○井上吉夫君 私は、自由民主党を代表して、当面する内外の
重要課題につき、
総理ほか
関係閣僚に若干の質問をいたします。
中曽根政権は既に五年目に入りました。この間、外にあっては
世界の首脳
外交を堂々と展開し、
経済協力などを通じて
世界の平和と
繁栄に積極的な貢献を行ってきました。また、内にあっては三公社の民営移行を初め各般の
行財政改革、社会保障や
教育などの諸
改革を着実に進め、今、二十一
世紀を展望した
税制改革などに真剣に取り組まれておりますが、どうか、
我が国の明るい未来を開くために不退転の
決意でこれら
課題の
克服に御尽力いただきたいと存じます。
総理は、このたびの
施政方針演説において、民主
政治の
改革と議会
政治の新たな前進に挑戦する意欲を強調されました。
行財政改革を初めとする諸
改革が一歩一歩実現を見ている中で、より
基本的かつ重要なことは
政治そのものにあるとの思いを訴えられたものでありましょう。行政
改革が叫ばれ始めてから今日まで、まず
国会がみずから範を示すべきだとの根強い声に対し、謙虚に耳を傾けなければなりません。形式主義や漫然たる前例の踏襲がかえって
政治をわかりにくくし、あるいは能率を損ねている点のあることを率直に認め、勇気ある自己
改革に取り組む必要を痛感する一人であります。
立法府と行
政府相互間の適正な牽制と
協力についても言及されましたが、現在、
総理大臣として行
政府の長であるあなたは、自由民主党の総裁でもあり、四十年にわたり立法府の一員としての経験を積んでこられました。その長い経験と真摯な
政治への取り組みの中から、しかも、中曽根
政治の総
決算ともいうべき今期
国会の冒頭に、あえて
政治改革の必要を力説されたことは千金の重みをもって受けとめるべきものと思います。単なる
演説として終わらせてはなりません。本院においては、既にその
方針を
決定した常会の一月召集問題とあわせ、
総理の御
見解を改めてお聞かせ願いたいと存じます。
まず、
国際国家日本の責務について伺います。
我が国経済力の著しい伸長と国際社会における地位の向上に伴い、
我が国の国際的
責任や
役割に対する
世界の期待と
関心はますます高まっております。それだけに、
我が国は、狭い視野から目先の利益のみを追求するのではなく、相互依存の国際的観点に立って諸
外国との
調整を図り、
世界の平和と
繁栄に
協力していかなければなりません。
総理は、就任以来、二十一
世紀への基礎づくりの一つとして「
国際国家日本」の建設を提唱され、
国際国家の中で
我が国がその国力にふさわしい積極的貢献を行っていく必要性を強調されております。今後どのような分野に重点を置いて
我が国の国際的責務と
役割を果たしていくお
考えか、御
所見を承りたいのであります。
次に、
外交問題について伺います。
新春早々、百年ぶりの寒波襲来の中、
総理は
日本の首相としては初めて、フィンランド、ドイツ民主共和国、ユーゴスラビア、ポーランドの四カ国を公式訪問されました。まことに御苦労さまでした。従来、この地は
我が国の首相がなかなか訪問し得なかっただけに、今回の歴訪は、
日本外交の幅を広げるという意味で太いに意義があったと思います。
総理の訪問された四カ国は、それぞれ東西
関係の中で重要な地位を占めており、またレイキャビク後の米ソ
会談の不透明な時期だけに、
総理はこれら諸国の最高首脳との
会談を通じ、二国間
関係の発展及び東西間の
政治対話の促進の面からいかなる成果があったとお
考えになるか、お伺いしたいと思います。
昨年は、八年ぶりに
日ソ外相間定期協議が行われ、また領土問題を含む
平和条約交渉が再開、継続されるなど、最近の
日ソ関係の推移は私も評価いたします。しかし、
ソ連側は依然として北方領土問題に対する
我が国の正当な主張を認めようとしないことは極めて遺憾であります。
日ソ間の最大の懸案が依然として未
