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1987-08-25 第109回国会 衆議院 商工委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年八月二十五日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 佐藤 信二君    理事 臼井日出男君 理事 奥田 幹生君    理事 加藤 卓二君 理事 田原  隆君    理事 与謝野 馨君 理事 奥野 一雄君    理事 二見 伸明君 理事 青山  丘君       麻生 太郎君    甘利  明君       石渡 照久君    小川  元君       尾身 幸次君    大坪健一郎君       奥田 敬和君    梶山 静六君       粕谷  茂君    玉生 孝久君       中山 太郎君    額賀福志郎君       野中 英二君    穂積 良行君       宮下 創平君    山崎  拓君       緒方 克陽君    上坂  昇君       城地 豊司君    関山 信之君       浜西 鉄雄君    水田  稔君       長田 武士君    権藤 恒夫君       森本 晃司君    薮仲 義彦君       米沢  隆君    東中 光雄君       藤原ひろ子君    松本 善明君  出席国務大臣         通商産業大臣  田村  元君  出席政府委員         内閣法制局第四         部長      大出 峻郎君         外務政務次官  浜野  剛君         通商産業大臣官         房審議官    深沢  亘君         通商産業省通商         政策局次長   吉田 文毅君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         通商産業省機械         情報産業局長  児玉 幸治君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      赤尾 信敏君         外務省中近東ア         フリカ局中近東         第二課長    渡辺 俊夫君         商工委員会調査         室長      倉田 雅広君     ――――――――――――― 委員の異動 八月二十二日  辞任          補欠選任   石渡 照久君      片岡 武司君   宮下 創平君      河本 敏夫君 同日  辞任          補欠選任   片岡 武司君      石渡 照久君   河本 敏夫君      宮下 創平君 同月二十五日  辞任          補欠選任   大西 正男君      穂積 良行君   工藤  晃君      松本 善明君   藤原ひろ子君      東中 光雄君 同日  辞任          補欠選任   穂積 良行君      大西 正男君   東中 光雄君      藤原ひろ子君   松本 善明君      工藤  晃君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する  法律案内閣提出第八号)      ――――◇―――――
  2. 佐藤信二

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。緒方克陽君。
  3. 緒方克陽

    緒方委員 今回の外為法改正も、きょう二日目の審議であります。我が党の同僚議員からも、この問題について厳しく問題点指摘をされながら質疑をされておりますが、私は、次のような三つの理由でこの法案に反対であるという立場を明らかにしながら質問を行いたいと思います。  まず第一は、これまでも言われてきたことでありますが、東芝機械外為法による輸出申請に当たりまして、いわゆる不実の記載によって機械輸出を行ったということでありますが、そのこと自体は問題があるにしても、その機械によってソ連の原潜の音が小さくなったということでありますが、その確証も得ることのないままに、いわゆる濃厚な嫌疑ということだけで日本自由通商目的とする外為法改正を行うことは非常に問題があるということ。二つ目には、日本貿易立国ということで東側あるいは社会主義圏の国との交易を初め一層交易を拡大しなければならぬときに、この法律はこれに対する制約を与えるものであるということ。そして三つ目に、いわゆる安全保障条項という概念をこの法律にさらに持ち込んで、法の性格を変えるだけではなしに、今度の法改正によってその規制基準も明らかにしないまま、違反した者については罰を科す、しかもこの罰も強化をするということでありますが、特にその基準が明らかでないということで罪刑法定主義にも反する、そういうことで憲法違反疑いもあるという観点があるということで、非常に問題の法律であることを前提にして、以下質問をしていきたいと思います。  まず第一に、本法案の提案に絡んで、あるいは東芝事件も含めてでありますが、東側諸国社会主義圏との交易の縮小といいますかキャンセル、そういう問題が言われているわけでございますが、その中で特に、同僚議員も取り上げておりますが、中国の問題と全体的な問題についてお尋ねしたいと思います。  まず第一に、中国問題です。これは八月二十三日の朝日新聞でありますが、自民党の一年生議員訪中団中国代表との話の中で幾つか取り上げられておりますが、特に貿易問題では、「中国貿易は好調で八七年は総額約八百億ドルに達する見込みだが、このうち八六年に全体の四分の一を占めた対日貿易比率は八七年には六分の一に低下する」だろうというような報道があるわけでございます。資料によりますと、中国は、一九八五年が百八十九億ドルですね。これは両方合わせてでありますが、一九八六年が百五十五億ドルですけれども、これがさらに下がる可能性があるということを報道その他で言われているわけです。そういうことで、対中貿易というのは今回の法改正なりあるいは外為ということでかなり厳しくなっていくということになるのかどうか、そこらの見通しについてまずお尋ねをしたいと思います。
  4. 吉田文毅

    吉田政府委員 日本側の対中国契約キャンセルが十八億ドルに上るという旨の中国側指摘があったという報道がございますが、これは事実でございます。しかしながら現在までのところ、そのように多額のキャンセルが生じているということにつきましては、当省としては確認しておりません。  また、中国貿易に占めます我が国との貿易比率は、これは中国側輸入がベースになりますので中国側の統計によりますと、八六年には二三・三%であったものが、八七年の一-六月では二〇・五%、約五分の一というふうに、そのシェアがやや減少しております。しかし、八七年の通年で六分の一に減少するかどうかにつきましては、現在のところ明確な見通しはございません。  なお、中国貿易に占めます我が国との貿易シェア低下傾向は、ココム事件発生以前、既に一九八五年以降引き続いて減少ぎみになっております。これは、中国側貿易収支改善を図るために、近年我が国からの輸入の多い自動車とかテレビなどの耐久消費財輸入を抑制しているということにも原因があるというふうに言われております。
  5. 緒方克陽

    緒方委員 この件については中岡側政策のあらわれのような表現でございましたが、さき委員会質問でも、田村通産大臣としては、対中貿易については積極的に取り組んでまいりたいといった意味での所信の表明もあっておりますので、そういうことで取り組んでいただきたいということを、これは意見として申し上げておきたいと思います。  次に、同僚議員質問関連してでありますが、さき委員会城地委員から、対中国問題その他、あるいは中小企業の問題も含めて非常に影響を受けているという中で、一体どういう対処をするのか、特別の配慮その他審査体制の促進を含めて対処をすべきではないかというような質問が出ましたが、そのことについて大臣としては、企業がかたずをのんでいるということで、しばらくしたら戻ると思う、その間待ってもらいたいという趣旨の御答弁があっておりますが、果たしてそうなるのかどうか。その時間的問題なども含めていろいろ問題があろうと思いますので、次の五点について大臣なり通産の方からお答え願いたいと思います。  まずその第一は、今回の事件を含めて、キャンセルの件数と実際に影響を受けている貿易への障害の額はどれぐらいになるのか。二つ目が、審査のおくれが確かにあるということでありますが、概括的に言われておりますけれども、どれくらいのペースでおくれているのか。そして現在、一番新しい時点で結構でありますが、どれぐらい審査が滞っているのか。三番目に、一番おくれているのはこの前は三カ月程度と言われておりましたが、もっとおくれているものもあるのじゃないかと思うのですが、一番おくれているのは何カ月ぐらいか。そして四番目に、今後何カ月ぐらいすれば、あるいは半年すれば一年すればといいますか、これは見通しの問題でありますが、もとのペースに戻るのか。最後に五番目に、一九八七年のいわゆるココム規制対象国との貿易総額は、通産省としてはどれくらいを見込んでおられるのか。  以上、五点に、ついて御答弁を願います。
  6. 児玉幸治

    児玉(幸)政府委員 お尋ねの第一点に、つきましてお答えを申し上げます。  東芝機械でございますが、これは先生御承知のように、五月の十五日に対共産圏向けにつきましては全品日一年間輸出禁止処分をいたしたわけでございます。今日までのところ、この東芝機械関係で四件、輸出金額にいたしまして二億二千万円のキャンセルが発生しているというふうに承知をいたしております。  それから伊藤忠につきましては、三カ月間の工作機械共産圏向け輸出行政指導でストップしているわけでございますが、これにつきましてはこれまでのところキャンセルになったものはないというふうに承知をいたしております。
  7. 畠山襄

    畠山政府委員 まず、審査のおくれの実態でございますが、御質問の中でも触れておられますように、大体三カ月ないし四カ月のものになっているケースが多いわけでございます。  どれくらい滞っているかということでございますが、例えば共産圏向けEL輸出承認の残高と申しますか、まだ未承認申請の受け付けをやっているものというのが百件たまっておるというようなことになっております。  それから、これはEL申請があったものでございますので、そのELの、輸出承認の前の段階のものがまだあるわけでございますけれども、ちょっとその前の段階はまだ把握いたしておりませんが、その申請が出てしまったものについて百件とかいうことになっておるわけでございます。  それから、平均的に三、四カ月おくれだとしても、一番おくれているのがどれくらいかという御指摘でございますが、それは行政例外通産省限りで承認できるものと、それから通産省限りで承認できなくて、特認といってパリヘ送るものとございますが、そのパリヘ送る方でおおむね半年ぐらいかかっておるという実情でございます。  とりあえず以上でございます。
  8. 吉田文毅

    吉田政府委員 八七年のココム規制国との貿易総額はどの程度になるかという点でございます。我が国といわゆる共産圏に属する諸国との貿易は、本年上半期の貿易総額、これは往復でございますが、これで対前年同期比で七%減、百六億ドルとなっております。  八七年全体としてどの程度になるかにつきましては、大変恐縮でございますが、為替レートの推移あるいは貿易相手国外貨事情等不確定な要因が多いため、現時点で見通すのはなかなか難しいという状況にございます。
  9. 緒方克陽

    緒方委員 それで、今の輸出申請に伴う審査のおくれの問題でございますが、大変滞っておるということについては省としても理解をされて努力されているようでありますが、田村通産大臣としてもこのことについてはさらに努力をしていただかなければならぬというふうに思いますが、その点について大臣のお考え、努力見解をよかったらお願いしたいと思います。
  10. 田村元

    田村国務大臣 先般も申し上げましたように、若干異常な姿でございます。しかし間もなく落ちつくものと信じております。物によっては違いますけれども、俗に言う一、二カ月常識というものに落ちついていくのではないだろうかと思っております。
  11. 緒方克陽

    緒方委員 そこで、具体的な法案の内容について質問をいたします。  私の質問趣旨は、今度の法改正法律性格が非常に大きく変わるのではないか。いわゆる原則承認許可ということになりまして、許可というのは原則許可特例許可ということであります。また、そのほかも含めて非常に大きく性格が変わるのではないかということでお尋ねしたいわけでございますが、既に何回も言われておりますように、この外為法というのは外国との自由な取引が行われることを基本とした経済法でありますが、今回非常に性格が変わるであろうというふうな改正があるわけです。  それは一つには、いわゆる安全保障条項ということで四十八条の中でこれを特掲、特別に掲げることによる制限強化あるいは罰則強化、さらに未遂罪適用も含めてであります。  そして先ほども言いましたが、三つ目にいわゆる輸出承認から許可ということで分割をされて、実質的に制限強化をされてくるということ。さらには、後ほど質問いたしますが、外務省との実質的な輸出承認に当たっての協議ということになるのではないか。これは非常に疑念の問題でありますが、そういうことで下手をすれば法定協議へというようなことにもなりかねないということで、通ってしまえば非常に性格が変わるのではないか、そういうふうに思うわけでございまして、以上の点について法制局並び通産省見解を伺います。
  12. 大出峻郎

    大出政府委員 今回の改正案でございますが、これは従来から外為法規制対象となっている貨物輸出等取引のうちで、国際的な平和及び安全の維持を妨げると認められる、そういうような取引に係る違反行為については、外為法目的である第一条に書かれておりますが、対外取引の正常な発展あるいは我が国経済の健全な発展に重大な影響を与えるおそれがある、こういうことにかんがみまして罰則等強化を行おうとするものでございまして、外為法の基本的な性格あるいは自由貿易原則というようなものを変更するものではないというふうに考えております。
  13. 田村元

    田村国務大臣 今回の改正は、原則自由、必要最小限規制という外為法の枠組みの中で、ココム関連貨物及び技術の違法な輸出について罰則、それから行政制裁強化を図ろうというものでございます。  したがいまして、一たん違反行為がありましたならば従来より厳しい対応で臨むということでございますが、その意味では、国際的な平和及び安全の維持に対しより配慮したものということは言えると思います。しかしながら、ココム規制は従来から外為法で実施してきているところでございまして、今回の改正によりまして規制対象が拡大するものではございません。罰則強化等を中心とする今回改正によって、外為法の基本的な性格が変わるものとは考えておりません。  それから、御意見のございましたことで、現在の外為法の運用におきましては、許可承認という文言の差によって審査の方法に差を設けておりません。今回の改正案では、従来通産大臣承認を要することとされていた国際的な平和及び安全の維持関連のある特定貨物輸出については通産大臣許可を要するということとされております。これは、最近では「許可」という文言を使用するのが通例でございますために、新たに設けた条項についてはこの文言を使用したものであります。  なお、第三項において「承認」という文言を残しましたのは、この部分につきましては実質的な改正が何ら行われなかったために従来の例によることとしたものでございます。  それから、外務省との間で意見を述べ合うということを法定したが、それは将来法定協議へ移行していくのではないかという御意見だったと思いますが、あくまでも両省はそれぞれ必要に応じて意見を述べ合う、もちろんそれは尊重しなければなりませんけれども、意見を述べ合うということでございまして、外為法全体については通産省と大蔵省、そしてこの項目に関しましては通産大臣主務大臣通産省主務官庁であることに間違いはございません。
  14. 緒方克陽

    緒方委員 今大臣から御答弁のありました許可承認かという問題については、後ほど少し私の意見も述べ、また政府意見も聞きたいと思うのです。  それは後ほどいたすことにいたしまして、法制局の方では変わっていないというようなことが明確な形で答弁されたわけでございます。そういうような法制局の考え方が、これから私が問題にしますけれども、結局今度の法改正憲法違反疑いがあるということになりかねないということでございまして、政治に左右されて法制局もそういうような見解を持つということについては非常に問題であるということだけは、この際明確に私の意見として申し上げておきたいと思います。  次に、四十八条についてさらに質問をしていきたいと思いますが、いわゆる「国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして」政令で定めるところにより通産大臣許可ということになるわけですね。そして、これに違反した者は懲役または罰金その他行政罰行政のいろいろな処分もあるわけでございますが、これが一番大きな問題です。いわゆる、国民は下手をすると法律中身をよく知らないで罰せられるということになるわけであります。しかし、法律では「国際的な平和及び安全」、それに違反するようなものを許可なく輸出をした者については罰せられるということになるわけでございまして、同僚議員も言いましたように、私は一番ここが問題だと思います。  憲法三十一条は「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」というふうになっているわけですね。余り繰り返し言っても何ですから、今日までの議論の経過から申し上げたいのですが、いわゆる通産省の今日までの本委員会での答弁は、許可を受けなければならないものは政令で個別的に定めてあるので明確であるというふうにされまして、これについて、その基準は明らかじゃないじゃないかという質問に対して、政府側としては、輸出をする業者は勉強をするからわかるというふうな御答弁さき委員会であっているわけですね。そうしますと、国民は罰せられるわけですから、よく勉強しなければわからぬような法律というのはおかしいと思うわけであります。  そこで、具体的にお尋ねしますけれども、いわゆる輸出業者は勉強するからわかるということですが、どれぐらい勉強すればわかるというふうに思われますか、お答え願いたいと思います。
  15. 畠山襄

    畠山政府委員 「国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められる」ような貨物ということで政令で具体的に指定をするわけでございますが、これは、より具体的に申し上げれば、現在百七十八品目指定してあるわけでございますけれども、これをまた指定することになると思います。  確かに個々の品目によりましてはいろいろ複雑なことも書いてございますけれども、ただ、その複雑な品目を生産なり輸出なりなさろうとする方方は当然それを知っておられるわけでございますので、その物については知識を持っておられるわけでございますので、それを今後とも、今御指摘のように法令遵守意識徹底等によって一段としっかり知っていただくということと相まって、この品目指定自体がそう不明確であるということはないというふうに考えております。  それで、先ほど憲法三十一条との関連で御指摘がございましたけれども、この前からお答え申し上げておりますように、こういう経済法のようなものは対象技術進歩等々で変化をしてまいりますので、要件を一般的に法律で定めまして、そして対象品目なり技術政令等に委任をするというケースは、外為法だけじゃなくてほかにもいろいろあるわけでございまして、そういう意味で、特に外為法のこの書き方が憲法三十一条に違反しているというようなことは考えておりません。
  16. 緒方克陽

    緒方委員 私の質問に明確に答えてないわけでございますが、例えばいろいろな法律があります。交通違反であればこの道路では六十キロを超してはいけないとか、あるいは人間を殴ってはいけないとか、いろいろなことがあるわけですが、いわゆる国際的な平和と安全を維持する、そういう漢たる基準政令で出すということですが、その中身を勉強すればわかるというふうに言われたわけです。ですから、どの程度勉強すればわかるかというのが私の質問ですから、そのことについて答えてもらいたい。
  17. 畠山襄

    畠山政府委員 恐縮でございますけれども、どの程度勉強すればというのを具体的に何日勉強すればとか、そういうふうにはお答えできないわけでございますが、まず一般国民でございますと、これは金額は低うございますけれども、一応五万円以下のものは適用除外ということになっております。それで、問題は五万円以上のものを、昨今五万円以上のものが多うございますが、出すときでございますけれども、やはり一応法律政令で定める貨物をと書いてあるわけでございますので、政令をごらんいただくということが必要であります。それから、政令をごらんいただいただけでおわかりいただけませんときは、恐縮でございますが、通産省なりあるいは通産局というのが地方にございますけれども、そういうところへお問い合わせいただくという手続が必要であろうかと思います。
  18. 緒方克陽

    緒方委員 通産局に出てこいという話ですが、一般国民は余りわからぬでもいい、五万円以下は関係ないからみたいなことですが、罰せられるということですからはっきりしなきゃならぬわけですね。間違えば罰せられるわけですよ。一般国民は何時間かということについてお答えできませんでしたけれども、それでは、私も一般国民の一人で同時に議員であるわけで、商工委員をしておりますけれども、私なら何時間ぐらい勉強したらわかるでしょうか。
  19. 畠山襄

    畠山政府委員 一般的に輸出をなさるということではないと思いますので、当該品目について知識を得ようとなさるということでございましょうと思いますから、緒方委員のような優秀な議員の場合はそれほど時間がかからずにできるのではないかというふうに思います。品目にもよりまして、機械の特にソフト関係、そういったものとかかわりますと少し難しくなりますけれども、一般的に特定品目でございますので、何も百七十八品目全部をお知りになろうというわけではないと思いますので、それほど時間がかからないし、もし時間がかかりそうでしたら、恐縮ですが、先ほどのようにお問い合わせいただけると幸いでございます。
  20. 緒方克陽

    緒方委員 今のような御答弁で、結局いわゆる四十八条で言う「国際的な平和及び安全」にかかわるというものについての基準は明確でないわけですね。そういうもので今回の法改正をやって罰則強化するということでありまして、非常に問題である。明確な答えがないわけでありますから、こういう法律については政府自身がもっと考え直さなきゃならぬということを申し上げて、後のこともありますので、政府の御回答は、国民をこの法によって罰するに当たっての明確な基準はきょうの委員会でも示されなかったということだけ確認をして、次に進みたいと思います。  次に、法制局お尋ねいたします。  法制局も同じようにさき委員会で、第四部長の方から、このことについて、要するに法律の条文だけではないが、政令国民の皆様がわかるというふうに理解していただきたいという答弁ですね。それで、政令国民の皆さんがわかるというふうに理解していただきたいということですが、私は国民代表として理解ができないわけですね。法制局は一体どういうふうにお考えになりますか。
  21. 大出峻郎

    大出政府委員 今回の改正案の「国際的な平和及び安全」ということについてでございますが、これはこの前も申し上げましたように、国際社会において紛争あるいは紛争のおそれのない状態を意味しておる。その維持を妨げると認められるといいますのは、例えば国際間における紛争を引き起こしたり、これを助長したり、あるいはそのおそれがあるような場合を言うというふうに考えておりますというふうにこの前申し上げたわけであります。  この要件に該当する特定技術取引だとか特定貨物輸出等につきましては、それぞれの規定、つまり二十五条なり四十八条の規定に基づきまして政令で具体的に品目を定める、こういうふうになっておるわけであります。したがいまして、それぞれの条項に基づきます政令で具体的に品目を定めていく、こういう法律的な仕組みになっておるわけでございますので、法律政令と両方相まってごらんいただけば、具体的に何が許可対象になるのかということがはっきりするということをこの前申し上げたつもりでございます。
  22. 緒方克陽

    緒方委員 今の御回答があった後、それでは国民がわからないじゃないか、一体どうしてくれるんだという質問に対して、政令国民の皆様がわかるというふうに理解していただきたいというのは、これは私がメモをとってあなたがしゃべられたのですよ。国民の皆様がわかるというふうに理解していただきたいというふうに、議員委員会で言ったわけですね。しかし、それは理解できない、その百七十八品目、どういうことだということを具体的に国民がわかるようにしなければ、そのことによって罰せられるというのは問題じゃないかということで、理解していただきたいということについて理解できないというふうに言っているわけですから、説明をしてくださいよ。
  23. 大出峻郎

    大出政府委員 現行の外為法におきましても、輸出貨物等につきましては四十八条に基づいて政令品目指定をいたしておるわけであります。政令では別表がございまして、そこに個別に一つ一つ品目を掲げてございまして、これらは通産大臣承認を要するというふうに書かれておるわけであります。今度の改正案に基つぐ政令といいますものも、それと同じような形で具体的に品目というものを政令で書かれていくということでございますので、どのような品目通産大臣許可を受けなければならないものであるかということは、政令を見ることによって明らかになるというふうに考えております。
  24. 緒方克陽

    緒方委員 その答弁はもう何回も聞いているわけですよ。それで、その議論の結果、外為法を見て、そしていわゆる政令を見なさいということだけれども、結局国民はなかなかよくわからぬという同僚議員質問に対して、国民の皆様がわかるというふうに理解していただきたいというあなたの答えがあったから、わからない、一体どうするんですか、そこを聞いているんですよ。前段の方はもう五、六遍聞いておりますから、そこのところを言ってください。
  25. 畠山襄

    畠山政府委員 恐縮でございますが、通産省政令の話でございますので私の方からお答え申し上げますけれども、一般的に法律等で、行政法で罰せられる場合もいろいろございますけれども、やはりその限界のところはやや解釈問題というのが出てくるのが通例であろうかと思います。この場合、この百七十八品目の場合も、非常にわかりやすいものとそのぎりぎりの限界のところと二つあろうかと思います。非常にわかりやすいものについては全く知識のない一般国民でもわかるでしょうし、ただその限界のところは、これはこの政令に限りませんで、ほかの法律でもやはり解釈問題をある程度行政庁なりなんなりに問い合わせていただくことが必要であろうかと思います。  それでこの百七十八品目の場合でございますが、この場合は、私ども事実上の制度として非該当証明という制度を設けております。それで、もし国民が、国民と申しますか具体的には企業でございますけれども、企業が判断に迷われる場合には、それが該当するかどうか、品目についてこういうものだという説明書を出していただきまして、それに基づいて非該当であれば非該当証明書というものを出す事実上の制度も講じております。したがって、御指摘のような非常に困るというような事態にならないものと考えております。
  26. 緒方克陽

    緒方委員 今も言われましたように、ある程度明確なものもあるでしょう。しかしこれは、いわゆるココム規制品というのはそれぞれ年度ごとに変わっておりますし、内容も大変複雑な問題である。いみじくも局長自体が言われたように、グレーゾーンといいますか、ぎりぎりのところの問題がある。あるものはパリまで持っていかなければならぬというような大変不明瞭な部分があるわけで、それを行政の方が判断をして、通産省通産大臣が判断をして、裁量で決めて、そして違反をすれば刑罰ということでありますから、非常にわかりにくい。しかも政府の裁量で決められるという問題で、さっきも言いましたようにこれは憲法違反疑いが非常に強いということでありまして、私は、ほかの質問もありますから、これ以上議論を詰めても進みませんから、憲法違反疑いがある、大変問題であるということだけは、この際指摘をしておきたいと思います。  次に、四十八条の各項について質問をしたいと思いますが、四十八条が「輸出許可等」で一項、二項、三項と今度の新しい改正であるわけでありますが、一項はココム関連というふうに思われますが、二項についてであります。二項は「通商産業大臣は、前項の規定の確実な実施を図るため必要があると認めるときは、同項の特定の種類の貨物を同項の特定の地域以外の地域を仕向地として輸出しようとする者に対し、政令で定めるところにより、許可を受ける義務を課することができる。」というふうに言われているわけであります。二つ質問いたしますけれども、一つは、許可の義務を課すことができるわけですから、課さない場合もあるわけですね。課さない場合はどういう基準なのか、これがまず第一。そして二つ目に、許可をする場合の基準は一体何なのか。この二点についてお答えを願います。
  27. 畠山襄

    畠山政府委員 まず第一点の許可の義務を課さない場合でございますけれども、一応論理的な整理といたしましては、ここにございますようにこれは「同項の」、同項というのは第一項でございますが、「特定の地域以外の地域を仕向地として輸出しようとする者に対し、」でございますから、第一項で仮に全地域向けに規制をしているというような場合には第一項の地域以外の地域というのがなくなりますので、そういうものについてはここでは許可を受ける義務を課す必要がないということが出てまいります。それから、この第二項のおおむねの趣旨は、要するにココム物資ならココム物資についてダイバージョンが起こらないように、迂回輸出が起こらないようにということでございますので、迂回輸出を防止する必要がないと考えられるようなものがあるとすれば、そういうものも許可を受ける義務を課さないことになろうかと思います。  それから、第二点の許可をする場合の基準ということでございますが、これは先ほどの迂回輸出の抑制ということがねらいでございますので、したがいまして、当該第三国へ出した場合に、その貨物が当該第三国に最終的に落ちつくということが基準でございます。したがいまして、具体的には例えば輸入証明書と申しますかIC、インポートサーティフィケートと俗称いたしておりますが、そういう輸入証明書をその国の政府から取るとか、あるいはそういうものが取れない場合にはユーザーから最終需要証明書と申しましょうか、そういうものを取るとか、そんなようなことが基準になるわけでございます。
  28. 緒方克陽

    緒方委員 今言われました相手の国からの輸入証明書あるいはユーザーからということですが、「等」ということになっております。これはもう時間がありませんからあれですが、そのほかにあるものはこの際、明確にしておいていただきたいと思います。     〔委員長退席、加藤(卓)委員長代理着席〕
  29. 畠山襄

    畠山政府委員 輸入証明書のほかに、最終に通関をしだということを証明するデリバリーベリフィケーション、DVと言っておるものがございます。それを今余り運用いたしておらない国が多いようでございますけれども、しかしそれが運用に入ったような場合には、輸入証明書に加えて今申し上げた――輸入証明書というのは、そこへ輸入しますよということを事前に証明するわけでございますね。今のDVというのは、事後的に確かに入ったということを証明する制度でございまして、そういうものを要求する場合もあろうかと思いますが、そういう意味合いで申し上げたわけでございます。
  30. 緒方克陽

    緒方委員 そうしますと、「等」というのは通関証明書ということで、はっきり言うと大体三つということになりますか。
  31. 畠山襄

    畠山政府委員 大体三つないし二つということになろうかと思います。
  32. 緒方克陽

    緒方委員 それでは先ほど大臣から、最初の質問の中で、法改正で四十八条一項、二項、三項の一項、二項は「許可」にして、三項は今回法律性格が変わっていないから「承認」ということだということで、今では法律的には許可承認は変わらないからだんだん許可の方に変えているというような言い方でございますが、これが非常に問題なわけですね。  それで、辞典を幾つか調べたのですが、いわゆる許可というのはある辞典によると、反対言葉としては禁止、それから承認の反対は否認ということでありまして、結局許可というのは「願いを聞きとどけること。」これは広辞苑です。「一般に禁止されている行為を特定人に対しまたは特定事件に関して禁止を解除する行政行為。」、許可の場合は禁止が原則です。承認の場合には「正当、または事実・真実と認めること。」、「ききいれること。」「国家・政府・交戦団体などについて、」外国が「その国際法上の地位を認めること。」ということで、これは原則追認ということで認めることですが、許可の場合はいわゆる原則禁止で、例外許可ということになっているわけですね、  それで通産の方ともいろいろお話をしましたら、いや役所では同じですよというような言い方をされました。役所の理解国民理解というのは、やはり言葉の意味で言うと広辞苑などが一番正確だと思うのですが、そういう意味許可承認というのは非常に性格が変わっているわけですね。役所は、承認許可も同じだと言いながらなおかつ許可にどんどん変えていくということになれば、知らないうちに政府の権限によって一切、原則禁止だけれどもこのことについては政府が認めるんだということにだんだんいわゆる許可権限というのが強まっていくということで、この外為法だけではなしに、これからのいろんな法律全体にも影響を受ける問題ではないかという意味で、私は非常に深刻に受けとめているわけであります。  このことについては、やはり承認ということにしなければならぬじゃないか、あるいは「許可」と「承認」というふうに分けた問題については非常に問題がある。行政がこのことによっていわゆる権限を拡大しようとする懇意的な意図がこの中にあるということで問題だと私は思うわけですが、このことについてのお考えを聞きたいと思います。
  33. 畠山襄

    畠山政府委員 承認許可のニュアンスの差につきましては、今委員が御指摘のようなあるいはニュアンスの差があろうかと思いますけれども、ただ現在の外為法の運用というものを考えてみますと、やはり輸出の場合に、貿易発展あるいは経済の発展という目的の限りにおいて最小限度の制限ができるということになっております。そして、その制限を「承認を受ける義務を課する」という形で制限をしているわけでございます。承認の否定は否認だということをおっしゃいましたけれども、やはりこの場合もそういう言葉を使ってありますけれども、とにかく承認を受けなければ違反になるわけでございまして、そういう意味で、許可の場合と実質的に同じ意味合いを持っているわけでございます。恐縮でございますが、実質的に同じ意味合いを持っているものを承認というふうにもう少し緩いかのごとき表現を使うということは、またそれはそれなりに批判もあるわけでございましょうし、最近の一般的な書き方が、そういうものは許可なら許可ということに統一をしていくということでございますので、本件それに倣ったわけでございます。  そういうふうに統一をしてまいりましても、外為法の一条の目的を変えるわけではございませんので、最小限の制約のもとで、基本は輸出自由の原則であるということは全く変えるつもりはございません。
  34. 緒方克陽

    緒方委員 今の御答弁では非常に納得しがたいわけですね。結局、大きな政府の流れとしてそういう使い方がされているということであれば、本委員会だけでの議論じゃなしに、全体的な問題として、政府の、行政の権限強化という意味の中でいろいろな、特に今回のような外為法というような自由な通商取引原則とする、そういうものにこういう言葉が次々とふえていくということについては反対である、問題であるということ。全体の問題として、またほかの委員会その他も含めてこの問題については取り上げていかなければならない問題であるということで、これには反対であるということを申し上げて、時間の関係で次に移っていきたいと思います。  次に、六番目でありますが、いわゆる「国際的な平和及び安全」というところで今回また貿管令が出されるということになりますが、これはどういう形になるわけですか。別表ですね。
  35. 畠山襄

    畠山政府委員 四十八条一項の例で申し上げますと、百七十八品目を具体的には当面列挙をするということになろうかと思います。
  36. 緒方克陽

    緒方委員 そういたしますと、後ほどにもちょっと触れますけれども、百七十八とその他ということで二つの表になるということでございますか。
  37. 畠山襄

    畠山政府委員 四十八条一項は今の百七十八品目になります。ただ、その中に武器が入ってまいります。百七十八品目について、共産圏と申しますか、そういう特定の地域になるわけでございますけれども、武器につきましては、これは全地域規制をするということになろうかと思います。それから、その中に含まれると思いますが、原子力関係資機材というのもありますけれども、これも全地域というような関係になろうかと思います。  それで二項でございますが、二項は迂回輸出規制でございますので、その百七十八品目のうち、先ほどちょっと御答弁申し上げましたように、全地域規制になってないものが対象になっていくというふうに考えられます。ですから、武器の部分等を除いたもの、だからココムの品目の多くの品目がそうでございますけれども、それがここに載っかってくるということになろうかと思います。  ついでに申し上げますと、三項でございますが、現在貿管令は二百二十三品目ございます。二百二十三から百七十八を引いた残りがこの三項に規定されるということになろうと思います。
  38. 緒方克陽

    緒方委員 それでは、次に進みたいと思います。  さき同僚議員質問の中で、いわゆる国際的な平和・安全というものの中で規制をされるものは何かということで、いわゆるココム品目と武器となり得るもの、そして原子力ということが言われました。原子力については、御案内のように我が国では平和利用ということになっているわけでありまして、そういうことで考える限り、まあこれはなかなか難しい問題ですけれども、許可項目に入りながらなおかつ一緒にココム品目と同じ扱いになって、罰則も五年ということに強化されるわけですが、その平和利用ということで限定をされているということにあって、ロンドン・ガイドラインとかその他いろいろ、そういうことで日本規制している内容については資料をいただいているわけですが、平和利用という限りにおいて一緒くたに罰則も引き上げるということについては少し無理があるのではないかなという気がするわけでございますが、この辺についてどうお考えでしょうか。
  39. 畠山襄

    畠山政府委員 御指摘のように、我が国は原子力関係資機材の輸出に関しては、相手国で平和目的に限って利用されることをこの外為法で担保しているわけでございます。しかしながら、仮に外為法の規定に反して無許可輸出されるという場合には、相手国で軍事転用される可能性も厳密に排除できないおそれがあるということで、その平和利用の保証がないわけでございますので、違反行為に対しては武器と同様厳しく対処したらいいのではないかという考え方から、こちらの方に入れさせていただいておるわけでございます。
  40. 緒方克陽

    緒方委員 今の問題は、ちょっと後の時間がありませんので、後にまた意見を申し上げたいと思います。  そこで、外務省の方にお尋ねをいたします。  外務省通産省との関係で、いわゆる自由貿易外務省がどういう形で口出しをするのかといいますか、そういうことで非常に問題になっているわけでございますが、私の意見としては、今回の法改正に絡んで外務省が必要以上に通商政策に口を出して、我が国自由貿易を阻害するというふうに見られる点については、非常に遺憾に思っているということでございます。さき委員会城地委員質問だったと思いますが、外務大臣輸出承認に口を出してきたときに通産大臣がノーと言ったらどうするかというような趣旨質問があったわけでございますが、それについて外務省としては、要旨ですが、外務大臣は情報を提供し、国際的な情勢を申し述べるのでございます、こういうような答弁があっているわけでございますが、そういうことでしょうか。
  41. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 お答えいたします。  通産大臣の方から、この二五条一項、二項及び四十八条一項、二項の規定の運用に関して特に必要があると認めるときには外務大臣意見を求められますが、同時に、通産大臣の方からそういう照会があるか否かにかかわらず外務大臣といたしまして「国際的な平和及び安全の維持のため特に必要があると認めるとき」には、これらの規定の運用に関して外務大臣としての意見通産大臣に述べるということで、具体的にどういう場合かということにつきましては、今委員が言われたとおりでございます。
  42. 緒方克陽

    緒方委員 そこで、長い言葉のやりとりですから、今の問題をやっておりましたら時間がありませんからお尋ねしたいと思うのですが、ここに「通産省外務省の覚書の内容」があるわけでございます。内容は五項目でありますが、私が御質問したいのは、通産省外務省の両事務次官の間で交換された覚書の内容の第三項の、改正法第六十九条の四第二項の規定に基づき、通商産業省に外務省意見を申し述べる場合にはこれを尊重するものとするということの中で、(1)で「その許可に際してココムの特認をとる必要はないが規制する必要があるもの。」については、意見を述べるということに含まれることがあるわけですね。そうしますと、文章の読み方によっては、輸出許可に当たっては、規制する場合には外務大臣は一々口出しすることができるというふうにとれるわけでございますが、そういうことなのかどうか、お尋ねをいたします。
  43. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 ただいま御指摘のございました覚書の三項の(1)に書いてある点でございますけれども、ココムに特認を求めるものにつきましては、通産省で特認案件だと判断されたものは外務省を通じてパリに送りますので、当然外務省はどういうものが特認審査対象になっているかというのはわかっているわけですけれども、そうでないもの、一般的には行政例外に相当する案件かと思いますけれども、そうでないものでも、外務省外国から得た情報等に基づきまして慎重な取り扱いを要すると判断するようなものにつきましては、外務省から通産省意見を申し述べるというような例がここに想定されているかと思います。  ただ、今先生が御指摘されましたように特認以外の案件すべてについて一々外務省が口出しをするのかということにつきましては、私たちはそういうことは考えておりません。あくまでも国際的な平和及び安全の見地から、特に必要があると認めたケースだけについて意見を申し述べるということです。  ここでお断りしておかなければいけませんことは、今度の法律改正によって自由貿易が阻害されるのではないか、外務省がやみくもに貿易の拡大あるいは自由貿易を抑えようと思っているのじゃないかというふうに一部の新聞等でも報道されておりますけれども、私たちは全く逆でありまして、外務省はあくまで世界貿易の拡大あるいは日本輸出入の拡大のために一生懸命努力しておりますので、一々くちばしを入れるということは考えておりません。
  44. 緒方克陽

