○矢野絢也君 私は、公明党・
国民会議を代表いたしまして、
国民が最も強い関心と危惧を持っております三点、つまり、
防衛費、
円高不況。雇用
対策、
税制改正などに論点を限定し、集中的に掘り下げて御
質問いたします。(
拍手)
総理、あなたは、昨年の衆参同日
選挙で三百議席を超える勝利を得られました。その後、あなたを拝見しておりますと、いささかおごりの姿勢が目立つのであります。
アメリカへの知的水準、人種差別
発言は、あなたの国際感覚が疑われた一幕でした。はるかなる山々、連山を踏破するという大変な意気込みで、
防衛費のしゃにむにな
GNP比一%枠の突破、
マル優廃止、
売上税へとエスカレートしていく。これでは
日本の平和も
国民生活も踏みつぶされてしまいます。私
たちも身構えざるを得ないのであります。
そこで、まず
防衛費であります。
政府は、
我が国の重要な平和原則となってきた
防衛費は
GNP一%以内とする
昭和五十一年の
閣議決定を弊履のごとく、破れ草履のごとく廃止され、五年ごとの
総額明示方式を決定されました。申すまでもなく、一%枠は、長年にわたって、国内的には
防衛費の無制限な増加を防ぐ歯どめであり、かつ、
国民の自衛隊に対する理解とコンセンサスの大前提でございました。
日本が再び
軍事大国とならない国際的なあかしでもあります。あなたは、これらの歯どめ、前提、あかしを平然と取り払われたのであります。これを断じて容認することはできません。(
拍手)
来年度
予算では
防衛予算を
行政改革の聖域にしないとの断固たる決意が
政府にあれば、
円高、原油安のメリットもあります。一%枠は当然に守れたはずであります。大蔵原案の段階で一%以内におさまっていたものをどうしても突破させたいために、さほど重要でないものが作為的に追加されたと私は推測をいたしております。いかなる費目、いかなる内容が
政治折衝において追加されたのか。また、どういういきさつであったのか、これは大蔵大臣にお答えをいただきたい。
次に
総理、
政府の立場で
考えてみましても、防衛庁調達に課せられる
売上税を
非課税扱いにすれば一%以内におさまるはずであります。ほかの省はその努力をしておる。なぜ防衛庁はその努力をしなかったのか。しかも、
売上税が防衛庁の調達に課せられるとの前提に立ては、十八兆四千億円の
中期防衛力整備計画の増額の口実を与えることになるがどうか、その点をお答えをいただきたい。今回の一%
枠突破のいきさつは初めに突破ありき、とにかく突破というやり方であります。なぜかかる粉飾的、作為的なやり方で無理やりに一%枠を突破しなければならないのでありましょうか。
それに加えて、このように強引に一%
枠突破を演出してみせた上で、この虚構を前提、既成事実化し、一%枠堅持の五十一年
閣議決定を覆してしまいました。これは、六十二年度
予算にとどまらず、将来にわたって重大な
意味を持ちます。百歩譲って、この
予算が本年度一%枠を仮に突破したとしても、六十三年度に再び一%枠に戻すことが正しいやり方であります。つまり、波が防波堤を越えても、この防波堤を取り除く必要は断じてないのであります。まさに言語道断の暴挙であると言わざるを得ません。(
拍手)新しい
総額明示方式が何の歯どめにもならないことは、一兆三千億円の二次防が三次防で二兆五千三百億円、四次防で五兆六千億円と、
倍々ゲームで膨張した過去の経験からも明らかであります。しかも、その
総額明示方式をとる新しい
閣議決定では、一%枠という客観的な歯どめはなくなってしまいました。特に、ポスト中期防の六十六年以降の新
計画決定は何の歯どめもなくなり、そのときの
内閣の自由な判断にすべて任せられ、フリーハンドとなってしまっております。この
国民の不安にどう説明されるか、納得のできる答弁を強く求めます。
一%枠は
国民の自衛隊へのコンセンサスの土台でもありました。公明党は、一定の前提で
我が国の自衛能力を認めている政党であります。そのゆえにこそ私は、このようなやり方では
我が国の平和路線は崩壊し、安全保障についての
国民的コンセンサスは混乱、自衛隊への
国民の理解と
信頼がなくなってしまうと声を大にして叫ばざるを得ないのであります。(
拍手)
また、中国は一%
枠突破に強い懸念を示し、アジア諸国にも
日本に対する不信と警戒心を与えています。これをどう見ておられるか。いずれにせよ、一%以内で専守防御に徹した
