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1987-09-10 第109回国会 衆議院 社会労働委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年九月十日(木曜日)     午前九時三十三分開議 出席委員   委員長 堀内 光雄君    理事 稲垣 実男君 理事 戸井田三郎君    理事 長野 祐也君 理事 丹羽 雄哉君    理事 浜田卓二郎君 理事 池端 清一君    理事 沼川 洋一君 理事 田中 慶秋君       粟屋 敏信君    伊吹 文明君       石渡 照久君    臼井日出男君       小沢 辰男君    大野  明君       大野 功統君    木村 義雄君       古賀  誠君    佐藤 静雄君       高橋 一郎君    戸沢 政方君       中山 成彬君    野呂 昭彦君       三原 朝彦君    箕輪  登君       持永 和見君    伊藤 忠治君       大原  亨君    河野  正君       城地 豊司君    田邊  誠君       村山 富市君    新井 彬之君       大橋 敏雄君   平石磨作太郎君       吉井 光照君    塚田 延充君       児玉 健次君    田中美智子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 斎藤 十朗君  出席政府委員         厚生大臣官房審         議官      佐々木喜之君         厚生省健康政策         局長      竹中 浩治君         厚生省保健医療         局長      仲村 英一君         厚生省保険局長 下村  健君  委員外出席者         警察庁刑事局刑         事企画課長   古川 定昭君         労働省職業安定         局障害者雇用対         策課長     根本 安俊君         社会労働委員会         調査室長    石川 正暉君     ————————————— 委員の異動 九月十日  辞任         補欠選任   片岡 武司君     石渡 照久君   藤本 孝雄君     臼井日出男君   永井 孝信君     城地 豊司君 同日  辞任         補欠選任   石渡 照久君     片岡 武司君   臼井日出男君     藤本 孝雄君   城地 豊司君     永井 孝信君     ————————————— 九月四日  育児休業法制定に関する請願安倍基雄君紹  介)(第一六一七号)  同(青山丘紹介)(第一六一八号)  同(伊藤英成紹介)(第一六一九号)  同(小沢貞孝紹介)(第一六二〇号)  同(大矢卓史紹介)(第一六二一号)  同(岡田正勝紹介)(第一六二二号)  同(春日一幸紹介)(第一六二三号)  同(川端達夫紹介)(第一六二四号)  同(河村勝紹介)(第一六二五号)  同(神田厚紹介)(第一六二六号)  同(木下敬之助紹介)(第一六二七号)  同(北橋健治紹介)(第一六二八号)  同(小渕正義紹介)(第一六二九号)  同(佐々木良作紹介)(第一六三〇号)  同(田中慶秋紹介)(第一六三一号)  同(滝沢幸助紹介)(第一六三二号)  同(玉置一弥紹介)(第一六三三号)  同(塚田延充紹介)(第一六三四号)  同(塚本三郎紹介)(第一六三五号)  同(中野寛成紹介)(第一六三六号)  同(中村正雄紹介)(第一六三七号)  同(永末英一紹介)(第一六三八号)  同(西村章三紹介)(第一六三九号)  同(林保夫君紹介)(第一六四〇号)  同(吉田之久君紹介)(第一六四一号)  同(米沢隆紹介)(第一六四二号)  同(和田一仁紹介)(第一六四三号)  同(安倍基雄紹介)(第一九六三号)  同(青山丘紹介)(第一九六四号)  同(伊藤英成紹介)(第一九六五号)  同(小沢貞孝紹介)(第一九六六号)  同(大矢卓史紹介)(第一九六七号)  同(岡田正勝紹介)(第一九六八号)  同(春日一幸紹介)(第一九六九号)  同(川端達夫紹介)(第一九七〇号)  同(河村勝紹介)(第一九七一号)  同(神田厚紹介)(第一九七二号)  同(木下敬之助紹介)(第一九七三号)  同(北橋健治紹介)(第一九七四号)  同(小渕正義紹介)(第一九七五号)  同(佐々木良作紹介)(第一九七六号)  同(田中慶秋紹介)(第一九七七号)  同(滝沢幸助紹介)(第一九七八号)  同(玉置一弥紹介)(第一九七九号)  同(塚田延充紹介)(第一九八〇号)  同(塚本三郎紹介)(第一九八一号)  同(中野寛成紹介)(第一九八二号)  同(中村正雄紹介)(第一九八三号)  同(永末英一紹介)(第一九八四号)  同(西村章三紹介)(第一九八五号)  同(林保夫君紹介)(第一九八六号)  同(吉田之久君紹介)(第一九八七号)  同(米沢隆紹介)(第一九八八号)  同(和田一仁紹介)(第一九八九号)  同(小沢貞孝紹介)(第二一四五号)  同(田中慶秋紹介)(第二一四六号)  同(塚田延充紹介)(第二一四七号)  同(塚本三郎紹介)(第二一四八号)  同(中野寛成紹介)(第二一四九号)  同(永末英一紹介)(第二一五〇号)  同(吉田之久君紹介)(第二一五一号)  同(米沢隆紹介)(第二一五二号)  同(和田一仁紹介)(第二一五三号)  労働基準法改悪反対等に関する請願安藤巖  君紹介)(第一六四四号)  同(石井郁子紹介)(第一六四五号)  同(岩佐恵美紹介)(第一六四六号)  同(浦井洋紹介)(第一六四七号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第一六四八号)  同(金子満広紹介)(第一六四九号)  同(経塚幸夫紹介)(第一六五〇号)  同(工藤晃紹介)(第一六五一号)  同(児玉健次紹介)(第一六五二号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一六五三号)  同(柴田睦夫紹介)(第一六五四号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第一六五五号)  同(田中美智子紹介)(第一六五六号)  同(辻第一君紹介)(第一六五七号)  同(寺前巖紹介)(第一六五八号)  同(中路雅弘紹介)(第一六五九号)  同(中島武敏紹介)(第一六六〇号)  同(野間友一紹介)(第一六六一号)  同(東中光雄紹介)(第一六六二号)  同(不破哲三紹介)(第一六六三号)  同(藤田スミ紹介)(第一六六四号)  同(藤原ひろ子紹介)(第一六六五号)  同(正森成二君紹介)(第一六六六号)  同(松本善明紹介)(第一六六七号)  同(村上弘紹介)(第一六六八号)  同(矢島恒夫紹介)(第一六六九号)  同(山原健二郎紹介)(第一六七〇号)  同(安藤巖紹介)(第二一一一号)  同(田中美智子紹介)(第二一一二号)  国立病院等の再編成に伴う特別措置に関する法  律案反対等に関する請願安藤巖紹介)(第  一六七一号)  同(石井郁子紹介)(第一六七二号)  同(岩佐恵美紹介)(第一六七三号)  同(浦井洋紹介)(第一六七四号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第一六七五号)  同(金子満広紹介)(第一六七六号)  同(経塚幸夫紹介)(第一六七七号)  同(工藤晃紹介)(第一六七八号)  同外一件(児玉健次紹介)(第一六七九号)  同外一件(佐々木良作紹介)(第一六八〇号  )  同(佐藤祐弘紹介)(第一六八一号)  同(柴田睦夫紹介)(第一六八二号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第一六八三号)  同外一件(田中美智子紹介)(第一六八四号  )  同(辻第一君紹介)(第一六八五号)  同(寺前巖紹介)(第一六八六号)  同(中路雅弘紹介)(第一六八七号)  同(中島武敏紹介)(第一六八八号)  同(野間友一紹介)(第一六八九号)  同(東中光雄紹介)(第一六九〇号)  同(不破哲三紹介)(第一六九一号)  同(藤田スミ紹介)(第一六九二号)  同(藤原ひろ子紹介)(第一六九三号)  同(正森成二君紹介)(第一六九四号)  同(松本善明紹介)(第一六九五号)  同(村上弘紹介)(第一六九六号)  同(矢島恒夫紹介)(第一六九七号)  同(山原健二郎紹介)(第一六九八号)  同(安藤巖紹介)(第一九三八号)  同(岩佐恵美紹介)(第一九三九号)  同外九件(小澤克介紹介)(第一九四〇号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第一九四一号)  同(工藤晃紹介)(第一九四二号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一九四三号)  同(柴田睦夫紹介)(第一九四四号)  同(関山信之紹介)(第一九四五号)  同(田中美智子紹介)(第一九四六号)  同(寺前巖紹介)(第一九四七号)  同(中路雅弘紹介)(第一九四八号)  同(中島武敏紹介)(第一九四九号)  同外四件(野間友一紹介)(第一九五〇号)  同(不破哲三紹介)(第一九五一号)  同(藤原ひろ子紹介)(第一九五二号)  同(松本善明紹介)(第一九五三号)  同(矢島恒夫紹介)(第一九五四号)  同(上原康助紹介)(第二〇四一号)  同(金子満広紹介)(第二〇四二号)  同外一件(児玉健次紹介)(第二〇四三号)  同(新村勝雄紹介)(第二〇四四号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第二〇四五号)  同(関山信之紹介)(第二〇四六号)  同(平石磨作太郎紹介)(第二〇四七号)  同(藤田スミ紹介)(第二〇四八号)  同(村山富市紹介)(第二〇四九号)  同(矢島恒夫紹介)(第二〇五〇号)  同(永井孝信紹介)(第二一四二号)  国立療養所東高知病院存続等に関する請願  (山原健二郎紹介)(第一六九九号)  同外一件(平石磨作太郎紹介)(第二〇五二  号)  国立病院等の再編成に伴う特別措置に関する法  律案廃案等に関する請願外三件(大原亨君紹  介)(第一七〇〇号)  同(安藤巖紹介)(第二〇五三号)  同(岩佐恵美紹介)(第二〇五四号)  同(柴田睦夫紹介)(第二〇五五号)  同(田中美智子紹介)(第二〇五六号)  同(寺前巖紹介)(第二〇五七号)  同(野間友一紹介)(第二〇五八号)  同(藤原ひろ子紹介)(第二〇五九号)  労働基準法改悪反対労働条件改善等に関す  る請願浦井洋紹介)(第一七〇一号)  同(児玉健次紹介)(第二〇六一号)  看護婦夜勤日数制限等に関する請願瀬長  亀次郎紹介)(第一七〇二号)  労働基準法改悪反対労働時間の短縮等に関  する請願安藤巖紹介)(第一九〇八号)  同(石井郁子紹介)(第一九〇九号)  同(岩佐恵美紹介)(第一九一〇号)  同(浦井洋紹介)(第一九一一号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第一九一二号)  同(金子満広紹介)(第一九一三号)  同(経塚幸夫紹介)(第一九一四号)  同(工藤晃紹介)(第一九一五号)  同(柴田睦夫紹介)(第一九一六号)  同(辻第一君紹介)(第一九一七号)  同(寺前巖紹介)(第一九一八号)  同(中路雅弘紹介)(第一九一九号)  同(中島武敏紹介)(第一九二〇号)  同(野間友一紹介)(第一九二一号)  同(東中光雄紹介)(第一九二二号)  同(不破哲三紹介)(第一九二三号)  同(藤田スミ紹介)(第一九二四号)  同(藤原ひろ子紹介)(第一九二五号)  同(松本善明紹介)(第一九二六号)  同(村上弘紹介)(第一九二七号)  同(矢島恒夫紹介)(第一九二八号)  同(山原健二郎紹介)(第一九二九号)  労働基準法の一部を改正する法律案廃案等に関  する請願東中光雄紹介)(第一九三〇号)  国立病院等の再編成に伴う特別措置に関する法  律案反対国民医療改善等に関する請願(井  上和久紹介)(第一九三一号)  同外一件(近江巳記夫紹介)(第一九三二号  )  同(薮仲義彦紹介)(第一九三三号)  国立病院等の再編成に伴う特別措置に関する法  律案反対、民主的な地域医療計画確立等に関  する請願草野威紹介)(第一九三四号)  国立病院等の再編成に伴う特別措置に関する法  律案反対医療保険拡充等に関する請願(新  井彬之君紹介)(第一九三五号)  国立病院等の再編成に伴う特別措置に関する法  律案廃案等に関する請願外一件(橋本文彦君紹  介)(第一九三六号)  同外五件(森田景一君紹介)(第二一五四号)  労働基準法の一部を改正する法律案反対に関す  る請願金子みつ紹介)(第一九三七号)  小規模障害者作業所助成等に関する請願外二  件(田邊誠紹介)(第一九五五号)  同(平石磨作太郎紹介)(第二〇五一号)  国立病院等の再編成に伴う特別措置に関する法  律案反対等に関する請願外七件(武田一夫君  紹介)(第一九五六号)  同(中村巖紹介)(第一九五七号)  同(伏木和雄紹介)(第一九五八号)  同(吉井光照紹介)(第一九五九号)  労働基準法改正案反対等に関する請願山花貞  夫君紹介)(第一九六〇号)  労働基準法改悪反対、週四十時間制の実現に  関する請願小澤克介紹介)(第一九六一号  )  同(角屋堅次郎紹介)(第二〇六三号)  労働基準法の一部を改正する法律案に関する請  願(金子みつ紹介)(第一九六二号)  はり、きゆうの健康保険方針改正等に関する  請願小澤潔紹介)(第一九九〇号)  同(正木良明紹介)(第一九九一号)  同(大野潔紹介)(第二一四三号)  同(春日一幸紹介)(第二一四四号)  国立病院療養所統廃合反対等に関する請願  (児玉健次紹介)(第二〇三九号)  難病患者等医療及び生活保障等に関する請願  (田中慶秋紹介)(第二〇四〇号)  労働基準法の一部を改正する法律案廃案等に  関する請願田中美智子紹介)(第二〇六〇  号)  国立病院療養所の縮小再編成中止等に関する  請願金子満広紹介)(第二〇六二号)  心身障害者対策基本法の一部改正に関する請願  (坂上富男紹介)(第二一四一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  精神衛生法等の一部を改正する法律案内閣提  出、第百八回国会閣法第六四号)      ————◇—————
  2. 堀内光雄

    堀内委員長 これより会議を開きます。  第百八回国会内閣提出精神衛生法等の一部を改正する法律案議題とし、趣旨説明を聴取いたします。斎藤厚生大臣。     —————————————  精神衛生法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 ただいま議題となりました精神衛生法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  近時の精神医療精神保健をめぐる状況には種々の変化が見られるところであり、精神医学進歩等に伴い入院中心治療体制からできるだけ地域中心体制整備していくとともに、多様化し、複雑化する現代社会において、広く国民精神保健向上を図ることが重要な課題となってきております。  こうした諸状況変化を踏まえ、国民精神保健向上を図るとともに、精神障害者人権に配意しつつ適正な精神医療を確保し、かつ、その社会復帰促進を図るため、今般、精神衛生法その他の関係法律を見直すこととし、この法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、精神保健向上に関する事項についてでありますが、「精神衛生法」の題名を「精神保健法」に改めるとともに、その目的や国及び地方公共団体並びに国民義務として精神的健康の保持及び増進その他の精神保健向上に関する事項を盛り込むこととしております。  第二は、精神障害者人権の擁護並びにその適正な医療及び保護実施のための措置に関する事項についてであります。  まず、精神保健指定医についてであります。  従来の精神衛生鑑定医制度を見直して精神保健指定医制度を導入することとし、精神医療についての一定実務経験のほか厚生大臣等が行う研修の修了を新たにその指定要件として加えるとともに、五年ごとに研修を受けることとする等の措置を講ずることとしております。  次に、入院制度に関する事項についてであります。  本人同意に基づく入院を推進する見地から、これを「任意入院」として新たに法律上規定するとともに、保護義務者同意によるいわゆる同意入院については「医療保護入院」として位置づけ、入院に当たって精神保健指定医診察要件とする等その適正な実施を確保するための措置を講ずることとしております。また、措置入院の解除につき精神保健指定医診察要件とする措置を講ずることとしているほか、精神科救急に対応するため「応急入院」を新設する等入院制度に関して必要な整備を図ることとしております。  次に、入院患者の処遇に関する事項についてであります。  入院の際には必要な事項患者本人告知することとするとともに、都道府県に新たに精神医療審査会を設け、入院患者病状に関する定期の報告等に基づきその入院の要否等に関する審査を行うこととしております。また、入院患者に対する行動制限のうち、特に人権上重要な一定のものについてはこれを行うことができないこととするとともに、精神保健指定医の認める場合でなければ一定の著しい行動制限は行うことができないこととする等の措置を講ずることとしております。  第三は、精神障害者社会復帰促進に関する事項についてであります。  法律目的等において、精神障害者社会復帰促進に関する事項を盛り込むとともに、日常生活に適応するために必要な訓練及び指導を行う生活訓練施設並びに自活のために必要な訓練職業を与えるための授産施設精神障害者社会復帰施設として法律上規定し、都道府県、市町村、社会福祉法人その他の者がこれを設置することができることとしております。また、その設置促進を図るため、国及び都道府県施設設置及び運営に要する費用を補助することができることとしております。あわせて、社会福祉法人医療法人等精神障害者社会復帰施設設置することができるよう社会福祉事業法及び医療法改正も行うこととしております。  以上のほか、精神病者に係る公衆浴場利用規制を見直すこととし、公衆浴場法改正もあわせて行うこととしております。  なお、この法律施行期日は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日からとしておりますが、公衆衛生審議会への諮問に関する事項公布の日からとしております。  以上がこの法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  4. 堀内光雄