    緒方委員 今のような言い方は非常にけしからぬ言い方であります。一部の新聞が書くとかいうような言い方をしておりますが、これは国民全体が心配をしておるということで、外務省が口出しをすることについてはいわゆる自由貿易をやるという観点から非常に問題があるということですから、そのことは申し上げておきたいと思います。  同じように、この覚書第三項(1)について通産省としてはどういうふうにお考えになっているか、お尋ねをしたいと思います。
  45. 畠山襄

    畠山政府委員 私どもとしては、外務大臣意見を言われるといいましても、自由貿易原則とする外為法の枠内での御意見ということであろうと思っておりますので、それによって審査が停滞するということはないと思っておりますし、そう期待もいたしたいというところでございます。
  46. 緒方克陽

    緒方委員 今の点については、何遍も言いますが、特に一部新聞ではなしに国民全体あるいは業界全体、我々が非常に問題にしているということを申し上げて、最後の質問に入りたいと思います。  我が国貿易輸出と大きく関係しておりますIJPCの問題で、きのう、おとといとイラクが四十機で爆撃をしたとかいろいろなことが言われております。私はこの問題については非常に関心がおるわけでございますが、この推移いかんによっては、三井も大変でしょうが、日本貿易保険もまさに大問題ということでございます。いよいよ八月二十七日がその保険申請の事前手続の最後の期間になっているということでございますが、そのイラク爆撃の状況について外務省としてはどういうふうに把握されているのか、あるいはこの保険申請についていわゆる会社側からどういう対応になっているのか、もう既に手続がとられたのか、保険申請に当たっての前段の作業がなされたのかどうか、以上二点お尋ねをいたします。
  47. 吉田文毅

    吉田政府委員 バンダルホメイニ地域に対しましてイラクの空軍機による爆撃が行われましたことは、イラン側によっても報道されているところでありますが、当該地域の中でIJPCサイトが爆撃されたか否かにつきましては確認はされておりません。しかし、これまでの現地情報により判断する限り、プロジェクトサイトが爆撃され、被害が生じたことはほぼ間違いないものというふうに考えております。  なお、被害の詳細につきましては、現場への立ち入りが困難な状況もありまして、確認されておりません。
  48. 渡辺俊夫

    ○渡辺説明員 お答えいたします。  ただいま通産省から御説明があったとおりでございまして、二十二日及び二十三日にバンダルホメイニ地域に対するイラク軍機による爆撃が行われたということは、イラク側の発表及びイラン側の報道、双方から見まして間違いはないところかと思います。しかし、IJPCのプロジェクトそのものが被害を受けたとか、どの程度の被害があったのかといった詳細につきましては、まだはっきりした情報がつかめていないということでございます。
  49. 畠山襄

    畠山政府委員 第二点目の御質問の、事業者側が保険について申請ないしそれに類するような行為を行ったのかどうかという点でございますけれども、保険の手続といたしましては、この関係で申し上げますと、大ざっぱに言って二つ手続がございます。一つは、危険が発生しましたよ、損害が出ましたという、その通知をするという行為でございます。それからもう一つは、保険金の請求をするという行為でございます。このうち前者、私どもでは危険発生通知と呼んでおりますけれども、これにつきましては、今のようなお話もありますし、それからそれ以前の爆撃等もありますものですから、そういうことでこの危険発生通知を出したいという話が事業者側からございまして、多分あしたかあさってか、期限内にそういうものが出てくるのだろう、現時点では出ておりませんけれども、出てくるのであろうというふうに了知いたしております。
  50. 緒方克陽

    緒方委員 先ほど言いましたように、この法改正で四十八条、前は二十五条もあったわけですが、いわゆる国際的な平和保安全ということで外為法性格が大きく変えられ、しかも罰則を受けるということで国民の権利に大変な問題を惹起する、また憲法違反疑いもあるということで、本法案については反対であるということを、意見でありますけれども、とにかく問題があるということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  51. 加藤卓二

    ○加藤(卓)委員長代理 水田稔君。
  52. 水田稔

    ○水田委員 質問に入る前に、委員会の運営について委員長に要望をしたいと思うのです。  一つは、この法律というのはまさに我が国自由貿易原則に大変大きな制約をもたらすもの。さらに、その中で従来と違うのは、外務省から法定協議を求められて、事実上そういうことがこれから行われるかどうかという問題でございます。また、新しい観点としては、安全保障という問題が大きな問題として出ております。  私は、理事を通じて、内閣総理大臣と外務大臣にぜひ出席してもらいたい。というのは、この問題に対して、通産省の対応もさることながら、外務省の対応は一体どうだったのか。その中で、こういう法定協議まで求めてきたことについて最高責任者に対して質問をするということは、欠くことのできないことだと思います。安全保障問題については、我が党の上坂議員も物を申したい、こういうあれもあるわけであります。それは通産大臣、外務大臣じゃなくて内閣総理大臣でありますし、また、私どもはいたずらに法案審議を延ばそうと思っておりません。しかし、少なくともこれほど重要な法案でありますから、内閣総理大臣あるいは外務大臣にこの委員会に出ていただく、そういうことをぜひ委員会の運営の中で考えていたたきだい、理事会で御相談をいただきたいということを、冒頭要望申し上げたいと思います。
  53. 加藤卓二

    ○加藤(卓)委員長代理 よく理事会の上で諮って、また検討させていただきます。
  54. 水田稔

    ○水田委員 そのようにぜひ御相談いただきたいと思います。  第一にお伺いしたいのは、今回の発端は東芝機械外為法違反ということでございますが、東芝という会社がこの外為法違反あるいは不公正取引ということで、今論議になっておる外為法改正にかかわる、アメリカに対してそういうことをやった会社であるのかどうかということを、通産省はどういうぐあいに見ておられるのか、お伺いしたいと思うのです。
  55. 児玉幸治

    児玉(幸)政府委員 東芝と東芝機械とは全く別の法人でございまして、別会社であるわけでございます。ただ、東芝は東芝機械の株を五〇%ちょっと持っているという関係があるということでございます。  ところで、御質問は、それでは東芝も何か法律案関係があるのかということでございますが、まず東芝側の方の説明、私どももいろいろ聞いておりますけれども、もともと子会社とはいいながら東芝機械自身が一部上場の会社でございまして、この東芝機械の日常の業務活動につきましては、他の関連会社の場合と同様、東芝機械の社長以下の独立の権限と責任において運営をされているわけでございます。したがって、東芝機械の今回のココム違反事件につきましても、何ら関与していないというのが東芝側の主張でございます。  また、私どもの方も本件につきましていろいろ調査をいたしたわけでございますけれども、東芝機械によるココム違反に関連いたしまして、親会社であります東芝がこれに関与していたことを示すような事実は何ら発見されておりません。
  56. 水田稔

    ○水田委員 全く関係がない、外為法違反に関係がない。九軸研磨機の不正に絡む輸出には関係ないわけです。しかし、現実にアメリカで包括貿易法案条項三〇一条ですか、この強化という中で、東芝が名指しで攻撃されることは、そうすると理不尽なことだ、こういうぐあいに受け取ってよろしゅうございますか。通産省はどういうぐあいに、当たり前のことだと受け取っているかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  57. 田村元

    田村国務大臣 おっしゃるとおり、まことに理不尽きわまるものでございます。
  58. 水田稔

    ○水田委員 理不尽であるならば、これはなぜ外務省やあるいは通産省が、理不尽だということでこういう対応をしなければならぬのですか。何としても理解できないですね。東芝は何にも悪いことをしていない。しかしそれが、東芝はけしからぬということで、既に東芝では直接には七千人、関接的には一万人の労働者が職を失うかもしれぬという理不尽な攻撃をアメリカから受けておる。東芝関連全体で三千五百億円も売り上げが減る。まさに日本の通商上の利益はアメリカの理不尽な要求によって失われようとしておるときに、こういう対応でいいのですか。その点を、後で外務省には聞きますが、通産省は何もできないのですか、我が国国民の利益、権利、雇用を守るためにできない省庁なんでしょうか。その点、大臣からお答えいただきたいと思います。
  59. 田村元

    田村国務大臣 申すまでもなく、ココム違反というのは国内法、国内の処置で解決すべき問題であります。第三国から制裁を受けるいわれはありません。いわんや何の関係もない東芝がやられるということは、先ほど申し上げたように、我々としても理不尽きわまるものとして納得できません。東芝機械の場合でも、これは国内法で当然処置すべきものでございます。  でございますから、私ども向こうへ参りまして、随分この点は強く申しました。幸いアメリカの行政府は我々と同じ意見でございました。私は、行きまして、随分行政府あるいは議会の人々と会って我々の意見も述べ、そして強くこの法案の、いわゆる包括法案は申すに及ばずですが、ガーン修正案というものの撤回を求めたわけでございます。  ところが、御承知のように、アメリカの議会なり上院等で、大統領が手も足も出ないと言ってはあるいはぐあいが悪いかもしれませんが、三分の二をはるかに超える多数で議決をしたということでありまして、私も随分強く向こうで言いました。村岡通政局長が心配して、私に「冷静に」という紙を回してきましたけれども、随分机をたたいてのやり合いにもなりました。しかし、日本は全貿易の四割をアメリカに依存しておる、売り手という日本の置かれておる特殊の立場がある。しかも議会が、好むと好まざるとにかかわらず、我々の抵抗がいかようであれ、ああいう大差でもってガーン修正案を含めて法案を可決してきた。もしこれが我々の抵抗でうまくいけばよろしいけれども、悪い影響をしたときにどうなるであろうか、悩んで悩んでしながら、向こうで私なりに懸命の対応をしてまいったということでございます。
  60. 水田稔

    ○水田委員 私は、日米貿易摩擦で我が国のこれまでの産業政策なりあるいは我が国の産業界のとってきたこと、これがアメリカに大変なダメージを与えた、そういうことを真剣に考えるべきだと思うのです。  しかし、この東芝という会社が理不尽な攻撃を受けておるのを守れぬということになれば、それはまさに、日米関係ではみんな理不尽だということは知っておるのですから、だからそれはアメリカというのはむちゃな国だという印象になりますよ。日米関係は決してよくはならない。また、日本政府が理不尽なことで一歩でも譲歩するということがあるなら、国民の感情としては政府に対する不信が出てきますよ。  もう一つお伺いしますが、今いわゆる報復措置として、たしか沖電気の半導体チップの香港経由の不正輸出といいますか、ずっとの経過を追ってみますと、これはまさにアメリカでよくやるおとり捜査的なもので、むしろアメリカから仕掛けられて、それに乗せられたという形の中で日本の多くの産業が、全く関係のない電動工具まで含めて大変な報復関税をかけられておる。これも理不尽なことでしょう。どうなんですか。それは通産省で、あれはやっぱりやった沖電気が悪いという判断で対応されておるのですか。
  61. 児玉幸治

    児玉(幸)政府委員 半導体につきましてアメリカは、御案内のように四月十七日に、日本が半導体協定を守っていないという理由によりまして、三つ品目につきまして一〇〇%の関税をかける、しかも日本だけを差別してかけるという措置を採用いたしたわけでございます。私どもは昨年九月にできました半導体協定につきましては、これを誠実に遵守しているという立場でございますし、実際その協定によって期待される効果も逐次上がってきつつある段階でございましたものですから、アメリカ側のそういう措置につきましては全くその根拠がないという立場でございまして、措置発動以前におきましてもアメリカに参りまして措置発動について非常に厳しい批判をいたし、その措置を発動しないようにということも言ったわけでございますが、残念なことに措置は発動されているわけでございます。したがって、現在におきましてはアメリカ側のそういう対応に対する不当性を申し立てるために、ガットに二十三条一項の協議の申し立てをいたしまして、八月の初めに第一回の日米間の協議も行われているわけでございます。  いずれにいたしましても、我々が今努力しなければならないのは、そういう理にかなっていない措置を一日も早くやめさせるためにあらゆる方法を通じて努力をしていくことであると考えております。
  62. 水田稔

    ○水田委員 一度ならず二度、三度と、アメリカが理不尽であろうとも声を大にして日本に言えば、日本は妥協して引っ込んでいく。これを続けてどうなるのですか、日本の国は。今まさに産業構造の転換ということで、日本の経済は大きな曲がり角にある。そういう中で日本経済はどう生きていくかということで、私は今回のこの法案の提出というのは、そういう点ではまさに理不尽に屈して国内的な措置をしようということですから、どうしても納得できないのです。そういう点では、私は日本国民が生きていくために、これは幾ら言ったところで既にアメリカで政府が公約ということで大臣か言われておる、それも問題があると思いますが、少なくともこの点に関して私は与野党じゃないと思うのです。特に与党の皆さんは、日本の産業について大変心配されている人が多いわけですね。そういう点では合意する点があると思うのです。本当の意味での日米関係、いい関係をどうやってつくっていくか。理不尽なことをやっていたのでは日米関係が悪くなりますよ、これは決して日米両国のためによくない、そういう立場で毅然とした態度で今後やっていただかなければならぬということだけ、私は申し上げておきたいと思います。  次の質問ですが、これは前の一般質問でもお伺いしましたが、とにかく政府の統一見解は、ソ連潜水艦の低音化について、いわゆる具体的証拠はないが一定の因果関係は存在する、これが統一見解です。これは裁判では通用しないだろうと思うのですね。この文章で我が国国民の何割がああそうかと言って納得するか、そういうものだと思うのです。あのときも私は、秘密の資料は持っていないけれども、公刊された資料から見て、これから後に幾らか影響があるかもわからぬけれども、これまでの低音化については関係ない、そういうことを申し上げた。それから後にジェーン年鑑の編集長の出したものを見ましても、これはまさに十五年前から低音化が進んでおる、アメリカよりソ連の潜水艦の方が優位に立つ、そういう技術開発がされておるという報告が最後にされておるわけですね。ですから、これはアメリカから聞くというのではなくて、通産省自身がとり得る資料の中で、アメリカから言われることが本当に理にかなったことかどうか、科学的に正しいことかどうかということを判断しなければ、それは政府のような、具体的証拠はないけれども一定の因果関係があるとアメリカから言われたから、それをうのみにして我が国法律をいらったり政策を変えたりするということは、我が国の通商上の利益を守るために決していいことではないと思うのですね。そういう意味通産省が独自に、あれだけ言われてきたのですから、本当かどうかということを調べていると思うのです。そういう点での判断を聞かしていただきたいと思うのです。
  63. 児玉幸治

    児玉(幸)政府委員 潜水艦のスクリューから発生します音を低下させるためにいろいろな方法がございますけれども、スクリューの複雑な加工をする際に、問題になりました機械が非常に有効な機械だ、加工効率にも影響を与えますし、ひいてはスクリュー音の発生の程度にも影響を与えるものだというふうに私どもも考えておるわけでございます。  今お尋ねの、通産省が独自に潜水艦の昔がどういうふうに小さくなっているかを調べるべきであるという御意見だろうかと思いますが、これはまことに恐縮でありますけれども、行政官庁通産省という立場では限界があるわけでございまして、事柄の性質上そこまで踏み込むことは私どもはできないというふうに考えております。
  64. 水田稔

    ○水田委員 あなた、そんな無責任なことはないですよ。だれがこれで納得するんですか。具体的証拠がないのに因果関係がある、こう言うのです。そんなの通用しないですよ、日本の言葉で。それならば、私は専門家じゃないです、しかしそれなりにアメリカの言うのが正しいのかどうかということで、具体的に通産省に対しても委員会を通じてこういう点があるじゃないか。例えばチタン合金を使ってきておるというのは、これは公表されておるわけですね。あるいはまた超電導モーターの開発をやっておる、それが使われておるかもしれない。そういうことがスクリュー音だけではないわけですね、潜水艦全体、それは常識じゃないですか。そういう中で公刊された、アメリカ国防省が出したあるいはアメリカの国会の中で論議されたそういう文書は、通産省、全部とれるわけですよ。ジェーン年鑑も最新のが出ました。八六年、八七年のが出た。それらを見て、逆に言えばアメリカが言うのが正しいなら説明してみると言うべきじゃないですか。そういう事実を確認しないでやられるということは、我が国の産業なり我が国の通商上の利益を守る官庁としての役割を果たす気持ちがないからじゃないですか、答えてください。
  65. 児玉幸治

    児玉(幸)政府委員 今回の東芝機械事件とソ連の原子力潜水艦の静粛化の因果関係については、確かに具体的な証拠は入手していないけれども、因果関係に関する嫌疑は濃厚というふうなことが政府全体の考え方でございます。もちろんこの点につきましては、私どももあらゆる機会をとらえて情報の入手には努めたわけでございまして、七月中旬、田村通産大臣が訪米いたしました際にも、多数の米国の政府高官との会談あるいは事務レベルでの各種の情報交換をいたしたわけでございます。それらの情報交換、会談を通じまして、内容は事柄の性質上立ち入るわけにはまいらないわけでございますけれども、嫌疑は濃厚であるとの心証を得て大臣は帰国いたしているのでございます。
  66. 水田稔

    ○水田委員 私は、そんなことは信用できぬし、国民も納得しないだろうと言っておるのですよ。公表された資料があるんですよ。それを見る限りは、これから後は知りませんよ、今までの低音化についてはほとんど関係ない、むしろそのほうが――通産省も手に入る資料ですよ、それを使わぬというばかな話はないと思うのです。  そこで私は、こういう点はどうなんですか。先ほどから言うように、一つは東芝に対する理不尽な攻撃、あるいは半導体の協定を守っておるにもかかわらずいわゆるおとり捜査的なことで報復関税をかけるというようなことをやっておる。あるいはまた潜水艦の低音化についても、実際には関与していることはわずかにもかかわらず、それがアメリカの国防上に大変なマイナスの影響を与える、こう言って声を大にしてやるアメリカのやり方というのは、日本と物の考え方が違うのじゃないですか、どうなんですか。例えばアメリカは陪審制度がある。針小棒大に打ち上げる、それが国民性としてある。日本の場合はそれに対して、まず相手の立場をそんたくして、そしてどうまとめるかということが先に立つ。これは外務省も同じですが、そういう態度をとったんでは国民の利益を守ることはできぬのじゃないですか。そういう文化の違いをわきまえて対応するという基本的な姿勢が、これは外務省もそうです、通産省にもないから、こういうことが平気でやられるのじゃないですか。それに対応する基本的な姿勢を日本政府が持って、それぞれの省庁が持って、毅然としてアメリカとやる。国際的には外交というのはそういうことなんですよ。常に日本が損をしておるのは、相手の立場なり相手の要求をそんたくして、どこで妥協しようか、そういう態度がありありと出ているから今度のような理不尽な、いわゆる外為法改正まで要求されるようなことになったのではないですか。そういうところを考えて対応されたのですか、どうですか。
  67. 児玉幸治

    児玉(幸)政府委員 国際関係につきましてのいろいろな話し合いというのは、確かに水田先生おっしゃるように、相手の国の文化とか物の考え方とか、いろいろな伝統、歴史があるわけでありまして、そういったものも踏まえて話をしていきませんと、日本で説得するときに使える論理をそのまま相手に使ってみても、これは必ずしもうまく相手を納得させられるわけではないことが間々あることでございます。したがいまして、いろいろな外交交渉あるいは経済交渉をいたします場合にも、私どもはそういう点については常に心がけているつもりでございまして、米国との関係におきましても、先ほど大臣、机をたたいて議論をしたということを申し上げましたが、我々事務当局でアメリカとやりますときにも、アメリカ側で後で悪口を言われるくらいに相当強い調子でいろいろ議論はいたしておるわけでございます。  ただ、本件につきましては、そういった議論の仕方ということだけではございませんで、私どもやはり感じますのは、アメリカが安全保障の問題については日本とははるかに高いレベルといいますか、違ったレベルで、センシティブといいますか神経質であるということでありまして、そういった点は私どももよく踏まえながら議論をしていかなければならないのではないかなというふうに考えております。
  68. 水田稔

    ○水田委員 アメリカのそういう安全保障上の考え方が日本と違う、そんなことで理不尽がまかり通る日米関係を続けていいのかどうか。だから、それを明らかにした上でアメリカの立場も我々は考えよう、これが基本でなきゃならぬのですよ。だから、事実を明らかにしない通産省というのは責任があるのですよ。潜水艦の問題だって、我々でさえもおかしいという資料をアメリカの文書、ジェーン年鑑という国際的に通用するそういうものでも、これはそうでないということは明らかであるにもかかわらず、我々にも通産省が説明をせずに因果関係があるなんということを言うのは失礼じゃないですか。だから、基本的な一あとはもういいです。ですから、そういう点が欠けておるということを申し上げておきたいと思うのです。  あとは、これもこの前質問しましたが、十分な答えをもらえなかったのですが、私の言い方が「国益上の例外措置」と言ったわけですが、行政上の例外措置ということで、アフガン事件の後、アメリカの当時のカーター大統領がいわゆる非該当証明を出す、いわゆるリストに載っていないもの。そしてその次は特認でやるものがある、パリヘ送って特認でやる。そしてもう一つは、いわゆる例外措置ということでやっておる。カーター大統領が一切特認は認めない、こういうことをココムで強引に主張して決定させておりながら、一九八〇年から八三年までの間に例外措置で特認、いわゆるパリヘも出さないで数千件の輸出をしておる。それは確認しておるのかどうか、日本でも行政上の例外措置で年々どのくらい出ておるのか、そういうことを聞いたわけですが、具体的なお答えはなかったわけでありまして、その点はどうなっておるかということをまずお伺いしたいと思います。
  69. 畠山襄

    畠山政府委員 御質問の中にございましたように、行政例外という制度がございまして、各国限りの判断で共産圏向け輸出が認められるというのがまずございます。これは、一定の技術レベル以下のものでございます。一定のレベル以上のものにつきましては、特別認可といいますか、一般例外と称しまして特認になるわけでございます。  そこで、具外的な件数についてお尋ねでございますが、私ども、共産圏向けの戦略物資の輸出承認件数は年間約四千件でございます。それで、このうち特認で出される件数というのはおおむね百件ぐらいでございます。それで、米国でございますが、米国の特認はそれに比べて年間相当多いということでございますけれども、恐縮でございますが、各国別の特認の数は相当多いことは多いのでございますけれども、申し合わせで公表しないということになっておりますので、米国の具体的な数字については御容赦いただきたいと思います。
  70. 水田稔

    ○水田委員 公表しないといったって、この前私が質問のときに、ある年数を限ってトータルで申し上げたことがあるのですね。アメリカの特認申請は全部認められているわけです。全体の七割ぐらいでしょうね。ほかの国は否認をされておる。こういう運営になっておるということですから、そういう制度があるということ。  そこで、この点はいかがなんですか。一九七二年の八月にアメリカのブライアント社が、ミニチュア・ボールベアリングの精密研磨機百六十八台を商務省の輸出承認を得て輸出しております。これはいわゆる行政上の例外措置として行ったものなのかどうか、伺いたいと思います。
  71. 児玉幸治

    児玉(幸)政府委員 ブライアント社のベアリング製造機械輸出の件でございますけれども、お尋ねの件、行政例外としての承認であるかどうかという点ははっきりいたしませんが、一九七六年の四月に下院の国際関係委員会の公聴会におきまして国防省の担当者から説明資料の提出が行われておりまして、それによりますと、ブライアント社製のベアリングの研磨機百六十八台につきまして一九七二年の八月に商務省が輸出承認をしたというふうな報告が出ております。
  72. 水田稔

    ○水田委員 それは行政上の例外措置でやったということになるわけですね。
  73. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 このブライアント社の機械輸出につきまして、今児玉局長の御説明のとおりでありますが、七二年当時はまだボールベアリングの研磨機はココムの規制対象品目にはなっておりませんでしたので、行政例外か否かという問題がなかった時点の問題でございます。
  74. 水田稔

    ○水田委員 それじゃ、これがいわゆるジャイロスコープの技術に転用されてソ連のSS18、19に使われる、弾着精度が一挙に高まって、アメリカのICBMミニットマンⅢの基地が正確にねらわれるようになった。これはアメリカだけじゃなくて西側の諸国全部について言えることですね。これはアメリカ下院の小委員会の記録の中で明らかなんでございますね。やはりアメリカ本土は大変脅威にさらされる、こう言うのですね。アメリカがいわゆる国防上の脆弱性が一挙に高まった、こういう報告をされておるのです。これは西側、西側とよく大臣言われるわけですが、日本を含めて全体に大変な安全保障上の影響があった問題ではないかと思うのです。  これに対して、今度は事実我々としては、まだ確たる証拠を示して安全保障上の影響があるかないかわからぬいわゆる九軸研磨機でこれだけの攻撃を受けておるけれども、これと比べればそれ以上のいわゆる西側諸国と言われる国々の安全保障上不安を招く技術をアメリカが提供した、こういうことについて抗議を--アメリカからはこれだけのことで抗議されるのに、日本がこういう目に遭ったときには抗議するというようなことはされたんですかどうですか。
  75. 畠山襄

    畠山政府委員 ボールベアリングの輸出のときに抗議したという事実は、確認をいたしておりません。  ただ、確かに今回の東芝機械事件の場合に、例えば損害賠償を要求するとかそういったたぐいの話がアメリカから仮に来るとすれば、それは過ぎたる要求であるというふうにも考えておりまして、私どもとしては、大臣も申し上げましたように、ココムの申し合わせというのは、それぞれの国がそれぞれの国内法で実施していって、それで体制が十分でなければそれはそれなりに自主的に直していくということが筋道と考えております。したがって、他国がそれを猛烈に非難するというようなことはあってはならないことだと考えております。  ただ、本件の場合、東芝機械事件の場合は、先ほど因果関係があると私どもが言ったという御指摘でございましたけれども、やや細かくて恐縮でございますけれども、私どもが外務省との間で因果関係があり得るということについて一たん合意したことはございましたが、因果関係があると申し上げたことはございません。因果関係があり得ると申しました趣旨は、このような機械輸出されれば御指摘のようなことが、委員の御質問の中にもありましたけれども、これからも含めてあり得るという意味合いでそういうことを申し上げているわけでございます。ただ本件は、我が国輸出貿易管理令なり外為法の明白な違反でございましたものですから、因果関係があるなしにかかわらず違反は違反として処断をしなくてはいけないという立場から措置をしたという側面が強いわけでございます。
  76. 水田稔

    ○水田委員 いわゆるココムの委員会の運営というのは、まさに言われたとおりなんですね。それならば今回の問題で、東芝機械を国内法できちっと処理するということで、どこの国からもとやかく言われる筋はない。しかし、アメリカからは言われる。アメリカがやった場合は、日本はココムの本質をわきまえて何も言わない。  もう一つお伺いしますが、例えばアフガン事件で一切の輸出をとめて経済制裁をするという中に、アメリカは穀物の輸出もとめたのですね。しかし、ココムでそういうことを外国に押しつけながら、何の相談もしないでアメリカはそれを解除しましたね。そのときも、ココムの会議で何もアメリカ一国に文句を言わぬで、通産省外務省は、アメリカのやり方はけしからぬではないかという抗議をされたのかどうかを含めてお伺いをしたいと思います。
  77. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 ココムの場におきましては、特定の国がココムの約束あるいは規則に違反して輸出したりあるいは制裁を解除したというような場合には、当然私たちとしては問題提起いたしますけれども、今の穀物の場合のようにココムとは関係のない場合には、ココムの場で問題提起することはありません。ただ、アフガン侵攻等にかかわる対ソ制裁につきましては、日米間で緊密な協議等は当時行われました。
  78. 水田稔

    ○水田委員 今度のアメリカからのこの理不尽な要求というのは、これまで我が国が、ココムの問題というのはお互いに合意したことは国内でやるんだということを、アメリカが理不尽な勝手なことをやった場合に、事あるごとに言うべきことを言ってないから何回も重なってくる。だから沖電気事件の問題も、そして今度の東芝に対する攻撃も、そういうこれまでの外務省の姿勢なりあるいは通産省のやってきたことが積み重なって、これだけの理不尽なことが今要求されるようになったのじゃないですか。その点だけは申し上げておきたいと思うのです。  そこで、次の質問に進みますがココムで規制を合意している品目というのは幾らあるのか、お伺いしたいと思います。
  79. 畠山襄

    畠山政府委員 ココムで規制をするということで合意をいたしまして、これは具体的にはリストレビュー会議というところで合意してくるわけでございますけれども、それをしかるべき時点で我が国政令指定をするわけでございますが、その政令指定品目数は、御案内のとおり百七十八品目でございます。
  80. 水田稔

    ○水田委員 それでは、ココムの扱いで、一つは非該当品、百七十八品目以外のものは非該当ということで扱う。実際にはなかなか非該当の証明が出なかったり、出ておってもなかなか輸出できぬという問題がありますけれども、一応自由。百七十八品目の中である一定のレベルのものはいわゆる特認で出していく、こういうことですね。そして、そこから先の問題は行政上の例外措置ということでそれぞれの国の判断でやれる。こういう三つ段階の扱いになっておるというぐあいに理解してよろしいか。
  81. 畠山襄

    畠山政府委員 ある品目を考えました場合に、まずそれはココムに該当しない品目であるか、ココムに該当するとすれば一定の技術水準以下のものであって、したがって国内の行政庁限りで了承ができる行政例外品目であるか、あるいはそれ以上のレベルであって特別の認可が国際会議であるココムで必要であるという特認品目であるか、今委員指摘のとおり、三つに分類できると思います。
  82. 水田稔

    ○水田委員 そうすると、該当品目の中で行政上の例外措置と言われるのは、一つのリストがあるわけですか。そして特認というのは、その枠を超したものを特認の扱いでパリヘ送って判断を求める、こういうことになっておるわけですか。
  83. 畠山襄

    畠山政府委員 そのとおりでございます。
  84. 水田稔

    ○水田委員 そうすると、今回の事件というのは、そういう点ではそういったルールを外れたいわゆる虚偽申請によるものであって、法律違反してもやろうと思う者がおると、どんなに罰則を硫化しても起こり得る種類のものですか。
  85. 畠山襄

    畠山政府委員 今度の事件は、罰則が最高懲役三年以下、それから行政制裁輸出の禁止一年以下というもとで起こった事件でございます。これが今回御提案申し上げておりますように、懲役も五年以下になり、それに伴って時効も五年に延び、それから行政制裁も一年から三年に延びるというようなことがありますと、やはり相当の抑止効果が伴うのではないかというふうに私どもは判断しております。
  86. 水田稔

    ○水田委員 罰則の問題じゃないのですが……。  そうすると、先ほど来何回も御答弁がありましたように、ココムの運営というのはそういう三つの区分の中で、それぞれの国が合意したことを国内法によって運営すればいい、その運営について他国からとやかく干渉すべき性格のものではないということは間違いないですか。
  87. 畠山襄

    畠山政府委員 ココムの申し合わせは国際会議による申し合わせでございますので、やはりある国が運用がルーズであるというようなことがございますれば、それは他の国がルーズじゃないのかというととというのはあり得ることだと思います。
  88. 水田稔

    ○水田委員 運用がルーズであるからということが国際会議で出るというのと、罰則強化とか法律規制強化、これはまさに国内問題ですね。主権にかかわる問題です。そこまで言うのははみ出しじゃないですか。今回のアメリカの要求というのは、大臣が行ってこっちから先に言ったのか、アメリカからの圧力が、通産省の対応がなまぬるいという別の力が働いたのかもしれませんけれども、ということは、アメリカからこういう罰則強化についての要求がもしあったとしたならば、これはまさに内政干渉ということになるのじゃないでしょうか。いかがですか。私どもはどうも、こういうことを言われるということ、それをしなければ日米の今の問題は解決つかぬということは、まさにアメリカからの圧力で国内的な法律改正をやれ、こういう要求をされていると受け取られるわけです。いかがですか。
  89. 田村元

    田村国務大臣 私が直接交渉に当たりましたものでありますから、私からお答えをいたします。  我が国に対しまして、アメリカから法改正を含む輸出管理体制の強化の必要性についての表明があったことは事実でございます。しかしながら、外為法罰則それから行政制裁強化というものは、我が国の産業及び技術の向上というもの、国際社会においての我が国の担うべき責任等が増大している状況のもとで、今回の東芝機械による不正輸出事件と類似の事件の再発を防止することが自由主義諸国の主要な一員たる我が国の責任ということは、当然我々はわきまえなければならない問題だろうと思います。そういうことから、そういう責任を果たす道であるとの我が国、我々独自の判断に基づきまして行うものでございます。そのために今回、外為法改正案の審議をお願いしているところでございます。我が国が外為法改正を軸として再発防止策をとることによってみずからの責任を全うすることが、西側自由主義国との円滑な貿易関係維持発展させ、長期的視点から自由貿易を拡大していくために必要であると考えております。
  90. 水田稔

    ○水田委員 私は、今の答弁は重要なあれを含むと思うのですね。ココムの運営についてアメリカが神経質になっているのは、私ども理解できぬことはないわけですよね。しかし、少なくともココムの合意の枠を超して内政干渉にわたる場合、西ドイツは、何だ、内政干渉にわたることを言うな、こう言ってやはり主権をちゃんと主張しているわけですよね。しかも、アメリカからそういうことを言われて我が国会がそれに諾々と従わなければならぬという理由はないわけですね。問題は、罰則強化とかなんとかじゃなくて、運営が適切に行われれば今度の事件はとやかく言われる筋合い、問題はないわけですね。そういう点では今の大臣答弁というのは、アメリカから事実無根、理不尽な要求を積み重ねられた中で、まさに内政干渉にわたることをやられておる、そういうふうに我々としては受け取らざるを得ぬということを申し上げておきたいと思うわけです。  そこで、先ほどお伺いしました三つのランクに分かれておるわけですから、一体どこからが違反するかというのは本当に国民にはわからぬわけですね。緒方議員質問に対して、よう勉強すればわかる、こう言うのですが、勉強してもわからぬですよ。発表せぬのですから勉強してもわからぬはずですね。これはまた後で具体的な条文改正のところで質問をいたしますが、国民を罰するという場合に、法律に明記していなければどこに違反したかわからぬということになるのですから、いわゆる罪刑法定主義に反するこの貿易管理令の別表ですか、そういうことになっておると思うのですね。ですから、基準は明らかなようで実は、品目は載っておる、しかしどのレベルかというのは全く国民にはわからぬという形でやられておる。これは日本の法体系の中では異例なものであって、こういう点はやはり明らかにしていくべきじゃないか、そういうぐあいに思うのですが、いかがでしようか。
  91. 畠山襄

    畠山政府委員 まず、御指摘の何で罰せられるのかということにつきましては、委員御案内のとおり法律に基づく政令で品日の範囲が書いてあるということでございます。  その次に、その基準でございますけれども、基準につきましては、基準一般を公表するわけにはいかないわけでございますが、ただ事実上、基準と申しますかに相当するようなものが一応明らかになっておりまして、御説明させていただきますと、例えばココム規制対象地域以外の地域、第三国向けというようなことでございますが、この場合は、ココム申し合わせの参加国それから協力国向けの場合は輸入証明の添付を求めておるということでございますし、それからそれ以外の国でございますと、エンドユーザー、最終需要者の証明書、これは流通業者ではないものが望ましいわけでございますが、そういうものを出してもらうようにいたしております。それから、ココム規制対象地域につきましては、ケース・バイ・ケースで、各国への協議を内容とする先ほどの特認という手続を行いますし、それに該当しないものにつきましては行政例外ということで、性能、使用用途等によって具体的に定められた範囲内で認めておるということでございます。  しかしながら、御指摘のように行政例外の範囲なんかについて具体的な公表を行っておりませんので、そういうものも、これは今後の話でございますけれども、規制趣旨を徹底する意味からもなるべく発表していくというような方向で努力してまいりたいと思っております。
  92. 水田稔

    ○水田委員 ぜひそうしていただきたいと思うのです。これは、そうは言っても日本だけでできる問題じゃないので、いわゆる外為法目的からいっても、また国際的な経済の流れを大きくするためにも、やはりココム加盟国全体の中で、少なくとも行政例外ぐらいのところまではオープンにしていく、これは罪刑法定主義からいってもそうでしょうし、また経済上の理由からもそうだろうと思うのですね。ぜひココムでそういうことを通産省としても主張してもらいたい。また、今の答弁のようなことを外務省もココムの委員会の中で取り組むお考えがあるかどうかを、あわせてお伺いしたいと思います。
  93. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 通産省とも御相談しながらできるだけ努力いたしたいに思っております。これはもちろん、一応コンセンサス方式でやっておりますので全参加国の同意が必要でございますけれども、できるだけ努力いたしたいと思っております。     〔加藤(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
  94. 水田稔

