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1987-09-01 第109回国会 衆議院 大蔵委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年九月一日(火曜日)     午前十時三分開議 出席委員   委員長 池田 行彦君    理事 大島 理森君 理事 熊川 次男君    理事 笹山 登生君 理事 中川 昭一君    理事 中村正三郎君 理事 野口 幸一君    理事 宮地 正介君 理事 玉置 一弥君       新井 将敬君    井上 喜一君       石破  茂君    今枝 敬雄君       江口 一雄君    遠藤 武彦君       金子 一義君    小泉純一郎君       笹川  堯君    杉山 憲夫君       高鳥  修君    戸塚 進也君       鳩山由紀夫君    村井  仁君       村上誠一郎君    山中 貞則君       山本 幸雄君    上田 卓三君       沢田  広君    中村 正男君       早川  勝君    堀  昌雄君       日笠 勝之君    森田 景一君       矢追 秀彦君    山田 英介君       安倍 基雄君    正森 成二君       矢島 恒夫君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         大蔵政務次官  中西 啓介君         大蔵大臣官房審         議官      土居 信良君         大蔵省主計局次         長       斎藤 次郎君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省理財局次         長       藤田 弘志君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         国税庁次長   日向  隆君 委員外出席者         警察庁交通局交         通企画課長   山田 晋作君         法務省民事局第         三課長     永井 紀昭君         外務大臣官房審         議官      小原  武君         外務大臣官房儀         議官      松井 靖夫君         厚生大臣官房政         策課長     清水 康之君         厚生省年金局年         金課長     谷口 正作君         社会保険庁年金         保険部厚生年金         保険課長    松尾 正人君         労働省労働基準         局補償課長   角田 幸男君         労働省労働基準         局賃金福祉部福         祉課長     渡邊  信君         労働省婦人局婦         人労働課長   粟野 賢一君         建設省建設経済         局不動産業課長 藤田  修君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ――――――――――――― 八月三十一日  大型間接税導入反対等に関する請願柴田睦  夫君紹介)(第八一七号)  大型間接税導入反対マル優存続等に関す  る請願安藤巖紹介)(第八一八号)  同(石井郁子紹介)(第八一九号)  同(岩佐恵美紹介)(第八二〇号)  同(浦井洋紹介)(第八二一号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第八二二号)  同(金子満広紹介)(第八二三号)  同(経塚幸夫紹介)(第八二四号)  同(工藤晃紹介)(第八二五号)  同(児玉健次紹介)(第八二六号)  同(佐藤祐弘紹介)(第八二七号)  同(柴田睦夫紹介)(第八二八号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第八二九号)  同(田中美智子紹介)(第八三〇号)  同(辻第一君紹介)(第八三一号)  同(寺前巖紹介)(第八三二号)  同外一件(中路雅弘紹介)(第八三三号)  同(中島武敏紹介)(第八三四号)  同外一件(野間友一紹介)(第八三五号)  同外一件(東中光雄紹介)(第八三六号)  同(不破哲三紹介)(第八三七号)  同(藤田スミ紹介)(第八三八号)  同(藤原ひろ子紹介)(第八三九号)  同外二件(正森成二君紹介)(第八四〇号)  同(松本善明紹介)(第八四一号)  同(村上弘紹介)(第八四二号)  同(矢島恒夫紹介)(第八四三号)  同(山原健二郎紹介)(第八四四号)  マル優等利子非課税制度存続等に関する請願  (池田克也紹介)(第八四五号)  同(石井郁子紹介)(第八四六号)  同(石田幸四郎紹介)(第八四七号)  同(遠藤和良紹介)(第八四八号)  同外一件(木内良明紹介)(第八四九号)  同(小谷輝二君紹介)(第八五〇号)  同(坂井弘一紹介)(第八五一号)  同(柴田睦夫紹介)(第八五二号)  同(沼川洋一紹介)(第八五三号)  同(野間友一紹介)(第八五四号)  同(春田重昭紹介)(第八五五号)  同(日笠勝之紹介)(第八五六号)  同外一件(藤原ひろ子紹介)(第八五七号)  同(森田景一君紹介)(第八五八号)  同(矢追秀彦紹介)(第八五九号)  同(矢島恒夫紹介)(第八六〇号)  同(吉井光照紹介)(第八六一号)  同(渡部一郎紹介)(第八六二号) 九月一日  大型間接税導入反対等に関する請願岩佐恵  美君紹介)(第九七一号)  同(柴田睦夫紹介)(第九七二号)  同(松本善明紹介)(第九七三号)  大型間接税導入反対マル優存続等に関す  る請願外一件(安藤巖紹介)(第九七四号)  同外一件(東中光雄紹介)(第九七五号)  同(正森成二君紹介)(第九七六号)  同(安藤巖紹介)(第一〇五三号)  同(石井郁子紹介)(第一〇五四号)  同(岩佐恵美紹介)(第一〇五五号)  同(浦井洋紹介)(第一〇五六号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第一〇五七号)  同(金子満広紹介)(第一〇五八号)  同(経塚幸夫紹介)(第一〇五九号)  同(工藤晃紹介)(第一〇六〇号)  同(児玉健次紹介)(第一〇六一号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一〇六二号)  同(柴田睦夫紹介)(第一〇六三号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第一〇六四号)  同(田中美智子紹介)(第一〇六五号)  同(辻第一君紹介)(第一〇六六号)  同(寺前巖紹介)(第一〇六七号)  同(中路雅弘紹介)(第一〇六八号)  同(中島武敏紹介)(第一〇六九号)  同(野間友一紹介)(第一〇七〇号)  同(東中光雄紹介)(第一〇七一号)  同(不破哲三紹介)(第一〇七二号)  同(藤田スミ紹介)(第一〇七三号)  同(藤原ひろ子紹介)(第一〇七四号)  同(正森成二君紹介)(第一〇七五号)  同(松本善明紹介)(第一〇七六号)  同(村上弘紹介)(第一〇七七号)  同(矢島恒夫紹介)(第一〇七八号)  同(山原健二郎紹介)(第一〇七九号)  大型間接税導入マル優制度廃止反対に関す  る請願河野正紹介)(第九七七号)  マル優等利子非課税制度存続等に関する請願  (石橋大吉紹介)(第九七八号)  同(辻一彦紹介)(第九七九号)  共済年金の改善に関する請願井上普方紹介  )(第一〇五二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 九月一日  大型間接税導入反対マル優制度存続に関す  る陳情書外十二件  (第一  〇一号)  所得税等大幅減税に関する陳情書  (第一〇二号)  公共用地取得に伴う税制の改正に関する陳情書  外一件  (第一〇三号)  租税特別措置法老年者年金特別控除に関する  陳情書  (第一〇四号)  米軍返還国有財産留保地利用促進に関する陳  情書  (第一〇五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出  第四号)      ――――◇―――――
  2. 池田行彦

    池田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出所得税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します、矢島恒夫君。
  3. 矢島恒夫

    矢島委員 大臣も御案内のとおり、このところ連日マル優存続を求める請願だとか陳情人々、あるいは全国から、私の部屋にも来ておりますけれどもマル優廃止しないでもらいたいというはがきなどが来ております。また、前国会、今国会にかけまして大変国会も混乱したような状態が続いている。どこに原因があるかということを考えてみますと、やはり昨年の同時選挙にさかのぼらざるを得ないわけであります。  と申しますのは、やはりあの同時選挙の中で中曽根首相減税はやりますという約束をいたしました。ところが、その減税財源として、大型間接税売上税導入だとかあるいはマル優廃止いたしますとかそういうことを言わないばかりか、むしろそんなことを私がやるものですかという発言全国各地でやったわけであります。私はやはり政治家として国民への公約というものは極めて重いものだと思うわけです。ところが、そもそもの上着ボタンの一番上をかけ間違えたという状況の中で廃案になりましたけれども、この廃案になった理由について、国民皆さん方の理解が足らなかったようなことを言って他人のせいにするような、しかも今国会では、最後のボタンをむしろ上着に穴をあけてそのボタンをかけようというような状況になっているのではないかと思うのです。そういう状況の中で、既に一斉地方選挙ではきっぱりとした国民の審判も下ったわけですから、この際やはりかけ違えたボタンというのは全部外してもとのとおりに戻す、こうしないと国民皆さん方は納得できないのじゃないかと思うのです。  二十七日ですか、当委員会参考人方々がいろいろと意見を述べられました。その意見の中にも、公約違反マル優廃止というのは問題だという指摘もありました。大臣、今日のお立場は大変微妙なものがあろうかと思うのですが、やはり正直こそ信頼につながるものだと私は思うわけなんです。公約違反マル優制度廃止、このことについて今日時点大臣のお考え、どのようなお考えをお持ちか、ひとつお答えいただければと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 マル優につきましては、昨年の選挙の際、私の記憶では、総理大臣は、マル優については、いわゆる社会的に配慮しなければならない人々に対しては残すべきだと思うが、これが不正に利用されるといったようなことについては改めなければならないということを言っておられたと思いますので、全部これをそのまま残していくというようなことは言っておられないと思うのであります。記録を調べてみますと、これは昨年の六月十四日でございますが、自民党の本部から都道府県の支部連合会あるいは各候補者に対しまして、この点について誤解がなきようにということで、中曽根総理の言明は、「いわゆるマル優制度については、老人とか、母子家庭とかの社会的に弱い人に対してはこれを維持していく。しかし、不正を行っているものについては、是正しなければならない。」こういう趣旨であるということを六月十四日の時点で言っておりまして、私はこのとおりであると思います。
  5. 矢島恒夫

    矢島委員 不正を行っている者に対しては正さなければならないというので、不正を行っている者は私もやはり正していくべきだと思いますけれども、そのことが即このマル優廃止するかどうかということとはつながってないような発言がなされたのではないかと思うのです。  同時に、大臣、そう言われますけれども、あの選挙を振り返ってみますと、自民党議員方々の中にもたくさんの方々マル優存続あるいはマル優廃止反対ということを選挙中述べられているわけです。私リストを持っておりますが、あえて個人のお名前は申し上げませんけれども選挙公報に、マル優存続いたしますとかマル優制度の発展、存続を図りますとか、いろいろな形ですけれども公報にも載っております。また、第一声やあるいは街頭演説の中でたくさんの方が言われて当選してきているということや、さらに加えて、自民党税調の小委員会の中でのマル優問題についての討論の中で大分いろいろと反対される意見も出されていることが新聞紙上にも載っているわけです。私は政治というものは国民信頼を得て進めていかなければならないものだと思うのです。ところが、このことが政治不信を一層拡大したものだと思わざるを得ないのです。政府の責任は非常に重大じゃないかと思うのですが、この点についてのお考えを。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 個々候補者があるいは議員自分の所見としてそういうことを述べられたということはあり得ることでありまして、想像にかたくございませんが、そういうこともあって自民党総裁立場としては明らかにしていく必要があるということからこのような六月十四日のいわば通達になったのであると思いますが、その中では「社会的に弱い人に対してはこれを維持していく。」と言っておりまして、それ以外の人に対して維持していくということを反対に言っておらないわけでございまして、総理総裁立場はこれで明らかであると考えます。
  7. 矢島恒夫

    矢島委員 いずれにいたしましても、国民政治への信頼を回復するために、やはりボタンのすべて間違ったかけ方を改めるためにも外していくべきだと思うのですが、こういう状況の中でなぜマル優制度だけを税制改革の中から取り出して急いでいるのかという点なんですけれども、昨年四月にアメリカ中曽根首相が参りましてマル優制度廃止を約束された、ことしのベネチア・サミットにおきましても各国に対してマル優廃止を言明した、こういう状況のもとでまさに前国会廃案になったこの法案にほとんど同じものを今国会に提出してくるということは、国会の無視であり、また国民の意向を顧みないというやり方ではないかと思うのです。特に、先日の二十七日でしたか参考人方々の御意見も、税制改革全般国民に示してその上で国民意見を聞くというのが民主政治だ、その中からマル優だけを引き抜いて今急いでいるということには非常に問題があるという指摘もあったわけなんです。こういうような問題について今大臣はどのようにお考えか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 諸外国、殊にアメリカ税制は、例えば住宅建設のための利子について所得控除をする、セカンドハウスまでよろしい、あるいは最近までは事実上ほとんどの借入金の利子がそういう特典を受けておったということは、アメリカ人からいえば、自分たち住宅建築なり消費なりを奨励しているそういう税制を持っているのに、日本は逆に貯蓄を奨励する税制を持っているではないか、両国の今の立場からいえばほとんど逆さまになった方がいいのではないかという批評があるわけでございまして、総理大臣の言われましたことは、そういうことに対してこたえられたのであろうかと思います。元来、戦争中あるいは戦後復興の時期から続けてまいりましたから今日余り怪しみませんけれども、我が国のようなきょうの状況になって、なぜ資産所得がこのような優遇を全般的に受けるのかということは、先入観をなくして考えると確かにそれは問題視されることであろう。しかし、社会的に配慮を要する人々に対しては制度として改組して残しておくということが政府立場でありまして、これは即また選挙中に総理総裁国民に言われたこともまさにそのことであったと思うのであります。その間、違約というようなことはないと考えます。
  9. 矢島恒夫

    矢島委員 やはり二重三重の国民への裏切りだということを指摘せざるを得ないと思うのです。今大臣からお答えいただいた貯蓄に対する優遇的な取り扱い、諸外国にも例がある問題だとか、あるいはまた日本貯蓄率が非常に高い、これは私どもにしてみれば的外れの非難だと思うのですが、そういうようなことにつきましては、二十六日に我が党の正森議員の方から資料を提出して逐一御質問申し上げたところでございますけれども、私もきょう資料をお配りさせていただいて幾つかの御質問をさせていただきたいと思うのですが、委員長、ひとつ資料の方を配っていただければと思います。  まず、お手元にお配りいたしました資料の一ページ、第一枚目でございますけれども、「勤労世帯年間収入五分位階級貯蓄種類別現在高と構成比——「昭和六十一年貯蓄動向調査報告」(総務庁)より−」という表がございますけれども、この表の貯蓄現在高というところを見ていただきますと、七百三十二万九千円がその平均値となっております。もちろんこれは非課税の枠内であることは言うまでもございません。さらに、この第一階級から第五階級の方へずっと横に見ていただきますと、もちろん第五階級に行くに従って貯蓄現在高はふえておりまして、第五階級は第一階級の四・六倍という数値が出ております。  この貧富の差の拡大がここ数年続いているということ。特にこの資料には載っておりませんけれども昭和五十七年、この第五階級と第一階級格差を調べてみますと三・八九倍になっておりました。五十八年に四・一六倍、六十年には四・三四倍、そして六十一年の統計では四・六倍とますます貯蓄現在高の格差が広がっている現状がここからわかると思うのです。  特にマル優にかかわり合いを持つ定期性預貯金の欄を見てみますと、やはり同様、第一階級、第二階級と進むに従って定期性預貯金もふえていって、第五階級と第一階級倍率は三・七七倍となっております。  さらに、もう少し下の方へ行きまして、有価証券の欄を横へ行きますと、何とその倍率は三十二・二倍、相当大きな開きが出てきているわけです。つまり、金持ちは財テクをやれても低所得の人はそれどころではないという状況がここからもわかるわけです。  こういうことにつきましては朝日生命もいろいろと分析した結果を出しております。朝日生命のまとめですけれども、この一、二年国民中流意識がやや薄れているのもこんな資産格差が一因ではということで書いているわけです。株式のキャピタルゲイン課税問題やあるいは土地政策などが抜本的に見直されないとこうした格差が今後も拡大していく可能性が強い、このように指摘しております。さらに、国民生活に関する世論調査をやった結果、中の中という人がどんどん減ってきていて、中の下がふえてきているという中で国民中流意識が徐々に弱まっている、この傾向もこうした資産格差が広がりつつある結果ではないかと朝日生命が言っているという記事が載っております。  そこで、資料の三枚目へちょっと飛ばせていただきますが、三枚目の下の欄に「勤労者世帯年間収入階級別持家率」という表を載せてありますけれども、これをずっと見ていただきますと、最初の百五十万から二百万の年間収入階級ですと持ち家率は二九・二%。だんだん上がっていきまして、八百万あるいは一千万以上になりますともう八〇%を超えている。こういう持ち家率総務庁から発表されているわけです。  全体を見てみますと、やはり貧富格差がどんどん拡大している状況をあらわしているのではないか。こういうときに二〇%の一律の分離課税をするということは、税制の大原則である累進性だとか、あるいは所得再配分の問題だとか、あるいは総合課税の問題だとか、こういう理念にも反していくのではないかということ。その上、今まで三五%の選択分離課税を選択していた人たちに対しましては、一五%一挙に下げて二〇%にしてしまう。同時に、所得税最高税率の問題でも、七〇%から六〇%に引き下げる。まさに大金持ち優遇税制改革であって、不公平感というものをどんどん一層拡大していくのじゃないか。この点について、大臣、いかがお考えですか。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私はそう思いませんので、あるいは御指摘のように、先ほど朝日生命を御引用になって、ここ一、二年云々ということはあるかもしれないと思うのでございます。しかし、ここ一、二年というのは、やはり日本経済がここ一、二年あるいはもっと、三、四年かもしれません、一種の変調期にありまして、そして雇用不安があったりそういうことが起こっておりますことがその根本的な原因ではないのか。もともと五分位というのはそういうふうに階層的に分けるのが目的でございますから、そういうことが起こりますとそれはどうしたって第一分位の方に響いていく。上の方の分位はその影響を受けることがやはり少ないというのはごくごく当たり前のことで、私は日本経済動向そのものにここのところ原因があるのではないか。ここ一、二年といったようなここという感じは私はそういうことではないかと思いますので、日本経済がもう少し正常化いたしまして、そして雇用が回復いたしてまいりますと、そういうことはやはりまた直っていって、中流意識というものがもっともっと充実していくんではないか、私はそう思っております。
  11. 矢島恒夫

    矢島委員 いろいろと御答弁されておりますけれども小倉税調会長大金持ち優遇になることを問題にしておりましたけれども、やはりその点については指摘しておかなければならないと思います。  そこで、資料の二枚目のことについてちょっとお伺いしたいわけです。これは「勤労者世帯貯蓄現在高階級別貯蓄及び負債の一世帯当たり現在高」の表であります。その欄外の方にちょっとまとめて、(注)の方ですけれども先ほども申し上げましたけれども、「勤労者世帯の一世帯当たり平均貯蓄現在高……約七百三十三万円」そのうち「中位数は四百八十四万円、」モードが百九十三万円、そういうような数値が出ておりまして、その下に、3のところに「勤労者世帯の一世帯当たり平均負債現在高」、その前に、1のモード、最頻値百九十三万円のすぐ下に「約三分の二の世帯平均貯蓄現在高を下回り、かなり貯蓄の低い方に偏った分布となっている。」そういうような状況がこれらの資料から知ることができるわけなんです。  つまり私が言いたいのは、先ほども不正を正すということがマル優廃止の一つの理由だということを総理も言われているというお話がありましたけれども、どうしてもこの不正をしているのは一部の大金持ちだ、そのことをもってみんなが不正しているように言うことは極めて問題があるのではないか。例えば、ここに自民党議員の方が言われていることですけれども新聞紙上で言われていることですが、「大蔵省の推計では、マル優貯蓄のうち不正はせいぜい六−七%。人数にすれば、一%程度ではないか。一握りの不正のために大多数のまじめな人が被害を受けるのは、角を矯めて牛を殺すたぐいだ」という記事が載っております。大臣、このことについてお考えをちょっとお聞きしたいと思います。
  12. 日向隆

    日向政府委員 私どもといたしましては、マル優制度の適正な運用を確保するため、毎年金融機関の店舗を選んで調査を実施しておることは御承知のとおりであります。この調査は、利子支払い者である金融機関源泉徴収義務者として所得税源泉徴収を適正に行っているかどうかを確認するためのものであります。したがって、非違のあった個々預貯金所有者所得状況についてまで全体にわたって把握していないのが実情でありまして、したがって正確には今委員指摘の事柄についてはわからないわけでございますけれども、これらの調査を通じまして得た感触といたしましては、不適正にマル優を利用しているのは一般に三百万のマル優非課税貯蓄限度額以上の預金を持っている比較的高額な所得者ではないかということであります。
  13. 矢島恒夫

    矢島委員 確かに、今お答えいただいたことは、国税庁も「資産家利子課税を逃れるため、銀行口一座を分散してチェックを免れているほか、預金獲得に懸命な金融機関が不正に加担するケースもあると指摘している。」ということで、やはり大金持ちが不正をしているんであって、どう考えてもこの非課税限度の枠内の働く人たちが不正をしようと思ったってできるものではないということは明らかだと思うわけです。  ところで、お手元にお配りいたしました資料の(2)の「負債」という欄がございますのでちょっと見ていただきたいと思います。「負債」の平均のところが二百六十四万七千円となっております。その「負債」のうち、下へ行きますが、「住宅・土地のための負債」、これが二百四十六万五千円、このようになっています。つまり、この負債のうちの住宅や土地のための負債というのが何と九三・一%を占めているというのがこの表からわかるわけです。  ところで、恐れ入りますが表の(3)の方をちょっと見ていただきたいと思います。「勤労世帯負債現在高の推移」というのがそこにあるわけです。これは昭和五十年から六十一年までの間の負債現在高が第一の欄にあります。年々増大していることは表の示すとおりであります。五十三年の百二十六万一千円に比べて六十一年は二倍以上になってきている。その表の一番右側に、「負債年収比」というのがあります。この「負債年収比」の欄を見ましても、五十年から六十一年に向かって年収に対しての負債の割合というのがふえていっているという状況があらわれていると思うのですね。  そこでまた二枚目の方にちょっと戻っていただきますが、この負債年収比の状況をこちらの表、つまり貯蓄現在高階級であらわした方で見てみますと、その(2)の表のちょうど「負債」と書いてあるところをずっと横に見ていただくことになると思うのですが、そのような状況がそこにあらわれており、そしてそのずっと一番下になります、その(2)の表の下の方に負債年収に対する比、一つ「収」が余計になっておりますが「負債年収比」、これを見ますと、百から百五十万の階級が七一・五%、以下どんどん減っていきまして、一千万円以上になりますと二六・五%、つまり一千万円以上の人の負債年収比に対して百から百五十万の階級人たち負債年収比は約二・七倍にもなっているわけなんですね。こういう状況を見てみますと、明らかに貯蓄現在高おおよそ七百三十三万円、それから平均の負債現在高二百六十四万七千円、引き算をしてみますと四百六十八万円になりますか。そういうように負債というものをやはり考えに入れていかなければならないんじゃないか。とりわけ低所得の百から百五十万、それから二百から二百五十万、この引き算をしたところを見ますと、つまり貯蓄現在高マイナス負債現在高というのがありますが、その欄を見ますといずれもマイナスになっているんですね。つまり負債の方が上回っているわけなんです。やっと三百万から四百万の階級になりまして四十三万円のプラスというのが実情であるわけです。  ですから、貯蓄現在高だけを見るのではなくて負債考えていきますと、一生懸命老後のためとかあるいは病気したときとか子供の教育のためといって貯金を考えているんだけれども、実際にはそのことにも役に立たないような状態なんだというのが実態じゃないかと思うのですね。こういう状態の中で一律に二〇%を課税していくということ、それがまた内需拡大につながるんだ、そういう御意見も言われておりましたけれども、内需拡大のために物を買うほどの貯金がない、ですから内需拡大になるものじゃないと思うのですが、引き続き今もマル優廃止が内需拡大に役立つとお考えなのか。まさに私は弱い春いじめ以外の何物でもないと思うのですけれども、その辺についてちょっとお聞きしたいと思います。
  14. 水野勝

    ○水野政府委員 お示しの表は、これは貯蓄現在高階級でもっておとりになっている数字であろうかと思うわけでございます。一方、負債の方は、ここにもございますように、圧倒的にその負債の九割ないしはそれ以上は住宅、土地のための負債分のようでございます。それがまた実態であろうかと思うわけでございますが、土地、住宅取得のための負債でございますから、それは負債とは申しましても住宅や土地としての資産形成になっているというふうに考えることができるわけでございます。また、貯蓄現在高との比較でございますと、土地、住宅取得のためには、当然お持ちになっている貯蓄を最小限度のものは残して取り崩して土地、住宅取得のために負債をしょわれる。したがいまして、当然の結果といたしまして、それだけ取り崩しておりますから貯蓄現在高階級としては下の方の階層に属し、それがまた負債との比較では負債の比率が高い。これはある意味で自然な結果ではないかと思うわけでございますので、そういう意味からいたしますと、ある程度貯蓄のたまったところで土地、住宅を取得されているという姿をあらわしておるということではないか、このように解釈もできるところでございます。
  15. 矢島恒夫

    矢島委員 そういう解釈をされましたけれども負債であることは間違いないわけですし、労働省の調査発表によりましても、六十五歳までには千五百万円ぐらいの貯蓄が必要だ。家を取得したり土地を買ったりしたことによっての負債であるということであったとしたって、貯蓄そのものはマイナスであったりわずかであったりというのが本当に働く人たちの実情なんですね。しかも一たん病気になれば土地を売るか家を売ってまたもとへ戻さなければならないというような事態も起こるかもしれない。そういうようなことを考えますと、今の御答弁ですとそれも一つの資産のうちだからということですが、国民は非常に貯金をしたい、貯蓄を何らか、老後のためとかあるいは教育のためとか病気のためにしたいと願っていてもなかなかできない実情にあるということは、これははっきりしていると思う。そこでこの二〇%の一律課税をしてくるということはまさに弱い者いじめではないかと思うのですが、いかがですか。
  16. 水野勝

    ○水野政府委員 先ほどの三枚目にもございますように、年収階層別に見ましての持ち家率というのは上の万ほど高いということでございまして、サラリーマンといたしましては、特にサラリーマンの中に階層があるというよりは、年功序列的な給与体系でございますと、一定の水準のところまでで貯蓄されてそこで土地、住宅を取得される、それによりまして貯蓄が減り負債がふえるわけでございますが、おおむね持ち家の取得あるいはその返済が終わりますと、後は貯蓄が、むしろ金融資産がたまっていく。そういうことからいたしますと、金融資産に対しまして適正な課税を行わさせていただくというのがそういう資産蓄積の状況にもむしろ合致するという面もあるのではないかと私ども考えるわけでございます。
  17. 矢島恒夫

    矢島委員 納得いたしませんが、次の質問に移っていきたいと思います。  ちょっと話が変わりますけれども、大蔵大臣、ちょっとお聞きしたいのですが、失礼ですが、今郵政省が郵便貯金の勧誘のためにテレビやそのほか雑誌などに広告を載せて宣伝しているのですが、キャッチフレーズを御存じでしょうか。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いや、どうも不敏にして存じません。
  19. 矢島恒夫

    矢島委員 その内容は、「郵便貯金は暮らしのオッパイです」というのです。これがテレビからずっと流れておりまして、あるいはつり看板等で出ているのです。私は、これはイメージ宣伝でしょうから、中身がどういう意味なのかということを一々せんさくするのもどうかとは思いますけれども、私なりにその宣伝の内容というものを考えてみますと、赤ん坊の画像がずうっと長く画面に出てまいります。そういうことから考えて、赤ん坊の成長になくてはならないものだということを言っているんじゃないかと思います。つまり生命に欠かすことのできないもの、それをイメージしているとすれば、郵便貯金はそういう命の成長に欠かすことができないものですよということで、このキャッチフレーズを使っているのではないかと私は思うのです。大臣は御存じないので、この画面についてどういうお考えがあるかということを今すぐお聞きするのは無理かと思いますが、これはどういうキャッチフレーズとして郵政省は使っているか、今もしお考えがありましたらお答えいただきたい。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 どうも申しわけありませんが、よくわかりません。
  21. 矢島恒夫

    矢島委員 要するに私が言いたいのは、このキャッチフレーズを使いながら郵便貯金の勧誘を今ずっとやっているわけなんです。ところが、マル優制度廃止してしまったら、まさに命を成長させる源なんだという、そういうイメージが使えなくなっちゃうんじゃないか。郵政省は、これだけじゃありませんけれども、このキャッチフレーズの宣伝を主にして、何か今年度おおよそ二十億円をかけているそうなんです。ですからマル優制度廃止ということによってこの二十億円がむだになっちゃうんじゃないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはよく存じませんが、普通に考えますと、政府が閣議決定をいたしまして国会に御提案している法案の内容は郵政省も当然知っているはずであって、御提案いたした以上、それが実施されるという前提で物を考えておられるのではなかろうかと存じます。
  23. 矢島恒夫

    矢島委員 私はこの二十億円がむだにならないことを願うわけなんですけれども、次の質問へ移らしていただきます。  私はこのマル優の問題を、これからもずっと続けますけれども、今いろいろと問題点を指摘してきたわけなんです。もちろん私たちの立場マル優制度廃止のこの法案を撤回しろということなんですから、減税の上積みいかんによってはどうのこうのという立場じゃありません。しかし、この間我が党を除いての与野党の書記長・幹事長会談などによるところの内容、こういうものを少し検討してみますと、どうも自民党の提案というものが不明確であると同時にごまかしがあるんじゃないか。  例えば八月七日に提案されましたが、二千億円の上積みですか、当委員会におきましてもバナナのたたき売りではないかという指摘がございましたけれども、その財源等については当時大臣も明確に御答弁されておりませんでした。その後、八月二十六日、第二回月の会談が行われまして、それで新聞等によりますと四百億円の上積みというようなのが出てきたわけなんです。ところが、八月七日の時点での合意といいますか、八月八日に新聞発表されておりますが、この二千億円の減税をどういうふうにするかという記事がほとんどの新聞に載っておりました。税率修正のやり方によってこれを上積みしていく。この税率修正のやり方というのはいわゆる一〇・五%の最低税率の適用範囲を広げていくということで、金額までずっと書いてあって、つまりは四百億円上積みしたというふうに新聞では報道されておりますが、中曽根首相も、上積みじゃなくて計算の処理をしたら出てきたものだというような発言をされておりますけれども、大蔵大臣、まさにこれは第二回の会合で上積みしたというのではなくて、第一回の合意のときにいろいろ考えて、こういう形でこの税制の率の見直しをやっていこうというので計算してみたら出てきたのがこの四百億円だ、このように解釈してよろしいでしょうか。
  24. 水野勝

    ○水野政府委員 私ども承知いたしておりますところは、お示しの八月七日に幹事長・書記長会談がございまして与党から一定の御提案がなされたところでございますが、その後国会の審議がございまして、それを踏まえましたところで、八月二十六日幹事長・書記長会談におきまして与党側から、その八月七日の与党からの御提案を実現する上での具体的な制度改正につきましての御提示があったところと承知いたしておるわけでございまして、この具体案の御提示に基づきまして昭和六十二年度の減税額を計算いたしますと一兆五千四百億円になるということでございます。
  25. 矢島恒夫

    矢島委員 計算して計数をきちんとやったらそのような形になった。新聞では上積みなんという表題を出したところもありますが、どうも事実とちょっと違っているということだろうと思うのです。  そこで、次の質問に移らせていただきますが、先ほど、勤労者の負債の大部分、つまり九三・一%が住宅、土地取得のためのもの、つまりローンであるというところを示したわけなんですが、最近の異常な土地の高騰という中で勤労者はもう都会には住めないような状態になってきている。こういう事態の中で、土地税制あるいは土地に関連している問題等、幾つか御質問申し上げたいと思うわけです。  その中で、まず土地税制問題として、八月二十八日ですか、六十一年度中に決算した資本金が五億円以上の大企業の申告所得状況、上位五十社を発表しております。それを見てみますと、いろいろな特徴があらわれておりますけれども、まず第一に言えることは、前年度に比べて金融業が十九社から二十六社になった。中でもこの土地ブームに便乗の信託銀行は、新たに三つ加わりましたから全部で五つになっている。不動産業も新たにこれは三菱地所が入っております。三菱地所も昨年度よりも収益を一八・七%、三井不動産が二五・一%、それから住友不動産も同様の収益を昨年度上げている。こういうように昨年との大きな違いがこの中にあらわれていると思うのですね。  もう一つ、これは民間調査の方の資料なんですけれども、資産百億円以上が百五十四人になった、こういう調査結果も同時に新聞に発表されているようであります。それで、ここのところをちょっと読んでみますと、「個人名義の資産が百億円を超す資産家は昨年より二十人増え百五十四人に」、「地価の高騰、株価高を背景に、新規公開企業のオーナー経営者や大地主が新たに資産家の仲間入りをしていることが分かった。」こういうようなことが書かれております。  どうも、こういう地価の高騰だとかあるいは株価の値上がりというものによってこういう事態、今私が申し上げましたような状況が起こっているということは、もう正常じゃない、異常だと私は思うのですけれども大臣、この辺は異常だとお考えになるかどうか。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 やはりこういうことが長く続くようでございますと、これはもう正常なことではないと思います。
  27. 矢島恒夫

    矢島委員 そこで、このような事態をつくった背景というものを見てみますと、やはり金融機関の問題が出てくると思うのです。金融機関が不動産業やあるいは建設業向け融資ということで、資料をいただいておりますけれども、この三カ年間について見てみますと、全国銀行の不動産業やあるいは建設業向けの貸出残高というのが、六十年三月末で約三十兆円、六十一年三月末になりますと三十六兆円、そしてことしの三月末で調べてみますと四十五兆円と非常に伸びておりまして、この四十五兆円というのは昭和四十八年以来の最高水準であるとも出ております。こういう状況の中で、新聞によりますと、これらの資金が地上げ屋の方にも回っているというような報道もされております。  こういう中で、昨年二度にわたって、国土庁土地局長からの大蔵省銀行局長への要請という中で、銀行局長が「土地関連融資の取扱いについて」という通達を出されておるわけですけれども、この通達が出されたが一向に効き目がないのじゃないかというところの問題なのです。というのは、今申し上げましたように、この融資を慎むようにという通達にもかかわらず金融機関や不動産業への融資が伸びているという状況を見ますと、金融機関の土地投機や底地買いに対する融資をもっと厳しく規制すべきではないか、そうでないと、また四十七年とか四十八年のときと同じようなことを繰り返してしまうのではないか、こう危惧するわけなのですが、この辺はいかがでしょう。
  28. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 先ほど委員がお示しいただいたように、いわゆる不動産関連融資というのはこのところ伸びております。ただ、不動産関連融資の大きな部分は実際には実需に基づく融資であろうというふうに考えておりますが、しかし、そういうものの中におっしゃるように土地の価格の暴騰の背景となっているような融資もあるやに考えられますので、先ほどお話がございましたように、銀行局長通達を出してそのような融資の自粛をするように強く要請したわけでございます。しかし、その後状況を見ておりますと、御存じのような中央信託銀行の事件等々も起こっておりますので、大蔵省といたしましては特別ヒアリングというものを実施しておりまして、現在も実施中でございますが、それによりましていわゆる投機につながるような融資の実態を個別行から詳しくヒアリングをしております。その結果といたしまして問題がある場合には、そのような融資の是正を指導いたしますとともに、そのような融資を行う融資の体制に問題がある場合には、その金融機関の行内の融資を決める仕組みについても是正を求めているわけでございます。したがいまして、金融機関の方もこの問題については真剣に取り組んでおりますので、我々といたしましては、やがて徐々にではあるかもしれませんが、効果が出てくるというふうに期待しているわけでございます。
  29. 矢島恒夫

