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1987-09-02 第109回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年九月二日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 稲葉 誠一君    理事 上草 義輝君 理事 小渡 三郎君    理事 町村 信孝君 理事 宮里 松正君    理事 上原 康助君 理事 玉城 栄一君    理事 和田 一仁君       北村 直人君    佐藤 静雄君       鈴木 宗男君    武部  勤君       野中 広務君    鳩山由紀夫君       江田 五月君    小谷 輝二君       藤原 房雄君    林  保夫君       瀬長亀次郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣          (総務庁長官) 山下 徳夫君  出席政府委員         総務庁行政監察         局長      山本 貞雄君         北方対策本部審         議官      紀 嘉一郎君         北海道開発庁計         画監理官    大串 国弘君         沖縄開発庁総務         局長      勝又 博明君         沖縄開発庁振興         局長      塚越 則男君         外務省欧亜局長 長谷川和年君  委員外出席者         警察庁警備局警         課長      半田 嘉弘君         宮内庁長官官房         総務課長    齋藤 正治君         防衛庁防衛局運         用課長     大森 敬治君         防衛庁防衛局調         査第二課長   伊藤 康成君         防衛庁経理局工         務課長     黒岩 博保君         防衛施設庁施設         部施設対策第三         課長      嶋口 武彦君         外務省北米局安         全保障課長   岡本 行夫君         外務省欧亜局ソ         ヴィェト連邦課         長       茂田  宏君         文部省初等中等         教育局中学校課         長       辻村 哲夫君         文部省教育助成         局地方課長   奥田與志清君         文部省体育局ス         ポーツ課長   向井 正剛君         水産庁振興部沿         岸課長     堀越 孝良君         郵政省放送行政         局業務課長   團  宏明君         建設省道路局日         本道路公団・本         州四国連絡橋公         団監理官    小松原茂郎君         特別委員会第一         調査室長    木村 俊之君     ――――――――――――― 八月二十日  北方領土返還国際司法裁判所に提訴するため  の決議に関する請願安倍基雄紹介)(第六  二六号)  同(青山丘紹介)(第六二七号)  同(伊藤英成紹介)(第六二八号)  同(小沢貞孝紹介)(第六二九号)  同(大矢卓史紹介)(第六三〇号)  同(岡田正勝紹介)(第六三一号)  同(春日一幸紹介)(第六三二号)  同(川端達夫紹介)(第六三三号)  同(河村勝紹介)(第六三四号)  同(神田厚紹介)(第六三五号)  同(木下敬之助紹介)(第六三六号)  同(北橋健治紹介)(第六三七号)  同(小渕正義紹介)(第六三八号)  同(佐々木良作紹介)(第六三九号)  同(田中慶秋紹介)(第六四〇号)  同(滝沢幸助紹介)(第六四一号)  同(玉置一弥紹介)(第六四二号)  同(塚田延充紹介)(第六四三号)  同(塚本三郎紹介)(第六四四号)  同(中野寛成紹介)(第六四五号)  同(中村正雄紹介)(第六四六号)  同(永末英一紹介)(第六四七号)  同(西村章三紹介)(第六四八号)  同(林保夫紹介)(第六四九号)  同(吉田之久君紹介)(第六五〇号)  同(米沢隆紹介)(第六五一号)  同(和田一仁紹介)(第六五二号) 九月一日  北方領土返還国際司法裁判所に提訴するため  の決議に関する請願塚本三郎紹介)(第一  一二六号)  同(和田一仁紹介)(第一一二七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 九月一日  核戦略爆撃機等嘉手納基地飛来反対に関する  陳情書  (第一五三号)  北方領土問題等解決促進に関する陳情書  (  第一五四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  沖縄及び北方問題に関する件      ――――◇―――――
  2. 稲葉誠一

    稲葉委員長 これより会議を開きます。  沖縄及び北方問題に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北村直人君。
  3. 北村直人

    北村委員 河北質問機会を与えられましたことを感謝申し上げる次第でございます。  冒頭、山下総務長官におかれましては、この春、四月に河北の我々委員と一緒に北方視察をしていただきました。本当に心から感謝を申し上げる次第でございます。つぶさに北方の厳しい状況あるいは経済の厳しい状況を目の当たりに見ていただきまして温かい御指導をいただいたことにつきましては、選挙区を同じくしております私物め北海道五区の先生方、そして北海道選出の代議士に成りかわって厚く御礼を申し上げる次第でございます。  そこでまず、長官お願いをしたいと思いますし、また長官の御意見をお聞きしたいと思いますが、北方領土隣接地域振興基金早期達成ということで、五十八年に五年間を目途として百億を積んでいただくということが議員立法で国会を通過させていただいたわけでございます。しかし、六十二年、最終に至っても百億にはほど遠いという基金達成でございます。しかし、皆さんの温かい御理解で、この五月には十年という期間に直していただきまして、さらに百億に向かって皆さんの御理解をいただいているところでございますが、今のところは五十億をちょっと超えただけの基金でございます。当初、この北方基金立法趣旨のときには利率にして七%を大体の基準と置いたところでございますけれども、今の国の基金金利関係では、ことしになりますと五・一%あるいは今月に入って五・二%くらい、大体そのような七%から見ると非常に低くなっている。あるいは北海道の方の預託金利においても二・六四というふうな非常に低い金利になっている。これでは立法趣旨を生かして百億積んでいただいて、その中から出る利息を一市四町、根室市を初め羅臼、標津、中標津、別海、ここで使わせていただくには、当初予定した金利からは非常に厳しいものが予測される。やはり早い時期にこの百億を積んでいただきたい。私は、心から長官お願いをする次第でございます。  そして、今回も、自民党の河北委員会の中で非常に議論がございましたけれども、この八月三十一日に概算要求で九億という基金要求が大蔵にされました。これも我々としては非常に不満はありますけれども、総務庁皆さんあるいは長官の本当に温かい御理解でよくここまで予算要求にこぎつけていただいた、心から感謝をする次第でございます。しかし、あと五年でなくて、何とか短い期間の中で百億を積んでいただき、その百億から出てまいります利息を、北方領土が戻ってくるまでの間、一市四町の産業発展地域発展のために御尽力いただけるよう、長官の温かい御配慮をいただきたいと思います。それで、この延ばしていただいた期間を縮めていただいて百億を何とか短期間の中で積んでいただける御意思があるかどうかをまず長官にお伺いさせていただきたいと思います。
  4. 山下徳夫

    山下国務大臣 この振興基金につきましては、ことしの四月末から五月の初めにかけまして現地にお伺いいたしました際、北海道庁の首脳部初め関係各団体から非常に強い要望がございまして、私もそのことはもう十分承知をいたしております。しかしながら、御案内のとおり現在の予算の仕組みの中に一つマイナスシーリングというものがございまして、こういうことはきちんと守らなければならぬ、そういうことをつかさどるのが私の方の役所でもございますので、実は率直に予算の構成には苦慮をいたしておる次第でございます。  特に総務庁というのは、ほかに別に事業らしい事業というのはほとんどございません。したがって、やりくりということができるような役所じゃございませんので、これ自体を大きく伸ばすということは事実上非常に難しい問題がある、しかし、そんな中にもとにかく昨年同様は何とかしなければということで、一応九億円というものは計上いたしておるわけでございます。今申し上げましたとおり、皆さん方の御期待、御要望はだれよりも私は承知いたしておりますので、五年延長されたからといって五年でやればいいや、そんな安易な気持ちではなくて、今後とも最善の努力を払ってまいりたいと思います。
  5. 北村直人

    北村委員 長官の大変力強い御決意をお聞きいたしまして、私も意を強くするところがございますし、また地元の方々も五年は長いなという不安に、きょうは多分拍手を送っていただけるものだと思います。何とか長官の温かい御理解で、五年ではなくて短い期間の中で百億に積んでいただきますよう、ひとつ総務庁挙げてお骨折りをいただきますようにお願い申し上げる次第でございます。  さて、昭和六十二年度の中ではおよそ二億五千五百万円がこの基金対象事業に支出をされているわけでございます。これは六十二年度の計画書でございます。大体八割が北方領土隣接地域振興等事業について、あと二割ぐらいが北方領土問題等世論啓発事業に実は使われております。しかし、この北方基金立法趣旨のときには、この基金については一市四町が事業として使わせていただくということが明記されていると私なりに理解はしておるところでございますが、聞くところによりますと、その北方領土問題等世論啓発事業の中で、一市四町以外の地区で使用されているんではないかという懸念が実は出ております。  確かに一市四町が事業主体となって、北海道であれば私もそれなりに理解はできるわけでございますが、例えばこれが、これは本当かどうかわかりませんのでそこら辺のところも御答弁をいただきたいと思いますが、例えば北海道ですと毎年二月には札幌雪祭りという世界的に大きなイベントがございます。そういう雪祭りの中に北方のいわゆる啓発運動一環として北方コーナーを設けさせていただいておるようにも聞いております。しかし、これは一市四町の事業主体ではなくて、あくまでも札幌市あるいは北海道がやるものでございます。そうなりますと、この立法趣旨からいたしまして、少ない金利の中から一市四町が事業主体となってやっているについて、地域外で使われるということについては私は非常に納得ができない、というよりも有効な金利の運用にちょっと問題があるのではないか。北対協なり、あるいはもう一つございます期成同盟ですか、そういうところでも予算はあると思いますけれども、そちらの方から出していただける、その方が北方基金をつくったときの立法趣旨からして妥当ではないかと私は考えておりますが、お答えをいただければ大変ありがたいと思います。
  6. 紀嘉一郎

    紀政府委員 お答えいたします。  一市四町が実施主体になるならば、北海道内で使われることについては問題ないと理解しております。それが特別措置法趣旨である北方領土問題の啓発等に使われるならば、一市四町が主体であれば差し支えないと考えております。
  7. 北村直人

    北村委員 北海道であればという今のお答えでございますが、それであれば、例えば北海道ではなくて東京あるいは大阪等地場産業発展のために一市四町の産業祭りをする、あるいは物産展をする、そういうときにその物産展北方啓発コーナーを設けてやりたいというときにはこの北方基金対象として認めていただけることになるのでしょうか。それについてお答えをいただければ大変ありがたいと思います。
  8. 紀嘉一郎

    紀政府委員 北方領土問題の啓発については、全国的には北方領土問題対策協会、それから基金関係につきましては北海道内、こういうふうに理解しておりますので、もしそういう問題がありましたら、全国的な問題については北方領土問題対策協会が分担するというふうに考えております。
  9. 北村直人

    北村委員 そうしますと、全国的なものであればこの基金以外のところで使わせていただくということで理解をしてよろしいのですね。
  10. 紀嘉一郎

    紀政府委員 この北方基金による啓発活動については、一市四町が主体になって北海道内で使うことは差し支えございませんけれども、北海道を除く全国的な地域におきましては、これは先ほど申しましたようにこの法律の趣旨からいって北方領土問題対策協会等に分担させるのが適当かと存じます。
  11. 北村直人

    北村委員 何となく理解に苦しむのですが、それでは要望ということで、もし一市四町が地域振興のために北海道外でも先ほど言ったように物産展産業祭をぜひ行いたいというときには、北対協なり同盟の方で、その助成等については総務庁の方からできるだけの御指導をいただけるよう、要望としてお聞きとめをいただきたいと思います。  次に、実は北方領土返還については国の重要課題として、中曽根総理大臣もあるいは歴代総理歴代外務大臣も声を大きくして国内外に意見を述べているところでございますが、五十四年の九月九日には園田外務大臣現地視察しております。五十五年の十月二十五、二十六日には伊東外相現地を見ております。そして五十六年の九月九日には鈴木総理が初めて北方領土視察していただきました。五十七年には櫻内外相現地を見ていただき、そして五十八年には安倍外務大臣北方視察をしていただいている。五十四年から五十八年までは毎年大臣あるいは総理視察をしております。総務長官におかれましては、先ほど申したとおり行っていただいて本当に心から感謝をしているところでございますが、外務大臣においては五十八年の安倍外相以後ことしまで一度も北方視察をしていただけていない。  そしてこの九月の五日、六日に倉成外務大臣が行っていただけるということで現地人力あるいは我々河北も大変喜んでおったところでございますけれども、新聞等では、非常に厳しい状態が続いているので北方視察については延期というよりも今回は取りやめるという外務省の見解でございます。しかし、日本重要課題一つのこの北方領土返還運動の中で、どのような外圧あるいはいろいろな状況があっても、年に一度は外相みずからが北方視察していただいて現地人力に、あるいは国民皆さんにきちっとした啓蒙、啓発活動をするのが外務大臣としての役目ではないか、私はそう思います。  今回は外相がどのような理由で北方視察をお取りやめになったか、およその見当はつきますけれども、この後も外務大臣北方視察をする用意があるのかどうか、そこら辺のことを外務省の方にお伺いをさせていただきたいと思います。
  12. 長谷川和年

    長谷川(和)政府委員 お答えいたします。  北方四島は我が国固有領土でございます。こういった北方四島の一括返還を実現しまして、なるべく早くソ連との間に平和条約を締結して安定的なかつ真の相互理解に基づいた関係を築くというのが日本政府対ソ外交基本方針でございます。こういった基本方針との関連で、対ソ外交に直接携わっている外務大臣北方領土視察するということは大変意義のあることと外務省は考えておりまして、従来からできるだけ多くの外務大臣北方領土視察を行っていただいてきております。  たまたま委員指摘倉成大臣北方領土視察につきましては、従来から検討しておりまして、現在も検討中でございます。二、三の新聞にいろいろな憶測記事がございましたが、外務省としては従来から検討しており、現在も検討しております。ただ、大臣のほかのいろいろな日程の関係がございまして今までに実現しておりませんが、今後とも検討し、機会をとらえてぜひとも北方領土視察する予定でございます。  それから、先ほど委員がちょっと御指摘になりました、最近ございました日本ソ連との間の事件でございますが、これは我が方としては、東京におりましたソ連通商代表部代表代理日本国内法の規定に触れ、かつその公的資格にふさわしくない行動をしておりましたので、本人の自発的な退去を求めるという事件でございます。また、竹島防衛駐在官に関しましては、本人がたまたま七月二十九日にオデッサに視察に参る、これは通常の視察旅行一環でございまして、そこで行った行為というのは全くその公的資格に合ったことをしたのですが、ああいうことを言われまして、これは全く言いがかりでございます。  こういった問題と、委員あるいは北海道選出先生方が大変御熱心にやっておられる北方領土返還の問題、これは全然次元の違う問題で、政府としてはこの問題は最近ありました事件とは全く関係ない、今後とも熱心にやっていく、そういう考えでおります。
  13. 北村直人

    北村委員 ぜひ外務大臣にはやはり毎年北方の地を踏んでいただいて、現地方々の御意見、そして外務大臣みずからが北方視察するということが、国民方々北方領土我が国固有領土であるという啓発の一番の宣伝効果になると私は思います。ぜひこれからも外務大臣に毎年北方視察お願いしたいと思いますし、さらに要望として、ことしも北方墓参関係については総務庁長官の温かい大きなお力、そして外務省さんのお力によって、若干日にちはずれましたけれども、去年と同じ人数で同じ場所に墓参をさせていただきましたが、皆さん大変喜んでおられますし、この後も、来年以降もぜひ北方墓参の継続、それとできるのであれば地域の拡大について長官あるいは外務大臣そろってひとつ御審議をしていただきながら、前向きに検討していただきますように御要望申し上げたいと思います。  続きまして、文部省さんにもひとつ御質問をしたいと思っておりますが、実は先ほど申したとおり、日本重要課題一つ我が国固有北方領土教科書問題で、総務庁さんは来年をもって全都道府県副読本を配付されるというようにお聞きしております。これは大変ありがたいことだと思います。しかし中身を聞いてみますと、一つ学校に大体五十冊程度の副読本である、それも共有の副読本である、そう聞いております。  ここに現地羅臼町がみずから、社会科副読本、こんな分厚いのをつくりまして、百六十ページから二百十ページまで約五十ページに及ぶ北方のことを書いた副読本がございます。これは羅臼町ですと、年に二十四回これを使って子供に教えております。そしてほかの、例えば根室市でありますと、小学校の四年から中学二年までは年四時間、そして中学三年ではたったの年二時間、一市四町の現地でさえこのような時間でしか北方領土日本固有問題についての勉強をしていない。これは府県においては何をか言わんやというふうな懸念を実は私は持つわけでございます。ましてや先ほど言ったとおり一校五十冊、これは総理初め政府が、日本国有領土である、こう言って国民啓発運動をしているにしては大変少ない数ではないかと私は思います。  文部省として、年何時間はやれというふうな、そういう指導要領というのは多分ないと思いますけれども、しかし文部省さんの各府県教育委員会に対する指導というのは大きなものがあると思います。ぜひそこら辺のことを、本当に時間がございませんので、今の現状と今後の文部省さんとしての取り組みについて若干の御意見をお聞かせをいただければ大変ありがたいと思います。
  14. 辻村哲夫

    辻村説明員 北方領土の問題でございますけれども、北方領土は、これが我が国固有領土であるという立場に基づきまして、小中学校子供につきましてもその発達段階に応じて正しく理解させる、こういう観点に立ちまして、文部省としてもその指導努力をしておるところでございます。具体的には、教科といたしましては社会科におきましてそれぞれその指導観点等を明示いたしまして、各学校でそれによった指導を行うということで指導しておるわけでございます。  ただいま先生から副読本についていささか心もとないというようなお話があったわけでございますけれども、文部省としては、基本的には学習指導要領というものに教育課程基準が示されておるわけでございまして、したがってそれに沿ってまず教科書において小学校中学校高等学校において明記されておるという点、それを補強する意味で副読本が使われているという点でございまして、まず、全国の子供たちにつきましては教科書を通して的確に指導するという点を第一義的に考えております。さらに、外務省あるいは総務庁等お力添えをいただきまして、副読本をも使った的確な指導が行われるような指導もあわせて行っていきたいというように考えております。
  15. 北村直人

    北村委員 文部省さん、そして総務庁さんにおかれましては、連係プレーをとりながら、この副読本の配付あるいは北方領土教育内容についてはぜひ充実をして、全国民、低学年からこの問題に取り組んでいただけるようひとつ御配慮をいただきたいと思います。  それからもう一つ、これはぜひ総務長官閣議のときに、ひとつ何かの折に言っていただきたいなと思います。きょうは御答弁をいただくわけにはいかないと思いますが、実は北方領土隣接地域の中で学校をつくる場合に、国土庁から山村指定ですとか特別豪雪地帯等指定を受けますと、三分の二の助成をいただいて小学校中学校増改築あるいは新築をさしていただける。しかし一市四町の中でその地域指定を受けていないところが二つもある。ましてや、先ほど言いました例えば羅臼町の場合ですと、あの雪が降るところで特別豪雪地帯指定も受けていない、山村指定も受けていない。三分の一の国庫の負担、三分の二を自治体が持つということは、大変厳しい今の状況だと思います。これは多分、国土庁指定審議会というのがあると思います。どうか長官におかれましては、閣議等のときに国土庁長官なりにお申し入れをしていただきたい。長官の窓口でございます根室の一市四町の中で、教育問題の中、特に若い人力日本国有北方勉強をする学校助成が不公平なところがあるではないか、それを強く長官からほかの大臣にも、あるいは閣議の中で一言言っていただきたいなという御要望を私から申し上げたいと思います。  時間でございますので、実は最後に長官、これからお呼びする方々のお名前、御記憶があると思います。  斉藤正樹君、魚谷隆英君、武藤真奈美ちゃん、田中範子ちゃん、渡辺恵ちゃん、菊地百枝ちゃん、栗栖徹君、谷内田和宏君。この八人の中学二年生が、先日、北方少年交流派遣ということで長官あるいは文部大臣あるいは総理陳情に行ったと思います。小さな人方長官から温かいお言葉をいただいたと思います。これは昭和四十六年から続いている小中学生の北方の小さな陳情でございます。にもかかわらず、昭和四十六年に十二歳の子供が今は二十八歳になっております。その子供たちが今どう思っているでしょうか。  政府は、君たちも頑張りなさい、私たちはしっかりとこの北方領土を返すまで努力をする、こう言って小さな子供たちに夢と希望を与えて根室に帰さしていただいたと思います。そして昭和五十八年からは中曽根総理大臣陳情し、私もこの河北の一議員として私一人が中曽根総理大臣にこの小さな陳情者陳情する場面に立ち会いをさせていただきました。中曽根総理も、よく来てくれた、君たちのその熱意はよくわかる、私も全精力を傾けて北方領土返還努力をする、君たちも頑張ってくれ、これを五十八年から五十九、六十、六十一、六十二年、五年間言い続けてきたんです。その言い続けてきた中曽根総理大臣でさえ、鈴木総理大臣以来北方の地を見ていないのです。これではこの小さな子供たち現地に帰って、中曽根総理大臣がこういうことを言った、私たちも夢と希望を持って北方が帰ってくるまでこの一市四町で親の仕事を受け継いでしっかり仕事をしていこうという子供たちの夢を無残にも打ち砕いてしまうのではないかと私は思います。  最後に、御要望でございます。あの北方の地に、今回の八人の子供たちのように四十六年から十六年間、十六掛ける八人です、こういう人力現地で首を長くして政府の要人の人力が言ってくれたそのことが実現できるように今も頑張っているところでございます。どうかことし来てくれたこの斉藤君初め七人の人方の熱意を長官も忘れることなく、ひとつ返還に向かって総務庁挙げて百億の基金達成、そして総務長官は毎年行っていただける、外務大臣も毎年行っていただける、そして総理大臣も毎年北方の地を視察していただけるようぜひ長官の温かいお骨折りをいただいて、総理大臣にも長官みずから申しわけございませんが御陳情していただきますように心からお願いを申し上げ、私の質問を終わり、もし長官から一言お答えがいただければありがたいと思います。
  16. 山下徳夫

    山下国務大臣 ただいまお話がございましたのは、北方少年交流派遣者ということで一月ほど前、八月の七日の午前中に大臣室にこぞってお見えになりました。先生も御一緒でございました。  私は、実は自由民主党の広報委員会の筆頭副委員長をやっておる折に、全国の党の関係者を集めて現地根室で二泊三日にわたって講習会をやったそのときの責任者でございます。そういった関係で、北方領土問題については自来極めて深い関心と、あるいはまた私も国政に籍を置く者としての責任を感じながらまいったわけでございます。  したがいまして、一月前にこういう方々がおいでになって、この子供さんたちが、おじいちゃん、おばあちゃんが北方領土に居住していたころの非常に楽しかったお話、それをぜひ東京子供たちにも伝えたいとか、どうか一日も早く返してほしいという素直な子供の感情を私に訴えられて、私は非常に胸にぐっと詰まるものを覚えました。私自身も今日までのいろいろな体験を披瀝いたしまして、私なりの子供たちに対する激励なり決意をそのとき申し上げたつもりでございます。今後とも、この子供たちの切なる気持ちというものは大切にして、これが小さなものであっても日本の隅々まで大きな輪に広がるように心がけて為政者の一人として臨んでいかなければならぬ、かように思っておる次第でございます。  総理の問題につきましては、総理機会あるごとに北方領土問題については確固たる決意で臨むということを申しておられますし、折に触れて総理とお話しするときにも深い関心と決意は私も十分受け取れるわけでございますが、先ほど外務省政府委員のお話もございましたように、いわゆる国政の中枢にあられる方として極めて繁忙であり、繁忙で済まされないかもしれませんが、国事多端であるという立場も私もわからないではございませんが、御趣旨は十分お伝えいたしたいと思います。
  17. 北村直人