    ○水田委員 できるだけというのじゃなくて、先ほど通産省から答弁があったように、やはり外為法目的そして罪刑法定主義からいってもおかしいということからいえば、少なくとも例外措置ができるくらいのところまでは、いわゆる国際的な日本の将来の経済ということを考えても、それは通産省努力するし外務省も、条件つきじゃない、努力してできない場合もあるかもしれないですよ、しかし努力するというのは、日本の産業、日本の通商上の利益を守るためには通産省外務省もそういう同じ立場でココムの場で努力するという、そういう答弁でなきゃならぬですよ。いかがですか。
  95. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 通産省外務省と一体になってココムに対応あるいは対処しております。今先生の御発言の趣旨も踏まえまして、両省が協力して最大限の努力をしたいと思っております。
  96. 水田稔

    ○水田委員 ぜひそういうぐあいにお願いします。  そこで、一九六九年、既に何人かから御質問があったと思うのですが、日工展訴訟判決というのがございます。これをずっと読んでみますと、損害賠償をとられなかったということで、しかも政府は控訴してない。ですから今ココム問題に関する、外為法関係でいえば唯一の国内における判決でございますね。この趣旨からいけば、今の具体的な、いわゆる何が処罰になるかという細かい基準が明らかでない。そして、この外為法の精神は制限は極めて限定されなきゃならぬ、そういうことからいえば、差しとめることはいわゆる国民の基本的な権利を損なうということで、いわば違憲判決と言われるものですね。ですから、ここで現在の法律もこれに該当するし、たまたまそういう訴訟が起きなかったから後の判決は出ておりませんけれども、申請して却下される、承認されないという場合にそういう訴訟が起きる可能性はいっぱいあるわけですね。まして、ここで理不尽な要求による罰則強化などやれば、さらにそういう点が続発すると思えるのですね。  通産省は、いわゆる外為法目的、そしてココム対応のいわゆる外為法の運用が今の形でやられることが、本来憲法上どういうことになるというぐあいに御判断なさっておるのか、お伺いしたいと思うのです。
  97. 畠山襄

    畠山政府委員 日工展の判決で、御指摘の部分について裁判官が言った点のエッセンスは、要するに外為法は経済関係法規であるから、純粋に経済的な理由による規制はいいけれども、ココムのような政治的な理由による規制はいけないということでございます。  しかしながら、私どもの意見は、ココムの規制も経済的な理由による規制でございますということでございます。なぜ経済的な理由かといいますと、ココム参加国と我が国との貿易というのは我が国貿易の過半を占めておりまして、それで例えば我が国だけがココムの申し合わせに反して共産圏に抜け駆け的な輸出をいたしたといたしますると、これら過半を占める国々から経済的な圧迫を受けるということで、したがいまして我が国貿易あるいは我が国経済発展のためにもココムの申し合わせを遵守していくことが必要であります。したがって、一見政治的な理由のように見えますが、そういう経済の論理を一たん通った理屈で規制をしているわけでございますという立場でございます。これは昭和四十四年にも強調いたしましたが、先ほど御指摘のように勝訴になってしまいましたものですから、それ以後それを主張する機会に恵まれなかったわけでございます。現在でもそのように考えておりまして、また今回の外為法改正でもそのような考え方に基づいているわけでございます。
  98. 水田稔

    ○水田委員 今の主張というのはへ理屈なんですよ。その裁判官の判断の方が外為法を読む限り正しいので、持って回った言い方で、だから経済上の理由があるんだと言うのはへ理屈なんですよ。この輸出をとめることができるかできぬかという判断は、「目的」のところでストレートに判断すべき問題なんですね。ですから、私はこれ以上憲法論議をしても始まらぬと思いますが、少なくともこれから、政府に対する不信が大変強まっておりますから、こんな理不尽なことをずっとのまされるようなことをやっておるので、そして現実大変な被害をみんな受けておるわけですから、それならこれから対抗してやろう、おれたちの基本的権利を損なう外為法に対抗して、何件かの訴訟が出たら全部通産省が負けるという性格のものだということだけ申し上げて、この点は終わりたいと思います。幾らやったところで、今の持って回ったへ理屈しか聞かされぬのでは、結論が出ませんから。  さて、そこで法案の具外的な内容について伺いたいと思います。  二十五条に特定技術の役務の許可というのがあります。そこに役務の取引というのがあるのですね。この役務の取引というのは具体的にどういうものなのか、お伺いしたいと思うのです。
  99. 畠山襄

    畠山政府委員 二十五条の役務取引一般でございますると技術輸出も含んでおりますが、そのほかに輸送でございますとか保険でございますとか、そういった広範なものを含んでおります。
  100. 水田稔

    ○水田委員 それは有償の場合に限られておるわけですか。
  101. 畠山襄

    畠山政府委員 有償、無償を問わず含まれております。
  102. 水田稔

    ○水田委員 無償の場合というのは、想定されるのはどういう場合ですか。
  103. 畠山襄

    畠山政府委員 余り具体的な例ではないかもしれませんけれども、例えば技術をただで教えてあげるとか好意で教えてあげるとか、そういったようなたぐいが入るかもしれません。
  104. 水田稔

    ○水田委員 この問題は大変重要で、また危険な問題だと思うのです。  例えば社会主義国圏との間でも学術文化の交流、そういう協定に基づく場があります、学術会議があります。そこで学者がいわゆる――この人たちは、先ほど来言いますように、何が触れるかということはほとんどだれも知らないでしょう。リストも明らかにわかっていない、レベルもわからない。しかし学術の交流ということになれば、相当ハイレベルのところでの論議が行われる。ですから、全く知らないで学会で研究発表をやる。あるいはまた、国内で見本市などが開かれます。そういう場合に、向こうからもバイヤー等がそれぞれ来るのです、当然呼ぶわけですから。そこで、この機械はどういう性能を持ってどういうあれかと当然聞くでしょう。それで答える。その人は、いわゆる外為法の細かい基準というのは全く公表していないのですから、わからぬわけですから、やった。三年か四年くらいたって、おまえ、あれはココム違反だということで、最高五年以下の懲役に処せられるということが起こる可能性が私はあると思うのですが、いかがですか。
  105. 畠山襄

    畠山政府委員 確かに、学者の技術提供という問題は非常にデリケートな問題でございます。これが海外でなされましたときに理論的には一理論的といいますか理屈から言えば、二十五条の一項の一号に該当をする技術であるということになり得る性格のものでございます。  ただ、今御指摘の点はございますけれども、二十五条一項一号の規制対象となる技術は、特定貨物の設計、製造、使用に係る技術ということでございます。したがいまして、純粋な学問的研究とか国内の学会で既に発表をしておる公開の知識とか、そういったものは対象になりません。
  106. 水田稔

    ○水田委員 私が言った不安が今の答弁でなくなるものじゃないです。学術の交流をやった場合に学会だけということはないでしょう、あるいは招待によって訪問する中で我が国の工場を見てくれという話もあるでしょう。それがかかる可能性があるということです。特に国内の見本市なんかでは、そういう可能性があるわけですね。大臣はそんな意思はないと言うのですが、スパイ防止法の先取りということになりかねない条項なんです。どこかに歯どめを置かなければこれは大変なことになると私は思うのです。今の貿易局長答弁ではそういう危険性があるということですから、歯どめについて何らかの措置を考えてもらわなければならない。大臣、特にスパイ防止法云々というようなことは、この前の委員会でも答弁されておりましたが、通産省の所管する法案でそれに類することが現実に起こり得る可能性を持った条項がここに入れられておるということについては、そういう不安のない――この法律というのはもともとそういうものではなくて、通商上の利益を発展さすというのが目的ですから、それとは全く異質の性格のものが役務の取引の中で入ってくる、これはそういう不安のないように何らかの形での歯どめをぜひしてもらわなければならぬと思うのですが、いかがですか。
  107. 畠山襄

    畠山政府委員 これは相手が企業ではございませんので、御指摘のような方向ができるかどうかよく検討してみたいと思っております。
  108. 水田稔

    ○水田委員 役所の検討するというのは、検討したけれどもやらぬということが多いのです。それでは困るほど重要な問題である。ですから、大臣から、そういう不安のないような措置を講ずる、こういう答弁をいただかぬと私、引き下がるわけにはいきません。
  109. 田村元

    田村国務大臣 通産省が今外為法改正と取り組んでおりますのは、純粋の通商上の問題でございます。でございますから、ココムの問題も、ココムと言えば何となく違和感があるかもしれませんけれども、我が国としては全く通商上の源から発しておるわけでございます。でございますから、今おっしゃったこと、実は私もよくわかります。これは俗に言う悪い意味での政府答弁というのでなしに、私から、十分この点検討してみる、今後の配慮を考えて検討してみろということを早速指示いたします。
  110. 水田稔

    ○水田委員 ぜひそういうことで不安のないような限定をしていただきたい、こういうぐあいに申し上げておきます。  そこで、六十九条の四です。一番問題なんですが、その二項に、外務大臣は必要がある場合は通産大臣意見を述べることができるという新しい条文の挿入が行われようとしておるわけでございますが、これは今までも必要がある場合ということで通産省としては外務省から意見を聞いてこられたのじゃないですか。その点いかがですか。
  111. 畠山襄

    畠山政府委員 通産省といたしましては、今までも必要があります場合には外務省からいろいろ意見を聞いてまいりました。具体的には、例えば先ほど御議論に出ました特認の場合でございますが、あの場合はむしろ外務省がバリの国際会議に出て審査に加わっておるということでもございますし、それから、ココムの対象品目を決めるリストレビュー会合というのがございますが、その際にも外務省通産省とが協力してやってきておるということでもございます。違反事件の調査なんかにつきましても同様でございまして、かように外務省と必要に応じてこれまでも協議をしてまいりました。
  112. 水田稔

    ○水田委員 法制局おいでになっていますね。今通産省答弁がああいうことですが、これまでも実際やってきておる。今度こういうぐあいに法文化されるわけですが、ということは、これまで行ってきた既定の事実を法文化したというぐあいに理解していいものでしょうか。
  113. 大出峻郎

    大出政府委員 今までにおきましても両省間においていろいろ御相談があったというようなことでございますが、今回の場合には「国際的な平和及び安全の維持」ということに関連した条項もございますので、そういう今までの経験あるいは意見交換の実態というものを踏まえながら今回このような規定を書いたということであって、通産省の先ほどの御答弁のとおりであるというふうに考えております。
  114. 水田稔

    ○水田委員 これは通産省外務省に伺いたいのですが、「国際的な平和及び安全の維持」というのは具体的に何でしょうか。基準があるのなら教えていただきたい。それから、これはだれが判断をされるのかということを伺いたいと思います。
  115. 畠山襄

    畠山政府委員 「国際的な平和及び安全の維持」というのは、具体的にというのに該当するかどうか、ちょっと恐縮でございますけれども、私どもとしては、国際的な紛争の発生もしくはその拡大を助長するような取引、または西側諸国の安全保障に重大な影響をもたらす取引等を規制することによって、我が国を含む国際社会の平和及び安全が脅威にさらされることがないようにすることを意味するというふうに考えております。具体的にここで取り上げようとしておりますのは、ココムの品目であり武器輸出であり、そして原子力関係の資機材でございます。
  116. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 通産省と同じ考えでございます。
  117. 水田稔

    ○水田委員 これはココムリストと一緒で、言葉はわかっても具体的な内容はだれにもわからぬわけですね。最終的には日本の国内でどちらが判断するのですか。例えば、通産省はそう思わなくても外務省が思ったら言うことになるのですか。
  118. 畠山襄

    畠山政府委員 先ほどの御質問の中で、だれが判断するのかというところを落としまして恐縮でございましたけれども、具体的にはこれは政令でそう認められるものを判断するわけでございますので、政令で決められるわけでございますから、その政令の判断の主体が結局だれが決めるかということになるわけでございます。したがいまして、まず通産省が案をつくる、そして外務省その他にいろいろ合い議をいたしまして、そして内閣へ提出して決まるということでございます。今の御設例のようなケースは、話し合いで決めていくということにならざるを得ないと思います。
  119. 水田稔

    ○水田委員 政令でも、具体的なことを決めることがこれほど難しいことはないです。今まで日本の歴史の上でも平和とか安全とか、あれだけの戦争をやったときでも、やはり「東洋平和のためならば」ということで何をしたかということ、それほど難しいものですね。通産省外務省の判断は、どこに基準を置くかということで、もともと基準が一緒じゃないんですね。  もう一つは、幾らやったところで、例えば今の運営からいえば、ココムにいわゆる特認事項というのがあるということは、この条項に当てはまるか当てはまらないかの最終認定はココムにあるのではないかと思うのです。そうすると、ココムの中での発言力の強い国の判断がこの条項を最終的に決めることになるのじゃないですか、事実問題として。そういうものじゃないのですか。
  120. 畠山襄

    畠山政府委員 ここで言っております「国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるもの」とかという規定は、委員十分御案内でおっしゃっているわけではございますが、「認められるものとして政令で定める」貨物なら貨物ということでございまして、したがいまして、「国際的な平和及び安全の維持を妨げること」になる場合一般を私どもで決めようというような、そんな大それたあれではございませんで、その貨物なり技術なりを決めていくということでございます。具体的にはココムでの話し合いに基づいて決めていきますので、今特定国云々というお話がございましたが、そこは国際会議でございますので、特定国の理不尽な主張は退けていくということが前提でございます。そして決まっていきましたものについて、それはココム関係からの外為法上の規制貨物であり規制技術であると観念してまいりますので、また、ほかには武器とかいうものもございますが、国際的な平和及び安全一般を定義するようなそういった難しさはないし、またそういう大それたことは考えてもいないということでございます。
  121. 水田稔

    ○水田委員 ココムの実際のこれまでの運営の実態の中で、日本が今言われたような取り組みをしておるならばそうですかと言ってうなずきますけれども、ドイツやフランスは、その点ではたてりを守りながら言うべきことは言うておる。日本の場合は言っていないじゃないですか。それで、日本が一番この規制の中で通商上の利益を失っているという事実がおるわけです。政務次官がおいでになっておるので、午後は御都合が悪いようですから、質問の順序を変えまして外務省の方を先にやらしていただきたいと思います。その点については、後でまた関連の、補足の質問をしていきたいと思います。  そこで、政務次官がおいでですから外務省に伺いたい。  これは通産省にも聞いたのですが、今回の東芝機械外為法違反事件というのは、東芝はそういう意味外為法違反もしくは不公正取引でアメリカから非難されるようなことをやった会社とお考えになっているかどうか、その点を伺いたいと思います。
  122. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 さき通産大臣以下通産省の方から御説明がありましたとおり、私たちといたしましても、東芝自身は違反事件にかかわっていないというふうに判断しております。ただ、前にも御説明がありましたように、東芝が東芝機械の資本の五一%を持っていたという点は事実だということも了解しております。
  123. 水田稔

    ○水田委員 そうすると、今東芝が受けている攻撃というのは理不尽だ、こういうぐあいに外務省もお考えでしょうか。
  124. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 どういう言葉を使ったらいいかわかりませんけれども、今のアメリカの議会を中心にした動きは非常に残念なことであると思います。
  125. 水田稔

    ○水田委員 そこで、日本国民があのテレビを見て大変不愉快になったし、またあれをつくった東芝の子会社の労働者、悲憤慷慨しておるわけですね。これくらい我が国をばかにした話はない。というのは、皆さんもごらんになったように、アメリカの国会の前庭でアメリカの国会議員――いわゆる田本の輸出攻勢で職を失った労働者が腹立ち紛れに日本の自動車へどうこうということとは違うのです。少なくともアメリカの良識を代表する国会議員が東芝のラジカセをハンマーでぶち壊す、日本国民に大変なショックを与えたテレビ放映であったわけです。一体、外務省はこういうことはどういうぐあいにお考えになっているんでしょうか。まああれは仕方がないことだと思われておるのかどうか。東芝に対する攻撃は理不尽だとお考えになっている、こう言われたが、どうですか。
  126. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 ハンマーであの東芝製のラジカセをたたいている人たちの気持ちとしては、今度の事件が西側のあるいは自由主義陣営の安全保障に重大な影響を及ぼしたその憤慨の気持ちからやっているかということは想像されますけれども、あのような行為は非常に残念なことであると思いますし、アメリカの例えば新聞等に報道されます世論の中でも、非常に望ましくないあるいは大人げのない行為であるという報道も見られます。
  127. 水田稔

    ○水田委員 そう思われるのなら具体的に何か外務省はアクションを起こして、何かされたんですか。例えば、このようなけしからぬことがやられることは日米関係にとって決して好ましいことではない、まさにこれをつくった労働者にとってはこれくらい侮辱された話はないんですからね。自分たちが悪いことしたのなら幾ら攻撃されても仕方がない、いい商品を安くアメリカヘ提供した、それをアメリカの国会議員がハンマーでぶち壊す、それを世界に放映をされる、これぐらい侮辱されたことはない。その人たちの利益を守るのが外務省の仕事ではないんですか。具体的に何をされたか、聞かせてください。
  128. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 特に東芝制裁法案につきましては、在米松永大使を中心に(水田委員「いや、ラジカセの問題を聞いておるのです」と呼ぶ)この点につきましても、松永大使以下館員から関係議員さん等に直接会ったり電話をしたりいたしまして、日本側の事情説明等をしてできるだけ理解を得るように努めております。
  129. 水田稔

    ○水田委員 まさに外務省は、国外で日本の利益を代表して行動していることにならぬでしょう。何で説明するんですか。けしからぬと抗議すべきでしょう、政府に対してもアメリカの国会に対しても。これが日米関係に対してどういう影響を及ぼすかということを抗議してしかるべきだ。それをやらぬで、向こうの制裁強化のための、日本の国内の法律に対して法定協議を求めるようなことを外務省はやっておるのでしょうが。ちゃんとやることをやってから言いなさい。これは、大臣にかわって政務次官、答弁してください。
  130. 浜野剛

    ○浜野政府委員 お答えします。  外務省としては、大使を通じて遺憾の意を表明しております。また、在京大使も、それについてまことに遺憾であったという御回答もいただいております。  今後、こういう問題については、国内の民間企業企業責任、それからアメリカ議会の立場を含めて、具体的に率直に先生の御趣旨に沿うような形を外務省としてとってまいります。御了解願います。
  131. 水田稔

    ○水田委員 次官の答弁、了解いたしますが、しかし実際問題として、そんなことをしたら困りますよというぐらいのことでは聞かぬわけですよ、アメリカという国は。それは、先ほど次官おられぬときに、いわゆる陪審制度の国、文化の違いがある、だから日本政府がこれはもうけしからぬ、こう言うて声を大にしてとにかく抗議を申し入れるということが外務省になければ、何遍でもこんなこと起こってきますよ。そのことを申し上げておきたいと思います。  そこで、外務省がこの今回の東芝機械事件が起きてから具体的にはどういうぐあいに動いたのかということを、ちょっと御説明いただきたいと思うのです。
  132. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 私たちが最初にこの事件の通報に接しましたのは昭和六十年十二月で、ココムの議長から在仏大使館の担当官に連絡がありました。その後、アメリカからも去年の六月さらに去年の十二月に連絡がありまして、その後も引き続いてありましたけれども、その都度関係方面にこの情報を伝えまして、特に通産省にお願いしていろいろと調査をやってまいりました。
  133. 水田稔

    ○水田委員 この前も私は申し上げたのですが、例えばノルウェーの場合は大使が関係国会議員に全部手紙を出して、我が国はこういうぐあいに対応します。日本はそんなこともやっていないのです。というのは、本気でこの問題について問題の重要性――アメリカの思いというのは、さっきから答弁にあるように日本とは違うというのは、私だってそれはわかるのです。そういうことで、これはどうなるかということで通産省と十分協議しながら対応をやっておればここまでこじれることにはならなかったのではないか。そういう物の見方を、外国へちゃんと在外公館を置いて、そして国内へその情報を入れるということに、本気でなかったのじゃないかという気がいたしますし、また、先ほど申し上げましたように、東芝のラジカセをハンマーで壊すという事件についても、アメリカのことになるとどうも対応が一歩下がった形でやっておる。私は何もアメリカとけんかをしろとか、そんなこと全く思っていないし、日本の経済を考えれば日米関係は大事な関係だと私も思っています。  そういう中での外務省の対応に問題があるし、さらに私ども、これは真偽は確かめようがないわけですが、むしろ外務省筋が情報を流して、我が国からアメリカ側に対して、通産省の対応がなまぬるいから向こうから火の手を上げてもらいたい、そういういわば我が国の国内における官庁間の縄張り争いでアメリカ側で火をつける、そういう役割さえ果たしたのじゃないかといううわさが国内で飛んでおるわけですね。まさにそういう点からいうと、この問題は火が大きくなって通産省が困ることの方がむしろいいというような基本的な考え方で対応したのじゃないかと疑わざるを得ぬわけですね。だからこそ、通産省がこれほど苦労してこの問題、国内の通商上の利益を守ろうというのが、いわば形の上ではこんなばかげた法案を出さざるを得ぬというところまで追い込まれた責任の一端は外務省にあると私は思うのですが、その点はいかがですか。これは政治的な問題ですから、大臣にかわって次官、答えてください。
  134. 浜野剛

    ○浜野政府委員 いろいろな見解があると思いますが、外務省としてはそういうことは一切ございません。この点はひとつ十分なる御理解を願いたいと思います。
  135. 水田稔

    ○水田委員 実際に今現にアメリカとの貿易では、これは特定の会社というのではなくて、大変なダメージを受けておる。だから、沖電気の問題、半導体チップの問題を含めれば相当額のもの。それから、社会主義国圏との貿易では、これは既に先ほども質問にありました、中国は十八億ドルがキャンセル、あるいはまたソ連やその他の東欧圏では恐らくこの一年間に百億ドルを超す商売が事実今とまっていますからね。そういうことが起こっておる。これに対して外務省も責任があるわけですね。そうでしょう。そういう点はどういうぐあいにお感じになっていますか。そういう問題は通産省の仕事で、外務省はそれはないとお考えなんでしょうか。
  136. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 外務省の設置法にもございますように、外務省はいろいろな設置の目的がございますが、その中に「通商航海に関する利益の保護」ということもありますように、外務省としては従来からいろいろとやってきておりますけれども、この東芝事件が起こりましてからも、特にアメリカ議会を中心としたああいう強い意見に対しては、その鎮静化のために一生懸命努力しております。特に、例えば東芝制裁法案等につきましては外交ルート、特に在米大使館を通じて松永大使から、例えば上院議員百名全部に対して連絡をとって鎮静化に努めると同時に、下院議員につきましても有力な下院議員を中心に大半の方に一々接触をして努力してやってきております。そういうことで、私たちも通産省と力を合わせて一生懸命やっているということをこの際、御説明さしていただきたいと思います。
  137. 水田稔

    ○水田委員 本気でやっておるのならこんなことにならぬですよ。言われるように外務省設置法の三条の二号には「通商航海に関する利益の保護及び増進」こうあるのです。安全保障について外務省がどうこうというのはどこにも書いてない。それにもかかわらず、いわゆる外為法からいえば法律上も今の解釈でも憲法上問題があるこの法律改正について、法定協議を求めたのは外務省であることは事実ですね。いかがですか。
  138. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 従来からココムの問題につきましては通産省外務省との間で緊密に協力をしてきましたけれども、今後さらにこの協力連絡体制を強化するということと同時に、従来の協力体制につきまして法律上も明記していただきたいということを外務省から申しました。
  139. 水田稔

    ○水田委員 従来やっておるやり方と今度法定でこういうぐあいに入るということは、全然意味が違うわけでしょう。しかも、先ほど私は通産省に対して、ココムに対して国内でもとにかくいわゆる行政上の例外措置については基準を公表していく、外務省も一緒にやります、こう言ったのですから、それは今でもその部分について物を言いたい、外務省はこう言っておるわけです。そういう手続が煩瑣になることがどれだけ実際の実務をやっておる者については貿易上の障害になっておるということを、お考えになったことがあるのですか。このいわゆる三条の二号の趣旨からいけば、外務省の本来の任務というのはそういうことを取っ払っていく。先ほど答弁があったように、通産省と一緒にココムでもいわゆる行政上の例外措置については公表していく、だからもうほとんど問題なくなる、そういうことがこの外為法上の本来の目的じゃないか。しかし、外務省のやってきたことは法定協議を求め、さらにこの任務の中に書いてない安全保障上の問題で意見を言う。まさに通商上のブレーキを、この法律外務省の任務の中に書いてあることと違ったことを現にやりながら、私たちの任務でやっていますと言うのは、これは詭弁にすぎぬと思うのです。  この点は委員長、もう答弁よろしいです。まさに外務省のそういう対応が問題だから、私は冒頭、委員長がおられぬで代理の委員長に申し上げましたが、安全保障の問題では内閣総理大臣。これは拙速にやってはいかぬと思う。私どもは殊さらに時間を延ばそうという気持ちはありません。しかし、これだけのことが起こり、国内で大変な事件になっておる、しかも日本の将来に大変な影響を及ぼす法律だから、少なくとも最高責任者の外務大臣も必ず出て、時間がなければ大臣に合わした時間で我々はいいわけですから、そういうことでの運営をぜひお願いしたいということを申し上げまして、時間になりましたから、一応ここで午前中は質問を終わります。     ―――――――――――――
  140. 佐藤信二

    佐藤委員長 この際、御報告いたします。  ただいま審査中の本案について、去る二十一日、法務委員会、外務委員会及び大蔵委員会から連合審査会開会の申し入れがありました。  本件について、当委員会理事会で協議いたしましたところ、諸般の事情により、連合審査会は開会しないことになりましたので、御了承願います。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ――――◇―――――     午後一時二十二分開議
  141. 佐藤信二

    佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。水田稔君。
  142. 水田稔

    ○水田委員 途中、外務省に対する質問が入りましたので飛ばしておりましたが、具体的な条文について、六十九条の六と七十条で罰則強化行政処分も含めてやるわけでございますが、私が調べてみますと、いわゆる税法に関する関税法以外は、同じ経済違反については罰則というのは大体横並びにあるわけですね。国際的にいいましても、とにかくアメリカは別格としまして、今の日本程度で行われておる。これは先ほど来何回も御答弁がありましたように、あくまでも国内でそれが国内法規によってお互いに守っていこうということからいえば、あえてこういうような経済事犯として各法令との横並びを、これは突出して罰則強化というのが全体的な法の体系の上で実際いいのかどうか、そういう点について通産省の御見解を聞きたいし、また、これは国際条約あるいは国連決議で国内法が規定される場合でも、今の経済事犯については全部大体この程度のところですね。ココムというのは、先ほど来何回も御答弁があるように国際条約でもなければ国際協定でもない、いわば国際的な取り決めでは一ランク下の合意なんですね。それが国際条約に基づく法律よりも罰則がきついというようなことは、日本の法体系全体の上から均衡を欠くわけですから好ましいものではない、こう思うのです。この点は通産省法制局、両方から御答弁をいただきたいと思います。
  143. 畠山襄

    畠山政府委員 御指摘のように、経済事犯の違反は三年以下の懲役というのが多いことは事実でございますが、御質問の中にもございましたように、特許権等を侵害する物品等の輸入禁制品を輸入した場合、これは関税法の場合でございます。それから、文化庁長官の許可を受けないで重要文化財を輸出した場合などというのが五年以下の懲役ということになっておりますので、確かに一般の経済違反よりは少し長期になっておりますけれども、これは今回、現行三年という体制下でもこういう事件が起きましたものですから、それ以上の抑制措置をとりたいということと、それから時効の延長も図りたいということから五年にしたわけでございます。それで、国際的にもどうかという御指摘でございますが、確かに西ドイツ、フランスあたりは三年でございまして、イギリスは二年というようなことでございますから、それらと比較いたしますと長うございますけれども、アメリカは十年、カナダは五年、それからノルウェーは今度五年にすると言っておりますので、そういったものとの均衡を考えれば、まあまあ一応均衡のとれた年数であるというふうに考えるわけでございます。  それから、国際約束、国連決議等々は三年なのに、こっちの方は程度が低いにもかかわらず五年なのはおかしいじゃないかという御指摘でございます。私ども、ココムの申し合わせに基づきます規制は確かに紳士協定によるものではありますが、その内容からいたしまして、現実に主要西側諸国がこの申し合わせに参加してそれを遵守している中で違反事件が起きると影響も大きいわけでございますので、そういった内容の重要性に着目をいたしまして五年ということにいたしたわけでございます。  国際約束といいますとどんなものかと申し上げますと、例えばアメリカとの間での工作機械輸出規制というような話でございますので、こういうようなのは全く典型的な経済的な事件というようなことでございまして、その違反も影響は大きいには大きゅうございますが、ココムの違反ほどではないというようなことも考えまして、内容本位で一応五年ということで提案させていただいているわけでございます。
  144. 大出峻郎

    大出政府委員 「国際的な平和及び安全の維持を妨げる」と認められるそういう取引につきましては、その違反行為、すなわち通産大臣許可を受けるべきものを受けないで輸出等をするというような行為が、外為法目的である対外取引の正常な発展あるいは我が国経済の健全な発展に与える影響というものが非常に大きいということにかんがみまして、今回三年以下の懲役から五年以下の懲役というふうに罰則強化したわけであります。  経済規制等を行います行政法規違反というものの中で、五年以下の懲役刑を定めた立法例というものがどういうものがあるかといいますと、例えば銃砲等の無許可製造についての武器等製造法、この三十一条、これは一年以上十年以下という重いものであります。あるいは三十一条の二の四号、これは五年以下というふうになっておりますが、そういう例がございます。それから、酒類だとかもろみなどの無免許製造につきまして、酒税法の五十四条でございますが、五年以下という例もございます。それから、先ほど通産省の方も例を挙げられましたが、重要文化財の無許可輸出についての文化財保護法の百六条というような例もございます。あるいは石油需給適正化法の二十五条あるいは食糧管理法の三十八条、国民生活安定緊急措置法の三十七条などにつきましては、政令で定める行為について政令で五年以下の懲役刑に処する旨を定めることができる趣旨の規定もあるわけであります。このような関係条項との絡みから考えましても、他に立法例が非常に少ないというわけでもないであろうと考えておるわけであります。  それからもう一つの点につきまして、条約その他の国際約束、これは改正案の二十五条三項二号というところに関連をするわけでありますが、これの履行を妨げると認められるものの違反行為罰則は、通常三年以下の懲役という該当条項になっておるわけであります。これとの均衡の問題という御指摘がございましたが、これは国際約束によるものかどうかという形の上での分類ではなくて、それぞれの違反行為の重要性にかんがみましてそれぞれの罰則が考えられておるということであります。
  145. 水田稔

    ○水田委員 いずれも私の質問に的確に答えてないのです。本来これは法律改正を伴う問題ではなくて法の運用の問題で、ごり押しな強圧的な圧力がかかったことによって、形の上で何か示さなければならぬという嫌々ながらの思いでつくったものですから、答弁もこじつけになっておるわけですね。ですから私は、そういう点ではいささかも納得できない。まさに経済事犯に対する国際的なあるいは国内的な他の法律との均衡を失するということを申し上げておきたい。  そこで、大臣にお伺いしたいのですが、よく大臣は「西側諸国の中の日本」、こういう言われ方をするのですが、「西側」というのはどういうところなのですか。
  146. 田村元

    田村国務大臣 突然のお尋ねなのでちょっと私も表現に困りますが、自由主義諸国というふうに私は受けとめております。
  147. 水田稔

    ○水田委員 そうすると、当然イギリスやフランスや西ドイツやイタリア、みんな入るわけですね。ココムの問題というのはアメリカと日本だけがやっておるのじゃないのです。そういう国々の中でいろいろ話し合って合意をしていっておる。今度起こった事件、例えば東芝機械でアメリカが脅威を感ずるのであれば、当然大西洋から物を運んでおるイギリスやフランスや西ドイツは全く同じ脅威を感じなければならぬ。また、日本がこの問題で対応する場合、当然そういう国々の問題について配慮しなければならぬ。アメリカと日本は確かに結びつきは深いけれども、アメリカと日本日本が存在しておるのではない。ですから、この問題について通産大臣は、西ドイツやフランスやイギリスやイタリアなどそういう国々と起こった事態について、例えばアメリカに対してはああいう説明に行った。どうもEC諸国へ行ったような話も聞きませんし、またそこらと今後のあり方を協議したという特別な、これは外務省も含めてですが、外務省通産省が動いたということを、我々が寡聞にして聞かないのかもしれませんが、まさにそういう点では、国際的と言いながら、アメリカだけの言い分で日本が慌てふためいてやっておるという印象を受けるのですが、いかがですか。
  148. 田村元

    田村国務大臣 先ほどの「西側諸国」というのは自由主義諸国ということになりますが、現在我々が使っております「西側諸国」というのは、ココム加盟十六カ国ということになりましょう。今おっしゃったことはまさにそのとおりでありまして、何もアメリカが盟主で皆がその属領というわけではございませんから、日本からいえば他の十五カ国全部と平等の対応をしなければならぬことは当然であります。  実は私、特に意図したわけでもなかったのですけれども、通産大臣になりましてからヨーロッパヘはしばしば行きまして、そしてヨーロッパの担当者なんかとはもう電話で話ができるぐらいのおつき合いになっておりますけれども、アメリカというのは行ったことがなかったのです。それで、アメリカの議会に対していささか戸惑いもございましたけれども、それはそれとして、私は今おっしゃったことはごもっともだというお返事を申し上げます。  同時に、今度ほど議員外交の必要性を感じたことはなかった。特にアメリカは日本と違いまして議院内閣制ではありませんから、三権分立ですから、議会は議会なんですね。でございますから、やはり日本の議会人がアメリカの議会人と相互に交流し合うことは一番必要なことだということを痛切に感じました。ちょっとつけ加えて恐縮ですけれども。
  149. 水田稔

    ○水田委員 ですから今度の問題、我々国民から見ればまさにアメリカの理不尽な攻撃の中でなすすべもなく日本が譲歩をする、長いそういう積み重ねをやってきた。どこかで断ち切って、やはり西側諸国を含めて世界の中で日本が独自なそれぞれの国との関係を持ち得るということを考えていかなければならぬ。今後のココム運営についても、例えばドイツやフランスやイギリスやイタリアというところとも、こういうことが起こって我我としては今後はこういうぐあいにやっていく、そういう中で、例えば罰則なんかでもそういう国国と歩調を合わせていく、あるいは特認の問題でも、従来の運営というのは、アメリカが圧倒的に多数を出して、そしてアメリカの分は全部通って、そしてよその国のは特認から落ちるというのが現実の運営なんですからね。そういうことが日本のこれからのために必要ではないかということを申し上げて、次へ進みたいと思います。  先ほど来申し上げましたように、四月にこの事件が表へ出て以来五カ月たったわけですね。これは実際にはとまってしまっておるわけです。ですから、新しく出しても事実上審査は進まない、あるいは既に非該当証明をもらって倉庫へ入っているものももう一遍通産省許可をもらってこい、こういうことになっているわけですね。午前の質問にもありましたように、これは中国側から十八億ドルのキャンセルがあった。これから東欧圏との取引がどのくらいマイナスになるかというと、これは二、三〇%は恐らく下がるのではないかと言われておる。こういう社会主義国圏との貿易というのは、この一年間だけで足せば恐らく百億ドルを超すことになるのではないか。またアメリカとの関係では、いわゆる報復措置による一〇〇%関税というようなことから落ちていっておる。全体的には大変な影響を受けておるわけです。確かにアメリカの経済と日本の経済の結びつきは、日本の中でも圧倒的な比率を占めていることは事実であります。しかし、これから世界全体の経済が伸びていく中で、西側諸国だけではなくて東西の貿易の拡大というのも一つの課題であろうと私は思うのですね。一つは、そういう点については長期的にどういう戦略を持って、お考えを持って通産省は対応しておられるのかということをまずお伺いしたい。  もう一つは、現実には法律は生きておるわけです。外為法は現実に生きておるのですが、実際には機能しないのですね。機能しないために専業、中小の商社というのはまさに倒産がどうかというたちまちの問題になっておる。これは通産省が今の法律の運用をきちっとやれば、それからもう一つは、通産省がココムに対する基本的な、国会で答弁しておるようにこれはあくまでも国内問題、外為法を守ってきちっとやってもらえるならばきちっとやります。ああいう東芝機械のような不実の申告をやらずにきちっとやってくれ、やるんならこれは機能するはずなんです。そういう明確な業界に対する指導もできない。聞きに行っても、通産省は全く今は殻を閉じて物を言わない。事実問題として、これは外為法目的からいっても通産省はそれをやらなければならぬのに、実際機能していない。それを早く機能さすことをやらなければ多くの倒産も出るし、そういう中から通産行政に対する不信が、アメリカからの強圧に負けるということと、もう一つは、現実に今の法律を機能させればできることが、させないためにおれたちはこんなひどい目に遭った、そういう行政に対する不信がどんどん高まってきておるわけです。  ですから、一つは全体的な長期にわたる、いわゆる社会主義国圏を含めた貿易構造について通産省がどういう方向へ持っていくのかということ。もう一つは、具体的に今起こっておる問題について、どういうぐあいにすればいい、この法律は生きておるのだからこういうぐあいにやりますよということを言ってあげなければ、これはますます行政不信を招くことになるということで、二点をお伺いしたいと思います。
  150. 吉田文毅

