つを並列的に参酌要素とし、あわせて麦作生産性向上品質改善に資することの二つ配慮要素にする、こういうふうにされているわけであります。端的に言って、三つ参酌要素二つ配慮要素を総合勘案して決めるというわけでありますから、すべての要素を参酌して完璧の価格決定方式がとられるかのような説明がされているわけでありますが、この新方式と昨年十一月の農政審答申パリティ方式を採用しているものについては、「可能な限り生産性向上成果価格に反映し国内農産物価格に対する消費者及び実需者割高感をすこしでも解消するとともに財政負担を軽減するという観点から、その内容を改善することを検討する必要がある。」こういう方向を照らし合わせてみますと、結局は大幅な麦価の切り下げということにしかならないのではないかと思うわけであります。麦作は再び衰退作物として切り捨て方向をたどるのではないかと思われるわけであります。  そこで、どうしてもここで農林水産大臣の所見を承っておきたいわけでありますが、農業生産における麦作位置づけをどうするか。ずばり端的に言って切り捨て方向をとるのか、ある程度金はかかっても生産拡大国内自給率向上方向を断固貫くのか。将来に向けての基本方向についてどう考えておられるのか、腹を割った考えをひとつ承っておきたいと思います。
  4. 加藤六月

    加藤国務大臣 麦の我が国における生産状況やあるいは位置づけは、今石橋委員が言われたような経過をたどってきたことは事実でございます。しかしよく考えてみますと、麦というものは土地利用型の代表的作物であり、また転作有力作物でもあります。六十一年産においては作付面積割合転作二八%、水田裏作四一%、畑作三一%となっておりまして、約七〇%弱水田に麦の作付をしておるというような状況でもございます。したがいまして、麦は水田作においては冬作物として稲作と有機的に結びつけ得る作物として、また畑作におきましては連作障害の回避の観点から、イネ科作物として豆類、根菜類等と組み合わせた合理的な輪作体系を構成し得る作物として、土地労働力、機械、施設有効利用を図る上で重要な作物であります。また、地域条件に即した合理的な輪作体系のもとで営農、農業経営の柱となる基幹作物として、農業所得維持確保を図る上で不可欠な作物でございます。さらに麦について申し上げますと、省力化が進展しており、生産組織化中核農家への土地利用集積等による作業単位大型化を図ることによりまして生産コスト低減を図り得る作物でございます等々、我が国土地利用型農業の健全な発展を推進する上で今後とも重要な役割を果たしていくものと考えております。  したがいまして、今後の麦生産の振興に当たりましては、まず第一に加工適性の高いわせ多収品種育成普及等による加工適性向上地域条件に即した麦作技術改善による収量品質高位安定化、あるいは共同乾燥調製ばら流通推進等による品質均一化及び物流合理化、あるいはまた期間借地作業受委託等による中核農家への土地利用集積、及び中核農家を中心とした生産組織育成等々によりまして、生産性向上、とりわけ生産コスト低減需要のニーズに即した品質向上物流改善等を推進してまいりたいと考えておるところでございます。
  5. 石橋大吉

    石橋(大)委員 二つ目は、麦の価格決定あり方基本についてちょっとお伺いをしておきたいと思うのですが、再生産確保が図られる麦価とは一体いかなるものか、その基本的な考え方について農水省の考え方お尋ねしておきたいと思います。  御承知のように我が国の現在の麦作の実態を見ますと非常に大きな特徴があると思います。それは、特に七〇年代転作政策によって北海道関東九州、この三地域にいわば非常に局地化をしておるということであろうと思います。特に水田利用再編対策麦類奨励補助金の高い特定作物に指定されたことが大きく影響しているわけであります。そういう意味で、現在水田地帯で拡大してきた麦作減反政策に伴う補助金によって支えられているといってよかろうと思うのであります。したがって、麦作経営的に自立化をしていくためにはかなり大規模米麦二毛作あるいは大規模多毛作畑作一環として麦作が成り立たなければならないということになろうと思いますが、そういう麦作基本的なあり方の問題を含めてどう考えているのか。麦単作だけを念頭に置いて考える場合、再生産確保が図られる麦価とはどの程度の作付面積価格によって保障されるのか、あるいは米麦二毛作多毛作との関連はどう構想されているのか、この点とあわせて奨励補助金の扱いをどうするつもりなのか、この点だけ聞いておきたいと思います。
  6. 後藤康夫

    後藤政府委員 麦の再生産確保に関するお尋ねでございますが、麦につきましては、御案内のとおり日本自然条件のもとにおきまして、例えば小麦につきましてはその用途でございますめん用パン用等いろいろございますが、国内産麦につきましては主としてめん用の原料というようなことで品質的に制約がございます。そういうことで今後ともその相当部分輸入せざるを得ないわけでございますけれども、農政審報告におきましても「生産性向上基本として国内での基本的な食料供給力確保を図る」というふうにされておりますことを踏まえまして、国内生産輸入の適切な組み合わせによりまして麦の安定供給を図ってまいるという考えでございます。その際、価格政策につきましては、品質別需要の動向等踏まえまして、地域条件に即した合理的な土地利用方式の展開によります水田農業の確立と転作作物としての位置づけなり、あるいは輪作物裏作物としての位置づけといったことに配慮しながら、生産性の高い、担い手や地域によって安定的な土地利用型農業として麦の発展が図られるように価格政策を運営していく必要があると考えております。  お尋ねの中にございましたように、確かに米に比べますと、稲作主業農家というものはございますけれども麦作主業農家というようなものはちょっと考えにくいわけでございまして、しかも麦の場合は水田の麦、田麦、水田につくられておりますものの中でも転作一環としてつくられているものとさまざまございます。そういう経営一環として麦をとらえながら考えていかなければいけない。したがいまして、米と若干違いますのは、米の主業農家みたいな麦の主業農家というようなとらえ方はなかなかしにくくございますので、今北海道なり九州から山陰、それから関東、こういったところで主産地の形成が進んでおりますが、そういったところでの質の問題も含めました麦作の健全な発展が図れるようにということを考え価格政策を運営していかなければいけないというふうに考えているわけでございます。
  7. 石橋大吉

    石橋(大)委員 次に、竹島領有権をめぐって幾つかお尋ねをしたいと思います。  まず、海上保安庁にちょっとお伺いをしたいと思います。  御承知のとおり、島根県の隠岐島から約九十海里の日本海上に位置する竹島、これが我が国固有領土であることは議論がないと思います。しかるに韓国外務省昭和五十三年五月八日に駐韓日本大使館に対して、竹島の十二海里内で操業している日本漁船はすぐ退去をするように口頭で要求をしまして、翌九日には同海域韓国警備艇があらわれて、操業中の日本漁船竹島沖十二海里以外に退去をさせられました。当時、同海域では島根県を初め鳥取、山口、福岡各県の主としてイカ釣り漁船約百隻が操業中であったと言われております。日本政府は直ちに、竹島は歴史的にも日本国有領土であり、日本漁船操業は何ら違法ではない、こういうことで韓国政府に対して抗議をしたものの、その後一向に問題解決に至っていないわけであります。同海域での日本漁船操業は再開を見るに至っていないわけであります。昭和五十二年五月十八日、本院内閣委員会における政府答弁によりますと、韓国は前年、昭和五十一年八月の時点で竹島には韓国警備隊の職員が駐在し、若干の宿舎と思われる建物、それにトーチカのような、そこに銃を備えた施設が見られたというような答弁が行われているわけであります。  それから満十年がたちましたが、韓国によって不法軍事占領されたも同然の竹島の最近の状況はどうなっているのか、具体的に近況を承りたいと思います。
  8. 児玉毅

    児玉説明員 お答えいたします。  海上保安庁では、外務省の要請によりまして六十一年の十一月、巡視船竹島周辺海域に派遣いたしまして、同島の施設等状況調査を実施いたしました。その結果によりますと、東島に灯台一基、見張り所四カ所、兵舎等六棟、角型鉄塔二基、鉄製やぐら二基、各種アンテナ等施設を認めております。また、韓国警備員と思われる者を視認いたしております。
  9. 石橋大吉

    石橋(大)委員 今話を聞きますと、兵舎らしきものが六棟というふうに言われておるわけでありますが、島に上陸をしておる警備兵の数がわかったらお聞きをしたい。  今のお答えでも明らかなように、十年間の間により一層軍事占領の色彩濃厚な強固な軍事施設というか、そういう状態が築かれておるように思うわけであります。  そこで、外務省伺いたいわけでありますが、昭和五十七年三月十八日の参議院予算委員会で当時の櫻内外務大臣は、韓国不法占拠されている竹島の問題について、昭和二十七年から同五十七年一月まで韓国に対して計五十六回の抗議申し入れをした、こういうふうに公表しているわけであります。その後今日まで、外務省韓国竹島不法占拠に対して何回ぐらい抗議申し入れを行われたか、そしてそれは文書によるものか口頭によるものか、あわせて伺いたいと思います。
  10. 高野紀元

    高野説明員 お答え申し上げます。  昭和二十七年に韓国がいわゆる李承晩ラインを設定いたしまして竹島をその内側に含めた際に、口上書竹島に対する韓国領土権主張は断じて認められないという旨を厳重に申し入れて以来、本年に至るまで口上書の形によりましては五十三回にわたって抗議をしております。それから、日韓定期閣僚会議あるいは日韓外相会談を初めあらゆる機会に口頭によっても竹島問題を提起いたしまして、日本側立場を明らかにしてきているわけでございます。ちなみに、口頭に関しましてはあらゆるレベルでやっておりますが、例えば昭和五十三年以降をとりますと、現在に至るまでの間、外相会談外相レベルにおいては提起回数は十五回に及んでおります。
  11. 石橋大吉

    石橋(大)委員 海上保安庁、後でもいいですから、警備兵の数わかっておったら教えてください。  今言われたように、まだ百回にはなりませんけれども、七、八十回ぐらいの抗議外務省が繰り返しておられるわけでありますが、こういう口上書による抗議あるいは口頭による抗議、これを繰り返すだけでは、やがて竹島韓国領土として国際法上も第三者からも認められてしまうのじゃないか、こういう気がするわけであります。こういう形ばかりと言うと外務省のメンツがないかもしれませんが、抗議の繰り返しが国際法上一体どれだけの意味を持つのか、ちょっと念のために聞いておきたいと思います。
  12. 高野紀元

    高野説明員 お答え申し上げます。  竹島につきましては、歴史的事実に照らしましても、また国際法上も我が国固有領土であるということは明白でございます。我が国としましては、韓国による竹島不法占拠を黙過することにより我が国竹島に対する法的立場をいささかなりとも害することがあってはならないという観点から、これまで機会あるごとに先方不法占拠抗議いたしまして、即時撤去等を要求してきた次第でございます。さらに、竹島周辺海上巡視を実施するなどの方法によっても我が国立場先方に対して明確にしているところでございます。  このように、韓国側不法占拠に対し繰り返し抗議し、また竹島巡視によって我が方の立場先方に明確にしてきておるわけでございますので、韓国側不法占拠を継続することによって韓国竹島領有権を取得するということにはならないというのが外務省考え方でございます。
  13. 石橋大吉

    石橋(大)委員 続いて外務省伺いますが、一番最近の日韓閣僚会議等、ある程度高級レベル外交交渉の場で竹島問題を議論されたのはいつか、そこで具体的にはどういう話になったのか、端的にちょっと伺いたいと思います。
  14. 高野紀元

    高野説明員 お答え申し上げます。  最近におきましては六十一年九月、去年でございますが東京におきまして、それから六十二年、本年の五月、ソウルにおきまして行われました日韓定期外相協議、それから客年の十二月、日韓定期閣僚会議、これは東京で行われました。それから本年の七月、先月でありますが、第七回のUNCTAD総会の際に行われました外務大臣会談で、倉成大臣からそれぞれ竹島問題を提起いたしまして、我が方の立場を明確に伝えた次第でございます。
  15. 石橋大吉

    石橋(大)委員 続いて外務省伺います。  先ほどの海上保安庁調査結果の報告にもありますように、事実上韓国軍事占領という状態竹島は置かれている、こう思うのです。こういう軍事占領というような異常な事態に対して、単に抗議を繰り返すだけでは極めて不十分ではないか。軍事占領に対して軍事力の発動というわけにはなかなかいきませんけれども、ある程度何らかの強い形をとった抗議の意思を明らかにしておかないと、例えばフォークランド紛争におけるアルゼンチンとイギリスの領土紛争の場合の例のように、結局は事実上の支配が継続することによって、国際法上も竹島はこのまま十年、二十年たてばやがて韓国領有、こういうことになってしまうのではないかと思うわけであります。この点について外務省どう考えておられますか、ちょっと伺います。
  16. 高野紀元

    高野説明員 お答え申し上げます。  政府といたしましては、竹島領有権に関する日韓間の紛争はあくまでも平和的手段によって解決を図るという基本方針に立ちまして、可能な限りの方策を講じている次第でございます。すなわち、韓国政府に対して、韓国竹島に対する領土権主張は認められない旨厳重に申し入れを行うと同時に、累次の巡視結果に基づき、韓国各種施設を設け、不法占拠を続けていることに対して繰り返し抗議申し入れを行うなどの外交努力を続けております。  さらに、結果として韓国側に拒否されたものの、かつて我が国竹島問題を国際司法裁判所に提訴することを韓国側に提案した経緯もあるわけでございます。先ほど来申し上げましたとおり、外務大臣会談等においては累次この問題については提起しているほか、例えば世界各国の地図において竹島が正しく我が国領土として表示されるよう各国出版社申し入れを行うなどの努力は行っております。
  17. 石橋大吉

    石橋(大)委員 次に、領有権時効関係について、念のためにちょっとお伺いをしておきたいと思います。  国際法上、これは解釈の問題だと思いますけれども、非常に流動性の激しいものについては短期的に時効成立をする。領土のように流動性の少ないものについては、領有宣言抗議声則などによってある程度時効の中断といいますか、そういうことを繰り返すことによって時効はなかなか容易に成立をしない、こういう解釈もあるようですが、そういう観点でいいますと、竹島という島については別としまして、竹島周辺の漁業権については非常に流動性のあるものとして考えられる。短期的に時効成立をして、最初に言いましたように日本海沿岸の漁民にとって極めて重要かつ切実な竹島周辺、豊かな漁業資源、漁場でありますが、これが韓国のものになってしまう、こういうようなことも心配をされるわけであります。  御承知のように、島としては非常に狭い島でありますし、草は生えておっても木は生えていない、こういうところで余り価値がないように見えますが、竹島を中心にして二百海里宣言でもすれば、兵庫県から下関までの西日本の陸地面積に相当するぐらい広い海域、しかも非常に豊かな漁場であるわけでありまして、そういう意味で非常に価値の高いところであります。それだけに竹島領有権の確立に対する切実な県民や関係者の希望もあるわけでありますが、この時効の問題について一体外務省はどういうふうに考えておられるのか。  同時に、水産庁にもちょっと聞いておきたいのですが、これはどこから出た話か知りませんけれども、かつて竹島領有権については韓国に認める、しかし、竹島周辺の漁場については入会漁場にして解決しようじゃないかというような議論があったこともあるわけでありますが、これは今の時効の問題等の関連があってそういう議論が出てきたのかどうか、ちょっとその点伺っておきたいと思います。
  18. 高野紀元

    高野説明員 お答え申し上げます。  今御指摘の点に関しまして、私必ずしも直接お答えする立場にございませんので、その点御容赦をお願いしたいのでございますが、一般論として申し上げまして、御指摘の時効取得という概念が国際法成立するかどうかということについては、学説上もいろいろ異論があるということのようでございます。  いずれにいたしましても、我が国といたしましては、先ほど来御説明申し上げているとおり、韓国に対して、不法占拠に対して累次にわたり抗議をしておるわけでございまして、こういう抗議が累次行われておるという限りにおいて、御指摘のような時効による領土の取得というものは成立しないというふうに考えておる次第でございます。
  19. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 竹島領有権韓国に認めるかわりにその周辺を入会漁場にしようというような話があったというふうに御指摘があったわけでございますが、少なくとも私が長官に就任して以来、そのような考え方日韓両国の間に出されたことはございません。
  20. 石橋大吉

    石橋(大)委員 もう一つ外務省にお聞きをしておきたいと思いますが、日米安保条約と竹島関係ですね。竹島は日米安保条約に言う日本の施政権下にある島として認められておるのかどうか、念のためにちょっと聞いておきたいと思います。
  21. 高野紀元

    高野説明員 お答え申し上げます。  安保条約の第五条は、日米両国が日本国の施政のもとにある領域における、いずれか一方に対する攻撃に対し、共通の危険に対処するよう行動するという規定をしているわけでございます。竹島については、我が国領土ではございますが、現実に我が国の施政が及んでいないということから、安保条約第五条に言う日本国の施政のもとにある領域には該当いたしません。
  22. 石橋大吉

    石橋(大)委員 続いて外務省伺いたいわけでありますが、竹島が歴史的事実に照らしましても我が国固有領土であり、また国際法的な評価からいっても日本領土であることは論をまたないところだと思うのです。この点については、国内に関する限り私どもも外務省基本的に認識の差はないと思いますが、こういう問題はきょうは一切省略をしまして、今までお尋ねをしていますように、このままいけば何年か後には竹島韓国軍事占領、事実上の支配の既成事実化によってやがて韓国領土になってしまうのじゃないか、この一点に絞って今お尋ねをしておるわけであります。  先ほどもちょっとお話がありましたように、一九六五年、昭和四十年の日韓基本条約の調印に当たりまして、日韓間の紛争解決に関する交換公文が取り交わされております。それによりますと、「両国政府は、別段の合意がある場合を除くほか、両国間の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとし、これにより解決することができなかった場合は、両国政府が合意する手続に従い、調停によって解決を図る」、こういうふうにされているわけであります。竹島の帰属問題についても、この交換公文の定める方式によって処理されるべきことは当然であります。  ところが韓国は、交換公文に竹島紛争の名が特記されていなかったことを盾にとって、竹島問題は交換文書の対象にならない、こういうふうに主張して今日に至っておるわけであります。韓国は一貫して、竹島韓国固有領土であって、交渉に応じられないという態度をとり続けているわけであります。そして韓国は、まず第一段階として、竹島問題が交換公文に言う紛争でないということを主張することによって外交上の経路による解決を拒否し、どうしてもそれができない場合には、第二段階として調停の手続に合意を与えないことによってこれを拒否し、最終的には調停案そのものができてもこれを受諾しない、こういうような姿勢を貫くことによって目的を貫徹する可能性があるわけでありますし、そういう道をとっておるわけであります。  こういうことを考えてみますと、外務省課長さんにここまで言うのはちょっと酷かもしれませんが、この日韓条約締結当時の交換公文なるものがその後の竹島問題の解決を非常に困難にしている。いわば韓国にとっては非常に有利に、我が日本にとっては非常に不利に、にっちもさっちもいかない袋小路にこの問題を追い込む原因になっておるのではないか、こういう感じがしてならないわけであります。もしそうでないとすれば、こういう方法をとってちゃんと解決しますよ、こういうことを明確にしていただきたいと思いますが、外務省の見解を伺いたいと思います。
  23. 高野紀元

    高野説明員 お答え申し上げます。  御指摘の一九六五年の日韓間の紛争解決に関する交換公文ということでございますが、竹島問題については、過去三十数年にわたって同問題に関して日韓政府間に数十回の抗議ないし抗議口上書の応酬が行われてきたということは事実でございまして、この事実から見ても同交換公文に言う「両国間の紛争」に竹島が含まれることは明らかなことだと考えております。我が方としては、今までのところ韓国側がこの問題に応ずる気配がないことは残念だと考えておりますけれども、竹島問題は、日韓国交正常化の際に取り交わした紛争の平和的解決に関する交換公文にのっとり、外交上の経路を通じて今後とも粘り強く努力をしていきたいと考えております。
  24. 石橋大吉

    石橋(大)委員 続いて外務省伺いたいわけでありますが、韓国は、竹島が地理的、歴史的理由とともに争うべからざる法理論に照らして韓国領土と不可分の一体をなしている、こう主張しております。そういう点では、我が日本と同様、国際法にその見解の正当性を根拠づけていることは御承知のとおりであります。それゆえ、竹島の帰属をめぐる紛争はいわゆる法律的紛争の様相を呈しているわけでありますから、先ほども外務省からお答えがありましたように、本紛争は国際司法裁判所に付託をして解決する、これが一番合理的だと思うわけであります。  しかし、先ほどもお答えがありましたように、韓国は一九五四年、昭和二十九年九月二十五日の竹島に関する紛争を国際司法裁判所に提訴して解決しようという提案を拒否し、さらには一九六二年、昭和三十七年十一月十二日の大平外相・金鍾泌韓国中央情報部長会談における同様の提案を拒否して、国際司法裁判所における紛争処理の道も閉ざされているわけであります。袋小路に陥っていると言わざるを得ない状況であります。しかし国際司法裁判所への提訴については最終的に一方的な提訴も可能ではないか、こういうふうにも考えるわけでありますが、外務省はどういうふうにお考えになっていますか。
  25. 高野紀元

    高野説明員 お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたが、かつて我が国竹島問題を国際司法裁判所に提訴することを韓国側に提案いたしました。しかしながら韓国側はこれを拒否した次第でございます。そういう韓国側の態度から考えますと、実際問題として現時点で国際司法裁判所への提訴により本件を解決し得る見通しは立てがたいというのが率直な状況でございます。今御指摘の一方的な提訴という点でございますが、この点に関しては、いずれにいたしましても国際司法裁判所は韓国が応じない限り本件問題に管轄権を有しないということは同様でございまして、既に一九五四年に我が方から韓国側にこの問題は提案した、それに対して韓国側の拒否があったということになっているわけでございます。
  26. 石橋大吉

    石橋(大)委員 竹島問題はこれを最後にしたいと思いますが、最後に地元島根県の要望などを踏まえまして外務省にもお尋ねをしたいし、できれば農林水産大臣の決意のほどもちょっとお伺いしたいわけであります。  まず一つは領土問題の解決、こういう観点で言えば北方領土竹島も同一線上の問題で変わりはないと思いますが、この点をどう外務省考えていますか。
  27. 高野紀元

    高野説明員 お答え申し上げます。  北方領土竹島も、我が国固有領土であるという点については全く変わりございません。政府としては、いずれの領土問題についてもその解決に向け最大限の努力を傾注している次第でございます。
  28. 石橋大吉

    石橋(大)委員 今も話がありましたように、北方領土竹島我が国固有領土の問題として変わりはない、こういう考えだということでございました。しかし、竹島と北方領土の問題の今まで何十年かの政府の対応や扱いを見ていると、非常に大きな違いがあると思うわけであります。  例えば、北方領土の問題につきましては北方対策本部ですか、総理府の中にそういう専門の組織もありますし、専門のスタッフも三人か四人か配置をされておりますし、北方領土の日を制定したりしてかなり大々的に国民的なキャンペーンも張っておられるわけです。しかし、そういう状況に比べれば竹島問題は、さっきも言いましたように国を挙げての領土問題の解決という取り組みにほとんどなっていないのじゃないか、こう思うわけであります。ですから、せめてそういうことをするために、ぜひひとつ政府としては北方領土問題の解決と同じように、直ちに同じ数の人間を配置しろとは言いませんから、できれば竹島問題についても一人ぐらい専門の担当者を配置するぐらいのことをして、もっと本腰を入れて韓国との返還交渉をやるなり国民的な世論を喚起するなり、そういう取り組みをしていただきたいと思うわけであります。北方領土の日に対して竹島の日ぐらい設けてもらいたいと私は思っているわけです。この点についての外務省の見解、また、農林水産大臣もせっかく中国地方の出身でもありますから、できればこういう方向に向けて閣僚の一人として鋭意努力をしていただきたい、こう思うのですが、この点についてお伺いいたします。
  29. 高野紀元

    高野説明員 お答え申し上げます。  御指摘の点に関しましては、各省庁にもまたがり得る問題でもございますので外務省限りのお答えということでございますが、一般論として申し上げて、我が国固有領土たる竹島の問題に関する国民の正しい理解、認識が深まるという意味において望ましいことであり、そのため適切な方法で国内啓発に努めることは必要なことと考えております。もちろん、竹島問題について我が国が何らかの具体的な対応を行うに当たっては、それが韓国の国民感情あるいは日韓関係全般に与える影響等を十分勘案し、万が一にも日韓の友好関係に不測の事態を招くようなことがないよう最大限の配慮が必要であると考えておりまして、このような観点から御指摘の点を含めいかなる方法があり得るか、慎重に検討していきたいと考えております。
  30. 石橋大吉

    石橋(大)委員 大臣にも御努力をお願いしたいわけでありますが、どうですか。
  31. 加藤六月

    加藤国務大臣 我が日本にとって一番近い隣国韓国との間の竹島をめぐる領有権の問題、これはあくまでも平和的な話し合いによって解決していかなくてはなりません。そういう基本的な立場に立ちまして、さらに努力してまいりたいと考えます。
  32. 石橋大吉