    堀内委員長 以上で趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 堀内光雄

    堀内委員長 これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。長野祐也君。
  6. 長野祐也

    長野委員 今回の精神衛生法改正案において、精神障害者人権問題が大きく取り上げられております。このことは私は大変大事なことであると思います。そしてそれ以上に大事なことは、その精神障害者にとって何が幸せかということであります。そしてこの原点を感情論でなくて、私は現実論として冷静に考える必要があると思います。精神障害者に対する十分な医療の確保、偏見の是正、ケアのための十分な社会復帰の施策の充実が今一番必要なことであると考える次第であります。  そのような前提のもとに、自由民主党を代表して七点、厚生省見解をただしたいと思います。  まず第一は、患者にとってどの入院形式が適当かは、患者病状に応じ、医師の判断により認めるべきであると考えますが、いかがでしょうか。
  7. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 精神医療については、患者病識を有しない場合がある等の特殊性があり、そのため、任意入院のほか医療保護入院措置入院等入院形態が規定されているところであります。患者病状等に応じ、患者本人医療及び保護を確保するため、最も適切な形態入院が行われるよう改正法運用に当たり十分留意していく所存でございます。
  8. 長野祐也

    長野委員 精神障害者人権が必要であることは論をまちません。しかし、警察庁の調べでもわかりますように、一般国民犯罪に比べまして、その数は必ずしも多くはないわけでありますが、その犯罪内容を見てみますと、極めて悲惨なものが多いこともまた事実であります。したがって、精神障害者人権を守るとともに、地域社会人権もまた守られなければならないと私は考えます。  今回の改正の要点の一つとして挙げられております任意入院につきまして、患者の要求があれば退院をさせなければならないこととしております。これによって起こる事故事件等について厚生省はどう考えておられるのか。また病院管理者責任があるかないかについて関係者は一様に危惧をしているわけでありますが、不幸にしてそのような事故があった場合の病院管理者責任についてどのように考えておられるか、御見解を伺いたいと思います。
  9. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 精神障害者にかかわる痛ましい事件は、社会にとってもまた精神障害者やその家族にとっても極めて不幸なことであり、ぜひとも回避されるべきものと考えております。  改正案におきましては、法律措置入院判定基準を置く等措置入院の適正な運用を図ることに加え、応急入院制度新設するなど、入院制度整備を図るとともに、精神障害者社会復帰施設促進等社会復帰体制整備を図ることとしているところでございます。今後ともそのような事態が生ずることのないよう厚生省としてもできる限りの努力をしてまいる所存でございます。  また、病院管理者責任についてでございますが、司法の問題であり、精神衛生法上の問題ではないと存じますが、一般論として言えば、任意入院本人の意思により入退院するものであり、申し出による退院後に発生した事故につきましては、病院側によほどの落ち度がない限り事故について病院開設者責任を問われることはないものと考えております。
  10. 長野祐也

    長野委員 今回の改正案におきまして、入院患者に対する告知義務づけられております。患者人権に配慮したものとして望ましいものであると私は考えますけれども、関係者のお話を伺いますと、入院時、患者の中には全く病識がなくて、診察の時点で不安や興奮状態にある人もいるということであります。こういう場合に告知をすることでかえって患者病状の悪化を招くことが懸念をされます。そこで、このような場合には、本人病状回復を待って適当な時期に告知をすることが適当だと思いますが、見解を伺いたいと思います。  また、今回の改正案において精神病院管理者に対する罰則の強化、新設が多く見られるわけであります。今回の改正案新設をされます罰則は、すべて事務手続上のものでありまして、医療法医師法等の例を見ましても、このような事務手続上のものまで罰則新設する必要はないと私は考えます。病院関係者の間では、医師日常患者医療保護に専念をできるようにもっと医師の良識を信用してほしいという声が強いようであります。これらの不適切と思われる罰則を削除すべきだと思いますが、いかがでしょうか。  さらに、現行精神衛生法では、措置入院患者入院させるための病院をあらかじめ知事指定をすることとし、その取り消しは専ら知事の権限で行われることになっております。この際、今回の改正案において各都道府県精神保健審議会設置をされたことでもありますので、取り消しの事案が生じたときは、指定病院設置者十分弁明の機会を与えた後、改正案第十三条の地方精神保健審議会の意見を徴した結果に基づき措置すべきものだと考えますが、以上三点についてまとめて大臣の御見解を伺います。
  11. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 告知義務罰則指定取り消しの三点についての御提案趣旨は、傾聴に値する考えであると思います。
  12. 長野祐也

    長野委員 時間の関係で、あと四点まとめて伺います。  質問の第四は、措置入院入院基準を国が策定する必要はないのではないかと思います。仮にあるとしましても、ガイドラインで十分ではないかと思いますが、御見解を伺います。  質問の第五は、改正案検討の段階において、公衆衛生審議会の精神衛生部会の審議が重要な役割を担ったと思いますが、この精神衛生部会のメンバー構成におきまして、民間精神病院委員が十七名の委員のうちわずかに一名であります。大学、国立、公立病院からは精神科医師が六名入っていることを見ましても、委員構成が不均衡であると私は思います。今後さらに政令、省令策定の段階で精神衛生部会の意見を聞くことも多いと思われますが、この際、委員構成について再検討をされるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。  今回の改正により、精神科医療においてマンパワー養成及び施設改善、社会復帰施設等負担が大きくなるわけでありますが、これについて財政上特別な措置を配慮すべきであると思いますが、御見解を伺います。  最後に、今回の精神衛生法改正案には、すべての関係者において多くの意見があります。したがって、本法案を施行した後に再検討を必要とするもの及び今回の改正に間に合わなかった事項もあることでありますから、数年後見直しを行い、よりよい精神衛生法にしていく必要があると思いますが、大臣の御見解をまとめて伺います。
  13. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 まず、措置入院判定基準でございますが、精神障害者人権確保及び医療保護の確保の観点から知事が行政処分として行う入院措置が自傷他害のおそれという要件に関する一定の基準のもとに適正に行われる必要があること、またさらに、全国の措置傘のばらつきを是正することが必要であること等の理由から策定することとしたものでございまして、御理解をいただきたいと思います。  判定基準の策定に当たりましては、公衆衛生審議会の意見を聞くこととされておりますが、その際、精神医療の現場の意見を十分聴取し、適切なものといたしたいと考えます。  二番目の公衆衛生審議会委員構成でございますが、精神障害者の多くは民間病院入院している現状を踏まえ、御指摘の点については前向きに十分検討をいたしたいと思います。  社会復帰施設等に対する財政上の措置でございますが、今般の法改正に合わせて、今年度予算においても、精神障害者関係予算の充実を図る等必要な予算措置を講じているところでございます。今後も、今般の改正趣旨を実現すべく、財政面においても厚生省としてできるだけの努力をしていきたいと考えます。  最後に、法律の見直しの件でございますが、改正法施行後においても、精神障害者の定義の問題、いわゆる保護義務者にかかわる問題等今後に残された問題もあり、改正法施行の状況を見ながら、さらに検討を加え、必要に応じ所要の措置を講じていく必要があると考えております。
  14. 長野祐也

    長野委員 どうもありがとうございました。
  15. 堀内光雄

  16. 村山富市

    村山(富)委員 今回の精神衛生法改正は実に二十二年ぶりに改正されるのでありますが、今回の改正がなされるようになりました背景は、今さら申し上げるまでもないと思いますが、八四年三月の宇都宮病院事件が契機となっている。これが国連の人権委員会などでも取り上げられ、国際的な批判を浴びるようになったというところにあろうかと思うのです。  繰り返して申し上げるまでもないのですけれども、八三年の十月、我が党は、宇都宮病院に五年三カ月の長きにわたり拘禁をされてきた方から、同年四月二十五日、同病院新二病棟における無資格の看護人など四名による患者さん、当時三十二歳に対するリンチ殺害事件、この事実に関する生々しい訴えを受けたのであります。  この訴えの中で我が党が最も衝撃を受けましたのは、この惨劇が当時の新二病棟の全患者と職員約六十名目撃のもとで行われたことであり、かつこれだけの目撃者がありながら、事件発生後六カ月が経過しているにもかかわらず、この人によって一報がもたらされたのみであり、また我が党のその後の半年にわたる事実確認作業によらなければ、これが宇都宮病院事件として公にされることがなかったということであります。  さらに、この確認作業の最中の同年十二月三十日に、今度は当時三十五歳の患者さんが、これまた無資格の看護人などによりリンチ殺害されていたということであります。法治国と言われ、治安のよい国、裁判所、司法のしっかりした国としてすぐれている我が国でなぜかかることが起こったのか。その原因を明らかにし、制度的に二度とこういうことが起こらないようにする、これが今回の改正の大きな目的だと思いますが、大臣はどのように考えておりますか。
  17. 仲村英一

    ○仲村政府委員 精神病院入院されている患者さんの人権侵害が生ずることは、まことに遺憾なことでございまして、このような不祥事件が発生する要因といたしましては、我が国の精神病院が従来伝統的に閉鎖病棟が多い、あるいはそのために入院患者の通信、面会の自由が必ずしも保証されていないというような閉鎖的な処遇の問題、あるいは入院患者からの調査請求制度等、人権確保のために機能する制度が十分に整備運営されていないこと、さらには入院患者に対します外部からの病状審査、実地審査等適正な医療及び保護の確保を図るための手だてが十分に行われていないこと等が今御指摘のような事件が起こった背景として私ども考えております。
  18. 村山富市

    村山(富)委員 今日の日本における精神衛生行政の問題点として、例えば措置入院同意入院など強制入院を主体に収容と隔離を中心とした制度であること。この結果、地域医療社会復帰などがまともに問題にされてこなかったこと。精神障害者に対する差別と偏見が強く平等な人格としての扱いがなかった。したがって、医療法上も特例などにより差別をされ、例外規定によって処理されてきたこと。また入院に当たっても、本人の意思が無視され、入院中の生活についても医師の裁量権に基づく無制限の行動制限が許されることになったこと。病院の経営についても、国と地方自治体によらぬ圧倒的多数を民間の精神病院にゆだねられてきたこと。予算の措置についても、入院費が大半を占めることになり、この面からも社会復帰の可能性がはばまれてきたこと。地域医療についても同様であります。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕  このようなことがバックになって、大部分の患者がかぎのかかった閉鎖病棟に入れられ、通信、面会の自由が奪われ、弁護士に依頼する道も断たれ、密室化が促進された。この結果、精神病院内部における不祥事が続発する土壌がつくられてきたというふうに私は考えるのであります。私どもは、精神病院の不祥事件はこのような極めて構造的なものであり、宇都宮事件はその氷山の一角であるというふうに、これまで指摘してきたところでありますが、今回の改正でこのような不祥事が再び起こることがないかどうか。人が殺されたりけがをさせられる、少なくともこういう不祥事がなくなる、この点責任を持って答弁ができるのか、大臣の見解をお聞きしたいと思うのです。
  19. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 今回の改正案では、患者人権の擁護を図りつつ適正な医療保護を行うという観点からの改正を行ったわけでございます。  その主な点を申し上げさせていただきますと、第一点は、本人同意による任意入院という制度を新たに法定化いたしたものが一点であります。  第二点といたしましては、精神保健指定医制度を設けまして、任意入院以外の本人の意思によらない入院につきましての入院の適否、また著しい行動制限等について、この指定医の判断によらなければならないことといたした点であります。  第三点といたしましては、すべての入院患者退院や処遇改善の請求権を認め、措置入院及び医療保護入院中の症状についての定期報告を義務づける、これらを審査するために都道府県精神医療審査会というものを設置することといたしました。     〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕  第四点といたしましては、信書の発受の制限や行政機関職員との面会の制限等厚生大臣の定める行動制限については、これを行うことができないということといたしたところであります。  これらの改正を行いまして、精神障害者人権の確保を推進し、今後このような事件を防止するよう配意いたしておるところでございます。
  20. 村山富市

    村山(富)委員 私は先ほど申し上げましたけれども、やはりいろいろな構造的要因がある。そういうところをお互いに厳しく受けとめて、正しい認識をしておかないと、せっかく改正しても効果がないと思われますので、あえて申し上げるわけでありますが、少なくともこの宇都宮事件というのは大変センセーショナルな事件であったと思うのです。それだけに、こういう事件は恐らくなくなるだろうと私どもは期待しておりましたけれども、その後もこうしたような事件に関する訴えが後を絶たない。死亡事件の原因となる患者への看護人などによる暴行事件などもあるやに聞いております。  昨年二月、愛媛県大洲市における静心園大洲精神病院患者死亡事件に関し、地元警察署が現場検証並びにES器具などの検査を行ったと聞いているわけです。この事件は、警察は院長初め関係者からも事情聴取をしているようでありますが、警察庁からこの事件内容や現場検証の状況、その結果等についてお聞きしたいと思うのです。
  21. 古川定昭

    ○古川説明員 お答えいたします。  ただいまお尋ねの件につきましては、愛媛県警からの報告によりますと、昭和六十一年二月八日、愛媛県大洲市内所在の静心園大洲精神病院入院中の当時三十六歳の男性が同病院内において死亡したというものでありますが、本件につきましては、大洲の精神病院で電気ショック治療中に患者が死亡したという情報がありまして、所轄の大洲警察署が承知したわけであります。  同署で調査した結果、先ほど申しましたように、同病院入院中の三十六歳の男性が死亡しているということが確認されたわけであります。通報内容等から医療過誤の疑いもあるのではないかということで司法解剖に付しましたところ、死因は頭蓋骨骨折によるクモ膜下出血等に基づく脳機能麻痺によるものと認められたところから、自傷による可能性と同時に他為による可能性もあると判断しまして、カルテ等の捜索、差し押さえ、病室等の検証並びに病院関係者等からの事情聴取等所要の捜査を推進してきたところであります。しかし、他為によるものか、自傷によるものかを断定するに至らず、現在なお引き続き捜査中であると聞いております。
  22. 村山富市

    村山(富)委員 この病院は、聞くところによりますと、数年前にもESにより二人の患者が死亡したと言われておるわけでありますが、そういう事実はあったのかどうか。  それから、具体的な内容については、私は時間の関係もありますから省略しますが、伝え聞くところによりますと、先ほど申し上げましたように、この病院ではESが乱用されておると訴えられておるわけです。普通一般の精神病院なんかでは、今日よほどのことがなければESは使用しないと聞いていますし、外国では第三者機関に相談をしてでなければ、主治医による判断ではESは使えないというふうになっている国もあるように聞いておるわけです。厚生省の方でこの病院のそうした状況についてもし承知をしておれば、お聞かせいただきたいと思います。
  23. 仲村英一

    ○仲村政府委員 お尋ねの死亡事件については、私ども残念ながら承知しておりませんが、電気ショック療法につきましては、治療指針にも認められている治療法でございますけれども、これの乱用ということがあるとすれば、やはり適正な医療という観点からも問題ではないかと考えられます。したがいまして、御指摘の病院につきまして、今後都道府県とも協議いたしまして、実態の把握に努力してみたいと考えております。
  24. 村山富市

    村山(富)委員 また、大阪にあります桐葉会木島病院では、これはもう事件になって解決しているわけですが、福祉事務所の職員がこの病院から車や金をもらって患者を回したり、患者保護者や支払い能力の有無を十分に調べることをせずに、生活保護扱いとして病院側にとって取りはぐれのない医療扶助を支給する便宜を図った、こういう事件もございまして、これはもう裁判も終わり、医師としてあるまじき行為として有罪判決が出ているわけです。こうまでして患者病院に回してもらわなければならぬというようなところに今の精神病院の置かれている体質があるのではないか、こういうところにまた問題があるのではないかと私は思うのです。また、この病院では必要以上に点滴がなされたといったような訴えもいろいろ来ていますけれども、まあ時間の関係もあって私は触れませんが、少なくともこういう事件が後を絶たないということは、先ほどから指摘しておりますように、今持っておるいろいろな構造的要因、原因がある、そういう構造的要因を直していかなければ、私は直っていかないだろうと思うのです。こういう現状置かれている問題点をお互いに正しく厳しく認識し合う、そこから出発していかないと、この改正案というものは本当に効力を生んでいかないというふうに思うので、そういう問題についての大臣の見解を聞いておきたいと思います。
  25. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 確かにこれまでの精神医療における入院措置というものが拘束的な部分が非常に多うございます。これに対して、今回の法改正によりまして、人権の擁護という点に重点を置いて、これらについても適正な措置が行えるよう、そしてまた本人入院に対する自由な意思もしくは同意による任意入院というようなものを創設をし、できるだけ開放的な入院状況というものが生まれることが望ましいというふうに考えております。
  26. 村山富市

