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1987-08-28 第109回国会 衆議院 大蔵委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年八月二十八日(金曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 池田 行彦君    理事 大島 理森君 理事 熊川 次男君    理事 笹山 登生君 理事 中村正三郎君    理事 野口 幸一君 理事 宮地 正介君    理事 玉置 一弥君       新井 将敬君    井上 喜一君       石破  茂君    江口 一雄君       遠藤 武彦君    金子 一義君       木村 義雄君    小泉純一郎君       笹川  堯君    杉山 憲夫君       高鳥  修君    戸塚 進也君       鳩山由紀夫君    松田 岩夫君       村井  仁君    村上誠一郎君       山中 貞則君    山本 幸雄君       伊藤  茂君    上田 卓三男       沢田  広君    中村 正男君       堀  昌雄君    日笠 勝之君       森田 景一君    矢追 秀彦君       山田 英介君    安倍 基雄君       正森 成二君    矢島 恒夫君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         大蔵政務次官  中西 啓介君         大蔵大臣官房総         務審議官    角谷 正彦君         大蔵省主計局次         長       斎藤 次郎君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省関税局長 大山 綱明君         大蔵省理財局た         ばこ塩事業審議         官       宮島 壯太君         国税庁次長   日向  隆君  委員外出席者         厚生省健康政策         局総務課長   吉田  勇君         建設省住宅局住         宅企画官    櫻田 光雄君         自治省税務局府         県税課長    小坂紀一郎君         自治省税務局市         町村税課長   小川 徳洽君         参  考  人         (日本たばこ産         業株式会社常務         取締役)    田口 和巳君         参  考  人         (日本たばこ産         業株式会社常務         取締役)    勝川 欣哉君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 委員の異動 八月二十八日  辞任         補欠選任   今枝 敬雄君     松田 岩夫君   笹川  堯君     木村 義雄君   武藤 山治君     伊藤  茂君 同日  辞任         補欠選任   木村 義雄君     笹川  堯君   松田 岩夫君     今枝 敬雄君   伊藤  茂君     武藤 山治君     ————————————— 八月二十八日  大型間接税導入マル優制度廃止反対に関す  る請願広瀬秀吉紹介)(第七〇八号)  マル優等利子非課税制度存続等に関する請願  (近江巳記夫紹介)(第七〇九号)  大型間接税導入反対所得税大幅減税等に関  する請願野間友一紹介)(第七四一号)  同(中路雅弘紹介)(第七四二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出  第四号)      ————◇—————
  2. 池田行彦

    池田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出所得税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村正男君。
  3. 中村正男

    中村正男委員 今回のこの所得税法の一部を改定する法案につきましては、政府原案としては一兆三千億円の減税と同時に少額預貯金非課税制度廃止、いわゆるマル優廃止がセットで提出をされてきたわけでございますが、この非課税貯蓄制度廃止については、既にもう何回ともなく言われておりますように、さき国会売上税導入を初めとする一連の税制改革法案でございまして、これについては与野党合意でもって次の臨時国会には出さない、こういうもとに我々としてもそのような理解をしておったわけでございますが、国会に改めてこういう形で提案をされてまいりました。また野党の私どもも、社会、公明、民社と社民連、四党共同で二兆円規模減税要求を出してまいりました。与党政府、そしてこの野党との間には、大きな隔たりがある形でスタートしたわけでございますが、したがって、審議に入る前に一定与党としての譲歩といいますか、改めてのこの考え方提示をされなければ、なかなか審議に入ることは困難であるというふうな中で折衝が続けられてきたわけでございます。  御案内のように、八月七日に与党野党書記長幹事長会談が開催をされまして、その時点上積み規模としては二千億円、そしてこの非課税制度あり方については総合課税への移行問題も含め、五年後に見直しを検討する、こういう項目を含めて四項目の再提案というものがなされたわけでございます。しかし、私どもはこの改定案につきましても、我々の期待をしておるところからほど遠い内容である、こういう態度をとったわけでございますが、しかし、国会審議をとめた形での改めての与党に対する再考を促すという方法をとるよりも、むしろ大蔵委員会で具体的な問題を提示をしながら、また国民の声を率直に反映する中で審議を続けて、その中でさらに与党のあるいは政府再考を求めていく、こういう態度をとったわけでございます。  既に十八日の本会議でもって、宮澤大蔵大臣の方から趣旨説明が行われ、二十一日、二十五日と委員会審議が進んでまいりました。昨日は、午前中に四名の方々、さらに午後また同じく四名の方々参考人をお招きいたしまして、それぞれの立場から御意見をお伺いする、こういう経緯をたどってきたわけでございます。その間、二十六日には再び与党野党書記長幹事長会談が行われまして、一応の上積み額提示されたという経緯であります。  そこで、まず最初に宮澤大蔵大臣にお聞きをしたいわけでございますが、今回の税制改定についての野党の受けとめ方は、減税規模なりあるいはマル優廃止等について極めて不満を持っております。そういう中で、異例とも言うべきこういう審議のやり方をとっておるという、このことについて大臣としてはどのような認識をお持ちなのか、まずそれをお聞きしたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前国会の終了に際しまして、議長のごあっせんで税制改革協議会が設けられまして、各党におきまして今後の税制改正について御議論が今日まで継続して行われております。その間におきまして、所得税減税はやはり何としても今年度やらなければならないという点では、野党のお立場もそうでございますし、政府与党もまた緊急経済対策でそのような決定をいたしておりました。  したがいまして、財政等々の関連でどのくらいの所得税減税規模が適当であるかということに問題は狭まってきたわけでございましたが、ただいま御指摘のように八月七日に与党幹事長から、与野党書記長幹事長会談において与党側提案を申し上げ、その結果として御審議が開かれるに至った。八月二十六日には、さらに与野党書記長幹事長会談がございまして、その結果として、政府がかねて考えておった所得税減税規模では過小である、さらにこれを上積みすべきであるという八月七日の与党からのお話について、さらに八月二十六日にお話し合いがございました。  その際に、与党の方から政府に対しまして、改めてこの程度税率構造等々でひとつ野党の御意見も聞いてみたいという話がございまして、初めて私どもは具体的な作業をいたしまして、一兆五千四百億に相当いたしますところの税率構造与党に御提示をいたした。それをめぐりまして、与野党幹事長書記長会談が行われたというふうに承知をいたしております。  したがいまして、この間の経緯は、当初政府考えました所得税減税規模では不適当である、過小であるという、国会側と申しますか野党側の御主張に対しまして、現在の財政状態で可能な限りのお答え与党として申し上げて、それに従いまして税率構造を今日はじきました結果が一兆五千四百億円である、このような経緯でございますから、結局、政府考えておりました所得税減税規模では過小であるという御判断国会の御判断となっておる、このように考えております。私どもとしては、それは当然尊重いたさなければならないことと存じます。
  5. 中村正男

    中村正男委員 私が申し上げたいのは、我々の立場としてはこの再上積みについてもまだまだ不十分であるということと、もう一つ非課税貯蓄制度廃止というものについても全く顧みるところがございません。そういう中でも、本委員会としては審議を拒否するのではなしに、野党側としてはさらに審議を通じて政府側の改めての考え方を聞きたいというふうな態度審議を続けております。これは私は、従来の国会運営からいたしますと、極めて異例な野党の私どもの姿勢ではないかと思うわけなんですけれども、そのことに対しての大蔵大臣としての認識を私はお聞きをしておるわけでございまして、もう一度その辺をお答え願いたいと思います。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま申し上げましたようなことを背景にいたしまして、当委員会においてさらにこの問題を検討、審議をしょう、こういう御意向承知をいたしておりまして、政府といたしましても、所得税減税等々は国民的な要望でもあり、また内外から求められておるとも申せることでございますので、何とぞひとつ御審議をお願いいたしたいと思っております。
  7. 中村正男

    中村正男委員 私どものまじめなといいますか、本当に国民の声を最後のぎりぎりまで強く反映をさせていきたい、こういう意向であるということをぜひひとつ理解をしていただきたいというふうに申し上げておきたいと思います。  そこで、一つは、これは確認になるわけですが、数字的なことは後にいたしまして、八月七日の与野党書記長幹事長会談で四項目提示されました。一項目については、さらに一定税率見直しが行われましたから、数字的に変化をいたしております。しかし、二番目の「利子課税制度の改組の実施時期については、六十三年四月一日とする。」三番目の「財形貯蓄(年金・住宅)の利子非課税とする。」四番目の「利子課税制度あり方については、総合課税への移行問題を含め、五年後に見直しを検討する。」こういう内容でありますが、これについては全く改めての考え方提示をされてないというふうに受け取ることになるのですか。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 八月二十六日の与野党書記長幹事長会談におきましては、専らこの一の問題につきまして、どのような税率構造なり等々でどのくらいの減税になるかということが中心にお話し合いが行われたと承っております。したがいまして、八月七日に与党幹事長から申し上げました他の三点につきましては、これから国会の全体の問題を含めましての修正が行われるものと私ども予測をいたすわけでございますから、その際にどのようにお取り扱いになるか、恐らくはこの八月七日の与党幹事長の発言を中心修正国会がなさるのではないかと推測をいたしておりますけれども、本来これは当委員会あるいは国会におきまして御決定になられるべき事項と存じます。
  9. 中村正男

    中村正男委員 そうしますと、この二番、三番、四番については、今後のこの委員会審議を踏まえてそれぞれの内容について改めて法案化していく、こういうこととして確認しておいていいですか。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのように承知をいたしております。
  11. 中村正男

    中村正男委員 それでは、二十六日の書記長幹事長会談の結果出されました改定案について、数字的な確認をしておきたいと思います。  きのう当局の方から「所得税税率修正のポイント」さらに「所得税及び住民税負担軽減状況給与所得者の場合)改正平年ベース」というのをいただいたわけですが、要約して、今度の二十六日の改定案では、税率の刻みが十三段階から十二段階になって、最低税率一〇・五%の適用範囲を百五十万円課税所得まで適用する、さらに課税所得二百万円までの税率を一二%にする、三百万円以降は当初案、こういう形での受けとめ方でいいのですか。
  12. 水野勝

    水野政府委員 二十六日の与野党お話の中で出されたのは、ただいま委員提示のように、一〇・五%の適用帯を百五十万までにする、それから、その上の二百万円までは一二%にする、このような案であるとお聞きいたしております。
  13. 中村正男

    中村正男委員 そこで、負担軽減状況という具体的な数字をいただいたわけですが、これを少し確認をしておきます。数字をそれぞれ申し上げますから、最終的にそれについてのお答えをいただきたいと思います。  年収三百万円のところでは、与党提示案後の軽減額としては二万九千六百七十五円、四百万円の階層で四万七千五百円、五百万円で七万七千六百五十円、六百万円で十万八千四百五十円、七百万円で十三万一千百円、八百万円で十六万三千七百円、九百万円で十九万五千七百円、一千万円で二十万八百円、一千二百万円で十三万三千二百円、一千五百万円で十二万九千円、二千万円で十二万九千円、三千万円で三十九万六千五百五十円。これは改正平年ベースということになっておるわけですが、六十二年度の数字はこれとイコールになるのですか。数字が違うのであれば、ちょっと具体的な数字を言っていただきたい。
  14. 水野勝

    水野政府委員 ただいま先生御指摘数字は、与党提示案の姿によります所得税住民税を全部含めた平年度ベース数字でございます。六十二年分といたしますと、これは所得税だけの数字に相なります。そうしますと、ただいま御提示数字とは違ってまいろうかと思うわけでございます。便宜六十二年分の姿としてと申しますと所得税の姿に相なりますが、この所得税の姿につきましても配偶者特別控除の点が若干違ってくるという点はございます。しかし、これは六十二年と六十三年ほとんど違いませんので、便宜所得税の六十三年分、ほとんど六十二年分と違わない数字で申し上げますと、三百万円の年収でございますと一万七千三百二十五円、四百万円でございますと二万六千四百円、五百万円でございますと四万七千五百円、六百万円でございますと六万三千五百五十円、七百万円でございますと七万八千九百五十円、八百万円でございますと十万二千七百五十円、九百万円でございますと十四万二千二百五十円、一千万円でございますと十四万九千円、こんな数字に相なってございます。
  15. 中村正男

    中村正男委員 それ以降はどうですか、一千万円以上。
  16. 水野勝

    水野政府委員 千二百万円で十万一千円、千五百万円で十万一千円、二千万円で十万一千円、三千万円で三十五万七千七百五十円という数字でございます。
  17. 中村正男

    中村正男委員 それで、総額的な数字をお聞きしたいのですが、これは六十二年度の額としてお聞きいたします。課税所得で百五十万円までが五千八百億円、二百万円までが一千六百億円、三百万の年収で一千億円、それから四百万円と六百万円の間で二千二百億円、それ以降八千万円まではトータルして八百億円というふうに理解してよろしいですか。
  18. 水野勝

    水野政府委員 今のお話の中で、おおむねお示しの数字でございますが、三百万円と五百万円の間が二千二百億円ということに相なろうかと思います。したがいまして、五百万円を超える年収全体につきましてそれが八百億円になる、そういうふうに御理解いただきたいと思います。
  19. 中村正男

    中村正男委員 そうしますと一兆五千四百億円、今こういう数字提示されておるわけですが、合計して税率変更分で一兆一千四百億円、配偶者特別控除の新設その他の改正で四千億円という数字になろうかと思いますが、特に配偶者特別控除だけで見るならば数字幾らになるのですか。
  20. 水野勝

    水野政府委員 その数字の大半は配偶者特別控除分でございまして、三千九百億円程度かと思われます。
  21. 中村正男

    中村正男委員 一応数字確認したわけでございますが、次は、この与党提示案を本委員会としてはどういうふうに受け取ったらいいのか。もう機械的に、政府がこれをもと政府の案を修正した形で提示されておると受け取るのか、いや、まだそういう状況ではない、与党野党幹事長書記長会談の中で示された与党提示案であって、今後これをもとにこの委員会の中で与党野党が協議して一定修正案という形でまとめ上げていくのか、現在出されておる与党のこの提示案について政府としてどういう受けとめ方をしているのか、改めて確認しておきたいと思います。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 八月七日の与野党幹事長書記長会談におきまして、一兆三千億円に二千億円上積みをするということを与党幹事長が御提案申し上げました。しかしその際、それについてすぐに合意ということがあったわけではございませんで、国会の御審議がそれを契機に始まったわけでございます。さらに、八月二十六日に重ねて与野党幹事長書記長会談がございまして、この八月七日の問題についてさらに与党考えをお聞きになられまして、その際与党幹事長は、八月七日の御提言をさらに具体化するために私どもに、この二千億円の上積みというものを税法に、税率構造に直すとどのようになるかという計算をしてみるという話がございました。と申しますのは、所得税は御承知のような構造でございますから、きちっとある数字をおっしゃいましても、そのとおりにどうしてもなりませんで、少し上へ行ったり下へ行ったりすることは普通でございますから、それを私どもが計算いたしましたところ、先ほど言われましたように、百五十万円までは一〇・五%、二百万円までは一二%ということにいたしますと、ほほ八月七日にお話のありました二千億円、実はそれを少し超すわけでございますけれども、こういうことになりますということを与党幹事長主税局長がお伝えいたしまして、それをもとに八月二十六日のお話し合いが行われたと承知いたしております。  したがいまして、政府立場といたしますと、政府案修正するということができませんので、現実の問題として国会が御審議の過程におきまして適当と思われる修正をお加えになるもの、政府といたしましてはそのように考えております。
  23. 中村正男

    中村正男委員 本委員会は、これからさらに徹底的な審議が続けられていくわけでございますので、二十六日の一定提示案にこだわらずに、さらに具体的な修正に向けて私ども努力してまいりたいと思います。政府としても、ぜひその点率直に受けとめていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  そこで、実は昨日、御承知のように本委員会といたしましては、午前中四名の方々、そして午後同じく四名の方々にそれぞれの立場を代表して、国民階層意見として、税制改定案に対して意見の陳述をいただきました。私ども熱心にその御意見を拝聴したわけでございますが、要約して申し上げますと、一つは、二十六日の書記長幹事長会談で示された一定上積み額があったけれども、なお国民が望んでおる減税規模にはほど遠い、不十分である、ぜひさらに国民期待するような規模拡大をすべきである、これが基調としてそれぞれの立場から言われておりました。また、思い切った累進構造の緩和にも踏み込んでもらいたいということ、そしてマル優廃止の問題については、さき国会で廃案となったものがほとんど変わらずに再提案されておる、政府に極めて欺かれた感じである、この一律分離課税というのはより不公平の拡大につながる、むしろ限度管理、これは納税者番号だとかあるいは社会保険番号等々を使って徹底してやるべきであって、それができないからといってこのような二〇%の一律分離課税を課税するというのは納得できない、こういう御意見でございました。  さらに、所得税が払えない階層も含めて今度は非課税貯蓄制度廃止をされるわけでして、そういう方々にも、本当にささやかな今日の生活、さらには今後のみずからの生活を守っていくための預金の利息に税金がかけられるということについては、極めて政治不信という形で国民の諸階層は受け取っておる、こういうさまざまな強い御意見が出されました。これは私ども、本委員会として意見をお聞きした、そういうことでございますが、政府に今言ったような御意見があったということをお伝えしておきたいと思います。  私どもは、したがって、大方の国民はなお大きな不満を持っているという立場で、減税規模についても大変二十六日の会談を注目しておったんですが、その期待にこたえてない。七日の書記長幹事長会談では与党幹事長としては真剣に努力をする、こういう言葉を約束されたわけですが、真剣に努力をするというのは、これは具体的な数字でもってあらわせないことには言葉だけに終わってしまったという失望でございます。さらに、この六十二年度は住民税減税が見送りになっております。したがって私どもは、国税だけでも二兆円の減税実施をすべきである、こういう強い要求を重ねて申し上げたいと思います。それについての大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 八月二十六日の会談につきまして、これは見る立場からどう評価するかということはおのずからあると存じますが、実は政府立場から申しますと、政府が当初考えておりました減税規模よりはかなり実は大きくなっておりまして、これは政府としましては当然財源をどうするかということを考えなければならないということでございますので、政府立場から申しますと、この一兆五千四百億円というものを、国会の御意思でございますればこれはもうやむを得ないことだとは思っておりますが、その財源的な処理をどうすべきか、今年度あるいはそれは当然明年度にもそういう構造が持ち越されるわけでございますので、そういう点はなかなか厳しいものであるというふうに実は私ども考えております。
  25. 中村正男

    中村正男委員 この六十二年度の一兆五千四百億円、今の時点ではそういう数字になっておりますが、この場合の財源は具体的にどういうふうに考えておられるのか、御質問いたします。
  26. 水野勝

    水野政府委員 八月二十六日にあのような減税規模の御提示があったところでございます。私どもとして、政府提案のものにつきましても、財源は少なくとも恒久的な姿としてはそれに見合うものはぜひ確保し、その範囲内でということで御提案したわけでございますが、その後の経緯によりまして今のような減税規模になっておる。そうしたものの財源状況はいかがかということで、大変難しい問題でございまして、率直に申し上げて厳しい状況にあるというふうに受けとめておるわけでございます。  が、今回御提示申し上げております全体としての税制改正案の中におきましては、若干の増収措置を伴う制度改正もお願いをいたしております。その中には期限のないものもございますが、また期限の付されている措置もございます。期限の付されているものと申しますと、それは恒久的な財源措置としては厳密に言えば見合わないものではございます。しかしそうしたものも、とにかく期限のあるものないもの、いろいろひっくるめて見直してみてカウントすれば、何とかかすかすいけるのではないか。しかし、それは厳密に言うと、恒久財源で見合ったとは言えない側面もあるわけでございますが、そうしたものもカウントしていけば何とかいける。しかし、現在そこの点につきましてはよく精査中でございます。全体としては恒久的な財源措置と言われると、厳しい状況にあるというふうに受けとめておるところでございます。
  27. 中村正男

    中村正男委員 いや私は、もう既にこの数字が出されているわけですから、具体的に手当てをしていく財源はこれこれで幾ら、これこれで幾らというのが当然用意されておるんじゃないか、そういう中で聞いておるわけでございまして、もう一度お答え願いたいと思います。
  28. 水野勝

    水野政府委員 今国会、今度の改正法案におきましても、有価証券取引税の税率見直しでございますとか、利子所得以外の利子類似のいろんな金融商品の類似品につきましての課税それから取引所税の税率見直し、そういったものを御提示申し上げてございます。一方、登録免許税につきましても、課税標準の見直しを御提案していますが、これは期限を付して当面の措置としてお願いをいたしております。そうしたものも、いや、これは財源としては見合うんだという観点に立ては、これはある程度見合うものになる。  ただ、もう一つの点として、私ども厳しい状況にあるという点の一つの側面は法人税の関係でございまして、これは一・三%がことしの三月末をもちまして外れております。今回御提案申し上げております部分につきましては、法人税関係の増収措置分は今回は外しておりますので、そういったものをカウントいたしますとかなりなネット減収になる姿にはございますが、今回御提案申し上げているものでは、先ほど申し上げた項目、有価証券取引税、取引所税、それから当面の措置としての登録免許税等でもって何とか説明はできるか、こういう状況でございますが、厳しい状況にはあるということでございます。
  29. 中村正男

    中村正男委員 数字的には単純にいけば六十一年の決算剰余金の一兆三千億円、それと予備費からとりあえず手当てをするということになるんじゃないですか。
  30. 水野勝

    水野政府委員 六十二年度分の数字としては仰せのとおりでございます。これらによりまして、おおむね先ほど申し上げております、御提示申し上げております改正項目も若干増収措置がございますのでそうしたものを補いまして、さらに今御提示の六十一年の剰余金、その分と合わせれば六十二年分としては何とかつじつまが合うのかな、そういう感じでございます。
  31. 中村正男

    中村正男委員 私が後の方から申し上げた数字を含めて考えるならば、一兆五千四百億円、これが限界だということにはならないんじゃないか、いろいろなところを見直していけば相応の財源がまだまだ出てくる、こういうふうに私どもは見ております。当面一兆三千億円余りの決算剰余金、予備費だけでも一兆五千億円余りはあるわけでありますから、ことしの改定分を含めればまだ上積みの余力はあるというふうに申し上げておきたいと思います。  次に、マル優の原則廃止非課税貯蓄制度廃止についてでございますが、私どもはあくまでもこれについては反対をしていくという態度を明らかにしながら、以下具体的にちょっとお聞きをしてまいりたいと存じます。  第一点は、改めてお聞きをするわけですが、きのうの参考人の御意見ではございませんが、なぜこの時期にこれだけを全体的な税制改革から切り離してやらなければならないのか、その必然性がどうしても納得できません。その点についてお尋ねをしたいと思います。
  32. 水野勝

    水野政府委員 私ども、二月の時点からこの点の改正は御提案申し上げていたわけでございますが、基本的な観点といたしましては、所得税、法人税その他もろもろを見直す際におきまして、現在約三百兆円の非課税貯蓄があり、その利子といたしまして十五兆円程度非課税利子所得といったものが存在している。これは、個人の事業所得あるいは法人所得等の規模と比べまして相当なものでございます。そうした所得金額が課税外になっているという点につきましては、税制改革と申しますか、今回の改革を進めていくに当たりましては、勤労性所得との関連等からいたしまして、ぜひ見直しを行わさしていただければということが一つの観点でございます。  また、この非課税貯蓄制度はお一人では現在九百万円でございます。したがいまして、四人世帯であればその四倍ぐらいが利用できる。しかし、そうした高額な限度を利用できる方はやはり高額所得者であり高額貯蓄者でございますので、結果的に高額所得者がより受益しているという現状になっているのではないかといった観点もございます。  また、現在の非課税貯蓄制度は、戦時中、昭和十六年の国民貯蓄組合制度から始まり、また戦後の資本蓄積期におきまして、貯蓄奨励といったものが基本的に推進されてきたわけでございますが、現時点におきましてこうした税制上の政策的な配慮が果たして適当かどうか、こうした観点からの政策的な見直しという点もあるわけでございます。  よく言われます不正利用が多い、それを排除するという点ももちろんあるわけでございますが、それと並びまして幾つかの観点から、これを今回見直しをさせていただければということでございます。
  33. 中村正男

    中村正男委員 この論議については、既にこの委員会で全くすれ違いに終わっておりまして、私どもはその限度管理をより徹底していけばいいのではないか。さらに、減税に向けての恒久財源というのが一つの理由づけになっておりますが、その点につきましても六十二年度の税収で見る限り、今度四月一日からに改定されたわけでありますから、六十二年度の恒久財源としては実質ゼロになるわけです。したがって、そういう理由づけもできないわけであります。六十三年度は、仮にこの制度がスタートした場合どの程度の税収見込みが考えられるのか。  それから、既に大蔵省の方から平年度では一兆六千億円の税収が見込める、こういう答弁がしばしば出ておりますが、それは一体何年度を想定してそういう数字になるのか、あわせてお聞きをしたいと思います。
  34. 水野勝

    水野政府委員 政府で御提示しておりますのは一月一日でございますが、四項目の御提示におきまして四月一日からとなってございます。その点を前提といたしまして六十二年度分として見込みますと、二千億円弱の数字となろうかと思うわけでございます。  それから全体としての規模は、国税、地方税合わせまして一兆六千億円ということを申し上げておりますが、これは非常に長期に申し上げれば、郵便貯金の定額貯金は十年物といったものがあるわけでございますから十年ということになりますが、しかし平均的な預入期間といったものもございますし、また一年定期のウエートもかなりあるわけでございますので、私どもおおむね五、六年後にそうした規模の税収が平年度的に実現されるのではないかと見込んでおるところでございます。
  35. 中村正男

    中村正男委員 次に、一律二〇%の分離課税ということなんですが、端的にお聞きしたいのですが、二〇%の数字的な根拠、これはどういうことからこういう数字になったのか、お聞きをしたいと思います。
  36. 水野勝