    石橋(大)委員 竹島問題につきましてはとにかく先ほど申し上げましたような経過で、鋭意解決に向けて努力していただきますように強くお願いをして、これで一応おきたいと思います。  続いて、日本海沖における韓国漁船不法操業の問題につきまして伺いたいと思います。  御承知のように、日本海沖における韓国漁船不法操業等をめぐる諸問題につきましては、関係漁業団体、島根県を初めとする日本海沿岸各県の知事、県議会、関係市町村等からこれが早期解決について毎年のように政府に要望や決議が出されております。  そこで、まず山陰沖における韓国漁船の現認状況でありますが、昭和五十七年に二百三隻、昭和五十八年に二千三百六十隻、昭和五十九年に三千三百十六隻、昭和六十年に二千百五十一隻、昭和六十一年に二千五十七隻、こういうふうになっているわけであります。領海侵犯、拿捕件数は昭和五十七年一隻、昭和五十八年八隻、五十九年二十八隻、六十年二十二隻、六十一年十八隻、こういうふうになっているわけであります。現認件数、隻数に対して拿捕件数が非常に少ない、大したことないじゃないか、こう思われるかもしれませんが、これは不法操業のほんの氷山の一角でありまして、領海侵犯以外のところにも大きな問題がたくさんあるわけであります。  水産庁はよく御承知だと思いますが、まず第一点は、我が国の漁業においては、船型三十トンから百トンの中型イカ釣り漁業は距岸三十海里以内での操業が禁止をされているわけであります。この中イカラインと領海十二海里の間には相当広範囲な海域があるわけでありますが、韓国船はこの海域に何らの制限もなしに自由な操業を行っているわけであります。日本船の入漁できないところで自由に操業しているのであります。日本漁船はこれを指をくわえて見ていなければいかぬ。資源保護、漁業秩序の維持という観点からも極めて深刻な実態となっているわけであります。  二つ目は、韓国のアナゴかご漁船の不法操業の問題であります。  山陰沖韓国漁船の先ほど申し上げました現認状況の内訳を見ても、アナゴかご漁船は昭和五十七年十隻、五十八年二百十二隻、五十九年千二百五十一隻、六十年九百八十二隻、六十一年九百八十九隻と、全体の半数に近いところまで最近急激にふえているわけであります。アナゴとはいいますが、ほとんどはいわゆるヌタウナギといいますか、こういうものをとるための漁船であります。そして、領海侵犯や不法操業もこのアナゴかご漁船が一番多いわけであります。最近、領海侵犯に対する罰金を従来の二十万から二十倍の四百万円に引き上げ、一時的に多少自粛をされたかの感を抱いた時期もあるわけでありますが、しかし、こういう状態が長続きするとは思われないわけであります。なぜかといいますと、罰金二十万では略式裁判で終わったのが、四百万に上げた途端に本裁判に訴えなければいかぬ、長期に船員を抑留しなければいかぬ、裁判が終わるまで。結果、非常に高いものにつくわけでありますから、なかなか罰金を引き上げただけで問題が解決する、こういうことにはならない、そういう面があるわけであります。  三つ目の問題は、本土と隠岐間の海峡における沖合底びき船の領海侵犯の問題。漁業資源保護のために一日本の漁船は御承知のように六月、七月、八月の三カ月間、完全に禁漁期間に定めて漁を休んでいるわけでありますが、韓国船はこの休漁期間中にどんどん入って、せっかく資源を確保しようと思っておるのにごっそりとっていってしまう。やがて、完全に資源の枯渇を迎えることにならざるを得ないと思われるわけであります。こういうことをやっているために、水産試験場の漁業試験もうまくできない、こういうような形になっておるわけであります。そういう意味で、山陰沿岸における韓国漁船不法操業の取り締まり、特に休漁期間中の取り締まりについて、何らか政府の方で早急に解決をされるようにひとつしていただきたい、こういう切実な願いを持っているわけですが、水産庁のお考えを承りたいと思います。
  33. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 ただいま先生が御指摘ございました事態は、日本の漁業資源の維持、それからまた日本の漁民感情から見て大変に遺憾な事態であるというふうに私ども考えておるわけでございます。しかしながら、領海侵犯は別といたしまして、イカ釣りの中型、いわゆる沖合イカの禁止ライン内の操業問題、それから沖合底ひきの禁漁期間内の操業につきましては、現在の日韓漁業協定の枠組みでは違法操業ということができないわけであります。これは御承知かと思いますが、今お互いに相手国の沿岸の漁業秩序を守るという根拠になっております合意議事録八条a項の文言からいたしまして、四十年当時設定されていた操業禁止海域についてお互いに守るということでございまして、操業禁止期間がうたわれてないわけでございまして、それは当時その必要がなかったわけでございます。協定締結後二十年たちまして、漁業実態が大きく変わってきたわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、その二十年間の実態の変化を踏まえて、協定の改定を韓国側申し入れているわけでございまして、その中にはただいま御指摘の点につきましてはすべて網羅いたしまして、韓国側に提案しているわけでございます。
  34. 石橋大吉

    石橋(大)委員 今の問題に関連をしまして、厳密に言えば違法だと言えないということかもしれませんが、同時に日韓漁業協定では、相手国の国内規制措置をお互いに尊重しよう、こういうこともあるわけでありまして、そういう観点から言えば、日本の漁民の立場から言えば、不法操業だ、こう言わざるを得ないと思っておるわけであります。  それはそれとしまして、次に、今水産庁長官から話がありました日韓漁業協定の問題です。  法律的に触れてないからそういうことは言えないかもしれませんが、ある意味では非常に不平等といいますか、そういう中身を持った漁業協定になっておるわけであります。水産庁でも言われておりますように、一つは、韓半島周辺だけで隻数制限が行われておって、日本周辺では隻数制限が行われていない。二つ目には、韓国漁船日本の多くの国内規制に従う必要がなく、日本周辺で日本漁船より有利な操業を行うことができる。三つ目に、日本漁船は新しい漁業を行うことができない。一方、韓国漁業は日本周辺で新しい漁業を行っている。さっき言いましたアナゴかご漁業だとかイカ流し網漁業だとかイカ釣り漁業、こういうものを韓国はどんどんやっているわけであります。いわば日本漁船韓国漁船操業に関する不平等といいますか、こういう結果がなぜ生ずることになったのか、この点、水産庁の考え方をもう一遍念のために聞いておきたいと思います。
  35. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 ただいま御指摘いただきました事実は、私どもとしても全く先生の御指摘のように認識しているわけでございます。ただ、協定締結の四十年当時の事情から考えますと、要は日韓漁業協定というのは、日本の漁船が韓国周辺に出漁して操業することだけを念頭に置いて規定されておるわけでございまして、そのような観点から、日本周辺の水域には一切共同規制水域のような水域設定は行われていないわけでございます。それでは共同規制水域を現在日本周辺に設定したらどうだということになりますと、これはまた別途いろいろ検討しなければならない問題はあろうかと思います。
  36. 石橋大吉

    石橋(大)委員 そろそろ制限時間が来ましたので、最後に二百海里法の早期全面適用について水産庁の考え方を承り、また、大臣の決意のほども承っておきたいわけであります。  御承知のように、一九七七年の海洋法元年以来、二百海里体制は世界の潮流になっておるわけであります。米ソ両大国を初めとして、沿岸国は資源への主権行使を強化しております。我が国の漁業食糧確保にとって周辺水域の重要性はますます増大していることは御承知のとおりであります。しかし、我が国の漁業水域法は、御承知のように東経百三十五度以西の線引きを留保し、そしてまた、韓国、中国を適用除外しておるわけであります。このため、両国に対しては、十二海里以遠では管轄権、すなわち主権の行使、取り締まり権が及ばないことになっているわけであります。山陰沖における韓国船の不法操業などが後を絶たない原因もこういうところにもとはと言えばあるのじゃないか、こういう気もするわけであります。現状をこのまま放置することは、官民一体となって推進しておる二百海里内漁業振興施策、すなわち栽培漁業や沿岸整備、漁場管理と矛盾することになるわけであります。  このような現状から、我が国周辺水域の漁業振興を担保する上で、生産の場の確保操業秩序の確立が必要であり、このため、基本的に世界の大勢に沿った二百海里法の全面適用体制の早期確立が日本海沿岸の漁民、関係各県や自治体の切実な要望であることは先ほど来繰り返し強調しておるところでありますが、そういう意味で二百海里体制の全面適用の早期確立に向けて水産庁、できれば外務省はどう考えておるのか、特に見解があれば聞きたいわけです。あわせて農林水産省にもそういう方向でひとつ鋭意努力をお願いをしたいわけでありますが、決意のほどを承って、私の質問を終わりたいと思います。よろしくお願いいたします。
  37. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 二百海里体制が世界の大勢であるということは先生御指摘のとおりでございます。ただ、やはりそれぞれの海域の特殊事情があるわけでございまして、昭和四十年協定締結以来、日韓の漁業関係が比較的安定した形で推移してきたという事実もまたこれは否定できないところでございます。また、特に韓国に対して二百海里体制を一方的にしくためには、現在の日韓漁業協定の破棄というようなことをしなければならないわけでございまして、この点は外務省はもとより水産庁といたしましても、現在この協定に基づきまして韓国周辺海域において安定的な操業を営んでいる漁業がある以上、なかなかできないことでございます。  このような判断から私どもとしては、この問題は結局話し合いによって解決せざるを得ないというふうに考えておるわけでございまして、仮に将来双方が二百海里をしき合うとしても、それは話し合いによってお互いに二百海里に移行するという合意ができた場合になろうかと思うわけでございます。当面、私どもといたしましては、実態に即した操業条件の設定とその定期的見直しの仕組みの制度化、それからまた沿岸国の取り締まり権の確立ということで協定の改定を韓国に提案しているところでございます。両国の主張には大変隔たりがあるわけでございますけれども、双方ともこの問題は放置できないという認識は一致しておりますので、十月末の期限に向けて全力を挙げて取り組んでまいりたい、かように考えておるところでございます。
  38. 加藤六月

    加藤国務大臣 日韓両国間の問題解決へのアプローチには大きな相違があり、その解決には困難が予想されます。しかし、この問題を放置できないという点については両国間の認識に相違はないと考えております。したがいまして、基本的な問題につきましては今後とも協議を続けていく一方、当面の問題につきましては、今後十月末までの問題解決を目指して全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。
  39. 石橋大吉

    石橋(大)委員 竹島問題、それから日本海における韓国漁船不法操業の問題、二百海里宣言の問題を中心に質問させていただきましたが、最後に、とにかく外務省、農林水産省を初めとして鋭意問題解決努力をしていただきますように繰り返しお願いをいたしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  40. 玉沢徳一郎

  41. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 食管に入ります前に、一、二懸案の問題をお伺い申し上げたいと思います。  一つは十二品目問題でありまして、せんだってからアメリカを訪れていた眞木経済局長がお帰りになられた。大変な御苦労であられたとその労をねぎらいたいと思うのでありますが、新聞等で報ぜられるところによりますと、アメリカ側は二国間協議は拒否していないが十二品目すべての段階的自由化が前提、こういう基本姿勢を崩しておらない、今回の非公式協議でも結局問題解決のための合意ができなかったと報道されているわけであります。しかし一面、ガットの小委員会の二回のパネルが終わって今月下旬には三回目のパネル、早ければ九月二十日前後にもパネルの裁定がなされるというふうなことも聞いているのであります。これは我が国農業の将来にかかわる極めて重大な問題でありますし、農水省も大変苦慮をなされておるものと思うのでありますが、この際、経過の御報告と、それからこれが打開への決意をお示しいただきたいと思います。
  42. 眞木秀郎

    ○眞木政府委員 お答え申し上げます。  十二品目問題につきましては、ただいま五十嵐委員からお話がございましたようにガットのパネル、小委員会での検討が進められておりまして、既に二回のパネルを終えましてあと一回のパネルを終えた後、この秋にはその結論が出てくるというような、かなり差し迫った状態にあるわけでございます。この間、我が方といたしましては、日米両国間のこれまでの関係等を考慮し、あくまで二国間によって現実的な円満な解決を図るべきであるという基本的な考えで対処してきたわけでございますが、アメリカ側は全品目を段階的でいいから自由化ということははっきりさせるべきであるという主張を崩さないままに今日に至ったわけでございます。  このような状況のもとであくまで我が方としての基本立場を米側に理解をさせ、二国間協議に持ち込む必要があるという判断のもとに、私、今月の六日から約一週間ワシントンに参りまして、アメリカ側のUSTRその他の関係者と意見交換をしてまいりました。  私の方からは特にUSTRに対しまして、日本国内農業実態等を考えれば、USTR、アメリカ側が主張しております全品目の段階的自由化というものは受け入れることはできない、各品目ごとの実情に即してアメリカ側と日本側とよく話し合って、日米両国間で現実的かつ円満な解決を図るという我が方の立場を理解してほしい。アメリカの主張によりまして現在パネルが進行しておるわけでございますが、この結論を待って対処するということは、今ウルグアイ・ラウンド、農産物のみならず多くの分野において交渉が始められておりますが、これももともとは日米がイニシアチブをとって始めたラウンドでございます。日米協調が必要なこのような新しいラウンドの全体の進行にも悪影響を及ぼすおそれがある、そういう日米協調すべきウルグアイ・ラウンドの中で、多くの国が見ている前で日米間がこのような問題で争うということはよくない。また全体として見れば日米間の農産物貿易、これまで非常に友好的に行われてきたわけでございます。こういうものに対して日本にこのパネルの結果を押しつけるというような形になれば、我々はパネルの結果がどうなるかということを先取りして考えているわけではございませんけれども、パネルの結果を押しつけるというような形でこの問題の処理を図ろうとすることは、日本の農家なり関係者の非常な反発なりそういうものが出てくるわけでございますから、全体としての日米農産物貿易関係、これまで良好な関係にあったそういうものにも悪影響を及ぼすというような点を力説いたしまして、二国間協議を申し入れたわけでございます。  しかしながら米側は、こういう日本側、私の申し上げたようなことのみで二国間協議に直ちに応ずるということはできない。やはり全品目について将来何らかの形での段階的自由化と申しますかフェーズアウトという原則を守ると申しますか、そういうものを取り入れた形での対応が必要であるという点を譲らなかったわけであります。しかしながらこの問題、やはり今後とも二国間で協議していくことはいいことであろうということでございまして、さしあたりましては来月初めにハワイで定例の日米貿易委員会が開かれるわけでございますので、そこでまた話し合おうではないか、こういうことになっております。  いずれにいたしましても、時期が大変迫っておりますので、こういう点、今後とも我が方の基本立場をあくまで守りながらできるだけ早急に解決を目指すべく一生懸命頑張ってまいりたい、このように考えております。
  43. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 大変難しい国際環境の中でのお仕事でありますから本当に大変だろうというように思いますが、どうかひとつ我が国基本的な政策を踏まえて鋭意我が国農民の立場を守ってほしい、このように思う次第であります。  今同僚議員から御質問があったところでありますのでほぼ理解はできたわけでありますが、一方漁業問題でも十月末に自主規制措置が期限切れになるということもあって、ことしに入って四回目の日韓漁業協議が六日から行われたわけでありますが、これも大変な難しい問題であることはよくわかるわけであります。しかし、さっきの石橋委員の御質問にもありましたように、我が国の漁民の立場からいうと、もうとても我慢ができぬということになっていることは改めて言うまでもありません。この機会に先般行われたソウルでの協議の経過、これも十月末までに期限が切れるわけでありますから仕上げていかなければならない、しかもなかなか解決のめどがついてこない、こういう中での水産庁としての方針と決意のようなものをお伺い申し上げたいと思います。
  44. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 交渉継続中のことでございますので具体的な細部についてはお許しいただきたいと思うのでございますが、概要について御報告申し上げます。  八月六日、七日の協議におきましては、我が国は現行の協定の枠組みの改正が必要であるということを再度強調した上韓国側の理解を求めたわけでございます。これに対しまして韓国側の見解は従来どおりであるというふうに主張いたしまして、協定締結当時の経過とかそれから国民感情というようなことを重ねて説明し、現在は協定改定、つまり枠組みの見直しの条件が成熟していない、ただ韓国といたしましても現在の協定が永久に不変なものであるというふうには考えていない、こういうふうに主張してまいったわけでございます。  さらに私どもといたしましては、ただいま先生の御指摘もございましたように十月がもう間近に迫っておるわけでございますので、十月末までにどうしても解決しなければならない問題ということを提案したわけでございます。もちろん私どもは基本的に協定の改定が必要である、この基本立場は変えておらないわけでございまして、それを留保した上でどうしても十月末までに解決しなければならない問題といたしまして、第一点といたしましては北海道における国内操業秩序の遵守、それから第二点といたしまして西日本における国内規制、特に現在の日韓漁業協定の枠組みには漏れている部分、つまり四十年以降にいろいろ禁止ラインが設定されたもの等があるわけでございまして、そういうものについて韓国側に守ってもらうこと、それから第三点といたしまして特に最近の韓国船の、韓国船と決めつけられないわけでございますけれども、とにかく船名隠ぺい船が特に西日本海域で多数操業しているという実態から見まして取り締まりを強化する、取り締まり権の確立、この三点について我が方の考え方を具体的に説明したわけでございます。  これに対して韓国側といたしましては、我が国主張の一部には同意ができる点があるということを言っておるわけでございますが、なお両国の考え方には大きな隔たりがある、極めて遺憾であるというふうに大変厳しい対応をしたわけでございます。双方それぞれの主張を検討の上次回協議を九月上旬に行うということで具体的日程については外交ルートで決める、かようなことで今回の協議を終わったわけでございます。
  45. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 今回の協議の終わったのはわかるんだが、そういう中で十月末というもう目の前の期限切れがあるわけで、これから何回も協議を重ねながら来月あたりには詰めていかなければならないというふうに思うわけであります。今のお話あるいは先ほどの大臣の御答弁をお聞きしますと、基本的な面ではなかなか合意が得られないとすれば、継続をしつつ、つまり保留をして、当面とにかく急いで解決をしなければならない面についてはどうしても解決したいというふうなお話であったと思うのでありますが、北海道の漁民におきましてもこの前、先月の二十四日、札幌で全道漁民大会を開いて、そして二百海里法を適用しない限り日本韓国漁船に対して取り締まり権を持てない、日本政府は安易な妥協をしないで、あくまで二百海里を即時適用すべきだという声も非常に強いということなども既に御承知のことであろうと思うのであります。非常に切迫したこういう状況の中で、どうか一層の御努力をひとつお願い申し上げたいというふうに思います。  これらを初めとして、さまざまな国際的な農、漁業等にかかわる懸案の重大な問題が山積をしているわけでありますが、そういう中で、近く自民党の総裁選びというようなこともあるわけであります。加藤農水大臣、今までも大変な大臣の御努力をいただいているわけでありますが、所信をひとつ残りの在任期間でぜひ実らせるというような気持ちで、本問題にしっかり取り組んでいただきたい、このように思うのでありますが、これらの問題についての大臣の御決意をいただきたいと思います。
  46. 加藤六月

    加藤国務大臣 今日の我が国農業、水産業あるいは林業、どれを見ましても、内政問題と外交問題とは完全に表裏一体をなしております。外交即内政、内政即外交という面があるわけでございまして、今後いかなる内閣、いかなる農林大臣があらわれても、この問題は取り組んでいかなくてはならない問題であると考えております。  私も、農林水産大臣としてぎりぎりまで必死の努力をしていきまして、ある面では問題の解決、ある面では解決のための糸口を、またある面では解決するための大きな方向転換を、それぞれのケース・バイ・ケースに即応してやっていきたいと決意を固めておるところでございます。
  47. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 それでは、麦の問題に入りたいというふうに思いますが、ことしに入って次々に農産物の生産価格の大幅な引き下げが行われているわけであります。加工原料乳は実質八・六%、麦価は御承知のように四・九%、米が三十一年ぶりに五・九五%、この前も参考人として来ていた生産者代表の山田孝夫さんがお話をしていたが、まさに日本農業というのはあらゆる面で出口のない、四万壁ばかりというような思いの深い昨今であります。急激な円高と自由化の要求、主要品目における生産抑制、累積する債務、そして今言う相次ぐ価格の引き下げ、加えて先般来審議をしてまいりました大豆、なたねの算定方式の改定、このたびの食管法の二部改正による現行麦価のパリティ算式の改正案がこういう流れの中で出てきているということになるのであります。  今の内外の状況の中で、生産性向上を懸命に目指していかなければならぬ、こういうことは私どもも当然努力をしていかなければならぬことであろうというふうに思うのでありますが、しかし、今申しましたような今日の重なる苦しみの中で追い打ちをかけるような措置については、容易に賛成できるものではないというふうに思います。時間をかけて構造政策の進捗と相まってこれらを行うべきものであろうというふうに思うのであります。  まず、お伺いいたしますが、このような厳しい農業環境のもとでは、農家がどう努力しても、一体大丈夫なんだろうか、こういう見通しがついていかない。これからも農家は麦作政府の中長期需給見通しに沿って、また、今後の水田農業確立対策を支えるかなめとして本当に長期的に安心して生産に励んでいいのだろうか、日本農業における麦の位置づけと申しますか、この点についてまずお伺いを申し上げたいと思います。
  48. 加藤六月

    加藤国務大臣 石橋委員にもお答えいたしましたが、麦は土地利用型の代表的な作物であり、また、転作有力作物でもあります。六十一年産におきましては、作付面積割合転作が二八%、水田裏作が四一%、畑作が三一%となっております。  麦は、水田作におきましては、冬作物として稲作と有機的に結びつけ得る作物として、畑作におきましては連作障害の回避の観点から、イネ科作物として豆類、根菜類等と組み合わせた合理的な輪作体系を構成する作物として、土地労働力、機械、施設有効利用を図る上で重要な作物であります。また、地域条件に即した合理的な輪作体系のもとで農業経営の柱となる基幹作物として、農業所得維持確保を図る上で不可欠な作物でございます。そして、麦につきましては省力化が進展しており、生産組織化中核農家への土地利用集積等による作業単位大型化を図ることによって生産コスト低減を図り得る作物であること等から、我が国土地利用型農業の健全な発展を推進する上で今後とも重要な役割を果たしていくものと考えております。
  49. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そうとすれば、農家として当然期待するところは現行価格水準の連続性の問題であろうと思うのであります。農家の営農設計に大きなダメージを与えるような価格引き下げを行うべきではない、規模拡大などの生産性向上するに必要な構造政策の成果と相まって十分に整合性を持たせつつ価格政策を進めていくべきものだ、このように思うのでありますが、いかがですか。
  50. 後藤康夫

    後藤政府委員 改正法に基づきます価格算定におきましては、法案でごらんいただきますように麦の生産費その他の生産条件、それから麦の需要及び供給の動向、それから三番目に物価その他の経済事情、この三つの事項を総合的に参酌しながら麦作生産性向上と麦の品質改善に資するという観点に立って行うことにいたしたいと思っているわけでございます。  この改正法に基づきます具体的な価格算定方式についてでございますが、これにつきましてはことし六月に米価審議会で麦価審議をいたしました際、改正法が成立いたしました暁には米価審議会において小委員会を設けて検討するということが合意を見ております。御案内のとおり米価審議会は生産者団体の代表の方、そしてまた現場で実際に農業をやっておられる方も委員としてお入りいただいている委員会でございますが、ここで小委員会を設けて検討していただいた上で決定したいと考えておりますので、具体的な算定方式ということにつきまして現段階では具体的なことを申し上げにくいわけでございますが、ただ、算定方式の変更によりまして麦作の安定的、継続的な発展に支障が生ずることがございませんように、やはり行政価格としての連続性ということも配慮する必要があるというふうに考えておりまして、こうした点も踏まえながら算定方式なり具体的な麦価水準について検討いたしてまいりたいと考えております。
  51. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 先ほどもちょっと話が出ていたと思うのでありますが、我が国の国土面積が非常に狭い、したがって土地利用型農業においては他国とのハンディというものが自然環境の上でどうしようもなくあるわけであります。しかし、そういう制約条件の中でも可能な限り生産性向上について努力をしていくということは当然のことであろうと私は思うのであります。しかし、この場合大切なことは、生産性向上メリットをすべて価格に反映してしまうということでは農家の生産意欲を失うことになるのではないか、やはり一定の割合がその努力の結実として農家に還元される、そのことがまた次の生産性向上へのエネルギーになっていく、こういうことでなければならないのではないかと思うのですが、この点はいかがですか。
  52. 後藤康夫

    後藤政府委員 もう先生よく御存じのところだと思いますけれども、本年までとってまいりましたパリティ方式のもとにおきまして、生産振興奨励金の相当額という部分が上に乗っかっておったわけでございますが、ここに生産性向上を反映させます場合に労働時間の減少の一定部分を見るということでやってまいったわけでございます。ただこの点、仮に生産費方式ということになるといたしますと、これは先ほど申し上げましたように米価審議会の小委員会でこれから具体的に詰めていただくわけでございますが、パリティ方式と若干違う要素があるのではないかというふうに思っております。  と申しますのは、生産費方式と申しますのはかかったものは見るという方式でございますから、逆に申しますとかからなかったものを見るということは建前としてはちょっと難しいということになろうかと思います。一般的に、平均の生産費で、米で申しますと一俵二万円とか、麦で申しますと一俵一万円というふうなことが言われますけれども、個々の生産費の個票を見ますれば、また階層別に見ましても非常に大きな違いがございます。麦でも〇・三へクタールのところと二ヘクタール以上のところでは生産費が倍、半分というようなことでございます。やはり平均の生産費に基づいて価格を決めますれば、平均よりも一歩先んじて高い生産性を上げておられる農家には必ず生産性向上のメリットが残るわけでございまして、価格の中で明示的に生産性向上の還元部分というものを織り込まないと生産意欲が減退をするということは、経済的に申しますと一般論としてはないのではないか。  ただ、麦作と申しますのはかなり米と違いまして、北海道それから内地、また田麦、畑麦ということでかなり違った生産構造を持っておる面もございますので、そういったものを全体をひっくるめまして麦の生産が健全に発展するように配慮をしていくということは、今後の価格政策の運用においても必要ではないかというふうに考えておるところでございます。
  53. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 さっき言いましたようにスケールの上では非常にハンディは持っているけれども、そういう中ででもそれぞれの実態に即して最善の工夫、努力をしながら生産性を上げていく、内外の価格差の縮小に努めるという努力を何ぼ苦労しながらでもお互いにしていかなければいかぬわけでございますから、そこはやはり農家の皆さんにしてみても懸命な努力をしながら、また、それについてはやはり一定の果実の還元もあって、それが励みになりながらまた次のエネルギーを生んでいく、新しい工夫、努力を重ねていくということでなければ、これは何ぼ努力したって一向に実になってこないということでもいかがなものかと思うわけで、ぜひそういう面では十分な御配慮をお願い申し上げたいと思います。  今年度の食管麦勘定の見通しはどうかということなのでありますが、今年度約四百万トンくらいの外麦を買い付けることになろうと思うのであります。最近のこの円高でありますし、けさ見ますとびっくりするようなえらい跳びはねた円高にまたなっているようでありますが、今日現在で既に契約を終えたものは何割ぐらいあるか、これをまずお伺いしたいと思います。
  54. 後藤康夫