    村山(富)委員 今幾つかの病院の問題点について私は述べたわけでありますが、すべての病院がこういうことをしているとは私は決して思いません。いろいろな悪条件を乗り越えて、一生懸命苦労されて良心的にやられておる病院もたくさんあると思うのです。しかし、先ほど来申し上げておりますように、やはり今持っておる問題の中にこういう事件が起こってくる要因がある。そこらをやはりきちっととらえておかないと、なかなか問題が残っていくのではないかというふうに私は思いますから、その点を強調して申し上げておきたいと思うのです。  そこで、私どもはこの法案の審議に際して、全家連の皆さんやあるいは法律関係者の皆さん、それからまた精神病院で働いている皆さんの意見等々たくさんいろいろ聞かせてもらったわけです。そういう意見を総体的に見て、私は、今度の改正案が先ほど来申し上げておりますように、人権を尊重するとかあるいは社会復帰のための前向きの姿勢を示すとかいうような面で、今持っておる精神衛生法の体質の殻を破って前向きに進んでいこう、こういう姿勢であることについては一定の評価をしながら、我が党としてこの法案には賛成をしたいと思うのです。しかしこの法案が、今申し上げましたような意味で、皆さんの期待にこたえて本当に前向きに効果の上がるような運営ができるかというようなことから考えますと、若干の問題点もあると思いますので、そういう点に関連をして、幾つかの問題を提起をしながらお尋ねをしたいと思うのです。  第一に、今回の改正の一つの大きな柱としては、任意入院についての問題があると思うのです。この任意入院というのは患者を開放処遇することが原則であります。日精協の五十八年度の調査によって見ましても、開放処遇のできるものが三〇%、病院・地域精神医学会の調査では、入院時六〇%が自由入院が可能である、その他の四〇%についても、一カ月後には大部分が自由入院に移行が可能であるというふうに言われているわけです。私はこういう実態に照らして考えますと、開放病棟の拡大等については、計画的にやっぱり進めていく必要があるというふうに思うのですが、こういう問題についての見解を承りたいと思います。
  27. 仲村英一

    ○仲村政府委員 精神病院入院患者さんに対しまして開放的処遇を行うということは、治療効果の上からも好ましいわけでございますし、患者さんの社会復帰促進させるという点からもよろしい。特に患者さんの人権を確保するという観点からも望ましいということで、御指摘のとおりだと思うわけでございます。  しかし、御承知のように、入院患者さんの処遇の開放化というのは、病院職員の質量両面にわたります充実を図るという必要もございますし、病院の所在いたします地域社会の御理解も十分に得ていく必要があるというふうに考えておりますので、直ちにこれを行うというのは非常に難しい面もあると考えられます。しかし、私どもとしては、その必要性を認めるわけでございますので、関係者の御理解を十分にいただいて、開放化に伴う困難を軽減させながら、御指摘のような開放化につきまして着実にその推進を図ってまいりたいと考えております。
  28. 村山富市

    村山(富)委員 今度の改正は、先ほど申しましたように、任意入院による患者の人格を尊重する、人権を尊重する。それからもう一つは社会復帰の道を開く。この社会復帰につきましては、口で言うほど簡単なものではなく、やっぱりいろいろな悪条件があると思うのですね。  例えば、まだまだ社会には正しい理解を持たれておらない。したがって、差別や偏見のある中で、家族が退院した者を引き取りたくとも引き取れないという状況もあるのではないか。あるいはまた親たちが高齢になって引き取ることが不可能である、こういったようなこともあろうかと思うのです。したがって、社会復帰を本当に実現させるためには、やっぱり公的に対応していくことが大事ではないかというふうに思うのですが、この社会復帰と、これに必要な施設づくりを国及び地方公共団体が積極的にみずからやっていくということが必要だと思うのですが、そういうことについての見解を聞いておきたいと思うのです。
  29. 仲村英一

    ○仲村政府委員 精神障害者社会復帰促進のために、地方公共団体が積極的に取り組んでいただくということは、おっしゃるように不可欠でございますし、法制化を行いたいとしております精神障害者社会復帰施設整備につきましても、地方公共団体の積極的な取り組みが求められるわけでございますけれども、地方公共団体につきましては、例えば人口の少ない地域でございますとか行財政能力の点もございますし、そういう観点で一律的に設置義務化するというのは問題のところもあろうかという御意見もございました。同時に、社会福祉法人でございますとか医療法人等の民間の主導による整備も望ましい面があるということも御指摘がございましたことで、法律では一律的に義務づけることはしなかったわけでございますけれども、御指摘のような趣旨は、私どもとしても今後さらに必要だということで、いろいろな面から私どもとしても努力を重ねたいと考えております。
  30. 村山富市

    村山(富)委員 私は、やっぱり精神病院なんかに入院した患者さんが長期入院しなければならぬということになるのは、もちろんその人の病状もあるかもしれませんけれども、しかし社会復帰をするにしても、受け入れる施設がないとか、あるいは社会復帰してもなかなか生活ができないとか、あるいは家庭的にいろいろな問題があるとか、いろいろな要因があろうかと思うのです。そこで、そういう患者さんが退院した後、地域社会で生活を営みつつ医療が受けられる、こういう地域医療体制をつくることも、また必要ではないかと思うのです。しかし、日本の場合は精神衛生対策費を見れば明白なように、その九〇%以上が医療になっているわけです。これまで社会復帰や地域医療対策費は皆無に等しいわけです。世界の先進国では、この地域医療が主流になっておる。二十年前日本に来られたWHOのクラーク博士は、既に二十年前にそういう勧告をされているというようなことも聞いているわけですが、入院中心主義から地域ケア、地域医療への移行を図る、このために地域ケア、地域医療、福祉ネットなどの社会復帰のための整備五カ年計画といったようなものをつくって積極的に推進をしていくということが大事ではないかと思うのですが、こういう問題についてどのような見解を持っているか、お尋ねしたいと思うのです。
  31. 仲村英一

    ○仲村政府委員 御指摘のとおり、社会復帰施策を推進するに当たりまして、長期的な展望に立った計画というのがあれば非常によろしいかと考えるわけでございますが、今も御指摘ございましたように、精神医療の医学的な側面が進展すると同時に、入院から外来中心の医療へ流れが変わりつつあるという一方の流れと同時に、御指摘のように、地域サイドの問題、地域ケアでございますとか地域医療でございますとか福祉サイドとの連携、そういう点で確かに私ども日本の社会がおくれをとっておったということも事実でございます。したがって、私どもといたしましては、いろいろの側面から御理解を得ながら、この社会復帰施策を進展させてまいりたいわけでございますけれども、地域住民の理解をいただく問題でございますとかマンパワーの不足の問題といういろいろの要素があるわけでございまして、現在直ちに計画的整備というわけにはまいりません。いろいろの施策、それは予算面に限らず、国民の責務でございますとか理解度を高めていただくというふうなことでのソフトの部分も含めまして、いろいろ地域で地域精神保健対策として展開させるようなことも含めながら考えてまいりたいと思います。
  32. 村山富市

    村山(富)委員 同時に、病院退院されて、そしてどこかで集団で住宅に住むとかあるいはまた授産場に通うとかいろいろあるわけでしょうけれども、そういう方々のために、病院の外来あるいは診療所の機能等々を高めてもらって、夜間診療所などを地域的に増加することがまた必要である。家庭に帰っても必要があれば外来で診てもらえるとか診療所に行けるとかあるいは相談に応じてもらえる、そういうことがやはり必要ではないかと思うのです。通院者が通院を中断するようなことのないように、やはり退院後の医療保障というものも、今申しましたように、しっかり考える必要があるし、同時に訪問看護なんかも欠かせない大事なことではないかというふうに思うのです。私は、外来診療費あるいは訪問看護料なんかの思い切った引き上げをやって、そういうことが十分可能になるような手だてを講ずる必要があるというふうに思うのです。  そこで、外来診療及び訪問看護体制の強化を図ることが必要だというふうに私は思いますもので、そのために有効な措置を講すべきである。今申し上げましたように、例えば外来診療費や訪問看護料などの思い切った引き上げといったような措置も講じて、そういうことが可能になるような手だてを講じていくということが当面大事なことではないかというふうに思うのですが、こういう点についての見解も、この際聞いておきたいと思うのです。
  33. 仲村英一

    ○仲村政府委員 先ほども申し上げましたように、精神医療は、従来の入院中心治療体制からできるだけ地域中心体制整備を図るということで、今後変えていく必要があるわけでございますので、精神障害者社会復帰促進するという観点からも、同時に重要な課題だと私ども考えております。  外来診療をその地域で気軽に受けられるということ、あるいは訪問看護の体制整備されるということは、まことに必要なことだと考えておるわけでございまして、例えば集団精神療法でございますとか精神科のナイトケア等、従来から診療報酬面の配慮によっても外来診療に対する経済的裏づけを行ってきたわけでございますが、引き続きそのような方向での努力を保険当局にお願いすると同時に、今ございました訪問看護の実施の問題でございますとか保健所によります訪問指導などを含めまして、地域精神医療の拡充に努めてまいりたいと考えております。
  34. 村山富市

    村山(富)委員 社会復帰あるいは退院後家庭におって治療を受けるとかいろいろなことが必要だと思うのです。  そういうことと関連をして、さっきもちょっと触れましたけれども、患者さんがいろいろな問題について相談相手になってもらえる、こういう意味の精神科のケースワーカーというものの役割も大変大きくなっておるのじゃないかと思うのです。しかし、現状を見ますと、その精神科のケースワーカーの身分がまだ不確定である、しかも診療報酬は全然見てもらえない、こういうような事情もあって、ほとんどの精神病院では、精神科のケースワーカーというものは置かれてないところが多い。こういうところにやはり問題点があるんじゃないかというふうに思うのです。  それで、これからますます精神科のケースワーカーの役割というものは大変大きくなっていく、しかも患者さんにとって絶対に必要な、心の頼りになるというふうにも思われますので、この際、こうしたケースワーカーの身分なんかについてもはっきり位置づけをし、確立をして、そして診療報酬の点数化を図るというようなことも当然考えでいいのではないか、また考える必要があるのではないかというふうに私は思うのですが、こういう点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  35. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 精神科ソーシャルワーカーの身分制度の問題でございますが、医療福祉士、つまりメディカルソーシャルワーカーでございますが、医療福祉士として資格法制化をするという方向でこれまで医療関係者間の意見調整に極力努めてまいったわけでございますが、関係者のコンセンサスがなかなか得られないというのが現在の状況でございます。私ども厚生省といたしましては、身分制度は身分制度としながら、当面講習会等を通じまして、精神科ソーシャルワーカーを含め医療ソーシャルワーカーの資質の向上に努めてまいりたいと考えております。
  36. 村山富市

    村山(富)委員 今精神科のケースワーカーというのはどれくらいおりますか。同時に、精神科のケースワーカーが配置されている病院というのはどれくらいあるのですか。
  37. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 PSWとして従事をしておられる従事者数でございますが、全国で約千三百人と推定されております。このうち精神病院に従事しておられる方々は九百七十人でございます。
  38. 村山富市

    村山(富)委員 大臣、今お聞きになったと思うのですけれども、私は、いろいろな意味で精神科のケースワーカーの役割というものが、先ほど来申し上げておりますように、これからますます大きくなっていくと思うのです。しかも、社会復帰をしたり、その人が人間として、社会人として生活ができるように手だてをしていくというような意味において、精神科のケースワーカーというものは大変欠かせないものになっていく、またそうなってもらわなければ困るというふうに思うのです。しかし、先ほど来申し上げておりますように、実際には診療報酬なんかでも全然見てもらえないわけですから、したがって、置こうといったって置けない状況にあるというふうに言われているわけです。  そこで、こういう精神科のケースワーカーの役割というものを位置づけて、やはり診療報酬なんかでも当然それに見合うものは見るべきだというふうに私は思うのですが、そういう点についてはどういうふうに考えられますか。
  39. 下村健

    ○下村政府委員 精神医療に係る診療報酬につきましては、精神科のデイケア、ナイトケアというふうな格好で点数を創設いたしまして、在宅精神医療の推進を図っているわけでございます。  ただいまのPSWに関係する問題につきましては、身分上の問題等もまだ解決してないというふうな状況でございますけれども、今申し上げましたデイケア、ナイトケアの実施に当たるチームの一員として位置づけるという格好で、現在はその評価を行っており、業務の重要性については十分認識しているつもりでございます。今回の制度改正を契機といたしまして、精神医療の領域における医療のあり方について、さらに議論を深めてまいるということになろうかと考えております。  診療報酬の問題につきましても、当然中医協で今回の改正に沿っていろいろ議論を展開していくということになろうかと思いますが、その中で、議論の推移を踏まえながら、さらに検討を進めてまいりたい、このように考えております。
  40. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 いわゆる精神医療のソーシャルワーカー、PSWの件でございますけれども、さきの国会で幾つかの身分法を提出させていただき、これをお認めいただいたわけでございますが、その際にはいわゆるSW、社会福祉士として身分制度をつくらせていただいたわけであります。あの際に、PSWにつきましても、医療ソーシャルワーカー、MSWの一つとしてこの身分制度も確立をいたしたいということで相当な努力をいたしたわけでございますが、何分、こういった身分制度を確立いたします場合には、当該の方々の御意向また関係者の御意向というようなものがコンセンサスが得られませんとなかなかできにくいものでございまして、私どもといたしましても相当努力をいたしたわけでございますが、その合意が得られない状況に現在あるわけでございます。先ほども健康政策局長から答弁をいたしましたように、いわゆるPSWとして存在される方々について、その資質の向上のために努めてまいる、また診療報酬の点につきましても、社会復帰とか、またそれにかかわる必要な診療報酬上の評価を今後検討していくというような、実態に合わせたところで進めてまいるのが現状のところではないかというふうに考えております。
  41. 村山富市

    村山(富)委員 先般、国会で社会福祉士の資格をつくりましたね。私はその際に、医療福祉士と社会福祉士と区別をして設ける必要はないのではないか、そういう意味における役割というのは、診療施設面におけようと社会的な立場におけようと同じようなことをするわけですから、したがって、そういうものを総括して身分の確立を図ることが大事ではないかというふうに申し上げたのですが、そういう点とも関連をして十分ひとつ検討いただいて、いずれにいたしましても、こういう方々が身分的にもはっきり位置づけられて、しかも診療報酬も受けられて、病院が活用できるような、そういう手だてをしっかり講じていただきたいということを重ねて申し上げておきたいと思います。  私は、総体的に見て一番大事なことは、こういう精神障害者に対して社会的にやはりお互いが理解を持つということが何より大事だと思うのです。まだまだその理解が不徹底である。そのためにつまらないトラブルが起きたり、なかなか社会の中に入れなかったり、社会復帰ができなかったりするような要因にもなっていると思うのです。しかし、この啓発というのは、やはり行政が積極的にそういう対応をしていかないとなかなか難しいことじゃないかと思うのです。これは例に聞いたのですけれども、イギリスなんかでは年間を通じて、例えば「目の日」、「歯の日」といったようなものが、日本にもありますが、こういうものが設けてある。「精神分裂者のための日」というようなものまで設けて、テレビやラジオや新聞等を通じて偏見をなくすような啓蒙、広報活動を常時やっておるというようなことも聞いておるわけです。私は、方法は幾らでもあると思うし、工夫をしてもらいたいと思うのですが、いずれにいたしましても、公的に社会がこういうものに対して正しい理解を持つということの啓発は必要であるし、啓蒙が必要であるというふうに思うのですが、この点についてどういうふうにお考えであるか、見解を聞いておきたいと思うのです。
  42. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 お話のように、社会全体が精神障害者に対して正しい理解を持つということは大変重要なことであると考えております。今回の改正案におきましても、第二条の二項におきましては、国民精神保健に対する義務、そしてまた精神障害者に対する理解、また障害者の社会復帰に対する協力というような点について規定をさせていただいておるところでございまして、今後とも今回の法改正趣旨にのっとって、あらゆる機会を通じて障害者に対する正しい理解を国民全体が持ってもらうように努力をいたし、また医療関係者を初めその他の関係者等にも強く働きかけてまいりたいというふうに考えております。
  43. 村山富市

    村山(富)委員 重ねて申しますけれども、関係者だけでなくて社会全体が正しい理解を持つということが、社会復帰を可能にしたり、それから精神病患者を立ち直らせたり、そういうことにとって大事なことだというように私は思いますから、これは積極的に取り組んでいただきたいと思うのです。  それから、次にお尋ねしたいと思うのですが、精神医療に携わっておるお医者さんあるいは看護婦さん等に関する医療法上の特例措置があるわけですね。この点について私は承りたいと思うのですが、この特例を見ますと、一般科の基準看護よりもはるかに医療スタッフが少ない三類、無類を精神病院に認めている。これはどういう経過でこういうことになったのか、できればお尋ねしたいと思うのです。
  44. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 精神病院におきます医師看護婦等の職員配置の標準でございますが、御承知のように、精神病の多くが慢性疾患でございますし、病状の急変することが少ないというようなことから一般病院よりも緩和されておるということでございます。
  45. 村山富市

