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1987-05-22 第108回国会 参議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年五月二十二日(金曜日)    午後一時開会     ―――――――――――――    委員異動  五月二十一日     辞任         補欠選任      高橋 清孝君     福田 幸弘君      近藤 忠孝君     佐藤 昭夫君      秋山  肇君     野末 陳平君  五月二十二日     辞任         補欠選任      福田 宏一君     寺内 弘子君      下稲葉耕吉君     小野 清子君      佐藤 昭夫君     近藤 忠孝君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         井上  裕君     理 事                大河原太一郎君                 大浜 方栄君                 梶原  清君                 赤桐  操君                 塩出 啓典君     委 員                 小野 清子君                 岡部 三郎君                 河本嘉久蔵君                 斎藤栄三郎君                 斎藤 文夫君                 寺内 弘子君                 中村 太郎君                 藤野 賢二君                 矢野俊比古君                 吉川  博君                 志苫  裕君                 丸谷 金保君                 多田 省吾君                 和田 教美君                 近藤 忠孝君                 吉岡 吉典君                 栗林 卓司君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        大蔵政務次官   藤井 孝男君        大蔵大臣官房審        議官       大山 綱明君        大蔵省主計局次        長        角谷 正彦君        大蔵省国際金融        局長       内海  孚君    事務局側        常任委員会専門        員        保家 茂彰君    説明員        経済企画庁調整        局財政金融課長  大塚  功君        経済企画庁総合        計画局計画官   小島  襄君        外務大臣官房外        務参事官     久保田 穰君        外務省経済極力        局国際機構課長  高橋 恒一君        通商産業省貿易        局貿易保険課長  森清 圀生君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○多数国間投資保証機関への加盟に伴う措置に関  する法律案内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 井上裕

    委員長井上裕君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、福田幸弘君が委員辞任され、その補欠として寺内弘子君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 井上裕

    委員長井上裕君) 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案及び多数国間投資保証機関への加盟に伴う措置に関する法律案の両案を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。宮澤大蔵大臣
  4. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま議題となりました国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案及び多数国間投資保証機関への加盟に伴う措置に関する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  国際開発協会、いわゆる第二世銀は、低所得開発途上国に対し、極めて緩和された条件による融資を行っておりますが、今般、本年七月以降三カ年の融資約束に充てる資金を賄うため、第八次の増資として総額百二十四億ドルの資金を補充することが合意されました。我が国は、低所得開発途上国社会経済開発における国際開発協会役割重要性にかんがみ、同協会活動を積極的に支援するため、昭和六十二年度以降三年間にわたり追加出資を行うこととしております。  本法律案内容は、政府が同協会に対し、四千三百四十二億二千四百二十六万円の範囲内において追加出資ができるよう所要措置を講ずるものであります。なお、追加出資の三分の一に当たる千四百四十七億四千百四十二万円については、我が国国際復興開発銀行出資シェア引き上げ条件とする条件つき出資としております。  次に、多数国間投資保証機関への加盟に伴う措置に関する法律案につきまして御説明申し上げます。  この法律案は、別途本国会において御承認をお願いしております多数国間投資保証機関を設立する条約に基づき、我が国が多数国間投資保証機関加盟するために必要な措置を講ずることを目的とするものであります。  多数国間投資保証機関は、国際復興開発銀行グループの一員として、開発途上国への民間対外投資を促進するため、これに係る戦争、収用等の非商業的危険を保証する国際機関として設立されることとなっております。同機関活動は、累積債務問題への対応、我が国経済国際化に資するとの観点から、政府といたしましては、我が国主要先進国及び開発途上国とともに同機関加盟いたしたいと考えております。  本法律案内容は、加盟に伴い、政府が同機関に対し、五千五百十二万七千九百ドルの範囲内において出資ができることとする等所要措置を講ずるものであります。  以上が、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案及び多数国間投資保証機関への加盟に伴う措置に関する法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  5. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で両案の趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 志苫裕

    志苫裕君 この間大蔵大臣の所信を聞いたんで、それの問題についてお聞きしたいんですが、きょうは少し時間がありませんので後日に譲りまして、いきなり法案に入ります。  このIDAについてですが、これは二十六億ドル、四千三百四十二億円、当時の為替でいきまして百六十七円相当に当たっておるんですが、為替相場がどんなに変化してもこれは変わらないんですか。
  7. 内海孚

    政府委員内海孚君) これは条約交渉過程におきましてレートを固定しておりますので、円建てドル建でいずれも変わることはございません。
  8. 志苫裕

    志苫裕君 そうですか。いや何か、例えば百六十七円を今に直すと百四十円でしょう、大まかに。そうすると、約七百億円ばかり余計出すのかなと、そう思ったら、ここに金額で書いてありますので、余り相場には関係ないということはわかりました。  世銀出資シェアを一・五%引き上げる、説明には数字は書いてありませんが、一・五%引き上げることを条件にしておるようですが、近く世銀増資でもあるんですか。
  9. 内海孚

    政府委員内海孚君) 世界銀行一般増資を予定しております。その予定に際しまして、今委員指摘のように、一・五%アメリカが形の上で放棄いたしまして、これを我が国の方でいただくということが決まって、約束されておるわけでございます。
  10. 志苫裕

    志苫裕君 そうすると、近く一般増資があって、それはまたそのときにはそのときでお話があるんだろうと思いますが、今お伺いしますと、日本シェアが上がればどこかの国が下がる勘定で、アメリカシェアを下げて日本がその分をシェアを上げる。率直に言いまして、アメリカとイギリスなどがさまざまな理由ODA量的拡大に消極的な傾向を示しておるんですが、そういうことなども背景にあってアメリカの分が下がって日本の分が上がる。悪い言葉で言うと肩がわりしてくれぬかと、こういう意味合いを持っているんですか。
  11. 内海孚

    政府委員内海孚君) ただいまの点につきましては、実は国際機関出資をめぐってはこのような状況があるわけでございます。  すなわち、投票権の伴いますものは各国ともシェアを引き下げることを好みません。したがって、今の例で申し上げますと、世界銀行アメリカが一・五%下げるというのは、実はアメリカとしては下げたくないわけでございます。IDAの方は世界銀行投票権という形には反映しないものですから、そういった意味投票権の伴わない方のお金よりもやっぱり投票権の伴うお金の方を出したいというのは、これはそれぞれの国の利害関係からいって、それなりにわかるわけでございます。  当委員会におきましても過去におきまして、例えばIDA世銀投票権関係のないようなお金を出すときには、これが世界銀行投票権に反映されるように政府としても努力をすべきだというような御趣旨附帯決議をいただいていたわけでございまして、今回、先ほど大臣からの趣旨説明にございましたように、IDAにおいて我が国が現在国際的に置かれております立場を反映してかなり思い切った出資をさせていただくようにお願いしているわけでございますが、この際、これについてはやはり世界銀行の方の発言権の方もふやしたいという、これは当院の附帯決議の御趣旨にも沿って努力をした結果、そういうふうな形でアメリカその他関係国合意されたということでございます。
  12. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、こんなことを余り細かく聞いてあれですが、説明のしようによっては積極的に発言権を確保するために動いたというふうにも聞けるし、物には裏表もありまして、裏側から見るとアメリカ肩がわりをさせられたと。確かにアメリカは先ほども言いましたように消極的傾向ですから、出しっぷりの悪いアメリカ世界じゅうペースを合わしておるとだんだん枠が小さくなっちまいますから、どっか積極的なところが少しでも言い出してくれれば全体の枠は大きくなりますからその分いいわけですが、ちょっとその辺の説明の仕方によっては肩がわりのようでもあるし、積極的な説明をすると、それはそれなり説明がつくんですが、どっちなんですか。
  13. 内海孚

    政府委員内海孚君) 恐らくこの場合に当てはめて考えますと、IDAにつきましては我が国かなりアメリカ肩がわりということまではいきませんが、アメリカは本来百十五億ドルという範囲内でアメリカの責任は果たすけれども、みんなが希望しているように百二十億という範囲になると、自分の方はちょっとそれは持てないなというところを、我々はその残りの五億について四億五千万ドル追加的に持とうということにしたわけですから、ある程度こちらがそういう拠出を追加的にしたということは言えると思います。ただ、世界銀行の方は、実はアメリカの方は、これは減らしたくないという方の関係で、アメリカ人の率直な気持ちはそうだろうと思います。それをあえてこのIDA8を成功させるために、いわば譲り渡しに合意したということで考えていただくのが恐らく現実に合っているのではないかと思います。
  14. 志苫裕

    志苫裕君 シェアを落としたくない、しかし余り金も出したくないというアメリカのつき合いしているとちっとも大きくなりませんから、かわれるところはかわるというのは積極的で結構ですがね、私はちょっとひがみ根性がありまして、何でも肩がわりするくせがある日本でありますので、ちょっとその辺の事情を積極、消極あわせて聞いたんです。  ところでこのIBRD、親方の第一世銀の方ですね、あるいはこのIDAもそうですが、これらの資金配分というのは何か物差しでもあるんでしょうか。
  15. 内海孚

    政府委員内海孚君) あらかじめ決められた意味での資金配分というものはございません。ただ、IDAにつきまして申し上げますと、これはどちらかというと貧しい方の開発途上国を対象としておりますので、そのときそのときの状況におきましてかなりウエートを置きながら考えていくわけでございまして、今回のIDA増資につきましてはそのかなり部分サブサハラ、アフリカの貧しい国々の援助に充てるという考え方でおります。
  16. 志苫裕

    志苫裕君 それは世銀の方は別で、IDAの方はここにもありますように低所得国、何でもGNP国民一人当たり七百ドルと言いましたか、何かそれ以下を言うんだそうですが。
  17. 内海孚

    政府委員内海孚君) はい。
  18. 志苫裕

    志苫裕君 それはわかりますが、世銀の方のはすべて要請主義だけで、別にこの世銀性格から見て、例えば所得水準だとかそういうものによって、資金枠というようなものを決めるというようなことはないんですね。
  19. 内海孚

    政府委員内海孚君) 御指摘のとおりでございまして、当然に地域別あるいは国別に頭に置いて動かしているということではなくて、基本的に要請主義にのっとりまして、それぞれの国の状況に応じて、またそのときそのときの資金状況に応じまして融資を決定しております。
  20. 志苫裕