解決であるという
状況を踏まえ、
政府は今後いかなる
方針で
対ソ外交に臨まれる所存か、改めて
総理の
決意をお聞きいたします。
また、ゴルバチョフ書記長の
来日問題について、昨年来、
日ソ間の
外交ルートで話し合いが行われていると承知しておりますが、その見通しについてあわせてお尋ねいたします。
次に、安全保障問題、特に
防衛費の新しい歯どめについて伺います。
六十二
年度予算において
防衛費が対
GNP比一・〇〇四%となりました。これは中期防衛力
整備計画の第二
年度目として、立ちおくれの目立つ練度の向上や隊員施設等の後方部門の回復を図るほか、在日
米軍経費の
日本側負担など必要最小限の経費を計上した結果、
GNPの鈍化傾向もあって一%枠を超えましたが、これはまさしく既定計画の積み上げによる当然なる帰結であります。
申すまでもなく、一%枠それ自体は
軍事的合理性はないにしても、五十一年以降防衛力
整備の当面のめどとして果たしてきた意義はそれなりに評価できると思います。今回、
政府は、
防衛費の新しい歯どめとして、
我が国防衛の
基本方針の堅持、中期防衛力
整備計画による
総額明示方式の採用、三年後の見直しの
廃止、
三木内閣の
決定尊重を決めましたが、私は節度ある
防衛費の見地からしても、この新しい
決定は現実的対応として妥当なものと思います。
〔
議長退席、副
議長着席〕
しかし、
国民サイドにおいては、
防衛費が青天井になる
懸念はないか、また、これまでの
GNP一%というわかりやすい物差しに比べ、新しい歯どめは理解するのが難しいとの指摘がありますので、今回の
決定に至る経緯及びこれらの
意見について御説明いただき、さらに、中期計画終了後の六十六
年度以降についてどう対処されるのか、あわせて御
答弁願います。
私は、一国の防衛と治安の
確保は国の独立と平和の
基本であり、何物にも優先する国政の
重要課題であると思います。どうもこれまでの
国会における防衛論議は、
GNP一%枠が先にあって、これを超えるか超えないかということに余りにも論議が集中し過ぎ、
我が国の置かれている軍事情勢をどのように把握し、西側の一員としての国際協調や責務をどう果たすかといった
我が国防衛政策のあるべき姿に対する論議が不足していたのではないでしょうか。私は、
国会において防衛問題の本質論を徹底的に議論することこそ
国民の負託にこたえるゆえんだと信じます。そのことが、
日本が軍事大国への道を歩まない最大の歯どめであり、シビリアンコントロールの堅持に通ずるものと
考えます。
総理の御
所見を伺います。
次に、
経済問題についてお伺いします。
まず第一にお尋ねしたいことは、当面の景気動向と今後の見通しであります。
昨年の
経済は、まさに
円高不況で苦悩した年でありました。六十一年の
経済成長率は、一-三月期では前年比三・一%、四-六月期及び七-九月期では二%台、さらに十-十二月期では一%台に落ち込んだと推定され、仮にこの趨勢が続くとすれば、
昭和六十一
年度の実質
経済成長率は、
政府が下方
修正した三%の達成も困難と思われ、
企業倒産の増加と
雇用情勢の悪化が
懸念されるのであります。
政府の御
見解を伺います。
今、
我が国経済にとって一番の問題は、急激な
円高にあり、特に重大なことは為替レートの不安定にあると思います。昨年十一月以来、宮澤・ベーカー
会談の合意により小康状態を保っていた為替レートは、本年に入ってさらに円が急騰し、一月十九日にはついに一時百四十円台の最高値を記録しました。早速、渡米された宮澤
大蔵大臣の御
努力により、昨年の合意が再確認され、一定の成果をおさめられたことを多とするものでありますが、これで安心していいものでありましょうか。合意の
内容を含め、
大蔵大臣の今後の見通しについての御
見解を承りたいと存じます。
私は、
総理の言われる「