防衛力の節度ある整備は十分可能であります。六十二年度
予算案において一%以内にとどめる削減をなし、今回の新しい
閣議決定を
撤回して、五十一年
閣議決定を守るべきであります。これを強く要求をいたします。
総理の御所見を承りたい。御答弁によりましては、我が党はこの
国会、重大な決意をせざるを得ません。しかと承りたいのであります。(
拍手)
総理、あなたは、
我が国のかかる
軍拡路線を転換し、世界軍縮への働きかけを率先して行うべきであります。米ソのレイキャビク会談の際に見られた軍縮を目指す世界の熱いあの願い。この会談を単なる失敗とみなさず、潜在的合意を具体化し、実現してほしいと世界が望んでいます。
総理は、米ソ両国に再会談を強く要請されるべきであります。また、来年の第三回国連軍縮特別総会へ向けて、世界的な軍縮の流れへの突破口を切り開く国際世論を高めるために、国際軍縮年の設定や
軍事費を凍結させるための国際
会議開催を呼びかけるなど、
我が国が積極的に平和への努力を尽くされるべきであると御提案したいが、御見解を承りたいのであります。(
拍手)
さて次に、
円高不況と雇用
対策の問題に
質問を移します。
円ドル為替レートは、一昨年九月のG5、先進五カ国
蔵相会議から驚くべき短期間で四〇%の
円高となりました。
余りにも大幅、急激過ぎます。G5は保護主義を食いとめ、
日本の対米貿易黒字の縮小のための
政治的シナリオであり、そのための
円高でありました。しかし、今対米黒字は、八五年五百億ドルから八六年は八百五十億ドルの見込みという異常な増加を示し、その
政策目標が何ら達成されないまま
円高は
日本を直撃し、
国民経済は辛らつな不況に苦しみ、失業は大きくふえつつあります。しかも、
アメリカ議会では再び保護貿易論が
日本けしからぬと名指しで台頭しております。そして、この一月に入っての異常な
円高は最高値を更新し、
国民の憤りは沸騰点に達しているのであります。
古典的な
経済学のセオリーでは、
円高。ドル安は
アメリカ経済における国際競争力の強化、つまり輸出
産業の発展、海外からの輸入に対抗し得る
アメリカ国内
産業の発展へと進み、さらに、
アメリカの輸出増大と輸入の減少をもたらし、
アメリカの国際収支を好転させるはずであります。しかし、現実はそのように動いておらない。なぜだろうか。
アメリカ経済は今や多国籍
企業、いや、国籍すら超える超国籍
企業化しているものが多いわけであります。そして生産、流通、サービスのうち生産を海外拠点に移す傾向があります。いわゆる
アメリカ経済の空洞化現象が起こっており、また、
アメリカ企業の合理化も、種々の
理由からそれほど熱心に進められているとも思えないとする見方もあるわけでございます。
その結果、ドル安によって
アメリカ企業の国際競争力が強化される条件が本来整っているにもかかわらず、
アメリカ経済の活性化につながらず、対外
赤字はふえるばかりでございます。
我が国からの対米輸出も、円建てででも数量的ででも明らかに減少しております。しかし、四〇%も
円高になった結果、ドルベースの計算では輸出額は増大せざるを得ない状況にあります。
例えば、一ドル二百五十円のとき千円の物を輸出すればこれは四ドル。それが一ドル百五十二円では、同じ物が六ドル五十七セント。仮に千円を八百円に値下げいたしましても五ドル二十六セント。やはりドルベースでは大幅に黒字になってしまうわけです。たとえJカーブ効果があるといたしましても、それを超えて
円高・ドル安が逆にドル建ての
日本の対米黒字を増大させているのであります。そして
アメリカの対外収支が、
我が国への
赤字だけではなくEC、カナダなどにも軒並みに大幅
赤字であることは、
日本が悪いというよりも、
アメリカ経済自身に問題があることを明らかに証明しておるのであります。(
拍手)
総理は、これらの状況についてどのようにお
考えですか。
さらに、レーガン大統領に
アメリカ経済の実態についてこのような苦言を呈されましたか。その反応、その結果はどうでありましたか、ぜひ明らかにしていただきたいのであります。
私は、G5への対応に、
中曽根内閣は大変失礼でありますけれ
ども、致命的なミスを犯したのではないかという大きな疑問を提示せざるを得ません。