    北村委員 長官、失礼なことを申し上げました。どうか温かい大きなお力添えをいただけますように心からお願い申し上げまして、質疑を終わらせていただきます。本当にありがとうございました。
  18. 稲葉誠一

    稲葉委員長 武部勤君。
  19. 武部勤

    ○武部委員 歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島の北方四島は、歴史的にも条約上も我が国固有領土であり、また元居住者を初め多くの国民がその早期返還を切望しているにもかかわらず、戦後四十年を経た今日まだその実現を見ないのみならず、その明らかな展望すら立ってないのが実情であります。もとより外交交渉には相手があることでもあり、事柄が領土問題であることを考えれば、その解決が容易でないことも、また息の長い努力が必要であることも当然のことでありますが、しかしこれが未解決であることによって生ずる諸問題の解決のためにはあらゆる努力と強力な対策を怠ってはならない、かように考える次第であります。  山下大臣は先般も北方領土視察をなさいましたし、また我が自由民主党におきましてもこの北方領土問題に精力的に取り組んでこられ、また今所管大臣として多大な御尽力をいただいているところでございますが、本日は北方領土問題が未解決であることにより生じている問題、あるいはまた今後の北方領土問題ないしは北方領土返還運動にかかわる物の考え方について若干大臣の御所見を伺いたい、かように存じます。  まず、最近の私の印象でありますが、どうも北方領土返還運動一つの曲がり角に立っているのではないか、ある意味では転換点に立っていると言っても過言でない、私はこう思うわけであります。  その理由の一つは、まず北方領土返還運動の発祥の地であり、今日まで運動の拠点として大変な努力を市民挙げて継続をしていただきました現地根室市を初め隣接の各町々が北洋の打撃等を受けて大変疲弊している、こういうことも一つの背景にあるように思うわけであります。  第二には、今まで一生懸命島を返せという叫びを旧島民の皆様方を中心に情熱を込めて切実な願いとして展開をしてまいりましたけれども、これらの皆さん方もかなりのお年を召されているという現状にある。  第三には、これは先ほど北村君もいろいろと大臣に御要請申し上げましたけれども、この領土返還運動に対するあるいは領土問題に対する国の取り組み方、姿勢について現地の人々との間に少々ギャップが生じているのではないか、かようなことから、今見直しをして、出直し的に北方領土返還運動を考えていかなければならないときに立っている、私はこのように思うわけであります。  もう一点は、外務大臣現地視察北村君が強く要請しておりましたけれども、これは総理を初めぜひそのことを願う考えに私も相違ありません。しかし、この領土問題というのは、まず現地の住民だけの問題でない、日本の問題であり、これは世界の問題だ、こう思うわけであります。したがって、国際世論に訴える努力と、これをどう展開していくかということもこれからの一つの課題ではないか、かように思うわけであります。  以上のような前提に立って御質問申し上げたいと思います。  初めに北方墓参について伺います。北方墓参は、昨年八月、十一年ぶりに再開をされ、本年も先週墓参が終わったところでありますが、これは外務省になりましょうか、その概要についてお答えをいただきたいと思います。
  20. 長谷川和年

    長谷川(和)政府委員 北方墓参につきましては、昨年八月二十一日から二十四日まで、ことしは八月二十五日から二十八日まで行われました。昨年度の北方墓参は、遺族等計五十二名の方が色丹島の稲茂尻、歯舞群島、それから水晶島の秋味場、ボッキゼンベ、茂尻消を対象として実施されました。なお、ボッキゼンベにつきましては昨年初めてこれが実現されました。政府としては、今後とも墓参地の拡大とか、こういった問題につきまして従来どおりソ連側となお一層努力して交渉していく方針でおります。
  21. 武部勤

    ○武部委員 少々迫力に乏しい答弁だと私は思います。  ここに昨年墓参に行かれた方々の手記があるわけでありますが、私は読むほどに非常に胸が締めつけられる思いを感じました。そして、この墓参についてはせめて四島全域にわたって拡大されるように私は切なる願いを感じているところであります。これはもう非常に感銘を受けましたから、一部を紹介したいと思います。ちょっと朗読します。これは色丹島出身の佐藤クエさんの手記でありますが、   私は斜古丹ですので他人のお墓の隅の方を借り、引揚船の出る二日前に無念の思いを残して、死亡しこの島に淋しく眠る夫と、若くして、死亡した長男・軍司ちゃんの魂に一人言をぶつぶつ言いながら供え物を上げました。   その間にお経が始まり、斜古丹まで届けと云わんばかりに大きな声でお経をあげて下さいました。私をはじめ、たまらなくなり、あちこちですすり泣き、そのうち声をだして泣き出しました。地面に穴があくほど涙を落してきました。帰りは、このままいりまでも、夫と長男の眠るこの島を離れたくない、五分間でも、十分間でも色丹島の土を踏んで居たくて、最後のボートに乗ることにしました。   水晶島は根室のノサップ岬から手が届くような島、最後の墓参地茂尻消などは根室のすぐ目の前です。そこでお参りをして来ましたが、何でソ連の指示に従い、ペコペコ頭を下げて墓参に行かなければならないかと思うと腹が立って来ました。   国後、択捉両島へ行けなかった皆さん、残念だったと思います。この次には必ず行けますようお祈り申し上げております。   島に生活している頃のことは、いくら書いても書きたりません。   私は今回の墓参に参加でき、感無量であります。来年は墓参個所がふえ、継続されることを祈っております。この度の墓参を実現して下さった皆様方に深く感謝申し上げます。これは色丹島には行けたが、御家族の墓地には行けなかった佐藤さんという方の手記であります。  次は、国後島出身の田中由美子さんの手記の一部を朗読します。   それにつけても私の生れ故郷の国後島への墓参はもちろん、近づくことさえ許されず、遥か彼方の水平線上に山並がかすかに見えただけで、何ともいいようのないもどかしさとわびしさを感じました。それでもこの墓参に参加させていただき、自分の国へ旅することのできた喜びを実感しています。  最後に、択捉島出身の方の手記でありますが、   北方四島の内、択捉島の墓参のみがいまだに一度も実現されていない現状に、私たち遺族はたとえようもない悲憤を感じ、いらだたしい思いをしています。   この度、そぼ降る雨の中の最後の水晶島茂尻消の慰霊祭が終わっての帰途、ある御老人が「もう生きて再び来れないだろうが、これで思い残すことはない。ほんとうに来てよかった」と、つぶやいていましたが、墓参を待ち焦がれている択捉島の元居住者にも是非、この思いを実現させてほしいと願うものです。  大臣、この島民の切々たる訴えを聞いていかがお感じになっておられますでしょうか。北方墓参について遺族は、国後島、択捉島への墓参、歯舞群島、色丹島についても墓参箇所の拡大を強く要望しておるところであります。国後島については、御案内のとおり昭和四十五年まで四回にわたり墓参を行った実績がありますが、その後同島への墓参は行われていない。ことしも昨年と同じでありました。ぜひ来年こそ遺族の方々の願いをかなえて墓参の拡大を実現させてもらいたいと思うのでありますが、大臣の力強い御決意のほどをお伺いしたいと思います。
  22. 長谷川和年

    長谷川(和)政府委員 お答えいたします。  私の答弁ちょっと迫力がなくて申しわけないのですが、今度は少し声にめり張りをつけて御答弁いたします。  我が方としましては、北方四島の墓参の実施についてこれまで相当ソ連側とやっておりまして、実は今回につきましても東京では私と大使あるいはソ連大使館員、モスコーにおいては我が方の大使と先方あるいは大使館員と先方関係者とが何回もやっておりました。また、ソ連に行かれるいろいろな方々にお会いしまして、先方の要路の方に会われるときにぜひともこの墓参の問題は我が方の要望どおり実現してほしいと伝えてくださるよう従来からお願いしております。例えば、先般社会党の塚本委員長が行かれましたが、私は塚本委員長に二回お会いしまして、委員長が先方にお会いになったときにも墓参が遺族の方の要望どおり実現するようにぜひおっしゃってほしいということをお願いした経緯がございます。  私は、個人的には二週間ほど前夏休みを三日とりまして北海道に参りまして根室に行ったのですが、残念ながら択捉島は見えなかったので、明くる日は自分で車を借りまして国後を見るべく知床に行って、羅臼峠に登りましてそこで見ました。私、どうもちょっと声にめり張りがないので、迫力がないということで非常に申しわけないのですが、私自身あるいは外務省として一生懸命努力しております。  今先生指摘墓参地の拡大は、従来から択捉、国後、歯舞、色丹、この四島への墓参についてはソ連側に対して強く要請しておりますが、残念ながらソ連は今まで御指摘の択捉島への墓参を認めるに至っておりません。しかし今後とも外務省としては、あるいは日本政府としては、北方四島全部への墓参ができるように努力していく方針でおります。
  23. 稲葉誠一

    稲葉委員長 今のは民社党の塚本委員長の話ではないですか。社会党と言いませんでしたか。
  24. 長谷川和年

    長谷川(和)政府委員 失礼しました。民社党の塚本委員長が訪ソされました際でございます。
  25. 武部勤

    ○武部委員 今局長から非常にめり張りのある答弁をいただきました。  大臣、旧島民の三分の一は八十歳を超えているわけであります。ですからこの墓参については、一日も早く実現をしていただきますようにその努力政府に強くお願いしたい、かように思います。  時間の制約もありますから、また大事なこともありますので、先に進めさせていただきたいと思います。  先ほど北村君からいわゆる北方基金の問題について質問がございました。このことについて私見を申し上げますと、現地の率直な素朴な気持ちは、第一に、五年以内を目途として百億を積む、これはいわゆる公約のように受けとめているわけであります。それが先ほど大臣のお話ありましたように、最近のマイナスシーリングというような制約のもとで達成できなかった。しかし各位の努力によりまして五年間延長されたということは非常によかったと思っておるわけでありますけれども、やはり返還運動の拠点であり原点である現地皆さんが、よし、とにかく百年かかっても二百年かかってもこの運動は絶やさずやるんだぞという気概と決意を持ち続けなければこの運動は進まないと私は思うのです。かような意味で、そのような五年間で百億ということを公約と受けとめている、これは率直な住民感情であります。このことをひとつ大臣よく御理解をいただきたい、このように思います。  それからもう一つ、この基金に何とか頼ろうとする背景も先ほど来お話ししたとおりでありまして、北洋等の影響を受けて経済的に大きな打撃を受けている現地でありまして、地域の振興策を何とか立てなければということで、市町村長を初め、各界が四苦八苦しているわけであります。ですから、これは総務庁あるいは開発庁も御案内のとおり、この基金を国や道の事業に使えないのか。法律で示すとおりそれはできないわけでありますが、私はここで大臣お願いしたいのは、やはり現地が非常に疲弊しているという現状、これでは今後の返還運動に大きな力にならないのではないか、したがって、現地地域振興政府として思い切った手だてをしてもらいたい。  もちろん、この百億を積むということを、先ほどの北村君とのやりとりの中では九億、総務庁よく頑張った、こうおっしゃっておりますけれども、頑張らなかったとは言わないですけれども、我々も頑張って去年九億になったわけですね。ことし九億ですよ。この概算要求を見ますと、国債費が非常に大きいとはいいながら、六十兆円を超える規模になっている。それなのに、なぜにこの国の基本的な北方領土返還運動にかかわる基金がことしは九億しか要求できないのだ。現地の素朴な住民はそれはわかりません、いろいろな制約があることはわかりません。したがって、このことをよく御理解いただいて、地域の振興に特に大きな手だてをいただきたい。  特に、地方財政が逼迫しておりまして、あれもやりたい、これもやりたい、経済の活性化のためにあの手この手と考えているわけでありますけれども、結局は財政事情が大きな制約になっている。きょうは開発庁にも来ていただいておりますからいろいろと御質問申し上げたいこともあったのですが、時間がありませんから省略いたしますけれども、このことをいま一度大臣にひとつ御銘記をいただいて御努力を願いたい、このように思います。これは答弁は要りません。  次に、私は提言を含めて考えを申し上げたい、こう思います。  その一つは、先ほどもお話ししましたように、北方領土返還運動、甚だ御努力いただいている皆さん方に、言葉は悪いのでありますけれども、どうもマンネリ化してきているのじゃないか、形式化してきているのじゃないか。その背景は老齢化の問題もある。それから、現地の経済状態が非常に疲弊をしている。それからもう一つは、先ほど来お話ししておりますように、これは国家の問題、日本の問題ですから、もっと政府自身が思い切った取り組み方をしてくれていいのではないか。さらにもう一つは、国際世論にいかに訴えるかということなどが、今後の領土問題を考えていく上で大事な要素になってくるのじゃないか、このように私は思うわけであります。  そこで、今申し上げましたような三つないし四つのこれからの視点について、私はぜひお願いをしたいと思っていることは、いかがなものでしょう、観光客は相当数道東に来ております。納沙布周辺にぜひ大規模な国際キャンプ村などをつくっていただいて、道東に来られる観光客に入ってきてもらう、あるいは若い人たち北方領土返還運動についての理解を深めるには、やはり百聞は一見にしかず、現場を見てもらうことだ、こう思うわけであります。先般、笹川良一先生などの肝入りで平和の塔、大変立派なものが建設されました。それだけでも人の流れが変わってきているという話を現地の人に伺うわけであります。  ぜひこの大規模な青少年キャンプ村あるいはオートキャンプ場あるいはイベント広場とか野外ステージもつくって、人がそこに来て、そして現地で生の北方領土の姿を見る、そういう機会というものを、これは国が中心になって、町村に任せて補助事業でやるということではなしに、国が中心になってやってみたらどうか、やってみていただきたいということを私は思うのでありますが、ひとつこの点についてのお考えをお聞かせ願いたいと思う。
  26. 大串国弘

    ○大串政府委員 ただいま先生指摘のとおり、根室地域につきましては、二百海里問題等を抱えておりまして非常に疲弊しているところでございます。ただいま具体的に青少年キャンプ村とかオートキャンプ場等の御指摘がございましたけれども、現在の制度では、国が中心になってやることはなかなかできない、このように考えております。  いずれにしましても、隣接地域の振興計画、第一期が五十八年から六十二年までということでやっておりますけれども、六十三年以降の振興計画につきまして、北海道庁の方で現在鋭意地元市町村とも連絡し合いまして策定中でございます。この中で観光開発等につきまして具体的な、意欲的な計画が盛られることを期待しておりまして、そういう計画が出ましたら、私どもとしましても国として支援できる範囲内で前向きに対処をしてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  27. 山下徳夫

    山下国務大臣 先生の御熱意、先ほどから私も感心して聞いておりまして、実は沖縄の戦跡めぐりというのを私は何回となくやったのです。そこで健児の塔、ひめゆりの塔に参りまして、当時のことを想起して、まさに涙がにじむような思いがいたしました。そういうところが観光地として開発されることについては、いろいろ御遺族の心中等を察すると問題もあるかと思いますが、しかし少なくとも私は、そういうところに何回となく行ってみて、当時の戦争の悲惨さ、戦争はよくないということをしみじみ思いますから、やはり現場に行って、おっしゃるとおり百聞は一見にしかず、大いにたくさんの人に行っていただくことがそれなりの大きな効果があると思います。  そのためには、いろいろ観光等でも開発する。そういう意味から、先生の青少年のキャンプ村ですか、私はこれは一つのアイデアとして先生に対して大変敬意を表する次第でございますが、これを国がやるかどうかについてはいろいろ問題があるかと思いますので、今後ともひとつ検討課題として検討さしていただきたいと思います。
  28. 武部勤

    ○武部委員 参考までに、道東の観光客の入り込みについて私はデータを持っていますから、ちょっとお話ししますと、網走には百八十万、知床には百九十七万、それから尾岱沼、野付牛、風蓮、これは百万、それから阿寒は百三十万、釧路が九十万、厚岸五十万、それでこの根室は四十八万ということであります。すぐそばまで二百万人ぐらいの人が来ているわけですね。  ですからこれは観光開発というとらえ方ではなくして、特に最近は若い人がどんどん来ています。納沙布まで私も行きます。いろいろな人が本州から来ると車で案内しますけれども、せいぜいあそこで三十分ないしは一時間立って眺めて、感慨に浸って帰るというのが常であります。それだけではなかなかあそこまで行けないのではないかということであります。ですから、これは観光開発としてとらえるのではなくして、一人でも多くの皆さん方に、特に若い世代に対する啓蒙普及をどうするかということになりますと、例えば国立青年の家という制度もありますよ。あるいはまた、大臣も御検討いただくというお話でございますから、もろもろお考えいただいて、ぜひひとつ積極的にこの種の考えを実現化さしていただくように最大の努力を願いたい、私はこう思うわけであります。  最後に申し上げますが、中曽根総理が今月訪米をし、仄聞いたしますと、国連で演説をする機会があると伺っております。私は、国際世論に訴えるということが今後の北方領土返還運動を前進させる非常に大きな課題だということにかんがみましても、現地皆さん方もあるいは北海道議会等も国連等にも何度も行って、あるいはヨーロッパにも出かけていって啓発を促しているところであります。国連でもし総理が演説をする機会があるとすれば、ぜひこの領土問題について一言触れていただきたい、そのことを大臣からお話をいただけないものかということを強くお願いをしておきたい、かように存じます。  最後にいま一度大臣の御決意のほどを伺いたいと思いますが、非常に大きな転換点に立っているということにおいては大臣も同様の御認識をいただいたと思うわけでありますが、今後、非常にマンネリ化しているであろうと思われるこの北方領土返還運動を、ここで新たな視点から盛り上げていくために山下大臣の御決意のほどをお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  29. 山下徳夫

    山下国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたように、四月末から五月の初めにかけまして再度私は現地視察をいたしました。特に今回は所管大臣として参りましたが、当方の船で周辺をずっと視察しておりますときに、先方にソ連の巡視艇の姿が見られました。我が国固有領土でございますから、そうであるとするならばソ連の巡視艇が我々を監視するかのごとく通っておるところは我が国の領海であるはずであります。我が国の領海であるべきところから私どもを監視されるがごとき、まことに不愉快な思いを実は率直に私はしたのでございます。  今申し上げましたように固有領土であるというかたい信念に立って、この問題はひとつ息長く強く継続して運動を展開していかなければならぬ。特にまた政府だけではなくて、あまねく国民により深く認識してもらうためにも、国民運動として大きくこれをさらに展開していかなければならぬ、こういう決意に変わりはございません。
  30. 武部勤

    ○武部委員 終わります。ありがとうございました。
  31. 稲葉誠一

    稲葉委員長 上原康助君。
  32. 上原康助

    ○上原委員 私も、最初に北方問題からお尋ねをさせていただきたいと存じます。  今も同僚委員の方から我が国政府北方領土返還については少しマンネリ化しているのじゃないか、あるいは大きな転換期にあるのじゃないかという御指摘があったのですが、私たちもその限りにおいては共通の感を抱くものです。  そこで、本当なら総務庁長官外務大臣御一緒に出席していただいて、外交案件の中でも非常に重要な外交問題であると私は思うので、その方がいろいろ議論を深める意味あるいはまた政府の御見解をただす点からもいいかと思うのですが、なかなか事情が許しませんので、きょうは北方問題の担当大臣であられる総務庁長官また欧亜局長等に率直な御見解をお尋ねをさせていただきたいと思います。  まず、北方領土問題解決への展望を私はもう少し示してもらいたいという気がするわけです。示すべきだという立場からお尋ねするのです。つまり、我が国固有領土である、そういう立場で返還を求め、かつ対ソ交渉を進めてきているわけですが、一向に進展しませんね。今のような対ソ外交というか、そういう状況では百年河清を待つのみで、なかなか領土問題が解決をされて、言うところの日ソ平和条約の締結という運びにはならないのじゃないかという懸念を抱かざるを得ないわけですね。そういう意味で、今後の対ソ交渉というか北方領土返還問題解決への新たな視点というかそういう展望というものをもう少し明らかにすべきじゃないのか。  つまり国際情勢が今どういうような変化にあるのか、あるいは日ソ関係が確かに最近の好ましからざる事件等もあってなかなか容易でない面もあるわけですが、しかし従来のような対ソ交渉というか北方領土返還要求の姿勢では、私はこの問題はなかなか解決できないと見ているわけです。だからもう少し角度を変えたというか新たな戦略を立ててこの領土問題解決への我が国政府日本側の意欲なり姿勢をこの際示す時期じゃないのか、こういう気持ちというか立場を我々は持つわけです。そういう点について何かありましたら、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  33. 長谷川和年

    長谷川(和)政府委員 お答えいたします。  日ソ間の最大の懸案である北方四島の一括返還を求めまして、平和条約を締結して真の相互理解に基づく安定的な関係を築くというのが従来からの政府対ソ外交基本方針でもあり、今後の基本方針でもございます。ただ、今委員指摘のとおり、ソ連側は従来からこの話し合いに応じてこなかった経緯がございますが、昨年二度にわたる日ソの外相定期協議を行いました際に、我が方から北方領土問題を日ソ間の最重要懸案として提起してソ連側と話し合いまして、領土問題を含む平和条約の交渉が再開されました。これは今後継続されることが合意された次第でございます。  また、安倍前外務大臣は、昨年五月に訪ソされました際にゴルバチョフ書記長とも会談しまして、この問題に関する日本側の考え、立場、主張を申し述べた経緯がございます。しかし、ソ連側のこの問題に関する態度は非常にかたくなでございまして、従来の立場を変えるまでに至っておりません。しかし、政府としては今後あらゆる機会をとらえて北方四島の一括返還を実現すべくソ連側と話し合いを続けていく所存でございまして、まず話し合いをする、そういうことに全力を挙げて取り組んでいく方針でおります。
  34. 上原康助

    ○上原委員 いつ聞いても同じようなお答えしか返ってきませんが、総務庁長官、私もそんなにこの北方問題について勉強している方でないのでどこか間違っている点があればお許しをいただきたいわけですが、一九五六年十月に当時の鳩山総理が訪ソをして、言うところの日ソ共同宣言に署名をしたわけですね、当時の最高幹部会議長のブルガーニン、幹部会員のフルシチョフ。それから七三年十月七日、田中元総理が訪ソして首脳会談をやった。実にその間のブランクというのは、最高首脳会談というのは十七年のブランクがあるわけですね。もちろんその間外相定期協議とかいろいろ高級事務レベル会議は相互に持たれてはおっても、毎年という場合もあるし、二、三年置きという場合もある。これでは私はパイプが詰まったり十分の意思疎通を図れない、この事実一つを見ても指摘できると思うのですね。  その後はどうかといいますと、七三年十月から、中曽根首相が八五年三月にチェルネンコ書記長の葬儀に出席して、ゴルバチョフ書記長と立ち話をした、その程度で、全くないわけですね。いかに北方領土固有領土であり、表面的には日ソ友好を促進していくという姿勢を持ちながらも、私は、政府の意欲というかこの問題に対する熱意というか、その面でいささか何かわだかまりというか、それがあるのじゃないかという気がしてならないわけですね。  最近に至っても、ゴルバチョフ書記長の訪日というものがあれだけ話題になりながらそれも結局実現を見なかった。したがって、中曽根現首相とゴルバチョフ書記長の首脳会談というものはこの十月末までにはあるということは恐らく絶望的でしょう。そうすると、七三年から今は八七年、約十五年近く首脳がこの領土問題を含めて日ソの平和友好条約をどうしていくかということについての政治会談というものはないわけですね、五六年から七三年、そしてそれ以降。  これでは北方領土返還あるいは日ソの平和友好条約の締結ということにこぎつける外交交渉としてはいささか消極的じゃないのか、だからそういう面をどう転換をして、我が方も積極的に対ソ交渉を進めていくかという今日的次元に立った戦略を立て直さなければいかぬではないかということが私が冒頭お尋ねした点なんです。総務庁長官、担当大臣としてその点どうお考えですか。
  35. 山下徳夫

