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1987-08-04 第109回国会 衆議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年八月四日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 玉沢徳一郎君    理事 近藤 元次君 理事 鈴木 宗男君    理事 月原 茂皓君 理事 保利 耕輔君    理事 松田 九郎君 理事 串原 義直君    理事 水谷  弘君 理事 神田  厚君       大石 千八君    大原 一二君       太田 誠一君    田邉 國男君       谷垣 禎一君    長谷川 峻君       森下 元晴君    柳沢 伯夫君       山崎平八郎君    五十嵐広三君       石橋 大吉君    田中 恒利君       武田 一夫君    吉浦 忠治君       藤田 スミ君    山原健二郎君  出席政府委員         食糧庁長官   後藤 康夫君         食糧庁次長   山田 岸雄君  委員外出席者         参  考  人         (全国農業共同         組合中央会常務         理事)     松本登久男君         参  考  人         (全上川農民連         盟執行委員長) 山田 孝夫君         参  考  人         (製粉協会会長正田  修君         参  考  人         (東京大学農学         部教授)    荏開津典生君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君     ――――――――――――― 七月三十日  米の輸入反対等に関する請願外一件(串原義直  君紹介)(第三一号)  同外一件(新盛辰雄紹介)(第三二号)  同(正森成二君紹介)(第三三号)  同(村山喜一紹介)(第三四号)  同(安田修三紹介)(第三五号)  同(池端清一紹介)(第三七号)  同(竹内猛紹介)(第三八号)  同(前島秀行紹介)(第三九号)  同(山口鶴男紹介)(第四〇号)  同(工藤晃紹介)(第五二号)  同(佐藤徳雄紹介)(第五三号)  同(嶋崎譲紹介)(第五四号)  同外一件(城地豊司紹介)(第五五号)  同(田口健二紹介)(第五六号)  同(中路雅弘紹介)(第五七号)  同(松前仰君紹介)(第五八号)  同(安田修三紹介)(第五九号)  同(川崎寛治紹介)(第六四号)  同外一件(川俣健二郎紹介)(第六五号)  同(早川勝紹介)(第六六号)  同(渡部行雄紹介)(第六七号)  同(伊藤茂紹介)(第七六号)  同(上坂昇紹介)(第七七号)  同(浦井洋紹介)(第八八号)  同外一件(坂上富男紹介)(第八九号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第九〇号)  同(不破哲三紹介)(第九一号)  同(稲葉誠一紹介)(第一六〇号)  同(大出俊紹介)(第一六一号)  同外一件(中村茂紹介)(第一六二号)  米の輸入反対日本農業自主的発展等に関す  る請願安藤巖紹介)(第七五号)  米の市場開放阻止農畜産物輸入自由化枠拡  大阻止に関する請願串原義直紹介)(第一  二〇号)  同(清水勇紹介)(第一二一号)  同(中村茂紹介)(第一六三号)  森林林業活性化国有林野事業再建に関す  る請願串原義直紹介)(第一二二号)  同(清水勇紹介)(第一二三号)  同(中村茂紹介)(第一六四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 七月三十一日  農業基本政策強化に関する陳情書外十六件  (第二四号)  米の輸入自由化及び農畜産物輸入枠拡大反対に  関する陳情書外一件  (第二五号)  森林林業活性化に関する陳情書外一件  (第二六号)  二百海里漁業水域全面適用に関する陳情書  (第二七号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  食糧管理法の一部を改正する法律案内閣提出  、第百八回国会閣法第六〇号)      ――――◇―――――
  2. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 これより会議を開きます。  第百八回国会内閣提出食糧管理法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  本日は、本案審査のため、参考人として全国農業協同組合中央会常務理事松本登久男君、全上川農民連盟執行委員長山田孝夫君、製粉協会会長正田修君、東京大学農学部教授荏開津典生君、以上四名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。  この際、参考人各位一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  松本参考人山田参考人正田参考人荏開津参考人の順に、お一人十五分程度意見をお述べいだたき、その後、委員質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、松本参考人お願いいたします。
  3. 松本登久男

    松本参考人 委員長のお許しを得まして、本日は食糧管理法の一部を改正する法律案について意見を述べさせていただきたいと存じます。  私、全国農協中央会常務理事をやっております松本でございます。先生方には特に平素からいろいろお世話になっておりますが、この際、この場をかりて厚く御礼申し上げます。  私、これから三点ほどに分けまして御意見を申し述べさせていただきたいと存じております。第一は、本案に対する総括的意見ということで私ども考え方を述べさせていただくつもりでございます。第二は、政府買い入れ価格の動向に影響を及ぼす麦をめぐる最近の事情のうち、一、二の問題につきまして私ども意見を述べさせていただきたいというふうに思っております。第三に、生産者団体としての御要望を申し述べさせていただきたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。  まず最初に、本案に対する総括的意見でございますが、食糧管理法の一部を改正する法律案は、同法第四条ノ二第二項の麦の政府買い入れ価格に関する規定を、昭和二十五年産及び二十六年産の麦の政府買い入れ価格平均価格農業パリティ指数を乗じて算出したいわゆるパリティ方式から生産費等の三要素を反映したものに改正するというふうに理解しております。この改正は、現行法規定マクロ経済の実体に沿ったものとし、構造政策を助長し、生産性向上に資するものに改めようとするものだというふうに了解しておりまして、その意味では時宜にかなった改正であるというふうに考えております。  続きまして、第二に、麦をめぐる最近の事情につきまして一、二の問題点を挙げさせていただきまして、意見を述べさせていただくつもりでございます。  まず最初に、麦の生産構造でございますが、昭和六十一年産麦作農家平均作付規模を見ますと、四麦合計でおよそ八十アールということになっております。これは北海道都府県生産構造が違っておりますので、北海道都府県に分けて見てみますと、北海道平均でおよそ三百二十アール、都府県平均で六十アールということでございまして、昭和二十五、六年当時の三十二アールに比べますとかなり規模拡大しているというふうに考えられますが、しかしながら依然麦作は零細な規模で行われているという状況でございます。しかしながら、三十アールからおよそ都府県平均六十アール、全国平均八十アールという規模規模拡大してまいります過程生産構造も大きく変わってまいりまして、十アール当たり投下労働時間は二十五、六年当時の百四十八時間に対しまして最近では十二時間というふうにかなり生産性向上し、生産構造も大きく変わっております。また生産性をあらわしますもう一方の指標でございます十アール当たりの収量でございますが、二十五、六年当時の百八十九キログラムに対しまして六十一年が三百五十七キログラムというふうに、単収におきましてはおよそ二倍という向上を見ているところでございます。  このように規模拡大しつつありまして、それに伴いましてその過程生産構造も大きく変わってまいっておりますが、その水準はいまだ低いものでございまして、私どもは、今後とも条件を整えて規模拡大を一層推進する必要があるというふうに考えております。  ちなみに、田畑合計の小麦作で見まして家計費を充足し得る規模を試算してみますと、およそ千百六十アールということでございます。つまり家計費を充足し得る規模といいますのは、言いかえてみますと農業専業で生活できる規模というふうに言いかえることができると思いますが、麦作の場合にはおよそ十二ヘクタール程度規模がございませんと、これで家計費が充足できないということでございます。しかしながら実態の方を見てみますと、統計資料の制約から十二ヘクタールという規模がなかなか推定できませんが、五ヘクタール以上の耕作規模農家を拾い上げてみますとおよそ全国で五千六百戸ほどでございますが、このうちの四千七百戸ほどは北海道でございまして、都府県の場合にはおよそ千戸という程度農家でございます。  こういった事情からいたしますと、生産構造は変わりはしましたものの引き続き麦作振興していくということを考えますと、また実需者並びに国民の期待にこたえ得る生産構造を実現していくということになりますと、より一層の条件整備規模拡大ということが必要だということでございます。  第二に、麦作をめぐります最近の事情につきまして品質問題がございます。最近の需給事情からいたしますと、麦のようなバルキーな農産物は、どちらかといいますと実需者に好んで使っていただくということが非常に大切であるというふうに考えております。御承知のとおり麦についても需給は非常にルースになっておりまして、そういった事情を勘案いたしますと実需者が好んで使っていただくという条件をつくっていくことが非常に大事なことだというふうに考えております。現に需給全体を見ますと、六十二年の計画ベースで見まして、総需要四百八十二万トンに対しまして外麦からの供給が三百九十六万トンということでございますから、内麦からの供給はわずかに八十七万トンということでございまして、需給の中で外麦のウエートが非常に高くなっておりまして、その意味需給も国際的な事情影響を受けるという状況でございます。  御承知のとおり小麦も、国際的には他の穀物と同様でございまして供給過剰基調にありまして、その影響を非常に強く受けているということでございます。また最近の円高影響がございまして、麦製品につきましても、マカロニ、スパゲッティ、ビスケット等輸入が近年急増しておりまして、五十五年対比六十年の変化率と六十年対比六十一年の変化率はほぼ同じという状況でございまして、この面でも国際的な需給影響を非常に強く受けている事情がございます。  そういった事情を勘案いたしまして、内麦の生産におきましては特に良質物生産に力を入れる必要があるということは生産者もかねてから考えているところでございまして、前年の六十一年産麦につきましては、実需者側の御要望もございまして、それに沿いまして、農家手取りの一部を構成しております小麦品種区分別契約生産奨励金格差拡大しておりまして、よりいい品質ランクの麦を生産した生産者には手取りが多く、品質の悪いものをつくった生産者には手取りが低いというように手取り水準を変えておりまして、良質麦生産へのインセンティブを高めているところでございます。また品種選択と同時に、加工適性の良否を左右いたします肥培管理収穫乾燥調整等改善にも生産者団体としては非常に留意をしているところでございます。日本の場合にはアジア・モンスーン地帯という特殊な気候条件に立地している農業でございますから、西欧等に比較しまして収穫期気候条件に非常に不利な条件がございまして、そういった条件を、肥培管理収穫乾燥調製過程の作業を通じましてできる限り克服していきたいというのが生産者側考え方でございまして、現在これについて鋭意努力をしているところでございます。今後とも引き続きそういった努力が実りますように先生方に御助力をいただければと考えておるところでございます。  なお、最後になりますが、この機会をかりまして、生産者団体としての要望を述べさせていただきたいと思っております。  まず第一に、価格水準でございますが、価格水準につきましては、生産者並び生産者団体としての麦価に関する要望は、一言で言えば安心して生産に励むことができる条件水準を維持していただきたいということでございます。特に六十二年度から始められました水田農業確立対策のもとで麦作振興ということは引き続き重要な課題となっております。こういった事情があるだけに、生産者麦価水準に寄せる関心は並み並みならぬものがございます。また麦生産状況も、転作政策等過程生産振興対策がとられてまいりましたことを反映して、四十八年を底にいたしまして漸次生産が回復に向かっておりまして、六十二年には作付面積で三十八万ヘクタール、生産量も四麦合計で百二十二万トンということで相当大きく振興方向に向かっております。それだけに、仮にこの新しい改正食管法のもとでも、規定改正された後、政府買い入れ価格水準は少なくとも現行程度水準であることが必要だと考えております。今後検討が予定されております算定方式の論議におきましてもこういった生産者要望が十分考慮されますように先生方のお力添えをいただければと考えているところでございます。  第二に、麦作関連施策の問題でございますが、この問題につきましてもぜひとも先生方のお力添えをいただきまして、内容の充実を図っていただきたいと考えております。特に生産者といたしましては従来から要望書等を提出しておりまして、先生方のお目におとめいただいておると存じておりますが、関連施策におきましては重点として次の四点をお願いしておりますので、よろしく御留意のほどをお願いいたしたいと思っております。  第一は、麦の生産の問題でございますが、中長期の需給見通しに基づく生産基本方向を明示していただきたいということでございます。麦作につきましては、昭和二十五年をピークにいたしまして、三十年代は漸次生産が減少してまいりました。四十年代の中ごろ転作政策と相まちまして生産振興が再び図られるようになってまいりましたが、生産者は、いずれにいたしましてもこのような土地利用型作目の場合には一年一遍の作でございますから、比較的長期にわたる生産基本方向というものが明示されませんと安心して生産に携わることができないという事情がございますので、そういったことを踏まえて、生産基本方向の明示をぜひできますようにお力添えをいただきたいと思っております。  第二番目は、麦作集団育成による生産規模拡大のための推進を助長していただきたいということでございます。先ほど御紹介いたしましたように麦作生産規模拡大してまいりましたものの、まだ私どもが今日社会的に求められております生産性を実現するための規模と比較いたしますと零細のまま推移しておりまして、こういった麦作規模をますます拡大していかなければならないという事情を抱えております。私どもは、今日の農用地の所有の実態社会的環境、そういったことからいたしますと、麦作生産規模拡大生産性向上を実現していくためにはどうしても、個別農家に依存するのみでなく、集団的な生産を実現いたしまして、土地利用調整の上に一定のスケールメリットが図れるような麦作集団育成に力を注いでいるところでございまして、こういったことは、歴史的に形成されてまいりました土地利用関係調整という大変難しい課題を乗り越えなければならない問題でございますので、私どもひとりの力ではなかなか望むべくテンポで進んでおりません。したがいまして、この点につきましても国の施策を通じましてその推進が助長されますようにお願いをしたいということでございます。  第三番目に、麦作生産性向上のために、また品質改善のために良質わせ多収の品種開発お願いしたいということでございます。御案内のとおり麦は冬作物でございまして、二毛作地帯の場合には米と作期が競合する関係がございます。特に最近は米の作期が非常に早まっております。また麦の収穫期にはたまたま梅雨季を迎えまして、かなり湿度の高い時期で肥培管理に非常に難しさが伴う生産事情を抱えておりますので、そういったことを克服する意味からも良質わせ多収の品種開発並びに普及の促進を国の力を挙げての御支援をぜひいただきたいというふうに考えております。  関連施策の第四番目でございますが、共同乾燥調整ばら流通ということは、同じく麦の生産性向上のために非常に大切なことでございまして、その施設の整備のための施策強化を引き続きお願いしたいということでございます。  以上四点をこの価格に関連いたします関連施策の中で特に重点的に強化していただくようにお願いを申し上げたいというふうに考えております。  要望の第三点でございますが、価格構造政策との関係についてでございます。  麦作規模拡大が一層進展してまいりまして、新たな生産実態形成されてまいりませんと価格水準も望む水準になかなかスムーズに受け入れられがたいという事情が現場にはございます。そういった事情を踏まえまして、価格水準につきましても我々は漸次見直しを図っていきまして、消費者実需者に受け入れられる水準に近づけていきたいというふうに考えておりますが、そのためにも構造政策等進捗に応じまして麦作生産規模拡大していくと同時に、より生産性の高い、体質の強い麦作になっていく、そういった実態形成に応じて価格政策運用も図られていくべきだろうというふうに考えております。  世によく言われておりまして、価格を大幅に下げれば生産体質強化されて生産振興されるのではないかという御議論がございますが、私どもは逆に考えておりまして、今日農政中心課題でございます構造政策進捗の度合いに応じて実態形成をよく見据えた上、その実態に合った形で価格政策水準見直しも行われるべきではないかというふうに考えておりますので、価格政策運用につきましてはそういった意味で慎重にお願いをしたいというふうに考えております。  最後になりますが、この食糧管理法の一部改正法案、現在御審議をいただいている過程でございますが、私ども生産者の側からいたしますと、既に秋まき小麦についてもそうでございますが、六十三年産麦につきましては播種の時期が迫っております。早いところでは、北海道では八月末には播種がなされる地域がございますし、都府県の場合でも早いところでは九月中旬から生産が始まるという事情を抱えております。そういった事情がございますので、できる限り、この改正法につきましては審議を早めていただきまして、関係生産者が一日も早くこの趣旨を了といたしまして生産に励めるような環境をつくっていただきたいというふうに考えております。そういった事情を踏まえていただきまして十分御審議をいただいて、私ども要望に沿った改正がなされますようによろしくお願いをいたします。(拍手)
  4. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 ありがとうございました。  次に、山田参考人お願いいたします。
  5. 山田孝夫