    矢島委員 日銀の二十八日発表の四月から六月の全国銀行の貸付金の調査によりましても、六月末の不動産業向け貸出残高は三十一兆七千七百二十六億円で、前年同月末に比べて三五・一%ふえた、こういうことで、引き続きいろいろと規制等の問題等でやっているような御答弁ですけれども、どうもその効果が上がっていないというのが現時点での状況であることは、この伸びから考えてみてもはっきりするわけなんですね。そういう意味からして、あの通達で事足りたというのではなくて、やはりもっと実効ある規制を今考えていく必要があるのじゃないかと思うのですが、大臣、ひとつその辺の御決意を。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはやはり当然のことながら統計のおくれということもあると思いますので、先般始めました特別ヒアリングというのは、金融機関を選び、また、土地高騰の大きいと見られる地域を選んでかなり具体的にヒアリングをやっておりまして、いずれにしても金融機関はこういうことについて世間的な関連を非常に配慮する人々でございますから、このヒアリングというのは実は大変に効果を発揮しておるように私は仄聞いたしております。
  31. 矢島恒夫

    矢島委員 ぜひひとつ今日この土地高騰問題に対する銀行あるいはそのほかの金融機関の融資問題については真剣に取り組んでいただきたい、このことを申し上げて、土地税制の方に移っていきたいと思います。  もちろん、こういう土地の高騰というのは、税制面だけでできるものでないということを私も十分承知しております。しかし、土地税制というものが、地価の安定に寄与するものであったりそうでなければならないと思いますし、土地成金が生まれるような条件をつくったりあるいは土地転がしたとか投機を呼ぶようなものであってはならないと思うわけですが、今回の土地税制改革はその点どのような役割を果たすというようにお考えか、その辺をお聞かせいただきたい。
  32. 水野勝

    ○水野政府委員 今回御提案申し上げております税制改正法案におきましては、第一点といたしまして、所有期間が二年以下の土地等を譲渡した場合につきましては、法人につきましては三〇%の特別税率で特別の課税を行わさせていただく、個人の不動産業者等につきましては、その譲渡による所得の金額の五〇%とそれから本来の総合課税を行った場合の税額の一二〇%といずれか高い方の金額でもって所得税を課税させていただくという超短期重課制度を創設させていただくというのが第一点。それから、譲渡所得課税につきましての長期、短期の区分を、従来十年といたしておりますけれども、この点につきましてはこれを当面五年とさせていただく、それから個人の事業用資産の買いかえにつきましては、その買いかえに伴いますところの買いかえの率を八割に縮減させていただく、それから登録免許税の課税標準につきましてその引き上げ是正をさせていただく、こうした御提案をさせていただいているわけでございます。これらの措置が一体となって、一方におきましては仮需要の抑制、一方におきましては供給の促進、こういったことで当面の地価対策にもそれ相応の効果を期待申し上げているところでございます。
  33. 矢島恒夫

    矢島委員 超短期をつくることによっての供給あるいは課税強化による土地供給問題等も含めてお話がありましたが、このあめとむち論というのはちょうど二十九日のNHKの朝の経済セミナーでやっておりまして、私それを聞いておりましたが、土地の供給の面でいえば、やはりだれのための供給かというところが非常に重要ではないかというように思うわけです。今中曽根内閣が進めている民活促進というための供給であってはやはり困る、このことを一つ指摘しておいて、中身に入りたいと思います。  今の御答弁どおりに進行するかどうかという問題も含めましてちょっとお聞きしたいのですが、個人の土地譲渡にかかわる所得税負担がどうなるかということで、実はお配りいたしました資料の最後、四枚目、(5)というところですけれども、「個人の土地譲渡に係る所得税負担の仮定計算」、これは主税局にお願いしたわけなんですが、一番下の備考欄にもありますように「他の所得及び所得控除は考慮しないで計算している。」という前提がございます。  こういう中でこの表を見ますと、まず所有期間十年超の土地譲渡については、表からも明らかなように、三千万円から五千万、一億、そして十億、こういうように考えたわけなんですが、譲渡益が高額になるほど、つまり地価が高騰しているところほど減税率が高くなっておる。「差引」というところで二・一%、五・九%、最後の十億円になりますと一三・三%、こういうように現行に比べて減税率が高くなっているということがこの十年超のところで言えるのじゃないか。  それから二つ目に、五年超ですね。十年超が今までであったのが五年超に今度はするわけです。ですから、長期譲渡所得の対象が五年間縮まったわけなんですけれども、これによって、所有期間五年超十年以内というのがすぐ右側の表になっておりますけれども、上段の右側、これを見ましてもやはりここが一番大幅な減税が行われる部分になるわけで、「差引」のところの減税率を見ていただいてもおわかりのとおり、いずれも六〇%前後というようなことで、聞くところによりますと、これによって税収は百億円ぐらい少なくなるのだということでございます。  さらに、次の所有期間二年超五年以内、これは現行の短期と同じところに当たるわけですけれども、この表を見ましても、譲渡益階級でこれが高くなればなるほど、つまりは地価が急騰しているところほど減税率が高いというような結果が出てきている。  先ほどお話にありました超短期の部分を一番最後、右側の下側に試算してみたわけなんですけれども、これも確かに譲渡益階級三千万、五千万の部分はプラスですから増税になっている。しかし、一億円、十億円という部分については引き続き減税になってきている。  先ほどいろいろと御説明をいただいたわけですけれども、このことから、まず一つには、土地の供給を図ったと言うけれども、所有期間五年超を長期にしたということによって不動産屋とかあるいは大資産家という者に対しての利益を図ったものではないかという点。  二つ目の問題点として、都心の土地所有者、これは東京だけではなくて、今や私の埼玉県も、あるいは神奈川、千葉、大阪、名古屋など、特に商業地におきましては大変な土地の急騰を見ている。こういうところの土地資産家やなんかにいわゆるうまい汁を吸う機会を与えるんじゃないか、不動産業者も喜ぶようにしたのではないかという二つ目の問題。  三つ目の問題点といたしましては、土地転がしを抑えるあるいは土地投機を抑えるといっても、土地の譲渡益が今表にありましたように一億、十億というふうに高くなるところ、地価が急騰しているところでは効果がないのではないかということ。いわば比較的資本力の弱い、資力の少ない不動産業者を抑えるということにすぎないのではないか。これでは昨今の土地が急騰しているものへの対応策にならないという以上に、大土地所有者あるいは不動産業者に一層のもうけを保証しているようなものではないか。一方でマル優廃止してしまうということで勤労庶民はいろいろといじめられる。他方で土地資産家や不動産業者に減税もやるしこういう大もうけのチャンスも与えている。不公平の拡大ではないかと思うのですけれども、その辺についてのお考えを。
  34. 水野勝

    ○水野政府委員 今回、供給の促進といった観点からの改正といたしまして、所有期間の長短区分につきまして十年を五年にいたしておるところでございます。譲渡所得課税の所得税の本来の姿としては五年をもって長短といたしておる、これが本来の所得税の本則の姿でございますので、今回それに合わせたところでございます。それによりまして、長短の制度につきましては、御承知のように長期につきましては基本的には二〇%、短期は四〇%でございますので、新しく長期所得になる部分につきましてはこれが半分になるという効果がお示しの五〇%、六〇%減税になるというところの効果であろうかと思うわけでございます。  そのほかの点につきましての、例えば十年超、こういった点につきまして上の方ほど軽減割合が高いと申しますのは、御承知のようにここのあたりの一般的な課税方式は、四千万円までは比例税率の二〇%といたし、その上の部分につきましては二分の一総合課税でございます。今回所得税の基本的な見直しの一環といたしまして累進税率の緩和を行っておるところでございまして、勤労意欲、事業意欲等との関連から今回最高税率七〇を六〇まで下げてくるという改正をいたしております、これが譲渡所得につきましても、四千万円までの比例税率部分は変わらないけれども、上の方になりますとその効果があらわれるということでございまして、これは今回の税制改正の結果でございます。しかしながら、このように最高税率を調整いたしましても、我が国の所得税の六〇%というのはなお世界最高の水準にあるわけでございます。  また、超短期二年以内のものにつきましても上の方は軽減になっているという数字でございますが、これは所得税の姿でございまして、今回住民税の税率の見直し等も行っておりまして、その効果といたしまして現在行われております賦課制限制度が今回は撤廃されるわけでございます。そうした住民税の効果をあわせて考えますと、この十億円という階層につきましては負担の増加に相なるところとなっておるわけでございます。ただ、横並びでもって見ますと軽減になる、これは住民税を入れますと負担増加になるところでございますけれども所得税だけでございますと軽減になるという効果は先ほど所得税減税の効果でございますが、その場合におきましても、それが二年以内、五年持っていた場合、十年、こうした横並びで保有の期間をとってそれぞれ比較すればそこは相当な負担の差があるわけでございますので、その効果は期待されるところでございます。  なお、土地転がしといった現象をどのようにとらえるかなかなか難しいところでございますが、転売実績等によりますと、所有期間が大体半年といった例が相当な部分を占めているということのようでございますので、二年という期間を設定いたしますれば、その保有者が中小企業なり大企業なりを通じましておおむねカバーされてそれが効果を発揮できるのではないかと考えておるところでございます。
  35. 矢島恒夫

    矢島委員 譲渡益階級で高い方、一億円、十億円という方がいずれも減税幅が大きくなってきておるということについて、結局は税制改正部分の最高税率の問題等も絡んできてこうなっている。ですから、そこに問題があるので、全体的に税制を見ていくときに不公平の拡大であり大金持ち優遇ではないかという論理になってくると思うのです。  そこで、個人の方をやりましたが、今度は法人の方の土地譲渡益課税についてちょっと聞きたいと思うのです。  この問題の一つは、短期重課制度が十年以下保有から五年以下になって、やはりこちらもそうなっていますね。これはこれまで土地投機にかかわった法人の責任を免罪してまたまた大もうけの機会を与えることになるのではないかということ。また、超短期重課制度を創設された。これも二年間ですが、多少の効果はあると思いますけれども、土地の急騰地では果たして効果を発揮するのかどうか甚だ疑問なものではないか。二年を過ぎると五年以内は従来と同じことになるわけですから、決定的な土地投機規制にはならないのじゃないか。とりわけ本年四月以降法人の方は税率の引き下げになっておりますし、不動産関連法人をさらに優遇するようなものになるのではないかと思うのですが、この点についてのお考えを聞きたい。
  36. 水野勝

    ○水野政府委員 先ほど申し述べましたように、土地転がし的な短期の転売の実情を見ますと、半年というのが相当な部分を占めているということからいたしますと、二年間というのはほとんどのそうした事例をカバーできる、このように考えますので、相応の効果を私どもは期待をいたすところでございます。
  37. 矢島恒夫

    矢島委員 私、最初に不動産業界等における金余り現象であることをちょっと申したのですが、その中での土地税制の緩和、これでは、大蔵省は、地価対策、土地投機問題について、地価の異常な高騰を抑える政策をとらずに庶民を都心から追い出すことに協力するだけじゃなくて、不動産業界の大もうけを支援するようなものではないかということを指摘しておきまして、次の土地に関連いたします登録免許税の改正についてお聞きしたいと思うのです。  土地の所有権の保存登記あるいは所有権の移転登記等について、今土地の値上がり問題を指摘いたしましたが、こういう状況のもとで百分の百五十とするわけですが、なぜ今日こういう改正案を出してきたのか、その点をお聞きしたいと思います。
  38. 水野勝

    ○水野政府委員 御承知のように、登録免許税の課税標準は登記のときにおきますところの不動産の価額がその本来の姿でございます。ただ、その価額といたしましては、大量の方々の登録を受け付けるわけでございますので、全国的に網羅され、また客観的にそれが直ちに知られるものでないと効率的な運営ができないわけでございます。そうした観点からいたしまして、御承知のように登録免許税法の附則におきまして、不動産の価額と申しますのは当分の間固定資産税の評価額を使うこととされているところでございます。この不動産の固定資産税の評価額は、累次の評価がえによりましてこれが適正な水準に確保されるように努力はされてきているところでございますが、これは現時点におきましては通常の取引価格に比べますとやはりかなり低位にあるということは否めない事実でございます。そうしたところからいたしますと、不動産の価額をもって本来の課税標準といたすべき登録免許税が、そうした課税標準のとり方によりまして負担水準が低くなる、低くあらわれる、低い結果となるということになりますと、この税の性格からいたしましてもやはり問題であるということから、今回その見直しを行わせていただくというところでございます。  具体的に申し上げますと、昭和四十年代、五十年代におきましては、固定資産税の評価額が即登録免許税の課税標準でございますが、これと公示価格、例えば不動産の価格の一つの例として公示価格と対比いたしますと、おおむね四割程度の水準にあった。これが現在では二割台の水準になっておるわけでございます。そういたしますと、不動産の価格といったものを公示価格として考えた場合には、これが負担水準が実質的に半分になってきているというような見方もできるわけでございます。そうした点を踏まえまして、取引価格と固定資産税評価額との乖離状況や地価の動向等を踏まえまして、当分の間の措置といたしまして、今回とにかく課税標準を五〇%引き上げて、負担の回復と申しますか負担の適正化を回らせていただきたいということで御提案を申し上げているところでございます。
  39. 矢島恒夫

    矢島委員 評価額との乖離の問題、つまり土地の値上がりが激しいからそういう事態が起きてきているという部分ももちろんあるわけだと思うのですね。公示価格の二割台になってきているというようなお話もありましたけれども、要するに地価がこんなに高騰してきたのは一体だれの責任なんだという点がやはり問われなければならないことになるのじゃないか。その結果としてこの登録免許税の五〇%引き上げというような事態も出てきたわけですから。まず、何といいましても、内外企業の本社機能などが中枢管理業務を東京に集中する、そういう状況の中で、首都改造計画だとか四全総構想だとかいろいろ出されておりますけれども、結局容積率だとか高さなどの制限、規制緩和あるいは国やそのほかの公有地などを払い下げる問題、同時にまた土地投機を政府がきちんと規制し得なかったというようなところが今日の土地の高騰を招き、そして都心に勤労者が住めなくなってきているという状況ではないかと思うのです。そういうものに、これを五〇%もアップするということは、追い打ちをかけていくのじゃないかと思うのですが、その点いかがですか。
  40. 水野勝

    ○水野政府委員 土地に対しますところの税制といたしましては、その取得の際にお願いをいたします税制、それから保有におきましての課税をお願いします税制、それから譲渡をいたしましたときの税制、こういったいろいろな段階の税制があるわけでございますが、現時点におきましては、土地の取得に対します税制のあり方というのも非常に重要な部分ではないかと思うわけでございます。そうした点からいたしまして、土地の取得に際しましてその裏におる担税力に着目して課税をお願いいたしております登録免許税につきまして適正な水準の課税をお願いすべく御提案を申し上げているところでございます。  一方、これは土地の取得につきましての登録に際しての負担の見直しでございまして、その上物でございます家屋につきましてはその点の改正はいたさないわけでございます。また、マイホームの取得につきましては、所得税それから登録免許税を通じましてもろもろの措置を講じまして、その負担の軽減、合理化のために税制としても措置をいたしておるところでございますので、今回の結果がそうしたマイホームの取得につきまして障害になるというところのものではないと考えておるところでございます。
  41. 矢島恒夫

    矢島委員 国民は、都心はもちろんですけれども、大都市近郊の土地がどんどん値上がりしておりまして、ますます住めないような状態に来ているという状況だと思うのです。こういうところでは、庶民は新たな土地を求めることができないだけでなく、住んでいる人も固定資産税の毎年の引き上げがあるわけですからますます住んでおれなくなってきている、そこへもってきて、登録免許税五〇%アップなどということでは、まさに国民の負担増のトリプルパンチではないかと思うわけです。  例えば、私ちょっと計算してみたのですが、五千万円の土地の場合、現行で三十万円の登録免許税が必要だと思うのですね、現行の場合、千分の六ということで五千万円ですから。そうすると、六十二年、ことしの十一月一日以降になりますと、千分の九になりますか、ですから四十五万円になるわけで、十五万円のアップとなる。同時にまた、六十三年一月一日以降になりますと、固定資産税の評価がえの時期になります。六十年の評価がえのときにちょっと聞いてみたわけですが、六十年の評価がえのとき、自治省の話ですと、五十七年の全国平均で評価額の約二〇%アップ、こういうことですから、五千万円の土地は評価がえの中で六千万円になってくる。ということでやってみますと、登録免許税が五十四万円ということになりますか。そうすると、現行より二十四万円もアップすることになるわけなんです。まことにひどい話だと思うのです。大金持ちはこのくらいのことは別にこたえないかもしれませんが、ローンでやっと土地を買って家を建てようというような庶民にとっては大打撃だ。今までの政府の地価政策の失敗を国民にトリプルパンチの形で押しつけようというのではないか、そういうことを私強く考えたのですけれども、大蔵大臣はこの点についてはいかがでしょうか。
  42. 水野勝

    ○水野政府委員 ただいまのお示してございますと、千分の六という税率の点を御使用なさっておられますので、これは保存登記の税率であろうかと思うわけでございます。家屋につきましては保存登記という場合が多いわけでございますが、土地につきましては千分の五十というのが通常の税率でございます。こちらの方で計算いたしまして、それからもう一つ、先ほど申し上げました不動産の価額というのが課税標準として固定資産税評価額を用いた場合にどれだけの開差があるか。先ほどかなりな格差があると申し上げましたところでございますけれども、これが仮に先ほど申し上げた公示価格に対して二〇%というふうな仮定を置きますと、その土地を取得されるときの価格に対しまして〇・五%の引き上げになろうか、単純に計算いたしますとそうなるわけでございます。また、三〇%の場合は〇・七五%の引き上げとなろうかと思いますので、今後土地を取得される方につきましてこの程度の御負担の増は、本来の不動産の価額を課税標準といたします登録免許税といたしましてはこれは本来の姿ではございますが、これが結果としてそれだけの負担増になる、この程度の負担増につきましては御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  43. 矢島恒夫

    矢島委員 保存登記の形で計算をしてみたということはそのとおりです。ただ、このような事態で庶民はますます住めなくなってくる、土地が取得しにくくなる、トリプルバンチだということを指摘したいわけなんです。  今までずっと土地問題等についてお聞きしてきたのですが、時間の関係であと少ししかありませんので、医療費控除問題でちょっとお聞きしたいのです。  医療費控除の足切りを五万円から十万円に引き上げるというような内容になっているかと思うのですが、これによって大体百億円ぐらいの増収ということだそうですが、総務庁の家計調査年報によりますと、六十一年の医療費は全世帯でその金額が八万三千五十三円と出ています。勤労者世帯の場合には八万三千八百十三円。いずれも八万円台なんですが、しかし、健康保険制度の改悪などによって何とか医療費を切り詰めようというので、これでもここ三年連続実質減少となっているのです。この八万三千円というのが平均ですけれども、今度の医療費控除の足切り額を十万円に引き上げるということで結局のところ足切りになってしまう。ですから国民の大多数は医療費控除を認められなくなってしまうわけなんです。マル優廃止の上に今度は医療費の方でも医療費控除が受けられないような形をなぜとるのか。その辺について、大臣
  44. 水野勝

    ○水野政府委員 医療費の支出ももろもろの個人の生活上の支出の一つなわけでございます。基本的には、個人のそれぞれの世帯に対しますところの所得税の課税といたしましては、そうした基礎的な支出につきましては課税最低限をもって対処させていただく。ただ、通常の水準を上回るような例えば多額の医療費につきましても、多額の医療費支出を余儀なくされた場合には、一般的な支出といたしまして課税最低限でもって対処していただくということとはややかけ離れてまいります。そうした異常に多額な支出を余儀なくされた場合に、その場合の通常の場合に比べましての担税力の減殺、これを課税上しんしゃくするというのが御承知のように医療費控除制度の趣旨でございます。したがいまして、一般的な平均的な医療費の支出水準といったものは本来課税最低限の中で対処され、これを異常に上回る部分につきまして対処さしていただく、これが制度の趣旨であろうかと思うわけでございます。  これが現在のところ定額基準といたしましては昭和五十年に五万円と定められて以来十二年間据え置きとなっておるところでございますので、この点を、その後の医療費支出の状況、それから一般的な家計の所得水準、こうしたもの等を勘案いたしましてこのような見直しを御提案させていただいたところでございます。
  45. 矢島恒夫

    矢島委員 先ほども私申し上げましたとおり、六十一年度の医療費の平均というのが八万三千円前後ということで、今日までいろいろとこの医療費控除の手続は税務署にとりましてもなかなか大変だったなんという話も聞いているわけですが、この制度を利用する人が五十年のときが二十四万人ぐらいであったのが五十九年になったら九十六万人にふえてきているということをお聞きしているのです。結局のところ、税務署で検算やあるいは還付手続、こういう事務負担がふえて困っているという、先ほどの話のように納税コスト切り下げのため何とか合理化しようという理由がもしあるとすれば、これはまた大変なことだ、庶民いじめをするためにできるだけ手続をする人を少なくしようという意図だとすればこれは許せないことなんで、一部報道されているそういうことについてどうお考えか。
  46. 水野勝

    ○水野政府委員 この医療費控除制度の趣旨につきましてはただいま申し上げたところでございまして、一般的な医療費支出の水準は、これは一般的に人的控除なりでカバーをしていただくというところでございます。  現在定められております五万円の金額は昭和五十年に定められたところでございますけれども、この見直しのときに前提となりました昭和四十八年、九年あたりの水準を見ますと三万円から四万円の医療費支出の状況のようであったわけでございます。これが現在一般的な水準として八万円程度にまで上昇しているということからいたしまして、こうした観点から五万円を十万円にさせていただくというのが今回の改正の趣旨でございます。
  47. 矢島恒夫

    矢島委員 大臣にお聞きしたいのですが、今国会毎日のように先ほど申しましたようにマル優制度廃止反対だという陳情方々が見えているわけですが、この医療費控除の足切りの話をちょっといたしましたら、みんな、これはひどい話だというふうに怒っているのです。とりわけ、私はちょうど埼玉ですので、埼玉の方から見えられた方で糖尿病の御婦人が、二週間に一回通院しているんだそうです。病院へ行くにもタクシーで行かなければならない状態だ。この人は国民健康保険を使っている人ですから、毎月二、三万円の医療費がかかると言いますが、医療費控除の対象になるわけですけれども、しかし家計を圧迫していつも主人に大変肩身が狭い、申しわけないと思っている、医療費については全額控除を認めてほしいんだ、そういうお話があったわけなんです。私は本当にもっともだと思うのです。まだいろいろとお会いする人たちに気の毒な話の方々もいらっしゃるわけなんです。私は、こういう人たちのためにこそ政治はきめ細かな配慮をすべきであって、病気で困っている人の医療費控除カットで百億円増収を図る、あるいは、先ほどは否定されましたが、税務当局のコストの切り下げというようなのでは余りにもひど過ぎるのではないかと思うのですが、大臣、ひとつお考えを。
  48. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは個々のケースについて伺っていますとそういうこともあろうかなということは否定いたしませんが、ただ、一般的な支出につきましては課税最低限というものがあるわけでございまして、いろいろな控除をそのためにしておるわけでございますから、そういう意味では医療費といえどもそういう種類の支出であるということに違いはないわけであります。したがいまして、いわば平均的なものを超えたと申しますか、これは一般的な控除あるいは課税最低限では扱えないというものについて控除を認めていくという制度、こういうことでやらせていただくしかないのではないかと思います。
  49. 矢島恒夫

    矢島委員 いずれにしろ、そういう社会的に弱い立場にある人、困っている人たち、こういう人たちに温かい手を差し伸べるというのが政治だと思うのです。そういう点を十分に考えていただくということを要求したいのです。  いよいよ時間がなくなりましたので、あと私は各種加算税問題についてお聞きしたいと思ったのですけれども、その時間がございませんので、最後に大臣にちょっとお伺いしたいのです。  私は、今まで公約違反の問題だとか大金持ち優遇の問題だとか貧富の差の拡大の問題だとかあるいは不公平の拡大の問題などをずっと質問してきたわけなんですが、今日、マル優制度廃止というのがいわゆる新しい大型間接税導入の一つの突破口になるんだ、さらに税制改革の最終目的は大型間接税にあるんだというようなことでの新聞報道もたくさんされているわけですけれども大臣は、これを一つの突破口として新しい大型間接税導入しよう、こうお考えかどうか、その辺をちょっとお聞きしたい。
  50. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その間に私は特に因果関係はないと考えます。
  51. 矢島恒夫

    矢島委員 どうも因果関係がないと言われましても、大臣、それは因果関係がない、一つの税制改革の一環としてやっているのだ。扉が半開きになったという中曽根首相発言もありましたし、いろいろな発言を見ますと、これは一つの突破口だと考えざるを得ないし、因果関係がなかったとしても、大臣、これからの税制改革の中で大型間接税についてはどういうお考えか、ちょっとお聞きしたい。
  52. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この利子課税の問題は私は所得税法というものの中の問題だと考えておりますもので、それで先ほどのようにお答えを申し上げたわけでございますけれども、これから各党の御協議による税制改革協議会等々でも議長からのごあっせんもあっていろいろ将来のことを御検討いただくのであろうと思います。私どもも、これからの二十一世紀までの根本的な税制改革考え、また我が国全体が老齢社会に、あるいは高寿社会というのでございましょうか、入っていくということを考えますと、今のままの税制ではなかなか将来は大変であろうということは思っておりますので、その点は将来殊に所得税、法人税等々の減税を本格的にしてまいりますと、今の財政事情ではそれに見合った何かの歳入措置が要るというふうには考えております。ただしかし、前国会の経緯もございますので、この点はしばらく税制改革協議会の御協議を見守ってまいりたいと考えております。
  53. 矢島恒夫

    矢島委員 大臣税制改革協議会のことを出されましたけれども、私は十八日の本会議での質問の中でもこの税制改革協議会なるものは極めて問題があるものであるという点を指摘したわけなんです。ですから、税制改革協議会の成り行きを見てという御答弁についてはどうも納得いかないということを申し上げたいと思うのです。  時間になりました。私今までずっと述べてまいりましたように、公約違反であるマル優廃止、こういう問題は撤回する以外にないんだ、さらに、どんな形にしろ、新しい大型間接税導入、こういうものにも反対である、今やることは三兆円減税、それにさらに課税最低限三百万円以上ということを実施すべきであることを要求いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  54. 池田行彦

    池田委員長 早川勝君。
  55. 早川勝

    ○早川委員 今回の所得税法等の改正法案等について質問いたしますけれども、それとの絡みで若干の関連事項についても伺いたいと思います。  今の同僚委員の最後の質問で、大蔵大臣はいわばこれからの税制改革については協議会の協議を得てということを言われたのですが、先月の二十八日の自民党の軽井沢セミナーで竹下幹事長は、税制改革は新内閣の手でということで、その際には大型間接税を含めてというようなことを話されております。それと同時に、財界人のアンケートの中で次期政権の課題は何かということがありますけれども、その中では、第一にはやはり税制改革だという回答が出されております。そういうことを考えますと、次期内閣、どなたがなられるかわかりませんけれども、仮に大蔵大臣が内閣を組織するということになりましたら、やはり最大の課題は税制改革だ、このように思われますか。
  56. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今前提になさいました問題はちょっと外しましても、税制全体の問題あるいは財政全体の問題から考えまして、やはり税制改革というものはこの時期に将来に向かってなさなければならない大切な仕事ではないかと存じます。
  57. 早川勝

    ○早川委員 今回の改革案というのは、いわば売上税の旋風の後処理のような中身になっておることは御存じのとおりなんですが、中曽根首相は昨年の選挙のときにいわゆる増減税同額だということを言われまして、所得減税所得税と住民税減税含めてですが、二兆七千億円の減税をやりたい、それから法人税減税は一兆八千億円、したがって減税総額は四兆五千億円、マル優廃止は一兆六千億円で財源を確保して、さらに売上税で二兆九千億円、それで四兆五千億円の同額になる、こういう構想を出されたわけです。今回、この三月のときの租税特別措置法が日切れということで通りまして、法人税の四三・三%が四二%に税率が下がった。そこで五千億円の法人税減税が行われて、そして今回所得税が一兆五千四百億ですか減税された。そうしますと、所得減税額においても法人税の減税額においてもいずれも昨年中曽根首相が提示された減税額を下回っているわけですね。そうすると、減税額においても実施されるべき額はまだ残っているわけです。  内容的にも、例えば所得税割の税率構造がさきの通常国会で出されたいわゆる二段階で簡素化を図る、現行の十五段階を十三段階にしてさらに六段階にまでする、そして二兆七千億円の所得減税のうち所得税だけは一兆九千億円ですが、そういう構想が出されたわけですね。今回は一兆五千四百億円、その中間が出てきているわけですね。税率の刻みも、政府案は十三段階ですけれども、過日の書記長・幹事長会談の中で十二段階に修正するという合意が成りました。そうしますと、当初考えられた六段階というところが最後に残っていると考えるわけです。この六段階に行く課題。  それから法人税についてもやはり同じことが言えるわけでして、当初案ですと、六十一年度は四三・三%だったのが、租税特別措置法が通ったときに、ことしは四二%に法人の基本税率がなっている。出された法案は、来年度はそれは四〇%に下げて、しかも六十四年度には三七・五%に下げる、こう三段階に下げていく。現在は一段階で終わっている。そうすると、あとの二段階が残っている。それから法人税に関連して言えば、引当金も四段階で下げていく。それから受取配当金益金不算入、これも段階的に整理していく。この部分が全部残っているわけですね。  したがって、恐らくこれは次の内閣の課題ではあるんですけれども、時間の問題があると思うのですね。少なくとも当初考えられていた六十四年度くらいまでに税制改革をやりたいというのが途中でとんざしている。当初にもう一度戻しますとあと二年なんですけれども、そういうふうに考えますと、どれくらいの時間をこの税制改革という問題について一応考えたらよろしいでしょうか。
  58. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず、既に行われております法人税減税あるいはただいま御検討いただいております所得税減税案等々が、いわば当初政府考えておりました行き着く姿、最終案から申せば、その中途半端なものである、あるいはそれに甚だ達しないものであるとおっしゃっていらっしゃいますことは、そのとおりでございます。政府としては、我が国の所得税は、もう何度も申し上げましたので省略いたしますが、勤労意欲を損なうおそれがあり、また法人税も各国との比較において引き下げる必要がある。そして、シャウプ以来の大改正をやりまして、これで将来に向かって長い間耐え得るような税制を仕上げたいと考えておりますことは、依然としてそのとおりでございます。  ただ、そのためには、現在の財政状況から申せば、かなりの新しい財源を必要とすると政府考えておりまして、これらの構想、殊にその中で新しい財源に関する部分は厳しく前国会において御批判を受けて廃案になった、それが現在の段階でございます。そういう段階が現在でございますが、将来に向かって所得課税あるいは法人課税を大幅に軽減して新しい税体系を、税構造をつくりたいという必要は、私は一向に変わっていないと考えております。  問題は、それならばそのようなことを可能にする財源をどこに求めるかということであろうと思いますが、これにつきましては、つい前国会であのようなことが起こっておりますので、軽々にもう一遍問題を持ち出すということは考えなければならない。問題がございますから、新しく国民の御理解を得て、こういうこと、ああいうことではということは、やはりある機会には申させていただきたいとは思っておりますけれども、その間に税制改革協議会が発足をせられまして、その場においてそのような問題を検討するようにという衆議院議長のごあっせんがございます。したがいまして、税制改革協議会が設けられましてからまだ三カ月余りでございますから、これからその問題についてもいろいろ御検討が進むであろう、その推移をしばらく見させていただくのが政府としての当然の配慮でなければならないであろう、こう思っておりますので、いわばそういったような問題を全部私ども含みながらしばらく税制協議会の御検討の推移を見させていただきたいということになっているわけでございます。
  59. 早川勝

    ○早川委員 その場合に、前回出された税制改革案の全体、いわば全体像というのは、減税と増税が同額でという構想で出されているわけですが、私などは、そういうふうな形で出すのではなくて、先ほど言いましたように、法人税自体での改革構想が出されてとんざしているわけですから、それはそれで次年度以降なら次年度以降でも着手できるのではないか。やはり所得税減税についても同じことが言えるのではないか。つまり、それをやらずに、また今の改革案の中で協議会の推移と言われておりますと、また何かこう、マル優問題がありますけれども、それ以外の新しい財源構想がセットにならないと出せない、このようにお考えですか。
  60. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず法人税におきましては、先ほど指摘のこの五千億分というのは、政府としてはそれに対応するいろいろな引当金でありますとか受取配当参入の問題でありますとか、考えておったわけでございます。現在でもおるわけでございますが、このことは、今の一・三%下げました分に何とか対応したいという部分でございまして、それで法人税の引き下げはもう能事終われりというわけではございませんから、やはりそれから後の問題があろうと思うのでございます。いわんや所得税におきましては、これで済んだというふうに考えておりませんので、将来の問題がある。で、財政の収支状況が現在のようなあるいはそれと多かれ少なかれ余り変わらないようなことを前提にいたします限りは、やはり大きなスケールの減税はそれに伴う新しい財源を見つけなければ現実の問題として困難であるということを申し上げざるを得ないと思います。
  61. 早川勝

    ○早川委員 今回の税制改革に当たっての理念というのか原則の一つに、税収の中立性というのがございますね。今回法人税といわば所得税が先行して減税されるという形にはなりましたが、今年度に関連していえば、自然増収、六十一年度の剰余金等があるからバランスするということを言われましたが、今回の一兆五千四百億円の減税、それから法人税の五千億円の先行を含めまして、剰余金を抜いた場合のいわゆる税収というのは、税制改正におけるバランスということを考えますと、どういう結果になりますか。
  62. 水野勝

    ○水野政府委員 六十二年度分といたしましては、今お示しの一兆五千四百億円、これに対しまして六十一年度の剰余金といたしまして一兆三千五百億円程度の剰余金が残っておるわけでございます。もちろんこれは二分の一以上を国債整理基金に繰り入れるという規制を除外した場合の話でございます。  一方、今回所得税減税とともに御提案申し上げております改正法におきましては、有価証券取引税等々につきましていろいろ見直しを行わさせていただいているところでございまして、そうしたものによりますところの増収額と申しますか収入額が、六十二年度といたしましてはそうしたものをいろいろ寄せ集めますと千九百億円程度のものになるわけでございますので、今回の減税規模といたしまして六十二年度分といたしましてはそこはおおむね見合っておるかということでございます。
  63. 早川勝