    山下国務大臣 北方領土返還につきましては、我々としては正当な要求として相手国に対して要求をぶつける。したがって、これは国民の悲願でございますが、行政の所管といたしましては、私ども総務庁はこの北方領土の問題に関する限り国内的な問題を所管し、国際的な問題は外務省、こういうふうに心得ておるわけでございまして、私どもの所管のことにつきましては、きょうもそのうちのある部分について御答弁申し上げたところでございますが、私の責任において、私の所管することについてはさらに過去を顧み、将来に向かって新たなる決意で取り組まなければならぬ、かように思っておる次第でございます。  外務省が所管しております対外問題について私が言及するのはどうかと思いますが、先ほど政府委員からも答弁がございましたように、やはり話し合いが一番大切である、その場をもっともっとつくっていくということで、その最頂点はやはりトップ会談、首脳会談でございますから、その実現等は私どももさらに期待しなければなりませんが、今日まであらゆる外交交渉、外交会談の場においてこの問題が常に強く取り上げられていることは私ども承知をいたしておりますし、あるいは与党の、また野党の皆さん方もそれぞれ機会を見て声を大にしてこの問題について言及されておることも承知をいたしております。  さらに、マンネリ化しようとするこの問題について、内外の問題について行政としてどう取り組むべきかということは、さらに私どもも反省しながら新しい視野に立って、またもっといい方策はないか、知恵はないかということはさらにまた検討を加えてまいりたいと思います。
  36. 上原康助

    ○上原委員 ですから、私たち政府対ソ外交基本方針ということに幾分疑問を持つわけですね。我々も国会決議であるとか北方四島等の返還問題については積極的に参加もしましたし、またそれは国民の強い要望であり、一日も早い返還を求めているという面では共通しているわけですね。だが、ただ希望だけ持っておってもこれはにっちもさっちもいかないですよ。もう戦後四十二年経過しておる。だから、今日的次元に立った対ソ外交を確立してもらいたい。  だが、今もおっしゃるように、政府対ソ外交基本方針は四島一括返還を実現して平和条約を締結することを基本方針としているわけでしょう。これは正しいと言えば正しい。そして、この四島の返還が実現しなければ経済、科学技術面での協力もお断り、いわゆる政経分離はしないという方針をとっておられるのじゃないか、その姿勢を貫いている。  だが、このような硬直した態度で果たして北方領土返還実現の展望が開けるかとなると非常に見通しは暗いと私は思いますね。何も四島返還を二島でいいとかそういう意味で言っているわけじゃないのです。相手を交渉の土俵に引っ張ると言ったら変な言い方ですが、共通の交渉のテーブルに着くためにはもう少し日本側も柔軟性があっていいんじゃないかということを私は申し上げたいわけです。  四十二年も経過していまだに領土問題が解決していないということは、どこかに対ソ外交のあり方に反省というか問題がないのかどうか。だから、北方四島の返還が経済協力とか科学技術協力等の関係改善の前提条件という硬直した姿勢では北方領土問題の前進は容易でないということは今日までのこの歴史の経過が示していると思うのですね。ですから、例えば経済協力とか科学技術協力等により関係強化を図れるものならその中から領土問題の足がかりというか手がかりをつかむという外交戦略をこの際考えてみてはどうかというのが、冒頭新たな立場に立ったあれはないのかというお尋ねなんですが、その点いかがですか。
  37. 長谷川和年

    長谷川(和)政府委員 政府対ソ外交基本方針につきましては先ほどお答え申し上げたとおりでございますが、北方領土一括返還を求めるということは、これは国の領土の問題でございまして譲ることのできない基本的な方針でございます。ただ、それはそれとして、バランスのとれた日ソ間の関係の改善あるいは友好関係の増進を図るということは日本政府の大きな目標の一つでございまして、またソ連側にも同じような対応が要望されるところでございます。  ちなみに、科学技術面につきましては、昨年政府間の科学技術協力委員会が開かれまして、また今年双方の都合のいい時期に開くことを予定しております。また、貿易につきましては、本年六月に日ソ政府間の貿易経済協議が友好裏に開かれました。先方からマルケビッチ外国貿易省の第一次官が参りまして、日本側と二日間協議した経緯がございます。日ソ間の貿易につきましても、昨年度は五十一億ドルとここ数年来の一番いい伸びを示しております。  また、文化面で見ますと、近々日本側の広報文化センターが開かれる予定でおりますし、本年五月には歌舞伎がソ連訪問を実現しまして、非常にソ連方々からも歓迎され、歌舞伎訪問の目的を満足に達成したと聞いておりまして、政府としてはバランスのとれた日ソ間の関係の増進を図っていく、こういうことで一生懸命努力しているところでございます。
  38. 上原康助

    ○上原委員 そういった文化交流とか科学技術、経済等々でできる分野で促進するというのは結構なことですが、しかし基本は何といっても領土返還でしょう。それが実現しないと、この面が幾ら進展したといっても問題解決にはならぬわけです。お答えは私がお尋ねしているものにずばりと返ってこないわけですが、私も先般参加して、本沖特委員会の海外派遣で、英国王立国際問題研究所を訪問した際に、同研究所の機関誌であるザ・ワールド・ツデーというのがありまして、その六月号にこの領土問題を掲載していたのです。その中で、ウルフ・メンドルというロンドン大学キングス校の助教授が「日本北方領土問題はアジアのフォークランドか」という論文を書いておられる。その訳も調査室等々でやって参考にしているわけですが、メンドル氏はこの論文の最後に北方領土問題の解決策を提言しておられるんですね。  要約すると、日ソ双方の頑固さが緩んでくれば次に述べる二つの措置に沿って解決への進展を図ることができるのではないか。だから日本側もソ連側も余り原則というか自己の主張に頑固に固執しているがゆえに一歩も前進しないと、第三者というかこの問題に関心のある国際学者は見ているわけですね。私はこれは参考になるのではないかと思う。  一つには歯舞、色丹の返還、これは御承知のように日ソ共同宣言のときに原則的に承認済みなんですね。しかし今の段階というのは、五六年のあの共同宣言で両国の最高責任者が署名したものさえ否定をされようとする後退ぶりですよ。歯舞、色丹だって返さぬというかあるいは日本領土でないんだ、領土問題は不存在だということだから、こんな外交というのはあり得ないと思うけれども、それだけかたくなになっている。それはいろいろな経緯があるわけですね。日本が余りにもソ連を敵視するというか、仮想敵国としていろいろなことをやっている等々も災いはしていると思うのですが、そのことはさておいても、原則的に承認済みである。  国後、択捉については、この助教授の言い分は問題の棚上げに同意すること。恐らく日本は両島での主権を断念しないだろうが、実力行使は絶対に行わないと約束はできよう。まさか国後、択捉を実力で奪還をするということは、これはあり得ない。理論上はそれはやろうと思えばできるという言い分もまたはあるかもしれないが、実際問題として実力行使でそれを奪還ということは、日ソの全面戦争があるいは米国を巻き込んだそういう有事につながる、これはあり得ないと思うんですね。ですからそういう一時的な約束をする解決方法、これは西独がドイツ再統一の政治目標を断念しない傍ら、実力行使を放棄しているやり方と一脈通ずる面があるのじゃないか。このような取り決めをした後で北方領土の非武装化、漁業権、経済協力拡大等に対する協定を結んでみてはどうか。  「そして問題解決に向けて前進するのに不可欠な前提条件の一つは、ソ連が、日本を紛れもなき政治大国であるとの認識を深めて、日本に対して、米国との安全保障関係を解消するようにとの要求を撤回することである。」だからソ連側にも日米間のそういった関係を解消しない限り云々ということは言わさない。「もう一つは、日本は失地回復に余り強くこだわらないことである。しかしながら、実際に政治に携わる人々にとっては、歴史的経緯、心理的偏向、当面の利害から生ずる相反した圧力などに直面しつつ、行き詰まりを打開する方法を見出すのは難しいことである。」  そして最後に肝心な点を次のように述べておられるのですね。「だからといって、問題を未解決のまま放置するならば、日ソ双方が悔いるような結末になるだろう。これは他の領土紛争の歴史がしばしば描いてきたとおりである。」と結論づけておられるわけですね。メンドル氏が最後に述べているのは、北方領土問題を未解決のままに今後百年あるいは二百年とこのまま放置をしていいのだろうか。隣国であるソ連とは漁業、貿易、文化等あらゆる分野にわたっておつき合いをしていかなければならない立場に日本はあるのだ。  ですから、そういうことを考えるならば、四島一括返還にこだわり続けて、オール・オア・ナッシングの姿勢をとり続けて、日ソ共同宣言から、五六年ですから既に三十一年たっていますね、三十一年間未解決のまま経過をしてきた、こういうことでいいのだろうか。日ソ両方が余りにも頑固過ぎるのじゃないのか、もっと柔軟性を持ってやってみたらという提言なども国際的にはなされている分野もあるわけですね。  だから外務省あたりもこういうようなことにももっと、もちろんそれは既に参考にするなり目は通しておられるとは思うのですが、第三者の指摘したことについても、領土返還問題についてはどうすれば窓口が開けて、同じテーブルについて、国民要求である四島一括返還が実現するかということについて、あらゆる多面的な手法なり考え方なり方法というものを私は取り入れるべきときだと思うのですね。こういうことについてはいかがですか。
  39. 長谷川和年

    長谷川(和)政府委員 外務省といたしましても、いろいろな評論家あるいは国際政治学者、こういった方々が我が方の北方領土問題等について言及する場合には、論文あるいはそういった記事を集めて研究あるいは参考にさせていただいております。ただ、今のメンドルという助教授の方ですか、この方の論文については、私、不勉強を告白しますが、読んでおりませんので、早速取り寄せて読ませていただきます。  今委員の御指摘を伺っていますと、その方は日ソ双方同じレベルで扱っておられるような感じがいたします。ただ、北方領土の問題というのは、ソ連が戦後不法に占拠した領土でございまして、日本人にとりましてはこれは血であり肉であり歴史である、便宜の問題なんかで片づけることができない基本的な問題である、そう観念しておりまして、それが政府対ソ外交基本方針を構成している大きな理由でございます。私たちは常にありとあらゆる場を使いまして本件について交渉の場につくように従来からソ連に話しかけておりまして、先ほど申しましたように、昨年一月、五月の外相間の定期協議でこの問題についても話し合いがされたわけでございます。  いずれにしろ、政府としては、これは日本にとってあるいは日本国民にとって歴史であり伝統であり血であり肉である、便宜の問題で解決することはできない、便宜の問題で済ますことのできない重要な問題である、そのように考えまして、ただその過程においていろいろな方々の御意見も伺いつつ参考にしてまいりますが、これだけは重要な基本的な問題であると心得て対処しております。
  40. 上原康助

    ○上原委員 別に基本的なことを棚上げにしていいとか、北方四島とも固有領土であるということを変えなさいとか、そういうことを言っているわけじゃないのです。それは言うはやすい。そういうことで自己主張だけすれば、それはやっておけば一番安全だ。百年たっても二百年たっても北方四島は我が国固有領土ですよ、領土ですよと言っておってちっとも前進しなければ、何の意味もないじゃないですか。だから本当に真剣に領土返還を求めるというならば、例えば沖縄返還の例を皆さん見てごらんなさい。沖縄だって固有領土です。同じ日本の一部だ。  しかし実際にはどういう形でアメリカから返還されたのか。皆さんからいうと同盟国の範囲内においても、沖縄返還というものがどれだけ金がかかり、どういう形で返還されたかというのは一番あなた方が知っているわけでしょう。北方だって、実際的に返還というテーブルに着いた場合にいろいろな問題が出ると私は思うのですよ。ソ連だって、実際問題として国後・択捉まであいくちを突きつけられた形で、固有領土だから日本側が返還後は何をやってもいい、そういう感覚で返還交渉を皆さんが仮にやろうとしたって、千年たってもそういうようなあれはできませんよ。  だからそういうことについては、やはり相互の信頼性という問題と今日の領土問題の難しさということを考えたならば、今あなたがおっしゃるようなそういった、むしろそれは僕らから言わせれば観念論ですね、それこそまさしく非現実的。現実的にこの領土問題をどう解決するかという新たな視点に立った対ソ外交というものがない限りこれは前進しませんよ、総務庁長官。きょうは外務大臣もいらっしゃらないから、国務大臣としての御見解を聞かせてください。
  41. 山下徳夫

    山下国務大臣 先ほども答弁申し上げたとおり、この問題は外務省の所管でございまして、私がとやかく言うべきではないと思います。  ただ、双方頑固だとおっしゃる先生にお言葉を返すようですが、私の方としては、これはいわゆる固有領土であるという正当な根拠に基づいて強く要求をしている。そのためにテーブルに着いてください、どうかひとつこの問題について話し合いをやろうじゃないかということはあらゆる機会に呼びかけているが、この問題はもう解決がついているのだよ、既にもう済んでいる、そしてそれ以上は応じないと言う方が頑固ではないか。要求する方においてこれ以上もう頑固過ぎる、執拗過ぎるということはあり得ない、それぐらいやってしかるべきだと私は思うのですが、受ける方が拒絶反応を示している。これが頑固であるということでございますから、さらにこれに対して外交交渉の場で相手の反省を求めながら、テーブルに着いて話し合いが進むように努力しなければならぬ、かように思う次第でございます。
  42. 上原康助

    ○上原委員 それは、第三者のそういう見方もありますよということを私は引用しているのであって、しかし、全くそれは無視していい内容ではないと私は思うのですね。そこで、頑固であってもいいわけですが、問題をどう前進させるかというところにいま一歩踏み込むというか、ウエートを置いた外交姿勢というものがあってもいいのではないか。  そこで、もう一遍確認をしておきたいわけですが、五六年の共同宣言の中では、翌年以降外交協議をやって歯舞・色丹は返還する、そして、それに基づいて平和条約を締結した段階で国後・択捉も返還に云々とありますね。しかし、実際問題としてそれさえも後退させられている。これは重大問題ですよ。相手がけしからぬと言ってしまえば、あなたがおっしゃるようにそれでいいかもしれないが、しかしそれでは問題は解決しないわけでしょう。そこに問題があると言うのです。それで、そのことは今も有権だと私たちは思いますね。では、少なくともその線に持っていくには当面どうするの。それが一つ。  もう一点は、七三年の田中・ブレジネフ会談の共同声明でよく引用されていることは、戦後未解決の問題云々がありますね。その中には領土問題を含むという解釈を口頭で日本側が言ったら、はいそのとおりですと相手は答えた。それは、外務省が出している「われらの北方領土」というものでも言っているし、しばしばこの北方問題を論議をするときオウム返しに返ってきますね。だがソ連側は、それは全くなかったんだ、また実際にノートもされてない、メモランダムもない。  こうなると、これは日本側からすると、皆さん国民向けに、あるいは外交的にこれを利用しているというかそういう立場なのか、本当に七三年のあの会談において、戦後未解決の問題という中に領土問題があるということが日ソ間で確認をされた案件なのかどうかはいささか疑わしいですね。その二点はどうなんですか。少なくともそれが日本側として確証があり自信があると言うならば、当面そういう方向にこの領土問題あるいは日ソ交渉の中で持っていく、またそれがスタートにならなければいけないと私は思うのですね。その点はどうなっているのですか、明らかにしてください。
  43. 長谷川和年

    長谷川(和)政府委員 今委員指摘の二つの問題のうち二番目でございますが、当時、七三年でございますが、当方から未解決の諸問題の中に領土問題を含むのかと口頭で確認を求めましたら、先方はそのとおりである、ダーダーダーと言った、そうなっております。これは、私たちは当然のことながら日本の行政官であり、日本国の内閣総理大臣が先方と話をして、その場に日本側の通訳もおりますし、そこで先方がそう言った、たまたま時間的余裕なんかがございまして、口頭ではございましたがそのように口頭の確認が得られたということでございまして、私たちは一二〇%これを信じております。  それから、委員指摘の第一の点でございますが、仮定のいろいろな想定等があると思いますが、四島の一括返還を求める、その実現のために努力するというのが政府基本方針でございます。
  44. 上原康助

    ○上原委員 そうすると、五六年の共同宣言はどうなるのですか。そういう言い方はおかしいよ。これは重大問題だね。
  45. 長谷川和年

    長谷川(和)政府委員 共同宣言あるいはそれに関連して当時の松本・グロムイコ間で交換された文書等ございますが、政府としては、四島の一括返還を求めるというのがただいま申しましたとおり基本方針でございます。
  46. 上原康助

    ○上原委員 基本方針基本方針、最初から言っておりますように。そういう最高首脳が行って共同宣言を出した。その条文さえも、否定とは言いませんが、あるいはそれとは異なる、変わった考え方に立つのが基本方針だというのは、外交案件、外交姿勢としては私はいささかどうかと思いますよ。そうなると、余計にソ連側を刺激するんじゃないですか。それは、きょうのところは聞いておきましょう。  そこで、今のようなことではなかなかこれは前進しませんね、総務庁長官。戦後未解決の問題には領土問題が入るのでしょうと言ったらダーダーダーと言った。その程度のことでは、殊さらこれを強調するほど相手が受け取ったとは、外交の了解という面では非常に根拠薄弱と受け取らざるを得ないと僕は思うのです。そうであるとするならば、五六年の共同宣言さえもそういうふうに受け取っている、七三年の会談もそういうふうになっているとなると、そこには、領土返還については相手は不存在だと言っている、我が方は固有領土だ、返しなさいと言っている、そういう主張があるだけで、共通のテーブルに着けるような条件というのは全くないわけですね。これでは、四十年経過をした中で、領土返還領土返還北方を返せ返せと言う割には、政府の取り組みというものは、そういう機会をつくるためにもっと熱を入れていいのじゃないか、その点まとめて長官の方からお答えをいただきたいと思います。
  47. 山下徳夫

    山下国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、私の所管は限られておりまして、その範囲内でどのように答弁申し上げたらいいかちょっと戸惑っておりますが、いずれにいたしましても、領土問題というものは世界のあちこちでしばしば起こっておる。最近ではフォークランドでついに戦火を交えだということが私の印象に深く刻み込まれております。先生も御指摘になったように、ああいう形で日ソ間において解決できるとは毛頭考えておりません。したがって、領土問題は足して二で割るという方式ではまず解決不可能であるかな、そうであるとするならば、やはり平行線をたどりながら、息長い執拗なしかも頑固と言われるくらい強い要求をしながら長期にわたって交渉を継続していく以外にはないかな。  ただ、折に触れて、なるほどこういう形でもって要求をしたらどうかといった一つの方法論と申しましょうか、いろいろアイデア、知恵あるいはまた経済等との問題、先ほど先生もおっしゃったとおり、これは卵が先か鶏が先かになるかもしれませんが、この問題を解決しなければ経済協力をしないよという、あるいはまた経済協力が先行する場合もあるかとも思いますが、いろいろなものを持ち寄って、そして相手国に対して今後とも強力に執拗にこの問題はやっていかなければ、なかなか半分でいいよというような解決の方法は、当然一括して返還を求めるという我が国の立場からしてもできないというふうに理解をし、また、私どもも国民に対して強い強い国民の支持をいただけるようなPR等も今後さらに進めてまいりたいと思います。
  48. 上原康助

    ○上原委員 この件についてはまだ機会を見て、さっきの答弁などももう少し経緯も踏まえて検討してみたい感がするわけですが、いずれにしましても、これはそういった環境の整備というか条件づくりをもっと日本側も積極的にやらないとできないと思うし、前進しないと私は思う。何か反ソキャンペーンだけで、返さぬのはソ連がけしからぬ、悪いのだ、場合によっては日米で乗り込んでいってもとってこい、そういうような考えではこれは絶対できませんよ。今ややもすると国内にそういった意見などが台頭しつつあることを私たちは非常に懸念をするのですね。それはまたソ連側も敏感に受けとめるでありましょう。  外交というのはそうじゃないと私は思うね。たとえ体制の違いはあるにしても、善隣友好という立場から考えると、この領土問題を解決する上においてはもう少し今日までの日本側の対ソ外交というものの反省の上に立って、相手側の言うことに聞くものがあれば十分に聞きながら、相互信頼、尊重をつくり上げていくということをやらないと、今のような状態では領土返還といったって本当に百年河清を待つ思いで、国民もいら立ちを感ぜざるを得なくなると思うのですね。その点は、私がお尋ねした点あるいは我々が対ソ外交をもっと積極的に進めてもらいたいという立場とは相当な隔たりがあるような感じはするけれども、今日の日ソ間を考えた場合には領土返還問題を含めてもっと対ソ外交の転換を図るべきである、このことを強く求めておきたいと思います。  そこで、次に若干総務庁にかかわる件でお尋ねしておきますが、一つはこの間委員会でポーランドとか関係国を視察して感じたことなのですが、北方領土我が国固有領土である、あるいはなぜ日本がその北方領土返還を求めているかということについての、特にヨーロッパ諸国に対するPRとかそういう面がいささかまだ足りないのじゃないのかという感じがしてならないのですね。世界地図においても、日本領土だということになっているところもあるし、いやソ連領だというところもあるし、何かグレーにしているところもある。そういう面で、ヨーロッパ諸国における領土問題と我が国が求めている北方領土返還の性格は違うのだということについて、それぞれの在外大使館を通して、日本側が確かな立場に立った法的根拠、いろいろな面に基づいたPR、あるいは相手国に理解せしめるということをもっとやっていくべきだと思うのですが、この点どうお考えですか。
  49. 長谷川和年

    長谷川(和)政府委員 まさしく委員指摘のとおり、この問題につきましては広く国際社会の理解を求める必要があると私たち考えております。基本的にはこの問題は日ソ両国間の問題でございますが、日本側の考え方、立場について諸外国の理解あるいは支持を求める必要があると考えておりまして、我が国政府としましても外国語のパンフレット及び外国語のフィルムを作成しまして、大使館を通じて海外における広報を行っております。また、一九八〇年の第三十五回国連総会以降母川国連における外務大臣の演説におきまして北方領土に言及する等、我が方の立場につきまして広く国際社会の理解を受けるよう努力しておりまして、今後ともこの努力を続けていきたいと念じております。
  50. 上原康助

    ○上原委員 その点はぜひもっと力を入れていただきたいと要望しておきます。  それと、北方領土隣接地域の振興問題ですが、指摘をするまでもありませんが、五十八年度に策定された計画期間は五年ということになっていますね。たしか今年で終了することになる。来年以降どうするのか、新たな計画をつくるのかあるいは現計画をそのまま延長するのかどうか、この点が一つ。  それと、北方対策本部で、今の国際的なこととも関連するのですが、さっきもちょっと御指摘がありましたが、たしか六十年度から北方領土問題についての社会科副読本を作成しているようです。その配付状況は一体どうなっているのか、またそれを利用した成果はあらわれているのかどうか、そういう面についてお答えをいただきたいと思います。
  51. 紀嘉一郎