国際国家日本」が調和ある対外
関係を実現して、
世界経済の活性化へ積極的に貢献していくためにも、
国内における
地域経済の活性化を図り、
雇用の安定を促進するためにも、今実施しなければならない緊急かつ最重要な政策手段は思い切った内需振興策をとることだと思います。
来
年度予算では、苦しい財源の中で、公共
事業量を前
年度化五%増を
確保しているほか、民間活力発揮のため、
産業基盤
整備基金の創設等きめ細かな
対策を講じていることは評価できますが、私は、六十二
年度経済を内需主導の三・五%の実質
経済成長率を確実なものにするには、速やかな予算の成立を図ることであり、昨年を上回る公共
事業予算の前倒しを実施することが必要であると思います。そして、景気の動向に応じては
財政投融資の追加等、必要な
財政措置をためらうべきではないと思います。いかがでありましょうか。
特に、
大蔵大臣には、このたびのベーカー米財務長官との交渉を通じ、対米
貿易収支の大幅な黒字減らしの必要性を痛感されたことと思います。そのためには、まだまだ
内需拡大策が必要だとはお
考えにならないでしょうか、御
答弁を願います。
続いて、
雇用問題でありますが、
円高、
産業構造の
転換等のもとで業況が一層悪化していることから、造船、
非鉄金属、鉄鋼を初めとして大量の過剰人員が生じております。このため、出向、配転、一時休業の実施、さらには希望退職の募集等の
雇用調整が進められており、特に
不況業種等における
雇用調整は
地域の
雇用情勢を急速に悪化させ、
輸出関連の
中小企業産地、造船等に関連した
不況地域、さらには産炭
地域等においては極めて深刻な
雇用問題が生じております。こうした
状況を
考えると、
雇用問題の
解決は喫緊の
重要課題でありますが、今後の
雇用情勢の見通し及び
雇用対策の
方向についてお伺いいたします。
また、
円高の長期化の中で
中小企業が新たな活路を開拓していくためには、
事業転換等を通じて構造
転換を進めていくことが肝要であります。とりわけ
円高の影響を集中的に受けている輸出型産地や、いわゆる
企業城下町の
中小企業が構造
転換を進め活路を開拓していくことは、
地域経済の活性化にとっても不可欠であります。
政府は、これまでにも特定
中小企業者
事業転換対策等臨時措置法など
円高関連
中小企業対策を講じてきておりますが、今後、これらの法律の着実な実施を図りつつ、
中小企業の構造
転換対策を重点的に進めていく必要があると
考えます。
さらに、関連の下請
中小企業に深刻な影響が生じています。このような下請
中小企業が、自立化または親
企業の多角化を通じ、新しい
企業活動の
方向を見出し得るよう下請
中小企業対策に万全を期す必要があると思います。これらに対しては、特にきめ細かな
対策が必要と存じますが、
政府の
決意をお尋ねいたしたいのであります。
次いで、
財政の問題であります。
政府は、六十二
年度予算の編成に当たり、五年連続の超緊縮型予算を編成し、臨調
行革路線を踏襲し、
財政再建に対する強い
姿勢を示されました。
国債残高が百五十二兆円にも達しようとするときでありますから、子孫に過大な
負担を残さないため、借金に依存する
財政の膨張を極力抑えんとする
努力に対しては敬意を表するものであり、今後ともその
基本姿勢は堅持しなければなりません。
しかし、一昨年来の急激な
円高による
不況は、
経済の失速による
税収の低下を招き、かえって
財政再建をおくらしかねません。この際、
財政再建の
手法及び目標年次の見直しを含め、大胆な
内需拡大と黒字減らしを検討すべきだと思いますが、
政府の
見解をお伺いいたします。
次は、国債管理政策についてであります。
五十年以来の大量の公債発行によって、六十二
