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岡村政府委員 お答えいたします。
「人ノ
事務処理ヲ誤ラシムル目的」ということでございますが、これは
不正作出されました
電磁的記録が用いられることによりまして他人の
事務処理を誤らせる目的のことであります。
事務処理と申しますのは、例えば財産上、身分上その他の人の生活
関係に影響を及ぼし得ると認められる
事務の処理をいうわけでございまして、これは業務として行われるかどうか、あるいは
法律的な
事務かどうか、財産上の
事務かどうか、こういったことは問わないわけでございます。従来は「
行使ノ目的」ということで
文書偽造の目的を
規定いたしておったところでございます。ところが、今回の
改正案につきましてはそういう表現ではなしに、「人ノ
事務処理ヲ誤ラシムル目的」といたしたわけでございます。これは、例えば無
権限者が作成したコピーのようにたとえ不正につくられましたものであってもそこに
記録されているデータが本来のものと同一でありますれば、それが当該のシステムにおいて使用されても害が生じないわけでございます。こういったような点を考えまして、処罰の範囲を適切に限定いたしますために「人ノ
事務処理ヲ誤ラシムル目的」という実質的な違法目的を必要とすることにいたしたのでございます。
次に、「権利、義務又ハ事実証明ニ関スル
電磁的記録」ということでございますが、これは一定のシステムにおいて権利義務または事実証明に関するものとして用いられる
情報を
記録した
電磁的記録のことであります。権利義務に関する
電磁的記録と申しますと、権利義務の発生、変更、消滅の
要件となり、あるいはまたその原因をなす事実について証明力を持っております
電磁的記録をいうのでありまして、例えばオンライン化されました銀行の元帳ファイルなどがこれに当たります。「事実証明ニ関スル
電磁的記録」とは、実社会生活に公証を持っております事項を証明するに足るものとして
情報を
記録した
電磁的記録のことでありまして、例えば商品台帳、顧客台帳ファイル、キャッシュカードといったようなものがこれに当たるのでございます。なお、プログラムでございますが、これはその
記録の内容が
コンピューターに対する指令でありまして、権利義務あるいはまた事実証明に関するものではありませんので、ここに言う「権利、義務又ハ事実証明ニ関スル
電磁的記録」には当たらないのであります。しかし、プログラムを改変することによって権利義務または事実証明に関する
電磁的記録を不正に作出したような場合は
不正作出罪として処罰されることがあり得るわけでございますが、それはまた
一つの別の問題であろうかと思うのであります。
次に、「不正ニ作リ」ということでございますが、これは違法に
電磁的記録を存在するに至らしめるということでございまして、行為者について申しますと、
記録の作出
過程に関与するその
あり方に違法があると言えると思うのでございます。例えばデータを入力する
権限がないのにデータを入力して
記録を作出するような行為、あるいはデータ入力の
権限は一応あってもこれを乱用して虚偽のデータを入力して
記録を作出する行為、こういったような行為がこれに当たると思うのであります。従来の
文書の偽造、変造という概念を用いなかったわけでございますが、
電磁的記録は可視性なり可読性がないという点で
文書と違うわけでございますし、また、入力したデータがプログラムによってほかのデータなどとともに処理、加工されてつくり出されるなど、その作出の
過程に複数の者の意思や行為がかかわることが多いのでございまして、その作成
方法も
文書とは異なるという点から、
電磁的記録につきましては
文書と同様の作成名義を観念することが困難な点がございますので、偽造、変造という概念を用いることによっては処罰すべき
不正行為の実態を的確にとらえがたいということからこれを用いなかったのであります。
次に、「
公務所又ハ公務員ニ依リ作ラル可キ
電磁的記録」ということでございますが、これは、
公務所または公務員の
職務の遂行として作出される
電磁的記録のことでございます。
次に、「人ノ
事務処理ノ用ニ供シ」ということでございますが、これは、不正に作出された
電磁的記録を他人の
事務処理のために使用される
電子計算機において用い得る状態に置くということでございます。
次の
詐欺罪の
関係につきましては、米澤参
事官からご
説明いたします。