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1987-09-02 第109回国会 衆議院 大蔵委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年九月二日(水曜日)     午前十時四分開議 出席委員   委員長 池田 行彦君    理事 大島 理森君 理事 熊川 次男君    理事 笹山 登生君 理事 中川 昭一君    理事 中村正三郎君 理事 野口 幸一君    理事 宮地 正介君 理事 玉置 一弥君       甘利  明君    新井 将敬君       井上 喜一君    石破  茂君       江口 一雄君    遠藤 武彦君       金子 一義君    木村 守男君       熊谷  弘君    小泉純一郎君       笹川  堯君    杉山 憲夫君       高鳥  修君    戸塚 進也君       鳩山由紀夫君    村井  仁君       村上誠一郎君    山中 貞則君       山本 幸雄君    阿部喜男君       上田 卓三君    小野 信一君       沢田  広君    中村 正男君       早川  勝君    日笠 勝之君       森田 景一君    矢追 秀彦君       山田 英介君    安倍 基雄君       正森 成二君    矢島 恒夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         経済企画庁国民         生活局長    海野 恒男君         経済企画庁総合         計画局審議官  宮本 邦男君         大蔵政務次官  中西 啓介君         大蔵省主計局次         長       斎藤 次郎君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省理財局た         ばこ塩事業審議         官       宮島 壯太君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         国税庁次長   日向  隆君         通商産業大臣官         房審議官    深沢  亘君         労働省労働基準         局賃金福祉部長 若林 之矩君     ————————————— 委員外出席者         参  考  人         (日本たばこ産         業株式会社代表         取締役社長) 水野  繁君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 委員の異動 九月二日  辞任         補欠選任   今枝 敬雄君     木村 守男君   藤波 孝生君     熊谷  弘君   山中 貞則君     甘利  明君   堀  昌雄君     阿部喜男君   武藤 山治君     小野 信一君 同日  辞任         補欠選任   甘利  明君     山中 貞則君   木村 守男君     今枝 敬雄君   熊谷  弘君     藤波 孝生君   阿部喜男君     堀  昌雄君   小野 信一君     武藤 山治君     ————————————— 九月二日  大型間接税導入反対マル優存続等に関す  る請願瀬長亀次郎紹介)(第一一五五号) 同(野間友一紹介)(第一一五六号) 同(東中光雄紹介)(第一一五七号) 同外一件(正森成二君紹介)(第一一五八号) 同(金子満広紹介)(第一二五一号)  同(東中光雄紹介)(第一二五二号)  同(正森成二君紹介)(第一二五三号)  同(東中光雄紹介)(第一二八〇号)  同(正森成二君紹介)(第一二八一号)  大型間接税導入反対等に関する請願瀬長亀  次郎紹介)(第一二四八号)  同(松本善明紹介)(第一二四九号)  同(矢島恒夫紹介)(第一二五〇号)  マル優等利子非課税制度存続等に関する請願  (安田修三紹介)(第一二五四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出  第四号)      ————◇—————
  2. 池田行彦

    池田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出所得税法等の一部を改正する法律案議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として日本たばこ産業株式会社代表取締役社長水野繁君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 池田行彦

    池田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 池田行彦

    池田委員長 この際、本案に対し、中村正三郎君外四名から、自由民主党提案による修正案が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。中村正三郎君。     —————————————  所得税法等の一部を改正する法律案に対する修   正案     〔本号末尾に掲載〕
  5. 中村正三郎

    中村正三郎委員 ただいま議題となりました自由民主党提案に係る修正案につきまして、提出者を代表して提案趣旨内容を御説明申し上げます。  御承知のように、所得税減税規模及びいわゆるマル優等利子課税制度につきましては、自由民主党日本社会党護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合の四党派の幹事長書記長間協議を重ねてまいりました。  本修正案は、その協議の際自由民主党から示された提案趣旨を踏まえ、また、当大蔵委員会での審議をも勘案しつつ提出したものであります。  以下その内容を申し上げますと、まず、所得税税率構造について、最低税率一〇・五%の適用範囲課税所得百二十万円以下から百五十万円以下の金額拡大するとともに、一二%の税率適用範囲を百二十万円を超え百六十万円以下の金額から、百五十万円を超え二百万円以下の金額に引き上げることとし、課税所得二百万円以下の金額に適用される税率を三段階から二段階に改めることとしております。  次に、勤労者財産形成住宅貯蓄契約及び同年金貯蓄契約に係る預貯金等利子等について、三・七五%の税率による源泉分離課税の特例を改め、これを非課税とすることといたしております。  次に、利子課税等改正について、その実施時期を昭和六十三年一月一日から昭和六十三年四月一日に延期することとしております。  さらに、利子所得に対する所得税課税あり方については総合課税への移行問題を含め、必要に応じこの法律施行後五年を経過した場合にその見直しを行うこととするほか、所要の整理を行うことといたしております。  なお、以上の修正の結果、昭和六十二年度における所得税減税規模政府原案の一兆三千億円から一兆五千四百億円になるものとされております。  以上が修正案の概要であります。  何とぞ、御賛成を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  6. 池田行彦

    池田委員長 これにて修正案趣旨説明は終わりました。  この際、国会法第五十七条の三の規定により、内閣において御意見があれば発言を許します。宮澤大蔵大臣
  7. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま修正案趣旨につきまして御説明を承りましたが、この修正案につきましては、政府といたしまして、諸般の事情に照らしましてやむを得ないものと考えております。     —————————————
  8. 池田行彦

    池田委員長 これより原案及び修正案を一括して質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  9. 沢田広

    沢田委員 二十一月からこの大蔵委員会が始まっていたわけでありますが、あらわれるがごとく、あらわれざるがごとく、この二千四百億の分については提案がなく、じんぜん日を送ったわけであります。本日、ようやくここに提案をされたということでありまして、この間、この修正案を取りまとめるためにお骨折りをいただきました関係者に対しては、その労を多とするものであります。しかし、今日本が課せられている課題、また国民期待にこたえていくためには、この程度減税で満足されるものではなく、より多くの、多角的な面も必要でありましょうが、消費の拡大、内需の拡大等々が世界的に求められているわけであります。  今回のこの修正によって、より国民が享受する利益、また失うべき損失というものもあるわけであります。これは提案者の方にお伺いをいたしますが、これも恒久財源を必要とするものであります。我々も野党ではありますが、その財源をどうするかについては、国民の一人として、これからどう対処していくかを明らかにしていくことが必要だろうと思っております。そういう意味において、提案者においては、その間の交渉経過を含めながら、これからどのように対応していく考えであるのか、その点お伺いいたします。
  10. 中村正三郎

    中村正三郎委員 政府原案によります一兆三千億の減税分については、その財源措置といたしまして、与野党税制協議会において、政府においてこれを処置してもらうというお話し合いがあったように伺っておりますが、それ以外の分につきましては、今の沢田先生の御質問は大変重要なところだと思うわけでございますけれども減税の上積みの財源は、今回は税制上の特別措置その他のものをかき集めて、この税制上の特別措置大臣答弁にも何回も出ておりまして、期限を付されているものもございますが、そういったもので何とか当面は処置できると聞いておりますが、なお政府において精査をしておられると伺っております。  なお、今回の税制改正に伴って生じる六十二年度分の財源不足につきましては、六十一年度分の剰余金を含め、歳出歳入両面を通じる六十二年度財政運営全体の中で処理するほか、六十三年度以降については、今後の歳入歳出両面を通じて財政運営全体の中で考えていくべきことだと思うわけでございます。そして、こういう中で与野党税制協議会というようなところの役割もあるのかなという感想を持っている次第でございます。
  11. 沢田広

    沢田委員 当初、野党は、二兆円の減税が当面緊急に必要であるという判断に基づきまして、それぞれ折衝してまいりました。問題は、これによってGNPの伸びが、景気回復がどうか、貿易摩擦がどうか、国民生活がどうか、そういう課題に対する認識の差ということになると思うのであります。二兆円程度減税あるいは三兆円ぐらいの減税をここでやらなければ、中曽根総理最後になってまたアメリカへ行くようでありますが、これもレーガン政府から相当追い詰められた話になってくるのだろうと思うのです。資金の還流をしろというようなことまで言われているやに、新聞で報道されているわけであります。それがどういう形で今度また我々の予算なり税制に影響を与えるか、極めて憂慮する状況にある。ですから、二兆円減税というものの基本に最低合意できる線を守られるべきではなかったのか、ここでみみっちく下げることはかえって画竜点睛を欠くことになったのではないか、こういう心配があるわけでありますが、その点は提案者としてどう考えておられますか。
  12. 中村正三郎

    中村正三郎委員 与野党書記長幹事長会談でも、いろいろな御意見があったことは伺っております。確かに沢田先輩指摘のとおり、減税規模は、減税を受ける側からすれば大きいことにこしたことはないと思いますが、現下の厳しい財政事情を踏まえて考えますと、この御提案がぎりぎりの額であるというふうに考えております。また、六十三年度においては地方税を含め二兆円を超える額となることで、これがぎりぎりの額と考えて御提案をさせていただいたわけでございます。
  13. 沢田広

    沢田委員 今回の修正案の中には、今まで各党同僚議員からいろいろと言われておりました修正点についても幾つか配慮されている。これも努力は認められるわけでありますが、しかし、先般来の審議の中で各面にわたっての是正といいますか、補正をいろいろ言われてきた各同僚議員の主張が十分生かされたとは言いがたい。どうも、この委員会で議論している分野と違った分野でこういうものがつくられていて、この委員会意見がそれぞれ反映できない仕組みに国会運営が今なってしまっているのではないか。  きょうも、隣の席は自民党さんの席でありますが、こうやって見ると極めて少ないですね。これだけの税制改革、これだけの減税、増税を担った大法案であります。言うならば、国民にとって生死を問うような法案審議に当たって、かくもみすぼらしい状況審議するということは、私も議員の一人として極めてじくじたるものがあるわけであります。これは政権政党の責任はもちろんでありまして、そういう意味においては、今後大蔵委員会委員の各意見を十分に参考にしてもらってそれを反映できるように、提案者もその一人ですからみずから恥ずかしい面も吐露してもらって、今後どういうふうに対応されるか、その決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
  14. 中村正三郎

    中村正三郎委員 今沢田先輩から大変厳しい御指摘をいただきましたが、沢田先輩のお言葉のとおりでございまして、そういったことを心の中に入れて、これからの私ども理事としての活動の指針にさせていただきたい、頑張ってまいりたいと思うわけでございます。  それからまた、大蔵委員会役割について今御意見がございましたが、確かに沢田委員も御存じのとおり、政府が提出された法律案を何らかの形で修正を加えなければならないという事態が起こった場合に、過去において、大蔵委員会に小委員会を設けてそこで審議したこともございます。また、政党政治を踏まえて党対党の話し合いにゆだねて、大蔵委員会質疑等を通じて話を聞きながら、そういったものを踏まえて、できるだけしんしゃくして党対党で決めて、それを大蔵委員会で処理するということをやられたこともございます。私は、どちらも政党政治としてはあり得ることだなと思うわけでございますが、大蔵委員会理事として考えるならば、大蔵委員会の機能をもっと発揮していただきたいというのは沢田委員と同じ意見でございます。
  15. 沢田広

    沢田委員 今までの答弁に対して政府側としては、要するにこの提案に対しまして先ほどは大分遠慮した発言をされましたが、今日本の国それ自身が抱えている課題あるいは国民が抱えている課題世界に対する日本役割等を見て、ない金ではあるけれども、もっと厳しい状況にある国々もある、とすれば日本が果たすべき役割としては、この程度では十分とは言いがたいのではないかという気がするわけですが、大臣として気持ちの上で、財政の金目のそろばん勘定だけではなくて、いわゆる世界的な感覚の上に立って世界宮澤として答えるとすれば、これはどういう位置に属するものであるか、どういう受けとめ方をされるか、お伺いしたいと思います。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府といたしましては、先般成立をさせていただきました補正予算におきまして、かなり大規模緊急経済対策をただいま実施いたしつつございます。この減税案はそれに加わるものでございますので、恐らく提案者におかれまして、沢田委員の御指摘のように、もっと大きければその意味ではもっと効果があるということはお考えになりつつ、財政事情も御勘案の上でこのような御提案をなされたものと拝察いたします。政府といたしまして、過般の緊急経済対策とあわせますならば、諸外国の期待にこたえ得る規模のものであると存じます。
  17. 沢田広

    沢田委員 ここまでこの提案がなかったために、きょうは私は臨時に質問させていただきました。これから真打ちになるだろうと思いますが、我々野党各党理事がそれぞれまたここで質問していくわけであります。提案にこだわらずに謙虚に聞いてもらって、与野党の中で意見が一致するものはさらに加えていく、こういう謙虚な態勢でこの法案最後審議ができますようにお願いをし、委員長もその辺は余りこだわらないで弾力的に対応することを心から期待をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  18. 池田行彦

  19. 宮地正介

    宮地委員 ただいま自民党から、所得税法等の一部改正案修正案が出されましたので、最初に提案者に、御確認を含め御質問さしていただきたいと思います。  これは与野党幹事長書記長会談の、自民党竹下幹事長から提案をされました四項目につきまして、具体的に法律修正という形で出てきたわけでございます。特に、この修正案の要綱の第四項目の「その他」の第一項「利子所得に対する所得税課税在り方については、総合課税への移行問題を含め、必要に応じ、この法律施行後五年を経過した場合において見直しを行うものとする。」と附則の第五十一条に今回明記をされたわけで、これはこれからの税制改革にとりまして大変に重要な問題ではないか。  提案者に率直にお伺いしますが、施行後五年がたちましたら、現在の利子課税問題等につきましては総合課税に移行することの見直しを行う、このように理解してよろしいのでしょうか。
  20. 中村正三郎

    中村正三郎委員 宮地先生から大変重要な御指摘でございますが、利子所得に対する所得税課税あり方については、税制協議会におきましてもまた当委員会におきましても、また書記長幹事長会談でもいろいろな御議論、御意見があったことは承知をしております。当委員会においてもいろいろな御意見が出され、まだその論議が続いているさなかではないかと思うわけでございます。そういう中で野党からのお話もあり、「利子所得に対する所得税課税在り方については、総合課税への移行問題を含め、必要に応じ、この法律施行後五年を経過した場合において見直しを行う」旨の規定を設けることにしたわけでございまして、いやしくも書記長幹事長会談で話し合われ、それを国会でこうして修正案として提出させていただいて決めるわけでございますから、国会で決められた以上、誠実に実行されるべきものであるというふうな認識をしております。
  21. 宮地正介

    宮地委員 関連して大蔵大臣にお伺いしますが、今提案者から誠実に履行する、しかし五年後には現政権大蔵大臣が、果たして宮澤大蔵大臣になっているか、恐らく総理になっているかわかりませんが、政権が変わってもこれは不変である、その精神は生き続けていかなくてはならない、こう思っておりますが、この点についてはいかがでございますか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 法律として成立いたしました以上、それを誠実に実行いたしますことは行政府に課せられた義務でございますので、政権のいかんにかかわらず、そのことは申し上げることができます。
  23. 宮地正介

    宮地委員 主税局長にお伺いします。  総合課税への見直しをするということは、具体的には現在の法律では利子課税につきましては、租税特別措置法の中で分離課税ということが明記をされているわけであります。これが総合課税ということで見直しをされるということは、具体的に租税特別措置法の中における第三条の改正をする、こういうことでございますか。
  24. 水野勝

    水野政府委員 今回御提案申し上げております所得税法改正法の中で、御指摘のように租税特別措置法第三条の改正を御提案申し上げているわけでございまして、その中に分離課税云々規定が盛り込まれているところでございます。分離課税総合課税見直しが行われるということでございますれば、御指摘のように、この租税特別措置法第三条の見直しということに相なろうかと思うわけでございます。
  25. 宮地正介

    宮地委員 大蔵大臣に申し上げますが、具体的には租税特別措置法の第三条の改正につながっていくわけでございまして、そうした見直しにおいて、日本のこれからの税制改革のまず利子課税のところが根本的に改革をされるという、一つの大きな突破口がここで切り開かれたと私は理解をしているわけでございます。これは、これからの日本税制改革の重要なポイントである。今、主税局長からも、総合課税への見直しを具体化することは租税特別措置法第三条の改正につながるんだ、こういうふうな御意見を伺ったわけですが、当然与野党幹事長書記長会談を受けての修正案のこの内容は、大変重要な重みを持つと思います。この点について大臣としての御所見、またこの実施に当たって提案者は誠実に履行をしていく、こういうお話を伺っているわけですが、大臣としての誠意あるお考え、また決意等についてお伺いしておきたいと思います。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、また主税局長から答弁を申し上げましたとおりでございますが、五年を経過いたしました時点において、この五十一条の規定を誠実に考えていくということでございます。
  27. 宮地正介

    宮地委員 その点について確認をさしていただきました。政府並びに提案者も、この附則の五十一条については誠実に対応していく、こういうことが議事録にも残されたわけでございますので、ぜひ五年後の総合課税への移行、見直しを、私ども期待とまたその決意を持って対応してまいりたい、このように思うわけでございます。  そこで、原案を中心といたしました所得税法等改正案の問題について、御質問を進めさしていただきたいと思います。  まず、大蔵大臣にお伺いしますが、昨年の総選挙以来、売上税等の問題を含め、税制改革という問題を中曽根内閣の大変に大きな最後の仕事として総理も取り組んできたわけでございます。これから二十一世紀高齢化社会を迎える、そうした大変大事な日本社会において、この税制改革問題というのは、私は今後も引き続いて非常に大事な課題である。ましてや宮澤大蔵大臣は、次期総理大臣の候補のお一人ということで、日本のこれからの政治、行政を動かしていく中枢の、大変大事なお立場にあるわけでございますが、大蔵大臣としてこの税制改革基本理念、これはどういうものをお持ちなのか、まずお伺いをしておきたいと思います。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 シャウプ税制が行われましたのが昭和二十五年でございますので、非常に長い年月この税制は、基本的には大きな変更なしに行われてまいりました。その間、我が国の内外の状況は、極めて急速に大きな変化をいたしたわけでございます。したがいまして、新しい税制考えるべき時期に来ておりますことは疑いがないと思いますが、したがってこの時期に、今後二十一世紀を展望して新しい税制考えるべきであろうというふうに政府考えておるわけでございます。  その際、やはり公平、公正を旨として、またできるだけ簡素にといったような幾つかの作業目標を持っておるわけでございますが、そういったようなことを念頭に置きつつ税制改正考えていきたい。さしずめ、我が国所得税が、殊に勤労者にとって相当重税感を与えるものになっておりますから、そのことを考えつつ、また簡素化も含みながら、いわゆるライフステージにおいて、なるべく昇給とともにすぐに税率累進が変わってくるというようなことでないように、一生と申しますか、就職をして退職までの間は次々に累進がかかるというような制度でなく、なるべく緩やかなものにいたしたいといったような点、あるいはまた我が国法人税世界どこでも本社を置けるような時代になりましたから、国際的な権衡というものも考えなければならない、そういう意味では法人税はかなり高いというふうに考えますといったようなこと、つまり直接税が勤労意欲あるいは企業意欲を阻害するに至っておるという現実をやはり改めていかなければならないといったような問題、また同時に、二十一世紀に向かいまして、二十一世紀に入りますと殊に我が国社会高齢化が急速に進展いたしますので、そういうことも考えまして、それに対応するために国民の各層に社会の共通な費用はなるべく広く、薄く負担をしていただくことはできないであろうかといったようなことを考えつつ、税制改革を進めてまいりたいというのが基本理念でございます。
  29. 宮地正介

    宮地委員 そうした基本的な理念、公平、公正あるいは今大臣からお話のあったような理念、私は非常に大事なことであると思います。  もう一つ、こうした税制改革を進めていく場合には、何といっても国民の合意というものをとりながら誠実にこの改革案の手続を踏んでいかなくてはならない、国民の代表は国会でございますから、国会における審議の進め方あるいはあり方、また与野党で話し合われたその合意、こういうものは誠実に履行されていかなくてはならない、私はこう思うわけでございますが、この点について大臣はいかがでございますか。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 何と申しましても租税は国民の所得あるいは富と申しましょうか、それを一方的に国にお納めを願うということでございますので、そういう意味では国民がそれについて十分な理解を持っておられませんとそのような行政はなかなか行い得ない。そういう意味からも、ただいま仰せられましたようなことはまことにそのとおりであると存じております。
  31. 宮地正介

    宮地委員 そういう点で、今回のこの法案政府から提案をされましたが、本年五月十二日における与野党国会対策委員長会談において、特に売上税関連六法案につきましてはこの臨時国会提案をしない、こういう約束がありまして、当然この売上税関連六法案の中にはマル優の廃止の問題が含まれていたわけであります。また、この五月十二日の合意事項に対して、この臨時国会が始まる前の七月二日にも、五月十二日の与野党国対委員長会談における合意を尊重する、こういうことが確認をされ、また税制改革協議会におきましても、これは衆議院議長のあっせんとしてでき上がり、この税制改革協議会というのは協議の場である、そして与野党の合意を尊重する、合意のできないものは政府として提案する場合には当然慎重に対応しなければならない。  提案権というものは政府にあることは認めますが、この五月十二日の与野党国対委員長会談あるいは七月二日の与野党国対委員長会談の合意を踏みにじるかのように今回、所得税法等一部改正案ということでマル優の原則廃止が盛り込まれて政府が臨時国会提案をしてきた。これはまさに、国会におけるそうした与野党の合意を冒涜するものである。あの売上税関連六法案というのは、国民の大きな世論の力があってあのような形で廃案になった。特に統一地方選挙で自民党は、県会の選挙では大幅な後退をして世論の厳しい御批判、審判というものが下った。こういうあらゆる面から考えても今回、マル優廃止の法案を臨時国会に提出をするということは普通の常識ではあり得ない。それをなぜ政府があえて拙速に出してきたのか。これからの総理を目指す、人格者である、また良識派と言われている宮澤大蔵大臣は、こういう経過について当然怒りを覚えるくらいのお方ではないか。国民の怒りというものは、それなりに大変厳しいものがあると私は思うのです。この点について、大臣はどういうふうにお考えになって政府の一員として提案されたのか、まずお伺いしておきたいと思います。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 与野党国対委員長会談のお話し合いにつきまして、有権的にあれこれ申すことは政府としては避けるべきことだと存じますが、税制改革協議会あるいはまた八月七日及び八月二十六日における与野党幹事長書記長会談等々を通じまして、ただいま中村委員が御提案になられました修正が、そういう経緯を背景にして御提案になっておるということと存じておりまして、したがいまして政府といたしましては、政府提案について国会の御意思によって修正をせられますことは、これはやむを得ないことであり、また尊重いたすべきもの、このように考えております。
  33. 宮地正介

    宮地委員 主税局長にお伺いしますが、あなたは事務方の棟梁ですから、ましてや今回のこの所得税法等一部改正案、「等」ということでこの大きな八つの法律をワンパッケージにして提案をされた。これはどういう考え方で提案をされたのか、お伺いしておきたいと思います。
  34. 水野勝

    水野政府委員 今回御提案申し上げております法律は、現行の税制につきましては、従来のような部分的な見直しを続けていくということにつきましては既に限界に達しておるところでございまして、税制全般にわたります基本的な体系的な見直しによって税制のゆがみ、ひずみを除去して、内外の経済社会情勢の変化に即応した税制を構築するという観点から御提案をしたものでございます。  そうした観点に基づきまして、個人所得課税におきますところの負担累増感、不均衡感に対処する、こうした問題が喫緊の課題であるとともに、また当面内需拡大のために所得税等の減税先行を確保する必要がございます。そしてまた、その財源措置の観点をも踏まえまして、利子所得等の資産性所得につきまして課税ベースの拡大を図り、公平、公正な負担の実現を図るという観点から、そういう考え方から所得税税率構造累進緩和、配偶者特別控除の創設、利子課税の改善、有価証券取引税の税率改正等を行うものでございます。  このように、今回御提案しております法律に盛り込まれた措置は、いずれも以上のような一つの共通した考え方に基づくものでございまして、基本的には一体不可分のものであると考えてございます。政策が統一的であり、趣旨、目的が同一であるということであれば、従来国会審議をお願いをいたします際にも、改正事項を一括して法案化して御提案を申し上げてきたところでございますので、今回もその線に沿ったものでございます。また、納税者の側におかれましても、負担の減が中心でございますが、その一方、また負担の増もあるわけでございます。そうした際におきましては、納税者とされましても、全体の税制改正がなされた場合に全体としてどのようにその負担が変化するか、そのあたりは一体として評価をいただく。そういう意味におきましては、一体のものとして法案を御提案し、一体のものとして御審議をお願いするのが、納税者の観点からもその要請にこたえるものともなると私ども考えた次第でございまして、こうした観点から一本の法律として御提案をし、御審議をお願いをいたしたところでございます。
  35. 宮地正介

    宮地委員 今まで大蔵委員会では、所得税法の改正とか租税特別措置法改正とかあるいは法人税改正とか、通常国会のときは、大体私の過去の経験では、各一本ずつ別にしてきちっと法案を提出をされてきた。大蔵省としては、大変常識のある提案の仕方をされてきた。しかし、今回「等」ということでワンパッケージでこの提案をしてきた。ましてやマル優の廃止の部分については、これは租税特別措置法所得税法と両方絡んで、先ほど申し上げましたように、国会においても、国民からも、まだ時期尚早である、大変批判の高い、ましてや前国会でつぶれた、それを強引に出してきて、そして所得税減税マル優廃止をワンパッケージにして、いわば国民期待するものと反対するものを一緒にして出してきた。  これは政府としての提案の仕方にも、大変将来に禍根を残すのじゃないか、そういうことで、私どもはまずこのマル優廃止の問題については、何とか所得税法等一部改正案の中から租税特別措置法を分離できないか、あるいはその分離ができないなら、マル優廃止部分について所得税法と租税特別措置法の、具体的には削除をしていく以外にないのかな、政府としては両方何とか成立させたいあるいは審議の促進をさせたい、そういう配慮も相当働いていると思いますが、こういう提案の仕方というのは大変に問題が残るのではないか。ましてや、先ほど申し上げましたような、与野党の合意が踏みにじられた形のマル優廃止が、この所得税法等一部改正案という中で抱き合わせになっておる。  大蔵大臣、私はこの点について、非常に何か政府としての取り組みに拙速さというか、余りにも国民をばかにするような、そういうような配慮というものが、どうも大蔵省ベースで進められている、こんな感じがしてならないのですが、こうしたいわゆる手法について、大蔵大臣としてはどういう見解を持っておりますか。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま主税局長が申し上げましたように、税制のあちこちを少しずついじるというようなことでなく、税制全般をやはり改革すべきだ、先ほど申し上げましたような、そういう時期であるという判断に立ちました点が一つ。また、この時点においてこういう御提案をいたしますことが、我が国の内外から今求められております課題にもこたえるゆえんでもある、そういう政策目的をこの法案が持っておるということ、それから納税者のお立場からいっても、減税、増税の部分が明確になるということ、あるいはまた歳入歳出の観点からいいますと、この税制の中で将来の歳入増を意図している部分もあるといったようなこと、それらを総合的に一本で御審議願うことが好ましいのではないかと考えたわけでございますが、その点は法制局とも打ち合わせをいたしまして、そのようなことは法律的にも適当なことであろう、こういう同意を得ましたので、御提案をいたしたような次第でございます。
  37. 宮地正介

    宮地委員 私は、こうして包括的に法案をくくって提案をしていくというやり方、これは例えば沖縄の返還のときのような、ああいう整備のための法律案がたくさんあるときとか万やむを得ないときは、これはやはり検討に値すると思いますが、今回の臨時国会提案されているこの法案というものは、明らかに所得税減税先行といわゆるマル優の廃止を何とか強引に政府としてはやっていかなくてはならない。恒久財源をということですが、恒久財源は実際には五年、六年先である。財源的にも、そんなに当面はマル優恒久財源としての機能を発揮しない。ましてや、今回の与野党幹事長書記長会談において、施行も一月一日から四月一日に変更がされた。本来ならマル優の原則廃止の部分の租税特別措置法改正あるいは所得税法の改正というのは、来年の通常国会に出してきたっておかしくない。それをあえてこの臨時国会に抱き合わせでやってきた、これは私は大変に大きな問題が残ると思うのです。この点について、主税局長はどういう考え方を持っているのですか。
  38. 水野勝

