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1987-08-21 第109回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年八月二十一日(金曜日)     午前九時三十一分開議 出席委員   委員長 佐藤 信二君    理事 臼井日出男君 理事 奥田 幹生君    理事 加藤 卓二君 理事 田原  隆君    理事 与謝野 馨君 理事 奥野 一雄君    理事 二見 伸明君       麻生 太郎君    甘利  明君       石渡 照久君    尾身 幸次君       大坪健一郎君    奥田 敬和君       梶山 静六君    粕谷  茂君       鴻池 祥肇君    玉生 孝久君       虎島 和夫君    中山 太郎君       額賀福志郎君    野中 英二君       二田 孝治君    松本 十郎君       緒方 克陽君    城地 豊司君       関山 信之君    浜西 鉄雄君       水田  稔君    長田 武士君       権藤 恒夫君    森本 晃司君       薮仲 義彦君    米沢  隆君       工藤  晃君    藤原ひろ子君  出席国務大臣         通商産業大臣  田村  元君  出席政府委員         内閣法制局第四         部長      大出 峻郎君         通商産業大臣官         房長      棚橋 祐治君         通商産業大臣官         房総務審議官  山本 幸助君         通商産業大臣官         房審議官    深沢  亘君         通商産業省通商         政策局次官   吉田 文毅君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         通商産業省機械         情報産業局長  児玉 幸治君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      赤尾 信敏君         外務大臣官房外         務参事官    野村 一成君         外務省国際連合         局国際政策課長 天江喜七郎君         商工委員会調査         室長      倉田 雅広君     ――――――――――――― 委員の異動 八月十八日  辞任          補欠選任   甘利  明君      河本 敏夫君 同日  辞任          補欠選任   河本 敏夫君      甘利  明君 同月二十日  辞任          補欠選任   森本 晃司君      井上 和久君 同日  辞任          補欠選任   井上 和久君      森本 晃司君 同月二十一日  辞任          補欠選任   小川  元君      二田 孝治君   尾身 幸次君      虎島 和夫君   大西 正男君      鴻池 祥肇君 同日  辞任          補欠選任   鴻池 祥肇君      大西 正男君   虎島 和夫君      尾身 幸次君   二田 孝治君      小川  元君     ――――――――――――― 八月二十日  外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する  法律案内閣提出第八号) 七月三十日  企業人材資源専任制度法制化に関する請願  (嶋崎譲紹介)(第六〇号)  産業技術開発評価体制に呼応する開発工学技術  者に関する請願嶋崎譲紹介)(第六一号) 八月七日  円高不況対策に関する請願園田博之紹介)  (第三八六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 七月三十一日  中小企業経営安定施策の充実に関する陳情書  外一件  (第二八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する  法律案内閣提出第八号)      ――――◇―――――
  2. 佐藤信二

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、趣旨説明を聴取いたします。田村通商産業大臣。     —————————————  外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する   法律案    〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 田村元

    田村国務大臣 外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  今回の東芝機械外国為替及び外国貿易管理法違反した不正輸出事件は、我が国を含む西側自由主義陣営安全保障に重大な影響を及ぼすおそれのあるものであり、極めて深刻な問題であります。これにより、我が国国際的信用が著しく損なわれたことは、まことに残念というほかありません。  このように、我が国産業及び技術発展並びに国際社会において我が国が担うべき責任増大等状況のもとで、国際的な平和及び安全の維持妨げると認められる違法な貨物輸出及び技術提供が、我が国対外取引の正常な発展及び我が国経済の健全な発展を阻害するおそれが強まってきております。  このような状況のもと、我が国といたしましては、今回の事件重大性を深く認識し、このような事件再発防止のため、あらゆる角度から対策を講ずることが必要であります。この一環として、国際的な平和及び安全の維持妨げると認められる違法な貨物輸出及び技術提供に係る罰則及び制裁強化等措置を講ずる必要があると考えられます。  このような要請に対応するため、今般、本法律案を提案した次第であります。  次に、この法律案要旨を御説明申し上げます。  まず、国際的な平和及び安全の維持関連のある特定技術提供等役務取引については、従来から通商産業大臣許可を受けなければならないこととされておりましたが、今般、これを特掲し、その規制趣旨をさらに明確化することとしております。  第二に、通商産業大臣は、許可を受けずに特定技術特定地域において提供する取引を行った者等に対して、三年以内の期間を限り、一定の役務取引貨物輸出等を禁止することができることとしております。  第三に、国際的な平和及び安全の維持関連のある特定貨物輸出について、従来から役務取引に用いられていた表現と同じ表現をもってこれを特掲し、通商産業大臣許可を受けなければならないものとすることにより、その規制趣旨を明確化することとしております。  第四に、通商産業大臣は、許可を受けずにこれらの貨物特定地域に向けて輸出した者に対して、三年以内の期間を限り、貨物輸出及び特定技術提供する取引を禁止することができることとしております。  第五に、この法律の施行に必要な限度において、主務官庁の職員が立ち入ることができる場所に、この法律の適用を受ける取引を行うことを営業とする者の工場を追加することとしております。  第六に、通商産業大臣は、国際的な平和及び安全の維持関連のある貨物輸出及び技術提供について、特に必要があると認めるときは、外務大臣意見を求めることができることとするとともに、外務大臣は、国際的な平和及び安全の維持のため特に必要があると認めるときは、通商産業大臣意見を述べることができることとしております。  第七に、無許可特定技術特定地域において提供する取引を行った者及び無許可特定貨物特定地域に向けて輸出した者は、五年以下の懲役または二百万円以下もしくは目的物の価格の五倍以下の罰金に処することとして、罰則強化することとしております。また、無許可特定貨物特定地域に向けて輸出する者は、未遂をも罰することとしております。  なお、この罰則強化の結果、時効期間は五年に延長されます。  以上が、この法律案提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 佐藤信二

    佐藤委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 佐藤信二

    佐藤委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥野一雄君。
  6. 奥野一雄

    奥野(一)委員 最初に、今さら私から申し上げるまでもございませんが、憲法九十九条というのがございます。既に御案内のとおり、これは「憲法尊重擁護義務」、こうなっておりまして、「天皇又は摂政及び国務大臣国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」こういう規定があるわけでございますが、通産大臣あるいは通産省の皆さん方は当然この憲法九十九条については尊重し、ここに書かれているように憲法を擁護する義務、こういうことについてはそのとおりお考えになっていると思うのでありますが、まずいかがでしょう。
  7. 畠山襄

    畠山政府委員 御指摘のとおり、憲法九十九条についてはそのとおりに厳密に遵守していかなくちゃいかぬというふうに考えております。
  8. 奥野一雄

    奥野(一)委員 厳密にその点については憲法遵守というようなことで今お答えがございました。私は大変不思議に思っているのでありますけれども憲法というのは我が国最高法律でありまして、ところがその憲法精神自体というものが時の政府解釈によって、私どもから言わせますというと、これは非常に拡大解釈というのでしょうか、そういう形の中で憲法精神というものが踏みにじられつつあるのではないかという危惧を、実は一つは持っているわけです。  今度の外為法違反とかなんかということになりますと、世の中が騒然とするくらいとにかく連日マスコミなどでも報道されますし、また政府自体も今度の外為法改正やなんかの一連の動きをずっと見ておりましても、これは通産大臣アメリカヘ飛んでいく、そういうようなことをしまして、外為法違反ということについては再発を防止しなければならない。非常に積極的な行動をとられるわけですけれども憲法精神そのものをそれではどこまで真剣に守ろうとしているのか、私は大変不思議に思っているわけでございます。  私は、単純に憲法というものを見ておりましても、憲法精神、それがほとんど前文の中に書かれているわけでありますけれども、この憲法前文精神というものを見て、それではこの精神というものは一体、特定の国を差別していいという解釈はこの中から成り立ってくるのかどうか、大変疑問に思っているわけでございます。そこで、我が国憲法前文、これは端的に言って特定の国を差別してよろしい、こういう解釈が成り立つかどうか、成り立つとすればどこの条文でそういうものが成り立つのか、ひとつお示しをいただきたい。
  9. 畠山襄

    畠山政府委員 憲法前文で御指摘部分関係がありますのは、恐らく「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」というあたりであろうかと思いますが、私ども、御質問とぴったり合っているかどうかは別にいたしまして、仮想敵国を持つというようなことは許されない、また持つつもりもないというふうに考えております。
  10. 奥野一雄

    奥野(一)委員 今のお答えでは私はちょっとぴんとこないのですけれども、こういうふうに理解していいですか。日本国憲法精神というものは、特定の国に対して差別的なことをやるという意思は全くない、これが憲法精神だ、そういうお答えだというふうに理解していいですか。
  11. 畠山襄

    畠山政府委員 一般的に、例えばある国と通商航海条約を結ぶといいます場合に最恵国待遇を与える、あるいは内国民待遇を与えるというようなことがございます。それで、それを与えるまでに至ってないということもございます。その二つが差別というのかどうか、ちょっとよくわかりませんけれども、国と国との関係の間にはおのずから濃淡というものがあるということは事実でございまして、そういう濃淡があることまでこの憲法前文が禁止しているというふうには、私どもとしては考えておりません。
  12. 奥野一雄

    奥野(一)委員 人間同士でも、これは多少好き嫌いというのはありますよ。しかし、好き嫌いはあるけれども、それは差別ということにつながるなんということは今許されていないわけですね。  私は、この憲法が制定された時期、戦前戦後をずっと経験してきておりますから、どういう経過でこの憲法がつくられてきたか。一部にはアメリカから押しつけだとかなんとかというようなことを言われておりますけれども、あの悲惨な戦争状態を経験をしてきた一般庶民——それは高級な方々はあの戦争の中でどれだけの苦痛を味わったか知りませんけれども、我々のような一般庶民というのは、一番苦しい思いをしてこの戦前戦後というものを過ごしてきている。そういうような人たちから見ますと、この憲法精神というのは、今専守防衛ですか、そんなことは許されるんだということで自衛のためなら軍隊を持てるなんということに、我々から言わせますと拡大解釈というような形で進んできているのですけれども、これがつくられた当時はもう戦争というのは全くやめた、やめなきゃだめだ、軍隊というのは一切持たない、当然だというような形でこの憲法というものが生まれてきているという理解を、私は今日までしてきているわけですよ。ところが、先ほど言いましたように、歴代の内閣の、我々から言わせるならば拡大解釈のような形でそれがどんどん形骸化されてきているというふうに思っているわけです。  しかし、本来の憲法精神というものを見ますというと、この中にも書いてありますとおり、「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、」これが国際協調なり国際平和の一つ精神だというふうに思うのですね。ですから今、それは国によって濃淡がある、そのことまでを禁止はしていないだろうと言われる意味は、私はある程度わかります。しかし、それは先ほど言ったように、人間的なつき合いの中でも好きな人間もあればあるいは嫌いな人間もある。しかし、そのことによって差別をしてはならないというふうに私は思うのですね。それがこの憲法精神だと私は思っているのですよ。  しかし、今度のココム規制強化ということを一つ考えてみた場合には、この憲法国際平和主義なりあるいは国際協調主義だとか、あるいは我が国が戦後それではどういうような方針をとってきたのか。本会議なんかの答弁でも、西側陣営一員に立って、こういうようなことを言っております。しかし、政治部分では仮にそうであっても、経済部分ではいわゆる政経分離というような形の中で今日まで自由貿易活動というものをやってきたのではないだろうか、こう思っているんですね。このココム規制というものを強めていくということは、今まで我が国がとってきたそういう方針というものに一つは反していくんでないか、あるいは自由貿易原則というものからだんだん遠ざかっていくような形になっていくんではないか、こういうおそれを持っているわけですが、その点はいかがでしょう。
  13. 畠山襄

    畠山政府委員 ココムの申し合わせに基づきます外為法規制実施は、今御指摘部分にも若干ございましたように、我が国西側諸国一員としての責任を果たして、特に密接な関係のあるこれら西側諸国との貿易関係維持発展させていく上で不可欠だということで実施をしているわけでございまして、特定国を敵視というようなことではございませんので、先ほど来御指摘憲法原則にも反しているとは考えておりません。
  14. 奥野一雄

    奥野(一)委員 私は、それは違うと思いますね。憲法精神というものをもし本当に真剣に考えておられるんだったら、仮に西側陣営なら西側陣営にそれは立たれるということを肯定したといたしましても、だから対共産圏なら共産圏に関していろんな制限を加えていくということ、これは後でもまた触れますけれども、それは一つの線を共産圏諸国というのですか東側諸国というのですか、そういうものに引くということになる。それはやっぱりあくまでも差別的な扱いをしていくということにつながっていくと私は思うのですよ。例えば武器そのものということになれば、これまた後でやりますけれども、これはまた今我々の立場から言ってもちょっと考え方が違ってくる。しかし、実際にはココム規制強化ということは、これも後でだんだん触れていきますけれども、軍事に転用される可能性のあるものはすべて抑え込まれていくという可能性が出てきているわけですね。  そういうことになっていくというと、今日のような科学技術の発達をした世の中では、端的に言ったらほとんどそれは認めないという形につながっていく。だからそのことは、戦後今日まで、先ほども申し上げましたように、これは日本の中では大変な論争をやりながら政治面では西側陣営に立つという経過をたどってきておるわけですよ。六〇年安保とかいろんなものを通したりいろんなことをやってきて、そういうような形になっているわけですよ。しかしそういう立場の中でも、経済の面に関しては世界と平等につき合っていこう、こういう形で自由貿易原則というものを貫いてきておると私は思うのですよ。だから、そういうようなことにだんだん遠ざかっていくということになるわけでしょう、規制を強めていくということはならないですか。
  15. 畠山襄

    畠山政府委員 今回の外為法改正は、確かに規制を強めるという面がございますけれども、その内容行政制裁強化とそれから罰則強化ということでございまして、対象貨物なり対象技術なりの範囲を広げるということはございませんので、そういう意味では、適法な貿易をやっておられる限り介入がふえるとか自由貿易原則が損なわれるとか、そういうことはないというふうに考えさしていただいております。
  16. 奥野一雄

    奥野(一)委員 いや、ちょっと私が聞いていることに率直に答えていただいてないような感じがするわけです。私はまだ中身の問題について触れているわけではございません。先ほどから、憲法精神というものを土台にして物事を考えていった場合に、本来なら無差別世界各国と友好的につき合っていく、そのことが憲法前文に盛られている精神だ、こう考えているんですね。しかし、政治面とかなんかということになりますと今こういうような状況ですから、それを一遍に全部なくせなんて言ってもそんなことはできやしない。その経過というものは私もよく知っている。しかし、経済の面では何とかかんとか、多少の制限はあったにしても、今までは比較的日本の場合にはアメリカと違った立場をとりながら、そのことが一面においては東西緊張の緩和にも役立ってきておるのだろうと思うし、そういう扱い我が国はやってきた。しかしまた、東芝機械事件というものを契機にしてさらに規制を強めるという形になったわけでしょう、中身じゃないですよ。そういうことになってきたということは、憲法精神からさらにまた今踏み出しかけてきているのではないかという危惧を私は持っているんだということなんです。
  17. 畠山襄

    畠山政府委員 特定の国との間で緊密な関係がある、それから、他の特定の国との間でそれほど緊密な関係がないというような濃淡を持つことまで、憲法前文なり何なりが禁止しているというふうに私ども考えておりません。  それで、確かに御指摘のように経済の面では、政治の面以上にやや普遍的な経済原則に基づいてできるだけ自由にということでやってきたことは事実でございます。ただ、ココムに基づきます規制外為法によって行ってきておりますのもまた現実の姿でございまして、これは今始まった話でもございません。一九五二年から実施をいたしておるわけでございますから、そういった若干の制約のもとに経済の方もやってまいったという現実があるわけでございまして、それはまたそれとして御理解もいただきたいと考えておるわけでございます。
  18. 奥野一雄

    奥野(一)委員 ちょっとその辺のところは平行論議になりそうな気配でございますね。  私が先ほどから言っているのは、憲法精神というものを皆さん方外為法に熱意を入れるぐらいに真剣に——それじゃ憲法精神は何か。憲法というのは国の最高法律なんですから、すべてここから出発をしなければならないと思うのです。そうしたら、憲法九十九条に書いてあるように、常に行政に携わっている公務員皆さん方でも、我々の場合でもそうなんですけれども憲法精神がいかに生かされていくのか、そういうことをやらなければならない義務を持っているんだと思うのです。ところが実際には、端的に言ったらココム規制なんかは憲法前文に反するという認識を私は持っているわけです。だから、本来ならばできるだけそういうことのないような措置というものを考えながら行政だって進めていかなければならないのではないか、私はそう思っているのです。国と国とのつき合い濃淡だとかなんとかという問題ではないと思うのです。本当に憲法精神というものを考えていくならば、本来この種の法律というのは非常に疑義がある、まずそういうことを申し上げておきたいと思っているわけであります。この辺のところはちょっと意見が平行のようでございますから、次の方に進んでまいりたいと思っております。  多くの学者方々も、新聞紙上等ごらんになればおわかりのように、今回の外為法にいろいろな疑問を投げかけているわけです。まず私どもの見ている中では、学者先生方の中で、今度の外為法改正法理論上妥当だという意見を持っている方の論文というのは余り見たことがございません。ほとんどの先生方は、原則自由を理念としている外為法安全保障の見地から規制を持ち込むのは法理論上非常に大きな疑問があると言われているわけでございます。外為法そのものは、原則自由ということが一つ理念、これは第一条目的にはっきり書かれているわけです。一条目的には原則自由というふうに書かれて、もちろん例外というのは必ずあるわけでありますけれども原則自由という第一条目的を直さないでおいて、例外の方の規制というのですか、こっちの方に何か非常に大きな力を入れているというのは、皆さん方実際に仕事を担当されておって疑問がわかないのでしょうか。これはどうですか。
  19. 畠山襄

    畠山政府委員 一条目的を直してないわけでございますけれども、ただ、今度の改正は二十五条なり四十八条の改正が主でございます。二十五条の改正にいたしましても、今までも国際的な平和と安全の維持妨げになると認められるものについては主務大臣許可を受けなくてはいけないという形で、これは具体的にはココム関係の事項などを指しているわけでございますけれども、そういうものについて規制をするということが法文上明確に書いてあるわけでございます。今回、ココム関係のものなどを主といたしまして罰則強化するという必要性から、その部分、つまり国際的な平和と安全の維持妨げになるようなものというのを特記いたしまして、従来書いであったものを特別にその部分だけ取り出してまいりまして、その違反最高懲役五年としたというのが技術輸出に関する改正内容になっているわけでございます。  それから貨物につきましても、今までは一般的に書いてございましたけれども技術と同様に国際的な平和と安全の維持妨げになると認められるものとして政令で定めるもの、それに対する違反罰則強化する必要性から特記したわけでございます。そういう内容でございますので、従来も例えば技術輸出について書いであったことを今度そこに特掲をするということでございますから、特に目的の変更は必要がないというふうに判断したわけでございます。
  20. 奥野一雄

    奥野(一)委員 その辺はちょっと違うのじゃないでしょうか。前は技術関係ソフト関係、こういうものにつきまして平和・安全の維持ということになっておった、今度は貨物の方にそれが加わってきた、こういうことなんでしょう。貨物の方にもそれを適用するということになったわけでしょう。そうしたら、前よりも範囲が広くなったわけでしょう。違いますか。
  21. 畠山襄

    畠山政府委員 結論から申し上げますと、前よりも範囲が広くなったわけではございませんで、前は、具体的に申し上げますと、奥野委員十分御存じのことで恐縮でございますけれども、四十八条一項では「政令で定めるところにより、通商産業大臣の承認を受ける義務を課せられることがある。」というふうに書いてございまして、この政令が輸出貿易管理令でございました。この政令による制限は、例えば「外国貿易及び国民経済の健全な発展に必要な範囲をこえてはならない。」というふうに書いてありまして、逆に言えば、外国貿易及び国民経済の健全な発展に必要な範囲で最小限の制限を行ってもよろしいということであったわけでございます。この規定を根拠にココム規制、それからココムじゃない規制、例えば過当競争の防止とか需給調整とか、そういった規制もやってきたわけでございます。特にこれを区分しないでやれましたのは、ココム関係輸出貿易管理令の違反とそうじゃないものの違反罰則を同じにいたしておったものですから、一般的な条項でやっていたわけでございます。だから、御案内のように従来もやっておったわけでございます。それを今回は、ココム関係に関する外為法違反懲役五年以下ということで強化をいたしたいわけでございますので、そこでその部分特掲する言葉として、従来から技術の方に使われておった言葉を使わせていただいた。これは何も範囲を拡大するわけではございませんで、冒頭に御説明申し上げましたように、従来も外国貿易及び国民経済の健全な発展に必要な範囲での最小限の規制ということでやらせていただいたものを、いわばブレークダウンしたというものでございます。
  22. 奥野一雄

    奥野(一)委員 従来のものと何も変わりないのだったら、改正する必要はないのじゃないですか。
  23. 畠山襄

    畠山政府委員 その行為に対します違反を、今回は罰則をほかのものと比べて強化する必要が生じたということで、その部分だけを特記いたしたかったという、そのために改正をさせていただこうということでございます。
  24. 奥野一雄

    奥野(一)委員 罰則の方のやつは、また後で触れます。  時間の関係もございますから、次にこれは外務省の方に聞かなければわからないと思うのですが、ちょっと私至言葉の表現がどう使ったらいいのかわからないのですけれども、ある国と戦争状態が終わって、ある国と国交回復をする、平和条約を結ぶ、その平和条約を結んだ国と我が国との関係というのは、どんな関係になるのですか。
  25. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 平和友好的な関係維持が図られるわけです。平和友好的な関係維持に努めることになります。
  26. 奥野一雄

    奥野(一)委員 私も、これはどういう表現を使ったらいいのかわからなかったのですけれども、平和友好関係維持に努めるという状態になる、こんなことの今お答えなんですね。  そこで、日本と一番近い共産圏というと、今国交回復しているのは中国なんですけれども、中国と日本とは、相手が共産国家であっても、平和と友好の維持のために努力をする、こういう義務というのですか、関係が生じているということになるわけですね。
  27. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 そのとおりでございます。
  28. 奥野一雄

    奥野(一)委員 この前、一般質問のときでもちょっとこの問題について触れたわけでありますけれども、今度の東芝機械違反事件で、東芝機械というのは一年間、共産圏諸国に対する輸出を禁止された。そのために、前回の委員会でも触れましたように、現在中国では経済の現代化を進めているのですけれども、それに対してやはり相当な影響を与えそうだ。もう既に東芝機械との契約の中でも、実行できなくなってしまって違約金か何かの請求も出るような状況にある、今そういう局面になっているわけでございます。  ソビエトとの間は、これは正式な国交回復ということでは、まだ領土問題を解決していませんが、それも何か友好関係のあれは結んでいるわけですね。今中国とは完全に国交回復ができている、こう私は思っているわけですが、ただ中国とソビエト、それに対する日本、この関係というのはどうなんですか。差があると言えば変な言い方なんですけれども、同じ状況ですか。これは、ちょっと次に入る前にお尋ねしておきたい。
  29. 野村一成

    ○野村説明員 ソ連との関係におきましては、御承知のように領土問題が未解決。やはり国と国との関係におきまして、領土にかかわる問題というのは、私どもは基本的に重要な主権にかかわる問題と考えておりまして、それがゆえに御承知のように平和条約が締結されていないという状況でございまして、我が国としまして、そこからおのずと出てくる関係の違いというのはあるかと思います。  ただ、先ほど先生、国交回復ということに触れましたけれども、私ども、ソ連との間につきましても、戦争状態を終了し、国交を回復し、外交関係を設立しまして、関係政治経済、文化その他の面で発展する、そういう意味におきましては同じでございます。
  30. 奥野一雄

    奥野(一)委員 今度の改正案というものは、条文そのものを見ますと、我々からすれば非常にあいまいな表現を使っておる、こうなるわけでありますけれども、本来ならほかの方に余り影響を与えるような条文ではないのですね、条文そのもの、文章そのものからいけばですよ。しかし、実際には、これは皆さん方の方のこれから行政指導で、特に共産圏に対する輸出については厳しく扱われることになっていく可能性というのは非常に強いわけですね。ですから、今度の改正案というものは、一面から見ますと、共産圏諸国に対して改めて、いい表現かどうかわかりませんが、日本としての対抗姿勢、共産圏に対しては厳しくやっていくぞというような対抗姿勢を表明したようなことになるのではないかという感じを持つわけなんですよ。  そういう感じを私は受けているわけなんですけれども、そういうことになりますと、今日まで日本が外交方針としてとってきたのは、実際上そうであるかどうかはわかりませんけれども仮想敵国というものは設けない、世界各国と友好にやっていこうという外交方針でなかったかな、こういう感じがしておるわけです。そういうようなことに反しているのではないかなという感じも持ちますし、また、そういうことが逆に東西緊張の、今緩和ということで世界が少し動きつつある、そういうものにも逆行することになっていくのではないか。  その一つのあらわれかどうかわかりませんが、最近また少しソ連との間ではぎくしゃくするような感じになってきておるわけですね。それはどこから始まったのかということになるとわかりませんけれども、これは東芝事件だって一つの大きな影響を与えているかもしれない。中国の方ではまだ余りコメントをしてないようですけれども、中国にしてみたって、日本が対共産圏貿易について一層規制を厳しくしていくという一つ方針ですから、そうなっていくと、今言ったように我が国の外交方針なりあるいは今までの日中友好にひびが入っていくのではないか、そういう感じを持つのですが、その辺はどうでしょう。
  31. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 我が国といたしましては、共産圏諸国とも友好的な関係を保つという基本方針がありまして、それは社会制度が異なるということは前提とした上で、共産圏諸国との間の友好関係維持発展に努めております。  同時に、先ほどからも御説明ありますように、我が国安全保障あるいは一員たる西側の安全保障という見地から、これは必要最小限において戦略物資の輸出規制を行うということも方針でありますが、この二つの方針が相反する、あるいは両立しないというふうには私たちは思っておりません。
  32. 奥野一雄

    奥野(一)委員 通産省の方はどうなんでしょう。御案内のとおり、今中国の方では経済の現代化というものを盛んに進めておりまして、恐らくそのためには我が国からの高度な技術とかあるいは製品、そういうものの導入を強く求めていると思っております。今度ココム規制強化されれば、そういうものについても非常に難しくなっていくと私は判断をしておるわけなんですが、そういうふうになりませんか。
  33. 畠山襄

    畠山政府委員 今度の規制強化は、先ほどもちょっと御説明申し上げましたように、罰則制裁強化ということでございまして、対象貨物範囲をこれを機会に広げるということを考えておりませんので、御指摘のような事態にはならないと考えております。
  34. 奥野一雄

    奥野(一)委員 それはそうですが、その問題は私はまた後で触れます。  確かに、品目をふやすとかそういうふうなことはやらないというけれども、しかしいわゆる戦略物資でなくたって、軍事転用可能と思われるものは輸出できなくなるわけでしょう。今でも輸出しないわけでしょう。技術の進歩というものがあるのですから、これはだんだん厳しくなってくるのではないですか。
  35. 畠山襄

    畠山政府委員 ココムの対象物資を私ども戦略物資と呼んでおるわけでございますけれども、そういう意味でございますれば戦略物資でなければ輸出ができるわけでございまして、単に抽象的に軍事転用可能だというだけでココムの対象品目でないものが輸出できなくなるということはございません。
  36. 奥野一雄

    奥野(一)委員 その議論はまた後でやります。私はそういうふうに思っていないのであります。  先ほどもちょっと申し上げましたように、外務省の方からはさっきああいう答弁がございましたけれども、実際には今度の外為法改正というものは、国内の一つ再発防止とかなんとかという手だてだということになっておりますけれども現実には対共産圏諸国に対する輸出関係が非常に厳しくチェックされていく、こういうことになるわけでしょう。なりませんか。
  37. 畠山襄

    畠山政府委員 今度の法律改正に伴って共産圏貿易を厳しくチェックするということはない、法律改正に伴って論理必然的に厳しくチェックするということはございません。  ただ、率直に申し上げまして、今度の東芝機械事件東芝機械側の虚偽申請という事態から生じたということがありますので、私どもの審査が少し慎重になっておりまして、そういう意味で一件当たりの、例えば審査期間が今少なくとも過渡的に長期化している、そういったことはございます。
  38. 奥野一雄

    奥野(一)委員 日本は今もちろんアメリカあたりが一番貿易の強大な相手国ということになっておりますけれども日本の置かれている地理的な条件とかいろいろなことを考えますと、もちろん朝鮮半島もそうでありますけれども中国、自分のあるアジアというのですか、隣接をしている国々と仲よくしていくということが一番基本だと思うのですね。ですから、そういう面で私が一番心配しているのは、今度のココム規制というものを通じてソビエトとの関係がおかしくなったり、あるいはまた中国とせっかく国交回復して十五年という時日が経過をしてうまくいきつつあるときに、今中国だって例の光華寮問題なり雲の上の人の発言なんかの状況で、必ずしもすっきりしたような関係でなくなりつつある。そういうときだけに、こういうふうなことについては相当慎重に配慮してやってもらわないと、遠いアメリカの方とは神よくしても近くの人力とはけんかばかりするような感じということは、余り好ましい状況ではない。そういう面については、今度ココム規制ということで、今そういうふうに言われましたけれども輸出関係では相当厳しくなっていくのではないかというおそれを私はまだ持っているわけです。そういうことを考えながら、そうすると対中国との交流、特に経済交流なんかそうですけれども、これは従来よりダウンさせるとか、従来よりやりにくくさせるということはないですね。
  39. 吉田文毅

    ○吉田政府委員 日中貿易関係は、一九七二年に国交正常化して以来着実な発展を遂げてまいっておりまして、貿易額で見ますと、国交正常化当時の十四倍であります百五十五億ドルの水準に昨年は達しております。これは、日本貿易相手国として見ますと輸出で第四位、輸入で第五位、輸出入合計では第三位の数字となりまして、極めて密接な関係を構築しているというふうに見られます。通産省といたしましては、今後とも日中の通商関係の健全な発展を期してまいりたい、そのような方向で努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  40. 奥野一雄

    奥野(一)委員 日中貿易関係は別な機会にまたやりたいと思っているのですよ。私も中国関係の方からいろいろな文書などをいただいて勉強させてもらっていますから、今お答えになっているようになっているかどうかという疑問も若干あるわけですが、これはまた別問題ですから、また後でやらしてもらいたいというふうに思っております。  その次は、これは前回の委員会一般質問でも質問しましたけれども、今度の改正目的、なぜ今外為法改正しなければならないのか。再発防止あるいは米国議会の東芝制裁措置の緩和、こういうことが考えられるんですが、先ほど通産大臣提案理由というものを聞いておりますと、これは再発防止が主目的なのかな、こう思ったりするんですけれども、一連の行動を見てみますと、これはまた何か対米関係もその中に非常に大きくウエートを占めているような感じもするわけなんですが、本来の目的はどっちなんでしょうか。両方入っているんでしょうか。
  41. 畠山襄

    畠山政府委員 このたびの東芝機械事件というのが虚偽の申請に基づいて行われたということでございまして、私どもといたしましては、民間の産業界等々がこういった輸出関係の法令遵守の意識を一段と強めてもらうということが何よりも必要だと思っているわけでございます。現在、罰則懲役最高三年であり、また行政制裁が一年であるわけでございますけれども、これでもこういう事件が起きたわけでございますので、こういったところを強化して、そしてまず民間産業界における法令の遵守意欲といいますか遵守精神強化していきたい、これが最大のねらいでございます。
  42. 奥野一雄

    奥野(一)委員 これは前回の委員会でも申し上げたんですが、私がちょっと疑問に思っているのは、罰則強化して再発防止ができるんであればこんな楽なことはないと思うのですけれども、これは確信を持っておられますか。今度の罰則強化することによって、例えば今までも相当な件数があったと思うのですけれども、これが半減するとか激減するとか全くなくなるとか、どんなようなことを考えておられますか。
  43. 田村元

    田村国務大臣 実は、私がアメリカヘ参ります前に、あらゆる角度から再発防止の検討をしたのであります。結局、罰則強化しかないなということになった。もちろん基本的には、企業のモラルというものを守ってもらうということが何よりも必要でございます。必要でございますけれども世の中、それは確かに刑法なんてない方がいいでしょうし、外為もない方がいいかもしれません。政府方針国民に知らしめて、お守りくださいとかちっと守られるというのなら、刑法も何も要らないと思うのです。先ほど貿易局長お答えしましたように、罰則三年でもああいうことをやる、といいますことは、無秩序と言うより無法と言う方が正確かもしれません。そういうことで罰則強化ということが、しかもそれに、幇助を入れるということはちょっとしたなにでございますけれども、未遂も入れるということ。そして当然のこととして、罰則強化すれば時効が延長される、刑事罰、行政制裁強化する、そういうことでございますが、そういうふうにしてでも自覚を求める以外にないだろうということで、実は外為法改正に踏み切ったということでございます。これは、私自身の気持ちの整理をしたということでございますが、率直に言って、ほかに再発防止策があるでしょうか。あれば一番いいのですけれども、結局これしかないだろうということでございます。
  44. 奥野一雄

    奥野(一)委員 浜の真砂は尽きぬともというのがありますけれども、それはそうだと思うのです。ただ、私前回も触れましたように、再発防止ということに最重点を置くということであって、これは当然だと思うのです。しかし、罰則強化しただけで、決してこれは再発防止にはつながらない。三年だからやろうか、五年ならやめようか、こういうことではもちろんないと思うのです。  そこで、罰則強化するということについてはそれはそれなりの理由があると思うのですけれども、問題は、罰則強化の背景というものが、単に国内的な観点から出てきたものだけではない。やはり対アメリカという関係、それから安全保障という関係、これがどうしても絡まっていると私は見ざるを得ないと思うのです。だから今度の改正案の中でも、平和・安全維持というのが一項また、今までなかった条文の中に入ってくるということになっていると思うのです。そのことが優先をされていくということになった場合に、何かそっちの方に追い込まれてこういうような措置をとらされてきたのではないかなという感じが一つはしてならないわけでございます。  従来、五十五年の改正のときだって通産省の方では、これは貿易の一元管理になじまないということで拒否されたと聞いているわけですね。そういう方針を貫いておった。ところが今度はそれを受け入れてしまった。それは、通産省の方の本音からそういうふうにしてなってきたのか、どうもそうでないような気がしてしようがないわけです。外務省あたりが物すごい圧力をかけたり、あるいはそのほかの方から何かそんな圧力が加わってきてこういう関係になってきたのでは狂いかなという感じが非常にしてならないわけであります。そのことが、これは前段触れましたように、自由貿易ということを貫いてきている我が国貿易政策から見て一体妥当なのか、こういうふうにも考えられます。  ですから、もし再発防止ということであれば、本来ならもうちょっと時間をかけて、これは閣議決定になるまで二週間くらいの作業の時間でなかったのではないかと私は思っているのです。しかし実際には、問題とすれば先ほどから触れておるような問題もあるし、いろいろな問題はまだ残されている。そういうものを、余り深く検討もしないと言ったらしかられるかもしれません、それは担当の省庁では十分検討したというふうに当然なると思うのですけれども、我々から言わせると、検討というのがちょっと不足しているのじゃないか。いろいろな対外的な関係でも対内的な関係でも調整をして、将来に悔いを残さないようにつくるのであれば、やはりもうちょっと時間をかけてやるべきでなかったのか。  こういうことを言っては失礼になるかもしれませんけれども、何かアメリカが怒ったからという印象が強いのじゃないかと思うのです、一般国民の大方が受ける印象というのは。アメリカの方から物すごく怒られて東芝制裁措置がとられようとしているから、何かそれに間に合わせるために日本は慌てて対応を強いられてきた、そういう印象をぬぐい切れないと思うのですよ。だから、そんなようなことで一つの前例がつくられるということになった場合には、今までの例から見て次から次へと、何かあったらアメリカ日本をがんと怒れば日本はもう頭を下げてすぐ何かそれに対応してくれるだろう、こんなようなことになったら大変なことだと思うのですね。そういうような方針を間違わないようにやらなければならないのではないか。こういうようなことをやって将来に全く悔いを残さない、こういう確信はお持ちですか。
  45. 田村元

