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1987-08-25 第109回国会 衆議院 地方行政委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年八月二十五日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 石橋 一弥君    理事 岡島 正之君 理事 片岡 清一君    理事 渡海紀三朗君 理事 西田  司君    理事 野呂 昭彦君 理事 安田 修三君    理事 草野  威君 理事 岡田 正勝君       石渡 照久君    越智 通雄君       金子 一義君    北村 直人君       鈴木 恒夫君    高橋 一郎君       竹中 修一君    友納 武人君       中山 利生君    加藤 万吉君       佐藤 敬治君    中沢 健次君       山下八洲夫君    小谷 輝二君       柴田  弘君    経塚 幸夫君       寺前  巖君  出席国務大臣         自 治 大 臣 葉梨 信行君  出席政府委員         自治大臣官房審         議官      森  繁一君         自治大臣官房審         議官      小林  実君         自治大臣官房審         議官      渡辺  功君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省財政局長 矢野浩一郎君         自治省税務局長 津田  正君  委員外出席者         防衛施設庁施設         部施設取得第二         課長      西田 壽快君         防衛施設庁施設         部施設対策第二         課長      柴田 桂治君         国土庁計画・調         整局計画課長  春田 尚徳君         外務省北米局安         全保障課長   岡本 行夫君         大蔵大臣官房参         事官      浜中秀一郎君         大蔵省主計局主         計官      水谷 英明君         大蔵省主税局調         査課長     長野 厖士君         大蔵省主税局税         制第一課長   杉崎 重光君         地方行政委員会         調査室長    大嶋  孝君     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五号)  地方交付税法の一部を改正する法律案内閣提 出第六号)      ————◇—————
  2. 石橋一弥

    石橋委員長 これより会議を開きます。  内閣提出地方税法の一部を改正する法律案及び地方交付税法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤万吉君。
  3. 加藤万吉

    加藤(万)委員 ただいま議題になりました税法交付税法、大変重要な問題でありますので、少しきょうはお時間をいただきましたので、若干中身を突っ込んで討論をし、また質問をし、できれば我が方の主張に対する御意見をぜひ国政に反映をしていただきたい、こう思います。  最初に、国土庁の方お見えになっておりますから、四全総について若干お伺いをしたいと思います。  四全総は、大臣案内のように、日本列島の新しい改造計画だろうと私は思うのです。従来ありました太平洋沿岸ベルト地帯中心とした日本コンビナート地帯中心とする経済あるいは国土形成というものから、それが引き継がれまして三全総まで、若干の手直しはいたしましたものの基調的な部分は変わっていなかったと思うのですが、四全総は、その結果としてあらわれた日本の一極集中的な国土あるいは経済の構成というものをできる限り多極分散型に変えていこう、そういう基調に変わっているわけです。いわば日本列島の新しい改造計画、こう申し上げて差し支えないと私は思うのです。  そこで国土庁の方にお聞きしますが、四全総提案される、あるいは審議をされる過程地方団体からのさまざまな御意見が出ています。それぞれのブロック圏からも意見が出ていますが、私は、象徴的に出ているものとして全国市長会から提案されている内容、大変異味深く、しかも時宜にかなった内容ではないか、こう実は思っているわけであります。その中で多く指摘しているのは、三全総までの計画というものが、実際の計画と現実に執行された内容とは大変な乖離がある。例えば人口の集中の問題にいたしましても、分散型をとろうとした三全総について、実はそれとは逆行する形で都市集中型になってしまった。三全総の計画が大変に乖離があった最大の要因は、地方団体行財政上の基盤が大変希薄であった。このため結果的に三全総の計画を完全に遂行するに至らなかった。その上に立って四全総を考慮してほしい、いわゆる四全総計画を実行するにはそういう批判を埋め合わせる必要性がある、こう述べられているわけであります。  さて、三全総へのこういう地方団体からの批判というものは、四全総の中にはどういう形で繰り込まれてきたのでしょうか。あるいはまた三全総に対する各地方団体批判は、私は当たらずといえども遠からずという気がするのでありますが、この辺に対する、本案を計画あるいは提起をされている国土庁の御意見をまずお聞きしたいと思うのです。
  4. 春田尚徳

    春田説明員 お答えいたします。  四全総の策定に当たりましては、各界各層から実に多くの御意見を賜りまして、意見交換を重ねました結果策定されたものでございます。  今御指摘ございましたとおり、全国市長会並びに町村会からは、昭和六十年四月にそれぞれ四全総に対する意見といたしまして非常に有益な御意見を書面でいただいております。かいつまんでちょっと御紹介させていただきますと、市長会皆様からは、「全国すべての地域において自主的な努力によって発展が可能となるような国土計画を樹立することが必須の条件である。」「とくに高速交通体系整備等地域間格差を解消するための国土基盤整備に十分な配慮がなされる必要がある。」などを中心とした御意見をいただいております。  それから続きまして町村会皆様からは、農山漁村地域の抱える問題状況を解消するとともに、食料・木材安定供給国土資源自然環境の培養・保全、ゆとりある居住空間供給あるいは国民と自然との触れ合いの場等提供等、各種の役割機能を十分発揮できるよう計画をまとめること等の御意見をいただいてございます。  これを非常に丹念に検討させていただきまして、また両会共通して行財政基盤強化についての御意見もちょうだいしている次第でございます。四全総ではこれらの御意見を十分踏まえまして、地域間交流活発化を図るための全国一日交通圏の構築、それから大規模リゾート整備やマルチハビテーションの推進による農山漁村地域多面的役割発揮等施策をお示しした次第でございます。また、計画を効果的に推進いたすために地方行財政基盤強化等をお示ししたところでございます。
  5. 加藤万吉

    加藤(万)委員 この四全総計画を実施する時期、計画到達目標の時期、それからこれに必要な財源はどのくらいなんですか。
  6. 春田尚徳

    春田説明員 四全総計画期間は御案内のとおりほぼ十五年、西暦二〇〇〇年をめどとするものでございまして、四全総におきましては、その目標といたしまして多極分散型国土形成ということを挙げさせていただいたわけでございますが、そのためには、高速交通体系など地域づくりのための基礎的条件整備いたします一方、地域特性を生かしつつ地域みずからの創意と工夫を基軸として地域整備推進することにしております。このような地域づくりを進めます上で、地域の総合的な行政主体であられます地方公共団体の果たす役割が高まると考えておりまして、計画を効果的に推進いたすためには、その行財政基盤強化を図る必要があると認識しておる次第でございます。  そのため、地方公共団体財政基盤につきましては、計画では、今後の「高齢化情報化国際化進展等に伴う多様な財政需要の増大に対応していく必要があり、地方財源確保と安定のため、今後とも適切な措置を講ずる。」といたした次第でございます。
  7. 加藤万吉

    加藤(万)委員 推定される財政見込み額はどのくらいですか。
  8. 春田尚徳

    春田説明員 内需中心とする中規模の成長を前提といたしますと、国土基盤投資、これは従来の社会資本投資プラス民間によります国土基盤に関する設備投資も含めたものでございますが、向こう十五年間でおよそ一千兆円というふうに推定してございます。
  9. 加藤万吉

    加藤(万)委員 一千兆円、これは民間の活力、資金を導入することも含めてでありますが、大変なお金ですね。したがって、国の財政投資もさることながら、今お答えにありましたように、地方財政力をどう強化するかということがその背景になければ、この遂行はできないと私は思っているのです。今お答えにはございませんでしたが、この四全総遂行する主役地方団体だ、私はこういうように見ているわけです。したがって、その主役地方団体財政的に確保されないということになりますと、この四全総はまさに空文、砂上の楼閣に等しい、こう言わざるを得ないわけです。  さて大臣市長会提言の中には、三全総の計画失敗の中には公共投資の抑制、縮減、これは国の財政悪化あるいは地方財政悪化、それから雇用の場の確保のための産業政策の欠如、それから国、地方役割責任分担の不明確、さらに市町村行財政基盤強化が図られなかったこと、これが挙げられているのです。私はこれは適切な提言だろうと思うのです。特に日本列島改造計画後とこの四全総の大きな違いは、先ほどもお話しいたしましたように、鉄鋼を中心とするコンビナート地域が、今度はいわば電子産業遺伝子産業あるいは電子工学と言われる分野が日本経済を支えていくことになるわけですから、こうなってまいりますと、それに必要な産業基盤形成、同時にまた地域環境雇用の場の形成、こういうことになるわけです。  したがって、今お答えがありましたように、これらの基盤形成をするのに必要なのは十五年間で一千兆円、もちろん国の財政投資もあるでしょうし、あるいは民間資本投資もございましょう。しかし、何といってもこの計画主役である地方団体財政的基盤というものが確立をいたしませんことには、この四全総、いわば一極中心から多極分散型の新しい国土計画というものは現実化されていかない、私はこう思うのです。  そこで、今度の税制改正を含めまして、あるいは六十二年度から、さらには六十三年度予算編成にこれから入るわけですが、いわばこの四全総に向かって一体どういう地方と国との財政配分あるいは今申し上げました地方役割責任分担、さらには市町村財政基盤をどうするか、このことが展望されないまま税制改正が行われるということは私は大変遺憾なんです。予算委員会でも申し上げましたけれども一単に税制改正が、売上税の是非の問題であるとか利子課税が云々とか税目の中身についての議論はありました。しかし財政、制度の仕組みとしての議論がほとんどなされなかったのです。今の日本の国に、我々に課せられた仕事は、この四全総に象徴されるような新しい日本産業基盤あるいは地域基盤社会資本投資、あるいはそういうものを含めてどう形成するかというところに視点がないまま論議されているところに、私は何か物寂しさを覚えざるを得ないのです。  どうでしょうか、大臣。一千兆円、十五年間で必要な財源。いろいろな区分があるでしょう、民間投資だとかあるいは国の投資だとか。しかし、その主役となるべき受け皿、主役の舞台のところに財政基盤がないまま今日の税制改正が行われる、あるいは今日の議論が行われるということについては甚だ遺憾だと私は思うのです。大臣、恐らく大臣も私も四全総の結果の最終場面を迎えるには年の方が少し足りなくなるような気がするのです。しかし、その発射台をつくるのは今の時期です。それだけに大臣任務も大きいし、今ここにお並びの自治省のいわば高級官僚と言われる皆さん方責任は非常に大きいと私は思うのです。自治省が、行財政配分あるいは地域への分権を含めて胸を張って計画遂行条件整備を相当行いませんと、今の流れに流されたままで、その中で行財政運営をされるとなるとこれは大変な失敗をもたらしてしまうのではないか、こう思うのですが、大臣、私の見解は間違っているでしょうか。
  10. 葉梨信行

    葉梨国務大臣 四全総基本理念は、東京一極集中を是正して国土の均衡ある発展を達成するために多極分散型国土形成を図ることでございます。今先生がおっしゃり、また国土庁当局から御答弁があったとおりでございます。このためには、地域特性を生かした魅力ある地域づくりを進め、多様性を有する国土形成を図ることが必要でございます。地域の総合的な行政主体でございます地方公共団体の果たす役割はより一層重大さを増しておりまして、その行財政基盤強化を図ることが必要でございます。先生指摘のとおりでございます。  自治省といたしましては、今後ともこのような観点から関係省庁とも連携をとりまして、国と地方役割分担見直しとか事務の共同処理体制整備とか充実等必要な施策を講じてまいりたいと思う次第でございます。  さらに、先生ただいまの御質問の中で、今度の税制改革に関連して地方財源充実を図らなければならないという御指摘がございました。今回の税制改正でございますが、税制抜本的改正の必要にかんがみ、その一環として、さしあたって住民負担の軽減及び合理化等、当面緊急に措置すべき項目について改正案を取りまとめたものでございますが、住民税として利子割が創設されることになりましたことは、地方税源充実強化にとりまして極めて有意義なことであろうと思うのでございます。第一段階として必要なステップを一歩踏み出したと認識している次第でございます。  四全総の目指す多極分散型の国土形成していくためには、地方行財政基盤をより強固なものにしていくことが必要でありますので、今後とも地方財源充実のために各般の努力をしていかなければならない。その過程におきましては、国民皆様の理解を得ながら、また特に野党の皆様との御協議を進めながら、その財政基盤強化のための税制改革も進めていかなければならない、これは不可欠の課題であろうと認識している次第でございます。地方分散推進観点にも税制改革を進めながら十分に配慮して、国、地方間の税源配分につきまして地方税源充実強化の要請を十分に踏まえて対処していきたいと考えております。  先生が言われましたように、西暦二〇〇〇年を目指す大きな仕事をやっていくためには、やはり今までの考え方にとらわれないで、お互いに新しい視野に立って、また改革意思を固めて現状打破の精神を奮い起こして改革を進め、地方税源確立充実に努めていきたい。与野党が協力一致して行っていきたい。先生の御意見にもう全面的に賛成でございます。
  11. 加藤万吉

    加藤(万)委員 財政局長にお伺いしますが、私はこの四全総を確実なものにするためには、やはり発想の転換、いわば従来の発想の逆転が必要だろうと実は思うのです。  そこで、ことしの春以来の税制改革を見ておりますと、どう見ても物取り主義的な発想以上には出ていないような気がするのです。今大臣は、利子課税の問題で地方財政強化への一歩を踏み出した、こうおっしゃいます。しかし後で私は討論をさせていただきますが、利子課税にしても売上税の問題にいたしましても、例えば売上税を一つとってみると、電気税だとかあるいは木材引取税だとか、いわば固有地方財源がそれぞれ売上税に吸収されているわけですね。地方への財源は額としては多くなった。しかし税の仕組みとしてはまさに中央集権じゃないですか。その起きてくる中で、いや地方財源はこれだけ充足しましたよ、あるいはこれだけの財源確保しましたよ、これではいけないと思うのですよ。そうではなくして、本来広域的な財源と言われる商品に対する付加価値税的なものは地方財源だという学説的なものが我が国にも定着しているわけですが、そういう意味から見て、こういう税制を国の吸い上げた中で地方への配分をするという方向は、やはり間違いじゃないでしょうか。大臣はそうおっしゃいましたが、私は、これからも地方財源をどうするかという税制上の仕組みの問題を議論するに当たっては、自治省皆さん任務は非常に大きいと思うのです。後でさまざま論点を整理してお互い意思交流意思疎通を図りたいと思っていますけれども。どうでしょうか、そういう面が払拭し切れないまま今の税制改革なりあるいは当面の措置のところに目を奪われ過ぎて、大道を見失っているのではないかと思います。  財政局長、これから一千兆円と言われる財源を必要とする四全総計画に対して、大臣意見も表明されはしましたけれども自治省のいわば当事者として、当面大蔵省と、あるいは国全体の中で胸を張ってもらわなければならない皆さん方ですから、ひとつ決意をお聞きしたいと思うのです。
  12. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 四全総に示されますような多極分散型の国土形成を進めてまいりますために、地域的にそれぞれの必要性に応じて必要な財源確保されなければならない。しかも御指摘のとおり、まさにこういった均衡ある国土形成のための主役地方公共団体であると存じます。そういう意味で、私どもももちろん四全総以前からこのことは強く主張してまいりました。  今回の税制改革に当たりましても、当初提案を申し上げましたような税制改革内容は、目的税制のゆがみ、ひずみを是正し、財政的には歳入中立性確保するという考え方に立ったものではございますが、その中におきまして私どもとしては、できるだけそういった地方財源確保なりあるいは均てん化がより進め得るような形でいろいろ物を考えたわけでございます。  残念ながら、当初の提案につきましては御承知のような経緯で廃案となったわけでございますが、今回の改革見直しにより新たに御提案申し上げておりますものの中でも、委員が御主張のような地方固有財源充実しなければならないという観点に立った税制としては、新たな利子課税見直しというものを立てておるわけでございます。決して、財源をすべて中央に吸い上げて、それを配分すれば事は足りるという考え方は毛頭持っていないところでございます。  ただ、端的に申しますと、当初の売上税に見られますように、これは現在の我が国経済構造実態、特に我が国の場合極めて広範な企業活動ネットワーク国土全般にわたって張りめぐらされておるという実態を考えて一あのような譲与税というような手法をとった方がより適切である、こう考えたわけでございます。端的に申しますと、経済地域的な格差というものが、長期的に見ますと縮小されてきておりますが、ごく最近の情勢を見ると、これがまた拡大をしつつあるのではないか、こういう状況にあるわけでございます。その中で、これから国土の均衡ある発展を目指して地域間のバランスのとれた仕事を進めていくためには、どうしてもその点を考えた財源配分もまた必要ではないか。それによって地方自治体が地域にとって本当に必要な仕事が行える、こう考えるところでございます。  もとより、税制以外に地方交付税の果たす役割というものもやはり極めて大きいわけでございます。それによって地方団体がそれぞれ自立的な体制のもとに地域整備し、全体として国土発展を目指し、四全総目的を達成し得るようにぜひとも地方財政地方税制の面で考えていく必要がある、常にそういう考え方は持っておるつもりでございます。
  13. 加藤万吉

    加藤(万)委員 財政局長、基本的なスタンスが、財政局長も含めまして自治省スタンスがそこにあるのが私は率直に言ってどうも合点がいかないのです。  これは現役の方では失礼ですから、ある雑誌で拝見させていただいたわけですが前事務次官がこう言っているのですね。ちょうどあなたの答弁と同じなんですが、我が国風土的特徴、今後の経済情勢を検討すると、要するに全国的な企業ネットワークということも含めてということでしょう、国庫補助負担金の廃止によって地方歳入中に占める地方税シェアを飛躍的に高めることは悲観的にならざるを得ない、石原前次官が言っていらっしゃることです。さりとて、地方交付税シェアを引き下げて地方税シェアを高めることは、交付団体一般財源を減額して不交付団体一般財源を上乗せすることを意味し、到底実施でき得ないと書いていらっしゃるのですね。  これが今のあなたのおっしゃったスタンスと似ているのですよ。似ているというのは、いわば税制を抜本的に改革して地方財政財政的基盤をきっちりつくるというところから発想が出るのじゃなくて、今の現状の中から言えば、交付税の問題を含め、何しろ地方税シェアを広めるという問題も含めて、それは困難なことです、したがって当面の財政はどうなる、こういう方向にならざるを得ないのですわ。このスタンスを変えなければ、とてもではないけれども、一千兆円の財源地方的な財政基盤をつくるということは不可能に近い、こう思うのです。  交付税役割は、こうおっしゃいましたが、交付税について少し議論をしてみたいと思うのです。  今度の交付税もそうですが、十兆二千億を超えましたが、約十兆二千億の交付税があります。この交付税中身を、一体今我々はどうとらえるべきかと思うのです。交付税役割、本来持つ性格はどういうように御認識ですか。
  14. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 地方交付税の持つ基本的な役割は、地方団体財源保障機能並びに財源均衡化機能にあると考えております。
  15. 加藤万吉

    加藤(万)委員 かつてシャウプ税制がしかれまして、平衡交付金があったときにさまざまな議論がありました。いわば標準的行政というものに対して地方財源が少ない、地方団体のそれぞれの財源が少ない、これを埋める、そして平衡交付金で見る、さらに財政調整機能を多少そこに持たせて平衡交付金の総額を決める、このときにも実は議論があったのですね。  私は先輩からお話を聞きますと、行政需要基準財政需要額収入額、これを埋めるだけでは国の政策として余りにも一元的ではないか。むしろ極端に言えば、地方交付税なしでも地方行政ができるという状況もつくり上げていく。全国的には財政調整機能が必要ですから一定のものは必要であろうけれども基準行政を定めてその上でやるということは画一的な行政になる可能性があって、地方の自主的な、あるいは自立と言われる地方行政を阻害するおそれがありはしないかという議論がさまざまあったのですね。  しかし、それは歴史的な経過を経て、今財政局長がおっしゃったような形で交付税性格を見るというふうになりました。最近はどうですか。今財政局長がおっしゃった地方財政調整機能基準行政需要を満たすための交付金というものの確保を超えて、交付税そのものが国の、中央財政支配的機能を果たしていませんか。というのは、今回の当初予算、それから補正予算でもそうですが、国が行う例えば今度の補正予算でいくと五兆円の公共事業その他の事業を含めて内需拡大方向に向かってやる、国際的な非難を免れるためにと言ってもいいのでしょうが、しかしそれの財源不足額が実はほとんど交付税でカウントして処理する、こういうことでしょう。  大臣答弁で、私が予算委員会でやった折にもそうですが、これだけの仕事をやるのに地方財源は足りませんが大丈夫ですかと言いましたら、いやそれは大丈夫です、交付税を含め財源的な手当ては全部します、単独事業の八千億円についても地方団体財政的に困らないような形ですべて処理をします、できる限り財源確保はいたします、こう言っています。  しかし、それでは交付税中身は一体どうなのか、少しく検討してみますと、今言いましたように中央財政支配的な、あるいは政府と言ってもいいでしょうが、政府経済運営に必要な交付税の位置しか出ていないのですよ。本来持つべき地方団体間の調整機能、あるいは地方団体が持つ財源不足額を全体の平衡交付的な要素を含めて調整しようといういわゆる交付税という機能から、中央仕事をさせるためには交付税の中の算入額を拡大してその中で仕事をさせる、いわば交付税が本来持つ性格と大分異なってきているのじゃないでしょうか。財政局長どうでしょう。
  16. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 特に今回のように内外の要請にこたえるために国の公共投資を大幅に拡大し、その実施はほとんどが地方公共団体の手によってなされるわけでございますので、その財源について地方債及び交付税措置をするというようなことは、私どもとしてはそれを円滑に進めるためには必要なことだと考えております。ただ、それが知らず知らずのうちに交付税中央地方に対する財政的支配の手段と化せしめているのではないか、こういう点についての御指摘でありますが、もちろん手法としてこういった方法によらざるを得ないということは現実問題として御理解をいただけると思うわけでございますが、問題は、そういった交付税の基本的性格がそれによってゆがめられてくるのではないかという点についての御懸念であろうかと思います。  私ども地方交付税についてはあくまでも地方の自主的に使用し得るところの一般財源だと考えておるわけでございます。したがって、交付税の算定に当たっては常にそういうような考え方を基本に置いてこれまでも行ってきておるところでございます。公共事業にいたしましても、確かにこれは国外からの要請もございますし、また国全体として内需拡大という要請ももちろんあるわけでございますが、それとともにそれぞれの地域においてはそれぞれの公共事業を必要とする、いわば公共事業配分そのものが地域の要請に基づいて行われる形による部分も極めて大きいのではないかと考えておるところでございます。したがいまして、それに対して交付税をも用いた財政的な措置をしていくということは、これも地域を無視した単に中央の都合だけの財政的な措置のやり方では決してない、そういうものではなかろうかと考えておるところでございます。  しかしながら、御指摘の点は私も十分理解をしておるつもりでございます。地方交付税性格というものを、今後ともこれが設けられたときの趣旨に沿うように運営することが基本であると考えております。
  17. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大臣、少しく数字を挙げて御説明した方が御理解いただけると思いますが、六十二年度の財源不足額は二兆三千七百五十八億円、当初です。このうち国が交付税その他を含めまして処理した金は、たばこの金が千二百億円、交付税が三千八百二十八億円、交付税に算入する額は一兆七千六百二十四億円です。多分この数字は間違いないと思います。すなわち財源不足類、六十二年度の地方財政に対して地方団体財源がなくて大変困ります、大臣がおっしゃったその分については国がちゃんと交付税その他で見ますというお金は、今言いましたように一兆七千六百二十四億円を加えて二兆二千六百五十二億円なんです。財源不足額に対する充当した金は六十二年度は九五・三%です。これは六十一年度は九七・六%でしたから少し下がりました。問題は、一兆七千六百二十四億円、これから一兆七千億と言いますが、この中身は、今財政局長がおっしゃったように地方団体で必要な公共事業もその中に繰り込まれております、もちろんそうですよ。しかしこの大半は——大半はというよりも、地方団体仕事をこれだけしてもらわなければ全体の国の経済あるいは成長率の確保の面から見ても難しいんですということを加えて一兆七千億円の交付税への算入を決めて財源確保してあるのです。この限りにおいては、大臣がおっしゃいますように、地方団体仕事をやる上に必要な財源確保はしました、このことはまさにそのとおりなんです。  しかし、この一兆七千億円という膨大な交付税へ算入された額は、やがて地方財政へ行きますと公債費にはね返ってくるわけですね。公債費の中にはね返って財源の償還に充てられてくるわけです。いわゆる交付税総額の中に占める、国が必要とする事業に対して、地方団体の要請もこれありということを含めますけれども、いずれにしても交付税に算入することによってこの事業はできますよといったお金は、こういう形で交付税算入、だから仕事をしなさい、可能でしょう、こういう形になっているのですよ。  さて、それではいま一つ大事なことをぜひ大臣のお耳に入れておきたいと思うのです。六十二年。度の当初予算で、もし国の財源だけでこの財源不足額をカバーするとしたらどのくらいの比率になるのだろうか。これは多少計算の基礎が難しくなりますから、そのままストレートにという話にはならないかもしれませんけれども、例えば六十二年度における財源不足額の補てん地方債の交付税算入額、これは当初予算でございますが一兆七千六百二十四億円ですね。当初の二兆三千七百億円の財源不足額に対して後年度国で加算をされるお金は、全部当初で話をしますが、調整債に係るもの二千四百五十億円、それから千八十億円、それから臨特等の三千百六十三億円、足して六千六百九十三億円ですね。財源不足額に対する充足率、すなわち国が財源不足額に対して後年度加算をしましょう、負担をしましょうというお金は四九・三%です。半分いかないのですよ。財源不足額を生み出したそもそもの原因については今やりとりがありました。しかし、その財源不足額に対して後年度国で見ましょうという金は四九・三%ですよ。もちろんこの中には八〇から一〇〇とかいう国の負担の算入額の率がありますから、これは二分の一ずつと決めた上で計算した数字ですけれども。  ところが今度は、六十一年度でまいりますと、同じような方式で出しますと、六十一年度は財源不足額が一兆一千七百億円ですね。これに対しての補てん地方債の交付税算入額は九千二十億円。これに対して、後年度で国が加算をされるという額は六千二百九十七億円ですよ。この率は、国が後年度加算をしますという額を加えてまいりますと、国の財政負担額は、財源不足類に対する負担割合は七四・三%です。去年までは約七五%財源不足額に対して平たく言えば国が見ましょう。今年度は五〇%を割ったのですよ。こんな手法をもってしたら、地方財政が、地方債の補てん後交付税に算入されて交付税の弾力的運用がなくなるのは当たり前じゃないですか。大臣、どう思われますか。
  18. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 昭和六十一年度と六十二年度を比較をして、地方債で措置をしたものについての後年度の国の措置の割合を御計算になられてお示しをいただいたわけでございます。私ども、ただいまの御計算なさいました数字について詳しく確かめるいとまはございませんけれども、一般的に申しますと、両年度において後年度の国の措置の割合が違うとすれば、六十一年度においては財源不足は国庫補助負担率の引き下げに伴うもの、その影響額のみが財源不足であったのに対し、六十二年度はそれ以外の通常収支におきましても八千七百八十八億円の財源不足が出た、この点の事情の違いが一つあろうと思います。  国庫補助負担率の暫定的引き下げに伴う措置については、一般財源による措置のほか、起債で措置をいたしたものの、かなりの部分は後年度国が措置をするという約束に相なっておりますので、やはりそれだけ措置率は高くなるということになろうかと思いますが、六十二年度の場合には、それ以外に通常の収支の財源不足額が生じ、これに対しましてはその大部分がいわゆる財源対策債という形で措置をされますので、これは後年度における国の措置を明確に約束されたものではなく、それぞれの年度においてまた財源対策を考えていくわけでございます。そういった点についての違いがあろうかと思います。  ただ、いずれにいたしましても、地方債による措置というものが随分大きくなってまいります。最近における情勢を反映してそのようになってきたわけでございますが、同時に地方団体の公債費負担も極めて膨大になってまいりました。したがって、こういった起債で見て交付税で後年度措置をするというやり方についても、それなりにきちっと法定額以上に上積みするという約束のあるものももちろんございますけれども、ただ一般的に申しますと、地方団体自身としてもだんだんやはり借金の額がふえてまいりますので、そういった事業の消化そのものも財政運営面から見てやはりためらうということになるわけでございます。そういった観点から、今回の補正においては、従来と違いましてオール起債ではなくて、やはり交付税による措置がぜひとも必要だというぐあいに考えて、こういった措置を講じたわけでございます。  公債費を将来交付税に算入していくことについての交付税そのものの硬直化のおそれということについては、私どもも御意見まことにごもっともであるというふうに受けとめております。その辺については、今後地方財政対策等を通じ、あるいは交付税の今後のあり方について十分認識し努力をしてまいりたいと思います。
  19. 加藤万吉