    水野政府委員 法案を一本の法律で御提案を申し上げた考え方につきましては、ただいま大臣から申し述べたとおりのところでございます。  それから、この点につきまして利子課税に絞ってさらに申し上げさせていただきますと、現在の郵便貯金や少額貯蓄の非課税制度所得税法の中に規定をされておるところでございます。それからまた、もちろん今回の累進税率の緩和、配偶者特別控除の創設、これらの事項も所得税法の中に盛られておる事項でございます。一方、利子課税につきまして、先ほど委員から御指摘のございましたこれを一律分離課税にするという点につきましては、租税特別措置法第三条の改正ということでお願いを申し上げているところでございます。  納税者からごらんいただきますときには、所得税法の方に現在のマル優制度見直し規定があり、それでは全体としての課税方式がどういうことに相なるか、これは租税特別措置法の第三条の改正で一律分離課税として今後お願いを申し上げるということになる。そこらは一体としてごらんをいただくようにするのが納税者への御理解をいただく。それからまた、もちろんまずその前提として当国会におきまして御審議を願う際に、これは一体として御検討いただくのが適当ではないか。こういうことで、利子課税関係について言えば、所得税法と租税特別措置法とを一体として御審議を願うように御提案をしたところでございます。  利子課税本体、マル優につきましての見直しそれ自体について申し上げれば、今申し上げましたように、まさに所得税法の中の改正規定としていろいろなところに出てきておる、それと今回の税率見直し等もその所得税法の中にあるといったことからいたしますと、所得税部分について言えば、これは所得税法という一つ法律改正として御提案を申し上げるのが自然な姿ではないかということで、この点はお願いをしたところでございます。租税特別措置法との一体化につきましては、ただいま申し上げたような考え方でございす。
  39. 宮地正介

    宮地委員 国税庁に伺っておきたいと思いますが、このマル優の限度額の名寄せを検討している、朝霞の電算機の施設を活用して、こういうようなお話が聞こえてきておりますが、この点については既に検討されているのですか。
  40. 日向隆

    ○日向政府委員 各種金融機関の窓口を通じて私どもに提出されます非課税貯蓄申告書の枚数は一億数千万枚という大変膨大な数に上っておりますので、とても手作業では名寄せは困難でございます。したがいまして、これをコンピューターを使いまして名寄せをすることができるかどうか、そのシステム開発について現在検討中であることは事実でございます。
  41. 宮地正介

    宮地委員 それでは次に、所得税減税財源問題あるいはこれからの税制改革の進め方などについて、若干お伺いをしておきたいと思います。  一兆五千四百億円の所得税減税財源について、六十二年度としては、これは決算剰余金の六十一年度の一兆三千五百億円プラスアルファ分についてはどういうふうに考えておりますか。
  42. 水野勝

    水野政府委員 六十二年度分といたしましては、御指摘のような剰余金がその主体をなすものでございますが、そのほかの部分といたしましては、今回この法律で有価証券取引税の税率見直しでございますとか、金融類似商品の課税見直しでございますとか、取引所税の税率見直しといったものを御提案申し上げているところでございます。また、二年間の期限を切っての見直しでございますが、登録免許税の課税標準の見直しもお願いをいたしておるところでございます。期限はございますけれども、いずれにいたしましても、昭和六十二年度としては相応の増収効果があるところでございます。そうしたものをもろもろ集めまして、ただいま御提案がございましたようなものにつきましても、何とか財源措置は講じてまいるようにいたしたいと考えておるところでございます。
  43. 宮地正介

    宮地委員 六十三年度はどうなるのですか。
  44. 水野勝

    水野政府委員 今後の恒久的な財源といたしましては、利子課税が中心となるところでございます。しかしながら六十三年度におきましては、これは平年度化いたしますまでにはまだかなり時間がかかるところでございますので、恒久財源としては見合いになりましても、六十三年度といたしましては前から申し上げておりますように、財源としては厳しい状況にあるわけでございます。この点につきましては、六十三年度財政運営、今後の話でございますけれども、歳出歳入を通じどのような財政運営を行っていくか、その中におきまして極力その措置を講じてまいることに相なるわけでございますが、これは年末までの予算編成、税制改革の中でもろもろの検討を行い、御審議を願うことに相なろうかと思うわけでございます。
  45. 宮地正介

    宮地委員 今、年末までの税制改革とおっしゃいましたが、それはどういう意味ですか。
  46. 水野勝

    水野政府委員 税制改革と申し上げたといたしましても、それは今お話しの六十三年度の財源措置の話でございますので、六十三年度称制改正というふうにお考えをいただければと思うわけでございます。
  47. 宮地正介

    宮地委員 六十三年度の税制改革で一兆五千四百億円の恒久財源が入るような税制改革というのは何ですか。
  48. 水野勝

    水野政府委員 その点につきましては、ただいま申し上げましたように、歳入歳出全体を通じました財政運営の中で考えるというところまででございまして、今後それを具体的に税制改正にどういう項目でどの程度まで結びつけていくか、これもまさに六十三年度の財政運営の中で今後検討してまいる事項ではないかと考えておるわけでございます。
  49. 宮地正介

    宮地委員 財政運営の中でということは、必ずしも税制改革による恒久財源で対応するという意味ではないのですね。
  50. 水野勝

    水野政府委員 この点につきましては、去る七月二十四日の税制改革協議会での御議論の要約の中で「減税実施に当たっては、恒久財源が確保されることが必要である。」この点につきまして意見の一致を見たとされているところでございますので、私どもといたしましては、この点につきまして十分この趣旨に沿って対処してまいる必要があると考えておるところでございますが、六十三年度財政運営はこれからの話でございますので、こうした観点も十分念頭に置きながら、具体的に今後検討をしてまいることになろうかと思うわけでございます。
  51. 宮地正介

    宮地委員 現実問題としては、これだけの大きな恒久財源に対しての税制改革は、来年度の税制改革の中で対応は無理だと私は思うのですね。そうなってくると、今予想されるのは六十二年度の決算剰余金、この自然増収がどうなるか、この辺についての含みは全く考えていないのかどうか、ちょっとお伺いしておきたいと思うのです。
  52. 水野勝

    水野政府委員 ただいま申し上げたように、「減税実施に当たっては、恒久財源が」という御指摘でございますから、まずは恒久財源として考える必要があるのではないかと思うわけでございます。「六十二年度において、減税を先行実施する。」という御議論の要約もございますが、これは六十二年度の話でございます。したがいまして、六十三年度以降については、この御趣旨に沿って検討してまいることでございます。  御指摘のございました税収動向につきましては、六十二年度といたしましてはまだ実質一カ月が納付されたところでございますので、この点を前提にしての御議論を申し上げる段階にはまだないのではないかと考えているところでございます。
  53. 宮地正介

    宮地委員 現在の税の弾性値は大体二・一くらい、ということは大変な高いペースで進んでいると思うのですね。来年の税収の伸びも相当な伸びになるのではないか、六十一年度の決算剰余金を上回る相当な伸びになるのではないかという見通しを専門の経済機関でも最近はじいてきていますね。大蔵省としては控え目控え目にという感じで見ているわけですが、この自然増収ができるかできないかは現段階では測定値を出すのは非常に難しい。しかし、大方の専門経済機関の調査等によると、多いところでは、年度末に超過七兆円なんという大変な空前のペースで税収の伸びが出るのじゃないか、こういうことも言われているわけですね。  ですから、当然年末に来年度の税制改革の案をつくるときに一兆五千四百億円あるいは来年度から住民税五千億円の減税、合わせると大体二兆円を超える減税財源が必要になってくるわけですね。そのときに、年末の税制改正恒久財源でこれを全部措置するということは、現実問題として、あなた方が前通常国会で出したようなああした大型の間接税的なものを導入しない限り、はっきり言ってこれは無理だと私は思うのですね。これはやはり、国民の合意を得るのに大変な反対の渦の中で廃案になったぐらいですから難しい。そうすると、通常行っているような税制改正のような形の恒久財源しか出てこないのじゃないか、私はそういうふうに見ているわけです。そうすると、財源として考えられるのはやはりこうした自然増収の部分。ましてや先ほど、NTTの株の売却益は減税財源には使わないと断言されているわけですから、そういう点では恒久財源一本でいくのは大変に難しい。まさか赤字国債でこれを穴埋めするなんということは考えていないと思うのです。  財政運営上と言っておりますが、もう概算要求が六十兆円を超えるものが出てきた今日、これからこれを精査して四兆円か五兆円カットするというお話も出ていますが、当然この二兆を超える減税財源についての税制改革を含めた財政運営上の問題について大蔵省としては取り組んでいかなければいけない。その取り組む基本的なスタンスというものが今の段階で全くないということなのか、その点についてはどうなんでしょう。
  54. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは私どもとしても実は非常に難しい立場に立っておりますのは、もとよりそういう問題を考えていないわけはございません、いろいろなことを考えておるのでございますけれども、この税制改革協議会におきまして、先ほど主税局長から申し上げましたように、座長報告によれば「右の減税実施に当たっては、恒久財源が確保されることが必要である。」という御認識を示しておられますので、この改革協議会においてその問題についての御議論が、これから御検討が行われるというふうに当然私ども考えておるわけでございます。宮地委員の言われますのは、いや、それが間に合うか間に合わないかということに問題があるよと仰せられておるのだと思いますが、いずれにしてもそういう御検討がこれから行われるということが、この座長報告の合意部分であると承知をいたしておりますので、それに先んじまして政府があれこれ申し上げることは、場合によって差し出がましいという非難を受けなければならないであろう。  ただ、そういうことを思っておりますので今あれこれと申し上げにくいわけでございますけれども、年末に近づいてまりますと、まさにおっしゃいますように、来年度はどうするのかということを、当然本来政府考える務めのある問題でございますから、やはり考えなければならない。自然増収ということを今から考えるわけにはまいりませんし、いずれにしても恒久財源が必要だということは税制協議会でもお示しがあり、私どももそう思っておりますから、ただ、仮に自然増収があったからそれを充てるという安易なやり方はできないでございましょうし、特例公債でその部分を補うということも、おっしゃいますようにいろいろ問題が多過ぎる感じがいたしておりまして、したがいましてただいまとしては、税制改革協議会のこれからの御検討の推移を見守りつつ、政府としても内々どういうふうにすべきかということを、予算編成の過程の中で、ある段階から考え始めなければならないのではないかと思っておるところでございます。
  55. 宮地正介

    宮地委員 特に私は、この点は非常に大事な問題であろうと思いますので、また今後行われる大蔵委員会等でいろいろ詰めをやっていきたい。  時間の関係がございますので、次に進めさせていただきます。  国税通則法の改正の中で、今回納税環境の整備の観点から加算税、重加算税の引き上げを行っていますね。この加算税、重加算税の引き上げはどういう考え方から今回国税通則法の改正を行おうとするのか、この点についてまずお伺いしておきたいと思います。
  56. 水野勝

    水野政府委員 納税環境の整備の必要性につきましては、従来当委員会を中心といたしましてかなり強いものがあるわけでございます。そうした御議論を踏まえまして、昭和五十九年度におきましては記帳義務、総収入金額報告書制度の創設、こういったものを御提案申し上げ、法案化をお願いしたところでございます。しかしながら、その後におきましてもこうした問題につきましての御要請はかなり強いものがあり、さらに一層の納税環境の整備を図る必要性が強く指摘されているところでございます。そうした点の一環といたしまして、今回総収入金額報告書制度の提出限度を引き下げさせていただくとともに、適正な申告を確保するという観点から、加算税の若干の見直しをさせていただいているところでございます。  ただ、今回五%ずつの上乗せをさせていただくとともに、また少額な場合の加算税の不徴収限度額も千円から五千円に大幅に引き上げさせていただいているところでございますので、中小零細な事業所得者には極力御迷惑のかからないようにしつつ、適正な申告を御期待申し上げる制度として御提案を申し上げていると言えるのではないかと思うわけでございます。
  57. 宮地正介

    宮地委員 国税庁の現場の立場からこの加算税、重加算税の五%アップ、これはどういうふうに見ておりますか。
  58. 日向隆

    ○日向政府委員 私どもの立場から申し上げますと、適正な申告をしていただくということが一番大事なことでございますので、やはり適正な申告をしていただかなかった場合における行政上のペナルティーにつきましては、それ相応の重みがあってしかるべきだというふうに考えております。
  59. 宮地正介

    宮地委員 これはペナルティー、罰則が強化されることになるんですが、特に重加算税の過少申告の場合三〇%、無申告の場合三五%、現行でですね。これが結局三五と四〇になるわけですね。相当これは厳しいペナルティーになるんじゃないかな。これは強めれば強めるほどそうした適正申告が進む、こういう理解を現場ではしますか。
  60. 日向隆

    ○日向政府委員 どちらの状態になるか的確に判断することは、私正直申し上げまして難しいと思います。ただ私どもといたしましては、ペナルティーの額が高くなりますればなりまするほど、その運用については的確にやっていかなければならぬ、間違って運用するようなことがあってはならない、かように考えております。
  61. 宮地正介

    宮地委員 これは非常に調査とか査察とか、査察なんかの場合は明らかにこれは相当厳しいペナルティー、これは当然だと思うのですが、調査なんかの場合でここまでしなければいわゆる適正な申告が進捗しないのかどうか、これは非常に問題だと思うのですね。まず基本的なそこのところの考え方、理念、これは現場とこの法律をつくった主税局と本当に角突き合わせて現場の実態を理解した上でこうした法改正をつくられたのか。主税局長、どうなんですか、これは。
  62. 水野勝

    水野政府委員 私どもといたしましては、制度的な改正を行います際にはもちろん執行当局と十分打ち合わせを行い、その要望、要求、そういったものも十分に織り込みまして、また私どもから御提案するときには十分その意見も聞きまして、御提案を申し上げているところでございます。
  63. 宮地正介

    宮地委員 私は、やはりこの調査のときの内容あるいは実際にこれを適用するに当たっては国税庁の現場としては、その調査した内容によって本当に悪質なやっと、あるいは中小企業のもう五人、十人のところはある意味ではどんぶり勘定的で、初めは本当に税理士や計理士の皆さんがいなくて、社長みずからが家族で一生懸命やって成長してきて、ある程度そういうものが整った。ところが調査というのは、過去三年、五年前からやるわけですな。そこで、今度は重加算税どんと四〇%とか、こういうようなやり方で適正化を進めていく、ペナルティーを強めることによって適正申告を進めていく、こういう考え方が今後強く出されるとしたら大変危険なことではないか。私は、やはりこの内容についての精査というものをきちっとして、現場の方は、この法律法律として通ったにしてもその運用においては慎重にやってもらいたい。この点について、次長の見解を伺っておきたいと思います。
  64. 日向隆

    ○日向政府委員 その運用について慎重にやってほしいという点につきましては、私、しかと承っておきたいと思います。特に御指摘の中で重加算税の適用につきましては、御案内のように課税標準等または課税の基礎となった事実について隠ぺい、仮装があった場合に課せられるわけでございますが、その率は今回の改正によりまして相当高額になるわけでございますので、この適用につきましては十分慎重を期してまいりたい、かように考えております。
  65. 宮地正介

    宮地委員 最後に国税庁に。  最近、納税人口の増加に伴いまして、海外に進出していく企業の数も非常に多くなってまいりましたね。そういう点で国税職員の皆さんも、相当やはりそうした対処には御苦労が多いようです。まず員数が少ない、また予算もなかなか厳しい。そういう点について、今後やはり国税職員の方々のそうした立場を考えて、もっと改善策といいますか、あるいは人をふやすとかこういう対策、これをどういうふうに考えているか。  もう一つは、今回売上税の法案が廃案になりました。当初売上税対応として六百人ぐらいの要員を確保する、これはとんざしてしまったわけですね。しかし国税職員というのは、今までの仕事の量あるいは質の大変難しい、そういう点から、今までも国税職員の数というのは非常に厳しい状況にあった。そういう点でこの六百人の増員問題についても、今これからそれをならしていかなければならぬと思うのですが、この点についての対応をどう考えておられるか、二点ちょっとお伺いしておきます。
  66. 日向隆

    ○日向政府委員 本邦企業の海外進出が最近とみに著しくなっておりまして、私どもが把握しております海外事業所、支店等は一万一千数百という数に達しております。これに伴いまして、その海外取引を利用した脱税もふえてきておる傾向にあります。したがいまして私どもは、租税条約による情報交換の強化に加えまして、調査官の海外派遣を積極的に行いまして、こういう事態に対処したいと思っておりますが、そのために必要となります海外旅費等について関係方面の御理解を得てまいりたい、かように考えております。  また、御指摘の定員の問題につきましては、現在実調率の現状等を考えてみますと、私どもの立場から申し上げますと、定員の増加は切に望まれているところであります。これにつきましても、今御指摘の員数の点を含めまして、関係方面の御理解を得て、定員が適正な形で増加していくようにできるだけの努力を払っていきたい、かように考えております。
  67. 宮地正介

    宮地委員 時間が参りましたので終わります。どうもありがとうございました。
  68. 池田行彦

    池田委員長 野口幸一君。
  69. 野口幸一

    ○野口委員 まず、予定をしておりました質問以外のことで若干お聞きをいたしますが、大蔵大臣の職務権限は一体何か、ちょっとお聞きをいたしたいと思います。
  70. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっと法律を見ましてから御返事をさせていただきます。
  71. 野口幸一

    ○野口委員 なぜ、このようなことを言い出しましたかと申しますと、少なくともこの職務権限、お読みになったらはっきりしているわけでありますけれども、国の歳出歳入にかかわる用務一切あるいは債券の売却、国債の発行等々いろいろな権限が大蔵省にあり、またその大蔵省を統括する長が大蔵大臣である、こうなっているわけであります。そういたしますと、この大蔵委員会にかかる法というものは、実はその大蔵省の権限の行使にかかわる課題である、こう考えてもよろしゅうございますね。
  72. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一般的に申しまして、大蔵省の所管事項につきまして、それに限りませんけれども、当委員会にいろいろ御調査、御審議がありますことはもうそのとおりと存じます。
  73. 野口幸一

    ○野口委員 先日決定をいたしましたNTT株の売却益の処分の関係については、これは大蔵省所管事項でございますか。
  74. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 NTT株は国債整理基金特別会計が所有をいたしておりますので、それは大蔵省の所管と存じます。
  75. 野口幸一

    ○野口委員 そうなりますと補正予算案に、先にその権限の中を、大蔵委員会審議を待たずして、決定されないままに予算に計上をして、先に予算委員会で審査をするということは、この大蔵委員会を無視していらっしゃるという形になるわけですが、いかがなものでしょうか。
  76. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一般的に予算は、これから将来、場合によりましては一年間、あるいは補正予算でございますとそれより短い時期もございますが、政府がいたそうと考えておりますことを予算、歳入歳出という形で国会に御審議をいただき、お許しを得るというものでございますから、したがいましてそれはかなり将来に関する施策を当然のことながら含み、また前提としておるものでございます。それで、個々の施策は、場合によりまして法律案あるいはその他の方法で、また当該委員会の御審議を受けるわけでございますが、予算そのものは将来に向かっての施策を、いろいろな措置を前提にして組まれておりますために、予算に組まれておりますことが、必ずしも予算編成の時点で法律なり制度として確立しているとは限りません。国会でお許しを得ることを前提にして、それを予算に含んでおるということはしばしばございます。これは将来に関することでございますので、行政府としてはそういうふうにせざるを得ず、また国会のお許しがあって、初めてその予算が実は執行できるということも申すまでもないことでございますので、そのような形で御審議を受けております。  したがって、予算そのものは主として予算委員会で御審議を受けるわけでございますけれども、その前提になります諸施策あるいは法案等々は当該委員会でまた御審議をいただく。両方の御審議が終了いたしまして成立いたしませんと、その部分の予算は執行できないわけでございますから、そういう形で国会が各委員会で御審議をなさっておるということと考えております。委員会委員会との相互の関連につきましては、これは政府が申し上げるべきことではございませんので、その間、国会におきましてもろもろの調整が行われておりますものと存じております。
  77. 野口幸一

    ○野口委員 きょうは余り時間がありませんので、このことを深く突っ込んでやるつもりはないですが、私はこの十何年間国会におりまして非常に不思議なことは、歳出項目が先に決まり、そしてその歳出に見合う財源を後で見つけ出すという方式に実はなっているわけなのであります。これは仕方のないことだとは思いますが、少なくとも大蔵委員会にかかる部分についてそれが先に他の委員会で可決される、それも含めて可決される、その後で実はこの大蔵委員会に回ってくるということになります。  与党の理事さんがよく私どもに折衝なさいますときに、実はこの間もそうだったのでありますが、補正で上がりました、NTT法案を一日も早くお願いをいたします、まるで予算委員会の下請稼業みたいに、そういう言い方で、予算が上がりました、上がりましたと、上がりましたから何とかひとつこれはということで、マル優の問題のこの資金の利用法についても絶体絶今、予算案の中ではもう使い方が決まっているのだから、ここから先は、例えばNTTの株の売却益の処理についてはもう幅はありません、向こうの方へ決まっているのですからこの程度でございますと、まるで下請機関のごとく与党の理事さんは私どもに迫られる。そして私どもに、一日も早くこれを上げろとおっしゃる。  私は、主客転倒だと思うのですね、大臣。所管事項というのは大蔵大臣がお持ちであって、大蔵委員会にかけてそのことはどう使おうかということをお決めになった上で、それじゃこれは大臣が先ほどからも言われているように、補正予算案の一つ財源として使おうじゃないかということになれば、それはそれで結構かと存じますが、先に補成予算の方でくくられてしまって、そして私の方へ来て私の方が審議をしようと思っても、審議のしようがないじゃありませんか。それがいわばひもつきであり、または予算委員会の隷属機関みたいな大蔵委員会の実情になっているのじゃありませんか。
  78. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国会の中のことにつきましては、私どもはかれこれ申し上げるべきではございませんが、衆議院規則九十二条によりますと大蔵委員会の所管事項は、「大蔵省の所管に属する事項(予算委員会及び決算委員会の所管に属する事項を除く。)」とございまして、こういうところでこれらの委員会と当委員会との調整が行われているものと、衆議院規則を読みますと推察ができます。  そこで、今お話しのことはそのとおりでございまして、NTTの株式の売却代金に関する法律及び外一件でございますが、これはこの委員会で御審議があり、御議決を得て本会議の御議決があり、さらに参議院において同様のことが行われません限り、予算のその部分に関する執行はできない、これはもう当然のことでございます。
  79. 野口幸一

    ○野口委員 それはわかっているのですがね、だからやり方が実は本末転倒になっているのですね。本来、この委員会にかかって可決をされて、そしてそのことをもって予算が組まれていかなければならない。少なくとも同時に行われなければならない、最低譲って。こちらの審議と向こうの審議とが同時でなければ意味がないと思うのですね。だって、私どもの方は、例えばNTT株の問題にすれば、その使途、その売却益はどのように使うかということは、実はこの委員会で御諮問を受けて、大臣の方からの提案があって、我々はそれはどうしようかということを決めて、そこで決まった形の中で初めて補正予算なら補正予算財源として使う。しかもそれは、建設公債にかわるものとしての使用の方法であるというようなことになっていくようになりまして、順序からいきますと全く逆になっているのですね。  私は、当委員会でしばしば思うことなのでありますけれども、一体この大蔵委員会とは何だということをよく質問することがあります。また、大蔵大臣の職務権限も非常にあやふやであると私は思っております。例えば与野党幹事長書記長会議で決まった問題、この間から、先ほどから問題になりました。その問題についても、大蔵大臣は拒否することもできるし、またその額を上回ってでも出すこともできる、そういう権限があると私は思いますが、いかがですか。
  80. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこのところが議院内閣制の二つの特色だと考えるわけでございますが、もとより法律的には、ただいま言われましたようなことは可能、不可能ということであれば、おのずから法律上の解釈はございますけれども政府と与党が一体になって動いていくということはやはり議院内閣制の特色でございますから、事実上私どももそういう制度の上に立って行政をやっておる、それが議院内閣制というものではないかと存じております。
  81. 野口幸一

    ○野口委員 その問題を突っ込んでいきますと、例えば与野党幹事長書記長会議ですか、それの合意を見た、そのことを受け入れるに当たって、所管大臣の、いわゆる大蔵大臣としての権限の内容とのかかわり合いというのは極めて微妙な問題だと私は思います。その間の課題については、きょうは与えられた時間というのは少のうございますので、後ほどゆっくりやらせていただきたいと思いますが、大蔵委員会としてのあり方というものはもう一度洗い直すべきである、しかも予算執行にかかわる問題については、この方法についても審議あり方についても考え直さなければならぬ時期が来ているのではないだろうかというようなことを常々思うのでありますが、大臣はそのような矛盾をお考えになりませんか。
  82. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 当委員会運営につきまして私がかれこれ申し上げることは避くべきであると存じますが、委員会運営のために政府としてはこうせよ、ああせよというそういうお話がございますれば、政府といたしましても最大限にその努力をいたします。
  83. 野口幸一

    ○野口委員 この際、例えばこの委員会運営の方法でありますが、これは理事会等で言えばいいとおっしゃられればそれまでのことでありまするけれども、あえて言わせていただきますならば、例えば税制改革協議会というものがつくられました。しかし、税制改革協議会がつくられても、仮に私ども委員会の中で税制改正に関する特別委員会等をつくって中身の議論はできないわけではないわけであります。何も税制改革協議会オンリーで、今回のこのシャウプ勧告以来三十数年間と言われているところの大改革を任せる必要もないわけでありますし、また、私ども所管の委員会としては、当然責任を持ってその内容についても詳細に検討しなければならない責務もあると思います。  したがって、税制改革協議会なるものと、それからまた私ども委員会の中において、小委員会なりいろいろな形でもって税制改革に当たる諸課題について当然その任務を果たすべき機構を設けるべきである。税制に関する小委員会というのは実はあるわけでありますけれども、作動をいたしておりませんし、これは税制に関するということになっておりますので、税制改革ということにはなっておりませんが、いずれにいたしましても、そういった機関を十二分に発揮することによって実は今後の税制改革あり方について議論をしてまいりたい、こういうように思います。  と同時に、大臣、先ほどからも、先日もそうなんでありまするが、つまり税制改革協議会の意見を参照としてとか、あるいはその動向を見守ってとかよく言われますけれども、それは非常に民主的なお答えであろうと思いますが、やはり所管大臣の権限内において、私はこう考える、大蔵省としてはこう考えるという言葉は当然あっていいと思うのでありますね。例えば明年度の財源の問題につきましても、先ほどの宮地委員質問の中でもございましたけれども、一体どうするのかと言われたら、所管大臣としてはこう考えるということは当然あってしかるべきで、それはこういう財源をもって充てるべきだと考えているが、しかしかれこれであるという大蔵省は大蔵省なりの言葉を述べられることは、決して税制改革協議会に対して遠慮なさる必要はないと私は思うのであります。その点の御意見はいかがですか。
  84. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 税制改革協議会が私的なものでございますと、またそれに対する私どもの対応も異なってまいりますのですが、衆議院議長がごあっせんになって、天下の公党が、共産党は別でございますが、お集まりになって協議をしておられるこの協議は、私はやはり公のものであると考えております。したがいまして、その公の機関がいろいろ協議を、殊に明年のことはこれからなさろうというときに、それに先立って、協議会からお尋ねがございますればそれは伺いまして申し上げることはもちろんでございますけれども、いかにもそれを先取りすると申しますか、あるいは先走ると申しますか、そういうことはいかがなものであろうか。これは法律的な問題ではなくて政治的な判断の問題でございますけれども、私はそう思っておりますものですから、当委員会でお尋ねがございましたときに税制改革協議会、こう申し上げるのはいかにもお尋ねにお答えをしていないような印象がありまして、申し上げる方も申し上げにくいのでございますけれども、しかし、構わずどんどん申しましたら、またそれはそれで一つの出来事になりますものでございますから、やはりある段階までは協議会の御協議を尊重して見守っていくということを申し上げざるを得ないのでございます。
  85. 野口幸一

    ○野口委員 大蔵大臣としては、非常に適当な隠れみのができたみたいな感じでございまして、いわば行政としては、税制改革協議会というものがあるのだからそれの動向を見守ってというような言葉で今までよく言われましたし、また与野党幹事長書記長会議等で今御審議中でございますからとか、あるいはまたそういう話がございますのでということで、大蔵省自身の考え方というものが今までの答弁の中で非常に少なかった、この所得税改正にかかわる諸問題については。特に、金額問題についての話はきのうまで、いわゆる一兆三千億ですか、その問題で修正案が出されたけさまで、実はその問題がこうだということの御説明がなかった。  それはそれといたしましても、全体的に見ますとどうも、大蔵大臣としての権限をある意味では縦横に駆使して、そしてそれはそれなりに大蔵委員会としての権限も持たせていただくような御発言なり、あるいはまた、当委員会においてのいわゆる自主的な討議の材料に行政の立場としてのあり方を堂々とお述べになることも、御遠慮なさる必要は全くないと私は思うのであります。それは、そこで委員会として良識的に判断をいたしまして議論をさせていただくつもりでございますし、私どももそれは参加をさせていただきたいと思っておるところでございます。  どうか今後におきましても、税制改革協議会なるものは、私は共産党さんの意見を無視するという意味では——無視するというよりも、むしろそういったものが入っていませんだけに、いわば挙党的になっていない、国会の縮図にはなっていないというような部分も実はございます。いつも、共産党が物を言うときには、税制改革協議会の中には私どもは蚊帳の外でありますからという言葉が一つつくのでありますけれども、いずれにしても民主的に行われた、たとえどういう形であろうともやはり代表権を持っておられる方々が構成をされる部分の中で話をする、つまり当委員会で話をするということがやはり筋道でありますから、筋道のところを忘れないで今後の税制改革というものを進めていただきませんと、これは私ども社会党、公明党、民社党でつくっております税制改革協議会とは別の角度から申しましても、本来の民主的な大蔵委員会運営から申しましても、この大筋だけは間違えずにやっていただきたいな、こういう気持ちだけはお伝えしたいと思いますので、大臣の御答弁を求めて、この項を終わります。
  86. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘の点は、よく私どもも肝に銘じて承ります。
  87. 野口幸一