    田村国務大臣 国の安全という問題でございますけれども、これはココム関係の国内法に対する違反事件懲役三年から五年になる、それが他の違反事件にまで累を及ぼすということは、おっしゃいますように自由貿易そのものに食い込んでくる可能性が多分にあるわけですね。でありますから、あの表現はもともと二十五条で使っておった表現でございますけれども、それを四十八条に適用しましたのは、これは一般外為法違反事件を三年以下ということで、むしろある意味においては守ってあげるということであの部分だけ特掲したということでございます。  それから、外務省の圧力がどうのこうのというお話でございましたが、私、別にそんな圧力というのは感じませんでした。外から見るとそういうふうに見えたかもしれませんけれども、私は圧力とは思いませんでした。お互いに意見を述べ合うということはいいことじゃないでしょうか。協議して、このようにしてこうしてといってきりきり詰めるというような文言じゃございませんから、外務省とて通商政策というものはやはり大きな仕事の一つでございますから、その点では両省が神よくしていく。例えば、ちょっと余談になりますけれども失礼して申し上げれば、外務省と通産省はもっと仲よくしていいと思いますよ。それから、大蔵省と通産省も仲よくしていいと思いますよ。本当にそう思います。でございますから、あれはあれでいいんじゃないでしょうか。  それからもう一つアメリカにしかられたら日本はというお話でございましたが、しかられるぐらい別に何でもないです。日本だって立派な独立国でございます。アメリカより日本の方がはるかに経済内容のよい独立国でございます。ただ、もっと慎重にとおっしゃいますけれどもアメリカ日本と全然違いますのは、例えば政治行政等の組み立てが、日本は何といっても議院内閣制でございます。ところが、アメリカの場合は三権分立で、議会というものは行政府の言うことなんか聞きやしません。でございますから、もしあんな東芝制裁法案、それもグループのものを三分の二以上で議決して大統領の拒否権も発動できないような形にされたら、日本にとってはかり知れない経済的な被害が及ぶわけです。でございますから、そこいらは私もいろいろと考えないでもなかったのですけれども、この法律はそうじゃありませんが、とりあえず私自身の気持ち、田村個人の気持ちとしては緊急避難的な気持ちが多分にあったということは事実でございます。日本はやはりすべてにおいて、特に経済は国際的な友好を保持しながら、特に自由陣営、このココム加盟国は十六カ国、日本以外に十五カ国ございます。この十五カ国の自由陣営、自由主義諸国と日本との貿易総額は六割に近うございますから、やはりそれは大切にしていかなければならぬし、できるだけ自由貿易という原則は守りつつ大切にしていかなければならぬ、そのための協調はある程度仕方がないということだと思います。
  46. 奥野一雄

    奥野(一)委員 そこで、今大臣の方では、別に外務省の方から圧力がかかったわけではないし、お互いに意見を交換して神よくするのはいいことだ、それは大変いいことなんですね。それはいいことであると私も思います。しかし、実際に伝えられておるようなところでは、外務省の方では安全保障条項−−通産省は安全保障条項という言葉は使ってないんだろうと思うのですね。平和・安全維持というのですか、そういう言葉だと思うのですが、今まで貨物の方にはなかった安全保障条項が入ったということについて、通産省の方では、これは今大臣が言われましたように、決して外務省からの圧力ではなくて、通産省がもろ手を挙げて賛成をしてみずから入れた、こういう条項なのかどうか。  それから、お互いに意見を述べ合うということが今度また一つ入ってきているわけですけれども、外務省の方が出す意見というのは、実際の経済問題そのものよりもやはり安全保障ということが主になって意見を述べるということに当然なるだろう、こう思うのですね。経済関係貿易そのものというのですか、そういう経済的なものであれば、これは通産の方が専門でございますから。外務省の方から入ってくるのは、これは安全保障上うまくない、こういうようなときに恐らく意見を述べるのだろうと思うのですよ。ですから、安全保障条項ということが入ったことについて、通産省としてはもちろん今法案を出しているわけですから、嫌だというようなことにはならぬだろうと思うわけでありますけれども、これは答えられませんかな、全くもる手を挙げて賛成して入れた条項なのかどうか。  それからもう一つは、もし外務省と通産省が意見が対立したようなときには、どういう調整をするということになるのでしょう。
  47. 田村元

    田村国務大臣 今、通産省がもろ手を挙げて賛成したという表現を使われましたが、賛成というのは人から提案されたことに賛意を表するのが賛成ということでございます。そうではなくて、我々の判断でいたしました。いろいろ慎重に検討して、判断でいたしました。  それから、外務省と通産省とそれは意見が違うことが起こり得るかもしれませんけれども、それは内閣の裁定ということもございましょうし、またトップレベルの話し合いということもございましょうし、それは何といっても法律でございますから、内閣自体の責任で処理するということになろうかと思います。
  48. 奥野一雄

    奥野(一)委員 そうだと思いますね。これは、こうやって法案を出してきて、いや我々は渋々入れたんだということにはならぬと思うのですが、それは大臣言われましたように、もろ手を挙げて賛成したということはみずから発動したことではなくて、他から言われたものに賛成ということになるのだけれども、まあしかし我々の方に聞こえてくる話では、通産が初めから考えておったのかどうかということについては多少疑問がある。しかし、それはいいですよ。そういうようなものがありますので、これはやはり扱いとしては慎重に扱っていってもらわないというと、先ほど私が申し上げましたように、外務省から意見として出されるのは、やはり安全保障ということが主になってくると私は思うのですね。そのほかで外務省の方からこれはどうかというような意見が出されるということはそうないと思うし、あれば、逆にそれは越権行為になってくると思うのですね。やはり安全保障上疑問があるからという意見だと思う。そっちの方が優先をしていくということになった場合に、先ほどから申し上げておりますように、日本政経分離でやってきて、可能な限り自由貿易、そういう原則がそこから崩されていく、こういうおそれがありますので、そういう点についてはひとつ十分に御配慮をいただきたいと思っているわけでございます。  そこで次に、ちょっと簡単にお尋ねをしてまいりますけれども、最近米国あたりではどちらかというとやはり少し保護貿易的でないかな、こう思われるような動きというのが進んでいる。何かあれば、これはどっちが悪いのかということはあります。日本が悪いのか、アメリカの方が行き過ぎているのかということはにわかに判断つきかねるかもしれませんけれども、何かちょっと貿易摩擦があればすぐそれに対して制裁を加えるということは、自分の国の産業を保護するというのですか、ですから何か自由主義、自由貿易とは違うような形の動きというのが今進んでいるような気配が私はしているわけであります。本来、日本の場合には自由貿易というものを貫く、こういうことで今日まで先頭に立って活躍をしてきているのでございますけれども、その日本がみずから安全保障条項ということを入れて、これは管理強化ということに当然なっていくだろうと思うのですね。やはり自由でなくなってくる、管理が厳しくなってくる、こういうことになるわけなんでありますけれども、そういう面では、そういう心配というのはございませんか。
  49. 畠山襄

    畠山政府委員 まず第一点は、米国が最近貿易摩擦があるとすぐ制裁に走るという嫌いがあるのじゃないかという点につきましては、確かに半導体問題を初めといたしまして、また今回の事件もそうでございますけれども、半導体の場合、例えば三〇一条でございますとか、ああいう規定をやや一方的に自分で米国だけで解釈をして制裁に走るとか、あるいは今度も東芝制裁法と称して米国が日本の企業を制裁するとか、そういうような動きに出ようとしておることは大変問題があるというふうに私ども考えております。  他方、第二点の日本安全保障を理由に規制強化していく、管理強化になるのではないかという御指摘でございますが、これは先ほど来申し上げておりますように、今回この平和・安全維持関連の条項が入りましたのは、一にかかってそれにかかわる罰則を特段に強化をいたしたいというだけの意図でございますので、安全保障を理由に規制強化する、あるいは管理を強化して品目数をふやすとか、そういうことを考えておりませんので、自由貿易主義に法律的に逆行しておりませんし、また運用としても従来の方針を堅持してまいりたいと考えているところでございます。
  50. 奥野一雄

    奥野(一)委員 しかし、実際に経済界の大方というのはそういうとり方はしてないですね。やはりこれによって管理が相当厳しくなるだろうという受けとめ方をしているので、それは外為法の持っている一つの性格でないかなという感じもするのですね。法律的に非常に明らかでないということなんで、これまた後でやります。  そこで、ついでにちょっとお尋ねしておきますけれども、これも前の委員会で私ちょっと触れたと思っておりますが、東芝グループの制裁、それから前には半導体の関係で電動工具、全く関係のないものに対する報復措置、それから今度また何でしたか一〇〇%関税をかけるとか、そういうようなことがずっと続いてきているわけなんですけれども、いろいろお話をお聞きいたしますと、あるいはきのうの本会議通産大臣などの御答弁なんかも聞いておりますというと、いやちゃんと言うべきことは言った、文句は言った、こういうふうなお答えのように伺っておったのですけれども、私どもから単純に考えますと、何で関係のないものが制裁をされなければならないのか、これはやはり考え方によっては非常に大きな問題だと私は思うのです。それは、株の大半を持っているとか、いや同系会社だとかいうようなことはあるかもしれませんけれども、正確に言ったら全く関係のない会社だ、それに対して制裁措置をやろうとしている。それから、先ほど言ったように、半導体の問題なんかのときも、全く関係のない電動工具などがやり玉に上がる。こういうことに対しては、きのうの御答弁なんかを聞いておって、何らかの日本政府としての対応はされたというふうには承知をしているわけでございますけれども、具体的にはどういうようなことをやられたのかということを、私はちょっと聞きたいと思うのです。  東芝機械違反を起こしたということになりましたり、あるいはアメリカ制裁措置をとろうということになると、これは新聞の一面にでかでかと出るわけです。しかし残念ながら、通産大臣アメリカに文句を言ったとかということになりますと、余り大きな記事になっていないですね。だから、一般国民はやはりその辺のところはよくわからぬと思うのですよ。何だ、それこそアメリカに怒られっ放しじゃないのかと。極端なことを言うと、こんなことを言っていいかどうかよくわかりません、私は決して自分ではタカ派だと思っていませんし、非常に平和主義者で優しい男だと思っているのですが、そんな理不尽なことをやった場合に、アメリカがそんな関係のないことをやるんだったら、じゃ日本だってアメリカの農畜産物なんか一切輸入しないぞと言うくらいの気概をある程度示さないと、何か最近の動きだと、この貿易関係では何でもかんでもアメリカに押されっ放しだという印象を受けてしようがないわけでありますが、この東芝グループの制裁とかあるいは電動工具なんかのときに、日本政府としてはどんなような措置をとられたのか、ちょっと経過をお聞きしたいと思います。
  51. 田村元

    田村国務大臣 大体ココム違反事件におきましても、それは当然国内法に違反する面があれば国内法で取り締まるべきであって、第三国から制裁を食らういわれは何もありません。それはしてならないことなんです。それを今度やってきた。また、半導体でもそうでございます。電動工具で、かわいそうにマキタとかという会社はひどい目に遭っているのですよ。まさに、俗に言う犬の罰が猫に当たったような格好なんですね。その都度我々は、特に通政、機械情報両局からも非常に厳しく抗議を申し込んでおりますし、私もまた、日本へ来たアメリカの高官と会い、あるいはアメリカヘ行って会った向こうの高官たちにも、国会議員にもそれは言いました。特に、亡くなりましたけれども、私のカウンターパートであるボルドリッジ商務長官には、非常に厳しく私から抗議も申し込みました。  ただ、だからといって、日本が報復といいますけれども、報復しようと思ったらできないことはありません。ところが、もし仮にお互いに報復のやり合いをやったときに、どちらが痛い目に遭うかといったら日本なんですよ。日本輸出によって飯を食っているのです。言うなれば売り手なんです。日本の国内においても、会社同士でもそうだと思いますが、売り手、材料屋なんというものは常にメーカーからたたかれていると思うのですね。ですからそれを泣き泣き——この間の売上税の御審議のときでも、果たして弱い売り手が転嫁ができるかということが問題になりましたね。あれと同じでございまして、日本の場合そこに非常につらい面があるということは、これは私もはらわたが煮えくり返る思いを幾たびかしましたけれども、売り手という弱みということは、これは国会の答弁としてそぐうかそぐわないか知りません。知りませんが、あえて私が率直に申し上げるならば、この点は御理解をいただきたい、我々の気持ちもお酌み取り願いたいということでございます。
  52. 奥野一雄

    奥野(一)委員 私も決してそんなことをやれというようなことを言っているのではないのだけれども、やはりいらいらするような気持ちだってあるのですね。日本の方が弱い立場にあるものだから、貿易関係の中では、今言われましたように、どっちが痛い目に遭うかといったら日本の方が痛い目に遭う、そういうようなものだから、何か言われるとすぐはいはいというような感じに受け取られたのでは、これは先ほども言いましたけれども、余りいい前例をつくるということにはならないのではないか。弱い立場にあるけれども、やはり理不尽なものについては明確に直ちに対応していくということの方が、むしろ友好関係を進める上においてはプラスだと私は思う。何でもはいはいということじゃないと思いますけれども、そういう印象を与えるということはやはりうまくないのではないかと私は思うのですよ。どんな立場にあろうが、やはり理不尽なことに対してはきちんと言うべきことは言う、こういう態度というものを貫かなければならないと思うのですね。  これはもちろん、そういう貿易関係ということですから通産省でございますけれども、しかし外交関係ということになれば外務省が——今度の東芝のそういう制裁をやろうとしている、これはアメリカ政府でなくて議会でありますけれども、通産省の方はもう死に物狂いになって汗をかいてやられているのだけれども、何か外務省の方がのんびりはたで見ているような感じがしてならないのですが、外務省の方はこれに対しては何もやらなかったのですか。
  53. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 外務省といたしましても、今通産大臣から御説明がありましたように、アメリカの議会がいわゆる東芝制裁法案を通そうという動きがあるということについては非常に遺憾に思っておりまして、新聞等には余り出ませんけれども、在米の松永大使が中心になりまして、各上院議員、下院議員あるいは議会のスタッフ等を中心にいろいろと働きかけをやっております。  と同時に、あと二週間余りでアメリカ議会がまた再開されますので、今、再開に備えてどういう対応を練るか。これはもちろん東芝制裁法案だけでなく、米議会の両院協議会でこれから審議されます通商法案全体につきましてどういう働きかけをやるか。これまで既にいろいろとやってきておりますけれども、引き続き、もう最終段階ですので一生懸命やろうと思っておりますし、今その戦略を練っているところでございます。
  54. 奥野一雄

    奥野(一)委員 先ほど通産大臣は、外務省とも大蔵省とも仲よくやっていきたい、こう言っているわけですから、通産省が困っているときは外務省もやはり側面からそれを支援していくという体制をとってもらわないと、我々の方の目に映るのは、何か通産と外務とただ縄張り争いをやっているのではないかというような印象だけを与えてはやはりうまくありませんので、そういう面ではひとつ積極的に協力をしてやっていただきたいと思います。  それから、先ほどの御答弁の中で、いや決してココム規制強化というものをこれからやろうとかそんなことはしないのだというような御答弁がございました。私は、先ほどから言っているように、ココム規制強化というのは、日本の場合には、資源がなくて技術というものを使って、その技術を移転したり、あるいは製品にしてそれを輸出するという、そういうことをずっと今日までやってきて今のような経済大国にまでなった国だと思うのですね。そこで、こういうココム規制ということが強化をされていくと——私は、これはますます強化をされていくのではないかなという疑念を持っているわけでございます。本来ならこの種のものは、国内のことでございますから、日本政府が当然主権というのですか、そういう立場の中でやらなければならない問題だ。しかし、どうもやはりアメリカとの関係、その影が消えないという感じを私は持っているわけです。アメリカの方からいろいろなことを言われてくるのではないかという感じが非常に強いのですね。きのう何か本会議でそういうような質疑があったように聞いておるわけでありますけれども。  日本の場合には、今まで武器輸出禁止三原則というようなことで国際平和の維持に努力をしてきたわけでございますけれども、これからの技術発展ということを考えていきますと、例えば先日、アメリカの国防総省が日本の先端技術の企業を調査した報告書を出しているわけですね。その報告書を見ますと、日本のほとんどの先端技術は軍事転用が可能だ、こういう報告を出しているわけです。もちろん、今その中のものは大部分規制品目の中に入っているんじゃないかなと思いますけれども日本技術の進歩の度合いを考えていった場合には、だんだん縮小されるというよりはむしろ拡大されてくる可能性が強いのじゃないかな、そういう感じがしてならないわけでございます。そういうことになった場合には、技術立国だとかあるいは輸出立国だというようになっている日本は、非常に難しくなってくるのではないかと思います。  それからもう一つは、これはこの問題とは直接関係ありませんけれども、一昨年政府は、ASEAN諸国に対する中小企業の投資とか技術移転、これを促進するための具体策をつくられているというふうに伺っているわけでございます。これはもちろん中小企業関係が主でございますから、どの程度の技術水準になっているかはわかりませんけれども、今の技術というものは、一定の時期が来ればだれでもすぐできるような技術になっていくという、そのくらいの進歩をしていると思うのです。そうすると、ASEAN諸国なんかに対する中小企業技術移転促進、こういうことについてだって、ひょっとしたらこれを制限されてくるという可能性だって出てくるのではないだろうか、こういう感じがするのですが、そういう面についての心配は本当にございませんか。
  55. 畠山襄

    畠山政府委員 日本は確かに技術では相当先進国になっておりまして、そういう意味では、戦略技術といいますか、そういうものの規制になるものの意味合いが日本の場合違うということは、確かに御指摘の面があると思います。  ただ、ASEANの例を引き合いに出して御指摘がございましたが、当面は、ASEANに出します技術というのは、量産技術でございますとか比較的最先端というものではない技術でございますので、こうしたココム規制に、全くかからないということはないと思いますが、相当部分がかかるなんということはないということでございます。そうした意味では、対ASEANの技術協力に影響が相当あるというようなことはないと思いますし、また、既に公開されました技術でございますとかあるいはやや先端度の薄れました技術というものにつきましては、毎年のココムの会合を通じましてできるだけリストから外していく努力も、また今後重ねてまいりたいと考えております。
  56. 奥野一雄

    奥野(一)委員 先ほど申し上げましたように、つい最近、アメリカの国防総省が日本の先端技術企業を視察した報告書を出している。これは御承知だと思うのですが、あの中にいろいろな技術が、軍事転用可能なものがずっと一覧で出ているわけでありますけれども、あれは今ほとんど全部が規制の対象になっているものばかりですか。
  57. 畠山襄

    畠山政府委員 あの中の記載が余り詳細ではございませんものですから、ココムのリストとの照合をいたしておりませんので、具体的なお答えは今この段階でできないので、恐縮でございます。
  58. 奥野一雄

    奥野(一)委員 アメリカ日本技術を高く評価して、これまで調査に来られたときに、ほとんどが軍事面で応用可能だ、こういう報告が出ているわけでございまして、これからまた技術がどんどん進んでいくということになりますと、私は先ほど申し上げたように、政令の別表に全部目を通しているわけではございませんから、それがひっかかっているかひっかかっていないかを即座に判断できませんけれども、ふえていく可能性があるのではないか、こういうものについてはまただめだよということを言われる可能性が出てくるのではないか、こういう危惧を持っているわけでございます。そういうことになっていくと、先ほどお答えでは、いやこれから規制品目とかそういうものについてはふえる可能性はないというようなことだったのですが、私は、日本の現状の技術水準からいけばむしろふえる可能性の方が強くなってくるのではないか、規制品目などが増加するおそれがある、そういう心配があるということを申し上げておきたいと思います。  それから、もう時間がなくなってきましたので次に入らせてもらいますが、今度の外為法改正ココム遵守の規定表現が非常にあいまいだ、それに対して罰則強化するということは一体妥当なのかどうか、これについては多くの学者皆さん方からも問題点があるということで指摘をされております。けさも日弁連の解釈というのですか報告書が出されて、日弁連の方でも、これは法体系上非常に疑問がある、こういうふうに言われているわけでございます。  本来、警察庁を呼んでお尋ねする予定だったのですが、このココム遵守の規定表現というのは全くあいまいでしょう。ほかの犯罪行為というか犯罪の構成というものと比べると、全くあいまいな表現になっているわけです。平和と安全を何とかかんとかというようなことで、普通の罰則を伴う規定であれば、例えば交通違反であれば、違法駐車をしてはならない、あるいはまた決められた速度制限をオーバーすれば違反だ、これははっきりしているわけなんです。ところが外為法の場合には、そういうことが非常にあいまいな表現になっている。そして、それはすべて政令でやるということになっている。憲法三十一条の罪刑法定主義、これからいきますとおかしいのではないか、こういうことになっていくわけであります。政令で定めるということは、本来立法府が憲法で規定されているようにきちんとやらなければならないのを、立法府の権限を侵すのではないかと思われるようなことを行政府の方でせられるということについては、実際に妥当なのかどうか大変疑問があるわけでありますが、この辺は一体どういうふうに調整されておられますか。
  59. 畠山襄

    畠山政府委員 改正案におきます「国際的な平和及び安全の維持妨げることとなると認められるもの」として許可を受けなければならない範囲でございますが、これは現在と同様、御指摘のように輸出令等の政令で具体的に明示することとしておりますので、その範囲が不明確になるということはまずないと考えております。  それから、行政一般の話で恐縮でございますけれども許可の対象となるものを定める場合に、その対象の決定について、この経済事象のように時々刻々変化する情勢に合わせて専門的、技術的な知識を踏まえて判断を行っていく必要があるというときには、法律上には一定の要件を定めるにとどめまして、そしてその品目など具体的な内容法律から政令にゆだねるということが一般的に行われているわけでございまして、この外為法の場合におきましてもこうした手続をとっておるわけでございまして、これが罪刑法定主義でございますか、そういったものに反するとは考えておりません。
  60. 奥野一雄

    奥野(一)委員 お答えとしてはそうなんでしょうね。これはまさか憲法三十一条違反しているなどというお答えはもちろん出てこないわけでございまして、ただ、先ほどから申し上げておりますように、日本の著名な法律学者は、私の知っている限りではまず大体ほとんどの方々は、この外為法規制というのは憲法三十一条に照らして全く疑問がある、こういう解釈を述べられております、一々そのことについて紹介はいたしませんけれども。私もちょっと見て、これは罰則を伴ってなければまだいいのでありますけれども、普通の法律体系ということを考えてみた場合には、こういう行為をすればだめだよと、その内容というものがやはり詳しくわかるように書くというのが憲法三十一条精神だろう、私はこう思っているのです。  しかし、この外為法の場合には、どこが一体ひっかかるのだかわからないのですね。何でひっかかるのだか、この法律を見ただけではわからない。例えばこの四十八条なんかを見て、「政令で定めるところにより、許可を受ける義務を課する」、許可を受けなければ違反になるのかな、こういう解釈よりできないですね。ほかの法律だとそうではないと思うのですよ。にせ札はつくってはならない、つくったら罰する、こうなっているのではないかと思うのですがね。そこのところを私は言っているのですね。  そして、それはすべて政令を今度は見なければわからなくなる。政令というのは我々審議することはできないわけですから、本来ならその政令の中身を全部出してください、こう言って、その政令の中身を本来検討しなければならない、こう思うわけですけれども、政令ということになれば、先ほど言ったように、これは行政府のしかも裁量になる。  きのう警察庁の方々とちょっとお話し合いをいたしましたら、本来であれば、先ほど言っているように交通違反ということであれば、警察は見れば、ああこれは交通違反だということですぐ発動できる。しかし、外為法違反のものだけは、警察庁自体がこれは違反ではないかということで乗り出すことがなかなかできない。通産の方からこれはクロでございますと言われて、警察が例えば発動するというふうな仕組みになるわけでしょう。そういう法体系というのはおかしいのではないかなという疑問を私は持っているわけですよ。これは、そういうものにひっかからないのですか。
  61. 畠山襄

    畠山政府委員 ただいま御説明申し上げましたように、法律の規定ではやはり許可を受けなければいけない。どういうものについて許可を受けなければいけないかというと、例えば「国際的な平和及び安全の維持妨げることとなると認められるものとして政令で定める」ものを輸出しようとする者は許可を受けなければいけないということが書いてございまして、委員指摘のように、政令を見なければいけないということがまずわかるわけでございまして、政令では、例えば今の輸出貿易管理令の一番最初には「タングステン鉱」と書いてあるかと思いますが、タングステン鉱というのを出そうという人は全地域向けに承認を受けなければいけないなということがわかるわけでございまして、まあタングステン鉱の場合は非常にわかりやすくてほかの場合は少し難しいということもございますけれども、いずれにしてもそれを専門にやっておられる企業がそれを見て、輸出を行う際に承認を受けなければいけないのかいいのかは確かに政令段階までごらんいただかなければいけませんけれども法律にちゃんと政令を見てくださいということも書いてあるわけでございまして、これは何も外為法に限りませんで、経済関係法制は、やはり対象が時々刻々変化するものですからこういうふうになっている場合が多うございまして、税法なんかでもそういうふうにたくさんなっておりまして、税法がいい例だと申し上げているわけじゃございませんけれども経済関係法ではすぐれてこういう場合が多いわけでございますので、御理解を賜りたいと思います。
  62. 奥野一雄

    奥野(一)委員 本来、経済法であるはずの外為法などに、先ほどから申し上げておりますように安全保障という、これは政治的なものですね、そういうものをしゃにむにこの中につぎ込んできたからこういう書き方になったんだと私は思うのですよ。これは純然たる経済関係だけであればもっと別な形で、例えば罰則を設けるにしても書きようがあったと思うのです。一般の大方が「国際的な平和及び安全の維持妨げる」、経済行為の中でこれは普通なら判断できないですよ。何をやれば「国際的な平和及び安全の維持妨げること」になるのか、ここの表現が非常にあいまいだ。例えばはっきり書くなら、外国に武器を輸出してはならないとか、対共産圏に対してはと書いてあるならこれは別だと思うのですよ、まだ。そういう書き方になっていない。それは非常にあいまいな表現を使って、しかもその判断はすべて行政府ということになるから問題があるのだ、こういうふうに私は言っているわけです。  時間がちょっとなくなってきましたので、そういうことについては、私どもとしてはやはりこういう書き方というのはうまくない。本来、そうすればこの外為法の中に政治条項を入れること自体がまずいということになってくると私は思うのです。全くの経済だけの法律にすればこんなややこしい形にはなっていかない。将来そういうふうにしていかなければならないので、もし別なものをつくるならつくると言った方がすっきりすると思うのですよ。そういう議論も本来あったわけでしょう。今度の改正なんかの場合であっても、特別立法にした方がいいのじゃないか。ただ、特別立法をやれば、私が前段に触れたように憲法上どうなるのかという議論があったようにもお伺いしているわけでございますけれども、そういうことで問題があると思います。  しかも、そのことで三年が今度五年という、他の経済事犯から比べると——これはしかも形式犯でしょう。あるやったその行為が、直ちに国際的な平和及び安全の維持妨げたのかということにはならないわけですよ。妨げるおそれがあるということでしょう。具体的にそれは何か妨げれば別でありますけれども、直接的にはそうならないはずだ。妨げるおそれがあるということは、あくまでもだれかの判断でしょう、それは。例えば、強盗をやったとか殺人をやったとか放火をしたというものはすぐわかりますよ。事犯というものはすぐわかる。しかし、この行為というのはあくまでもだれかが判断する以外にないわけですよ。そのことが実際に国際的な平和及び安全の維持妨げたかどうかというのはだれが判断するのだ、こうなるのですね。そういう、言うならば形式犯に対して、経済事犯としては最高の五年ということを今度科するということになるわけであって、だからそういう大きな刑罰を科するのであればやはり慎重な検討をしながらやるべきでなかったかなと私は思うのですが、五年ということは当然だということですか。
  63. 畠山襄

    畠山政府委員 五年という刑がどうかということでございますけれども、今でも例えば関税法の中で無体財産権、特許権あるいは意匠権、ああいった違反のものを入れてくるときの関税法上の違反が五年になっているとかいうようなこともございまして、確かに御指摘のように相当きつい分野に属しているかとも思いますけれども、決して例のないことではなくて、関税法で今申し上げた例もあるというふうに考えております。
  64. 奥野一雄

    奥野(一)委員 例えば関税法の中で、きのう麻薬の中では七年も十年もあるんだというお話も聞いておりますけれども、関税定率法というのですか、私よくわかりませんけれども、これで例えば偽造貨幣を輸入した場合、これは最高五年だ、それから輸出取引法では、輸出入組合の組合員が収賄した場合には最高五年だ、こういうのがあるということも聞いておるわけであります。それじゃ、例えば外為法の四十八条違反なら四十八条違反というものを考えたときに、その事態が直ちに国際的な平和及び安全の維持妨げたということに、先ほど例として申し上げましたように、強盗だとか殺人だとか放火だとかそういうたぐいと同じような、効果と言うのは変ですけれども、そういう効果をすぐあらわすというようなことにならないものでしょう、これは。そういうおそれがある、こういうことだけなんですよ。しかもそれは、実際的にアメリカ東芝機械のものでは何百億だか損をする——損をしたのじゃない、損をするという見込みでしょう。そういうものに対して刑罰を科するということについては、実際上一体どうなのか。だから、先ほどから言っているように、この法律そのものをもっと変えればいい。もう政治条項なんて入れるな、私はそう言いたいですね。どうでしょう。
  65. 畠山襄

    畠山政府委員 「国際的な平和及び安全の維持妨げることとなると認められるもの」というのは判断しなくちゃいかぬことではないかというのは、御指摘のとおりでございます。ただ、それ自身を判断するわけでございますけれども、判断をするのは政令をつくるときに判断をさせていただくわけでございまして、政令ができてしまった後のものを一般の企業の人は見るわけでございまして、その政令には、委員もよく御存じのとおりに、一応ココムの場合でございますと百七十八品目でございますか、明確に書いてありますので、それさえ見ていただけば、今度の改正案でいきますと許可を取らなくちゃいけないのか、取らなくてもいいのかということが一応明確にわかるわけでございます。  それから、こういう「国際的な平和及び安全の維持妨げることとなると認められるものとして」という条項をこの外為法の中に入れるからおかしくなるという第二番目の御指摘でございますが、これは他意があって入れたわけではございません。先ほどから御説明申し上げておりますように、ココム関係外為法違反をとりたてて罰則強化したい、それを、大臣も申し上げましたようにココム関係以外の外為法違反と一緒くたにして全部五年というふうにすれば、従来どおりの規定でいけたわけでございますけれども、それではココム関係以外の外為法違反を五年に引きずり込んでしまうことになりますので、そうしないでココム関係外為法違反だけをとりたてて罰則強化したいということから、いわばそれをあらわすものとしてこの表現を従来の技術輸出のところから引いてきたわけでございまして、それ以上の理由ではないわけでございます。  また、特別法をつくってはどうかという御意見であったかどうかあれでございますけれども、この件につきましては、現在の外為法の骨格を変えるわけではなくて、罰則強化及び行政制裁強化ということが中心でございますので、わざわざ特別法をつくる必要はないというふうに判断をさせていただいたわけでございます。
  66. 奥野一雄

    奥野(一)委員 私は、決して特別法をつくれとは言ってません。外為法の中からあの条文を取ればいいのじゃないか。  それから、政令を見ますとココム規制品目というのはある程度わかると思う。それは品目がわかるということだけであって、それが具体的に実際に国際的な安全と平和というものをどう脅かすのかということは何もないわけでしょう。それに対して罰則をすると言うからおかしい、私はこう言っているのです。  時間ですから終わります。
  67. 佐藤信二

    佐藤委員長 城地豊司君。
  68. 城地豊司

    城地委員 今ちょうど大臣が参議院の採決の方へ行っておられるのでいらっしゃいませんから、大臣には後ほど、重複はいたしますけれども質問をしたいと思いますが、政府委員の方からお答えをいただきたいと思います。  今回この外為法改正する、その提案理由の中で、私は、何といいますか、これでいいんだろうか、本当にこういうことなんだろうかということで疑問がありますので、最初にそのことについて質問したいと思います。  先ほど提案理由説明があった中で、今回の東芝機械不正輸出事件は云々のところから「極めて深刻な問題であります。これにより、我が国国際的信用が著しく損なわれたことは、まことに残念というほかありません。」という点がありますが、どのように「国際的信用が著しく損なわれた」という判断をされたのか、そこのところを御説明いただきたいと思います。
  69. 畠山襄

    畠山政府委員 我が国ココムに参加をいたしておりまして、ココム自体は国際条約でもないし国際的な拘束力を持ったものでもございませんけれども、そこに参加をいたしまして、そこで約束をいたしましたことは国内法で実施をして、その約束どおりに守っていくというふうに方針を宣明しているわけでございますけれども、今回ココム違反の物資が、理由はとにかく出ていってしまったということで、ココムでの約束に反したということでございますので、そうした意味合いで国際的な信用を傷つけたというふうに考えているわけでございます。
  70. 城地豊司

    城地委員 今のお答えだけで——東芝機械のやったことをいいと私は言っているわけではありません、二軸と九軸というのをごまかしてやったことは確かに悪いことであります。ただ、それの問題が、しかもその先にまた問題があるわけであって、九軸の機械がソビエトの潜水艦のスクリューの研磨に使われて音が小さくなった、それがアメリカの対外戦略に問題があるということで非常に問題が大きくなっているわけですね。  もともと工作機械、私も工作機械に関係しておりましたからあれですが、工作機械の分野は日々進歩している。しかも、ICを使って工作機械はこの数年間飛躍的な大きな発展を遂げている状況であります。そういう中で、やったことは悪いのですけれども、これで言うように「国際的信用が著しく損なわれた」のかどうかという判断は、ただそういう機械を輸出をした、そのことは悪い。だが、悪いことは憩いとしても、私は、日本国際的信用がそんなに著しく損なわれたのだろうかということについて疑念を持つわけでございますが、再度お答えをいただきたいのです。
  71. 畠山襄