    志苫裕君 余り長くやってもすぐ時間なくなっちゃうから。おおよそわかりました。  これは別のところで国際的な話をして今度の合意、それから日本役割とこうなったわけですが、こうしたことはあれですか、今国際的な論議になっておるいわゆる日本黒字還流論ですね、あるいは資金還流論とでもいいますか、こういう世界的な、国際的な論議というふうなものと一連のものですか。
  21. 内海孚

    政府委員内海孚君) その点は全く御指摘のとおりでございまして、現在御審議いただいておりますIDA第八次増資につきましては、これは特に、例えば外国の新聞で申しますと、ウォールストリート・ジャーナルとかル・モンドとかでも、 その交渉過程におきまして、日本に大きな役割を求めるという論調が極めてしばしば出たわけでございます。  そういうことも考えまして、また我が国が現在置かれております国際的な状況等にかんがみまして、当初百十五億ドルという規模で、これはアメリカの方の資金的余裕観点から百十億をベースとして第七次増資と同じ割合でという考え方で進んできたわけですが、これは関係国が何とかして百二十億に達するような規模増資をしたいということになりまして、それではその五億分のうち四億五千万を我が国が持つことにして、合計二十六億ドルという大きな貢献をしようということになりましたわけで、これはことしの初めにおきまして三年間で百億ドルの還流政府は考えているという言い方を国際的にもよく申していたわけですが、その百億ドルのうちの一環でございます。二十六億ドルはこれをカウントしております。
  22. 志苫裕

    志苫裕君 それではこれから少し、いわゆるこの資金還流論といいますか、資金還流計画、考えてみればそういう資金還流計画の中の大宗を占めるものはさしずめODAだろうというふうに考えますが、ところでこの四月末の日米首脳会談において三年間二百億ドル還流計画を発表した。今ちょっと局長がお話しになった去年の合意の分も含めると三年間三百億ドル。それの二十六億ドルがIDAの第八次増資に回るんですが、ただちょっと予算委員会でもいろいろ議論があったらしいですが、私もちょっと傍聴したけれども、いろいろ言っておるがなかなかわかりにくいのでわかりやすくしますと、一体この三百億ドルを資金面でいきまして、ちょっと済みませんが、三百億ドルのうちODAにカウントされる分は幾らODAにカウトンされる分は幾ら、それからPFにカウントされる分は幾ら、こういうふうに分けて言ってくれませんと、政府自分が金出すわけでもない、民間の金出すのもおれがやっているというようなことを言われても困るわけであって、それがどういう原資が使われるのか、ちょっと説明してくれませんか。
  23. 内海孚

    政府委員内海孚君) ただいまの還流計画という場合に、我が国経常収支の大幅な黒字というものがまずありまして、それが円滑に世界にある程度還流されていかないと困るというところに基本的な発想があるわけでございます。ところが、その経常収支黒字というのが必ずしも国に入ってくるということでなくて基本的には民間にあるものですから、そういう意味で、還流計画というのは不可避的にかなり部分民間資金をどういうふうに円滑にリサイクルさせるかということになるという点を、まず念頭に置いていただきたいと思うわけでございます。  さて、御質問の三百億がどういうふうに分かれるかということでございますが、最初の百億については大体内容が決まっておりますのでかなりはっきり申し上げられると思いますが、まずそのうちの第一のものは、いわゆる世界銀行に創設いたしました約二十億ドルのジャパンスペシャルファンドでございます。大ざっぱに言いますと、円建てで言うと三千三百億円になるわけですが、そのうちの約一割の三百億円はODAになります。三千億円は民間からの資金還流でございますのでODAにはなりません。それはいわゆる民間からの資金還流になります。その次には、IMFに対して外国為替特別会計が約三十六億ドル貸し付けますが、これもいわばマーケットの金利で還流しておりますのでODAには入ってまいりません。それからその次が、今御審議いただいております二十六億ドルのIDA第八次増資、これはODAでございます。それから同様に、アジア開発銀行に同じようなアジア開発基金というのがございまして、ここに十三億ドルを拠出することにしておりますが、これもODAになります。したがって、かなりの多くの部分ODAということが言えると思います。  それから、残りの今度総理アメリカに行かれまして発表されました二百億ドルにつきましては、実はまだ内容がそんなにはっきり固まっておりませんが、まず第一のカテゴリーが、先ほど申し上げました世界銀行に対してジャパンスペシャルファンドをつくったような、そういったものを世界銀行に対してさらに拡大するだけではなくて、アジア開発銀行とかあるいは米州開発銀行にも拡大しようということでございます。  したがって、これはいわば政府資金が触媒的な役割を果たしながら民間資金がリスクの心配なしに開発途上国流れるということでコンバインされるものですから、そのうちどの部分が、政府資金部分ODAになりますが、またこれは来年度予算要求からまたスタートしなければならないものですから、幾ら、どういう割合になるということは決まっておりません。  それから、第二のカテゴリーが、輸出入銀行海外経済揚力基金世界銀行やその他開発機関協調融資をするという考え方、それから円借款等アンタイで出そうという考え方でございますが、これは海外経済協力基金の分はODAになります。輸銀の分はその他の政府からの金の流れというふうに分類される部分になります。それから、残りの三十億ドルは、これは輸出入銀行からのバンクローンを考えておりますので、これもODAにならないでその他の政府部門からの金の流れというふうに分類されるわけでございます。
  24. 志苫裕

    志苫裕君 そういうふうにごちゃごちゃ言うからわかりにくくなるんでね。  ですから私は、それはIMF幾らとかIDA幾らとか、百億円分はありますから、私の方で若干カウントするのはできます。二百億円はこれからの話なんだから。だけど、やっぱり三百億還流しますとか二百億還流しますという場合には、どういう性格のものになるんだろうかということがわかるように、私が聞いたような形で表現してくれる方がわかりやすいんですよ。  もちろん日本黒字というのは、何も政府にたまっているんじゃないので、民間も含めてみんなたまっているんですから、それぞれの形で還流するというのはわかりますから、ですからやっぱりそういう資金性格別に分けて表現された方が、何だか知らぬが二百億とか三百億と、随分余計やりますな、政府も奮発したもんだ。聞いてみたら、みんな民間の金を持ってきたというんじゃないですか。余り威張った手柄にもならぬわけでしてね。  そういう意味で、これはできれば、今ごちゃごちゃ説明しておりましたが、これからはできればそういう形で説明もしてください。そうしますと、我々はそれについての判断も大分つきやすいわけです。資金性格によってどこへ行くかということが我々判断つくわけでして、そういう意味でこれは注文をつけておきます。  総理の訪米では、あわせてODA第三次中期目標の二年前倒しというものを表明されました。何か今度アメリカへ行って、アメリカの閣僚に取り巻かれて一人で口頭試問を受けたような雰囲気が伝えられていますが、もともとODAというのは、例えば外圧とか気兼ねとかいうようなもので決まるんじゃなくて、きちっとした理念に基づいて行われるものだと思うんですが、ともあれ、やること自体は結構なことです。  そこで一つお伺いしますが、日本ODAについてはいろいろの問題点指摘されておったし、改善の余地もあります。例えばGNP比がどうとか質がどうとか、あるいは商業主義に陥り過ぎておるのじゃないかとか、あるいはマルコス疑惑に出たような浪費があるとか、援助体制がどうとかこうとか、いろいろさまざまな問題があります。  そこで、私はずばり聞きますよ。さまざまなこの批判、指摘、また努力目標等があるんですが、ODA三次目標を二年前倒しで達成をしたい、四百億ドルを下らない額で、そして八五年の倍額にということですね。これが第三次中期目標になってますが、これが達成されたときの日本ODAの姿は、どういう姿になっておるのか。当てどもなくやっておっても意味がないので、何かの目標を持って、ばっとグラントエレメント比率を高めようとか、贈与比率を一〇〇にしようとか、あ るいはGNP比の何%にしようとかいうようなそういう目標を持たないで、出たとこ勝負で、ちょっと外圧があるから出そうとかいうようなことではいかぬという意味で、私はそのとき二国間のODAはどれぐらいの比率になっておるか。それからマルチ援助比率はしたがってどうなっておるか、GNP比はどうなっておるか、グラントエレメント及び贈与比率はどうなっておるか、こういうODAに関する主な指標を考えてみて、日本ODAの姿はこのようになりますということが表明できますか。
  25. 久保田穰

    説明員久保田穰君) お答え申し上げます。  我が国としましては、現在中期目標を立てましてODAの量的な拡大、質的な改善に努めておるところでありますけれども、ただいま委員指摘なさいましたように、この二年前倒しということで、早期にかかる目標が達成された場合に、その最終的な姿、一九九〇年における我が国ODAの実績、対GNP比率グラントエレメント、こういう数字がどうなるかということについては我々もいろいろ考えております。  しかしながら、現在GNP伸び率及び円ドル為替レートが非常に不確定な要素が多いということがございまして、現時点で委員指摘のような数字につきまして具体的な数字を挙げるということは極めて困難な状況にございます。ただしかし、この倍増目標の二年短縮ということの中には、量的な拡大と質的な改善ということがはっきりとした形で入っておりまして、それに向かって引き続いて努力していくということで考えております。
  26. 志苫裕

