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堀委員 今は減税先行していただいたので、これは私のかねて願っておったスタイルになりましたから、また
大臣も総務会長のときにおっしゃっていたスタイルになったので大変結構なんですが、しかしこのままでずっといけるわけはないのです。それで、私はさっき申し上げたように、
利子非
課税というのは財源にならないのです。現実に財源見通してこの年に幾ら入るかなんということは、預貯金をしている
皆さんの判断によるところでありまして、推測は成り立つかもしれませんけれ
ども、なかなかそう簡単でない。そうなりますと、私は、やはり何らかの減税財源に見合う財源を全体のグランドデザインとして考える必要があるところにそろそろきているのではないだろうか、こういう気がしてなりません。
今の私が六十年に申し上げました物の考え方の中で一番大事なのは、実は農業
所得者と事業
所得者の
皆さんの
申告が十分に行われていないという
国税庁によるところの資料は大変なものがあるのです。きょうはそういう場所じゃありませんから私これは申し上げません。そうするとどういう事態が起こるかといいますと、高校なんかで奨学金をもらいたいというので申請をいたしますと、
所得証明をもらっていらっしゃい、こう言っていますね。
所得証明をもらってくるとなると、税務署へ行ったり自治体でもらうことになりますが、この
所得証明というのが、
申告が適切に行われていなくて六割ぐらいしか
課税されてないということになると実は
所得証明が低いわけですね。サラリーマンは全部ガラス張りですから丸々出てくる。そうすると、今の事業をやっていらしたりする方たちの方が生活の実態ははるかに高いのに奨学金がもらえる。要するに、税金で一つ得をして、今度はもう一回そういう奨学金だとか社会保障、保育所の費用なんかでも皆関係ありますし、公営住宅の入居も関係あるのですから、そういう一般的、社会的な
部分において得をする。二重に得をし、片一方は二重に損をしている九二%の三千九百九十一万のサラリーマンもいる。こういう事態ですから、税の公正化を図るということが税の一番大きな目的ではないのか。
ちょっとここで、まだ時間がありますから、アメリカの
税制のことを触れさせていただきたいのであります。
「一九八四年一月二十五日 一般教書において、レーガン大統領は、具体的な
税制改革案の作成をリーガン財務長官に指示したことを公表。」
「十一月二十七日 リーガン財務長官は、レーガン大統領に、対し、「公正、簡素、経済成長のための
税制改革(タックスリフォーム フォア フェアネス シンプリシティー アンド エコノミックグロース)」と題する
税制改革案を提出。」一番最初に「公正」が出ているわけでありますね。
その次に、約六カ月たったときでありますが、「一九八五年五月二十八日 レーガン大統領は、「公正、成長、簡素化のための
議会に対する大統領租税
提案(ザ プレジデンツ タックス プロポーザルズ ツー ザ コングレス フォア フェァネスグロース アンド シンブリシティー)」と題する
税制案を発表。」これもやはりしょっぱなが「公正」でございますね。
そうして、六月以降、
税制改革について、下院の歳入
委員会は、これはロステンコウスキさんが
委員長でありますが、この間本
会議で申し上げましたように三十回の
公聴会を開催して、そして九月十八日の下院歳入
委員会において
税制改革の
審議が始まっておる。そうして、「十二月三日 下院歳入
委員会において可決(タックスリフォーム アクト オブ 一九八五)。」こうなっているわけであります。「十二月十七日 下院本
会議において可決のうえ上院に送付。」
一九八六年一月以降、
税制改革について上院財政
委員会、ファイナンスコミッティー、パックウッド
委員長でありますが、そこで
公聴会がまた開催される。そして、五月七日になって、上院の財政
委員会においてタックス リフォーム アクトオブ 一九八六というのが成立をする。「六月二十四日 上院本
会議において可決。七月十七日 上下両院協
議会において
法案一本化のための
協議開始。八月十六日 上下両院協
議会において一本化
法案合意。九月二十五日 下院において
税制改革
法案可決。九月二十七日 上院において可決。」十月二十二日、レーガン大統領の署名により同
法案が成立している。
ですから、この間本
会議場で申し上げましたように、スタートして一年半レーガン大統領が
議会へ出すために時間がかかり、今度は
議会は一年半かかって実はこの法律ができている、こういうことでございますね。
ですから、そういう問題を含め、今の減税問題を考えるについては、今後三年間ぐらいかけて本当に真剣に
与野党の者が、本当に
国民の将来のためにどういう税のグランドデザインをかけるかということをしっかりみんなが勉強して、要するに主税局主導ではなくて、
国会の
皆さんが話し合った上で、
国民が納得するようなものを主税局の協力のもとにやっていくということが日本の今後の財政にとっては大変重要なプログラムではないのだろうか。別に私は私が
提案したようなものをやってくださいと言っているわけでもありませんが、ここでひとつ今後のこういう問題についての財政の展望をちょっと申し上げておきたいと思うのです。