    畠山政府委員 確かに御指摘のように、ココム違反と申しますか、そういうことは各国とも幾つかあるわけでございまして、そういう意味では、これも数あるココム違反事件一つである、したがって日本がとりたてて各国以上に国際的な信用を傷つけたわけではないじゃないかという御指摘もあるかもしれませんけれども、ただ、本件がたまたま、今御質問の中にもございましたように、潜水艦の音を小さくすることに少なくとも量的に非常に貢献するんじゃないかという論理的可能性もあって、そのことが西側の安全保障に非常に大きな影響を与えたということの内容の重大さから考えて、単なる一連のココム違反事件とは少し違う意味合いがあったという意味を込めて、「国際的信用が著しく損なわれた」と申し上げているわけでございます。
  72. 城地豊司

    城地委員 これ以上、国際的信用が著しく損なわれたことについて論点を進めようとは思いませんが、さらにこの提案理由の後段の方で「今回の事件重大性を深く認識し、このような事件再発防止のため、あらゆる角度から対策を講ずることが必要であります。」と言い切っています。これも後ほど大臣にも言いますが、先ほど大臣は、あらゆる角度から対策を講ずることが必要だ、私もそう思うのです。ただ単なる罰則とか、ただ単なるこれが出たからそれをということだけの問題じゃなくて、貿易とか商品を売り買いする関係でありますから、しかも物をつくる関係、さらには、先ほども同僚議員が言われましたように、いろいろなものに品物というのは転用することも可能だし、改造することも可能だということからすれば、「事件再発防止のため、あらゆる角度から対策を講ずることが必要」なのであります、これに言うとおり。そして、この一環として今回この法律を出したということを言っているのですが、先ほど大臣は、いろいろ考えて検討したが他に打つ手はない、であるからこの法律しかないんだと言われましたが、この提案理由と根本的に食い違っていると思うのですね。あらゆる角度から対策を講ずる、あらゆる角度から講じた対策はこれこれある、そのうちの一つにこの法律改正もある。だとすれば、あらゆる角度から検討した内容を教えてほしいというのが質問の点でございます。
  73. 畠山襄

    畠山政府委員 大臣が先ほど申し上げましたのは、この外為法改正抜きに対策を考えられないという意味合いを少し強く申し上げたのだと思いますけれども、この外為法改正自体が、本件が民間の企業による虚偽の申請に基づいて行われ起こったということから、まず民間サイドでの遵法意識を強めてもらわなくちゃいけないと考えたわけでございまして、その結果、この外為法罰則をまず強化しなくちゃいけない、あるいは行政制裁強化しなくちゃいけないと考えたわけでございます。  それ以外にどうかということでございますが、それはいかにそういうものを強化いたしましても、民間の中で社内体制と申しますかあるいは社内外の体制かもしれませんが、まず法令遵守の教育の徹底ということが必要でございます。それから、社内におきます内部監査体制と申しますか、そういうものも強化していく必要がございます。今回、七月の初めでございましたか、大臣が百四十九団体に呼びかけをいたしまして、法令遵守基準をつくってくれるようにということをお願いいたしました。その全団体から、現在、法令遵守基準はこういうふうにつくったという報告がございますけれども、そうした中でも今申し上げた法令遵守教育の徹底、それから内部監査体制の徹底、それから社の中で今までは営業優先と申しますか、営業で取引が決まってしまいますとほかの人がだれもチェックせずに物が出ていくというようなことになっていたのを、それを第三者、法務部といいますか、社内の組織ではございましょうけれども、そういう別の組織が別の観点からもう一度見てみるということにもしたいという話もございます。それから、こういった戦略物資につきましては、決済をしかるべき上位の人まで上げていくという社の中の決済体制の強化ということもうたわれております。  ほかにもございましょうが、以上申し上げましたようなそういった民間の企業の中における社内体制、遵法精神、遵法意識の徹底ということが、この外為法改正と並んでもう一つ重要なことであろうかと思います。  他方、政府のサイドにおきましても、今回の虚偽の申請がずっと通っていってしまったという反省に基づきまして、まず通産省といたしましては、これまでややもすれば審査が画一的でございましたものを、もう少し重点的に審査をする要素も取り入れるということで、特定の案件については貿易局の審議富をヘッドとする特別の審査会を設けまして、そこで毎週一回必ず審議をする体制にしていくという重点審査体制をとりますとともに、人数といたしましても、七月十日まで四十数人でございましたけれども、これを内部の定員の振りかえによって現在六十二人といたしております。これをまた来年度の要求では八十人ほどの体制にいたしたいと思っておりまして、そういった人員面の体制も強化いたしたいと思っております。  さらに、政府部内の行政機関の連絡体制も整備をいたそうと思っておりまして、基本的な事項につきましては、もしこの法律を通していただいた段階におきましては、ココム関係の閣僚会議というようなものの設置をお願いいたしまして、通産、外務、防衛、大蔵、そういった各大臣などにお入りいただきまして、そこで基本問題を審議していただくということにもいたしたいと思っておりますし、また、例えば実行面ということでこれに密接に関係をいたしますのは私ども通産省と税関を所管いたします大蔵省でございますので、その通産、大蔵の連絡会議というものも今回設置をいたしまして、その連絡調整に遺漏なきを期したいと考えているところでございます。
  74. 城地豊司

    城地委員 次に、貿易関係全般について伺いたいのですが、今度のこの法案を見てみますとたくさんの問題点がある。そしてこの法案そのものを見ますと、同僚議員も指摘しましたように「国際的な平和及び安全の維持」というような抽象的な文言があるわけでございますし、そういう関係でいきますと、私自身も、貿易全体が伸びるのではなくてむしろ萎縮をするような関係に流れていくのではないかという懸念を持つものであります。  といいますのは、本来日本貿易は、今貿易の問題でいろいろな摩擦は起こしておりますけれども、我々が生きていくためには、貿易立国という言葉の表現がありますように、どんな状態になっても貿易で生きていかなければならない、そういう宿命にあるわけでございまして、そういう状況の中でそういう貿易関係が自由濶達に、そしてもちろん適正に行われなければなりませんけれども貿易状況が萎縮をするというようなそういう関係法律を提起するのはいかがなものかというふうに考えるのですが、それらについてのお考えがあればお伺いをしたいと思います。
  75. 畠山襄

    畠山政府委員 確かに、御指摘のように我が国貿易立国として、自由貿易という考え方のもとで貿易を拡大し経済発展を図ってきたわけでございまして、共産圏貿易につきましても、健全な形で発展していくことが我が国にとって望ましいわけでございます。  ただ、我が国といたしましては、自由主義諸国の一員といたしましてココムの申し合わせを遵守して、戦略物資、技術の無制限的な流出を規制していくことが、主要西側自由主義諸国との円滑な貿易関係発展させていく上で必要だというふうに考えておりまして、今回の改正は、ココム関連貨物あるいは技術の違法輸出について従来よりも厳格にといいますか、罰則なり制裁強化して対応しようというものでございますが、今回の改正において規制対象となる貨物あるいは技術を拡大するということは考えておりませんので、共産圏貿易につきましても新たな支障が生ずるということは法律上ないと考えておりますし、また運用としてもそのようなことがないよう努めてまいりたいと考えております。
  76. 城地豊司

    城地委員 貿易立国については通産省の考え方わかりましたが、例えばこれから日本貿易を考える場合、同僚議員からも先ほど若干指摘がありましたが、要するに今までの貿易相手国、今のままでいいのだろうかという問題があるわけですね。大臣も先ほど答弁されましたが、ココムの参加国十六カ国、日本を除く十五カ国ですか、その国とのいわゆる貿易量は全体の六〇%である。共産圏の量は一〇%以下ということになるだろうと思うのですが、非常に少ない。しかし、少ないにしても共産圏の中には中国というようなものも入っている。ソビエトの場合も、中国よりは若干距離は遠いが、将来の日ソ貿易というようなものを考えていった場合に、必ずしも今のような状況だけでいいのだろうか、そういうふうに私は考えているわけでございます。少なくともココムというのは、対共産圏貿易規制をする内容でありますから、共産圏貿易はやりにくくなるんじゃないかというのが一般的に素人がだれでも考えることなのですが、そういう心配がないというふうにお考えですか。
  77. 畠山襄

    畠山政府委員 今回の規制強化といいますか外為法改正内容は、先ほど来申し上げておりますように罰則制裁強化でございまして、したがいまして違法行為に対する規制強化ということでございます。したがいまして、適法な行為を行っておられる限りは、共産圏貿易に影響をしないというのが法律の条文上の話でございます。  そこで、法律はそれでよろしいわけでございますが、運用といたしましても、今御指摘のように、共産圏貿易も今後の我が国にとって非常に重要でございますので、そういうものに支障がないように十分努めてまいりたいと考えております。
  78. 城地豊司

    城地委員 共産圏貿易も重要だということではなくて、これからは共産圏貿易もさらに重要さを増すということだと思います。  現実、昨日の新聞なんですけれども、新聞の状況だけですべてを判断するわけにはまいりませんが、「共産圏輸出審査滞る」ということで「通産省、約千件が棚ざらし」という大きな見出しできのう新聞に発表になりました。これは日経新聞ですが、とにかく法律審議が国会で始まったら、こんな千件が棚ざらしになって輸出審査が滞るということは、普通はあり得ないことだと思うのです、私の常識では。法律が出たからといってなぜ輸出審査が滞るか。ですから、口でそう考えないと言っても、現実そういう規制強化されるんじゃないか。罰則強化するというようなことになればやはり慎重にならざるを得ないということで、これは人間の社会一般常識がそういうことになるのであって、そういうことがここにあらわれたんじゃないかと考えるのですが、この問題についてはどのようにお考えですか。
  79. 畠山襄

    畠山政府委員 先ほど奥野委員にも若干お答え申し上げたわけでございますけれども、確かに現在私どもの審査が停滞をいたしております。これは、今回の事件が企業の虚偽の申請というものに基づいておったものですから、私どもの審査が少なくとも当面慎重な審査を行わざるを得ないということになっておりまして、先ほどちょっと触れましたように、特定の重要案件と考えられるものにつきましては慎重な重点審査体制をしいたというようなこともありますし、それから個々の審査も慎重になったというようなこともありまして、一件当たりの審査期間が長くなってまことに恐縮でございますけれども、三カ月以上になるというようなものも出てきておるわけでございます。  ただ、こういうことではいけませんので、審査体制の拡充強化を図るということから、先ほど申し上げましたように、七月十日にそれまでの四十数人であったものを六十二人にとりあえず内部振りかえで強化をいたしました。ただ、正直申し上げまして、やはりこの間東芝機械事件への対応、それからこの外為法の策定その他、皆この関係者がやっているわけでございまして、そういった意味でちょっと過渡的には時間がかかるのは、まことに申しわけないけれども実態でございます。  しかし、こういった人員を強化いたしまして、それから来年度の要求でもまた拡充をいたしまして、審査期間をもっと短縮して、共産圏貿易が滞るというようなことがないように努めてまいりたいと考えております。
  80. 城地豊司

    城地委員 この問題については後ほど私の考え方を申し述べたいと思いますが、次に移らせていただきます。  ココムは、三十七年間の歴史を持っているわけであります。しかも当初は、何といいますか国際情勢が米ソの冷戦の中で生まれたココム、それが三十七年のいろんな歩みの中で今日まで来ておる。しかも、このココムの性格がいわゆる国際的な条約ではなくて、お互いに守ろうではないかという、言うなれば紳士協定という形で三十七年間来ていることも事実でございます。  そういうココムでありますが、そのココム統制、ココム規制というようなものの流れもあると思いますが、私は今の技術の進歩、全体的な大きな流れとしては、ココム規制は緩和の方向に流れているというふうに認識しているし、これからも緩和の方向に大きく流れていくのではないかというふうな認識を持っているのですが、それについてのお考えがあればお聞かせをいただきたいと思います。
  81. 畠山襄

    畠山政府委員 ココム規制がどちらの方向に向いているかということはなかなか判断のしにくい点ではございますが、まずココムのリストアイテムの数で申し上げますと、一九五二年、日本が加盟いたしましたころのアイテム数というのは四百三十二品目であったようであります。それが現在は百七十数品目ということでございまして、したがいまして、加入当時に比べれば品目数は減っておるということでございます。ただ途中、例えば一九八〇年でございますが、百四十五品目であったというようなこともありまして、そういうのと比べるとどうかということもありますので、一概に緩和の方向に向かっているということもまた断定しにくいかもしれないと思っております。  ただ、私どもとして常々心がけておりますのは、少なくともその技術一般化をして、何も規制をする必要がないにもかかわらずまだリストに残っているというようなことがないように、そういうものはどんどん外していくようにということを心がけておるところでございます。
  82. 城地豊司

    城地委員 私が緩和の方向に動いていくだろうというのは、今の品目だけの問題ではなくて、世界全体の技術進歩、さらには要するにそういう軍事用の転用の問題とか、さらに例えば一つの例を挙げますと電算機ですね。電算機の進歩というようなこと等からして、電算機の導入というのはもう世界的な常識になってきている。今、どういう社会でもそういう大型の電算機、コンピューターがどんどん入っているという状況でありますし、これは共産圏諸国だって電算機を入れる状況になると思うのです。例えば、かつて我々がソビエトに行ったときに、売店で物を買うときにまさにのろのろと筆算で計算をやっていた。ついこの間、数年前に行ったら、今度リコーの計算機で計算している。やがてもっと高級な計算機になるというように、普通の日常生活の中の生活の態様というようなものもどんどんそういう電算機が入るようになってきている。  かつてアメリカ関係では、中国に対する電算機の輸出問題が大きく社会問題として論議された時期もありました。そういうこと等からすれば、もう既にそういう部門は、確かに大型の計算機であれば軍事用に転用するとかいろんな計算ができるとか、それは当たり前のことなんですね。昔は戦争の道具でも、高射砲だ大砲だなんというのは距離をはかってどんとやったのですが、今は全部それが計算をしてもらえる。これはもう世界じゅうの常識です。子供だってそれくらいのことはわかっているということでありますから、そういう技術の進歩等からして、そういうことで制限する範囲は狭まってくるであろうというふうに私は考えているわけで、そういう意味合いからしても、こういうものを売っちゃだめだとか、こういうものはこうするんだという規制は当然緩和される方向に流れてきているし、またココムというものの性格そのものからしてもそんなにそれを縛るようなことでいけるわけがないというふうに、独断的にそう考えているわけですが、もう一度規制緩和の方向について御答弁をいただきたいと思います。
  83. 畠山襄

    畠山政府委員 御指摘のように、技術はだんだん各国とも進歩をしていくわけでございまして、ココムは単に西側の技術が東側に流れるのをスローダウンさせようということでございますから、東側の技術に存在するものを規制する必要はないわけでございます。したがいまして、東側の技術がある程度進んでいくに対応して規制は緩和されていく、その限りで緩和されていくということは事実であろうかと思います。  ただ、技術というのは、他方で先端分野で進歩もいたしますものですから、先ほど品目でお答えして恐縮でしたけれども、先端分野の方はまた規制が広がっていくということで、先端分野じゃないところの規制は緩和されていくということであろうかと思います。
  84. 城地豊司

    城地委員 このココム問題でひとつ突っ込んで伺いたいのですが、ココムのリストがある。しかし、ココムの運用として、ココムの参加国は規制品目を共産圏輸出しようとする場合には協議をするんですが、規制品目であっても、参加国の全会一致によって、軍事用に使用されない等の一定の条件のもとで輸出を認める特認制度というのがあるわけであります。この特認制度が、ある学者先生に言わせると非常に問題だというわけですが、この特認制度で決められるものがつい最近、昨年でも一昨年でもいいですが、一年間でどれくらいになるのか。  それで、私どもが得た情報では、この特認制度を最大活用しているのはアメリカである、全体の六〇%をアメリカ一国でこの特認制度を活用していると言うと言葉が過ぎるかもしれませんが、特認制度の恩恵を受けているといいますか、そういうことなんですが、それらの真偽のほどもお答えをいただきたい。
  85. 畠山襄

    畠山政府委員 まず、ココムの中に特認制度というものがございまして、その品目につきましては、技術水準の高いものは、例えば日本で申し上げますと通産省限りで輸出承認をするのではなくて、今御指摘のようにパリに送って加盟国全体で承認をして、それに基づいて通産省が改めて承認をするということをやらなくちゃいけないという制度があるのは事実でございます。  そこで、日本はどれくらいその特認件数があるのかということでございますけれども、これらは公表してはいけないということになっておりますので数字は一応御勘弁いただきたいと思いますが、感じで申し上げて、確かに御指摘のようにアメリカの方が圧倒的に特認の数が多くて、そして日本の方が少ないというのは事実でございます。ただこれは、一面から見ますと、さっき御質問の中で御指摘のように、アメリカが特認制度の恩恵に余計浴しているんじゃないかという見方もできようかとは思いますが、他面から見ますと、他面といいますかアメリカなんかが言っておりますのは、日本は本来特認に申請すべきものを申請してないんじゃないか。例えば、アメリカの言っている話ですから必ずしも本当だという意味じゃございませんけれども、通産省限りで承認をしてしまっているんじゃないかというような疑いを指摘もしておりまして、それでどっちが本当に有利なのかというのはいろんな議論が存在するというのが現状でございます。
  86. 城地豊司

    城地委員 この特認の問題も数字が公表されない、ただ非常に大きいということだけの話では論議がかみ合わないわけでございますが、しかし考え方によっては、ある基準を決める、そして特認がある。特認の数が庁方がべらぼうに多い。今アメリカがこう言っているということでありますが、日本の通産省が特認をわざわざココムヘ申請もしないでどんどん認めているなんて、そんなばかなことをやるはずがないのであって、これは明らかに品目の選定そのことに問題があるんであって、特別ですよとか例外ですよというものがそんなに多いということは、どう考えても一般論としては納得できないわけです。ただ、ということは、品目で決めておいても出せば特認になるということなので、そういうところに逃れ道が一つあるというふうに私は自分の経験から判断をするわけなんですが、しからば特認制度をやめるといいますか、そういうことについてどう考えるわけですか。
  87. 畠山襄

    畠山政府委員 先ほど申し上げましたのはアメリカが、一部がそう言っているというだけの話でございまして真実だというわけじゃございませんが、ただその品目のくくり方とかそういうものがございまして、その品目のくくり方が細かいと例えば件数が多くなるとかそういうようなことになりますので、その辺の違いがあろうかということはあるわけでございます。今のは件数でございましたけれども、金額的に言うとほぼ見合っておるんじゃないかという意見もあるわけでございます。いずれにいたしましても、これは加盟十六カ国で議論をしながら決めていく問題でございますので、一国が自分の利益のために乱用するというようなことは制度上できないというふうに考えております。
  88. 城地豊司

    城地委員 ココム規制問題と、それから特認制度にあらわれておりますようにココムの運営そのものは、そういう意味では、我々が考えるに、どこかで何かを決めて守らなければだめだよというようなそういう性格でない。言うならば、ある意味で緩やかな紳士協定で成り立っておるわけでありますから、緩やかなそういう制限といいますかそういうことであるということは、この特認制度一つ見ても私は理解できると思うのです。ココムというのは本来条約でもないし、紳士協定なんで、お互いに守りましょうやということで三十七年の歴史を経てきているものだというふうに判断しております。  次に、今回の東芝機械ココム違反問題について、概況は一般の週刊誌その他でも私どもは十分知っているつもりでございますが、この違反事件は最後にこれが決め手だと、やはり東芝機械はこういうことで違反をしたということが確認されたのは、どこで確認されたわけですか。
  89. 畠山襄

    畠山政府委員 若干の経緯を申し上げさせていただきますと、最初、一九八五年十二月にパリの事務局へ投書がございました。これは、元和光交易のモスクワ支店長という人からの投書でございました。その投書が日本に回ってまいりまして、私ども関係企業のヒアリングを十回行いました。その間に、関係五省庁連絡会議という外務省主催の会議を三回開きました。  それで、その十回のヒアリングを通じまして、東芝機械が主張したことは次の三点でございました。第一点は、今度の輸出した機械はハードとしては九軸であるけれども、同時制御は二軸しかできないということでございます。二点目は、NC装置はコングスベルクから輸入してきたものであるけれども、そのNC装置も二軸である旨のコングスベルク社の証明書があるということでございます。それから、第三点目はプログラムでございますが、プログラムというのは、最初に輸出いたしました九軸がどうも向こうでぐあいが悪くなったようでございまして、一部ハードの修理をしたようでございます。それに伴ってソフトも直さなければいけなくなったということがございまして、そのプログラムでございますけれども、これも二軸用であるという三点の主張をいたしたわけでございます。  それで、ノルウェーの証明書もありましたし、それからハードは、例えば十三軸だけれども同時制御は六軸しかできないなんという機械も世の中には間々あるわけでございまして、これは城地委員お詳しいと思いますが、そういうものがあるわけでございます。それから、最後についておりましたプログラムの点につきましても、これは試験所で検査をしてもらいましたが二軸か五軸かよくわからぬというようなことでもありまして、そういうことから私どもは、違反であるという明白な証拠は見出されなかったという回答を先ほどの三回目の五省庁連絡会議にして、そして外務省から回答をしてもらったということになっているわけでございます。  二回目は、昨年の六月ぐらいに同じ投書がアメリカに回りまして、アメリカから同じ問い合わせがございまして、それであれば前回にさんざんヒアリングをしたりして調査した結果があるから、こういうことであったよという回答をしたわけでございます。  三回目は、去年の十二月でございましたけれども、このときに初めて潜水艦の低騒音化に関係があるのじゃないかという指摘があったわけでございますが、そういうこともあってこれは深刻な問題だという指摘アメリカからあったわけでございます。その際に私どもは、しかしながらその投書の案件、データであれば既に調査をしているので、それ以外に何か根拠があるのかというやりとりをいたしておりました。それが一、二月でございます。その結果、若干の材料も三月ぐらいに米側から参りまして、そのころ私どもは調査をもう一度本格的にやってみようという決意を固めまして、そして四月の初めに、私ども貿易局それから機械情報産業局のチームが日曜もずっと出勤をいたしましていろいろな観点から調査をし、配線図等々も見た上でチェックをいたしました結果、東芝機械が実はということを認めだというのが経緯でございます。
  90. 城地豊司

    城地委員 東芝機械問題は概況だけで結構ですが、次に、東芝機械のみの問題ではなくて、日本の工作機械業界がここ数年来ICを非常に活用しNC機械をどんどんつくり、それらが世界各国へどんどん輸出されている。日本国内でも相当使われている。まさに世界で他の国が肩を並べられないぐらい工作機械業界は活況を呈しているし、それだけいろいろなところに力を注ぎ、研究をし、やってきたのではないか。ですから、アメリカに対する輸出にしても、機械類の中でも工作機械は恐らく五〇%ぐらいを占めているのじゃないか。そういうことの中で、一昨年ですかアメリカから工作機械に対する輸出規制の話し合いがなされて、その最終的なまとめが日本が自粛をするというのですか、そういう関係で落ちついたように私は報道で承知をしているのですが、そういう工作機械業界の現況、さらに日本アメリカのそういうトータル的な工作機械産業の置かれている現況から見て、私は日本の方が非常に進んでいるのじゃないかという印象を、自分がそういう機械の関係関連していたことからそういうように思います。日本中小企業なんかでも、NC機械というのは今どんどん入れています。こんな小さい工場でよくこういう機械を入れられるな、一億の単位の機械を三十人、五十人というような工場へ入れて加工している、そういう現実を目で見てそういう感じがするわけですが、通産省としてはこの工作機械業界の現況をどのように見ておられるか、お答えをいただきたいと思います。
  91. 児玉幸治

    ○児玉(幸)政府委員 工作機械の業界事情につきましては、むしろ城地先生の方がお詳しいのではないかと思うわけでございますけれども、仰せのように、日本の工作機械業界というのは今や生産額あるいは貿易額を見ましても世界一というのが実情でございます。比較のために申し上げれば、例えば生産額は、ちょっと古うございますけれども一九八五年には五十三億ドルでございまして、第二位の西ドイツが三十一億ドルでございます。     〔委員長退席、臼井委員長代理着席〕  それで、どうしてこういうふうに発展をしてきたかという点につきましても、御指摘のとおりでございます。日本はユーザーのニーズに非常に柔軟に対応いたしまして、NC旋盤であるとかマシニングセンターといったような、汎用のNC工作機械の分野で非常に強い競争力を持つようになったわけでございます。アメリカとの貿易摩擦についてもただいまお触れになりましたが、実は一九八五年ごろには日本からアメリカ輸出される工作機械が、NC旋盤あたりで七〇%以上、マシニングセンターでは八割に近いようなシェアを占めるというところまでいったわけでございます。これは、裏を返しますと、アメリカの工作機械業界がそういったNC化の大きな流れになかなかうまくついていけなかったということがあったのではないかと思われるわけでございます。そういう状況の中で昨年十一月に、とりあえず五年間でアメリカ側もアメリカの工作機械業界の再建のためにいろいろ努力をするということでございますので、それを前提といたしまして日本側で自主規制に踏み切ったわけでございます。  それでは、日本の工作機械業界というのは世界一かということでございますけれども世界一であるかどうかをはかる物差しというのは実はいろいろあるわけでございまして、今話題になっておりますNC化率ということで申しますと、これはもう文句なしに日本世界一でございます。毎年生産されます工作機械の中でNC装置つきのものというのは、例えば昨年あたりは日本では七〇%弱のものはNC化されている。一方、アメリカの場合には三割だというふうなことでございますから、そういった面では日本世界一でございます。しかし、工作機械はそればかりが生命ではない。いかに高精度の加工をするかとか、工作機械全体をシステムとして組んでいくというふうな技術もまたあるわけでございまして、公平に見まして、そういった高精度の加工とかシステム化という点においては、やはりまだアメリカがすぐれているのではないかなというのが実態でございます。
  92. 城地豊司

    城地委員 大臣がお見えになりましたから、大臣にもいろいろとお考え方を伺いたいと思います。  今、工作機械業界の現況について御説明をいただきました。それと関連して、貿易全体の中でいろんなトラブルが日本アメリカの間に起こっている。かつてカラーテレビ問題が起こり、そして自動車の輸出規制の問題が起こり、今の工作機械の自主規制の問題も起こり、そして一番衝撃的な最近の状況は半導体の報復関税の問題だと思います。言うなれば、半導体の報復関税なんかは、世界的ないろいろな識者の意見を聞いても、やはり本来とられるべきでないというのが大勢だと私ども思うのです。自由な競争であれば、ああいうような報復的なものをとるべきでないと思うのです。私が日本立場でそう言うということでとられるとまた困るのですが、そういう点からして、大臣は特にこの責任者として非常に苦しい立場でいろいろやられてもおるし、この半導体の報復関税問題は、こういうことにしないでほしいという要請も恐らくされたと思うのですが、大臣はこの半導体報復関税問題をどのように認識しておられるか、お伺いをしたいと思うのです。     〔臼井委員長代理退席、委員長着席〕
  93. 児玉幸治

    ○児玉(幸)政府委員 大臣がお答えいたします前に、私ども今この問題とどういうふうに取り組んでいるかという点につきまして、経過を御報告いたしておきたいと思います。  御案内のように、ことしの四月十七日に、半導体につきましてアメリカ側が日本だけを差別して一方的に関税を一〇〇%に引き上げたわけでございます。このこと自身が非常にルール違反でございますし、また昨年の九月に締結いたしました日米半導体協定の精神にも非常にそぐわないわけでございます。私どもといたしましては、協定遵守のためにさまざまな努力をしていた最中でございまして、この協定で期待しておりますような効果も逐次上がりつつあった矢先に、そういうような措置アメリカ側がとったということでございます。  したがいまして、四月十七日のアメリカ側の措置採用以来、これを一日も早く撤回させるために、例えばすぐその直後に東京で大臣とヤイター通商特別代表との会談もございましたけれども、その席でも非常に強力に撤回の働きかけを大臣からしていただいたわけでございますが、一方アメリカのとりました措置そのものがガット違反でもございますので、四月十七日に直ちにガット違反だということでガットに提訴もいたしたわけでございます。その後は、御案内のように日米間でいろんな交渉もし、他方ガットにおきましてもいろんなことをやってきたわけでございまして、六月のベニスのサミットの際に、日米間の話し合いで三億ドルのアメリカ側の措置のうちの五千百万ドルが撤回されたということでございます。また、ガットにおきましても、この八月の初めでございますが、日米間でガット違反だという問題について激しくやり合ったところでございます。  まだ結論が出たわけではございませんが、そういったさまざまな形で、一日も早くこの措置の撤回を私どもとしては働きかけるために、全力を挙げているところでございます。
  94. 田村元

    田村国務大臣 今、参議院の本会議から帰ってまいりまして、今までの御質問を聞いていなかったものですから、失礼しました。  今、児玉局長が申したことで尽きると思いますが、私ども半導体問題につきましても、極めて強い懸念を抱いております。この半導体問題は、市場アクセスの問題はヤイター代表のところであり、そしてダンピングの方は商務省でございます。ヤイター代表と私と二人で約二時間近く、さしで話し合ったわけでありますが、その間、私が強く迫りましたのは、明らかにガットにそぐわないものであって、即時撤回してもらいたい、これが一点であります。それからいま一つは、日米半導体協定に対する解釈の統一見解をもう一回はっきりしようじゃないか、そのために専門家協議をぜひお互いに持ちたいものだということを申しました。  いずれにいたしましても、この半導体問題の場合も、私が感じたところで申せば、結局貿易不均衡、アメリカの財政赤字等々による、特に議会筋のいら立ちというものが行政府をしてあのように走らしめておるのではなかろうかという感じがいたしました。これはもちろん、私の単なる直感でございますけれども、そのように感じた次第であります。
  95. 城地豊司

    城地委員 この問題はもう一つの点だけでとどめたいと思いますが、きのうの新聞報道で日本製コンピューターの配線板、マザーボードに対して一〇〇%の報復関税をするとアメリカが発表したということでありましたが、これについて状況をどのように把握しておられるか。
  96. 児玉幸治

    ○児玉(幸)政府委員 先生がお尋ねの件は、プリント基板にマイクロプロセッサーその他いろいろなものを装着したものが、アメリカで輸入されます際にどういう扱いを受けるかという問題であろうかと思うのでございます。  実は、正直申しまして、まだ正確なことがわかっていないのでございまして、調査中でございます。いろいろ調べてみなければわからない点があるのでございますけれども、今まで部品として向こうで輸入する場合に無税であったものが、いやこれは部品でない、例えばマイクロプロセッサーをつけたものはコンピューターと同じものであって、物によりましては、まさに現在アメリカが半導体問題に関して制裁をいたしております対象のパソコンと同じようなものでないのかというふうなことを言っているというのが一つの物の見方でございますが、いやそういうことではなくて、むしろ税関の実務の運用の中で、場所によりいろいろの物の解釈に混乱があったのを、この際一本化しようとしているんだというふうな議論もあるわけでございます。  いずれにいたしましても、一刻も早く実態を解明いたしたいと思いますし、また、こういったたぐいのものにつきまして、単純に解釈の差でございますというふうなことで、今まで無税であったものが突如として制裁の対象になるようなことではもちろん困るわけでございますので、実態をよく調べた上で、私どもの方としてもきちんと対応してまいりたいと思っております。
  97. 城地豊司

    城地委員 お互い国と国の貿易とか、国と国の立場というものは、やはり話し合いそれからお互いに相手を尊重するという立場でなければ、そういう意味での友好関係貿易関係というようなものは成り立たないと思うのです。今のお話を伺いまして、どうも最近アメリカ全体が非常にいら立っている感じがするし、そういうことがいろいろなところに出てきているんじゃないかというふうに思います。  いら立ちの原因はどこにあるかということについては、本委員会で特別にやるよりは、むしろ外務委員会とか衆議院本会議等々でやるべきじゃないかと思いますが、いら立っている原因、それらの原因を取り除いていくことがこれからの日米通商問題を考える際に必要だと私は考えておるわけだし、そのほかにも、今後の日本貿易のあるべき姿、さらにはココム規制の問題、先ほどの工作機械の関係、半導体の問題、これもこれもまたこれもという状況が出ている。しかし、日本にとってアメリカは最大の顧客でありますから、そういう意味ではどうも日本が弱い。先ほど同僚議員も指摘されましたように、昔はアメリカがせきをすると日本が風邪を引くという言葉が大分はやりました。このごろはそういう言葉ははやらなくなりましたけれども、どうもそういう感じがしてならない。そういう意味では、日本の国会もはっきりするところはしていく。大統領とか議会のあり方等々について体制が異なるということはわかるにしても、私はどうもそういう感じがしてならないのでございます。  そういう意味合いで申し上げますと、アメリカの対日戦略といいますか、極端な言葉を言うと、こういう貿易とかココム問題というようなことだけからの判断でございますけれども、どうもアメリカの対日政策が変更してきているのかな。今までは仲のいい弟分日本ということで来たのが、このごろはどうもそういうかわいい弟というよりは、むしろ弟もでかくなったな、このままにしておいたら本家は乗っ取られてしまうというような、例えは悪いのですが、そういう感情に流れが来ているのかというふうな疑念も持たざるを得ないような事柄が非常に多く起こっているわけでございます。そういう点について、大臣の方で御感想がありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  98. 田村元

    田村国務大臣 おっしゃるような指摘にも我々耳を傾けなければならぬかと思います。結局、アメリカ貿易赤字の三分の一ほどは日本にやっつけられておるということも大きなことでございましょう。いろいろとあると思います。これは通産大臣としての御答弁と申しますよりも、むしろいずれかの日に外務大臣にお聞きをいただいた方がいいかもしれませんけれども、いろいろとあると思います、彼らの不満もあるだろうし。けれども、だからといってやっていいこと悪いことというのは、率直に我々も指摘していかなければならぬと思います。同時に、日本の企業のモラルの確立というものが喫緊の急務という感じもいたします。  いずれにいたしましても、このような日米関係。において日本も一緒になっていら立ったら、これは大変なことになってしまう。我々はあくまでも冷静沈着に、しかも非常に微妙なときですから、時流の感覚も身につけながら対応していくべきであろう、このように思いますが、それにいたしましても、アメリカの対日戦略が変わったと私は思いません。むしろそれよりも非常に単純に、いら立ってわあわあ騒いでおるところが多いのじゃないかと思いますが、日本の対米政策という点ではいろいろと考えていかなければならぬことが今出てきたのではなかろうかというふうには思います。     〔委員長退席、臼井委員長代理着席〕
  99. 城地豊司