    水野政府委員 今回御提示申し上げております所得税住民税改正といたしましては、最低税率は国の場合は一〇・五%、地方税の場合は五%となっておるわけでございます。勤労者、サラリーマンの方につきましても、まず下積みといたしまして勤労性所得、給与所得がある。利子所得としては、平均的なケースを考えますとその上積みとしてあるわけでございますので、そうした所得税税率構造等を考えますと、国税、地方税合わせての水準としては二〇%といった水準が適当ではないかというふうに考えられるわけでございます。  それからまた、現時点におきましては、利子所得の基本的な源泉徴収税率としては二〇%という数字がございます。これは国税だけの数字でございます。今回これは国、地方、一五%と五%に分かれるわけでございますが、従来からのそうした水準といったものも背景にはあるということも言えるのではないかと思います。
  37. 中村正男

    中村正男委員 国民の受け取り方としては、当初から二〇%という大変高率な課税率に対して非常に抵抗があると私は思うのです。  さき国会売上税の問題を翻って考えてみますと、五十一品目の非課税項目、さらには一億円以下の非課税業者、こういう例外を設けて五%でもって導入しようとした。さまざまな論議があったわけですけれども、それぞれの業界では、極めて複雑な制度であるし、また非課税品目、非課税業者等の関係がややこしい、むしろこういうものはもっと単純に、簡単に、制度として仮に実施をされるのであれば、傘としても五%というのではなしに、一律に一%ぐらいから段階的に実施をされれば、それほど大きな、あれほどの各業界の皆さん方の反発を引き起こさなかったのじゃないか、一部にはそういう反省的な意見もあったと私は思うのです。  そんなことを考えますと、今回のこの例外をつくり、かつまた二〇%という当初の考え方から何ら変わってない率でもって実施をしようとしている、そこらあたり、前回の売上税導入についての国民的な反発、それをもとにしての反省、そういうものが今度のこの非課税貯蓄制度実施に当たっては全く加味されてない、何ら反省的な、前進的な措置が見られない、こういうふうに思うのですけれども、その点はいかがなものでしょう。
  38. 水野勝

    水野政府委員 売上税についての経緯につきましては、いろいろ御議論のあるところであろうかと思うわけでございますが、利子課税につきましては今のようなお話の例外の点をどう考えるか、いろいろ検討はしたところでございます。やはり、利子所得は勤労性所得の上に上積みとしてあるというふうに考えますと、先ほど申し上げましたような国一五%、地方税五%という税率水準が適当ではないかと申し上げたわけでございますが、基本的に、その勤労性所得の上に上積みとしてあるという場合の勤労性所得についての稼得能力、そうした稼得能力が減退したと申しますか、そういう稼得能力がなくなったあるいは消滅した方々については、勤労性所得と申しますか、ほかの所得の上積みにあるというふうに考えにくい。そういうことからいたしますと、老人、身体障害者等々につきましては、例外的に非課税とするということがやはり適当ではないかと考えるわけでございます。  したがいまして、そのように稼得能力の減退したあるいは消滅した方については非課税を続けるとすれば、その他の方々については一般的には稼得能力をお持ちでございますから、そういたしますと、現在の所得税住民税税率を前提といたしますと二〇%、一五%と五%の税率水準でお願いをするのが適当ではないか、このように考えたわけでございます。
  39. 中村正男

    中村正男委員 私は、中曽根内閣の今度の一連の税制改革に対する態度を見てみますと、しばしばこの委員会でも論議がされておるように、本来、税というのは公平、公正、これがまず何よりも基本にある、こういう認識が改定に当たって全く感じられない。まず国民全体向けに、いや、こういう点に配慮していますよ、したがって血も涙もない、そういう税制改革ではありませんよ、まずこういうえさをそういった立場の人々にまいて、えさと言っては表現がいささか適切じゃないかと思いますが、とにかく、政府もなかなか配慮してくれているなというふうなことをまず出しながら、そして税制改革を進めていこうとする。しかし、本来、そういう配慮しておりますよということ自体が、税制改革の公平、公正を損ねているのじゃないか。そこらあたり極めてずるいやり方で、国民向けのいわば無責任なそういうやり方を私は露骨に感じるわけです。  なぜもっと公平、公正な、国民の皆さんがすべて批判をしても、断固としてその批判にこたえていくというふうな態度でもって税制改革をやらなければならない。今回もまだまだ例外という形で、六十五歳以上の老齢者あるいは身体障害者、母子家庭等々に、こういう非課税扱いをしますよ、こういうことは本来税制改革に当たっては不適当な考え方ではないか。むしろ税制としては、国民が公平に負担する中で、そういう社会的弱者については別な福祉政策でもってそれぞれの年金の上積みを図っていくとか、そういうところでカバーをすべきであって、そういった福祉政策と税制改革をいわば混同させて実施しようとしている、そこが今の政府のやろうとしておる税制改革の一番の問題だというふうに私は指摘をしたいわけですけれども、その点についてはいかがなものですか、大臣お答え願いたいと思います。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのようなお考え方は決してないわけではございませんで、せんだっても堀委員でございましたか、一律にそういう特別な措置なしにやってはどうか、そういう人々に対する配慮は別の社会保障措置でやるべきではないか、そういうお考え方が現実にないわけではございません。  ただ、今回の場合で申しますと、今までこういう制度がともかく長いこと行われてまいりまして、そういうところの中でいわば稼得能力のない方々は、そういう前提のもとに今まで生活を集いできておられるわけでございます。これが稼得能力のある人でございますと自分で稼いでいかれますから、そんなに心配しなくてもよろしいのでございましょうが、そういう力のないあるいは大変に乏しい方々にとっては、突然ここで現状を変えるということは実際問題としてそれは酷ではないか。一般の方々には、先ほど主税局長が申し上げましたように、勤労所得のいわば上積み考えて源泉で取らせていただく、しかし稼得能力のない人々は、上積みといいましても下がないわけでございますから、そうなりますとそういう方々には特別な社会的配慮をいたしませんと、現行の状況からの変化が余りに急であるというようなことをも考えまして、こういうことにいたしたわけでございます。
  41. 中村正男

    中村正男委員 ぜひ、私どもが主張しております、税はあくまでも公平、公正に、そしてそういう立場方々には社会福祉政策でもってその分は十分手当てをしていく、こういう考え方についてひとつ前向きに検討を願いたい。今度の非課税貯蓄制度導入に当たっては一律二〇%、こういう高率でもって導入するのではなしに、むしろ段階的に低率で入っていく、そして公平、公正化の中で今言ったような手当てをしていくという実質的な修正の中身について、ぜひ御検討をお願いしておきたいと思います。  ついでにと言っては恐縮でございますが、財形の問題についてちょっとお聞きをしておきたいと思います。  今度の八月七日の四項目の中で、年金・住宅財形については三・七五%の政府提案をゼロにする、こういうことでございますが、一般財形でもって積み立てられていらっしゃる方々がそれを引き出して、例えば住宅資金として使われる場合にはこれが適用されるのか、当初契約した段階での一般財形はあくまでも一般財形として課税をしていくのか、それが第一点。  それから、これはきょう突然の質問で数字的にちょっと難しいかもわかりませんが、できましたら一般財形が今トータルどのぐらいあるのか、それから年金・住宅財形がどのくらいの規模になっているのか、あわせてお尋ねをしたいと思います。
  42. 水野勝

    水野政府委員 御承知のように、一般財形と住宅あるいは年金財形それぞれ要件が違うわけでございますので、そのまま移行するということはもちろんできないわけでございますが、その要件をお備えになれば、それはその方式に移行していくことは可能であろうかと思うわけでございます。  それから、現在の財形貯蓄といたしましては、一般財形としてはおおむね全体として十兆円程度の残高がございます。
  43. 中村正男

    中村正男委員 年金・住宅財形は幾らになっていますか。
  44. 水野勝

    水野政府委員 年金につきましては、おおむね七千億円程度の残高となってございます。住宅は今回から始まるわけでございます。現在、年金としては今申し上げたような数字でございます。
  45. 中村正男

    中村正男委員 先ほど言われました一般財形を住宅、年金にシフトしていく、その場合には一定の要件、こうおっしゃったわけですが、それは大体どういうものなのか、どういうことが必要なのか、お答えいただきたいと思います。
  46. 水野勝

    水野政府委員 基本的には、財形法の体系でこうした資金の使途、住宅なら住宅、年金なら年金にその使途を特定するような積み立てにいたした場合が住宅財形であり、年金財形になるわけでございますので、基本的にはそちらの財形法の仕組みの中で処理されておるところでございます。
  47. 中村正男

    中村正男委員 しかし、その積み立てをしておる勤労者が、たまたまその積立期間中に住宅取得の必要性が生じたという場合には、これはそれにシフトは可能ということですね。
  48. 水野勝

    水野政府委員 一定の要件を満たしていただくことになれば、それまでの一般財形も、それは住宅なり年金財形の方に移行するというふうな仕組みと承っておりますので、その要件を充足していただければということでございます。
  49. 中村正男

    中村正男委員 要件の中身をお聞きしたいのですが、きょうここで予定質問として通告していなかったので、後ほど具体的に要件の中身をお聞きしたいと思います。(発言する者あり)いや、言っているのだけれども、答えてくれないので。シフトができるということは確認していいですね、それは。何かあいまいな答弁なんですけれども、要件も、労働者がその途中でそういう必要性が生じた場合には、それは煩雑な手続なくして可能だということを明確におっしゃってください。
  50. 水野勝

    水野政府委員 先ほど申し上げましたように、基本的には財形法、勤労者財産形成法の方の体系でございますので、私どもといたしまして今突然のお話で、こういうことでということで確定的に申し上げて後で御迷惑をおかけするのもいかがかと思いますので、一般的な話として本日のところはお答え申し上げ、よく確認をいたしたところで後日お答えをすることにいたしたいと思うわけでございます。
  51. 中村正男

    中村正男委員 我々はシフトができるというふうに理解をしております。そんなにかたくなな態度ではなしに、この財形貯蓄のゆえん等を考えますと、当然そんなことぐらいは十分配慮をすべきだということを私は申し上げておきたいと思います。  次に移ります。  「金融財政事情」八月二十四日の「OPINION」という欄で、庭山慶一郎さんという方がこんな小文を出しておられます。   昭和六一年度の国の決算では、経済界の好況による企業の利益の増加を反映して、法人税が大幅の増収になり、土地の値上がりによって所得税と相続税が、証券市場の活況で有価証券取引税が大幅にふえた。その結果、全体の租税収入は見積額に対し二兆四〇〇〇億円もの増加となった。この分では、昭和六二年度も見積額に対して大幅な租税収入の増加が期待できそうだ。政府財政はしたがっていまや潤沢で、国会野党要求している二兆円の減税は余裕をもって実施できるはずだ。   これは直接税に重点をおいている現行のシャウプ税制のおかげで、所得税減税をするには財源が必要だが、 云々、こうあるわけでございまして、いわばまさに直接税が主体の今の税制の結果六十二年度の減税財源が十分手当てをできた、こういうふうにこの人はおっしゃっておられるわけですが、私どもは、この二兆円の減税の必要性と、さらに六十二年度以降についても勤労者の減税幅の拡大をひとつぜひ要求をしてまいりたいというふうに考えております。  そこで、私ども勤労者、サラリーマンが今の累進税率の結果、極めて酷税下に置かれておる、ひどい税制もとに置かれておるという指摘がまたなされております。これは、この委員会でも一度紹介をされた一橋大学経済学部教授の野口悠紀雄さんの「税制改革への提言」という中で指摘がされております。  要は、今回十二段階に累進税率が改定をされようとしておりますが、七〇年代の前半まで、いわゆる五〇年代、六〇年代、そして七〇年代の前半ごろまでは、いわゆる租税負担率というものが大体一八%ないし一九%というところで一定をしておった。しかし、それが一九七〇年代の後半から急激に上昇しておって、今日現在二五%を上回る、そういう状況になった。これも第一には、勤労者の累進税率が、この間、五十九年度には若干の見直しがなされましたけれども、それ以降固定化されておりますから、当然その後租税負担率というものは上昇しておる。  また、もう一つの見方では、「国税の対国民所得比の変化」というものが出ております。それで見ますと、所得税のうち申告分と源泉分、これを一九七八年度と一九八三年度を比較して見てみますと、申告分は七八年度分一・一八%、これは国税全体に占める割合でありますが、八三年度はそんなに変化しておりませんで一・三四%、それに比べて源泉分は七八年度が三・四六%、八三年度は実に四・八五%までこれが肥大化をしております。  また、もう一つ数字では、「国税収入額の変化」でありますが、これも一九七八年度と八三年度の比較の数字が出ております。所得税全体としては、七八年度に対して八三年度は一・七六倍になっておりますが、源泉分はそれに対して一・八五倍、申告分は一・四九倍にとどまっておる。こういう数字がそれぞれあるわけでございまして、私どもは今度の十二段階の改定でもなお不十分だという立場をとるわけでございます。今回の税制改正で、そんなに大きく勤労者のとりわけ源泉分の負担割合が下がるということにはならないと私は思うのですが、今申し上げたような数字の実態についての認識をまずお聞きをしたいと思います。
  52. 水野勝

    水野政府委員 数字の傾向としては、委員お示しのような傾向であろうかと思います。個人事業所得者につきましては、ある程度規模になりますと法人成りをするとかそういった要素もございますので、今の数字の推移そのものが勤労者の所得税の重圧を示すということでもなかろうと思うわけでございますが、やはり給与所得者の税負担の累増感と申しますか重圧感、そうしたものは相当なものがあろうかと思うわけでございます。  したがいまして、そうしたことを受けまして今回の税制改革におきましても、一般のサラリーマンにつきましては累進が何段階もきつく働くというようなことは極力避けて、先般御提案申し上げた二月の政府案におきましては、普通のサラリーマンについては二段階ぐらいの累進で済むような仕組みでいかがかということで御提案をしたところでございます。今回の御提示申し上げている仕組み、税率構造におきましても、かなり最低税率の適用幅を拡大する等の措置をいたしておりますので、方向としてはそうした考え方に沿っているものではないかと思うわけでございます。  一方、事業所得者と申しますか申告所得者につきましては、一部は執行の問題としていろいろ努力をさせていただいている。それからまた、納税環境の整備という点からいたしまして、昭和五十九年度には総収入金額報告書制度でございますとか記帳義務制度を導入させていただいたわけでございますが、今回御提案申し上げている中におきましても、個人事業所得者の青色専従者給与、みなし法人制度等につきまして、所要の調整と申しますか見直しをも若干御提案申し上げ、事業所得者と勤労所得者と申しますかサラリーマンとの間の負担の調整を図る努力はいたしておるところでございます。
  53. 中村正男

    中村正男委員 私どもは、当面六段階税率の刻みに改めるべきだ、こういう提案をしておるわけですが、昨日の参考人意見でも十二段階に改定された累進税率、まだまだこれでもって十分とは言えないという指摘が極めて強うございます。六十三年度は、最終的に本年度決まる税率で続けられると考えられますけれども、私どもはなおかつ六十二年度も累進税率見直し、さらに段階の縮小といいますか、ブラッケットの簡素化が必要だ、こういう認識に立っております。さき政府税制改革案でも、一定の先行きの考え方が同時にセットで出されております。しかし、今回はそういったものは一切ございません。  私どもは、六十二年度の減税もさることながら、さらに勤労者の負担軽減という問題はまだまだこれで十分じゃございませんので、六十三年度にブラッケットの見直しはやるおつもりがあるのか、来年度の予算編成間際でありますから当然それは念頭にあろうかと思います。その点について大臣認識と見解をお尋ねしたい。同時に、六段階、この辺については政府与党野党との間にもそう大きな隔たりはなかったのではないか、私はこういう認識に立っているわけですが、そうした場合に六段階に向けてどの程度の年次を考えられるのか、その辺も含めてお答えをいただきたいと思います。
  54. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点につきましては、通常国会に御提案いたしましたところによりまして、所得税のいわゆる平年度化の姿はごらんをいただいておったわけでございます。その点につきましては、ただいま御発言のように基本的には考え方はそんなに間違っていない、こうおっしゃっていただいたのかと思いますが、私どももただいま御提案いたしましただけの姿では行き着いた姿とは存じておりませんで、将来もっともっと中堅のサラリーマンを中心にブラッケットあるいは刻み、税率等々を直してまいりたいという希望を持っております。そのいわば私どもが理想形と考えましたようなことを前国会に御提案申し上げたわけでございました。  しかし、これは相当の財源を必要といたしますので、どのような恒久財源を伴ってそのようなことが可能であるか、全体的な税制改革として考えることが必要でございますし、また税制改革協議会におかれましてもそのような問題として御検討いただきたい、これは議長のごあっせんの趣旨もそういう御趣旨であったかと存じます。したがいまして、ただいまのお尋ねは、まさに所得税の行き着く姿としては御指摘のようなことをやってまいりたいと私ども考えておるわけでございますが、そのための財源がどのようにどういう時期に用意されるかということによりまして、所得税の方のいわば進行ぐあいと申しますか、それも左右されてくる、こういうことであろうかと存じております。
  55. 中村正男

    中村正男委員 きょうの段階ではこれ以上はとどめておきますけれども、今回の税制改革につきましても基本的な大枠が出されずに、非課税貯蓄制度廃止を当面六十二年度に無理やりにセットで出してきておられる。先ほどからの質疑の中でも、恒久財源として考えるならば、六十二年度、六十三年度を見た限りでもこの時期それをやる必要性はないわけです。あえてそれだけを出してきておられるわけです。しかし一方では、今言った所得税の抜本的な改革というものが示されていない。そういったことに対して、むしろ積極的に税率の刻みをこのようにしていくというふうなことを先行して政府は示すべきではないか、こんなことを極めて強く私どもは申し上げておきたいと思います。  あとわずかの時間になりましたので、個別問題を二、三お聞きしておきたいと思います。  まず、給与所得者について、申告納税の選択の問題が提起をされております。このことは端的に申し上げて、給与所得者とその他の所得者との間でこういった必要経費の不均衡があるというふうに認めた上でこういうものを出してこられたのか、まず基本的な考え方をお聞きしたいと思います。
  56. 水野勝

    水野政府委員 大半の給与所得者につきましては、その所得税負担は年末調整をもって完結するというのが実態でございます。一方、個人事業所得者につきましては、それは確定申告をもって確定するというところとなっておるわけでございます。その税負担水準につきましては、法制的には、所得の定義その他もろもろにつきましては特段差があるわけではございません。したがいまして、制度的にそこに負担の差が生じているということはないわけでございますけれども、個人の事業所得者につきましては、御自分で収入を計算し、御自分で経費を計算して、御自分で税額を算出し納税をしていただくということになっておる。それに対しまして給与所得者につきましては、おおむね年末調整をもって完結するという、そこの納税方式の差異、これが給与所得者の税につきましての不公平感と申しますか、もろもろの税につきましてのイメージにつながっておるという御指摘があるわけでございます。  したがいまして、給与所得者につきましても、所得税の本来の姿からすれば、御自分で収入を計算し、御自分で必要経費を算定して申告をされるというのが本来の姿であろうかという考え方もあるわけでございますが、我が国といたしましては、長年給与所得者につきましては年末調整でもって完結するという制度が定着をいたしてきております。が、今回給与所得者につきましても、特定の場合にはその選択によって申告納税の道を開くという趣旨でもって、特定支出控除を制度化したらいかがかということで御提案を申し上げておるところでございます。
  57. 中村正男

    中村正男委員 特定支出の範囲の問題なんですが、今回、単身赴任者の旅費だとか転任に伴う費用だとか、そういったものに限定して特定支出の範囲を決められたようでありますが、この範囲であればもう既に大体大方の企業ではその企業が負担をしておりまして、事改めてこれを申告対象にするというのは全く実効性がない。むしろ、それよりも勤労者に共通した、まだまだ当然必要経費として認めてもらいたいというふうな項目があるわけです。例えば、アメリカでは労働組合費が一定の対象として認められております。今日、労働組合の活動も大変社会的に重視をされてきておりますし、大きな影響力を持ってきております。こういった労働組合費だとか社会通念上の冠婚葬祭費、こういったものは極めて共通した、しかも勤労者のいわば一番身近な負担として重い内容になっております。この二つの問題について、その考え方を聞いておきたいと思います。
  58. 水野勝

    水野政府委員 冠婚葬祭費につきましては、諸外国の例を見ましても、必要経費の概念に入れるというところはどうも少ないようでございます。労働組合費につきましては、アメリカは含めてございますが、イギリスは含めていないといったこともありまして、諸外国、いろいろな扱いになっているようでございます。  ただ、今回の制度は、日本の所得税としても、収入に対して必要経費を勤労者の場合にも算定して計算をし、申告をしていただくという、そこまではまだ基本的には踏み切っていないところでございまして、必要経費という概念は一応離れまして、特定の支出、その算定なり存在なりにつきまして余り争いの起こらない特定の支出を選びまして、それが給与所得控除額を超えれば申告の道を開くというところまでの制度でございまして、現行制度では必要経費の実額控除制度というところまでまだ参っておりません。まことに、そうした方向のものとしてはいわば本当の第一歩というところでございますので、こうした制度を実現させていただければ、それの今後の扱い、適用状況等を見ましていろいろ検討してまいり、必要経費の実額控除制度にまで徹底することがどこまで可能か、適当かといったことを今後さらに検討をしてまいりたい。今回は、まだそれの全くの取っかかり的な程度でございますので、まだまだ御議論をいただく点は多かろうかと思うわけでございます。
  59. 中村正男

    中村正男委員 もっと実効性のある申告制度の選択ができるような中身にぜひ改めていくように、強く要望しておきたいと思います。  次に、今回の改定には含まれていないのでありますが、生命保険に対する税制上の取り扱い、とりわけ生命保険料の所得控除の限度額の引き上げを強く要請をされております。御案内のように、今日のこの生命保険というのは、国民の自助努力によって、国の社会保障制度のカバーできない部分を補完している役割を担っておるわけでございまして、社会の進展とともにこの役割の重要性が非常に上がってきております。生命保険料の所得控除限度額の引き上げ、これについてぜひ検討をいただきたい。現行の五万円から十万円にまで引き上げるように私ども要請をいただいておりますので、この機会にその見解をお伺いしておきたいと思います。
  60. 水野勝

    水野政府委員 生命保険料控除は、いわば長期的貯蓄を奨励するための誘因措置として、昭和二十六年に設けられたものとされておるところでございます。これが創設されまして、既に四十年近くを経過しているところでございます。  現在、生命保険料の適用状況を見ますと、この十年間ぐらいをとりましてもおおむね七割程度を推移しておりまして、これが誘因的な措置であるということからいたしますと、加入率と申しますか適用率がほぼ横ばいで変化している、そういうところからいたしますと、既に創設後長年を経過しているところでもございますし、また、今回貯蓄奨励措置見直しているということからいたしますと、この控除制度につきましては、むしろその整理合理化の方向で見直しをするのが適当ではないかというのが、昨年の十月の税制調査会の考え方の中で述べられているところでございます。ただ、これがかなりな、三千万以上の納税者の中で二千四、五百万人の方々がこれを利用してきているという定着した制度となっておりますので、今回の改正の御提案に当たりましては、こうした税制調査会の指摘はあったわけでございますが、一応これは今回はそのままにして御提案しているというところでございます。
  61. 中村正男

    中村正男委員 時間が参りましたので、最後にこれだけを指摘をして終わりたいと思います。  一つは、税金白書という問題であります。今、各省庁それぞれ所管の事業内容なりあるいは国民の意識、そういったものを白書としてまとめて出しておられます。しかし、私の知る限りでは税金白書というものが出されてない。今日これほど税制について国民の意識が高まってきております。税金の負担の仕方やその使われ方、税金の仕組みやまた実態、こうしたことを広く国民に知らしめるべきだ、私どもこういう立場をとるわけでありますが、難しい数表とかそういったものは出ておるようですが、国民向けのそういった税金白書的なものは私は出されてなかったのじゃないかな、こう思うのです。ぜひこれをひとつ検討していただきたいということ。  それからもう一つは、今度の所得税法改正の論議を通じて感じたことなんですが、数字的なやりとりというものは、政府野党あるいは与党との間で当然これは交わしていかなければならない法律であります。しかし、今度の審議を通じて、例えば一兆三千億円の政府原案についての積算的な数字の資料は何ら出されてない。委員会の過程でもそういう指摘がある中でも、それを出すという確約もない。しかも、七日の幹事長書記長会談の中では二千億円の上積みをする。それは一体どこをどう変えることによって二千億円という数字になるのか、全く我々はそれは検討のしようもない。最終段階でようやく、一〇・五%の範囲を百五十万円までということで数字が出てくる。その間、我々が精査をするにも何ら資料がない。  本来、労使の賃金交渉でも同じテーブルで話し合っておるわけでございまして、一%上げることによってこういうところにこのような配分をしていくというのが、これはきちっとした交渉のルールとしてあるわけです。なぜ、政治の分野で、あるいはこういった具体的な数字をもって論議する本委員会でそういうものが出されないのか。私どもはそういう政府態度というか、大蔵省だけがこの資料を握っておって、それをもとにして出されてくるということに対しては非常に不信感を強く持つわけでございまして、そういうことに対する強い反省を含めて大臣の見解をお聞きして、終わりたいと思います。
  62. 池田行彦

    池田委員長 時間を経過しておりますので、簡潔に御答弁願います。
  63. 日向隆

    ○日向政府委員 まず税務の広報につきまして、所管でございますので私からお答えさせていただきます。  税務行政を円滑に実施するために、納税者の方の理解と協力が必要でございます。このため、委員指摘のような事柄についてよく知っていただくことが必要でございまして、私どもといたしましても各種の資料、パンフレット等を作成して広報に努力しているところでございます。御指摘のことを踏まえましてなお一層この面について努力してまいりたい、かように考えております。
  64. 水野勝

    水野政府委員 数字的なものにつきましては、毎年給与所得につきましては民間給与の実態、それから申告所得税につきましては申告所得税の実態といたしまして、その種類別、階層別、収入階層別の人員、所得金額、税額等をまとめましてお示しはしているところでございますが、御指摘の点につきましては今後なお十分よく心してまいりたいと思います。
  65. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまの御指摘につきましては、主税局長国税庁次長からお答え申し上げましたが、私としても十分注意をしてまいりたいと思います。
  66. 中村正男