    紀政府委員 お答えいたします。  振興計画は北海道開発庁が中心になって現在作業が進行中でございます。総務庁の分担の方は北方領土隣接地域の振興について北方基金で補助を行う仕事でございます。北方領土に隣接する根室市、別海町、中標津町、標津町及び羅臼町の北方領土隣接地域は、北方領土からの引き揚げを余儀なくされた方の多くが住んでおります地域でございますし、また北方領土返還要求運動の発祥の地でもございますので、この運動の拠点としての地位を占める重要な地域であると認識しております。この地域は、かつて行政的にも経済的にも北方領土と一体の社会経済圏を形成して発展した地域でございますが、北方領土問題が未解決であることから、戦後はその望ましい地域社会としての発展を阻害されるという特殊な事情がございます。  このような事情にかんがみまして、北方領土返還要求運動の拠点である北方領土隣接地域を安定した地域社会として形成するのに役立つようなこの地域の振興及び住民の生活の安定に関する総合的な施策を計画的に推進する必要がございます。このような基本的認識に立って、北方特別措置法第六条の規定に基づきまして北方領土隣接地域の振興計画が策定され、北方領土隣接地域振興等基金をも活用しまして、隣接地域の振興が円滑に進められるよう、総務庁としてもさらに努力してまいりたいと考えております。  もう一点、お尋ねの啓発にかかわります解説資料の問題でございます。既に学校教育において北方領土の問題を取り上げておりますけれども、徹底を欠く点もあるかもしれませんので、総務庁におきまして、北方領土問題対策協会を通じまして、学校教育の場を通じた啓発の推進を図るため、昭和六十年度から年次計画で、中学生を対象とした北方領土問題に関する少年向け解説資料を作成して全国に配付しております。  解説資料の活用方法としましては、市町村の教育委員会はもとより、県教育委員会理解と協力を得まして、一校当たり五十部を全校に配付しまして、歴史、地理、公民の授業の際に学習の資料に供するとともに、学校図書館またはクラス図書館に常備し、随時生徒の自習のための参考資料として利用できるように配慮しております。もとより、生徒一人一人に配付できればよろしゅうございますが、厳しい財政事情等もございまして、いろいろな制約の中で一番効果的な利用をしてもらおうということで、このように実施している次第でございます。  以上でございます。
  52. 上原康助

    ○上原委員 ほかにもちょっとお尋ねしたいこともありますが、時間が限られていますので、別の件も聞かなければいけませんから、北方問題はこの程度にしておきたいと思います。  総務庁長官は、行管も担当しておりますので、いろいろおわかりだと思いますから、お尋ねしてみたいわけです。  私は、国民体育大会、国体のあり方について、少し政府の御見解をただしておきたいと思うのです。  いよいよ今月二十日から二十三日に沖縄の海邦国体、夏季大会が始まるわけですが、非常にいろいろな問題が出てきている。きょうは、時間も限られておりますから、そうたくさんはお尋ねできませんので、基本的な点だけ聞いておきたいわけです。  今の国体行事の実情、実態を政府はどう見ておられるのか。ちょうど沖縄で一巡して、来年から二巡目に入るということなんですが、国体のあり方について検討してみる必要はないのかどうか、まず基本的な点から、どういうふうな御認識なのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  53. 山本貞雄

    ○山本(貞)政府委員 ただいまお話がございましたように、スポーツの振興というのは青少年の健全育成という観点からも、また国民が広く健康で明るく活力のある生活を営む、こういった点からも非常に重要になっておるわけでございます。  ただいま、国体運営をどのように見ておるかというふうな先生の御指摘でございますが、私ども、確かに新聞その他におきまして、例えば国体後はその施設につきまして維持費がかさむとか、十分な使用がされてないとか、そういった記事も承知しておるわけでございます。そういうことも考慮いたしまして、私ども現在の中期行政監察予定テーマにおきまして、スポーツ振興対策に関しまする行政監察を一応予定いたしておりまして、その中で、国体運営の問題につきましてもあわせて調査して検討してみたい、このように考えておる次第でございます。
  54. 上原康助

    ○上原委員 昨年の山梨の甲斐路国体のときに、前総務長官でしたが、行政監察の必要性があるということで、地方行監が国体の実態を調査しよう、行政監察してみようという動きがあったのですね。しかし山梨出身の某大物政治家が、そんなことはけしからぬ、国体に水を差すものだというツルの一声でなくなってしまったのです。  一つには、今あったのですが、国体の目的は一体何なのかということを考えざるを得ませんね。長官も佐賀国体でいろいろな御体験をしたでしょう。一部に返上運動も出たでしょう。国民に広くスポーツを普及する、あるいは青少年の健全育成という、そういうことからそもそもスタートをしたはずなんですが、今の国体のあり方というのは、地方財政を非常に圧迫する、あるいは学校現場に混乱をもたらす。特定の団体を政治的に必ず参加させる動きが非常に強い。  こういうことで、本当に国民のスポーツを普及するとか、青少年の健全育成とか地域の振興、そういう面とはかけ離れた、大変華美で必要以上の財政を投入して、この国体の一時期を過ごすために県も市町村もあっぷあっぷさせられている。文部省と日体協の行政命令あるいは強制的な指示によってこういう国体というものが開催されるということは、これは本来の趣旨から反しますよ。そういう面で、行政監察の必要性をお認めになるのかどうか。何も沖縄をすぐやれというわけじゃない、これは全般的な問題。  幸い、もう今年で一巡するわけだから、今後のおり方として隔年でいいんじゃないか。半世紀に一回だからといったって、毎年毎年各都道府県は、小さい県なんか毎年選手を大量に北海道から全国へやるのは、これはもう相当しんどい行事なんです。そういう面で、全般的な行政監察の必要性をお認めになるのかという点。  もう一つは、これは地方行政というよりも、余り何でも行革審とかそういうところでやれというのは、私たちの本来の立場ではないのですが、全般的なものからすると、総務庁として、今後国体の実態というものについては行政的な調査をやってみて、反省点は正す、あるいはまた、余りにも華美になっている、過大になっている、財政的に非常に圧迫をしているということについては、この際、何らかの総合判断をした行政監察というか、そういった改革というものを私はやるべきだと思うのですね、トータルとして。いかがお考えですか。
  55. 山下徳夫

    山下国務大臣 国体の起源が何であったか、私も深くは記憶しておりません。第一回目がたしか東京であったか、それもはっきり記憶いたしておりませんが、戦後間もないころであったことは間違いありません。当時、打ちひしがれて日本の行く方向すらわからないような、国民が茫然とした一時期に、やはりまず健康だ、体力づくりだ、それから日本を復興しようというのがい言葉のようであったことは私も記憶いたしております。と同時に、フジヤマのトビウオと言われた古橋広之進なんという人が出てきて、次々に世界記録を変えていって、戦後茫然自失しておった国民に非常な勇気と自信を与えたということも私は記憶いたしております。  そんないろんなことが重なって、ここでひとつ国民のエベントとして大いにやろうということで、その後、今日までの経過を見てみますと、やはり体力以上に日本人のスポーツが振興され、あるいはまた、そのことで体力を増進したと言えるでしょう。ただ、おっしゃるように経費の負担等は、特に戦後、私は大変なことだったと思います。したがって、四国四県だったですか共催をやったり、あるいは東北三県で共催をやったり、とても一県では無理だということで国体の共催が行われた時期もありました。その後だんだん国力が伸展して、小県なりといえども一県でこれを開催するようになったのでございます。  今沖縄で一巡したこの時期に、これはいいとか悪いとかいうよりも一つの節目ですから、この節目に立ってもう一回これを検討してみようというのは私は当然のことだと思います。よいとか悪いとかの問題ではなくて、おっしゃるようなこういった問題はえてしてエスカレートする嫌いもあります。そういう点もあわせて、ひとつこの際、節目に立ってこれは検討するという意味の行政監察はやるべきではないか、私はこのように理解しております。
  56. 上原康助

    ○上原委員 その点はいろいろな問題点があるし、これは国会の場でも時々文教委員会とかそういうところで取り上げられているようですが、総合的に議論された向きはまだ少ないですね。したがって、私はきょうは問題点だけ、今行政監察の必要性、場合によっては行革審、そういう面でもぜひ検討してもらいたいということ。  もう一つは、特に問題なのは総合優勝制度を取り入れたことですね。これは文部省、来ていると思うのですが、どうしてこういうことを半ば強行的に取り入れたのか、その目的は何ですか。
  57. 向井正剛

    ○向井説明員 お答えします。  国体は昭和二十一年に第一回を開催したわけでございますが、当初からスポーツの総合の競技大会、各種目別の競技大会はたくさんございますが、各種の総合成績を各都道府県で順位を決めるということを申し合わせまして、当初から現在に至りますまで都道府県対抗で総合成績を争うという形で行われております。もちろん最初はスポーツ関係者の話し合いで決まったものと考えております。
  58. 上原康助

    ○上原委員 最初から総合優勝制度をそれは取り入れていないでしょう。問題は、天皇杯、皇后杯をあくまで開催県でとってもらいたいという政治的な意図というか、そういうところからこの総合優勝制度というのは来ているのだよ。だから、そういった総合優勝制度というものをやるから、無理してジプシー選手であるとかあるいは自衛隊をもスポーツだけに特定をして利用していくという——本来スポーツというのは自然人がやるべきことなんだよ。国民平等といってもそれぞれの任務というのがあるはずなんだよ。だから、この総合優勝制度の問題についても大臣、ぜひ検討してもらいたい。  例えばこんなむちゃなことがありますか。五十六年はたしか滋賀でなされていますね。そうしますと、開催県は皆一位なんだ。例えば奈良県の場合だったら、奈良国体は五十九年だったですか、五十六年の場合三十九位なんです。わずか四カ年で一位になっている。だから、ちっちゃい県であろうが大きい県であろうがみんな無理して、学校現場でも普通の教員の採用は控えて、国体開催が決まればもう三年前から体育の先生だけ、スポーツの優秀な人だけみんな採用していって、終わればいろいろな弊害が出ている。これは文部省、わかるでしょう。  自衛隊は自衛隊で宣撫工作で、水泳であるとかあるいはピストルであるとかライフル、一体ライフルとかピストルとか銃剣術、そういうものまで今日の国民のスポーツということで国体で争うべき種目なのかどうか。人殺しじゃないか、ピストルとかライフルとか。銃剣術なんか、これは今やっていませんよ。戦前のまさしく軍国主義教育の残滓なんだよ、銃剣術なんというのは。こういうものまで日体協は強制をして、こういうものをやるためには日体協に加盟させるとかいろいろな手を使ってやっている。まさにスポーツを毒する最たるものなんだ、こういうやり方は。それを、天皇招聘ということで強力に学校現場に押しつけている、日の丸、君が代も。  私たちは、一般的常識で考える限度のことについては国民としての責任感、義務感ということでやらなければいけないことはわかります。だが、今日のこの国体のあり方というものあるいはそれを政治的に利用するやり方、その背景にある、同時に天皇を頂点とする天皇国家に持っていこうとする国体スポーツを利用しようとする動き、これについては我慢できませんね。文部省はもう一遍答えてください。それと、今のことについて大臣はどうお考えなのか。
  59. 山下徳夫

    山下国務大臣 天皇杯あるいは皇后杯制度がどのような弊害があるかという問題については、私は所管ではございませんし答弁する資格もございませんが、ただ国体の種目は今でも年齢別というのはあるのでしょう、四十歳以上とかありますね、種目によって。ですから、国民総参加という立場においては国民的スポーツ行事であり、どこかの国のようにオリンピックで優勝すれば年金制度とか国民栄誉賞とか、そういうスポーツ英雄をつくるような国体ではないと私は思っております。  それから各県で天皇賞その他が、実は佐賀の場合でも、あんな小さな県ではとてもそんなものをもらえるわけはない、底辺が小さいですから。しかし、そういうことによって奮起しますね、県内のみんなが。ですから、私はあながちこれは悪いとは思っておりません。ただ、改めるべき点があれば、これは私の個人の主観ですから、みんなで考えて改めたらいいだろうと思います。  それから、銃剣道の話がありましたが、それだけではない。けん銃はオリンピックにないのかな。私も一々わかりませんが、銃剣術が悪いというのならフェンシングだって同じじゃないでしょうか。あるいは広い意味においてボクシングだって空手だって格闘技ですから、そこらあたりはそんなふうに決めつけなくても、スポーツとしての許容範囲としていいのじゃないかと私は思っております。
  60. 上原康助

    ○上原委員 それは立場の違いとかいろいろな受けとめ方があるでしょうけれども、ライフル銃とか銃剣術というものがスポーツの国民的普及種目でないことだけははっきりしている。それを取り入れなければいけないという絶対的必要性はないと思いますよ、年齢差があるにしても。だから、この総合優勝制度の問題というものの検討のあり方、今指摘をした問題は、こういうことを取り入れるから混乱するのですよ。  それと学校現場の混乱の問題ですが、今言うような体育教員の水増し採用と言うとあるいは言い過ぎかもしれませんが、実際問題としては半ばそうでしょう。一時ジプシー選手といって大変問題になった。国体があれば、去年山梨、今度沖縄沖縄の次に来年は京都なら京都、みんなジプシーですよ。だからそこは優勝するのですよ。こんなことで一体本当にその地域住民の参加を得た国民のスポーツですか。もっと気軽にみんなが参加できる雰囲気をつくるというのが本来のねらいだったはずなんです。それをやってもらいたいということです。  今の件と、文部省沖縄国体についてどういう指示をしたかというのが二点目。ひとつお答えください。
  61. 奥田與志清

    ○奥田説明員 公立学校教員の採用のことにつきましてお答えを申し上げます。  公立学校教員の採用につきましては、各都道府県教育委員会が児童生徒数の増減に伴います教職員定数の関係あるいは退職予定教員の数などを総合的に勘案いたしまして、かつ長期的な観点に立って、体育を含めまして各教科につき所要の教員の採用を図っているところであります。沖縄につきましても同じような考え方に基づきまして教員の採用を図っているというふうに聞いております。
  62. 向井正剛

    ○向井説明員 お答えいたします。  沖縄県に対しまして、私ども文部省の方から昭和五十九年に沖縄県に対する要望事項というものを口頭で申し上げております。  その中で、一つは、国体は国民のスポーツの祭典であることから、競技会としての質実さ、祭典としての明るさ、楽しさを持つものであり、開催に当たっては県の実情、特性に即し弾力的に準備及び運営を進めていただきたい。  二つ目は、施設はできるだけ既存の施設を活用することとし、新規の施設については大会後も住民が十分活用できる実質的なものとしていただきたい。  三番目は、実施計画に支障を来す事態が生じた場合は、関係者間の協議により実施規模を、これは施設規模であるとか参加人員でございますが、縮小するなど実施計画の変更を行うこと。  それから四番目は、競技力向上対策については地方スポーツの振興につながるよう十分配慮するとともに、学校教育活動に悪影響を与えないようにすること。  五番目は、競技運営、集団演技等については、学校教育活動に支障を来すことのないよう十分配慮すること。  六番目が、大会全般並びに開閉会式等については、大会の趣旨を踏まえ、華美にならないよう配慮すること。  七番目が、大会の運営に当たっては、国体終了後の県民スポーツの振興につながるよう十分配慮するということ。  それから八番目が、これは現在の国体は、国体開催基準要項に基づいて行われておりますが、具体的な実施に当たっては開催県の諸条件を考慮できるようになっておりますので、県の実情に応じた開催ができることを認識していただきたい。そのような要望事項を申し上げておるところでございます。
  63. 上原康助

    ○上原委員 一々もっともらしいことだけおっしゃっていますが、私が聞いているのはそういった施設をどうのこうのということじゃないのです。特別教育活動に名をかりて通知を出しているわけでしょう。その事実があるかどうか。
  64. 向井正剛

    ○向井説明員 お答えします。  通知等は開催県には出しておりません。
  65. 上原康助

    ○上原委員 出していないということですが、出していますね。もちろん国体と直接かかわって、国体のためということじゃないのだが、国体開催に向けて通知を出している。それは国旗掲揚の問題、国歌斉唱の問題、本当に出していないのですか。八五年九月に出しているでしょう。出しているかどうかだけ、はっきりさせなさい。
  66. 向井正剛

    ○向井説明員 私の承知している範囲では聞いてございませんが、文部省から——国旗、国歌、県が市町村にという意味ではございませんでしょうか。
  67. 上原康助

    ○上原委員 それは出していますよ、県に。もちろん県に出せば、県が出している。それはまたいずれ議論をしたいと思います。ですから、国体ということで全部こういうふうに文部官僚の、文部省の、日体のあれで、事実一切強制をしているんですね。絶対日の丸を掲げなさい、君が代を歌いなさい。それはやるのも自由、やらないのも自由ですよ。  そこで、時間があれですから、そういう実態があるということ、そういうことでも学校現場をうんと混乱させている。あなたは華美にならないと言っているが、マスゲームのために小中高校生というのは年間どれだけの時間を割いていると思う、児童生徒に対しては大変な負担ですよ。これは沖縄だけでない、各県ともそうなんです。開閉会前にあれだけのマスゲームをいろいろやりますから、それはあなた、児童生徒というのは大変な強制をされている。非常な華美ですよ。そういったことが随所で起きている。  次は、財政問題も触れたいのですが、その前に警備問題を少しただしておきたいと思います。  沖縄国体に向けて、特に天皇、皇太子あるいは妃殿下、皇室が行かれるということで今大変な状況になりつつありますね。もちろんこれは治安維持というものは常識の範囲というかいろいろな面でやるべきという前提で私はお尋ねしますが、本当に国民体育祭ということで県民はもう、うちで言うとイーチーアクビンナラナン状態になっていますよ。呼吸もできない、本当に不自由な状態になりつつある。どのくらいの治安対策をやろうとしておるのか、まず警察庁お答えください。
  68. 半田嘉弘

    ○半田説明員 既に御承知のように、国体の開催に当たりましては天皇陛下以下の皇族の方々沖縄に行幸啓あるいはお成りになるわけであります。その皇族の方々の安全を確保するということと、それから国体の諸行事、たくさんございますが、これが円滑に行われるということを確保するというのは私ども警察の役割でございまして、それを遂行するために必要な各種の対策を講じておるところであります。今大変息もできないというような表現であったかと思いますが、そういうことにはなっておらないはずであるというふうに私どもは認識をいたしております。  何しろ、天皇陛下が沖縄に行幸になることに反対するセクト等は、ことしの後半の最大の闘争目標ということを早くから言っておりまして、先般も、八月二十七日にやりましたような貨物自動車から五発の爆発物等を皇居に向けて発射するというようなことが既に起き始めてきておるわけでございます。これが東京という、警備的には警視庁という非常に力のある警察がやっておるところでも起きるという状態でございまして、沖縄でも県警が大変努力をいたしておりますけれども、同じようなことが沖縄で起きないようにするためにいろいろな対策をとらざるを得ないということでございます。  例えば今爆発物発射に使われましたような車両を見つけるために車両の検問を行いますとか、そういう爆発物がセットされたようなところをあらかじめ発見をするための検索活動をするとかいうようなことを行わざるを得ないわけでありまして、そのために各種の県民の方々の御理解と各般の御協力をいただくというようなことで対策をとっておるところでございます。
  69. 上原康助

    ○上原委員 過激派対策をやるなとか、そういうゲリラ活動に対して確固たる処置をやるのは当たり前じゃないですか。私が聞いているのはそうじゃないんだ。沖縄国体に向けてどのくらいの警衛官を派遣し、どういう体制でやっていくかということを聞いているんだよ。そんな、話をそらすな。
  70. 半田嘉弘

    ○半田説明員 体制の問題は、現在まだ夏、秋、身スポ、各大会ごとに検討を進めておりまして、何人ということを明確に申し上げられる段階ではございませんが、かつて、昭和五十年でございましたか、海洋博がございまして、その際に二千四百人の機動隊を本土から派遣いたしておりますが、秋の大会について申し上げればそれを上回る人数が必要ではないかというようなことで検討いたしているところでございます。
  71. 上原康助

    ○上原委員 だから、天皇が国体に参加をすることが国体の成功なのか、その地域住民が安心して非常に気楽に国体に参加をするのが先決なのか、そこが問題なんだよ、あなた。皇族が行くからといって、沖縄県民のこれから、九月から十月、十一月までの日常生活というのは一体どうなるのですか。  しかもいろいろな週刊誌等見ても、元兵庫県警の方がこう言っているのですね。もう時間がありませんので全部は読めませんが、「兵庫県警では各交番所の者に、朝日新聞阪神支局襲撃事件の捜査という名目で、特別の巡回をさせてるわけです。アパートとか一般の住宅なんかに。タテマエは朝日新聞の襲撃事件でやっているわけですけど、実際は、今年の秋の国体(沖縄)に天皇陛下が行かれますね。それについての極左の事前の把握ですわ。兵庫県は沖縄県出身者が多いでっしゃろ。」こういうことで県外まで、沖縄の人を青年やそういう者を特定をして尾行したりいろいろなことをやっている。全くこれを見ると、沖縄の人を見たら過激派と思えというようなことだ。こういうことが既にあらわれている。  しかももう一つは、京都府の知事が、台風十二号のキビ被害は警備にプラスだ、サトウキビ畑がみんな台風でやられて過激派がそこに潜むことができないからという問題発言をしている。こういう状態。あるいは、ちょっと安定した職についていないという青年とか精神的に少し異常があるという人を、沖縄市であるとか僕の住んでいる嘉手納町とか中部一帯、那覇、全部マークして、市町村長立ち会いのもとに強制的に精神病院に保護しているという実態、こういうことがあるわけですよ。通常の国体の開催ならばこんな強硬手段とらないでもいいんじゃないですか。  もう一つ沖縄国体期間中退職警官に地域の交番を担当させる計画もあるのですか。  今の三つ、答えてください。
  72. 半田嘉弘

    ○半田説明員 兵庫県の元警察官が書いておるという記事は……(上原委員「警察官が書いているのではない、そういうことを警察官が言っているということを書いてあるのだ」と呼ぶ)そういうことはいたしておりません。  それから、今先生の御住所の近くでそういう強制的な措置を……(上原委員「私の住所の近くじゃない、何を言っているか。よく聞きなさいよ」と呼ぶ)そういう強制的なこと、特別ほかの県と変わったことを沖縄でやっている事実はございません。
  73. 上原康助

    ○上原委員 事実はありませんと言うが、あなた調査したの。そういう報告がなされているのです。現にあるのですよ、新聞なんかにも載っている。あなた、今事実がないと言ったが、本当に調査したのですか。そういうふうにすぐ即断して、こっちはある程度調査もして物を言っているんだよ。
  74. 半田嘉弘

    ○半田説明員 言葉足らずで大変失礼をいたしました。私はそういうことについて聞いておりませんし、特別なことをやるように沖縄県警でそういう方針でやっているということも聞いておらないということでございまして、もしそういうことがございますれば具体的に調査をし、さらに御回答申し上げたいというふうに思います。
  75. 上原康助