総理、G5にはその調整幅と調整期間について暗黙の了解が存在していたのでありましょうか。もし存在しておらないとすれば、これは
日本政府、大変な怠慢ということになります。
日本政府としては、調整期間に二、三年をかけたいと提案する必要があったと私は
考えます。どんな内容であったのか、具体的に率直にお答えをいただきたいのであります。
また、昨年十月三十一日の宮澤さん・ベーカーさんの共同声明で、これで
円高もおさまるのではないかと期待されました。しかし、最近の動きは裏切られております。この背景として、米財務省がドル下落を容認する
発言を連発した。特に、宮澤・ベーカー合意をほごにすると受けとめられるベーカー氏の
発言は、マルク高中心の
相場展開を円を前面に押し出す
相場展開に情勢を変えてしまいました。これは米国の背信行為ではないかという声もあります。
総理大臣及び大蔵大臣の御見解を伺いたい。
アメリカの議会では、早速貿易法案の公聴会がスタートし、ストラウス前通商代表の
発言など為替市場が神経質になっております。
アメリカ議会の動きをどう見ておられるのか。
宮澤大蔵大臣の一月二十一日の日米蔵相会談、御苦労さまでございました。しかし、
我が国はもっと言うべきことをはっきり言う必要がございます。(
拍手)会談の内容と今後の展望について御説明願いたい。また、十二月の
アメリカの貿易収支が好転したと報道されておりますが、この動きは今後定着するものと見ておられるのか、伺いたい。また、近くG5開催の予定がうわさされておりますが、その
見通し、特に、その際の
我が国の
政策スタンス、主張はどういうものなのか、私がるる指摘して申し上げた論点を踏まえ、御説明を願いたいのであります。(
拍手)
さて、問題はそれだけではありません。より
基本的な疑問があります。著名な
経済学者のサミュエルソン氏は、「
日本には金融緩和よりも財政面からの景気刺激
政策が必要なんだ。大きな黒字は
日本の
政策ミスであった」と言っておられます。また、西ドイツの前首相であるシュミット氏も「
日本の膨大な貿易黒字は
政策ミスである。にもかかわらず、
日本は世界景気は上向きであると
考えて、世界
経済の拡大を過大評価した。
日本は財政の
赤字を恐れて貿易による景気上昇は無限に可能だと
考えたに違いない」と中曽根
経済政策とその運営が誤りであったと鋭い
批判が出ているわけであります。
中曽根
経済路線とは、臨調路線堅持と貿易拡大主義の二本柱、つまり、緊縮
予算とそれに伴う
内需拡大への消極姿勢、これは六十二年度
予算案を見ても歴然としておるわけであります。その結果、成長率を高めるための輸出拡大がいや応なしに必要とされた
政策路線でありました。これが可能なためには、世界貿易が無限に大きくなっていくという基礎前提が必要であります。しかし、世界貿易は八〇年、八一年をピークにして縮小傾向に向かいました。
総理、世界
経済の拡大が頭打ちになった時点、すなわち、八〇年代に入ってあなたの
内閣が発足したその時点で、もっとグローバルな視点に立った
政策の大転換が必要でありました。にもかかわらず、それをやらずに
内需拡大に失敗し、結果として
アメリカ、ECへの輸出ドライブが強まった。そのツケが今まとめて襲いかかっていることを私は声高に訴えるものであります。どう反論されますか。(
拍手)
私は、
行政改革を否定しておるものではございません。むしろ、公明党は
行政改革をさらに熱心に推進せなければならないと決意をしております。しかし、
政府は臨調答申のつまみ食いでした。臨調の第一、第二、第三部会の部会報告にほとんど手つかずの
状態で、お世辞にも
行政改革が進んだとは言えません。つまり、
行政改革とはいえ及び腰で、電電と国鉄の民営化以外では見るべき成果なく、結局、財政収支の帳じり合わせにあなたの
政策は極めて矮小化され、輸出ドライブにストップをかけ得る
内需拡大政策に成果をおさめ得なかったのであります。その結果、
我が国の貿易黒字は異常拡大した。その解決策として
円高政策しかない袋小路にあなたのせいで
日本は追い込まれてしまったのであります。(
拍手)
先ほどのサミュエルソン、シュミット両氏の指摘は、
日本の実情への認識ギャップはあるといたしましても、グローバルな視点から見て厳しく受けとめざるを得ません。まさに今日の
円高不況は
政策ミスによる人災であると言えます。(
拍手)そして何が残ったかといいますと、
