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正田参考人 製粉協会会長を務めております
正田でございます。
諸先生には大変私
どもの業界を御指導いただいておりまして、この席をかりまして厚く御礼申し上げます。また、大変にお詳しい諸先生でいらっしゃいますので、私から
意見を申し上げるというのも大変僣越に存じますが、御指名でございますので、
実需者を代表いたしまして、今般の
食糧管理法の一部を
改正する
法律案につきまして若干の
意見を申し述べさせていただきます。
まず
最初に、国内産
小麦に関連いたします製粉業界の実情につきまして御説明をさせていただきます。私
ども、国内産
小麦につきましては内麦と通称しておりますので、そういう言葉が出てまいるかと思いますが、御容赦をいただきたいと思います。
お手元に「国内産
小麦に関する
問題点と
要望」という黄色いパンフレットをお配りさせていただいておりますが、これは昨年の六月に製粉協会でまとめたものでございます。製粉協会ではこれ以前にも、
昭和五十四年の六月に「内麦に関する基本的
考え方」、
昭和五十七年の四月に「国内産
小麦の特性と
品質上の
問題点」、また本年五月には「国内産
小麦の
品質評価」、このように私
ども実需者の考えをまとめまして、そのときどき
意見を申し述べさせていただいているわけでございますが、お手元にお配りしましたパンフレットが最も広範に国内産
小麦に関する私
どもの考えをまとめておると思いますので、お届けしたわけでございます。
その中には、大きく分けまして四つの
問題点が述べられております。
まず第一は
品質問題でございます。これは後ほどまた詳しく申し上げることになると思いますが、
一言で申し上げまして、いろいろ
生産者の皆さんに御
努力をいただいていることとは存じますが、結果的には、私
ども需要者の
要望が
生産面にほとんど反映されていないのではないかということでございます。
第二番目に物的流通の問題でございます。
諸先生御案内のとおり、
小麦の
生産が
北海道、九州という我が国の両端に非常に偏ってきております。このために、当然、大消費地である東京あるいは関西というそういうところと、
生産地との乖離が大幅に生じておりまして、このために、私
ども需要者負担による輸送費の大変な増高という問題がおるわけでございます。また、物的流通の問題といたしましてはこのほかにも、
ばら流通の問題であるとかあるいは倉庫集約化の問題というのがあるわけでございますが、こういった点につきましてもまだまだ不十分でございますし、またこの点が、後ほど申し上げます
品質のばらつきにも悪
影響を及ぼしているということでございます。
第三番目には麦管理
改善対策でございますが、この点につきましては、先般
運用改善通達が出されまして、現在
改善の
方向に向かっているという認識を私
どもは持っております。
そして、四番目には内外
価格差の問題でございます。
私
ども実需者が
政府から買い受ける
小麦の
価格につきまして、現在、内麦の大幅な逆ざやとその
生産量の急増ということのために、この売り渡し
麦価と国際
価格の間に大変に大幅な乖離が生じていることは御
承知のとおりであります。私
どもで試算いたしますと、現在において三倍を超えるという姿になっているのではないかというように思います。
このために、既に自由化されております
小麦の二次加工製品の
輸入が急増をいたしておるわけでございます。今年の一月から六月のベースをとって昨年の同期と比較をいたしてみますと、ビスケットにおきましては、前年同期に対しまして四三%の
輸入量の増加でございます。また、内麦に特に
関係のございます
日本めん、乾めんでございますが、これにつきましては前年同期を八三%上回る
輸入がなされております。またケーキミックス類につきましては、前年同期の約四倍の
輸入が既に行われておりますし、マカロニ、スパゲッティにつきましては、前年に対しまして二三%の
輸入増加でございます。また、ここのところに参りまして、豪州産の
小麦で製造されました韓国製の手延べそうめんというようなものの
輸入も急増いたしております。現在の国内消費が非常に低迷しております中で、こういう
輸入品が増大してくるということは、私