    中村正男委員 自治省と建設省、お越しをいただいておりましたが、時間がございません。大変申しわけございません。これで終わります。
  67. 池田行彦

    池田委員長 安倍基雄君。
  68. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今、同僚議員がいろいろの質問をしておりますから、余り重複しない程度と思いますけれども、我が党として言わなくてはいけないことは言わなければならないので……。  冒頭に、今もちょっと話が出たのですけれども、今度の与野党合意で最終的に一兆五千四百億円、こういう話になっておりますが、平年度ベースにすると住民税合わせて二兆二千億円ぐらいになるだろう。私どもの方の心配として、これは税率はいじくってみたわ、ところが現実的な減税額はそこまでいかなかったわというような話があっては大変であるという話がございまして、一応各党が大蔵省から説明を受けて、計算方法はなかなか難しい、そう簡単にはいかぬということのようでございますけれども、それは大きく狂われても困るのです。その辺、細かい計算方法は一々あれでございますけれども、大体こんな感じ、こういった格好で積算したので、これは狂いっこないんだよという御説明をまずしていただきたい。
  69. 水野勝

    水野政府委員 税収それから減税等につきましてはあくまで見積もりでございますので、結果として、これは必ずびたりこうなるということだといたしますとなかなか苦しいところでございますが、今回の与党から提示された案に基づきましての減税額一兆五千四百億円、これは適正なものと私ども考えておるところでございます。
  70. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今の地方税を含んで二兆、平年度ベースというのも大丈夫ですか。
  71. 水野勝

    水野政府委員 今回の、与党から提示されました案につきましての国の六十二年度分の減税は一兆五千四百億円でございます。これが平年度化いたします場合の金額といたしましては、一兆五千億を若干切る一兆五千億弱でございますが、一兆四千九百億円台でございます。
  72. 小川徳洽

    ○小川説明員 住民税についてお答え申し上げますが、住民税減税規模につきましては、昭和六十三年度で五千七十二億円を積算いたしております。また、昭和六十四年度以降につきましては、平年度ベースで六千五百八十九億円、約六千六百億円を積算いたしておるところでございます。
  73. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いずれにいたしましても、さっきの中村委員の質問と同じように、どうも税率だけ動かしたが本当はどうなるのだという心配もありますので、これは責任を持ってやっていただきたいと思います。時間が九十分しかございませんので、早目にどんどん進んでいきます。  二番目に、ちょっと議論も出たと思いますけれども、六十一年度の自然増収が結構あった。これがいわば一時的なものかどうか。本来ならば、これだけの増収があれば、財テクが多かったとかいろいろ話もございますけれども、現行法体系で年々そのくらいの税収は見込んでもいいのかもしれぬ。そうすると、減税というのはむしろその外枠であるべきだという議論もあるのです。だから新しい財源を見つけなくても、自然増収がこれだけあるのだから、この法体系のもとである程度減税してもとんとんではないかという議論が十分あるのです。問題は、六十一年度の自然増収が一過性のものであるのかどうか。これがこの税体系の中でこのくらい続いていくとなりますならば、新しい財源と言わなくても減税はできるのではないか、本当に減税をやるのだったら、もうちょっと別のそれプラスアルファがあるべきではないかという議論があるのです。これについては認識の問題だと思いますが、本当に一過性のものであるのかどうか。これは、財テクが多くなったから一過性だという話もありますけれども、今後も財テクが続くかもしれないわけです。その辺で、今度の増収についての見方が大きな議論の的になると思いますが、いかがでございますか。
  74. 水野勝

    水野政府委員 六十一年度の税収の伸びは九%程度となっております。これに対します国民総生産の数値はまだ確定的なものは出ておりませんが、一応それで対比いたしますと、弾性値は二・一五という数字になっておりますので、これがこの十年間平均が一・一程度数字であったということからいたしますと、相当部分は、今までの考え方からいたしますと一過性のものではないかと思うわけでございます。ただ、今後もそういう財テクが続くという御指摘ももちろんあるわけでございますが、今までの分析、今までの税収の動向からすると、その大半は一過性的なものではないかと私ども感じておるところでございます。  それから、財政の年々なお新しく特例公債を発行している現状、ストックとして百五十兆円の国債を抱えている現状からいたしますと、予想以上の税収の伸びは即減税というふうに結びつけて考えるのもいかがか。昭和五十年に特例公債発行を始めて以来、なかなかその削減が今まで十分でなかった。それは一つは、税収の伸びが十分でなかったという点もあるわけでございますので、税収の伸びが仮に好転するとすればその点の配慮も必要ではないか、むしろそれは今まで削減に足りなかった部分を補うべきではないかと考えるところでございます。
  75. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 この伸びが一過性であるかどうかというのは非常に難しい議論にわたります。さっき庭山さんの話も出ましたけれども減税をするときには財源という考えもわからぬではないけれども、自然増収の分析というか、これもこれからの大きな問題じゃないか。現行法体系でこれだけ増収されるのであれば、マル優ということをそんなに慌てなくてもよかったのではないかという考えがございます。  マル優の問題もいろいろな問題があるのですけれども大臣が来られる前に、大きな問題よりも技術的な問題をお聞きしたいと思います。  まず第一に、今度のマル優でどのくらい増収があるかという話が出ましたけれども、例えば六十五歳以上を抜いたために結局どのくらい増収すべきところがしなかったのかということと、それを六十歳にしてみたらどのくらいになるのだろうかという点をお聞きしてみたいと思います。
  76. 水野勝

    水野政府委員 六十五歳以上の老人それから身体障害者、母子世帯等、こうした方々を引き続き非課税制度を継続することによりまして、非課税貯蓄の中のおおむね四分の一はそのまま継続して非課税とされるというふうに考えておるところでございます。それから六十歳ということになりますと、現在の年齢構成からいたしましてなお相当な方々がその対象におなりになる。現在の年齢構成からいたしますと、そこの方々としては六百万近い方々がおられます。そうした方々も追加してということになりますと、先ほど申し上げた四分の一程度のという数字はなお相当上に行くのではないかと思うわけでございます。
  77. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 大体の減収額というのは出ておりますか。
  78. 水野勝

    水野政府委員 おおむね三千億円程度の減収になろうかと推算されるところでございます。
  79. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 そこで、四分の一ということになりますと、これは年齢別に一応わかっているわけなんでしょうが、不正利用が大分あるということになりますと、その四分の一というのは不正利用が大分あったその四分の一という話になるわけですね、現在のマル優というのは大分不正利用されているわけですから。その非課税貯蓄の四分の一、全体がおおむね四分の一だからマル優についても四分の一だろうということで、不正利用を含んだ形の四分の一になるわけですね。
  80. 水野勝

    水野政府委員 マル優について、不正利用があることはよく指摘されるところでございますが、それが年齢別に見てどのように分布しておるのか。お年寄りの貯蓄というのは平均的には普通の水準より高い、そうしますと余裕のある対象貯蓄の多い方々が不正が多いということも言えるかもしれませんが、一方、六十五歳以上の方でございますから社会的にそれほど活動はしておられない、積極的に不正利用をされるということからしますと現役の方が多いかもしれません。そこらは、四分の一分けたときに不正がどちらに多く分布するかということにつきましては、ちょっとわかりかねるところでございます。
  81. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 老人がうそをつくかつかないかということになりますが、老人とかを残しても、結局限度管理という問題が起こってくるわけです。老人ならうそつかないという話でもないので、逆に老人を利用して若い連中が方々でどんどん預金するという問題もあるので、老人なら安心だという話でもない。この点、最初の老人の場合に減収額がどうかという積算そのものが不正利用を前提とした何分の一という話になる。ということは、基本的には老人もやはりうそをつくかもしれないという前提があるわけです。その点で、限度管理もきちんとせにゃいかぬということかと思います。  次に、さっき一般財形と年金財形の話も出ましたが、例えば一般財形をゼロじゃなくて一〇%ぐらいにするというぐあいにすると、どのくらいの減収額になりますか。
  82. 水野勝

    水野政府委員 現在の残高等からいたしますと、お示しの一〇ということでございますと四百億円程度かと推算されるところでございます。
  83. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 比較的、思ったより減収額が少ない、それは思ったより少ないと見るか多いと見るか問題でございますけれども。だから、財形が割合に限度がきちっとしているというか管理がきちっとしている、つかみやすいという点が非常なメリットなんですね。だから、財形が勤労者のためになるというのに加えて限度管理が割ときちっとしている、その面でほかのものと比べるとちょっと別の要素があるのかなということかと私は思います。これはまた、大臣が来られてからの話にいたしたいと思いますけれども。  三番目に、財形をやれない連中も随分いる。特に中小企業などは、道は開けているけれども、経営者が手間がかかるとか言ってなかなかやらないというような話もあるわけでございまして、こういったいわゆる財形ができない連中についてどうお考えになるかというわけでございます。
  84. 水野勝

    水野政府委員 先日もここで労働大臣がお見えになってその点の御議論があったわけでございますが、今回、そこらの点につきましては、少しずつでも利用ができるような見直しも財形法自体におきまして提案をされておるようでございます。御指摘のように、企業規模別には下の方の企業ほどこの制度の適用割合が低いことは事実でございます。そこらにつきましては、労働省とも私どもよく相談をしながら、その利用が拡大されるような方向でなおよく勉強はしてまいりたいと思っております。
  85. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 そこで、実は我が党としては、例えば一世帯三百万とか五百万とかいうような形を考えてはどうか、そのかわりにマル優カードというもので限度を管理する。これはマル優カードについて、ちょっと大臣が来られないと十分の御見解もあれなんですけれども。このマル優カードというのは、皆様がかつて出したグリーンカードと同じだというふうな話もいろいろ言われるのですけれども、当時は何かマル優カードがあると預金を全部そこに書き出さなければいかぬ、洗いざらい見つかっちゃうというような感じで受け取られておった。  私ども提案しているマル優カードというのは、権利を行使したい者がその分だけ書いていって、要するにあるA銀行だったらこれは三百万、あと残りは二百万あるから二百万をほかのでやる、それ以外のものは、それを設定するときその分だけは使えるけれどもその後幾らつくっても使えない、だから権利の行使者だけがそれを使用すればいいんだというので、まことに限度管理がきちんといける。老人、寡婦についても、老人の名前をあちこち何回も使おうなんて、それはできない。そういう意味では非常に合理的な考え方じゃないか。前回つぶれちゃったから今度は、というのはいささか早計なんで、これだけ税に対するいわば関心が強まってきているときに、マル優カードというのを使って一世帯一口、それ以外はちょっと高くしてもいいという考え一つある。  私どもも、地元に参りましていろいろな人に会ったときに——マル優というのは、私自身不正利用ということをこの場で、二年前でしたか取り上げて、一人当たり幾らか、一世帯八百万、一千万なんてあり得ない、不正利用があるに違いないということで、限度管理を大いに推進するあれになったわけでございますが、今度の参考人の陳述なんかいろいろ聞きましても、せっかく限度管理が始まろうとしている、我々としてはその方法としてマル優カードということを提案しているというときに、減税財源としてやらなければいかぬということでほんと持ってきた。きのうの参考人の質疑でも、もっともっと検討した上でやってほしいということをしきりと言っておりましたけれどもマル優カードについてどうしてあれなんだろう。老人、寡婦、身障者、それは身障者あたりはうそをつくとは思わぬけれども、そういうことを悪用されたらどうするんだ、その辺、そういう今度外した人々の限度管理をどうするんだという点について、お聞きしたいと思います。
  86. 水野勝

    水野政府委員 今回の利子課税の改組につきまして御提案申し上げておりますのは、そうした利用の実態をいかに適正に是正していくかという点、これも一つの観点ではございますけれども、基本的には戦前戦後続いてまいりました貯蓄奨励措置といったものを見直しをさしていただく、それによりますところの十数兆円の利子所得が除外されている状態を是正さしていただくという点が基本的な観点となっておるわけでございますので、現時点非課税貯蓄制度の利用を適正化する、そのためのマル優カード制度等云々というのとは、少し議論の方向が異なるのではないかと思うわけでございます。  ただ、御指摘マル優カード制度につきましては、委員指摘のように、権利を利用しようとされる方のカードではございますが、この点は五十五年に御提案したときの少額貯蓄等利用者カードも、まさに少額貯蓄を利用されようとする方の制度でございました。その点につきましても、利用者カードの券面に、金融機関別の限度額の設定がそこに表記されるわけでございますので、そういたしますと、金融機関相互間でその獲得競争が始まる、あるいは他の金融機関にどこでほかの枠を利用されているかということを提示せざるを得ないといった点も、かなり大きな問題として論議されたところでございます。  また、各人と申しますか、当時は各人別のカードでございましたので、そういたしますと、お年寄り、子供、そういったものも全部一つ一つのカードをお持ちになる。そうすると、親族相互間でも極力その資産の保有は表に出したくないということがおのずと外に出るようなことになる。そうした感情を逆なでするようなことにもなるのではないかという御議論も、かなり強かったところでございます。  いずれにしましても、こうした利用者カードではございましたけれども、諸般の情勢からこれを一時執行を停止するとともに、昭和六十年にはこれを撤回いたしたところでございまして、撤回さしていただいたのがまだほんの一昨年でございますので、その後の税につきましての意識はもちろんいろいろ変化はされてきているかとは思うのでございますけれども、まだ二年前のことでございますので、私ども改めてさらにここで利用者カードということではございましても、カード制度を御提案申し上げる環境にはどうもないのではないかと考えておるところでございます。
  87. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 そうすると、今の老人、今度枠から外された人々が不正利用するのは、どうやってチェックするんですか。
  88. 水野勝

    水野政府委員 昭和六十一年から現行の制度でも本人確認をさせていただき、それを限度管理するという制度が始まっておるところでございまして、おおむねお年寄りは千三百万人、六十五歳以上の方はそうした数字でございます。これに身体障害者の方、母子世帯等を加えまして、グロスで申し上げますと二千万人ぐらいの数字にはなるわけでございますが、現行の非課税貯蓄制度、これは一億六千万口ぐらいの口数があるわけでございまして、こうした点からしますと、今後非課税を継続きしていただく方々数字規模と申しますのは、けたが一つぐらい違うような数字でございますので、これは何とか本人確認限度管理、適正に運営をできるのではないかと考えているところでございます。
  89. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 二千万人とおっしゃったけれども数字は後で確認したいのだけれども、例えば一世帯一人とかあるいは納税義務者一人というぐあいにしたら、人数が四、五千万と僕は聞いていますがね。この二千万のちょうど倍ぐらいですな。だから、一世帯一口ぐらいマル優カードでやったらいいじゃないかというのもそうあれじゃない。  ちょっと細かい話になりますけれども、さっき話が出ましたように、全体の四分の一という数字は、結局は不正利用を前提とした数字ですからね。ですから本人を確認しても方々の店でやれば、名寄せさえきちっとできなかったら、実際のところなかなかできないんでしょう。老人そのものは良心があっても、それを利用する息子だって随分いるんだし孫だっているんだし、あるいは身障者、親族はそういうことはしないと思うけれども、それでも、それを利用する人間は出てくる。限度管理をやるのかやらないのかといいますと、なかなかこれはやり切れない。事実やれないというか、本人確認でやりますというのは今までと同じことなんです。  その意味で堀委員は、例外を設けるなという議論を提出されている、私はむしろ、一世帯一口で限度管理をきちんとしろという議論をしている。いずれにしても、ちょっと中途半端なんですね。弱者救済という面はいいんだけれども、それは不正利用をしないという前提でやるというのも、これまた私はおかしいなと思う。私はあなた方の先輩ですから、財政の苦しさはわかるのですけれども、もっと練った形で利子課税問題は考えるべきじゃなかったか。  特にまた、総合課税の問題もあるわけです。今度の与野党合意で、総合課税をどうするんだ、五年後までにめどをつけるというのですけれども、逆に一つの問題は、こういう総合課税問題、利子課税との関連、こういったのは全体の資産所得課税をどうするかというすべての大きな中で考えなければいかぬ。逆に、五年後というと、ほかのものは全部ストップしてしまうのかという心配さえある。でありますから、総合課税問題を含めた検討は、本当にやるのか、あるいは五年後というのじゃなくて、三年以内とかきちっとそういう期限を切って、そのうちにやるんだというような形でむしろ考えるべきじゃないかな。この辺について税制当局が、これから税制の根本的見直しをするというのであれば、総合課税原則についての考え方も含めて、例えば三年以内にやるとかそういうような考え方であるべきではないのかな。与野党合意で、これは党の話かもしれませんけれども政府としても、本当にこれからの税制改正期限を切ってやるつもりがあるのかないのか、その辺をお聞きしたいと思います。
  90. 水野勝

    水野政府委員 所得税は、引き続きまして現在の税制の根幹でございますし、また、各種所得を総合して累進的に課税をさせていただくという所得税の大原則は、あくまで堅持をされるべきものであろうと思うわけでございます。  ただ今回、利子につきましては、長年の非課税貯蓄制度見直していく、改組させていただくというときには、今まで課税の経験のない郵便貯金当局にも御協力を願う、そういうことからいたしますと、今回発足いたします新しい利子課税制度は、お年寄り等は非課税を継続するとともに、実質的に公平を確保できるような一律分離課税に移行をしようということでございますが、これは租税特別措置法におきまして発足をしようということでございまして、所得税法の原則としては、総合課税の方向は維持しておるところでございます。  ただ、非常に口数の多い金融資産を相手としての制度でございますので、余り短期間にこれが見直しがされるというようなことは適当ではないのではないか、三年というのはいかがかなという感じがいたします。昭和四十五年に現在の源泉選択制度が導入されましたときも、おおむね五年をその期限として発足し、見直しをさせていただいてきているという経緯もあるところでございます。  なお、利子所得以外の資産所得課税、これは別に五年後に見直すということではございませんで、その他のもろもろの資産所得課税は、極力早い——現時点でもいろいろ御提案申し上げていますけれども、なおいろいろ御指摘のあるところにつきましては、早急に見直しをしてまいる必要があると考えておるところでございます。
  91. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 そうすると、今の利子関係の総合所得の問題も五年以内にはやるんですな。五年たってから検討するのですか、五年以内に検討するのですか。
  92. 水野勝

    水野政府委員 先日、八月七日の与党からの御提示では、「利子課税制度あり方については、総合課税への移行問題を含め、五年後に見直しを検討する。」という文言であったと承知いたしておるところでございます。これが法案修正との関連でどのように詰めが進められておるか、この点につきましては与野党お話でございますので、私どもとしては、そこの詰めができましたものはこれを尊重してまいりたいというところでございます。
  93. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それではむしろ、党同士の話し合いにゆだねようという感じですか。
  94. 水野勝

    水野政府委員 税制の基本的な問題、根幹にかかわる問題といたしましては、私ども意見を申し上げるべきことについては意見を申し上げるべきであろうかと思いますけれども、このような御提言が与党からなされ、それによりまして与野党間でお話が進められているということでございますれば、私どもそれを注視し、尊重してまいりたいというところでございます。
  95. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 大臣のお留守中にいろいろな議論があったのですね。今論議いたしているのは、利子課税をこうやって分離していく、総合課税原則は形式の上では残しているけれども、実態的には総合課税を放棄したような格好になっている。総合課税問題を、与野党合意では五年後に見直しをするという話が出ておりますけれども、さっき出た懸念は、我々は資産所得課税のすべてを含めた税体系の検討を早急にしなくてはいけないということでございまして、この利子課税の総合主義を五年後ということになったら、ほかのものがストップしては困るよということと、これは五年というよりはもっとそれ以内、あるいは三年以内とか五年以内とかに検討すべきではないかというのでございまして、それに対する水野局長の答弁は、ほかの課税見直しはどんどんとやっていきますよ、こう言ったからといってほかのものをストップすることではない、ただ、この利子課税については、一遍発足したらすぐまた動かすのもおかしいので、これは五年たってから考えるんだというような考えでございました。  この点、ほかのものをストップするんじゃないよというような話は私は当然と思いますし、それについての御回答と、もう一つ、やはり総合主義を離れるというか、総合課税を離れるというのは大きな問題であって、本当はこのマル優問題、私は大臣が来られる前にいろいろ議論したのですけれども、ちょっと拙速に過ぎているなという気が非常にするんです。例えば、老人というような弱者は外してもいいけれども、弱者についての限度管理が全然されない。本人確認はするといったってできるかどうかわからない。本人確認ができても、本当の意味のいわば名寄せができるかどうかわからない。もし、老人というのができるんだったらほかの者についてもできるはずなので、私どもマル優カードということで権利行使のためのカードを使ったらどうか。その提案をしたら、これはつい最近引っ込めたばかりだから今さらできないと。  私どもは、従来の背番号制にちょっとというぐらいに大きく宣伝され過ぎたこの話が、本当は権利を行使するために三百万なり五百万なりを書いたら、それ以上は設定できないよ、設定した人はそれをやりなさいという形でやったらいいわけなので、しかもまだ、マル優カードについてはこの前も話したと思いますけれども、我が党はそれを老人でも全部渡して、例えば一世帯一人、納税者一人くらいできちんと管理すれば、まさに限度管理はきちんとできる。  私は、今度のマル優制度が——余りたくさん一遍に聞くとわからなくなってしまうから、最初の五年後に検討するということ。その前にも、全体の資産所得課税を含めた税制の検討はするんだろうなということをまず確認すると同時に、総合課税主義についての検討、例えば三年以内とか五年以内とか、もう少し期限を限って検討すべきではないか、この二点をまずお聞きしたいと思います。
  96. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず前段のお尋ねにつきましては、これは問題ございませんで、その他の資産課税につきましては検討を続けてまいります。  次に、その後段のお尋ねでございますが、政府はこういうことを本来御提案をいたしておらなかったわけでございますけれども、八月七日、各党の書記長幹事長会談がございました。その反映としてこういうことが出てまいりまして、過般、八月二十六日の会談でも、これにつきましては別段のその後の御異論がなくて、このまま今日になっておるということを考えますと、恐らくこれは国会があるいは当委員会がこの法案修正をなさいますときに、この部分は何かの形で国会の御意思としてあらわれるものというふうに私ども思っておりますので、その結果を尊重して行政をやっていかなければならない、こう考えております。  本来、五年がいいか三年がいいかということでございますと、大変に口数の多い商品でございますから、五年程度を見させていただくことがよろしいのではないかと私も存じておりますけれども、いずれにしてもこれは何かの形で法案、つまり最終的には法律の形で国会の御意思になるのではないかと想像いたしますので、それにはもちろん政府は従わなければならないというところでございます。
  97. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 党としての話ということはわかるのですけれども、むしろ行政当局、政府として、本来例えば総合課税主義を離れたということ、実質的に離れているということは大問題なんで、そういったことを含めてもう一遍検討すべきだ、あるいはその期間が五年を超えてというような話になっておるようでございますけれども、むしろそれ以内というかあるいは三年以内、今主税局長は、決めた途端にはそう変えられませんよという話もされましたけれども、今度のいろいろな話を聞いてもいささか拙速に過ぎる面がいろいろあるのですよ。  私は、もともとそういう資産所得課税をかけるということについては決して反対じゃないのです。ところが、今の一人一口くらいじゃないかという声もある。問題は、不正利用を防止するのにまず最初に観点があった、それを我々が始めたばかりなのにこういうことになる。しかも我々は、限度管理の方式としてはマル優カードまでも言い出してきている。でございますから、従来、何年か前につくったもの、それは一人一人マル優カードを赤ん坊にもあれにも全部渡してやらせるというのは、実際のところちょっとおかしいと思うのです。むしろ、一納税者あるいは一世帯一つ、世帯主くらいにして、それできちっと限度管理をする、ほかの者にはちゃんと高い税率を課すということの方が非常にいいことかと思います。そこの点をもう一遍行政当局として見直す気持ちがあるのかどうか、それも五年を超えてではなくて、むしろもっと近い時期に総合課税原則を含めた見直しをするのかどうか、もう一遍その点お考えを承りたいと思います。
  98. 水野勝

    水野政府委員 私ども今回御提案申し上げておりますのは、昭和十六年の国民貯蓄組合制度に始まり昭和三十八年の現在の少額貯蓄制度に至っている利子課税制度を、不正排除という点もございますけれども利子課税のあり方、課税の公平の確保の観点、貯蓄奨励といった点の政策的な見直し、こういった観点から改組をお願いいたしておるところでございますので、一世帯あるいは一人当たりで利用者カードでもって限度管理をして不正を排除するという観点は、一つの観点ではあろうかと思いますけれども、今回の利子課税制度をその点に絞っての御提案ではございませんので、一つのお考えではございますが、今回の制度としてはいかがなものかと考えておるところでございます。  それから、そのように長い間定着してきております利子課税制度をここで改組、見直しを行わさせていただくという点につきましては、ここでお願いをするならば、政府提案といたしましては、特に期限を切らずに御提案をさせていただいたところでございますが、八月七日の与党からの御提示で五年後に見直すということが提案されておる。その点につきましては、これは与野党のお話し合いを注視し尊重してまいりたいところでございます。
  99. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 もう一遍確認の意味で、ほかの人の資産課税については、もうこれに関係せずどんどんと検討されるということですね。それは御了解ですね。現在のこの利子についても、それは一つ考えは、一遍導入したらすぐ変えるわけにいかぬという意見もわからないではないですけれども、いろいろ欠陥もあると我々は見ておるので、やはり早い時期にもう一遍再検討すべきじゃないかと私は思います。本当は、再検討すべきような法案を出してくるというそのものも問題ではあるのですけれども、本当に今度のマル優のあれはちょっと拙速に過ぎているな、せっかく限度管理が始まって、その限度管理でいろいろなやり方ができるはずなのにということでございます。  これは繰り返すともう時間がございませんから、今の大臣としては、私が言っているのは五年後じゃなくて五年以内くらいにもう一遍、総合課税方式を含めた意味の我々の意見も聞いた上で——と申しますのは、今まで参考人なんかに聞きましても、いろいろな制度についてもっともっと議論をしてほしいのだ、これは国会のみならず内外でも何かぱっばっぱと決まって、減税財源としてマル優だ、こういうぐあいに決まってしまっている感じがある。これは今同僚から、政府考えのみならず、次期総理大臣という声もかかっているわけですから、むしろ自民党総裁という形からいっても何らかの見方があるのではあるまいかというので、この点、見直し論を、これは今自民党が決めたらどうのこうのですというだけではなくて、自民党を将来決められるかもしれないわけですから、この点、どうお考えになるか、ちょっと難しい質問かもしれませんけれども
  100. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 自民党と申しますよりは、いずれにしてもこの点はやがて国会の御意思が示されるものと考えますので、それに従いまして行政をやってまいらなければならないと思っております。
  101. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 じゃ、国会決定していけば、それなりのことは考えるということでございますね。  もう一つ大臣に、これは大臣がおられないとき、さっきお話ししたのですが、財形という問題があるのですね。年金あるいは住宅の財形については考える。例えば、一般財形というのは別にあって、十兆くらいあるのですかな、それを上回った金額があるわけです。それについては全く措置がない、こちらについてはゼロだというのもえらいアンバランスじゃないか。さっきも、一般財形からこちらへ流れ込めるかどうかという話があったのですけれども、一般財形を、二〇を一〇にすれば減税額は逆に四百億くらいになる、こういう話も出ました。  一般財形の持つ特色は、本当に限度がきちっとしているのですね。架空とか何とかということがあり得ない。そういうことで、そういう一般財形について何らかの軽減措置が行えるのかどうかという質問をしたわけです。大体、全体として八百億くらいのところを、二〇を一〇にすれば四百億の減収になる。四百億が多いか少ないかは別にして、一般財形について考慮してもらえるかどうかということをお聞きしたいと思います。
  102. 水野勝