    村山(富)委員 私はそういうところにも構造的ないろいろな問題が起こってくる背景があると思うのです。これはある人が調べた調査を見ますと、全国の精神病院千六百一カ所のうちおよそ半数が三類と無類であると聞いておるわけです。そうした病院の多くは、スタッフが少ないために必要以上に閉鎖病棟に収容しなければならぬというようなことも起こり得るのではないか。これが先ほど来申し上げておりますようないろいろなまた問題が起こる要因にもなっておるというふうにも思われるのですが、この際、任意入院を認めて開放病棟をどんどんふやしていくということになれば、こういう特例があったのではなかなかそれに対応し切れないのではないか。私は、この際、こういう特例というものは廃止して、一般科と同じようなスタッフ、陣容が整えられるような体系にする必要があるのではないかというように思うのですが、この点はどうでしょうか。     〔委員長退席、戸井田委員長代理着席〕
  46. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 精神病院を含めまして病院の職員配置の標準でございますが、医療法制定時以来、基本的な変更はこれまでなかったわけでございます。しかしながら、お話しのような最近の精神医療をめぐる状況変化でございますとか、現場におきます業務量あるいは人員配置の実態等を踏まえまして、今後検討してまいる必要があろうかと考えております。
  47. 村山富市

    村山(富)委員 私は幾つかの実態を調査していますけれども、もう詳しくは申しませんが、むしろこういう病院の方がよりスタッフを充実して行き届いた配慮ができるようなことが必要ではないかというふうにも私は思われますので、この点は、今すぐ撤廃しなさいと言ったってなかなかそうは簡単にいかぬでしょうけれども、そうした実態を踏まえて、また今後のことも考えて十分検討していただきたい。そしてそごのないようにきちっと整備してもらいたいということを強く要請しておきたいと思うのです。  それから、今度のこの改正案を見ますと、政令、省令にゆだねられる事項が大変多いのです。ざっと見ただけでも二十二項目ぐらいあるわけです。この二十二項目の政省令がどういう立場でつくられるかというつくる側の立場によって大変大きく左右されてくるのじゃないか。この政省令の考え方や中身がある程度明確にならないと、なかなか審議がしにくい面もあるのですけれども、今ここでそんなことを申し上げてもなかなか間に合いませんから、私は特にこういう点について承っておきたいと思うのです。  例えば、行動制限をする具体的な内容あるいは処遇に関する基準等々は政省令でつくられるわけですが、こういう行動制限や処遇に関する基準などというものはどういう考え方でおつくりになるつもりなのか、その考え方だけを聞いておきたいと思うのです。
  48. 仲村英一

    ○仲村政府委員 入院中の患者の処遇の基準とか行動制限等に関するものにつきましては、御指摘のとおり、最終的には政省令、告示など今後の検討にゆだねられておる部分も多いわけでございますが、御指摘のような、例えば三十六条の第二項に掲げておりますような、行うことができない行動制限として定められておるのは、法律でも例示されておりますように、「信書の発受の制限、都道府県その他の行政機関の職員との面会の制限」等、内容的には六十年十月にお出しいたしました通信・面会のガイドラインの内容に沿って定めてまいりたいと考えておりますし、三十六条の第三項に指定医の認める場合でなければ行うことができない行動制限として定めることを予定しておるものにつきましては、「患者の隔離」等人権侵害につながるおそれのある著しい行動制限でございまして、具体的には保護室の使用でございますとか拘束具の使用等を念頭に置いておるところでございます。
  49. 村山富市

    村山(富)委員 これまた政省令はこれからおつくりになるわけですけれども、やはりこの改正案が提出された背景やら、こういうことになってきた要因というものを十分踏まえた上で、その改正趣旨が十分生かされるような、そういう運用がされるような政省令というものをしっかりつくっていただきたいというふうに期待をいたしておきます。  それから次に、もう一つの柱は、指定医を設けることですね。私は専門家ではありませんから、専門家の皆さんの意見をいろいろ聞いてみますと、例えば夜間、休日に患者病状が非常に悪くなった、指定医でなければ行動制限ができないといったような事態も起こり得るのではないか、あるいはまた退院の一時的制限をしなければならないような事態が起こり得ると仮定します。こうした場合に、指定医の数、あらゆる精神病院で夜間、休日に十分の指定医が配置できるという見通しがあるのだろうかという不安を持っておる方もおられるわけです。そういう点についてはどうなんでしょうか。
  50. 仲村英一

    ○仲村政府委員 指定医の役割というものは、従来の鑑定医制度をさらに拡大したものでございまして、精神医療の質を高めると同時に、患者人権についても配慮するような形で指定医制度というものを設けさせていただきたいわけでございますけれども、お尋ねのように、指定医が不足するのではないかという危惧も一部に言われているようでございますが、私どもの推計で申し上げますと、六十一年の九月現在で鑑定医、現在の制度でございます鑑定医が四千四百十三人でございます。それから精神衛生鑑定医の要件を既に満足している精神科の実務経験を持っておられながらまだ鑑定医となる手続をとっておられない方々が約二千人ぐらいおられると私どもは考えておりますので、こういう方たちがこの改正法施行前に鑑定医の指定を受けますれば、経過規定によりまして精神保健指定医となるわけでございまして、そういう方たちを全部カウントいたしますと約六千人の指定医が確保できるのではないかというふうに想定しております。したがいまして、精神病院は約千六百ぐらいございますので、それで割りますと、単純でございますけれども、平均いたしますと、精神病院施設当たり三・七人という数字が出てくるわけでございまして、運営に関しましてそう大きな支障を生じないのではないかというふうに考えております。
  51. 村山富市

    村山(富)委員 今お話がありましたように、今の精神衛生法で言う鑑定医が指定医に変わるということになるわけですね。そうすると、鑑定医が指定医と名称が変わっただけなのか、あるいはその役割や権限が具体的にどう変わってきたのか、御説明いただきたいと思うのです。
  52. 仲村英一

    ○仲村政府委員 現在は鑑定医制度ということで行われているわけでございますが、その方たちは、措置入院をする際の行政的な判断をするために鑑定が必要となった場合に、その都度鑑定医としてお願いをするというふうなことでございましたが、今後の指定医制度というのは、もちろん鑑定医業務もおやりいただくわけでございますが、それに加えまして、先ほどから申し上げておりますような、専門的な医療にかかわる部分で指定医が判断しなければ、例えば入院が許可されないとか行動制限ができないとかいうふうなことでの業務の幅と申しますか、二種類の業務があって、それがつけ加わったという形だと考えております。
  53. 村山富市

    村山(富)委員 そうすると、鑑定医よりも指定医の方が、権限と言ってはなになんですけれども、影響する範囲が非常に広がってきたというふうに解釈していいわけですね。  それで、いろいろな意見があるわけですけれども、特に、お医者さんの中にもいろいろありますし、例えば行政に厳しい批判をするようなお医者さんもあるわけですね。そういう批判をするようなお医者さんはなかなか指定医には指定されないのじゃないか、こういう危惧を持っておられる向きもありますし、心配している向きもあります。  私はここでお聞きしたいと思うのですけれども、指定医というのはどういう基準でお決めになるのか、お尋ねしておきたいと思います。
  54. 仲村英一

    ○仲村政府委員 指定医の指定の問題でございますが、一定実務経験を有し、かつ厚生大臣が行う研修を修了したお医者さんでございまして、その職務を行うに必要な知識及び技能を有すると認められる方々に対しまして、その内容は細かくは公衆衛生審議会の御意見を聞いて行うものでございます。思想、信条につきましては、その自由が憲法においても保障されておるわけでございまして、私どもといたしましては、指定医の指定に当たってそのようなことについて考慮するつもりはございませんで、内容的には、先ほど申し上げましたような知識及び技能を有する者ということで考えたいと思っております。
  55. 村山富市

    村山(富)委員 もう繰り返し申しませんけれども、今お話がございましたように、指定医の役割というものは、やはり大変大きくなっていくわけですから、それだけに指定医の数やらあるいは現状で十分対応できるようになっているかどうかといったら問題もあると思いますから、そういう点も十分配慮しながら、少なくともそごを来さないような方向で体制整備していただくということを特にお願いしておきたいと思うのです。  続いて大臣に伺っておきたいと思うのですが、去る八月十八日付で国際法律委員会、ICJと称されておりますが、そのマクダーモット事務局長より大臣あてに書簡が寄せられているはずでありますが、大臣はその書簡をごらんになっておられますか。
  56. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 御指摘の書簡は、八月十八日付でICJの事務局長から私にあてられたものでございます。これによりますと、今回の法改正を歓迎するとともに、さらなる人権擁護についての御指摘があったところでございまして、私といたしましても、十分に参考にさせていただいておるところでございます。     〔戸井田委員長代理退席、委員長着席〕
  57. 村山富市

    村山(富)委員 参考にされるという御意見でございましたけれども、私は重ねて指摘をしておきたいと思います。今大臣からも答弁がございましたように、今回の改正を心から歓迎する、患者保護をさらに強化するために、国際人権規約の条項を満たしてほしいと述べているわけですね。今後どう対応されるつもりかということについてお尋ねしたいと思うのです。  この書簡の中の第一点は、適正手続に従って、非公式の裁決機関で拘束手続がとられること。それから第二には、この裁決機関である審査会は、法律委員が議長を務めること。患者及び扶養義務者が審理への出席が認められるべきこと。また、その代理人や証人についても審査会に参加の道をつけること。第三に、審査会による六カ月—一年を超えない間隔での再審査。第四に、審査委員は中央政府より任命される独立のものとすること。医師と弁護士が平等に参加すること。第五に、精神病者に対する差別不平等条項が公衆浴場法以外の法律についても廃止されるべきこと。精神障害者社会保障について身体障害者と同等の権利を持つべきこと。などの要請があるわけですね。  こういう具体的な要請事項に対して、今後どのように対応していくつもりなのか、そういう見解についても、この際承っておきたいと思うのです。
  58. 佐々木喜之

    ○佐々木(喜)政府委員 厚生省といたしましては、現行法をもって国際人権B規約の要件を満たしておるという基本的な考えでございますが、ただいま先生御指摘になりました大臣あての書簡、これは十分承知をしております。今回の改正法案におきまして、審査会の設置その他人権面におきましていろいろな改正点を盛り込ましていただいておりますので、今回の改正によりまして、国際人権規約の目的とするところ、その精神に沿って一層人権の擁護が図られると考えております。  今先生御指摘の具体的な項目については、一部この法案に盛り込まれたものもございますし、なおさらに検討を進めなければならないものもあろうかと考えておりますが、例えば、今おっしゃいました中で、定期の審査でございますが、本人の意思によらない入院については、定期的に患者病状等を徴しまして審査会で審査をするというような点につきましては、今回の改正の中に盛り込まれております。それからまた中央政府の任命の問題、こういった点につきましては、審査会を都道府県に置くというようなことからして、その委員を中央で任命する、この辺はなかなか日本の国情から困難な点もあろうかと思います。そのほかいろいろ具体的に御指摘の点につきましては、今後さらに検討いたしまして、一層の前進が図られるものであるかどうか検討の上、措置をする際に考えてまいりたいと考えております。
  59. 村山富市

    村山(富)委員 最後に申し上げましたが、今回の法改正の中で、特に公衆浴場法については是正されるように対応されておるわけです。この点、私はある意味で評価したいと思うのですが、ほかに三十数本同様の差別条項があるというふうに私は承知しておるわけです。こういうものについても、やはりあってはならぬことだと思いますから、関係各省庁と十分連携をしながら是正をしていくための努力をする必要があるんじゃないかというふうに思うのですけれども、具体的にどのようになさるつもりか、この際お聞きしておきたいと思うのです。
  60. 佐々木喜之

    ○佐々木(喜)政府委員 公衆浴場法改正につきましては、今回の法案の中に盛り込ませていただいております。そのほか、各種法令におきまして、いわゆる欠格条項を持っているものが多数に上るではないかということでございまして、私どもの方も大変大きな関心を持ってこれに取り組んでまいっております。個別の制度の目的趣旨からいいまして、いろいろそちらの方の御要請もあろうかという点はございますが、精神障害者人権擁護でありますとか社会復帰社会参加という観点から申しますれば、この欠格条件の見直しというのは大変重要な問題でございます。政府といたしましては、本年六月に取りまとめられました障害者対策推進本部の「「障害者対策に関する長期計画」後期重点施策」の中に、その一項目として、精神障害者の資格制限等の検討という事項が盛り込まれているわけでございまして、こういう方針を受けまして、各省において検討を進められていくようにということで期待をしているわけでございます。  それから、地方公共団体におきますところの問題がございます。地方公共団体の条例によるものとかあるいは設置している施設の利用とか、こういった点もいろいろあろうかと思いますので、この点につきましては、先ごろ保健医療局長より各都道府県知事に対しまして通知を発しまして、地方自治体におきますところの精神障害者に係る利用制限等につきましてのそれぞれのレベルでの検討をお願いをしたということでございまして、中央地方それぞれそのように措置をしていただくように推進をしてまいりたいと考えております。
  61. 村山富市

    村山(富)委員 今御説明がございましたが、右から左へ直ちにできるものもあるし、できないものもあろうかと思うのです。その点は十分精査をしながら、必要なものから漸次是正をしていくということも大事なことと思いますから、今後各省庁と十分連携をとりながら、そういう点についても御努力を願いたいということを心から御期待を申し上げておきます。  できるだけ質問時間を縮めてくれという要請もございますから、この法案を通すために、全体の動向とにらみ合わせて協力をしなければならぬと思いますので、これで質問を終わりたいと思うのですが、私はやはりさっきからるる申し上げておりますように、今の精神医療の置かれておる実態を考えた場合に、本当の意味で良心的に今の法律制度を踏まえた上で病院経営をするということは大変困難があるし、いろいろな障害もあるし、問題点もあると思うのですね。だから、そういう点は是正をしていく必要がある。しかし、先ほど指摘したような事件が起こる要因も、いろいろな構造の欠陥の中にはやむを得ない原因もあるのではないかという点も、先ほど来指摘しておりますように、例えば特例の問題とかいろいろあろうかと思うのです。そういう点を十分見直して検討をしてもらう必要があると思いますし、今度新しくつくられたいろいろな改正の問題点についても、いろいろな角度から危惧される向きもあるのです。また同時に、これではまだまだ不徹底だ、もう少し社会復帰の問題等についても、公に義務づけてやってもらう必要があるのじゃないか、こういったようないろいろな要求もあると思うのですね。こういういろいろな角度からこの法案に対する注文もあるわけです。そういう注文を考えた場合に、私はやはり先ほど自民党の長野さんからも御意見がありましたけれども、言われる意味は違う面もあるかもしれませんが、いろいろな角度から考えてみて、一定の期間を置いて見直しをする時期があってもいいのではないか、また見直しをする必要があるのではないか、そしてさらによりいいものをつくっていくということが必要ではないかというように思うのです。  そういう点について最後に大臣の見解を聞いて、私の質問を終わりたいと思うのです。
  62. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 今回の改正案を御提出するに当たりまして、公衆衛生審議会等におきましていろいろ御検討いただきました中にも、精神障害者の定義の問題、またいわゆる保護義務者に係る問題等についてなお引き続き検討をするようにということも言われており、私どもといたしましても、引き続きこれについて検討をいたしてまいりたいと考えておりまするし、またただいま御指摘がございましたように、今回の改正内容と関係する問題等につきましても、この改正法の施行の状況を見ながら、さらに検討を加えて、必要に応じて所要の措置を講じていく必要があると考えております。
  63. 村山富市

    村山(富)委員 これで終わります。
  64. 堀内光雄

    堀内委員長 沼川洋一君。
  65. 沼川洋一

    ○沼川委員 今回の改正案は二十二年ぶりの改正ということで、各界から非常に注目を集めておるわけでございますけれども、まず最初に大臣にお尋ねをしたいと思います。  昭和五十九年三月に例の宇都宮病院の問題が起こりまして、患者人権無視事件というものが国民に強い衝撃を与えたわけでございます。これが契機になって国の内外から精神医療の現状についての批判が巻き起こってまいりまして、国際法律委員会などから調査団が来日し、そして六十一年九月には「日本における人権と精神病患者」と題する報告書が出されております。この内容を見ますと、日本の精神医療の現状では、国際人権規約で規定している精神病患者人権保護の条件が満たされていないとする警告が出されておるわけでございます。そういう意味で、精神衛生法の不備が特に外国から指摘をされてきたという経緯がございます。また最近では、国際法律委員会のジュネーブ本部のニール・マグダーモット事務局長から日本の精神衛生法改正案に対して斎藤厚生大臣にあてて、先ほどもちょっと問題にされておりましたが、どうも非常に厳しい内容の書簡が送られてきておるようでございます。さらに来春は調査団を日本に送るなどの計画もあるやにも聞いております。  そこで、大臣にお尋ねしたいのは、今回のこの改正案がもし成立したとするならば、このような国際的批判に耐え得るものなのかどうか、その中身について、まず大臣の率直な所見をお聞かせいただきたいと思います。
  66. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 今回の精神衛生法改正案は、精神病院における入院患者人権擁護の推進、そして精神障害者社会復帰促進を図ることを主要な内容といたしておるわけであります。これはかねてより国際的にも国内の有識者からも日本の精神医療を取り巻く状況の立ちおくれというものが指摘されておったわけでありますが、こういった指摘されておる事項に幅広く対応いたしてまいるものであると考えております。  また、今般の改正案では、障害者の定義、またいわゆる保護義務者にかかわる問題等については、なお引き続き検討することとなっておりますが、入院患者人権の擁護と社会復帰の推進に向けて着実な推進を図っておりまして、この意味では十分諸外国からの批判にこたえ得るものと考えさせていただいております。
  67. 沼川洋一

