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1987-08-25 第109回国会 衆議院 環境委員会 第5号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和六十二年八月二十五日(火曜日)     午前十時十一分開議 出席委員   委員長 林  大幹君    理事 小杉  隆君 理事 武村 正義君    理事 戸沢 政方君 理事 福島 譲二君    理事 山崎平八郎君 理事 岩垂寿喜男君    理事 春田 重昭君 理事 滝沢 幸助君       石破  茂君    小沢 一郎君       片岡 武司君    杉浦 正健君       田澤 吉郎君    中島  衛君       平泉  渉君    森  美秀君       金子 みつ君    馬場  昇君       斉藤  節君    森本 晃司君       岩佐 恵美君    東中 光雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 稲村 利幸君  出席政府委員         内閣官房内閣内         政審議室長   的場 順三君         環境庁長官官房         長       山内 豊徳君         環境庁企画調整         局長      加藤 陸美君         環境庁企画調整         局環境保健部長 目黒 克己君         環境庁自然保護         局長      古賀 章介君         環境庁大気保全         局長      長谷川慧重君         大蔵大臣官房         審議官     尾崎  護君         文部大臣官房総         務審議官    川村 恒明君         通商産業省機械         情報産業局次長 岡松壯三郎君  委員外出席者         環境委員会調査         室長      山本 喜陸君     ————————————— 委員の異動 八月二十五日  辞任         補欠選任   江崎 真澄君     中島  衛君   河本 敏夫君     森  美秀君   山口 鶴男君     馬場  昇君   遠藤 和良君     森本 晃司君   岩佐 恵美君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   中島  衛君     江崎 真澄君   森  美秀君     河本 敏夫君   馬場  昇君     山口 鶴男君   森本 晃司君     遠藤 和良君   東中 光雄君     岩佐 恵美君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案  (内閣提出、第百八回国会閣法第三六号)      ————◇—————
  2. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公害健康被害補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馬場昇君。
  3. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 まず大臣に御質問いたします。  この改正案につきまして、国民の側というか被害者患者の側からたくさんの声を聞いておるわけでございますけれども、この改正案環境行政の大幅な後退であるという意見がほとんどです。そして、公害患者切り捨て悪法だという声がほとんどでございます。そういう声がほとんどですから、大臣のこの改正に当たっての基本姿勢をまず聞いておきたいと思います。
  4. 稲村国務大臣(稲村利幸)

    稲村国務大臣 お答え申し上げます。  今回の公健制度の見直しは、現在の大気汚染状況を踏まえまして、制度を公正かつ合理的なものとしようとしているものでございます。  また、これまでの公害患者に対する個別の補償から、今後は地域住民対象として大気汚染による健康被害未然に予防するため、健康被害予防事業の実施など総合的な環境保健施策を積極的に推進しようとしております。  また、窒素酸化物対策などの大気汚染防止対策も一層強化するなど、時代の変化に的確に対応して環境行政を一層進展させていく所存でございます。
  5. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 今の答弁を聞いておりましても、被害者とか患者という言葉が一つも出ていないですね。この環境委員会で、大臣長官になられまして所信の表明をなさいました。そのときに、二十一世紀に向かって環境行政の使命を全うするために全力を挙げて頑張るのだということをお話しになったわけでございます。大臣承知と思いますが、現在認定患者がどんどんふえていっているのです。そういう状況に今日あるわけです。ところが、この法律が実施されますと、今だんだん認定患者がふえているのに新規患者は全部認めない、切り捨ててしまうわけでしょう。患者の側から、被害者の側から言った場合に、前進が何かありますか。
  6. 目黒政府委員(目黒克己)

    目黒政府委員 事務的に御説明だけ先にさせていただきます。  先ほど大臣からもお答え申し上げましたように、地域住民対象といたします健康被害未然に予防するための予防事業といたしまして、環境保全事業あるいは環境保健事業等を初めといたしまして新たな施策推進しているところでございます。また、既存認定患者につきましては今までどおり補償することも続けていくのでございますし、そのほかに、新たな患者に対します研究調査といったようなことも進めるところといたしているのでございます。
  7. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 この法律健康被害補償法でしょう。未然防止のことは私も知っているのです。ところが、今どんどん患者被害者はふえている。こういう患者に対して、患者ですよ、未然防止じゃないのです。これはみんな切り捨てでしょう。こういうことで前進ではないです。切り捨て法でしょう。悪法でしょう。  結局環境行政、特に環境保健行政というのは、国民の心身の健康と生命を守るという意味において、未然に防止するというのもその一つでしょう。しかし、この法律というのは、残念ながら被害者になり患者になった人に対する補償をする、こういう趣旨があるわけでしょう。ところが、新しく認定しないわけですから、そういう人がどんどん出たって切り捨て以外の何物でもないわけです。これを改悪と言わずして何と言いますか。これは天下悪法であるということについて申し上げておきたいと思うのです。今ここで言って、それじゃこれを撤回いたしますとは、あなた方は強行する姿勢だから言わないと思うのですが、こういう天下悪法大臣、あなたのときに出したということは歴史に悔いを残しますよ、そのことをまずはっきり申し上げておきたいと思います。  次に、それをさらにさかのぼって敷衍するために大臣に聞いておきたいと思うのですが、大臣精神の問題、思想の問題という形において、環境行政をする大臣の心を聞いておきたいと思うのです。  まず第一に、昭和四十八年に救済法からこの補償法にかわりました。これはもう御存じのとおりでございますが、健康被害救済法から健康被害補償法にかわって制定されたのが昭和四十八年。それをかえて制定したときの精神は何だったと大臣は把握しておられるのですか。
  8. 稲村国務大臣(稲村利幸)

    稲村国務大臣 公健制度昭和三十年代から四十年代の著しい大気汚染状況を踏まえ、公害患者の迅速かつ公正な保護を図るために創設されたものであることは、先生もう御承知のとおりでございます。公健制度は、民事責任を踏まえ汚染原因者負担により健康被害者に対して個別の補償を行うという制度であり、制度を公正かつ合理的に運用していくということが基本になるものと考えております。
  9. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 法律目的を今お読みになったわけでございますが、この法律をつくるときの心とか精神というのを私はお聞きしたのです。  この制定のときに、環境庁長官は多分前の総理大臣の三木さんじゃなかったかと思うのですが、大いに議論が行われて、そしてはっきり答弁もなさっているのです。疑わしきは救済するという精神で貫いているのです。そして、被害者患者が一人も見落とされることのないようにという精神を貫かれているわけでございますし、反対加害者、疑わしきは罰するのだという精神で実は貫き通されておるわけでございます。そういう中で、例えばここに一人の患者がおるとしますね、この患者が例えばぜんそくになった。この人が大気汚染との因果関係を調べようといったって、判断することは正確に言えばもう不可能なんですね。例えば硫黄酸化物ぜんそくになった、あなたはこうだ、こういうことを一人一人にして因果関係判断するのは非常に困難である。そこでさっき言ったように、被害者を疑わしきは救済するのだという政治判断政策判断によって、そして今長官が言われましたような患者早期救済、こういう意味で画期的な措置としてこの法律ができたということは、これは大臣もお認めになりますか。
  10. 稲村国務大臣(稲村利幸)

    稲村国務大臣 四日市判決当時のような著しい大気汚染状況におきましては、いわば疑わしきは救済という考え方合理性があります。第一種地域に係る公健制度もこのような考え方を基礎として成り立っておるものでございます。しかしながら、現在の大気汚染状況は、昭和三十、四十年代とは異なり、民事責任を踏まえた公健制度により全国のばい煙排出者汚染原因者として、その負担により公害患者に対し補償を行うことは、制度の公正、合理的な運用の観点からは適当ではないと考えられます。したがって、一概に疑わしきは救済ということは言えないものと考えます。
  11. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 SOx等につきましてはあなたの言われたことも少しは理がある。しかしNOx等については、さっき四日市の大気汚染と言われた、それと同じようなのが、今交通の物すごい頻繁に行われているところではあるわけです。これは後で申し上げます。  少なくとも私がこの法律改正を見た場合に、この公健法をつくりましたときの精神、疑わしきは救済するのだ、そしてまた、発生源で疑わしきは罰するのだ、こういう精神というのが、あなたのこの改正案を出したという姿勢からは後退しておるとしか見えない、これは本当に考えられるとそう思われると私は思うのですけれども、水かけ論を言うたってしようがありませんから、確かに後退しておるということを、これは私だけでなくて国民大半——この改正案が出てきたときに各社の新聞の社説なんかをあなたごらんになったと思うのです。全部そう書いてあるのですよ。これは国民世論じゃないですか。そういうことを謙虚に受けとめて行政をしなければ間違うし、後退し続けるであろうということを申し上げて、さらに具体的には後でまた聞きたいと思います。  もう一つさかのぼって聞いておきたいと思うのですけれども、七〇年の公害国会公害対策基本法改正されましたね。そのときに相当の議論をいたしました、そして経済との調和条項というのが削除をされたのです。これは大臣も御承知と思いますが、あのときの議論で、なぜ経済との調和条項削除されたか、どう把握しておられますか。
  12. 稲村国務大臣(稲村利幸)

    稲村国務大臣 お答え申し上げます。  環境行政は、公害対策基本法目的にもありますとおり、国民の健康を保護し、生活環境保全することを目的として行うものでございます。こうした環境の健全な保全があって初めて経済の健全な発展が図られるものと確信をしております。
  13. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 そういうことで、今大臣答弁にもあったのですけれども、例えば経済環境というものを見た場合に、やはり環境行政というのは経済に優先する、そういう思想がこの削除の中にはあったことは今言われたとおりでございまして、もう一つは、環境行政というのは絶対にやり過ぎだというようなことはあり得ない、そういう思想もそのときには入っていたわけですよ。そういう中で経済との調和条項というのが削られたわけでございますけれども、それから約二十年近くたっている。  大臣、この法改正を見てみると、その基本法制定経済環境行政調和という中で、環境行政が優先するという思想がひっくり返っているじゃないですか。経済を優先させて環境行政を後退させておる、主客が転倒しておる、それが今度の法改正だと私は思いますが、それに対して大臣の御見解はどうですか。
  14. 稲村国務大臣(稲村利幸)

    稲村国務大臣 お答え申し上げます。  経済を優先して環境保全を後回しにするということではない、あくまで環境保全あって経済の繁栄がある、その基本的なものには変わりない、私はそう思っております。
  15. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 実際大臣気持ちがそうならばこの法律は違うのです。この法律大臣気持ちをあらわしていない、こう言わなければならないと思うのです。  大臣、では具体的にお聞きしますけれども中公審がこの答申作業をしておる最中にあなたは経団連首脳秘密裏会談をなさいましたね。どうですか。
  16. 稲村国務大臣(稲村利幸)

    稲村国務大臣 私は最初に患者さんの代表の方と時間をかけて会いまして、後、拠出金等々できる限りお願いしたいという意味で懇談をする機会をわずかに持ちました。
  17. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 何回会われましたか。
  18. 稲村国務大臣(稲村利幸)

    稲村国務大臣 たった一回でございます。
  19. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 患者と会った後にとおっしゃいましたけれども、実はその基金なんかという構想はずっと前にも、八四年十月一日に帝国ホテルであなたと企画調整局長保健部長、三人そろって経団連首脳と会っておられる。この面会はあなたの方から要請したのですか、向こうから要請されたのですか。
  20. 加藤(陸)政府委員(加藤陸美)

    加藤(陸)政府委員 ちょっと今企画調整局長という名前も出ておりますのでお答え申し上げるわけでございますが、まず、八四年とおっしゃいましたか。——それと帝国ホテル、つまびらかに調べてみないとあれでございますが、ちょっと思い当たる節はございませんけれども
  21. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 では、どういう話が出たかということを申し上げますけれども、この会談で、まだ基金問題等の話が出ない前ですよ。これは経団連幹部が言ったことですよ。大気汚染が大幅に改善されているのに新規患者が続々とふえているのは不合理だ、制度改正を一日も早くやってくれ、こういうことをあなたたちに強く要望した。これはあなたたち秘密のうちに会っておる、公開していない。この事実を聞かれても秘密にしておる。  そういうことを考えますと、余り時間がありませんけれども、やはりこの法律改正というのは、先ほどからずっと言っておりますように、本当に患者切り捨てる以外の何物でもない。そうして、公健法制定されたときの精神もその基本になる公害基本法制定されたときの精神も踏みにじって、はっきり私の考えを言わせてもらえば、まず経団連幹部等とあなたたち会談して、先に結論を持っておって、その結論によって中央公害対策審議会隠れみのに使ってそれに答申を出させた、実はこういう筋書きになっているのではないですか。これは、環境行政推進でも被害者の側に立った措置でもない、こういうことだと思う。これは表向き答弁させたって、そうじゃありませんと言うに決まっているでありましょうが、そういうことは心ある国民というのは見抜いていますよ。だからこの改悪は許せないという批判をしておるわけでございます。あなた方は違うと言うかもしれぬが、そういうことをはっきり申し上げて、私はこれは歴史的真実だと思います。  これは私が言うのじゃなしに、具体的にさらに聞きますと、中公審会長がこれを答申するときに会長談話というのを発表していますね。中公審は、総会というのは過去何回やったことがありますか。
  22. 加藤(陸)政府委員(加藤陸美)

    加藤(陸)政府委員 今始まってからという数字は正確に記憶しておりませんが、今からさかのぼりますと、昨年の十月、その前は、いわゆる形式的な総会は年に一回はやっております。これは組織のための総会でございますのでちょっと別にいたしまして、そういう先生の御趣旨を体してお答えいたしますと、実質的ないわゆる大きな問題を踏まえての総会というのは数えるほどしかないのではないかというふうに記憶いたしております。
  23. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 実は私が調べましたら、こういう個別的な問題で総会を開いたというのは、中公審始まって以来二回しかやっていない。その一回がこの答申のときの異例総会ということになっておりまして、会長さんも異例談話を発表なさっているのですよ。会長談話をここに持ってきておりますから、多分これは議論になったのではないかと思うのですけれども、では、私は中身で問題点を言う前に、この会長談話が出されたのは御存じでしょうし、この会長談話をどのように受けとめておられるのかをまず聞いてから質問します。
  24. 稲村国務大臣(稲村利幸)

    稲村国務大臣 先生先ほど来の話にちょっと付言させていただきますが、経団連代表との癒着とか根回しとかというのは本当にありません。私は先生にそう理解をしてもらいたいと思うのです。  それと、今の先生の御質問にお答え申し上げますが、昨年十月の中公審答申に際し会長談話を出しておりますか、これは答申の取りまとめに当たり一部の委員から指定解除について反対あるいは時期尚早との意見があったため、これを明記するとともに、総会の総意を受けて今後の環境保健に関する施策の実現、大気汚染防止対策のより一層の推進などに万全を期するよう行政に要請をしたものと受けとめております。
  25. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 会長異例談話を発表するということ、その受けとめ方というのは今おっしゃったわけですけれども談話の中の最後のところに、公害患者——患者ですよ、公害行政とは書いてないのですよ。公害患者に血の通った施策を講じてくれということを一番最後につけ加えてあるわけでございます。この患者に血の通った施策というのは、今おる患者もおりますし、それには今までどおり補償するということになっているのですが、今続々ふえつつある。しかし、それがあなた方に言わせると原因がはっきりしないのだとおっしゃるけれども原因がはっきりしなくても患者は続々ふえているのです。そういう患者に血の通った施策をしなさいとわざわざここにつけ加えてあるわけでございます。では、この患者に血の通った施策をと会長が言われたのをどう受けとめておられますか。
  26. 目黒政府委員(目黒克己)

    目黒政府委員 会長談話につきましては、先生指摘最後の血の通った云々というところにつきましては、指定を解除した後に新たに発生をする可能性のある、あるいは特に今もし地域指定をされ続けておれば認定を受ける可能性のある方というふうに私ども受けとめておるわけでございますが、それらの方々に対しますものといたしましては、健康被害予防事業の中で一つ研究調査というのがあるわけでございます。  具体的に申しますと、今申し上げました可能性のある方々に対しまして病状やら住居の環境等々を含めましたものに対し、その方々がどのように治していったらいいか、あるいは回復していったらいいかということを中心といたしました原因を解明するための調査研究を行うのが一つでございます。それから、そのほかに医師、保健婦等によります健康相談、こういうものを受けて一体どういうところで治療を受けたらいいか、どういうふうな対応をしたらいいかという相談あるいは健診、あるいは主として呼吸器方々でございますので、呼吸器疾患にかかわります外来の充実強化といったようなことを通じてこの方々に対して適切な対応をしてまいりたい、このように私どもは考えているところでございます。
  27. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 大臣、今の答弁なんか補償法の前の救済法あるいはその前の時点のような話をなさっているのです。そういう時点があって、救済法があって補償法ができて、実は補償法の中で救済補償があるわけでしょう。それをずっと十年も二十年もさかのぼらせたような、歯車を後ろに回したようなことを今からやる。現在あるのを後退させておいて、これが何の血の通った行政になるのです。  この会長談話について私はあらゆる報道機関の論評を読んでみました。会長さんが談話を発表したときに記者会見をなさっているのです。その記者会見をなさっておるときにどういう気持ちだったかということをおっしゃっているのです。環境行政というのは絶対後退してはならない、前進させなければならない、こう思って私はこの談話を出すのです。そして、答申には具体的なことも言っておられる。行政にもう少ししっかりしなさい、こういう気持ちを込めて出したと言って、例えば後で言うNOx等の局地的な問題等についてもこれは対策をやるべきだというようなこともおっしゃっているんですけれども、そういうことをおっしゃっている。そして、そのときの談話を見てまだ各世論は、各報道機関は一斉に論評しておるじゃありませんか。会長異例談話を出したということは、環境庁ペース補償法改正作業中公審はただ隠れみのにされただけだ、そういう審議会に対する会長の精いっぱいの抵抗であった、これがこの談話だ、こういうことを各紙一斉に論評されている。これについては長官はどう考えますか。——長官です。目黒さん、あなたに質問していない。長官考え方を言っているんじゃないか。
  28. 目黒政府委員(目黒克己)

    目黒政府委員 事務的にちょっと……
  29. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 事務的には聞きません。長官です。この談話に対する、今言ったことに関するんだから、あなたに聞いていない。事務的なことは聞いていない。
  30. 稲村国務大臣(稲村利幸)

    稲村国務大臣 先生のお触れになった論調も私も一通り目を通しまして、そういう御指摘があったことも、論調としての御指摘があったことを知っていますが、私ども中公審答申隠れみのに使ったり、そういう気持ちでこの法案の審議をお願いしていることは毛頭ありません。
  31. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 環境行政というのは、経済環境行政調和、さっき削除のときも長官も言われたでしょう。少なくとも国民の側、被害者の側、患者の側に立ってやるのが環境行政でしょう。そういうことが行われていないという中で中公審会長さんまでもこういう抵抗をされておるということがあるわけですから、この辺は各社もそういう論調をしているんだからこういうのには謙虚に耳を傾ける。国民世論とかそういう患者の声は切り捨て御免というような環境行政はあってはならぬ、そのことをまず申し上げておきたいと思うんです。  そこで、今のは中公審会長さんのお話。専門委員会がありましたね。専門委員会委員長さんもおっしゃっておるじゃありませんか。鈴木委員長はこうおっしゃっているんだ。専門委員会報告の引用の仕方がおかしい、答申に当たって。局地的汚染のひどい沿道地域を簡単に解除しているが、NOxを無視していると思う、こういうことを専門委員会委員長さんが批判されているんですよ。そしてほかの委員も公然と言っておられるじゃありませんか。少数の患者でも大気汚染による影響があれば補償すべきではないか、こういうことも言っておられるわけでございます。  こういう専門委員会委員長さんとか委員意見に対して、答申を強行しようとした側、これは環境庁の側だと私は思うのですが、作業委員会というのをおつくりになっておるわけです。作業委員会経済専門家とか法律専門家とかがこの中に入っておられるわけでございますけれども全面解除というのはこういう専門委員会、お医者さんなんかの専門委員会方々が批判されているわけですが、それに対して反論という形で、全面指定解除という結論制度的、法律的判断によるものであって、医学的な判断とは違うんだ、そういうことでお医者さんの専門委員会委員長さん等の意見反論を加えて、そしてこの答申を押し切っておる、こういう状態と聞いて知っているんですけれども、時間がありませんから、全面指定解除という結論制度的、法律的な判断によるもので医学的判断とは違う、こういう反論作業小委員会あるいは答申を求める段階の中であったのかどうか、事実をお知らせください。
  32. 目黒政府委員(目黒克己)