年度末の公債残高は百五十二兆円、その利払いのための国債費は約十一兆円に達し、歳出予算の二一%と最大の支出項目となっております。この際、国債費の効率的支出の観点から、従来の国債管理政策を根本的に見直し、低金利時代にふさわしい弾力的な国債借りかえ政策に踏み切るべきだと思いますが、いかがでしょうか、
大蔵大臣の御
答弁を願います。
次に、
経済摩擦について伺います。
我が国は、戦後一貫して自主的な市場開放に取り組み、特に一昨年七月には、
中曽根総理の強力なリーダーシップのもと、市場アクセスに関するあらゆる制度を総点検し、改善策を集大成したアクションプログラムを策定し、現在その着実な実施に努めているものと承知しております。しかしながら、依然として
史上最高の水準にある
我が国経常収支黒字を背景に、各国からの
我が国の市場開放に対する要求は後を絶ちません。もとより「
国際国家日本」として、
我が国経済社会の一層の
国際化を進めることは避けて通れぬ責務であります。
他方、急速な
円高の進行は、
国内産業の一部に極めて深刻な打撃を与えております。かかる情勢のもとで、市場開放問題に今後どのように取り組まれるのか、
基本的なお
考えをお伺いしたいと思います。
特に、農産物の市場開放については、昨年の米をめぐる動き、対米十二品目問題等、
状況は厳しさを増しております。対外
経済関係の円滑な推進という困難な
課題が一方にはあるものの、食糧の安定供給、国土の保全、
地域社会の活力の維持等の面で農業は重要な
役割を果たしており、単に
経済性のみの観点だけで論ずるべきではないと
考えるのであります。
さきに国連が発表した人口予測では、本年中に
世界人口は五十億人に達し、わずか二十三年後の二〇一〇年には七十億人にも急増すると見込まれており、食糧問題はまさに地球的視点でとらえるべき人類全体の
課題であります。
日本人の食
生活に占める米の重要性を
考え、また農業にとってそのシンボルとも言うべき米問題は、その取り扱いについて特に慎重な
配慮が必要と思うのであります。この際、食管制度の今後について
総理の明快な
答弁をお伺いいたします。
続いて、農業問題についてお尋ねいたします。
農政
審議会は、「二十一
世紀へ向けての農政の
基本方向」を発表しました。その中で、穀物等の国際需給は当面緩和しているが、中長期的には楽観を許さない
状況にあることを指摘し、与えられた国土
条件の中で最大限の
生産性向上を図り、極力
国内の供給力を
確保することが必要であると述べ、さらにそのためには、稲作を初めとする土地利用型農業部門における構造改善を可能な限り加速することが
基本的に重要であることを力説しております。
しかしながら、必要な土地改良などの予算はむしろ縮減傾向にあり、経営の
規模拡大も思うように進まないのが
現状であります。
日本農業の将来はどのように展開するのか、先行き不安に包まれている農家に自信と意欲を取り戻させることの今ほど大事なときはありません。本年は、日米農産物十二品目問題、米問題、牛肉、かんきつ協議問題等が山積しております。これら外圧に対しどのように対処されるおつもりか、その所信をお聞かせ願いたいのであります。
さらに、
国内対策としては、さきの農政
審議会から報告された今後の農政の
基本方向及び水田農業確立
対策の骨子につき御説明をいただき、
日本農業の将来展望について明確な指針をお示し願いたいのであります。農林水産大臣の
答弁を求めます。
今、
日本農業を取り巻く厳しい環境は、先ほど述べた諸
外国からの農産物の輸出攻勢であり、
国内的には農産物輸入の拡大を歓迎する風潮の強まり、いわゆる外圧、内圧の高まりであります。
日本農業の生き残りのために大事なことは、外圧もさることながら、むしろ内圧に対してであります。言葉をかえて言えば、
国民的合意を求め、消費者が納得する価格に向けての農業の
努力が成功するか否かでありましょう。この際、農業団体と
政府とが腹を割って話し合い、共通の