    ○早川委員 六十二年度は剰余金を含めましてバランスすると思うのですが、今回の税制改正案がそのまま六十三年度に移行した場合に、この減税と増収のバランスはどのようになりますか。多分減税が多くなって足りない額が出てくるんじゃないかと思うのですが。
  64. 水野勝

    ○水野政府委員 六十三年度以降もこれとほぼ同規模の減税が行われることになるわけでございます。それに対しますところのいわゆる恒久財源といたしましては、その中心をなすものは利子課税の見直しとして御提案させていただいているところのものでございます。これは国税、地方税合わせまして一兆六千億円でございまして、このうち国税といたしましては一兆円弱のものが見込まれるところでございます。したがいまして、あと数千億円のものは恒久財源としてはなかなか見込みが難しいところでございますが、登録免許税を今御提案申し上げております。こうしたものは期限つきのもので、当面の措置として御提案申し上げているものでございます。こうしたものも寄せ集めて計算すればほぼ見合うという計算もできないわけではないわけでございますが、恒久財源として見合うという意味で厳密のお話でございますと、それはなかなか厳しい状況にあるということでございます。  また、利子課税についても、御提案申し上げている改正が平年度化をいたしますのは五年、六年後でございます。したがいまして、それまでの間の見合い財源につきましてはやはり大変厳しい状況にあるわけでございますが、その年その年の歳出歳入を通じた財政運営の中で何とかやりくりをしてまいることになろうかと思うわけでございます。
  65. 早川勝

    ○早川委員 税収の中立性という意味は、税制改正による減税額は税制改正によるあるいは新税による増収で賄うということだと思うのです。決して自然増収が上がってきたからそれでバランスすればいいという話じゃなかったと思うのです。そうすると、今主税局長のお話に出ましたように数千億の減収が六十三年度予算では出てしまうのですね。そうすると、それを税制改正で賄うとすれば、来年度、六十三年度税制改正の中心は数千億に上る増税案が出てくる、こう考えてよろしいですか。
  66. 水野勝

    ○水野政府委員 計数的に計算すればただいま申し上げたようなことになるわけでございますが、今後六十三年度以降の税制改革、特に六十二年度の税制改革を具体的にどのようにお願いしていくかにつきましては、今月から年末にかけましての全体の財政運営の中で検討させていただくことになるわけでございますので、少なくとも六十三年度におきまして見込まれるその差額につきましてどのように処理するか、これは今後の検討課題でございます。
  67. 早川勝

    ○早川委員 税収の中立性はやはり堅持する、多分そういう考えを持たれていると思うのです。その場合に、自然増収という問題が出てくればそれは減税に回せばいいと私などは思うわけでして、やはり堅持するならばきちんと税制改正でバランスさせるという発想をした方がいいのじゃないか、こう思っております。自然増収が大いに期待されるので、それで先ほど言いましたような所得税改正、法人税改正、とりわけ住民税が、今度出された改正を見ますと、当初案に出ていた十段階、四段階というのをまたミックスしたような形で七段階までの税率構造に変えているわけです。その点で考えると、所得税の方がかなりおくれているという形で、先ほど大臣は、いわば中間的な改革案だ、まだまだ残っている、基本的な簡素化を含めて考えるとこれからの課題だと言われたわけですけれども、やはり税収の中立性を言われるならば、当初考えられていた改革案というのをタイムスケジュールをきちんと明示していった方が国民の方にはわかりやすいのじゃないかと思うのです。そういう意味で振り返ってみますと、四兆五千億円ずつ提示した、いわゆる全体像はこうですよ、その中で時間的に、法人税はこう変えます、所得税はと、少なくともこういう形を出したわけですね。したがって、次期内閣の最重点課題が税制改革であることは恐らく衆目の一致するところでありますので、ぜひスケジュールを明らかにしていただきたいな、こういうふうに考えております。  次に、この委員会でずっと行われておりますマル優廃止の問題について伺いたいと思いますが、政府税制調査会の昨年出された答申では、いわば四案が出されたわけです。少額貯蓄非課税制度についての改組案というのですか改革案ですか、四つの案が出されたわけです。  第一には総合課税案、第二が確定申告不要制度を併置した方がよい、三番目は低率分離課税、四番目が一律分離課税、こういう四つの案が出されまして、出てきたのは一律分離課税なんですが、この一律分離課税を選択された最大の理由というのはどういうところにございますか。
  68. 水野勝

    ○水野政府委員 利子所得と申しますのは、極めて大量の口数を持ち、また極めて流動的な性格も有しているわけでございます。そうしたものにつきまして実質的に公平な課税を行わせていただくという意味におきましては、その利子所得の発生の大量性、元本である金融商品の多様性、浮動性といった特異性のある利子所得につきまして実質的に公平を確保できる課税方式としては一律に源泉分離課税を行わせていただくというのが簡素、中立、効率という要請にもこたえる方式ではないか、これが税制調査会でも四つの方式につきましていろいろ説明をいたしておりますときの言いぶりでございます。  ただ、今回御提案申し上げておりますのは、全く一律分離というわけでもございませんで、所得の稼得能力の減退あるいは滅失した方々につきましては引き続き非課税を続ける、これが大体四分の一程度の貯蓄額につきまして適用がされるわけでございますので、完全に税制調査会が提案した一律分離ということではございませんが、考え方といたしましては利子所得の特異性に応じた実質的に公平を確保できる方式ではないかというのが今回の御提案の理由でございます。
  69. 早川勝

    ○早川委員 その答申の中で、一律分離課税については、長所は簡素であり中立て効率的だという見方がある一方、短所では公平、公正に反する部分があるという表現で指摘されていると思うのですが、そういう観点で考えますと、長所は簡素、中立だからそちらの方を優先させてこれを選択した、こういうふうにとらえてよろしいですか。
  70. 水野勝

    ○水野政府委員 お示しの点は、「他方、同方式を採ることとすれば、高額所得者の負担が大幅に軽減される一方」云々と「公平、公正という点で問題があるのではないか」という表現が確かにあるわけでございます。ただ、今回、従来実質的にはほとんど課税が行われておりませんでした郵便貯金につきましても、郵便局それからその預金者に新たに課税をお願いをするようになる、こうした点からいたしまして、今お話しの簡素、効率といった要請にこたえる方式としてこの一律分離という方式をとらせていただいたわけでございます。  また、高額所得者の負担が軽減されるという点のコメントでございますが、現在一方にございます三五%の源泉選択制度の利用状況等をも調査いたしまして、そうしたものが所得水準等との関連でおおむね各水準を通じて利用されておるという実態をも調べまして、こうした点の指摘にもおこたえできるのではないかということから一律分離方式をとらせていただくことで御提案を申し上げているところでございます。
  71. 早川勝

    ○早川委員 大臣に伺いますけれども中曽根首相の掲げた、そして大蔵省が取り組んでおられる税制改正は、公平、公正、簡素、活力、国際性だとか六つばかりございますけれども税制改正に当たっての最重点、第一位のプライオリティーを持つ原則は私は公平、公正だと思うのですが、この点についてはいかがですか。
  72. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それを欠きましては国民に受け入れられる税制、税務行政というものはなかなか難しいと思いますから、そういうお考えに私も同感でございます。
  73. 早川勝

    ○早川委員 そうしますと、今の一律分離課税に関連して、答申にもありましたように、どちらかというと長所である簡素という面が非常に表面に出たと思うのですね。そして短所である公平、公正というのは若干後ろに下がったわけだけれども、総体としては幾分かはカバーできるだろうという形で一律分離課税、基本的にはそういう仕組みをとったわけですけれども、やはり公平、公正といういわば基本原則、第一位の原則をとりますと総合課税が望ましいと思います。総合課税が望ましいけれども、事務的にはえらい煩雑になるということがそれがとれない理由だと言われると思うのですが、結局今回の一律分離課税を採用して、そして八月七日ですかこの与野党協議の中で、総合課税への移行問題を含め五年後に見直しを検討するということを言われているわけですね。  そうしますと、御存じのように、今ある利子課税制度というのは、一方に非課税制度がありまして、他方に課税制度があって、源泉分離選択課税としかも総合課税というふうに、大別すれば二つに分かれて、さらに分ければ三つに分かれているわけですね。今回はこの源泉分離選択課税を総合課税のところも完全に切ってしまうわけですね。基本的には非課税のところになっていくわけですね。  そうすると、ではそれが五年後に見直しとなった場合に、「総合課税への移行問題を含めこというまくらがありますけれども、やはり公平、公正の原則に立つと総合課税にいかなければならない。総合課税に行くに当たっては、今の方が仕組みとしては残っているわけですからいいのではないか。残っている部分を拡大していく。総合課税と源泉分離選択課税とありますけれども、その総合課税のところを拡大していけば非課税制度というのが吸収できるわけですけれども、今度非課税制度をなくして一律分離課税、つまり分離課税にしてしまったわけですね。そして総合課税に移行する。なかなか難しいのではないかと思うのですけれども、この点については主税局長の方はどのように考えておられますか。
  74. 水野勝

    ○水野政府委員 五年後に、五年を経過した場合にその検討を、ここで方針を明らかにするという八月七日の与野党幹事長・書記長会談の御提言があるわけでございまして、これが現在与野党でお話し合いがされて詰められているところでございますので、そうした点がどのように措置されるか。これは私どもとしてもそれを注視してまいり、それが何らかの形で具体化されればこれを尊重してまいるところでございます。  したがいまして、これを総合課税との関連で現時点におきましてどういうふうに考えるかということは難しい問題で申し上げにくい点でございますが、現在の一律分離課税は国税、地方税合わせまして二〇%の源泉徴収を行わせていただきこれをもって課税が完結するという方式でございますが、総合課税という場合におきましてもこれは必ず源泉徴収は恐らく存置され、源泉徴収の上でさらにどのような措置をするかというところが問題になることではなかろうかと思うわけでございますので、現在総合課税分は二〇%の源泉徴収がされている、これを老人、身体障害者等を除きましては一般的に国税、地方税合わせまして二〇%で源泉徴収させていただくというところに拡大し、これをもって一応現時点では課税が完結するという方式でございますが、その源泉徴収後にどのような措置を講ずるかといったところが先ほど指摘の四つの方式、総合課税、申告不要云々とあるわけでございますから、それは現時点からでございましても、また今回の一律分離課税からでございましても、そこは総合へ移行するという場合でもそれほど差があるわけではないだろう。むしろかなりな部分が非課税として扱われているところから総合に行くというのはやや異質な気もしないわけではない。そこは今後のまさに今お話し合いの中での御措置であり、それがまた今後五年間、今後世の中の一般的な事務処理状況とか納税者の心理とか、そういったものがどう変化するか、それらをすべて見た上での話ではございますけれども、一律分離課税から総合課税に移行というのがほかの方式と比べて特に問題がある、困難であるというふうにも考えられないのではないかという気もするわけでございます。
  75. 早川勝

    ○早川委員 そうしますと、今回の措置によって五年後の総合課税も、国民世論の動向、そして政府の方針等を考えれば、その結果によっては総合課税も割とスムーズに行ける、このように理解してよろしいですか。
  76. 水野勝

    ○水野政府委員 私どもといたしましては、現時点におきましては、実質的に公平を確保できる、簡素、中立、効率という要請にもこたえられるものはやはりこの一律分離課税方式であるということで御提案をさせていただいているところでございますので、その先のことにつきましては現時点ではなかなか申し上げにくいところでございます。
  77. 早川勝

    ○早川委員 マル優廃止がいかに不公平という問題を含んでいるかということは再々指摘されておりますので繰り返しませんけれども、今回の所得税の刻みで、恐らく四百万円を超えるところが一四%ぐらいの所得税の適用税率だと思います。マル優は一五%ですから、所得税の場合一五%ですね、そうしますと、それ以下の人はいわば取られっ放しで、分離課税所得税一五%取られてしまうわけですから、ましてや非納税者のところには返ってこないわけですね。そんなことを考えますと、前にも指摘されたと思うのですが、何か還付の方法を認めた方がいいのではないかという感じを持つのです。取りっ切りになるのではなくて、所得の低い人は還付請求してもいいよという道を考えた方がいいのじゃないかと思うのですけれども、この点についてはいかがですか。
  78. 水野勝

    ○水野政府委員 そうした方式も一つのお考えであろうかと思うわけでございますが、今回御提案申し上げておりますのは、稼得能力の減退された方、お年寄り、身体障害者、こうした方々につきましては、そもそも源泉徴収から始まりますすべての課税は行わないで非課税とさせていただく、一方それ以外の方々につきましては、所得の稼得能力があればまずおおむねの場合は所得税の納税者としても課税を行わさせていただいている。その上積みとしては国税一五%、地方税五%の課税をお願いするという、いわばマクロ的に見たそこの非納税者と申しますか、所得水準の低い方と申しますか、そうした方につきましてマクロ的にそういう方式で区分をさせていただいたというのが今回の考え方でございます。  全体として一定の源泉徴収をさせていただき、それぞれの方につきましてそれを前提として還付あるいは追加総合課税を行わさせていただくということになりますと、十億口を超える預貯金でございますので、それぞれにつきまして源泉徴収を行い、それにつきましての本人確認を行わさせていただき、それにつきましての支払い調書なり支払い計算書をお渡しいただき、それをもって申告をしていただく、還付をしていただく、それに対応する資料もまた税務当局の方に備えておくということになりますと、かなりな事務的なコストと申しますか負担が、納税者、金融機関、郵便局、税務署、税務当局にも及ぶわけでございますので、今回としてはそれはとらなかったところでございます。  それから、今回の事情といたしまして、先ほど申し上げました郵政当局に初めて課税事務をお願いすることになったという点、それから、従来は利子課税は原則としては地方の方には及んでいなかったところでございますが、今回幅広く地方団体にも利子所得課税が行われるようになる。そういたしますと、住民税の特殊性からいたしまして、その預金の所在地と住民の所在地でございます住民税の課税団体とがかなりいろいろ錯綜いたしますので、そうした場合にはこの還付問題というのが非常に難しい問題になる。郵政当局に新たにお願いをすることになった、地方団体にも新たに課税が行われるようになった、こうした新しい事態もございまして、そうした点をも踏まえまして一律分離の方に御提案をさせていただいたということでございます。
  79. 早川勝

    ○早川委員 今回のこのマル優改革についての欠陥なんですけれども、今言いましたように課税最低限以下の人への配慮がどうしても欠ける。それから、六十歳が定年制だとすれば、六十から六十五歳、同じ引退してもその層のところは結局は年金と利子で生活者になるわけですけれども、そこのところへの配慮がない。それからもう一つは、今回の改革によりますと支払い調書の作成とそれの税務署への提出義務がなくなる。売上税問題が出たときもそうなんですけれども日本所得というよりも収入だと思うのですけれども、世界的に見ても非常に均等化されているという議論がされているわけですね。ところが、じゃ今のような状況で金融資産はどうなっているんだろうかとか、そういう収入は一体、いわゆるサラリーマンにおける給与収入等の統計だけはそういう結果が出るわけですけれども、そうではなくて資産所得を含めた今の我が国のいわゆる所得ですね、収入ではなくて所得というのはどういう構造になっているかというのはわからないし、ますますわからなくなるわけですね、今度の支払い調書が出ていかないと。そうすると、冒頭にこれからの税制改革のスケジュールという問題があるわけですけれども、そういうバックデータがもっとも国民の前に公表されないと、仮に大型間接税問題が不幸にして浮上するようなことがあった場合にも国民は納得しないと思うのですね。毎月の収入の五分位、十分位は格差は少ないよという議論だけしていても、今の土地の値上がり、株の資産保有者が一方に偏っている状況の中では、本当に所得構造として日本の社会というのは均等になってきているのか。その格差は縮まっているのか。最近の統計だと逆に広がっている。こういう円高不況の中では賃金格差も広がってきている。こういうデータがだんだん出てきているわけですね。こういうことを考えますと、今回の方式というのは、間接的に見ても日本の富の配分構造等をますますわからなくしていく、そういう欠陥を有していると思うのですが、こういう問題について、大きな税制改正の中で位置づけた場合決して望ましいものではないと思うのですけれども、これは大臣、どのようにお考えなんですか。
  80. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、ちょっと先ほどお触れになりましたいわゆるキャピタルゲイン等々の課税が、私どもも十分に徴税体制ができませんで今完璧な姿になっているとは思っておりません。やはりこれは徴税体制をだんだん整えまして、不公平にならないようにしながらそういうものは取っていかなければならない、課税していかなければならないと思っておりますが、そのことはおっしゃるとおりだと思いますが、ただ他方で、支払い調書等々、確かにそれをとりませんということは、ある意味で統計的には所得構造等々が把握しにくくなるだろうというのは、それは私はそうだと思います。そうだと思いますが、だからといってそこから何といいますか不公平が助長されるということは、私はそれはないだろう。前の方の問題はわかりましたが、後の方の問題がそういうところへ来ることはない。まあ言ってみれば金融機関等々に非常に煩瑣なことを求めるわけでございますから、求めればそれはそれだけの資料を国は把握することはできます。それはできますが、さてそれが果たしていいことか、必要なことかということになるのでございましょうから、それだけ煩瑣なことを民間の人々にただ国が資料を整備したいためということであれば、それはいかがなものであろうか。それは所得分配のあるいは所得課税の不公正というようなことにつながる問題ではないだろうと私は思います。
  81. 早川勝

    ○早川委員 やっぱり税制所得の再配分機能が私はこれから期待されるんじゃないかと思うのですね。そういう場合に、そのバックのところのデータをより把握しがたくしていくような改革は好ましくないというふうに考えます。  次に、今回のあるいは前回の税制改革を通じて、また国民が関心を持っているいわゆる公平なあるいは公正な負担というふうに考えますと、いわゆるクロヨン問題があると思うのですが、今回というよりも昨年のこの答申の中にクロヨンという言葉、いわゆるクロヨン論議というのですかね、これを政府税制調査会が取り上げたのは初めてだという指摘もございます。世に言われているクロヨンというものは政府の方はいまだかつて認めてないと言われているんですが、本当にクロヨンというのはあるものかどうか伺いたいと思います。
  82. 日向隆

    日向政府委員 通常クロヨンという言葉は、所得税における給与所得者、事業所得者、農業所得者間における所得把握の格差について言われていると思われますが、言われるようなクロヨンという所得把握上の格差があるかどうか私ども正確にはわからないところでありまして、したがってクロヨンといった形で十把一からげに論議することは適当ではない、こう考えております。  しかし、営庶業所得者に対する事後調査の結果、その申告漏れ割合は、委員あるいは御存じかもしれませんが、六十一年分で一九・九%、六十年分で二一・六%、五十九年分で二一・六%というふうに、連年調査対象を変えまして十五万から十六万件調査しているにもかかわらず、申告漏れ割合は二一%前後を推移しているという事実がございます。さらには、このような言葉に象徴されるような所得の把握の差についての不公平感や不満が世の中に存在しているということも事実でございます。  このような二つの事実からいたしまして、私どもといたしましては、一層この面における広報、相談、指導、調査の充実に努めまして、所得種類間における把握の差が解消するようできるだけの努力をしてまいりたい、かように考えております。
  83. 早川勝

    ○早川委員 今回の税制改正の中でいわゆるクロヨン、そういう不公平感、不満感を払拭するために、なくすためにどういう改革に着手されたのか、ちょっと伺いたいと思います。
  84. 水野勝

    ○水野政府委員 所得の把握問題につきましてはともかくといたしまして、その根底には、所得税の中でも源泉徴収でもって課税が全部完結されるサラリーマンの方と申告をもって課税関係が完結される個人の事業所得者、そこに納税方式として差があることは事実でございまして、その点が申告と納税の方式に差があるというところからまず問題がある、そういう御指摘もあるところでございます。そこのところ、自分でもって申告と納税をされるというところに一つの基本的な違いがある、そこから問題がいろいろ出てきているという点が多々あるわけでございます。こうした点につきましては、給与所得者にも申告納税の道を開くということが一つの解決方法として考えられるところでございます。こうした点につきましては、今回サラリーマンにつきましての特定支出の控除制度として御提案を申し上げている点でございます。  それからもう一つの点といたしましては、これも制度的な面でございますが、事業所得者の場合、特にその方が青色申告を選択された場合には、みなし法人課税を採用することができる。また、みなし法人課税を採用しない場合におきましても、家族を専従者として扱い、これに対しまして事業の中におきまして給与の支払いという方式をとることができる。これらによりまして、世帯としての税負担の観点から見ますと、まずその事業としての所得と御本人に対するみなし報酬としての給与所得とに分割できる。あるいは家族の間におきまして本来の事業所得と家族専従者に対する給与として分割できる。給与として分割できるとそれは給与所得控除が適用される。そういうことからいたしまして、所得の分割あるいは給与所得控除の適用、こういった点が可能になるということからいたしますと、給与所得者の場合にはお働きになる方々、稼得者一人を単位として課税がそこで行われておるということとの比較におきまして、いろんな御批判がある。その給与の支払いといったものが実態をまさに反映したものであればそれは問題ないのではないかという御指摘もありますけれども制度としてそうなっている場合におきましては、そうした制度をとれないサラリーマンの方々との関係から見ますといろいろ御批判のあるところでもございます。こうした点からいたしまして、みなし法人の問題につきまして、その報酬水準につきまして所要の是正措置と申しますか、考え方におきまして一つの枠をはめさせていただいた、こうした点も第二点として見直しを御提案させていただいているところでございます。
  85. 早川勝

    ○早川委員 そうしますと、今回の改正によって、クロヨンという表現でもって不公平感を抱いているあるいは不満感を持っているサラリーマンのその気持ちというのは、かなり解消すると考えてよろしいですか。
  86. 水野勝

    ○水野政府委員 申告所得税を中心にいたしました納税環境の整備の問題につきましては、この数年来いろいろ取り上げて御提案申し上げているところでございまして、昭和五十九年度の改正におきましては記帳義務制度とそれから総収入金額報告書提出制度を御提案したところでございます。今回におきましては、この総収入金額報告書制度を従来の五千万円超を三千万円超に改めさせていただくようにいたしております。また、加算税につきまして若干の見直しをさせていただいているところでございます。  先ほど申し上げた点を加えまして、今回の御提案申し上げている所得税法改正法におきましてもこうしたもろもろの措置は考えさせていただいているところでございますが、給与所得者のお持ちになっておる税につきましてのいろんなお考えがこれによって一挙に解決されるというところまではいくものではないと私ども考えておるわけでございます。例えば今回の特定支出控除制度も、必要経費の概算、実額控除制度といったものに比べますとまだまだ全く緒についたばかりのものというところでもございますし、今後ともなおこうした点につきましては十分頭に置いて勉強をしていかなければならない点であると考えておるところであります。
  87. 早川勝

    ○早川委員 今回若干手直しをされているのですが、実は昨年の答申が明らかにされたときに小倉税調会長は雑誌のインタビュー等に答えまして、いわゆるクロヨンなどはないのだというコメントをされているのですね。売上税反対のいわば急先鋒になられた清水さんがまた雑誌で答えられて、やはりクロヨンはないんだ、こう言われている。クロヨンがあるのだという不公平感を抱いているのはいわばサラリーマンだと言われているわけです。売上税が出たときに、あるいは大型間接税と言いかえてもいいわけですが、このクロヨンを解消するためにそういうものが必要だという考え方が一部にありました。これについて、実際にそういう大型間接税をその仕組みはどういうものであるにしろ導入した場合には、いわゆるクロヨンというような気持ちが本当に消えるような形が生まれるものかどうか、それとは一切関係ないと考えてよろしいのかどうか、その点をちょっと伺いたいと思います。
  88. 水野勝

    ○水野政府委員 税制のあり方につきましてはいろいろ御議論のあるところでございますけれども、やはり所得税が最も合理的な租税であると言われているところでございます。それぞれの型の所得を総合し、これに累進課税をさせていただくというのがその納税者の担税力を一番端的に反映するものであるというふうに従来から言われているところでございます。しかし、どのような租税でございましても、これが一つでもってまたそうしたもののウエートが非常に高まる場合には、それに伴いますところの弊害も出てくるところでございます。そうしたところから、税制といたしましては単一の租税をもって構成するという例はおよそないわけでございまして、いろいろな課税標準の組み合わせでもって課税を行わさせていただいておる。そういう意味におきまして、所得税が中心ではございましても、消費支出の面に担税力をとらえこの面に課税を行わしていただくということと、所得それから消費、そうしたものを組み合わせもことによって実質的により公平な課税制度に近づくものであるというふうには私ども考えておるわけでございますが、具体的に売上税がクロヨンの問題の解決に直結するというふうなところまで申し上げることはなかなか難しかろうと思います。マクロ的に租税体系のあり方といたしましては、消費、所得、それからまた先ほどお話しの資産、こうしたものが合理的に組み合わされる税制が実質的に公平を保つことのできる合理的な税制であろうかと考えるところでございます。
  89. 早川勝

    ○早川委員 クロヨンにかかわる問題ですが、給与所得控除の問題です。  従来ですと、この性格について、シャウプ勧告のときもそうなんですが、以来答申で触れられてきているわけですが、昨年の答申においても、給与所得控除は、勤務費用の概算控除と、その他の所得との負担調整の特別控除と、二つの要素から成り立っていると区分したわけですね。問題は、ではその給与所得控除の勤務費用の概算控除とその他所得との負担調整。いわばサラリーマンの所得というのは担税力が非常に弱いんだというのがこの他の所得との負担調整の部分ですが、大体給与所得の二分の一が勤務費用の概算控除に相当し、その残り半分が他の所得との負担調整のための特別控除、こういうふうに区分されているのですね。そして、勤務費用の概算控除のこの選択制を、「勤務に伴う費用の実額控除と概算控除との選択制を導入することが適当である。」こういう答申になっているわけです。つまり、給与所得控除を半分ずつにして、二分の一の方を実額控除にするか概算控除にするかの選択制にする、たしかこう書いてあるわけです。ところが、政府案として今回出てきた法案では、特定支出というのは給与所得控除を超えた部分だ、こういう表現になっているのですね。どうしてこういうふうに変えられたのかということを伺いたいと思います。
  90. 水野勝

    ○水野政府委員 昨年十月の抜本答申におきましては、御指摘のように、給与所得控除の性格を明確にし、その二分の一ずつを経費部分、負担調整部分として区分し、その概算経費相当分につきましてはこれをもって実額控除との選択適用を認めることがいかがか、そういう方向が出されたところでございます。これが十月末の基本的な答申でございましたが、その後この方向に沿いまして各方面とももろもろの検討を進めさせていただいたわけでございますが、何分にも現在の我が国のサラリーマンを中心とした所得税制度は百年にわたりまして概算控除制度をとってきておりまして、個別に申告を行うような方式はとってきていないところでございます。こうしたことからいたしますと、一挙に実額控除選択制度に踏み切ることにつきましては十分慎重に対処する必要があるのではないか。また、その費用の問題につきましても、サラリーマンの場合の費用と申しますと、どうしても家事上の費用と関連するものが極めて多い。その確定をめぐりましては納税者と税務当局との間でいろいろな問題が予想されるところでございます。そうした点を考えまして、この答申の基本的な方向は維持しつつ、今回の措置といたしましては、特定の支出、客観的に確定できる、トラブルの発生のおそれの少ない特定の支出を明確にした上で、その金額の支出が相当なものに及んで担税力に響いているという場合には個別に申告納税の道を開くということにいたしたところでございます。また、その支出が相当な程度に及ぶという場合の基準といたしましては、一応給与所得控除の金額をとらせていただいたというところでございます。  でございますから、今回の特定支出と申しますのは、サラリーマンの必要経費といったものとは一応離れまして、それが場合によっては家事上の経費とも関連することもあり得るような支出の項目も拾っているところでございますので、先ほどお示しの給与所得控除の半分が経費、半分が負担調整部分といたしましたときの経費とは一応切り離したとすれば、この二分の一をとるというのは若干根拠が外れるわけでございますので、特定支出として必要経費の概念と離れたものをとりました結果といたしまして、その比較する基準額も給与所得控除そのものをとらせていただいておるということでございます。
  91. 早川勝

    ○早川委員 先ほど主税局長も言われましたように、なぜクロヨンの思いを持つかということは、昨年の総理府の世論調査、税金に関して行われているわけで、そこにもはっきり出ているわけです。「サラリーマンと商工業、農業等の自営業者の間の納税方法に違いがある」のだ、だから不公平なのだ、これが不公平を抱く理由の第一位なのですね。その中で税調答申が出てきたわけですが、そして大島訴訟、サラリーマン訴訟がありまして、それらを受けてこの税調答申は書かれている。それらの意図、精神を反映していると思うのです。ところが、今説明を伺いましたように、この特定支出というのはこれとは全然別だ、必要経費ともちょっと違うのだ。そうすると、依然として不公平感をつまり納税方法に基本的に違いがあるのだと抱いているわけですね。源泉徴収で終わってしまう。一方、自営業者は申告しているわけですから。本当に申告の道を開いてやることが、まあ政府で言えば根拠なきということになるのかもしれませんけれども不公平感を払拭できるのだ、こういうふうになるわけですが、それを閉ざしたような形になるわけですね。  ほんの一部、サラリーマンの必要経費とも違うのだ、勤務に伴う費用とは違う形で特定支出を認めた。そうすると、まずいわゆるクロヨン問題を解消するために取り組んだという感じは受けないというのが一つと、二番目に、何か今回の税制改正は簡素でなければいけないと言ったのに、必要経費、給与所得とはちょっと別なところに、五項目ですか、上乗せしてしまったというふうに考えますと、簡素じゃなくて何かよくわからぬなというような改正にもなっているわけですね。そうすると、クロヨンが解消するのじゃなくて、何かごまかされてなおさらわかりにくくなってきているなという感じを抱かざるを得ないのですけれども、こういうとらえ方は間違っているでしょうか。
  92. 水野勝

    ○水野政府委員 今御指摘の納税方法に差があるという点につきましては、サラリーマンにつきましても特定支出がございます場合には申告納税の道が開かれたということで、基本的な方向としてはまさにその線に沿ったものであると私ども考えておるわけでございます。  ただ、これが税制調査会の抜本答申にございましたような選択によりますところの実額控除制度の取っかかりをつかんだと言えるところのものまでにも若干至らないかもしれない、そういう意味におきましては、答申の精神はともかくとして、その具体的な姿に比べますと、かなりまだその手前のものであるというふうに申し上げざるを得ないところでございますが、その取っかかりはつけさしていただいて、今後のこの適用実態等を見ながら今後さらにこの点についてよく勉強をしてまいりたい、これが率直な感じでございます。
  93. 早川勝

    ○早川委員 少なくとも税調答申の方向に、そちらをターゲットにしてそちらへの改革を進めていただくのがいいのじゃないかなと思います。  もう一つ、クロヨン問題ではございませんけれども、今回の税制改正でたばこの問題にちょっと触れたいと思います。  御存じのように、時間が余りございませんので自分でしゃべりますけれども、一本一円がなぜ値上げされたかという経過を踏まえますと、たしか予算編成の中で二千億円ぐらいの税収収入減でどうしてもそれがカバーできないという中で何か急遽出てきた、たしか政府税調答申にも盛られなかったのが予算編成の中で、六十一年度ですか、出てきました。六十二年度、ことしの十二月三十一日まで延長するというのは、いわば売上税導入するということを前提にして、来年の一月一日から導入することを前提にして十二月三十一日まで延ばしているわけですね。今度の法案の中にはこれを一月一日からまた三月三十一日まで延ばす、こういうふうになっているのですが、売上税が完全に後退してつぶれたにもかかわらずたばこ消費税だけが残ったというその理由についてまず明らかにしていただきたいと思います。
  94. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘のように、この一本一円の特例は、六十一年度の予算編成に当たりまして、補助金等の整理合理化に伴う地方財政への影響等を考えてお願いしたものでございます。その点につきましての地方財政との関連につきましては、その間の事情はなお継続をいたしておるところでございますので、六十二年度税制改正に当たりましてはこれはなお延長をお願いすることとしたところでございます。  ただ、別途売上税を御提案申し上げ、売上税はたばこにつきましても課税の対象とさせていただく、そういうことからいたしまして、その時点でのと申しますか、一本一円の特例をお願いしたその税率を含んだところでの税率水準を売上税創設後におきましても維持するということで六十三年一月からは新たな税率をお願いする、そういたしますと、特例税率につきましては九カ月間お願いをするということで先般三月にお願いをしたところでございます。その後の通常国会での経緯は御承知のようなことでございまして、売上税につきましては廃案とするということでございますので、この特例措置につきましては九カ月でなくて六十二年度いっぱい、十二カ月間は延長をお願いしたい、そういうことから今回三カ月間の延長をお願いしているところでございます。
  95. 早川勝

    ○早川委員 三カ月間延長されて、売上税大型間接税ですが、売上税というのは少なくとも来年四月一日からということは毛頭考えられないわけですが、では、このたばこの一本一円の値上げの特例というのは、三月三十一日以降、来年度はどういう措置をされるわけですか。
  96. 水野勝

    ○水野政府委員 この点はほかの問題とも並びまして昭和六十三年度の税制改正の検討課題となるわけでございます。来年度の税制改正の問題の一環といたしまして今後政府部内、税制調査会におきまして検討をいただき、その方向を待って対処をさせていただきたいと思うわけでございます。
  97. 早川勝