    後藤政府委員 外麦の買い付けにつきましては三月後ぐらいのところのものを手当てしていくという形になるわけでございまして、価格とか為替レートの変動ということで見ますると、契約ベースで暦年でつかまえた状況というのが、手当てをしたベースで申しますと、暦年に対応するものが大体会計年度の収支に響いてくるというような、三カ月ずれのような感じになるわけでございます。そういう意味で申しますと、今までの既買い付け分というのは五割弱でございます。既買い付け分百八十八万トン程度ということでございます。
  55. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 予算編成のときに想定した為替レートは一ドル百六十三円ということであったと思うのでございます。そうしますと、ざっと半分くらい手当てをされたということになりますと、おおよそその差益はどのくらいの額になるか。
  56. 後藤康夫

    後藤政府委員 いわゆる予算で前提にいたしております支出官レートと申しますのが、六十二年度予算におきましては百六十三円ということでございますが、先ほど申し上げましたことしの既買い付け分一-六月につきまして平均をいたしますと、百四十八円程度になろうかと存じます。その差で計算をいたしますと、為替レートの実勢と支出官レートの差によりまして出ますいわゆる俗称差益と申しますか、約四十三億程度というふうに計算されるところでございます。
  57. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 けさが百四十五円くらいでしたですね。これからどういう変動があるかわからないわけでありますから何とも言えないが、ともかく今までで四十三億くらいの差益になる。一方で生産価格は四・九%下げ、しかも品質格差も拡大をした。これは一%で十四億とかという話をちょっと聞いたこともあるのでありますが、この四。九%下げなどで内表面で財源の余裕はどのくらいですか。
  58. 後藤康夫

    後藤政府委員 大変細かいお尋ねでございますけれども、私ども国内麦の買い入れ価格の一%の変動で内麦の損益に影響いたしてまいります額を約十九億円と見ております。したがいまして、四・九%でございますと九十億円くらいというふうにお考えをいただいて結構かと思います。
  59. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 一方、最近非常に顕著に目立ってきているのが小麦粉製品の輸入激増の問題であろうと思います。いただいている資料から見ましても、六十年対六十一年比で、これは暦年でありますが、マカロニ、スパゲッティ類で三〇・一%、ビスケットなどで五四%、めん類で二七%前年比増になっているわけであります。殊にマカロニ、スパゲッティなどは五十五年から六カ年間で四倍以上にも急増して、国内供給量の二二%に及ぶという資料になっているのであります。この間、本委員会に参考人としておいでいただきました製粉協会会長の正田さんの話によりますと、今年はさらに急増しているという御説明があって、本当に大変だなというぐあいにお伺いしたのでありますが、最近現在で前年比でどの程度増加を見ておるか、資料を御説明願いたいと思います。
  60. 後藤康夫

    後藤政府委員 御指摘のとおり、最近麦の二次加工製品の輸入の増加傾向が見られるわけでございます。大きく分けまして、マカロニ、スパゲッティ類、それからビスケット類、それから乾めんというのが主体でございますが、マカロニ、スパゲッティなりビスケットにつきましては、本場志向とか高級品志向というような風潮もございまして、輸入が従来から増加傾向にございましたけれども、最近の円高傾向によりましてそれがさらに若干進んでいる。それから乾めん類につきましては、従来から安価なものが若干輸入されておりましたけれども、円高による割安感からこの種のものの輸入がさらに増加をしている。こんな状況でございまして、ことしの一-六月平均で昨年の同期と貿易統計で比較をいたしますと、マカロニ、スパゲッティ類が二三・三%の増、それからビスケット類が四三・一%の増、乾めん類が八三・一%の増ということでございます。  国内の総需要に占めます輸入量の割合ということになりますと、マカロニ類の場合は二割を超えるというくらいのところまで参っておりますが、ビスケットなり乾めん、昨年で見ますと四%、あるいは乾めんの場合は〇・二%ということで、シェアとしてはまだそれほど大きくございませんけれども、輸入の増加率ということでは最近特に乾めん類の伸びがちょっと大きくなっているという実態でございます。
  61. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 最近、オーストラリア産のASWですか、あれを全量原料にした韓国産の製めんがかなり日本に入ってきておる。しかも、それはうんとふやしていこうという傾向にあるというふうに聞いているのであります。あるいはまた、この前、国内の食品メーカーが海外に二次加工の工場をつくろうというような報道なんかも聞いているのでありますが、最近のこの種企業などの動向について御入手している情報があればお教えいただきたいと思います。
  62. 後藤康夫

    後藤政府委員 小麦の加工食品産業の海外進出の問題でございますが、私どもが承知をいたしております限りでは、現在のところでは現地の需要にこたえることを目的として企業の判断によって行われている。現地に進出して製品をつくって、それをまた日本に入れてまいるということになりますと、いわゆる産業の空洞化というようなことになってまいるわけでございますが、現在までのところそういった動きが表面化をしているというふうに私どもまだ認識をいたしておりません。現地で例えば即席めんを売る、あるいは現地在留邦人というようなものも含めまして、そういうものが主体であるというふうに考えておるところでございます。  ただ、円高がさらに進行するとか、あるいは非常に長く続きました場合に企業進出がもっと加速をされるという心配もないわけではございません。そういった事態を避けますためには、基本的にはやはり内外価格差の縮小に努めていくということが必要だというふうに考えておりまして、そういった観点から最近におきます麦管理の実態なり輸入価格の動向、見通しといったようなものを総合的に考慮しまして、今年の二月に政府の売り渡し価格の平均五%の引き下げというようなことも厳しい財政事情の中でございますけれどもやらしていただいた、こういうことでございます。
  63. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 今年二月にお話しのように五%売り渡し価格を引き下げたわけでありますが、しかし何といいましても、この前の話じゃないが、それはまだ大幅な格差があるわけですね。こういう中でなかなか国内のメーカーも大変であろうというふうには思うわけであります。やはり国内産麦のユーザーという立場でもある麦加工産業の国際競争力を配慮していく、あるいは消費者に円高メリットを還元するというような意味等も含めて、さっき余裕財源について内外のそれぞれの麦の管理によるメリットもお話があったわけでありますが、これらについて早急な配慮を考えているかどうか、これらについての御意見を伺いたいと思います。
  64. 後藤康夫

    後藤政府委員 先ほど六十二年度に入りましてから現段階までのいわば損益の面でプラスになる要素のお話があったわけでございますが、全体として六十二年度の予算で申しますと、国内麦が千五百三十八億の損失、外麦が千五百七十二億の利益ということで、両者あわせてほぼとんとん、三十四億ほど利益が出ている、こういう予算になっているわけでございます。  それから、本年産の麦の刈り入れを今南からずっと順番にやっておるわけでございますが、まだ最終的な統計の確定はございませんけれども、四麦合計で、私どもいろいろ食糧事務所等から情報をとりますと、麦の作付面積も六十一年産に比べて七%ほどふえているということで、内麦の買い入れ数量がどうなるかという点は、内麦につきまして見ますれば非常に大きな売買逆ざやがございますので、その辺の要素もございます。それからまた、これから先の為替の変動、それから今シカゴ相場の変動も、雨がちょっと降ったといっては下がりとか、あるいはまた為替の方の資金が商品市場に流れていったというようなことで上がるとかというようなことで、非常に不安定な状況でございます。  この辺全体を見きわめて、毎年表につきましては十二月に価格の問題について判断をするということでやっておりますので、ことしもそういうことになろうかと思っております。ただ、円高が引き続いて少なくとも現在までのところ進行している、それから加工製品の輸入がさらに増大をしているというようなことも私ども食管の運営におきまして頭に置きながら考えていかなければならぬと思っておりますけれども、具体的にそれでは売り渡し価格をどうするかということについてのお尋ねであるといたしますれば、現在のところはまだ何も決めていないということでございます。いずれにいたしましても、十二月にはこの問題について判断をしなければいかぬだろうというふうに思っております。
  65. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 時間がやや来たようでありますので最後の質問になろうと思いますが、麦にいたしましても米にいたしましても、生産性を高めるという上で基盤整備事業は極めて重要な役割を持つわけであります。既に先日来再三にわたって御質問を申し上げているわけでありますが、大幅な減反あるいは米を初めとする各種農産物の価格引き下げ、こういう農業所得の低下によって、一方また事業費が非常に上がってきているということなどもあって、既往債務の償還が極めて困難になっているということは御承知のとおりであります。既に再三申し上げているところでありますから詳しく述べることは避けますが、農水省としても鋭意この問題についてお取り決めをいただいておりますことに敬意を表したいというふうに思うのであります。きのうの閣議で二十一日施行ということで正式に決められたようでありますが、特定国営事業における受益者負担金の支払い期限の延長などの土地改良法施行令の一部改正について、この際、若干の御説明をいただきたいというふうに思うわけであります。同時に、これの内容によりますと、それぞれ関係自治体にも応分の協力を得るということになっているわけであります。自治省や知事会や市町村会等について御協議をいただいているものと思いますが、これらについてその感触等についてあわせて御報告をいただきたいと思います。  同時に、やはり問題なのは、先日来特に私ども力説をさせていただいておりますのは、県営や団体営における既往債務の償還の問題であって、これも大変御努力をいただいているようでありますが、私どもは米価引き下げの折の関連施策として位置づけられている、こういうぐあいに実は思っているのであります。また、それらしい当時の御発言の模様も把握をしているわけでありますが、この点についてはそう受けとめていいのかどうかということであります。そして、六十三年度予算にぜひひとつこれを盛り込んでいただきたいと思うし、またその努力を鋭意いただいているように思うのでありますが、概算要求の期限も近いわけでありますので、これらにつきましての御決意、見通し等につきましてもお話をいただきたいと思います。
  66. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 三つお尋ねがございました。  最初の特別型の国営土地改良事業の負担の軽減のために、これは国営の土地改良事業の中で国が負担する部分以外の、県それから農家といった受益者、その両方の負担部分につきまして財投資金を借りて国が一括施行するという、特別型国営事業地区と言っておりますが、その地区の工期の遅延あるいは事業費がふえているということで農家負担が著しく増大いたしております特定の地区を対象にいたしたものでございまして、具体的に申しますと、地元の土地改良区による償還準備金を事業の完了前に自主的に積み立てること、地方公共団体による営農指導などを内容といたしました都道府県がつくります償還計画を国が承認いたしまして、その承認することにより償還計画に見合った償還期間を延長する、かんがい排水事業ですと従前十七年とありますのを二十五年、農用地開発も十五年とありますのを二十五年以内というように延長いたしまして、各年度の農家の負担金を軽減するものです。  これは土地改良法の施行令を改正する必要がございますので、六十二年度予算で認められた後で、今お話しのようにこの二十一日の金曜日から施行する予定でございます。これはこの委員会でお隣に座っていらっしゃいます辻一彦委員が福井県のある国営土地改良事業、実際には国営の総合農地開発でございますが、それについてしばしば御意見があったところも十分頭に置いてやった措置でございます。したがいまして、これは最初は福井県の総合農地開発の地区について適用したいと考えております。  それから二つ目は、土地改良の負担対策。  私どもは、もちろん米価の問題もございますが、事業費の単価も相当アップしていますし、土地改良による整備水準も相当向上していますし、最近は金利も急激に下がっているということで農家の方に割高感が出てきています。私も構造改善局をお預かりしてほぼ一年になりますが、着任当時からいろいろな方から土地改良区の負担金の割高感についての御指摘もございまして、自分でもいろいろな意味で身にしみで感じているわけでございまして、米価の問題もございますが今言った問題もございまして、そういうものを総合的に受けとめながら土地改良の負担金問題に対処していかなければいけないと考えています。  では、六十三年度、おまえたち何をやっているのだということですが、六十二年度予算要求は今私どもの省内で鋭意取りまとめをしているところでございまして、またこれでゴーサインをいただいておりませんのでわかりませんが、土地改良事業の負担問題については、今までやってきた地区とこれからやる地区といろいろ考えなければいけないと思います。これからやる地区については、先般も申し上げましたように、できるだけ安上がりにするように整備水準を土地改良区が選択できるようにするとか、公庫資金の金利も下げているとかいうこともございますし、できるだけ継続地区の卒業を早めるために新規地区の採択は御遠慮願うとか、いろいろなこともやらなければいけないと思っていますが、これは大体これからの地区。  それから、既往の地区で特に負担の重いところがどの程度あるか、それが農家所得なり農業所得なりをどの程度圧迫しているかというのを今洗っている最中でございまして、そういう実態を踏まえて、何らかの形で六十三年度予算要求の中に土地改良の負担金が特に重い地区についての対策を盛り込む方向で現在鋭意検討中でございます。
  67. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 どうもありがとうございました。      ――――◇―――――
  68. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 次に、第百八回国会内閣提出大豆なたね交付金暫定措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案についてほかに質疑の申し出もありませんので、これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  69. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。藤田スミ君。
  70. 藤田スミ

    ○藤田委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、政府提出の大豆なたね交付金暫定措置法の一部改正案に反対の討論を行います。  反対する第一の理由は、今回の改正案が基準価格引き下げを目的として算定方法を改悪していることであります。  改正案は、パリティ価格を参酌事項から外し、パリティ指数が上昇していても恣意的に価格引き下げが可能となる算定方法に改悪するものであります。  特に参酌事項に現行の「生産事情」にかえて「生産費」を明記していますが、その「生産費」について、販売することを主たる目的として生産を行っていると認められる生産者に限定しており、運用いかんでは中核的担い手の生産費を反映した価格算定につながるものであります。また、需要供給の動向を参酌事項に入れていますが、今日の円高のもとでアメリカ産大豆輸入拡大を前提とした需給動向参酌による市場原理導入は、低価格押しつけの一つの根拠とされ得るものであります。さらに「生産性向上」や「品質改善に資する」という配慮規定も、生産性向上品質改善のための生産者の意欲を高める価格ということではなく、価格引き下げで誘導するというのが農政審報告立場であり、これは低価格政策の配慮規定になるでしょう。このように基準価格算定方法の改正内容は、現行パリティ方式をさらに反動的に改悪するものであります。  第二の反対の理由は、今回の改正案が、生産者を犠牲にした財政負担軽減策であるという点です。  今回改正案は、最低標準額を設定し、標準販売価格がこの最低標準額を下回った場合、最低標準額までしか不足払いしないとしています。しかも、最低標準額については、輸入大豆価格も含めた市場価格で設定するとしており、この水準いかんでは基準価格が農家の実質手取り額を意味しなくなり、不足払い制度の根幹を崩しかねないものであります。  第三の反対理由は、基準価格に種類銘柄別の価格を導入し実質農家手取りの格差を一層拡大し、品質格差の水準次第では再生産確保を旨とする基準価格基本を崩しかねない点であります。  以上述べましたように、今回の改正案は、大豆などの自給率向上方向ではなく、大豆増産にブレーキをかけ、何よりも国の財政負担軽減をねらいとした価格政策改悪法案であり、強く反対するものであります。  以上で政府提出の法案に対する反対討論を終わります。ありがとうございました。
  71. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  72. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 これより採決に入ります。  第百八回国会内閣提出大豆なたね交付金暫定措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  73. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
  74. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 この際、本案に対し、保利耕輔君外三名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。五十嵐広三君。
  75. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合を代表して、大豆なたね交付金暫定措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     大豆なたね交付金暫定措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   大豆及びなたねは、畑作における合理的な輪作の基幹作物として、また水田における重要な転作作物として農地の高度利用と農家の所得確保を図るうえで大きな役割を果たしている。   よって政府は、中長期展望の下に国内大豆及びなたねの自給力の向上をめざした生産振興を図るとともに、本法の施行に当たっては、左記事項の実現に努め、生産農家の経営安定に遺憾なきを期すべきである。      記  一 基準価格については、生産者の理解が得られる算定方式を確立するとともに、その算定に当たっては、従来の価格算定の経緯、大豆及びなたねの生産実態等をも十分勘案し、再生産確保が図られる価格を実現すること。    なお、生産性向上の反映については、農家への還元にも十分配慮して行うこと。  二 種類等別基準価格の設定については、関係者の意見が十分反映できるよう必要な措置を講ずるとともに、各品種の地域的な適応性、優良品種の開発普及状況地域ごとの制約にも十分配慮すること。  三 最低標準額については、従来の国内大豆及びなたねの市場実勢を尊重し、生産者団体等の販売努力により達成し得る水準に決定するとともに、為替レートの変動等による輸入価格の低落等が国内価格の低落に著しい影響を及ぼす場合には、その変更を速やかに行うこと。  四 大豆及びなたね作の生産性向上を図るため、土地基盤の整備、経営規模の拡大、生産組織化及び団地化、機械化一貫作業体系の確立等生産条件の早急な整備に必要な各種施策の拡充強化に努めること。  五 品質向上と出荷単位の大型化を図るため、共同乾燥調製施設の整備、広域的な集出荷体制の確立等を積極的に推進すること。    また、良質かつ安定多収品種育成地域に応じた栽培技術の改良、高性能機械の開発等の試験研究の拡充に努めること。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  76. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  保利耕輔君外三名提出の動議に、賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  77. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。加藤農林水産大臣
  78. 加藤六月

    加藤国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上善処してまいりたいと存じます。     ―――――――――――――
  79. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  81. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  82. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  第百八回国会内閣提出食糧管理法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。竹内猛君。
  83. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、今議題になっている食糧管理法の一部改正の問題に関連して若干の質問をいたします。  まず最初に、麦の問題でありますけれども、麦の日本農業生産の上においての位置づけについて質問をしたいと思います。  五十二年に小麦六%、大・裸麦が一四%で合計二〇%を、六十五年の長期見通しの中で小麦一九、大・裸麦を一七%に見通しをしているわけですが、現実にはその状況はどのように進んでいるかということについてまずお尋ねします。
  84. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいま先生お話しの六十五年見通しの問題でございます。「農産物の需要生産の長期見通し」におきましては、数字的に申しまして、四麦合計で作付面積五十一万ヘクタール、生産量百八十万トンと見通しておるところでございます。これまでの各種の生産対策を推進してまいりました結果、現時点、これは六十一年をとらしていただきますと、作付面積におきまして三十五万ヘクタールでございますので目標に対しまして七〇%、生産量百二十二万トンでございますので六八%という水準に達しているわけでございます。  麦の生産の動向というものをこの六十五年の見通しとの関係でさらに見てみますと、作付面積といたしましては、これまた先生お話しのとおりでございまして、五十二年、五十六年、長期見通しの趨勢をかなり上回る伸び率となっておりましたけれども、五十七年以降裏作麦が着実に増加の傾向で推移はいたしましたけれども、水田利用再編対策におきます転作等の目標面積が軽減されたこと、あるいは調整を行ったというようなこともございまして転作麦が減少したことから横ばいで推移しております。生産量につきましては、気象条件によります作柄の影響を受けやすいという点がございます。小麦の単収でございますが、五十三年二百八十四キロから六十一年では三百二十八キロということでございまして、絶対額で四十四キログラム、比率といたしまして約一五%の増ということでございます。近年着実に向上傾向にありまして、生産量も増加基調にあると考えてよいかと思います。  以上のように、作付面積生産量ともおおむね長期見通しの趨勢に沿って推移していると考えておるところでございます。
  85. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 実際は目標に対しては七〇%程度になっておるし、その他の問題でもいろいろ問題がありますけれども、消費についてはどのように見ているのかということについて、消費面からどうでしょう。
  86. 後藤康夫

    後藤政府委員 御案内のとおり、小麦につきましては小麦粉の消費が一人当たり大体三十二キロということでここしばらくの間ずっと横ばいで推移いたしてまいってきております。それから大麦につきましてはさまざまな需要がございますけれども、二、三年前からしょうちゅう用の需要がかなり上向きまして増勢にございましたけれども、昨年あたりからしょうちゅう需要が落ち込んでまいってきておりますので、これもそういう意味におきまして安定的な推移をするものというふうに考えております。
  87. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 必要な麦についてはその他は輸入しなければならない。輸入の動向というものについてはどうなっているか。
  88. 後藤康夫

    後藤政府委員 先ほど申し上げましたように、小麦について申し上げますと需要は一人当たりで極めて安定的でございます。他方、麦の生産はただいま農蚕園芸局長からお話しございましたように、大体長期見通しの線に沿った形で伸びてまいってきております。ただ外麦の数量の方がはるかに大きゅうございますのでこれが直ちに麦の輸入の大きな減少ということにはなってまいってきておりませんけれども、麦の輸入量といたしましては横ばいないし若干減少というような形で推移をしてきているわけでございます。
  89. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、麦の場合には北海道が主産地であります。これは気候上そういうことになっていて、他は例えば北陸にしても北関東にしてもその他にしても裏作であったり、あるいは転作を余儀なくされている、こういうことになっておると思うのです。そこで本当に真剣に麦をつくっていくということになると、これはどれぐらいの歩どまりになるのかということが大変問題ではないか、こういうふうに思うわけで、適地適産あるいは裏作との関係、表、裏の関係、それから減反奨励金、こういうことになる。減反奨励金の場合には、奨励金がなくなってしまったら恐らくつくるのをやめてしまうのじゃないか、ということになったらこれはその後が大変なことになる。そういうわけで麦というものを将来どういう形で持続をしていくのかということについて見通しはどうですか。
  90. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいま先生お話しのように麦の適地適産の問題があるわけでございますが、先生御指摘のようにまず大きく分けまして北海道、裏作、転作といったような三つの区分と申しましょうか、地域的な問題あるいは水田とのかかわり合いでそういうようなことが想定されようかと思います。  まず北海道におきましては麦、バレイショ、てん菜、豆類等を中心にいたしまして三年ないし四年の合理的な輪作体系を確立する上で重要な作物でございます。そういう意味で、この生産の安定を図る上には今後とも機械、施設の共同利用の体制を図るということが重点になろうかと思います。  さらに、裏作の麦につきましては、先ほど食糧庁長官からのお話もございましたけれども、加工適性の高いわせの多収品種の導入というようなこと、麦と稲の一年二作体系と申しますかそういうことを確立しながら土地利用の高度化を図るということが眼目であろうというふうに考えます。  さらに、今先生御指摘の転作の問題でございます。転作の問題も、裏作の麦に相並びましてかなり大きな部分、約三分の一を占めておるわけでございます。大臣からも午前中お話し申し上げたとおりでございまして、これにつきましては麦、大豆一年二作体系あるいは麦、稲、大豆の二年三作体系といったようなものを地域条件に即しまして合理的に展開していく必要があろうと思います。そういった観点におきまして、いわば奨励金と申しましょうか、転作推進対策における位置づけ等、あるいは奨励対策というのが重要になるわけでございます。六十二年から発足をさせていただいております水田農業確立対策におきましては、特に一つの技術的な柱といたしまして、田畑輪換と申しましょうか、地域輪作農法の確立といったようなものを技術上の眼目といたしまして、麦を重要な位置づけに置いているわけでございます。  その場合におきまして、奨励金の体系というものを、補助金の中で構造政策的な観点というものを入れまして、こういう場合におきます加算制度というものも、従来の一段階のものを二段階に入れる、一段階のものにつきましては単に団地化加算といったようなものに加えまして、さらに構造政策的な観点も入れるというようなことにしているわけでございまして、そういう中で第二番目の加算の共補償的な観点から、最近におきます、まだデータははっきりしておりませんけれども、各地域、特に都府県におきます中に輪作農法の確立というものを取り込んでいただきまして、展開が見えるところでございます。
  91. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 問題は、物をつくって農家の所得がどういうふうに構成されるかということが中心になるだろうと思うのですね。  そこで、今度の改正案の問題ですが、今度の改正価格を決定する方式を変える。二十五年、六年であったパリティの対象を外して、今度は諸物価の動向であるとか生産状況であるとか何かを決めてやる。そうすると物の取りがかりの場所が、基準になるものがない。そしてつくる方は適地、北海道のようなところがあるし、それから表裏でやるところがあるし、転作という形になる。畑なり水田をつくった場合に、そこに投下する労働と、機械や何かの償却を考えた場合に、一体反当どれくらいの収益というものが保障されてくるのかということが問題になると思う。この点についてはどういうふうに考えておられるのかということについてお答えをいただきたい。
  92. 後藤康夫

    後藤政府委員 お答え申し上げます。  今回の改正法案は、パリティ方式によります麦価算定にかえまして三つの参酌事項、生産費その他の生産条件、それから需要及び供給の動向、それから物価その他の経済事情、この三つを総合勘案いたしまして、生産性向上と麦の品質改善に資するように配慮して決めるということになっておるわけでございまして、パリティという方式からは変更をいたしますけれども、今申し上げました三つの参酌事項、パリティという方式から離れますと、やはり何と申しましても一番最初の参酌事項になります生産費というものが基本になってまいろうかと思います。  先生御指摘のとおり、北海道、都府県、そしてその中で田麦、畑麦といろいろな態様があるということは事実でございます。その辺の多様性をどういうふうに考えながら算定方式を組んでいくかということにつきまして、実はことしの生産者麦価を諮問いたしました際の米価審議会におきまして、この法案が成立をした暁には米価審議会、これには生産者の方々の代表も参加をしておられるわけでございますが、ここで小委員会を設けて、今後の麦価算定の方式について米価審議会としても検討しよう、こういうことになっておるわけでございます。したがいまして生産者、同時にまた、麦は品質問題その他の問題が起きておりますので実需者、両方の意向が反映されるような形で、この小委員会で来年度以降の麦価算定方式の検討が行われることを私どもとしても期待をいたしておりますし、私どももそのためのいろいろな内部検討は進めてまいらなければいけないというふうに考えておるところでございます。
  93. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 パリティ方式をとって二十五年、二十六年が、仮にそれがかなり古いとすれば、別なところの基準をつくって、だれにもわかりやすい基準から算定をして、そしてその農家の生産費を償い、一定の所得が補償されるということでなければ、生産者としてはどうも納得がいかない。  ところが、今度の場合には、需給関係とか経済の動向であるとか、あるいはその他の物価の動きだとかいうことになると、すべてそれは農家自体で判断のしにくい、行政の方でどうにでもこうにでもなるような形のものになってしまうと、生産農家にとって一体今度の改正がプラスになっているのか、それともマイナスになるのか、あるいはこれは行政改革の中で一貫した取り扱いの対象とされているからやむを得ないということでやらざるを得ないのか、その三つのうちで一体どういう形になるのかということをお伺いしたいわけです。
  94. 後藤康夫