    加藤(万)委員 六十一年度、補助金に対する財源の手当てをしました。そのとおりですね。ところが今度の補正で、六十一年度の補助金のカット分、六十二年度の補助金のカット分、これに対して千五十億円穴埋めしますね。六十一年度の補助金の引き下げによる六十二年度影響額一兆二千八百億円、これは当初ですが、それが今度の補正によりまして千五十億円、臨時財政特例債で国費減額相当額千五十億円出しますね。わかりましたね。これだってそうでしょう。これは総体申し上げる必要がないから、私、後でこれだけ抜き出してみたのです。これだって六十二年度補正額による地方財政負担でしょう。六十一年度は七四%しかない。切り上げて七五%としましょうか。国の負担割合七五%です。先ほどの私の議論です。補正を加えたら、六十二年度に地方債が交付税に算入される負担割合、同時に財源不足額と国の負担割合、どのくらいになるか、私はそこまで計算し切れなかったわけです。それは高いですよ、補助金だってこうなっているんですから。  今財政局長は、三千五百億円別途見ましたから、こういうお話で、したがって交付税総額については相当思い切って措置したつもりです、こうおっしゃいましたね。大蔵省の方、見えていますか。三千五百億円を積み上げるときに、大蔵省の方は大分渋った、率直に言えば。今財政局長胸張って、三千五百億円交付税を入れたんですからその負担割合はそう見捨てたものじゃございませんよという意見ですけれども大蔵省は渋った。なぜかといえば、六十一年度の補正の際に御案内のように減収になりました。全体の補正をいたしました。その際に、あれは五千何億円ですか、交付税特会から借り入れをいたしましたね。その二分の一は国の負担ですよ、二分の一は地方が償還しますよ、こういうことですね。交付税特会の償還財源については二分の一方式ですね。そうですね、財政局長。——ちょっと待ってください、間違ったら後で訂正してもらって結構ですから。交付税特会の借り入れを償還する際の負担割合、これは六十一年度補正の際……(矢野政府委員「利子を国がみんな見た。元本は全然入っていません」と呼ぶ)そうですか。ここでやりとりしてもしようがない。いずれにしても、その際に交付税特会から借り入れをした。したがって、本来はそれはそれだけ国が負担をしたわけだから、三千五百億円六十一年度の剰余金を何も交付税に取り込む必要はないという意見で、自治省側とちょうちょうはっしやられたという話は私は陰ながら聞いている。やったかどうか知りませんよ。多分そうだろうと思われます、これは大蔵省の言い分ですから。  ところが、今度の補正もそうですが、本来六十一年度の剰余金財源というのは、財政見積もり、いわゆる六十一年度の税収見積もり、もしあのときに減収であるという見込みを立てずに、当初予算どおり税収があると見込んだ場合には、あの措置は必要なかったわけでしょう。六十一年度の決算は結果的には二兆五千億近い国の剰余金が出たわけですね。あれは見込み違いですよ。したがって六十一年度の補正で減額予算を組む必要はなかったわけです。しかもその中に利子分を含める交付税特会の借り入れをしたから、結果的にこの三千五百億円を積み上げるなどということは必要ないのだというような御意見は全く当を外れていると言わざるを得ないのです。やったかどうか知りませんよ、多分そうだろう、私は聞いているだけですから。  そうしますと財政局長、三千五百億円積み上げたからというけれども、本来六十一年度の予算の剰余金として交付税で配られるべき金じゃないですか。財政需要として五兆円ふえたから、その分として三千五百億円六十一年度剰余金から回しますよというのは、サミットで決めた六兆円の内需拡大のために必要な財源措置は国の必要な政策として出たものですよ。したがって三千五百億円を六十一年度剰余金から回す必要はないのです。これは別途財源を見出して六十二年度のサミット以降の我が国内需拡大を含めた事業計画をやるべきですよ。私は交付税が二千二百億円組み込んだのは売上税がなくなりましたからわかるのです。売上税がなくなった減収分を六十一年度の剰余金で埋めた、これは論理的にも正しいでしょう。三千五百億円の分を埋めたから六十二年度の地方財源に対しては相当緩和したつもりですなどということは、財政局長、ちょっとおこがましいですよ、本来この財源は国の政策として必要な財源として確保すべき財源ですから、  六十二年度の補正に伴う三千五百億円は別途考えてみる。例えば国の財政収入がうんと多ければ一般財源で持ってきてもいいじゃないですか。いろいろ方法はあると思うのですよ。六十一年度の剰余金は本来地方団体に交付されるべき財源です。そして国の政策の違いによって、売上税の廃止によって穴埋めされた分、これは引いてもいいでしょうのただし三千五百億円の追加公共事業を含めた補正にこの財源を使うのはどうも間違いではないか、私はこう思うのです。どうでしょうか、まず大蔵省の御意見を聞きましょうか。
  20. 水谷英明

    ○水谷説明員 お答えいたします。  まず、六十一年度の補正予算時におきまして交付税特会が運用部から借り入れを行って交付税の総額を確保したということでございまして、今から見ますれば、結果的にそんな必要はなかったということになるわけでございますが、当時の時点におきましては、一兆四千億もの所得税、法人税の減収が見込まれ、その三二%相当分になりますと四千五百億円もの多額でございます。地方交付税として予定されていたものを減額するわけにはいかない、国の財政事情にゆとりのないことは先生よく御承知いただいていると思いますが、そういうことでやむにやまれずに資金運用部から借り入れを行ったわけでございます。その際の四千五百億円の措置につきましては、六十年度補正の実質的な措置、実質的な負担関係を参考にいたしまして、借入金の元金は交付税特会から償還していただきますが、その利子分については全額国が見るということにしたわけでございます。  今回、税制改革見直しというものが行われる一方、地方交付税の決定をどうしても八月の末にやらなければならないという中で、実は自治省さんともいろいろ協議をさせていただいたわけでございますが、目の前に第一次補正予算で決定されました多額の公共事業の追加が現実問題としてあったわけでございます。この公共事業の追加につきましては、もちろん対外的な約束という問題もございましたけれども、やっぱり国内に広い地域にわたって不況というものが浸透しているという点も十分勘案されているわけでございまして、この公共事業の追加の地方負担というものが非常に多額に上っている。約九千八百億円と承知しておりますが、この地方負担について現実的に、従来二千億程度の場合には、こういう追加事業につきましては地方債でやっていただいたという例もあるわけでございますけれども、ことしの場合にはなかなかそういうわけにはまいらないということで、いろいろ自治省さんと御協議した結果、六十一年度の剰余金をもって補てんするというのが現実的解決ではないかということでやらせていただいたわけでございます。  国の財政事情、相変わらず厳しい状況が続いておりまして、地方財政観点から先生がごらんになった場合にいろいろ御議論のあることは承知しておるつもりでございますけれども、今回は今申し上げましたような事情がございますので、その点は御理解をいただきたいと思います。
  21. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 昭和六十一年度秋の措置につきましては、ただいま大蔵省の方から御答弁があったとおりでございまして、利子は全額国庫の方で見る、元金は交付税会計で負担するということでございます。  そこで、今回の措置でございますが、御指摘のように、売上税の穴埋めにこれを充てることはやむを得ないにしても、公共投資の追加に伴う地方負担については本来これは用いるべきではなくて、それは交付税そのものなのだから交付税本来の目的に従って使うべきではないか、こういうような御意見と存じますが、先ほども申し上げましたように、今回の場合、結果的に剰余金が生じてまいりまして、それに伴って交付税の精算増が出てきたわけでございます。そういう点で申しますれば、結果的に昨年秋の措置、借り入れによって穴埋めをするという措置は必要なかったのではないか、これは結果から見ればおっしゃるとおりかもしれませんが、ただ本年度の場合には、当初の地方財政対策以後におきましてさらに新たな事情が出てまいりました。一つは、先ほど申し上げましたように税制改革関係の見直しということであり、もう一つは、従来にほとんどその例を見ないような大規模な公共投資の追加という事態でございまして、この追加に伴う地方負担については、従来は、昨年の場合にもあるいは一昨年の場合にも、金額がそう大きくなかったということもございまして全部起債で措置してきたわけでございますが、今回の場合、地方団体の公債負担の状況を考えますと到底そういうわけにはまいらないということから、とにかくこの資金を公共事業のための地方負担のために使用すべきであるという考えに立って措置を講ずることが現実問題として適当であると考えたわけでございます。  御指摘のように、精算増は、そのままにしておきますれば当然昭和六十三年度の交付税の上に加算されるという性格のものでございますが、それはそのままにしておきまして、仮に追加公共事業地方負担のための財源を他に求めるといたしましても、現在の国の財政状況、特に減税等が当初の額よりもさらに上積みをされるという状況どもあわせて考えますと、結局は、そのための交付税財源を当面確保するとすれば、もう既に基本的にはやめたと言っているところでございますが、臨時異例に借り入れの措置をとるとかあるいは特例加算をする。その場合の特例加算についても、将来これを返していかなければならないというような措置になるわけでございますが、いずれにしてもそういったような措置は、地方財政を本年度だけでなくて来年あるいはそれ以降も含めて考えますならば、そういう方法によることは必ずしも適切ではない。むしろ現在結果的に生じてまいりましたこういった剰余金に伴う交付税の精算増を用いて当面の措置をすることが地方財政全体から見ても現実的であり、より適切であるという判断のもとに、今回このような措置を講じたわけでございますので、御理解を賜りたいと思います。
  22. 加藤万吉

    加藤(万)委員 理解はできませんけれども、当面の措置としてやられたその限界の範囲で理解しろというのなら私はできるのです。ただ、先ほども申し上げましたように、いわば交付税というものをそういう形で安易に利用するという姿勢が問題だと私は言っているのですよ。  いわゆる交付税というものは、先ほどもお話ありましたように、財政平衡交付的な要素を持ちます。それから地方団体間の調整的能力を持ちます。しかし、国のそういう施策によって交付税が左右されてくる、同時にまた起債が拡大をする、しかも起債は交付税にカウントされてその比率は高くなる、こうなってきますと、地方団体交付税の網の目の中にあるということになりますよ。網の目の中に全部取り込まれているというふうになりますよ。したがって、交付税一般財源であるという論理がだんだん希薄になって、地方団体の行うべき自主的な、あるいはその地域に合った行政というものが運営できなくなりますよ。ですから今度は地方団体の長はどういうことになってくるかというと、物取り主義ですね。あの補助金は起債に入れてくれ、起債を消化させてくれ、同時に起債は交付税にカウントさせてくれ。本来その都市が持つべき構想というものに対する財政需要としてみずからの自主財源の能力を失うわけです。これで多極分散型の都市ができますか。こういう構造で多極分散型の新しい日本列島に改造していくべき財政構造としていいですか。  先ほど当初のお話のときに、交付税もそれなりの役割日本列島の新しい改造計画には果たしますと言われましたが、中央財政の支配の網の目の中に交付税まで取り込まれて、交付税は御案内のように十兆円ですから、五十四兆円の地方財政規模に対しては五分の一強ですね。これがだんだんそういう形になってきたら、そして通常必要な財政経費というのは一定化されているわけでしょう、例えば生活保護とか学校教育とかいろいろなものを含めまして。そうしますと、弾力的運用なんというのはできなくなりますよ。私は金太郎あめだと言っているのです。というのは、どこの都市をめぐっても同じ顔しか出てこない。先ほど国土庁の方がその都市に必要な地域的な条件、例えば今の企業城下町というのは、コンビナート地帯が壊滅することによってなくなってきたわけですね。そうしますと、岩子には例えば釜石なら釜石、札幌なら札幌、熊本なら熊本の新しい拠点都市を中心とする顔というものがつくられていかなければなりません。ところが交付税でこういう形で縛ってくる、あるいは国の必要な公共投資計画を国が五兆円必要だということで交付税にカウントするから交付します、こういう形になってきますと、まさに日本列島どこを折っても金太郎あめのような同じ顔しか出てこない。これでは多極分散型の都市構造にはならぬのじゃないですか。これは議論のあるところですから、ひとつそういう視点もお忘れないようにという念押しの話です。  さてそこで、今言ったように交付税がだんだん地方財政の網の目のように張りめぐらされまして、地方団体がこれに反発する力がだんだんなくなってくる。これからの脱出をしなければいけないと私は思うのです。そこに今の交付税を含めまして補助金をどうするのか、あるいは交付金をどうするのか等々の財政構造全体の見直しが必要になってくると私は思うのです。大蔵省がおっしゃるように三二%の地方交付税があって地方団体は富裕だ、したがって交付税見直しという意味じゃないのですよ。財政構造全体を含めて、地方と国との行財政配分も含めまして、どういう見直しをすべきかという時期に来ておる。ならば、自治省の新しい税制改革スタンスもそのところを発射台にしながら、当面の措置はどうするのか、六十二年度の予算に対する要求はどういう形でまとめていくのか、これが必要ではないか、こう思うのです。  大臣、少しやりとりが長くなりましたけれども、こういう発想の中に立つべきだ。交付税もそういう意味合いを持たせる条件を個別個別、一つずつ出てきますよ、今の三千五百億円のやりとりでもおわかりでしょう。財政局長は多分私の意見に半ば同感の御意思のようですから、そういうことを含めて当面の財政計画はありますよ。それは了としましょう。しかし長期的に見て、それが侵食されることが結果的に交付税の、地方団体から見れば一般財源というものを侵食しているということに対して、もっとしっかりした視野を持つ必要があると私は思いますが、いかがでしょうか。
  23. 葉梨信行

    葉梨国務大臣 先ほどからの先生財政局長とのやりとりで大体尽きているわけでございますが、先生からのお話でございますので申し上げてみますが、地方財政は巨額の借入金残高を抱えておりまして、各地方団体財政運営においても年々公債費負担が増大する極めて厳しい状況にあることは御指摘のとおりでございまして、早急に財政構造の健全化を図ることが必要であると考えておるわけでございます。  このような見地から、今回の補正予算に基づく追加公共事業等に係る地方負担につきましても、従来のように全額を地方債によることなく、三千五百億円の地方交付税の増額を図ることとした次第でございます。しかし、それについては先生いろいろ御意見がおありになったわけでございますが、今後とも行財政の守備範囲の見直し行財政運営の効率化等により、引き続き地方歳出の徹底した節減合理化を図るとともに、地方税地方交付税などの地方一般財源の着実な充実を図るように努めていきたいと思う次第でございます。  最後のくだりでございますが、先ほど私も御答弁申し上げましたように、通常国会当初に提出いたしました売上税、そして地方売上譲与税、それから七分の一を地方売上譲与税といたしまして七分の六を地方交付税の算入対象として地方配分する、こういうことはまさにその地方税源充実強化を図る、安定的な財源確保するという課題にこたえる一つの答えであったと私どもは思うのでございます。ただ、それが売上税という形、いろいろな徴税の手法等について御異論があった、また与党の中にも一部あったと認識しておりますけれども、基本的な方法としましては、私は地方税源充実という先生がまさに強調しておられ要望しておられる課題にこたえる答えであったと思うのでございます。  先ほど私が申し上げたましたように、廃案になりました上は、もう一度改めていろいろと考え方を打ち出していかなければならない。そのときには野党の先生方からもこの地方税源充実という課題にこたえるためにまたアイデアを出していただいて、そして与党と野党、そして政府とがそれぞれの議論を通じてこの目的を実現するためのシステムを考え出していきたい。これが、ただいまの利子課税を行って地方税源充実を行うという第一のステップが完成しましたならば、次の課題であろうと考えているわけでございます。
  24. 加藤万吉

    加藤(万)委員 交付税現状からの脱出問題を私はひとつ強く検討というか、原則的な立場をしっかり踏まえた上で、税制改革もそこの視点から出るようにぜひ自治省の検討を煩わしたい、こう思います。  もう御案内でしょうが、このほかにあるのですから、地方財政は。そうでしょう。単独事業に対する問題もあります。NTTの株のあれもそうでしょう。いわゆるNTTの株の利益を地方へ分配、する。約四千億程度。これだって現実には今度地方債と同じ扱いになるわけですね。この四千億、NTTの株の益金ですか、仮に地方におろした場合に、それに見合うお金は当然地方債の発行になるのでしょうね。したがって、片一方は将来は補助金として確保されますけれども、片一方のそれに対応する地方財源負担はまたふえるのです。それから今度の一般建設事業債の負担の拡大で八千三十九億円と聞いています。これもそうでしょう。これもやがて、交付税にどういう形でカウントされるのか、あるいは地方債そのものになるのか、これからの財政の始末の仕方でしょうけれども、これとてもそう。それから先ほど言いました追加公共事業の九千七百八十二億円。三百九十二億円や千三百五十億円は国がいろいろ面倒見ましょう。これを差し引いても八千三十九億円は地方債への転換、やがてこれは交付税のカウント、こういうことになるのです。それは大変ですよ。交付税そのもの性格がまさにここでゆがむかゆがまないかという時期ですよ。私は先ほど六十二年度は四九・五%になったと言った、いわゆる国と地方財政負担割合が。これは大臣に失礼なお話かもしれませんけれども地方と国との財源配分で悪い意味での画期的なことになってしまうのですよ。ぜひ負担割合という問題に対する考え方を、少なくとも六十一年か六十年、そのくらいまでに持ち込む努力をさらに私は要請します。でなければ交付税性格そのものが変わってしまう。大変な六十二年度の当初予算並びに補正予算の中の地方債への転嫁だ、こう思います。これが財政逼迫になることは申し上げるまでもありませんから、ぜひひとつその立場での六十三年度予算に向かっての予算確保をお願いしたい、こう思います。  次に、地方税について幾つか御質問を申し上げます。  今度の地方税減税、先般我が同僚議員の質疑応答でいろいろありました。税務局長、先日の答弁で、六十三年度地方税減税をやります、その額は五千七十二億円、それから六十四年度は大体六千六百億円、それに必要な財源利子課税で、こういうお話でございましたね。ただ、これが四月一日になりますと六十三年度の財源確保は二千五百億円になる、こうおっしゃいました。これは間違いないですか。
  25. 津田正

    ○津田政府委員 今回御提案しております住民税の減税規模でございますが、六十三年度におきまして初年度としまして五千七十二億円、翌年度以降平年度化いたしますと約六千六百億円の減税をする。さしあたっての財源の問題でございますが、利子課税が平年度化いたしますと大体六千五百億円程度見込めると思うわけでございます。政府提案でいたしました一月一日導入ですと三千五百億弱と申しますか三千億から三千五百億弱くらい見込めたわけでございますが、四月一日ということになりますと、それよりも約一千億減の二千五百億をもうちょっと下回るのではないか、こういうふうな見込みを立てておる次第でございます。
  26. 加藤万吉

    加藤(万)委員 六十三年度の減税に見合う財源不足は何でカバーするのですか。
  27. 津田正

    ○津田政府委員 まずこの問題、初年度をどうするかという減税規模の問題に絡むわけでございまして、私どもこういうような考え方でまず五千億くらいというふうにさせていただいておるわけでございます。  御承知のとおり、通常国会におきまして私ども初年度の減税といたしまして二千三百億円の減税規模を御提案したわけでございます。その後、先生住民税仕組みを御理解いただいておりますので、かなり早い段階からやり直しは難しいのじゃないか、こういうような先生からの御指摘もあったわけでございますが、私ども地方団体あるいは給与支払い者等実際税務に携わる方々の御意見も聞いてまいりますと、どうにも現段階におきましては本年度の減税が難しい、事実上困難、こういうような事態になったわけでございます。  その際に、来年度の減税規模といたしましては、住民サイドの要望と申しますか期待ということを考えますと、当初本年度二千三百億円減税という御提案をしたという一つの事実もあるわけでございますので、少なくともその倍くらいは住民の側からして期待があるのではないか、こういうような考え、もちろん減税規模のアッパーリミットは恒久財源としての利子財源でございますので六千五百億でございますが、二千三百億円をミニマムといたします最大限六千五百億、その間でどの程度がいいかという初年度の規模としましては、今申しましたように二千三百億円の少なくとも倍は、本年度減税を実施できないという事情を御理解いただくためにもやらなければならないのではないか。  それから財源の面でございますが、先ほど御答弁申しましたように、一月一日でございますと大体三千五百億円ないし三千億円くらい期待できる。これは理論的ではないのでございますが、通常国会で御提案いたしました減税規模二千三百億円、それから当時利子課税で見込んでおったものが六百億円程度でございました。ですからその間の千数百億円というのはほかの財源、あの場合では法人関係税あるいは売上譲与税、そういうものが全体としてバランスをとったものでございますが、住民税と利子との関係から申しますと、千数百億円というのは何らかの財源確保をしなければならない。そうすると三千億ないし三千五百億円の利子財源が期待でき、そして当初の国会で個人住民税と利子との関係で申せば千数百億円を他の財源で見つけるというような感覚からすると、まあ五千億くらいがいわゆる住民負担というサイドの面あるいは財源の面からしましても私どもとしては適当な規模ではないか。  それじゃ果たして千数百億円という財源、特に幹事長・書記長会談の結果四月一日になりますと、これが二千五百億円以下になってまいりますので、むしろ二千数百億円の財源を今後確保しなければならない。これが私どものノルマでございますし、また地方団体財政運営を円滑にするためにも必要でございますが、そういうような事態になっておるわけでございます。  それじゃ具体的な財源、現段階でどうかということでございますが、経済情勢そして国税等の動きを見てみますと、ある程度自然増というのは期待できそうでございます。これもまた年度当初の結果しか入っておりませんので今後どうなるかわかりませんが、ある程度の期待も持てる。それから来年度の税制改正、やはり抜本改正を今後も進めていかなければならない。その中におきまして何とか財源確保いたしたい、このように考えておりまして、正直申しまして、具体的に現在何で補てんする、このような見通しまでは持っておらないわけでございますが、以上のような考え方から五千億円という規模とし、それに対する財源補てん、来年度しなければならないノルマというものを考えておるわけでございます。
  28. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大蔵省、六十二年度の税収見通しは今のところは相当不確定要素ですが、私の手元には六十二年六月現在の租税及び収入印紙の収入額調べがございます。いわゆる予算額に対する進捗割合というのは相当高いですね。例えば、これは減税問題が入りますから所得税などは年末調、整で変わってくると思いますけれども、一一・六に対して一二・三ですね、六月現在。これは七月が出ていると思いますけれども。特に有価証券取引などは、昨年度の六月時に比べて一二%が三五・三%、額としても千七百六十一億八千万円ですか、相当高いですね。堅調だ。しかも、経済企画庁をきょう呼んでおりませんが、経済の成長も底をついた、上向きに転化した。こう見ますと、六十二年度の税収見込みは相当強気で見ていいと私は思いますが、余り数字的なことは言わぬでいいですよ、どういう見方を現時点でされておるのか、見方の方向だけ。
  29. 長野厖士

    ○長野説明員 六十二年度の税収でございますけれども先生仰せのとおり、ただいままで判明しておりますのは六月末まででございますけれども、確かに伸びは高こうございまして、対前年比で一五%余りの増加になっております。  ただ、何分にも進捗割合という観点で申しますとやっと一〇%、年全体の税収の一割が判明したところでございますので、これから先につきましては、まだもろもろの経済情勢を見なければならないと考えております。六十一年度から剰余金が出てまいったわけでございますけれども、六十一年度の税収自体、経済成長率と税収を割ってみますいわゆる弾性値という数字で見ますと二を超えておるというような状況で、その前の五年間は一を切っておりましたから、異常な数字が出ております。これはひとえに土地とか株とかの取引の活発化という要素で税収が大きく伸びてございますので、これがどういう持続性を持つものか等々、これからの成り行きをいま少し眺めさせていただきたいと考えておるわけでございます。
  30. 加藤万吉

    加藤(万)委員 税務局長、おっしゃったとおりで、六十二年度は国税関係は堅調ですよ、と私は見ます。  それから経済成長率も、内需拡大方向その他を含めて相当堅調と見ていいでしょう。おっしゃるように、年度にどういう状況が起きるかわかりませんから、それは不確定要素としましても、相当堅調だというふうに見ていいでしょうね。当然この地方税に当てはまる項目も含めまして六十三年度の地方財政収入は相当大きい、こう見ていいでしょう。  今税務局長がおっしゃった中で、二千五百億円の減税との差、これは利子課税を除きまして四月一日から実施ということで、その具体的な財源は明示できない、そのとおりだと思うのです。具体的な内容の明示ができないということは、仮に五千百億円の減税規模が六千五百億円になっても、財源の面から見るなら六十四年度の地方税減税にしても同じことだということですよ、極端な議論をしますけれども。いや、お笑いになるなら、今の段階で二千五百億円の減税の財源の穴埋めの額をきちっと示しなさい。示されないのですよ。私もそうだと思うのです。ならば、それは六千五百億円にしても同じなんです。  どうして財源を見出すか。利子課税も含めまして、私どもはマル優制度については利子課税反対ですから、したがってそれらも含めてどう財源を見出すかということと、地方税減税を六千五百億円以上、いわゆる六十四年度前倒しをするかしないかという政治的な問題と財源の問題とは切り離して議論ができるということです、議論としては。もし政治的な要請があれば、六十四年度分の減税を六十三年度執行することも不可能ではない。それは財源をあとどう見出すかという問題はありますよ。しかし政治的な要請として、今の与野党間のいろいろなやりとり、後で述べますが、地方税交付税との減税規模の問題等々考えていけば、六千六百億円の六十四年度地方税減税を前倒ししても、財源的には、財源を見出す条件としては、不確定要素を含めて、今の大蔵省の六十二年度の税の堅調さぶりを見ても、去年より二〇%も多いというのですから、国税に対して一五%もふえているというのですから、この推移を見ても、その財源確保には事欠かないと私は思っているのです。  もちろん、それは足りなければいろいろな方法はありますよ、政治的には。NTTの売却益をどうするかという議論もありますけれども、少なくとも六十二年度から実施をし、六十四年度に二段階で地方税減税をする必要性はない、どうですか。
  31. 津田正

    ○津田政府委員 私自身も、来年度の補てん財源につきまして現在明確に結論を得ておるわけでございませんので、そういう意味では先生の御指摘のとおりかと思いますが、しかし四月一日に利子課税を延期したことによりまして、もう既に一千億の財源調達についてのノルマがふえておる、こういう事情も御理解いただきたいと思います。
  32. 加藤万吉

    加藤(万)委員 六十二年度と六十四年度の地方税減税を二段階に分けた理由は何ですか。
  33. 津田正

    ○津田政府委員 先ほど申しましたように、本年度通常国会に提出いたしました二千三百億円の減税というものが、年度途中で実施できなくなった。それで来年度から初年度としてやらなければならない、そういうような住民サイドの期待というものにこたえるには、その倍以上は確保しなければならない、こういうような要請と、もう一点、財源面で三千数百億利子財源があれば、あと千数百億円ぐらいは、考えてみれば六十二年度でもやはり努力すべきものであった。もちろん法人課税あるいは売上譲与税等の問題も絡んで、全体としてでございますが、個人住民税の減税と利子課税収入というようなものの見合いからすれば、千数百億円の財源調達というのは何らかの意味でやらなければならない、こういうような事情を考慮しまして、五千億円から出発する、こういうような考え方になっておるわけでございます。
  34. 加藤万吉