    ○上原委員 これから九月、さっきも言いましたように夏季大会が控えているし、特にメインの十月にかけていろいろなあれがあると思いますが、復帰十五年を迎えて国体をみんなで成功させようという中で、強引に自衛隊を参加させたり、日の丸、君が代を強制したり、安定した職がないとか精神的に少しよくないとかいう人々に対して特定をして強制的に隔離をするとか、それみんな皇族が行くからでしょう。我々は余りにもそういうことには合点がいかぬですね、長官。そういう実態があるということ、これはこれからもっと問題になりますよ。  そこで、きょうは宮内庁も来られていると思いますので、今私が指摘したような問題、天皇が行かれる行かない、あるいは皇族が行く行かないについては私はコメントしません。それがいいとか悪いとか、政治的な立場もありますからね。しかし、県民としては、ただでさえ戦争責任の問題とか、あるいは今の沖縄の実態ということを考えた場合にはいろいろなことがあるんだ。賛否両論がある。それもわかりながら私は指摘をしている。しかし、やられる方もこれは大変なんだ。したがって、こういう状態の中で行幸啓がなされるということを知っているのか、そういった実態というものを宮内庁は進講しているのかどうか、このことについてひとつ明らかにしてください。
  76. 齋藤正治

    ○齋藤説明員 お答えいたします。  御質問趣旨は、国体開催につきいろいろな問題点があると思われるが、それらの実態を宮内庁として掌握した上で皇室の行幸啓実現へ臨んでおるのかという御趣旨と承りましたが、国民体育大会のあり方等については格別といたしまして、まず、地方行幸と申しますのは、地域住民の方々の御意向を十分にしんしゃくいたしまして実施されるものでございまして、この秋の沖縄国体行幸につきましても、沖縄県民の方々の意向を体した沖縄県知事さん、それから日体協の会長さんなどの行幸要請、これに基づきまして現在実現に向けて鋭意検討中の事柄でございます。  御指摘の国体のあり方、警備のあり方などにつきましては、私どもも新聞報道あるいは雑誌の評論等々マスメディアを通じて勉強はしておりますけれども、これらの問題につきましてはそれぞれ御所管の省庁におかれまして御検討になる事柄であるので、特に宮内庁として意見を差し挟むことは差し控えたいと考える次第でございます。  なお、特に警備の問題につきまして一点付言させていただきたいのでございますが、およそ時の治安情勢に対応してどのような警備を行うかということにつきましては警察の所管に属することでございまして、沖縄国体警備のあり方につきましても、その体制やら内容やら、このようなことにつきましては警察御当局がその時その所の情勢に即応して具体的に措置される事柄であると考える次第であります。  ただ、一点、行幸をめぐる警備に絡みまして、皇室の安全確保措置を講ぜられる結果、皇室と国民との親和を妨げるようなことになることは決して好ましくない。すなわち、このような機会に皇室と県民の方々とができるだけ自然な形で接せられ、触れ合いの場を持たれるという行幸啓の趣旨が滅却されるようなことは好ましいことではございませんので、宮内庁といたしましては、かねて警察当局に対して、可能な限りスマートな警備措置をとっていただきますようお願いしているところでございます。  以上、お答えいたしました。
  77. 上原康助

    ○上原委員 委員長指摘もありますからこれで終えますが、特に警察庁に要望しておきたいことは、私も警察がやっていることをすべて否定しているわけではないのです。それはおわかりだと思うのです。余りにも過剰警備にならないように、今宮内庁がおっしゃるように皇室と県民を全く遮断をして、一体何のために国体が開かれたのか、何のために天皇がわざわざ沖縄まで行かれたのか、こういう非常な、かえって沖縄県民の基地とか戦争とか、戦後のいろいろなことについて刺激をするようなことだけはやめてもらいたい。スマートな警備というけれども、何がスマートかよくわかりませんが、そういう立場でこの国体問題というのは考えていただかないと、ややもすると皇族が行くことだけが国体の成功だ、そういう立場には私は立ちませんよ。そういう面で特段の御配慮を賜りたいと思います。  今までのことをお聞きになって長官から結びとして一言御見解を聞いて終えたいと思います。
  78. 山下徳夫

    山下国務大臣 私の所管外のことが質疑が多うございましたので、ただ私の立場からは、円満に国体が開催されることをこいねがうのみでございます。
  79. 上原康助

    ○上原委員 終わります。
  80. 稲葉誠一

    稲葉委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十二分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  81. 稲葉誠一

    稲葉委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。藤原房雄君。
  82. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 最初に外務省にお伺いを申し上げます。  午前中も同僚委員からいろいろお話がございましたが、しばらくの間途絶えておりました日ソ間の問題について、なかなかテーブルに着いてお話し合いをするという状況にございませんでしたが、去年安倍外務大臣を初めとしまして、国連、それからまた外相定期協議、こういうことでお話し合いが進むようになりました。日ソ間のことにつきましては、そういうことで昨年からそういう会談が持たれるようになったわけであります。そこで、ことしも外相の定期会談をしろということや、そのほか首脳同士のことについても共同コミュニケに記されたわけでありますが、外相の定期会談、このことにつきましては本年これからどのように予定をされていらっしゃるか、ちょっとお伺いしておきたいと思います。
  83. 茂田宏

    ○茂田説明員 お答えいたします。  日ソ間の定期外相協議につきましては、御承知のとおり昨年一月にシェワルナゼ外務大臣が訪日しまして安倍外務大臣との間で行われまして、その後五月に安倍外務大臣が訪ソして日ソ外相定期協議が行われたわけです。この二回の定期協議を通じまして、日ソ間の外相定期協議というものを定着化させたいということを我々が希望いたしまして、一応定着化してきていると考えております。  次回ですけれども、次回に関しましては年内にシェワルナゼ外務大臣の訪日を得て、東京において日ソ外相定期協議を行うという段取りになっております。ただ、外相定期協議に関しましては、一応コミュニケにおきまして年内ということになっておりますけれども、これは今後情勢を見ながら日ソ双方の都合をも勘案しながら相談をしていきたい、こういうふうに考えております。
  84. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 相手もあることではございますが、昨年共同コミュニケの中でも確認をされたことでありますし、いろいろな諸情勢はあろうかと思いますけれども、今もお話ございましたが、ひとつ着実にこういうものが定着するような御努力を積極的に進めていただきたいものだと思うわけであります。  さらにまた、昨年の共同コミュニケで日ソ首脳同士のお話し合いの場も進展するやに期待をいたしたわけでありますが、いろいろな状況があるようでございます。このことにつきましても、去年はできなかったといたしましても、その方向にさらにまた進むような日ソの首脳のお話し合いの場といいますか共同コミュニケが着実に実施されるような方向で努力しなければならぬだろうと思います。そういう認識については外務省も同じであって、そういう御努力をなさっていると思うのでありますが、国際情勢がこのようにいろいろ揺れ動いている中でございますのであれですが、今までの様子を見ますと日ソ関係というのはやはり米ソの関係に大きく影響されるといいますかそういう傾向のあることは論をまたないことだろうと思います。  しかしながら、米ソの首脳会談も近く持たれるような状況の中にあるということから考えますと、昨年ゴルバチョフ書記長が来日するかどうかということで非常に期待をいたしておりましたが、しかし本年そういう環境ができつつあるということで、外務省としてもこういう状況というのは真剣に受けとめなければならないのではないか、それに対するまた着実な御努力というものも必要ではないか、こう思うのですが、外務省のお考えをお聞きしたいと思います。
  85. 茂田宏

    ○茂田説明員 お答えいたします。  我々としましては、ソ連日本にとりまして大変重要な隣国であるという認識を持っておりまして、この重要な隣国との関係はできるだけ改善されたものが望ましいという考えでおります。ただ、その日ソ関係が改善されるためには日ソ双方が努力をすべきであるという考えでおりまして、日ソ間には北方領土問題という非常に大きい問題が存在しているわけでございます。この点について我々としましては、この問題を解決して平和条約を結んで日ソ関係を本当の意味で安定したものにしたいということを念願しておりまして、ソ連側がこういう問題について前向きの対処をしてくれることを期待したいと思います。  首脳訪問に関しましては、日本側からは一九五六年鳩山総理、その後一九七三年田中総理、それから公式の訪問ということでありませんけれども、鈴木総理中曽根総理も葬儀に関連して訪ソをしているということで、順番としましてはソ連側の首脳に日本に来ていただいて、日本において首脳会談を行いたいというふうに考えております。  この点につきましては、先生から御指摘がありましたように、昨年日本側から訪日の招請をしたということですけれども、向こう側がこちら側から提示した期日には来れなかったという事情があります。我々としましては、この問題についてはボールはソ連側にあるということで、ソ連側からの時期の提示を待ってやっていきたいと思っております。基本的には日ソ間の問題というのは大きい問題がありますので、首脳レベルで取り扱うような問題があるという意味で、首脳会談の実現というものを我々は重要なことだというふうに認識しております。
  86. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 日ソ間の問題で北方領土の問題は非常に重要な課題であることは論をまちませんが、お話し合いをするにはそういう環境ができなければならぬ。そういう環境というのは、今までの推移を見ますと、国際情勢、いろいろな要因があるわけでありますけれども、概して言いますと米ソの間が非常に進展している環境のときには比較的テーブルについて話し合うような環境ができやすい。そういうことからいたしますと、本年、近く米ソ首脳会談が持たれる、そういう雰囲気が今いろいろ言われておるわけでございますので、今までとはちょっと違った状況の中にある。  そういうことでは、今お話ございましたけれども、順番からいえば当然ソ連のゴルバチョフ書記長が日本の国に来る順番になるのだろうということでありますけれども、いずれにしましても、そういう今までとは違った環境の中にあるときをとらえてひとつ積極的にお取り組みをなすべきではないかということを申し上げておるのです。北方領土云々というお話でしたけれども、そのことについてはどうですか。
  87. 茂田宏

    ○茂田説明員 お答えいたします。  先生指摘のとおり、日ソの関係というのも大きい意味での東西関係の中の一部という側面がございます。したがって、東西関係の中心的なものであります米ソの関係がよくなるときに日ソの関係がよくなるような環境が出てくるであろうということはおっしゃるとおりだと思います。ただ、日ソ間にはそういう問題とは別のいろいろな問題もございます。先生指摘のとおり、国際環境、それから日ソ間の諸懸案についての進展ぶり、そういうことを踏まえながら、筋の通った形での日ソ関係の改善というものを目指していきたいと思います。
  88. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 昨年の十月十七日に北方領土問題の解決促進に関する決議が衆議院、参議院、同じ日に行われたわけであります。これは今日まで、衆議院におきましては十三回ですか、参議院では九回、それぞれ決議をいたしておるわけであります。これは国会で決議をするということでありますけれども、内閣、行政府としましてもそれを踏まえて、また交渉とかいろいろなことには、その決議というものがやはり一つの大きな武器になるのだろうと思います。五十五年から五、六年たって六十年、六十一年と決議があったわけですね。去年倉成外務大臣はシェワルナゼ外相と何度がお会いになりましたけれども、それはそれとして、そのほかの外交上の問題につきましても、こういう国会の決議等は、それなりに重みを持って、また後ろ盾としていろいろ御発言になられたのだろうと思いますけれども、これらの決議に対しましては、行政としてはどういうふうに受けとめ、また今日までそれをどういうふうに生かしてきたのかということについてちょっとお伺いしておきたいと思うのです。
  89. 茂田宏

    ○茂田説明員 お答えいたします。  北方領土返還に関しては、国会におきまして何度も決議をしていただいております。昨年は日ソ国交回復三十周年という節目の年でもあったということもありまして御決議をいただいた。北方領土返還の問題に関しましては、一時ソ連側はこれは日本側の一部の者の要求にすぎないということを言っておりました。ただ、最近はこの一部の者という言い方は減ってきております。そういう減ってきたことは、この問題が全国民的広がりを持つ問題であることをソ連側が認識をしてきたということだと思います。  そういう認識をソ連側がしてくるに当たって、やはり国権の最高機関である国会で全会一致でこの問題についての決議を採択していただいたということが大きな役割を果たしていると思います。我々は、この北方領土問題についてそういう国会を通じて表明された国民の支持というものがあるということを踏まえて外交交渉に当たっておりまして、この決議を非常に貴重なものとして受けとめて今後も交渉に努力していきたい、かように考えます。
  90. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 当委員会総務庁長官が中心ということでありまして、外務省の諸般の問題につきましてはまた外務委員会でいろいろお話を申し上げなければならぬだろうと思いますが、日ソ間のことについては、関係改善のためには何といっても北方領土返還というものが非常に重要な問題であることは論をまちません。やはり日ソ間の対話、返還交渉というものを粘り強く進めるということが大事だろうと思います。  そのためには、国民世論と国際世論を喚起するということを両々相まって進めなければならないと思うわけであります。私も今まで機会あるごとに申し上げてまいりましたが、外務省として、諸外国に対する世論の喚起という問題につきましても、パンフレットをつくって各国に対して日本の立場を認識させるとかいろいろなことをなさっておるようでありますけれども、午前中も同僚委員からお話がございましたが、こういう運動はある年数たちますと全体的にマンネリ化いたしますので、ひとつその時代に即した姿のものを考えていかなければならないと思うのですよ。  そういうことで、確かにパンフレットとか地元の大使館でいろいろなさることも大事なことでありますが、さらにまたそれを推し進める、時代に即した新しい内容のものを進めていくということで、国際世論の喚起ということについて、外務省も乏しい予算の中でいろいろ御苦労なさっておると思うのですけれども、これからのあり方として何かお考えがあったらお聞きしておきたいと思うのです。
  91. 茂田宏

    ○茂田説明員 お答えいたします。  北方領土問題については、我々としましては基本的には日ソ二国間の問題である、したがって日ソ両国間の話し合いで解決すべきであるというふうに考えております。ただ、ソ連側はこの問題について非常に厳しい態度をとり続けているわけでありまして、やはり北方領土問題について国内で理解を得るとともに、国際社会の中において日本の主張の正当性を訴えていくということは非常に必要なことだろうと思います。これは先生指摘のとおりだと思います。  我々が実際にやっていますことは、英文のパンフレットですとか英文のビデオフィルム等をつくりまして、これを大使館で広報活動の機会があるときにその国の国民に見せるということ、それから大使館はその駐在国の政府との間にいろいろなコンタクトがありますけれども、そういうときに日本側の立場の説明をしております。それから、もっと大きな国際的な場としまして、国連総会の場におきまして、これは去年も倉成外務大臣からこの問題を言及しましたけれども、日本側の立場を国連総会の場で述べているということであります。一つ一つは地味な話ですけれども、そういう地味な努力を今後とも積み重ねていきたいと考えております。
  92. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 地味なことの積み重ねが大事なことだろうと思います。しかし、同じことをやっておりますとどうしてもマンネリ化してまいりますので、その時代時代でいろいろ創意工夫しながらやっていかなければならないと思います。今のところは何か今までのことを踏襲しているみたいで、新しい発想でお考えいただいて進めていただきたいと思います。  いずれにしましても予算の伴うことですからいろいろなことをするにしましてもあれですが、ことしの概算要求の中でどういうものが盛り込まれたのかわかりませんけれども、積極的に今後国際世論喚起ということについてもお力添えをいただきたいものだと思います。  これは北対協のことになるかもしれませんが、国際シンポジウム、これも国際世論を喚起するという上では非常に重要な意味を持っておると思うのでありますが、六十年、六十一年これを開催いたしたわけでありますが、六十二年度の計画についてはどのようになっておりましょうか。
  93. 紀嘉一郎

    紀政府委員 お答えいたします。  北方領土問題の解決のためには、先ほどもお話がございましたように、国内世論の結集とともに国際的にも理解を求めていくことが必要でございまして、これまで政府としましては、国連における外相演説や在外公館を通じた地図の記載の適正化や国連使節団の派遣など、外交面において努力を払われておることは御存じのとおりだと思います。  総務庁といたしましても、国際世論喚起の重要性を認識しまして、六十年度から北方領土問題対策協会事業として国際シンポジウムを開催して、内外の国際問題研究者を招きまして国際情勢の今後を展望するとともに、その中における日ソ関係のあり方等について討議をしていただいているところでございます。今年度につきましては十一月に仙台市において開催することとしており、現在テーマ、人選等について検討しているところでございます。
  94. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 ことしの概算要求、過日のものを見ますと大体同額ぐらいで来年度要求が出されているようであります。来年もこの国際シンポジウムが実施されるわけですね。
  95. 紀嘉一郎

    紀政府委員 今後継続していく所存でございます。
  96. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 これも回を重ねますと同じような形式に流れやすいような傾向になりますので、これのあり方等についてもいろいろ総務庁も御研究なさっていると思うのです。それから、ことしの開催は十一月ということに決まったようでありますが、この規模とか内容、今後のあり方について何かお考えがあればお聞きしておきたいと思うのです。
  97. 紀嘉一郎

    紀政府委員 六十年度は東京で開催しまして、テーマは「転機に立つ国際情勢と日ソ関係」ということで、外国の招待者は米国が二名、西独が一名、パネルディスカッション形式で行われました。昨年度は十一月十一日、十三日東京と大阪で、テーマとしましては「国際情勢の展望と日ソ関係のこれから」ということで、フランス、カナダ各一名、東京では円卓式の研究討議、大阪ではパネルディスカッションでございます。六十二年度は十一月十三日、十四日、仙台で十三日、東京で十四日ということで、テーマは「転機に立つ国際情勢と日ソ関係の展望」ということで、アメリカ、イギリス、シンガポール各一名の参加者を予定しております。これはそのときそのときの状況に応じながら工夫を凝らして考えていきたいと考えております。
  98. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 そこでいろいろ議論になったこと、それは学者といいますか専門的な立場の方々が長い研究をなさったことを土台としましていろいろ御発言なさるのだと思います。こういう貴重なことが行われていることについて、非常に関心のある方は承知しておるのですけれども、多くの方々にこういう実態というのをお知らせする機関といいますか、あったことの内容、討議されたこと、これを周知徹底するのにはどういうことをしていらっしゃるのでしょうか。  このやり方によっては相当大きな影響力があるのじゃないかと思うのですけれども、だんだん回を重ねる、いろいろな角度から論じられてきたこと、そしてまたそういうことが基本となって、関心があるといいますか、それを国民の中に、ある階層に周知徹底させるということ、ただ政府の特定の機関の雑誌だけでなく、何かもっと国際シンポジウムで行われたことの内容等について考えるべき余地があるのじゃないかと思いますが、どうでしょう。
  99. 紀嘉一郎

    紀政府委員 せっかく外国のオピニオンリーダーの方をお呼びして議論を闘わすわけでございますから、その成果は、それぞれの国に帰っていただいて研究活動なり言論活動で発揮していただくことも当然予定しておるわけでございます。また、日本で議論されたことにつきましては、報告書のような形でできるだけこういうことに関心を持つ方々に配布、周知させていくほか、それぞれの研究者のその後の言論活動において発揮していくように期待しております。この成果の活用ということについては一層研究したいと考えております。
  100. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 領土問題を抱えている国々は世界にもいろいろあるわけでございますし、またそういう問題について専門的に研究なさっている学者も多いわけでありまして、そういう関係方々とお話ししますと、日本の国では予算を取ってそして海外のこういう学者をお呼びして一堂でお話しする機会というのはなかなかつくれない、こういうことを言っておりました。私も機会があるたびに、こういう国際シンポジウムのような形のものを日本の国でやるように当局も積極的に取り組んでもらいたいと何度か申し上げたこともあるわけでありますが、六十年からこういう形で開かれたことは非常に意義のあることだと思います。  これだけ諸外国から専門の方々がお集まりになっていらっしゃるわけでありますから、今お話しのようにそこであったことをさらに深くそれぞれの立場で御検討なさることはもちろんでありますけれども、それはある特定の学者の中のことだけではなくして、より深い学問的な立場からそういうものが国民の中といいますかある知識階層の中にどんどん浸透していくといいますか受け入れられるような形というのは非常に重要なことじゃないかと思います。開催のあったことや趣旨等については一般紙また政府の発行しておりますものの中にはございますけれども、もっと広くこれが目に触れるような形のものを御研究いただきたいものだと思います。  それから、これに関連しまして、地元でも年来要望されております国連等に対する使節団派遣の問題でございますが、これは地元の方々が本当に大変お忙しい中、国連に訴えるということは非常に重要なことだということで地元から国連に対する使節団を派遣する、こういう形のことをやっておったわけでありますが、これは国の立場としてもこういう国際世論喚起ということの中でぜひお考えいただかなければならないし、そういう形でやっていただきたい、これも地元としては非常に強い要望があるわけであります。  このことについても今日までいろいろ議論もあったことでありますが、この国連に対する使節団派遣ということについて、総務庁では現在どのようにお考えになっていらっしゃるのか。今度の場合予算を見ても余りそういうことについてはお考えがないみたいですけれども、今後どのように進めていこうとなさるのか、ぜひひとつお聞きをしておきたいと思います。
  101. 紀嘉一郎

    紀政府委員 国連使節団派遣につきましては、外務省が担当しておりますので外務省から。
  102. 茂田宏

    ○茂田説明員 お答えいたします。  外務省としましては、地元北海道方々北方領土問題について国連を初め諸外国にこの問題の啓発、この問題についての日本の主張の正当性を訴えに出かけられるということについては大きい意義を認めておりまして、北方領土復帰期成同盟への補助金を通じましてこの事業の支援を行っております。  この行き先に関しましては、毎年国連に行くのがいいのか、昨年は国連には行かなかったわけでありますけれども、そういうことをどういうふうに組み合わせていくのかということについては外務省としては地元の意見を尊重しながら相談をして決めておりますし、今後ともそのようにしていきたいと思っております。
  103. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 そのほか今日までも国際世論喚起の中ではいろいろなことも考えられて、それなりにいろいろ積み重ねてまいりました。今何点か申し上げましたが、今日の議論の中、それからまたきょう申し上げたこと等ひとつ御検討いただきまして、着実に進めていただきたいものだと思います。国際世論ということは非常に舞台が大きいだけに、粘り強く進めなければならない。日本だけがではなくて、やはり日本の立場というものを理解させるということにおいては非常に重要なことだろうと思いますので、強く要望しておきたい。  また長官におかれましても外務省と十分御連絡をとりまして、国務大臣ということですから、自分の与えられたことだけではなくして全体観の上からも、ぜひひとつ国際世論喚起のために御努力をいただきたい、こう思うのでありますが、一言大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  104. 山下徳夫

    山下国務大臣 御趣旨は体して、私の立場から関係省庁の関係者とよく話を詰めてまいりたいと思います。
  105. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 外務省一つだけ最後にお伺いしておきますが、先ほど来ソ首脳会談も間近にあるような雰囲気だということで非常に話し合いの場、またはテーブルに着く機会というものはそう遠くないといいますか、今までと違った環境の中にあるというお話をしたわけでありますが、しかし、つい先ほど日本ソ連におりました関係方々、三菱商事の次長さん、それから外務省の方、さらにまた日本の国内におりましたソ連関係の方が退去、こういう問題が起きましてぎくしゃくといいますか、そういうことになるのかどういうふうに推移するのか、これは非常に私どもとしましても大きな関心事でありまして、事実は事実としていろいろ報道もされておりますし私どもも見聞きしておりますが、これはお互いにこっちの認識とまた受けとめ方等いろいろあるわけですから、いろいろなことが言われているようであります。私が外務省の方にお聞きしたいのは、省内では今回の問題についてはどういうように分析し受けとめていらっしゃるのかということです。  それと、日ソ間の関係について大きな支障を来すような問題ではないのか。そういつもいつもこういうことがあるわけではございませんけれども、ただ期日が、日本が退去を命じたのとソ連でなされたのと幾日も遣わずにあったということで、これは何かお互いに報復的なことなのかどうか非常に危惧することなんですけれども、このことについて外務省ではどういうふうに分析していらっしゃるのか、その辺のことをちょっとお伺いしておきたいと思います。
  106. 茂田宏