    後藤政府委員 現行の規定によります麦価算定方式でございますが、パリティということにつきましては、参考人の御意見の中にもございましたように、これはもともとアメリカ生まれの考え方でございまして、一九三三年に大恐慌の中での大農業不況に対処するために農業調整法というのができまして、そのときに非常に大きな価格の下落を調整する、むしろ下支えをするというための、いわば緊急避難的な価格対策の一つの手法であった、したがって、これが生産とか需要の構造が大きく変わるというような、長期的な使用にたえるものでは本来ないというふうな御意見もあったところでございます。アメリカにおきましても、戦後はパリティ価格というものは計算をいたしますけれども、それを二〇%下回らないとか、三〇%を下回らないというような形で、最終的にはたしか一九七三年でございますか、昭和四十八年に本家のアメリカの方では農業法からも姿を消したというような方式でございます。  御案内のとおり、現行法で二十五、二十六年という基準時の固定をいたしまして、そこからパリティでもって価格を算出するという方式は、今日の麦作生産構造が当時と全く異なっておりますので、パリティでもってその当時の実質購買力を今もなお保持しなければいけないという根拠に乏しくなってきている。また、生産性向上の反映という現下の課題、あるいはまた、品質差を価格に反映してまいる、これも一度非常に落ち込んでおりました麦の生産が回復をしてまいりまして、ある程度の小さな規模でございますれば、いわば外麦の大きな量の中にまぜて使うというような形でも済むわけでございますが、これだけちゃんとした規模生産に立ち直ってまいりますと、やはりそれ自身としての品質というものがひとり立ちをしないと需要はなかなかついてこない、そういうこともあるわけでございます。私ども、そういった時代の要請にこたえるために今回の改正考え、また御提案を申し上げているところでございます。  それから、これが生産者のためにどういう影響なりメリットがあるのかということでございますが、御心配の点につきましては、先ほど申し上げましたように生産者の代表も入っております米価審議会で方式について検討していただくということになっておりますし、また長期的に見ますれば、こういった価格算定を通じて継続的な安定的な麦作の振興が図られ、また我が国生産されます麦の品質国内のユーザーあるいは実需者消費者のニーズに合うような形での麦の生産が誘導されるということが実現できるとすれば、これは麦作農家、日本農業にとってもプラスになることではないかと考えておるわけでございます。
  95. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 麦の問題にしても、これは水田と裏腹の関係になって、大変重要な農産物のうちの一つですから、長期見通しというものをつくったならばそれに近づけるような努力はどうしてもしてもらわなくては困る。これについては、六十五年まであと三年間あるわけだけれども、その三年の間に果たして当初予定したような形で進むかどうかについては甚だ疑問があるから一層の努力をしてもせいたいことが一つであります。  二つ目は、生産者に対しはやはり生産費と所得が補償される、投下した労働力が商品化されて懐に入ってくるということ、もちろん三百六十五日麦をつくっているわけではないのだから、それについては一定の配慮をしてもらうことにしても、そういう価格の決め方が必要であるし、それから消費者については納得ができる価格というものを決めてもらいたい、こういうふうにしていかなくてはいけないだろうと思うのです。その間に機械などが大変金がかかっていると思いますけれども、それは共同なり法人なりによってそういうものの支出をなるべく少なくしながら生産ができるような指導が望ましいのではないかというふうに考えておりまして、これはひとつ私どもの要望としてぜひ聞いておいてもらいたい。  次に、経済企画庁にお伺いしたいのです。経済白書が最近出たわけですが、これを見ると、久しぶりに農業のことを取り扱ってくれているのは結構だけれども、その中に大変気になる言葉がたくさん並んでいる。どういうことかというと、食糧を中心とする日本物価水準が欧米に比して高い問題を取り上げ、その中で、アメリカに比し、またヨーロッパに比して二割以上高い。それは教育やレジャーにかかる費用もあるが、食管制度の運営の改善をすることや競争の原理の導入、さらには政府の規制の合理化、見直し、流通機構の効率化等が必要だとされているが、こういうふうになっているのですね。一体食管制度のどこをどうしてやるのか、競争の原理というのは何をやるのか、こういうことについて一つ一つわかりやすく説明をしてもらいたいと思うのだけれども、いかがですか。
  96. 伊藤征一

    ○伊藤説明員 ただいまの先生のお話ですが、私どもは物価局でございまして、物価レポートというのを出してございまして、食料品の価格が国際的に比べて割高であるという指摘は私どもの物価レポートの方でやっております。ただ、物価レポートの方ではあくまでも事実として国際的な価格の比較をやったまででございまして、特に価格が割高であるという事実と食管制度を結びつけてああだこうだということを言っているわけではございません。
  97. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それではなぜ新聞にああいうような言葉が出るのか。例えばきょうの読売新聞を見てもそういうことは大きく書いてあるのです。食管が問題だ、運営を直さなければならない、こう言うのです。一体どこをどう直したら納得できるようなことになるのかということは一つも書いていない。まるっきり食管があれからもこれからも袋だたきになる。僕らの承知するところによると、四十年の末ごろ、確かに農林省の予算の中では食管の会計が四二、三%から四五%ぐらいあったときがある。現在は農林省予算の中で食管の費用は一九%ですよ。切られて切られて、どうにもならないぐらい切られてしまっている。それでもなおかつ食管が悪いというのはおかしいじゃないか。だから、そういう誤解を招くようなことは記事から抜いてもらいたいのです。  それからもう一つお聞きしますけれども、我々を初め皆さんもそうだけれども、疲れればコーヒー一杯ぐらい飲むでしょう。これは一杯が三百円ぐらいですよ。ところが、一日に食べる米は一体何ぼになると思っていますか。物価局なり企画庁はどういう計算をしているか、そのことについてちょっとお伺いしたい。
  98. 伊藤征一

    ○伊藤説明員 お米の一日当たりの消費量ということでございますか、ちょっと正確な数字はあれなんですが、大体七、八十円ぐらいではないかと思っております。それで、コーヒーの三百円と比べてこの七、八十円が何で高いのだ、そういう御質問だと思いますけれども、私ども先ほどからちょっと申し上げておりますが、物価局でございますので物価レポートの方での話をさせていただきます。  この物価レポートでいろいろ比較しておりますのはあくまでも同じ品目、米なら米同士を日本と外国と比べる、あるいは同じ費目、食料費といったものについて国際比較するということをやっておりまして、米とコーヒーといった違うものを比べてどちらが高い、安いということはなかなか言いにくいところがあります。私どもの分析はあくまでも国際比較をやっているということでございます。
  99. 加藤六月

    加藤国務大臣 実は私は昨日、閣議が終わった後の記者会見で、経済白書の問題について農業に触れておる部分でちょっと気にかかることがあるということは言ったのであります。それからまた、先般物価安定関係会議が官邸で開かれまして、同じように我が国の食べ物、食管制度あるいは輸入アクセスの問題等について、民間側委員数名から高いという印象の発言が次々にありました。そこで私は逆に最終的に問題を提起しておきましたのは、あなた方は物価の専門家であり、いろいろとよく勉強されておるのだけれども、ニューヨークと東京を比較される場合に単に食べ物の比較では困る。例えば下水道料金は四倍である。水道料金は三倍である。ガソリン代は四倍である。これらは国民生活にとって必要欠くべからざるものであって、食糧は選択の余地があるけれども、選択の余地のないものについてこういう差があることを今後物価問題を勉強される場合にはやってもらいたい。ガソリンについては一部輸入を自由化したけれども、石油税、揮発油税を払っておる、なおリッター当たり四十数円の開きがある、国民消費に直すと一兆七千億円になるのだということを逆に申し上げておいた経過を報告させていただきます。
  100. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 たまたま大臣が発言をされたから非常に結構なことだと思うのですけれども、経済企画庁長官にぜひ注文をしてもらいたい。そういうわけのわからない誤解を招くような記事を出してもらったら困る。大体あれが悪いこれが悪い、競争の原理を入れろ、合理化をしろ、一体これはどういうことだ。結論もないような抽象的なことで、そしてただでさえ迷惑しているときにいよいよ財界や外国の言いなりになってしまう。そして、せっかくここまでやってきた日本水田農業なり変なりというものがだんだん壊されていく、こういうことになるでしょう。これはもう絶対にああいうような抽象的なことで報告しないようにひとつ注意をしてもらいたい。  それから、レポートの方でも、米とコーヒーと違ったといっても、それはやはり出すがまぐちは一緒なんだよ。コーヒーに払う金だって米に払う金だって一緒なんだ。品物は違うんだ。コーヒーが三百円だよ、米は三食食ったって七、八十円じゃないか、こう言っているのです。だから、それを高いなんということを言うこと自体がおかしいのだ。そうでしょう。そういうことも皆さん注意してもらいたいのだよ。そしてレジャーに金がかかる、教育にかかる、そうなっているじゃないですか。遊ぶ方やそういうものには金をかけて、生活は苦しい。家賃はどうなっているんだ。これは高いでしょう。そういうものも出さないで農業ばかりなぜいじめるのだ。食糧が高い食糧が高い、これは農林省つぶし、農業つぶしなんだ。それが許せないのだ。  さて、そういうことでもう一つここでこの際、これは経企庁などそっちの方へ申し上げたいのだけれども、価格が安くて物でさえあればどこでつくったって構わないという物の考え方はやめてもらいたいのだ。まず消費者の安全ということが問題なんですよ。その次は新鮮、良質、確実。それから次には物価なんだ。物価は五番目なんだよ。親指じゃないのだ。それを安くて物でさえあればいいというこの考え方、これはずっとつながっているのじゃないか。これが一貫しているんだ。農業の持つもう一つの緑であるとか水であるとか国土の保全とかいうことは当たり前のことになっている。冗談じゃないのだ。水田がだめになれば保水量がなくなるんですよ。緑もなくなっちゃうんだ。それで洪水が出るんです、今も東北の方には出ているけれども。そういう問題が起こるんだから、農業というものを半分だけ見て、物でさえあれば、安くさえあればいいというその物の考え方をひとつやめてもらいたい。どうですか、これは。
  101. 伊藤征一

    ○伊藤説明員 私ども物価を所掌しておりますので、物価観点から物を見るということが仕事でありますので、その点が重点的になっていることはそのとおりでございますけれども、もちろん物価だけが下がってあとは全部どんなことになってもいい、そんなことを考えているわけではございませんので、今先生のお話を伺いまして、我々も十分そういった面を考えながら進めてまいりたいと思います。
  102. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この点には加藤大臣もひとつ御発言をしてください。
  103. 加藤六月

    加藤国務大臣 我々の食べ物を比較する場合に、食生活あるいは食習慣あるいは伝統、あるいは買うときにも一度に大量に買う方式、買わない方式、あるいはそれに伴う商品の信頼性、品質、いろいろな問題があります。したがって、ある面では農業、農産物というのはいろいろな国がいろいろな保護措置、国境措置その他を考えておるわけでございまして、そういう点は国政を運営していく場合にも十分考えなくてはなりません。ただし国内生産者、すなわち農業関係生産者においても、競争条件生産性向上というのは常に念頭に置き頑張ってもらっていかなくてはならない。一方を強く主張することによって、一方の伸ばすべき芽を摘んでしまってはいけないと考えておるわけでございます。  私としては、財界が農産物あるいは食管制度をいろいろ言うのは、これは一部財界の利益のために連中は言うのであって、生産団体は生産団体の利益のためにいろいろ言う。そこら辺に整合性を持たせ、調整していくということが国政である、こう考えておるわけでございます。良質なものを、おいしいものを安く食べさせてあげたいというのが政治でありまして、まずくて高いものを食べなさいと強制するようなことはしてはならないわけであります。そこら辺のバランスをどうとっていくかというところに我々の頭を使い、努力しなくてはならない点があると考えておるところでございます。
  104. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 特に重要な段階ですからよく頑張って、ひとつ農業と農村を壊さないように、農民にもちゃんと自信を持って営農ができるようにしてもらいたいということで次に移っていきます。  先般私はこの場所で卵のことについて質問をしました。鶏卵の調整が四十九年、五十六年、そしてことし、六十二年と行われておりますけれども、ともかく昨今の新聞を見て、卵価が急落をして倒産が続いている。だけれども、消費者は卵が下がったからといって拍手する者はだれもいない。消費者というものはある意味においては組織されない面もありますからね。ところが、そういう点があって、今生産調整といいますか、それががたがたになってしまっているのじゃないかと思うわけです。そういう点で何を条件にして各府県に割り当てをしたのかというところからこれは問題を説き起こしていかなければならないだろう。今一億三千百三十九万羽で割り当てをしているけれども、その割り当てをしているのは何がその基礎になっているのか。
  105. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 御指摘のとおり、鶏卵の需給につきましては従来から大変大きな変動がございまして、価格も不安定な状態になるということで、お話がありましたとおり、四十九年から計画生産を進めておるわけでございます。この計画生産の目標にしております飼養羽数については、四十九年に決めました全国レベルでの目標羽数は一億二千万羽というレベルでございましたが、これにつきましては安定しておりました四十九年四月時点での飼養羽数をめどとしてこのレベルを決めたわけでございます。  さらに五十六年にこの目標羽数は一億一千七百万羽というレベルを決めたわけでございますが、この時点におきましては比較的需給価格が安定をしておりました五十五年の飼養羽数を基本としてこのレベルを設定したわけでございます。  直近時におきましては、お話がございましたように、本年の六月末に関係団体等にもお諮りをしまして、約一億三千万羽という目標羽数を設定しておりますけれども、この基本的な考え方は、最近の需給事情等を考えて卵の生産量として年間約二百二十万トン強の生産量、そしてまたそのもとで成立する卵価水準が経営的にも対応できるというレベルを想定してこの目標数量を設定し、その具体化を図ろうということで現在作業を進めておるところでございますが、とりあえずの問題としまして、御指摘のとおり大変卵価が低迷しておりますので、本年六月に決めたこの一億三千万羽の目標数量のうち千四百五十万羽につきましては全国段階で保留しまして、県別あるいは農家別の配分を当分の間見合わせるということで現在その作業を進めておる、こういう状況でございます。
  106. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 まず、そういう状況で仕事を進めていただくことは結構ですけれども、最近、七月の末から八月にかけての状況を見ると、きのうの読売新聞の夕刊にも出ておりましたが、飼料会社、畜産関係の会社が倒産して、連鎖的に各地に大変影響を起こしております。これについて先般資料を要求したけれども、調査が十分にできているかどうかわかりませんが、これは調査してもらいたいということなのです。それでその原因を探ってほしいということだ、私の方ではかなり調査したけれども、それが合うか合わないかという問題もありますから。  そのときに問題になっているのは、今日存在している羽数の確認が非常に難しい。確かに生産調整している組合員あるいは調査員とかそういうものが調査をすると思いますけれども、私のところでも超過養鶏がありまして、そこへ行ってみても対応する者は卵を集めるパートの人とかそこの鶏舎を管理する管理人であって、実際の支配をしている者はそこにはいない、だからわかりません、こういうことで事実上何もわからない、しかしそこには立派な鶏舎がある。そういうようなことであって、無理やりになかなか入りにくい。恐らく、税務署の署員が脱税の調査に入るように一つの法的基礎を持って入らない限り、最終的な羽数を握ることは困難ではないか。したがって、常に大手がどんどんはびこって、そして零細な中小がつぶれていくことになりかねない。  そういう意味で我々は法案によって需給調整と価格安定をしようという形で先般来出してきたけれども、これは前々の局長、石川次官が局長のころからどうしても意見がいません。京谷局長もこの間石川事務次官と同じことを答弁されたから考え方も同じだと思うのでこれ以上聞いてもつまらないから聞かないけれども、我々はこの状況を黙って見ているわけにはいかないのです。  だから、どうしたら本当に正確に現在の羽数が把握できるのかということについて、これは確かに二つの基金から外すというペナルティーはあるけれども、それを外したものがまたやみをやっている。そんなものには世話にならない、基金なんか要らない、お金も自分で工夫するからいいじゃないか、こういうことになったら一体どうするのですか。その点をはっきりしてもらわないことには現在の卵価の下落を防止することはできないだろう。やがてまた一定の時期になれば勝手にひなをつくってさらにまた新しい状況が生まれてくるのじゃないか。こういうことを考えると、この際我々が主張しているようなことも配慮してもらわなければ困ると思うのですけれども、いかがですか。
  107. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 お尋ねの問題が二つあろうかと思います。  第一点が最近起こりました畜産関係会社の倒産の問題でございますが、この実情、前回の委員会でも御指摘がございまして、私どもなりに実情掌握に努めておるわけでございます。  御承知のとおり、この会社は飼料の販売を中心にしまして牛、豚の生産販売あるいは養鶏さらには一部畜産関係食品の生産販売に当たっておりました会社で、昭和四十二年に設立されて、ただいま申し上げました業務を逐次拡大してきております。内容的には直営あるいは業務提携という形で本社以外に関連会社が十三社あるというふうな企業グループであると承知しております。この会社が先月末に本社ベースで約二百五十億円、グループ単位で総額約五百三十億円の負債を持って倒産いたしまして、現在その整理に入っておると聞いております。この倒産の要因につきまして私ども細かい資料を入手することは不可能でございますけれども、詳細は別といたしまして、民間調査会社の情報等によりますと、現在起こっております鶏卵価格の問題が主要因というふうな評価はしておりませんので、このグループの業務内容の拡大過程で資金繰りがつかなくなって今回のような事態が生じておるというふうな評価が一般的であると承知しております。  第二点目の鶏卵の計画生産の的確な実施の問題でございます。  御指摘のとおり、私どももその的確な実施のために従来からいろいろな努力を重ねておるわけでございますが、私どもの計画生産とあわせまして、当面の鶏卵需給の出超状況に対応して、御承知のとおり日本養鶏協会を中心にいたしまして、ふ卵羽数の削減あるいは大規模階層における飼養羽数の自主的な調整というふうな運動も展開されつつあるわけでございます。そういう自主的な運動形態と表裏一体となって、私どもの計画生産生産者の自主的な御努力を媒介にして実行していくということが本来的に望ましいと考えておるわけでございます。  また、その一環として、御指摘がございましたように、鶏卵価格安定基金あるいは飼料価格安定基金制度から無断増羽者を排除するというふうなペナルティー措置も実施しつつありまして、この実行につきましても、従来その実行状況がやや緩んでおったというふうな指摘もございますので、本年四月を期しましてこのペナルティー措置の厳正な実施をしていきたいということで現在努力しておるところでございます。関係者につきましても、そういった私どもの方針に沿って特段の御協力をいただくようこれからも努力をしていきたいと考えておるわけでございます。
  108. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 努力していることはわかりますけれども、この問題についてはもう二度も委員会等において――しばらく様子を見て、現地調査もしてからもう一度いろいろと質疑を続けたい、こういうことできょうはこれくらいにしておきます。  続いて、今度は酪農の問題です。  先般、全国生乳連の問題について、これは公明党の草川委員からも文書によって質問がありました。私はここで質問をした。このことについて、草川委員に対しても文書でお答えになったし、また関係団体にも窪田課長の名によって文書が出されている。それを見るとやはり農林水産省は、確かに酪振法の十九条で決めている団体もあるし、農協法で決めている団体もあるが、法律の前に決めたものはすべて平等であるはずなんだけれども、どういうわけだか一方は極めてまま子扱いをしている。なぜそういうふうにしなければならないのか。まま子であり、それは本当に余計なものであるというような回答であって、相手にしないということでは行政としてまずいのじゃないか。これは大臣にもひとつ検討してもらわなければならないことだと思うのですね。そんなものなら一体なぜ許可したのかということですね。これはどうです。
  109. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 全国生乳連についてのお尋ねでございますが、前回の委員会でもお答え申し上げましたとおり、この設立時点におきましても私どもいろいろな論議をしたつもりでございます。  御承知のとおり、生乳の取引については加工原料乳不足払い法によりまして各県に設立されております指定生乳生産者団体と乳業者の間で取引が行われるというシステムになっておりまして、現在ほぼこのシステムが定着をしておるわけでございます。いわばこの生産者側に立つ指定生乳生産者団体の背後にありましてその機能を発揮していくことに努力する組織として、全国段階では御承知のとおり専門農協であります全酪連、それから総合農協系統では全農、さらにはそれらを一括した中央酪農会議といったようないわば支援組織がございまして、この機能と新しい全国連というものが機能、役割の面でどのような分担関係を持っていくのかということについて、設立時点から私どもいろいろ問題ありということでありますが、この全国連の設立自体はあくまでも農協法に基づく生産者団体の自主的な御要請であるということで、いろいろな論議をいたしましたけれども、一応認可をするということで設立された経過があるわけでございます。  その後のこの団体の活動状況について、経済局の方からの検査等によっていろいろな指摘もなされておるわけでございますが、現在の加工原料乳不足払い法のもとで形成されております生乳の取引関係を前提にして、先ほど申し上げました既存の全国団体との役割分担のあり方については現時点におきましても十分な話し合い、調整が必要ではないかという考え方を持っておりまして、全国団体レベルにおけるその辺の機能、役割の分担についての自主的な話し合いを私どもとしては期待をしておる、こういう状況でございます。特別えこひいきしておるというつもりは全く持っておりません。
  110. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 だんだん時間が詰まってきたから、大事なことが一つあるからその方に移っていきますが、熊本県酪農業協同組合の会長中原利丸という人を、理事と監事ら十四人が七月三十日、中原会長が全国酪農業協同組合連合会からの奨励金の一部、四億一千万円を着服したとして業務上横領の疑いで告発することを決め、代理人が同日熊本北署に告発状を提出した。同署では内容の検討を始めた。中原会長はやましいことはないという形で釈明をしております。これを告発したのは県酪連の副会長二人を除く全理事十一人と監事三人です。  代理人によると、全酪連は五十六年から六十一年にかけて熊本県酪連が買った飼料に対して七億五百四十五万八千六百十四円を奨励金として支払った。ところが、県酪連の受け取り奨励金決算報告書には二億九千三百五万一千百五十九円しか計上されておらず、差額の四億一千二百四十万七千四百五十五円を横領したとしている。これに対して県連の中原会長は記者会見をして、奨励金は一般と特別がある。特別を受けたのは熊本県だけであって、三菱銀行熊本支店の口座に振り込まれた。問題の四億一千万円云々はこの特別奨励金で、酪農家保護のために政治献金として全国の国会議員約百三十人に対して五十万ないし三千万をみずから手渡した。領収書はつくらなかったが、私は使ってはおらない。このことは六十一年十二月の理事会で報告済みだと反論をしております。告発人を名誉棄損で告発するとさえ言っている。  全酪連の福岡支所では、飼料の拡販対策として奨励金を出したが、その使い道については各県連の判断に任せる、全酪連は言うまでもなく経済団体でありますので政治資金など出せるはずがないと会長の名前でこれに対して反論をしております。  きょう私が質問をするということで全酪連の方から四項目の内容が届いておりますけれども、中央の全酪連は、中原会長のやったことに対しては責任は持てない、それは中原会長個人のものである、こういうふうにはっきり言っております。こういう問題を承知しているかいないか、まずそこから伺います。
  111. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 細かい事実関係についてはともかくといたしまして、御指摘のような案件が発生していることにつきましては、全酪連及び私どもの所管しております業務連絡ということで九州農政局、それから熊本県当局から大まかな状況報告は受けて承知をしております。
  112. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は熊本県出身の同僚とも相談をして、ぜひこういう不明朗なことは正さなければならないということでこれを取り上げるわけです。  きょうは警察庁からも来ていると思いますけれども、警察庁の方で早くこういうものについては捜査をして実態を明らかにしてもらわなければ、全酪連の中央としても迷惑だと言っている。つまり、全酪連の中央の名においていろいろなことをされていることについて迷惑だ、中原個人の仕事に対して大変迷惑しているということでありますから、警察庁の方としてはこれに対してどういう取り扱いをしているのか。早くやってもらいたいと思います。
  113. 垣見隆

    ○垣見説明員 警察といたしましては、皆発を受理するなどして捜査を進めているところでございまして、その過程で刑罰法令に触れる違法行為が明らかになれば厳正に対処してまいる所存でございます。
  114. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この問題は、現在まだ末端の乳価が決定をしていないところがたくさんありますね。先般山行手県に行って調査をしてみたけれども、岩手県では乳価が全国で一番低い八十円ですね。県全体が八十円だ。委員長が岩手県だからよくわかっているはずですが。そこで、乳価の交渉権の問題で知事が告発をされております。法律上のいろいろな条文に合わせて見て、生産者の言うことは理がある、こういうことで、岩手県の県内の弁護士であるとどうも話をしてまずいから、よその県の弁護士まで頼んで告発をしなければならないというほどに先鋭化しているところもある。だから、やはり末端の生産者の声というものを正しく政治、行政に反映していくためには、何としても生産者の団体である生乳連というものに対してももっとしっかりした取り扱いをしてもらいたいし、それから全農にしても、えさを売るということで大変奨励金なんかも出しているようだけれども、これについても、えさは今安いのですからね。飼料の拡大のためにいろいろやっているかもしれませんが、まあいろいろあるし、全酪連にしてもしっかり下部を指導してもらいたい。そして誤解のないようにお互いの団体にがっちりしてもらわなければならない。経済連なり農協の指導については経済局長の範囲かもしれませんが、全体としてはこれは大臣の取り締まる管轄下にあるから、加藤農林大臣から、このような問題について一言発言をしてもらいたいと思います。
  115. 加藤六月