    志苫裕君 これはこれだけでもちょっとじっくりやらないといかぬのですが、私はどうも日本のそういう対外協力関係経済協力あるいは政府開発援助にしましても、いささか出たとこ勝負だという感じをもともと持っておったんですが、まあ北同士の間も今問題ですが、南と北との間のいろいろな収支構造というふうなものが世界経済にもストレートに響いてきておるわけでして、国際国家日本と言われる日本が果たす役割がますます大きいときに、その還流計画の大宗を占めるODAについてあるべき姿、それからガイドライン、そういうものを持っていないというのは怠慢だと思うんです。  なるほどGNPが大きいですから、額はほどほどですけれども、対GNP比は八五年で〇・二にいくでしょう。DACの平均で〇・三五で、ブラント報告は〇・七でしょう。随分低いものなんですよ。そうでなくても日本世界のおかげ、南のおかげをこうむって生きている国でしょう。それにしちゃささやかなものだ。総合グラントエレメント日本が七三・六ですが、DACは九一・四でしょう。勧告基準は八六ですが、そこまでもいっていない。贈与比率四七・五でDACは平均が八〇・八ですよ。  この間予算委員会で外務省の局長が答弁されておったのを聞いていましたら、特に西欧の場合は本来ODAというのは無償が原則という考え方でやっています。事実、北欧なんかでは一〇〇%がそうなっているところもあるわけです。そういう意味で量的にも質的にも低いということは前から言われておる。それで奮発をして倍増計画、二年前倒しと。その結果どうなるのかということがちっとも示されないんです。何を目標にしてどこへ走っていくのかという、それがないんです。これはODAの主管官庁がしゃばじゅうに分かれておって、四省庁体制というが、勘定してみると十四もあるようだが、その辺にも欠陥があるのかもしらぬが、結局どこが責任を持っているのか。銭の方は銭の方でけちるだろうし、外務省はどこか行っていい顔もしなければならぬし、いろいろなことで結局つじつま合わぬことばかりしているからこうなるんだ。この点はひとつ外務省の担当がおたくなんだけれども、きちっとODAのガイドラインつくりなさいよ。どうですか。
  27. 久保田穰

    説明員久保田穰君) ODAの量的な拡大とそれから質の改善につきましては、確かに委員指摘のように、現在我が国のDAC援助協力国の中に占める位置というものは、ともに国際的な平均に比べますと見劣りのするものでございます。いろいろ試算しておりますけれども、第三次中期目標二年前倒し達成ということになりますと、その時点で六十年末の実績、ドル換算で三十八億ドルというものが七十六億ドルという形に里的には非常に拡大するわけですが、GNP伸び率というものが今後どうなるかはわかりませんけれども、これも相当な現在のペースで伸びると仮定いたしますと、やはり委員指摘のように、その時点で計算しましてもGNP比率ということではかりますと、必ずしも現在の〇・二九というパーセントというものが改善されるという点についてはなかなか容易でないという面があると思います。  国際社会における相互依存、国際的責務という観点から見まして、二国間で相手国の満足のいく援助ということだけではなくて、そういう数字についても今後とも努力して改善していきたいと思っております。
  28. 志苫裕

    志苫裕君 これ以上ここではどうしようもないんで、いずれまた、この点については強い関心を持っておりますので、これからも取り上げていきたいと思っているんです。  ただ、私が申し上げておきたいのは、自民党の総合経済対策要綱でも途上国への資金還流促進計画、先ほども黒字還流論の話がありましたが、私は、資金還流という発想は多分に経済協力の理念、あれは援助理念と深くかかわっておるからこれに強い関心を持つんですが、経済協力の理念、各国のシフトの仕方を見ていますと、それぞれの国によって国益を中心に考えたり、経済利益の追求を考えたりさまざまなものがありますが、大まかにいくと戦略援助、人道主義というこの両極において、真ん中に相互依存なり世界共同体的な発想がシフトされておる。日本援助の場合には、書いたものは別としまして、その軌跡を見るというと、大まかに言うと戦略援助に近い。別の言葉で言うと、やっぱり経済利益の追求というものが大きな核だったというふうに思います。  借款による例えばインフラの整備にしましても、よくよくたどっていけば、結局日本の進出企業のインフラ整備というふうにつながっている面もあるわけであって、それが資金還流というところまでいけば、援助理念のやっぱりそれなりの意思の転換とでもいうか、あるいは確立というかそういう内容にもかかわっているんだな、またそうしなきゃならぬと思っているんですが、それだけにひとつODAの指標をもう少し正確にして、みんなそこへ向けて頑張るというふうに求めておきます。  この問題の最後になりますが、実は私、参議院の外交・総合安全保障調査会の国際経済・社会小委員会の小委員長をしているんですよ。この間初めて一国際経済社会といってもいっぱいありますので、とりあえず日本ODAのあり方について手始めに取り上げて、与党、野党を問わず大体似たような意見になってきましたから、できればその辺の合意でも形成しようということでやって、この間いろいろな方から意見を聞いておりまして、実はNGO、まあなぜNGOかという議論があるところですが、NGOに属している人たちの話を聞きまして、与党、野党を問わず非常に感銘したんです。我々はいかにNGOについて無関心であったか、逆に言うと、いかに大きな役割を果たしておるかということですね。相手被援助国の民衆と溶け込んでなかなか大変なことをやっていると感銘しました。  一種のボランティアですから、人様から金を集めてやっているんですが、そこで大蔵大臣、これはあなたの方がいいんですが、NGOは民間から善意のお金を集めまして政府ではできない分野で協力援助の実を上げているので、NGOに対する寄附金の取り扱いに税制上の優遇措置を講ずれば、もっとNGO活動が活発になるという確信を持った。諸外国にはODAの相当の部分をNGOを通じてやっておる、ヨーロッパもあるわけですが。そういう意味でこの点は大蔵大臣、あなたの即答で決まっちゃうんで、ひとついい返事してく たさい。
  29. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) 寄附金につきましての税制上の扱いについて、まず申し上げさせていただきたいと思いますが、一つは指定寄附金、それからもう一つは試験研究法人の制度がございます。海外経済協力関係につきまして多く利用されますのは、この試験研究法人のシステムでございまして、主務大臣が認定をいたします発展途上にある海外の地域に対する経済協力を主たる目的とする公益法人、これにつきましての海外経済協力のための寄附というものは一定のルールのもとに所得控除が認められる。こういう制度がございまして、現在主務大臣が認定をいたしております。そういった公益法人、これは三十近くのものが認定されております。  ただいまのNGOでございますか、それが具体的にいかなるものであるかという点につきましての私の認識は余り深くはないのでございますが、こういった公益法人を通じます形での海外経済協力に対する活動へは税制上かような形で支援をいたし、それなりの貢献をしているんではないか、こんな認識を持っているところでございます。
  30. 志苫裕

    志苫裕君 結局どういう返事をしたのか答えがわからぬ。いいというのか、悪いというのかね。検討するとか……。
  31. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) 今御指摘のNGOでございますか、これが法律上の要件、これは法人税法の施行令の七十七条にございますが、開発途上にある海外の地域に対する経済協力を主たる目的とする法人、これに該当するということで主務大臣の認定がございますれば、寄附金の損金算入の道が開かれるということでございまして、今のNGOなるものにつきましての認識は私十分ではございませんが、それが外務省において大蔵省との協議は必要でございますが、それの上での認定ということにかかっている問題かと存じます。
  32. 志苫裕

    志苫裕君 時間がないからあれですが、NGOの実態は、それは千差万別ですよね。外務省が出しておる「NGOダイレクトリー」を見ましても、こんな分厚い、たくさんのものがあります。その中に、宗教心を持ってやっている団体、あるいは日本青年団協議会のような、ああいう団体もさまざまあるんです。あるいは本当のボランティアが集まってやっているものまで、これは千差万別ですから一定の物差しはつくらぬといかぬのですが、それらの資金繰りを見ていきますと、善意の人たちの寄附、あるいはいろいろな団体の寄附がありますね。不思議に企業がないんですよ。企業だったら随分進出してかの国でもお世話になる連中だが、なぜ企業から寄附がないのだと聞いたんですよ。そうしたら、企業さんが言うには、おたくへ寄附しても税制上の恩典がないと言う。そこで、聞いている与野党ともになるほどなと。これは実際に援助実務に携わっておる官庁、また現場にいる諸君はNGOの役割を高く評価しているんですよ。ですから、物差しがただ四角四面の法人とかなんとか言いますと、寸が足りないものがあったりどうか知りませんが、それらはもう少し主務官庁で大勢全体がうまくいくように、外務省もそうだし、通産省もそうだし、大蔵省もそうですが、相談をしてそういう要望が満たされる、それでODA全体がうまくいくように、これはひとつ大蔵大臣、あなた答弁してください。検討してください。
  33. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど政府委員が申し上げましたように、道は開いてありまして、法人税法施行令の中に「開発途上にある海外の地域に対する経済協力を主たる目的とする法人」、これに対するものは損金にすることができるということになっているわけでございます。  そこで現在、現実に例えばオイスカでありますとか、日本シルバーボランティアズでありますとか、国際開発センターでありますとか、そういうところは、現にこれに対する法人の寄附は損金になりますし、個人の場合は所得控除になるわけでございますね。ですから、道は開かれておるし、その指定を受けておる団体も二十幾つかあるわけですが、問題は、この受け取る方がしっかりしているところである、法人格を持ってしっかりやっているということさえわかればよろしいわけですが、そこのところの認定の問題があるわけでございましょう。ですから、それを外務省と大蔵省の方とよく具体的にそういうことを打ち合わせをさせまして、なるべく御趣旨に沿うように、そして金が間違いなく使われるということがわかりますと、そういうふうな道がございますから適用していけばよろしいと思います。
  34. 志苫裕

    志苫裕君 大臣、それ私も最初そう思ったんだ。ところが、それは余り実のある話じゃないんですね。今オイスカ等を例に出しましたが、NGOにも役所の息のかかったNGO、幾らか補助金をもらっておるとか、息のかかったところと、本当に現地に溶け込んでやっているものがあるわけですよ。あなたは息のかかったものには銭が出ていくような仕掛けになっていることを説明しているんですが、それだけではODA全体は生きた回転をしないということを指摘をしておるので、それらをひとつ検討課題にしておいてください。たしかもらっているのはあるんでしょう。補助金出ているのもあるんだから、補助金の出ているのは政府の親戚筋ですから。これはまた役割も違うわけですから。そういう意味でちょっと申し上げたので、これは両者いますから、大臣は今よく外務省と相談をするということですから、その点をひとつ了承をしておきます。  ところで、この問題、あと時間がないので一つだけですが、途上国債務が問題になった。しかし、よく見ますと、途上国債務の中には、言葉は悪いけれども、債務国であたふたしているのにその債務の中からせっせと武器を購入して、それでまた債務がどんどんかさんでいるという途上国も多いんですが、そのほかに、表に出ない、公表されないものを入れると、今大体途上国債務二六%ぐらいが武器の購入に充てられておる、債務の中からね。ただ、政府資金なんかの場合にはそれはチェックできますが、民間資金の場合にはそれのチェックについては大変無関心です。これはどうでしょう。援助をする国だって楽をしているんじゃないんです。それが途上国へ善意で回ったら、それでせっせと武器を買うというのは余りいい図ではない。もっとも、どこその国みたいに援助をして、その金から手前の国の武器を買ってもらったりしている、何のことはない話もありますが、こういう点については大臣あるいは外務省、ちょっと何か関心を持っていますか。
  35. 久保田穰

