○米沢隆君 私は、民社党・民主連合を代表いたしまして、ただいま御
報告のありました先般のG5、
G7の共同
声明に盛られた
合意事項に関し、今後の
我が国の
対応策等を含め、
政府の
見解をただしたいと存じます。
御
承知のとおり、今回の一連の会談では、これ以上の大幅な
為替レートの変動は、
各国の
成長と
経済構造の
調整を阻害するおそれがあるとして、
各国は
為替相場を
現状程度の
水準で安定させるため緊密に
協力するということで
合意されたとあります。言うまでもなく、一昨年来の急激で大幅な
円高によって
我が国経済が深刻な打撃を受けている今日の姿を見るとき、この
認識は、甚だ遅きに失したとはいえ、緊急避難的措置としてはまずは妥当であり、これで未曾有の
円高に一応の終止符が打たれるとするならば、歓迎すべきことであるかもしれません。
しかし問題は、かかる
合意ができたとはいえ、もしドル
相場が今後もなお下がり続けた場合、
為替相場の安定に向けて、参加
各国はお互いに一体どのような方策で
対応することが約束されたのか、具体的な
政策調整や協調介入のあり方が不透明なことであり、また、どのような状態になったときそれが発動をされるのか、その手続さえ全くわからないということであります。一部には、協調介入についての
合意は得られなかったとの報道もありますが、一体約束事の具体的中身はどうなっているのか。その
内容いかんによっては、この
合意がどれだけの効果を持ち得るのか、懸念の方が先に立ちます。
顧みれば、G5の歴史は、
プラザ合意からの経緯を見てもおわかりのとおり、
我が国にとって、注文を受けるだけで、
円相場にとっては失敗の歴史であったと言ってよく、
我が国経済外交の軟弱さを痛感するこの十六カ月でありました。この際、
政府が今回のG5を求めた意図は何であったのか、また、その
成果をどのように踏まえているのか、基本的な問題への所信と、あわせて約束事の中身につき
大蔵大臣の明確な答弁を求めるものであります。
また、今回の
合意内容を見ますと、
アメリカは決してドル安路線を放棄したわけではない。ただドルを低目の
水準に安定させるための暫定的取り決めの色彩が強く、
情勢が
変化すれば、いつでももう一段のドル安容認に切りかえる余地を巧妙に残していると思われるのでありますが、
大蔵大臣の受けた感触はいかがなものでありましょうか、御
見解を求めます。
さて、第二の問題は、今回の共同
声明によりますと、現在の
為替相場は、おおむね
各国の
経済の基礎的諸
条件を反映した範囲にあるとの点で
合意したとありますが、これはちょっと解しかねます。まさか
日本の国益を代表する
大蔵大臣はこのくだりに素直に頭を縦に振られたわけではないのでしょうね。善意に解釈するならば、この部分については、遺憾ながら頭を無理して縦に振らないと今回のG5
合意が
成立しそうになかった、すなわち、これ以上の
円高に歯どめをかけるためには、不承不承このくだりを認めざるを得なかった、よって、この部分の
合意は
大蔵大臣の本意ではなかったと解釈したいのでありますが、真意はどうであったのか、この際、本音のところをお聞かせいただきたいと思うのであります。
既に現行の円
水準は百五十円台に大きく切り上がっております。ために、鉄鋼や造船を初めとする
我が国の基幹産業は、構造不況に
円高が加わって大幅な合理化を余儀なくされ、いまだかつてない大量の離職者を前に
雇用不安はその極にあります。また、二月の
中小企業庁の調査でもおわかりのように、円が百五十円台で推移するならば、輸出型
中小企業の六割が廃業に追い込まれるとの結果さえ出ているのでありますが、このような事態が続出する
状況で、どうして百五十円台が
我が国にとって妥当な
水準だと
考えられましょうか。いかに
日本が肩身の狭い
貿易黒字国であるとはいえ、今日の
円高水準は余りにも異常であるとの
認識こそ必要ではなかったのか。そのことを主張されることこそ
日本国の
大蔵大臣の役目ではなかったのかと申し上げたいのでありますが、この点につき、今回の会談での
大蔵大臣の全
発言内容を御披露いただきたいと思います。
しかし、既に共同
声明は発表されました。
政府が認めてしまった当面一ドル百五十円台という高値圏のところで
