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1987-07-02 第108回国会 参議院 決算委員会 閉会後第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年七月二日(木曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         菅野 久光君     理 事                 石井 道子君                 大島 友治君                 松尾 官平君                 梶原 敬義君                 田代富士男君     委 員                 井上  孝君                 板垣  正君                 河本嘉久蔵君                 沓掛 哲男君                 杉山 令肇君                 寺内 弘子君                 中曽根弘文君                 永野 茂門君                 福田 幸弘君                 真鍋 賢二君                 宮崎 秀樹君                 守住 有信君                 久保田真苗君                 佐藤 三吾君                 及川 順郎君                 片上 公人君                 刈田 貞子君                 佐藤 昭夫君                 橋本  敦君                 関  嘉彦君                 抜山 映子君    国務大臣        法 務 大 臣  遠藤  要君        外 務 大 臣  倉成  正君        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君        文 部 大 臣  塩川正十郎君        厚 生 大 臣  斎藤 十朗君        運 輸 大 臣  橋本龍太郎君        労 働 大 臣  平井 卓志君        建 設 大 臣  天野 光晴君        自 治 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    葉梨 信行君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)        (国土庁長官)  綿貫 民輔君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  栗原 祐幸君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       近藤 鉄雄君    事務局側        常任委員会専門        員        小島 和夫君    説明員        警察庁長官官房        審議官      森広 英一君        警察庁長官官房        審議官      石瀬  博君        警察庁刑事局保        安部長      漆間 英治君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁教育訓練        局長       長谷川 宏君        国土庁長官官房        水資源部長    志水 茂明君        国土庁土地局長  片桐 久雄君        法務省刑事局長  岡村 泰孝君        法務省入国管理        局長       小林 俊二君        外務大臣官房領        事移住部長    妹尾 正毅君        外務省アジア局        長        藤田 公郎君        大蔵大臣官房審        議官       尾崎  護君        大蔵省理財局た        ばこ塩事業審議        官        宮島 壯太君        大蔵省銀行局長  平澤 貞昭君        大蔵省国際金融        局長       内海  孚君        国税庁直税部長  伊藤 博行君        文部省初等中等        教育局長     西崎 清久君        文部省学術国際        局長       植木  浩君        厚生省生活衛生        局長       北川 定謙君        厚生省社会局長  小林 功典君        厚生省社会局生        活課長      矢野 朝水君        農林水産省農蚕        園芸局次長    兵藤 宗郎君        運輸省航空局長  山田 隆英君        運輸省航空局技        術部長      中村 資朗君        運輸省航空事故        調査委員会委員        長        武田  峻君        運輸省航空事故        調査委員会事務        局長       藤冨 久司君        郵政省放送行政        局長       成川 富彦君        建設省建設経済        局長       牧野  徹君        建設省河川局長  陣内 孝雄君        会計検査院事務        総局第一局長   疋田 周朗君    参考人        住宅都市整備        公団総裁     丸山 良仁君        住宅都市整備        公団理事     倉茂 周明君        日本銀行理事   青木  昭君        日本放送協会専        務理事      林  乙也君        日本たばこ産業        株式会社常務取        締役       勝川 欣哉君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件昭和五十九年度一般会計歳入歳出決算昭和五  十九年度特別会計歳入歳出決算昭和五十九年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十九  年度政府関係機関決算書(第百四回国会内閣提  出)(継続案件) ○昭和五十九年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第百四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十九年度国有財産無償貸付状況計算書  (第百四回国会内閣提出)(継続案件)     ―――――――――――――
  2. 菅野久光

    委員長菅野久光君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  昭和五十九年度決算外二件を議題といたします。  本日は、総括的質疑第一回を行いますが、質疑に先立ち、まず昭和五十八年度決算における警告決議に対し、その後内閣のとった措置につきまして、大蔵大臣から説明を聴取いたします。宮澤大蔵大臣
  3. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昭和五十八年度決算に関する参議院審議議決について講じました措置概要を申し上げます。  政府は、従来から決算に関する国会審議議決会計検査院指摘等にかんがみ、国費の効率的使用事務事業の運営の適正化不当経理の発生の防止等に特に留意してまいったところであります。  昭和五十八年度決算に関する参議院審議議決について、各省各庁において講じております措置を取りまとめ、その概要を御説明申し上げます。 (1) 公務員等綱紀粛正につきましては、行政に対する国民信頼を維持し、行政の公正な執行確保するため、これらの職員に対し機会あるごとに指導を行うとともに、万一違法・不当な行為が発生した場合には厳正な措置を講じてきたところであります。   今後とも、あらゆる機会をとらえ、公務員等綱紀の厳正な保持に努めてまいる所存であります。 (2) 政府開発援助につきましては、国民の貴重な税金等によって賄われているものであり、適正かつ効果的・効率的に行われるべきことは論をまたず、そのため政府としては、援助実施手続の各段階において従来以上にきめ細かい配慮をするとの考え方に基づき、事前調査拡充、円滑な案件実施評価拡充質的改善等に努めているところであります。   今後とも、我が国援助につき広く国民理解を得るためにも、適正かつ効果的・効率的援助実施に一層努め、政府及び各実施機関を通じ、その実施体制強化業務効率化等、改善すべき点は改善するとの姿勢で努力を続けてまいる所存であります。(3) 精神病院における入院患者人権確保につきましては、厚生省において、精神障害者人権確保観点から、各都道府県を通じ精神病院に対し、指導監督に努めているところであり、本年一月の全国衛生主管部局長会議等全国レベルでの会議の場において、昭和五十九年六月二十二日付通知の「精神病院に対する指導監督等強化徹底について」に基づき、周知徹底を図ってきているところであります。   また、精神衛生法につきましては、精神障害者人権確保社会復帰促進観点に立って、同意入院制度見直しを含む改正法案を提出し、御審議をお願いしているところであります。 (4) 国営かんがい排水事業につきましては、御指摘の趣旨も踏まえ、その促進を図るため、事業の財源に財政投融資資金からの借入金を充てる特別会計制度の活用に毎年度努めてまいりました。   特に、昭和六十一年度におきましては、従来一般会計によって借入金を充てることなく事業を行っていた国営地区についてもすべて特別会計制度に組み入れ、事業費のうち都道府県負担金相当額借入金を活用することとし、事業の一層の促進を図ったところであります。   また、近年厳しい財政事情の中ではありますが、国営かんがい排水事業に重点的に予算配分を行っております。   今後とも、国営かんがい排水事業を一層促進し、その早期完了に努めてまいる所存であります。 (5) 設備共同廃棄事業につきましては、昭和六十一年五月三十日の経済対策閣僚会議において現行制度の抜本的な見直しを行い、現行設備共同廃棄事業を廃止することとし、改めて厳格な要件及び監視体制強化のもとに、特定産地等構造調整促進するための新たな設備共同廃棄事業実施する旨決定したところであります。これを受けて従来の制度を廃止し、現在、厳格な要件と厳格な監視体制等のもとで産地組合事業主体とする新しい制度として厳正に実施しているところであります。   また、綱紀粛正につきましては、行政に対する国民信頼を維持するため、その厳正な保持に努めるよう職員指導するとともに、厳正な措置を講じたところであります。 (6) 官庁営繕工事適正化につきましては、工事費積算誤りに関し、再発の防止に万全を期するよう一層業務の適正な執行に努めるべく、営繕担当部局に対して通達を発し、その周知徹底を図るとともに、積算業務見直しを行い、チェックシステムの充実を図る等の措置を講じたところであります。   今後とも、積算業務質的向上を図り、官庁営繕工事の適正な執行に努めてまいる所存であります。     ―――――――――――――
  4. 菅野久光

    委員長菅野久光君) それでは、これより総括質疑に入ります。  質疑のある方は、順次御発言願います。
  5. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 外務大臣御苦労さまでした。  中日閣僚会議大変中日関係に影響するんじゃないかと危惧されておったんですが、無事済んだかどうかは問題としても、あれだけの非難応酬をやっておった経緯が一応鮮明になって、しかも中国の真意が私は出たんじゃないかと思いまして、その意味では将来のためにもよかったんじゃないかと思います。  しかし、それにしても外交の玄人である外務省事務次官が、雲の上という表現が、日本では雲上人ですわね、しかし向こうでは恍惚の人と、こうなるという、ここら辺は私は素人でわかりませんけれども、プロの皆さんはそこら辺はやっぱり知ってしかるべきじゃないかと思う。私はそういう意味で、傲慢と言われても、これは反論の余地がなかったんじゃないかと思うんです。とりわけアジア全体で見て、こういった面では私はやっぱり配慮していかなきゃならぬと思いますし、宿題というか、問題で光華寮の問題が残されておりますが、三権分立て非常に処理は難しい点もございますけれども、しかし、せっかく日中閣僚会議一つの方向が出されたわけですから、ぜひひとつそこら辺は対応して解決に努力してもらいたいと思うんですが、どのように御認識しているのか、今後の対応を含めて言いただきたいと思います。
  6. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 今回の日中定期閣僚会議大変中国側の温かい配慮もございまして、各閣僚の間で日中双方のいろいろな問題につきまして相当突っ込んだ協力関係、その他懇談の機会、また意見交換が行われた次第でございまして、非常に率直な意見交換が行われたという意味におきまして、相互理解が深まったと存じ上げておる次第でございまして、ちょうどくしくも国交正常化十五周年に当たる年でございまして、その意味では私は非常に有意義であったと、また、鄧小平主任もこの会議は有意義であったという評価をしていただいたと、御発言をちょうだいをいたした次第でございます。  御案内のとおり、先ほどお話の、いわゆる雲の上発言という問題でございますが、本件につきましては、先月、柳谷前外務事務次官より記者会見の場において、「先に、いわゆる外務省首脳発言として報道されたもののうち、鄧小平主任に関する部分において、礼を失する表現があり、これが中国側不快感を与えたことは遺憾であった。」と。また中曽根総理は、「日本政府日中国交正常化に当たり、中国政府との間で確認した諸原則は不変不動である。日本国家意思は「一つ中国」であり「二つ中国」などの立場をとるものではないことを強調したい。」旨、中国側に再確認するように指示された次第でございまして、以上のとおりでございまして、今回の日中閣僚会議の中におきましても、呉学謙外相等と私との間におきまして、光華寮問題等について率直な意見交換をいたしました。もちろん意見平行線をたどる部面もございましたけれども、それなりに中国側立場も十分承りましたし、私も日本外務大臣として日本立場を十分御説明申し上げたということでございます。
  7. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 閣僚会議では、宮澤さんは大変特別扱いで優遇をされたという報道がなされておるんですが、これはやっぱり次期総理候補としての期待が大きかったんじゃないかと思うんです。  そこで、これは今外務大臣からお答えもいただいたんですが、私は先日官房長官とこの問題について議論をしたときに申し上げたんですが、鄧小平さんの発言の中にある意味というもの、それは今度の場合も表現されていますが、この一世紀に起きたことはまだ人民は忘れていないというこの言葉、それから、そこに教科書問題、靖国問題、防衛費一%突破問題、光華寮問題、こう次々に起こってきたのは、私の方じゃなくてむしろあなたの方じゃないですか、こういう説、これは私は、このうち官房長官とも議論したんですが、やはり今第一線で、中国にしろ東南アジア諸国にしろ頑張っておる人たちというのは、少年時代に目の前で日本の軍隊の略奪やいろんなことを見た人がたくさんいらっしゃる、そういう意味では、私は戦争の何というんですか、悲惨さというものをじかに見ておる人たち、そういったものを念頭に置いての外交でないといけないんじゃないか、日本のありようでなきゃいけないんじゃないか、こういうことを議論したんですが、宮澤さん、そういう意味で、今度の閣僚会議に出席なさっていただいて、どのように心がけなければいけないかなといろいろ感じなさったことがあるんじゃないかと思うんですが、そこら辺いかがでしょう。
  8. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 具体的な光華寮の問題につきましては、ただいま外務大臣お答えになられたとおりでございますが、日中間関係を今後考えていきます上でもし問題があるとすれば、それは二つのいずれかのことに関してであろうと思います。  一つは、今ちょうど御指摘になりました日中間の過去の歴史に関する問題であると思います。それからもう一つは、いわゆる一つ中国ということに関しての問題であろうと思われまして、この両方の問題につきまして誤解が生じませんように、殊に戒心をしていく必要があると考えております。
  9. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そこで官房長官内閣として、今焦点になっておるこの光華寮の問題ですね、中曽根さんも困ったと、こういうことを新聞で見ましたが、困ったではこれはなかなか済まない問題で、一つ中国という問題が絡んで問われている問題ですから、解決していかなきゃならぬと思うんですが、内閣としてどのよう対応なさっていくのか、その点を言いただきたいと思います。
  10. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 総理お話ように、この問題の処理政府としても苦慮しておることは事実でございます。しかし、こういった問題は、やはり我が国としては相手方の言い分も十分配慮はしなければなりませんけれども、やはりこういった問題の処理国際法の上から見ても、そしてまた国内法の上から見てもきちんとした処理はしなければならない。ならば、先ほど外務大臣お答えをいたしましたように、やはりこの種の非外交領事財産というものが現在国際法上その帰属については必ずしも定説はない。定説がない以上は、やはりそれぞれの国内法に従って最終的には司法判断にまつべき筋合いのものであろう、こう思わざるを得ません。  そこで、私どもとしては、やはり現在、この案件最高裁判所に係属中でございますから、その司法判断をまつというのが基本的な考え方でございますが、その間、やはり日中間でこの問題をめぐっていろんな感情のきしみ等が生まれてくるということも予測しておかなければなりませんが、そういう際にはやはり相手方日本のこの建前、そしてまた誠意というものを十分披瀝しながら理解を求めていくというのが一番やるべき日本側としての対応ではないのか、三権分立原則を曲げるというわけにはまいらない、かように考えておるわけでございます。
  11. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 外務大臣、結構ですよ、結構です。  確かに今長官の言われるように、日本の場合の三権分立ということは侵すことのできない一つの原理ですから、わからないではございませんけれども、しかし、中国の言う一つ中国という、そういう貫いてほしいという、それはやっぱり私も当然理解していかなきゃならぬと思うんですね。言いかえれば、台湾問題の処理というものがこういう格好で出てきたんじゃないかというような感じがしますので、ひとつ長官おっしゃったように、基本は何かというと、相互誠意に基づく信頼関係をきちんと踏まえておくことが大事だと思うので、そこら辺はひとつぜひ大事にしながら対応していただきたいということだけきょうは言わしていただきたいと思います。  そこできょうは、外務大臣もいらっしゃるんですが、率直に言って時間がございませんから、官房長官だけに一つだけお聞きしておきたいと思うんですが、これは質問通告をやってないものですから大変申しわけないと思うんですがね、昨日、韓国の全斗換大統領が民正党の盧泰愚代表委員の八項目の提案を全面的に受け入れる、こういう声明が出されました。これは、私は隣国の民主化のために大変喜ばしいことだと思うんですが、そこでお伺いしたいのは、あの八項目の中にございました金大中先生に対する復権、赦免ということも含まれておるわけですね。それで既にその手続がとられておるということが報道されておりますが、日本政府としてこの問題は、私はやっぱり、そうなりますればきちんと処理しなきゃならぬ問題があるんじゃないかと思う。それは何かといいますと、いわゆる日本で起こった事件で、九段下のグランドパレスで起こった事件というのは、これは何としても政府としてきちんと整理をしていかなきゃならぬと私は思うんですが、そのために同氏の来日を実現して、そして原状回復措置をとるべきだと思うんですけれども、この辺について内閣としてどういう認識なりお考えなのか、これをお伺いしたいのが一つ。  もう一つは、やっぱり日本政府として、この時点で再検討しなきゃならぬのは、私は、対韓政策の今までのありようを検討していただかなきゃいけぬのじゃないかと思う。いわゆる北朝鮮を含んでの朝鮮半島全体の抜本的な転換というのか、対応というんですか、こういったものについてどのようにひとつ内閣として認識をし対応ようとしておるのか、この点、大変質問通告してなくて申しわけないんですけれども内閣として一言だけ見解を承っておきたいと思うのです。
  12. 藤田公郎

    説明員藤田公郎君) 後半の政策に関します部分官房長官からお答えがあると存じますが、前半の部分につきましては、これまでも委員御承知のとおり、国会の場で本件議論になったことがございますけれども基本的には金大中氏に対します刑の宣告、その後二十年ということまでに減刑になりましたけれども、これは、我が国に関連しております同氏の活動以後のことが原因になって行われたことでございますので、確かに、いわゆる金大中事件に関連した部分も引用はされていることは事実でございますけれども基本的にはその後の事態に関連したものであるというのが私どもが御答弁を申し上げているラインであるというふうに考えます。  以後の政策的な問題については官房長官からの御答弁があると思います。
  13. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 藤田局長せっかく答弁いただいたんですけれども雲の上発言ではございませんけれども、こういう問題はやはり私は内閣としてどうするかというまさに重要な問題ですから、これはひとつ長官局長答弁のとおりですとか、そういうちゃちな逃げ方をせずにきちっとした答弁をいただきたいと思うのです。
  14. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) これは突然の御質問で、事は外交上の重要な問題でありますし、また政府基本にかかわる重大課題でもございますので、どこまでお答えを今直ちにするのがいいのか多少の戸惑いも感ぜざるを得ませんが、私はやはり韓半島全体、いわゆる朝鮮半島に対する日本基本方針というものは、過去の歴史日本としては忘れてはならない、そういった基本の謙虚な立場一つはとらなきゃならない、同時にまた、韓半島全体の平和ということが日本の平和にも重大なる影響を持つ問題である、こういったような私は二つぐらいのことを基本に考えながら対韓政策というものは日本として考える必要があるだろうと、こう思います。  御質問の中の金大中さんの問題も、これ極めて遺憾な事件であったことは私は間違いがないと思いますけれども、これはやはり一応日韓の間の問題としては処理済みの問題である、かように私は理解をいたしておるわけでございます。  なおまた、南北問題等は、これはかねがね日本外交方針としては、南北両当事者間で平和的な話し合いのもとに朝鮮半島全体が統一することを印本としては望んでおるんだと、こういった基本的な対応で今日に至っておるので、これは私は今後ともそういう方針でいくべき筋合いであろうと。  なおまた、御質問の中に、今回の朝鮮半島事態の中の一項目といったようなことが御質問出発点にございますが、今回の韓国の問題は、これは韓国の内政上の問題でございますので、政府としては、それに対してはかれこれ発言をすべきことは差し控えるべきであろうと、かように考えているわけでございます。
  15. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 もうこれ以上この問題で深入りはしませんけれども、しかし金大中さんが、さっきおっしゃったよう日本でああいう無法な取り扱いをなされて、政治的には決着つきましたけれども刑事事件としては未解決のままですよ、引きずっておるわけですね。私はやっぱりその辺の原状回復というのは、金大中さんが一つには韓国の重要な地位におられる方でもありますし、当然することが私は日本韓国との今後の関係にも影響するんじゃないかと思うんです、これはひとつぜひそこら辺も検討していただきたいということを申し添えておきます。  そこで時間がございませんから、早速住宅都市整備公団の問題に入りたいと思いますが、あさってから募集をするコラム南青山ですか、これが二LDKで家賃が月に二十五万円、また多摩に建設中の四LDKのマンションを来年三月七千万円で売り出すと、これは事実だと思うんですが、こうなると、もうまるで民間の不動産会社の広告を見ておるような感じがしてならぬのですけれどもね。一体、この安い住宅を庶民に供給するという公団の機能からいっていかがなものかと思うんですが、どうでしょう。
  16. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) 今お話のございましたように、当公団の使命が中堅勤労者のために、良質でできるだけ安い家賃の住宅を供給するということが目的であることは間違いないところと私どもも考えております。したがいまして、例えば本年度供給いたします賃貸住宅、大体一万一千百戸を予定いたしておりますが、それの平均家賃は月に七万七千百円になる予定でございます。この金額は中堅勤労者の所得の大体一六ないし一七%に当たるものでございまして、これは勤労者の方々の家賃支払い能力の範囲内に入っていると私は考えております。  また多摩の七千万円というお話でございますが、これも来年度供給を予定しております分譲住宅六千六百戸の平均価格は大体三千百三十万円になる予定でございます。  ところで南青山の問題でございますが、これは島根県の会館を建てかえるに際しまして、当公団の住宅もそこに五十四戸入れていただく、こういうことで事業を進めたわけでございますが、今おっしゃられましたように、平均家賃が十九万円、最高家賃が二十四万四千五百円となることでございます。これは地価の高騰等で私はやむを得ない措置ではあると思いますが、まことに残念なことだと思っております。しかしながら、このよう住宅を当公団でやるべきかやるべからざるか、こういうことにつきましては、御承知のよう我が国住宅事情が戸数的には充足されまして、量の拡大の時代から質の拡充の時代に移っているわけでございます。その一つといたしまして、都心部における再開発等を行って、良質な職住近接の住宅を供給することも当公団の大きな任務だと私は考えております。こういうよう観点から今回南青山でこのようなことをやったわけでございますし、また分譲住宅の多摩の七千万円の件でございますが、これはこれからの高齢化社会を考える場合には、やはり三世代住宅、老人同居住宅等の大型住宅の必要もあるわけでございます。したがいまして、先ほど申しましたように平均は三千万円でございますが、例外的に五十坪ぐらいの家になりますと、やはり多摩でも七千万円ぐらいになる。しかし、この戸数はそれほど多いわけではございません。したがいまして、このよう考え方から政策を進めているわけでございますが、いずれにいたしましてもあらゆる工夫を凝らしまして、なるべく安い家賃で、あるいは安い価格で分譲できるように今後とも努めてまいりたいと考えているわけでございます。
  17. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 確かに便利のよさ、それから広さ、おたくの方では二十一世紀を展望してと、こういうことを言われておることは事実なんですが、しかし二十五万の家賃という、一体そういうところに住む人の月収というのはどの程度を考えているのか。七千万を超えるあれを購入するという都民というのは一体どういう庶民なのか。ちょっと想像を超えるんですよね。私はやっぱり住宅都市整備公団の果たすべき役割から言うと、どうも納得できない。どういう対象を置いておるんですか。庶民ですか。
  18. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) まず、例えば南青山のお入りになる方の問題でございますが、これは昨年の八月に本郷の真砂町で百三十戸の賃貸住宅を供給した例がございます。これが今まで供給したものの一番家賃の高いものでございますが、最高十六万円というものでございます。この住宅にお入りになっている方の状況を見ますと、夫婦共稼ぎの方が五〇%ぐらいお入りになっておられます。また、月給のほかに一定の貯蓄のおありの方がお入りになっておられますし、あるいは家賃負担が高くなっても都心の便利なところに住みたいという方がお入りになっているわけでございまして、所得分位で申しますと、大体四分位の上の方の方、八百万円程度の方がお入りになっているわけでございまして、今回も大体そのくらいの方がお入りになるんではないかと考えております。  また、七千万円の件でございますが、最近は新たに家を求めるというほかに買いかえの事例が出ているわけでございまして、確かにおっしゃいますように、七千万円の家を勤労者が何の資産もなしに買うということは不可能であると思います。ただ、今まで持っている家を四千万円ぐらいでお売りになれば、あとの三千万円で新しい家が買える、このような方々がこれに応募してまいっておるような状況でございます。
  19. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 だから私は言っておるわけですがね、そういう層にはちゃんとした不動産会社がいろいろあるわけですよね。そこで十分用足しできるんですよ。私は、都市整備公団というものはそうじゃなくて、もっとぐっと届かないところの層、不動産会社の皆さんというのがもう見向きもしないところに、やっぱり政府の責任として住居をひとつ措置していくというのが僕は基本的なあり方じゃないかと思うので、さっきから聞いておるわけです。これはひとつ公団総裁意見を聞いてみて、なるほどな、こんな感覚ではちょっと困ったなという感じがしておるんですがね。  建設大臣、これはやっぱり土地の異常な値上がりでこういうことになったのかわかりませんけれども、これは私は重大な意味を持っておると思うんです。やっぱりこういうときにこそ安くて便利で広くて、そして庶民住宅を提供していくという、そういう任務というか責務というものが私は政府や自治体、公団にあるんじゃないかと思うんですが、この点、大臣いかがです。
  20. 天野光晴

    国務大臣(天野光晴君) お話ごもっともだと思いますが、最近の土地に関係する住宅等の問題は、普通の常識では判断しかねる状態であると思っております。  実は、既に御案内だと思いますが、大川端で住宅開発をやっております。これは三井不動産がやったんでありますが、私のところへある知人が来まして、申し込もうと思うんだが、何百倍だかわからないので、とりようがないからひとつあなたお願いできないかと言うものですから、私、一週間ばかり前に三井不動産の江戸会長、今度相談役になりましたが、まだ会長のうちに、ちょうど一週間前ですが、電話でお願いをしてみました。そうしたら、分譲する予定でやったんですけれども、分譲しかねますと、こういう話でした。どうしたんだいと言ったら、何百倍は結構だ、その抽せんした者が入るんならそれで結構だと。ところが不動産屋のブローカー的な者が数多くおりまして、大学等の学生を何百人も動員して申し込んでいるので、これはとてもじゃないが何とも困りましたと。分譲するかしないか、まだ決定するわけにはまいりませんという話がありました。これは中曽根内閣の土地政策の失敗だと、私はそう思っておるんです。  そういう意味で、実は先日の閣議でこの問題を私は発言しまして、対策を講じなきゃいけないんじゃないかという話をしました。そして、時価相場というものを拾ってきました、ここにデータがありますが。それによりますと、三井不動産では六千万で三DK、四DKのやつを販売する予定だったんですが、その周辺のマンションの予定価格は一億二千万から二億五千万だというデータが今ここにありますが、出てきているわけでございます。そうですから、まず地価の根本的な問題を解決するということが重要でありますが、公団自体も地価の高いところをいろんな関係で引き受けざるを得なくなった。それをつくってみたならば、最近、今総裁の言うような状態になったんだと私は理解しておりますが、公団の本来の使命からいっては、やっぱり避けて通ることもどうかと思うんですが、十二分検討して、公団の本来の趣旨に沿うようにやっぱり努力すべきだと考えております。十二分検討するようにいたします。
  21. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 大臣、思い切って、ずばっと本音を言いましたが、確かに中曽根内閣の土地政策、失敗ですよ、これは。ここら辺については官房長官に聞こうと思っておったんですけれども、先に言っちゃったからね。  ただしかし、官房長官、こういう建設大臣が認めておるように、地価対策がもう本当にこれは東京都中心に大変ですね。あなた、新聞で見ると、これ何とかしなきゃならぬということで、行革審の方に出してもらいたいと、検討してもらいたいと、こういうことを言っておりますけれども、これは率直に言って、今までのような土地の供給をふやすことによって安定さしていくというやり方ではもう対応できない、規制に踏み切っていかなきゃできないという、そういう異常な状態じゃないかと私は思うんですけれども、具体的にどういう対応をなさろうとしているのか。今の建設大臣の失敗ということを含めて、きちっとしていただきたいと思います。
  22. 天野光晴