    山田参考人 ただいま御紹介にあずかりました山田孝夫でございます。  私は旭川市近郊であります上川中央部で総面積五ヘクタール、作付面積四・二ヘクタールを耕作しています平均的な専業農家であります。親子三代にわたりまして水田単作経営をやってまいりましたが、現在は転作配分を受け、転作作物として麦を八十アール余りつくっている者であります。  私の住む上川中央部は古くから上川百万石の地帯と言われまして水田単作地帯として発展してまいりましたが、昭和四十五年から米が過剰であるとして減反政策が進められ、現在では上川全体では水田面積の五三%、中央部におきましても四〇%を超える減反面積配分がなされ、農家はその消化に大変な苦労をしているところであります。  その第一の悩みは、つくる作物がないということであります。小豆ビートなど、上川地方気候に合った作物は、北農中央会作付指標に基づいて強く作付制限がなされております。例えば転作小豆につきましては、農蚕園芸局の通達にありますように全道的には一万二千ヘクタール以上の作付は認められておりませんし、ビートにしましても畑作を含めて七万二千ヘクタール以下の作付指導がなされております。さらに、野菜の価格の低迷と相まって、減反面積拡大は勢い麦作面積拡大につながっているのであります。畑作を含め、全道的にはことしの麦の作付は十二万一千ヘクタールになっており、前年比では一一二%の伸びであります。また一方、転作麦作付を見ますと、約四万ヘクタール近い作付がなされており、前年に比較して二七%という急激な作付増であります。転作面積の約三五%を占めております。これを見ればおわかりのように、麦作北海道畑作農家は言うに及ばず、水田農家においても米と並ぶ重要な基幹作物であり、その価格の推移は農家経済に大きな影響を与えるのであります。それだけに価格の決定に関する法律改正は慎重であってほしいと思います。  今、北海道農民は、表現しがたい不安な気持ちで営農を続けております。貿易黒字に起因する異常な円高の中での農畜産物内外価格格差拡大自由化要求、加えて農畜産物価格連続引き下げ生産抑制強化、さらに連日のように繰り返されます農業批判と急激な農政変化に対して農民は困惑し、自分たち先行きに大きな不安を抱いているのであります。ことしは春から減反強化、乳価の引き下げ麦価引き下げと加えて米価の大幅な引き下げによって、北海道農家減収額は、米関連で四百五十三億円、酪農、麦作を加えますと七百十七億円程度になると推計され、全道の農畜産物販売額の七%近い減収額であり、さらに秋に決定される畑作三品の価格のいかんでは大冷害を超える減収となり、地域経済に与える影響は大であります。  失礼でありますが、このことを私の経営に照らしてみますと、減反奨励金の減額、米麦価引き下げ、他用途米拡大奨励金引き下げ特別自主流通米枠拡大による共補償と調整保管負担増、以上五つのマイナス条件を積算しますと、金額で五十九万七千円の減収となります。これは粗収入の八・七%を占め、所得に置きかえますと一八・八%の減収となります。生産資材値下がり分を織り込んでも、一五%台の所得減というとてつもない大変なことであります。これは私一人でなく、大多数の専業農家実態でありますから、基盤整備事業受益者負担金の償還ができない農家や負債の返還が困難な農家が出ている実態であります。  政府は、貿易摩擦解消のために内需拡大政策推進を実行しようとしていますが、農業基幹産業としている地方では、経済は停滞し、需要は減退しているのであります。また、農家にとりましては、規模拡大コスト低減は急務でありますが、現状のような先行きでは農家は積極的に取り組むことができません。今北海道農地売り手希望が多いわけですが、買い手希望が少なく、そのために農地価格は急激に下がり、債権確保ができなかった農協が一番困っているのであります。最近の農政の柱として、価格政策ではなく構造政策を進める方針であると言われますが、農家が負担できない状態では構造政策は進みませんし、価格政策の裏づけのない構造政策は成り立たないものだと思います。  今回の食管法第四条ノ二の二項の改正でありますが、麦を取り巻く困難な状況やその中での食糧庁の皆さんや関係者の御苦労を察知しているつもりでありますが、生産者として先ほど来申し述べてまいりました経過の中ではどうしても、農家経済が深刻な状況に陥っておりますし、再生産確保の面から見ましても、改正案には賛成しかねるわけであります。  今回提案されております食管法の一部改正については、現行法の中で明記されております無制限買い入れを前提として、幾つかの問題点について御意見を申し上げたいと思います。  第一に、現行麦価のパリティ基準算式の改正案では、三つの参酌要素と二つの配慮要素を加えた総合勘案方式への変更でありまして、価格の大幅引き下げを目的とした改正とならないか、財政負担の軽減を図る目的の法改正であれば、そのときどきの財政事情によっていかなる価格算定もできることになり、価格政策に一貫性がなくなるおそれがないか、心配であります。  第二に、生産者の理解と納得が得られる算定方式の確立が必要であります。しかも、現行のパリティ価格との連続性を持った価格の決定が必要であり、価格の大幅な変化は営農計画にそこを来すことになり、経営の継続が困難となり、農家にとっては好ましいことではありません。  第三には、生産性向上を全部価格に反映させることに問題があると思います。すなわち、より一層の生産性向上のためにその向上メリットの一定額を生産者に留保し、規模拡大などへの追加投資に回すことができるよう、配慮が必要だと思います。コスト低減努力した生産者に配慮し、生産意欲を損なわないような価格設定が必要であります。一方、生産性向上価格に的確に反映させようとするならば、家族労働費については他産業労賃で、すなわち製造業五大規模以上で評価がえし、生産者所得確保に十分配慮する必要があると思います。  第四には、品質格差の設定でありますが、昭和六十二年産麦価決定に当たり、法律の改正を待たず大幅な品質格差の導入がなされたことは遺憾であります。なお、今後の品質格差の設定に当たっては、地域の実情を十分配慮し、固有用途なども考慮された運用が望まれます。  以上、改正案について私の所見を申し述べてまいりましたが、この機会に、麦作生産改善対策について私の考えをあわせて述べさせていただきたいと思います。  麦作生産性向上とコストの低減、さらに品質改善は緊急を要する課題であります。その対策として、一つには、規模拡大基盤整備事業推進が必要であります。しかし現状では、先ほど申し上げましたように、既に完了しています基盤整備事業の償還が困難な事例が多く出ており、既応の事業費償還の繰り延べなど農家負担軽減対策が必要であります。また、今後採択されます新規事業の推進に当たっては、工事単価の見直しを含め、工期の短縮、道路などの公共性の高い部分についての国費負担の増額などを行い、農家が負担にたえられるよう配慮すべきであります。  二つには、コスト低減についてであります。今農家が支出している生産費の中で大きな割合を占めているのは、何といっても農機具、肥料、農薬等でありますが、これらの生産資材価格引き下げについて一層の行政指導の強化を図っていただきたいと思います。円高による農畜産物の内外価格拡大が大きな問題になっておりますが、私たちの使っております生産資材は世界一高いものであると言われており、このような状況のもとでは農家が何ぼ努力しても限界があります。私たちもコスト低減努力は惜しみませんが、非農業部門の協力が必要であります。生産財も国際価格並みで供給してほしい、そのための行政指導を強く希望するものであります。  三つには、品種改良についてであります。今、日本麦作品質にしても収量においても諸外国に比較して大幅におくれていると思います。この意味で、例えば加工適性が高く、安定多収でその地帯に合う品種の改良開発が急務であります。試験研究の充実が進まないと、農家努力だけでは良品質の麦の生産はできないと思います。  以上、改正案と生産条件について私の意見を述べさせていただきましたが、最後に、この機会に諸先生方お願いがございます。  今、農業は歴史上で経験したことのない試練に逢着し、農民は苦悶をしています。急激な円高自由化要求、各般にわたる生産抑制、連続しての価格引き下げ、一つとして明るい材料がありません。私たちにすれば、出口のない暗いトンネルに入った思いがあります。この状況では優秀な後継者も定着もしませんし、規模拡大の意欲もそがれてしまいます。私たちは生き残りをかけて頑張らなければならないと思っていますが、努力すれば大丈夫であるという農政の安定した政策の確立がなければどうすることもできません。  諸先生の御尽力によりまして、農業者が希望を持って努力できる農政の確立を心からお願いを申し上げまして、参考人としての御意見の開陳を終わらせていただきます。  以上で終わります。(拍手)
  6. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 ありがとうございました。  次に、正田参考人お願いいたします。
  7. 正田修