    加藤国務大臣 こういう問題で世間の疑惑を招くような行為は農政において断じて許されるべきものではない。ましてや前古未曾有、多事多難な農政のときにおいて、国民に信頼され、尊敬されるようにやらなくてはならないわけでございまして、それが単なる行政上のミスによるものあるいは特定のポストを占める者の邪心によって起こったもの、いろいろあると思いますけれども、すっきり、はっきりさせまして、疑惑の解消、あるいは国民にガラス張りの一連の行政として見てもらうようにさらにさらに努力しなくてはならないと考えておるところでございます。
  116. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 もう時間がないからこれで終わりますけれども、先般の委員会でも私は発言をしましたが、養鶏の問題にしても酪農の問題にしても、豚の方はちょっと落ちついているようですが、牛肉は取り上げればまた新たな問題があると思いますけれども、畜産の問題についてやはり集中的な審議をし、なお委員会の皆さんと一緒に現地で声を聞く、相談をするということが親切な方法だと思う。ここではどうしても話が食い違うところもあるのだから、現地の生産者と行政とそれから国会が一緒になって話を聞くということについてぜひこれを理事会で取り上げてもらいたい。  それからもう一つ、私は岩手県に行って負債の調査をしてきました。その負債のことについては、農林水産省の中では経済局の金融課を窓口にして相談をするという形をとっており、先般も資料をいただきましたが、なおこれについて不十分だと思う点が多々あります。農家負債というものは、負債でもうどうにもならなくなってしまっては困るのだから、更生ができるような指導と手当てができるような方向へいくためには、やはり農家負債対策室というようなものをつくって親切に取り上げていくのがいいのじゃないかと思うので、この二つを求めたいと思います。
  117. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 後ほど理事会で検討をいたします。
  118. 加藤六月

    加藤国務大臣 いろいろなできるだけの資料その他は取りそろえて審議の効率化に御協力申し上げたいと思います
  119. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 終わります。
  120. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 藤原房雄君。
  121. 藤原房雄

    藤原(房)委員 食糧管理法の一部を改正する法律案につきまして若干の質問を申し上げたいと思います。  農林大臣も、前には国土庁長官、また党内におきましてはなかなかの政策通として御活躍であったわけでありまして、農林大臣に御就任になりましてから、今どの部門でも内外ともに諸問題が非常に山積をいたしておりまして、国務大臣として困難な諸問題にお取り組みになって大変に御努力なさっていると思うのであります。特に農林水産省につきましては、国内的な問題もさることながら、農業、漁業、それぞれ諸外因との問題がございまして、これらの問題の解決のために、国内のことではございませんから、相手のあることで、問題がそう急テンポで解決するわけじゃない、地道な御努力をしていただかなければならぬということで、大変に御苦労いただいたことだろうと思うのであります。  そこで、農林大臣のような立場というのは、農林漁業に関する産業の性質から、長期的な展望に立って施策を推進しなければならぬ。そういうことからいいますと、農林大臣の地位というのは、ある期間、そういう中長期の展望に立って物事が進められるような時間的な余裕といいますか、やはり時間が必要じゃないかと私はいつも感じておるわけであります。加藤大臣の今日までの御努力に敬意を表するとともに、今言われておりますように、中曽根内閣もいよいよもう秒読みといいますか、迫ってまいったわけでありますけれども、その閣僚として今日までなさいまして、山積する諸問題について、大臣の今日までのこの問題に対処してきた経験に照らして、ある一定期間の長さが必要であるという私の考え方等について、党内事情、いろいろなことはあるのですけれども、事務引き継ぎや何か、いろいろなことは十分になされるかもしれませんが、二年、三年というスタンスで大臣として施策を推進することが望ましい、こういう私の考え方に対して大臣はどうお考えになられますか、御答弁をいただきたいと思うのです。
  122. 加藤六月

    加藤国務大臣 我が自由民主党、多士済々、今後だれが農林水産大臣になっていきましょうとも、政策の継続性ということと国内外を含む政策の整合性という二つは確実に継続されていくと思います。農業、林業、水産業、どれをとりましても息の長い、そして中長期的な問題がたくさんあるわけでございます。私は、任期範囲内において直面する問題あるいは中長期的な問題、いろいろあるわけでございまして、解決するものはするし、あるいはまた大きく方向を転換するものはささやかながらその方向に向かっての糸口をつくっていく、こういうことを任期のある限り一生懸命やっていきたいと思っておるところでございます。  要は、息の長い、腰を据えてやらないといけない農政問題でございます。そこら辺、当委員会の先生方の御指導、御鞭撻、そして当局の呼吸というのがぴったり合っていけば間違いない今後の農政が展開してくるのではないだろうか、こう思っておるわけでございます。今日まさに農政というものが非常に大切になってきましたし、また国民生活における意味合いも今までとは変わった意味で大変重要性を増してきたと思います。みんな一致結束して、目的意識を持って今後当局も頑張り、そしてまた国会も頑張っていただきたい。及ばずながら私もその一員として大いに皆さん方とともに手をつないでこの重要な時期を乗り切っていかなくてはならぬと思っておるところでございます。
  123. 藤原房雄

    藤原(房)委員 漁業につきましては、過日も委員会におきましていろいろお話し申しました。きょうも同僚委員からお話ございましたが、韓国との問題、これも農林サイドだけで解決できることではございませんで、外交上いろいろな今日までの経緯がございます。さらにまた、ソ連、アメリカ、漁業問題につきましてもそれぞれ今日までのいろいろな交渉の経緯があるわけであります。農産物につきましても現在鋭意アメリカとガットのパネル審査を続けておるという中にございまして、今大臣からもしみじみお話がございましたが、内外ともに重要な時点にあるだろうと思うわけであります。そういうことで、大臣もアメリカに行かれ、またソ連に行かれ、みずからその矢面に立っていろいろ交渉なさっていらっしゃった。そういう行動的なお姿につきましては私どもも非常に敬意を表するものでありますが、問題が非常に深刻の度を増しつつあるということで、これは日本の国の農林漁業の根幹にかかわる重要な問題でありますから、総力を挙げて取り組んでいかなければならない問題であります。  さらにまた、今大臣からお話ございましたが、自民党には人材が多いからだれがやっても継続性、整合性に欠けることはないのだというお話でありますけれども、非常に難しい局面であるだけに、適材適所というか、こういうことでこの難局といいますか問題に処さなければならないと思います。そういうことでこれから対外的な折衝として取り組まなければならない、そしてまた、ともにテーブルに着いて説得、お話し合いを重ねる場面と国内的に施策として進めなければならない二面性があろうかと思います。そういうことで対外交渉という問題については、午前中もいろいろお話がございましたし、過日の委員会でも申し上げましたが、韓国との問題や鯨に見られますように、だんだん昔日の面影がないといいますか、ずっと大きく後退をせざるを得ないような局面というものが眼前にあるわけでございまして、これらの諸問題につきましては大臣もせっかく今日までこれら諸問題について深い経験とうんちくを傾けて進めてまいったわけでありますから、日韓の漁業交渉のことにつきましても、さらにまたアメリカとの問題につきましてもぜひひとつ全力を尽くしてお進めをいただきたいし、何としても突破口を見出すような御努力をいただきたい。期日もそうあるわけではございませんので、政権交代がどうあろうと、とにかくこの問題について、農林漁業の今日的な課題について御努力をいただきたい。この御決意のほどを一言お伺いしておきたいと思うのであります。
  124. 加藤六月

    加藤国務大臣 先ほども申し上げましたが、農林水産大臣というのは国内問題と国際問題と非常に多岐にわたるわけでございまして、私は内政即外交、外交即内政という気持ちでおるわけでございます。  当面差し迫った問題としては、ただいま委員御指摘のとおり、日韓の漁業問題あるいはまたIWCにおける捕鯨問題が一つあります。また、アメリカを中心とする問題としまして十二品目、牛肉、かんきつ、米類といった問題もあるわけでございます。こういう問題には、英知を結集し、努力を注いで前途に光明が見えるように頑張らなくてはならぬと思っております。また、そういう対外折衝をする場合に一番大切なことは国内世論が二分しないことでございまして、国内世論というものが交渉の強い後ろ盾になるわけでございます。この国内世論というものが分裂あるいは二つにも三つにも分かれるということになりますと、政府として折衝する場合には非常にやりにくいということもあるわけでございまして、そういう意味におきましても当委員会等の意見の一致というものが折衝する場合にある面では一番優位になってくるし、また勇気を持って折衝ができるのではないかと考えております。  ぎりぎり精いっぱいの努力をしまして、今申し上げましたような問題に対し、前途に光明が見出せるように頑張りたいと強い決意を持っておるところでございます。
  125. 藤原房雄

    藤原(房)委員 確かに、対外交渉におきましては国内世論というのが一つの大きなバックになるということが長い今日までの経験の上から巷間言われていることでありますが、みずからその立場に立ってお働きになられた大臣の深みのあるお言葉だろうと受けとめております。  ところで、法案に入らせていただきますが、大臣の提案理由の説明の中に、「麦は、国民の食生活において米と並んで主食としての地位を占める農産物であるとともに、我が国農業において、代表的な土地利用作物の一つとして、また、水田農業の確立を図る上での有力な転作作物、裏作作物として、重要な地位を占めてお」る、このように大臣が仰せになったのであります。まことにこのとおりであると思うのでありますが、パリティができました二十五、六年、その当時の事情からしますと今日大きく日本の社会も変わりましたし、また農業を取り巻く諸情勢も変わってきたわけであります。麦そのものを見ましても大変に大きな変化をして今日までまいりました。輸入麦が大半を占めまして、麦も非常に自給率も低下したときがあったわけでありますが、農林省が一貫して「米と並んで主食としての地位を占める農産物」だという、こういう考え方できておったのかどうか、今までの経過を見ますと非常に疑わしいような気が非常にするわけであります。  現在も転作作物の中で麦というのは非常に大きなウエートを占めるものでありまして、大臣のお話の中にもあるわけでありますが、午前中の同僚委員の御質問に、食糧庁長官が、麦作主業農家というのはいないんだというお話がございましたが、確かに麦だけをつくっている方というのはごく限られた方なんだろうと思います。それだけに、水田稲作とは違った面で麦作というのは位置づけといいますか、重要性というのはあるんだろうと思います。今日まで経済の低迷、さらにまた農産物の外圧、いろいろな社会情勢の中にありながら麦の重要な位置というものについての農林省の考え方というのは、今大臣のお話、これを一貫して農民の方々がこういう位置づけで受けとめていっていいのかどうかという、いいのかどうかというよりもこうあるべきだということで、とりあえずこういう考え方を変えてはならぬという、こういう気持ちでおるわけでありますが、これからいろいろな社会情勢の変化もあろうかと思いますけれども、一貫した今後の考え方として受けとめてよろしいかどうか、その辺の状況についてちょっとお伺いしておきます。
  126. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 大臣からも午前中にお話を申し上げたところでございますが、農業生産における麦作位置づけに関しましては土地利用型の代表的な作物である、あるいは転作の有力な作物であるというような点から、特に本年度から発足をしております水田農業確立対策の中での大きな位置づけという形で麦がされているところでございます。  この数字につきましては、転作あるいは水田裏作あるいは畑作等々につきまして、それぞれ二八%、四一%あるいは三一%という数字に示されているとおりでございまして、麦は水田作におきましては冬作物として稲作と有機的に結び得る作物として、また畑作におきましては連作障害の回避の観点から重要な輪作体系を構成する作物として位置づけられるわけでございます。さらに、表作といいましょうか、あるいは稲作ないしは大豆作との関連等々もありまして、土地労働力あるいは機械、施設有効利用を図る上で重要な作物というふうに考えているところでございます。また一方、地域条件に即しまして合理的な輪作体系のもとで農業経営の柱となる基幹作物といたしまして、農業所得維持確保の上で不可欠な作物というふうにも考えているところでございます。  麦の生産の面に着目をいたしますと省力化が進展をしておりまして、生産組織化あるいは中核農家への土地集積等によります作業単位大型化を図る余地がかなり多く残っております。生産コスト低減を図り得る作物考えられるわけでございまして、我が国土地利用型農業の健全な発展を推進する上で今後とも重要な役割を果たしていくものと考えているところでございます。
  127. 藤原房雄

    藤原(房)委員 今日までいろんな経緯をたどっておりますが、四十年代、非常に生産規模が落ちたときがございました。また、減反政策が進むにつれて生産振興奨励金の交付や、五十年代に入りましてから奨励金を価格に織り込むとか、また特定作物に指定をするとか、いろんな経緯があるわけでありますけれども、今お話がございましたように、輪作体系を確立する中で非常に重要な位置を占めるという、さらにまた機械の省力化、こういうことでは確かに欠かすことのできないといいますか、水田稲作とリンクをした中での大事な位置を占めるというこの重要性については、今お話のあったことは私も十分に理解できるわけであります。ただ、現在の自給率が非常に低いということや、それから主業的に麦作をしているというんじゃなくて転作地、それからまた裏作とかいろんなそういう作物としてあるということで、そういう点では非常に不安定な要素といいますか、麦そのものの国内での必要性とかいろんなことが、それから省力化とか輪作体系とか言われるわけでありますけれども、そういうことからいって、五十五年に農産物の需要生産の長期見通しを立てております。この中で麦というものについては小麦を中心としましていろいろ述べておりますけれども、この時点と今日では大分様相も変わっておりますが、麦に対してはこの長期見通しを尊重して今後も推進していくといいますか、そういう形で進めていくということに変わりがないのかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  128. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 麦の六十五年見通しの点でございます。先生御指摘のように、農産物の需要生産の長期見通しという形で、作付面積につきましては五十一万ヘクタール、生産量につきましては百八十万トンの数字を挙げているところでございます。これまでの各種の生産対策を推進してまいりました結果、六十一年時点におきます作付面積は三十五万ヘクタールでございまして、七〇%の達成率、生産量におきましては百二十二万トンということでございまして、六八%の数字ということになっているわけでございます。この点につきまして現時点に立ちまして六十五年の見通しとの関係で見ますと、作付面積につきましては五十三年から五十六年につきましては長期見通しの趨勢をかなり上回る伸び率であったわけでございますが、五十七年以降におきましては裏作麦は着実に増加傾向で推移してまいりましたけれども、水田利用再編対策におきます転作目標面積が軽減されたということもありまして、転作麦が減少したことから総体的には横ばいで推移したという数字になっております。なお、本年まだ数字がはっきりはしておりませんけれども、水田農業確立対策といったようなことの中から再び増加するということも見込まれているところでございます。  次に、生産量につきましては、気象条件等によりまして作柄に影響を受けやすいという面がございます。しかしながら、小麦の単収は五十三年の二百八十四キロから六十一年産には三百二十八キロということでございまして、近年着実に向上傾向にあります。それに関連をいたしまして生産量も増加基調にございます。  以上のように、作付面積生産量とも達観的に申し上げましておおむね長期見通しの趨勢に沿って推移してきたというふうに考えております。  なお、今後の生産の見通してございますが、作付面積の増加、単収の増加ということが見込まれるわけでございます。したがいまして、生産量も増加するということが見込まれるわけでございます。単収の高位安定化というようなことをあわせて行う、具体的には、麦作の共励会というものの中で示されておりますいわば優良事例におきまして五百キロというような農家の方々もかなり輩出しておられるような状況でございますので、そういった中にあわせまして生産コスト低減を図りまして、実需者側のニーズに即しました良質の品種に基づく供給を行うという考えに立ちますれば、日本めん用を中心とした総需要の一定の程度の国内生産確保は図られるというふうに考えておるところでございます。
  129. 藤原房雄

    藤原(房)委員 過日の参考人の方々のお話をお聞きいたしますと、やはり生産したものが実需者の方々のニーズに合ったものでなければならぬということで、今大臣が麦についての位置づけといいますか重要性、さらにまた今日輪作体系の中に組み込まれておるということや、機械とかいろいろな省力化、こういう中にも麦というものがすっかり一体化しておる、そういうことから、今お話がございましたように、長期見通しにはやや及ばないといたしましても、単収が伸び、面積が増大し、生産が上がるということです。こういう見通しになっているわけでありますが、問題は生産需要という、実需者のニーズにどう合ったものにしていくかということがこれからの大きな問題だろうと思います。そういう点で、麦の品種改善といいますか、これは非常に重要な課題であり、そしてこれから取り組まねばならない、時間がある程度かかりますけれども、着実に進めていかなければならない問題だろうと私は思うのであります。これも研究機関等で十分に検討せよと農業団体からもいろいろお話がございますけれども、基本的にヨーロッパの麦と日本の麦では収穫期とかいろいろな土地条件、気候条件が違うので、すぐ持ってきてできるということじゃなくて、日本の風土、気候に合う品種改良ということが非常に難しいことのようでありますが、これらの問題について、当然、単収から生産増というものが見込まれる中にありまして、それが厄介者扱いされるようなことではならぬので、今日までもいろいろ対策を講じてきておられると思うのですが、これからより力を入れて進めてもらわなければならない重大な課題であると思うのです。この問題についてはどのようにお考えになってお進めになっていらっしゃるか、その辺のことについてお伺いをしておきます。
  130. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生御指摘のように、麦の生産におきまして実需者側からの製めんあるいは製粉適性、あるいはビール麦等に関連いたしましての醸造適性あるいは製表適性等加工適性改善についての強い要請がございます。そういう意味で、国内麦の生産振興を推進する上で、先生御指摘のとおり品質改善を図ることが極めて重要な課題だというふうに考えるものでございます。  この麦の品質改善に当たりましては、一つは、これまた先生御指摘のとおりでございまして、加工適性の品種の育成ということが極めて重要な点でございます。現在、かなり古い育成の時期になりますが、農林六十一号というのもございますし、さらに四十年代末に九州農業試験場で育成されましたシロガネコムギというのもございますが、その後五十一年以降、各年といっていいほどに各地域地域におきましての新品種の育成もされているところでございます。そういった新しい加工適性品種の育成を、外国産品種等も導入する等々のことを努力いたしまして、あるいは国の試験場あるいは地域の各都道府県の試験場等とも協力をまちまして図ることがぜひとも必要だというふうに考えます。また、こういった新しい品種の育成された後に、普及によりまして良品質作付の面積を拡大をしていくということもあわせて必要であるところでございます。  また、品質改善の方策におきましては、地域条件に適した麦作技術改善ということもあわせて必要な点でございます。さらに育成の段階以降、乾燥調整あるいはばら流通、保管施設等の整備によりまして案出荷単位を大型化し、産地としての品質均一化を図ることも必要であるというふうに考えるものでございます。  良質の品種の作付拡大につきましては、実需者サイドと密接な連携のもとで共通な品種評価の基準を確立しているところでございまして、またこれに基づいた加工適性向上の促進であもとか、あるいは生産実需者両サイドの協議に基づいた良品質への作付の誘導等を図ることが重要だと考えております。  なお、北海道におきまして作付が拡大しております良質のチホクコムギにつきましては、育成の段階から生産者あるいは実需者両サイドの密接な協力体制のもとで育成されたものでございまして、作付拡大が図られてきております。近年、他の地域においても、このようなことを模範といたしまして取り組みがなされているところでございますので、全国内な良品質生産というものを今後とも進めていかなければならないというふうに考えるものでございます。
  131. 藤原房雄

    藤原(房)委員 よい品質のものをまた実需者のニーズに合ったものをというのは一つの大きな課題であるわけでありますが、しかし、実態はそのような方向に進んでいない。過日の参考人のお話の中にもございましたが、好ましい品種、品質のものの作付が非常に減少傾向にあるということがデータなどを見ましても出ているわけですけれども、これは今お話しの中にございました作業の手順とか、それからその土地の気候、風土、また稲作やほかの作物との兼ね合いということでそういうことなのですが、これは克服しなければならない問題であって、今度は品質格差ということを導入するわけでありますから、ただ、これは品質格差で統括的にやるというのではなくて、皆さんの方から言うと一つの誘導策ということになるのかもしれませんが、手順をそういう方向にできるような、好ましい品種が作付できるようなそういう環境をつくってあげることが大事なことなのだろうと思います。現在、当然過ぎるほど当然のことなのですけれども、実態はそうなっていないという現実、こういうことについてはどのように受けとめていらっしゃるのか、またこれに対して今後どういう指導といいますか施策を進めていこうとなさるのか、その辺のことについてお伺いしておきたいと思います。
  132. 後藤康夫

    後藤政府委員 御指摘のとおり、実需者に好まれる麦の作付シェアがむしろ低下をしているという問題がございます。内麦の品質向上の問題につきましては、今御指摘ございましたように各般の面から努力をしていかなければいけないと思っております。ただいま農蚕園芸局長からお話がございましたような品種改良の問題から各種の生産対策の問題、それからまた私どもでやっております価格政策でもそれを誘導をしてまいるという、研究から生産対策そして価格政策全体を通じて内麦を品質的に需要に合ったものにしていくという努力をしていかなければいけないと思っておるわけでございます。今回御提案申し上げております改正案でもそういった考え方を中に盛り込んで御提案を申し上げているわけでございます。  ことしの麦価の決定に際しまして銘柄区分によります銘柄格差を取り入れたということでございますけれども、これは先ほどお尋ねの中にもございましたような、現に需要者に好まれている麦の作付シェアが減っているという実態を踏まえまして、私ども、都道府県のそれぞれの試験場におきます栽培試験の結果によりまして、銘柄区分ごとの十アール当たりの収量を調べてみたわけでございます。そういたしますと、やはり好まれる麦というのは相対的に単位収量が低い。それから、単位収量がかなり高くて安定しているけれども需要者側には好まれない麦が伸びているというような傾向が見受けられましたので、ことし産地銘柄によりまして三つの区分に分けまして、好まれる銘柄区分のⅠにつきましては六十キロあたりで小麦で申しますと四百円をプラスをいたしまして、相対的に品質評価の劣る銘柄区分のⅢにつきましては百五十円マイナスをつけるという形で、一言で申しますといい麦をつくることによって損をすることがないような価格の差をつけるということをことしからやったわけでございます。こういった価格決定がまた生産面でどういう反応が出てくるかということを見ながら、品質面をどうやって価格で誘導していくかということにつきまして、これはある程度試行錯誤というふうな形をとらざるを得ない面もございますけれども、私どもいろいろ工夫をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  133. 藤原房雄

    藤原(房)委員 これからいろいろ試行錯誤しながら進めていくということでありますが、しかし品質格差、銘柄格差というのはひとり歩きといいますか、この六十二年産から始まるわけでありまして、そういう点では農家に対する配慮がちょっと欠けておる点があるんじゃないかという気がしてならないのです。農業の場合は、加工業のように一遍に新しい機械を装置して生産性が上がるということではなくて、ある程度の経験を必要とすることや、また品種改良にいたしましても、土地条件とかいろいろなことがございますから、そういうことを考えますと、ある期間を置いて――そういう点ではてん菜の糖分取引というのは、農業団体を初めといたしましてある期間を置いてなさったということではそうあるべきだろうと私は思うのです。麦も長い歴史があるといいながら、ひところそういう技術的なことが途絶えようとした時期があって、また若い人たちが古老からいろいろお聞きしながらようやくとにかく植えなければならぬということで植えた時期もあった。こういういろいろな経過があるわけでございまして、そういう点では冒頭にも大臣からお話がありましたように、息の長い作業ということからしますと、手順を踏んで物事を進めていきませんと非常に難しいことだと私は思うのです。そういう点で、今後十分に単収が伸びることが予想され、また作付面積もこれからふえるだろうという中にありまして、実需者から嫌われるような生産物が生産されたのではなりませんので、これはひとつ真剣な取り組みをしていただきたい。品種改良とか研究機関に対する要望も非常に強いのですけれども、こういうことに対しましては農林省も麦についてはそれなりに配慮をしているのでしょうか、現状はどうでしょう。
  134. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、品種の品質改善、その中心になります新品種の育成等につきましては国の試験場あるいは都道府県の試験場が相互の連携を高めながら、わせ、多収性、良質性、耐病性、機械適性等を主要目標として育成努力を傾けているところでございます。現在、品種の育成方向といたしまして、さらに加えて機械化の栽培技術の確立というものが展開されておりますので、それに応じた機械化適性という点についても考慮を払って実施をされているところでございまして、作付体系の改善とあわせまして品種の改良に重点を置いて実施、協力分担をしているところでございます。  特に、小麦の品種改良に関する研究につきましては、これも先ほど先生の御指摘の点に関連するところでございますが、製めんの適性に関する良質性、それから雨の害の回避のためのわせあるいは多収性等を主要目標として推進をしております。この結果、近年では良質でめんに適する品種といたしまして四十九年のシロガネコムギというものが出ておりますし、それから五十六年の作出でございますけれども、北見農試で出てまいりましたチホクコムギ等が育成されてきておりまして、この普及に向けられているところでございます。これらの品種はいずれも麦の品種別作付の上位を最近は占めておりまして、その伸び率も高いものとなっております。今後とも国の試験研究機関を中心といたしまして、生産者、実需者のニーズに応じて製めん適性についての優良品種の育成に対する体制整備を図りつつ新品種の育成に努めてまいる所存でございます。
  135. 藤原房雄

    藤原(房)委員 いずれにしても、麦の品種改良とか作付に対します技術指導というものについてはほかの作物から見まして決して進んでいるとは言えないと思います。今いろいろやっているのだというお話ですから結構でしょうが、現場に参りまして、現実的にはもっともっと真剣に取り組まなければならない課題だろうと思います。ぜひこれはお進めいただきたいことだと思うのです。  時間もだんだん迫ってまいりましたが、今度パリティから、麦価の基準価格というのはいろいろな要素を入れて総合勘案することになるわけです。新しい方式になりますと参酌要素というのは三つ、麦の生産費その他の生産条件、麦の需要及び供給の動向、物価その他の経済事情、こういうことや麦作生産性向上品質改善、こういうものを配慮要素にするということですが、これは法律にあるわけですけれども、そういうことによりまして今までのパリティの指数と結果的にどういうことになるかということは私どもも非常に重大な関心を持って見ておるところであります。ここのところ、米価を初め乳製品や農畜産物、軒並み引き下げになっている中にありまして、また、麦も先ほど来お話がありますように重要な転作作物として位置づけられておるのでありますが、今度のパリティから新方式になりますとどういうことになるのかというのが一つの大きな問題だろうと思うのであります。  先ほど来申し上げておりますように、農業というのは非常に息の長い産業でありますから、現行価格の中でいろいろな営農計画というものが立てられておりまして、そういう整合性というのが大きく崩れますとその運用上大きな破綻を来すことになるわけであります。これは実際これから米審の小委員会いろいろなところへ諮問してこういう問題についてはお決めになるようでございますけれども、少なくとも、新しい方式になったといたしましても、現行価格と大きな違いが出てくるようなことはあってはならぬと思いますし、これはどういうことになるか、フリーハンドはそっちの米審とか皆さん方にあるので、ただこちらから願望を述べても、どういう形で進められるかということについて御説明いただいても、大きな格差がないということになるのかどうか。そこは皆さん方はいろいろな試算といいますか御検討なさったのだろうと思いますけれども、これはどうなんでしょう、非常に大きく危惧するところですが、パリティの今日までの計算方式と新しい方式になったらどういうことになるのか。現行価格と比較して大きな乖離があってはならぬことですけれども。  いずれにしましても、一年に一遍しかとれない麦作に励んでおられる方々は一番ここのところが心配なところなんですけれども、今までもいろいろな試算とか御検討、シミュレーションをなさったのだろうと思いますけれども、どうでしょう。
  136. 後藤康夫