    国務大臣(天野光晴君) 私の方から一言所感を述べておきたいと思います。  やっぱり需要供給のバランスをとらなきゃだめです。これは厳重に法律をつくって締めつけるとかというようなことはできないわけではないと思いますが、それではやっぱり問題があります。人を殺せば死刑にすると言っても殺すやつがあるんですから。そういう意味でこれは需要供給のバランスをやっぱり完全にとるようにしなきゃいけない。とり得るとまだ私は考えております、東京都心では。まだとり得ると考えておりますから、この問題について、中曽根内閣の汚名挽回という意味を含めまして、これからわずかな期間の間に努力をして実現をいたしたいと考えております。
  23. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 天野建設大臣は、中曽根内閣閣僚として、この内閣解決ができなくて今日にまで至っておるという意味合いで中曽根内閣の失敗であると、こういう極めて率直、簡明なる御答弁お答えいたしましたが、それはこの内閣ではいまだ有効適切なる打開策が講ぜられてないと、こういう意味合いであろうと思います。これは長い間の実は課題でございます。ただ、今日のようにまさに土地の問題、これは主として地価でございますが、経済問題から社会問題にまで発展をしつつある状況でございますので、このまま放置できる筋合いのものではありません。  そういうよう意味合いから、原因についてはもう今さら申し上げるまでもなく、こういった高度の社会を迎えて、情報化を中心としていわゆる業務機能というものが集中してくる、大都市に集中する、しかもその大都市の中の一点に集中する、そうすると、その地域に対する施設用の土地が不足をする。これは需要と供給の原則で決まる土地も品物であるという前提に立つならば、やはり異常なる地価が現出をする。そうなれば、その中から住居を持っておる人が地方へまた買いかえに出ていくと、こういったことで漸次地価の高騰が波及をしていく。これが今日の東京あるいは大阪等を中心にした現状であると思いますが、いかにもこれは放置ができません。  そういったようなことで、これらについてどうやるのかということになると、これは実は土地とは何ぞやと、自由な商品なのかどうなのかといったような憲法上のいろんな問題もありますし、あるいは業務機能の分散、これをどう考えたらいいのか。あるいは投機的な面による需要、仮需要の増大、それによる土地の騰貴の原因もある。この土地騰貴をどう抑えていくのか。あるいはまた金融機関、金余りといったようなことから来る現象等もございます。非常にいろんな複雑な要件が重なっておるわけでございますから、これをどう解きほぐしていくのかということはなかなか一朝一夕にできることではありませんが、放置できないといったようなことで、さしあたりの当面の問題としては閣僚懇談会等でいろいろ議論もし、とりあえずの処置としての長短期の土地転がしを防ぐ意味における税制の改正の問題、これは御提案を申し上げておるわけでございますね。あるいはまた土地計画法ですか、国土庁所管の法律の改正も百八国会で成立をさせていただいたといったようなことで当面の対策はとっておりますが、さればといって状況が好転をしたというわけにはまいりません。  そこで、この問題は、実は行政調査会でも既に基本答申でお取り上げになりまして、いろんなメニューはお書きになっていらっしゃる、しかし、なかなかそれが実現をしない。それで今日に至っておりまするので、やはりこの際、最近の状況を放置できないので、思い切ってひとつ本当に各界の専門家の御意見を徴して、そして政府・自民党一体となって強力な土地政策を展開する必要があるんじゃないかといったよう総理の発想から、近く閣議等でもその御発言がある予定でございますが、それを受けまして閣僚懇談会等でも対応をしながら、同時に行革審で、いわゆる一種の土地臨調みたいなものと、こうお考えになっていただければいいんじゃないかと思いますが、そういうものをつくりまして、これやっぱり相当長期にわたって腰を据えた政策を立てて、国民理解と共感を得ながら何とかこの土地問題の解決をしたいと、こういうつもりで、今そういった体制を取りつつある状況であると、かように御理解をしていただきたいと、こう思います。
  24. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 長期、短期の対応もございますが、これからの家賃に影響しますし、これから、もう一つ申し上げますが、今度は固定資産税に影響してくる、こういうような類のものですからね。これは建設大臣も含めて緊急なひとつ対応をとるべきだと思います。  そこで、自治大臣に聞きますが、来年は三年に一回の固定資産税の評価がえの年になりますね。地価公示価格で見ると、この三年間で東京の住宅地が平均六〇%値上がりしておる。昨年一年間で五〇%。そうして、これを倍率で見ると、東京都で六・六倍、東京圏で三倍、三大都市圏で二倍、こういう値上がり状況なんです。三年間に三〇%以内なら、これは負担調整で来年度から毎年一〇%ずつ上がるという仕組みになっておりますけれども、五〇%ということになりますと、六十三年度、四年度はそれぞれ二〇%固定資産税が上がる、こういう深刻な事態になるわけですね。  この対応というのを、僕はやっぱり、先ほど建設大臣も言ったように、中曽根内閣の失敗でこうなったことは明々白々ですからね。国が言いかえれば国公有地を民間に高値で売る。それが引き金になって大都市の狂乱地価になっておるわけですからね。全然言いかえれば罪もない庶民の皆さんは、その結果二〇%ずつ引き上がる固定資産税を払わなきゃならぬ。これは私は大変な、何というんですか、今全国的に自治体の中で問題になっておる状況ですから、このまま見過ごすわけにはいかない。少なくともやっぱり何とか軽減措置をきちんとしにゃならぬのじゃないか、対応しなきゃならぬのじゃないか、こう思うんですけれども、大臣いかがですか。
  25. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) ただいま先生から御指摘がございましたように、東京その他大都市におきまして異常な地価の高騰が見られますことは事実でございます。  来年は、昭和六十三年度に土地の評価がえが行われるわけでございますが、ただいま課税諸団体におきましてその作業が進められておりますが、自治省といたしましても、全国的な観点から、評価の基準となる地点につきまして適正な評価が行われるよう調整を行っているところでございます。特にその場合に御指摘ような特異な地価の上昇がありました地点につきましては、十分に配慮しながら課税団体と調整を図っていきたいと考えております。  そしてまた、固定資産税の負担と評価の問題につきましては、昨年十月、税制調査会の答申がございました中にもその問題について触れております。それを読んで見ますと、「その評価に当たって引き続き均衡化、適正化に努め、中長期的に固定資産税の充実を図る方向を基本とすべきである。この場合、多くの納税者に対し毎年課税されるという固定資産税の性格を踏まえて、負担の急増を緩和するためなだらかな増加となるよう配慮が必要である。」、こううたっているわけでございまして、この趣旨を踏まえながら課税団体と調整を進めていきたいと考えております。
  26. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ぜひひとつそういう措置をお願いしておきたいと思います。  そこで、国土庁長官にお聞きしますが、こういう土地狂乱の状況の中で、主管大臣として一体どういう認識対応をしようとしておるのかということが一つ。  もう一つは、いわゆる固定資産税の基礎になる土地の地籍調査、これを調べてみますと、二十六年から始めて、そして今三一%ですね、全国で。しかも、大都市はほとんどやってない。いわゆる中小の自治体でやっておるのは五百五十ほどありますけれども、これはほとんど山とか田んぼですわね。今、東京では一坪が一千万円から一億とこう言っておる。こういうところは地籍調査がいってないために全部固定資産税から漏れているわけですよ。こういうようなずさんな状態にあるということは、私はゆゆしき問題ではないかと思う。そして、しかもこの四、五年を見ると、年間わずかに六十八億とか七十億とかいう調査費しか計上してないもんだから、ほとんどやられていない。こういうような状態でいきますと、これはまた地価狂乱すればするほど私は不公平が拡大していく、こういったような感じがしてならぬのですけれども、これに対して一体どういう対応をなさろうとしておるのか。それも含めてひとつお願いします。
  27. 綿貫民輔

    国務大臣(綿貫民輔君) 地価の高騰の問題につきましては先ほど建設大臣、官房長官からもお話があったところでございます。全国的には安定しておるんですが、東京等について特に急騰しておるという問題につきましては、需要供給のアンバランスとか、あるいは金余り現象の便乗とか、いろいろ複合的な要素があるというふうに考えておるわけでございまして、先ほどお話がございましたように、地価対策については、供給面をふやすということと規制面についての強化をするということで方向を今やって努力しておるところでございます。  今の地籍調査の問題につきましては、従来からもこれの進捗について努力をしておるところでございますが、確かに関東、関西、中部といったところが進捗率が非常におくれておるという事実がございます。これにつきましてはいろいろとPRその他もしておるわけでございますが、これに御協力いただくような体制を今いろいろとやっておりますが、その辺が現実の問題として進捗度がおくれておるということについてはいろんな要素があるようでございまして、私も本日この御質問があるということで当局とも相談をしておるわけでございますが、ぜひこれが進捗度が進むように努力をしていかなきゃならぬというふうに考えておる次第でございます。
  28. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 これは大臣、こういう地価狂騰で歴然と不公平が出てくるわけですね。しかも昭和二十六年ですから、もう三十数年やっておるわけだ。そうして三一%とはどういうことなのか。これは私はもう怠慢と言う以外にない、その一言に尽きると思う。こんなのこそ官房長官、やっぱり行政改革の対象に挙げて整理をしなきゃだめですよ、これは率直に言って。これは綿貫長官も、事態の重大さを初めて今認識なすったようですけれども、ぜひひとつこれは、内閣としてもこの問題について取り上げていただいて早急に地籍調査ぐらいきちっとして、それにやはり適正な評価額がきちんと出るような、固定資産税をかけるような体制をつくらなきゃこれはもうどうにもなりませんよ。ここら辺をひとつ答弁もらいましょうか。もうわかりましたからいいですか。念を押しておきますから、ぜひひとつこの辺処理をお願いしておきたいと思います。  時間もございませんから、国土庁長官並びに建設大臣、住・都公団総裁、結構です。どうも御苦労さまでした。  それから自治大臣、福岡の苅田町の事件でちょっと大臣の見解並びに検察庁の見解も承っておきたいと思うんですが、これは収入役の背任横領にかかわる問題ですね。しかし、これに類するものが最近自治体で二重帳簿、虚偽文書、裏口口座、こういうのが横行していますね。例えば山形県米沢市、三重県上野市、北海道の喜茂別町ですか、和歌山の下津町、奈良の香芝町、最近では福岡の浮羽町、熊本の小川町、これは保育所ですが、こういった傾向に対してどういう認識をしておるのか、また対応をどういうふうにとられたのか。いかがでしょうか。
  29. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) 今、先生が挙げられましたよう事件はいずれも極めて異例な事件でございます。地方公共団体に対します住民の不信を招くものでございまして、まことに残念であり、遺憾に存ずる次第でございます。  自治省といたしましては、この種類の事件防止するためには、何よりもまず地方公共団体におきまして、議会並びに監査委員等によります自律機能が十分に発揮されることが必要であると考えておりまして、そのような現在あります制度、組織を十分に使って、そのよう事件が起きないように適切に対応してもらうよう指導しているところでございます。
  30. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 今度の苅田町の事件ように税金をそのまま、しかも収入役というその出納の責を負う者が裏帳簿にそのまま入れて、こんなことが公然とやられて、しかもそれが十何年も続いておるということは私は遺憾では済まぬと思うんですよ。とりわけ税務課長が四回もかわっているわけです、苅田町の場合。その際にこの不正の裏口座が引き継がれているんです、職務で。こういうことが当たり前のようにやられている。これは私は、しかも税務課長は公務員の守秘義務で、地公法三十四条、地方税法二十二条、だからこの不正を外に漏らしてはならぬと思っている。こういうありようについて、一体自治大臣として遺憾であるとか、そういうことで処理しますとこれは大ごとになりますよ。こんなことでは済む問題じゃないですよ。そう思いませんか。
  31. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) ただいま先生がおっしゃいました守秘義務ということを課長が申したというお話でございます。どういう場面でどういうよう事態に対して申したのかわかりませんけれども、守秘義務というのは外に対する義務でありまして、内部規律の問題とは別でございます。恐らくそれは問題のすりかえではないかと思います。  それから、このような今たくさん挙げられましたよう事件につきましては、苅田町につきましては、ただいま検察庁が捜査中でございますから、捜査の経過を見守り、結果によりまして適切な指導をしていきたいと考えておりますが、いずれにいたしましても明らかになった事案につきましては、それぞれまた検察庁あるいは警察におきまして厳しく取り調べをし、厳正な処分をしていかなければならないと、このように考えているところでございます。
  32. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 確かにすりかえですよね。しかし、すりかえですけれども、内部告発の保障をぴしっとするという制度もない。その点を私は自治省としてはきちっとした指導をやってもらわないと、今あなたが、すりかえだということだけでは問題片づかないと、その点ひとつ、これから検察庁に聞きますけれども、ぜひこの問題を契機に監査制度を含めて、今申し上げた職員の守秘義務を含めて、いわゆるそういう問題が、不正が引き継がれていくようなことのないような、そういったありようをぜひひとつお願いしておきたいと思うんですが。  そこで、検察庁にお聞きしますが、東京地検が入ってもう三カ月たつんですね、四月七日ですから。この時点で福団地検に移送するというのが報道されているんですが、これはどういう意味を持つんですか、局長
  33. 岡村泰孝

    説明員(岡村泰孝君) 御質問のございました苅田町事件でございますが、四月に東京地検が告発を受理いたしまして所要の内偵捜査を続けていたところでございます。  ところで、本件の事案をさらに解明いたしますためには、多くの関係人から事情を聴取する必要があるところでございます。これらの関係人がほとんどが苅田町、福団地検管内に居住しているのでございまして、そういうような事情をいろいろ考慮いたしますと、本件につきましては関係者等が居住している地域を管轄いたしております福団地検に移送いたしまして、福団地検におきまして引き続き捜査を継続するのが相当である、こういう判断に達したところから、東京地検から福団地検に対しまして本件を移送したものであるというふうに承知いたしておるところでございます。
  34. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうすれば、地元では移送によって東京地検は逃げ出した、もうこれは先は見えてきたんではないかといううわさがあるんですが、今あなたのお話を聞きますと、そうじゃなくて、むしろ証人喚問にしても、いずれにしても地元に大勢いらっしゃるわけだから、またこの問題を追っかけていくのには、今の東京地検から出張捜査ということでは到底対応できないから、地元に移すことによって本格捜査に切りかえたんだ、こういうふうに理解していいんですか。
  35. 岡村泰孝

    説明員(岡村泰孝君) 本件事案の解明のためには今後の捜査をまたなければならないところでございまして、ただいま御指摘のありましたように、基本的な捜査といいますか、基礎的な調査を続けまして、事案の真相の解明に努力するためには福団地検で捜査を行うのが相当である、こういう判断で福団地検に移送したものでございます。
  36. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうすれば、基礎捜査、本格捜査をするためにはやっぱり福団地検に移した方が体制上やりやすい、強化できる、こういう判断だ、そういうことでいいんですね。
  37. 岡村泰孝

    説明員(岡村泰孝君) そういう趣旨でございます。
  38. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そこで、この事件は今おたくの方に、地検に告発があったのはいわゆる住民税の背任横領ですか。しかし、あそこにはそれ以外に霊園事件であるとか、文書焼却事件であるとか、職員採用における不祥事であるとか、いろいろ事件ありますね。そういうものを含めて今後は捜査の対象に入っていくわけですか。
  39. 岡村泰孝

    説明員(岡村泰孝君) 告発を受けました事実は住民税に関しまする業務上横領事件でございます。ただ、御指摘のありましたようないろいろのことが報道されておりますことは、捜査当局といたしましても十分に承知しているところでございます。そういった点を含めましてどういうふうな捜査をするかということは今後の問題であろうかと思うのであります。
  40. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 だからそういうものも含まれていくわけですが、町議会は七月二日、きょう尾形代議士を告発しましたね。地方自治法百条の九項によって告発した、こういうふうにしておるんですが、これはどう処理しますか。
  41. 岡村泰孝

    説明員(岡村泰孝君) 検察当局が告発を受理したということは、まだ今の時点におきまして私確認はいたしていないところでございます。もし検察に対しまして適法な告発があれば、これは受理をいたしまして捜査をいたすことになるわけでございます。
  42. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 やっぱり当時の町長ですから、ここを逃がしてということにはならぬと私は思うんで、告発があったらひとつぜひ対応を速やかにしていただきたいということだけ一つつけ加えておきたいと思います。  そこで局長ね、四月七日、東京地検が入って以来三カ月、花房収入役名義の裏口口座、出金伝票、こういうのもどんどん新聞では公表されていますね、新聞では。それによると、五十九年から六十年十二月に解任されるまでの間に百二十回金の出入りが行われていますわね。そして入金が四十六回、一方の出金、これが尾形町長が三選を目指した六十年七月を挟んで五十九年八月一日に千五百万、六十年四月三十日に二千五百万、六十年の十月十六日に千五百万、それぞれ大口が引き出されている。その他小口が引き出されて、その小口を聞いてみると、新聞の報道で見ると、町執行部の接待費に流用する、秘書係長がどうしてもこれをくれということで請求したので渡したという前会計課長が東京地検に証言しておる、こういう内容が出ておるんですが、これはいかがでしょう。
  43. 岡村泰孝

    説明員(岡村泰孝君) 東京地検におきましても所要の捜査をいたしたところでございますが、先ほど来申し上げましたとおり、事案の解明のためには今後の捜査にまたなければならない点も多いところでございます。現に捜査中でございますので、ただいま御指摘のございました具体的な事柄につきましては答弁を差し控えたいと思っておるのでございます。
  44. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そこで町営墓地の問題ですが、完成直前にかけ崩れで使用が不能になった、にもかかわらず工事代金一億一千七百万を支払った、このことで六月一日に住民から返還要求が出されて告発されていますね。この告発されたことに対してどのよう処理されていますか。
  45. 岡村泰孝

    説明員(岡村泰孝君) 刑事上の告発があったとは私聞いておらないところでございますが、なお調査はいたしてみたいと思います。
  46. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ぜひひとつ調査してほしいと思います。私が調べたのでは告発されておるようです。  それからもう一つお聞きしますが、地検が捜査の中で、こういう報道がされておるんですね。五十二年初めに道路拡幅用地として町有地八百五十平方メートルを県に売却して県が一千二百九十万円を町に入れたと、五十三年三月に。しかし、これは地検の調査によると、まだ入金の形跡がないというのが報道されておるんです。これはどうでしょうか。
  47. 岡村泰孝

    説明員(岡村泰孝君) 苅田町の事件をめぐりましてはいろいろの事柄が報道されているところでございますが、その中には捜査当局の関知いたしておらないところもあるわけでございます。具体的にどの部分かということについては申し上げかねるわけでございますが、いずれにいたしましても、先ほど来申し上げておりますように現在捜査中でございますので、具体的事実関係につきましては申し上げかねるところでございます。
  48. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そういう答弁をするだろうと私は思ったんですが、やっぱり岡村さんね、新聞報道というのもそう、一社だけなら私はやっぱり書き過ぎがあったかと思いますけれども、大体こう見ると、各社とも共通して東京地検の取り調べではと、こういう表現が頭について報道されておりますよね。そういう点から見ると、もう三カ月ですから、私やっぱりぼつぼつ仕上げにかかってくる時期になるんじゃないかというような感じがしておるんですよ。そういう意味で、ぜひひとつそこら辺も深めていただきたいと思いますが、時間がございませんから一つだけ最後に聞きますが、六十年の町長選挙前後に、さっき申し上げましたように、三回にわたって尾形町長に五千万渡したと、こういう報道がなされておる、花房収入役が渡したと。残りの三百三十万については、東京地検の調べでは、六十年十二月に辞職する際に花房さんがポケットに入れたと、こう証言しておる。その際、花房さんが地検の取り調べに対して証言しておる内容では、三回にわたる五千万の金は町長室で尾形町長に直接渡したと。町長は大丈夫かいと、こう言ったと、それで花房さんは大丈夫ですと言ったという、こういうところまでこう出ておる。これは私は、地検としてどういうふうに、そこまでくるんならもう私は背任横領ということで、そろそろそこら辺に区切りをつけていいような時期に来ておるんではないかというような感じがするんですよ。どうでしょうか。
  49. 岡村泰孝

    説明員(岡村泰孝君) ただいま御指摘のございました具体的な事実関係でございますが、それが事実かどうかを含めまして、現に捜査中でございますのでお答えをいたしかねるところでございますが、現在福団地検におきまして、引き続き事案の解明のために捜査を継続しておると、こういう段階でございます。
  50. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 もう時間がありませんから、きょうはこの段階で終わりますが、ただ一つ、法務大臣も見えておりますけれども、自治大臣もそうですが、税金を、住民税を出納長が公式の金に上げずにやみからやみに、そうしてまたやみからやみに使っていく、こういうことが結果的に追及したけれどもわからなかったとかいうような形で処理されますと、全国一斉に行われますよ。そうすると、国民から見ると税金を払うばかはおりませんよ。こういう事件ですから、私はやっぱり検察庁もひとつ本気で、今が本気でないとは言いませんよ、より一層本気になって、ぜひひとつ早急に、国民に明らかにできるような、そういう体制をひとつぜひつくっていただきたいということをお願いして終わりたいと思います。
  51. 久保田真苗

    久保田真苗君 私、六月四日のこの委員会で、法務の場でお聞きしました外国人の不法就労の問題、つまりいわゆるじゃぱゆきさんの問題について、きょうは各省大臣におそろいいただきますので、一応まとめておきたいと思います。まず外務大臣にお伺いします。  活発に訪問外交をしていらっしゃるんですけれども、六月二十二日にフィリピンのアキノ大統領との会談で、このじゃぱゆきさんの問題をお取り上げになったということでございます。どういう経緯でこの問題は出たのでしょうか。
  52. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 最近、我が国におけるじゃぱゆきさんと呼ばれるフィリピン人等の不法就労者の存在が顕在化しているということは事実でございます。  ちょうど私、六月二十二日、アキノ大統領にお目にかかりまして、アキノ大統領もこの問題に非常に深い関心をお持ちになっているということを承知しておりましたし、私もこの機会にアキノ大統領に対しまして、この問題の解決を真剣に日本側としても考えておりますと。日本側でも査証の審査厳正化等に適切に取り組んでおりますし、今後とも厳重にやらせていただきたいと思いますと。しかし、この問題については、やはり日本とフィリピンと双方協力をすることが必要でございますから、双方の協力についてもひとつ大統領も御留意いただきたいと。また本問題の本質的な問題の背景として、フィリピンの経済が回復して、また雇用問題が増大すれば、この問題についての解決に大変役立つのではないかということを私から意見として申し上げたわけでございます。  これに対しまして、アキノ大統領におきましても私が申し上げましたことに対しまして御理解を示されましたし、またひとつ日比両国でやはり協力することは必要であるということはそのとおりであるので、何ができるか検討中でありますし、また現在日比間の事務レベルで進められている協議を継続していきたいと、こういう御発言があった次第でございまして、その後、このじゃぱゆきさんの問題についての事務レベルは、私が二十二日アキノ大統領にお目にかかりました翌々日、六月二十四日にマニラで開催されました第一回の外交事務レベル、外務審議官、村田審議官も次官に昇格をいたしましたけれども、これで外務省日本大使館とフィリピン外務省との間、関係等で鋭意協議をいたし、また今後とも協議を続けることで合意をいたしている次第でございます。
  53. 久保田真苗

    久保田真苗君 アキノ大統領の方からは、これについてどういうことをおっしゃいましたですか。  例えば、フィリピンの婦人団体が非常にこの問題に関心が深い。そういう婦人団体のこととか、それから現地で非常に活躍といいますか活動しておりますやみのブローカー組織ですね、そういう問題なども出ましたでしょうか。
  54. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 大統領との御会談の一々についてここで申し上げるべき筋ではございませんけれども、アキノ大統領大変深い御関心をお持ちになっているということを踏まえて、私の方から積極的にこの問題にこういう対処をしたいということを申し上げまして、大統領としては、その線でひとつ一緒にやりましょうと、そういうことでございました。
  55. 久保田真苗

    久保田真苗君 事務レベル協議というのは、そこで合意されたというふうに理解してよろしいわけでございますか。
  56. 倉成正

    国務大臣倉成正君) そのとおりでございます。
  57. 久保田真苗

    久保田真苗君 そしてすぐに持たれました高級事務レベル協議でフィリピン側はどういうことを望んでいるんでしょうか。日本側はフィリピン側に何を望んだのでしょうか。それをお聞かせください。
  58. 妹尾正毅

    説明員(妹尾正毅君) お答え申し上げます。  フィリピン側から指摘がございました点は、まず何よりもフィリピンで、こういう女性たちが日本で非常に虐待を受けていると、そしてこれが人間の尊厳にかかわる問題として報道されており、フィリピン政府としても、そういう意味対応を求められているので、解決のために日本政府の協力をお願いしたいと、これが一番中心のことでございます。  そういうことに関連して、あるいは日本側で労働市場をもっと開放してもらって、例えば家事使用人などを日本に送るということができれば、それは一つの方法ではないだろうかとか、あるいは興業者の入国とか滞在といった問題もございますが、そういう点なんかについてもっと緩和できないだろうかというふうな話もございまして、今後の進め方としまして、日本とフィリピンの間で対策を協議する場を設けたいという提案、発言があったわけでございます。日本側として困りますのは、こういう人たちがフィリピンに帰りまして、日本日本側関係者から売春を強要される、断わると手足を折られたりあるいは手首をつぶされたというようなことを、フィリピンに帰って記者会見で言うわけでございますが、こちらではそういうことをなかなか、話が直接に余りないわけでございます。それは非常に実態が把握しにくくて困るわけでございまして、日本側からはそういうふうな点については、日本では必ずしもその実態をすべて正確に把握することが非常に難しい状況にあるというところに問題があるのだけれども、もう一つ指摘すべき点は、やはりこういう人たちのほとんどはいわゆる不法就労者でございまして、日本はやはり法治国家としてこういう不法な外国人の就労と滞在ということを放置できないという問題が日本側から見るとある。そういうことで、日本側におきましてもフィリピン側と同様にこの問題を憂慮しておりまして、入国査証とか入国審査といった面でこれを厳格化しているわけでございまして、また違反者を年間数千人も強制退去させているという状況を御説明いたしまして、あわせてフィリピンから示唆のございました、例えば芸能人の滞在延長といったようなことは、関係当局に伝えて相談したいと。それからもう一つございました家事使用人といった単純労働者の入国については、原則として日本においては認められていない、それが現在の政策であるということをフィリピン側に伝えたわけでございます。
  59. 久保田真苗

    久保田真苗君 定期協議のあり方ですけれども、私は、この問題はビザと出入国管理だけの問題じゃなくて、非常に参加する省庁の範囲が広いと思うのですね。それは国内体制の問題なんです。そして、これが人権侵害に絡んでいるということで非常に範囲が広いので、私はぜひこの問題は本気で取り上げていただきたいし、そして外務省、法務省以外に国内法規をもってこれに対して臨むべき官庁というものをぜひ参加さしていただきたい、そういう協議に当然発言すべきだし、その責任があると思います。その点について外務省はどうお考えですか。
  60. 妹尾正毅

    説明員(妹尾正毅君) これはフィリピン側と日本側と両方あるわけでございますが、これまでフィリピン側とは個別に協議していたわけでございますが、ただいま御指摘もありましたように、今度の事務レベル協議におきまして、フィリピンにおいては今後マニラにあります我が方の大使館と、それから先方が外務省を中心にそのほかの関係省庁全部集まりまして、協議機関をつくるということになったわけで、関係省庁みんな入るわけでございます。日本側におきましては、私どもといたしましても国内に関係する省庁いろいろあるわけでございまして、こういう関係省庁と随時協議をして対応していきたいと、御指摘ような点は十分念頭に置いて対処を考えていきたいと思っているわけでございます。
  61. 久保田真苗

    久保田真苗君 外務大臣が言われました今の一般的な背景としての経済雇用情勢ですね、それは当然必須の条件なんです、フィリピン側における。ですけれども、私はフィリピンの最近不法就労が急増しているということの背景には、前回法務当局から御指摘のありました仲介業者、つまりブローカ-の問題です。これが非常に目に見えて組織化されてきているという御指摘があるわけです。そして、その体制が整いつつあると、そういう御指摘が法務省からあるわけですね。  私は、このことはぜひ頭に置いていただかなきゃならない。それでなかったら、フィリピンばっかりがこんなに急増して、しかもこれは観光ビザというようなことから言いますと、外務省の御発言で、やるにも限界があると、こうはっきり言っていらっしゃるわけです。  そういうことでございますから、このブローカーの問題をまず頭に置いていただいて、それから国内における悪質な事業所がその不法就労という状況を搾取していくという、そういう人権侵害のケースについて、ぜひ外務省はここを一番の底支えになる場面としてお願いしたい。  つきましては、警察と法務省から、この前私伺えなかったブローカー、あっせん業者の実情について、わかれば国別の数とか実態、手口などをお教えいただきたいんです。
  62. 小林俊二

    説明員小林俊二君) フィリピンを中心といたしまして、この不法就労外国人の入国が急増した背景に、ブローカー等の組織が非常に組織化が進んで受け入れ体制、送り出し体制が強化されたということが存在するということは間違いない事実と私ども認識いたしております。したがって、これを防圧するために、そうした組織について解明に努め、そして制約あるいは処罰等の処置を講ずるというここが不可欠であるとの委員指摘の点は、まことにそのとおりであると存じております。  私どもも、今後の事案の処理は直接には関係した外国人に対する摘発、調査ということになるわけでございますが、そうした調査を通じて、その背後にあるものを常に解明するようにあらゆる努力を傾注しているわけでございます。  現に、最近において摘発されました、例えば六十一年中に摘発されましたいわゆるじゃぱゆきさんを中心とする不法就労外国人の案件について見ますと、ほとんど九〇%近くがそうしたブローカーの手を経て日本に入ってきているということが確認されております。したがって、個々の件につきまして、どういうブローカーが介在していたのか、どういう組織が背後にあったのかということを確認することに重点を置いて、それによって得た情報は関係当局に逐一伝達して、その面からの摘発の可能性を検討していただくということを基本的な対応といたしております。  なお、情報が十分ではないといったような御不満も捜査関係当局あるいは取り締まり当局にはおありかもしれませんが、私どもとしてはこの面における努力をさらに強化して、摘発に十分な情報の確保に努めていきたいというふうに考えております。
  63. 久保田真苗

    久保田真苗君 情報が十分じゃなさ過ぎるんですね。  私がお伺いしたのは、どれくらいの組織がこういうものにかかわり、暴力団がどういうふうにかかわり、どういう手口でもってやっているのか、どういうタイプがあるのか、それを伺いたかったんですよ。  警察の方にもお願いしてあったんですけれども、どうなんでしょうか、ちょっとお願いします。
  64. 漆間英治

    説明員(漆間英治君) 最近、職を求めて来日する外国人が多くなっていることに目をつけまして、これらの人々の入国などに介在をしまして不法な利益を得ている例が見受けられますけれども、私ども警察としましては、この種の行為あるいはこれらの行為を常習的に行う組織に重点を置きまして厳しく取り締まってまいる所存でございます。  ただいま御質問のありました数でございますけれども、残念ながらその種の統計はとっておりません。ただし、報告事例の中で幾つかのケースを拾って申し上げたいと存じます。  まず第一番目に、一つの例としましては、日本人の芸能プロダクションの経営者がフィリピン女性二十名をバー、スナック等に派遣していた事例。これは昭和六十一年の八月に警視庁がいわゆる労働者派遣法違反で検挙いたしております。二番目に、暴力団幹部が現地のブローカーと結託をしまして、観光ビザで送り込まれてきましたフィリピン女性三名を新東京国際空港に出迎えて連れ帰り、スナックの経営者に引き渡して売春をさせていた事例。これは昭和六十一年十月、新潟県が職業安定法違反、売防法違反で検挙いたしております。三番目に、フィリピン人の手配師がフィリピン男性五百五十八名を工場や飲食店等に供給していた事例。これは昭和六十二年三月に愛知県が職業安定法違反で検挙いたしております。四番目に、在日フィリピン人女性ブローカーらが香川、徳島両県下のブロイラー工場等にフィリピン人男性三十一名を有料で職業紹介していた事例。これは昭和六十一年十一月、香川県が職業安定法違反で検挙いたしております。  幾つかの代表的な例を拾っておきましたが、数ははっきりいたしませんが、このようなケースがかなりあるのではないかというふうに考えております。
  65. 久保田真苗

    久保田真苗君 その問題もう一回やるとしまして、初めに、外国からの就労についてですね、基本的な考え方、幾つか、どうしてもここは押さえなきゃならないという考え方があると思うんですね。  私はまず伺いたいのは、労働大臣、そして法務大臣にお伺いしたいんです。どの国でも完全層用ということは、その国の国是だと思うんですよ、少なくとも文明国であるからには。ところが、国際国家になるんだからといって、日本の労働者の失業がふえても、それでも国際化するんだという、そういう考え方は、私はそういうことはできないと思うんですけれども、それについて労働大臣、法務大臣の御見解を伺います。
  66. 平井卓志

    国務大臣(平井卓志君) 外国人労働者の受け入れのあり方でございますが、これは基本的にはやはり経済社会面における国際化の進展、さらにはそれに伴う環境の変化等を踏まえまして、幅広い観点から検討すべきものであるというふうに理解をいたしております。ただ、御指摘ように、我が国の雇用情勢や労働条件に悪影響を及ぼすことのないよう十分考慮することが、私は肝要であろうかと。さらに踏み込んで申しますと、やはり外国人労働者の受け入れ自体が日本人の労働条件を引き下げる要因となるようなケース、さらに就業構造の改善をおくらせる、いま一つ、低賃金労働力を導入するものとの国際的批判も受けるおそれがある等々、このよう観点から、基本的には単純労働者につきましてはこれを受け入れないという従来の方針対応すべきものであると、かように考えております。
  67. 遠藤要