    ○茂田説明員 お答えいたします。  ソ連側から、我が方の大使館の防衛駐在官が公的資格に合致しない行動をとったということで、在ソ防衛駐在官に対しまして自主的な退去を求めてきたということがありました。これにつきましては我々の方でいろいろ調査もいたしましたけれども、駐在武官には公的資格に合致しない行動というものは一切なかったということであります。したがって、この武官に対するソ連側の措置というのは我々がともに行っている日ソ関係改善の努力に対して水を差すものであるということで極めて遺憾である。  我が方がとりました措置というのは、ポクロフスキー在京ソ連通商代表部代表代理に対する自主的な国外退去を求めたわけですけれども、ポクロフスキー氏に関しましては、東京航空計器問題ということで日本側の関係者は送検をされておりますけれども、この関連で日本国内法に違反する行為をしたということでありまして、この事件が起こりましたのは七月二十日です。その後外務省から出頭要請を繰り返していたわけですけれども、応じていないという状況を踏まえて自主的な国外退去要請をしたということでございます。時期的に近接していた事件ですけれども、我々としてはこの二つの事件は別個のもので、別個のものとして処理しているということであります。  こういうことに関しての外務省の分析というのはなかなか申し上げにくいわけですけれども、外務省の姿勢としましては、私冒頭に言いましたようにソ連との関係というのは重要視しております。重要視しておりましてその関係がより改善されたものであることが望ましいと考えておりますけれども、ただそれは日ソ双方がそのために努力すべきものであるという姿勢でおります。したがって、そういう基本ラインを踏まえまして今後対処していきたいと思っております。
  107. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 外務省の方は以上で終わります。  さて、国内問題に入ります。  最初に、長官北方領土に現職としていらっしゃった。その前にも何度かいらっしゃったようでありますが、あの納沙布岬にお立ちになって、大臣として担当する諸問題、こういうものの中でそういう立場になってごらんになったときの受けとめ方というのは違うのだろうと思います。大臣があの納沙布にお立ちになりましてすぐ目の前にございます状況等をごらんになりまして、率直にどうお考えになったのか、また当地根室を中心とします各地の関係方々にお会いしたときのいろいろなお話等を交えまして、ひとつ御感想をお聞きしておきたいと思います。
  108. 山下徳夫

    山下国務大臣 まだ沖縄がアメリカの占領下にあるときに、ドルにかえて沖縄に行った当時を想起しまして、これも日本なのになとしみじみと思ったことがございますが、当時は沖縄方々はそのまま居住しておられました。  それと違って、今度納沙布岬に立ったときには、その向こうに見える島々から全部引き揚げてきておられる、こういう方々の御心中を察するに、一日も早く長年居住した郷土とも言うべきあの四島にお帰りになりたいだろうな、そういう御心中をお察しした場合に、何か深い感銘を私は受けましたし、それから先ほど御答弁申し上げましたように、当然我が国の領海と思われるところから私どもが何かソ連の監視艇の監視を受けるような感じで非常に不愉快な思いをしたのでございまして、我が国固有領土として一日も早く外交的にこの問題を解決しなければならぬと決意を新たにした次第でございます。
  109. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 そういうことから立場も立場、そういう担当大臣としての御感想、あそこにいらっしゃって、東京にいてお考えになったのと違って、やはりその場に立ちますと、そういう感情というのはむらむらと起きていらっしゃるのだろうと思います。  そういうことからいいますと、国内の世論をより喚起するということ、これはいろいろな形で進めなければならないのだと思います。そういうことに対する認識、そしてまた当地に立つこと、いろいろな関係方々、いろいろなメディアを通しまして、幅広くその認識を深めていくということが大事なことだろうと思います。午前中も同僚委員からお話ございましたように、最近の運動というのはどうもマンネリ化しつつあるのじゃないか。また、世代交代といいますか、一万七千からいらっしゃった方々もだんだん老齢化してまいりまして、もう半分近い方々がかわられたり、お亡くなりになったり、いろいろな方がいらっしゃいますし、四十年もたちますと様子も変わってくるわけであります。粘り強い国民の大きな世論を背に受けてということでありますけれども、これは沖縄とは違った面で運動論というのは展開しなければならないのだろうと思います。  そういうことからいいまして、今日までもいろいろ議論されておりますが、今度の六十三年度の概算要求の中に、北方領土問題対策協会の補助としまして、北方領土全国青年フォーラム開催、これは新規で行われることになっておりますけれども、これはどういう形のものをお考えになっていらっしゃるのか、ちょっとお伺いをしておきたいと思います。
  110. 紀嘉一郎

    紀政府委員 先生も御指摘のとおり、戦後四十二年たちまして世代の交代があります。北方領土問題の啓発について、我々は特に若い人たちに対して理解を求めていくという方針でございます。その観点から、フォーラムにつきましては次のように考えております。  全国、各県でございますから、各県の返還運動の核となっていただく方々を選びまして、現地根室で研修、それから現地との交流等を行いまして、その目で北方領土を見ていただき、そしてまた、帰っていただいて今後の活動の中心になっていただく、こういう趣旨でフォーラムを考えております。そういうことで実現できるように願っております。
  111. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 私どもも今日までも訴え続けておりますが、こういう息の長い問題になりますと、どうしても教育ということが非常に重要になってくる。学校教育とか社会教育、こういうことで北方領土教育ということに対して今日までも叫ばれて、文部省教科書副読本、こういうことについてもぜひひとつ進めてもらいたい。これは年次計画でいろいろなさっているようでありますが、これはぜひ大臣、きょう午前中もお話ございましたので、私詳しいことは一々申し上げませんが、文部省ともよく話し合って、こういう教育というものが国民一人一人に認識を与える重要なことになるだろうと思いますし、着実にこれが進むような方向で御尽力賜りたい。  さらに社会教育、これを企業間とかいろいろな研修とか、社会教育は最近盛んに行われておりますけれども、そういう中におきましても、これは会合の趣旨や何かいろいろございますから一律にはいかないのかもしれませんけれども、機会あるたびにこういう問題が取り上げられるような方向で進めていただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  112. 紀嘉一郎

    紀政府委員 国民世論の啓発と申しますか、北方領土問題に対する正しい認識、理解を深めていただくために最大の努力を尽くしたいと考えております。先ほども申し上げましたように、特に若い人たちに対するいろいろな啓発活動も考えております。  学校教育に関しましては、基本的に教科書の問題は文部省でございますが、これはそれぞれの発達段階に応じた段階で書き入れでございます。なおそれだけの記述では不十分ということで、特に中学生を対象とした副読本を、これは北方領土問題対策協会を通じて作成しまして配付し活用していただくということになっております。特に各県ごとにその県と北方領土との関係等についても記述しておりまして、県の教育委員会等の協力を得ましてやっております。こういうことで若い人向けの啓発活動を重視してまいりたいと思います。
  113. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 後藤田さんが総務長官のときに申し上げたことがあるのですが、今度もいろいろ各県から若い人たちを選ばれて根室で交流とか研修をなさるということでありますけれども、そういう形のことも大事なことだと思います。さらに、特にあそこへ特定の方々を集めるということになりますと、意図的に何かあるなんといういろいろな憶測があるのですが、ことし北海道で高校総体がありまして、また六十四年には「はまなす国体」が北海道で行われるのですが、こういう国体や高校総体が北海道で行われる。  そういう競技の中のどういう種目でもよろしいのですが、根室のこの地域で、一カ所でも行われるようなことがございますと、競技のためにお集まりになる、そしてその人たちがその地域のいろいろなお話、またここまで来たんだからということで現地に赴く、こういうことで自然の中で教えられるといいますか身についてくるといいますか、いろいろなものを利用するお考えというのが大事じゃないか。  午前中いろいろ国体のお話がございましたけれども、北海道で再来年「はまなす国体」を行うことになっておりまして、これは会場をどこにしてなんて、これからできるのかできないのかいろいろな問題があろうかと思いますけれども、そういうことを念頭に置くということが大事なことで、後藤田長官も何年か前そういうことも大事なことだというお話があったのですけれども、これは地方自治体にもこういう話は恐らくあるのだろうと思いますし、地元と大臣のお考えが一致すれば決して実現できないことではないわけでありますし、たくさんの競技はあそこではできないのかもしれませんけれども、数多くの競技の中の一つくらいはなさる。そして、それがまた地元の大変な競技場や何かの負担になるという一面もあるのかもしれません。それは基金とか何かいろいろな制度もございますし、いろいろなことでバックアップしまして、全国の代表の方々がそこにいらっしゃって自然の中で北方領土の意義を実感なさる上では大事なことだな。  これは私どもがちょっと思いついただけの話で、また地元の方のお話でありまして、そのほかいろいろな会合、イベント、いろいろなことがございますけれども、そういうものが地元で開かれて、自然の中でそういうものが浸透していくという形のものはいろいろなことがあるんじゃないかという気がしてならないのですけれども、ぜひひとつ、国体のことについては地元のことやいろいろなことがありますからここでどうこうというわけにいかないかもしれませんけれども、これは何年も前からお話ししておりますので、そういうこと等も念頭に置きながら、全体、国民世論といいますか、こういうものの啓発についてはひとつ幅広く御検討いただきたいものだと思います。大臣、どうですか。
  114. 山下徳夫

    山下国務大臣 午前中もお答えいたしましたように、やはり国民一人一人が目で確かめるということが非常に大切なことだと思っております。したがって、確かめるために多くの機会をつくるということ、これは大切なことでありますから、国体の開催地の問題につきましては御意見として承る機会があれば、また当局者とも話し合ってみたいと思います。
  115. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 さて、国際的なこと、国内的なこと、世論喚起、こういうことについてはひとつ息長いことでもございますし、また世の中の変化に伴いまして、いろいろな人の動きがございます。そういうもの等をひとつ十分に勘案して、そのときに合った形で進めていただきたい。  さて、地元としまして、根室を中心としまして、この地域がやはりある程度の生活基盤を持って発展した地域としてなければならない。こういうことから、北方領土隣接地域振興、こういうことが叫ばれまして、特別措置法とかいろんなことで措置をされることになったわけであります。今までは各省庁でやっておりましたものも開発庁を中心にしまして調整をし、そしてまた立体的にこれを推し進めていく、こういうことでそれは非常に大事なことだろうと思うわけであります。  一番この中で問題なのは振興基金のことでありますが、これは同僚委員からもいろいろお話しございましたが、長官の御努力また関係方々の御努力によりまして、六十二年度予算は従来よりも一億多い積み立て、本当は五年のうちに百億というふうに地元の方は思い、またそういうお約束だったはずでありますけれども、五年間延長してということでありますが、何も十年かかるのではなくして、一日も早くという長官のお話もございましたけれども、これは地域を振興するためにどうしても進めていただかなければならない地元としても最重点の課題でもございます。  ことしの概算要求を見ますと九億になっておりますから、去年だけではなくてことしも来年も当然九億ということだと思いますが、これは概算要求ということですから、これからまた大蔵とのいろんな折衝もあるのですが、不退転の決意でぜひひとつこれは最低限九億は国としましてもやっていただきたいし、今後もまたこの考え方を踏襲する、さらに一日も早くこれが実現のできるように、百億になるように、こう祈らずにはおれませんが、大臣の御決意をちょっとお伺いしておきたいと思います。
  116. 山下徳夫

    山下国務大臣 予算編成の上でシーリングというのはこれは厄介なんですね。厄介と私が言ってはちょっと言葉が過ぎるかもしれませんが、難しい問題だと思っております。しかも、そういう予算の仕組みについて、総務庁というのは他の官庁に先がけてきちんとしなければならぬ、そういう立場であるということは、私もみずから自覚をいたしております。  同時にまた、これもお答えしましたように、総務庁というのは事業というのはほとんどないのでございまして、したがってシーリングの枠内で総務庁予算の中でやりくりがつくかというとなかなかつかない。しかしながら、いろいろ御要請も強いことでございますので、昨年同様が精いっぱいというところで九億円を計上いたした次第でございまして、その辺の私どもの努力と申しますか微力と申しますか、これはひとつどうか御了承いただきたいと思う次第でございます。なお五年間の延長につきまして、五年いっぱいということではなく、できればひとつ少しでも早くこの金額に達するように努力することは当然のことであります。
  117. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 それはひとつ御努力をいただくといたしまして、ちょっと今の話にはつながらないのかもしれませんが、墓参のこともあるわけであります。  この墓参のことについてちょっとお伺いしておきますが、これは外務省ですか、要するにこの墓参を継続するということと、それから今まで行ってないところ、択捉とかいうところにぜひひとつという地元の方々の強い強い願いというのは長官も地元にいらっしゃっていろいろお話を聞かれたことだと思います。  さらに、さっきもちょっと申し上げましたが、もと島にいらっしゃった方がもう三分の一お亡くなりになっている、こう言われております。いろいろお話を聞きますと、ぜひ墓参に行かしていただきたいという方が、非常に希望者が多いのだそうですけれども、現在のところ全体でいろいろな関係方々を入れて五十何人ですか、四十七、八人というところですね。だんだん老齢化が進んで、島にいらっしゃった方、ぜひ我が父を、我が母をということでありますけれども、この希望者の方々が自分の希望が達成されるには相当年月が要る。中国の残留孤児じゃございませんけれども、今のような四十名程度ということですと希望してもなかなか行けない。  継続的な実施ということと、それから対象地域の拡大ということと、さらに参加者をもう少しふやされて希望なさる方々が一日も早く行けるようなことができないのかどうか、この辺のことについてもぜひひとつ長官の御努力を賜りたいと思いますが、これは何か総務庁でいろいろお調べになったりなんかしたことがあればひとつ御報告をいただきたいと思います。
  118. 紀嘉一郎

    紀政府委員 北方墓参につきましては、十一年間途絶えていたのが昨年再開されて、色丹と歯舞の四カ所行われたことでございますが、本年も元居住者の方々の御要望北海道庁を通しまして我々外務省に伝えて、外務省を通しましてソ連と交渉していただきましたけれども、結果的には昨年同様ということでございます。我々はその間外務省と連絡をとりまして、何回も本来の希望を実現するようにお願いした結果でございます。しかしながら、昨年同様でございますが、居住者の方の希望の一部をかなえることができて大変喜んでおります。決してこれで十分だとは考えておりません。今後とも対象地域の拡大それからスムーズな実施等につきましては外務省と相談しまして、格段の努力をいたしたいと考えております。
  119. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 それから旧島民の方々、この旧漁業権のことについてはまたいろいろ議論があるところですが、きょうは時間もございませんからいたしませんが、元居住者の援護融資の対象、漁業者については一代だけその子供さんということになっているわけでありますけれども、何か世代が四十年もたってまいりますとそういう枠だけではスムーズにいかないといいますか、この次をどうするかということを考えなければならないところに来ておると思うのですね。これは総務庁でもいろいろ御検討なさっておることだと思うのですけれども、次世代までその融資を拡大する方向といいますか、これも地域地域だけに非常に強い要望がありまして、これは十分に長官も御存じのことだろうと思います。これはいろいろ御検討なさっていらっしゃると思うのですけれども、どうなんでしょう。
  120. 紀嘉一郎

    紀政府委員 旧漁業権者等への援護資金の貸付事業は、北方地域旧漁業権者等に対する特別措置に関する法律に基づきまして、特殊法人北方領土問題対策協会が行っているものでございますが、その貸付金枠等につきましては逐年改善を図ってきておりまして、現在六十二年度の貸付資金枠は十二億円でございます。  この融資制度は、北方地域の旧漁業権者及び元居住者の置かれている特殊事情にかんがみ、これらの方々事業経営と生活の安定を図るために創設されたものでございまして、この融資の対象をさらに北方領土の生活体験を有しない子、孫までに拡大することについては制度の趣旨からいって大変難しい問題がございまして、この点については繰り返して申し上げておるのでございます。しかし、元居住者からも強い要望があることは我々十分承知をしておりまして、実態等も十分把握した上引き続き慎重に検討する必要があると考えて検討中でございます。
  121. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 事業をなさっていますと当然事業子供さんに引き継ぐわけです。元居住者の方々の生活基盤というのは自分自身がみずから仕事をしなくても子供さんが実際やっているというケースもだんだん出てくるわけで、子供さんの事業によって元居住者の方々の自分の生活が支えられる、こういうこともございますし、これは一般的なことでありますけれども、北方領土隣接地域というのは非常に産業のないといいますか、漁業におきましても最近は大変厳しい環境の中にございますし、そういう法律的な建前だけでこれを判断いたしておりますとこれは元居住者の方々も大変な状況になってしまうのではないかということで、地元の現状とかいろいろなことを、法律の建前は建前として私どももわかりますけれども、それは現状に即して政治的なお考えをぜひひとつ御判断を賜らなければならないと思うのですが、大臣どうでしょうか。
  122. 山下徳夫

    山下国務大臣 ただいま審議官からお答え申し上げましたように、北方領土問題で直接犠牲を受けられた方々に対してこの制度というのは設けられているわけでございますから、その子供さんや孫の代までこれを及ぼすということは法の趣旨からしてもいろいろ難しい面があろうかと思います。慎重な検討がなされなければ、これは容易な問題ではないと私は思っておりますが、御趣旨は承っておきたいと思います。
  123. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 開発庁にお伺いします。もう時間がございませんから簡潔にひとつ。  この隣接地域全体の振興策というものを、計画を立てられてそしてこれを推進するということでここ数年まいったわけでありますけれども、この数年、四年、五年の間振興策というものが着実に進んだと、それは行政の立場からいうと進んだと言うに決まっているかもしれませんけれども、率直なところどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。経済変動、農業、漁業、こういうものは非常に環境が変化をいたしておりまして、なかなか実効を上げるということについては厳しい状況の中にあるのではないかというふうに私どもは思うわけでありますけれども、行政当局としてどういうふうに評価をしていらっしゃるか。これは一つ一つお尋ねしようと思ったのだけれども時間がございませんから総括的なお話で結構ですけれども、お伺いしておきます。
  124. 大串国弘

    ○大串政府委員 北方領土返還要求運動の拠点でございます北方領土隣接地域一市四町、ここの地域の活力の維持と発展を図るということで昭和五十八年以降振興計画を作成しまして、それに沿いまして積極的な推進を図ってきたところでございます。  先生御承知のことと思いますけれども、二百海里問題、生乳の生産調整、乳価の抑制等で非常に厳しい状況でございます。五十八年度以降人口も根室市を中心に二千人弱の減少を見ておるところでございます。そういうこともございまして、第一期の振興計画が六十二年で終わるわけでございます。現在、六十三年度から五カ年計画ということで北海道庁の方で振興計画を鋭意地元市町村と相談しながら詰めている段階でございます。六十三年度以降、その振興計画に従いまして関係省庁連絡を密にしましてより一層地域の振興に邁進してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  125. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 もう時間も迫ってまいりましたのであれですが、この地域で一番主な産業といいますとやはり漁業だろうと思います。漁業につきましては、日ソ漁業交渉を初めといたしまして北方水域におきましては非常に厳しい状況であることは御存じのとおりです。それだけに地先の水域につきまして漁業振興、増養殖を初めとしましていろいろな施策を今日まで地元からも要望されておったわけでありますが、ちょうど漁港の長期計画もことし終わって、また新しい計画を立てることになっておるわけでありますけれども、漁港整備を中心としまして沿岸の漁業振興に対して特段の力を入れてもらいたい。これは今日この計画の成果と今後について、農林省にちょっとお伺いをしておきたいと思います。  それからもう一つは、六十一年度日ソ地先沖合漁業交渉で、通称三角地域と言われておりますここの操業ができなくなる。これは地元の沿岸漁業の方々にとりましては大変な打撃でありまして、零細な漁民の方々でございますので、何とかこれらの方々に対する施策をというのが地元からの強い要望であり、これは長官もまた担当の方々もよく御存じのことだろうと思います。この根室漁港や花咲港、ここから出ておりました漁船漁業の方々はもちろんのこと、沿岸の零細な漁民の方々に対する施策というのは本当に大事なことだろうと思うのです。漁業のその場における漁獲量と加工、そういうものの一体となった漁業の振興策というものが定着いたしませんと、根室周辺のこの地域発展というのは期されないと思います。  もちろん中標津を初めとしまして別海等における酪農もさることながら、漁業がどこまでどういう形で進むか本当に予想し得ないような環境の中にある。どんどん漁獲量が減らされる。そしてまた、今申し上げたような零細漁民の方々の大事な唯一の漁場でありました三角水域で漁業ができなくなる。こういうことが進んでいるわけでありまして、これは農林省の方に漁港整備とこの地域の漁業振興、これについてこれからどういう施策をお考えになっていらっしゃるのか、ちょっとお伺いをしておきたいと思います。
  126. 堀越孝良

    ○堀越説明員 根室地域の沿岸漁業等の振興につきましては、先生の御意見も踏まえまして今後とも積極的に推進をしてまいりたい、かように考えております。  それからまた、いわゆる三角水域を初めといたしますこの地域の漁業についてでございますけれども、根室等の漁業者にとりまして非常に重要な漁場でございます。したがいまして、この漁場につきましては近く行われる予定の日ソ地先沖合漁業交渉におきまして、日本側といたしましてぜひともこの水域での操業が確保されますよう努力をしてまいりたい、かように考えております。
  127. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 時間もございません。これが最後でございます。  漁業、しかも地先沖合、目の前で今までとっておりましたものがとれなくなる。小型漁船で非常に零細な方々、遠くへいらっしゃる方ももちろん大変ですけれども、今までとっておりました零細な方々がどんどん漁獲量が減らされる、こういう現状でございます。この地域の問題について担当の長官の立場からも、農林省は農林省で一生懸命頑張っておりますけれども、連携をとりながらこれらの方々の救済策等をぜひひとつ御検討いただきたいと思います。  それから最後になりますが、地元では、何といっても時の総理大臣、最高責任者の方がこの現状を、国民世論、国際世論、こんなこといったって一番行政の中心であります総理大臣がそれなりの認識がないということですとならぬものですから、やはり地元としては現地にという声が非常に強いわけでございます。中曽根内閣、もう幾ばくもございませんで云々する立場にはないのかもしれませんけれども、ぜひひとつそういう一つの認識というものだけは長官の時代にしっかり打ち立てていただきたいといいますか残しておいていただきたい。だれがなっても真っ先に日本の国として最大の課題であるという認識の上に立って総理みずから現地にまずいらっしゃる、何らかの形でそういうものが継承されていくようにひとつお願い申し上げたい、こう思うのです。地元の産業の振興、そしてまた総理大臣現地視察大臣よろしくお願いいたします。一言どうですか。
  128. 山下徳夫

    山下国務大臣 漁業問題につきましては、私の置かれておる立場から最善の努力を傾けたいと思います。また総理大臣北方領土視察の問題も、午前中に御答弁申し上げましたように、総理機会あるごとに非常に力強くこの問題について発言しておられまして、かたい信念でこの問題に立ち向かっておられる姿を私は承知いたしております。ただ国事多端ということで今日まで実現いたしておりませんけれども、御趣旨はよくお伝えしておきたいと思います。
  129. 稲葉誠一