    吉田政府委員 我が国といたしましては、貿易立国ということを国是としているということもございまして、いろいろな国との調和ある対外経済関係の進展ということを常に希求しているわけでございます。  共産圏貿易につきましては、先日来いろいろ御議論がありました際に私どもお答え申し上げましたように、ソ連につきましては、向こうの油価の低下という外貨事情等ございまして、現在、若干貿易が昨年並みにはいかないかなという感じになっております。また、中国問題につきましても午前中お答え申し上げたわけでございますが、これらソ連、中国を含めまして、共産圏貿易につきましても、日本との間での健全な発展ということを考えております。  また、米国、EC等につきましては、いろいろ貿易摩擦的な問題も生じておりますが、例えばECにおきましては、産業協力の進展ということで、相手国産業の活性化のお手伝い等もしながら貿易の伸展を図っているところでございます。  また、東南アジアにつきましては、東南アジア諸国輸出に貢献し得るような企業の育成というような点につきましても、いろいろ通産省としても努力をしているところでございます。
  151. 畠山襄

    畠山政府委員 通産省が今の外為法の運用をきちっとやっていないがために審査が停滞をして、そして、なかんずく中小の貿易業者に大きな影響を与えておるという御指摘でございますが、確かにそういう一面が現在このただいまの瞬間はございます。それでこれは、今回の事件企業による虚偽の申請というものに基づいて起こったために私どもの審査が慎重になりまして、その結果承認が停滞をしておるということでございます。しかし、そういうことで中小の貿易業者等に影響が出てはいけませんものですから、この前からお答え申し上げておりますように、そういうことのないよう全力を尽くしてまいりたいと思っております。  それで、具体的には七月十日から内部の定員振りかえによって人数をふやしました。人数をふやしましたが、まあ正直申し上げて、その瞬間はまだ輸出担当業務になれておりませんので、まだ過渡期的な期間を過ごしております。それから、来年またさらに八十人体制へと増大するべく要求も行っております。こういうことを通じまして、審査期間が従来の一、二カ月というような平常のペースに戻りますように、一生懸命やってまいりたいと思います。
  152. 水田稔

    ○水田委員 そのことは通産省が、新しい法律になるかならぬか、そのうち通るのでしょうが、現行法律でも実際にやらなければいかぬことをやっていないために起こるのですから。具体的に今、業者が聞きに行っても通産省は何も言わぬわけです。ですから、通産省はこういうことでやりますということをやはり十分周知するということが必要だろうと思うのです。  それから、先ほど大臣に西側ということをお伺いしてちょっと聞き漏らしたのですが、こういうことなんです。例えば、先ほども言いましたように、外務省は安全保障上というと考え方は大分違う場合もあるのですね。ですから外務省意見を聞く場合でも、例えば行政上の例外措置などをやる場合でも、ヨーロッパの各国が運用している常識的なココムの運用、やはりそこらを通産省としては頭に置きながら、これが常識的なココムの運用と。だから、国の名前を言ってはいけないかもしれませんけれども、例えばアメリカなんかから特別に別の意味でのクレームがついて、よその国は皆このくらいのレベルでやっておるのに突出してこれはだめ、そういうことに屈することのないように、いわゆる西側諸国全体の中での標準的なところで我が国もココムヘの対応というのをやっていくんだ。大臣に、ぜひそういう構えでやっていただきたいということをお願いしたいのですが、いかがですか。
  153. 田村元

    田村国務大臣 おっしゃるとおりでありまして、貿易量におきましてもあるいはまた輸入障壁その他いろいろな問題についても、例えばヨーロッパを見まして、西ドイツ等と遜色のないような形にこれを育成するとともに、ココム等に対してもやはり西側諸国としてのバランスはとるべきだと思います。
  154. 水田稔

    ○水田委員 時間がありませんから、最後にまとめて大臣にお伺いしたいのです。  一つは、大臣がアメリカヘ行かれる場合に、衆参の商工委員会の委員長をお連れになって行かれておる。これは恐らく党の立場で行かれたのだと思うのです。委員会の立場なら当然委員会理事会の承認ということなんでしょうが、しかし、先ほど大臣からもお話がありましたように、アメリカも三権分立かもしれませんが、我が日本もそうなんですね。これは恐らく、外務省関係なしに我が国通産省商工委員会だけだったら、こんな法案を出すことはみんな反対ということになってしまうでしょう。政府としての統一の意見がこういうことになったというぐあいに思うのですね。アメリカヘ委員長が行くというのは、アメリカの国会の権能からいえば、議会も大臣と同じ意見でとにかく帰ったという印象を与える。私どもとしてはこの委員会で、今度のあり方は日本国民の多くは納得しないだろうという思いでありますから、これはちょっと軽率なやり方ではないか、行政府に従属した商工委員会ではないという点で、私は極めて遺憾に思います。あえてこれで追及とかなんとか言いませんが、遺憾の意だけは表しておきたいと思うのです。  それからもう一つは、私は、本来これは対外的なことですから、外務省の責任がまさに通産省以上にあると思うのですが、外務大臣は来ておりませんから、外務大臣にこの責任をとってやめろということを言われぬので、できれば委員長、冒頭申し上げましたように、そういう機会を持っていただければ申し上げたいと思うのです。  外務省の方にも極めて責任は重いということだけ申し上げて、最後に通産大臣、私は、今回のこの法案を出さなければならないようになった事態というのは、まさに我が国の通商上の利益を損なう事態になった。これは大臣の全面的な責任じゃない、外務省の責任もありますけれども、少なくとも、本当に心の底から、こうやることが日米関係のためにいい、日本の産業界のためにいいという思いはないと思うのです。そういう思いで私は、日本的な責任のとり方というのは、やはりこれは理不尽だったということで、けじめをつけて進退を明らかにすべきじゃないか。そのことで、理不尽な要求によってこういう法案までつくらされたから日本では所管大臣がやめなければならぬという日本の風土あるいは日本の文化というものをアメリカに知ってもらう。そのことをしなかったら、今回の事件は、相も変わらずアメリカが、理不尽であろうと理屈が通らなくても、強圧的に声を大にすれば日本は何でも聞くということを今後に残していくのではないか。それを断ち切るためにも、私は、大臣がそういう意味での責任をとられるべきじゃないかというぐあいに思います。  その点をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  155. 田村元

    田村国務大臣 実は、薄々御承知と思いますが、この事件が出ましたとき、私はもう職を辞そうと思いまして、親しい友人たちに相談をかけました。そしてアメリカヘ行ったわけであります。  アメリカで、先ほどおしかりいただきましたが、あの国は日本と全然議会の立て方が違いますから、こういうことを言うのは大変恐縮なんですが、私が言ったのではなくて向こうが言ったのですからお許しを願いたいのですが、三百人以上おって何も決められないとは何だということなのです、極端に言えば。おまえたちは議院内閣制じゃないか、こういうことなんですよ。ところがアメリカはどうかというと、党議なんというものはもう二の次なんですね。共和党と民主党と両方の議員が組んで、そして大統領のことをぼろくそにやっておるというような、余り党議を重んじないというのでしょうか、昔の緑風会的なところがあるということもございまして、なかなか難しいことはございました。けれども、両委員長に御一緒に願ったことのよしあしはとにかくとして、大変これが、向こうでは委員長というのは偉いのですから、非常にオーソライズされたことだけは間違いがない、これは間違いがないと思うのです。  それはそれとして、まあよしあしを僕は言っておるわけじゃございませんが、それで、実は向こうで私はボルドリッジ、ヤイターに、おれはもうやめようと思う、俗に死の抗議という言葉があるが、もうやめようと思う、こう言いましたところ、二人とも私に、まあこれはミニスター・タムラじゃなくてミスター・タムラに言う、友人として言うが、ばかなことはよせ、おまえの方じゃ東芝の会長、社長がやめたというが、敵前逃亡してそして相談役になって給料をもらって今ごろは事件を忘れてゴルフしているんだろう、日本大臣まで逃げたとアメリカ人はとる、日本人的な感覚を我々は受けとめるわけにいかないと。私が東洋人としての深さだと言ったのですけれども、それは全然通用しない。とにかくできるだけのことをするというのが責任のとり方じゃないのか。考えてみれば私も大正の人間ですが、生きて虜囚の辱めを受けずというのと、やるだけやったら白旗掲げるというのとの違いかもしれませんけれども、そこいらのことがございまして、私も随分悩んだのですけれども、懸命に努力することが責任のとり方、少なくともアメリカ相手での責任のとり方かな、国内問題であれば潔く職を辞するのが責任のとり方かな、こういうふうに思って生き恥をさらしておるということでございます。
  156. 水田稔

    ○水田委員 私は、日本の今現実に起こっておる事態というのは、国内の問題です。大変な状況ですね、経済的には。これは法律の問題じゃなくてやはり運用の問題だ、そういう一面と、また理不尽なことをのまざるを得なかった通産大臣の無念の気持ちをアメリカに示すのは態度で示す以外にない、そういう意味で申し上げておるのですからね。単にあなた、責任とってやめろと言うのじゃないのです。それなら私は、むしろ外務大臣に言いたいのですね。その対応が長年にわたって悪いからこうなった。だから、通産大臣、無念の思いを込めて、譲るべからざるを譲らざるを得なかった今の状態に対する無念の気持ちを進退によって示してもらいたい。これはもう答弁結構ですから、そのことを申し上げて私の質問を終わります。
  157. 佐藤信二

    佐藤委員長 二見伸明君。
  158. 二見伸明

    ○二見委員 最初に、今回の改正の引き金になりましたいわゆる東芝機械事件でございますけれども、アメリカの異常な反応を見るにつけ、やはりこれはココム違反ということだけではなくて、日米の経済摩擦あるいはハイテク摩擦というものが根強くあるのではないかなというふうに思います。  それで、ちょっと本題から外れて申しわけないのですけれども、最近は日米経済摩擦等々がありまして、日本の海外投資、かつてはアメリカに三分の一、東南アジア等いわゆる太平洋圏に四分の一ぐらい海外投資が行われていたのが、経済摩擦なんかを契機にいたしましてアメリカヘの投資が目立ちまして、最近は五〇%ぐらいになっている。その結果、シェアでは東南アジア等々が、いわゆる太平洋圏がシェアとしては減っているというふうなことも伺っているわけでありますけれども、大体そういう傾向にあるのかどうか。  また、もしそういう傾向が事実とすれば日本にとっては余り好ましい傾向ではないな、日本のアメリカに進出するあるいは日本の資本がアメリカに行くのが悪いということじゃなくて、その結果東南アジア、太平洋圏への日本の進出が減るということがまずいなという感じを私は持っているわけですが、その点については通産省はどうお考えでしょうか。
  159. 杉山弘

    ○杉山政府委員 日本の海外直接投資についてお尋ねがございました。大体の傾向は今御指摘のあったようなことでございまして、昭和五十五年度におきましては、対米投資は全体の約三分の一くらいでございます。対アジアの国々に対しますのは四分の一、こういう感じでございましたが、最近時点、例えば昭和六十一年度で見ますと対米が四六%、対アジアが一〇%というような数字になっております。  この理由でございますけれども、対外直接投資と申しますと、製造業もさることながら、金融、サービス、不動産といったその他の業種が非常に多うございまして、こういうものはどうしても勢い先進国、特にアメリカに向かわざるを得ない。それから製造業について見てみますと、かつては御案内のように製造業も資源立地ということで資源に近いところ、また労働力の安いところということで発展途上国に出てまいりましたが、特に資源立地型の海外投資というのは製造業の場合最近はちょっとテンポが衰えてきておりまして、むしろ近時では御案内のように加工組み立て型産業の対外進出ということになってまいりますと、これもまたどうしても先進国にならざるを得ない、こういう感じでありまして、製造業につきましても対米投資の割合というのがここのところ上がってきております。  ただ、私特に注目したいと思っておりますのは、この円高が始まりましてから特にNICSにつきましての加工組み立て型の投資が割合に伸びてきておりまして、例えばNICSについての製造業の投資というものを見てみますと、五十九年度は七%、六十年度が二%でございましたが、六十一年度には一五%程度に上がってきておりまして、対米の製造業の投資とともにやはり対NICSに対する製造業の投資というものもふえる傾向にあるのじゃないかと思います。  マクロ的に見ますと、今先生御指摘のようなことで対米の比率が上がり発展途上国が落ちているということで、必ずしも傾向として好ましくはないわけでございますが、内容的に見てみますと、少なくとも製造業に関する限りはそういうことでちょっとNICS投資につきましては上向いてくる兆しがありますし、こういうような円高の状況が続きますとこの傾向がますますこれから強まっていくのではないか、こういうふうに考えられると思います。
  160. 二見伸明

    ○二見委員 実は大臣東芝機械事件を機にアメリカ議会の対日批判がかなり強まってきているわけですね。これは見方を変えますと、日本とアメリカとで日米双方の経済依存度がかなり深まっていることの一つのあらわれだろうと私は思います。それなりにあの事件で、いろいろなアクションは別といたしまして、日米関係がもうある面では抜き差しならぬくらいお互いにコミットしてしまっている。この関係は非常にいいことだと私は思うのです。  だけれども、そういう関係はこれからも堅持するとしても、日本の海外直接投資が先進国型になってアメリカの方へどんどん行く、それは一つの流れかもしれないけれども、しかし日本が長い目で見た場合に、今の杉山さんの御説明ですとNICSには加工組み立て業が少し息を吹き返してきているというお話がございましたが、いわゆる東南アジア、太平洋圏、ここと日本との関係というのはもっとパイプを太くする、パイを大きくする必要があるのじゃないか、そうしておくことが、また例えば東芝機械事件のようなことが起こったときに日本の対応もまた変わってくるのではないかと思うわけですけれども、大臣の御見解、また具体的なお考えがありましたらお答えいただきたいと思います。
  161. 田村元

    田村国務大臣 まさにおっしゃるとおりでありまして、西ドイツの前の首相であるシュミット氏が日本に対する提言をしております。それは、我が国つまり西ドイツはECという非常に大きなマーケットを持って、対米依存度いわゆる対米輸出輸出貿易量の一〇%そこそこである、ところが日本は対米依存度が四〇%に近い、むしろECにもっと進出をし、そして日本の近隣諸国を大いに育成するといいますか近隣諸国に繁栄してもらうということによって日本貿易を地域的にも分散させて、そしてアジアの繁栄に資することが必要なのではないかということをシュミット前首相が言っておるわけであります。私はまさに至言であると思うのです。  今、我が国の周辺を見ますと、いわゆるアジアNICSと言われる韓国、香港、シンガポールを別にいたしますと、皆一次産品に頼って、そしてその価格の低落等で非常に苦しい思いをして、私も先般ASEAN諸国を回ってきましたが、皆外貨がなく、資金に苦しんでおります。私はタイのバンコクで、新アジア工業化総合協力プラン、平素ニューAIDプランと言っておりますが、ニューAIDプランというものを提唱いたしました。これからの日本は、アジアNICSと大いに競争し合いながら、ASEAN諸国の産業形態が外貨獲得型の、いわゆる輸出型の産業になっていく、いわゆる二次産業等をどんどん興していただくように、我々も、従来のお金を貸してあげますとか差し上げますだけじゃなしに、技術からノーハウからいろいろなものを提供して、そしてASEAN諸国からどんどんと物を買う、マーケティングあるいはセールス、すべていろいろな面で御協力申し上げるということでやっていく必要があるんじゃないか。それからまた、累積途上国に対して黒字の還流もどんどんと思い切ってやるべきじゃないだろうか。また、太平洋地域のコールフロー計画といいますか、そういう点でも大いに協力をしていって、そして、何もアメリカと貿易をするなという意味じゃありませんけれども、対米依存度を徐々に薄めながら、対EC、とりわけ近隣諸国との貿易の交流というものをもっともっと大きくしていくことによって、アジアの平和と安定、同時にまた日本の経済的繁栄と安定ももたらされる。  私は、先般のシュミット前首相の意見を聞いて、なるほど彼は一がどの人物だな、一番我々が考えておることを言い当ててくれたなという思いでございましたが、まさに二見委員のおっしゃるとおりだと思います。
  162. 二見伸明

    ○二見委員 東芝機械事件のアメリカ議会の反応は非常に異常なわけですけれども、私もやはり頭にはきておりますが、ただ、だからといって反米ナショナリズムというような感情を日本国内で起こすようなことがあってはいかぬ。アメリカこんちくしょうというので昔の五十年前の鬼畜米英みたいな気持ちになって、反米ナショナリズムというものだけは絶対に起こしてはいかぬ。アメリカも冷静だけれども、日本もやはり同じように冷静に対処しなければえらいことになるという考え方を持っております。  それで畠山さん、あなたはこの間大変御苦労されて、我々がお盆で休んでいる間にアメリカヘ行ってこられました。向こうへ行ってあなたが説明をしてきた。九月八日からアメリカで両院協議会が開かれますね。そのときの対日制裁条項のことであなたは行かれたのだと思うのだけれども、向こうでの反応は大体どんなぐあいでしょうか。
  163. 畠山襄

    畠山政府委員 私ども、まず東芝制裁法案につきましては、他国が一方を裁くと申しますか、そういう内容でもあって絶対に反対であるということを伝えたわけでございますけれども、それに対しまして先方での反応は、政府当局者は、これは田村大臣訪米時にも表明をしておったわけでございますが、一様に反対。反対というのは、日本の立場に賛成であって、東芝制裁法案には反対ということを表明いたしておりました。これは政府当局者でございます。  ただ、その見通しはどうかという点でございますが、この点につきましてはしかしながら議会は非常に勢いづいておって、どういうことが起こっても不思議ではない状況でもあるので、東芝制裁と呼べるかどうかは別として、包括貿易法案の中にかあるいは単独でか、何らかの形でココム関係規制が入るという見通しが非常に強いというようなことを、先方の数多くの人が述べておりました。
  164. 二見伸明

    ○二見委員 ちょっと確認ですけれども、それは例えば日本企業特定した法案なりなんなりが出そうだということですか。
  165. 畠山襄

    畠山政府委員 これは政府関係当局者のまあ一部は期待であり希望であると思いますので、あるいはそのまま額面どおりに受け取ってはいけないのかもしれませんが、先方の言っておりましたのは、できればそういう具体的な名前を入れるとかいうことではなくて、そして、できればそういう一国が他国を制裁するような形ではなくて、そういう形ではない何らかの規定が設けられる、その辺で妥協ができるといいんだけれどもねというようなことを言っている人が複数おりました。
  166. 二見伸明

    ○二見委員 畠山さんにもう一点伺いたいのですけれども、アメリカの議会はかなり強硬だけれども、産業界の方では日本の立場についてはかなり理解をしてきているという話も伺っているのですが、産業界の反応はどうでしょうか。
  167. 畠山襄

    畠山政府委員 私、産業界に直接はコンタクトをしませんでしたので直接の話ではございませんが、例えば産業界の一部に、東芝制裁法が実施されると、東芝からの部品の供給でございますとかそういったものに仰いでいるところが相当あるので、東芝制裁法はアメリカの産業にとっても有害であるという意見を表明する人が多い。それで、そのことは東芝制裁法を阻止する上で有益であるということを米国の政府当局者も述べておりました。
  168. 二見伸明

    ○二見委員 大臣、この段階で予測しろと言われてもあるいは御答弁できないかもしれませんけれども、外為法はきょう議了いたしましてあした採決ということになりますね。それを前提といたしますと、アメリカの両院協議会での結論というのは最悪の事態は避けられるというような、確信までいかなくても確信に近いようなお気持ちはお持ちでしょうか。それとも、やはりそうはいかぬ、まだ確信するほどまでいっておらぬというのが現在の御心境でしょうか。いかがでしょう。
  169. 田村元

    田村国務大臣 これも大変お答え申し上げにくい御質問なのでありますが、率直に言ってわかりませんという答弁が一番正直だと思います。外為法改正され、管理体制その他いろいろな面が整備されて、両院協議会が幾らかでも日本に対していい姿勢を示してくれることを期待しておりますが、ただ言えますことは、これがもしだめになったら、外為法等がだめになったら、それは間違いなく向こうは硬化してしまうであろうということは言えましょう。けれども、私が先般スマート氏も参りましていろいろとよもやま話をしておりました範囲内においては、アメリカの行政府は、日本の国会がうまくやってくれ日本通産省がうまくやってくれれば我々は大いに助かる、議会対策が助かる、こういう表現はございました。
  170. 二見伸明

    ○二見委員 私も、アメリカ議会の冷静な対応を心から期待をいたしております。  具体的に本論に入りますけれども、最初にいわゆる四十八条関係についてお尋ねをいたしたいと思います。  四十八条で、今度こういう条文が入りましたね。「国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める」、これはいわゆるココム関連貨物特掲するというか、特記するための文章だというふうに言われております。そういう前提でちょっとお尋ねいたしますけれども、四十八条関係については、政令に定める貨物というのは貿管令の別表で難しい、今までは番号かなんかがずっと並んで品目がありまして、その下に「全地域」、こういうふうになっておりましたね。今度はそれはどういうスタイルになるんでしょうか。しかも、この今度の場合には四十八条の一項、二項に違反した場合には五年の懲役ですね。いわゆる五年物ですね。それ以外は三年物ですね。今までは別表は全部三年物だったわけです。今度は五年物と三年物に分かれるわけですね。五年の刑罰のものはこれでございますよ、三年ものはこれでございますよというように、素人が見てもわかりやすく表というのはできるのかどうか、その点についてはどうでしょうか。
  171. 畠山襄

    畠山政府委員 まず四十八条の一項でございますが、一項につきましては、具体的に申し上げればこれまでの別表のとおり品目としては百七十八品目が並ぶことになるわけでございます。ただ、その内訳といたしまして、武器に該当しますものは全地域ということで従来どおりでございます。それからココムだけのものは、ココム対象地域と申しますか共産圏と申しますか、ちょっと正式に何て御説明するかという問題はさておきまして、御説明のために申し上げれば、そういうような地域を限定いたしまして掲げることになるわけでございます。それから原子力も全地域ということで掲げさせていただく予定でございます。したがいまして、その一項の場合は違反は五年でございますけれども、二項は三年になるわけでございます。  それで、二項の方は迂回輸出規制するのが趣旨でございますから、例えば武器に該当しますものは、一項で全地域と書いてございますから、二項には書かないわけでございます。それで、武器とか原子力を除いたもの、だから武器とか原子力とダブらないココム品目について二項に定めていくということになるわけでございますが、これはわざわざもう一遍表を書きませんでも、その項の第何号から第何号までというふうに書けばそれで足りるというふうに考えております。  で、御質問の最後の点にお答え申し上げれば、そういうふうに明確にいたしますので、どれが一項、すなわち五年以下の懲役に該当し、どれが三年以下の懲役、これは二項の話でございますけれども、に該当するかということは明確になろうかと思います。
  172. 二見伸明

    ○二見委員 そうすると、現在ですと別表でずっと一覧表がありますね、それだけ見たんではどれがココム規制品目かわからぬわけですね。通産省から出されている通産省公報とかを見ると、番号が何と何と何はココム規制品目である、こうなっておりますね。そういう煩しいことじゃなくて、今度はその政令、そしてそれに基づいた別表を見れば、ああこれはココム規制品目なんだなと、担当の人、商社なりメーカーなりはそれを見ればもうわかるわけですね。それでよろしいですね。
  173. 畠山襄

    畠山政府委員 御指摘のとおりでございます。
  174. 二見伸明

    ○二見委員 そうすると、現在百七十八品目ですね。この百七十八品目というのはココムリストとイコールですか。それとも、ココムリストではあるいは百七十一か二か知らぬけれども、小さいんだけれども、日本は何か特別の判断があってふやしているということになりますか。同じですか、どうでしょう。
  175. 畠山襄

    畠山政府委員 ココムリストを単純に計算いたしますと百七十四品目でございます。日本はそれを若干の品目についてブレークダウンをいたしておりますので百七十八品目になりますが、その範囲が全く同じかといいますと、やはり政令を書きますときの技術とか、もう少し平易にわかるようにした方がいいとかそういう配慮もあるものですから、そういう意味で、ココムリストに掲げてある品目よりも日本の方が、貿管令の方が若干範囲が広くなっておるという面がないではございません。
  176. 二見伸明

    ○二見委員 今四品目多いわけですね。この四品目多いのは、翻訳というか、それを翻訳するときの技術上の差でもって四品目が出てくるのか、それとも別の理由でもって四品目が出てくるのか。いやこれもやはり規制品目にしておこうという日本政府の意思でもって四品目がつけ加わっておるのか、その点はどうでしょう。
  177. 畠山襄

    畠山政府委員 これは国民理解を得やすいためにブレークダウンをしておるだけでございまして、その面から規制の範囲が広がっているということはございません。例えばココムリストの中にNC工作機械と一本で書いてあったとしますと、それを我が方では、政令の方ではNC装置とそれから工作機械というふうに分けておるというたぐいの話でございまして、先ほどのお答えの中の後段で申し上げましたのは、そうしたブレークダウンとは別に、個々の品目でごらんいただきましたときに余り精緻に書きますと煩わしくなります面がありますので、ココム品目の範囲を若干超えて、平易を求めて大ざっぱに書いてあるところが政令の方にはございますというだけでございます。
  178. 二見伸明

    ○二見委員 それからさらに、四十八条で「特定の地域を仕向地とする」、これもやはり政令ですね、特定の地域も政令ですね。貨物政令ですね。その政令で決められる特定される地域というのは、具体的にどういうことになりますか、どういう基準でこの地域を特定するわけですか。
  179. 畠山襄

    畠山政府委員 御指摘のように、四十八条は貨物政令で定めますし、地域も政令で定めるわけでございますが、その地域を政令で定めるのは、第一項の場合でございますると主として共産圏というようなことで定めていくことになると思います。
  180. 二見伸明

    ○二見委員 そうしますと、ココムで規制対象になっているのは十二カ国ですね。キューバとかアフガンというのをたしか今言ったけれども、今は十四ですね。プラス二というのはキューバとアフガンですね。これからもやはりそういう十四カ国が特定される地域ということになりますか。それとも共産圏で、キューバ、アフガン、それ以外にもまたふえてくることになりますか、あるいはもっと減らしますか。例えば中国なんかどうなりますか。
  181. 畠山襄

    畠山政府委員 地域につきましては政令指定でございますので、政令までの段階で具体的に考えてまいりたいと思っておりますけれども、現在の対象地域、今御指摘のキューバとかアフガンも、何と申しましょうか、通産省が本省で事務を処理している地域に入っておりますが、そういったものも含めてやっていくということになると考えております。
  182. 二見伸明

    ○二見委員 もう一点伺いますけれども、この特定の地域、これもやはりココムの委員会で、加盟十六カ国で決めるわけですか。それとも、その点はある程度それぞれの国がフリーハンドを持っているのでしょうか、この決め方は。
  183. 畠山襄

    畠山政府委員 ココム委員会としての対象地域というのは当然ココム委員会で決めていくわけでございますが、それを我が方がどう政令上規定していくかというのは、それを参考にしながら私どもが決めていくというのが筋であると考えております。
  184. 二見伸明

    ○二見委員 そうすると、例えばココムの委員会では十二カ国であって、日本としてはそれにプラスしてキューバ、アフガンを加えるという政策判断をすることもあるということになるわけですね。そういうことですね。
  185. 畠山襄

    畠山政府委員 恐縮でございますが、ココムの委員会での対象地域というのは、一応申し合わせにより公表しないということになっておりますので、これを政令に直しました際に、それが完全に一致しているとか一致していないとかいうところは、ちょっと答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  186. 二見伸明

    ○二見委員 それから第二項の方ですね。「通商産業大臣は、前項の規定の確実な実施を図るため必要があると認めるときは、同項の特定の種類の貨物を同項の特定の地域以外の地域を仕向地として輸出しようとする者に対し、政令で定めるところにより、許可を受ける義務を課することができる。」この条文はどういうことを意味しているのかな、これは簡単に言いますと。
  187. 畠山襄

    畠山政府委員 第一項に、例えば特定の地域として共産圏なら共産圏と書きました場合に、第二項ではその共産圏「以外の地域を仕向地として」ですから、例えばアメリカを仕向け地として輸出しようとする者に対し許可を受ける義務を課すことがあるということでございまして、例えばアメリカを経由して共産圏なら共産圏へ迂回輸出されることを予防しようとする趣旨の規定でございます。
  188. 二見伸明

    ○二見委員 これは第三国経由を防止するわけですね。先ほど午前中の御答弁の中に、ICであるとかDVであるとか、そういうものでもって担保するわけですね。そうすると、ではその政令で定める第三国、これはどういう基準になりますか。要するに、共産圏以外は全部第三国になるわけですか。  ココム対象国は政令で定める地域に私は入っていると聞いているのですけれども、まずそうなのかどうか。ココムに加盟していない国がありますね。例えばシンガポールとかオーストリアとかスウェーデンとか、そういうところはどういう基準でもって第三国に日本としては決めていくのか。その基準だとか決め方はどうでしょう。
  189. 畠山襄

    畠山政府委員 原則として、その第二項に書きますのは、第一項に掲げられた地域以外の地域すべてということになると思います。特定品目について、全くその国を経由して迂回輸出があり得ないということは、論理的には考えられますけれども、実際上はそういうことは余りありそうにないと思われますので、原則として第一項に掲げられた地域以外の地域をすべて包含したのが第二項に掲げられるということであると思っております。
  190. 二見伸明

    ○二見委員 わかりました。そうすると、こういうことですね。いわゆるココム規制物資、貨物輸出する場合、ココム規制対象区、共産圏を除く国にココム規制の例えばNCならNC、九軌の工作機械輸出する場合、それが共産圏以外の第三国であれば、アメリカであろうとシンガポールであろうとオーストラリアであろうとアルゼンチンであろうと、あるいはタイであろうとどこであろうと、それは指定されるわけですね。そういうことになりますね。共産圏を除く全地域が政令対象になる、そこに全部入ってしまう、漏れる地域はないということですね。
  191. 畠山襄

    畠山政府委員 おおむねそのとおりでございます。
  192. 二見伸明

    ○二見委員 ICだとかDVだとかは、そういう第三国に関してはすべて必要になるわけですね。そうした形で第三国へ輸出する。第三国への輸出というのは、逆に言えば、ダイバージョンを防止するために第三国に対する輸出を厳しく見ていくんだと思うけれども、そうしたハイテクノロジーといった貨物輸出が厳しくなるということになりますか。第三国への輸出はかなり枠が狭められて、規制が厳しくなってやりにくくなるということになりますか。
  193. 畠山襄

    畠山政府委員 まず品目の範囲について申し上げれば、百七十八品目で変わりはございませんので、その面から第三国に向けての規制が厳しくなるということはないと思われます。  ただ、今IC、輸入証明書のお話が出ましたけれども、ココム加盟国といたしましては、第三国へ出したものがダイバージョンで共産圏へ流れるということは試行上やはり問題がありますので、なるべくそういうことがないようにしていきたいということで、輸入証明書を出してくれる国の数をできるだけふやしていきたいというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、そういう国がふえてくれば、今まで例えば輸入証明書を出してくれなくて最終需要者の証明書で我慢していたところを輸入証明書にかえるというようなことになってくるわけでございます。最終需要者の証明書というのはその企業が出すわけでございまして、輸入証明書は政府が出すわけでございますから、その辺で差があるわけでございますけれども、ただ、最終需要者の証明書をとることと、それから輸入証明書をとることと、それほど事務の煩雑さと申しますかに大幅な違いがあるということも考えられませんので、まあそういった違いはございますけれども、基本的に、現行の運用に比べて第三国への輸出がきつくなるということはないだろうというふうに考えております。
  194. 二見伸明

    ○二見委員 もう一つ。第三項は「承認を受ける義務を課することができる。」、第二項は「許可を受ける義務を課することができる。」午前中も、許可承認とどう違うんだということの、たしか緒方委員だったと思いますけれども、議論がありましたが、やはり「許可を受ける義務を課することができる。」の方がトーンが強いと考えてよろしいでしょうか、これは。
  195. 畠山襄

    畠山政府委員 これは、最近の用例が許可というのが多くて、承認というのはこういうケースに使わないということでございますので許可に改めたということでございまして、承認よりも許可の方がニュアンスが強いというようなことはございません。
  196. 二見伸明

    ○二見委員 二十五条の役務取引のところでまたちょっとお尋ねしますけれども、「政令で定める特定の種類の貨物の設計、製造又は使用に係る技術を」とありますが、この政令の書き方はどんなぐあいになるのでしょうか。まず、「政令で定める特定の種類の貨物」、ここまでは四十八条で言う貨物と同じですね。ですから、午前中からの御答弁を繰り返して言えば、ココム規制品目と武器とそれから原子力ということになります。それの「設計、製造又は使用に係る技術」ということになりますと、四十八条で決められた貨物と役務の数はイコールになると思うのだけれども、実際には、現行では貨物よりも技術の範囲の方が広くなっております。これはどういうことですか。
  197. 畠山襄

    畠山政府委員 二十五条の「政令で定める特定の種類の貨物」というところまでは、御指摘のように大体四十八条と同じということでございます。ただ全体として見ますと、プログラムを例えば特掲いたしますとかいうこともございますから、若干技術の方が数が多いということになってこようかと思います。
  198. 二見伸明

    ○二見委員 数が多いというのは、例えば貨物はオーケーだけれども技術はだめだというケースはありますか。私は、こういう貨物輸出する、これについては規制品目である、その貨物にかかわる例えば設計、製造、使用の技術が膨らむことは理解できないわけではないのです。だけれども、この貨物そのものは規制はされてないのだけれども、これに付随するノウハウの方は規制されるというケースはありますか。
  199. 畠山襄

    畠山政府委員 それはございます。例えば、その貨物自体輸出は認めておるのですけれども、その貨物の製造技術は秘密であって、輸出は抑えておるというケースはございます。
  200. 二見伸明

    ○二見委員 なるほど貨物輸出してもいい、しかしそれにかかわるノウハウはだめというケースはあるわけですね。そうしますと、技術とかそういうものでかなり汎用性の高いものなどは、貨物はよくても技術がだめというケースがこれから認められてきますと、二十五条で規制されるものというのはかなりふえますね。四十八条で言う貨物の方は具体的なこういう物だからわかりやすい。百七十八品目といえばこれだけなんです。これにかかわるいろいろな技術というのは相当拡大されますね。これと附属しているならともかくわかるけれども、これはいいけれどもこれに関する技術はだめということになると、役務の取引というのはかなり拡大されてくるのではないかと思いますが、その点どうですか。
  201. 畠山襄

    畠山政府委員 それは御指摘のとおりでございまして、先ほど申しましたように製造技術なんというものについてはそれ自体が秘密で、しかし貨物の方は、その単純なできたもの自身は秘密ではない、秘密といいますか規制対象となってないということがございますので、実態として技術の方が範囲が広くて、御指摘のとおりでございます。
  202. 二見伸明

    ○二見委員 そうすると対象技術の範囲というのは、政令ですから日本日本で決めるわけだけれども、これは各国と横並びで決めていくことになりますか。それとも、日本日本で独自の判断で決めていくことになりますか。例えばアメリカでは軍事中核技術リストというのがありまして、かなり厳しく規制はしているのだけれども、加盟十六カ国は全部横並びで範囲を決めることになりますか。その点どうでしょうか。
  203. 畠山襄

    畠山政府委員 アメリカではアメリカ独自の規制を行っているようでありますが、我が国では加盟十六カ国の横並びの規制ということで、我が国だけが突出して規制強化するということはないようにしたいと考えております。
  204. 二見伸明

    ○二見委員 その点は了解いたしました。  それから、これは第二十五条二項ですか、「通商産業大臣は、前項の規定の確実な実施を図るため必要があると認めるときは、非居住者との間で特定技術を同項第一号の特定の地域以外の地域において提供することを目的とする取引を行おうとする居住者に対し、政令で定めるところにより、許可を受ける義務を課することができる。」これは、私のこういう解釈でいいのかどうか。要するに、共産圏以外のところで、例えばソ連の技術者なりなんなりに規制されている技術の提供をしてはいけないということの意味と解してよろしいですか。
  205. 畠山襄