    ○早川委員 何か売上税込みで考えていたのが、特例で値上げしたのが五六・七%の負担率が五九・七%に上がって、その上がった経過は、冒頭言いましたように、極端に言えばたまたま歳入に穴があいてそれを補てんするために上げた、ところが、上げた途端にこれが適正な税負担水準になってしまって、そのまま二年間延長して、今の話ですと、五九・七の今の水準が適正水準だというようなお考えですと、六十三年度税制改正はそれがそのまま本法に入ってしまうというような予感がするのですけれども、そのように考えて——考えたくないのですけれども、五六・七に戻してほしいなというようなことを強く希望しておきます。  それから、税制改正について、とにかく今回全体を通じてちょっと感じたことなんですけれども、どうも公平、公正を本当に実現しよう、それを第一にして取り組んでいこうというのじゃなくて、割と簡素だとかあるいは効率性みたいなところが非常に強く出た改正案じゃないかな、こう思います。  例えば先ほどの給与所得控除についても、特定支出だけに限定するということは、サラリーマンはもっと確定申告権を認めてほしい、納税の原則は自主申告だというのがあるわけですから、その道を本当に開いてほしいという要求があった。そして税調答申にもそこまで入っている。ところが出てきたのは特定支出でほんの一部だ。恐らく来年度から再来年になると明らかになるのでしょうけれども、一体何人のサラリーマンの人がこの特定支出を受けるために申告するかというと、ごく限られた特定の人だけじゃないかなというふうな感じを持ちます。  それから、利子所得についても、本当に五年後に、手法としては今回のやり方でも二〇%源泉徴収するわけだから総合課税に行くことにおいても割とスムーズに行き得るんだということを答えられたわけですが、それにしても分離課税移行をとってしまった。総合課税から分離課税に移行する。  それから、先ほども質疑がございましたけれども、医療費控除についても五万円の足切りを十万円に上げてしまう。そうすると、今還付請求をやっている人たちは医療費控除が大部分なんですね。あと一部住宅取得控除がありますけれども。それを、五万円を十万円に上げてしまうと、恐らくこれまた還付請求の道を実質的に狭くしていくのじゃないか。  こんなことを考えますと、今回の税制改正というのは、どうも民主的というのか納税者の権利を本当に保障して広げていこうという観点が逆に後退して希薄になっているのじゃないかなという感じを持ちます。  それでは、時間がございませんので、私は来年度予算について関連事項を三点ばかり伺いたいと思います。  昨日六十三年度予算についての概算要求が締め切られまして、公共事業費を軸にした景気の後押しというのか、積極財政への転換が、マイナスシーリングの中でもそういう方向への転換が行われる予算になろうとしております。その予算全体について伺いたいということじゃなくて、大臣に特に伺いたいことがあるのですが、いわゆる六十二年度予算のときに、御存じのように防衛関係費がGNP比一%を超えた予算が組まれたわけですね。大蔵大臣、私は非常に残念な印象を持っているのですけれども、戦後政治の継承発展ですか、大臣言われましたが、そういう理念をお持ちだとすれば、私などは、防衛費のGNP比一%予算を組むときにもっと積極的に反対の意思表示をされてよかったのじゃないかなと思っております。今回の概算要求においても六・二%増を認める。確かにGNPの伸びとの絡みがあるのですが、御存じのように、他の一般歳出等はそれこそマイナスシーリングでずっと抑えられていくわけですね。その中で概算要求六・二%を認めた。しかも防衛関係費につきましては概算要求が締め切られてかなり高い率を認めた。ただし、大蔵省は必ず、あらゆる予算については聖域を認めない、こういうことを発言されるのですね。国民は、聖域を認めないということだからすべてを洗い直してむだをなくしてカットするだろう、こういう期待を持つわけです。ところが、あらゆる予算に聖域を認めない、防衛関係費についても特別扱いをしないよ、こういう考え国民は十二月まで持つわけです、過去は持ったわけですが、今回概算要求で防衛関係費は六・二%の増額が認められたわけですけれども、やはり聖域ではなくて特別扱いはしない、でき得れば一%枠に抑えてほしい、こういう期待を持っているのですが、大臣のお気持ちを伺いたいと思います。
  98. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 六十二年度の防衛費予算につきましては、御指摘のようなことがございまして、改めて一月二十四日に政府は今後の方針の閣議決定をいたしました。また、中期防衛計画によって支出をしていくということも御承知のとおりでございますが、事実問題といたしまして六十二年度の防衛費の伸びはそれにもかかわらず五・二%でございましたから、これは昭和三十年代以来の低い伸び率でございまして、決して大きな伸びを示したというわけではございません。GNPその他の分母の方の事情もあったということでございます。  それで、六十三年度は、これからの問題でございますし、GNPの推移もよくわかりません等々、いろいろまだ未知の事情がございますので、シーリングはシーリングでございますが、もとより一月二十四日の閣議決定の精神、中期防衛計画の範囲内の問題、専守防衛というようなことを考えながら厳しい査定をしてまいりたいと考えておりまして、その結果一%との関連が果たしてどうなりますか、これはGNP等々との関係にもよることでございましてただいま定かに申し上げられませんが、厳しく査定をいたすということに変わりございません。
  99. 早川勝

    ○早川委員 日本の防衛関係費は御存じのようにGNP一%を若干超えたということなんですけれども、とにかく日本のGNPは非常に大きいわけですね。しかも今の円高の状況でドル換算したりすると既に世界第三位だという数字も出てくるわけです。そうしますと、不況だといっても国際的なレベルで見れば日本のGNPは非常に高いところで成長している。そうしますと、この一%という問題はとりわけ東南アジア諸国にとって日本が憲法の精神を逸脱するかしないかということの一つのメルクマールだと思うのですね。そういうことで、結果論ではありますけれども、今まで言われていた聖域を設けない、特別扱いをしないということを、この年末の予算政府案、その前段である大蔵原案で結構ですけれども、一%以下に抑えるということを基本方針にしてぜひ取り組んでいただきたいと思っております。  昔から国破れて山河あり、こういうあれがありますけれども、どうも防衛費がふえて一方の山が荒れているというのが今の日本の実情だと思うのですね。防衛費がふえて山河が残るんじゃなくて山の方も大分荒れているわけです。国有林ももちろんそうなんですけれども。ある本で読んだような記憶があるのですけれども、緑が減っていくと人間の精神はかなり殺伐になるということも言われておりますので、国有林だけじゃございませんけれども、山の整備の問題についても来年度予算でぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思っております。  ことしの三月、「緑と木、水資源」という項目で世論調査がされております。その中で、森林の造成、手入れの方策について何が一番多いかといいますと、国や地方公共団体が積極的な助成を行うのがよろしい、こういう調査結果が出ています。来年度予算についても、NTTの財源が一方にありまして、その活用をめぐっていろいろアイデアが出されているわけですけれども、また国有林についても補正予算で若干手当てされたのですけれども、今までの林政審の報告を見ても、人件費を減らして行革をしてという発想の域を出てないのですね。そうじゃなくて、この際ぜひ思い切ってNTTの財源の活用を含めて特別な財源措置を図っていただきたいし、図っていくことが中長期的なそれこそ二十一世紀に向かっての社会資本整備の大きな柱になると思うのですが、その点での大臣のお気持ちを伺いたいと思います。
  100. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国有林野は御承知のように特別会計で独立採算制が建前でございますけれども、ただいま早川委員の言われましたようないろいろな事情から、政府としては事実上一般会計からいろいろな援助を行っております。造林、林道につきましてそうでございますし、また治山について一般会計の負担をいたしております。また、六十二年度では保安林等の保全に要する経費の一般会計繰り入れ等も新たにいたしました。このようなことで、御指摘のようなことがございますので、独立採算制とは申しながら一般会計がかなりの負担をいたしておりまして、もとよりこのことは突然打ち切るというようなわけにはまいらないことはよく承知をいたしております。また同時に、そういうことでございますから、林野におきましても要員規模の適正化等々いわば運営の改善を図っていただきたい。引き続き一般会計でいろいろな御面倒は見てまいらなければならないということは、六十三年度においても恐らく事実問題としてこれは認めざるを得ないであろうと思っております。
  101. 早川勝

    ○早川委員 最後になりますけれども、週休二日制の問題について伺いたいと思います。  完全週休二日制の必要については従来から言われておりまして、前川レポートにおきましても、生活のゆとりだとか雇用の問題、内需拡大、貿易摩擦対策の観点等々から考えても早急に必要だということが言われております。週休二日制に向けての最近の動きは、御存じのように公務員の四週六休制の取り組み、人事院勧告等もございました。労働基準法の改正が今議論されておりまして、そこでも労働時間四十時間への短縮という問題が取り組まれております。  そういうことで、完全週休二日制をやる場合には金融機関が先陣を切るのがいいんじゃないか。今までですと、いや後の方がいいんだということがあったのですけれども、今までやられてきた経過を見ますと、昭和五十八年八月に第二土曜日が休業になったのですね。閉店になりました。それから三年後の六十一年八月に第三土曜日も休業になったのですね。単純なタイムスケジュールじゃないのですけれども、三年といいますと再来年の八月にまた三年後が訪れるわけですね。銀行局年報の五十八年のときの報告書を拝見しますと、そのときは非常に消極的な表現がありまして、懸念されているのですね。信用秩序が混乱するだとかいろいろな問題で果たして土曜休業がいいかどうか心配があるということを記述されていたのですが、六十一年になりますと、割と順調にいっているというような記述に変わるのです。さして混乱もないということがあります。実は六十一年八月に第三土曜日が休業になる一年前に、これはこの委員会の問題でもあるのですが、五月三十日に大蔵委員会に設けられた金融機関の週休二日制に関する小委員会が実に二年半ぶりに再開されたと書いてあるのですが、六月十九日に決議しているのですね。     金融機関の週休二日制に関する件   労働時間の短縮は、世界の趨勢であるばかりでなく、貿易摩擦の軽減にも資するものであり、現在、実施の気運が出てきている金融機関の週休二日制の当面一日の増加について、円滑かつ速やかに実施できるよう、政府は最善の努力を行うべきである。 これが六十年六月十九日に当委員会の小委員会で決議されて、一年後の六十一年八月から第三土曜日も休業になった。あと残るのは第一と第四土曜日があるわけですけれども、もう本当に一歩だ、もう一歩踏み切れば完全週休二日制ができるわけですね。そういう状況だと思います。そして、月初めと月末という商取引の中での慣習があるわけですけれども、やはり完全にやることがいいのじゃないか。金融等の国際化等を踏まえますと、金融機関がその先陣を切って完全週休二日制への方向を明確にしてもいいのじゃないかと思うのですが、またそういう必要があろうと思いますけれども、これは大臣の見解を伺いたいと思います。
  102. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように昨年八月に第三土曜日を加えましたので二日になったわけでございますが、金融機関の週休二日制の拡大というのはやはり時代の流れと考えるべきことかと思います。したがいまして、これからさらにこれを拡大してまいりますためには、金融機関自身のコンセンサスの問題もございますけれども、お客様、つまり国民あるいは企業等の理解というものがどうしてもこれに先立つ必要がありまして、そういう環境整備をやりながら一層の拡大に努力いたすべきものと考えております。
  103. 早川勝

    ○早川委員 これは委員長へのお願いになるのですけれども、当委員会においても金融機関の週休二日制について前向きに取り組むように、一日も早く実現できるような決議が採択できるようぜひ取り計らっていただくことをお願いして、私の質問を終わります。
  104. 池田行彦

    池田委員長 午後一時四十五分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時二分休憩      ————◇—————     午後一時四十八分開議
  105. 池田行彦

    池田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。日笠勝之君。
  106. 日笠勝之

    日笠委員 まず、昨日各省庁が大蔵省に六十三年度の予算の概算要求を提出し、締め切られたわけでございます。そのことにつきまして、まだ時期が早いのかもしれませんけれども、大蔵大臣に、今後の予算編成、どのようなめり張りをつけて編成していきたいと考えておられるか、お聞きしたいと思います。
  107. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は私まだ概算要求の締め切りの結果を聞いておりませんので正確に申し上げることができませんけれども、もともと概算基準の設定のときに幾つかの決定は既にいたしておりまして、いわゆる例外となります項目は今までと同様でございますから、そのような方針でやってまいることでございます。  殊に、例えば対外経済援助のようなものがございますが、そういう方針でやっていかなければと思っておりますが、それ以外でございますと、今回は投資的な経費のマイナスシーリングをゼロにいたすというふうに考えておりますことと、NTTの先般国会でお認めをいただきました法律に基づきまして社会資本整備のために売却代金を使うといったようなこともございますので、全体といたしまして、いわゆる内外から起こっております内需拡大の要請に財政もそれなりの、苦しゅうございますけれども、一翼を担わなければならないということを考えております。  他方で、そうなりますと、しかし勢いその他の経常経費等々には全体のこととしてきつく当たらなければならぬということに逆になりますので、その点は関係各省庁の御理解を得ながらそういう方針で年末に向かいまして作業を進めてまいりたいと思っております。
  108. 日笠勝之

    日笠委員 次は、一問一答形式で、理屈はよろしいですから、そうであるかないかだけちょっとお聞きしたいと思います。  大蔵大臣は、新型といえばいいんですか、大型といえばいいんでしょうか、間接税導入論者であるかどうか、これについてまず。理屈はいいです。
  109. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはなかなか一問一答形式でまいりませんで、午前中にも申し上げておりましたが、所得税、法人税のやはり思い切った減税をいたしまして根本的な税制改正をいたしたい考えには変わりはございませんが、今の財政の事情から申しますと、やはり何かの財源、かなり大きなものを考えなければならないというふうに思っております。
  110. 日笠勝之

    日笠委員 大きなものというとやはり大型間接税と私は理解いたします。  じゃあ次は、キャピタルゲイン課税論者であるかどうか。
  111. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 キャピタルゲインも所得でございますから本来課税せられるべきものである、行政上公平に公正に行えるような仕組みを、体制を整えましてだんだんそれに進んでいきたいと思っております。
  112. 日笠勝之

    日笠委員 これも原則的にはキャピタルゲイン課税論者であると私は理解いたします。  三つ目、総合課税論者であるかどうか。
  113. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは、理想はすべての所得が総合されて累進税率の適用を受けるというのが所得税の究極的な理想であろうと思います。
  114. 日笠勝之

    日笠委員 一問一答の最後でございますが、衆議院議長あっせんの中にも直間比率見直し云々という言葉がございますが、直間比率見直しの前に、直接税の中のいわゆる不公平税制の見直しということは、それが先かどうか、どうですか。
  115. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはお互いに排除するものではございませんので、両方とも両立するものであろうと思います。
  116. 日笠勝之

    日笠委員 じゃあ大蔵大臣の基本的なお考えを確認した上で、次の質問に移ります。  今回の所得税法の一部改正のいわゆる基本理念、これは那辺にあるや、お伺いをしたいと思います。基本理念。
  117. 水野勝

    ○水野政府委員 今回所得税改正を御提案申し上げております。その基本的な視点といたしましては、給与所得者所得税につきまして、サラリーマンの持っておられる重圧感、不公平感、こういったものをどのように解消し対処していくかというところが基本的な出発点でございます。  我が国の所得税それ自身、負担水準自身を考えますと、諸外国に比べて必ずしも高くないというか、むしろ低い部類に属するとも言えるわけでございますが、しかし、所得税につきましては、サラリーマンの所得税を中心として、その減税の御要望は非常に強いわけでございます。それは、結局は、一つはそれが他の所得の種類と比べて不公平であるとか、あるいはその累進課税に際しましての負担の累増が厳しいということでございますとか、申告納税の方法が他の所得者と違う点があるとか、こういったもろもろの点が指摘される。そうした点を踏まえまして、所得税をゆがみのないと申しますか、極力大半のサラリーマンの方に御支持を得られるような所得税に手直しをしていく、そのためにはどのような方策、改正方向が考えられるか、これが今回もろもろ御提案申し上げておる中の基本的な考えでございます。
  118. 日笠勝之

    日笠委員 政府税調の抜本的見直しの基本理念としては、公平、公正、簡素、選択、活力、中立性、国際性、こういう視野からも配慮する、こうなっておりますが、今回のいわゆる税制改正はこれらに当てはまるんでしょうか。それともこういうものに行き着く前の一里塚、このように考えたらいいんでしょうか、局長、どうですか。
  119. 水野勝

    ○水野政府委員 理念といたしましては、お示しの公平、公正、簡素、活力、選択、こうした理念に基づきましてもろもろの改正を検討し御提案を申し上げたところでございますが、今回の御提案によってこれらの理念がすべて実現されているというところまでは必ずしも至っておらない点もまだ多々あろうかと思いますが、そうした理念のもとでの改革の第一歩と申しますか、とにかく踏み出したものであるということは申し上げられようかと思うわけでございます。
  120. 日笠勝之

    日笠委員 そうすると全体像というものはいつごろ示すんですか。抜本税制改革の全体像、こういうものはいつごろから着手されますか。
  121. 水野勝

    ○水野政府委員 この点につきましては、昭和六十年の九月に内閣総理大臣から今申し述べたような理念に基づいた税制改革のあり方につきまして諮問があったわけでございまして、それを受けまして一応昨年の十月二十八日全体としての改革の方向につきまして答申が取りまとめられているところでございまして、私どもとしては一応あの姿が改革の全体像であるというふうに考えてはおるわけでございます。
  122. 日笠勝之

    日笠委員 そうすると売上税もその中に入るんですか、どうですか。
  123. 水野勝

    ○水野政府委員 現在の個別間接税を中心とした我が国の間接税体系がこのままでいいということはないわけでございまして、とにかく間接税につきましても何らかの見直しは要するわけでございます。また、昨年十月二十八日の答申もその点につきましてもいろんな方向を示しているわけでございますが、この点につきましては、この抜本答申は間接税につきましても具体的には三つの改革の方向が考えられるといたしておるところでございまして、その中の一つの方向として先般売上税を具体的に策定いたしまして御提案したところでございますが、その経緯につきましては御承知のとおりでございます。間接税と申しますか個別消費税、現行の個別消費税をとにかく近代化、合理化する必要がある。その方向、その具体的な内容等につきましては先ほど申し上げた十月二十八日の答申がその考え方であるというふうに考えておるわけでございます。
  124. 日笠勝之

    日笠委員 今度の概算要求に伴いまして、例えば運輸省からは通行税を廃止してもらいたいとか、また通産の方からは石油税を値上げしたいだとか、また、これは大蔵の中でございましょうけれども、相続税の減税をしたい、いわゆる課税最低限を引き上げたい、こういう個別に各省庁担当の部署の権限の範囲の中でいろいろもろもろ打ち上げが行われておるわけですね。通行税を廃止、石油税は増税、相続税は最低額を上げるとか、こういうふうにばらばらばらばら今言われておるようでございますので、これは明年の税制改正ということで大蔵省早く取りまとめて国民に早く素案を示さないと何となくばらばらに税制改正が行われるのではないか、抜本的というのではなくて個別、選択的な改正になるんじゃないかというふうにも思うわけでございますが、この点はいかがですか。
  125. 水野勝

    ○水野政府委員 一応今申し上げましたように全体としての姿は昨年の抜本改正答申の中にあらわされておるわけでございます。その中の方向の一つをいただきまして今般この所得税法等の一部を改正する法律案を御提案申し上げて御審議をお願いしておるところでございまして、目下とにかくこの法案をこの国会で十分審議をお願いをするというのが現在の私どもの急務であると考えておるわけでございます。  昭和六十三年度税制改正の方向につきましては、この国会での御論議、それから国会に置かれております税制改革協議会の御討議も踏まえまして、年末までに財政全体の中で具体的に考えてまいるべき点でございますが、現時点におきましては、とにかくこの国会、この法案につきまして御審議をお尽くし願うということで目下は終始しているところでございます。
  126. 日笠勝之

    日笠委員 じゃあ、この審議が済んだ後、年末までにお考えになるということでございますが、その点について二つほどお聞きしたいと思うのですが、最近の週刊誌によりますと、いよいよ大蔵省の逆襲が始まるということで、アメリカ型の小売売上税導入しようか云々というような話がございますが、いわゆる大型間接税については、ここ当面は、どんな形に変えるにせよ、六十三年度改正案には出てこない、このように理解してよろしいでしょうか。
  127. 水野勝

    ○水野政府委員 現在の我が国の個別消費税がもろもろのゆがみを生じており、これの基本的な見直しを要するといった点につきましては、先ほど申し述べたとおりでございまして、それの検討が昨年の抜本改正答申におきましてもるる述べられているところでございます。その中におきましては具体的には三つの類型の方向が示唆されておるわけでございまして、その中の一つとして売上税をまとめて御提案したところでございますが、それにつきましての先般通常国会以後の経緯等は御承知のとおりのところでございます。今後個別消費税体系を何らかの形で見直しをしていくということは避けて通れない点でございますが、前国会からの国会での御論議の経緯、これは十分尊重して検討してまいる必要があろうかと思っておるところでございます。
  128. 日笠勝之

    日笠委員 今回のマル優原則廃止も、装いを新たにして出てきたわけでございまして、原則的には前回の少額貯蓄非課税制度廃止というのとほとんど一緒なわけでございます。一部例外ができたということで我々は理解しておるわけでございます。  先ほどおっしゃったように三つの類型がある。あと二つ残っておるわけです。それからまた、その三つの類型以外に、アメリカ型の小売売上税というものをいよいよ導入をしていくんではないかというような話もちらほら出ておるわけでございますが、それはわからないわけですね、まだ。特に小売売上税についてはどうですか。
  129. 水野勝

    ○水野政府委員 前回の基本的な方向の中での三つの類型としては、端的には小売売上税というものは入ってはいなかったわけでございますが、第二の類型といたしましての方式のもの、これはある意味ではアメリカの小売売上税等に通ずるものでもあろうかという見方もできるわけでございます。しかしながら、いずれにいたしましても、間接税の今後の基本的な方向につきましては、今国会の御議論、税制改革協議会における御検討を踏まえて年末までに、来年度税制改革をどうするか、あるいはそれ以後の税制改正をどうするかを慎重に検討してまいるべき点でございますので、この時点におきまして今後この方式のものを検討していくんだということを申し上げられる段階にはまだないわけでございます。
  130. 日笠勝之

    日笠委員 申し上げられる段階ではないということは、そういうこともあり得るというふうに理解できるわけですから、本当ははっきりと、そういうことはない、アメリカ型の小売売上税導入するつもりはないというふうに明言していただければ一番いいわけですけれども。  間接税ということでございますが、酒税でございますが、今回の一部改正等には、たばこ消費税の件は若干延長ということで出てますが、お酒の税金は出てこないわけでございます。これはパネルディスカッションは今どうなっていますか。
  131. 水野勝

    ○水野政府委員 一応パネルにおきましては検討と申しますか会合は終わりまして、現在その報告書の取りまとめが行われている段階であるというふうに聞いておるところでございます。
  132. 日笠勝之

    日笠委員 前回も、酒税も関税は下げる、そして従価税を従量税に移行する。これは、もちろん売上税が絡んでいるわけでございますが、今回の税制改正は売上税絡みは出さないという原則でございますが、しかしいかんせん、そういうEC諸国からもこの酒税については強い強い改正が望まれておるわけでございます。私も本年一月にヨーロッパへ税制調査で行きましたときに、ECの欧州酒類製造業協会の会長さんも事務局長さんも、酒税の税制改正に日本は前向きに取り組んでくださってありがとうというお礼も言われたわけでございますけれども、今後、来年の税制改正へ向けて酒税の税制改正は当然考えられるわけでしょうか。そのパネルの結果も出るわけでございますので、その辺を見比べながら六十三年度税制改正には酒税の大幅な改正も十分考えていく、こういうことでしょうか。いかがですか。
  133. 水野勝

    ○水野政府委員 現在の個別消費税につきましてはもろもろの問題があるところでございますが、酒税につきましても、ただいまお話しのヨーロッパ・EC諸国からの指摘アメリカからの問題の提起、もろもろの問題が挙げられているところでございます。そうした点も踏まえ、それから売上税を間接税の中核としてこれを導入するといった点を考えまして、前国会におきましては、そうした点を前提といたしまして従価税率の廃止、従量税率の調整といったことを盛り込んだ酒税法の改正法案を御提案申し上げたところでございます。ただ、前国会におきますところの経緯等もございまして、売上税関連法案は再提案はしないということで、今回の法案には、売上税に関連して酒税につきましてもろもろの措置を講じました従価税率の廃止、従量税の調整等は盛り込んでいないところでございます。  こうした背景を持って検討いたしました酒税法の改正でございますので、次の通常国会等におきましてこの点につきましてどのように対処するかはいろいろ難しい点があるわけでございますけれども、今国会における御論議等を踏まえまして、年末までには、次回の段階といたしましてどのような改正を御提案申し上げるか、十分に検討をしてまいりたいと思うわけでございます。
  134. 日笠勝之

    日笠委員 そうすると、次の税制改正、これまた入れるということは、明言は避けられるわけですね。御論議を踏まえてということですね。  では、大蔵大臣、ちょっとお聞きしますが、酒の中でも特にビールならビールをとりますと、今ビールの税率は小売価格の四八・八%、これは高いと思いますか、それとも適当な税率だと思いますか、安いと思いますか。
  135. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ずっと長年やってまいっておりますので、消費者も何とか勘弁をしていただいておると思います。
  136. 日笠勝之

    日笠委員 自民党の諸君の中にはビールを下げる会ができたというふうに聞いておるのですけれども、えらい話が違うようでございますが、やはり直間比率でも、余りにも直接税に偏り過ぎて、見直さなければいけないということですね、直間比率。そうすると、ビールの酒税の中に占めるシェア、これは大変なものがございます。  ちょっと説明しますと、ビールだけで年間一兆二千億円の税収ですよ。年間八十億本でございますけれども。それで世界各国に比べましても、日本が四八・八%、その次に高いのはイギリスの三〇・五%ですね。日本の方が五〇%以上高い。あとアメリカとか西ドイツ、フランスは皆一〇%台でございます。そしてまた、ビールの酒税の中に占める割合というものも、これは六一・三%ですか、一兆九千七百億円のうちの六一%がビールだけの税金でございます。  こういうふうになりますと、直間比率見直し云々とおっしゃるならば、その酒税の中の余りにもビールだけに偏り過ぎておる、こういうふうなものも見直していかないといけないのではないか、かように思うわけですが、どちらか御答弁を。
  137. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 楽しくビールを飲んで税金も出してくださるというので非常にいいのじゃないかと思うのでございます。この酒税をほかのものに割りかけるということになりますと、清酒ではもう知れておりますし、ウイスキーはかなり高うございます。しょうちゅうなんかではとてもどうにもなりませんから、これはどうしてもビールにならざるを得ないのでございます。
  138. 日笠勝之

    日笠委員 では、大蔵大臣は、ビールの今の税率は適当であると。これはちょっとよく耳をほじくってもう一遍確認しなければいけません。  さすれば、国会でも再三附帯決議が出ております。例えば酒税負担格差の是正ということも言われておるわけです。お酒の中でいろいろな税率の違いがあるとか、こういうのがちゃんと国会の附帯決議でなされているわけです。これは直せということでしょう。格差を是正しなさいと附帯決議を出している。それを認めないということであれば、何のために附帯決議をしたのか。政府はそういうものは一切認めない、こういうふうになると思うのですが、大蔵大臣、これはもう一度聞いておかなければなりません。
  139. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘のように、我が国の酒税につきましては酒類間にかなりな格差のあることは確かでございます。今御指摘のように、ビールのように四八・八%といったものもあればしょうちゅうのように八%台のものもございます。これはある意味ではこれまでの酒税の検討に際しましてそれぞれの消費の態様、生産の態様等に応じてとってきた方向でございますが、御指摘のように現在のような消費の多様化の時代のもとにおきましてはもう少し格差を縮小してもいいのではないかという御議論のあることは確かでございます。  そのやり方といたしましてはもろもろの方式もあろうかと思いますので、一概にビールを下げるということだけの方向でもございません、それは今後の酒税制度あるいは間接税制度全体の中で十分検討させていただきたい点でございます。
  140. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今主税局長の申し上げたとおりでございます。
  141. 日笠勝之

    日笠委員 大蔵大臣は、ほかのものを上げろ、こういうことでしょう。それで格差を是正する。それはおかしいわけでございますから、世界各国でこれほど高いアルコールの、ビールとかそういうものに対しての税率はないというのは説明したとおりでございますから、やはり国際性ということを考えてもバランスをとっていくのがしかるべきではないかと思います。  いずれにいたしましても、どうも大蔵大臣も主税局長もビール党じゃないようでございまして、この件については余り前向きな御答弁が出ませんけれども、しかし、一つのものだけにそれだけの高い税率を強いるということは、先ほどから申し上げておりますように直間比率を見直しするのも、私たちは結果論で直間比率が変わるのはいい。しかし、意図的にビールだけ非常に高い税率をかけて、需要も多いということで、先ほど言いましたように全部の一兆九千七百億円のうちの六一%がビールだけの税金である。おまけに税率も四八・八%である。大衆飲料としてビールはもう国民になくてはならない。物価統制のときといいましょうか、オイルショックでこういうものの価格は統制するという中にビールは入っていたのですから、それほど大事な国民にとっての嗜好品です。そういう意味で、私は、かたくなな、自分の愛好がほかのお酒か何か知りませんけれども、やはりビールというものをもう一度見直して、国会での附帯決議でもありますように公平な格差是正を図っていただきたい。これは主税局長に最後お聞きして、次に行きたいと思います。
  142. 水野勝

    ○水野政府委員 そういう意味におきまして、そうした点も一つの観点として売上税を酒類にもお願いをし、そういたしますとその分だけ酒類間の負担はある意味では均一化される面もあるわけでございますので、一部を売上税で置きかえ、その分だけ従量税率を調整するという点を織り込みました改正案を先般御提案したわけでございます。その後の経緯等も踏まえまして、今後なおよく検討いたしてまいりたいと思うわけでございます。
  143. 日笠勝之

    日笠委員 では、ビール談義はこれで終わります。暑い中でしたから一服の清涼剤と思ってやったわけでございます。  では次に、減税について御質問いたします。  その前に、減税のことにつきまして税制協議会で議長へ中間報告をいたしましたね。その中身でございますが、その報告によりますと、「一 減税についての議論の要約」という項目がございます。さらに「1 次の諸点については、意見の一致を見た。」これは与野党の税制協議会でこれだけは意見の一致を見ましたよというものの二つ目に、「右の減税の実施に当たっては、恒久財源が確保されることが必要である。」こういうふうになっておりますね。まず大蔵大臣に、この税制協議会の与野党一致の意見、これは最大限に尊重される意思があるのかどうか、これについていかがですか。税制協議会の与野党の一致というのは尊重するかどうか。
  144. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 「税制改革協議会報告」「減税についての議論の要約」「次の諸点については、意見の一致を見た。」三つ書いてございます。そのとおりでございます。
  145. 日笠勝之

    日笠委員 最大限に尊重するのですね。
  146. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 さようでございます。
  147. 日笠勝之

    日笠委員 そうすると、午前中の論議をちょっとお聞きしておりますと、主税局長は、減税の財源、恒久財源としては厳しいものがある、やりくりしなければいけないというような御答弁をされておりましたね。現実にどうなんですか。六十二年度減税をしますが、これは恒久財源じゃなくほとんどが剰余金ですね。来年六十三、六十四、六十五、直近の二、三年間、所得税減税分に見合った確たる恒久財源はあるのですか。どうですか。
  148. 水野勝

    ○水野政府委員 ここにございますような厳密な意味での恒久財源は、今回の与野党お話し合いの中での御提案である一兆五千四百億円のものが、厳密な意味で用意されておるということからいたしますと、これは大変厳しい状況にあるということを申し上げておるわけでございます。  恒久財源、その二つの点についてでございますが、一つは、恒久財源の中心は利子課税の見直しでございまして、これによりまして国税といたしましては一兆円弱のものがございます。が、この点につきましても、これがまさに恒久的にこの制度を実施していった場合に五、六年後に実現されるという意味におきましては恒久財源でございますが、そういたしますと、六十三年、六十四年におきましてはまだそこまでの金額での財源確保の点につきましては充足されないわけでございます。  それから、利子課税が中心でございますが、それは一兆円弱でございますので、一兆五千億円という減税規模との対比におきましてはなお五千億の差があるわけでございます。この五千億円相当のものにつきましては、一部は有価証券取引税の見直しでございますとか、金融類似商品につきましても利子課税並みの扱いをさせていただくものでございますとか、若干の増収を講じさせていただいておるわけでございますが、一方、今回御提案申し上げております登録免許税の見直し、こうしたものにつきましては、当分の間の期限を切っての措置でございますので、これは厳密に申し上げると恒久財源と言えるかどうかはわからないわけでございます。  そうしたものもひっくるめまして利子課税と合わせますと何とか見合うものに達するわけでございますが、これは期限が来れば消えるものでございますから、ではその期限の到来したときにそれに変わる何らかの措置を講ずる必要がある、そういう意味におきまして、厳密に恒久財源が完全に見合っているかということでございますと、それは厳しい状況にあると申し上げておるわけでございます。
  149. 日笠勝之

    日笠委員 五、六年後は何とか財源になるということですね。ということは、この前いただきました資料を見ますと、今度のマル優廃止によって利子課税の増収は一兆六千百六十億、平均利回りが四・一%ということでございますが、これは五、六年後にはこの一兆六千億円以上の税収があるというように見ていいのですか。
  150. 水野勝

    ○水野政府委員 五、六年後に一兆六千億円が実現されるというふうな意味でございます。
  151. 日笠勝之

    日笠委員 そうしますと、それにプラスして、今回、金融の類似商品の増収が七百億円ぐらいですか、これは合わせて約一兆六千八百億ぐらいですね。まだまだ足らないのじゃないですか。住民税、所得税減税は平年度ベースで二兆二千億円でしょう。そうするとどうしてもまだ約五千億足らないわけですね。ということは、恒久財源が確保されたというふうに言えないのでしょう。言えないのにどうしてこういう法案が出てくるのですか。先ほど大蔵大臣は最大限尊重するとおっしゃっている。与野党合意にもとるじゃありませんか、恒久財源が確保されてないのにこういう法案が出てくるということは。どうですか。
  152. 水野勝

    ○水野政府委員 私どもとして御提案申し上げたのは一兆三千億円でございます。この点につきましては、政府として御提案申し上げる際におきましては、この協議会の御趣旨も踏まえまして、ただいま御指摘の金融類似商品等を含めまして、平年度的に何とか見合うようなものとして御提案を申し上げたというところでございます。  なお、一兆五千四百億円という点になりましての減税でございますと、これも恒久的な減税でございますので見合うものがどうかという点の御議論はございますが、この点につきましては、先ほどちょっと申し上げた登録免許税の見直しでございますとか個人の事業用資産の買いかえ、これも期限を持って御提案を申し上げている。こういったものは果たして厳密に恒久財源と言えるかということになりますと難しい点はございますが、一応こうしたものもそういう財源としてカウントをさせていただければ見合っておる。しかし、先ほどの協議会の報告にございました恒久財源をもって減税を行うのだという精神を厳密に持ってまいりますと、そこの点につきましてはやや厳しい点があるということを先ほど申し上げたところでございます。
  153. 日笠勝之

    日笠委員 言葉で言うとわからぬ。数字を言ってみてください。じゃ、登録免許税、それから事業用資産買いかえはどのぐらいの増収を見込んでおるのですか。言葉で並べてもわかりません。数字はこれが幾ら、これが幾ら、それでちゃんと見合うかどうか検討しましょう。
  154. 水野勝

    ○水野政府委員 登録免許税といたしましては約二千億あるわけでございます。買いかえの特例も約七百億でございますけれども、一方、こうしたものをカウントする以上は期限のある減収項目もカウントをする必要があるわけでございますので、そうしたものが、今般御提案申し上げております土地の譲渡所得課税の長短区分の問題、こういったものがございますので、ただいま申し上げた増収項目と相殺いたしますと、おおむね二千二百億円程度のカウントはできるところでございます。
  155. 日笠勝之