    説明員久保田穰君) 我が国の開発援助におきましては、委員も御承知のように、途上国の経済開発、民生の安定ということを重点にしておりまして、平和的な目的で援助をしております。国会の委員会における決議も踏まえまして、軍事目的にかかわる援助については極めて厳重に注意を払っておりまして、そういうことのないようにということで我が方の援助を進めておる次第でございます。
  36. 志苫裕

    志苫裕君 最後にしますが、時間がなくなったので、MIGAについて一問しますが、MIGAの設立は六〇年代から国際的な論議にもなってきたことで、ただその設立効果も疑われておったりして合意形成に時間がかかった。周りのその後の動きもありますが、その条約が採択されることになったんですが、この論議過程、採択に至った事情について簡単に説明してもらいたいことと、これは海外直接投資を促進する目的を持つわけですが、その直接投資の動向というのは、最近南と北じゃなくて、北北同士に重点が移っておるという傾向にあるのですが、そういう状況におけるこれの効果、この二つだけお答えいただきます。
  37. 内海孚

    政府委員内海孚君) MIGA条約の設立の経緯は、ただいまお話しありましたように、一九六〇年代からこういう話はありましたんですが、最近になりまして、特に一九八一年九月に、世銀総裁を当時しておりましたクローセンの提唱に基づいて具体的な検討に入り、このような形で実を結びつつあるわけでございます。  その背景を一言で申し上げますと、債務累積問題につきましては、現在もう一兆ドルに達しよう としている債務をどうやって返済させるかということだけではやはり難しいわけでして、それぞれの債務国で、いわゆるグロースオリエンテッドといいますか、成長志向型の経済に持っていきながら、そこの成長を図りながら資金流れを円滑にそういう国々に対して流れるようにする、これによって問題を解決していこうという流れが大変高まりまして、そういうことの一環として直接投資がそういった国々にも安心して行けるような仕組みをつくろうということで、こういうふうになってきたというようなことが私どもの理解でございます。  それから、最近における直接投資の、特に我が国の直接投資の動向につきましては、実は委員指摘のような傾向は大変顕著だと思います。特に最近ここ一、二年は、我が国の対外直接投資はかなり北米への比重を高めておりまして、開発途上国よりもそういった流れが一番大きくなっております。  その背景は、貿易摩擦等を背景といたしまして、生産拠点をある程度そういった国に移すことにより経営を多角化しようというような流れも一方においてありますし、また金融等の自由化によりまして、金融の現地法人、あるいはこれは我が国の金融、生命保険等だけでなくて、事業会社も金融会社をそういった北米等につくるというような動きもあるものですから、そういった流れが非常に大きくなっている。これはそれ自体は結構なんですが、例えばアジア向けの最近二、三年の直接投資の流れを見ますとほとんど横ばいである。これはやっぱり今委員指摘のような観点からすれば、このままでいいかという問題があります。そういう意味で、我が国にも海外投資損失保険はありますけれども、こういった形で、より国際的な観点からこういったものができることによってカバレッジも広がるということが、そういった傾向をさらに是正していくということを期待しているわけでございます。
  38. 志苫裕

    志苫裕君 終わります。
  39. 和田教美

    ○和田教美君 私もIDA及びMIGA関係の質問から始めます。  まず最初に、志苫委員からもお話のあった累積債務の問題ですけれども、今の答弁にもありましたように、一九八六年度には累積債務は一兆ドルを超えるということでございまして、恐らく六月のベネチアサミットでも非常に大きな課題の一つになるんだろうと思うんですが、そこでごく簡単で結構でございますけれども、今の世界の累積債務の現状ですね、先進国にもあるわけですが、それと開発途上国に分けていただいて、総額もどのくらいかということをひとつお聞かせ願いたいのと、それから日本の対外累積債権ですね、日本世界一の金持ち国だなんて言われているんですが、これも先進国と開発途上国両方にあると思うんですが、その状況等、まず御報告願いたいと思います。
  40. 内海孚

    政府委員内海孚君) まず、開発途上国の債務の状況簡単に申し上げますと、ただいま委員指摘のように、ことしの末には恐らく開発途上国の債務残高は約一兆ドルに達するというふうな推計がなされております。その中での顕著な傾向は、だんだん短期債務の割合が減ってきて長期債務がふえてきている、すなわち債務が中長期化しているということ、それから地域別に見ますとこれまた問題の所在が違いまして、例えばアフリカの場合には政府部門からの借り入れが大きな役割をしているのに対して、例えば中南米のように一人当たり国民所得の高いところはどちらかというと民間からの資金の流入が多いというように、それぞれ地域別に問題が異なっているということでございます。  それから、我が国地域別民間金融機関の貸し付けが、債権がどういう状況になっているかということ、これは一番最近の時点ですと六十一年九月末の数字でございますが、途上国向けには六百二十億ドルに達しております。それからOECD諸国、つまり先進国に対しては五百八十二億ドルでございます。東欧諸国に対しましては百四億ドルという状況になっております。  なお、世界のその他の先進国の債務の状況がどうなっているかというのは国別かなり違うものですから、またさらに御質問がございましたら、それに応じてお答えするということでお願いできればと思っております。
  41. 和田教美

    ○和田教美君 それはもう結構でございます。  一九八五年十月のベーカー提案ですね、IMFの中心的な役割を継続する、それから国際開発機関による、より多額かつ効果的な構造調整融資による補完をするというようなことがあったわけですけれども、ところがIMFからの開発途上国の借入純額を見ますと最近余りふえてないですね。むしろ主要債務十七カ国だけでも八六年に入ると、その八六年だけを見ますと三億SDRぐらいマイナス。それから、借り入れ加盟国全体で見ると八六年一月から九月までで二十億SDRのマイナスということになっておりますね。これはいろんな事情があるんだろうと思うんですが、一つにはIMFからの借り入れというものがかなりいろいろ批判があって、そして例えばIMFコンディショナリティーというふうなものが非常に厳しいというふうなこともあるんではないかと思うんですが、その辺はどういうふうなことに大蔵省考えておられるのか。それと、それを改善していくためにはどうすればいいのか、このままほっておくとIMF中心というのはだんだんぼけていくんじゃないかというふうに思いますのでね。
  42. 内海孚

    政府委員内海孚君) 御質問の初めの方の部分、すなわちIMF融資が昨年ネットでマイナスになっているという点は御指摘のとおりでございまして、ただこれは一九八二年、八三年にブラジル、メキシコ等のいわゆるクライシスが来まして、そのときに大口融資をいたしましたその返済が来たということでございますので、これ自体をもってIMF役割が減ったとか、あるいはIMF融資方針がその後厳しくなったということではないわけでございます。しかしながら、基本的にIMFのこの問題についての対応というものについて、今のような御指摘は、例えば開発途上国の側からはかなり聞かれるわけでございます。確かにケース・バイ・ケースに累積債務問題というものを解決を図っていく、その場合にIMFが一つの触媒的な重要な役割をする。  どういう形でかと申しますと、ただいま委員指摘のように、IMFが短期の融資をするに当たりまして厳しい経済政策の注文をつける、これが実行されるということで民間金融機関も安心してIMFについて融資をする、あるいはリスケジューリングに応じる、こういう図式でずっときているわけでございます。これがだんだん国内的に政治的に難しくなってきているというのが一つは背景として、委員指摘のように、あるんだろうと思います。  例えばベーカー提案が、IMFだけじゃなくて世界銀行等の地域開発機関が協力してお金を貸して、成長への夢を持たせようということを言ったのも恐らくその辺に関係があるんだろうと思いますが、IMFは基本的にやはり開発途上国の国内の政策をよく勉強して、そこがどういう政策をとることがほかの民間金融機関も安心してそこにお金を貸せるようになるかという点におきまして、やはり私どもそれは重要だとは思うわけです。ただ、その過程におきまして、IMFもよくそういった事情を理解して、将来の成長へのモチベーションといいますか、そういったものも大事にしながら、コンディショナリティーをつくっていくということは大変望ましいことであると思っておりますし、そういう意味において、私どももIMFをバックアップしていかなければいけないなというふうに思っているわけでございます。
  43. 和田教美

    ○和田教美君 次に、民間直接投資の問題ですけれども、これはMIGAの法案と直接関係があるわけですが、今も志苫委員から話がありましたように、先進国への直接投資というものはアメリカを中心にどんどんふえているわけですね。ところが、開発途上国については直接投資は近年減少傾向にありますね。これもいわゆる非商業的リスク というか、戦争とか紛争とか、そういうことにかなり貸す方でリスクを強く感じてだんだん減っているというふうなこともあるのかもしれませんけれども、これが今回のMIGAの設立によってどの程度カバーできるのか、あるいはまたこの非商業的リスクというふうなものについて、これから先行きますますこういう傾向が強くなっていくというふうに考えておられるのか、その点はどうですか。
  44. 内海孚

    政府委員内海孚君) ただいま御指摘のような、また先ほど志苫委員の御質問にもありましたような、開発途上国向けの我が国の直接投資の伸び悩みという原因が那辺にあるかということでございますが、一つにはやはり特に我が国の直接投資が多く向いておりましたアジアの地域が一次産品等の価格の低迷によって、やや伸び悩みが強く見られたということに恐らくは大きく関連しているんであろうと思います。したがって、こういった国が不安定だから出せないというようなことがどの程度あったかというのは、それほどではなかったように思うわけでございますが、いわばこのMIGAがカバーしようとしております政治的なリスク、非商業リスクに対するカバーといいますのは、言ってみますれば、本当のこうセーフティネットというか、サーカスで空中ブランコから落ちたときにもネットがあるという意味でございまして、こういうものができたから一挙にふえるということではないかもしれません。  というのは、やはりそれぞれの国のそういった直接投資の受け入れ方その他、その国々の経済、それと我が国とのかかわりというようなかなり構造的な問題がありますと思いますが、少なくとも、今後政治状況いかんによりまして、そういった心配があるようなときでも投資家が出ていくかどうか、事業がそこに出ていくかどうかというときには、このMIGA協定は、やはり非常に決定的な役割をする局面があろうというふうに思っております。
  45. 和田教美