    加藤(万)委員 六十二年度実施できないという問題は、大臣の方からも予算委員会や私ども意見、実際問題としてできないだろうということで六十三年度へ繰り越したわけですね。ですから、これは手法としてそういう手段をとられたことはわからないわけではない。今まだ与野党で詰めている段階ですから、その結論について言うのはいささか時宜に適してないかとは思いますが。しかし、六十三年度の財源の面からという議論は、これはいただけませんね。どう見たって、今の税収の堅調さぶりから見て、また来年度はさまざまな税法改正が出るわけでしょう、いわゆる資産課税の問題を含めまして。これは翌年度に持ち越す分もあるでしょうけれども地方財政としてはいい意味での地方財源が相当確保できるという条件等もありますね。もちろん我々が主張しておりますように、NTTの株の受け払い利益金を地方に対してどう分配するか、これも一つの政治的な意味を含めて減税財源になり得るものですよ。ということになりますと、六十四年度の減税額を六十二年度に前倒ししてもおかしくないですよ。余りそこに固執をされますと、じゃ地方は金がなければ何もできないのかということになりかねませんからね。財源の問題については政治的な要素を含めて解決するという決断をすれば、六十四年度の地方税減税を六十三年度に前倒しすることは不可能ではない。こういう意見だけを、これは見解の相当な違いといいましょうか、政治家が物を言う立場と皆さんのように行政をあずかっている立場からの差だろうと思いますから、大臣、ひとつこれは考えてみていただけませんか。これは回答は要りません。回答をもらったら大臣責任も出てくるでしょうから要りませんが、政治家としてどう見るかという視点は、今の与野党間の政治折衝の過程をも踏まえてこれありということで、ぜひひとつ腹の中にきちっとしまっておいていただきたいと思うのです。  それでは、今度所得税減税が一兆三千億から一兆五千億になります。これはほとんど確定的と言っていいでしょう。あるいはマル優の問題を含めて、与党の側では四月一日と言っていますから、これも税制上の改正が行われます。このマル優の廃止が四月一日になったことによって地方税がどう減ってくるかという問題は、議論としては本当はしたいところですが、額もそう多額ではありませんからきょうはおきますが、税率構造は相当変化をする、こう私は見ているのです。仮に国と地方との減税の配分、六十三年度を見ますと一兆八千億、所得税が七二・二%、地方が二七・八%、平年度の場合に一兆九千六百億円、国が六六・三%、地方が三三・七%、こんな減税の配分状況ですね。これは減税規模がどうなるかによって変わりますから、今の場合にはそのベースで話をすればということです。  地方と国との減税の配分額が大分違うのですね。例えばこれを今度は県、市民税を含めた税率構造で見てみますと、現行が地方府県民税を含めて四・五%、改正で五%になるわけですね。さらに最高は現行が一八%で一六%になります。その差が、一二・五%の開きが一一%に縮まって、倍率では四倍から三・二倍になるわけですね。所得税はどうかといいますと、同じようなことを言いますと、税率の最低と最高の五九・五%が四九・五%になり、それが倍率でいけば六・七倍が五・七倍になるわけです。  さて、今度の一兆五千億になった場合に、この税率構造の税率の刻みも含めて改正をするという話ですから、地方税の減税税率が現行のままですと、国の所得税の税率の刻みとの差の間で再調整する必要があるのじゃないですか。これはどうお考えでしょう。
  35. 津田正

    ○津田政府委員 御指摘の税率構造の点と総額のバランスということでございますが、まず総額につきまして申し上げますと、所得税の六十年度の決算額が十五兆四千億程度でございます。それから、住民税の所得割の決算額が六兆五千億でございます。したがいまして、住民税の減税の六千六百億というのは六兆五千億の総額の一〇%を超えて一〇・一%程度の数字になっております。それに対しまして、所得税が一兆三千あるいは一兆五千になりましても、現在の所得税なり住民税の総額に占める比率というのは大体同様でございまして、むしろ住民税は踏み込んでおった、こうも御理解いただきたいと思います。  ただ、踏み込んだ理由というのは、まさしく利子割配分につきまして約一兆六千億見込まれるうち、地方が約六千五百億、国税が一兆を切るような状況でございますので、国税とすれば本当はマキシマムが一兆程度の減税規模というものを踏み込んできたわけでございますが、現在の所得税なり住民税所得割の総額に対する比率とすれば、国税が一兆五千億になりましても、既に個人住民税の減税規模というものはその比率になっておるような状況をまず御理解いただきたいと思います。  それから税率構造の点でございますが、これは所得税と住民税の場合、特に住民税は負担分任というような性格を持っておりますのでフラット税率でございまして、基本的には違うわけでございますが、現段階におきまして私どもの御提案しております軽減率というものを見てまいりますと、特に今回の税制改正中心とされております中堅所得者層の減税率を見ますと、給与収入四百万円で夫婦子供二人ということでやりますと、住民税の減税率は二三・三%になっております。それから所得税の一兆三千億案の現在提案しておりますものでは二一・一%、このような格好で、住民税の方が軽減率は若干高くしております。それから五百万円はちょっと逆になりまして、所得税が一八・五%の減税率、住民税が一七・九%の減税率。それから六百万円になりますと所得税は一四・五、住民税は一七・二の軽減率。それから七百万円でございますと所得税が一二・七、住民税が一四・二、こういうような状況でございまして、総額におきましても、また中心でございます中堅サラリーマン層の軽減率というものにつきましても、おおむね現在政府提案の一兆三千億の所得税の軽減率を若干上回るような形になっておるわけでございまして、基本的にいわゆる負担分任という税率構造の違いもあるというようなことから、一兆五千億の所得税の減税規模になりましても、住民税の税率につきましての調整というのは現段階においては要らないのではないか、かように判断しておるわけでございます。
  36. 加藤万吉

    加藤(万)委員 確かにおっしゃるように現行に対する税率、負担割合、一兆三千億の場合には格差がある、いわゆる踏み込んだという御意見、それはうかがえないわけではないのです。それは一兆五千億になりますと大分違いますよ。先ほど言いましたように総額の分野で地方税は一〇・一%、所得税は一〇%、一兆五千億なら十五兆四千億ですから約一〇%ですね。同じですよ。私は、改正案以降減税が上積みになったときにどうするかという話をしているのですよ。  今税務局長がおっしゃったのは一兆三千億のベースでとられましたものですね。今度は逆に見てみましょうか。いろいろ数字を、今四百万、五百万のところがありましたけれども、例えば一番多いであろうと言われる五百万のところを見てみますと、負担割合は所得税で、改正で六・四五が三・六八になるのでしょう。今度の修正案、これは新聞の情報による刻みですからどういう刻みになるかわかりませんけれども、五百万円の所得の人の刻みで言うと負担割合が三・五六%、住民税でいきますと二・七七。同じようにこれは改正がありませんから、一兆五千億になっても二・七七の住民税の負担割合、こういうことになるわけですよ。いわゆる中間所得層に対する減税規模が二千億拡大するということで税率の刻みが変わってきますと、地方税をそのままにしておきますと、確かに当初の踏み込みが多かったのだという議論はここへ来ては成り立たないのですよ。当初の踏み込みが多かったから、いや国税の方は減税になっても地方税はそのままで大丈夫です。住民の側から見れば、国税が減税されたにもかかわらず地方税はそのままの負担割合ですから、重税感をどっちに求めていきますか。当然地方税ですよ。よく言われておりますけれども、国税は涙で払え、地方税は怒りを持って払え、こう言っているのですよ。怒りの部分が全部首長に来ますよ。むしろ積極的に、国税の減税をやられるならなぜ地方税をやらないのですかというぐらいの姿勢があってしかるべきじゃないですか。どうでしょう。
  37. 津田正

    ○津田政府委員 確かに政府案からその後の国会審議の過程におきます議論というものはあるわけでございますが、やはり当初案におきましては私ども相当踏み込んだ点を御理解いただきたいと思います。  それから、税率構造をいじる場合には、利子財源を大体六千五百億見込んでおるものでございまして、それをオーバーするというような格好にもちろんなってまいるかと存じます。  六十数兆円の借金を抱えております厳しい地方財政状況というような全体的な観点、そして通常国会におきます政府案に対する各界の意見の中には、やはり地方税源充実のためには住民税の減税というものはある程度縮小してもいいんじゃないか、それが地方税源確保の一つの道ではないか、実はこういうような意見もあったということもございます。しかし、住民負担の軽減の要望というものは強いわけでございますし、私ども政府案におきましてその点は十分配慮したつもりでございますので、御理解いただきたいと思います。
  38. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大蔵省と同じようなことを自治省が言っては困るね。地方税減税に対する期待がそれほどでもないなんということはあり得ませんよ。ここでも幾つか議論がありましたね。国保税があんなに高くなっちゃっているわけでしょう。固定資産税が今度はどういう形になりますか、これも大変でしょう。等々を見てみますと、地方税の重圧感というのは大変ですよ。しかも、国税が減税になるという段階で、以前はこの税額で今度は相当踏み込みましたという議論は、ここまで来ますとそれは成り立たないのですよ。税務局長、首をかしげられてもだめですよ。国税が減税になって地方税が減税にならないというその実感しか出てこないのですよ。  しかも、六十二年度は国税は年末調整でやる、地方税はなし。しかも、国税は六十二年度からさらに上積みされる。きょうの竹下幹事長のお話じゃございませんけれども、若干中の刻みまで考え直そうかという時期でしょう。このときに、地方税の減税を最も主張してもらわなければならない自治省が、いや、それは踏み込みましたから、しかも現行制度からいけば相当踏み込んでありますし、むしろ地方税減税は云々なんということを言われたのでは、地方の首長はたまったもんじゃないですよ。それでなくても重圧感が相当強いのですから。  私は、この際やはり六十四年度の前倒しの問題がまず第一。第二には地方税減税の刻みの問題を含めて再検討するということが必要だろう、こう思うのです。大臣、どうですか。今おわかりになったと思うのですが、減税は国の方がやられて地方税をやらないということになったら、大臣のかなえの軽重を問われますよ。どうですか。
  39. 葉梨信行

    葉梨国務大臣 通常国会に提案いたしました減税計画と今度の利子課税によります減税計画を見ますと、むしろ地方税の方が進んでおりまして、そういう意味で、絶対額は確かに所得税の減税額が多うございますが、決して見劣りはしない、このように考えております。
  40. 加藤万吉

    加藤(万)委員 税務局長、六十二年度が切り上げて五千百億円、六十四年度は六千六百億円ですね。千五百億円の減税の中身はどうなりますか。細かい数字はいいです。例えば刻みの部分でどのくらい出ますか、あるいは基礎控除の部分でどのくらい出ますか。
  41. 津田正

    ○津田政府委員 実は来年度予定しております五千億円、これは住民税仕組みとしまして六月から五月まで取るということで、再来年の四月、五月分を落としております。そういう意味におきまして、いわゆる税制措置としては約五千八百億ぐらいの規模になるわけでございますが、その分におきましてはもう中堅所得階層以下の者はほとんど減税し尽くしておる。六千六百億円に至るのは、かなり所得階層の高い人について減税を一年間待っていただいておる、こういうような仕組みをとっております。
  42. 加藤万吉

    加藤(万)委員 六十三年度は五千八百億円ぐらいになる、六十四年度は六千六百億円、しかもそれは高い部分の所得者に対する減税。こうなると、言われておるように五千百億円の六十三年度減税、六十四年度の六千六百億円というのは、六十三年度で既に五千八百億円減税するから、実額でいくと今の数字だけでいつでも八百億円ですね。大臣、八百億円なんですよ。千五百億円地方税減税になるとみんな思っていますよ、六十二年度と六十四年度は。実額でいったら八百億円ですよ。そうでしょう。千五百億円じゃないじゃないですか。これはどう見たらいいのですかね。何かごまかされているのじゃないですか。ごまかされているのですか。それとも、いや六十三年度に既に五千八百億円やったんだから、それはもう言われておる五千百億円よりも多いんです、こういうふうに私どもは説明したらいいのですか。どうですか。
  43. 津田正

    ○津田政府委員 今回御提案しております六十三年度の減税の、要するに来年六月から三月までに軽減する額というものが五千七十二億円でございまして、これは地方財政といたしましてこれだけの穴があく、これをどう埋めるかという問題でございます。しかし、住民の方々からしますと、今回の税率表なり課税最低限の引き上げでございますと、再来年の四月、五月分ももちろん減税が決まってまいるわけでございます。それを足しますと五千八百九十八億円、要するに住民ベースで考えますと五千八百九十八億円、地方財政ベースで考えると五千七十二億円、こういうような仕組みになっておりますので、御理解いただきたいと思います。
  44. 加藤万吉

    加藤(万)委員 要するに二カ月先になったということでしょう。しかし、六十二年度から見れば、先になった分は六十四年度にそれが今度は入ってくるわけですから五千八百億円になりますよ。要するに六十三年度から五千八百億円のベースになりましたよということなんですよ。ただ、それはその適用が先ほど言いましたように六月−三月ですから、その分だけは抜けていますよ。実質でいけば、何のことはない、六十三年度と六十四年度は八百億円の差だということですよ。六月ということは二カ月分だけ減税しませんから、その分は確かに六十四年度そこから出ていく、四月から出てくるわけですから、その額は減税額になりますよ。しかし、少なくとも我々が議論する場合におきますと、六十三年度の減税額は五千百億円でなくて五千八百億円です。しかし、その額が五千百億円になるのは、四、五と落としていますから、翌年度から実施しますから、その分だけは減りますよ、こういう説明なんですよね。実額でいけば六十四年度前倒ししても千五百億円の財源は必要ないのですね、逆に言えば。そうでしょう、八百億円ですから。八百億円足せば六十四年度を六十三年度から適用しても八百億円の財源どおりで済むわけでしょう。そうなりませんか。それ以外に計算の方法が出ないじゃないですか。
  45. 津田正

    ○津田政府委員 いわゆる地方財政ベースと税負担の軽減でいわゆる住民サイドベースの金額が変わってくるところに、若干住民税のややこしさというものがあるわけでございます。  それでは六十四年度がどうかと申しますと、実は六十四年度におきましても利子課税の六千五百億は入ってこないのでございます。六十三年だけではなく六十四年以降も、当分の間何らかの別途財源を持ってこなければならない、恐らく六千五百億の利子課税が入るのは六十九年ぐらいになる、こういうような事情もやはり御理解いただかなければならないと思います。
  46. 加藤万吉

    加藤(万)委員 平年度ベースに利子課税が入るには六年ないしは七年かかるというのはみんな頭に入れておるのですよ。その間だって財源は足りないのですから埋めていくのでしょう、何らかで。埋める方法については、先ほど言いましたように政治的にもいろいろな財源、これからの税収見込みの問題もあるでしょう、堅調さとかなんとかという。しかし、それは織り込み済みの上の話で、財源にこだわって問題を論議していったら、それは利子課税でしかできませんよということになっちゃうのですよ。そうでなくて、所得税がこういう形で一兆三千億が一兆五千億になってくる、しかも地方税は六十四年度前倒ししても実害としては八百億円、それに少し加わるかもしれませんね。率直に言えば、税率の刻みとかそういうものも変わってくるでしょうから、変わる要素は多少はあると思います。概算の話ですけれども、八百億円前ということはございませんけれども、八百億円以上の財源があれば前倒しは不可能ではない。しかも、今言ったように所得税が税率構造の改定をやろうというときなんですから、この改定をやろうというときに地方税はそのままでいいですよということは、どうしても合点がいきません。  これは今度の地方税法の減税の改定の時期に間に合わないかもしれませんけれども、少なくとも六十四年度の改定は次の国会でやってもいいのですから、中身を今決めたからといって何もそのままいじりませんということはないわけですから、私はこのくらいのことは考えるべきだと思いますよ。でなければ、先ほど言ったような地方税の重圧感——あるいは大臣としてはあれ以上の言葉は言えないでしょう、六十二年度も六十四年度も相当踏み込んでいますから、これ以上のことはできませんと言う以外にないでしょうけれども、少なくともこういう矛盾は解消すべきですよ。また、解消の方向に向かってどうするかの御検討をぜひいただきたい、私はこう思いますね。
  47. 津田正

    ○津田政府委員 私ども、今後の国会審議におきます所得税のあり方というものの推移につきまして十分見守ってまいりたい、かように考えるわけでございますが、やはり総額の規模としまして、既に私どもとしましては一〇%の減税規模というものを打ち出しておる、国税の一兆五千億には十分見合うほどの総額の規模の減税ということを考えたことにつきましても御理解いただきたいと思います。
  48. 加藤万吉

    加藤(万)委員 これ以上は議論のやりとりになりますから申し上げませんが、私の言いたいことは、地方税というものが今日住民サイドから見れば相当重圧感がある、これにどう配慮するのか。気持ちの上でも、所得税は減税になりました、地方税は据え置きですというのは、これは当然マスコミが大きく取り上げられることでしょうから、一兆五千億に決まるか二兆円になるかわかりませんが、しかしその中で地方税減税には一指も触れてないことに対して、気持ちの上でもあるいは意識の上でも、地方税に対する、それこそ怒りを持って払えという言葉に象徴されるような事態にならないように、ぜひ前向きに御検討いただきたい、こう私は思うわけであります。  時間が余りありませんから次の問題に入りますが、固定資産税はどうなりましょうか。幾つか議論がございました。固定資産税の評価がえを初めどう扱っていくか。御案内のように地方税の中では大変安定した税目でもありますし、同時にその額も五兆円に近い額でありますから、固定資産税をどう変えるかということは住民の側から見ればこれまた大変な重圧感を持つところですから、これからの自治省がどういう対応で固定資産税に当たられるか、その方向性だけひとつお聞きしておきたいと思うのであります。
  49. 渡辺功

    ○渡辺(功)政府委員 ただいま委員指摘のように、固定資産税は市町村の税金にとりましては、今いろいろ御論議をいただきました所得割と並んで二つの大きな支柱でございます。したがいまして、この税金についてどういう姿で持っていくか、そして市町村の確固たる基礎となる税源として確保していくか、これが一番重要なことでございます。  そのためには、まず固定資産税につきまして評価がえを的確に行って、これによって負担の均衡化を図りながら、税制調査会の答申にもありますように、固定資産税負担の増加といいますか充実を図っていくことが基本であろうと思います。しかしながら同時に、これまた税制調査会の答申にもございますけれども、固定資産税は毎年地方、特に基礎的自治団体であります市町村財政を支えるための税金として御負担いただくものでございますから、この急激な増加を避けるために、なだらかな増加となるように考えていかなければならない、こういう御指摘もございます。そういった点を踏まえまして、固定資産税の問題について対処していきたいと考えているところでございます。
  50. 加藤万吉

    加藤(万)委員 固定資産税が大変負担が重くなったために、都市の真ん中においてとても払い切れないから都市から離れて由舎に行く、そして土地騰貴が起きている。土地騰貴の一つの引き金、私は基本的にはもっと大きな引き金があると思いますけれども、固定資産税の額が大きくて、それによってとてもじゃないけれども払い切れないから都市から出ていくという面もあろうかと思うのです。これは土地騰貴に対する抑制の一つの手段としてでも相当政治的には考えなければならない問題であります。  そこで、多くのことは申し上げません。固定資産評価額、固定資産に対する評価がいろいろあります。今たくさんのところで固定資産を評価いたしますね。例えば国税庁では路線価を決めます。これは固定資産に限らずその地域の価格の形成です。それから国土庁では公示価格というのがあります。あるいは法務省では造成地の評価基準なんていう基準価格がありますね。国のその土地に対する評価の基準が各省によってまちまちなんですね。統一化されていないのです。これが大変大きな原因をつくっている。例えば土地急騰に対する一定の基準価格をつくって、その基準価格よりも高く売買をやっている者には重課税を課すなんということが予算委員会でも相当議論になりました。ところが、それでは基準価格は何かといいますと、今言ったような価格なんですね。この中で、固定資産の評価額というのは各省が出している価格と比べて高いのですか、安いのですか。
  51. 渡辺功

    ○渡辺(功)政府委員 評価の価格の問題でございますが、ただいま御指摘になりました相続税の路線価、それから固定資産税の評価額、これは両方とも税金にかかわりのある評価として二つあります。それからもう一つ土地の公示価格でございます。この三つの評価の問題が特に言われているわけでございます。固定資産税の評価額は、ただいま申し上げました公示価格あるいは相続税の路線価と比べても低い水準にあるというふうにおおむね言えると思います。
  52. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大臣どうでしょうね、政府で土地に対する基準価格を統一化される必要性が私はあると思うんですよ。これは本委員会で議論するよりむしろ建設省、国土庁、法務省その他を含めて、基準価格を設定して、それから上の価格に対するいろいろな意味での行政的な抑制を加えるとか、あるいはそれに対する重課税をもって土地価格を抑えていくとかいろいろなことが出てくると思うのですが、それには最初に国が土地に対する基準価格を設定するという方向が必要ではないかと私は思うんですね。  予算委員会でも議論がありましたように、遺産相続をする場合に、自分の命持っている土地はこれじゃとても高く、いわゆる固定資産評価額で高くなっちゃうから、国土庁が決めている路線価の方に自分の土地を買いかえるわけです。十億の土地がそっちに買いかえまして仮に二億になったといたしましょう。二億に対する遺産相続税なんですよ。十億に対する遺産相続税が二億に対する遺産相続税に変わるのです。ここに信託銀行が介在をして、まあブラックマネーじゃございませんけれども、裏金で土地騰貴をあおるということが予算委員会でも議論になりました。私は、そのためには公示価格や路線価、固定資産の評価額を統一化される、そうして土地騰貴を呼び起こすようなことはできる限り避けるべきだ、こう思うんですよ。土地の抑制の一つの方法として基準価格をつくって、できる限りそれから起きる土地騰貴を抑制する、こういうことについて、まあ閣内いろいろ議論があるところでしょうが、土地問題に対する御意見をぜひひとつ聞かせていただきたい、こう思います。  それから、時間がありませんから次の問題、これは同じ問題ですが、市街化区域における農地の見直しの問題、同時にそれに対する課税の問題、これも多くの皆さん方がここで議論をされました。私は、基本的に市街化区域にある農地はどう見るべきか、やはりスタンスをきちっと持たれることが必要ではなかろうかと思うのです。もし私の数字が間違いでなければ、今日本にある市街化区域の農地は三万八千七百八十一ヘクタールと聞いております。坪に直しますと一億二千万坪であります。三万八千ですから大体一億二千万坪。五十坪の家を建てるとすると、道路とか空閑地を少しとりますから、約百五十万戸ぐらいの家が建てられるということになるのじゃないでしょうか。そうすると、農地に課税をしてそして宅地供給の需要を満たすというには、私は余りにも少な過ぎる。むしろ、百五十万戸といえば一年間でつくる日本の家屋と同じですから、もしそれを課税によって追い出すということになりますと、これは原則的な話ですけれども、宅地が需要と供給とのアンバランスの中にあるわけですから、再び投機の対象になってしまう。  こういうことを見ますと、市街化区域における農地の見直し、同時にそれに対する課税の問題も、私は、将来のその地域の市街化再開発の問題、あるいはその市街化再開発に必要な空閑地をどう求めていくか、こういう観点から農地に対する問題を見きわめていくべきではないか。そういう形から課税問題もスタンスを置くべきではないか。いわば市街化区域にある農地はやや公共的用地として確保するという政策を優先をさせて、その中における農地の見直しないしは課税という課題にかかるべきではないかという基本的な見解を持っていますが、この二つの点について大臣の見解をちょっとお聞きしたいと思います。
  53. 津田正

    ○津田政府委員 評価の問題につきましては、審議官から御答弁申しましたように公示価格、相続税の価格、固定資産税の価格、正直申しましてそれぞれ差があります。差がありますのは、これはまさしくそれぞれの制度の目的に照らしまして、公示価格はいわゆる売買取引の基準あるいは公共収用の基準、こういうような使命を持っておる。相続税はいわば一生の中の一回の相続財産の移動というものに対処するための税でございますので、それに相応した仕組み。固定資産税は三千数百万人という納税義務者を抱えて毎年納税をいただくというような固定資産税の税負担というものを考えながら評価をしておる、こういうような実情でございます。正直申しまして、これは政府税制調査会におきましても、公示価格等と違ってもやむを得ないという意見、あるいは少しでも公示価格に近づけるべきではないか、いろいろな意見がございまして、まだ意見の集約ができないわけでございますが、私どもそういうような中で現実の固定資産税負担というものを適正なものにするというような観点からも評価をしておるような状況でございます。  それから宅地並み課税の問題でございますが、先生の申されました数字、約三万八千ヘクタールでございますが、これは長期営農継続農地でございます。六十年度の長期営農継続農地が三万八千百二十ヘクタール、もう既に宅地並み課税の農地になっておりますのが六千八百五十五ヘクタール、合わせまして特定市街化区域農地の面積としましては約四万五千ヘクタールでございまして、そのうち長期営農の数字を申されたかと存じます。  この宅地並み課税の問題につきましては、五十七年度のいわば基本的な改正というようなものを受けて現行制度もあるわけでございまして、私どもとしましては、農業をまじめにやっている方々に対する配慮をしつつ、宅地供給観点、それから御指摘のいわば土地利用のあり方あるいは都市における緑地等の確保、それから正直申しまして下水道あるいは生活道路等がまだ整備されておらないような状況もあるわけでございまして、そういうような生活環境施設というものをどういうふうに推進していくか、ここいらの関連の問題を踏まえて今後宅地並み課税の問題を考えていかなければならない、かように考えております。
  54. 加藤万吉

    加藤(万)委員 特に固定資産課税につきましては、いわゆる平時的な宅地、家屋に対する税の問題、これは今の土地騰貴、特に大都市における土地騰貴から見ますと大変な負担になるわけですから、四分の一の減額措置はありますものの、現行の税額でも相当負担が多い。具体的な御指摘はそれぞれの議員の方から申されておりますが、ひとつ十分な配慮をしていただきたい。  同時に、同じように農地につきましても私は基本的に国土というものは国に帰属するものだと思います。しかし、その中における使用権だとか先祖代々が培ってきた土地の権利といってはおかしいですが、それぞれがあるわけですから、それを見逃すわけにはまいりません。何といっても今の地方団体にとってみれば用地費の高騰が公共事業の大変なネックになっていることはお聞き及びのとおりですから、十分な配慮、検討を加えてほしい、これは大臣にもぜひお願いをしておきたいと思います。  最後に、多少地元の課題で失礼でありますけれども、防衛施設庁関係にお聞きをいたします。大蔵省の方、結構でございますから。  最初に逗子の市長選挙が行われることになりました。その原因は、御案内のように池子問題に対する取り扱いであります。知事の調停案が出まして、その諾否をめぐって住民との間でいろいろなコンセンサスを培うように市長さんは努力をされましたが、結果的に市長が辞任をするということになってしまいました。そこで、地域自治の民主主義のあり方という問題についてはそれぞれ御見解があるし、私どもそれぞれ一定の見解は持っておりますが、今度の市長の辞任という課題にまで至ったという経過については、実は私は大変遺憾に思っている一人であります。この際、私は事実関係だけお聞きをしておきます。  池子の弾薬庫のアセスの評価表がいよいよ提出をされるということになりました。防衛施設庁はいつごろ県知事に対して評価表を提出されるのか。さらにこの評価表の提出をもって、池子弾薬庫跡地における米軍住宅建設問題は、形式的ではありますが一応次の建設へ踏み込む条件が整ったと理解をされておるのかどうか。これが第二点目であります。さらに三点目は、そういう状況地域がありますがゆえに、仮にアセスの評価表の縦覧にいたしましても相当混乱が予想されます。いわんやアセスの評価表が出たことによって次の建設への着手、そして建設ということになりますと、まさに地域的な混乱は大変なものを招来する、こう思いますが、事実関係だけについて御説明いただきたいと思います。
  55. 西田壽快

    西田説明員 お答えいたします。  まず神奈川県の環境影響評価という、環境アセスと言っております作業でございますが、現在横浜防衛施設局におきまして環境影響予測評価書を作成中でございます。これができ上がり次第神奈川県知事へ提出する。まだでき上がっておりませんが、目途といたしましては九月上旬ということを考えて今努力中でございます。  それから、環境影響評価書が神奈川県知事の方へ出されますと、手続上の問題ということで、工事の方へはできるだけ早く着工というふうに進めてまいりたい、かように存じております用地元の方の、過去非常に長い間いろいろな面で有名になりました案件でございますが、私どもといたしましては、神奈川県知事が国、県及び逗子市、この三者と話し合いをいたしまして、その中で調停案を出され、ここまでまいった案件でございます。今後とも神奈川県知事の調停案に沿って進めてまいりたい、かように存じています。
  56. 加藤万吉