    畠山政府委員 これも四十八条の二項の場合と同じような趣旨の規定でございまして、第三国を経由して共産圏技術が流れることを防止する趣旨でございます。したがいまして、今御指摘ケースにつきましては、許可を受けない限りその輸出は抑制される。逆に言えば、許可をとればいいということになるわけでございます。
  206. 二見伸明

    ○二見委員 そうすると、やはりこれから国際交流というのがかなり活発になるわけでして、極端なことを言いますと、第三国じゃなくて、日本技術者、研究者がモスクワに行くことだってこれからあるわけですね。そして、向こうで向こうの求めに応じてこの第一項で規制されている貨物の設計、製造または使用に係る技術を向こうにしゃべったということになると、これは二十五条違反ということになりますか。
  207. 畠山襄

    畠山政府委員 向こうでしゃべったというその内容いかんにもよると思いますけれども、ここで言っております技術は、書いてございますように特定貨物の設計、製造及び使用に係る技術でございますので、それを全部記憶して全部しゃべっちゃうというようなことは現在の高度技術の現状から考えますとなかなか難しいことだと思われます。ですから、申し上げたいことは、単にしゃべる程度の話であればそれほど、ここにございます特定貨物の設計、製造及び使用に係る技術を教えるということに該当しないケースが多いのじゃないかということでございまして、逆に、資料を持ってデータも提供し、プログラムも提供しということになってまいりますと、いかに学者がなすっても該当する場合がないではないということでございます。
  208. 二見伸明

    ○二見委員 確かに、高度な技術を一人の研究者が行ってぺらぺらしゃべる、全部しゃべれるかといったらしゃべれるものじゃありません。プロジェクトで行って設計なり製造に携わった分野については、それぞれが自分のパーツについてしゃべってそれをトータルすればわかるけれども、二見伸明がすばらしい研究者であってすばらしい機械の発明に携わっても、私が携わるのはわずかな部分でありまして、それをしゃべったからといって全体像がわかるものじゃありませんから、そう簡単に二十五条違反ということにはならぬだろうと私は思います。  しかし、ソフトの提供ということに規制がかけられるとどうなんでしょうかね。いわゆる研究交流活動とか技術協力、そういうことがやはり萎縮してくるのではないか。余り伸び伸びと気宇壮大にやるという気分じゃなくて、こんなことをうっかり言ったらひっかかるのじゃないかとか、そういうおそれも出てくるのじゃないか。それはモスクワでしゃべろうとレニングラードでしゃべろうと、あるいはワシントンでやろうとどこでやろうと、絶えずこのことを念頭に置かなければならないようなことになるのでは非常に困るなと私は思っているのだけれども、その点については、心配ないなら心配ない、こういう基準を設けるから大丈夫でございますというような明確なラインを引いてもらわないとちょっと困りますね。我々政治家みたいなアバウトなのが行って適当なことをしゃべったって、向こうも大して役に立ちやしないからこれはひっかかるわけはないけれども、日本の一流の技術者、研究者が行けばかなりのことはしゃべれます。どうなんですか、それは。
  209. 畠山襄

    畠山政府委員 今御指摘の点は確かに重要な懸念でございますので、御指摘のような触れない場合の基準と申しますか、そういったものがつくれるかどうか、先ほどの水田委員の御質問にも関係いたしますし、大臣から指示もございましたので、前向きによく検討をいたしたいと思います。
  210. 二見伸明

    ○二見委員 それから、例えばこういうことはどうなりますか。今、基準を検討していただきたいのだけれども、日本において共産圏技術者が技術習得して帰る場合は、この許可対象になりますか。日本に研修で来ますね。三月や半年と日本にいて、それぞれの企業に研修に来て勉強していく。その場合は、その来る技術者あるいは研究者に対してこれとこれは教えてはいけないよとかいうような、こういうラインを引くわけですか。それはどうなんでしょうか。
  211. 畠山襄

    畠山政府委員 外為法のこの条項の解釈といたしましては、本邦内における取引につきましては、居住者、非居住者間のものでありましても規制対象とならないというふうに考えております。
  212. 二見伸明

    ○二見委員 ちょっと今聞き落としたのだけれども、日本国内で、例えば共産圏技術者が来て、日本の大手企業でいろいろ研修をしますね。その場合に、二十五条で規制されているノーハウについて習得することは構わぬわけですか、できるわけですか。
  213. 畠山襄

    畠山政府委員 外為法の二十五条の解釈といたしましては、本邦内における取引につきましては、居住者、非居住者間のものでありましても規制対象とはならないと考えております。
  214. 二見伸明

    ○二見委員 わかりました。  二十五条は、役務の取引について通産大臣許可を受けなければなりませんね。四十八条では、貨物について通産大臣許可を受けることになっておりますね。これは、例えば貨物輸出する場合に、この貨物については四十八条で許可をとり、この貨物の使い方だとか設計図だとか、そういうものについては二十五条で許可をとるという、二重の許可をとることになりましょうか。それとも、それは貨物に附属するものだから四十八条でとればいいということになりますか。
  215. 畠山襄

    畠山政府委員 結論から申し上げますと、それは二重と申しますか、両方の許可原則としてとっていただかなくてはいけないということになります。四十八条と二十五条の両方の許可をとっていただかなくてはいけないということになります。
  216. 二見伸明

    ○二見委員 それから、二十五条一項の二号の「政令で定める外国相互間の貨物の移動を伴う貨物の売買に関する取引」というのは、いわゆる仲介貿易ですね。そうすると仲介貿易の場合は、ココム規制品目というか四十八条で規制されている貨物の仲介貿易に対しては、政令指定した例えばこの国とこの国の仲介貿易はだめよとか、そういうことになるわけですか。その場合は、これはどういう基準で決めるわけですか。先ほどみたいに、例えば第三国同士、共産圏ではないAという国とBという国との仲介貿易についても日本ではかなりこれに該当するのか、あるいはある国と共産圏との仲介貿易に限られるのか、その点はどうでしょうか。     〔委員長退席、奥田(幹)委員長代理着席〕
  217. 畠山襄

    畠山政府委員 まず、この二十五条の一項の二号は、典型的にはただいま、武器の取引の仲介貿易規制することを考えております。この場合には、当然でございますが全地域、その仲介される方、最初の出る国も全地域でございますし、入る国も全地域ということで考えております。  それから、ココム物資につきましてこの規制を行うかどうかという点につきましては、具体的には政令制定までの間に考えさせていただきたいと思っておりますけれども、各国の状況というのも考える必要があると考えておりますが、もしココムの物資も対象にするということでございますれば、当然これは非共産圏から共産圏に販売する場合ということになると思います。
  218. 二見伸明

    ○二見委員 それから今度は罰則の方、六十九条の六です。今度は、「五年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。ただし、当該違反行為目的物の価格の五倍が二百万円を超えるときは、罰金は、当該価格の五倍以下とする。」こうなりましたね。これは、前は百万円以下、三倍だったですね。それを今度は二百万円以下、五倍というふうに罰金をふやしたわけですね。  例えば、この間の東芝機械事件で、向こうへ売った機械は三十七億円でしょう。そうすると現行法でいつでも、あれは時効になってしまったけれども、もし時効でないとすると、三十七億円掛ける三倍というと約百億ですね。だから最高百億円の罰金が科せられるのですね、東芝機械事件というのは時効でなければ。今度は五倍ですから、百八十五億円ですね。私は、百億円でも相当なことだと思いますよ。それを今度は五倍に引き上げだというのは、これはどういうことなんでしょうか。  また、今までそうした現行法で適用された当該価格の三倍近い罰金が科せられた例があるのかどうか、その点もお答えいただきたいと思います。
  219. 畠山襄

    畠山政府委員 従来、御指摘のように三倍ということであったわけでございますが、そういう体制のもとでもああいう遺憾な事件が起きたわけでございます。それで、プログラムについては時効ではなかったわけでございますが、それの三倍というのは大したことではなかったというようなこともございまして、外国にも例がないわけではないというようなことで、五倍ということにさせていただいたわけでございます。  それで、従来三倍という枠でございますから、その三倍以上取ったという例は無論ないわけでございますけれども、百万円を超えてその三倍の方の規定が動いたという例は幾つかございまして、昭和三十八年のココム違反の事件、進展ココム事件と言っておりますが、それでは金額が一千万円でございました。それから昭和五十三年のフジインダストリアル事件、これはフィリピンヘ手投げ弾を出した事件でございましたけれども、これが罰金額が八百万円でございました。そんなことで、この百万円というのを超えた例は相当あるわけでございます。
  220. 二見伸明

    ○二見委員 もう一点。今度の事件が契機になってココム関連の違反の罰則強化しなければならぬという気持ちはわからないわけではないけれども、ココムというのは言うなれば紳士協定ですね。そうすると、ココム以外の、四十八条三項等等ですね、ココム以外のもの、これは三年ですね。現行法どおりですね。これは、国際条約だとか二国間の協定だとかでもって決められたものでしょう。それに対する違反が三年で、国際法上は条約としての効果を持たない、紳士協定にすぎないココム違反を条約に準拠したものよりも刑罰を重くするということについては、これは気持ちはわかるとしてもちょっと無理があるのではないかと思うのですが、どうですか。
  221. 畠山襄

    畠山政府委員 本件につきましては、ココムの違反になりますような外為法の違反が出ますとその影響するところが非常に大でございまして、例えば西側の安全保障そのものを損ないかねないというようなケースが出るわけでございます。そういう内容中心で判断をさせていただいたわけでございまして、条約あるいは国際約束といいましても、内容は例えばアメリカ向けの工作機械輸出規制でございますとかそういった全く純粋な経済事犯のようなものが中心でございまして、ですから、そういった国際約束の違反を、国際約束であるという約束の形式上の話だけから判断するのではなくて、違反の場合の内容から考えでこのような措置にさせていただいているわけでございます。
  222. 二見伸明

    ○二見委員 これを非常にきりきりした理論で詰めていきますと、じゃココムを条約にしましょうとか協定にしましょうとかいうところになってしまうとまたやぶ蛇になりますけれども、しかし純粋の理論からいくとやはりおかしいですわな。国際条約に準拠した方が三年で、そうではないものが五年というのは、純粋培養的な学問からいくとこれはおかしいという感じはしますね。それはその程度にしておきましょう、じゃ条約にしましょうということになるとまたえらい議論になりますから。  それで、六十八条で今度工場への立入検査が規定されましたですね。今までは事務所まででしたね。今度は工場が入りましたね。現行法で立入検査した事例というのはかなりあるのかどうか、まずそれをお尋ねいたします。
  223. 畠山襄

    畠山政府委員 現行法で立入検査をした例はございまして、例えばマリンサービスという会社に五十九年の十二月に立入検査をしたということがございます。これは、第三国へ輸出された後に共産圏にサイド・スキャン・ソナーというものがダイバージョンで販売されるのではないかというそういう情報がございまして、その疑いで立入検査をいたしております。
  224. 二見伸明

    ○二見委員 いわゆるこの立入検査権は六十八条の三項に書いてありますけれども、犯罪捜査のためにあるのではないということになっておりますね。そうすると、工場への立入検査を工場側では拒否することはできますか、これは。拒否してもよろしいですか。
  225. 畠山襄

    畠山政府委員 立入検査を拒否しますと罰則がかかると思います。
  226. 二見伸明

    ○二見委員 これは、犯罪捜査のために立入検査するわけじゃないでしょう。これは罰則がかけられるのですか。気がつかなかったな、これはどんな罰則になるのかな、拒否すると。
  227. 畠山襄

    畠山政府委員  「第六十八条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者」というのは、現行法で申し上げますと「六月以下の懲役又は二十万円以下の罰金」ということになっております。
  228. 二見伸明

    ○二見委員 通産省は、七月九日に発表した戦略物資の不正輸出再発防止対策の中間報告の中で、「検査体制の拡充強化策として法令違反を防止するため、検査官による随時の立入検査を実施することとし、このため立入検査要領を早急に作成する」、こうありますね。  今、まず工場への立入検査、これは拒否できませんね。そうなると、随時実施ということになると、もちろんこれは当然貨物輸出についての承認申請が出てきてからということになるでしょうけれども、その前提は貨物輸出承認の書類が出てきてからのことですが、いつでも好きなときに工場へ行けるわけですね。普通は、犯罪捜査の場合には令状か何か持っていくわけですね。これは令状じゃなくて検査官の身分証明書だけで行くわけでしょう。企業にしてみれば企業秘密もありますね。工場まで入られるのじゃ、見せたくないものもある。そうでしょう。随時やられる、こういうことになると、これは企業にとってはかなり神経にさわる話ですよ。どうなんですか。
  229. 畠山襄

    畠山政府委員 今御指摘の中の中間報告で「随時」と言っております趣旨は、こういうものにややありがちなのは定期検査でございます。相手に知らせておいて、何月何日に行くよと言ってそして行くというようなケースでございますが、そういうものではなくて、抜き取りで、抜き打ちと申しますか、そういう検査をできる体制にしておきますということでございます。そういたしますれば、今回のような虚偽の申請というものも、物を見る可能性がそういう形でうたわれているということになりますとやはり相当抑止されるだろうということを期待してのものでございます。
  230. 二見伸明

    ○二見委員 私は弁護士でもないし検事でもないから細かいことはわからぬけれども、どうも犯罪捜査のためにあるのではないと言うが、犯罪が起こってないからそう言うのだろうが、これはそうした司法的な色彩がかなり強いですね。しかも立入検査をした場合に、書類はすべての書類をその検査官に提示しなければならないのか。どの書類を見せてどの書類を見せないという判断は、まず事務所の方でできるのか。工場への立入検査も、工場の製造過程を全部見せなければいけないのか。これから先はちょっと企業秘密でございますから勘弁してくださいと言うことができるのか、その点はどうですか。全部、企業秘密まで入り込むことになると議論がまた別に発展しますね。
  231. 畠山襄

    畠山政府委員 この立入検査は、この法律にもございますように、この法律の施行に必要な限度で実施をするわけでございますので、今御指摘企業秘密がこの法律の施行に必要な限度の外でございますれば、当然立入検査はできないわけでございます。ただ、法律の施行に必要な限度でやはりその企業秘密を見なければいけないというときには、見させていただかざるを得ないというふうに考えております。
  232. 二見伸明

    ○二見委員 この件とは違うのですけれども、例えばハイテク工場でいろいろな、有毒ガスを使っての洗浄だとかやりますね。それで働いている労働者の安全のためにということで立入検査をしようとしても、企業秘密でもって現実は厳しいのです。ところが、こっちの方だけは企業秘密の分野まで入り込めるということになると、ちょっとこれはバランスを欠くね。どうですか。  私はハイテク汚染の問題で議論したことがあるのだけれども、ハイテク工場でいろいろな化学物質を使いますね。それに対しての立入検査なんかは企業秘密の壁があって現実にやりにくいのです。行政当局はやりにくくて困っている。しかし、これに関しては企業秘密の分野にまで踏み込めるということになると、ちょっとそれはバランスを欠く感じがするのだけれども、どうですか。
  233. 畠山襄

    畠山政府委員 今の御設例のケースについて詳しくないものですから、私どもの方のことだけを申し上げて恐縮でございますけれども、企業秘密であることがこの法律の施行に必要な限度での立入検査を拒む正当な理由にはならないというふうに考えております。
  234. 二見伸明

    ○二見委員 輸出規制されている貨物というのはかなり高度な技術を要するものでございますから、企業秘密の分野が非常に多いと思わざるを得ませんね。企業秘密でないような簡単なものだったら規制品目から外れているはずなんだから。そうですね。そういう点では、非常に企業秘密にかかわる問題があることだけを申し上げておきたいと思います。  それから六十九条の四、いわゆる国際的な平和と安全の維持ということでございますけれども、これについては四十八条にも国際的な平和と安全の維持という文言がありますね。この文言の解釈については、今までは、これはココムで規制された品目、それから武器、原子力、こう限定したものが国際的な平和と安全の維持中身でしたね。これが通産省からでございますけれども、四十八条にかかっている国際的な平和と安全の維持というのは、外務省も同じ認識でよろしゅうございますか。
  235. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 具体的に政令の過程で何が含まれるかというのを通産省からの提案を待って私たちがコメントする立場にあるわけですが、今のところココム対象品目、武器及び核不拡散関係規制、少なくとも以上が含まれると思っています。それですべてかどうかというのは、もう少し通産省の提案あるいは私たちも考えてみなければいけませんが、今のところはそういう分野が考えられます。
  236. 二見伸明

    ○二見委員 赤尾さんの答弁が微妙なので、畠山さん、ココム規制品目、それから武器、原子力、ここまではわかっているのですね。これからも、これ以外にもプラスアルファで入ってきますか。
  237. 畠山襄

    畠山政府委員 あり得るとしますと、そうケースは多くはないと思いますけれども、例えば南アのケースとか、イラン・イラクの化学兵器のケースとかというようなこと、それと国連決議があったとか、何かそういう歯どめがあるようなケースにつきまして、外為法での規制を行うに足る貿易の健全な発展とか我が国経済の健全な発展とか、そういう要件に合致する場合があり得るかもしれないと考えております。
  238. 二見伸明

    ○二見委員 いわゆるココム規制品目、それから武器、原子力、もしこれよりはみ出ることがあるとすれば、それは国連決議とか、そういう何か根拠があったものでなければプラスアルファで含めることはないと考えてよろしいですね。今の御答弁ではそういうことですね。  外務省の方もそれでよろしいですか。この解釈はどうなるのかな、外務省通産省では違っちゃうのかな。
  239. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 私が先ほど申しました、三分野以外に通産省との協議結果では他の対象事項も含まれるかもわからないと申しましたのは、今、主として国連決議に基づく制裁、あるいはイラン・イラクの場合必ずしも国連決議に基づかなくても自主的にあるいは主要先進国間で協議してやることもあるわけですので、そういう点をこの国際の平和及び安全と読むかどうかという点につきましてもう少し検討する必要があるという配慮があったわけです。同時に、果たして国連決議だけに限定されるかどうかという点につきましても、なお検討する必要があると思っております。
  240. 二見伸明

    ○二見委員 六十九条も、「外務大臣は、国際的な平和及び安全の維持のため特に必要があると認めるときは、」と、四十八条と同じように「国際的な平和及び安全の維持」という言葉があります。四十八条の「国際的な平和及び安全の維持」というのはかなりイメージ的に特定できますね、今までの通産省外務省両方の御答弁を総合しましても。まあココム、武器、原子力あるいは国連の決議に基づいた制裁規定、あるいは国連の決議に基づかなくても、例えばイラン・イラク紛争みたいなもの、何となくわかります。ところが六十九条の四できている「国際的な平和及び安全の維持」というのは、この解釈は外務省はどういうふうにしますか。同じですか。
  241. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 同じ意味だと了解しております。
  242. 二見伸明

    ○二見委員 そういたしますと、「外務大臣は、国際的な平和及び安全の維持のため特に必要があると認め」られるときは意見を申し述べることができる、その範囲というのは今申し上げた範囲で限定されるわけですね。
  243. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 どういう状況が国際的な平和及び安全の維持を妨げるものかというのは、世界情勢の例えばどこかで紛争が勃発するとかという状況で変わると思いますので、限定的だとは申し上げませんけれども、ほぼ今先生のおっしゃったラインかと思います。
  244. 二見伸明

    ○二見委員 そういたしますと、ココムというのはこういうことになっていますね。まず、ココムで現在百七十八品目という規制品目がある。それ以外のものは非該当ですね。該当するものは百七十八品目である。その百七十八品目の中に二つの線があって、あるレベル以下のものは行政例外で要するに輸出できるわけですね。ある以上のものは、特認ですね、ココムの委員会でもってオーケーをとらなければ輸出ができない。こういうことになりますね。  商社としてはどういうことになるか、商社の具体的な行動はどういうことになるかというと、まず、この品目が非該当であればこれは通産省輸出許可申請を出す必要はありませんね。非該当のものであればそのまますうっと輸出できる。該当するものについては、これはココムで規制されているんだけれども共産圏の某国と取引をしたい、商談を進めますね。商談を進めているときに、恐らく日本政府承認が得られれば輸出しましょうとかというような条件をつけた上で商談を進めてくるんだと思うんですね。そういうことで商談を進めてきて、そういう条件のもとで成約が成った、その段階通産省にこれこれの品物を輸出したいというふうに聞きますね。そのときに、この品目行政例外なのか一般例外なのかというのは、まず商社はあるいは輸出業者は最初からわかっておりますか。
  245. 畠山襄

    畠山政府委員 過去の経験とか過去に同様なケースがあったとか、そういうこともございますので、わかっているケースが事実上は多いかとも思いますけれども、ただ、恐縮でございますが、私ども行政例外とそれから一般例外との区分を公表は、今まではいたしておりません。
  246. 二見伸明

    ○二見委員 そうしますと、今まではしてないけれども、これから商取引を円滑に行わせる、またむだな労力を商社にも使わせない意味からいっても、これは一般例外です、これは行政例外ですという区分けを公表されますか。
  247. 畠山襄

    畠山政府委員 それは、そのような方向で努力をいたしたいと思います。無論、参加十六カ国との話し合いの上で、日本だけ突出して公表というわけにもいきませんが、話し合いの上でございますけれども、話し合いをする方向としては御指摘のような方向で努力をいたしたいと思っております。
  248. 二見伸明

    ○二見委員 行政例外は、これは政府の裁量でやれるわけですね。そうすると、この品物は行政例外対象品目であるとします。行政例外対象品目だからといって、申請したから行政例外でもって輸出できるとはこれは限らないのでしょう。それはどうなんですか。行政例外対象品目であるけれども、そのときどきの国際情勢によって輸出をオーケーする場合もあるし、ノーと言う場合もあるというふうに判断していいですか。
  249. 畠山襄

    畠山政府委員 行政例外でございましても、その最終用途でございますとか、それから量なんかも関係してくると思いますが、そういうことがございますので、行政例外でありさえすればすべて承認というようなことではございません。
  250. 二見伸明

    ○二見委員 そうすると、外務省の方に伺いますけれども、いわゆる二十五条第一項もしくは第二項、または四十八条一項もしくは二項の「規定の運用に関し、通商産業大臣意見を述べることができる。」ということの、意見を述べる場合の一つのケースとして、行政例外について、確かにそれは行政例外品目だけれどもこれこれこういう国際情勢なのでちょっと許可を出すのはやめてくれとか、どこどこの商社ということではなくて、行政例外品目かもしれないけれども少し許可は厳しくしてくれとかやめてくれとかというかそういう形での意見を述べることもあり得るわけですか。
  251. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 ただいまの六十九条の四の第二項に基づいて外務大臣通産大臣意見を述べる場合には、この規定の一般的な運用というかその基本的な枠組み等だけではなく、具体的な案件についても意見を述べることができるというふうに私たちは理解しておりますが、今度行政例外についてこれをやめてくれと言うかどうかということにつきましては、その当該品目が本当に行政例外輸出して差し支えないものであれば、外務省としてはやめた方がいいということは言わないと思います。  ただ、よく私たちがキャッチする情報は、行政例外として例えば輸出申請である業者が出そうと思っているとか、あるいはもう全然輸出許可対象品目でもない品目として出そうとしているような案件があるという情報に接することがありますので、そのような場合に通産省にそういう情報を即刻伝えて、調査を厳重にやっていただくというようなことが特に例として挙げられるかと思います。
  252. 二見伸明

    ○二見委員 この六十九条の四というのは、主として対共産圏貿易にかかわることですから、限定されることですね。しかも、それがかなり高度な技術を要するココム規制物資になるわけですね。そのときに、外務大臣が「国際的な平和及び安全の維持」という漠然としたことでもってこの運用に関して意見を述べていく。それが漠然とした情報提供であればそれほど支障がないんだけれども、恐らくこの意見というのは、貨物輸出の話だから、輸出の具体的なところまで踏み込んでこざるを得ないと思うのですね。  先ほど畠山さんは、ココムでも各国と相談をして、できれば一般例外と行政例外とを公表できるようにしたい、こうなっておるわけです。だから、我々に公表しなくたって役所同士は、通産省外務省との間ではどれが行政例外でどれが一般例外かということはわかっているわけです。わかった上でやっているわけだ。そうすると、この品目に関しては行政例外の品日だけれども輸出しないようにしてもらいたいとか、そういう具体的な個別の意見が出てくるんじゃないかと思うのです。むしろそこに外務省のねらいがあるんじゃないかと私は思っているんだけれども、どうですか。
  253. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 今、ココム品目のうち特認の対象になる輸出につきましては当然外務省にすべての案件について相談があると思いますので、これにつきましては、私ども全部把握しておりますから、その時点で意見を述べることができると思います。  行政例外の案件につきましては、通産省からすべての案件について協議をしていただくということは件数も非常にに多くて大変だろうと思いますし、私ども今実際に何件あるかも承知しておりませんが、これすべてについて相談を受けることはまず期待しておりません。したがって、それに対して一々意見を述べるというつもりはありません。ただ、通産省の方で行政例外案件だけれどもこれはどうしたらいいだろうかということで、特に外務省意見を求められた場合には外務省として意見を言うとか、あるいは先ほど申しましたけれども、外国から特定の情報が入ったような場合に通産省意見をお伝えするというような、限定された場合を考えております。
  254. 二見伸明

    ○二見委員 そういたしますと、六十九条の四の一項の方に関係してくるんですけれども、通産大臣が外務大臣意見を求めることができるというのはどんな場合を想定しているんですか。
  255. 畠山襄

    畠山政府委員 抽象的に申し上げれば、やはり国際的な平和と安全に関して問題があるかな、念のため聞いておこうかなというケースでございますが、それの具体的な選択の基準といたしましては、やはり小さなものをあれしてもしようがありませんので、今貿易局の中に特別の戦略物資等輸出審査会というのがございまして、そこで重点項目について審査を行っておりますが、そこにかかってくるもののうちから選ぶというか、必要があったら聞いていくということになるものだと思っております。
  256. 二見伸明

    ○二見委員 通産省外務省との覚書によると、   通商産業省は、改正法第二十五条第一項若しくは第二項又は改正法第四十八条第一項若しくは第二項の規定に基づき政令の制定若しくは改廃をしようとする場合には、あらかじめ十分な時間的余裕をもって外務省協議するものとする。 と、こうありますけれども、これは通産省外務省意見を求めるということになると、「政令の制定若しくは改廃」ということは私は具体的には貿管令の別表のことかいなと思っておるのですけれども、それをつくる場合には通産省外務省とよく協議しなさい、その場合には六十九条の四でもって外務大臣意見を求めなさい、こういうことになるわけですか。これとは特別関係ないですか。
  257. 畠山襄

    畠山政府委員 政令協議をいたします場合は、閣議にかかる前の協議を前広にやろうという趣旨のあれでございますので、この六十九条の四の協議はむしろこの規定の運用でございますから、少し趣旨が違うかなと思っております。
  258. 二見伸明

    ○二見委員 わかりました。  外務大臣通産大臣意見を述べることができる、それで外務大臣意見を述べてきた、それに対して通産省側の意見とは違っている場合だってありますね。なるほどそうですねと言う場合もあるし、それはちょっと状況が違うんじゃないですかという意見の食い違いがある場合もありますね。この意見の食い違いがあった場合はどうなりますか。まあ食い違いを調整するように両省でいろいろ話し合いはするのだろうけれども、食い違った場合はどういうことになりますか。所管として通産大臣の方の意見を優先するというか、その判断に任せるということになりますか。
  259. 畠山襄

    畠山政府委員 二見委員御案内のように、行政官庁の話し合いというのは、大体両方で話し合いをしますると話がつくものでございますので、食い違いというようなことで最終的にどうということに余りならないのでございますが、ただ一応、国家行政組織法でも行政機関相互の連絡を図れということになっておりますし、それから内閣法でも行政各部の施策に関するその統一保持上必要な総合調整を内閣がやるということになっておりますので、ぎりぎり申し上げれば内閣で調整してもらうということになりますが、そういうことにならずに大体話がつくと思っております。
  260. 二見伸明

    ○二見委員 外務省通産省の間で意見の交換があって、なかなか意見が食い違っている、最終的には調整するのでしょうけれども、そのことによって輸出手続に時間がかかるというようなことが出てまいりますか。  それともう一つ、これは大臣かな、関係閣僚会議を設けることになっておりますですね。これはどういう場合に開かれるのか。もし開かれれば、その場合、関係閣僚会議というんだから、中心者は議長ということになりますか、議長はどなたがおやりになるのか、通産大臣なのか。ちょっとそこの内閣の仕組みがよくわからないものですから、その点も教えていただけますか。
  261. 畠山襄

    畠山政府委員 まず第一点の、通産省外務省との意見交換でいたずらに許可がおくれたり輸出者に負担がかからないように、私どもとしても十分努力をいたしたいと思いますし、また外務省もこの点は十分配慮をしてくれるものだと考えております。  それから、関係閣僚会議でございますが、一応この法律をお認めいただきました段階でそれを設置するということになっておりまして、今各省間で協議中でございますので、議長その他まだ未定でございますけれども、一応のメンバーは、通産大臣のほかは外務大臣、防衛庁長官、それから国家公安委員長、法務大臣、大蔵大臣、それから官房長官、そういった方々であろうかというふうに考えております。審議事項はココムに関する重要事項というようなことで、今調整を進めているところでございます。
  262. 二見伸明

    ○二見委員 ココムに関する重要審議事項ということになりますと、ココム委員会での日本側の発言なんかもこの閣僚会議で決めることになりますか。
  263. 畠山襄

    畠山政府委員 これは外務省その他とも意見の調整を進め強ければいけませんけれども、私どもといたしましては、その問題についても必要に応じて閣僚会議なり、あるいはその下に局長会議もつくる予定になっておりますが、そういったところで検討していただいたらどうかというふうに考えております。
  264. 二見伸明

    ○二見委員 ちょっと細かい議論をさせていただきますけれども、今政令の、あれは貿管令でしたか十条で、輸出しようとする音あるいは輸出した者、それから生産した者から報告を徴収することができるという規定がありますね。例えば東芝機械事件にしてみれば、輸出した者というんだから伊藤忠になるのですか、それから、生産した者というと東芝機械ですね、それからいろいろな報告を徴収することができるということになります。  今回の事件では、単に輸出した者、つくった者だけではなくて、間に介在した者もいるわけですね。その介在した者から報告をとるということは現行法ではできませんね。この点についてはどうお考えになりますか。
  265. 畠山襄

    畠山政府委員 御指摘のように、現行の輸出令の十条は、「貨物輸出しようとする者、貨物輸出した者又は当該貨物を生産した者から必要な報告を徴することができる。」としか書いてございませんので、間に立った関係人がいるとしますと、その関係人からは報告徴収が政令上はとれないことになっております。ただ、大もとの管理法では「この法律適用を受ける取引を行う者又は関係人」というふうになっておりまして、現在の外為法もこの点は改正後もそうなるわけでございますので、法律とこの輸出貿易管理令との間にギャップがあるわけでございます。  そこで、今御指摘のようなところから報告を徴収する必要もあろうかと思いますので、この法律改正法の施行とあわせまして輸出令も改正をいたしまして、仲介を行った者なんかに対しても報告徴収ができるよう措置をしたいと考えております。
  266. 二見伸明

    ○二見委員 それから、私たちが改正案が出る以前から大変問題にしていたのは、第一条の「目的」ですね。原則自由というこの原則が、改正案を検討している過程の中でそれに手をつけようというような議論があったのかどうか。結果としてはないですね。しかし、この改正案をつくる過程の中でいろいろな議論の中の一つとしてはあったのかどうか、その点はどうでしょう。
  267. 田村元

    田村国務大臣 実は、再発防止ということの対策としていろいろなことを考えたわけです。外為法改正問題につきましては賛否両論がありました。非常に激しい議論も行われました。それで、再発防止ということは、外為法改正をして罰則、制裁の強化をするということが裏づけでないとざるになりはせぬかということから、やはりこれが軌になるだろうということで、完璧を期するために外為法改正に踏み切ったという経緯はあります。非常に真剣な討議が行われました。もちろんアメリカ側は一運の強化を強く明言しておりましたけれども、むしろ省内論争で、我が国のためにという独自の議論をした判断で改正に踏み切ったというのが真相であります。
  268. 二見伸明

    ○二見委員 そして今回改正案が上程されて、これは施行期日は公布俊二カ月以内ということになっています。当然二カ月以内に政省令や多数の通達や告示等の整備は間に合うから二カ月以内ということにしたのだと思うのですけれども、ただ業界は、業界でもいろいろな意見がありますけれども、この改正の成り行きについては非常に関心を持っています。自分たちの商売がやりにくくなるのかやりにくくならないのか、わかりやすくなるのかわかりにくくなるのか、非常に関心を持っております。そうした業界等への周知徹底というのはどういうふうにされますか。私は、賛否は別にして、業界への周知徹底というのはきちんとやらなければいけないと思うし、またそれだけのゆとりがあるのか、二カ月でできるのかどうか、その点どうでしょうか。
  269. 畠山襄

    畠山政府委員 確かに公布後二カ月以内に施行というのは、政省令が比較的広範、膨大であることを考えますとなかなかきつい作業ではございますが、私ども一生懸命努力をして、二カ月以内に施行ということに当然間に合わせたいと考えておるわけでございます。  その際に、先ほどの行政例外の例えばなるべく公表め方向へ向かっていくとか、そういった内容も含めまして一般への周知徹底のための努力も太いたやっていきたいと思っておりまして、法律公布後よく説明会などをやりますけれども、ああいったものを頻繁に開き、また外務省とも協力しながらココム事務局とも十分の打ち合わせをして、業界の方々の懸念をできるだけ払拭していきたいと考えております。
  270. 二見伸明

    ○二見委員 それからもう一点。実は先日、この外為法に反対の立場の方々が私のところに見えました。いろいろな話をしていたのですけれども、私はその人たちに、今度は審査体制を確立しよう、審査員の数をふやそうというのが通産省の案だし、確かに二十万件を処理するのに六十人や七十人でできるわけがない、あなたは外為法は反対だけれども審査官の数をふやすことについてはどうですかと聞いたら、賛成だと言う。ふやしてもらいたい、そうしなければ事務が滞ってしまって間に合わない、その面では、審査官の数をふやしてそして輸出承認事務がどんどんはかどることは大変結構なことですと言うのです。先日は、中国貿易がココムのこの事件でかなり影響を受けておりまして、承認事務が滞ってしまったために中国へ付く貨物がなかなか行かないという話もありますし、自民党の訪中団も、新聞の報道によりますと北京でそういう苦情を聞いたようですね。  そういうことになりますと、一つは、審査官をふやすことは私どもやった方がいいと思います。うんとふやしていいと思う。その結果事務がどんどんはかどって、滞ることなく輸出が進んでいくのはいいことだと思いますので、その点についてのお考えと、東芝機械事件中国貿易に支障を来したということになりますとこれは日本にとってなかなか厳しいこととなりますので、その点についてはどう考えているか。また、事務が大分滞っているようだけれども、あつものに懲りてなますを吹く感じもしないわけではないんだが、事務の滞貨を一掃するように頑張ってもらいたいと思うのですが、その点についてはいかがですか。
  271. 田村元

    田村国務大臣 要員をふやすということは当然のことであります。現在一応我々が考えておりますのは、四十二人を現在六十三人にしましたね、それを八十人にするということです。  先般来、ココム担当の通産省貿易局の役人を見ておりますと、国会の対応と両方で疲労こんぱいしまして、ほとんど徹夜状態が続いているというようなことであります。それと同時に、ふやしたふやした、倍にしたといって四十を八十ということではいかがなものだろうかと思って、実は今、これは事務当局とは全然切り離しまして私独自の判断でひそかに、せめて人員を三けたにできないだろうかということで内々折衝を始めております。まだ具体的に回答が出る段階ではありませんけれども、そして同時に、三けたにするにしても将来やはりもっとふやしていく、それは監視を厳しくするということももちろん必要でしょうけれども、基本的人権の問題もありますから、そういうところで弾力的に将来も伸ばし得るような形にしておいた方がいいのじゃなかろうかというふうに思って、その担当と実は、事務レベルは何もないのですけれども、閣僚レベルで今話をしております。  それから、日中貿易でございますけれども、随分ふえてまいりました。国交回復時の十四倍になったということですが、ココムにおきまして、規制対象百七十八品目中コンピューターを初めとする三十六品員の対中輸出に関しましては、既にもう御承知と思いますけれども、ココムヘの協議なしに各国政府限りで輸出承認を行っていいという申し合わせがなされております。規制は緩和されております。我が国におきましても、このような申し合わせを踏まえまして中国向け輸出規制は緩和しておりますが、今回の一連のこういうことで日中貿易を損なわないよう、万全の対応をするように通産省は意思統一を図っておるということであります。
  272. 二見伸明