    国務大臣(遠藤要君) 私はさきの委員会でも先生にお答え申し上げておりますけれども、今の労務関係については、法務省としては原則的に単純労務者は受け入れない、認めないという方針をとっており、いろいろ労働問題もございますけれども、私はいつも閣議において、失業率の問題や何かの際に二、三度閣議で発言をさせていただいております。それは何かというと、今先生の御指摘の不法入国によっての就労、そういうふうな面がなくなったならば、今度も三・二%の失業率ということになっておるが、そのパーセンテージもある程度低くなってくるというような点も私は何度がお話を申し上げ、各省庁でひとつぜひこのような点において御配慮を願いたいということが一つと、さらに今先生御指摘のとおり、低賃金でといいましょうか、途中であっせん業者が搾取して、本人の懐に入るのはわずかな金だというようなことになっておったということになりますると、日本の国の国辱、不名誉この上もないと思うんです。そのような点もございますので、就労等については十分ひとつ配慮していくべきことだというようなことを指摘をしておるわけでございますので、今後一層各省庁が、これは労働省または入管局と外務省というような範囲だけでは、この問題の解決というのは先生おっしゃるとおり非常に困難だろうと思っております。そのような点で、これからの入管局行政の問題はもちろんでございますけれども、国内の労働問題なり、衛生、風俗、教育、すべてに関係の深い問題でございますので、各省庁で十分話し合って対応策を講じていきたい、このような気持ちであり、私どもとして繰り返して申し上げますけれども、単純労務者を日本で今受け入れるという状態ではないということを申し上げておきたいと思います。
  68. 久保田真苗

    久保田真苗君 単純労働者の問題というふうに集約しておいでなんですけれども、私はやっぱりこれは国際化、自由化、あるいはいろいろな、日本の円レートが高いところから非常に就労圧力が強まっている今の情勢下で、やっぱり押さえるべきはきちんと押さえていただきたいんですね。それは日本の労働者の失業につながるというようなことになってはならない、それから日本人労働者の労働条件を下げるようなことになってはならない、そして、移民問題はどこの国でも非常に悩んでいる問題です、それは安易なことをやりますとこれが犯罪の増加につながる、スラム化するというような社会一般の悪化につながっていく、そういうことになってはならない、こういう基本的なところをぜひ押さえて考えていただきたいわけでございます。先へ参ります。どうぞよろしくお願いします。  それから、入国管理だけでは防げないということがございます。これはやっぱり観光ビザというものがほとんどである以上、外務省が幾ら努力なさって、怪しい者は拒否をするという体制をおとりになっても、それに限界があるということなんですね。そして出入国管理法というものがあるんですが、これをもっと改善すればこれは防げると思っていらっしゃるのか、それとも改善のポイントがあるのか、そういうことについてちょっと法務省から伺います。
  69. 小林俊二

    説明員小林俊二君) 御指摘の問題に関連する出入国管理法の改正は、主として不法就労者、資格外活動であるとか不法残留とかを犯して就労する人々を雇用する者を、処罰する条項を設けるべきではないかといった点に向けられておると承知いたしております。この点については、入国管理局内においても種々検討、協議はいたしております。ただ、現在しからばそうした行為を取り締まる法律がないかといえば、これはそういうわけではございません。出入国管理法につきましても、共犯としての扱いをとることによって、共犯と申しますと、具体的には幇助犯であるとかあるいは教唆犯であるとか、すなわち正犯は資格外活動であるとか不法残留とかでありますけれども、こうした共犯という観点からの取り締まりはできるわけでございます。法律的にはいずれも可罰行為でございます。また、職業あっせん等に関する、あるいは労働基準等に関する労働関係法規もございます。いずれも刑罰条項を有する法令でございます。さらにまた、売春取り締まりに関する防止法もございます。そこにもまた罰則がございます。こうした法律を駆使することによって、法律的には先生がお受け取りになっておられるような行為を処罰する余地はあるわけでございます。したがって、こうした法律のもとにおきます、こうした罰則のもとにおきます取り締まりが十分に進んでないとすれば、それは法律のせいなのか、あるいはさらに取り締まりに関連するより改善すべき点がある問題であるのかといった点を十分に検討して、その上でこの法律を改正する、具体的には出入国管理法に新しい罰則を加えるということによって対処するしかないというようなことになれば、あるいはその方向に行くこともあろうかと思います。現在はいまだにまだその検討の過程でございまして、将来の問題として念頭にあるという段階でございます。
  70. 久保田真苗

    久保田真苗君 文部大臣にお伺いしたいんです。それは学生の問題なんです。  就学ビザ、留学ビザ等でたくさんの学生が来ております。ところが、今二年前からの、百四十円レートになりまして急激な円高で、その方たちの生活あるいは勉学する余裕があるのかということが大変問題になり、文部省でもいろいろお考えになっていると思うんですが、大臣はこの就学生の生活実態、果たして本当に勉学できる時間があるのか。つまり、今、週二十時間までのアルバイトが認められているんですけれども、実際二十時間でやれるのか。特に奨学金あるいは安い宿舎の提供、こういう便宜を受けてない私費の学生たち、そういう方たちの生活実態についてどういう認識、所見をお持ちでしょうか。
  71. 植木浩

    説明員(植木浩君) 文部省は留学生につきましていろいろな施策を進めております。留学生と言った場合に、大学を中心といたします高等教育機関に勉学する外国人の学生でございまして、いろいろ医療費補助制度を設けるとか、あるいは宿舎を整備するとか、さらには生活困難で成績優秀な留学生に対しまして、奨学のための奨学資金を民間団体を通じて給与するとか、そういった施策を講じております。  今先生が御指摘になりましたのは、いわゆる留学生ではなく、一般の何といいますか、就学生と入管上は言っております、そういった学生の人々に対する事柄であろうかと思いますが、私ども非常に範囲がその段階になりますと多様にわたりまして広いものでございますから、留学生のように十分に実態は把握はしてないわけでございます。しかしながら、例えば日本語を勉強に来られます日本語学校での就学生につきまして、これはごく一部だとは思いますが、そういった学校自身が授業料の減免をやったりあるいは奨学金を出したり、そういった例も承っているところでございます。  文部省といたしましては、そういった学生の方々に直接施策を講じるということではなく、そういった日本語教育の機関が、教育の内容が向上するように、例えば研究協力指定を行ったり、日本語教育のそういった方々の関係者をお集めして日本語教育研究協議会を開いたり、さらにはそういったところの教員の質が大事でございます。で、国立の大学に日本語教員養成学科を年々増設をしたり、そういった努力をしておるわけでございます。
  72. 久保田真苗

    久保田真苗君 この前伺いましたとき、日本語学校四百二十七校のうち文部省が一応監督権を持っているものがありますけれども、それに該当しないのが百五十三校ほどあったんですね。これについては、もちろん法務省がビザの目的に沿った勉学をやっているかどうかということを十分チェックし、学校当局を通じて、学校当局そのものを管理していくんだと、こういうことなんでございますけれども、実際その方たちの勉学なりそれから勉学の時間があるかというようなことについて、あるいはそれで生活していけるかということについてますます問題が、当然私も非常に疑問が、そういうようなのをどういうふうに考えるべきなのか。それについて、例えば文部大臣はそういうものも含めて御指導なさるとか、あるいは援助なさるとか、そういうお考えはおありかどうか。つまり、そういうものについてどういうふうにお考えになるかということを大臣からお伺いしておきたいんです。
  73. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 先ほど局長が申しましたように、現在四百三十七の教育機関がございまして、そのうち百五十三が御指摘ように学校法に基づかないものでございまして、これは極端にいえば財団法人、株式会社、個人等でやっております。ところで、この実態調査をいたしておりますけれども、各種各様でございまして、これに対して一定の基準をもってこれの処置に当たるということがなかなかやりにくいところでございますが、さりとてやはり何としても日本語教育の推進を図らなきゃなりませんので、ケース・バイ・ケースでより多くより厚くそういう施策を講じていきたい、こういうことを思っておるところでございます。
  74. 久保田真苗

    久保田真苗君 私、これは非常に若い方の問題でございますし、結局就学ビザをまとめて集団的に代理申請ができるよう措置をおとりになったのはこのような経済情勢になる以前の話でして、その後いろいろ問題が発生しているようでございますので、ひとつ両省の御協議によって間違いのないようにお願いしたい、こう思うわけでございます。  文部大臣にはここでついでに私も一言伺っておきたいんですけれども、例の五月十六日の京都での教育改革推進懇談会での御発言なんです。  私、聞いていたわけじゃないんですけれども、子供が成人になるまで、あるいは義務教育が終わるまで子を持つ母親は家庭に帰った方がいいんだというような内容の御発言だというふうに承っておるわけです。  それで、私が申し上げたいのは、これは今をときめく文部大臣の御発言なんです。それで非常に影響する範囲が広いということを私は恐れるんです。なぜかといいますと、これについて迷惑をこうむっていく個人ないしは政府関係省庁を含めてかなりあると思うんです。なぜかといいますと、私どもはやっぱり女子差別撤廃条約を批准するために随分長い道のりを来ました。それは今からもう十七、八年も前からその道が始まりまして、国際連合で七年間、そして各国が参加し、もちろん日本も参加してさんざん討議しまして、一九七九年に条約が採択になった。そして、その後一九八五年に日本政府はこれを批准した。その前に国内法制の一応の整備をした、こういう長い道のりなんです。  ここの条約にございますやっぱり定型的な男女の役割を固定化して考えるということは改めよう、そうじゃないと婦人の社会活動はなかなかできないのだ、そういう一つ基本原則があるわけです。  それから、やはりすべての人の労働権を守っていこう。それについては、そこに性差別があってはならないのだと、そういう条項があるわけでございます。そして、それに対して、やっぱり育児やそれから社会というものが両立していけるような社会サービスをつくっていこうという申し合わせもあるわけでございます。  私は、まさか大臣がこういう考え方に反対なさるわけじゃないと思うんですけれども一つのことをとらえまして、一方的にそれを子を持つ母親の側のみの対応としてお考えいただくと、今のこの法体系で国際的にもそれから日本政府も進めていることからちょっと外れるのじゃないか、こう思うわけなんですけれども、大臣その辺どうなんでしょうか。
  75. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 私は京都で発言いたしました。しかし前と後ろが実はございましてね、話の中で、流れとして。その中の一つとして、主婦はできるだけ家庭に戻ってほしいと、こういうことを申し上げたんですが、それは学校教育だけが今問題としてクローズアップされておるけれども、教育全体はやはり家庭教育、それから社会教育、学校教育、一体とならなきゃならないんだと。その意味において家庭教育を充実してほしい。この際に私は、できるだけ主婦の方は、家庭を大事にすることで家庭へ戻ってもらいたいという発言をいたしたのが、家庭に帰れと、こうなってしまったんです。おっしゃる趣旨は私はよくわかっておりますし、私も実はこの国会対策副委員長をやっておりましたとき、この条約の成立に推進した一人でございますから、それはよくわかっておるんですが、現在就学時児童を持っておる母親の方ですが、その方の約五四%近くが有職者なんであります。この有職者、五四%有職者の中で、たしか三一%だったと思うんでございますが、これが雇用契約がある方なんであります。要するにプロの方、これはもう当然私はどんどん進出してもらいたいと思っております。ですから、プロとしての方、これはもう当然男女雇用均等法等もございますし、保護されておりますし、当然のことでございまして、時代はそういう時代になってきておる、これは進めなきゃならぬ。しかし、あとの二二、三%の方というのは有職者ではありますけれども、要するに一時職についておられる方、こういう方はやっぱり私は選別、選択すべきだと、プロの有職者でございますが、プロなのか主婦なのかということを、これは私は子供が学校へ行っている間は非常に大事なことじゃないかと思っておるのでございます。でございますから、今おっしゃっているように、何も男女雇用の問題を私は云々しておるのではなくして、やっぱり男はプロとして職業に命をかけてやっておるんでありますから、女性もやっぱりそうだと思うんです。そうでなけりゃやっぱりいかぬと思うんです。そうすると、プロとしての職業人か、やっぱり主婦としての、主婦も私はプロでなければ勤まらないと思うんです。そういう気持ちが心の底にあったもんですから、ついそういう言葉になったということでございまして、今お尋ねの趣旨に私は全く同感でございまして、ちゃんとやっぱり雇用契約もきっちりとした、要するに職業プロとしての婦人の進出を私も大いに歓迎するところである、こういうことでございます。
  76. 久保田真苗

    久保田真苗君 男女雇用機会均等法、私ども大変弱いといって実は反対投票したんですよ。でもそれは政府・自民党の方でもう推進なすったんです。その弱い均等法にすらやっぱり性別による差別を受けないで、そして職業生活を充実し、かつ家庭も調和できるような、そういうことを国が考えていきましょうというのがこの法律なんですね。そういたしますと、ただ、その子供を持っておるお母さんは家にいるのが一番いいんだというようなことにならないと思うんです。現にこの法律でも育児休業と再雇用制度二つのものの選択、それからもちろん厚生省の施策を加えて保育施設等の充実によりまして女子が続けて働いていけるという、いろんな体制を今社会づくりしているところでして、そういうものの音頭取りを内閣官房の婦人問題企画推進本部ですね、大臣も本部員でいらっしゃる、大変重要な本部員でいらっしゃる、そういうところで今やっておりまして、そういうことの啓発も婦人担当室が一生懸命やっているところなんですね。そこへこういう非常に重要な方の発言が、これは間違って報道されたにせよ、非常に全国を走ったわけです。私はこれでもって非常にやりにくい、そういう使命を負った官庁があると思うんですね。そして個人にとってみれば、今住宅ローン、すごいもんですよね。それでマイホームをあきらめなきゃならない。もうみんな泣いています。教育費の負担というのもすごいですね、近ごろ。多くの国で大学まで無料の教育をしようと言っている御時世になんです。非常に親というものに大変な負担がかかっている。そういう個人に対して、働いていることにうんと肩身の狭い思いをさせる。そういうことは、お一人の国会議員がおっしゃる分には私はこんなところで取り上げません。でも有力な閣僚がおっしゃるということになったら、これは全く別なんですね。ぜひとも条約の精神、法の体系、それに沿って、もし大臣がそういうふうに仮に本心思っていらっしたとしても、閣僚でいらっしゃる間は私見をお慎みいただきたいと私は思うんです。いかがでしょうか。
  77. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 御趣旨は十分承っておきます。
  78. 久保田真苗

    久保田真苗君 そういうふうにしていただけるというふうに考えてよろしいんですか。
  79. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 私も十分説明しながら、私の意見も聞いてもらうように努めて、おっしゃるような誤解のないように私はいたしたいと思います。
  80. 久保田真苗

    久保田真苗君 大臣のところでやっていらっしゃる国立婦人教育会館はいろんな活動をやっていますよ。大変立派な会館です。でもそこには常時託児所が置かれているんです。それは子供を持っている母親がそういう諸活動、文部省のサービスから除外されないということを心に置いてやっているわけでございますから、ぜひ私はそれは文部省の問題に限らず労働省の所管になっている雇用の問題についても同じ御趣旨でぜひお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。  それから、この間の質問で、ある民間団体のやっている外国人女性の駆け込み寺の問題をちょっとお話しして、そこが幸か不幸か大変はやりまして、実は外国人の方たちの生活費を見ていく上からも内外の教会から募金なさったりして、非常にそういう意味で苦労していらっしゃるわけなんです。そのお話をしましたところ、早速厚生省の方からそこへ視察、事情聴取にいらしてくだすったんです。それでごらんになった上の御感想など聞かせていただきたいと思います。
  81. 矢野朝水

    説明員(矢野朝水君) ヘルプの活動でございますけれども、従来出版物とかマスコミ報道である程度承知しておったつもりでございます。ただ先般先生から御意見等がございましたので実態を見るのが先決だと、こう思いまして参ったわけでございます。一言で言いますと非常に被害者の立場に立ってよくやっていらっしゃるなと、こういう感じを持ったたわけです。御承知のとおり、この財団法人日本基督教婦人矯風会という団体は、明治の十九年にできた団体だと伺っておるわけでございまして、一世紀以上にわたりましてこの婦人保護に非常に力を入れてこられたと、そういう蓄積があるということ、あるいはキリスト教の奉仕精神でやっていらっしゃると、こういうことでこういう事業が円滑にやれるんだなと、こういうことを痛感した次第でございます。
  82. 久保田真苗

    久保田真苗君 そこで、これは外国人の駆け込みというのは比較的最近の新しい問題なんですね。ところが今までの法体係からいたしますと、日本人の国民だけを対象にして考えた上から、いろいろこういう方たちが生活保護を受けられるんじゃないかとか、あるいは何か救済の方法があるんじゃないかとか、そういうことを思いますと、それに突き当たってくるわけです。それで私は、確かにこれは、この団体が任意で善意でやっていることかもしれない。しかし、今後ともこういう状況は当分の間は避けられないだろうと思うわけです。  そこでぜひ私、厚生大臣にこの際お願いしておきたいのは、前に第三セクター方式という、そういうやり方を、企業相手の民活ばかりじゃなしに、民間団体がやっているこの善意の血の通ったサービス、こういうものをそれはそれで生かしながら、ここへ入ってくる人たちの生活、あるいは食べる物とかいろいろ、交通費だとか、訴えに行くとか、そういうことにかかってくるもろもろの実費については公費によって負担するという道をぜひ模索していただきたいんです。それはもう御検討いただいていると思います。しかし、ぜひ早い機会に前向きの結論を出していただきたいと私はもう心からそれを願っておるわけでございます。ぜひそのことを厚生大臣に面倒を見ていただきたい、それについて大臣からの御所感を例えればありがたいと思います。
  83. 斎藤十朗

    国務大臣(斎藤十朗君) ただいま生活課長が実地に見てまいりました、また、先生から御指摘のございます財団法人日本基督教婦人矯風会が設置されておられます保護施設につきましては、なかなか有益な事業を展開をしていただいておるということを報告を受けておるところでございます。  ただ、外国人の方々を保護していただくことをしていただいておるわけでございますが、大体多くの場合、不法滞在者という形の中で、ごく限られた一時的な保護というようなことになるのではないか。通常私どもがとっております制度といたしましての婦人保護施設等とは少しなじみが薄いのではないかというふうに思っておりまして、そういう意味におきましては大変難しい問題であるというふうに考えております。
  84. 久保田真苗

    久保田真苗君 私、これは新しい問題だというふうに申し上げております。そして決してこの方たちの、不法滞在だからといってこの方たちが売春、暴行を受けるというようなことに対して救済がないということではこれは済まない話なんですね。いろいろな面で対応していらっしゃるけれども、なかなかこれだけの歴史、伝統を持っているそういう民間のサービスというものが成り立っていくように考えるのが、大臣のお仕事じゃないかと私は思います。それでぜひこの際、そのことを本当に実現していただくことをお願いしておきたいと思います。  それから法務大臣、労働大臣、それから自治大臣、このお三方にぜひともお願いしたい。それは今法務省が中心になっていらっしゃる、もう既に各省協議でやるというふうに言っていらっしゃるんですけれども、私はこれは政策だけの問題じゃなくて、これをどういうふうに人権侵害に対応するかという、そのまさに実行、協力体制の問題だと思うんです。  それで法務省は、まずぜひ労働省や警察に法務省の入国管理でおつかみになったブローカー組織の名前、それから悪質な使用者の名前、こういうものを通報していただきたいということなんです。  それから労働省にお願いしたいのは、これを底支えをするのは、ただその方たちが何分かの賃金をもらってめでたく帰れればいいという問題じゃない。これでは後を絶たないんですね。どうしてもこれは労働基準法あるいは職業安定法によって、その罰則の適用をもって厳正に臨んでいただかないとこれは絶対解決しないんですね。それを労働大臣にはお願いしたい。  そして自治大臣には、警察はもういろいろやっていただいております。御努力もお願いしております。ですけれどもこの暴力団、集団ブローカーの問題、そして一番人権の問題にかかわっている売春。しかもフィリピンから来る場合はこれが非常に多いんです。数字以上に多いという、そこのところを御理解いただきまして、ぜひ警察活動の中でこれを処分するという、それを進めていただきたいのでございます。  三人の大臣の方から一言ずつでも御答弁をお願いいたします。
  85. 平井卓志

    国務大臣(平井卓志君) ただいま御指摘いただきました点につきましては、もう既に今年あらゆる不法就労については厳正に対処すべき旨、都道府県労働基準局に指示をいたしてございますし、御趣旨の方向でさらに職安法違反も含めて厳正に対処してまいりたいと考えております。
  86. 遠藤要

    国務大臣(遠藤要君) 各省庁と十分連絡をして対応していきたいと思います。
  87. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) 東南アジアから来日する外国人が激増しておりまして、今先生からるるお述べになりましたような事例が見られますが、これら弱い立場人たちを食い物にしていろいろ暴利をむさぼっている暴力団あるいは職業手配師等に対しましては、さらに厳しい取り締まりを行っていきたいと考えております。
  88. 菅野久光

    委員長菅野久光君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時七分休憩      ―――――・―――――    午後一時四分開会
  89. 菅野久光

    委員長菅野久光君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十九年度決算外二件を議題とし、総括質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  90. 石井道子

    ○石井道子君 大蔵大臣を初めといたしまして、大変お忙しい中をわざわざ御出席をいただきましてありがとうございます。  まず渇水対策につきましてお伺いをしたいと思うわけでございます。  ことしは降雪量も少なく、また空梅雨でございまして、全国的な水不足が続いております。特に関東地区の深刻な水不足が進行しているわけでございまして、下久保ダムも貯水量がゼロであると報じられているわけでございますが、既に利根川水系渇水対策連絡協議会において、本日から取水制限が三〇%に強化することが決定され、東京都では給水制限を一五%とし、埼玉県では四五%、千葉では三〇%とすることが報じられているわけでございます。また小学校、中学校、高等学校の学校プールの中止も求められておりますし、野菜などの不作等重なりまして非常に大幅な値上げも行われておりますし、台所を直撃し、国民生活に及ぼす影響も大変大きなものがあるわけでございます。  水の消費量は文化水準のバロメーターを示すものであるということでございますが、気象庁の調べによりますと、昭和三十年ごろをピークといたしまして雨量は減少傾向を示している一方でございます。また人口の都市集中化や産業経済の発展の多様化、また生活水準の向上などによりまして水の使用量は増加する一方でございまして、水不足の緊急事態を避けるために、適切で速やかな対策が望まれているところであると思うわけでございます。  日本は外国と比べて清潔で安くておいしい水に恵まれておりますから、生命の源であります水というものの大変大切なありがたさというものを忘れがちでございます。この際、水の有限性というものも踏まえまして節水対策が求められていると思うのでございますが、水道用水における節水対策をお伺いをしたいと思います。また節水用の器具の利用とか、あるいは水の再利用対策、雨水の利用などについてもどのようなことをなさっておりますかお伺いをしたいと思います。
  91. 北川定謙

    説明員(北川定謙君) 先生御指摘いただきましたように、最近の渇水状況による水道水への影響というのは大変深刻なものがあり、この状況はだんだんと進行すると私ども非常に憂慮しているわけでございますが、現在、利根川、荒川水系での取水制限に伴いまして通常の給水がだんだん困難となっておるわけでございます。利用者への節水の協力を強く求めておるわけでございますが、現在、暫定水利権の取水カット及び安定時の水利権の二〇%の取水制限に入っておるわけでございます。現在五つの都県、百五の市区町村、百十九万人に影響が出ておるわけでございます。  今後とも、さらに節水について関係の市民の皆さんに御苦労をお願いをしておるわけでございますが、一般家庭では、例えば蛇口につける節水こまを利用するとか、あるいは洗濯はできるだけまとめて洗って、すすぎはためすすぎにするとか、あるいは入浴についてはできるだけシャワーか行水で我慢をしていただく、あるいは洗濯とか掃除等についてはふろの残り湯を活用していただくとか、非常に深刻にお考えを願わなきゃならない状況になってくるんではないかというふうに思います。また、大口利用者である業務用では、水洗トイレの水の節約だとか、あるいは水冷式のクーラーの補給水を絞っていただくとか、あるいは周辺に活用できる井戸がある場合には雑用に活用していただくとか、非常にきめ細かなことを関係都県を通じまして指導をしてまいっているところでございます。
  92. 石井道子

    ○石井道子君 水の有効利用を図るために、また漏水の防止も図らなければなりませんが、全国平均の有効率が昭和五十一年の八一・六%から五十九年には八六・三%に改善をされておりまして、それなりの努力も評価されるところでございます。また、水不足になりますと地下水のくみ上げという傾向が大変強くなりまして、これが地盤沈下の傾向を引き起こすわけでございまして、これはまた生活環境に悪影響を及ぼすわけでございまして、地下水の採取目標量というものを設定して、地盤沈下対策も図らなければならないというふうに思うわけでございます。  水需要の増大に対応いたしまして水の安定供給を図るためには、水資源開発の促進を図ることがますます重要になってくると思うのでございますが、特に関東地区の利根川、荒川水系におけるダム建設の現状につきまして進捗状況をお伺いをしたいと思います。
  93. 陣内孝雄

    説明員(陣内孝雄君) お答え申し上げます。  関東地区におきましては、現在ダム建設を進めております事業が三十四事業ございます。直轄事業で九、水資源開発公団七、補助事業十八でございます。このうち現在渇水が発生している利根川及び荒川水系について見ますと、利根川水系では二十一事業、内訳は直轄七、公団五、補助九、荒川水系では四事業、直轄一、公団二、補助一を実施しているところでございます。
  94. 石井道子

    ○石井道子君 最近の財政事情の厳しさから、予算の削減とか補助率の引き下げが行われておりますから、規模の縮小も生じているのではないかと思いますが、工事のおくれも心配されるところでございます。ダム建設予算の重点配分につきましては十分配慮する必要があるのではないかと思うわけでございまして、最近の内需拡大対策によります補正予算の編成の中に当然組み入れられるべきではないかと考えますけれども、いかがでございましょうか。
  95. 陣内孝雄

    説明員(陣内孝雄君) ダム事業の必要性につきましては、私どもこの問題の早期実現のために努力しておるところでございますが、現在の厳しい経済情勢に対しまして内需を中心とした景気の積極的な拡大が急務であるということで、今回補正予算が行われるような場合におきましては、この趣旨を踏まえまして十分取り組んでまいりたいと思います。特に現下の深刻な渇水にかんがみましては、ダム事業の推進に十分配慮したいと思っております。
  96. 石井道子

    ○石井道子君 ダムの建設に当たりましては、水源地域の住民の生活というものを第一に考えなければなりません。また、その地域は過疎地域でもありますから大変難しい問題を抱えていると思うわけでございまして、ダム建設についての関係住民の理解と協力を得るためには大変な御苦労と長い年月が必要でございますので、非常にダム建設につきましては難航をしているということがしばしば見受けられるわけでございます。  既に昭和四十八年に、水源地域対策特別措置法が制定をされまして、水源地域の生活再建や、また生活環境、産業基盤の整備を充実する対策がとられてきているわけでございますけれども、その指定範囲の拡大の問題、また生活権に関する補償項目を見直す必要があるのではないかと思うわけでございます。また、制度は違いますけれども、山村振興法とかあるいは過疎地域振興特別措置法などを十分に生かして、その整合性を持った政策を進めることも必要ではないかというふうに思います。今後最も重要視されなければならない水源地対策の改善について、その方針をお伺いをしたいと思います。
  97. 志水茂明

    説明員(志水茂明君) 水源地域対策につきましては、先生御指摘のとおり、水源地域対策特別措置法に基づきましてこれら地域の整備を図りますとともに、別途設立されております水源地域対策基金等によりまして、関係住民の生活再建対策並びに関係地域の振興対策を推進しているところでございます。  これら地域の整備振興を進めるに当たりましては、従来からも山村振興法だとか過疎法、こういったものの諸制度も活用いたしまして総合的な施策を推進しているところでございまして、今後とも関係省庁等の協力を得ましてその充実に努めてまいりたい、このように考えております。
  98. 石井道子

    ○石井道子君 昭和五十二年の三全総を踏まえまして長期水需給計画が昭和五十三年に策定されているところでございますが、その後の人口動態の変化とか産業構造の変化もありますし、生活環境の向上、そして異常気象の問題も多発をしておりますし、住宅建設の促進対策の関係もありますし、いろいろと厳しい財政事情の中で多くの問題を抱えていると思うのでございますけれども、水資源の有限性というものを十分踏まえた上で、やはりこの際見直す時期に来ているのではないかと思うわけでございます。その点についていかがでございましょうか。  また、特に最近の関東地区の異例な渇水状況に照らしまして、昭和五十七年三月に決定されました利根川、荒川水系の計画の見直しもどのように進められるのか、国土庁長官にお伺いをしたいと思います。
  99. 綿貫民輔

    国務大臣(綿貫民輔君) 二十一世紀に向けての我が国のいろいろの地域振興を含めて国土のあり方を取り決めます四全総を三十日の閣議で決定をさせていただきました。その中でも特に我が国の水の問題につきましては、いろいろ委員の皆様方からも御意見もございまして、十分この方向づけについて意を用いたつもりでございます。  今後の全国の総合水資源計画の策定につきましては、これに沿いまして今後策定をしてまいるつもりでございますし、また利根川、荒川水系等の水資源開発の基本計画の改定も早急に進めなければならない、このように考えております。
  100. 石井道子

    ○石井道子君 次に、昭和六十三年度の予算の中で社会保障関係予算についての考え方をお伺いしたいと思います。  我が国は世界に例を見ない大変なスピードで高齢化が進んでおります。年金受給者は一年で百万人近くも増加しておりますし、老人医療費にも大きい影響を与えているところでございます。厚生省予算は毎年一兆円前後の当然増が生じております。六十二年度の当然増は八千億円でしたが、六十三年度も八千億円以上の当然増があることは確実ではないかと思います。昨年も一部は、約四千二百億円くらいは概算要求基準の中で別枠として使われてまいったわけでございますけれども、五十七年度からゼロ、マイナスシーリングが始まって以来、当然増の中で別枠に認められない部分の財源を捻出するために制度改正を次々と行いまして、国庫負担を先送りして切り抜けてまいっております。  昭和五十八年二月の老人医療費の一部有料化を行いましたし、また健保法の改正によって本人の一割負担も実施いたしまして、また六十年度には高率補助金の一割カットを行っているわけでございますし、六十一年、六十二年度の補助率の見直しの中でも、年金については五十七年度以降毎年国庫負担の繰り延べが行われているわけでございます。六十二年度も政府管掌の健保の国庫補助の減額千三百五十億円、厚生年金の国庫負担の繰り延べ三千六百億円、さらに国民年金の支払い月を年四回から六回に変更することによって一カ月分を先送りして、六十二年度の国庫負担を一カ月分を浮かせるというようなやり方も行っておりまして、いろいろと工夫をして現在まで苦難を切り抜けてまいっているのが実情ではないかと思います。  六十三年度予算編成では、制度改革ももう限界ではないかとも思われるわけでございますけれども、老人人口がふえると社会保障費というのは自然とふえてまいりますので、財源がないからといって厳しい概算基準方式が続いておりますと、社会保障制度そのものが崩壊をしないかということが大変心配をされるわけでございます。社会保障費の安定した財源が確保をされ、制度の安定した運営ができるように社会保障特別会計構想が、六十一年には予算審議のときにもございましたけれども大蔵大臣は検討を表明されているわけでございますが、特別会計構想においても、将来とも安定した財源をどうするかが最大の重要な課題ではないかと思っております。社会保障に対する国民信頼を得る上からも、六十三年度予算においては、その財源について十分配慮すべきであると思いますけれども、社会保障経費をどのように将来とも確保していくかについて、大蔵大臣と厚生大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  101. 斎藤十朗