    ○沼川委員 特に今回の改正で、今もおっしゃった患者人権を尊重しつつ精神医療の進歩に従った適切な医療を行うとともに、患者社会復帰社会参加を実現していくことを目指したもの、そう私も理解をしておるわけでございますが、その意味では中身にはまだまだいろいろと問題があるわけでございますけれども、現行法より一歩前進したものと一応の評価はできるのじゃないかと実は思っております。問題は、そのためには地域に根差した医療と福祉が行われるということ、これが極めて重要かと思います。地域精神医療の充実に関してどのような施策を持っていらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  68. 仲村英一

    ○仲村政府委員 精神障害者社会復帰のための地域での受け皿の問題でございますけれども、先ほどからの答弁の中でもお触れ申し上げましたように、地域社会に十分受け入れられる素地が一番の基盤になろうかと思いますので、そういう点で国民の「理解」と「協力」という条項も入れさせていただいているわけでございますが、具体的にそのような施設がどうなるかという問題でございますとかあるいはその仕組みをどうするかということにつきましては、これからさらに努力をしなければいけないものもたくさんあるわけでございます。  数学的なことで申し上げてみますと、社会復帰が可能と考えられる患者さんが、入院患者のうちの約二〇%と推定いたしますと六万八千人の方々。そのうち約三〇%は居住型の精神障害者の援護寮でございますとか精神障害者の福祉ホームを御利用なさるのではないか、あるいはそのうちの約一〇%が精神障害者通所授産施設を利用するというふうなことで予想しておるわけでございまして、このような数字を目途といたしまして、今後施設整備を図ってまいりたいと考えておりますが、同時に小規模保護作業所に対します助成でございますとか、通院患者のリハビリテーション事業等につきましても、さらにその充実を図るように努めてまいりたいと考えております。
  69. 沼川洋一

    ○沼川委員 精神病院における人員及び施設の基準というのは、医療法の特例によりまして一般病院に比べますと低い水準でよい、こういうふうになっておりますが、こういう問題こそやはり抜本的に改めるべきじゃないかと考えますが、いかがでしょうか。
  70. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 精神病院におきます職員配置の基準でございますけれども、精神病の多くが慢性疾患であるあるいは病状が急変することが少ないということで、従来一般病院より緩和をされていたところでございます。これまで精神病院を含めまして病院の職員の配置基準につきましては、法制定以来基本的な変更がなかったわけでございますが、最近の精神医療をめぐる状況変化でございますとか現場におきます業務量あるいは人員配置の実態等を踏まえまして、今後検討してまいりたいと考えております。
  71. 沼川洋一

    ○沼川委員 きょうずっと先ほどから伺っておりまして、検討検討という言葉が何かにつけて非常に出てきます。厚生省はボクシング協会じゃないわけですから、もっと前向きの御答弁をひとついただきたいと思います。  そこで、これは一つの具体的な事例ですけれども、六十年五月に千葉市で千葉県精神科医療センターというのがオープンしております。ここを見ますと、特に短期集中治療、一カ月以内の退院というのを一つの大きな命題として掲げてありますが、早期退院を実現するために、わずか四十床の病床に対して医師が七人、看護職員四十人などのスタッフで、総勢七十人に上るわけです。これが民間の病院だと大体二百床の病院に匹敵する体制じゃないか、こう言われておりますが、このような手厚いスタッフがあって初めて前進があるのじゃないか。ですから、確かに医療法には特例がありますけれども、先ほどから私が言いますように、患者社会復帰ということを大きく掲げるならば、こういう問題に早速取り組んでいくという姿勢が大事じゃないかと思いますが、重ねてお尋ねいたします。
  72. 仲村英一

    ○仲村政府委員 確かに我が国におきます精神障害者社会復帰対策というのは必ずしも進んでおったというふうに私ども考えておらないわけでございまして、そういう観点からも、今回の法律改正の中にそのような趣旨を一部入れさせていただいているわけでございまして、先ほど申し上げましたようなことでのハードの部分としての社会復帰施設整備、それに対します助成も大事でございますし、退院された患者さんが医療を継続するようにするためのいろいろの工夫、例えば継続医療するための訪問看護でありますとか、それに対する診療報酬の設定でございますとかあるいは地域社会の方々の十分なる御理解、御協力をいただくということだとか、さらに職業訓練的なものも含めましていろいろ社会復帰に資するための施策が今後とも大いに進展される必要があるわけでございますので、私どもといたしましては、このような関連の事業も含めまして、御指摘のような意を体しまして、さらに努力を重ねたいと考えております。
  73. 沼川洋一

    ○沼川委員 この社会復帰施設に関連して、さらにお尋ねしたいと思います。  この精神衛生法では、第二条で「国及び地方公共団体義務」として社会復帰施設の充実というのを掲げてあるわけでございます。この精神医療の分野に社会復帰促進が位置づけられたということは、先ほどから申し上げますように、私も高く評価しておるわけでございますけれども、精神薄弱、身体障害者に比べますと、施設が大幅におくれているところのこの精神医療の分野の福祉を前進させ、患者退院促進し、社会復帰社会参加を促進するためには、これはより充実したものとしていかなければならぬことは当然でございます。  そういう面から見ますと、この本法の第九条、第十条に、精神障害者社会復帰促進を図るため都道府県、市町村、社会福祉法人その他の者は社会復帰施設設置することができる、このようになっております。これははっきり申し上げて「設置することができる。」と、社会復帰対策に力を入れると言いながら、この文言というのは極めて消極的で、国の責任というのが何か回避されるような気がいたします。言ってみれば、これはつくりたければつくりなさいということですね。「設置することができる。」その意味ちょっと教えてください。
  74. 仲村英一

    ○仲村政府委員 精神障害者社会復帰促進のために、地方公共団体が積極的にお取り組みいただくということは非常に必要なことだということでございまして、法律に条文化いたしました精神障害者社会復帰施設整備についても、地方公共団体の積極的な取り組みが求められるということでございますが、すべての市町村に一律的に必要かどうかというふうな需要と申しますかニーズの方からの問題もございますし、各市町村の行財政能力の観点から見ても、設置の困難なところもあり得るということの御意見がございました。そういう観点で一律的に義務づけるということをしなかったわけでございます。  他方、社会福祉事業法改正いたしまして、社会福祉法人等でも民間の主導による整備ができる場合もあり得るということから、そういうものと両々相まって社会復帰促進をできるだけ図ってまいりたいということで、法文上は一律に義務化をしなかったということで御理解をいただきたいと思います。
  75. 沼川洋一

    ○沼川委員 私は市町村を設置主体にしたということはむしろ評価したいと思います。もちろん、これは財政的な問題もあっての考え方だと思いますけれども、要はこの設置すべき責任が一体どこにあるのか。どうも国の責任が明確にされていない、この点が私どうも問題だと思うわけでございます。やはり推進するんでしたら、はっきり国にその責任があるということをもっと明確にすべきじゃないか、このように思いますが、この点いかがでしょう。  さらにまた、市町村といいますと財政的な面もございますけれども、都道府県ぐらいは、やはり設置すべきであると、もっと明確にしたっていいんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
  76. 仲村英一

    ○仲村政府委員 国の責任全体については二条に、私どもとしても国全体としてそのような努力をすべきだということでの条文が加えられておるわけでございます。  それから、御意見といたしまして、都道府県設置しなければからないということも議論としてはございましたけれども、先ほどのような議論の末に、今お願いしておるような、一律的に義務化をしなかったということで法文上は整理をさせていただいております。もちろん国、地方公共団体を通じて社会復帰促進になお努力するということは、この法律の精神全体からも、私どもとしては努力を重ねるようなことで、法の精神にその中身が盛られているというふうに考えているわけでございます。
  77. 沼川洋一

    ○沼川委員 どうもちょっと大事なところになると御答弁がよくわからぬわけでございますが、確かに第二条には「国及び地方公共団体義務」として、この社会復帰施設設置というのがうたわれておりますが、実際の中身になりますと、先ほどから私が指摘いたしますように、「設置することができる。」と極めて消極的で、つくりたければつくりなさいというような考え方で果たしてこういう施設が進むだろうか、本当に心配いたします。  ですから、先ほど聞きました、市町村はいろいろ財政的な問題があるとしても、都道府県ぐらいについてはもっと明らかに設置すべきである、そういう姿勢を打ち出すべきだという点でお聞きしました点をもっと明確にお答えいただきたいと思います。
  78. 佐々木喜之

    ○佐々木(喜)政府委員 先生御指摘のように、病院につきましては、都道府県設置義務というのはあるわけでございます。社会復帰施設につきましては、都道府県のみならず市町村、社会福祉法人その他の方々についても、私どもの気持ちとしては、できるだけ設置をしていただくことによりまして施設の普及を図っていきたい、こういう気持ちがございます。  都道府県設置義務を課します場合には、それではそのほかのところはどうなんだ、こういうようなことも出てくるということも考えられますので、その辺も考慮に入れまして、規定としては「できる。」という規定にさせていただいたということがございますので、申し上げておきます。
  79. 沼川洋一

    ○沼川委員 実は私がこれにこだわりますのは、今回の内容の大きな柱が患者人権尊重、それから社会復帰、ここに大きな意味があると思います。だから社会復帰をうたうんだったら、その受け皿を、それをうたうに見合うだけの施策というのをもっと前向きにぜひとも取り組んでいただきたい。そういう点で、これは非常に不満でございます。  また、さらにお尋ねしたいと思いますが、社会復帰施設設置運営に関する費用負担は、国、地方自治体の関係ではどういうふうになるんでしょうか。
  80. 仲村英一

    ○仲村政府委員 社会復帰施設の設立運営に要する費用につきましては、国及び都道府県が補助することができるという旨を規定しておるわけでございまして、国と地方公共団体の間の具体的な費用負担につきましては、なお細部について検討を要するわけでございますけれども、既に本年度、六十二年度中に実施することとしております社会復帰施設施設整備を例に挙げますと、国がその費用の二分の一を負担いたしまして、都道府県と市町村等の設置主体がそれぞれ四分の一を負担する、こういうことで実施をしておるところでございます。
  81. 沼川洋一

    ○沼川委員 この社会復帰施設の経営を社会福祉事業法に定める第二種社会福祉事業、このようにしてありますけれども、その理由はどういうわけでしょうか。
  82. 佐々木喜之

    ○佐々木(喜)政府委員 社会福祉事業法におきますところの第一種社会福祉事業と第二種社会福祉事業の区分けでございますが、概括的に申し上げまして、社会的に極めて弱い立場に置かれている方々の収容施設でございますとかあるいは経済的な搾取を防ぐための措置とか、そういうようなものが第一種社会福祉事業で、したがって規制も大変厳しくしてある。それから社会福祉の増進のためのそのほかの事業を第二種社会福祉事業、このような区分けになっているというふうに理解しております。  今回法案に盛り込みました精神障害者社会復帰施設は、主として退院者を対象にいたしまして職場なり家庭なりという社会復帰の過程にある方の施設でございますので、第二種社会福祉事業としての位置づけがしかるべきか、こういう考え方で整理をしたわけでございます。
  83. 沼川洋一

    ○沼川委員 この第二種施設というのは、許可が要らなくて届け出だけでいいという施設ですね。
  84. 佐々木喜之

    ○佐々木(喜)政府委員 届け出で設置をできるということになっております。
  85. 沼川洋一

    ○沼川委員 ですから、私が心配いたしますのは、施設基準も満たない低い水準の施設でよい、どうもそういうものがあるような感じもいたします。ですから、そういうものであるならば、これは国から若干の補助を受けたって、余りにもお粗末なものができるのじゃどうしようもありませんので、その点心配ありませんか。
  86. 佐々木喜之

    ○佐々木(喜)政府委員 もう一つは、精神障害者の方の社会復帰施設という場合には、病院からの移行ということがございますので、医療法人の設立ということも一つは期待してよろしいのではないか。社会福祉事業法によりますと、第一種社会福祉事業は、原則は社会福祉法人設置というようなことになっております。そういう観点も考慮しております。  それから、ただいまお尋ねの、それによって施設内容が粗末なものになる心配はないかという点でございますが、その点につきましては、国の方も予算措置等を講じまして、その場合には一定の基準を設けるなど、劣悪な施設というようなことにならないように十分注意をしてまいりたいというふうに考えております。
  87. 沼川洋一

    ○沼川委員 私は、この社会復帰施設の中心問題となりますと、患者の生活に密着した援助と差別の撤廃にある、これが根幹だと思うわけです。したがって、その援助というのは、経済的援助、居住、就労の確保、在宅看護の体制の確立など非常に多岐にわたらなければならぬと思うわけです。今回の法案では、結局社会復帰対策として掲げてあるのは、生活訓練施設授産施設、この施設だけしか掲げてございません。何か上辺だけぱっと並べであるような感じがいたします。もっと幅広い見地から検討を進めるべきじゃないか、そういう点から考えますと、その点ちょっと不満でございます。  こうした社会復帰が現実的に推進されるためには、やはり精神科ソーシャルワーカーなどの医療スタッフの充実が不可欠であると思うわけでございますけれども、そうした点が本法では何ら規定がございませんが、どうでしょうか。
  88. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 精神病院におきますマンパワーの確保の問題、特にPSWの問題につきましては、先ほども御答弁申し上げましたように、私どもとして資格法制化の方向で意見調整に努めたわけでございますが、関係者のコンセンサスが現在得られていないということでございます。  それから、看護婦の問題につきましては、これも先ほど医療法上の配置基準の問題でお答えを申し上げました。私どもといたしましては、実情を十分把握しながら今後検討を進めてまいりたいと考えておるわけでございます。
  89. 沼川洋一

    ○沼川委員 労働省からお見えになっていると思いますが、この精神障害者社会復帰に関して、雇用対策という面でどのようにお考えになっているかをお聞かせください。
  90. 根本安俊

    ○根本説明員 お答え申し上げます。  精神障害者につきましては、精神薄弱者の方と異なりまして手帳制度というものがございませんので、そういった方々の判定あるいは確認につきましていろいろと問題があるのではないか、あるいはまたプライバシーを侵害するような事態を招いた場合には、かえって障害者の方々の職業的な面でもマイナスになるんではないかという問題もあるわけでございます。しかしながら、精神障害者につきましては、これまでも公共職業安定所におきましてきめ細かな職業相談、職業紹介を行ってきたところであり、また昭和六十一年度から精神分裂症あるいはまた躁うつ病にかかっている者に対しましての職場適応訓練という制度を実施いたしております。  また、先般身体障害者雇用促進法の改正があったわけでありますが、精神障害者に対しましても、職業リハビリテーションを推進するとともに、その雇用の促進のために必要な調査研究に努める、こういった内容が盛られております。今後はこういった調査研究に努めるとともに、いろんな助成措置がございますので、こういった助成措置を含めた雇用対策のあり方についての検討を進めていきたい、このように考えております。
  91. 沼川洋一

    ○沼川委員 特に雇用という面ではいろいろと難しい面があるかと思いますけれども、今回の改正のスタートに当たって今までと違った観点からひとつしっかり取り組んでいただきたい、このことをぜひ申し上げておきたいと思います。  さらに、これは何回も申し上げますけれども、今回の改正は、今までどちらかというと精神障害者に対して施設に収容するという施設中心主義であったのが、今度はやはり社会復帰ということを目的として地域に帰す、こういうことでございます。ですから、二十二年前を振り返ってみますと、今のこの地域医療が今日大きく進んでおる現状とはるかな隔たりがあるわけです。そういうことを考えますと、当然これは地域の中でも、先ほども指摘されておりましたけれども、地域精神医療ネットワークといいますか、医療、福祉、保健という、そういう立場からの体制づくり、これは当然必要だろうと思います。  またさらに、入院患者がどうしても多い。しかも長期入院が多い。アメリカやヨーロッパと比べて日本は減るどころかだんだんふえる傾向にある。その問題点を突き詰めていきますと、やはり中間施設的なものがない。そういうことで、言ってみれば、先ほど言いました生活訓練施設とか授産施設というものも中間施設というふうな意味で考えていらっしゃるんでしょうか。大臣、この点いかがでしょうか。
  92. 仲村英一

    ○仲村政府委員 先ほどから申し上げておりますように、社会復帰施設につきましては、居住型のものとかいろいろあるわけでございますが、今お尋ねのような医療との関連において社会復帰をどう考えるかということだと思いますが、医療施設におきましても、精神科のデイケア施設というのが従前からもあるわけでございますし、今後も、例えば独立施設型でございますとか病院に付設する形でございますとかあるいは診療所に付設する形でのより医療に近い方のリハビリテーションということもあるわけでございますので、そういう福祉型の施設と同時に医療型の機能も、デイケア等の機能も発揮していただいて、それができるだけ地域の中で活用されるということで考えたらいかがかということでございます。
  93. 沼川洋一

