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1987-07-03 第108回国会 衆議院 農林水産委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年七月三日(金曜日)     午前十時三十一分開議 出席委員   委員長 玉沢徳一郎君    理事 近藤 元次君 理事 鈴木 宗男君    理事 月原 茂皓君 理事 保利 耕輔君    理事 松田 九郎君 理事 串原 義直君    理事 水谷  弘君 理事 神田  厚君       上草 義輝君    大原 一三君       太田 誠一君    木村 守男君       菊池福治郎君    小坂善太郎君       佐藤  隆君    田邉 國男君       谷垣 禎一君    野呂田芳成君       長谷川 峻君    森下 元晴君       保岡 興治君    柳沢 伯夫君       山崎平八郎君    五十嵐広三君       石橋 大吉君    田中 恒利君       竹内  猛君    辻  一彦君       前島 秀行君    武田 一夫君       玉城 栄一君    藤原 房雄君       吉浦 忠治君    和田 一仁君       藤田 スミ君    山原健二郎君  出席国務大臣         農林水産大臣  加藤 六月君  委員外出席者         厚生省生活衛生         局食品保健課長 大澤  進君         農林水産政務次         官       衛藤征士郎君         農林水産大臣官         房長      甕   滋君         農林水産省経済         局長      眞木 秀郎君         農林水産省経済         局統計情報部長 松山 光治君         農林水産省構造         改善局長    鴻巣 健治君         農林水産省農蚕         園芸局長    浜口 義曠君         農林水産省食品         流通局長    谷野  陽君         食糧庁次長   山田 岸雄君         水産庁長官   佐竹 五六君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十六日  辞任         補欠選任   保岡 興治君     石破  茂君   山崎平八郎君     笹川  堯君   寺前  巖君     浦井  洋君 同日  辞任         補欠選任   石破  茂君     保岡 興治君   笹川  堯君     山崎平八郎君   浦井  洋君     寺前  巖君 六月二十九日  辞任         補欠選任   寺前  巖君     山原健二郎君 七月三日  辞任         補欠選任   佐々木良作君     和田 一仁君 同日  辞任         補欠選任   和田 一仁君     佐々木良作君     ――――――――――――― 五月二十七日  一、食糧管理法の一部を改正する法律案内閣   提出第六〇号)  二、大豆なたね交付金暫定措置法の一部を改正   する法律案内閣提出第六一号)  三、流通食品への毒物の混入等防止等に関す   る特別措置法案宮崎茂一君外五名提出、第   百七回国会衆法第六号)  四、本邦漁業者漁業生産活動確保に関する   法律案安井吉典君外十六名提出衆法第一   号)  五、農林水産業振興に関する件  六、農林水産物に関する件  七、農林水産業団体に関する件  八、農林水産金融に関する件  九、農林漁業災害補償制度に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(昭和六十二年産  米穀政府買価格等)  食糧管理制度根幹堅持・米の市場開放阻止等  に関する件      ――――◇―――――
  2. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  この際、昭和六十二年産米穀政府買い入れ価格米価審議会への諮問及び昭和六十一年産米生産費統計調査結果について政府から説明を聴取いたします。山田食糧庁次長
  3. 山田岸雄