    日笠委員 さて、大臣、そうなってくるとどうなりますか。先ほど尊重されると言った。けれども恒久財源は確保されていないのですね。やりくりするとか、時限的な立法ですから恒久財源とは言えないという主税局長の御答弁です。しかし、この与野党の意見の一致は、「減税の実施に当たっては、恒久財源が確保されることが必要である。」と我々はそうじゃなくてNTTの売却益を戻し税でもいいからやれとかいろいろな財源は言いましたけれども、それはその後の意見の一致を見なかったということで対立したということが出ていますでしょう。その中には、これを見てもわかっていただけますように、恒久財源ということにつきましては非常に与野党の意見の一致を見ていない。見ていないのにこういう法案が出てくる。また、与野党の幹事長・書記長会談で、先ほど局長は、一兆三千億円だったのをあちらの方で勝手に一兆五千四百億円にやってもらって本当に困っているんだというこういうようなことでございますが、大臣、これはどう見ればいいのですか、恒久財源が確保されていないのに一兆五千四百億円の減税をするということは。
  156. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、この報告はなかなかよく書けてございまして、確かに、「右の減税の実施に当たっては、恒久財源が確保されることが必要である。」とございます。その次に、「昭和六十二年度において、減税を先行実施する。」と書いてあるのです。この「先行実施する。」というのは、恐らく、まあともかくやれい、こういうことでございますよね。ですから、「恒久財源が確保されることが必要である。」本当に私どもは必要だと思いますが、次に今度は、「六十二年度において、減税を先行実施する。」とございますから、六十二年度はともかくやはり減税が大事なんだ、そこで先行実施、こう言われたと私ども考えておるわけでございます。
  157. 日笠勝之

    日笠委員 それはそうですよ。だから、六十二年度は足らぬことはわかっておるのです。だけれども、恒久財源がいつかの時点で確保されなくてはいかぬわけでしょう。そうでしょう。いつかの時点で。それはどうなるのですか。その先の項目は飛ばして突然そこに来られるとおかしなことになるので、いつかは確保されなければいかぬですよ。
  158. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まさしくもう、ちょっと立場がどうなりましたのかと思いますが、本当にいつかは恒久財源が確保されませんと困りますので、ただいまのところ、率直に申し上げますと、六十二年度は歳入剰余金もございますからともかく何とかかんとかやってまいります。それで六十三年度になりますと、先ほどから御指摘のように、利子課税はまだちょぼちょぼでございますから、いずれ恒久財源になりますというふうにお答えすればいいようなものの、それはいわば永久平年度化でございまして、大分時間の先のことでございます。でございますから、六十三年度では、いわゆる自然増というものを考えない意味での減税、増税ということでの恒久財源ということになりましたら……(日笠委員「自然増」と呼ぶ)いや、けさほどの御質問の中に、自然増なんというものは入れないんだよ、こういうお話がございました。そのとおりだと思うのでございますね。ですから、税法改正による減税、増税を六十三年度でびしっとそこでマッチさせろということになりますと、それは実は、私ども今、どうしていいかということを申し上げるだけのものを持っておりません。  一つは、それは税制改革協議会がこれからどういうふうな御審議をなさるかということがあるものでございますので、それを推移を見守らせていただいておるわけでございますが、このままいきましても、六十三年度で恒久財源と減税とがマッチするかといいますと、三年度自身ですぐにマッチするということは、ただいまのところは、こうこうこういうことでございますという御説明はちょっと申し上げにくいというのが本当のところではないかと思います。
  159. 日笠勝之

    日笠委員 そうすると、何遍もしつこいようですが、恒久財源が確保されていないのに減税をやってしまう、こういうことですね。与野党の意見の一致を見たというのですが、一致したものを無視する、こういうことですね。このとおり報告を見ますとそうですが。
  160. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 こういう与野党の御一致がありましたので、ちゃんと六十三年度には恒久財源をお示しいただけるのであろう、こういうことでございます。
  161. 日笠勝之

    日笠委員 そうすると、これは与野党の税制協議会で示してくれるのを待っているということですか。  だったら、委員長、私はここで申し上げておきますけれども、ならば大蔵委員会の存在価値はどこにあるのですか。大蔵委員会で、この結論が決まって、一兆五千四百億円からびた一文動かないのでしょう。我々がここで、もう百億、もう五十億何とか頑張ってくれ、マル優も原則廃止だけれどももう少し残してくれと幾らここで大きな声を張り上げて言ったって、時間がたつのを待って、あと採決へ持ち込むだけじゃありませんか。こんなものはもう儀式、セレモニーですよ。
  162. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いえ、六十二年度においてはもう私どもは覚悟しておりますから、これはもう先行実施でございます。六十三年度のことはまだまだ時間がございますので、これから税制改革協議会が年末に向かいましてまた第十三回目からを続行していただけますから、それの御審議を私どもが見守らしていただいておる、こう申し上げておるのでございます。これから年末までの時間のことでございます。
  163. 日笠勝之

    日笠委員 年末までにこの忙しいさなか税制協議会で恒久財源が見つかると私は思いませんね、その手品みたいなことは。  ですから、これはどうですか、委員長委員長に私は申し上げますが、当大蔵委員会の中にそれなら財源小委員会とか減税委員会とかこういうものを設けて、税制協議会だけに任せておったのじゃこれは大蔵委員会に何の存在価値もないわけでございますので、この点については後ほど理事会で前向きにひとつ、税制協議会に対抗するわけじゃない、税制協議会の後ろに位置してもよろしいから、小委員会をつくって、我々大蔵委員会も何らかの、この減税額に少しでも貢献できる、税制改正に貢献できるようなものをしなければ、これは一方通行、言うだけ、こう思うのですが、委員長、どうですか。
  164. 池田行彦

    池田委員長 本委員会の運営の方法につきましては、本委員会に与えられました責務を十分に果たしていく、そういった観点から今後とも理事会等において検討してまいりたいと存じます。
  165. 日笠勝之

    日笠委員 大蔵大臣、率直にお聞きしますが、もう一兆五千四百億円びた一文減税額はふやすことはできませんね。
  166. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはいずれにいたしましても国会の、あるいは当委員会の修正によってお決めいただくことでございますが、八月二十六日のいろいろ御討議のございましたこと、もう私どもとしてはこれをどうやったら実現できるかといろいろ苦慮をいたしておりますので、その辺のところをどうぞ十分お酌み取りをいただきたいと思います。
  167. 日笠勝之

    日笠委員 そうすると、大臣、この一兆五千四百億円はこれ以上御無理だとお酌み取りください。ならば、その一兆五千四百億円という金額は動かさずに実質的にさらに減税になる方法はないのか。いいですね。  これは一つは医療費控除でございます。これは主税局長どうですか。医療控除を今回五万が十万に足切りで上げるわけですね。そうすると幾らの増収になるのですか。五万円を十万円に上げた場合幾らの増収になりますか。
  168. 水野勝

    ○水野政府委員 これは増収を期待しこれをもって減税財源に充てるというための改正ではございませんので、これでもって増収額というのは当たらないわけでございますが、この改正によりまして百億円程度の増収にはなる計算をしておるところでございます。
  169. 日笠勝之

    日笠委員 百億円の一応増収にはなるわけですね。そうすると、これは大臣、一兆五千四百億円の所得税減税のこれはカウント外ですよ。そうですね、主税局長。百億円という数は一兆五千四百億円の減税額のカウント外でしょう。
  170. 水野勝

    ○水野政府委員 カウント外でございます。
  171. 日笠勝之

    日笠委員 そうすると、大蔵大臣、どうでしょうか、足切り五万円を十万円、これを据え置いたらどうでしょうか。実質減税みたいなものですよ。本当は百億円の増収が見込まれておるのを据え置きにすればもともとですから、これは百億円減税したのと同じですね。そうすると我々大蔵委員会も面目立ちますよ。頑張ったおかげで一兆五千四百億円の所得税減税、さらに医療費が据え置きになったから、本来ならば百億円余分に取られるべきものがそれだけ取られないということは、実質減税みたいなものじゃありませんか。こういう方法で、与野党幹事長・書記長の皆さんには、一兆五千四百億円、これ以上ふやしませんでした、しかし医療費控除の五万を十万、これはもうやめまして据え置きにいたします、これは修正でできるわけですね。大臣、どうですか。
  172. 水野勝

    ○水野政府委員 この金額は昭和五十年に決められたものでございまして、当時の医療費の支出が三万から四万円程度でございましたとき、この一般的な医療費支出水準に合わせまして五万円というふうに決めさせていただいたわけでございます。現在は平均して八万円程度の支出状況でございます。この医療費控除は、一般的な支出水準のものにつきましては課税最低限等で対処していただくことといたしまして、一般的な支出水準以上のものにつきまして医療費控除でもって対処するという趣旨でございます。そうしたところからいたしますと、昭和五十年以降の医療費支出の水準あるいは各家計の実収入の水準等からいたしまして、今回別にこれでもって増収を図るとか増税ということでございませんで、その間の情勢の推移に調整をさせていただいているということでございます。  昭和五十年当時におきましてはこれによりまして二十四万人程度の医療費控除の適用者がございましたが、現在はこれが百八万人程度となっておるわけでございまして、こうした点から考えますとこの医療費控除の水準としてはややいかがなものか。この制度の趣旨からいたしますとこれはこれでぜひ是正をさせていただきたい。これが昨年末の税制調査会の答申の方向にもございますわけでございますし、また私どもといたしましても、こうした状況からいたしましてこの点は一般減税の問題とは切り離しまして御提案を申し上げ、お願いをしているところでございます。
  173. 日笠勝之

    日笠委員 局長のおっしゃることはおっしゃることでそれはよくわかるのですが、私が今申し上げているのは、この大蔵委員会でこれだけ長時間かけて審議をして、もう与野党幹事長・書記長会談で一兆五千四百億円になってしまった、そこから先幾らここで論議してもびた一文何も上積みもできない、マル優存続もできない、これじゃもう型にはまって結論先にありきで、これじゃ我々も頑張っていくかいかないわけでございますので、これは大臣としての一つの見解の問題であり、裁決の問題だと思うのです、大臣。この足切りを現行どおりにすれば実質百億円の減税に匹敵するわけです。腹は何も痛まないわけです。ぜひひとつそういう方向で、できれば与野党の理事会で協議して修正をしていただきたい、こう思うのです。修正が出れば、それは国会の御論議の御意見ですからぜひそうやってもらいたいと思うのですが、とりあえずこの医療費控除を据え置くということについて大臣の御見解を承りたいと思います。
  174. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 与野党の幹事長・書記長会談が何度か行われまして、八月七日に自民党の幹事長がある四項目でございますかの御提言を申し上げ、また八月二十六日にも御議論があった、ここに至ります間に実はいろいろな案が事実問題といたしまして与野党間で御議論、御検討になっておるように承知いたしておりまして、その結果としてこの四つの問題が残ってきたというような経緯等私ども考えておりますものですから、これにつきましてはどうかこれでひとつ、これも実は楽なことではございませんのですけれども、ここまでのことで国会の御意思が決まれば、これはもう何とかしてそのためのやりくりを考えなければならない、これが限度のように存じております。
  175. 日笠勝之

    日笠委員 これも委員長にお願いいたしますが、後ほど理事会でぜひそういう医療費控除は現行据え置きということでひとつ与野党の理事さんの間でよくもんでいただきたい、そしてしかるべき結論を出して、大蔵省の方に申し出をし、修正をいたしていただきたい、かように思いますが、委員長、どうですか。
  176. 池田行彦

    池田委員長 これまでの諸般の事情あるいは経緯を十分踏まえまして理事会において協議してまいります。
  177. 日笠勝之

    日笠委員 ぜひひとつ大蔵大臣、一兆五千四百億円びた一文も上積みできないということでございますので、これは不平不満でございますけれども、医療費控除だけは据え置きすると実質百億円の減税になるわけでございますから、篤と頭に入れておいていただきたいと思います。  それから、医療費が出ましたので、医療費控除について、国税庁の方ですか、何点かお伺いしたいと思います。  先ほど世帯の平均の医療費は八万三千円ぐらいと御答弁にございました。それで、今度五万を十万にするということは先ほど言ったとおり据え置きにしてもらいたいわけでございますが、二十四万から百八万ですかの医療費控除の申告者がいるということで、自主申告というもの、税金についての知識がそれだけ広がったとも言えるわけでございます。そういう方々をばっさり切るのも大変忍びないということもございます。それともう一点は、病気になってから、けがをしてから病院に行くというのは医療費が非常に高くつくわけでございます。しょっぱなに私が申し上げましたように、来年度予算の概算要求がもう締め切られましたけれども、国立大学の授業料値上げは必至、医療費削減これまた必至と言われておるわけでもございますので、一つ御提案申し上げます。  それはどういう提案かと申しますと、B型肝炎のウイルスキャリア、これは一説によりますと全国で三百万人ぐらいいると言われております。このB型肝炎は伝染力が非常に強烈でございまして、御存じのとおりいろいろな医療機関においても、手術中だとか注射をしているときに間違ってけがをしたというようなことで死亡者もたくさん出ておる。こういうことで、国立の病院関係については、ワクチン接種で一人二万円お金が要るわけでございますが、来年度二万人で四億円ぐらい予算を要求すると聞いております。ところが一番危ないのは家族です。一人に三人の家族として、三百万人なら九百万人ぐらいは危ないわけです。これはワクチン接種に一人二万円お金がかかるそうでございますが、B型肝炎のワクチン接種は医療費控除で認められないのか。健康保険の方ではこれは認められないということをはっきり言っております。ですから、予防医学という観点で、B型肝炎になってから病院に担ぎ込まれたら相当な医療費が要るわけですから、その前の予防で一人二万円ぐらいかかるわけですが、ワクチン接種をする場合に領収書をとっておきまして医療費控除として申告をするということはいかがでしょうか、ぜひ前向きにお答えいただきたいと思います。
  178. 日向隆

    日向政府委員 まず初めの現行医療費控除の還付申告件数はどのくらいかというお尋ねでございますが、医療費控除に係ります還付申告件数につきましては、医療費控除を主たる理由とするもので拾い上げてみまして、各年の三月三十一日現在において、二、三年分申し上げますと、直近の六十一年分は百四十三万人、六十年分は百三十八万人、五十九年分は百六万人という状況でございます。これはサンプルによる推計の数字でございます。  第二点の医療費控除の範囲の話でございますが、具体的にB型肝炎の例を挙げられましたけれども、これは委員御案内のように、医療費控除の範囲に関する所得税法施行令第二百七条の第二号に「治療又は療養に必要な医薬品の購入」が規定されているだけでございます、したがいまして、現在、単なる健康増進や疾病予防のための医薬品の購入につきましては、その費用は一般的には、今言いました施行令の趣旨を受けますと、医療費控除の対象と指定することは難しいと考えております。ただ、B型肝炎につきましてるる御説明があったところでございますが、こういったものの費用につきましては、それが具体的にどのような状況において使用されるかをよく見まして、疾病等に伴いまして診療または治療の一環として使用されると判断される場合には医療費控除の範囲に含めて取り扱ってまいりたい、かように考えております。
  179. 日笠勝之

    日笠委員 ワクチンもいろいろございまして、今度は子供のワクチンでございますが、百日ぜき、ジフテリア、破傷風の三種混合ワクチンの場合ですと、一回が大体二千五百円以上、そして四回しなければいけないから子供一人一万円かかってしまう。これだけではありません。あと、おたふく風邪もありますし、日本脳炎もあります。子供が病気にならないようにするためにいろいろなワクチンがありますが、一人当たり何万円というふうにかかる可能性もあるわけです。一人がたとえ三万円かかっても、例えば子供が三人の家族であればワクチンだけで九万円かかってしまうのです。こういうものこそ医療費控除に取り込まないと、厚生省の方も予算が非常に厳しい、医療費の削減必至と言われておる中にあって、病気になってからでは費用が物すごくかかるわけでございますから、これはぜひ施行令を変えまして、ワクチンに関するもの、医者が認めたもの、指示したものについては、B型肝炎も子供のおたふく風邪とか百日ぜきの各種ワクチンも——三人の子供の一人がかかれば次の子供はほぼかかるわけです。三人の子供のうち一人がおたふく風邪にかかると、恐らく二番目も三番目もかかってしまうのです。こういうこともあるわけです。ですから、初めの子供はかかってしまったのだからワクチンはしようがないが、しかし、二番目、三番目の子供は予防で重要なわけでございます。そういうことも含めまして、厚生省とも一度よく相談をしていただきまして、B型肝炎また子供の各種ワクチンは医療費控除で認めるということで御検討いただけるかどうか、もう一度お願いいたします。
  180. 日向隆

    日向政府委員 施行令の話につきましては、これは主税局の所管でございますから私の立場では言うことはできませんが、今委員指摘の百日ぜきの予防等につきましても、通達上の扱いとして、今私がB型肝炎のときに申し上げましたような扱いと同様な取り扱いをしてまいりたい、かように考えております。
  181. 日笠勝之

    日笠委員 しかし、通達上でとなると、これは検討してもだめというふうになる可能性の方が強いわけです。だから、これは本当に前向きの前向きで考えていかなければならない。  それじゃ、主税局長、どうですか。これについては最後に大臣にも聞きますよ。国民の命という大事な問題です。健康保険に適用にならないのだからワクチン接種くらいは医療費控除で認めなさい、こういうことです。
  182. 水野勝

    ○水野政府委員 医療費控除の趣旨は、通常の医療費支出でございましたら、医療費以外のもろもろの家計の支出がございますが、そうした通常の支出の水準のものは、一般的な人的控除、その集積としての課税最低限でもって対処させていただく、その中で通常の支出を異常に超えるようなものについては、その方の担税力が減殺されるわけでございますから、医療費控除として特段の控除を行うという趣旨でございます。そういたしますと、予防のためのもろもろの措置が一般的になされるということでございますと、それがその方の担税力をほかの納税者と比べまして異常に減殺するものとして該当するのかどうかという点につきましては、その本来の性格からするとなかなか難しい点があるのではないかと思うわけでございますが、御指摘の点は十分よく勉強はさせていただきます。しかしこの趣旨からいたしますと、そうしたものがこういう特別の所得控除としてなじむかどうかはかなり疑問ではないかと考える次第でございます。
  183. 日笠勝之

    日笠委員 大臣、どうですか。未来の総理を担おうかという方ですから、国民の健康を守るとい立場で、B型肝炎の患者がいる、伝染しないようにその家族がワクチンを接種する、それは健康保険で見られなくて全額自己負担、これじゃ私はちょっと納得できませんね。よく検討していい答弁を……。
  184. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 少し事務当局に検討をさせてみますので、時間をちょうだいいたしたいと思います。
  185. 日笠勝之

    日笠委員 事務当局の方に検討していただくということでございますから、大臣にそういうふうにおっしゃっていただいたのですから、まさか後ろ向きの検討した結果が出るとは私はつゆとも思わないで、大確信をしていきたいと思います。  では、ちょっとマル優の問題にいきたいと思います。  これは主税局長さん、マル優廃止理由を、理屈はよろしいからポイントだけ三つ四つ、いわゆる理屈は後で貨車に乗ってくるくらいいっぱいつけられるわけですから、一、二、三くらいで簡単におっしゃっていただけますか。
  186. 水野勝

    ○水野政府委員 この制度は古くは大正九年から始まっており、具体的には昭和十六年の国民貯蓄組合、昭和三十八年度のマル優制度につながっているものでございます。  第一点といたしましては、そういう零細な庶民の貯蓄ということで始まっておりましたが、現在では個人貯蓄の七割以上が適用を受けている結果となって、その趣旨にややそれてきておるということでございます。第二点は、それによりますところの非課税利子の金額が、昭和六十年度で申しますと十五兆九千億円という巨額なものになっておる。これは、他の個人事業所得、法人所得等との間で負担の不公平をもたらしていあのではないかという点でございます。それから、現在のマル優制度はお一人三百万円ずつの金融機関、郵便貯金、国債でございます。一人九百万円になるわけでございますが、世帯人数が多ければそれだけ多く使用できる、そういたしますと結果的にそういう枠を使い切ることのできる高額所得者ほどより多く受益している実情にあるのではないか、これが第三点でございます。第四点としては、戦時中の消費購買力の吸収、戦後の経済復興期におきますところの資本蓄積、こうした時代とは違いまして、貯蓄奨励ということで一律的に政策的な減税措置を講ずる必要はいかがか、これが次の点でございます。それから、よく言われます、現在の制度はかなり複雑でございますので不正利用が少なからず見られるところでございます。そうした点への対処ということ、これが第五点と申しますか、列挙をいたしますればこういう物の言い方になろうかと思います。
  187. 日笠勝之

    日笠委員 本当は、マル優はやはり残すという立場で私は一つ一つ反論したいのですけれども、時間の関係で一つ二つちょっとお聞きしたいと思います。  先ほど三番目の中で、一人九百万、四人家族ですと三千六百万ですか、そういうふうに世帯人数が多ければ多いほどいわゆる使える金額も多くなる、こうおっしゃいましたね。じゃお聞きしますけれども、子供の名前でもし三百万円郵便貯金なら郵便貯金を持っている。この場合は、毎年五十九万円までなら贈与税はかかりませんが、一挙に三百万やった場合、これは贈与税の対象になるのじゃないですか、どうですか。
  188. 水野勝

    ○水野政府委員 一年の間に三百万贈与されたら贈与税がかかってまいります。
  189. 日笠勝之

    日笠委員 そうしたら、六十万以上は贈与税ですね。そういうふうなことで、おっしゃいましたように、例えば一家で三千六百万あるというような家庭で、じゃだれが子供に与え、おじいちゃん、おばあちゃんに与えてそうなっているのかということを調査したことがありますか。それによって、どれだけの贈与税だということでこの税収がふえたんですか。
  190. 水野勝

    ○水野政府委員 そうしたマル優ないしは源泉所得税調査一般の問題として、資料等を通じそうした事態があれば、贈与税の申告漏れとしてお願いをしているところでございます。
  191. 日笠勝之

    日笠委員 だから、調査したことがあるのか。あれば、それだけでどのくらい税収が上がったのか。調査もしてなくて、四人家族で三千六百万のような高額のものがあってどうのこうのというのは理屈だけでありまして、実体はないわけでしょう。例えば、どこかの金融機関なら金融機関だけでも調査をしたことがあるのかどうか、どうですか。
  192. 日向隆

    日向政府委員 贈与税につきましてそれなりの調査をしておると思いますが、ただいま突然のお尋ねでございますので、具体的に三百万円の問題につきましてどの程度贈与税の調査事績の中でわかるかについては、よく調べた上で後で御答弁申し上げます。
  193. 日笠勝之

    日笠委員 恐らくそういうことで調査してない。調査してない、実体がないのに、推測で四人家族なら三千六百万からの多額の資産があり、預貯金があって、それに対して課税されぬのはおかしいというのは理屈にならぬということですね。ですから、後で調査をした、しない、したならばどれだけの人をしてどれだけの税収が上がったか、これをいただかないと局長が言われた三番目は認められないということになってきますね。  それから、戦時中どうのこうのと言われましたけれども、戦時中のことはいっぱいあるわけですよ。入場税だって、戦費調達のためできた税金じゃありませんか。酒税だって、戦費調達のためにつくった税金制度ですよ。そんなこと言うんでしたら、入場税も酒税も全部改めなければいかぬということになってきますね。     〔委員長退席、大島委員長代理着席〕  戦時中ということであればそういうことになるわけですが、そのように政策でしむけてきたわけでしょう。預金をするように、ストックをするように、国が政策的に、法律的にしむけてきたわけでしょう。それを、今これだけの膨大な、非課税利子だけで十五兆何千億円であります、それは不公平でございます、これはだまし討ちじゃありませんか。一生懸命国民も政策にのっとって貯金をしなければいけないとやってきた、ある日突然、これはもう悪い制度ですから改めます、これだと国を一体どこまで信用すればいいんだろうか。やれやれ、頑張れ、九百万までは無税だ無税だ、一生懸命やってきた、そうしたら今度はストックが多くなり過ぎましたから、課税ベースに外れてはまずいので課税します、これはだまし討ちと言うんじゃないですか。  今日までそうやってきたんでしょう、法律で。預貯金を九百万円までであれば非課税にします、一生懸命ためてください、それが即財政投融資であるとかいろいろな面で日本の国の発展のために生きてくるんだからと、私たちは子供のころそう教えられましたよ。学校において子供貯金で、少ない金額を持っていっては貯金をしてきました。そうやって学んできたわけであります。それを今になって、これだけの膨大なストックがたまったのではこれはおかしい、ばっさり切ろう、これでは国をどこまで信用すればいいんだろうか。やればやったで、ある程度の実績ができた、今度はばっさりと切られる、こういうふうになるわけですが、この点、恐らく国民の率直な疑問というものは、そうやって国を信頼して、将来のために、年金のために、住宅のためにということで貯金をしてきた、預金をしてきた、マル優を残せと言う人は七〇%も八〇%もいるわけですから、それを、余りにも膨大な非課税利子がある、これはおかしい、ばっさり切る。それはほんの一部残すのですよ、二千二、三百万人ですか。これではどこを、だれを信用して国の政策にのっとって国民はやっていけばいいのか、これだけちょっとお答えください。     〔大島委員長代理退席、委員長着席〕
  194. 水野勝

    ○水野政府委員 税制上の優遇措置と申しますか、特例措置も、その時代その時代の社会経済情勢に応じた措置としてお願いをしているところでございまして、背景となる社会経済情勢が変わればまた政策措置の重点はほかの方に移していくということが税制当局としては必要ではないかと思うわけでございます。  ただ、全く今までの非課税貯蓄制度を全廃してしまうというドラスチックな、一度にそういうことをお願いするというのはいかがかと思いますので、老人、身体障害者、母子世帯等につきましては引き続き非課税を継続する、それからサラリーマンの方の財形につきましては特例措置を続けるということで、必要な範囲におきましてはそうした配慮を行いつつ、社会経済情勢の変化にはやはり税制としても対応してまいる必要があろうかと思いまして、御提案をしているところでございます。
  195. 日笠勝之

    日笠委員 私は、それについては納得できません。ドラスチックな改革をやるならば、同僚議員も提案しました一店舗、一種類、五百万なら五百万ということにまずして、それから今回のようにやるというような中途経過があってもいいと思いますね。まさにこれはドラスチック過ぎますよ。そういうことでございます。  次は、極端な例ですが、いわゆる義務教育、小学校、中学校ぐらいの子供がお父さん、お母さんからお年玉をもらってためた、恐らく五万とか七、八万の預貯金、定期があったとしますね、これも課税するのですか。
  196. 水野勝

    ○水野政府委員 こども銀行のものでございましたら、引き続きこれは非課税でございます。それが従来のマル優制度にのっとったものでございましたならば、それは課税をさせていただくということでございます。
  197. 日笠勝之

    日笠委員 私の子供が今何か五万か六万あるのだそうですが、とんでもないと怒っていました。何か取られる利子で、一カ月分の自分の小遣い分だそうですよ。だから、子供の本当に少額の預貯金まで利子を取るというのは、先ほど同僚議員も後ろの方で血も涙もないと言っておりましたが、私もそう思いますね。  それからもう一つは、障害者を持った親御さんですね。この親御さんが、六十五歳以上でもない、いわゆる寡婦でもない、それからまた身体障害者でもない場合、しかし子供は障害者だ、何といってもやはり将来の経済的なことが心配なわけですよ。そのために、親御さんが一生懸命貯金をしてきているものもあるのです。自分が死んだ後、このお金でせめて子供が何とか経済的な意味では社会の非難も受けずに生活できますようにということで一生懸命貯金をしてきた。しかし、これでも課税されますね。親御さんの貯金ですよ。
  198. 水野勝

    ○水野政府委員 今回、引き続きまして非課税扱いを継続させていただきます範囲につきましては、御指摘のように老人、母子家庭、身体障害者等でございまして、所得の稼得能力が減退し、または減失した方の貯蓄につきまして引き続き非課税とさせていただくということでございます。そうした障害者の方の御親族等につきましては、そうした制度導入いたしますと、その方の御関係を証する書類を本人確認書類とともにまたあわせて御用意していただく。御本人につきましては、身体障害者でございましたら手帳をお持ちでございますが、その家族等々ということになりますと、執行面等を考えますとその点はやや複雑な制度にもなろうかと思うわけでございますが、制度の趣旨といたしまして御本人の稼得能力の消滅した方の非課税貯蓄として仕組みます以上、その家族の方につきましてはその点は今回としては難しい問題である。ただ、御指摘のような点につきましては、そうした障害者のために、お子さんのためにということでございましたら、現在の相続税の中におきましても心身障害者扶養制度等、特別の制度も配慮しているところでございます。
  199. 日笠勝之

    日笠委員 要は課税ということですね。ですから、うんと少額な定期をしている子供さんのものにも利子課税、それから子供さんが障害者でお父さん、お母さんが一生懸命働いて将来の子供のためにということ、これも一応課税になる、まさに血も涙もないような感じになってくるかと私は思うのですね。  それで、マル優は高額所得者にとって非常に有利である、このようにも思うわけですね。何か聞きますと、金持ちの鼻歌が聞こえてくるようでございます、特に高額の所得者は、最高税率がまず下がりますね。それから三五%が二〇%に下がりますね。有価証券取引税も〇・五五から〇・五に下がりますね。トリプル減税だ、もう金持ちは笑いがとまらない、本当にありがたい税制改正だ、こういうような声が私ども聞こえてくるわけでございます。これについても、総合課税であれば相当高額の税金を取られるべき人が、資産性所得、すなわち利子課税については二〇%と非常に低率な税率しか適用されない、こういうふうになるわけでございます。これについては、不公平がますます助長されるという意味では私は大変に疑問に思うわけでございますが、いかがですか。
  200. 水野勝

    ○水野政府委員 お金持ちあるいは高額の貯蓄を持っておられる方が有利であるという点につきましては、恐らく現在三五%の源泉選択課税を行っておられる方、あるいは高い税率でもって総合申告をしておられる方のお話であろうかと思うわけでございますが、現在の三五%の源泉選択課税の利用の実態を見ますと、これは所得階層にかかわりなくと申しますか、かなり低所得者から高額所得者までまんべんなく利用されておるというのが実態でございますので、高額所得者だけがこれによって負担が下がるということは必ずしも当たらないのではないかと考えておるわけでございます。  また、非常に高額な貯蓄を持っておられる方々はまさに、先ほどのお話の贈与税の問題はございますけれども、家族お一人九百万円までフルに現在使っておられてそれが丸々非課税であるということからしますと、そうした貯蓄利子につきましては二〇%の御負担はかかるわけでございますから、むしろ負担増加となるのはそうした高額な貯蓄者であるとも言えようかと思うわけでございます。  また、高額な貯蓄者、資産家は、三五%をお使いになる前に一六%の割引債等を御活用になっている場合も多かろうと思いますので、今回の利子課税の改正がお金持ち、高額貯蓄者に有利であるというのは、必ずしも当たらないのではないかと私ども考えておるところでございます。
  201. 日笠勝之

    日笠委員 それはマル優のことだけれども、私が言ったのは、最高税率が六〇%にも下がり、有価証券取引税も下がるのでしょう。トータルして言っておるわけですよ。だから、トリプル減税だと言っておるわけです。  では、ちょっと計算できかねるかと思いますが、具体的にお聞きします。例えば今、銀行それから郵便局に五千万円していた人、マル優が九百万適用を受けている、この人は今度の税制改正で減税になるのですか増税になるのですか。今、特定の理由づけをしているわけですよ。五千万円ぐらい郵便局なり銀行預貯金をしている人で、ちゃんと九百万円までのマル優は適用を受けて、あとの四千百万円は三五%払っているとした場合、これは減税になると思いますか、増税になると思いますか。
  202. 水野勝

    ○水野政府委員 五千万円の金融資産をお持ちになり、そのうち四人家族で三千六百万円は非課税貯蓄をお使いになり、その余につきましては、この例で申しますと、源泉選択をお使いになっているという方でございますと、現時点におきましてはその方の税金は二十四万五千円でございますが、これは源泉選択の分でございます。今回全体が、非課税貯蓄分が課税されるといたしますと五十万円の御負担になり、その差額二十五万五千円が、差し引き御負担増になるという計算に相なろうかと思うわけでございます。
  203. 日笠勝之

    日笠委員 だから、問題の設定が違うのです。一人が五千万円持っていて、九百万円までのマル優適用を受けていた場合、あとの四千百万円は三五%払っていた場合ですよ。どうなりますか、簡単に。増税か減税かわかるでしょう。減税になるんですよ、減税でしょう。計算はいいですよ、幾らという金額は。減税でしょう。いや、局長、金額はいいのですよ、計算機は出さなくても。  例えば、お年寄りでひとり者であって五千万円の預貯金があった、九百万円まではマル優適用を受けた、あと四千百万円は普通の何とか銀行に一千万とか何とか信託に二千万とかやっていた場合、これは減税でしょう。金額はいいのですよ、さっと出ませんか。考えたってわかるでしょう。——では、計算をしてくださっているからそんな難しくない。要は増税になるか減税になるかだけで、これは減税になるはずですよ、私が計算しますと。だから、金持ちほど減税になる。最高税率は六〇%に下がっちゃってありがたい。それから有価証券取引税も下がる。有価証券取引も、午前中同僚議員がやられたそうでございまして、私は省きますけれども、お金持ちほど有価証券保有率が高いんですね。そうでしたね。お金持ちほど有価証券を持っている方が、金額が多い。そういうことになれば、もう本当に金持ちの鼻歌が聞こえてくるという、これはもう言えると思うのです。  局長、ちょっとお聞きしますけれども、今度のマル優の原則廃止になりましたらば一兆六千億円ほど増税になる、こういうことでしたね。一兆六千百六十億、データをもらいました、ところが、二千七百億円減税になるところがありますね。源泉分離課税によって減収です。これはどういう人が対象なんですか。二千七百億円減税になる人は、どういう方が対象なんですか。
  204. 水野勝

    ○水野政府委員 先ほどの五千万円でお一人という場合には、恐らく目の子では二十万円ぐらいの減税になろうかと思いますが、この点につきましては先ほど申し上げましたように、こうした方が即三五%を用いておられたのか、一六%という源泉分離課税が適用になる割引債もあるわけでございますから、そういう方につきましては一六%が今回一八%になるということもございますから、そうしたケースでは負担の増加になる、いろいろなケースがあろうかと思うわけでございます。  それから、一兆六千億円の全体としての増収でございますが、御指摘のように源泉分離課税三五%を適用しておられた方の分につきましては、その分は一律二〇%、国一五、地方五で、一兆六千億の中ではその分だけ減収になるわけでございますが、この点につきましては先ほど申し上げましたように、源泉選択課税の利用の実態等からいたしますと、それは比較的所得水準とはかかわりなく上下に分布しているようでございますので、そうした方の分がお金持ちだけの負担減と申しますか、収入減になっているとも言えないのではないかと考えておるところでございます。
  205. 日笠勝之

    日笠委員 時間がありませんので、最後ちょっと急いで。——労働省さんに来ていただいておりますか。  財形のことを実はもう少し詳しくやりたかったわけでございますが、一般財形でございますが、これを今度年金と住宅については五百万円までは非課税ということになるわけでございます。一定の要件、一定の条件のもとにシフトできるわけですね。今、一般財形をやっている人が住宅財形、年金財形にシフトする場合の一定の要件が要るというふうにおるのですが、一定の要件というのはどういう要件ですか。
  206. 渡邊信