    ○沼川委員 私もいろいろとこういった精神障害関係の相談を受けるわけですけれども、そのたびに感じますのが、病院はもう退院してよろしい、じゃあ自宅でさっとその方を引き受けられるかというと、最近のケースとして、御両親が非常に高齢化されている、足が悪い、体のぐあいも悪い、息子を引き取りたいんだけれども、家庭の事情でどうにもならない、そういうケースの話を非常に多く聞くわけでございます。  ですから、言ってみれば、そういう病院と家庭の中間、こういう施設づくり、やはりこれは受け皿としてぜひとも力を入れていただきたいと思いますし、こういう問題が整備されない限り、長期入院あるいは病院収容中心主義の体制というのは何年たっても変わらないじゃないか、そういう気が私はいたします。これはお答えは結構でございますので、ぜひひとつそういう方面に力を入れていただきたいと思います。  時間が余りありませんので、ちょっと先に進みたいと思います。これは本会議でも問題になった件でございますが、国公立病院のあり方について再度お尋ねをしておきたいと思います。  精神病院開設者別に見ますと、総数千六百十施設の約八割、千三百十三施設が私立病院でございます。そのためか世論の一部に、国公立病院は本来の設置目的に立ち返って、今よりさらに精神医療を担当し地域医療に貢献すべきである、こういう批判があるわけでございます。すなわち、人的にも施設面においても整備が不十分な私的病院にいわば重度の措置入院患者が比較的に多いという傾向もございますし、そういうところから宇都宮病院事件みたいな問題も起こるのではないか。言ってみれば、本来そういう措置入院に値するような患者は、国とか公的医療機関がきちっと対応しなければならないのに、実際にはそういう患者は全部私立病院に送り込んでしまう。あの宇都宮事件のときのあの内容は、これは確かに大きな問題でございます。しかし、いろいろ聞いていて私も一つ感じたのは、何でもかんでも宇都宮、とにかくあの病院患者が集中して来た。いわば県境を越えて、都合の悪い病人はみんな送り込まれてきた。そして事件が起こるとたたかれる、そういう不満をちょっと漏らしておられましたけれども、あの事件社会的に本当にけしからぬ問題でございますけれども、その辺考えますと、もっとこの精神医療という問題に対して力を入れなければならない国が余り力が入ってない、全部私立病院にしりぬぐいさせている、そういう体制では、これは本当に精神医療というのは進まないんじゃないかという感じがいたします。病院は私立が非常に多い、そこにゆだねている問題が多過ぎる、こういう点について、国公立の病院の今後のあり方、どのようにお考えになっていらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。
  94. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 措置入院患者入院につきましては、その医療保護人権確保といったような観点から、できるだけ国公立病院でこれを受け入れることが望ましいと考えております。今後とも国立病院療養所、また都道府県立の精神病院等において、これの受け入れを促進できるよう努力をいたしてまいる覚悟でございます。
  95. 沼川洋一

    ○沼川委員 時間がありませんので進みたいと思います。  具体的な問題点としまして指定医制度、先ほどもいろいろ問題になっておりましたが、お伺いをしたいと思います。  精神医療患者本人の意思に反して医療行為を行わざるを得ない局面がある以上、法的に資格制限を行うことは最小限度必要であるかと考えます。ただし指定医の認定が恣意的なものとならないように、指定医認定の方法、具体的基準について関係団体等の意見を十分配慮する必要があるかと思うわけでございます。そういう点から、一つには、指定医が現在の患者数から見て何名程度必要なのか、またこの数は確保される見通しがあるのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  96. 仲村英一

    ○仲村政府委員 指定医が何名程度必要かというお尋ねでございますが、先ほどおっしゃいましたように、現在約千六百の精神病院がございまして、一病院当たり二名以上の指定医が常勤することが望ましいとすれば、最低三千二百人程度ということになるわけでございますが、六十二年九月の時点で精神衛生鑑定医が四千四百十三人おられるわけでございまして、施行後の経過措置によりまして、その方たちが精神保健指定医になるとすれば、それぞれの病院において、その管理運営に当たっていただくわけでございますし、現在その資格が十分おありになりながら鑑定医の資格を取っておらない方が約二千人程度おられるわけでございますので、私どもとしては、この指定医の確保という点につきましては、そう問題はないのではないかと考えております。
  97. 沼川洋一

    ○沼川委員 精神科医師の不足というのをいろいろ聞きますが、実態はどうなっているのか、またこの不足の原因は何なのか、さらに今後増加させるためにどういう施策を考えていらっしゃるのか、お聞かせください。
  98. 仲村英一

    ○仲村政府委員 診療科別にその科のお医者さんが充足しておるかしておらないかという問題は非常に難しい問題でございまして、このことは精神科についても同様だと考えております。精神科を標榜されるお医者さんは、五十九年の年末で七千三百人程度おられるわけでございまして、精神障害者の診断、治療に三年以上の実務経験を有する精神鑑定医の数は、先ほど申し上げましたように、四千四百人ということでございまして、我が国の人口十万人当たりの精神科標榜医師数は六・八人でございますが、例えばアメリカ合衆国におきましては十二・〇人ということでございまして、そういう点からいいますと、精神科医の数が必ずしも十分でないというふうに考えられるわけでございます。  その原因というのは非常に難しいわけでございまして、医学部へ行きますれば、すべての診療科についての講義を受けて、あとは御本人の希望で診療科を選択されるわけでございますので、そういう点で役所がどうこうすればふえるという面がなかなかない部分もあるわけでございまして、そういう点では、お尋ねのようなことに対してどう対策をとるかということは非常に難しいわけでございますけれども、近年の精神医学の進歩、例えば診断とか治療技術の進歩ということもございまして、昭和五十六年には六千二百人でございましたものが五十七年には六千五百人、さらに五十九年には七千三百人ということで、だんだん精神科を標榜するお医者さん自体は毎年数百名程度ずつふえておるというのが現状でございますので、このような傾向につきまして、私どもとしても持続させていきたいと考えておりますし、種々の施策によりまして、精神科の精神医療の質を確保する優秀なお医者さんが精神科においでいただくことを希望しておるところでございます。
  99. 沼川洋一

    ○沼川委員 任意入院の規定でございますけれども、入院治療の基本形態として、今回任意入院が明記された、これは私ども非常に評価したいと思います。今回の改正の中でこれが入れられたということが、今申し上げますように、私ども評価するところでございますけれども、今後任意入院促進していくために、次の点をぜひともこれは明らかにしておく必要があると思ってお尋ねするわけでございます。  この二十二条の三の二項は、入院者から退院申し出があった場合に、その者を退院させなければならないということを規定しておりますけれども、入院中の処遇について非強制的処遇が原則であることが明記されていないわけですね。この原則がなぜ明記されなかったのか。これは当然同項の趣旨から見て非強制的処遇すなわち開放処遇が原則である、私はこのように理解をするわけでございますけれども、法文上これが明記してなかったのはどういうわけでございますか。
  100. 仲村英一

    ○仲村政府委員 任意入院にかかわりませず、一般的に言いまして、精神科の入院医療はできるだけ開放的な治療環境で行われるということが望ましいと私ども考えておるわけでございますが、その開放的な処遇を行うべきであるといった内容の規定を設けることは、やはり個々の患者の症状に応じて判断されるべき部分があるというふうなこともございまして、法的な仕組みとしては不適当ではないかということで考えまして、むしろ運用面で種々考慮してまいりたいということで対応したいと考えております。
  101. 沼川洋一

    ○沼川委員 強制的な手段によらないで任意入院者をケアするためには、強制的処遇に比べてより多くのマンパワーが必要であると私は考えます。ひいてはより多くの費用を要することになるのじゃないか。このような負担の増加に対して、やはり医療費の裏づけがなければ、かけ声だけの任意入院促進ということに終わってしまうのじゃないか、こういうおそれが十分考えられます。医療現場の負担増に見合った形で、例えば任意入院加算、こういった医療費サイドの手当てがされることになるのかどうか、この辺をお尋ねしておきたいと思います。
  102. 下村健

    ○下村政府委員 精神科の診療報酬につきましては、これまでも各種の点数の新設等で精神医療の推進を図ってまいったわけでございますが、ただいまお話しになりました入院に係る問題につきましては、現在は基準看護制度で対応しておるわけでございます。精神医療については、その特殊性にかんがみてより緩やかな要件での基準看護を認めるというふうな形でやっておるわけでございます。問題は、私どもとしては、その任意入院という形によって、そういう患者さんに対してどういう医療をやっていくのかあるいはどういう配置が必要なのかというふうな、むしろ医療内容の問題ではなかろうかというふうに考えているわけでございますが、今回の改正を契機にいたしまして、さらに具体的な議論を展開していくということになるのではないかと思っておりますので、中医協における議論等を見ながら、そのあり方について考えてまいりたい、このように思っております。
  103. 沼川洋一

    ○沼川委員 まだまだお聞きしたい点がたくさんあるわけでございますが、時間がありませんので、最後のまとめの意味で、さらに大臣に最後にお尋ねしたいと思います。  特に、私も何回も申し上げましたように、今回の改正案は、一つは、入院が必要なときでもできる限り患者の意思による入院に努めるよう医師義務づけて任意入院を基本とする、この点が一つ。それから強制入院行動制限などの強制医療に対する患者の不服申し立て権を認めて、入院時にこれらの権利を患者に書面告知する。三番目に患者の不服申し立てを精神医療審査会審査し、これに基づき知事退院や処遇改善を命令できることとし、命令違反には罰則を設けるなどの規定を提案しているわけでございます。  この改正案の新しい規定は、まだまだ不十分な点がたくさんございますけれども、現行法から見れば一歩前進と私も評価したいと思います。そういう点で、今回の改正案はまず一つのステップとして、これで決して十分ではありません。今後国際世論の批判を今のままではますます浴びるんではないか。日本の歴史というのを振り返ってみますと、日本が民主化する場合、必ず外圧でないとだめだという歴史をどうも持っているようです。黒船以来、何か外圧がないと日本の民主化は進まない。私はそういうことでは困ると思います。大臣は、今国際世論の批判、いろいろな問題が指摘されておることも十分御承知であると思いますけれども、これを一つのステップとして、国際批判に耐えられる、むしろ胸を張って日本の精神医療法はこうだと言えるような法律づくりに、今後ともいろいろな指摘された問題点を改善しつつ努力をしていただきたい。その意味での決意を最後に伺って、終わりたいと思います。
  104. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 今回御提案をいたしております改正は、精神病院におきます入院、そしてまた入院中の処遇また退院、こういった時点におきます改善を施し、人権の一層の擁護を促進してまいる、同時にまたできるだけ在宅なり地域において、この方々が十分なる生活をしていけるような社会復帰に努めてまいる、こういう内容でございまして、これまで置かれておりました精神衛生を取り巻く環境等から見ますと、相当な前進になるものと思うわけでございます。同時にまた、そういったことを踏まえますと、これを実効を上げていくということについては、現在もなおいろいろな問題点なり障害もあろうかと思うわけでございますが、こういったものを乗り越えて、今回の法の改正趣旨にのっとってこの法を運用し、徹底いたしてまいるということが第一である。そしてその上に立ってさらなる改善を行ってまいるということが必要である。このような考えに立ってこれからも精神保健対策について積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
  105. 沼川洋一

    ○沼川委員 以上で終わります。
  106. 堀内光雄

  107. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今回の精神衛生法改正は、患者人権尊重をしつつ精神医療の進歩に従って適切な医療を行うということを前提とし、さらに患者社会復帰社会参加が実現していくことを目指したもの、こういう形であると思います。もう一つは、そのための地域医療や福祉という観点が大切であろう。こういうことが重要視される中で、今回の法改正は、少なくとも二十数年ぶりに外国のいろいろな批判あるいはまた今日における社会的なニーズにこたえて改正されたものと思います。こういう一連の考え方について、冒頭に大臣の所信をお伺いしたいと思います。
  108. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 今御指摘がございましたように、今回の改正精神障害者入院人権の擁護を一層促進してまいる、同時に社会復帰促進いたしてまいるということにおいて精神保健対策を一層向上していく。これまでいろいろと御指摘なり、また御批判もあったことに対して対応していけるものであると考えております。     〔委員長退席、長野委員長代理着席〕
  109. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そこでお伺いしたいわけでありますが、厚生省では、精神障害者と言われる人たちの数をどのように把握し、さらにまたその中でも入院を必要とする人あるいはまた在宅のまま医療指導を受けられる、また受けることを必要とする人がどのぐらいおられるか、把握をしていたらお伺いしたいと思います。
  110. 仲村英一

    ○仲村政府委員 精神障害者全体の数の推計でございますが、精神衛生実態調査、三十八年に行われたものがございますけれども、この有病率、人口千対十二・九という数字を使って推計いたしますと、精神障害者の推計数は約百五十五万人ということになるわけでございます。なお、この中には約五十万人の精神薄弱者も含まれているわけでございます。現在どの程度の患者さんが入院しておるかということで申し上げますと、六十一年六月末現在の入院患者数は約三十四万人でございます。それから外来患者さんでございますが、通院患者は五十八年の患者調査から推計をしてみますと約七十万人ということでございまして、これらのことから医療を受けている精神障害者の数は約百万人程度ということで推計しております。
  111. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今、厚生省で昭和三十八年度に調査をされ、そしてそのパーセンテージを出されて推計で百五十五万人と言われたわけであります。私はその基本的な考え方は理解できますけれども、昭和三十八年代の社会的な条件と今日の社会条件では大変大きく変わってきております。特にここ五年、十年というのは精神的にも大変負担増になる社会傾向が出ているわけであります。そういうことを考えたときに、昭和三十八年の数値、基礎データでよろしいかどうか。この辺が厚生省としては余りにも漠然としたデータに基づいてそれぞれの資料をつくられているのではないか。そういう点で、これらに対してどのようにお考えになっておるか。
  112. 仲村英一

    ○仲村政府委員 おっしゃいますように、三十八年の精神衛生実態調査の有病率をもって推計しておりますことは、まことに古いではないかという御指摘だと思います。御指摘のとおりだと私ども考えておりますが、こういう形の精神衛生実態調査というものが最近諸般の事情から非常に行いにくいということもございまして、この数字を使わさせていただいておるわけでございます。  御指摘のように、他の一般の疾病構造が変化しているのと同様に、精神疾患についても恐らくいろいろな形での変貌が起きておるということは、私ども想像にかたくないわけでございますが、まことに申しわけないのですけれども、確固たる数字をお答えできないわけでございます。しかし、今御指摘のような、近来の変化でございますとかあるいは高齢化というふうな要素も考えますと、中身的にもあるいは数字的にも変わっておる部分があろうかと思いますけれども、残念ながら現在のところ確たる数字は申し上げられないわけでございますので、先ほどのようなことでお答えさせていただいたわけでございます。
  113. 田中慶秋

    田中(慶)委員 確かに精神障害というのは幅広いと思います。心の病という前提に立ちますと、精神障害者を特定し、その数の正確な把握というのはなかなか困難だと思いますけれども、今日の科学技術の進展や社会環境は大変複雑になっております。少なくとも産業構造の変化を見ただけでも、従来までの製造業が第三次産業に移行する、また管理職やいろいろな職場環境も大きく変わっている、こういうことを考えただけでも、現業にいた人がある日突然営業にかわり、自分たちの会社の命一つでそれぞれ単身赴任をされていく、そんな環境の中で精神的負担というのが大変大きくなっているわけであります。その数は少なくともますますふえている傾向にあると私は思います。そういう点で、今局長が言われておりますけれども、把握しにくい、三十八年のデータを使っている、こういうところにこれからの対策やいろいろな問題点が起きやしないか、そういう点の心配があるわけであります。恐らくこれは日本だけの問題ではなく、先進国と言われるアメリカやヨーロッパの中においても同じことが言えるのではないかと思います。そういう点では、三十八年のデータを基礎にしながらも、先進諸国のデータを踏まえて全体的な把握というものが必要であろう、こんなふうに私は考えておりますけれども、厚生省としてこれらに対してどのようにお考えになっているのか、お伺いしたい。
  114. 仲村英一

    ○仲村政府委員 おっしゃいますように、対策を立てる場合に、その対象となる患者さんなり疾患像を的確に把握するというのは非常に大事なことだと考えておりますので、いろいろな角度から工夫をしてみたいわけでございますが、御指摘のように、同じ精神疾患の中でも、質の変貌と申しますか、そういうのが起きておるということをおっしゃるお医者さんもおられるわけでございますしいテクノストレスとかいろいろな形で、こういう社会でのストレスに対応する形での疾患というものは別な形であるわけでございますし、先ほども申し上げました高齢化によります痴呆の問題とかいろいろ中身は変わっておるわけだと思いますので、専門の先生方ともよく相談をさせていただきまして、できるだけ的確な数字を把握するような努力を重ねてみたいと思います。
  115. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私はなぜこの数字にこだわっているかというと、これからの医療全般にわたる整備の問題やあるいはまた医師の問題、先ほども言われておりますけれども、医師不足と言われながらも、現実には全体的な数の把握とかいろいろなことがなければ、不足であるかあるいはまた充足されているか、そういうことははっきりできないわけであります。あるいはまたそれぞれの施設にしても、当然そのことが言えると思うのです。ですから、ある程度の全体的な把握をすることは、予算を措置をする場合においても大切なことであろう。今のような把握の形の中では、きめの細かい医療やきめの細かい福祉というのは私はできないと思う。ですから、こういうことを含めて、すべての問題というものは、この数値が基礎になるのではないか。せっかく今回法律改正をするにしても、やはりそういうことが根本になければいかぬであろう。こんなことで申し上げているわけでありますから、できるだけ正確なデータを把握できるように、またそのことによってこれからの対策が十二分に行われるであろう、私はこんなふうに考えております。この辺について大臣、ひとつ明確に答弁をいただきたい。
  116. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 社会の複雑化、多様化等により心の病いを持たれる方も非常に多くなってまいります。精神保健対策の推進ということは非常に重要なことであり、これの根底になるべき基礎的データを把握していくということがその前提になるということもお説のとおりだと思います。しかしながら、具体的に調査をさせていただくということになりますと、さまざまな御意見やらまた障害もあるわけでございまして、関係の皆様方に十分な御理解を得るべく努力をし、そして実態の把握ができるよう前向きに努力を重ねてまいりたいと思います。
  117. 田中慶秋