  130. 林保夫

    ○林(保)委員 御苦労さまでございます。きょうは北方四島の実情につきまして、国家的な、民族的な悲願であり、そしてまた大人の世代の責任としてどうしても山下大臣、解決しなければならぬ、皆さん同じ思いでしょう。ところが、それをやらなければならないにもかかわりませず、先ほど来お話がるる出ましたように波がございます、国際情勢もございます。こういう変化が余り強かったり弱かったりしておりますと成るものも成らないという危機感を実は深く持っております。したがいまして、私どもの党の宣伝じゃございません、民社党ではもう緩むことなく毎年あちらへ行きまして、国民皆さんから時には不毛な運動じゃないかと言われたのです、私も一緒に年二回は資金カンパをし時には向こうへ行く、これは不断に、コンスタントに実はやっておる立場でございます。  そしてまた過般も、世界情勢、極東情勢なかなか難しい、そういう中であえて私ども塚本委員長を団長とする訪ソ使節団が中曽根総理の親書を持ちまして参りまして、ゴルバチョフ書記長に会えなかったのは心残りであったと思うのですけれども、なおドブルイニン書記とかデミチェフ政治局員候補とかロガチョフ外務次官など要路に会いまして、塚本委員長のことでございますので強く、厳しく、いろいろございましたけれども、一口で申し上げるならば北方領土を返さない限り日本との関係改善はないんだ、全国民の問題でありどの政党が政権についてもこれはなくならぬ問題だからこのことを明言すると繰り返し繰り返し訴えて帰ってまいりました。  そこで、総理が何回あそこへ行ったんだとか外務大臣が何回行ったんだとか総務長官がどうだとかという話もございます。これは大臣、大事なんですね、コンスタントにやるということで。それで大臣、この春御苦労にもあちらにお出かけいただきまして、実際に見られて深い印象を持たれたやに先ほども承りましたけれども、私も昨年秋本委員会視察ということで北海道を回り、また海上保安庁の御好意で洋上視察もさせていただきました。どういう御印象を持たれましたか、大臣、改めてお聞かせをいただきたいと思うのです。
  131. 山下徳夫

    山下国務大臣 民社党におかれてかねがね大変な御協力をいただいておりますことにつき、私も政府の一員として衷心より敬意と感謝の念を表する次第でございます。  これまた午前中の答弁で申し上げましたとおり、かつては党の研修会の責任者として三日二晩あそこに泊まり込みまして現地を船で視察したりいろいろやったこともございますし、継続して私が党務に携わっているときにはいろいろとまた東京その他で研修会もいたしましたし、今回は責任ある立場、担当の国務大臣として現地に参りまして、これまた午前中も申し上げましたとおり久しぶりにまた国後、択捉、水晶島、あの辺をずっと見まして、しかもソ連の巡視艇が我々を見張るかのごとく遊よくしているあの地域我が国の領海ではないかと思ったときに非常な不快感を私は覚えた次第であります。  したがって、国民感情の上からもまた正当な要求というかたい信念の上からも、一日も早くこの問題は解決しなければならぬ。そのためにはやはり幅広い国民運動となるべき国民理解、これは大いに深めなければならない。国民全体がよそごとではなくて使命感を持ってやるというところまで徹して、政府一つの責任としてやっていかなければならぬ、かように存じておる次第でございます。
  132. 林保夫

    ○林(保)委員 本当に大臣も御苦労さまでございます。そして御出席の皆さんも同じ立場でございますのでともどもに頑張らなければならぬと思いますが、実は国民の立場からいたしますと、中曽根総理は直ちに韓国に行かれた、アメリカに行かれた、大変意欲的だ、今日まで意欲的に御本人はやっておられると思います。その意欲的な気持ちの中には確実にソ連がある、というよりもソ連じゃなくて北方領土がある、このように期待しておったのでございますが、なかなか難しい問題であったということだと思います。  そういった中で総理の戦後政治の総決算あるいは言葉は違いましてもやらなければならぬという問題、私は、大人の世代の責任、こういうことでございますが、今日の状況は、言うなればソ連が、ゴルバチョフさんがウラジオストクで演説された、それから実は、中国との間にはウスリー江そのほかの難しいと言われた国境交渉がことしの春以来始まっておるわけですね。それで、日本に対しましては、語弊があってはいけませんけれども、私なりに解釈いたしますと、塚本調査団に対しましての、全部じゃございません、一部のことですが、歴史的事実を変える気はない、こういうような返答が返ってきております。新聞報道によりますと、返還の手法を少し変えたらどうだ、期限を先につけて日ソ交渉を先にやったらどうだという話まであるやの、これは新聞情報でございますので、外交ルートに乗った話ではございません。  そういうところがある中で、今北方領土返還に関する日ソ間の情勢、そしてどういう展望があるのか、大臣、最高責任者としてのお言葉を一言お聞かせいただきたいと思います。
  133. 山下徳夫

    山下国務大臣 これも午前中から引き続き御答弁申し上げておりますとおり、北方領土解決のためには、国内的問題と国際的問題があるかと存じます。私が担当しておりますのは国内的な問題でございまして、国際的な問題は当然外務省の所管でございます。  とにかく、今申し上げましたように、これは気長くやらなければ、国境紛争は世界のあちこちでございますけれども、足して二で割るような解決はあり得ないと私は思っております。したがいまして、武力の解決もできないし、これは気長に、しかもますます強力に、強力の度を増しながら、ということは、一つは銭金の問題ということよりも、国民の意識の問題を高めるということでやっていくということが一番大切である、内外あわせてこの問題に対処をし、気長くやっていくということが大切であろうかと思います。
  134. 林保夫

    ○林(保)委員 私も大臣の御決意並びにお考えには全面的に賛成なわけでございます。ただ、運動というのは国内の運動だけではいかぬ、外交交渉なりいろいろなものがありますね。これらをきっちり仕分けして、これからどうやるかという手法がなければ私はだめだと思うのです。どうもその辺の議論が日本国内では一緒になってしまっておる、こういう感じを禁じ得ないわけです。ただ走り回って、あそこへ行きさえすれば返ってくるというものではございませんね。それに対してやはり政治に携わる者、行政に携わる者は、それなりにきっちりと何をやるかということがなければならぬと思うのでございます。御共鳴いただけると思います。  まずそういった点で、きょうは時間もございませんけれども、一体日ソ関係はどうなっておるのだということをやはり詰めていく、私は隠す必要もないと思います。そして、デッドラインのところで初めて、返してくれるか、返そうか、どういう条件になるか、こういうことになるのが物事の相談だと思います。そういった視点で、時間は足りませんけれども、きょうは北海道及び北方周辺の日ソの、主として防衛問題につきまして防衛庁の皆さんからお話をいただけたらと思います。  まず一番は、近ごろ新聞報道を見ますと、国民が心配するようなきな臭いくらいの情勢がいろいろ出ております。私は決してきな臭いとは判断しておらないのですけれども。なお、先日の防衛白書によりますと、極東ソ連軍の増強と活動の活発化、そして数字ももうびっちり出ておりますね。本当に目の覚めるような状況です。一面、INF交渉ではアジアだけ残す、こう言っていたのが、グローバル・ゼロにしていくという姿勢も見られております。これは、これから秋のレーガン・ゴルバチョフ会談、まあ中曽根さんの対応も大事でしょうね、そういった問題だと思いますが、具体的にきょうは防衛庁の御担当の皆さんに格別御出席いただいて恐縮でございましたが、ひとつソ連の、ちょっと過去との比較も欲しいと思うのですけれども、今日どのように増強されておるかという数字を、時間がございませんので口早にばっと言ってください。ひとつお願いします。
  135. 伊藤康成

    伊藤説明員 ただいまの御質問の点でございますが、極東ソ連軍の増強ぶりということでございますが、過去十年くらいをさかのぼりまして比較して簡単に申し上げさせていただきます。  まず陸上兵力でございますが、一九七〇年では二十二個師団約二十万人というような数字でございましたが、本年度、一九八七年では四十三個師団、約三十九万人というような数字になっております。このほか、中身的にもT72戦車ですとかその他地対地ミサイルあるいは多連装ロケットといったような装備も充実されているという状況がございます。  次に、海上兵力でございますが、同じく一九七〇年と比べますと当時七百二十隻、約百万トンでございましたが、現在は約八百四十隻、百八十五万トンということでございまして、なおその中には、御承知かと思いますが、キエフ級空母が二隻とかあるいはキーロフ級原子力ミサイル巡洋艦といったようなものも極東の方に配備されておりまして、今や極東のソ連太平洋艦隊はソ連の艦隊の中でも最大のものと言われるほどになっておるわけでございます。  また、航空兵力について申し上げますと、やはり一九七〇年では約千八百七十機の作戦機を持っておったわけでございますが、現在、八七年時点ではこれが二千三百九十機ということでございます。またその機種といたしましても、TU22Mバックファイア、ミグ23あるいはミグ31というような新しい飛行機が配備されておるという状況でございます。  なお、十数年前は一切ございませんでした中距離核でございますけれども、例のSS20が現在極東方面に約百七十基あると承知しておるわけでございます。
  136. 林保夫

    ○林(保)委員 続きまして、北方四島領土におけるソ連軍の増強も新聞に時々出るくらいですね。しかし、なお近ごろ激しいという話も聞いておりますが、防衛庁はどのように認識しておられますか。
  137. 伊藤康成

    伊藤説明員 お答えいたします。  北方四島につきましては、ただいま御指摘もございましたけれども、戦後一時的に部隊がいなくなった時期もございますが、地上部隊について見ますと、一九七八年に国後、択捉両島に大隊規模あるいは旅団クラスの部隊が再配置されておりまして、それ以後逐次増強されておりまして、一九八一年ころ、私どもとしては大体師団規模の部隊になっているというふうに推定をしております。なお、国後、択捉のほか、色丹島にも一部部隊が配備されておるという状況でございます。  この部隊は、ソ連の通常の師団が保有しております戦車ですとか火砲、あるいはヘリコプター、MI24ハインドというヘリコプターでございますが、こういうものを装備しておりますが、それ以外に、通常の師団では持っていない長い射程の百三十ミリメートルのカノン砲というものも配備されているというふうに承知しております。  それから航空部隊でございますが、これは戦後ずっと何らかの機種がいたわけでございますが、最近では一九八三年の八月から九月にかけて、約二十機のミグ23という新しい方の飛行機でございますが、これが択捉島の天寧飛行場に飛来しております。以後、現在約四十機に増強されて、現状はそのままという状況でございます。
  138. 林保夫

    ○林(保)委員 続きまして、新聞報道によりますと、八月二十七日でしたか、キエフ級空母ノボロシスクを含む太平洋艦隊の主力艦が宗谷海峡を通過した。これは防衛庁の発表じゃなかったかと思うのですけれども、その後どちらへ行き、どういう目的で行動しておるかというのをちょっと教えていただきたいと思います。
  139. 伊藤康成

    伊藤説明員 ただいま御指摘の点でございますが、私どもの方も宗谷海峡を通峡した時点でわかる範囲で発表させていただいているわけでございますが、概略申し上げますと、八月二十六日の夜からあのあたりでの動きが確認されたわけでございます。二十六日夜から二十八日にかけまして、キエフ級の空母ノボロシスクあるいはキーロフ級原子力ミサイル巡洋艦フルンゼ、その他イワン・ロゴフ級の揚陸強襲艦ですか、こういうものを含めまして合計二十五隻のソ連の海軍艦艇が宗谷海峡を日本海の方からオホーツク海の方に向かって通峡していったということがございます。非常に短い、正味一日かそこらの間にこれだけの数の船がまとまって通峡したというのは、私ども知る限りにおいて初めてでございます。この船でございますが、その後ほとんど一日もたたず、翌二十九日、早いものは二十八日の夜からでございますが、再び逆にオホーツク海から日本海の方へ大部分が帰っていったというような状況でございます。  そこで、どういうことであったかというのは定かではないわけでございますが、これだけの規模の、二十隻以上、二十五隻あるいは二十隻というような船が東へ行ったりあるいは西へ行ったりしておるわけでございますので、オホーツク海を中心としたあの海域で何らかの訓練というようなことが行われたのではなかろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  140. 林保夫

    ○林(保)委員 矢継ぎ早で恐縮ですけれども、それらのソ連の軍事力の増強に伴って、艦艇や航空機が宗谷海峡そのほか対馬、津軽海峡を含めまして、いろいろ動いていると思います。その概況について御説明いただきたいと思います。
  141. 伊藤康成

    伊藤説明員 御説明いたします。  我が国周辺で、まず航空機でございますが、私ども大体過去五年間平均ということで従来申し上げておりますが、最近のところで見ますと、航空機の動きが大体年間約三百五十回というふうに承知しております。  内訳を申しますと、日本海を南下して北陸沖等で反転していくものが二百六十回、それから対馬海峡を南下し、あるいは北上するという対馬海峡を通峡するものが約八回、それから太平洋を南下しまして、紀伊半島あるいは四国沖を経まして沖縄東方沖で反転するというようなコースが一つございますが、これが八回、太平洋をさらに南下して、ずっと遠くまで参ります、太平洋南下というふうに呼んでおりますが、これが三十一回、さらにまた、三陸沖を南下しまして房総半島沖で反転する、いわゆる東京急行というものでございますが、これが三十一回、それから北海道東沖で反転します、道東沖というふうに呼んでおりますが、これが約九回というような状況になっております。なお、昭和六十年に初めて確認されたわけでございますが、北朝鮮を横断いたしまして南の方へ下っていく飛行機があるわけでございますが、これが現在のところ、二年間の平均でございますが九回、こういうような状況になっておるわけでございます。  次に、艦艇でございますが、これもそれぞれ、宗谷それから津軽、対馬の三海峡を通峡するものを過去五年間平均で大体申し上げておるわけでございますが、これも現時点では、大体年間トータルいたしますと五百七十五隻ぐらいということになります。内訳を申し上げますと、対馬を通峡いたしますのが百四十五隻、それから津軽海峡が五十隻、宗谷海峡が約三百八十隻、こういうようなところが現在の状況でございます。
  142. 林保夫

    ○林(保)委員 続きまして、大変御苦労ですが、例の航空識別圏内ですか、大体その範囲で正体不明の飛行機が来たときにスクランブルをかける。かつては五百回と聞いておりましたけれども、そうすると、一年は三百六十余日しかございませんので一日に一回以上もというのですが、何か最近はそれが三倍ぐらいになっているというような話も聞きます。その点は年度別にどういう状況になっているか。  それからもう一点は、今もちょっと触れられましたように、北朝鮮がえらい協力的にソ連機を通しているという情報も出ておりますが、お話しいただきたいと思います。  ついでに、ソ連機以外の飛行機がどこの国籍か、わかれば一緒に言ってください。
  143. 大森敬治

    ○大森説明員 お答えいたします。  領空侵犯につきましては航空自衛隊が実施しているわけでございますけれども、スクランブルの回数を過去統計的に見てみますと、先生指摘のとおり、五十一年当時は五百二十八回という回数でございましたけれども、この五年ぐらいの平均をとりますと、八百五十回ということになります。ちなみに、昨年六十一年度は八百二十五回、六十年度が八百九十八回、五十九年度九百四十四回、五十八年度六百七十五回、五十七年度九百二十九回という回数になっております。  スクランブルの対象の国別内訳ということにつきましては御答弁を差し控えさせていただきたいと思っておりますけれども、ほとんどの場合がソ連機によるものでございます。
  144. 林保夫

    ○林(保)委員 時間がございませんのでそれで了承いたしますが、それに対応いたしまして、先日も新聞報道によりますと、これは六十三年度予算とも関係してくるのだと思うのですが、北方がそういう状態でありますので、北海道重視の師団編成をやるとかいろいろ国会答弁そのほかでもう既に出ておりますが、大体どういう構想をお持ちなのか、簡単にひとつ御説明いただきたいと思います。
  145. 大森敬治

    ○大森説明員 お答えいたします。  陸上自衛隊の編成の関係でございますけれども、防衛庁といたしましては、昨年の五月に陸上防衛態勢研究会というものを設置いたしまして、我が国の地理的な特性ですとか将来の兵器体系の趨勢を踏まえまして将来の効率的な陸上防衛態勢のあり方を現在検討しているわけでございます。この研究の中で、師団等の作戦基本部隊の編成のあり方についても検討いたしておるわけでございますが、師団につきましては、三十七年に設立、編成されました後、基本的には変わっておりません。  基本的な一律編成になっておるわけでございますが、配置されるその地域の特性それから将来の軍事技術の趨勢等を考慮しまして現在検討を進めている段階でございまして、具体的な結論が得られておりませんので具体的にお答えする状況にはないわけでございますが、基本的には、北海道の部隊につきましては、戦車とが自走火砲を重視し、本州等の部隊は対戦車火力を中心とする機動的な編成にする、そういうような考え方がいろいろあろうと思いますが、そういうことを踏まえまして現在検討中の状況でございます。  以上でございます。
  146. 林保夫

    ○林(保)委員 そういう専門的なことはそれといたしまして、私も実は昨年の十月の初旬でございましたか、御交誼いただきまして、党の皆さんと一緒に陸上自衛隊の東千歳駐屯地とか航空自衛隊の千歳基地を見せていただきまして、実は驚いたことがあるのですね。宿舎というか隊舎というのですかね、皆さんお泊まりになるところ、住居ですね。それから、その次は、今度は七四戦車でしたかね、修理工場ございましたね、何か小学校の古いのみたいな感じがしました。一方は暖房がやっとついた、一方はついていない。民間の車検場よりもちょっとひどいじゃないかという、それから印象としては、これは燃料タンクは持ち運びにはドラム缶に詰めて、野積みもしようがないんだということも聞きましたけれども、余りにもたくさんありました。それから、確かに格納庫は大体整備されているようでしたけれども、かつては人工衛星から見れば日本の飛行機はどこか全部わかるんだというようなことも言われた時期もあったと思います。また、過日は、あれは何が原因ですかね、火事がございましたね、七月ですか。  その辺のところで、来年度予算で本年度の七百二十億円が千二百億ですか、そういうような増強をされるとは聞いておりますけれども、どういう実情になっておるのか、その火事の起こった原因も含めて簡単に御説明いただきたいと思います。
  147. 黒岩博保

    ○黒岩説明員 隊員の処遇改善施策のうち営内居住というような特殊な勤務上の制約を受けております隊員のための隊舎、食厨・浴場等いわゆる生活関連施設の整備につきましては隊員の士気を高め、装備の充実とか教育訓練の推進とともに質の高い防衛力を整備する上でも重要な施策の一つと考えております。  隊舎等、これらの生活関連施設の現状でございますけれども、隊舎の中には戦前の木造建物とかあるいは老朽化しているもの、一室に多人数が居住しているような大部屋方式のものとか、あるいは狭隘なために二段ベッドに入っているというようなものもございます。また、食厨・浴場につきましても、老朽化、狭隘度の高いものがありまして、これらの施設を世間一般並みの水準に引き上げることが目下の急務であると考えておりまして、かかる観点から特に老朽化あるいは狭隘度の著しいものを優先して建てかえ、整備、増設してまいりたいと考えております。
  148. 林保夫

    ○林(保)委員 いろいろな条件があると思いますけれども、正面装備あるいは抗堪性の問題とか継戦能力とかの問題ばかりでなくて、全体のバランスをとってやっていただかないといかぬなという感じを禁じ得ませんので、これからもそういった面で御努力をいただきたい、このことをひとつ特に申し上げておきたいと思います。  大臣、こういうことを聞きましたのも、防衛上の安全の問題がありますね。それから、地政学的な問題、歴史的な問題そして経済の関係、そして何がありますかね、交流上の問題とか、それから際立って日本の場合は漁業の問題がございまして、いろいろあるわけでございます。そこらあたりで、過日も小名浜港へソ連船が入った。それ以前に、日本海でソ連の漁場を認めたという事実が今から数年前にございますね。そういったものを含めて私はそれを隠ぺいすることはないと思うのです。それらの全部の条件を積み重ねて一体どうかという日ソ交渉でなければならぬと私は思うわけでございます。そして、今、北方四島ですが、ここに先ほどの御答弁では師団級のソ連軍というふうに聞きましたけれども、大体何人ぐらいでしょう、師団級といいますと。
  149. 伊藤康成

    伊藤説明員 北方領土におります部隊でございますが、陸軍の場合で大体七、八千ぐらい。なお、これとは別に国境警備隊が約三千人程度というふうに承知しております。
  150. 林保夫

    ○林(保)委員 それから、大臣にお聞きしたいのですけれども、あそこへ民間人が随分来ておるという話を聞きますね。担当大臣としてどのくらい把握しておられますでしょうか。民間人といいますと、私が情報で聞いていますのは、漁業者それから森林開発あるいは温泉がある。今のをトータルしますと八千、三千で一万一千ですね。それどころじゃないですよね、大臣。担当大臣としては実情を把握しておられると思いますが、どれぐらい……。
  151. 山下徳夫

    山下国務大臣 これはちょっと私の担当じゃないんじゃないでしょうか。どこが所管するかと聞かれるとこれまた私もよく承知いたしておりませんが、現在私はお答えするだけの資料を持っておりません。
  152. 林保夫

    ○林(保)委員 それでは、紀審議官と防衛庁両方から、知っておられたらひとつ教えていただきたいと思います。
  153. 紀嘉一郎

    紀政府委員 残念ながら承知しておりません。私たちの方は国内の啓発ということが主でございますので、情報は持っておりません。
  154. 伊藤康成

    伊藤説明員 私どもも民間人のソ連国内の動きについてまではちょっとよく承知しておりません。
  155. 林保夫

    ○林(保)委員 実はこの問題は、昨年十二月に私ども党の先輩と一緒に玉置さんに北方四島の返還問題、いろいろ具体的にこうしなければならぬ、ああしなければならぬということで要望しに行きました。御苦労さま、こういうお言葉もあったわけですけれども、その際質問いたしましたらえらいびっくりされまして、それは大至急調べてみると、担当大臣がそういう実情くらい知っておられないとやはりいかぬのじゃないだろうかと私は思うのです。大臣、交渉を具体的に始めますと、そういう問題がもろに出てきますね。  きょうのところはそれにいたしまして、委員長、議事録で差しさわりがあるようでしたら、ひとつ私も国益に反することは発言したくないわけでございますので、また理事にもよく頼んでおきますから、もしありましたら言っていただきたいと思うのです。  大臣、返ってきたときに、北方四島がどのような扱いをされるかということをやはり担当大臣は考えておられると思うのです。そういう発想なしで交渉して、返ってきたわ、あしたからどうするわということでは、一億一千万人を運動に駆り立てる根拠はないと私は思いますね。逆説的に申しますと、北方四島が返ってきた、そこへ防衛庁が何個師団もえらいものを持ってくる。いや返しませんね。大臣、交渉というものはそういうものだと思いますね。これは沖縄返還の交渉を見てもそうだと思いますね、いろいろな条件があって。  そうすると、とりわけ総務庁長官としては、担当大臣としては、私の知る限りではそこに住んでいる民間人の国籍をどうするか。漁業権もありましょうし、あるいはまた日本のような土地の所有の問題もあるかと思いますね。そこへ日本人、旧島民の子孫だけ帰すのか、ほかの人も行くのか。そして四つの島を、どのような図を描くのかということがなければ、これは本当の意味の交渉にならぬと思いますね。大臣、どのようなお考えを持っておられますか。その点を承りたいと思います。
  156. 山下徳夫