    目黒政府委員 御指摘の点につきましては、この答申にも書いてあるのでございますけれども、この専門委員会報告科学的知見、これにつきましては、その前提として御審議をいただいたのでございます。またこの答申を取りまとめるに当たりましては、この専門委員会報告を、専門委員会委員長であります鈴木先生作業小委員会あるいは環境保健部会等で十分御説明になり、また質疑を行った上で、専門委員会の主要なメンバーも入っておられます部会におきまして十分に議論をしたものでございます。  また御指摘の内容にわたることでございますが、医学を無視しているということではございませんで、この制度基本といたしております割り切り、一つ患者認定というものに対する割り切り、それから地域指定というものに関する割り切り等々、医学の問題を踏まえてさらに行政的に割り切った面があるのでございます。この専門委員会報告をもとにして御審議いただきますと合理性がなくなったということから、全面的な指定地域の解除を含みますこの制度改正考え方になったわけでございまして、私ども環境庁もそのような考え方に基づいて判断をし、法案を提出したということでございます。
  33. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 この場所で水俣病の問題を私もよく皆さんと議論するのですけれども、水俣病のときには、専門家による判断条件というのは一言一句残さず全部そのとおり認定に当たってはやっていますね。ところが今度のここの専門委員会のお医者さんたち意見というのは、今言った制度的、行政的な判断で、そのとおりとなっていない。私は水俣病のときには、その判断条件というのは専門家のお医者さんがやるけれども認定をするときには知事が認定するのですから知事の行政判断というのが入ってよろしい、それが法律趣旨ではないか、今あなたが言われたようなことがあってもいいんだということでここで主張しておるんです。ところがここの場合にはそういうことをやらしておりながら、水俣病のときにだけは絶対にそういう行政判断は許さぬというような態度をとっておられるというのは、その違いはどこにあるのですか。
  34. 目黒政府委員(目黒克己)

    目黒政府委員 水俣病でございましてもあるいは第一種にかかわります病気の場合におきましても、やはり具体的な認定をするという最後判断、そういうものにつきましては医学そのもので判断をし、先生の御指摘のとおり私ども行ってきているわけでございます。  また、この制度改正制度議論に当たりましても、専門委員会報告あるいは中公審答申等もございますけれども、この専門委員会報告でも指摘をしておりますように、現在の大気汚染状況では、長文にわたりますので読み上げるのは差し控えますけれども、三十年代、四十年代と同じような大気汚染状況ではない。あの当時はぜんそく等の疾病の主たる原因であると言えた。しかしながら、現在の大気汚染状況では大気汚染が主たる原因と言えなくなってきたということを専門委員会報告でも指摘しておられるのでございます。また水俣病につきましては、因果関係がはっきりわかっている病気なのでございます。また第一種につきましては、先ほど申し上げましたように大気汚染にかかわる病気につきましては、ある程度の大気汚染あるいはその他の原因もあるという医学の前提をいたしました上でこの制度制定し、あるいはまたその合理性等につきまして、この状況の変化に伴いまして現行のような改正に至ったという経緯でございますので、御理解賜ればと思っております。
  35. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 専門委員会意見の中で、さっきから長官も部長も三十年代、四十年代と今日は違っておるんだというようなことをおっしゃるわけですけれども、その大気汚染原因が、様態は違ってもなくなってはいない、違っておるということをなくなっておるとあなた方は解釈しているんじゃないかと私は実は思うのです。  そこで、今専門委員会報告をあなたは読まなかったが、私がちょっと申し上げますと、「我が国の最近の大気汚染は、二酸化窒素と大気中粒子状物質が特に注目される汚染物質であると考えられる。」だから、昔はSOxだったのですけれども汚染はされておるんだ、しかし、原因物質が少し変わってきておる、こういうぐあいに言っておるわけです。そして、「現在の大気汚染が総体として慢性閉塞性肺疾患の自然史に何らかの影響を及ぼしている可能性は否定できない」、この大気汚染ぜんそく等の疾患に及ぼしておる影響は否定できないという状態に今日はあるんだ、こうはっきり言っておるじゃないですか。こういう「否定できない」という表現というのは、自然科学の分野では肯定を意味していることはだれでも知っている常識でしょう。だから、現在大気汚染ぜんそく等の疾患に影響を及ぼしておるということは専門委員会報告にもきちんと出ておるわけです。しかし、あなたはその先、「しかしながら」と言って三十年、四十年とさっき言ったけれども、これは最初の原案ではなかったということじゃないですか。「しかしながら」というのは目黒さん、あなたが言ったということはある報道に載っておりますよ。なかったけれども、「しかしながら」という以下は環境庁がない知恵を絞って書いたんですよとあなたが言ったということがある報道機関の記事として出ておる。そういうことで、何としても全面解除しようということが先にあって、否定できないというのはこの分野では肯定なんですよ。影響があるというのに全面的に解除してしまう、そういう暴挙をあなた方はあえてしておる、こういう状況です、  そこで、具体的に答弁を求めますが、例えば六十一年七月に東京都の調査がございますね。この東京都の調査で、幹線道路沿いの局地的汚染などNOx健康被害に及ぼしておる状況という調査の中でこういう記録がありますね。幹線道路から距離に対応してぜんそくなどの呼吸器の有症率にNOxの影響が見られる、こう出ております。そして、例えば世田谷などの、ここは指定地域外ですけれども、一日の交通量があそこは四十万台を超える、この世田谷等には現在千七百人以上の呼吸器系の患者がおる、こういうことも出ておる。こういう調査がなくてももう常識として、東京とか大阪とかこういう主要道路沿いのNOx汚染というのは深刻な状態だということはもう御存じのはずです。  そこで、こういう幹線道路沿いのNOx汚染状態は深刻で、そこに患者がたくさん出ておるという状況、これを認めるかどうかということと、認めないとするならば、そういう呼吸器系疾患には大気汚染は影響していないという科学的な解明をしておるのかどうか、その点について答えてください。
  36. 目黒政府委員(目黒克己)

    目黒政府委員 御指摘の東京都の調査でございますが、これは再々この委員会でもお答え申し上げておりますので要点だけを申し上げますと、この調査についてはさらに東京都の委員会におきまして、関連というものについてはある程度示唆をすることはあるけれども因果関係ということについてはなお調査検討を要するという趣旨答申もございます。また、中央公害対策審議会昭和六十一年の答申におきましてもこの点に触れておるのでございまして、この辺につきましても、NOx対策あるいは道路沿道の問題ということについては重要であろう、しかしながら、この調査の結果、果たしてそこに出ている患者さん自体についてはっきりした因果関係と申しましょうか、そのようなことは言えないという趣旨のことが出ているのでございます。  また、この東京都の調査につきましては、専門委員会のメンバーを含みます環境保健部会におきましても十分御議論をいただき、特にこの結論を変えるものではないという趣旨のことでこの答申結論に至ったもの、このように私ども理解をしているのでございます。
  37. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 とにかく今のような答弁環境行政をやられるのだったら国民は不幸ですよ。今度はもうそういう答弁を聞きたくないから長官に聞きます。  今、東京都の調査などを申し上げた。これは過去これを改正するときに、関係の都道府県とか区市町等の意見を聞かれております。その意見も取り上げておらないわけですけれども、今東京都でこんなにやったというなら真剣に取り上げなければならぬ。例えば一歩譲っても、そういう調査がある、今のはそういう調査にはまだ検討を要するのだなどと言われたが、それでは、こういう状況があってそういう調査もあるのだけれども環境庁はこういうのは十分調査をし検討しなければならないのだと思うのだったら、その検討する間まずやるべきことは、NOx指定要件の中に入れて道路沿いの調査とか対象とかを急いでやる、それで補償法を逆に充実させなければならぬですよ、NOxについて。そういうことをしてその後指定解除をするかしないかということを判断すればいい。はっきりわからないという状態の中で何ですぐ解除ができますか。よくわからせて、それからわかるまでは解除をしないし、逆にNOx指定要件の中に入れて充実すべきだ、これが今日環境庁がとるべき道だと私は思います。  長官、この国会でもNO2を標準化するように求めた国会決議もあるでしょう。SOxとかNOxとかそういうことだけでなくて、複合大気汚染の健康影響の標準化というのもやるべきだという意見もたくさん出ておる。さらに続けますが、今日、自動車によるNOxを中心とする複合大気汚染というのが深刻になっているのは事実ですから、自動車のNOx対策を含めて補償法を強化すべきであって、これが解明されていないときに全面指定解除するというのはおかしいのじゃないかと思うが、どうです。これは長官に聞いているのです。
  38. 稲村国務大臣(稲村利幸)

    稲村国務大臣 的確な百点満点の答弁がなかなかできないところで御理解はいただきたいのですが、やはり中公審での三年にわたっての五十数回の審議環境庁としては尊重して、東京都における調査も勘案しながら、この公健法改正を今何とか合理的に日本全体を考えて公正というものを前面に出しながらここで御審議をお願いしているところで、確かに沿道のNOx対策の重要性については今後我々は本当に一生懸命取り組むという決意を裏腹に出しておるわけですので、御理解をいただけたらありがたいと思います。
  39. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 私は長官から百点の答弁を求めようなんて全然思っていないのです。あなた方が今やっていることはゼロですから、ゼロじゃおかしいよということを言っているわけでございまして、これは政治論として政治家長官にも聞きますが、今NOxのこういう大気汚染の被害がどんどん沿道なんかを中心に出ておるときに、例えばNOxのそういう地域を全部指定地域からなくするわけですから、裏からいうとNOxというのは安全です、人体の被害はありませんと安全宣言をあなた方はやっているようなものじゃないですか。こんな深刻な状態になっていくのにNOxは安全でございます、それだから私たちは全部指定を解除するのですよ、今度のこの法律というのはこういう暴挙でしょう。これでは許すことはできない、こういうぐあいに思います。  長官、SOxの場合を思い起こしてください。これも環境基準に到達していなかった。もちろんNOxは今も環境基準に達していない。そういうときに国会で法律をつくって、SOxを排出した量に見合って費用負担をさせたこの法律ができておるでしょう。そういう中から各企業はSOxを出さないように頑張ろうといって当時の五分の一ぐらいにSOxの濃度を下げることに成功したでしょう。だから私は聞きたいのは、NOxも、ちょうどSOxを環境基準を達成するように誘導したように、これも犯人として、こういう犯人は出してはいけないよという誘導を法律によってやって、そしてNOxの基準を達成させる、そういう政治的な判断というのもあってしかるべきだと思う。そういう状況のときに指定解除してNOxの安全宣言をするようなことをしたら、NOx環境基準を達成するように排出者が努力しますか。自動車業界はそういう努力をしませんよ。自動車業界なんかを努力させるためにも全面解除しないで、これを指定要件に入れて環境基準を達成するように誘導する、それが政治家のとるべき道じゃないですか。
  40. 稲村国務大臣(稲村利幸)

    稲村国務大臣 先生の御質問の四十一地域全面解除は無謀ではないかという御意見、現在の大気汚染状況下で指定地域地域指定を維持する合理性について考えますと、段階的な指定地域の解除を行うことは制度の公正と合理的運営を図るという基本に照らして、そこのところを先生お考えいただくと適当でないのではないか、こう考えられます。  なお、国民の健康保護という観点からは、健康被害予防事業推進などによって予防に関する施策の充実を図ってまいりたい。この間、岩垂先生の積極的な御発議で各理事さんも調査をというようなことも踏まえて、先生お触れの特にNOxに今後気をつけながら私どもも対処してまいりたい、こう思います。
  41. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 SOxについて不公平、不公平、改善されたとおっしゃいます。そうしたら、NOxについて重点を変えたらどうですか。例えばさっき経団連があなたたちに約束させたような、解除をしてくれ、お金を出すのは不公平じゃないか、指定地域も何もないところからお金を出すことは不公平といったら、今度は逆に、NOxが二、SOxが八ならば、逆転させたらどうです。SOxはこういう状況だ、不公平だから基金負担は二割にする、NOxを八割にする、自動車の排ガスが多いからそっちから余計金を出せ、ひっくり返してやったら現実に合うじゃないですか・今度の法改正なんかそういうことをやればいいじゃないですか。そうしたら不公平だという業界の指摘にこたえていける、そういうように私は思うのです。いずれにいたしましても患者が見捨てられ、そして環境行政は物すごい後退。これはどんなことを言っても、今ここでいかに口先でごまかして答弁したって歴史から批判されますよ。  そういう中で、指定地域を解除するということになっているのですけれども、解除条件が示されていない。この法が発足したときの解除要件というのがありますね。相当期間にわたり大気汚染の程度が環境基準を満たす程度に改善され、かつ、その地域新規患者発生率が自然発生率程度に低下すること、これが解除条件だ。こんな解除条件は例えば幹線道路沿いなどは今一つも満たされていない、そこを解除するというのですから実におかしな話であるわけです。最後に一言言いますけれども、解除条件をまだつくってなければ、政令でつくるのでしょうから、つくるときにNOxなんかが非常にひどいところは手順を踏んでこうやるのです、一挙にやらないのです、そう言って、この法律をあなた方は押し切るだろうが、押し切ったときにも最低その解除条件をつくって手順を踏んでやっていきますよ、患者さんたちに配慮をしますよ、少しぐらいそういう配慮はできないのか。
  42. 目黒政府委員(目黒克己)

    目黒政府委員 御指摘の解除の要件でございますけれども、これは当審議会答申時点でも私どもいろいろお願いを申し上げ、また私どもの方もこの答申に解除の要件といったものがある程度明らかにされるかどうかということについても期待をいたしておったのでございます。しかしながら、この中公審答申の概要から申し上げますと、当時のような大気汚染の激しい状況においては、このようなある程度定量的に大気汚染の影響の程度を判断されるような状況がある、またあったのでございます。今後もそのような状況があるかどうかということを発足当初は予想をしておったわけでございます。しかしながら現在の大気汚染状況下では、その後の科学的知見あるいは調査等々をまとめて総合的に判断いたしてみますと、やはり定量的に判断するのが困難な状況になってきた、むしろ、いろいろな地域を含めまして、汚染濃度の高いところも低いところも含めまして、総体として現在の大気汚染が主たる原因ではないというような趣旨結論に到達いたしまして、この結果、現在四十九年当時の答申の解除の考え方というのはとれないという趣旨のことが答申にあるのでございます。  また、NOxの問題につきましては、この幹線道路沿道の問題について留意事項等として取り上げられておられるわけでございます。しかしながら、このはっきりした因果関係というものがわからない、あるいは未解明であるといったような点、あるいは全体を考えまして制度合理性というものを保たなければいけないという点等々を含めまして、沿道の指定というようなことでございましてもはっきりした因果関係がない、あるいはある程度技術的にもなかなか難しい割り切りの問題がまた出てくるといったようなことを含めまして、私ども、現在の制度の公正を保つという観点から、この幹線道路等も含めました全指定地域について解除を行うという趣旨の現行の制度改正を行うことといたしたのでございます。  また、このNOxの問題につきましては、再々先ほどから申し上げておりますように各種の対応を行ってまいりたい、このように考えているところでございます。
  43. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 さっきから私は言っているのですよ、そんなぐずぐず読まなくても。わからない、研究しなければならないというのだったら、それをやる間は解除してはいかぬということを言っているのです。またさらに、公健法をつくったときは、それはわからないから政治判断政策判断でこういう補償法をつくるのだぞと言ってつくったのです。そういうときの気持ちさえ残っておれば、全面解除なんかできないはずです。こういうことをはっきり申し上げます。  大体もう時間が来たわけでございますけれども最後に、これは本人申請主義ですから現在潜在患者がいっぱいおると思うのです。あなた方が指定を取り消してしまったらこの人たちはもう泣き寝入りなんです。そしてまた、この指定を解除される、一回認定されておった、よくなった、ところがまた発症した、こういう人、あるいは現在申請もしていないけれどもたくさん発症しておる、そういう人たちの掘り起こし、こういう一回治癒したものがまた病気になったという場合、それから現在まだ申請していない者の掘り起こしをする、そういう気持ちがあるかどうかということを最後に答えてください。
  44. 目黒政府委員(目黒克己)

    目黒政府委員 今の御指摘の点でございますが、私ども、現在認定されている方々が治癒されればこの制度から離脱する、また発症された場合には、この指定解除後に発症した他のぜんそく患者さん方と同じように、この地域対象といたしました、先ほど来御説明申し上げました健康被害予防事業によって悪化を予防するとか、あるいは健康の回復のための対策というものを行うことといたしておるのでございます。
  45. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 掘り起こしはどうしたのですか、掘り起こしは。
  46. 目黒政府委員(目黒克己)

    目黒政府委員 掘り起こしと申しますか解除時に申請しなかった方々……
  47. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 現在申請していない人がたくさんおるはずです。そういう人たちをどうするのか。
  48. 目黒政府委員(目黒克己)

    目黒政府委員 私どもの理解では、やはり現在の指定地域内におります患者さん方は、私どもPR等に努力をしているわけでございますけれども、恐らくそのような方々は解除以前に申請を行うであろうというふうに私ども理解をしているのでございます。
  49. 馬場委員(馬場昇)

    馬場委員 時間が来ましたが、大臣、こんな悪法はやってはいかぬです。あなたは所信表明で二十一世紀に向かって環境行政をやると言われたのですが、これは環境行政を後退させる長官になってしまう。ぜひこれは考え直してくれということを申し上げて私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  50. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 斉藤節君。
  51. 斉藤(節)委員(斉藤節)

    ○斉藤(節)委員 私も時間が余りありませんので、二、三御質問申し上げたいと思います。  まず、局地的汚染の問題と弱者集団の取り扱いについて質問いたしたいと思うわけでございます。  私は、ここで重要視しなければならないと思っておりますのは、局地汚染の問題と弱者集団の取り扱いについての政府の取り組みであろうと思っておるわけであります。中公審専門委員会報告におきましても結論に加えて、先ほど来いろいろ議論されているようでありますけれども、二つの留意事項をつけ加えておるわけであります。すなわちその第一点は、「検討の対象としたものは、主として一般環境大気汚染の人口集団への影響に関するものである。したがって、これよりも汚染レベルが高いと考えられる局地的汚染の影響は、考慮を要する」、このようにまず第一点では留意事項として言っているわけでございます。また第二点では「従来から、大気汚染に対し感受性の高い集団の存在が注目されてきている。そのような集団が比較的少数にとどまる限り、通常の人口集団を対象とする疫学調査によっては結果的に見逃される可能性のあることに注意せねばならない。」このようにいわゆる感受性の高い集団の存在が注目されなければならぬということを言っているわけでございます。特に通常の人口集団を対象とするような疫学調査では見逃されてしまう可能性が多分にある、そのことに注意しなければならない、このように言っているわけであります。  以上のように専門委員会においてさえ、汚染レベルの高いと考えられる局地汚染の影響は考慮を要する、このように局地汚染と言っているのは、SOxではなくてNOxを指していることは言をまたないわけでございます。そういう意味でこのNOx、窒素酸化物、こういったものを考慮しなければならない。また、次のように感受性の高い集団のあること、それが、何回も申しますけれども、くどいようでありますけれども、疫学調査によっては見逃されてしまう可能性がある、このように指摘しているわけでございます。  また、八月二十二日、先日の参考人を迎えての本委員会におきましても、千葉大学の吉田参考人がこのことに触れて、疫学は学問ではないとは言わないまでも、このような見逃しのあることを指摘しているわけであります。吉田教授は疫学は何か学問じゃないのじゃないか、そういうニュアンスを含めたような言い方をしておったわけでありますけれども、私は、これは必ずしも正しいと思いませんが、やはりそのような見逃しがある、弱小集団、少数の集団は見逃しがあるという点でこれは疫学の欠点じゃないかな、私はそんなふうにも考えるわけであります。これらの見解に対しまして大臣の御所見をお伺いしたいと思うわけであります。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  52. 稲村国務大臣(稲村利幸)

    稲村国務大臣 先生指摘専門委員会指摘の留意事項につきましては、中公審答申にもありますとおり大変重要なものと受けとめております。特に幹線道路沿道の問題につきましては、環境庁としてもこれを重要課題として今後ともさらに調査研究を行うとともに、幹線道路沿道を含めた大気汚染防止対策を一層推進してまいる所存でございます。
  53. 斉藤(節)委員(斉藤節)

    ○斉藤(節)委員 今大臣答弁されましたように、これから一層の研究その他をやってまいりたいということでございます。ということは、ただいまの馬場委員の質問にもありましたけれどもNOxというのは人体に影響ないんだという考え方大臣にはないということ、そのように解釈してもよろしゅうございますね。
  54. 稲村国務大臣(稲村利幸)

    稲村国務大臣 NOxの人体への影響はもちろんある、ですからこれに対して今後真剣に取り組むということを御了解いただきたいと思います。
  55. 斉藤(節)委員(斉藤節)