日本の
産業界の目を覆うばかりの大不況であります。
総理、設備といい、技術といい、経営能力といい、勤勉な労働力といい、優秀な下請といい、どこへ出しても世界の超一流の工場が今、
一つまた
一つと消えていきます。まさに
日本経済の圧殺、虐殺ではありませんか。あなたは、これをやむを得ない、
日本経済の
産業構造の転換だ、仕方がないと知らぬ顔でおれますか。しかと御答弁を願いたいのであります。(
拍手)
経済同友会が昨年六月実施したアンケート調査によりますと、代表的な製造メーカー三百五十九社のうち、海外へ生産、研究、開発部門の移転を検討しておる
企業は九四%、三百三十七社、生産の空洞化のみならず技術の空洞化までが今
我が国では深刻に心配されておる現状であります。現在、
日本的経営の本質と言われた終身雇用制、親会社と下請の緊密な
関係、
企業城下町など
地域と
企業との共存共栄が音を立てて崩れようとしております。雇用、下請、
地域が切り捨てられようとしているのであります。また、
日本経済データ開発センターの分析では、今後五年間製造業部門で九十万人の職場が消えてしまうと分析をしております。これは鉄鋼、造船、繊維のみならず自動車、エレクトロニクス、家庭電器製品な
どもその例外ではないと報告をしておるのであります。
失業は三%を突破しそうです。しかも、この陰には統計にあらわれないパート、婦人、老人の切り捨てが既に進行しており、さらに、
企業が抱えておる百五十万人と推定される余剰人員があります。この
円高、この
日本経済の空洞化、失業はますます厳しい状況を迎えたと言わざるを得ません。とりわけ、五十五歳から六十四歳までの定年前後層の再就職は極めて困難となってまいりました。
六十二年度
予算を見ましても、何ら効果のある
内需拡大策もなく、雇用
対策もありません。
総理、この冷酷な雇用、下請、
地域の三つの切り捨て、どう見ておられるのか、どう対処しようとされておるのか、しかと御答弁をいただきたいのであります。(
拍手)
さらに、このままでは
アメリカの保護貿易主義が
円高に重ね打ちされまして、そうした保護貿易主義が
EC諸国にまで及ぶ場合は、
我が国が壊滅的な打撃をこうむるとともに、世界
経済は破局的な局面へ突入してしまうことになりかねません。
事態は中曽根
経済政策そのものを転換しなければならないところに来ております。この私の
批判を甘受されますか、そうでないとしたらどうぞ具体的に御反論を願いたいのであります。
次に、
税制の問題を御
質問いたします。
総理、あなたは一昨年二月、
予算委員会で、あのとき、
予算委員会の
審議が閣内意見、答弁の不一致をめぐって紛糾し、中断されてしまいました。そのとき、私の
質問に対して「多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模な消費税を
投網をかけるやり方でやることはしない」と
政府の統一見解の形で私や
予算委員会に約束をされたのであります。そして
総理は、昨年のダブル
選挙の際には、連日、
大型間接税の
導入を否定する
演説をされました。今にして思えば、随分白々しい
演説をされたものであると言わざるを得ません。
自民党税制調査会の山中会長もあなたの
公約について「
うそをついたと思う。
公約違反であることは認めざるを得ない」と言われたと聞きます。
総理、この
売上税はどう弁解されても明らかに重大な
公約違反であります。(
拍手)弁解の余地がありますか。反論があれば、お聞かせをいただきたい。
恐らく
総理は、全
企業の八七%、五百三十万業者が
非課税だから大型ではない、包括的ではない、だから約束違反ではないと言われるのでしょう。しかし、
課税される一億円以上の業者数は一三%と少ないかもしれませんが、売上高では実に九二%、ほとんどがカバーされてしまいます。しかも、
非課税業者も結局
課税業者に追い込まれ、また、
非課税品目も原材料費や輸送費に
課税されることになります。つまり、最終的に負担する
消費者の立場からいえば完全に大型であり、包括的であり、網羅的であると言わざるを得ないのであります。(
拍手)お答えをください。
非課税とされる業者につきましても、税額の控除票が発行できない。前段階で
売上税支払い済みでございますという
売上税の控除ができない。そこで鎖が切れてしまう。具体的に申し上げますと、この