    山田説明員 昭和六十二年産米穀政府買い入れ価格につきまして昨日米価審議会諮問させていただきましたので、その諮問の概要について説明させていただきます。  まず最初に、「諮問」と「諮問についての説明」について朗読させていただきます。      諮  問   昭和六十二年産米穀政府買価格について、将来にわたり我が国稲作の健全な発展を図るとの観点に立ち、需給事情に即応しつつ生産費及び所得を考慮して決定することにつき、米価審議会の意見を求める。   昭和六十二年七月二日           農林水産大臣 加藤 六月     …………………………………      諮問についての説明  米穀政府買価格は、食糧管理法第三条第二項の規定により、生産費及び物価その他の経済事情を参酌し、米穀の再生産確保を図ることを旨として定めることになっており、その算定については、昭和三十五年以降生産費及び所得補償方式によりその時々の需給事情等に応じて行ってきたところであります。  このような中で、昨今の米をめぐる内外の諸情勢から、稲作の中核的な担い手となる農家やこれら農家中心とする集団を育成し、将来にわたって我が国稲作の健全な発展を図り、国民の主食である米を安定的に供給していくことが現下の最大の課題となっており、このための各種施策を鋭意推進しているところであります。  また、米の需給事情については、消費が依然として減少傾向にある一方潜在生産力は高水準で推移し、潜在的な需給ギャップ拡大傾向にあり、過剰を懸念しなければならない状況の下にあります。このため、三度の過剰を招かぬよう水田農業確立対策推進と併せて政府の的確な米管理の徹底を期すことが重要となっております。  なお、米の管理に係る財政運営も、国家財政が厳しい状況にある中で、一層困難な局面に直面しております。  他方、稲作については単取水準上昇投下労働時間の減少、更に一般経済情勢面では物価金利水準低下労賃上昇率鈍化等をみております。  本年産米穀政府買価格につきましては、以上の事情総合勘案の上、生産費及び所得補償方式により算定することとしてはどうかということであります。  次に、お手元にお配りさせていただいておりますところの「昭和六十二年産米穀政府買価格試算」という資料説明をさせていただきます。  まず、資料に入る前に、算定基本的な考え方について申し上げたいと思います。本年産におきましては、先般の米価審議会委員懇談会、前広米審での御論議も踏まえまして、五十九年五月の米価審議会において採択されました米価算定に関する米価審議会委員会報告の趣旨に沿って算定を行っております。  すなわち、算定方式としましては生産費及び所得補償方式によることとし、対象農家平均生産費について物財雇用労働費など実際に支払う費用につきましては生産費調査結果を物価修正するとともに、家族労働費については都市均衡労賃評価がえをし、実際の支払いを要しない自己資本利子自作地地代についても一定評価方法により算入しまして、これらを合計した評価がえ生産費平均単収で除したものに、収量変動平準化係数を掛けまして「求める価格」、これが米全体の農家庭先価格でございますが、それを算定しております。  具体的な算定につきましては、後ほど資料説明させていただきますが、主要な点について申し上げますと、まず、生産費対象農家につきましては、巨額な財政負担を伴って生産調整を行わなければ需給均衡が図れないという現下の米の需給事情米価算定に反映させることとしております。すなわち、生産費対象農家といたしまして農家生産費の低い順に並べて、その累積生産数量比率一定比率、七九%になるわけでございますが、その比率になるまでの農家をとっております。  その場合、この一定比率を求める際の分子当たりますものにつきましては、これまで生産予定量をとっておりましたが、本年においては生産者側自主調整保管が実施され、そのうちの二十万トンは本年度の転作強化によって在庫減を予定しているものであることから、本年の需要に含め得るものといたしまして生産予定数量千十万トンにその二十万トンを加えたものをとっております。  また、分母当たります潜在生産量につきましては、六十二年度における潜在生産量千三百七十万トンから、昨年の試算値と同様に、他用途利用米生産予定量三十五万トン、それから転換畑相当分を含みますところの永年性作物等定着分三十二万トンを控除しております。  次に、主な算定要素について御説明いたしますと、まず、家族労働評価に用います都市均衡労賃とり方につきましては、基本的には五十六年産以降のとり方と同様、常用労働者数五人以上千人未満事業所規模製造業賃金について、都道府県別米販売量ウエートにより加重平均した賃金という考え方に立って算定しております。  また、自己資本利子及び自作地地代につきましては、金利動向が大きく影響いたしますが、本年の場合、金利が短期的に大幅に低下し戦後最低の水準になっていることに配慮し、家族労働費とともに重要な所得付与部分を占めるこれらの要素金利水準の急激な変動により大きく振れることは必ずしも適切ではないとの考え方に、立ちまして、その影響を緩和するようなとり方をしております。すなわち、自己資本利子金利とり方といたしましては、自作地地代算定に、おける金利とり方とも関連づけまして、米価算定時における農協六カ月定期と一年定期平均の五十八年以降五年平均をとっております。  また、自作地地代評価につきましては、五十九年産からのやり方と同じく固定資産税評価額を元本とする土地資本利子という考え方に立ち算定しておりますが、その際の適用利率につきましても、金利低下影響を緩和する観点から、十年利付国債の過去五年間の平均応募者利回りを用いております。  企画管理労働につきましては、現行米価算定方式対象となっております圃場における直接的な生産労働とは異なること、零細な農家まで含めた米販売農家算定基礎としていること、現下の米の需給事情等から見まして全面的に米価算定に算入することには問題があると考えられます。 一方、作付規模拡大生産組織化等推進により水田農業を確立していくことが重要な課題となっている中で、今後、企画管理的な労働もより重要になってくるものと考えられます。  