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上田耕一郎君 いや、覇権主義、大国主義と、言葉はそういうふうに言っているのです。その大国主義、覇権主義の行動をするものの中に、帝国主義によるものもあるし、それから残念ながら社会主義によるものもあるという見方なのです。帝国主義と社会主義というのは社会
体制についての概念です。大国主義、覇権主義というのはそういう行動に、あるいは
政策についての規定なのですよ。それで、
先ほどレーニンの
お話がありましたけれども、レーニンはスターリンが民族自決権を侵害したとき、これは社会排外主義だ、社会帝国主義だということを言いましたし、それから第一次
世界大戦に第二インターナショナルが賛成しまして軍事費に賛成したりした、これは社会帝国主義だという批判をしたのです。社会主義が帝国主義と同じ行動をとった場合には社会帝国主義という言葉なのです。
ただ、我々は今の大国主義、覇権主義について言いますと、
アメリカに一番典型的に見られておりますが、あのベトナム侵略とか今のニカラグア干渉とか、
アメリカ帝国主義にとってそういう民族抑圧や侵略はかたり
体制としてレーニンが分析したような本質的なものがあると思っているわけです。
ソ連、中国の場合には避けられ得ると、社会主義の原則から逸脱していろいろなことをやっているわけですね。これは
体制から不可避的なものではなくて、この大国主義、覇権主義をやらないで正しい方向に進む十分な
可能性を持っているというふうに我々は見ておるのです。
ところが、なかなか一時的なものじゃなくて何度も何度も繰り返されるわけです。チェコスロバキア侵略、それからアフガニスタン侵略、ポーランド干渉、それから
先ほどお話が出た千島問題なんかもそうです。あれは第二次大戦で領土不拡大を決めた大西洋憲章、カイロ宣言に違反しているのです、ヤルタの秘密協定で。
アメリカ、
ソ連、イギリスがヤルタの秘密協定を結んで、スターリンの要求をのんで千島は
ソ連に渡すということを秘密に取り決めた。それはスターリンの間違った主張に賛成した
アメリカ、イギリスも悪いですけれども、やっぱりスターリン、
ソ連の側の誤りが大きいわけです。ですから、千島の
ソ連の占領もこれは大国主義、覇権主義の
一つのあらわれだという
立場でカイロ宣言、大西洋憲章に基づいて領土不拡大なのだ、当然第二次大戦の戦後処理として誤っているから全部返すべきだという態度を我我はとっているのです。
しかし、そういうふうにかなり根強く出てきますので、私どもはおととしの第十七回党大会で
綱領に入れたのです。社会主義が行うこういう覇権主義を是正することは非常に重要な
綱領的課題だとして、共産党の
綱領に
綱領修正をしまして入れたのです。それで、社会主義国の一部にこういう覇権主義の偏向が表面化した、これは国際
緊張の一定の要因となるとともに、対外干渉と侵略に本来無縁である科学的社会主義の理念を傷つけ、民族独立、平和、社会進歩のための連帯と闘争に困難と障害をつくり出した、こういうことでこういう覇権主義的偏向の克服のために闘うということは
日本共産党の重要な課題だ、ということで党の
綱領にまで入れまして、これは非常に重要な歴史的な課題だと思っています。もちろん、我々はこれは克服不可能な偏向ではなくて、必ず克服できる偏向だと
考えているわけです。
それから二番目の御
質問は、
ゴルバチョフの内政改革の評価でございますが、私どもは、
ソ連にしろ中国にしろ内政問題については、これは我々が
ソ連や中国の
日本共産党や
日本の運動に対する干渉を誤った干渉だと言って厳しく批判し抗議して闘ってきておりますので、内政問題ですので、干渉的
発言は党としては控えているのです。しかし、
ゴルバチョフ書記長のもとで行われている今のペレストロイカと呼ばれている改革、
向こうでは改革というよりも立て直しとかいう言葉を使っているし、再編、つくり直すということで、かなり本格的な運動として進んでいるようです。私どもは実情を調べて、文献を見るだけでなく、特派員からも事実の報道を行っておりますけれども、積極的なものだと
考えています。
私が述べた中で、例えば投資のやり方の改善というのが出ていますが、これはおととしの四月、中央
委員会総会で
ゴルバチョフが述べていますけれども、私も実はそれを読んで驚きまして、これまで
ソ連では、投資というと新しい工場をつくったり、新しい鉱山をつくったり、新規の投資だと、今まである工場の設備改善はほとんどしてこなかったということが書いてあるのです。これではだめだということで、設備改善に対する投資を大いにやらなきゃならぬということを非常に力説しているので、そういう
経済原則に反した投資のやり方が今までまかり通っていたのかと思って、私も改めて驚いたのです。これは一例ですが、
ゴルバチョフ書記長のもとでの再編の運動というのは、そういう工業
関係の投資、それから運営だけじゃなくて農業に及び、さらに
ソ連の民主主義の問題、それから党の幹部の問題にまで及んでおりまして、ことしの一月の総会の報告などは非常に大胆な、かなり突っ込んだところまで行っているように思うのです。
それから、NEPについては、私ども戦時
共産主義から戦時
共産主義のいろいろな諸問題に直面して、やっぱり農民との
関係を改善していく、それから利権とか
先ほど言われた国家
資本主義、それから協同組合の方向を非常に重視して進んだ方向で私どもも高く評価している。
ゴルバチョフの再編の運動の中でもレーニンの時代の経験、それからNEPの経験というものを非常に大事にして、あの当時の