    城地委員 一般的な日米の貿易の問題はわかりました。  今度の法案の中身関係で二、三お伺いをしたいと思います。  刑罰が三年が五年になったとか、いろいろ罰則強化するということでこの法案の改正がなされておりますけれども、この罰則強化問題だけではなくて、例えば今回技術提供関係でもそういう罰則が適用されるということが出てきているわけでございますが、そういう意味でいきますと日本技術アメリカ技術、まさっている分野、劣っている分野、いろいろあると思うのです。日本だってそのことは十分わかっているし、アメリカもわかっている。とすれば、例えば技術提供の形態なんかでも、大学教授がアメリカヘ行って講演をする、日本のトップ技術技術屋がアメリカヘ行って講演をする、さらにはアメリカでなくてココム規制国へ行って講演をすることだってあり得るわけですね。このごろ非常に大学教授の交流が頻繁でありますから、ソビエトヘ行く場合もある。中国でも、ある技術の水準の高いところを呼んで、そういうものを参考にする。学会なんかも持たれますし、話は違いますが、今度国際人口問題なんかの国際会議も中国で九月二十三日から持たれるという、そういうことでどんどん国際化、そういう関係の研究者の交流というものが持たれると思いますが、そういう講演やったり研究者の交流が、今回のこの罰則強化でさらに範囲を拡大してやられるんじゃないかという心配が一部になされているのですが、これについては心配はございませんか。
  100. 畠山襄

    畠山政府委員 この問題は大変デリケートな問題でございます。したがいまして、理論的には個人の学者技術提供を行ってしまうということもないじゃないと思いますけれども、ただ、二十五条第一項第一号で今度規制対象に掲げます技術は、特定貨物の設計、製造、使用に係る技術ということでございまして、したがいまして純粋な学問的研究のようなもの、そういうものは対象にならないというふうに考えております。また、向こうで秘密のことをどこかですっと学者が教えちゃうというのは別でございますけれども、公になったものをまた向こうで公にするというようなことは、これは別にこの法令に触れるものではないというふうに考えております。
  101. 城地豊司

    城地委員 非常に心配のあるところでございます。  今御答弁がありましたが、例えば研究の分野と設計の分野というのはもう紙一重で、研究の成果が設計にあらわれるわけで、口で言って、こういうふうに組み立てればこうなると言うのはそれは研究でありますけれども、それを図面にちょっと書けば完全な設計ということになりますし、頭の中で考えることだって設計と言われる分野があるので、そういうことについては非常に運用は難しいと思うのですね。これほど高度化してきますと、普通でもソフトだって紙と鉛筆があれば今世の中で仕事ができる。そうすると、技術者が不足していますから、あなた、紙と鉛筆持っていらっしゃいということでどんどん仕事ができます。私の友人なんかでも、自宅で仕事をやっているのですね、ソフト技術者で。何だ、おまえ毎日会社へ行かなくていいじゃないか、いや、おれはここにいたって頭使ってあれすればいいんだというような時代になってきているし、女性のそういうソフト技術者も養成されてきておりまして、家庭の主婦をやっていながら一日何時間がやってそれでちゃんと仕事ができるというようなことがあるわけです。ですから、頭の中で考えていること、それが具体的に表面にあらわれなくても、このごろはそういう時代になってきておりますので、そういう意味ではソフト技術等との問題、それは学者の講演だとかそういうものにも及ぼされるといろいろな意味での支障がありますので、これはやられる場合には十分配慮していただきたいというふうに考えております。  それから、今回貨物の無許可輸出の未遂犯についても行うというふうに範囲を拡大されているようでありますけれども、私は、この未遂の犯罪の場合には非常に難しいと思うのですね。そういう気持ちがあってやった、具体的に船に積み込んだまでやられれば、ああ積み込んだじゃないかということで指摘はされますが、例えば積み込む場合でも、それだけ積み込んだのか、一緒にこん包してやったら、十個こん包したがそのうち九個があれで、一個だけ間違って入れてしまうというようなこともあるわけだし、そういう点では外為法によって未遂までやるというのはちょっとどうかなと思うのですが、その辺についてのお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
  102. 畠山襄

    畠山政府委員 この未遂罪を今度入れることにいたしましたのは、従来は、例えば税関でココム違反といいますか輸出貿易管理令違反みたいなのが見つかりましても、それじゃやめました、今度は国内に売りましょうということになりますると何らとがめることができないという状況であったわけでございますので、今回は法の規制をより実効あるものといたしますために、保税地域に搬入をしたというのを一応の目安にいたしまして、これは関税法の判例でそういうのがあるわけでございますけれども、それを一応の目安として規制をしていこうと考えているわけでございます。それで、外為法上の輸出の開始時点それから完了時点の解釈というのは、一応関税法と一致した解釈を行っておりまして、関税法においては既に未遂が罰則の対象となっており、そしてその未遂は今申し上げましたように貨物を保税地域に搬入して輸出申告を行った時点で未遂が成立すると考えておりますので、そのような運用をしていけば、余り法的安定性も害されないのではないかと考えております。
  103. 城地豊司

    城地委員 外務省、見えていますね。先ほど同僚議員からも質問がありましたが、今回の外為法関係でどうしてもわからないことの一つに、外務大臣がなぜこういう輸出を承認する関係の中に出てこなければならないか。「国際的な平和及び安全の維持」ということだから外務大臣だというのですが、どうしても理解できないのです。商売をやる、ココム規制がある、しかしそれに対して外務大臣意見を聞く、その必要があるのだろうか。ノーという意見が出たらやめるのだろうかというところまで考えますと非常に微妙な問題をはらんでいるし、もともとこの表現が「国際的な平和及び安全の維持」という概念でやられておりますので、それについて外務省としてどういう御見解を持っておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  104. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 外務省と通産省の間におきましては、これまでもココムのいろいろな会合でありますとかココムの規則の執行面、あるいは外国からいろいろと容疑の可能性があると言って指摘された場合等、あるいは今回の東芝機械事件の処理ぶり等をめぐりまして、緊密な協力体制のもとで対処してきております。今度外為法改正を機に法律上も、通産大臣は特に必要があると認めるときは外務大臣意見を求める。あるいは、「外務大臣は、国際的な平和及び安全の維持のため特に必要があると認めるときは、」特定の規定の運用に関し通産大臣意見を述べることができるという規定を入れていただいたわけで、今後、従来からやってきました緊密な協力関係というのを法律上も明記していただいたということです。  外務省として、例えば特に通産大臣あるいは通産省に意見を申し述べる場合としまして、今過去の協力関係について申しましたけれども、外務省としても外国といろいろと接触しておりますものですから、外国からいろいろと情報を得る場合が多いものですから、そういう情報について通産省に提供すると同時に外務省の判断を述べるとか、あるいは国際情勢等に照らしてどうだろうかという点を中心に意見を申し述べるということかと思います。
  105. 城地豊司

    城地委員 はっきりしない答弁なんですが、要するに外務省と通産省がどういう立場で仕事をしておられるか、そのことは私も概念的にわかっているつもりなんです。外務省は、それは海外にたくさん大使、公使を派遣していますし、とにかく日本国を代表してアメリカに、日本国を代表してソビエトにいるというのが外務省の仕事であるし、それから対外的なものでやられることは十分わかります。しかし、商売の関係で外務省がどうこうする必要はないし、現に今度の東芝事件で一も、省庁間の連絡でその実態はどうなのかということを把握するために外務省も参加をしていると先ほど答弁がありました。当然そうだと思うのですね。通産省だけでやるのでなくして、その意見とか状況とか情報とかを提供することは何ら差し支えない。それが条文になければ情報の提供ができないというほど、日本の官庁は幾ら縦割り行政とかいっても、それほどかたくなにやっているというふうには考えておりません。したがって、こういう条文がなくても、いたずらにこういう条文を入れて何かその中に踏み込めるというようなことで規定をしなくても、従来の運用でできるのじゃないかと思うのですが、その辺についてはどのようにお考えですか。
  106. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 確かに従来、特定のいわゆるこういう意見をお互いに述べるという条項が法律上なくても、実態上いろいろと運営されてきたわけですが、今回は、通産省といろいろとお話をした結果、法律上もそれを明記していただくということになったわけです。さきに貿易局長から、今度の外為法改正と同時にいろいろと政府部内で検討しておられる輸出管理体制の強化の具体例が説明あったわけなんですが、その一環としてとらえていただければよろしいかと思っております。
  107. 城地豊司

    城地委員 これは最後に結論を申し上げるときに、今の外務省問題等についても考え方を述べていきたいと思います。むしろ「国際的な平和及び安全の維持」という条文が表面にクローズアップされてきた、だから外務省が関与しなければならないというふうに考えるのは、どうも法の運用その他考えますと行き過ぎじゃないか。でなければ外務省が関与できないかというような、そんな問題ではないわけであるし、一朝事ある場合には何省何省の垣根を全部取っ払っても、日本の国の何がどうなるのかというときには、当然お互いに知恵を出し合うということは当たり前のことでありますから、そういう意味では、最後に私の考え方は申し述べたいと思います。  先ほども若干質問いたしましたが、今審査が若干滞っている実情については貿易局長からのお話である程度理解はできました。しかし、新聞その他の報道機関でも、最近全体的に非常に事務が停滞して、中小企業の中には、一、二カ月で終わらないで五カ月もかかっているものもある、このままでは相手からは物が来ないといって違約金を取られる、であるから解約をするものが出ているという新聞報道もあったように記憶しています。     〔臼井委員長代理退席、委員長着席〕 そういう意味で、審査事務の停滞が中小企業に与える影響はやはり大きいと思うのですね。たとえ一カ月であっても十日間であっても大きいと私は思いますが、それらについての対策は、何か先ほど人員が四十名から六十名、そして次のときには八十名、そういう点での人的な配置の問題はお伺いしました。それは必要なことだし、そういう意味で前向きに取り組んでおられることは十分わかるのですが、一方では、今度は審査をさらに厳密にやり過ぎる。厳密にやってもやらなくても、それはしかるべき人が見ればある意味ではわかるものなんですね、専門家は専門家で。私は今までの仕事の経験で、ここの中にちょっとおかしいところがあるかないかというのはある程度判断できるし、そういうものは本来としてはぽんぽんやる、後でだまされてどうしたというのは余りないのが普通なんですね。そういう意味中小企業の問題、特に深刻な問題だというふうに私受けとめておりますので、そういうことがないのか、これからそういうものは改善されるのか、お答えをいただきたい。
  108. 田村元

    田村国務大臣 企業側から見れば、外為法を初めとしてこの対策がどのようになるのだろうかということを今かたずをのんで見守っておるということだろうと思いますし、また率直に言いまして、これは役人答弁はできないでしょうから私があえて申し上げるのですが、役人の方もあつものに懲りてなますを吹くのところが若干あるのじゃなかろうか。そういう萎縮があって、それで少しいろいろと重箱の隅をほじくるようなところがあるいは指摘されるかもしれません。でございますが、私はもう肩の力を抜けと言っておりますので、恐らく極めて近いうちに常態に戻るであろう、今御指摘ございましたように恐らく二、三カ月ぐらいで流れがうまくいくような姿に戻るであろう、このように思っております。今はちょっと転換期で、しかも一種の動乱期と言っていいか、そういうことでありますので、今をもって将来を見通しされることは、ちょっと私としてはそこのところをよろしくとお願いを申し上げたいということでございます。
  109. 城地豊司

    城地委員 今度の東芝機械事件を契機にしてこの法案が提起をされたということでありますが、ヨーロッパ全体の感じとしては、割合冷ややかにというよりは冷静にというか、そういう見方で見ているという情報を得ているわけでございます。東芝機械問題が起こったから罰則強化をしてやるんだというのは日本だけ。当該国のノルウェーでもやられたような話もありますけれども、そういう意味では、最初に若干質問いたしましたように、私は罰則強化でこの再発を防げないという立場でありますからそういうように感ずるのかもしれませんが、西欧諸国の対応状況、それはどういうふうになっているか、お伺いをしたいと思います。
  110. 畠山襄

    畠山政府委員 西欧諸国の対応状況でございますが、今御指摘になりましたように、ノルウェーは罰則が今六カ月でございますけれども、これを五年、それから時効を十年に延ばすということで、この秋の国会で審議をしてもらうということを言っております。その他の諸国は具体的な動きはありませんが、ただ一部の国で、例えば罰則を三年のところを五年に延ばすところを内々検討をし始めだというような国もございまして、確かに御指摘のように、自分のところへ今この事件がかかわり合ってこないようにというふうな、少し静かに見ているという空気がございますが、内々ではもう少しココム強化に国内執行面から協力をしていこうかという動きがあるように察知されます。
  111. 城地豊司

    城地委員 一番最初に、大臣がおられなかったときに貿易局長からお答えいただきましたが、私は、今度のこの種の事件を二度と起こさないようにするためにこういう罰則強化してというようなことでの提起がされておりますけれども、基本的にはこの提案説明で申されました、要するにあらゆる角度からこの再発防止を検討する。そして、先ほど貿易局長からもお答えいただきましたが、教育の徹底とか内部監査体制とか法令遵守の思想の徹底とか、営業優先を転換してチェック機構を各会社ごとにつくるとか、決裁体制の強化とか、むしろそういうことが必要なんであって、罰則強化したからそういうことが防止されるのじゃない。むしろそういう意味では、やはり各会社とも、東芝は何かそういう体制を内部でつくったと新聞報道で伺いましたが、そういうことこそ必要なんであって、罰則をたまたま強化すればそういう事件再発防止ができるんだというようなことではないというふうに考えておるわけでございます。  しかも、このココムの三十七年の歴史を見て、ココム規制が緩和の方向に行っているというふうに私は思いますし、そういう意味で、それらを緩和でなくて強化をするという方向に行くのはむしろ逆コースである。さらには、先ほど申し上げましたが、外務省にこの中に一枚加わってもらうというようなことは、あえてこういう外為法の中にそんなことを入れる必要はないというふうに考えておるわけでございますが、それらの考え方について、大臣からお考え方があればお聞かせをいただきたいと思います。
  112. 田村元

    田村国務大臣 実は、東芝機械の問題が出まして、アメリカがガーン修正案なんというのを出して大騒ぎを始めた。テレビには、東芝のラジカセをハンマーでぶっ壊すというようなところが出てくる、いろいろあったわけでございます。  そこで、私はアメリカヘ行きます前に、省内でいろいろな角度から討論をさせました。結局、アメリカ人と日本人の感覚の違い、あるいはヨーロッパ人と日本人の感覚の違いの中に一つ顕著な違いがある。それは、外国人というのは割合に国の安全とか防衛とかということに敏感であります。ところが日本の場合は、私をも含めてということになるんでしょうけれども、四十二年の平和、しかも平和憲法が今や定着して、そうして企業の企業機密はあり得ても国家には秘密や機密はないというような社会風潮がだんだんと広がりを見せておって、これがまた定着をしてきておるというようなことから、ココム等に関する感覚がおよそ諸外国とは違う面がある。全面的に違うとまでは申しませんが、日本人の場合、その点確かに外国から見ればいら立ちの種になるような感覚を持っておる。そうして、ただただ稼ごう稼ごうというところがあるように彼らは見るわけですね。  我らには我らのまち言い分はありますけれども、そういうことがございまして、いろいろな角度から検討しまして、そうしてこれは罰則強化もやむを得ないのじゃないかということで、小学生じゃない大の大人が、しかも企業のことですから、例を引くのもまことにどうかと思いますが、時に体罰も要るのじゃないか、体罰の強化も要るのじゃないかというようなことから罰則強化、そしてそれは同時に時効の延長にもなるということでこれを採択した。  そうしてまた、率直に言いまして、外為法改正につきまして省内で本当にいろいろな議論があったのです。いろいろな議論がございました。一たび省論一致すればといいますか、結論が出れば皆それなりの統一見解で答弁をしておりますけれども、それまでには大変な議論もあったのです。そういうことでございまして、もろもろの対策も講じていこう。  私は、四十二人を六十三人、八十人、これも率直に言って何人がいいかということより、数が少ないのはかわいそうだ。二十万件ですから、四十二人を八十人にして果たして二十万件の責任がとれるかどうか。失敗が出れば責任問題ですから、私も随分やめろやめろ言われて、このライセンスを出したのは昭和五十六年八月の出来事なんですけれども、ですからいろいろな通産大臣関係あったのですが、どういうわけか私のときに問題になって、私はもうやめるんだからいいですけれども、役人の場合は本当にかわいそうです。ですから、私は八十人でも足りないと思っておりますから、なお大臣レベルでこれを幾らかでもふやすように努力をしたいし、将来またこれをふやしていきたいと思っております。ふやすように努力してもらうように、私の意見を残していきたいというふうに思っております。  外務省との法律の問題、これは役人というのはなかなか予算とか権限に関しては、私は根っからの党人政治家ですから、もうこれが東大出がなと思うほど愚かなところがあります。愚かというか哀れな感じすらいたしますが、しかしこの平和と安全という問題、これはやはり国際的な感覚も必要といたしますから、これは私どもはもう二十五条で使っておる言葉ですし、四十八条へそれを持っていくだけのことなんで、ココムは別よ、ほかのものがココムのあおりを食らったらかわいそうだよという意味のけじめなんですけれども、だからといって、外務省の国際的感覚というものも聞いていいんじゃないかということで、あえて協議にしないで意見をお互いに言い合うということにしたわけでございます。
  113. 城地豊司

    城地委員 時間があと五分しかなくなりましたので、結びで私の考え方を申し述べたいと思います。なお、それに対して御見解があれば伺いたいと思います。  先ほどからいろいろ質疑を通じて理解をされたこともある、しかし質疑を通じてまだ十分にはっきりしない点もあるかと思いますけれども、私は、今度のこの法案、このことで日本自由貿易は若干阻害をされる危険性があるというふうに思います。これはやり方にもよりますから、必ずしもそういうことではないという反論もあると思います。私も、やり方さえうまくいけばそういうことがないかもしれませんが、原則的に、流れとして考えてそういう危険性がある。  それから、この共産圏輸出の問題については私どもの仲間でもいろいろ相談しているのですが、将来の日本貿易のあるべき姿、それはただ単に、今輸出も輸入もアメリカとの取引が一番多いわけですが、しかしそのままで果たして二十一世紀に入っていいのかどうかということで考えますと、やはり日中貿易の占める割合というようなものを大きく考えなければならない。今中国が外貨不足で悩んでいるとすれば、三十年間無償貸与してでも中国にそういう需要を発生させて、そして日本と共同してどんどん経済的に成長してもらうということも必要なんじゃないか。日本のいわゆる経済的な成長政策としてもそれが必要だという一面もあると思います。そういう点では、今度のこの法案は、むしろ逆にそういうことをやりにくくするという一面もあると思いますので、今回のこの改正については疑念を持っているということを申し上げておきたいと思います。  さらに、「国際的な平和及び安全の維持」というような抽象的なものを表面に出してきた。今までも二十五条ですか、後段にそういうような文言があったということでございますが、どうもそういうことをはっきり、何というか抽象的なものとして入れてくる。しかも、外務省がそれに関与するというようなこと等を考えますと、どうも余りすっきりしないという考え方があるわけでございます。  それからココム問題にしても、先ほど大臣がおられないとき、特認事項の関係で質問をいたしました。品目が決まっているけれども、特認事項があって、私の得た情報では全体の六割がアメリカだ、しかも日本よりもマルが一つ違うくらい向こうの方が多い。では、何のために品目をあれして、しかも特認事項をあれするんだということで考えていきますと、私は、内容がないので禅問答のようになりますからこれ以上は言いませんが、そういうことからして、ココムというのはそういうものなんだというような、ある意味での認識も持たなければならないというふうに思います。  それから、後段に大臣が言われた、人員をふやしてそういう輸出関係の事務的な処理はぴしっと早くやっていくということは、これは法律の問題と直接関係ありません。法律にはどうこうでなくて、輸出で生きていかなければならぬ日本の現状としては、やはり早くそういうものに対する承認を通産省が与えるということが必要なわけでありますから、それこそ行政改革で、人数をふやす方の行政改革も、私もいつもいろいろな場面で言っているのですが、行政改革というのは減らす方だけ、予算を削ることが行政改革と思っている。それは間違いであって、必要なところに必要な人員、必要なところに必要な経費というものをやるのが行政改革であろうと思いますので、そういう点は十分配慮をしていただきたいと思います。  最後に、これは大臣も言われましたが、私もそう思っているのですが、アメリカはいら立っていると思います。私どもアメリカから来たアメリカの議会のスタッフの人たちと話をすると、極めて冷静なんです。その人たちアメリカの頭脳でありますから、いいことはいい、悪いことは悪い、あなたの言うことはもっともだというようなことで、私たちは十数名の国会のスタッフが来たときに意見交換をしました。あなた方はよく気がついています、アメリカの悪いところはここです、いいところはここです、あなた方の言うのは、正しいことはここですと。しかし、アメリカの議会になるとまた違う。大統領の権限の問題も違う。しかも、今はそういう意味でいら立ちの中にあるということなので、そういう意味では非常に冷静さを欠いている動きがなきにしもあらずと思いますけれども、これは、アメリカのことはそもそも世界のことでありますから、アメリカも冷静になって、しかも財政赤字を解決して立ち直ってもらわなければ困る。アメリカが壊れたら世界も壊れるということを十分我々も知る必要がありますし、そういう意味で対米関係についても、通産大臣はもちろんのこと、ぜひともそういうことの解決を図っていただきたいということでございます。  やはりアメリカという国は言うべきことは言わないとだめなんで、中曽根さんの悪口をここで言う気はありませんが、ロン・ヤスの関係といっても、ロンの言うことだけやすやすと聞いてくるようでは困るのであって、今はロン・ヤスヤス関係というようなことで言われているようですが、やはりはっきり言うことは言うというような政治姿勢でなければ、向こうだって気がつかないというふうに思います。そういう意味で、そのことについて要望を申し上げて終わりにしたいと思います。  大臣、お考え方があれば、最後にお聞かせをいただきたいと思います。
  114. 田村元

    田村国務大臣 全くおっしゃるとおりでありまして、アメリカのみならずどこに対してでも言うべきははっきり言う、これは私は、外交でもそうでしょうが、通商の基本だと思います。私も随分言ってまいりまして、私に随行していった通政局長の村岡君なんかもはらはらしたことも大分多いようですけれども、これはやはりはっきりと言った方がいいと思います。  それから、この外為法改正そのものが自由貿易を阻害するとは思いませんけれども、しかし、今後の行政上のいろいろな扱い、配慮という点では、やはり十分のことをしていく必要があろうかと思っております。  感想があればということでございましたので、一言申し上げました。
  115. 城地豊司

    城地委員 ありがとうございました。終わります。
  116. 佐藤信二

    佐藤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十七分休憩      ————◇—————     午後二時五十八分開議
  117. 佐藤信二

    佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。森本晃司君。
  118. 森本晃司

    森本委員 まず最初に、通産大臣にお伺いしたいと思います。  今回の東芝機械事件でございますけれども、私はまさに奇怪な事件だというふうに思っておるところでございますが、東芝機械が起こしましたこのココム違反、通産省の目をごまかした極めて悪質な犯罪である、そのように私も思っております。虚偽の申告をしながらやるとは実にけしからぬ、それだけにソ連にもその必要性があったのであろうという論議もされるかもわかりませんが、実にその問題はけしからぬと私は思います。  しかし、一方、今回のアメリカの異常な対応、反応、このことも私は実は解しかねるところでございます。日本にいろんな理由はあるかと思いますが、今回、私はむしろ難癖をつけられたのではないだろうかと思います。半導体やいろんな部分で、貿易摩擦でだんだん日本に負けてくるから、それじゃ、普通は犬にかまれたら犬をけ飛ばすのですけれども、犬をけ飛ばさないで東芝をけ飛ばしたという感じに受けとめられてならないわけであります。こういった問題に対して田村通産大臣に非常に御苦労いただき、御心労いただいているということ、私は大臣の行動に非常に感謝するところでもありますし、日本を守らなければならないという大臣の思いがいろいろな国会答弁を聞いておりますと伝わってまいりますし、同時にまた、大臣がアメリカヘおわびの旅に出られたということ、私は大変御苦労さまでございますと申し上げたいところでございます。しかし、東芝機械が悪いと言い、またアメリカが悪いと言って、同時に私は、だからといって通産省の責任は全くないということにはならないと思うわけです。田村大臣のときではなかったわけでございますけれども、通産省の体制の中にいろいろな問題があったと思いますし、通産省は通産省でこの問題の責任はきちっととっていかなければならない。一方、不幸にもあらわれたときの大臣に就任されておられました田村大臣にもいろいろな形での責任をとれという声が上がっているわけでございます。  大臣の責任のあり方について私はお尋ね申し上げたいわけでございますが、きのうも大臣が一生懸命答弁されておられるさなかにやめろというやじが同じ党内から出ておりまして、私もいささかどう解釈していいのかわからないような状況でございました。私は大臣にこの責任のとり方、私は大臣にやめろというようなことは申し上げません。むしろ今この難局に遭っている日本を背負って、この問題処理に当たっていただかなければならないのではないだろうか、そんな思いも持っております。また、通産省の皆さんにその後いろいろと話等々を聞いておりますと、全力で取り組んでおられるというところでございますが、この問題解決に当たられる所轄大臣としての今日までの御苦労とその御感想と、そして決意をお述べいただきたいと思います。
  119. 田村元

    田村国務大臣 私は、率直に言いましてこの問題、東芝機械のやりましたことは悪質な犯罪行為であると思いますし、また、だからといってアメリカの反応も非常に過剰な反応であると思います。ココム違反、それは国内法によって処置されるべきものでありまして、第三国から制裁を食らうということは、これは当を得ないものであります。それはそうでありますが、だからといって、虚偽の申請をしてそれにひっかかった。五十六年の八月のことでございますが、ライセンスを出しております。これはやはり通産省の責任は重いということを私は思います。  答弁要旨には、遺憾であるという言葉が使われております。通産省としてまことに遺憾である。私は、はっきり申し上げてそういう言葉は使うべきでない、責任は大きいということははっきりと自覚すべきだ、このように思っております。実はあの事件が出ましたときに、私は事の重大性にかんがみて、ひそかに私自身が責任をとることを決意いたしたのであります。だからといって、アメリカヘ行かなければならぬ。いろいろな段取りだけはしておかなければなりませんから、それは確かにそういう決意をしてその用意もいたしました。  ところが、東芝機械は当然ですが、東芝グループということで東芝の会長、社長が辞任した。辞任を発表する直前に私のところへ報告に来られましたが、アメリカヘ行って聞いてみますとそれが全然評価されていないのです。私が東洋人の深さだと言っても、それは評価されていない。むしろ敵前逃亡のような印象で受けとめられておる。私は、通産大臣というのではなくして全く個人として、今私と親友のつき合いをしておりますヤイターやボルドリッジに相談をかけたのです。私が辞任することによってアメリカのこのエキサイトぶりが少しでも鎮静するんならば、私は潔く責任をとってもいいがと言いましたところ、二人とも、それはよせ、そんなことをしたら大臣まで逃げたかということになるぞ、日本人とアメリカ人は考え方が違う、だからミニスター・タムラ、それはよせ、こう言ってクレイトン・ヤイターあるいはボルドリッジが私に忠告してくれたわけです。  それで、私も帰りましてから党内の親しい友人にも相談しましたけれども、結局、私の手でてきぱきとすべてを段取りして国会にもお願いをして、再発防止の最も軸となるこの外為法改正ということを国会にお願いし、かつ我々の手でしっかりとした段取りをしていく、それが何よりも必要であろうと考えて、ある意味においては生き恥をさらしておるような格好で在任しておりますけれども、必死になって今その対応に大わらわになっておるということでございます。責任をとること、今の私にとってはこれ以上拡大させない、でき得べくんばアメリカの保護主義に水をかけることができれば、そして東芝の制裁法案が成立しないように、ただただ必死で取り組んでおる、それが私の責任のとり方であると現在では自覚をいたしております。
  120. 森本晃司

    森本委員 大臣の心境とその決意を今お伺い申し上げまして、ぜひこの大きな責任を先頭に立って、体を張って大臣に頑張っていただきたいと思うわけでございます。  ただ、私は今日までの御苦労またこれからしていただく大臣の御苦労には敬意を表しますが、今回の改正案につきましては、後ほどまたいろいろと申し上げますが賛成しかねる部分が相当たくさんございますので、その部分もひとつ大臣よくよくお聞きいただきながら、これからの日本にとって何が一番大事なのかというふうにお聞き取りいただければと思うわけでございます。  今、大臣の答弁の中に、同時に東芝制裁条項が何とか通らないようにという思いがある、そのように大臣が今お答えになりましたけれども、今向こうは夏休みでございますが、九月になりますとそれが明けていよいよこの問題が論議されるわけです。大臣はその様子を今どのように見られておるのか。その所見と、どのように対応されようとしておるのか、お答えいただきたいと思います。
  121. 田村元

    田村国務大臣 御指摘のように、アメリカの議会は九月の八日までお休みでございます。九月の九日から始まるわけであります。そこで両院協議会の人選というものが行われましょうし、急速に動きが強まるものと思われます。でございますから、我が方としては、我が方といいますのは日本としては、向こうのサマーバケーションの間に何とかこういうものを全部整理をして、そして彼らが選挙区から三々五々ワシントン入りをするというときには、さあこれを見てくださいと言えるようにするのが好ましい。好ましいというか、それしかもう方法はないとすら思っております。  ただ、夏休みで選挙区へ帰ってワシントンヘまた戻ってくる、そのときにアメリカの議員連中、特に下院の人々がどういうような感覚で帰ってくるか、これはそのときにならないとわからない。どこの国でもそうでございますけれども、そのときにならないとわからないということだと思っております。
  122. 森本晃司

    森本委員 きょうは外務省からもお見えいただいておりますが、外務省にお尋ね申し上げたいわけでございます。  この東芝機械事件が発生してそして外務省にも連絡があり、また今日までこんな人ごとになってしまったわけでございますが、外交を担当される外務省として、どのように対応してこられたのかということをまずお伺いしたいと思います。
  123. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 東芝機械事件につきましては、けさも通産省の方からも御説明ありましたように、当初、昭和六十年十二月にココムの議長から我が方在仏大使館を経由して外務省に違反事件の内部密告の文書が届きまして、自来直ちに通産省と緊密な協力のもとに本件を追及してきたわけです。法令上これは、国内の違反事件を調べていただくのはもちろん通産省でございますが、ココム事務局を通じて情報に接したということもありまして、緊密な連絡をとってやってきました。  その間、通産省におきましては、けさも御説明がありましたように、十二月以来非常に何回も関係企業の関係者を呼んで事情聴取をしていただいたわけなんですけれども、残念ながら直ちには明らかな違反ということがわからなくて、その後アメリカ政府からも、去年の六月になりまして同じような違反の容疑があるという通告がございましたし、その後去年の十二月になりまして国防次官が参りましたときにも、外務省に対して再度リマインドがありまして、私たちがアメリカ側に申しましたのは、いろいろと通産省で関係企業から何回も事情聴取をしてもらったけれども、どうも書類を見てもあるいは関係企業からの事情聴取から見てもなかなかよくわからないということで、アメリカの方でもう少しはっきりした証拠を提供してもらえるともっと本件を追及することができるんだけれども、何か追加的な情報をもらえないかということも何回か、特にことしの初め以来アメリカにも督促して、特にことしの三月、四月に相当進展がありまして、けさ通産省から御説明がありましたように、問題が明らかになったという経緯がございます。この間、通産省との間では非常に緊密な協力のもとに本件を追及してきた次第でございます。
  124. 森本晃司

    森本委員 外務省が通産省と連携を緊密にしながら対応してきたというふうに今御答弁いただいたわけでございますが、私は今聞きたいのはそうではなくして、私ちょっと十分言わなかったのですが、アメリカがこんな状況になって議会が大騒ぎになっている、そういったことに対して外務省はどういうことをされたのか。それは、通産省なら通産省と連携をとって、あとは通産省、おまえのところでやれという感じなのか、外務省は外務省としての外交の責任上この問題を解決しようというふうに努力されたかどうか。  例えばこういう情報が私のところへ入っているわけですけれども、七月十四日のアメリカ下院貿易委員会における公聴会で、行政府からただ一人出席したダーウィンスキー次官、この次官の話の骨子ですけれども、「ノルウェー政府は極めて前向きであり、なされるべきことは多いが、最大限の協力を確信している。今までのところ、日本政府の対応には若干失望しており、本件及び再発防止のいずれについても一層の対応が必要。」であるというふうに、まだ田村通産大臣が訪米する前の向こうの次官の感想です。  ノルウェーはすぐに対応したというのは、ノルウェーの大使館がすぐにアメリカ議会に、私の聞くところによりますと手紙を出したというわけです。議員の一人一人に大使館から手紙を出した。ノルウェーの場合は、それは通産省の責任だ、いやそれは外務省の責任だということではなくして、外務省は外務省独自で手紙を出して、そして一生懸命アメリカの議会にその理解を求めようとした。そういった努力が、今回のこの事件の中で外務省にあったのかどうかということを私はお尋ねしているのです。
  125. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 私が当初申しました関係は主として東芝機械から輸出されました九軸の関係でございますが、九軸事件が明らかに国内の法令に違反して出されたということが通産省の調査を通じて明るみに出るにつれ、私たちといたしましても通産省と相談しながら、例えば意見を求められることもありまして、例えばアメリカの反応はどうだろうか、あるいはこの程度の罰則であればアメリカの反応はどうだろうかというふうな意見も通産省に述べました。その結果、九軸につきましては五月十五日に行政罰が発表されると同時に、当時まだ時効が成立しておりませんでしたプログラムの輸出につきましては通産省による告発がありまして警察が動いたわけなんでございますけれども、その段階、五月の段階では日本のとった措置というのは非常に高く評価されまして、当時は日本は非常によくやってくれた、ノルウェーはおくれている、よくないというのがアメリカの、特に行政府の間における評価だったと思います。  ただいま先生から御指摘のありました七月十四日のダーウィンスキー国務次官の公聴会における発言で、ノルウェーはよくやっておる、日本措置には失望しておるという発言は、恐らくその後発覚しました五軸をめぐっての日本の対応ぶりについてのダーウィンスキー次官の印象だと思います。これにつきましては確かに私たち、対応が当時の時点では若干おくれたと思っております。その後、通産大臣に訪米していただいていろいろアメリカ側に説明していただきまして、その後、外為法改正あるいはけさも御説明ありましたような閣僚会議の発足の検討等も含む一連の輸出管理体制の整備等もございまして、これも在米大使館等を通じまして通産省からもいろいろと御説明しておられますけれども、私たちも在米大使館を通じまして、行政府はもちろんですが各議員あるいは議会スタッフ等、あらゆる方面に連絡をして理解を求めるように努めております。例えば一例を申しますと、松永大使から上院議員百名全部に日本のその後検討しておる措置等につきまして説明しておりますし、下院の主要議員にもほとんどすべてに説明している等もありまして、最近は相当理解が深まっておると思っております。  それともう一つ、東芝制裁条項につきましても、これは既に六月、七月の時点で大使館等を通じて、あるいは来日しますレーガン政府要人あるいは議会関係者等に私たちもいろいろと日本意見を述べておりますし、今後米議会の再開に備えましていろいろと今アメリカに対して働きかけをやっておる段階でございます。
  126. 田村元