そこで、こうした点に配慮いたしまして、本年においては暫定的な取り扱いといたしまして、いわば担い手予備群的農家と考えられます規模層以上には、一・五ヘクタール以上でございますが、企画管理労働を付与するとの観点から、過去のデータに基づいてその生産シェア相当分を算入しております。  以上に加えまして、近年の激しい収量変動算定値に実際上大きく影響していることにかんがみ、昨年の政府試算と同様、米価算定適用年直近三年平均の十アール当たり生産費と単収を基本としつつ、収量変動平準化のための一定係数を用いることによりまして、収量変動影響を緩和するようにしております。その際、昨年の政府試算におきましては、「直近三年平均単収と直近三年の平均単収の技術水準に、修正した直近五年平均単収との比率」を収量変動平準化係数として用いましたが、本年におきましては、昨年の方式のような過去の技術水準を平年単収で修正するといった違和感や期間を何年とするかといった問題が解消され、かつ、より安定的であると見られる。「生産費単収と推計により求めた平年ベース生産費単収との比率」を用いております。以上のような方式による試算結果は、一-五類、一-二等平均包装込みのいわゆる基本米価現行米価よりも五・九五%低い一万七千五百五十七円となります。  それでは、以下、資料に基づきまして御説明さしていただきます。  資料の第一ページ目に掲げてありますところの式でございますが、これによりまして「求める価格」、いわゆる農家庭先価格算定さしていただいておるわけでございます。この算式のうちの分子でございますが、これは十アール当たり評価がえ生産費、すなわち統計調査によりまして調査された結果の数字を、家族労働費につきましては都市均衡労賃評価がえをする、物財雇用労働費につきましては物価修正をする、そうしたものを合計したのがこの評価がえ生産費でございまして、それの三カ年平均分子に置かれるものでございます。  分母につきましては、十アール当たり収量、これも三年平均でございます、生産費調査収量の三年平均が掲上されておるわけでございます。で、これの計算によりましたものがキログラム当たりになるわけでございますが、そこにアルファという、一番下の方にアルファイコール収量変動平準化係数ということで説明されておりますが、それを掛けまして六十キロ当たりに換算する、こういう算式でございます。  そこで、収量変動平準化係数について説明さしていただきますと、九ページをお開きいただきたいと思います。九ページの真ん中辺の3というところに「収量変動平準化係数算定」という項目がございます。式は若干いかめしいような数式になっておりますが、内容は至極簡単でございまして、分子に置かれますものは直近三カ年間におきまして実現されたいわば生産費調査で明らかにされますところの生産費単収を平均するという式でございます。分母内容について申し上げますと、これは直近三カ年間におきますところの平年ベース生産費単収、いわゆる生産費調査で明らかにされますところの単収を平年ベース推計し直す、それの平均をとったものでございます。  平年ベース生産費単収の推計につきましては、九ページの後段の方にZrというところに説明がございますが、「米生産費調査による米販売農家の十アール当たり平均収量農林水産省統計情報部作物統計調査に基づく十アール当たり収量との関係から計測した次式」、これが十ページの一番上段に書かれておりますが、この式によりまして一応計算されるわけでございます。その結果がアルファイコール一・〇三九、こういうことになるわけでございまして、これを冒頭に説明をさしていただきました算式に代入いたしまして計算をさしていただく。それで、その結果につきましては二ページに掲げられておりますところの「求める価格」でございます。これを計算いたしますと「求める価格」は一万七千百二十九円になるわけでございます。この価格運搬費を加算さしていただきまして、いわゆる政府買い入れ場所におきますところの価格、これを「基準価格」と呼んでおりますが、それを計算いたしますと一万七千三百十二円になるわけでございます。  この基準価格をまたベースにいたしまして、3に書いておりますウルチ軟質類一等裸価格、これは具体的に政府が買い入れます場合の価格中心になるものでございます、この3のウルチ軟質類一等裸価格につきましては基準価格所要格差等の額を加除いたしまして計算することになっておりますが、そうして求めましたものが一万七千四百四円、こういうことに相なるわけでございます。  この価格から4におきますところのウルチ一-五類、一-二等平均包装込み生産者手取り予定価格、いわゆる基本価格でございますが、こり価格を算出するわけでございますが、ごらんいただいておりますように、これも所要方式に基づきまして等級間なり類格差、こういったものを加除いたしまして計算しておるわけでございますが、その結果は一万七千五百五十七円になるわけでございます。これは前年の基本米価一万八千六百六十八円に対しましてその格差は千百十一円になりますし、また率にいたしますとマイナス五・九五%になるわけでございます。  三ベージには、参考として掲上させていただいておりますが、「類別等級別政府買価格」を掲げさせていただいております。これは前ページの3で説明いたしましたウルチ軟質類一等裸価格類別格差等級格差でもって加除して計算したものでございます。なお、類別格差なり等級間格差は前年と同じ額で計算しております。  大体以上でございますが、そのほかにちょっと八ページをごらんいただきたいと思います。  八ページの真ん中辺の(7)で企画管理労働費について説明させていただいております。「米生産費補完調査の結果に基づく稲作に附帯して必要な集会出席技術習得資金調達及び簿記記帳に係る時間に、対象農家生産数量に占める水稲作付規模一・五ヘクタール以上層の割合を乗じて求めた時間に見合う評価額は、都市均衡労賃評価して算定する。」十アール当たりでこの労働時間が一時間になるわけでございまして、これも今回は費用の中に計上さしていただきまして計算しておるわけでございます。  以上が大体概略でございまして、あと算定要素の明細、細かい点につきましては時間の関係上省略させていただきたいと思います。
  4. 玉沢徳一郎