    ○野口委員 そこで、ちょっと細かい話に入ります。  与党に協力し過ぎましてはしょりましたので、時間も少なくなってしまいまして申しわけございませんが、税制改革の一番大事な部分でもあるわけでありまするけれども、不公平、不公正の問題でございます。この不公平、不公正の問題の中に存在いたしますものは一体何かといいますと、制度上の不公平、執行上の不公平というものが私は大別して二つあると思います。  まず、制度上の不公平の問題でございますが、実は制度上の不公平の問題は、特定の政策目的に資するという意味で配慮をする、いわば実質的な意味での特別措置というものでございます。あるいはまた法人受取配当の益金不算入、換地処分に伴うところの資産を取得した場合の課税の特例等あるわけでありまするが、こういった制度上の不公平というものをまず正していかなければならぬ。医師の優遇税制も入るでありましょう。  同時に、執行上の不公平は、私はかねてから非常に問題にいたしておるところでございます。先ほども少し話がありましたが、私の方は少し観点を変えて申し上げたいと思うのであります。言われているところの実調というものであります。今日行われておりますところの事後調査は、法人においては全体の大体一〇%以内、個人においては五%以内、これは申告者という意味であろうと思いますが、その程度であると思いますが、いかがですか。
  88. 日向隆

    ○日向政府委員 申告所得税の営庶業所得者について、六十年四月から六十一年三月三十一日の間における調査事績を申し上げますと、実調率は仰せのとおり四%以下の三・八%でございます。同様に法人税について、六十年七月から六十一年六月までの間における調査事績について申し上げますと、実調率は仰せのとおり九・六%でございます。
  89. 野口幸一

    ○野口委員 私は、実調率が非常に少な過ぎると思うのであります。ある法人で聞いた話なんでありますが、一〇%以内ということは簡単に言うならば十年に一回ということであります。交通事故に遭ったようなものだ、こういう話をするのでありますが、個人の場合ですとさらにまた五%以下、今おっしゃったように三・数%というようになってまいりますと、まさにめったに当たらぬけれども弾に当たってしまったというような気持ちで納税者がいることも、巷間伝えられている裏話の中に出てくる言葉であります。もう少し実調率を上げて、調査をもっと数多くしかも内容的なものを実施することによって、この面における不公平、不公正というものを正すことはできないのか。少なくとも現在の金額どのくらい上がっているか、後ほどお聞きしたいと思いまするが、事後調査におけるところの所得額の把握の総額、あるいはまた近年におけるところの調査後に出ましたところの徴収税額の差は一体どのくらい上がっていますか。そして、事後調査員が一人当たりどのくらいの税収を取ってきていることになっているかということをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  90. 日向隆

    ○日向政府委員 ただいま申し上げました実調率と同じ前提で申し上げますと、申告所得税の営庶業所得者につきましては、調査件数は十五万八千件、増差所得金額は五千七百六十二億円、増産税額、これは加算税が入りますが千三百六十九億円でございます。これを従事しております職員定員ベースで、一万二百六十八人で割りますと、二人当たり増差所得金額は五千六百万円、増産税額は千三百万円でございます。  法人におきます同様な数字でございますが、調査件数は十九万四千件、増差所得金額は一兆一千四百八十二億円、増差税額は四千三百八十三億円、定員が同様のベースで一万一千二百二十人でございますので、一人当たり増差所得金額は一億二百万円、同増差税額は三千九百万円と相なります。
  91. 野口幸一

    ○野口委員 単純に計算されておるわけでございますが、それを参考といたしまして、さらに仮に今の調査人員を倍にふやしたといたします。つまり、目的は今の実調率を倍にすることであります。法人等は二〇%、個人においては一〇%を目標にした場合、およそ増産税額は下がってくることは間違いありません。今やられている実調は、悪いやつを初めから順番にやっているわけですから、次の段階はだんだん落ちてくるでありましょうから下がることは私どもも認めますが、仮に半分しか上がってこなかったということにして、職員一人当たりの給与とそれの関係はいかがなりますか。
  92. 日向隆

    ○日向政府委員 今、委員おっしゃいますように、すべて限界効用は逓減するという法則がございますし、また費用の方は漸増するという事情がございますので、比例的にその効果があらわれるということにはまいらないと思いますが、仮に申告所得税法人税の調査に限って調査人員を二倍にした場合の人件費等の増加額は約千六百八億円でございます。他方、増差税額の増加額は五千七百十億円でございます。
  93. 野口幸一

    ○野口委員 お聞きのとおり、やってできないことはない。人件費よりも上回ることは絶対あり得ないということでありますから、この問題については当然前向きに検討をして、何も行政改革が進んでいるときだから税務職員は絶対ふやしてはならぬという法律があるわけではありませんし、そんなことを決めたこともないわけでありますから、今の税の不公平感を国民から脱却させていくためにも、悪い部分については進んで徴税を進め、そして是正をさせていくことが大事だと思うのであります。今の実調率では、私はまだまだ逃れている悪い部分があると指摘せざるを得ないと思うのであります。その点、徴税に直接当たっておられる国税庁において、こういう倍加をしていくというような考え方についてどのようなお感じで今の私の意見をお聞きしておられるか、お伺いをいたしたいと思います。
  94. 日向隆

    ○日向政府委員 私どもの立場で申し上げますと、除斥期間が三年、悪質な脱税の場合に五年ないし七年という現状からいたしますと、できますれば三年一巡ないしは五年一巡の実調率の維持が望ましいかと思います。そうなりますと、現在の実調率とかなりかけ離れてしまうわけでありますが、それにすぐ近づくのは無理にいたしましても、現在の実調率を少しでも上げることが望ましいことは言うまでもないとところであります。
  95. 野口幸一

    ○野口委員 それでは、最後大臣にお聞きいたします。  今言いましたように、少なくとも三年に一回、五年に一回ぐらいは調査をしたいというのが本来の国税庁の考え方だと。それには養成をしなければならないし、勉強もさせなければならない。だとするならば、昭和四十年程度の税務職員の仕事の内容とそのあり方について調査をいたしますと、単純に計算いたしましても今日段階で約一万人不足をしているという状態であります。ここ数年間、若干の端数の増員はありましたけれども、ほとんど定員は変わっていない、仕事だけはどんどこどんどこふえているという内容であります。したがって、その面からも私どもは、国民の不公平、不公正という面から考えましても、実調率というのはもっと上げるべきである。その上げるために人をふやして、そして取るべきところから取ってくるということはきちっとしてもらわなければ、これは不公平感は免れないと思うのでありますが、そういった意味での増員について、大臣の前進的なお考えをお聞きしたいと思いますが、いかがですか。
  96. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに実調率は決して高いと申せませんし、また時効もあることでございます。御指摘の点は、税務に対する御理解としてありがたく承ります。私どもとしましては、事務の合理化、機械化等々によりまして、できるだけ与えられた人員で能率を上げるという努力を常に心がけなければならないわけでございます。その上でなおただいまおっしゃいましたようなことがございますと、これはある意味でやむを得ないことであろうかと存じますが、しかしそれより前に能率を上げることを心がけまして、その上でまたあれこれにつきまして御配慮を仰ぎたいと思っております。
  97. 野口幸一

    ○野口委員 能率を上げていくということも大事でありますが、潜在的にはやはり人員が、昭和四十年程度の時代の人員がなお今日二十数年間たちましても大体同じペースで行われている。しかも、それを簡単に言うと、一万人ぐらいの増員があってしかるべきものが今ゼロであるという勘定になっているわけでありまするから、現在の状況でもそうなんでありまするから、今実調をさらに深めていく、それからパーセントを上げていくということになりますならば、当然それに対応する人的措置というものが必要であるということを大臣も十分御理解いただいたと思っております。頭を下げておられますから、御理解をいただいたと思って次に、進ませていただきます。  実は、先ほどちょっと問題になりましたけれども、いわゆるマル優の中で所得税法第九条だったと思うのでありますが、いわゆる「こども銀行」の子供貯金の関係の部分がございます。これは今回、この子供貯金にかかわる利子については税の対象になっていないわけでありまするが、そのとおりでございますか。
  98. 水野勝

    水野政府委員 そのとおりでございますし、今回改正をいたして御提案申し上げてございません。
  99. 野口幸一

    ○野口委員 それによりますと、「学校教育法第一条に規定する小学校、中学校若しくは高等学校」こうあります。つまり、小学校六年間、中学校三年間、それから高校三年間、十二年間が、実はいわゆる児童または生徒として在校、在学する期間であります。その期間に仮に資産譲渡にかかわるような金額以内、つまり年間六十万ですかの以内において、これらの諸君が貯蓄をいわゆる大学進学のためにするということになりました場合、この金額についても、といいますと、十二年間でありますから、六十万といたしましても七百二十万円という金額が単純に出てくるわけでありまするが、それはどういう形になるのか。またもう一つ、その中で、学校長の指導を受けてということがありますが、その学校長の指導というのは一体どういう意味を指しているのか、その辺もお聞かせいただきたいと思います。
  100. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 税の方を除きました指導は私の方でやっておりますので、私の方から御答弁させていただきます。  まず、「こども銀行」につきましては、昭和四十六年に「「こども銀行」運営要領」というのが出ております。その中に、学校側が「指導にあたって留意すべき事項」というのがございます。読んでみますと、「「こども銀行」の指導にあたっては、児童生徒の競争心をあおらないよう留意し、無理のない程度で継続することのできる望ましい貯蓄の態度、習慣を育成するようにする。」それから、なお書きがございまして「なお、預貯金のできないような家庭の事情にある児童生徒に対してほしいることのないよう注意する。」ということでございまして、このような学校側の指導のもとにやっておりますので、実際問題といたしまして、一人当たりの預金残高が非常に少額でございます。したがって、先ほど委員がおっしゃいましたような高額のものを続けてやるということは、実際上ないということでございます。
  101. 野口幸一

    ○野口委員 それならば結構なのでありますが、一方、いわゆるマル優制度が廃止になりました逃げ道としてこの「こども銀行」の運用というのは、極めて問題があると思っております。実は、ここに目をつけている銀行ももう既にあるわけでございまして、大学進学に資するために、資産譲渡にかかわらない金額の範囲ならば、学校長が御指導いただくならば、私どもの銀行が直接集金をさせていただいてもよろしゅうございますしということまでも実は出ているものがございます。そういったものが、子供貯金の、九条をうまく利用した新たな貯蓄方法として、無税の、利子に税金のつかない方法として出てきているわけであります。  したがって、それは結構なことでございますなと言って私は笑っておったのでありまするが、他の方法でこういうことがあるとするならばこれはまたゆゆしき問題でありまして、限度を定めるとか、今銀行局長が言われましたような問題点も含めて、この問題を適正に扱っていただかないと、他との不均衡が起こり得る可能性があるということを御指摘申し上げておきたいと思いますので、あえて一言申し上げた次第であります。  この問題につきましてはこれで終わらせていただきまして、約二十分間でございますので、次はたばこをやらせていただきます。  たばこ産業の現況についてお伺いいたしますが、現在のたばこの販売量はどういう状況であり、かつまた、将来に向かってどのように進んでいくと想定されるか、お伺いいたしたいと存じます。
  102. 水野繁

    水野参考人 現在のたばこの販売状況、これが主要でございますので、これを申し上げたいと思います。  昨年に比べまして、全体の需要は微減をしておるという状況でございます。その中で、特に外国たばこのシェアが非常にスピードに乗って拡大をしておるというのが実情でございます。若干数字を申し上げさせていただきますと、昨年一年の外国たばこのシェアというのが三・九%でございました。これが三月以降、特に四月以降も含めまして七月までの数字が出ておりますが、七月が九・八%ということになってございます。四月から七月までの累計で申し上げましても、九・一%のシェアとなってきております。  ただ、これにつきましてはいろいろな見方がございますので、今の事態ですぐにどういうふうなことで動くのかということについては、今のところまだもうちょっと情勢を見ながら判断したい、こういうふうに我々は考えております。
  103. 野口幸一

    ○野口委員 慎重な御答弁でございますが、残念ながらたばこの販売量そのものはふえることは絶対にあり得ない、減ることはあってもふえることはない、こういうように私は思わざるを得ないのであります。また、逆に外国たばこの日本進出は、八月現在で大体一〇%程度になってきておりますが、将来は私は二〇%を超すものと推定をいたしております。そこで、アメリカたばこが進出たばこ全体の約七〇%を占めているようでありますが、それらの国におけるところの担税額、つまり税率、アメリカでございますが、アメリカのたばこ会社にかかっている税率はいかほどでございますか。
  104. 水野勝

    水野政府委員 たばこ会社にかかっておる税金ということでございますが、アメリカにおきますところの標準的なたばこの小売価格に占めます消費税の割合としてお答えを申し上げますと、アメリカにおきましては三九%程度ではないかと承知いたしております。
  105. 野口幸一

    ○野口委員 我が国のたばこの税金は、実はもう言うまでもなく五九%を超えておるわけでございます。六十一年度現在でそうなっておるわけであります。今までですと、これは関税という一つの関所がございましたが、関税が取っ払われてしまったわけでありますから、当然向こうは自分のところの税額だけ、いわゆる自国におけるところの税額だけを負担して日本へ売りにくるわけであります。当然、その税の差というものはサービスにも回せますし、品質の改良にも回すことができるわけであります。  そうなりますと、外国たばこ、特にアメリカのたばこと日本のたばことこれから自由に競争してまいりますと、当然アメリカたばこが蔓延する可能性もなきにしもあらずであります。ここで思い切って日本のたばこの税率についても改定をしなければならない。つまり、今日日本たばこ産業株式会社というのが自由競争の場に入っていったわけでありますから、それを勘案してまいりますと、特にアメリカからの輸入におけるところのシェアが外国たばこの七〇%を超えているという現在において、アメリカのたばこ産業にかかる税率が今水野局長がおっしゃったように四〇%未満であるということになりますと、日本のたばこと約二〇%近い税率の差があるわけでありまして、これを続けますと、日本たばこはまさにもうバンザイせざるを得ないという状況になる。  これは、最近テレビをごらんの方はもうよくおわかりのように、連日のごとくアメリカたばこのいわゆる宣伝のテレビ放送がなされております。日本たばこも同じようにやればいいというわけでありますが、恐らく金もないだろうし、税金をたくさん大蔵省に取られちゃって、本当にたばこ産業としてはにっちもさっちもいかないところに来ているのだろうと思うのであります。そういった意味で大幅減税をしてやらないと、日本たばこはまさに瀕死の状態に陥るのではないか。将来この外国たばこの占めるシェアが二〇%、三〇%占めた場合、そのときはもう既におそいのでありまして、現在におけるところのこの状況というのを主税局長はいかにお考えか、この日本のたばこに対する税についてどのようなお考えをお持ちか、ひとつお答えをいただきたい。
  106. 水野勝

    水野政府委員 委員承知のことでございますけれども、ただいま私申し上げました三九%と申しますのは、アメリカにおきますところの小売価格に占めますところの負担水準でございます。これが我が国に輸入されてまいりますればもう内外無差別でございますので、我が国と同じ負担水準の課税をお願いするところでございます。このたばこにつきましての負担水準については従来からいろいろ御議論をいただき、この大蔵委員会でも御審議を願ってきているところでございますが、これはたばこと申しますのが特殊な嗜好品としての性格を持ち合わせておるわけでございまして、これがいろいろな経緯、今までの沿革をたどって現在の水準になっておる。これは国税収入、国民所得、民間最終消費支出等に占める割合、こういったものが現在の水準になっておりますのが、過去から比べてどういう経緯になってきているか、それからたばこの消費動向はどうか、それからまた申し上げるまでもなく、国の財政状況から見てどの程度の御負担をお願いするのが適当か、こうしたもろもろの観点を総合的に検討させていただきまして、そのときそのときの判断を申し上げて国会に御審議を願っておる、その結果としての数字が現在お話の五九%という数字になっておるわけでございます。
  107. 野口幸一

    ○野口委員 前段に言われました、日本と同じように税金がかかっているというのはどういう意味ですか。アメリカたばこの販売価格に合わせて、日本でも税金を五九%取っているというのですか。
  108. 水野勝

    水野政府委員 三九%と申し上げましたのは、アメリカにおきましてアメリカのたばこが売られたときの、その小売価格に占める割合といたしましては三九%、これは委員指摘のように、日本におきますところの負担水準とはかなりな差があるわけでございますが、そのアメリカのたばこが日本に参りまして、輸入されて消費される、その場合には日本の税法が適用され、これは先ほど申し上げたアメリカの三九%でございませんで、我が国で定められました消費税の水準として課税が行われる。したがいまして、三九%と五九%といったような差があるというわけではないということ、これは十分御承知のことと思いますけれども、その点、念のため申し上げたところでございます。
  109. 野口幸一

    ○野口委員 それは、例えば会社の経営の中での話であります。少なくとも向こうでは、日本に何%持ってきているか知りませんが、アメリカで経営をしている全体の中で考えた税負担率というのは三九%でございます。それで、そのうち何%かを輸出しているわけでありますから、たとえ日本で同じように税金を取られましても、全体の税負担率というのは日本よりは低いはずでございます。だから、当然その差というのはありまして、それをサービスなり宣伝に回すことができるという可能性は秘められているわけでございます。ましてや、今後日本における市場獲得のために、今一生懸命やっているわけでありますから、当然赤字覚悟でやってきている部分もございます。そうなりますと、日本のたばこ産業としては、今何%に一遍に下げろというわけじゃありませんけれども、少なくとも一%や二%を下げてやらないとこれを阻止するだけの力さえないのではないだろうか、こういうことを申し上げているのであります。  これに関連いたしまして、実は前の大蔵大臣が一年限りということで、一本一円という値上げをされた経緯があるわけなんです。私も、ここに議事録を持っているので説もうかと思っているくらいに、再三にわたって一年限りでございます、一年限りでございますとおっしゃったのです。ところが、実はこれは大うそでございまして、またことしもということでございまして、初めは何か売上税との関連で十二月となっておったのが、今度はまた来年三月まで、こういうわけであります。大臣、少なくともこれを来年の三月以降はもとへ戻す、つまり一円はもう取らない、もとへ戻してやる、とれは当然のことなんであります、約束なんでありますから。初めは一年と言ったのが二年やっているわけなんでありますから、そういうことにはならない。仮に、これによって財源が不足をした場合にはよそから必ず持ってきまして、たばこ産業に一円はもとのとおりに戻しますという約束をぜひこの場でしてやっていただきたいと思います。
  110. 水野勝

    水野政府委員 今回御提案申し上げておりますのは三カ月間、来年の三月までのものでございます。三月までのものにつままして、六十三年度といたしましてこれをどのようにいたしますか、この点につきましてはほかの問題とも一緒でございますが、昭和六十三年度税制改正の一環として税制調査会にも御議論をいただき、関係方面とも御相談をし、その結論を待って対処し、国会に御提案を申し上げたい、このように考えているところでございます。
  111. 野口幸一

    ○野口委員 ちょっと、それはあなた、詭弁ですよ。一年間しかやらないと言ったものを延ばしたのですよ。それを来年はわからないなんて、そんなばかなことはありません。来年はやめることは当然じゃありませんか。初めから一年だと言ったのです。特にお願いをいたしたい、税調にもかけておりませんでしたけれども緊急のことでございますからどうかお許しをいただきたいと、竹下大臣答弁を読みましょうか。お許しをいただきたいと言って、一年間に限ってということで当委員会を通っていったのです。一年限りと自分で言ったのだから、一年でやめるのは当たり前なんです。それを、今回特に許して仮に一年とするということになれば、来年はわかりませんじゃなくて、来年提案しなければもとへ戻るのです。そうでしょう。
  112. 水野勝

    水野政府委員 六十一年度の税制改正で御提案を申し上げたときに、その適用期限はもちろん一年として御提案をし、御審議を願ったところでございます。ただ、その際にも、一年後の点につきましては、絶対に一年に限るというところまでは申し上げてはいない、期限としては一年ということで御提案をし、御審議を願ったということではないかと思っているところでございます。
  113. 野口幸一

    ○野口委員 もう私は、あなたの言うことは信用いたしません。本当にその場を逃れればいいというようなことばかりです。ですから私ども、この大蔵委員会へ来ているとだんだん人間が悪くなるのです。だまされてだまされて、だまされるたびに人間が悪くなってしまう。追及すると、実は決まっていなかったというふうにうまく逃げられる。これは私は残念無念でたまりません。無念でありますけれども、時間が参りましたので質問を終わります。
  114. 池田行彦

    池田委員長 安倍基雄君。
  115. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 修正案についての質問を中心に、時間も十五分で余りございませんから、簡単にお聞きしたいと思います。  我が党は、特にマル優の廃止問題について、資産所得課税全般のフレームワークの中で十分時間をかけてじっくり考えるべきではないか、特に今度の総合課税を実質的には離れるという面からいいまして、まだ非常に不満な点が多いわけです。  そこで、まず第一にお伺いしたいのは、今度の見直し規定でございます。書記長幹事長の合意というよりは自民党回答だったようでございますけれども、移行問題をどうするかということに対して五十一条で見直し規定が今度出たわけです。「課税在り方については、総合課税への移行問題を含め、必要に応じ、この法律施行後五年を経過した場合において」どうこうと書いてございますが、「必要に応じ」というのは意味が逆に弱まるのではないか。五年を経過したときに見直しを行って、その結果、よければそのまま続けるし、よくなければ変えるというわけだけれども、「必要に応じ」ということは逆にそれを弱めて、そのときにもう一遍必要性を考えてという形になるので、いささか真意がはっきりしない。逆に、できたらしないで済まそうという感じがにじみ出ていると言わざるを得ないのでありまして、この点について提案者の御見解を承りたいと思います。
  116. 中村正三郎

    中村正三郎委員 お答え申し上げます。  今の安倍委員の御質問でありますが、先ほど沢田委員の御質問にもお答え申し上げましたとおり、ただいま利子所得課税あり方についてはいろいろな御意見が出ております。税制協議会でもいろいろな議論が深められましたし、当委員会においてもまた継続してそういう議論がなされているところだと思うわけでございます。  そこで、与野党書記長幹事長会談のお話し合いを踏まえて、五年を経過した場合に見直しをするという規定を入れさせていただいたわけでございますが、その五年を経過した場合に見直しをするということで考えますと、五年を経過していつかというような御議論もあろうかと思うわけでございまして、これは社会経済情勢の変化に応じて必要があれば五年経過していつでもやるんだということで、私は、むしろ必要があればやらなければいけない、そしてさっき宮地委員の御質問にもお答えさせていただきましたよう。に議会で決めた以上、これは誠実にやっていくべきことであるという認識を持っているわけでございます。
  117. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 当初申しましたように、見直しを行って、よければ存続、悪ければやり直しということですから、「必要に応じ」ということを殊さらにつけ加えることはむしろ弱めるのじゃないか、見直し規定に対して弱い効果を持ちますね。今の御答弁は、五年前でもやっていいということですか、「必要に応じ」五年前でもやるということですか。そういうことじゃないでしょうな。
  118. 中村正三郎

    中村正三郎委員 この文案から読めば、五年前にということには読めないと思いますが、今委員が御指摘になられましたように、検討して必要がなければやらぬということには絶対読めないのではないかと私は思うわけでございます。そして、必要があるときは、いつでも五年を経過した場合に検討するという意味で入れさせていただきましたので、御了解を賜りたいと思うわけでございます。
  119. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私は、この「必要に応じ」という言葉は不要であると思います。これはむしろ外した方がいいのではないかと思います。見直しを行う、見直しを行った結果、よければ存続、悪ければ改正ということですが、もともと私どもは、原則として現在の形で限度管理でやれという主張でございましたけれども、その面からいって、今度の改正については甚だ不満な点も多い。その点で、「必要に応じ」とクッションをもう一遍入れるのはおかしいのではないかと私は思います。この点、提案者は党でございますから、自民党でございますから念を入れたのかもしれませんが、私はできたら削除すべきではないかというぐあいに考えております。野党の皆さんもそうだと思います。だから、これは法制局に一々聞かなくても論理として当然でございます。  次に、書記長幹事長会談は一応自民党回答でございまして、ここに例えば財形貯蓄の問題が年金、住宅というぐあいに出ておりますけれども、一般財形について二〇%をゼロにするか、あるいは一〇%にするか、いずれかということで、できたらゼロにしたい、それで八百億でございますから、一〇%であったら四百億ということでございますが、新聞報道をいろいろ読みますと、新聞の報道が正確かどうかという問題はございますけれども政府専用機を買うだけでも四百億くらいかかるという話さえございます。そうすると、何か財形の利子を課税しておいて政府の飛行機を買うのかということに逆になるので、この辺について提案者、そして必要とあらば大蔵大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  120. 中村正三郎

    中村正三郎委員 年金、住宅に関して、野党の御意見も入れて税率をゼロにするという改正案を今度つくらせていただいたわけでございますが、この根本にございますのは与野党書記長幹事長会談の申し合わせと申しますか、そこで御提案申し上げたものの第三項でございますけれども、「財形貯蓄(年金・住宅)の利子は非課税とする。」ということを、私どもといたしまして修正案にまとめさせていただいたわけでございます。  しかし、その中の考え方といたしましては、住宅取得とか高齢化社会を迎えての年金とかいうものにつきましては、特にこれを支援する必要があるという観点からこれがなされたのではないか、また一般財形については、これを必要な方は年金貯蓄、住宅貯蓄へ変更することができるというような規定もされているわけでございまして、私が推測すれば、そういうことからこういうふうになってきたのだと思いますが、詳しくは政府側から御答弁をしていただいたらと思うわけでございます。
  121. 水野勝

    水野政府委員 今回、利子課税を御提案申し上げているところの趣旨といたしましては、現在の社会経済情勢で、とにかく貯蓄一般につきまして一律的に優遇措置を講ずるということにつきましては政策的な観点からいかがかということで、御提案をさせていただいているところでございます。一般の財形は、まさにその貯蓄をされる方がサラリーマンであるという点につきましては一般的であるという点は違いますけれども、天引きで貯蓄をされた場合には一般的に優遇措置を講ずるということは、今回御提案申し上げております利子課税見直しの線からやはり適当ではないのではないかと考えるところでございます。  それから、ただいま御提案者からお話のございましたように、一般の財形は、この適用の末日の残高をもって一定の手続をおとりいただければ変更することができるように、財形法それから今回の税法でも措置をいたしておるところでございますので、御活用いただければと思うわけでございます。
  122. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 この前の質問でも大臣お話ししたのですけれども、財形というのはまず第一に不正利用が絶対できないという問題が第一点。それから私どもは、低額所得者に対して優遇措置が講じられないかということを考えたのですけれども、低額所得者という定義がなかなか難しい。そうなると、財形という形であれば一番とらえやすいという意味で、これは低額所得者に対するいわば優遇措置ということで私ども考えていたわけでございます。  この与野党の合意とおっしゃる、こちらの方は自民党回答と考えておるわけでございますけれども、これはたまたま年金、住宅というのを例示と見るか限定と見るか、むしろ例示というか、こういったものという特色を出すために、さっきも話が出ましたけれども恐らく書記長幹事長段階で、詳しいことがわからないところのとにかく予算委員会でやるとかそういったことで、この辺は本来は大蔵委員会で詰めた形できちっと議論すべきであったわけでございます。年金、住宅というのがたまたま出てきたのは、むしろ例示として考えてもいいんじゃないかという考えがございますが、もう時間もございませんので事務当局の方じゃなくて大臣の御意見を。  もう一つ、私は質問しておきます。私は、二十六分で終わらなければいかぬものですから。もう一つ、年齢制限でございますけれども、労働省あたりは退職年齢を六十歳ということで指導している。六十と六十五、これは人数がどうなるかという問題がございますけれども、この辺は何でこうなったのかな。労働省の、六十歳ということで一つの線を引くのも一つの方法ではないか。  この二点について、年齢制限につきましては後から提案者の御意見、財形の問題及び年齢についてまず大臣からお返事をいただきたい。
  123. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 財形の問題につきましては、先ほど御提案者からお話がございましたように、やはり住宅は住宅政策というのがただいま大変に焦眉の問題でございますし、それから年金というのはやはり老齢という、そういう政策目的に従いましてこの二つのものを限定的に選ばれたものではないかと私ども考えております。
  124. 中村正三郎

    中村正三郎委員 大臣の御意見と同様でございます。
  125. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 年齢の問題につきましては。
  126. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは一般に政府が老齢者と考えますときに、いろいろな施策を六十五で考えておりまして、それに倣って考えております。
  127. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私ども党として、今回の改正が余りにも拙速であったという気がいたしますので、その辺を私ども態度を明らかにすると同時に、御質問したわけでございます。  最後にあと一問でございますが、今度の税率改定で、この前の質疑でもちゃんと平年度ベース、地方税を含めて大体二兆二千億くらいになるかなというお話がございました。これから同僚議員もそういう質問を取り上げると思いますけれども自民党として結局今度の税制改正は、当初提示されたような税率をもっと簡素化して軽減していくという方向に対する第一歩というようなぐあいに考えて処理されておるのか、そうでないのか。これはむしろ提案者としての党の方にお伺いしたいと思います。
  128. 中村正三郎