    田中(慶)委員 確かにいろいろな日本の今日までの歴史の中で、精神障害者という形の中で、その家族の大多数は、古くから社会等の偏見により自己の立場を主張することもはばかられてきたわけです。こういうことからしても大変難しい問題があろうと思います。しかし私は、今の社会構造からして、全般的に、よその国の例も見ながら、できるだけ近似値のものが出るであろう、こんなふうに信じておりますし、ぜひこれからもそのことを含めて、全般の対策に重点を置かなければいけないということでこのことを申し上げているわけであります。  そこで、実は今申し上げたように精神障害者の家族というもの、あるいはまたその障害者もそうでありますけれども、肩身の狭い思いをして悩み、苦しみ、そして厳しい社会の現実に直面しながら病いとの闘いをし、懸命に生きているわけであります。今回の改正は、法律の名称は精神衛生法から精神保健法に改め、目的規定についても改正が行われているわけでありますけれども、精神衛生法が真に憲法で規定する基本的人権を保障する改正となるかどうか、大変疑問であります。その辺について、基本的には個人の基本的人権を保障するということ、これが大切ではないか、こんなふうに考えておりますけれども、今回の法律、その中身、その背景等々を含めて、この辺についてどのような形で位置づけられているのか、お伺いしたいと思います。
  118. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 今回の精神衛生法改正は、入院患者の一層の人権の擁護、また社会復帰ということに重点を置いて改正をさしていただきました。  特に、入院患者の処遇につきましては、第一に、本人同意による任意入院という新しい制度を初め入院形態等について整備をいたしました。  そして第二点といたしましては、精神保健指定医という制度を新たに創設をし、任意入院以外の入院等についてこの判定を行い、また行動制限等についても、この指定医によって判断をするということにいたしたところであります。  また第三点といたしましては、都道府県精神医療審査会というものを設置をいたしまして、入院状況を把握をする、そしてまたその退院の適否等について審査をするということといたしたわけであります。  このような主な点を申し上げさせていただいたわけでございますが、このようにいたしまして、入院患者の皆様方の人権を一層擁護し、そして憲法に定められる基本的人権をこれまでにも増して推進、充実をさしてまいることになるというふうに考えております。  また、社会復帰を推進をいたしてまいるということにおいて、病院から家庭へ、そして地域へということをスムーズにしていく。そのためにはいろいろな相談事業やまた指導事業、そしてその社会復帰のための施設を充実をしていく。また地域における精神保健センターというようなものを充実をいたしていくことによりまして、地域において障害を持たれる方も伸び伸びと生活をしていただけるような、そしてそれが、裏返せば地域の方々が精神障害者に対しての理解を深めていくということにもつながってまいると思うわけであります。  こういったことを総合的に見てみますと、基本的人権の一層の推進に資するものであるというふうに私どもは考えております。
  119. 田中慶秋

    田中(慶)委員 大臣からの今の答弁を聞くと、今回の改正はまさしくすばらしい、バラ色のような形で受け取られるわけでありますけれども、そのような精神でぜひこれはやっていただきたいし、またこれからもいろいろな指導をしていただきたい、こんなふうに思います。  例えば、今までの中においても問題の一つであります措置入院も、都道府県別に比較しても、それぞれがばらばらであった、こんなこともデータで出ているわけであります。ですから、今回の一つの法の改正、これがやはり長い日本の精神障害者に対する歴史を変える一ページになってほしい、こんなことを含めて、ぜひ今の考え方をこれからも定着、推進をしていただきたい、これを要望しておきます。  そこで、今回改正が行われるようになったきっかけというものは、一つには昭和五十九年三月のいわゆる宇都宮病院事件であると思います。この事件発生からこれまで、法律改正の準備と並行して、厚生省では指導監督強化、事件の再発防止等の策を講じてこられたと思います。具体的にはどのようなことをやられてきましたか、この辺についてまず一点お伺いしたい。  さらにまた、その効果がどのような形で出ているか、同様の告訴事件等々が発生しているかどうか、これらについてお伺いをしたいと思います。
  120. 仲村英一

    ○仲村政府委員 いわゆる宇都宮病院事件でございますが、五十九年三月十四日の看護職員による患者への暴行致死の新聞報道を発端といたしまして、無資格者診療でございますとか入院の必要のない方が入院しておられるというふうな種々の問題点が指摘されたところでございまして、この宇都宮病院に対しましては、事件後栃木県を通じまして数回にわたりまして立入調査及び実地審査を行いまして、関係者からの事情聴取も行ったわけでございますが、医療従事者の不足、無資格者の診療行為、患者の病室外収容、入院不要者がいたこと等の問題点が確認されたわけでございます。  これらに基づきまして、栃木県において、同病院に対しまして、医療従事者の充足等について努めること、それから病院管理者を変更させること、入院不要者を退院させること等各般の指導を行ってまいったわけでございますが、厚生省といたしましては、事件後の五十九年六月二十二日にそれを契機といたしましたいわゆる三局長通知を各都道府県に出しまして、精神病院に対します実地指導、実地審査医療監視等の徹底を図って、このようなことが再び起きないようにということで指示をさせていただいたところでございます。  なお、宇都宮病院につきましては、先ほど申し上げましたこれらの指導によりまして、入院が必要ないとされた患者さんについては全部一度退院をしていただいて、現在、再度医療が必要な方で一部入っておる方がおられるようでございますけれども、当時の判定で入院不要とされた者については、すべて他の施設へ移転をしていただいたということで、当時の状況から見て私どもとしては改善が見られたというふうに考えております。  それから、後段でお尋ねの宇都宮病院事件以降類似の訴訟事件はどの程度かということでございますが、宇都宮病院事件に関しましては、元院長その他看護職員等に対する刑事事件と同時に、病院関係者、国、栃木県、宇都宮市に対しまして民事の損害賠償訴訟が提起されております。  それから、その他の訴訟事件でございますが、全体として私ども直接把握していない部分もあろうかと思いますが、国が被告とされております訴訟事件は、同意入院にかかわります八王子市長の同意が遡及して行われたことが問題とされた民事の損害賠償請求事件として、現在東京地裁で係争中のいわゆる成田病院事件というのがあるわけでございます。
  121. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今のような背景のもとに昭和五十九年と六十年八月に国連の国際人権連盟、障害者インターナショナル、すなわちNGOが日本の精神医療に対して、不当な入院措置を防ぐための手段がない、あるいはまた入院患者に対しての扱いそのものが動物並みの扱いをしている、あるいはまた政府は改善のための努力を怠っている、精神衛生法は国際人権B規約に違反しているなどの批判が行われ、当時は宇都宮病院事件の直後であり、感情的な面もあったかと思いますけれども、すぐにこれらに対して厚生省は反論されたわけであります。  しかし、今これらの批判を振り返ってみて、当たらずとも遠からず、こういう感があるわけでありますが、当時のNGOの批判について、現時点では厚生省はどのように考えられておるのか、お伺いしたいと思います。
  122. 仲村英一

    ○仲村政府委員 当時確かに幾つかのNGOから指摘がございました。それに対しまして、当時といたしまして、不当な入院を防ぐための各種のチェックがなされておって、同時に司法的救済手続をとることもできる、あるいは大部分の病院は健全で最善のケアで治療をしておる、三局長通知、先ほど申し上げました三局長通知を出すなどして政府としても対策を実施してきておる、それから精神衛生法は国際人権B規約に違反してないというようなことを私ども主張したわけでございます。  基本的には、私ども現在も同様な理解でございますが、精神医療を取り巻く諸状況を勘案いたしまして、精神障害者人権擁護をさらに推進する必要があるということから、通信・面会に関しますがイドラインをお示ししますとともに、その延長線上と申しますか、今回の法律改正まで参ったわけでございまして、国際的な批判にもたえるように、日本の精神医療の質の向上、さらには社会復帰促進ということ、あるいは入院患者さんの人権擁護という点で、国の施策をさらに飛躍させたいということで法律改正をお願いしているわけでございます。
  123. 田中慶秋

    田中(慶)委員 批判は批判として率直に受けとめ、新たな次の発展のための大きなエネルギーにしていただく、弁解であってはより充実はできないと私は思います。  そこで、さらに国際法律委員会、ICJの訪日調査団の報告書、昭和六十一年九月にまとめているこの報告書についてはどのようにお考えになっているのか、今改正に盛られている点、盛られていない点、さらにはまた今後これに基づいてどのように進められていくのか、これらについてお伺いをしたいと思います。
  124. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 ICJによる訪日調査は、法律精神医療に関する専門家によって、我が国の精神保健医療制度、実際の地域医療体制等各般の分野について行われたものでございますが、昭和六十一年九月の報告書はそれぞれの専門的見地から取りまとめられたものと考えております。  今回の法改正作業につきましても、各界から寄せられた御意見とともに、この国際的な人権団体でありますICJ勧告についても十分参酌させていただいたところでございます。  具体的な点につきましては、局長から答弁いたします。     〔長野委員長代理退席、委員長着席〕
  125. 仲村英一

    ○仲村政府委員 ICJの勧告について、今回の法改正に盛られている点、盛られていない点、その理由ということでのお尋ねだと思いますが、ICJ勧告におきましては、我が国の精神医療につきまして、入院患者に係る人権擁護についての法的保護が不十分である、それから二番目に、リハビリテーション等社会復帰施策が不十分であって、長期にわたる入院が常態化しておること等の基本的な問題認識に立って、その是正のための指摘が行われたわけでございまして、もう少し具体的に申し上げますと、自分の意思にかかわらず入院している患者さんについては、都道府県レベルの中立機関による審査システムを確立する、職員配置チェックや患者個人の苦情を受け付けるため定期的な精神病院調査を実施する、入院患者の信書、通信の自由を完全に保障する、精神障害者を対象とする広範な地域ケアと社会復帰プログラムの整備に対する財源措置をとるということを提言しておりまして、今回の改正におきましては、本人の意思にかかわらない入院形態では、患者人権の擁護に必要な一定の資質を持つ精神保健指定医の判断を必要とする仕組みをとったこと、それから本人同意に基づく任意入院制度を法律に明記したこと、入院継続の必要性の有無や処遇の適否について、専門的かつ中立、公正な審査を行う精神医療審査会設置したこと、厚生大臣が定める一定行動制限については行うことができないこととしたこと、厚生大臣または都道府県知事は、必要に応じて精神病院に対する報告徴収、立入検査等を行うことができること、精神障害者社会復帰施設等法文上明記して、地方公共団体がこれを設置することができる等、ICJの勧告の趣旨に沿った形で、入院患者人権とともに、社会復帰促進を図る規定を設けたところでございまして、ICJ勧告のうち、精神病院に生じたすべての死亡例の剖検、高齢精神障害者に対するホステルの整備など、我が国の医療福祉制度との関連でさらに検討が必要な点につきましては、今回の法改正では盛り込んでおりません。  以上でございます。
  126. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は、このICJの勧告というものが今回一部入れられておるわけですけれども、その勧告がまだ不十分であると思います。そういう点で、これからどうするかという問題について御答弁いただけなかった。  さらに、ICJから厚生大臣、あなたに手紙が来ていると思います。私のところにもその写しをちょうだいしておりますし、また勧告の内容も来ているのです。しかし、今回の改正に当たって、趣旨は生かされておりますけれども、生かされていない部分も大分あるような気がいたします。  そこで、今後、時間がない、質疑も余りできませんでした。そういう中で、政省令の通達、指導、あるいはまた今回できなかった部分について速やかな見直しとかいうことについて大臣の見解をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  127. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 ICJから八月十八日に私あての書簡が送られてまいりました。これによりますと、今回の法改正を歓迎する、しかしながら、さらなる人権擁護に向けての指摘がございました。今回の改正におきまして、御指摘の事項が十分全面的に盛り込まれたとは申し上げられない点があるわけでございますが、今先生が御指摘のように、この法律を成立さしていただきましたならば、その政省令の制定、また法改正後の制度運用の面において、御指摘の趣旨が十分生かされるように最善の努力をいたしてまいります。  また、今回の法改正に当たりまして、なお残っておる問題といたしまして、障害者の定義の問題、いわゆる保護義務者にかかわる問題等もございますが、この法律運用いたしてまいります段階においていろいろと常に見直しを行いながら、改善をすべき点は改善をするという姿勢に立って、必要に応じて必要な措置を今後ともとってまいりだいと考えております。
  128. 田中慶秋

    田中(慶)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。ありがとうございました。
  129. 堀内光雄

  130. 児玉健次

    児玉委員 日本におけるこれまでの精神障害者の対策は、精神障害者を長期にわたって社会から隔離するかそれとも放置しておく、こういった特徴を持っていたと思います。今回の改正案はいわば当然過ぎるほど当然の措置を何点か含んでいると私たちは考えております。  そこで、もしこの改正案について十分な時間をかけ慎重に審議すれば、精神医療の今後の改善、向上に貴重な手がかりが得られるだろう、そう考えているだけに、このような短時間の審議については極めて遺憾である、それをまず冒頭に述べておきます。  さて、時間もありませんから、私は手短に質問しますので、ぜひ御答弁も簡潔にお願いしたいと思います。  本人同意に基づく入院、これが今回の改正案の一つの重要なポイントでもあるだろう、こう考えます。患者人権を擁護していく、閉鎖病棟に患者を隔離することで医師看護婦等の不足をカバーするという現状を改めることが非常に重要になっていると思います。  そこで、私は端的にお伺いしたいのですが、昭和三十三年十月二日事務次官通知「医師は他の診療科に比べて三分の一、看護婦等も少なくていい」この事務次官通知について、先ほど大臣の御答弁にもありましたが、精神保健をめぐる状況変化精神医学の進歩、それに伴って積極的な治療を行って患者退院社会復帰を促すことが可能になってきておりますから、この事務次官通知について見直すことが今必要になっているのではないか、こう考えますが、端的にお答えいただきたいと思います。
  131. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 精神病院医師看護婦等の配置基準でございますが、精神病の場合、慢性疾患であり、また病状の急変が少ないということから、従来一般病院より緩和をされていたところでございます。しかし、最近におきます精神医療をめぐる状況変化あるいは現場におきます業務量、人員配置の実態等を十分踏まえまして、今後検討してまいりたいと考えております。
  132. 児玉健次

    児玉委員 ぜひ速やかに、今局長からお話があったような検討をしていただきたいと思います。  そこで、今回の改正に触発されてより充実した高度な医療を進めたいと誠実に願っている精神病院、そういうところで、これまでの看護基準、特二、特一、一類から三類、これをこの際、医療活動の必要から、その基準が求めている要員配置を十分に行って、看護基準をグレードアップしようとする、そういう動きを私は現場で幾つかお聞きしました。こういった看護基準のグレードアップについて、厚生省としてはその要請に積極的に対応すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
  133. 下村健

    ○下村政府委員 精神病棟にかかわる基準看護につきましては、精神医療特殊性等にかんがみまして、特例的な取り扱いを行ってきているというのはお話しのとおりでございます。入院比率の高い基準看護、特二、一といったものにつきましては、患者の症状等によりまして、看護婦の配置を厚くする必要がある場合に限って認めることにしているわけでございます。これは精神病棟の置かれている状況から考えまして、特二のような手厚い体制をとる場合には、患者の症状に対応した医療のあり方というふうなものを考えて、それなりの必要性が前提になっているということでございますので、その取り扱いについては、個々の事例に応じて適切に対応していきたいと考えております。
  134. 児玉健次

    児玉委員 私は精神医療における診療報酬の問題に入りたいと思います。  御承知のように、この分野では患者の話をじっくり聞く、非常に時間をかけて辛抱強い努力を行う、このことが求められております。  そこで、まず、政管健保における入院一日当たりの平均点数、精神科とその他の診療科を比較した場合に何点になっているか、お聞きします。
  135. 下村健

    ○下村政府委員 昭和六十年度の政府管掌健康保険の数値でございますが、入院の一人一日当たり点数は、入院全体の平均で千三百十二・二点、精神病院の場合ですと、甲表をとりますと七百三十七・一点ということになっております。
  136. 児玉健次

