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塩出啓典君 ただいま議題となりました公明党・
国民会議提出の
宇宙開発基本法案につきまして、その提案理由及びその内容を御説明申し上げます。
広大な宇宙は、その限りない空間の利用についても、またはかり知れない未知の
エネルギーや資源等の存在についても予想されながらいまだ十分に
開発されておらず、人類に残された無限の未
開発の宝庫であるとともに、
科学技術振興のかぎを握る技術革新、イノベーションの場ともとらえられています。
宇宙空間は、無重力、超真空という特殊な
環境であり、その利用によって、コンピューター、半導体等のエレクトロニクス
分野や高付加価値の化学薬品等のバイオテクノロジー、各種先端産業の基盤をなす新素材等、多くの
分野に画期的な技術の進歩が期待され、同時に、これらの
分野における
科学技術の発展は産業全般に対する波及効果も極めて大きいものが期待されるところであり、
我が国としても自主技術による
開発を進めることがいかに重要であるか論を待たないところであります。
また、宇宙
開発は地球上の資源、
エネルギー、人口、食糧、
環境等の諸問題の解決への方向と可能性を与えるのみならず、
科学技術の進歩、産業の
振興、
国民生活の向上及び福祉に寄与すること大であり、その的確かつ強力な
推進は一国の将来にとっても極めて重要な
意味を持つものであります。
したがって、
我が国としては、宇宙に関する
科学技術の
研究開発を
推進し、自主技術を蓄積するとともに、人類
社会の豊かな生活と福祉の向上に多くの貢献をしていかなければならないと
考えるものであります。
世界の宇宙
開発は、
昭和三十二年、ソ連が人類初の人工衛星スプートニク一号を打ち上げ、本格的な幕あけとなり、以来、約四半
世紀の間に目覚ましい発展を遂げ今日に至っております。米ソ両国を初めとする
世界の主要国は、早くから宇宙
開発の重要性に着目して
開発体制を整備し、具体的な
開発目標を定め、国家的な
事業として国を挙げて
開発に取り組んでいるのが現状であります。
特に、米国における宇宙
開発は、米国航空宇宙法に基づき
発足した米国航空宇宙局、NASAが中心となり、月面着陸やスペースシャトルを初め宇宙基地など、活発な
開発を
展開しております。ヨーロッパ諸国においては、欧州宇宙機関、ESAの設置に関する条約に基づき、十二カ国が共同し二トン級のアリアンロケットや有人宇宙実験室、スペースラブ及び欧州独自で宇宙基地を建設する
計画等、意欲的な宇宙
開発を
推進しつつあります。
さらに、欧米の将来への動向は、基地建設に次いで月の再探査や火星への有人飛行、次世代スペースシャトル計画、さらには通信、放送、気象観測、天文等、多
分野にわたる宇宙
開発を
展開しようとしている現状であります。
我が国の宇宙
開発は、米国のアポロ十一号が月面着陸に成功した
昭和四十四年五月に
宇宙開発事業団が設置されたことによりようやくその緒についたものであり、米ソ欧に比べてかなりおくれてスタートしたことからも、技術の水準や宇宙の有効利用ではそれら先進国との間に大きな格差があるのが実情であります。こうしたおくれを取り戻し、自主技術による
開発を強力に
推進し、さらに国産スペースシャトルの
開発など、多様な宇宙活動に備え、また、宇宙基地の共同
開発を進めるなど、国際協力にも力を注いでいくべきであります。
昭和六十一年における米国の宇宙
関係予算は一兆二千四百二十二億円、国防省
関係は除く、に上り、ソ連は米国以上の
規模であると言われており、両国は他の先進国に比して
世界をリードしております。同
年度の
我が国の
予算は一千百七十二億円と米国の約十分の一の
予算規模であり、欧州宇宙機関一千八百九十六億円の約一・六分の一であります。また、過去の累計額では米国の約三十分の一と圧倒的な格差となっております。自主技術を確立し、国産化を
推進するためには、現在の一千億円前後の年間
予算では不十分であり、三千億円
程度まで早急に、計画的に増額を図るべきであるというのが
関係者の一致した意見であります。
宇宙
開発は、リスクが高く、多額の資金と多くの人材かつ長期にわたる
研究が必要であり、国は、国力との調和を図りながらも、投入資金の差は技術格差につながるとの認識に立って宇宙
開発関係予算を十分に確保すべきであります。
現在、
我が国は
世界において全く軍事を志向しない宇宙
開発に取り組んでいる唯一の国であり、SDI、戦略防衛構想を初め、敵国の衛星を破壊するASAT、衛星破壊兵器や、ICBM、大陸間弾道弾を迎撃するBMD、弾道ミサイル防衛システムなど、軍事利用が強力に進められようとしている今こそ、平和目的に限るとした宇宙
開発の原点を厳格に守り、今後とも宇宙の平和利用