    ○斉藤(節)委員 ありがとうございます。  そこで、今いただきました御所見を踏まえまして次の質問をさせていだだきたいと思うわけであります。  すなわち、このような専門委員会報告に対しまして中公審はどのように受けとめ、答申を出したかといいますと、次のように述べているわけでございます、「専門委員会報告において局地的汚染の内容は具体的には述べられていないが、一般環境より明らかに汚染レベルの高い所としては、例えば一部の幹線道路沿道が挙げられる。しかしながら、局地的汚染の健康影響について評価を行うには、科学的知見が十分ではなく、留意事項とされているものである。」このように述べておるのであります。私ここで一番ひっかかりますのは、「科学的知見が十分ではなく」、このように述べている点でございます。この留意事項というのは、決して科学的知見が十分ではないからではなくて、十分科学的知見があったからこそ専門委員会がこのような指摘をしたものと私は解釈するわけでありますけれども、この私の考えが誤っているかどうか御答弁願いたいのであります。
  56. 目黒政府委員(目黒克己)

    目黒政府委員 先生の御指摘の点でございますが、私ども中公審答申に対する理解と申しますと、NOx等のいわゆる局地的汚染の問題につきましては、この制度の問題を考えました場合に、制度を割り切ってきたわけでございますが、その場合には、民事的なものを踏まえたこの制度の本質といたしまして、基本的な考え方といたしまして、因果関係がある程度はっきりしているということが大事であろうというふうに私ども受けとめておるのでございます。このNOxの問題あるいは局地的汚染というものにつきましては、はっきりしたその辺のものがない、あるいは不十分である、私どもそういう趣旨に受けとめておるものでございます。
  57. 斉藤(節)委員(斉藤節)

    ○斉藤(節)委員 因果関係の問題でございますけれども、これにつきましても今保健部長因果関係がはっきりしないとかあるいはない、不十分である、そのような御答弁であります。私は因果関係専門委員会報告の中には十分含まれている、そんなふうに思うわけであります。そういう観点から、まずこの専門委員会報告しておりますことをここでるる述べてみたいと思うわけであります。  専門委員会は次のように報告しております。つまり「我が国の最近の大気汚染は、二酸化窒素と大気中粒子状物質が特に注目される汚染物質であると考えられる。」このように最近の我が国の大気汚染について専門委員会判断しているわけでございます。さらに「道路周辺では、他と比較して二酸化窒素の濃度が高い。」このようにも指摘しているのであります。これは科学的知見をもとにした報告と言わなければならないと思うのでありますけれども、この辺どうですか。
  58. 目黒政府委員(目黒克己)

    目黒政府委員 私ども先生指摘のとおりに受けとめているのでございます。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  59. 斉藤(節)委員(斉藤節)

    ○斉藤(節)委員 それでは続けさしていただきますけれども、現に「昭和六十年版道路周辺の大気汚染状況」によりますと、昭和五十九年度で二酸化窒素濃度が最高の値を示した東京都板橋区大和局では年平均値六六ppb、一日平均値の九八%値は一一九ppbもあるわけです。日平均値の最高値は一四七ppb、一時間値の最高値は実に二六二ppbに達し、しかも日平均値が環境基準の上限値である六〇ppbを超えた年間日数は実に二百二十一日、つまり一年間の六一%、大体二日に一回以上にも及んでおるわけであります。このようにいわゆる「昭和六十年版道路周辺の大気汚染状況」で述べているわけであります。  しかも専門委員会報告は二酸化窒素の生体影響について次のように評価しております。つまり、生体影響は二酸化窒素が影響するんだ。先ほど大臣も二酸化窒素は影響する、このように御答弁されましたので、言っていることはそうであるという裏づけになるかと思うわけであります。すなわち、慢性気管支炎の基本病態である気道における胚細胞と気管支腺の分泌過多状態に関し、二酸化窒素長期暴露による胚細胞の増殖を含む病変は動物実験の結果から説明可能であり、実験動物において四〇から五〇ppbで認められると評価される、このように述べているわけでございます。  また、気管支ぜんそく基本病態である気道の過敏性についてはどうかといいますと、「各種の汚染物質は一過性に気道収縮剤に対する気道反応性の亢進を来し、気道が過敏な気管支ぜん急患者については、二酸化窒素一〇〇ppbの短期暴露で気道反応性の亢進をもたらす可能性があると評価される。」このようにいわゆる二酸化窒素の生体影響について述べているわけであります。慢性気管支炎の基本病態である気道にこのような変化を与えるんだ、しかも実験動物、これはマウスだと思いますけれども、これによると四〇から五〇ppbである。先ほど申し上げました板橋区の大和局での年平均値あるいは一日平均値の最高値、こういったようなものを見ますと、実に一〇〇ppbを超えているわけでありますから、これは実験動物のマウスに対しての影響と人体に対する影響もある程度、私は完全にそうだとは、因果関係があるとは言いませんけれども、ある程度人体にこのような二酸化窒素の影響があるというふうに言える、そんなふうに思うわけです。  また、気管支ぜんそく基本病態である気道の過敏性についてもこのように、この場合はちょっと二酸化窒素の濃度が実験動物に対して大変高いわけで、一〇〇ppbを使っているわけですけれども、しかし、「短期暴露で気道反応性の亢進をもたらす」、このようにいわゆる気道の過敏性に影響のあることを述べているわけであります。  ここで、一応こういったようなことをお認めになられますか、どうですか。
  60. 目黒政府委員(目黒克己)

    目黒政府委員 御指摘のことでございますが、この実験研究の結果でございますが、その影響が四〇〇から五〇〇ppbということで影響がある、あるいは現実の環境汚染濃度の十倍程度の高濃度においてはかなり明らかにされている、あるいはまた低濃度において見られた変化もあるけれども、その意義づけは必ずしもはっきりしていない、あるいは疫学研究等々というような記載がこの専門委員会報告にあるのは事実でございます。
  61. 斉藤(節)委員(斉藤節)

    ○斉藤(節)委員 このような板橋区の例ばかりじゃなくて、このNO2の濃度が、いただきました一般環境大気測定局の年平均値でありますけれども、千代田区あたりも昭和五十年から六十年に至って、やはりほとんど四五から四九ppbといったような非常に高い濃度の二酸化窒素があるわけです。しかも粒子状物質でありますPM、これにつきましても千代田区などもやはり高い値を示しております。大体四九ppbから七三ppbぐらい、このようにずっと高くなってきているわけです、中央区におきましても、NO2に関しましてはかなり高い値を示しております。一般に、交通渋帯の激しいようなそういうようないわゆる都区部におきまして、かなり高い値を示しておるわけでございます。  そのほか、大阪などもやはり二酸化窒素あるいはPMが非常に高い値を示しておるわけでございます。吹田市なども、比較的吹田市などというのは大阪でもいい地点にあるはずでありますけれども、結構三三ppbからあるいは三二ppbとか、いろいろそういった二酸化窒素の濃度があるわけであります。またそのほかのいろいろの、九州におきましても同じようであります。例えば、北九州市なども高い二酸化窒素濃度を示しておる。それにまたこのPM、これもやはりかなり高い値を示しております。そういうことで、いずれにしましても、最初に指摘されておりましたように、やはり大気汚染で二酸化窒素による影響、これはばかにならない、そんなふうに私は思うわけでございます。  それに、改善されたとは言いますけれども、SO2につきましても結構まだあるわけでございます。例えば新宿区なども、まあ六十年に至りましては下がっておりますけれども、結構高い濃度を示しておりますし、それから板橋区などもそうでありますし、いずれにしましても、SO2も改善されたとは言うけれども、このようにゼロではない、あるわけです。  そういうようなことから、私はそれぞれの動物実験など、二酸化窒素なら二酸化窒素だけを使っての動物実験あるいはSO2ならSO2だけを使った実験もやって、そういうような純粋な状態でやっているものが多いわけでありますけれども、やはり一方では複合汚染的なもの、微量といえども二酸化硫黄があるという状況下における二酸化窒素の影響というものは、これは純粋な場合とは大分違ってくると私は思うわけであります。そのようなことから、やはり大気汚染における二酸化窒素の影響というもの、これをさらにさらに詳しく調べなければなりませんし、影響が既にこのように動物実験においてもあるということでありますから、そういう意味でも今回の措置というものは非常に問題であろう、そんなふうに考えるわけであります。さらに慢性閉塞性肺疾患の発症あるいは増悪因子としてこの二酸化窒素がやはりあるのだということでございます。これにつきましては、長期暴露下では実験動物の気道感染抵抗性は二酸化窒素五〇〇ppbにおいて低下すると評価される、このようにも言っているわけでございます。  このように、いわゆる二酸化窒素による影響というのは因果関係がないとかあるいは薄いとか、先ほど来述べておられるわけでありますけれども、私は因果関係は十分考えられるのではないか、このように申し上げたいわけでございます。それから問題になります肺気腫との関係についても、専門委員会ではこのように述べております。「二酸化窒素暴露による実験動物での肺の気腫性変化の成立は明らかであるが、暴露濃度がある程度高く、暴露期間がある程度長期間であることを必要とする。」この肺気腫との関係については、専門委員会で述べておりますことは、暴露濃度がある程度高い、それから暴露期間がある程度長期である、そのようなことを述べておりますから、このようなことからいきますと、現在の大気汚染の二酸化窒素の濃度からいきますと余り問題にならないかもしれませんけれども、しかし、薄い濃度であっても、長期間にわたって暴露された場合どうなるかということは、やはりこれからの問題であろうと私は思うわけでございます。  以上、いろいろ申し上げましたけれども、集積された科学的知見からすると、道路沿道の大気汚染は著しく高い濃度であって、健康には十分影響するということが予想される、このように私は思うわけでありますけれども保健部長、いかがでございますか。
  62. 目黒政府委員(目黒克己)

    目黒政府委員 動物実験におきましては、それぞれ現在の環境基準の十倍あるいは非常に高濃度の時点で実験の結果が、先生指摘のとおりあるわけでございます。またSOxについてもさまざまな実験があることは事実でございます。しかしながら、そのような結果を人間に対しまして人間への影響ということで置きかえるといいますか、そのように低濃度で人間でどうかというところに推測をいたしますためには、やはりこの専門委員会としてはまだまだ不十分ではないか、そのような趣旨と私ども理解しておるのでございます。  いずれにいたしましても、専門委員会は、今御指摘がありましたようなこの動物実験の結果とか、あるいは先ほど来お話のありましたNOx等々を含めましたATSの調査あるいは暴露の実験とか臨床的な知見、毎日の臨床の場でお医者さんがいろいろ得ておる知見というようなものを総合いたしまして、先ほど来申し上げましたように、可能性は否定できないけれども主たる原因とは考えられないという趣旨の総合的な結論に到達したものと私ども考えておるのでございまして、そのように御理解を賜ればと思っておるのでございます。
  63. 斉藤(節)委員(斉藤節)

    ○斉藤(節)委員 そのような結論に至ったということでありますけれども、先日の参考人で東京都の衛生局長の沼田さんの陳述にもありましたように、これからはNOx中心のものにしていかなければならない、大気汚染はそういうものを中心としていかなければならない、このように述べておりまして、窒素酸化物の問題を無視することができないというように考えるわけでございます。  時間もなくなってきましたので、次に、先ほど専門委員会報告の中の留意事項の感受性の高い集団についてであります。この点について、先日の参考人の館正知さんも、幹線道路沿道の影響については感受性の高い一部の人を見逃すおそれがある、このように述べておりまして、やはりこの感受性の高い人に対する問題を述べているわけでありますけれども中公審答申には次のように述べているわけであります。「専門委員会報告では、大気汚染に対して感受性の高い集団とは、児童、老齢者、呼吸器疾患患者等ではなく、通常の疫学調査において検出し得ないような少数の集団を指している。これらについては、更に調査・研究を加える必要があるが、「著しい大気汚染の影響による疾病の多発」という状況を前提として個別の補償を行う本制度の観点からは、検討の対象とはならないものと考える。」とありますが、これについて環境庁としてはどう考えておられるのでありますか。いわゆる通常の疫学調査において検出されないような少数の集団とはどのような集団を指しているのか、その辺を明らかにしていただきたいと思います。
  64. 目黒政府委員(目黒克己)

    目黒政府委員 この感受性の高い集団というものにつきましては、専門委員会報告等で御指摘をいただいております集団の意味は、やはり中公審答申として先生が御指摘なさいましたような方向のものでございまして、これはそのようなことが果たして妥当かどうかは別といたしまして、例えて申し上げますれば一つの体質的なもの、アレルギー体質的なもの、今の科学ではつかむことができないようなものというふうに私どもとらえておるのでございまして、果たしてこのような集団がどの程度に現存しているのかどうか等を含めまして今後研究、調査を行っていく必要があろう、このように考えております。あくまでもこの感受性の高い集団は、むしろ学問の世界の中でのいろいろな論議の中で出てきたものというように私どもとらえておるのでございます。
  65. 斉藤(節)委員(斉藤節)

    ○斉藤(節)委員 時間がなくなってしまいましたので残念でありますけれども、老齢者とか幼児じゃないというような御見解であります。そういう特殊なアレルギー性の体質を持った人だと言われますけれども、そういう人だけではなくて、幼児などの弱者を感受性の強い集団というものの中に入れるべきであろうと私は思うわけでございます。  いずれにしましても、指定地域全面解除は、どう見ましても、いわゆるNOxの問題もあるわけでありますので、これを解除してからさらに研究していくというのは何か矛盾があると私は思うわけであります。そういう点でこのような全面解除は、どう見ても説得力に欠ける行為と考えるわけでありますけれども大臣の御所見をお伺いいたしまして私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  66. 稲村国務大臣(稲村利幸)

    稲村国務大臣 先生の大変高い角度、また広い見識でいろいろ御指摘をいただきましたが、先生の御意見を十分尊重しながらも、ぜひ環境庁の今御審議をいただいている方向も御理解いただけたら、こう思います。
  67. 斉藤(節)委員(斉藤節)

    ○斉藤(節)委員 これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  68. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 滝沢幸助君。
  69. 滝沢委員(滝沢幸助)

    ○滝沢委員 委員長、御苦労さまです。長官初め皆さん、御苦労さまです。  幾日かにわたりまして今回の公害健康補償法にまつわる討論を続けてきたことでありますが、私は最後に、基金事業についての具体的な財政負担ないしは計画の細部等につきまして、わずかな時限でありますが、確認しておきたいと思います。  大気汚染によりまする健康被害の予防は、指定地域の解除、例の議論されております解除とは別な次元において欠くことのできない大事なことであります。もちろん指定地域指定そのものについて私は初めから疑問を持っておりましたし、今回の解除についても意見があります。しかしそれは今までも申してきましたし、しばらくおくとしまして、それとはかかわりなく、健康被害を予防する、ないしは既に罹病された方々を温かくお手当てをすることは大事なことだと思いまして、特に大気汚染の影響による健康被害を予防することについての事業は具体的にどのようなことをされることであるか承っておきたいと思います。
  70. 目黒政府委員(目黒克己)

    目黒政府委員 予防事業と申しますのは、先ほど来御議論をいただきました、現在の大気汚染状況下では個人に対して個別に補償を行うのは適当でないけれども大気汚染が何らかの影響を及ぼしている可能性は否定できないといったようなことから、大気汚染防止策のほか環境保健に関する施策を一層強化する必要があるということでこの事業を行うことといたしたのでございます。具体的にはこの事業は二つに分かれておるのでございまして、人の健康に着目をいたしました環境保健事業、それから環境そのものに着目をいたしました環境改善事業の二つから成るのでございます。環境保健事業は原則として地域の人口集団を対象といたしまして、例えば健康相談や健康診査等によりまして健康の確保や回復というものを図るものでございます。  まず第一点は、大気汚染の健康影響等に関する研究でございまして、これは先般この委員会でも御議論をいただきましたような、今後起こり得る可能性のある患者さんに対する調査研究といったようなもの。  それから二番目は、医師や保健婦等によります呼吸器疾患にかかわります相談や指導、あるいは疾病を予防いたしますための健診といったようなものを行うのでございます。  また三番目といたしまして、呼吸器外来の整備によります医療の充実、こういうものを考えておるのでございまして、またこのほかに環境の改善事業といたしまして、例えば交通公害防止の計画づくりや低公害車の普及促進等により、環境質自体を健康被害を引き起こす可能性のないものとするというような事業を行うものでございます。  このそれぞれの事業につきましては、今度の改正法案によりまして、この事業を行います性格から、これは後ほど企画調整局長の方から具体的に申し上げることとなろうと思いますが、一つは、新たにこの事業は、協会自体が行いますものと地方公共団体が行いますものを助成するものというふうに二つに分かれておるのでございまして、調査研究あるいは知識の普及あるいは研修といいますようなものは協会自体が行うものでございます。また、計画作成とかあるいは健康相談等々先ほど申し上げましたもの、そのほかに具体的に申し上げますと、水泳教室とか音楽教室とかぜんそくキャンプ等といった機能訓練とか、あるいは温水プールの建設とか医療機器の整備等々と申しますような施設等の整備というものにつきましては、これは地方公共団体が行いますものに対しまして協会がこれを助成いたすという形で構成をしているものでございます。  なお、この具体的な財源あるいは事業実施主体等につきましては企画調整局長の方から御説明することと思います。
  71. 加藤(陸)政府委員(加藤陸美)

    加藤(陸)政府委員 負担の問題でございます。  これはただいまの答弁にもございましたように、大気汚染原因者等の社会的責務に基づく拠出によってつくり上げていく基金というふうに考えておるわけでございます。具体的に申し上げますと、ばい煙発生施設を設置している者でございます。それと、これにかかわりのある者も参加していただくようにということで考えておるわけでございます。  なお、地方公共団体に負担をかけてということは余り考えておりません。
  72. 滝沢委員(滝沢幸助)

    ○滝沢委員 いろいろおっしゃっていただきましたが、現行法によります公害保健福祉事業というものとのかかわりはどうですか。
  73. 目黒政府委員(目黒克己)

    目黒政府委員 現在の公害保健福祉事業につきましては、認定患者の健康の回復とかあるいは保持増進という観点から、リハビリテーション事業等々あるいは成人の転地療養、あるいは家庭療養指導等々というものを認定患者対象といたしまして行っているものでございます。現在行っております公害保健福祉事業につきましては、新事業が行われるということになりました場合にもこれは当然続けていくこととなるわけでございます。  しかしながら、新事業の方は、大気汚染の影響による健康被害の予防という観点から主として行うような面がございますので、したがいまして、例えば健康診査の場合をとってみますと、その性格から患者対象にならない。しかしながら、事業のメニューによっては若干対象者が異なるというふうになってくるのでございますが、既存の認定患者については、公害保健福祉事業に加えて新事業が受けられるような形で、メニューによりまして、ある場合にはお互いが一緒にやるような形になり、ある場合には分けた形になる、こういうようになるのでございます。例えばこの健康診査の場合には患者さん方は必要がない、こういうふうなことになりますので、そのように区分けをいたすことを考えているのでございます。特にこの両事業のメニューが今申し上げましたように重複する場合におきましても、両事業が並行して充実いたしますように私ども努力をしてまいりたい、このように考えているところでございます。
  74. 滝沢委員(滝沢幸助)

    ○滝沢委員 私は全体の思想としては補償から予防に移っているのかな、こういうふうに思いますが、今現に行われております公害保健福祉事業というものを率直に反省されたときに、十分な成果をおさめてきたとお考えなのかどうか。私は、十分にというわけにはいかないというのが一般的評価ではないかと思うのでありますが、今回新たに改正法によって行われます基金事業の効果というものについて御自信があるかどうか、またどういう体制でもってこれを進められていくのかというような面について、もう一度御説明を願いたいと思います。
  75. 目黒政府委員(目黒克己)

    目黒政府委員 御指摘の、現在行われております公害保健福祉事業につきましては、一部の地域におきましてそのやり方等につきまして若干の不満がある、あるいはいろいろな御意見があるということについては私ども承知をいたしておるのでございます。しかしながら、各種の調査研究といったような形でこの新しい事業を並行して行うに当たりましては、やはり現在の公害保健福祉事業につきましても同じように効果あるように持っていきたい、私どもこのように考えているところでございます。  また、これまで効果がないんではないかという御指摘でもございますが、これは例えば健康回復のキャンプに行くとか、あるいは転地療養をやるといったような形の中で、それなりの効果は上げてきたもの、私はこのように理解をいたしているところでございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように若干の御意見等があることは事実でございますので、そのようなことも含めまして、今後これの一層の充実に努力してまいりたい、このように考えているところでございます。
  76. 滝沢委員(滝沢幸助)