    正田参考人 製粉協会会長を務めております正田でございます。  諸先生には大変私どもの業界を御指導いただいておりまして、この席をかりまして厚く御礼申し上げます。また、大変にお詳しい諸先生でいらっしゃいますので、私から意見を申し上げるというのも大変僣越に存じますが、御指名でございますので、実需者を代表いたしまして、今般の食糧管理法の一部を改正する法律案につきまして若干の意見を申し述べさせていただきます。  まず最初に、国内産小麦に関連いたします製粉業界の実情につきまして御説明をさせていただきます。私ども、国内産小麦につきましては内麦と通称しておりますので、そういう言葉が出てまいるかと思いますが、御容赦をいただきたいと思います。  お手元に「国内産小麦に関する問題点要望」という黄色いパンフレットをお配りさせていただいておりますが、これは昨年の六月に製粉協会でまとめたものでございます。製粉協会ではこれ以前にも、昭和五十四年の六月に「内麦に関する基本的考え方」、昭和五十七年の四月に「国内産小麦の特性と品質上の問題点」、また本年五月には「国内産小麦品質評価」、このように私ども実需者の考えをまとめまして、そのときどき意見を申し述べさせていただいているわけでございますが、お手元にお配りしましたパンフレットが最も広範に国内産小麦に関する私どもの考えをまとめておると思いますので、お届けしたわけでございます。  その中には、大きく分けまして四つの問題点が述べられております。  まず第一は品質問題でございます。これは後ほどまた詳しく申し上げることになると思いますが、一言で申し上げまして、いろいろ生産者の皆さんに御努力をいただいていることとは存じますが、結果的には、私ども需要者の要望生産面にほとんど反映されていないのではないかということでございます。  第二番目に物的流通の問題でございます。  諸先生御案内のとおり、小麦生産北海道、九州という我が国の両端に非常に偏ってきております。このために、当然、大消費地である東京あるいは関西というそういうところと、生産地との乖離が大幅に生じておりまして、このために、私ども需要者負担による輸送費の大変な増高という問題がおるわけでございます。また、物的流通の問題といたしましてはこのほかにも、ばら流通の問題であるとかあるいは倉庫集約化の問題というのがあるわけでございますが、こういった点につきましてもまだまだ不十分でございますし、またこの点が、後ほど申し上げます品質のばらつきにも悪影響を及ぼしているということでございます。  第三番目には麦管理改善対策でございますが、この点につきましては、先般運用改善通達が出されまして、現在改善方向に向かっているという認識を私どもは持っております。  そして、四番目には内外価格差の問題でございます。  私ども実需者政府から買い受ける小麦価格につきまして、現在、内麦の大幅な逆ざやとその生産量の急増ということのために、この売り渡し麦価と国際価格の間に大変に大幅な乖離が生じていることは御承知のとおりであります。私どもで試算いたしますと、現在において三倍を超えるという姿になっているのではないかというように思います。  このために、既に自由化されております小麦の二次加工製品の輸入が急増をいたしておるわけでございます。今年の一月から六月のベースをとって昨年の同期と比較をいたしてみますと、ビスケットにおきましては、前年同期に対しまして四三%の輸入量の増加でございます。また、内麦に特に関係のございます日本めん、乾めんでございますが、これにつきましては前年同期を八三%上回る輸入がなされております。またケーキミックス類につきましては、前年同期の約四倍の輸入が既に行われておりますし、マカロニ、スパゲッティにつきましては、前年に対しまして二三%の輸入増加でございます。また、ここのところに参りまして、豪州産の小麦で製造されました韓国製の手延べそうめんというようなものの輸入も急増いたしております。現在の国内消費が非常に低迷しております中で、こういう輸入品が増大してくるということは、私ども小麦産業に携わる人間といたしましては大変につらいことでございますし、また、そのために苦しい状況になっておるわけでございます。  以上のごとく、原料小麦品質価格、この両面から、国内の製粉業界あるいは小麦粉の二次加工業界が、輸入加工品との競争上ただいま大変に苦しい状況にあるということを、まず諸先生に御理解賜りたいと存じます。  次に、国内産小麦品質を中心に申し上げます。  現在、私ども政府から、製粉用といたしましておおむね年間に四百六十万トン買い入れております。このうちおおむね七十万トンが内麦でございまして、この内麦が主として日本めん用の原料として使用されております。これがパンやケーキに使われておりませんのは、内麦に含まれておりますたんぱくの量、質の関係からでございます。  御出席先生方、もう御高承のとおりでありますが、現在の食生活の高度化、あるいは飽食の時代、こういう時代におきましては、食卓に上る食品すべてが非常に限られた胃袋を求めてせめぎ合っているというのが現在の状況でございます。このため、例えばうどんと申しましても、A社のうどんとB社のうどんが市場で競争しているということだけではございません。うどんとハンバーグあるいはうどんとフライドチキンというものがやはり同様の競争関係にあるわけでございます。このために、まず内麦の主要な消化先である日本めんの需要を維持しあるいは拡大しようというためには、よりおいしいうどん、おいしい日本めんを供給する以外にはないわけでございまして、またそのためには当然のことながらよいうどん用粉、よいうどん用小麦というものが必須の条件となるわけでございます。  それでは、このよい小麦というのはどういう小麦であるかということでありますが、私どもは大体二つの観点からこれを評価いたしております。一つは、二次加工適性と言われるものでございまして、これはめんの場合でいきますと、例えばめんの色であるとか外観であるとか食感、食味、そういったいわゆる官能検査、官能試験によるもの、及びめんの歩どまり等の経済性によるものでございます。また二番目には、製粉適性と呼ばれるものでございまして、これは一言で申し上げれば、よい粉をどれだけ多く効率的にとれるか、そういう観点でございます。  こうした二つの観点から評価をいたしますと、現在日本めん用として最適の小麦というのは、オーストラリアから輸入されておりますASWという品種でございます。これは昭和四十九年以来輸入されておりまして、その間オーストラリアでは、日本から製めん技術者を招く等の努力をいたしまして、現在の日本めんに向く品質をつくり上げてきておるわけでございます。  製粉協会では、内麦が急増いたし始めた昭和五十三年、五十四年以来、一貫して内麦の品質改善要望してまいりました。しかし、残念ながら現在の内麦は、先ほどの一次、二次加工適性ともASWに劣るばかりでなく、内麦の中でも比較的好ましい品種作付が減少傾向にある、あるいは同一県内で十種類もの異なる品種作付がなされておる、また同一地域、同一品種小麦でもたんぱく、水分が三%以上ばらつくというような欠点を有しております。こうした内麦の急増に対しまして、製粉業界におきましては、工程の変更、設備改善あるいはロット管理等いろいろな苦心をしながら内麦の使用をここまで増加してまいりました。  しかし、現在の消費者の嗜好の高度化あるいは輸入品との競争という状況におきましては、何とか一日も早くASW並みの品質小麦を国際価格並みで入手できるようになることが私どもの願いでございます。ただ、その実現までの間は、相対的に好ましい品種作付あるいは物流の改善、ばらつきの防止ということをお願いするより仕方のない現状でございます。  今般の改正法律案におきましても、麦の品質改善に資する旨のことがうたわれておりますし、このことは私ども実需者がかねてから要望しておったことでございます。この改正法律案には賛成の意思表示をさせていただきたいと思います。しかしながら、ただいま申し上げてまいりましたいろいろな問題というのは、この法律改正によってすべて解決されるわけではございません。今後とも諸先生の一層の御理解と御指導を切にお願い申し上げまして、意見の陳述を終わらしていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 ありがとうございました。  次に、荏開津参考人お願いいたします。
  9. 荏開津典生