    国務大臣(斎藤十朗君) ただいま先生御指摘をいただきましたように、高齢化が大変進む中で、厚生省所管の予算、その当然増というものは相当な額になるであろうというふうに考えております。  当面する問題といたしまして、六十三年度の予算要求に際しましても、相当な当然増をどのように吸収していくかということは非常に重大な問題であり、これから私ども全力を挙げてこれに取り組み、努力をいたしてまいりたいと考えておりますが、まずは、先生が今御指摘もございましたように、その当然増経費を吸収する意味でのいわゆるシーリング枠の特別枠というものについて、財政当局を初め関係の皆様方に十分なる御理解をいただき、最大限の枠確保のために努力をいたしてまいりたいと考えておりまして、その上、国民基本的な社会保障制度、これらが安定的に運営できるような、福祉の後退と言われないような、そういう予算を編成をいたしてまいるように努力をいたしてまいりたいと考えております。  なおまた、もう少し中長期的に考えまして、今後とも増高いたします社会保障経費、これにどう対応していくかというお話でございますが、これにどのよう対応していくかということは非常に重要な問題であると考え、私どもも鋭意検討をいたしておるところでございます。  社会保障特別会計という構想、また、そのための福祉目的税という構想、いろいろあろうかと思うわけでございます。今ちょうど衆議院におきまして、共産党を除く各党間の税制に関する協議会が持たれて、税制の面からの広い角度からの検討がなされておるわけでございますので、その点につきましては、そういった点を十分横目で見ながら私どもも真剣に、前向きに、そしてまた、いつでも対応できるように検討を重ねてまいりたい、こう考えておるところでございます。
  102. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 基本的には厚生大臣とよく御相談をしながらやってまいりたいと思っておるわけでございますけれども、高齢化は進展をいたしてまいりますし、また、年金がいわゆる成熟化をいたしてまいりますから、社会保障関係費につきましては今後とも多額の当然増が見込まれる、このことは避けられないところだと考えております。そして、昭和六十二年度におきましても、したがいまして概算要求基準では四千百八十八億円の増額を設定いたしました。  そこで、明年度の六十三年度の問題はこれからでございますけれども国民生活の基盤として、将来にわたって安定した、かつ有効に機能するよう制度、施策をできるだけ見直すものがあれば見直しを進めていきますとともに、必要な年金あるいは手当の水準の確保、老人対策、心身障害、保健医療等々、いろいろな身近な福祉施策の面におきましてもできるだけ配慮をいたしてまいりたいと思っております。まだ多少時間がございますので、よく厚生大臣のお話を承りながら御相談をしてまいりたいと考えております。
  103. 石井道子

    ○石井道子君 次に、麻薬、覚せい剤問題についてお伺いをいたします。  最近、我が国では覚せい剤の犯罪が大変ふえております。毎年二万人ぐらいずつふえていると聞いているわけでございますが、戦後のヒロポン乱用に続く第二のピークとも言われております。しかし、最近では、その乱用が青少年とか家庭婦人にも浸透しつつあるので、大変注意を喚起されているところでございます。一方、海外では欧米諸国を初め世界の多くの国々で、ヘロインやコカインなどの麻薬の乱用が増大をしており、我が国への流入も大変心配をされております。私は、麻薬、覚せい剤の乱用は、国民の保健衛生に対する危害ということにとどまらず、健全な家庭、健全な青少年の育成という観点から極めて重要であると思います。  このような見地で、私は青少年を初め、広く国民に対して麻薬、覚せい剤の真の恐ろしさを十分に啓発し、薬物の乱用を許さないというしっかりした世論の形成を通じて、乱用の防止を図る必要があるものと考えているわけでございますが、厚生大臣は、麻薬、覚せい剤対策の推進に非常に積極的に取り組まれているわけでございまして、今後ともその充実に努めていただきたいと思います。  ここで、大臣の御決意のほどをお伺いしたいと思います。
  104. 斎藤十朗

    国務大臣(斎藤十朗君) 先生御指摘ように、現在日本におきましては、麻薬の面ではほとんど問題のない状況になっておりまするけれども、覚せい剤につきましては、ここ数年間、毎年の検挙数が二万人台を維持するというような、高値安定というような好ましくない状況にございます。そして、特に青少年やまた家庭婦人層に侵入をしつつあるということは、大変見逃せない状況にあるというふうに考えております。  厚生省といたしましても、この覚せい剤乱用防止対策に全力を挙げて今取り組んでおるところでございます。何といいましても、水際作戦、また密売等を早期に徹底的に摘発をするということが大事でありますとともに、また今、先生から御指摘がありましたような麻薬、覚せい剤に対する啓発活動ということも一方で非常に大きく取り上げていかなければならないのではないかと、こう考えております。  厚生省といたしましても、この六十二年度予算におきまして、覚せい剤等の乱用防止推進員制度拡充を図り、また各保健所ごとに相談窓口を設置をするというようなことを行ったり、また青少年向けの啓発活動の強化などの新しい予算を計上をいたしまして取り組んでおるところであります。同時に、必要なことは、一つ国民運動というような形で、官民一体となった思想啓蒙運動を行っていくということが必要であろうという観点から、本年一月の閣議におきまして政府全体として取り組んでいくということを決定をいたしまして、そして各民間の方々のお力をいただきまして、六月一日付で財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センターという民間啓蒙活動団体をつくったところでございます。  そういう中で、今先生が御指摘ありましたように、この麻薬、覚せい剤に対する恐ろしさというものを啓発していくと同時に、また周りの者もこういうものを許さないという思想、国民的世論の盛り上がりというものをつくっていくということが今非常に大事なことであるということで取り組ませていただいておるところでございます。
  105. 石井道子

    ○石井道子君 先日、ベネチア・サミットにおきまして、特に麻薬に関する議長声明も行われたところでございます。また、六月の国連の主催によります国際麻薬会議が開催をされまして、厚生大臣もそれに御出席したと聞いているわけでございますが、このよう会議が開催されるに至ったことは、世界的な薬物乱用の増大という背景があると理解をしているところでございまして、その会議の状況とその内容について国際的視野に立った対策を今後どのように生かしていかれるのか、御所見をお伺いしたいと思います。
  106. 斎藤十朗

    国務大臣(斎藤十朗君) 今お話のございましたように、六月の十七日からオーストリアのウィーンにおきまして国連加盟国による国際麻薬会議が行われました。  これはさかのぼりますと、レーガン大統領夫人が提唱されて夫人サミットが行われ、そのときに麻薬、覚せい剤の撲滅ということが提言をされましたわけでありますが、これを受け、国連のデクエヤル事務総長が今回の会議を提唱されたところであります。また今お話がございましたように、サミットにおきましてもこの麻薬会議の成功を期待すると、こういうような雰囲気の中で行われたわけでございます。閣僚レベルの国際麻薬会議としては初めてのことだそうでございまして、そしてまた、参加国も約百三十カ国に及ぶというよう会議で、いかに国際的なこの問題に対する関心の高さというものがあるかということを感じさせたところでございます。  この会議におきましては、生産地対策、また密造密売対策、こういったことについての国際的な協力、そしてまた、特に私の方から提言をいたしたわけでありますが、先ほども申し上げましたように、乱用防止のための啓発活動ということについても国際的に力を合わせてやっていくべきではないかということを申し上げ、今回の国際会議におきましてもそういった教育の面からの普及啓蒙活動ということも取り上げられ、いろいろな場でこれからの国際協力を一層強めて、そして世界人類の中から麻薬、覚せい剤を撲滅してまいろう、こういう強い誓い合いが行われたというふうに御報告申し上げたいと思います。
  107. 石井道子

    ○石井道子君 先日、東京の東村山市の特別養護老人ホーム松寿園の火災におきまして死者十七名を出すという大惨事がございまして、大変痛ましい、大変残念なことでございました。  松寿園の場合には、消防法で義務づけられました防火体制で、消火器や屋内消火栓の配置などについてはいずれも基準に合致しておりまして、定期的な防災訓練も行っていたということでございますから、松寿園の火災によって特養ホームの入所者のような災害弱者の安全を図る、安全を守るためには、これまでの基準ではいろいろ不備な点が出てきたのではないかと思うわけでございます。厚生大臣は早速、老人ホームなどの社会福祉施設の防災基準の抜本的な見直しを指示されまして、松寿園の場合にはスプリンクラーの設置が義務づけられている床面積六千平方メートル以下であったためスプリンクラーがなく、大事に至ったことから、緊急対策として特養ホームなどにスプリンクラーを設置するための補助金を補正予算で処置するという大変素早い対応をいただいたわけでございまして、心強く思うわけでございますが、その概要についてお伺いをしたいと思うわけでございます。  また、スプリンクラーの設置費は国が二分の一を負担し、残りを都道府県と福祉施設の設置者が四分の一ずつ負担をしているわけでございますから、福祉施設がこのような負担ができるかどうかということが大変疑問でございまして、この負担の軽減策をとるべきではないかと思うわけでございます。福祉施設が自己負担分の費用が都合できないためにその設備がおくれまして、また惨事が起こってしまうというふうなことがありますと困りますので、その対策が早急に必要ではないかと思うわけでございますが、スプリンクラーはどのような施設を対象として設置する予定になっておりますか、お伺いをしたいと思います。
  108. 小林功典

    説明員小林功典君) スプリンクラー設備の設備補助の対象施設といたしまして、私どもは現在入所施設のうち、例えば特別養護老人ホームでありますとか、身体障害者療護施設でありますとか、あるいはまた精神薄弱者更生施設、こういったいわば自力で避難することが困難な要介護者が入所している施設と、こういうふうに考えております。
  109. 石井道子

    ○石井道子君 夜間の管理体制が寮母さん二人だけというようなこともありまして、夜間の宿直体制ということの強化がもちろん大切ではありますけれども、緊急の場合に地域の住民に力をかしてもらえるような方法を考えておくことも必要と思いますし、また一刻も早く消防署に連絡をすることが必要でございます。近くの消防署との間に、ボタンを押すと非常事態が即座にわかるようなホットラインを引くということも必要ではないかと思うわけでございまして、東京都では、都内の特養ホームに消防署直結の非常通報装置を設置することにしたということを聞いております。国の方でもその点について考えるべきではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  110. 小林功典

    説明員小林功典君) お話がございましたように、確かに社会福祉施設におきましては老人、心身障害児等のいろんなハンディキャップを持った方が入所されております。そういうことを考えますと、特に火災等の災害発生を未然に防止するということが大事なことはこれは申すまでもございませんが、同時に、万一火災が発生したような場合には消防機関への迅速な連絡というのは重要でございます。  現在、先生も御承知と思いますが、厚生省と消防庁合同で消防安全対策検討委員会というのをつくっておりまして、鋭意検討していただいておるところでございます。そこで、早期通報方策を含めまして、防火管理体制全般につきまして今検討を行っておりますので、その結果を踏まえて適切に対処してまいりたいと思いますが、ただいまのホットラインの御提言も参考にさしていただきたいと思います。
  111. 石井道子

    ○石井道子君 次に、男女雇用機会均等法施行一年後におきます成果と課題についてお伺いをしたいと思います。  職場の男女平等の実現を目指しまして男女雇用機会均等法が施行されまして、ことしで一年になるわけでございますが、保護と平等の兼ね合いなどをめぐりまして、法案成立前からこの法案の取り扱いについては非常に賛否が渦巻いておりました。均等法の施行のこの一年間を振り返ってみて、募集とか採用に関してある程度の成果があったのではないかということも感じるわけでございます。  総理府広報室が編集しております六月十五日付の「今週の日本」という広報紙がございますけれども、これの中で労働省の婦人局の太田婦人政策課長が、「新聞、雑誌等の求人広告が」、「これまで「男子のみ」とあった広告が「男女問わず」に変わったり、四年制大卒者の求人についても従来「男子のみ」だった企業が相当減って、大卒女子にも大幅に門戸が広がりました。」とおっしゃっているわけでございまして、努力義務であります募集、採用の面で、ある程度成果が上がったことは大変喜ばしいことではないかと思うわけでございます。  一方、人事院の外郭団体であります日本人事行政研究所が去る五月四日にまとめた「将来あるべき人事管理を考えるための基礎調査」によりますと、均等法が施行された六十一年に企業が採用した女子社員の職種別採用には、総合職として採用されたのは一企業平均で男子が四十三人に対して女子は一人にすぎません。その上、一般職その他は女子中心で、男子はほとんどないというのが結果となってあらわれているわけでございますが、女子への門戸は広がったと言われているものの、企業の体質はまだ女子排除の傾向が残っているのではないかと感じられるわけでございます。  このような実態を踏まえますと、基幹業務に従事する総合職と補助業務の一般職に振り分けるコース別人事制度の導入が大変最近進んでおりますけれども、総合職に配置された女子社員はごく一握りの人たちでございます。また均等法施行後の女性の転勤問題も大きなネックになっているわけでございまして、入社試験の面接や総合職と一般職の振り分けの際に、一部の企業においては転勤を伴う、転勤をさせるということを強調しているとも聞いております。本人の意思を確かめ、また自覚を求める点ではこのことも必要かもしれませんし、女性の置かれた立場、環境というものが千差万別であるということを踏まえて、いろいろと難しい点があると思いますけれども、女子だけに最初からコースを限定することもちょっと不都合な感じもするわけでございまして、今後企業が改善しなければならない課題がいろいろとあるのではないかと思います。  女性の配置、昇進の問題もその点があるわけでございまして、その点についての問題につきましては、女子社員が総合職に移りたくても移れないというような不満も時にはあると聞いております。労働大臣はこうした総合職とか一般職のコース別の振り分け方法についてどのようにお考えでございましょうか。
  112. 平井卓志

    国務大臣(平井卓志君) ただいま委員から御指摘ございましたように、男女雇用機会均等法施行後丸一歳を迎えまして、御指摘のとおり募集のみでなくて、求人の増加、また役職への女子の登用、さらには教育訓練カリキュラムの男女の同一化、さらには男女別定年制の是正等、全般に雇用管理を法の趣旨に沿って改善した事例は多く見受けられております。  いずれにいたしましても、今後とも昇進とか昇格、こういう問題を含めて、性別による差別はあってはならぬということが原則でございまして、こういう雇用の分野における男女の均等取り扱い、これはやはり企業主も、また社会のコンセンサスも得ながら着実に実現されるように法の適切な運用に努めたい。  今御指摘のありましたコース別の人事管理のあり方、私は詳細にすべてを承知いたしておるわけでございませんが、企業には企業それなりの企業独自の管理方法、これは企業別に違いますけれども、その中でやはり我々が今後さらに指導していかなければならぬ問題というのは、性別による差別は原則的にこれを排除するということでなければならぬと思うわけで、さらにそういう法の趣旨に沿って今後指導強化してまいりたい、かように考えております。
  113. 石井道子

    ○石井道子君 去る五月七日に、政府中曽根総理を本部長といたします婦人問題企画推進本部の会議を開きまして、「西暦二〇〇〇年に向けての新国内行動計画」を決定しております。また労働省は五月三十一日に、昭和六十二年から六十六年における女子労働者の福祉対策基本方針を決めて、今後の婦人行政を進めることとしておりまして、まことに好ましいことと存じます。  労働省が女性のためにいろいろな企画を立てていただいているわけでございまして、これが計画倒れではなくて、実際にその実効を上げる必要があると思うのでございますけれども、労働大臣は女子労働者福祉対策基本方針に基づきまして、その具体的な施策についてどのように推進されるか、お伺いをしたいと思います。
  114. 平井卓志

    国務大臣(平井卓志君) これはもう委員御案内のように、総理みずからがこの企画推進本部の本部長でございまして、私ども閣僚もそのメンバーでございまして、趣旨は十分に理解をいたしております。  例えば、労働基準法中の母性保護、この規定については、御案内のよう昭和六十年に産前産後休業期間の延長、さらに保護措置拡充する改正を行っております。また、従来から事業主に対して労働基準法等の遵守の徹底も図っております。  さらに男女雇用機会均等法では、女子労働者の妊娠中及び出産後の健康管理に関し、事業主に対し母子保健法の規定による保健指導、または健康診査を受けるための必要な時間を確保する等の措置を講ずるよう努力を要請しておりまして、労働省では事業主の配慮すべき必要な措置について指導基準を設定しまして、その徹底に努めてまいったところでございます。  今後ともこの「西暦二〇〇〇年に向けての新国内行動計画」を踏まえながら、労働基準法の遵守、指導基準の徹底等を図ると同時に、労働環境、作業態様の変化等に伴う母性健康管理対策のあり方をさらに検討してまいる方針であります。
  115. 石井道子

    ○石井道子君 次に、今深刻な失業問題が起こっております。総務庁が六月三十日に発表した労働力調査によりますと、ことし五月の完全失業率が三・二%と過去最高の高い率となっております。完全失業者は百九十一万人で、このうち解雇などによるものが六十四万人で、一年前の六十一年五月に比べますと十二万人もふえているわけでございまして、雇用情勢の悪化が一段と進行しております。経済企画庁が六月十六日に発表した一月から三月の国民所得統計速報では実質GNPの伸びが年率四・九%となったことから、経済企画庁は、企業収益も上向き始め、景気は底入れし、緩やかな回復が起こっていると判断したようでございますけれども、こういう明るい材料はあっても、これがすぐに雇用情勢の悪化を改善することにつながらないのが難しいところでございます。  野村総合研究所は、鉄鋼などの構造不況業種の人員整理が今後一層強くなれば、六十二年度の平均失業者数は二百三万人、失業率は三・三%と厳しい予測を出しております。政府においても、通産省は、急激な円高により産業構造の調整が急テンポで進み、このまま放置すれば六十五年には失業率は四%になるのではないか、失業者二百五十万人という数字を警告をしているわけでございます。日本企業が抱える過剰雇用人員を九十万人と推計している調査機関もあるわけでございまして、労働大臣はこの雇用問題は今日の日本が早急に解決しなければならない最大の課題ではないかとおっしゃっているわけでございますし、日本国民を路頭に迷わせることがあってはならないわけでございまして、この雇用対策の万全を期さなければならないわけでございます。この点についてどのようにお考えでございましょうか。
  116. 平井卓志

    国務大臣(平井卓志君) 御指摘ございましたように、五月の統計によりますと三・二%という史上最悪の失業率という数字が出てまいった、このことは大変深く憂慮をいたしておるわけでございます。  ただ、委員からも御指摘ございましたように、片一方でやはり有効求人倍率というのが本年一月〇・六一から月を追うごとに上がってまいりまして、五月は〇・六五という、緩やかでございますが改善を見ておる。同時に、有効求職者の数も減っておるということが、なかなか雇用の実態を踏まえました場合に明確な説明がつかない。一つには、私は非常に難しい過渡期に差しかかっておる、かよう判断で、さらに分析を進めておるわけでございますが、緊急経済対策、さらにはその中に雇用対策等も含めて今政府は万般の施策をやっておるわけでございます。ただ、委員も御理解いただけると思いまするのは、三十万人等の雇用対策、さらにはその中に新法でございます地域の雇用対策等四月一日から施行をいたしておりますが、やはりそういう政策効果は最低限見ましても半年ないしは九カ月、十カ月のずれがございまして、そういうところでやっぱりタイムラグをどうしても見ました場合、その間の政策の浸透に今一層の努力を重ねまして、五月の数字は数字として、この二、三カ月の数字は特に重大な関心を持って推移を見なければならぬというふうに考えております。  いずれにしましても、不況業種、さらにはその関連地域において非常に雇用問題が深刻化しておりますことは、私どもも承知をいたしておりまして、政府全体、総合政策をもってただいま鋭意取り組んでおるわけでございます。
  117. 石井道子

    ○石井道子君 次に、宮澤大蔵大臣にお伺いをしたいと思います。  昭和五十八年八月に閣議決定されました「一九八〇年代経済社会の展望と指針」によりまして、赤字国債からの脱却年度がそれまでの五十九年度から七年間延長されまして、六十五年度となりました。この財政再建路線によりまして、一般歳出を縮減し、財政再建に向かって大変な御苦労をされていらしたわけでございますけれども、六十五年度赤字国債脱却という目標年度がもう目の前に差しかかっているのに、我が国の財政は相変わらず赤字国債に頼るというのが実態でございまして、六十二年度予算を見ると、以前よりは少ない額ではありますが、四兆九千八百十億円、依存度が九・二%となっております。  また、ことし政府が出されました「財政の中期展望」によりますと、六十五年度までの赤字国債脱却の仮定計算を見ますと、六十三年度、六十四年度と毎年度一兆六千六百億円の国債を減額する一方、税収はやはり毎年度六・六%増加することとなっているわけでございますけれども、仮定計算で示された六十五年度までの、六十三年度、六十四年度に一兆六千六百億円の国債減額、また六・六%税収確保の達成については十分自信がおありでございましょうか。そして六十五年度に赤字国債脱却が可能であるかどうか。さらに最近の内需拡大対策によります景気浮揚対策、緊急経済対策との絡みでその両立が可能であるかどうか。率直な御意見をお伺いしたいと思います。
  118. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 六十五年度に赤字国債依存の体質から脱却できるかどうかということについてのお尋ねでございますが、御指摘になりましたように、ここまで参りますとなかなかこの目標達成は厳しいということは認めざるを得ないと考えております。  ただ私が、かと申しまして、この目標を今放棄するということをちゅうちょいたしておりますのは、一つには、もし六十五年度が難しいのならば、いつならば可能かということを、かわりの目標を掲げなければなかなか財政削減の努力は難しゅうございますが、こういう状況の中で、それならば何年ならばいいかということを整合的に決定いたしますのには、余りにいろんな要素が不確定でございます。殊に最近は、例えば為替レートのように国外からの要因で経済運営が相当に影響を受けるといったようなことがございますので、余りに前広に新しい目標を立てるということは、それだけやはりかなり困難になるという問題が一つございます。  それからもう一つは、ちょうど今もお話がございましたが、我が国としては、やはり国際的にあるいは国内的に内需の拡大をしてまいらなければならないという問題がございまして、先般も緊急経済対策を立て、間もなく補正予算の御審議をお願いいたしたいと考えておるわけでございますが、その際に、これから将来に向かいましてNTTの株式の売却代金というものがかなりそこそこの値で売れましたらば、援軍になって施策を助けてくれることができるような見通しを持つに至りました。  そういたしますと、経済でございますから努力を重ねてまいりますと、いわゆる拡大基調に経済全体が乗るということは、これは決してあり得ないことではない。また、本来そうでなければいけない。そうでございませんと、財政自身も実は苦労をするということでございますので、そういう運営に経済が入っていける、それは決して望みなきにあらずとも考えております。  あれこれ考えますと、六十五年までにまだちょっと時間がございますので、この問題についてはこの目標を放棄せずに、もう少し時間がたちますまでいろいろな努力を続けていくべきであろうと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  119. 石井道子

    ○石井道子君 経済企画庁長官も、財政再建路線の見直しを行う必要性を示されていると伺っておりますけれども、今回二兆七百九十億円の補正予算規模で行われるそのような緊急経済対策ということがあるわけでございますけれども、そのことによってGNPへの影響、それから貿易摩擦に対しましてどのような影響を及ぼすとお考えでございましょうか。また、内需拡大のための積極的財政出動と財政再建の両立は可能かどうか、その点についてもお伺いをしたいと思います。
  120. 近藤鉄雄

    国務大臣(近藤鉄雄君) 先生御指摘の緊急経済対策でございますが、これが今年度のGNPにどの程度の寄与をするかということでございますが、この緊急対策がいつどういう形で実行されるかということについては、もう既に当初予算につきましては、上半期に公共事業について八割を超える契約をしようと、そういうことで関係各省鋭意努力をしている最中ではございますが、さらに補正予算の成立をまって新たな公共事業支出等も行えるわけでございますので、このあたりずっと検討してまいりませんと、現実的な数字をここでお示しすることはまだできない面もございますが、ただ、何せ、六兆円、減税を含めて六兆円、GNPの一・八の額でございますし、私どもこれが順調に実行されるならば、向こう一年間でGNPを二%程度押し上げるものと、こういうふうに考えておりますし、さしあたって当面六十二年度どうだと、こういたしますと、まあその半分程度、すなわち一%程度GNPを押し上げるものであると、かように考えているわけでございます。  国際収支の改善はどうかと、こういう御質問でございますが、これも我が方、内需拡大政策と同時に、大蔵大臣からもお話がございましたような為替レートがどうなるか、また対外の、向こう側の国際競争力の問題だとか、いろんな問題を勘案しなきゃなりませんが、十億ドルの政府特別調達も考えてございますので、合わせて五、六十億程度の経常収支の改善に資するものである、かように考えておるわけでございます。  最後に、こうした緊急経済対策と財政再建とはどうなんだ、こういう御指摘でございますが、当然、この建設国債の増発は国債負担の増にはなるわけでございますが、同時に、内需拡大によってGNPの増大はこれは税収の確保にもなってまいりますので、この段階で一概に言えない。六十一年度の税収は私ども考えた以上の増収という事実もございますので、こうした総合的ないろんなものを考えていかなきゃならないわけでございます。  ただ、私は、今回の財政主導による緊急経済対策、あくまで緊急経済対策であって、いつまでも財政主導で、財政がすべて内需拡大におんぶするという形ではいけないのではないか。したがいまして、当面財政主導でまいりますが、漸次民間活力によって、内需拡大の民間活力の果たす割合をだんだん拡大していく方向で、財政、金融、経済の総合的な展開を図ってまいる必要がある、かように考えている次第でございます。
  121. 石井道子

    ○石井道子君 次に、地方財政についてちょっとお伺いをいたしますけれども、最近の財政の緊迫した状況の中で、補助金カットも進んでおりますし、地方財源の充実ということが大変緊急な課題ではないかと思います。  今回、補正予算の中の公共事業の地方負担分というものが約一兆二千億ぐらいと見込まれていると伺っておりますけれども、その対策についてはどのようにお考えでございましょうか。  また、行政改革を進める上において、行政事務、権限の移譲と再配分についてさらに推進すべきではないかと思っておりますけれども、大臣はどのようなお考えでございましょうか。
  122. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) このたびの補正追加予定の公共事業等によって必要になります地方負担につきましては、今後大蔵省と協議をいたしまして、必要な地方財政措置を講じて事業執行に支障が生じないように適切に対処してまいりたいと思います。  また、その補正追加の公共事業等に必要な地方負担でございますが、一般の場合でございますと、その場合には全額地方債で措置をしてきたところでございますが、今度の場合は非常に額が多うございますので、これまでどおり全額地方債で対応するというわけにもいかないのではないかと考えております。これから大蔵省とよく協議をいたしまして、事業が適切に執行できますように対処していきたいと考えている次第でございます。  それから、行政改革について御質問がございました。  地方公共団体への権限移譲等につきましては、政府といたしましては、国、地方を通ずる行政の簡素効率化及び地方分権を推進するために、住民に身近な事務は、住民に身近な地方公共団体において処理できるように、国、地方間の役割分担のあり方につきまして幅広く検討を行ってまいりました。昨年の、地方公共団体の執行機関が国の機関として行う事務整理及び合理化に関する法律等によりまして、大臣権限の知事への移譲や機関委任事務の団体事務化等を図ってきたところでございます。  しかし、これまでの権限移譲は地方公共団体の長年の要望から見ますと非常に不十分であると考えられます。これからもあらゆる機会をとらえて一層の整理合理化を図っていきたいと考えているところでございます。
  123. 石井道子

    ○石井道子君 時間がなくなってしまいましたので、最後に農薬のことをちょっとお伺いしたいと思いますけれども、最近農薬による事故というものが大変多くなっております。特にパラコート関係の農薬の事故が非常に多くなっておりまして、せんだっての農薬入りドリンクとか、あるいは中学校においての給食で生徒が使ったと、そんなようなこともありましたり、また農薬による事故死とか自殺とか、そんなことが大分ふえている状況があるわけでございますけれども、このようなパラコートなどの農薬が、製造、販売の段階では大変厳しくチェックをされますけれども、販売された後の保管、管理というものが大変ルーズになっているのではないかと思うわけでございまして、その点の農薬の安全管理、保管についてどのよう指導をなされておりますか、お伺いをしたいと思います。
  124. 兵藤宗郎

    説明員(兵藤宗郎君) パラコートによる誤飲事故あるいは自殺、犯罪等、目的外使用で非常に残念な事故が起きているというふうに思っております。  パラコートの薬剤としての開発につきましては、それを飲み込んだときにすぐ吐き出すようにということで催吐剤を加えるとか、あるいはすぐに識別できるようにということで青色の色素を加えるとか、あるいは飲んだときにすぐ、においでわかるというようなことで、においを加えるとか、そういった努力をこれまでしてまいりましたし、それからさらに、従来ですとパラコートの含量二四%というのが一般的な農薬でございましたけれども、最近はパラコートの含量を五%に落としまして、それにさらにジクワットというような別の除草剤を加えました新しい形態の除草剤を開発するということで、こういったパラコート剤がそういった事故につながらないようにと、薬剤からの努力をしてまいったところでございます。  さらに、先生御指摘ように、それが農家の手に渡る段階では、その販売業者に対しまして、農家にその安全な管理、保管、そういったことについて十分な指導をしていただくようにということで、農薬の販売業者にはそういった指導を徹底してまいったわけでございますし、また一般農家に対しましてはさらに普及等を通じまして、それの保管に万全を期すようにというよう指導をしてまいっているわけでございます。  さらに、そういった一般的な指導だけではなかなか十分に趣旨が徹底しないということで、厚生省さんとも共催をいたしまして、毎年金国的には六月を農薬の危害防止月間に指定をいたしまして、そういったいろんな啓蒙あるいは講習、そういったことを通じまして農家あるいは販売業者、そういったところに対して安全な管理、使用についての徹底を図ってまいったところでございます。  さらに、非常に短時間ではございますが、六月の運動月間の一週間につきましては、全国的にテレビ放送を通じまして、パラコート剤の管理あるいは安全使用について趣旨を徹底するというようなことで、これからもさらに、農薬面からの開発はもちろんでございますが、安全な保管、管理について十分な指導をしてまいりたい、かように考えております。
  125. 及川順郎