    ○滝沢委員 せんだってアメリカに行きましたら、例の米自由化についていろいろと議論をしておりますうちに、アメリカの議員さんがおっしゃるのには、日本だって議員さんならわかるでしょう、私たちは挙げて選挙区の事情、選挙民の圧力が行動の原点です、こういうふうにおっしゃっていましたが、我々もその例外ではありません。  つまり、私がかねがね申し上げておりますのは、この公害健康補償法律は最初から地域指定している、言うなればその地域に住む者であったならば、ぜんそくにかかった者は他の原因によることがあっても救済対象になり得る。ただし、指定地域以外の者は、まさに公害による罹病であるという場合にもその恩典に浴しない。しかし負担は、それらの指定された事業等にかかわるものであったならば、その地域指定にかかわらず、つまり東北、北海道、四国のごときはいわゆる認定患者を一人も出していないが、そこに所在する事業所は負担が強いられるということについては大きなる不満があったと私たちは理解をしているわけであります。そのような意味で、地方公共団体がこれらの事業、特に今回の改正に対してどのような理解をしているかということについては私たちは大いに関心のあることでありますが、これを政府としてはどのように理解しておいでなのか、あるいはまたいかなる部分において地方公共団体の意思というものは反映したものでありましょうか、お伺いします。
  77. 目黒政府委員(目黒克己)

    目黒政府委員 御指摘の新たな事業に対してのみならず、私どもは従来も環境行政の中で地方公共団体とは密接な連携をとりながら進めてまいってきたものでございます。また、その連携の中で、私どもいろいろ具体的な地域の実情あるいは状況等々を承りつつ毎年行政を進めてきたのでございます、しかしながら、今回のこの新たな事業につきましても地方公共団体からは御意見の中に、窒素酸化物等による汚染、とりわけ幹線道路沿道の汚染がなお改善されていないことについて強い懸念があることから、この事業の実施等についてもそれぞれ強い要望が出されているところでございます。あるいはまた非公式の接触等の中にも、やはりこの事業の問題についてもいろいろ事務的にも意見があることも事実でございます。このように地方公共団体におきましてはこの事業の重要性をよく認識いたしておりまして、積極的に対応していただけるもの、このように考えているところでございます。
  78. 滝沢委員(滝沢幸助)

    ○滝沢委員 先ほど地方公共団体には財政負担をお願いしないとおっしゃっていましたが、これは私はいわゆる基金の面に限っておっしゃっているのではないかと思います。いやしくも国が一つの仕事をなさろうとするときは、地方公共団体が何らかの意味の財政上の負担を免れるものではない、こういうふうに思います。そういうことについて今日私は地方自治体の状況を見ますると、国が数々の制度改正等をなさるときに、権限はこれを中央に集中し、負担はこれを地方に委託する、これはいろいろとおっしゃっておりますが、結果的にはそのようなことだと思いまして非常なる不満を持っておるのであります。いやしくも今回のこのことが地方の財政上に負担を強いる結果にならないかどうか、ひとつ再確認しておきたいと思います。
  79. 加藤(陸)政府委員(加藤陸美)

    加藤(陸)政府委員 財政上の負担の問題でございますが、先生も御指摘になりましたように、現在の保健福祉事業につきましては折半負担というような問題がございますのは御承知のとおりでございます。基金の事業で行いますものにつきましては、基金からそれにかかる費用を交付することを考えております。ただ、先生ももちろん地方自治の実情について非常にお詳しい先生でございますのでもう重々御承知のことと存じますが、例えばいろいろな機関、保健所でございますとか、あるいはヘルスの関係の現在もやっております一般事業というものはもちろんしっかりと自治体においてやっておられるわけでございます。これとかみ合っていく関係がございますので、そういう意味では自治体の物心両面にわたる御協力というのは、これはもちろん前提にして考えなければならぬ点は御理解いただきたいと思いますけれども、この新たな事業についての費用負担という点では、十分なといいますか、必要にして十分な経費は基金で見ていくという考え方基本としてまいりたいと思っております。
  80. 滝沢委員(滝沢幸助)

    ○滝沢委員 時間でございますから切りますが、しかし、患者の皆さんに先般申し上げたのでありますけれども、私は今回の審議状況を見まするときに、もはや終局に近い。この論議の展開のいかんにかかわらず、物理的には数の論理による政治力学的にこの改正法は通るという前提に立って、しかもこの論議の時間は、既にこれが大臣に承ることについては最後のチャンスと思うものでありますから一言触れさせていただきます。  大臣、この法は先ほど申し上げたとおり物理的には通るでありましょう。しかし、患者の皆さんを初め、全国津々浦々の関係される方々に多くの不満と不安があることは確かであります。そのようなことを踏まえていただきまして、今回のこの新法によります各種事業等を推進されますに当たりまして、いやしくも大臣が今おっしゃっていることないしは掲げていらっしゃる理想に背くことのない体制を確立されていただくについての所信を最後に承っておきたいと思います。
  81. 稲村国務大臣(稲村利幸)

    稲村国務大臣 滝沢先生からいろいろな角度でこの公健法を国家国民のためにという御指摘をいただきました。この健康被害を予防するための新たな事業は、今回の法改正目的である個別の補償から地域対象とする予防への施策の転換を図るものでありまして、環境庁としてはこの事業を極めて重要と考えております。この事業を実効あるものとすることにより国民の健康の確保に万全を期してまいりたい、先生の御指摘を無にしないように努力したいと思います。
  82. 滝沢委員(滝沢幸助)

    ○滝沢委員 委員長、いろいろとありがとうございました。長官初め各位、御苦労さまでした。終わります。
  83. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 東中光雄君。
  84. 東中委員(東中光雄)

    東中委員 最初に長官にお伺いしたいのですが、今度の公害健康被害補償法の一部改正ですが、現行の四十一指定地域を全面的に指定解除する、そして法案自体でいえば名称も目的も変わる、そして補償協会は補償予防協会に変わる、これは大変な根本的な変更だと思うのです。公害に対する基本事項の改正ということになると思うのですが、いかがでございましょうか。——大臣基本的な性格を。
  85. 稲村国務大臣(稲村利幸)

    稲村国務大臣 なるべく的確に答えようと思いまして今いろいろ協議していたところですが、今回の制度の見直しは、現在の大気汚染状況、そしてその健康への影響を踏まえ、三年にわたって十分御審議をいただいた中公審答申を尊重し、制度を公正かつ合理的なものとしよう、こういうねらいでございます。
  86. 東中委員(東中光雄)

    東中委員 私はねらいを聞いているのじゃなしに、性格を聞いているのです。事柄の性格を聞いているのです。ねらいはそういうふうに表現することもできるでしょうけれども患者を全部切り捨ててしまえというねらいであったというふうにも言えるわけです。そういうねらいじゃなくて、事柄の性格が、健康被害補償制度救済してきたその四十一地域を全部解除してしまおうというのでしょう。そして、あと補償協会が予防協会になってしまって変わっちゃうのですね。性格が変わる。公害対策基本の事項で変更をしていくということではないですかと聞いているのです。
  87. 稲村国務大臣(稲村利幸)

    稲村国務大臣 先ほどの滝沢先生への最終答弁と関連をしておると思いますが、公正、合理的というものを前面に出して、個別補償から地域的な予防、これを主眼に取り組もうとしておるわけでございます。
  88. 東中委員(東中光雄)

    東中委員 それじゃ端的に聞きますよ。  公害基本法の二十七条には二つの問題が分けて書いてありますね。公害対策に関する基本的事項を調査審議する場合と、それから公害対策に関する重要事項を調査審議する場合とは明らかに項目が違うわけです。今度の場合は、こういう結論になってくるのは、その二十七条の二項で言えば一号に該当するものではありませんかということを聞いているのです。あなたは二号だとおっしゃるのですか。どちらですか。
  89. 目黒政府委員(目黒克己)

    目黒政府委員 中公審の議事運営と申しますか、諮問あるいは答申という手続の問題でございますけれども、これにつきましては、基本的な問題といたしまして、中公審審議会では、新たに諮問した事柄のみならず一般的な公害問題等に対しまして、特に地域指定のあり方について御審議をいただき答申を得たもの、このように考えておるのでございます。
  90. 東中委員(東中光雄)

    東中委員 問題をそらしたってだめですよ。そんなこと、あなた方の審議の仕方が、二十七条の二項の二号で環境庁長官が諮問をした、これははっきりそういう文書が出ているのだから、そのことを聞いているのじゃないのです。事柄は、四十一指定地域全部を解除するという結論なんですよ。そういう問題は明らかに公健法の二条四項に基づく総理大臣の諮問が要る、中公審の権限の側からいうならば二十七条の二項一号に該当する基本原則にかかわる問題じゃないのか、これを聞いているのですよ。二条四項に基づく中公審への諮問をやりましたか、関係知事及び関係市町村長に対する諮問はやりましたか、意見を徴することをしましたか、その点、そういう形で聞きましょう。
  91. 目黒政府委員(目黒克己)

    目黒政府委員 御指摘中公審の諮問並びに答申にかかわることでございます。  公健法の二条第四項の規定では、内閣総理大臣名で中公審意見を聞かなければならない、こうしているのでございますが、指定地域にかかわります問題につきましては、今後この指定地域の解除等にかかわります政令の立案までに中公審意見を聞くという手続を行う、あるいはまた済ませたい、このように考えているのでございまして、この点につきましては諮問当初から私どもの申し上げていることでございます。また、地方自治体につきましては、二条四項に基づきまして、この委員会でも御審議いただきましたように、地域指定に関します地方自治体の御意見についても伺ったところでございます。
  92. 東中委員(東中光雄)

    東中委員 あなたの言っていることは明らかに矛盾しているじゃありませんか。この二条四項によれば、「政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、」中公審と関係知事と関係市町村長に意見を聞く、でしょう。だから「制定又は改廃の立案をしようとするときは、」特に今度の案件のように四十一地域全部指定を解除する、こういうことになれば、実質的には改廃も改廃、大変な問題だ。そのうちの一番やらなければいけない、最初に書いてある中公審の諮問は後からするのでございます、しかし、立案しようとするときにやらなければいけない知事と関係市町村長には意見を聞いたのです。一番やらなければいかぬところは聞いていない。そして、いわば二番目、三番目に書いてある分だけは聞いた。これは要件が満たされていない。事柄の性質をそもそも初めから、中公審の権限で言えば二十七条の基本問題、基本事項というふうにとらえていない、いわゆる重要事項にとらえておったというところから来ておる矛盾なので、これは明白に手続的におかしい。あなた方自身の言っていることの中に手続的な矛盾がはっきりある。だって、立案するに当たっては、成立してからじゃないのですよ、立案するに当たっては意見中公審に聞かなければいけないけれどもまだ聞いていない、しかし、地方自治体関係は聞いた、これは手続上の瑕疵であるということははっきりと申し上げておきたいと思うのであります。  そして、二十七条二項二号で諮問をした五十八年十一月十二日付のあの環境庁長官中公審会長あての「公害健康被害補償法第二条第一項に係る対象地域のあり方について(諮問)」という文書による諮問があるわけですけれども、ここで諮問をしたのは四十一地域の廃止なんという問題ではないわけですね。この一番最後のところに明白に「中央公害対策審議会における具体的な審議事項は、我が国の大気中に存する汚染物質と健康被害との関係の評価、並びにこの評価を踏まえた第一種地域指定及び解除の要件のあり方」について諮問する。解除要件、指定要件についての諮問でありますから、この答申には解除要件、指定要件についてどういうものが出てきたのですか。解除要件について言っていただきたい。
  93. 目黒政府委員(目黒克己)

    目黒政府委員 先ほどのお答えに補足をいたします。  やはり基本的な問題といたしまして中央公害対策審議会指定地域のあり方ということについてまず御審議をいただき、専門委員会等をつくって三年にわたる御審議をいただいたということでございまして、その審議会の御審議結論を踏まえまして、私どもが今制度改正に取り組んでいるところでございます。それからまた、その後、先ほど申し上げましたように、さらに手続として二条四項の規定によりまして行うということでございまして、この手続上にそごはない、私どもこのように考えているのでございます。  それから、今の御指摘の解除の具体的な要件という御趣旨と思いますが、これはこの委員会でも再々お答え申し上げてきたことでございますけれども制度発足当初の五十八年十一月、諮問当時、この当時は環境庁としては知見が十分でなかった。二酸化窒素とか浮遊粒子状物質を含めまして、大気汚染健康被害との科学的な評価を行いまして、これを踏まえまして現在の大気汚染状況対応した指定要件あるいはまた解除要件といったようなものを示していただきたい、このように審議会には私ども問うたのでございます。しかしながら、専門委員会報告等から判断いたしますと、現在の大気汚染状況から申しますと、地域の有症率を決定いたしますさまざまな要因がございますが、その中で主たる原因をなすものとは考えられない、したがって、人口集団に対する大気汚染の影響の程度というものを定量的には判断することができない、このような専門委員会報告を踏まえた中公審答申なのでございます。  中央公害対策審議会では、今申し上げました答申のもとにおきまして、新たに指定の要件とか解除の要件、こういったようなものを適切に設定することはできないけれども、もはや全体として民事責任を踏まえた制度として大気汚染物質を全国の排出原因者負担において損害の補てんを行うことは適当ではなく、指定地域をすべて解除することが妥当である、このように判断されたのでございます。
  94. 東中委員(東中光雄)

    東中委員 答申と同じように、あなたの答弁もまるっきり要領を外している。あなたの今の答弁の中ではっきりしたことは、指定要件及び解除要件については決めることができないというふうに中公審答申の中では言っておるということを言われました。だから全部外してしまうのだと言っているのですが、全部外すということは第一諮問してないじゃないですか。やるとすれば、大臣がじゃなくて総理大臣が諮問しなければいかぬ問題です。大臣が諮問したのは、指定及び解除の要件のあり方と書いてございますね。要件を諮問したのです。そして、要件はつくれませんということになっているわけでしょう。この答申総理大臣じゃなしに環境庁長官の諮問に対する答申としては明白に逸脱しているというふうにまず申し上げておきたい。  しかも、なお手続的に申し上げますならば、被害補償制度というのは被害者の生存の権利、損害賠償を求める権利、こういうものを制度的に保障することが、だから一つ補償制度としての法律合理性が保障されることが必要である。もう一つ国民の健康、生命に関する制度であるから、それについての医学的な、科学的な必要性、合理性判断されなければいけない。この二つがどうしたって要るわけです。そういうものをやるための、専門的に検討するための諮問委員会であるはずなんです。ところが実際にやられておるのは、いわば加害者側の、費用負担者側の代表が入っておっても、権利が問題にされておる被害者側の代表が一切入っていないという構成になっているところへ諮問をして、しかも、その諮問は環境庁長官が解除要件についての諮問をしながら、それの逸脱した答申が出てきて、全面的解除、制度の根本的な基本にかかわるそういういわば逸脱答申として出してきた。本来やらなければいけない二条四項による総理大臣の諮問はまだやられていない、したがってそれに対する結論は出ていない、そしてその一部である地方自治体に対する諮問はしたけれども九〇%までは反対意見が上がってきた、こういう状態で本来の中公審指定解除についての答申というものは、諮問もなければ答申もない、しかし法律はつくっていく、これは明白に手続的に違背がある。  日本弁護士連合会が意見書を出してきていますね。日弁連といえば、公害企業と言われる企業の顧問弁護士さんも入っていますし、患者側の権利を守ろうという立場の弁護士さんも入っていますし、裁判官や検察官をやった弁護士さんも、全弁護士が弁護士法によって強制的に入っている、そういう公的な団体です。その公の団体が、手続上これは重大な問題がある、中身はそういう表現をしていますけれども、これは無効だという意味を含めているわけです。現に今度の作業小委員会のメンバーであった小高さんは「行政手続からみた諮問行政」という論文を法律時報の中で書いています。具体的にこの問題について、これは手続的に無効じゃないかという意見さえ出ています。学説、判例の大筋からいってこんなやり方は問題を残す、効力が疑問である、こういうふうにさえ言っているわけです。できてしまった法律について裁判所で無効か有効かの争いをしなければいかぬようになってくると日本弁護士連合会が今言っておるのです。  その立法を今やろうというのですけれども、そういう問題の立法をやってはいかぬ。ちゃんと諮問したらいいじゃないですか、総理大臣から諮問して、そこで審議会を開いて、審議会の構成もちゃんと両方の権利を守るように、弁護士会の構成と同じように全部の立場を出してくるという構成にすべきじゃないかと私は思うのです。今、公の機関である日弁連でさえそういうことを何回も言って意見が出てきておる状態ですから、改めて総理大臣から諮問をして、中公審の構成も考えて指名して、そしてこの法案はちょっと置いておいてやるべきだと思うのですが、環境庁長官、どうですか。——大筋の話だから長官でいいです。
  95. 加藤(陸)政府委員(加藤陸美)

    加藤(陸)政府委員 事務的に法律の解釈にかかわる問題についてお答え申し上げます。  まず公害対策基本法二十七条の中央公害対策審議会の事務の規定でございますが、この第二項二号に「公害対策に関する重要事項を調査審議すること。」となっております。それから、一号では「公害対策に関する基本的事項を調査審議すること。」とございます。この一号の方がどういうものに当たるかという点につきましては、先生からいろいろな御意見を承ったわけでございますけれども、これは公害対策の大きな枠組みにかかわる事項というものであると理解いたしております。通常、法律改正は二号で諮問をし答申をいただいております。ただし、これは事務の規定でございます。先生おっしゃるように一号でなければならないというふうには私どもは考えておりません。二号によって、環境庁長官の諮問によって法律改正は行える。  それから、先生がおっしゃいますお話の中にございましたが、四十一地域全部を指定解除するという問題が極めて重要であることは私どもも当然そのように考えておりますけれども、もともと地域指定の問題は政令をもって対処することになっており、解除についても同様でございます。私ども、ここのところの理解はどういう形になるにせよ、地域指定の解除の問題がどういう形になるにせよ、それは将来の問題でございますので、今ここで直接云々する法律論ではないかと存じます。それはいずれにせよ、今回のただいま御審議をお願いしております法律改正の問題につきましては、公害対策基本法二十七条の中公審の所掌事務の区分で言えば、二号の「重要事項」に当たるというふうに申し上げます。
  96. 東中委員(東中光雄)

    東中委員 今の話、全然見当違いのことを言ってもらっては困るのですよ。二十七条の関係では、重要事項であろうと基本事項であろうとそれは別にして、総理大臣環境庁長官かというところで区別をしてあるわけです。問題は二条四項によって、あなた方は二条四項による諮問が必要だと考えているからこそ知事にも関係市町村長にもやったでしょう。ところが肝心の、一番初めに書いてある中公審をやっておらぬじゃないか。やってないと言って今答弁があったじゃないか。そのことを言っているのだから、もうその理屈は要らぬです。そういう状態になっているから、これは手続上は瑕疵があるということが今議論になっていることはもう間違いないのだ。これは日弁連からも文書で出てきているのです。だから長官、そういう疑問があるままで、諮問すればいいんだから、疑問があるままで諮問もせぬで進めるというのはいかぬと思うから長官の腹を聞いておるのです。もう時間をとってかなわぬから局長はよろしい。長官、どうでしょうか。
  97. 加藤(陸)政府委員(加藤陸美)

    加藤(陸)政府委員 私、解除の政令の方のことを漏らしまして、大変失礼いたしました。  この政令改正地域解除等にかかわる政令改正の問題につきましての中公審意見並びに地方自治体意見、地方自治体意見は既に聞いておるわけでございますけれども、これは法律的には政令改正を行う前に聞けということでございます。これは手続違背はございませんので、御理解賜りたいと存じます。
  98. 東中委員(東中光雄)