認識を持つことが必要であり、農業団体の主体的取り組みが今一番大事ではないでしょうか。
政府もまた、今後の農政を進める上で農業団体の受け持つ
役割を一層明確にし、相
協力して農業と農村の未来を築いてほしいのであります。
政府の
答弁を求めます。
国土面積の約七割を占める
日本の山は、そのほとんどが急峻な地形で道路事情もよくありません。そのような劣悪な
条件のもとで、全面積の四割に当たる一千万町歩が人工造林として育ちつつあることはすばらしいことであります。せっかくのこの山を荒廃させてはなりません。除伐や間伐などの有効な手入れさえ実行されるならば、二十一
世紀は間違いなく国産材時代を迎え、外材に頼らなくても木材需要のほとんどが自給可能になるに違いありません。
しかしながら、外材と価格面で肩を並べるためには林道網の
整備が絶対
条件であり、当面、森林総合
整備事業や間伐促進
対策事業が欠くことのできない政策手段であります。
いま一つは、木材需要の拡大であります。手ごろな値段で木が売れさえすれば造林意欲はよみがえります。木材需要の大宗は何といっても住宅用材でありますから、住宅建築の促進、とりわけ木造建築の推進に特に力を入れていただきたいのであります。
ことしは国際居住年。
経済大国
日本で一番見劣りのするのが住居であり、住宅政策は内需振興の目玉でもあります。この際、
政府を挙げての取り組みを強く要請いたしたいのでありますが、
総理並びに農林水産大臣の御
答弁を願います。
次に、四全総について伺います。
近年における中央と地方の
現状を見ますと、一時減少傾向にあった中央と地方の所得間格差は再び拡大する傾向を見せております。特に、急速に進みつつある
産業構造の
転換の流れは、東京のように懐の深い
経済を持たない
地域経済に大きな影響を与えつつあり、一昨年の秋以降の
円高の進展は、このような変化を急激に力速させております。
政府では、現在、国土の均衡ある発展を図る観点から四全総を策定しているところであると伺っておりますが、今後、活力ある
日本経済を維持発展させ、豊かな社会を構築していくためには、東京などの大都市の問題に対処するだけでなく、
地域間の格差の
是正を図り、国土のあらゆる資源を有効に活用することに
努力を傾注すべきであると
考えますが、
政府としての
見解を伺いたいと思います。
また、
地域を活性化させ国土の均衡ある発展を図るためには、その原動力たる
産業の振興を図ることが重要であると
考えますが、今後の
産業立地政策の展開について、
政府としての
基本的
考え方を伺いたいと思います。
次いで、四全総の問題でありますが、三全総は地方の時代を提唱し、その定住圏構想において、地方の
生活環境、生産基盤、就業
機会などの基礎的
条件を改善し、若い人々にも魅力ある健全な
地域社会の形成の必要を強調いたしました。地方の
努力とも相まって、都市への人口流出、過疎化の進行に歯どめがかかり、地方に新しい活力がよみがえるかに見えましたが、最近再び東京を中心とする都市への集中が目立ち始めました。狂乱とも言うべき東京の地価の高騰はまさにこの象徴と言えましょう。東京にとって大事なことは地価
対策であり、土地政策であります。四全総は、したがって三全総の足らざるところを補い、あるいはより強力な政策手段をもって地方の活性化を促進するものでなければならないと信じます。
総理並びに国土庁長官の御
所見を伺います。
整備新幹線の建設、高速道路網の
整備等、高速交通体系の
充実整備が最重要戦略として求められていると思うのでありますが、あわせお答え願います。
なお、四全総において、計画策定の視点の冒頭に「
世界に開かれた国土」をうたい、「特に東京は、環太平洋
地域の拠点」としての位置づけを強調されております。
新春早々の一月六日、国土庁長官の鹿児島における懇談会では、九州各県の知事を初めとする出席者から、東京中心の一極集中ではないかとの不満が続出し、地方活性化への強い主張と具体的要望が提起されたと聞いております。この際、各地の懇談会で出された