    田村国務大臣 ちょっと今のことで、とても時宜に適したいい御質問でございますので、私から簡単に経緯を御説明申し上げます。  アメリカは最初高く評価しておったのです。ところが五軸が出てまいりました。日本政府アメリカ政府もその時点で余罪というような考え方で、それほど深刻ではなかったのですけれども、いろいろな報道によって非常に深刻さを増していった。たまたま、その前に私が渡米しようとしたのです。そうしましたら、アメリカの行政府の反応が、今あなたがやってきたら、それほどアメリカ東芝機械の問題がまだエキサイトしていないころですから、やってきたら半導体問題どこんがらがってにっちもさっちもいかなくなるぞ、議会を逆に刺激するぞ、しばらく遠慮してくれないか、こういうことでございましたので、私が遠慮した。それが今のようなことに、裏目に出たといえば出たわけでございますけれども、そうして私がアメリカヘその後行きましたときに、具体的な案を持っていったわけでございます。もっとも、アメリカヘ行ってから整理した案もございますけれども、持っていったわけでございます。  そして、それを説明して、特に私はここで外務省の名誉のために申し上げておきますと、駐米大使の松永君が本当によくやってくれました。君、倒れやせぬかと言って僕は心配したのでありますが、非常によくやってくれました。ただ、私がアメリカへ行く前は具体的な案を外務省も通産省も出せませんから説明のしようがなかったというところもございます。  そして、私は、帰りましてすぐに総理とも相談し、各方面とも相談いたしまして、そしてとにかく私が向こうで明言してきた対応策を早く決めてくれ。いつまでだと言うから、七月三十一日までに決めてくれ、七月中に決めてくれ、こういうことになりまして、七月三十一日に閣議決定、国会へ提案という運びで、異例のスピードで行ったわけでございます。といいますのは、そこまでやりませんと、夏休みで帰るものですから、とにかく急げ。  それから、全部の国会議員、上院、下院全員、上院百人、下院四百三十五人全員に私は署名入りの手紙を送りました。そしてこの問題に対する、もちろん外為だけじゃありませんが、外為法もこういうことで提案した、内容はこうこうだ、その他を考えておる、いろんなことを書きまして、全員に手紙を送りました。まあ役所は大変だったと思いますけれども、私は自分でサインするから全部送れ、こう言って送らせました。そうしまして、アメリカ側からの反応、いろんな人から私のところへ私信で手紙が来ておりますが、大変よかったという評価のお手紙が相当数来ておるというような状況でございます。  なお、ちょっと、私さっき申し上げました中で訂正したいことがございますが、昭和五十六年八月に出しました、私がライセンスと言いましたが、あれは非該当証明でございますので、ライセンスという言葉はどうぞお忘れになっていただきたい。非該当証明でございます。
  127. 森本晃司

    森本委員 今回のこの問題は、私は通産も、同時に外務省も本当に一体となって事に当たっていただきたいというふうに思うわけでございます。巷間でいろんなうわさがあるわけでございますが、どうもどちらもよろしくないというふうな話がよく出てまいるわけでございます。  そこで、あと、この東芝制裁条項でございますが、これはどうなるかということは非常に我々も心配しているところでございますが、これは外務省はこの条項が成立しないように、これはもう成立しちゃ困る条項でございますけれども、これは働きかけは今後されるのですか、どうですか。
  128. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 これまで、機会あるごとに行政府及び議会関係者に強く申し入れしてきておりますし、今アメリカのプレス等を通じましてもいろいろと、特に在米大使館を中心にキャンペーンをしてきておりますけれども、特に今度の再開されるアメリカの議会に向けてさらに精力的に努力したいと思っております。もちろん、これはアメリカの包括貿易法案の一条項ですので、包括法案には、東芝制裁条項は日本にとって非常に深刻な問題の一つですけれども、それ以外にゲップハート条項とかいろいろな条項がありますので、それらも私たちとしては忘れるわけにはいきませんので、非常に重点項目の一つとして精力的に働きかけたいと思っております。
  129. 森本晃司

    森本委員 ぜひ取り組んでいただきたいのです。  一言でお答えいただきたいのですが、通産省、東芝制裁条項が向こうで成立することがいいのか悪いのか。外務省、いいのか悪いのか。つくらせないと頑張るのか。まるで確認事項みたいなのでございますが、改めて聞かせていただきたいのでございます。
  130. 田村元

    田村国務大臣 ああいうとんでもない法律ができることは、絶対反対であります。
  131. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 外務省としましても、このような制裁条項の成立は問題の解決に資するものではありませんし、ガット上も非常に問題があるということで、全く望ましくないと思っております。
  132. 森本晃司

    森本委員 いずれにしましても九月から始まりますので、この問題については今後、こういった条項が成立しますと、後また続いてターゲットはあそこだ、ここだというぐあいにやられてしまいますと、またそれぞれの問題についてあたふた走らなければなりませんので、通産省、外務省、全力を挙げて取り組んでいただきたいと思うところでございます。  そこで、田村通産大臣にお尋ね申し上げたいわけでございますが、このおわびに行かれたときに、向こうでいろいろ話をされた中で、対ソ対潜探知能力共同研究を、こんな事件があったかわりに、おわびにこれを協力して共同研究をやろうというふうな話がワインバーガーさんとあったように伺っておるのですが、いかがでございますか。
  133. 田村元

    田村国務大臣 まず御了解願いたいのは、私はわびには行きませんでした。私は謝罪使節ではなくて、今後こういうことが起こらないために、もちろん遺憾の意は表さなければなりませんが、再発防止の策を持って、ああいう極めて保護主義色の強い、しかもココム違反というのは、先ほど申し上げたように国内法で処罰するものであって、第三国が制裁を食らわせるということはとんでもない、もってのほかのことですから、我々はこのように対応するからあなたの方で激しい立法なんというのはよしてもらいたいということ空言いに行ったわけでございます。これはちょっと御理解願いたいのであります。  それから、ワインバーガーさんとの話はどういうふうに伝わったか、私はそのときに日本におりませんでしたからちょっとわかりませんが、率直なことを言いますと、因果関係があるんだとかいろいろなことを言うわけですが、因果関係アメリカの軍だって、ソ連の軍だって示してくるはずはあり得ないのですから。ソ連がこういうふうに利用させてもらいましたと言うはずもなければ、アメリカが軍の機密をしゃべるわけでもありませんが、そこで、もし何だったらあれと同じ工作機械を日米共同で研究しようじゃないか、いろいろな対応を。対潜能力をまた復活させるとか、もしあなた方が言うようにあれが影響があったとするならば、それをまたどのように挽回するかということを日米でともに協同して共同調査をしよう、共同研究をしようじゃないか、それはいいですよということを私は言ったのでありまして、提供するとか、そういう言葉は一切使っておりません。
  134. 森本晃司

    森本委員 同時に、東芝の青井社長も、今回の問題を引き起こしたのであれば共同研究をやりたい、協力を惜しまないというふうにおっしゃったように聞いておりますが、その話はその話でいいですが、その後すぐにハワイに制服組が出ていきましたね。これは外務省は恐らく御存じないということはないのですが、制服組が出ていってこの共同研究のことを話し合ったというふうに伺っているのですが、それは事実はどうですか。
  135. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 ワインバーガー国防長官の来日に次いで、ウェッブ海軍長官が来られましていろいろと話し合った結果に基づきまして、日米の専門家が七月二十九日から三十一日までハワイで会合をされました。私たち余り詳しいことは承知しておりませんが、研究協力の具体的な内容についてはこれから検討していこうということであったというふうに伺っております。
  136. 森本晃司

    森本委員 外務省、済みません、専門家というのは何の専門家ですか。防衛庁の専門家ですか。専門家、どこの人か明確に言ってください。
  137. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 日本側の防衛庁の専門家、海上自衛隊の専門の方です。吉川防衛部長を長とする五人の方が日本側から参加しております。
  138. 森本晃司

    森本委員 大臣が向こうへ行って、そういうことがあれば共同研究をしようじゃないかと話をしたというわけでございますけれども、私はただ単にそんなことでおさまっている話ではないと思うのです。もうそのすぐ後に制服組が話し合いをしている。今回のこの東芝事件に絡めて、また一挙に、わずかの期間の間にそういうふうに進んでいく体質が問われなければならないと私は思っているわけです。対ソ対潜探知能力ですから、これは仮想敵国は明らかにソ連になりますね。ソ連以外ないですね、対ソ対潜探知能力ですから。今仮想敵国を設けていくということについては、我が国の平和憲法に反してくる。また、集団自衛権の行使にはならないのか。また、この対ソ対潜探知能力を備えた——探知能力でございますから、これの及ぼす範囲は日米の防衛だけではないと私は思う。領域はもっと大きな領域になってくると思います。これは個別的自衛権ではないですね。こういうふうに、すぐに話がエスカレートしていく。東芝事件は東芝事件で、いけなかったことはいけなかったでいいのですが、そういうふうな協力の仕方というのは私は納得できない。しかも、そんなことがこのわずか一カ月の間でとんとんと進んでいってしまう。このことについて外務省の考え方、いかがですか。
  139. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 確かに東芝機械違反事件も背景にあったと思いますけれども、この日米の対潜能力の向上のための研究協力というのは、日米安全保障条約に基づく研究協力というふうに私たちは伺っております。
  140. 森本晃司

    森本委員 外務省、この共同研究は武器輸出原則にひっかかるかどうか。今まだ行われていないのですね。これから行われようとするのですね。だけれども、もう既に制服組が動いているのですからね。このままほうっておくわけにはいかないと思うのですよ。これは武器輸出原則にはどうなりますか。
  141. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 これはまだ、具体的な検討課題はこれからさらに話し合っていくということですので、具体論は申し上げる段階にありませんけれども、全く一般論として言いますと、日本からアメリカに対して武器技術が供与される場合には、対米武器技術供与取極に従って処理されるということになるというふうに了解しております。
  142. 森本晃司

    森本委員 今の外務省の……
  143. 佐藤信二

    佐藤委員長 機械情報産業局長がちょっと答弁しますから……。
  144. 児玉幸治

    ○児玉(幸)政府委員 もし御質問を取り違えておりましたらお許しをいただきたいと思いますが、技術でございますと、今の赤尾外務省官房審議官の御説明のとおりであろうと思っております。  それから、仮に機械のお話をお尋ねでございましたらば、話題になっておりますあの機械は別に武器を製造する機械ではございませんで、いわゆるNC装置のついた汎用の工作機械でございまして、スクリューも削りますけれどもまた商船のスクリューも削る、また発電機のタービンの羽根なども削れるような機械でございますので、これは汎用の機械でございまして、いわゆる武器輸出原則に言います武器製造関連設備ではないというふうに考えております。
  145. 森本晃司

    森本委員 今、武器製造するものではないとおっしゃいましたけれども、ソ連のスクリューをやった重大なものがあるというふうな政府見解が出ておるのに、今さら武器をつくるものではないというのもおかしな話ですよ。
  146. 児玉幸治

    ○児玉(幸)政府委員 森本先生お尋ねの武器輸出原則との関係について私お答え申し上げているわけでございまして、武器輸出原則におきましては、武器及び武器製造機械というふうなものについていろいろな物の考え方の整理があるわけでございますけれども、あくまでこの三原則において申します場合のいわゆる機械というのは、武器製造のために専用に用いられる機械のことを言うわけでございます。したがいまして、今回のようなNCつきの工作機械というようなほかのさまざまな用途にもあわせて使えますものは、あくまでもこれは汎用の機械でございまして、武器輸出原則上に申します武器製造設備ではないのでございます。
  147. 森本晃司

    森本委員 対ソ対潜探知能力を研究しようという、潜水艦は武器でしょう。それを、潜水艦をつくったりあるいはその探知能力をやろうというのは……。
  148. 児玉幸治

    ○児玉(幸)政府委員 潜水艦そのものは明らかに武器でございますが、潜水艦に必要なさまざまな部品その他を加工するものの中にはいろいろな機械が使われるわけでございまして、今回たまたま問題になっておりますプロペラ製造用のNC工作機械というのは、あくまでも汎用の製造機械であるというふうに認識をいたしております。
  149. 森本晃司

    森本委員 これは後ほどまた触れますけれども、どこまでがココムにかかわるのか、かかわらないかという問題と似通ったような問題になってくるわけですけれども、いずれにしましても、外務省にさっきちょっと私尋ねかけて終わったのですが、要するに日米の——相手は対ソ対潜探知器ですよ。対ソになっているのです。それは日米の武器三原則にかかわりませんか。
  150. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 私たちが防衛庁から伺っておりますことは、先般のハワイの会議におきまして、まだ最終的にこれから何をやるかということは決まっておりませんけれども、ソ連潜水艦の静粛化に関するデータの交換並びに海洋環境の調査、捜索識別機能の向上、対潜訓練の強化等を中心に話し合って、今後引き続きどうするかを検討していこうというふうに伺っておりまして、またそれ以上具体的に内容が固まっているというふうに伺っておりません。
  151. 森本晃司

    森本委員 私が今この問題をあえて取り上げましたのは、そうしたちょっとしたことを機会にすぐ後ろに制服組がついていって、そしてなし崩しにやっていこうということです。今外務省の答弁は、今後検討してまいりますという答弁ですけれども、もう既に相当検討されていると私は思いますね。むしろそれを積極的にやる方向に進んでいく。いろいろな貿易問題のすぐ後ろに、我々日本国民が今日まで国是としてあるいはコンセンサスとしてやってきた非核三原則や、あるいは今論議になります武器輸出問題、こういった問題を打ち破って形骸化していこうという流れがある。そのことは、きょうは防衛庁は来ていただいておりませんけれども、今後もこの外国貿易は、そういったことによくよく注意をしていかなければならないということを申し上げておきます。この問題については国会でも十分論議されておりませんけれども、論議されないままにすすっと国民の知らないところで進んでいくというのは、これもまたおかしな話でございます。対ソ対潜探知能力共同研究という以上はどうか十分、これは一体どこまでどうしていくのかということを具体的につかんで、またそのことを具体的に一度御報告を賜って、そして武器輸出原則にひっかかるのかどうか、その問題も論議していただいて、それから前向いて進めていただきたい、そのように思うところでございます。  通産省、この問題について一言。
  152. 児玉幸治

    ○児玉(幸)政府委員 ただいまの先生の御意見、十分頭に置いて対処させていただきます。
  153. 森本晃司

    森本委員 次に、先日のスマート次官と通産大臣との会談の中で、ココム違反をチェックする輸出審査員、今現在六十三人ですか、来年度で八十人にふやしておられるわけでございますけれどもアメリカは、スマートさんはどうも納得していないようでございまして、アメリカだけでも五百人の体制をつくっているんだというふうに言っております。まだ、先日そういった貿易関係の人に会いますと、今は非常に混雑しているし、もっと人をふやしてもらいたいという要望も多く出ているわけでございますが、その辺はいかがでございましょう。アメリカの商務次官とお会いになり、その言葉を聞かれてからの通産大臣のお気持ちは。
  154. 田村元

    田村国務大臣 アメリカ日本がこういう問題を見る尺度は、やはり幾らか違うと思います。でございますから、スマート次官は私に、とてものことじゃないが数が少な過ぎやせぬかい、おれの方は数百人だぞということを言っておりました。確かに彼から見れば、四十二を六十三にして八十にするというのは、あるいはナンセンスであったかもしれません。しかしスマートは、自分の意見としては言わなかったのです。これじゃアメリカの行政府、特に議会を納得せしめる力はないよ、あとはもうすべてよろしい、行政府としては非常に高く評価しておる、人数だけが問題だな、こういうことを言っておったわけです。  私は、そのときは何も言いませんでした。一応我々は八十人にするという前提の上に立っておりますから、ああそうかいという程度で聞いておきましたが、よく考えてみますと、十九万どれだけ、二十万件でございますから、これは言われてみれば確かに、四十二でひどい目に遣わされた、だまされたから八十にしようというのもちょっとおかしな話かな、これは、おまえの気持ちを言えというお話でございますので申し上げます。  それから、対外的にも、特にその後でちょっと担当局長に聞きましたら、大変なんだそうです。ココム担当者は、来るのを全部審査しなければならぬところへ国会対策で、答弁要旨をつくるのに徹夜に次ぐ徹夜なんだそうですよ、本当のことを言いますと。それで、そういうことを聞きまして、その意味においてもやはりふやすべきかなと実は思っております。けれども、これは私の感想でございますから。事務方としては、一たん表へ出した以上、我々はとてもとてもということでしょうけれども、それは政治的な判断、決断を必要としましょうから、私は、少しふやした方がよいというように今精神的に傾斜をしておるわけでございます。
  155. 森本晃司

    森本委員 先日のテレビでも大臣が、行革といってもやらなければならないことはきちっとやらなければならない、そういうことを今までやってこなかったのがいけなかったんだというふうに御意見をおっしゃっていたのを聞かしていただいて、私も賛同しておったところでございます。私も担当の人に会いましたけれども、徹夜でしたとおっしゃっておりました。そういった人たちの人権を守る意味からも、ぜひその点をお願い申し上げたいわけでございます。  同時に、貿易関係の人から聞きますと、機械工業組合にいろいろと相談しつつ、機械工業組合が設けてくれて、そしてできるだけスムーズに行くようにそういった民間の御協力をいただいているんだという話もございましたが、私は、これは非常にいいことで、もっともっと通産省も応援して  いかなければならないのじゃないかと思うのですが、その辺いかがでございますか。
  156. 児玉幸治

    ○児玉(幸)政府委員 ただいまの森本先生の御指摘は、恐らく、日本機械輸出組合の相談事業のことではないかと存ずる次第でございます。この機械輸出組合は、日本貿易業界、機械工業界の代表的な企業あるいは輸出専門の中堅商社とかいったものが全部で五百十三社入っております非常に大きな組合でございます。  この日本機械輸出組合におきましては、ことしの四月から相談室を設置いたしておりまして、戦略物資等の輸出承認手続についての相談事業、あるいは輸出貿易管理令等の関係法令に関しますいろいろな相談事に乗るというふうな業務をいたしておるわけでございます。確かにこういった業務は、輸出承認手続等につきましての啓蒙普及に非常に大きな効果もございますし、また組合でそういうふうなことが行われておりますと、通産省に申請に参りますときにも事前に相当な整理ができているわけでございまして、通産省の審査事務の円滑化にも実は大変役に立っているわけでございます。そういった観点から、私どもといたしましては今後とも、この組合のやっております事業につきましては適切な指導をいたしますとともに、積極的にバックアップをしてまいりたいと考えております。
  157. 森本晃司

    森本委員 そういった制度を確立しながらココムの問題についてはきちっと対処してもらいたいわけでございますが、通産大臣アメリカに行かれたときに、亡くなられましたけれども、ボルドリッジとの間で合意したものがココム規制強化あるいは再発防止へ向けて七項目ほどあったわけでございます。外為法改正はまた後で論じさせていただきたいのでそれを除きまして、日本ココムヘの協力、それからココム違反事件の全面的洗い直しということがありました。ほかにも、ココム規制、専門家チームの相互交流、ハイレベル協議の実現、それから厳格な輸出審査チェック、これは今答えていただいたので結構かと思いますが、あと、第三国経由の戦略物資規制強化等々の約束事があったわけでございますが、そのことについて、進捗状況はいかがですか。
  158. 田村元

    田村国務大臣 今いましたのが、ボルドリッジ商務長官が亡くなるちょうど十日前でございました。二人でいろいろ長時間話をしておりました。  七項目の合意とか表明とかと言うと大げさになるかもしれませんが、確かに七項目、私、そのときにメモしました紙は記念に残してございますけれども、確かにそういうことを話し合いました。森本さんの今お使いになった言葉をかりて言えば表明したということですが、ちょっと御報告しますと、外為法、これは今御審議いただいている。それから輸出管理の人員、先ほど申し上げましたようにふやすことを前提にして、向こうで私が言いました数よりふやしてやろうかなというような気持ちでおりますが、それはアメリカに対してでなく、先ほど申し上げたような役人の人権の問題がございますから、そこいらのことも考える。  それから、通産省と商務省の間でも、こういう問題のみならず、とんとんといろいろなことを協議しようやということで担当レベルの協議、これはもう既に実施しております。それからハイレベル、これは局長クラスでございますが、これも月末にフリーデンバーグという商務次官補の訪日によりまして実現いたします。御承知のように、先般、畠山局長を向こうに派遣いたしましたが、またこれからも定期的に、通産、商務両省を主体として日米協議を行うということにしてございます。こういう協議を商務省と通産省がどんどんやっていく、要するにコミュニケーションをどんどん濃密にやっていく、通商代表部も同じことが言えますけれども、そうすれば半導体問題でもあそこまでこじれなかったかもしれないというふうに思います。それに、日本は売り手で向こうはお客さんなのですから、その意味においても国益のためにもやるべきじゃないだろうか。  それから、過去の案件の調査につきましても、特別検査チームにおいて現在鋭意調査をもう既に相当やっております(それから、ココムにつきましても、より確実にその申し合わせが守られますように積極的に対応する方針でございます。  今申し上げました点につきまして、何といっても軸が法律でございますから、外為法の成立と相まって再発防止策の重点と考えておりまして、我が国自身の問題として取り組んでおる次第でございます。あくまでも、外為法の枠の中で我々は物事に対応し、決していくことが必要であろう、こういうふうに考えております。
  159. 森本晃司

    森本委員 今、大臣の答弁のハイレベル協議の実現の中で、局長クラスを派遣するというように御答弁をいただきました。近く行われるそうでございますが、今後の日米協力体制の中で実務者レベルの交流が一番必要ではないだろうか。日常的にそういう実務者レベルの交流がもっともっとありますといろいろなことがお互い理解できる。大事に至るまでにおさまっているというふうに、私もそのことについては痛感するところでございます。今後の日米協力体制は、この実務者レベル、輸出管理当局者の交流を図ってもらいたいところでございますが、よろしくお願いします。
  160. 畠山襄

    畠山政府委員 御指摘のように、日米貿易の実務者レベルの交流というのは非常に重要でございまして、先週も貿易局の岩井安全保障貿易管理室長が商務省に参りまして、ほぼ一週間にわたって交流をしてまいったところでございまして、今後もそういった努力を続けてまいりたいと考えております。
  161. 森本晃司

    森本委員 あと実務的なことでもう少しお尋ねを申し上げたいわけでございますが、時間がだんだん迫っております。あとまた改正内容にも入りたいと思いますので、御答弁をよろしくお願い申し上げます。  輸出令が六十一年十二月二十三日に改正されまして本年一月一日から実施されておりますが、この輸出令はその後、要するに東芝事件以後も別に何の変更もされていないわけでございますが、現状は非該当証明の提示が要求されるなりいたしまして非常におくれているし、それから同時に、実務内容にも、業界の方から見るとでございますが、大きな差別が見られるというふうに受けとめられておりまして、その結果、輸出商談の中断や契約納期の遅延などが数多く発生している。こういったことが政治状況によって一々延びたり縮んだりするようでは非常に困ると思うのですが、この状況はいかがでございましょうか。
  162. 畠山襄

    畠山政府委員 御指摘のように、最近輸出の審査の事務が停滞していることは、申しわけありませんが事実でございます。これは、今回の事件が企業の虚偽の申請に基づくということであったために、従来に比べて審査そのものが慎重になってしまったということによるものでございますし、また、具体的な審査手続といたしましても、重点的な項目については省内に戦略物資等輸出審査会というものをつくって、そこでやっているということもまたその一因になっておろうかと考えるわけでございます。  しかしながら、こういう状況が長く続きますると、今委員指摘のように、産業界なかんずく中小企業輸出者その他に非常に御迷惑をおかけいたしますので、そういう状況をできるだけ早く解消いたしますように、先ほど大臣からもお答え申し上げましたような人員の増員を初めといたしましていろいろな対策を講じまして、今どうかすると三カ月かかっているというものをもっと短縮していくという努力を一生懸命してまいりたいと思っております。
  163. 森本晃司

    森本委員 その努力をぜひ行ってもらいたいわけでございますが、同時にこれから、私は決して賛成しているわけではありませんが、法定協議が行われるとか、あるいはパリのココムヘの問い合わせがいろいろあったりする。そういうところで、例えば三週間以内でこれは決定するんだ、審査の結果の開示時期を輸出令で決めることはできないのかどうか、その点をお伺い申し上げます。むしろこの開示時期を決めていかないと、なかなか商談が成り立っていかないと思うわけでございます。
  164. 畠山襄

    畠山政府委員 御指摘のように、審査期間を法定するといいますか、一応目安を決めるということは確かに審査事務の迅速化のためには理想的だとは思うのでございますが、ただ、このココム関係のハイテクの技術あるいは貨物といいますものは、内容によりまして非常に複雑さ、戦略性などが異なりまして、実際問題といたしまして、通産省だけで承認をする行政例外という案件のほかに、一般例外と称してパリで、国際会議で判断しなければいけないというようなものもあるものですかう、一律に審査期間を設定するということはできにくい状況になっております。そういう状況ではございますが、先ほど申し上げましたように人数等をふやしまして、今のような停滞がほんの過渡的なものになるように努力をしてまいりたいと思っております。     〔委員長退席、奥田(幹)委員長代理着席〕
  165. 森本晃司

    森本委員 あと業界の皆さんが非常に困っておられるのは、ココムリストが秘密のベールに包まれていますので、自分たちでどういう方向に向いていっていいのかということが非常にわからないわけでございますが、これはわかるようにはできないのでしょうか。例えばイギリスではココムエンバーゴーあたりがそれに近いようなものを出しているわけですけれども、私は、わからないで捕まってしまう人も気の毒だし、また、それで作業がおくれていくのも大変なことにもなっていくというふうに思うので、何とかもう少しわかりやすくできないものだろうかということを通産省にお尋ね申し上げたいのと同時に、外務省にもお尋ねを申し上げたいわけでございますが、ココムをオープンにするように働きかけることはできないのかどうか、その辺お伺いしたいと思います。
  166. 畠山襄

    畠山政府委員 御指摘のように、その規制趣旨を徹底いたしますためには、規制の具体的内容、基準というようなものが明確であるということが一般論として望ましいというふうに私どもも思うところでございます。したがいまして、ココムの案件につきましても、一応ココムがああいう申し合わせにより、内容は秘密にしよう、そういうことが限界としてはございますけれども、その範囲で通達等で——指摘のようにイギリスも少し便宜を図っているようでございますので、そういったものもよく研究いたしまして、必要な情報提供には一段と努めてまいりたいと思います。
  167. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 ただいま通産省からも御説明がありましたように、ココムの活動内容自体、いわゆるココムリストと称しております品目リストも含めまして、非公開ということで参加国間で申し合わせておりますので、日本だけが一方的に公開するということは非常に難しい点がありますが、今通産省の御答弁のように、どういうのが実態に印すかという点からできるだけ検討いたしたいと思っております。  実は先般、七月の中旬にパリでココムの特別会合が開かれたのですけれども、通常はこういう会合があるということさえも外には発表しないということになっておりますけれども、今の日本の国内における強い関心から見まして、あるいは日本から外務審議官というハイレベルの方が出たということもありまして、日本としては到底この会合の開催自体を秘密にしておくことはできないというようなことを例えば言いまして、一応みんなの間の申し合わせで、会合の事実とどんなことを話し合ったか、非常に大ざっぱなものですけれども、その点だけはプレスに説明したということもございましたけれども、各国の合意が得られる範囲内でできるだけ公にしたいということは考えております。
  168. 森本晃司

    森本委員 外務省がココムに加わっていらっしゃいますので、ココム自体がわけのわからぬものでございますけれども、やはり日本産業を守っていく上からも、でき得る限りこれからもいろいろと積極的にそういった問題を働きかけていってもらいたい、そのように思うところでございます。  それで、今回の改正の問題に入っていきたいわけでございますが、まず最初に、ようやく東西が何とか協調の時代に入ろうとしているときにもあるわけでございますが、ココム強化していくということについては、これは逆の流れになってしまうのではないだろうか。東西貿易の正常なる発展自体が、それが緊張緩和につながっていく。それを強化強化という形をもっていけば、特に日本が今回のこの改正で突出するように受けとめられるわけでございますけれども、そういう状況になってしまいますと、かえって安全保障、平和・安全という問題については逆の流れになってしまって、角を矯めて牛を殺してしまうようなことになってしまわないかということ。  それから、今大臣からいろいろとお答えいただきました、こういう対策を講じているということで、今後それが積極的に行えるわけでございますが、私はそのことだけで十分ではないだろうか、外為法まで改正する必要はないのではないだろうかというふうに思うのです。先ほどお述べいただいたものをいろいろと整備し、さらに強化していただいた方がむしろいいのではないか。今回の東芝事件も、決して現行の法令の不備によって生じたものではないと思うのです。むしろあれは虚偽の申請ですから、だますやつはどこまでもだますし、死刑の罪をかぶせるぞと言ったところで抜けるやつは抜けるというのが今回の東芝機械事件だと思うのです。そういう意味で、では法令を直したからそれはおさまるんだという問題ではないと考えておりますが、いかがでしょうか。
  169. 田村元

    田村国務大臣 実はこの外為法改正すべきかどうか、省内で随分議論をいたしました。いろいろな意見を持っておる者もおりました。結局、罰則強化だけはしなければしようがあるまい。ただ、罰則強化といっても行政制裁も入りますが、だからといって平和と安全とかなんとか、ココム関係というものだけにしないと、あとの者が三年から五年と巻き添えを食らうというのもこれはいかがなものだろうかというので、たまたま二十五条に「国際的な平和及び安全」という言葉がございましたから、ちょうどいい、これを使おうということにして特掲をしたということでございます。これは安保条項とよく言う人がおるのですけれども、私どもの感覚では、率直に言って安保条項という考え方ではなくて、ココム関連という考え方で二十五条の「平和及び安全」というものを取り入れたわけでございます。  なぜ外為法改正に踏み切ったか、これは正直言いまして、私も通産大臣になりましてからもう九回外遊をいたしましたが、アメリカヘ行きましてもヨーロッパヘ行きましても中国へ行きましても、どこへ行きましても、私も大正の人間でございますけれども、もう昭和元禄で四十二年間戦争なしで平和な世界日本に住んできたわけですけれども、我々がおおよそ考えることのできないほど国防意識は各国強うございます。ところが日本はその点は全くむとんちゃくでございますから、企業機密はあり得ても国家機密はあり得ないというような感覚が非常に強い。ここは商工委員会でございますから、それがスパイ防止法とどうこうということを言うのではありません。  ただ、そういうことで日本人の意識の問題がございますから、これは罰則強化という一種の体罰といいましょうか、これは入れた方がいい。ただ、だからといって、どれだけ罰則強化しても、悪いことをしない者は何の関係もないのですから気楽な話だと思います。そういうわけで、この外為法改正に踏み切ったという次第でございます。
  170. 森本晃司

    森本委員 今の大臣の御答弁の中で、既に入っていたから入れたという、非常に安易な法律のつくり方だなというふうに我々は受けとめるわけです。既に二十五条に入っているから四十八条に入れてもおかしくないじゃないか、テレビのときも私見ておりましたけれども、どうも納得しかねるところがそこのところでございます。  それで、対象はココムだ、このようにおっしゃっておられますし、また今そういう答弁だったわけでございますが、「国際的な平和及び安全の維持」という言葉があります。大臣は今ココムだとおっしゃいました。だけれども国際的な、これは決して対共産圏だけを指しているわけでもない。それを指しているとしたならば仮想敵国をつくっているということにもなりますし、この「国際的な平和及び安全の維持」について、その範囲というのは明確になっていないと思うのですけれども、これはいかがでございましょう。
  171. 田村元

    田村国務大臣 いや、どうも失礼しました。ココムのことばかり頭にあったものですから。武器、原子力関係等々が含まれるわけでございます。
  172. 森本晃司

    森本委員 外務省は、この範囲をいかがに受けとられておりますか。
  173. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 これから政令を定める段階で、通産省にも私たちの考え方をお伝えして整備していただきたいと思っておりますけれども、今通産大臣が述べられましたように、ココム関係規制に加えて、武器とか原子力関係等がとりあえず頭に浮かぶ範囲でございます。
  174. 森本晃司

    森本委員 「国際的な」という範囲はどうなんですか。「国際的な平和及び安全の維持」に関する武器とか、そういうものですか。地域的にはどこに及ぶのですか。まず「国際的」という言葉、これは一体どこを指しているのですか。外務省ちょっと答えてください。
  175. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 ここで言う「国際的な」という意味は、世界の平和・安全というふうに解釈いたします。
  176. 森本晃司

    森本委員 そうすると、世界の平和・安全ですからココム以外の、大臣はさっきココムとおっしゃいましたけれどもココム以外の地域でも平和及び安全の維持妨げになるということが認められたならば、それはだめになっていくわけですか。
  177. 畠山襄

    畠山政府委員 大臣が先ほど申し上げましたように、例えば武器輸出なんというものを考えてみますと、今武器輸出原則あるいはそれに基づく国会決議、ああいった世界を考えておりますので、したがいまして、当然全地域とも対象にしていくというふうに考えております。
  178. 森本晃司

    森本委員 そうしますと、それは日米安保の範囲を超えているものにはならないのですか。日米安保条約の範囲を超えておりますか、超えていないですか一また、憲法第九条の個別的自衛権の問題との関係はどうなりますか。これは外務省にお伺いします。
  179. 天江喜七郎

    ○天江説明員 お答え申し上げます。  国連憲章第一条には、国際の平和及び安全の維持ということが主たる目的になってございまして、この国連憲章の主目的である国際の平和及び安全の維持という言葉がすなわち、その他の地域的な安全保障の基礎になっております条約その他に引用されておるわけでございます。したがいまして、ここに申し上げました国際の平和及び安全という文言は、国連憲章の中でも、また安全保障条約の中でも、特に共産圏との対立とかそういうものを念頭に置いた概念ではないということは、国連憲章の起草経緯、すなわちソ連とアメリカが一緒になってつくったという経緯からも明らかでございます。ただし国連憲章第五十一条には、世界においていろいろな武力攻撃が発生した場合に、国連憲章のもとでつくられる安全の維持のための軍隊、国連軍ができるまでの間は、地域的な安全的な枠組み、すなわち日米安保、NATOあるいはワルシャワ条約等において国際の平和及び安全の維持のために行動することができる、こういうような規定がございます。
  180. 森本晃司

    森本委員 そうすると、後で出てきますが、三年と五年の刑に分けた理由、刑を三年から五年にした理由は、ココム以外の人も五年になっては大変なので、これがココムだとわかるようにするためにこの文言を入れたという発言がありますね。その話を聞く限りは、対象は対共産圏になりますね。この解釈でいきますと、後の方の刑罰の問題になってくると、ココムとそうでないものとを区別するためにそうやったのだということと、今ここでは全世界的なものだ、国連憲章に基づくものだ、当然国連憲章は仮想敵国を想定しておりませんけれども、それと矛盾はないですか。
  181. 畠山襄

    畠山政府委員 私どもといたしましては、「国際的な平和及び安全の維持」といいますのは、国際的な紛争の発生あるいはその拡大を助長するような取引、または西側諸国安全保障に重大な影響をもたらす取引、そういったものを観念いたしているわけでございまして、ココム関係について申し上げれば、先ほど御質問の中で御指摘いただきましたように、その部分を取り上げるためにこの用語を使ったということでございます。
  182. 森本晃司