    児玉委員 私が先日伺った総合病院の場合、その総合病院の内科の一日の平均点数が約千六百点、精神病棟が八百点ですから、その比率は大体二対一、非常に低く抑えられております。それが治療なき収容隔離の一つの原因になっているというふうに私は受けとめております。  そこで、もう少し踏み込んでお伺いしたいのですが、医師の面接、カウンセリングはたしか二百二十点だと私は聞いております。それから通院患者に対する看護婦等の訪問指導料は二百点ということになっている。  ちなみに伺いますが、理学療法士が四十分以上かけて行う治療は何点でしょうか。
  137. 下村健

    ○下村政府委員 運動療法の複雑なものについてお尋ねだと思いますが、三百三十点ということになっております。
  138. 児玉健次

    児玉委員 ちょっとそのままいてほしいのですが、エコーの検査ですね、最も高度の医療機械を使ってのエコーの検査は何点でしょうか。
  139. 下村健

    ○下村政府委員 八百点でございます。
  140. 児玉健次

    児玉委員 そこで、これは大臣にぜひ聞いていただきたいのですが、辛抱強く患者の話を聞いて、十分時間をかけて、高度の専門性を持つ医師患者の治療に当たる、それが時間に関係なく二百二十点と抑えられている。理学療法士の四十分の治療が三百三十点。それは私は高いとは言いません。それはそれでさらに改善される必要があると思うのですが、こういった精神医療における診療報酬が必ずしも実態を反映していない。  大臣、もう一つ言いますと、熱心な精神科のお医者さんや看護婦さんたちは、現在の診療報酬で通院患者に対する訪問指導料は二百点という形で位置づけられております。長期にわたって入院している患者がそろそろ退院が可能になる。そのとき、私が行きました病院医師看護婦等は退院前に必ずその受け皿になる患者の自宅を訪問して、どんな部屋でこの後暮らすことになるか、どういう家族の中で励まされながら社会生活を送ることになるか、そういう訪問指導をやっているのですが、この訪問指導について、現在の診療報酬ではどのような点数が準備されているか、この点お伺いします。
  141. 下村健

    ○下村政府委員 一時帰宅については認められておりません。
  142. 児玉健次

    児玉委員 だからこの点は大臣に私はあえて申し上げたいのですが、精神医療の診療報酬について、やはりこの改正を契機にしてかなり思い切った見直しを将来にわたって行うべきだと思うのですが、いかがでしょうか、大臣。
  143. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 近年におきます精神医療向上を踏まえ、また今回の法改正趣旨を実現いたしてまいりますためには、精神医療にかかわる診療報酬についても検討をいたしてまいらなければならないと考えております。今後、医療現場の実態等を踏まえ、また中医協を初め関係の皆様方とも十分御相談をいたしまして、その改善に努力をいたしたいと思います。
  144. 児玉健次

    児玉委員 次に、既にけさからの質疑の中で出されておりますが、精神保健指定医制度の問題について一、二お伺いします。  まず最初に伺いたいのは、これまでの精神衛生鑑定医、これは法律によれば、その同意を得て指定するということになっております。だからお願いする立場だったと思うのですよ。今度はそこが変わってきていますね。厚生省令で定めるところによる研修とはどんな内容、何日ぐらいの日数でどのような実施場所で行うのかというのが第一の質問です。  もう一つの質問は、「厚生大臣が定める精神障害につき厚生大臣が定める程度の診断又は治療に従事した経験」こういうふうに法の中にはありますけれども、厚生省が出されている精神病のカテゴリーといいますか範囲は、精神分裂症、躁うつ病からアルコール中毒、覚せい剤中毒、その他の中毒などなど非常に広範多岐にわたっております。それらについてすべて過不足のない臨床経験がもし求められるとすれば、この後新しく大学を出て精神科に入局されるお医者さんたち、もちろん五年の経験が求められておりますが、そういう指定医を生み出していくことは困難になるのじゃないか。ここは言ってみればレアなケースについては、かなり実情に見合ったそういう考え方が必要ではないか、こう考えるのですが、今の二点についてお答えください。
  145. 仲村英一

    ○仲村政府委員 指定医の指定要件としての厚生大臣が行う研修内容が第一点だと思いますが、患者本人の意思にかかわらない入院でございますとか、著しい行動制限にかかわる判断を行う指定医として必要な患者人権に関する知識等を身につけることを目的とするものでございまして、具体的には精神保健法等関連の法律、制度等を勉強していただくということ、あるいは最近の精神医療の動向でございますとか、精神障害者、精神病院に関するいろいろな事件等最近の精神保健をめぐる問題でございますとかいういろいろなケーススタディーについて御勉強いただくということで考えておりまして、現在のところ集中的に三日間程度ということで考えております。  それから、(児玉委員実施場所」と呼ぶ)時に決めてございませんが、普通の講習のような形でやる予定に考えております。  それから、実務経験のお尋ねでございますが、おっしゃるように、すべての疾患を五年で把握するというのは非常に難しいことだと思いますが、例えばある施設については精神障害のうちでも一部の患者さんしか扱っておらないところがあるわけでございまして、そういうところだけにおられた方が他の種類の病院に行かれたときは、そういう形で申し上げますと、実務経験が足りないということでございますので、例えば措置に該当するような患者さんを十分診るとか、いろいろな一定実務経験ということで考えております。  実際の内容につきましては、私ども公衆衛生審議会等の御意見をこの後お伺いするようにいたしまして、余り過大な要求にならないように、今の御指摘もございますので、御相談をさせていただきたいと思うわけでございます。
  146. 児玉健次

    児玉委員 次の問題に入りますが、保護義務者の問題です。私たちの調べたところによると、今精神障害者保護義務者をどのくらいの数で把握するかというのは困難がありますけれども、一つの調査によれば、保護義務者が非常に高齢化している。六十歳以上の方が五七・一%に及んでいる。それからこれらの保護義務者の年間収入が、社会全体の中で、どちらかと言えば低収入の部分に集中している。年収二百万以下の人が四一・四%、こういう状態です。その中で保護義務者精神障害者に対する監督義務入院している患者の引き取り義務、その他負い切れない大きな責任を今担っています。今度の改正案の中で保護義務者責任を軽減する具体的な改善措置が見送られたのはなぜでしょうか。
  147. 仲村英一

    ○仲村政府委員 保護義務者につきましては、実態的に今おっしゃられたようなこともあろうかと思うわけでございますし、この法案を作成するプロセスでいろいろの御意見があったわけでございまして、ただいま御指摘のような保護義務内容の問題でございますとかあるいは市町村長が保護義務者になること等についていろいろ御意見があったわけでございます。公衆衛生審議会でも御意見が出たわけでございますけれども、今回は結論を得るに至らず、引き続き検討を要すべき問題であるということでお示しをいただいたわけでございますが、この保護義務者制度というのは、我が国におきます家族制度とも大いに関連する問題でもございますし、直ちに今ここで法律改正に盛り込むのは、私どもとしても無理ではないかと判断したわけでございまして、今後引き続き検討する事項の一つに入っておるわけでございます。
  148. 児玉健次

    児玉委員 この点は、この後の重大な課題であるということを指摘しておいて、それで私は具体的に求めたいのですが、保護義務者に対する社会的援助、高齢化しているし、どちらかといえば低収入の層が多い、そういう中で、例えば在宅看護手当のようなもの、それから長期に入院されている方が退院されようとする、そういう場合に生活準備金的な制度、これをこの法の改正を一つの契機として厚生省としてはぜひとも御検討いただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  149. 仲村英一

    ○仲村政府委員 精神障害者社会復帰する場合のいろいろの要件の一つとして、経済的な問題が非常に大きいということは、御指摘のとおりだと思います。ただ、おっしゃられましたような手当なり準備金等を私どもが今直ちに制度化するということにはなかなかおこたえしにくいわけでございまして、社会復帰促進するについて、施設整備と同時に、そういう経済的な側面も大事だということの御指摘だということで受け取らせていただきたいと思います。
  150. 児玉健次

    児玉委員 この点の重要性は厚生省としても御認識のようですから、私たちは真剣な検討を強く求めておきたいと思います。  そこで、最後の問題ですが、社会復帰施設の問題です。これも今度の改正案の中の重要なポイントの一つだと私たちは考えています。都道府県、市町村。そこで、まずお伺いしたいのは、社会復帰施設の今後の整備計画について、厚生省としては全国的なスケールで大体どのようなお考えなのか、お伺いします。
  151. 仲村英一

    ○仲村政府委員 この数年間で何カ所ということでの整備計画は持っておらないわけでございますけれども、先ほどから繰り返し御答弁申し上げておりますように、地方公共団体の積極的な取り組みのほかに、社会福祉法人でございますとか医療法人等社会復帰施設設置できるということで、私どもとしては、補助金をできるだけ獲得をいたしまして、その施策を伸ばしていきたいと考えております。
  152. 児玉健次

    児玉委員 ここの問題は、今老人医療の大きな変化によって保健所の機能がかなり大きく変わっておりますが、在宅の精神障害者社会的に大きく包み込んで、さらに治療を進めていくというとき、重要なポイントがこの社会復帰施設の拡充整備だと私たちは考えております。今のお話だと、多少大まかでもいいから全国的な整備計画をお持ちだと思ったのですが、どうもそれをお持ちでないようだ。  そこで、私は重ねてお願いしたいのですが、今度の法の中で、都道府県、市町村が社会復帰施設設置することができるという努力規定になっておりますが、これは設置しなければならないという義務規定に変えるべきではないか、そしてあわせて国の補助、援助も、「予算の範囲内において、費用の二部を補助することができる。」こういう及び腰が整備計画を今手につかんでないということにつながるのですから、国の補助についても義務規定に改めることが必要なのではないか、こう考えますが、お答えいただきます。
  153. 仲村英一

    ○仲村政府委員 精神障害者社会復帰施設設置義務規定としなかったのはなぜかというお尋ねだと思いますけれども、もちろん社会復帰促進のために、国のみならず地方公共団体が積極的にお取り組みをいただくということは不可欠だと考えておるわけでございまして、そういう観点で法律には明定させていただいたわけでございますけれども、義務規定としなかったわけでございます。これは地方公共団体につきましても、いろいろ行財政能力の観点あるいは利用者の効率的な利用が図られるかどうかというふうな点も含めまして、全国一律に義務とするのはいかがかという御意見もあったからでございますし、同時に社会福祉法人医療法人等の民間によります復帰施設の活用ということで対応していったらどうかということで、このようなことにさせていただいたわけでございます。  同時に、社会復帰施設に対する国庫補助でございますが、もう既に今年度からも法律改正に先駆けまして幾つかの施設について補助を図るようにしておりますので、私どもといたしましても、今後ともこの方向で努力をしてまいりたいと考えております。
  154. 児玉健次

    児玉委員 やはり及び腰だと言わざるを得ませんね。どちらかといえば予算を要しない部分についてはかなり皆さんとしては突っ込んだ検討をなさっているけれども、予算を必要とする部分については事実上余り手をつけていない。  そこで、時間でもありますから、最後に大臣にお伺いしたいのですが、一般的なこの後に向けての大臣の決意表明というのではなく、先ほど私は看護基準の改善の問題、精神医療における診療報酬の見直し改善の問題、今の社会復帰施設の拡充強化の問題など、国として当然行うべきさまざまな具体的な課題、この点では幾つかのヨーロッパの先進的な経験もございます。それらに向けて大臣としてこの後どのように努力を強めようとなさっているのか、この点の御所見をお伺いして、終わりたいと思います。
  155. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 今回の改正は二十二年ぶりの言うならば大改正でありますし、それはすなわち人権の擁護を一層推進をいたしてまいる、そして社会復帰を推進をいたしてまいる、こういう二大目標といいましょうか、課題を実現しようという改正でございます。これらに魂を入れていくということは、これから必要なことであり、その実現を円滑にいたしてまいるためにも、それらの周辺の問題等の改善ということを一層心してやってまいらなければならない、こう考えておりますので、その気持ちに立って努力をいたしてまいります。
  156. 児玉健次

    児玉委員 具体的な条件整備という形で魂を入れていただきたいと強く述べて、私の質問を終わります。
  157. 堀内光雄

    堀内委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  158. 堀内光雄

    堀内委員長 この際、本案に対し、稲垣実男君及び田中美智子君外一名から、それぞれ修正案が提出されております。  順次趣旨説明を求めます。稲垣実男君。     —————————————  精神衛生法等の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  159. 稲垣実男

    ○稲垣委員 ただいま議題となりました精神衛生法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  修正の要旨は、第一に、医療保護入院の際の告知については、患者の症状に照らして支障があると認められる場合は、その支障が解消したときに告知できるものとすること。この場合において、その旨を診療録に記載するものとすること。  第二に、罰則のうち、医療保護入院応急入院及び仮入院入院時の告知義務違反、任意入院者の入院時の説明義務違反、医療保護入院退院時届け出義務違反及び一定行動制限を行った場合の診療録記載義務違反に係る過料を削除するものとすること。  第三に、都道府県知事による指定病院指定取り消しについては、地方精神保健審議会の意見を聞いてこれを行うものとすること。  第四に、政府は、この法律の施行後五年を目途として、新法の規定の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。  以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  160. 堀内光雄

    堀内委員長 田中美智子君。     —————————————  精神衛生法等の一部を改正する法律案に対する   修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  161. 田中美智子

    田中(美)委員 日本共産党・革新共同を代表して、精神衛生法等の一部を改正する法律案に対する修正案について、趣旨説明をいたします。  今回の政府提案改正案は、精神障害者入院形態見直しと、社会復帰促進を行おうとするものであり、内外から批判されていた現行の精神衛生法を基本的には改善するものです。  しかし、内容を見ると、どうしても見過ごせない問題点を持っています。  精神障害者が、進歩した、まともな医療が受けられるようにすることが何よりも患者人権を守ることとなりますが、このための改善が明確でありません。閉鎖病棟に患者を閉じ込めることで看護職員の不足をカバーしている現実を解消すること、及び内科等に比べて入院中の診療報酬が平均二分の一と低水準に抑えられているため、治療なき収容となっている現状を改めることであります。このためには、看護職員の配置基準の改善、精神保医療の診療報酬の改善が必要でありますが、このための計画がありません。  次に、社会復帰施設は、地方公共団体等が「設置することができる。」となっております。また、その設置及び運営に要する費用は、国及び都道府県が「一部を補助することができる。」となっており、設置及び補助が義務化されていません。精神障害者社会復帰のためには、五千施設が必要だと言われています。これを実現するために、国及び地方自治体が責任を持って計画的に設置する必要があります。  次に、修正案の概要説明いたします。  第一は、精神障害者が十分な医療が受けられるよう、精神病院における医師及び看護職員の配置基準及び診療報酬の改善が速やかに図られるよう特段の配慮をすることとしております。  第二は、厚生大臣が定める社会復帰施設整備目標を達成するため、都道府県整備のための計画を定めなければならないものとします。  第三は、この計画に基づく精神障害者社会復帰施設に要する費用については、国及び都道府県が補助しなければならないこととしております。  以上が本修正案を提出する理由と修正案の概要であります。  何とぞ委員各位の御賛同をいただくようお願いいたします。
  162. 堀内光雄

    堀内委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  この際、田中美智子君外一名提出の修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。斎藤厚生大臣
  163. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 田中美智子君外一名提出に係る精神衛生法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきましては、政府としては反対であります。     —————————————
  164. 堀内光雄

    堀内委員長 これより本案及びただいま提出されました両修正案を一括して討論に付するのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  精神衛生法等の一部を改正する法律案及びこれに対する両修正案について採決いたします。  まず、田中美智子君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  165. 堀内光雄

    堀内委員長 起立少数。よって、田中美智子君外一名提出の修正案は否決いたしました。  次に、稲垣実男君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  166. 堀内光雄

    堀内委員長 起立多数。よって、稲垣実男君提出の修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  167. 堀内光雄

    堀内委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  168. 堀内光雄

    堀内委員長 この際、本案に対し、戸井田三郎君外四名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合及び日本共産党・革新共同の五派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨説明を求めます。沼川洋一君。
  169. 沼川洋一

    ○沼川委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合及び日本共産党・革新共同を代表いたしまして、本動議について御説明を申し上げます。  案文を朗読して、説明にかえさせていただきます。     精神衛生法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、適切な措置を講ずるよう配慮すべきである。  一 任意入院応急入院等が新設されたことにかんがみ、これら制度の円滑な実施に努めること。  二 社会復帰施設整備社会復帰のための施策の一層の推進を図るとともに、地域精神保健医療の推進に努めること。  三 精神科ソーシャル・ワーカー等の専門家の養成とその制度化などマンパワーの充実に努めること。四 今回の改正趣旨、今後の精神医療のあり方を踏まえ、診療報酬の面等において適切な配慮を行っていくこと。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  170. 堀内光雄

    堀内委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  戸井田三郎君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  171. 堀内光雄

    堀内委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、斎藤厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。斎藤厚生大臣
  172. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、努力いたす所存でございます。     —————————————
  173. 堀内光雄

    堀内委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  174. 堀内光雄

    堀内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  175. 堀内光雄

    堀内委員長 次回は、来る十七日木曜日午前十時理事会、午前十一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時三十九分散会      ————◇—————