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赤桐操君 私は、
日本社会党・
護憲共同を代表して、ただいま
議題となりました
昭和六十二
年度の
財政運営に必要な
財源の
確保を図るための
特別措置に関する
法律案に
反対の
立場から
討論を行うものであります。
まず最初に、四年
半余りにわたる
中曽根内閣の
財政経済運営の
失敗を指摘しなければなりません。
中曽根内閣の
経済運営の羅針盤として五十八年八月に
作成された「一九八〇年代
経済社会の
展望と
指針」では、
実質経済成長率四%、
名目成長率六ないし七%を公約しながら、最近では、
実質成長率二ないし三%、
名目成長率四ないし五%と
下方乖離の
状況にあるにもかかわらず、これを放置し、不況と
縮小均衡の全く逆の
政策運営を行ってまいりました。
他方、
国際経済では、
貿易摩擦なき輸出で
貿易の
拡大均衡を図り、
保護貿易主義の台頭を
防止すると述べておりますが、
中曽根総理就任以来、
貿易黒字は年々ウナギ登りに増大し、
貿易不
均衡は年間一千億ドルとその極に達し、
アメリカ議会においては、
包括貿易法案で
日本産業、
経済つぶしの火の手が燃え盛っているではありませんか。
さらに、「
展望と
指針」で、
政策の
基本方向の第一に
完全雇用の達成を掲げ、そのための
施策の
基本として、
産業構造の急速な
変化に対応し、
失業に対する予防的、
機動的対策を
充実する、新たな
雇用機会を積極的に開発する、
労働時間の
短縮等労働者福祉の向上を図り、ゆとりある
職業生活を形成するとうたっているのでありますが、
完全失業率は
総理就任直前の二・五%から毎年上昇し三・〇%に達し、最近では
完全失業者は百八十万人を超す状態で、
失業の不安に多くの
労働者は駆り立てられておるのであります。
政府の約束した
失業の予防的、
機動的対策を初め、ゆとりある
生活形成などは絵にかいたもちでしかなかったと断ぜざるを得ません。
私が
財確法の
反対討論の冒頭で、何
ゆえ中曽根内閣の
経済政策の
失敗を糾弾するかと申しますると、実は六十二
年度の
歳入不足を補てんする
赤字国債発行の根源がここにあるからであります。せめて「
展望と
指針」で公約された
経済政策を着実に実行、推進されてきたならば、
日本財政が今日これほどまでの苦境に追い込まれるはずはなかったのでありまして、
財確法の提案は
中曽根内閣の失政を余すところなく証明していると言わなければなりません。
次に、この
財確法は、六十二
年度欠陥予算を
前提にその
運営のための
借金法案であるということであります。
六十二
年度予算は、あの悪名高き
公約違反の
売上税創設を柱に
税制改革をもくろんだわけですが、
国民の総反撃に遭って
売上税は廃案となり、その
収入見込み額一兆百八十億円はもちろん、
税制改革を
前提とした増減税に大幅な狂いが生じたことはだれの目にも明らかであります。
政府予算の
歳入項目に
編成時点と
議決時点で大きな差異が生じたにもかかわらず、
政府修正を行わず、
歳入は
見積もりにすぎないと殊さらに軽視の態度でこの二十日に
欠陥予算の可決を図った
政府のやり方は、憲法の
予算編成権及び
提出権の精神すら理解しておらず、
財政民主主義の
立場からも認められません。
さらに、
歳入面に加え、
歳出についても五兆円を超える
追加を
レーガン大統領初め
EC閣僚会議等でも約束しており、この点でも六十二
年度予算は
国会審議段階で
大型歳出追加補正を義務づけられたまことに異常、異例な
歳出不足の
欠陥予算であります。
申すまでもなく、一年間の
歳入歳出を適正に
見積もり予算を
作成するのは、国に限らず、およそあらゆる団体、家計を含め、
予算といわれるものの本質であります。こうした
予算の
必須要件を欠いた六十二
年度の国の
予算では、今後赤字国債の
追加発行すら起きかねない状態にあると思うのであります。一年間を通じての借金見通しすらも不確実なままの