    森本委員 法制局から来ていただいておりますのでお答えいただきたいと思うのですけれども、「国際的な平和及び安全の維持」についての法制局の範囲解釈、それからこの言葉が果たしてすべてのものの戦略物資かそうでないものかの基準になり得るかどうか、法制局の見解を聞かせてください。
  183. 大出峻郎

    ○大出政府委員 今回の改正案の第二十五条第一項あるいは第四十八条第一項に「国際的な平和及び安全」という言葉が出てまいるわけでありますが、これは国際社会において紛争あるいは紛争のおそれのない状態、そういうものを意味していると思います。その維持妨げると認められるといいますのは、例えば国際社会における紛争を引き起こしたりこれを助長したり、あるいはこれらのおそれがあるような場合を言うというふうに考えておるわけであります。先ほど通産省の方から例を出しておっしゃっておられましたが、例えば武器輸出という問題について考えてみますと、すべての国に対してそういうものを輸出するということがこの規定との関係で問題となり得る、当てはめる問題としてはこういうふうな形になってくるのではないかと思うわけであります。  それから、この言葉が即ココムかという点につきましては、先ほども申し上げましたように、法律の規定の意味は、国際社会において紛争あるいは紛争のおそれのない状態ということでありますから、これがココムだけに限定されるというわけでは必ずしもないと思います。武器輸出というような側面の問題を考えてみますと、そこはココムだけに限定されるというわけではないということが御理解をいただけるかと思います。
  184. 森本晃司

    森本委員 法制局の方に御答弁いただきたいのですけれども、こういう抽象的な言葉は基準、物差しになりますか。私、この言葉は非常にあやふやではないかなと思うのですね。他の法律の中で、今外務省が安保条約と国連憲章を挙げてくれました。この二つにあります。日本法律の中であと一つあるように伺っておるのですが、どういうことがございますか。
  185. 大出峻郎

    ○大出政府委員 今回の改正案におきましては、規制の要件といたしましてこのよう名言葉が設けられておるわけでありますが、その意味するところは、先ほど申し上げましたように、国際社会において紛争あるいは紛争のおそれのない状態が「国際的な平和及び安全」ということであるというふうに理解をしておるわけであります。そして、こういう法律的な要件のもとに、具体的にはごらんいただくとおわかりいただけますように、これに該当する特定技術取引だとか特定貨物輸出等につきましては、それぞれの規定に基づく政令で具体的、個別的に定めるという形になっておるわけであります。具体的、個別的に定められる政令の補完によりまして、その範囲というものは明確であるということがはっきりいたすというふうに考えておるわけであります。
  186. 森本晃司

    森本委員 他の法律では、この間通りました研究交流促進法にありますね。ここだけですね。しかも、この研究交流促進法というのは罰則規定じゃないですね。訓示規定ですね。法制局、これはどうですか。
  187. 大出峻郎

    ○大出政府委員 ただいま御指摘の研究交流促進法の第十条というところでは、この法律の運用に当たりましての配慮事項、こういう形でもってただいまのような用語が出てまいるわけであります。これにつきましては、罰則の規定というものはございません。
  188. 森本晃司

    森本委員 今回これは罰則がついてくるわけですが、ではほかに罰則の規定のあるものはありますか。
  189. 大出峻郎

    ○大出政府委員 この前もこの委員会におきましての御質問でお答えを申し上げたかと思いますけれども、現在すべての法律を調べ切っているというわけではございませんけれども、国内法の条文といたしましてはただいま御指摘の研究交流促進法の条文というものがある。それ以外は、これは現行法の外為法の二十五条、これは改正案でございませんで現行法の外為法の二十五条にはそういう法律要件がございまして、それに基づいて政令で内容を決めていく、こういうような仕組みになっております。これにつきましては、罰則の規定が設けられておるという形になっております。
  190. 森本晃司

    森本委員 日本のほかのにはそういう罰則規定がないというのは、これは基準を決めにくいからそうなっているのじゃないかな、物差しがないから罰則規定にはなっていないのではないだろうかというふうに私は思うわけです。今法制局の方にお答えいただきましたけれども、二十五条にある、これは大臣もそのようにお答えいただいた、だから持ってきたのだというのですが、これはもう少しまた論議させていただきたいのです。  この二十五条の場合には基準になるものがあるわけです。今度の場合はないと私は判断する。その違いはどこにあるかという前にまずお聞きしたいのですが、私が今手にしているコップ、これは「国際的な平和及び安全の維持」という視点から考えてみましたら該当するかしないか。一般国民の人がこれを見ましたら、どれが該当するのかしないのかわかりませんよ。法制局、ちょっと答えてください。水の入ったコップ、これは該当しますか。
  191. 大出峻郎

    ○大出政府委員 後から通産省の方からのお答えもあるかと思いますが、法律の条文といたしましてはこのような書かれ方がされておる、しかしこれは、法律のこの条文だけですべて完結をしているわけではございませんので、現行法の二十五条もそうでございますし、今回の改正案もそのような意味では同じ形になっておりますが、具体的なものは政令で定める、そして政令では個別具体的に一つ一つ拾っていく、こういうような仕組みでこの法律の枠組みというものはできておるわけであります。したがいまして、国民方々からごらんいただきますと、設けられる政令の規定というものをごらんいただくことによりまして、何がここで許可の対象となる貨物であるのか、あるいは何がここの規定による許可の対象となる特定技術取引であるのかということは、政令をごらんいただければ明確にわかる、そういう法的な枠組みで全体が構成をされておるというふうに御理解をいただきたいというふうに思います。
  192. 森本晃司

    森本委員 政令が決まればわかる。政令が決まるまで私のここに今持ったコップがこれに該当するかどうかわからぬのですね、そういうことですね。皆さんも秋葉原へ行かれたと思います。秋葉原に行くと、我々が使うことはできないけれども、小学生や中学生の子供の方がはるかにいろいろ使うことのできる半導体の機械があそこにたくさんある。私の息子も小学校ですけれども、僕よりそういうのを使うのははるかにうまい。皆さんも一回秋葉原の店に行かれて、どれがその政令に定まるものか定まらないものか、仮に今度政令をつくられたとしたならば、見に行かれたらどれがどれだか本当に、そこへまた買い物に来ている大人に聞いてください。それは私はわからぬと思う。  それともう一つは、法制局の回答によると、政令によって決まる。これはだれが決めるのですか。私の今持っているこのコップがいいとか悪いとか、これはだれが決めるのですか。
  193. 畠山襄

    畠山政府委員 確かに、輸出金別表の対象品目というのはそうやさしくはできておりませんで、御指摘のように秋葉原で具体的にどれが該当するかということについてすぐにわかるということにはなっておりませんが、ただ、輸出をする企業というのは一応専門家でございますので、専門家としてそういう教育を十分社内でもしてもらって通暁をしていただきたいというふうに思っているわけでございます。  第二のお尋ねは、この対象品目をだれが決めるのかということでございますが、これはココムのリストレビュー会合というものでまず国際的な話し合いがございまして、そこは具体的には外務省の書記官なりあるいは通産省からの出張者なりそういった人たち日本側からは参加するわけでございます。それに国際的なカウンターパートも出席をいたしまして、そこでの話し合いでココムリストなるものが決まってくるわけでございます。そして、国内的には私どもがそれを政令案に表現をいたしまして、内閣法制局審議を経て各省と協業をした上内閣で決定する、こういうことになるわけでございます。いずれにしましても、そういう際に基準といたしますのは、先ほどの国際的な平和及び安全の維持妨げとなるかどうかということ、それから外為法目的でありますところの国際貿易の健全な発展あるいは我が国経済の健全な発展ということを基準として考えていくわけでございます。
  194. 森本晃司

    森本委員 一つココムで決まる、国内的にはそれを持ち帰って整理し、政令で政府で決めていくということですね。ココムで決まったらそれでいいじゃないですか。私は、決していちゃもんつけているわけじゃないのですけれども。「国際的な平和及び安全の維持」というこの判断は政府がやるんでしょう。国民のわからぬところでなされますよ。今コップが、これも危ないと言ってしまえば、これが入っておればそのままになってしまう。さっきはだれもこれが該当するともしないともおっしゃっていただいておりませんけれども、これ、だれか恣意的に入れようということになれば、それは入ってしまうのじゃないですか。
  195. 畠山襄

    畠山政府委員 「国際的な平和及び安全の維持妨げになるかどうかということは、日本外為法でございますから、日本が判断をするわけでございます。そして、その外為法目的の中に、我が国経済の健全な発展あるいは我が国貿易の健全な発展ということも書いてございますので、そういった観点から眺めてみて、日本の代表も出ているわけでございますからそういうことは間々ないと思いますが、仮にココムで変なものが決まってくれば、そういうものは当然排除をしていくということになるわけでございます。  コップというようなもの、わかりやすいもので例示をいただいて大変感謝申し上げていますけれども、コップの場合ですと無論該当いたさないわけでございますが、御指摘のようにボーダーラインはなかなか難しいところもございますが、そこは先ほど申し上げましたようになるべく政令の表現もわかりやすいように工夫もいたしますが、会社の教育とかそういうことも通じて、輸出者が間違えないように今後勧奨もしてまいりたいと思っているところでございます。
  196. 森本晃司

    森本委員 ベトナム戦争のときにスマート爆弾が使われましたね。そのスマート爆弾の頭の先に日本のカメラがつけてあって、飛行機の上からそれを操縦して、的確に目標に落とす。日本のテレビカメラがついている。このテレビカメラは一般に汎用ですね。だけれどもアメリカが勝手に使ったのです。スマート爆弾の頭の先につけたわけですね。この場合はどうなりますか。
  197. 畠山襄

    畠山政府委員 あのときの議論は、スマート爆弾の先端についた今おっしゃったテレビカメラが武器そのものに該当するかという議論であったかと思います。それで、スマート爆弾専用のカメラでございまして、それ専用に設計製造されたというものであれば、これは武器専用の部品ということで武器に該当するし、そうでなくて、今御指摘のように汎用であれば汎用であるというような議論であったかと思います。ココムの場合は、武器もその中に含まれておりますけれども、武器じゃない戦略性の高い物資というものも含まれておりまして、それらがどういうふうになっていくかということは参加十六カ国で相談をして、できるだけ戦略性の高いものに絞っていこうという最近の傾向ではございますが、そういうことで決めていくわけでございます。
  198. 森本晃司

    森本委員 いずれにしましても、政令で定められて恣意的に含められる可能性も十分あるわけでして、この「政令で定める」という漠然たる基準を、先のものを政令で定めるというのは、私は非常に危険な行為だと思うのです。この「国際的な平和及び安全」と言っていますけれども、安全というのは、自分が脅威だと感じたら危険であり、そうでないと感じたら安全である。平和のためにと言っているけれども、果たして平和のためなのか、そういうことを規制することによってむしろ緊張を招いていくように私には思えてならない。こういったあいまいな基準で、しかも範囲が明確でないもの、しかもそれを、あとは政令で国会の論議のないままで定められていくという法律については、私たちは納得できないというところでございます。  さらに話を次に進めさせていただきますが、先ほど来、五十五年の改正のときに二十五条が入ったというわけでございますが、では、五十五年の改正のときに四十八条にはなぜ入らなかったのですか。
  199. 畠山襄

    畠山政府委員 五十五年の改正のときに、技術に入って四十八条の貨物になぜ国際的な平和及び安全に関する条項が入らなかったかというお尋ねでございますが、まず五十五年のときに技術の方になぜ入ったかということを申し上げますと、当特技術といいますか、その技術をもう少しカバーするのは役務取引でございますけれども、その役務取引におきましては昭和五十五年以前は原則禁止の体系でございました。それで、非常に広い範囲にわたって許可制がとられていたわけでございます。そのために、その広い範囲のものを一々列挙するわけにいきませんでしたので、したがって五十五年改正前はこの国際の平和と安全とかいう言葉がなかったわけでございます。ところが、昭和五十五年改正におきましては、役務取引の大半を自由化してしまいました。そこで、逆に許可対象となる役務取引についてポジティブに明記する必要が出てきたわけでございます。そこで、許可対象として残されたほかの対象と並びまして、今の平和。安全理由による規制もポジティブに明示をしたということで、技術の方に入ってまいったわけでございます。  そこで、お尋ねは貨物の方についてなぜ入れなかったかということでございますが、四十八条につきましては五十五年改正前から、役務取引とは異なりまして原則禁止の建前になってなかったわけでございます。昭和三十九年でございますか、に全体として大幅に貿易を自由化いたしましたけれども、その以降、実態として原則自由の体系が確立されておりましたものですから、その包括的な従来の規定ぶりを変更する必要がなかったわけでございます。それで、従来からこの「国際的な平和及び安全」と今呼び始めようとしているような行為、すなわちココムに関する規定をやっていたわけでございますが、これは国際貿易の健全な発展のためにならば最小限の制限を行ってもよろしいという四十八条二項の規定に基づいて、ココムについての規制とそれからココム以外についての規制、これは過当競争の防止とか需給理由とかそういうものでございますが、その両方をやってきておったわけでございますけれども、今回はそのうちココム関係外為法違反罰則強化したいということから、前者を取り上げて「国際的な平和及び安全」という言葉であらわしていくということにさしていただこうとしているわけでございます。
  200. 森本晃司

    森本委員 それから、二十五条に使われているから今度四十八条に入れた、何ら内容は変わらないという答弁が先ほどありましたけれども、私は前の二十五条と今の二十五条と内容が違うと思うのです。五十五年の改正のときの二十五条と今回の改正の二十五条、どこが違うかというと、要するに五十五年の改正の二十五条のときには「我が国が締結した条約その他の国際約束の誠実な履行又は」、前に条約、国際約束の誠実な履行が入って、それで「国際的な平和及び安全の維持妨げる」もの、こういうぐあいになっていますね。三つ並んであるわけです。今回は何にもそれがなしで「国際的な平和及び安全の維持妨げることとなると認められるものとして」すぐにそれが「政令」。前回の場合は「政令」というのはもっと前に来ています。しかも、「国際的な平和及び安全」というこれはまさに漠然としたものですから、一般条項になってくると思うのですね。これは前にあるから等価値であって、この一般条項の持つ意味もある。今度の改正の場合にはそれがなしで「政令」と来ているわけですよ。これは二十五条で言う初めから二行目に書いている「政令」と今回の安全の維持妨げることになるものとしての「政令」、法制局、これは同じですか、政令は。
  201. 大出峻郎

    ○大出政府委員 現行の外為法の二十五条の規定でございますが、ただいま御指摘の条項の部分でございますけれども、これは「役務取引又は外国相互間の貨物の移動を伴う貨物の売買に関する取引であって、我が国が締結した条約その他の国際約束の誠実な履行」というのと、「国際的な平和及び安全の維持妨げることとなると認められるもの」というのとは、選択的に書かれておるわけであります。したがいまして、両方の要件に該当するということを要しないわけでありまして、役務取引であって「国際的な平和及び安全の維持妨げることとなると認められる」、そういうものについて現在も政令で定めておる、こういう形になっておるというふうに承知をいたしております。
  202. 森本晃司

    森本委員 離婚訴訟の場合に離婚の理由に挙げられるものには、不貞の行為あるいは三年以上行方不明になった、あるいはまた悪意で遺棄したもの、あるいは不治の病、そして「その他」というのがありますから、この「その他」という一般条項は、前の不治の病とか不貞の行為とかと等価値に値するから、「その他」はそれに準ずるものということになっておるわけですね。  それで考えてみますと、現行の二十五条は、条約や国際約束の誠実なというのと等価値という  一つの基準がある。今回の改正の場合には基準がない。現行の政令の持つ意味と、今回の改正の、政令のすぐ上に「国際的な平和及び安全」というのが重なっているのと、政令の性質が明らかに違うのじゃないだろうか。現行は並んでいるから、それと等価値のもので平和と安全ということを決めることはできるけれども、今回は並んでいなくて政令ですから、本当にここは政府の勝手で何でも決められるということになってくる、この政令は。これはひとり歩きしますよ。
  203. 畠山襄

    畠山政府委員 森本委員の御指摘趣旨は私なりに理解ができますけれども、ただ本件につきましては、「我が国が締結した条約その他の国際約束の誠実な履行」というものと「国際的な平和及び安全の維持妨げることとなると認められるもの」というのは、ただいま法制局の第四部長からお答えがございましたように、並列的になっております。     〔奥田(幹)委員長代理退席、臼井委員長代理着席〕  それで、前者は今回の法律でございまするとこの三項の方に参りました。今お手元にございますかどうか、三項の二号をごらんいただきますと、「役務取引又は外国相互間の貨物の移動を伴う貨物の売買に関する取引であって、我が国が締結した条約その他の国際約束の誠実な履行を妨げることとなると認められるもの」ということで、これは三年の方になってきているわけでございます。それで、後段の「国際的な平和及び安全の維持妨げることとなると認められるもの」、これが先ほどかも御指摘のように一項の一号に来ているということになっているわけでございます。  そこで、政令でございますが、現行法も改正案も両方とも、当該取引についてその手続を定める意味で「政令で定めるところにより、」と書いてございます。それから、現行法の方では「政令で定める取引」というのがございますが、それで具体的には政令で決めていくわけでございますけれども改正案の方ではこの一号の中に、「政令で定める特定の種類の貨物の設計、」というふうになっているわけでございまして、政令の立て方も一応現行法と改正案はパラレルと申しますか、対応しているというふうに考えさせていただいております。
  204. 森本晃司

    森本委員 いずれにしましても、今度の西十八条に入った政令というのは、今度の改正案なるものは、政府が勝手に決めることのできる、ひとり歩きのできるものではないか。こういった極めて未完成な——私は、これは非常に無理してつくられたと思いますよ。もしどなたかが正直におっしゃったら、恐らく無理しているなというふうにおっしゃる人もいらっしゃるかもわからない。非常に無理した法律であります。ちょっと私は納得しかねる。  あと、外務省との協議のことでちょっとやりたいものですから、もう一つだけこの問題について言っておきたいと思うのです。要するに、こういう「国際的な平和及び安全の維持」ということで全く漠然とした、罪となるべき行為の内容法律で余りわかっておらぬ。しかもこれは、もう全部政令にゆだねているだけで、それで罪にならなければならない。そういった形は罪刑法定主義に非常に反しているんじゃないだろうかという点と、もう一つは、その刑が最高懲役五年ということは、形式犯的な罪としては余りにも重刑過ぎるのではないだろうか。こういった「国際的な平和及び安全の維持」の内容を政令に任すというような法律、それから重刑を科すことが必ずしもいいというわけではない。したがって、今回のこの法律改正しないでそのままでやっていったらいいと私は思いますが、いかがですか。
  205. 畠山襄

    畠山政府委員 第一点の、法律で一定の基準を書いておきまして後を政令に委任するというのは、対象が時々刻々変わる経済現象のような場合には、一応経済法の中で外為法に限らず見られる現象でございまして、罪刑法定主義には反していないというふうに考えております。  それから、五年の懲役というのが長いという御指摘でございますが、現行関税法の中で、例えば特許関係、意匠関係法律違反して入ってきた貨物について懲役五年というような例もございまして、それらとの均衡から一応バランスがとれていると言い得るというふうに考えております。
  206. 森本晃司

    森本委員 次に、外務省とのいわゆる法定協議。決して法定協議ではありません。これは法定協議になると、貿易の自由という原則から考えてみると、外為法精神からも随分変わってくるのではないかというふうな感じにもなりますので、いわゆる法定協議というところでございますけれども、この改正案の立法の途中で、これは外務省にもお尋ねしたいのですが、特別立法を外務省は立てようとされたと思う。これはけしからぬ話だと思う。通産省は罰則等の強化を考えていたというところです。  そこで、いろいろとあの時分の新聞を見ますとそれぞれいろいろなことが書いてありますけれども、最後に苦肉の策でしょうね。それで、大臣は安保条項ではないということでございますけれども、我々から見ると安保条項を盛り込むことを外務省は提起した。通産大臣外務大臣が話し合いをするという法定協議を要求したわけですけれども、結局意見の交換という規定にとどめるということになってしまったわけでございます。  こういういわゆる法定協議、外務省の背景には国防という問題があるわけですけれども、そういう条項になっていった、そういう法律になっていったということ。これは、自由貿易の大原則に立つのが通産省でございますから、その大原則に立つところの通産大臣としてこの経緯をどのように受け取っておられるのか、伺いたいと思います。
  207. 田村元

    田村国務大臣 安保条項ということで決めつけますと、これは外為法の範疇を出てしまいます。でございますから、それは独立法の方がよいということになりましょう。あくまでも外為法自由貿易原則が書かれてある、そして必要最小限の規制が加えられるという法律でございますから、法定協議ということはいたしません。これは法定協議ということを余り言われたくないのです、率直なことを言って。法定協議でございましたら、外務省はおろか防衛庁も入れなければならぬかもしれません。やはり外為法はあくまでも自由貿易法律という観点から、外務省は意見を我々に述べることができる、我々もまた外務省に意見を述べることはできます。もちろん外務省の意見は十分耳を傾け尊重しなければなりませんが、最終的な判断は通産省が下す、こういうことだとお考えをいただきとうございます。
  208. 森本晃司

    森本委員 通産省は、この自由貿易の大原則を絶対に曲げないでいただきたいのです。そうでないと、外務省が入り、その裏から今度はまた防衛庁が入ってくる、何だかんだとやっていきますと、確実に経済に軍事が介入していくということになりかねない。この間テレビを見ておりまして大臣が、外務省が入ってくることを非常に好んでおられないような発言でございましたから、これは通産大臣頑張っておるなというふうに私はあのテレビを見ていたわけでございますけれども、外務省の所感はいかがですか。
  209. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 従来から、特に国際的な見地から私たちが情報を得た場合等には通産省に即刻伝えまして、いろいろと協議をしてきておるわけなんですが、今度我が国輸出管理体制をこの法律改正も含めまして整備される機会に、六十九条の四に書いてありますように、特定の場合には通産大臣外務大臣意見を求めることができる、あるいは国際的な平和及び安全の維持のために特に必要なときには外務大臣通産大臣意見を述べることができるという条項を入れていただいたわけです。こういう規定が入りますと、いわゆる自由貿易が阻害されるとかあるいは外務省がココム規制の拡大を図るというような新聞報道等も行われておりますけれども、今通産大臣童言われましたとおり、政府といたしましては、外務省も含めましてあくまで自由貿易が大原則でありまして、いたずらに自由貿易規制しようという意図は毛頭ありません。特に、私たち外務省は、アメリカの保護主義に対しても非常に強く戦っておりまして、あくまで世界自由貿易ということを強く言っておりますが、これは日本輸出管理におきましても同じ立場で対応しております。  ただ、そのときに特にココム規制を中心にして、今度の東芝事件にも見られますように、我が国を含む西側の安全保障にとって非常に大きな問題が起こるような事件が起きた、こういう問題については外務省としても十分に意見を言わしていただきたい、そういう考えがあるのでございます。
  210. 田村元

    田村国務大臣 念のためにちょっと申し上げておきますと、外為法主務大臣は、これは大蔵大臣と通産大臣でございますが、この条項に関しましては主務大臣通産大臣でございます。
  211. 森本晃司

    森本委員 「外務大臣は、」云々で「運用に関し、通商産業大臣意見を述べることができる。」という、この「意見を述べること」の範囲はどういうことになっていますか。どういう意味ですか。どこまで意見を述べることができますか。意見を述べて、通産大臣が聞かなかったらいいんだというふうな形になるのであれば、それは覚書条項でもよかったんじゃないでしょうか。この中に入れないで、覚書条項でもいいんじゃないですか。
  212. 田村元

    田村国務大臣 それでもよかったと思います。思いますけれども、まあそれはまた役所の問題がございますから、意見をお互いに述べ合う。もちろんその意見は尊重しなければならぬことは当然ですけれども、率直に言いまして、「国際的な」という表現があります以上、やはりプロフェッショナルな行政機関といえばこれは外務省でございますから、我々も通政は持っておりますけれども、外務省の意見を聞くのを法定してもよかろう、そのかわり我々の意見を言うのも法定しよう、こういうことでございますから、私は、この問題で自由貿易が阻害されるというような危機意識はそれほど持っておりません。
  213. 森本晃司

    森本委員 私も決して、外務省に何も言うたらあかんと言うておるわけではないし、外務省しゃしゃり出るなと言うわけでも何でもないのですが、自由貿易原則を守る上から、どうかアメリカの言うままに物を——外務省というのはどっちかといえば国際的な立場ですから、アメリカの情報が圧倒的に入ってきますから、それをそのまま持っていくようなことはやめてもらいたい。アメリカは特に今は大変な状況に入っていますので、日本自由貿易を守るべき立場からよくお互いの意見を交換してもらいたいのです。  外務省は、これは法定協議でないということでありますけれども、法定協議と見られる部分もあるわけです。時間が参りましたのでちょっと言えませんが、一々お答えいただけませんが、こんな心配があります。まず、外務省と協議をするならば原則自由という外為法趣旨が変わるということです。アメリカの意向等を受けて政治的理由の規制をされるのじゃないかという心配があります。また、ココム対象貨物規制が厳しくなる。アメリカの言うままになって、アメリカは今度のココムでも好き勝手にやっています。本当に何で日本がこんなにココムを一生懸命、もう田村大臣が、やせてはおられないけれども心労を尽くさなければならぬほど、ココムの問題で神経質にならなければならぬのかと思うほどですから——アメリカも自由にやっています。この間のソ連の見本市でもアメリカの品物がどっと出て、日本は東芝が撤退して、日本の見本市会場はもうがたがたになっているわけです。  要するに私が申し上げたいのは、行政例外というところに絶対外務省が協議やそんなものを持ち込まないでもらいたい。もう一つは、事務上の手続で承認が非常におくれてくると思います。長い間話ばかりやっていますと、今でもおくれているのですから、その辺もよく考えてもらいたい。それから、中には非常にうがった考え方がございまして、失礼な話かもわかりませんけれども、SDIの企業が優先されるようになっていくのではないだろうかという心配もなきにしもあらずでございますし、同時に、この後にまた防衛庁や警察庁が大きく関与をし始めるのではないだろうか、そのための布石が始まったのではないだろうか。この数年間の中曽根内閣の軍拡へのあり方を見ていると、私たち国民は、そのことについて心配するなといっても心配せざるを得ない。  私は、今、東西の安全保障というのは必ずしも防衛、軍備だけではないと思います。貿易があり、文化がある。東西がそれぞれ交流していくことによって国際協調が図っていかれるものと思う。中国を見ましても、やっと日本といい環境になってきたと思ったら、その後また光華寮で今大変な問題になっています。営々として築き上げた、歩み始めた日中貿易も、この改正でまた亀裂が入ってしまうようなことになっては大変だと思う。まして、けさの新聞を見ますと、ソ連と日本の間に大きな亀裂が起きようとしている。日ソ貿易さらに冷却か、日本とソ連の貿易がもうこれでどうなってしまうのだろうかという記事で、きょう見ましたら、通産省はまだその後つかまれたと思いますけれども、情報が入っていないのでどのように対処されていくのか、これも真相究明をしていかなければならないわけですけれども、まさにこの数年間このままいくと、中国もだめになり、ソ連もだめになる、アメリカからはバッシングでやられていくという、日本はもう外交で孤立してしまうのではないだろうか。私はもっともっと自由貿易を大原則とした従来の外為法そのままで、そして守るべきところを守り、改善すべきところを改善して、そして世界に貢献をしていかなければならない立場であるということを申し上げまして、私の質問を終えさせていただきます。  最後に、大臣、一つだけ東西貿易に関する所感をお願い申し上げます。
  214. 田村元

    田村国務大臣 今、対中貿易の話が出ました。これについてちょっと簡単に申し上げますと、日中貿易は一九七二年の国交正常化、あれから着実な発展を遂げまして、昨年の貿易量は国交正常化当時の十四倍になっております。約百五十五億ドルの水準に達しております。政府として今後とも日中貿易を促進していく、増大せしめることは当然のことです。先般も、日中閣僚会議で私も鄭拓杉氏といろいろと協議をしたところでございます。今度の外為法改正は、我が国輸出管理体制の強化趣旨とするものでございまして、これによって我が国の今申し上げました立場はいささかも変わるものではございません。  そこで、中国問題で今まで恐らく答弁がなかったかもしれませんから申し上げますと、ココムにおきまして規制対象百七十八品目中、コンピューターを初めとする三十六品目の対中輸出に関しましては、ココムヘの協議なしに各国政府限りで輸出承認を行い得るという申し合わせがなされておりまして、規制は緩和されております。我が国も、上記申し合わせを踏まえまして、中国向け輸出規制を緩和しております。これは、今後ともこの外為法改正によって影響を受けることはない、このように私は考えております。
  215. 森本晃司

    森本委員 ありがとうございました。
  216. 臼井日出男

    ○臼井委員長代理 米沢隆君。
  217. 米沢隆

    ○米沢委員 私は、質問に入ります前に、けさの新聞を見ますと各社トップで、駐ソ日本大使館の防衛駐在官と日本商社駐在員の二人に対してソ連が国外退去を要求した、そして日本政府も例の東京航空計器幹部による防衛産業スパイ事件関連して、ソ連の通商代表部のポクロフスキー代表代理を追放することを決定したという記事が出ておるわけでありますが、いわゆる今議論しております東芝機械ココム規制違反の対ソ不正輸出事件の摘発、五月の横田スパイ事件の摘発、それかり先ほど申しました東京航空計器幹部による防衛産業スパイ事件の摘発等々、一連のこのような事件をソ連は反ソキャンペーンの一つだというように主張してきたわけでございます。  外務省の方にお尋ねをいたしますが、今回のこのような報復合戦というのは、この東芝機械事件がかなり色濃く影響しておるものでしょうか。その背景についてどういうような分析をされておりますか。
  218. 野村一成

    ○野村説明員 ただいま御指摘のございましたソ連側の措置でございますが、特に竹島防衛駐在官の国外退去要請というものにつきましては、これは全く事実無根である、私どもそういうふうに認識しております。特に諜報活動に従事しておったということでございますが、そういうことはございません。  それで、その背景ということでソ連側の意図ということにつきましての御質問でございますが、私どもはそもそもそういう事実無根の遺憾な措置であるという認識に立っておりますので、したがいまして、その背景等につきまして私どもの方からそんたくするというのは適当でないという立場をとっております。  それから、先ほど先生の方から報復措置ということに言及ございましたが、私ども東京でとりました措置と申しますのは、これは日本の国内法に違反しまして身分にふさわしくない行為を行ったにもかかわらず私どもの累次の出頭要請にこたえなかった、そういう状況を踏まえまして措置をとったものでございまして、とるべき措置をとったにすぎない、そういう認識でございまして、ソ連側の措置への対抗あるいは報復、そういう措置を意図したものではございません。
  219. 米沢隆

    ○米沢委員 質問に的確にお答えいただいておりませんが、先を急ぎたいと思います。  本題に入りたいと思いますが、我が国は自由主義陣営の一員といたしまして、他の自由主義陣営国とともに自由、平和、安全保障等に関し同じ価値観を有し、共通の利害を有しておる、そういう考え方に立ちましてココムに参加し、ココムが紳士協定であったといたしましても誠実にココム規制を遵守しよう、こういうことで今日までやってきたわけでございます。したがって、今回のようなこの東芝機械事件はまことに遺憾なことでありまして、かかるココム違反事件、それも虚偽の申告など悪意による対ソ不正輸出などは言語道断だと言わねばならないと思います。その観点から、関係者に対しまして法律によって厳正な措置をとり、再発防止策に力を入れるべきは当然のことだと思いますので、本法案に対しましては基本的には賛意を表するものでございます。  しかし、客観的に見ておりまして余り急ぎ過ぎるのではないかなという感じがどうしても否めません。その内容においてもあるいは取りまとめの急ぎ方におきましても、なぜこんなに急いで対処しなければならないのかな。我が国の独自性からくる改正というよりも、アメリカの意向に沿うようになるべく早く早くという、そちらの方に力点が置かれた改正措置ではないのか。本来、東芝機械事件につきましても国内で厳正な措置をすることで大体終わりなんでございますが、どうもアメリカさんの意向等に余り深入りし過ぎて、結局はココム規制強化する方向にどんどん泥沼に入っていくような状況があるのではないか、そんな感じがしてならないわけでございます。もし今アメリカにおける日本バッシングなかりせば今度のような改正法案に思い至ったであろうか、こう考えますと、何か疑念を払拭できないのでございますが、通産大臣並びに外務省の見解をお尋ねしてみたいと思います。
  220. 田村元

    田村国務大臣 おっしゃることはよくわかりますが、とにかく私どもは、今日までこういう件について十分な体制でなかったことは事実でありますし、だからこそこういう事件が起こったわけでありますし、同時に意識的にも欠けておったところがあるいはあったかもしれない、その点では通産省の責任はまことに重大であると思います。同時に、早晩、いずれかはやらなければならない問題であったにもかかわらずその切実感がなかったということは、また認めざるを得ないと思います。  今度こういう事件が起こりまして、基本的には、アメリカがどう言うた、こう言ったということより、西側の自由主義国家が十六カ国で構成しております、しかも日本貿易量の約六割に近い顧客であるということも考えますと、当然我が国の国益から見ても考えなければならない問題でもあります。また同時に、自由陣営の結束と、あるいはそれこそ平和と安全という意味からも考えなければならぬ問題でありますが、直接的な問題としては、とにかく今のアメリカ議会のいら立ちというもの、はっきり申し上げて、私はアメリカのためにこれをやったと言いたくないのです、率直なことを言って。ココムというのは、国内法で違反事件は処理するものであって、第三国から制裁を食らうべきものじゃありません。外国の企業を第三国が制裁する、これはとんでもないことであるし、同時に、八○年以降全部やっつけるなんて、いわゆる法律効果の遡及ということまで、これは新法をつくるのに法律論として言語道断だと私は思います。  けれども、だからといってアメリカの議会で、先般来上院でもそうでございますが、三分の二以上の、大統領の拒否権の発動すらできないような状態でこれが通ってきたということになりますと、やはり両院協議会の段階で我々はこれに反対しなければならぬし、だからといって、我々外国ですから、直接行って反対と言うような権限もありませんから、幸いにしてアメリカの行政府が非常に強い反対の意見を持ってくれておりますだけに、我々がそれに対応して、とにかくこういうような法律がどんどんと、例えばガーン修正案のようなものが、とりあえずコングスベルグ社と東芝グループ、今度はまた別のものが出てきた、ああこれが出てきたというようなことで日本経済に大混乱を起こすこともあり得るし、また雇用問題で大変なことになる可能性もある、だからこれをできるだけ急ごう。  まず閣議決定、国会への提案を急ぎましたのは、向こうの議員が夏休みで帰る前に、それからこうして御審議を願っておりますのは、急いでいただいておりますのは、何とか向こうのサマーバケーションが終わる前に、これを向こうへこういうふうにしたよということを伝えて、そうしてアメリカの行政府によって、まず九月九日から始まるであろう両院協議会の人選から始まってずっと一連の議論というものに対して頑張ってもらう、アメリカ政府は非常な強い意欲を持って保護主義に反対しておりますから、これに大いに頑張ってもらおう、こういうことで大変急いだということでございまして、その苦衷のほどはひとつお察しを願いとうございます。
  221. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 ただいま先生からも御指摘されましたように、今度の外為法改正を中心とした輸出管理体制の整備というものは、アメリカから言われたからやるということではなく、あくまでも日本の問題として、あるいは日本安全保障、ひいては日本を含む西側の安全保障という点にも十分留意した上で、日本独自の判断に基づいてやっていくということが重要だというふうに思っております。ただ、日本だけが強化する、あるいはココムの加盟国十六カ国がばらばらでは規制が十分確保できないということもありますので、日本が管理体制を整備すると同時に、ココムの場を通じて各国のその執行のあり方、場合によってはココム参加国以外の第三国にも協力を求めるということで、体制を整備していく必要があるというふうに思っております。
  222. 米沢隆