    水野政府委員 今回の利子課税制度見直しに当たりましては、一般的に貯蓄を奨励をするという観点から、戦前戦後を通じてまいりました利子課税制度見直しをさせていただくという観点に立つものでございます。そうした観点からいたしまして、一般的な財形、これはその使途が特定されているわけではございませんので、それがサラリーマンの方々のための一般的な貯蓄の奨励措置になっているということからいたしますと、一般的な観点から貯蓄奨励措置を見直すという点から申し上げれば、これは今回の制度の一環として、ぜひ見直しをさせていただく必要があるのではないかと考えておるわけでございます。
  103. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 住宅、年金と一般とそんなに違うのかどうかという問題と、それから今度の財形の場合には、どっちかというと低額所得者というか、そうお金持ちじゃない人——もともと今度貯蓄優遇を考えるというのは、非常にあり余っている連中、しかもそれを不正利用している連中のものはあれだけれども、ある程度つめに火をともすような連中については考えるべきだ。低額所得者と、こうやったときになかなか難しい。要するにどの辺が低額が、あるいはどうやって見るのか難しいという意味で、低額所得者一般は無理だけれども、こういう財形をやっているような連中は、低額所得者の場合が多いということと限度がはっきりしている。  これは従来も話が出たのですけれども、老齢化社会になってくる。それで、年金制度が本当に完備していれば、こんなことは言うことはないのですよ。このままでいけば、年金制度がほとんど将来パンクしてしまうかもしれぬというような状況もとで、自衛手段として低額所得者がためている部分もあるわけですから、それは、貯蓄奨励に補助金をやることはいけないよというのとちょっと異質かな。だから、財形の場合には低額所得者は代替という形で——さっきも中小企業の連中、なかなか財形が利用できないんじゃないかという話もありましたので、それは労働大臣も中小企業に努めている人々も含んでいこうという話もございましたけれども、低額所得者、代用という意味で考えているわけですから、しかも限度管理がきちっとされているということで、一考の余地があるんじゃないかなと思うのでございますけれども、いかがでございますか。
  104. 水野勝

    水野政府委員 これは繰り返しの御答弁でございますが、今回の利子課税制度見直しという観点、一般的な貯蓄奨励措置につきましての税制上の優遇措置を見直すという観点からいたしますと、特定の行われていない一般財形につきましては、ぜひその対象として改定をお願いいたしたいところでございます。
  105. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 本当は四百億が大きいか小さいかですけれども、どっちかといえば、限度管理をきちんとして、ほかのものにばあっと高い税をかければ、これ以上の増収は幾らでも出てくるのですよ、実際のところ。その辺が、いわば改正案が、結局は高額所得者優遇じゃないかという非難を受ける理由でもあるわけですね。また総合課税の原則も外しますし、三五%を二〇%にするわけですから。  この点、ここで押し問答してもしようがございませんから、前向きな答弁がそう簡単に出るかどうかではありますけれども大臣として今後全体の構成の上で、とにかく今も話が出ましたし後からも出ますけれども、資産税とか資産課税とか、その一環としてのこういう話ですから、それ以外にまた皆さんは、マル優のことをやっても、今度は逆に代替商品へのシフトは別のところで税を課するから大丈夫だというような話もしておりますけれども、いろいろな面で、今度のマル優廃止が果たしてよかったかどうか、私はまだ非常に疑問に思っておるので、この点再検討も含めまして、ある程度考えていただかなくちゃいかぬということでございますけれども、財形の問題、主税局長の答弁だけであるのか、あるいは大臣として、なるほど僕の質問ももっともな面もあるなというぐあいにお考えになるか、一言お伺いしたいと思います。
  106. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわば働き盛りのサラリーマンについて考えますと、この制度は、稼得能力をなくした人々に社会的な考慮をしようということでございますから、そういうサラリーマン等を対象とする財形制度、これを特別扱いするのはいかがなものであろうかと思っておるわけでございます。ただ、その勤労者の財産形成の中でも、老後に備えるという意味での年金貯蓄あるいは住宅取得のための貯蓄、これは老後どの関連においてやはり支援する必要があろうかなというのが、この八月七日に与野党お話しになられた趣旨であろうと思いますので、それであれば政府としても、その御意思が修正という形になれば従わなければならない、こう考えておるわけでございます。
  107. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 さっき同僚議員が質問をした、一般財形からこちらの方の財形にスムーズに移れるのかなということにも若干関係いたしますので、この点はそういった考えで対処をしていただけるかと思っております。  次は、これは同僚議員のどなたか質問したかという問題があるのですけれども、今度五%は地方税で地方の方に行くんですね。私が以前から申しておりますのは、地方税というのは地方税全体と見るのか、各地方、地方として見るのか。端的に言えばメガロポリスか、要するに貧困な地方団体かということを問題としているのですけれども、今度住民税の軽減という要素がある、今度はマル優の関係で五%そっちへ行く。これは各都道府県あるいは地方にどういう影響になるだろうか。  それはちょっと御説明願いたいのですが、各地方への五%の配分というのはどういう格好でやるのか、各店舗ごとに考えるのか。そうなると、いろいろの隠す預金は東京あたりの大都会に置いておいた方がやりやすいのですよ。でございますから、この五%のいわば収入が余り地方に落ちていかないで、東京とか大きな都市に集中してしまう可能性があるのではないか。そうすると、私が前から申しておりますように、東京が、人口が九・五、六%なのに地方税は一七%入っている、あるいは法人住民税のときは二五%入っているというようなアンバランス、これはまた逆に助長する形にならないかな。この点、どうやってどういうぐあいに地方の収入になるのかということについて、自治省にお聞きしたいと思います。
  108. 小川徳洽

    ○小川説明員 利子割の課税につきましては、ただいまお話しのございましたように、利子等の支払い、またはその取り扱いをするものが、その営業所を通じて利子等の支払いを行う際に特別徴収をするということでございまして、その営業所所在の都道府県に納入をする、こういう仕組みを御提案しているところでございます。  それがどのように各都道府県への税源の分布といいますか、そういう意味で申し上げますと、すべての金融商品につきまして各都道府県別の分布状態を示す資料は残念ながらないわけでございますが、課税の対象となります金融商品全体の中で最も大きなウエートを占めておりますのは預貯金でございます。この預貯金につきましては日本銀行の統計がございまして、これによりますと、昭和四十九年度末における個人の預貯金残高の各都道府県別のシェアと個人の住民税所得割の収入決算額の都道府県別のシェアを比較いたしてみますと、一般的には地方における個人預貯金残高のシェアの方が都市部よりもシェアが高い、そういう傾向にございます。したがいまして、その限りにおきましては住民税所得割に比較いたしますと、より均てん化する方向にいくのではないか、私どもとしてはこのように判断しておるところでございます。
  109. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それはマル優適用というか、非課税貯蓄の分布ですか。
  110. 小川徳洽

    ○小川説明員 これにつきましては非課税貯蓄ということではございませんで、すべての預貯金でございます。  それから、先ほど私、昭和四十九年度末、こう申し上げたかもしれませんが、これは五十九年度末の誤りでございましたので、訂正させていただきます。
  111. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これはやってみなくちゃわからないのかもしれませんけれども、この辺は私は時間があれば最後に、国税と地方税との関係をちょっとお話ししたいと思うのですが、直感的にはそういう名寄せが難しくなるようにやる場所は、大都会の方がむしろ多いのじゃないかという考えもございますので、この点単なる預貯金だけのあれで済むのかどうか、やはり限度管理という問題にどうしても響いてくるのだなという気がいたします。  それと、ちょっと今度の改正の中で一、二取り上げたいのは、医療費控除の足切りですね。これは厚生省。参考人の陳述の中にもいろいろ話が出てくるのですけれども、私自身も各地を回りますと、今度五万円を十万円にした、これはどのくらい家計に響くのかな。その辺を厚生省はどう考えているのかなということをお聞きしたいと思います。
  112. 吉田勇

    ○吉田説明員 医療費控除につきましては、一般的な家計負担の水準を上回って、偶発的に支出を余儀なくされる医療費による家計の負担を軽減する制度として設けられているというふうに私ども理解しております。現行の医療費控除の足切り限度額の水準につきましては、所得水準の上昇がありましたのですが、昭和五十年以降据え置かれておりまして、このような制度の趣旨に照らして足切り限度額を十万円に引き上げても、家計にとっては大きな負担とはならないと考えております。
  113. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 一般の世帯の平均医療費というのはどのくらいになっているわけですか。また、それがどう変化していますか。
  114. 吉田勇

    ○吉田説明員 一世帯当たりの年間保健医療費の支出ということで、これは総務庁の統計局による家計調査年報でございますけれども、五十年に保健医療費といたしまして五万円となっておりまして、六十年には八万円となっております。
  115. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 まあ、これはいろいろなところで、今度の減税の方もあるけれども、また逆の方でマル優廃止とか医療費とか、そういうところを全部トータルしていきますと、それほどありがたくないというような話も出てくる、ありがたくないとは言わないけれども。それで、やはり一番出てくる話は、減税をするためにどうも簡単に大きな制度が変わってしまったという印象を持っているのもいるのです。それはそれなりに皆さんは十分検討してきたとおっしゃるかもしれませんけれども、そこが私ども考えは、さっきも白書の話も出ましたが、これだけ税に対する関心が主婦から世帯主に非常に広く行き渡ってきていまして、売上税問題というのがそれだけみんなに大きく目を開かせたということでございますので、この機会に、ただ大蔵省内部だけではなくて、与野党を含め、民間も含めてもっともっと基本的な議論をし始めるべきではないか。  そうした議論をし始めれば、私が前回もお話をいたしましたように、直間比率だけではなくて、いわゆる直接税の中でも勤労所得あるいは資産所得、また所得がすぐ出ないいわゆる資産、資産税そのもの、私がこの前提案した土地保有税というようなものも、これは一時にぽんと出るかわりに少しずつ払うというような話でございますから、そういうことを含めて全体の中でこのマル優制度廃止考えるべきだったのだ。そのために一年、二年については、自然増収もあり、NTTもあり、NTTというのは、この前も話が出ましたけれども公共事業に使う、使うといっても最終は一般の税金に来てしまう。この話は覚えていらっしゃると思います。そういうようなことで、どうも今度のマル優制度の改正については拙速に過ぎるんじゃないかという議論が随分あるのです。  そこで、これを含めまして大蔵大臣、どういうところに重点を置いてこれからの税制改革を行っていこうかということを、これは急な話ではあるとしても、ある程度のビジョンを持っていただいて結構な話なんで、先に事務当局がお答えになった後でも構いませんけれども、これからの税制改革の方向というものをちょっともう一遍はっきりさせていただけませんか。
  116. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これからの税制改革の方向を政府としてはどう考えるかというお尋ねでございます。  まず、やはり所得税、法人税とも現在の税負担はかなり重い、軽減をする必要があるというふうに考えております。そのうち所得税につきましては、勤労者、中堅サラリーマンに殊に重税感が強い。それは他の所得に対しての税務行政執行との関連も実はございますが、同時に実生活社会へ出ましてからの所得税の刻みが非常に細こうございますので、昇給をするたびに税金が大きくなっていくという、そういう意味での圧迫感と申しますか重税感、それが子供さんが学校へ入るそのための学費であるとか、あるいは住宅ローンの返済といったようなことが来る時期にその重税感が非常に高くなってきておるように存じますので、いわばライフステージにおける所得税の刻みをできるだけ大きくいたしまして、税率でいえば一つあるいは二つぐらいの税率でほぼリタイヤメントの時期になる、そういうふうにしたらば重税感が軽くなるだろうというのが所得税についての改正の一番大きな問題だと思います。  法人税につきましては、この節のようにどこでも本店を置ける、本社を置けるというような国際的な状況になってまいりますと、やはり国際的な法人税の負担水準というものも考慮いたしませんといけないということがございまして、そこへいきますと、我が国の法人税の負担水準はかなり高いということがございますので、これも下げる必要があるであろう。両方合わせまして、勤労意欲であるとかあるいは企業意欲であるとかいうものを損なわない程度にしておかなければならないというふうに、大きな方向としては考えておるわけでございます。  そこで、実はそれらのことには相当な財源が要るというふうに政府判断をいたしまして、他方で我が国のように所得水準が高く、かつ所得格差の少ない国においては、殊に二十一世紀に向かいまして急速に国が老齢化をしていくという時代に、将来に向かって生産年齢人口が大変に多くの年寄りを背負うということがわかっておりますから、そうなりますと、稼得能力が少なくなった人々は所得税を納められないとすれば、今から国民社会的なコストというのは薄く広く国民に持ってもらうという制度を立てておいた方がいいのではないか、こう考えまして、間接税を新しく起こすべきではないかと政府としては考えたわけでございます。  それは前国会におきまして、いわば国会の御採用になるところとならなかったわけでございますけれども、全体といたしましてはやはり直接税を軽くしていくこと、その結果としての財源を何かの形でつくっておかなければならない、かたがた二十一世紀に向けての人口の構成の変化というようなことを考えますと、やはり間接税にもう少しウエートをかけるということが必要であるし、また我が国の場合にはそれが望ましいことなのではないかという、基本的にはそういうようなことを考えております。
  117. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 野党の中から、また売上税だなというような声も出てきそうなところだったわけですけれども、私はある意味からいうと、例えば消費段階で一回限りの消費税ということも考えられないではないのですよ。その前にやはり資産所得課税あるいは資産税そのもの、この間土地なんかは売らないうちは所得が生じないということを言われましたけれども、売るときだけじゃなくて持っているのに課しておいて、そして売るときは安くするというのが土地所得、土地問題の解決にはいいんじゃないか。  この前、「エコノミスト」の予告をしましたけれども、あれは出ましたから読んでいただいたかどうかと思いますけれども、土地税制というのが非常にこれからの大問題である。特に土地の場合には、保有の場合には固定資産税ということで地方税に行っている。だから、これは地方税の方でその辺がどんどんとふえてくるならば、今度は要するに地方で負担すべきものは負担させる。この辺国税と地方税とをこのままにしておいて、しかも地方税というのはメガロポリスに集中する地方税のままで置いて、すぐ、やれ老後のための売上税だ、あるいは間接税だということはちょっと早急なんで、もう少し資産所得課税、資産課税——私はこの前、直間比率だけではなくて、通常の勤労所得と資産所得あるいは資産税、間接税、そういったものを全部含めて、そういった比率で物事を考えるべきだ。だから今まで全然、地方は地方、国は国、当然財源考えるときには、いわば機能配分の問題があるわけですね。どこまで国がやり、どこまで地方がやる、それは国によって違うわけです。  ちょっと、これは言い出すと時間もないですからあれですけれども、公共投資は国がどの程度やるのか、地方がやるのかということも含めて、国の財源だけで各地にやると、国の資金を持っていったところが得をしちゃうということが非常に大きいので、それを含めた大改革が本当は必要じゃないかと思うのです。これは、あと十五分しかございませんからちょっと……。  今度土地について、いわば短期譲渡に重課する、要するに十年を五年にするという、二つの方策をとられました。これはいわゆる土地転がしを、二年は土地転がしになる、五年は長期になるという改正なわけですが、きのうの参考人の話でも、これからの税制の大眼目は土地税制だという話もした人がいたわけです。さっき大臣は、資産所得課税あるいは資産課税について余り言及されなくて、専ら直間比率の、従来の間接税のことばかり言われておりましたけれども、こういう技術的な話でやる前に、まず資産所得課税あるいは資産税そのもの、私が資産税と言っておりますものは、繰り返すようですけれども、土地の譲渡あるいは相続のときにぽんと来るのではなくて、所有している期間はある程度払う、譲渡するときには軽課するという考えも含めまして、これは相続税の問題も随分大きくなるわけです。  これからとても地価が上がり、今どうしようかという連中も出てきている。大問題があるのですね。それを含めた税制改正が必要なんで、どうも大臣は間接税の方のことは言われましたけれども、資産所得課税もしくは資産課税、これを中央、地方との絡みを含めてどうお考えになるのか、お答え願いたいと思います。
  118. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 「エコノミスト」にお書きになりましたものは拝読をいたしました。それで、地価対策として、殊に固定資産税あるいは保有税等々について御言及になられましたのも承知をいたしております。  それは理解のできることでございますが、さてそこで一般的な資産課税をどう考えるかということになりますと、安倍委員も御記憶でいらっしゃると思いますが、シャウプ税制の中では富裕税ということが言われておりまして、これはしばらくの間実行をいたしました。いたしましたが、結果はどうしてもやはり目に見えるもの、すなわち土地と家屋、当時は家屋というものが非常に大事なものでございました。そこらがもうほとんどになってしまいまして、その他の資産の把握というのは実際上できなかった。そういう意味では非常に公平を欠く税制になりまして、短時間でやめた記憶がございます。  そういうことから考えますと、広く資産税ということになれば、これは土地、家屋にとどまらないわけでございますが、そのための行政というものは実は大変に煩瑣なことになる、しかもうまくはいくまいということがございますので、どうも一般に資産税というものについては、私は果たしてそれが効果的にいくものだろうかどうだろうかということに疑いを持っております。  ただ、殊にこの土地の問題はこういうことでございますから、この間も御提言になられましたように、保有税あるいは固定資産税、それはいわば担税力というものとの関連は十分考えなければならないことだと思いますけれども、これは私の所管ではございませんが、そういうことは考えていいではないかということは私も同感のできるところでございます。
  119. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 資産所得の把握が非常に難しい。もっともシャウプのころの富裕税を復活しろと私は言っているのじゃないので、竹村健一あたりがよく言っているように、今度のマル優廃止もある程度資産所得に課税せいということかと思いますけれども、今や勤労所得を上回るような資産所得が続々と出てきているわけですよ、蓄積が大きいですからね。ここに目をつけないと、いわば間接税の消費税でやるよりは、むしろ資産所得をどう把握するのか、把握し切れないときには、例えば土地、建物だって、土地の場合だったらある程度課税すればそれを有効利用するとか、今のところは譲渡のときだけぽこっと課して持っているときにはほとんど課さない、特に土地についてはですね。それがやはり地方税であるために手がつけられてないという大きな矛盾があるのですね。  ですから、富裕税が失敗したから今そういったことは考えられないとおっしゃるけれども、それこそこれだけの富の蓄積が出てきてしかもそれが相当偏ってあるというときに、勤労所得あるいは間接税——間接税というのも、どうしてもやはり勤労者に最終的には重くなってしまう。そういうことを考えますともっともっと、もう一遍新しい観点から資産所得課税、資産課税というものを考えていくべきなんじゃないかなという面で、今私の所管じゃございませんと言いましたけれども、そういう自治省と大蔵省、地方税と国税、私はあそこでも指摘したように、要するに国の負担がどんどんふえるのに国のできる範囲は非常に限られている、ここをもう一遍見直していかなくてはいけないんじゃないかということなんですよ。  これは大問題でございまして、議論し始めると切りがないのですけれども、直間比率だけじゃなくて直接税の中の勤労所得、資産所得、間接税それに地方税を含めた資産課税そのものという大きなバランスを、実はこの前出してもらったのですが、やっぱり西独あたりは資産課税が少ないけれどもほかの国は割と多いんですね、日本よりも。これをもうちょっと内訳を詳しく調べてもらって、大蔵省はいつも直間比率、直間比率と一つ覚えで言わないで、そういう資産所得比率とか資産課税比率とか、そういうことを含めて見ていただきたい。そういう中の一環としてこのマル優廃止考えられるべきであったのに、何か減税するために、参考人の中にも何かたたき売りみたいな格好で減税幾ら、そのためにこれをのむとかいうような話になっちゃって、基本論が忘れられているんじゃないか。いわばマル優廃止ということについてこれだけ国民の関心が高くなったんだから、もっともっと議論してほしかったというのが方々の声なんですよ。一世帯が一口くらいいいじゃないかという議論もありますし、さっきもどうして二〇%に決まったんだとかいうような話とかいろいろありましたけれども、そういうことで、こういう大きな問題につきましてもう一度大蔵大臣考え直してもらえぬかということでございます。最後に、まだあとちょっとございますから、考えをお聞きしたいと思います。
  120. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 資産所得について課税することは、それはもう私は言われるとおりだと思うのでございますが、資産課税ということになりますと、やはり資産と所得と消費とこの中のバランスを考えながらやっていくことがよろしいのではないかと思っております。
  121. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 大きな問題を聞きましたから、最後にちょっと細かいかもしれませんが住宅の買いかえの特例があるんですね。東京のど真ん中で巨億の金をもらった者が税がかからなくするために各地方の周辺を買いあさる、それが地価の高騰を促進しているという議論もございます。たださっきの、譲渡の際の税金をある程度安くしないと土地供給はふえませんよといった面もありまして、土地供給の面からはそうだけれども、周辺の需要に対しては恐ろしい力を持ってきております。この辺を考えるべきことと、もう一つはさっきの、絶えず日ごろ持っておるときの税金を重くしておいて譲渡のときに安くする、そういうことがやはり土地政策の基本だと思うのですよ。だから、今の買いかえ特例についてどうお考えになるのかお聞きしたいと思います。
  122. 水野勝

    水野政府委員 この制度は、昭和四十四年までは非常に一般的に行われていたところでございまして、いろいろ今のような御指摘もある、そういうことからいたしまして廃止をいたしたところでございますが、その後また昭和五十七年に至りましてこういったものが復活をいたしておるところでございます。ただ、現在のこの住宅買いかえは十年以上保有していた場合でございますので、それが果たして転がし等に影響があるのかどうか。やはりこの点は個人の場合の十年以上でございますので、こうした点については、五十七年に復活いたしましたばかりのものでございますので、今直ちにこれに手をつけるということはいかがかということから、今回は御提案はしてないわけでございますが、いろいろ指摘される点もあるわけでございますので、今後なおよく勉強いたしたいと思うわけでございます。
  123. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 じゃあ時間が短くて、しかも切られた上だけれども、皆さんもいらいらしているようだから、この辺で一応私の質問を終えておきます。
  124. 池田行彦

    池田委員長 この際、休憩いたします。     午後零時五十八分休憩      ————◇—————     午後二時十五分開議
  125. 池田行彦

    池田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として日本たばこ業株式会社常務取締役田口和巳君及び同常務取締役勝川欣哉君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  126. 池田行彦