  5. 松山光治

    松山説明員 お手元にお配りしております資料によりまして、昭和六十一年産米生産費について御説明申し上げます。  一ページに総括表が出ておるわけでございますが、本年の生産費につきましては、最近の稲作をめぐる事情、その中での調査環境変化等事情を勘案いたしまして、十俵以上の米を販売した農家についての平均としてお示しいたしてございます。関連して、六十年産の結果につきましても必要な組みかえ集計したものをお示ししておるところでございます。  ごらんいただきますと、十アール当たり生産費でございますが、物財費が二%弥増労働費が二%強減る、こういう状況の中で、費用合計から副産物価額を差し引きました第一次生産費で見まして十三万七千八百七十五円、それに資本利子地代を算入いたしました第二次生産費が十七万七千七百二円ということで、いずれも一%程度の増となっております。  右側に六十キログラム当たり生産費を出してございますが、これは第一次生産費で一万五千三百十二円、第二次生産費で一万九千七百三十五円ということで、いずれも一%程度マイナスになっておるわけでございます。  六十キログラム当たりがこういうマイナスになりましたのは、御案内のように昨年は豊作でございまして、平均収量が五百二十九キログラムから五百四十キログラムに二・一%ふえております。こういうことを反映したわけでございます。  収益性につきましても、こういった収量増が反映してございまして、下にございますように粗収益で一・八%の増、十アール当たり所得として見ますと八万二千五百十一円ということで一・四%の増、こういう姿に相なっておるわけでございます。  以上が総括的な姿でございますが、若干中身に立ち入って御説明いたしますと、二ページをお開きいただきますと、二ページの(1)に費目の構成が出ております。これを見ますと、まず一番大きいのが労働費でございまして、三六・七%でございます。農機具費が三〇・七%ということでこれに次いでおりまして、以下肥料費賃借料及び料金農業薬剤費と続くわけでございまして、この五つの費目費用合計の八六・八%を占めております。  こういった主要費目動向について若干見てみたいと思いますが、労働費は先ほども申しましたようなことで前年を二・四%下回っておるわけでございますけれども、これは労賃単価上昇いたしましたけれども、十アール当たり投下労働時間が五十二・二時間ということで前年に比べ四・二%減少した結果を反映したものでございます。  農機具費につきましては、引き続き自説型コンバイン等高性能機械への更新が続いております。そういう事情の中で前年を三・七%上回っております。  肥料費はほぼ前年並みでございます。肥料につきましては、昨年の七月に主要十品日で一〇%強の値下げがあったわけでございますけれども、昨年につきましてはもう既に七月ということでございますから肥料の手当ては終わっておるということで、昨年の価格引き下げは六十一年の生産費には事実上反映しておらない、このように御理解いただけるのではないか、このように思っております。  次に、賃借料及び料金でございますが、前年を七・八%上回っております。これは収量増という要素もございますけれども、ライスセンターでありますとかカントリーエレベーター等利用がふえるといったようなことで、稲作作業委託が増加しておるということが主たる要因であろうというふうに考えております。  農業薬剤費も前年並みでございます。地代につきましては、若干前年を上回っております。  このほか、ここに書いてございませんが、光熱動力費、約三千五百円程度の値になっております。これは値下がりを反映いたしまして一三%弱の減に相なっております。  以下、作付規模別生産費でございますけれども、十アール当たり生産費、六十キログラム当たり生産費で見ましても、作付規模が大きくなるにつれまして逓減するわけでございます。逓減の度合いは六十キログラム当たりの方が大きく出ております。これは言うまでもなく規模の大きな層ほど農機具利用も効率的になる、そういうことで稲作労働省力化も進むというようなことで労働費なり農機具費なりあるいは賃借料料金等費用低下する、こういうことでございます。  若干数字にわたりますと、十アール当たり生産費で見まして、ちょうど三ページの一番上のところにございますが、一番生産費の高い〇・三ヘクタール未満層というのを一〇〇といたしました指数で見ますと、一・五ヘクタールから二ヘクタール層で七三、二・〇ヘクタールから三ヘクタール層で七一、三ヘクタールから五ヘクタール層で六九、五ヘクタール以上層で六四というふうな逓減状況になっておるわけでございます。  その下に六十キログラム当たりの第二次生産費についての規模別格差状況も記載いたしてございます。  最後収益性でございますが、収益性につきましては先ほど申し上げたところでございますけれども、十アール当たり所得を一日当たり所得に換算した結果が一番最後のところに出ておりますが、先ほど申しましたように労働時間が減少しておるということを反映いたしまして、一日当たり所得といたしましては前年を五・八%上回る一万二千九百十八円というのが結果値になっておるわけでございます。  あと、四ページ以降に細かな統計表が出ておりますけれども、ひとつ御参照いただければありがたいと思います。  以上でございます。     ―――――――――――――
  6. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松田九郎君。
  7. 松田九郎