意見を積極的に取り入れ、施策に組み入れるべきだと思いますが、四全総の
基本政策並びに策定の時期等につき、
総理並びに国土庁長官の御
見解を承ります。
次に、
教育改革について伺います。
教育は、国家社会の発展の基盤を培うものであり、次代の
日本を担う青少年の豊かな個性を伸ばし、その可能性を最大限に発揮させる使命があると
考えます。今日の
我が国の発展は、
教育に対する先人の
努力によってなし遂げられたものでありますが、どうも戦後
教育はともすれば知識偏重、功利主義に走り過ぎ、倫理観や思いやりの心がおろそかになったようであります。先年来、校内暴力や青少年非行の増加、学歴偏重による偏差値
教育重視の風潮、画一的
教育に対する反省などの指摘がなされておりますが、今こそ
教育は、国家百年の大計の観点に立って二十一
世紀を展望し、
教育者のあり方など
教育制度全般にわたる新しい見直しが強く要請されております。
特に私がお願いしたい人づくりの目標は、豊かな心と創造力に富み、社会的連帯感と強い
責任感を持つこと、
日本のよき文化と伝統に対し深い理解を持つこと、国際社会において信頼される倫理性の高い
日本人であることを目指していただきたいのであります。幸い
総理の
熱意により、
教育改革が三大
改革の一つとして取り上げられ、五十九年以来、
臨時教育審議会において精力的な
審議が積み重ねられており、近く第三次
答申が示される予定であります。
そこで、まず伺いたいのは、今までの
答申をどう受けとめ、
教育改革に取り組んでおられるのか、また、いよいよこの八月には
審議会の任期が到来いたしますが、今後の
教育改革の視点をどこに置き取り組んでいかれるおつもりか、
総理の所信をお伺いいたします。
さて、さきの第二次
答申において教員の初任者研修制度が提言されました。
教育は人にあると申しますように、究極のところ、学校
教育の成否は一に教員の力、資質にまつところ大であります。それだけに、教員が意欲と使命感を持って堂々と
教育活動を展開することが大切ではないでしょうか。私ごとで恐縮ですが、私の娘三人ともかつて教職に身を置いた時期がありましたが、彼女らが共通して言うには、新任教員としてこれからスタートする際、
教育に対する愛情と意欲は十分持ってはいるが、実践力、指導力については未経験で何となく自信がない、不安がつきまとうということでありました。
今回、
政府が
考えている、新任教員に対し採用後一年間、指導教員の指導のもと、
教育活動の実務研修を
義務づけることは、
教育者としての使命感や
子供に対する
教育的愛情、豊かな教養、実践的指導力を養う上で効果あるものとして評価いたします。どうか新任教員に対する指導は、画一的、固定的なものではなく、後継者を育成する
立場とあわせ、指導教員と新任教員がともに学び研修するという触れ合いの気持ちで、成果が上がることを期待いたしたいのであります。六十二
年度はとりあえずの先導試行であるようですが、今後この制度の
導入にどう取り組まれるのか、
総理の
所見をお願いいたします。
次に、高齢化社会への対応について伺います。
我が国の人口の高齢化は急速に進展し、平均寿命は男性七十四・八四歳、女性八十・四六歳、二十一
世紀前半には四人に一人が六十五歳以上という超高齢化社会が出現すると報ぜられております。今後、安定し、かつ質的にも
充実した人生八十年時代に対応したライフスタイルを構築することは、
国内政治における最大の
課題であり、活力ある長寿社会を実現するためには、将来を見据えた長期的視点に立って安定した社会保障制度の構築を目指す必要があると
考えます。
政府はこのような見地から、既に医療、年金制度の
改革を行い、前
国会においては老人保健制度の
改革を見ました。さらに、