    中村正三郎委員 一大蔵委員会理事としては、答弁するのに大変大きな問題だと存じますが、この修正案自体は、政府考え方に基づきます原案について与野党のお話し合いの中から出てきた修正案でございますから、その方向について私どもがとやかく発言するのはいかがかとは存じますが、議員として考えますと、税制改革の展望については衆議院議長のあっせんもございまして、そこで与野党税制協議会も行われている最中ということも考えますと、引き続き検討をする税制改革の中の一つのステップであるというふうに考えるのが至当ではないかと思うわけでございます。
  129. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 もう二十六分ですから、私はここで質問を終わります。
  130. 池田行彦

  131. 正森成二

    ○正森委員 私どもは、マル優廃止を含む所得税法等の一部改正法律案については断固反対であります。その点については、八月二十五日私が第一回目の質問のときに、二時間にわたってその論拠を申し上げたところです。本日は、中村正三郎君外四名提出の修正案に限って質問をさしていただくということでございますので、短い時間でございますが、幾つかの問題を聞かしていただきたいと思います。  最初に、この修正案が我が党を除く自民党と社公民との書記長幹事長会談で行われた。その淵源は税制協議機関にございますわけで、この税制協議機関については、先ほど社会党の同僚野口委員からもまことに正論の指摘がございました。党は違いますが、その本質的部分については、当委員会並びに国会審議を形骸化するものであるという御指摘に対しては、私もそのとおりであるということを最初に申し上げておきたいと思います。  そこで伺いますが、今度中村さんなどから修正案が出ましたけれども、それはマル優を廃止するという基本的な点については手を触れていないと思うのですね。その上で、大蔵省には修正三原則というのがあるそうですね。例えば八月四日の読売新聞に載っておりますが、「税収が大幅に減らない。徴税の事務量が増えない。金融機関間の不公平を招かない」、これがその修正の三大原則であって、これにかなう修正である、こう書いてあるんですね。結果的に見ますと、まさにそのとおりではありませんか。
  132. 中村正三郎

    中村正三郎委員 私どもといたしましては、共産党さんが入っておられなかったわけでございますが、自社公民の話し合い書記長幹事長会談から出てきたものを法制化の手続をとらしていただいたということでございまして、その間、計数的な問題とかいろいろなことで大蔵省に意見を聞いたことはございますが、大蔵省の三原則というようなものを私も存じませんし、そういったものをしんしゃくしてやったものではございません。
  133. 正森成二

    ○正森委員 それでは次に伺いますけれども、最初八月七日に二千億円減税が上積みされました。次いで、八月二十六日に四百億円上積みされたということになっておりますが、例えばその二十六日の昼に中曽根首相は記者団の質問に答えて「あれは上積みではない。計数整理をした結果だ」、こういうように述べたと各紙で報道されております。特に東京新聞です。つまり、これは上積みではなくて計数整理であるというように一国の総理が言っているのですが、提案された中村議員は何とお考えになっておりますか。
  134. 中村正三郎

    中村正三郎委員 大変重要かつ難しい御質問でございますが、私どもが存じておりますことは、八月七日の書記長幹事長会談において一兆三千億に対して二千億の上積みをするという旨の提案をされた。このときは、私ども承知する限り、税率構造の問題とかいろいろなことは議論をされてなかったように伺っております。その後、自社公民の話でございますが、大蔵委員会審議等の経過も見ながらもう一遍話し合いを持とうということになりまして、二十六日の書記長幹事長会談において我が党の方から、いろいろな社会経済情勢も踏まえて、先ほど御提案させていただいたような税率構造にした、そしてそれを計算して、結果として一兆五千四百億になったというふうに私は理解しているところでございます。
  135. 正森成二

    ○正森委員 中村議員答弁は、役目柄やむを得ない非常に御苦心の答弁だと思いますが、事実に完全に反しているのですね。ここに八月八日の読売新聞の朝刊があります。これを見ますと「所得税率十二段階に 政府・自民修正方針」「最低税率幅を拡大」こういうぐあいになっておりまして、このリード記事を読みますよ。よく聞いておいてください。   政府自民党は七日、与野党幹事長書記長会談で、自民党が六十二年度の所得税減税を二千億円積み増し、一兆五千億円にすると提案したのに伴い、具体的な所得税率の修正方針を固めた。それによると、中堅所得層への減税をさらに手厚くするため、最低税率(一〇・五%)の適用幅を、先月末国会に提出した政府案の課税所得百二十万円(夫婦と子供二人のサラリーマン世帯で年収四百三十五万円)以下から百五十万円(同四百七十六万円)以下まで広げると同時に、第二段日の税率(一二%)を、百六十万円以下から二百万円以下まで広げるとしている。この結果、政府案の第三段目(一四%)の税率は、第二段目に吸収されることになり、十三段階だった税率の刻みは十二段階簡素化される。 これが読売新聞の八月八日に出ていることであります。今回のあなたが提案されている修正案と寸分変わらない、同じじゃないですか。  ですから、八月七日提案のときには二千億円という、まさかつかみ金をするわけじゃないでしょう、戻し税じゃないのですから。それは、何らかの税率構造の変化をやって、二千億なら二千億減税額をつくり出すわけですから。それには、最低税率一〇・五%を百五十万円にするのだ、そして十三段階は十二段階にするのだ、一二%は二百万円までに広げるのだというようになっているわけです。だからその案のままで、社公民の書記長からもっと積み増しできぬかというので、計算してみたら、もともと——ほかにまだ資料あるのですよ。「再上積みは朝三暮四?」これは八月二十七日の読売であります。これにはどう書いてあるかと言えば、大蔵省の中には、もともと先の通常国会に提出した当初案は一兆円減税といいながら一兆百八十億円で、百八十億円の端数があった、今度の二千億円の上積みについてもこれは端数があったのだ、それを足せばちょうど二千四百億円になったのだ、こういうぐあいに読売新聞の八月二十七日の「視界」というところにちゃんと書いてある。  いいですか、中村さん。ここではまじめな顔で答弁しておられるけれども、八月八日に二十六日の社公民幹事長書記長会談答弁した内容と同じことが出ているのですよ。だから、自民党は同じ案で、それでいよいよやるときに計算してみたらいいあんばいに四百億という端数が出た。それで、これを減税の上積みにしておけということで社公民を、言葉は悪いがだました、あるいはだまされたということになるのじゃないですか。だからこそ中曽根総理が、あれは減税の上積みじゃない、計数整理だ、こう言っているのでしょう。違いますか。
  136. 中村正三郎

    中村正三郎委員 一大蔵委員会理事としての私の御答弁で足りるかどうかということでございますが、新聞報道一般論といたしましていろいろなものが出てまいりまして、今御指摘のことも、私気がつきませんでしたけれども、出ていたのだと思います。また私ども、四百十億だとか五百億なんだとか六百億だとかいろいろなうわさが飛び交ったのを伺っておりますが、私の立場といたしましては、書記長幹事長会談におきまして出した結論を誠実にこうして修正案にまとめさせていただいたということでございます。
  137. 正森成二

    ○正森委員 中村議員が、個人として一生懸命誠実であるということは疑いませんが、事実はそうなんですね。  水野さん、あなた方、八月七日に二千億円減税ということで、当初案と同じことを考えたのでしょう。新聞にも出ておりますよ。それとも何か変えたのですか。あなた、今余り正直じゃないとか言われていたけれども、正直に答えてごらん。
  138. 水野勝

    水野政府委員 この点は、先般もそうした御議論がこの委員会でもあったかと存じます。それから当日の読売新聞、私ども読んでいまして、今はっきり記憶がございませんが、百四十万、百五十万、並べて書いたりしておりまして、ですから、どうも何かがあったとしてそうしたものをお書きになったような記事でもない、私どもは先般お話があったときに読み返してそんな気がいたしたところでございます。  その政府提案をいたしましたときには、七月二十七日には基本的な考え方を自民党税制調査会がおまとめになっている。その中では、サラリーマンの税負担を一層軽減する見地から、最低税率の適用対象所得の範囲を拡大する等の手直しを行うという御決定があり、これが政府提案になっておるわけでございますが、そうした基本的な考え方というのは与党にもある。こうした考え方は、税制改革協議会でも御提案があったとお聞きしておるところでございまして、こうしたものをいろいろ各種の新聞等が検討されてそのような記事になった。先般、大臣からも、その新聞としてのそれぞれの見識により、ひらめきによって記事がつくられたというふうに申し述べられたところでございまして、八月七日にこうした幹事長書記長会談の御提案があり、その後当委員会質疑一巡した段階でもう一回そういう会合があって御提案があった、そうしたものを受けて私どもとして算定をさせていただいたというのがまさにこれまでの経過でございます。
  139. 正森成二

    ○正森委員 ひらめきなんというなかなか文学的な表現を使われたけれども、そのひらめきが二週間以上も前のが八月二十六日のと当たっておるのですね。だから、ある意味ではひらめき過ぎるというように思うのですが、まあその点はそのぐらいにしておきましょう。  次に、今度附則の五十一条で「利子所得に対する所得税課税在り方については、総合課税への移行問題を含め、必要に応じ、この法律施行後五年を経過した場合において見直しを行うものとする。」という条文が入ることになっておりますが、これを正直に日本語として読みますと、「総合課税への移行問題を含め、必要に応じ、」ですから、総合課税にいくように見直しをするとはなっておりませんね。総合課税になる場合もあればそうでない場合もある、必要な場合もあれば必要でない場合もある、そういうことでしょう。
  140. 中村正三郎

    中村正三郎委員 先ほどから御答弁させていただいておりますように、利子課税あり方については、それぞれ各党また委員の皆様方でいろいろな御意見があるところでございます。でありますからこそ、この見直し規定を入れて、将来の社会経済情勢の変化に即応して、五年を経過した場合に見直しをするという規定を入れさせていただいたわけでございますが、それが今ここですぐ総合課税であるとかそうでないのだとか分離課税だとか、そういうような特定の結論を先取りして入れたものではないと思います。
  141. 正森成二

    ○正森委員 最後に、一つだけ聞かせていただきます。  財形貯蓄が非課税になるという修正でございますが、それによる減税額は幾らですか。
  142. 水野勝

    水野政府委員 政府提案では三・七五%、これがゼロという御提案でございます。これによりまして、約十億円前後の減収と相なるかと考えております。
  143. 正森成二

    ○正森委員 十億円の減収というのは非常に受益が少ないといいますか、それであるだけでなしに、報道によりますと、大蔵省の中には、主としてこの恩典を受けられるのは大企業のサラリーマンなんだけれども、大企業のサラリーマンだけがなぜそういう恩典を受けるのかという批判的意見があるということが同じように新聞で報道されておりますが、私どもは、もう時間がございませんので答弁は要りませんけれども、同じように非課税にするなら、全国民に均てんして渡るような改正が望ましいということを指摘しまして、私の質問を終わらせていただきます。
  144. 池田行彦

    池田委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。    午後零時四十一分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  145. 池田行彦

    池田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野口幸一君。
  146. 野口幸一

    ○野口委員 まず、総理にお尋ねをいたしますが、シャウプ税制と言われるものを実施しましてから三十七年、この抜本的な税制改革に当たりまして、その心構えとして一番大事にしなければならない点ほどのように心得ておられますか。
  147. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 シャウプ税制以来三十七年たちましたけれども、その間日本の経済の構造の変化あるいは所得層の変化あるいは日本社会の高齢長寿化、さまざまな変動が起きまして、しかも一番顕著なことはサラリーマンの大群が出現してきたということでございます。そういうようないろいろな面から、シャウプ税制のときにつくられた税体系は必ずしもそのまま今日の世の中に公平、公正、簡素という形で妥当するとは言い切れない状況になりまして、そのようなゆがみ、ひずみを是正して、そして二十一世紀に向かって日本の長寿社会に備える長期的、安定的な税体系を準備していく、そのことが大事なことになってきたと心得ております。
  148. 野口幸一

    ○野口委員 そこで、前国会のことを若干お聞きいたしますが、前国会総理にしてみればふがいないことであったと思いますが、いわゆる売上税法案並びにその関連法案があのような形で終わりました。今振り返ってみて、なぜあのような経緯が起こったのかという点について、今日の時点におけるところの総理の率直な御感想をお聞かせいただきたい。
  149. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 売上税問題でいろいろ混乱を生じましたことは甚だ遺憾でございました。しかし、税制の抜本的改革をやろう、また国民の皆さんの要望久しかった減税所得税及び法人税について思い切ってやろう、そういう考えに立ちまして、増減税ニュートラルという形の長期的、安定的な恒久税制改革を目指していろいろ御審議を願い、また、政府税調におきましても党税調におきましても、かなり時間をかけ、精力を入れておつくりをいただいた案で、それを政府としてはいただいて実行しようと思ったわけでございますが、今から考えてみますと、国民の皆様に対する説明をする時間がやや足りない、あるいは手続も必ずしも十分ではなかった、そういう意味国民の皆さんの御理解を十分得ることができなかった、そのために挫折したことは甚だ残念でございましたが、今から、反省をいたしました。そして周到な手配で、今後はそのような抜本的な税制改革に向かって一歩一歩着実に前進していかなければならない、そう考えておる次第であり、税制の抜本的改革は初心忘るべからずで、今でもはっきりと堅持しておるところでございます。
  150. 野口幸一

    ○野口委員 総理の言われる言葉の中で、税制改革は必要かどうかという点に関してのみ私に仮に逆に御質問があるとするならば、それは必要でございますと答えざるを得ない状況であるということは間違いございません。そこで、前国会で、残念ながらというお言葉はなかったかもわかりませんが、いずれにしても、あのような結果になった原因を私なりに考えてみますと、税制改革が三十七年ぶりとか言われるだけに、抜本改正に当たっての地ならしというか、そういう環境づくりが全くできていなかった。いわんや、繰り返すわけではございませんが、昨年の総選挙に当たって、いわゆる大型間接税はやらないんだという総理の言葉が一つのひっかかりになりまして、縦横十文字、投網をかけるようなという言葉まで飛び出しまして、自縄自縛みたいな形になって、みずからがみずからを縛る形になってしまったと言わなければならぬのじゃないだろうかなという気持も私は一つあるわけであります。  また、あの選挙において三百余という大議席を得られた大政党が、いわゆる税制抜本改革としてお出しになるにしては余りにも拙速であったのではなかろうか。四年間の任期があるわけでありますから、その間においてあらゆる周到な準備をしながらやるべきではなかったのかなという気がするのが、まず一番大きく感ずるところであります。  そこで、そう考えてまいりますと、今はしなくも総理がニュートラル方式という言葉をお使いになりましたが、私どもはこのニュートラル方式という言葉は余り好きではないのであります。なぜとなれば、前の大蔵委員会でもちょっと話をしたことがあるのでありますが、現在我が国には百五十兆を超すいわゆる借財があるわけであります。これを何とかしなければならぬというのは、どなたも否定をなさらないと思います。  そこで、財政再建という言葉があるのでありますが、よくもてあそばれますが、財政再建とは一体何をもって財政再建とするのか。さきに宮澤大蔵大臣はこうお答えになりまして、少なくとも今の予算に占める二〇%余になっているいわば利息の支払いが一般会計の中で支払えるような状態、いわゆる税収で支払えるような状態にまで持っていく、その辺が当面のいわば財政再建というところに近づくといいますか、その目標だ。もっとも最終的には、百五十数兆円の国債を全部償還してしまおうというのが、借金をなくしてしまおうというのが財政再建かもわかりませんが、非常に遠いといいますか、なかなか難しいことでございましょうし、当面置くべき財政再建の目標というのはその辺かなということで御示唆がございました。総理としてはどのようにお考えでしょうか。
  151. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 一言で申し上げますと、財政の硬直性を打破して財政の対応力を回復していく、そういうことではないかと思います。今おっしゃいましたように、来年の三月になると約百五十三兆にも及ぶ国債の残高が残りまして、恐らく予算編成の際に国債費だけでも十五兆近くぐらい払わなければならぬときが来るのではないか。そうすると、一般行政経費が今までは三十二兆六千億円ぐらいで横ばいしてきましたが、多少公共事業、社会資本を充実させてそれがふえるにいたしましても、しかし国債費が一般会計の中に占める割合が二〇%を超すということは、財政そのものを非常に硬直たらしむる原因になると思うのです。そういう意味で、私は、臨調やあるいは財政関係の皆さんの御協力をいただきましてようやく一九%台に下げたところでありますが、しかしまたそれが二〇%台に戻った。そういうことで、やはり二〇%をめぐる攻防というようなことを一つのメルクマールにしながらできるだけ努力をしていく、それが財政の弾力性を回復する一つの目安になるんじゃないか、そんなことを実は頭の中に描いてきたわけでございます。
  152. 野口幸一

    ○野口委員 そうしますと、お言葉を返すようでありますが、財政再建の当面の目標は、いわゆる予算の中において国債費を二〇%以下に抑えることが財政再建という目標であるということになりますか。
  153. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今まで申し上げてきましたのは六十五年度赤字公債依存体質脱却、そういうことで言ってまいりまして、それは今でもそのとおり思っております。要するに赤字公債というものは大体において、表現は適切ではないかもしれませんが、やや消費的な経費、国の行政経費の中でも消費的な性格を持つ。そういうような性格を持って、建設公債というのと性格が違います。資産として残るものではない。そういうような面から見まして、赤字公債依存体質からの脱却ということを六十五年を目標に努力してきたつもりでございますが、その予算編成上のメルクマールというものを別の面からとらえてみますと、また別の基準として今のような考え方も持ってきた。今日におきましても赤字公債をできるだけ減らして、そして資産的なものが残ればこれは子孫が恩恵を受けるわけでございますから、これはお金を子孫に払っていただいてもいいと思いますが、それ以外、我々のときに使うお金、我々のときは大体ベネフィットを受けるという仕事については子孫にそのお金を払ってもらうということは、これは我々としてはできるだけ避けなければならぬ、そういう考えに立っておるわけでございます。
  154. 野口幸一

    ○野口委員 それは一つの御意見といいますか、総理としてのお考えでございましょうが、私はこう思うのですね、総理財政再建という目標を仮に私どもにどう考えるかということになりますならば、やはり最終的には借金を全部なくしてしまうということ、これが一番財政再建の最終目標だと思います。しかし、これ以上ふやさないようにしていく、今の借財がこれ以上ふえないようにするというのも一つの目標かもしれません。また、さきに引用いたしましたように、宮澤大臣が言われました、二〇%になんなんとする国債費がいわゆる税収でといいますか、一般会計でもって支払うことができる、もう国債を発行しなくともいいというような形にならないかということについても、一つの目標であろうと思うのであります。  そうなりました場合に基本的に考えなければならない問題は、何といいましても国民のいわゆる負担率の問題であります。いわゆる税の負担率と年金その他一般的な社会保障負担率と申しますか、この二つに分けられると思いますが、いずれにしてもこの国民負担率がどこまで国民に要求できるだろうか、そこから始めませんと、この問題の根本解決はできないだろうと思うのであります。  そういった意味で今国民負担率は、租税負担率として二五%、社会保障負担率が一一%、合わせて三六%程度でありますが、これは実は二十一世紀を展望してどの辺までとり得るかというところをまず頭に描いて、その中で長期的な債務の処理のあり方、それから短期的な、今日的ないわゆるやらなければならない諸問題の解決、あるいは貿易摩擦もそうでありましょうし内需拡大もそうでありますが、いろんなことをかみ合わせた中におけるところの中長期ではなくて、短期的なものと中長期のものと分けていわゆる財政再建に取り組む、いわばプロセスと申しますか手段というものが当然考えられると思うのでありますけれども、実はこの売上税が出てまいりましたときには、この国民の負担率というものは頭になかったのではないだろうか。  そういうことを頭に入れて、まずはその議論から始めて、今中長期的にはこうなんだよ、短期的にはこうなんだよというお示し方がなかった。だから、いわゆるニュートラル方式なるものが出てまいりまして、所得減税はしてやる。所得減税は今どうしてもやらなければならないんだ、内需拡大のためにもそうなんだということでございます。もちろん、そうでございましょう。私どももそれは否定するものではありません。と同時に、その財源措置として売上税を、こう言われますと、これはプラス・マイナス・ゼロだからということで入る。しかしよく考えてみると、果たしてこのニュートラル方式というプラス・マイナス・ゼロというのはいつまで続くんだろうかと考えますと、そう長い話ではないというような気がするわけであります。としますと、いずれかの時点で、例えばの話でありますが、売上税という税率が上がっていくのではないかというような考え国民に抱かしめたのではないだろうか。  つまり、片方には百五十何兆という借金が残っているんだし、まだまだ二〇%を占める利子の支払い、国債費というものがあるにもかかわらず、いわゆる「増税なき財政再建」とおっしゃるけれども、そんなプラス・マイナス・ゼロというような甘い考えでできるんだろうか。そんな話は甘過ぎるんじゃないか。ここに視点を置きますと、当然これはだまされているのではないかという疑念というものがわくような仕組みがこの前の税制改正の中に出てきたのではないか。  もっと基本的に、例えば国民の負担率は今三六%だけれども、これを皆さんに御努力いただいて三八%まで上げると仮にする、あるいはまた社会保障は全部国が見てやるから税金でもってそれを負担するのだ、あるいは社会保障は個人の負担によってそれぞれある程度自助努力といいますか、頑張りなさい、この分は国の経費でやらなければならないから税としていただきます、その中にあって税制というものほかくあるべきであるということで、いわば導入する税制はこういう形でとりたいと思う、つまり、直接税と間接税のあり方についてそこでお説きになって、初めて間接税というものの導入というものが描かれてくるというようなプロセスが全然なかったとは言えませんが、ほとんどなきに等しい形で出されてきた。  これは私は、国民がこの増税問題に対する疑惑、あえて増税なきとおっしゃいますから、増税があるんだろうと思っているにもかかわらず増税なきでやっていくんだとおっしゃる、財政再建ができるんだとおっしゃるところに私は問題点があるのではないか。これは増税という言葉の定義から始めたのでありますが、そうしたら宮澤大臣は、増税というのは新しい税目をこしらえて税を取ることが増税であって、自然増税のような増税はそれは増税とは言わない、こうおっしゃったように記憶するのですけれども、どこの辞典を引いてみましても、増税とは国民が負担をする税がふえることを増税というというのですから、自然増であろうと何であろうとふえるものはふえるのであります。しかし、「増税なき財政再建」という言葉を使われるときには、そういう増税とは何ですかと聞きますとそういう言い方をされるのであります。  しかし、先ほど私が申しましたように、国民としては、本当に「増税なき財政再建」というのができるのだろうか、今百五十何兆円という借財を抱え、二〇%余になんなんとする国債費を支払いながら、しかも国民福祉をねらっていく我が国あり方として、これ以上税がふえないでいいものだろうか、だれが考えてもそれは無理ではないかという気持ちが一方にはあるわけであります。したがって、ニュートラル方式というのが何か入り口の甘いささやきではないかということによって起こる疑念、これが私はこの間の問題点の一つのいわば動かざる石といいますか、礎石といいますか、とどめの一つになってきたのじゃないだろうかというような気がするのでありますが、総理はいかがお考えになりますか。
  155. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 野口さんにそう言われてみるとそういうような感じもいたします。  その前に、租税プラス社会保険料等の国民負担率、一体どの程度まで考えられるのかという最初の御質問でございますが、おっしゃるように、大体租税負担が二五%で、社会保険料が約一一%で、三六%ぐらいで、大体アメリカと似た数字です。ところが、イギリスとかフランスとかあるいはスウェーデン以下のスカンジナビア諸国等を見ると五〇%から六〇%ぐらいになっておる。これは主として社会保険、社会保障経費が非常に多い。しかも大体それは税金で取っておる。そういう形をとっておるわけです。  それで、日本のこれからの動向を推察してみますと、やはり長寿社会にどんどんなっていきまして、一、二年前までは六十五歳以上の老人というのは一一%ぐらい、私らもその一一%の中に入ったかな、そうこの間思っておったら、最近になるというともう一二%、一九九〇年代になると一五%ぐらいになる。そこで、老人に対する医療費とか年金とか、そういう金がどんどん要るわけであります。  それで、最近の厚生省のそういう老人等を中心にする医療費がどれぐらい自然にふえていくかという数字を見ますと、毎年厚生省は苦労して、ほうっておいても四千億円はふえていくのですね。そのほかいろいろ合わせると約八千億円、厚生省は毎年毎年そのお金をどうするかというので予算編成のたびごとに四苦八苦して、それでいろいろ健康保険とか年金とかそういう問題で皆さんに御迷惑をおかけした次第なので、いわゆる制度改正、国家負担の減少という形で合理的にやろうということで努力してきました。しかし、これもだんだん限度が参っております。それで毎年毎年、老人の医療費、年金だけでも四千億円ふえる。来年も、その次も、その次もということになりますと、そのお金をどこから調達するかという問題が出てくるわけであります。  そこで、一面には制度改正ということをもう少し刻んでやらなければいかぬのかなという判断もありますし、あるいは一面においてはまだ別の方法を考えるということも考えられる。社会保険料を上げるという問題もありましょうし、いろいろな考えもあり得ます。しかし、大体ヨーロッパの国々において社会福祉制度が発達した国は税金でそれを取っているようですね。ですから、社会党の皆さんの中にも、いわゆる社会福祉税という考えにお立ちになって、基礎年金は自分たちで出してもいいけれども、それをオーバーする部分は社会福祉税という形で取ったらどうか。堀さんなどはそういう御議論をして、我々も傾聴したものであります。そういう御議論も一面にありますが、我々としては、中小企業の関係とかあるいはいろいろ算定基準をどうするかというような問題から見て、まだまだ熟さないところもある。日本の場合には保険という考え方で自助を中心にしてやる方がいいと、税にはなじまない国民性を持っている。この間の税制改革をやっても痛感したところであります。  そういうようないろいろな面からいたしまして、今後のそれはみんなで考うべき課題で、長寿社会を一面においては喜ぶが、それをどう支えていくかという問題については研究すべき課題があると思います。臨調におきまして、その点は随分いろいろ論議されて、そしてどの程度まで国民負担率を上げて我慢してもらえるかという試算をしたことがあります。私は当時行管長官でありましたか、いろいろその試算を聞いておりましたが、結局文章でできたものは、欧米の水準をかなり下回る水準に日本はおさめておこう、そういうことで答申が出てきておる。ではかなり下回るというのは一体幾らくらいのことですかと臨調の皆さんにお聞きしましたら、いや数字は言えませんということです。しかし、いろいろ出た議論を聞いてみると、まあ高くて四五%ぐらい、外国は五〇%から六〇%いっているけれども、まあ日本はせいぜい四五%、四〇%に近いところへできるだけおさめるというのが長期計画、長期目標として一応考えられるのじゃないでしょうか。それは一、二年や二、三年の話じゃないのです。長期目標として長寿社会に対応する一つの心構えとしてそういう議論があったということを聞いております。  しかし、これは非常に大事な問題で、国民負担という問題はいろいろな面に関係してまいりますから、今後じっくり研究をする必要がありますし、今税制に関する協議会が与野党で開かれておるわけでございますから、そういう長期的な日本国民負担構造等につきましては、直間問題も含めまして、与野党でいろいろ御審議願うのが適当ではないか、そのように考えておる次第でございます。
  156. 野口幸一

