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稲村稔夫君 だから問題にしているんですよね。それだからわざわざあなたに差し上げたんです。
論文のレビューということは、論文にいろいろとあるということでしょう。ブランチ博士の
研究そのものではなくても、ブランチ博士がいろいろな論文を集めてきたらそれだけの問題がいろいろとあるということなんですよ。そうすると、それをいろいろとやっぱり検証しなければならない問題が人間の命の問題として提起をされているということになるんじゃないですか。
実は、これは「サイエンス」という日本でどこでも手に入る雑誌ですよね。「サイエンス」の別冊「がん」ですが、これの中で、例えば一九七九年の論文です。既に大分前になりますよね。ここでR・ドゥボレという人がかなり専門的な見地で書かれています。今、我々は今まで体験したことがないほどたくさんの化学物質にずっと取り囲まれている。その化学物質の複合したいろいろな形での影響というものは極めて重大になってきている。このことを、今までの動物実験だとかなんとかだけではとてもじゃないけれども確かめていくのにはもう間に合わない
状況になっている。しかし、とにかくそれだけたくさんのものがあるから、例えば今のバイオテクノロジーの発達などでDNAを傷つけるかどうかということで因果関係をある
程度的確に調べることができる、そういうようなことに積極的に取り組んでいくべきであるというようなことが提起されてきているんです。そして、言ってみれば、今の化学物質というのはすべて疑ってみる必要があるという意味合いのことが、この中で専門的な見地からいろいろと書かれています。
少なくとも人間の傘とかかわりを持つようなところのセクションで仕事をしておられる方は、この論文を読めとは必ずしも私は言いませんけれども、これに類したそういう立場というものはいろいろと出ているのですよ。ですから
それなりに学習をしていただいて、それこそいろいろと国際的に提起をされている問題に対しては重大な関心を持って調べてみるという責任と義務があると思うんですね。それを、今私の方から差し上げるまで例えばその論文についてのことは知らなかったというお話でありますし、さらにそれはただ単なるレビューであるというそういう評価のされ方というのは、私は本当にこれでいいのだろうかという感じがするんですよ。レビューであるだけに、それぞれみんな調べていただかなきゃならない、こういうことになるんじゃないでしょうかと私は思うんです。
実は、こういうことがあるものですから、私の知り合いの大学の
先生に、今その
先生のところでわかるだけでどれだけのものがあるだろうかと調べていただきました。そうしたら、私の手元に出されてきたものがこれだけで二十論文あります。NACに関してのことだけですよ。人体とのかかわりの問題だけで二十もあるんです。
その中から紹介をしていきますと、例えばアメリカのオークリッジ国立
研究所のR・エレスプル、R・K・ライジンスキーという二人の方の
研究の結果として、NACと亜硝酸とが環境の中で一緒になるとNニトロソカルバリルになるという論文があります。これを初めといたしまして、N
ACと亜硝酸とが結びつくとNニトロソカルバリルになるという論文が六つありました。一つの論文の中に複数になって二つの課題が入っている場合もありますが、こういうものが六つあります。
それから今度はドイツのC・ジャンゾウスキーあるいはR・クライン、R・プレウスマンという人たちが
研究をしたものとして大気中にある窒素酸化物、つまり排気ガスなんかみんなそうですね、その窒素酸化物とこのNACとが結合するとやはりNニトロソカルバリルになるということが証明された、こういう論文があります。
あるいはグダニスク大学やワルシャワの醗酵工業
研究所のS・J・クバッキーとかG・クプリスゼウスキーというような人たちの
研究では、人間の胃の中でこのニトロソカルバリルが形成をされるという危険性があるということを
指摘している、そういう論文が二つもあります。
さらに、このNニトロソカルバリルというものは強力な突然変異を引き起こす物質であるということが証明された、こういう論文がD・シーベルト、G・アイゼンブランドというドイツがん
研究センターやハイデルベルクの人たちの
研究を初めとして七論文あります。
それからさらに、このニトロソカルバリルというのが強い発がん性を持つことも証明をされた、こういうのが今のドイツの人たちの
研究、さらにアメリカの
研究、その他を含めまして七論文あります。そしてその中でも特に注目に値するのは、R・ブロイスマンとかG・アイゼンブランド、D・シュマールというドイツがん
研究センターの学者が出した論文の中には、一日の摂取許容量というものを国際的に決めなきゃならない
段階に来ているというようなことが
指摘されているんですよ。
さらに、J・D・レーガンとか、R・B・セットロフとかいう人たちの
研究によると、遺伝子を傷つけるということがはっきりした、こういうのが二論文あるんです。
さらに、フランスのポール・サバチー大学の
研究者によると、ニトロソカルバリルというのは肝臓のがんを起こす、肝臓の酵素を阻害するというようなことを
指摘しております。
ですから、先ほど私が差し上げたのは、こういういろいろな論文がある中のレビューで、私がその中の論文を全部調べたわけじゃない。今手元にあるものを調べてもらっただけでこれだけあるんです。これだけのものが国際的にもう知見になって出てきているんですよ。私がさっきWHOだとかFAOが安全だからといってそれだけでいいんですかという提起をしたのはここなんですよ。厚生省にもこれはぜひ聞いておいていただきたいんですよね。厚生省自身はこういうことを御存じだったんですか。もしこういうふうなことが出てきたとしたら、積極的に前向きにこういう
研究というものを
調査をし、
我が国における体制というものを考えてみることが必要だと両省ではお思いになりませんか、その点をお伺いをしたいと思います。