売上税では、例えばA商店がB商店に一万円の品物を売ったとき一万円の五%、五百円が
売上税。B商店はA商店に一万五百円を支払うことになります。A商店はこのうちの五百円を
売上税として納税をいたします。B商店はそれに付加価値をつけまして二万円で次のCデパートに。そして二万円の五%の千円が
売上税分で、B商店は二万一千円を受け取るので……(
発言する者あり)よくお聞きなさい。千円が
税金ですが、前の段階でA商店に五百円の
税金を払ってございますので、A商店がもう既に五百円納税済みでございますから、B商店はCデパートから受け取った
売上税千円から五百円を差し引いた残りの五百円を納税するわけであります。Cデパートはこれを三万円で。しかし、
消費者が買うときには、三万円とその五%の千五百円の
売上税分の計三万一千五百円を
消費者はデパートに支払う。CデパートはB商店から仕入れた際に既に千円の
売上税を払ってございますから、お客さんから受け取った
売上税千五百円から千円を引いた残り五百円を納税する。
この仕組みをよく見ますと、A商店もB商店もCデパートも
売上税を納めるものの、決して自分の
お金を払うのではない。最終的に
消費者が千五百円を余分に取られ、その税負担が
消費者にすべて転嫁されるのであります。もしB商店が
非課税業者である場合、B商店は
売上税とは無
関係になりますので、A商店からの一万円に五百円の
税金分を加算した一万五百円の仕入れ
値段に先ほどと同じ付加価値一万円を上乗せして、Cデパートに対して二万五百円で売ります。しかし、B商店はCデパートに対して前段階で五百円の
売上税を納入済であるという証明書を出すことができません。したがって、Cデパートは三万五百円に丸ごと五%の千五百二十五円が
売上税として加わり、先ほどの三万五百円プラス千五百二十五円、三万二千二十五円取られる。
消費者は、前段階で
非課税業者が入った場合、仕組みの矛盾によってさらに五百二十五円も余分に払うということになるわけであります。ですから、前段階までの
売上税との二重払いとなってしまう。また、前段階の税が仕入れ
値段の中に潜り込むために、税にまた五%の税がかかるという、この二十五円がそうですが、まことに奇々怪々な現象が発生します。これをどう説明されますか。
だから、
非課税業者は取引から排除される。既に某自動車メーカーがそのような方針を決められたと新聞報道されているわけでございます。この
売上税のシステムでは、
非課税業者が流通のネットワーク再編成の中で排除される。
年商一億円未満は
非課税ですよと猫なで声で弁解されましても、取引のラインからはじき飛ばされ、結局、泣く泣く
課税を選ぶケースが多くなってしまうわけであります。これでは全く弱い者いじめであり、そして多段階、包括的、網羅的になり、
公約違反と言わざるを得ません。これをお認めになりますか。(
拍手)
経済界では、
売上税を
導入すれば
税率を簡単に引き上げられ、怪物に育つという声があります。ヨーロッパの現状は軒並みに十数%と、まさしくそのとおりであります。そうならないと断言できますか。その保証はどうなっておりますか、お答えいただきたい。特に、今
経済界では、
売上税による仕入れ、販売、経理の複雑さに悲鳴を上げ、また、
企業が負担する納税事務コストの巨大さに恐れおののいています。それに加えてこの
円高不況で、業者は
売上税を価格に転嫁することは力
関係から見て到底無理ではないかという見方もある。税は結局業者が負担してしまうという心配もあります。これらの悲鳴、心配は、特に零細小
企業、商店、お店にあっては深刻であります。また、売り値とは別個に税額を表示する外枠表示
方式をなぜとらないのかという声もあります。これらをどう見ておられるか、具体的にお答えをいただきたいのであります。
さらにまた、アクションプログラムで関税を引き下げられまして、二・一に下げられた。この
売上税はすべての輸入品に五%かかる。関税が七・一%になるのと同じであります。手続の複雑さと相まって、また
貿易摩擦の原因になるではございませんか。御答弁をいただきたい。
さて、
政府は、約四兆五千億円の
所得税の
減税、
法人税の
減税を掲げられております。しかし、サラリーマン世帯でいえば、年収五、六百万円までの家庭の税負担は現行を上回る重税に泣かされなければなりません。