    ○野口委員 私は、税制改革というものに着手するに当たりまして、今総理も四〇%という一応具体的な数字をお示しになりましたが、この数字の行方は別といたしまして、まず一番合意をしなければならないのは、国民負担率、それから社会保障制度そのものを一体どのような形で今後遂行していくのか、この基本的なところを合意をしておきませんと、あるいはまた国民が納得をしておりませんと、税というものに対する観念というものが大いに変わってくるだろうと思うのであります。そこのところがなくて、今私が申し上げましたことに御答弁がございませんでしたが、このニュートラル方式なるやり方というのは果たしてよいのか悪いのか、もっと大上段から振りかぶった形で、あるいは皆さん方にとっては与党でありますから次の選挙に負けるのじゃないかということでお出しにくいのかもわかりませんけれども、思い切って増税ならば増税という形の中で財政再建はかくあるべきである、しかし、今の段階ではこういう形では取れないのだ、だからまずは内需拡大という形でもって減税をしなければならぬ、これも負担だけれども、あえてやるというならばそれはそれで納得と。しかし、将来はこれは何としてもいただかなくてはならぬことになりそうだ、長寿社会にもなるし、あるいはまた諸般の社会的な傾向から眺めてみてもそういう傾向にあるのではないかという点を示唆なさった上で、そして長短期的な計画を立て、さらにそこに税制改革という問題を持ち込んでいく方法がなかったのか。余りにも短絡的な物の考え方で売上税の導入というものを引き出してこられたのではなかったか。その点について総理は率直に今どのようにお考えでございますか。
  157. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 やはりある程度長期的見通しを持ちまして、そして一面において社会福祉政策を進める。しかし、一面において減税そのほか社会福祉政策に対する恒久財源というものもあてがっておかなければ、それは恒久的な税制にはならない。そういうわけで、片っ方では思い切った減税もやりあるいは社会福祉制度も維持していくが、片っ方においてはそれに見合う、減税に見合う何らかの財政措置も講じておかないと、これは恒久税制とは言えない。一、二年たったらもうお金が足りなくてまた大騒ぎするというのでは財政政策としては立派なものではない、そういう考えを持ちまして、政府税調及び党税調の御意見も承ってこの間の抜本改正考えるものをお出ししたわけでございます。しかし、その点については説明不足でありました。  私は、これは国民の皆さんに十分御議論願い、お聞き願う必要はあるとは思っておりまして、大蔵委員会にともかくのせてもらって、そこで皆さんで大激論をやっていただいて、そして必要な措置を与野党で話し合ってやってもらったらいいのだろう、ともかく大蔵委員会で十分時間をとって御議論願おうというのが腹づもりにあったのですが、大蔵委員会にまで入れてくれなかったわけで、そこで議論ができなかったので、私としては大誤算があったわけであります。まあしかし過去のことを言っても仕方がありませんが、税の問題というものは国民が最大関心を持っている問題ですから、専門家がそろっていらっしゃるこの大蔵委員会においていろいろ御議論をし、じっくりおやりいただくというのが本質的に大事である、私はそのように考えておる次第でございます。  原議長が裁定といいますかあっせん案を出しましたが、あの中には、税制改革は必要である、それから直間の見直しもこれは早急に行うべきであり協議会をつくってやろう、そういうふうに与野党、共産党を除きましてそういう合意ができたわけでございますが、これはやはり与野党ともに心ある者が日本の将来を考えて、そしてそのような合意をつくって共同で勉強していこうということができたので、私は、非常に立派なありがたいやり方である、そう考えておったところでありますが、今後とも、直間見直しも含めてと書いてありますから、恒久的な税制をつくるについてどういうやり方がいいのか、見直しするとすればどうするのか、じゃどういう間の方をとるのか、売上税というものはあれだけ国民が排斥されましたが、果たしてそれでいいのか悪いのか、何か別のいい考え方があるのか、そういう点を自由に御議論願えれば幸いであると思っておるわけです。
  158. 野口幸一

    ○野口委員 ちょっと今、言葉じりをつかまえるわけではありませんが、共産党を除きという話がございましたが、少なくとも一政党をなされております共産党でございます。私はそういう意味では、民主政治というのはたとえ反対党であろうと意見の異なる政党であろうとやはり構成メンバーに入れて、当然税制問題についても考えなくてはならぬだろうと思っておるわけでありますし、ましてや野党というか、そのことにつきましてはやはり考え直さなければならないことだと思っております。  また、最後におっしゃいましたように、この大蔵委員会で議論をしてほしかったというお言葉でございますが、私も、その初めの出だしはともかくといたしまして、やはりこの大蔵委員会で十分な議論をさせてほしかったと思う一人でございます。税制改革協議会というのができましたけれども、私は税制改革協議会も結構であろうかとは存じますけれども、この大蔵委員会において特別委員会なり小委員会なりを駆使しまして、長い年月と専門的な視野から皆さん方の御意見を多く拝聴して、今私が申し上げました国民負担率の問題から始めましたところの大改革あり方について、先輩の皆さん方からも御意見を拝聴し、国民の皆さん方からも公聴会やいろいろな立場で広く御意見を拝聴して、実はこの大蔵委員会において税制改革というものについてやりたいと思っておる者の一人でございます。その意味では私は総理考え方に全く賛成であります。  さて、そうなりました場合に、実はこの大蔵委員会という立場でございますが、実は今から二時間弱の前なんでありますが、大蔵大臣質問をする機会をいただきまして、大蔵大臣の権限の問題から端を発しまして、私はこの大蔵委員会という存在というものについての若干の疑義を申し上げたところであります。と申しますのは、実は予算委員会という委員会がございまして、この予算委員会、すべての問題がそこで討議をされることになっております。予算委員会は、御存じのように予算を伴うものはもうすべてそこでしゃべれるというわけでありまするから、総括委員会的な存在でございます。しかし、そこで仮に歳出の部分についてはお決めになりましても、それに伴うところの歳入源について話をするところは実は大蔵委員会であります。ところが、大蔵委員会はその間開かれておりません。実は予算が決まってから大体大蔵の方へ回ってくる。大体そういう形をとっております。私はこれは異例だと思うのですね。少なくとも歳入委員会というものの中で、次の年度におけるところの歳入財源が幾らあるか、どういうものを認めるか、あるいはどういうものを売却すべきか、いろいろなことについて大蔵大臣の権限において大蔵委員会に諮問をなされ、そこで議論をしたものを実は本来ならば予算に組み込まれていくべきだ。しかし、それは日時的な問題がありますからあらかじめお組みになるということはこれは御随意でありますが、少なくとも審議の過程は実は逆にしてもらわなければならぬ問題ではなかったのか、そういう感じもするわけでございます。  そこで、よその国にも例はないわけではないわけでありますけれども、実は大蔵大臣二名制という話であります。少なくともこの大蔵委員会というものをもっと充実させ、歳入面におけるところの議論を先行させていくという立場に立って、大蔵大臣というものを歳入、歳出大臣と分けるという方法、あるいはまた副大臣という形でもって副大臣がいわゆる予算委員会に出て大蔵大臣大蔵委員会に出るという方法等々、いろいろ考えられますけれども、少なくとも大蔵委員会というものをもっと重視をしていただくという立場に立って申し上げますならばいろいろな方法があろうかと思いますが、総理大臣としてその辺はいかがお考えか、ひとつ御所見を承りたいと思います。
  159. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 委員会審議のやり方はこれは国会のマターで、国会の方でいろいろお決め願えれば政府はそれに従っていく、これが我々の基本的立場でございます。  しかし、おっしゃいますように、アメリカあたりでは歳入委員会というものがかなり権限を持って大きな存在として活躍をしておられます。そういう面から見ますと、大蔵委員会は事実上そういう国の歳入を決める大事な委員会でございますから、少なくとも予算が成立あるいは通過する前に歳入だけをいろいろ議論するという機会は、これは大事ではないかと私は個人的には考えます。法かし、四月一日から予算は執行する、そういうことになっておりますから、政府側としてはそれに間に合わせていただくならば、大蔵委員会あるいは予算委員会でどういうふうに時間を分配なさるか、大臣を配分なさるか、大蔵委員会に全閣僚をくぎづけにして予算委員会と同じように何日間おやりになるか、そういうことは議会でお決めになることで、合理的にお決めいただいたら政府はそれに従ってやる、そういうことであると思っております。
  160. 野口幸一

    ○野口委員 恐らくそういう答えが出てくるのだろうと思ったのですけれども総理としてというよりも、今は行政の長でございますが、個人として、こういう考え方、今私が申し述べたような考え方、例えば大臣二名制というようなとっぴな言い方をいたしましたけれども、これは歳入、歳出に分けてという考え方もございましょうし、あるいは委員会あり方という運管の方法もあるかもしれません。しかし、なべて申しますならば、なぜそんなことを言い出したかといいますると、大蔵委員会というものが、例えば税制問題一つを取り上げてみましても、実は、よそのところでと言っては失礼ではありまするけれども、門外の方々が議論をなさっているのを私どもは聞くだけ、もちろん間接的、直接的に聞かせていただきますけれども、一番大事な大蔵委員会でもって税制問題が議論される前によその機関で、いろいろなところでとやかく言われるということに私は一つの義憤を感じているのであります。  もちろん私も、書記長あるいはまた幹事長というような方々が御議論なさって今回の所得税の額についてもいろいろ政治的な折衝をなさるのは御自由でございますし、またそういうことも必要であろうとは存じますけれども、私どもは少なくともこの大蔵委員会の中にあってそういった問題もひとつ議論させてもらいたいな。ところがそういった問題は、実は数日前というよりもけさになって正式には改正案が出てまいった。そこでけさから与野党間におきまして、与党の提出でございますので与野党間となるわけでありまするが、本当に若干の時間改正案についての議論がされた。こういう経緯を見てみますと、大蔵委員会の存在というものが最近だんだん予算委員会の下請作業をやっているような感じがしてならないのであります。  今総理がおっしゃいましたように、四月一日から予算を執行しなければならない、これは一つ大前提になるわけであります。予算委員会があのような形で開かれまして、その後にまた大蔵委員会が開かれる。大蔵委員会はいつも日切れだ日切れだといってぼんぼんしりをたたかれるのですね、早く上げろと。議論も十分しないうちに、与党の方々はもちろんそれは大事なことであるかもわかりませんけれども、その日程に追われて実は三月三十一日までにということで大蔵委員会運営されているのが現実の姿であります。議論が十分されておりません。したがって、私どもはこういった実態を改正していくということについて本当に謙虚な気持ちで物を申し上げているつもりであります。総理、これからのあるべき大蔵委員会としての、あるいはまたこれから税制改革としての考え方をどのような形で議論をするべきがいいと、個人的にでも結構でございますから、御披瀝をいただけませんか。
  161. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 英国の議会が発祥したのも、税の問題から議会が成立した。事ほどさように税の問題というものは大事な対象であるだろうと思います、税の問題を扱う主管委員会大蔵委員会でございますから、支出もさることながら、収入源の税という問題の比重がもっと大きくなっていいと私もそのように同感でございますが、しかしこれはいずれも院内で議会の皆さんがお決めになることですから、願わくはそういうような改正が、運用の変化が与野党合意のうちにできればいいものではないかな、そういうふうに思う次第でございます。
  162. 野口幸一

    ○野口委員 少し角度を変えて御質問申し上げますが、国民の間に税の負担に対する不公平の問題が非常に大きく取り上げられております。今の国民の不公平、不公正感というのは何を指して言っているのであると総理はお考えですか。
  163. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 一番言われていますのはサラリーマンの源泉所得税あるいは地方税の問題で、いわゆるクロヨンとかトーゴーサンとか俗称されるそういうものは何か火種があるから煙が出てくるので、そういう点に我々としては重大関心を持っておる次第なのでございます。そのほか、最近は、株式とか土地とかそういうものはかなり景気がよくて、そして所得の一番、二番、三番という長者番付なんかを見るとそういう土地というものがかなり出てくる、あるいは法人で法人収益が非常にいいものは金融機関が今度はずっと上に出てくる、そういう面を国民はじっと見ておると思うのです。そういうような点について税が適正に取られているかどうか、あるいはよじれやゆがみがないか、そういうような点について我々としても為政者として適正なことが行われるように努力していかなければいかぬと思っておる次第です。
  164. 野口幸一

    ○野口委員 不公平という問題を取り上げますと、私は二つあると思うのであります。一つ制度的な不公平であり、一つは徴税的な不公平、この二つがあると思います。  制度的な不公平というのはいろいろありますけれども、今日租税特別措置法などのように特別に税を軽減する措置、またいわゆる行政上の特例として税の軽減を図っていく特例を設けるということがたまたまございます。そういったものが積もり積もってゆがみになってきているという部分もございます。  それから今度は執行面におきましては、今総理もおっしゃいましたように、クロヨンとかトーゴーサンと言われるのは一体何から起こっているか。所得の捕捉が不十分だというところにあると私は思うのであります。これも先ほど大蔵大臣との質疑で申し上げたのでありまするけれども、この際思い切って捕捉を正しくというかもっとしっかりとした形でなし遂げていくには一体どうすればいいかといえば、税務職員の増を図っていくべきではないか。行政改革の時代でありまするから、私は簡単に申し上げているのではなくて、今日の実態的な調査活動というものが大体どのくらい行われているのかといいますと、実は法人では年間一〇%弱、個人では四%に満たないという状態だそうであります。したがいまして、国税庁の方に聞きますと、どのくらいを目標としているかというと、大体法人は五年に一回ぐらいは見たい、あるいはまた個人の場合は三年に一回ぐらいは見たい、逆でありましたか、何かそのようにおっしゃっておりました。少なくとも今の実調とはかけ離れた思いでいらっしゃるわけでございます。しかし、今実際はなかなかそう簡単に税務職員がふえるものでもありません。少なくとも三年、五年の経験がなければできない仕事でありますから、これは早急に今一万人ふやしたからといってすぐさま税収にはね返ってくるものではありませんけれども、少なくとも長期的に物を考えますならば、徴税面におけるところのより正確な捕捉というものに対する考え方を改めていただかなくてはならぬだろう。そういう意味で思い切った抜本的な対策を、総理みずからも大蔵省を督励をしてそのあり方について考え直していただかなくてはならぬ時代ではないかと思いますが、いかがお考えでしょうか。
  165. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 大蔵省の国税関係の定員は、私の記憶ではたしか五万人強であって、それほど大きく変化していない。行政管理庁におきましては、しかしできるだけやりくりをいたしまして国税の人間をふやして、年に百人とか百五十人くらいずつ同じ定員内でやりくりしたとか、財務局から持ってくるとか、いろいろそういうことはやってきておるのです。しかし、だんだん詰まってきつつあるだろうと思います。  私があるところで聞いた話では、たしか一人ふやすと五千万くらい税金がふえるんだ、そうすれば人間どんなにふやしたって国は損じないじゃないか、給料ぐらい十分出るじゃないか、こういう話を聞いたこともありますが、しかしそういうことばかりを中心に人間をふやすということもまたどうかと思う。しかし、業務上どうしても必要である、さもなければ公正、公平が確保できない、そういうような場面については行政としても十分考えてあげなければいけない、そういうふうに考えておりまして、国税の皆さんが決められた定員の中で随分一生懸命やってくだすっていることについては私も非常に感謝しておるところでございますが、実際の業務状況等も見まして総務庁の長官の方と定員その他についてはいろいろ御相談願うようにしたらいい、そう考えております。
  166. 野口幸一

    ○野口委員 私も総理とそう変わりはない意見でありまして、何も税金を取るだけに人をふやせと言っているわけではない。ただ不公正、不公平感というものは、例えば今も、これもまたささやきでありまするが、例えば税を逃れたということを節税という言葉をよく使われますが、脱税したという言葉は使いにくいので節税という言葉を使う。節税と脱税とは意味が違うのでありますけれども、しかしそれが混同されているやにも思われる節もないではありません。ところが、実際、事後調査というのは実調というのだそうでありますが、事後調査をしてみますと、残念ながら申告税額と実際調査をした税額との差額が出てまいります。ということは、不当申告であったということがパーセンテージ上出てきているわけでございます。それがどのくらいかというと、これは数字上の問題で多額に上っているわけでありまするが、今現在の実施をされている事後調査だけでもすごい金額になっているわけでありまするから、それを仮に先ほど申し上げたように実調率を倍にして——今の実調する人員を倍にいたしましたところで倍の税収が上がるとは私は申しません。悪いのから順番にやっているそうでありまするから、だんだん数をふやせばその差額というのは小さくなってきますから上がりませんが、少なくとも現在の実調率を倍上げるぐらいのところに目標を置くことによって徴税面におけるところの不公平感というものが国民の中から消えていくのではないだろうか。そういうことをやっているやつはない、悪いことをしているやつはそんなにいないんだ、自分の所得に合わせてちゃんと税が納められているということは確かだという気持ちが、いわゆるトーゴーサン、クロヨンと言われるものにないのだろう。  法人が非常にたくさんあるわけでありますが、赤字法人の場合において、果たしてその法人が本当に赤字なんだろうかという点について実態調査をすると、こういう報告がございます。法人の経営実態が実際に赤字であった、本当に赤字であった。ところが、二つ目には、法人の経営実態は黒字であるが、代表者及び同族関係が過大な役員報酬を取る等の経理によるものがあった。三つ目には不正経理のもの。これはいずれも実調によって出てきたものでありまして、いわゆる赤字法人と言われている税を納めていない法人には、実際を調べてみるとこういう不当なものがあるということが調査によっても出ているわけでございます。  したがって、私の言いたいのは、この際、税の徴税面におけるところの不公平というのは、抜本的な改革を税務当局にお願いして、もう少し実調率の上がるような定数に改正すべきではないか、これを内閣総理大臣としてひとつ御指示いただけないものだろうかということを申し上げたいのであります。
  167. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 毎年国税庁が新聞に発表するのを見ますと、脱税のワーストテンというのが出て、並ぶ顔は大体同じような業種が多いですね。これはどういう原因でそういうふうになるのだろうか、私はよくわかりませんが、国税庁はちゃんと知っているだろうと思うのです。もっと手を入れればもっといろいろなものが出るだろう。そういうこともあり得る。実際、実調をしてみてその脱税率というのを見ると、たしか七、八割は脱税しているという数字でありましたね。ああいうのを国民の皆さんが読んで見ていて、自分の源泉所得がみんな天引きで取られているのを見て、非常に不快感をお持ちになるのではないか。そういう面からしますと、税務執行上の問題で大きな問題がやはりここにあるという気はいたします。それにつきましては、一つは定員の問題とか行政改革の問題もございますから、そういう点については今後の課題としていろいろ研究してもらいたい、総務庁等とも検討してもらいたい、そう思っております。
  168. 野口幸一

    ○野口委員 総理から前向きの答弁をいただきましたが、ひとつ大蔵大臣に重ねてお願いをいたします。  これは金を取るためにという意味じゃなくて、国民の不公平感、不公正感というものを除去するために。今も総理がおっしゃいましたように、毎年ワーストテンで出てくるものというのは大体決まった業種が出てきます。しかし、それはなぜ出てくものだろう。それも実はその実調率は全体の一〇%を超えていないのですね。だから、そういうことを考えますと、これは私たち源泉徴収を取られているサラリーマンの多くの人々は、一体日本はどうなっているのだろうということを考えるわけでありますし、またその点についてもっと積極的な徴税をなぜやらないのだろうかというような気持ちもわいてくるわけでございます。  これも先日申し上げたのでありまするが、私の娘が保育園に行っておる。保育園の保育料というのは、所得税によって算出される地方税によって出てくる金額を基礎といたしまして算出するわけでありますが、なぜか自転車に前と後ろで乗せて送ってこられる奥さんの御家庭の保育料が高くて、外車に乗って子供を後ろに乗せて送ってこられる奥さんの方の保育料が安い。それに対して娘は憤慨をいたしておりましたが、どう説明していいのかは私もわからないという実情もあるようなわけでありまして、これはその捕捉の仕方というものが実はどこかで抜けてきている部分が端的にあらわれる一つの問題だろうと思うのであります。  そういった意味から申しますと、今回、行政改革の面、先ほどからも何遍も申し上げておりまするが、いろいろやりくりなさって大蔵省のいわゆる第一線の税務職員の問題についての定員の配慮というのはなされているとは思いまするけれども、不公平感、不公正感をなくすためにという立場からの抜本的な増員対策をお考えになって、より多くの実調率を上げることによって国民の不公正感をなくしていくという方針をぜひお立ていただきたい。この際、ひとつ御明言をいただきたいと思います。
  169. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに実調の度合いは満足なところまでまいっておりませんで、御指摘のように、もう少し実調をいたしますと現実にそこで逋脱が摘発できるというだけでなく、何年かに一遍実調があるということになりますと、納税者の方がそのことを十分頭に置いて申告をされるということにもなりまして、そういう意味での公平ということ。それから、実調の数がふえますとその業種における利益の標準がどのくらいであるかということも余計わかるようになりまして、そういう意味からも公平、公正に役立つものと思います。  大変に御理解のあるお言葉をいただいておりますが、税務行政の中で合理化をいたしましたり機械化をいたしましたりしてできるだけ能率を上げることに努めることが第一でございます。その上でなお何としても多少の人員の増強が必要であるということでありますと、それはまたそういうことを充実していきますのにもやぶさかではございません。まずよく能率を上げまして、その後に入り用な人員は補充してまいりたいと考えておりをする。
  170. 野口幸一

    ○野口委員 私は決して人をふやすだけが能でないと思いますけれども、現在の段階から申し上げますならば、昭和四十年時代の定員がそのまま横ばいになっている、二十数年間ほとんど増をしていないというのが第一線におけるところの税務職員の実態であります。本当によくやっていると思います。だから、この程度で不公平、不公正という面におけるところの実調が少ないパーセントで終わっているようなこと、たまに実調に来るのが何か交通事故に遭ったようなものだというようなことをうそぶいている業者がいるということを聞きますだけに、こういった面からの御配慮もぜひ必要だと思うのでございます。この点については、総理も前向きの御返事をいただきましたので、所管大臣であります大蔵大臣といたされましても十分な御検討をいただきたいということを重ねて申し上げておきたいと思います。  そこで、納税者カードの問題でございます。総理はこの問題について余り積極的なお返事はいただけませんでした。というのは、プライバシーの問題だとか、余り人の懐の中に手を入れるのはいかがなものか、こういうような御表現でございましたが、今でもそのようなお考えでございましょうか。
  171. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 遺憾ながらそう思っております。
  172. 野口幸一

    ○野口委員 実は私どももプライバシーの侵害になるのではないかという疑いを持っておった一人でございます。ただ、やり方によってはそのことを防止しながら納税者カードというようなものもできるのではないか、こう思っているのであります。  非常にプライバシーのうるさいところのヨーロッパ諸国でこれができ上がっているということ、また、アメリカでは既にこれが、別の制度でありますが、いずれにいたしましても、国民の背番号ではありませんけれども、いわゆる納税者カードにかわるべき、社会保障年金カードだったか何かわかりませんが、ちょっと不明でありまするけれども、とにかくそういうカードがございまして、基礎的にそれを引用して今回の税制改革にもお使いになっておるようでございます。だとするならば、ヨーロッパ諸国でもこの問題については前向きに取り組んで既に実施されている問題であり、しかも、ヨーロッパ諸国はプライバシーの問題についても非常にやかましい国々でありますのにもかかわらずこの問題が成功しておるということにつきましては、一考に値するのではないだろうか。私ども、決してプライバシーを全く侵害しないものであるということについては言い切れませんけれども、少し前向きにこの問題についても検討し、将来この納税者カードの導入によって非行あるいは脱税というものを防止する方法はないものか、もう少し検討する余地はないものかと思うのでありますが、総理、重ねてお尋ねいたしますが、もう少し検討する気持ちはございませんか。
  173. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 やはりグリーンカードというものをやりましてあれだけ大きな反対が生まれた、それでこれがやめになった、そういういきさつを考えてみますと、徴税風土と申しますか納税心理あるいは社会的風土というものはヨーロッパと日本とやや違うところがある。ヨーロッパにおいては納税というのは国民の義務であるとはっきりしておりまして、そして契約社会であり、それから脱法行為というものについては非常に峻厳な取り扱いを受けても当然だ、脱税も大きな脱法であって恥ずかしき行為である、そういうような観念が明確に出てきておるわけです。これは契約社会、法的社会という性格があるわけです。日本の場合はいわゆるコンセンサスソサエティーで合意社会でありまして、ある意味においては談合的な要素もありますし、いい面、悪い面もいろいろあると思うのであります。そういう契約的なあるいは法遵守というような観念がヨーロッパほどそう鋭敏でない社会であります。そういうような面から、今のようなマル優制度等を実行いたしましても、実は高額所得者ほど悪用しているという面が非常に強い。これはもう厳然たる事実だろうと私も思います。  そういうようないろいろな情勢を考えてみて、そしてグリーンカード制というのは論理的にはこれは非常にいいやり方なんです。つまり、いかにもヨーロッパらしいデカルト流のやり方ですね。けれども日本社会において果たしてそれがなじむかという問題は、実際はあれだけの反対が起きてきた。そうすると、風声鶴唳で、これはもう単にグリーンカードのことだけではなくて、それが機縁になってほかの帳簿までのぞかれるぞという恐怖心を呼んで、そういうような面が非常に社会的波紋を大きくする。これは実際は悪いことなんです。けれども、そういう厳然たる事実があることは否定できないので、その社会になじむようなやり方をやるのが政治一つの行き方である、そのようなことを一つ考える。  もう一つは、膨大な金持ちや所得の多い人が不正または不当でやっていると思われるお金が、その場合相当資金逃避が出てきます。それが金に行くのか、外国へ流れるのか、株式に流れるのか、そういう問題も実は当面の問題として考えなければならぬ場面も必ず出てくると思うのです。安穏に現在の貯蓄状態というものをある程度維持しつつ、しかも税金を納めてもらう、そういうやり方は源泉分離で一律に二〇%なら二〇%いただく、ただしそれはもう違法ではありません、そういう形で安心感を与えながら貯蓄率を維持していくというのもこれも一つ政治のやり方で、私はどっちかといえば当面はその方が妥当する、そういうふうに考えておる次第なんです。
  174. 野口幸一

    ○野口委員 その問題はまた後日機会を得てやりたいと思います。  一つだけ総理にお願いがございます。  きのうでしたか、総理、災害に対しての優良消防団を表彰なさいました。実は今、非常勤消防団員でございますが、出動した場合に出動手当というのが出ます。これは法律ではございませんで省令だと思いますが、所得税法二十八条に基づく基本通達に関連するものでございますけれども、その手当に対して税がかかっているわけであります。その許容額が現在五万円になっておりまして、五万円未満は非課税ということでございます。大体九〇%から九五%程度非課税だと言われております。残るところはもうわずかでございますが、この際お願いをしたいのは、その出ている部分というのは一体どういう部分で出てくるのかと申しますと、御案内のように昨年の日航機が墜落いたしました群馬県の御巣鷹山ですかの付近の消防団の皆さん、あるいはまたことしの大島災害におけるところの大島の消防団の皆さんとか、大災害とかいうものに直面をした消防団のところに、非常に多額と言っては悪いですけれども、この限度を超えていく手当が出てくるわけでございます。しかし当然でありまして、寝食を忘れ、家業を捨てて、そして全くおのれを捨てて業務にいそしんでいらっしゃる消防団の出動手当にまで税金をかけるというのはいかがなものか。今九五%まで税金がかからないのなら、この際消防団員の出動手当まで税を取らなくてもいいのではないかという気がするわけであります。あくまでも家業を捨てて自分の本職ではなくて自主的に御参加なさっている消防団員が、夜中にたたき起こされて雨の日も風の日も出ていかれる出動手当に対して税をかけるというそもそもの考え方に対して私はむしろ本当に憤りを感じている一人でございます。消防団員の皆さん方がこのような形で努力なさっている出動手当に対しては、額のいかんにかかわらず、決して災害が多くあることを彼らも願っているわけじゃございませんから、決してそれは多額になっていくわけじゃございません。しかし、たまたまあのような日航機の事件だとか大島のあのような噴火だとかというものが起こるわけでありまして、そのときにおける消防団員の手当が多額であったからといって課税するのはいかがなものか。この際思い切って消防団に対する税を全廃していただきたい。これは総理一つの決断によってお願いできるものと思いますので、あえてお願い申し上げる次第でございます。
  175. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私が聞いたところによりますと、事故が起きたという場合に消防団員が出動する場合の手当は免税になっておる。ただ、定額で五万とか、そういう月々の手当みたいに定額で出しているものは、これは一種の所得みたいな性格を持っているというので税金がかけられる。しかし、御巣鷹山の事件だとかいろいろなそういう事件で出動命令が出て出動したという場合は、実費弁償みたいな性格を持っておってそれは免税になっておる、そういう話を私は聞いておりますが、もしそうであるならば、これは妥当、合理的な話じゃないか。出動が何回も何回もあって、それは四十万なり五十万になるかもしれぬが、回数が多くてもそういう実費弁償的な出動の場合には税は取らぬ方がいいでしょう。しかし、固定的に定額的に出されているというものは、一種の給与に似た性格を持って、実費弁償的な出動手当というものと性格が違う、そういうふうに考えるのですが、もし間違っていたら政府委員から答弁してもらいたいと思います。
  176. 日向隆

    ○日向政府委員 基本的にはただいま総理の御答弁のとおりでございますけれども、私どもが消防団員の出動手当等の状況を見まするに、出動の都度支払われるいわゆる狭い意味での出動手当と出動の有無に関係なく支給される定額報酬及び、ここが問題でございますけれども、その両者が同時に支給される場合とがございます。  そこで、出動手当につきましては、今の総理答弁とダブって恐縮でございますが、それが実費弁償としての性格を持つものであることから非課税として取り扱い、定額報酬については年額五万円を限度として非課税として取り扱っているところであります。また、出動手当と定額報酬とが併給されている場合には、出動手当については非課税、定額報酬については課税として扱っております。  私どもといたしましては、今委員が御指摘になりましたような消防団員の出動手当の実態をよく把握した上で、少額不追求の考え方及び実費弁償の性格を持つものは課税しないという考え方のもとに、ただいま申し上げました課税非課税の取り扱いの全体について御要望の趣旨を踏まえて検討してまいりたい、かように考えております。
  177. 野口幸一

    ○野口委員 終わりますが、実態がまだ少しつかめていないようでございます。今最後のところで言われましたものが残っておるようでございますので、ぜひそういうものがございましたならば非課税措置にしてやっていただきたいということをつけ加えまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  178. 池田行彦