円相場が推移するならば、既に現在の
円相場の
水準が採算ラインを大きく突破している産業界にとっては、今回の共同
声明は、倒産もやむなしの宣告、いわば死刑宣告と同じではありませんか。その上、今回の
合意で
政府みずからが百五十円台を公式に妥当だと認めた点において、
政府の責任は重大であります。
総理、あなたは、この急激かつ大幅な
円高を今日まで放置し、産業界に構造
調整のいとまも与えず、今またこの耐えがたい円
水準を是認なさるとは、一体どのような
経済感覚をお持ちなのでしょうか。
日本の産業をどうしようとなさっておられるのか、この際、篤と承りたいのであります。私は断じて承服できません。
以上の観点に立って、以下次の四点につき、
関係大臣の
所見を求めます。
第一に、まず
大蔵大臣。
現在の百五十円台の円
水準が
我が国のファンダメンタルズを適正に反映しているというならば、それはどのような計算によるものか、その具体的根拠をお示しいただきたい。
第二に、通産
大臣にお
伺いいたします。
今回の
合意、一ドル百五十円台で推移するならば、
我が国の産業は一体どのようになっていくと分析されておられますか。百五十円台で生き残れるのはどの産業でしょう。衰退させられる産業にはどのような対策が用意されておりますか。今後産業の空洞化はどのように
進展するのでありましょうか。その対策はお持ちでありましょうか。
第三に、
経済企画庁長官並びに通産
大臣に
お尋ねいたします。
我が国経済が今日トータルとして耐え得る適正な円
水準は、当面どれくらいの
水準だと思われておりますか。また、これは国際公約でもありますが、
我が国経済が外需依存型から
内需主導型へ、そして、国際協調型の
経済構造にソフトランディングするためには、ほほどれぐらいの期間とどれくらいの円
水準が確保されるべきだと
考えておられるのか。百五十円台では、産業界に混乱と、
国民にいたずらな犠牲を強いるのみだと私は
考えますが、御
所見をいただきたいのであります。
第四に、
総理並びに
大蔵大臣に
お尋ねいたします。
政府が
内需拡大策を怠ったばかりに対外
経済摩擦を
拡大させ、結果的に異常な政治
円高を招来せしめたというあなた方の政治責任はまことに重大でありますが、あなた方がいささかでもその責任を痛感され、
日本の国益を重んじていただくならば、当面、この
合意を守っていかざるを得ないと言われるかもしれませんが、
政府は、近い将来速やかにせめて百七十円から百八十円ぐらいの円レートに
是正していく
努力目標を放棄してはならないと私は
考えますが、私どもの
要請は、百
円高に苦しむ全産業界の
要請は是とされますか、非とされますか、責任ある御答弁をいただきたいと存じます。
さて次は、今回の共同
声明において、
我が国の
政策課題として国際公約されたと言われる今後の金融
財政政策の問題についてお
伺いをいたします。
今回の
合意では、黒字国は、物価の安定を
維持しつつ、
内需を
拡大し、
対外黒字を縮小する
政策をとることとし、
日本はその
目的に資する
財政金融政策を続け、
予算成立後、
内需振興を図るため、総合的な
経済対策が
経済情勢に応じ準備されることになろうということでありますが、この
合意文書を見る限りでは、今回の会談において、
我が国の
財政金融政策に関し何が議論され、参加
各国が何を
要請し、
我が国が何を約束してきたのか、具体的には何もわかりません。要するに、
我が国は
内需を
拡大し、
対外黒字を縮小するために、従来の緊縮
財政運営の枠内で従来どおりのびほう策をとり続けることを表明してきただけのことなのか、それとも、所期の
目的達成のためには、従来のパターンを変えて、積極
財政運営に方向転換することを含めて、何か新しい決断、約束をしてこられたのか、まずその点について
大蔵大臣の明快な御答弁をいただき、この
合意を受けて約束した
政策課題をこなしていこうとされる場合、今から何があなたの
課題なのかをお示しいただきたいと思います。
あわせて
総理に、今後の
我が国財政金融政策の基本方針に変わりありや否や、特に、
我が国の緊縮
財政路線自体の見直し、ひいては
財政再建目標年度の見直しに着手される用意があるかどうか、
総理の勇断を求めて、答弁を求めます。