    加藤(万)委員 最後に発言されたことは非常に大事なことです。いわゆる環境アセスの評価表は知事の調停案に沿ってという御答弁がありましたが、今作業されておる評価表の基本的な姿勢もそこにあるわけですか。それから九月の上旬ということを目途に行われる。同時にそのアセスの評価表の提出をもって事務的な、やや形式的な池子弾薬庫への米軍住宅の建設計画に着手する条件は整った、こういうようにお考えでしょうか。
  57. 西田壽快

    西田説明員 先生のおっしゃるとおりでございます。
  58. 加藤万吉

    加藤(万)委員 いつ議会の方で市長の辞任の受理が行われるかどうか、これは今のところは不確定でありますから申し上げるわけにはいきませんが、この間に市長選挙が行われる可能性は十分にあるわけです。そうしますと、これだけ全国的にも課題を残し、しかも地方自治にかかわる基本的な分野まで踏み込んだ課題でありますがゆえに、混乱の中でこれらのアセスの縦覧が行われることは決して好ましい条件ではないと私は思います。いわんや市長選挙にこの課題が政治的に活用されるということに至ってはなおさらのことであります。したがって、着手あるいは縦覧から着手に至る過程は極めて慎重を要すると思いますが、いかがでしょうか。
  59. 西田壽快

    西田説明員 地元が大変関心のある大事な問題でございます。その点十分注意してまいりたいと思っております。
  60. 加藤万吉

    加藤(万)委員 事実関係の確認だけですから、この問題に対する意見はまた後ほど機会を見て防衛施設庁、あるいはこれは外務省にも関係する問題ですから、質疑を行いたいと思います。  いま一つお聞きしますが、基地周辺の学校の防音壁、これまた今大変話題になっている課題です。話題というよりも、むしろ基地周辺の防音壁の中のアスベストの使用については、がんの発生源であるということで国民的な関心だけではなくして、改修を求め、また改修に着手をしております。きょうは文部省をお呼びをしませんでしたが、文部省も九月中に全国における学校防音壁のアスベスト使用に対する調査を行い、その状況をどう修理するかという調査を行っていると聞いております。問題の発生が私どもの地元、厚木基地のある大和、座間、綾瀬というところから出てまいりましたがゆえに、基地の防音壁とのかかわり合いというのは非常に深いわけであります。今聞くところでは、八月中に防音壁の改修をやって九月の新学期には間に合わせようということで、それぞれ地方自治体は苦労して改修をやっているわけであります。ほとんどがそれぞれの地方自治体の財源の中でこの修理を行うという状況下にあると聞いております。一部では九月に行うという状況にもあります。  そこで、これは本来は文部省に聞くべき課題でしょうが、全国的にあるアスベスト使用の問題は、同時にそれに伴う改修の費用はできる限りひとつ補助事業として認めてもらうという方向で、そういう関係でお話がありましたら、きょうは文部省いらっしゃいませんから自治省の方にお願いしておきたいと思うのです。  そこで、とりあえずきょうは基地周辺の防音壁について私の意見を述べますが、これはどうでしょう。全国の学校の防音壁と基地の場合の騒音に対する防音壁とはアスベストの量が違うのではないかと私は実は見ているのです。例えば学校の場合には普通天井だけ。しかし基地周辺の学校の場合には、天井のみに限らず両壁とか他も含めてあるのではないかと推定されるわけです。これはわかりません。相当厚さも違うのではないかということになりますと、学校の改修費は大変なそれぞれの地方団体の負担増であります。  そこで、本来基地周辺のそういう基地から起きる障害あるいは基地公害と言われているものに対しては、基地周辺整備法等に基づきまして整備事業としてそれぞれ基地交付金の中にもありますし、また安保条約に基づく基地周辺整備法に基づく費用負担という形にもなっているわけですが、防衛施設庁どうでしょうか。この基地周辺の防音壁の改修については、思い切って基地関係のそういう費用で地方団体負担分を肩がわりをするということが必要ではないか、私はこう思うのですが、いかがでしょうか。
  61. 柴田桂治

    柴田説明員 御説明申し上げます。  今先生の方から防音壁というふうに御発言があったのですけれども、防音校舎の吹きつけの石綿のことだと思って、そちらの方でお答えいたしたいと思います。  防衛施設庁は、現在吹きつけ石綿の使用実態の調査中でございます。この調査結果を踏まえまして検討することとしておりますが、ただ現状における対策といたしましては、現在防音機能の維持の必要から、老朽化いたしました防音建具だとかそれから内装材だとか空調機器の取りかえ工事を防音機能復旧工事として補助しております。この制度を活用して対応してまいりたい、そのように思っております。
  62. 加藤万吉

    加藤(万)委員 それでいいと思います。校舎そのものの全体の改装をこの機会にということもあるわけですから、当然それらの、例えば空調施設その他も含めてどういう費用が必要なのか。同時に、それに対する費用負担を、少なくとも基地周辺の学校に対する問題は基地周辺の整備事業として財政負担を行うという基本線で対応していただきたい、私はこう思います。  最後になりますが、核事故処理隊が、新聞で報道されておりますように、きのうも安保特別委員会で本国会でも問題になっております。たまたまこれらの処理部隊が神奈川の横須賀にある。しかも、これまた新聞がそれぞれ報道しているところでありますけれども、この部隊が従来ある米軍の部隊、すなわち横須賀の海軍司令部その他とは独立した部隊として存在をする、こういう報道がされております。核事故処理部隊があるということは、結果的に核の存在そのものが横須賀を含め、あるいは今の厚木基地の問題を含めてあるのではないかという危惧、同時にそれに対する住民的な不安が非常にあるわけであります。  新聞の報道によりますと、この米海軍核兵器事故対策隊の爆発物処理第一グループの分遣隊が在日米海軍横須賀基地の中に配備をされておる。しかも、これは同基地の電話帳にも実在をし、核弾頭装備の魚雷、爆雷を管理していると推定をされるのではないか、こうさえ言われておるところであります。横須賀基地の配備部隊、多少横文字で書いてありますので私は訳していただきましたが、横須賀の爆発性軍需品処理第一派遣隊グループという形で電話帳にそれぞれ記載をされておる、こう報道がされて、住民を含めて同基地周辺では、この存在、同時にそれは核兵器の我が国への持ち込みを含めて危惧の念、あるいは一種の大変な危機感を持ちながら対応しているところであります。  横須賀の市長並びに神奈川県知事の方からも、その実在の有無について、今外務省あるいはそれぞれの関係機関に調査を依頼をし、もしその実在があるならば、この問題の解明と同時に我が国の非核三原則に立つ政治的な処理としてどう行うのか、その方向性を見守っているというのが現状であります。  外務省は、今この報道、同時にその経過に伴って現在処理はどうされているのでしょうか。
  63. 岡本行夫

    ○岡本説明員 ただいま先生の御指摘の報告書でございますが、私どもまだ入手してございません。ただいま入手に努めておりますので、内容については、文書入手次第コメントさせていただきたいと思います。ただ、先生御承知のように、私ども、安保条約に基づきます事前協議制度がございますので、米側から事前協議の申し入れがない以上、いかなる核の持ち込みもあり得ないとの立場でございます。  それから、先生の御指摘の報道の中にございます電話帳の爆発物処理隊、これは確かに現存するようでございます。私どももこの点は米側に確認してございます。ただ、この報道で言っております爆発物処理隊分遣隊と申しますのは、およそありとあらゆる爆発物、爆弾でございますとか弾頭それから機雷、魚雷、果ては小火器の弾薬、弾丸に至るまで、すべての爆発物を処理、発見、安全化するための部隊であると理解しております。したがいまして、横須賀におります部隊は当然通常の爆発物だけの処理に従事している、このように御理解いただきたいと思います。
  64. 加藤万吉

    加藤(万)委員 通常の暴発物処理ならば、恐らく米海軍横須賀司令部の管轄下あるいは管理下にある。もし報道されておるように、この第一グループ処理隊がその系統には属さない独立したものであるとするならば、これはだれが見ても通常の爆発物処理隊とは見られませんよ。ですから、皆さんが危惧しておる、これがいわゆる核処理という特殊的な任務を持ったものというふうに推定をされることについて、いやそれではありません、通常の爆発物の処理隊としてあるんですということはうなずけませんね。今お話ありましたように、当面ノーチラスが報道いたしましたその報道関係について事実関係を調べる、こう言っているわけです。したがって、今の点も含めて調査をしていただきたい、こう私は思うのです。この調べた結果として、大変な事態だ、我々が指摘するのと同じような事態だとするならば、当然これは日米の合同委員会で議題となるべき課題だと思いますが、いかがでしょうか。
  65. 岡本行夫

    ○岡本説明員 私ども、当該文書を入手いたしましてからこれを精査するつもりであることを先ほど申し上げたとおりでございます。  なお、補足的に申し上げますと、先ほども申し上げましたが、これはありとあらゆる爆発物の処理ということでございますから、その中には核物質、さらには化学物質といったようなものまで理論的には含まれると理解しております。ただし、その部隊がそのような能力を有することと、実際に何をやっているかは別のことでございまして、横須賀にある部隊は通常爆発物の処理のみに従事しているというのが先ほど私が申し上げた点でございます。  それから、合同委員会の場でとの御指摘でございますけれども、これは昨日も外務大臣が御答弁してございますけれども、私どもとしては、米側から情報を得、当該文書を得、そしてその必要性に従ってしかるべく米側にも必要あれば協議ないし申し入れを行っていくつもりでございます。
  66. 加藤万吉

    加藤(万)委員 先ほど学校のアスベスト問題を取り上げましたが、これより前に相模原の補給廠におきましてアスベストが野積みされているという米軍基地の問題がございました。どこに持ち運びをされたかわかりませんが、その後処理されたという話であります。沖縄などで最近米軍のさまざまな演習を通しての住民への被害など等もこれあり、最近の米軍に対する日本政府の姿勢、もっと毅然とする必要性を私は各所で痛感しているわけであります。したがって、この問題の事実関係をしっかりと把握していただき、日米合同委員会あるいは必要な機関を通して日本側の姿勢を明確に指し示されますことを強く要望、要求しておきたいと思います。  大臣、きょうは私の質問時間を大変多く皆さんの配慮でいただきました。申し上げました中に、これから検討していただくこと、あるいはこの国会を通しまして改正をするもの、さらに今将来的な展望を持って、日本の税財政のあり方を含めこれからの日本列島をどう持っていくのか、そこにおける社会資本の拡充、同時に今起きつつある地域間の格差の問題の是正、起きております雇用確保のための産業の配置、各般にわたってさまざまな論議をさせていただきました。私は、野党側のこれらの意見が、単にこの委員会で述べたというだけに終わるにしては余りにもむなしい気がいたします。大臣と私とは期は同期生でありますから、そういうよしみもありまして、私は、大臣がさまざま私が申し上げた中の発射台をぜひ在任期間中に実行され、その道を切り開くことを期待いたします。  同時に、これからも地方自治関係に対してきちっとした姿勢を持ち、対大蔵省、対政府への技術的なサゼスチョンや、あるいはある意味においてはイニシアチブをとっていただく自治大臣自治省関係の皆さんに、ぜひ私が申し上げたことを幾つか胸に刻みながら配慮をし、これからの行政に当たっていただきたい。  きょうは三十分ぐらい昼休みの時間を持とうというお話も事前にありましたから以上で打ち切りますが、最後に大臣の御意見を聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  67. 葉梨信行

    葉梨国務大臣 日本の将来を画する各般の、非常に広い分野にわたります御議論を御質問という格好で伺いました。それらの問題は、これから解決しなければならない、出口を探さなければならない、ほとんどそういう課題でございました。そういう意味では、これから与党と野党あるいは政府と国会という立場で忌憚のない意見を交換しながら、新しい展望を開くようにお互い努力をしたいと思います。むなしいなんということをおっしゃらずに、積極的に、もう我々の世代のためではなくて、次の世代、次の日本のための議論を我々はしている、こういうことで、これからもお互いにいろいろ努力をしたいものでございます。  それから、在任中にめどをつけろとおっしゃいましたが、これは問題が大き過ぎますので、在任中はもちろんでございますが、議員としてお互いにまた努力をしていきたい、こう考えておる次第でございます。
  68. 加藤万吉

    加藤(万)委員 終わります。
  69. 石橋一弥

    石橋委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十四分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  70. 石橋一弥

    石橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。草野威君。
  71. 草野威

    ○草野委員 本日は地方税法交付税法の審議でございますが、委員長のお許しをいただきまして、若干場違いの感もございますけれども、外務省に来ていただきまして、私の地元の神奈川県の横須賀におきまして、この二、三日新聞で報道されておりますけれども、核爆発事故に備えて米軍の部隊が存在をしている、このようなニュースが報道されておりまして、非常に地元を挙げていろいろな不安に駆られている、こういうような問題が発生しておりますので、それに関連をして外務省の方にお尋ねをしたい、このように思いますので、ひとつよろしくお願いいたします。  初めに外務省にお尋ねをしたいと思います。  ただいま申し上げました問題で、最近の新聞報道によりますと、米国の民間調査機関でございますノーチラスが情報の自由法に基づき入手した米軍の公式文書の中に、米軍は太平洋地域での核兵器事故の発生に備えて関係諸国政府との間で事故対応策を協議、調整することになっており、日本もその対象地域に含まれているということが明らかになったわけであります。さらに、核兵器の取り扱いなど高度の技術を持つ米太平洋艦隊の爆発物処理第一グループ分遣隊、別名核兵器処理隊と言っておりますが、これが日本では横須賀、佐世保両米軍基地に配備されていることも明らかになりました。こういう報道が佐世保、横須賀市民に大きなショックを与えているわけでございます。これまであった核の疑惑が現実のものとして新たに市民の不安をかき立てたわけでございます。  そういう中で、横須賀市の市長は一昨日、こういうような談話を発表しております。今まで外務省からも在日米海軍司令部からも何らこの種の情報は得ていないとして、今回の報道にかんがみ、外務省などにも照会し、不明な点などがあれば明らかにし、市民の不安を取り除き、安全を守るというような趣旨の声明を発表いたしまして、昨日、横須賀市の幹部を外務省の方に派遣をされたようであります。  そこで外務省にお尋ねいたしますけれども、昨日の横須賀市ほかの神奈川県の幹部との話し合いの中におきましてどのような説明を行われたのか、まずこの点についてお尋ねをしたいと思います。
  72. 岡本行夫

    ○岡本説明員 御指摘のとおり、昨日横須賀市の方々が私どものところへお見えになりました。そして、今回の報道について、このような米太平洋軍司令部の文書の存在を承知しておるのかということ、そして核兵器の事故対策について米軍側と日本政府の間で何らかの協議が行われた事実があるか、そして報道によりまして横須賀に置かれているとされている爆発物処理第一グループなるものは実際に配置されていて、それはどのような任務を帯びているのか、このような御質問がございました。  私どもの方から、第一番目の点につきましては、そのような文書は私どもは直接は承知しておりません、現在入手に努めているところでございますとお答え申し上げました。  第二の点については、我が国は非核三原則を当然ながら堅持している国でございまして、我が国に核兵器が存在するわけもなくしたがって在日米軍と私どもとの間で核兵器の事故について話し合いを行ったというようなことは今まで一切ございませんとお答えいたしました。  第三の点につきましては、これは核兵器を専ら取り扱う部隊ではない、確かに横須賀に爆発物処理第一グループなる部隊が存在いたしますけれども、これは、大は大きな爆弾から小は小さな火器の弾丸に至るまで、およそ爆発物すべてを取り扱い、その発見、回収、安全化処理などを任務としている部隊でありまして、したがって横須賀におきましてはこの部隊は通常の爆発物のみを取り扱っている部隊と承知しております、このようにお答え申し上げた次第でございます。
  73. 草野威

    ○草野委員 今の御説明の中で確認をさせていただきたいと思いますが、報道されたこの米側の公式文書につきまして日本政府としては入手をしておらない、そういうことでございまして、新聞等の報道によりますと、外務大臣もこれの入手について努力をするということでございます。この文書につきまして、入手された暁には連絡するというふうになっているようでございますけれども、入手の暁にはこれを公表されますか、いかがですか。
  74. 岡本行夫

    ○岡本説明員 外務大臣の方からも御答弁申し上げておりますとおり、私どもこの文書の入手に今鋭意努めておるところでございます。入手いたしました後は、この文書を精査いたします。そして、この文書が公表できるものであれば私どもとしてはもちろん公表し、御疑問に答えていくつもりでございます。
  75. 草野威

    ○草野委員 それから、この爆発物処理第一グループ分遣隊という部隊の配属につきまして、横須賀と佐世保に置かれているということは米軍から聞いて承知をしておる、こういうことでございますけれども、お伺いしたいことは、今日本国内でこの部隊が配備されているのは横須賀と佐世保、この二カ所でございますか。それともう一点は、この部隊はいつごろから配置をされておりますか。
  76. 岡本行夫

    ○岡本説明員 実は私ども米軍の部隊の配置について、その一々につきまして承知する立場にはございませんで、必ずしも詳細には把握してございません。これまで米側から聞いているところでは、少なくとも海軍については横須賀、佐世保にある。そのほか公表されております米軍の電話帳には幾つかの地名が記されておりますけれども、これはいずれにせよ通常の爆発物の処理の部隊として施設、区域に置かれるのはまことに当然のことであるというような説明を今受けておりまして、なお詳細については把握中でございます。
  77. 草野威

    ○草野委員 ただいまのお話の中で、この部隊の任務のことについて御説明がございましたけれども、これについてもう一回確認をさせていただきたいと思います。この部隊の任務について「爆発物全般の処理任務としており、核爆発物のみの処理任務とする部隊ではない」と米側から聞いておる、これでよろしいですか。
  78. 岡本行夫

    ○岡本説明員 大要そのようなことでございます。
  79. 草野威

    ○草野委員 そうしますと、今御説明をいただいたお話とこの文書に書かれておる内容とちょっと違ったような気がしたものですから、確認をさせていただいたわけでございます。いわゆる通常の爆発物を処理する部隊である、必ずしもそういう認識ではないということですね。ここにも書いてありますように、これは外務省の答弁ですけれども「爆発物全般の処理任務としており、核爆発物のみの処理任務とする部隊ではない」ということは核爆発物の処理任務の一つである、こういうような解釈もできるわけです。したがって、もしそういう解釈であると、我々日本国民にとってはこれは大変重大な関心を持たざるを得ない、こう思うわけでございますが、いかがですか。
  80. 岡本行夫

    ○岡本説明員 私冒頭に申し上げましたように、この部隊というのはあらゆる爆発物の処理を行い得る能力を持っておるものでございまして、先生の御指摘のとおり、その中には核物質さらには化学物質といったものまで入るものと承知しております。ただ、それはこの部隊の能力でございます。この部隊、私どもまだ正確にその系統等を承知しているわけではございませんけれども日本国外に派遣されることもございましょう。したがいまして、この部隊がそのような処理能力を有していることと、実際に核兵器の一切存在いたしません日本で通常の爆発物のみを取り扱っているというその事実とは、また別の問題と理解しております。
  81. 草野威

    ○草野委員 ただいまの外務省の御説明はそれなりに承りました。ということは、日本政府の立場としては、日本には一切の核兵器は存在しない、このような前提に立った上での御答弁であるからこれは当然であろうと思います。しかし、このような記事が出てくるということは、そう簡単にああそうかいなということで済まされるようなものではないのではないかと私は思います。したがって、これは外務大臣もお話しになっておりますように、全力を挙げてこの文書を手に入れるように努力をしていただきたいと思いますし、その内容によっては公表するというようなお話でございましたけれども、これはぜひとも公表すべきであると私は思います。そのように外務省の方にお願いいたしまして、外務省に対する質疑の方は終わらしていただきたいと思います。  最後に、大臣に一言お尋ねしたいと思いますが、今のやりとりで大体どういうことが横須賀であったかということはおわかりになったと思います。六十二年度の自治省予算を見ますと、基地交付金二百二十一億円というのが出ておるわけでございますけれども、国が提供した基地の中にこういう物騒な部隊が存在しているということになるわけであります。そういうところから横須賀市民また佐世保市民たちが大変な不安にかき立てられている。核が今実在する、しないということは別にしましても、そういうおそれがある、こういう問題に対して大臣としても重大な関心を持っていただきたい。今後大臣の立場として、こういう問題に対しましても、外務省等とまた連絡提携をとりながらこの問題の解決に向かって全力で努力をしていただきたいと思いますが、大臣のお考えを承りたいと思います。
  82. 葉梨信行

    葉梨国務大臣 事実関係はただいま外務省から御答弁申し上げたとおりであろうと思います。日本国内どこであれ、地域住民の生命と財産の安全を守ることは常に考えなければならないことであろうと思っている次第でございます。
  83. 草野威

    ○草野委員 では、次の問題に入らしていただきたいと思います。  所得税それから住民税の減税の問題につきまして若干お尋ねをしたいと思います。  先般行われました与野党の国対委員長会談、五月十二日でございますが、このときに、売上税関連法案を再提出しない、こういうような約束が行われたわけでございますけれども、実際はこれが守られていない、約束違反であるという問題、それから減税とマル優廃止をセットにした法案の出し方、それから今回のマル優の廃止の理由、そういうことにつきまして順次お尋ねをしたいと思いますが、まず一番初めに大蔵省にお尋ねをしたいと思います。  マル優は、我々は原則廃止ではなくて存続を主張しているわけでございます。そういう意味では法案の撤回を要求するものでございますけれども、なぜマル優を廃止しなければならないのか、その理由について、まず大蔵省にお尋ねをしたいと思います。
  84. 杉崎重光

    ○杉崎説明員 今回、いわゆるマル優と呼ばれております非課税貯蓄制度につきましては、老人、母子家庭あるいは障害者といった方々に対する非課税制度に改組するという御提案をいたしておるわけでございますけれども、それにはいろいろ現行の制度に問題があるわけでございます。  まず第一に、現在個人貯蓄の七割以上がこの非課税制度の適用を受けております結果、巨額の利子所得が課税ベースから外れております。そして給与所得あるいは事業所得、また法人所得といったものとの間で税負担の不公平がもたらされているということが第一点でございます。  次に、この制度は高額所得者が一般的にこの制度の枠を限度いっぱいに使って課税を免れているというのに対しまして、平均的な所得者というのはこの枠を使い切ってはいないわけでございまして、結果的に高額な所得者ほどより多く受益しているという現状が見られます。  また第三点に、不正利用がかなり見受けられるということも事実でございます。  さらに、戦前でございますとかあるいは戦後の復興期といった時期と異なりまして、今や我が国は世界一の資本輸出国ということになっておりまして、貯蓄の奨励といった目的で一律的にこうした政策的な配慮を行う必要は薄れてきているばかりではなく、これを続けることには海外からの批判も高まっているという問題点がございます。  そこで今回御提案をするわけでございまして、これはそれとともに国民の待望するところの所得税等の減税を実現するための恒久財源確保するという見地からも行われるものでございます。
  85. 草野威

    ○草野委員 今何点かにつきまして廃止の理由を伺ったわけでございますが、その中身につきまして若干お尋ねをさせていただきたいと思うわけでございます。  まず一つは、不正利用の問題でございますけれども、これはかなりの額に上っているというようなことでございますが、この不正利用がどのような実態になっているのか、ひとつ御説明をいただきたいと思うわけでございます。不正利用といいますと、他人の名前を使うだとか仮の名前で預金をするだとか限度超過だとか、いろいろなことがあると思いますけれども、ともかくその不正の実態につきまして、ひとつできるだけ詳しく御説明をいただきたいと思います。
  86. 杉崎重光

    ○杉崎説明員 現実にこの税法を執行いたしておりますのは国税庁でございまして、国税庁におきまして随時必要な調査等を行いまして、そうした不正利用に対する摘発を行っておるわけでございます。  現在私が持ち合わせております資料によりますと、六十事務年度におきまして国税職員が金融機関に対しましてこのマル優調査等を行ったわけでございます。その結果が手元にございますので御披露させていただきますが、この調査と申しますのは、金融機関におきまして非課税貯蓄を実際に取り扱っているわけでございますから、そうした金融機関が非課税貯蓄であるかどうかということを適切に把握しているかどうかという意味で、通常私ども源泉監査という形で、源泉所得税を監査するという意味でございますが、申し上げております。  六十事務年度におきましては、調査、指導した件数が四千七百八十二件、これは金融機関全体におきましては一一・五%ほどの接触割合になるわけでございますが、追徴した税額は四百二十一億円ということになっております。
  87. 草野威

    ○草野委員 今、昨年の調査の実態を若干数字を挙げて御説明いただいたわけでございますけれども、金融機関四千七百八十二件の調査を行った、四百二十一億円の追徴を行った、確かにこれはこれなりの成果であったと思うのですね。  それはそれとして、それでマル優を廃止しなければならないのかということなんです。そこら辺がもう一つぴんとこないのですね。ということは、昨年のこういう調査が一つあるのです。これについてあなたのお考えをもうちょっと承りたいと思うところなんですけれども、これはやはり税務当局の調査の結果、ある日刊紙の調査によりますと、その時点での郵貯を除くマル優残高が百六十兆円、そのうち不正預金が十兆円である、こういうような中身が発表になっているわけでございます。これはあくまで税務当局の数字であります。そうしますと、その数字というのは約六%に当たるわけでございます。そうすると実際にどのくらいの人たちが悪用したのか。頭数でいきますと恐らくその半分、パーセンテージでいくと三%くらいではないか、こういうような推計が出されているわけでございます。  そうしますと、これだけ多くの大衆が利用している制度で、わずかという言葉が適当かどうかわかりませんけれども、いずれにしても三%程度の悪用で、残りの九七%の人たちは善良な利用者である。わずか三%の不正者のためにこの制度を廃止する、こういうことは果たして適当であるのかどうか、こういうような話もあるわけでございますが、こういうことについてあなたはどのようにお考えになりますか。
  88. 杉崎重光

    ○杉崎説明員 先ほども申し上げましたとおり、不正利用の実態調査ということになりますと、国税庁が直接に従事いたしておりますので、その点御了解いただきたいわけでございますが、ただいま御指摘なされました数字というのは、ひとつ先ほど私が申し上げましたような調査に基づいて大胆に推定をすると、十兆円を上回る規模の不正利用があるのではないかということかと思います。  個々の調査を積み上げていきますと、少なくともそのくらいの不正利用があると推測できるということかと思いますが、何さま不正利用という問題はなかなかこれが把握しがたいところが一つの特質でもございますので、これをもう少し別の観点から考えてみますと、現在のマル優を初めとする非課税の貯蓄というのは約二百八十七兆円ほどあるということを申し上げております。これを仮に全国の世帯数約三千九百万世帯でございますか、これで割ってみますと、一世帯当たりは平均的に七百三十六万円ということになります。ところが、貯蓄動向調査で見まして全世帯で平均的に一体どのくらい貯蓄を持っているのか。これは非課税であろうと課税であろうとすべてでございますが、そうしたものを見ますと、その統計では五百九十九万円ということになってくるわけです。こういうマクロ的に観察をいたしますと、非課税貯蓄の平均とそうした貯蓄の平均というものが合わないということなどから判断いたしますと、不正利用というのもかなりの額に上っているのではないかという気がいたします。  ただ、一言お断り申し上げますと、不正利用というのは今回の非課税貯蓄制度を改組いたします理由の一つでございまして、そのほかにもいろいろな理由があることはただいま申し上げたとおりでございます。
  89. 草野威