    ○及川順郎君 初めに経済企画庁長官にお伺いをしたいわけでございますが、六月の経済企画庁の月例経済報告を見ますと、個人消費や住宅建設など内需が堅調で、その上、企業収益に下げどまりの兆しが出ているということで、先行きの明るさが見えるというような、こういう見通しが出ておりますけれども、一方、四月から五月の輸出数量が大幅に減少して、民間設備投資も引き続き停滞していることからすれば、まだ景気は底を打ったという感じはいかがなものかなという、こういう感じがするわけでございますが、これから本格的な回復に向かう見通し、またその具体的な裏打ちされる要因というものについて、長官の御見解を承っておきたいと思います。
  126. 近藤鉄雄

    国務大臣(近藤鉄雄君) 先生も御指摘のとおり、最近の輸出はまさに円高効果もございまして減少ぎみでございますが、率直に申しまして、私の今後の経済運営に当たりまして、輸出増大というものが需要拡大のいわば主導的な役割をむしろ果たすような形を改めなきゃならないのであって、むしろ輸出が下がった分を内需でいかに補うかということがこれからの経済運営の基本であると考えておるわけでございます。  そういう観点から考えますと、これも先生御指摘でございましたが、個人消費は堅調でございますし、殊に民間の住宅投資は非常な伸びを、まさに記録更新ぐらいな感じでおりますし、また設備投資におきましても、確かに輸出関連においてはまだ低迷はございますが、非製造業、輸出に関連しないような分野の設備投資は最近堅調でございますので、そういうことを踏まえて、これに緊急経済対策が既にもう上半期で八割前倒しということで、関係各省庁において契約を進めでございます。地方においても進めておりますし、またこれは大蔵大臣にも大変御努力をいただいておるわけでございますが、まさに円ドルレートの安定というのが少なくともこれ以上悪化していかない、現在の水準で安定基調でいくということになってまいれば、在庫の方も大体底を打ってプラスに転じていくのではないかと思いますし、これに海外の安定のもとで国内の設備投資が、非製造業だけでなしに、製造業関連においても今後出てくるということが期待できれば、私は今後比較的順調な形の経済の推移を期待してもいいと、かように考えておる次第でございます。
  127. 及川順郎

    ○及川順郎君 最近のマネーサプライは昨年、前年比一〇・二%増になっておりまして、非常に急速な伸びを示しているわけでございますが、企業を中心にしたキャピタルゲイン志向が強まって、株式、債券、土地などの投機的取引が活発化しているというのがその要因と見られておるわけでございますが、こうした取引に金融機関が積極的に貸し出しを行っている。例えば全国銀行の不動産業向け貸出残高は大体六十二年三月末で三十兆円、三十兆二千九百八十三億円、前年に比べますと三六・二%増になっておるわけでございますが、六十一年度のこれは一年間のこの総貸出残高の増加額の三分の一以上、これが不動産業向けに占められているわけでございます。金融緩和のもとでこの傾向がこのままずっと進んでいきますと、一般の物価にインフレが波及するという危険性が無視できないというよう指摘があるわけです。これらの金融政策に対しまして、今日、日銀さんとしてどういう見解を持っておられるか、また将来的な見通しも含めてお答えを賜ればと思います。
  128. 青木昭

    参考人(青木昭君) 御指摘のとおり、マネーサプライがふえておりまして、この五月のM2プラスCDの併算というのが前年比一〇・二%増、二けたに乗せるというような伸び率でございます。しかも年初来伸び率がだんだん高まってきたということでございますし、そういうふうに金融緩和が進むに従いまして、やはり土地といったような既存資産の取引が活発になるというふうなこと、あるいはそういうものの値上がりが目立ってくるというようなことがあるわけでございます。  ただ、土地を除いて物価というようなことで見てまいりますと、これまでのところ物価は大変落ちついておるわけでございまして、当面これが、その国内の需要の要因から物価の安定が大きく崩れるというような懸念もまだ出ていないというふうな状況でございます、マネーサプライの動向には十分注意を払う必要があると思っておりますけれども、当面の金融政策の大きな課題は、やはりG5、G10といったような国際協調のもとで為替の安定を実現していくということが引き続き重要な課題になっておるわけでございます。  そういった意味から、私どもといたしましては、やはり当面はこれまでの金融緩和基調を維持していくということが適当であろうと思っておりますし、またそういったことのためにも金融市場の金利を、公定歩合、今二・五%でございますけれども、それとつり合いのとれた姿に維持していくというようなことが大事であろうというふうに思っておるわけでございます。もちろん金融緩和の行き過ぎに伴う弊害というのを何とか生じさせないようにしなきゃなりませんので、マネーサプライの動向等には十分注意していくつもりでございますし、それから金融機関の貸し出しなどにつきましては慎重な態度を引き続き要請していく、必要があれば機動的、弾力的に運営をしていく、こういうことが基本的な考え方でございます。
  129. 及川順郎

    ○及川順郎君 ありがとうございました。  きのうの大蔵省発表によります六十一年度決算で、二兆四千二百八十四億円という増加を、当初見通しから見ればかなり大きい増収を見ているわけでございますけれども、この税収の増加に対して、大蔵省としてどのようにその原因を分析をされておられるか、またこの要因に自然増収の要因を含めまして、この税収の要因というものは健全な方向で理解してよろしいかどうか、大蔵大臣にまずお伺いをしたいと思います。
  130. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御指摘ように、かなり大きな自然増収があったわけでございますが、まず結論から先に申し上げますと、これが今後の税収の趨勢を即意味するというふうにはなかなか考えにくいと見ておくべきではないかと思います。  と申しますのは、まずかなり大きく増収になりました法人税、三月期の法人決算などでございますけれども、非製造業の法人は概してよろしゅうございましたし、中小企業もそう悪くはないという感じでございましたが、製造業の法人は本来営業利益はそんなによろしくない、御承知のような状況である、しかし実際にはいろいろ金融収支であるとか、あるいは有価証券、株式等の処分であるとかいったようなことで、営業外利益を相当計上しておる、それが殊に製造業の法人の意外に悪くない決算になっておる大きな原因だというふうに考えます。  それから、個人の所得税の申告分につきましても、現在の土地の価格の上昇というものを反映いたしまして、そこから出ます譲渡所得といったようなものが相当大きく出ておりますし、同じことは相続税についても言えるかと存じます。そのほかに大きな増収は、有価証券移転取引税でございますけれども、これはもう御承知のような株式の取引のブームを反映いたしました。  といったようなことが増収のかなり大きな原因であるといたしますと、これは今まさに及川委員が御指摘になっておられます金融の緩和ということと無関係とは思えない要素が相当ございますので、したがって、今回こういう増収が出たので、これで今後税収の基調というものはかなり強く楽観的に見ていいかどうかと申しますと、ただいま申し上げましたようなことは、いわば一次的な要因と考えるべきだと思いますので、今後の増収を示唆するとは必ずしも言えないというふうに私どもは考えております。
  131. 及川順郎

    ○及川順郎君 今回のたけを見ますと、大変な増加、しかもこれが健全にこのまま推移していくという状況で考えれば、六十二年度の税収も、これまた引き続き伸びていくだろう。そうしますと、これが減税財源との絡みの中で、今の協議の推移を見るまでもなく、減税財源にある程度の見通しが立つのではないか、こういうことになってくるわけでございますが、今大臣の御見解を承りまして、まだその辺はそういう減税財源との絡みで見通す状況には至っていないという認識でしょうか。
  132. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 六十一年度の自然増収に関します限りは、数字がほぼ確定いたしたわけでございますので、そこでこれから地方へ分けます交付税等々を差し引きいたしましたりいろいろございますけれども、それから、間もなく御審議をいただこうと考えております補正予算の中で既に一部先取りをいたしておる点もございます、等々を差し引きましても、一応この昭和六十一年度に与野党でいろいろ御検討になっておられます所得税の減税でございますけれども、この程度のものは、金額的にはこの自然増収で賄えるという感じでございます。  ただ、法制的には、これは半分は国債償還をするとかそういう規制がございますので、その点は法律を改める必要があるわけでございますけれども、係数としては、この自然増収で、この際のいわゆる前倒しに当たります所得税の減税には、ほぼ数字は見合うという感じなのでございますが、それはこの際の減税分で先行、前倒し分でございまして、将来の問題になりますと、つまりこれだけの税収を六十三年度に向かってこのベースで見込めるかということになりますと、先ほど申しましたように、それは即断しがたいということでございますから、これはまた別途の問題になろうと存じます。
  133. 及川順郎

    ○及川順郎君 今回の、六十一年度の税の自然増収を見ますと、これは増加だから、増収だだからよかったと、これだけでは済まされない問題が要因としてあるのではないだろうか。といいますのは、どうしてこれほどの狂いが出るかという、こういう点ですね。  半年前の昨年十一月に税収の下方修正を行ったばかりでございまして、もしあの段階で今日のこのような増収を見込めたならば、もっと適切な経済対策の手が打てたんではないだろうか、こういう反省点も指摘されておるわけですけれども、この点に対する御見解はいかがですか。
  134. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはまことに適切な御指摘だと申し上げざるを得ないと思います。税収見積もりが事実と違ったということは、過大に見積もった場合も困りますけれども、過小であったらばいいかというと、必ずしもそうばりは言えないことでございますから、昨年の補正予算の段階で、ある程度の減収を計上いたしましたのは、結果としてどうであったのかという御指摘に対しては、それはやはり見通しに誤りがあったと申し上げざるを得ないと思います。  ただ、先ほど申しましたように、今回のこの増収の中身がいわばいっときの、長い間の趨勢とは思えない要因によっているところが多いものでございますので、そこのところを見通し得なかったということは、これはまあ最善の努力をしてもなお見通し得なかったという種類のことに属するとは存じます。そうであるとは存じますので、そういう意味事務的な誤りといったようなことがあったと私は思っておりませんけれども、まあしかし結果としてこういう見積もりの過誤を生じたということは、やはり御指摘ように考えなければならないと思っております。
  135. 及川順郎

    ○及川順郎君 これに関連しまして、一つは税収の年度区分に見通しのしにくい要因があるんじゃないかなという感じも実はするわけであります。  大蔵省では昭和四十九年度に、御承知のように税収不足を補うためということを理由にいたしまして、国税収納金整理資金令等を改正しまして、国税収入等の年度所得区分をそれまでの三月末から四月末まで、これは延長しております。その後、五十二年にはさらに五月分を前取りして前年度に取り込むという、こういうところまでやっている。これは国税収納金整理資金に関する法律を改正してこういう形態をとっておるわけでございますが、以来今日までこの形態できておるわけでございます。  確かに三月、年度末締めということを理由にしておりまして、その後の事務的要素によっておくれたということで繰り入れるという、こういう見通しを、そういうことを理由にしているわけでございますけれども、四月はともあれ、五月までという、こういう状況が一つの税収の見通しの難しさの要因になっているんではないか、こういう感じがいたしますけれども、この点について大臣いかがでしょうか。
  136. 尾崎護

    説明員(尾崎護君) 先生御指摘のとおりの経緯で、四十九年、五十三年度に税収の年度区分の変更が行われました。特に五十三年度の変更に際しましては、五月分の税収、つまり法人税で申しますと、三月決算分の法人税を五月までに納付していただくことになっているわけでございますが、そこまで取り込んだことになりました。五月分の税収というのは、大体法人税では俗に一年分の三分の一ぐらいに当たるわけでございまして、三分の一ぐらいのかたまりがそこで入ってくる。それを補正予算の段階で見通さなくてはいけないという技術的な難しさを伴っておりますことは事実であろうかと思います。  しかしながら、五十九年度、六十年度あたり、かなり税収の見通しもいい線に来ていたわけでございまして、今回の法人税の見通しの誤りは、やはり先ほど大臣から申し上げましたとおりに、非常に異常な経済の状況、それが実体経済と結びつかないところで生じたということによるものであろうかというように存じます。従来から税収見積もりにつきましては私ども最大限の努力を払っているところでございますけれども、今回のような例も一つの教訓といたしまして、今後とも適正な見積もりに努めてまいりたいと存じます。
  137. 及川順郎

    ○及川順郎君 今のに関連しましてもう一点お伺いしたいわけでございますけれども、この年度所得区分の変更につきましては、大蔵省内部で当時主税局と主計局が相当論争したという経緯もある程度承知はしておるわけでございますが、この延長の考え方は、これは明らかに発生主義をとっているという、こういうことになるわけでありますけれども、国の決算と予算は、これは現金主義というのがこれが常道でございまして、この点に対する当省としての見解はどのような見解をお持ちになっていらっしゃいましょうか。
  138. 尾崎護

    説明員(尾崎護君) 税収の場合、税額の確定が三月決算法人につきましては三月に確定をしている。つまり、租税債権としてはそこで確定をしているという、先生おっしゃいますとおり発生主義的な考え方に立ちますと、現金としては五月に入ってくる、納付されるような五月分の税収までを当該年度の税収として見込むことには、そういう考え方ももちろんあり得ることであろうと存じます。そういう技術的な問題とともに、当時の議論といたしましては、他方、別の面で税収の確保ということももう一つあったわけでございまして、そういう状況を勘案いたしまして制度改正を行ったものでございます。
  139. 及川順郎

    ○及川順郎君 大臣、今回のような自然増収が大きいときに、もしそういう見通しの不透明さということに対する要因の一つというぐあいに考えられているならば、五月まで前に繰り込んでということが、これを三月までいきなりぱっと戻すということが無理ならば、せめて四月ぐらいまで、こういうときにこそ修正をしておくというよう考え方、こういう考え方について大臣は何か御所見をお持ちでございますでしょうか。
  140. 尾崎護

    説明員(尾崎護君) 税収見積もりに課されております制約につきまして大変御配慮をいただきましてありがたいわけでございますが、現実の問題といたしまして、五月分の税収は六十一年度の例でまいりますと五兆六千億からあるわけでございます。これの年度区分の変更をするということをいたしますと、これに見合うだけの何か財源手当てをしないとある年度の予算が組めないという、非常に現実的な問題があるわけでございまして、なかなかそれは難しい問題ではないかと思います。私どもいろいろ今回の教訓も生かしまして、今後とも適正な見通しに努力をしてまいりたいと考えております。
  141. 及川順郎

    ○及川順郎君 大蔵省の事務レベルの考えはわかりましたけれども、重ねて大臣の御感想を承っておきたいと思います。
  142. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昭和五十二年でございますか、ああいう改正をいたしましたことは、その当時やむにやまれぬ事情であったわけでございまして、財政事情が非常に好転をもう全面的にしてきたということになりましたら別でございますが、今、もう五月を一カ月、四月にいたしますと五兆何千億円というものがなくなってしまいますので、これはもう自然増どころではない話になってまいります。  財政がうんとこう楽になりましたときにはまたそういったような御議論も考えてみなければならないかとも思いますけれども、ただいまのところどうも現実に追われているという感じでございます。
  143. 及川順郎

    ○及川順郎君 先ほど大臣の御発言の中にもございましたけれども、六十一年度余剰金の一部前借りの問題でございますけれども、この六十二年度の一次補正予算は、予定される臨時国会に出されてくるわけでございますが、その中に余剰金の繰り入れという予算編成措置をやっている。六十一年度決算の主計簿が締め切られるのは七月三十一日ということでありまして、それ以前にやはりこの問題が行われるということになってくるわけですね。一般的に考えますと、一次補正で歳入不足は一応特例公債の増発によって補てんする形をとって、二次補正の段階において、六十一年度決算が確定するのを受けて六十一年度余剰金の受け入れを行って、前者の特例公債の減額補正を行うことが妥当であるというような、これが一般的な考え方ではないかと思うわけでございますけれども、そういう観点から考えますと、このたびの措置は極めて異例の措置というぐあいに受けとめられるんですけれども、この点についてはどのような御見解をお持ちでしょうか。
  144. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今のお尋ねには、技術的な要素があるいは入っておるのだとは思いますけれども、ごくごく常識的に私どもが考えましたことは、かなりの大きな自然増収がある。このたび補正予算で受け入れましたのは四千億余りでございますけれども、この四千億どころではない、少なくともつまりその何倍かの自然増収があるということが事実上明確でございましたので、過去にも例がないことではございませんので、これを一部歳入に計上いたしました。それはまさに御指摘のことに関係いたしますのですが、そうではありませんと、この部分特例公債を出すかということになるわけでございますが、みすみすもう自然増収があることがわかっておりますので、特例公債を増発して利払いをするということはいかがなものであろうかとも考えまして、四千億だけ前に補正で使わしていただいた、こういうことでございます。  大変にきちんきちんと筋道だけで申しますと、それはしかし一遍借金をしておいて、後でやるのが本当じゃないか、数字が決まってからと、御議論はあろうかと思いますけれども、利払いのこともございますのでこういうことをさせていただいたわけでございます。
  145. 及川順郎

    ○及川順郎君 時間が参りましたので、最後に六十二年度の予算シーリングについて大臣の御見解を承って私の質問を終わらしていただきたいと思いますが、このたびの補正予算以降の六十三年度予算編成について、大変サミットでも一つの話題になりましたけれども我が国の内需拡大を求めるこの声というものが国際的な広がりを持ってきている、そういう状況の中でやはり今回の補正予算だけでとどまらずに、今後もある程度の積極財政を続けて日本の経済構造の調整を図らなければならない、こういう点については、これは異論はないわけでございますが、そのためには投資的経費についてはマイナスシーリングを見直す必要があるのかどうか、こういう議論が出てくるということです。  公共投資を行う場合に従来のような建設、農林水産、運輸の各省の既得権化された領分主義、公共投資の配分を改める必要があるんではないかという指摘も一方では耳にするわけでございますね。さらに、公共投資のうちでも波及効果の大きくてしかも経済構造の調整に役立つ条件を満たすもの、あるいはまた国民生活の質の向上に貢献するようなものに重点的に配分するということは、言うはやすくて、しかしなかなか実際これを行うということは難しい側面が十分考えられるのではないか。もしその必要性を認めるとするならば、大蔵大臣としまして六十三年度予算編成に臨んでこの趣旨を本当に徹底して実行し得る自信がおありでしょうかということが非常に興味のあるところでございまして、大事な時期でございますので、ぜひこの点の御所見を承りまして私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  146. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 問題は二つございまして、従来の公共事業の配分率と申しますか、それが非常にいわば固定されてしまって、弾力性がなくなっておるということの御指摘関係者が多く認めるところでございますけれども、これはやはり当該者の中でいろいろ世の中のニーズというのは少しずつ変わってまいりますので、また地域的にもこの経済のよし悪しがいろいろございます。そういう場合の傾斜配分の必要もございますから、これは各省で内部でいろいろ御検討願っておるところで、大蔵省がこうせよああせよという種類のことよりはむしろ、やはりその役所の中でまず考えていただくということかと思いますが、それにしても今度は各省の間の問題がまたございますので、そこらもよく御相談をしながら、実情に合うように少しずつでもやはり改める努力をしてまいらなきゃならぬと思っております。  それからもう一つの問題は、このたびは補正予算ではそうでもございませんが、本予算になりますと、いわゆるNTTの売却代金、法律を変えさせていただきましてこれを社会資本整備勘定に使いたいと思っておりますのでございますが、これは従来のそういうものにいわばプラスになるという感じのものでございますので、これはいろいろ弾力的にその辺を手直しもできますし、新しいものも殊に地方の需要にマッチしていけるのではないかとこういうふうに考えております。
  147. 片上公人

    ○片上公人君 防衛庁にお伺いいたします。  昨年十二月に日米政府間で署名が行われましたシーレーン防衛研究につきましては、さきの国会でも大変問題となりましたけれども、研究の内容はごく大まかなものしか説明されていません。改めて伺いますが、軍事的シミュレーションを行った結果どのような結果が生じたのかということを明らかにしていただきたいと思います。またそれに対しまして粟原長官はどのような感想をお持ちで、今後どのように行おうと考えておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  148. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) お尋ねのシーレーン防衛共同研究でございますが、これは今までも国会等でたびたび御答弁申し上げておりますけれども、一定の条件、実際の戦闘の様相というものは千差万別でございますけれども、それのうちのティピカルな形で我が国の海上交通に対する破壊が行われた場合に、我々自衛隊とそれに共同してくれる米軍がどう対応するかという一つのシナリオをつくりまして、それに基づいて個々の戦闘について彼我の被害あるいは戦果といいますか、相手をどれだけやっつけたかというようなシミュレーションをするわけでございます。そういった結果、最終的には一カ月後、二カ月後、三カ月後といった形で、我が国に入港してくる船舶がどう逓減をしていくか、どの程度まで我が国に対するいわば輸入量が減ってしまうんであろうか、全体として商船の被害がどのくらいになるんだろうかというような形でシミュレーションをしたものでございます。  これがそういった極めて特定の条件下における日本のシーレーンの防衛のためのシミュレーションでございますけれども、それなりに一つの検証ができたということがこの成果であることは間違いないわけでありますが、それ以上に、今回この種シミュレーションを初めて日米間で行ったわけでございますので、そういった点で日米双方が十分意見を交わして、どういう考え方で対潜作戦なりをやったらいいか、あるいはそれをシミュレーションする場合にどういう手法を用いたらいいかといったような点についていろいろと相談しながらやっていくという段階を通じて、日米間の相互理解ができたというような点、非常に役立ったと言うべきであろうかと思うわけであります。  もちろんこれらの研究成果を通じまして、現在自衛隊が持っておる能力あるいは米軍から支援される能力について、こういう点がまだ足りないなとか、そういった点シミュレーション上出てきた問題ございますが、いずれもこれらは我々にとっていえば、従来からこういう点が問題ではなかろうかと思っておったものが裏づけられたという点で、特段新しいものがあったわけではないけれども、我々自身の今防衛力整備をしている方向というものが間違いではなかったという意味意味合いは非常に大きかったのではないかと思っております。  なお、分析結果を具体的にという御質問でございますけれども、これはまさに我が国のシーレーン防衛能力なりあるいはアメリカの支援能力というものの具体的な防衛能力を示すものでございますので、事柄の性質上そういった個々の数字等については、あるいは内容等についてはお答えを控えさせていただきたいと思います。御了解いただきたいと思います。
  149. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 今、防衛局長から御説明したことで、多くをつけ加えることはございませんが、ただ私の感想ということですから申し上げますが、これは要するにいろいろの想定がある。その中の一つを特定をして研究をしてみる、しかもそれは装備、兵力等については現有勢力をもととしておる、そういうことでございますから、それはそれなりの一応の結論が出る。しかしそのこと自体が直ちに大きな意義を持つというのじゃなしに、こういう研究を積み重ねる中で日米の共同対処というものの方向、それができてくる、あるいは今やっているやつが正しいかあるいは訂正すべきかということになるのであって、こういうような連続して今後の経過を見なきゃいけないと、そういうふうに考えております。
  150. 片上公人

    ○片上公人君 ガイドラインに基づく共同作戦研究につきましては、その結論が何ら両国に義務を生じさせるものではないとこれは承知いたしておりますが、一方それでは研究の結果は出されっ放しにされることになると考えられますけれども、そのような扱いになっているのかどうか。シーレーン防衛研究は署名後どのように取り扱われておるのか。特に防衛改革委員会の洋上防空体制研究会において資料として配付されるなり、また研究内容の説明が行われましたのかどうか、お伺いいたします。
  151. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) このシーレーン防衛研究の結果というものは、日米の両国政府がそれぞれ持ち帰って独自の判断によってこれを利用するという建前になっておるわけであります。したがいまして、我が方としましても、当然のことながらこの結果というものは必要な範囲には、そのうちの必要部分について知らせるということであります。  今お尋ねの洋上防空研究でございますが、その研究会にシーレーン防衛の共同研究の結果すべてがそういう研究会の場で披露されたというようなことはございません。ただ、研究会に参加しておるメンバーの中には、当然のことながら担当の幕僚監部の防衛部長であるとか、あるいは場合によっては担当者でシーレーンの防衛の共同研究の内容について知悉している者も参加しておりますから、そういったことも踏まえて洋上防空研究会が行われておるということは事実でございます。  いずれにしましても、この作業結果というものは、先ほど防衛庁長官からも御答弁申し上げたように、それがそのまますぐ何かに使えるとか、予算要求をするとか、あるいは長期計画に組み込むとか、そういったことではございませんで、どちらかといえば、従来から進めている防衛力整備の方向なりあるいは現にやっていることなりが、的外れであるかないかというような検証に非常に役立ったというように御理解いただければありがたいと思います。
  152. 片上公人

    ○片上公人君 洋上防空に関連しまして、六十三年度業務計画の作成に際しての長官指示という中に、OTHレーダーの検討推進が挙げられております。現在までの検討状況はどうなっているのか、また設置場所について最近硫黄島が大きくクローズアップされてきていますが、防衛庁としては既に内定しているんではないかということをお伺いいたします。
  153. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) OTHレーダーにつきましては、もう一年近くなる、あるいはもっとそれ以上になるかもしれませんが、これが我が国防衛にとって有効なものであろうかどうかという基礎的な勉強を進めてまいりました。と同時に、設置するとすればどのあたりがいいのかというようなこと、さらにはOTHレーダーそのものについて我々まだ知識が十分でございませんので、そういったものについてできる限りの資料をアメリカからもらって勉強するというようなことを続けてまいったわけでございますが、現在の段階は、六十二年度予算で、米国に参りましてOTHレーダー、我々が導入するならこれであろうと言っておるROTHというものでございますが、これが現在アメリカで実用実験の最中であります。アメリカの東海岸のノーフォークで現在実用実験をやっている、その状況を視察をし、かつそれがどういった能力を持ち、あるいはどういった諸元があるかといったようなことの調査のために、今調査員を派遣をいたしているところでございます。それが帰りましたら、そういったデータをもとにまたさらに検討を進めていこうという段階になっております。  一方、もう一つお尋ねの設置場所の件でございますが、これにつきましては前々から申し上げているように、OTHレーダーの有効範囲等から考えますと、どうしても本土そのものではなくて、もう少し南に下がった、例えば小笠原諸島であるとかあるいは南西諸島であるとか、そういった島嶼部に置かざるを得ないということがまず第一点としてございます。それからさらに、我々が日本の本土の防空なり洋上防空を考える際に、できるだけ情報を得たい地域というものを考えますと、方向的には、例えば南西諸島と小笠原諸島を比べれば、小笠原諸島方面の方がより戦略的といいますか、戦術的にはすぐれた地位にあるということもこれまた事実であります。  ただ、実際にこれを設置するとなりますと、受信場所等がなり長い地積を要しますので、果たして土地の取得が可能であるかどうかとか、あるいは近くに、例えば硫黄島等に置く場合に、飛行場と並んでおって、電波障害が起きるか起きないかとか、そういったことについてもただいま調査団を出しておりますが、そういった調査結果がわかりませんとなかなか詰めようがないということで、現段階では今申し上げたような状況でとどまっておるわけでございます。
  154. 片上公人

    ○片上公人君 洋上防空を考えていきますと、どうしても航空機の航続距離から、本土から離れたところに基地が必要になってくると思います。硫黄島は近年訓練基地として着々と整備をしてきていると聞いておりますが、従来から防衛庁が答弁されておるように、いわゆる戦闘機の基地にするという考えは当面ない、このよう理解してよいか、お伺いしたいと思います。
  155. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 硫黄島につきましては、今、先生申されましたように、従来から本土の近くでは訓練のための空域が非常に狭い、ほかの民航等の航空路等がふくそうしておりますので、十分な、例えば超音速の訓練をするとか、そういった訓練場が求めがたいということで、硫黄島の基地の整備を進めて、そちらに海空の自衛隊の航空部隊等が移動訓練を行うというような形で整備しておりまして、将来ともあそこをもって作戦基地にするという考えはございませんで、これを訓練用の基地として活用してまいりたいというように考えております。
  156. 片上公人

    ○片上公人君 防衛庁は本年の五月二十七日に、「業務・運営に関する改善検討事項」の検討結果をまとめ、発表いたしましたが、この中で、防衛研究所研修員や幹部学校学生等の海外現地研修、国外訓練に航空自衛隊のC130H輸送機を使用する考えを明らかにしておりますが、この検討結果の考えを説明していただきたいと思います。  なお、これまで国外研修は民間機を使用して行われていましたけれども、例えば六十一年度の場合は、防衛研究所の関係は、米、韓国、東南アジアの三班に分かれて計四十人、統合幕僚関係では東南アジアへ三十六人、陸上自衛隊幹部学校関係韓国へ二十四人という状況でありますが、今回なぜ民間機から自衛隊機使用に変更する考え方に変わったのか、その理由の説明をお願いしたいと思います。
  157. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 本問題は、私ども行政としてこうしたいということで必ずしも検討しておるものじゃございませんで、防衛庁の中に、御存じのように防衛改革委員会というものができまして、現在のやっておる業務等を見直しながら、より効率的経済的な運用の仕方があるかないかといったような側面について、各般の面について検討する委員会ができておるわけであります。そちらの方の委員会で、例えば今も例に挙がりましたように、海外等に研修あるいは訓練等にかなり大勢の者が出ている。一方、自衛隊はそういった輸送にも使えるんではないかと思われる輸送機を持っておる。その場合に、従来のように民間航空に依存して運んだ方がよいか、自衛隊のものがせっかくあるんだから使った方がいいか、そういった点も検討してみるという課題を私どもの方にもらいまして、検討いたしてみました。  その結果、例えば従来海外に相当多くの者を運んでおる例としては、ナイキであるとかホークであるとかというものの実射訓練に、日本に射場がございませんのでアメリカに参っておりますが、こういった非常にアメリカの本土まで行くという遠距離輸送に関しましては、やはり従来どおり民航機を使った方がはるかに経費的にも安くつくし、早くできるということで効率的であるということがわかりました。  一方、比較的近間のところ、例えば日本周辺の国等、近いところに行くのであれば、仮にその飛行が訓練飛行を兼ねて行えるようなパイロットの訓練ともなるということで、訓練の油を使ってそういうところにも行くというような考えでいけるんであれば、場合によっては自衛隊機を使った方が経済的な場合もあり得るというような結論が出た次第であります。
  158. 片上公人