    東中委員 長官、その問題は後で答えてください。今言っているのはまるきり違う。「立案をしようとするときは、」なんです。立案しようとしておるからこの法案が出てきておるのでしょう。だから市町村長、知事にやったのでしょう。何で中公審にやらぬのか。これは瑕疵だ、こう言っているのだから、そんなごまかしはだめ。  もう一つどうしても言わなければいかぬことがあるので、時間がなくなってしまいますので言っておきますが、私、今ここに中公審総会あるいは環境保健部会の議事録を持ってきています。一九八六年四月八日の第三十回環境保健会議事速記録によれば、これもなかなか環境庁は示さないのだけれども専門委員会報告が鈴木さんからやられて、二つの留意事項というのをはっきりと出しておられます。この問題について、もう時間がなくなったので残念ながら申し上げることができませんけれども、第一の問題点は、汚染レベルの高い局地汚染の健康への影響は十分検討しなければいかぬということ、非常に難しい表現をされています。今まで面で考えたけれども、今は点、線、ポイントで考えなければいかぬということで、局地汚染ということを留意しなければいかぬということを専門委員会結論一つとして出されておる。もう一つは、大気汚染に対して感受性の高い集団への影響について、比較的少数だからということで見逃してはいかぬ。特にお年寄りや子供さんやあるいは病弱の人たち、こういう人たちは昔から言われていることだからもちろんのこと、それ以外にも感受性の高い人があって問題なんだということが二つの留意事項で言われておる。  ところが、その問題について、この答申がまとめられる中公審総会の第三十六回総会会議録、十月三十日付を見ますと、館さんは出されている専門委員会の方針の結論をまるきり逆にしてしまっておりますね。局地については問題外にしてしまうし、感受性の高い人たちに対する対処の問題は、特別に新しく発見された問題については難しいということで外してしまう、まるきり違う報告をしてそれが答申になってしまっている。  この会議録を見ますと、この保健部会で最終的に部会長代理が、「いろいろ疑念はたくさん出たしご不満もあるけれども、一部反対意見もあるということを踏まえて」、だから、疑問も出た、反対意見もあった、いろいろ疑念が出たということを前提にしながら、そのことには一切触れないでここで報告しているのはけしからぬということを瀬尾委員が発言している会議録、ありますね。その一番問題になっている、もめた環境保健部会報告審議会議録というのは一切出さないわけでしょう。どうしても我々に示さないじゃありませんか。この十月六日でしたかの会議録というのはそういう形でやみからやみへ葬られている。これは、科学的な問題、医者の専門的な問題を作業小委員会医者に関係のない人が違ってまとめてしまう、こういう科学性を否定して国民の健康を扱う。しかも一それは本来国民の健康にかかわることだから公開が原則であるべきものを、会議録さえ示さない。こんな非科学的なやり方で、しかも手続的に問題がある状態でこの法案を急いで通すということは許されぬと私は思うのです。どうしてももう一回やり直せということを言わざるを得ない。  もう時間が来ておりますので、環境庁長官に、科学性なし、法律的に欠陥あり、改めて手続をやり直せ、そして審議を尽くすべきだ、こう思うのですが、この二点について意見を聞いて質問を終わります。
  99. 稲村国務大臣(稲村利幸)

    稲村国務大臣 先ほど来、先生再三御指摘をされております法律的な問題は、環境庁がこの法案を御審議いただくについて間違いはない、こういうふうな自信を持ってお願いをさせていただいております。  もう一つ科学的知見についての歪曲はこれもない、こういうことで御理解いただきたいと思います。
  100. 東中委員(東中光雄)

    東中委員 それは抽象的にそういうことを言ったって、現実に日弁連からも医師会からも、日本の医者の圧倒的多数が入っている医師会が反対をし、そしていわば制度について最も責任のある日弁連が反対をしている、手続的にはまだ総理大臣の諮問がない、こういう格好で進めるというのは、稲村長官、これはその歴史に汚点を残す。環境庁ができたときの審議に私、参加しましたけれども環境庁がこんなことになるとはだれも思ってなかっただろうと思うのです。断じて再検討を、もう一回手続をやり直せということを要求して、私の質問を終わります。
  101. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十九分休憩      ————◇—————     午後一時三十分開議
  102. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩垂寿喜男君。
  103. 岩垂委員(岩垂寿喜男)

    ○岩垂委員 中曽根総理、御苦労さまでございます。お忙しいところ、環境委員会に御出席いただいたことに感謝します。  私は、総理の御出席をお願いした意味は、無論今問題になっている公健法改正に関する問題もございますけれども、中曽根内閣の環境問題に対する基本的な政策、とりわけ、長期にわたって政権を担当してこられたその実績を含めて、この機会に所信を伺いたいという気持ちでお願いをしたわけでございますので、少し広範にわたって質問をさせていただくことをお許しをいただきたいというふうに思います。  まず、公健法改正について総理に質問をさせていただきます。  今回の法改正、私どもから言わせると、これは改悪というふうに言わざるを得ませんが、中央公害対策審議会専門委員会、これは専門家が集まって長い間かかってまとめた報告書、その中から改悪に都合のいい部分だけを利用して、その上、一都を歪曲してまでいわゆる中公審報告という形でまとめてきた経過が、この委員会の審議を通じてかなりつまびらかになってまいりました。  そればかりではございません。指定地域の解除の要件とも言うべき地方自治体の多数意見というものを事実上は無視して行われようとしていることに、私は問題の所在を指摘をせざるを得ません。これは、二酸化窒素の環境基準の改定の際に犯した誤りを再び繰り返すものと言わなければなりません。私は、公害被害者という弱い立場の人々を一方的に切り捨てるばかりではなくて、公害に対する因果関係説に基づく損害賠償責任というものを免罪をし、さらに原因者負担の原則をあいまいにする暴挙だと言わなければなりません。私は、あえて中曽根総理に対してこの法案の撤回を要求をいたしたいと思いますけれども、この機会に御答弁を煩したいと思います。
  104. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 政府は、公害対策につきましては、重大な関心を持って強力にこれを推進しつつあるところでございます。  日本は、昭和四十年代に高度成長の結果を受けまして相当な公害に見舞われまして、それに対する反省として、環境庁の設立を初め公害諸立法をかなり厳格にやりまして、それを今まで強く推進もしてきまして、その成績はかなり顕著なものがあったと思います。特に、大気の問題、水の問題あるいは騒音の問題等々につきまして、政府はあらゆる面から目を配りまして、これが規制を強化してきたところでございます。しかし、大気の問題等につきましては、最近の統計数字等を見ますというと、大体この程度でもう規制はある程度解除して、そして今後は予防に重点を置く、そういう段階に入ったのではないかと我々は想像しておりましたが、しかし、審議会における三年にわたる審議の結果を踏まえまして、また地方自治体の御意見も徴しまして、今回はそのような措置に踏み切ったわけでございます。  しかし、といって、公害に対する関心や政策を緩めようというものではございません。新しい観点に立って予防というものを中心にして、そしてさらに政策を進めていこう。今まで認定された皆様方に対しては今までどおりの政府としての手当てを十分にやっていく、これはいささかも変わるものでもございませんし、また、公害に関する調査、モニター等はやはり我々は厳密にこれを行いまして、もし将来万一出た結果等を見まして、そのときに応じて適切な措置をまたとるという余地も十分考えておるところであり、ひとまず現段階においてはこういう踏み切りをやるのが適当であろう、そういう考えに立って今回の法案の御審議をお願いしている次第なのでございます。
  105. 岩垂委員(岩垂寿喜男)

    ○岩垂委員 総理の言葉ですから、大変重たい言葉だと受けとめますので、少し訂正をしておいていただきたいと思います。  今総理は規制を解除してとおっしゃいました。これは間違いでございまして、指定地域を解除するということでございますから、これは議事録に残る言葉でございますし、総理の発言にしては珍しくちょっとオーバーランをしたのではないだろうかという感じがいたしますので、その点は御訂正を願いたいと思います。
  106. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 指定地域の解除というのは規制の解除の一つの方法である、そうとも実は考えて申し上げたのでございますが、正確に申し上げれば指定地域の解除ということでございます。でございますから、患者さんに対する政府の手当てというものは依然として従前どおりやる、そういうふうにも申し上げたところなのでございます。
  107. 岩垂委員(岩垂寿喜男)

    ○岩垂委員 実は総理は委員会の私ども議論というのを聞いていたわけではございませんですから、そのことについて一つ一つここで言挙げをするつもりはございませんが、少なくても専門委員会報告、つまり科学というものに対して裏切ることを政治の名で行うとすれば、私は、議会制民主主義に対する国民の信頼を損なうだけではなくて、その権威が問われざるを得ないというふうに考えます。しかし、そうは言いながら審議が三日間続けられてきまして、いわゆる多数決原理という形で決定が行われる限りにおいては、残念ながらこの国会か次の国会かは別としていずれこの法案が成立することは明白だというふうにも思います。ですから、そこで何としても、環境庁から私も一つ一つの問題について御答弁をいただいてはおりますけれども、ここで改めて幾つかの点について質問を申し上げて総理の口から御答弁をいただきたいと思います。  最初に、この法案の審議を見守っている全国の公害被害者の皆さんに、総理として心の痛みを込めてお見舞いと激励の言葉をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  108. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 公害政策の不備から全国の公害の認定を受けられました皆様方には大変御迷惑をおかけして、恐縮に存じておるところでございます。おくればせながらいろいろな法律対策等も講じまして現在まで努力してまいってきたところでございますが、政府としても今後とも責任を持ってこれらの患者の皆様方に対する手当て等については万全を期してまいる所存でございます。
  109. 岩垂委員(岩垂寿喜男)

    ○岩垂委員 先ほどから総理のお言葉にもございますが、また、法案でも既に認定された公害病患者に対しては今後とも補償を継続するというふうになっています。しかし、現実にはかなり恣意的に患者切り捨てが行われてきたという判断が持たれるケースが指摘されています。そこで、今後空気がきれいになったからとか、あるいは認定の条件を厳しくするとかということによって、恣意的な患者切り捨ては行わないということをお約束をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  110. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 あくまで科学的なデータに基づきまして、客観的な基準によりまして我々は行政措置を行うべきであると思っております。
  111. 岩垂委員(岩垂寿喜男)

    ○岩垂委員 恣意的な切り捨ては行わないということについて、念のために患者の不安にこたえてもう一遍御答弁をいただきたいと思います。
  112. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 主観的な、恣意的な切り捨てのようなことは行いません。
  113. 岩垂委員(岩垂寿喜男)

    ○岩垂委員 この委員会のやりとりの中で、NOxなどの大気汚染による健康影響を調査するために、環境庁に、局地的汚染健康被害調査、それから、実は私が提案をしたのですけれども、大都市における気管支ぜんそく等に関する研究調査、これを行うことを公約をしていただきました。それぞれおおむね五年間の調査期間を明示されました。この調査結果の遅滞ない公表、あわせて、その結果によっては被害に対する救済方法の確立を総理大臣として国民にお約束をいただきたいと思いますが、明確な御答弁をいただきたいと思います。
  114. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 岩垂さん御指摘のように、特に自動車を中心にするNOxの問題というものは、今後の大きな問題で残っていると思うのでございます。そういう点も考慮いたしまして、公害問題に関する調査はこれを実行を続けてまいります。そして、その結果はまた公表いたします。政府としては、その結果を見まして、必要に応じて適切な対応対策を行う所存でございます。
  115. 岩垂委員(岩垂寿喜男)

    ○岩垂委員 私は実は、この調査はもう少し大規模な取り組みでというふうにお願いをしてまいりましたけれども、しかし、それでも一応、患者を中心とするそれと、それから局地汚染、このものをあわせて考えれば因果関係なりあるいはその影響というものが明らかになるだろう。本当は、五年という歳月は失われるものが大きいという感じがいたしますけれども、今そのことに着手することは差し迫った課題だと思いますので、今総理が御指摘のように、自動車、移動発生源というふうに特定をした言葉をいただいて、その因果関係が一日も早く明らかになっていくことを国民とともに見詰めてまいりたいというふうに思っております。  これも、総理にこういう細かいといいましょうか委員会におけるやりとりの問題を質問申し上げるのは大変恐縮でございますが、専門委員会報告にも、それから国会でのやりとりの中でも、再び著しい大気汚染が引き起こされる懸念が完全には払拭できない、万一の事態が発生すれば行政措置をとるということが書いてございました。その行政措置とは、再び地域指定を行うというふうに理解してよろしいかということを質問いたしましたところ、そういうことだというふうに御答弁をいただきました。  そこで、これはNOxと浮遊粒子状物質の指標化、そして自動車沿道の地域指定を含むものと理解してよろしいかどうか、総理の御答弁をいただきたいと思います。
  116. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 科学的調査の結果によりまして、その結果が、非常に憂慮すべき状態というものが出てくれば、当然再び指定するということも含まれておると考えております。  要するに、大事なことは、そういうような被害状況を再び出さないということが大事でございますから、我々としては、予防措置につきましても、自動車行政を担当する部局あるいは地方公共団体とも提携しまして、今後とも細心の注意をもちまして対策を講じてまいりたいと思いますが、万一そういうようなデータが出た場合には、ただいま申し上げましたようなことも含めて、我々は対応策を考えておるわけでございます、
  117. 岩垂委員(岩垂寿喜男)

    ○岩垂委員 この議論が行われる過程で、中央公害対策審議会のメンバーに公害患者とかあるいは被害者代表する人が参加していないことは不公正ではないかという御質問あるいは御指摘が随分されてきました。総理御存じのとおりに、中公審委員会というのは、従来はお金を出してもらうという立場から企業の代表が入っていたことを、私は否定するものではありません、ただ、それらの人たちは、ともすると公害の裁判のいわば被告の立場に立たされている人たちもおられるわけでありまして、そういう人たちが方針を決めて患者に押しつけてくる、国民に押しつけてくるということはいかがなものか、片手落ちではないかという指摘が何回かなされてまいりました。  そこで、これは総理にぜひ御検討を、何らかの方法をという言葉を添えますけれども中公審の構成の中に患者代表というか患者代表ができる人たちを参加させるということは、最低限必要ではないだろうか。この際加害者被害者の関係というようなことをくどくどと述べるつもりはございませんが、公平の原則からいっても、それは可能な道だし、私は何らかの方法を考えてもらいたいということを環境庁長官にお願いをしてまいりました。前向きの御答弁をいただいておりますが、これは総理の方の関係の委員会ということにもなるわけでございますので、その辺について格段の御検討を煩わせたいと思いますので、総理からも御答弁をいただきたいというふうに思います。
  118. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 審議会の専門部会のメンバーを見ますと、お医者さんもたしか九名入っております。そのほか、ジャーナリストとか学者とかあるいは国民生活を代表すると思われる方々等が入っておりまして、大体において公益性を持った方々で網羅されておる。そういう意味において、当該関係者はこの中には御遠慮願った、そういう考えに立脚しておるものであると思います。しかし将来の問題として、いろいろな状況の推移等も見まして、将来必要があるという場合には、検討するにやぶさかでございません。
  119. 岩垂委員(岩垂寿喜男)

    ○岩垂委員 ありがとうございました。その言葉というのは、今皆さんおられますけれども、やはり総理の口から聞きたかったと思うのです。いろいろな参加の仕方というのはもちろんあると思います。しかし、いずれにせよ、患者不在のままで物事が決まっていくというのは、事実関係がそうでなくても、被害者という立場に立たざるを得ない、そういう気持ちをそんたくして、ぜひその道を生かしていただきたい、このように思います。  これは総理に伺うのは大変恐縮ですから環境庁長官でもあるいはどなたでも結構ですが、NOx及び浮遊粒子状物質についての環境基準の達成の時期とそのプログラムを明確にしていただきたいと思います。
  120. 稲村国務大臣(稲村利幸)

    稲村国務大臣 先生指摘の窒素酸化物や浮遊粒子状物質につきましては、大都市地域を中心に環境基準の達成されていない箇所がなお多数残されているのが現状でございます、このため、ディーゼル車を中心とした自動車の排出ガスや工場、事業場等からのばい煙などの発生源対策の強化に加え、輸送の合理化、道路の立体交差化などの自動車交通公害対策、低公害車の普及等の対策を積極的に講ずることにより、環境基準をできるだけ早期に達成するよう全力を挙げてまいる所存でございます。
  121. 岩垂委員(岩垂寿喜男)

    ○岩垂委員 NO2の環境基準を二倍から三倍に緩和したときに、その達成の目途というのは、たしか昭和六十年のはずでございます。緩和したときに六十年というめどがあったはずでございます。しかし、六十年から時間を過ぎても、もちろんクリアしないだけではなくて、現実にはもっとひどくなっている。しかも、今日の条件のもとで環境基準をクリアする時間さえ明らかにできない、これが現実なんであります。  私は、今総理からもあるいは環境庁長官からも御答弁をいただきましたが、特に三大都市圏を中心とする地域NOxあるいは浮遊粒子状物質の異常に高い状態、これを考えると、発生源、とりわけ移動発生源に対する削減対策は一日もおろそかにはできないというふうに思います。道路の構造とかいろいろなことをお考えになることはその一つかもしれませんが、その一環として地方自治体が、例えばメタノール車とかあるいは電気自動車の導入あるいはその普及というようなことに対して積極的な対策を進める場合には特別の奨励策をとっていただきたいと考えますけれども、これはいわゆる積極的な手だてとしてぜひ御配慮をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  122. 岡松政府委員(岡松壯三郎)

    ○岡松政府委員 政府としまして、従来から、電気自動車あるいはメタノール自動車等の低公害車に対する技術開発の実施あるいは普及のための税制上の優遇措置等を講じているところでございますが、これらは性能の向上あるいは普及拡大に伴いますコストダウン等を通じまして効果を発揮してくる、こういう形で地方公共団体への導入に資するものというふうに考えておる次第でございます。また、地方公共団体における低公害車の普及努力に対しましては、今後これを奨励するための措置を講じていくように検討してまいりたい、このように考えております。
  123. 岩垂委員(岩垂寿喜男)

    ○岩垂委員 私、選挙区は川崎なんですけれども、実はこの間も市長とお話をして、例えば清掃の車とか市営バスとか、単に見本という程度ではなくて本格的にと言ったら、金がかかるじゃないかと言われました。それはそのとおりなんです。だけれども、ある種のインセンティブといいましょうか、一定の期間を区切ってそういう形で実用化を図っていくということ以外には手だてはない。今レンタルなんです。これじゃ、しょせん大衆の生活の中にそのことが生かされていくという道筋は閉ざされているわけでございますので、何でもかんでも補助金をということを申し上げるつもりはございませんが、何らかの時間的な距離と、それからその条件というものを踏まえて、とりあえず普及をするために努力をするということについてぜひお考えをいただきたいと思いますが、もう一遍、その辺はお考えになっていらっしゃるのかどうか、御答弁をいただきたいと思います。
  124. 岡松政府委員(岡松壯三郎)

    ○岡松政府委員 先生指摘のように、低公害車でございます電気自動車について見ますと、まだ車体が通常車両に比べて三倍程度かかっているということが普及の障害になっているわけでございますが、今御指摘ございましたように、できるだけこの普及を図るようにさまざまの助成措置を講じていくように努力してまいりたいと考えております。
  125. 岩垂委員(岩垂寿喜男)

    ○岩垂委員 やはり環境行政と通産の仕事というのは連動してやっていかなければなりませんので、その点余り待ったなしに進めていただきたいということをお願いをしておきたいと思います。  次に、総理に質問をいたしますが、国際的な環境協力を大胆に実施することによって、日本のニューイメージとでもいいましょうか、それをアピールすることについて、若干の提案を含めて質問を申し上げて、御答弁を煩わしたいと思います。  総理は、ベネチア・サミットでヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムを提案されました。それは経済宣言の三十五項目に明記されましたけれども、このヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムの中に、実は、環境問題の解決、例えばフロンガスあるいは酸性雨あるいは熱帯雨林の問題、砂漠化の問題などのプログラムというものは入っていません。これは科学技術庁と通産省が中心になってお進めになったことだそうでございますが、総理ももっと具体的に、効果のあるというかアピールのできるようなことをというふうに御指摘をなさったという話が新聞に出ておりますけれども、そういう環境問題の解決の項目をこの中に加えていくおつもりはございませんか。
  126. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムは、ここ二年ぐらい、いろいろ基礎研究、勉強、フィージビリティースタディーをやりまして、ロンドンでも各国の代表に御出席をいただいて専門家会議をやり、大体やれる、また各国も好意的である、そういうところから、先般のベネチア・サミットにおきまして私も発言をして日本の意図を説明し、各国の協力も求めまして、先般の経済宣言の中にこのプロジェクトが載せられたということでございます。  その趣旨とするところは、生体の機能を解明いたしまして、大脳から筋肉から、あるいは食生活、消化作用あるいはそのほか人体が持っておるそのような諸機能というものをできるだけ科学技術力によって解明して、これに接近していこう。大体ロボットというのは筋肉の代用のところまである程度きました。それに大脳がくっついて、コンピューターがくっついてロボットというのは動いているわけであります。そこまである程度きていますが、大脳自体の生理機能の解明、例えば、そこまでいくかどうかは非常に難しい問題ですが、記憶という問題というものをもう少し解明してみる。あるいは光合成という問題もございます。光合成の中には酸素の発生というような問題も出てまいります。  そういうようないろいろな面から、二十一世紀への大きな仕事として壮大なヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムというものをやりまして、基礎科学を中心にして各国と協力してやる。フィージビリティースタディーの間は大部分は日本でお金を持ちましょう。それで、日本だけでこの成果を独占するという考えは毛頭ございません。各国の協力のもとに各国の皆さんとその成果を共有しつつ我々としては進めていきたい、そういうことを申し上げた次第でございまして、大体ごとし、来年ぐらいはフィージビリティースタディーをやって、どの方面にどういうふうに我々は進められるかということを考えて進めようと思っておるわけでございます。  その結果は、私は、恐らく公害対策についてもかなり有益な結論あるいはデータが出てくると思います。先ほど申し上げましたような光合成一つ見ましても、酸素、窒素に関する部分もあるわけでございます。そのほかの部分についてもかなりあると思うわけでございます。そういう意味におきまして、自然環境との随順、調和、人間生活との調和、そうして自然の保護という面についても我々は大きな関心を持ちましてこのプロジェクトを進めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  127. 岩垂委員(岩垂寿喜男)