    ○米沢委員 今回の外為法の一部改正法案の提案は、さきの東芝機械事件に端を発していることは明らかでありますが、本法案の審議に当たりまして、改正中身を吟味する場合にも、あるいはこれからのココム行政の対応はいかにあるべきかということを判断する場合にも、まず明らかにしてもらいたいことは、今回の東芝機械事件政府は一体どう見ているのかという問題と、本法案の改正を初めとしてこれから実施する一連の管理体制強化策を考える際、政府のスタンドポイントはどこにあるのかという点が明らかにされるべきだと考えます。そういうことで、もう各種の質疑の中でほぼ明らかにはなっておりますけれども、再度、基本的な問題として政府の見解をただしたいと思います。  まず第一は、どうしてこのような事件が起こり得たのかという問題分析についてであります。すなわち、この事件は起こるべくして起こったのか、それとも東芝機械、和光交易、伊藤忠商事というそれぞれの企業の営業方針にかかわる特殊な事件にすぎないのか、かかる事件の発生した背景なり要因を政府はどのように分析されておるのかという点についてまずお答えいただきたい。
  223. 児玉幸治

    ○児玉(幸)政府委員 今回の事件につきましては、これまでいろいろな機会に経過の御報告をいたしているところでございますけれども、これを一言にして申しますと、本来、外為法輸出貿易管理令に基づきまして承認を受けなければ輸出できないものにつきまして、承認を受けないで輸出したというのが事柄の本質でございます。  その背景をいろいろ分析してみますと、結局法を破ったわけでございまして、企業が法を破ってまで利益を追求しようということで発生したというふうに見ざるを得ないのではないかということでございます。また、行政サイドにつきましてもそういうふうな企業の行動の実態を見抜けなかったということでございまして、この点につきまして極めて遺憾だったというふうに考えております。
  224. 米沢隆

    ○米沢委員 そういう意味では、このような事件再発防止のためには、今分析されたようなあしき背景やあしき要因を取り除く、改めるということが最善の道であることは当然のことでありますが、そのような判断に立たれた結果、今回の改正法案は、政府としてどのようなスタンドポイントに立って、どのようなねらいを持ってこの中身改正法案ができ上がったのかということをまず説明していただき、本改正によってどのような法律効果が出てくると期待されているか、その点まで含めてお答えいただきたい。
  225. 畠山襄

    畠山政府委員 今回の事件我が国を含む西側の自由主義諸国の安全に重大な影響を及ぼすものでありまして、我が国が今後こうした国々との貿易取引を円滑に進めていきますためには、この事件再発を防止することが必要不可欠、まずそういう基本的な認識に立ってこの法案を提案しているわけでございます。  そして、今児玉局長が申し上げた点に関連して申し上げますれば、やはり企業が法を破ってまで利益を追求したということでございますので、法を破ることのないように、まず罰則あるいは行政制裁、そういったものを強化せざるを得ないということで、その二つを強化することを主眼として提案をさせていただいているわけでございます。
  226. 米沢隆

    ○米沢委員 そのほか、今おっしゃったような改正のみではなくて、一連のココム管理体制の充実強化のためにいろいろ対策を練っておられます。これも先ほどからいろいろ出ておりますけれども、簡単で結構ですが、今からどういう対応策を用意されておるのか、その対策はいつごろ完成するのか、その点について概略御説明いただきたい。
  227. 畠山襄

    畠山政府委員 この外為法制裁強化と並んで、産業界におきまして最も重要なのは社内体制の整備でございます。今回の東芝機械事件にいたしましても、社の全員が知っていたかどうかという点については非常に問題があるところでございまして、営業優先と申しますか、そういうことですっすっと決まっていったというおそれなしとしないわけでございますので、まず社内におきまして法令遵守意欲の徹底ということが必要でございます。それからもう一つは、社内のチェック体制が必要でございます。例えば、決裁を上の方まで上げるとかそういった意味でございますけれども、そういったこと、あるいは物を見る、単に書類を見るだけではなくて出ていく物を第三者がチェックをするといった体制が必要でございます。  そういった認識に立ちまして、七月の初めに通産大臣が百五十団体に呼びかけをいたしまして、業界団体から法令遵守基準を出していただいているところでございまして、今大体そういう内容を含んだ基準ができているところでございます。他方、行政サイドにおきましても、こういう虚偽の申請を見破れなかったという反省のもとに、人員を強化し、また審査体制の重点化を図っておるところでございます。
  228. 米沢隆

    ○米沢委員 次の問題でありますが、東芝機械事件は、最初八五年十二月に通産省に内報があったものと聞いております。告発は八七年四月、いかにも対応が遅いと言わざるを得ないのでございますが、これはどういう理由でこういうことになったのでしょうか。一面では、通産省がたかをくくっておったのではないかとか、どうせアメリカのハイテクたたきの一連の言いがかりではないかとか、いろいろな話が新聞等には書いてありますけれども、真実の理由は一体何でしょうか。
  229. 畠山襄

    畠山政府委員 六十年の十二月に確かに外交ルートを通じまして、この不正事件に関する情報を私ども入手いたしました。直ちに外務省主宰の五省庁連絡会議という場でこの話が、具体的には投書でございますけれども、投書の話が披露されまして、そして私どもが十回にわたってその際にヒアリングを行ったわけでございます。  それで、その際に先方が、先方といいますのは東芝機械でございますが、主張いたしましたのは、第一点は、この機械は確かに九軸ではあるけれども、同時制御をできるのは二軸でしかないということの主張を繰り返しました。それから二点目としましては、付随しているNC装置が、これはコングスベルグから輸入されたものであるけれども、これは二軸であるという証明書がついているということを主張いたしたわけでございます。それから三点といたしましては、今度告発の対象になりましたプログラムでございますが、これは外為法違反だということで告発の対象になったわけでございますが、それも二軸用のものであるということを主張いたしたわけでございます。これについては、試験所で検査もいたしましたけれども、二軸じゃないという断定的な証明はできませんで、それらを合わせて、どうしても明白な違反があるということは、この十回のヒアリングを通じて確証がつかめなかったわけでございます。それがいわば第一回の調査でございました。  ただ、投書はパリのココム事務局に行ったものですから、その後同じ投書がアメリカの方に行きまして、それが六月でございました。そのときにアメリカから同じような指摘があったわけでございますが、それはこの間調査したとおりであるという答えをいたしたわけでございます。それで、去年の十二月になりまして、そのときに初めて潜水艦の低音化という事態の指摘も米国からあったわけでございます。  したがいまして、米側もだんだん認識が深まってきたと申しますか、そういうことではあったと思うのでありますが、十二月に指摘がありまして、午前中外務省の方から答弁がございましたように、その際に私どもは、投書の件であればもう既に一応調べたのだけれどもクロの証拠は見つからなかった、だけれども、それ以上に何か具体的な証拠と申しますか材料を米側が持ち合わせているのかどうかということを一月、二月にかけて問い合わせておったわけでございます。それに対して米国のある程度の返事が三月に参ったというようなことでございまして、確かに御指摘のように、全体をざっとごらんいただきますと、おととしの十二月から何をやっているのかねということがあったかとも思いますけれども、個々に御説明申し上げますと、それぞれの場面で一応一生懸命やりまして、その結果四月に通産省としてようやく東芝機械がやったことを認めさせるということになったわけでございます。  ですから、去年の十二月に指摘がありましてからはかなり迅速に調査をいたしまして、五月十五日に処分をいたしたわけでございますが、少なくともその時点では米側からも高い評価、迅速で果断な措置日本政府はやったという評価も得ていた状況でございました。
  230. 米沢隆

    ○米沢委員 確かに、今度の事件のように虚偽の申請といいましょうか、不実の申請等によって行われるものについて通産省でチェックするということがかなり難しい問題であることはよく理解ができますが、結果的には、今度は企業が悪いことをしましたという自白によって事件がオープンになってくる。こういうものを見ておりますと、じゃ今度の法律改正ができたら、このような依然として虚偽の申請で法の網をくぐり抜けようとする企業を本当に未然防止できるのであろうか、そういう疑問が出てくるのでございますが、実際は今までと変わらぬわけですか。
  231. 畠山襄

    畠山政府委員 虚偽の申請といいますか、結局このことの法律的な性格は、二軸の機械を出しますと言った、ところが実は九軸の機械を出しちゃったということでございますので、九軸の機械について承認をとらずに輸出したということになるわけでございますが、そうした外為法違反の行為を行いました場合の制裁が、今の三年以下の懲役から五年以下の懲役強化される、あるいは会社全体にかかってくる行政制裁として、例えば輸出禁止というものが最大一年以下から最大三年以下へ強化されていくということになりますと、これは相当な抑止力を持つのではないかというふうに私ども期待するわけでございます。  無論、御指摘のようにこれだけで万全というわけにいきませんので、私ども行政サイドの体制といたしましても、人員を四十人体制から八十人体制へと強化をしていくということ、それから審査のやり方も、従来ともすると小さな案件も大きな案件も一律に画一的に審査をしておったという弊害もございましたので、そのうち重点的なものについては特別に審査会方式をつくって審査をしていく。あるいはココムの基本的な問題につきましては関係各省の連絡体制も十分整えてやっていくというような行政側の措置を講じ、他方企業側におきましても、先ほど説明申し上げましたような法令遵守意欲、意識の徹底を図っていただくということで、再発防止に努めていきたいと考えているところでございます。
  232. 米沢隆

    ○米沢委員 今回、法改正によって罰則強化する、この罰則強化一つの抑止力として働く、こういうことですね。と同時に、今この事件関連した例で言いますならば、今から管理体制も強化されるわけでございますが、かなりの人数等もふやしていこうという御意向のようでありますが、例えば本当は九軸のNC工作機であるにもかかわらず二軸だと言うて申請をされた、これから管理体制が強化された場合に、同じようなものが来たときに本当にチェックできるんですか。これは大変技術的な問題もありまして、ただ数をふやすだけでは無理なところがあるんじゃないか。ですから、これと類似のものが本当に白々しく虚偽の申請で来られたときに、果たして技術的に解明し、これはおかしいなというような判断ができるような監視体制といいましょうか管理体制というのは、なまなかなものでできるものではないと思うのでございますが、その辺はどういうふうにお考えですか。
  233. 畠山襄

    畠山政府委員 確かに御指摘の点は非常に深刻な点をついておられまして、管理体制の強化だけで本件を未然に防止するということは、仮に同じような虚偽の申請が出てきた場合にはなかなか難しいことは事実でございます。ただ、今までは立ち入り検査といって物理的に品物を見にいくというようなことは行っておりませんでした。これを無論全数について今後やることはできませんけれども、立ち入り検査をし得るという体制を整えるということは、今回のような文書による虚偽の申請がすっすっと通っていくということを抑止する意味で非常に意味があると考えております。  もう一つは、今回の二軸という申請は、これ自身は、考えによりましては二軸の工作機械というのは存在するわけでございますから、それさえ出せば虚偽の申請でもなかったわけでございまして、問題はそれとは違う九軸を出したというところにあるわけでございます。そういたしますと税関との連絡体制というのもまた重要になるわけでございまして、そこで、七月十日に税関との連絡という意味を含めまして通産省と大蔵省との連絡体制の強化、連絡機関を設置いたしました。そういうことをやるということでございます。  ただ、大前提になります虚偽の申請が出てくるということがまた出てきますと、これが出てこないようにするのが一番大事でございますので、外為法強化とそれから社内体制の強化、この二つを期してまいりたいと思っておるところでございます。
  234. 米沢隆

    ○米沢委員 文春に載りました元和光交易モスクワ事務所長の熊谷独さんの手記ですね。この委員会でもいろいろと話題を提供しておるようでございますが、ここに書かれておる中身を読みますと、確かに今度の事件の張本人みたいな人が生々しく書いたのでございますから実感として迫ってくるものがあるのでございます。例えば、戦略物資をソ連などのコメコン諸国に輸出するにはいろいろな方法があるんだ、八つの方法が出ていますね。まあ細かくは読み上げませんが、こういう方法があるということは、審査する立場方々はみんなわかって今まで審査してきたんでしょうね、これは。
  235. 畠山襄

    畠山政府委員 率直に申し上げまして、まあこういうものがあるだろうなということがおおむねわかっているものが多うございますけれども、いざそこへ目の当たりに書かれてみますと、なかなか思いをまた深刻にせざるを得ないという状況であるものもございます。
  236. 米沢隆

    ○米沢委員 そういうことであれば逆に、過去にさかのぼるのは余り僕は好きじゃないのでございますが、こういう手口を見れば実際はかなりのものが過去において似たような手口で不正輸出されておるのではないかな、こういう推測をせざるを得ないのでございます。そういう点に関して、通産省としてはどういうような御意見を持っておられるのか。  特に今回、貿易局の担当審議官を長とする特別検査チームを編成し、過去の疑わしい案件の徹底的洗い直しを開始した、こういうふうに言われておりますけれども、これは疑わしき事実みたいなものがあるだろうということの前提でやられるのか、それとも疑わしきものを探す程度のものなのか、そのあたりはどういうふうに理解したらよろしいんでしょうか。
  237. 畠山襄

    畠山政府委員 特別検査チームをつくって徹底的に調査を行っているのは御指摘のとおりでございます。  その目的とするところは、疑わしいものを探すという後者のケースであるよりも、やはり前者、すなわち疑わしいものが、若干疑わしいと指摘されるものが存在をしておって、それを調査をしておるということでございまして、無論最終的に疑わしきかどうかはまだはっきりしたケースはございませんけれども、そういうものを調査しているということでございます。
  238. 米沢隆

    ○米沢委員 この手口を見ますと、例えば「モスクワ見本市展示」というのが書いてあるんですね。「モスクワの見本市に出品した規制品を、ソ連の研究所へ一定期間貸与し、ソ連の専門家の手で、徹底的に分解、分析し、高度技術の秘密を研究し尽くす、ということもハイテク取得の一方法として、おこなわれている。」こういうふうに書かれますと、六十一年の十月十五日から二十四日の間、モスクワ見本市があったのですが、何かこういうモスクワ見本市の場を利用して、本当にこのような手口でひょっとしたらやられておるんじゃないのかなという疑念を持たざるを得ないところがあるんですね。実際に今度やられたかどうかは別ですよ。  そこでお伺いしたいのは、このようなモスクワの見本市あたりになぜココム規制品みたいなものを持っていって展示するのか。これはいろんな理屈があるかもしれませんが、素直に考えたら、ソ連に対して輸出してはならぬというものをわざわざソ連に持っていって見せる、こんなものがあるのですよなんて、どういうことなのかなと僕はちょっと理解できないのですよね。一体どういうことなんでしょうか。
  239. 畠山襄

    畠山政府委員 見本市がありました際に、ココムの対象物資を持っていったということは事実でございます。ただ、内容が二つありまして、一つ行政例外的なものでございまして、行政例外といいますのは、通産省限りで、もし承認申請が来れば承認ができるという品物でございます。それからもう一つ一般例外でございまして、これはパリの国際会議で承認がおりて初めて承認するというものでございます。  それで、今御指摘のソ連に輸出してはいけないということになる蓋然性の高いのは後者の方でございますけれども、後者の方について確かにこの前のモスクワの見本市に持っていったわけでございます。ココムの話し合いでは、御指摘のような側面もありますが、しかし、一応見本市であれば、持ち帰り条件つきであれば持っていってもいいということになっておったわけでございまして、そういう国際的な合意と申しますか了承のもとにそういうものを持っていったわけでございます。  ただ、その後ココムのルールが、御指摘のような意味も含めてでしょうか変わりまして、そして持ち帰り条件つきであってもどうせ輸出を認めないようなものであれば持っていくのは意味がないということになって、そういうことはやめになりましたので、これを最後にこういうことはやめになるということでございますので、そのテキストの中に書いてある一つはそういう手段で解消していくかなというふうに期待しているところでございます。
  240. 米沢隆

    ○米沢委員 何も疑うわけじゃありませんが、この前持っていったものでも、あるところが持っていった工作機械等が昨年の十月十五日から二十四日までの間に見本市が開かれて、積み戻しの年月日は六十二年二月二十五日になっておりますね。四カ月もソ連にあったのですが、これはこんなに時間がかかるものですか、工作機械なんというのは。何かごの手口を読みますと、ひょっとしたらというような疑念がわくのでございますが、これは余り関係ないのでしょうね。
  241. 畠山襄

    畠山政府委員 私ども、持ち帰りの時期は終了後三カ月以内という指導をいたしておりまして、そういう意味ではこれは少しそれを超過しているのじゃないかというふうに思っておりまして、非常に遺憾なケースだと考えております。
  242. 米沢隆

    ○米沢委員 このようなやりとりをしておりまして考えますことは、結局はココム規制といっても自由主義国家全体の問題としてとらえていかないと、個々のケース、確かに東芝機械事件等は遺憾な事件でありますからこれについて厳正な措置をすることは当然のことでありますが、今、アメリカあたりの議論を見ておりますと、悪いには悪いけれども東芝機械そのものが何かスケープゴートになって、いかにもその件が非を鳴らされることによってこちらの方へ追い込められていくという、何かそんなふうに見えて仕方がないのですね。  私は、ココムのいろいろな歴史がありますが、冷戦の構造の変化によってときには緩く、ときには厳しく、結局先ほど紹介しました手口等でやられますと、これは単に日本だけの話じゃなくて、あらゆるココム参加国も同じようなことをやっておるのじゃないか。そういう意味では、ある方が書いておりましたが、紳士クラブのココムにたれ一人紳士はいない。その意味では、何か今、東芝機械事件がひとり焦点になって、いかにも日本がけしからぬ、東芝機械けしからぬ、アメリカでは東芝グループ全体がおかしいなんという議論に発展しつつありますけれども、これはちょっとスケープゴートに過ぎる、魔女狩りに過ぎると思うのですね。本来、今やらねばならぬことは、東芝けしからぬとか、あるいはラジカセをたたき壊すということではなくて、日本アメリカと共同で自由主義国家のココム規制のあり方をどうしたらいいのかという、そのことを建設的に考えることが必要なのではないか。冷静に考えればそういう結論になって当然であろう、こう思うのでございます。  そうした中で、例の包括貿易法案に関連しましていろいろな東芝の制裁法案等が出て、その中でいろいろな議論がなされておるわけでございますが、例えばそういう意味では、ココム遵守のあり方は一体これでいいのかどうか、あるいはまたチェックシステムはこれでいいのかどうか、あるいは罰則が各国ばらばらでいいのかどうか、そういうような議論の中で、できれば紳士協定をやめて条約にしたらどうか、いろいろな意見があることは御案内のとおりでございます。そういう意味で、今のような話に対して政府としてはどういうスタンスで今臨んでおられるのか。例えば紳士協定を条約に格上げするなんというようなことは是なのか非なのか、日本政府としてはどういうふうにお考えですか。
  243. 畠山襄

    畠山政府委員 まず、ココム範囲につきましては、これは新たに規制の必要が出てきた技術貨物規制をするけれども規制の必要のなくなったものは規制から外していくという、いわゆるストリームライニングという方式で進んでおります。  それから、今御指摘のチェック体制につきましては、つまり一度約束したことをそのとおり実施するという体制につきましては、これは第三国協力の問題を含めまして関係国、参加国でいろいろ話し合いを進めているところでございます。そうしたところで、例えば輸入の証明書でございますとか、そういったものをきちんと出してもらうようにできるだけ協力を呼びかけていくとかということで、これは範囲を拡大するというのではなくて、一度約束したことを約束したとおりに実行されるように強化していこうという方向で努力をいたしております。  それから、ココムを条約化するのがいいかどうかという点でございますが、これは、これに対する制裁がこのようにだんだん厳しくなってまいりますと、論理的にはと申しますか、法体系上は、入り口の方もああいうふわふわしたものではなくて、条約として明定された方が望ましいという見解が一方にありますけれども、他方、対象がこういった時々刻々変化する技術あるいは輸出という問題でございますので、そういった経済現象でございますので、条約で固定化していくというのもまたどうかというふうに通産省としては考えております。
  244. 米沢隆

    ○米沢委員 今回の法改正内容はもうここに明らかになっておるのでございますが、特に問題のありますのは安全保障条項、それから特に外務省が熱心でございました法定協議条項の新設は、外務大臣意見の聴取ということで結論が出ておるわけでございますが、まず外務省にお尋ねしたいのでございます。  今回の外為法改正の折衝の段階で、安保条項の盛り込み、外務大臣意見の新設、かなり執着されておったようでございますが、どういうような意図からこのあたりの盛り込みや新設が必要であるという意見を持たれたのか。そして、最終的には取り入れられたのでございますが、このような問題、どのような意義を見出しておられてどういう効果を期待されようとしておるのか、外務省の意見を聞かしてほしい。
  245. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 今回の東芝機械事件をめぐりまして、日本の企業というのは利益の追求に一生懸命で日本独自の安全保障に関心が少ないのじゃないかというような意見等もありました。あるいは今の管理体制を見ますと、このココム規制実施に当たって、日本あるいは西側の安全保障からの視点の管理体制あるいはチェック体制が果たして十分かどうかという点も問題提起がありました。  そのような点を踏まえまして、私たちとしましては、この管理体制をより実効のあるものとするためには、複眼的な観点という言葉をよく使っておりましたけれども、そういう観点からバランスのとれたチェック体制を行う必要があるのじゃないか、そのために通産大臣外務大臣との密接な連絡、意見調整が法律上も確保されることが望ましいというふうに判断いたしまして、通産省に対して当初法定協議という言葉を使っていたのですが、最終的には、両省間の協議の結果、それぞれの場合について通産大臣外務大臣意見を求めるあるいは外務大臣通産大臣意見を述べることができるという形でまとまったわけでございます。  このもとで私たちといたしましては、個別案件も含めましていろいろと外務省が、例えば不正行為が行われそうな場合等の情報をキャッチした場合には早急に通産省に情報を提供してチェックしていただく、あるいは国際的な平和及び安全の維持の観点から戦略物資の輸出管理について特に留意すべきような点が生じた場合には、私ども意見を述べて、その点を尊重して輸出管理に当たっていただくということ等を今後やっていただきたいというふうに思っております。  それじゃこれの効果はどうかという御質問でございますけれども、今やっとこの法律案ができて審議していただいている段階でございますが、これからこの法案が通ると同時に、通産省と具体的な意見の交換のあり方、あるいは場合によっては協議のあり方等につきまして御相談していきたいと思っております。
  246. 米沢隆

    ○米沢委員 これも各委員からるる御指摘がありましたが、「国際的な平和及び安全の維持」というこの安全保障条項は、確かに抽象的な概念で、解釈の仕方いかんによっては無限に広がるものなんですね。実際上はココムリストに特掲されているからそれ以外の問題は余り問題じゃないという御認識を持っておられるようでございますが、別な立場からいいますと、このような抽象的な概念を盛り込んでおるということは、逆に、今日の状況等を見ておりますと、アメリカあたりから一方的に、おい、あれに違反しておるじゃないかなんと言うていちゃもんをつけられる一つのきっかけをつくるようなものにもなると私は言わざるを得ないのですね。  特に、運用面がうまくいくということにすべてかかっておるのでございますが、運用の面におきましても、口では簡単に安全保障条項と自由貿易のバランスをとってなんで言いますけれども、具体的な個々の問題につきますと、判断される方もなまなかな難儀ではないなと思わざるを得ないのですね。  特に、各委員指摘をされておりましたけれども、これからハイテクあたりがこのココム規制の大きな焦点になっていくと思うのでございますが、ハイテクなんというのは汎用性のある民生用と軍用ほとんど区別はつきませんね。そういうものを一体どういうふうな線引きがされるのか。あるいはグレーゾーンと言われるような、またグレーゾーンにかかわるようなものが皆さん方が判断をされる場合に一番難しい問題になると思うのでございますが、こういうものを一体どういうふうに判断していくのか。そういう意味で、安全保障自由貿易のバランスに配慮と言っても、そのあたりは具体的にはどういうふうに担保されるのか、そのあたりが産業界としても企業家としても我々としても大変関心のあるところなんですが、ここらはわかりやすく説明できるんでしょうか。  同時に、例えば第三国経由で輸出されるもののチェックみたいなもの、これはまた大変だろうと思いますね。例えばグレーゾーンの問題にいたしましても、ソ連の戦車につけられるエアコンはどっちなのかというような質問を僕らにもよくされるのでございますが、わからないよとしか言えないのでございます。明確にそのあたりを線引きしてほしいのですね。     〔臼井委員長代理退席、委員長着席〕
  247. 畠山襄

    畠山政府委員 まず、第三国経由のものにつきましては、その第三国に最終的に落ち着くという書類をとるのが原則になっておりまして、今後もそういう体制で臨んでいくことになろうと思います。  それから、ココムの品目を具体的にどうやっていくのかということでございますが、これは具体的にはまずココムのリストレビュー会合というパリの会合で決まっていくわけでございます。これは十六カ国が参加して会議をしながら決めていくわけでございますけれども、その際に、私ども立場としては、戦略性の高いものはやむを得ないけれども、しかしもはや戦略性が高くなくなったものについてはできるだけ外していくという態勢で臨んでいくことにいたしたいと思っております。従来は、こういったココムリストレビュー会合に際しまして、私どもの体制としては必ずしもハイレベルで議論をしていただいてからやるという体制になっておりませんでしたから、今後は、例えば今度設置をお願いしておりますココム関係関係閣僚会議といった場でもその基本事項については討議をしてもらうというような形で、日本側の強い意向が十分に反映するように検討してはどうかというふうに考えているところでございます。  具体的に最後に御指摘になりましたソ連の戦車につけるエアコンという例でございますが、もしそれが戦軍専用のものということでできておりますれば戦車の部品ということになりますので、ココム対象といいますか武器に該当すると思いますし、それから汎用のものをたまたま取りつけておったということでありますれば、たとえ戦車に取りつけられても武器には該当しないということになろうかと思います。
  248. 米沢隆

    ○米沢委員 時間もなくなっておりますが、次は、例のアメリカ議会で燃え盛っております制裁法案の点についてお伺いしたいのでございます。  皆さんの資料をいただきますと、いろいろな制裁法案がデパートに商品が並ぶみたいに出ておりますね。その中には既に下院を通ったもの、上院を通ったもの等がございますし、これから上院、下院の両院協議会ですり合わせ等ができるということでございますが、この中身を見ておりまして、こんなものがアメリカ議会で通るぐらいならもう自由主義社会は終わりだなというぐらいなものがたくさんございますね。したがって私は、制裁法案が両院協議会で議論される中でかなりマイルドなものになっていくかもしれませんけれども、マイルドになるにせよ何かが残されるであろう、こんな感じがしてなりません。そういう意味で、これからこの制裁法案がどういうような行方をたどると判断をされておるのか、同時に、こういうものが盛り込まれないように政府として一体今何をやっておられるのか。  それから、この制裁法案の中身を見ますと、法律的にいろいろな問題があるような気がしてなりません。アメリカの法体系と日本の法体系と違いますから、我々が判断しにくいところがあるかもしれませんけれども、少なくとも法治国家として国際的に通用する法律論からしてちょっといかがなものか。事後法で処罰をするのは一体どういうものか。あるいはまた、裁判の手続もなくて企業を、それも他国の企業を罰することができるのか。確かに東芝機械は問題かもしれませんけれどもアメリカだってたくさんやったことがありますね。それについて我々日本側がアメリカの企業を罰するなどということを言ったことはない。しかし、何かしら貿易黒字がしがらみになっているかもしれませんが、何かにつけて、米議会ではいかにも属国的に日本の企業を扱ってけしからぬ、言語道断だと思うのでございます。  そういう意味で、いろいろな動きをやっておられると思いますが、どういう動きがなされておるのか。あるいは、今出されている制裁法案に法的にいっていろいろな問題があるということは皆さんも分析されておるのでございますが、そのあたりについてどういう御見解を持っておられるのか、御意見を聞きたいと思います。
  249. 吉田文毅

    ○吉田政府委員 今お話しのように、米国議会におきます東芝制裁の動きといたしましては、上院におきまして、まず七月二十一日に東芝グループに対します制裁条項を含んだ包括貿易法案が可決されております。また、下院におきましても、包括貿易法案とは別に、東芝製品の輸入を一年間禁止することを内容といたしますコーツ法案が提出されるなどの動きがございます。夏季休会、これは八月八日から九月八日の間でございますが、今後この夏季休会明けに開催されます両院協議会におきまして、本件の米国におきます対応ぶりが決まってまいるものというふうに考えております。  我が国といたしましては、東芝機械の対ソ不正輸出のような事件再発防止のための措置につきまして、その実現に全力を挙げて取り組んでおります。その軸となる外為法改正につきお願いしているところでございます。東芝制裁法案にっきましては、ココム違反に対する制裁はそれぞれの国がみずからの責任におきまして行うべきものというふうに考えておりまして、ほかの国の企業の違反に対しましてアメリカ側が独自の制裁を一方的に科するというようなことには問題があると言うなど、いろいろな観点から本法案等につきましては反対の立場を表明しております。また、米国の行政府も東芝制裁法案に反対するという立場を明確にしておりまして、外為法改正を含みます我が国再発防止策を評価しているところでございます。  私どもといたしましては、先般の大臣の訪米等によりまして、我が国再発防止への取り組み等につきまして米側の理解は深まりつつあるというふうに考えておりますが、米国議会の対応にはなお厳しいものがございます。今後とも米国の議会、行政府の一層の理解を得ることができますよう努力してまいる考えでございます。そのためにも、ぜひ現在御審議外為法改正案につきましてよろしくお願い申し上げます。
  250. 米沢隆

    ○米沢委員 時間が参りましたが、いずれにいたしましても、アメリカでそういう制裁法案的なものが可決されるということになりますと、我々はこうして苦労したかいがないわけでございますので、ぜひそのような保護貿易主義的な制裁法案が通らないように政府としても腰を入れて頑張ってもらいたいと思いますし、今度の外為法改正は、決して安全保障条項等によって東西貿易等が阻害されてはならないということもこれは当然のことでございますので、特に運用についてよろしきを得るように頑張っていただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  251. 佐藤信二

    佐藤委員長 工藤晃君。     〔委員長退席、奥田(幹)委員長代理着席〕
  252. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 最初に、ココムそのものについて伺いますが、まずココムの正式の名称は何かということで、七月二十一日参議院の予算委員会で外務省の方からコーディネーティング・コミッティー・フォア・ストラテジック・エクスポート・コントロールという回答があって、通産省が今回出した資料によると俗称戦略物資調整委員会とありますが、そのほかいろいろな名称もありますので、正式にもう一度答えていただきたい。
  253. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 お答えいたします。  ココムにつきましては、非公式な西側諸国の相談の場ということもございまして、英語で何が一番正式収名称かということも必ずしも決まっておりませんが、予算委員会ではコーディネーティング・コミッティー・フォア・ストラテジック・エクスポート・コントロールというふうにお答えしたようですが、私たちは略称でコーディネーティング・コミッティーという言葉を使っているというふうに、この際、お答えさせていただきたいと思います。
  254. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 予算委員会で外務省は戦略的輸出コントロールということを言ったのですが、アメリカの国防報告書を見ると、毎年、多国間輸出統制、マルチラテラル・エクスポート・コントロールとなっていて、それからもっと傑作なのは、防衛庁がアメリカの毎年の国防報告書を訳していますが、それには対共産圏輸出調整委員会だなんという訳をつけていて、こういうふうにしてココムというのは名前からして何が本当の名前だかわからないような存在であって、非常に厚いべールに包まれている。  しかし、今度のこの法律改正の直接の目的は、このココム輸出統制を日本で厳しくやって、そのために法を犯した者は厳しく罰するという。ココムが何だか正体がわからないのに、それを日本実施するために、そしてまたその実施いかんによっては国民が重い刑罰を受けるような、立法府としてこんな法案の審議というのは私は初めてじゃないかと思うのですが、それだけにこれまで資料の要求を六点にわたって行ってまいりました。そしてその一部は出されてまいりましたけれども、本当に国民にこの審議を聞いていただきまして納得のいく審議を尽くすという意味からも、これらの資料が完全に出される必要がありますので、このことは、今佐藤委員長がいなくなってしまったけれども委員長を通じて私は改めて要求したいと思います。  さて、そこで、レーガン政権が出てきてからアメリカの国防政策としてココムの位置づけというのは非常に変わってまいりまして、輸出統制のやり方が大きく変わってきたということはアメリカの毎年の国防報告、特にレーガンが出てきてからですけれども、一九八二年、アメリカでいくと八三会計年度の国防報告からずっとことし出たものまで六年間を見ると、非常にはっきりしたことが出てくるわけなんです。  それで、大臣どこへ行きましたか。
  255. 奥田幹生

