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佐藤栄佐久君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました
昭和六十二年度予算三案に対しまして、
政府原案に賛成し、
日本社会党・護憲共同及び公明党・
国民会議から提出された修正案に反対する討論を行います。
我が国では、一昨年秋以来の
円高をめぐり種々の論議が展開されております。
円高それ自体は、円の対外評価が高まることであり、長い目で見れば
我が国にとって
プラスであることは言うまでもありません。既に、この
円高と原油安によって十一兆円近い差益が
国民生活に還元されており、消費が堅調な動きを示すなど、景気の下支えに寄与しているのであります。これらは、
政府の適切なる指導によるところが大きく、私はその労を多とするものでありますが、反面、この
円高が急速かつ大幅であったため、
輸出依存型産業とその関連産業を
中心に
影響があらわれており、雇用情勢も厳しくなるなど
日本経済は
円高デフレの様相を色濃くしているということも否定できません。
また、
日本の
貿易黒字が依然大幅な水準を続けていることから米国議会でも対日批判が強まり、見過ごせぬ
状況にあります。
もちろん、
政府としてもこの間、
総合経済対策を
決定し、これに基づく補正予算で思い切った建設
国債の増発を断行するとともに、
金利水準の引き下げ、国際会議における為替安定に向けた要請など、あらゆる機会、政策を通じてこれらに対処してきたのであります。時期を逸することなく適宜適切に行ったこれらの行動を私は高く評価するものであり、同時に、
円高、
貿易摩擦問題の解決に向け
総理みずから米国を訪問し、
レーガン大統領と忌憚のない意見を交わすことにより
日米間の
関係をより緊密なものとし、為替の動きを落ちつかせたことは
総理の
努力のたまものと、これまた高く評価いたす次第であります。
しかし、為替レートは何分にも市場が決めることであり、乱高下に対してはその安定のため引き続き
政府の
努力が必要とされますが、基本的には
我が国の
経済産業構造を内需
中心のものとなるよう粘り強く取り組んでいく必要があると思われます。
昭和六十二年度予算三案は、こうした内需型の
経済を目指して編成され、また、懸案の財政改革にも配慮するなど、
我が国が抱えている課題に十分こたえた内容となっており、賛成いたす次第であります。
以下、その主な理由を申し上げます。
まず、財政改革をより一層推進したことであります。
高齢化の進展、国際社会への対応等が今後十分行われるためには、早期に財政の対応力を回復することが必要であります。このため、
政府は、
昭和六十五年度までに特例
国債依存体質からの脱却という
努力目標を立て、懸命なる
努力を続けてきたところであり、その効果も徐々にではありますが着実に上がってきております。今年度予算においても、一層の
努力を払うことにより、一般歳出は五年連続で前年水準を下回ることとなり、公債依存度は、特例公債を発行して以来初めて二〇%を切りました。このことは財政の対応力が回復しつつあることのあかしであると言えましょう。
次に、内需
中心の
経済への転換を進めるとともに、当面する
円高の
影響についてきめ細かな対応を図っていることであります。
一段と厳しい財政事情にかんがみ、公共事業
関係費を前年度当初予算に対し減少させながらも、内需の拡大に資するため一般公共事業の事業費については、財政投融資の活用や民間活力の活用等の工夫により、名目
経済成長率見通しの伸びを上回る五・二%の伸びを確保しております。内需の拡大に重要な役割を果たす住宅建設に対しても、住宅金融公庫の融資戸数の増加、貸付限度額の拡大等対策の拡充を図っております。また、厳しい情勢が見込まれる雇用に関しても、三十万人雇用開発プログラムを実施し、地域雇用対策の充実等積極的な推進を図ることとしております。さらに、産業構造
調整を推進するため、種々の配意をし、産業基盤整備基金を設けるとともに、中小企業の近代化、構造
改善を促進するための施策を講じているのであります。
これらの施策は、当面する
円高デフしから来る
影響を緩和するとともに、
我が国経済が内需型へと地道に脱皮することを可能にさせるものであり、時宜にかなった措置であります。
そのほか、国際社会への貢献に向け、海外援助、防衛
関係費については特段の配慮をし、それぞれ高い伸びを確保するとともに、恵まれない方々への福祉施策や、明日の
日本を築く上に欠かせない教育研究環境の整備についても重点的に配分を行うなど、厳しい財政
状況にもかかわらず政策優先順位に応じて十分な配慮がされているのであります。
以上申し上げてきましたように、
昭和六十二年度予算三案は、現下の
我が国が抱える諸問題によく対処し、また、将来展望を切り開こうとする意欲に満ちたものと高く評価したいのであります。
なお、
日本社会党・護憲共同及び公明党・
国民会議提出の修正案は、防衛費の削減を求めるものでありますが、もとより防衛費は
日本を独立国としてみずからの手で守るため、また西側の一員としての国際的責任を果たすために重要な経費であり、これの削減は認めるわけにはまいりません。
今回、
経済の伸び悩みもあり、わずかではありますが、この防衛費がやむを得ずGNP一%枠を超えることとなりました。しかし、
我が国は平和国家を貫くことを基本としており、このことにより軍事大国への道を歩むなどということは全くの杞憂にすぎないということも申し上げておきたいのであります。
これをもちまして私の討論を終わります。(拍手)