    ○片上公人君 自衛隊機の活用で、現在そのための研修用の燃料費はないことから、検討結果では、訓練用の燃料費を使用することを特例的に可能ならばという条件をつけておりますが、そこで訓練用の燃料費を国内や周辺地域での訓練でない、外国に行くための訓練に使用することがこれは可能だと見ているのかどうか、さらに研修に名をかりた国外訓練の目的、内容についてどのようなことを検討されたのか、これを明らかにしていただきたいと思います。
  159. 長谷川宏

    説明員(長谷川宏君) お答え申し上げます。  初めに、国外訓練の目的、内容の方から御説明いたします。ただいま防衛局長が御説明いたしましたとおり、業務運営に関します自主監査委員会におきまして検討いたしました国外訓練等は、地対空誘導弾、ナイキ、ホーク部隊の年次射撃訓練と、もう一つ幹部学校学生あるいは防衛研究所研修員等の海外現地研修でありまして、その前者の目的、内容は、国内には射場がないために米国において射撃訓練を実施し、戦術技量の向上を図ることを目的として実施するものでありまして、昨年度には、ナイキ十九個高射隊約八百五十名、ホーク十九個高射中隊約六百五十名が参加いたしました。また、幹部学校学生等の現地研修は課程を履修しております学生に対します教育の一環といたしまして、海外の軍事社会情勢等を現地で実地に研修させ、幅広い国際感覚を身につけさせることを目的といたしまして、陸上自衛隊幹部学校学生、統合幕僚学校の学生、防衛研究所研修員等に対して実施しているものであります。  この際、訓練用の燃料費を外国に行くために使うことは可能なのかという御質問でありますが、もう少し前段で申し上げますと、現在自衛隊におきましては、地対空誘導弾、ナイキ、ホークの実射訓練、それから護衛艦、潜水艦あるいは大型対潜機の米国派遣訓練、それから日米共同指揮所演習の年二回のうちの一回を米国において実施すると、そういう段取りをとっておりまするところ、これらのうちで護衛艦等の米国派遣訓練のように、艦艇及び航空機を派遣いたしまして実施する訓練につきましては、必要な燃料費を予算において措置しておるところであります。  およそ訓練用の燃料費を外国に行きますために使用することが可能か否かという点につきましては、しかし個々具体的な事業が計画されました段階で、当該外国への運航に従事するパイロットについての訓練効果等を踏まえて判断すべきものと考えておりまして、まだ具体的な計画がございません時点では、特に燃料費の手当てについても検討はしていないというのが現状でございます。
  160. 片上公人

    ○片上公人君 防衛庁では、自衛隊員の海外研修訓練で自衛隊機を使用する場合、運航を訓練に繰り入れて、訓練用の燃料を使えなければペイしないと言っているようでございますけれども、逆に航空専門家の中には、C130Hを利用するのは理解できない、騒音がひどくて乗っている人にはもう地獄である、整備なども考えなければ、民間機より安いとは思えないと言っている人もいると聞いております。  そこで、費用効果の面で民間機と自衛隊機と試算してみてどうなっておるかということをお伺いしたいと思います。
  161. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 細部資料を私ちょっと手元に持っておりませんが、先ほど申し上げたように、非常に遠くまで行くということになりますと、御承知のようにC130Hいうのはプロペラ機でありますから非常に時間がかかる。そうしますと、途中で何度も着陸をして給油をしたり、あるいは場合によっては乗っていった者、乗組員も含めてそこで宿泊をしなくちゃいけないというようなことがございますから、非常に高いものにつくということで、これは全く不経済な使い方ではなかろうかというように思っております。  一方、例えば現在研修等で参っております中国であるとかあるいは韓国であるとか、そういったところについて言えば、仮に油代を除けばそれは自分の飛行機で行った方が安いのは間違いないわけであります。問題は、その油が、空身でも飛ばなくちゃいけない訓練、これはパイロットとしては年間百何十時間というように、ある程度離着陸をすると同時に飛行をするという慣熟のための訓練というのがございます。これは全くお客を乗せなくて飛ぶ場合もありますし、乗せて飛ぶ場合もあるわけですが、そういうものにあわせ利用できるものであれば安くなる場合もあるというのが検討の結果でございます。
  162. 片上公人

    ○片上公人君 今回の自衛隊機の海外使用の考え方の中には、自衛隊員の海外研修、訓練とあわせまして、将来の海外派兵に備えて自衛隊輸送機による洋上の長距離航法や未知の空港での離着陸の経験を、今から積んでおきたいという意図もうかがえるようであります。もしそうだとしますと、これは絶対容認できないことでありまして、この点について明らかにしていただきたいと思います。
  163. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) いわゆる海外派兵と申しますのは、武力行使を目的にした部隊の海外への派遣でございますが、従来から教育訓練ということでは、例えば固定翼対潜機等が、日本にその種の訓練施設がないということで、ハワイなり米本土まで航空機を持っていって、そこで訓練をして帰ってくるというような、航空機の乗員そのものの訓練のために航空機ごとそちらまで行ってくる、航空機で飛行するというような例は毎年のようにやっております。  さらに、艦船について申しますと、艦艇そのものがやはり今申したような訓練施設あるいはアメリカとの共同訓練をやるというようなことで海外に行くこと、その種の例はたくさんございますし、あるいは同時に艦艇そのものの訓練目的ではなくて、例えば新任の幹部を海外の施設等を見せて研修をするという目的のために遠洋航海というのを行っておりますが、これはまさに艦艇がある意味では教材であると同時に、運ぶための輸送手段として艦艇が使われて、世界各国を回って遠洋航海をするというような例が教育訓練としては毎年のように行われておりまして、それらについては、先ほど申し上げたように、いわゆる武力行使を目的とする海外派兵とは全く異なるものであるというように考えております。
  164. 片上公人

    ○片上公人君 防衛庁、ありがとうございました。  次に、郵政省、NHKにお伺いいたします。  NHKの放送あるいは新聞報道によりますと、この七月四日から衛星第一放送で、地上の放送サービスとは全く異なる衛星放送独自番組を二十四時間の編成で行うこととなっているそうでございますが、放送衛星ゆり二号による衛星放送というのはいまだ試験放送であります。このような状況の中で衛星放送に全く新しい放送を導入しようとする意図はどこにあるのか。これは郵政、NHKの御意見をお伺いいたします。
  165. 成川富彦

    説明員(成川富彦君) 衛星放送につきましてですが、これまでBS2によりましてNHKが難視聴解消を主たる目的として、従たる目的として普及発達ということを目的として、二チャンネルの試験放送を実施してきたところでございます。しかしながら、ほとんど地上放送と同じ放送内容で実施していますことから、受信世帯が約十四万世帯と余り伸びてきておりません。必ずしも十分普及されているという状況ではございません。こういうことから、衛星放送をより一層普及促進させる等の観点から、BS2の二チャンネルのうち一チャンネルにつきましては難視聴解消のための放送を行いまして、もう一つのチャンネルでは衛星独自番組の放送が実施できるように先般免許方針を修正したところでございます。  これに基づきましてNHKでは、先ほど先生からの御質問の中にありましたように、国際情報を中心とした二十四時間編成等を内容とする新しい衛星放送を七月四日から開始することにしているところでございます。これによりまして国民のニーズといいますか、期待に沿った形で衛星放送の普及が図れるものというふうに私ども認識しているところでございます。
  166. 片上公人

    ○片上公人君 放送衛星の有効的な活用によりまして衛星放送の普及に資するという目的は、大変結構なことであると思いますが、しかし六十二年度のNHK予算における衛星放送費用というのは三十五億円程度と聞いております。これは従来どおりの難視聴解消を主目的とした予算編成に基づく計画と思われます。このような予算の枠の中で、二十四時間の独自番組の編成をどのように行っていくつもりなのか。また、それがNHKの厳しい財政状況をさらに圧迫するのではないかという心配がありますが、どうでしょう。
  167. 林乙也

    参考人(林乙也君) 衛星放送の件につきまして、常日ごろ大変御心配、御理解をいただきまして、この席をかりまして厚く御礼を申し上げます。  ただいま放送行政局長の方からもお話があったところでございますけれども、御案内のように衛星ゆり二号は総額約六百億の経費を投じ、またNHKといたしましても三百六十億に近い建設に関する経費を投じて現在に至ってまいっておるわけでございまして、この打ち上げ、建設の成果というものをどのよう国民の視聴者の方々に還元していくのかということが最も必要なことというふうに理解しております。また、今後の衛星放送の事業につきましては、現在の段階は今後の事業展開のための基盤整備に全力を挙げなければならぬということと考えておりまして、そのための施策というものを基本にして考えておるところでございます。    〔委員長退席、理事梶原敬義君着席〕  そういうようなことから、おかげさまで、六十一年の二月十二日に打ち上げました衛星BS2bは順調に運行されておるところでございまして、BS3への放送の継続あるいはBS2bの信頼性の万全の確保というところからいたしますと、現在なお試験放送による放送ということにせざるを得ないというのが私ども考え方でございますけれども、一方におきまして、一日も早くその成果を国民の方々に還元していく必要があるというように考えまして、幸い郵政省当局におきましても免許方針の改正がやられましたこの機会に、七月四日から、一チャンネルにおきましては地上の放送と異なる独自の番組を二十四時間編成してサービスし、また残る一チャンネルにつきましては地上の総合放送及び教育番組の混合編成によりますサービスを行っていきたいというように考えておるところでございます。  六十二年度の事業計画におきましては、地上波によるテレビジョン放送番組と同時に、放送衛星の特性を生かした魅力ある番組を効果的に編成し、衛星放送の普及に資するということを六十二年度の予算、事業計画の中にも明示いたしまして取り組んでおるところでございます。  ただ、一方におきまして、現在衛星は、先ほども申しましたように試験放送の段階でございますので、過度の経費を投じて運営するということはやはり避けなければならぬということから、六十二年度予算におきましては、放送実施経費といたしまして三十五億円を計上して計画に当たっておるところでございます。その際には、特に地上編成との有機的な連携を図るとか、あるいは海外及び国内の番組を効率的に調達するとか、あるいは長時間放送や保存番組の再編集等、極力効率的な編成を行って経費の徹底的な節減を図り、収支予算の範囲内で対処するということを基本的な考え方といたしまして、現在業務を進めておるというところでございます。
  168. 片上公人

    ○片上公人君 今回の新たな番組編成は、衛星放送の普及を図る施策の一つであるということですが、今後の普及の見通しとしてはどのようなものを持っているのか。また、その普及見通しのかぎはどのようなことと考えておるのかということをお伺いします。
  169. 成川富彦

    説明員(成川富彦君) 我が国の衛星放送でございますが、BS2によって試験放送という形で実用化の緒についたところでございますが、まだその緒についたばかりでございますし、またこの分野は世界的に見ても未経験の分野でございまして、今後の普及を明確に現時点で見通すということは非常に難しいかと思います。しかしながら、ちょっと古いデータでございますが、五十八年の十一月に郵政省が外部機関に委託しました調査結果によりますと、BS3の打ち上げ時点、これは六十五年でございますが、を予定しておりますが、BS3の打ち上げ時点で約百万という予測が出ております。当省といたしましてもこの程度まで普及してほしいという期待を持っているところでございます。  それから二番目にお尋ねの普及のかぎでございますが、衛星放送の特徴を生かした魅力のある放送番組を放送していただくというのが一つだと思います。それからもう一点は受信機の低廉化でございます。できるだけ安い受信機が普及するということがかぎを握っているんじゃないかというふうに考えているところでございます。
  170. 片上公人

    ○片上公人君 それでは今後の放送衛星計画につきましてお伺いいたしますが、六十五年度には放送衛星二号の後継機であるBS3a、六十六年度にはBS3bが打ち上げられるということを聞いておりますが、衛星技術は日進月歩で進みまして、将来は十分に安定した放送サービスを提供できることと思われますが、BS3ではどのような放送サービスを計画しているのかということをお聞かせ願いたいと思います。
  171. 林乙也

    参考人(林乙也君) ただいまも郵政省御当局からお話がございましたように、衛星放送の普及のかぎと申しますのは、視聴者の方々にいかに衛星放送の番組についての魅力を感じていただくかということが一番のかぎであることは申すまでもないところでございます。そのよう考え方のもとに、NHKといたしましては、BS2段階におきましては、視聴者のニーズが那辺にあるのかということをいろいろな工夫の中で現実に番組を見ていただきながら、また積極的にそこらあたりの御意向を吸収して、その成果というものをBS3に反映し実現していきたいということで取り組んでおるところでございまして、衛星放送がその特性として持っております全国を一挙にカバーし得る特性、あるいは災害等に非常に強いという特性、あるいは高画質、高音質の番組が放送できる特性というものを、BS3の段階におきましては具体的に実現できるように取り組んでいきたいというように考えておるところでございます。また、BS3の段階におきましてはやはり衛星のBS2と異なりまして六機、予備機の各チャンネルの周波数を異にしておるというような設計にもなっておるところでございますし、    〔理事梶原敬義君退席、委員長着席〕 また、広帯域の中継機が搭載されておるというようなこともBS2の段階としては異なるわけでございますので、さらに多角的な活用といいますか、各機能の多角的な活用というものをできるだけ図っていくことによりまして、コストの軽減ということにも努めてまいりたいというように考えておりますし、また本来衛星の開発、打ち上げにつきましては、宇宙開発に伴うところのリスクというものが必然的に伴うということも、ユーザーとしても覚悟せざるを得ないところではございますけれども、それをいかにリスクの分散なり、あるいはそれをユーザーの負担にならないような形で確保していくかというようなことなどもいろいろ今後工夫し、知恵を絞りながらBS3段階における衛星放送計画というものの展開に当たってまいりたいというように考えておるところでございます。
  172. 片上公人

    ○片上公人君 NHKではハイビジョン放送などのサービスを行うというふうに聞いておりますけれども、これは今から行おうとしておる衛星放送独自番組編成よりもはるかに大きな経費がかかることになると思います。このような経費を担保するために今後新たな収入の道を確保しなければならないと思いますが、何かもくろみはございますか。
  173. 林乙也

    参考人(林乙也君) ハイビジョン放送につきましては、BS3段階での実用を目指しまして現在ハード面、ソフト面の開発を進めておるところでございます。  将来の放送実施計画につきましては、まだハイビジョンにつきましては技術基準や免許方針も定められていないという状況でもございますので、NHKの一存でどのようにするというところまで至らないわけでございますが、今後の推移を慎重に見きわめながら検討してまいりたいというように考えております。  NHKといたしましては、今後の衛星の特性を生かす一番の目玉としてハイビジョンがあるというように考えておるところでございますし、またその実用のためには先生御指摘ように設備、機材面で、現在の方式にいたしますならば相当高額の開発経費というものも必要になろうかとは思いますけれども、しかしそれが実用、普及の段階になりますとかなり低廉化というものも期待できるわけでございまして、いわば番組というものが国民の方々にいかに魅力あるものと考えていただくかということと、それから経費の負担について極力軽減を図っていくということの両々あわせながら、今後進めてまいりたいと思いますし、またNHKの事業計画といたしましては、やはりそれらのサービスに対する財源措置というものを受信料の制度体系の中で鋭意検討していかなければならぬというように考えておりますけれども、それらも今後の私どもの重要な検討課題というように考えておるところでございます。
  174. 片上公人

    ○片上公人君 どうもありがとうございました。  次に日航機事故についてお伺いいたします。  六十年八月に乗客、乗員五百二十名の死者を出しました日本航空一二三便の墜落事故に関する最終報告書が運輸省航空事故調査委員会から提出されましたので、この際その要旨、それから報告に基づく勧告、建議の趣旨について簡単に説明をしていただきたいと思います。
  175. 武田峻

    説明員(武田峻君) 御質問お答えいたします。  航空事故調査委員会は、昭和六十年八月十二日、群馬県上野村山中に墜落した日本航空株式会社所属ボーイング式7477JA八一一九にかかわる航空事故につき実施した調査に基づき航空事故調査報告書を作成し、去る六月十九日、運輸大臣あてに提出いたしました。とともに公表いたしました。  また同時に、今回の事故調査の結果及び調査の過程で知り得た事実を検討し、航空事故防止のために講ずべき施策について勧告及び建議を運輸大臣に対して行いました。  調査の結果でございますが、今回の事故は事故機の後部圧力隔壁に進展した疲労亀裂によって同隔壁の強度が低下し飛行中の客室与圧に耐えられなくなったために、まず同隔壁が損壊し、それに引き続いて垂直尾翼を含む尾部胴体構造の損壊、操縦系統の損壊が生じ、飛行性の低下と主操縦装置の機能の喪失を来したために生じたものと推定いたしました。この後部圧力隔壁における疲労亀裂の発生、進展は、昭和五十三年、大阪国際空港における事故による損傷の修理の際に行われた後部圧力隔壁の不適切な修理に起因しており、亀裂が隔壁の損壊に至るまでに進展したことについては、それが点検整備で発見されなかったことも関与しているものと推定いたしました。  次に、本事故に関連いたしまして運輸大臣に対して行いました勧告及び建議についてでございますが、当委員会は同種の事故の再発防止という観点から早急に対策を要するものとして、耐空性の確保に関する勧告として、一番目が航空機の大規模な修理、二番目、そういう機体のその後の点検整備、三番目ですが、フェールセーフ性に関する勧告を行いました。  また、将来の航空安全の向上に資するという観点から、緊急異常事態における乗務員の対応能力を高めるための方策、二番目に目視点検による亀裂の発見に関して検討することについて建議を行いました。  これらの勧告及び建議がその趣旨によって早急に検討され、適切な対応が進められることを強く望むものであります。
  176. 片上公人

    ○片上公人君 次に、この報告書に対しまして航空会社の監督官庁としての運輸省の御意見を伺いたいと思います。大臣、お願いいたします。
  177. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私が運輸大臣になりまして最初に参加をいたしました公式な行事がこのJAL一二三便の犠牲者の一周忌の式典でありました。そしてその中には私の非常に親しかった友人も三名含まれております。その折にも、また今日も変わりませんが、私は運輸大臣として運輸行政のいわば根幹は、あらゆる交通機関において安全というものを最重点事項として考えていく、また関係者にもそのための御努力をお願いするということが一番大切なことだと考えております。  ただいま事故調の委員長からお話がありましたとおり、今回提出されました報告書によりますと、本件の事故は修理作業の誤り、不適切な修理というものが起因となって発生したとされておりまして、通常では考えられない原因による大変不幸な事故でありまして、遺憾という言葉しかないわけでありますが、何とも言いようのない思いであります。  この報告書に基づき建議及び勧告が提出をされました。この提出されました報告書により明らかにされました各種の問題点、またこれに基づいて行われました勧告及び建議に対しまして的確な対応を図りながら、二度と同じ過ちを繰り返すことのないように運輸省としても最大限の努力を傾けていきたいと考えております。
  178. 片上公人

    ○片上公人君 日本航空保有のB747SR型機に対する墜落事故以降の耐空性改善通報の内容とこれに対する処理、つまり主要改善箇所、日本航空の整備体制の改善等の経過についてお伺いいたします。
  179. 中村資朗

    説明員(中村資朗君) 運輸省では、事故後同種事故の再発を防止するためにボーイング747型機に対しまして胴体及び垂直尾翼関係だけで八件の耐空性改善通報を発行しておるわけでございます。その重立ったものといたしまして、ここで三件だけ御紹介をいたしますが、事故直後にまず第一に行いましたのは、同型機の運航をいたします定期四社に対しまして、垂直安定板あるいは方向舵、胴体与圧室の後部の構造、こういうものを一斉点検をすると、こういうことの指示を出しております。これにつきましては、若干のふぐあい事項が発見をされましたけれども、その時点での運航には差し支えないと、こういう結論が出たわけでございます。  それから二点目といたしましては、六十一年の五月でございますが、後部圧力隔壁が破壊しても垂直尾翼等が破壊をしないよう尾翼の点検孔へカバーを取りつけると、こういうことを求める耐空性改善通報を発行しております。これにつきましては、現時点におきまして全機装着済みでございます。  それから三点目でございますが、これはことしの二月になりまして発行したものでございますが、垂直尾翼が破壊をいたしましても油圧系統の機能が損なわれないように、油圧系統に自動遮断弁を取りつけると、こういうことを内容といたします耐空性改善通報を発行しております。現時点で進捗状況は四機程度でございますが、全体として六十二年度中には全機終わらせる予定でございます。  なお一方、日本航空におきましては、事故後の運輸大臣の勧告に対応いたしまして、胴体の与圧構造の点検を強化するとか、あるいは整備要員の増強をするとか、メーカーに対する品質管理強化のために、米州の技術品質保証部を設置するとか、あるいは機付の整備士制度の導入を図るとか、こういうことで整備体制を充実強化しているところでございます。
  180. 片上公人

    ○片上公人君 最終事故報告書によりますと、大阪空港におけるしりもち事故の修理が当該機の墜落原因とされておりますが、修理はマニュアルどおり行われなかったにもかかわらず、修理後の検査段階でもそのミスを発見できなかったと指摘されております。その当時における航空機の修理検査による不適切な箇所の発見が制度的あるいは技術的に不可能であったのか。この修理に関するボーイング社の説明内容がどのようなものであったのか、事故修理検査方法の改善が行われたのか。仮に有効な対策を講じていなかった場合、今後検討するのかということをお伺いいたします。
  181. 中村資朗

    説明員(中村資朗君) 事故報告書によりますと、日航機の事故は、しりもち事故後の後部圧力隔壁構造の修理においてなされた不適切な修理に起因をいたしまして発生をしたと推定をされております。当該修理作業中に発生をいたしまして、エッジマージンの不足に対しまする修正指示そのものは適切であったわけでございますが、実際にはその指示とは異なった不適切な作業が実施をされた。しかも、このような作業が行われたという記録も残されなかったということ、また、修理作業が完了した後からでは当該接続部分のへりがシール材で覆われてしまうということもございまして、指示とは異なる作業結果を発見することは不可能であったというものでございます。  このようなことから、当該事故機の修理におきましては、修理作業中の作業管理が適切になされていなかったというふうに考えられるわけでございまして、今回なされました勧告の趣旨を踏まえまして、主要構造部材の交換作業等を含む大規模な修理を行うに当たりましては、作業管理に万全を期するということで、修理を行う者に対しまして指導の徹底を図ってまいりたいと、こういうふうに考えております。
  182. 片上公人

    ○片上公人君 最終報告書では、航空機の耐空性、確保に関する勧告を行っております。そして勧告は政府の回答を義務づけておりますが、この勧告の効力、活用につきましてどのように考えておられるのか。  制度は異なりますが、米国のNTSBの場合は事故調査終了以前であっても有効な改善勧告を行っているけれども我が国の場合は調査終了まで行われておりません。もっと早く勧告できるように考慮をすべきであると思いますが、御説明をお願いします。
  183. 藤冨久司

    説明員藤冨久司君) お答えいたします。  今回航空事故調査委員会が運輸大臣に対して行いました勧告は、航空事故調査委員会設置法の規定により行われたものでありまして、これは航空事故調査の結果に基づき航空事故の再発防止という観点から早急に施策を講ずる必要があると認めて行われたものでございます。これによりまして航空事故の防止に寄与することが期待されるものでございます。なお、我が国の場合、勧告は航空事故調査の結果に基づいて行われるものでございますけれども、このほかに事故調査の過程で知り得ました事実等から航空事故防止のために必要と認められる施策を講ずべきことにつきましては、建議を行うことができることとされておりまして、両者あわせまして将来の航空事故防止に寄与することが期待されているものでございます。  なお、今回の日航機事故の調査に関連いたしまして、米国のNTSBが早い時期に勧告を出したのでございますけれども、これは米国が今回の事故機の製造国でございましたので、その製造国の事故調査機関でありますNTSBが製造国の立場から、事故の原因はともかくといたしまして、調査の過程で公表されました事実をもとに同型機の安全のために必要と考えられる事項について行ったものでございます。
  184. 片上公人

    ○片上公人君 勧告に関連しまして、大型機の後部圧力隔壁などいわゆる与圧構造部位の損壊に伴うフェールセーフ性の規定を耐空性基準に追加することとしておりますが、我が国は大型航空機の製造国でないために種々ハンディがあるものと聞いております。したがって、せっかくの措置であるだけに製造国に対しまして反省を求めるという効果を考えれば、ぜひぜひこの実効性を確保されたいと思いますが、その手続、進め方を説明をお願いいたします。
  185. 中村資朗

    説明員(中村資朗君) 今先生おっしゃいましたように、確かにハンディのある話だと思いますが、運輸省といたしましては、航空事故調査委員会の勧告を受けましたので、世界の主要な航空機製造国の政府当局であります米国の連邦航空局でございますが、FAA、あるいはヨーロッパの合同耐空性管理委員会というのがございまして、これに所属をしております英国あるいはフランス、さらには国際民間航空機関に対しまして、この勧告の趣旨を通知、通報をいたしますとともに、耐空性改善、耐空性基準の改正を働きかけてまいると、この努力を続けていきたいと、こういうふうに考えているわけであります。
  186. 片上公人

    ○片上公人君 建議によりますと、整備技術の向上に資するために目視点検による亀裂の発見に関する検討をするということとしておりますが、これは今回の事故にかかわらずむしろ当然のことでありまして、これだけ科学技術が進歩している時代に目視によるだけでもどうかと思いますが、現状はどのような方法でまたその発見率を向上させる手段があるのか、今後の進め方はどうかということを伺いたいと思います。  時間がございませんので、まとめて最後に、遺族補償交渉及び妥結、示談成立の現状はどのようになっているか、遺族団の訴訟提起状況はどのようになっているのかをあわせてお伺いして質問を終わります。
  187. 中村資朗

    説明員(中村資朗君) 前半のお答えは私からさせていただきます。  目視点検による亀裂の発見の可能性というのは種々のファクターが絡んでまいりますので一概に言えないわけでございますが、亀裂自体の長さとか形状ばかりでなくて、視認性、検査員の目からの距離あるいは検査員自体の技能といいますか、そういうものもかかわってくるものでございますが、当局といたしましては建議の趣旨を踏まえまして、学識経験者あるいは航空会社等で構成をいたします委員会を設けまして、目視点検による亀裂発見に関するデータの収集あるいは分析を行いまして、資料が相当程度蓄積をした段階で報告書を出したいと、こういうふうに考えております。
  188. 山田隆英

    説明員(山田隆英君) 遺族補償についての御説明を申し上げたいと存じます。  事故当時の搭乗員の全員の数が五百二十四名でございまして、乗員十五名を除きますと、旅客の数が全部で五百九名でございます。そのうち負傷された旅客の方が四人おられまして、この方々については現在治療中でございまして、その症状がまだ固定しておりませんために示談交渉がなされておりません。残りの死亡された旅客五百五人の方についてでございますけれども、そのうちで示談で解決済みの方が百四十六名でございます。残りの方のうち、現在御遺族から訴訟が提起されております方が八十五人おられまして、訴訟件数で申し上げますと、現在十三件ございます。十三件で、途中で取り下げなどもございまして、現在の状況で申し上げますと、日航のみを対象とするもの、これが二件、それから日本航空とボーイング社両社を相手にするものが二件、それからボーイング社のみを相手にするものが九件ということでございます。
  189. 橋本敦

    橋本敦君 きょう、私は社会、世の中から暴力をなくさなければならぬという、こういう課題について質問をしたいと思うのであります。  今、浜松市の海老塚では一力一家がつくりました暴力団事務所ビル、これに対して暴力団追放を求める市民の皆さんが二年半近くにわたって暴力追放、暴力団事務所を許すなという、本当に粘り強い市民運動を展開しています。この運動は浜松だけではなくて、近年金国各地でも暴力追放の市民運動が大きく広まっている一環でありますけれども、その中でも非常に大事な事件になってまいりました。住民側の弁護士が暴力団員によって背中から刺され、子供たちが誘拐されるという、そういう恐れで安心して登校もできない、まさに重大な社会問題であり、かつ政治問題であります。私はこういった暴力と暴力団がはびこるのは重大な政治の責任だとこう考えておりますが、こういう暴力団の蠢動を許さない、暴力団を世の中からなくすということについては当然のこととは思いますが、政治姿勢の問題としてまず国家公安委員長である葉梨大臣の御見解を伺いたいのであります。
  190. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) このたびの、今先生もおっしゃいましたように、長年にわたりまして地域の住民が暴力団排除のために立ち上がり、非常にまた頑張っておられるということにつきましては、暴力団の存在を許さないという地域住民の意識の盛り上がりの結果であり、極めて意義の深いものであると考えております。  警察といたしましても、この住民運動に最大限の支援をしてまいりたいと思います。
  191. 橋本敦

    橋本敦君 きょうはわざわざ文部大臣にもお越しいただいたわけでありますが、校内暴力を一切許さないということを私どもも厳しく主張してきましたし、まさに教育の場でも暴力は許されることではありません。そういう教育の観点から見て、社会に暴力団が存在し善良な市民に不安とあるいは人権侵害を含む被害を与えているという事態は早くなくさなくちゃならぬというのは当然でありますが、文部大臣としていかがお考えでしょうか。
  192. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 全く私も遺憾な事件だと思って心配しております。あの事件が起こりましたのは、たしか六月の二十日だったと思っておりますが、それ以来浜松市の教育委員会、これとPTA、学校等協議いたしまして、例えば集団登校と集団下校とで親が付き添う、先生もそれに指導する、こういう形でやっております。しかし、何としてもあそこの空気がもうよどんでおりまして、非常に児童生徒にショックを与えておる。これを何とか緩和しなきゃいけないと思って、今教育委員会と警察当局なり地元、総ぐるみで対策をしておりますので、我々として手伝いし得ることは何でもいたしたいという気持ちでおります。
  193. 橋本敦

    橋本敦君 警察庁も全国的には暴力追放について日常的にもいろいろと努力をなさっておるはずでありますが、近年この暴力追放ということについて全国各地でどのような住民運動が何件ぐらい起こっているか。そしてまた、暴力団事務所撤去ということについて成功した事例もかなりあると思いますが、どの程度把握していらっしゃいますか。
  194. 森広英一

