○上田利正君 私は、
日本社会党・護憲共同を代表しまして、
昭和六十二年度の
財政運営に必要な
財源の
確保を図るための
特別措置に関する
法律案及び同
法律案の
修正案につきまして、反対の討論を行うものであります。
現在、
我が国を取り巻く
国際環境がこれまでになく悪化していることは周知の事実であります。
我が国の一方的かつ大幅な
貿易黒字、経常収支の黒字に起因する対外経済摩擦は、たび重なる
国際協議にもかかわらず一向に解決に向かう気配がうかがえないばかりか、かえって激化していると言える状況であります。円高・ドル安はとどまるところを知らず、先進各国の財政金融の政策責任者の
国際会議が開かれるたびごとにその傾向が助長されるという事態を、私たちはこの間何度か経験してまいりました。苦境にあえぐ世界経済の中にあって、まさにジャパン・バッシング、
日本いじめが行われているのであります。そのため、
我が国の経済は厳しい円高不況に陥り、とりわけ雇用失業問題は深刻化しております。
このように経済は非常に困難な状況にありますが、そればかりではありません。財政について見ますると、中曽根
内閣のにしきの御旗であります「増税なき財政再建」、「
昭和六十五年度
特例公債依存からの脱却」という財政再建の目標は達成不可能なことが完全に露呈をしているのであります。その中で、財政の出動、いわゆる積極財政政策を
国際公約として遂行しなければならない局面を迎えております。
こうした今日の危機的状況は、従来の臨調行革路線に立った中曽根
内閣の経済財政政策の完全な破綻をあらわすものであり、その帰結であります。
政府が経済の変化を軽視し、数字合わせの財政再建に走り、偏狭で長期的展望を持たない
財政運営を続けた結果、経済も財政もいずれも底なしの泥沼に入り込んでしまったのであります。経済と国民の生活を忘れたこれまでの経済政策、財政政策、租税政策が破綻を来したことをここに明確に断言できるものであります。
今求められているのは、国民生活の向上を目指した経済財政政策の抜本的な転換であります。それに成功しない限り、
国際摩擦も国内問題も解決できないことは明らかであります。にもかかわらず、
政府は新たな財政再建目標を設定しないばかりか、減税政策の積極的
活用も社会資本
投資の思い切った転換の方針も提示せずにこの難局に対処しようとしているのでありますが、これでは、輸出依存の経済から内需主導の経済への転換も、
特例公債依存財政からの脱却も期待できないのであります。(
拍手)
以下、本
法案に対します主な反対理由を申し上げます。
まず第一に、
政府が税制の抜本改革に当たり、税収中立を建前とし、「増税なき財政再建」の公約の違反ではないと強弁しながら、大型間接税である売上税を創設し、マル優を廃止し、大増税への布石を打とうとしたことであります。
政府のこのもくろみは、国民の強い反対と、それを背景にした野党の共闘により粉砕することができましたが、国民の合意を得ることができない状態で大型間接税は絶対に導入すべきではありません。
政府は、大幅減税先行による景気回復が財政再建に資するものであり、また、内外から求められている政策であることを肝に銘ずるべきであります。
政府並びに自由民主党は、今回の
経過を反省し、国民の信頼と合意に基づいた税制改革を
推進していくため、野党との協議に真剣に対応しなければなりません。税制改革に当たっては、まず現行不公平税制の徹底的な是正から始めることを進言をしておきます。
第二に、
特例公債の発行は財政法第四条の趣旨に反しての公債発行であり、しかも、
特別措置として認めるには余りにも長きにわたっての発行が行われていることであります。
言うまでもなく、
我が国の財政法は均衡財政を
原則としており、四条公債、すなわち、建設国債それ自体が
特別、例外的なものであります。本
法案の
特例公債は
特例のさらに
特例とするもので、本来的には十二年間にもわたって発行される性格のものではないのであります。財政法によれば、公債発行に当たり四つの条件が付されております。その第一は借り入れはあくまでもやむを得ない場合であり、第二は償還
計画を明示することであります。三つ目は借り入れの金額を制限することであり、最後に国債整理基金に繰り入れることであります。これに照らして考えれば、
政府の
財政運営は全く無責任、無
原則であると断ぜざるを得ません。
第三は、四兆九千八百十億円の
特例公債の発行が、懸命に財政再建へ取り組んだ上でのやむを得ない結果であるとは言えないということであります。
公債依存度一九・四%も、国債償還のための定率繰り入れ等を停止することなく、国債整理基金
特別会計への繰り入れを実施するならば、依存度は二三・七%となり、これは
昭和五十七年度の依存度を上回ることになるのであります。また、
特例公債の減額も前年度当初予算よりもわずかに二千六百五十億円で、
昭和六十一年度当初予算での減額四千八百四十億円を下回っており、
政府の財政再建がここでも大幅に後退していることが明らかであります。
第四は、
政府の
特例公債減額の
計画が進まない一方で、国民への負担の転嫁が行われていることであります。
今回も、
政府管掌健康保険
事業にかかわる一般会計からの厚生保険
特別会計健康勘定への繰り入れのうち、千三百五十億を削減しております。昨年度の千三百億円、一昨年度の九百三十九億円の削減と三年連続の
措置ですが、この背後で、いわゆる受益者負担の強化、利用者負担の増加によって受診の抑制、家計負担等々が高まっているのであります。弱い立場の者の負担による財政再建は福祉向上を目指す社会に逆行するもので、認めることはできません。
第五に、国債整理基金
特別会計への定率繰り入れの停止による
特例公債の減額もNTT株等の売却益によって支えられたもので、国債償還
財源の問題について根本的解決策は何ら示されていないことであります。
昭和六十五年度
特例公債脱却目標を優先させる一方で、百五十二兆円を超える公債残高を抱え、その償還に長期間を要するにもかかわらず、償還基金のあり方について基本的な検討を進めることなく、臨時的対応を続けることは、絶対に許されることではありません。
最後に、既に虚構となってしまった「増税なき財政再建」、「
昭和六十五年度
特例公債依存からの脱却」という
政府公約の破綻の政治責任を一体だれが負うのでしょうか。財政再建と言いつつ国民生活を圧迫し続ける一方で、防衛費を突出させ、対GNP比一%枠を突破させた責任をだれがとるのでしょうか。財政再建を今後真剣に検討していくに当たって、まずその点を明確にすることが必要不可欠であります。中曽根総理大臣の政治責任は重大であると言わざるを得ません。
以上をもちまして、私の討論を終わります。御清聴ありがとうございました。(
拍手)