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国務大臣(
宮澤喜一君) 御指摘のように、
我が国の
経済構造が一九八〇年ごろから、当時の非常なドル高を背景にいたしまして、過度に輸出依存体質に変わってきたという事実がございまして、よく申し上げることでございますけれ
ども、一九八〇年の貿易黒字は六十億ドルでございますけれ
ども、一九八五年には六百億ドルになっております。この過度の輸出依存体質を改めませんと世界
各国に対して貿易摩擦という脅威を与える、なかなかその批判にこたえられないというふうに考えておりまして、また
他方で、
我が国自身の
社会資本というものは
経済大国と言われるにしては極めていまだに貧弱なものでございますから、やはり過度に国外へ出ていった資源、資金を国内で
活用するということは、どうしても
我が国自身のためにも、また国際的な
我が国が受けております批判から考えましても必要なことだというふうに存じます。ただ、その際、民間の設備投資あるいは在庫投資等が高ければそれなりに資源、資金が国内に向くわけでございますけれ
ども、いろいろな
事情からそれは殊に
製造業においては極めて低いという
状況でございます。いろいろ考えますと、やはり
財政がかなりの役割を果たさなければならないというのが現状ではないかというのが私の基本的な認識でございます。
ただ、先ほど
政府委員が申し上げましたように、それなら
我が国の
財政はこの何年間かによくなったかと申しますと、必ずしもそうとは申せない。
国債依存度は確かにかなり下がってまいりましたけれ
ども、依然として
利払いが二割を占めておるということは、将来、殊に老齢化していく
我が国の
社会を考えますと、
財政が弾力的にそういう
状況に対応し得るには、いかにも弾力性を欠いておるという問題は依然として変わっておりませんので、そういう
状況の中で
財政がぎりぎりいっぱい
努力をして、先ほど申しましたような内外の要請にこたえてまいらなければならないという、いわばやや背反いたします二つの問題を持っておるということになろうと思います。
そうではございますけれ
ども、しかし殊に最近になりまして、私は昨年の暮れにも大蔵省の諸君と話し合ったことでございますが、五年間ずっと
一般歳出削減を続けてまいりました、それはそれなりの
制度の改変にも通じましたし、また物の
考え方についても非常に貴重な成果を残してきたと考えますが、これをこのまま
昭和六十三年度に向けてやっていくということにはそろそろ無理が出てきた。殊に投資的
経費について、やはり内外の
情勢から考えれば、新しい発想をしなければならないのではないかということで事務当局の諸君も大変によく考えてくれておりまして、何か六十三年度には従来と少し変わったやはり行き方をしてみたい。ただ、それにいたしましても
財政が決してよくなっておるわけではございませんので、投資的
経費に重点を置くとすれば、その他の
経費についてはやはり厳しい態度をもって臨まざるを得ないというのは、どうしてもそれはやむを得ないことでございます。
そういう
状況の中で、この六十二年度
予算を
国会で
成立させていただきましたら、その後の処置につきまして、六十三年度の
予算編成方針も含めまして早急に具体化をいたしたいと考えておるところでございます。