    ○岩垂委員 総理がさきにポーランドからの環境協力の要請を受け入れまして大変御努力をいただいたということも新聞で見ていますが、環境協力の実施について制度面と資金面、両方の面で限界を恐らく認識なさったと思うのです。つまり、ODA予算の枠内でやろうとするとポーランドは非対象国です。それはポーランドだけじゃございません。よそへ広めていく場合にその問題がひっかかります。それから、ODAはあくまでも経済協力ということですから、環境協力に流用するというのは非常に難しいという現実があります。私、実は総理に予算委員会で質問したことがあるわけですが、やはり有償、無償の規定や申請主義の問題もございまして、なかなか問題が解決しない面もありますけれども、私が提案したいのは、ODAの予算を別枠にするか、そうでないとある形で、国際環境協力事業費みたいなものを計上していく、別枠でそういうものを立てるか、あるいはODA予算の中で一定割合を環境に対する融資といいましょうかあるいは協力といいましょうか、そういうものにする必要があるように思いますが、総理は、ポーランドなどを経験なさってどんなふうにお考えでございましょうか。私はぜひそういうことにしていただきたいと思うのです。
  128. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 この正月にポーランドへ参りましたときにヤルゼルスキ国家評議会議長と話をしまして、ポーランドのワルシャワの公害がかなりひどい、そういうことで調査団を派遣しましょう。向こうも非常に歓迎してくれまして、今調査報告をつくっている最中です。そのほか、例えばトルコのアンカラ、これも非常にひどい、そういうところから日本の公害経験にかんがみまして協力を求めてくるというところもあるわけでありまして、日本としても最大限協力を申し上げてまいりたいと考えております。  発展途上国との関係におきましては、ODA予算を使いまして、そして徹底的に協力できるものは協力した方がいい、そういう考えに立ちまして、今後ともODAの使い方自体というものも研究してみたい、そう思っておる次第でございます。
  129. 岩垂委員(岩垂寿喜男)

    ○岩垂委員 総理、いわゆる申請主義なものですから、相手の国から日本に求められたときに、その優先順位がどうしても環境問題というのは開発よりも下に下に書類が行ってしまうのです。上からとっていきますと、どこまで行ってもそれが届かないという問題点が現実にございますので、その辺について別枠というか、あるいはその中で一定割合をというふうな配慮をこの際ぜひお考えをいただきたいというふうに思います。  私はこの二月に国連環境特別委員会の東京会合での総理のごあいさつを伺いました。あいさつの最後に「私は、改めて、国連環境特別委員会の活動に敬意を表するとともに、我が国としても、国際社会と我々の子孫の共有財産である地球環境保全のため、我が国の技術と経験を生かし、より一層積極的な役割を果していく所存である」ということを表明をされました。大変御立派なごあいさつだというふうに伺っておりました。  ここに武村正義さん、いらっしゃいますけれども、その呼びかけで、実は私も呼びかけ人の一人として参加をさせていただいて、超党派の国会議員百五十名によるところの地球環境問題議員連盟というものが結成をされました。そして活動を始めました。総理もやがて入っていただきたいと思っておりますが、それはそれとして、総理が演説の中で申されたような、「一つの地球から一つの世界へ」といういわゆるブルントラント・レポートをどう生かしていかれるつもりなのか。  私、はっきり申しまして、軍備ではなくて、地球市民の命と健康を守るための国際的な責任を日本が果たすために、あるいは貿易黒字の問題で大変いろいろなことを言われています、日本の経済の実態についての諸外国の批判もございます、こういうものにこたえていくために、この際、日本の公害対策に注いできた一つ制度一つは技術、一つは資金、一つはマンパワー、こういうものを含む日本の環境問題についての力を生かして、官民の出資にかかわる地球環境保全基金制度というふうなものを構想して、かなり大きな構想を立てて——私があえて申し上げたいのは、中曽根ファンドと言ってもいいというぐらいに思っているぐらいなんですが、それはそれとして、そういうものをつくるために総理の直属機関で検討委員会を発足させていただきたいというふうに考えますけれども、これは私はかねてからの念願でもございますので、ぜひ総理にこの機会に御答弁をいただきたいというふうに思います。
  130. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 国連環境特別委員会の報告書は二十一世紀に向けた持続的開発を目指して環境保全の見地から種々の提言を行っておりまして、今秋の国連総会において国連として本報告書を受け取り、取り組み方について討議されると承知しております。我が国としては、国連での議論の動向も見つつ、今後いかなる国際協力を行い得るか検討し、地球環境保全のため一層の積極的役割を果たしてまいりたいと思っております。  宇宙飛行士が地球は青かったとかあるいは緑の唯一の惑星とか、そう言われておりますように、地球の環境というものほかけがえのないもので、これは人類全体で保護すべき共同責任を持っておるし、また先進国、経済力のある国であれば、それだけその責任は加重されていると我々は考えております。  そういう意味におきまして、地球をめぐる環境問題については我々も非常に積極的な関心を持ちまして、ナイロビにおける会議等におきましても、当時の原環境庁長官を派遣して、我々はお金を拠出して特別委員会をつくって機能させたわけであります。日本としては積極的にそういう態度をとってきているわけでございますが、地球全体の大きな問題につきましても、日本も応分の負担を積極的にして結構であると私考えております。しかし、これは日本一国というのは必ずしも適当でないので、みんなでお金を出し合って努力しよう、力のあるものやあるいは公害関係で迷惑をかけていると思われる国はもっとうんと出そう、そういうような関係に立ってみんなでやるという精神が必要であると思うのです。そういう意味におきまして、御提案の地球環境保全基金制度という御構想は非常に注目に値する一つの構想であると思います。  以上申し上げたような趣旨に沿って、こういうものが国連を中心にできるかどうか、外国の反応はどうであろうか、その場合日本の役割はどの程度行うべきか、そういう問題についてもひとつ研究させてみたい、そう思っております。
  131. 岩垂委員(岩垂寿喜男)

    ○岩垂委員 みんなでやることは必要ですが、隗より始めよという言葉がございますので、日本がやはり先進的な知見を持っている、公害対策の先進国という意味を世界が評価しているということから考えて、ぜひ日本が言い出すという立場をとっていただきたいと思うのです。  というのは、ブルントラント委員会というのは、実は総理御記憶かもしれませんが、河野洋平さんが本会議で提案をし、私が委員会で総理にお尋ねをして、原文兵衛環境庁長官にそれを受けとめていただいて、そして生まれてきたという背景もございますので、いわばそういう研究の成果というものが出たわけですから、それをフォローアップといいましょうか具体化していくために、さらに日本の役割というものが期待されているというふうに思いますので、その点をぜひ御考慮をいただきたいと思います。  実は私、きのう毎日新聞を見ましてびっくりしたのです。今私が申し上げたこととはちょっと違いますが、「砂漠緑化や人口爆発対策 地球問題研究所 通産省が設立計画」。はっと思ったのですが、環境庁どこへ消えちゃったのかなというふうにも思いました。しかし考えてみたら、今も環境庁長官を冷やかしたら、環境庁長官は、いやそういうことは通産省も建設省も環境考え方が広がってきたということだと思って、環境庁はその上へ乗っかってやるんだというふうにおっしゃっておりましたので、これは大物だなと思いました。  それはそれとして、やはり政府の中でばらばらにこの種のことを始めたところで効果が上がるものではございませんし、それでは私はどうも十分な成果を上げることはできないと思いますので、この種のものは環境庁のセクト主義ではなくて、きちんと環境庁が通産省と相談をして、そして国際的にも影響をもたらすわけですから、やってほしいと思いますが、環境庁長官一言どうですか。
  132. 稲村国務大臣(稲村利幸)

    稲村国務大臣 先生の思いと全く同じ思いで、きのう朝刊を見てびっくりして、早速六十三年度予算の庁議がありまして、事務次官以下の前で今の先生の御意見をそっくり私が申しました。各省庁の先取り競争でなく、地球的規模の環境を守るということは大変結構なことだな、環境問題に対していよいよ通産省も農林省も厚生省も運輸省も建設省、みんな目を向けてこういう記事を各省庁で発表して、浮かび上がったところを環境庁が牽引車の役をとって頑張ればいいチャンスだなというふうに申したところです。  中曽根総理がこの二月の環境特別委員会のブルントラントさんとの個別会談その他で、二十一賢人会も非常に好印象を持っておられますし、六月私が出席させていただいたUNEPの理事会でも日本への期待も大変大きいので、今先生が総理に一つ一つ御確認をいただいている。これは本当に、地球的規模の懇談会もこの間武村先生、岩垂先生、大変な汗を流されて設立されたところでございますので、これを機会に環境問題、環境庁もしっかりしなければならないとありがたく思っております。
  133. 岩垂委員(岩垂寿喜男)

    ○岩垂委員 最近民活方式を導入した大規模な開発が東京湾だけではなくて全国で問題になっています。これをこのままにしておきますと、環境破壊の災いというものを後世に残すことにならざるを得ない。そういう立場から言うとどうしても、かねてから問題にしてまいりました計画段階からのチェックを可能とするアセスメント法案が必要だと思うのです。その意味では、現在の閣議決定方式というものは再検討をされるべきだと私は思いますが、総理、この点はあれですか、福田内閣、鈴木内閣の時代から私はこのやりとりをしてきまして、もう手が届くところまで行ったと思ったら中曽根さんの時代になって法案じゃなくて閣議決定方式ということになってしまったわけです。それはその時代のいわば状況だとも受けとめますけれども、これから大規模開発が全国でひしめいている状況のもとで、やはり人間生活優先という考え方を生かすために今の閣議決定方式について検討を加えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  134. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 その前に、先ほどの地球問題研究所に関係しまして考えを申し上げますと、サミットにおきましてもよく出る話は酸性雨の問題であります。それから途上国との関係におきましては森林と砂漠化の問題が出て、これは全地球的関心の問題として国境を越えてみんなで協力し合おうということにもなっておりまして、地球全体というものを包括的に考えて国際協力で進めていく、それについては日本自体がその問題について相当な権威ある発言ができるような研究をしておくことが大事でありまして、どこの省庁でどういうふうにやるかは別として、そういう検討は日本としては先進国と言われるくらいに進めておかなければならぬ、そう思っておるところでございます。  それから、環境アセスメント法案につきましては長い間懸案の問題でございましたが、官房長官を中心にいたしましていろいろ調整しまして、行政措置法律にかわることをやろうということでそれを決定し、それが今既に実施されつつあるところで、一応決着、そういうことで御了承を願いたいと思うのです。将来の問題は、今後の実際の成り行き等も見まして、将来の課題としてそのときにまた考慮する、こういうことであると考えております。
  135. 岩垂委員(岩垂寿喜男)

    ○岩垂委員 総理は一応決着とおっしゃいますけれども、現実はそうではございません。だから、その点はぜひ検討を加えていただきたいと思います。  最後になりますが、この九月にモントリオールで開かれるUNEPの外交官会議でフロンガスの規制の問題、特にこれはプロトコル案が採択されることが確実だというふうにも私伺っております。そこで、日本はこのプロトコル案に対してどういう態度をおとりになるのか。我が国もオゾン層の保護条約とでもいいましょうか批准をせざるを得ないと思いますが、その点をどんなふうにお考えになっていらっしゃるか。各国のコンセンサスが得られて一つのまとまりが見られたらこれは批准手続をとるのか。それから、批准をされるだけではなくて国内の規制体制をどう整備するかということも必要だというふうに思います。それらについてどんなことをお考えになっていらっしゃるか。もう九月でございますから、UNEPの会議対応でもございますから、ここで明らかにしていただきたいと思うのです。  総理、フロンガスというのは直接的には無害であり、そして極めて安定した物質だと言われているのですが、それが成層圏というかオゾン層を破壊していることは事実でありまして、それが人間の生活、生命を脅かすとか皮膚がんの原因になっていることは御承知のとおりでございますけれども、こういうものをナショナルプロジェクトで代替のものをつくっていくぐらいの努力を私どもしなければならぬし、するべき時期が来ているように思うのですが、そんなことも含めて、簡単で結構ですから御答弁をいただいて質問を終わりたいというふうに思います。
  136. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 フロンガスの問題は、地球的規模の環境問題の一つとして極めて重大な課題であると受けとめまして、国連環境計画の場等を通じて積極的に対応してまいりたいと思います。  日本はフロンガスを大きく使用している国の一つで、スプレーとかそのほか我々は大変便益を得ているわけでありますが、それが地球環境を阻害するということではまた大変な問題をはらんでおるわけであります。近く開かれるモントリオール外交官会議でも、諸外国と協調しつつ実りある成果が得られるように努力してまいりたいと思いますが、具体的な規制方法が取りまとめられた場合はこれを遵守するための国内体制を整備してまいる所存であります。やはりこれは国際協力でみんなで一緒にやらないと効果がない、そう考えております。  オゾン層保護のためにはフロンガスにかわる代替物質の開発及び科学的知見の集積が極めて重要な課題と考えておりまして、このため、関係省庁の緊密な連携のもとに官民を挙げて積極的に取り組む所存であります。
  137. 岩垂委員(岩垂寿喜男)

    ○岩垂委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  138. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 春田重昭君。
  139. 春田委員(春田重昭)

    ○春田委員 総理大臣、御苦労さまでございます。総理への質問となればどうしても意見が集約されてくるわけでございまして、同僚議員と重複する点はどうか御理解をいただきたいと思っているわけでございます。  先ほども御質問がございましたけれども、ことしの二月、国連の環境特別委員会が我が国で開かれたわけでございます。総理も出席され、ごあいさつをなさっているわけでありますが、この委員会の中では、一つは地球の資源は有限である、したがって、我々の世代が浪費すれば子孫には貧しい地球を残していくことになる、そこで、先ほども話があったように持続可能な開発を考えよう、こういったテーマが出ております。さらに、環境問題はエネルギー政策とか工業政策とか食糧政策等の結果として出てくるものであり、狭い意味での環境保全ということは問題の解決にならない、こういったテーマも出ていたと思うのです。  そこで、総理として、今後政府がいろいろな予算を組んだり経済計画や政策を考える中で、やはり持続可能な開発を念頭に置く必要があるのではなかろうかと私は思っているわけでございます。経済先進国であっても我が国はまだまだ環境の面においては決して先進国ではない、いわゆる発展途上並びに後進国であると言っても過言ではない面がございます。そういった面で中曽根総理の今後の環境問題についての高い御見識をまずお伺いしたいと思っているわけでございます。
  140. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 環境問題につきましては、日本としては特別の大きな関心を持ちまして、我々の内閣の政策としても大きくこれを重視してまいっておる次第でございます。特に日本は昭和四十年代におきまして高度成長を遂げました。そのときに大きな惨害をもたらした公害というものを反省いたしまして、日本自体は相当な規制をやりましてこれから脱却いたしましたが、途上国とかあるいはその他の国においてなおもってこの問題に悩まされている国もなきにしもあらずであります。そういう意味におきまして、日本みずからのこの問題に関する取り組みというものを我々としては持続してやっていく、同時に国際的な協力の場も広げて、お互いに地球全体をきれいにしていこう、そういう運動として国連あるいはそのほかの二国間、ODA、そういうものを通じまして積極的に努力してまいりたいと思っております。  これだけの大きな工業国家になり経済技術力を持った国家になりますと、迷惑をかけている面もかなりあると思います。海洋における汚染であるとか排気ガスの問題であるとか、目に見えないところでそういう部面もあると思うのでありまして、そういう点につきましては相応の責任も感じ、またそういう面に対する貢献、協力も日本はしていかなければならぬ。幸いにそれだけの技術的蓄積また経験もあるわけでございますから、そういう貴重な資料を関係各国にも頒布もし、協力の実を上げてまいりたい、そう考えておる次第でございます。
  141. 春田委員(春田重昭)

    ○春田委員 そういった世界各国へのいわゆる環境につきましての日本の立場ということも当然でございますけれども、我が国におきます予算面また経済計画においても十分な配慮をしていただきたい、こう要望しておきます。  先ほども地球的規模の環境問題ということが出ておりましたけれども、こういった問題が世界各国の政策の中で進められておりますが、今回の公健法というのは公害のいわゆる行政の後退ではなかろうかと私は危惧しているわけでございます。公健法改正昭和五十八年八月三日、臨時行政調査会の最終答申で第一種指定地域について、一つ地域指定、二つは解除の要件の明確化を図るということから始まったわけでございます。そして環境庁中公審へ諮問し、専門委員会作業小委員会を開き、そして環境保健部会を開いて昨年十月三十日中公審答申という形であらわれているわけでございますが、四十一指定地域全面解除がなされたわけでございます。しかしこれは非常に時期尚早でございますし、私たち合理性がない、こう思っております。  その理由として、一つは四十九年十一月の中公審答申では解除要件が明らかになっているわけでございますが、六十一年十月の中公審答申では明らかになっていないわけでございます。先ほど言ったように、臨時行政調査会の中でも「解除の要件の明確化を図る」となっておりますが、残念ながら昨年十月の中公審答申では解除要件が明らかになっていないわけです。  二番目としては、大気汚染硫黄酸化物また窒素酸化物や浮遊粒子状物質等のいわゆる複合汚染であると言われているわけでございますが、その解明がなされていない状況でございます。  さらに三点目は、硫黄酸化物は減ったとしても窒素酸化物また浮遊粒子状物質等につきましては、大都市の沿道周辺は環境基準をオーバーしているわけでございます。せんだっても当委員会で、東京都の衛生局長がおいでになりまして御答弁なさっておりましたが、いわゆる一般道路は別として、自動車排出の測定局の中では環境基準を八〇%もオーバーしている、こういった状況の中で、今回の全面指定解除ということは時期尚早であり拙速である、したがって撤回すべきある、こう私は言わざるを得ないわけでございます。総理の御答弁をいただきたいと思うのです。
  142. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 今回の公健法の見直しに当たりましては、窒素酸化物等の健康影響についても中央公害対策審議会で三年に及ぶ慎重な審議を行った結果、現在の大気汚染状況では解除は相当との結論を得たものでありまして、今後は重点を予防方面にさらに力を入れて持っていきたい、そう考えておるところでございます、  なおまた、SOxについてはある程度克服したと考えますが、NOxあるいは浮遊粒子状の公害物質等につきましては、御指摘のとおり我々としては今後重大関心を持って克服すべき課題である、そう考えております。  特に自動車の沿道等の問題というものは今後ますます大事な問題になってくると思います、これについては都市政策の面で、都市を迂回するバイパスをうんとつくるとか電気自動車あるいはそのほかの無公害運搬物を積極的に開発していくとか、そういう努力も相まってやる必要があり、あるいは煙を出すディーゼルエンジンの改良とか、そういう技術的な問題もあると思います。そういういろいろな問題につきまして積極的に努力してまいりたい。  また認定は解除いたしましても、患者さんの皆さん、認定された方々に対しましては我々としては今までどおり十分手当てをしてまいる。また、調査を厳重に励行してまいりまして、もし万一被害が相当出てくるという科学的なデータのぐあいによりましては再認定ということも考えてしかるべきである、それも含めて我々としては対策として考慮しておるということを申し上げる次第でございます。
  143. 春田委員(春田重昭)