高額所得者には
減税に、八割を占める中堅及びそれ以下の
所得者にはむしろ
増税であります。特に、中堅所得層への公平な
減税という
総理の約束は全くほごとなったのではありませんか。どう説明されますか。一方、マル優制度の廃止は、老後、不時の病気への備え、子供の
教育、
住宅計画などのライフサイクル、庶民の
生活を直撃してしまうものであります。さらに、一律分離
課税は、今まで無税だったのに、零細な庶民の預貯金にも二〇%
課税するだけではない、金持ちに対しては今までの三五%が二〇%に軽減されるという不公平、金持ち優遇ぶりであります。預貯金の利子が下がっておる現状の中で、庶民の
生活設計は危機に瀕してしまいます。
今回の
税制改正の特徴は、総合課
税制度がまずます骨抜きとなり、税の所得再配分機能を低下させたことにあると言えましょう。この不況により、今後低
所得者層の所得格差はますます大きくなる可能性があります。しかも、この
税制改革はその所得格差拡大に拍車をかけるものと言わざるを得ないのであります。(
拍手)額に汗する多数の
勤労者、弱い立場の庶民の不安にこたえるのが
政治の
責任であると私は申し上げたいのでございます。特に
総理、行
政府は新しい制度につきましては、立法府において法律が成立してから後に
予算編成をなし得る、これは三権分立、当然のことであります。
六十二年度の
予算案を拝見いたしますと、
経済界、
消費者など幅広く、強烈な反対の集中しておる新しい制度が、あたかももう法律が成立したかのごとく前提となって
予算編成されているのであります。つまり、マル優の廃止、二〇%の一律分離課
税制度、そして
売上税が
税収として計上されております。既存
税制度の範囲内で、例えばパーセンテージなどの手直しをして
予算を編成するというのであれば、これは前例もあります。また、
税収見込みも、既存
税制というわけで根拠もそれなりにあると言えましょう。しかし、
売上税などは全くの新税であります。新制度であります。何の法律根拠も、この
予算編成に当たってはございません。ましてや、
税収の客観的な積算根拠も全くあいまいであります。しかも、その法律案なるものもまだ議会に提出されておらず、私
たちは拝見しておらないのであります。これは立法府軽視と言わざるを得ません。したがって、本来ならば、まず法律が成立してから、
減税、
増税その他を補正
予算などで
予算措置されてしかるべきものであります。(
拍手)
総理、こういうわけでございますので、公明党は、このような先ほど来るる申し上げた不公平と矛盾に満ちた内容の、そしてまた、このような議会を軽視したやり方での
売上税の
導入、マル優の廃止を絶対容認することはできません。(
拍手)度これが実施されますと、もはやこれの修正は極めて困難なものとなり、重大な悔いを残すことになります。このような
予算案を
撤回して再提出され、
税制改正案の提出も断念されることを強く要求するものでございます。(
拍手)しかと御答弁を願いたい。
私は、グリーンカード制を速やかに実施し、マル優制度を存続、そして利子配当を総合
課税方式で
課税し、株式売却利益や
土地投機の巨大な利益などキャピタルゲインに重課するなど、所得の多い者には高い
税率、少ない者には低い
税率で公平を実現し、かつ
減税財源を確保することが十分可能であることを指摘し、その実施を強く要求いたします。お答えを願いたいと
思います。
私は、
円高不況の
質問で
内需拡大を怠った
政府の
責任について言及をしました。
総理は、財政難で金がないと言う。しかし、一方では
マネーゲーム、
土地の狂乱的高騰、さらには
アメリカへの大量の資金流出など、この様相は金の
余り過ぎ以外の何物でもありません。この金
余り症候群を
減税や公共投資の財源として見る視点、
政策をなぜ
政府は持てないのですか。この余った
お金に国内の
社会資本の充実など、魅力ある民間の投資先を見出せるような手だてを
政府はなぜ講じないのか。このなぜにお答えをいただきたい。
例えば、相続税をおそれておる
お金には相続税や譲渡税を軽減ないしは免除する、そのかわりに利子はありませんよという長期の無利息の国債を発行し、引き受けてもらうというやり方。公共事業の
土地買収のケースにもこの国債は検討される価値があると
思います。まことに膨大な
