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国務大臣(栗原祐幸君) 御指摘のとおり今度の訪中は大変
中国側の歓迎をいただきました。
会談内容そのものも極めて率直にかつ
友好裏に、常識を離れてというか、一時間三十分の国防部長との
会談時間が二時間二十分になると。それから万里副
総理との
会談は大体四十五分というふうに言われておったんですが、実際には一時間十五分ですか、非常に率直に話をいたしました。
私は防衛の責任者でございますから、我が国の防衛のスタンスというものを話をした。それは我が国の憲法というものがある。それに基づいて必要最小限の防衛力の
整備をしなけりゃならない。専守防衛、非核三
原則いろいろある。そういうものに基づいて
昭和六十二年度の予算を組んだところが一%を少し超えることになったと、これがもう実際の話だと。ただ我が国では一%を超えたということについて、一%を超えるとこれは軍事大国になるのじゃないか、これはけしからぬというような議論があると。それに対して私はこう言っているんだと、一体軍事大国というのはどういうことなんだと。軍事大国の定義をまずはっきりさせなきゃならぬ。軍事大国の定義の意義が軍が政治を支配する、そういう
意味であるならば、戦前はいざ知らず現代はそういう体制ではない。昔は天皇の軍隊であったけれ
ども、今は自衛隊は国民に選ばれた国
会議員から互選される
総理大臣が統括責任者である。これがいわゆるシビリアンコントロール。国民を離れて自衛隊はないんだと、国会を離れて自衛隊はないんだと、そういう
意味合いでは戦前と大きく違っておる。もし軍事大国という
意味が他国を侵略するに足る実力を持つということならば、我が自衛隊は外征軍ではない、自衛隊二十四万がよそへ出ていったら
日本はもうがらあきだと。そういう
意味合いで、外国の方へ行くなんということはあり得ないし、そんな実力はないんだと。そういう
意味合いで一%を超えると軍事大国になるとかならぬという議論はこれはおかしいということを言っているんだという話をまずしたんです。
それに対しまする張部長さんの答えは、制度上
日本が軍事大国になれないということはよく
理解できたと。自分の国は自分で守ると、一定の必要の防衛力を持つということは当たり前であるし、日米安保も私
どもは結構だと思っておると。ただ
日本には軍国主義的な思想があるのではないか。例えばということで向こうが言い出したのは、これが大東亜戦争肯定論とか、あるいは南京大虐殺虚構論だとか、あるいは今度「光復」というような右翼の雑誌も出たと。それから靖国神社の問題もあるし教科書の問題もあるし光華寮の問題もあると、こういう脈絡になったんです。
そこで、私はこれは
日本でいろいろの
意見があることはそのとおりだと。しかしこれは
日本の体制とおたくの体制が違うということをまず御
認識いただきたい。
日本は自由主義、民主主義、議会制民主主義でいろいろの
意見があるんだと。しかしそれらのいろいろの
意見というやつは、切磋琢磨する間に消化されて落ちつくところに落ちついていくんだと。それが議会制民主主義制度の本質なんだと、そういう点を御
理解をいただきたい。
もう
一つの点は、靖国神社のお話が出たからお答えをするけれ
ども、遺家族の人たちは靖国神社に公式参拝をしてもらいたいと言っているのは、純粋に戦没者の霊を弔いたい、そういう
気持ちのように私は了解している、
理解している。ただこの問題についてはいろいろあるので、
政府としては配慮をしてことしも
内閣総理大臣が靖国神社の参拝はしないというふうになっている、
政府の努力も認めてもらいたい。
教科書問題についてもいろいろあるけれ
ども、これまた検定制度というのがあって、この検定制度のあれですぐにどうということはできない場合もある。しかし厳正に考えてみてこれはやらなきゃならぬ、正さなきゃならぬというときにはそれなりの手続を経てやっておる。問題になったときに
官房長官談話が出たけれ
ども、日中共同宣言、日中
友好平和条約、そういうものを基礎としてやっているということもひとつ
理解していただきたい。
光華寮の問題については、これは私が有権的にあなた方に事の是非を言うわけにはまいらぬが、
一つだけ申し上げておくと、これまた
日本の
総理大臣は何でもできるというふうにお思いだろうけれ
ども、
日本の
総理大臣何でもできないんだ、これは。そんなに力がないんだと、あなた方が言うように。それはこの間の売上税で野党の
皆さん、国民の
皆さんあるいは国会の方でうまくいかなかったと。その場に四人いましたけれ
ども、あとの人は省略しますわ。とにかく
総理大臣というのは万能じゃないんだと。そして司法に対しては
日本ではいかなる権力も口出しができないんだと。このことをよく御
理解いただきたいと、こう話したんです、ざっくばらんに。
そうしましたら向こうさんの方は、
日本の制度はよくわかると、事情はよくわかると。しかし我が方の事情もよく参酌をして、できる範囲内で善処してもらいたいと、ごもっともなことだと。これが張国防部長と私との話です。
その次に万里副首相との話の中では、万里副首相は、きのう張愛萍国防部長と大変有益な議論があったようだと、よかったと思うと。本日は私が
中国国家を代表して、
中国政府を代表して趙紫陽首相の代理としてお話しをするということから、いろいろ話がありまして、その結果、防衛問題について触れないわけです。そこで私が防衛問題について張部長からいろいろお話を承ったと思うけれ
ども、実は
鄧小平主任によくお伝えをいただきたい、私も
鄧小平主任に会いたいと思うんだ、この点どうだと、こう言ったら、
鄧小平主任は高齢であるので私
どもはできるだけ仕事を少なくするようにしておるんだ。トウ主任も私
どもの
考え方も変わっておりません、必要な防衛力の
整備は必要であるし、日米安保というものも必要だと、そういう趣旨の話があったわけです。これが
実態でございます。
ですから、少なくとも私に関する限り、
中国政府は我が国の防衛政策に対して
理解を深めた、間違いないと思う。それと同時に、人民日報もその
会談の後、
日本の防衛政策について
理解を深めたという記事が出ておるんです。そういうのが
実態でございます。