政府は、昨年六月、長寿社会
対策大綱を
決定し、
経済社会の活性化を図り、活力ある長寿社会を築くこと、社会連帯の
精神に立脚した
地域社会の形成を図り、包容力ある長寿社会を築くこと、生涯を通じ健やかな
充実した
生活を過ごせるよう、豊かな長寿社会を築くことを
基本方針として掲げております。高齢者が長年培った知識と能力などを
雇用、就業を通じて積極的に活用するとともに、職業
生活から老後
生活へなだらかな移行策を
考えるべきだと思いますが、具体的
対応策を伺います。
先般公表された厚生白書は、明るい長寿社会へ向けて社会保障はどうあるべきかについて総合的かつ具体的に論じておりますが、一部に
福祉後退との論評もないわけではありません。しかしながら、社会福祉は各世代間における公平な給付と
負担の
国民的合意が大前提であります。この際、将来の社会保障
負担はどうなっていくのかお示し願いたい。
なお、
我が国の風土、伝統に立脚したいわゆる
日本型福祉社会をどのように構築されるおつもりか、お尋ねいたします。
関連して、福祉サービスの問題でありますが、医療、年金と並んで長寿社会において重要なのは、寝たきりや痴呆性のお年寄りと、その家族が安心して託すことのできる福祉サービスであります。高齢者や障害者のニーズには多様なものがあり、これに対応するためには総合的な施策の展開が必要でありますが、今、何よりも望まれているのは、住みなれた
地域で家族や近隣の人々とともに暮らしていける
条件の
整備であると思います。このため、各種在宅福祉サービスの
充実が急務であると
考えますが、どのように取り組まれますか。
以上、
総理及び厚生大臣の御
所見を伺います。
最後は、
税制改革についてであります。
申すまでもなく、
税制は
国民生活に密接に関連するものでありますから、社会
経済が変化するに伴い、
税制についても絶えず見直しを図るべきことは当然であります。シャウプ
税制からことしで三十七年が経過しました。この間の
我が国経済社会の変化には目覚ましいものがあります。長期に及んだ高度成長と二度にわたる石油ショック後の安定成長を経て所得水準は大きく上昇し、
世界のトップレベルに達しました。当時と今日では、一人当たりの
国民所得は約五十倍に増加し、
アメリカとほぼ同じ水準となりました。他方、貧富の差は先進諸国の中でも極めて小さなものとなっております。就業構造においてはいわゆるサラリーマンが増加しました。また、消費においては多様化、サービス化が進行しています。豊かな社会のもとで人口の高齢化、
経済取引の
国際化も進展してきております。
現在の
我が国税制は、このような戦後四十年間にわたる社会
経済情勢の著しい変化に十分対応し切れておらず、数々のゆがみ、ひずみが生じ、これらを放置しておくことは
国民の税に対する信頼感を失わせかねません。したがって、この際、現行
税制の抱える
問題点を解消するため、
税制全般にわたる根本的な見直しが必要であると思うのであります。
総理の御
所見を伺います。
以下、私は現行
税制の
問題点について申し上げます。
第一は、働き盛りの中堅サラリーマンを中心に高まっている所得税の
負担感の問題であります。
この人
たちはまさに
我が国経済の担い手でありますが、住宅、
教育などへの支出がかさみ、
生活にゆとりがない一方、所得税の強い
累進構造により、所得が増加するに伴い
税負担が大きく増大することに不満を持っております。この状態を放置していれば、彼らの勤労意欲、
事業意欲に悪影響を与え、ひいては
我が国経済の活力を損なう結果になりかねません。今回の
税制改革において、中堅サラリーマンの
負担軽減を中心に所得税の思い切った
減税が行われることは、まさにこのような
状況に即応した措置であると
考えます。
経済の活力に関して言えば、法人税の問題も重要であります。法人税については、その