    松田(九)委員 私は大臣に直接にすべての質問をしたいと思っているのですが、大臣が見えていないから、それでは山田次長にお聞きしたい。  米価引き下げについては後ほど触れるとして、最初に、昨日来の米審の中で今回のいわゆる生産者米価引き下げに伴って消費者米価も据え置くというのかあるいは引き下げるというのか。長官引き下げを指示したというふうに載っておるのだが、それについて。どの程度引き下げるのだ。
  8. 山田岸雄

    山田説明員 お答えいたします。  米穀政府売り渡し価格取り扱いにつきましては、まだ具体的には何ら私ども決めておらないわけでございまして、新聞情報等で多少そういった思惑的な情報があるわけでございますけれども、この問題につきましては、食管法規定に従いまして家計の安定を旨とするということで今後検討してまいりたい、このように考えております。
  9. 松田九郎

    松田(九)委員 おかしいな、今の話は。「消費者米価引き下げ言明 食糧庁長官」、ちゃんとこれは載っておるじゃないか。後藤食糧庁長官生産者米価引き下げについて二日の米価審議会の席上、消費者米価については「生産性向上メリットを消費者に還元するという考えでやっていきたい」と明言したと書いてある。これは毎日新聞だけれども、この毎日新聞がでたらめ書いておるというのか。おかしいじゃないですか。
  10. 山田岸雄

    山田説明員 お答えいたします。  昨日の米価審議会におきまして私どもの食糧庁長官委員の質問についてお答えになりましたのは、多分、消費者米価政府の売り渡し価格につきましての今後の考え方というものを説明なさったと思います。それで、具体的にはまだ決めてないと私申し上げたのでございますが、基本的な考え方といたしますれば、生産者米価を今回五・九五引き下げさせていただきましたその引き下げのメリットというふうなものは当然、額として幾らということは決まっておりませんけれども、そのメリットの中身につきまして消費者にも還元した方がいいんじゃないか、こういう考え方長官説明なさったものと私は理解しております。
  11. 松田九郎

    松田(九)委員 ちょうど大臣見えたから、基本的な問題だから大臣にお聞きしておく。  大臣、昨日来の米審の席上で食糧庁長官が今回の生産者米価についての引き下げ、当然これは消費者に還元をする意味で消費者米価というものも引き下げていくということを言明した意味の新聞報道がなされておる。これについて所管大臣としてどういう考えを持っておられるか、ひとつこの際承っておきたい。
  12. 加藤六月

    加藤国務大臣 食糧庁長官米審でお答えしたニュアンスが外にどのように漏れたか私は存じませんが、生産者水仙と消費者米価は必ずしも直接に連動するものではありません。しかしながら、我が国の米の自給方針を貫き、食管制度の根幹を守っていく点について、生産者、消費者、納税者、国民から理解し納得し支援をしてもらうためには、今回のようなケースがある場合に、いろいろ米審の先生方から御意見、御質問があるわけでございます。その過程において、売買逆ざやの問題、コスト逆ざやの問題等がいろいろ議論されました過程についてそういうことが出たと思いますが、直接食糧庁長官消費者米価を下げるとは言及していないと記憶しております。
  13. 松田九郎

    松田(九)委員 このことに余り時間をとりたくないんだけれども、大臣、これはおかしいな。毎日新聞に載っておるんだよ、ここにちゃんと。あなたに見てもらえばわかるんだけれども。これに載っておる載っておらぬは別にして、今米審で審議をしておる五・九五%なんという異常な、大幅な生産者米価引き下げについては、財政難ということだけの理由でこういうむちゃくちゃな引き下げをしたとは私は思えない。当然、生産者、消費者の間のコンセンサス、相互理解というものを含めて今後の農政を確立していくという見地からおもんぱかってこういう大幅な、異常な生産者米価引き下げというものをやっておる。だから、当然消費者に対しても何らかの、いわゆる消費者米価に対する引き下げというメリットがなければいかぬと思うんだが、今の大臣の話はおかしいな。もうちょっと突っ込んで承っておきたい。書いてあるんだ、これは。
  14. 加藤六月