    ○二見委員 時間がありませんので簡単に申し上げます。  ココムというものが現実に存在をして、ココムから脱会した方がいいのじゃないかとか国内でいろいろな議論がありますね。ただ、日本が加盟してもう三十五年の歴史もあるし、ココムから脱会するということは非常に非現実的な選択だというふうに私は思います。当然ココムで決められたことについては日本は守らなければならないし、守るための努力もしなければならないし、また企業にもそれだけのモラルの要求はしたいと思います。だけれども、一面でココムで対共産圏貿易規制すると同時に、もう一方でやはり東西貿易というのはパイプを太くする必要もある。規制規制だ、だけれども別の面で東西貿易のパイプは太くしておくことが、日本のためにも、お互いの東西の対立を緩和する意味からも必要だと思います。たしか今東西貿易は、いわゆる西側ココム加盟国の対共産圏貿易のウェートというのは、総輸出額で二%とか三%とか、ウェートは低いですね。アメリカはたしか〇・九%で、この大半は穀物ですよ。日本は、中国貿易を入れるとちょっとふえますけれども、中国貿易を除いた対共産圏貿易というのは二・一%か二%だったと思う。ですから、東西貿易というのは非常に細いパイプでつながっているという感じがいたします。このパイプは当然これからも太くしていく努力はしなければならないと私は思うのです。  と同時に、ココムに対しては、ココムで規制する品目というのは極力拡大しないように――規制は小さく壁は大きくという考え方はアメリカにもありますね。やたらに規制品目を広げるのじゃなくて、規制品目はうんと縮めてもいい、しかしそれだけは必ず守るという厳しい体制が必要だという意見はアメリカにもあるわけですけれども、我が国もそうあっていいのではないかというふうに思います。そうしたことから、ココムに臨むこれからの基本的な考え方について、総論、締めくくり的にお尋ねをいたしたいと思います。それが一点です。  それから、これは通産省の方が詳しいのか外務省の方が詳しいのか、どちらでも結構でございますけれども、アメリカは今ココムをどういうふうにしょうと思っているのか。もともとアメリカは、発足当時からココムを国際条約にしようとか、今でも協定化しようとか、いろいろな動きがありますね。ココム加盟国だけではどうも対共産圏貿易規制しにくいので、それ以外の第三国に対する規制強化しようとか、そうした考え方がアメリカにもあるわけでありますけれども、そうしたアメリカの考え方がどうなっているのか。それに対して主要各国の反応といいますか、考え方がどうなっているのかをお教えいただきたいのが一つ。  それから、ココム加盟国は対共産圏貿易について決められたものについては守るとしても、やはり議論になってくるのが非加盟国ですね。これについては我が国としてはどういうふうにしていくのですか。聞くところによりますとアメリカは、非加盟国、韓国とかハイテク非加盟国に対しては加盟国に準ずる措置をするようにかなり外交的な圧力をかけているというふうに聞いておりますけれども、我が国としてはそこら辺に対する考え方はいかがでしょうか。  以上まとめてお伺いをして、質問は終わりたいと思います。
  273. 田村元

    田村国務大臣 東西貿易、特に共産圏などの貿易に対して配慮をすべきであろうというのは、私は当然だと思います。八六年度で対共産圏貿易輸出入全部で六・八%ぐらいだと思いますから、これはもうこういう問題が起こった、外為法改正したといっても、ココム以外の問題で貿易を拡大することは十分可能でございますから、十分の配慮をしていくべきだと思います。  ココムを今後どう考えるか等々につきましては、これは、これから法律外務省も物が言えるそうでございますから、外務省の方からお答えを願う。
  274. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 ココムにおけるいろいろな動きにつきましての御質問にお答えいたします。  最初に、ココムの条約化についてアメリカはどういう考えかということでございますけれども、公式にはアメリカは条約化を提案したということはありません。私たちといたしましても、今までこういう非公式なココムという会合の場を通じて比較的うまくやってきたと思います。必ずしも万全ではありませんけれども、比較的うまくやってきましたので、もしも条約をつくって、もっとがっちりした仕組みをつくろうというような提案が出てきた場合には、慎重に検討する必要があるというふうに思っております。  次に、ココムの強化の動き、これは条約化も強化の動きの一部かもわかりませんが、最近具体的に議論をされておりますのはいわゆる執行面での協力、これは輸出国の管理体制のバーモナイゼーション等を中心にした執行協力の問題、同時に、ココムの参加国だけが一生懸命やっても、第三国を通じてどんどんその技術あるいは物が輸出されるのではココムの参加国の努力が必ずしも実効を上げないということもありまして、第三国協力ということ、この執行協力と第三国協力というのが比較的重要な課題になってきております。これはアメリカだけではなく、日本も含むココム参加国が共通の認識を持ってやっております。もちろん、国の立場によりまして若干の違いはありますけれども、この執行協力と第三国協力というのが今重要な課題になってきております。  ただ、第三国協力をやる場合に、そのプラス面とマイナス面を考えなければいけないと思っております。そのプラス面としましては、私たちがココム参加国間で幾ら規制強化しようといっても、あるいは実効のある規制をやろうと思っても、第三国を通じて重要な物資が流れてしまったのでは実効性がないということで、第三国の協力を求める必要があるということです。他方、注意しなければいけませんことは、そういう第三国の主権の問題でありますとか、あるいは、特に近隣のアジア諸国は、非常に成功している国が多いわけですが、発展途上にある国が多いものですから、そういう国の経済発展をいたずらに阻害してはいけないという、そういうココムの実効面と、これらの国の主権の尊重及び経済発展を阻害しないという両方をバランスをとったアプローチが必要だというふうに思っております。
  275. 二見伸明

    ○二見委員 以上で終わります。
  276. 奥田幹生

    奥田(幹)委員長代理 青山丘君。
  277. 青山丘

    ○青山委員 去る七月二十八日であったと思いますが、私は、当委員会におきましてココムについて質疑をいたしました。本日は、その質疑を通して、またそれを前提にして、外為法改正案について質問を行います。  最近のココムに関する情報をいろいろ聞きますと、アメリカ議会の休会ということもあるのでしょう、いささか小康状態を保っているかのように見受けられます。しかし、九月八日以降アメリカの議会がまた再開をされて、御承知のように例の包括通商法案協議、これの見通しについては非常に困難な状況になっていくのではないか、大変予断を許さないというような受けとめ方をしております。とりわけ、東芝制裁条項の取り扱いがどういうふうになっていくのか。そういうことを考えますと、依然としてこの問題は非常に困難な状況になおあるというふうに私は受けとめております。  そういう中でこの改正案が提出されているわけですけれども、一つは、やはり再発防止をしていかなければいけない、その再発防止のための一環でもある。また、通産大臣が訪米をされた際に強い決意を述べてきておられます。そのことは恐らくアメリカも相当期待をしておりますし、一定の評価もしてくれていることだと思うわけであります。したがって、この改正案の取り扱いが、アメリカと日本にとって非常に重要になってきておると私は思います。  ただしかし、この改正案で最も困難なことは、外為法の一条に規定してありますように、何といっても自由貿易を拡大していく、貿易取引を拡大していくというのが大前提であって、それと同時に、もう一つはこれは大変矛盾することになるかもしれませんが、対外配慮といいますか、安全保障のためにこの種事件を再び起こさない、そういう日本政府の姿勢ということも同時に満たしていかなければなりませんから、大変困難な作業であったのであろうと思いますが、政府内部の調整を急がれて大変短期間で取りまとめられたことを、私は一定の評価をしたいと思うのです。そういう大変困難な中の審査でありますし、総合的な判断の中の、再発防止のための総合的な手だての中の外為法改正というのはその一つだというふうに受けとめていかなければいけないのではないかと思います。  そこで、法律改正の内容について少し触れていきますが、今回の改正によって行政制裁罰則強化されます。この行政制裁罰則強化されることによって、ココム関連の違反事件というものがどの程度再発の防止ができるというその効果、どの程度の効果を期待しておられるのか、見通しを立てておられるのか、まずお尋ねしたいと思います。
  278. 田村元

    田村国務大臣 再発防止についての基本的な問題は、やはり企業のモラルの問題だと思います。けれども、世の中には時に問題を起こす者もないではありませんから、その意味では十分な管理体制というものを強化してとりながら、いわゆる万全の配慮といいますか、目を配りながらなお罰則あるいは行政制裁強化ということで支えていかなければなるまい。ですから、私はそういうものがやはり三位一体になって効果を上げるものと思っておりますが、この罰則強化あるいは制裁の強化というものは、やはりそれなりの大きな歯どめになるのではなかろうかというふうに考えております。
  279. 青山丘

    ○青山委員 今回の行政制裁が一年以内から三年以内ということで三倍に強化されるということでありますが、これまでの行政制裁適用事例というのはどんなものがあるのか。行政制裁というのは比較的弾力的にといいますか機動的に対応できる、そういう意味では一定の評価ができると思うのですね。しかし、これまでのこの適用事例はどんなものがあったのか、少し御説明いただきたいと思います。
  280. 畠山襄

    畠山政府委員 これまでの行政制裁適用事例でございますが、国際交易が昭和五十八年から六十年にかけて行いましたソ連、東欧向け米国製コンピューター等の無承認輸出、これにつきまして全地域向け全品目について一カ月間輸出禁止を行いました。それから、クリモト・トレーディングが昭和五十八年に行いました東欧向けレーザー応用装置の無承認輸出、これも一カ月の輸出禁止ということになっております。なお、先般の東芝機械事件では、共産圏向けについて一年間の輸出禁止ということを行っているわけでございます。
  281. 青山丘

    ○青山委員 行政制裁ですから、司法的な手続を経ないで行政の立場できちっと制裁をしていく、これはそれなりに機動的な対応ができますから。  ところが、これがもし誤った対応になってくると、これは大変なことになる。したがって、行政制裁発動の手続というものが恐らくあるのであろうと思います。これは具体的な事例をもって御説明をいただきたいと思いますが、その仕組みについて御説明いただけますか。
  282. 畠山襄

    畠山政府委員 行政制裁の発動に当たりましては、まず外為法の報告徴収規定等を活用いたしまして情報収集を行います。そういたしまして、事実関係について十分な認識を得まして、外為法違反の事実が存在することが確認された場合に初めて行政制裁を行うということになるわけでございます。  行政制裁の期間あるいは対象につきましては、違反の悪質性等を個々に判断することにいたしておりまして、今回の東芝機械事件のようなケースについて申し上げれば、故意に政府を欺きまして高度な工作機械をソ連に不正輸出したものでございまして、極めて悪質ということで一年間共産圏向け全商品の輸出禁止という制裁を行ったわけでございます。
  283. 青山丘

    ○青山委員 今回行政制裁が三年以下、ただ行政制裁が三年とか一年とか、抽象的には悪質なものとか軽微なものということなんでしょうが、制裁が行われる判断の基準というものが恐らくあると思うのですね。また、それをあらかじめ明確にしておらないと、そのときそのときによってその判断の基準が違ってきておっては不公平が出てくる。一定の基準があるのでしょうか。
  284. 畠山襄

    畠山政府委員 行政制裁の判断基準でございますが、無許可輸出等がございましたときに、まず個別のケースごとに当該違反行為の重大性、それから違反行為を行うに至りました輸出者側の事情と申しますか情状と申しますかそういったこと、それから当該企業における違法輸出再犯かどうか、それから将来の可能性、それから当該企業における輸出管理体制強化可能性などを基準として、制裁の重いか軽いかということを決めていくわけでございます。
  285. 青山丘

    ○青山委員 一定のマニュアルがあるのですね、基準は。  それから制裁の対象である特定技術の提供、これの形態というのはいろいろな形が考えられると思うのですけれども、どのようなケースを制裁の対象としていくのか。制裁の対象である特定技術の提供というのはいろいろなケースがあると思うのですね。問題となりそうな例示を挙げてひとつ説明していただけませんか。
  286. 畠山襄

    畠山政府委員 行政制裁対象となります特定技術の提供、今度この規定を新設するわけでございますけれども、そのケースとしましてありそうなのは、例えばプログラムソフトなどをハンドキャリーで持っていく、そういったようなケース、あるいは郵便で出しているのもそうかもしれませんし、国際宅急便で出すとか、そういうケースについても制裁の対象になろうかと思います。
  287. 青山丘

    ○青山委員 それから、今度罰則が三年以下の徴役から五年以下の懲役と大変強化されるわけですが、それだけを見ますとすごい強化だなという印象も恐らく多くの人が受けられたと思うのですね。ところが今回の事件では、時効が三年であったためにというようなことが一つのべースにあるということも漏れ聞いておるわけです。懲役五年以下、こういう罰則を持っておる経済法というのは関税法くらいのもので、その他は余りない。そういう意味では、五年以下の懲役とした本当のねらい、意図、どのような意図で進めてこられたのか、御説明いただけますか。
  288. 畠山襄

    畠山政府委員 懲役を五年以下ということにいたしました理由は、やはり現体制、三年以下という懲役の体制のもとでこういう東芝機械事件のような遺憾な事件が起きてしまったということで、もっと抑止力を強化する必要があると考えたことが第一点でございます。  また、仮にそういうふうにいたしましても、今御質問の中にございましたように、関税法の第百九条では、例えば特許権等を侵害する物品等の輸入禁制品を輸入した場合が五年以下の懲役ということにもなっておりますし、また文化庁長官の許可を受けないで重要文化財を輸出した者も同様に五年以下の懲役というようなことにもなっておりますので、確かにきつい方ではございますけれども、そういった前例もまた十分あるということでございます。他方、これによって、御指摘のように時効を五年に延ばすこともできるということも、考査していただきたい理由の一つでございます。
  289. 青山丘

    ○青山委員 五年以下の懲役、それに伴って時効も五年になるわけですから、関係資料の保管体制というものもきちっと整えていかなければなりません。そのあたりはどのような計画を立てておられるのでしょうか。
  290. 畠山襄

    畠山政府委員 時効延長に伴います関係資料の保管体制につきましては、非常に重要な点でございます。現在のところは、文書の保存期間が大体一年から二年ということでございますが、これでは延長された時効に対応できませんので、私ど氷予算要求をいたしまして、現在二千百万円の予算でございますが、これを六十三年度は一億二千万円にして、その中ではシステム開発費を主にしようと思っております。その中にマイクロフィルムの導入も含めておりまして、マイクロフィルムを導入いたしましてほぼ永久的な書類保管をしていこうというふうに考えているところでございます。
  291. 青山丘

    ○青山委員 また同時に、企業に対しては五年間は書類の保管を義務づけていくとか、行政指導をしていくとか、そういうことは既にやっておられるかもしれませんが、進めていく必要がありますね。  それから、今回の法改正によって行政制裁罰則強化されていくわけですけれども、ココムに加盟しておる他の先進国とのバランスは、我が国のこの制裁の独化、日本だけが突出しておるのかどうか、その辺の罰則の軽重、他の国との横並びの線ではどういうふうに理解しておられますか。
  292. 畠山襄

    畠山政府委員 他の国の罰則は、英国が二年、フランスが三年、西ドイツが三年でございますので、これらに比べれば今回御提案のは厳しいわけでございますが、米国の十年に比べれば軽く、またカナダの五年、それからノルウェーが今回の事件を契機に最高刑を五年に強化する方針というのに比べれば、同じようなものということでございます。  ちなみに時効でございますが、時効は英国、フランスは三年でございますが、カナダは無期限、ノルウェーは十年ということでございまして、米国、西ドイツは五年ということでございますので、日本はこの五年と同じ、米国、西ドイツと同じということになるわけでございます。
  293. 青山丘

    ○青山委員 特に突出しておらない、まあまあ横並びだというふうに受けとめておられるのでしょうか。そうですね。  それから、今回罰則を六十九条の六は五年以下の懲役、それから七十条と分けられておりますが、その意図はどんなところなんでしょうか。それから、ココム規制対象以外のものが三年以下の懲役ということで三年以下にとどめてあるわけですが、国際協定、国連決議等が三年ということです。しかし、今回のココム、これは御承知のように国際的には紳士協定の位置にありまして、これが五年以下の懲役ということになってきますと、どのように考えていけばその辺が妥当性、整合性を持つことができるのか、この二点。  一つは、先ほどの六十九条の六と七十条に分けられた意図。それから、今の国際協定あるいは国連決議に比べて、紳士協定としてのココムの規制違反が五年、その辺はどういうふうに理解しておられますか。     〔奥田(幹)委員長代理退席、委員長着席〕
  294. 畠山襄

    畠山政府委員 六十九条の六と七十条を分けたのは別に他意はございませんで、単に六十九条の六は五年とか五倍とかいうきついものを掲げたということでございます。  それから、ココムは紳士協定であるのに国際約束あるいは国際条約に基づくものよりも違反が厳しいではないかという御指摘の点でございますが、確かにココムは紳士協定ではございますが、その違反の態様が西側の安全保障を損なうおそれがあるというようなことで非常に影響が大でございますので、そういった紳士協定であるというような、あるいは条約でないというような形式にとらわれずに、その違反の内容重視でこのような罰則強化に踏み切らせていただいたわけでございます。
  295. 青山丘

    ○青山委員 今回新設された貨物の無許可輸出の未遂犯、これは貨物だけに特定されて技術対象としておらないわけですけれども、技術の無許可の未遂犯は、大変特定しにくいのかもしれませんが、どのような意図で外されてきておるのか。それから、役務提供の未遂というのがあり得ないと考えておられるのかどうか、その辺はいかがですか。
  296. 畠山襄

    畠山政府委員 御指摘のとおり、役務につきましては、貨物の場合と異なりまして通関とか船積みとかいう定型的な手順が必ずしも存在いたしておりませんので、実行の着手をどの段階で認めるかというところが見きわめにくいものですから、これに未遂を設けますと刑罰の対象範囲が不明確になるということで、今回は未遂を罰することを見送らせていただいたわけでございます。
  297. 青山丘

    ○青山委員 役務の提供の未遂の特定が非常に難しい。  それで、貨物の無許可輸出の未遂というのを一体どの時点で未遂と判断をしていくのかということなんですね。これまでは品物が船積みされた時点で犯行が行われたというふうに見てきたわけです。そして、この未遂ということになりますとどの時点なのか。例えば契約が取り交わされた時点になるのか。あるいは製作といいますか品物がつくり始められた、着手された時点を言うのか。品物はできたのだけれども、輸出地点へ運ぶ途中までを言うのか。どの段階を未遂と断定されるのか、その辺の基準はきっとお持ちでありますよね。いかがでしょうか。
  298. 畠山襄

    畠山政府委員 外為法輸出の開始時点と完了時点の解釈は、関税法と一致した解釈を一応とっております。関税法におきましては既に未遂が罰則対象になっているわけでございますが、その関税法の未遂罪というのは、判例上貨物を保税地域に搬入した時点ということになっております。  ちなみに、保税地域への搬入といいますのは、時点といたしましては、まず契約があって、輸出承認申請がございまして、輸出承認なら承認がございまして、その後保税地域へ搬入するわけでございます。さらに、その後に税関への輸出申告があって、そして船積みが始まるということでございますので、保税地域への搬入というのは輸出申告の直前ということになるわけでございまして、その時点で未遂罪が成立をするということになるわけでございます。
  299. 青山丘

    ○青山委員 関税法に準拠するというふうに理解してよろしいのですね。  先ほど、関係閣僚会議の構成については質問がありましたね。割愛します。  今回の法改正で、立入検査の範囲に工場も加えました。加えたことによって、法律的に工場まで加えて拡大をしてきたというだけではなかなか実効効果が上がってこない。そのための人員配置も恐らく計画しておられるのでしょう。立入検査をして判断のできる人的配置を計画しておられるのか、そのあたりはいかがでしょうか。
  300. 畠山襄

    畠山政府委員 七月十日までは、立入検査を実際に行う人は兼務を除いてなかったわけでございますが、七月十日に貿易為替検査官十名を内部振りかえでこの立入検査に従事してもらう体制にいたしました。さらに、来年度におきましても検査体制の拡充を図るために、大幅な人員増を要求いたしております。こういうことで、立入検査の実施が現実にできる体制を確保してまいりたいと考えております。
  301. 青山丘

    ○青山委員 私も先月、そしてきょういろいろと質問させていただき、皆さんの質問の内容を聞いていささか明らかになってきた部分があります。しかし、まだまだ運用上、解釈上不明な部分も多くあると思うのです。特に、関係企業にとって判断をする基準を明確に示してもらわないとなかなか困る。大分不安が募っておると私は思います。そういう意味では、あらかじめ判断の基準なるものをぜひきちっと整備しておいていただきたい。そうして、貿易取引をしている関係業者の判断に対してこたえていくという体制がないといけないのではないか。  それは、これからちょっと触れさせていただきますけれども、今回の事件の後、輸出業務が大変滞ってきておると聞いております。そのために、貿易実務の面でいろいろな影響が出てきておる。審査が大変厳しくなってきておりますから、そのために輸出申請審査が滞ってきていて、輸出業務そのものがなかなか進んでいかないというようなことを私は聞いております。現在の輸出業務の実施状況はどんなところなんでしょうか。
  302. 畠山襄

    畠山政府委員 現在の輸出業務の審査状況でございますが、この間の東芝機械事件が虚偽の申請に基づいておったというようなことから、審査が非常に慎重になっているというのが実情でございます。個々の審査が慎重になっているということのほかに、制度的にも貿易局に戦略物資等輸出審査会というものをつくりまして、大口重点項目については一週間に一度そっちへ上げてから審査をするというようなことにもなっておりまして、まことに恐縮ではございますけれども、一件当たりの平均的な審査期間が三カ月というような状況になっております。
  303. 青山丘

    ○青山委員 従来はどれくらいで審査処理されたのでしょうか。
  304. 畠山襄

    畠山政府委員 従来はおおむね一、二カ月というような状況でございました。
  305. 青山丘

    ○青山委員 現状の審査体制の実効効果をきちっと上げていくためには、若干の厳しさは出てくるなと私どもも見ていました。しかし、これがどの段階を正常化と言うのかなかなか判断に迷うところでしょうが、できるだけ従来程度のところにまでスピードを上げていただくためには抜本的な対策を講じなければならないのか、それまではこれからずっともっと時間がかかっていくのか、そのあたりはどうなんでしょうか。
  306. 田村元

    田村国務大臣 これは、あるいは私がお答えした方がいいかもしれません。局長からは言いにくいかもしれません。  おくれております理由は幾つかあるわけですけれども、その一つは、あつものに懲りてなますを吹いておるところがあります。いま一つは、ココム担当者が、こういう問題が起こったものでありますから七月十日に人員をふやしたといいましてもたかの知れた増員でございますから、そこで、こういう問題が起こってその対応と本来の対応と両方で皆非常に疲れ果てておるわけでありますが、もうそれほど遠くない将来に、従来の、先ほど局長が申しましたような一、二カ月ぐらいで大体答えが出せるというような姿に、つまりもとの姿に戻るであろうと思っております。先ほど申し上げたように、私は八十人ではいかがなものであろうかと思って、ちょっとまた自分でいい意味での欲が出てきたものですから、せめて三けたに乗っけることはできないだろうかというような気持ちもあるものですから、今それと取り組んでおります。人員は、厳しくするためばかりの人員というより、むしろ彼らにも人並みの生活をさせなきゃなりませんから、そういう点からいいましても何とかふやしたいなと思っております。
  307. 青山丘

    ○青山委員 できるだけ早い機会に以前のようなスピードで審査を受けられるようにひとつ進めていただきたいと思いますが、審査を受けるために提出する書類が、通産省から要求される書類が以前にも増して多いというようなことはないのでしようか。
  308. 畠山襄

    畠山政府委員 虚偽申請のようなのを防止するために、従来より慎重に書類をとったりしているということはございますので、そういう御批判はあろうかと思います。
  309. 青山丘

    ○青山委員 企業にとりましては、以前はこの品物は通った、この書類で通った、しかし今回からどうも難しくなって、これはだめかもしれないというような企業の不安感というのが大分出てきております。事件以降の審査処理というのが大分滞ってきておるということを聞きますと、企業のこの種の不安、ぜひひとつ取り除いていただきたい。アメリカの輸出管理法のように罰則は非常に厳しい、先ほども御説明がありましたように十年以下の懲役、大変な厳しい罰則でありますが、そうでないものについてはどんどんと進めている。これが自由な貿易取引を促進するものでありますし、さりとて不正は許さない。不正を許し、ひどい言い方しますと、時間をかけてなお不正を許してというようなことになっては、これはやはり西欧先進国から同盟国としての日本に対する信頼は傷つくだけ。違反は許さないが、そうでないものについてはできるだけ積極的に貿易取引を進めていく、これがやはり基本的な姿勢ではないかと思います。したがって、いたずらに企業が負担を増大することのないような配慮、これが必要だと思うのですが、いかがでしょう。
  310. 畠山襄

    畠山政府委員 御指摘のように、企業にできるだけ負担がかからない範囲で、かつ正確な処理をさせていただきたいと思っております。  ちなみに、アメリカは三週間ぐらいが平均のようでございまして、もっともアメリカでも違反は年間三十件とか四十件とかあるようでございますけれども、それにしましてもそういったことでもございますので、日本企業が不当に長くこの輸出関係の事務で負担を強いられてはいけませんので、御指摘のような方向で心がけてまいりたいと思っております。
  311. 青山丘

    ○青山委員 それから、審査基準は今までと変わらないのかどうか。
  312. 畠山襄

    畠山政府委員 今回の法改正は、東芝機械事件でも明らかでございますように、ココム関連貨物及び技術にかかわる違法輸出等影響の重大性にかんがみまして、その罰則それから行政制裁強化するということでございますので、今回の改正規制対象貨物を変えるとかあるいは技術の範囲を変えるということはございません。したがいまして、審査基準も変更されるとか強化するとか、そういうことはやらないつもりでおります。
  313. 青山丘

    ○青山委員 審査が余り延びてきますと、一般的に心配されるのは、既に契約を得たものがなかなか輸出できない、そうなってきますと、損害賠償請求を受ける心配も出てきます。それがもろにそのままではなくて、いろいろな形で企業輸出意欲をそぐようなことになってしまっては、日本の経済活動全体に深刻な影響が出てきてしまいます。ですから、ココムの違反事件は起こしてはいけない、したがって罰則強化についても私はやむを得ないと理解しております。  しかし問題は、審査の事務に余りにも時間がかかってきては自由な貿易取引ができないのではないか。そのためには、どうしても審査の効率化をぜひ進めていっていただきたい。これは人員をただ。ふやすだけではなくて、いろんな知恵を使って審査の効率化というのはできると私は思います。審査のシステム化ということも確立していけば、うまく処理できるのではないかと思います。そのあたりはぜひひとつ、関係業者に対しての配慮という意味でも通産省の立場で努力をしていただきたい。そのことが、企業の負担を余りにも増大させて輸出意欲をそぐことのないような通産省としての思いやりといいますか、配慮であろうと思います。  そういう総合的な配慮をしていくことが大事であって、ただ規制強化さえしていけばそれでアメリカやヨーロッパに対して顔向けができるのかというと、私はそうは思わない。日本日本の立場があるのですから、日本の自主性を確立していくためには、アメリカに対する配慮はしていかなければいけない。いけないけれども、日本の国内の企業に対する配慮も同時にやっていくんだという姿勢がぜひなければいけないと私は思います。そのあたりの御見解はいかがでしょうか。
  314. 畠山襄

    畠山政府委員 審査の迅速化につきましては、先ほど大臣から御説明申し上げましたように、省内の定員振りかえで現在六十三名に増加をしたところでございますが、それをさらに来年は八十人体制、あるいは大臣のおっしゃるような体制にしていくということに加えまして、今システム化というお話が御質問の中でございましたけれども、先ほどもちょっと御説明申し上げましたように、来年は予算をことしの六倍にいたしまして、コンピューターのシステム開発を入れて、そしてコンピューターの面からも事務処理を迅速にしていくということに努力をしてまいりたいと考えております。
  315. 青山丘

    ○青山委員 今回の東芝機械の不正輸出事件の背景というものは、特定企業だけではなくて、日本全体が経済活動中心で安全保障に対する認識というのがやはり弛緩していた。それから、ココム関連法規をきちっと遵守していくんだという意識も幾らか緩んでいたと言わざるを得ないのではないかと私は思います。したがって、そういう意味では今回の法改正の実効をきちっと上げていくためには、先ほど大臣もおっしゃいましたように、企業がみずから戒めていくという姿勢がなければ、やはり実際の再発防止の効果というのはなかなか困難であろう。しかし外為法改正も、それなりの意義は大変あると私は思います。  そこで、対共産圏貿易取引をしておる企業の中で、安全保障に対する認識を高めていく必要がある。また、法律を遵守していくという体制を確立していく必要がある。そういう認識を持ってもらえるような啓蒙普及というものをこれから通産省がたゆみなく、何年何月やりました一ついこの間も、もう二度目ですか三度目でしょうか、関係団体百四十数団体を呼んでやられたと聞いております。たゆみなくやっていただかなければならぬと思いますが、企業みずから努力してくれるような体制というものに対して通産省の取り組む姿勢、いかがでしょうか。
  316. 畠山襄

    畠山政府委員 御指摘のように、役所がいかに体制を整えましても、実際の輸出行為を行うのは企業でありますから、企業が法令遵守意欲を持たない限り目的を達成できないわけでございます。  そこで、通産省といたしましては、五月十五日に、東芝機械の不正輸出事件関係企業に対して処分をいたしました際に、今後の再発防止のための民間の体制につきまして、まず第一に、本件関係企業に対して社内の責任体制の確立等改善措置を求めたということ。それから第二に、大手商社に対して再発防止策を取りまとめることを要請したということ。第三に、今御指摘日本貿易会、日本機械輸出組合、日本工作機械工業会等、関連団体約百五十に対して、輸出関連法規の遵守について一層の注意を払うよう要請したということをまず文書で行いました。その上で、六月三十日の閣議におきまして、総理の指示に基づきまして通産大臣から直接、七月二日及び七月七日の両日にわたりまして、上記の百五十団体の幹部を招集をいたしまして緊急会議を開催いたしまして、各団体で適切な社内管理体制の確立、それから従業員の教育訓練を含めた輸出関連法規遵守徹底のための基本方針をこの各団体がつくってくれるように、要請をいたしたわけでございます。  それで、現在そのすべての団体から報告書が提出をされておりまして、その提出された法令遵守基準によりますと、具体的な内容といたしましては、第一に輸出関連法規についての教育訓練の拡大。それから第二に、個々の案件の輸出に当たっての事前チェックの体制強化。これは具体的には、例えば決裁を上の方まで上げますとか、あるいは物を具体的に見ますとか、あるいは営業担当だけではなくて第三者と申しますか、法務都がそれを見るとか、そういった体制を強化するということ。それから第三に事後チェックでございますが、輸出関連法規の遵守状況について企業内で法務部などが内部監査を実施する。それから第四に、先ほど御指摘がございました文書保存期間の長期化、こういったことなどが盛り込まれておりまして、今後もこの輸出関連法規の遵守のための体制整備がどういうふうに進められていくかということを、随時当省としてチェックをしてまいりたいと考えているところでございます。
  317. 青山丘

    ○青山委員 今、ココム遵守のための基本方針が示されております。各企業においてもこのような形で基本方針を定めました。具体的にこれが実施されていくかどうかという、今度はこのチェック体制をどのようにとっていかれるのか、具体的な方針を聞かしていただきたい。
  318. 畠山襄

    畠山政府委員 今は、先ほど申し上げましたように、各百五十団体が再発防止指針と申しますか、法令遵守基準をつくったわけでございまして、今度はそこに属する各企業が、それを参考にしながら自分でそういったものをつくっていかれるということが一番望ましいわけでございます。  そこで、そういうものを各企業がつくっていきますように、今度は通産省として必要な指導をやっていく必要があるわけでございまして、これは輸出承認審査基準というわけにはいかないと思いますけれども、例えば輸出申請がありましたときなどにも、そういうものの遵守基準が当該企業でつくられているかどうかということを参考として見ていくとか、そういうような形を通じまして十分法令遵守に各企業が意を用いてくれることを徹底してまいりたいと思っております。
  319. 青山丘

    ○青山委員 さきの違反事件の反省に立って東芝機械、伊藤忠商事、和光交易等々の再発防止のための社内の体制は、どんな形でとられているのでしょうか。
  320. 児玉幸治

    児玉(幸)政府委員 東芝機械と東芝の二社におきます再発防止対策につきまして、まずお答えをさしていただきます。  東芝機械は、今回の事件を引き起こした当事者でございます。まずその関係の始末をしなければならないということでございまして、五月の十五日に社長、それから五月の二十八日に常勤監査役、六月の二十六日に取締役二名がそれぞれ引責辞任をいたしたわけでございますが、さらに七月三十日にも、解雇一名を含め関係者の処罰が行われております。  これとは別に、再発防止対策につきまして次の四点を打ち出しているのでございます。第一点は、共産圏向け輸出の担当組織の解散でございます。第二点は、輸出法務課を設置いたしまして、輸出手続に関しますチェックを第三者的な立場からやるということにいたしたわけでございます。第三点は、社員に対するココムの関連法規に関する教育の定期的な実施等の再発防止対策を講じております。さらに第四点目といたしましては、行政処分期間、これは御案内のように五月の十五日に行政制裁を講じまして、金品目を一年間共産圏向け輸出禁止という措置を講じておるわけでございますけれども、この行政処分期間の終了後もソビエト及び東欧圏に対する輸出を今後一切打ち切るという方針を、企業として明らかにいたしております。私どもといたしましては、今後ともこれらの再発防止策の実施状況につきまして必要な指導監督を行いまして、二度とこのような事故が起きないように万全を期してまいりたいと思っております。  次に東芝でございます。東芝は、御案内のように東芝機械に対しまして五〇%ちょっとの株を保有いたしておりまして、親子関係にあるわけでございますけれども、本作事件には東芝としては実は全く関与してないことがこれまでの調査で明らかになっておるわけでございます。しかしながら、親会社としての責任を明らかにするという立場から、七月一日に東芝の会長、社長が辞職をいたしました。また、親会社たる東芝といたしましても、以下の四点につきまして再発防止のための対策を講ずることを明らかにいたしております。第一点は、特別対策委員会を設けまして、東芝グループ全体として再発防止対策を検討する。第二点は、関連会社の社長会におきまして各社ごとの再発防止対策の立案と実行の要請をいたしております。さらに第三点としましては、今回事件を引き起こしました東芝機械につきまして、米国の監査法人に依頼をいたしまして管理体制の調査をいたすことになっております。第四点は、東芝自身で、コンプライアンス・プログラムというふうに申しておりますけれども、ココム規制に関する法令手続遵守プログラムの作成を行っておるところでございます。通産省といたしましても、このような東芝の自主努力がその実を上げますように、所要の指導助言をしてまいりたいと思っております。
  321. 畠山襄

    畠山政府委員 伊藤忠でございますが、伊藤忠の再発防止策といたしましては、社内にココム委員会を設置しまして、ココム対象物資、技術共産圏向け輸出について当該委員会が了承しないとだめだということにいたしましたほか、輸出に当たって貨物技術的仕様それから最終用途、客先等を商社としても十分チェックをするということにいたしました。また、社員に対する教育を徹底する方針も決定いたしております。  それから和光交易でございますが、これは社長と取締役の二名が責任をとって辞任をいたしておりますが、伊藤忠同様、社内に輸出法規委員会を設置いたしまして、輸出関連法規の周知徹底、教育等を図ることといたしております。
  322. 青山丘

    ○青山委員 今、具体的に申し上げた企業が再発防止のための社内的な措置を具体的にとって、実効効果がこれから上がってくるのでしょう。しかし、通産省としても、この種事件を起こしたということから、今後の行政的な指導の立場にあって、実効効果が上げられるような対応をぜひしていただきたいと思います。  今回の法改正は、実は大変難しい取り組みをされたと私は思っております。冒頭申し上げましたように、貿易取引をぜひ積極的に進めてもらいたいし、しかしこのような不正の取引は許してはいけないし、また許すようなことがあったら西側同盟国の日本に対する信頼は著しく傷つきます。そうした大変矛盾した二つの要件をいずれも満たしていかなければならない困難な作業であった、そういう点での評価はいたしておりますが、この背景には、通商摩擦とか技術摩擦とかアメリカのいろいろないら立ちがありました。ただ、アメリカの日本に対するそういう感情はよく理解できますけれども、これも日本が置かれている立場からしますとそれなりの配慮をしていかなければなりませんし、日本の立場もきちっと守っていかなければなりませんから、ただいたずらにアメリカに迎合していくだけでは日本の産業は発展していくはずがありませんし、日本の経済全体を考えてみても、アメリカにも言わなければならないことがたくさんありますが、今日時点ではそんなことを言ってみても仕方がないかもしれません。いろいろな立場で総合的に考えてみて、そういうような背景から今回のこの外為法改正だけでは決して十分ではないし、これは失礼な言い方だけれども、まだ小手先の手直してあります。総合的な取り組みとというのはこれからなお進めていただかなければならない。事件発生後、通産省が大変誠意を持って対応してこられて、大変な御苦労であったと私は思いますが、なお西側の人たちの我々に対する要請、要望、こういうものもしっかり受けて、しかし日本の産業、貿易がこのようなことのために大きな制約を受けることがないように十分な配慮をしていっていただきたい。  以上申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  323. 佐藤信二