税負担水準が国際的に見てかなり高くなっていることが指摘されております。
経済社会の
国際化の進展のもとでこの状態を放置していれば、
我が国企業の活力が失われ、いわゆる
経済の
空洞化現象が生じるおそれも否定できません。今回の
改革では、法人税の
税率の
段階的引き下げが図られておりますが、この措置により
我が国企業に新たな活力が生まれることを期待するものであります。
以上の観点から、所得税、法人税及び住民税の思い切った
減税を実施することが必要であり、当然それに見合う税源を何かに求めざるを得ないわけであります。既に数年前から、
政府税調における論議の過程で直間比率の見直しの必要性が強調されており、また、
非課税貯蓄制度についても、少額零細な貯蓄の奨励がその本来の目的であったものが、
現状では
巨額の利子が
課税対象から外れ、かえって高額
所得者がより多く受益する結果もあらわれており、この際、見直しの対象としたものであって、これらにかわるべき適切な代案は
考えられないと思うのでありますが、
政府の
見解を求めます。
特に、今回の改正が所得税、法人税の
減税と切り離しての
増税議論に陥りがちでありますので、相関連して御説明を願います。
さて、今回実施しようとする
売上税についてでありますが、
選挙公約との
関係について
総理にお尋ねいたします。
総理は、いわゆる
大型間接税と称するものは
導入しないと
公約され、
国会答弁を通じて、それは多
段階、網羅的、普遍的、投網をかぶせるようなとの表現を使われております。我が党税調における議論でも、特にその点に配意してまいったところでありますが、この問題は
政治の
基本姿勢にかかわる重要問題でありますので、
国民の理解が得られるよう、特に
総理の明確な御
答弁をいただきたいのであります。
以下、今回改正の個別問題について、数点
大蔵大臣にお伺いいたします。
少額貯蓄非課税制度及び郵便貯金
非課税制度を
廃止して、老人、母子家庭等に対する利子
非課税制度に改組しようとされておりますが、その
考え方及び
内容について御説明願います。
今回
導入予定の
売上税実施に伴い、従来の物品税が
廃止されることになりますが、その改正
理由と
内容をお答え願います。
売上税については、流通、サービス業界など
課税業者の側は、価格に転嫁できないため経営圧迫につながると心配し、一方、消費者の方では、物が値上がりして家計を圧迫すると、それぞれ自分の方への影響を心配しております。さらに、
売上税は一たん
導入したら安易に
税率を引き上げ、
増税路線に歯どめがかけがたいとの心配があります。これらの諸点につき明確な御
答弁を願います。
売上税という新税が
導入され、
関係者は新たな
税負担がかかることになります。この制度は初めてのものであるだけに、徹底した制度の周知及び広報が必要であり、また、納税者に対しては手厚い親切な指導と相談が必要と思います。これらにどう対処される
方針か伺っておきたいと存じます。
今回の
税制改革が、現代に生きる者の子や孫に対する
責任として、今、我々は何をなすべきかの高い視点に立って、真剣な議論を闘わし、
国民皆様の御理解と納得が得られるよう念願するものであります。
中曽根総理は、さきの自由民主党大会において、今や安定と満足は
改革の中に生まれ、そこに
日本の未来の希望が生まれると声を大にして述べられました。
我が国を取り巻く内外情勢は極めて厳しく、我々に課せられた
責任の今ほど重大なときはありません。我が自由民主党は、光輝ある
責任政党として、
転換期の大きな苦痛と試練を乗り越え、今ここに必要な
改革を断行し、二十一
世紀へ向けての限りない前進に全力を傾倒する
決意であります。
国民各位の御
協力を切望して、私の代表質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣中曽根康弘君
登壇、
拍手〕