    説明員森広英一君) お答えいたします。  住民運動の起こっている数というのは大変多うございまして、必ずしも数を正確につかんでおりませんが、さような住民運動の結果で暴力団の事務所等を追放することに成功しておる件数というものは、昭和六十年で百二十七件、昭和六十一年度で百十三件と、そのような数字を掌握をいたしております。
  195. 橋本敦

    橋本敦君 問題の浜松で一力一家というのがブラックビルの中に事務所を設けようというわけでありますが、この一力一家というのはどういうような犯罪歴あるいは組織、団体であるのか、警察庁はどうつかんでおられますか。
  196. 森広英一

    説明員森広英一君) 一力一家の実態につきましてお答え申し上げます。  一力一家と申しますのは、昭和五十九年六月に、旧伊堂組という暴力団がございましたが、その旧伊堂組の幹部をいたしておりました現在の一力一家の青野哲也という組長、これが「一力一家」という名称で組を起こしたのが発端でございまして、その後早々の間に有名な暴力団山口組の系列に入っております。そうして、現在時点におきましては、浜松市を中心にいたしますところの静岡県の西部地方に勢力を持っておりまして、傘下に約十一団体百三十名の勢力を擁しておるという実態でございます。  なお、この暴力団は、賭博、のみ行為、やみ金融などを主な資金源にしていると見ておりまして、これの検挙に努めました結果、例えば昨年一年間では組員四十一名を検挙をし、今年も六月末までに、半年の間に四十四名を検挙しておる、こういった状況でございます。
  197. 橋本敦

    橋本敦君 こうした組員による犯罪歴というのは、今おっしゃった覚せい剤、賭博、恐喝、それから窃盗、暴行、傷害、銃砲刀剣、それから道交法違反、殺人未遂、詐欺、あらゆる犯罪に及んでいると承知しておりますが、そうですか。
  198. 森広英一

    説明員森広英一君) 今申されるような犯罪あるいは賭博、のみ行為、さらには証人威迫の行為、あるいは対立抗争事件に伴う殺傷事件、各種多様な犯罪を敢行しておるところでございます。
  199. 橋本敦

    橋本敦君 したがって、実に凶悪な暴力集団だということがはっきりと言えるわけですね。だから、こういう暴力的な凶悪集団に対して住民が二年半近くにわたって監視小屋を設け、お互いに交代で仕事が終わったら監視をし、そしてまた署名運動、市民大会を成功させ、また自治体にも警察にも訴え、あらゆる努力をしながら暴力追放の運動をやっているというのを、私は本当に大変なことだと思うんですね。これに対して、この組事務所に対する住民の反対運動が起こりましてからこの一力一家が、弁護士に対する殺人未遂を行うまでにどのような不法な行為を行っていますか、この住民運動に対して。
  200. 森広英一

    説明員森広英一君) 住民運動につきましては、昭和六十年三月中旬ごろから地域住民が立ち上がりまして、同年、すなわち昭和六十年の八月には問題のビルが完成しましたためにさらに運動を強めて監視の活動等を開始をいたしました。これに対しまして昭和六十一年の十一月に一力一家の組長、青野哲也が対抗する訴訟を提起したという経緯がございまして、だんだん対立がエスカレートしておりましたところ、今年に入りまして一力一家の組員が付近の監視をしておる住民に対して尾行を行うようになりました。そうして、警察も警戒をいたしておりましたところ、六月十八日に至りまして監視をしておる住民に集団脅迫事件を発生させました。これはその場で直ちに検挙をいたしております。それから、六月二十日には海老塚町の自治会の役員宅に侵入いたしまして、ガラス等の器物損壊を行うという事件が発生いたしました。この事件も検挙をいたしました。また、先生の御指摘にもございましたが、同じ二十日の日に住民側の弁護団長に対する刺傷事件、襲撃事件というものが発生いたしまして、これは現在におきましては既に犯人を逮捕をいたしております。  いずれにしましても大変凶悪な団体でございまして、住民に対する攻撃がございます。できるだけ未然に防止をいたしておるつもりでございますが、そういった不幸にして発生した事件につきましては、早急にこれを検挙するという体制で対処をしておるところでございます。
  201. 橋本敦

    橋本敦君 それから、先ほど文部大臣に伺いましたが、住民大会に参加した子供は誘拐するぞというおどしを込めた電話が新聞社にかかってくる。これはもう明らかに脅迫そのものですが、これの犯人は検挙されておりませんか。
  202. 森広英一

    説明員森広英一君) お答えいたします。  その件につきましては、今先生おっしゃったとおり、新聞社に匿名の電話がございました。犯人は何者ともまだ今のところわかっておりません。しかしながら警察といたしましては、児童の安全を守るために、そういった誘拐事件が実際に発生しないような警戒、保護の活動を現在行っているところでございます。
  203. 橋本敦

    橋本敦君 文部大臣も大変に心配をされて、子供が学校に通うのに安全に通えるようにあらゆることを、できることはやりたいというそういう御意見があったんですが、いつまでもこれを続けなくちゃならぬということになりますと、警備する警察も大変だし、学校に責任を負う文部省、あるいは教育委員会を含む責任ある立場の人も大変だし、一体どこでどうこれを決着してこういうことをなくさせるか。文部大臣はあらゆることをやりたいということをおっしゃっていますけれども、具体的に葉梨自治大臣あるいは文部大臣としてこうするというようなお考えがあるんでしょうか。
  204. 西崎清久

    説明員(西崎清久君) 先生御指摘のとおり、児童生徒に脅迫が行われるというのは大変異例な事態でございます。ただいま文部大臣からお答え申し上げましたとおり、現時点におきましては浜松市教育委員会が警察当局と十分な連絡をとりまして、まず小学校について申し上げますと関係地域で四校ございます。これらにつきましては、登校時に親が付き添いによりリレー式に集団的に登校をする、それから下校時は集団下校を行う、こういうふうな措置をとっております。それから、中学校につきましては関係地域三校ございますが、下校時に集団下校をするというふうな措置をとり、幼稚園につきましては通園バスに私服の刑事さんの同乗をお願いするというふうな措置をとっておるわけでございますが、御指摘のとおりこれらの事態がいつまでも続くということになりますと大変問題が長引くわけでございまして、地域のPTA協議会もきょうやっておるはずでございますが、対応については関係機関とともになるべく早く解決するようにというふうなことで、教育委員会も苦慮しておるというのが現状でございます。
  205. 橋本敦

    橋本敦君 最終的には、私は市民運動と世論の力がこういった不正な暴力に負けずに勝利すると思いますけれども、早く解決しなくちゃならぬ。住民運動も大変ですね。子供を誘拐をするぞという最も親にとっては本当に辛抱できない、子供を人質にとるというようなこういう凶悪なことまでやるとか、暴力団が市民運動に対して精神的慰謝料を払えというようなとんでもない裁判を起こして、住民の方が建物の使用禁止を含めて反訴を準備するということになれば、その訴訟を許さぬというわけで弁護団長殺人未遂で殺しにいくとか、これはもう絶対にこういう存在は存在そのものが許せない、こう思うんですね。それぐらいの気持ちですが、国家公安委員長のお気持ちどうですか。
  206. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) お話にありましたようなこの事案に対しましては、辛抱強く検挙に至るように努力を続けていきたいと思います。それからまた、潜在的ないろいろな事案もあると思いますので、それらにつきましても掘り起こしの努力をいたしまして、熱心に捜査し、そしてこれを検挙する、こういうことで対応していきたいと考えております。
  207. 橋本敦

    橋本敦君 こういう凶悪なことをやるなら、これはもうその事務所を撤去さして追放する以外にないですよ。そこまでどうやるか。運動と世論は大事ですけれども、政治の場、行政の場でもやっぱりそこも含めて、本当に腹をくくって暴力団をなくさなくちゃならぬと思いますね。文部大臣、先ほど御答弁いただきましたからもう結構でございますので、ありがとうございました。  そこで、弁護団長の三井さんが刺されたという事件の捜査は罪名は何でやっていますか。
  208. 森広英一

    説明員森広英一君) 現在、殺人未遂容疑で被疑者を逮捕をいたしております。
  209. 橋本敦

    橋本敦君 それで、私は青野組長のやり方はけしからぬと思うんですが、これは犯人と称する男を出頭さしたでしょう。そのときに青野組長が、自分は関係ないんだというような、そんな手紙を持たせて出頭さしていると新聞で報道していますが、本当ですか。
  210. 森広英一

    説明員森広英一君) 事実でございます。
  211. 橋本敦

    橋本敦君 警察はそれ信用できますか。
  212. 森広英一

    説明員森広英一君) 現時点では証拠がありませんのでこれを論評するのは大変難しゅうございますが、暴力団犯罪一般で論じますと、そういう場合にえてして上部の指示で殺人を行った例が大変多うございますので、警察としては鋭意捜査を進めてまいりたいというふうに考えております。
  213. 橋本敦

    橋本敦君 今のおっしゃる観点は大事なんですね。わざわざ自分が組長でありながら関係ないよというそういう手紙を持たせて自首させるというのは、これはもう警察に対してけしからぬ態度ですよね。社会的にも通用しません。だから、私は殺人未遂という重大な事案について、まさに組長を含む組織的犯罪として徹底的な捜査を遂げられることを厳しく要求したいんですが、その決意でおやりいただけますか。
  214. 森広英一

    説明員森広英一君) 鋭意事案の真相を解明する努力をいたしたいと存じております。
  215. 橋本敦

    橋本敦君 この暴力団が起こした裁判について、この民事裁判の中で、これだけ凶悪な犯罪行為をやっておきながら、おれたちは暴力団ではない、任侠の士である、こんなことを言っているということでありますが、もってのほかであります。先ほどおっしゃったとおり、まさに凶悪集団そのものであります。この事務所が建設されるにつきまして、この土地は五十九年十月二十二日に、登記簿によりますと、青野に所有権移転されておるわけですが、前所有者は高林という方でありますけれども、うわさによりますと、これは一力一家が賭博をしばしばやることはさっきもおっしゃったとおりですが、賭博で巻き上げたといううわさがあるんですが、そういう情報はお聞きになっていますか。
  216. 森広英一

    説明員森広英一君) ただいま御指摘ような事案があるという情報は、現在までに入手しておりません。
  217. 橋本敦

    橋本敦君 調べていただきたいんです。私ども、現地の弁護士からの情報としても、そういう話だということを聞いております。そうしますと、常習賭博罪の時効は三年しかありませんから、急いでもらわないといけないわけですが、この土地を賭博のカタにとったとしますと、まさに犯罪を構成する物件に近いということになってきますからね。もしそうすることになれば、常習賭博で立件できれば、犯罪の用に供したものあるいは犯罪として取得されたものは、これは場合によっては裁判所は没収処置をすることができるわけですからね。やっぱりそういうところまで踏み込んで、知恵を出して、何としてもこの事務所を徹底的になくすということに本当にメスを入れていかなくちゃならぬと思う。今、情報はまだ入ってないということですが、厳しく捜査をお願いしておきます。  この事務所を建設するについて、それでは資金はどこから持ってきたのか。自己資金がどうか、それはわかりませんが、調べてみますと、こういうことをやっているんです。  この青野は、これを取得しましてから、六十年四月十八日に、ある工務店にこの土地の所有権を移転します。それで建築が始まる。で、このビルができたのが六十年七月三十日でありますけれども、その後九月に至って青野は、このビルと土地に名義を所有権移転をした工務店から所有権移転請求権保全の仮登記を自分につけますから、表向きの登記の操作であって、実際は青野の所有だということがこの登記からもうかがえる。実際は、青野は今お話をした民事裁判で住民相手に慰謝料請求の裁判を起こしていますが、その裁判所への訴状の中で、この土地とビルは私のものである、自分のものであると主張をしております。これは裁判所での主張ですから間違いありません。だから、この土地、建物は一力一家の組長の青野のものだということは十分に考えられる。しかし、登記上は今言ったように、ある工務店の名義にしている。自分は所有権移転請求権保全の仮登記をしている。なぜこういうことをやるかといいますと、この登記によりますと、五千万円の融資を、このビルを担保にして六十年の七月三十日に、さる東京に本社がある大手信販会社から受けるわけであります。だから、どういう資金源もやっぱりきちっと洗っていかなくちゃならぬと思うんです、  そこで、大蔵省に伺いますが、暴力団に対して、明らかに暴力団とわかっている場合は、公共的性格を有する銀行等は融資をすべきではないと思いますが、どういう態度をおとりになっていらっしゃいますか。
  218. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 今一般論としての御質問でございますので申し上げますと、大蔵省といたしましては金融機関の融資について、今委員もおっしゃいましたような金融機関の公共性にかんがみまして、いやしくも暴力事犯等によって社会的に批判を受けているような先、すなわち暴力団への融資は厳に慎しむよう機会あるごとに金融機関等を指導しているということでございます。
  219. 橋本敦

    橋本敦君 したがって、銀行から融資が受けられないので、こういった工務店に、自分の名前じゃなくて工務店の名前を借りて、そして銀行ではなくて信販会社から五千万の融資を受けたという工作の疑いが強い。  大蔵省に伺いますが、今言ったような厳しい態度をおとりになるということは、信販会社が金融を主体として営業している場合に、信販会社に対しても厳しく指導をなさるということが必要ではないかと思いますが、信販会社に対する指導はどうなりますか。
  220. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 信販会社はいわゆる金融機関ではございません。しかし、多くの場合貸金業者でございまして登録を受けているわけでございます。その意味で大蔵省のある意味で監督下にあるということでございます。したがいまして、このような信販会社につきましても、今金融機関に申し上げましたような趣旨を念頭に置いて融資等を行うことを、我々としては希望しておるわけでございます。
  221. 橋本敦

    橋本敦君 おっしゃるとおりだと思うんです。したがって大蔵大臣、今私が提起したこの件について、ここでは信販会社の名前は申し上げませんが、調べたらすぐわかりますので、こういった架空の所有権移転登記によって暴力団であることをごまかして、そして融資を受けておるというこの一力一家のやり方について、信販会社に対しても調査をしてしかるべき指導をしていただくように御指示いただきたいんですが、いかがですか。
  222. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 具体的な事案でございますので、事案を存じませんから、その件について直接お答えをすることは避けなければならないと思いますが、先ほど銀行局長が申し上げましたように、情を知ってそのようなことをするということは好ましいことではないということは明確にいたしておきたいと思います。
  223. 橋本敦

    橋本敦君 おっしゃるように、情を知ってということにおっしゃいましたが、私は一力一家が、今警察がおっしゃったようなその地域では名うての凶悪暴力集団であることはもうたちどころにわかることでありますから、そういうことをよく知った上でおやりになったという可能性が強いと思いますので、しかるべき調査を引き続いて、御答弁ありませんでしたが、要求をしたいと思うんです。これは警察の方でもこの点については、資金源については目を光らせていただきたいので、大蔵大臣が今おっしゃったそういう立場で警察も、今私が指摘した点は検討してほしいと思いますが、いかがですか。
  224. 森広英一

    説明員森広英一君) 融資に絡みまして犯罪行為があるという場合には、警察におきましても厳正に対処をいたしたいと存じます。
  225. 橋本敦

    橋本敦君 そこで、建設大臣に今度はお伺いしたいのでありますが、浜松市もそれから静岡県も暴力団をなくすために本当に真剣にやっております。  最近の報道によりますと、別の暴力団が山口組系下垂一家というのでありますけれども、これが事務所を建設しようとしたことについて浜松市は大英断ですけれども、建築確認を留保するという態度をとりました。それからさらに、最近の報道によりますと、御存じだと思いますが、静岡県が明らかに暴力団がやっている、あるいは関係者がやっている、名前を暴力団組長の妻名義に、代表取締役にしていてもそれは暴力団がやっていると見られるというようなところまで踏み込んで検討して、暴力団に対しては建設業法に基づく知事の許可を与えない、こういう態度をとっております。  私は、これは立派な態度だと思うのであります。建設業法の第七条第三項によりますと、法人である場合は役員や使用人が、個人である場合はその音あるいは使用人が「請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。」でなければ許可をしてはならないと、こう書いてありますね。だから、「請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。」でない限りは許可しないという厳しい、こういう解釈も可能ですね。  ところが、暴力団一家がやっておるならば、時によりあるいはいろんな場合に脅迫を含む不正な行為あるいは刑事犯罪とならなくても、「不正又は不誠実な行為をするおそれ」がそれ自体あると見てよいわけですから、こういった厳しい態度を建設業法の許可についてとるのは暴力団をなくしていく上からも必要だと私は思いますが、建設大臣のお考えはいかがでしょうか。
  226. 牧野徹

    説明員(牧野徹君) 建設業法の許可の基準につきましては先生がただいまお読み上げいただいたとおりでございます。問題はこの「不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。」が必要だと、こういうことでございますが、この解釈をめぐりましては、従来から暴力団が関与するものについては厳しく対応するようにというのが一貫した姿勢でございまして、ただ許可の申請がございました場合に、例えばその社長さんあるいは重要な使用人が明らかに暴力団構成員であるかどうかの確認ということは必ずしも簡単ではございません。で、いろいろ警察庁の方とも十分御協議をいたしました結果、的確な情報通知をいただけるということが明らかになったものでございますから、昨年通達を出しまして、そういう情報をいただくということを前提にした上で、それは明らかにわかるわけですから建設業の許可は与えない、あるいは許可は三年ごとに更新をいたすわけですが、更新の時期に来れば更新の許可は与えない、こういうふうに対処をするつもりでございます。
  227. 橋本敦

    橋本敦君 今の点大事ですが、警察庁の方も的確な情報を提供するということで協力することはお約束していただけますね。
  228. 森広英一

    説明員森広英一君) 建設省と既に相談済みでございます。
  229. 橋本敦

    橋本敦君 今おっしゃったように三年ごとという話がありますが、明らかに違法あるいは刑事犯罪を含む不正な行為をやったということになれば、三年ごとどころか直ちに営業許可を取り消すということも法律上可能ではありませんか。
  230. 牧野徹

    説明員(牧野徹君) おっしゃるとおりでございまして建設業の許可で言えば「許可の取消」というのが第二十九条にございますが、そこで非常に悪質なことをやれば、それはもう直ちに取り消すことも可能でございます。
  231. 橋本敦

    橋本敦君 以上のようなことですから建設大臣まさに暴力をなくすということで国家公安委員長だけにお任せするんじゃなくて、あらゆる機会に暴力団の蠢動を抑えるためにも建設大臣として今御答弁あった方向で厳しく対処していただけますか。
  232. 天野光晴

    国務大臣(天野光晴君) 十二分国家公安委員会との連携をとりまして、始末は完全にいたします。
  233. 橋本敦

    橋本敦君 葉梨国家公安委員長に最後に私はこの浜松の問題について御検討いただきたいのですが、本当に住民は二年有半頑張っています。そして自治体も県あるいは市も頑張っています。警察もまた児童の警備を含め住民の警護のために本当に大変な状況で頑張っていますね。私はこれは早く解決しなきゃならぬと思いますが、そのためにもさらに市民が世論を高めて運動することが大事なんですが、政治の場で、政府の場でこういった問題について責任を負われる国家公安委員長として、一遍この現地を御視察をしていただきたい。そして自治体関係者にも静岡県、浜松市にも会って状況もつかんでいただきたい、そういうことを御検討いただくように、警察庁はもう既に視察いただいておるようですが、いかがでしょうか。
  234. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) 既に警察庁の幹部が現地を視察して、また担当の県警本部その他にも指示をしておりますので、その推移を見たいと思っております。
  235. 橋本敦

    橋本敦君 その推移を見るということでありますが、推移を見たということでいつまでも長くなっては困るので的確に連絡をとり、そしてこれはやっぱり現地を視察する必要があると考えればぜひ行っていただきたいということを要望しておきたいと思いますが、よろしいですか。
  236. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) 先生のお話はよく承りました。
  237. 橋本敦

    橋本敦君 それでは浜松の問題はこれで一応終わりまして、最近続発しておりますいわゆる地上げ屋と居住者を追い出す不法な暴力、これについて質問をしたいと思うのであります。  この点については地価高騰につけ込んで東京、大阪等いろいろなところで地上げ屋の策動が強まっていることは明らかでありますが、問題は大変な不法な暴力をあえて行うということでもう本当に黙視できない状況になっております。例えば大阪の住吉では長居一丁目というところで不当な立ち退きを迫る共同興産という株式会社があるわけですが、どういうことをやっているかといいますと、この写真にもありますけれども、アパートのあいたところをいきなりユンボのような機械を持ってきて打ち壊す。ですから現に居住している人はまさに内部のふすま一枚で外と接しなきゃならぬところまでやられて、あたりはまさに木材からいろんなものが散乱をして無法の町という状況を呈します。そしてあいたところに何をやるかといいますと、大型犬を空き地にほうり込んでそして夜通し鳴かせる、また大小便は垂れ流しだ、そしてそれでまだ足らぬとなると畳をめくってそのあいたところへ入って水をまく。本当にひどいことをやっているわけであります。  また大正の例を申しますと、大阪の大正区というところで文化住宅と言われる古い建物があるんですが、次々あいていく、そこはもう人を入れないであかしておきまして、そして底地買いでこれが買われ建物の所有権が移って、地上げ屋ということで大阪では三和グループといえば名うてでありますけれども、それの手に移ってからはこれはどんなことをやるかといいますと、これもまたひどいものでありまして、いきなり一時間にわたって作業員を連れていって空き室のドア、ガラスをハンマー、鉄棒でたたき割って大変な音を立てて破壊行為を行う。そしてそれだけではありませんで、そのあいたところに白いビニール袋の中に腐った肉の塊をほうり込んで悪臭を放たさせると。それからあいたところに立ち退き連絡所というようなものをつくって、夜中にそこへ人を連れていって夜通し大声でマージャンをやって騒ぎ立てると。これはもう本当に住民はたまったものじゃありませんね。こういうようなことをやっておるわけですが、警察はこれはそれぞれ告訴されている事件でありますが、状況をつかんでいらっしゃいますか。
  238. 森広英一

    説明員森広英一君) ただいまお尋ねの二つの事案につきましては、最初の事案は口頭で届け出を受けておりますし、二つ目の事案につきましては告訴を受けておるところでございます。
  239. 橋本敦

    橋本敦君 こういうような行為は明らかにこれは刑法的に言えば器物損壊罪であることは明らかでありますし、建造物損壊罪、刑法二百六十条ですね、それから同時にまた立ち退く義務のない者をこういう暴行、脅迫で立ち退かせようとするのですから強要罪あるいは強要罪の未遂に該当することは明らかですが、法解釈として警察はどうお考えですか。
  240. 森広英一

    説明員森広英一君) 告訴なり届け出なりを受けましてただいま捜査を開始したところでございますので、その行為が具体的に何罪に該当するかというような御答弁は現在時点ではできないわけでございますが、もし告訴状に記載のとおりの事実が事実であれば、真実であれば今御指摘ようなことになろうと、これは仮定の問題としてはそういうものであるということだけに答弁をとどめさせていただきます。
  241. 橋本敦

    橋本敦君 これについては警察庁は断固として捜査をやるということでやっていただけますか。
  242. 森広英一

    説明員森広英一君) 当然届け出なり告発があったわけでございますので、犯罪に該当する行為がある場合には当然のことでございますけれども、厳正に対処をしてまいるべきものと存じております。
  243. 橋本敦

    橋本敦君 ただ一点指摘したいのは、この大正の場合、私が担当の弁護士から得た情報ですけれども、告訴状を持って六月二十九日に弁護士の代理人二人、それから告訴人七人、今言った大変な人権侵害を受けている本人ですが、この人たちが我が党の大阪市会議員の矢達君と一緒に警察に告訴状を提出しに行きました。態度がどっちの味方かと思われるくらい異常なんですよ。まず弁護士一人だけ入りなさいと、代理人は一人だけ。告訴している本人は七人いるんですけれども入るな、一人だけ入りなさい、市会議員は出ていきなさい、こういう強圧的な態度だ。これは私は暴力的被害を受けている住民を保護する立場にある警察として、こういう態度はこれはとるべき態度ではないと思いますが、こういう態度をとられたということ自体私は問題だと。それからさらに、告訴状を受理されたときに、捜査一係は二人しか人がいないので、あしたからすぐ調べるというわけにはいきませんよ、こういうようなことをぽっと言われるということで、住民は警察に対するこの態度に著しい不信を持たざるを得ない、こう言っておりますが、こういう態度は改めるべきだと思いますが、事実をお調べになって適切な指導をしていただけませんか。
  244. 森広英一

    説明員森広英一君) ただいま初めて伺いましたので、さような事実はないと私は信じておりますけれども、もしそういった誤解を生むような行為があった場合には厳しく指導をいたしたいと思います。
  245. 橋本敦

    橋本敦君 今までこういった暴力事犯がはびこる背景には、警察は民事問題には介入しないという、そういった表向きの言いわけがしばしばあったようであります。しかし、明らかに度を超えて刑事犯罪を構成すると見られる行為については、地上げ屋の策動は、これは厳しく対処していただくのは当然だと思いますね。それは御異論ないでしょう。
  246. 森広英一

    説明員森広英一君) 犯罪行為に対しては、ひるむことなく適正に職務を執行すべきであるというふうに考えております。
  247. 橋本敦

    橋本敦君 それで、この地上げ屋はしばしば人を使ってこういう暴力行為をやります。しかし、実際は明け渡しを要求する土地の取得、建物の取得、これをやっている者は宅建業法に基づく認可を受けている、そういう事例が多いのであります。例えば今私が指摘をいたしました大正の場合は、株式会社カヤノキ建設というのが介入しておりますが、これは宅建業者としての免許を持っております。それからさらに、先ほどお話しした口頭で告訴があったとおっしゃった住吉の長居一丁目、ここで共同興産という者が問題を起こしているわけでありますけれども、これも宅建業法による免許を持っているのであります。私は番号まで調べております。  そこで建設省に伺いたいのでありますが、宅建業法の免許について、第五条で免許基準、第四号はどういうようになっておりますでしょうか。
  248. 牧野徹

    説明員(牧野徹君) 第五条免許の基準の第一項の四号でございますね。これは「免許の申請前五年以内に宅地建物取引業に関し不正又は著しく不当な行為をした者」には免許をしてはならないというのが注書きで入るわけであります。
  249. 橋本敦

    橋本敦君 そこで、こういうような暴力的地上げ屋というような、こういう策動を許さないために、警察のしっかりした対処と同時に、先ほどからも言っておりますが、こういう業者に対しては宅建業法による免許の厳しい審査及び取り消しを含む処置を検討する必要がある、そこまで今社会問題になっていると思うのですが、建設大臣のお考えはいかがでしょう。
  250. 牧野徹

    説明員(牧野徹君) 宅地建物取引業の免許につきましても、ただいまお読み申し上げました条文なりあるいはその次の五号でございますが、「宅地建物取引業に関し不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者」というふうな者には免許をしてはならない、こういう法律になっておりますので、従来からもそうでございますが、厳正にこれは適用をしてまいりたいと考えております。
  251. 橋本敦

    橋本敦君 それでは、私が指摘しましたこの事案について株式会社カヤノキ建設及び共同興産株式会社、これについて調査の上必要な処置がとれるならばとるということで、調査をお願いしておきたいと思うのであります。  国土庁にお伺いしますが、こういった地価の高騰につけ込んでの地上げ屋の行動、これに対応するために最近監視区域の設定を含めて新しい法律のもとで作業を進めていらっしゃると伺っておりますが、どういう状況に今なっておりますか。
  252. 片桐久雄

    説明員(片桐久雄君) 地価上昇の著しい地域において投機的な取引を抑制する観点から、前国会におきまして国土利用計画法の一部改正が行われまして、新たに監視区域制度が設けられました。  この監視区域におきましては、小規模な土地取引について届け出の対象とするとともに、届け出の対象とならない土地取引につきましても報告を求めることができるということになっております。  今後この報告徴収の内容等に関する政令、それから総理府令の整備を行った上、八月初めには施行いたしたいということで準備を進めております。この監視区域の指定につきましては、現在のところ東京都、神奈川県、横浜市、川崎市におきましては法施行と同時に監視区域を指定するという方向で検討しておりますし、また千葉県、埼玉県、大阪市等におきましてもこの監視区域の指定について検討が始められております。  国土庁といたしましては地価が急激に上昇している地域におきまして、この監視区域制度が積極的に活用されることが重要であるというふうに考えておりまして、関係の地方公共団体を指導している次第でございます。
  253. 橋本敦

    橋本敦君 建設大臣、地価の高騰についてはかねがね厳しい御意見をお持ちでございますが、それにつけ込んで暗躍する地上げ屋をこれはやっぱり不法に蠢動さしてはならぬ。今国土庁もそういう方向で監視区域の設定から作業を進められておりますが、全国で都市の地価が高騰する地域を中心にして一体どういうような地上げ屋の不法な策動があるのか、それにどう対応してこれを抑えるのか、建設省としても検討を開始してほしいと思うんですが、いかがですか。
  254. 天野光晴

    国務大臣(天野光晴君) 先ほど来お話のございましたように、不法行為であるという認定を警察庁の方でやっぱりきちっとしてもらえば、私たちにはその事件の捜査の権限はありませんから、状態だけではやっぱりちょっと無理だと思いますので、そういう観点から警察当局のきちっとした捜査をしていただいて、それに対処して厳重に始末をしたい、そう考えております。
  255. 橋本敦

    橋本敦君 それは結構ですが、私が言うのは全国的に一体地上げ屋というのは何で、どういうことをやっているか、その状況、実情把握にも努めてほしい、こういう意味なんですね。
  256. 天野光晴

    国務大臣(天野光晴君) それは決して、今土地問題を扱う我々行政面からいって非常に望ましくない行為でありますから、その実態は十分調査をさせるようにいたします。
  257. 橋本敦