    佐藤委員長 京中光雄君。
  324. 東中光雄

    東中委員 外為法改正についてでありますが、今度の改正はココムの適用強化のためということになっておるわけでありますが、その前に、ココムは一九五〇年にNATOが結成されて間もなしに軍事同盟の経済版ということで発足をして、そして旧安保条約ができて我が国もこれに加盟した。今日までずっと続いておる。とりわけ八〇年代になって非常に規制強化されてきた、こういうことなんですが、このココムとあわせましてチンコムがありましたですね。これはどういうふうに進んできて今どうなっておるのか、外務省からお見えいただいていると思いますが、その点についてまず御説明をいただきたいと思います。
  325. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 チンコムは、一九五二年八月に設置が決まりました。その後、一九七一年に機構としてのチンコムは廃止されました。中身は、中国向けの輸出規制について、ココムと似たような非公式な相談の場ということで設けられていたわけです。
  326. 東中光雄

    東中委員 ついでにお伺いしておきますが、一九七一年になって、それまでは必要だったのがそのときになくなったというのはどういうことなのか、あるいはチンコムの加盟国の範囲はどういうことなのか、ココムの規制との関連はどうなるのか、簡単に御説明をいただきたい。
  327. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 ココムの中に特別にチンコムというものが設けられたわけです。今中しました五二年の設置から、七一年にチンコム自体は廃止されたわけですけれども、この間の国際情勢の推移等を反映して、チンコムができてその後廃止ということになったわけです。設置されたときの背景といたしましては、朝鮮戦争というのがございますし、その後中国をめぐる国際情勢の変化に合わせて七一年には廃止されたということでございます。チンコムの参加国は、ココムの参加国と同一です。
  328. 東中光雄

    東中委員 それでは、本来のココム関係について入ってまいりたいと思います。  七〇年代は、福田総理の本会議場の答弁でもありましたように整理縮小していくという方向であったし、日本政府もそういう方向で努力をするということだったのですが、八〇年代になって非常に強化をされてきた。特にレーガン政権になりまして、レーガン政権になったその直後のブラウン国防報告は別でありますが、レーガン政権としてのワインバーガー国防長官の国防報告、最初が一九八二年二月に行われた八三会計年度の国防報告ですが、ここで初めて国防報告の中にココムなり輸出統制なりの問題が出てくるわけであります。  そこで、八三年度の国防報告によりますと「政策目標」として、   われわれの国際的目標は、米国の戦争遂行能力の改善及び同盟国・友好国の戦力強化である。これは協力的な防衛協定、安全保障援助及び武器売却を通じてなされるものであって、共通の安全保障利益を促進し、及び米国安全保障を前進させかつソ連の前進を妨害するために技術移転を統制する。 こういうふうに書いてあるのです。だから、明白に軍事的な目的で、アメリカの軍事力をふやす、ソ連の安全保障を妨害する、そういう言葉になっています。そのためにこの技術輸出の統制をやるんだ。その後これが「技術移転の分野においては、軍事重要技術リスト(MCTL)」アメリカのMCTLを改定をする、見直しをする。「また、ココムにおいて、このリストを多国間ベースで技術移転の統制として使用することを実施するため手段を講じている。」これは八二年の二月の発言で、だから八一年からそういう方向で動いておるのだというのが書いてあるのですね。  私は、これは大臣からぜひ聞かしていただきたいのですが、国際平和と安全の維持なんて言いますけれども、このねらいはアメリカの軍事力を増強するんだ、同盟国、友好国の軍事力を強めるんだ、ソ連を抑えるんだ、これが目的技術を統制していくんだ。こういうココムというのは、これは本当に軍事同盟と一体となった戦争体制といいますか、ソ連を敵視した体制と言わざるを得ないわけですが、アメリカ自身が公式にそういうことを国防報告で言うておる。通産大臣、それに協力、加担することがいいかどうかという点を含めて御見解を承りたいと思います。
  329. 田村元

    田村国務大臣 西側の主要自由主義国家十六カ国が、共産圏への無制限な戦略物資を出すということについて自粛を申し合わせておるということでございますから、日本も極めて主要な自由主義国家としてこれに加盟する以上は、これは当然のことというふうに思っております。
  330. 東中光雄

    東中委員 抽象的に言えばそういうことでしょうけれども、具体的には極めて露骨でしょう。アメリカの戦争遂行能力を改善するのです。安全保障というようなものじゃないのです。戦争遂行能力を改善する、同盟国の戦力を強化する、そしてソ連の方は妨害する、こういう目的というのはきれいごとじゃないのですよ。それはもうちゃんと、国防総省は正直に言うておるのですよ。私はそういう点で非常に重要な問題だと思っています。  それが、八四会計年度の国防報告になりますと、こういう記載があります。   ソ連への技術移転は広範なものではあるが、統制できないものではない。米国政策を支えるための国防省の目的は、先進技術の軍事使用におけるリードタイムを保護するための輸出統制にある。 だから、リードしているのを、そいつを保持していくためにやるんだ、同盟国日本も協力せい、結局こういうことになるわけであります。さらに、「昨年、われわれはこの目標のため、主要な業績をあげた。」こういうことを言っておりまして、「昨年及び今年の」というのは八二年、八三年でありますが、「第一義的活動は、重要技術プロジェクト、ココムにおけるリストの検討」等が主要な活動であるというふうになっています。「重要技術プロジェクトは、MCTLの開発及び改定が含まれる。」そして、一九八二年は、MCTLにおける重要技術及び関連財の範囲・種類の改定、改善の作業が広範に続けられた。」こういうふうに、いわば総括をしているわけであります。  この二つの国防報告を通じて出てきますのは、アメリカの軍事重要技術リスト、MCTLの見直しと改定強化という作業がずっと進められ、それがココムに持ち込まれていくという経過が非常にはっきり出てきておるわけであります。  そこで外務省お尋ねしたいわけでありますが、MCTLの改定はどのようにされて、八三年度国防報告で言っている見直し作業、それをその後ずっと続けてきたということを言っておりますが、そういう内容について説明をしていただきたい。
  331. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 MCTLは、一九八〇年以来毎年作成されてきております。特に八五年以来このMCTLの作成が法定化されまして、これは輸出管理法第五条(d)項の(5)で規定されております。   国防長官は、軍事的中核技術リストにある物  資及び技術につき、既に軍事的に中核でなくな  ったものを取り除くために、少なくとも年一回  見直しを行うための手続を定めねばならない。ということで、毎年一回見直しが行われてきております。  そのリストにつきましては、公表されている部分と公表されていないものとありまして、これまで公表されたものとしましては八四年版と八六年版とがございます。それ以外の年には公表はされておりません。これは国防省で作成しております。  以上でございます。
  332. 東中光雄

    東中委員 公表されている部分と公表されていない部分、常に毎年二つに分かれておる。公表されていない部分は、重要技術リストとして特に秘密にしておかなければならないほど重要な秘密技術、軍事的に利用できる技術ということになると思うのですが、そういうものこそココムで規制する規制対象リストになっていく性質のものですね。規制せぬでもいいんだったら、秘密にする必要はないわけですから。  ということになるので、ココムの場においてMCTLは開示をされておるものと開示をされてないものがある。MCTLのリストはココムリストの中に入れていかれる、そういうことで努力をしておるんだということが国防報告の中にずっと出てきておりますから、どういうものがココムの場で開示をされ、そして全く開示をされていないMCTLというのはどういうものなのか、明らかにしてください。
  333. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 私たちは、公表されていないMCTLは持っておりませんので、それがどういう中身かということは存じておりません。実は、きのう安全保障特別委員会で先生からの御質問に対して、外務省の渡辺経済局長が不公表部分も外務省として入手しているというふうにお答えいたしましたけれども、ちょっと思い違いで答えましたので、この際訂正させていただきますけれども、私たちが持っておりますのは公表されたもの、八四年と八六年のものでありまして、それ以外の不公表のものは持っておりません。  第二点の、今先生御指摘の、このMCTLがそのままココムリストの改定につながっているということでございますけれども、MCTLはあくまでもアメリカの国防省がつくるもので、アメリカの輸出管理法によりますと、それをできるだけコモディティー・コントロール・リスト、CCLと関連づけるということになっておりまして、もしも商務長官と国防長官が協議して意見が合わない場合には大統領が決定するということで、MCTLとアメリカのCCLとは非常に密接な関連が参ると思いますけれども、それはあくまでアメリカの国内の制度の問題でありまして、ココムリストとは直接の関係がないと言えるかと思います。ココムリストにつきましては、あくまでココム参加十六カ国がコンセンサス、全会一致ベースで決めております。毎年リストレビューが行われまして改正しておりますけれども、これがMCTLの翻訳ではないということははっきり申し上げることができるかと思います。
  334. 東中光雄

    東中委員 それが翻訳だと私は何も言っているわけじゃないのです。だから、MCTLが基礎になっておって、それをまず見直しをし、それを検討して、秘密にすべきであるというふうに思ったリストを今度は輸出規制、アメリカ国内において規制するわけですから。そしてココムにおいてもそれとの関連でやっていく。そのままリストが動いているなんて全く言っていないわけです。  しかし、秘密にしておる部分について言えば、MCTLで公表している部分は、そのうちの八四年と八六年の二つだけは日本へ来ておる。これはぜひ我々の方にも示していただきたいと思うのです。これは要求しておきます。  それとあわせまして、それ以外の秘密の部分は日本へも来ていない。ココムヘも来ていない。しかしそれは、アメリカ国内的に規制対象であることは間違いないのだから、ココムにおいても規制対象として出てきておる、そういうぺースでいくのだということが国防報告の中ににじみ出ておりますから、そういうことを言っている。だから、ココムヘ出席しておられる外務省関係は、そういう流れというものは当然わかっているはずだと思うのですが、その点どうですか。
  335. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 ココムのリストレビューに際しまして、アメリカの代表団はアメリカとしての対処ぶりをしていると思いますが、そのときにどこまでMCTLに従ってやっているかどうかというのは、これは私たち不公表のMCTLを持っておりませんから正確にはわかりませんが、恐らくMCTLに盛られたラインで対応している部分も非常に多いかと思います。  他方、私たちはそのアメリカのリストに拘束されるわけではありませんので、私たち日本もヨーロッパの国も、何が戦略物資かどうかというのは我々独自の角度から判断して、アメリカと合意できるものは賛成する、できないものはする必要がないということで対応してきております。
  336. 東中光雄

    東中委員 ココムは大分縮小しておった。それをレーガン政権になって拡大する。今ハイレベルのココムの会議というのはときどき開かれているようなお話でありますけれども、それはワインバーガー国防報告で取り上げてから最初に一九八二年の一月に三十年ぶり、いわばココムができてから初めてと言っていいぐらいの時期にこのハイレベルの会合が開かれたわけですね。そしてそこで、ココムというのは大体何やっているかというのを一切隠しておったのが、ここでは新聞発表しましたね、何を決めたかということについて。これは非常に異例の、ココム拡大強化発言みたいに私たちは思うわけですけれども、その内容はどういうものでしたか、明らかにしてください。
  337. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 八二年になってハイレベル会合が三十年ぶりに開かれたということですが、これは、そのときどきのココム参加国間のいろいろな政策あるいは国際情勢を踏まえての政策等がありますが、その背景とか理由等は、私今時に申し上げる立場にはございません。
  338. 東中光雄

    東中委員 この八二年一月のハイレベル会議、三十年ぶりの、レーガン政権になって初めてのそういうハイレベル会議にだれが出席したんですか。これは秘密会議だから、秘密組織だからいよいよもってややこしいのです。出席者も構成者も場所もわからないという秘密組織でしょう。しかし、ハイレベル会議を開いたということが国防報告には書いてあるわけです。そして発表しているのですね、文章というか新聞発表、コメントを出しましたね。一体何を出して、だれが出席して、どういうふうにしたんですか。
  339. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 申しわけありませんけれども、八二年のそのときのプレスレリース等を今持ち合わせておりませんので、後で調べまして先生のところへ御説明に伺いたいと思いますが、御了承いただければ――よろしくお願いいたします。
  340. 東中光雄

    東中委員 私は、その内容を知っているから別に持ってきてもらわぬでもいいですけれども、要するにココムを拡大強化していくという宣言というか発表なんです。  そういう経過で、これは大臣に考えてほしいのですけれども、八二年といったら暮れに中曽根内閣ができるわけですけれども、レーガン政権ができてから実際に動き出すときですよ。そのときに三十年ぶりのココムのハイレベル会議が開かれて、そして発表して中身はどうかといえば、国防報告、これは八七会計年度、去年の国防報告によりますと、「我々が一九八一年に始めたCOCOMに関する措置は、この分野ではまだなすべき多くのことが残されているものの、成功を収めてきた。第一に、一九八二年秋に始まった徹底的なリスト再検討は三年後首尾よく完了した。」アメリカから見て首尾よく完了した。「この再検討は、過去十年余のうちで最も包括的なもので、ソ連圏に輸出されておれば、その軍事増強を高めたであろう製品と技術のより現実的な評価をもたらした。」こういうことで、ずっとリストの内容ある程度書いているのです、こういうものをやったんだと言って。これは国防報告で発表しているのですね。だから明瞭に中曽根・レーガン体制でうんと強化され、リストが変えられてきたということだと思うのです。だから、百余りの案件を提案をした、そしてリストを変えたというのも、八五年の国防報告の中に出てきます。  そこでお伺いしたいのですが、この三年間にココムリストはどういう点でそんなに変えられて、どういうふうに変化してきたのかという点を説明していただきたい。
  341. 畠山襄

    畠山政府委員 御指摘のように、昭和五十七年から六十年にかけてリストレビュー会合というのが行われたわけでございます。それを反映して、我が国貿易管理令も改正をされていくわけでございます。そこで、輸出貿易管理令の改正の方で申し上げますと、五十九年四月の改正では超合金製造設備の追加などがございました。それから、別表第一の十二項目を改正いたしまして、そのうち新規追加が六項目、その他の改正が六項目でございました。それから六十年二月の改正では、例の浮きドックの追加、電算機の緩和等、八項目を改正いたしております。これを整理いたしますと、新規追加が六項目、その他の改定二項目ということでございます。
  342. 東中光雄

    東中委員 今、貿管令の別表の改正という形で言われましたけれども、私がお伺いしたのは、ココムリストの改定について聞いたつもりです。明白にそうですね。それで、そのことについてはココムの申し合わせにより言うことができないのですとあなた方は言うのです。ところがアメリカの国防報告には、こうこうこういう項目についてやれて、最も重要な成果を上げたのだと書いています。御承知のとおりです。だから、全部アメリカのペースで、アメリカが提案してきたものをのまされていっている。要するにハイテク技術関係の製品は、汎用品をどんどんそうして規制していくというところへ遭い込められていっている、こういうことになると思うのですが、そうではございませんか。
  343. 畠山襄

    畠山政府委員 リストレビューの方でございますと、百二十項目について見直しをこの三年間に行ったわけでございますけれども、その結果、削除が四、新規が二十九ということになったと承知いたしております。ただこれは、アメリカの国防報告は国防省が書いているものでございますからそれなりにみずからを評価していると思いますけれども、それはアメリカの立場でございまして、今申し上げたようなことはココム参加十六カ国で議論をして決めていったというものでございまして、アメリカの言うとおりにずっと引きずられているということはないと考えております。
  344. 東中光雄

    東中委員 ココム十六カ国それぞれ提案をするのだというお話でございますけれども、規制を新しくしなさいということを提案してくるのはアメリカのMCTLに基づく、秘密にしているぐらいのものが毎年改定されているわけですから、それに基づいてやってくる。日本側も提案しているということは、この間レクで聞いたら言われているのですけれども、日本側から提案したというのはどういうものを提案したのですか。
  345. 畠山襄

    畠山政府委員 ココムにおきます個々のやりとりにつきましては、申し合わせにより申し上げられないことになっておりますが、日本側から提案するものは主としてむしろ削除する方でございます。こういう技術は一般的になったので、だから削除するべきではないかというようなものが多かったのではないかと考えております。
  346. 東中光雄

    東中委員 ということは、日本側輸出規制をやめたらどうかという提案をしているわけでしょう。向こうから新しいものが出てきて、とうとうそれを皆のまされてきて、全体としては今百七十八品目になっている、こういうことではないのですか。
  347. 畠山襄

    畠山政府委員 先端技術の分野でございますと、アメリカが進んでいるというような側面もございますから、そういう経験に照らしてアメリカがそういう主張をするところが多いということは事実であろうかと思いますが、立場を変えて、日本側がそれじゃどんどん先端技術規制していくべきだという主張をすべきかという問題について考えてみますと、必ずしもそういうことにならないと思いますので、私どもとして一般的になった技術について削除を主張しているというのは、それなりの理由があることであるというふうに考えております。
  348. 東中光雄

    東中委員 MCTLで、しかも秘密で同盟国に対しても示さないMCTLのリストというのは、最も輸出規制しようとするものであるということは明白だと思うのですね。それは論理的に必ず、形は変えたにしろ、外形としてはココムヘ出されてきている。外形は出されてきておるけれども、中身はわからないというココム規制基準というのはあるのではないか、学者の研究なんかではそういうことも言われています。だって、秘密のMCTLがあって、法律上つくらなければいけなくなっておって、大見直しをやってつくって、しかもそれは日本に示さないということですから、ココム加盟国でありながら規制基準になるそのリストがわからないという状態について、何にも疑問を感じませんか。紳士協定だから知らぬ方がいい、もう向こうさんのおっしゃるとおりで、結論さえわかればいいというふうな姿勢なんですかね。そこらはどうでしょう。
  349. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 ココムリストの改定に当たりましては、各国が削除するなり、あるいは新しいハイテク製品が中心ですが、新しい品目を追加するなり提案する場合には、それなりの理由をはっきり付してやるわけなんですが、先ほども申しましたようにMCTLというのは、ある特定技術が具体的にどのような形でどのように軍事転用されるかを示したアメリカ政府部内の参考文献であるというふうに私たちは理解しております。したがいまして、アメリカが特定品目をココムのリスト改定に当たりまして追加しようというときに、提案理由として説明することはあると思いますけれども、逆に、リストを改定しようと思えば、なぜ改定するのかしないのかということをみんなで議論しなければいけませんので、アメリカが追加あるいは――しかもMCTLは追加だけではなくて削除することも先ほどの輸出管理法にはっきり書いてあるわけですね。古い技術は削除するあるいは緩和するということも書いてありますので、MCTLは強化ばかりでないということもこの法律上はっきりしていると思いますけれども、いろいろ緩和とか規制の厳格化を提案するに当たってのアメリカの提案理由説明には使われるかと思います。だから、その限りにおいては私たちは説明を聞けばいいかというふうに理解をしております。
  350. 東中光雄

    東中委員 外務省、それでは説明にならぬですよ。非常に重要な秘密軍事技術なんだということで、アメリカ国防総省が大がかりに検討してつくったリストがある。そのリストで、それは社会主義圏へ渡してはいかぬのだ、当然そういう前提でつくっているわけでしょう。それで、ココムで規制するときに、そのリストに載っておるけれどもココムの中へ入れないのだ、そんなばかなことはあり得ないですね。そうしたら、ココムの中へ入れるのだったら、秘密にしておいたのではだめじゃないですか。ココムの中で示さなければいけないでしょう。ところが、ココムでも秘密にするわけでしょう、だって日本にも知らせないわけですから。だから、そういうものがある。これはもう動かせない事実になるわけです。その点は、そういうものだということだけひとつはっきりしておきたいと思うのです。  それで、この仕組みの問題については、私どうしても合点がいかないのですけれども、いわゆる「戦略物資輸出承認申請件数推移」というのを通産省からもらいました。六十一年度でいいますと、総件数が十九万八千九十二件だというふうに書いています。そのうち「い地域」関係が三千八百五十三と書いてあります。これは「申請件数推移」と書いてあるのですけれども、これで承認件数は幾らになるのですか。
  351. 畠山襄

    畠山政府委員 確かにその資料には「承認申請」と書いてあってあれでございますが、これは承認件数と同じでございます。たまたまこの間、不承認処分というのはございませんでした。
  352. 東中光雄

    東中委員 そうすると、戦略物資輸出承認申請を出す件数というのは、それは別表第一を含めていわゆるココム関連の百七十八品目に該当する物件の輸出申請ですね、該当しないものだったら承認申請要らぬわけですから。だから、これはあの百七十八品目に該当するものとして輸出したいと言うて出してきたのが十九万八千九十二件であって、そしてそのすべてが百七十八冊目のリストに該当しておるけれどもすべてが承認をされた、こういうふうに読んでいいわけですね、これは。
  353. 畠山襄

    畠山政府委員 おおむねさようでございますが、この中に入ってないものとして、相談があって、どうせ承認をしつこないからやめた方がいいとか、そういうことを言ったというのが、これは統計をとっておりませんから件数はわかりませんけれども、そういうものがまたたくさんあるということでございます。
  354. 東中光雄

    東中委員 そうすると、百七十八品目に該当するからというて申請が出てくる、そして事前聴取でこれは初めからだめだと言われて、これはいわば非合法、非公然に事前でチェックしてしまう。これは封建時代と同じようなやり方で、それ自体問題ですけれども、正式に出てきたものはあのリストに該当するけれども、それを承認するかしないかということを通産大臣の権限でやるわけですね。通産大臣承認を得なければならない、これだけのものはということですからね。その承認するかしないか、該当しておるけれども、承認するかしないかということを検討をする基準は一体何なのですか。
  355. 畠山襄

    畠山政府委員 共産圏に向けます場合と、それから非共産圏に向けての場合と基準が異なっておりますけれども、非共産圏であってそしてココム参加国の場合は、主としてIC、輸入証明書を取れるかどうかというのが一つの大きな基準でございます。  それから、ココム参加国以外の非共産圏の国でございますが、これは協力国と非協力国とに分かれまして、協力国の場合ですと、やはり参加旧同様にIC、輸入証明書を出すわけでございます。だから、それがあるかどうかというのが基準になるわけでございます。それから、協力国でない第三国と申しますか、そういうものの場合には政府輸入証明書を発行をいたしませんで、その最終ユーザー、最終需要者がどういう最終需要者であるかということを調べるわけでございます。そこで、最終需要者がちゃんとしたユーザーであって、例えば流通業者のようなものではないということでございますれば、それを承認するということになるわけでございます。  それから共産圏の場合でございますと、これは行政例外的なものに当たるのか、それとも一般例外といって、パリの国際会議審査しなくちゃいけないのかということになるわけでございまして、行政例外的なものに当たります場合には、その貨物の仕様とか用途とか性能とかそういうものをチェックいたしまして承認をする、しないの判断が行われますし、それから特別認可が必要な、パリ会議が必要なものにつきましてはパリに送って国際会議で決定する、大体そういうスキームになっているわけでございます。
  356. 東中光雄

    東中委員 わからぬことをようけ聞きました。共産圏というのは何ですか。
  357. 畠山襄

    畠山政府委員 便宜、共産圏という言葉を使わしていただいて恐縮でございましたけれども、具体的には輸出の私どもの通達で「い地域」と言っている地域十四カ国でございます。
  358. 東中光雄

    東中委員 「い地域」、共産閥というのは何を基準に決めてあるのですか。
  359. 畠山襄

    畠山政府委員 ココムの申し合わせで共産圏ないしそれに準ずる地域となっているところでございます。
  360. 東中光雄

    東中委員 ココムの申し合わせにそういう申し合わせがあるということを今言われたことになるわけですか。ココムの申し合わせの内容を今言われたことになるのですか。
  361. 畠山襄

    畠山政府委員 ココムの申し合わせの中に対象地域が決まっているわけでございます。
  362. 東中光雄

    東中委員 そうすると、秘密に決まっていることであって、日本の法令上の根拠は何にもないけれども、それであなた方が勝手に通達をつくって「い地域」、こう言っている。  それからもう一つ、行政例外と一般例外、こうおっしゃいましたが、これは一体何ですか。行政行為を、承認行為という承認をするかしないかというときに、法による行政でしょう。その法による行政をやる通産大臣が、行政例外だとか一般例外だとか、行政例外行政をやるんですか。そういうアブノーマルもアブノーマル、もう異常状態がここまで来ているんだと思うようなことを言われたのですけれども、一体どういうことですか。
  363. 畠山襄

    畠山政府委員 まず、その行政例外、一般例外というのは俗称でございまして、私どももっと正確に申し上げれば、通産大臣限りで承認をする品目とそれからそうでないレベルの品目ということになるわけでございます。  それから第一点の、日本行政法令上は何の規定もないけれども、ココムの申し合わせで秘密で決まっていて、そして私どもが勝手にやっている、こういうふうにおっしゃいましたか、その点についてでございますけれども、これは日本の法令上は御案内のとおり、全地域向けの規制ということになっております。そこで、全地域になっておりますのは、現在の法令では、対象地域もそれから具体的な対象地域でないところも、いずれもその罰則が同じ懲役三年ということになっておりますので、したがいまして「全地域」と書いてあるわけでございます。これは対象地域への迂回輸出を防止する趣旨からでございます。  他方、今度の改正案ではその考え方を変えまして、四十八条の一項では対象地域を明示をする、政令で定めるということになっておりまして、そして迂回輸出を抑制する目的では、貨物について申し上げますと四十八条の二項がございまして、それで定めていくということになりますので、前者は罰則が懲役五年以下、後者は三年以下というふうに分かれてくるわけでございます。その必要から、今回は対象地域を、それを何と申し上げるかは別にいたしまして、明示していくことになるわけでございます。
  364. 東中光雄

    東中委員 結局、ココム対象地域は「い地域」ということで特定している十四カ国であるということを今あなたは言われた。直接的には言われなかったけれども、趣旨は明白にそうである。ですから、ココムの申し合わせは秘密でありますと盛んに言っておるけれども、秘密じゃなくてちゃんと明らかにしたということになるわけだと思うのですが、それはそうしておきましょう。  しかし、ココムは非公式の機関で非公開であって、しかも内容は全部秘密にされておるということで、それでその効力というのは、国際法上も国内法上も条約としての効力は持たない。これは判決にもはっきり出ておりますし、この間の本会議でも、総理大臣もその点はそういうことだということを言われておりますから今改めて申し上げませんが、そういうものを今度は軸にして、そして通産省通産大臣の機関としてあのココムリストを繰って、申請されたものについて一般例外ということで一々チェックをしているということですね。そうではございませんか。
  365. 畠山襄

    畠山政府委員 御質問趣旨を必ずしもはっきり把握できてないかもしれませんが、申請がございますると、まず対象地域向けかそうじゃないかということをあれいたしまして、対象地域向けの場合ですと、おっしゃるようにあるレベル以上でございますると、通産大臣限りでは承認をいたさないで国際会議に出すことにいたしております。そういう意味では一々チェックしてやっておる、そういうことでございます。
  366. 東中光雄

    東中委員 大臣に伺います。  別表に該当するということで申請が出てきた場合には、通産大臣がこれを承認するかしないか、今度の改正法によれば許可するかしないかということを通産大臣が決めることになっているわけです、我が国外為法上は。ところが、実際は安保貿管室は、国内限りでやれる部分はあのココムリストに従ってチェックをするけれども、特定の部分については、通産大臣がやる部分をパリのココムまで持っていって、そこでオーケーが出なければ通産大臣もオーケーを出すことができない、こういうことになっているのですよ。こんな制度というのはないですよ。非公式の会議へ持っていかなければ、そして外国意見を聞かなければ緒論を出せない。  通産大臣の権限というのは、外為法上は通産大臣許可を得なければならないとなっているのです。その許可権限者である通産大臣田村さん自身が、その補助機関でしょうけれども、安保貿管室が自分のところで結論を出せなくて、パリまでわざわざ持っていくのですよ。そして、全部の同意を得なければできない。アメリカの国防総省があのリストを出している、そこの代表の同意も得なければ承認ということができない、こういう仕組みになっているのです。これは、ココムというような非公式の、非公然の条約にできないようなものを国内法に入れておくからこういうおかしなことになるのです。だからこれは、法に基づかない行政、あるいは手続的に言えばデュープロセス違反ということに結局なってしまうのです。その点どう思われますか。
  367. 田村元

    田村国務大臣 どうも加盟各国がそういうことになっておるようですな、日本だけでなしに。
  368. 東中光雄

    東中委員 私は、日本外為法改正についての審議をやっているのであります。外為法の今度の改正案では、通産大臣がその認可をするについて、必要があると認めたら外務大臣意見を聞くと入れました。別に必要もないと思うけれども、入れいと言うから入れましたと、あのテレビ討論会のときに大臣はそう言われましたけれども、外務大臣は外務大臣として、自分たちの方で言いたいことがあると思ったら意見を言うことができると、わざわざそういう改正にしたのですね。そういうふうにせいとアメリカの方から言ってきたと新聞には報道されました。  ところが、今実際の仕組みはどのようになっているのかと言えば、通産大臣が決めるはずの輸出承認通産大臣で決められなくて、どこにあるのかはっきりしないようなそのアメリカ大使館の別館、パリにあるところまで持っていってその意見を聞いてこなければいかぬ、あるいはそこでつくったココムリストに照らして見なければいかぬというのです。日本法律ではないのです。多分英語だろうと思うのです、私は見たことがないからわかりませんけれども。その英語で、基準に合っているかどうかを見なければいかぬということになっているのですよ。  こんな制度というのは、ほかは者やっておったからといって、日本はこれは許されないです。法治国家、法に基づく行政という点からいって、私は許されないと思うのです。説明がつかないですよ。全部隠して非公然にしておくのだったら、それはまた知らぬのだからわからぬけれども、事実上こうして聞いているでしょう。しかし、こういうふうにココム違反だなんというようなことを言って表へ出ている。もともとは、一九五三年までは存在すら明らかにしなかったわけですからね。存在が明らかになっても、今、聞く方も何もさっぱりわからぬ。少し明らかになってきたと思ったら、今度はココム違反だといって、日本たたき、東芝たたきが始まっているという状態でしょう。そういう仕組みに今なっているのです。だから、ココムというのは外為法で、ココムはそれぞれの国の国内法で処理するんだというふうになっていると言いますけれども、処理することになっていないじゃないですか。通産大臣がやるということが、承認権限を持っている通産大臣がやれなくてわざわざパリまで持っていかなくてはいかぬ、こんなことは許されぬと私は思うのです。どうでしょう。
  369. 畠山襄

    畠山政府委員 俗称一般例外の品目につきまして、東中委員が言われるように、パリの国際会議で相談することは事実でございますが、これは法律に基づく申請があって、そしてその申請通産大臣として、現行法上で申し上げますと承認する際にそういう意見を聞くということでございまして、通産大臣としての最終的な判断をするということであろうかと思います。  それから、ココム違反という御指摘がございましたが、確かに国内的な観点から見ますと、ココムは条約でも何でもないわけでございます。ですから、ココム違反と言うのはまことに正確を欠いておりまして、外為法違反というふうに私どもは観念いたしております。
  370. 東中光雄

    東中委員 それは、局長が言うておる範囲におけるつじつまは合っておるかもしれぬけれども、本当に行政法学的に言うても――それから、わざわざ今度の改正法で、外務大臣が「意見を述べることができる。」「外務大臣意見を求めることができる。」こういうことを入れたのでしょう。そういう規定を入れなければ入れないでもよさそうなものだけれども、法定上わざわざそうした。通産省としては、余り好ましくないけれどもしたというのでしょう。ところが、あに図らんや、国際機関、国際機関と言いますけれども、非公式機関ですよ、秘密機関でしょう。しかも、わざわざパリまで行かなければいかぬでしょう。日本代表はだれが行っているか、これもはっきりしないのでしょうが。そういうところへ行って意見を聞かなければできない、こんなのはないです。イギリスや西ドイツやフランスの場合は、そういうことになっておったって、そのかわり言いたいことは言ってますね。アメリカがどう言おうが、ぼおんとはねつけてますよ。ところが日本は、ココム違反やと言われたってようはねつけやせぬでしょう。これは何としても許されないことだと私は思うのです。  これはココムを脱退して、あるいはそれこそ大臣自身の権限でやるならやるというんだったら、それはそれなりにいいと思うのです。「外務大臣意見を求めることができる。」という規定をわざわざつくったということとの関連で、アメリカ国防総省の意見を求めることができる、あるいはココムの意見を求めることができるとなぜ入れぬのですか。あるいは、ココムの意見を求めなければならないとなぜ入れなかったのか。ココムは非公然だから、そんなことは言えないんです。そのくせに、ココムの問題は国内法化して国内法でやるんだ、こう言っているんでしょう。これはもう矛盾ですね。そして、ココム違反だといってアメリカから文句を言ってきたら陳謝をする。どうしたってつじつまが合いません。  何とか改める方法、どうですか通産大臣、それはひとつ考えてもらわなければならぬ。おかしいですよ、これは道理が通らぬです。何ぼ日米軍事同盟があってそれが優先するからといったって、筋が通らない。優先すること自体がいかぬですけれども、それ以上に筋が通らぬことで今立法が進められようとしている。断じて承認できないですが、御意見を承りたいと思います。
  371. 田村元

    田村国務大臣 ちょっと私わからないところがあったのですが、ココムを脱退して日本独自で決めればよいという意味がしっかりわからないのです、そうおっしゃったけれども。それはどういうことを意味するのでしょうか。
  372. 東中光雄

    東中委員 日本は、輸出貿易管理についての二つの大原則があると私は思うています。憲法外為法の二つの原則がある。一つは、日本憲法は二十二条で職業選択の自由を基本的人権として認めています。したがって、それは営業の自由であり、輸出貿易の自由を基本的人権として保障している。日本国民企業は、輸出は自由である、これは大原則であります。もう一つの原則は、武器輸出原則、国会決議があるのです。武器及び武器技術及び、あの五十一年度の政府方針によれば兵器製造専用の工作機械その他はいかぬ、厳正に慎むとちゃんと国会決議に書いてあるのです。この二つが原則なんです。あとは、輸出貿易については調整、管理をするということが通産大臣の仕事だと思います。この二つの原則で、そして経済的理由で調整をやる、それを貫くべきだというのが私の考えです。  ところが、自由は安全保障というような名前で制限されてくる。もう一つは、国会決議は、アメリカとは安保条約があるからその効果的運用を期するためといって、武器技術輸出、武器の輸出を認めてしまった。こういうとんでもないことをやって、一方では、勝手に社会主義国を十四カ国秘密で決めて、それに対しては技術輸出さえ、汎用品、一般商品でさえ規制をしていく。これはもう明らかに間違いだ。私はだから、そういう二つの原則に基づいて、通産大臣は経済の繁栄のための、国民貿易の自由を発展させるための調整をやる、こういうふうにすべきだと思うのです。そのことを提起しているつもりです。いかがでございましょう。
  373. 田村元

    田村国務大臣 外為法の今度の改正をお願いしておるわけですが、この外為法の第一条の目的にも記されておりますとおり、「外国貿易」「が自由に行われることを基本とし、」すなわち自由貿易原則としておる。それから、「必要最小限の管理又は調整を行うこと」これは、「対外取引の正常な発展を期し、もって」「我が国経済の健全な発展に寄与することを目的」としておる。この「必要最小限の管理又は調整」という域からはみ出ておるものではないという考え方を我々はいたしております。  それから、通産大臣承認する際に事実上ココムの意見を聞いても、主権の侵害にはならない。各国とも同様で、加盟各国がそうすることに同意しておるわけです。でございますから、そういうルールで事務処理をしておるということでございまして、日本だけが特別の処理方法をとっておるというものではございません。
  374. 東中光雄

    東中委員 時間ですから、質問を終わります。
  375. 佐藤信二

  376. 松本善明

    松本(善)委員 外為法の改悪というのは、大事な問題点を、安全保障の問題や日本貿易の問題、それから基本的人権の問題等々、多く含んでいると思います。  大臣にいろいろ伺いたいのですが、最初に、少し技術的な点について多少伺っておきたいと思います。  ココムの規制の問題について、この六月にある大学教授が投書をしておられました。セージェルヘ行ったときに、十六ビットのパソコンを船積みしようとしたら許可がおりない、小型でどこでも売っているじゃないかと言っていったら、いや自民党の有力議員通産省に電話してもらったらうまくいく、そんなばかなことがあるかということで、とうとう手荷物にして提げていった、こういう投書がありました。私が伺いたいのは、手荷物で持っていって、向こうでこれは便利だ、ぜひひとつ譲ってくれぬかということで譲った場合には、外為法にひっかかるでしょうね。簡潔に結論だけお答えいただきたいのであります。     〔委員長退席、田原委員長代理着席〕
  377. 畠山襄