    荏開津参考人 東京大学農学部教授の荏開津でございます。専門の農業経済学の観点から若干意見を申させていただきます。  今回の改正の要点の一つは、パリティという方式を廃止されるということにあると思いますので、先刻御承知のことではあって、失礼かとは思いますけれども、農産物の政策価格の算定に関しますパリティという方式について若干意見を申させていただきます。  このパリティという考え方は、アメリカで、戦前の大不況期でございますが一九三三年に、アグリカルチャー・アジャストメント・アクト、AAAと通称しておりますが、このときに導入された考え方でございます。日本でも昭和の初期の大不況期で、農村不況の最中でございますが、世界的な農産物価格の暴落のときで、原理は御承知のとおりでございますけれども、この考え方は、短期の市場の混乱と申しますか、需給の非常なアンバランスというものを切り抜けるという一種の緊急避難と申しましょうか、非常に短期の市場のバランスを取り戻す方式であるというふうに私は理解しております。つまり、生産構造その他、需要の構造も含めまして市場の構造が変わらないような状態で、短期的な暴落、暴騰というような混乱、特に暴落でございますけれども、それを回復するという目的で考案された方式でございます。  アメリカでも、戦後もこの方式は維持されましたけれども、非常に弾力的に運用されるようになってまいりまして、パリティは計算されますが、プライスはそのパリティの水準から二〇%以内、二五%以内あるいは三〇%以内というふうに次第に幅が拡大してまいりまして、そうなりますと実際にパリティというものの意味はなくなってまいりますが、最終的には、七三年のアメリカの農業改正でパリティという考え方は廃止され、現在ではほとんどこのパリティという考え方はなくなっているというふうに考えます。  そういう意味で、非常に短期的な需給の不均衡、暴落を回復する方式でございますので、長期にこれを用いるということは、そもそもこのパリティという考え方の本来の性格から見て必ずしも望ましいものではないというふうに考えます。  次に、今回の改正案及びその提案理由に関して意見を申し上げます。  改正案は二点の要点を持っていると思いますが、第一は、昭和二十五年産及び二十六年産政府の買い入れ価格を基準とするパリティというものを廃止するということで、これが一番大きな改正点であると思いますが、こういう改正はむしろ遅きに失したということはありましても現在非常に妥当な改正であるというふうに考えますので、できるだけ速やかにこの改正を実現していただきたいというふうに私は考えます。つまり、小麦を中心とする麦の国内における生産及び需要状況というのは、このパリティの基準になっております昭和二十五年ないし六年時代とは全く異なっているということはもう皆さん御承知のとおりでございますが、その点について三点、非常に違ったものになっているという点を指摘したいと思います。  第一点は、国産麦はかつては水田の裏作物ということで非常に広範につくられていて、つくっている農家数も非常に多かったわけでございますけれども、現在では必ずしも水田裏作ということで広くつくられてはいないのみならず、作付面積あるいは作付農家数というものも、かつての数に比べて非常に減少、恐らく十分の一くらいに作付の戸数は減少しているのが第一点。  第二点は、生産構造、労働生産性というような点が非常に変わりまして、機械化が進みまして、特に端的にそれを示しますのは作付反当の労働時間というのは非常に変わった。十分の一ぐらいに減ってしまったということでございます。  第三点は需要でございますけれども、かつては小麦のほかに大麦、裸麦等が相当食用にも利用されていたわけでございますけれども、現在は小麦が中心となり、かつ日本めんの原料として輸入小麦と非常に厳しい競争の中で用いられている、そういうような点におきまして、二十五、六年当時と現在の国産麦の需給状況は全く変わっておりますので、提案理由にありますように、国産小麦生産性及び品質向上を急務としていることが指摘され、かつ現行価格決定方式が硬直的であるという不備が指摘されている。  この提案理由も改正の案も、以上申しましたことから考えまして極めて妥当なものであり、かつ改正は急務となっているというふうに考えます。  次に、改正及び改正後の国産の麦に関する政策に関する補足的意見を若干申させていただきます。  第一点は、今回の改正案を拝見しますと、国産麦の政府買い入れ価格の算定が非常に弾力的なものになっているというふうに考えます。非常に弾力的であるということはそれ自体悪いことではございませんけれども、こうなりますと、法律に基づいて硬直的な形で算定できないわけでございますから、その後の運用というものは非常に重要になるのは当然であります。したがって、今後この改正案が成立しました場合にそれを運用することが非常に重要になるわけでございますが、そのために米価審議会という審議会があるというふうに理解いたしますが、この米価審議会の麦作あるいは麦価決定において果たします役割は従前よりもはるかに重要なものとなるというふうに考えますので、立法府におきましても行政庁におかれましても、この審議会の役割というものについて十分に慎重を期されたいというふうに希望する次第でございます。  最後に、国産麦の現状について私の考えております問題点及び政策上の要望と申しますか、私の意見を一点だけ申させていただきます。  先ほど以来、麦価及び品質ということが非常に問題になっているわけでございますが、現在の国産の麦は非常に違った生産構造のもとに生産されている。つまり、北海道を中心とします麦、それから都府県でも畑作の麦あるいは水田裏作の麦がありますが、そのほかに転作の麦というものがあるわけでございまして、特に北海道産の麦あるいは都府県畑作の麦というものと転作の麦というものとは生産構造と申しますか生産性あるいは品質等非常に異なったものであることは御承知のとおりかと思います。そして、それぞれに問題はあるわけでございますけれども、転作の麦というものは非常に大きな問題を抱えているというふうに私は思います。  つまり生産性においてもあるいは品質面においても最も問題があるのがこの転作の麦である。でありますが、転作の麦は転作面積拡大とともにかなり拡大してまいっておるわけでございまして、それはこの転作麦生産性におきましても端的に言って低い、あるいは品質におきましても、これだけに関する統計はなかなか得がとうございますけれども、低いと一般的に見られると思いますが、しかし、この転作麦の転作奨励金を含めました収益性と申しますかそういうものは必ずしも低くないと私は考えます。つまり生産性及び品質面において非常に問題のある転作の麦というものが収益性においては奨励金がありますために必ずしも悪くないということで、転作面積拡大とともに生産作付が伸びてきているわけでございますが、これを一体今後どうするのかということは、価格決定を中心としまして今後の麦作政策、麦作振興政策というものの中で非常に重要な課題であると思います。  さらに、この転作の麦の作付面積ないし生産というのを拡大する方向で持っていくのかどうかということをまず第一に長期的な方針として確立すべきである。第二に、もしこれをさらに生産振興するという方針をお立てになる、現在そういう方針であるかと思いますが、その場合には、速やかにこの品質向上ということを図っていただく必要があると考えます。  以上述べましたように、今後この改正案に基づきまして麦価の決定及び麦作振興ということの政策を行われます場合に、米価審議会というものの役割を改めて十分に重んじて認識していただきたいという点と、転作の麦というものの品質向上あるいは長期的な生産方針ということに十分御留意いただきたいと思います。  以上でございます。(拍手)
  10. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。串原義直君。
  12. 串原義直

    ○串原委員 参考人の皆さんにはきょうは大変お忙しいところを御出席をいただいて、大変参考になるお話をいただきまして感謝にたえない次第でございます。時間が余りないものですから詳しい質問はできないかと思いますけれども、それぞれの参考人の皆さんに伺いたいと思うのでございます。  最初に、松本参考人に伺いたいのでございますが、それぞれの皆さんからも、これからの麦価算定に当たって重要なことは算定方式であろうという意味のお話がございました。実は私もそう思うのでございますが、今、荏開津先生は、米審がこれからとても重い役割を持つようになるだろうというお話がございました。私もそう思います。  そこで伺いますが、松本さん、政府は新しい算定方式の具体化につきましては米価審議会に意見を聞く、あるいは米価審議会の中に小委員会を設置して検討していこうと考えておるけれども、それと同時に関係団体の協議を経て決めたい、こういうふうに考えていると聞くのでございますが、私もそうだろうと思います。そこで、そうであるとするならば、関係団体の中で大きな役割を果たす農協という立場で新しい算定方式を決める際特に留意してもらいたい、あるいは留意すべきことは何であろうか。つまり、こんなことを考えていますということがありましたら教えてもらいたいと思うのでございます。
  13. 松本登久男

    松本参考人 串原先生御指摘の点、私どもも、本案改正に伴います麦価算定方式の策定ということは非常に重要なテーマだというふうに考えておるところでございます。この問題につきまして特に私どもは、先ほどの意見の中にも申し述べましたように、現行麦価水準というものが現在の麦作にとってはほどほどの水準でございますので、その水準を維持することは絶対に必要だというふうに考えておりますので、そういったことを反映できるように、まず三要素のうちの生産費の要素を特に重視していただきたいというふうに考えております。生産費の中でもいろいろとり方の細かい問題はたくさんございますが、生産費をより基本に置きまして、現在の麦作水準が維持できますように算定方式をつくっていただくようにお願いしたいというふうに思っております。
  14. 串原義直