    橋本敦君 最後に、大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、昨年度の銀行貸出額日銀調査によりますと、新聞にも出ておりますが、不動産業融資が大幅の増で前年比三六%増、八兆円。そして六十一年度末で銀行の不動産業融資が三十兆円を突破した、こういう報道もございました。これが地価急騰を下支えしているのではないかとも報ぜられておるわけですね。  これについてはかねてから大蔵省としても土地関連融資について不当な土地投機をあおらないように、あるいは土地転がしをやらないようにという観点から、公共性にかんがみて融資については厳に慎めという通達を出していただいておりますが、余り効果がないのではないかという気がしているんですね、これだけ三十兆もたまってくる、八兆円も今年度ふえた。もっと厳しくおやりいただいていいのではないかと思うんですが、どうですか。
  258. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) このような融資につきましては、これまでも累次にわたって通達を出してきております。  先ほど委員もおっしゃっておられたように、昨年十二月が最後でございますが、その際に金融機関から不動産関連の融資額につきまして報告をとることにいたしました。それにつきまして、報告を受ける際に我々としては異常に関連融資が伸びている場合には、その内容について聞いております。したがいまして、徐々にそういう意味での効果は出てくるものと思います。  それから、あわせて申し上げたいのでございますけれども、土地関連融資等につきましては、土地の値段が御存じのように急速に上がっておりますので、仮に実需に伴う部分について融資する場合でも、やはり金額は当然地価の上昇に応じて上がってまいります。したがって、最近の貸出残高のかなりの増加、その中にはこのような適正な融資もほとんど大部分占めていると私は思っておりますので、それ以外のもの、いわゆる適正でないというのか、投機を目的とするようなもの、あるいは暴力団の先ほどの地上げ関連のようなもの、こういうものにつきましては我々としては厳しく金融機関を指導していきたいと思っております。
  259. 橋本敦

    橋本敦君 最後の質問をします。  私が指摘した大正の事件でも、全国でも珍しいケースですが、住民はこの地上げ屋に融資した銀行も共同不法行為あるいは過失で不法行為に手をかしたということで、損害賠償の裁判を起こしていますが、読んでみますと、なるほどこれは和歌山の興紀相互ですが、八億円の融資をしている、それから大阪商業信用組合、これは四億円の融資をしている、こういう巨額な融資をもとにしてこういった地上げ屋が策動するわけです。これはどこから返してもらうかというと、こういう不法な行為をやって住民を追い出して、そしてもうけて、まあ言ったら汚い金から返してもらう、こういうことですから、公共機関としての銀行がやるべき姿ではない。だから、こういった損害賠償の裁判が起こるのも私は当然だと思うんですが、こういうようなことで融資の面でもさらに一層地上げ屋の策動を許さない方向で厳しく規制することを大蔵大臣にお願いし、所見を承って終わります。
  260. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 不正なもの、あるいは著しく反社会的な種類の融資、これはもう指摘をしなければならないことはもちろんでございますけれども、一般的に不動産関連の融資が非常に大きくなっているということにつきましては、やはり報告を徴するという形で注意を促すということはやってまいりたいと思っております。
  261. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 最近本屋の店頭で、一九二九年のときの世界恐慌の本でありますとか、あるいは大恐慌来るというふうなセンセーショナルな本が売れているようでございますけれども、私は簡単に歴史が繰り返してそういう大恐慌が来るなんというふうなことは信じておりません。しかし、もしやはり対策を誤るとそういう危険性があるということも排除できないのではないか。つまり、今日世界経済はかってとは比べものにならないぐらい商品、資本、技術が国際的に自由に動き回っている。他方において政治の方はそれぞれ各国が別々に財政政策を立て、経済政策を立て、別々に対応している。したがって、各国がよほど政策的に協調して対応するのでないと、そういった経済の動きにおくれちゃって大変な経済的な不況あるいは恐慌ということをもたらすことも私はあり得ると思います。  その意味でサミット会議、これは本来経済の会議が主たる目的であったと思いますけれども、サミットが開かれまして各国の経済政策のあるいは財政政策の協調を図っていくということは私は大変意味があることであるというふうに思っております。昨年も東京で開かれましたサミットにおいて、そういったふうな経済政策の協調、多元的に相互監視していくというふうなことが言われておるんですけれども、ことしのベニスのサミットは前年の東京サミットと比較しまして、そういった国際的な協調という点においてどういう点が変わっているか、どういう点が進歩したというふうに御認識されていますか、そのことをまずお伺いしたいと思います。
  262. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私も関委員と同じように一九二九年の再来というようなことはあるとは考えておらない一人でございますが、いわゆる七カ国蔵相会議であるとかあるいはサミットであるとか、一つ一つはジャーナリズムの立場からいえば大した成果もなかったというようなふうによく言われます。あるいはそのとおりかもしれませんが、しかし、こういうことが頻繁にしかも定期的に行われることによって、これは私は一種の定期健康診断みたいな役割を果たしておる、何か大変なことが起こらないようにしょっちゅうそういう連絡をしておるという、そういう意味合いはやはり一九二九年とはおのずから違ったものを我々は持つようになったと考えております。ことしのサミットもそういう意味ではそのような位置づけをされるものであろうと思いますが、殊にことしが昨年と異なりました一つの問題は、為替の問題につきましていわゆるプラザ合意以来のドルの低落というものがこれ以上大きく動くということは、アメリカ自身を含めて各国にとってこれは非生産的である、カウンタープロダクティブであるという認識が各国首脳の間で一致したということ、したがって、それを防ぐためにおのおのの政策協調を進める、また場合によっては共同会議を行うという蔵相会議のかねての申し合わせを、首脳において確認をしたということが一つの進歩であったかと思います。  もう一つの成果といたしましては、そのよう政策協調を行うあるいは行われているかどうかをチェックする一つの方法として、いわゆるサーベイランスというものを具体的に東京サミットで出されました宿題にこたえて、仕組み、方法、やり方をこの間のサミットで決定をした、経済問題について申しますならばそのようなことが成果に数えられるのではないかと思います。
  263. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私も、為替の安定ということを去年に比べますと非常に強調している、去年はそれほどでもなかったと思うんですけれども、ことしはそのことを特に強調している点は一つの進歩ではないか、アメリカの方の反省ではないかというふうに思っております。  もう一つ、去年に比べますと、宣言の文句なんかを見ますと政策的な意図がかなり強く出てきているんではないか。つまり去年の場合は例えば多元的なサーベイランスを行うために、それぞれの国の経済見通しといいますか、フォアカーストをレビューするというふうな形で書かれていたと思うんですけれども、今度はそれぞれの国の経済のオブジェクティブ、目的、それからプロジェクションですね、これ何て訳していいかちょっと非常に困るんですけれども、それをデベロップしていく、展開していく、そういうふうな言葉が使われているということは、去年よりももっと政治の介入を強めていこうというふうに受け取っていいのではないかと私は思うんですけれども、大蔵省どのようにお考えですか。
  264. 内海孚

    説明員(内海孚君) 関委員指摘のとおり、今回まずサーベイランスの手続がかなり明確に示されることになりまして、その過程におきましてまず各国はただいま御指摘のとおり中期的な政策のもとになります経済見通しと目標というものを提示しながら、それに即してその随時随時の経済がその方向に適切にいっているかということを見ていこうという点が明らかになったわけでございます。もっとも、実態といたしましてはもう従来五カ国あるいは七カ国の蔵相会議におきまして、同様にそれぞれの大臣が現在政策として国際社会においてやろうとしていることを提示しながらやってきたわけでございますが、これがより明確にただいま御指摘よう表現で表示されたということは一つの新しい点であろうかと思います。
  265. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 言いかえますとそれだけつまり、言葉は悪いんですけれども、各国の経済政策に対して相互介入といいますか、それが強まってきたというふうに私は受け取っているんですけれども、その問題に関連しまして一部の経済学者あるいは評論家の中では、日本はサミットに備えるために緊急経済対策あるいは六兆円の内需拡大策をつくった。私はこれはもともとサミットのためにやるべきじゃなしに日本自体のためにやるべきことだと思うんですけれども、どうもやはり客観的に見ますとサミットで日本たたきを免れるために、何か慌ててああいうものをつくったというふうな印象を与えてしまったということは非常に遺憾ですけれども、しかし、ああいう六兆円の内需拡大策をやったにしても、日本たたきの原因である日本の貿易黒字はそれほどは減らないんだ、せいぜいうまくいっても五、六十億いけばいい方だ。それに比べると、そのために日本が内需拡大のためにやるところの犠牲、例えば財政再建がおくれるとか内需拡大を無理に強要されるとか、そういった犠牲の方がはるかに大きいんだ、そういう否定的な見方をしている人もあるんですけれども、それに対して大蔵省どのように反論されますか。
  266. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私はそれを犠牲だと別に考えておりませんで、もともと我が国の場合にはこれだけ輸出をしておりながら、社会資本の整備は甚だしくおくれておるわけでございますから、関委員の言われますように、これは外から言われなくてももともとやるべきことであった、またやるべきことであると思っておりまして、まあこのたびの緊急経済政策というのは、私は一遍だけ補正予算を組んだら我が国の経済構造の調整というものができるといったような簡単なものではないと思っておりますので、これからかなり長い間そういう努力を続けていかなければならないと思っておるのでございます。またそういたしたいと思いますが、それは我が国にとって別段の犠牲ではない、本来しなければならないことを国民自身のためにやるのだというふうに考えておりまして、財政再建との関連で申しますと、私はそのような経済政策の展開をしていくことによってやや経済の動きが拡大均衡の方に向かっていきますれば財政もその利益を享受することができる、そういう望みは決してないわけではございませんので、そういう意味でも私は犠牲だというふうには考えたくないと思っておるわけであります。
  267. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 時間がございませんので、最後に希望だけ申しておきますけれども、そういった日本の犠牲が多過ぎるというふうなことを言っている人の議論の中で、つまり日本は何も悪くはないんで、アメリカのレーガノミックスにすべての原因があるんで日本は少しも悪くないんだ、そういう分析をしている人があります。  私はそれは半分は当たっていると思いますけれども、しかし、であるから各国がそれぞれ自分勝手なことをやるということになってきたら、これは世界経済は先ほど申しましたように大変なことになってしまうんで、まさに今度のベニスのサミットの宣言にあらわれていますように、日本の方も内需拡大についていろいろ注文を受けるかもしれないけれども、逆に日本がアメリカに対して財政赤字を削減しろということを今よりももっと強く言えるようになっているんじゃないかと思う。そういった意味で内向きに考えるんじゃなしに、むしろもっと経済政策なんかの国際協調を強めていくという立場から、アメリカに対しても言うべきことをどんどん言うその場が開けてきたんではないかというふうに私は受け取っておりますので、そのつもりでやっていただきたいと思いますけれども、何か御意見があればそれを承って。
  268. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) アメリカの財政赤字が問題の大きな原因であることは明らかでございまして、この点につきましてはサミットに先んじて行われました日米首脳会談の声明にもそういう趣旨のことが出ておりますし、またサミットにおきましても中曽根総理大臣は、レーガン大統領にじかにそれを指摘をしておられます。  ですから、そこに問題がございますことは事実でございますが、またさりとて我が国も、だからといって外貨ばかりをむやみにためまして各国から批判を受け、しかも措置すべき国内の社会資本は貧弱なままにおいておくということでは、これは我が国自身のためにならない、こういうふうに考えております。
  269. 抜山映子

    ○抜山映子君 最初に相続税の問題につきましてちょっとお伺いいたします。  前回、六月十九日の決算委員会におきまして多少聞き足らなかったように思いますので、補足させていただきます。六月十九日の折に大蔵大臣は、未亡人のところまでは相続税の課税が余りないのかもしれませんけれどもという御発言がございました。東京都内では六〇%から七〇%地価が上がり、それにつれて路線価格も上がり、一般の市民が大衆課税とも言うべき莫大な相続税を払わなければならなくなりました。  そこで、一つお伺いしたいのでございますが、これは皆様方に深く認識していただくためにあえて数字を挙げて御説明いただきたいんでございますが、仮に世田谷に五十万の路線価格の土地を宅地でございますが五十坪持っている、その上に家を持っておって預貯金の額を千万円持っておったといたしまして、さらにそのほかもろもろ家具とか植木や庭石にまで課税されるわけでございますから、そういうもろもろの物を含めて五百万あったとして、一体どういう税金の額を仮に子供のいない未亡人が相続した場合に払わなければいけないのか、これをちょっと御説明いただきたいのでございます。
  270. 伊藤博行

    説明員(伊藤博行君) 先生お示しの諸計数を前提にいたしまして計算いたしますと、お話しのように相続人は配偶者一人、相続財産は居住用宅地五十坪とおっしゃいましたので百六十五平米、平米当たりが五十万円ということでございますので、それにプラスして預金あるいは家屋等の千五百万を加えまして、あとは債務控除等がないという前提で計算いたしますと、配偶者の税額軽減額等を勘案いたしまして、最終的な納付すべき相続税額は約六百八十四万円ほどになろうかと思います。
  271. 抜山映子

    ○抜山映子君 今お聞き及びのように、別にゴルフの会員権も持っていない、わずか五十坪の宅地の上に預金も一千万円しかないというようなごく普通の御家庭で、未亡人は六百八十四万円相続税を納めなければいけないわけです。このほかに、土地、宅地を自分の名義に相続するのに登録税もおよそ百万ぐらいはかかるでございましょう。そうしますと、一千万の預金を持っている未亡人は、相続が終わった段階においてほとんど現金はなくなってしまう。一人でたっぷり食べていけるだけの年金のある未亡人ならまだしも、これが自営業で国民年金にも加入しておらないといたしますと、この土地はやはり売って自分のこれからの生活を立てなければならない、こういうような大衆課税になっているという実態を御認識いただきました場合に、前回宮澤大蔵大臣は具体的に今後検討しますとお約束いただきましたけれども、どのようにお考えいただけますでしょうか。
  272. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いろいろなケースがあるのだと思いますけれども、一般論としまして非常に大都市、特に東京でございますが、宅地が高くなりまして、相続税の課税価格が非常に大きくなってくる、評価が高くなってくるということは事実でございますから、税制調査会でもその点はやはり何とか考えなければいけないという御議論が多かった。ただ、今年度の場合、財源等々のことで問題を取り上げませんでしたけれども、やはりこれは取り上げなければならないときが来ておるように考えますので、できるだけ早く検討しなければいけないであろうと思っております。
  273. 抜山映子

    ○抜山映子君 さらに御検討いただきたいのは、我が党が年来主張しております中小企業の事業承継税制の確立てございます。中小企業は自分の土地を工場の敷地に提供しておったりするような事例が大変多うございまして、土地の暴騰によりまして二代目、三代目の中小企業者は会社をつぶさなければならない事態に至るという事例がさらにこの近年促進されてまいったわけでございます。したがいまして、詳細には入りませんけれども、生前贈与の場合の贈与税の納税猶予制度とか、相続税の納税猶予制度等を含めまして中小企業の事業承継税制を至急確立していただきたいと思いますが、大臣いかがでございましょうか。
  274. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この問題は実は以前から取り上げられておりまして、例えば同族会社の場合に株式をどういうふうに評価するか、一般の上場会社と同じに評価いたしますと非常に大きな額になったりすることはあり得ることでありますから、そういう場合の特例であるとか、あるいは事業用に使っております宅地について相続の場合に評価額から減額をするとかというようなことを、一定の坪数まででございますけれども、いたしておると思っております。税制調査会でも、ただこれは今言われましたように農地の場合と同じではないという認識を持ってやっておられますので、ただいまのような特例を講じているということと思います。
  275. 抜山映子

    ○抜山映子君 現在、租税特別措置法の六十九条の三がございまして、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」というのがございます。ここに挙げてある数字でございますが、この百分の六十とか、このような数字をさらに拡大することによって相続税の額を低く抑えていくということも技術的に可能と思いますが、そのあたりいかがでございましょうか。
  276. 尾崎護

    説明員(尾崎護君) 先ほど大臣の御答弁にもございましたように、二百平米までの部分につきまして、今先生御指摘ような特例措置を講じているわけでございます。農業者、それから中小企業者につきましてこのような特例措置が講じられておりまして、それをどこまでも突き詰めていくということになりますと、他方、本法によります相続税の適用を受けますのが給与所得者、勤労者だけになってしまうというようなことにもなりかねないわけでありまして、そこのところはやはり相続全体の問題として考えていかなくてはいけないのではないかというように、税制調査会の御審議でもそのよう指摘がなされたりしているところでございまして、先ほど大臣の御答弁のとおり、全体として相続税のあり方を今後検討していくように努めたいと存じます。
  277. 抜山映子

    ○抜山映子君 ぜひ検討をお急ぎいただきたいと希望いたしておきます。  次に、たばこの害について質問いたしますが、本日は喫煙者自体の問題よりも、いわゆるパッシブスモーキング、受動喫煙あるいは間接喫煙とも言われておりますが、そういう吸う本人ではなくてそばにいるために余儀なくたばこを吸わされる人の問題、それから未成年者及びこれから母親になるかもしれない御婦人のたばこについての弊害、こういう問題に焦点を当てまして、本店には大変な愛煙家もおられますので、吸う御本人は趣味、嗜好の問題で、人様に迷惑をかけない範囲で存分にお楽しみいただくのは結構としても、今挙げました三つの問題について特に質問を展開したいと思うものでございます。  ところで、このたばこの弊害の問題を特に取り上げますのは、たばこ産業株式会社として民営化された、同時に本年四月から関税が免除されるようになって外国たばこが参入してきた、それによりまして日本たばこと外国たばこの間にシェア争いで大変熾烈な競争が行われておるわけでございます。その結果、テレビコマーシャルが大変にふえました。雑誌「企業と広告」、これによりますと、本年四月の六日から十二日の一週間に関東地方で流されたスポット広告が何と計四百八十本だそうでございます。それ以前に比べて大幅にふえておるわけでございます。このテレビコマーシャルは既に諸外国において禁止されている国が大変に多いわけでございますが、これがどういう国であって、その主たる規制の内容をおっしゃってください。
  278. 宮島壯太

    説明員(宮島壯太君) 御答弁申し上げます。  諸外国におきますたばこの広告規制の問題でございますが、アメリカでは、一九七一年一月以降、法律によりシガレットのテレビ、ラジオによる広告を禁止されております。イギリスにおきましては、一九六五年以降、保健省、業界間の合意によりシガレットのテレビによる広告を禁止されております。西ドイツにおきましては、一九七五年一月以降、法律により全たばこ製品のテレビ、ラジオによる広告の禁止がされております。フランスにおきましては、一九七六年七月制定の法律により全たばこ製品のテレビ、ラジオによる広告禁止がなされています。我が国におきましては、たばこ業界の自主規制にゆだねられております。
  279. 抜山映子

    ○抜山映子君 今挙げていただいた国のほかにも、ソ連も台湾も韓国もマレーシアもシンガポールも、まだずっとたくさん、カナダもブラジルもということであるのでございますけれども、今挙げていただいたいわゆる先進国におきまして、すべてテレビのコマーシャルほかが禁止されている。ところが日本は全く自由なものでございますから、日本のたばこ業界に入ってきた外国のたばこ産業は、こんなにマーケティングのしやすいところはないということで大変に喜んでおるそうでございます。  そこで、皆様方のお手元に、これは昭和六十二年六月三十日の朝日新聞に出ましたたばこの広告でございます。これはコピーしたものでございまして、コピーしたがためにかえって読みやすくなっておるぐらいなことなのでございますけれども、この広告はフィリップ・モリス・インクと書いてございますから外国のたばこ会社だと思いますけれども、このお配りした中に、「未成年者の喫煙は禁じられています」と入っておるのでございますが、皆様判読できますでしょうか。多分とこに書いてあるんだろうとお思いになると思いますが、右の下端に実はぼかしたような感じで出ておるわけでございます。これでは未成年者の喫煙が禁じられているのかどうかよくわからない、こういうような広告になっておるわけでございます。  それからもう一つ、あちらに、これは日本たばこのポスターでございます。大変に、どういいますかあか抜けたポスターでございまして、民営化になって大変に努力をしておられるんだろうと思うんですが、この文句でございますけれども、「ケリの入った、うまさだぜ。」と、こうございます。恐らく先生方列席の方々には「ケリの入った」という言葉は初めてじゃないかと思います。恐らく若い人の使う言葉ではないか。そしてこの意味は、恐らくパンチの効いた、強烈なというようなたばこなのかなと私も想像する程度のことでございます。これも「未成年者の喫煙は禁じられています」と入っておりますが、これは先ほどのフィリップモリスよりはかなり、紺地に白くなっておりますから見えやすくはなっておりますが、字はかなり小さくなっております。  ところで、たばこ産業の方、参考人でお見えいただいておりますか。この「ケリの入った、うまさだぜ。」、こういうふうにおつくりになった、これは明らかにヤング対象の、むしろ未成年者に受けるような文句のように思えるのでございますが、これはいかがでございましょうか。
  280. 勝川欣哉

    参考人(勝川欣哉君) 先ほど先生も申されましたように、この四月に製造たばこの関税が全廃されまして、外国たばこの一斉値下げが行われました結果、外国たばこのシェアが急速に高まっておりまして、私どもといたしましては、総需要の停滞下で国産たばこのシェアを極力維持するためには、多様な要望にこたえた製品を開発するとともに、それを消費者に買っていただけるような効果的な広告を行うということが極めて重要となっているわけであります。一方、たばこ消費の実態を見ますと、マイルドセブンのような軽くて吸いやすいたばこが主流となっておりますが、一方でコクのある喫味の製品を求める消費者もかなりおられることは事実であります。  今御質問ありましたディーンは、このような強い喫味をお好みになる消費者の御要望にこたえるために開発されたものでありまして、比較的ニコチン、タールの値も高く、また太い巻きでありますので煙量感もありまして、吸いごたえのある仕上がりになっております。このようなディーンの製品特徴をどのよう表現したら最も消費者に容易に理解していただけるかということを考えた末に、実は専門用語の展開から御指摘いただいたような広告文句を使うことといたした次第であります。  と申しますのは、昔から専門家の間では、吸いごたえのあるとかあるいはコクのあるという喫味の特徴をあらわす技術用語といたしまして、英語のキック、キックが効いているという言葉が昔から使われているわけであります。しかし、キックという英語は非常にわかりにくいので、その日本語の訳であります「ける」というのを使ったらどうかということで、実はキックの効いた喫味を「ケリの入ったうまさ」というふうにすることにしたわけでありますが、一方で広告は、一般になじみやすい表現にする必要がありますので、登場する人物の話し言葉に直して「ケリの入った、うまさだぜ。」というふうな表現にした次第であります。  ただ、私たちとしましても、それこそこれはキックが若干効き過ぎじゃないかというふうな懸念もありましたので、実はこの広告文句を採用する前に念のため消費者イメージの調査を行いましたが、その結果、「ケリの入った」というのは、日常的な用語でありまして、食品等のコマーシャルに使われても別に違和感がないという評価を得ましたので広告に使用した次第であります。  事実、製品特徴といたしまして、ディーンは強目のたばこでありますので、たばこにある程度なれた人でないとこの喫味は評価されないと思われるわけでありますが、こういった強い喫味を好む方々に製品特徴をストレートに伝えるためにこの文句を採用したものでありまして、特に未成年者を意識したものではございません。  私どもといたしましては、業界の自主規制コードにのっとりまして未成年者の喫煙防止には十分配慮しているわけでありますが、二十代、三十代の喫煙者は、全体のそれぞれ二二、二六%と約半ばを占めておる実情でありまして、厳しい競争のもとにおきまして、これらの方々に新しい製品の特徴を時代感覚でストレートに理解していただけるような広告表現を考えると、御質問ような御指摘を受けることもありまして、いろいろと苦労しているわけでありますが、いずれにしましても、今回御指摘をいただいたことを十分踏まえまして、今後広告表現については従来以上に注意を払ってまいりたいと考えております。
  281. 抜山映子

    ○抜山映子君 それで、たばこ産業の株主さんでございます大蔵省の方にお伺いしたいのでございますが、このように外国たばことのシェア争いということもありまして、どんどん広告がエスカレートしていくと思うのでございます。ましてテレビのコマーシャルの方は直接茶の間に入り込みまして、子供たちの目に触れて未成年者の喫煙したいという欲求を膨らますという事態があるわけでございます。それゆえに、よく七五三ということが言われまして、たばこを吸ったことのある高校生は七割いる、中学生で五割、小学生で三割いるというようなとんでもないと五三という数字が言われております。幾ら家庭や学校でたばこを吸っちゃいけないと教育しても、テレビの方でどんどん流されたり、こういう新聞、それから、これからは次第に広告等とか、まあ大がかりなものも出てくる気配もございますが、法律によって規制する方法が、指針を示す方法が現にあるわけでございますね。この法律が四十条でございましたか、たばこ事業法の四十条ですね。たばこ事業法の四十条によりますと、大蔵省の方で広告についての指針を出すことができる。これについて大蔵大臣、指針を出して適正に広告が行われるようにしてくださるお気持ちはございませんか。
  282. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) たばこ事業法の四十条に「広告に関する勧告等」という規定がございまして、実はこれに基づきまして大蔵省が、何と申しますか、指導と申しますか、のもとに業界で規制のコードが協定ができております。その趣旨とするところは、いわゆるメディアにおける広告の、どう申しますか、総量規制と申しますか、トータルでこれ以上超えてはいけないといったような、そういう点に関するものが一つ。それからもう一つは、やはり未成年者を一番考えなければいけないんでございますから、テレビの広告にしても、未成年者が見るような時間帯にはなるべく出さないとか、未成年者に人気のあるタレントは使わないとか、いろいろ苦労をしてそういう協定を結んでやってもらっておるのでございます。野放しにはいたしておりません。
  283. 抜山映子

    ○抜山映子君 そのような規制をしていただいておるにしては、余りにも目に余る広告が現在行われていることを大臣は御存じないんでしょうか。現に野球の、スポーツのときにはもうたばこのコマーシャルが頻繁に入っております。ですから、もしそれ徹底しておらないならば、さらにそれを徹底するように、さらにもう少し具体的に指針を示すとか、そういうことが緊要であると思われますが、いかがでしょうか。
  284. 宮島壯太

    説明員(宮島壯太君) 先ほど大蔵大臣から御答弁申し上げましたように、業界におきまして従来から自主規制が行われているところでございます。特に未成年者につきましてはその喫煙防止観点から、たばこの広告活動が未成年者に影響を及ぼさないよう一定の規制がなされているところでございます。具体的には大臣から先ほど御紹介ございましたので省略いたしますが、今抜山委員からの御指摘もございましたので、今後とも自主規制の趣旨が徹底され、その実行が図られるよう業界の指導に努めてまいりたいと、このように考えております。
  285. 抜山映子

    ○抜山映子君 ちょっと大臣に念を押しておきたいと思いますが、私はたばこ事業法第四十条に基づいて指針を出しておられますかと申し上げたんですが、その点はいかがでしょうか。
  286. 宮島壯太

    説明員(宮島壯太君) 大蔵大臣はたばこ事業法に基づきまして広告を行う者に対しまして、広告を行う際の指針を示すことができるという条文がございまして、こういった制度があることは十分承知しております。ただ、我が国の状態は、本年二月に主要メーカーを中心に日本たばこ協会が設立された際に、同協会に対しまして広告に対する従来からの自主規制についてその趣旨を徹底し、適切に対処するよう求めたところでございます。当面この自主規制がきっちり守られるよう指導していくというのが現在の考え方でございます。
  287. 抜山映子

    ○抜山映子君 今の御説明によりまして、たばこ事業法第四十条に基づく広告、宣伝基準の指針というもの自体は出ていないということはわかりました。これではやはり徹底しないと思いますので、ぜひ株主である大蔵省の方で宣伝基準をつくり、特に外国たばこも参入しておることでございますから、指導基準をつくって、単に自主規制ということでなくて、イニシアチブをとっていただきたいと思いますが、いかがですか。
  288. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは私は必ずしもそう考えておりませんので、こういう勧告をする規定がございますと、これを背景にして業界の中で自主規制の協定をつくらせる、みんながお互いにそれを守っていくという方が有効に働く場合はしばしばございますので、私はそれでよろしいと思います。
  289. 抜山映子

    ○抜山映子君 有効に働いていないから今申し上げたのでございます。先ほど、四月六日から十二日の一週間におきましてコマーシャルが四百八十本も流れている。それぞれが大変にだれもが吸いたくなるような魅力的なコマーシャルでございます。ですから、大臣は自主規制の方が効果を発することがありますと御見解を述べられましたが、実態は決してそうなっていないことを御指摘申し上げたいと思います。  ところで警察の方は、未成年者がたばこを入手する経路について何か統計がございませんでしょうか。
  290. 石瀬博

    説明員(石瀬博君) 警察の方では年間五十万人ないし六十万人の喫煙少年を補導しておりますけれども、その入手経路につきまして全体的に調査したことはございませんけれども、たまたま昨年六月神奈川県警察が一カ月間に補導した喫煙少年について調査したものがございます。それによりますと、補導した二千三百十人のうち、自動販売機から直接購入した者が千九百八十九人で、全体の八六%で最も多うございます。次いで、友人からもらった者が百二十六人、五・五%、たばこ販売店から購入した者が八十五人、約四%、こういうことになります。
  291. 抜山映子

    ○抜山映子君 ただいまお伺いしました数字によりますと、自動販売機から購入した喫煙少年が二千三百十人のうち千九百八十九人、八六・一%ですか、そんなに多いということがわかりました。自動販売機も効用は確かにあるわけなんですが、たばこに関する限りは、やはり未成年者が容易に抵抗感なく自動販売機だとつい購入してしまうと、こういうことだと思います。それで、この自動販売機の置く場所を販売する者が監視できる場所に移動させるとか、あるいは未成年者は喫煙することができないという表示、ステッカーみたいなのを張ってございますが、あれをもっと大きく目立つようにすることができないか、その点をお伺いしたいと思います。
  292. 宮島壯太

    説明員(宮島壯太君) 未成年者の喫煙を防止することは、抜山委員指摘のとおり重要な課題でございます。小売販売業者等に対しまして各財務局長を通じ以下のよう指導を行っているところでございます。まず第一は、購買者が未成年者であると推定される場合には、喫煙者を確認いたしまして、未成年者の喫煙に供されると認められればたばこを販売しないこと。それから、自動販売機を設置する場合には、その利用状況を把握できる場所、例えば店舗に併設、よく見えるところに設置すること。三番目に、自動販売機の前面の見やすい位置に必ず未成年者の喫煙禁止を趣旨とした表示を行うこと。こうした指導を各財務局長を通じて行っているところでございまして、今後とも関係行政機関、関係団体等との連絡を密にしながら、十分配慮してまいりたいと考えております。
  293. 抜山映子

    ○抜山映子君 本年十一月には、禁煙オリンピックとも言うべき第六回喫煙と健康世界会議が六十カ国、約六百人の参加を得て、我が国でも財団法人日本対ガン協会などが共催という形で開かれます。日本がたばこにつきましてはたばこ天国の後進国であるというようなあざけりを受けないためにも、ひとつ早急に対策を立てていただきたいということを希望いたしまして、私の質問を終わります。
  294. 菅野久光

    委員長菅野久光君) 本日の質疑はこの程度にいたします。  次回の委員会は明三日午前十時に開会し、総括的質疑第二回を行うことといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十一分散会