    ○渡邊説明員 提案しております財形法案では、一定の要件のもとに一般財形から年金と住宅に切りかえることができるというふうにしてございますが、この一定の要件につきましては、まず引き続き行うことができる期間についてでございますが、これを御提案の案では本年の十月一日から来年の、六十三年の六月末日までということにしております。  第二点は、引き続き行うことができる額でございますが、これを本年十二月末日の残高を限度とするというふうにしておりまして、こういった点が主な点でございます。
  207. 日笠勝之

    日笠委員 そうしますと、そういうふうにシフトができるわけですが、駆け込み加入ではございませんが、今自分の会社にある、天引きだ、今一万円ぐらいしかやっていない、これを今度一般財形だから年金にしようかということで、また住宅でもよろしい、住みかえということもできるわけですから。一挙に二十万ぐらいやっちゃう、半年。これはできるのですね、一挙に二十万。給料が二十万、二十万全部でもいいのです。それで半年済んだら、今のマル優を取り崩して使って半年済んだら、一定の要件の期間が過ぎましたら、今度はもとどおり一万円に戻す。これはシフトできるのですね。これはいいですか、これで。
  208. 渡邊信

    ○渡邊説明員 財形貯蓄は給与からの天引き貯蓄ということでございますから、どれを契約の変更によりまして、例えば毎月の積立額をふやすということは可能でございます。
  209. 日笠勝之

    日笠委員 ということなんですよ。だから、私がもしサラリーマンなら、給料が四十万あったとしましょうか、今から来年の三月三十一日まで何カ月間、全部給料を一般財形の年金やっちやうんですね、シフトさすのです。それでマル優を取り崩すのですよ、五百万円までは無税ですから。これはちょっと問題があると思いますよ、隘路がありますよ。これは研究してください。  それからもう一つ最後、労働省さん、加入の問題でございますね。これは御存じのように、非常に中小零細企業商店の方々は加入率も悪うございまして、サラリーマンの納税者が三千八百万という中で一千七百万人しかまだ入っておりません。二千万人はまだ入っておりませんね。そういうことから見ると、非常にまだ加入率を促進していかなければいけない、こういうふうに思うわけです。  御承知のとおり、今いろいろと検討してくださっているようでございますが、「中小企業生涯福祉のあり方に関する研究会報告書」というのが先日出ました。これを見ましても、財産形成が重要であるということで、これらを網羅したメニューの整備が必要である、このように言われておるわけでございますが、特にそういう零細企業商店にお勤めの方々の加入率をどうやって促進するかということについてのお考えが何かございますか。
  210. 渡邊信

    ○渡邊説明員 この財形貯蓄制度は長期的、計画的貯蓄ということでございますから、中小企業、特に零細企業におきましては、従来なかなかなじめないという面があったかと思います。  今回の改正案では、転職をされまして、取扱金融機関が前後で異なるという場合にも、財形貯蓄は引き継げるというふうな措置を講じておりますので、今後は中小企業でも利用しやすい制度になるというふうに考えております。また、本年度からは予算措置をもちまして、全国二百十の中小企業の集団を指定しまして、この集団に重点的に財形制度の普及をするということにしております。  こういった措置を今後とも強めまして、また金融機関などの協力も得まして、今後中小、特に零細企業の普及を進めていきたいと考えております。
  211. 日向隆

    日向政府委員 ちょっと先ほどのことで……。  親が子供に贈与をいたしまして三百万円のマル優をつくった場合、贈与税の課税についてどの程度調査するかという点につきましてのお尋ねでございましたが、現在これを直接の目的として贈与税の調査をすることはしておりません。ただ、特殊な課税資料がありました場合、これに関連して調査をすることはあり得ます。したがいまして、その調査の件数及び税収等につきましてはつまびらかではございません。御了解いただきたいと思います。
  212. 日笠勝之

    日笠委員 最後に、医療費控除の件につきまして、私は、据え置き、現行どおりということにこれから理事会等で検討していただき、政府も、もしそういうふうに理事会でまとまりましたら、このことについては前向きに検討し、実質百億円の減税ということをお願いを申し上げたい。  以上で終わりたいと思います。
  213. 池田行彦

    池田委員長 沢田広君。
  214. 沢田広

    ○沢田委員 大臣、今現在審議をいたしておりまする法案は、政府が提案しております一兆三千億の提案であるというふうに理解をしてよろしいですね。
  215. 水野勝

    ○水野政府委員 現時点におきまして御審議願っている私どもの御提案したものは、一兆三千億円のものでございます。
  216. 沢田広

    ○沢田委員 私ども以外があるのですか。
  217. 水野勝

    ○水野政府委員 本委員会に御提案されておるものは、現時点ではそれであると解釈しております。
  218. 沢田広

    ○沢田委員 現時点以外にはあるということですか。
  219. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのものを御審議していただいている、それ以外のものはございません。
  220. 沢田広

    ○沢田委員 そうすると、与野党で妥結をいたしました二千四百億に及ぶ減税の法案は、主として大蔵委員会に付託されるものと思いますが、それは改めて審議をするというふうに理解をして、これは議会が決めることでありますが、委員長としてはそういう判断のもとに今進めている、こう思ってよろしいですか。
  221. 池田行彦

    池田委員長 ただいま当委員会におきましては、政府から提案されました所得税法等の一部を改正する法律案を審議の対象とし、また税制全般について、いろいろ議員の各位から御質疑がされておるものと承知しております。
  222. 沢田広

    ○沢田委員 一兆五千四百億の全体の減税の中において何を行うべきか、また国民の期待にこたえるものは何なのであろうか、議員諸公はそれを主として置いて議論をしてきていると思うのです。ですから、ここで、与党の提案はプリントがありますが、提案者の席に着いて提案をしてもらう、野党の方にも提案があるならば提案をしてもらう、そして、一兆五千四百億の中身で議論をするということにしなければ本当の議論にはならないと思うのです。今盛んに述べられていることも、皆一兆五千四百億を想定して議論をしているのです。これは提案者がいるはずですから、それを提案しないで、二十一日から今日まで大蔵委員が九人も審議をしてきて、この二千四百億が化け物のように、何かわけのわからないままに、あるがごときなきがごとき、今大臣はこれが政府の提案きりです、ほかにはありませんと言っているのですから、そうなると与野党の妥結した二千四百億をだれかが提案しなければ、我々でなければ委員長が大蔵委員会で提案しなければそれは話にならない。この段階に来ても全然この問題が俎上にのらない、議論にならないということでは、今後の大蔵委員会の審議はできないと思うのですよ。これは、少なくとも委員長が議長の指揮下にあって運営をしている責任者として、この内容をこの段階においても放置をしているということは、国民に対して申しわけない。これは、速やかに提案できるように委員長から取り計らっていただきたい。それまで質問できません。
  223. 池田行彦

    池田委員長 沢田委員に申し上げます。本委員会に議案が提案されました場合には本委員会において審議をいたします。現在、政府提案の所得税法等の一部を改正する法律案について審議を続けておるわけでございますので、質疑を続けていただきたいと思います。  ただいま御提議の件につきましては、可及的速やかに措置されるように理事会等でも相談してまいりたいと存じます。
  224. 沢田広

    ○沢田委員 私が言っているのは、一兆五千四百億の減税の中身を審議するためには、政府は一兆三千億の減税しか提案しておりません、そうすると、二千四百億に及ぶ減税の内容はだれが提案するのですかと、それはありませんと。だからそれは、議長のもとにまとまった与野党の結論があります。それに基づいて現実的に審議は進んでいるのですから、別に改めてやるというのならそれも一つの方法です。今一兆三千億だけ決めればいいのです。一兆五千四百億を議論するならやはり総体的なものとして議論できるように、議案として提案してもらわなければ我々議論できません。それには政府・与党の幹事長であるとか、あるいはそれぞれ話し合ったものを現実的に提案してもらってからでないと審議、これも事前審議のおそれはありますけれども、その提案をしてもらわなければ議論になりません。仮定の議論になってしまう。そんな不見識なことは大蔵委員会としてやるわけにいかないですね。ですから、委員長にそれを善処してもらうことを私は要望したわけです。ただ始めてください、ああそうですかと、信号機が青になったようなわけにはいかないのですから、その辺はけじめをつけて進めてください。
  225. 池田行彦

    池田委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  226. 池田行彦

    池田委員長 速記を起こして。  ただいまの御提議につきましては理事会で協議をすることにいたしまして、審議を続行いたしたいと存じます。  沢田君。
  227. 沢田広

    ○沢田委員 今の同僚議員からは、あとの分の追加分も追って明日の段階には提案されるということでありますから、その分についての質問等についてはそこに譲りたいと思います。  その他の案件の方で主体的にお伺いいたします。ほかの省庁にも来ていただいておりますから、若干その方を消化していきます。  けさの朝日新聞に、警察官が免許証に落書きをした、こういうことであります。免許証はこれは公文書だと思いますが、その見解を警察からお答えいただきたいと思います。
  228. 山田晋作

    山田説明員 お答えいたします。  運転免許証は、自動車を運転することができるということを、いわゆる警察許可を示す証書でございます。
  229. 沢田広

    ○沢田委員 ちょっとそのままで。  公文書か私文書かの区別を聞いているんです。公文書なんですかということで。
  230. 山田晋作

    山田説明員 ちょっとその点につきましては何でございますが、先ほど申しましたように、車を運転することができるということを証する書面でございます。
  231. 沢田広

    ○沢田委員 そんな答弁で、答弁になっていないじゃないですか。私文書ですか公文書ですかと聞いているんです。じゃ何なんですか、それは。帰らないでちょっと言ってくださいよ、まだあるのですから。
  232. 山田晋作

    山田説明員 運転免許証は、それぞれ都道府県の公安委員会が発行した証明書でございますから、当然公の証書でございます。
  233. 沢田広

    ○沢田委員 公文書である、それでしかもこれは警察が本人に渡された場合においても、公文書としての位置が存在する。だから公共の建物に落書きをした場合には、警察は何の法律で取り締まりますか。     〔委員長退席、中川(昭)委員長代理着席〕 公の建物に落書きをしたら、どういう法律で取り締まりますか。——どうもおたおたしているようですから次にいきますが、言うならば公共物に落書きする者もあるいは公文書に棄損を与える者も、刑法上の罪になることは間違いないですね。ですから相手がどういう人であるにせよ、あるいは相手がどうであるかに関係なしに、「バカ」とか「アホ」とか、そういうものを免許証に落書きするなんというのは、公務員としては少なくとも余り素質のよくない者だということになると思う。私は、あえて素質がよくないという言い方をしたのは、これは当然行政処分なり刑法上の処置を受けるべき行為である、こういうふうに判断するわけであります。そこで答えてもらいたいんですが、答えてくれますか。私はそう判断しますが、いかがですか。
  234. 山田晋作

    山田説明員 運転免許証につきまして先ほどお尋ねがございましたが、落書きをしたということでございますが、それが運転免許証の効用を害するものであるかどうかということにかかってこようかと思いますが、その実物につきまして私もまだ現在見たものでもございませんし、新聞できよう初めて拝見したわけでございます。ただ、問題としましては、ああいうことをすることはまことに遺憾であるというふうに感じます。したがいまして、それぞれ所管の当局の方でしかるべき措置がされるのではないか、こういうふうに考えております。
  235. 沢田広

    ○沢田委員 法律違反をして刑法違反をしても、遺憾であると警察はここで答弁をした、あるいはスピード違反をしてもあるいは駐車違反をしても遺憾である、こういうことで事が済む、こういうことをいみじくも示したものだと判断をいたします。それで、次の問題に私は入らしていただきます。もしあえて訂正したいと思うならば、それなりの覚悟を持ってひとつ出てください。  なお、警察においでをいただいたのは、大臣、実は通勤費の問題で、自動車の通勤は九千六百円が控除の限度になっている。それで、列車なりバスなりで通勤しますと二万四千円まで認められている。これは大臣に聞きたいんですが、こういう差は何でつくられたと思っていますか。——主税局長に聞きたいんじゃない、これは政治家宮澤さんに聞きたいんです。どういう意味でこういう差をつけたとお考えになられますか。  例えば、もう一つ若干説明しますと、十五キロの場合でも、片道十五キロで三十キロですね。車の種類によっても違いますけれども、大体三十キロというと、十キロぐらい一リッターで走る車と考えても三リッター。三リッターで二十五日通うと仮定いたしましても、この金額ではとても足らないのです。これはもし何だったら、主税局長の方が答えた後、考える時間を与えて大蔵大臣に答えてもらいましょう。
  236. 水野勝

    ○水野政府委員 私どもの方の所得税法での通勤費の非課税範囲につきましては、原則としては公務員の通勤手当に準じているわけでございますが、そうしたところからいきますと、十五キロメートル以上の場合はお示しのように九千六百円でございます。ただ、その交通手段を使った場合にこれよりもかかるというときには、これがそういう自動車ではなくて「交通機関を利用したとしたならば負担することとなる」一カ月の合理的な運賃、これを支給する、それでその限度額は二万四千円となってございますので、通勤手当の非課税範囲の方につきましては、一応の金額は九千六百円の頭打ちはございますが、ほかの場合との比較で二万四千円までいくようにはなっておりますので、税制上の措置としては、差別はそこで解消をしていると私ども考えられるのではないかと考えておるわけでございます。
  237. 沢田広

    ○沢田委員 じゃ局長、その場合に、あなたは担当でないなんて逃げられては困るのだが、ほかの族費を払っておって、労働者災害補償法でいったら、その場合に補償法は適用すると思いますか適用しないと思いますか、あなたの論でいって。
  238. 水野勝

    ○水野政府委員 委員から先手を打たれましたが、それはもう私ども専門外でございますので、正確でない御答弁を申し上げては恐縮でございますので、ちょっとそこはむしろ私ども専門外につきましては、控えさせていただきたいと思うわけでございます。
  239. 沢田広

    ○沢田委員 まあ、これでやっていると時間がかかりそうですから、あと労働省に来てもらっているのは、本来そういう意味なんですが、いわゆる合理的な経路をたどらなければならないという義務づけがある。合理的な経路とは何ぞや、その合理的な経路をたどらなければ労働者災害補償法の適用にならなくなる。  それで大蔵大臣、ちょっと時間的に省略しますが、たからかかったガソリン代は、私が言おうとしているのは、本人控除の分で税制上認められないならば、税制上というか、この控除九千六百円を二万四千円まで引き上げてもらいたいというのが一つなんです。これは、ガソリンで通ってもあるいは列車で通っても二万四千円までが限度額になっているとすれば、二万四千円までは減税の対象としてやってほしい。しかし、なお念のため申し上げますと、企業が払える減税の限度は九千六百円なんです。それ以上は税金をかけなくちゃならない。課税対象になるわけです。だから、課税対象にするというならば、ガソリン代は本人の申請で減税額にしてもらいたい、それは通勤に使っていることは事実なんですから。言い回し方はいろいろありましたけれども、列車なら二万四千円いいが自動車では九千六百円というのは、今日の自動車社会で論理が立ちません。だから、それまで枠を上げてやってください、簡単に言えばそういうことです。  それで、労働省の方に言っておきますが、いわゆる合理的な経路というのはいろいろこれも難しい。お祭りがあったり何かすると、曲がったり何かすることがあり得る。細かい例は省略をいたしますが、労働省のこの合理的な経路、それの解釈については災害補償法に書いてあるわけですが、それ以外に今日の段階において考えている方向についてお答えをいただきたい。これは大臣には無理だから、労働省の方でお答えいただきます。
  240. 角田幸男

    ○角田説明員 労働省におきます合理的な経路ということでのお尋ねでございますが、労災保険におきます通勤災害補償制度の中で合理的な経路について説明いたしておりますのは、住居と就業の場所との間を往復する場合に一般に労働者が用いるものと認められる経路ということでございます。したがいまして、自動車通勤者の場合でありましても、あらかじめ会社に届け出している経路に限らず、特段の合理的な理由もなく著しく遠回りとなるような経路以外につきましては、合理的な経路として認められるということでございます。
  241. 沢田広

    ○沢田委員 念のためですが、局長、列車で通勤すると二万四千円まで非課税でもらえるのです。それで、もらっていて自動車で通っているのは脱税になりますか、それとも合理的だと局長は思いますか。
  242. 水野勝

    ○水野政府委員 税の立場から申しますと、十五キロ以上の場合には、それが合理的な経路でございましたらば、その九千六百円でなくて、普通に列車に乗って通ったときの定期運賃までなら非課税でございますということでございますので、それをもらっていて自動車をというときでも、そこまでは非課税は適用になるのではないかというふうに考えるわけでございますが、具体的なケースによりましていろいろであろうかと思います。しかし基本的には、普通の列車の通勤での金額までは非課税、その限度はもちろん二万四千円でございますということですから、そこまでの普通の定期運賃をもらっていて自動車が、それをもって脱税と言えるかどうかは疑問ではないかという感じがいたします。
  243. 沢田広

    ○沢田委員 局長としては珍しく寛容なお答えをいただきましたが、結果的には、九千六百円が一万円になろうと一万二千円になろうと二万四千円までの間は、いわゆる列車で通勤してきている限度が二万四千円である、それを自動車で通ってきても二万四千円までは当然脱税にはならない、こういうように解釈してよろしいですね。
  244. 水野勝

    ○水野政府委員 二万四千円を限度として列車定期運賃までの分は非課税ということでございますから、脱税という問題にはならないように思います。
  245. 沢田広

    ○沢田委員 それで、九千六百円は結果的には非課税限度が二万四千円に上がった、こういうことになるわけでありまして、非常に前向きのお答えをいただきまして心から感謝を申し上げる次第であります。今後、公務員の方も順次そういうものになっていくだろうと思いますので、人事院もいないけれども、その趣旨に立ってこれから対応していただきたい、こういうふうに思います。それは大臣、念のためですが、これは違ったなどというと主税局長が腹を切らなければならなくなりますから、大臣もそういう方向で善処してもらえる、こういうことですね。では、大臣首を縦に振っていますから、速記録にもそのように書いておいてもらいたいと思います。  続いて、順次通告の順でいきますが、厚生省においでをいただいておりますので、幾つかお伺いをします。  前にも同僚議員も幾らか聞きましたが、現在のいわゆる国民の可処分所得、勤労者の可処分所得は、日本の国の風土、慣習あるいは生活の体制、そういうものから見て望ましい水準は、どの程度の割合をもって望ましいと考えておりますか。これは、厚生省の方の生活保護の立場等にあられる意味を含めて、また社会保険庁の方でも、これから老齢化社会を迎えて年金が上がるのじゃないのか、どの程度上がるのだろうか、医療費も毎年一兆円ずつ上がっているのだが、これもどの程度まで上がるのだろうか、こういう心配があります。理想的な可処分所得の割合は幾らと判断をしておりますか。これはひとつ保険庁、厚生省それから主税局、大蔵大臣、こうお答えください。
  246. 清水康之

    ○清水説明員 お答えをいたします。  望ましい可処分所得の比率はどのくらいかという問題は大変難しい問題でございますので、事実でちょっとお答えをさしていただきたいと思います。  総務庁の家計調査を見ますと、年平均の一カ月分の勤労者世帯の可処分所得は、昭和五十五年では月額三十万五千五百円ほどになっておりますが、六十一年におきましてはそれが三十七万九千五百円ということで、約七万四千円の絶対額の増加ということになっております。ただ、先生御指摘のように租税や社会保障負担というものがふえておりまして、この間、五十五年の月額四万三千八百円が六十一年には七万二千九百七十円ということで約二万九千円ほどふえておりまして、その租税や社会保障費で取られる額というものの比率は一五・五%から一九・八%というふうに増加をしているわけでございます。  これはミクロの家計で見た場合でございますが、マクロに国民経済全体との関係でどうかということを企画庁の国民経済計算年報というもので見てみますと、租税や社会保障負担の対国民所得比というものは、昭和五十五年で三一・三%でございましたが、昭和六十年にはそれが三五・一%ということで、五年間で約三・八%ほど増加しているわけでございます。  私どもは率直に申し上げまして、人口の急速な高齢化あるいは年金制度の成熟化というようなことを考えますと、社会保障にかかわる国民負担というものは、今後ともある程度増加することは避けられないのではないかというふうに考えているわけでございますが、御指摘のとおり可処分所得を確保するといいますか、可処分所得が増加するというふうなことは、納税者あるいは国民方々の選択する余地を広げるということでございますから、そういう点を十分配慮しなければいけないと思っております。また、そういう趣旨も踏まえつつだと思いますが、臨時行政調査会その他の公的な場で、我が国の国民の社会保障に関する負担率は、現在のヨーロッパ諸国の水準よりもかなり低位にとどめるべきである、そういうふうな御指摘も受けておりますので、将来にわたって国民負担について国民の理解が得られるよう、適正な水準になるようにいろいろ努力すべきであるというふうに考えております。
  247. 沢田広

    ○沢田委員 途中ですが、ほかのところも聞くので、適正とかそういうことを聞いているのではなくて、向こう三年なり五年ぐらいまでを目安にした場合に、国民負担能力の限界としてどの程度であろうかということについて、適当とかなんとかというのは幾ら言ったって適当なんですよ。あなたの答え全部が適当になっちゃう。だから、適当というのは答弁にならないんで、大体どの水準があなたの、厚生省としては必要なのか、望ましいのか、それを言ってください。
  248. 清水康之

    ○清水説明員 先ほども申し上げましたとおり、具体的な率で申し上げることは非常に難しい問題だと思います。長期的にどの程度の負担水準になるかということにつきましては、これからの経済の動向、医療費の上昇、いろいろな不確定要素がございますので、どのくらいということをあらかじめ先に決めておくということはいかがかと思いますが、先ほど言いましたように、ヨーロッパ諸国の現在の負担の水準をかなり下回るようなところに目標を置いて努力したいということでございます。     〔中川(昭)委員長代理退席、委員長着席〕
  249. 谷口正作

    ○谷口説明員 お答え申し上げます。  ただいま沢田先生の方から年金の関係についての御指摘がございましたが、年金につきましては御案内のように、昨年の四月から新しい年金制度を発足させていただいたわけでございます。年金の給付水準を考える場合には、もちろん現役勤労者の負担というものとの見合いで考えるわけでございますけれども、基礎年金につきましては五十九年度価格で一人五万円、夫婦で十万円、そしてサラリーマンの方々につきましてはそこに報酬比例年金が乗っかりまして、全体として現役の平均賃金の約七割弱の水準ということで、こういった水準を設定することによりまして、現役勤労者の方々の負担水準も将来に向かって軽減を図るという改正をいたしたわけでございます。
  250. 水野勝

    ○水野政府委員 所得税の関係から可処分所得の水準といったことを考えます場合には、一つの問題は課税最低限であろうかと思うわけでございますが、今回御提案を申し上げている線でございますと、標準世帯では二百六十一万九千円でございます。これが基礎的な可処分所得の水準ということになろうかと思いますが、これを諸外国と比較いたしますと、フランスの二百五十九万円からイギリスの八十五万円程度まで分布しておるわけでございまして、こうした中では日本の課税最低限は世界でも最高の水準にあるわけでございまして、この点につきましてはいろいろ議論のあるところでございます。現時点のこの水準といたしましては、就業者数に占めますところの納税者の割合等、この割合のこれまでの推移、諸外国との比較からいたしますとおおむね妥当な水準であり、また金額としては世界最高でございますので、これを現在特に見直すという状況にはないというふうに考えておるわけでございます。
  251. 沢田広

    ○沢田委員 皆回りくどい答弁ばかりですが、大臣、ざっくばらんに、今のままでいくと年金の掛金も社会保障制度審議会で答申している水準でいけば、十万円で一万二千五百円ぐらいか一万二千四百円ぐらいが限度かという一つの線ですね。それとさらに今度は、医療費は毎年一兆円ずつ上がっておりますが、国が出すか本人負担かということの問題はありますが、今でもそれは一割負担あるいは二割負担という議論が出ているくらいでありますから、それらの資料を見ますると、日本の社会保障の負担率というのは二四・四%、これは国の財政の中の分布と国民負担、いわゆる個人が負担している比率とは数字的には違うと思います。しかしながら、大体三五%ぐらいが限界ではないかというのが一般的な一つの数字です。  日本は、スウェーデンやあるいはフランス、西ドイツ、イギリスのような社会保障制度にはなっておりませんから、どうしても自分で自己の体なり健康なり幸せを守るという自己本能的な体制を持つ、こういうことですね。ですから、そうすると三五で抑えていくためには今後どうあるべきかというと、直接税を下げざるを得なくなるということになるのじゃなかろうか。年金は上がります、医療費も上がります、それを三五で抑えるとすれば、直接税を下げて間接税に転換をするということを政府としては考えていかないとならないというところへ逢着するのではないかという心配が出てくるのですね。さもなければ、別の財源をもって個人の所得をふやさなければ可処分所得はふえていかない、こういうことになるわけですが、その点は大臣、どういうふうな御見解をお持ちでしょう。
  252. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっといろいろな問題が一緒に提起をされておるように思いますけれども、行革審が昨年出しました答申の中に、我が国の国民負担率が長期的にある程度上がることはやむを得ないけれども、ヨーロッパの水準、これは五〇%前後と書いてございますが、大体みんな五〇%を上回っておりますが、それよりかなり低い水準にとどめたい。これについては、ある行革審の委員は例えば四五%と言われた。これは私見でございますが、そういうようなことがありまして、政府としてどの辺ということを言ったことはないように存じます。  ただ、現在我が国の租税負担率は御指摘のように二五ぐらいでございますので、そういたしますと、社会保障負担率が余り高く上がっていくわけにはいかない。仮に間接税と言われましても、租税負担率になることはもう同じことでございますから、その点ではやはりその五〇をかなり下回る水準というのが、まあまあ各方面のコンセンサスにほぼなっておるのでございましょうか、しかし、それでも現在の三五からいいますとかなりの上昇でございますので、そう簡単にそういうことが短時日に起こっていいものとも思いません。  ただ、もう一つ申し上げてよろしいことは、いずれにしても社会保障の負担率というものがどうしても上がっていくとすれば、それは何かの形の間接税で賄っていく必要が片一方の財政の事情から出てくるだろうとおっしゃいますことは、そのような説をなす人がかなり多いように思います。しかし、政府としては、はっきりした見解を持っているわけではございません。
  253. 沢田広

    ○沢田委員 きょうはこれ以上詰めはしません。この問題が、やはり今後の大きな日本政治課題だという認識をお持ちいただければいいと思います。  先ほどマル優の問題で議論がたくさんされましたから、ちょっとだけお伺いしておきます。  今、金利は通常の場合三・七%ですね。これが七%ぐらいに上がったとすると、ちょうど倍になりますから、その場合に、同じ三百万の金額にいたしましても二十一万円の金利がついて、それの二〇%、四万二千円の税金がつく、こういうことになります。今三・七%ですから、四%としましても十二万円ついて二万四千円の税金で済む、まあもっと下がりますか、大ざっぱに言って大体そうなる。だから今、低金利のときには割合痛みは感じないと思うのですね。それほどじゃない、こう思うのですね。ただ、今度金利が上がっていったときには、政府としては大変な大増収になって、四万二千円にでもなれば倍になって税金が入ってくる、こういう感じです。それで、やはり金利連動ということをある程度考える必要性があるのじゃなかろうか。  負担の均衡という面から見たらば、今二〇%、我々には例えば一〇%という意見もありましたが、三・七%で二〇%である、七%になったら一〇%に下がる、税収としてはこれは将来にわたってずっといくわけですから、将来、七年、十年たったあとの税収としては、それの大体一兆何千億かが定期の収入になってくる、こういうことにつながりますが、その辺の考え方に余裕はないんだろうかという気がするわけです。いつまでも○・○三七という数字ではないだろうと思うのですね。低金利もこれから上がってくる段階を迎えるだろう、いつまでもこれでいかない。そうした場合に負担ががたっと多く倍になる、これは国民にとっては随分痛いんですね。だから、金利に連動するという、見直しの規定はその意味もあるかもわかりませんが、そういうことを配慮して見直すんだということを考えておられる、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  254. 水野勝

    ○水野政府委員 この二〇%の水準は、所得税の税率水準とも一応いろいろ勘案しつつ決めさせていただいているところでございます。所得税は最低税率が今一〇・五、大半の方は一四、一五ぐらいの適用を受けておる。住民税が最低税率五%でございます。そうした水準等々をも勘案しながら、御提案申し上げているところでございますので、利子率によりまして利子所得の負担額が変動することと直ちに連動して検討を行うことが適当なものであるかどうか、これはその時点におきますところの財政事情等をも勘案すべき問題でございますが、この負担水準自身としては、所得税の税率構造等を主として勘案しつつ考えるとすれば、直ちに連動というところにはいきにくい面があるのではないかと考えられるわけでございます。
  255. 沢田広

    ○沢田委員 金利が上がるということは、所得税の方とは全然別なんですね。経済そのものは変わっていくかもわかりませんが、金利が上がるということは税金の課税対象とはおのずから性格が違う領域なんです。今は〇・〇三七を標準として考えているからだけれども、もし七%なり五%に上がったと仮定をしてみても、負担が重いなという感じを対象者は持つと思うのです。ですから、そういう意味においての弾力性を腹構えとして持たないとぶったくり主義になるという論理が、今提案しているからそう感じなかったかもしれぬが、こんなに金利が上がったときに全く政府はずるい、だまし討ちをした、どうやったってこういうことになると思うのですね。だから、その辺には当面上は若干の弾力性を持たせることが、今後の展望を見ていった場合にはそういう場合もあり得る、これが全部固定的なものではないというふうに判断すべきものだと思いますが、これは大臣あたりに政治的に答えてもらう以外にないので、二〇に決めたら金科玉条というのじゃないというふうに判断……
  256. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私の方がお答えが辛いのかもしれませんが、金利が倍になりましたら手取りが倍になるわけでございますから税率は別に下げませんでもいいはずでございますし、また金利が倍になりますと国債その他政府が払う金利も倍になります。ですから、払う方だけ倍になりましていただく方が半分になっては政府もまた困るのでございまして、その点はひとつ別々にお考えいただきたいと思います。
  257. 沢田広

    ○沢田委員 政府の払う国債の方が七とか八になればまた支払いあれだけれども大臣、財政再建をやっていって六十五年はゼロにしようと言っているぐらいですから、その段階には恐らくゼロになってしまっているのじゃないかというような気がするのです。どうも言うこととやることが違うような気もしないでもありませんが、そういう段階になれば結果的には政府の支払い分はなくなる、こういうふうにもなるわけで、このまま最低の今の金利の状態を標準にして考えずに、上がった金利で、それで堀先生なんかの一〇%という主張も一つの方向だ、特例を認めないで一律一〇%というのも、将来の展望を見たときには一つの案だなというふうに私も思うのです。ですから、そのときに過酷な税金だと思わせないためにはその程度の余裕を持って臨んでもらいたい、これは期待を含めて申し上げます。これで動かせないのだというのじゃなくて、そういう意見もあったから今後政治の運営には考慮していこうということの気構えだけお聞かせいただいて、先に行きたいと思います。
  258. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのような御意見がございましたことをよく留意いたします。
  259. 沢田広

    ○沢田委員 続いて、これは数字の問題ですから主税局長にお伺いします。  年金が八十万、老齢控除が五十万、何百万円になったら逆転すると思いますか。三百六十万、いろいろ控除がありますね。七百万円、あります。年金がどの程度になったらば、今までの勤労控除をしたものと逆転する段階に至ると思いますか。国税庁の方に聞くのが筋なんです。国税庁の人、六十五歳以上でいいです、八十万と、三百六十万の場合は二五%、さらにこれに老齢控除五十万、こういうことになりますから、それを加えていった場合に、今までの勤労控除の計算したものとどの程度の水準でとんとんになり逆転するか。逆転しないなら逆転しないとお答えください。
  260. 水野勝

    ○水野政府委員 六十五歳以上でございますと、二百八十万円前後のところで交差するような感じでございます。ただ、今回は税率の見直しともあわせて行っているところでございますので、それによって御負担が増加するということはないものと考えております。また、現在の年金の給付水準等からいたしますと、この水準に達せられる方はごく一部の方ではなかろうかと考えておるところでございます。
  261. 沢田広

    ○沢田委員 これは確認のためですが、地方議会議員の互助年金は——「公的年金等」と書いてありますが、「公的年金等」の中身は何と何を言うのですか、そう聞いた方がわかりやすいと思うのですね。
  262. 水野勝

    ○水野政府委員 法律には一号、二号、三号と列挙してございます。一番基本的には国民年金、共済年金、厚生年金等でございますが、二号の部分として従来給与所得に入っておりました恩給、それから今御指摘のような地方議員の年金等もこの中に入っておるところでございます。
  263. 沢田広

    ○沢田委員 障害年金も含まれる、こういう解釈ですね、全部そういうことですね。
  264. 水野勝

    ○水野政府委員 障害年金となりますと、もともと非課税の体系に入っておりますので、問題ないと考えております。
  265. 沢田広

    ○沢田委員 解釈は、それは公的年金ではあるけれども課税対象外に扱う、こういう意味ですか。首を縦に振っているからいいです。  それでは続いて、今社会労働委員会でやっておりますが、パートの奥さんの専業主婦控除の問題で、もし百十二万円ぐらいに所得が上がってしまった、途中で残業が入ったかちょっと手当をもらったか、そういう場合にどの程度で逆転すると思いますか。だんなさんは十六万五千円の控除がなくなります。それから三十三万円の扶養控除もなくなります。こういうことでだんなさんの方の増税分というもの——だから、これが新しい税率表ができませんと計算ができないのですよ。一五四で計算するのか一三〇で計算するのかということの判断がつかない。だから、ではどの程度になったならば逆に、五百万円ぐらいというと、今の税率でいくと三〇%ぐらいですね。だんなさんの三〇%ぐらいの税率でいった分の計算と、今度は奥さんが十六万五千円をもらえなくなった場合の計算と、それは比較をされたことだと思いますが、その点はどういうふうに理解をしながら進めましたか、検討の結果だけでいいですからお聞かせください。
  266. 水野勝

    ○水野政府委員 今回、御提示のような議論を念頭に置きましてやったところでございますが、今具体的にお示しの、御主人が五百万円、それが奥様が百六万五千円から百十二万円の年収になられたという具体的なケースにつきましては、ちょっと計算はすぐにはできかねるところでございますが、そうした点を加味しながら今回の改正を御提案した。そうしたぎりぎりのところでの計算、例えば御主人が四百万円で、従来は奥様が九十万円だったのが九十一万円になる、そうしますと途端に逆転はしたところでございますが、その逆転額、今回完全に解消されるというところまでは至っておりませんけれども、その逆転額と申しますか、手取りの減少額がかなり減るというところの計算は頭に置きつつ、御提案をしたところでございます。具体的な今のケースにつきましては、なお後刻計算して申し上げたいと思うわけでございます。
  267. 沢田広