分野において積極的な活動を果たし、
世界に貢献すべきであります。
近年、米国のスペースシャトルの暴発事故、デルタロケットの事故、欧州のアリアンロケットの事故等に見られるように、
世界的に宇宙事故が続発し、そのため欧米の各種ロケットの信頼性が大きく揺らいできています。
このような現状にかんがみ、
我が国の宇宙
開発を進めるに当たって安全性の確立は極めて重要であり、そのためにも、より一層宇宙
開発体制の強化を図るべきであります。
また、
世界の各衛星通信
事業会社は、シャトルなどにかわってアリアンロケットに相次いで打ち上げを委託し、
我が国でも昨年五月にアリアン社・仏に衛星打ち上げを委託しております。双方の事故を機に、今後の
我が国の宇宙
開発計画にも大きな影響を与えることが
考えられます。こうしたことからも、速やかに自主技術の
開発を進める必要が痛感されます。
公明党は、先ほど述べたように、
我が国の宇宙
開発を
推進するため、宇宙
関係予算の確保、自主技術水準の向上、安全性の確立、宇宙
開発体制の強化等を主張してきました。こうした
施策を国全体として効率的に実施するために
宇宙開発基本法案を提出するものであります。この
基本法は、宇宙の
開発及び利用に関する目的、
基本方針、国の責務等の
基本的な事項を定め、国として整合性のある効率的な
施策が
推進できるものとします。
基本法の制定については、
昭和四十三年五月に公布された宇宙
開発委員会設置法の両院の
委員会における採決の際に「わが国における宇宙の
開発及び利用に関する
基本方針を明らかにするため、速やかに宇宙
基本法につき
検討を進め、その立法化を図る」等の附帯決議がつけられています。公明党の主張はまさにこれらの決議に添うものであり、約二十年にわたってこの決議を無視し、宇宙
開発の進展をおくらせた
政府の責任は問われなければならないものと
考えるものであります。
さらに、
我が国では、現在、
科学技術庁を初め文部、通産、郵政、運輸、建設、自治省など、八を数える多くの省庁が宇宙
開発に取り組んではおりますが、縦割り
行政のもとで所管業務をそれぞれ実施しているのが実情であります。宇宙
開発の実を上げるためには、国全体としての総合的な計画のもとで、時代の進展におくれないよう適切な
施策を実施することが必要であります。そのため、
我が国の宇宙
開発を
推進する宇宙
開発委員会を発展的に解消し、総理府に宇宙
開発会議を置くものとします。
会議は宇宙
開発基本計画の作成及びその実施を
推進することとします。
宇宙
開発委員会にかわって宇宙
開発会議を設置する主な理由は、
委員会が
内閣総理大臣に対して意見を述べるにとどまるのに対し、
開発会議は、
関係大臣が加わっていることから、
予算の調整機能と計画の実施を
推進する機能を持つということであります。
それでは、公明党の
宇宙開発基本法案の主な内容を申し上げます。
第一に、目的と
基本方針としましては、宇宙
開発に関する
施策の総合的かつ計画的な
推進を図り、もって
国民経済と
国民生活の向上に寄与することを目的とし、
開発に際しては平和の目的に限り、民主的な運営のもとに国際協調を図りつつ、自主的に安全の確保に留意してこれを行うものとします。
第二に、国の責務等につきましては、国は
基本方針にのっとり宇宙
開発のための
政策全般にわたり必要な
施策を講ずるとともに、財政上、金融上の措置を行うものとし、また
政府は年次報告書を国会に提出するようにします。
第三に、宇宙
開発会議について申し上げます。
まず、
会議の事務の内容は、①宇宙
開発基本計画の作成及びその実施の
推進、②
関係行政機関の宇宙
開発に関する
予算の事前
調査を行うほか、③宇宙
開発に関する総合的な
施策で重要なものの企画に関して
審議し、その
施策の実施を
推進することとします。
次に、
会議の
構成につきましては、①会長及び
委員をもって組織し、②会長は、
内閣総理大臣を充て、③
委員は
関係国務大臣のうちから
内閣総理大臣が任命する者及び宇宙
開発に関しすぐれた識見を有する者のうちから両議院の同意を得て
内閣総理大臣が任命する者六名をもって充てるものとします。
第四に、国の具体的
施策としては、国は宇宙
開発会議の策定する宇宙
開発基本計画にのっとり、①宇宙空間の利用、②人工衛星による資源、
エネルギーの探査、③宇宙
開発に伴う弊害の防止及び宇宙
環境の保全、④基礎的
調査研究の
推進、⑤
科学技術の
研究の
推進、⑥国際協力の
推進、⑦その他
民間の
事業活動の助成、
研究環境の整備等の
施策を
推進することとします。
以上が、
宇宙開発基本法案の提案理由並びにその内容であります。
何とぞ、慎重に御
審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。