    山下国務大臣 非常に難しい問題でございまして、これまた責任ある答弁ができるかどうか、率直に申し上げて私も非常に自信がないのでございます。ただ、この問題の進捗の状況につれてその態勢を整備しておく必要がある。  そこで、ただいま幾つか例示されました、戸籍の問題等につきましては、根室の市役所等に当時のものがちゃんと保管されている。当時の状況からして、これを漁船で持ってきて保管しておるというのは勇敢と申しますか、大変立派なことであったと思っております。そういう資料等は現在保管されておると思いますから、そういう問題についてはいつでも対応できるものはあると思うのでございますけれども、総合的にどうするかという点につきましては、今後の返還問題の進捗につれてそれに対応できるような、遅きに失するようなことは絶対にないようにしなければならぬと思うのです。今の時点でこの問題を、何はどうするということをお答えできないのは大変どうも恐縮に存ずる次第でございます。
  157. 林保夫

    ○林(保)委員 私のつたない体験ですけれども、かつて第二回の日ソ円卓会議に出まして、いろいろな話があったわけですけれども、その間で、日本返還運動の高まりとその衰弱ぶりですね、大変向こうは、あなたたちはそう言うけれども、こういうこともあるじゃないかという問題がありましたり、その後四島をどうするのだという話も、会議では出ませんでしたけれども、実は食事での話し合いの中で出たという事実もございます。言うならば、旗を持っておらびに行くだけでは政治、行政上の責任は果たせないと思いますので、ぜひ私の方からもお願いしておきたいと思います。  それは外務省の問題あるいは法務省の問題、農林水産省の問題、そのほかいろいろあると思うのですけれども、担当の大臣あるいは総務庁としては、ABCの三つくらいでできなければ、XYZくらいの考えをそれなりに持ちながら、晴れた日にどうするかというのをひとつぜひお考えいただきながら、先ほど申し上げましたように、にこやかに手を握って仲よくだけでは決してこの問題は解決しないということは過去の事実が証明しております。きっちりした取引になるのじゃないかという感じを深ういたしますだけに、ぜひひとつこのことをお願いしておきたいと思います。大変勝手なお話を申し上げたようでございますけれども、私どもの心ある仲間もそういう考えを持っておりますことをひとつ言っておきたいと思います。  議事録で不適当なところがありましたら、委員長、削っていただいて結構でございます。  お互いに実務上の取引で解決するというようなところまで踏み込みませんと、国民の期待、世代の責任はなかなか果たし切れないと思いますので、最後に大臣の御所感をもう一度承りたいと思います。
  158. 山下徳夫

    山下国務大臣 どうも先の先まで御心配いただいてありがとうございます。  私が今申し上げましたように、例えば戸籍謄本とか不動産の登記台帳、こういうものは根室に保管してあると私どもは承っておりますし、漁業権等につきましては法に照らしてこれは即応できるものではないかと私は思いますが、いずれにいたしましても関係者とこの問題についてはまだ打ち合わせておきたいと思います。
  159. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。終わります。
  160. 稲葉誠一

  161. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 最初に、北方領土問題についてお伺いします。  現在、政府が防衛政策を進めている、この中で特に重視しなければいけないのは、六十二年版防衛白書で「侵略への対処」の項を新しく設けて、北部日本の防衛を重視ということが述べられている例に示されているように、千島、樺太進攻作戦を含む海洋戦略など、危険なレーガン戦略に追随して、日米軍事同盟強化と軍拡の道を突き進もうとしております。  現在、特に核戦争阻止、核兵器全面禁止、廃絶が人類にとって死活的に重要な緊急課題になっているとき、ソ連脅威をあふった軍拡の方向がますます強化されるということは、現実に領土問題の解決を妨げる重要な要因になっていると私は思います。この点について外務大臣の御意見を聞きたかったのですが、きょうは外務大臣いませんので、ぜひ総務庁長官のこれに対する明確なお考えを聞きたいと思います。
  162. 山下徳夫

    山下国務大臣 我が国の防衛は、私から申し上げるまでもなく、いわゆる専守防衛、我が国に対する侵略を抑止し、排除するための防衛態勢であることはもう国民も知っているところでございます。それと、今お話がございました北方領土の問題は、我が国固有領土であるという当然主張すべきものを私どもは主張しておるわけでございますから、この二つは全く別の問題であり、これを絡めて考えるということはいかがなものか、あるいはまた、相手国がこれを絡めて処置するというようなことが仮にありとするならば、これは私は理不尽なことだと思うのでございます。  特に共産党の皆さん方も、これは与党の自由民主党以上に千島まで含めて返せという御主張をなさっていただいておるわけでございまして、これは国民感情として国民が打って一丸となって要求すべきものであって、防衛云々の問題と切り離して考えるべきだと私は理解いたしております。
  163. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 今、総務庁長官がおっしゃったように、我々は全千島を返せということなんです。ところが、今言ったように防衛白書に新しく項を設けて仮想敵国をソ連に置いている。これで別々の問題だと解釈しるというのが大体無理なんですよ。一応は総務庁長官意見はそういう意見として承っておいて、これでは全千島の返還どころか、いわゆる四島の返還も難しいということだけは申し上げておいて、次に進みたいと思います。  総務庁年次報告によりますと、中期行政監察の予定テーマとして防衛施設周辺地域対策を挙げております。これに関連して防音装置の問題、防音関係の問題を私は取り上げたいと思います。  具体的に申し上げますと嘉手納町、北谷町とありますが、ここの町長さん、議長さんが私のところへ来られて非常にはっきり言われました。具体的な一つ質問ですが、騒音指定区域にありながら防音工事の助成を受けている住宅と受けていない住宅がある。所によっては、これはドーナツ化現象と言っておりますが、騒音源に近い住宅には助成がなくて、遠い住宅に助成がある、これは関係住民の生活の安定及び福祉の向上に寄与するという法律の趣旨や、いわゆる憲法のもとでの平等という趣旨にも反するということでありまするが、実態は極めて不平等な状態に現在なっております。  第二に、防音工事をやった住宅では、今時に沖縄は非常に暑いのですね、ここも暑いのですが、クーラーなどの電気料が重なって財政的に大きい負担となっている。  三番目に、いわゆる塩の害が非常に激しくて大分傷んでいる、交換の時期が来ているという問題などを訴えておりますが、これに対しまして施設庁あたりは十分これに対応できる対策をとっていない。これについて施設庁、方針を具体的にこうこういうふうにしたが現在こうだということをはっきりしてほしいと思います。
  164. 嶋口武彦

    嶋口説明員 先生から三点御質問をいただきましたので、順番に従いまして御説明申し上げたいと思います。  第一点目の問題は、いわゆるドーナツ化現象という問題でございまして、これは騒音区域の指定の告示の際に存在してなくて告示後に建てられた建物、これに対しましては私どもいろいろの機会にこういう建物についても住宅防音工事を実施すべきではないかということでたびたび要請を受けておりますし、私ども常に念頭に置いているところでございます。ただ、先生御案内のように騒音区域の指定の告示前に存在する建物、これも非常にたくさんございまして、我々は非常に急いでいるわけですけれども、数が膨大だということでいまだ多数残っている、告示前に存在する建物に対する防音工事もまだ十分実施していないような状況にある。そのような状況を考えますと、告示後に建てられた建物に対する住宅防音工事を常々念頭に置いているわけでございますけれども、やはり告示前に存在する建物に対する住宅防音工事をできるだけ急いでやるのが先ではないかというふうに考えております。いずれにいたしましても告示後に建てられた建物につきましては日常我々も常々念頭に置いているわけでございますので、今後の検討課題として考えさせていただきたい、このようなことでございます。  第二点目のクーラーの電気料金の問題でございますけれども、これも私ども常々念頭に置いております。確かに沖縄のように暑い夏、住宅防音工事をやりますとサッシによって閉め切りますので、ぜひともクーラーが必要になってくるということでございます。この問題も私ども常々念頭に置いているわけでございますけれども、何分にも先ほど申し上げましたようにいまだ多数住宅防音工事を実施しなければならないものが残っているというふうな状況でございますと、今すぐの問題としてはいかがかというふうに考えております。ただ、生活保護世帯につきましては、確かに生活保護世帯の皆様の事情を考えますと、これは何とかしなければいけないのではないかということでこれまで何度も財政当局と調整を図ってきておりますけれども、いまだ実現に至っていない、私ども引き続きこれが実現に向けて努力してまいりたい、このように考えております。  第三点目の、沖縄の嘉手納町、北谷町の場合になりますと、クーラーが塩害で非常に傷みやすいということで、これも私ども従来から念頭に置いているところでございまして、もう十数年もたってきますとやはり傷むものも出てくるのではないかということで、この問題も考えております。何分にもこれは具体的な問題でございますので、実際に調査してみないと実情等もなかなかつかめませんので、数年前より一部ではございますけれども熱心に調査をやってきております。これらの調査結果を踏まえまして、適切な処理について財政当局とかけ合っていきたい、このように考えております。  以上でございます。
  165. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 今度は長官にお聞きしたいのですが、基地を撤去して米軍がいなくなれば防音装置など要らないのですよ。しかし、そうはいかぬという現実を踏まえての質問でありますが、御承知のように、実は沖縄には全国の基地占有面積の七四%ぐらいが集中しております。飛行機といえば、三沢、岩国、ミッドウェーなどから、三沢あたりからはF16がやってくる、それから普天間からもFA18戦闘機など多数がやってきて大変な騒音なんです。それで、この防音装置ですが、今お答えになったことでは到底住民の要求は達せられない。今北谷町のお話をしましたが、砂辺あたりは百ホン以上が普通だというのです。百ホンというのは話ができませんからね。  私はこの基地調査をやったときに、普天間基地の近くに普天間第二小学校があるのですが、四十五分の授業中に六回ないし七回ぐらい、子供が授業ができないというのですね。長官、この写真の右側に子供の写真があるのですよ。耳を押さえて——これほどなんですね。これは宜野湾の第二小学校子供たちなんですが、この問題は決してここだけではなくて、嘉手納から北谷から、そういったまさに教育の機会均等をも破壊するようなことである。私は長官にこの点でお願いしたいのは、関係省庁と早目に連絡をとられて、騒音が本当に人間らしい暮らしを破壊しないような方向に努力してもらいたいと思いますが、いかがですか。
  166. 山下徳夫

    山下国務大臣 これは一つの公害でございまして、米軍に限らず、国内における民間機の離発着についても今十分考慮されているところでございます。この子供が耳をふさいでいるのは、教室じゃございませんね。これは何か滑走路の近くで離着陸を見ているところじゃないでしょうか。よくわかりませんけれども、これは教室じゃございませんね。いずれにいたしましても、この問題については、むしろ監察を行っている政府委員の方がよく調べておると思いますから、政府委員から答弁をさせたいと思います。
  167. 山本貞雄

    ○山本(貞)政府委員 防衛施設周辺地域対策の問題につきましては、さきの臨調答申等におきましても、事業内容を見直し、一層効率的に実施すべきだ、こういう指摘をいたしておるわけでございます。また、一方におきまして、最近は防衛施設周辺の都市化等の進展も御指摘のようにあるわけでございます。したがいまして、私どもも現在の中期行政監察予定テーマにおきましても、適切な時期にこういった防衛施設周辺対策問題について行政監察を取り上げることを検討いたしております。その際に、御指摘のような点もあわせまして十分参考にしてやってまいりたいと考えております。
  168. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 次は、在日米軍内におけるNHKの受信料の問題についてお聞きしたいと思います。  現在、在日米軍基地にある個人住宅は約一万戸と言われております。仮に全住宅に受信施設があるとして、全住宅から受信料を徴収すると、NHKは受信料が二カ月で千九百八十円ですからこれを年間に直しますと一億一千八百八十万円になります。現在の段階ではまだ変えていませんが、アメリカ側は地位協定に基づいてこれは税金というふうに考えるので払えないということであったが、政府との交渉の結果、払うなということは言わない、払ってもよろしい、ただしNHKに任せる。ところが、米軍基地内に入っちゃいかぬというようなことがあるので事実上徴収不可能なんですね。  ですから、この点につきましては、例えばパス券を発行して徴収できるように米軍に入れるような方法を講じないと、徴収してもいいが米軍基地内に入っちゃいかぬ、ただし書類で要求することは一向に構わないということで、結局ほとんど入らないという状態である。これはぜひ突破してもらわなければ、米軍といえども受信している、NHKを聞いているのですから。もちろん、今大臣に言う必要はないと思いますが、六十二年度のNHKの予算は三千五百十五億円、そのうち三千三百四十八億円が受信料なんですよ。ですから一刻も猶予できない、国の財産が減るわけなんですから。主権者としてこういった点を直すよう、これはパス券で簡単にできると思いますので、その点について何かお考えがありますか。
  169. 岡本行夫

    ○岡本説明員 お尋ねが日米間の地位協定の解釈にかかわることでございますので、私の方から御答弁させていただきます。  この問題につきましては、先生指摘のように米側は従来から、NHKの受信料というのは地位協定第十三条に言う租税の公課に当たる、したがって払う義務はないという立場をとり続けております。私どもの地位協定上の解釈は、米軍全体としてならいざ知らず、米軍の構成員個人個人については、このように租税の公課ではないものについてはその免除はないという立場をとってきております。そして、米側とはこれまで種々調整を続けてきたことは御案内のとおりでございます。  その結果、米側は、地位協定の解釈に関する米側の立場はいささかも変更しないけれども、NHKが米軍の個人に対して受信料徴収について勧奨する、そのような活動を行うことはNHKの御自由ですという立場をとっているわけでございます。その結果NHKの方では、電話ないしは郵送といった方法で受信料徴収の努力を続けられてきたと聞いておりますが、先生が御指摘の点は、実際にNHKの集金人の方が基地内に立ち入る問題についてだと思います。  この点につきましては、外務省としてNHKの方のそのような立ち入りについては認めてやってくれということを米側に口添えしているところでございますが、他方、地位協定の第三条に定めます管理権というものを米側が持っておりまして、米側がこれを根拠に実際のこれまでのNHKの立ち入りの申請に対しては敷地内の立ち入り許可を出してないというのが実情でございます。
  170. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 五十四年三月十六日の逓信委員会で今のような見解が述べられているのです。それから一歩も進んでいないのだ。だから、NHKは事実上入れませんから、払ってくれと手紙を送るでしょう。それはあなた、どうにもならぬですよ。だから、これは企業に任すことはできぬわけなんです。ですから、政府が進んで取るべきものなんです、取ってもいいということを言っておるわけなんだから、しかし、今おっしゃったように、アメリカは基本的な態度は変わっていない、地位協定に基づいて税金を別に考えているから。しかし、徴収することについて、払ってはいけないということは別に米軍人や軍属に通達はしていない。だから、みずから取りなさい、ただし基地には入っちゃいかぬと言うわけだ、これでは取るなということなんですよ。郵政省の方では、今までのようなあの制限下でNHKは幾らくらい徴収したか、何か知っていますか。
  171. 團宏明

    ○團説明員 お答えいたします。  今外務省から話がありましたとおりでございまして、NHKとしましても放送法に基づきまして受信料の契約ないし納入をお願いしてきているわけでございますけれども、今話がありましたよううに、基地内の立ち入りが事実上できていないという状況でございまして、現時点ではほとんど徴収ないし契約はできていないという状況でございます。
  172. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 長官、これは当然まとめて払うべきなんですよ。これは沖縄の那覇基地で事実があるのですよ。この基地内に、もう貸さないという地主がいて、そのために通行券、最初パス券を持っていたが、自分の畑の中に行くのに通行券が要るかということで今自由に入れるようになっているのですよ。これが那覇自衛隊基地。ですから、政府努力すればいわゆる無記名の、NHKならNHKが書いたパス券を持っている人であれば入れるという道を開くということは私は可能だと思うのですよ。だから、長官関係省庁と一応打ち合わせをされて実現できるように、パス券さえあれば入れるのですよ、パス券がないともちろん基地内に入れませんから、そういう方向で努力して国の財産をふやすように努力してほしいと思いますが、長官、いかがですか。
  173. 山下徳夫

    山下国務大臣 先ほど外務省からもお答えがございましたように、この問題は基本的に地位協定上の租税公課の解釈をめぐる問題であるということでございますから、そうであるとするならばこれはやはり外務省が所管される問題でございまして、私の方がやるべき問題ではないということでございます。ただ、御趣旨はよくわかりますので、決して逃げるわけではございません。私の方が主宰して関係省庁と話し合うべきかどうかということ、これまた事務方とよく話し合ってみなければわかりませんが、御趣旨はよくわかりますので検討させていただきたいと思います。
  174. 岡本行夫

    ○岡本説明員 今に至りますも米軍の敷地に対してNHKの方がお入りになれないということの背景には、先般来申し上げておりますように、受信料の法的性格をめぐる日米間のこれまでの議論がまだ決着を得ていないこと、さらに申し上げますれば、米側の中に実際上はNHKを見てないのだからそのような受信料の支払いには応じられないという感情論が一部にあることも事実でございますが、私どもはそこは、第一にこれはNHKとの受信契約に基づきまして受信者が支払い義務を負っておりますいわばNHKの維持運営のための分担金的なものであるからということを説得しておりますし、またNHK受信料の性格というものは、見る見ないにかかわらずNHKの放送を受信できる受信設備があればこれはすべからく払わなければならないものであるということを強調しております。私どもは、立ち入りの問題も含めまして、今後とも粘り強く米側と話していく所存でございます。
  175. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 余りアメリカに遠慮し過ぎないで、払うと言うのだから。ただ、基地に入ってはいかぬぞということだけなのですよ。自由に入れませんから、これは否定しません。しかし、そういったようなパス券の問題があるのですよ。これは折衝によってはできるわけなのだ。だから長官、ひとつ関係省庁のいろいろな意見を調整してやってほしい、長官せっかくそういった努力をするということを言われたので、これはそういうことで了解したいと思います。これは一応予算に入るし、財産なんだから、そういった意味で私は聞いておるわけだが、長官がせっかくそういった関係省庁の意見も聞いてというようなことを言われたのでこれを了として先に進みます。  今度は、沖縄開発の問題で、よく言われる本土の大企業が入ってきてそして沖縄の経済を食い荒らしているということは当委員会でもたびたび申し上げましたが、海邦国体は九月から始まるわけなのです。これについて、国体関連事業、これは沖縄開発庁関係ですが、五十七年から六十年までを調べましたが、五十七年は大体四四・八%が本土企業、ところで六十年、これは逆転して本土企業が五八・二%で県内企業は五〇%を割って四一・八%、金額は二十四億一千五百万円、本土企業は三十三億五千六百万円というふうに年を追うごとにこういうふうにだんだん本土企業の方に余計回っている。事実は今申し上げたように、実際から言うと毎年いわゆる技術の問題とかあるいは請け負う場合に、本土大企業でなければいかぬとかというふうなことでない場合には、だんだん沖縄の企業がふえるのが当たり前なんだ。これは逆なんですね。  ですから例えば、後で申し上げますが、沖縄の自動車道の工事に至っては、沖縄自動車道路は、五十七年から六十一年までの合計で八三%が本土企業なんですね。道をつくるんですよ。これは別に大した機械とか何も要らないから、これだけは結局沖縄の企業だけでいいんじゃないかというと、この自動車道路は逆になってくる。八三%、金額にして二百六十五億九千十九万円、沖縄県内の企業は一七%でわずかに五十四億四千九百三十一万円、こういった状態なんです。私はこの点は早目に直してもらわないと、県内企業に落ちるようにしないと、今二次振計で十五年になってあと五年しかない、こういった調子でどんどん本土企業の方に持っていかれると、県民の懐に入ったのは鉄筋コンクリートばかりだといったようなことにならぬようにやらないといかないと思うのですが、これはどうですか。建設省来ておるでしょうか。
  176. 塚越則男

    ○塚越政府委員 私ども把握しておりますのは、沖縄総合事務局において発注した事業でございますけれども、先ほど先生、五十七年から六十年までの数字をお挙げになりましたが、六十一年度について見ますと、件数、金額とも七〇%が県内企業に発注されている状況にございます。たまたま六十年度は事業の内容等で先生のお話のような形になったと思いますけれども、六十一年度につきましては、今申し上げましたように件数、金額とも七〇%は県内企業に発注されているという状況にございます。
  177. 小松原茂郎

    ○小松原説明員 先生からお話ありました懸案の自動車道工事に関連しましてお答え申し上げたいと思います。  建設省におきましては、中小企業の育成につきまして、毎年度閣議決定されます中小企業に対する国等の契約方針、それから毎年度の建設省所管事業の執行につきましての通達に基づきまして、中小企業者の受注機会の確保に努めるよう日本道路公団指導しているところでございます。日本道路公団におきましては、工事発注の規模別に発注基準を設けておりまして、それぞれの工事の発注規模に対応するように等級の業者に発注することといたしております。  沖縄自動車道というのは大規模な施設でございまして、先生はたかが道路というお話でございましたけれども、非常に大規模な事業でございまして、施工能力といった見地からも、また工事の効率的な施工の上からも、発注規模の単位というものはどうしても非常に大きくならざるを得ません。したがって、中小企業者が大半でございます沖縄県の業者の受注機会というのは少なくなる傾向にございます。  そこで、道路公団といたしましては、これに対処いたしますために、沖縄県の中小企業者の受注機会をぜひともふやしたいということで、大手企業者の組み合わせによるいわゆる共同企業体方式というものの活用を図っておるところでございます。また、一部の工事につきましては、さらに特例といたしましてその共同企業体の構成員の片方を沖縄県に本店を有する業者に限定するという条件をつけるなどいたしまして、沖縄県の業者の受注機会の確保に努めてきているところでございます。  非常に努力いたしております結果がそういった数字でございますが、今後なお、沖縄自動車道、先生のお話のように十月開通いたしまして残工事わずかでございますけれども、今後ともそういったことで、極力県内業者の活用につきまして道路公団指導してまいりたいと考えております。
  178. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 弁解にこれ努めていますが、今の六十年度の本土企業五八%といったのは事実なんですよ。それから今、建設省ですか、沖縄の自動車道事業についてはもう驚くべきなんですね。もちろん共同企業体、このジョイントベンチャーとしてではなく、単体として県内企業に発注したのは、五十七年から始まった自動車道路工事で四年間は一社もないんですよ、沖縄県の場合には。一社もなく、六十一年になってやっと四社、パーセンテージにして〇・二%、金額にしてわずかに七千七百七十万円、これが実態なんです。これは否定できないんですよ。これはあなた方にもらった資料ですからね。だから、こういったことのないように、やはり道でしょう、コンクリートばかり残って金は本土に持っていかれるようなことではないようにしてほしい。  時間が来ましたので終わりますが、この点、行政が有機的、合理的にその目的を果たすことになるような観点に立って、総務長官としてもこの点についてはひとつ配慮お願いしたいと思いますが、いかがですか。
  179. 山下徳夫

    山下国務大臣 よく検討させていただきたいと思います。
  180. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 じゃ、終わります。
  181. 稲葉誠一

    稲葉委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十七分散会