    加藤国務大臣 書いてあるものをそのまま信じたら、本当の議論は行われないと思います。
  15. 松田九郎

    松田(九)委員 いや、さっきから言ったようにこういうことに時間をとりたくない。それなら大臣、はっきり消費者米価については引き下げをしない、あるいはそういう方向なのですか。引き下げを検討中であるということなのですか。全然そんなことは考えていないということか、はっきり言ってみてください。
  16. 加藤六月

    加藤国務大臣 消費者米価米審にかけなくてはなりません。恒例は毎年年末にこれを行っておるわけでございます。そういう経過がございまして、今の段階においては、生産者米価に対する政府諮問案を米審において御審議をいただいておる最中であります。この米審の答申をいただき、そしてまた十月前後ごろには本年産の米の状況もはっきりしてくる、そういうもろもろの問題を考えながら決定していくべき問題であると私は考えております。
  17. 松田九郎

    松田(九)委員 まあ今の場合、答申はまだ、今夜出てくるわけだから、その前に所管大臣として微妙な段階だから突っ込んで私が聞いてもあなたも立場が困るだろうから、以上で私は終わりますが、よく考えてやってもらわなければ困りますよ。生産者だけが犠牲を払う、そして五・九五なんという政府諮問がどこに根拠があってなされておるかということ等について我々は今後十分対応して、関係者にもいろいろな報告なりあるいは説明をしなければいかぬ。  ところで、この問題は一応おくとして、これまた毎日毎日新聞をにぎわしておるのは渇水対策。東京都内一千二百万の人口を養う水、これはどうなっておるのか。東京近郊の水源は空っぽと言って毎日渇水対策、渇水対策と言っておるが、一体東京近郊の水源はどこにあるのか、とことこが空っぽになっておるのか、ちょっとそれを簡単に説明してくれ。時間がないから簡単に、名前だけ言ってくれ。――よし、よい。時間がない。  そこで、これもひとつ大臣に直接承りたい。  昨年来、自由民主党の中で、今のようないわゆる水源枯渇の状態、河川はんらん、地すべりが頻発しておる状態の中では国家の財政だけでは賄い得ない、だからひとつ特別に関係者に拠金を願って、緊急整備税、水源税というようなものを我々はつくって、積極的に河川対策、水源を確保しようということでやってみたのだけれども、今このように水がないと言って毎日騒いでおる。工業用水はもちろんのこと、環境の上からも、観光の上からも、水がないとなっては、文明国家、経済大国という日本がそのような状態ではおかしいと思う。  今エイズには大変力を入れておる。エイズも大変だけれども、国の費用まで投じてエイズ対策をやることよりも、私から言えば、この緊急整備税というようなものをもっと国の費用ででもPRをして――テレビなんかでも、いわゆる北方領土の問題とエイズにだけ国の費用をかけておるのじゃないか。私は、北方領土はもっと大々的にPRをして納得させて関係国の反省を求めねばいかぬと思うけれども、エイズについて予防法を皆さん確かめましょうなんてタクシーにまで張っておる。交通安全は、だれかやろうじゃないかということならばタクシー会社にふさわしい標語だと思うけれども、何でタクシー会社までこんなことを書いておるのかと私は不思議に思った。団体のやることだからとやかく言わぬけれども、少なくとも政府は緊急整備税、水源税については昨年来のいきさつもこれあり、現在どうなっておるのか。三百億の基金を関係者から集めるとやっておるが、この間自由民主党内の部会で聞いたら一銭も金は集まっておらぬ。こういうものが今集まったかどうか、それを聞きたい、これは党内では法律をつくるという約束になっておるのだから。
  18. 甕滋

    ○甕説明員 ただいま先生からお話がございましたように、昨年の水源税の処理の際のいきさつがございます。それに従いまして、水源林については基金を整備いたしまして充てていこうという方針が一つ決まっております。それに従いまして、今農林水産省といたしましては、まず産業界あるいは関係業界の理解を得てそれに取りかかる必要があるということで精力的に関係方面を回ってまいりました。おおむねその御理解については基本的に取りつけられてきているというふうに思っておりまして、今後具体的な基金の拠出等につきまして鋭意取り組んでまいりたいと考えております。  また、予算面におきましても、このたびの補正予算の中におきまして何とかならないかという検討も行いまして、六百四十八億円の災害復旧等の経費の中で、災害関連緊急事業という形で当初予算の約四倍に当たります八十一億円の計上ということも予定をいたしておるところでございます。
  19. 松田九郎