私は前回は年金だけの目的税ということをしたのでありますが、いろいろずっと調べてみますと、今後非常に増加する問題というのは年金だけではないということがわかってまいりました。要するに医療も老人医療というものが、これから老人が大変ふえてくるために、老人医療費というものも相当なスピードで拡大する。それから老人福祉、これはいろいろな施設その他、特養や養護老人ホーム等の
運営費でありますけれ
ども、施設はもう国が建てれば当然でありますけれ
ども、そういう
運営費、言うなれば老人福祉のための
措置費というものを加えまして調べてみますと、ことしの六十二年の予算で七兆五千百億実は予算が一般会計の歳出で立っているわけでございます。これが、さっき申し上げましたように
昭和八十五年というところで、西暦二〇一〇年でありますけれ
ども、ピークを越えるのは、西暦二〇二〇年から二五年になればどうやら老齢化が横ばいになりますから年金も医療も横ばいになってくるのでありますけれ
ども、そこまではどんどんふえていくわけであります。ですから、大体そのころに、八十五年にどのぐらいこれが増加するかというと、ざっと五倍ぐらいになるのです。五倍ぐらいになるということは、今七兆五千億ですから、三十七兆五千億円を実は必要とするというのが西暦二〇一〇年、
昭和八十五年の姿になっているわけであります。
ですから、私はこの間本
会議で申し上げましたけれ
ども、今や私
どもは、経済的な問題では世界を見ながら、しかし我々の国の中の問題についても実は十五年、二十年先を見ながら全体のシステムを考えていかなければ、間近になってやっつけ仕事でこんな仕事ができるはずはないのでございます。ですから、官僚の
皆さん大変優秀な方であります。ただ、システムが実はこの
皆さんが動けるようになっていないわけです。各省が、御
承知のように、大蔵省、通産省、運輸省、郵政省、農水省、建設省、縦割りであります。この縦割りの中にまた局があるわけでありますから、私は
宮澤さんに、通産
大臣のときでございましたか、大蔵省は局あって省なしというのを通産
大臣に申し上げたことがございます。記憶にあるのでありますが、今日、局あって省なしの問題よりも、局の中で自分が分担していることをしっかりやるだけでも精いっぱいという今の状態ですから、周囲、世界じゅうを見渡して自分たちの政策を考えるというのは、実はこれは今のシステムからしてとても不可能な問題なのでございますね。ですから、そういう意味ではそれをやるのは政治家の任務ではないのだろうか。
ですから、そういう意味で、行政の
皆さんは、原案を出されるのは恐らく課長でございましょう。しかし、課長というのは大体二年ぐらいしかいないのじゃないですか。一般的にそうでしょう。三年も五年も課長をしている人はいないと思うので、大体が二年。今度は決定権を持っているのは
局長。
局長が大体二年。この前から私は、大蔵省は証券
局長というのはどうして一年にするんだ、二年にさせると言っている。ともかく吉本さん以来
局長を二年やったのは一人もいない。一年では法律はできないのですよ。これは
大臣よくおわかりだと思うのですが、その行政になれるために大方一年かかってしまうので、それでは法律といったらもうかわってしまう。ですから、法律の作業をするためには
局長は最低二年在職が必要だと私は思っているのですが、なかなかそうならなかった。
私がやかましく言ったおかげで、亡くなりましたけれ
ども、佐藤さんという証券
局長ができました。そこで、私は佐藤さんに早速、私も
大蔵委員会に長くいるものですから、あなたは大体二年いけますよ、だからひとつ投資顧問法というのをやってください、こういう話をしました。しかし、佐藤さんは、二年いくかどうかわからないものですから初めはなかなか渋って、先生、それはおっしゃるけれ
どもなかなかそう簡単にいきませんなんて言っていたのですが、見通しが立ってきて、投資ジャーナルというような事件も出てきたら、いや、やりましょうということになって実は取りかかっていただいたが、不幸にして病気のために亡くなられて私は本当に残念だと思うのですが、投資顧問法という法律ができたわけですね。そうして、この法律は、実は共産党の
皆さんを含めてこの
委員会で全会一致で成立をしたという
歴史的にも非常に珍しい法律になっているのであります。私は、そういう意味で、ともかくも二年しかいない人に十年先、十五年先のことを考えろといったって無理だと思うのです。
そうすると、これから、私が今いろいろなところで言っていますのは、中曽根さんは戦後の総決算と言われるけれ
ども、総決算じゃないんだ。戦後の枠組み、パラダイムを変えなければ、日本は世界の中で生き残れない、私はこういう心配がしてならないのであります。それは、行政官の諸君、優秀でありますけれ
ども、十年先、十五年先の計画を立て、世界を見ながら物を考えるようにシステムがなっていないからなのであります。
そうすると、今の新
憲法が私たちに定めておりますように、国権の
最高機関がそれなりの職務を果たさないで行政におんぶしてやっているような状態は、ここでこの枠組みを変えて、要するに政治主導、
国会主導で、