    ○串原委員 そこで、いま一つ松本参考人に教えてもらいたいのですけれども、それぞれの参考人先生方四人の皆さんが品種改良という点についてお触れになりました。重要な点だろうというふうに思っています。  そこで、品種改良のため、試験研究機関の充実等々を含めてやることは大変あると思いますが、とりわけこれとこれだけは何としても急いでやってもらわなければ困りますよ、あるいはやってもらいたいというお考えがありましたら、この際教えてもらいたいと思うのです。
  15. 松本登久男

    松本参考人 串原先生御指摘の点でございますが、私ども、これも先ほどの意見の中に簡単に述べておきましたが、日本麦作はたまたま収穫期に非常に雨が多くて湿度が高いという環境肥培管理をしなければならないということでございますので、そういう意味で、西欧から良品種を入れましてもそれがそのまま日本麦作に適用できない面がございますので、どうしても国内で在来種のいい形質を伸ばしていかなければならぬ、こういう事情を抱えております。そういう意味では品種改良が非常に重要だということは私どももかねがね考えておるところでございますが、その際に、本来でございますと、生産者がもっとそういったことについて自主的な開発ができる力を持ち得なければいけないわけでございますが、現在持ち得ておりません。そういう事情でございますから、国の試験研究機関で特にわせの品種開発について力点を置いていただきたいというふうに私どもは現在の段階では考えております。
  16. 串原義直

    ○串原委員 それでは次に山田参考人に伺いたいのでございますが、自分で農業をやっていらっしゃって、麦をつくっていらっしゃって、その立場での具体的な提言、あるいは解説も含めてお話をいただきましてありがとうございました。  そこで私、伺いたいのでございますが、麦価の問題について常に諸外国との価格差、これが語られるわけであります。日本の麦は高いということでありますし、事実そういうことであろう、こう思うのでございますが、しかし、価格引き下げということ、そう簡単なものではない。私もいささか農業の経験もありますだけに痛感をさせられているわけでありますが、山田参考人から、価格引き下げにプラスになるようなコスト低減等々、生産性向上といってもいいでしょうね、そのためには基盤整備に力を入れるべきであろう、あるいは農家の負債整理についても配慮をしなきゃいけません。いま一つは生産資材引き下げ、これも円高問題もあって考えていってもらわないと不可能な話になりかねないという意味のお話があったわけであります。持に基盤整備という点で山田参考人が、いま一つ突っ込んで具体的にこのことをこうやっていただくならば麦作に大きなプラスになるでありましょう、価格低減にも寄与することができるでありましょうというお考えをお持ちでありましたならば、この際お示しをいただければありがたいと思います。
  17. 山田孝夫

    山田参考人 今の串原先生の御質問にお答えをしたいと思います。  実は、コスト低減と申しましても、今先生御指摘のように、現地における農民は、現状の枠の中でとり得る手段というものはなかなか限られております。そういう中で、いわゆる機械の共同利用だとか団地化の問題、これは生産者が一生懸命取り組まなきゃならぬ問題だと思いますけれども、その部分というのは、生産資材引き下げる部分としてはそう大きい部分ではありません。  そこで、やはり何と申しましても水田の汎用化、特に上川、空知においての減反の中ではそういう問題が出てまいっております。そういう問題の基盤整備関係でございますが、もう先生も御案内のとおり、率直に申し上げて差しさわりありますが、今基盤整備の工事費が非常に高いわけでございます。例えば私たち上川におきまして、水田十アール当たりの基盤整備が百万円近く今かかりまして、二七・五%の補助で二十七万五千円が受益者負担ですよ。最近は下がりましたが、もとは六分五厘の農林漁業資金を借りますと、返す金が利息を含めて約五十万円ぐらいになるわけでして、私の方の農地価格が今そういう状況でございますから、農地を買うくらい農家が基盤整備負担金をしなければならないという実態にあります。そういう状況でございますから基盤整備がストレートにコスト低減につながっていない、逆に言えば、いわゆるそういう専業的な、基盤整備に意欲的に取り組み、農地拡大した農家が今経営が困難である、立派な後継者のおる、残ってほしいような農家経営が行き詰まっておるという実態があります。私も農協の役員をやった経験がありまして、これが農協にとっては今一番頭の痛い問題でございまして、やはりこの辺が作文どおりにいかないと思います。  そこで、私先ほど申し上げましたとおり、こういう基盤整備についてはもっと工費の内容を下げられないだろうか。例えば今メニュー方式が農林省の御苦労で出していただきました。しかし、率直に御批判申し上げて悪いわけですが、安かろう悪かろうでは意味がありません。素掘りにしまして四五%の工費でできますよ、こういうふうに申し上げても、我々がすぐそれをまた手直ししてトラフを入れなければならないという状況であっては、これは決してメリットにならないわけでございます。私たちは今の工法の中でもっと安くできないだろうか、そういうふうなこととか、先ほど申し上げました道路とか排水についてはもっと公共性が強いので、その辺は農業負担でなくて別な方法で国の負担を多くするとか、いろいろな方法は考えられぬだろうか、こういうふうなことをいろいろ提言しておるわけでございまして、私たちも一生懸命コストを低減して頑張っていきたい、こう考えております。  以上です。
  18. 串原義直

    ○串原委員 山田参考人にいま一つ伺いますが、価格は、よくて安い方がいいことは私はよくわかるのでありますが、率直に伺いますけれども、今の麦価でこれ以上安くなるとしたら、皆さんはもっともっとつくらざるを得ない、つくろう、こういう気になるでしょうか。いかがでしょうか。
  19. 山田孝夫

    山田参考人 私も来る前、自分の組勘でこの生産費調査なんかを分析してみております。実は、いいものをつくるということで、今上川なんかにおきましては、ホロシリが主体でございましたけれどもチホクに取り組んでおります。チホクになりますと、これは非常に雪腐れする品種でございまして、いわゆる雪腐れ防止剤とか倒伏防止剤を投与しなければなりません。そうしますと、農薬費は、今農林省の生産費調査では二千円程度でございますが、私の経営なんかでは九千円を超えております。そういう状況で、いいものを生産する場合には非常にコストが高くなっております。いい品種は体が弱いということがありまして、そういう面で非常にコストがかかっております。  そういうことでございまして、これ以上の価格引き下げということにつきましては、農家はどうしても経営は成り立たないという状況、ぎりぎりの線に今来ておると私は思います。しかし、それならば今麦をやめることができるのかと申しますと、米も減反割り当て、しかもその他のものも作付指標で制限されておりましてつくるものがない、荒らすより方法がないということであります。私たち専業地帯は出稼ぎができませんので、どうしてもつくらなければ生きていけない。こういう深刻な状況に立ち至っておりまして、何としてもつくって生き延びていきたい、こう考えております。  以上です。
  20. 串原義直

    ○串原委員 それでは次に、正田参考人に伺いたいわけでありますが、実需者、業界という立場における御意見、私にはとても参考になりました。  そこで伺いたいのでございますが、日本の中における重要な、つまり食品に関する企業として、その原料を外国に依存するということにつきましていささか将来を展望いたします場合に、正田参考人はどうお考えになっていらっしゃるか、この点を伺いたいわけでございます。実は、おっしゃられましたように、よい品質の麦を国際価格並みで供給されることが私たちの希望であり、要望であります。それはそのとおりであろうと思うのでありますが、それを踏まえて日本の企業として、特に食糧という原材料を外国に依存するということについての御感想を、この際ぜひ承りたいと思うのでございます。
  21. 正田修

    正田参考人 ただいまの串原先生の御質問にお答えさせていただきますが、まず最初に、先ほどの意見の中にも申し上げましたけれども、現在、日本消費者の嗜好というのは大変に高度化しているわけでございます。自分の嗜好に合ったあらゆるものが手に入る状況消費者にとってはなっているわけでございます。したがいまして、その消費者の嗜好によりまして、それに合わない、消費者がおいしくないと感じたものは、たとえこれを幾ら供給しようと思っても消費者が受け付けないという前提がまずあると思います。そういう中で、先ほども申し上げましたように、現在日本の国内で生産されております麦は、主として日本めん用ということで使用をされておるわけでございますけれども、この日本めん自体が消費者から拒否をされる、おいしくないと言われるようになったのでは、幾ら私どもが国内産小麦を使おうと思っても、消費者がそれを受け付けてくれないということだと思います。それがまず第一点でございます。  それから、串原先生の御質問、そういった基幹食品原料を海外に依存する、海外から輸入するということについての実需者としての意見はどうかという御質問がと思いますが、少なくとも現状におきましては、海外の穀物需給、全世界的な小麦需給というものは大変に安定をいたしております。安定をしていると申しますか、世界的に小麦は過剰でございます。この過剰という状況を前提といたしました場合には、これの輸入が何らかの形で途絶えるとかそういうことはまず当面考えられないのではないかというように思っております。また、食糧庁御当局におかれましても、その穀物の安定輸入ということには鋭意御努力をいただいておりますので、私どもは現在の世界の小麦事情需給というものを前提とした場合には、やはりしかるべく輸入の安定化という御配慮を続けていただければ、まずその供給についての心配はない、このように存じております。  以上でございます。
  22. 串原義直

    ○串原委員 実は、荏開津先生にも一点お聞きしたかったのでありますが、時間が参ってしまいましたから、私これで終わることといたします。  改めて参考人先生方、ありがとうございました。
  23. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 武田一夫君。
  24. 武田一夫