    ○春田委員 中公審会長は和達会長でございますが、この方が中公審答申に当たりまして会長談話という形でお出しになっております。その中には血の通った行政をやってほしい、いわゆる中公審で十分フォローできなかったものを国として、環境庁として、行政としてそれをカバーしてほしい、これが血の通った行政という言葉にあらわれているのではなかろうかと私は思っているのです。先ほども総理の御答弁ありましたように、現行認定患者につきましては従来どおり補償されているわけでございぎすが、新しく発生する患者につきましては今後対象でない、補償されない、こうなっているわけですね、したがって私は、和達会長はこの辺に、国として何とか新規患者につきまして血の通った行政を望むということを会長談話の中で出されたのではなかろうかと推測するわけでございます。今回の法改正におきましては、地域レベルのそういった環境事業、予防対策を主眼に置いておりますが、新しい患者、ここの救済がなされていないわけです。ところが、総理も御存じのとおり毎年九千名の新しい患者の方がふえております、これは私は見逃すわけにはいかないし、無視できない現実の状態ではなかろうかと思っておるわけでございます。そういった面で、当然地域全体のレベルの環境予防対策費は必要でございますが、こういった新しい今後発生する患者の方に対しても何らかのそういった政治の救済の光を与えていただきたい、あえて申すわけでございますが、総理の御見解をいただきたいと思います。
  144. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 今までこれらの補償に関する経費というようなものは、発生源の工場あるいは自動車重量税、こういったものを財源にして財源的な対策を考えてきたわけでございます。今後も基金をつくりましてそのような発生源あるいは自動車関係、こういうようなものから基金を調達して、この基金をもちまして調査、予防あるいは必要な対応、こういうことを考えてまいりたい、その中にはただいまの健康問題等に対する対応というものも含まれて考えてしかるべしである、そう考えている次第でございます、
  145. 春田委員(春田重昭)

    ○春田委員 指定地域の地方自治体の意見の大半が大都市沿道の窒素酸化物対策を挙げているわけでございます。さきの委員会の私の質問の中でも、環境庁答弁がございました。自動車の排出規制の一段の強化として走行モードの見直しの必要性を私は主張いたしました。さらに先ほど総理からの御答弁もございましたが、大型トラックのディーゼル車の黒煙の問題、直噴式の問題、また燃料でございます軽油の硫黄分を少なくしていく抜本対策、こういった対応をお伺いして環境庁のそれなりの御答弁をいただいたわけでございます。私は、さらにこれを国として具体的にさらに突っ込んだ対策をする必要があるんじゃなかろうか、こういった考え方を持っておるわけでございますが、総理のもう一歩突っ込んだ御答弁がいただければありがたい思っているわけでございます。
  146. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 沿道を中心とする大都市等の大気汚染の問題というものは、今後とも重要な問題として政府としては全面的に取り組んでまいるつもりでございます。自動車排ガス規制のほかに輸送の合理化、道路の立体交差化、低公害車の普及等の総合的対策も積極的に推進する所存でございます。六十二年八月二十一日に環境委員会で春田さんの御質問に対して局長答弁しておりますが、現在、中央公害対策審議会においてディーゼル車等からの窒素酸化物の一層の低減、走行モードの見直し、ディーゼル黒煙の低減等について各種の調査研究等を行いつつ審議を進めております。できるだけ速やかに答申をいただきたい。大体六十四年度中ということになっておりますが、その半ばを目標に答申をいただけるように審議を促進して、その結果を踏まえて規制の強化、そのほか所要の措置も検討してまいりたい、そう御答弁申し上げておりますが、このように考えておる次第です、
  147. 春田委員(春田重昭)

    ○春田委員 最後になりますけれども、総理に提案したいと思うのですが、環境庁昭和四十六年設置されました。その任務の第一は、国民の健康を確保することである、こうなっておるわけでございます。ところが、ともすれば環境庁は各省庁の調整機関という立場に立って、余り存在価値が高くないわけでございます。そういった意味で、環境庁が今後国民と一体となって行政を展開するためにも、私は次のことを提案していきたいと思っておるわけでございます。  一つは、公害や環境問題に対する国民各層の要望、意見を聞き、かつ、疑問に答えていくとともに、公害行政環境保全について国民とともに考えていくために、毎年幾つかの都市におきまして地方一日環境庁を開催してほしい、これが一つです。  二番目としては、快適環境整備事業の充実を期するために、快適環境保全、創造に著しい成果をおさめた都市そして地域を表彰、また顕彰するために、全国の快適環境コンクールを開催したらどうか。環境庁としてはおいしい水のコンクール等もやっておりますが、それをさらに広げて、こういった各都市を宣揚するコンクールもやったらどうか、そう思っております。  三番目には、我が国の環境教育を推進する中心的な機関として日本環境教育センターを開設したらどうか。  この三点を提案するわけでございますが、総理の前向きな御答弁をいただきたいと思っているわけでございます。
  148. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 環境問題の解決については、国民の御支持、国民の御理解が非常に重要であると思います。日本が昭和四十年代に相当な環境汚染が出まして、そこで、政府として思い切った対策を講じて、環境庁をつくったり、外国よりはるかに強い規制を基準をつくりましてやりました。あのころ私たちは、ちょっと厳し過ぎるかな、ちょっと難しいのじゃないかぐらいに思ったのでありますが、良薬は口に苦しで、確かにあれは良薬であった、現在考えるとそう思うのです。大体人間というものは、よくなろうあるいは規制を厳しくしようとすると、その当座は非常に苦痛に感ずるものでありますが、しかし、ある程度のそういう苦痛を甘受しなければ問題は解決しない、そういうふうにも考えて、人間の怠惰心というものをこれで精励な方に直していくということも大事であるように思います。そういうのは、やはり国民世論というものでできております。あるいはジャーナリズムの力というものが大きかったと思うのです。そういうような考えに立ちまして、国民一人一人にそう御認識を願うことは大事であります。  政府としても、毎年六月五日から六月十一日まで環境週間を設けて、環境教育の推進等、それを実施してまいりました。今後とも御提言の趣旨を踏まえまして、これらの機会に環境に関する国民の御理解を深めるための施策を一層強力に推進してまいりたいと思います、具体的な御施策につきましては環境庁で研究さしてみたいと思います。
  149. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 斉藤節君。
  150. 斉藤(節)委員(斉藤節)

    ○斉藤(節)委員 今、春田同僚委員の方からいろいろ御質疑がありましたので、重複する点もあるかもしれませんけれども、総理に御答弁願いたいのでございます。  今回の本法案の改正の理由といたしまして、これは環境庁で述べているわけでございますけれども、「近年における我が国の大気の汚染の態様の変化を踏まえ、」云々、こういうふうになって、その中身でありますけれども、中身は、昭和三十年ごろから四十年代の大気汚染の主役であった二酸化硫黄は大幅に改善された、しかし二酸化窒素並びに大気中粒子状物質は、徐々に改善傾向を見せてはいるものの、依然として環境基準を満たしていない、このようなふうに述べているわけでありますけれども、しかも中公審専門委員会報告におきましても次のように述べております。「我が国の最近の大気汚染は、二酸化窒素と大気中粒子状物質が特に注目される汚染物質であると考えられる。」このように言っておるわけです。さらに、「道路周辺では、他と比較して二酸化窒素の濃度が高い。」このように述べております。  また、二酸化窒素の生体影響については次のようにも述べているわけでございます。つまり、生体に影響があるということでありますけれども、簡単に述べますと、二酸化窒素の長期暴露による気道杯細胞の増殖を含む病変は、動物実験の結果から説明可能である。二つ目は、気道が過敏な気管支ぜんそく患者については、二酸化窒素一〇〇ppbの短期暴露で気道反応性の高進をもたらす可能性があると評価される。三つ目には、二酸化窒素の長期暴露下では実験動物の気道感染抵抗は五〇〇ppbで低下する、このように述べておりまして、いわゆる二酸化窒素というのがいかに生体に対して影響があるかということがはっきりしているわけでございます。しかも、それらの汚染物質というのはいわゆる発電所とかあるいは工場といったいわゆる固定発生源からのものもかなりありますけれども、それ以外に特に移動発生源、すなわち自動車でありますけれども、移動発生源からのものがはるかに大きいのであります。しかも、その汚染地帯は幹線道路であり、なかんずく交通量が多く渋滞の度合いの極めて高いところということになっているのであります。  そこで、総理の御所見を賜りたいのでありますけれども、このようなことから指定地域全面解除するのではなくて、よく調査した上で改善の著しい地域から部分解除にしてはどうかと思うのでありますが、御所見を賜りたいのであります。
  151. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣  その点につきましては、中央公害対策審議会におきまして三年間いろいろ御審議を願い、科学的データに基づきまして慎重に検討した結果解除しかるべし、そういう結論に相なったので、政府はそれを受けまして今回のような措置を講じたわけでございます。あくまでこれは科学的なデータに基づいてやるべきで、先ほど答弁申し上げましたように主観的な恣意的なものであってはならない、これは厳重に今後も守っていかなければならぬところであります。  なおまた、既に認定を受けた患者さんに対しましては今までと同じような手当てを十分行うべきであり、かつまた、将来につきましては予防措置というものを大切に考えて、基金等を通じましてそれらに対しても万全の措置を講じてまいりたい。もしデータの結果、必要があるという場合には再認定ということも含まれる、そういうふうに申し上げたとおりなのでございます。
  152. 斉藤(節)委員(斉藤節)

    ○斉藤(節)委員 また発生するような場合には追認というようなことでございましたけれども、二つ目の質問といたしまして、今も御答弁の中にあったのでありますけれども、今後ある地域——いわゆる四十一地域指定解除になりますが、その四十一地域並びに他の地域も含めまして局地的に大気汚染による公害が著しく発生した場合、公害健康被害補償法による地域指定を再び行う用意があるのかどうか。先ほど岩垂議員への御答弁にもあったようでありますけれども、重ねて御質問申し上げます。
  153. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 客観的なデータによりまして、必要ある場合にはもちろん再指定地域指定ということも含まれておると申し上げたとおりであります。
  154. 斉藤(節)委員(斉藤節)

    ○斉藤(節)委員 では、次の質問に入らせていただきますけれども、費用負担の問題についてお伺いしたいと思うわけでございます。  現在の費用負担は、固定発生源が八〇%、それから道路、それの方で二〇%ということでそのような費用負担になっているわけでありますけれども、私は、この費用負担の分担につきましては、今は移動発生源からのものが相当多い、そんなふうにいろいろのデータからも考えられますので、この際、移動発生源をもたらしているそういう企業からも徴収して、これからの費用負担に入れていったらどうか、そんなふうに考えるわけでありますけれども、総理はどのようにお考えになるか、御所見をお願いしたいと思います。
  155. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 新しくできる基金につきましては、いわゆる移動発生源と言われる自動車関係から基金も拠出していただく、そういう考えを持っております。
  156. 斉藤(節)委員(斉藤節)

    ○斉藤(節)委員 そのような移動発生源からもされるということで、大変ありがたいと思うのであります。  次は、先ほども申し述べましたように、我が国の大気汚染というのは、交通渋滞によるもの、いわゆる道路事情による大気汚染、それから物流機構の不備なところから来る、必要のない車の通行による大気汚染、それから先ほど来いろいろ議論になっておりましたけれども、ディーゼル車による大気汚染など、今後我が国の大気汚染を浄化していくためには、環境庁はもちろんでありますけれども、建設省あるいは運輸省それから通産省、これらの各省庁、さらには産業界も含めた総力戦で取り組んでいかなければならない問題と考えるわけでありますけれども、総理の御所見をお伺いしたいと思います。
  157. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 まさに御指摘のとおりであると思います。これは一環境庁だけではとてもできる問題ではございませんで、通産省、運輸省あるいは建設省、あるいは基礎研究という面におきましては大学もありましょうし、厚生省もございましょう、そういう、内閣挙げてこれは取り組むべき問題であると考えております。
  158. 斉藤(節)委員(斉藤節)

    ○斉藤(節)委員 もう時間が参りましたので、あと一つだけ総理に御質問申し上げたいのでありますけれども、国立公害研究所の問題でございます。  国立公害研究所の資料を、いろいろ十年来のを私見せていただきまして、大変研究がすばらしいということで敬意を表しているわけでありますけれども、実際の、今汚れている環境をどうするかといった問題などについて具体的な例を研究している点が比較的少ないように思うわけです。特に基礎研究が多くてすばらしいと思うのでありますけれども、国立公害研究所というからには、やはり実際の道路問題とか、あるいは環境が汚れているところを実際に浄化をどのようにするかといったような問題などについて研究をやっていただきたいと思うのであります。これは国民の国立公害研究所に対する願いでもあるんじゃないかと思うわけでありますが、その辺、総理の御所見を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  159. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 国立公害研究所におきましては、公害現象の機構解明等基礎的な研究を推進するほか、窒素酸化物による大気汚染対策等、公害の改善に資する具体的な手法の研究にも取り組んでおるところでございます。総合的な試験研究機関としての使命を果たすために今後とも大いに努力し、成果を上げるようにさせたいと思っております。  現在は筑波学園都市にございまして、職員が約二百五十名、研究職が百七十四名でありますから、かなり大規模な研究所でございます。大気汚染、水質汚濁あるいは監視測定方法あるいはNOx等、公害の防止に関する試験研究を実施しております。モニタリングの方法であるとか、あるいは酸性雨そのほかの原因究明、あるいはそういう汚染物質の移流等、そういうようないろいろな問題につきましても今検討しておるところであり、窒素酸化物の沿道汚染対策の効果予測等も今取り上げてやっておるところでございます。  今後も御趣旨を体して大いに努力をいたさせます。
  160. 斉藤(節)委員(斉藤節)

    ○斉藤(節)委員 どうもありがとうございました。
  161. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 滝沢幸助君。
  162. 滝沢委員(滝沢幸助)

    ○滝沢委員 委員長、御苦労さまです。  総理、御多用のところ、環境委員会にお出ましをいただきまして我々の率直な問いに答えていただきますことを、まことにありがとう、御苦労さまです。  実は、総理にお尋ねをするという機会はなかなかないものですから、短い時間ではありますがやや多岐にわたり質問を申し上げまするし、あるいはまた失礼な表現もあろうかと思いますが、志は、国を思い、政治をたださんとする理想に燃えるものでございますから、ひとつ御了承をちょうだいしたいと思います。  ところで、総理、鳥のまさに死なんとするやその声悲し、人のまさに死なんとするやその言よしと申します。これは申すまでもなく、論語の中において曽子が臨終に臨んで言った言葉として人口に膾炙されてまいりました。しかし、私はここに、政権のまさに終わらんとするやそのなすところよし、こういうふうに実は言いたいのでございます。  あなたは、まことに賢明な、しかも人心掌握の才にたけられまして、説得力と指導力を兼ね備えられた方でありまして、若き日に、総理大臣国民投票で選ぼうという提唱をされたことにつきまして、私はかつて賛意を表した日のことを忘れません。そのあなたが多年の志を遂げられて政権につかれまして、既に光陰矢のごとく、よわい数えて五年と相なりました。いろいろと御苦労のあることであり、思わざる障害もあったことでありますからやむを得ない点も認めざるを得ないのでありますが、戦後政治の総決算というあなたの大命題はいかがに相なったものでありましょうか。自主憲法の制定、これは自民党の立党の理念と承っております。あるいはまた靖国問題、教育の問題、特に教科書検定の問題ないしは防衛の理念の確立、これらのことにつきましては国民の間に多くの議論があります。ゆえにこそ、私は、あなたが指導される自民党が一つの理想を掲げて、明確にして頑張っていただくものと存じておりましたが、この国家的基本問題についてはいわば玉虫色に過ぎまして、将来への指標もなかなか提示されないまま今日に至ったのではないでしょうか。殊に、本日ここに議題になっております公害対策を初め、税制の改革ないしは財政の再建、行革等につきましても、志なお半ばに達せざると申しても過言ではなかろうと思います。  しかし、この政権も残るところあと百日、今こそ政治家一代の志を明示されまして、あすの日本の行くべき道を示されまして、あなたの後から総理になられる方、どなたか知りませんけれども、それらの方々に今後の指標を示しておいていただくことは、あなたの残された任期中の責任ではなかろうかと思うのであります。激励を込めて申し上げるわけで、いかがなものでありましょうか。
  163. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 御激励は、まことにありがとうございます。しかし、政治のまさに終わらんとするやというのは早過ぎますね。まだ国会でこれだけの重要案件を審議していただきまして、法案を成立さすべく鋭意努力している最中でございまして、まだまだ我々としては努力すべき対象、目標は十分あって、また、しなければならぬ、そう思っておるところでございます。  いろいろお挙げになった案件等につきましては、それらについて一つ一つ私の考えを申し上げておるところでございますが、いずれ適当なときになったら、自分の政治というものを全部、この五年間を考えてみて、そして締まりをつけるというか切りをつけるというか、やはり次の時代も考えていろいろやるべきことはやっておかなければならぬ、そういうふうに考えておりますが、まだそういうことを申し上げるには早過ぎる、あなたも大変せっかちなところがある、そういうふうに拝察した次第であります。
  164. 滝沢委員(滝沢幸助)

    ○滝沢委員 せっかちなのかもしれませんが、しかし私が申し上げていることはあなたを支援された多くの国民が望んでいることだと存じまして申し上げるのであります。いかがとは思いますが、重ねて申し上げます。  さきに述べました憲法、教育、防衛その他国家の基本問題について、あなたはといいますか自民党は、むしろこれを明確に決断することなく、私たちの何はこの辺でしょうか、相当広くしてもこうです、ところが、自民党さんは、三百六十度、東西南北の窓を開いて、いわば憲法改正論者から護憲論者から、右から左から全部の票を——国民全部の票じゃありません、幾らか残っておりますがお集めなさる。しかし、よってもって現に政権を持っているがゆえの権力ないしは行政のサービス、こういうものの安売りをもって票を集めなさる。その結果の三百。ないしこれが四百であろうと五百であろうと何物ぞと私は申し上げたい。かつて、戦争中の政権が獲得しました九〇%の議席と選ぶところがないじゃありませんか、と私は申し上げたいのでございます。戦後四十年、我が国の国家運営に当たられたこの結果を一々挙げれば切りがありません。経済こそは成長しましたが、さっき申し上げました国家意識の問題等につきまして実情はいかがでありますか。これを思いまするときに、この際、相当の票数は減らしても、議員を減らしてもないしは政権を一時失うことがあっても、今日ここに議論になっております公害の問題をも含め、やはり明確な指標を出されて決してせっかちではないと私は思うのでありますが、重ねて、いかがなものでありましょうか。
  165. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 「心大海のごとし」という言葉があります。自民党は大海のごとき存在でもありまして、揚子江も流れ込めば利根川も流れ込めばメコン川も流れ込む、そういう大きなところがあると思うのです。そういう懐が広いところがなければ全世界を相手にしてこれだけ難しい時代にいろいろな複雑な問題を処理する力は生まれない、そう思う次第なのでございます。我々としてはそのときに大事な問題を的確に処理していく。しかし、問題は次々に出てくるでありましょう。しかし、時務ということがありまして、そのときの仕事という問題を的確に処理して次々にそれらを片づけていく、そういう考えに立ってやってきたつもりであります。
  166. 滝沢委員(滝沢幸助)

    ○滝沢委員 そういうことをおっしゃっておりますから、売上税のように議員が一人一人の利害によって賛成ができたり不賛成ができたりするわけですわな。それは自民党さんのことですからそれといたしまして、しかし、そういうことをおっしゃっていると、いずれ政権を失う日の傷は相当に大き過ぎるのじゃないか、こういうふうに思います。  ところで、いろいろ議論を承っておりますると、患者を見捨てない、そのためには再指定、再認定という言葉。大臣環境庁、これは初めてですよね。総理がお出ましになるまでは再指定、再認定というような言葉は出てきませんでした。これをも含めて、患者を見捨てない、いわば公害のない国づくりをなさるという力強い姿勢を示していただいたと理解するのでありますが、そのように理解してよろしゅうございましょうか。
  167. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 あくまで客観的、科学的なデータに基づきまして、そしてこれは大事である、必要ある、そういう場合には再認定、再指定ということも考えておる、そういうことも中に含まれておると先ほど来申し上げたとおりでございます。
  168. 滝沢委員(滝沢幸助)

    ○滝沢委員 最初からの議論の中で、中公審会議録を公表しろ、しないといういろいろな話がありました。しかし、中公審だけではなくていろいろと委員会、諮問機関等設置されておりまして、この手法にもいろいろと議論はありますが、私は、そういうことの公の議論の資料というものはなるべく国民の前に明らかにして、あまねく国民から理解されるという姿勢こそ本当だと思うのですが、いかがでしょうか。制度のことを承っているのじゃありません、考え方を承っているのです。
  169. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 正式に出た結論というものは公開すべきものである、そう思っております。ただ、審議の過程におけるデータというようなものは必ずしも公開すべきものにふさわしくないものもあると思います。
  170. 滝沢委員(滝沢幸助)