    池田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  127. 池田行彦

    池田委員長 質疑を続行いたします。伊藤茂君。
  128. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私にとりましては懐かしい大蔵委員会で質問の時間をつくっていただきまして、大変うれしく思っております。また、お聞きをいたしておりましたが、同僚議員の皆さん、大変真剣なレベルの高い議論をなさっておりまして、うれしく、心から敬意を表する次第であります。  幾つか質問させていただきたいと思います。この間、一〇八国会が終わりました後、税制改革協議、与野党十三人での協議がございまして、まあ十二という数は余り縁起のいい数ではないのですけれども、非常にまじめな御意見をいろいろ拝聴いたしまして、参加をさせていただきました一人という意味を含めまして質問をさせていただきたいと思います。  なお、きょうは臨時大蔵委員会で、非常に残念なんですがレギュラーでございませんので、同僚議員の皆さんのさまざまの御質問とダブる点があるかと思いますが、御了解をお願いしたいと思います。  大臣に幾つかお伺いしたいわけでありますが、私も、先般の通常国会、その後の経過、そしてまたこの国会状況ですね、まだ中途でございますけれども、振り返りましていろいろと思うことがあります。また、もっと勉強しなければならないというふうに思う点も多いわけでありまして、また、十年近い大蔵委員会の在籍の当時に、皆様からいろいろと教えていただいて、税制というものがいかに社会にとってあるいは最もベーシックな政策、大事なものかということも勉強をさせていただきました。そんな気持ちでいろいろなことを、この経過を考えるわけであります。  まず、個々にいろいろな内容を伺いますが、総括的に、この前国会からの経過、税制の討議の中でも非常にドラマチックな余り例のない経過であったわけでありまして、いろいろな意味での教訓を政府としてもまた与党としても受けていると思います。私ども野党もどういう勉強をしたらいいのかということを感ずるわけでありまして、大まかに言って、この経過を振り返って、率直に、大臣、どんな感想をお持ちでございましょうか。
  129. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府としては、シャウプ税制以来長い間懸案でありました税制の根本的な改革を思い立ちまして、税制調査会等々の審議を経まして、前国会にその案を御提出をいたしたのでございました。それは、所得税、法人税等の減税中心に、直間比率等をも考えながら、新しい間接税も起こしまして、それによりまして二十一世紀に向かっての税制の体制を整備いたしたいと考えたわけでございます。しかるところ、これは前国会、通常国会におきまして、国会のお入れになるところとならず、廃案となりました。  この間の経緯につきましては、よって来るところはいろいろございますと思いますが、私どもとしても反省することが多く、大変に遺憾な結果であったと思っております。  しかるところ、この廃案に際しまして、議長のごあっせんによりまして税制改革協議会が発足をいたしまして、直間比率等のことをも含めまして、将来の税制改革について御検討をお始めになり、十二回にわたって御熱心な御討議がございました。その結果として、座長の責任におきまして、七月の末に、それまでの経過を議長に御報告になったと伺っております。  しかし、ここまでの間におきましては、今後の税制改革をどのようにすべきかについてまだ十分の議論を尽くしてないように伺っておりまして、その間、しかしながら、今年度におきまして所得税減税ということはやはりどうしても必要であるということにつきましては、協議会におきましても、その規模はともかくとして、ほぼコンセンサスがあったと伺っております。また、政府与党といたしましても、これに先立ちまして、緊急経済対策決定いたしました際、一兆円を下回らざる所得減税ということを決定いたしておりました。それらの状況にかんがみまして、政府といたしましては、このたびの臨時国会に、これからの長い展望はともかくといたしまして、この際必要だと考えられます当面の減税税制改革につきまして御提案をいたしまして御審議を仰いでいるところでございます。  私どもといたしましては、これはやはり将来の私どもの持っております展望につながる減税でありたい、いわば一遍限りの戻しといったようなものであってはならないと考えておりますので、本案を御審議の上、なおひとつぜひ御賛同を仰ぎたい。  と同時に、また税制改革協議会におかれましては、今後の税制改革についてこれからさらに御審議をお続けになると存じますので、ひとつ御討議をしていただきましてできるだけ速やかに今後いかに税制改革があるべきかをお示しをいただきたい。政府といたしましては、しばらくその税制改革協議会の御審議の推移を見守る、こういうふうにいたしたいと考えております。  なお、このたび政府が御提案いたしました税制改革、減税案につきまして、八月七日及び八月二十六日に与野党幹事長書記長会談が開かれまして、政府が当初考えておったところでは不十分であるといったような御意見があり、また八月二十六日には与党幹事長与党立場から一つの案を御提示になられました。御審議がこうやって進行しておるわけでございますが、政府といたしまして、もし与野党合意があって政府案修正をされるということでございますれば、これはもとより尊重いたさなければならないところである。その際の財源をいかにすべきかというようなことは、政府としてそういう状況考えながらこれから工夫してまいらなければならない、かように考えております。
  130. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大臣の御答弁の中に、与野党が協議し合うことという意味合いのお話がございました。私はこう思います。議会の場というのは、残念ながら政府提案に対する野党の質問というのが九九%という構造になっているわけでありますが、本来的に言うならば、これは半分だろうと思うのです。政府が、また多数党が法案を提供される、それに野党がそれぞれの立場からさまざまな意見を申し上げる、そういう中でよりよい結論が出るようにしていくのが大事な機能であると思いますが、それがすべてではないと思います。やはり、お互いに尊敬すべき国民の代表であり、国権の最高機関でありますから、そういう場でさまざまな政党商あるいは個人間でも結構だと思いますが議論がなされるというのは、議会人の立場からすれば必要な半分の本来あるべき仕事なのではないだろうかというふうに思うわけであります。  昨年の暮れには各党を代表して政審・政調レベルでの協議をさせていただきました。振り返ってみましても、非常に気持ちのいいというと語弊がございますけれども、まじめないい議論をお互いに言い合うことができたなというふうに思っております。今回も十二回ございましたが、ちょっと残念な気持ちというのが今の気持ちであります。  ただ、私は、議会の機能としてという意味でも、今後ともそういうことは必要なことではないだろうか。今回は一つの政党だけ入ることができませんでしたが、やはり本来でしたらすべての政党会派が入って議論する、大蔵委員会にも大蔵大臣顧問というニックネームのある人もいらっしゃるわけでありますから、みんなが入って議論をするということが望ましいことだろうというふうに思うわけでありまして、と同時に、税制という面から見ますと、ほかのどの政策よりもそういうことが国民合意を形成する上で大事なことではないだろうかという気もするわけであります。  そしてまた、前の同僚議員の御質問の中でも、大臣の御答弁で、今第一段階、次の第二段階というような意味合いのお話もございましたが、むしろメーンの仕事は後に残っているというのが率直な状況であろうと思います。これから五年、十年、あと十二年で二十一世紀、そしてまた高齢化社会のピークにかかっていく、どうしたらいいのか、議会でいい議論をしながら国民の皆様の意向を代表しあるいは世論を誘導するという役割も果たすべきであろう。その間に意見の対立または激しい議論も、お互いに尊敬の気持ち、信頼感を持ちながら激しい議論もされるということも大事なことであろうというふうに思うわけであります。  いずれにいたしましても、この国会が終わりまして間もなく新しい総理、新しい大蔵大臣、新しい税調会長ということになるわけでありますから、その先どうなるのかという具体論の意味ではございません。しかし、そういう意味合いの手順あるいは方法というものが与党からもまた私ども野党考えてやるべきでないだろうか。幸いにして、これは座長責任でという形で出された中間報告で、十三名一致してという形には残念ながらなっておりませんけれども、協議は打ち切らない、協議は続行していくという意味合いのことが議長への中間報告の中でも出されているわけでありまして、その辺はそういう趣旨で大臣もよろしいのでございましょうか。
  131. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま伊藤委員が御指摘のとおりと存じます。
  132. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 幾つか具体論に入りたいと思いますが、こういうことが一つあります。  実は、あの与野党協議の中で、社公民でありましたが、私ども立場から簡単なペーパーで提案をいたしました。具体論は別にいたしますが、そのときの発想は、今後の税制改革は大きく言って二つのステップと申しましょうか、二段階をとったらどうであろうか、シェーマチックに割り切るわけではありませんけれども。メーンとして、第一段階では徹底的な不公平是正というものを考えよう、第二段階では、その上に立って高齢化社会その他非常に大きな問題をどうやったらいいのかということを考えよう。  なぜ第一段階というものを考えたかと申しますと、先般の総理府でしたか政府がおやりになった世論調査やさまざまなマスコミ機関のおやりになる世論調査などを含めて見ましても、大体八割が不公平感を持っているという非常に異常な数字が出ているわけでありまして、数字で見ますと日本の国民の税負担率というものは諸外国と比較して決して高いレベルではありませんが、しかし不公平感の方は異常に高い。私は、近代国家としては非常に変な形といいますか、異常な形だろうというふうに思うわけでありまして、税の哲学はタックス・アンド・デモクラシーでありますから、そういうものをどうしたらいいのかということをまず解決をしなければならない。そうでないと、どのような案をどういうところから出してもアレルギーばかり起こってくるというようなことになるのではないだろうか。税に対するところの国民の信頼感、また必要な社会の会費を公平に納得がいって負担ができるのだという意味での安定した認識を形成させることが先ではないだろうか。金額でどうこうという試算は、非常に多く計算なさる方々もいらっしゃいますし、手がたく計算なさる方もいらっしゃいます。銭目のこともありますけれども、それ以上にそういうことが大事なんではないだろうかと思って実は私は考えたわけでありまして、そういう垣根を越してといいますか、そういう一つ段階努力の上に、高齢化社会という非常に大きな問題、どうやって知恵を絞ってみんなで考えたらいいのかという、単に税の負担という意味だけではなくて、これは将来社会国民合意を形成するというふうな論理もあると思います。そういう意味で二段階考えたわけであります。  具体論としては、私もいろいろなものを勉強させていただきました。与野党協議で出した簡単なペーパーもございます。そのバックグラウンドには、世上幻の野党案と言われているもの、それが正式名称みたいになってしまいましたけれども野党間でも公明党さん、民社党さん、社民連の政策責任者で随分長いこと勉強いたしまして、そのときも、私どもは正直言いまして、さまざまな意味で、与党政府と比べたら私ども野党は、政策の勉強、能力の面でもあるいはさまざまのデータあるいはそれを勉強するマシンと申しましょうかシステムと申しましょうか、そういう意味でも残念ながら非常に大きなハンディキャップを現実に持っております。しかし、そのハンディキャップはあるけれども、何かやはりオールターナティブを提起できる努力、勉強はしなくてはならぬ、これが野党としての今の大きな使命であろうというふうに思うわけでありまして、そのときも話が出たのですが、今は亡くなったスウェーデンのパルメ前首相が、スウェーデンの総理のときに、オールターナティブがあってそして初めて民主政治、民主議会である、与党に比べて野党は大きなハンディキャップを持っている、そのハンディキャップがないように野党の立法調査費は与党の二倍としますということをパルメさんが提案をして議会で決めたのですね。今は自民党にそんなことをお願いするつもりはございませんで、将来もし私どもが政権をとることになったら野党の方にそうしたいと思いますけれども、それは雑談ですが、そんな気持ちでやりたいという気持ちを込めながら二段階というものを考えたわけであります。単に税のやりくりとかあるいは単年度の収支とかという意味ではなくて、一つの今後税制改革に取り組むという意味から言いましたらそういうことが妥当ではないかなというふうに思っておるわけでありますが、いかがでございましょうか。
  133. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、税というものはすぐには反対給付を伴っておりません。したがいまして、よほどそれは公平、公正でありませんと納税者から協力をしてもらうということが難しい。したがいまして、政府も、税制調査会におきましても公平、公正を旨としてそのような方針を掲げて御審議を願ってまいったところでございまして、この点も伊藤委員の御指摘のとおりであると思います。
  134. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 そういう中で、また野党間で勉強した中で話題となったことに大蔵省に対する要望が実はあるわけでありまして、まあ大臣というよりも大蔵省の皆様という方がいいと思いますが、先般私の先輩議員の堀目雄議員の方から本会議で激しい、手厳しいお話がございました。私は気持ちとしては非常に共鳴するのですね。というのはどういう意味かと申しますと、やはりこれからの税制考える場合に、ちょっと厳しいことかもしれませんが、やっぱり税制問題の言うならば専門家、税制問題のベテラン、職人的なことだけではいけないんじゃないだろうか。それは主税局だけでないと思います。ほかのところにも言えると思いますね。要するに社会の動き、社会全体の状況、そして国民の皆さんに納得をいただける発想というものをどう持ったらいいのか。いろんな意味での勉強やら議論やらやって幅広い視野の中で考える。また、そういうものがないと、国民のすべての皆さんから御負担をいただくことの御納得というのは難しいのではないだろうかというふうな気がするわけでありまして、そういう意味での見識なり責任感なりということが求められている今の時代ではないだろうか。  各官庁を見ましてもそれぞれいらっしゃいます。経企庁なんかでも今度パリからお帰りになって経済研究所の所長になられた吉富さんとかいろんな非常に幅広いエコノミストがいらっしゃいまして、時々おもしろいお話を伺ったり議論をするのですけれども、やっぱりそういうものが特に税、財政という政策全体の中枢部を占めるところに求められるというふうなことではないだろうか。そういう意味での努力なり勉強なりあるいは人材の配置というか、求められる時代ではないかというふうな気がするわけでありますが、話題となった御本人、いかがですか。
  135. 水野勝

    水野政府委員 私ども、御指摘のような観点に立って、税の世界だけにとどまる議論でなくて幅広い視野から検討を行ってまいりたい。また、行ってきているつもりではございますが、なお私どもとして考え得る範囲におきましてはやっているつもりでもそこらの点につきましては不足している面もあろうかと思います。十分心して今後対処してまいりたいと思うわけでございます。
  136. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 まあそういう人材のある大蔵省でなくちゃならぬということはむしろ大臣の方が痛感をされていることかもしれません。  やや具体論に入りまして、今後のことをお伺いをしていきたいというふうに思います。  一つは、二段階という意味合いのことを言われておりますけれども、今度の税法の中でも第二段階に関するところの部分は出されないということに経過上なったわけでありますが、そういうものを一体どう考えたらいいのかという場合に、一つは手順の問題があるんだと思います。恐らく六十二年度の税収も相当好調に推移をするのではないか。何か新聞では空前の増収がなんということを書いてあるのを見ますけれども、これはまだ三カ月、四カ月しかわかっておりませんから最終決着がどうなるかということはわかりませんが、そういう中で次の税制をどう考えるのかというふうな客観的な事情もあるかもしれませんし、それからとりあえず来年度どうするのか、あるいはこれから二年、三年後にどうするのかというようなことも出てくると思います。しかし、今度売上税問題の経過を見ましても、手順の持つ意味というのは非常に大きいんじゃないだろうか。  二、三日前に新しく出た本で橋本徹さんとか山本さんという方がお書きになった「日本型税制改革」という本がございまして、この経過のことを早くも総括をして本を出されておりますが、それを読んでおりましたら、問題点幾つか挙げられておりまして、この経過の中で振り返ってみて欠陥と感ずることについて、あいまいな理念とか、それからさまざまのデザインの面でずさんであったとか、あるいは個別の税制の面でのデザインのまずさとか、それから公平、特に垂直公平を考慮していないという意味でのマル優の一律分離の採用とか、あるいは経済、内需その他全体のインパクトがどうなるのか検討が不十分だったのではないかとか、いろんなことが掲げられております。  私もそれを読んでみたんですが、やっぱり世上言われておりますように、この間の教訓として、拙速あるいはさまざまの特例その他を含めて内容がわかりにくい、さらにはまた、これが今求められている日本の経済の方向との関係がどうなるのか、その面で矛盾があるのではないか、幾つかのことが言われているわけでありますが、特に今後どうしていくのかという手順の問題が非常に大きな意味合いを占めるんじゃないだろうかというふうに思います。  特に、そういう意味で言いますと、売上税は廃案となっております。そういう中で大型間接税導入を急いで考えるという状況にも私はないと思いますし、手順という面から見て今後どのような姿勢が考えられるべきだろうかという感想を大臣に伺いたいんです。
  137. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 衆議院議長のごあっせんによりまして税制改革協議会が発足をし、今後もこの全体の問題について検討を続けていかれるということを、先般も、座長個人の御見解ではありますけれども、そういうふうに言っておられます。ということになりますと、政府といたしましては、そのような経緯から、今後の税制考えることにつきまして税制改革協議会の御意向並びにその御検討の推移を見守らしていただくということが何としてもまず政府としていたすべきことであろうと思うのであります。ああいう経緯で発足をしておられますから、その御検討を無視して、政府はこう考える、こういう案というようなことを勝手に申していいことでないことは明らかでございますから、一定の期間の中で税制協議会がぜひ全体の問題について御検討を願い行くべき道をお示しいただきたいと念願をいたしております。  ただいまの政府立場は、今回の所得税改正案が、御修正があるかと存じますが、仮に施行されるといたしますと、今年度は歳入剰余金等々で、多少足りませんけれども、何とかやりくりをしてまいります。明年度になりますと、これはまだまことにはっきりいたしませんが、実はどうやって税源をつくるかということがただいまのところわかっておりません。税制そのものの中での、例えば利子課税等々は簡単には歳入になってまいりませんから、それに大きな期待をかけることはできませんので、したがいまして、所得税そのものはいわば余り大きな新しい財源を伴わないというふうに考えなければなりません。と同時に、法人税が、伊藤委員がよく御承知のように、いわば減税部分だけが前国会で成立をしたような形になっておりまして、政府としてはそれに見合うものとして引当金であるとかあるいは配当軽課についての措置であるとかいろいろ考えておりましたのですが、その方は成立いたしておりませんから、法人税も減税部分だけが、つまり税率引き下げ部分だけが現に実行されておる。両方から考えまして、このままでございますと、明年度はこの減税部分だけが続いて施行される、それについての税制面からの税源というものは今の段階では新しくは考えられていない、こういう状況でございますので、税制改革協議会におかれましても、その辺のことも御賢察の上で、なるべく早い時期に基本的な方向をお示しいただきたい、政府としてはしばらくその御検討の推移を見守る、こういうことであろうかと存じております。
  138. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 そういたしますと、売上税は廃案となりましたが、こういうたぐいのいわゆる大型間接税は、この春の国会の経過の中でも六十二年度はできない、六十二年度は、間もなく政権交代ですから、とても準備をし世論の御理解をいただいて提起をできるような状況にも現実にはないというわけであります。六十四年度にはとか六十五年度にはとかいう話もマスコミではちらちらあったわけでありますが、こういうのは、できなかったものを急いでまた考えなくちゃならぬというイメージではなくて、やはり新たな姿勢のもとに中期的にもさまざまの検討をしながら、また与野党協議の状況ども考えながら慎重に対応していくというふうなことでしょうか。
  139. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ここは二つ問題がございますのは、ただいま申し上げましたように、現在の、現在のと申しますよりは、ただいま御提案しておりますことを基礎にいたします所得税減税というものは明年も続いていくことでございますし、法人税もそうでございますから、それに見合う財源をどうするかという問題が第一にございます。  それから、将来の問題といたしまして、税制改革協議会において、この所得税並びに法人税、政府は、今回のはいわば第一段と申しますかその部分でございまして、本来将来像は前国会で申し上げましたように誇っておりました。現在も気持ちの中では持っておるわけでございますが、そのようなことが必要であると税制協議会がお考えになるかどうか。もう減税はこの程度でいいんだとお考えになるのか、あるいは将来像はやはりこうでなければならぬとお考えになるのか、その問題が次にあると思うのでございます。そのいかんによりまして、それならばそれに対応する財源をどういうふうに求めるのかということを税制改革協議会はどうお考えになるか、こういったような幾つかの問題があろうと存じます。  政府としての考えが全くないというわけではございませんけれども、通常国会のあの経緯考えてみますと、同じようなことをもう一遍御提案できないことはもう明瞭であるのでございますから、やはりそこは税制改革協議会に御検討いただいて、相なることならばなるべく早い時間の中で方向をお示し願いたい、こう思っておるわけでございます。
  140. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 そういうことで申しますと、所得税を今まさに議論しているわけでありますし、また書記長幹事長会談の経過というものもあるわけでありますし、二兆円を当然今実現すべきだというのが私どもの主張でございまして、これは現実的にも可能であり正当なものではないかというように考えているわけであります。一兆五千四百億円とかいうふうな与党の回答になっている、当面はそういう状況にありますけれども。  当初通常国会政府が出されました、思い切って簡素化をしていく、それからサラリーマンの一生、ライフサイクルの中で二つか三つの段階ぐらいでこれは可能となるという、これは一つのリーズナブルな方向であろうというふうに私も思います。私ども社会党も六段階ぐらいにしたらいいのではないかというふうな政策を持っているわけでありますが、近い将来がいずれかの時期にこういうものは実現したいというお考えはそのとおりなのか。それから、それを持っていく手順あるいは方法、そのための財源、全体構造などは先ほど来大臣がおっしゃっているような手順で考えていく、そういうことなんでございましょうか。
  141. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 所得税を中堅サラリーマンを中心にライフステージで一つか二つの税率で全体もできるだけ簡素化するということにつきましては、税制改革協議会の中におかれましても、今伊藤委員の言われましたように、根本的な考え方としては、大きな方向としては御賛同いただけるのではないかと私も思っておりますし、政府はなおそれがやはり好ましいことだと考えております。もう一つは、法人税については、この節は世界どこでも本社を置くことができますので、やはり税率の国際的な比較ということも考えなければならない、この点についても御賛同いただけないものであろうかと考えております。そこまでのところは恐らく税制改革協議会も多かれ少なかれ同じラインでお考えいただけるのではないかと思うにつけまして、その部分の根本改正というものはできる可能性が高い。  ただ、現在の財政状態もあり、その他いろいろございますから、さてその上で税制改革全体としてのこれに見合う財源等々について、あるいは議長も直間比率ということを言われましたが、そこらのことについて税制改革協議会がどういうふうにお考えになられるのか。前半分のお話だけでは、実際に実行する段になりますと、ただいまの財政ではちょっと耐えていけないというふうに考えるものでございますから、その辺のところを税制改革協議会がどうお考えになるか、それは私どもとしてはしばらく御検討の推移を見守らしていただかざるを得ないのかなという感じでおるわけでございます。
  142. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大臣、そこのところは税制協議の中でも残念ながら平行した状態で終わっちゃったのですが、私どもは、六十二年度の減税構造を決めましょう、しかし財源が当然必要ですと、これは当然のことです。何か食い逃げは困るみたいなことがあったのでしょうか、うちの堀委員も同僚議員も指摘をしておりました期限の一括法案とか、さまざまなことがあります。私どもああいうのを聞くとからんとくるのですね。もし野党減税だけ実現をして財源については食い逃げをしたというようなことがあったら、野党が猛然と世論から批判をされるだろうと私は思います。また、一人の議会人としての責任からいって、そんなことは夢にも考えないというのが当然のことだろうと私ども思っているわけでありまして、そういう意味で、実はあわせて論と引き続き論との対立になりまして、私どもの方は引き続いてでありまして、六十二年の構図を決めましょう、議会その他の都合もありますから早目にやろうではありませんか、同時に十項目の検討課題を私どもは出しまして、引き続き即やりましょう、そして責任ある役割を果たせるように財源の手当てを考えましょう。ところが与党の皆さんの方はあわせて論でありまして、減税のあれと同時にあわせてどうしてもやってもらわなくちゃ困るというようなわけで、何となくえらく違うような違わないような議論を何回も実は繰り返したというふうな経過があるわけであります。  その辺は経過ですから別にいたしまして、ちょっと今大臣がおっしゃった中での直間比率の問題ですが、議長裁定の中にも、直間比率また高齢化社会に備えという言葉がございます。この意味合いをどうとらえるべきなのかということですね。私どもそれは実は私どもなりの考え方があって、後ほどそれは申し上げたいというふうに思うわけでありますが、何か新聞でちょっと読みましたが、今まで歴代大蔵大臣、特に竹下さんが典型的でありましたけれども、直間比率というのはアプリオリに考えるべきものではない、結果であって、結果として直間比率の数字が出るのだということを、歴代大蔵大臣、大体同じ趣旨を御答弁されてきたのです。これはちょっと新聞で読んだだけで正確ではないのですけれども宮澤大臣、ちょっと違ったニュアンスの御発言をされたように新聞で読みましたが、その辺はいかがお考えでしょうか。
  143. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私も事務当局からはよくそういうふうにいわば教えられておるわけでございますけれども、ただ、客観的に見まして、直接税が七〇以上である、間接税が三〇以下であるという状況そのものは、我が国のようなこれだけ所得水準が高く、かつ格差が少ない国では、殊に老齢化していくとすれば、将来の若い人の負担のことを考えますと、やはりこれは何か考えなければいけないのではないかという問題提起は別に間違っていることではないというふうに私は思っております。あえてその伝統的な、そのような考えに反対するとか挑戦するとかいうことではございませんけれども、現状というものはやはりこれでいいわけではないのではないかという気持ちを持っております。
  144. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 いや、私は何も在来どおりの方が絶対正しくて変えるのがおかしいという意味合いの質問ではありません。やはり税制論理学みたいな話は話なんで、大事なことは、国民の皆さんに、中身としてどういうデザインをするのか、またどういう御負担が一番正当なのかというふうな問いかけなり、また国民の皆さんにそういうものを語りかけていくことが大事なのではないだろうかという気がします。ただ、私どもからいたしますと、従来の大臣の答弁というのは非常にいい論理でありますから年じゅう言っているわけでありますが、やはり中身でどういうことを出していくのか、国民にどういう御理解が得られるのかということが私は大事なことだろうというふうな気がいたしております。  幾つかの個別のことを引き続きお伺いしたいのですが、利子課税の将来ですね。今のマル優の問題につきましても、私ども何遍考えてみてもなぜ今マル優なのかということは理解できません。それはまた別にいたしまして、具体論なのですが、大臣は、将来総合課税へのトライをしなければならぬ、さまざまの努力をしなければならぬ、またあり方論としてそれは筋だというようなことを言われているようでありますし、総合課税というのは大事なプリンシプルであろう、マル優の問題で一挙にむしろそれを崩そうとしているのではないかということを私ども指摘をいたしているわけであります。  総合課税の方向が大事だというならば、いろいろな意味での努力あるいは勉強を大蔵省はすべきではないかと私は思います。例えばキャピタルゲインとか株の売買益の課税の問題にしても、前から政府税調の方でも、本来原則非課税ではなく原則課税が望ましいという言葉はいつも書かれておりました。お念仏のようにその言葉が書かれているというわけでありました。そしてまた主税局長の答弁では、究極的にというのか、将来考えていきたい、検討していきたい、しかし今は段階的に有取税とかあるいは何万株、何回とかというふうな形で考えていくというふうなわけでありますが、これは将来のことをお念仏で言うだけで、実際には近づいていかないということになると思います。  総合課税がある意味でのプリンシプルだという認識ならば、そこに向けてのチャレンジ、さまざまな勉強、さまざまな具体策の検討あるいは広く知恵を求めることをやるべきではないだろうか。例えばアメリカの場合の株のキャピタルゲインにいたしましても、レーガン税制改正で短期、長期というものを一本化した税率で執行されているという状況があります。確かにカード制その他の問題、セキュリティー・ナンバー・システムなどの問題もあります。しかし、そういうことを無理だ、難しいということでいつまでもほうっているのではないかという感じがするわけでありまして、大蔵省の中でも真剣にそういうことの取り組み、研究あるいはさまざまの審議などを開始をする、着手をするということがやられるべきではないだろうか。そうでないと、総合課税が望ましい原則だといっても、これもいつまでもスローガンで終わりということではないか、今までの状況は怠慢ではないかと思いますが、水野さん、どうですか。
  145. 水野勝

