○
国務大臣(宮澤喜一君) ただいまヨーロッパのEMSのお話がございました。確かにこれは
一つの参考とすべき制度でございますが、見ておりますと、やはりヨーロッパ
各国の間にかなりの
政策の協調がありまして、このEMSという制度を何とか維持していこうということから、
我が国とは確かに違いましてみんな接近しております国々でございますから、
政策の協調は確かにしやすい点があろうと思います。そういう
政策の協調というものに裏づけられてとにかくEMSというものが維持されておる。それでも御指摘のように時々調整を必要とするのでございますが、何とかしかしそういうことで維持されておりますのは、やはり
政策協調というものが比較的しやすい
状況でなされておるということではないかと思っております。そのことを大きく申しますと、変動相場全体がやはり
各国の
政策協調が基本だということをあのEMSの例は示しておるというふうに
考えるわけでございまして、先ほど日銀総裁も言われましたように、
各国間のいわゆるファンダメンタルズというものを調整していくことが基本であろうと思います。
その次の
お尋ねでございますが、確かに変動相場、現在のように非常に円が動きますと、これはもう
我が国の経済ばかりでなく、
国民生活そのものに非常に大きな
影響がございます。何とかしてこれは安定をしてもらわなければならないわけですが、ただそこで、今投機というお話がございました。実際の実需取引と投機に基づくものとは観念の上では、いわば言葉では区別ができるわけでございますけれども、為替取引は非常に複雑でございますから、どの部分が実需であってどの部分が投機であるか。例えばいわゆるヘッジというものは、御承知のように危険を防ぐ行為でございますから、それ自身が投機だとはなかなか申しにくいというような要素がございます。
したがいまして、御指摘の点はよくわかることでございますけれども、ここまで
我が国もいわば自由化をしてまいりました。御指摘のように、かつては実需に限っていたものを今はそれも自由化をいたして、先進国のいわば先頭を走っている
一つの国になっておるわけでございますから、これをいっときのことでいわばもう一度統制に戻すということは、果たして失うところと得るところがどうであろうかというようなことも
考えなければならないかと思いますし、また仮に
我が国が何かそういうことを
考えたといたしましても、今為替取引はほとんどもう二十四時間どこかで行われておることは御承知のとおりでございますし、自由化のもとではどの市場で取引をすることも自由でございますから、
我が国だけがそういうことを仮に
考えましても、それはもうごく簡単にしり抜けになることも明らかでございます。
というようなことをいろいろ
考えてまいりますと、確かにいわゆる投機筋、これによっていわば投機的な金もうけと
考えられる向きは、そこから
国民生活そのものが脅かされるということについては深く
考えていただきたいということを私ども申し上げるにやぶさかでございません。為替管理の問題としてこれを取り上げることは、やはりメリットとデメリットを
考えますと、デメリットが大きいというふうに
考えております。