    松田(九)委員 今の答弁でははっきりしておらぬな。  とにかく昨年来の、いわゆる水源税を設定しようじゃないかというときに、都会地の国会議員はほとんど反対したと私は思うのだよ。水はだれが使っておるか。田舎の者が使うんじゃない。端的には東京都が今困っておるんだろうが。水は要らぬと東京の都議会が言えるか。だから大臣、もう少し国会議員の、特に都会出身の議員なんというのについては水の必要性、限られた財源の中ではこれ以上の対策ができないということをPRをしてもらわなければいかぬ。そして今一銭も基金が集まっておらぬ。そんなことでは大臣、どうにもならぬ。だから、大臣は一体この問題をどのように処理するのか。年度内の問題だから、基金が積極的に関係者から集まらぬというのならば決断をしてもらわなければいかぬが、そこら辺については大臣はどう考えておるか。もう時間がない。ひとつその点についての決意のほどを聞いておきたい。
  20. 加藤六月

    加藤国務大臣 水源税問題は、昨年、一昨年二年にわたり熱心に議論されたところでございます。その必要性については多くの皆さん方が十分認識していただいたと思うわけでございますが、党の段階における調整で御存じのような基金構想に変わったわけでございます。その基金構想を受けまして、農林省としては鋭意各界各方面に働きかけておるところでございます。  ただ、その三百億の基金構想について、その使い方等について拠出を求めておる団体からいろいろな意見が出てきておるわけでございます。我々は、川下論、川上論、いろいろ水を治めるのに問題はあったわけでありますけれども、降雨量は世界で二番目、年平均千三百ミリ以上の降雨量を持つ我が国が、この我が国の地形の特性からことごとくこれを海に流してしまうというようなことは何としても残念であります。森林の涵養、すなわち国土、自然環境の保全ということは我が国にとって最も大切であり、そしてまた水の貴重性というものを今回改めて国民が認識していただいておるところでございまして、こういった情勢を踏まえながら今後積極的に各界各方面に拠出していただくべく、そしてまたその使途がより公共的であり、より我が国の水源を涵養し、国土保全という点に結びつくようにしていきたいと考えておるところでございます。
  21. 松田九郎

    松田(九)委員 何で水源税のことを私が厳しく質問しておるかというと、後で述べますけれども米価関係があるんです。米農政と関係があるんです。こんな急傾斜地の山間僻地の狭い日本のような領土においては、雨が降ったら直ちに、田んぼがなければ、水田がなければ、水はさっさと流れて大海に注ぐ。だから水は枯渇するんですよ。水田があり、森林が涵養されて初めてそこに水というものはたまるわけだ。今、水田を減らせ、米要らぬというような政府考え方だから、どんどん水は流れてしまってため池も必要なくなってきておる。水路も保水する池もなくなってきておる。だから、水は飲料水だけ欲しいといったって主客転倒だ。だからそこら辺はひとつよく心して今後やっていただきたい。  次に、これは私の専門じゃないけれども、ちょっと問題なのは、先週英国のボーンマスで開催された国際捕鯨委員会の結果について質問したいのですが、この会議において米国のキャリオ提案が採択をされたと聞いている。これによって我が国が進めておる調査捕鯨との関連性は一体どうなるのか、水産庁長官
  22. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 ことしのIWC年次会議に、我が国は先生今御指摘のございましたように調査捕獲の計画を提出したわけでございます。これに対ししてアメリカよりいわゆるキャリオ提案がなされまして、これはそれぞれ各国が提出しました調査捕獲の内容について一定の見地からチェックするということでございます。それを科学小委員会でやって、その科学小委員会で見解が一致しなかったものについては本会議にかけまして、本会議でそれぞれの加盟国政府が許可を発給することの適否について勧告をする、こういうことでございます。  本来、調査捕獲は条約八条に基づく各加盟国の権利でございます。その権利の行使を制約するような、非常にIWCの本来の条約の趣旨に反するような提案でございますが、遺憾ながらこれが可決されたわけでございまして、そのキャリオ提案に基づいて我が国の調査捕獲計画について延期の勧告がなされたわけでございます。もちろん、これは法律的に言えば調査捕獲の権利行使に影響を与えるものではございませんけれども、本年直ちに当初計画どおり調査捕獲を実施するかどうかにつきましてはなおいろいろ検討すべき問題点がございますので、本委員会の決議も踏まえ、広く関係者の意見を徴しまして方向を決めたい、かように考えておるわけでございます。
  23. 松田九郎

    松田(九)委員 この問題については、伝え聞くところ、玉沢委員長が団長としてこの国際会議に行かれて代議士諸君とともに大変お骨折りをいただいたと聞いておるが、今一応保留というか暫定的な措置として今説明のとおりになっておるようだけれども、今後もこの点については引き続いて努力してもらわなければいかぬが、その点についての長官としての考え方を聞いておきたい。
  24. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 先ほど申し上げましたように、本委員会の決議を踏まえて広く関係者の御意見を聞いて方向を決めたい、かように考えておりまして、大体七月中くらいにはその方向をはっきりさせたいと考えております。
  25. 松田九郎