皆さん議員が一生懸命に勉強するようにしなければしようがない。それにはしかし今の仕組みは適していないのですね。金帰火来、きょうはもう金曜日でございますから、ここにお座りの
皆さんの遠方の方は、座っておられても、汽車の時間がどうだろうか、皆随分、これはそっちだけじゃありません、こっちの
皆さんも
議員ですから同じでありますが、気にしていらっしゃるというのが率直な実情ですね。これはどうしても改めなければいかぬ。そのために大事なのは、やはり西ドイツがやっておるような比例代表小選挙区制というあの制度をやるべきだ。そうして、要するに政党本位の選挙制度になれば選挙区にしょっちゅう帰る必要はないのでありまして、みんなが
国会で勉強して、政策の争いで
国民にこたえるということになるわけでありますから、どうしても土台になる選挙法を変えて、そこでみんなが勉強できる条件をつくって、そうして現在の新
憲法の
国会法に基づいて、
皆さんで大いに切蹉琢磨して、政治家として我々が
国民に負託されておる任務を果たせるようにしなければだめだと思うのです。
〔熊川
委員長代理退席、
委員長着席〕
池田委員長がおられてあれなんですけれ
ども、私は鈴木さんが総理のときに公選の
委員会に来ていただいてこれをやりました。そうしてこういう
提案をしたのです。これは制度の改革というのは大変ですから、今、来年なら来年決めていただいたら、実施は十年先からの選挙でやりましょう。大体三年に一遍ですから、そうすると十年先というのはその間に選挙が三回行われるわけです。
皆さんあの制度が十年先にあると前にわかりながら選挙をやってこられるわけですから、十年先にやるということで総理
大臣ひとつどうでしょうと言いましたら、堀さん、十年は長過ぎますよ。長過ぎますよと言ってやらなければ、これは全然長過ぎも何もしないので、結局できなかったのです。
御
承知の参議院全国区比例代表というのは私が政策審
議会長のときにつくった案なんでして、実は竹下さんが選挙制度調査会長のときに、堀さん、どうも参議院金がかかってしようがないしするから、あなたの案だけれ
どもあれを自民党案として出したいけれ
どもどうかとおっしゃったから、私は、結構です、それは本来なら衆議院がやるべきことなんですけれ
ども、今の情勢ではなかなか衆議院にそれが期待できないので、一応参議院でやってみたらどうでしょうかということでございました。この
法案は参議院は強行採決でございましたけれ
ども、私は
昭和三十五年からずっと公選の
委員しているわけでありますから、わざわざ
理事を買って出て、久野
委員長に、久野
委員長ひとつお任せください、必ず衆議院は整々と処理ができるようにやりますから。公明党、共産党の
皆さん御反対でございましたけれ
ども、最終的には話し合い、納得していただいて整々と採決を行っていただいたという経過があるわけであります。
ですから、私が今申し上げておることは、政治の一番基本は選挙制度だ、こう思っているのです。私は
昭和三十三年に当選して三十五年に
委員会の選択が初めて我々に任されたときに、
大蔵委員会と公職選挙の
委員会を選択いたしました。それは、
大蔵委員会というのは国の財政や経済、それの最も中心的な
部分であるから、ここをしっかり勉強して、この前の片山内閣のように、私
どもそのころは十年先には政権をとれると思っていましたから、そこで
大蔵委員会に来てしっかり勉強しよう。もう一つ大事なのは選挙制度だ。今の日本の選挙制度というのは、要するに自民党と社会党で選挙しているのじゃないのです。私の選挙区で言いますと、実は原健三郎さんと私はずっと御一緒に長くやっているのですけれ
ども、(発言する者あり)いやいや、あなたは最近出てきたのだからどうってことはないのだ。もう長い間、原さんとやっていますが、大変仲がいいわけです。どうして仲がいいかというと、原さんはもう一人おられた永田さんのことを私に、あいつけしからぬよ、こうおっしゃる。私は永田さんもいい方ですから何とも思わないけれ
ども、原さんにすれば気に入らないことが多分あるのでしょう。今度永田さんは永田さんで私に、堀さん、なあ、原さんというのはひどいことをやるよ、こう言うのですが、こっちは聞き役で、ああそうですか。何もかかわる必要はないのですけれ
ども。
要するに、今の選挙というのは、自民党の
皆さんが自民党の中でどうやって通るかということを一生懸命やる。そうなるとそこでは何が起こるかというと、政策の争いではありませんから、後援会を拡大をして頭数をそろえる。お金がたくさん要る。これがロッキード事件に象徴されるところの日本の政治の最も問題のある
部分だ、私はこう認識をしておるわけなんです。ですから、公職選挙で比例代表の選挙が行われるようになって、私は
委員会で自治省に選挙違反があったかどうかと言いましたら、選挙違反がございません。比例代表では選挙違反にならないのです。ですから、選挙違反が起こるような制度を選挙違反の起きないような制度に改めて、そのことによって政治家が安心して勉強ができて、
憲法前文に言うように
国民の信託にこたえられるような政治のシステムをつくることが、私は、今の戦後の枠組みを変える、パラダイムを変えるという一番中心課題ではないのか、こういう認識なのでありますけれ
ども、
大臣はいかがでございましょうか。