    ○草野委員 この不正利用も廃止の理由の中の一つであるということでございまして、必ずしもこの不正利用が大きな理由の一つではなさそうな感じを今伺っていながら受けたわけでございます。やはり税務当局、国税当局の問題であろうかと思いますけれども、これを廃止する、しないというのは国税庁当局の問題ではございません。皆様方の方の関係でございますので、この問題につきましては、私は先ほど申し上げましたように、わずか三%ぐらいの不正利用者のために全体を廃止する、こういうものはいかがであろうか、こういう気がするわけでございます。  それともう一つは、一番初めにおっしゃったように、他の税制と比べて不公平だ、こういうお話があったわけでございますけれども、この不公平であるか不公平でないかという問題なんですね。これは税制上の専門家の見方もあると思います。それから国民の見方もあろうかと思います。  国民の見方によりますと、例えば総理府の世論調査でございますけれども、マル優について不公平と思うか思わないか、このような調査結果を見ますと、不公平とは思わないという方の数字が四八・六%、不公平と思うという数字は一七・七%、こういう調査結果が出ているわけでございまして、少なくとも国民の側から見た場合にはマル優については不公平だとは思っていない、こういうような世論調査の結果も出ているわけでございます。しかし、これは税の専門家から見た場合には必ずしも公平ではない、こういうふうにおっしゃられるのだろうとは思いますので、その点につきましてはいろいろとまたこれからお尋ねしたいと思います。  先ほどのお答えの中で、他の所得と比べて不公平であるというような御説明でございましたけれども、どういう所得と比べて不公平なんですか。
  90. 杉崎重光

    ○杉崎説明員 先ほど申し上げましたことは、非課税貯蓄の利子というのはその名の示すとおり非課税になっているのに対しまして、私どもの受け取る例えば給与所得でございますとか一般の法人が事業を行いまして所得を得るところの法人所得あるいは個人の事業所得、そういったものは所得がある限り一般に課税されているわけでございまして、そうした所得との間の不公平ということを申し上げたわけでございます。
  91. 草野威

    ○草野委員 確かにおっしゃられるように、所得税の中にはいろいろとあるわけでございまして、給与所得だとか事業所得だとか配当所得だとかいろいろな所得があるわけでございますが、少なくとも現在非課税になっているもの、それは株式譲渡所得、それから少額預金利子、郵便貯金利子、少額公債利子、財形貯蓄利子、こういうものがあるわけでございます。そういう中で、今回この株式譲渡所得のみを残してほかを課税の対象にしよう、こういうようなお話でございますけれども、ではなぜ同じ非課税の中でも株式だけ残して他を課税とするのか、その理由について御説明をいただきたいと思います。
  92. 杉崎重光

    ○杉崎説明員 有価証券の譲渡益につきましても現在全く非課税ということではないわけでございまして、一部課税されているわけでございますが、今回の法案におきましても課税ベースの拡大提案いたしておるわけでございます。例えば先物取引に伴う譲渡益といったものには課税をするということでございますし、それから継続的な取引については従来から課税いたしておるわけでありますが、その継続的な取引の基準を今回厳しくするといったことも考えているわけでございます。  それで、政府税制調査会の抜本答申におきましても、段階的に課税強化をしつつ究極的には原則課税を志向するということが書かれてございますが、私どもとしてもその方向に向かって今回の御提案をいたしておるわけでございます。  ただ、現在全面的にここで総合課税を行う場合には、譲渡損の扱いも含めまして取引の把握や課税資料の収集のための実効ある措置が不可欠になるわけでございますが、納税者番号制度を含む本格的な管理体制の導入なくしては、そうした課税の適正な執行は確保しがたいと思われるわけでございます。そうした点がございますので、今回の御提案のようなことになっているわけでございます。
  93. 草野威

    ○草野委員 利子所得は原則課税、株式譲渡所得の場合原則非課税、一部課税、こういうふうになっているようでございますけれども、同じ資産性所得であって、あるものは課税、あるものは非課税、これは不公平だと思うのですね。そういうものについては早く改めてもらわなければならないと思うのです。  それで、今総合課税それからもう一つは背番号制ですか、こういうような話が出たわけでございますけれども、やはり公平な課税ということになれば、当然そういうようなことなどはこれから考慮していかなければならないというふうに思うわけでございます。以前の国会から、グリーンカードの問題また背番号制の導入の問題についていろいろと議論されているわけでございますけれども、そういう問題について大蔵省は何となく消極的ではないかというような感じもしないではないのですね。これはどういうことでしょうか。
  94. 杉崎重光

    ○杉崎説明員 背番号制度あるいは納税者番号制度あるいは最近言われておりますようなマル優カードとかいろいろな形で言われていることは、要するにどうやって納税者の貯蓄なら貯蓄について把握するかという把握の体制の問題かと思うわけでございますが、これにつきまして、例えば現在の非課税貯蓄制度については何かこのような仕組みを導入することによって限度管理を徹底すればよいではないかというお話なのかと存じますけれども、先ほど来申し上げておりますとおり、今回の非課税貯蓄制度の改組というものは、単に限度管理をしっかりすれば問題が解決するということではございませんで、こつこつためた貯蓄もさることながら、やはりこつこつ働いて稼いだ所得についても課税されることとのバランスその他を考えて今回御提案いたしておるわけでございまして、そうした意味におきまして、限度額の管理を強化していくことで本件が解決されるということではないという認識を私ども持ち合わせているところでございます。
  95. 草野威

    ○草野委員 今の説明ではちょっと納得がいかないのです。例えば背番号制の問題でございますけれども、こういう制度の導入には何だかんだ理屈をつけないで早急に踏み切るべきではないかと思うのです。中曽根総理は、税務署が国民の懐に手を突っ込むようなことはやりたくない、こういうような表現でおっしゃったことがございます。確かにプライバシーというものは大切だと思いますけれども、しかしアメリカの場合は既に背番号制といいますか、名前は正式に何というかわかりませんが、実施をしているわけですね。ソーシャル・セキュリティー・ナンバーというのですか。いずれにしてもこういう形で実施をしておるわけでございまして、少なくとも日本に比べるとアメリカの場合はプライバシーの保護ということを重要視する国である、このように言われているわけでございまして、そういうところでやって、しかもかなりうまくいっておる。約九〇%ぐらいは捕捉をされているというような話も聞いているわけでございますけれども、そういう制度に非常に消極的であることについて我々は非常に残念に思えてならないわけでございますが、もう一遍この点について御答弁をいただきたいと思うのです。
  96. 杉崎重光

    ○杉崎説明員 御案内のとおり、かつてグリーンカード制度というものを導入するという御提案をいたしまして、それは法律として成立いたしたわけでございますが、結論的に申し上げますと実行されずに廃止されてしまいました。そこで、その過程を通じて私どもが感じましたところは、そのようなグリーンカードを初めとするいわゆる番号制度について国民的な合意を得るにはまだ時間がかかるということでございます。そうした経緯があってまだ間もないわけでございまして、今後とも私ども勉強していかなくてはいけない課題かと存じますけれども、今直ちにそうしたものを御提案するにはまだ国民的な合意を得られないのではないか、そういう認識でございます。
  97. 草野威

    ○草野委員 国民的合意が得られていないというお話ですけれども、本当に国民的合意が得られていないかどうか、ひとつ大蔵省も耳を澄ましてもう一回よく聞いていただきたいと思うのです。たしか日本の最大の労働組合団体である全民労協も、正式に番号制の導入については賛成であるというようなことも表明しているわけでございますので、もう少し積極的に取り組んでいただきたいと思います。  この問題につきまして、もうちょっとお尋ねしたいと思います。確かに株式の売却益、キャピタルゲインまたはキャピタルロスというものの正確な把握はいろいろ困難が伴うことは当然だろうと思いますが、証券会社などにおける資料の提供義務だとか名寄せ用のコンピューターの導入、こういうことは当然必要になってくると思います。しかし、コスト的に見ても、また技術的に見ても、こういうことは現代の我が国においては決して困難なことではないのではないか、このように私は考えるものでございます。そういう中で、先ほどから繰り返して申しているようでございますけれども、今回のマル優廃止との関連におきまして、非課税貯蓄の所有者よりも有価証券の所有者の方がどちらかといえば資産が大きいわけでございますので、利子課税をするなら有価証券の譲渡益の方にも課税をしなければこれは不公平である、不均衡ではないか、私は結論的にそのように思わざるを得ないわけでございますが、もう一度御答弁をいただきたいと思います。
  98. 杉崎重光

    ○杉崎説明員 繰り返しになって恐縮でございますけれども、私どもも、有価証券の譲渡益につきましては極力課税する方向努力をいたしているわけでございます。ただ、現在の状況に照らしてできる限りのところまではやっておりますけれども、その先さらに進むためにはそれなりの体制整備が必要でございまして、そのためには、先ほど来申し上げておりますとおり、どうやって個々の株式の取引、売却、それから購入といったことについて把握していくかということが大問題でございます。個々の取引を一証券会社との間を通じてやっているとは限らないわけでございまして、証券会社を通じて買ったのを全く別のところで売却するとかいろいろなことがあるわけでございますから、それについては御指摘のとおり何らかの形で取引の資料を確保するということが税務当局にとって大前提になるわけでございます。そうしたことなくしてはかえって新たな不公平が生じかねないということで、私ども今後とも引き続き勉強をしていきたいと存じます。
  99. 草野威

    ○草野委員 もう一点、貯蓄の問題について触れられたわけでございますが、この貯蓄については奨励する意味が薄れた、また海外からの批判もあるというような意味のお話でございました。こういうお話を伺っておりますと、何か貯金をするのは悪いことをするように聞こえてならないわけです。私は決してそのように思いませんし、また貯蓄をすることも必要なことだろうと思っております。今のあなたのお話によると、これをひっくり返して言うと、そういうことだからマル優を廃止した、だから貯蓄も減少するであろう、少なくとも減少することを期待しているのかな、このように思わざるを得ないわけなんですね。そこで、マル優の廃止によりまして我が国の貯蓄が本当に減少すると大蔵省では考えていらっしゃるのですか。
  100. 杉崎重光

    ○杉崎説明員 私の申し上げておりますポイントは、貯蓄が善か愚かということを申し上げているわけではございませんで、現在の我が国の置かれている状況から見まして、政策的に貯蓄を奨励するほどの必要性はないのではないかということを申し上げているわけでございます。  現実に利子課税が貯蓄にどのような影響を与えるかということにつきまして、税制調査会は次のようなことを答申いたしております。引用させていただきますと、「マクロ的な貯蓄水準あるいは投資水準は、多様な要因で決定されるものであり、過去の推移に照らしてみても、利子・配当課税の方式と総体としての貯蓄等の水準の間に、実証的に明確な相関関係を見出すことは困難であってこということでございまして、何がしかの消費促進あるいは貯蓄抑制的な効果が期待されるのではないかとは存じますけれども、それを計量的に、またどの時期どの程度そういうふうになるかということを把握することは困難だということかと存じます。
  101. 草野威

    ○草野委員 この際ついでにお伺いしておきたいと思いますけれども、こういうような制度は、欧米先進国の場合実施している国があるんじゃないかと思いますけれども、もしございましたら、例を挙げて御説明いただけたらありがたいと思います。  それから、善か愚かと私は必ずしもそういうことを決めつけて、別にそういう意味で言ったのじゃありませんけれども、一つは、日本人がなぜ貯蓄をするか。これは言われるまでもないと思いますけれども日本の現社会におきまして老後のことを考えた場合に、やはり何がしかの貯蓄を持っておかなければ非常に不安である、こういうことが一番多いと言われておるわけでございます。しかし、現実には日本の社会がアメリカやフランスなどと比べて恐らく三倍から四倍以上のスピードで高齢化が進んでいるわけでございます。こういう現象から考えてみますと、じゃそういう中で貯蓄は減少するのか、減少の傾向につながっていくのか、また逆にふえていくのか、こういうふうに考えた場合に、やはりどうしても減少の方向にいかざるを得ないんじゃないかというふうに思うわけでございます。したがって、マル優廃止とか廃止でないとか、そんなことは関係なく、我が国高齢化社会の進展に従って、現在の我が国の預貯金というものはどうしても減少の傾向に進んでいくのではないかというような感じがするわけですね。こういう点から考えて、幾ら外国からの批判だからといって、マル優の廃止の理由の一つにすることはちょっとどうかな、このように思いますが、いかがでしょうか。
  102. 杉崎重光

    ○杉崎説明員 諸外国で非課税貯蓄の制度があるかどうかというお話でございますが、私の承知いたしておりますところでは、アメリカにおきましては非課税の貯蓄制度といったものはないというふうに承知いたしております。ただ、ヨーロッパで見ますと、フランスとかイギリスには特定の貯蓄商品の利子を非課税とする制度があるというふうに理解いたしております。
  103. 浜中秀一郎

    ○浜中説明員 ただいま先生から、今後老人社会になる、高齢化が進む、その観点で貯蓄について検討を進めておるか、こういう趣旨の御質問でございました。  一般的には、経済拡大するにつれまして貯蓄も増加してくる、こういうことでございますので、お尋ねの趣旨は、その中にあって貯蓄率をどういうふうに見ておるかということであろうかと思うのでございます。先生指摘のとおりでございまして、我が国の貯蓄率は先進主要国の貯蓄率と比較いたしまして高い水準で推移しているところでございます。また、御質問の中にもございましたが、老人、若者共通いたしまして病気や不時の災害に備えようとする心構えが日本人の中に非常に強いこと、あるいは住宅等を充実しようという志向が強いこと、またさらに、人口構成を見ますと生産年齢人口の割合が大きく、老後に備えての貯蓄をする世代が相対的に多いこと、これらのさまざまな要因が総合的に作用しているというところだろうかと存じます。  そこで、今後の我が国の貯蓄率について予測するところでございますが、これは御案内のとおりなかなか難しいところでございます。先生指摘のとおり、一方では、金融資産の蓄積がかなり進展してまた高齢化が進んでいく、このような観点から、中長期的には低下の方向に向かう可能性もある、こういうふうに御指摘される向きもあるようでございますが、他方におきまして、現在に見られますような根強い貯蓄意識、また既にかなり高水準に達していると思われます消費水準というようなことを勘案いたしますと、当面なお高水準を維持するものと考える向きもございまして、なかなか将来的に予測するところが難しいのでございますが、いずれにいたしましても、貯蓄が非常に重要であるということにつきましては御指摘のとおりでございます。
  104. 草野威

    ○草野委員 最後に、このマル優問題についてもう一問お尋ねしたいと思います。  恒久財源という問題でございますが、今回のマル優廃止は減税のための恒久財源として位置づけられているわけでございます。しかし、正直言って果たしてそうかな、このように思うわけでございまして、この両方を結びつける必然性が本当にあるのかと思います。当初の案によりますと、このマル優の廃止によりまして平年度一兆六千億ですか、増収を見込んでいたというような話も聞いておりましたけれども、平年度化した場合のこの額について、どの程度の増収を見込んでおられるのか、もう一遍お尋ねをしたいと思います。  この平年度化するのは六、七年先ということでございますけれども、そういうことであれば、当然当面の減税の財源にはもうならないわけでございまして、それにもかかわらず、また五月十二日の国対委員長会談の合意に反してまで、今回減税とセットにしてその財源化を図ろうとしておるわけでございますけれども、これはいかなる理由によるものでしょうか。我々としては、この減税とマル優廃止はあくまでも切り離すべきだということを主張をいたすものでございますが、いかがでしょうか。
  105. 杉崎重光

    ○杉崎説明員 平年度増収額が一・六兆円という数字は、国税、地方税を通じて前通常国会に提案されました利子課税見直しの増収額ということかと存じますが、今回の改正によりまして利子課税に係る増収分がどのくらいあるかということを申し上げますと、国税分で約九千九百億円程度と見込んでおります。
  106. 津田正

    ○津田政府委員 地方税におきましては、利子課税見直しによる増収額は六千五百億円、このような見通しを持っております。
  107. 草野威

    ○草野委員 ただいまの御答弁によりますと、国税が九千九百億、それから地方税の方が六千五百億、合わせて一兆六千四百億、こういうことですね。  この点につきまして、ある民間経済研究所等によりますと、この一兆六千何がしの数字でございますけれども、この数字は少し過少ではないのか、少な過ぎるのではないか。また六、七年、これは今の御答弁の中に六、七年というお答えはなかったのですけれども、今までは六、七年と言われております。その六、七年ということがもし正しいとすれば、ちょっと長過ぎるのではないか。実際には三、四年程度でその程度の収入は見込めるのではないか。そして、今回程度の減税を上回る収入を確保できた上に、さらに財政再建の財源とすることができるという隠されたねらいがあるのではないか、こんなことも伝えられておるのですね。既に御承知だと思いますけれども、こういうような指摘、まあ指摘というより報道に対しましてどのようにお考えになりますか。
  108. 杉崎重光

    ○杉崎説明員 今回の措置が平年度化するのにかなりの時間を要するというのは御指摘のとおりでございまして、一番極端な場合には郵便貯金の定額分が最長十年でございますから、そうしたものがどの程度影響を及ぼすかといったようなことを考えていかなければいけないわけでございます。いずれにいたしましても、この増収額をどうやって見込むかということになりますと、非課税貯蓄の残高がどのくらいあるかということ、それから平均的にどのくらいの利子率であるかといったようなことをもとにいたしまして積算をしてみまして、私ども専門的、技術的な検討を加えましたところで、ただいま申し上げている数字になっているわけです。それ自身実態に合ったものと信じております。
  109. 草野威

    ○草野委員 最後に大臣にお尋ねしたいと思います。  今マル優問題につきまして、主として大蔵省中心にしていろいろとお尋ねしてきたわけでございますけれども、最後に恒久財源の問題として大蔵省にお尋ねしたわけでございます。こういう点も大蔵省としては例えば十年という数字も挙げておられましたけれども、十年といっても、確かに最終的にはそれは十年かもしれません。しかし実際には、何年がいって途中からはほとんど平らのような状態になるわけですね。そういう意味で、十年というのは果たして正しいかどうか、そんなことはわかりませんけれども、ともかく大蔵省はかなり必要以上に長期間を見込んでいるのじゃないか、また金額についてもかなり少なく見ているのじゃないか、そういうような気がしてならないのですね。  しかし、大蔵省は私どもの試算に自信があるということでございますので、これ以上はお尋ねしませんが、この恒久財源の問題につきまして今までの税制改革協議会の中でいろいろ言われてきたことは、恒久財源なくして減税なし、そういうことで減税をすぐ恒久財源に結びつけること自体がおかしいのじゃないか、私はこのように思うのですね。例えば自然増収が見込まれる場合は恒久財源なしに減税を行うことが十分に可能だと思いますし、またほかの収入、例えばことしの場合はNTTの売却益とかそのほか経費の節減によっても恒久財源なしに減税を行うことは当然可能であろうと思うのですね。したがって、単なる財源論だけで税制の基本原則である公平性を曲げたり、あるいはまた、そういうものに余り考慮を払わずに税制改革を行うことは余り適当なことではないのではないか、このように私は思うわけでございますが、大臣の御所見を承りたいと思います。
  110. 葉梨信行

    葉梨国務大臣 戻し税のように例えば一年だけ減税を行うという場合にはそれでもいいかもしれませんが、永続的に減税を行っていくとすれば、やはり恒久的な財源措置をしなければならないことは自明の理であろうと思う次第でございます。
  111. 草野威

    ○草野委員 この問題でまたやると時間がかかりますから、次に移ります。  次に、地方税法の問題につきまして若干お尋ねをしたいと思います。  地方税の減税は、当初案では六十二年度から実施することになっていたわけでございますが、今回提出されました法案では、年度中途における個人住民税の減税はその課税上の仕組みからいろいろ制約があるので六十三年度から実施する、こういうことになったわけでございます。そこで、その内容につきまして今まで言われておりますことは、六十三年度約五千億、六十四年度に約六千六百億、こういう話が出ているわけでございますけれども、このように二カ年で実施することにつきまして、これは財源措置等の理由から二カ年にわたって減税をするんだ、このような説明のようでございます。  しかし、当初は所得税と同様に個人住民税につきましても六十二年度から減税を実施する、こういうふうになっていたわけですね。それをいろいろな事務の都合でやむを得ず六十二年度から実施する、こういうふうになったわけでございまして、国民の立場からすれば当然六十二年度、ことしから減税されるもの、そういう期待を持っていたわけでございます。一般の国民からすれば、そういう難しい技術的な問題はわかりません。しかし、そういう課税上の仕組みから六十三年度に、一年先送りに結果的にはなってしまった。そういうことで、国民の期待を結果的には裏切ってしまったことになったわけでございます。したがって、今回の減税につきましては二カ年ではなくて六十三年度一カ年ですべての減税を実施すべきではないか、このように思いますが、いかがでございましょうか。
  112. 津田正

    ○津田政府委員 先生指摘のように、先般の通常国会におきましては、住民税は六十二年度から二千三百億円ベースの初年度の減税から出発しよう、このような案を提案したわけでございます。その後、税革協議会等の御議論も踏まえ、また私ども、六十二年度に果たして年度途中四千四百万人に上る納税者の課税を全部やり直すことができるかどうかということを、関係者と相談しながら考えてきたわけでございますが、御指摘のような住民税の課税の仕組みからいって、本年度、年度途中の減税ということは極めて困難、事実上できない、こういう事態になっておるわけでございます。  そこで、六十三年度から住民税は減税を行わせていただきたい。その場合、先生指摘のとおり、国民の方々は六十二年度減税ということに期待を持っておったことも事実でございます。そういうような期待、また恒久財源とされております利子課税見直し財源状況、両面から検討してきたわけでございますが、やはり本年度減税を見送る、本年度二千三百億円という減税を予定しておったわけでございますが、これができないという事態になれば、それの倍以上の減税をすることが国民の期待にも沿うのではないか。  一方におきまして、利子課税見直しということは、正直申しまして七、八年かかるような情勢でございますが、ある程度先行的な減税というごともやらなければならない。そういう両面の考慮のもとに五千億円の初年度減税から入る、そして六十四年度には平年度化で六千六百億円程度の減税を行う、このように考えたわけでございます。本年度減税できないという実情、そして国民の期待、そして地方財源として恒久財源がすべてまだ入らない、こういうような状況を勘案いたしまして、二段階の減税方式ということで御提案申し上げておる次第でございます。
  113. 草野威

    ○草野委員 今いろいろと御説明がございましたけれども財源の点から見ても六十四年度六千六百億円ということでございますので、千六百億円ふやしたわけですね。我々から言えば、わずか千六百億ですよ。これだけ上積みするということは現在の地方財政に一体どれだけ大きな影響があるのだろうか、こういうような気がしてならないわけなんですね。この点についてもう一回御答弁をいただきたいと思います。  それから住民税減税の問題ですが、中堅層に対する減税に配慮したい、こういう総理のお話でございますが、住民税の場合どのような配慮がなされておりますか、お尋ねをさせていただきたいと思います。  六十三年度の税率改正の表を拝見いたしますと、一つの例を挙げます。中堅所得層のうち例えば課税所得が百三十万から二百二十万、これは現行税率のまま据え置かれているわけでございますが、こういうことでは中堅サラリーマン層への減税は不十分ではないか、このように思うわけでございますが、この点をあわせて御答弁をいただきたいと思います。
  114. 津田正

    ○津田政府委員 五千億と六千六百億の差が千六百億という御指摘はもっともなわけでございますが、実は六十三年度におきます利子課税見直し財源は、当初私ども三千億ないし三千五百億程度と期待しておったわけでございます。しかし、先般の幹事長・書記長会談の結果、利子課税見直しの実施時期を一月一日から来年四月一日に送る、こういうような提案がなされておりまして、それによりまして実は六十三年度に期待されます利子課税見直しによる財源というのは一千億円ぐらいさらに減収になる、こういうような厳しい状況になっておるわけでございます。  もちろん、今後の経済動向、税収の見通しにつきましても十分私ども今後様子を見てまいりたいと思いますが、昭和五十年以来の減税の規模を考えますと、五十九年度所得税、住民税の減税を大幅にやりましたと言いましても、住民税での減税が実は三千億円程度というような状況でございまして、六十三年度五千億というものは住民税としては相当規模の減税である、このように考えておる次第でございます。  それから、住民税の税率等いわゆる住民負担の軽減の状況でございますが、今回の案で見ますと、住民税の減税におきまして税率を下げるということと課税最低限の引き上げ、このような仕組みになっております。ただし、先生指摘のとおり最低税率につきましては四・五を五・〇としておりますが、課税最低限、各控除二万円ずつ引き上げというものが大きく響いております結果、夫婦子二人の給与所得者の場合におきまして、給与収入三百万円でございますと軽減割合は四〇・一%、四百万円で二〇・九%、五百万円で一八・三%、六百万円で一四・三%、七百万円で一二・六%、こういうような軽減率になっておりまして、相当な軽減を図っておる、このように私ども考えておる次第でございます。
  115. 草野威

    ○草野委員 次に、地方交付税法地方財政対策などについてお尋ねしたいと思います。  初めに地財計画でございますが、当初の地財計画を修正されたわけでございますが、内容的には今回の公共事業の追加であるとか減税とか交付税の据え置きに伴うものであろうかと思います。当初の計画では、昭和六十三年一月売上税導入を前提に、投資的経費を中心に千八百五十八億円の売上税相当額を計上しているわけでございます。地方財政計画における売上税相当額を拝見いたしますと、六十二年度については投資的経費が千五百九十七億、一般行政経費が百十五億、その地合わせまして千八百五十八億、平年度の約四分の一、こういうような数字が計上されているわけでございます。しかし、今回の修正で歳入の売上譲与税収入は全部落としたわけでございますので、歳出の方でも千八百五十八億円、この分は落とすのではないかなと思うのでございますけれども、この点はいかがでございますか。
  116. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 確かに御指摘になりましたように、当初の地方財政計画売上税導入に伴いまして、これに伴う歳出への影響額として初年度約千八百億円を見込んでおる、このように御説明を申し上げたところでございます。今回、補正地方財政対策による歳入歳出の見直しに際しまして、売上譲与税歳入の方から落としたわけでございますが、歳出につきましては、今申し上げました約千八百億円に相当するものを特に変更を加えていないところでございます。この売上税の影響のほとんどの部分は、先ほど数字をお挙げになりましたように投資的経費でございます。しかも、国の方におきましても同じように公共事業についてはそういった影響額が見込まれておる、こういうことになっておるわけでございますが、今回の公共事業の追加に当たりましても、特にそういった点についての修正は行われておりません。また単独事業もあるわけでございますが、我々としては、こういった売上税の影響というものが本年度はなくなるということに伴いまして、今申し上げました国の予算との関係からも特に今回変更を加えることにしなかったということと、それから結果としてはその分実質的に事業費がふえると申しますか、地方団体の判断によってその辺を取り扱うことが可能になっておるというぐあいに考えるわけでございます。地方財政計画はあくまでも見積もりでございまして、したがってこれを参考として地方団体投資的経費を予算に計上する場合は、その辺を地方団体の判断で計上していくということになろうかと思います。  また、経常経費等につきましては、これは物価上昇等の中に含まれておるということでそれだけの影響額があるわけでございますが、この点についても特に物価の指標というものが、予算の基礎になったもの、あるいは地方財政計画の策定の基礎になった物価の指標というものが修正されておるわけでございませんので、それらの点についてあえて補正地方財政対策において見直しは加えていないところでございます。
  117. 津田正

    ○津田政府委員 申しわけございません。先ほど給与収入の各段階別の軽減率を所得税のものと資料を間違えましたので、住民税のもので訂正申し上げたいと思います。  給与収入三百万円で三四・七%の軽減、四百万円で二三・三%の軽減、五百万円で一七・九%の軽減、六百万円で一六・六%、七百万円で一二%の軽減、このようになっております。申しわけございませんでした。
  118. 草野威