さて、今回の
合意で目新しいことといえば、
経済情勢に応じてという
条件つきではありますが、
内需振興を図るため、
予算成立後、
総合経済対策を準備することが早々と表明されております。これは、
政府みずからが六十二
年度予算が
内需振興策としては欠格
予算であることを証明するようなもので、それもいわば外圧によって
我が国経済財政政策の欠陥修正を余儀なくされることは甚だ遺憾と言わざるを得ないところでありますが、過ちを改めるにはばかることなかれということで、その素直さには、この際、敬意を表したいと存じます。
ただ問題は、その中身として、一体どのような
総合経済対策が用意されようとしているのかという点であります。もし昨年度におけるようなものであれば、それは完全に今回の国際公約を踏みにじることになることは明らかでありましょう。なぜなら、昨年は四月の
総合経済対策、五月の当面する
経済対策、九月の第二次
総合経済対策と盛りだくさんに対策を発表し、実行したにもかかわらず、
政府公約の四%
成長さえ達成できない。しかも、
貿易収支の黒字は激増するという、全く力不足の
総合経済対策で終わっているからであります。
そこで、
経済企画庁長官、昨年の
総合経済対策の実効性についてどのような評価をなされておりますか。もしそれと同様なものの延長線上に今回の
総合経済対策が
考えられているとすれば、それは再び異常な
円高を許し、ひいては国際的信用を失うことになりますが、ことしは何か大胆な
内需拡大策が
考えられているのでありましょうか。この際、新しい
総合経済対策の需要創出規模をどう
考えるのか。できればベースとなる
考え方、その編成に当たっての
決意等につき、
大蔵大臣、
経済企画庁長官の答弁を求めたいと存じます。
次に、
政府は、この一連の会談で
アメリカに対しどのような注文を行ってこられたのかという点につき、
大蔵大臣にお
伺いいたします。
一昨年秋以来、
我が国は
円高に振り回され続けておりますが、それはまた、
アメリカが
自国の
財政赤字、
貿易赤字のツケを
我が国並びに西ドイツに転嫁し、理不尽に
為替相場に政治介入し続けた十六カ月でもありました。今回のG5においては、
アメリカが約束した
政策課題は
財政赤字の圧縮ということだけでありますが、
アメリカに対しこの程度のオブリゲーションを負わせるだけで果たして
為替相場は安定に向かうのでありましょうか。今や、
為替相場だけでは
貿易収支の不
均衡の
改善は達成できないことは自明の理でございます。
我が国としては、
アメリカに対し、
アメリカ自身の再生を図るための
経済産業構造の転換策、いわば
日本とは逆に、輸入依存型
経済を
是正することを要求し、その決断を迫ることこそ重要ではなかったかと
考えますが、
大蔵大臣の
所見を求めます。
同時に、
アメリカで燃え盛っております一連の
保護貿易主義法案の行方につき、
政府はどのような情報を持って
対応しておられるか。それは、どのようにまた決着するとお思いか、これは
総理の御答弁をお願いします。
最後に、今回のG5
合意による待ったなしの
内需拡大の
要請と売上税の
関係についてであります。
今や、
国内においては、公約違反の天下の悪税売上税導入反対の声は燎原の火のごとく広がりつつありますが、
アメリカにおいても、
我が国の税制改革に対する関心が高まりつつあると言われます。先般訪米いたしました民社党の春日調査団に対し、ことごとく面接する
アメリカの要人は、こちらから言及する前に、「
日本の売上税については、
日本のように貯蓄率の高い国で、消費に課税するのは
内需拡大に逆行するもので問題だ。また、今のタイミングで
実施することは不幸だ」との
見解を述べていたとの
報告を受けましたが、かくのごとく、
アメリカ等においても売上税導入には失望しているのが実情であります。当然のことでありましょう。
政府は、この際、今までの行きがかりはお捨てになって、対外公約である
内需拡大の
要請に誠実にこたえる意味においても、売上税の導入を撤回すべきだと
考えますが、
総理の
見解を求め、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣中曽根康弘君
登壇〕