    ○武田委員 四人の先生方には、大変貴重な御意見をちょうだいいたしまして、ありがとうございました。本日はお忙しい中、大変に御苦労さまでございます。  食管制度というのは内外ともに非常に関心を持たれておりまして、これからの我々国民にとっては非常にまた重要な課題の一つであろうということで、皆さん方の御意見参考にいたしまして、国民の、これは消費者生産者両方にわかりやすく、しかもその利益がお互いに守られるということが大切だと私は思うわけでございまして、そういう観点からいろいろと勉強させていただきたい、こう思います。二、三御質問いたしますので、よろしくお願いしたいと思います。  最初に四人の先生方お願いしたいのでありますが、全体的には食管制度というのをどういうふうに評価をされているか、中にはこれは廃止した方がいいとか、一部手直しをせよとかいろいろとございますが、食管制度に対する評価をどのようになさっているものか、お考えをひとつ簡潔にお聞かせいただきたい、こう思うのです。
  25. 松本登久男

    松本参考人 武田先生の御質問でございますが、私どもは、食管制度の歴史的に果たしてきた役割はともかくといたしまして、現状におきましても食管制度は、国民食糧の安定供給という上では非常に重要な役割を果たしている制度だというふうに考えております。  御案内のとおり、食糧は人間が生活していく上での基本的な資材でございまして、特に価格その他の変動によって需要の動向が大きく左右されるというものでもございませんので、食糧は安定的に供給していくことが何よりも国の秩序を維持する上で大事な要素だというふうに考えておりますので、その意味で、今後とも食管制度は有効に機能を果たしていってほしいというふうに考えております。
  26. 山田孝夫

    山田参考人 食管制度の評価でございますが、端的に申し上げて、私は生産者にとっても消費者にとってもこれはいい制度である、実はこのように考えております。先生も御案内のとおり、五十六年に食管法の大幅改正が行われまして、それ以来、運用によっては現行法の中でかなり今の時勢に合った運用ができる、このように理解しておりますので、現行法で十分であろう、このように考えております。  以上です。
  27. 正田修

    正田参考人 私の立場は、食管法全体について申し上げる立場ではないと思いますので、私ども関係いたしております麦に関係する部分についてのみ簡単に意見を申し述べさせていただきます。  私どもは、現在の食管法が私どもの原料でございます小麦の安定供給という点につきまして果たしておる役割は大変に大きいものと評価をいたしております。ただ、先ほども申し上げましたように、一面におきまして現在種々の問題が生じている。特に品質問題、内外価格差の問題、こういった非常に大きい問題が生じております。ぜひこういうものを現在の食管の枠組みの中で適切なる運用をもって解決していっていただきたいということを、諸先生並びに行政に携わる皆さんにお願い申し上げたいと思います。  以上でございます。
  28. 荏開津典生

    荏開津参考人 率直に申しまして、私は食管法は現在相当大きな見直しをしなければならない状況にあると考えております。今回の改正案もそうでございますが、これまでにも種々改正はされてきておりますけれども、何と申しましても、食糧の不足期というときに供出、配給ということを目的につくられた法律であるという点で、現在の状況とは全く違った食糧需給のもとにつくられた法律であり、現状にそぐわない点が非常にある、大幅な見直しの必要があると考えております。  特に一点申させていただきたいと思いますが、日本農業の発展ということは私も非常に望んでおるものでございますけれども、そういう観点から考えましても、食管法の存在が必ずしも非常に重要であるとは言いがたい点がいろいろあると考えております。詳しいことは、時間の関係もございますので省略いたします。  以上でございます。
  29. 武田一夫

    ○武田委員 それでは正田参考人にお尋ねします。  品質の問題で期待に沿えないような麦が日本にはかなりある。いただきました資料を見ますと、例えば北海道小麦などは「澱粉分解酵素活性の低い小麦の育種を望みたい。」と書いてあります。そしてASWのような品質のいいものが欲しいということでありますが、これは今の日本状況の中では、例えばどこか別な地域でこういうものが可能で、そこに集中的につくればそれが皆さん方の期待にこたえるようなものができるものか。あるいはまた、例えば育種の問題についても下に書いてあるわけでありますが、北海道などにおいても研究開発、手を加えていけば期待に沿うような品質のいいものができる、そういうものが遠い将来でなく近々でもできる可能性があるものかどうかという問題。それから、国はそういう研究をやっているのだろうと思うのですが、やはり生産者もあっての業界でありますから、業界としても及ばずながらそういう研究や育種あるいはまた品質改良のために何らかの努力をなさっておるものかどうか、その点をひとつお聞かせいただきたいな、こう思うのです。
  30. 正田修

    正田参考人 育種の問題につきましては、大変にいろいろ難しい問題があると存じます。どういう方法をもってすれば果たしてこの日本でASW並みの品種ができるのかということについては、私もお答えできる能力を持ち合わせておりません。ただ、私どもとすれば、最も日本めんに適していると私どもが考えております豪州産の小麦を原料とした手延べそうめんが韓国から安価に輸入されてきているという現実を前にいたしますと、やはりそういうものができなければ国内の日本めんが輸入された品物に競争上負けていくということは避けられないのではないか、そういった危機感から、国内で小麦をおつくりいただくのであれば、何とかそれに負けないようなものをつくっていただきたい、こういうお願いを現在いたしておるわけでございます。  また、それに対しまして業界といたしましても、これはなかなか十分にというわけにはまいらないかとも存じますけれども、いろいろな面で、殊に需要者としての立場からのできる限りの御協力をさせていただきたい、そのように存じております。  以上でございます。
  31. 武田一夫

    ○武田委員 松本山田参考人にお尋ねをいたします。  規模拡大というのは大きな課題で大変苦労しておると思うのですが、今後一層規模拡大を進めなくてはいけない。このために国は特にどういうことに力を入れなければならないか、この一点に絞ってひとつ御意見、御要望を聞かせてもらいたいと思います。
  32. 松本登久男

    松本参考人 武田先生の御質問でございますが、私どもも、麦作を初めとして土地利用型農業におきましては規模拡大が今最優先課題だと考えております。このためには、何と言いましても地域の中で土地利用の調整がきちっと行われることが必要だと考えております。その土地租用の調整につきましては、従来からございます農地諸制度の中で、農業者の自主的団体でございます農協を初めとする各種生産者の団体が、制度上しかるべき土地利用調整の中心的役割を担うというふうに積極的に位置づけられておりません。そういう意味で、今後はぜひそういったことについて先生方の御助力をいただきまして、規模拡大ができますような新しい制度を創出していただければというふうに考えております。
  33. 山田孝夫

    山田参考人 規模拡大はどうしたら進むかという問題ですが、私たちから見て、規模拡大をするためにはやはり農政が安定しているということが一番の前提ではないかと思います。どういうものをつくればどれくらいの値段で売れる、そしてどういうものがつくることができるかという大前提が今のように非常に不安定な状況では、規模拡大をせいといっても、土地を買って果たして金を払っていけるのかどうかということで、皆さんが拡大意欲をそがれておるという実態がございます。それが第一の問題だと思います。  そのほか小さい問題はたくさんございますが、時間がありませんので一点だけにとどめたいと思います。
  34. 武田一夫

    ○武田委員 それでは最後松本さんにお願いしたいのですが、制度の問題ですね。特に農業委員会の皆さん方が中心になって土地の売買あるいは賃貸などをやっていますね。そういう問題について、市町村との協力は農協中央会としてやっているわけですが、中央会として、農協としてもっと主体的な立場でやろうとするとき、例えばどういう方法がお互いうまく調整しながらやる上で可能であるか、具体的に聞かせていただきたいと思うのです。
  35. 松本登久男

    松本参考人 大変大事な御質問でございまして、体系的に答える準備が現在完全にできておりませんが、私ども、現在の諸制度のもとでは、規模拡大のための土地利用調整の最も有力な手段は売買による手段ではなくて貸借による手段、つまり利用調整による手段で規模拡大をしていくのが一番好ましい、また実態にかなっていると考えておりますが、こういった売買によらず利用調整によって行っていく場合に、現在の農協に法制度上認められておる機能といいますと、第一は作業受委託、第二に経営受委託、第三に農地信託と三つの制度がございます。しかし、いずれも実務的には幾つかの難点がございまして、現実の経済あるいは経営実態に合致しない要素がございますので、現行制度のもとで農協に認められている諸制度についても、内容的には運営上改善をしていただきたい点が多々ございます。  そのほかに、現在土地利用調整の主流になっております農用地利用増進事業、こういった農用地利用増進事業の中では農協は機能を明確に位置づけられておりませんので、そういった現在最も土地利用調整の中心に位置づけられている諸制度の中で農協の役割を明確にしていただくことが必要ではないかと考えております。
  36. 武田一夫

    ○武田委員 大変ありがとうございました。時間ですので終わります。
  37. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 神田厚君。
  38. 神田厚

    ○神田委員 参考人の皆さん方、大変貴重な御意見をありがとうございます。限られた時間でありますので、二、三御質問をさせていただきます。  まず、この改正法律案によりますと、パリティ方式を廃止して新しい方式で価格を決定する、こういうことになっておりますが、その内容は具体的ではありません。したがって、これからどういうふうなことを基本としてこの改正、その新しい運用をするのかということが非常に問題になるわけであります。先ほど荏開津参考人からも指摘がございましたが、これから先の運用は非常に弾力的な運用になる、この弾力的な運用の中身が非常に問題だということで御意見もいただきましたが、各参考人に、この新しい方式というものの中身が一体どういうふうなことになった方がいいのか、どういう点を中心として新しい方式がつくられるべきだと考えられるのか、それぞれのお立場があると思うのですが、御意見をお聞かせください。
  39. 松本登久男

    松本参考人 ただいま神田先生からの御指摘の点でございますが、私どももまだ政府案についても内容を承知しておりませんが、私どもといたしましては、この改正法に基づきまして、新算定方式では三つの要素が考慮されなければならぬということが規定されておりますが、その中で特に生産費の要素につきましては、現行生産実態を反映いたしまして、少なくとも平均生産費を重視した方式が組み立てられますようにお願いをしていきたいと考えております。
  40. 山田孝夫

    山田参考人 先ほど申し上げましたとおり、今度は五つの要素がございまして、どこにウエートをかけるかによりまして価格がかなり大きく動くであろうと思います。今まではパリティを下らざるということが生産者にとっては継続的な価格が維持されたということでありますけれども、そういう点に非常に不安を持っております。生産者の立場からいいますと、価格がある程度継続性、一体性が維持されないとなかなか営農計画が立たないという面があります。  そこで、米価を見ましても、米価については生産費あるいは物価、経済事情という非常に参酌要素の少ないものでありましても、先生御案内のとおりいろいろな答えが何十通りも出るわけでございまして、極端に言いますと、今度の要素を使いますと化け物のような価格になるのではないか、私はこういう心配をしておりまして、まことに失礼でありますが、そういう点が一番心配するところであります。
  41. 正田修