国民の燃えるようなイニシアチブを本当に生かして進もうということを呼びかけておりますので、この点も注目したいと思っております。
それから、首尾一貫した民主主義という問題は、
ソ連にも中国にも当てはまることで、これは
ソ連、中国の責任だけではございませんけれども、非常におくれた農業国から出発した革命でございますので、
ソ連にはちょっとものはえた議会しかありませんでしたし、中国には議会なんかないわけで、そういう政治的にも
経済的にも文化的にもおくれた国から進んだわけです。そういう面もあり、それからスターリンの誤り、毛沢東の誤りも結合して民主主義という点ではさまざまな
問題点がありましたし、非常に大きな悲劇的な誤りさえ犯されたと思うのです。レーニンも社会主義革命をやったからといってすぐ民主主義の国にできるわけじゃないのだ、社会主義革命をやったというのは・社会主義的な
経済的土台ができたのである
可能性が生まれたのだと言うのです。正しい
政策、正しい政治を行う、その
可能性を
現実のものにできるかどうかというのは、本当に民主主義化が国家全体に達成されたとき初めて保障されるということなどを言っておりますけれども、そういう点では
ソ連も中国もまだまだ多くの問題を持っております。ですから、我々は特に
日本は発達した
資本主義国でもありますし、複数政党を初め議会制民主主義を堅持した社会主義でなければならないと思っております。
なお、ディクタツーラの問題についても御
質問ございましたが、我々はあれは、国家なんか要らないのだというマルクスの時代にアナーキズムの主張がありまして、それに対してマルクスが、いや労働者階級が権力を握った国家というのが必要なのだということで、それをプロレタリア・ディクタツーラと名づけたのですね。レーニンの時代に確かに一党制度になったのですけれども、当初はメンシェビキその他複数政党で十月革命の直後やっていたのです。それが武装蜂起その他反乱を起こして、それで禁止されるということで一党になっていったという歴史的な経過が
ソ連にはありますが、その歴史的な経過から生まれた個別的問題をやや普遍化し過ぎた理論的な行き過ぎもあったと我々は
考えています。我々はその点では、長い論文も書き、党大会でも非常に
研究をして、ディクタツーラ問題というのを
綱領からは外す。それがただまずい問題だから外すというのじゃなくて、マルクスの当時の
研究の原点に戻れば、これは労働者階級の権力という言葉と同じなのだから、何も繰り返す必要はないというので省いたということがございます。
〔理事
中西一郎君退席、会長着席〕
それから四番目の御
質問で、それではどういう国際
経済秩序が必要と
考えているかという御
質問がございました。これは
先ほども
中西珠子委員が触れられましたけれども、新国際
経済秩序(NIEO)については七四年の国連の資源特別総会での総会の宣言がございます。これは満場一致確認されたもので、私もここに持ってきておりますけれども、新しい国際
経済秩序としてaからtまで二十項目に及ぶ宣言の原則が書かれている。この二十項目全部一三言うというのでなくて、私は、この
発言の中で十三ページの二段目ですけれども、NIEOについて私どもが最も重要だと思う内容を要約して書いてあります。多
国籍企業の規制、天然資源に対する主権の確立、公正、平等の原則に基づく
貿易、通貨、金融の国際
経済制度の抜本的改革。つまり、これはIMFとか
世界銀行とかさまざまな現在ある国際
経済制度がございます。こういうものを本当に公正、平等の原則に基づいて、このNIEOの原則に盛られているような方向で改革すべきだということです。
私どもは、この国連総会の七四年の宣言はかなり発展
途上国を主体にして書いてありますけれども、NIEOというのは単に発展
途上国にとって重要な課題であるだけでなく、国連総会で二回も採択されていることでも明らかなように、私ども発達した
資本主義国の場合にも、また社会主義諸国にとっても、
世界全体にとって共通の課題としての位置づけを持ち得ると思っています。
ところが、残念ながら、国連総会で七四年にこういうものが採択されたにもかかわらずなかなか実行されない。NIEOの確立に関する行動計画というのが同時に採択されているのですけれども、せっかくこういう行動計画が採択されておりながら実効ある措置がとられていないのです。それは国連に責任があるだけでなく、やはり西側諸国、発達した
資本主義国に最も大きな責任がある。特に
アメリカ、また
日本は今
世界のGNPの一〇%を持っておりますし、あと十年たてば一五%というくらいの国際的な比重も非常に大きいので、このNIEOの実現に対して、単に南北問題として取り組むだけでなくて、今の
日本の異常円高、日米
貿易摩擦等々、これらの諸問題を解決するためにも
日本ももっと積極的にNIEOに取り組む必要があると思うのです。
そういう取り組みに対して障害になっているのは、私の報告の中で冒頭に書いた多
国籍企業の規制の問題です。多
国籍企業の問題を本当にどう規制するかということが私は
中心問題の
一つだと思うのです。今
アメリカが
世界最大の債務国に転落したのもあの双子の赤字で悩んでいるレーガノミックスが大きな責任を持っておりますけれども、同時に多
国籍企業があれだけ広がったために
アメリカ産業が空洞化しているという大問題があるわけです。
日本も今異常円高のもとで多
国籍企業の
段階を本格的に進もうとしつつあるだけに、産業空洞化の規制のためにも、多
国籍企業をどう規制していくかということに取り組む責任を持っていると
考えています。