    ○草野委員 たっぷり減税しているじゃないか、こういうお話でございますけれども、御存じのように所得税につきましては、今与野党の間でこれくらいの減税ではだめだということでさらに上積みの話し合いが行われているわけでございまして、我々も決して住民税減税をこの程度で満足しているわけではないということを申し上げておきたいと思います。時間がないので急がせていただきます。  地方財政対策の補正措置の問題でございます。地方税、それから地方譲与税の減収対策について見てみますと、これは当初との比較で三百九十三億円の減、こういうふうになっておりますが、これについては財源対策債で補てんということになっているわけでございます。いずれにいたしましてもこういう性格でございまして、地方の借金、こういう形になるわけでございます。また、地方交付税では売上税の二〇%相当分二千二百六億円、これだけ減収になるわけでございますけれども、これも六十一年度の地方交付税の精算額五千七百五十五億円、この中から穴埋めをするのだ、こういうことになっておるようでございます。しかし、この売上税の二〇%減というものは国の売上税の廃案によるものでございますので、これは当然国の責任で補てんすべきものであろうかと思います。本来六十一年度の地方交付税の精算額は地方固有財源でございますので、これをもって国の責任を肩がわりするというのはおかしいんではないか、このように思わざるを得ないわけでございます。交付税法附則三条の特例措置、こういうもので国の一般会計が負担すべきではないか、このように思いますが、いかがでございますか。
  119. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 今回の税制改正案の見直しによりまして地方交付税の減収が生ずることが見込まれたわけでございますが、一方、景気の情勢によりまして六十一年度の国税三税の自然増収に伴う交付税の精算増分が今お挙げになりましたように五千七百億円余見込むことができることが明らかになりましたので、その一部を昭和六十二年度分の地方交付税の減収の補てんに充てるということが目下の情勢から見て適当であると考えて、このような措置を講じることとしたところでございます。  当初国もそれから地方においても見込んでおりましたところの売上税は、国税、地方税を通じての減税の補てん財源としてその創設が考えられたものでございます。これが結果的に廃案になったということによる減収分について、国においてさらにその減収を補うための別途の税源を確保するというような措置が講じられる場合は別といたしまして、今回のような場合に専らこれを国の責任において補てんをするということは現実問題としては困難であると考えております。実際にそれだけの交付税の精算増という財源が出てまいったわけでございますから、当面はこれによって措置をしていくということが現在の情勢から見て適当だ、こう考えたわけでございます。  なお、当初の場合におきましては、例えば所得税の減税先行があったためにその分だけ交付税が減る、しかしその場合にはこれを埋めるべき財源も、特に交付税の精算増といったようなものもございませんでした。そういう意味で特例加算千百三十五億の措置を講じ、なおこれは今回の補正措置におきましてもそのまま確保することにいたしておるわけでございます。ですから、そういったような場合にはまさに特例措置で加算をするということもあるわけでございます。今回の国税の減収に伴うものすべてを交付税の本来の法定額の中で賄うということとしたわけではないという点は御理解を賜りたいと存じます。
  120. 草野威

    ○草野委員 大蔵省の方、どうもありがとうございました。  時間がございませんが、もう一問だけ伺っておきたいと思います。  いろいろと今御説明いただいたわけでございますが、いずれにいたしましても二千二百六億円につきましては六十一年度の精算額の中から穴埋めをする。それから例の公共事業の追加に伴う分三千五百億、これも同様な措置だろうと思います。  そこで、国の方は六十一年度の剰余金一兆七千六百十五億円というふうに聞いておりますけれども、このうち四千三十億円は公共事業財源としたわけで、残りの一兆三千五百八十五億円は所得税減税財源に充てると言われております。地方税の減税は六十三年度に行われるわけでございますが、六十一年度の交付税の精算額五千七百五十五億円はやはりそのときの財源としてとっておくのが筋ではないかな、このように我々は思うわけでございます。したがって、六十三年度の交付税に回るべき精算額をことし全部使ってしまったならば来年度の減税財源に支障を生ずることになるのじゃないか、地方財政対策に支障を来すことになるのではないか、こんなことも懸念するわけでございますが、こういう点はいかがでございますか。
  121. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 六十一年度分の精算を住民税の減税財源に充ててはどうか、こういう御質問でございますが、先ほど申し上げましたように、六十一年度分の交付税の精算額につきましては、まず税制改革見直しに伴う六十二年度の交付税の影響額のうち、今の情勢から見て他に適当な補てん方法がない売上税相当分二千二百六億円の補てん財源にこれはどうしても充てざるを得ない。それからもう一つは公共事業の追加でございますが、これもやはりこれだけの規模の公共事業が追加されるということになりますと、すべて起債というわけにはまいらない。ぜひとも一般財源措置を講ずることが必要だ、それによって公共事業の執行を円滑にする必要がある、こう考えて、そのために三千五百億円を使ったわけでございます。とにかく、地方財政対策以後生じてまいりました新たな事情に、まずこの精算分をもって対応をいたしたいという措置を講じたものであることを御理解いただきたいと存じます。  なお、御指摘のように、六十二年度以降の住民税の減税につきましては、これは恒久財源としては道府県民税利子割の創設をお願いしておるところでございますが、その平年度化までの間においては、これは減税先行型になることは必至でございます。もちろんその際の税財源について当然考えてまいりませんと歳入中立性が保たれず、また地方団体財政にも影響が出てくるわけでございます。また、明年度以降における税制改正なりあるいは地方財政対策を講じるに際しまして、全体としてそういった財源確保が可能となるよう努力をしてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  122. 草野威

    ○草野委員 最後に、土地の高騰問題と固定資産の評価がえに関する問題につきましてお尋ねをしたいと思います。  昭和六十三年度は固定資産の評価がえの年度に当たっておりますが、全国都道府県に一カ所ずつ置かれております基準地の価格発表は今回はいつごろになる予定でございますか。  また、基準地の評価がえ作業は評価がえ年度の二年前、今回の場合は昨年の七月一日を調査時点として評価がえが進められると聞いております。そうしますと、今回は昨年七月一日以前の過去三年間、つまり五十八年の七月二日から六十一年七月一日までの間の地価の値上がりが反映されることになると思いますが、この点についてはいかがでございましょうか。
  123. 渡辺功

    ○渡辺(功)政府委員 固定資産税の評価がえに当たりまして、地目に分けて評価するわけでございますが、その中で、今委員指摘のように宅地、農地、これは田と州とありますが、それと山林、これにつきましては自治大臣が、評価の均衡を図りますために、指定市町村長が評定いたしました基準地の適正な地価について所要の調整を行うということにしております。この場合、従来から中央固定資産評価審議会の意見を聞いた上で基準地価格の調整を行っております。前回、昭和六十年度の評価がえにおきましては、その前年の五十九年九月末ごろに同審議会の審議に付された上で基準宅地についてその路線価が一般に公表されておりまして、今回の昭和六十三年度の評価がえに当たりましても、おおむね同様のスケジュールで行われますように現在調整作業を進めておるところでございます。  それから第二番目に御指摘の点でございますが、実際の調査期間ということでございますが、委員指摘のように、非常に膨大な作業でございますから間際の評価がえのための資料まで収集して評価がえをするということはできません。六十一年の今回の評価がえであれば七月一日までということで御質問がございましたが、この大体一年半前の七月というところを基準日といたしまして、基準地、標準地の評価がえ作業をスタートさせているところでございます。  そういうわけでございまして、第三番目に御質問でございますが、この間の地価ということになるとそう大きな上昇はないのではないか、その辺はどうなっているかという御質問であると思いますけれども、地価の上昇は特に最近この一年間において著しいものがある、これは確かでございます。それ以前の段階におきましては、地価の上昇が激しくないというのはちょっと言い過ぎかもしれませんが、最近一年間と比べますとそれほど急激な上昇とはなっていないわけでございます。  例えば東京圏の商業地を見てみますと、六十二年の公示価格で見ますと、この六十二年の公示価格は一年間の上昇率として四八・二%という上昇となっておりますけれども、五十九年では五・五%、六十年では七・二%、六十一年は少し高くなりまして一二・五%でございます。  また住宅地を見ましても、おおむねそういったような状態で、六十二年度公示価格は東京圏で二一・五%でございますが、同じく住宅地について東京圏を見ますと、五十九年は二・二、六十年は一・七、六十一年は三・〇ということになっております。  それでは価格全体が相当安定しているのかといいますと、そうでもございませんで、特にただいま御指摘のようなこの三年間の地価動向を見ながら評価がえをやるわけでございますが、地価公示の動向を見ますと、三大都市圏の特に都心部の一部商業地では非常に急激な地価上昇があるわけでございます。例えば東京都の二十二区の商業地全体では五〇%程度でございまして、大阪では三二%程度というようなことになっております。特に東京都の二十三区の最高価格地を示す、これは標準地に係る同時期の三年間の上昇率は一七六%になっております。こういうふうに、特に都心におきますところの急激な上昇ということが、今回のこの前々年からその前三年間程度の動向の特徴ということになっているわけでございます。
  124. 草野威

    ○草野委員 全国四十七カ所の基準地の宅地の平均価格は前回の六十年度には一九・九%の上昇率、このようになっているわけでございまして、前々回の五十七年には二四・一%、このような上昇率になっております。基準地の評価額は評価がえ年度の二年前のものを基礎にするということになりますと、こうした考えで前回と前々回の状況を見てみますと、前回の六十年度の一九・九%、これについては、五十九年四月一日の公示価格の過去の三年間の倍率を見てみますと一五・八%という数字になっております。同じく五十八年の四月一日の公示価格の過去三年間の伸び率を見てみますと、これは二三・二%になっておりまして、この一九・九%という数字はちょうどこの二つの数字の間におさまっている、こういうような結果になっているようでございます。また前々回の二四・一%について見ましても、五十六年の二六・八%と五十五年の一八・六%の間におさまっているわけでございます。  このような考え方で六十二年度の評価額を推定してみますと、六十二年の公示価格の伸び率は一三・二%になっております。六十一年度の伸び率は八・二%でございます。したがって、もしこの間におさまるとすれば、高くても一三・二%程度で、前回の六十年度の一九・九%まではいかないようにも考えられるわけでございますけれども、こういう点ほどのように見たらよろしいでしょうか。
  125. 渡辺功

    ○渡辺(功)政府委員 ただいま地価公示の動向、特に前々年から三年程度の前回、前々回の状態をお示しして御質問いただきました。私どもも、そういったような事柄も含めまして、調整に当たるときにはいろいろ検討をしているところでございますが、現在まだその作業は途中でございまして、調整の状態についてお示しするようなところまで私どもの作業は進んでいないわけでございます。  ただ、どういう傾向にあるのだろうかということについては、先ほども申し上げましたけれども、三大都市圏の都心部等の大都市の中心商業地において非常に地価の急騰が見られる反面、ただいまの御指摘は、まさにそのほかの地方都市においては全般的に割合安定的に推移しているということでございます。したがいまして、従来の宅地基準地の評価と比べますというと、こういう地価動向にかんがみると、従前の場合と対比してかなり特徴的なのは、地域によって上昇率に相当のばらつきが生ずるのではないか、こういうふうに見ているところでございます。
  126. 草野威

    ○草野委員 時間がなくなりましたので二つ三つまとめて御質問したいと思います。  今おっしゃられたように、確かに全国的に見ますとばらつきが見られるわけでございまして、固定資産税の制度のあり方につきまして、全国一律ではなくてもう少し地方自治体の裁量を認めるようにしたらどうか。例えば税率を自由に下げられるような弾力性を認めるような方向で検討されたらいかがでしょうか。これが一点です。  それから二番目は、現行の固定資産税では、徴税事務の簡素化等の観点から、土地については免税点が十五万円とされまして、課税標準額がそれ以下の土地には課税されない、こういうようになっているわけでございます。しかし、これは昭和四十八年以降すっと据え置かれているわけでございまして、この間の地価上昇を考えますと、来年度はこれを引き上げてもよろしいのじゃないかと思いますが、この点いかがでございますか。  第三点。地代家賃統制令、これは昨年の十二月三十一日で時効になったわけでございますが、これに伴いまして全国的に地代家賃の便乗値上げが今問題になっているわけでございます。これについての対策を何か考えているか。  最後に、土地や家屋を所有する固定資産税の納税者には、その評価額が妥当かどうかチェックする方法として固定資産課税台帳の縦覧制度というものがございます。しかし、これを縦覧できるのは所有者に限られております。したがって、借地人や借家人はみずからそれを確かめチェックすることができません。来年度の税制改正では借地人、借家人でも自由に縦覧できるように改正をすべきではないか。  以上、お尋ねいたします。
  127. 渡辺功

    ○渡辺(功)政府委員 まず第一点目は、固定資産税の負担につきまして各団体が自由に下げることができるような方途を認めてはどうかという御趣旨と思います。  固定資産税につきましては、既に委員御承知のとおりでございますが、法制上は市町村におきまして標準税率未満で課税することも可能でございます。したがいまして、法的には御指摘のような仕組みがとられているわけでございます。ただその際には、標準税率というものは通常よるべき税率であると法律にも定められておりますが、市町村が提供するサービスにつきまして標準的な行政水準を維持するために必要な住民の標準的な税負担の水準ということを示すものだということでございます。標準税率を下回る税率を定めることはできますけれども、それが適当であるかどうかということにつきましては、その市町村行政水準であるとかあるいは財政状況とかいろいろな事情を総合的に勘案の上、特に慎重に判断すべきものではないかというふうに私どもは考えております。  それから第二番目は、免税点の引き上げを考えないかという点でございます。  免税点につきましては、現在、土地は十五万円、家屋は八万円とされているわけでございますが、現在におきます市町村財政状況、とりわけ固定資産税が所得割と並んで重要な自治団体の基礎的財源でありますことから、この問題についてはやはり慎重に考えなければならないということでございます。特に土地につきましては、小規模住宅用地あるいは一般住宅用地について課税標準の特例が設けられておりまして、これは相当な措置になっているということがございます。また、家屋について申し上げますと、在来分家屋の評価額を原則といたしまして据え置くという措置を講じて負担の増加を防いでおります。こうしたことを考えますと、免税点の引き上げは、当面これを行うことは適当でないというふうに考えているところでございます。  それから第三番目、四番目につきまして、御質問と順序が逆になるかもしれませんが、台帳縦覧の問題と地代家賃の値上げ対策といいますか、便乗値上げというものに対してどう考えているかという点についてお答えを申し上げます。  まず、台帳の縦覧の問題でございますが、固定資産課税台帳は固定資産税を賦課するための基本的な帳簿として市町村に備えられまして、土地登記簿とか建物登記簿に登記されている事項のほかに、固定資産の価格とそれから課税上の事項が登録されているものでございまして、これを借地・借家人など第三者に縦覧するということになりますと、納税者の意思に反しましてその財産上の秘密を市町村が漏らすことにもなりますので、納税者本人、その委任を受けた者等、固定資産税の課税に関し直接関係を有する者以外の者に対して固定資産課税台帳を縦覧させることはできないものと考えております。  なお、評価がえに伴います地代または家賃の不当な引き上げという問題につきましては、従来からもいろいろ御議論いただいておりまして、私どももそうした御議論に十分留意いたしましてこれに対処してきているところでございます。評価がえごとにその抑止につきまして都道府県を通じまして指導を行ってきたところでございまして、今回の評価がえにつきましても、その評価がえの水準、あるいは先ほど申し上げましたように特に今回は全体的には割合になだらかな推移といいますか、そういうことが見られるとしても、一部分で非常に高い地価の高騰がどういう状態に評価がえに反映してくるかというようなことも含みまして、これを見ながら適切な対応を図ってまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  128. 草野威

    ○草野委員 以上で終わります。
  129. 石橋一弥

    石橋委員長 岡田正勝君。
  130. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 私は、マル優制度廃止反対、内需拡大のためにも地方税の大幅減税を実施せよという立場に立ちまして、順次質問を行います。  まず第一番に大臣にお伺いをいたしますが、先月、七月二十八日東京の全国都市会舘で行われた全国市議会議長会の第五十七回地方財政委員会におきまして、自治省の柿本財政課長さんが、昭和六十三年度からの住民税減税のためにはマル優見直しがぜひとも必要という趣旨の講演を行われましたが、大臣といたしましては今回の税制改革におけるマル優見直しをどう考えていらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。
  131. 葉梨信行

    葉梨国務大臣 このたびの税制改正法案でございますが、税制改革協議会の御論議を念頭に置きながら、当面早急に実施しなければならない税制改革項目を取りまとめたものでございます。その中で、勤労所得と資産性所得との間の実質的な租税負担の公平を確保するという見地を基本に置きまして、住民税減税に対しまして恒久的財源確保するために利子非課税制度の改組を行ったところでございます。
  132. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そういう御意思であるといたしましても、直ちにマル優制度廃止に踏み切るということは、恒久財源確保のために取りやすいところから取っていこうという考え方ではありませんか。
  133. 津田正

    ○津田政府委員 非課税制度の見直しということにつきましては幾つかの理由があるわけでございます。一つは、不正利用がかなり見受けられるということ。それから第二点としましては、個人貯蓄の七割以上がその適用を受けている結果、約十六兆円にも上る巨額の利子所得というものが課税ベースから外れておって、勤労所得あるいは法人所得等との税負担の不均衡があるという点。それから現実問題としまして、現在のマル優の枠というものが、家族四人でございますと御承知のとおり三千六百万あるいは財形貯蓄を合わせれば四千百万、こういうような非常に大きな枠になっておりまして、通常の階層の貯蓄におきましてはみんな枠を余しておる。結局、結果的には金持ちの方々だけが活用しておる。もちろん通常の方も利用しておるわけでございますが、利用の仕方から申しますと、やはり金持ち階層がより受益しておる、こういうような性格を持っておること。それから、果たして貯蓄というものを一般的に一律的に政策的配慮をするかどうか、これについても反省する必要があるんじゃないか。こういうような四点の問題があるわけでございます。  よく不正利用云々ということだけでの御議論もあるかと思いますが、やはり勤労所得とのバランスの問題、そして実質的にはかなり金持ち優遇になっておるという枠自体が非常に大きな問題、そういう問題も抱えておるわけでございまして、もちろん勤労所得でございます個人住民税、所得税の減税というものをいたしたい。それとの均衡もあり、そして補てんという意味でも利子課税見直しが必要である、このように考えておるわけでございます。
  134. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それもよくわかります。限度枠いっぱいを使い切っている人はほとんどない。もし使い切っておるとするならばお金持ちの方であって、そういうところに不公平が生じておる、そういう不公平を直すためにも断行すべきであるというようなお話でございますが、それも一部了解はできます。できますが、しかしながら私ども税制改革をするときにまず第一番に手をつけなければならぬことは、国民的な要請であります不公平税制の是正、そして地方行革の断行。こういうことを行うならば、これはいろいろな試算がございますけれども、大体国全体といたしまして三兆ないし五兆円、大体そのうちの四割が地方財政の方に関与いたしますから、一兆二千億ないし二兆円近くの財源が浮いてくるはずであります。  そういう不公平税制の是正とか行革の断行とかいう、やらねばならない行政責任を放置したまま、最も簡便なマル優制度の廃止による一律二〇%課税断行というやり方は、まことに横着なやり方ではないかと私は思いますが、いかがでありますか。
  135. 津田正

    ○津田政府委員 御意見のとおり、不公平税制の是正の問題、そして地方行革の一層の推進ということは、地方団体または私ども地方団体関係者にとりましても重要な問題でございまして、従前からも取り組んでまいったわけでございますが、今後もさらに努力を続けていかなければならない、このように考えられるわけでございます。  ただ、不公平税制と言われるものの中には、いわば政策的に必要な税制、税負担の公平ももちろん必要であるが政策的にこういうものを推奨したい、普及したい、こういうような性格を持っておるわけでございまして、一番大きなものは、先般来よく議論になります小規模住宅に対する固定資産税については四分の一までまけておる、あるいは住民税におきましても生命保険料控除というようなものを認める、そういうような政策的意義、これは時々刻々にその要請というものは変化してまいるわけでございまして、常に見直しは必要でございますが、いわゆる非課税措置というようなものにはかなりそういう現在なお政策的に存置しなければならないものがあるわけでございます。しかし、いずれにしましても、税の負担の公平のためにそういうようなもの、あるいは全く不公平と言われるものもあるわけでございまして、その点につきましては私ども努力してまいらなければならないわけでございます。  ただ、この点から申し上げましても、先ほどの利子課税見直しという点も、不正利用という点もございますが、やはり不公平の是正、勤労所得についてかなり税負担が重いと言われるほど課税されておるのにかかわらず利子所得について全く非課税ということは、やはり税負担の公平という観点からしましても見直しが必要なのではないか、かように考えておるわけでございまして、地方行革につきましても今後一層努力いたしまして、地域住民に十分その利益が還元されるよう相努めてまいらなければならない、かように存じております。
  136. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 なかなか理路整然としたお答えでございますが、そういうお答えを聞くと虫がむらむらとするのですね。例えば小規模住宅等においては四分の一も減免措置を講じておりますしというようなことでおっしゃってこられますと、しからばそれ以外の不公平税制はもうないのか、あるとすればどういうものがあるのか、それをここで言うたのではまたあなたの立場が困るだろうからこれは聞かぬことにいたしまして、次に移らせていただきましょう。  さて、六十一年一月から本人を確認するということによってその厳正化措置がとられておるのでありますが、それの効果をもっとよく見きわめてからこの問題に踏み込むべきではなかったのかというふうに私は思うのでありますが、いかがでありますか。
  137. 津田正

    ○津田政府委員 本人確認制度というものの励行が行われてきておるわけでございますが、それにつきましても限界があることは確かでございます。同じ店舗でありますとその確認ということは容易でございますが、店舗が違うあるいはほかの銀行に行った場合どうするのだというような議論はどうしても残るわけでございます。  ただ先生、これだけの問題ではなくて、やはりいわゆる課税ベースとして利子所得というのが十六兆円近く残っておるというのが勤労所得との均衡上問題である、この点を十分御配慮いただきたいと思います。
  138. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは次に、がらっと質問を変えさせてもらいます。マル優制度を廃止賛成ではないのですから、誤解のないように聞いていただきたいと思います。  疑問に思っておることを聞くのですが、自治省のこれまでの態度といたしましては、利子課税制度についてはあくまでも総合課税を追求するという立場にあったと私は理解をしておりますが、今回の一律分離課税、国が一五%、地方が五%ということは、この総合課税の追求という姿勢から考えると逆行するのじゃありませんか、反するのじゃありませんか、いかがですか。
  139. 津田正

    ○津田政府委員 グリーンカード制度の問題におきましては、私ども大蔵省の案に賛成でございまして、国会の御審議を受けて一たんは成立を見たわけでございますが、事実問題としまして資金シフトが著しく起こるとか、非常に不安感が国民の間で起こったというような反省のもとに廃案になったわけでございます。そういう意味におきまして、グリーンカード制度というものはまだ我が国としては時期尚早と言わざるを得ないのではないか、かように考えておるわけでございます。  所得課税の原則としまして、いわゆる総合課税、垂直的な公平、水平的な公平ということは一つの基本的な理念でございまして、そういうものを追求するということは私どもに課せられたものでございますが、やはり利子所得におきます発生の多量性、元本の多様性、それから正直申しまして、奥さんのへそくりを御主人は知らないのに税務署にコンピューターでつながってわかるというのが国民の意識に定着するのにはまだ時間がかかるのではないか、そういう意味におきますと、これらの利子の特性からいたしますと、一律分離課税という今回の方式は実質的な公平につながるのではないか。特に地方税にとりましては、かねてから当委員会で毎回御指摘を受けておりました三五%の源泉分離選択課税につきまして、所得税だけかかって住民税はかからない、このような問題も今回の案では一挙に解決できるという点を考慮いたしましても、グリーンカードの問題はそれ自体今後総合課税の問題としてなお検討は要すると思いますが、現段階におきましては今回の案が現実的、妥当なものではないか、かように考えております。
  140. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 今へそくりということが出ました。あれもなかなかいい言葉ですね。私どもはへそくりをしてくれるような女房がおることが亭主としては非常に頼もしいと思いますよ。例えば大昔の話でありますが、豊臣時代に山内一豊の妻が、いざ出陣というときに主人が乗っていく馬がない、これでは人にばかにされる、天下の武将として恥をかく、そういうときに、やおら鏡の中から小判をざくざくと出して、あなた心配しなさんなと言って都合してやったあの美談、ああいうのはどう思われますか。
  141. 津田正

    ○津田政府委員 そういう女房を欲しいものと思っております。
  142. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それは結構なことでありますというお話でありますから、大体私と同じだなと思って安心して次のことを聞かせていただきます。  これはもし大臣でよろしければひとつお答えいただきたいと思うのでありますが、また原則に返ってくるようでありますけれども、このマル優制度の廃止そのものは、選挙中の総理の公約の違反であり、しかして前国会の与野党国対委員長会談の合意事項に反する問題であると思いまして、私は先般の本会議で総理に確認をいたしました。あなたは選挙中に大幅の減税を断行いたします、そのための財源として大型間接税あるいはマル優というようなことを心配する向きもあるが、心配しないでください、この財源はあるのであります、それは何か、自然増がまず第一にあります、その次に国有財産の売却があります、その次にNTTの売却益もあります、こう言ってあなたは国民を安心させたではありませんか、ということを問いましたら、総理は、私は実はあの質問にはひっかかってこないと半分投げておったのですが、きれいにひっかかりまして、その本会議で確認されましたね。私は選挙中にNTTの売却益も減税財源に充てられるということを言いましたが、それは自然増収あるいは国有財産の売却、NTTの売却益等々というふうに例示をしたのでございます、こうおっしゃったのです。これは我が国の衆議院の本会議の議事録にばっちり残ったことでありますから、将来もう取り消しはききません。総理から取り消しの申し出もございませんでした。でございますから、これはもう明らかに公約違反であり、与野党国対委員長会談の合意事項に反する提案であると私は考えておるのでありますが、よろしかったら大臣からお答えを聞きたいのであります。
  143. 葉梨信行

    葉梨国務大臣 非課税貯蓄に対します問題につきましては、総理は選挙中も、お年寄りとか母子家庭とかその他気の毒な境涯にあられる方については除いて課税を行いたい、こういうふうに限定的に申し上げておりましたので、私は公約違反ではないと思っております。  それから、税制改革協議会の各党間のお話し合いの中で、当初の通常国会に提案しました法案そのものは再提出しないということを与党の担当者から申し上げたかもしれませんが、今度の非課税制度につきましては、当初案とは多少内容が変わっている、こういうように私どもは認識している次第でございます。
  144. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 品行方正、協力度抜群の自治大臣としては、今のは模範回答だと思います。これを争っておりましても時間ばっかりとりますので、次に行かせていただきます。  さて、それではひとつ具体的に質問をしていきたいと思うのでありますが、まず第一に、マル優制度を廃止しそ一律二〇%課税した場合に、取り分としては国が一五%、そして地方が五%、こういう割合というものはちょっとおかしいのと違いますか。大体我々の認識からいったら、三税に対する地方交付税の三二%でさえ少ない、もっと税率を多くするべきだ。これには自治省も、そのとおりだ、我々も努力を重ねておりますというお答えがいつもはね返ってくるのでありますが、このマル優の配分については、例えばこれを三二%にしたら一五%対五%じゃないですよね。もっと高く上がらにゃいかぬでしょう。そうすると、この五%でどうして自治省は納得したのか不思議でならぬのですが、どういうわけで納得しましたか。
  145. 津田正