    正田参考人 私どもの立場からは、今回の生産性向上及び良品質麦への誘導、そういう点を通じまして私どもの希望する品質、またできるだけ国際価格に近い価格というものの方向へ向かっていただければ大変に幸いだと思いますし、それを心から期待いたしております。  以上でございます。
  42. 荏開津典生

    荏開津参考人 二点申し上げたいと思います。  第一点は、今回の法改正はパリティの廃止ということでございますから非常に大きな変更でございますけれども、実際の政府買い入れ麦価というものは急には大きく変えることはできないであろうし、望ましくはないであろうと私は考えます。ただ、新しい方式で考えられます麦価水準と申しますか、品質格差も含めましてのあり方は旧来の方式とはかなり違うものとなると考えますので、来年度の麦価をどうするかということとは別に、新しい方式に基づいて進んでいくべき方向を明示された上で急な変更が起きないような配慮をされるべきではないかと思います。  第二点は、パリティにかわる方式というのは非常に難しゅうございますが、世界各国の政策価格の決め方を見ましてもやはり生産費が中心になると思います。ただ、ここで問題なのは、先ほども申しましたけれども日本麦作生産費は非常に違ったものが幾つかありまして、平均というものに必ずしもはっきりした意味を持たせるようなことができないと考えておりますので、その構造的な違いのどこに目をつけて生産費を考えるかというような点への配慮が必要ではなかろうかと思っております。  以上でございます。
  43. 神田厚

    ○神田委員 それでは、次に松本参考人にお尋ねをいたします。  いろいろ御意見要望等もございまして、特に価格水準の問題がございました。これは先ほどお尋ねしました状況の中で現行水準を下回らない価格の設定ということでございますが、現行水準にいたしましても、生産農民の方からはもう少し高くしてくれという要望等もかなりあるわけであります。この辺のところ、具体的に現行水準を下回らない要求についての御説明をいただきたいと思うのです。
  44. 松本登久男

    松本参考人 神田先生の御指摘は、価格水準につきましては、生産者ないし生産者団体といたしましては少なくとも現行水準を維持することが必要だと私が申し上げた点についての御質問だと思います。  御承知のとおり、麦作は現状におきましてはまだまだ生産振興されておりまして、生産構造の変革の可能性がかなり高いと考えております。特に、荏開津先生も御指摘のとおり、畑における小麦作あるいは田における小麦作は、生産構造においても生産費の構成においても非常に大きな違いがございますので、まだまだ生産構造を変えていく要素がございいます。そういうふうに生産構造自体が変わっていく過程でございますから生産性向上の可能性はかなりございまして、冒頭の意見でも申し上げましたように、この種の原料農産物につきましては実需者ないし消費者に好んで使っていただくということが非常に大事なわけでございますから、私どもは、私どもの主張だけで必ずしも生産振興の安定的な環境が得られるとは考えておりませんので、そういったバランスを考慮した上で、我々の望んでおります方向での生産構造の変革の度合いに応じて水準見直していくという配慮が必要ではないかと考えておるところでございます。
  45. 神田厚

    ○神田委員 次に、山田参考人にお尋ねいたします。  具体的に御自分の経営の中から、生産者米価の引き下げの問題その他でかなりの所得減になるという状況で御説明がございました。特に麦作生産の面においても、そういう意味では今後の先き行きの見通し等を見ますと非常に難しい状況だ、いわゆる農家負債についての手当て等も考えていただかなければならないというふうな御意見でございましたが、その辺の実情を具体的にちょっと御説明いただきたいと思います。
  46. 山田孝夫

    山田参考人 府県の先生方には異なる受けとめ方がなされるかもしれませんが、今北海道農家が非常に負債が多い。何でそんなに北海道は負債がふえたのですかというのは、省庁へ行ったらよく逆に質問をされるのです。  北海道は、御案内のとおり国の政策に最も忠実に従ったところであったと思うのです。ですから、基盤整備あるいは道営圃場整備等がなり進捗率が高こうございまして、そういうことによるいわゆる機械の装備の入れかえ、こういうような問題が関連して出てまいっております。昔の田んぼでございますと三十万程度の耕運機でやれたわけですが、トラクターになりますと五、六百万、コンバインも入れかえますと五、六百万のコンバインになる、こういうことの累積がたまりまして大きな負債になっております。  それからもう一つ、いわゆる基盤整備によるところの先ほど申し上げました償還金、これが、やはり償還をしております関係上、農家が払えないために農協の高いプロパー金利に変わってしまっていく、そういうことで非常に大きな負債状況になっております。北信連あるいは道が一昨年調査しました七千戸調査、それぞれ調査対象が違いますから金額は違いますが、水田農家におきましては一千万から一千六百万程度平均負債、あるいは畑作においては一千七百万から二千万程度の負債、酪農においては三千万を超える負債、これは平均的な負債であります。負債のない農家もあるわけでございますから、負債のある農家は一億を超えるような負債の例もある、こういうことであります。でありますから、現在コストを下げると申しましても、この辺の問題が一つの足かせになっておる実態であります。いわゆる負債償還の利息の問題、それからもう一つは土地改良の償還の金額の問題、例えば端的に、最近できました道営圃場整備やその他の工事で田面ができ上がっておりますが、これの償還が十アール当たり一年で二万五千円から三万円程度、減反率が五〇以上でございますから、米をつくる面積にしては六万程度の金を払っていかなければならぬ、こういう状況であります。  私も自分の麦の生産費調査をやりましてはたと困ったのは、私の生産費の中には、転作畑につきましても土地改良負担金が入ってくるわけです。これは払わなければならぬわけです。ところが、農林省の資料には一銭も入っていないのです。ここでやはり経営がにっちもさっちもいかない。生産費に入っていないのですから、負債整理も土地改良の負担金も、端的に家計費で払いなさいということになるのです。そういう点が農家生産性向上コスト低減の大きな足かせになっております。後向きの話ばかりじゃ困りますけれども、後向きの話も一ひとつ何とか配慮していただかないと、北海道はなかなか前向きの話にはならない状況になっておる、実はこう考えております。以上です。
  47. 神田厚

    ○神田委員 正田参考人にお尋ねいたします。  二次加工製品の輸入が非常に多くなっているという御報告がございましたが、特に、物によっては何倍もというようなものがあるようでありますが、そのことについて、協会というか業界としましてかなりの打撃になっておるのですか、さらにそういうものについて何か御意見等、行政に対する要望等があったらお聞かせいただきたいと思います。
  48. 正田修

    正田参考人 ただいまの神田先生の御指摘、私どもにとりまして今最も心配をしておることでございます。  現在までのところ、伸び率は先ほど申し上げましたような数字で、これはやはり伸び率としては異常と思われるくらいの高率で伸びているということだと思います。それからもう一つ、それぞれの輸入品が国内でどれくらいのシェアを占めているかという問題があるわけでございますけれども、マカロニ、スパゲッティ等につきましては、もう既に国内消費の三割が輸入品によって供給されているという状態でございます。また、そのほかの品目につきましても、私ども各地を回りましていろいろ私どもの得意先等の話を聞きましても、現在テスト中であるというような話が非常に多くなっております。したがいまして、いつそれがまたテストから本番になって急増するかということを私ども大変に懸念をいたしておるわけでございます。  こういう問題につきまして何か考えがあるかという御質問でございますけれども、やはりこの基本になっておりますのは、原料価格が国内と国外で大変に違っているということ、これに尽きるわけでございます。そうであれば、輸入に対してある障壁を設けるとか、そういうことを私ども自身の立場とすればあるいはお願いするべきかもしれませんけれども、現在のいろいろな情勢を考えますと、恐らくそういうことはお願いをしても実現性のないことではないかというように考えます。したがいまして、やはり基本的には、この内外の価格差というものがある一定の妥当な範囲にまで縮まってきませんと、こういった輸入の増勢というものはとめられないのではないか、そのことを大変に心配しております。  以上でございます。
  49. 神田厚

    ○神田委員 最後に、荏開津参考人にお尋ねをいたします。  先ほど、米審のあり方が非常に重要になってくるはずだというような御指摘がございました。ところで、現在我々は米価審議会というものについていろいろと、もう少し生産者の代表を入れたらどうだというような意見等も含めて御意見を申し上げているのでありますが、米価審議会のあり方について御意見がございましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  50. 荏開津典生

    荏開津参考人 これは非常に難しい問題でございますけれども、とにかく一つの算定方式審議会においてつくられまして、それを今回のパリティのような特にリジッドな方式を非常に長期にわたって運用されますことには問題があるわけでございますけれども審議会として一つのできるだけわかりやすい方式をつくられて、ある期間の間はその方式に従って、よほど特殊の事情が生じません限り算定して、その算定結果を尊重されるということが非常に大事ではないかというふうに私は思っております。また事情が非常に変わってまいりますれば、その算定方式そのものをお変えになるということになってまいりますでしょうけれども、私自身は、審議会の場で生産者及び消費者というようなものがそれぞれの利害を主張して激突するというようなことではなかなかどうにもなりませんので、ある、できるだけ簡明な算定方式を、そのところは十分御審議を尽くされるべきかと思いますけれどもつくられまして、非常に大きな事情変化が生じない限り、その算定方式に従っていかれるという運営の方法が比較的いいのではないかと考えております。  以上でございます。
  51. 神田厚

    ○神田委員 終わります。ありがとうございました。
  52. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 藤田スミ君。
  53. 藤田スミ

    ○藤田委員 大変暑い中を参考人の皆さん、きょうは本当にありがとうございます。  私はまず、北海道からわざわざおいでいただきました山田参考人からお伺いをしていきたいと思います。  私は実は、せんだってこの上川の方に参りまして、いろいろ生産者の皆さんから話を聞かせていただきました。何をつくったらいいのかと言いたいとおっしゃった山田さんのお言葉は、私が北海道で最も多く聞かされた言葉であります。  ところでお伺いをしたいのは、麦価は五十六年以降基本価格に織り込まれた奨励金部分を削減し続け、価格は抑制されてまいりました。そして、六十一年産麦から引き下げになっております。それによって農家経営や負債にどのような影響があったのかということをもう少し詳しく聞かせていただきたいのと、二つ目はパリティ方式の果たした役割、それから、今回生産性向上品質改善ということがしきりに言われているわけですけれども、その二つの目的を達成するために一体どういう点に配慮をしなければならないのか、この三点をお答え願いたいと思います。
  54. 山田孝夫