    ○和田教美君 海外直接投資のリスクというふうな問題からいえば、すぐ思い出すのは例のナショナルプロジェクトと言われるイラン・ジャパン石油化学、IJPCですね。これはイラン・イラク戦争の激化で今もう完全に工事はストップ状態になっておるわけなんですが、その状況が今どうなっておるのか。  それから、日本の直接投資の場合には輸出保険制度というのがあるわけなんですけれども、この輸出保険を、日本側の三井物産を中心とする輸出保険を請求したとか請求しないとかいう報道もございましたけれども、それはどうなっているのか。  それから、少し調べてみたんですけれども、どうもこのIJPCについての輸出保険の掛け方にはいろいろあって、プロジェクト全体に掛けているものと船積みの段階で個々の資材、プラント等に掛けているものと二つに分かれておる。それで第二のケースの場合には、この八月末で期限が切れるというふうな話があるわけですが、そこでそういうふうに期限が切れる場合に、それまでに請求があれば払うということになるのかもしれませんが、切れた場合にはそれはそれでおしまいなのか、継続するということになるのか、その点は通産省ですね、お願いします。
  46. 森清圀生

    説明員森清圀生君) 御質問は三点あったかと思うんでございますが、まずIJPCのプロジェクトそのものの現状と今後の見通しと申しますか、その点につきましては、私どもは確かにIJPCの直接の当事者ということではございませんので、当事者は日本、イラン含めまして多数の関係企業、これがプロジェクトの主体になっておるわけでございまして、したがいまして、私ども国としてこのプロジェクトについての直接的な判断云々というのは申し上げる立場にないわけでございますけれども、私どもが関係者から聞いておりますところでは、確かにイラン・イラク戦争あるいは紛争のもとで工事が約八年ぐらいにわたりまして中断しておるのは事実でございます。  さりながら、これは私ども、日本政府としてもそうでございますけれども、このプロジェクトが日本とイランの両国関係の重要なプロジェクトという認識は変わっておりませんし、これは関係者の皆さん、そういう考え方を堅持しておるというふうに了解しておりまして、私ども政府としましても、これまでどおりこのプロジェクトが所期の目的を達成する方向に引き続き向かっていくようにできるだけ支援をしてまいりたいと、かように思っております。  次に、保険関係でございますが、このプロジェクトが私どもの海外投資保険に付保されておることは先生御指摘のとおりでございます。この保険関係につきましては、これは保険一般がそうでございますけれども、被保険者の方が付保されておりますこのプロジェクトについて、保険約款に照らしまして何らかの判断をまずされまして、その上でもし保険の請求とかいうことに至りましたら、まずその被保険者の請求という行為があって初めて私どもとして法令、約款に照らして検討するという立場でございますが、事実関係としまして、現在までのところ被保険者の方から保険約款に基づく支払い請求の申請というものはまだ出てございません。  それから第三番目に、同じく保険の絡みで、一部の保険が八月までに切れるんじゃないかということでございますけれども、保険にはそれぞれ保険の責任期間というのがございまして、確かにこのIJPCの保険の一部のものが八月に、いわゆる当初の保険責任期間というのが来ることは先生御指摘のとおりでございますが、この八月の時点、つまりその一部の保険責任期間の切れる部分が到来いたしますときに、その部分が直ちに何といいますか、保険が付保されている状態から自動的に落ちてしまうのかということでは必ずしも一般論としてはないわけでございまして、本件につきましても八月の時点までに、まさにその今のお話と関連いたしますが、被保険者の方から何らかの御判断が出たところで、私どもとして対応を考えさせていただきたい、かように思っております。
  47. 和田教美

    ○和田教美君 次に、IDA関係ですけれども、今も志苫委員からお話しございましたけれども、この日米首脳会談で中曽根総理が約束した三百億ドルの資金還流計画。どうもさっきからのお話を聞いていると、政府関係資金民間資金というふうに分けた場合に一体どうなんだというのが、さっぱり今の説明を聞いてもわからぬわけですね。どの程度真水があるのかというのがさっぱりわからぬわけです。だから簡単に、つまり大体大づかみで幾らというふうな額は言えないんですか。政府関係資金はどのくらいで、民間協調融資なんかの金額はどのくらいということは言えないんですか。
  48. 内海孚

    政府委員内海孚君) 先ほど申し上げましたように、最初の百億の部分につきましては比較的簡単に申し上げられるわけです。つまり、二十六億ドルのIDA部分とそれからアジア開発基金の十三億ドルの部分、それから世界銀行に対して三年間で一般会計から出します三百億円でございます。その部分ODAになることはこれはもうはっきりしているわけでございます。  ところが残りの二百億につきましては、例えば世界銀行その他にスペシャルファンドをつくる場合に一般会計からどのくらい出せるか、あるいはその残り民間資金になるわけでございますが、その辺、まだこれからの基本的に詰める事項でございます。先ほど志苫委員の御指摘にもありましたように、この辺はできるだけ速やかにめどをつけてお示しできるようにいたしたいと思っております。  ただ、役割といたしまして百億、二百億というような大きな還流をしますときには、先ほど申し上げましたように、基本的には日本経常収支黒字というものが民間の部門の方に帰属しておりますものですから、政府資金役割というのはそれをどうやって投資を安全に、安全な形で民間資金がそちらに向かうように、いわば触媒の役割を果たすかというところに大きなポイントがあるんだ ということで御理解をいただきたいというふうに思っております。
  49. 和田教美

    ○和田教美君 私もこういう還流計画を大胆なものをやるということは非常に賛成なんですので、この間も世界開発経済研究所という国連大学の研究機関ですね、それが報告を出しておりますが、それはもっととにかく雄大なものであって、大体五年間、一千二百五十億ドルの黒字剰余金を開発途上国還流させる方向で日本がイニシアチブをとることを求めているというふうな新聞記事がございましたが、ただこの還流ということを考えた場合に、資金開発途上国還流すると、ところがそこで開発途上国が少し資金的な余裕ができて、そして先進国から、例えば日本からまたいろんな資本財を買うとか、そういうものでそれがまたこっちに還流してくる、こういうふうな可能性がないとは言えないと思うのですね。ですから、その辺の歯どめというものをやっておかないと、一たん出したけれども、また返ってくるというようなことの繰り返しては意味がないと思うのですが、その辺はどういうふうな歯どめを考えられているのですか。
  50. 内海孚

    政府委員内海孚君) 私どもはその点は全く同じ気持ちを持っておりまして、よく日本ODA倍増の計画をつくったということを外国の友人に言いますと、それで日本はまた輸出をふやすのかという印象を先進工業国の場合には直ちに持たれるわけでございます。したがって、今回二百あるいは三百億ドルという還流計画をつくりますときには、これはあくまでもアンタイド、つまり日本からの輸入を義務づけないものという形の性格をはっきりさせたものとなっておりますのは、全く同じ問題意識からでございます。
  51. 和田教美

    ○和田教美君 それでは、政府で国会が済んだらすぐ緊急経済対策というものを決められるし、補正予算の問題も大分論議されておるようですから、それに関連した質問を、余り時間がございませんけれども、二、三やらせていただきたいと思います。  近藤経済企画庁長官が、予算委員会だったと思うのですけれども、日本の経済収支の黒字、つまり今のレベルよりも、大体GNPで言えば、GNPの対比二%ぐらいが適当だということをおっしゃったのですけれども、これは何か経済企画庁で計算の根拠があるのだろうと思うのですが、大体どういう根拠なのか。それともう一つ、一体どのくらいの期間でその二%まで減らすということなのか。それを御説明願いたい。
  52. 小島襄

    説明員(小島襄君) 経常収支の適正な水準に関しましてはそのときどきの国際経済情勢だとか、あるいは貿易相手国との関係とかいろんな要素を考慮しなければならないものでして、一概にどの水準が適正となかなか申し上げにくいと思われるわけでございますけれども、過去の我が国の対外関係の歴史を振り返ってみますと、経常収支黒字幅がGNP比で二%程度まで膨らみますと、いろいろと摩擦が激化する、そういうような見方がございまして、先般長官が予算委員会で答えましたのも、こういう観点から二%が一つのめどになるのじゃなかろうか、そういう発言であったというふうに理解しております。  それで、このような数字を今後の政策目標といたしまして、何年で達成すべきだとか、あるいは達成できるかというようなことになりますと、経常収支につきましては、御案内のように、各国の経済政策だとか、あるいは為替レート、原油価格の動向等、いろんな要因によって左右されるといいますか、変わってまいりまして、我が国の政策努力だけでなかなかこうということを決められるものでないものでございますので、具体的な数値の目標と申しますか、そういうものを政策目標として設定するのは非常に難しいんではなかろうかと、かように考えておるわけでございます。  ただ、現在の四%を超える水準というのは、これはいかにも大き過ぎるといいますか、なかなか世界経済の調和ある発展という観点からも問題が非常に多いものでございますので、政府といたしましては経常収支不均衡を着実に縮小する、縮小させるということを国民的な政策目標といたしまして、先般そういう目標を設定いたしまして、先進各国との政策協調を図りながら内需の拡大とか輸入の促進等、我が国の経済構造調整に積極的に現在取り組んでおるところでございます。
  53. 和田教美

    ○和田教美君 GNPの二%というと、今のGNPでざっと計算すると大体四百数十億ドルということになりますね。そうすると、現在の一千億ドルの黒字ですね、そうすると、これは大体四%あるいは四%以上ということになり、半減しなきゃいかぬということになりますね。半分減らさなきゃいかぬ。大体五百億ドルぐらい減らさなきゃいかぬということになるんですが、仮に五年間で減らすとしても一年百億ドル減らさなきゃいかぬ。三年間で減らすとなると百数十億ドル減らさなきゃいかぬ。そういうことが実際問題として可能なのかどうか。宮澤大蔵大臣は、前にそういうことは可能だということをおっしゃったように新聞に載っておりましたけれども、その点はどうお考えですか。
  54. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私はそういうことを申した記憶はございませんが、さあそれは、つまりプラザ合意からもう二十カ月でございますから、アメリカの輸出力が非常に回復をすると、日米間の貿易バランスで、アメリカは確かにそういえば一年間で二百億ドル近い貿易バランスを回復したいと言っておるんでございますね、そう言うことは言っております。さあしかし、五年間に毎年ずっと百億ドルずつ――ちょっと私に見当つきかねます、できるかどうか。
  55. 和田教美