  179. 宮地正介

    宮地委員 最初に、中曽根総理に当面する重要課題について、せっかくの機会でございますので、お伺いしたいと思います。  昨日、総理は、松永駐米大使にお会いいたしまして、九月二十一日にはニューヨークで行われます国連総会で基調演説をされ、その後レーガン大統領との日米首脳会談に臨む、こういう意欲を示されたと伺っておりますが、この点についての御見解をお伺いしたいと思います。
  180. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 この夏以来、米ソ首脳会談が起こり得るのか、あるいは米ソ間のINF交渉がどういう帰趨をたどるのだろうかという点について深甚の注目をして調査もしてきたわけでございます。八月に入りましてから、いろいろな情報等を総合いたしますと、INFはゼロ・ゼロ・オプションで成立する可能性が非常に強い、特にドイツのコール首相がああいう声明を出したのは非常な弾みをつける要素にもなった、あとは詰めの問題で、検証の問題がかなり大きな問題にもなるし、そのほかまだ多少問題はあるでしょうが、条約文をつくっていくというところまで話が進んでいく可能性がかなり強い、そういう情報を私はキャッチしておりまして、そうなるというと日本としても非常に重要な段階になる。一方、国連総会がありまして、レーガン大統領もそこへ出るという話があって、アメリカ筋から、もし私が国連総会に出るならばニューヨークでレーガン大統領も会いたいということで、向こうは会う用意があるというような話が前からちらほらありまして、どういうものかなと思っていましたが、いよいよINF交渉が濃度がだんだん濃くなってまいりましたので、松永大使を呼びまして、きのうアメリカの情勢等をいろいろ聞いたわけです。そのほか、アメリカ議会の模様やいわゆる保護主義法案の帰趨等も詳細によく聞いたわけでございますが、松永大使自体は、状況が許せばできるだけ訪米した方が自分はいいと思います、そういう助言をいたしました。しかし、今我々は議会の中にありまして、重要法案をお願いして精力的に御審議していただいているときでございますから、我々は議会がやはり一番大事であるという考えに立ちまして、また政府・与党とも話し合いをしなければなりませんので、そういうわけで、議会の審議の推移がどういうふうになるかということも注目しながら、松永君の話は話として一応参考にしつつだんだん検討を続けていこうという状態でいるのが正直な話であります。
  181. 宮地正介

    宮地委員 特に最近は日米間で重要な課題が山積してきておるのは事実であろうと思うのです。例えばベネチア・サミットで総理が国際的にお約束して帰ってきた二百億ドルの還流問題、あるいは最近の東芝ココム問題、あるいはFSXの選定問題、これについてもどうも防衛庁長官は日米共同開発の方向で検討しておるやの御発言も出ておるわけでございますし、また、今お話がありましたようなINFのグローバル・ゼロ問題、あるいは米国の包括通商法案の問題。総理は確かに十月三十日で自民党総裁の任期は切れますが、当面こうした日米の重要な課題が山積しておる中でレーガン大統領とのトップ会談は大変意義があるのではないか、国会状況を見ながら今検討を進められておるとおっしゃっておりますけれども、今私が申し上げたような懸案事項について日本の立場をアメリカのトップに積極的に話をして、日本政府としての取り組み、また臨時国会国会における日本の取り組みについて発言することは意義があるのではないかと私は思っておるわけでございます。その点について、総理として、意欲を持っておられるとは思いますが、認識の上においてはどういうふうに考えておられますか。
  182. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ただいまのお言葉は行政府としては非常にありがたいお言葉をいただいたわけでございますが、立法府の方も状況をよく確かめつつ、また御意見もよく承って、重要法案審議ということはやはり一番大事なことであると考えておりますので、そういうことも考えつつ検討を続けたいと思っております。  しかし、おっしゃいますように、INFの問題が濃度が非常に濃くなってまいりまして、日本にとっても重大関心の問題であり、一番近い段階におけるアメリカ側の考えを責任者から直接聞くということは為政者としても非常に大事なことであるし、また、助言を求められれば私自体もいろいろ申し上げたいこともなきにしもあらずであります。その方が、ベネチア・サミット後のいろいろなフォローアップの問題、円ドル関係という問題もありますし、東芝問題はもとよりFSXの問題もありますし、いろいろな問題が日米間にはあるわけで、できるだけ頻度を多くしてアメリカの責任者と日本総理大臣あるいは閣僚が会う、その会う回数が多ければ多いだけコミュニケーションが密になって摩擦を解消する力が出ると私は思うので、その労を惜しまない方がいい、そういう積極政策を私は持っているわけでございます。そういう点から見ますと、今のお話は非常にありがたいお言葉で、感謝をいたす次第でございます。
  183. 宮地正介

    宮地委員 次に、総理は、先日の衆議院内閣委員会におきまして、最近のペルシャ湾の航行問題について、海上自衛隊が舞鶴沖の公海で機雷を除去するが、それをペルシャ湾の公海で行っても法的に違いがあるとは思わない、日本の船舶を守るためであり、武力行使、海外派兵に当たらない、こう答弁されたと伺っておりますが、まず、間違いないのか、この真意はどこにあるのか、お伺いしておきたいと思います。
  184. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 法的解釈は間違っていないと考えております。その答弁は法制局に確かめてやった答弁でありますから、法制局も同じ考えを持っていると思います。  要するに、武力行使ということと障害物除去ということは別なことなので、浮遊物とか妨害物が日本の船舶あるいは日本自体に対して障害を及ぼす場合には、これを除去するということは武力行使には当たらないで障害物除去ということになる、そういう解釈は明確にできると思うのです。それで、舞鶴の沖でそういう妨害物が出てきたという場合に日本のためあるいは日本の船舶のために除去するということと、場所がペルシャ湾にせよ、日本船を守る、障害を除去する、平和な通商上の航海を維持できるようにするということは、これは武力行使ではないわけなのでありまして、法的に同じだと私は思うのであります。それが武力行使にわたるということは、これは別の問題であります。したがって、その辺は強く区別しておかなければならぬと思っております。  しかし、ペルシャ湾の場合は、法的には可能であっても、ああいう国際紛争が今起こりつつあるような状況のもとに日本船あるいは日本の行為について不測のことが起こるということは極力避けた方がいい。これは憲法の精神というものをおもんばかりまして、平和国家あるいは憲法の精神という面をそんたくして、できるだけそういうことはやらぬ、そういうふうに申し上げたところであります。
  185. 宮地正介

    宮地委員 今図らずも総理からお話がありましたように、憲法で海外派兵というのは禁じられているわけでございまして、特に総理は、先日の軽井沢セミナーにおきましても、この点について、「経済と安保の調和」こういうことで、「ペルシャ湾問題では日本は最大の受益国だ。自衛隊の掃海は武力行為ではないが、ペルシャ湾のようなところでは国際紛争に巻き込まれないよう配慮が必要だ。だからペルシャ湾には出しません、と断言している。ただ、財政面での応分の負担はしなければならない。」こうおっしゃったと伺っておりますが、間違いございませんか。
  186. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 財政面の場合は、例えば国連のしかるべき枠組みでそういう機構ができるというような場合には、平和安全航行を確保するという意味においても日本は協力すべきである。日本に入ってくる石油の五五%はペルシャ湾から来ておるので、アメリカがこの間護衛したクウェートの船のうちある船は日本へ来ているわけです。LPGの船は日本に来ているわけです。それをアメリカの船が護衛しておるわけですから、そういう面を見ると、アメリカ人、アメリカの議会やアメリカのタックスペイヤーから見れば、何だ、日本のためにアメリカがそんなお金を出して危険を負担しているのか、日本は何をしているのか、そういう議論は当然起こるのであります。そういう面から見まして、憲法の許す範囲内の協力ということは、我々は受益国として行うことは当然のことで、そういうこともやらなかったらこれはもう非常な利己主義のエコノミックアニマルの典型だという非難が出るでしょう。それは国際国家、国際協調を唱える日本趣旨に反することでございますから、そういう適当な仕組みができれば国会の皆さんの御了承もいただいてしかるべき財政措置にも応ずる、そういう考えを持っておるのであります。
  187. 宮地正介

    宮地委員 しかるべき財政措置は、私は、やはり具体的には経済協力のような平和的な手段といいますか、そういう面で特に南北問題、あるいは特にまだ中近東の諸国におきましてはいろいろ日本の技術協力とかそういうものを望んでいる国も多いわけでございまして、そういう点を指しておっしゃっているのか、その点について御見解を伺っておきたいと思います。
  188. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 それも含まれます。湾岸地帯全体の安定あるいは住民福祉という面も我々は考慮の一端には入っておるわけでありますが、しかしこれは全世界的スケールでやろうとしている問題で、私が財政的措置と言うのは、ペルシャ湾における安全航行の確保、通商上の安全航行の確保、そういうための国際的な例えば国連を中心にする普遍性を持ったやり口とか、そういういろいろなスキームができた場合には、適当であると思うものについてそれに対して財政的負担も我々は考える、そういう意味で申し上げておるのです。
  189. 宮地正介

    宮地委員 次に、税制改革問題を含め中曽根内閣が戦後総決算、こういうことで最後総理の仕事としてこの税制改革問題に今取り組んでおられるわけでございますが、私は最初に、特にその中で、マル優の廃止問題に総理が取り組んできた一つの経過というものを振り返りながら少し議論をしたい、こう思っております。  特に、昨年の四月に、総理の諮問機関でございました前日銀総裁の前川さんを座長といたしましていわゆる前川レポートが提言されました。総理は、昨年提言された直後、アメリカのレーガン大統領のキャンプデービッドに参りまして、世界の国の総理として私もキャンプデービッドに招かれるようになったということで、総理は大変誇りを持って行かれた。そのとき、レーガン大統領と率直に前川レポートの中に書かれておるマル優廃止問題——総理は、日本の国は貯蓄の奨励に補助金を出している、こういうことをよく欧米各国では言う、こういう御発言予算委員会等でも何度かされているのを私も伺いました。昨年のキャンプデービッドにおけるレーガン大統領との会談の中でこのマル優問題はどういうふうに話し合われたのか、その辺のお話をまず伺っておきたいと思います。
  190. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 キャンプデービッドにおいてマル優問題を話したという記憶は今ありません。しかし、ホワイトハウスにおける両方の閣僚協におきまして、私は、前川リポートというリポートが出てきた、政府はこれを点検して、ぜひ閣議で取り上げて、その内容政府・与党で相談した上でこれを実行するようにいたしたい、そういうことを言って、政府・与党で前川リポートを確かめた上で政府として取り上げてから実行する、そういうことを申し上げたんで、前川リポートをそのまますぐ実行するというやり方で言ったんではないのです。政府で検討の上、取り上げてやりたい、そういうことを申し上げたのであります。  それからマル優問題に関しては、ベネチア・サミットでこれは発言をいたしました。これはほかの国のある大蔵大臣が今のマル優問題等についていろいろ言及もしたんです。日本は貯蓄過多の国で、それでまだああいうマル優のような制度をやっているのか、これは国際均衡を害するというような発言がありました。私は、いやそれはもうこの間の議会で提案したところだ、しかし残念ながら税法の改正が挫折したのでまだできないんだ、私はあきらめていない、こういうものはぜひ実現していきたいと思っておる、そういう話をしたのでございます。
  191. 宮地正介

    宮地委員 確かにことしのベネチア・サミットで総理はそうした発言をされた。また、昨年のホワイトハウスでレーガン大統領にこの前川レポートの提言を示しながら具体化の第一歩のお話し合いをされた。総理がこういう一連の国際的なところでマル優の廃止問題についてお話をされた。欧米各国の皆さんはこれを国際公約と受けとめておるのではないか、こう思いますが、総理としてはこの問題についてはそうした国際公約と受けとめられることを承知お話しになったのかどうか、この点はいかがですか。
  192. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 これは外国に約束するという性格のものではないので、我が国我が国独自の考えに基づいてマル優問題の処理をやっておるものですから。しかし、我が国がそういうマル優問題の処理をやるについては、外国の動向というものも頭に置いてそういう処理の方法もつくられているという点も否定はできません。しかし、外国から言われたとか外国との約束だとかそういう性格のものではないので、我々はこういうふうにいたしたい、そういう我が方の主体的念願を表明したそういうふうにお考えいただけば幸いです。
  193. 宮地正介

    宮地委員 主体的念願としても、やはり一国の総理が御発言をすれば、そこに出席した各国の首脳は、日本は努力をし、いずれはこのマル優の廃止をするんだな、こういう理解をとるのは必然だと私は思うのですね。そういうような一つの国際的な首脳会談等の流れの中で、我が国国会においても、このマル優問題というものは、先ほど総理からお話がありましたように、さきの通常国会で売上税関連六法案とともにこれは廃案になったわけであります。廃案になりまして、その後五月十二日に与野党の国対委員長会談が行われまして、次の臨時国会にはマル優廃止は提案をしない、提出をしない、こういう合意がなされておるわけであります。そして、この臨時国会が始まる前の七月二日には、さらにこの五月十二日の与野党国対委員長会談におけるこの合意を尊重すると再確認をされた。そうした国会における最も大事な国会運営の責任者である国対委員長会談でこのマル優廃止の取り扱いについての合意がなされているにもかかわらず、なぜ政府はこの臨時国会マル優原則廃止を盛り込んだ当大蔵委員会審議されておる所得税法等一部改正案所得税減税とセットで出されたのか、政府の最高責任者としてこの点はどういうふうにお考えなのか、御確認をさせていただきたいと思います。
  194. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 前の通常議会のときに、売上税関係六法案は提出しない、そういうふうに申し上げました。その後税制協議会におきまして与野党でいろいろな樽俎折衝もございました。そして、今回は減税法案を提出いたしますが、恒久財源をそれへもって充てなければならぬ、そういう点も話し合いの中にあったわけであります。そういういろいろな経緯を踏まえまして、そして今回提出いたしましたのは、前の法案とは違う法案で、いろいろな内容改革が加えられているわけであります。そういう点において前の法案ではない、新規のものである、そしてそれは減税法案に対応する恒久財源的措置である、こういうふうにお考え願えれば幸いであると思うのであります。
  195. 宮地正介

    宮地委員 今総理は、総理予算委員会で言われた言葉をおかりすれば、いわゆる新型マル優である、もう一つ恒久財源であるからこの国会マル優廃止の法案を提出したのだ。これは国民は納得しないと私は思うのですね。新型マル優とかあるいは手直しをしたマル優だから通常国会マル優とは違うのだ、こういう認識は私は誤りだと思いますね。マル優廃止のさきの通常国会に出たものも、今出ているものも、これは全く同じものだと理解するのが普通の良識ある人の判断であり、また認識だ、私はこう思うのです。  確かに特例事項として六十五歳以上とか身体障害者とか母子家庭を除くという条項が今国会に提出されたマル優の中にはあります。しかし、これは当然といえば当然の問題でありまして、国民認識は、前国会で提出されたマル優と今この国会に提出されているマル優とは全く同じである、こういう認識にあると私は思うのです。また、恒久財源といっても、これは今まで大蔵委員会で再三議論してまいりましたが、今後五年、六年後に約一兆六千億円の平年度ベースの税収が上がってくる、当面このマル優恒久財源の原資になるなんということは考えられないわけです。ましてや、来年の四月一日から施行ということでございますから、あえてこの臨時国会に出さなくたっていい性格のものなんです。だれが見ても常識的には、現在出ているマル優は、総理のおっしゃるようないわゆる新型マル優とか手直しマル優とか、前国会マル優とは違うのだ、これはまさに詭弁ではないか、こう思うのですね。  総理は恐らくこの国会最後になるかと思いますが、その点については改めて、本来ならこのマル優廃止は今回の所得税法一部改正案から削除するのが当然ではないか、こう思いますが、いかがでございましょう。
  196. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 我々から言いますと、マル優廃止じゃなくてマル優是正である。マル優の改組である。確かに改組になっているわけであります。施行期日も変えますし、また野党の皆さんのお考えで財形の方も年金や住宅についてはこれもゼロにする、そういうようないろいろな新しいことも盛り込みまして新型マル優である、そういうふうにお考えいただけばありがたいと思うのであります。
  197. 宮地正介

    宮地委員 これは、明らかに総理が常々自民党の最高幹部等にお話しになっておる、税制改革で道筋を立ててくれ、こういう場でお話しするのは余りあれですが、どうも生臭い、総理の次のことをお考えになった道筋論にむしろ重点が置かれているのじゃないかな、こういう感じがするわけでございますが、総理は、もし今国会でこの税制改革法案が成立すればその使命を達成した、こういうふうにお考えですか。
  198. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 まだまだいろいろな仕事が残っておりまして、しかし、政治においては友情というものはありがたいものであるとしみじみ痛感しております。
  199. 宮地正介

    宮地委員 これ以上余り追及しますと総理のお立場もあるでしょうからこの辺にしておきますが、国民の声はやはり今私が申し上げたような声が大多数ではないか、こう思っておりますので、この点だけは強く主張をしておきたいと思うのであります。  もう一つ大事な問題は、所得税の先行に対するところの減税財源です。総理は、所得税減税先行型でいくのだ、こういうことで昨年の衆参ダブル選挙以来大変に強力にリーダーシップを発揮してまいりました。さて、今、与野党幹事長書記長会談等で六十二年度所得税減税は一兆五千四百億円、こういう形になってきたわけであります。ところが、今大蔵省当局も一番困っている頭の痛い問題はその財源問題であります。  六十二年度財源については、幸いにして、総理にとっては恐らく神風であるのじゃないかと思いますが、六十一年度の決算剰余金が地方交付税や補正予算等に使ってもなお現在一兆三千五百億円程度残っているわけであります。その他、一部今回の税制改正の中からプラスを捻出しながらこの一兆五千四百億の所得税減税財源は大蔵省も何とかひねり出せそうな状況に今あるわけであります。  ところが、六十三年度の恒久財源、これはまさにマル優は微々たるものですからできません。六十三年度になれば住民税減税の五千億がさらに出てくるわけでございますから、二兆円を超える減税財源が必要になるわけであります。  そこで、総理は、昨年の衆参ダブル選挙のときに、そうした減税財源としてはNTTの株の売却益とかあるいは日本航空の株の売却益などを充当して対応したい、検討したい、こういう御発言を私もテレビ等でお伺いしました。しかし、今回のNTTの二法案に見られますように、NTTの売却益は社会資本整備ということに限っていわゆる無利子の融資という新たな手法を用い、政府は今回はいわゆる減税財源の道は閉ざしてしまったわけであります。  まずこの点について、一つは、総理の総選挙におけるときの国民に対する発言、公約というものが生かされていないのではないか。結果的にそれがやはり今後の恒久財源論の中で六十三年度の今申し上げた二兆円程度減税財源に今大蔵省が非常に頭を痛めている。こういう点を見て、総理としてはどういうふうに考えておられるのか、財源の問題について所見があれば総理のお考え伺いたいと思います。
  200. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 これは、十二月に予算編成を行いますときに、歳入歳出全般を見詰めながら、そのときに政府・与党でお決めいただく、恐らく私の後のどなたかがおやりになるんだろう、そう思いまして、私がこれ以上申し上げるのは僣越である、そう思いますが、しかし、こいねがわくは神風がさらに吹き続けることを祈っております。そういう可能性もなくはない。六兆円の緊急財政景気浮揚政策が大分効いてきまして、この分でいくというと、神様にお祈りすれば神風は吹き続いてくれるのじゃないか、そういうふうにも考えておるところでございます。
  201. 宮地正介

    宮地委員 総理も何かおやめになる時期が近づくにつれて神がかり的になってきたような感じを受けますが、やはり現場の大蔵省はそんなところじゃないのですね。そういう神がかり的なことで財政運営していたらたまったものじゃない。大蔵大臣、今の総理発言、どうですか。
  202. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今のは大変大所高所の御発言でありまして、私どもから申しますと、例の税制改革協議会が十二回の会合をお開きになりまして、今一応中断しておりますが、続けてまた御会合であるということを承知をいたしております。それで、七月二十四日でございましたか、座長の御報告の中で、この点については意見の一致を見たという中に、「減税実施に当たっては、恒久財源が確保されることが必要である。」こういうことになっております。ただし、「六十二年度において、減税を先行実施する。」こうでございますから、そうだといたしますと、六十三年度については恒久財源が必要だということを税制改革協議会では事実上合意をしておられるわけでございますので、改革協議会において恐らくその点についての御検討がこれから行われるものであろうと考えておるわけでございます。政府として全く改革協議会にお任せっ切りということを申し上げているのではございませんが、まさにその御検討が行われるやさきでございますから、それに先立ってあれこれ申し上げることもいかがなものであろうか。だんだん年末になりますので心配はいたしておりますものの、まず協議会の御協議を見守りたいと思っておりますので、これは各党におきましてよろしくお願いを申し上げたいと思っているところでございます。
  203. 宮地正介

    宮地委員 総理は神がかり的な、第二の神風が吹けば大変にいいような感じ、また大蔵大臣は現場の方々の意識を大変認識をしながらかたい御答弁をされたわけでございます。やはりこれからの、六十三年度以降の減税財源総理減税先行というその旗のもとに実施した減税財源問題は、非常に今後大事な問題であろうと思います。もちろん行政改革問題もそうでありますが、今申し上げたような総理の自然増収論の問題も新たな問題になってくると思います。  しかし、私はもう一つ総理にお伺いしたいと思うのですが、総理の、中曽根内閣の鈴木政権から受けたときの大きなにしきの御旗は「増税なき財政再建」、そして具体的には昭和六十五年度には赤字公債発行をゼロにする、こういうにしきの御旗があったと思いますが、これについては間違いございませんか。
  204. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 そういうことを申し上げました。そういうことを申し上げました中には、行政改革による成果ということが考えられておりまして、経費の節減のほかに、NTTを民有化してその株式を売るとか、あるいは日本航空を民有化してその株式を売却するとか、あるいは場合によっては国有財産の売却とか、そういうものも実は頭にあったわけです。六十五年までにはNTTを民有化してその株式を活用できればなということで、NTTの民有化という問題は、財政的理由だけではございません、経営の効率化とかサービスを向上させるとか、そういう問題でやったわけでございますが、一面においてそういう面も念頭になくはなかった。しかし、幸いに皆さんの御協力によりましてNTTも民有化され、株式も順調にこれが売却され、仮に二百五十万円で売却されれば、昭和六十五年まで毎年約四兆七千億円ぐらいのお金が使える。六十五年までそれだけ使えるということになれば、これは使いようによっては赤字公債依存体質から脱却できるな、そういう感じもしておったわけですよ。しかし、それは国債償還に使う、そういう方針を決めまして、やはり国民の大事な財産だからこれは国民の共通している借金返しに使おう、そういう方針を決めまして、そしてそちらの方を主にしてやる、ただし公共事業、社会資本の充実には無利子の金でそれを活用するという方策もつくった。そういうお金でやれば、一般会計から公共事業費に現金が行くのをある程度セーブできます。そういうようなところから、赤字公債あるいは建設公債を、公債依存率を減らすということも、考え方によっては難しいことではあるけれどもできないことではない、そういうような頭も多少はあったわけであります。  しかし、赤字公債と建設公債は、公債といっても性格がやはり違いますから、そういう点ではまだ非常に厳しい現実が続いておると思うのです。全体の数量的計算は実際は合ってきてはおった。しかし、これから自然増収がどういうふうに出るか、これも神様にお願いしなければならぬところでありますが、今の税収の状況を見ると、かなり好調のようであります。そういうような情勢全般を見まして、やはり努力はしていけば望みなきにあらずなんだ、私は今でもそう思っております。
  205. 宮地正介

    宮地委員 大蔵省の国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算、ケースAで、いわゆるNTTの株式の売却収入、これは六十二年度から六十五年度までは毎年一兆八千三百億、これをまず国債整理基金特別会計に繰り入れる。最後の六十六年度は六千百億。今総理が図らずもおっしゃいましたように、恐らくこの秋のNTT売却益、現在の実勢価格が一株約二百五十万ぐらいといたしますと、大体四兆八千億円ぐらい売却収入が入ってくるわけであります。そこから一体一兆八千億毎年国債整理基金特別会計に戻しますと約三兆円、今回、六十三年度の概算要求ではどうもNTT二法案に伴う社会資本整備費には一兆三千億円これを活用するようでございますが、それをしたにしても約一兆七千億円まだ残る勘定になるわけです。ですから、こういうような財源というものを今後の税制改革の議論で、これが例えば大蔵大臣の言うように来年度の税制改革で二兆円に上るような財源のできるような恒久財源の新しい税制というものはまず不可能だろう。国民の合意を得るには物理的にも期間が非常にない。また売上税と同じような結果になるのじゃないか。やはり総理が前々からおっしゃっているように、本当に国民の合意を得ながら税制改革の議論というものをしていくには、二年なり三年というのはどうしても時間的、物理的に必要ではないか。そこに拙速に恒久財源で二兆円以上となれば、これはまた大型間接税的なもの、EC型付加価値税的なものあるいはそれに類したものにのめり込まざるを得ない。そうすると、それを議論するのに物理的に必要な二年も三年もの時間というものを考えたときに、暫定的に一つ財源措置というものを考える一番いいのは、大臣、NTTの株式の売却益を暫定的減税財源としてちょうど六十六年まで、六十五年までは今申し上げたように大体四兆八千億ベースで売却益が出てくるわけでございますから、そうした財源というものをしっかりと見据えた上で税制改革論議というものをがっちり国民の合意を得るように努力すべきではないか、この点が一つ。  もしこれがどうしても減税財源として窓を切り開かない、社会資本整備、最終的には国債整理基金特別会計に戻すのだから原理原則は残しているんだと大蔵省のおっしゃるようなそういう方式でいくとするなら、先ほどいみじくも総理のおっしゃったように、全面的に国債整理基金特別会計にぶち込んで、言うなれば国債償還に充てて国債残高を減らす。あるいは、六十五年度発行ゼロまでには、これは大蔵省がつくった仮定計算例の中でも、特例公債が六十一年度は五兆二千四百六十億、六十二年度が四兆九千八百十億、六十三年度が三兆三千二百億、六十四年度が一兆六千六百億、そして六十五年度がゼロです。トータルしても十五兆二千億。ところが、NTTの売却収入の活用をすれば、国債整理基金特会に一兆八千三百億ずつ四回入れて、最後に六千百億入れて、なおこれをトータルしても七兆九千億です。それを入れてもなお大体三兆近いのが三回、約九兆円の金が残るわけですから、これは国債償還に充てれば中曽根総理の掲げた昭和六十五年度特例公債発行ゼロに大変近づく。私は、総理財政運営最後でしでかしたな、こう言われると思うのですが、この二点について総理の御見解を伺っておきたいと思います。
  206. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 来年のことは次の新しい人がおやりになるので、十二月の予算編成のときに出入りを全部調べて総合的な判断からお決めいただく、そういうことであると思います。  それから、第二に、やはり減税財源というものは恒久財源をもって充てるべきである。与野党の合意はやはり尊重さるべきでありまして、どうしても恒久財源というものをお互いに探し出す努力をする必要があると思うのです。しかし、初年度あるいは二年度から全面的に帳じりが合うということを強行するということは、これはそのときの政治情勢を見て考えてもいい余地はあると思うのです。だから、ごく短期間に総体的に出と入りが合う、恒久財源をもって充てる保証が法的にも確立される、そういうことであるならば、私は恒久財源をもって充てたとこれは子孫に対して言えるだろうと思う。過渡期的に若干出入りはあり得る。ことしなんかもそういうことであります。そういう余裕は政治のことでありますからあっていいと私は思いますが、しかし、それも次の新しい人がどういうふうにお考えになるか、お考えを決めていただく。しかし、与野党で決めた恒久財源をもって充てるということはやはり守るべきである、そう思っております。  それから、NTTの株式というものは、もう法律で議会でも決めておりまして、国債償還に使うという形になっておる。これは、税理論から申しますと、減税に充てるものは自然増収のお金を充てるというのが筋だろう。つまり、景気その他の事由で余計税金が入ってきたのだから、その分は国民にお返しする。予算のことですから、ほかにも使いますよ。しかし、筋からいえば、減税財源というものは自然増収が適当であって、こういう臨時的に三年とか五年入ってくるようなお金をずっとやらなければならぬ減税財源に充てるということは、お金がなくなったときにまた大騒ぎしなければならぬ、そういう不安定な税制を抱えていくということ自体は必ずしも適当でない、私はそう思うのでございます。そういうような考えに立って、私たちは筋を通していくべきではないかと思っております。
  207. 宮地正介

    宮地委員 総理との国会における質疑は恐らくこれが最後になるのではないか。総理も「暮れてなお命の限り蝉しぐれ」と名文句をお吐きになり、私も歴代の総理大臣をいろいろ承知しておりますが、この四年九カ月、総理ほど中曽根語録をたくさんお残しになった総理もなかったと思います。大変に御苦労さまと申し上げますとともに、これから大事なのはやはり総理の後継者の問題だと思います。そのときの総理大臣が偉大であったかどうかは、その後に続く総理大臣がどういう総理になられるか、これは大変大事なリーダーとしての資格、総理のよく言われる今後の歴史が判断する大変重要な材料ではないか。この後継者の問題について、総理は大変生臭い話でしづらいとは思いますが、国会の場において最後の御質問でございますから、後継者選びについての現段階における率直な御感想をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  208. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今、国会中で、重要法案を通すために我が党は全力を挙げてやっておる最中でありますから、そういう問題は私は家内にすら話したことがない。いわんや国会野党の皆さんに話すなんということは考えられないことでありまして、やはり時期が来るまでは我慢してほしいとお願い申し上げる次第であります。
  209. 宮地正介