    ○津田政府委員 今回の利子課税見直しにおきまして、国が一五%、地方に五%、このような税率を設定しておるわけでございますが、住民税というものは広く負担を分任するという性格を持っております。浅く広くと申しますか、そういうような性格を持っておるということと、先ほどもちょっとお答えしたわけでございますが、住民税の方は今まで取っておらない部分もすべてカバーするという性格を持っております。したがいまして税収の配分におきましては、国税におきましては九千五百、地方税におきましては六千五百ぐらい、そういうような比率でございまして、比率からいたしますと三二%ではなくて四〇%ぐらいということで、地方への配分というのはかなり頑張ったつもりでございます。かつ税の性格から申しましても、金持ち優遇とかいろいろ議論のある中で、私どもの税率は住民税の最低税率の五%に匹敵しておるということで、広く薄くというような思想にも合致しておるのではないか、かつ税収配分としても相当な配分になっておるのではないか、こういうような考え方でございます。
  146. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 今のお答えからいたしますと、県と市町村とを合わせての住民税の最低税率五%、大体これと匹敵する、まあいいじゃないか、こうおっしゃるのでありますが、国の方は一〇・五%でございますよね。そういうお話をなさるときには、地方の方の最低税率は五%でありますから大体見合っておりますわいな。国の一五%の方は一〇・五%には見合わぬのですが、これはこっちは目をつぶったのですというのはどうもいい答弁になりませんね。私はそう理解するのですよ。  それで広く負担をする、分任をするというような性格を持っておりますのでなんということをおっしゃる。それなら今度のマル優に関する利子割の課税というものは、都道府県が取って市町村は取りませんね。そうでしょう。住民というのは市町村に住んでおるのじゃないのでしょうかね。だから市町村が取るのが本当じゃないのですか。何で都道府県がまとめてがぽっと取るのですか。これは金融機関の所在その他のことでいろいろ理屈があるのだと思いますが、しかしそうやって理屈をおっしゃると、こっちも理屈を言いたくなるのです。こういう気持ち、わかるでしょう。だから、そういうことなんかをひとつぜひお考えをいただきたいと思うのであります。  それからその次の質問でありますが、マル優制度を廃止して一律二〇%課税をいたしますと、内需振興のために減税をやろう、こういうせっかくの減税という効果が半減しますね。これは大蔵省が出しておる——二十一日に私は大蔵省に大分突っ込み過ぎたので、きょうもお呼びするのはちょっとどうかと思いましたから、もうきょうはいいわ、来るな、自治省の方で十分対抗できるはずだから、こう言って出席を求めなかったのですが、大蔵省の発表による平均年収五百八十五万円、貯蓄の保有が四百七十四万円、そのときにおける所得税、地方税の減税が八万八千円というのであります。ただし、これは所得税は一兆三千億円の減税、それから地方税の場合は六十四年度以降、いわゆる平年度化したものの金額で勘定して八万八千円の減税。それに対してマル優の廃止をして二〇%課税をしたら三万四千円の増税ですから、差し引き五万四千円の減税と相なります、こういうことを言っているのですね。  そう言っておるのでありますが、さてこのマル優の廃止の三万四千円というものはどこから出たかというと、もう日本始まって以来と言ってもいいぐらいの三・五%という最低の利子に対して二〇%の課税、こういうことであります。大体これは証券なんかも入っているのですからね。国債なんかでは大体普通六・五%の利子でしょう。そういうようなことを考え、今がもうぎりぎり最低なんで、利子はどんどん上がりつつあります。そういう傾向に来ております。そういうときにおいて勘定するのには、やはり五%に対する二〇%というのが大体常識的な線ではないでしょうか。そうすると四万八千円の増税、差し引き四万円の減税にしかならない。半分以下の減税、こういうふうに相なってしまいますので、国民の落胆ぶりが目に見えるような気がするのでありますが、いかがでございますか。
  147. 津田正

    ○津田政府委員 いわゆる平均的な年間収入と平均的な貯蓄保有額ということで表をお示ししておるわけでございます。もちろんその利率の設定につきまして、恐らく先生のお手元のは三・六%の利率だと思います。この利率の点につきましても、実は経済情勢が敏感なものでございますので、今回の見込みにおきましては、先ほど税収の見込みを申しましたが、私ども四%ではじいておる。通常国会の段階では実は四・一%であった。途中経過におきまして三・六というような実勢もあったというようなことで、大蔵当局であのような資料を提供したわけでございます。ただ、これはあくまで平均的なものでとらえておるわけでございますが、先生先般御指摘になったように、最頻度数というようなことでいきますと二百万弱の貯蓄というあれもあるわけですね。ですから、これだけをとらえて議論されるということもいろいろな問題があるのじゃないか。何回も申して恐縮でございますが、やはり基本は勤労所得と利子所得との課税の均衡の問題、この点を十分お考えいただきたいと思うわけでございます。
  148. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは次に、収入の点について疑問をお尋ねしたいのでありますが、例えば二百八十七兆円の非課税貯蓄残高があるといたしますと、それに対する利子が五%で税金が二〇%とすると、貯金額に対して一%の税金となりますから、少なくとも二兆八千七百億円ぐらいの収入があるのではないかというふうに一般には思えますね。非課税貯蓄が二百八十七兆円ある。これはもうずっと示されておることで、それに対して利子五%、税金二〇%とするならば、一%でありますから二兆八千七百億円は税収として入ってくるはずではないかなと思うのでありますが、国の収入は平年度で九千九百億円、それから地方が平年度で六千五百億円、合わせて一兆六千四百億円にしかなりませんね。これは一体どういうことでこういう金額が少なくなるのでありましょうか。その点をお示しください。
  149. 津田正

    ○津田政府委員 利子課税の税収見込みというものを立てます際には、まず非課税貯蓄分と課税貯蓄分に分けて計算をしてまいっております。  まず、非課税貯蓄分でございますが、非課税貯蓄残高を六十二年三月末で三百十兆円と見込んでおります。そして利率を先ほど申し上げました四%として今回見込んでおります。そういたしますと、十二兆四千億という数字が出るわけでございます。しかし老人等のいわゆる非課税を存続するものの割合を二五%、相当大きなものと予想しておるわけでございます。この二五%と予想しておる根拠でございますが、老人世帯が全世帯に占めます割合が約一四%でございます。それから老人世帯で貯蓄残高が幾らあるか、実はこの統計が余りないわけでございます。あるのは勤労世帯におきます六十五歳以上の貯蓄高という統計はございます。それで見てまいりますと、八百三十六万円ということになっております。それで平均が四百七十四万円というような数字でございます。そういたしますと、これは勤労者世帯の平均貯蓄保有高の一七六%、こういうような数字になるわけでございます。このように世帯割合と貯蓄保有高、これは統計が勤労世帯だけで、いわゆる事業者から引退された方々の世帯というのはもうちょっと大きくなるのではないかと思いますが、勤労世帯ベースではじいて通常の世帯の一七六%の貯蓄保有をしておるということを掛け合わせますと、実は二五%というような率、額を控除しなければならない。そしてその税率、地方税率を五%掛けて非課税貯蓄を出す。地方税におきまして四千七百億という計算になります。  それから課税貯蓄分につきましては、三五%の分離課税の実態あるいは申告不要額の実態あるいは総合課税の実態を勘案してまいりますと、約千八百億程度になるわけでございます。千八百四十億でございますか、千八百四十億が課税貯蓄分の額になってまいりまして、現在総合課税で取っております額等を勘案いたしますと六千四百数十億ということでございますが、丸めまして六千五百億程度見積もれるのではないか。  このような計算過程を経ておるわけでございまして、私ども現在得られます資料、また現在の金利水準というようなことを考えますと、一応現段階におきます客観的な計数ではないか、かように考えております。
  150. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこでまたもとへ戻るようでありますが、現在の段階では二〇%のうち一五%が国、五%が地方という配分でやっていらっしゃいまして、金額的に見たらとんでもない、そんなことにはなっておらぬ、九千九百対六千五百、これは大分違うな、ほとんど四〇%近いじゃないか、こういうことになるのでありまして、だから今いいじゃないかということになるのかもしれませんが、将来的に考えたら決定的に一五%と五%というのは取る率が違うわけですから、三対一の割合になるのですから、やがてこれが数字の上で三対一の取り分にはっきり出てくるときは出てきますよ。これはそう出ないのですといったら分け方の数字にうそがあることになるので、この三対一の数字が出たときに、自治省として地方自治体の利益を代弁したことになるのですかということを私はもう一度尋ねたいのです。現在九千九百億対六千五百億だからいいですよ、心配しなさんな。それはことしは心配しませんよ。だけれども、だんだん年を経ていったら大きな差が出てくるなということになって、そのときの自治大臣はだれだ、あれは話のわかる葉梨さんであった、こういうふうなことになったのではお困りでしょう。だからそれをもう一度確かめておきたいのです。
  151. 津田正

    ○津田政府委員 一五対五ということを将来にわたってどう見るかということでございますが、現状の三五%で源泉分離選択というものに対しても地方税が新たにかかっていったということでこのような結果が出ておるわけです。要するに、三五%分の住民税が今までかかってなかった分を、全くの損でこれは今度はかけるのが当たり前、ですから減税補てん財源から除くというわけにはいかないんじゃないか。やはり利子課税見直しという中で、所得税の問題とは別個に住民税の今までの多年の懸案を片づけた、それによって財源が国税との割合ではふえたということですが、これも個人住民税として還元すべきではないか、かように現段階では考えております。  ただ、長期的に申しますと、先生指摘のとおり大体国税と地方税は二対一だとかそういう比率の中で一五対五というものはなお検討を要する、こういう御指摘はもっともでございまして、私ども今後におきましてもその問題は常に頭に置いてまいりたい、かように考えております。  ただ、現段階におきます五%というものは住民税の最低税率であるということ、それから県が取るわけでございますが、その五分の三を市町村にやる。その市町村にやる割合自体も五%の最低税率の中身でございます市町村が三、県が二、こういうような比率にもすべてパラレルにしてわかりやすい仕組みにして工夫したわけでございます。
  152. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 今の説明、よくわかりますが、とにかく一五対五というこの分配比率については私は大変な疑問を持っておりますので、将来本当に真剣に御検討をいただきたいというふうに思っておるのであります。  さて、このマル優の廃止の問題について、財形貯蓄に対する特例税率がありますね。この特例税率の根拠というものは何なのでしょうか。そして、キャピタルゲインの課税に関する関連というものはどういうことになるのですか。それから、割引債を課税対象から除いた理由というのは一体何なのでしょうか。そんなことは大蔵省に聞いてくれという御返事でもいいですよ。
  153. 津田正

    ○津田政府委員 財形貯蓄についてでございますが、通常国会に提案したものよりも、今国会に提案したものはもう一段下げたわけでございます。これはやはり利子課税見直しについていろいろ御議論がある中で、現在老人の方の貯蓄と同時に将来の老後というものを考える。まだ働き盛りであるが、老後のための貯蓄というものも考慮すべきではないか。こういうような御議論もある中で、課税上の把握がしっかりしておりまして、いわゆる勤労者の財産形成という意味で大きな役割を担っております年金、住宅に関する財形貯蓄につきまして優遇しよう、こういうような考え方でございます。この点につきましては、先般の幹事長・書記長会談で従前どおり非課税にしようか、こういう提案も出ておるような状況でございまして、そのような提案につきましては私ども政府の一員としまして尊重してまいりたい、かように考えておるわけでございます。  それから、割引債につきまして今回地方税で課税しなかったということでございます。割引債のいわゆる前取り利子というものをどう見るのか、それが地方税の問題として課税団体とどのように関連づけるか、実はこの点が問題でございまして、やはり利子等はその期間が満了して利子が発生したところの地方団体が課税すべきである、こういうようなことかと思うわけでございます。ところが、割引債はそうではなくて、発行した時点、まだ利息を生むような時点が始まらない前で取ってしまうというようなこと。そうすると、課税団体は、債券を発行した団体に取らすのか、それとも一たん買った人が転々流通して別のところに持っていった場合にどうするんだ、実はこういうような地方税固有の問題と申しますか、利子の発生の原因と課税団体との関連性というものにつきまして、私ども割引債につきましては実はまだ理論的に解明できなかった、こういうような事情でございます。  それからキャピタルゲインの問題につきましては、やはり資金シフト等の問題を考えましても、利子課税見直しと同時にキャピタルゲインの課税というものにつきましてもっと前進しなければならないわけでございますが、現状の把握体制、いわゆるキャピタルロスの処理の仕方、こういうものを考えますと、いわゆる継続的取引という範囲の限定、キャピタルゲイン課税の適正化という方向に進む、また今後さらに強化してまいりたい、こういうような形で対応させておるわけでございまして、今後なおその適正化につきましては努力を要する課題と考えております。
  154. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 時間がありませんので、大臣、もう一回聞かしていただきます。地方税の問題ですが、六十二年度の地方税減税を見送ったという理由は何ですか。
  155. 津田正

    ○津田政府委員 住民税は前年所得に対して課税する、このような建前をとっておりまして、既に六十二年度の住民税につきましては、五月までにそれぞれ納税者の手元あるいは給与支払い者の手元に、毎月幾らずつ納めてください、こういうような通知書が行っておるわけでございます。そこで、年度途中それをやり変えますと、四千四百万人に上ります納税義務者について全部やり直しをしなければならない。その事務というものが地方団体サイドで大体三カ月程度かかる。さらにそれが給与支払い者に参りまして毎月の給料から引きます税額というものを変えるというような作業に約一月かかる、こういうような事態になってしまっておるわけでございます。  そういうことを考えますと、現段階におきますと所得税の年末調整の十二月は到底できない。それ以降の話。かつ地方税制としては大きな問題でございます固定資産税の評価がえというのを実はことし抱えておりまして、そういうような中で無理強いをいたしますとむしろ混乱を招くのではないか。実際問題としては事実上できない、こういうような情勢になっておるわけでございます。  したがいまして、住民の住民税に対する負担軽減の要望、御期待というものもあるわけでございますが、本年度は見送りさせていただきまして、そのかわり、当初でございますと本年度二千三百億円の減税ベースということで初年度からスタートしようということでございましたが、来年度、そういうような事情も考慮しまして五千億円の初年度減税から始めたい、このような考え方でございます。
  156. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 今の事務手続上の理由というのはよくわかりました。しかしながら、五十八年度の減税の例からいたしましても、今回の臨時国会において六十二年度の住民税減税の法律を通して、六十三年五月からの税の徴収期に上乗せ実施をするという方法も考えられないことはないのではありませんか。
  157. 津田正

    ○津田政府委員 五十八年度の減税におきましても、実は五十八年度所得税減税に対応して住民税が年度途中減税をやるかどうかというような議論が起こった場合にもやはり同様な事情がございまして、実質できない、五十九年度の減税に上乗せする、こういうような処理をさせていただいたわけでございます。ただし、法案審議としましては、やはり五十八年度減税というものを所得税、住民税あわせた形で国民に御理解をいただくのが適当ということで、法案の審議は一体としてやった、このような経緯になっておるわけでございます。  それで、本年の場合におきましても六十二年度の年度途中減税ができない。それをどういうような形であらわすかということにつきましては、ことし二千三百億円の減税を考えておったものでございますから、来年度、その倍以上の額というものはやはり住民は期待するのではないか、そういう意味で五千億という規模を考えたわけでございます。  反面におきまして、利子課税見直しによります財源というものは到底そこまでいかないわけでございます。また、地方財政の運営に支障がないよう今後私ども努力してまいらなければならぬわけでございますが、ことし減税できない、国民の要望もあるであろう、こういうような考え方で二千三百億円を相当上回る減税規模というもので御提案しておるわけでございます。
  158. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 今お認めになりましたように、五十八年度におきましては十一月二十八日地方税法改正をいたしまして、減税を六百億円実施するということに相なりました。しかし、年度中途であるからそれはできないというので、その実施そのものは五十九年度に上乗せ実施をした。これはお認めになったとおりでありますが、私はそれと同じことを、当初前国会において二千三百億円に及ぶ減税を六十二年度出していらっしゃったのでありますから、それをポカにしたのでは住民の皆さんの期待が肩外しになるので、それの倍額に近い五千億の減税というものを六十三年度やらせていただこうと思っておるのであります。こうおっしゃいましたね。理屈はよく合っているのですよ。理屈はよく合っているのですが、そうしたら、今のお答えからいったら、六十三年度の減税そのものは大体二千二百億くらいしか一番最初は考えていなかった、そこへ六十二年度の二千八百億がありますので、それを没にしたから六十三年度に持っていって足してガッチャンコで五千億、これじゃ住民の諸君も納得できぬのじゃないですか。  例えば、これは売上税の関係もありますから数字そのものは合わぬと思いますが、一番最初の御提案は、前国会では六十二年度に二千三百二十四億円、そして六十二年度からは六千五百五十二億円の減税をやるという御予定でありましたね。これは売上税を含めての話ですが、そういう御予定でありましたものが、今度は、六十二年度はもう全然やりませんよ、そのかわり六十三年は五千七十二億ですよ。それは六十二年度の没にした二千三百二十四億ですか、それと勘定すれば大体倍いっているじゃないですか、二千三百二十四億の倍は五千億ですから、ありますよ、こうおっしゃいますが、一般住民の感覚からいったら、六十三年度に五千億するのなら、それに六十二年度分の二千三百二十四億を上に乗せる、オンする、これがいわゆる上乗せというのですよ、国民の常識からいうと。あなたのように税のエキスパートからいったらそういう言い方をなさるか知らぬが、一般の国民、住民からいったら、六十三年度の五千七十二億円、それに六十二年度やろうとした二千三百二十四億円を上に乗せてあげますよというのが上乗せなのであります。今の六十二年度はゼロ、六十三年度は五千七十二億、この内訳は六十二年度の二千三百二十四億の倍額に等しいのでありまして、六十二年度の分を、期待外れであろうからここに上乗せをしたのでございます、こう言うと話はわかりますよ。話はよく聞こえるのです。耳があるからよくわかるのだけれども、それでも内容としてはわからぬですな。内容としてはどうもこじつけがましいような感じがするのであります。  もう一遍質問を繰り返しますが、六十二年度に今出していらっしゃる法案の六十三年度分というのをよこしたらどうですか。それはまた金額が倍になるから、それはむちゃだよとおっしゃると思いますが、それくらいの意気込みを持ってやってほしいな。所得税の六十二年度減税はやるのに地方税の方は六十二年度減税はやらない、これは住民としてはまことに期待外れということになるのでありまして、さっきの回答とはがらっと色変わりしたものを答えてもらえませんか。
  159. 津田正

    ○津田政府委員 当初提案しましたものは税収ニュートラル、各年度も税収ニュートラルにしよう、こういうような考え方であったわけであります。今度御提案申し上げていますのは一月一日から利子課税、これが四月一日に事実上今後修正されてまいるかと思うわけでございますが、財源の面でも実は利子課税見直しという片肺でございます。  それから、六十二年度に財源の方ができておってそれで減税をやらないというならば先生の御議論はごもっともと私思うのでございますが、六十二年度財源の方も実は何もないわけでございます。要するに、減税もそれの財源も六十二年度には何もない。こういうような状況の中で、そうすると六十二年度できない、これはまことに申しわけないわけでございますが、六十三年度どうするかという場合には、やはり私ども二千三百億円という額を通常国会にお示しした経緯もあるわけでございますので、その二年分と申しますか、それを初年度という額として進めていくのが国民の御期待にもある程度御納得いただけるのじゃないか。財源の点からも地方財政の運営に余り支障を与えないで私ども努力目標の範囲内でおさまるのではないか、このような考え方でございますので、御理解いただきたいと思います。
  160. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 時間が参りましたので、大臣にお願いと、それから大臣の考えを最後にお聞かせをいただきたいと思うのです。  今まで二日間にわたりましてやりとりをしてまいりましたが、私自身はやはり納得がいかぬのです。それで、余りにも時間が短過ぎます。これだけの税制改革をやろうかというのに、これからこの次税制改革をやるといったら恐らく十年先じゃないでしょうか。そんなにたびたびありゃせぬと思いますよ。来年またやりましょうなんというようなことじゃないと思うのですね。そうすると、これだけのいわゆる減税案を論議するのにしては余りにも短過ぎる、私はそう思っております。しかも、現在我々が幾ら要求いたしましても手直しはないわけです。地方税の手直しはありません。そのことによる地方住民の重税感は私はぬぐえないものがあると思いますよ。  それから、よく御存じだと思いますが、まあ最近の国保税の高いこと。私も取られておるが、本当に目から火が出るほどの高いものですよ。住民税とほとんど肩を並べていますね。これは大変な税金であります。そこへ持っていって、今度はまた悪いことに三年に一回やってくる固定資産の評価がえの年ですよ、来年は。また固定資産税が何%かぼんと上がるわけですわ。これは明らかなる増税です。しかも、そこへ持っていって、片やマル優制度は廃止するよ、一律二〇%の税金を取るよというのでありますから、乱暴な言い方をすれば、奥さんの百万円のへそくりは一万円ずつ毎年その金額が減らぬ限り税金をコンスタントに取っていきますよ、こういうことでございますから、これも増税ですね。こういうことを考えてみますと、地方の住民、特に家庭の奥さんにとりましてはこの怒りは大きいですよ。何とも言えないふんまんがありますよ。  しかも、私の住んでおります広島県というのは不況地域がほとんどであります。その不況地域に住んでおる、不況業種に働いておった諸君たちは、それでなくても前年度の年収に対して課税をされるのでありますから、これはますますその打撃は大きいのでありまして、これらの人に対する、地域に対する不況対策、なかんずく活性化の問題、雇用の創出の問題等について格別の御配慮を期待するのでありますが、大臣のお考えを聞いて質問を終わらせていただきます。
  161. 葉梨信行

    葉梨国務大臣 ただいままでの御議論の中でおわかりのように、住民税減税それからマル優の廃止等につきましてはできるだけの配慮をしたつもりでございまして、これについては素直に御理解をいただきたいと思う次第でございます。  税制改革についての議論をする時間が足りなかったのは残念でございますが、夏休み前にも実は大分時間があったわけでございまして、今になって後悔先に立たず、こういうことでございまして、次からは国会の会期が始まりましたら、早速御議論、御質問を始めていただくようにしていただきたいなと思います。  また、税制改革につきましては、先ほど他党の御質問者に申し上げましたように、税制改革をして次の世代に備えたい、そのための一つのステップとして利子課税ということを行おうとしているのであると申し上げた次第でございまして、十年後と言わず、次の段階のまた改革案をあるいは通常国会に提案することになるのではないかと思いますので、よろしく御理解をいただきたいと思う次第でございます。  また、不況地域の問題につきましては、自治省といたしまして、これは自治省だけの問題ではございませんが、各省庁、政府全体として厳しく受けとめ、それぞれの立場からそれぞれの施策を行いつつあるわけでございますので、御理解を賜り、また御協力をちょうだいしたいと思う次第でございます。
  162. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これをもって質問を終わりますと申し上げたのですが、温厚篤実な大臣がきょうは珍しく皮肉を言われましたので。  夏休みの前にも随分時間があったのですが、こういうお話で、そのまま聞いて終わったのでは、議事録を見た人が、そういうことか、野党はつまらぬのうということになりますので、一言だけ申し上げておきます。  私どもの方から言うたら、いわゆる選挙公約の違反である、そして与野党国対委員長会談の合意事項を踏みにじるものであるという問題の大前提があるのと、それから法案の提出の仕方が非常に遅いじゃないですか。こんな中途半端なときにこの法案を出すとは一体何事ですか。しかも、これはもう出さぬ法案だったのですからね。だから恐らく審議はないのだろうと思っておったら、途中からひょこっと出してきた。約束違反です。それで、時間のないところへ持ってきて信義を踏みにじって出してきたのでありますから、我々の方が烈火のごとくになって怒るのは当たり前のことでありまして、そういう問題をさておいて、葉梨さんのようににこやかに笑いながら時間がありましたのにと言われると、みんなが本当かと思いますので、この点だけは私の方から断固として是正をさせていただきまして、終わらせていただきます。ありがとうございました。
  163. 石橋一弥

    石橋委員長 経塚幸夫君。
  164. 経塚幸夫

    ○経塚委員 まず最初に大臣にお尋ねをしたいわけでありますが、私ども共産党は当初から、マル優の廃止は反対である、そして軍事費、大企業特権を改めて思い切った三兆円の減税を、こう主張してまいりました。先ほどの自治大臣の御答弁では、総理は公約違反ではない、こうお答えになったわけですね。その理由として、お年寄りにはマル優制度は残すとか、そういう限定的なことを言っておったから公約違反ではない、こういう御答弁だった。しかし、これはちょっと違うのと違いますか。  六月二十八日、私のところの大阪の難波高島屋の前で総理は演説しはったのです。ちゃんとテープをとってありますけれどもね。マル優の廃止、大型間接税など私がやるものですか、こう開き直っておる。それで、寝屋川市というところがあるのですが、ここの駅前へ行ってどない言うたかというと、おまけに、野党は言うことがないものだからこんなことを言っております、夏が来るとお化けが出ますが、お化けにだまされないように皆さんしましょう、こうまで言うたんですよ。だましたのはだれなんですか。これはもう完全に公約違反ですがな。大臣はどこでお聞きになったのかわかりませんけれども、私が聞く範囲では、総理は大阪でそうおっしゃったのですよ。これはもう完全に公約違反ですよ。  それからもう一つは、もう先国会でこれは決着がついたわけでしょう。それを二週間もたつかたたぬかのうちにサミットヘ出て、外国で約束をして再提出、こうなったわけでありますから、公約違反であり、主権者国民の声を踏みにじるものであり、議会制民主主義を踏みにじるものだ、したがってこれは撤回すべきだ、こう考えているのですが、自治大臣は、これでもまだ公約違反はやっておりまへん、こうお考えですか。
  165. 葉梨信行

    葉梨国務大臣 先ほど申し上げましたように、利子課税についてのみ私は申し上げたわけでございます。また、私は総理の選挙遊説には同行いたしませんでしたから、どういうことをおっしゃったかわかりませんが、新聞報道によって承知をしております。また、総理自身の演説は実は衆議院の本会議で聞いておりまして、本会議ではそのように限定的に申し上げたはずでございます。
  166. 経塚幸夫

    ○経塚委員 総理のその選挙遊説は聞いておられない、一般新聞の報道で承知しておった、それから本会議でおっしゃった、こういうことでありますが、院の会議ではそう言っておりながら、肝心の選挙公約で今私が例を挙げたようなことを言ったわけですね。  ところで、この問題につきましては、大臣は選挙中どんな御公約をなさってきたのですか。
  167. 葉梨信行

    葉梨国務大臣 私はかねて税制改革をやらなければならないという考え方を持っておりまして、NHKその他民放のテレビによる政見放送におきましても、減税をしなければならないけれども、減税をするためには財源が要るので、その意味税制改革、特に直間比率の見直しをしたい、こういうことをはっきり申し上げて、これはNHKの記録に残っております。
  168. 経塚幸夫

    ○経塚委員 そうすると、直間比率の見直し、いわばこれはどういう名目であろうとも大型間接税に通せざるを得ないわけでありますが、それは言われた。マル優の問題については大臣は全然触れなかったわけですか。
  169. 葉梨信行

    葉梨国務大臣 格別触れたという記憶もございませんが、マル優については、総理が先ほど申し上げたように、限定的に改革したいという趣旨そのものを私は了承しておりましたので、そのようにやっていきたいと考えていた次第でございます。ですから、政見放送でそこに触れたかどうかちょっと記憶ございませんが、いろいろな場面で演説をする機会にはそのようにはっきり申し上げてまいりました。
  170. 経塚幸夫

    ○経塚委員 そうすると、減税のための財源として、一つは直間比率の見直し、私どもはこれは新しい形の大型間接税にならざるを得ないと考えているのですが、もう一つは、マル優の問題については、総理の言っているように、限定的な意味でお年寄りなどにはマル優制度は残すけれどもそれ以外は課税をする、こういう見解を持っておったというふうに解釈をしていいのですか。
  171. 葉梨信行

    葉梨国務大臣 ほぼそのとおりでございます。
  172. 経塚幸夫

    ○経塚委員 減税のために一方では増税を認めざるを得ぬという前提に大臣は立っておった。そうすると、これは片方でマル優の廃止だとか直間比率の見直しによるいわゆる大型間接税の導入だとかいうようなものがなければ、税制改正、減税だと言っても減税はやらない、こういう解釈ができますが、そう受けとってよろしいですか。
  173. 葉梨信行

    葉梨国務大臣 今こうやって政府税制改革法案を御提案申し上げておりますように、通常国会におきます税制改革法案は廃案になったわけでございますから、例えば税制改革協議会という場がございますが、そういう場で改めて野党ともお話し合いをしながら、また一般の国民の理解と協力、納得を得ながら、税制改革のやり方をこれから模索していかなければならない、そして御納得を得るような方法でやるべきであろう、こう考えている次第でございます。
  174. 経塚幸夫