    水野政府委員 キャピタルゲイン課税につきましても、これは本来総合累進課税がその姿としてあるべきものであるということは私どもも念じているところでございます。ただ、株式を中心とした有価証券取引につきましては、その流動性と申しますか、匿名性と申しますか、そういう点からいたしまして、これを現実に公平な総合課税実施するということになりますと、その取引の把握、その取引の背後にある取得価格の捕捉、そうしたことも含めまして実質的にどこまで公平な課税が確保されるか、その点につきまして数十年来いろいろ検討が行われてきている。昭和二十八年にキャピタルゲイン課税を原則非課税にいたしまして、同時に、その背後にある担税力に着目して有価証券取引税を課税するということでやってきてまいっておるわけでございまして、その有価証券取引税の税率、株式について申し上げれば万分の五五と申しますのは、世界の先進諸外国の中では最高の水準でございますし、こうしたことからいたしまして一兆四千億円に上る税収は確保されておる。しかし、そうした実質的な結果につきまして納税者の納得が得られているかというと、これは得られているとはどうも思われないわけでございます。  こうした実情を背景といたしましてどのように総合課税への方向を目指していくかということでございます。これは、委員指摘のように、累次の税制調査会の答申は原則課税の方向を目指しつつ漸進的に進めるというのが従来の方向でございますし、そうした方向の中で継続的取引の範囲拡大等に努めてまいっておるわけでございますが、こうした方向で続けておって納税者の納得をどこまで得られるか、この点につきましては、私どもも御指摘は十分わかるわけでございまして、税制調査会の答申にもございますように把握体制の整備を進めながら何か勉強をしなければならない、こんなふうに思っているわけでございます。
  146. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 在来型の答弁でございましたが、大臣、こういうことがあるのですね。この間、外国の人の、ちょっと名前は忘れましたが、税制のことを書いている本を読んでおりましたら、株式のキャピタルゲインのことが載っておりまして、こういうくだりが書いてありました。これは税額で例えば今の有取税の方が少ないのか、キャピタルゲイン課税をきちんとやった方が多いのか、これはいろいろあるというのですね。それは確かに株式の時価総額の高いときもあれば低いときもあればいろいろなことがあるわけですから、あるいは株式ですから常に流動的ですね。それはあるというのですね。現在原則非課税という中で別途考えている方法の方が金額が多いと言えば言えるかもしらぬ。しかし、株のキャピタルゲインに対する課税のルール、システムをきちんとするということは、税の公平のシンボルとして大事なんだと。確かに、片っ方では非課税貯蓄が原則廃止になる、片っ方はどうなっているのか、これはやはり国民の意識形態からして理解ができないということだと思うのですね。ですから、銭目のこともあるけれども、それ以上に税の公平のシンボルとしてこのことをやらなければならない、たしかアメリカの学者だったと思いますが、そういうことを書かれておりました。私はそういうことも大事だろうと思うのですね。  そういう意味からいたしますと、確かに政府税調なりあるいは税務の実務という面から見ますと相当難しい技術的な問題にトライしなくてはならぬ、あるいは今までの日本の経験では未知への挑戦という面もあるかもしれません。大変なことだろうと思います。しかし、やはりそこに正面から取り組むという姿勢が国民の税に対する信頼感を得る意味でも大事なことなのではないだろうか。確かに技術的その他の難しさということもあるかもしれません。しかし、それがあるから先送りをする姿勢ではなくて、それに正面からトライしてやるのだということが大事なのではないだろうか、そのアメリカの人の書いた本を読みながらそんな感じがしたのですが、そういう姿勢論としてどうお考えになりますか。
  147. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは筋道はやはりどうしても伊藤委員の言われるとおりになると思います。ですから、そういう努力社会の受け入れるような方法で続けていって、そういうキャピタルゲインというものもこれだけ課税になっているということがやはり税の公平感というものを助けるのに役立つ、筋道はもうそのとおりと思います。
  148. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 具体論では確かにいろいろ難しい面もあると思います。関係する業界の皆さんの御協力もなければこれは実行することができません。だから、そういう面をさまざまの諸外国の例などを含めまして具体的に追求をしていくということをぜひ真剣にやっていただきたいというふうに思いますし、私どももさっき申し上げたような野党精神でいろいろな意味での勉強を今後ともやっていきたい。この前、春の段階で四野党の幻税制案というものが出ましたけれども、もう事態がここまで来ますと、私どももまた勉強し直して、幻税制案パートツーか何かをしなくちゃならぬというふうにも思っているわけでありますが、そういう中でもぜひ政府にも刺激になるようなことをやっていきたいというふうに思っております。  あわせまして、土地の課税の問題、これは勉強すればするほど非常な複雑な面がありますね。土地対策全体と土地税制と絡み合って非常に複雑ですし、それから、今までのシステムの改革その他でいいのか、相当思い切った考え方の転換も必要ではないかというふうな意見があります。私有権制限なんて発想もありますけれども、私どもは、何か行政的、権力的に私有権制限と、法律で決めてやりますよというような方法論は妥当ではないのじゃないかというふうに思っております。非常に多面的な面を持った難しい問題でありますが、これにも真剣にチャレンジをしなくてはならぬというのが今日の問題だと思います。  ただ、政府税制調査会の最終答申でしたか、読んで思ったのですが、あの中には戦後の経過が書いてございました。戦後の経過の中で、土地対策を税制のところにシフトして持ってきた、そして、さまざまの税制緩和を通じて土地問題、特に供給面の解決を図ろうということが中心になってきた、そういうことがずっと積み重なってきて、今の状態でいいますと非常にいびつな形が出てきて、それが土地問題の解決にそれではやってきたことが効果を果たしたかといえば、これも非常に疑問だ一非常に疑問だとは書いてありませんけれども、そういうみたいなことが書いてあります。同時に、税制の面から見ましても、あるべき課税対象が非常に制限をされてくる、制約をされた状態になってくる、両面で問題になってくる、ですから正面から土地問題、土地政策に取り組まなくてはならぬ、同時に、社会的にこれがリーズナブルであり公平だと思われるような税制考えなくてはならぬというようなことが書いてございました。そういう意味から言いますと、今度の提出されている法案の中でも、十年を五年とかあるいは超短期とか、短期的には何らか意味合いがあるだろうということかもしれませんけれども政府税調でも出されている答申からいたしますと、まだまだ小手先の話というふうな気がいたしますが、その辺はどういうふうな認識でおられますでしょうか。
  149. 水野勝

    水野政府委員 土地問題はこの二十年間常に大きな問題として提起されてきたところでございまして、昭和四十四年の改正でかなり抜本的な土地税制改革が行われておるわけでございます。その時点におきましては、二年ずつを切りまして、譲渡所得課税につきまして一律分離課税導入して漸次その税率を高めていくという方式をとったところでございまして、これが当時の金余り現象とも相まちまして相当な土地の売却が出たわけでございますが、一方、それは法人がやたらと土地を買い占めたのではないかという御指摘もあり、かなりいろいろ御批判があったところでございます。したがいまして、その期限が参りました昭和五十年以降におきましては、一定金額以下を比例分離課税にし、一定金額以上のものは総合課税にするという方式で参っておるわけでございますが、その後、昭和五十七年に至りましても、この時点で長期、短期課税の分岐点を見直すなど、相当大きな改正が行われております。  しかし、土地問題につきましては、税制も相当な役割を果たすものとは思われますけれども税制の背後にありますところの土地問題それ自体、土地政策それ自体といったものがやはり基本ではないか、土地税制として大いにその機能を発揮すべきではございましょうが、基本となる土地政策等々からすればやはり補完的なものにとどまるのではないかといったのがこれまでの税制調査会の基本的な考え方のようでございます。その時点その時点で土地税制につきまして非常に御期待が寄せられる、その時点におきましてそれぞれもろもろの施策を講じてまいっておるところでございますが、それが果たして基本的にそうした政策の方向に結果的にどのように貢献し機能したかにつきましては、いろいろ指摘があるところでございます。もう少しじっくりと土地税制そのものにつきましても検討がされてよい面もあろうかとは思うのでございますけれども、土地問題の緊急性というところから常に何かを背負うことになりまして、その場その場でやってきております。そこらの点につきましては、今後もう少し時間をかけて検討すべき点もあるのではないか、あったのではないか、これが私どもの実感でございます。
  150. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 そういうレベルの話をしても土地問題は解決しませんから、結構でしょう。  ちょっと主税局長に、来年度の税制改正、いずれにしても新内閣、新税調となるでしょう、具体論はそういう新しい責任のもとで展開をされるということになるわけでありますが、税の担当者の立場から展望としてどうお考えになるのかという意味合いなんです。  一つは、六十二年度の税収、さっきも申し上げましたようにまだ三カ月分、四カ月分しか数字は出ていないと思いますから、確かな手がかり、結論的な見通しはできないかもしれません。しかし、今日の経済状況その他を見ますと、新聞で言う「空前の」という表現かは別にして、相当大きな規模が確実に予想されるという状態ではないかと思います。それは昨年の秋の補正で一兆一千億円でしたか減額補正をいたしました。そして二兆四千億円の税収増が生まれたという結論になっておりますし、一兆一千億円の税収減の補正がげたになって六十二年が組まれているというわけでありますから、そういう経過からしても相当の増収が見込まれるということになると思います。ですから、今度の減税問題などなど、その分野の枠内での必要な新財源手当てと申しましょうか、そういうことだけではなくて、今後六十二年度、六十三年度、経済動向、税収見込み、そういう構造ベースにして来年度の税制あり方考えるという発想があるべきではないかと思いますが、担当者としてはどう思いますか。
  151. 水野勝

    水野政府委員 まさに御指摘のように、六十三年度におきまして、ただ目前のいろいろなつじつまを合わせるということでなくて、基本的な税制あり方について検討を行い、必要な方向を打ち出していくということは必要なわけでございます。ただ、現時点におきましては、とにかく現在御提案申し上げておりますこの法案を御審議をお願いするということでございますし、また先ほど大臣から申し述べました税制改革協議会は今後も協議を続けられるということでございまして、残された問題につきましてはこの協議会の御審議をなお注視してまいるところでございますので、現時点で六十二年度以降の問題につきまして私どもから申し上げるのは極めて難しい環境にあるのではないかと思うわけでございます。  御指摘の税収等の動向につきましては、既に御案内のように二兆四千億円の増収がございました。したがいまして、御指摘のように六十二年度税収と申しますのは、そもそも予算額は六十一年度決算額を七千億近く下回るという結果にはなっておるわけでございます。ただ、六十一年度の租税の弾性値は二・一五というふうにこうした数値をとり始めまして以来の高い数値になっておりますので、この税収の中には相当一時的な要素が多いのではないかと思うわけでございます。こうした六十一年度の決算額が六十二年度税収に全く影響を及ぼさないということは全くあり得ないことではございますが、それがどの程度実質的なげたとなって押し上げ、どのような税収が生じてくるかは、いましばらく様子を見る必要があるわけでございます。まだ六月というのは実質的に一カ月だけのものでございますので、今後の経済の動向ともあわせまして十分これから注視してまいる必要があろうかと思うわけでございます。
  152. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 主税局長としての標準的な答弁だろうと思います。先般の経済白書を見ましても、構造調整とか転換期とかいろいろ書いてありますけれども、流れとして一つの方向づけかあるいは一つの方向づけへの動きとかという意味合いのことが書かれております。経企庁の方も景気底入れ宣言ということになっております。マスコミでは遅過ぎた宣言であるというふうな評論もなされております。主税局長とされても手がたくそういう答弁をするのですが、六十二年度の進行の過程の中でそれとはえらく違った状態になるかもしれないし、むしろそういう方向づけの方が強いのではないだろうか。その辺の考え方がさっきも申し上げた経済社会全体の幅広い動きを勉強しながら税制考えるというところの視点ではないだろうかという気がいたします。そういう視点を持って考えるべきではないか。  この間、新聞を見ましたら河本さんが経済の見通しのことを語っておられるところがございまして、それを見ましたらこういう状態が三年ぐらい続くという見解を述べられておりました。確かに法人税に関連いたしましても、産業構造も変わってまいりますから、今と同じ構造で税収が入るのではなく、いろいろな変化が当然ある、あるいは消費構造でもいろいろな変化があるというふうなことであろうと思います。そういうエレメントが入るのは当然でありますけれども、傾向としては河本さんが言われたような見方が妥当なのかなというふうな気もするわけであります。そういう面でいいますと、例えば通常国会に出されてこの臨時国会では出されなかった幾つかのテーマ、売上税は当然ですが、そのほかの問題があります。賞与引当金とかさまざまな引当金の圧縮問題とかワインの問題があります。これもECとの関係がありますから、そういう国際的な条件も含めて考えなければならぬと思います。売上税は別にして、通常国会に六十二年度税制改革として提起をされ、そしてこの短い臨時国会で幾つかのことだけ処理しようとしている。残された問題、その辺は主税局としてはどういうことが必要であるのか、どんな考えをお持ちですか。
  153. 水野勝

    水野政府委員 私どもとしては、ことしの二月にお出しした売上税中心とした間接税の見直しの問題、それから法人税率、国際的な動向に合わせましたその水準の適正化といったことが当面の大きな課題であるということにつきましては、なおそのように考えておるわけでございます。ただ、この二月以来の国会審議状況、廃案になりました経緯、その後の税制改革協議会における御審議、こうしたこの半年間の経緯を十分頭に置きまして、今後それをどのように進めていくのかということが重要な課題ではないかと思うわけでございます。  また、ただいまお示しのように経済の動向が変わった、こうした状態が三年ぐらい続くのではないか、そうした経済の動向の変化が税収の面にももちろん影響はしてまいるわけでございます。こうした点は、昨年の秋からことしの春にかけましてのもろもろの課題を検討いたしました際の背景とは若干異なってきている問題でもあります。そうしたものを背景とした場合に、税制改革の基本的な課題とされましたもろもろの問題についてこれから年末にかけましてどのように考えていくのか、かなり大きな問題でございます。それとともに、先ほどから委員お示しの手順の問題は非常に重要な問題であろうかと思うわけでございます。こうした問題は大きな課題として私ども頭にあるわけではございますが、先ほど申し上げましたように現時点としては今御提案申し上げている法案の御審議をとにかくお尽くし願うのが最大の急務となってございますので、大きな点につきましてはなおじっくりと検討をしておるというところまではまだ至っていないところでございます。
  154. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大臣に伺っておきたいのですが、今の六十二年度税制をどうするのかという問題もありますが、今年度私どもはあくまでもマル優廃止は反対ですし二兆円の減税は行うべきであると考えておりますが、いずれにいたしましても物理的にこの国会で何らかの処理がなされることになります。それから、予算の面でも、先般シーリングが行われまして、間もなく概算要求の締め切り、査定に入るという作業の方は進んでいくわけですね。そういうことの中で、この臨時国会で処理する事項などなどを含めて第二次補正の措置が当然とられなければなりません。これは新内閣になりますから責任を持ってどういうふうにということは言いにくいかもしれませんが、流れとしてあるいは財政運営の必要性として年内に第二次補正でも処理をすることが必要というふうな御判断でしょうか。
  155. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのような判断でございます。先般の御議決をいただきました補正予算は歳入面に全く触れておりませんものでございますから、年度の中で歳入面の整理をきちんといたしませんと、これはその問題を全部残してございますので、おっしゃるとおりでございます。
  156. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 それは、間々あるように、来年本予算の審議の中での補正処理というものとは違った年内の処理をしなくてはならぬということでしょうか。
  157. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いや、それは恐らく年度内でよろしいのだろうと思います。政策課題が別途ありますればまた別でございますが、一般的には年度内でよろしいのではないかと思います。
  158. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 マル優のことで伺いたいと思います。  実は、与野党税制協議の中で、正式には報道されている話題ではありませんが、軍艦論争というのがあったのです。それはなぜかといいますと、売上税など六法案が廃案になったのが五月二十五日だったでしょうか、五月二十七日かだったですね、海軍記念日だそうでありまして、永末海軍大尉とかがいらっしゃる。元海軍大尉ですね。現じゃありません。バルチック艦隊が全部沈んでしまった日だ。その日に売上税等関連法案が全部廃案になって海に沈んだ。その日がまた中曽根総理の誕生日だそうでありまして、大変縁起深い日であろうというふうに思うわけでありますが、そういうことなんで、マル優という船も海に沈んだ。沈んだ軍艦を浮き上がらせようとしたって、それはマストも壊れているし、艦体も破損をしているだろうし、引き上げてもどうにも使い物にならぬ。また、期待を持っても、ナヒモフのように黄金があるかと思ったら鉛だったといったことになる。したがって、沈んだ軍艦を浮き上がらせる、マル優号というものを浮き上がらせるのはやめましょうというふうな話がいろいろとあったわけであります。  まじめな議論ですけれども、そういうユーモアでやることも私は大事なことだろうというふうに思うわけですが、その中で与党の方からおっしゃるには、そうですか、沈んだ軍艦はだめですか、それじゃ新型でいきましょう、新造船でいきましょうという話があって、それで旧政府案の再提出ではありません改組新型提案という話があったわけでありますが、出てきた中身は大体ほとんど前と同じというわけでありまして、これはまさに沈んだ軍艦ではないかというふうな言い合いっこがあったわけでありますけれども、経過からして私ども非常に理解がいかないのは、当初から財源としてマル優利子課税の問題ということが焦点になっていたわけではありません。五回目でしたか六回目でしたか、そのあたりに、その会合の直前にサミットがございまして、大蔵大臣もいらっしゃったわけですが、サミットの総会ですかの席上で中曽根総理がマル優のことをおっしゃった。実は、そのときの数回の会合までには一遍もこれは具体的な話題になっていない、また具体的にテーマとしてもその名前が出されていないというわけでありまして、総理がおっしゃったら、その次の会合のところに冒頭でマル優についての提起が与党からあったというふうな経過になっているわけであります。  ですから、私どもからいたしますと、野党共通の認識ですが、これは本当に税制改革あるいは当面する必要財源として最も適切なテーマということでかねてから検討して出されたというのではなくて、中曽根さんが有終の美を発揮するために、そしてまた、税制改革に糸口をつけて終える、税制改革の努力はすべて失敗したということでない終わり方をしたいということから始まっているのではないかという認識を私はせざるを得ないのであります。ですから、動機において不純という言い方を私どもはしょっちゅうしているわけであります。  私どもも、必要財源として幾つか、十項目ですが、話題を提供いたしました。そうして、それらのことは真剣に議論をしたい。私ども野党が出したものが一〇〇%全部パーフェクトに立派なものだというふうなことまでは私は思っておりません。さまざまな問題があるでありましょう。しかし、やはり問題提起として受けとめていただいて、その中から減税財源考えていくというふうに実は思ったわけであります。不純な動機であるとは大臣も申せないでしょうけれども、そういう気持ちでマル優の話が始まった経過を実は認識をしているわけでありまして、ですからもともと余り愉快な気持ちではない話だというわけであります。今ごろなぜかというふうな気持ちもするかもしれませんが、なぜにこのマル優という特定の課題が今出されなければならなかったのかという認識ですね。協議の中でもそんな気持ちでずっとやり合いっこをしていたものですから、それが正当ではない、不純な経緯から起こったのだという認識なんですが、この法案に責任を持たれる大臣はどのように御認識なさいますか。
  159. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は、私はどうも終始そういうふうに考えてまいらなかったのでございまして、マル優というのは、これは所得税改正の明らかに一つの関連の事項でございます。そして長年富国強兵のためにあるいはまた資本蓄積のためにやってまいりましたが、したがって我々にとっては何かずっと当然の制度というように考えられた向きも多いと思いますが、先入観を離れていいますと、一種の資産所得でございますから、それがなぜそんなに多額のものが、二百八十何兆というようなものが課税の対象に元本としてなっていないのか。それも、特に社会的な配慮をする人々のものならともかく、だれでもである。しかもそれは金持ちほど枠をいっぱいに利用できる。どうしてそういうことがなお残っているのかということは、先入観なしに考えれば確かに問われてしかるべきことであろうというふうに考えました。したがいまして、社会的配慮を必要とする方々のためにはこの制度を改組して残す、それ以外はこれは普通に課税させていただくということがむしろ当然ではないのかというふうに私などは考えておりまして、所得税改正をお願いいたしますときにこれはぜひ御検討をいただきたいと考えてまいりました。  財源といたしましては、それはいずれの日にかはかなり大きな財源になることを期待いたしますが、定額貯金のようなものもございますしいたしますから、やはり数年はいわゆる完全平年度化はいたさない。したがって、ことしとか来年とかいうのにこれを財源としてやりたいので持ち込んだということではございませんで、むしろ所得税一つの大事な要素として利子だけが課税を免れていいわけはない、こう考えておるわけでございます。
  160. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 そこが私どもは全然意見が違うので、六十二年度の財源としてなぜマル優を採用されるのか。これは六十二年度中に全然カウントされないということになりましたし、もともとカウントしたってごくわずかなことですし、それから平年度分の一兆六千ですか、税収になるのは七年、八年後というふうな数字になる。そしてまた、これが本当に国民合意かと言えば、前国会経緯からいたしましても、私どもは常に売上税マル優、セットで話をしてまいったわけでありますが、国民合意が得られているとは思いません。むしろ、今国民世論の中で、これは不公平だ、なぜこんな状況がありここに課税しないのですかと言われているものをやっていくのが筋ではないのかと実は私は思うわけでありまして、この点は恐らく完全にすれ違いのままでこの議論が行われる。今の大臣の御答弁でしたら残念ながらそうならざるを得ないというふうなことであろうと思います。  ただ、書記長幹事長会談お話を伺いますと、合意の第四項でございましたか、将来これを見直すことを検討するでしたか、これを未来永久に断固これでやり抜くのだというふうなことではない意味合いのことが言われていたようであります。また、私ども野党間で政審で勉強する中でも、ある党によっては、三年時限立法、三年たったら白紙という一つの枠をつくっておいて、その三年の間に言うならばほかのキャピタルゲインの問題その他を含めて徹底的に一遍勉強して、三年後には国民の御理解の得られる全体像の姿の中でスタートしたらどうかというようなこともいろいろ語り合われた経過がございます。また、それらのことが与野党協議でも主張されまして、与党の代表の方からも、そういう議論を踏まえて一定の時間、一定期間の再検討期を置いて次を考えるということにしたらどうかということも二、三回そういう御発言もあった経過が実はあるわけでありますが、私はそれらの中で思うのですが、基本的には私どもはけしからぬというふうに思っているわけなんです。  例えばこういう発想もその勉強の中にございました。今一人九百万、四人家族で三千六百万、財形を足せば四千万以上という枠があります。このこと自体が異常なんじゃないだろうか。例えば、日本国民が、標準家庭の人が五千万、六千万貯金する能力を持っているならその中で四千万くらいはこれにしようという現実がどこにもなかったわけですから、現実に貯金をする能力よりも枠の方がはるかに多い。普通のサラリーマンで四千万の貯金がありますかと言ったらとんでもないというのが大部分でありまして、いろいろな組合の集会なんかに行って、あなたのところ月給一年分の貯金を持っている人どれくらいいるかと聞くわけですが、とてもともと言う。年収一年分ぐらいの貯金は持ちたいな、そうすれば気持ちも非常に落ちつく、家族も安心するというのだけれども、貯蓄動向調査の中での最多地域は二百七十万でしたか、二百万円ですね。大体二百万、三百万というのが平均的な状況ということになるわけであります。  そう考えますと、三百兆近くのものがあるのも異常だし、それから勤労者の生活にとって四千万円の枠があるというのもある意味では異常じゃないか。実態論で行こう。本当に守るべきマル優は、国民生活を見たらどうなのか。そういたしますと、家族一人百万がいいのか、あるいは一世帯三百万がいいのか、何がいいのか。デザインのしようはあります。デザインの仕方はあるけれども、これが実態に即したいわゆるマル優制度というものじゃないだろうか。  それから目的にしても、時代が違いますから前とは違うと思います。昔は生活保護がなんかいろいろな貯蓄奨励がかかったと思いますけれども、これからの時代ですから、もっとお買い物ができるようにとか内需に資するとか、あるいは新前川レポートに書いてあるこれからの社会目標、豊かな生活の質とか、いろいろな意味での効果と目標設定というのはあるんだろうと思うのです。ですから、何か三百兆近いトータルの額、それは計算して利息がこうですからこれだけの課税対象があるんだという発想にそちらはなるわけでありますけれども、現実、実態論として考えてみたら、国民の望むあるいは望ましい現実とは何かというものからする考え方もあるのではないだろうか。私は、これは大変に一理あると言ってはなんですが、それ以上に多くの国民の皆さんには御理解いただける。おそらくそれが百兆になれば百八十兆ぐらいのものは新たな課税対象になるということもあるかもしれません。ですから、そういうことも検討すべき課題ではないだろうか。  確かにそこで限度管理の問題が起きます。だけれども、例えばフランスのA通帳とかアメリカのシステムとか、諸外国の例を見るといろいろなものがありますね。例えば一人百万とか非常に単純な形で処理できる。本当に機械的に単純な処理ができる。いわゆるカード制その他難しい難しい、我々はやるべきだと言ってまいりましたけれども非課税貯蓄利用者カードというものを主張して、与党の方は難しいというようなお話だったのですが、そんな難しい話ではない、極めて単純な方法論も発見できるのではないかと思いますが、そういうアイデアといいますか、そういうお考えを評価なさいますか。どうお考えですか。
  161. 水野勝