    後藤政府委員 この御提案申し上げております法案を成立させていただきますと、先ほど申し上げましたように既にことしの六月の麦価の決定の際の米価審議会におきまして、法改正が行われた場合には小委員会を設けて算定方式を検討するということになっておるわけでございます。したがいまして、その検討の結果によって来年度以降の麦価の算定を行ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  米価審議会の委員の方々はすべて学識経験者ということでございますけれども、実質上生産者の立場にお立ちになっておられる委員の方、それから消費者立場に立っておられる委員の方、また中立の立場の方という国民各界各層の関係の方々に御参加をいただいているところでございますので、そこで公正な御議論をいただきたいというふうに思っておるわけでございます。したがいまして、私ども、いろいろな作業を全くやってないということではございませんけれども、今どういう方式をとり、どうするというふうなことを具体的にこの委員会でちょっと申し上げにくいというのが正直なところでございますけれども、今お話しのございましたように算定方式の変更によりまして麦作の安定的、継続的な発展に支障を来すというようなことがございませんように行政価格としての連続性ということにも配慮する必要があるというふうに私どもも考えておりますので、こうした点も踏まえながら算定方式や具体的な麦価水準について検討をいたしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。  いずれにいたしましても、この三つ参酌要素の中で第一に考えております生産費というようなものにつきましても、一方では麦作生産性の動向、もう一つは資材等の価格の動向、いろいろな要素が入ってまいります。したがいまして、そういったさまざまな要素の変化をどうやって織り込み、反映していくかということによって具体的な数式は決まってくるわけでございますけれども、今申し上げましたような配慮はする必要があるということで私どもも考えてまいりたいというふうに思っております。
  137. 藤原房雄

    藤原(房)委員 わかったようなわからないような話なんですけれども、結局、今は皆さん方の手にはございませんで、この法案が通りますと米価審議会の小委員会で具体的にということですから今のようなお話になるんだろうと思いますけれども、大臣、これはどうなんだこうなんだ、こう言っても出てくる話じゃないのですけれども、こういうことからしますと、今長官のお話にございましたように、基本的に政策の継続性といいますか連続性といいますか、こういうことからいって大きな隔たりのある価格にしてはならぬし、そういうことであってはならぬ、こういうことぐらいは大臣はお答えできるんだろうと思うのですが、その詳しい数式等についてはこれからだということですから、数式がはっきりしないんじゃ答えも出てこない、真っ暗やみでどうするこうするといってもしようがないので、大臣のお考えといいますか、この算式決定に当たりましての基本的な考え方といいますかそのくらいのことは御答弁いただけるんだと思いますが、どうでしょう。
  138. 加藤六月

    加藤国務大臣 先ほど来長官がお答えいたしておりますように、この法案が成立いたしますと米価審議会に小委員会を設けて検討していただきたいと考えておるところでございますけれども、ただ、その算定方式の変更によって麦作の安定的、継続的発展に支障が生ずることのないよう行政価格としての連続性にも配慮する必要があると考えております。こうした点を踏まえながら算定方式や具体的な麦価水準について検討してまいりたいと考えます。
  139. 藤原房雄

    藤原(房)委員 パリティ価格の中には調整額(生産振興奨励金)、こういうものが加わっておるわけですが、今度の新方式になりますとこういうような考え方はどういうふうになるのでしょう。  それから水田農業確立助成補助金、これは今までは転作奨励補助金とも言っておりましたが、こういうものは今後どういう扱いになるのでしょう。
  140. 後藤康夫

    後藤政府委員 これまでの麦価算定におきましては、昭和五十二年からでございましたか、生産振興奨励金の相当額を麦価の中に組み入れるということをやり、また、近年におきましては生産性向上をその部分に反映をさせるということでやってまいったわけでございますが、これはいわばパリティ方式に基づく価格算定のもとにおきます一つの手法であったというふうに私ども考えておるわけでございます。今回、新しい規定のもとに算定方式を検討いたします場合、先ほど申し上げましたような行政価格の連続性ということからいたしますれば、ことしの麦の価格は銘柄区分のⅡの一等で申しますと、たしか八千七百円くらいのパリティ価格の上に千七百数十円の生産奨励相当額が乗った形で決定をされておると思いますが、そのパリティ価格と奨励額を合わせたものが現行の価格水準ということでございますので、それとの連続性ということも配慮しながら麦価考えていくということでございまして、新しい算定方式の中にそのような要素として残るか、あるいは水準としての連続性ということの中で算定方式上は消えるようになるかということは、先ほど来申し上げておりますような算定方式の検討の中で決められてまいる問題であろうというふうに考えております。
  141. 藤原房雄

    藤原(房)委員 安定性、継続性、こういうことで進める。ただ、例えば生産費を出すといいましても、これはお米なんかと違って地域性とかまた経営規模とか、畑でずっとやっているのと転作でやっているのと非常に格差が大き過ぎるのですね。そういう点で、この生産費をどう見るかということ、こういうこと一つとってみましても非常に難しい要素があると思うのです。これは平均的な、そう大きな隔たりのないことだったらそう危惧はしないのでしょうけれども。こういうことで、この生産費というのはいかなるときのどの地域のどういう階層をどうするのかという一つかんがみましても、非常にこの行き先に対してどうなのかという疑問といいますか考え方があり、農家の方々はこのとり方について非常に危惧を持っておるわけです。価格水準に大きな影響を及ぼすだけに非常に関心事でもあるわけですけれども、生産費のことにつきまして、こういう問題についてはこれからお決めいただくということでしょうが、そういうものをできるだけ標準化するためにいろいろな御努力をいただかなければならない。これは皆さん方もいろいろな作業をしていらっしゃるんじゃないかと思いますが、具体的にどうだということを私は問い詰めるつもりもないのですけれども、地域間とか経営規模とか、そういう大きな隔たりの中で生産費というものをはじき出す、そのためには基本的にこんなことを考えているんだということがございましたら、お伺いしておきたいと思います。
  142. 後藤康夫

    後藤政府委員 先生今御指摘になりましたような問題が、新しい麦価算定方式考えてまいります場合にまさに大きな問題になろうかと思っております。  地域によっても生産費はかなり違っております。藤原先生のところの北海道生産費が安い方でございますけれども、価格というのは全国一本でございますから、北海道だけその生産費麦価を決めるというようなことをするわけにはまいりませんし、また規模によりましてもかなり大きな差がございます。一戸当たりの作付規模で申しますと、田作の麦で申しますと〇・九ヘクタールでございます。畑作麦でございますと一・六ヘクタール、北海道でございますと四・三ヘクタールというような規模の髪もございます。それから先ほども申し上げましたけれども、経営形態で見ましても米のような意味での主業経営というものは麦の場合はつかまえにくいわけでございまして、裏作物、つまり二毛作あるいはまた稲、麦、大豆というような二年三作という形での輪作の中での位置づけになるわけでございます。  米価審議会の御議論に予断を与えてはいけないという気はいたしますけれども、米価審議会の今までの米価の算定方式の御議論でございますと、ある一定の生産規模、作業規模を持った担い手に着目をした価格算定という御議論も随分ございますけれども、麦の場合にはそういうことはちょっと難しいんではなかろうかという感じがしております。昭和二十五、六年に比べまして、現在の麦作を見ますと北海道関東・東山そして九州というふうに非常に主産地化が進んでおります。むしろ主産地域に着目をいたしまして、主産地域における生産シェアを高めて麦作全体の生産性向上を底上げしていくという考え方が麦の場合には米よりは考えられる方向ではないかなという気がいたしておるところでございます。
  143. 藤原房雄

    藤原(房)委員 さて、生産性向上ということでこれから農家の方々も内外格差の縮減のために努力をしなければならない。今日までもそれに取り組んできておるわけでありますし、またこれからも努力しなければならないことだろうと思います。それに伴いまして価格的な問題、今後の動向、農産物の中での麦の位置づけ、そういうことについていろいろお話をいただいたわけでありますが、マクロ的な経済ということでいろいろお話しするとそれなりに時代の推移としてわからないわけではないのですが、今度は一農家として営農に当たるという立場からいたしますと、生産性向上というものは農産物の価格にある程度考えなければならぬということも言われておりますし、もちろんそうあるべきだと思います。そういう中で生産性を上げるためには基盤整備を初めとしまして、その周辺のものにつきましても力を注いでいかなければならぬ。そういうことの総合施策の中で農業というものはあるんだろうと思います。  そういう生産性を上げるためのいろいろな手だてがあるわけでありますけれども、その一つの土地基盤の整備、この基盤整備につきましては今日までも大変に御努力をいただいてまいったわけでありますが、前に一回視察に行ったことがあるのですが、仙台に田畑輪換の非常によくできたところもございまして、私どももこれは大したものだなと思うところもありますが、なかなか排水の悪いところ等どこでもできることじゃございません。  それとまた、最近基盤整備ということが言われておりますけれども、それに伴って今問題として言われておりますのは、基盤整備の工事費が非常に高いということ、それから四十年代に計画したものがだんだん工期が延びまして、そして非常に農民の負担になっているということ、計画が二度、三度変更になっている。かつて、北海道の函館の近くの上磯、あそこに大野町というのがありますが、そこへ参りましたら、これはもう異様に当初の計画、これは農民も生産性向上ということで進めようとしたのでありますが、現実はなかなか工事が進まない。これはこういう時代の流れの中で非常に経済の変動が激しいときであったということも一つは言えるのかもしれませんが、それにいたしましても、計画が二度も変更になり、そしてまた負担額がどんどん重くのしかかるということでは、これは基盤整備で生産性を上げるということが農家に負債を負わせるという形になって、本来の目的が逆になっているという、こんな形になっているところを全国各地にいろいろ私どもは見聞をしているわけです。  国営上磯土地改良事業は、四十六年に認可になって四十七年から着工いたしましたときは二十四億七千万で始まったわけでありますが、これが二回の計画変更ということで、二十四億七千万の当初の計画が七十二億五千万、そしてまたさらに百四億、このように計画がどんどん変更になって、これが受益者負担という形で農民に大きく負担が強いられた。これは全道、全国各地にこういう問題が起きて、今回は内需拡大ということでいろいろな基盤整備等についての打診がありましたけれども、とてもこういう農産物の価格の低迷の中で私どもはもう負担に耐えられませんということは各地に出ておったのです。これはもう農林省としても十分に御存じのことだと思います。  そういうことで、局長通達か長官通達が、今度、工事のあり方やそれからできるだけ早くやるとか、こういう通達を出したようでありますけれども、これからのものについてはそういうことで対処の仕方もあるのかもしれません。工事のあり方につきましても、地元に合った形で物事を進めていく。メニュー方式、いろいろなことが取り入れられる。しかし、今までのものにつきましては二度もこれが変わって、二十四億七千万の計画が百四億ということですから、これは大変なことです。しかも大野、上磯、あの辺はそんなに大きな規模の農家があるわけじゃございませんで、既往のものについてどうするかということもこれは重大な問題だろうと思います。  私の選挙区の共和町のところにも同じようなことがあるわけでありますが、余りにも工期が長過ぎるという、延び延びに延びておることのために、当初の計画ではもうとてもついていかれない。そしてまた事情が変わっておる。これからの問題については通達で何らかの効果を生むのかもしれませんけれども、今までのものについても何らかの軽減措置というものを考えていかなければ、生産性向上、これは逆に農家つぶしの元凶になる、こういうこと。詳しく一々申し上げるまでもなく、その辺のことについては全国のいろいろな問題について掌握していらっしゃると思うのですが、このことに対していろいろ部内でも御検討なさっておると思います。今までの計画のものについてこれからどういう対応をなさるか、その点お伺いしておきたいと思います。
  144. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 最初に、今お話が出ました国営の土地改良のまず上磯地区のお話をしてから、既往の土地改良事業の負担の問題についてお話をしたいと思いますが、国営の上磯地区は四十七年に着工いたしまして、途中で一回五十八年に七十二億五千万にし、それから今協議中ですが、百四億というようになって、確かにその間にかなりの事業費の増高があるわけです。  中身を見ますと、そのうち、二十四億七千万から百四億になりましたうち、三十五億は物価上昇によるものでございます。それから四十五億は工法を変更したあるいは変更しなければいけないということになってきたことによるものでございます。この四十五億の工法の変更といいますのは、最初はかんがい事業だけでしたが、その後排水事業を追加する、あるいは初め用水路とかトンネルをつくるというときに、ここのあたりにトンネルを抜こうと思ったのですが、どうも地形も地質もよくない、改めてそのトンネルを抜く場所を変えるとか、地質が非常にかたいところを選んでトンネルをつくるというふうに設計をし直すというような、地形、地質の精査の結果、用水路なりトンネル工法なりの変更等が原因でございまして、いずれにいたしましても、工期が長引くにつれ、こういう形での事業費がふえたことには大変遺憾に存じているところでございます。  私どもも、農業基盤整備事業で、特に四十年代の着工地区につきましては、その後の公共事業費の抑制によりまして工期が延びる、あるいは物価の上昇といったことによりまして事業費が当初計画に比べてかなり増加している、大変恐縮に存じている次第でございます。  基盤整備費の地元負担を軽くすることにつきましては、去る七月に構造改善局長の通達を出しまして、今お話しのように、整備水準をかなり高いものをとるか低いものをとるか、例えば用水路や排水路の基幹の部分あるいは末端の部分を舗装するかしないかでは地元の負担もかなり違うものですから、そこは地元の土地改良区などがどういう整備水準を選択するかということでありまして、そしてそれに基づいて事業を進めるように改めるということを関係者に指示もいたしました。  それから今お話しのような地区で継続中の地区につきましては、残事業につきましてできるだけ安上がりと言ってはいけないのかもしれませんが、経済的な工法などを採用いたしまして事業費の採択も図らなければいけないと思っていますし、また新規の採択を抑制いたしまして継続地区の工期の短縮を図りたいと思っています。  それから、やはりまだ負担が高いというのはどうしても出ておるわけでございますので、今そういう実態を洗っておるわけです。北海道からも個別具体的にいろいろ事情も聞いております。そして本当に負担が高くて、いよいよ土地改良の負担金の償還に入るけれども負担するのには余りにも高過ぎる地区については予算面で何らかのことをしないと済まない状態になるのではないかと思っていまして、そういう意味で、六十三年度予算要求の中で、これから実際に償還が始まっていくような地区については具体的な対策、特に負担の重いところの対策をどうするかということを今鋭意検討いたしているところでございます。
  145. 藤原房雄

    藤原(房)委員 これはぜひひとつ真剣に御検討いただきたいと思います。  これが、今までも土地改良事業が済みまして、償還になりまして、こういう経済変動の中ですから、できましたところが価格低迷、そしてまた、返還というのはなかなか難しい、厳しい条件の中にありまして、これが滞りますと厳しい土地改良区から責め立てられる、そして農業の継続が非常に難しいようなことも私どもも見聞いたしております。生産性向上のためにしたはずのものが、かえってそれが足を引っ張るようなことになってしまったのでは、何のための構造改善であったのかということになりますので、やはりこれはいろいろな角度から御検討いただきたい。  これは当然当局の方にも北海道からいろいろ要望事項として行っていることだと思うのでありますが、経済変動があるということは、確かに物価が上がるとかなんかということもありますけれども、それは物価が上がると同時に、支払いをする農家の方にとりましても大変な負担増になるわけであります。また、このように世の中が低成長になりますと、それに伴いまして資材費、いろいろなものとの兼ね合いの中で農産物が低迷しておる。これは何もお役所の方でお仕事をする立場だけではなくて、農作業、営農計画を立てていらっしゃる農民サイドから見ましても、こういう大きな社会変動というのは、現行制度ではやっていけないいろいろな条件がそこに出てきておるということですから、そういう問題についてはいろいろな角度から御検討いただいて適切な処置をいたしませんと、本末転倒になってしまうのではないかと思います。  いろいろなことを今検討中だということでありますけれども、北海道としましてはやはり規模が大きいということの中からいろいろな要望が出されております。特に基盤整備事業に対しましては、国営事業の地元負担金の支払いの条件の緩和ということで、国営かんがい排水事業等の支払い期間は十七年、据え置きは二年ですが、これは二十年、据え置きは五年ぐらいにしてもらいたいとか、国営農用地開発事業、現行十五年、うち据え置き三年を、二十年、そのうち据え置きは五年という形にしてもらいたいとか、利率につきましても国営事業の地元負担五%を四・五%に、農業基盤整備資金の償還条件の緩和、償還期限の延長、現行二十五年、据え置きが十年ですけれども、これは三十五年、うち十年を据え置きにしてもらいたいとか、既往の借入金の負担軽減、貸付利子、償還期限、これらのものについて、これは四十年代、五十年代の社会情勢の中でいろいろお決めになった、それと現在ではやはり変わってきているという中で、これは総合的にそういう諸問題もあわせて、金融面のこともあわせて御検討いただきませんとなかなか解決の方途は難しいのではないか。  それから、経営規模拡大に対する諸問題についても、農地流動化の促進につきましては、やはり特別控除枠とかいろいろな問題についてもございますし、また農業金融の拡充強化、貸付限度額の引き上げ等農地取得資金やそのほかの問題につきましても、償還期限の延長とか融資の引き上げ、こういう問題について今いろいろと出されております。現在住宅金融公庫でも親子二代ということで長いのがだんだんできてまいりましたが、それらのものともなぞらえて、やはり農業も一代で返還という時代からやや長期のものに変わりつつありますけれども、こういう総合的な施策で進めていただきたい。これは構造改善のことだけではなくして、総合対策として全体像の中で営農計画が進められるような形で、これはどうでしょう。
  146. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 北海道土地改良事業は、御承知のとおり、国営の総合かん排事業ですと国の負担率が八割もある。それから道営の圃場整備でも国が四五%、道営のかんがい排水事業ですと五五%負担しているわけでございまして、こういうところでさらにまた負担の緩和をすると必ず、恐らく財政当局あたりは、何だと、そういう話で、かなり今みたいに高い補助率あるいは国費を出して、しかも補助事業については補助残融資で公庫資金を借りて、その公庫資金についても財政投融資に補給金という名前で国の財政負担が出ているじゃないか、さらにそれに加えて、地元で払えないとか苦しいとか言って三重の補助を求めてくるのは何かというような反論がきっと出てくるのではないかと思いながら、慎重にいろいろ検討しているところです。  ただ、確かに土地改良事業そのものについてはいろいろな意味で負担の割高感というのが最近指摘されておりますので、私どもも、整備の内容に応じた経費あるいは地元負担をあらかじめ明らかにいたしまして、土地改良区がどういう整備水準を選択するかというようなことを、土地改良区が選択する方法を徹底したいし、それからできるだけ安上がりにできるように経済的な工法を採択するとか、地域の実情に即した計画基準の弾力的な運営といったことで事業費の単価もできるだけ下げたいし、それから新規の採択の抑制に努めまして、継続地区の工期をできるだけ短縮できるようにしたいと思っております。  それから、最近財投資金の借入金利あるいは農林漁業金融公庫による補助残融資の金利も引き下げまして、農家負担の軽減に努力をいたしております。  それから、既に借り入れております金も相当にたまってきている農家もございますので、自作農維持資金についても、今六十三年度予算編成と絡めて、一農家当たりの借入限度を高められないか。農地取得資金についても、特に北海道あるいは東北等では自作地を取得する、つまり借りるのではなくて自分の農地とするために買うという形態が多いものですから、借入限度を引き上げる方がよいのではないか。その場合、今お話しのように、かなりの額になった場合は、場合によっては親子で、つまり父親が買った農地の借り入れの残りは子供が引き継いで払うという形で、親子二代にわたってローンを受けて払っていくというようなことも意欲的に研究したいと考えております。  それから、今申しましたように、負担そのものが極めて高いという地区には、どの程度あって、どういうところにどういう問題があるかというのは、今北海道からも直接事情を伺っておりまして、そういう結果を総合していろいろな形で六十三年度予算要求の中で反映するように努力をいたしているところでございます。
  147. 藤原房雄

    藤原(房)委員 もう時間もございませんで、最後になりますが、これからの問題については局長通達ということでいろいろ改善が図られるようでありますけれども、大ざっぱに見ましても、北海道だけでも十数カ所こういうような問題を抱えているところがございます。現在問題になっておるところにつきましても十分にひとつ御検討をいただきまして、物価上昇とかいろいろな理由は理由として、工事の変更とかいろいろな事情は事情としましても、現実に現地に即した形でお話をぜひひとつ進めていただきたいものだと思います。  さらに、大臣、最後になりますが、こういういろいろな米価の問題や麦価の問題が出ますと、基盤整備、こういうことで生産性を上げなければならぬ、こういうことで周辺整備ということが必ず出るわけでありますが、それも非常に経済の揺れ動く中で、着工時点によりまして大変に大きな負担増になっておったり、また途中で計画変更とか物価上昇とかいうことで、農産物の価格低迷の中で非常に苦慮しておる、そういうところが全国に、それぞれの事業を進めたところにあるわけであります。  それで、一方では、米価を初めとしまして農産物がここ一、二年間にまた価格が引き下げられる。農畜産物の内外価格差の拡大、自由化、こういうことの中で一生懸命努力しなければならないことでありますけれども、北海道でいろいろ言われておりますが、このたびの米に関連する引き下げで四百五十三億か、酪農とか畑作とか、こういうものを加えるとおよそ七百億を超えるんじゃないかという、北海道の農畜産物、総額にしますとおよそ七%というような減収額になるんじゃないか。お米にしましても、一農家で約三十万とか五十万とか、規模の大きいところほど減収になるというようなことも試算されておるわけであります。こういう中で一番今日まで努力をしてきて、ある程度営農しておりました農家の方々は、やはり一番ネックになるのは負債問題で、規模が大きいだけにまた負債額もとの府県よりも大きいという現実の中で大変に苦悩いたしております。  今日までもこの金融対策については酪農を初めとしましていろいろ施策を進められておりますけれども、今集中豪雨的なこのような価格を引き下げるというような現実の中で、総生産高の七%というと大災害を受けたと同じような現実、現状でして、災害の場合には特別低金利の融資があるわけでありますけれども、それに匹敵するような現状にある、こういう御認識だけはひとつしっかり持っていただいて、負債対策、負債整理、これについてもできるだけひとつ可能な対処を最後にお願いを申し上げたいと思うのですが、大臣、いかがでしょう。
  148. 加藤六月

    加藤国務大臣 先ほど来構造改善局長から個々のケースあるいは全体的な問題についてもお答えをいたしたと思います。それから経済局の方におきましても、農家負債の問題、真剣に取っ組み、いろいろ調査その他をいたしておるわけでございます。そういう中におきまして、私も、全国はもちろんでございますが、北海道の農家負債の数字、これは稲作において、あるいは酪農において、あるいはその他のものにおいて、そしてその負債の原因となるものが農地拡大であるのか、施設整備であるのか、あるいは酪農におけるところのもろもろの問題であるのかといった点も詳しく調査し、勉強をいたしました。  藤原委員がおっしゃいましたように、農産物価格の低迷あるいは引き下げという中において、意欲ある農家がさらに頑張るような方法というものを講じていかないといけない。要は、意欲ある農家が意欲を失ってしまったときに日本農業というものは全減してしまう、この辺に最大限の配慮をし、またできる限りの政策的な応援をして、意欲を失わないようにやっていかなくてはならぬ。特に私が非常に心配しましたのは、北海道においては農地が数%ないし一〇%ぐらい、平均低下しておるという現実を見たときに、これは東京における土地の大暴騰ということに比べて農林水産大臣として心から寂しい思いをするとともに、何らかこれらに対するはっきりしたことを講じなくてはいけないと思っていろいろ検討もし、研究もいたしておるところでございます。
  149. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 神田厚君。
  150. 神田厚

    ○神田委員 食管改正法案につきまして御質問を申し上げます。  世界の穀物需給動向は一九八四年から急増しまして、一九八六年末には十六・七億トン、穀物在庫量四・五億トン、在庫率二七%と、短期間のうちに異常なまでに生産量、在庫量とも急増しております。それを受けまして世界の穀物価格は低落傾向にあるわけであります。  一方、我が国農業は、昨年の農政審報告におきまして「財政に大きく依存することなく可能な限り消費者及び実需者の納得の得られる価格で安定的に供給することが重要である。」このように指摘をし、生産性向上による体質の強化、内外価格差の縮小、需要の動同に即応した生産の誘導を重要な政策課題としております。  そこで第一にお尋ねをしたいのでありますが、競争の激化する農産物貿易の中にありまして近年小麦、大麦、裸麦の自給率は各般の振興対策を受けておおむね一四ないし一五%と増加をしております。長期的に自給率向上を図っていく場合に、対外的なこれらの輸入問題に対しましてはどのように対処をなさろうとしているのか。また水田農業確立対策一環として転作奨励品種として導入、拡大を図っていく場合に、小麦等の自給率を何%とすることが適切であると考えているのか、その点を御説明いただきたいのであります。
  151. 加藤六月

