○野口
委員 それは
一つの御
意見といいますか、
総理としてのお
考えでございましょうが、私はこう思うのですね、
総理。
財政再建という目標を仮に私
どもにどう
考えるかということになりますならば、やはり最終的には借金を全部なくしてしまうということ、これが一番
財政再建の最終目標だと思います。しかし、これ以上ふやさないようにしていく、今の借財がこれ以上ふえないようにするというのも
一つの目標かもしれません。また、さきに引用いたしましたように、
宮澤大臣が言われました、二〇%になんなんとする国債費がいわゆる税収でといいますか、一般会計でもって支払うことができる、もう国債を発行しなくともいいというような形にならないかということについても、
一つの目標であろうと思うのであります。
そうなりました場合に
基本的に
考えなければならない問題は、何といいましても
国民のいわゆる負担率の問題であります。いわゆる税の負担率と年金その他一般的な
社会保障負担率と申しますか、この二つに分けられると思いますが、いずれにしてもこの
国民負担率がどこまで
国民に要求できるだろうか、そこから始めませんと、この問題の根本解決はできないだろうと思うのであります。
そういった
意味で今
国民負担率は、租税負担率として二五%、
社会保障負担率が一一%、合わせて三六%
程度でありますが、これは実は二十一
世紀を展望してどの辺までとり得るかというところをまず頭に描いて、その中で長期的な債務の処理の
あり方、それから短期的な、今日的ないわゆるやらなければならない諸問題の解決、あるいは
貿易摩擦もそうでありましょうし内需
拡大もそうでありますが、いろんなことをかみ合わせた中におけるところの中長期ではなくて、短期的なものと中長期のものと分けていわゆる
財政再建に取り組む、いわばプロセスと申しますか手段というものが当然
考えられると思うのでありますけれ
ども、実はこの売上税が出てまいりましたときには、この
国民の負担率というものは頭になかったのではないだろうか。
そういうことを頭に入れて、まずはその議論から始めて、今中長期的にはこうなんだよ、短期的にはこうなんだよというお示し方がなかった。だから、いわゆるニュートラル方式なるものが出てまいりまして、所得
減税はしてやる。所得
減税は今どうしてもやらなければならないんだ、内需
拡大のためにもそうなんだということでございます。もちろん、そうでございましょう。私
どももそれは否定するものではありません。と同時に、その
財源措置として売上税を、こう言われますと、これはプラス・マイナス・ゼロだからということで入る。しかしよく
考えてみると、果たしてこのニュートラル方式というプラス・マイナス・ゼロというのはいつまで続くんだろうかと
考えますと、そう長い話ではないというような気がするわけであります。としますと、いずれかの時点で、例えばの話でありますが、売上税という
税率が上がっていくのではないかというような
考えを
国民に抱かしめたのではないだろうか。
つまり、片方には百五十何兆という借金が残っているんだし、まだまだ二〇%を占める利子の支払い、国債費というものがあるにもかかわらず、いわゆる「増税なき
財政再建」とおっしゃるけれ
ども、そんなプラス・マイナス・ゼロというような甘い
考えでできるんだろうか。そんな話は甘過ぎるんじゃないか。ここに視点を置きますと、当然これはだまされているのではないかという疑念というものがわくような仕組みがこの前の
税制改正の中に出てきたのではないか。
もっと
基本的に、例えば
国民の負担率は今三六%だけれ
ども、これを皆さんに御努力いただいて三八%まで上げると仮にする、あるいはまた
社会保障は全部国が見てやるから税金でもってそれを負担するのだ、あるいは
社会保障は個人の負担によってそれぞれある
程度自助努力といいますか、頑張りなさい、この分は国の経費でやらなければならないから税としていただきます、その中にあって
税制というものほかくあるべきであるということで、いわば導入する
税制はこういう形でとりたいと思う、つまり、直接税と間接税の
あり方についてそこでお説きになって、初めて間接税というものの導入というものが描かれてくるというようなプロセスが全然なかったとは言えませんが、ほとんどなきに等しい形で出されてきた。
これは私は、
国民がこの増税問題に対する疑惑、あえて増税なきとおっしゃいますから、増税があるんだろうと思っているにもかかわらず増税なきでやっていくんだとおっしゃる、
財政再建ができるんだとおっしゃるところに私は問題点があるのではないか。これは増税という言葉の定義から始めたのでありますが、そうしたら
宮澤大臣は、増税というのは新しい税目をこしらえて税を取ることが増税であって、自然増税のような増税はそれは増税とは言わない、こうおっしゃったように記憶するのですけれ
ども、どこの辞典を引いてみましても、増税とは
国民が負担をする税がふえることを増税というというのですから、自然増であろうと何であろうとふえるものはふえるのであります。しかし、「増税なき
財政再建」という言葉を使われるときには、そういう増税とは何ですかと聞きますとそういう言い方をされるのであります。
しかし、先ほど私が申しましたように、
国民としては、本当に「増税なき
財政再建」というのができるのだろうか、今百五十何兆円という借財を抱え、二〇%余になんなんとする国債費を支払いながら、しかも
国民福祉をねらっていく
我が国の
あり方として、これ以上税がふえないでいいものだろうか、だれが
考えてもそれは無理ではないかという気持ちが一方にはあるわけであります。したがって、ニュートラル方式というのが何か入り口の甘いささやきではないかということによって起こる疑念、これが私はこの間の問題点の
一つのいわば動かざる石といいますか、礎石といいますか、とどめの
一つになってきたのじゃないだろうかというような気がするのでありますが、
総理はいかがお
考えになりますか。