○下村泰君 大体外務省がそういう意向ならば、なおこちらの方としてはお話をしやすいのですが、実は現地の方にいろいろお話を伺ったんですけれ
ども、これはひとつ
文部大臣も聞いていただきたいんですが、チューリヒでは国際
学校及び現地校において、日本人子弟受け入れに関して非常に問題が生じている。最近転任してきた者の子弟の中に就学を拒否されるといった深刻な
事態が生じておる。国際
学校における
問題点は、日本人が総生徒数の四分の一を超える状態にある。日本人の子供さんの方が多くなってきているんですね。本来英語
教育を前提とする場で、英語を母国語とする子弟のための
学校なんだそうです。ですから、英語を理解できない子弟が増加しているために、全体の
教育レベルが低下していると、こういうふ
うに言われている。それから、特に生徒数が増加している一、二年生。低学年。新規
入学希望者は、一たんウエーティングリストに入れられて空席を待つのだそうです。しかもその際、英語を母国語とする生徒の
入学が優先される。したがいまして日本語はだめですわな。それで三カ月も四カ月も、甚だしいときはもう半年以上おくれると、こういう状態が生まれているそうです。
もう
一つ、チューリヒの現地の皆さんの困っていることは、スイス・ドイツ語というのがあるんですね。スイス・ドイツ語というのはドイツの方もわからぬそうですな、これ。聞くところによりますると、チューリヒに湖があって、その東と西じゃ全然違うそうです。その方
たちがいろいろ説明してくれました。ところがこっちはドイツ語わからない、ヒトラーくらいしかわかりませんから、何を言われたのかさっぱりわかりませんでしたけれ
ども。ですから、ここではスイス・ドイツ語を学んで、その上に今度は書き方を、書き方言葉としてのドイツ語を修得して初めて授業が理解できると、こういう状態だそうです。そうしますと、極端な例を言うと、日本の国内で君もしこれは差し支えがあるといけませんけれ
ども、津軽とかあるいは鹿児島、津軽井とか鹿児島の言葉ですわな。あるいは沖縄の方言とか、こういうのをごちゃまぜにしたような感じでしょう。しかも日本の場合には、そういう言葉で話をしても、それを言葉にすれば直せますけれ
ども、あっちでは通じないのだそうですよ。ドイツ人が来てスイス・ドイツ語のスイスの方と話をしたらわからないというのだから、こんなややこしい言葉もないと思うんですがね。こういったような状態ですから、余計日本人の子弟が困っている。
そのほかに、外務省の方。ここに補習
学校がありますわね。その補習をするために、週三回各二時間、いろいろな言葉の
勉強をします。そして算数であるとか国語であるとか。そのために子供
たちの負担が非常に多くなるわけですね。これはもう外務省の方がよく御存じだろうと思います。私、ちょっと伺ってきたんですけれ
ども、このスイスというところは、どちらかというと、
大学への進学率は非常に少ない。むしろ小
学校の五年、六年の間から職業別の
学校を選ぶとか、こういったような、何か国全体の
教育方針がそういうシステムなんだそうで、とてもじゃないけれ
ども日本人の子弟ではこういうところは合いませんわね。中には、こういったことでのハンディがありますから、お父さん、お母さんによっては、こういうところにはとても置かれない、したがいましてロンドンであるとかあるいはアルザス、これはフランスの方ですね、そういうところの全員寮に入るようなところで
勉強させる。日本へ子供さんを残してお父さんが単身赴任するんじゃなくて、御家族が全部ヨーロッパへ行って、今度ここでばらばらになるわけですね。こういったような生活を強いられている、こういうことなんです。
それで、こちらの方からあちらの方へいろいろと要請をしますと、スイスの
方々の方から返ってくる言葉というのが、なぜ日本ほどの経済大国が英語民族のための
学校に頼ったり、あるいは当初からだれしもが無理と判断される現地校に頼ろうとするのか。あるいは、なぜ英米仏あるいはイタリー等のごとく自前の
学校をつくろうとしないのか。こういうことを言われるそうです。そのたびに説明した日本人の方が返答に困るというような場面がしばしばあるそうです。
このチューリヒの市の当局では、開設の暫定許可を出してくれたわけですね。ですから、いつでも開設をしようと思えば
学校の設立ができる、こういう状態なんです。
それはもう切々と訴えていました。自民党の田代
先生と御一緒にお話を承ってきましたけれ
ども、何としてでも、少しでも早く日本人
学校を設立してあげませんと、どんどんふえているんですね、ここは。
私は、ここでも見ましたが、この補習の教室ですね、国際
学校校舎から六室、チューリヒ市立校校舎から三室、日本語
学校事務室から一室、計十室を借用している。なお事務局は民間アパートの一部を借りてこれに充てている。借料は邦貨に換算して年間三百三十万円。この補習塾の財政規模は
昭和六十年度で二千七百二十六万円。支出の内訳その他がございます。収入の内訳が、父兄の負担分が一千四百七万円で五一・六%、次いで企業負担分が二四・九%、国庫負担が一二・一%、こうなっているわけですね。国が一番軽いわけです。まあ国の軽いのを云々するわけじゃありませんが。企業負担というところがあるんですね。これは、会社を見るとすごい会社なんですよ。進出企業が、三洋、野村証券、ソニー、日本航空、大和銀行、三菱、三井両信託、それにニコン、このほか五十社。こういう会社から分担金を余計ふんだくってみたらいかがでしょうね。
中曽根総理はよく民間活力というような言葉を使いますけれ
ども、こういうのは、それこそ税金の方から控除してやる。から出せやと言ったら、これは喜んで出すと思うんですがね。そういうふうにして、民間にもっとどんどん責任を持たせてみたらどうなんでしょうか。その連中が進出して、そこで働いている人の子供
たちがそういう目に遭っているんですからね。どちらかというとこれは企業の責任かもわかりません、そのバックをしている日本の国の
政府も責任がないとは言い切れませんけれ
ども。こういうふうに
考えていきますと、外に行って何か日本の経済大国の恥の上塗りをしているような感じになるんですよね。
しかも、スイスというのは外務省から見たら先進国とみなされるんでしょうけれ
ども、ここにいる
人たちはスイスこそ開発途上国並みだと言っているんですよ、
教育に関しては。それだけに何とかしていただきたいというのが本日の私のお願いなんですが、まず外務省からお答えをいただいて、
文部大臣からお答えをいただきましたら終わりにします。