余り金や用地買収費をこの無利息国債でもし吸収することができれば、国債の利払いが減少し、その分、
減税財源な
ども確保することができます。
売上税や
マル優廃止などという
経済の混乱を招き、弱い者いじめをする必要は全くないではありませんか。将来に得られる相続税、譲渡税を失うことになりますけれ
ども、それ以上に今日の
時代が求める課題に適切な
対策をとることの方が、将来によい結果をもたらすという
意味で御提案をいたしました。
他方、高齢者は自分が何歳まで生きられるかわからず、老後の設計が難しいという悩みを持っておられます。中高年の
方々は、生存中ずっと安全と高利回りの年金を望んでおられます。例えば、それらの
方々の退職金や貯蓄などで資金を拠出し、国に資金運用を任せる。国は、同世代でグループを設定し、元本は償還しないことを条件に、そのかわり死亡されるまで十分老後の
生活ができる高利回りの年金を保障する。もしグループの仲間が亡くなられると、その配偶者に例えば半額を保障し、だんだんと亡くなっていかれます。その分生存者により高利回りの年金を提供する、いわゆるトンチン年金の改良案も御提案をしたい。これが実現すれば、豊田商事事件などにお年寄りが巻き込まれることもなく、国も
内需拡大の原資を得ることができます。
総理、これは一例でありますが、従来のせせこましい発想から脱皮されたらどうかという
意味で申し上げました。対案を出せ、対案を出せとおっしゃいますが、ぜひ御検討をお願いしたいわけでございます。(
拍手)
さて次に、最近の
東京都心部の
土地の高騰はまさに狂乱というべきであります。四全総
計画案は、この狂乱にさらに拍車をかけていると言えます。その結果、
内需拡大も
地価高騰により効果が大きく減殺され、人、金、情報はますます東京に集中し、地方はますます捨て去られております。
総理、この
土地狂乱をあらゆることに優先して歯どめをかけなければなりません。いかなる対処をされようとしておるのか。また、四全総をもっと地方重視に見直さなければなりません。お答えをいただきたいと
思います。
労働時間の短縮は、もう
時代の趨勢でございます。雇用を拡大し、休暇の増加による消費など
内需拡大のため、週四十時間、週休二日制を推進するとともに、ヨーロッパ先進国で効果を上げておりますワークシェアリングを推進する必要があると
思います。お答えをいただきたい。
また、指紋押捺制度についてでございますが、最近、国際化が急速に進展しており、外国人の人権を侵害するこの制度は一刻も早く廃止すべきであります。さしあたり登録証の常時携帯は
生活圏内、例えば
生活しておる都道府県内では緩和されるべきだと
考えます。
総理と韓国大統領の約束が守られていないのではありませんか。
総理が
施政方針演説で触れられましたエイズ
対策につきましても、緊急かつ具体的な
対策と今後の展望を明らかにしていただきたい。
今、世界が人類史的な転換点に差しかかってきております。そのあらわれの
一つとして、日米など
先進諸国の急速な脱
産業社会化が進んでおるわけであります。とりわけ物の生産と消費が最大の社会目標であった高度
産業社会とは異なり、脱
産業社会では人間のマインド、心、
精神の充実が目標となります。こうした社会では、当然、文化や
教育にかかわる人的、物的な
社会資本の充実がより重要な問題となります。いわゆる生涯
教育、社会人の再帰
教育も大切ですが、余暇や高齢者
福祉の面においても、
人々の文化的欲求の高まりに対応していく必要がございます。これは、従来の中央集権的、巨大テクノロジー一辺倒の、また物の生産重視では対応できません。そのため、
地域社会への住民の創造的参加をいかに実現されるか、種々の発想の転換が必要であります。
総理、人間マインドへの深い洞察が必要とされる
時代、このような
時代の転換にどう対応しようとされるのか、見解を伺いたい。
特に、この人間マインド、人の心と
精神の
時代には、とりわけ人権の尊重、報道や学問、言論、信条、思想、信仰、結社の自由が極めて重要であり、不可欠であります。スパイ防止に名をかりた人権の抑圧、自由の侵害は絶対に容認できるものではありません。スパイ防止法あるいは国家機密法は断念されるべきものであります。所見を伺い、私の
質問を終わらせていただきます。(
拍手)
〔
内閣総理大臣中曽根康弘君
登壇〕