    ○沢田委員 このバートというものの存在は、産業構造の転換がだんだん進んでいく段階において、労働省では約五百万、これは大分ふえたなという気がするのですが、五百万のパートがいる、こう言われるのですね。パートの存在というものが日本の産業構造の中で果たす役割、そしてまたそれにもたらされる労働条件、家庭生活への寄与あるいはマイナス面、これはどんなふうに大臣としては一般論として、パートというものはこれ以上ふえていくのが日本産業としては望ましい、あるいはやはりある程度の限界でとどまることがいい、どちらに比重を置いてお考えになっておられますか。
  268. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は、専門的な知識を持っておりませんけれども、基本的に雇用の数は多ければ多いほどよろしいのだと思います。しかも、それはできるだけ常用雇用で、安定した労働条件の方がよろしいということも確かであろうと思います。しかし、雇われる方の側でそれがいろいろな事情でできないということであれば、そういう方々にはその勤務状況に向くようないわばパートということであってもそれはやむを得まい。ただ、その場合、できるだけパートはパートとしての安定した労働条件というものが与えられなければならないというふうに思います。そういう前提のもとで申しますならば、パートと申しますか、自分の好む労働条件でフルタイムでなく働きたいという供給がまだまだある限り、それをできるだけ安定的な条件で受け入れるケースがふえていくことが望ましいのではないかと思います。
  269. 沢田広

    ○沢田委員 労働省と厚生省、おいでいただいていますが、大体大臣の答弁で包括的な答弁にはなっているような気がしますが、一応労働省、厚生省、一言ずつお答えください。
  270. 粟野賢一

    ○粟野説明員 パートタイム労働者でございますが、サービス経済化の進展に伴いまして、五十年代に入りましてから急速にふえておりまして、特に小売業、飲食店、それからサービス業、いわゆる第三次産業でふえているわけでございます。今後も多分サービス経済化ということでそういった産業がふえるでございましょうから、そういう中でどんどんふえていくのではないか、そんなふうに考えています。  それで、第三次産業分野では、業務が繁閑の差が非常に大きいわけでございまして、それに合わせた形でパート雇用するという形でふえるのではないか。一方、パートの方も、家事、育児等がございまして、そういう中で短い時間で働きたいという要望がございまして、そういう需給がマッチした形でふえていくのではないか、こんなように考えています。
  271. 松尾正人

    ○松尾説明員 パートタイマーに対する厚生年金の適用でございますけれども、これは現在、就業者の所定の労働時間であるとか所定の労働日数等を勘案いたしまして、常用的な使用関係にあるかどうかということを総合的に判断いたしまして、適用を行っているところでございます。今後ともこの考え方に基づいて対処してまいりたい、かように考えております。
  272. 沢田広

    ○沢田委員 大臣、問題は、そういうふうにパートがふえていった場合に、さっき議論が出ました、今は九十万からだんだん扶養控除の三十三万円を食い、あるいはまた十六万五千円を食いながらパートの収入がふえていきます。その場合には、だんなさんの方の三十三万円の控除がなくなり、十六万五千円を食っていきますからなくなる、それで配分を考えたということ、これは苦肉の策だと思うのですね。そういうことで考えていった場合に、この前の話のように専業の奥さんが十六万五千円、働いている方の奥さんも苦労は同じだと思うのですよ。宮澤さんの奥さんだってこれは大変な苦労で、選挙のときは別としまして御主人よりまだ大変に動いているのかもわからない。そうだと思うのです。  だから、私はこの前若干申し上げたが、働いている奥さんも考慮していく、主税局長は気がするとここまで言ったんだ。気がしたのだったら、思い切ってもう一歩進められないかなという気がするのです、金額は別として、気持ちですから。一応働いている主婦に対しても御苦労賃という意味で、一方が十六万五千円ならば、八万二千五百円でも考えるということは考慮の余地に入らないかということで、重ねてその気を一歩進めてもらいたい、こういうふうに思うのですが、これは局長か大臣かわかりませんが、気がした程度だったらそのぐらいで結構ですが、とにかく一歩進めていただくように考えてもらいたい、こういうふうに思います。
  273. 水野勝

    ○水野政府委員 今回の配偶者特別控除を御提案している趣旨からいたしますと、これはどちらかと申しますと、この制度自体は御主人だけが働いておられる方の世帯、こうした世帯につきまして、青色専従者を置いておる事業所得者世帯との負担の調整を図るという観点が主たるものでございます。また、共稼ぎ世帯は、世帯としての収入の水準が同じような世帯と比べますと、お一人が働いておられる方と共稼ぎの世帯とでは、所得水準は同じでも所得税の水準が共稼ぎ世帯の方がやや低い。一方、貯蓄水準等は割合高い。こういう点からいたしますと、まずはお一人が働いておられる世帯についての控除を考えるというところから、配偶者特別控除はお一人の世帯のこととして考えてまいりたいと思うわけでございます。  それで、この制度を活用いたしまして、パート問題の解決にも寄与するようにいたしたいというところから、若干の収入がございましても、それが激減することのないように役立たせていただくというところまで適用を拡大させていただいているところでございますが、完全な共稼ぎ世帯になりますと、先ほど申し上げたような状態でございますので、今回の制度としては、そこまで参るのはいかがかなと考えておるところでございます。
  274. 沢田広

    ○沢田委員 さっきも述べたように、これからはパートであれ共稼ぎであれ、子供の数は減っていきますし、お年寄りの数はふえるし、労働人口は減るわけですから、いや応なしに女性労働というものがふえていくことは必然的な社会構造であると思うのですね。それで、専業主婦の方を政策的に選んで、そして共稼ぎを除いたということは、産業構造の方向から見たら逆な問題だろうと私は思うのです。逆に日本の産業構造は、労働人口の少なさを補っていく婦人労働をどういうふうに待遇改善しながら進めていくかという方向で政策を選択すべきだということだけ私は申し上げて、この問題は終わらせます。  続いて今度の税制で、またこれはあしたの問題とは関係ありませんから、過少申告と無申告に五%ずつ重荷を負わせたというのは、全面的改正の遺産かもわかりませんが、少しこれは無理があるんじゃないのかというふうに思うのです。もう少し現状で置いてこの制度が定着して、その中からなお無理がある、あるいはそういう不心得者が多いということであればそこでまた上げる。この段階で余り理由がないのにこの五%くみ上げるということは、かえって逃げていく人を多くしていくという嫌いが生まれるのじゃないかという気がします。これは大臣、今から訂正はできないでしょうが、運用に当たってはその点十分考慮してもらいたいと思いますし、そうでないといわゆる逃げる人間の方が多くなってしまう、そういうものを助成することになりかねない、こういう心配がありますから、今回無理に出す必要はなかったのじゃないか。来るべき次の段階には訂正でもしてもらいたい、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  275. 水野勝

    ○水野政府委員 納税環境の整備につきましては、常にその要求が強く指摘されているところでございます。五十九年に記帳義務の制度、総収入金額報告書制度を設けさせていただき、六十一年には過少申告の規模等が大きい場合の加算税の率の見直しをさせていただいたところでございます。今回、そうした問題がなお依然として続いておる。適正な申告を求める声が強いわけでございますので、そうした声にこたえるために今回の措置を講じさせていただいたところでございますが、今回加算税が少額なものとして徴収しない限度、不徴収限度額を千円から五千円に引き上げさせていただいていますから、小さな金額でもってそうした問題があった場合の不徴収限度は大幅に上げられている。そういう意味からしますと、中小企業者の場合等におきまして、こうした問題はむしろその範囲が狭められたというふうにも言えるのではないかと考えるところでございます。こうしたことを全体として御理解賜れば幸いだと思うわけでございます。
  276. 沢田広

    ○沢田委員 記帳義務も満足にまだ徹底しない、あるいは帳簿方式にも進んでない、簿記にも至っていない、そういう段階でここまで走るのは走り過ぎではないかということなんです。本当はもっと言葉は激しいのですが、言いたい気持ちでいるのですけれども、時間の関係等もあるので、ここは警告をしながら、ここで出すのは無理があったのじゃないかということで、なるべくもう少し様子を見ながら再提出をするような方向で配慮してほしいと思うのです。  それに関連して、次の自家営業の場合の申告、青色申告もそうですが、どこまでが家庭経費でどこまでが事業経費が、電話はどう、テレビはどう、新聞はどう、あるいは慶弔はどう、いろいろあるわけです。それがいわゆるクロヨン、トーゴーサン等の問題になっているわけですから、あえて言うならば、逆に生活実態はどうであったのか。それは申告した分は事業経費ですから、ではその裏側にある生活実態の経費はどうであったのか。それは主税局長わかりますか。主税局長の勘でいいのですよ。長年こういうふうに税金をやってきて、そういうものは感覚的に、申告する青色なりみなし法人なりありますね、しかし、その実態、生活の中身というのはわかっているかどうかということなんです。感じでもわかりますか。国税庁の方で答えてください。
  277. 日向隆

    日向政府委員 事業所得の計算上、収入から必要経費を差し引いて所得を計算することは委員十分御存じのはずでございますが、この必要経費の中には、売上原価、一般管理費、販売費のように比較的客観的に把握できるものと、ただいま委員が御指摘になりましたような生活実態と申されましたが、いわゆる家事関連費のような特別経費と私ども言っておりますが、納税者が一番よく知っておりますし、また逆に言いますと納税者しかわからないというような経費があります。そういう特別経費につきましては、私ども、納税者の言い分をよく聞いてその実態を適正に把握した上で、家事関連費の中において家事部分がないしは事業部分かを区別するように指導しているところでございます。
  278. 沢田広

    ○沢田委員 時間の関係でまた大臣になりますが、いろいろ減税をやりますね。それから、社会福祉の方でもいろいろやっているわけです。この減税と社会福祉というもののバランスをどう見ていくかというのは、極めて重要なこれからの課題だと思うのです。一方ではマル優で増税をしていますね。今度、保険とかその他では優遇措置を講じています。また、さっき言った勤労者の財産形成なんかにおいても、若干の穴はあるようでありますが、いわゆる積立金を助成するような形で政策選択をやっています。恐らく、これまた外国からこれはけしからぬと言われると、またそこから見直されるのかもわかりませんけれどもマル優がああいう形で言われたから課税をして、一方ではまた新しくその貯蓄制度をつくっていく。結果的に同じところを回っているような感じもしないでもないのです。  ですから、そういう意味で見ると、この保険料などについては、さっきの可処分所得の範囲内なのか外なのかわかりませんけれども、果たしてそれを助成していくことが、議員の見解はそれぞれ差があるようですが、今七百兆円以上の契約、今三十兆円ベースにもなってきているわけです。これも言うならば預金の助成なんです。これは民間の育成なんです。そういうものを考えてみたときに、果たしてマル優の方はこう冷たくしながら、一方でまた抜け穴をつくっていくという、いわゆる減税と社会福祉というものをかみ合わせながら考えてみると、若干矛盾があるんじゃないか、あるいは政府の見解と我々の考え方に大きく違いがあるんじゃないか、こういうふうに思うのです。そういう視点でごらんになられたかどうか。保険料等の控除を今度入れたというのは、これも片方でこれだけ厳しくマル優に課税をしようと言っているときに、一方でそういうものだけを助成していくということになるのは片手落ち、こういうことになるんじゃないか、こういうふうに思いますが、その点はいかがでしょう。
  279. 水野勝

    ○水野政府委員 生命保険料控除制度につきましては、この制度がかなり長期にわたっておるところでございますし、また加入率もほとんど横ばいの状態でございます。また、この制度によりますところの減収規模も相当な規模に達しておるところでございます。そうしたところから、これは基本的に見直すべきではないかという御意見が強いわけでございます。しかしながら、他面、これがかなり長期にわたって国民生活の中に定着しておる、そういうところからいたしますと、これを直ちに縮減等行いますということはいかがかということで、問題の提起はございましたけれども、今回といたしましては、一応そのまま継続するようにいたしてきているところでございます。
  280. 沢田広

    ○沢田委員 もう議論する時間がなくなりましたから……。  土地の問題と、これも提案になりますが自賠責保険、車検、これは個人の経費控除に認めてほしい。いわゆる法定課税である、税金と同じである。だから、車検もあるいは自動車の自賠責の保険も、少なくとも控除の対象にすべき課題ではないか。これは国民全部、四千二百万台の車にそれがかかってきているわけですから、それは本人の課税控除、保険料よりももっと普及率が高いのです。片方は七百六十万人ぐらいです。損害保険は三百万人ぐらいですよ。それから比べたら四千二百万台の車がすべて、事業用もありますけれども、それが全部車検代を払い、あるいは免許証もそうですが、そういうような自動車のあれも払っている、その方を控除してやるというのが筋じゃないんだろうか、その方が法定費用として考えられる経費として認めてもらえる筋道が立つのじゃないか、こういうふうに思いますけれども、これも今答えを求めても、そうおいそれとは出てこないでしょう。  さっきみたいにうまく間違ってくれればいいが、そうはいかないだろうから、とにかく自賠責と車検というものについては一応本人の経費控除の対象にする、そういうことが一法定費は、地方税はみんななるのです。青色申告でも何でも地方税はみんななるのです。ところが、個人の場合はいわゆる勤労控除の中に入ってしまう。少なくとも車検料とか自賠責の保険料ははっきりしていることですから、この分は経費控除の対象として支障ないのではないかと思いますが、いかがですか。
  281. 水野勝

    ○水野政府委員 自動車につきましての自賠責の保険料あるいは車検の費用といったものは、自動車そのものの保有に伴う維持費ではないか、自動車を持てば法律上そうした費用を当然負担することに相なるわけでございますが、自動車を持つこと自体についてはその方の御判断でございますので、それはもろもろの消費支出の中の一つの支出であると考えるのが適当ではないか。そうした一般的な支出であれば、課税最低限をもって対処していただく。ただ、事業所得者の場合につきましては、もしそれが事業用の車であれば、それは必要経費として控除されることになろうかと思いますが、そうでないものにつきましては難しい問題であると考えておるわけでございます。
  282. 沢田広

    ○沢田委員 そんなことを言えば、保険なんかはなおさら任意ですよ。これだけ社会保障制度が進んで年金が充実してきて、それでなおかつ何億かの保険に入って、そんなものが免除にされることの方が、その論からいけば論外なんです。自賠責は法律で決められた義務です。私は任意の分を言っているのじゃないです。法律で強制されている部分は法定費用です。だから、少なくともそれは経費に見てやるのが筋じゃないですか。任意保険に入っているものをどうこうしろとは、私は言っていないのです。  車検料も同じく法定費用でしょう。これも三年分まとめて取っているわけでしょう。そういう分については少なくとも控除の対象にするのが、この自動車社会の今日の状況の中で配慮されてしかるべきものではないか、必要経費の中に入れていいのではないか。それを勤労控除なりの中に含めていくという論理の方が、若干問題があるのだろうと思うのです。ですから、今言った論からいくと、かえって保険料とか何かの問題の方が、人数も少ないし受益者も少ないということになりますので、ひとつその点は検討してください。  最後に、宮澤大蔵大臣にこの前も言いましたが、土地をどうやって抑えていくか、その処方せんをこれからの課題で考えていただかなければなりませんが、やはり面を広げることだ、結論はそうだと私は思うのです。ぜひ今度の予算を編成する際に、百キロ通勤圏ということを私は申し上げております。百キロなら、三つ百万都市をつくっても三十分で東京へ来られる。そうなれば、何も急いでこの辺のたくさんの高い土地を買わなくとも、百キロ圏内に通勤距離圏を置くということになれば、それを新幹線、高速道路ということで結んでやれば、東京だけ考えれば、広範な関東平野に散らばった中での通勤、その間にグリーンベルトを置いていくという発想に公共事業のウエートを置いたらどうだろう。茨城であれ栃木であれ群馬であれ山梨であれ、そういう広範な地域構想の中においてやれば、おのずから環境のいいところへ人間は住んでいくわけですから、フランスじゃありませんが、ニュータウンをそういうところへつくってやるという発想に、ひとつ総理を目指す宮澤さん、勝っても負けてもそんなことは別問題として、それは勝ってもらうことは結構ですが、とにかくそんなことは政治家としてみれば別問題として、そんなことよりも理想を実現することに我々はあるわけです。  だから、草履取りに徹しても一つの人生だと思っておりますけれども、ただ私は、総理になろうとしておられる方々はそのことが目的ではないので、どう国民自分の理想をつくるかというところに目標があるのだと思うのです。そういう意味においてぜひひとつ御一考をいただきながら、全部一度になんかできっこないですから、どこかにモデル地域をつくってもらって結構ですが、そしてモデルタウンをつくって、そこから新幹線を引きながら三十分の通勤圏をつくる、そういう時代になっておるだろうというふうに私は思います。  あと二、三の問題がありますから質問させていただきますが、以上の点について大臣からお答えをいただきます。
  283. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 四全総にも述べておりますとおり、首都圏の機能をできるだけ分散するということが片方で必要であると思いますけれども、それにも限度がございましょうから、ただいま御指摘のように通勤圏を広げる、そういう土地の供給をふやしてそのための交通をつくるということは、どうしても試みなければならない今後の施策の大事な点であろうと考えております。
  284. 沢田広

    ○沢田委員 これは大蔵大臣の予算査定の中で特別枠をつくりながら、ぜひひとつ考えてもらいたいと思っております。  次に、私は印紙税で逆な提案をするのですが、これだけ土地が高騰しておるときに、印紙税の頭をどうしてそのままにしておいたのかなという気がするのです。土地の高騰が現在のような状況にあって、契約するのにも印紙の六十万くらいで限度を置いておりますけれども、これだけ上がってきておる状況にスライドして、なぜ今度の提案のときには考えなかったのか。普通だったら、取りたい取りたい一心のあなたが、どう見忘れてここだけをわざわざ据え置いたのか、その辺の真意を、忘れたなら忘れたでいいのですけれども、ちょっとうっかりしたのかという気がしないでもないのですが、これは少し考えてよかったのではないかという気がするのですけれども、いかがですか。
  285. 水野勝

    ○水野政府委員 四十九年、それから最近は五十六年に引き上げさせていただいて、今お話しのように「五十億円を超えるもの六十万円」といたしておるところでございます。最近の改正で五十億円を超えるものというところまで参りましたので、一応現時点ではこの水準でいかがか、しかし一方、今回は登録免許税の方でその課税標準の見直しをさせていただく、そちらの方で御提案申し上げましたので、この不動産譲渡につきましての印紙税については今回は御提案しなかったわけでございますが、御提案の趣旨を十分踏まえてよく研究してまいりたいと思うわけでございます。
  286. 沢田広

    ○沢田委員 大分苦しいようでしたが、私は何もここでどうこうというのではないけれども、現実の姿がそう上がっておるのだから、それに合わせることも考えてよかったのではないかと思います。  それから、地方税の方の住民税と一五四になった場合との関係については、明日お聞かせをさせていただきます。要するに、住民税の方との関係がいわゆる一五四になった場合の対応が違うということであります。  それから最後になりますが、給与所得控除の意味をもう一回見直していただきたいということで、この説明書の中にあります。給与所得のシャウプ勧告の見解は、この間参考人には聞いたのです。しかし、大臣としては、このシャウプ勧告の経費控除の解釈はどういうふうにお考えになっておられるか。これは五十四ページです。自分で読んでもらってお答えいただきたい。
  287. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども質疑応答がありましたが、勤労所得控除というのは、半分は現実の経費であり、半分はいろいろその他の所得との捕捉の問題であるという物の見方は私もそうであろうと思っておりまして、しかし、このたび設定いたしましたのは、その半分に食い込むのではなく、現実にある種の支出がありましたときにそれを必要な支出だと認める、そういうことでこのたびのような制度を設けさせていただいたものと思っております。
  288. 沢田広

    ○沢田委員 自動車の課税の面で大変御配慮いただきましたので、厚くお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。お礼を申し上げて質問を終わりたいと思います。
  289. 池田行彦

    池田委員長 山田英介君、
  290. 山田英介

    山田委員 私は相続税の減税問題につきまして、まず最初にお伺いをいたしたいと思います。  まず、相続税につきまして、六十一年度の全国規模の発生件数と納税額、それから東京都における発生件数と納税額につきまして、お知らせをいただきたいと思います。
  291. 日向隆

    日向政府委員 ちょっと時点が古くて恐縮でございますけれども昭和六十年中に相続または遺贈によって財産を取得した、いわば発生ベースの相続税の申告件数は、全国では、被相続人ベースで四万八千百十四人、対前年比一一・八%増、その申告税額は九千二百六億円、対前年比一九・〇%でございます。続いて御指摘になりました東京都二十三区における同様の数字でございますが、被相続人ベースで六千五百三十九人、対前年比一一・三%、その申告税額は二千百十四億円で対前年比二二・四%でございます。  なお、冒頭にお断りしましたが、六十一年中に発生した件数は、六十二年六月末までに提出されてくる相続税の申告書によってカウントするということになっておりますので、まだその計数は把握しておりませんので、御了解いただきたいと思います。
  292. 山田英介

    山田委員 相続税の減税につきましては、昨年十月でございましたか、政府税調の答申にも触れられておりまして、減税が必要である、こういう見解が明示されているわけでございます。また、土地の暴騰によりまして、特に大都市部における相続税額というのが飛躍的に大きくなってしまって、居住用の財産等を処分しなければとても納税できないというような深刻な事態もあるわけでございます。六十二年度の税制改革法案に、なぜ相続税減税につきましてこれを盛り込むことができなかったのか、しなかったのか、その辺につきましてお伺いをいたします。
  293. 水野勝

    ○水野政府委員 昨年十月の抜本改正答申におきましては、相続税の見直しの必要性は盛り込まれていたところでございます。この抜本答申の中から六十二年度におきまして、どこまで、どれだけを実施いたすかという点におきましての昭和六十二年度の税制改正に際しましては、その答申におきましても、その税負担の見直しの緊要性、財源事情等にかんがみまして、六十二年度としてはこれは見送ることとする旨の答申がございまして、そうした方向に基づきまして今回は盛り込まなかったところでございます。
  294. 山田英介

    山田委員 先ほど申し述べましたような事情のもとで、総理大臣もそれから宮澤大蔵大臣も相続税の減税につきましては、非常に緊急かつ重要な課題であるという御発言を繰り返されたと承知しております。それで、六十二年度は主税局長、見送られたということでございますが、それでは六十三年度には減税はやるのか、そしてまた、具体的な減税の中身をどのように考えておられるのか、できましたら大蔵大臣に御答弁をいただきたいと思います。
  295. 水野勝

    ○水野政府委員 先ほど申し上げた六十一年十月の抜本改正答申におきましては、課税最低限の引き上げ、税率構造及び各種控除の見直し等につきまして所要の見直しを行うことが適当である、こういう答申をいただいているところでございます。六十二年度におきましてこれを見送るに至りましたことにつきましては、ただいま申し上げました。六十二年度改正といたしましては、これは六十三年度を前にしての歳入歳出の状況、財政運営全体の中で、ほかの問題と一緒に来年度税制改正の一環として今後検討をしていくべきものでございまして、まだ相続税につきまして、どのように、また何を取り上げるかということにつきましては、目下白紙でございます。
  296. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この委員会でしばしばお尋ねがございますように、税制改正、今年度の減税はいわば前倒しをせざるを得ない、明年度をどうするかということにつきまして、財源についていろいろ見通しがつきにくいことは、山田委員も御承知のとおりでございます。片方にそういう事情がございますが、他方でただいま御指摘のようなことがございまして、どうもこの問題は長くはほっておけないということが事実のように思われます。したがいまして、今、主税局長が申し上げたことに尽きますが、来年度の殊に新しい減税に見合います税源の問題あるいは歳入歳出全般の問題等も考えまして、やるとしても、必ずしも全部一度にやるということでなくてもよろしいという点もあるかもしれません。何かができるだろうかどうだろうか、もう少し時間をかけまして検討してみたいと思っております。
  297. 山田英介

    山田委員 大臣のお手元にも「相続税の実態調査」という資料が行っているかと思いますが、私、都内の三つのポイントといいますか地域を対象にいたしまして、相続税が地価高騰等によりまして一体どの程度はね上がってきているのかという点につきまして、自分なりに計算をいたしたものでございます。  その一つは、渋谷区松濤一丁目十七という地域でございます。二つ目は、渋谷区鉢山七丁目十五という区域でございます。いま一つは、目黒区の駒場二の一という区域でございまして、この調査の前提となります条件は一から四までございますが、夫婦子二人で夫が死亡して相続が発生した、こういう条件。そのほかに、いわゆる土地のほかに資産、負債、葬儀費用等はないものとしてこれは計算をいたしております。配偶者の税額軽減、これは配偶者の非課税限度額現行四千万円または相続財産あるいは相続額の二分の一、いずれか大きい方の適用を受けることができます。この配偶者の税額軽減で、二分の一が基本的に適用されております。それから小規模宅地の評価減、これは御案内のとおり評価額の三〇%が軽減されて、引かれて適用されるということになっておりますので、これも織り込んでございます。  それで、昭和六十三年度の正面路線価につきまして、これは側方路線価、すなわち角地につきましては、ちょっと特殊な立地かなということで外してございますからゼロにしてございます。したがいまして、一平米当たりの評価額は正面路線価と同じということにしてありますけれども、六十三年度は六十二年度と同じ上昇率と仮定してみました。一八五%の上昇率、評価額。それから六十四、六十五年度はいろいろな対策を講じまして、正面路線価が鎮静化することを前提に対前年比で一三〇%の上昇率、それから六十五年度にありましては一二〇%の上昇率、こういうふうに計算の基礎を置いたわけでございます。  ここで明らかなことは、例えば松濤一の十七という地域ですが、ここは渋谷区の高級住宅地、昔から居住している人が比較的に多い地域でございます。以下、鉢山、駒場もそれぞれ資料に記載しているとおりでございますが、松濤一の十七の地域の場合、六十坪、約二百平米の居住用の土地を持っているだけで、正面路線価はこういう形で出ておりますので既に実績でございますが、相続税の総額が六十二年にありましては二千百七十七万円、こういうことになります。それから六十三年でございますが、評価額の上昇率が六十二年度と同じ、こう仮定した場合には五千六百七十一万九千五百円の相続税を納めなければならない。六十四、六十五年につきましては、この評価額の上昇率がかなり鈍るといいますか鎮静化をしたような条件のもとで計算をいたしましても、六十四年度は八千三百二万円からの相続税を納めなければならないということになります。六十五年度は、わずか六十坪、二百平米の居住用の土地を持っているだけで一億七百四十万円からの相続税を納めなければならない、こういうような実情にあるわけでございます。  以下、渋谷区鉢山、目黒区駒場につきましてもこの松濤と同じように、相続税の納めるべき総額は非常にはね上がっていく、こういう状況があるわけでございます。あるいはまた予想されるわけでございます。それで居住用土地を売却しないと税金が納められない、そういうケースも非常に多く出てくるのではないだろうか。そうなりますと、相続税を納めるために東京で生活することが事実上断念をさせられてしまう。東京に住みたいあるいは住んでいるという、生活権と申しますか、これが非常に厳しいことになってくると思われます。  なお、この表にありましては、配偶者の税額の軽減、配偶者の税金はゼロとしてございますので、仮に配偶者がいない場合、子供が三人、父親が一人で、その父親が死んだ場合にはこの税金の額のほぼ二倍となる、こういうことになるわけでございまして、先ほど主税局長、そして後から宮澤大蔵大臣の御答弁があったわけでございますが、財源との関連ということのお話もわかるわけでございますが、なかなか猶予を許さない状況にあるのではないだろうか。したがいまして、六十三年度におきましては、やはり相当決断をしていただいて対処、対応をお願いしなければならない、かように思っているわけでございます。     〔委員長退席、大島委員長代理着席〕  それで主税局長、先ほど、六十二年度の相続税減税の中身等については現在白紙であるというお話でございましたが、日経新聞には、一紙だけなんですが、八月十六日付で、課税最低限の引き上げを五千万程度に、あるいは配偶者の非課税限度額、現行四千万円を五、六〇%引き上げるとか、こういうふうに大蔵省は方針を固めたという形で報道がなされたわけでございます。課税最低限の引き上げあるいは配偶者の非課税限度額の同じように引き上げということは、改正をする場合にはどうしても基本になるものだと思いますが、これがそのとおりだというように私は決めつけるつもりは毛頭ございませんが、仮にこの新聞報道に言うように課税最低限を五千万円に引き上げたとしても、私の調査によりますと、相続税の評価額というところがございますが、六十二年度で見てみますと、一億七千八十万円の中に既に課税最低限、現行分の三千二百万円というのは計算されておりますので、残りの一千八百万円をこの評価額から引き去って税額を計算するということに相なるわけでございますので、五、六〇%の課税最低限の率の引き上げあるいはまた非課税限度額の引き上げといいましても、実際には算出される相続税の総額というのはここに示しました数字とさほど変わらない、減少しないということになるわけでございます。  それやこれや考えまして、恐縮ですが、六十三年度の相続税減税についての大蔵省の対応、御決意というものをもう一度お伺いしたいと思います。
  298. 水野勝

    ○水野政府委員 先ほど申し上げましたように、昨年十月の抜本答申におきましては、例えば課税最低限は、これは昭和五十年度以降の物価、所得等経済指標の推移等を踏まえ所要の引き上げを行うことが適当である、このような答申が行われておるわけでございます。また、税率区分の幅、そういったものにつきましても所要の改正を行うべきである、それから配偶者の相続税額の軽減措置、これにつきましても四千万円については、配偶者の生活の安定に配慮しつつ引き上げを行うことが適当である等々の具体的な提案と申しますか、答申が述べられているところでございます。六十二年度におきましてこれが見送られた経緯につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。六十二年度につきましては、先ほど大臣から申し述べられたとおりでございまして、今後の検討課題でございます。
  299. 山田英介

    山田委員 大蔵大臣にお伺いをいたします。  ただいま、私のこの調査資料をるる私なりに御説明させていただいたわけでございますが、御印象並びに六十三年度につきまして大臣としての御所見を伺いたいと思います。
  300. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私もかなり差し迫った印象を持っておりまして、仮に現在の地価上昇、恐らく今回のことはこれで鎮静期に入ったと思いますけれども、しかし、もとへ戻るという感じもございません。そういたしますと、かなり深刻な問題が起こってくるのではないかという懸念をぬぐえません。ただ、来年度の、先ほどから繰り返して申し上げて恐縮でございますけれども、いわば減税の前倒しのようなものが所得税でも法人税でも今年度は行われつつある、行われようとしておることもございまして、来年度それをどういうふうに処理するかということが、国会との関係もございまして政府限りでも決めにくいような、そういうことを考えてまいりますと、相続税のことは差し迫っておるように思いますけれども、そういう財源をどうやってさらに今の問題の上に調達するかということ、これも減税でございますので、やはりこれに見合う財源ということをオーソドックスに考えざるを得ません。といたしますと、その辺のところが大変どうも深刻な問題だと思っております。  ただ、もう財源は難しいから来年は全然考えられないと言ってしまうにしては問題が大変に差し迫っておるように思いますので、諸般の情勢をもうしばらく見ながら、慎重に検討さしていただきたいと思っております。
  301. 山田英介

    山田委員 ぜひ、特段の御努力をお願いしたいと思っております。  次に、今回のこの所得税法等の改正法案の中身に、登録免許税の五割アップという件が含まれてございます。その件に関連をいたしまして、本日は法務省それから建設省あるいは国税庁の皆さんにおいでをいただいているわけでございますけれども、順次質問をさせていただきたいと存じます。  まず、法務省にお伺いをいたしますが、いわゆる登記制度の中に中間省略登記と言われるものが現実に存在をいたしております。ひとつ、わかりやすく簡潔に中間省略登記とは何か、これをお聞かせいただきたいと思います。
  302. 永井紀昭

    ○永井説明員 お答え申し上げます。  先生御承知のとおり、例えばAからBへ所有権が移り、BからCへさらに所有権が移った、こういうようにA、B、Cへと物件変動が行われた場合に、登記上はAからCへ直接登記を、名義を移す、こういうのが通常中間省略登記と言われているわけでございます。
  303. 山田英介

    山田委員 不動産登記法によりまして、我が国の登記制度というものが運用されているわけでございますが、この不動産登記法の精神あるいは理念、登記制度のあるべき姿と申しますか、この点につきまして御説明をいただきます。
  304. 永井紀昭

    ○永井説明員 不動産登記は、我が国では対抗要件というふうに位置づけられているわけでございますが、もちろん登記といいますのは、現在のあるべき権利の内容を正確に公示すること、それからもう一つは物件変動の過程を正確に公示しておくこと、こういうことによって取引の安全を図る、こういうことでございます。
  305. 山田英介

    山田委員 そういたしますと、不動産登記法におきましては、あるいはまた我が国登記制度の中にありましては、中間省略の登記は認めていないと理解をいたしますが、この点はいかがでございましょうか。
  306. 永井紀昭

    ○永井説明員 そのとおりでございます。と申しますのは、先生御承知のとおり、AからB、BからCへと物件変動がありました場合、直接AからCへの名義変更することは、当然のことながらその過程を正確に反映していない、こういうことでございます。     〔大島委員長代理退席、委員長着席〕
  307. 山田英介

    山田委員 課長の御答弁のとおりかと私も存じます。特に、中間省略登記というものが横行するあるいは大量に発生する、一般化いたしますと、公信力あるいはまた権利の推定力等に陰りが出てくるわけでありますし、ただいまの御答弁にありましたとおり、その物件変動の過程が欠落をいたしまして、現在の権利関係の態様だけが示される。それのみでよしとすれば、これは公示機能であるとかあるいは登記制度そのものに対する信頼性というものが低下するわけでございまして、判決による登記を除き、基本原則は中間省略の登記を認めていない、こういうことが今確認されたわけでございます。  恐縮ですが、判例では中間省略登記につきましてはどのような位置づけがされているのか、そしてまた、それは仮に事例として認められたものがあったとしても、その判例におきまして積極的に中間省略の登記を認めているということになるのか、あるいは限定的に解釈をすべきであると判例はされているのか、この辺につきまして、課長、教えてください。
  308. 永井紀昭

    ○永井説明員 学説、判例上はいろいろ説が分かれるわけでございますが、結果的に先ほどの例でAからB、BからCへの実態的な変動があった場合でも、たまたまAからCへの変更が既にされてしまっている、こういう場合には現在の権利をそれなりに反映している、それなりに公示しているという、その限度においては少なくともその登記を有効としよう、そういう立場が判例に一部うかがえるわけでございます。ただ、その場合におきましても、中間者のBという方の同意等がなければ、若干問題になるということが言われているわけでございます。
  309. 山田英介

    山田委員 この中間省略の登記というのは、今御説明になったとおりの、基本形はそういうことであるわけです。非常に最近、この中間省略登記というものが多用されているといいますか、角度を変えて言えば、登録免許税の納付を回避するというようなことを主たる動機として、こういう中間省略登記というものが事業者によりまして多用されておる、こういう実態があるわけでございますが、法務省におかれては、この中間省略登記の実態について把握をされておられるのでしょうか。あるいはまた、これが大量発生あるいは恒常化、慣行化されるということになりますと、登記制度の根幹を揺るがすゆゆしき大問題になるわけでございますので、この中間省略の登記の実態については、登記制度を所管なさる法務省におかれて実態把握をなさるべきではなかろうか、私はこう思いますが、あわせて二点、お願いしたいと思います。
  310. 永井紀昭