    加藤国務大臣 神田委員御指摘のとおりの国際情勢にあることは認識をともにするものでございます。そしてまた農政審報告におきましても「生産性向上基本として国内での基本的な食料供給力確保を図る」とされております。御存じのように現在は相当部分輸入に依存しておるわけでございまして、今後国内生産輸入との適切な組み合わせによりまして安定的に供給していく考えでございます。そうして、ある面では我が国は麦の大輸入国であって、麦についての輸入圧力が高まっているとは考えておりません。  それから、その次は、国内産麦は、午前中以来のいろいろな御質疑、御議論もあったところでございますが、現在のところは品質面からパン用あるいは菓子用といった用途には不向きでございます。日本めんの原材料として供給の拡大を図ることを基本としているわけでございますので、麦について自給力の向上といってもおのずから限度がございます。このような我が国立場は、今後とも麦輸出国の理解を得られるものと考えております。  そして、国民の理解を得ながら麦の生産振興を図っていくためには、まず第一は、食糧供給力の確保を図るとともに、地域条件に即した合理的な土地利用方式の展開による水田農業の確立等土地利用型農業の健全な発展に資するという観点から、転作作物、裏作作物としての位置づけ、食品工業原料としての性格等に配慮しながら引き続き生産性の一層の向上と良品質麦への生産誘導といった今日的課題に速やかにこたえることが重要であると考えております。  どの程度のパーセンテージをという点につきましては、局長からお答えをいたさせたいと思います。
  152. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいま基本的な考え方につきまして大臣からお話し申し上げたところでございますが、私の方から具体的な数値等につきましてただいま先生が御指摘の点に即してお答え申し上げます。  小麦自給率昭和二十年代四〇%台で推移してまいりましたけれども、その後需要が増加する一方国内生産減少ということがございまして、三十五年の三九%から四十八年には四%まで先生御指摘のとおり低下したわけでございます。その後、各般の麦生産対策の強化、転作対策の実施等によりまして国内生産が増加に転じまして、六十年には一四%まで回復をしているところでございます。  この小麦自給率につきましては、昭和五十五年に公表されました「農産物の需要生産の長期見通し」の中で、目標の年次であります昭和六十五年におきまして一九%程度ということで見込んでいるところでございます。また、大麦、裸麦に関連いたしましては一七%という数字を掲げているところでございます。  この数字に関連をいたしまして、作付面積とあるいは生産量といったものを対比してこれまでの推移を見てみますと、六十一年産の数字でございますが、それぞれ七〇%あるいは六八%という達成率という状況でございまして、そういう状況の中で今後将来の姿としてどういうふうなことを考えていくかということでございますと、六十五年の見通しとの関係で見ますと、作付面積につきましては五十三年から五十六年につきましては長期の見通しの趨勢をかなり上回る推移で出てまいりましたが、現在のところ水田利用再編対策における転作目標の面積の軽減あるいは調整もありまして転作麦が減少したことから、横ばいで推移したということでございます。ただ、今年再び水田農業確立対策の中での位置づけということもありまして増加するというふうに我々は見込んでおります。生産量におきましても単収等々から考えまして増加傾向にありまして、どちらかといいますと増加基調にあるというふうに考えられるところでございます。  以上のように、作付面積生産量ともおおむね長期見通しの趨勢に沿って推移をしているというふうに考えております。したがいまして、現在の私どもの「農産物の需要生産の長期見通し」の中で掲げております数字というものは一つの現在の目標値であろうというふうに考えております。
  153. 神田厚

    ○神田委員 農政審報告や前川リポートなどを受けまして、内外価格差の是正を政府は特に土地利用作物について推進をしておるわけでありまして、米、麦、大豆等の引き下げを図っていると言っても過言ではありません。  本年五月に発表されました農水省試算によりますと、農業生産が一割減少するとGDPの減少は一兆一千三百五十六億円、雇用減少が三十五万人、このようなことが言われております。これは農林水産省が昭和五十五年の地域産業連関表をもとに試算したものについての発表があるわけでありますが、その影響が建設、サービス、運輸などあらゆる分野に及んで、GDP、国内生産の減少額は農業GDP減少額の一・七五倍、こういうふうになるということが明らかにされております。また同時に、これによりますと、雇用の減少効果はおよそ三十五万人に及ぶ、このように見積もられておりまして、農水省としましては、地域経済に与える影響は極めて深刻だということを言っております。  これらについてなお詳しく地域別に見ますれば、関東地方におきましては農業GDP減少額の一・八三倍に当たる三千三百四十七億円、九州地方でも一・七四倍に当たる一千七百四十二億円の総生産の減少をもたらし、さらに、地域経済への影響は農業依存度の高い地域ほど深刻で、東北では農業GDPの一〇%削減によりまして地域内の全産業のGDPは一千九百六十億円、一・一八%も減少し、雇用減少は七万人に及ぶ、このように計算をされております。  こういうことについて農業問題が地域経済に与える影響の大きさを指摘しているわけであります。しかしながら、農林省がとっておりますこれらの一連の価格問題は、これらの指摘とはまさに正反対の、いわゆる農業振興からかけ離れた政策をとっていると言わざるを得ないわけでありまして、このような点におきまして、地域経済や日本経済における農業の重要性を主張しているにもかかわらず、実際の政策が内外価格差の是正という美名のもとに米麦価あるいは政策価格の引き下げということで、農業振興政策との整合性が非常に問題だと思っています。その点につきましてどのように考えているのか、お聞かせをいただきたいと思っております。  また、米麦価の引き下げによりまして、さきの試算によりますれば、当然農業GDPも減少するはずであります。それを政府はどのような形でフォローしようとしておるのか。フォローするための具体的な施策に欠けた場合には、当該改正案は農家に対しまして農政不信をさらに強めさせ、農業離れを加速させることになると思うのでありますが、その点についての対策あるいは考え方についてお聞かせいただきたいと思います。
  154. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいま御指摘のございました農業生産の増減の農村経済あるいは農村の雇用問題等に対する影響といった点についてでございますけれども、この試算は、昭和六十一年度の「農業の動向に関する年次報告」、いわゆる白書をこの春発表いたしましたけれども、その中におきまして私どものいろいろ勉強の成果のその一端を披露したものをお引きになってのお話かと思います。  この試算の概要は、一口で言いますと、仮に生産変動等の要因によって農業生産額が一割増減した場合地域経済にどういうような影響があるか、これは念のために申しますと、生産の物量が増減した場合というような前提を置いての試算でありますが、地域産業連関表を用いての試算でございます。地域によって差はございますけれども、ただいま先生からお話がありましたように、全産業で申しますと農業生産の増減額に対して一・七から八倍の影響が及ぶ、こういったことになっております。こういうデータはデータとして念頭にも置きながら、一方では基盤整備等構造政策あるいは生産対策を一層推進をいたしまして、地域農業の振興あるいは農村地域活性化のために所要の公共投資等の拡充を図る、今回の補正予算におきましてもその大幅な増額を図る、こういった対策等もあわせまして全体として農業あるいは農村地域活性化のために所要の政策を推進してまいりたいと考えておるところでございます。
  155. 神田厚

    ○神田委員 次に、昨年の麦作農家の平均作付面積が、北海道が三百十八アール、都府県五十八アール、全国平均七十九アールであると言われています。麦の生産費の縮減にはどうしても規模拡大が必要でありますが、最近の都府県における作付規模の変遷を見ますと、昭和五十九年五十六アール、六十年五十九アール、六十一年五十八アール、大きな伸びが見られて広いわけであります。食糧庁の米麦の集荷等に関する基本調査等々の資料を見ましても、北海道ですら五十九年は二百八十二アール、六十年は三百四アール、六十一年は三画十八アール、少しずつは伸びておりますけれども、ほとんど作付規模は変わっておらないわけであります。  したがって、今回の政府麦価の引き下げは、地域生産性格差は非常に大きくなってまいりまして、農家の生産条件の整備を完遂していないにもかかわらず、内外価格差の是正ということを一つの大きな目標として財政の合理化を推進をしていっているわけでありますが、この点から見ましてもこれらの政策誘導は時期尚早ではないかというふうに考えるわけであります。また、農家が今後経営合理化省力化を図っていくときに、果たしてそれではどのくらいの麦価及び何アールの作付面積をめどとして経営努力をすればいいのか、この点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  156. 後藤康夫

    後藤政府委員 本年産の麦価の決定に際しましては、今お話ございましたように内外価格差をできるだけ縮小するということが一つの背景としてあったわけでございますけれども、麦価の算定の仕方といたしましては、現行の算定方式の中でできるだけ近年におきます単収の増加なりあるいは労働時間の減少というものを麦価に反映をする、そしてまた品質格差の考え方を導入をしてまいるということで決定をいたしたわけでございます。そういう意味におきまして、最近における生産性向上を反映をさせたということでございまして、決して内外価格差から価格を割り出したということではないわけでございます。  ただ、先生御指摘のとおり、麦はスケールメリットの大きな作物でございますので、今後経営規模あるいは作付規模を拡大していく努力が必要であることは論をまたないところでございます。現在我が国麦作、もっと大きく申せば農業、農政が置かれておる状況のもとにおきましては、単収の向上なり作付規模の拡大、機械化というようなものを通じまして生産性向上させて、それを的確に価格に反映をしていくことが重要な課題になっておると考えております。実はそういう考え方に立ちまして今回の改正案の御提案も申し上げておるわけでございまして、生産性向上なり良品質麦への誘導というのは、私ども現在の状況から見ますと大変緊要な課題だというふうに考えておるわけでございまして、時期尚早というふうには必ずしも考えておらないわけでございます。  なお、麦作の二月当たりの経営規模のお話がございましたけれども、十年前に比べて二倍の水準になっております。ただ、その規模は、お話ございましたように平均をいたしますといまだ七十九アールというような水準でございますので、今後もさらに規模の拡大を図りまして生産性向上を進めてまいりたいと思っております。そういう意味で、生産対策価格政策がいわば車の両輪のように補い合いながら今我が国麦作が課されている課題に適切に対応できるようにしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  157. 神田厚

    ○神田委員 次に、財政負担の問題でありますが、米麦財政負担昭和六十年度実績で見た場合に、小麦がトン当たり十三万九千円、大麦が十三万二千円、米が五万八千円。小麦財政負担は米の約二・四倍になっております。また、小麦の支持価格は、一九八六年において日本を一〇〇とした場合にアメリカ一五、EC二四程度であります。したがって、今後水田農業確立対策として麦作の振興拡大を行った結果、国内麦の財政負担の増大によります政府の買い入れ価格の引き下げという要因が出てくるわけでありますが、麦作の振興と財政負担の増大というこのインバランスをどのように調整していく考えなのか。また国内麦の赤字を輸入麦の黒字で補てんするコストプール方式から考えた場合には、国内麦の自給率向上がどうしても財政圧迫という状況をつくっていくということにならざるを得ないわけでありますが、政府はどのように自給率向上財政負担及び農家経済との問題を調和をさせていくつもりなのか、その点をお聞かせをいただきます。
  158. 後藤康夫

    後藤政府委員 御指摘のとおり、内麦の財政負担は近年の生産拡大に伴いまして増加傾向にございます。そういう中で、いわゆる内外麦コストプールの考え方基本としまして、昨年までは麦の政府売り渡し価格を引き上げてまいった。端的に申しますと、昭和五十五年に一四・一%、五十六年に五・六%、五十八年に八・二%というような売り渡し価格の引き上げで賄ってまいったということでございます。しかし、近年麦の内外価格差が拡大をしてまいってきております。同時に、小麦なり小麦粉の価格差が国内と海外との間で非常に大きくなりますと、どうしても二次加工品の輸入が増大をしてまいるというような問題がございますし、また麦の輸出国との安定的な関係に配慮することも対外関係で必要でございます。そういうことからいたしますと、内麦の財政負担の増大を外麦の利益に安易に求めるということはだんだん難しくなってくる情勢になっております。こういった中で今後国民に納得される麦管理を推進していくということになりますと、今申し上げましたようなことからいたしますと、どうしても麦作生産性向上を図って、これを政府の買い入れ価格に的確に反映させていく、そして内麦の売買逆ざやの縮小に努めていくということが重要になってまいると考えるわけでございます。今回の改正は、こういった観点をも踏まえまして、構造政策との密接かつ有機的な連携のもとに適切な価格政策を講じていくことが大事だという考え方に立ちまして、買い入れ価格算定方式改善を行いたいということでお願いをいたしておるわけでございまして、今お尋ねのございました大変難しい問題につきましても、この法改正で一つの対応の道を開こうという気持ちも込めて御提案を申し上げているところでございます。
  159. 神田厚

    ○神田委員 それでは、その算定方式の問題でありますが、新しい算定方式は、一つに麦の生産費その他の生産条件二つに麦の需要及び供給の動向、三つ物価その他の経済事情、以上の三点を参酌し算定するということでありますが、これは考えようによりますと非常に恣意的に運用されるおそれがある、こういうふうなことを私どもは大変憂慮をしております。したがって、これらの算定方式についてどのような形でこれを運用するのか、具体的に説明をしていただきたいと思うのであります。同時に、水田農業確立助成補助金は将来どのようにこれを取り扱うのか、あわせてお聞かせをいただきたいと思います。
  160. 後藤康夫

    後藤政府委員 この三つの参酌事項につきまして、それをどのような算定方式に具体化をしてまいるかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、米価審議会において、法改正成立をしました暁には麦価算定方式についての小委員会を設けて検討するということになっておりますので、この中で、生産者、消費者、そしてまた中立的な立場の方々の御参加を得て、具体的な算定方式についての検討をお願いするということになっておるわけでございます。  ただ、この三つの参酌事項について、そういう意味審議会での御検討をいただくということで、いわゆる行政の恣意だけでやるつもりはないということを申し上げますと同時に、従来の二十五、二十六年を基準年次といたしますパリティ価格方式にかわる三つの参酌事項ということになりました場合に、やはり価格の算定に当たりまして生産コストが重要な要素になるということで、改正案におきましては麦の生産費を第一の参酌事項に挙げているということをひとつ申し上げさせていただきたいと存じます。  それから同時に、二番目の参酌事項の麦の需要及び供給の動向ということでございますが、これにつきましては、麦価の水準と申しますよりは、むしろ格差の問題に関連をいたしてまいろうかと思うわけでございますが、国内産麦品質問題が非常に顕在化をいたしておりますので、価格面からも良品質麦の生産を誘導していく。食管法の目的の中には需給の調整という言葉もございますので、需要供給の動向というのは当然価格算定に当たっての重要な参酌事項でございますが、需給事情というような法文の書き方もできるわけでございますけれども、むしろそういった品質別需要なり供給の動向を重視するという考え方をあらわすためには、需給事情ということではなくて、需要及び供給の動向という表現で書きあらわした方がよかろうというふうに思っておるわけでございます。  それから、パリティ指数も一つの物価指数ではあったわけでございますが、物価その他の経済事情、これは行政価格は一般的な物価の動向と無関係ではあり得ないわけでございまして、物価を参酌するということもあわせて入れているわけでございます。したがいまして、そういった生産費を一つの重要な手がかりにしまして、品質問題への対応を含めて麦価算定を行う、その際に物価その他の経済事情についても十分な目配りをするという考え方でこの改正条文の御審議をお願いしておるところでございます。
  161. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 本年から発足いたしました水田農業確立対策におきます助成補助金の問題でございますが、この考え方におきましては、従来の米から他作物への転換を重視した奨励措置という考え方にかえまして、構造政策を重視した助成措置とする考え方に立って交付することとしたものでございます。この対策におきましての助成補助金は、稲作転作を通ずる生産性向上を目的といたしまして、農地の流動化による規模拡大、担い手を中心とした生産組織育成等を配慮して交付することとするほか、さらに、新たに生産者団体の自主的な取り組みを促進する観点から、農協において農業者等の拠出により地域水田利用の合理化推進のための基金を造成し、計画的に水田農業の確立を推進する場合において、これとあわせて助成金を交付することとしたものでございます。対策前期の期間、六十二年から六十四年は、以上申し上げましたこの枠組みのもとに対策を推進することとしているところでございます。
  162. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  163. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 藤田スミ君。
  164. 藤田スミ

    ○藤田委員 法案の問題に入る前に二点だけお伺いをしておきたいと思います。  まず初めに、米軍機のワイヤ切断事件についてお伺いいたします。  これは、八月十二日に、米軍第七艦隊空母、ミッドウェーの艦載機グラマンEA6Bプラウラー、電子制御偵察機と言われておりますが、プラウラーというのは獲物をねらってさまよえるものというような意味だそうですけれども、これが奈良県吉野郡十津川村の山中を超低空飛行をいたしまして林業の作業用ワイヤを切断したわけであります。関係者の証言では、竜神村でも同様の超低空飛行が行われ、ほかにも和歌山県の中辺路町、本宮町でも同様の証言があったわけでありますが、紀伊半島の林業地帯が米軍の訓練空域になっていたという疑いがあるわけであります。  これは新聞報道ですが、運輸省の大阪航空局串本航空無線標識所の職員も、ここ二、三年串本土空を西から東へ非常に低空でかすめ飛ぶケースが目立つということを証言しております。私は、この事件が起こりましたそのとき現場におられた作業員の方に話を聞いてみたわけですが、ロープを切られるのじゃないかと思うことは過去にも何回もあった、去年からずっとそういう状態があったのだ、何しろ八月は四回目でこの事故になったのですから、そのたびに物すごい危険を感じていた、同じ飛行機で同じコースであった、こういうふうに言っています。さらに、四人乗っているというが、何の訓練が、まるで曲芸飛行みたいなものだ、ワイヤの下をくぐってきた、谷底から百五十メートルくらいのところなんだが、我々が仕事をしていたところよりもはるかに下を飛んで、飛行機というのは空を飛ぶものじゃないかというふうに思わず思ったというわけです。さらに、谷の向こうから木材を運ぶロープを渡したのは八月に入ってからですが、それが八月の七日から使用した途端にこういうことになったのです。このロープは労基局の方にちゃんと届けを図面を添えて提出をしているということであります。非常に危険な訓練で、二十四ミリのロープに当たったなら大惨事になっていたかもしれない。作業が危険になるようなことはもうしてほしくない、仕事ができないのだということを訴えています。この仕事をしていた井硲林産の社長さんは、二度とあってはならない、超低空飛行をやられたら木に登る作業員が怖がって仕事にならないのだ、これもまた同じような訴えをしております。  そこで防衛施設庁にお伺いをしたいのですが、一体どのような範囲でどのような訓練をしていたのか。また、そういう再発防止策はとっているのか。それからワイヤロープの復旧補償及び休業補償はどうするのか。この三点についてお伺いをいたします。
  165. 金枝照夫

    ○金枝説明員 お答えいたします。  防衛施設庁が在日米軍司令部から得た情報によりますと、米軍機は厚木基地を発進して岩国を経由して再び厚木基地に向かって航法訓練を実施中であったということでございます。この航法訓練似、飛行中のパイロットがA点からB点に地図に基づいて低空で飛行しながら任務達成を図る訓練であったという情報を得ております。  それから、この事故に対する再発防止はどのようにするのかという御質問につきましてお答えいたします。  防衛施設庁としては、このような事故が二度と生ずることのないよう在日米軍司令部に対しまして事故原因の究明及び再発防止策の確立について申し入れを行っているところでございます。  それから次に、切断されたワイヤ及び作業を中断させられていたこと等に対する補償はどのようになるのかという御質問に対しましてお答えいたします。  本件事故に係る損害賠償は、当該被害が米軍の公務上の行為に起因していることから、地位協定十八条五項及び民事特別法の規定に基づきまして防衛施設庁において処理することとなります。  以上でございます。
  166. 藤田スミ

    ○藤田委員 この問題は、本当にけさからも議論に出ています日米安保条約がネックになって起こっている問題なんです。それにしても、林業労働者の安全を守るためにも林野庁としても、このような林業地帯における米軍の訓練は絶対に行わないように申し入れをするべきではないかというふうに私は考えますが、いかがでしょうか。
  167. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 米軍機によりまして林業ケーブルが切断されました事故につきましては、当方といたしましても極めて遺憾でございまして、重大な関心を持っていることはもちろんでございます。  本件事故につきましては、ただいま防衛施設庁の方からもお話がありましたように、既に防衛施設庁で在日米軍に対しましていろいろな調査なり働きかけをしておりますし、外務省の方からも米国大使館に対しまして遺憾の意の表明なりあるいは調査、それから再発防止について万遺漏なきを期してくれということの申し入れも既にしておりますので、我々といたしましては、こういう申し入れに基づいてのそれぞれの対応について慎重に見守ってまいりたいと思っております。
  168. 藤田スミ

    ○藤田委員 次に、八月四日にリン農務長官は記者会見で、来年三月末で期限切れになります牛肉、オレンジの輸入枠の日米合意について延長は全く考えていないとして輸入枠の完全自由化を強く要求したと報道されているわけであります。その際、リン農務長官は前回交渉の決着時に、つまり八四年の四月にアメリカ側交渉の責任者のブロック前米通商代表が輸入枠を認めるのは今回限りだと日本側に通告してあると述べたそうでありますが、農水省、こういった事実はあったのでしょうか。
  169. 眞木秀郎

    ○眞木政府委員 お答え申し上げます。  前回の交渉の決着時におきまして我が方が現在の合意が切れます来年四月以降自由化をするというような点につきましてこれを約束したというような事実は全くございません。  ただ、前回のその交渉が決着いたしました際に、これは双方で文書により合意をしたわけでございますけれども、このときにこういう文書とは別に米側から現行合意が切れる来年四月以降におきましては輸入枠を前提とした決着は今回限りとしたいという意向が表明されたことは事実でございます。これに対しまして我が方からはこのような意向は我が方の立場考え、見解と全く異なる旨明確にこれを伝えた経緯がございます。
  170. 藤田スミ

    ○藤田委員 さらに八月下旬にハワイで開かれる予定の日米貿易委員会で議題としてこの牛肉、オレンジを取り上げることになっているとか報道されているわけでありますが、リン農務長官は日本は必ず撤廃に応じると思うと言っているわけなんですけれども、そういうことになりましたら、多くを語るまでもなく畜産、ミカン農民は大打撃を受けていくことは必至であります。大臣は毅然としてその撤廃を拒否するということで対応するべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  171. 加藤六月

    加藤国務大臣 八月の下旬ではなくして九月の初旬に行われるようになると聞いております。  先ほど経済局長からお答えいたしましたようなところでございまして、我が国は一九八七年すなわち本年中の適当な時期において関係国と協議に入りたいと考えておるわけでございます。どういう経緯、経過があるにいたしましても自由化ということをのむわけにはいきません。
  172. 藤田スミ

    ○藤田委員 ところが、さらに例の残存輸入制限農産物十二品目、この中から数品目の輸入自由化をするということでアメリカ側を説得するんだ、日米二国間協議で決着をさせるために眞木経済局長をアメリカに派遣されたとけさほどからも御報告を若干お聞きしておりますが、その数品目の中にはトマトケチャップ、トマトソース、果汁、トマトジュースというようなものが入っていると言われているわけです。もしこれらのトマトケチャップ、トマトソース、果汁といったぐいのものが自由化になりましたら、長野県の農業なんというのはとても深刻な打撃を受けることになるわけですが、本当にこのようなことを考えていらっしゃるのかどうか、私はここではっきり聞かせていただきたいわけであります。
  173. 眞木秀郎

    ○眞木政府委員 お答え申し上げます。  今回、六日から約一週間、ワシントンを訪ねまして、アメリカ側USTR等の関係者と十二品目問題を中心とした意見交換を行ってまいったわけでございます。十二品目問題につきましては、アメリカ側が全品目の段階的自由化を主張しておるわけでございますが、我が方といたしましては、国内農業の実情等に照らして考えますときにアメリカ側の主張を受け入れるわけにはいかない、あくまで日米両国間の話し合いにより現実的かつ円満な解決を図るべきである、こういう主張をいたしました。あわせてパネルが進行しているわけで、この結論が秋にも出るわけでございますけれども、この結論を待って対応することはやはり好ましくないという点も強調いたしまして、二国間協議に入るよういろいろと話し合ったわけでございます。しかし、アメリカ側はこれまでの主張である全品目の段階的自由化という原則を崩そうとはしなかったわけでございますが、引き続き二国間での話し合いを続けることには合意をいたしました。我が方といたしましては、今申し上げましたように、あくまで二国間による現実的かつ円満な解決を図るという立場に立ちまして、さらにアメリカ側に対して説得なり理解を求めていきたいと考えておるわけでございます。二国間協議と申しましても、こういうものも定義のいかんによりましては二国間でも話し合っているということかと思いますが、いずれにいたしましても交渉の段階にいろいろ入ってきているわけでございます。今後これをどう取り扱うかにつきましては、基本的に日本国内農業の健全な発展と、あわせて国際的な情勢あるいは関係国間の友好関係にも留意をしながら頑張ってまいりたいと考えております。
  174. 藤田スミ

    ○藤田委員 そうすると、数品目を輸入自由化することでアメリカ側を説得する、そういうことじゃないというふうに受けとめておいていいですね。
  175. 眞木秀郎

    ○眞木政府委員 今回の訪米によって、あくまでも二国間協議にアメリカ側も応ずるべきだということを強く申し入れたわけでございまして、数品目云々というのは一部の新聞の記事でございまして、我々は全く関知していないところでございます。
  176. 藤田スミ

