○
遠藤国務大臣 刑法等の一部を
改正する
法律案について、提案の
趣旨を御
説明いたします。
第一は、電子
情報処理組織に関連する不正
行為に対処するための
刑法の
改正であります。
電子
情報処理組織の普及の結果、各般の
事務の
処理が電子計算機によって行われるようになり、その形態が大きく変化しつつあることに伴い、このような新たな
事務処理の形態にかかわる不正
行為が少なからず
発生するとともに、今後その増加が懸念されるところ、これらの不正
行為の中には、現行
刑法により的確な対応が可能な従来の
事務処理形態のもとにおける不正
行為と同様の
行為でありながら、現行の諸規定ではこれを的確に
処罰することが困難なものあるいはその被害の重大さにかんがみ現行の法定刑では必ずしも適切に対応しがたいものがあるものと認められるのであります。
そこで、このような
状況にかんがみ、電子
情報処理組織において用いられる電磁的記録について、その不正作出及び供用並びに毀棄を
処罰する規定を設けること、電子
情報処理組織による大量迅速な情報
処理によって行われる業務を妨害する
行為を
処罰する規定を設けること、債権、債務の決済等が電磁的記録を用いて自動的に行われる
事務処理の形態を利用して財産上不法の利益を得る
行為を
処罰する規定を設けることの三点につき、緊急に
刑法の
整備を行う必要があると考えたものであります。
これに関する
改正の要点は、次のとおりであります。
その一は、人の
事務処理を誤らせる
目的をもって
権利、
義務または事実証明に関する電磁的記録を不正に作出する
行為並びに不正に作出された
権利、
義務または事実証明に関する電磁的記録を供用する
行為及びその未遂を五年以下の懲役または千円(罰金等臨時
措置法第三条第一項第一号により二十万円)以下の罰金に処するものとし、不正作出に係る電磁的記録が公務所または公務員により作出されるべきものである場合については十年以下の懲役または二千円(同法第三条第一項第一号により四十万円)以下の罰金に処するほか、
権利、
義務に関する公正証書の原本たるべき電磁的記録に不実の記録をさせる
行為及びこれを供用する
行為を現行
刑法の公正証書原本不実記載及びその行使と同様に
処罰するものとし、また、公務所の用に供する電磁的記録及び
権利、
義務に関する他人の電磁的記録を毀棄する
行為を現行
刑法の文書毀棄と同様に
処罰するものとする点であります。
その二は、人の業務に使用する電子計算機もしくはその用に供する電磁的記録を損壊し、もしくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報もしくは不正の指令を与え、またはその他の方法で、電子計算機に使用
目的に沿うべき動作をさせず、または使用
目的にたがう動作をさせて人の業務を妨害する
行為を五年以下の懲役または二千円(罰金等臨時
措置法第三条第一項第一号により四十万円)以下の罰金に処するものとする点であります。
その三は、電子計算機に虚偽の情報もしくは不正の指令を与えて財産権の得喪、変更に係る不実の電磁的記録を作出し、または財産権の得喪、変更に係る虚偽の電磁的記録を人の
事務処理の用に供して財産上不法の利益を得る
行為及びその未遂を十年以下の懲役に処するものとする点であります。
第二は、近年、
外交官等の殺害、在外公館の占拠、人質をとる
行為等の事犯に対処するための国際的な
協力体制の確立が国際的課題となっていることにかんがみ、政府は、国際的に保護される者(
外交官を含む。)に対する
犯罪の防止及び
処罰に関する
条約及び人質をとる
行為に関する
国際条約を締結することとし、今
国会にその承認を求める案件を提出しておりますが、これらの
条約のうち、前者は国際的に保護される者に対する殺人、誘拐等を、後者は人質をとって第三者に不法な要求をする
行為を、それぞれ一定の場合にはその国外犯をも含め、これを
処罰し得るようにすることを主な内容とするものでありますので、これらの
条約の実施上必要な
刑法等の
整備を行おうとするものであります。
これに関する
改正の要点は、次のとおりであります。
その一は、
刑法を
改正して、
刑法第二条から第四条までの場合のほか、同法第二編の罪につき
条約の
要請に従ってその国外犯を
処罰するものとする点であります。この
改正は、主として国際的に保護される者(
外交官を含む。)に対する
犯罪の防止及び処罪に関する
条約の実施のための
措置であります。すなわち、同
条約は国際的に保護される者の身体または自由を侵害する
行為等を
犯罪とすべき旨定めておりますが、これらの
行為の
処罰については国外犯の
処罰の点を除き既存の罪で対応することにより同
条約の
要請を満たすことができますので、国外犯に関して
条約の
要請の範囲内でこれを
処罰することを可能とする
措置をとり、
条約上の
義務を履行しようとするものであります。なお、この
改正は、一般に、
条約上
要請される範囲で
刑法各則の罪の国外犯を
処罰し得ることとすることにより、将来、国外犯の
処罰義務を定める
条約の締結が必要となる場合に、その早期締結に資する効果をも有するものであります。
その二は、人質強要
行為等の
処罰に関する
法律を
改正して、人を逮捕し、または監禁し、これを人質にして、第三者に対し不法な要求を行った者を六月以上十年以下の懲役に処するほか、人質強要
目的による逮捕、監禁及びその未遂を
処罰するものとし、さらに、これらの罪について、
国民の国外犯を
処罰するとともに、
条約の
要請に応じてその一の例に従って国外犯を
処罰するものとする点であります。この
改正は、人質をとる
行為に関する
国際条約の実施のための
措置であります。
その他、暴力
行為等
処罰に関する
法律第一条ノ二第一項及び第二項の銃刀を用いる傷害に関する罪についても、
国民の国外犯に加え、その一の例に従ってその国外犯を
処罰する
趣旨の
改正を行うこととしております。
以上のほか、所要の規定の
整備を行うこととしております。
以上がこの
法律案の
趣旨であります。
何とぞ慎重に御
審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。