    ○永井説明員 結論から申しますと、私ども登記所におきましては、中間省略登記がどのようになっているかということは全く把握しておりません。また、それは手続上不可能でございます。と申しますのは、先生重々御承知だと思いますけれども、登記申請におきましては、法律上必要な添付書類が法定されているわけでございまして、そこの書類上、例えばAからB、BからCという実態変動があった場合に、AからCへの直接の登記申請があります場合、大体全部AからCへの移転があったという、そういう原因証書をつくってくるわけでございます。AからB、BからCというような実態を反映した原因証書がある場合は、これは不動産登記法四十九条の七号というところで却下することになっておりまして、直接AからCへのそういう不動産登記を求めた場合に、A、B、Cというそういう原因証書がある場合は、きちんとAからB、BからCへのそういう登記をしてください、こういうことを言うことになっておりますので、したがいまして登記所においては、その書面上の審査だけを行う形式的審査主義でございますので、そういうことは把握のしようがない、こういう制度的な仕組みになっているわけでございます。
  311. 山田英介

    山田委員 登記官には形式的審査権しかございませんので、実態の調査権を付与しない限り、あるいは付与したとしても、実際にこれだけ激増する登記事件をこなすことは事実上不可能でございますから、課長の御答弁はそのとおりだと私も思います。  それで、差しさわりがなかったらぜひ御答弁をお願いしたいと思いますが、先ほど私が申し上げました中間省略登記を主に実行する人たちといいますか、実行者はその大部分が宅地建物取引事業者である、こういうことであるわけです。  そうしてまた、なぜ中間省略登記を実行するかという動機等につきまして、私は、申し上げましたように、登録免許税の回避が一つ、言葉を使えば節税というのでしょうか、それが一つあると思います。それから、あるいはAからB、BからCと転々売買、流通する物件の変動の過程にあって、AからCにいきなり所有権移転があったような形で登記がなされるということが中間省略登記ですから、Bの名前というのは出てこないわけです。実際には登記簿上にも出てこない。どこにも出てこない。また、そういうBという事業者がいたのかどうかということも、当事者以外にはわからない。そういうことで、中間省略を実行するまた別の動機としては、いわゆる土地の転売、土地転がしの実態、その不公正とか不相当な利益を上げている実態が、白日のもとにさらされてしまうのは困るというような動機もあるのではないかと私は思っております。  あるいは、さきに発表された中にございますが、脱税のワーストツーでございますか、いわゆる不動産業界が二倍の脱税額ということで、いきなりワーストテンかなんかの二番目に上がってきた。そういうようなことも拝見いたしておりますと、不動産取得税、これは地方税ということですが、あるいは国税の不動産譲渡所得等におきまして税金逃れがしづらくなるというようなところもあるのではないか。あるいは、何らかの理由で中間者のBという存在がその名前を隠しておきたいあるいは表へ出したくない、こういうような動機、理由というものがあると思いますが、第三課長、その辺はいかがごらんになっておられますか。実態を把握していない、把握できようがないという状況の中でこういう質問もいかがかと思ったのですが、差しさわりなかったらお聞かせをいただきたいと思います。
  312. 永井紀昭

    ○永井説明員 私どもはまさに実態を把握しようがないわけでございまして、そういうことはわからないというのが現状でございます。ただ、風評あるいは我妻先生の本にすらそういうことが書いてございますので、あるいはそういうことがあり得るのではないかということは予想はされるのでございますが、私ども立場では何が原因か、あるいはそれに対して登記所の立場で何か手を打つことができないかということにつきましては、非常に難しい問題であると思います。
  313. 山田英介

    山田委員 あと一、二問ですから。私は、そういう観点から中間省略登記というものが結果的に野放しにされていて、そしてそのことが要するに土地転がし、土地の転売等を非常に助長している要因の極めて重要な部分をなしているのではないか、これが一つございます。  それから、今回登録免許税を五〇%引き上げようとなされているわけでございますが、そういたしますと、一層中間省略の登記というものを拡大をする作用を及ぼすということを私は非常に心配をいたしまして、指摘をしておきたいわけでございます。土地等の所有権の移転につきましては、課税標準価額の千分の五十ですから、例えば一億の土地を所有権移転をして、登録免許税は五百万ですね。当然一千万の土地を売買した場合には、そのときに正しく登記がなされていればそこに五十万の登録免許税が納入されなければならないわけでございまして、中間省略の登記の存在というのが、まさにそういう巨額の登録免許税逃れのために利用されてしまっている。あるいはまた、それがもう一カ月くらいの間にひどい例は転々流通して十何回も土地が転がされていくというような事案の中には、いわゆる徴税当局にちゃんと譲渡所得がこれだけありましたと申告をされるのかどうかというようなことも、私は実は非常に心配をしておるわけです。それがいわば脱税の温床になっているのじゃないか、こういうことから私は非常に心配をいたしております。  したがって、課長、最後の質問になるかと思いますが、この中間省略の登記は法務省のお立場といたしましてこれは好ましくない、限りなくゼロに近づいた方がよろしいのだ。それは判決による所有権移転登記とかは別ですよ。あるいは、さっき課長が事例として、AからCに所有権が移転された、しかし、Cに移転された経緯がBが約束を守らなかった、それではCの権利が保全されないということでやってしまった、結果的にCの権利が守られたというような判例にあるようなたぐいの中間省略登記、あるいは先祖代々の数次相続、何代もかわっているのに所有権の登記は実際にはなされないで、要するに三代目の方に相続登記をやる場合に数次相続と言うのだそうですが、その場合には中間省略という概念も当てはまるのだろうと思いますが、そういうものは除いて、基本的に登記の公示機能、現在の権利関係を正確に映し出す、それからその物件についての過去の権利の変動の過程も、できるだけ登記簿という簿冊に明確に記載されることが望ましいという観点からいたしまして、これはない方がいいわけです。そういう意味では限りなくゼロに近い方がいいわけですね。これはちょっと確認で……。
  314. 永井紀昭

    ○永井説明員 先生御指摘のとおりでございまして、私ども法務省といたしましても、登記はできるだけ正確に公示機能を果たすべくきちんと登記手続をやっていただきたい。中間省略はごく限られた例外的な特別な場合、ただいま先生御指摘ありましたような判決による場合あるいは数次相続とかそういった特殊な場合だけに限る。したがいまして、私ども法務省といたしましても、登記所においてそういうことがわかりましたら直ちに却下するという方向でやっておりますので、御指摘のとおりだと考えております。
  315. 山田英介

    山田委員 あと順次建設省、国税庁に伺っていきますが、課長、済みません、最後にまた幾つか質問がございますので、いていただきたいと思います。  それでは、建設省の方に伺いますが、私は、宅地建物取引事業者という立場は、特に不動産の取引におきまして安全な取引社会を形成する義務があると思いますし、当然一般人より不動産取引の分野についてはその社会的責任は重いと考えますが、監督官庁といたしましてはどのようにお考えでございましょうか。
  316. 藤田修

    藤田説明員 先生今おっしゃられたとおり、私どもとしては、業者として社会的責任を十分自覚していただくよう、日ごろから業界の方々にお話を申し上げているところでございます。
  317. 山田英介

    山田委員 それでは、引き続いてお伺いします。来年、建設省と国土庁が協議をして宅地建物取引業法の改正を検討されているやに伺っております。その骨子を私申し上げますが、これでいいのかどうかという確認です。  一つは、希望を受けた売りと買いの情報はすべて仲介システムに登録を義務づけようとする、二つ目は、売買契約が成立した取引価格も登録する、三点目は、仲介システム同士の接続で登録情報を交換して一般に公開する、こういう大きな柱で言えば三点かなと思っておりますが、大体そういうことでしょうか。  それから、特に土地転がし、いわゆる中間省略登記を多用した土地転がしに対しまして、建設省はどのような指導と対策を講じておられるのか、伺います。
  318. 藤田修

    藤田説明員 お答えいたします。  第一点の多分新聞報道だろうと思うのですが、宅建業法の改正の問題でございます。内容につきましては、現在住宅宅地審議会の方で具体的な御答申を取りまとめるべく審議をいただいております。したがいまして、まだ固まっておるわけではございませんが、先ほど先生が申されました情報の公開といった関係についてはかなり誇張されて伝わっているようでございますが、不動産流通関係の情報について、多少なりともそういった観点からの改善をしたいというつもりは今のところ持っております。  二番目の土地転がしの問題でございますが、土地転がしにつきましてはこの辺なかなか難しいところがあるのですが、当事者の合意のもとで売買契約が適法に成立しているという限りにおきましては、私ども所管しています宅地建物取引業法上直ちにこれが問題だということで、違法だといったようなことで取り締まるわけにいかないわけでございます。とはいっても、土地問題というのは非常に重要だということでございますので、土地転がしのように違法とは言えないまでも商道徳上好ましくないと思われるような行為につきましては、この辺も営業の自由との関係からなかなか難しい面もありますが、宅地建物取引業の健全な発展を図るという観点から私どもいろいろな指導をいたしております。  昨年十一月にも、関係団体あてに「不動産業における信頼ある経営の確立について」という通達を出させていただいておりまして、その中で、業務の遂行に当たっては、いやしくも国民信頼を損なうような行為がないようにしていただきたいというように指導しております。その後も業界に強く自粛を要請するなど、適宜指導させていただいております。そういったことでいろいろ対応させていただいております。  また、今後の問題としましては、臨時行政改革推進審議会の土地対策検討委員会におきましてもいろいろな議論がなされておりまして、そういった審議内容も踏まえて必要な指導を今後図っていきたいと考えております。
  319. 山田英介

    山田委員 先ほど来の法務省のやりとりはお聞きいただいていたかと思いますけれども、我が国の登記制度の根幹を揺るがす土地取引、この中間省略登記というのは、今日の経済社会の大きな病理現象の一つなんです。実は法務省の方では、要するに形式審査権しかありませんから、これはもう精いっぱいやっていて、これ以上できないというのが実態だと私は理解しているわけです。  そうしますと、実際にこの中間省略登記を実行しているのは、そのほとんどが御省が指導されている宅建事業者なんですよ。そこに対しては、中間省略の登記はできるだけやめなさい、できるだけ正確な取引の実態を反映させるべく登記をしなさい、こういう指導を建設省御当局でやらないと、幾らいろいろと、先ほどちょっと私が伺ったのもそういうことなんですが、業法改正をお考えになっておられるという、それは結局は今の地価暴騰、それがすべてだとは私は言いませんが、そういう土地転がしで中間省略登記などを多用して、いろいろな意味で大きな問題になっております。そういう業者による地価のつり上げを防止するねらいで業法改正という動きが今あることは事実でございます。幾らそういうふうに業法改正をなさろうとしても、その実効は実は期しがたい。問題の根本は、この中間省略登記というのを結果的に野放しにしているところにあるのだということを明確に指摘を申し上げておきたいと私は思うわけでございます。それを宅建事業者に対する指導の中で、建設省といたしましてもぜひしっかりと対応していただきたいというふうに私は思うわけでございます。  登記システムというのは、法務省が責任を持ってやっているわけです。その所轄の当局が、中間省略の登記は特定の場合を除いて限りなくゼロに近づいた方がよろしいのだというふうにはっきりおっしゃっているのに、建設省の御担当の方では、いろいろ難しいこともございましてできませんという、ただそれだけでは通る話ではないわけでございます。恐らくこの議論は、大蔵委員会は当然のことだと思いますが、国会で余り取り上げられたり議論されたことは恐らくなかろうかと思いますが、私は御注意を喚起したいこととともに、具体的にこれだけ地価の暴騰ということが国民あるいは国民経済、生活等に大きな悪影響を与えている、こういう現下における最大緊急の課題の一つである、こういう状況を目の前にしたときに、私は、宅建事業者に対する当局の指導が今までどおりでいいということには断じてならないと思いますので、その点は具体的に結果が出るように、具体的な行動を伴う指導をなさっていただきたいと思いますが、一言御決意を伺いたいと思います。
  320. 藤田修

    藤田説明員 御指摘のように、不動産業界のマナーの問題につきまして私どもは常々いろいろ心を痛めているものでございまして、業界の方も、アヒルの水かきではございますが、懸命に努力をさせていただいております。そういう中で、今御指摘いただいた問題についても、法務省御当局のいろいろな具体的な取り扱いなり方針なりを踏まえまして指導をさせていただきたいと考えます。
  321. 山田英介

    山田委員 マナーの問題じゃないのです。そのマナーをそういうふうに課長がおっしゃるようなマナーにしてある大もとは何だという議論を私はさせていただいているわけで、その大もとは監督官庁である建設省さんがちゃんと宅建の事業者に、取引の実態に限りなく近づけた形で登記はしなさいよという指導をしなければ、いつまでたっても、マナーがいいか悪いか私は知りませんが、よくならないわけでしょう、悪いとすれば。それを言っているわけです。業者のマナーの問題というふうにすりかえられるように聞こえますので、これは御注意申し上げたいと思います。  現実に業法改正の場合には、例えばこういうふうに入れたらいいのです。中間省略登記はよろしくないわけですから、できる限り取引の実態に即した登記をするよう努力するとか、あるいは取引の段階ごとに必ず登記をして完結するとか、例えばそういう努力目標とか努力規定とか義務規定みたいなものを業法の改正の中に入れていただかないと、情報公開とかあるいはまた取引の価格を幾らコンピューターに登録を義務づけたといっても、実際にAからB、BからC、CからDと転々売買していく。結局中身が抜けてしまって、Aと最終のGとの取引がその情報登録システムの中に登録されるだけであって、そういう方向での業法改正であったとすれば今までと同じなんです。この中間の取引段階というものは、だれが当事者で、何回転売されて、どういう価格でというのは全く表に出てこないわけです。したがいまして業法を改正するなら、まさに中間省略登記はできるだけさせないという方向の業法改正の中身にならなければ、実際の地価暴騰の大きな元凶の一つである土地転がし等は防止することはできないということを私は申し上げたいわけでございます。  それで、ちょっと資料を持っておりますが、実際にそういう意味ではここに私、売買契約書のひな形、それから重要事項説明書というので物件説明書と言われる、不動産の取引をやる前提として、売り主が、あるいは仲介者が買い主に示すものであり、この中身をよく見てみますと、やはり問題があります。中間省略登記というものが全く当たり前のことだという前提のひな形なんです。実際の売り主と登記簿上の権利者が、書くところが別々に用意されているんですから、こういうところから是正をしていきませんと、いわゆるよく言われておりますように、不動産取引の世界というのは限りなく不透明に近い。実はこのAから転々売買、Gのところまでいって、そしてAとGの中間省略登記をやるだけで事は済んでしまうという今のそういう、法務省あるいは登記システムの中ではどうにもならないその部分を実は最大限に利用、活用、僕に言わせれば悪用の部分もすごくあるわけです。  ですから、実はAからGに至るこの間が限りなく不透明であり、これがブラックボックスになっているわけです。それを中間省略の登記をさせない方向で建設省が指導して実効が上がれば、この業界の不透明な部分というのは限りなく透明に近づいてくる。そしてこれが業界の体質改善、もってまた国民信頼にこの業界がこたえられるということになるわけでございまして、まさに監督官庁の御存在というのは、そういう方向づけをしてあげるところに主たる大事な任務がありはしないか。それをぜひ真正面からとらえて、ひとつお取り組みをいただきたい。これは所あるごとに、土地問題というのは我が国においても未来永劫に続く問題だろうと私は思っておりますので、ここは特に私関心のある点ですから、あらゆる機会をとらえてまた課長さんにも局長さんにも御質問させていただきますので、ひとつ積極的なお取り組みをお願いしたいと思っております。  それで、次に国税庁に伺いますが、所得税法とか地方税法、不動産取得税でございますが、仮に中間省略であっても現実に所有権の移転、所有権を瞬時においても転売、転がしの場合です、瞬時においても代金決済が終わっていわゆる所有権を取得した。登記はしてない、中間省略ですから。しかし、そういう場合でもこれは当然課税するわけでございましょう。そして、そういう場合に中間省略の登記というものがこれだけ何か常態化してきますと、いわゆる徴税という立場からは、その取引がなかったものとする、そういう非常に不心得な事業者が仮にいたとして、それが譲渡所得等の申告がなされない場合には、非常に中間省略の登記というものが常態化してくると、これは把握するのが非常に困難なのではないかなというふうに私思うんですが、その点も含めて御答弁をいただきたいと思います。
  322. 日向隆

    日向政府委員 今御指摘がございましたように、たとえ瞬間的でありましても売買がございました場合には、譲渡所得税の課税対象になります。  ところで、今までのお話でございますけれども、登記には権利移転等を公示いたしまして、それについて第三者対抗要件を持つという機能がございます。そこで、これは私どもの認識、やや今までのお話を聞いておりますと甘いかもしれませんけれども、現時点で私どもが把握している感触を申し上げますと、特別の目的や短期保有等を除く通常の不動産取引におきましては、登記は法令に従って行われていることが一般であるというふうに思っております。しかし、税務調査立場から申し上げますと、委員が御指摘になりましたように、すべての場合において登記が正確に行われることが望ましいということでございます。ただいま申し上げましたような一部中間省略登記の場合がございまして、しかしながらこの場合にこれを放置していいわけじゃありません。私どもといたしましては、登記資料を参考にいたしまして、それぞれの登記者に真実の売り手、買い手を順次尋ねるという方法で中間省略者の実態を把握して、これに課税をしているところでございます。この方法によりまして、多少手間がかかりましても真実の売買取引の把握に努めていきたい、こう思っております。  それから、なお論議を聞いておりまして感じましたところでございますが、不動産業者、宅建業者等の場合におきまして中間省略登記の問題というものについて、私ども課税上の立場から十分御理解をいただきたいと思います。したがいまして、こういう協会を通じまして、中間省略登記の課税上の立場から見た問題点について十分理解を得るよう努力してまいりたい、かように考えております。
  323. 山田英介

    山田委員 今回のこの法案で登録免許税を一・五倍にする、五〇%引き上げるということでございますが、予想される増収額というのはどのくらい見込んでおられるのでしょうか、これを伺いたいと思います。これは主税局ですかね。
  324. 水野勝

    ○水野政府委員 改正の平年度ベースで申し述べますと、二千億円程度を見込ましていただいているところでございます。
  325. 山田英介

    山田委員 二千億程度見込んでおられるということですが、私の理解では、大体この所有権移転の登録免許税につきましては実績で全体で三千億ぐらいかな、それで五〇%アップですから千五百億円ぐらいかなというふうに、私は今御答弁を想像していたんですが、二千億というわけですが、これは今まで議論しておりますように、そうでなくても一億の土地を所有権移転すれば、登録免許税は千分の五十で五百万ですね。それを節税あるいはそれを逃れるために中間省略の登記が使われている。これがさらに五〇%アップされますと、一億の物件の移転について登録免許税は五百万から七百五十万になるわけでしょう。そうすると、ますます中間省略の登記というものが蔓延してくる、あるいはそれを助長する方向に作用するわけです、どう考えても。その辺の今度は逆に、言葉としては適切かどうかわかりませんが、取りこぼしも相当覚悟しないと局長、あれですよ、その点はどうお考えでございますか。
  326. 水野勝

    ○水野政府委員 今回、登録免許税の課税標準の見直しをさせていただくわけでございますが、その趣旨といたしましては、これが課税標準は網羅的で客観性のあるものということから、固定資産税評価額をその課税標準といたしておるところでございます。この固定資産税評価額につきましては、実際の取引価格と申しますか、不動産の価額に応じて適正に評価されるように努めてまいっておるところでございますが、十年、二十年前に比べますと、その乖離というものはかなり大きくなっているのではないかと見受けられるところでございます。仮にこれを公示価格を用いましてそれとの割合をとりますと、昭和四十年代でございますとこれは四〇%台の乖離でございましたが、現在は二〇%台に低下している。そういうところからいたしまして、本来は不動産の価額をもって課税標準とすべき登録免許税が、そのような状況から実質的に負担水準が低下してきている。これを当面の問題として是正しようというところでございます。  したがいまして、実質的な負担水準が低下してきているのを、相当のところまではこれを回復しようとするところのものでございますので、実質的な負担水準からいたしますと、それが負担を引き上げるというものとも考えられないところでございますので、これによって、先ほどから御議論のございます中間省略の問題に直に結びつく。それによりまして、目減りが出てくるというふうにも私ども必ずしも考えてはいないわけでございますが、御指摘の点は、私どもの方といたしましても十分よく念頭に置くべき問題であると考えております。
  327. 山田英介

    山田委員 もう私がこの後何を申し上げたいかというのは、大蔵大臣も主税局長もおわかりだと思いますが、結局こういうことなんです。今五〇%税率アップをいたしますと、結局AからB、BからC、EからFという転々売買の過程で、これが全部結果的には登録免許税を納めないで済むようになっているわけです。現実にそれが物すごく多用されている。結局、最終の購入者というのは、マイホームなどを購入する一般の国民とか庶民という、こういう人たちが要するに最終の購入者になるわけですね。そうしますと、事業者はその登録免許税を回避することができている。しかし最終的に、本来居住するために、本来の意味の所有のために、本当に所有するのですから、最終の国民の皆さんはマイホームを。それは、転売しようと思って買う人はほとんどないと考えていいわけでしょう。そうしますと、結局、最終の購入者である国民のところへこの五〇%アップの登録免許税の税負担がかぶさってくる。事業者は納めないでいいということになっているわけです、今実態が。  大蔵省としては、必ずしもそうは考えてないと局長はおっしゃいますけれども、実態はそんなものじゃないのです。ですから、事業者あるいはいろいろな大きな企業でも不動産部とか持っていますから、そういうところは節税できるわけです。登録免許税、五割アップされても、何ら痛くもかゆくもないのです。逆に、痛くもかゆくもあるから中間省略登記を利用するわけですから、ここには負担はいかないのです。それは、最終のマイホームを購入する国民のところへ負担がいってしまう。なお、この土地の転々流通の中で、土地そのものの価格が膨らんでいくわけですから、ダブルパンチですね。それから、来年の四月一日には固定資産税、評価額の見直しがまたあるわけです。二割か三割ぐらいアップされるわけでしょう。  そういうことになりますと、私は時間があれですからこちらが伺った知識で論を進めますけれども、例えばこの登録免許税も、資産課税の負担の適正化というような観点から出させていただいたという御説明もいただいているわけです。しかし、それは今度はマル優の問題と同じで、キャピタルゲインとかあらゆるものを全部総合して、ひっくるめて全体として不公平税制はどうすべきか、キャピタルゲイン課税のあり方はどうするかという中に、むしろそういう理屈で出されてきたのであるとすれば、この登録免許税の五割アップというのは、そういう次元から議論をしなければならない一つであるというふうに私は思うのです。  それからいま一つは、結果的にこれは最終の購入者の庶民、国民のマイホーム購入時における過大な税負担として、全部それがしわ寄せされてしまうということは実態に照らして事実でございますから、大蔵大臣、今回この登録免許税、二千億円見込んでおられるそうでございますが、そういう観点からすれば、これをやることはよくないと私は思います。この部分の撤回を求めます。いかがでございましょうか。
  328. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 むしろしかし、それは正常に課税ができればはるかに税収は多いのであるから、そういう中間省略登記等々について各官署で協力をして、そういう中間が省略されないようなことを考えるべきだ、こういう御提言ではないのですか。
  329. 山田英介

    山田委員 私もそのとおりでございます。大臣に大変すばらしい御答弁をいただきましたが、庶民、国民に過大な負担がいくという点については、私は今やるべきではないということで同意したわけではありません。その後段部分です。ですから、いわゆる中間省略の登記を、要するに件数において限りなくゼロに近づけていく、これが先決なのです。したがいまして、これは私まず法務省に伺いますが、建設省の宅建事業者との関係の部局といいますか、要するに建設省と、大臣も今そうおっしゃっておられたわけでございますが、そういうことも踏まえまして、中間省略の登記そのものをなくしていくという方向は、我が国の登記システムを支え、維持発展させるということにつながるわけですから、建設省と、それからもう一つは、登録免許税とかかわってきますので大蔵省の担当部局と、あるいはまた国土庁も入れてもいいと思いますが、この問題について法務省として協議をする、いろいろ話し合う、理解をお互いに深めていくという場をつくる必要があるのじゃないか。問題は大きいのです、日本の土地問題ですから。これを法務省のお立場で御見解を伺いたいと思うのです。
  330. 永井紀昭

    ○永井説明員 結論から申しますと、法務省の立場といいますよりむしろ登記所の立場では、そういうことが非常に難しゅうございます。ただ、何らかの立法規制に基づいて登記所が何らかのチェックをする、そういう仕組みができるかどうかということについては考えてみたいと思いますが、現在の登記制度の仕組みからいたしますと非常に難しい点もございます。
  331. 山田英介

    山田委員 中間省略の登記というものはないものとして、要するに申請書の形が整っていれば登記をする、そういう形式審査の中の限界はわかりますよ。しかし、現実にはさっきの我妻先生のお話も課長聞かれたように、そしてまた御専門ですから、実態はどうなっているかということは御案内なわけですから、そういうふうな形ではなくて、要するにこの中間省略の登記が本当にゼロに近づくような方向でのいろいろな意見交換とか、だって、法務省が幾ら頑張ったって、これ以上どうにもならないとおっしゃっているのでしょう。それだったら、建設省の協力もいただかなければならないじゃないですか。そうでしょう。ですから、そんなに遠慮なさらないで一回、中間省略の登記、建設省の方もどれだけ理解なさっておられるのかなという部分もあるのじゃないかと僕は思うのですね。そういうところの理解を深めるために、話し合ったらどうかと言っているのですよ。課長、もう一回。
  332. 永井紀昭

    ○永井説明員 私ども、先生の御提言は十分理解し得るところでありますし、それから各関連省庁と話し合うことについては、いささかもちゅうちょしているわけではございません。ただ、個人の取引の自由でありますとか実態的な私法的な効力の問題とか、非常に根本的な問題がたくさんございまして、何度も繰り返しておりますけれども、登記所のシステムといたしましては非常に難しい点はございますが、そういう実態把握なり、あるいはそういうところで何らかの手段がないかということについて検討する、あるいは意見を交換するということについてちゅうちょしているわけではございません。そういうことについては、全く遠慮のない法務省でございますから、そういうことは話し合うつもりはございます。
  333. 山田英介

    山田委員 ぜひ、そういう姿勢でお願いしたいと思います、事は非常に大きな問題ですから。  では、建設省さんに伺いますが、これは今の課長さんの答弁ですと、法務省の方から積極的に話しかけていくのかなどうかなという点もちょっと心配なのですけれども、もし仮にそういう問題について許される範囲でいろいろ意見交換をやろうじゃないか、そういう場合にはどうですか、建設省は応じますか。応じてくださいよ。
  334. 藤田修

    藤田説明員 十分御相談をさせていただいて、御指導いただければと思います。
  335. 山田英介

    山田委員 では、もう一つ両省の担当課長さんに伺いますが、登記の実務の実際に司法書士といういわゆる専門職、国家試験の資格を持った者が全国で約一万六千人います。これが九〇%以上の、本人申請を除いてほとんどの土地の所有権移転とか登記事務に立ち会っているわけです、そこに介在しているわけです。そして、あるべき我が国の登記制度をどうしたら発展させられるかという次元から一生懸命やっている、こう理解をいたしておるわけでございますが、結局、中間省略登記等をなくしていくという方向で努力しようと思えば、この登記の専門家集団である司法書士会、このあたりとも十分この問題について意見交換をする、あるいはまたいろいろ話し合うということは私は必要だと思うのですが、表示の登記では土地家屋調査士会というのがありますけれども、この点についてそういう御用意があるかどうか、それをひとつ建設省さんと、法務省さん先で結構ですが、両課長にお伺いをしたいと思います。
  336. 永井紀昭

    ○永井説明員 中間省略登記の問題につきましては、日本司法書士連合会からもかねてよりいろいろな御要望なりあるいは考え方を、私ども法務省にもお聞かせ願っております。これからもそういう点につきましては十分意見交換をいたしていきたい、こういうように思っております。
  337. 藤田修

    藤田説明員 建設省といたしましても、司法書士会等の御意見をいろいろ別な場面でもごちょうだいしております。この問題についても、いろいろ御相談をさせていただきたいと思います。
  338. 山田英介

    山田委員 外務省さんに来ていただいていると思いますが、二、三お伺いをしたいと思います。  在京大使館の数と、その大使館の財産、資産の所有関係につきまして、簡潔に御報告をいただきたいと思います。
  339. 松井靖夫

    ○松井説明員 お答え申し上げます。  ただいま現在、東京には大使館、実館でございますが、これを開設しておるのは百五カ国こざいます。  在京の各大使館の敷地、建物の状況といたしましては、本国政府が所有しているケース、これは例えば事務所の場合ですと四十六件、大使公邸は四十九件ございます。それから、我が国の国有地を賃借しているケース、これは事務所が五件、大使公邸が四件ございます。そのほかのケースは、民間から賃借しているということになります。
  340. 山田英介

    山田委員 ウガンダ大使館が、七月末をもって経済的な理由によって大使館を閉鎖して、中国のウガンダ大使館と兼轄にする、要するに在京大使館引き揚げという事態が発生したと伺っておりますが、この原因は何でしょうか。ひとつ外務省のお立場で簡単に。
  341. 小原武

    ○小原説明員 お尋ねの在京ウガンダ大使館の閉鎖につきましては、正式には先方からは在京ウガンダ大使館を閉鎖するという通報を受けているのみでございまして、正式な理由の通報はございません。しかしながら、先方の関係者との非公式の意見交換などを通じて得ている情報によりますと、主に経済的理由によるものであるということのようでございます。  なお、中国にあるウガンダの大使館が兼轄するのではないかというお話でございましたが、私どもは、インドにある先方のハイコミッショナーが日本を兼轄するというふうに連絡を受けております。
  342. 山田英介

    山田委員 そういう事実関係は今のことでわかったのですが、外務省としてはこういう大使館の財産の所有関係というのは、一つは、御報告があったように、国有地を貸与してそこに地代を払って大使館を置いている、活動をやっている。あとは、自国で日本の一定の土地を、財産を購入して大使館を置いている。もう一つは、特にアフリカとかアジアの一部の国々あるいは中南米の諸国とか、我が国との交流の歴史が比較的新しいというような国々が恐らく多いのだろうと思いますが、民間の賃貸事務所に入っている。  ウガンダ共和国が閉鎖したのは、二、三百万とか、こう言われていますけれども、月々の家賃を払うことが非常に厳しくなったというようなこともまた言われているわけでございます。まさに経済的な理由ということなんですが、そういう状況の中で、一方では国有地を借りて安い地代で大使館活動をし、他方は、国民総生産とか経済力のより小さいといいますか、そういう国々が、今度は地価高騰で地代等が非常にはね上がっている民間事務所を借りなければならないというような、非常にアンバランスが目立つといいますか、非常に気になるわけでございます。これでいいのかという部分で外務省から御答弁いただきたいと思います。何らかの対応ができないかということです。
  343. 松井靖夫

    ○松井説明員 お答え申し上げます。  外交事務当局といたしましては、大使館のこの問題というのは非常に難しい問題だと思っております。経済的な問題とともに、大使館の開設、それから建設、実態という問題は、やはりその国の基本的な考え方、意思というものがございまして、この辺を十分見きわめた上で、こういう問題について何か側面協力できないかというふうに我々は考えている次第でございます。  開発途上国と申しましても、経済的に見れば開発途上国という国の中でも、考え方はいろいろ違いまして、その辺も十分見きわめたいと思っております。
  344. 山田英介

    山田委員 大臣、これは最後の質問になりますが、今外務省からるる御答弁いただいておるわけですけれども、いろいろ難しいというような理由の中に、今のことも含めまして、例えば海外援助などはその国の中で使われるべきものだとか、あるいは仮にそういうふうに国の方でいろいろと対応したとしても、一体どこの国を対象としてどう声をかけてあげたらいいのか、外交上のいろいろの配慮とか、いろいろあるようでございますが、私は、国と国との外交関係あるいは友好関係というもの、そういうようなことの大切さを念頭に置きましたときに、何か経済的な理由日本の大使館を閉鎖して出ていってしまうというのはいかにも残念な気がするわけです。ウガンダ共和国だけでなくて、これから幾つも、第二、第三のウガンダが出てくる、そのおそれなしとしないと私は危惧しておるわけです。  例えば国有地の普通財産などを活用して、そこに何かビルでも建てて、そして希望のある諸外国の皆さんにはそこを適切な、妥当な価格で使用していただくというような発想があってもいいのじゃないかな、こういうふうに私は思うわけでございます。いわば大使館ビルみたいな、そういう言われ方もしておるようでございますが、そういう形についても、前に外務大臣も歴任なされた、そして現在は財政当局の最高責任者であられる宮澤大臣の御所見を伺いまして、私の質問を終わります。どうぞいい御答弁を。
  345. 藤田弘志

    藤田(弘)政府委員 お答えいたします。  現行法上、国有地を大使館敷地として貸し付けますことはもちろん可能でございますが、永続的な建物を建てるために土地を貸すとしますと、借地権が付着する、こういう問題がございまして、現在一般的には新規な貸し付けは行なっていないのが実情でございます。  また、国におきまして大使館ビルを建てまして賃貸してはどうかという御提案につきましては、先ほど外務省からも答弁いたしましたとおり、相手国の主権にかかわる問題等もあると聞いております。いずれにいたしましても、その具体的な要請のない現段階で具体的なコメントをすることは差し控えたいと思いますが、もし外務省から具体的な要請がございますれば、その段階で慎重に検討したいと考えております。
  346. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私もちょっと実情がよくわかりませんで、今外務省の方のお話をちょっと聞きかけたところでしたが、もしそれらの国々が日本にぜひ大使館、公館を置きたいけれども経済的な理由でそれができない。これは事務所とレジデンスと両方あると思うのでございますけれども、そういうことで、それなら日本政府がちゃんとしたものを、アパートになりますのでしょうがつくりますから、そこへお入りになってはどうですか、それは宿舎をどうするかという問題がございますね、ということで一緒のところへといいますか、一つの建物の中になるのかと思いますが、そういうことが素直に行われるというのであれば、それは外務省からお話がありましたら、金がかかってもした方がいいことであろうと思います。  ただ、どうもおのおのの国にプライドのようなものがありまして、長屋とは申しませんがそんなところへ入るような気持ちは嫌だというようなことがあったり、宿舎の方をどういたしますか、どうもそういうことのやや微妙な問題があるようなことも聞きます。でございますから、外務省の方で、そういうものがあれば何カ国かはそれを希望しているということであれば、決して考えることにやぶさかではございません。
  347. 山田英介

    山田委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  348. 池田行彦

    池田委員長 次回は、明二日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十一分散会