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国務大臣(
宮澤喜一君) このたびの声明にもいわゆる
市場のファンダメンタルズということが何度か書かれておるわけでございますが、これは私が昨年の九月ごろからベーカー長官と話しておりました
考え方の基本でございます。すなわち、プラザ以降人為的に介入をいたしましてドルを安くしてまいったわけでございますから、これは大変に
市場的でない人為的な行為であったわけでございます。それが昨年の少なくとも九月には、もう今の為替
関係、円・ドル
関係はファンダメンタルズを
反映するに至った、したがってこれから先は
市場に任せるべきものであるというのが昨年の九月、十月の末の共同声明に出ております
考え方でございます。このたびの二月のせんだっての声明も同じ
考え方に沿いまして、プラザ以来やってきました人為的なこの介入というものは目的を達した、そうして今の
状況はファンダメンタルズの自然な
関係になっておるのであるから、これから先はいわゆるプラザ以来やってきたようなことはもうやらない、いわば
市場に任せてこれでいいのであるし、さらにドルが急落するということは我々が迷惑するのみならず、アメリカにとっても不利益である、こういうのが認識でございます。
したがいまして今ここであらわれましたことは、とにかく今の
市場が今のファンダメンタルズを
反映している、こういう認識だということになろうかと思います。それが大きく外れましたときにはみんなで緊密に協力をしようということでございます。
そこで、今の和田
委員の御質問は、それならば、今の
市場における円というものが、
宮澤は日本経済にとって非常にこれで満足なものであると考えておるかというお尋ねでございまして、私は今の円というものは日本の経済にとっては非常に厳しいものであると考えておりますことに変わりはないわけでございます。そうだといたしますと、このたび約束いたしましたことは固定を約束したわけではございません。この際における安定を約束しておるわけでございますから、いわば各国のファンダメンタルズの間に変化が起こって、そしてそれが
市場に
反映されるということは、これは基本的な物の
考え方としてそうあるべきことでございます。
一つ申しますならば、ああいう政策努力を我が国がやっていく、あるいは政策努力をアメリカがやっていく、殊にアメリカの場合に、プラザ以来もう一年半に近いわけでございますから、これがアメリカの貿易収支に全く
反映しないということであれば、それはむしろ普通のことでない。やはりそれはアメリカの貿易収支に少しずつでも時間がかかってもいい影響を与えていくと考えることが私は自然であろうと思うにつけまして、それはアメリカ経済のファンダメンタルズをそれだけよくするはずである、その限りにおいて円・ドルの
関係は今おっしゃいましたような
方向に動いていくはずである、ただしそれは、我々が人為的にやること、人為的という意味は相場に直接
関係、干渉してやることではございませんで、ファンダメンタルズが自然にそうなって、それが
市場にあらわれていくと、こういうふうに考えて私は昨年以来行動いたしておるわけでございます。