    ○和田教美君 次は、これはたしか野村総研だったと思うんですけれども、政府の言っている五兆円を上回る規模の内需拡大策というものに関連をして、五兆円というものを仮に、まあ内容、中身によりますけれども、真水が多いとか少ないとかということが関係してくると思いますが、これの中身については詳しいことを私余り聞いてないんですが、五兆円を仮に内需拡大策に投じたとして、かなり政府の直接の金を多く使うというふうな計算になっていたと思うんですが、それで大体貿易収支のアンバランスに影響するのは三十億ドルぐらいだと、こういう発表をいたしておりましたね。  その点は、経済企画庁は大体どのくらいと見ておるんですか、五兆円仮に内需拡大に使ってですね。お答え願いたい。
  56. 大塚功

    説明員(大塚功君) 野村総研の試算につきましては、私ども資料を取り寄せまして検討いたしましたけれども、五兆円の施策について具体的に内容を、一定の内訳を仮定いたしまして計算をしたものでございます。  一方、政府の総合的な経済対策につきましては、御案内のとおり、先般自民党が取りまとめられました総合経済対策要綱の考え方を尊重しつつ、現在その内容を検討中であるという段階でございます。  もとより、その内容を決定する際には、輸入面を含めまして波及効果の大きなものとなるように配慮してまいることとしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、現段階は各省庁と協議しながらその具体的内容を詰めているという段階でございまして、内容が固まっておりません。したがいまして、対策の経済効果、貿易収支に与える影響につきましても定量的に申し上げることは現段階では困難でございます。  ただ、定性的に申し上げますと、五兆円を上回る財政措置を伴う内需拡大策、これは我が国経済の内需を拡大いたしまして輸入を増大させる、それからまた輸出に向かっている需要を内需に振りかえるということでございますから、貿易収支を早々に均衡に向かわせる方向に作用するということははっきり申し上げられると思います。ただ、定量的にはなかなか申し上げるのは困難でございます。
  57. 和田教美

    ○和田教美君 そんなことはわかり切ったことであって、聞いておるわけじゃないんですが、まあいいでしょう。  それで、なぜこういうことを取り上げるかとい うと、これは大蔵大臣に最後に聞きたいんですけれどもね。政府・自民党は今内需拡大策ということで一斉にPRをしておるわけですが、これのPRが効き過ぎて、対外的にも六百億ドルになんなんとする対米黒字というふうなものは内需拡大策をやったからといって、まあ少しは減るかもしれないけれども、そう簡単に減るものではないと思うんですね。いろいろ政府が、例えば政府専用機を輸入する。三機輸入してもせいぜい二、三億ドルでしょう。そういうことで、今の話ですと内需拡大策でこれだけ積極的にやっても三十億ドルぐらいしか減らない。ところが、どうも対外的にもこういうことをやります、こういうことをやりますということで過大な期待を持たせるようなことが起こらないかどうか、アメリカの議会などに。それともう一つ、逆に国内的にも過大な期待を、幻想を抱かせるということが起こらないかどうか。  つまり、やっぱりこの黒字減らしということを本格的に考えるのには、日本でももちろん構造政策のようなことを、相当痛みを伴ってやらなきゃいかぬわけですね。それから、基本的にアメリカの財政赤字をうんと減らしてもらうということをもっと強く要求してもらわなきゃ困ると思うんですが、どうもそういうことは余りおっしゃらずに、何か見てくれがいいんでしょう、とにかくぱっと出すというふうなことがそういう心理的影響、悪影響を及ぼさないかどうか。同時に、なかなかそう簡単にはいきませんよということも国民にPRというか、はっきり言う必要があるんではないかというふうに私は思うので、その点大蔵大臣どうお考えでございましょうか。
  58. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その話は政府部内でも余り議論したことはないのでございますけれども、私自身は今和田委員のおっしゃったことに非常に近い考え方を実はいたしております。  ちょうど一九八〇年に我が国の貿易黒字は六十億ドルでございましたんですが、八五年にそれが六百何十億ドルになっております。五年間で貿易黒字が十倍になった、これが非常にやっぱり問題の時期であったと思うんですが、このときは一つはドルが非常に高い時期でございました。したがって、日本の円が非常に輸出をしやすい時期であった。もう一つは油がどんどん上がっておりまして、どうしても油を買うためには何でも輸出しなきゃいけないというドライブがございました。そういうことがあって、この五年間に日本の経済の構造が非常に過度の輸出依存的な体質に変わったと思うんでございます。でございますから、今あります問題は、こんなに輸出依存型体質になってしまった我が国の経済が、しかも社会資本が乏しいわけでございますから、この体質を直していかなきゃならないというのが前川リポートが言っていることだと思うのでございます。  そうだといたしますと、一遍補正予算を組んだらうんと輸入がふえたとか、急に輸出が減ったとかいうことにはならぬであろう。やっぱりそういう努力が何年か続きまして、日本が昔に戻るなんてことは、これはないことだと私は思いますが、また違った形での日本になって、そうして過度の輸出依存体質が直る。そういうことの今回が第二年目でございますか、一年目でございますか、こういう努力の継続が恐らく必要である、私はそう実は思っております。たまたまこれだけ円がまた高くなっておりますから、一九八〇年から八五年の間に比べればはるかにそれは輸出についてのいわばブレーキといいますか、そうなるはずでございますし、輸入がふえるはずでございますから、そういうことの展開の中でやっぱり何年かの努力をする必要がある。どうも今それにしても、しなければならないことはことしは同じことでございますので、それを一生懸命やろうやろうというのはよろしいんでございますが、それが即効的にすぐ何かになるという期待を国の内外に私は余り与えることはむしろ問題である。これは長い努力が必要であるというふうに思っております。
  59. 和田教美

    ○和田教美君 はい、結構です。
  60. 井上裕

    委員長井上裕君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、下稲葉耕吉君が委員辞任され、その補欠として小野清子君が選任されました。
  61. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私は、MIGAを中心に質問をしたいと思います。  このMIGAは一九八五年の世銀総会で設立が合意されたんですが、それに至るまで幾つかの案がアメリカなどから提案されましたが、なかなかまとまらなかったという経過があります。今回まとまった案につきましても署名国は先進十二カ国、途上国四十五という状況でありまして、メキシコ、ベネズエラ、アルゼンチン、ブラジル、こういう中南米の主要国など十四の国がこれは署名しておりません。これはいずれも累積債務で危機的状況にある国で、先進国の立場からいいますと、いわばこれ投資保険の枠組みに取り込まなければいけない、そういう国々なんですね。こういう国が今保留の態度をとっている。大変多くの数に上っておりますね。なぜこれらの国がMIGAに参加することを拒否しているんだろうか。これらの諸国がこの制度に参加しない理由は何なのか、まず御答弁いただきたいと思います。
  62. 内海孚

    政府委員内海孚君) ただいま近藤委員指摘のとおり、中南米諸国の幾つかの国例えば今御指摘のメキシコ、ブラジル等でございますが、MIGAへの参加に対する態度をまだ決定しておりません。これは紛争の解決のやり方につきまして、MIGAでとられておりますような国際的救済手続というものが、これらの諸国の伝統的ないわゆるカルボ主義と言っておりますんですが、そういった立場と相入れないということから、まだそれとの調整をめぐって検討中というふうに聞いておるわけでございます。
  63. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 要するに、主権侵害の問題だと思うんです。それはこれから質問をしますが、しかしもしこれらの国が参加しませんと、いわゆる保険の対象に主になるようなその可能性がある国が参加しないとなると、これせっかくできましても実効性が上がるのかどうか、そういう問題が起きてきやしないだろうかと思うんですが、どうですか。
  64. 内海孚

    政府委員内海孚君) たまたま署名をしていない国のことをおっしゃいましたが、例えば同じ中南米でも既にボリビア、チリ、コロンビア、エクアドルというような国々は署名しておりますし、その他多くの開発途上国、例えばアジアでは九カ国、中南米十カ国、アフリカ十五カ国、中近東八カ国というような国は既に署名しているということも同時に申し上げたいと思うわけでございます。
  65. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 しかし、かなり主要な国が参加しないということで一つの問題だと思うんですね。そこで、先ほどの主権侵害の問題というのは、結局国有化あるいは収用など保険事故が発生した場合に投資者に保険金をもちろん払いますね、と同時に、受け入れ国に対して代位請求権を持つことになる。つまりMIGAです。これは外国人資産の国有化や収用などの途上国の経済主権を認めた国連の経済権利義務憲章というのがあります。それに反するんじゃないか。この点をこれらの国は問題にするんじゃないかと思うんですが、どうですか。
  66. 高橋恒一

    説明員高橋恒一君) お答え申し上げます。  MIGAが代位を行うことに関しまして、これが途上国にとり不利になるのじゃないか、また一九七四年に国連で採択されました経済権利義務憲章に抵触するのではないかという御質問でございますが、そもそも代位と申しますのは、投資者が既に持っております権利をそのまま取得するものでございまして、投資者の権利が代位をすることによってふえる、それを上回った要求が行われるというようなことは全くないわけでございまして、代位によりまして投資受け入れ国が新たな義務を負うとか、その投資受け入れ国の権利が減るとか、そういうことはございませんので、代位が行われることによって投資受け入れ国が不利になるということはないわけでございます。  それから、この代位の規定を含んでおりますMIGAの設立条約は、御案内のように、一九八五年十月の世銀総会におきまして多数の途上国を含みます参加を得ましてコンセンサスペースで採択されておるわけでございまして、従来私ども途上国の側におきまして、このMIGAの規定しております代位が特に問題であるとか、途上国にとって不利であるというような意見を持っているということは寡聞にして聞いておりません。  それから、委員御質問の一九七四年の国連で採択されました経済権利義務憲章と代位の関係でございますが、これは特に関係がないのではないかというふうに存じております。
  67. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 まさに代位は、そのとおり別にそのことで権利義務関係がふえたりするものじゃありませんが、そして私も代位だけで先ほどの権利義務憲章に反するとまでは言わないんですが、ただこの代位と、それからもう一つ、この紛争が生じた場合に外部の第三者に調停、仲裁をゆだねるとなりますと、特にこの権利義務憲章の第二条二項(c)、これに該当する可能性が出てくるんじゃないかと思うんです。その点どうですか。
  68. 高橋恒一