    ○経塚委員 いずれにいたしましても、マル優の廃止は明らかに公約違反であることは間違いありませんし、国会でもう審判が出た問題でありますから、これはあくまでも撤回すべきであります。  それから、大臣は先ほどの御答弁でも、マル優の廃止問題は第一段階だとおっしゃった。そうすると第二段階というものがあるはずなんですね。第二段階がないのに第一段階だというお答えは出ないはずです。第二段階があるから、第一段階だということわりが出てくるわけであります。そうすると、第二段階というのは直間比率の見直しということになってくるのは明らかでありますが、これは後でまた触れたいと思います。  ところで、一方でマル優を廃止して減税だ減税だと言っても、これは減税にはならないことはもうるる論議されてきたところでありますが、私もちょっと例を申し上げておきたいと思うのです。  仮に年収三百万、預貯金三百万、何で私が年収三百万、預貯金三百万という事例を持ち出してきたかといいますと、六十年の総務庁の貯蓄動向調査では、年収二百五十万から三百万、平均二百七十四万というのが貯蓄額三百二十一万、こう出ております。しかも年収三百万ぐらいというのは、給与所得者の中で少なくとも六〇%ぐらいは占めておると考えられます。そういうことで年収三百万、預貯金高三百万というのを例に出してきたわけでありますが、通常国会の政府の年利四・一%で計算しますと、三百万として税が二万四千六百円かかるでしょう。それでは減税の方はどうなるかというと、年収三百万で配偶者特別控除が適用された場合で差し引きいたしますと、減税額はわずかに五千七十五円ですよ。この配偶者特別控除が適用されるのは三七%というのは政府も認めておるところですね。そうすると、非適用が圧倒的に多い。それでどうなるかというと、増税が一万九千三百五十円になるわけです。年収四百万円で配偶者特別控除非適用の場合は増税が四千三百七十五円、年収四百万以下というのは大体七〇%ぐらいになりますね。こうなりますと、マル優廃止前提だと減税どころか庶民の大多数が増税になるのではないですか。これでも減税だと胸を張って言えるのですか。
  175. 津田正

    ○津田政府委員 減税とマル優制度の見直し等による増収というものは、個々のいろいろなケースがあると思いますし、先生のおっしゃるようなケースもあるかと思います。ただ、一般的に申しますと、減税の方向は中堅所得階層のサラリーマン中心の減税というような形、そして貯蓄は、もちろん中堅所得階層の方々も持っておる。あるいはもうちょっと若い独身層の方も持っておられるわけでございますが、比率としてはやはり高額所得者の方の貯蓄が多い、こういう考え方もできるわけでございます。総体的に申しますと、減税と恒久財源見合い、それに若干所得税の上乗せというようなことでございますが、そういう意味からいたしますと、全体的には減税増税プラマイゼロ、若干減税がプラスということが言えるかと思います。しかし、所得階層からすればやはり金持ちが持っている貯蓄の方にかなり税負担が移動するという問題、そして利子課税の平年度化というものにはかなり時間がかかりますので先行減税という性格も持っておるのではないか、かように考える次第でございます。
  176. 経塚幸夫

    ○経塚委員 中堅サラリーマンというのは、所得はどれくらいからどれくらいまでを考えているのですか。
  177. 津田正

    ○津田政府委員 中堅サラリーマン層は、給与世帯で大体四百万から七百万ぐらいの幅、かように考えております。
  178. 経塚幸夫

    ○経塚委員 中堅サラリーマン、中堅サラリーマンとおっしゃいますけれども、先ほども例がありましたが、四百万から七百万ぐらいということになりますと、四百万、五百万というのは、専業主婦控除の適用を受ければマル優廃止で若干減税が増税分を上回ることになります。しかし、専業主婦控除の適用を受けない場合は、マル優が廃止になるとあべこべに増税になるということははっきりしておるじゃありませんか。何でこれで中堅サラリーマンが減税になると言えるのですか。それでしかも、全体としてはマル優廃止に伴う利子課税分の増税分と減税額とがチャラになるということで、税の軽減額が何%だとか何%だとかということを盛んに強調しはりましたけれども、私が申し上げましたように、貯蓄額から見ましても給与所得から見ましても、国民の七割、八割を占める層が、圧倒的多数が相殺すると増税になるじゃないか、これで何で減税と言えるのだ、ここを聞いているのですよ。こんなもの減税と言われしまへんで。言ってみますと、圧倒的多数が増税になるやおまへんか。総枠で見れば、相殺すればそれはゼロになるかわからしまへんけれども中身を見ますと、今申し上げましたように圧倒的多数が増税になるじゃないですか。  そこでちょっとお尋ねをいたしますが、国民所得に占める個人住民税の負担割合ですが、昭和四十五年、それから五十五年、六十二年見込み、負担割合は一体どうなりますか。
  179. 津田正

    ○津田政府委員 国民所得に対する個人住民税の負担割合は、昭和四十五年度に一・一%、昭和五十五年度が二・二%、昭和六十二年度見込みで二・七%程度であろう、かように考えております。
  180. 経塚幸夫

    ○経塚委員 五十五年の二・一五%に負担率を引き下げた場合、六十二年度の推計、あくまでもこれは推計になるとは思うのですが、減税額は、減税規模は一体どれくらいになるのですか。
  181. 津田正

    ○津田政府委員 昭和五十五年度二・二%で一応計算してございますが、六十二年度の税負担割合を二・二%まで下げますと、一兆三千三百億円の減税が必要となってまいります。
  182. 経塚幸夫

    ○経塚委員 大臣、ちょっとお尋ねしたいのですが、今お聞きのとおりです。私は、減税という以上は税の負担率をどのように軽減をしていくのかが基本でなければならぬと思うのですよ。国民所得に対する国民の税の負担率ですよ。これをどのように軽減するのかが私は減税の基本でなければならぬと思いますよ。それはそうですがな。体重六十キロの人が仮に三十キロの荷物を背負うて歩いておる、これが四十キロになり五十キロになり、それで体力は同じだとしますと、これは重いな、重いな、重いなとだんだんなってきますがな。だから、この負担率を軽減するのが減税の基本でなければならぬと思うのですよ。  ところが、今の御答弁によりますと、四十五年で一二%ですね、これは四捨五入で。それから五十五年が二・二%で、六十二年見込みが二・七%になる。いや、減税やるやおまへんか、こう言うたかて、片方でマル優の廃止をやるわけですから、同額なんですから、個人住民税の負担率は確かに二・四三%に下がりますが、一方でマル優を廃止するということになりますと、税の負担率は同じことになるわけなんですね。仮にマル優廃止を前提とせなんだ場合でも二・四三%なんですよ、平年度並みに六十二年度の減税を実行するといたしますと。それで、これはまだ五十五年の時点に戻らないわけなんですよ。五十五年の時点、七年前の時点、これでもまだ四十五年の、五十五年の十年前の税の負担率の倍になっているのですよ、一・一から二・二になるわけですから。一・一、四十五年まで戻せとは言いやしまへん。言うたかて、おまえ好きなこと言ってるだけだなということになりますから、笑われるだけの話でありますから言いやしまへんけれども、しかし五十五年に戻すとしたかて、今言いましたように一兆三千三百億円。  私はこれをずっと見てみたんですが、国民所得に占める地方税の負担率は、戦後二十年間は五%台だったんですよ。それから五十五年から五十八年は八%台。それから五十九年度に至りまして九%台。ずっとこれは年も短くなってくるし、負担率の上昇も引き上がってくるのですよ。だから私はあくまでも、減税ということを考えて税制改革を考える以上は、所得に占める負担率の軽減を基本にすべき、この手法から出発すべき、こう思うのですが、その点はどうですか。
  183. 葉梨信行

    葉梨国務大臣 負担率が低い方がいいことは事実でございます。ただ、現実にできる方法でできるだけのことを努力するということでなければなりませんで、そういう意味で、五十五年には及ばないけれども、一時の負担率よりは今回の減税案によりますと負担が下がるということで、ひとつお認めというか国民の御了承を得たいと思う次第でございます。これがさらに下がっていくことは望ましいけれども、現実にできることとできないことというものがございますから、そこら辺は現実的な対応をせざるを得ない、このように考える次第でございます。
  184. 経塚幸夫

    ○経塚委員 下がれば下がるほどいい、それはそのとおりですけれども、私は短絡的に下がれば下がるほどいいというようなことを単純に言っているのじゃないですよ。今申し上げましたように、年度を追うて負担率がうんと上昇してきておりますから、せめて少なくとも五十五年から六十年ぐらいの間へ負担率を戻すのが当然じゃないか、大幅な減税がやられておらないわけでありますから、戻すのが当然じゃないか。戻さないところか、若干下がるかのように見せかけて、片一方ではマル優の廃止でもって増税をやるわけですから、それで言いましたようにその結果は国民の七割、八割までがいわば増税になるというような答えしか出てこぬわけでありますから、こんなことでは内容としても減税だと言えるものじゃないし、規模からいってもこれは減税と言えるようなものじゃない。その前提としては、いわゆる庶民増税というものを前提にしておるからこうなるんだ、こう言っておるわけであります。  そこで、財政局長は今ちょっと首をかしげておりましたけれども財政局長に聞こうとは思いまへんけれども、一体その個人住民税の負担率は国民所得に対してどれくらいが限界やと考えてはるのですか。あわせて、国民所得に対する地方税の負担率はどれくらいが限界やと、逆に言えばどれくらいまでは許容されると考えてはるのですか。
  185. 津田正

    ○津田政府委員 住民税だけの負担率が最高どの程度かということはなかなか難しい問題でございまして、所得税と合わせた税負担比で申しますと、いわゆる国税、地方税を通じた税負担に社会保障の負担比率、こういうものを考慮しなければならない、かように考えておるわけでございます。  そして、全体の租税負担ないしは社会保障負担につきましては、今後高齢化社会の到来等からいたしますと若干上がるけれども、いわゆる西欧先進諸国の現状に見られるような負担率にしてはならない、こういうことが臨調等で申されておるような状況でございます。
  186. 経塚幸夫

    ○経塚委員 それでは、地方税だけで答えにくかったら、それは大蔵省へ聞いてくれということになるかわからしまへんけれども、その租税負担率、それから社会保障の負担率を含めてどれくらいが限界やと思ってはるのですか。
  187. 津田正

    ○津田政府委員 現在の我が国の租税負担率が大体二四、それから社会保障負担率が一一ぐらいでございまして、合わせますと三五%台でございます。イギリスが五三・四、西ドイツが五三・六、フランス六二・九、スウェーデン六九・三、こういうような諸国の例も見られるわけでございますが、これほど上げるのは我が国としては好ましくないのではないか。何とか四〇%台と申しますか、五〇に至る前の数字に抑えなければならないのではないか。行政改革推進等の必要も叫ばれておるわけでございます。
  188. 経塚幸夫

    ○経塚委員 まだ上げるつもりだんな、そうすると。よそに比べてまだ大分ゆとりがあるという、大臣、これはちょっと困りますよ、こんな考え方で対処されたら。  これは参考までに聞いてほしいと思うのでありますが、世論調査の結果でも税の問題で負担を感ずるが七四%でしょう。税目別に聞いたところ所得税が四九%、地方税が四一%でしょう。五十二年度から六十二年度見込みまでで見ますと、国民所得の伸びが七七%ですよ。国民一人当たりの租税負担額は一体幾らになっていますか。二・一五倍でしょう。地方税の負担額が二・一三倍でしょう。国民所得に占める地方税の負担率も、先ほどちょっと申し上げましたけれども、戦後二十年間は五%台ですね。これが五十九年度は九%台になった。それから租税総額の負担率は、四十七年までは一九%台ですね。それが六十年になりまして、今言いましたように二四・四%でしょう。これはいわばずっと一途に上昇ムードですよ。それで、これがまだ合わせてでありますけれども三五%、四〇%、まあ五〇%ということもちょろっと言いはったけれども、五〇%というようなことになると、地方税国民所得に占める負担率は一体何ぼぐらいになるのですか。それを計算しはってのお答えなんですか。それはどうなんですか。
  189. 葉梨信行

    葉梨国務大臣 先生大変いい質問をしてくださっておりまして、ヨーロッパの福祉先進国と言われる国が、戦後社会保障制度を充実させる中でそのような高い負担になってきている。日本はそのような轍を踏むまい、こういうことで努力しているわけでございます。しかし、高齢化社会を迎えて、年金保険とか健康保険とか支出がふえる要素がたくさんある。それをできるだけ合理化し、できるだけ行政改革を行って節約しながら、しかも国民皆さん方高齢化社会の中で七十になっても八十になっても、仮に百になっても、生活に、あるいは健康維持に心配がないような体制をとっていこう、こういうことでお互い努力をしているわけでございます。前車の轍を踏むまい、そしてしかも時代の趨勢の中でできるだけ賢く、財政的なそういうすべての社会保障制度あるいは租税制度を合理化していきたい、こう考えているわけでございます。  これが将来どうなるかということは、十年先、二十年先、三十年先のことはわかりませんが、今アメリカと日本が租税あるいは社会保障負担が大体三五前後で、先進国の中では最も低い。この低さというものをこれからも維持していきたい、しかし趨勢としてはややふえるであろう、ふえてもできるだけ低くしていきましょう、こういうことを税務局長が申し上げた次第でございます。
  190. 経塚幸夫

    ○経塚委員 いい質問をしていただいておる、こう言うから、褒めてくれるのかと思ったら、中身大臣の逆襲でありますがな。そんなものは逆襲になりはしませんよ。これはまたこれで論議をいたしますけれども、社会保障の給付の状況を見ましても、日本はそんなもの先進国どころか後進国ですよ。あなた、そんな実態を横に置いておいて、将来社会保障の給付がどんどんと規模的にふえていくから、そういう轍を踏まないために今税制改革をやっておるんだ、こんなことを言ったかて、それは筋の通る話じゃございません。きようはその論議は横へ置いておきますけれども大臣答弁は当たっておりません。  私が申し上げましたのは、五〇%というようなことを考えておるということになりますと、一体地方税の負担率をどこまで引き上げるのか、個人住民税の負担率を国民所得に対してどこまで引き上げるのか、そんなことを見通しながらそういうお答えになったのか、これは大変疑問に思うところであります。しかし、時間の関係もございますので次の問題に入りたいと思っております。  今回のいわゆる税制改正と称するものからいきますと、先ほども申し上げておりますように、マル優が廃止になりまして一律二〇%課税だと、いろいろと何回も質問が出ておりますように、三五%のいわゆるマル優の枠を超えた人が二〇%になるのでしょう。これ自体、いわば金持ち減税だと言われる理由もここにあるわけでしょう。それから、総合所得課税が突き崩されるわけでしょう。そこへもってきて、いわゆる個人住民税の課税最低税率が四・五%から五%に引き上げられる、一方では最高税率が一八%から個人住民税の場合一六%に引き下げられる。これは二重の意味で税の基本を突き崩すものじゃないですか。一つは累進制というもの、もう一つは総合所得課税というもの。この点について、税の基本はあくまでも累進であり、そして総合課税であるべきだ、こう考えるのですが、大臣はどういうようにお考えですか。
  191. 津田正

    ○津田政府委員 まず、三五%の源泉分離課税がなくなって国税、地方税合わせまして二〇%になる、この問題でございますが、大蔵当局のサンプル調査によりますと、三五%利用が必ずしも高額所得者階層だけに限られておるものではないようでございます。利用者のうち六百万円までの所得の人が約六割を占める、要するに源泉分離課税という仕組みは、三五%さえ納めれば税務署との交渉というのがノータッチになる、こういうようなメリットをねらいまして活用されておるような状況でございまして、むしろマル優の枠が四人世帯で三千六百万円という、この額自体が高過ぎるという問題、またこれを超えて貯蓄される方はどちらかと申しますと割引債一六%の運用をやっておる、こういう実態も見受けられるようでございまして、三五%がなくなること自体が直ちに金持ち優遇に結びつくものではない、このように考えております。  それから、源泉分離課税でいわゆる総合課税の建前が崩れる、こういう御指摘でございますが、やはり所得税なり住民税というものは、個々の納税者の事情を配慮した所得控除と累進税率の組み合わせという総合課税というのは理想でございます。しかし、利子所得の場合、その多量性、反復性、あるいは現在ですと一瞬のうちに世界を駆け回るというような現在の金融情勢の中に果たして総合課税がとれるのか、またそれによって金融秩序等の混乱があるのかどうか、そういうことを考えますと、マル優の現状の枠等から見ればむしろ一律分離の方が実質的な公平にもつながるのではないか、かように考えられるものでございます。  それから住民税固有の問題としまして、最低税率を四・五%から五%に上げておるわけでございますが、一つの大きな方針としまして、税率のフラット化をする、それから簡明なものにする、少しの所得上昇によってすぐ高い税率が適用になることを防ぐということの中で課税段階を少なくしておるわけでございますが、それと同時に、課税最低限の引き上げと四・五%から五%に最低税率を上げるというような措置を組み合わせた結果、低額所得者層から中堅サラリーマン層に至るまで相当程度の減税にしておるわけでございます。  最高税率の一八%を一六%に下げたということでございますが、これも余り最高税率が高いということ、また累進税率が高いということの弊害というものが、先ほど申し上げましたように累進度がきついと少しの所得の上昇で高い税率がかかるという税の累増感、負担感というものもございますし、今後の経済の活性化、事業意欲あるいは勤労意欲を刺激するためには最高税率を下げた方がいい、あるいは最高税率が高いことによりまして脱税なり節税という行動のむしろ誘因になる。下げることによってそのような脱税、節税の誘因がなくなって、これがまた実質的な公平にもつながるのではないか、このような考え方で今回の御提案をしておるような状況でございます。
  192. 経塚幸夫

    ○経塚委員 分離課税、一律税率にする方が公平だという論は、これはもう驚くべき論ですよ。決して金持ち優遇にはならぬとおっしゃいますけれども、貯蓄動向調査を見てください、はっきり出ております。平均四千万、五千万、一億という預貯金ができるのはどういう所得階層ですか。これは貯蓄動向調査にきっちり出ております。高額所得者ほど高額預貯金ができるのは当たり前なんです。それで低所得者はやはり低額預貯金しかできない、こうなる。そうして、高額所得者の所得税率はもとよりでありますが、個人住民税の税率も引き下げる。一方では最低税率は低所得者のを引き上げる。そしてマル優の利子課税については、いわば高額所得者ほど余計預貯金を持っておるわけでありますから、この税率三五%が一律二〇%になればそれだけ減税幅が大きいということはわかり切ったことです。こんなことわからないのですか。わかり切った話です。それを分離課税、一律税率にするのがより公平であるなどというのは、これはもう全く詭弁だと言わなければなりません。  そこへ加えて、固定資産税の評価がえの年度に当たるわけでありますが、これをちょっとお尋ねをしておきたいと思うのです。  固定資産税の上昇、大変ですね。東京都の文京区におけるAさんという年金生活者の例でありますけれども、地積が三百二十二・三一平方メートルです。税額が五十一年十一万六千六百円、六十二年には何と二十六万八千五百四十円、上昇率が二・三〇倍ですね。年金の収入は十六万円とそれからごちゃごちゃした収入があって月二十万、年収の一一・二%が固定資産税なんです。こう言っております。年々高くなる国民健康保険料とあわせて固定資産税の急増で生活の見通しが立たない、今でも固定資産税納付通知書をいつも戦々恐々として受け取っているが、来年の評価がえでは一体どうなるのか不安でならない。これは私は当然だと思います。  固定資産税、都市計画税の負担率は大したことありませんと言って、どなたか自治省の役人さんが本に書いておりましたけれども、東京なんて大変ですよ。地価の上昇は、五十八年一月一日から六十二年一月一日、中間値をとりましても文京区が二・〇三倍でしょう。台東区が二・〇二倍でしょう。現状でも負担が大きいのに、これは来年度評価がえになったら一体どういうことになるのか。私は来年は評価がえを凍結すべきだと考えておりますが、その点はどうですか。
  193. 渡辺功

    ○渡辺(功)政府委員 固定資産税の評価がえを凍結すべきではないかという御意見でございますが、私どもは固定資産税は市町村の基幹的な税目でありますし、また負担の公平を図っていくためにはどうしても評価がえを実施して、それによって相互の負担の均衡を図っていくことが必要であると考えております。六十三年度の土地の評価がえにつきましては、現在、自治省においても全国的な観点から評価の基準となります地点につきまして適正な評価が行われますように調整を行っているところでございますが、その場合、ただいま委員指摘のように、大都市地域におきます非常な急騰があります。これらの地域におきます買い急ぎとか将来における期待価格等による特異な地価の状況ということについても、その点は十分配慮しながら課税団体と調整を図ってまいりたいと考えておるところでございます。
  194. 経塚幸夫

    ○経塚委員 それは凍結できぬということでありますが、凍結せずに若干の調整措置を講じたって負担増はとまりはしませんよ、今でもこれは大変なんですから。凍結をしないということは了承できません。  もう一つお尋ねいたしますが、これは免税点の問題ですが、これも先ほど質問が出ましたけれども、免税点は御承知のように昭和四十八年からいろうておりませんね。そちらからもらった資料では、免税点以下の所有者の割合は、四十八年は土地で三九・五%だった。六十一年にはこれは二〇・六%に減ってしまっている。これはみんな課税対象になる。それから家屋は一四%だったのが、これはひどいですね、五・九%に減ってしまっているじゃないですか。四十八年から六十年を見ますと、大阪市の場合は土地で三・一一倍でしょう。東京特別区は二・三六倍でしょう。なぜこれは変えないのですか。さっきの御答弁では、地方財政上だとか課税標準の特例などをやっておるからという御答弁だったのですが、地方財政上だというようなことを言うのなら、なぜ国庫負担金や補助率のカットを認めておいて、地方にツケ回しをやっておいて、そして安定的な財源が必要だからといって、固定資産税はそのための重要な財源だからそんなに簡単に免税点を引き上げるわけにいかぬ、そんなことあなた言える立場にありますか。自治省が頑張って、断固としてこれ以上の国庫負担や補助率の削減は認めないということで頑張ってきておるのだったらそれは言えますよ。片一方で地方に負担を転嫁しておいて、片一方で恒久的な安定的な財源だからそう簡単には固定資産税はまけるわけにいきませんと言っても、これは筋が通りはしませんよ。それから、課税標準の特例をやっていると言っても、これはあくまでも軽減措置だけであって、これは非課税、免税じゃないわけですから、これは免税点以下の所有者がどんどん減ってきておるわけです。だから、これは四の五の言わずに、私は素直に見直すべきものは見直すべきだと思うのです。これは道理にかないませんよ。どうですか。
  195. 渡辺功

    ○渡辺(功)政府委員 免税点の問題につきましては、ただいま御指摘がありましたように、四十八年度に見直して以来見直しを行っておりません。過去におきましてそうした見直しも行われているわけでございますから、委員指摘のようにそういった検討を行うということが間違っているとか、それについて根本的な問題としてお答えをしているわけではございません。そうではありませんで、この免税点というものは零細負担の排除ということを言っております。その一つは、それは納税者側に対する配慮ということがありますが、一面では、徴税側の税務上の負担の軽減という問題がございます。免税点は、その免税点の段階で急激に負担が変動いたしますので、ある意味ではそういう矛盾というものはありますけれども、ただいま申し上げましたような理由で正当化といいますか、理由があるとされているものでございます。  そこで、前段御指摘もありましたが、土地につきましては二百平米までの住宅用地については四分の一にするという特例を設けておりまして、これによりまして一兆円の減収が既に生じているわけでございます。家屋につきましては据え置き措置というようなことをやっている。納税者側に対する配慮ということも行っているので、これが免税点の引き上げということは当面考えていないという理由でございます。  一方、徴税側の手間の問題でございますが、徴税側としてこれが税務執行上非常に大問題になるというような段階に至っているというふうに私どもは認識しておりませんで、要は、減税という問題があるならば、今度の所得割の減税のように重点というものがやはりそこにある。また、固定資産税問題ということになりますと、税制調査会の答申にありますように、負担の増加あるいは固定資産税の充実は必要だけれども、その負担の増加というものを緩やかにするという点に私どもとしては重点を置いて考えざるを得ない、こういうふうなことでございます。
  196. 経塚幸夫

    ○経塚委員 何で免税点を引き上げぬのだという質問が各党からも出ましたけれども、その際に一兆円、言ってみれば負担調整で軽減総額がそれぐらいになる、こういうふうなことを何回も答弁されております。五十年と六十年を比べてみますと、土地と家屋を合わせますと、軽減措置を講じておっても約三倍なんですよ。そうでしょう。軽減措置を講じなければ税負担が総額で約四倍になるわけですよ。もちろん納税者はふえておりますけれども、四〇%しかふえてはしませんがな。だから、個々の負担はかなりの負担増になっておるわけですよ。一兆円一兆円と言いますけれども、それは、これだけの軽減措置をやっておりますよと胸を張って言える理由にはなりませんよ、それほど負担が大きくなってきておるということの証明にはなっても。私はそう思います。一方では、こんな小さなところの免税点を昭和四十八年以来引き上げずにおいて、片一方では、当然これはやめるあるいは見直しをすると言っておったものまで据え置きじゃないですか。  例えば、産業用の電気税の非課税措置、六十一年は総額千百七億円でしょう。年間に産業用の電気ガス税が非課税にされている企業は、十億円以上の企業だけで二十四企業、そちらから出された名簿だけです。まだあると思いますが、どんなところがありますか。新日鉄、住友金属、トヨタ自動車、旭化成、帝人、これは国内はもとより国際的にも名立たる大企業でしょう。一方、一般の家庭は三千六百円を超えれば五%課税じゃないですか。これはそのまま据え置きでしょう。税制改正だといって、これは何も手をつけぬわけでしょう。これで公平、公正が通りますか。これは何で手をつけぬのですか。新しい形の大型間接税でも導入しない限りは、これはそのまま据え置きということなんですか。その点どうですか。
  197. 津田正

    ○津田政府委員 今回の税制改革論議におきましては、正直申しまして売上税の導入ということと電気税との調整、こういうような基本的な問題で議論されたわけでございます。産業用電気の問題につきましてはいろいろな観点からの御議論があるわけでございますが、私ども社会経済の推移に応じまして、今後におきましても適宜必要な見直しを行ってまいりたい、かように考えておるわけでございます。  ただ基本的にいわゆる直間比率の見直しという問題は、今後におきましてもなお税制改革の残された大きな課題と存じており、このような個別的な物品あるいはサービスに対する課税というものが今後どうあるべきかという基本的な議論も行われてまいるものと考えられます。
  198. 経塚幸夫

    ○経塚委員 大臣にちょっとお尋ねしますが、これは今後見直しを行うということなんですけれども売上税法案が出たときには、この産業用電気非課税の措置は、売上税でもって五%課税で非課税措置はやめる、こういうことだった。売上税が飛んでしまいますと、これを温存しているわけですよ。だから私はさっき、これは新しい形の間接税導入の際でないと見直しをしないのかとお尋ねをしているのです。その点、大臣いかがですか。
  199. 津田正

    ○津田政府委員 産業用電気の問題につきましては、電気税自体の問題でもございますので、それはそれとして検討してまいります。ただ、税制改革の流れというものがあることも御承知いただきたい、そういう意味で申し上げたわけでございます。
  200. 経塚幸夫

    ○経塚委員 時間が参りましたのでこれで終わらせていただきますが、私は最初に申し上げましたように、マル優の廃止だとか増税を前提にしたものでは減税にならない。有価証券取引税を〇・一%引き上げるだけでも数兆円の財源が入ってくるわけでありますし、これは毎年のように問題になっておりますが、外国税額控除の問題、これだけでも市町村民税分を合わせれば四千ないし五千億に達する。そのほかを含めますと、いわゆる特例措置的に大企業に優遇されているものを合わせれば一兆五千億円前後になる。さらに、地方税法による非課税措置も合わせると千百七十億円前後になる。それから、先ほど申し上げました大口の産業用電気の非課税でも一千億を超えるわけであります。だから、マル優廃止などといって、庶民いじめで、そして増税と抱き合わせの税制改革などというものは、これは減税にならないわけでありますから、増税を前提にしない思い切った三兆円の減税をやるべきである、そのためにはマル優廃止は撤回すべきである、こういうことを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  201. 石橋一弥

    石橋委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。  次回は、明二十六日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時八分散