○
国務大臣(
田村元君) 今お話のあったとおり、西
ドイツに対してやはり見習うべき点は多々あると思います。
私は先般来、西
ドイツのバンゲマン氏を初めとしていろんな人にお目にかかり、また西
ドイツの経済、産業の実態、とりわけ貿易に関する
考え方あるいは実績等について詳しく聞いてまいりました。
西
ドイツの一九八六年の貿易黒字、これは五百二十七億ドルでございまして、西
ドイツの対GDP比が五・九%でございます。
日本の貿易黒字が八百三十一億ドルでございまして、これが対GDP比を出してみますと四・二%ということで、むしろ西独の方が高いわけです。しかも、西
ドイツは製品輸出国でありますと同時に、製品輸入国でもあるわけです。例えば、製品輸出二千二百十九億ドルに対して製品輸入が千三百三十億ドル、比率が一対〇・六、つまり十対六でございます。これに対して
日本は製品輸出と比較して製品輸入が極めて少のうございます。製品輸出が二千五十六億ドル、製品輸入が五百二十八億ドル、比率が一対〇・二六でございます。これが特徴でございますが、貿易相手国産業に与える影響が異なり得るとの見方がございます。
また、対米輸出の依存度につきましても、
日本は三八・八%、西独は一〇・四%、比較して極めて高い点が
指摘し得るわけでございます。加えまして、西
ドイツには国際的に実施すると約束したことは必ず実施するという、いうなれば国際的信用があるわけです。西
ドイツはなかなか理屈は激しい、やり合うのも非常に激しいのですけれども、一たん約束したことは守るという民族性といいますか、国民的な習性がございます。それに対して
日本の場合は、若干言葉が抽象的になってそれが誤解の
もとになる場合も多々あるわけであります。
具体的に申しますならば、西独は貿易不均衡是正を目的として大幅な減税を内容とする御
承知のような包括的税制改革を進めております。一九八六年一月一日から既に総額百九億マルク、
日本の円にして八千九百三十八億円、レートで若干狂いはあるかもしれませんが、最近のレートでは八千九百三十八億円、この所得税の減税を実施しているほか、八八年に八十五億マルク、六千六百三十億円、それから九〇年一月一日には総額約四百四十億マルク、三兆四千三百二十億円の減税を行うことにしております。さらに、この四百四十億マルクのうち五十二億マルクは、これは四千五十六億円になるわけですが、ルーブル合意に基づきまして八八年に繰り上げ実施ということを予定しておるということで、国際的責務を果たしてきているということは事実言えます。
それに対して、
我が国の
内需拡大策につきましては、先ほど来申し上げましたように、
OECDの閣僚理事会の
会議冒頭から多数の国から高く評価もされた。また同時に、その内容、実施時期あるいは効果、経済効果、波及効果等に関して質問が集中いたしました。特に、この
内需拡大策の
中身について非常に評価と同時に疑念が表明されたということでありまして、中には、
日本よ、国際信用を失わない
ラストチャンスだぞということまで言われたわけでございます。
先般、御
承知のように、自由民主党が策定いたしました五兆円を上回る
財政措置を伴う
内需拡大策、いわゆる
総合経済対策、この
中身には非常に、つい先ほど申し上げたように評価も高くあり、強い期待が寄せられておりますけれども、私は、やはりサミット前にその内容を国際的にも納得されるような充実したものにしてこれを
総理は持っていらっしゃるという必要があるんじゃなかろうか。
もちろん
内需拡大策は
我が国のために行うものでございます。外国のために行うものではございません。けれども、G5、G7等の合意を踏まえましても、先般の四極の貿易
大臣会合を踏まえましても、今や
日本の、あるいは
アメリカの、あるいは西
ドイツの、この三大経済国の経済財政
政策について
他国が論及することは内政干渉とは言えない、
政策協調という点からいって必ずしも内政干渉とは言えない、我々には大きな責務があるわけでございます。特に先般の
OECD閣僚理事会の
共同コミュニケの中には、特別に三国の役割分担というものがそれぞれ特掲されたということも大きな特徴でございます。
ただ、言えますことは、従来西
ドイツは、
日本がやられる陰に隠れて余りやられなかったんですが、この間はむしろ
日本以上に大分やられておったということでございます。それもしょせんは黒字ゆえということであろうかと思います。