    山田参考人 藤田先生にお答えをしたいと思います。  上川まで来ていただきまして、本当にありがとうございます。  端的に今の農家の一番の悩みは、つくるものが十分ないということでございます。このようなことを申し上げると何ですが、今回の麦価改正につきまして全量買い入れの問題が出なかったということは、正直に申し上げてほっとしたところが私たちの本音でございます。もしこのようなことでまた麦の作付制限なんということになりますと、農民は何もつくるものがない、専業農家はどうやって生活すればいいのかということで、もう方法がないというのが実態でございます。そういう状況で、米価については五十二年からほとんど据え置き、北海道においては実質的に手取りがいろいろな面で下がっております。類別格差拡大とかマル徳、マル自の安売りの拡大とかという問題、あるいは他用途米の導入で手取りはどんどん下がっておりまして、いわゆる兼業地帯におきます一般的なC・D階層というのは今一割を超えております。この農家は、率直に言って計算上もうどうにもならない。今農協さんが一番頭が痛い、何とか解決してほしいということで一番先に希望を出すなら、このC・D階層の問題を何とかしてほしいというのが農協の本音ではないかと思う。  例えば、私のところの農地価格はずっと百万程度しておりました。ところが、最近一番いいところで七十万円、山沿いの悪いところですと四十万ということです。農協は、この農地の前の価格に八割程度の評価額にしまして金を貸しております。ところが、今土地を処分させても債権確保ができない。そういうことでありますから、これは役員の責任問題にも発展するということで、勢い臭いものにふた方式で自分の任期中は何としてもそういう問題を後に引き継いでいきたいというのが本音のところであります。一つはそれほど農家の階層分化が進み、C・D階層については全く処置なしという状況であります。ですから、農業のいわゆる規模拡大につきましては、その裏におきましてはそういう離農せざるを得ない農家の雇用の問題、それから老齢化してどうにもならない農家の老後の問題、これらの問題を一つのセットとして農業政策が進められないとこれは大変なことではないか、私はこのように考えております。  それからもう一つはパリティが果たした役割、これは先ほど申し上げましたとおり私たちが経営するためには何と申しましても生産者価格の安定的継続性、一貫性、こういうものがやはり一番大事でございまして、そういうものが一つの下支えになってきたということは事実であります。しかし、先ほど申し上げましたとおり六十二年の改正につきましては、現行法の中におきましてもいわゆる銘柄格差の導入とか等級間格差拡大が行われました。逆説的に言いますと、それでやれたのだから現行法を改正せぬでやればいいじゃないかという話にもなりますが、これはあくまでも正道ではありません。そういう意味でパリティの果たした役割は農家経済にとって非常に大きいものであった、私たちはこのように実は思っております。  それから、品質の問題でございますが、私たちは何としてもいい品質のものをつくらなきゃならぬ。しかも、コストを下げなきゃならぬ。そのためには何としてもいわゆる多収量品種、それから加工適性に合う品種開発を試験結果でやってもらわないとどうにもなりません。私は元来水田専業農家でしたから、米に比較すると、最近畑作の大豆をつくり、ビートをつくり、それから小豆をつくり、麦をつくっておりますが、畑作品種改良は非常におくれている。米並みの品種改良、開発が大事ではないか。そういう裏づけがないと、農家だけの努力でいいものあるいはコストを下げるということはなかなかできないのではないか、このように実は考えております。  以上です。
  55. 藤田スミ

    ○藤田委員 全中の松本さんにお伺いいたしますが、今回の法改正によってパリティ方式を廃止してしまおう、パリティは、先ほど山田さんがおっしゃいましたけれども、一口に言って農家の実質購売力を確保するという観点から採用し続けてきたものじゃないかと私たちは考えます。それが外されるなら、政府が恣意的に価格引き下げることになり、この点で農家所得補償ができなくなってしまうのじゃないか、ここに一番大きな問題を感じているわけです。こういうことを申し上げますのは、農政審報告に基づいて価格政策の合理化を目指し、内外価格差の是正と財政負担の軽減を具体化したのが今回のそれではなかったかと考えるわけでありますが、この点、松本さんの御意見を聞かせていただきたいと思います。  あわせまして、今回の改正が米価にも波及する、そういう危険性がありはしないかと思いますが、この点はどうお考えでしょうか。
  56. 松本登久男

    松本参考人 藤田先生から二点ほどの御指摘がございましたが、第一は、パリティ価格改正麦価引き下げに通じることを意味しないかということと、政府の恣意的運営に道をあげないか、こういう二点についての御指摘だったと理解しております。  第一点でございますが、先ほど荏開津先生もおっしゃっておられましたが、パリティ価格自体は制定されたときにはそれなりの意味もあったわけでございますが、最近の麦作におきましては、マクロの経済環境が非常に変わったということと、もう一つは生産構造が非常に変わったということもございまして、政府買い入れ価格自体が、二十五、六年産基準のパリティ価格以外に生産振興奨励金というふうに生産振興のために特別に加算されている額を加えて算定されております。そういう意味では、純粋にパリティ価格で引き延ばしてきて今日の価格を算定いたしますと、むしろ現行価格より大幅に買い入れ価格水準も下がってしまうわけでございまして、そういう意味実態に適した改正ではないかと私は思っております。価格というのは、先ほど荏開津先生もおっしゃられましたけれども、政策価格はある意味で非常にわかりやすい価格をつくっていかなければならぬわけでございまして、ある部分はパリティ部分、ある部分は生産振興奨励金の加わった調整額部分、こういう価格の組み立ては必ずしもベターなものではないのではないかと私どもは考えております。  それから、前段のパリティ価格にかかわってもう一つの問題でございますが、私どもも、御指摘のようにこのたびのような生産費、需給事情経済事情参酌の麦価決定という各種要素を組み合わせた麦価決定をしていく場合に、政府が全く恣意的にこれを運営できるような形の算定方式に結びつくことになるとすれば、そのことには反対でございます。これからはそういったことにならないように算定方式の各要素について十分我々の主張も行っていくつもりでございますし、そのように決めていただくように政府の方に働きかけていくつもりでございます。  第二点でございますが、このたびの食糧管理法の一部改正、特に麦価規定改正が米価にも波及するのではないかという御指摘でございますけれども、私どもはそのようには考えておりません。米価と麦価は全く違った原理で決定されておりますし、そのような懸念は余りないと考えております。
  57. 藤田スミ

    ○藤田委員 次に、荏開津先生にお伺いをいたします。  ことしの四月二十八日のエコノミストに掲載されました先生の論文「農政論議の土台を質す」を読ませていただきました。この中で先生は、「日本農業は、その乏しい土地賦存のために、近い将来において何の保護もなしに国際競争にたえうる産業となることはできない。実際にも、大豆や麦類の生産が、かつてかなりの保護のもとにおいてすら壊滅した経緯は、如実にその厳しい現実を示すものである。」こういうふうに述べておられるわけであります。  他方私どもは、先ほど私が申しましたけれども政府は今回の改正案は内外価格差の解消あるいは財政負担の軽減ということを目指して行われるものであって、低価格政策に進もうとしているというふうに考えるわけでありますけれども、先生のおっしゃった、私が今読み上げました先生の御意見とこの問題との関係というのですか、どう理解したらいいのか、そこのところをお聞かせいただきたいのです。
  58. 荏開津典生

    荏開津参考人 私が御指摘のもので書きました意見は、現在農業政策批判というのは非常にやかましいわけでありますけれども、そういう批判をされる方々の中に、日本農業は過保護であって、すべての保護を撤廃して自由競争市場に任せてしまう、貿易障壁と申しますか、国境の保護措置も全部やめてしまえばかえって日本農業は発展するのだというようなことを説かれる方々がおられるわけでございますけれども、それは非常な誤りである、現実認識の誤りである。農業というのは、もうこれは常識でございますけれども土地というものの制約の上に立つ産業で製造工業とは非常に違ったものでございますから、日本土地状況が麦類に関していいますと、カナダでございますとかアメリカ、オーストラリアと非常に違う、残念ながら非常に劣った土地賦存であるということは認めざるを得ない事実であって、こういうものが貿易を含めて全く自由な市場メカニズムのもとで生き残るというようなことはできない、残念ながらそういう事実は認めざるを得ないというふうに私は思うわけでございます。  そういう意味で、日本農業が生き残っていくことは非常に重要であると私は思いますが、そのためには保護は必要であるというふうに私は考えております。特に、国境における保護、麦の場合には国家貿易ということでございますけれども、国境における保護は不可欠であるというふうに考えます。  しかし、他面、ただ手厚く保護すればいいというふうにはなかなかまいらない。いろいろな理由がございますけれども、端的に最もそれを示しますのは、先ほどから特に正田参考人消費者という観点から強調しておられますけれども、原料麦の価格を手厚く保護しておりますと需要がなくなってしまう。これで買い手がなくなるということになりますと、いかに価格を保護いたしましても数量を抑えざるを得ないということになってきまして、どんどん作付面積なり生産数量なりを抑えていくという方向に進まざるを得ない。それでもいいということであれば一つの考え方でございますが、そういうことを考えますと、保護は必要であるということと、できる限りの生産性向上なり品質向上なりに努めて、需要される方々、最終的には消費者としての日本国民でございますけれども日本の国民が買わないというようなことにならないような意味で過保護にならないように努めていくことが重要である、こういうふうに私は考えているわけでございます。  以上でございます。
  59. 藤田スミ

    ○藤田委員 私の持ち時間が終了いたしましたので、正田参考人に大変失礼だと思います。質問の方は準備をしてまいりましたが、ルールを守りましてこれで終わらせていただくことをお許しいただきたいと思います。ありがとうございました。
  60. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位一言御礼を申し上げます。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時五分散会