    宮地委員 では、時間が参りましたので終わります。
  210. 池田行彦

    池田委員長 玉置一弥君。
  211. 玉置一弥

    ○玉置委員 総理には、大変お忙しいところありがとうございます。  先ほども話が出ておりましたけれども、四年九カ月の大変長い間総理として日本の国を運営されてまいりました。我々当初いろいろな評判を聞いておりまして、そのとき感じましたのは、一つは外国へ行って背が高いとやはりいいなということがありました。これは、後になられる方はわかりませんが、我々マスコミ等のいろいろな評判も聞いておりますけれども、対等に物が言える条件、私も余り高くないですけれども、そういう面から見ると、ほぼ目の位置が同じところにあるという面で大変見た目に対等になったなという感じがしたわけでございます。同時に、経済大国と言われておりまして、それがいつの間にか世界のいろいろな国々から貿易に関して攻撃を受けるというふうな時代になってまいりました。私たちの国がいかに所得が伸びてきたか、こういうところを十分つぶさに感じ取っているわけでございます。  しかし、例年のごとく減税問題が盛り上がってまいりまして、私も大蔵委員として何回となく減税にタッチさせていただきました。しかし、昨年の税調から始まりました論議、さらには政府案として売上税が出てくると同時に所得税改正が出てまいりまして、ともに一つの時期が来たなという感じを受けました。中曽根総理ではございませんが、シャウプ税制以来の大改革はむしろ我々がやってほしいという希望がありました。そういう中でやってきたわけでございますが、しかしいずれにしても、特に課税の不公平あるいは把握の不公平という問題がまだまだたくさん山積し、残されております。そういう中で税制改正の一部の部分だけが進んでいく、こういう問題についてまさにどうかなという気持ちを持っているわけでございます。  先ほどからいろいろな方々の質問をお聞きいたしておりますと、いずれにしても、売上税を政府として提案されまして、結果として廃案という事態になりました、これについてどう思うか、こういう意見がありました。私も、やはり売上税廃案というものは、一つには国民税制改革の意識づけをしたという点では評価できると思いますけれども、しかし税制改革のやり方あるいは税そのものの論議という面から見ると、大変な失敗であったというふうに思うわけでございます。  そこで、再度お尋ねをいたしますが、売上税が廃案になりました背景にはいろいろなものがあったと思いますが、これを政府としてどういうふうに受けとめられまして、また今後の税制改革にどういう点で生かしていかれるか、その辺についてお答えをいただきたいと思います。
  212. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 一言で申し上げますと過早に急ぎ過ぎた、そういうことで国民の皆さんに十分説明する時間がなかったという点を反省いたしております。しかし、私も、さっき申し上げましたように、実は大蔵委員会に入れていただいてそこでじっくりやっていただこう、そして与野党で話をして、必要な修正、そのほか十分時間をとっておやりいただけたら国民の皆さんにその間にはだんだんわかっていただけるだろう、そう思っておったのですが、大蔵委員会に入ることができなかったということでそごを来したというのが率直な私の考え方であります。  しかし、この教訓を生かしまして、今後税の問題等については慎重に、周到にやっていきたいと思いますが、幸いに議長さんのあっせんがありまして、抜本改革は必要である、あるいは直間の見直しも早急に行うべきであるという点について合意ができましたから、できるだけ速やかに税制協議会を活用させていただいて、国民が納得する長期的な安定した体系をできるだけ早くつくらせていただければありがたい、そう考えておるところでございます。
  213. 玉置一弥

    ○玉置委員 今お答えの中に早急に急ぎ過ぎたというお話がございました。そこで、例えばアメリカあるいはイギリス、こういう国々の税制改革がどの程度かかってやってきたかということは、もう既に御存じだと思いますけれども、一応申し上げますと、アメリカについてはちょうど九二年かかって税制改革をやり遂げたということでございますし、イギリスでは二万三千回の講習会を開き三年がかりでやってきた、こういうことでございます。そういう面からいきますと、特に中曽根内閣になってからの税制改革はかなり急ぎ過ぎの感があったのではないかというふうにも思うわけでございます。  売上税は、一つは確かに急ぎ過ぎというのがございましたけれども、もう一つは、選挙前には大型間接税をやらないというお話をされて、選挙が終わってから自民党が圧倒的な多数を確保されて出てきたところに問題があった、こういうふうにも思います。また、今回の所得税改正につきましても、さきの国会の五月十二日あるいは七月二日、この与野党国対委員長会談等におきまして、売上税関連の法案は出さない、こういうふうに約束をされたわけでございますが、それにもかかわらず出てきたということでございまして、若干手直しはされておりますけれども、そのとき一応対象になった政府原案というものに近い形でございまして、特にその場さえ過ぎてしまえばいい、そして次のチャンスをねらって、こういう姿勢では、税制改革そのものがなかなかうまくいかないのではないかという気持ちがするわけでございます。そういう意味におきまして、まだ売上税の失敗、これはいいにしろ悪いにしろ、大変な反省を呼び起こす材料になると思うわけでございまして、この売上税の教訓がなかなか生かされていない、これは私だけではないと思います、そういうふうに感じているわけでございまして、その面での意識改革というものをぜひお願い申し上げたいと思います。  また、先ほどの話の続きもありますけれども、自民税調あるいは政府税調の中で長く論議をしてきたとさきの委員の御答弁の中でございました。本会議の中でも、政府税調なり自民税調の中で時間をかけて論議をしてきた、こういう答弁をなさっておられるのを私聞いたことがあるわけでございますが、逆に言えば、今のお話の中にありました税制協議会、これと同じく一つの隠れみのとして使われるのではないかという心配がございます。  もう一つは、税調の場合にはかなりの権限を持って政府に対して答申するということでございますが、税制協議会におきましてはまさに議長あっせんという、あっせんでもないのですが、調停の結果生み出されてきた機関ということでございまして、先ほどの話にもありましたように、各政党全部が入っているわけではない、こういうところにも若干の疑問があるわけでございまして、むしろ私たちとしては、税制協議会の中で一つのビジョンをつくって、より具体的な問題を政府なりあるいは大蔵委員会がその中身について論議をしていかなければいけないと思うわけでございます。  そういう意味で、一部に政府税調の軽視という問題がここ二、三年出ておりまして、どうも中曽根さんになってから政府税調は党税調よりも地位が下がってきた、こういうお話も聞きますけれども、その辺も含めて、いわゆる諮問機関あるいは協議機関というものをどう扱っていかれるのか、この辺の問題点をひとつ御回答いただきたい。  それからもう一つは、政府税調の場合は人数がある程度限定されているということがございます。私たちかふだん日常接する皆さん方というのはいろいろな分野の方々がおられまして、そういう方々とともに意見を交わしていくということが大変重要でございますし、我々議員もそれぞれの分野での代表にもなっている部分もございますから、そういう面ではいろいろなメンバーをもっとたくさん入れたいわゆる国民税調というようなもの、より多くの分野から人を集めて論議ができる国民税調のようなものができないか、こういう話でございますが、これについてお答えをいただきたいと思います。
  214. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 別に政府税調を軽視しておるわけでもございません。政府税調の方は大体の基本的な型を示して、それを党税調は受けて、それを点検して、そして政策的見地から我が党の独自の見解をまとめてきた、そういうことなのでありまして、決して政府税調を軽視するとかなんとかという気持ちはないし、大いに努力していただいたことに感謝しておる次第なのでございます。  それから、税の問題は、先ほど野口さんの御質問にもありましたけれども、やはり国の歳入の大問題なのでありまして、大蔵委員会においてこれが専門家によって慎重審議され、あるいは地方公聴会とか字識者の意見を聞くとか、そういう十分な手続がとられることが望ましいと思います。従来ややもすると大蔵委員会審議時間が少なくてお昼休みや夜中まで御審議を煩わしまして、大変恐縮に存じ、政府としても感謝申し上げているところでございますが、アメリカのヘンノェンさんが委員長をやっている歳入委員会、ヘンノェンさんなんかの発言力というのは非常に強いですね。そういう点を考えてみますと、やはり歳入委員会をつかさどっておる大蔵委員会というものでこういう問題はこなしていただけるのが、国民に対していろいろ知らせていただくよすがの面からも私はいいのではないか、そういうふうに感じておりますが、これはいずれも国会の問題でございますから、与野党でいろいろお話し合いをしていただき、政府はそれに従ってまいりたいと考えておる次第でございます。皆さん方の方でそういうお考えをお出しいただけは、自由民主党としては十分受けて立つ考えております。
  215. 玉置一弥

    ○玉置委員 今のお話でございますと、議会の委員会の例えば公聴会みたいな形での提案、こういう形であれば受けて立つ、そんな感じで受けとめました。ただ、私たちが考えておりますのは、議会というよりもやはり常設のといいますか、そのときどきに応じて必ず開催されるようなそういう機関をセットしたい、こういうことでございますので、ぜひお考えをいただきたい、こういうふうに思います。  それから、今回の所得税改正でございますが、今回の所得税改正、これは大蔵大臣にもお聞きしたのでございますが、例えば六十一年の十二月にはいわゆる売上税を含めた形での直接税、間接税ともにある程度のビジョンというものがつくられておりました。増減税ニュートラルという形でございましたけれども、いずれにしても直間比率の見直しの形といいますか方向性か打ち出されてきたということで、所得税につきましても六段階、七段階というような形のところまで掘り下げて見直していこう、こういう動きかあったわけでございますが、今回は十二段階ですか、まず一部手直し程度のいわゆる減税分を稼ぎ出すための税制改正、こういう感じかするわけでございますし、逆にマル優制度、少額貯蓄非課税制度につきましては、我々は一部資産課税とともに論議をしていこう、こういう気持ちがあったわけでございますか、所得税、いわゆる直接税の分野課税をする、あるいはいわゆる所得としての見方の中での処理ということになってまいりまして、どうも最終的にこのままいきますと資産課税そのものが置き去りにされてしまうんではないか、こういう心配もしているわけてございます。そういう意味から見て、今回所得税減税で我々がやはり六十二年度幾らにしてほしいといういろんな話を申し上げてまいりましたけれども一つには最終ビジョンか目に見えてない、こういうところに対する不安。ですから、もし場合によってはこのままいってしまうんではないか、こういう不安があったからでございまして、そういう意味で、最終的な形、特に今回の所得税分野あるいは法人税等ございますけれども、どうなっていくのか、これについてお尋ねをいたしたいと思います。
  216. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 やはり恒久的税制というものは、恒久的な財源というものを伴ったものが初めて恒久的税制と言えるのでありまして、過渡期的に一時期いろいろな便法を講ずることはあり得ても、終局的にはある最小限の段階において全部が恒久的な財源をもって充てられる、そういうふうにすることが財政当局や政治家の責任である、そのように考えて、そういう方向でこの問題を始末したいと思います。  そういうところから、与野党協議及び議長のあっせんの中に、やはり恒久的財源をもって充てるという言葉もありますし、また直間比率の見直しも重大なことである、速急にこれは検討してやるという趣旨のことが書いてありますのもやはり恒久財源という意味からのあれであり、特にその背景には、長寿社会がもう目前のところに来ておりまして、そういう将来的設計というものを考えた場合に、今世紀における我々が子孫に対して十分の備えをしておくというそういう責任感からああいう文章も出てきたんだろうと思います。そういう点については与野党税制協議会等を通じまして合意をつくり、ある一定の期間後には安定した税体系が日本に確立されていくということができることが望ましいと考えておる次第でございます。
  217. 玉置一弥

    ○玉置委員 いつもの感じで大体お聞きしたのですが、どうも言葉だけで、具体的な目に浮かぶ形が感じられないような気がするんです。おっしゃることはわかるんですね。長寿社会に対応できるそういう税制を生み出していかなければいけないし、いろんな負担の問題等考えてやっていかなければいかぬというのはわかるのですが、例えば六十二年の当初に出されました所得税はこうなりますというような形ですね。あるいはそのときありましたのは、法人税も上乗せ分とってさらに基準の税率を引き下げます、こういうのが全部入っていました。所得も、例えばイギリス型とかアメリカ型とか、所得税段階の刻み、こういうものもございますし、課税最低限の話もありますし、こういうようなものが果たしてどういう方向に行くのかというのがわからない。ですから、我々にとってみたら、今回の所得税改正というのは例年やっているいわゆる減税のための所得税改正、これと何ら変わらないような気がするわけでございます。聞くところによると、政府としてはかなり大幅な所得税見直しをやっていこうという方針であるように聞いておりますけれども、この提案の仕方なりあるいは今までの説明の仕方、こういうものを見ておりますと、どうもその先のビジョンが感じられない、こういうことでございまして、今回のビジョンがわからないこと自体が大変税制改正の中での野党の協力も得られなかったということではないか、こういうふうに思うわけでございます。時間がありませんので余り深く突っ込んでできませんけれども、そういうことでございます。  それから、先ほどのほかの委員の方の質問の中にいわゆる租税負担の話がございました。中曽根総理は、四〇にできるだけ近づけた範囲内で、こういうお話をされておりました。六十二年の見込みでございますが、租税負担並びに社会保障負担、これの率は、租税負担が二四・四%、社会保障負担が一一・〇%、合計をいたしますと三五・四%となっております。ただ、アメリカ、西ドイツ等と比較をいたしますと、かなり物価間に開きがございまして、いわゆる同じような生活をしているという前提のもとに同じ物を同じ値段で買ったならばということで仮定をいたしましたところ、実に我が国の家計指数を一〇〇といたしますと米国では七二という数字になります。また西ドイツでは八一という数字になります。これは特に土地、住宅の購入にかかる費用あるいは食料にかかる費用食べ物も日本は高いんですね、こういうようなものがかなり差ができている、こういうことになるようでございますし、また教育費等につきましても、表の教育費、いわゆる公的負担なりあるいはいわゆる授業料程度で済んでいる部分、あるいは日本の場合にはそれ以外に塾通いというのがございまして、これを入れるともっと差がついてくるのではないか、こういうふうに思います。これで換算をいたしますと、例えば西ドイツ対比で計算をいたしますと、日本の租税、社会保障負担は四三・七%になります。また、米国の物価等で比較をいたしますと四九・一%ということでほぼ五〇%近くになる、こういうことでございます。  そういう面から考えていきますと、数字上あらわれている日本のいわゆる国民負担といいますか、こういうようなものは、確かに数字上はアメリカに近い三五前後という数字になっておりますが、実質的には、物価あるいは住宅というもので比較をいたしますと、さらに一歩進んでヨーロッパあるいは北欧に近い線になってきている、こういうような感じがするわけでございますが、どのように受けとめられておりますか、また、どの程度が適正と思われるか、それについてお答えいただきたいと思います。
  218. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま御提示になられました計算を詳細に拝見いたしませんのでちょっと申し上げられませんけれども我が国の場合、家賃あるいは住宅、それから生計費等々が比較的割高であると言われますことはそのとおりであろうと思います。しかし、そのことと公的負担との関連ということになりますと、むしろそれでしたら所得水準をそこで比べませんといけないわけになりますので、そのことと面接に公的負担との関連は見出しがたいのではないかというふうに思います。  それから、公的負担がどのぐらいであればよろしいかということは、かつて政府は公の機会に申したことはございません。臨調のときに、ヨーロッパ並みということは五〇を考えておられたようですが、それよりはかなり低いところでなければということを述べられたところが一節ございますが、これも余り断定的な意見にはなっておりません。ただいまが三六でございますから、まず四〇を超えていくということは恐らく避けられないとは思いますけれども、確かに五〇というところまではいきたくないというのがこれは私の感じでございますが、政府としてはそういうことを公式に申したことはございません。なるべく五〇というようなことにはしたくないという臨調の御指摘は、私はしかるべき御指摘ではないかと思っています。
  219. 玉置一弥

    ○玉置委員 さっき申し上げました数字は経済企画庁の出しております資料に書いてあるわけでございまして、またぜひお読みをいただきたいと思います。  それで、やはり負担の話でございますが、今まで見ておりますと、租税負担あるいは片方では社会保障負担、これは料率等ございますけれども、先ほどの話では、ヨーロッパの方はむしろ税金である程度料率を見ている、こういうお話でございますが、日本の場合には大蔵省と厚生省あるいは労働省、そういうようなところが別々にその分野を担当しているということでございまして、租税負担並びに社会保障負担合計がもちろん国民の負担でございますから、国民負担として調整する機能を行政機関の中に持たせるべきではないか、こういうふうに思うわけでございます。現在はどこかが先頭になって調整されていると思いますけれども分野争いがございましてなかなか公式に話がつかないということもあるようでございますから、ぜひその辺でいわゆる統一的にこの社会保障負担、税負担を見られるような機関をセットできないか、それについてお考えをお聞きしたいと思います。
  220. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実際問題としては、すべてが法律事項でございますから最終的には閣議の決定になりますが、その前には次官会議あるいは各省等との協議がございますので、現実問題といたしましては片っ方が独走をするというようなことはないように行政が動いておると存じます。
  221. 玉置一弥

    ○玉置委員 例えば健保法の改正だとかいろいろな特に税金以外の部分、そういうような部分になりますと、どうも削られてきているという意識が非常に強いわけですね。その辺が非常に問題だというふうに思うわけでございます。どちらかというと、税の方が押していて料率がやや縮小ぎみ、だからそれを逆に見れば、今までの国庫負担なりでやってきた部分、この部分が料率に置きかわってしまっている、だから料率の方に押されてしまっている、こういうことになると思うので、その辺がより適正な配分になるように調整機能を十分発揮をしていただきたいと思います。  時間がございませんので、多分最後になると思いますけれども、固定相場制のお話を若干申し上げたいと思います。  プラザ合意以降かなり為替変動がございまして、一説によりますと四〇%ぐらいの変化のために大変輸出産業が打撃を受けている、こういうことでございます。今百四十二円ぐらいで若干うろうろしておりますけれども、変動相場制そのものが本当に今の実情に合っているか、こういう問題点があります。例えばアメリカのドルのレート、これが我々はここまで特に円が上がるとも思わなかったし、あるいはドルがこれだけ落ちるというような感じを持ってなかったわけでございますが、実質的にドルが大変安くなってきている。このままでは本当にどうなっていくのかという心配もあるわけです。このままでいきますと、アメリカの財政赤字というのは当分おさまらないだろうし、それを救うにはむしろ固定相場制というものが必要ではないか、こういうふうに思うわけでございますが、その固定相場制というのは一挙にいくかどうかというのがありまして、その前にはいわゆる目標相場圏といいますか、プラス・マイナスのある範囲、例えば宮澤大蔵大臣が向こうへ行って合意をされてまいりました百五十円から百六十円の間、こういうものが必要になってくる。その部分で共同介入しながら各国が相場の安定に努める、続いて固定相場制への移行というものがより的確な動きではないか、こういうふうに思うわけでございますが、この辺についてのお考えあるいは見通しというものをお聞きをしたいと思います。
  222. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 プラザ合意が一昨年の九月二十十二日でございましたから間もなく二年になるわけでございますが、確かに思わない大きな通貨間の変化がございました。昨年からことしにかけましての動きは、御承知のようにプラザ合意以来のドルの下落、ドルが人為的に高過ぎたことを是正するそういう努力はもう完了した、これ以上大きく為替が変動することはだれのためにもならないという合意ができまして、そして投機的なあるいは相場の撹乱要素的な動きに対しては各国協調してこれに当たろう、協調介入、共同介入ということでございますが、そういう合意が先進国間に全部できてそれが現実に動きつつあるということはやはり大きな成果であったと思いますし、また各国の首脳がそれをベニスにおいて確認されましたことによってこれは各国間の最高の合意になったわけでございます。  そういう経緯でございますが、基軸通貨国であるアメリカの財政赤字、貿易収支の改善に期待をしてまいらなければならない、アメリカ自身も非常な努力をしておるわけでございますが、それと同時に、各国は政策協調というものをやっていくということも合意をされておりまして、そういう意味でみんなでドルを支えていこうと申しますか、守って、政策並びに市場で協調していこう、こういうことで現在の為替相場、為替のシステムができておる。これは考えようによりましては、各国がただほっておけばいいということではなくて一つの合意である安定を求めている努力と申し上げることができると思いますが、今の現状から申しますと、それはそういう協調と努力の中で一つのある範囲での落ちつきを示しておるのでして、固定的にこれを考えることができるかといいますと、ただいまのような状況ではちょっとそれはなかなか考えにくいのではないか。あるいはアメリカの財政赤字あるいは貿易赤字等がかなり改善をしてまいりまして、その段階でもう少しコンパクトな協力関係ということがあるいは考えられるかもしれませんが、その場合でもやはりなかなか固定というようなことにはまいらない。そこはちょっと考えますとできそうな、またそういう説をなされる方もありますけれども、現実にはやはりしょっちゅうお互いがこうやって連絡をし、協力をしていく中で安定を求めていくということが現在行い得る最善ではないかというふうに私は考えております。
  223. 玉置一弥

    ○玉置委員 終わります。
  224. 池田行彦

  225. 矢島恒夫

    矢島委員 総理、昨年の同時選挙のさなかですけれども、六月二十八日だと思いますが、あなたは大阪での演説の中でこういうことを言っていらっしゃる。  よくいう大型間接税とか、マル優の廃止とか、そういうようなことを私がやるもんですか。それはもう以前から言っているとおりなんであります。野党のみなさんは、これは六月になると四谷怪談の時期だからお化けをうんともってくる。お化けにだまされないようにしてくださいよ。 こういう演説があるわけです。総理、これは立派な国民に対する公約だと思いますし、同時に、この時期全国各地でいろいろと公約された。にもかかわらず、前国会に売上税それからマル優廃止の法案を提出してきました。そこで国民は公約違反だと怒ってあの一斉地方選挙でノーというきっぱりとした審判を下した。その結果前国会におきましてはこれらの法案が廃案になった。私はこのように考えているわけですけれども総理考えはこれと違いますか。
  226. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 共産党の方は同じ質問をを何回もされるので同じ答弁をいたしますが、これは六月十一日に札幌のパークホテルでやった演説、それを見ますと、  それから、いわゆるマル優制度の問題、これもいろいろ検討の対象には税制調査会でなっておりますけれども、しかし、やはり御老人とかあるいは子供さん持ちの主婦の皆さんとか母子家庭、こういうような老人や母子家庭のような弱い人についてはやはりこれは大事な制度ではないかと私は思っておるんです。一部不正利用している人たちがあると聞いております。それを直すために今努力しているわけですが、こういうものについては厳しい批判もあって、不公平税制という面から直すべきであるという議論もあります。こういうような点もいろいろ、今後こういう点に限って勉強していくだろう、そう思います。 こう言っておるので、今法案で出しておりますように、やはり老人とか未亡人の母子家庭とかあるいは身体障害者とか弱い人にはこれはちゃんと存続する、そう言っておるのです。     〔委員長退席、大島委員長代理着席〕  これもよく共産党の皆さんに読むのですが、栃木県の遊説で、  我々のほうから財源問題についてとやかく先に言うことは、税制調査会の委員審議に対して適当でないということで我々は自粛をしております。その結果を見守っておるという状態であります。   いずれにせよ、行政改革財政改革の目的はあくまで努力していくつもりであり、相当の政府の節約というものも考えられるし、あるいは徴税方法の改革。まじめにやっておる者と不まじめにやっておる者が同じ扱いを受けるということは適当でない。あるいは電電とか日本航空とかそのほかの政府の株式の売却であるとか、国有財産の売却であるとか、いろいろ考えられるだろうと思います。しかし税制調査会の意見がどういう答申が出るか見守ってまいりたいと思います。 こういうことを言いまして、電電を使うと言ったではないかという共産党の質問についてはこういうふうにお答えもしておるわけです。こういうふうにちゃんと考えて言っておるのでありまして、公約違反ではないのであります。
  227. 矢島恒夫

    矢島委員 本質的にマル優を廃止いたしませんということであって、確かにいろいろと条件は、お年寄りの問題、その他の問題、母子家庭の問題はつけられたかもしれませんけれども国民はそうは受け取ってなくて、あのときの選挙の中では、マル優は廃止にならないんだな、こういうように圧倒的多数が理解するような演説を各地でされたということについては事実だと思うのです。  ところで、なぜ前国会において廃案になったかという先ほどの質問に対して、国民の皆さん方に十分理解してもらう時間がなかった、そういう答弁をされておりましたけれども、私は、理解されておる時間がなかったというような問題ではなくて、事実は全く逆じゃないか、国民の皆さん方はあのマル優の廃止の内容あるいは売上税の内容、こういうものを知れば知るほど、まさにこれは大変なものだというので反対の輪がどんどん広がっていく、こういう状況の中で廃案になったと思うわけです。ところが、さらにまたまた今度の臨時国会に本質的には変わらないこのマル優廃止を提出してきた。こういうやり方は主権者である国民に対しての挑戦だ、国民政治に対する信頼、こういうものを失う以外の何物でもないと思うわけです。例えば選挙のときの投票率の低下、こういうものに見られるように、国民政治不信を一層助長していくのではないかということを私は恐れるわけですが、その点、総理は恐れられますか。
  228. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 先ほど来申し上げましたように、税制改革につきまして少し急ぎ過ぎ、国民の皆さんに対して御理解をしていただく時間的余裕が少なかったことを反省しておるわけでございます。     〔大島委員長代理退席、委員長着席〕
  229. 矢島恒夫

    矢島委員 私は、国会を無視し、そしてまた国民の意向を踏みにじるこういうやり方というのは、やはり国民の審判に対する二重、三重の挑戦であると断ぜざるを得ません。ですから、こういうマル優廃止法案というものは撤回以外にないのだということを強く要求しておきたいと思うのです。  次の質問に入りたいと思います。  これはきょうの午前中我が党の正森議員が触れましたが、八月七日、いわゆる我が党を除いた与野党での会談の結果、自民党が二千億円の上積みという案を出した。さらに八月二十六日の段階では、これが二千四百億円、こういうようになったわけです。そこで総理質問いたしますけれども、八月二十六日、記者団の質問に答えて、「あれは上積みではない。計数整理をした結果だ」、このように述べております。つまり、四百億円は、八月七日の二千億円の上積みのときと同じで、計数整理をやった結果だ、こういうように考えてよろしいでしょうか。
  230. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 二千億円は、竹下幹事長与野党会議でお約束をしてやったわけであります。それから四百億円さらに増加されましたが、これはいろいろ基礎的な数字をいじりまして、できるだけ弱い方々に厚い減税にしよう、そういうことで、特に年収五百万、六百万ぐらいの方に重点を置いた数字の入れ方をやりまして、その結果、そういうことになったわけでございます。
  231. 矢島恒夫

    矢島委員 いずれにしろ、午前中の質問の中でも正森議員が例に挙げておりましたけれども、八月八日の新聞で既にきょう出されました自民党修正案と同じ内容の報道があった。こういうようなことから見ましても、修正案と全く同じ構想であるということは、とりもなおさずその時点でそういう計算が既にされておった。そうしますと、四百億円というのは特別の上積みではなくて既にこの八月七日の段階で計算すれば出てくるものだ、こう考えてよろしいわけですね。
  232. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いや、それは八月七日の与野党幹事長書記長会談におきまして二千億円を上積みをするということを自民党幹事長お話をしたわけでございます。そういう合意があったわけではございませんが、そういうお話をいたしまして、さらにそれを八月二十六日に詰めていくということになったわけですが、その詰める手前の段階になりまして、自民党幹事長、政調会長から、二千億円というよりはもう少し具体的な形で、百五十万円以下まで一〇・五%の税率にする、それから二百万円まで一二%とする、こういう税率構造にしたならばどのくらいの減収になるであろうか計算をしてみてくれということが私どもの方の専門家に依頼がございまして、それを計算いたしてみましたら、刻みであり基礎控除でありいろいろなことでございますのでどうしてもきちんと二千億にはなりませんで上か下かへいくわけでございますが、それがちょうど一兆五千四百億ということになった、こういうことでございます。
  233. 矢島恒夫

    矢島委員 この問題は午前中も正森議員質問しましたのでこの辺でとどめておきます。ただ、このわずかな減税の上積みというものが裏舞台で進められて、国民がこんなに反対しているマル優廃止が認められ実質増税というようなことになることに私は本当に憤りを覚えるわけなんです。このことを表明しておきたいと思います。  次の質問に入ります。先ほどもお話ありましたが、総理マル優廃止の一つの理由として不正利用ということを言われました。それに関してであります。  十八日の本会議で、私、総理予算委員会答弁されたことを引用いたしまして、これでは日本は驚くべき金持ち優遇の脱税天国になろうとしているのではないか、こういうことを質問しましたところ、総理は、「利子所得課税上は特段の本人確認を行う必要が認められない」、「行政上自粛の徹底を指導していく」、「納税者に対する税務調査においても、不正等が行われる場合には、必要な場合には預金調査等を行うこととなるので、この制度が脱税を助長するとは考えておりません。」こう答えられましたが、この考えは今もお変わりありませんか。
  234. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 架空名義預金等については、引き続き行政上自粛の徹底を指導していくこととしておりまして、また、納税者に対する税務調査におきましても、必要な場合には預金調査も行うこととなるので、この制度が脱税の温床になるとは考えておりません。
  235. 矢島恒夫