    奥田(幹)委員長代理 大臣は、今お手洗いに行くことを許可しましたから御了承ください。すぐ帰ってきますから。
  256. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 これは大臣にも聞かせなければいけないわけで、それでこの八三会計年度の中で、国防総省としての国際計画の政策目標は何かということで、次のような定式化を行っているわけです。「国際分野での我々の」というのは国防総省ですね、「目的は、アメリカの連合戦争遂行能力を改善し、同盟国、友好国の軍事力を強化すること。」強化するには何によって強化するか書いてありますが、それは略します。それから「及びアメリカ安全保障を強め、ソ連の前進を妨げるやり方で技術移転を管理すること。」こういうことになってきております。こうして、アメリカの戦力を強めるために技術移転管理を強めるということをアメリカの国際計画の主な目標の柱にしたという変化が出てまいりまして、そしてこの年の国防報告を見ますと、「技術移転の領域では、我々は」これは軍事重要技術リストと訳した方がいいでしょう、「軍事重要技術リストの修正を完了してお力、このリストをココムにおいて多国間での技術移転統制手段として使用するための措置をとりつつある。」というのがこの八三会計年度の報告であります。これをまずとりつつあるということであります。  それから八四会計年度になってまいりますと、それに引き続き「昨年やり遂げ、また今年進められている主たる活動には、重要な緊急技術プロジェクト、ココムリストの再検討、」等々があると言って、「国防総省は、ココムリストの見直しに使用される優に百を超える技術提案の作成を含め、この努力の中心的役割を果たしてきた。」ココムにおけるリストのつくり直しの中心的役割を国防総省が果たしてきたんだと言っております。  そして今度は、八五会計年度によりますと、ここでは「我々の努力の結果、多くの領域で以前には統制されていなかったものを新たに統制対象に含めることにココムが同意するに至っており、大いに成功をおさめてきた。」ということであります。  それから八六会計年度、これも一々読むと煩わしいですけれども、ここでも「国防総省は、ココムリストの審査に使用される百を優に超える技術的な提案を作成し、この努力に大きな貢献をしてきた。」ということで、この間専ら国防総省がココムに言って、新たにつくった技術リストをココムに同意をさせてきたという経過を明らかにしているわけであります。  そして、今度八七会計年度になりますと、「我々が一九八一年に始めたココムに関する措置は、この分野ではまだなすべき多くのことが残されているものの、成功をおさめてきた。第一に、一九八二年秋に始まった徹底的なリスト再検討は、三年後首尾よく完了した。」こういうことを述べ、さらに八八会計年度、最新のものでありますが、それを受けて「我々は、同盟国や友好国が、その技術安全保障計画を強化するよう引き続き促さなければならない。それらの国の多くは、輸出統制により大きな政治的重点を置き、違反者に対する一層厳しい刑罰を科し、輸出実施手続を厳重にしなければならない。」と命令口調で書いてあるわけであります。  そこで、明らかに六年間連続してこの経過がたどれるわけでありますが、はっきりしていることは、アメリカで一九七九年輸出管理法がつくられ、それに基づいて国防総省が強い権限を持って例の軍事重要技術リストというのをつくって、それを統制のリストに入れてこれをココムに持ち込んできた、こういう経過が出ているわけであります。  これは日本政府としても、ココムの場にはだれかが出席しているわけでありますから、そういう経過をはっきり認識していると思うわけでありますが、その点について、ここではっきりどういう経過があったか述べていただきたいと思います。
  257. 畠山襄

    畠山政府委員 ココムの場におきます議論を一々跡づけますことは、ココムの申し合わせに違反しますので差し控えたいと思いますが、ココムのリストアイテム数の変化ということで申し上げますと、八〇年に百四十五品目であったものが、八六年十一月五日現在百七十四品目になっておるという状況にはなっております。
  258. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 大臣、今の私の冒頭のところはちょっと聞かれなかったかもしれないけれども、ともかくアメリカの国防報告書の中の、ココムリストの改定にアメリカの国防総省がこのように中心的役割を果たしてきたということについて、どういう感想をお持ちでしょうか。
  259. 田村元

    田村国務大臣 自由陣営の有力な国として、みずからの意見を述べたものと思います。
  260. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 自由陣営の一員としてではなしに、ココムそのものの実態というのをここでもぜひはっきりさせなければいけないのですが、歴史的に言ってもアメリカがいわゆる共産圏封じ込めのためつくっていったというものであり、今でも、とりわけ八〇年代に入って中心的役割を果たしたということを国防総省がみずから言っているこの経過、ここにココムの実態が出ているわけですから、この認識をはっきりさせないと、この法案の審議というのも非常に難しくなるということを私は指摘して、これをもう少しはっきりさせるため幾つかの質問をしていきたいと思います。  ところで、さっき言ったことしの国防報告の中にも、アメリカの同盟国や友好国に対して彼らの技術安全保障計画を強めるよう促す、違反者へのより重い刑罰を科し、輸出実施手続を厳重にしなければならぬというこの趣旨に沿って動いている国、これは大臣は、何もそれを言われたからやるんじゃないと言うかは別として、現実に今この時点として、このココムに入っている国のどこが刑罰を重くするような動きをとっているのか、これを答えてください。
  261. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 今の御質問にお答えする前に、もう一つさきの御質問に一言だけ追加さしていただきますと、確かにココムの場におきましては、リスト改正等におきましてはアメリカの置かれた国際政治における地位等にかんがみまして、アメリカの国防省がいろいろとイニシアチブをとってリスト改正等をやっているということはある程度考えられることですけれども、同時に留意していただきたいことは、ココムにおきます決定はすべてコンセンサス方式ですので、アメリカだけが幾らココム規制を厳しくしようということを言っても、日本あるいはフランス等一カ国でも反対すれば実現しないという点を申し上げたいと思います。  次に、今の御質問でありますけれども、私たちの調べましたところでは、つい最近、ことしの七月になりましてフランスが関税法の改正をいたしまして、関税法上の違反をして輸出した者に対しては懲役最高三カ月から三年に強化するという報告に接しております。そのほか、既にこれはけさも話が出ておりましたけれども、ノルウェーが罰則強化するということで、懲役を故意の場合には六カ月から最高五年、過失の場合が三カ月から最高二年に強化すると同時に、時効につきましても十年に延長するというふうに伺っております。
  262. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 フランスの場合三年ということで、ノルウェーが日本とよく似ているというのを大変興味深く聞いたわけですが、一方、日本は対米武器技術供与ということがいよいよ深みに入ろうとしている段階だろうと思うわけです。  私は一九八五年二月二十二日商工委員会で質問していろいろそこでただしたわけなんですが、改めて大臣にも伺いたいのは、我が国は武器輸出を禁止する原則というのを持っている。これは政府方針としても出されたし、国会の決議もある。特に三木首相の発言もある。それにもかかわらず、なぜ米国にだけは武器技術提供するのか、どういう理屈でそういうことがやれるようになるのか、そこをはっきりさしていただきたいと思います。
  263. 田村元

    田村国務大臣 対米武器技術供与につきましては、我が国は米国から防衛力整備のために技術の供与を含めて各種の協力を得てきていること、これは御承知のとおりでございます。また、我が国技術水準が向上してまいりましたことから、防衛分野における米国との技術の相互交流を図ることが日米安保体制の効果的運用を図る上で極めて重要と判断いたしまして、米国に対し武器技術を供与する道を開くことにしたものでございます。供与は、日米相互防衛援助協定のもとで、対米武器技術供与に関する交換公文及び実施細目取極の定める手続に従いまして慎重に実施されておりまして、武器輸出原則のよって立つ平和国家としての基本理念を十分に尊重したものでございます。
  264. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今の答弁は、要するに日米安保体制のためにアメリカに対しては例外をつくったんだということなんですけれども、振り返ってみて、七六年二月二十七日の武器輸出についての三木内閣総理大臣の発言という文書がありますけれども、「三原則対象地域については、「武器」の輸出を認めない。」「三原則対象地域以外の地域については、」−−ここが大事なんですね、「憲法及び外国為替及び外国貿易管理法精神にのっとり、「武器」の輸出を慎むものとする。」というようになっていますね。アメリカはどこのカテゴリーに入るかというと、少なくとも八〇年代になりますとグレナダの侵攻とかニカラグアの侵攻なんかをやっており、紛争当事国になるから当然これは禁止になるということでありますが、そういう紛争当事国でない場合でも、憲法精神からいって武器の輸出はやらないんだというのが内閣の決定、意思表明、こうであったのに、中曽根内閣になってからは安保体制のためにと言って、憲法の恒久平和の精神の上に安保条約が乗っかってきて、幾らでも風穴をあけられるんだということで、重大な方向転換であります。  そのことと今度のココム規制強化ということは一体のものだと思いますが、その問題での議論というのは一応ここまでにして、具体的に伺いたいのは、この交換公文の実施としてつくられたJMTC、武器技術共同委員会、これでこれまで具体的にどういう武器技術供与を決めてきたのか、ごく簡単に報告していただきたいと思います。
  265. 畠山襄

    畠山政府委員 これまでに武器技術として決められてきましたことをごく簡単に申し上げますと、携行SAM関連技術、それから武器たる艦船の建造にかかわる技術、それから武器たる艦船の改造にかかわる技術の三件でございます。
  266. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 住友重機械工業がアメリカの海軍に、核空母ミッドウェー改修の生産設備を含めてトータルシステムを提供するという案件は、今どうなっていますか。
  267. 畠山襄

    畠山政府委員 住友重機械のお話は聞いておりません。
  268. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 その問題はまた改めてやりますけれども、さっき言ったミサイルの関係では、東芝が入っているんじゃないでしょうか。
  269. 畠山襄

    畠山政府委員 申し合わせにより、個々の案件につきましては申し上げないことになっております。
  270. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 ついでに聞いておきますが、武器技術に限らずもっと広い分野の技術ですね、その提供ということをめぐって国防総省が非常に関心を持って、そしてマッカラム博士を団長とする調査団というのが三回視察して、八月には一つの報告をまとめたということが伝えられておりますけれども、これは防衛技研のほかどの企業を視察し、おおよそどういう技術に関心を持ったのか、報告していただきたいと思います。
  271. 児玉幸治

    ○児玉(幸)政府委員 マッカラム博士を団長といたします視察団は何回か我が国に参ったわけでございますが、六十一年八月に参りましたとき、我が国のエレクトロニクスメーカーの七社について調査をしてまいりました。それに基づきます報告書を見ますと、マッカラム調査団は、日本の訪問いたしました七社におきまして保有しておりますミリ波、マイクロ波技術及びオプトエレクトロニクス技術について関心を有していたように思われます。
  272. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 その中にも東芝は入っているんじゃないですか。
  273. 児玉幸治

    ○児玉(幸)政府委員 そのときに訪問いたしました七社の中には、東芝は入っておりません。
  274. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 これは新聞で伝えられたものでございますが、もうすぐ出てくることですが、第三次に基づくものの発表の中には東芝がちゃんと入っておりますし、それは当然のことだと思います。それはまだ確認していないのですか、八月出された報告は。
  275. 児玉幸治

    ○児玉(幸)政府委員 第三次の方につきましては定かでございませんけれども、一番最初に参りましたのが五十九年の七月でございますが、そのときの訪問先の中に東芝が入っております。
  276. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今、私は幾つかのことを聞きました。それで、要するにマッカラム調査団が最後の報告では十一の企業に対して非常に関心を持って、その中に、今東芝があるということですし、今言われたマイクロ波、ミリ波とか光電子工学とか、そういう分野で非常に東芝を重視しているということが出てくるわけです。  それから、先ほどは武器技術供与、これはアメリカの陸軍省に対して行ったものでありますが、やはり東芝はミサイル関係で供与しているということなんですね。それで、アメリカの国防総省にとって、実は東芝というのは非常に有望な企業であり、現にそういうミサイル関係技術提供させたし、これからのSDI関係にかかわるような技術でも、日本で言えば七社とか十一社とか、その中に入る企業であるわけです。  ですから、ここで考えてみなければいけないことは、アメリカは一方では東芝グループ全体に対しまして、やれココムにどうしたというようなことでああいう驚くべき不当な攻撃を加えてくる。これは大臣も、ああいう外国の法律に基づいた制裁というのは不当であると言われましたけれども、そういうことをやりながら、もう一方ではアメリカの国防総省のこれからの計画、研究開発計画のためには東芝からとるものは全部とってやろう、こういう方向に向かっている。我が党が今度のこの法案を非常に重視するのは、ただココム規制というのを重くかぶせてくるということだけじゃなしに、日本科学技術というものをアメリカの軍事強化のために徹底的に利用しようとすることと一体になってやっているということに、今ここでこそ、こういう進み方に対して、私たちは根本的にこういう方向へ進んでいいのかどうか。ただココムがどうだということだけじゃなしに、日本技術が軍事的にどんどん使われる、こういうことがどうか、ここを考えなければいけないときであるということを私は強く言いたいわけです。  もう一つだけ、ちょっと具体的に聞いておきたいのは、以前私が商工委員会で質問したときにはっきりしたことなんですが、これまでの交換公文その他の文書を見ますと、アメリカの国防総省が欲しがっている技術、カテゴリーとして三つある。一つは武器技術である。もう一つは防衛関連技術である、ディフェンス・リレイティブ・テクノロジーと言っております。それからもう一つは汎用技術である。デュアルユースということになるのですが、この三つのカテゴリーがあることはそのときの答弁で認めておりますから繰り返すつもりはないわけですが、アメリカに対しては武器技術も防衛関連技術もそれから汎用技術も、必要なものは何でも提供する、そういう大勢に向かっているけれども、実際今のココムリストに照らし合わせていくと、ココムリストというのは今の分類でいくと武器技術だけなのか、あるいは防衛関連技術まで入るのか、あるいはもっと汎用技術が入るのか、そこを答えてください。     〔奥田(幹)委員長代理退席、与謝野委員長代理着席〕
  277. 畠山襄

    畠山政府委員 ココムリストの中には武器も入っておりますし、それから防衛関連のものもあるでありましょうし、またおっしゃったようなデュアルユースのものも高度なものは含まれておろうかと思います。
  278. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 そこで、今産業界の人も含めて非常に心配しているのは、いわゆるココム規制ということで言えば、アメリカの国防総省はますます汎用技術規制に重点を置き出しておりますから、汎用技術ということでどこまで規制が広がるかわからない。それで、日本の汎用技術の研究と発展は専らアメリカヘの武器技術供与とかその関連でのみ発展させることができるけれども、それに基づく民生品やその他は社会主義貿易で全く売れなくなるような、こんなとんでもない姿になっていくのじゃないかという心配が広がっているわけでありますが、このことは指摘だけにしておきまして、ココムリストについてもう少し伺いたいと思います。  それで、我が党はココムリストの提出を要求しておりますが、それは出るのでしょうか、どうなんでしょうか。
  279. 畠山襄

    畠山政府委員 ココムリスト自体は申し合わせにより秘密になっておりますので、恐縮ですが提出できません。
  280. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 通産省安全保障貿易管理室は、その文書を持って仕事をやっているのですか。
  281. 畠山襄

    畠山政府委員 そのリストは保有して仕事をいたしております。
  282. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 そこにはあるけれども、公表しないということだそうです。  それは別としまして、ここで特にアメリカの国防総省が八一年以来の見直しと言っていることの内容とかかわるわけなんですが、今実際にこういうことになっているのではないだろうか。一九七九年の輸出管理法に基づいてアメリカの国防総省の責任で軍事的に重要な技術のリスト、MCTLをつくって、年々改定しながら、同時にこれは統制リスト、コントロールリストの中にそれをみんな入れ込んでいって、そして彼らの報告によると、百を超える提案でココム側にこれを受け入れさせてきたということで、大成功であったと言っております。  このMCTLというものを見ますと、これはアメリカ輸出管理法の中におおよその柱が書いてありますが、Aとして設計製造のノーハウ、Bとして中枢的製造検査・試験装置、Cとして高度のオペレーション応用メンテナンスのノーハウを伴う品物、Dとしてアメリカの軍事システムの設計製造の再現あるいはその洞察を可能にするような中枢的装置ということで、一九八四年に公開されたことがありますから、私もその一部を見たことがありますけれども、それはAの部分のごく一部分でも非常に詳細なものでありまして、一説によると、これは八百ページぐらいのものであるということになっているわけであります。  今、国民に対しては貿管令のあのリストしか見せないということを言いました。しかし技術の方の関係のリストは、実は貿管令の別表ではなくて、これは外為管理令とそれに沿った貿易関係貿易取引等省令の別表で一から二〇ということになっている。それを見ますと、アメリカの方のもとになっているMCTLというのは八百ページ本当にあるかどうか私見たわけではありませんから言いませんが、一説によるとそのくらい詳細なものであるのに、こっちはせいぜい二枚か三枚ぐらいの紙っぺらの中に入っているというので、それを見たっておよそ想像がつかない。それからもう一つ重要なことは、このアメリカのMCTLに沿ったいろいろな技術的な基準というのを個々の規制品目の中に入れ込んでしまっているから、ますます複雑怪奇になってわからなくなってしまっている。そういうことなので、さっき何か別表を見れば大体見当がつくというような調子のことを言われたのですが、少なくとも技術に関しては全くわからないというのが実情じゃないでしょうか。どうでしょうか。     〔与謝野委員長代理退席、臼井委員長代理着席〕
  283. 畠山襄

    畠山政府委員 外為法におきましては、今御指摘技術につきましては、現行法では外為令に基づきます省令で技術内容を決めております。この省令は、具体的には貿易管理令を引いて、その品目の設計、製造等に係る技術という引き方をいたしておりまして、その貿易管理令の方では品目が並んでおりますので、その限りで御理解いただけるものと考えております。     〔臼井委員長代理退席、奥田(幹)委員長代理着席〕
  284. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 それは、設計、製造に係る技術というのは、いろいろな機械装置なんかも幾らもあるんだから、どこがどうなんだかだれもわかりはしないですよ。だからはっきり言って、アメリカがこのMCTLを持ち込んで以来、特にこれは貿易関係をする人からいっても、技術のどこが縛られるのやらさっぱりわからなくなったというのが実情だと私は考えるわけであります。  そこで、もう少し具体的に言って、我が党への法案の説明をしていただきました通産省の方から、ハイテク製品や高度技術についての輸出承認の可否はパリ送りと言われ、パリでココム加盟国で協議して決定されるということですが、パリ送りする基準は何か。  それから、ココム本部に送った、恐らく事前聴取の段階で送ったのでしょうが、そういう特認案件というのは毎年何件ぐらいあるのか、それを答えていただきたいと思います。
  285. 畠山襄

    畠山政府委員 まず、パリ送りの基準という御指摘でございますが、ココムにおきましては参加国間の申し合わせがございまして、規制対象のものを共産圏例外的に輸出する場合に、一定の品目それから性能の範囲を定めて各参加国の合意を要することとしているわけでございます。我が国はその申し合わせを遵守しているわけでございますが、この具体的な基準、それから今最後に御指摘の件数、こういったものはココムの運営にかかわりますものですから、恐縮ですが、申し合わせで申し上げることはできないということになっております。
  286. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 さっき私は百件程度と聞きましたよ。違うのですか。外務省が言われたのでしょう。
  287. 畠山襄

    畠山政府委員 日本の場合、おおむねそんな数でございます。
  288. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 要するに、結局百件ぐらいというのはパリに送られて、そこで最終的判断を仰ぐという事実は明らかになったのですが、もう一つだけちょっと具体問題として伺っておきたいのは、新聞を見ますと、今えらい承認案件がたまってしまっているというのですが、それはパリ送りがふえたからですか、何ですか。
  289. 畠山襄

    畠山政府委員 今、承認案件がたまっておりますのは必ずしもパリ送りがふえたからではございませんで、今回の事件が企業の虚偽の申請に基づいておったということで、文書をチェックする態度が非常に慎重になってしまった。大臣の言葉をかりますと、やや萎縮しているという面があるのかもしれませんが、とにかく非常に慎重になってしまったということが一つでございます。  それからもう一つは、重点審査体制をとりますために、省内に戦略物資輸出審査会という委員会をつくりまして、重点的な案件についてはそこへ上げてから判断をするということになるという新体制になりましたものですから、それへのアジャストに時間がかかっておるということでございまして、これはまことに産業界特に中小企業に御迷惑をおかけして申しわけないことだと思っておりまして、こういうものが過渡的な機関に終わりますように、少なくとも従来のような審査期間でとどまりますように、今審査人員の拡充その他に努めているところでございます。
  290. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 事実関係だけ聞いておきたいのですが、アメリカのMCTLというのは毎年改定しているというのは御存じだと思います。それはある年一度公開されたことがあるということですが、これは実際通産省安全保障貿易管理室ですか、そこではそういうものはアメリカ側から情報をもらってそれを使っているのですかどうですか、それだけちょっと教えてください。
  291. 畠山襄

    畠山政府委員 MCTLというものは、必ずしもそれ自体がワークしていると申しますか、そういうココムの運用としてワークしているというものではございませんで、来園の国防総省が軍事的に重要度の高い技術について、将来の規制対象の検討に役立てるために作成しているものだと理解をいたしております。また、ほかの目的にも使っておるということでございまして、必ずしも現行のココム技術リストなら技術リストと一致をしているということではないわけでございます。貿易局にございます安全保障貿易管理室には、そのものは入手はいたしております。
  292. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 MCTLは、直接それで統制しないということは私もさっきも言っておりますから、それはそれでいいわけですが、事実上非常に重要な役割を果たしているということは、ある程度今の答弁からも出てきたんじゃないかと思います。  そこで、今度のこの法案というのは憲法違反の問題点があるというふうに考えます。今度、四十八条に「国際的な平和及び安全の維持妨げることとなると認められる」、そのような輸出そのほか出てきます。二十五条については前回の改正でこの言葉が入ったというものの、二十五条の内容も今度すっかり変わりまして、前は何かサービスというようなカテゴリーだったのですが、今度は技術が主体になってしまっておりますので、こうしますと、日本の商品の輸出もそれから技術の移転も、こういう対外経済活動として一番重要なすべての面が、今度は国際平和それから安全の維持、それを妨げることになるかならないかということになってくるということとともに、国民の自由であるべき営業がそれによって一定の統制を受ける、それによって刑罰を受ける、制裁を受けるということになりますが、これまでの日本法律で、国際平和それから安全の維持妨げるか妨げないかということで国民がいろいろ制限を受けるような法律があったかどうか、答弁してください。     〔奥田(幹)委員長代理退席、委員長着席〕
  293. 畠山襄

    畠山政府委員 「国際的な平和及び安全の維持」という言葉を使って制限がある法律というのは外為法を除いて現在ないわけでございまして、ちなみに「国際的な平和及び安全の維持」という文言を用いた国内の立法例といたしましては研究交流促進法というのがございますが、これはその意味合いは一応外為法上の文言の解釈と同様の解釈であろうかと思いますけれども、これは国の研究に関して、国際的な交流を促進するに当たって国際的な平和及び安全の維持について配慮すべきことを規定したものでございまして、違反行為には罰則といったようなことはございませんので、冒頭申し上げましたように、現行の外為法を除いてこのような文言を用いて制限を設けているというのは存在しないと思います。
  294. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 大臣、日本法律としては事実上初めて国際平和・安全の維持、それを妨げるか妨げないかという一つの要件といいますか、そういうものが入ってきて、そして、その内容が実はココム日本で厳しく実行するためでしょう。ここで言う国際平和と安全の維持というのは、ココム実施ということじゃありませんか。これはもう既にこれまでの委員会の答弁なんかで関係者が答えておりますが、どうですか。
  295. 畠山襄

    畠山政府委員 ただいま日本法律で初めてという御指摘がございましたが、現行法でも二十五条に「国際的な平和及び安全の維持妨げることとなると認められるもの」ということがございますので、今回の改正が初めてということではなかろうと思います。
  296. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 そんなへ理屈はだめだよ。それは、僕もそのことを前提にして言っているので、法律としてはこれが初めてで、しかもそれが商品の輸出から技術の移転から、言ってみると対外経済交流として一番主な分野にかぶせる。ところが、その国際平和と安全の維持妨げるということはどういうことか、妨げないということはどういうことか。法律で事実上初めて出てくるのに、ではどこにそれは定義されているのですか、国際平和とか安全の維持、政令で定めるわけですか。そんな勝手なことはできないですよ。これで国民の権利が縛られるわけですよ。懲役五年が待っているわけですよ。国際平和と安全の維持ですか、初めて法律に入ってくる。  では、この前の法改正のとき、どういう定義をしたのか、それを言ってください。少なくともこれまでの答弁じゃ、それはココムのことだということを言っていますね。国際平和・安全の維持イコール・ココムだということですか。それならそれで、はっきり言明してください、大臣が。
  297. 畠山襄

    畠山政府委員 私どもといたしましては、「国際的な平和及び安全の維持」と申しますのは、国際的な紛争の発生もしくはその拡大を助長するような取引、あるいは西欧諸国の安全保障に重大な影響をもたらす取引等を規制することによって、我が国を含む国際社会の平和及び安全が脅威にさらされることがないようにすることを意味しているというふうに考えております。
  298. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 委員会によってあれこれの答弁をされたらかなわないですよ。松本善明議員が外務委員会で言ったら、ここで言っている国際平和と安全の維持、それを妨げることにならないというこの意味は、要するにココムをやることだ。直接ココム目的としてこの言葉を入れたのでしょう。そのことをはっきりさせてくださいよ。そうしないと、これは法案審議にならないよ。何のための改正ですか。
  299. 畠山襄

    畠山政府委員 この改正をお願いしております直接的な契機といたしましては、委員指摘のとおりココムが契機でございます。
  300. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 だから、委員会によって一つの法案でそんな勝手な解釈をあれこれやったらだめですよ。  それから、では、少なくとも法律で新しい用語を入れて何か国民の権利を縛っていくなら、その定義そのものもどこかに明文化されて、しかもそれがどういう意味かということをはっきりさせなければだめじゃないですか。そんなことやってないじゃないですか。ただ、時々口先でそれが答弁として出てくるので、そんなのだめですよ。  さてそこで、今の答弁からありますように、これで言っている国際平和それから安全の維持、イコール事実上ココム日本実施することである。その意味は何か。私、そのためにわざわざ六年度にわたってアメリカの国防長官が出しておる国防報告書のさわりのところを指摘したわけでありますが、これは結局、そのまま読んでも、「アメリカ安全保障を強め、ソ連の前進を妨げるやり方で技術移転を管理すること。」ということでありますから、これで今日本にもそれをやらせようとしていることでありますから、この国際平和それからまた安全の維持イコール・ココム、イコール・アメリカの軍事戦略に従うことということになると、これはもう憲法の恒久平和の原則から全く反しているというのはこれまでもいろいろ指摘されておりますけれども、全然違うじゃありませんか。アメリカの側に立って軍事同盟を強化する、軍拡を進めるのに手助けをする、それがどうして憲法の恒久平和の原則−−それはすべての国民との協調ということをうたう国連憲章の第一条の中にはっきり目的として、国際平和と安全の維持というのがありますが、これは社会主義国も加わったすべての国を含めた平和であり安全であり、いわゆる西側陣営だけの安全ではないということははっきりしているわけでありまして、全く憲法の平和と相入れないココム強化する、それで日本国民を縛っていくということを今度は初めて法律として、国際平和とか安全の維持ということを入れるという段階でそういうものを紛れ込ませるということは実に重大なことだと考えますが、どうですか。
  301. 畠山襄

    畠山政府委員 国連憲章の場合は、御指摘のとおり東側、西側諸国の区別なくというのは国連としての性格からそうなっているわけでございますが、外為法の場合は我が国が主体的に判断するわけでございまして、これは申すまでもないことでございます。そこで、先ほど申し上げましたように、我が国としては、この「国際的な平和及び安全の維持」というのは、一つは国際的な紛争の発生もしくはその拡大を助長するような取引、もう一つ西側諸国安全保障に重大な影響をもたらす取引等を規制することによりまして、我が国を含む国際社会の平和及び安全が脅威にさらされることのないようにということを目的としているわけでございます。したがいまして、憲法の平和主義、そういったものにも反しないというふうに私どもとしては解釈いたしております。
  302. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 そんなへ理屈だめですよ。紛争を助長しない——さっき私、言ったでしょう。武器を輸出しない原則にのっとって、とりわけ紛争当事国にはやらない。アメリカは、グレナダの問題でもニカラグアの問題でも紛争当事国でしょう。そこには大いにやるといって、大いに助長しているわけじゃないですか。だから、矛盾だらけなんですよ。  だから、いいですか、我が国法律として事実上初めて国際平和・安全維持、それを妨げるのか妨げないかというのが行政の側の判断になる、あるいは刑罰を受ける判断になる。もちろん、今のところは貿易あるいは技術移転という分野に限られているかもしれない。限られているかもしれませんが、日本法律として初めて入るけれども、事実上日本法律に入ってくる国際平和あるいは安全の維持イコール・ココムという、アメリカの軍事戦略に基づいて各国を巻き込んで強化しようとしている事実上の軍事同盟強化、軍拡の政策、あるいはまた平和イコール西側の軍事同盟、そしてまた平和イコールそれこそ日米軍事同盟の強化、そういう意味合いを持ってこの法律に入れられますと、これからつくられる法律に片っ端から平和だとか安全の維持だというのが入ると、この最初に入った法律でこういう意味で入れたのだから後は幾らでも入るということになったら、これは大変なことになりますよ。憲法なんて本当に空洞化されてしまいますよ。  昔、戦争中のことを御存じの方おられると思いますが、「東洋平和のためならば何で命が惜しかろう」と言って、あの侵略戦争は東洋平和のため、こんなことを言ったのですよ。だから、こういう言葉のごまかしを入れたらいけないですね。やはり第二次大戦後の原点である憲法の平和というのは一体何か、すべての国の平和であるということ、そして恒久平和の原則をうたったわけでありますから、この問題で言いますと、明らかに平和の原則に反するということは言えるわけで、ただ、今の答弁を聞いておりますと、大分へ理屈がふえておりますので、次にもう一つの問題を伺っておきたいと思うわけであります。  問題は、法律にこういう文言を入れてそれで事実上、イコール西側の軍事同盟強化のことである、イコール日米軍事同盟強化のことであるということを入れること自体許されないことだと思いますけれども、今度の場合、国際平和それから安全の維持妨げるような取引であるかどうかということを政府の側が判断することになるわけですね。もちろん国民ココムリストは全然わけがわからない、全くわけがわからないうちに政府がこの文言を使って判断をして、おまえは懲役何年だということになるわけです。しかし、これは私はぜひ憲法前文をもう一度よく見直していただきたいのですが、私も戦後ちょうど学生でありまして覚えておりますが、あの憲法に入っているところで一番共感するのは、政府の行為によって再び戦争が起こらないことを決意し、ここに主権が国民にあることを宣しということになるわけです。国民が国際平和を妨げたりすることはないのですよ。これは政府の行為なのです。政府の行為としてそういう戦争を起こして国民に惨禍を与えるようなことを防ぐようにするというのが憲法精神であって、したがって、政府戦争の方向に向かっているのを食いとめるのは国民ですよ。そして、食いとめなければいけないというのが今の憲法ですよ。主権在民というのはその意味でしょう。  それを、今度のこの法律のこういうタイプが生まれてしまいますと、国民の行為で、おまえさんは国際平和と安全維持妨げているぞと政府が勝手に判断してそれで罰する。国民の側が、今の政府は明らかに国際平和それから安全の維持に反する方向に向かっている、食いとめなければいけない、そういう行動をしなければいけないというのが憲法であるにもかかわらず、今度はその判断権を政府が奪ってしまうとなったら、これはもう憲法の主権在民もなくなってしまうのじゃないですか。ですから、私たちが大事に考えている恒久平和という原則からいっても、あるいは主権在民という原則からいっても、さらに国家主権という原則からいっても、結局、通産大臣がこれまで承認する、これから許可するのですか、その場合も一年に百件ぐらいはパリに送らなければいけない、パリではアメリカが威張って牛耳るようなことをやっている、これも主権が一体どこにあるかということでありますから、それこそ憲法の一番大事な原則に次々と反するようなことになっているのじゃないか。この点どうでしょう。
  303. 畠山襄

    畠山政府委員 委員御案内のとおり、行政法におきましては、許可の対象となりますものを定める場合に、その対象の決定について、特に経済現象のように時々刻々変化する情勢に合わせて専門的、技術的な知識を踏まえて行う必要があるときには、法律上は要件等を一般的に定めて、その品目などを具体的に法律から政令にゆだねるということは間々行われているわけでございまして、そういう意味におきまして本件も、主権在民とおっしゃいましたけれども、それに反することはないというふうに考えております。  また、恒久平和の問題もお触れになりましたが、先ほど説明いたしたところでございますけれどもココムの申し合わせに基づきます外為法規制実施は、我が国西側諸国一員としての責任を果たして、特に密接な関係のあるこれら西側諸国貿易関係維持発展させていく上でそれが不可欠だということでやっているわけでございまして、特定国を敵視というようなことではございませんので、憲法の平和主義に違反するということもないというふうに考えているわけでございます。
  304. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 敵視することはないと言って、これは中曽根首相もどこかで答弁されましたけれども、聞いていてこれほど白々しいことないですね。  それで、それこそさっきのアメリカの国防総省の報告を聞くまでもなく、要するにソ連側を軍事的に抑え込むために優位を保つ、そのためのココムである、その統制である、その内容を変えなければいかぬ、それで今いろいろなことがやられておるわけですね。それから主権在民ということも、さっき私の質問の意味がよくわからなかったのじゃないかと思いますけれども、国際平和を乱すとか、それが政府の行為としてやられる、国民がそれを抑えなければいけないというのが憲法のスタートである。政府国民政府のやっていることを何も知らせないでどんどん、「東洋平和のためならば何で命が惜しかろう」というようなことで、平和という言葉を時には使いながら国民を引きずり込んでいった。  だから、本当に今日本の国の平和がどういう方向に向かっているのか、これを国民が判断して、そういう方向に向かう政治政府、それを食いとめなければいけないというのが憲法のあれであって、政府の方が、この行為は平和に合っているぞ、この行為は平和に合っていないぞ、こういう判断権を持つというそういう法律のモデルを最初につくるということ自体、大変なことが起きるということを言っているのでありますが、大臣、いかがお考えでしょうか。
  305. 田村元

    田村国務大臣 主権者たる国民の代表である国会でつくられました法律、それに基づいてその精神のもとに政府が判断をするというのは私は当然だと思います、違法行為をするわけじゃありませんから、共産主義の国で、果たして主権者国民の代表に全部相談をかけるでしょうか。これは考え方が違います、私とあなたとでは。ですから、私どもは立派にこういうふうにオープンで、秘密会でも何でもありません。共産主義の国のように、だれが病気になった、だれが死んだまでわからない、そういうような状況ではありません。オープンでやっております。そこでつくられた法律、賛成は賛成、反対は反対、堂々とお互いの意見を開陳し、正すべきは正すというふうにして結論を出す、そのでき上がった法律精神を尊重して、その法律のもとに政令をつくっていく、政府が行為をとる、これは当たり前じゃないでしょうか。
  306. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 大臣がそう言われるなら、前提として、この法案の審議、一カ月でも二カ月でも三カ月でも、来年かけてもやりましょう。アメリカでは、輸出管理法の修正は二年半かかっておりますよ。日本だけなぜそんなに急がなければいけないのですか。大臣の言われる本当の意味、そうだとすれば主権在民で徹底的にこれを審議する。  そのためには、これは理事会にも提案しなければいけないことでありますし、してきているわけでありますけれども、こんなに簡単に通すということが許されるでしょうか。それこそ多くの学者が、日弁連が、これは法律として欠陥がある、重要な問題点があるという指摘をしている。それから、産業界の人たちも非常に不安を持っている。それで、本当に主権在民というなら、ここでもっと審議し、しかも私の質問に対してそういうはぐらかすような答弁でなしに、やはりきちっと答えていただきたい。私は、憲法が言っているのは、それこそ国民があのかつての政府が勝手に戦争に巻き込んだようなことを起こさせないようにする、そういう政治体制、民主主義を維持しなければいけないということを言ったわけであります。  それで、今、社会主義国の政治状況どうかという皆さんの御意見は、また改めた機会で伺っていいわけでありますが、それは今この法案と関係ないことを言って時間をとると、やれもう時間が来たということでありますから、今の大臣の答弁から、どうか全委員の皆さん、それから佐藤委員長、この法案は徹底的に時間をかけてやるということを提案しますが、いかがでしょうか。——委員長、どうですか。
  307. 佐藤信二

    佐藤委員長 理事会で御相談いたします。
  308. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 では、これをもって終わります。
  309. 佐藤信二

    佐藤委員長 次回は、来る二十五日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時五分散会      ————◇—————