    ○滝沢委員 時間がなんでありますからこれ以上議論を深めることができませんが、せっかく総理にお目にかかりました機会に、実は、私はあなたにたびたび質問主意書なるものを提出してございます。その中に、私は政治家として、いや人間としての所信に基づいて申し上げていることがございます。  今議論されておりますのは公害から体の健康を守ること、しかし心の健康も守らなければなりません。その一つの課題として日本国の国語、特に漢字が戦後非常に簡略になり、適当に改廃されました。あるいは仮名遣い、俳句をおやりですからこれはよくよく御存じと思いますが、私もその一人でありますが、仮名遣いのあの便宜主義の改正、こういうものが日本の文化、歴史を毒している。さらには、これによってもってきて、法務省におきましては戸籍法五十条、同施行規則六十条によりまして、赤ちゃんが生まれたとき、親御さんがその子の幸せを祈って選んだ名前が登録されないのです。二千百十一字しか使うことができない。こういうのは、せめて名前ぐらいは自由につけさせてあげていいのではないか。こういうことでたびたび質問主意書等を提出しまするが、恐らく文部省、法務省の官僚の作文と思うけれども、まことにそっけない、あなたの御意見とも思えない結果が出てくるのでありますが、いかがでしょう総理、漢字なんかもあるいはまた仮名遣いなんかも歴史を重んずるのが本当だろうと思うし、わけても赤ちゃんの名前ぐらいは自由につけさせてあげるだけの、これこそ雅量のある大海のごとき心を示してちょうだいしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  171. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 国語を大事にするという点は全く同感でございまして、日本語の乱れというものは世の乱れという形になってくると私は思っております。そういう意味におきまして、最近は文部省等も精を出しまして国語の大切さというものを強調して、それに相応するような政策をやってきております。漢字というものもそういう意味におきましては大事な要素で、日本文化を形成している非常に重要な場面であると思います。最近は漢詩を知る学生が少なくなりまして、あの簡潔な文章の中にある、行間にある余韻嫋々たるセンス、ニュアンスというものが通じないような感じになってきておる。これは非常に遺憾なことでありまして、やはり漢詩というようなものも十分掌握できるような学生なり日本人として出てくることが望ましい、そう考えております。  ただ、余り難しい漢字の名前をつけられるということは、親としては満足でしょうけれども、国全体として見た場合にさてどうかなというところもあります。したがって、国語審議会等におきまして、国民の能力とかあるいは国民の需要概念といいますか社会通念と申しますか、そういうものから見てこの程度という基準を決めておるのでありまして、必要に応じてこれは逐次広げられる要素もあると思っております。ところが、国語力が非常に落ちているということは大学教育の最大の欠点の一つでありまして、今後とも小学校あるいは中学校、高校、大学等を通じましてそれらの点については力を入れたいと考えておるところでございます。
  172. 滝沢委員(滝沢幸助)

    ○滝沢委員 いろいろ承りましたが、まだ問いたいことは多々ございますが、時間が参りましたのでこれで終わります。  どうぞひとつ、せっかちかどうかは別として、残されました総理としての任期中に、先ほど申し上げました幾多の課題について勇気のある選択と指標を示されまするように、御健闘を祈りたいと存じます。ありがとうございました。委員長ありがとうございました。
  173. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 岩佐恵美君。
  174. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 中曽根内閣のもとで、公的私的を問わず諮問機関を重用して、国会を軽視する姿勢が非常に目につきます。公害補償法の問題でも、中公審の各種委員会の討議資料また会議録は、本委員会で再三要求しているにもかかわらず出てきていません。したがって、私は委員会の審議は尽くされたものだということが言えないと思っております。私は冒頭に、このような国会無視の姿勢は議会制民主主義を守る上から絶対に許されないことであることを厳しく指摘をした上で、総理に何点か質問をいたします。  私の持ち時間が全部で十五分でございます。短いのでまとめて質問をいたします、まとめてお答えをいただきたいと思います。  第一に、大気汚染公害はまだ終わっていません。現行指定地域では毎年九千人もの新たな患者さんが認定されています。東京、大阪などの大都市、特に幹線道路沿道ではNO2や粒子状物質による汚染が改善されるどころか、ますますひどくなっています。このような状態を放置して指定地域を一挙に全面解除する、これは現実を全く無視したひどいやり方だと思います。公害は終わった、大気汚染はなくなった、果たしてそういうことが言えるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。  第二に、指定地域解除の根拠となった中公審答申が出された経過は、患者さんを初め国民の声を無視した極めて非民主的なものだったと思います。中公審には経団連など財界の代表が多数、しかも川崎製鉄など公害裁判の被告、加害企業の代表まで委員として入っています。しかし患者代表は一人も入っていません。今回審議対象となっている公害補償法は、四日市裁判などで加害企業集団の賠償責任が明確にされたことを踏まえてつくられた、いわゆる民事裁判における和解を法制化したものと言われています。その法制度改正するのに加害企業だけ審議会に参加をさせる、患者を締め出す、こういうやり方は全く不公正であります。患者さんの意見を産業界の意見と同時に聞いたというふうに環境庁は言っています。しかし、ヒアリングによる聴取と委員として審議会に参加をする、これは全く別問題であります。全く別の立場であります。患者さんを診た医者が一人入っている、こういうことも言われますが、これは当然患者さん本人とは違うわけであります。このような不公正な構成のもとでの審議会答申、これはおのずから結論が決まっていたものだと言わざるを得ないと思います。このような答申をそのまま患者さんの反対を押し切って採用する、これは全くおかしいと言わざるを得ません。いわゆる社会ルールあるいは常識に反しているというふうに思います。この点、どう考えられますか。  第三点。中公審は、医者や疫学の専門の方々が入っているいわゆる科学的知見に責任を持つ専門委員会結論を故意にねじ曲げたり、資料検討を十分にする時間的余裕を専門委員会に持たせず、専門委員みずから不満が出されています。例えば、指定地域患者がふえているといっても、全国的にもぜんそく患者がふえているから公害によるものではない、そういう結論づけの論拠になった厚生省の調査について私は当委員会で再三指摘をしました。専門委員会でこれは検討してないはずであります。それなのに、疫学の専門家がいない作業小委員会、保健部会で勝手に資料を引用して、そして答申に有利なように採用した、こういうことが行われています。この資料について当委員会の参考人質疑で、医師である吉田参考人は、この資料の採用は的外れであると私の質問に対して答えています、  また東京都の大気汚染、特に道路沿いの汚染患者発生に密接な関係があり、NOxの影響を認めた報告も、専門委員会では最終報告の三年前に出された中間報告しか検討する機会が与えられていないのです、  さらに、三十年代、四十年代と大気汚染が同様のものとは考えられないという部分も、この言い回しが出てきた資料、けさの理事会でも私は要求しました。しかしこの根拠資料、特定できないから出せません、そういう回答しかないのであります。全くいいかげんであると言わざるを得ません。  このように答申は非科学的であり、また専門委員会報告をゆがめているという点でも大問題です。このような疑問、疑惑を抱えたまま指定地域全面解除結論を出すということ、これは私は手続的にも大変大きな問題があると思います。この点についてお答えをいただきたいと思います。  第四に、公害補償法第二条四項に基づき地方自治体の意見を聴取した。指定地域反対が二十一あります。慎重にというのが二十四あります。ところがこれらの意見を全く無視して、わずか六つしかない賛成の意見を採用する。ことしは地方自治法制定四十周年であります。憲法に保障された地方自治の本旨を守る、このことは当然行われなければなりません。このやり方は全く反していると言わざるを得ません。  第五に、指定地域全面解除新規患者さんを切り捨てると同時に、新しく実施する環境保健事業は、既存の患者さんが減ることによって生ずる余剰金を積み立てて行うものであります。患者さん切り捨てにもなりかねません。また、他方大気汚染、特に大都市の空気が汚くなっているのに患者さんを儀牲にする指定地域全面解除、これを行えば、道路、自動車対策など公害規制が後退することは明らかであります。  一方、東京では東京湾横断道、首都圏中央連絡道、外環道など空気を汚す道路建設がメジロ押してあります。これでは二度と公害を起こさないでほしい、こういう患者さんの切実な願いにも反するではありませんか。新たな大規模な被害を引き起こす可能性をはらんでいるわけであります。こういう事態に対して、一体どう対処をされるのか。  以上、五点につきまして質問をいたします。
  175. 中曽根内閣総理大臣(中曽根康弘)

    ○中曽根内閣総理大臣 五点の御質問をいただきましたが、まず第一点につきまして、解除は不当ではないかということでありますが、これは科学的データによりまして専門家が三年間いろいろ審議をいたしまして、そしてその結果出た結論を我々は尊重して今回のような法律提出、そういうことにした次第でありまして、不当であるということは考えておりません。  それから中公審のメンバーにつきましても、大体公益的な性格を持っている方が網羅されて出ておりまして、ジャーナリストとか学者であるとかあるいは国民生活を代表する消費者代表、生活代表的な方々であるとかお医者さんであるとか、そういうような者が大部分でございまして、このメンバーが不当であるとは思っておりません。  それから結論をねじ曲げているということでありますが、そういう事実はありません。素直に中公審全体としての結論を我々は精細に点検いたしましてこの法律制定したということであります。  地方自治体の意見につきましては賛成、反対、慎重、おのおのいろいろなニュアンスがございました。それら全体を勘案いたしまして我々は判断を下したわけであります、  それから、指定地域の解除が患者切り捨てになるのではないかということは、そういうことはございません、前から申し上げましたように、認定された患者さんの皆さんには今までのように手当ては十分していく、そういう考えを持っております。  横断道とか外郭環状とかバイパスをつくるということは、都心におけるNOxの公害をできるだけ減らそう、交通を緩和してよくしようという意味でもやっておるのでありまして、今のように都心に殺到する交通体系を、周りを迂回して都心を通らないで行けるようにするということは交通政策上非常に重要である、そう考えるので、この政策には共産党もぜひ賛成していただきたいとお願いする次第であります。
  176. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 私は今の答弁、本当に誠意がないと思うのですね。今までこの委員会で科学性についていろいろ議論をしました。しかし、肝心の資料が出てこないのであります。出てきている資料から見ただけでもその非科学性、ねじ曲げ、こういうものが明らかになってきていると私は確信を持って言い切れるのであります。本当に許せないと思います、  それから、今後のいろいろな道路建設につきまして——私は東京の郊外に住んでおります。郊外が選挙区であります。今の道路建設は、まさに都心の汚染を郊外に拡大するものであります。少しも都心がよくなるのではありません。今でも八王子とか日野とかそういう地域では、都の条例による十八歳以下の認定患者さんがたくさんいらっしゃるわけであります。八王子では千六百人もいるのです。これをさらに拡大することになるのです。この点、私は本当に怒りを持って指摘をしたいと思います。  今回の指定地域全面解除という公害補償法改悪、これは今までの短い質疑の中でも最初に結論ありきのものです。つじつまの合わないやり方である、こういうことが判明をしたと思っています。しかも、その一番の推進役は中曽根総理自身ではありませんか。この法律ができた当時、産業界の意を受けて公害企業の負担を減らすよう法案作成に当たって働きかけたのは、当時通産大臣だった中曽根総理であります。また、今回の中公審の諮問のきっかけとなったのは第二臨調の最終答申ですが、この臨調を進めたのも総理が行管庁長官のときでした。また、指定地域解除に向けていろいろ国会でも何回かやりとりがあります、総理は、三年前からずっとこの指定地域解除に熱心な答弁を繰り返してきました。昨年の公約違反の選挙で自民党が圧勝すると一挙に全面解除に踏み切ったものであります。私は、前代未聞の暴挙と言えるこの改悪を絶対に認められないし、本当に国会史上に汚点を残すものだと思います。法案の撤回を強く総理に求めまして、私の質問を終わりたいと思います。時間が限られておりますので、御答弁は結構でございます。  以上で終わります。
  177. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  178. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 この際、戸沢政方君から、本案に対する修正案が提出されております。  提出者より趣旨説明を求めます。戸沢政方君。     —————————————  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に   対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  179. 戸沢委員(戸沢政方)

    ○戸沢委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対する修正案について御説明申し上げます。  修正案はお手元に配付してありますので、案文の朗読は省略させていただきますが、その要旨は、関係法律について所要の条文整理をするものであります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  180. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 以上で趣旨説明は終わりました。     —————————————
  181. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 これより本案及び修正案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。岩垂寿喜男君。
  182. 岩垂委員(岩垂寿喜男)

    ○岩垂委員 日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、公害健康被害補償法の一部を改正する法律案について反対の討論を行いたいと思います。  今回の法改正、特に四十一地域にわたる指定地域全面解除は、中央公害対策審議会専門委員会報告の中から改悪に都合のいい部分だけを利用し、その上にその報告の一部をも歪曲して、そしていわゆる中公審報告という形でまとめ上げた、これらの経過についてはこの委員会でさまざまな角度から指摘をされたことでございます。もう一つは、指定地域解除の条件に欠かすことのできない地方自治体の意見というものの中で、その多数意見を踏みにじって強行されようとしているところに大きな問題があると言わなければなりません。  これはかって私自身もかかわったことでございますが、二酸化窒素の環境基準の改定の際に犯した誤りというものをまた繰り返すものだと言わなくてはなりません。現実に毎年九千人に上る新規認定患者が出ているということは、SOxだけではなくてNOxとの複合汚染によるものであることは余りにも明白であります。その因果関係を究明し、原因者負担の原則でその補償をしていくということは当然のことであります。  しかし、今回の法改悪によって公害被害者という弱い立場の人々を一方的に切り捨てる。私は非常に大きな問題だと思うのは、四日市判決で示された公害にかかわる因果関係説に基づく民事上の損害賠償責任というものを免罪するということ、もう一つは、PPPの原則とも言われている原因者負担の原則というものをあいまいにするものだとあえて言わなければなりません。先ほども総理質問の中で申しましたけれども、科学を政治の名で踏みにじる、これは議会制民主主義の筋から見ても国民の信頼を得ることになり得ない、このように考えます。  そういう点で私はこの法案に対して強い反対の決意を表明いたしまして、討論を終わります。
  183. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 春田重昭君。
  184. 春田委員(春田重昭)

    ○春田委員 私は、公明党・国民会議代表いたしまして、ただいま議題となりました公害健康被害補償法の一部を改正する法律案について反対討論を行うものであります。  さて、今回の本法改正の骨子は、本法律に基づく公害健康被害補償制度の大幅な見直しであり、その内容は、公害によって健康を害された方々をなおざりにしたものと衆目が一致して指弾されるところでございます。まさに本法の精神を根底より崩し、本法を空洞化するものと断ぜざるを得ないのであります。  そもそも公害健康被害補償制度は、経済の高度成長の落とし子と言われる公害に体をむしばまれ、病の床に供されている方々を人道的な見地より、さまざまな利害を超克して救済に当たる「健康被害に係る被害者の迅速かつ公正な保護を図る」ことを目的に設けられたものであることは論をまたないところであります。  また、昭和四十九年九月に本制度が発足して以来既に十数年を経過しているところでございますが、その間、公害被害者補償救済の上で画期的制度と評価され、また、我が国における公害行政の大枠を構成するかなりの役割を担ってきたとも言えるのであります。  しかるに、今回の改正は、こうした公害に対する地道な積み上げを一挙に根こそぎ崩す、まさに公害行政の大きな変質と後退をもたらすことはおろか、環境庁の存在意義すら疑われかねない暴挙以外の何物でもないと言わざるを得ないのであります。  さらに反対の理由を申し上げれば、昭和四十九年十一月の中公審答申では、指定地域の解除要件として著しい大気汚染がなくなり、その影響による疾病の多発がなくなることとしておりますが、今日においてもなお新たな公害患者発生を見るなど、改善されたとは言えない状況にあります。さらに、今回の公害指定地域全面解除の方向性を打ち出した昭和六十一年十月の中公審答申専門委員会報告を歪曲したもので、認めがたいのであります。  また、現状の大気汚染NOxやSPMなどの複合汚染であり、汚染の質的、量的な解明はなされておらず、したがって対策に明確さが欠けているのであります。さらに、大都市の沿道におけるNOxによる大気汚染は改善されていません。  また、既存認定患者に対しましては、更新時に運用を厳しい条件などつけないことであり、新規患者についても救済の光を与えるべきであります。  私は以上の諸点につき、反対の意を表明いたしましたが、総合して言えば、大気汚染状況は決して改善されたとは言えず、現行制度の存続を強く要求して反対討論を終わります。
  185. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 岩佐恵美君。
  186. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対して反対討論を行うものです。  本法案は、現在の公害指定地域をすべて解除することを前提とするものであります。大都市や幹線道路沿道におけるNO2を中心とする大気汚染は改善されず、患者もふえる一方であり、公害は決して終わっていません。環境庁自身の調査によっても大気汚染と健康への影響は明らかであり、東京都の調査でも確かめられています。このような現状のもとで指定地域全面解除するということは、被害者を見捨て、公害企業の責任を免罪するものであり、公害行政の大後退をもたらすものです。  本法案の根拠となっている中公審答申は、専門委員会報告を意図的にねじ曲げ、科学的根拠も示さないまま指定地域全面解除結論を出しています。厚生省の患者調査の恣意的な利用、東京都の調査を無視したことなど、科学的な裏づけは全くありません。専門委員会委員長からも批判されるような非科学的な答申に基づいたこの法案は、全く検討に値しないものであります、  本法案の提出に至る過程を見ても、中公審審議に加害企業側の代表だけが参加し、患者代表が加わっていないことや、関係自治体の九割にも上る反対、慎重の意見が全く無視されたことなど、手続的にもこの法案は問題があり、撤回すべきです。  本法案は、指定地域解除後に新たな環境保健事業等を行うとしていますが、既存の患者が減少することによって生ずる余剰金を積み立てた基金によって新たな事業を行うということは、既存の患者切り捨てを促進する危険さえあります。  以上のように多くの重大な問題点を持つ法案でありながら、本委員会での審議においては、再三にわたって要求したにもかかわらず審議に必要な資料が提出されていません。また、地方公聴会や連合審査などの要求も無視されました。このような不十分な審議のままで採決が行われようとしていること自体、極めて遺憾であります。国会に満足な資料も出せないような法案は、直ちに撤回すべきです。  本委員会の審議を多くの患者の皆さんが見守っておられます。なぜ病身を押して運動を続けてこられるのかという私の質問に、患者会の代表は、公害がなくなっていないことは自分たちの体がよく知っている、公害がなくなってもとの体に戻ることが、私たちのような被害者を二度と出さないことが、私たちの願いだ、と述べておられます。こうした切なる願いを踏みにじる公害健康被害補償法改悪は絶対に認められません。このことを強調して、本法案に対する反対討論を終わります。
  187. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  188. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 これより公害健康被害補償法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決をいたします。  まず、戸沢政方君提出の修正案について採決をいたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  189. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決をいたしました修正部分を除いて原案について採決をいたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  190. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  191. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 次に、ただいま議決いたしました本案に対し、武村正義君、岩垂寿喜男君、春田重昭君及び滝沢幸助君より附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者から趣旨説明を聴取いたします。岩垂寿喜男君。
  192. 岩垂委員(岩垂寿喜男)

    ○岩垂委員 私は、ただいま議決されました公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につき、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読をいたします。     公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講すべきである。  一 大気汚染から地域住民の健康を保護するため、新たに発症する慢性閉塞性肺疾患患者に配慮した事業を行うなど健康被害防止事業を効果的に実施すること。  二 大気汚染の影響による健康被害を予防することの重要性にかんがみ、大気汚染原因者及び大気汚染原因にかかわりのある者に基金への拠出を確実に行わせるよう、中小企業に配慮しつつ、適切な措置を講ずること。  三 認定患者認定更新等に当たっては、その保護に欠くことのないよう配慮するとともに、その健康回復のための事業を一層充実すること。  四 主要幹線道路沿道等の局地的汚染については、その健康影響に関する科学的知見が十分でない現状にかんがみ、調査研究を積極的に推進するとともに、その結果に基づいて、必要に応じ、被害救済の方途を検討すること。  五 複合大気汚染による健康影響について、環境保健サーベイランス・システムを早急に構築し、地域住民の健康を観察して、必要に応じ、適切な措置を講ずること。  六 大都市地域における窒素酸化物等による大気汚染については、早急に環境基準の達成を図るため、ディーゼル車・大型車を中心とした自動車排ガス等の規制を強化するとともに、輸送の共同化、立体交差化等の自動車交通対策、電気自動車・メタノール車等の低公害車の普及のための助成等の諸対策を総合的、計画的に推進すること。 以上でありますが、その趣旨につきましては、案文中に尽くされておりますので、説明を省略させていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げる次第でございます。  以上です。
  193. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  194. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 起立総員。よって、武村正義君外三名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、稲村環境庁長官より発言を求められておりますので、これを許します。稲村環境庁長官
  195. 稲村国務大臣(稲村利幸)

    稲村国務大臣 ただいま御決議いただきました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、努力いたす所存でございます。     —————————————
  196. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  197. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  198. 林委員長(林大幹)

    ○林委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十分散会      ————◇—————