    説明員高橋恒一君) お答え申し上げます。  委員指摘のように、七四年に国連で採択されました経済権利義務憲章の第二条第二項の(c)前段には以下のような規定がございまして、すなわち国有化等に係る補償問題で、「紛争が生じた場合はいつでも、その紛争は、国有化した国内法にもとづき、かつその法廷において解決されなければならない。」そういう規定がございます。これに対しまして、現在御審議いただいておりますMIGA設立条約の第五十七条の(b)でございますが、これには、MIGAが投資者の代位者として行動する場合の請求権に関する紛争につきまして、条約の「附属書Ⅱに定める手続」またはこの手続にかわりMIGAと「関係加盟国との間で締結する取極」のいずれかに従って解決する旨規定しております。そういう意味で、附属書のⅡは、交渉、調停及び仲裁につき定めております。  このように、MIGAが代位する請求権に関する紛争処理手続につきましては、国有化等を行った国の国内法に基づく国内法廷における解決以外の手続を規定しているという点におきましては、委員が御指摘のとおり、経済権利義務憲章の第二条第二項(c)前段の規定の趣旨とは異なっておるということは御指摘のとおりでございます。  しかしながら、同憲章の第二条第二項の(c)の後段がございまして、そこにおきましては、「但し、すべての関係国が諸国家間の主権平等の基礎の上にたち、かつ手段の選択の自由の原則に従い、他の平和的手段を追求することにつき自由にかつ相互間で合意した場合はこの限りではない。」という旨規定しておりまして、MIGAの加盟国におきましてコンセンサスペースでそれとは違う合意を行い、それに従いまして紛争処理手続を行うということは、この権利義務憲章全体の規定から見まして趣旨に反するものとは考えられないのではないか、かように考えております。
  69. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 大臣、今お聞きになったところが私は少し問題だと思うんですね。やはり途上国が経済主権を侵害されるんじゃないかというこういうおそれが、まあ今のただし書きで合意があればそれはいいんですけれども、そうでない場合が十分あるわけですから、そういう点だと思うんですよ。  それで問題は、現在我が国の経済進出が急速に行われておりますが、やっぱり真の対等、平等の経済協力を推進するという観点が必要だと思います。それで、先ほど申し上げた憲章は、国連で圧倒的多数でこれは可決されたものでありますが、これを遵守する、こういう立場で今後進む必要があると思うんですが、その点どうでしょうか。
  70. 高橋恒一

    説明員高橋恒一君) お答え申し上げます。  一九七四年の国連総会において採択されました経済権利義務憲章でございますが、この憲章は開発途上国の発展を促進し、もって公正な国際経済関係の確立を目指したものでございまして、我が国といたしましてもこの憲章が理想としておりますところは十分理解しております。また、そういう観点から、普遍的に受諾可能な文書が作成されますようにこの協議、交渉過程には積極的に参加いたしたわけでございますが、途上国の一部にコンセンサスを達成するための努力を十分に尽くさずに一方的な主張を反映し、問題のある条項を含んだままの憲章の草案の採択を強く要求いたした経緯がございまして、これがそのまま投票に付されたため、我が国は憲章全体に棄権したわけでございます。したがいまして、日本以外の主要国の中には反対をした国もございますが、我が国と同様に棄権した国も多数あるわけでございます。  したがいまして、我が国といたしましては、この憲章を遵守すべき立場には、厳密に申しますと、ないわけでございますが、冒頭に申し上げましたように、同憲章は途上国側の当時、少なくとも当時におきましてはほぼ一致した考え方、世論というものを表明しておったということも事実と考えられますので、我が国といたしましても、国際協調を図り途上国に協力していくという観点からは、できる限り今後とも理解は示していくという考えでおります。
  71. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 次に、これはちょっと解釈の問題ですが、この保証の対象になる四つがありますね。そのうち三つはわかるんです。収用あるいは戦争等ですね。ただ第三の契約違反、これは非商業リスクというんですが、商業リスクの場合とこれはかなり区別が難しいんじゃないかと思うんですが、その点どうですか。
  72. 内海孚

    政府委員内海孚君) ただいま御質問の点は、具体的に投資受け入れ国政府がかかわっている場合でございます。すなわち、具体的に申し上げますと、投資家と投資受け入れ国政府との具体的な契約を投資受け入れ国政府が否認または違反したときに、それに対する司法的救済が得られないという場合におきましてMIGAが保証をするということでございます。
  73. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 次は、既存の保険制度との関係であります。  現行の我が国の投資保険制度の概要と、それから最近の海外投資保険引受件数、それから金額、その残高、それからカバー率、これについてお伺いしたいと思います。
  74. 森清圀生

    説明員森清圀生君) 私どもで今運営いたしております海外投資保険制度、昭和三十二年以来若干の改正等もございましたが、非常に古い歴史を持っておる制度でございますけれども、現行の投資保険制度、現行のといいますか、より正確に申し上げますと、去る三月に輸出保険法を貿易保険法に改正する政府提案の法案を成立させていただいたわけでございますけれども、三月の改正前までの海外投資保険制度は、今御審議いただいておりますMIGAといろんな点で類似しておりまして、例えば保険の対象になりますリスク、これはいわゆる非常危険だけを対象にしておりますし、その他いろんなメカニズムはほぼ同一と御理解いただいてよろしいかと思います。三月のこの前の法律改正によりまして投資保険も拡充されることになったわけでございますが、その一番大きな点は、従来の非常危険に加えまして、いわゆる信用危険を新たにてん補の対象にさしていただくということになったわけでございます。  それから、投資保険の実績でございますけれども、昭和六十一年の実績で申し上げますと、海外投資保険全体で引受保険金額が、ちょっとラウンドの数字ですが二千億円、残高ベースで約一兆円でございます。  それから、カバー率につきましては、数字のとり方があれなんでございますけれども、私どもの残高を我が国のこれまでの海外直投の累計を分母にして割合をはじいてみましたところ一〇%弱、九・六%という数字になっております。
  75. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 このカバー率は外国に比べて高いんじゃないでしょうか。
  76. 森清圀生

    説明員森清圀生君) まことにあれなんでございますけれども、今私が申し上げましたような定義での数字というものが、各国同じ定義をとって出している数字がございませんで、そういう意味 では、先生からお尋ねのございました各国との本当に今の私どもの九・六と比較し得る数字というのはないのでございますが、そういう意味で割り引いて御理解いただきたいと思いますが、アメリカの場合で一応私どもの方で試算した数字でございますが、今まで全体で残高ベースで約二%という数字が出ております。
  77. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 これは日本の場合にカバー率が大変高いというのが、これは桜井雅夫さん、これは専門家ですね、その他にも多く指摘されておるんですね。ということは大臣、もう既にカバー率が多いということは、今回のMIGAでまた屋上屋を重ねることになるんじゃないか。そういう意味では別に参加する必要がないんじゃないか、こういう意見が出てくるんですが、これはどうですか。
  78. 内海孚

    政府委員内海孚君) MIGAは、本来商業的危険を扱う各国の公的投資保証機関活動をいわば補完することによりまして、開発途上国への直接投資の促進を意図しているわけでございます。我が国がMIGAに参加することによりまして、先ほども申し上げましたような我が国の海外投資保険との間でも協調保険とか、あるいは再保険というような形で相互にリスクの軽減あるいは分散を図ることができるということが期待されておるわけでございまして、その意味我が国からの直接投資を促進する効果は大きいものと考えております。
  79. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 あと時間がないので最後にまとめて質問し、答弁をいただきますが、結局これはアメリカが主に主張し、アメリカかなり要請が強く、いわば今度そのリスクに他国も参加するという要素が大変に強いんだと思います。と同時に、今までアメリカのやり方に、要するに、直接投資を行いそしてその後介入するということがあって大変反発が強かったわけですね。それで、これはアメリカの対外援助法にもそれがあると思うんです。  それで質問は、これは外務省、シッケン・ルーバー修正というのが対外援助法にありますね。それから大蔵省に質問は、ゴンサレス修正、これは第二世銀法などあります、こういうものはあるのか。結局このことによって途上国に対して介入をしてきたわけですね。現にこれはエチオピアに対してコカ・コーラやペプシ・コーラなどこれ十数社を国有化したのを契機に介入をしておるわけですね。この点について御答弁いただきたいと思うんです。ゴンサレス修正というのは、これはつい先ほどアメリカから文書が届いたようですが、そのことも含めてひとつ御答弁いただきたいと思います。
  80. 高橋恒一

    説明員高橋恒一君) 私への御質問は、米国の対外援助法の第六百二十条にございますシッケン・ルーパー修正に関するものと思いますが、委員からの御指摘のとおり、米国の対外援助法の第六百二十条におきましては、米国国民の財産について国有化等を行い、かつ適切な補償を行う等の措置をとらなかった国に対し援助を停止すべきであるという旨規定しております。この条項に関しましては、私ども調べたところによりますと、二つほど従来適用された事例があるようでございまして、一九六〇年代の初めに現在のスリランカ、当時はセイロンと言っておりましたが、スリランカに対しまして、さらには一九七〇年代の末にはエチオピアに対しましてそれぞれ国家収用が行われました際に、十分な補償が行われなかったということを理由に発動された例があるようでございます。  しかしながら、いずれにつきましても、その後両国から適切な補償が行われたということがありまして、同条項の両国に対する発動は現在は解除されているというふうに承知しております。  こういうアメリカの対外援助法がどういうような目的でつくられ、またそれが実際に途上国との関係でいかなる意味を持ち、それを我々としてどういうように評価するのかということでございますけれども、これはアメリカの対外経済政策についての話でございますので、我が国として特にこれについてコメントするという立場にございませんので、事実関係だけ申し述べさせていただきます。
  81. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ちょっと待ってください。  ゴンサレスの答弁の前に大臣の答弁も求めますが、結局アメリカが実際やっていることは、純粋に経済的であるべきこの種の問題について大変に政治を持ち込んでおるんですね。そのことがこれからも局長から答弁があると思うんですが、それを踏まえてひとつ最後に、大臣に御答弁をいただきたいと思います。
  82. 内海孚