財確法に
賛成するわけにはまいりません。
次に、
中曽根内閣の財政再建が完全に
失敗し、将来見通しの全くないままの
赤字国債発行に
反対であります。
中曽根総理は、総理就任時に、増税なき財政再建で赤字国債の
発行を六十五
年度で終わらせるとの財政再建計画を公約いたしました。それまでの財政再建が三年とか五年を目途とし、期間が短かったことが
失敗の原因であるとして、七年間にこれを延ばし、毎
年度一兆円の赤字国債減額を行うと発表いたしました。
中曽根総理のもとでは、たったの一年でも目標の一兆円の赤字国債減額は行われませんでしたし、減額は逐年先細りで、六十二
年度は目標額のほぼ四分の一の二千六百五十億円であり、さらに、六十二
年度を含め四カ
年度の平均削減額は五千億円を若干下回っております。赤字国債の
発行
だけをやめるという中曽根総理の非常に限定し矮小化した財政再建ですら完全に
失敗であります。
さらに、ここで指摘したいのは、総理が公約した財政再建に比べ大きなプラス要因があることであります。
まず、NTT株の売却益による国債償還のための定率繰り入れ停止
措置があります。五十七
年度から六十一
年度の繰り入れ停止八兆円、六十二
年度から六十五
年度までの今後の繰り入れ停止十兆円と見込まれることから見て、十八兆円ものプラス要因があって、なお財政再建に
失敗した責任は重大であると言わなければなりません。
次に、六十五
年度の財政再建に協力させる形で、
厚生年金、
国民年金、政管健保、住宅金融公庫等に対する後
年度への負担繰り延べ
措置が毎
年度行われ、六十二
年度末には十一兆円を超える金額になります。財政再建計画公表当時にはなかった一般会計負担の軽減プラス要因は、以上合計いたしまして約三十兆円にも達するはずであります。
中曽根内閣が四カ年で行う赤字国債減額は一兆九千九百九十億円にしか達しませんが、これは一体どういうことでありましょうか。総理が立てた財政再建計画は、どんな
歳入歳出見通しの上に立って単
年度一兆円の赤字国債減額の答えが出されていたのか、理解に苦しむのであります。
また、さらに理解できない点では、これほど明確になった六十五
年度赤字国債脱却の財政再建計画の
失敗を総理は認めず、なお増税なき財政再建の看板だけはおろさないとの態度は、さらに納得いきません。六十二
年度財確法は的確な財政再建の手法も持ち合わせずに、ただ借金をふやし、将来の
国民を苦しめることになることは必定で、認めるわけにはまいらないのであります。
反対理由の最後は、終わる目途も立たない赤字財政の
運営を許す結果になる六十二
年度財確法に
反対であります。
戦後間もなくつくられた財政法は、
財政運営の破綻が国の将来をも誤るとの考えに立っていたはずであり、その中で重要な原則は、借金に頼らない財政の確立であったと思います。財政法四条は、建設国債ですら、例外で厳しい条件つきでしか
発行を認めておりません。しかるに、四十一
年度以来、二十年間にわたり
発行が常態化し、その上に、五十一
年度から、財政憲法である財政法が認めていない赤字国債を
発行し続けております。この結果、今日、国債残高は百五十兆円前後に達し、その利払い費は十一兆円と、一般会計
予算の二一%と最大の構成比を占め、大きな財政圧迫要因となっております。さらに、今後六十年間という気の遠くなるような期間、
国民はこの借金を背負っていかなければならないのであります。
これは、
政府の二十年余りにわたる財政憲法を忘れ借金財政に甘えた
政策の結果であり、最近では借金財政麻痺の傾向さえ見られます。米国の財政赤字もそうでありますが、原則を軽視して軌道を一度踏み外すと、借金財政はコントロール不可能に陥り、国の財政経済並びに
国民生活を破局のふちに沈めることを強く警告いたしまして、私の
反対討論を終わります。(
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