ども小麦産業に携わる人間といたしましては大変につらいことでございますし、また、そのために苦しい
状況になっておるわけでございます。
以上のごとく、原料
小麦の
品質、
価格、この両面から、国内の製粉業界あるいは
小麦粉の二次加工業界が、
輸入加工品との競争上ただいま大変に苦しい
状況にあるということを、まず諸先生に御理解賜りたいと存じます。
次に、国内産
小麦の
品質を中心に申し上げます。
現在、私
どもは
政府から、製粉用といたしましておおむね年間に四百六十万トン買い入れております。このうちおおむね七十万トンが内麦でございまして、この内麦が主として
日本めん用の原料として使用されております。これがパンやケーキに使われておりませんのは、内麦に含まれておりますたんぱくの量、質の
関係からでございます。
御
出席の
先生方、もう御高承のとおりでありますが、現在の食生活の高度化、あるいは飽食の時代、こういう時代におきましては、食卓に上る食品すべてが非常に限られた胃袋を求めてせめぎ合っているというのが現在の
状況でございます。このため、例えばうどんと申しましても、A社のうどんとB社のうどんが市場で競争しているということだけではございません。うどんとハンバーグあるいはうどんとフライドチキンというものがやはり同様の競争
関係にあるわけでございます。このために、まず内麦の主要な消化先である
日本めんの
需要を維持しあるいは
拡大しようというためには、よりおいしいうどん、おいしい
日本めんを
供給する以外にはないわけでございまして、またそのためには当然のことながらよいうどん用粉、よいうどん用
小麦というものが必須の
条件となるわけでございます。
それでは、このよい
小麦というのはどういう
小麦であるかということでありますが、私
どもは大体二つの観点からこれを評価いたしております。一つは、二次
加工適性と言われるものでございまして、これはめんの場合でいきますと、例えばめんの色であるとか外観であるとか食感、食味、そういったいわゆる官能検査、官能試験によるもの、及びめんの歩どまり等の
経済性によるものでございます。また二番目には、製粉適性と呼ばれるものでございまして、これは
一言で申し上げれば、よい粉をどれだけ多く効率的にとれるか、そういう観点でございます。
こうした二つの観点から評価をいたしますと、現在
日本めん用として最適の
小麦というのは、オーストラリアから
輸入されておりますASWという
品種でございます。これは
昭和四十九年以来
輸入されておりまして、その間オーストラリアでは、
日本から製めん技術者を招く等の
努力をいたしまして、現在の
日本めんに向く
品質をつくり上げてきておるわけでございます。
製粉協会では、内麦が急増いたし始めた
昭和五十三年、五十四年以来、一貫して内麦の
品質の
改善を
要望してまいりました。しかし、残念ながら現在の内麦は、先ほどの一次、二次
加工適性ともASWに劣るばかりでなく、内麦の中でも比較的好ましい
品種の
作付が減少傾向にある、あるいは同一県内で十種類もの異なる
品種の
作付がなされておる、また同一
地域、同一
品種の
小麦でもたんぱく、水分が三%以上ばらつくというような欠点を有しております。こうした内麦の急増に対しまして、製粉業界におきましては、工程の変更、設備
改善あるいはロット管理等いろいろな苦心をしながら内麦の使用をここまで増加してまいりました。
しかし、現在の
消費者の嗜好の高度化あるいは
輸入品との競争という
状況におきましては、何とか一日も早くASW並みの
品質の
小麦を国際
価格並みで入手できるようになることが私
どもの願いでございます。ただ、その実現までの間は、相対的に好ましい
品種の
作付あるいは物流の
改善、ばらつきの防止ということを
お願いするより仕方のない現状でございます。
今般の
改正法律案におきましても、麦の
品質の
改善に資する旨のことがうたわれておりますし、このことは私
ども実需者がかねてから
要望しておったことでございます。この
改正法律案には賛成の意思表示をさせていただきたいと思います。しかしながら、ただいま申し上げてまいりましたいろいろな問題というのは、この
法律改正によってすべて解決されるわけではございません。今後とも諸先生の一層の御理解と御指導を切に
お願い申し上げまして、
意見の陳述を終わらしていただきます。
どうもありがとうございました。(拍手)