    水野政府委員 一つのお考えではないかと思うわけでございますが、今回の利子課税の見直しは、そうした貯蓄奨励と申しますか、一定利子所得はとにかく非課税にするというか、そうした政策目的が現在の時点で果たして適当かどうか。こつこつとためた貯蓄、その背後にはこつこつと働いて収入を上げられ、それを貯蓄に回されたということであれば、その出発点の方のこつこつと働かれたときの勤労性所得の方につきまして負担の軽減合理化を行う、その結果としてのものでございましたら、利子所得といたしましては現役の方々につきましては一定の水準の御負担を願う、稼得能力の減退、消滅した方々につきましては貯蓄からの利子につきましては非課税とする、そうした仕組みが適当ではないかと御提案を申し上げておるわけでございます。  お一人百万円と申しますと、利子にいたしましては四%とすれば四万円、その二〇%でお一人八千円ずつの負担の軽減をまんべんなく行わしていただくということが、現時点におきましてもしそうした軽減が行われるものであれば、むしろサラリーマンの方の勤労性所得の方につきまして極力負担軽減を行わしていただく方が合理的ではないか、一方、稼得能力のなくなられた方の利子所得はそれなりに配慮を続ける、そうした方が合理的、適当ではないかということで今回御提案申し上げているわけでございます。
  162. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 水野さん、それは答弁はいいですけれども、そういう実態に合った多面的なさまざまなアイデアなり、国民の皆さんのタックスペイヤーという立場にしたら、なるほどこれならば理解できるとか、いろいろなことを柔軟に考えて、そういう中から社会合意の得られるアイデアや方法を考えていくということもぜひ少しは考えてください。  それから、最後に大臣一つ伺いたいのですが、議長裁定の言葉の中に、直間比率見直しという言葉、それから高齢化社会という言葉がございました。将来のこととして一つの問題提起だろうと思いますし、なぜ議長裁定でそういう言葉が並んだのか私もよくわかりませんけれども、それまでは直間比率の見直しあるいは高齢化社会というふうに結びつけた議論というのは余りなかったわけでありまして、中曽根さんもそんな提起は余りなさらなかったと思うのです。しかし、現実にそこに出されておりまして、私は、こういうふうな物事のとらえ方、高齢化社会は必ずやってきます。高齢化社会という言葉はよくないので長寿社会と呼んでください、長寿社会という言い方をしてください、要するに何か余り明るくない感じの高齢化社会というイメージではなくて、我々のあるいは日本の国民の責任としては、日本の持っているさまざまの大きな能力というものをもってして幸せな意味での長寿社会という構想を考えていただきたい、また高齢者団体の方からそういう言い方をされましたけれども、それは別にいたしまして、私は、高齢化社会、直間比率の見直し、その意味合いは、大型間接税ということを短絡的にとらえて、高齢化社会が来ます、お金がかかります、財源が必要です、大型間接税はありませんという論理を短絡して展開をされるということは非常に危険な、議論が混乱をすることになるんじゃないだろうかというふうな気がしてなりません。副議長なんかにもときどきそんな話をするのですけれども、そんな議論をお互いにし合うのですが、大事なことは、その間に幾つかの幅広く検討すべき大きな社会問題がある。例えば高齢化社会、今のシステムでいけばさまざまの負担がかかるかもしれません。しかし、もっと幸せな長寿社会にふさわしい勉強、アイデア、あるいは努力をしなければならぬだろうと思います。  例えば医療にしても、今ターミナルケアが中心です。あの世へ行かれる前の一週間か十日に非常に多額の技術のお金がかかる面があるわけでありますが、プライマリーケアあるいはホームドクターとかいうシステムをつくる中で、もっと安いコストでしかも非常にサービスのいい方法とか、いろいろなそういうシステムの開発が必要だろうと思います。年金にしても、今の単線型ではない複線型と言っていいのか、いろいろな考え方も構想しなければならぬと思います。さらに、これは制度、行政ではありませんが、ボランティアとかいろいろな意味での社会の連帯も非常に大事なことだろうと思います。それらを含めて高齢化社会、長寿社会の何か知恵を凝らしたデッサン、デザインというものをどう考えていくのか、そういう大作業をやらなければならない。  また一面では、税制の問題でも、今のシステムのもとでお金がかかります、大型間接税にはなりませんだけでは何か理解がいかないので、さっき申し上げたような徹底公平、そして国民の信頼が得られる、それからさまざまの内外の面を含めまして、これからの時代にふさわしい税制はどうですかということを国民に選択を求める。いろいろなことが必要だろうと思います。財政制度の面でも改革が必要だろうと思います。  考えてみますと、議長裁定の中で出た二つの言葉の中に非常に大きな問題、まさに二十一世紀に向けてみんなが考えなければならないさまざまの大きな問題が全部つながってあるのだという感じで受け取るわけでありまして、そういうことをささやかな勉強で考えますと、何か単純に、高齢化社会が来ます、ますますお金がかかります、それは当然でしょう、負担が必要です、したがって直間比率見直し、その意味合いは大型間接税という短絡的なことではない政治としての勉強、それから政策的な豊かさというものを、政府与党におかせられましても、また与野党の議論なり野党の積極的な議論の中でもやっていくことが必要ではないだろうか。与野党協議の中でも、尊敬する多賀谷副議長さんも言われました。お互いにA対B相譲らない、最後にはパワーだということでは議会の権威は生まれない、お互いにそれを闘わせて、その中から苦労しても汗を流しても何かを生み出して国民の皆様のお役に立つ新しい芽をつくるというのが議会の権威だというようなことを尊敬する先輩から時々言われておりましたが、なかなかそうならなかったのは残念でありますけれども、それは別にいたしまして、いわゆる直間比率、高齢化社会というものに対して私はそういう考え方を持ちますが、大臣はどうお考えでしょうか。
  163. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今言われましたことを私は決して間違いだと申し上げようとしておるわけではございませんが、私どもは、こうやって生産年齢人口が今六・六人で一人の老人を支えているこの時点はよろしゅうございますが、二〇〇〇年になれば四人で一人になる、二〇一〇年には三人で一人を支えるということはそのときの若い人には大変な負担であろう、所得税をどれだけ払ってもとても負担できないような負担であろう、老人の方は所得がなくなりますから、稼得能力がなくなる、そういうときには、老人でもやはりある程度の消費はいたすわけでございますから、社会全体の費用をみんなが薄く広く我が国の所得水準なら負担できるのでございますから、今から考えておかないとそのときの若い人は困るのではないか、あるいは日本全体の社会が困るのではないかという思いが非常に強いのでございますが、しかし、それは問題の一つのポイントでございます。まさに伊藤委員が言われましたように、この問題はいろいろな方面から考えていくべきだということは、私どももさように存じております。
  164. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 時間ですからこれで終わります。ありがとうございました。
  165. 池田行彦

    池田委員長 森田景一君。
  166. 森田景一

    ○森田(景)委員 きょうは日本たばこ産業株式会社からお忙しいところを参考人に御出席いただいておりますので、たばこの問題から先に質問させていただきたいと思います。  たばこ消費税は、六十一年度で九千八百六十億円、六十二年度では九千五百八十億円が計上されておるわけでございます。地方財政計画でも、道府県で三千五百六億円、市町村で六千二百一億円、合計いたしまして九千七百七億円、国と地方を合わせますと一兆九千二百八十七億円という大変たくさんの消費税が納められておるわけでございまして、国、地方にとりまして貴重な財源となっておるわけでございます。  今回たばこ消費税の一部を改正するということになっておりますけれども、まず改正の理由をお聞かせいただきたいと思います。
  167. 水野勝

    水野政府委員 御案内のように、たばこ消費税につきましては、昭和六十二年度の税制改正におきまして、売上税の創設とあわせてそれについての税率の調整の点を当初改正案として御提案申し上げました。また、それとの関連におきまして、昭和六十一年度税制改正で臨時的な税率の設定をお願いしておりました。これは売上税の創設とともに本則を含めて改正するという今申し上げた点と関連いたしまして、暫定税率と申しますかこの特別税率、特例措置はことしの十二月まで九カ月間延長するという点を御提案申し上げたところでございます。その後の経緯によりまして売上税は廃案となってございますので、売上税の創設に伴います税率の調整は今回御提案はいたしていないわけでございますが、一方、特例措置を九カ月間延長しておりましたのは、一月一日からの売上税はなくなるわけでございますので、この特例措置はさらに三カ月間延長させていただくというのが今回御提案を申し上げ、御審議をお願いしておる主な点でございます。なお、そのほか技術的な点について二、三、今回御提案を申し上げておる点もございます。
  168. 森田景一

    ○森田(景)委員 今度の改正案は日本たばこ産業株式会社にとりましてはプラスになるのかマイナスになるのか、その辺のことについて御説明をいただきたいと思います。
  169. 田口和巳

    ○田口参考人 たばこ産業の田口でございます。参考人として事情を御説明させていただきます。  御承知のとおり、昭和六十年四月に私どもが従来やっておりましたたばこ専売制度が廃止になりまして、専売納付金制度がなくなりました。そして、そのかわりに消費税制度が導入されたところでございますが、その発足時の税率は、私どもの方で一番売れておりますマイルドセブンの例をとりますと、小売定価に対する負担率は五六・七%ほどとなっておりました。その後、昨年五月に一本九十銭の特例税率導入されたために、租税負担率、消費税負担率は五九・七%に上昇いたしまして現在に至っております。  一方、私どもが扱っておりますたばこに対する風当たりが最近一段と強くなってきております。そういうこともございまして、たばこの消費総量、総需要がだんだん減ってきておるという私どもにとっては大変つらい状況にございます。そういうこともございまして、たばこの商品として担税する力、担税力は現行の負担水準で私どもとしてはぎりぎりの限界にきているのではないかというふうに認識しているところでございます。したがいまして、たばこの税負担水準は、基本的には現状より少しでも低ければそれだけ私どもにとってはプラスの要素であり、逆に申せば、高い水準が続くということは大変つらいという立場にございます。  以上がたばこ産業といたしまして率直な事情を申し上げたところでございます。私どものつらい実情というのを御理解いただければありがたいと存じます。
  170. 森田景一

    ○森田(景)委員 かなり厳しいということでございますから、マイナスだということだと思いますね。それで、たばこに対する風当たりも強くなってきた。今お話がありました一本九十銭、実際一本一円かかっているわけですね。我々小売で買う場合には一本一円上乗せになっておりまして、そのうちの十銭が小売業者に行く、あとの九十銭のうち四十五銭が国の方に入って残りの四十五銭が道府県それから市町村に分けられる、そういうふうになっているわけです。これは本来は一年間だけの特例ということで成立したはずでございます。この際ひとつこれを外すべきだと思うのです。大蔵大臣、どうですか。
  171. 水野勝

    水野政府委員 一本一円の特例措置は昭和六十一年度にお願いをしたところでございます。これは補助金等の整理合理化に伴う地方財政への影響を考慮してお願いをしたところでございまして、昭和六十一年度におきまして一年間の措置としてお願いはしたところでございますが、この背景となっております補助金等の整理合理化の問題はその後も引き続いておるわけでございますので、昭和六十二年度といたしましてはこれを引き続きお願いをすることとし、ただ、売上税関連の調整措置の関係から九カ月間延長をさしていただくように御提案をしていたわけでございます。したがいまして、売上税問題の経緯からいたしまして、九カ月間という延長期間をこの際三カ月間はまずこの時点で延長をお願いをいたしたい、これが今回の御提案でございます。
  172. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま主税局長が申し上げましたような経緯でございますが、もとはといえば国の財政の不如意から地方にいろいろ御迷惑をかけ負担をかけるようになりました。それをこういう形でまた地方に対して償いをしなければならないといったような、そういういきさつのあることでございまして、これはまことにどうも申しわけないことであると思いながらお願いをいたしておるところでございます。
  173. 森田景一

    ○森田(景)委員 そうしますと、たばこ愛煙家は国や地方自治体に対して大変貢献をしている、こういうふうに大臣認識していらっしゃるのですか。
  174. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはもうそのとおりでございます。
  175. 森田景一

    ○森田(景)委員 実は最近たばこへの風当たりが強いわけでございまして、これが専売公社、専売局ですか、国営でやっておりましたときには、国に大変遠慮したんじゃないかと思いますけれども、余り強い非難が出てこなかったのです。これが民営になりましたら途端に風当たりが強くなった。この辺はどうも私不可解に思っているわけです。やはり今まで国に相当遠慮していたんじゃないかな、こんなふうに思うのですね。  きのうでしたかおとといでしたかの新聞を見ますと、   東京都交通局は二十六日、都営地下鉄線九駅を終日禁煙モデル駅に指定、改札から内側の階段、エスカレーター、ホームなどでは一切喫煙を禁止することを決めた。十月一日から実施し、利用者の評判がよければ順次禁煙駅を増やしていくことにしている。   禁煙モデル駅になるのは都営地下鉄三線、六十四駅のうち、浅草線・戸越、高輪台、宝町、三田線・白山、西巣鴨、新高島平、新宿線・曙橋、浜町、東大島の九駅。終日禁煙は、JR線目白、原宿駅でも七月一日から実施しており、  評判もよい、と言う。というのですね。「評判もよいこというのは、どなたが評判いいと言っているのか知りませんけれども、我々は評判悪いと思っているんですね。混雑のときにたばこを吸って迷惑をかけるというのは喫煙者としても慎まなければいけないと思うのです。朝のラッシュアワー等についてはこれはモラルの問題だと思いますが、余り人のいないところで一日禁煙、これは随分おかしな話だ、こう思っているんです。私はこの間JR新橋駅で実は横須賀・総武線に乗りました。そうしたらここも一日禁煙だと書いてあるんです。人がいないんですね。私一人しかいない。私一人しかいなくて禁煙しましょう、随分変な話だと思うのです。JR線も何とかここで収益を上げなければならない、PRもしよう、そういうことだと思うのですけれども、実情に即して、これほどたばこ消費税で国や地方に貢献している喫煙者を迫害するような行き方はよろしくないんじゃないか。大蔵大臣もこういう各鉄道会社に大蔵省にとっても貴重な方々だからひとつ余りいじめないようにしてほしいということくらい一言言ってもいいのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  176. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国、地方の財政立場も御関係の方々はよくわかっておられると思うのでございますけれども、また、御理解もいただきたいと思います。
  177. 森田景一

    ○森田(景)委員 ことしの四月にたばこの関税が撤廃されまして外国製のたばこが日本市場でのシェアを大変拡大してきている、こういうふうに言われているわけでございます。それで八月にはこのシェアが約一割にも達している、こういうふうに伝えられているわけであります。七月の総販売数が二百七十一億本だ。すごいものですね。そのうち輸入品は二十六億六千万本である、このように言われておるわけでございます。貿易摩擦の解消という立場からは、輸入の増加ということは大臣も奨励しているわけでございますからやむを得ないとしまして、それを迎え入れる日本たばこ産業の方はこれが強力なライバルになってきているわけでございまして、決して外国製たばこを吸うなというわけじゃありませんけれども、こういうことに対して日本たばこ産業株式会社はどういう対策をお考えになっていらっしゃるのかということをお聞きしておきたいと思います。
  178. 勝川欣哉

    ○勝川参考人 先生御指摘のように、この四月の製造たばこの関税撤廃を契機としまして外国たばこは一斉に大幅な値下げをいたしまして、本格的な価格なき競争というものが実現しまして以来、その伸びは非常に著しいものがありまして、七月末の累計では九十六億本、前年に対しまして二・七倍、シェアで九・一%、七月だけとりますと九・八%でありまして、八月の計数はまだはっきり判明しておりませんが、先生の言われるようなことになるかもしれないというふうな状況であります。  先ほど同僚の田口が申しましたように、停滞する総需要の中でこのような外国たばこのシェアの急速な増大といいますものは、単に私どもの会社だけではなくて、たばこ耕作農民その他関係者を含めまして、我が国のたばこ産業自体にとりまして大変脅威でありますので、私どもといたしましては、社の総力を結集して強力な営業活動を展開して国産たばこの需要の最大限の維持に努めたいと考えている次第であります。  具体的に申しますと、例えばマイルドセブンとかキャビン等の国産主力銘柄のブランドロイヤリティーの強化に努めると同時に、品質、外観等の点で外国たばこに負けない魅力を持った商品をつくり、それを消費者の方々に気に入っていただけるような多様な商品を開発投入するとか、あるいはテレビ等いわゆるマス媒体を中心にしまして、個別銘柄の銘柄訴求を充実させるとともに、国産たばこに対する好意層を広げるための共感訴求活動に力を入れるとか、あるいは自動販売機対策とかキャンペーン活動等を行いまして販売店や市場に直接働きかける活動を外国たばことの競争が特に激甚な市場を重点に実施してきた、そういうふうないろいろな施策を強力に実施しまして、できるだけ国産たばこのシェアの維持に努めてまいりたいと考えている次第であります。
  179. 森田景一

    ○森田(景)委員 何しろ日本たばこ産業株式会社も持ち株は国のはずでございますから、これが赤字会社になったら大変なことになると思います。そういう点ではひとつ大蔵大臣の方も積極的なてこ入れをしていただかなければならないだろう、こう思っております。  それで、大蔵省としては外国たばこがうんとふえても日本のたばこが減っても総数として変わらなければ消費税の方は入ってくるのは変わらないから余りそういうことには関係ない、こういうようなお顔を大蔵大臣はしていらっしゃるわけでございます。そういうことで、これから問題になるのはやはり価格と品質の競争になってくるだろうと思うのです。そうしますと、新聞報道によりますと、当然国内産の葉たばこの値下げを諮問するとかどうとかなんてことも出ておるようでございますけれども、生産者にとってはコストが合えばそれは下がってもいいと思いますけれども、コストが下がらないのに値下げされたのでは生活にかかわってくるわけであります。そういうことについても今後我々としても重大な関心を持っておりますので、大蔵省としても日本たばこ産業株式会社がよく発展できるように御指導をお願いしたいと思うわけです。  もう一つは、日本たばこ産業株式会社が、たばこの売り上げが年々落ちてきている、このままでは会社が赤字になるかもしれない、そこまで思ったかどうか知りませんけれども、これも私は新聞で拝見したのですが、最近、ハイテクでしたか薬品工業ですか、こういう方にも手を伸ばしていくような記事がありました。ある人が言うのには、たばこが有害で、その有害で病気になった人間を治すために薬をつくるのか、こんな話も出ているわけでございまして、これは冷やかしたとは思うのですが、しかし大事なことは、私も前に申し上げましたけれども、今いろいろと愛煙家の方々が肩身の狭い思いをしておりますのは、たばこは有害だという声が非常に大きいために肩身の狭い思いをしているわけです。ですから、たばこは有害ではないのだ、そういう確証が出れば何もたばこが減るなんということはないのだと思うのです。  その辺のところで、日本たばこ産業株式会社におきましても、いろいろな製品をお考えになるのはそれはそれとして結構でございますけれども、なおその辺のところを早く研究ができるように、成果が上がるように御努力をいただきたいと思うのです。私も、前回申し上げましたように、本当にたばこが有害ならば製造をやめるべきだ、どんなに好きな人でも吸わしてはならない、これが当然だと思っております。しかし、今の段階では、有害である、いや有害でない、こういうことでございますから、その辺のところをひとつ十分御研究なさって会社の使命としても明らかにしていただくよう格段の努力をお願いいたしまして、このたばこの問題につきましては質問を終わります。どうもお忙しいところを、何か体のおぐあいも悪かったそうでございますが、わざわざ御出席いただきましてありがとうございました。  今回の所得税法改正等につきまして、我が党では、先般本会議でも宮地質問がございましたとおり、この法律案は前国会で廃案となりました売上税関連法案でありますところのマル優など非課税貯蓄制度廃止を盛り込んでおるために、売上税関連法案は再提出しないとした五月十二日の与野党国対委員長会談合意を踏みにじるものである、これは今でもそう思っておるわけでございます。したがって、我々は、十二回にも及んだ与野党税制改革協議会において不公平税制の事例を十項目挙げましてその是正を検討すべきであると強く主張してきたわけでございます。こうした経緯を全く無視し、マル優廃止のみを六十二年度の所得税減税の恒久的財源とし、しかも減税とセットで法案提出した、これは我々も強く批判をしているわけでございます。そういう前提に立ちまして所得税の方から質問していきたいと思います。  中曽根総理は、前の通常国会のときに売上税法案を出しまして減税法案も出しました、このとき、シャウプ税制以来の大改革なんだ、こういうことを表明なさったわけでございます。今度のこの税制改革もその大改革の一環に入っているのでしょうかどうでしょうか。大蔵大臣、どのような御認識ですか。     〔委員長退席、大島委員長代理着席〕
  180. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 通常国会に根本改革案を御提案いたしましたが、国会のお入れになるところとなりませんで、税制改革協議会において御協議がその後続いておるわけでございます。したがいまして、今回は全面的な改革ということでなしに、当面必要な関連のものに限りまして御審議をいただくことにいたしたわけでございますが、願わくは税制改革協議会におきましてできるだけ早く将来への抜本改革の道をひとつお示しをいただきたい。また、私どもといたしまして、今回御提案いたしました限りにおきましては、例えば所得税の将来の税率あるいは階層の刻み等々をできるだけ簡素にしてまいりたいというかねての願望にできるだけ背馳いたしませんように、それに沿うような、いわばそこまで参りませんのですけれども、そういうことを頭に置きながら御提案をいたしたつもりではございますけれども、しかしこれはいわゆる抜本案というものになってはおりません。
  181. 森田景一

    ○森田(景)委員 それで、シャウプ税制以来の大改革、こういうふうに総理はおっしゃったのですけれども宮澤大蔵大臣もあのときはそういうお考えだったのですか。
  182. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 さようでございます。
  183. 森田景一

    ○森田(景)委員 そうしますと、シャウプ勧告というもの、それに基づいて税制ができたわけですけれども、これの評価ですね。大臣としてはシャウプ税制をどのように評価していらっしゃるのか、その辺のお答えを聞きたいと思います。
  184. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 シャウプ博士に日本に来てもらいました直接の動因は、当時非常に不評判でございましたいわゆる取引高税を吉田内閣が廃止する選挙の公約をいたしまして選挙に勝ったのでございますが、ドッジ・ラインが始まりましてその廃止ができないということから、専門家であるシャウプ博士に来てもらうということをドッジ氏が決めてくれたわけでございます。したがいまして、まずその取引高税の廃止ということはこのシャウプ勧告によって実現をいたすことになりましたが、もちろんそれにとどまらずに、二度にわたりまして非常にたくさんの学者、すぐれた人たちを連れてこられまして、中央と地方との行財政の関係であるとかあるいは所得税であるとか法人税であるとか、もう全面的にわたっていろいろ検討されました。それから平衡交付金、中央と地方との財源の調整等についてもいろいろ勧告もされまして、考えますと、ちょうどまたそのころに申告納税制度もやや根づくようになってまいりましたことも相まちまして、我が国のその後の税制と申しますか、これはまあ国の経済社会あり方全般に関係をいたすと思いますけれども、それを形づくるのに大変に大きな役割を果たしたというふうに考えております。
  185. 森田景一

    ○森田(景)委員 余りはっきりした御答弁じゃないと思うのですけれども、シャウプ勧告につきましては、公平を基礎にした合理的、民主的な税制を体系化した、こういう評価が高いわけですね。この点については大蔵大臣はどうお考えになりますか。
  186. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのとおりであろうと存じます。
  187. 森田景一

    ○森田(景)委員 大臣も、そのとおりだ、こういうことでございます。そのシャウプ勧告が評価どおりであるならば、その後、そのシャウプ勧告を崩壊させた、壊してきた、不公平税制をつくってきたわけですね。これは政府の責任だとは私は思うのです。今の政府と言いませんよ。あれ以来、歴代政府の責任だった、こう言わざるを得ないわけです。その点はどのようにお考えになりますか。
  188. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは昭和二十四年でございますが、結局、当時の我が国の国民所得の大きさあるいは、今で申しますと五分位層でございますが、最高所得者層と最低所得者との格差の大小等々、全く我が国の様子がその後において変わってまいりましたわけですが、殊にその間所得水準が全く違ってしまいました。政府としては何度か減税をいたしましたけれども、しかし、税の骨格そのものが変わっておりませんから、やはり今日になりますと、所得税、法人税というものはかなり高い水準にとまっておる。これは、いかな賢人でも、やはりかれこれ四十年でございますから、三十数年間一つの税体系が耐え得たということは大したことであったと思っておりまして、それは改める時期が来たと申し上げてよろしいのではないかと思います。
  189. 森田景一

    ○森田(景)委員 シャウプ勧告の中で法人税制に関しては法人擬制説を導入した、こういうことが言われているわけでございます。そのことが今日存在している巨額の引当金とか準備金の芽をつくった、このように言われているわけですね。また、シャウプ勧告では、貸倒準備金は合理的なものとして認めたわけです。その貸倒準備金の誕生が競争原理によりまして連鎖的に数々の引当金、準備金等のいわゆる企業優遇税制をつくっていった。これはシャウプ勧告の意図とは違うものである。意図と違うものを、引当金とか準備金とか、たくさんつくってきたわけですね。そしてまた、株式等のキャピタルゲイン課税を原則的には非課税にした、あるいは富裕税の廃止、こういうのがシャウプ勧告の崩壊だった、このように言われているわけでございます。  ですから、こういうものをもとの形に戻していけば、これはもっと税制としては、いわゆるシャウプ勧告は総合課税、こういうことでございますから、もとに戻って、あと所得税税率はそれはいろいろと工夫があってしかるべきだ、こう思うのですよ。こういうのは歴代政府の責任だったんじゃないか、せっかくすばらしい勧告をもらい、それをもとにして税制をつくりながら、崩壊させていった、今日になって大改革だ、これはおかしいんじゃないか、このように私は考えるのです。その点、大蔵大臣どう思いますか。
  190. 水野勝