    畠山政府委員 ひっかかると思います。
  378. 松本善明

    松本(善)委員 ワープロも同じでしょうね、結論だけ。
  379. 畠山襄

    畠山政府委員 そのワープロの性能によりますが、ひっかかるものがございます。
  380. 松本善明

    松本(善)委員 もう一つ伺いますが、前に北海道大学の大野教授が投書をしておられましたが、東欧の学者を共同研究するのに呼んだところが、査証が出なかった。これはココムによるものですけれども、学術交流を妨げる問題だということで国会でも問題になりました。  ここで私がお聞きしたいのは、ココムの技術に関する問題ですね。二十五条関係でありますが、これは非常に広範で、貿易関係貿易取引管理の省令の九条と別表で、一から一九までいろいろ技術が決められている。その中には、やはり新聞で見たのですが、例えば電機メーカーの松下電器なんかでも、ビデオテープの技術もひっかかる、だから本当に困るのだ。メーカーがそのぐらいですから、技術者にしても学者にしても、この技術の範囲が非常に広くてわかりにくいと思うのですよ。社会主義国に行って技術者やあるいは学者がこの技術の問題で、この規定の設計、製造、使用に係る技術、使用方法をしゃべった、これもやはり外為法にひっかかると思うのですが、今度の改正でももちろんそうですが、結論だけで結構ですが、お聞きしたいと思います。     〔田原委員長代理退席、委員長着席〕
  381. 畠山襄

    畠山政府委員 その品目が貿管令の対象品目でございまして、あるいは外為法対象品目でございまして、そしてそれの設計、製造、使用の技術を話した、そしてそれが技術を供与したと言われるような実態であれば該当すると思います。
  382. 松本善明

    松本(善)委員 大臣、ちょっと伺いたいのですが、よろしいですか。  今お聞きのように、個人用パソコンからワープロから、それからビデオテープやテープレコーダーの技術についてしゃべるということまでも、これは外為法にひっかかるわけですよ。しかも、今度の改正で、社会主義国でやれば形式犯としては異常に高い五年以下の懲役ということになる。これはもう徹底的にやったら、社会主義国に対して全面禁輸と同じことになります。それから刑事罰で臨むということなら、これはもうほとんど恐怖政治でしょうね。技術者や学者は社会主義国へ行ってしゃべれないですよ。それはなぜかといえば、要するに許可なしにこれらの貿易をしてはならぬということだけが決まっていて、そして中身は全部政令や省令で決まる、あるいは担当官の判断で決まる。これは白地刑法とか白地処罰規定だとかいうことが言われておりまして、何が罪になるかということがわからない。恐らく学者や技術者が、社会主義国で何をしゃべったらこれは罪になるかどうかということは、わからない場合がほとんどだろうと思うのです。よく研究していた松下電器でもわからないと言うのですからね。  そういうことは、私はこれはもう絶対許されないと思いますけれども、大臣と私は立場が違うから私と全く同じ立場に立てとは言わぬけれども、しかしこれは本当に大変なことになりませんか。私の言ったように、徹底的にやり方によっては社会主義国に対する全面禁輸になる。それから、いわば恐怖政治的な、本当に物をしゃべれないということになりかねない。この事実を、今大きな技術的な筋は通産省は認められましたけれども、大臣、政治家としてどうお考えになりますか。これは悪法だと思いませんか。こういうことがまかり通ってよろしいと思われるかどうか、大臣の御見解を伺いたい。
  383. 田村元

    田村国務大臣 御提案申し上げておる私から悪法ということを言わせようとは、それはもう無理な話ですけれども、それはそれとして、こういうことで規制をする。それ以外の面では、私は社会主義国家との貿易というものは大いに伸ばせばよいと思うのです。問題は、戦略物資等というようなもので、いわゆる自由主義国家十六カ国の約束事でございますから、それはそれで守るということで、特にこれを盾にとって逆用に無理な手を入れて、そして社会主義国家との貿易を締め上げる、阻害する、そういうことは私はすべきでないと思うし、その点は日本の政治もまた行政も良識というものは持っておると思います。
  384. 松本善明

    松本(善)委員 大臣、私の言ったことは否定しないで、立場は違うから運用で何とかするという趣旨でありましょうが、本当にこれは非常に危険なものです。ですから、貿易をやっている人たちからきょうも陳情を受けました。これはやり方によってはえらいことになるという陳情を受けました。  私は、これはやり方によっては裁判ももういっぱい起こると思いますので、ちょっと確かめておきたいと思うのは、この件については御存じのように、東京地裁のココム違法判決が唯一の判決なんで、これとの関係を伺うのですが、今度の提案理由もココムということは一言も言われていません。先ほどの局長答弁では、ココム違反というのは不正確なんだ、外為法違反というのが正確なんだというふうに言われました。ココムそのものが審議対象になってないわけですけれども、こうなりますと、東京地裁の判決では、このココムの申し合わせの趣旨目的に沿った国内法が既に存在するか新たな立法措置がなければこれはだめなんだというのが一つの趣旨でありました。私は、今回のものもいわゆるココムの申し合わせの趣旨目的に沿った国内法には当たらないと思いますが、通産省はどう考えていますか。
  385. 畠山襄

    畠山政府委員 確かに東京地裁では今御指摘のようなことが指摘されましたけれども、私どもはあの東京地裁の判決のその部分については争うチャンスがなかったので争えなかったということでございまして、私どもの考えといたしましては、あの判決にあるような純粋に経済的な理由によるものしか規制ができなくてということには賛成をいたしておりません。私どもといたしましては、ココムの規制といいますのも、そこに入っております西側諸国全体の平和及び安全を脅かすおそれがもしそれを実施しなければあるわけでありまして、抜け駆け的に我が国がそれを同意しておきながら陰で破るということがありますと、これら西側諸国から経済的な圧迫を受ける、そういう経済的理由によってこの規制を行う必要性が説明されるわけでございます。したがいまして、現在の外為法もそうでございますけれども、今度の改正後の外為法におきましても、そういった経済的な理由によってココム関係規制も正当化できるというふうに考えておるわけでございます。
  386. 松本善明

    松本(善)委員 私の言ったことに直接答えないで、先回りしていろいろ答えられたようでありますが、趣旨は、東京地裁の例の判決にはもともと反対なんだ、したがってそれには拘束されないのだという考え方だと思いますが、これは将来裁判になったときは必ず問題になります。そして、今言ったことをもう一度大臣にきちっと、局長が先回りして答弁したのですが、大事な問題なので聞いておきたいのです。  外為法は、輸出自由の原則を言っています。憲法二十二条の基本的人権としての営業の自由の内容として言っているのです。東京地裁の判決も言っていますし、私どももそう思っています。今度の政府案では「国際的な平和及び安全の維持を妨げる」という文章が四十八条に入りました。これが、ココムをその一つとして意味しているということは、私が外務委員会で聞いたときにそういう答弁がございました。これは私は、もう明白にNATOとか日米安保条約、これと一体になった戦略物資の社会主義国への禁輸体制、そのココム、そういうものを貿易の自由というものにかぶせる、そういう性質のものだということは明白だと思います。これは仮想敵国を持つというものであります。この仮想敵国を持つということについては、元法務大臣の奥野誠亮さんが自民党総務会で、これは憲法違反だ--もっとも奥野さんは憲法を変えるべきだという立場から言っておられるわけですけれども、仮想敵国を持っていることは明白ですよ、このココムは。そして軍事同盟と一体になっている。  これは、「諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」という憲法前文の精神と全く反することは明白です。この規制貿易自由の上にかぶせる。今局長は、経済的な理由だということなら差し支えないのだという趣旨のことを言いましたけれども、これは経済的な理由でも何でもないですよ。明白な軍事同盟の利益です。政治的、軍事的な制限でしょう。それを貿易の自由の上にかぶせて許可貿易にする、そういう性質のものでしょう。大臣、どう思われますか。これは経済外的なものであるということは明白でしょう。大臣答弁を伺います。
  387. 田村元

    田村国務大臣 今度の改正点、ココムだけではなくして武器輸出原則あるいは原子力等を含んでおるわけでございますが、罰則あるいは制裁の強化ということで、他の分野の違反事件問題を五年にということは酷でございますから、むしろそういう意味で平和と安全ということで特掲したということでございます。  それから、軍事同盟とおっしゃいますけれども、奥野さんのお話も出ましたが、私は奥野さんの教え子ではありませんので、これは奥野さんは奥野さんでお考えのことだと思いますが、通産省は純粋の貿易面ということで割り切っております。
  388. 松本善明

    松本(善)委員 大臣、いろいろ反論されたようですが、私の開いていることは、国際的な平和と安全の維持ということでかぶせるのは経済外的なものではありませんかということです。そういう制約を貿易の自由に課するということになりませんかということを聞いている。それについてはお答えにならなかった。これは私は、答えられないんじゃないか、間接的には私の言っていることを認められたのではないかというふうに、反論がありませんから思うのです。  重ねて言っておきますと、この判決では、経済外的理由による輸出制限は間接的に経済的な効果があってもそれは許されないのだ、こういうことを言っています。さっき局長の言ったこともそういう趣旨ですが、これはもうはっきり判決では否定をしておることです。もし反論があれば聞いておきたいし、貿易政策の問題としても、なぜこういう軍事同盟の利益を貿易の自由にかぶせなければならないのか。大臣の口から、先ほど言い残した点があればそれと、今私が申し上げました、なぜそういうことをしなければならぬかということについて、政府のお考えを伺おうと思います。
  389. 田村元

    田村国務大臣 外為法は、我が国が制定いたしました国内法でございます。日米安全保障条約は、日米両国が締結した二国間の条約であります。そして、国連憲章は、東側諸国を含む世界の大半の国々が締結した多国間条約でございます。したがいまして、外為法あるいは安保条約、国連憲章のいずれも、紛争の危険等のない平穏な状況をあらわす「国際的な平和及び安全の維持」という文言を用いております。制定主体の違いを反映して、外為法は西側自由主義諸国の一員たる我が国の立場から、日米安保条約は我が国と米国が共有することのできる安全保障の立場から、また国連憲章は、東西の区別なく世界のほとんどの国が共有することのできる立場からとらえておるわけであります。我が国は西側自由主義諸国の一員でございますから、その立場を踏まえて、共産圏に対して戦略物資及び技術を無制限輸出することは西側自由主義諸国の安全保障を脅かしかねず、国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなります。このような状況におきまして、我が国対外取引の正常な発展、そして我が国経済の健全な発展を期す上で支障があると考えまして、外為法に基づく規制を行っているところでございます。
  390. 松本善明

    松本(善)委員 今の答弁は、私の言ったことをかえって逆に論証するような結果になったと私は思います。安全保障上の立場から再々説明をされましたが、これは必ずこの件についての裁判が起こったときは問題になるということを言っておきましょう。  それで大臣に伺いたいのですが、私は先ほど申しましたように、貿易をやっている人たちから本当に困るということを言われてきております。新聞報道によりましても、対ソ輸出は二、三割減するだろう、場合によっては社会主義圏貿易が全面縮小になるだろう。それから、ソ連東欧貿易会、この会長は経団連の副会長ですね。これは、恐らく社会主義国の市場はヨーロッパに奪われるだろうということを言ってますよ。ココムを論ずる人は、右手のむちで社会主義国を打っているように左手のむちで同盟国を打っていると。日本はまさにそのとおりになっている。これは、日本貿易としては本当に重大なことだ。これを厳しくやっていけば、ソ連側ももう既に三菱商事の駐在員の退去勧告がありましたが、これが広がる心配もソ連に駐在している商社の中では起こっております。本当に重大な事態になりかねない。一体、こういうふうに東側貿易を縮小していっていいと思っているのか。それから、一体これから日本貿易というのをどうするつもりなのか。大臣見解を伺いたいと思います。
  391. 田村元

    田村国務大臣 たまたま外為法違反そうしてああいう刑事事件が起こったわけでございますが、企業法律を守れば、私は現に守っておると思うのですが、守っておれば別に減るということもありますまいし、おびえることもないと思います。でございますから、私はそこまで企業すべてが悪質だと思っておりませんから、東欧貿易も決してそんなに悲観的に見る必要はないというふうに思っております。
  392. 松本善明

    松本(善)委員 それは通産大臣答弁と思えないですよ。実際には冷え込んできてしまって、もう意欲を失ってしまっている。キャンセルも起こって、中国関係十八億ドルキャンセルになっているということでしょう。それは現実を見ないも甚だしいですよ。  通産大臣は、ほかの委員会で途上国へ目を向けるということを言われたようですね、私、議事銀で拝見しましたけれども。だけれども、これから貿易はどうなりますか。対米依存が四割になっている。だからココムを守らなくちゃいかぬ。まして、この調子でいったらますますアメリカに輸出をしていかなければ輸出できなくなりますよ。途上国へ目を向けるなんて言ったって、これは累積債務がいっぱいでしょう。新興国から輸入も来るでしょう。そんな簡単にいくわけがない。ますますアメリカとの貿易摩擦も激しくならざるを得ない。社会主義国との貿易は切れていくという関係が現実に出てきているのです。貿易を預かる大臣としてまことに頼りない。大変失礼かもしれないけれども、もうちょっとまともな答弁が出てくるかと思いましたけれども、それでは日本貿易の将来は暗たんたるものですよ。御答弁をいただきたいと思います。
  393. 田村元

    田村国務大臣 松本さんと私とは立場が違います、考え方が違いますから、以前から仲よくお互いにおつき合いは願っておりますけれども、この問題だけはお互いにやはり割り切った物の言い方をしなきゃしょうがないと思うのです。我が国は西側陣営の主要な一員でありますから、当然、我が国も参加しておりますココムの参加十六カ国との同調というものはしなきゃならぬ、守るべきものは守らなきゃならないと思うのです。  それはそれとして、シュミットも指摘しておりますように、きょうも午前中ちょっと御答弁申し上げたのですが、日本貿易というものが今後、今のままでいいんだろうかということを私は問題提起したわけです。例えば同じ黒字国である西ドイツは、ECという大きなマーケットを持っております。アメリカに対する依存度というものはわずか一〇%そこそこであります。ところが、日本は対米、つまりアメリカに輸出するという意味における依存度は四〇%近くあります。輸入の方は二〇%そこそこかもしれませんけれども、非常に依存度が高い。例えば貿易総量を言いましても、日本とアメリカは千百億ドルぐらい、アメリカとECは千三百億ドルぐらい、そして日本とECはわずか五百億ドル弱であります。でございますから、当然、日本として貿易面で余りにも偏った対米依存という形から徐々に脱却して、そして日本の近隣諸国との貿易を盛んにしていく。一次産品の低落で困り果てておるASEAN諸国に対してニューAIDプラン等で御協力を申し上げ、こういう国々が輸出志向型の産業を興していくことを我々もお手伝いを申し上げる。そしてまた、発展途上国に対して黒字の還流もすることによって、日本はアメリカ一極に過重な依存をすることから、アメリカ、EC、特にこのアジアという大きな極というものを大切にする必要があるということを申し上げたのでございまして、これはココムとはちょっと関係がございません。
  394. 松本善明

    松本(善)委員 やはりそうは簡単にいかないのですよ。立場は違うけれども、あなたはお読みになったかどうかわかりませんが、日本経済新聞に欧州編集総局の綿集部長が書いています。このままいったら、アメリカの第五十一番目の州に組み入れられる覚悟をする必要があるということまで書いています。これは立場の違いじゃないのですよ。日本貿易をどう真剣に考えるかという問題なんです。  私はそれだけ指摘をして、もう一つ、あなたが再々、ソ連の原潜の静粛化問題と例の東芝機械との因果関係の問題、口が裂けても言えないということを答弁されていますが、ジェーン年鑑の最新号で、ソ連の原潜は非常に進んでいてスクリューの問題じゃないんだということが言われていますね。私はこの原文をイギリスから取り寄せましたけれども、そういうことであります。この編集長のジョン・ムーアさんが読売新聞と会見したのでは、もう既にすべての設計作業はもっとうんと早い時期にソ連の原潜に関しては完了していたので、この東芝機械の問題は最新型のソ連潜水艦に大きな影響を直接及ぼしたと思えない、こういうふうに言っています。確かに、スクリューを使わない電磁流体力学推進の原潜が登場する、あるいは使われている、これは全然スクリューの問題なんかじゃないというのです。これは通産大臣が、それは嫌疑濃厚で聞いてきた、口が裂けても言えないと言っても、国民は何も知らぬ。要するに私を信頼しろ、言うならば知らしむべからず寄らしむべしというやり方ですね。それは到底通用しないということになってきていますが、このことについての見解を一言聞いておきたいと思います。
  395. 田村元

    田村国務大臣 この東芝機械のココム違反事件とソ連潜水艦のスクリュー音減音との因果関係につきましては、具体的な証拠、エビデンスは入手しておりませんが、因果関係に関する嫌疑は濃厚ということであります。これは政府の統一見解でもございます。  先般、訪米しました際にも、多数のアメリカの政府高官との会談、また事務レベルでの各種の情報交換を通じて、嫌疑は濃厚という心証を得ております。ただ、具体的な点につきましては、軍事機密に属する点が多うございますので、これはなかなか十分な説明を得られるようなものではありません。嫌疑濃厚との心証を得ましたけれども、それ以上は率直に言って言いようがないというのが偽らざる気持ちでございます。いずれにしましても、本件につきましては、我が国として調査を行った結果、本来輸出承認を要するプロペラ加工を行い得る高度な工作機械について、その性能等に関する偽った申告が行われたというところに大きな問題があったのではなかろうかと思います。  それはそれとして、先ほど来、奥野さんがこうおっしゃった、あるいは編集長がこう言ったとおっしゃいますけれども、奥野さんは立派な方ただし、私と非常に仲のいい隣県の人生の先輩でありますし、また編集長も立派な方でございましょうけれども、松本さんのこれについての意見をお聞かせいただくならですが、他の方々がこう言った、こう書いたということで決めつけられても僕も困るのです。あなたと一緒にチェコや東ドイツヘ旅行した際に、いろいろと御教示を賜ってあなたの人間性にも触れましたが、それはそれとして、率直に言って今の御質問に対してちょっとそれ以上答えようがない、ほとほと困惑いたしておるということでございます。
  396. 松本善明

    松本(善)委員 時間が来ましたので終わりますけれども、私は、あなたと同じ立場に立っている人もこう考えているよということを言ってあなたに質問をしたわけでありまして、私の意見は、ワルシャワ条約機構も軍事同盟を解消すべきだということを最近盛んに言っております。ワルシャワ条約機構も含めまして軍事同盟を解消して、ココムは脱退する、そして自由に貿易をする、憲法の精神でいけば日本はそういうふうに進むべきだということが私の意見だということを指摘をいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  397. 田村元

    田村国務大臣 さっき松本さんから、松本さんのお話ではありませんで編集長さんのお話ですから特に申し上げることもないかもしれませんが、日本はアメリカの州になるんじゃないかというようなことを言っておる者もあるということですが、そんなばかなことはあり得ることではないのです。  それから、これは特に申し上げたいのですが、日本がアメリカにおびえておるとおっしゃいますけれども、逆なんです。アメリカが日本におびえて、そして日本企業にやられてやられて向こうも往生しておるというようなこともまた事実あるのです。ですから、もっとお互いに我が国に対して自信を持ちましょう。私はそれを言いたいのです。
  398. 佐藤信二

    佐藤委員長 田原隆君。
  399. 田原隆

    ○田原委員 今回の東芝機械外国為替及び外国貿易管理法に違反した不正輸出事件は、我が国を含む西側自由主義陣営の安全保障に重大な影響を及ぼすということで、極めて深刻な問題であると私は認識しております。これによりまして我が国の国際的信用が著しく損なわれたことは、まことに残念というほかはありません。  田村通産大臣には、今回の事件の後直ちに、一方において外為法改正に着手し、審査体制の充実等の措置を素早く指示されて、その後、他方において、アメリカを初めとする国際世論に対してはいわば火消し役をみずから買って出られ、直ちに訪米するなど適切な対応に努められたことを、私は高く評価するものであります。田村大臣の国内における政治感覚の抜群さは皆さん御承知のとおりでありますが、対外的に見てもこういう対応がされて、内政のみならず外政にも強い通産大臣であるということが認識されたことは、自由民主党としても心強い限りであるし、通産省の役人としても、今苦労に苦労を重ねながらこの問題に対処しておりますけれども、半面非常に精力的にやっている源泉は大臣の姿勢にあると私は思うわけであります。  しかしながら、今回の事件を冷静に振り返ってみますと、国際社会において我が国が置かれている立場についての関係者の基本的認識について、反省してみる必要があるのではないかと思われます。すなわち、戦後、何もなかった焼け跡の野原の国から今日のような我が国に成長し、今や西側自由主義諸国の中で米国に並ぶほどの経済力と高度技術力を保有する国に至った我が国としては、国際社会において相応の役割と責任が期待されているということは自明の理であります。我が国企業政府は、単に国内での生活水準向上努力にとどまらず、広く世界に目を向けて、世界の中の日本、国際国家日本として我が因経済の規模拡大と技術水準向上に見合うだけの十分な自覚と責任を持つ必要性を私は痛感しております。こうした基本認識のもとに、幾つかの点について大臣及び関係局長お尋ねしたいと思います。ただ、既に大勢の方々から質疑がありまして、重複を避けて気がついた点だけをお伺いしたいと思いますので、ひとつ簡単にお答えいただきたいと思います。  まず大臣にお願いしたいのですが、今回の事件に対するアメリカ議会などの受けとめ方はどんなものであったか。また、特に外為法改正の帰趨いかんとアメリカ議会の反応ぶりの関係について今後どのような見通しであるか、感触をお持ちでありましたら最近のお考えを聞かしていただきたい。
  400. 田村元

    田村国務大臣 アメリカの議会また行政府の要人は、この事件が西側全体の安全保障について大きな影響を生じかねない重大問題である、そういう危惧の念を持って対応しておるものと思います。通産省としましても同じような認識のもとに、御審議いただいておる外為法改正を初めとして、このような事件の再発防止のためのもろもろの措置を講じて、その実現に鋭意努力をしておるところでございます。  アメリカの行政府は、先般もスマートが来ましたけれども、非常に日本政府の対応ぶりを高く評価しております。それから、実はきょう来た手紙ですけれども、ブラウン代理商務長官から私に手紙が来まして、大変評価をした手紙でございます。東芝事件に引き続いて日本政府によりとられた処置に関することを評価する、貴内閣の承認した不正輸出に対する刑事罰の強化及び外為法のより一層の調整は積極的な処置であると自分らも思う、省庁間の協調による審査輸出許可及び政策過程に専門的意見を加えることができるということには全く同感である、この問題についてスマート次官が通産省のオフィシャルと話をしたというようなことから、またフリーデンバーグ次官補がやってくるというようなことやら、いろいろと書いてありますが、非常に高く評価しておることは事実でございます。我が国とアメリカの行政府との共通した意見は、やはり議会において高まりつつある保護主義についてこれを阻止するということと、それからいま一つは、ココムというものを第三国という関係で見て、これに制裁を加えるということはとんでもないことだ、国内法で処理すべきものである、これも日米の両政府意見が一致しております。  ただ問題は、米議会は非常に厳しいものがございまして、上院も厳しゅうございますけれども、下院が特に厳しい。でございますから、何とかこの外為法改正を軸としてもろもろの対策を早く講じて、そして米議会のいら立ちというものをとにもかくにも抑えることが先決であろう。これをやってうまくいくかとよく言われますが、アメリカの議会のことですから私にはわかりません。ただ、私が向こうへ行ったり、また向こうの連中と話をしたりして言えますことは、もし我々の対応がそこを来したならば、間違いなく厳しい事態になるであろうということだけは言えるんじゃないでしょうか。
  401. 田原隆

    ○田原委員 我が国としては、各方面の意見を軽視してもいけないし、また逆にいたずらに迎合してもいけないし、適正に対処方針を定めて、今回のような事件の再発を防止する努力をしていかなければなりません。御承知のとおり、我が国自由貿易の上に成り立っているわけでありますから、安全保障の重要性に乗じて、原則として自由化の方向にある対外取引を必要以上に規制強化することは適切ではないと思います。  大臣に、今回の法改正の考え方といいますか、もっと言えば、要するに今回の法改正自由貿易の流れに逆行するものではないという大臣の決意を、一言伺いたいと思うわけであります。
  402. 佐藤信二

    佐藤委員長 簡潔にお願いします。
  403. 田村元

    田村国務大臣 率直に言って、逆行するものではございません。再発防止のための罰則行政制裁強化しようとするものでありまして、規制対象貨物及び技術の範囲を拡大するというものではございませんから、本質に触れたものではございません。
  404. 田原隆

    ○田原委員 大臣お忙しいようでございますから、もう一問伺います。  先ほどからも出ておりましたけれども、私もこの前からある場所で申しましたけれども、行革というのは民間の協力がなければできない。したがって、今度のような事件の善後策として法改正をし、体制を強化するといって人間を倍にしても、何十万件とあるものを審査するのは物理的に、本当にだます気でやったらこれはどうしようもないわけでありますが、その辺のモラルのことにつきまして、大臣もいろいろ手を打たれて指示されておりますが、これは継続的なものでなければいかぬ。  それについてどういうふうに事務当局に指示されるかという決意と、それからもう一つ、責任のとり方についていろいろ議論が出ましたけれども、私は日本的責任のとり方とアメリカ的とり方というか西欧のとり方というか、随分違いがあると思いますが、日本日本的なとり方をするのは、それはいいかもしれません。例えば東芝の関係の社長がやめられたとかいうようなことで、それはそれなりにいいのかもしれませんが、私はそれで済む問題ではないと思いますし、また大臣についてもいろいろ言われる人がおりますけれども、大臣がここまでつらい思いをしながら一生懸命やってこられたことは評価しなければならないし、今後とも始末をきちっとつけて、早期に体制がしかれるようにひとつお願いしたいと思うのでありますが、その辺の決意を大臣にお聞きしたいと思います。
  405. 田村元

    田村国務大臣 もう既に何回も事務方も御答弁申し上げておりますが、六月三十日の閣議で総理から私は指示を受けて、たしか七月二日と七月七日だったと思いますが、各業界の代表を呼んで私からいろいろとモラルの問題等々お願いをいたしました。百四十九団体すべてが、もう対応策を通産省へ出しております。  率直に言いまして、半導体問題につきましてもそうですけれども、日本企業がもうけんかなばかり考えてはいかぬが、企業がもうけに行くのは当たり前じゃないかと言われればそれまでですけれども、特にあの大企業シェア拡大主義というのはいかぬです。あれで外国に迷惑かけるところか、外国に迷惑かけることはこっちへ返ってくるのです。ですから、私はその意味では率直に、通産省がこれからしばしばあらゆる機会にモラルを守ってもらうことをお願いする、あるいは指導するという必要があろうかと思います。
  406. 田原隆

    ○田原委員 政府委員の方にお伺いしますけれども、新聞でつい最近見ましたけれども、ソ連外務省からモスクワの防衛駐在官ほか一名の出国要請がなされております。ソ連政府の意図についてもいろいろ言われておるような気がします。新聞の論評もその辺がうかがわれますが、そうした環境のもとにあって、今回のココム規制強化が今後、対共産圏貿易を萎縮させることはないかどうか。既に産業界には対共産圏貿易を手控える動きも出ていると聞いておりますけれども、実情はどうなんですか。
  407. 畠山襄

    畠山政府委員 共産圏貿易の実情でございますが、一九八五年をピークに、六年が減って、そして七年、これはまだ上半期しか出ておりませんが、やや減っているという状況でございます。ただ、この理由は、中国が八五年に非常な成長を遂げて貿易を拡大いたしまして、そしてその反省のもとに八六年、七年と調整をしてきたということが大きな理由でございまして、中国を除きますとそこそこ伸びている、ないしは横ばいというような状況でございます。  ただ、確かに現在、このような事件が起きましたものですから、私どもの審査が慎重になっておりまして、何度か御説明申し上げましたように、私どもの一件当たりの審査期間が三カ月とかそういうふうに長くなっておりますもので、今後その影響が出てきてしまうといけませんので、そういうことのないよう人員を手当てし、迅速な審査ができるように努めてまいりたいと思っております。
  408. 田原隆

    ○田原委員 次に、先ほどモラルの話をしましたが、それにも関係ある問題ですけれども、自主規制したりすることが非常に大事でありますが、自主規制するためにはココム規制の内容というのがはっきりしなければならない。ところが、どうも不明確であるという声が聞こえております。したがって、自主判断がしにくいので自主規制ができないという声がありますけれども、今度の改正を機に、政令その他の整備に当たりいろいろ指針をつくるなど、具体的に内容がよくわかるようにやっていただきたいと思うのですが、その辺の改善というのは相当考えておられるかどうか。
  409. 畠山襄

    畠山政府委員 ココムの規制の内容は、法律に基づきまして政令品目を決めておりますので、一応明確だとは思いますが、御指摘は、例えば俗称行政例外の範囲がはっきりしないとか、あるいは先ほども御議論がありましたように、学者の方がどこまで技術を教えることができるのかとか、いろいろ疑問の点も指摘いただいておりますので、そういったことについてできるだけ明確になりますように、参加各国とも十分前向きに話し合って、もっと国民にわかりやすい内容にするように、通達その他で心がけるように検討をしてみたいと思っています。
  410. 田原隆

    ○田原委員 次に伺いますけれども、今度の事件を見ておりまして、東芝機械は明確な虚偽の申請をしたということで行政制裁等を受けておりますけれども、名義人であった商社は何となく余りはっきりした制裁を受けてない。名義を貸しただけの企業あるいは輸出許可申請手続のみをしたと主張するような企業に対しては、今後も放置するつもりなのか。制裁の対象とすべきではないかと私は思うのですが、その点どうですか。  例えば、商社が名義を貸したとか自分は名義人だという場合、はっきり言って伊藤忠ですが、伊藤忠は東芝機械とともにソ連に工作機械を売る契約にサインしておるわけであります、そのサインの写しを見ましたけれども。にもかかわらず、伊藤忠に対する措置は法律に基づかない、言うならば行政指導による制裁、三カ月の輸出停止ということにとどまっております。私が経験した建設業などにおいては、私が建設業をやったわけじゃないですけれども、監督したことがあるんですが、元請と下請の関係はもっと厳しいものがありまして、下請がちょっとした失敗をしても元請がほとんど全責任をとって指名停止などの措置を受ける。こういうことに比べて、今回の措置は我々としては納得いかないような気がするのです。これはいろいろ業界の慣例とかルールとかあるかもしれませんけれども、やはり納得いかしてもらいたいし、今後そういう名義人におれは知らなかったと言わせないような措置をやはり考えてもらいたい。それは法律で明文をもって制定できなくても、そういう仕組みをつくり、運用してもらいたい、こう思うわけでありますが、貿易局長いかがですか。
  411. 畠山襄

    畠山政府委員 伊藤忠商事につきましては、確かにソ連との間の契約にサインをいたしているわけでございますが、スペックなどの技術的事項については東芝機械が全責任を負うというふうに当該契約でなっておるということが一つでございますし、また私どもへの非該当証明の申請者にもなっておるわけでございますけれども、ただ問題の、九軸じゃなくて二軸だと書いてきたのは、委細別紙のとおりと書いてありまして、その別紙の方の東芝機械であったというようなことがございました。  そこで、仮に伊藤忠商事が情を知りながら不正輸出に関与したのでございますれば外為法五十三条の処分を行えるものでございまして、当省でも実はそういう疑いを持って徹底的に調査をいたしましたが、その確証を得られなかったわけでございます。ちなみに、捜査司法当局も同様な御関心から調査したわけでございますけれども、これも送検をできなかったものと承知をいたしております。  ただ、御指摘のように、商社は輸出関連法規を知悉しているべきものでございまして、その遵守には特に注意を払うべきものだと考えておりまして、伊藤忠が自己の契約等について注意をせず不正を見逃したというか、一緒になったというようなことは極めて遺憾でございますので、その責任を明らかにするために三カ月間共産圏向け工作機械輸出を行わないよう文書で指示をするとともに、社内体制の改善等も指示したところでございます。で、御指摘のように、今後こういうことが起こりませんように、この伊藤忠を含めまして他の大手商社に対しましても、自己の契約については責任を持って社内における審査を徹底すること、またそのための体制を整備することについて文書で指示をいたしておりまして、その具体的な改善計画の報告も受けているところでございます。
  412. 田原隆

    ○田原委員 今後商社から、名義人から知らなかったと言われないように、繰り返しますけれども、そういう運用上の仕組みをひとつ考えていただきたいと思うわけであります。  それから、先ほども大臣にお聞きしましたけれども、責任のとり方の違いというのはいろいろあるのですけれども、東芝機械の違反事件に関して、これと法人格が全く異なる東芝の会長、社長が辞任した。これはひょっとしたら通産省が干渉したのかあるいは事前に相談を受けたのか、そういうことがあったのかないのかちょっとお伺いしたい。
  413. 児玉幸治

    児玉(幸)政府委員 東芝の会長、社長は七月の一日に辞任をされたわけでございますが、たまたまその辞任の報告ということで七月一日の午後、大臣室に二人で報告に見えたわけでありまして、私もその場にいたわけでございます。  二人の報告は、事柄の重大さにかんがみまして、確かに東芝機械と東芝というものは全く別な組織でもありますし、株は五〇%持っておるけれども経営は東芝機械自身が実は一部上場会社でもありますし、すべて自分たちで取り仕切ったということでありますけれども、やはりグループ全体の総帥という立場から見ますと、企業の最高責任者としての責任を感じてこの際辞任するという報告があったわけでございます。既に取締役会において辞任の決定が行われた後で報告に見えたわけでございますけれども、私どもの方から見ますと、そういうことをされる前に、グループの総帥であればグループ全体の体制を引き締めるために幾らでもやることがあるのではないかということで、実はその場で意見も申し上げてみたわけでございますけれども、既に話は決定済み、なおかつあらゆることを考えたけれどもこれしかないという報告でございました。したがいまして、御懸念のような事実は全くございません。
  414. 田原隆

    ○田原委員 それを聞いて安心しました。ただ、責任のとり方というものは非常に大事でありますから、今後他の企業等についてもそういう目で見て指導していただかなければなりませんし、また役所の方も、いろいろ声はあっても歯を食いしばって最後まで頑張っていただきたい。そういう意味から見て、通産省関係局長を初め事務官は、今回のあの事件以来感心するぐらい一生懸命になっておるということは、私は高く評価する次第であります。  次に、条文の中に外務大臣との意見交換規定がありましたけれども、これは我が国の平和及び安全の維持に責任を有するという意味であろうと思って、前からある外為法の文章との関連で許されたのかもしれませんが、どうして防衛庁が入らなかったのか、その辺のことをちょっと伺いたいと思います。
  415. 畠山襄

    畠山政府委員 改正法の六十九条の四は、外務大臣が国際情勢の総合的な分析、それからこれに必要な情報を収集する立場にあることから、通産大臣との間で意見の交換を行う旨の規定を特に設けて、連絡調整の一層の緊密化を図ることとしたものでございます。ただ、この規定は、他の国務大臣がその所掌に基づきまして通産大臣意見の交換を行うことを何ら排除するものではございませんで、例えば防衛庁にいたしましても、同庁設置法の六条十一号に基づきまして通産大臣意見を述べることが可能であることは、言うまでもないところでございます。
  416. 田原隆

    ○田原委員 時間が参りましたので、最後に一つだけ伺います。  今回の法改正は、私はずっとかかわってきてぜひ必要なものであったと思っているし、その内容も現時点でほぼ適正であると思っておりますが、世の中には、これで自由な貿易に阻害要因がふえるのではないかというような誤解を持つ人もいるわけであります。したがって、今後十分なPRが必要であろうと思うのです。これは組織的に十分にやってもらわなければならぬと思うし、また、のど元過ぎれば熱さを忘れるという国民性もありますから、これは制度的にじっくりと構えてやっていただきたいと思うのですが、御答弁願います。
  417. 畠山襄

    畠山政府委員 御指摘の点はまことにごもっともでございまして、今後、法律なり政令の内容を施行前に十分周知徹底するよう努力をしてまいりたいと思います。具体的には法律の説明会というようなものもございますので、そういうのを業界団体等も活用いたしまして頻繁に開催する等組織的な努力を、仮にこの改正案を認めていただきますれば早急に実施をいたしたいと考えております。
  418. 田原隆

    ○田原委員 最後に、繰り返しになりますけれども、だまそうと積極的に思う人はだまされる側はなかなか発見しにくいわけでございまして、これが事務の阻害に及ぼす影響は非常に大きいし、かつ発見されてからのごたごたを考えると大変でありますから、モラルという点、それからそういうものに対する対策をどういうふうにやれば、言うならば人間工学的にうまくいくかということ等も御検討いただいて、今後進めていただきたいと思います。  終わります。
  419. 佐藤信二

    佐藤委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。  次回は、明二十六日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十六分散会