    矢島委員 同じ答弁だと思いますが、総理は非常に楽観視しておられるのじゃないかという点、失礼かもしれませんが、あえて大口脱税を見逃すお考えではないかと考えざるを得ないような状況もあるのです。なぜ私がこの点を聞くかといいますと、一つは、総理も言うように預貯金について本人確認が不要になるだろう、二つは、銀行は原則として支払調書作成も税務当局への送付も行わなくてよくなるだろう、三つ目は、総理は今行政上自粛の徹底を指導していくと言われましたが、一体だれにどういう形で自粛の徹底を要請されるのか、こういう点を考えますと、本当に効果が上がるのかなと首をかしげざるを得ない部分もあります。こうなりますと、例えば偽名だとかあるいは架空名義、こういうものが横行する可能性があるのではないか。  国税庁の「昭和六十一年度査察事績」が出されておりますが、それをちょっと見てみますと、「依然として多数の仮名預金があり、告発した事件の別口預金のうち七六・一%が仮名預金、九・二%が無記名預金であった。」と述べています。こうなりますと、相続財産でも架空名義で預金しておけば相続税を免れる可能性も高くなるのではないか。あるいは大口所得税対象資産の課税を免れる可能性も出てくるのではないか。確かに利子所得に対する二〇%の税金は間違いなく徴収することができるかもしれません。しかし、その利子を生み出すところの元金についての所得税だとかあるいは相続税だとか贈与税だとか、こういう預貯金の捕捉が相当困難になるのじゃないか、結局税務当局は大口脱税を摘発する手がかりを失ってしまうのではないか、こう考えるわけですが、この点もう一度、総理、お答えください。
  236. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはそういうことにはならないと思います。と思いますのは、今度この制度の適用を受けようとする方々は、名前、住所、生年月日等は少なくとも記入をしていただかなければなりませんので、そういう書類、恐らくかなり大きな億単位の書類になるかと思いますが、これを何とか管理できるシステムをつくれないかということを今研究をいたしておりまして、それは恐らくできるであろう。とても人手でやるというわけにまいりません。そうなりますと、もとのところもきちんとそこで押さえられる、管理ができることになると思います。
  237. 矢島恒夫

    矢島委員 大蔵大臣はそう言われますけれども、架空名義というものが自由になることは税務当局の調査は相当困難が伴ってくるだろうということは予想できるわけです。予算委員会総理のこういう答弁もあるわけです。  全部これはあからさまに二〇%なら二〇%、利子について二〇%払っていただけば、そうすればもう追及や何かしません、あと追っかけることも要りません、預金証書も要りません、あなたは幾ら残っているとか足りないとかということも追っかけてきません。そして安心して——今までは、どうも不正をやっていた人たちは、おずおずいつやられるかというので恐怖心でやっていたでしょう。しかし、今度はもうそのことは正しいことなんです。 こういう失礼ですが非常に乱暴な言い方じゃないかなというふうにこの議事録を見まして私思ったのですけれども、現在よりも大口脱税の摘発が難しくなっていくことは明白ではないか。昨日も私申し上げましたけれども勤労者は一世帯平均預貯金現在高が約七百三十三万円、そして中位数は四百八十四万円、最頻値が百九十三万円、これじゃ脱税等を考えようもないような平均値の預金をしているわけです。ですから、マル優制度を廃止するということは、片や庶民を泣かせ、他方では一部悪質な大口脱税者を見逃していく、つまり大口脱税天国という現象が起こってくるのではないか、こう考えざるを得ないというところをひとつ主張しておきたいと思うのです。  次に、やはり十八日の本会議で私が医療控除の問題で総理質問いたしました。この医療費控除の対象を五万円超から十万円超に引き上げる、「一体どうしてなのか」と質問しましたら、総理は、最近の家計の平均的な医療費負担の水準、所得の増大等を考えれば、むしろ低きに過ぎる、こういうように答弁されました。また、昨日、私、この問題、つまり医療費控除足切り限度額の引き上げというものが庶民いじめではないかという質問をいたしましたら、主税局長答弁ですけれども、基礎的な控除は課税最低限でカバーできる、担税力の限度以上を対象にしたい、こういうような答弁をされたと思うのです。しかし、よく考えてみますと、健康保険制度の改悪だとか、治療費や入院費等が値上がりしている。本来この保健医療費は高くなっているにもかかわらず、家計調査年報を見てみますと、ここ三年ずっと連続して実質的には下がっているわけなんです。減少しているわけなんです。つまり、こういうことは、国民がいろいろな負担を何とかカバーしようという中で医療費の抑制ということが行われているということじゃないかと思うのです。医療費は五万から十万というように医療費の控除限度の足切りをした。他方、課税最低限はどうなっているかというと、そんなにも同じ比率で引き上げられていない。昨日も、私、川口の奥さんの病気で大変困っていらっしゃる状況を当委員会でもお話ししましたけれども、こういう温かい手を差し伸べなければならない体の弱い人とかお年寄りや病人、そういう人に犠牲を押しつけて、そして医療費控除でおおよそ百億円ですか、こういう増収を図る。まことにひどい話だと思うのですが、この点どういうふうに総理はお考えでしょうか。
  238. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは今のを決めましたのは昭和五十年であったと思いますから、やはりあるときには少し引き上げることは当然だと思っておりまして、きのうもそのお尋ねがございましたときに申し上げましたが、もともとそういう経費というものは、一般的な控除というものがあるわけでございますから、それで処理をするのが原則であって、それを超えたものについて特別の控除を認めるということでございますから、昭和五十年以来据え置かれましたものは今度程度動かさせていただいてもよろしいのではないかと私どもは思っております。
  239. 矢島恒夫

    矢島委員 この問題につきましては、昨日も勤労者家庭の年間の平均的な医療費額というものも示しましてお尋ねしたわけなのでこの辺にとどめておきますが、要するに百億円という増収を得るためにこういう弱いところをやるのではなくて、もっとほかにやるべきことがあるのじゃないか。例えばキャピタルゲインの課税問題だとか、いわゆる優遇税制と言われているところの外国税額控除の問題だとか、大企業への特別償却の問題だとか、そういうところを手をつけていくべきじゃないか、そのことこそ必要だということを指摘しておきまして、時間がございませんので次の質問に入らせていただきます。  総理は、この八月十八日のやはり衆議院の本会議ですけれども、こういうことを述べていらっしゃるのです。「抜本改革の念願は捨てておるものではありません。時と所を得て、しかるべき手続のもとにこれを推進してまいりたいと考えております。」こう答弁されているのですが、ここで言っている抜本改革というのはどういうことなのか、ちょっと教えてください。
  240. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 それは衆議院議長のあっせんの中にありました税制改革は現下の重大課題である、そう書いたあの意味は、私は大改革、抜本改革意味している、そう考えております。
  241. 矢島恒夫

    矢島委員 総理は、八月二十六日に伊東政調会長から野党側に四百億円の上積みの報告を受けたときに、「マル優の原則廃止ができれば、半開きだな」、こう言われたという報道がございます。この半開きというのはどういうことなのか、あとの半開きは何なのか、この点をちょっと教えていただきたい。
  242. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 やはりこれから所得税をもっと減税するとか、法人税をもっと減税するとか、そういう減税課題も残っております。それに対応する財源措置恒久財源を行ってやると与野党で合意しております。そういうような問題は税制協議会で今後もいろいろ御審議願う材料である、政府はそれを見守っていく、こういうことでありまして、道半ばである、そういう意味であります。
  243. 矢島恒夫

    矢島委員 税制改革協議会のことが今出されましたけれども、先ほど本委員会におきましても、野党の他の委員から共産党を除くことの問題というのが出され、筋の通る御意見がございました。それに対して総理は、与野党とも心ある者が集まってこれをやっているのだ、こういう御発言があったわけですが、では、心ない者はだれで、その心とは何か、ちょっと……。
  244. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 それは解釈の仕方でありまして、要するに息の合った者が心ある者である。息の合わない人はそれに外れた。ではなぜ外れたかというと、やはりふだん余りつき合いがよくないな、そういうような不信感があるからそういうことになっちゃうのじゃないかと思います。
  245. 矢島恒夫

    矢島委員 非常に重大な発言だと私は思うのです。ふだん息が合うとか合わないとか、心ある者という意味が、直間比率の見直しという点で心ある者ない者、こう分けたのならこれは話がわかるのですけれども、今のお話だと心ある者は息が合うか合わないかで分けるのだということ、それでよろしいのですか。
  246. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 やはり心というものは息と同じ、相通ずるものがございますからね。
  247. 矢島恒夫

    矢島委員 私はどうもこの点は納得しないし、認めるわけにもまいりませんけれども、時間がいよいよ迫ってまいりましたので、最後質問にいきます。  先ほど言いましたように、「時と所を得てこそして「これを推進してまいりたい」、このように総理は述べられた。結局のところこのマル優廃止で半開きができた、あとの直間比率の見直し、いわゆる新しい大型間接税の導入ということで扉を全部開いていこう、これが総理のお考えだと思いますが、そのようなことでよろしいでしょうか。
  248. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 税制協議会の御協議等を見守ってまいりたいと思っておるわけです。
  249. 矢島恒夫

    矢島委員 そこで必ず税制協議会というのが今までも当委員会での答弁の中にもたくさん出てきているわけなんですね。それがあるためにこの大蔵委員会の威厳を保つことができないような事態まで起きているわけなんですから、非常に問題がある税制改革協議会だということを指摘しておきたい。  次に、いろいろ言われましたけれども、結局のところ今ちまたでも福祉目的税だったらどうかとかいろいろなことが言われております。私どもは、もちろんマル優廃止というものも反対ですし、同時にどんな形にしても大型間接税を導入するということには反対であります。ですから、マル優廃止法案についてはぜひとも撤回してもらいたい。同時に、財源問題等がいろいろ言われるわけですけれども、やはり軍事費を削って、大企業に対する優遇税制を是正する、こういうことによって財源をつくって、増税なき減税ということで、一つには三兆円の減税、そして課税最低限を三百万円以上に上げるということをやることを強く要求いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  250. 池田行彦

    池田委員長 これにて原案及び修正案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  251. 池田行彦

    池田委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。金子一義君。
  252. 金子一義

    金子(一)委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案及びこれに対して自由民主党が提出した修正案につきまして、修正案及び修正部分を除く原案に賛成の意見を表明するものであります。(拍手)  最近の社会経済情勢の著しい変化と将来の我が国の経済財政考えるときに、現行税制について直接税、間接税の全般にわたる抜本的見直しを行い、国民の税に対する不平、不満を解消し、国民の理解と信頼を得ることが急務であります。  本法律案は、このような国税に関する制度全般にわたる改革の必要性にかんがみ、その一環として、所得課税の負担軽減及び合理化とその財源措置の観点を踏まえ、早急に実施すべき措置を講ずるため、当面次のような改正を行おうとするものであります。私はこのような政府の努力を極めて高く評価するものであります。  以下、具体的に申し上げますと、  第一に、所得税の負担の大幅軽減を先行して行う見地から、その税率構造について、最低税率適用範囲拡大及び累進緩和を行うほか、配偶者特別控除制度の創設を行うこととしております。また、給与所得者に特定支出の控除の特例を設け、さらに、老齢者控除を二倍に引き上げるとともに、公的年金等に対する課税についても所要の見直しを行うこととしております。これらの諸措置により特に働き盛りの中堅所得者層を中心に負担の軽減が図られるなど、所得税の負担軽減及び合理化の観点から、いずれも極めて適切な措置であると考えます。   二に、利子課税について、少額貯蓄非課税制度等を老人等に対する利子非課税制度に改組する等の見直しを図る措置を講ずることとしていることは、諸外国からの厳しい批判にもこたえ、同時に他の所得に対する所得税負担との均衡にも配慮した実質的公平にかなった措置であると考えます。  第三に、超短期所有土地等の譲渡益を重課する特例及び長期譲渡所得、短期譲渡所得の区分の特例を時限的に設ける等の措置を講ずることとするほか、有価証券の先物取引による所得を課税対象としており、これらは、現下の地価高騰下における土地税制あり方及び有価証券譲渡益課税あり方から見て、まことに時宜にかなった適切な措置であると考えます。  第四に、間接税等について、たばこ消費税、取引所税、有価証券取引税、印紙税、登録免許税等について所要の措置を、そして、その他、各種加算税の割合を引き上げることとする等、所要の措置を講ずることとしております。いずれも、内外経済情勢の変化への対応の観点及び納税環境整備の要請等にかんがみ、当を得たものと考えます。  第五に、自由民主党から提出されました修正案においては、去る八月七日の与野党幹事長書記長会談における与党からの提案を踏まえ、当大蔵委員会での審議をも勘案しつつ、昭和六十二年度における所得税減税規模は、政府原案の一兆三千億円から一兆五千四百億円の大幅な所得税減税になるものであります。このことは、中堅所得者層の税負担の一層の軽減の見地からまことに時宜にかなった措置であります。同修正案においては、利子課税制度の改組について、勤労者財産形成住宅貯蓄及び同年金貯蓄の利子を非課税とする等の措置をもとられています。これらはいずれも極めて思い切った措置であり、本修正案に対し賛成をするものであります。  最後に、厳しい財政事情を考慮するとき、今後、残された直間比率の見直し等をも含む税制改革に真剣に取り組み、やがて高齢化社会を迎える二十一世紀を展望して、世代を超えて国民の納得の得られるような立派な税制を構築するための努力がさらに必要であると考えるところでございます。  以上申し上げた理由により、本法律案及び自由民主党提出に係る修正案に対し、修正案及び修正部分を除く原案に全面的に賛成の意見を表明し、討論を終わります。(拍手)
  253. 池田行彦

    池田委員長 上田卓三君。
  254. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 私は、日本社会党護憲共同を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案及び同修正案について、反対の立場から討論を行うものであります。  この法案の問題点は、まず第一にマル優原則廃止を含んでいる点であります。  マル優廃止法案は、さきの国会国民の厳しい批判を浴びて廃案になったものであります。また、ことし五月十二日、七月二日の与野党国対委員長会談において、本臨時国会にはマル優廃止法案は提出しないと合意されているのであります。さらに、議長裁定に基づく与野党税制改革協議会でも合意を見ていないのであります。  この法案は、国民世論が反対するマル優原則廃止と国民世論が最も切望する所得税減税をセットにしたものであり、このような手法は厳に慎むべきであります。しかも、当面の減税財源としては、NTT売却益や六十一年度歳入剰余金があり、また今年度もかなりの規模の歳入超過が見込まれる状況であります。国民各層が求める大幅な所得税減税財源は、政府の決断次第で十分対応できることは明らかであります。政府はまず与野党合意のある所得税減税を先行実施し、その後に、広く国民意見を聞き、あるべき税制改革の道を探るべきであります。  第二に、今回提案されている所得税減税は、国民の願うものとは大きな隔たりがあります。  野党四党が一致して要求しているのは、最低二兆円の減税であります。一兆五千四百億円では、国民期待に反するものであります。大蔵省は、標準世帯で、マル優廃止の増税分と差し引いても、トータルで減税になると宣伝しております。しかし、専業主婦控除の対象外である夫婦共稼ぎ世帯や単身の労働者、さらに定年後六十五歳までの高齢者にとっては実質増税になることは、大蔵省も認めているところであります。  課税最低限度額も、専業主婦世帯を除けば据え置きであります。課税最低限度額は世界のトップ水準と言う大蔵省の言い分とは逆に、実質の人的控除だけを見れば欧米よりもはるかに低い水準であります。  また、新たに設けられた給与所得者の特定支出控除は、実際には有名無実の制度であります。他方、既に百四十万人もの給与所得者が活用している医療費控除の足切り限度額が二倍の十万円に一挙に引き上げられることによって、給与所得者の自主申告権は大幅に狭められることになるのであります。  第三に、マル優原則廃止の問題でありますが、政府の言う論拠は、本委員会での審議の中でも、もう完全に崩れているのであります。  中曽根首相は、マル優は円高、貿易摩擦の原因であると本会議答弁し、まるでマル優さえなくせば、貯蓄が減り、内需が拡大し、貿易摩擦が解消するかのような発言であります。しかし、日本の貯蓄の実態は、そんなに余裕のある状態ではありません。日銀貯蓄増強中央委員会の調査でも、貯蓄の理由は、病気や不慮の事故への備え三二%、老後の不安一六%、子供の教育費一四%、マイホームのための貯蓄一〇%であります。実に全体の七〇%以上の人が、将来の不安のための貯蓄なのであります。  このどれ一つをとってみても、中曽根内閣が進めてきた社会保障の改悪や無策の結果ではないでしょうか。内需拡大のためには、マル優の廃止ではなく、高い貯蓄率の本当の原因、けちけち財政を改め、将来に不安のない、安心して貯蓄を消費に回せる豊かな社会保障の充実こそが特効薬であります。  また、不正利用がマル優廃止の大きな原因に挙げられております。しかし、マル優を限度額以上に金融機関を利用している世帯は、貯蓄保有世帯の一〇・六%であります。不正利用者はこのうちのごく一部、多分数%にすぎず、国民の九割近くはマル優の限度額に到底達していないのであります。  しかも、多くの場合、マル優の不正利用には金融機関が直接的、間接的に協力していることは明らかであります。銀行局が金融機関を通じてマル優不正利用の調査と監督を徹底するだけでも大きな効果を発揮することは言うまでもありません。また、マル優限度管理のために、野党四党は一致してマル優カード制の導入を提案しております。こうした積極的な提案にも耳を傾けず、あくまで金融機関と一部資産家の利益を図ろうとしております。さらに、高額貯蓄者のためには、一律分離課税を三五%から二〇%に引き下げるなど、二重三重のサービスぶりであります。  宮澤大蔵大臣は資産所得が非課税というのは不公平であると常々言われております。それが本心ならば、資産所得の中でも今国民の間で最も不公平感が強いキャピタルゲインになぜ本格的なメスを入れないのでしょうか。昨年度の株式。公社債売買総額は四千二百十兆円にも上っておりまして、国税庁が徴収したキャピタルゲイン税額はたった五億円であります。政府も再三再四課税を強化すると言いながらも、遅々として進んでおりません。そればかりか、本法案では有価証券取引税すら九%も引き下げようとしております。預金金利はほとんど物価上昇率と同じであり、利子は目減り分を補っているにすぎないのであります。利用者の圧倒的多数が庶民であるマル優廃止に手をつける前に、キャピタルゲイン課税に真剣に取り組むべきであります。  日本社会党は、マル優廃止に反対し、課税最低限度額の大幅な引き上げを含む二兆円以上の所得税減税の先行実施を要求し、本法案の反対討論を終わります。(拍手)
  255. 池田行彦

    池田委員長 日笠勝之君。
  256. 日笠勝之

    ○日笠委員 私は、公明党・国民会議を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案並びに同修正案について、反対討論を行うものであります。  反対する第一の理由は、同法案与野党合意に反し、税制改革協議会の審議を全く無視したものであることであります。  すなわち、同法案は前国会で廃案になった売上税関連六法案である少額貯蓄非課税制度、いわゆるマル優の原則廃止が盛り込まれており、売上税関連法案を再提出しないとした五月十二日の与野党国会対策委員長会談の合意に反するものであります。  また、都合十二回にも及んだ与野党税制改革協議会において、現行税制に存在する不公平税制の事例を十項目挙げ、その是正を検討すべきであるとの我々の主張を無視し、マル優廃止と所得税減税をセットして提出してきたことは強く批判されなければなりません。  第二の理由としては、減税規模が不十分なことであります。当初六十二年度の減税規模を一兆三千億円としておりましたが、さきの与野党幹事長書記長会談において一兆五千四百億円に上積みされました。しかし、我々が当初より要求している二兆円規模減税には及ばず、内需拡大のためにも、国民期待に反する一歩後退したものとなっております。  第三の理由に、この法案が公平、公正、簡素、選択、活力という基本理念を全く欠いたものであり、なかんずく不公平税制の是正をなおざりにしたままマル優制度を廃止しようとしており、不公平をますます拡大させるものとなるためであります。今回の税制改革は、基本理念と言うべきものは何も見られず、マル優廃止にのみ固執する一方で、同じ資産性所得でありながら有価証券譲渡益などキャピタルゲインへの原則課税が見送られており、不公平拡大以外の何物でもありません。  将来の住宅購入費、教育費、さらに病気や老後の備えに対し、また子供のささやかな預貯金、障害者を持つ親がその子の将来のためにこつこつと蓄えた預貯金にまで利子課税するという血も涙もないやり方であり、高額貯蓄者のみを優遇するマル優廃止には断固反対であります。  最後に、土地の譲渡益課税に関しましても、長期譲渡所得の区分を十年から五年に変更し土地の供給を図るとしておりますが、土地供給の増加は余り見込めないばかりか、かえって五年間保有するということになる懸念があります。土地の供給は、固定資産税などほかの土地税制、規制緩和等と幅広い角度から検討しなければ実効性は全く望めないものであります。  以上、今回の税制改革は、改革という名に値しない、まずマル優廃止ありきとした国民無視の手法であり、国民生活をいたずらに混乱させるだけであります。国民の合意を得られる税制改革とするためには、廃止する妥当な理由のないマル優廃止などの拙速を避け、基本理念を明確にしてから着手すべきであります。  我々は、キャピタルゲイン課税を初めとする不公平税制の是正を早急に行い、加えて、五年後に利子所得に対する所得税あり方について総合課税への移行問題を見直しすることを強く要望し、反対討論といたします。(拍手)
  257. 池田行彦

    池田委員長 玉置一弥君。
  258. 玉置一弥

    ○玉置委員 私は、民社党・民主連合を代表して、ただいま議題となっております所得税法等の一部を改正する法律案及び自民党提出の修正案に対し、反対の討論を行うものであります。  反対する第一の理由は、本案国会の正常な審議に基づくことなく提出された点であります。本来税法の審議をする場である大蔵委員会をないがしろにしたことは、議会制民主主義を踏みにじる暴挙であり、断じて容認できません。老人等への特別マル優の適用、財形貯蓄の年金・住宅部分の非課税化など、修正された箇所はすべて国会審議以外の場でつくられたものであります。我々が大蔵委員会審議で要求したマル優カードの導入、一般財形の税率を一〇%とすること、六十歳以上の老人等にマル優を存続させることなどの修正は全く受け入れられなかったのであります。大蔵委員会という正式の機関の存在が無視されたことに私は強い憤りを禁じ得ないのであります。  反対する第二の理由は、所得減税規模が小幅にとどまっている点であります。円高後遺症がいまだ暗い影を落とす日本経済を立て直し、内需拡大を推進するために、二兆円規模減税実施せよと我々は主張してまいりましたが、政府自民党は、NTT株売却益を減税財源に充てる道を閉ざして、二兆円減税を拒否したのであります。  反対する第三の理由は、本案が抜本税制改革とはほど遠い小手先だけの改革に終わっている点であります。本来の税制改革は、マル優の限度額管理強化、株、土地等のキャピタルゲイン課税法人税の租税特例措置など、不公平項目の全般的な見直しを出発点とすべきであるにもかかわらず、今回の案は、マル優のみを悪者にして安易な財源確保のため廃止を強行してい各点で、ずさんきわまるものと言わざるを得ません。所得税税率構造法人税あり方等、将来の税制改革のビジョンが明らかにされていないことも問題であります。  反対する第四の理由は、総合課税の道が閉ざされたことであります。シャウプ勧告に基づいて我が国は原則として総合課税を理想としてまいりましたが、一律二〇%分離課税という今回の改革は、総合課税を完全に否定し、葬り去るものであります。本案に盛り込まれた総合課税の検討にかかわる部分は、名目だけのものであり、極めて不満であります。  以上、反対理由を述べるとともに、最後に、国民各層の参加を認め、国会での正常な審議を進めることによって二十一世紀を展望する抜本税制改革をつくり上げていくことが今後の最重要課題であることを強調いたしまして、私の討論を終わります。(拍手)
  259. 池田行彦

  260. 正森成二

    ○正森委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、ただいま議題となっております所得税法等の一部を改正する法律案について、政府原案並びに中村正三郎君外四名提出による修正案の双方に反対の討論を行います。  本法案に反対する第一の理由は、マル優廃止が主権者に対する二重三重の背信行為であるからであります。公約違反の売上税導入・マル優廃止法案があらしのような国民の反対運動と一斉地方選挙でのノーの審判によって廃案となったのはわずか三カ月余り前のことであります。にもかかわらず、その直後の今国会に、本質的に何ら変わらないマル優廃止法案を再提出し、押し通そうとしていることは、主権者に対する挑戦であり、断じて許せません。これが本法案に反対する第一の理由であります。  第二に、マル優廃止と所得税、住民税減税との抱き合わせによって、圧倒的多数の国民にとっては差し引き減税ではなく増税になることであります。すべての階層で差し引き減税という大蔵省試算は、専業主婦控除適用世帯か対象で、これは給与所得者の三七%にすぎません。残り六三%の共働き世帯や独身勤労者のほとんどは差し引き増税で、年収五百万円台の平均的共働き家庭では二万数千円の増税となるのであり、これは到底容認できないものであります。  第三に、税制基本である総合累進課税の原則と所得再配分の機能を破壊し、金持ち優遇の不公平税制を一層拡大することであります。零細な庶民の預貯金には課税最低限以下の世帯も含めて新たに二〇%もの課税を強いる一方、大口預金者の利子所得はたださえ不公平な現行の三五%分離課税からさらに四割も減税し、しかも、所得税最高税率を現行七〇%から六〇%へと大幅に引き下げることにより、まさに大金持ちには二重の大幅減税をもたらすものであります。  第四に、中曽根内閣自民党が直間比率の見直しと称して新しい大型間接税を導入するため、まず各個撃破でこのマル優廃止を押し通そうとしていることであります。この意味でも、新大型間接税への突破口となるこのマル優廃止に断固反対いたします。  次に、中村正三郎君外四名提出に係る修正案について一言申し述べます。  計数整理の結果約二千四百億円となった所得税減税の上積みは、低所得者層には薄く、マル優廃止による増税分と合わせれば、依然として圧倒的多数の共働き世帯、独身者では増税となります。また、年金・住宅財形貯蓄の利子非課税も、対象となるのはマル優貯蓄三百兆円のうちわずか一兆円にすぎず、マル優廃止時期の三カ月繰り延べと同様に、政府原案基本的性格をいささかも変えるものではありません。したがって、これを口実にマル優廃止を成立させる本修正案には断固反対いたします。  最後に、私は、軍事費を大幅削減し、キャピタルゲイン原則非課税等、大企業、大資産家への特権的減免税に抜本的なメスを入れ、増税なしの三兆円減税課税最低限の四人家族三百万円への引き上げを実現することを強く要求し、あわせて、我が党を除いた私的機関である税制改革協議会において密室協議が進められてきたことを議会制民主主義の名において改めて糾弾し、私の討論を終わります。(拍手)
  261. 池田行彦

    池田委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  262. 池田行彦

    池田委員長 これより所得税法等の一部を改正する法律案について採決に入ります。  まず、中村正三郎君外四名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  263. 池田行彦

    池田委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま可決された修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  264. 池田行彦

    池田委員長 起立多数。よって、本案修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  265. 池田行彦

    池田委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、中川昭一君外三名から、自由民主党日本社会党護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。中川昭一君。
  266. 中川昭一

    ○中川(昭)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨説明といたします。     所得税法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について所要の措置を講ずべきである。  一 衆議院議長斡旋にもあるように、今後の高齢化社会に対応する等、将来の我が国財政需要を展望するとき、税制改革問題は現在における最重要課題であり、今後できるだけ早期にこれを実現できるよう検討を行うこと。  一 有価証券譲渡益課税については、本人確認課税資料の収集のための実効ある制度が不可欠の前提であることに留意しつつ、適正、公平な課税の実現に向けて更に一層の検討を行うこと。  一 今回の土地譲渡所得課税改正を踏まえ、地価問題等現下の土地問題に適切に対応するため、土地政策の総合的な検討の一環として、土地税制についても負担の公平に留意しつつ引き続き検討を行うこと。  一 法人税については、今後における税制改革の一環として、税率、受取配当益金不算入制度、賞与引当金等の見直しについて、引き続き努力すること。  一 外国税額控除制度については、国際約二重課税の排除という制度本来の趣旨に沿って、早急に所要の見直しを行うこと。  一 特別償却、準備金、税額控除等の租税特別措置については、一層の整理合理化を推進すること。  一 変動する納税環境、財政再建・財源確保の緊急性及び業務の複雑化・国際化にかんがみ、高度の専門的知識を要する職務に従事する国税職員については、年齢構成の特殊性等従来の経緯及び税務執行面における負担の公平確保の見地から、処遇の改善はもとより、職務をめぐる環境の充実、中長期的見通しに基づく定員の一層の増加等につき格段の努力をすること。 以上であります。  何とぞ御賛成を賜りますようよろしくお願いを申し上げます。
  267. 池田行彦

    池田委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  268. 池田行彦

    池田委員長 起立多数。よって、本案に対し、附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。宮澤大蔵大臣
  269. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って配慮してまいりたいと存じます。     —————————————
  270. 池田行彦

    池田委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  271. 池田行彦

    池田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  272. 池田行彦

    池田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十九分散会      ————◇—————