    水野政府委員 シャウプ勧告は、その税制の骨格といたしましては、所得税をその中心に据えたわけでございます。当時、戦後二、三年後の時代でございましたので、所得税と申しますと、まだサラリーマンの給与所得税はそれほどの大きなウエートにならず、所得税としては専ら個人事業者それから農業所得者、このあたりの所得税の納税者が中心であったわけでございまして、シャウプ勧告の相当な部分はこの個人事業所得者の申告所得税、農業所得者の農業の申告所得税、このあたりにつきましての公平で効率的な申告納税制度のあり方、こういったものを中心に勧告が行われているというふうに感ぜられるわけでございます。  先ほど御指摘の法人税につきましても、まだ戦後の経済復興も緒につかない時代でございましたので、法人活動も見るべきものがない、そうした背景のもとで、法人税につきましても、擬制説という言葉が適当かどうかわかりませんが、法人と個人というのはかなり同質的なものとして位置づけまして勧告を行っていたように感ぜられるわけでございます。  しかし、その後の三十年、四十年後の我が国の現在の経済情勢はそのころと一変しているわけでございます。所得税につきまして申し上げれば、所得税中心は勤労者の源泉所得税中心となっているわけでございますし、当時としては税収の一〇%そこそこ程度しか占めておりませんでした法人税が三割ぐらいのもののウエートを占める、そういう経済情勢とともに税制もその実態が大きく変わっておるわけでございますので、どうしてもこの際基本的な改革を行う必要が出てまいっておるわけでございます。もちろん、シャウプ税制勧告におきましていろいろ勧告され、そのとおりに実施された部分が、その後の経済の復興期と申しますか、そうした要請で廃止されたり手直しされたりしている部分もあるわけでございますが、大きな方向としては所得税、法人税のあり方、そのあたりがやはりその後も続いてきており、それが改革の必要性を生ぜしめているという見方もできるのではないかと思うわけでございます。
  191. 森田景一

    ○森田(景)委員 いずれにしましても、シャウプ勧告では、総合所得課税といいますか、これが基本的な思想であったというわけですね。それがまたもとに戻ってくるような状況になっているということだと思います。  それはそれとしまして、そういう立場から今回の税制改革についていういろまた細かくお尋ねしますが、大蔵大臣は、減税はします、当初一兆三千億、その恒久財源としてマル優制度を原則廃止します、こういうことだったわけです。その後、与野党幹事長書記長会談で二千億の上積みをされ、さらに四百億円上積みになりまして、合計としては一兆五千四百億円の減税になりますということになったわけですね。これは大蔵大臣としては余りやりたくない不本意なことなんですか、どうなんですか。
  192. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま言われましたのは、八月二十六日の与野党書記長幹事長会談におきまして自民党の幹事長が一兆五千四百億円に相当するいわば税率構造の手直しを御提案した、そのこと自身が大蔵大臣としては不本意なことであるかというお尋ねでございますか。——その点は、大蔵大臣といたしましては、減税の幅が大きくなりますので、その財源をどうしようかということは当然苦労しなければならない立場でございますけれども、しかし国会の各党のお考えによりまして国会としてそのような御修正をなさるということであれば、これはもういや応ということではございません。尊重してまいらなければなりません。
  193. 森田景一

    ○森田(景)委員 国会で決めることはいや応申しませんという非常にすばらしい御答弁だと思うのです。先般来論議されておりますのは、私どもは二兆円規模減税をという主張をしているわけでございます。一兆五千四百億でも、財源は苦労するけれども出しますというのですね。出しますということになると、今まで一兆三千億でなければだめだと言っていたのが一兆五千四百億円になっても何とかしますというのですから、これは手品師みたいな状況だと思うのです。もう一振りすれば二兆円規模になるのじゃないだろうか、私はこんなふうに思っているのです。それで、大蔵省の考えとしては、戻し税減税ではなくして増減税同額ということでやっていきたいという方針だったのですね。だからマル優廃止を盛り込んできたわけです。これが戻し税減税ならば二兆円は大丈夫なんですか。
  194. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いえ、その点は、戻し税減税にいたしましてもここで二兆円の財源をつくらなければならぬということでございますから、それは六十二年度について申しますと決算剰余金の範囲を超えておるわけでございます。一兆五千四百ならここまでもてたのだから二兆とおっしゃいますが、綱を引いていきましてどこまでも引ける、あるところでぷっつりといくわけでございますが、どうもこの辺がぷっつりというところではないかと思うのでございます。
  195. 森田景一

    ○森田(景)委員 大蔵大臣はこれがぷっつりだと思っても、さっきのように国会で決めれば出しますという答弁ですから、まだ余裕をお持ちだと思うのです。それは大蔵委員会で最終的に一兆五千四百億と決まったわけじゃないのですから、この大蔵委員会で、それはけしからぬ、二兆円規模と私は言っておりますけれども大蔵大臣も何かつらそうなお顔をしていらっしゃいますから、じゃここで六百億上乗せをして一兆六千億にしたらどうだと決まったら、その財源も手当てができるのではないですか。
  196. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は今年度、明年度いろいろ悩みの種は尽きませんので、どうかその辺のところはひとつ実情を御勘案くださいますように、衷情を披瀝いたします。
  197. 森田景一

    ○森田(景)委員 私がここで大蔵大臣に一兆六千億にしなさいと言っても、委員会の意思じゃありませんからそれは受けられませんという御答弁になると思うのです。ですから、理事会でぜひ協議していただいて、この大蔵委員会合意として一兆六千億というふうに決めていただければこれは非常にいいことではないかと思いますので、委員長、ひとつ格段の御配慮をお願いしたいと思います。御答弁は結構でございます。  そういうことで御提案申し上げますけれども、先般我が党の矢追委員が質問しましたときに矢追私案というのをお見せしたのは御記憶だと思うのです。このとき、政府の方としては矢追試算で幾らになるかというのはここで即答ができないということでございましたが、その後計算していただいたと思うのですが、これはどういうふうな金額になってくるのでしょうか。
  198. 水野勝

    水野政府委員 先般ここで矢追委員からお話のございました点につきましては、幾つかのバリエーションもございましたのでいろいろな計算を要したところでございますが、基本的な体系といたしましては、当時委員も申しておられましたが、五千億円ぐらいになるというふうなお感じを述べておられました。平年度、初年度では違うわけでございますが、おおむね五千億前後の計数に相なるようでございます。
  199. 森田景一

    ○森田(景)委員 そうしますと、矢追試算で計算しますと、政府案に五千億ぐらい上乗せ、したがって一兆八千億ぐらいになる、こういうことですか。
  200. 水野勝

    水野政府委員 おおむねそのとおりでございます。
  201. 森田景一

    ○森田(景)委員 矢追試算の後で政府の先ほど大臣からお話ありました最終的には一兆五千四百億が税率見直して計算が出たわけですけれども、この間の提示は百五十万までで一〇・五%、こういうことになったんですね。だから、矢追試算ですと百四十万まで一〇・五ということですから、下の方はかなり思い切って決断した、こういうふうに理解するわけですけれども、この矢追試算で、今回は間に合わないですけれども、どっちみちまた暮れになって補正をやらなければならないでしょうから、そのときにこういう試算でやるおつもりはありませんか。
  202. 水野勝

    水野政府委員 先ほど申し上げましたように、この案でございますと、五千億円前後の計数に相なるわけでございまして、先ほど大臣から申し述べましたように、二千億円と申しますか一兆五千四百億円の減税規模でございましてもその財源は極めて厳しいものがあるわけでございますので、先般与党からの御提示の線、この線が先ほどの大臣の申し述べたぷつんと切れる線でございますので、ぜひとも御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  203. 森田景一

    ○森田(景)委員 今の御答弁の中で、ここがぷつんと切れるところだということですけれども大臣は「この辺が」と言ったんですよ。「ここで」じゃないのですよ。「この辺が」と言ったのですからね。間違わないでください。だから、六百億ぐらいは出そうだ、私はこういうふうに申し上げている。これが限度じゃなくて、この辺がと言うのです。非常に含みのある御答弁でございましたから私期待しております。  それで、実は私もいろいろと計算をしたいと思いまして、政府案が出た基礎資料を見せていただけませんか、こういうふうに申し上げましたら、何か膨大な資料なのでとてもお見せできません、ですから計算の方は私の方で幾らでもお手伝いします、こういうふうに実は大蔵省の方でお話があったんです。私は思い切って、政府もここまで思い切ったんですから、もう一つ頑張って、課税所得を二百万まで一〇%、それから五百万まで一五%、あとは政府案でいく、こうしたら幾らになりますか。
  204. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっと今、主税局長お答えいたします前に、誤解がないと思いますけれども、私はもうこれは本当に財源がございませんのでこれ以上のことは御勘弁くださいと申し上げておりましたので、どうぞ誤解なさいませんようにお願いいたします。
  205. 森田景一

    ○森田(景)委員 後でまたお願いしますね。  今大臣からそういうお話がありました。そんなにしょっちゅう変えるような答弁をしないで、主税局長が答弁して大蔵大臣と食い違っているじゃないかなんということになるとまずいというので訂正する、そんなことはしないで、後で理事会で協議するということでお願いしましたので、ひとつ十分御承知おきいただきたいと思います。  じゃ、ひとつ先ほどの答弁をお願いします。
  206. 水野勝

    水野政府委員 今の御提案でございますと、五百万までが一五でございますから、給与所得者の九割以上はこの中に入る。二百万までが一〇%でございますから、六、七割の方が一〇ということでかなり大幅な減税額になるのではないかと思われます。そのおおむねの水準で申しますと一兆円から一兆二千億円ぐらいの減収になるのではないか、そんな感じでございます。
  207. 森田景一

    ○森田(景)委員 それは政府案に上乗せしてその金額ということですか、全体としてですか。
  208. 水野勝

    水野政府委員 先般の政府提案一兆三千億円を基準の数字でございます。
  209. 森田景一

    ○森田(景)委員 それで実は今度の与野党幹事長書記長会談で最終的に、最終的というふうに私は聞いたわけですけれども、こういう案でどうかと。決まったんじゃないんですね、これ。どうかということだった。百五十万までが一〇・五%となっています。ここまでで五千八百億必要だ、減税がですね。こういう数字になっているわけです。この一〇・五%を〇・五%カットしたらどうなりますか。
  210. 水野勝

    水野政府委員 率としては〇・五%でございますが、課税所得百五十万までという中には相当な課税所得がそこに含まれておるわけでございます。最低税率でございますから、ここにほとんどの方がこの階級区分の所得を持っておられる。四千万人の納税者がお一人お一人百万、百五十万の課税所得を持っておるとすれば、ここに入っております課税所得は四、五十兆円になるわけでございます。したがいまして、それを〇・五ポイント下げるだけでも二千五百億円前後の減収になるのではないか、大ざっぱに推算してそんな感じでございます。
  211. 森田景一

    ○森田(景)委員 まあ私の方も二千五百億から三千億ぐらいというふうに計算していたわけでございますけれども、やっぱりせっかく減税をやるのですから、矢追私案とかあるいは私が先ほど申し上げました案、こういうこともいろいろ御検討いただいて実現の方向をやっていただければ結構なんですけれども、この政府案の一〇・五%、これを一〇%にしても二千五百億程度ということですから、ここまでは頑張ってもらえば、非常に暫定的な税率改正とはいいながら、ここまで頑張っていただければかなり評価をされる内容になってくると思うのですね。ここまで、どうですか、大蔵大臣、頑張ってみませんか。
  212. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはもう事切れるのではないかと思います。
  213. 森田景一

    ○森田(景)委員 事切れる。事切れるといいますか余り時間もありませんからそこばかりやっていませんけれども、事切れないのだということを申し上げておきたいと思います。  といいますのは、我々は、六十二年度の減税財源としては、六十一年の剰余金、これを充当する。先ほど大蔵大臣もそういう御答弁がありました。その前に、では一兆五千四百億円の財源はどういうもので充てるのか、そこのところを先にお聞かせいただきたい。
  214. 水野勝

    水野政府委員 先般から申し上げてございます昭和六十一年度の剰余金といたしましては、一兆三千五百八十五億円あるわけでございます。ただ、これは財政法第六条によりますところの二分の一以上を国債整理基金に繰り入れるという規定を外した場合の数字であることは御承知のとおりでございます。したがいまして、剰余金をもって充てると申しますときには一兆三千五百億円まででございますが、そのほか、私ども今回御提案してございます法律案の中におきまして有価証券取引税でございますとかもろもろの改正もお願いをいたしておるわけでございまして、それによりますところの税収増等を加えますれば今回の一兆五千四百億円というのは何とかカバーをできるかというところで、かすかすと先般から申し上げているところでございます。  ただ、これも先般大臣から申し上げている法人税の問題がございまして、これによりますればさらに数千億円の減収となっておるところでございますので、こうした全体を申し上げますともう非常にパンクした厳しい状況にあるところでございます。
  215. 森田景一

    ○森田(景)委員 やはり説明していただきまして納得するためには数字で教えてもらわなければいけないのですね。もろもろのことをやりまして、まあこれがいっぱいでございます、これでは赤ん坊に話をするのと同じじゃないかと私は思うのですね。ここのものがこうなって、幾らになって、こうだから、合計してこうなる、したがって一兆五千四百億の財源にはこれで充当できますと、そういうのが出てこないから、大蔵大臣、まだ踏ん張れば六百億ぐらい出るんじゃないですかということになるわけですよ。そういう数字は出ないのですか。
  216. 水野勝

    水野政府委員 数字全体を挙げてまいりますと法人税の問題も当然出てまいりますので、そういたしますともう相当、数千億円以上足が出ておるという状況でございます。
  217. 森田景一

    ○森田(景)委員 では、数千億円以上足が出ているなら、六十一年度剰余金の一兆三千五百億しかないということになるんじゃないですか。そういうことになるでしょう。一兆五千四百億で大蔵大臣もまあ承知したんだと思うのですよ。ここでは承知したとは言わなかったですけれども承知してきたんだと思うのです。財源がなかったらそれはできないわけですから。だから、この一兆五千四百億円の財源はどういうふうにするんですかと聞いているのに、いや、もろもろの改正をしても足が出る。さっきは、もろもろのことをやってもぎりぎりいっぱいだと。そのもろもろというのがわからなくしているわけですね。これは財源を確保していることになるんじゃないですか。大臣、それはどうですか。     〔大島委員長代理退席、委員長着席〕
  218. 水野勝

    水野政府委員 先ほどから申し上げてございますように、剰余金としては一兆三千五百億あるということでございますし、それから今般御提案申し上げております有価証券取引税の税率見直し、取引所税の税率見直し、それから登録免許税の課税標準の見直し、これらによりまして千九百億円程度財源が見込まれるところでございますので、そういう意味におきまして一兆五千四百億円というのはどうにかかすかすカバーをされるという計算に相なるわけでございます。  一応そういうことでございますが、そのほかには法人税の一・三%の税率の引き下げによりまして五千億円程度の減収が一応計上されるところでございます。
  219. 森田景一

    ○森田(景)委員 だから、今のお話を聞きますと、一千九百億ほどは増収の部分がある、だけれども法人税の方で五千億のマイナスが考えられる、そうでしょう。そうすると、トータルしてマイナスになるのですね。では一兆五千四百億の財源もないということなんじゃないですか。
  220. 水野勝

    水野政府委員 今般法律として御提案申し上げております所得税法等の一部を改正する法律、これによりますところのものでございますと、先ほど申し上げました千九百億円台の増収が計上される。この千九百億円台の増収に、一兆三千五百億の剰余金が別途ございます。それを合わせますと一兆五千四百億円はどうにかカバーされる、そういう計算に相なろうかと思うわけでございますが、別途、法人税、これは今般の御提案でございませんで去る三月末の租税特別措置法の方の関係で実現しておる部分ですが、これは今回御提案申し上げておりませんので今回の議論の外ではございますが、そういう数字も別途にある。しかし、今回御提案申し上げておるものといたしましては、先般の与党提示案も含めまして何とか見合っておるということではなかろうかということでございます。
  221. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今主税局長が非常に苦労して申し上げておりましたのですが、それでも、法人税の方はどうするのかというお尋ねがこれは当然あるだろうと思います。これは全く今才覚がついておるわけではございませんけれども、やはり歳出の方の不用額を集めましたり何かいたしませんと、ここはちょっと五千億別にございますから、それはまたそれでやらなければならないだろう、歳出歳入両面からどうも……。そういたしませんと、この方の処置はちょっとまだついておりません。
  222. 森田景一

    ○森田(景)委員 最初からそういうふうに言っていただければいいのですよ。一千九百億ほどは今度の法案が通ればカバーできるので一兆五千四百億については大丈夫です、ただ心配の種は法人税の関係のマイナスの五千億のがありますから、それはこの次、今出てないんだから、この次何とか考えますと。今の問題じゃないですね。そういうふうにはっきり言っていただければ私もごたごた言わないで済むわけなんです。だって、一兆五千四百億やりますという約束をしているのに、ありませんとか、足りませんとか、マイナスだというんじゃ、ではどうするのですかというのは当然の話なんですね。だから、今度の法案が通ればこれこれこういうことで充当させれば財源は何とかなりますとはっきりそういうふうにおっしゃっていただけば、このマイナス五千億というのはこの次の補正のときにやればいいのでしょう。六十二年度の税収も昨年よりは上回りそうだ、こういう話もあるわけですね。とにかくまだ六月一カ月分の計算だから先行きは不安だ不安だ、こういう話がありますけれども、今の時点では少なく見積もっても三兆円ぐらいの黒字が出そうだ、上乗せになりそうだということもあるわけです。それはなってみなければわからないという、主税局長としては当然のお考えだと思います。それはそれでいいのですけれども、決まったことについて、足りない足りないと言われても、我々は、足りないんじゃどうするんだとこうなるわけですから、そういうふうにはっきりしていただきたいわけですね。  それで、財源については先般来いろいろ論議されておりまして、私どもは、NTTの株売却益を充てたらいいじゃないか、こう言っているわけです。全部充てると言うのじゃないのですよ。そういうことで、ちょっとまた繰り返しになりますけれども、お尋ねしておきたいのです。  NTTの株は全体としては千五百六十万株だったと思います。それで、あれはたしか一株五万円の株券だったと思うのです。するとこれは七千八百値、こういうことだと思いますが、この点はいかがでしょうか。間違いありませんか。
  223. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまおっしゃったことで間違いございません。つまり、一株額面五万円でございますが、政府が処分し得る株数は七百八十万株でございます。株数で申しますと七百八十万株でございます。
  224. 森田景一

    ○森田(景)委員 ちょっと私もここですぐ計算できませんから、また後で確認したいと思います。  このNTTの株は最初売り出しのときには一株五十万円程度という予想だったんじゃないでしょうか。どうでしょう。
  225. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実際の問題といたしましては百十九万円の八掛けということで計上いたしたのですが、それは気配が出てからでございまして、最初は実際どれぐらいで売れるか見当もつかないような状況でございました。一番最初に予算に計上いたしましたときは二十一万三千円で計上いたしております。
  226. 森田景一

    ○森田(景)委員 それでこれは四年間かけて百九十五万株ずつ処分することになっているわけですけれども、きのうのNTTの株価が二百六十六万円だったかと思います。仮に一株二百五十万としますとこれは幾らになりますか。四兆八千七百五十億というふうに計算したのですけれども、この数字、間違いありませんか。
  227. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでよろしいのでございますが、手数料を引きますので、四兆七千七百億円と私ども考えております。
  228. 森田景一

    ○森田(景)委員 手数料を引きますけれども、総額としてはこの数字。それで、仮にこうなった場合、二百五十万円で売れた場合に、国債の償還には幾ら入れるのですか。
  229. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 三年間で六兆六千億円でございます。ただ、その三年が一年おくれてずれていくかと思いますので、ずれた三年を勘定しますとたしか七兆円でございます。
  230. 森田景一

    ○森田(景)委員 そうしますと、これは四兆八千億、約五兆円ですね。それで、三年間で七兆。二兆幾らかになるわけですから、すると約三兆近いお金が残る、こういう計算になるわけですか。私も粗っぽい計算で恐縮ですが。
  231. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国債整理基金が国債のオペレーションをいたしたりするものでございますから、償還額のほかにほぼ一兆円ぐらいの余裕を見さしていただきたいと言っておるわけでございます。それを計算いたしますと、仮に七兆に三兆でございますか、一兆ずつ加えさせていただくといたしまして十兆でございますが、四兆七千億の三倍、三、七、二十一、三、四、十二で十四兆でございますから、そのくらいの差になります。
  232. 森田景一

    ○森田(景)委員 ですから、これは来年またことしと同じようなことで公共投資等に使おうというお考えだと思うのですね。何かそのお金があるので大蔵大臣は非常に強いお立場だ、その資金はM資金だなどとこんなふうにも言われておるわけであります。それはそれとしまして、ですから、それをそんなたくさんでなくていいわけですから、例えば先ほど申し上げました一兆五千四百億に六百億上乗せする、ここから出したっていいじゃありませんか。どうですか。
  233. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それが、前々から申し上げておりますとおり、一つはこの電電の売却代金は国債償還をさせていただきたいと思っておるものでございますから、使ってしまう、使用してしまうということはいたしたくございませんで、先般の法律案におきましても、無利子で貸し付けますけれども全部返ってくるように考えておりますし、また、これはかなり大きな金額ではございますけれども、向こう三年間というような限られたいっときの財源でございますので、これを恒久税制財源にいたしたくない、これは選択の問題でございますが、政府としてはそう考えまして先般法案の御審議をお願いいたしたわけでございます。
  234. 森田景一

    ○森田(景)委員 なかなか話がかみ合わないのは、とにかくそういう減税をやって、しかも先ほどもお話ありましたように十項目の不公平税制を見直せという提案があるわけですね。ではそういうのもやります、ここのところをこうこうこうやってこれで幾らになります、するとこれだけ足りません、足りない分は私たちはこういうふうに考えてますという、いきなり法案でこっちへ出す前に、今税制改革協議会があるわけですから、税制改革協議会の方に、我々大蔵省としてもさらに大幅な減税のために一生懸命努力しております、御提案の十項目——十項目御存じですか。ちょっと言ってください。
  235. 水野勝

    水野政府委員 十項目といたしましては、先般の税制改革協議会、六月二十六日に御提出になったものを私どもその十項目として承知いたしております。
  236. 森田景一

    ○森田(景)委員 御存じだということでございますので、それも本気になって計算してここまでこうやってもう金額的にはこうなのだ、それを率直に私出したらいいと思うのですね。これは税制改革協議会のことですからこちらから余計なことを言うなということを言われるかもしれないけれども、私の考えを申し上げますと、大蔵省として努力すべきだという私の見解ですからね。では、そういう十項目提案が出ているなら我々としても一生懸命やってみましょう、これこれの金額出ます、これは減税財源にしましょう、それでもこうするためにはこれだけのお金が足りません、足りない分についてはこういうふうに我々としては考えておるのですがどうでしょうと積極的にそういうのを持っていかないと話というのはなかなか詰まらないのですね。  私は大蔵省が一生懸命努力しているということは十分承知しておりますけれども、そういう努力、これは主税局長とかあるいはほかの方々、この国会のことでなかなか難しいでしょうから、大臣が政党間の根回しとして、優秀な方がそろっていらっしゃるのですから、そういう資料を出してもらって、ここはどうですか、どうですかといって詰めていけば、かなり結論が早くなってくると私は思うのです。提案したことも検討しない、検討しないから話は平行線でいく、こういうことになるのだと思うのです。そういう努力をぜひお願いしたいと思うのです。我々としても大型減税はぜひ実現してほしいと再々申し上げておりますけれども、そういう姿勢でありますし、また大臣も大蔵省の皆さん方も、減税のために努力する、こういう姿勢でございますから、それは共通しているわけです。その減税額はどうなのかというところでなかなかかみ合わない問題があるわけでございますから、そういう点で十分な努力大蔵大臣としても払われていただくようにお願いしたいわけですが、いかがでしょうか。
  237. 水野勝

    水野政府委員 この十項目につきましては、私どもの持っております問題意識とほぼ共通していると申しますか、そういう点では私どもも鋭意勉強さしていただいているところでございます。  十項目のうち四項目につきましては今般の所得税法等一部改正法の中で御提案を申し上げているわけでございます。それからあと四項目につきましては、先般二月にお出しした税制改革法案の中でも取り上げさしていただいて御提案をしたところでございますが、今回法人税関係はすべて外してございますので、そういう意味では四項目取り上げたわけでございますが今回のものには入っていないわけでございます。したがいまして、十項目のうち二項目だけは春の法律、夏の法律でも取り上げてはございませんが、その他もろもろにつきましては、大半のものについては、問題意識を同じくし、今回あるいは春の法律で提案をさしていただいたところでございますし、引き続きまして私どももこの点につきましては問題意識を持っておるところでございます。
  238. 森田景一

    ○森田(景)委員 皆さんお疲れのようでございますから、またほかに用意したのですけれども……(発言する者あり)
  239. 池田行彦

    池田委員長 静粛に。
  240. 森田景一

    ○森田(景)委員 まだもうちょっとあります。  要するに六十二年度の補正予算をとにかくまたやらなければならないのですね。やります。そのときにはやはり本年度の剰余金の関係等についても補正の中でお考えなさるのだと思うのです。それで、先ほど申し上げました六百億はそこから充当できるか、あるいはNTT株を、またそれをやっていると時間が長くなってしまいますからあれですけれども、六百億をNTTの売却益から入れるか、それはとにかく難しいことを大蔵大臣は言っていますけれども、随分簡単にいろいろ法律を変えているわけですよ。さっき申し上げましたたばこだって、一円は一年限りだと言いながらまた延ばしているでしょう。それから税率もこれでぎりぎりですと言いながらぱっぱっぱっと変えてくる。いろいろな法律だってNTTの株だって、本来は全部国債整理基金に入れるという法律をつくったわけです。そうしたら予想外に高く売れたからといってまた改正して使う。大蔵大臣は、手品師か何か知りませんけれども、そういう変わり身が非常に上手なんです。だから、NTTの株が六百億こっちへ来たって、それは法律を変えればできるわけでしょう。だから、そういうことを考えるか、六十二年度の剰余金の補正分で六百億を入れるか、こういうことを考えて、さっき主税局長が今のところは苦しいですというお話ですから、しかしそういうことを考えれば今度はかなり余裕を持ったお立場になれると思いますから、その六百億のところ、まあはっきり六百億でなくても結構ですけれども、そういうことも十分理事会の協議を得て検討します、そういう答弁があればこれで終わります。
  241. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 森田委員のお立場からの御主張はよく承りました。また、私どもの申し上げることもお聞き取りいただきましたわけでございますが、もし理事会におきまして意見をというお求めがございますれば、いつでも参上いたしまして申し上げます。
  242. 森田景一

    ○森田(景)委員 終わります。
  243. 池田行彦

    池田委員長 次回は、来る九月一日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三分散会