    ○藤田委員 私はこのような十二品目というのは最低のものとして国として守っていくのが責務だと考えております。  それでは、法案の中身についてお伺いしていきたいと思います。  先日も当委員会で参考人質疑を行いました。上川町から生産者の方が来られましたけれども、財政負担の軽減を図る目的の法改正であれば価格政策に一貫性がなくなるおそれはないのか、再生産確保の面から見ましてもとても賛成できるものではないということで、さまざまな不安や強い怒りの声を出されておりました。私はまことに的を射たものだと聞かせてもらったわけであります。  今回、パリティ価格を下限とするという規定を外して、生産費その他の生産条件需要及び供給の動向や生産性向上品質改善などという極めて抽象的なものを参酌、配慮して決めるということですが、これは政府が恣意的に価格の引き下げを行っていけるような算定方式に変えるものではないかと私どもは考えております。早い話が、この新しい算定方式政府は麦の生産を一体伸ばそうというのか減らそうと考えておられるのか。また、五十五年に閣議決定しました長期見通しては、例えば小麦は六十一年産は八十八万トンでしたけれども、六十五年目標は百二十二万トンになっております。こういう新しい算定方式を取り入れてここまで麦の生産を進めることが可能なのかどうか、そのことについてお伺いいたします。
  177. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 麦につきましては、土地利用型の代表作物であり、転作有力作物であります。六十一年の作付面積の割合で転作の麦、水田裏作の麦、畑作の麦について見てみますと、それぞれ二八%、四一%、三一%という形になっております。このような状況を踏まえて申し上げますと、麦は水田作におきましては冬作物として稲作と有機的に結びつき得る作物でございます。また畑作におきましては、連作障害の回避の観点から、豆類、根菜類と組み合わせたイネ科の作物といたしまして、輪作体系を構成する重要な作物でございます。また、土地労働力あるいは機械、施設有効利用を図る上で重要な作物考えております。他方、地域条件に即した合理的な輪作体系のもとで農業経営の柱となる基幹作物と麦は考えられるものでございまして、農業所得の維持、確保を図る上で不可欠な作物考えるものであります。さらには、麦につきましては省力化が進展しておりまして、生産組織化中核農家への土地の利用の集積によりまして作業単位大型化を図ることにより、生産コスト低減を図り得る作物とも考えられるわけでございまして、我が国土地利用型農業の健全な発展を推進する上で今後とも重要な役割を果たしていくものと考えております。  現在、先生御指摘の「農産物の需要生産の長期見通し」というものにおきまして、この麦につきまして六十五年に作付面積五十一万ヘクタール、生産量百八十万トンと見通しをしておるところでございます。これまで各種の生産対策を推進してまいりました結果、六十一年の時点におきまして、作付面積は三十五万ヘクタール、生産量も百二十二万トンという水準になっておりまして、これらの水準はそれぞれ七〇%、六八%のものとなっているところでございます。この見通しを現行の麦の生産動向との関係で見てみますと、作付面積につきましては五十三年から五十六年までは長期見通しの趨勢をかなり上回る伸び率になっておりましたけれども、五十七年以降の裏作麦の増加傾向に対比いたしまして、水田利用再編対策によります転作等の目標面積が軽減といいましょうか調整されまして、転作の麦が減少したということがございます。したがいまして、全体といたしまして横ばいで面積は推移したというのが最近の傾向でございます。本年におきましては、数字はまだはっきり確定しておりませんけれども、水田農業確立対策の発足と相まって増加することが見込まれているところでございます。生産量につきましては、年々による、気象条件による作柄の影響を受けやすいということでございますけれども、五十三年の二百八十四キロから六十一年産については三百二十八キロというふうに反当収量向上しております。生産量も増加傾向にございます。そういうことでございまして、作付面積生産量とも現在のところおおむね長期見通しの趨勢に沿って推移しているというふうに考えているところでございます。  今後の生産見通しということでございますが、作付面積の増加、単収の増加が見込めることから生産量も増加することが見込めるわけでございますけれども、近年において国内生産の増加する中で財政負担の増大、需要サイドからの品質物流改善に対する諸要請の強まり等が問題として出ております。今後の生産振興に当たりましては、単収の高位安定化と合わせまして生産コスト低減を図るとともに需要のニーズに即した品質物流改善を推進いたしまして、日本麺類などを中心とした総需要の一定の程度の国内生産確保に努めてまいりたいと考えるものでございます。
  178. 藤田スミ

    ○藤田委員 要するに、生産性向上というものに今後は期待をかけていくというのでしょうか、力を入れていくということなんですが、実際に生産性向上ということが口実にされまして、五十六年以降生産性向上分の調整ということで生産奨励金部分はずっと据え置かれて、六十二年産は一・二%引き下げられましたね。だから、この現行のパリティ方式自体も食管法で言う再生産確保を旨とするという規定から見れば、そういうふうになっていないというふうに私たちは考えているわけです。生産費を償わない低価格押しつけの算定方式であるこのパリティ方式でさえ物価上昇に合わせて価格が上昇するために生産性向上価格に反映しないということで、奨励金部分のカットにも限界があるとしてパリティ方式そのものを廃止してしまおう、これが今回出されているこの法案の内容であるというふうに思いますけれども、そういうふうになっていきましたら、生産奨励金転作奨励金もあってせっかく増産を続けてきた国内麦は再びつぶれていくということになりはしませんでしょうか。  例えば、六十二年産麦価生産性向上分として四百三十三円カットされました。仮にこれが現行法で今と同じ状態が続くとすれば、この調整額上乗せ分は六十二年で千七百二十五円ですから、一年で四百三十三円ずつ削られていったら四年でこれもゼロになってしまうわけです。生産性向上を配慮するということはこういうことになりはしませんか。そして、昭和三十五年の小麦生産が百五十万トンであったのが四十八年には二十万トンというような減産になってしまった。その時期はパリティ価格だけであった時期ですが、こういうような状態になりはしないかというふうに考えるわけです。どうなんでしょう。
  179. 後藤康夫

    後藤政府委員 お答え申し上げます。  今回の法改正はパリティを下限とする規定を確かになくすわけでございますけれども、法案でごらんいただけますように、生産費その他の生産条件でございますとか需要及び供給の動向でありますとか物価その他の経済事情を参酌をするということでございまして、具体的には米価審議会の小委員会算定方式の御検討をいただいて新しい麦価算定方式を決定をするということにいたしておりますので、年々の麦価決定につきましては、その算定方式に従いまして適正に行ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。したがいまして、私ども、この法改正によりまして来年以降の価格水準がこうなるあるいはこうするというようなことについて現時点で具体的な予見なり前提というものを置いて考えているわけではないということを申し上げたいと存じます。  それから、これもお尋ねの中にも参考人のお話がございましたけれども、食管につきましてもう臨調以来随分長いこといろいろ議論がなされてまいってきております。そういう中で、とかく長年にわたって存続してきたものでございますから、功罪、長短の功の方、長の方というのは水か空気みたいに思われて、最近やや罪と短についての御議論が非常にやかましいわけでございますけれども、いろいろ御説明を申し上げてまいってきているわけでございますが、ただこのパリティの法律の規定についてだけは、先般の参考人の意見陳述にもございましたように、もう本家のアメリカの方でもなくなっているという考え方を、基準時まで法律で固定しているということにつきましては私どももこれが現下の我が国麦価政策として一番適切な方法である、一番適切な法律の規定であるということはなかなか申し上げにくい点であったわけでございます。そこを、もう少し現下の生産性向上なりあるいは品質改善ということを頭に置いた規定に直そうということで御提案申し上げているわけでございまして、パリティがなくなると直ちに価格決定が非常に恣意的になるというようなことは、こういった農林水産委員会という場もございますし、米価審議会という政府の中での価格決定の手続もあるわけでございますので、その辺もひとつ御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  180. 藤田スミ

    ○藤田委員 それじゃこれだけはっきりしてください。農家にとっては再生産が保障される価格でおるかどうかということは決定的に重大な問題です。価格というのはまさに生産基本になるわけです。先ほど大臣はいみじくも農民が意欲を失ったときには農業は滅びるんだと言われました。私は価格というのはそういうものだというふうに思うのです。ところが政府の資料でも六十一年度の数字で小麦の買い入れ量の半数を超す都府県での政府買い入れ価格による生産費のカバー率というのは九〇%ですよね。そういう状態の中で、今度のこの算定方式の見直しによって政府は少なくとも農民の所得確保、再生産の保障こそ価格政策基本だというふうに考えておられるのか、麦価は今後ともこの生産費を償う率を一層高めていかなければならないと考えておられるのか、そこのところだけはっきりしてください。
  181. 後藤康夫

    後藤政府委員 近年、内麦の生産はこれまでの各種の生産振興対策等通しまして急速に増加をしてきているところでございます。御指摘のように確かにここ数年の生産者麦価は、都府県産ということで見ますれば、第一次生産費は十分カバーいたしておりますけれども、第二次生産費をカバーするようにはなっておりません。しかし、最近の麦の生産量の増加傾向から見まして、現在の価格水準のもとでも十分な麦作振興が図られているものというふうに考えております。なお、都府県でも一ヘクタール以上層ではほぼ第二次生産費をカバーする水準になっているわけでございます。
  182. 藤田スミ

    ○藤田委員 そうすると、その水準を一層高めていかなければならないと思っているのかどうかです。今のは答弁になっていませんよ。聞いていることは、その生産費を償う率を一層高めなければいけないと思っているのか、再生産確保する農民の所得確保こそ価格政策基本だと思っていらっしゃるのかどうかです。答えられなかったら大臣で結構ですよ。
  183. 後藤康夫

    後藤政府委員 再生産確保と申しますのは、全国平均あるいはどの地域の一次生産費とか二次生産費を何%カバーするカバーしないという、私ども直ちにそういうこととつながる問題ではないと思っております。  我が国は、土地利用型の農産物につきましては自然条件のハンディもございますし、土地条件のハンディもございます。そういった制約条件の中で国民が納得をしていただけるような効率的な生産を行っていただいて、国民経済的に必要な量と質の麦の生産が継続してなされることが再生産確保されるということだと思っております。生産費のカバー率と申しましても、麦の場合には年々の作柄の変動というようなこともございます。一概に、どういうところをとってどういうカバー率にするかということにつきまして固定的なお答えを申し上げるのはなかなか難しいというふうに考えております。
  184. 藤田スミ

    ○藤田委員 今の答弁というのは、だれが聞いても大方みんなわかりにくいなと思うだろうと思うのです。要するに、行革審答申では、麦価について「現行の固定的な算定方式を改めるとともに、生産性向上を的確に反映した麦価決定等により、国内麦の逆ざや縮小を図る。」ことを要求しています。農政審報告では、内外価格差の縮小を価格政策に掲げて、価格政策の見直しや仕組みや運用の方法について見直しを提起しています。今回の法案はこれらを具体化したものだと思いますけれども、結局それが麦の増産あるいは自給率向上ということを放棄するものにつながっていくのだということだけは私は意見として申し上げておきたいと思います。  次に、品質改善の問題についてお伺いいたします。  加工適性が高く、安定多収でその地帯に合う品種の改良開発は急務である、試験研究の充実が進まないと、農家の努力だけではできないのだ、これもせんだっての参考人の方がおっしゃった言葉であります。麦というのは非常に難しい作物だなと、私も実は現地に参りまして思いました。秋に植えて明くる年の夏にとれる麦がたった三日の雨で穂発芽なんということでだめになってしまう、こういうようなことで、非常にデリケートなものなんだなということを思いましたが、さらにその品種改善ということになると難しい問題があって、農家の努力だけではだめなんだということを参考人もおっしゃり、また現地の皆さんも言っておられました。  そこでお伺いいたしますが、その品種改善の問題というのは、麦の無制限買い入れを義務づけられているのは政府自身なんだから、政府が本当に取り組むべきだ、したがって品種改善に対する政府の目標、そのための生産技術や生産対策や試験研究の充実強化、これは予算の措置も含めて重要な政府の責任だというふうに思いますが、どうでしょうか。
  185. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 先生今おっしゃいましたように、麦はもともと原産地が非常に乾燥した冷涼な地帯でございますので、日本は必ずしも適地ではない、そういうところでつくっているものですから、なかなかほかの国では考えられない穂発芽性というようなものは日本独自の育種の目標になっているわけでございますが、そういった意味でなかなか難しい面はあるわけでございますが、現在のところは多収性、早熟性、それから今の耐病性、そういったものと一緒に、製粉適性だとかめんの適性だとか、そういった加工適性向上というようなことを主要目標にいたしまして、国が中心になっておりますが、これはいろいろ地域によって条件が違いますので、県にも指定試験等でお願いをいたしまして、両方が協調をしてやっておるところでございます。  現実に最近ではニシカゼコムギとかあるいは多収のチホクコムギというようなものが大分つくられるようになってきたわけでございますが、例えばめんをとりましても、うどんと違いまして最近は色の白いものがいいとか消費者の好みもいろいろ変わってまいりまして、それに伴って実需者の方からの粉に対する、あるいは麦に対する要求というものが非常に厳しいものがございますので、そういう方と協議をしながら育種目標というものをかなり加工適性というところに置きまして育成をしているわけでございまして、現在まだ品種になっておりませんけれども、非常に色の白い関東百号とかいろいろな系統が今できておりますので、当面はそういうものを早く品種に仕上げていくというようなことを進めてまいりたいと思うわけでございます。  さらに、六十二年度から新しく麦とか大豆とかそういったものの品種改良に少し加速をさせようということで、水田農業確立の一環として新しいプロジェクトを組んでおりまして、それには従来の手法だけではなくてハイテク等を使った新しい育種技術というようなものも用いまして優良な品種をつくっていくように努力をしておるところでございます。これは、従来から麦についてはかなり国が中心になって県と指定試験等を通じて協調をしてやっている、その体制は今後もそういう形でやっていくことになるだろうというふうに思います。
  186. 藤田スミ

    ○藤田委員 私はその実需者の要求ということについて、今回いろいろなものも読ませていただきましたし、参考人のお話も聞かせていただきましたが、こんな言い方、適切じゃないかもしれませんが、実需者の要求というのは、馬の鼻の先にニンジンをぶら下げて走らすような、どこまで行ってもゴールは向こうの方へ向こうの方へと行って、もっといいもの、もっといいものと要求されているというところがあるように見えて仕方ないわけです。  例えばオーストラリアのASW、もともと日本の製めん業者があっちへ行って技術指導してつくらせた。気候がいいから非常にすぐれたものができる、めん用に適している、こうなったわけですね。そうすると、日本小麦めん用に適している、昔からうどんなんてありますから、そういうことでちゃんと因果関係はっきりしているわけですが、そのオーストラリアのASWが入ってきた、途端に日本の、銘柄区分Ⅰというのですか、これもASWに劣ると言われるようになった。  こうなりますと、本当にゴールがもうどんどん先へ逃げていって、要求というのは幾らでも来ると思うのですよ。そこで、本当に国内麦を育てていくのだ、国内麦を広げていくのだという構えで、実需者政府がそういう立場をしっかり持って当たっていかなければ、この品種改善の問題はもういいよなんというような話はどこまでいっても恐らく来ないというふうに私は考えます。どうなんでしょう。
  187. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 これは麦だけではなくて、いろいろなものが消費者の欲望といいますか、望みというのはだんだん高くなりますので、それを追いかけてできるだけそういう方の好みに合うようなものをつくっていくというのも私どもの仕事でございますけれども、やはり限度というものもありますので、例えば私どもで新しい品種をつくって、それが従来の国産の品種よりもすぐれたものであれば、そういったものを実需者の中でも使っていただくというような努力、これは私どもの局だけではできませんので、それぞれ生産奨励の馬とかそういったところと協議をしながら実需者生産者の間の話し合いに私どもが参画をするとか、いろいろな形で現在ふやして、したがって、北海道の品種なんかはかなり変わってきているということでございます。ただ、実需者の方々は、やはり消費者からいろいろな要求があるというようなこともあって、さらにいいもの、いいものということのお話はございますけれども、そういうものについてもできるだけこたえるように我々の方もしたいと思いますけれども、できたものをきちっと使うということが非常に大事ではないかというふうに私は思って、そちらの方も一生懸命やっている次第でございます。
  188. 藤田スミ

    ○藤田委員 消費者消費者と言われますが、消費者がそんな色の白いうどんなんてそれほど要求しているのじゃなしに、やはり実需者なんですよね。昨年十二月に出されました経団連の「食品工業の実情に関する報告書」、これを読みましたら、食品工業の空洞化の問題が取り上げられています。これはいろいろ書いてありますが、食品工業をめぐる経営環境は円高や関税の引き下げなど製品輸入障壁の除去により大きく変化しており、二次加工品を中心とした食品企業の中には、安い海外原料の獲得も大きな理由となって海外進出を計画し、実施段階に移していく動きが最近目立っている。このような状況は、国内における食品工業の空洞化現象の兆候であるとの見方もあり、国内において抜本的な対策が講じられない場合、こうした傾向に一層の拍車がかかるであろうと。早う言うたら空洞化のおどしで、安いもの、よいものを供給せよ、こういうことなんでしょうが、既に先ほど来からも出ていますように、六十一年度は麦製品の輸入の方も急増して、うどん、そうめんが三〇%増、ビスケット類は五四%増ということで、まさに日本のメーカーが韓国などに技術を持ち込んで逆輸入するというようなそうめんのたぐいもこのごろふえてきているわけであります。  私はこういうようなあれで、原料麦を一元的に管理している食管制度のもとで、こういう麦製品の野方図な輸入が行われるということは、矛盾と混乱を一層持ち込んで放置できないものだというふうに考えますが、この点についての政府のお考えをお聞かせください。
  189. 後藤康夫

    後藤政府委員 御指摘のように、最近の急激な円高の進行によりまして、麦の二次加工品の輸入が増大をする傾向にございます。まだ総需要の中に占めます輸入品のシェアというのはそれほど大きくございませんけれども、対前年の増加率ではこのところかなりの増加を示しているわけでございます。  こういった状況に対しまして輸入規制を強めるといったような貿易上の措置によって対処いたしますということにつきましては、一つは今日の我が国を取り巻く国際情勢からしてもなかなか難しゅうございますし、食品あるいは特に加工されたものにつきましては、ある一つの穴をふさげばまた次のところに姿を変えて入ってくるということがございます。全面的な国家貿易でもやりません限りは、なかなかそういうようなことは実行上も難しいということでございます。  それからまた、輸入増加の基本的な要因というのは、やはり何といいましても内外価格差がある程度の範囲を超えて拡大をするというところにあるわけでございまして、そういったことからしましても、対応といたしましては、基本的には内外価格差の縮小に努めていくということが大事なわけでございまして、こういった観点から、小麦につきましては、最近における麦管理の実態とか輸入価格の動向等総合的に勘案しまして、ことしの二月に政府の売り渡し価格の平均五%の引き下げということも行ったわけでございます。やはり麦作生産性向上を図りまして、これを政府の買い入れ価格にも的確に反映をし、またできるだけ国内の売り渡し価格にもそれを反映をしていくということと、国内産麦品質向上を図っていくということが、麦関連産業のいわゆる空洞化を避けるためにも緊要な課題だというふうに私ども受けとめておるところでございます。
  190. 藤田スミ

    ○藤田委員 私は、麦の売り渡しを受けているメーカーがその食管逃れを目的にしてやはり利益本位で空洞化を図っていく、こういうことにはもっと厳しい姿勢で臨んでもらわなければいけないというふうに思うわけです。これは品質の問題でも同じことです。  今回のそもそも円高、内外価格差といいますが、これはもとは円高でしょう。その円高は日本政府が誘導して今日こういう円高になっているわけですからね。それを放置して、そして食品工業のあの圧力に負けて、農民だけがいじめられるという、こういうことはとても納得できる話ではありません。  最後にこれは大臣にお伺いをいたしますが、内麦逆ざやだけが行革審その他で騒がれていますが、外麦の円高メリットもあって、麦全体は黒字になっているわけです。これを生産者にも消費者にも安定的に還元することが可能なわけで、食管の役割というのはそういう点で評価されるべきなんです。ところが政府は、米を含めた食管の役割を次々に骨抜きにして、金額の面でも食管繰り入れと水田農業確立対策を合わせた食糧管理費が、この中曽根内閣五年間のもとで一兆五十四億円から五千四百六億円に半減されました。一方、同じ時期に軍事費の方は九千五百四億円もふえているわけですから、私は、ふえた分の半分はまさに言われている、食糧対策費、食管のこの関係の費用を削って渡されているんだというふうに言いたいわけです。  要は、だからお金の使い方、国民から預かった税金の使い方の問題じゃありませんか。だから私は、食管予算削減のみを自己目的化するのではなしに、やはり生産者も消費者も本当にこの食管制度のもとで安定的な生活が維持できるという立場で、少なくとも、概算要求の時期を迎えておりますが、食管予算は拡充するとも、こんなにもう減らされてしまったのですから、もっと拡充していくという立場政府は取り組むべきだと考えます。これは最後ですから、大臣にお願いいたします。
  191. 加藤六月

    加藤国務大臣 私も、どう申し上げますか、きょう昼前に採決していただきましたなたね大豆、そしてきょう御議論いただいておりますこの食管法改正、すなわち麦類価格決定の変更に係る問題でございます。そういう全体の御議論を承りながら、我が国にも田植え歌や麦踏み歌はもうなくなるのかなという気持ちがしたわけでありますが、そういう気持ちの反面、何としても我が国の食管制度のもとにあるそういうものについては安定供給をしていき、そしてまた国民の皆さん方が理解と納得をしていただき、さらに支援していただくように持っていかなくてはならない。そのためには一生懸命お互い英知を絞り、努力をして頑張らなくてはならない、こういう気持ちでいっぱいでございます。  なお、昭和六十三年度の概算要求基準は既に閣議において決定し、八月末を目指して概算要求を今まとめておるところでございます。農林水産大臣としては、農業も林業も漁業もそれぞれ振興を図らなくてはなりません。そういう中で食管制度という問題のこの基本、根幹を守り、食管制度の機能をより発揮していくための予算づけということにも注意をいたしておるところでございまして、藤田委員のおっしゃいました精神というものは、ある面ではしっかり生かしていかなくてはならぬと考えておるところでございます。
  192. 藤田スミ

    ○藤田委員 先ほどからも各委員から取り上げられておりますが、最後に農業基盤整備事業の償還問題についてお伺いしたいと思います。  私も北海道の上川町に行きまして、本当に深刻だな、想像以上の問題だということをつくづく思いました。事業を行うに際しては、減反は二割で、八割は米がつくれるのだということで判こを押した。今はそれが逆になってしまって、上川平均で五三%の減反、ひどいところでは七〇%の減反ということになっています。まさに国にだまされたという思いは農民の中にいや応なく広がっています。しかも、金利は六・五%、大変な高金利で、農家はとても支払えない。したがって、金利を引き下げ、償還期限を延長して、そして利子補給などの対策をどうしてもとっていただきたいということなんですが、どうでしょうか。
  193. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 先ほどもお答えしていますが、国営土地改良事業というのは、北海道の場合八〇%国費が出ていますし、圃場整備でも四五%とかそういう形でかなりの補助金が出ている。しかも、補助残については農林漁業金融公庫から農家が金を借りますが、その金を借りる場合にも財政投融資資金のほかに補給金という名前での補助金が出ているわけですから、さらに何か第三の、要するに補助金みたいなものを乗せるというのはとても難しい話だと僕は思っています。  それからもう一つは、借りかえといっても、もともと財政投融資の金は郵便局に預けている零細な預金者にかつて約束した金利でそうなっているわけですから、借りかえたときにその返された金をどう運用したらいいかという点で今度は逆に財政投融資の方が困ってしまうという難しい問題があって、政府全体にこういう問題があるわけです。極めて難しい問題がたくさんあります。法手続を踏んだ後ですから、土地改良の法手続を踏んでやっている仕事だけに、同意をとってなおかつこんなことがあると、なお難しい問題がたくさんあるわけです。  そういう難しい問題を言ったら限りがありませんが、実際に何か非常に難しい、負担の重いところも確かにあると思って、私ども現地をいろいろ調べておるわけです。そういった調べた結果に基づいて、特に負担の重いところについて何らかの対策を打つ方向で今鋭意検討いたしておるところでございます。
  194. 藤田スミ

    ○藤田委員 これで最後です。大臣、さっきから何遍もお聞きになっていると思いますが、米価が引き下げられ、減反があり、転作奨励金が引き下げられ、政府による農産物価格の引き下げ、野菜の価格の低迷というような、これもまさに減反の転作による過剰生産がもとになって低迷しているわけです。三重苦、四重苦というような状態に置かれているのです。それに、さらに基盤整備事業による償還金の負担というようなこと、これは農家の責任だろうか、そうではないのではないかというふうに私は思うのです。国の政策が変わってきた中で出てきている問題でしょう。初めから判を押すときのように二割は減反、しかし八割は米がつくれるのだ、そのとおりになっていたらこんなことは悩みにも何もならないのです。そういう点では、今の情勢から見たら政府全体として難しいことというのは私もよくわかりますよ。しかし、難しくてもこれは政府の責任なんだということで、大蔵省も含めてこの償還金への問題に取り組んでいただきたいということを最後に大臣に求めたいわけです。大臣、いかがでしょうか。
  195. 加藤六月

    加藤国務大臣 この問題につきましては、先般の閣議におきまして施行令の一部改正を行ったところでございますが、全体的な問題といたしまして、さらに六十三年度の予算以降いかなる手段、方法を講ずればいいかということで、今省内全体でいろいろ勉強をいたしておるところでございます。何としてもそういう面における負担の軽減ということは大切なことであります。  ただ、最後に一つ私も申し上げておきたいのは、それらがすべて政府の責任だということになってしまったのでは生産者農民の奮起と努力がなくなってしまうわけでございまして、生産者農民も企業家マインドを持ってもらっていろいろ対応していく、それにはお上がお上がではなしに、やはり市場動向というものも企業家として見る目を今後生産者農民の皆さん方も持っていただかないといけないのではないか。ある面で申し上げますと愛のむちも時には必要であるので、甘やかしていくのが一番いいのではないという気持ちも私の心の中にはあります。  しかし、全体的に見ますと、過去におけるそういう負担金という問題が生産価格の低迷あるいは下落ということによって負担が増してくる、そして民間の金融が低金利時代になってきておるということ等を考えた場合に負担感が増してくるというのはよくわかるわけでありますので、そういう面については負担感ではなしに負担そのものをどうやって軽減してさしあげるか、午前中からいろいろな御意見も承っておりますが、この問題につきましては実は横並びという問題もあります。そしてまた、原資でございます郵貯、年金の将来に対する約束、過去に対するはっきりした約束というものもあるわけでございます。そしてまた、各省庁同じようにこういう問題を抱えておるわけでございまして、先ほど申し上げました横並びとの関係もありますけれども、関係省庁とも連携をとりながら、農業関係における負担の軽減について大いに検討し、できるものなら何とかしてさしあげたいという気持ちで、今六十三年度の概算要求並びに六十二年度の本予算決定までの間に頑張っていきたいと私は考えておるところでございます。
  196. 藤田スミ

    ○藤田委員 これでもう終わりますが、私は大臣の今のお言葉に大臣御自身の胸の痛みがないことが大変残念です。  それで、きょうは通産省の方からも自治省の方からもわざわざおいでいただきましたが、思いがけず答弁が長かったものですから、大変残念ですがこんなふうに失礼をすることになりました。あしたまた質疑がございますので、平に御客赦をいただきまして、あしたにしたいと思います。本当にどうもえらい時間をとっていただいてすみません。
  197. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 次回は、明二十日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時九分散会