    政府委員内海孚君) お尋ねのいわゆるゴンサレス修正条項につきましてお答え申し上げます。  この条項は、米国の国際開発金融機関への加盟措置法におきまして、米国系企業を不当に国有化する等の措置をとった国に対する各機関からの融資等につきまして、米国大統領がそれら機関において、米国を代表する理事に対しまして反対投票を行うよう指示するということを定めたものというふうに承知しております。  具体的な例といたしましては、かつて米国理事が反対投票を行った例として、IDAからのエチオピアへの融資がございます。この場合にアメリカは、今申し上げましたような条項のスタンスをとりましたけれども、現にこのエチオピアへの融資につきましては、米国の反対にもかかわらず、融資は承認されております。また、我が国IDAのエチオピア融資については支持しております。  これが一つの加盟国の意向とは全く別に、国際機関が純粋に経済的判断に基づきまして行動をとることができることの証拠ではないかと思うわけでございます。
  83. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今、国際金融局長が申し上げましたように、やはり国際機関としては国際機関の立場からそういう決定ができるということがやはり国際機関としての私は意義ではないかと思います。
  84. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私は、IDA並びにMIGAに関する法律につきましては賛成であります。  そこでこの際、黒字還流計画について二、三お尋ねをしておきたいと思います。例の有名なマーシャルプランは、四年間で百三十三億ドルの資金の投入でございました。これに比べますと、三年間で三百億ドルというのは決して見劣りがするどころではございません。相当の大きさを持った計画だと思うんですが、この黒字還流計画について必ずしも政府のお考えになっている内容がはっきりしてないもんですから、そこでお尋ねをするんですが、ナショナル・プレス・クラブでの中曽根総理のあいさつの内容から見ますと、この黒字還流について国際開発金融機関を通じ、あるいは二国間で実施したいと思います、こう言われているんですが、この国際機関を通じてやるのか、二国間でやるのか、この辺は具体的にはどのような展望をお持ちでございますか。
  85. 内海孚

    政府委員内海孚君) マーシャルプランとの比較での御指摘ございました。マーシャルプランとの一番基本的な違いは、アメリカにおきまして、当時は世界の富がほとんどアメリカに集中しているということだけではありませんで、それまでの巨大な軍事費というものがいわば非常に減ることができ、国家財政的にも非常に余裕があったということが基本的にあると思います。その点、実は日本は、経常収支黒字かなり大きなものでございますが、これが政府部門というよりも民間部門に帰属しているという問題がございます。したがって、還流ということを考えますときに、やっぱり相当大きな比重を占めますものは、民間資金がリスクということをそう心配しないで出せるというようなスキームを、どうやればできるかというところにポイントがかなりあるということが違うと思います。  ただ私は、大事なことは、マーシャルプランとの関係でおっしゃいましたが、この金で開発途上国世界のどこの国からも買えるという点がまさに大事だと思いますので、その意味アメリカが、これがジャパンのマーシャルプランかという ふうに仮に受け取ったとすれば、その点に大変意味があるんだろうと思います。  その内容でございますが、追加的な二百億ドルは大体三つのカテゴリーに分かれるわけでございます。  第一点は、世界銀行とかアジア開銀あるいは米州開銀に対しまして、まず政府がある程度のグラントの拠出をいたします。これは一般会計からでございます。これによりまして、これらの機関加盟国である開発途上国に対しましていろいろな計画、プロジェクトを開発するための資金援助を行う。それによりまして、プロジェクトが出てきますと当然資金需要になってくるわけでございますが、その場合に当たりまして、これら開発金融機関が東京のマーケットにおきまして民間資金調達をするという場合に、我が国の方もそれに協力をしようというものでございまして、これをおおむね三年間八十億ドルというふうに見積もっております。  それから第二番目のカテゴリーは、輸出入銀行あるいは海外経済協力基金でございますが、これらが特に世界銀行等の開発金融機関とともにいわゆる協調融資をいたしまして、そのときにそういう形で協力をするということでございます。これをおおむね九十億ドルと見込んでおりますが、この中には輸出入銀行融資をする場合に、民間銀行もそれとともに協調融資に参加するというお金も入るわけでございます。それから同時に、その中にはある程度バイラテラルの形での円借款の供与というものも、従来と違ったアンタイドという形で乗るわけでございます。  それから、一番最後のカテゴリー輸出入銀行からのバンクローンでございまして、これは従来資源開発で、しかもそれが我が国に輸入されるというようなクライテリアでやっておりましたが、これをもっとジェネラスに認めていったらいいではないかというもので、これが大体三十億ドルというふうに見込んでおるわけでございます。
  86. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 マーシャルプランと比べてのお答えがございましたけれども、マーシャルプランの当時と一番違っておりますのは、当時ヨーロッパは敗戦後でありましたから資金は本当になかったわけですね。ところが、今開発途上諸国はどうかといいますと、もちろん資金はありませんけれども、それだけではなくて、技術がない、製品のマーケットがない、インフラがない、こういう状態だろうと私は思うんですね。したがって、相当な規模資金還流を計画する場合に、それが生かして使われるためには、技術移転をどうやって図るか、インフラの整備をどうやって図るかなどなどの相当大がかりな夢のあるプロジェクトでも立てないことには、これは素直に流れていかないのではないかという気がしますし、もう片一方では、黒字還流といいますけれども、もっと輸入して、物を買ってくれたら言うことはないんですね、開発途上国としてみれば。黒字がそんなに出なければ一番いいんであって、出ることを前提にして還流というのは、どだいワンテンポ語が違ってくるのではないかということにもなりかねないわけですね。そうすると、日本の国内政策と非常にかかわりが深い中でこの黒字還流計画は進めていかざるを得ない。そうなりますと、国際機関を通してやった方がいろんな揣摩憶測の種になりませんのでいいとは思うんですが、むしろバイでやることを、日本の国内政策の裏づけを持ってやる方が、この際はむしろふさわしいのではないか、そんな気がするんですが、いかがですか。
  87. 内海孚

    政府委員内海孚君) 御指摘のような二国間の援助のメリットというのは確かにあると思います。またこれは、当然ある程度の水準を維持しなければならないということについて、私どもも全く違う意見を持ったものではございません。  他方、国際的な開発機関を使いますことのメリットといたしましては、先ほど委員御自身も御指摘がありましたように、いわば政治的にニュートラルな立場から、政治状況等に支配されないで援助ができるということ、それからそういった形をとります場合には、これは援助資金がすべてアンタイドであるということはだれの目から見ても明らかであって、それだけまた効率的に使えるということでございます。  また、先ほど御指摘の技術等の移転とか、あるいはその国のマーケット自体の改善のようなことは、まさに先ほども申し上げましたように、第二のカテゴリーで意図しております、いわゆる協調融資のようなものが世界銀行等の、いわゆる構造改善融資というような最近始まりました新しい、いわば委員御自身の御表現ですと、そういった大きな夢のあるような壮大な計画を、単に一つ一つのプロジェクトということでなくて、構造改善ということでやっていくというような形の新しい様式のものが始まろうとしておりまして、それに協力していくということ、しかもその場合には技術が単に日本からだけではなくて、世界で最もいいものが最もリーズナブルな価格で利用できるということ、そういった意味で私は、新しい資金流れとしては、できるだけ国際機関を使うことのメリットというのはかなり大きいのではないかなというふうに思っておるわけでございます。
  88. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 結構です。
  89. 井上裕

    委員長井上裕君) 他に御発言もなければ、両案の質疑は終局したものと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  90. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私は、日本共産党を代表して、多数国間投資保証機関への加盟に伴う措置に関する法律案及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。  まず、多数国間投資保証機関への加盟に伴う措置に関する法律案についてであります。  第一に、本法案によって設立されるMIGAの議長は世銀総裁が兼任するなど、その機構、運営は世銀と一体のものとなっており、したがってアメリカが事実上の支配権を持つ国際機関として設立されるのであります。しかも、アメリカがMIGA設立を推進する背景には、アメリカ系多国籍企業の直接投資の進出先の途上国における国有化等の危険負担を分散し、他国に肩がわりさせようとする意図があるのであります。  第二は、同機関は、国有化などの事故発生の場合、投資企業にかわって代位求償権を行使し、さらに紛争が起こった場合には、外部の第三者による調停、仲裁に解決をゆだねることになっておりますが、これは国有化の当然の権利を認め、かつ紛争は当該国の国内法規に基づいて解決すべきことをうたった国連憲章にも反し、発展途上国の経済主権を侵害する危険を持っているのであります。  第三に、この機関我が国が参加することは、既にある投資保険制度に屋上屋を重ねるものであり、我が国企業の海外進出に拍車をかけ、国内産業の空洞化を一層促進することとなるからであります。  次に、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部改正案についてであります。  第二世銀もMIGA同様世銀グループの国際機関であり、その機構、運営にはアメリカ援助政策が強く反映されており、しばしばアメリカの途上国に対する内政干渉の道具に使われているのであります。  そのことは、私が先ほど当委員会指摘したように、アメリカの国内法である第二世銀法には、大統領がアメリカ人理事を通じて国有化した国に対する援助に対して拒否権を行使させるという、いわゆるゴンサレス修正があり、実際にこれまでたびたびこの権限が行使されてきたことからも明らかであります。  このような基本的性格を持つ第二世銀我が国出資をふやしていくことは、対等、平等、内政不干渉、途上国の真の経済発展への貢献という我が国の目指すべき援助理念とは相入れないものであり、反対であります。
  91. 井上裕

    委員長井上裕君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めます。  それでは、これより順次両案の採決に入ります。  まず、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  92. 井上裕

    委員長井上裕君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、多数国間投資保証機関への加盟に伴う措置に関する法律案の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  93. 井上裕

    委員長井上裕君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 井上裕

    委員長井上裕君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二分散会