    松田(九)委員 そこで、今から本論に入るわけですけれども、三十一年ぶりと言われる今回の政府生産者米価引き下げ五・九五%について、所管の大臣としてこの数字、適であるか不適であるか、残念であるか満足であるかを聞きたい。
  26. 加藤六月

    加藤国務大臣 適正な価格であると考えております。
  27. 松田九郎

    松田(九)委員 日ごろ農民代表をもって任じ、しかも私も尊敬を払っておる大臣の言葉とも思えぬな。これは適正な、ね……。  世の中に、価格引き下げるとか、人件費をあるいは給与を引き下げるといったら、仮に一%にせよ大変な大騒動だ。それがいろいろ論議はあったけれども九・八%がまかり通って、政府考え方のように宣伝をされる。さあ、それからすったもんだのあげくに六・五になったとかならぬとかという経過がある。とどのつまり政府諮問が五・九五。一体それは何に原因があるのですか。農民が何か悪いことをしたのかね。農民の生活が豊かになったという証拠があるのかね。公務員の給料が人勧によって一年間に二%、三%と上がっておる。物価が下がったという気配は全くない。昨年においても一・七%以上、平均一・五%ぐらい物価もどんどん上がっておる。農民だけが何で生活が豊かになっておるなどという議論が成り立つの。昔から農民は生かさず殺さずという言葉があるけれども、そういう政治の理念、方針は今は通用しないのですよ。おまえさんたちは減反をするぞ、はいと言って昨年も六十万ヘクタール、ことしは七十七万ヘクタール。そんなむちゃくちゃなことを次から次にやって、一体どこまで農民を痛めつければいいの。農業というのは言うまでもなく保護政策だ。これは先天的に計画生産もできないし、他の産業と違って労働効能率が違う。気候、風土に影響される。したがって、それぞれの国家の事情に応じて、アメリカでいうならば輸出については奨励金を出してどんどん過剰生産に対する対策を講じておる。タイなどについては、課徴金制度をことし廃止して輸出をどんどん進めておる。白夜の国と言われ、生産性の最も悪いスカンジナビアの国においては、膨大なる覆いをかけて自給自足体制をとっておる。一億二千万の大国民、そして狭い領土、すべて海にその輸送を頼らなければならない。主たるいわゆる農産物輸出国であるアメリカが、一朝有事の際に、大飢饉が起きた場合、チェルノブイリの原子炉発電のあの事故に見られるように何らかの事故があったとき、一体これは……(発言する者あり)何が質疑時間が五分間か。私は五十九分から始めたんじゃないか。  とにかく、お役所や農林大臣が今のようなやり方で、一体今後農林大臣として農民を指導していく自信があられるのか。もう農民は今でさえも離農なんだ。家を新築する、家を修理するなどという農家は一軒もない。田舎に行ってみなさいよ。あなたが知っているとおりだよ。家は新築されておる。全部サラリーマンかあるいは公務員の家ばかりだ。農民は家一軒建てるような力もなければ、あるいはローンを払うのに、あるいはまた高金利に悩んでおる。農業金融関係の利子さえ払い切れない。そういう状態のときに、三年連続豊作だったということか何か知らぬけれども、そういう理由でもって事もあろうに五・九五%に引き下げるなどということは私は言語道断だと思う。そんな愛情のない、思いやりのない政治で今後の日本列島の農政というのをやっていかれるかどうか。私は大臣の、日ごろあなたの持論及びあなたのいわゆる精神をよく知っておるつもりだけれども、何でこんなむちゃくちゃな数字をあなたがのんだのか、あるいは諮問をしたのか、私は不思議でならない。今これは適正な価格でございます、諮問でありますと、出した以上は大臣としてはそう言わざるを得ぬだろうけれども、あなたは本当にそう思っていますか。五・九五が今の日本列島における米価についての基本的ないわゆる適正な数字であるとお考えですか。私はそう思わない。あなたは自分の心を偽っておると思う。そういうことで今後の日本の食糧政策というものをやっていかれますか。  減反に次いでさらにパンチを食らわせて、減反だけでもことしは七十七万ヘクタール、その減収の分が、東北、北陸各県において、米どころにおいては百五十億から二百億になるのですよ。新潟県は減反のいわゆる被害だけでも百八十億から二百億ある。加えて、五・九五にすれば百億も直接自分の収入減となる県というものは三十数県に上るでしょう。合算をすれば六十二年における農家の手取りはそれこそ二百五十億から三百億近い大きな打撃を各県が受けるわけだ。いかに大型補正予算を組んで景気浮揚をやるとか末端の活性化をやるといったって、例えば基盤整備をやるといったって受益者負担が要るのでしょう。受益者負担を、今農民はそれさえも支弁できないから、もうどんなに政府が大型予算を組んだって自分たちはそれは御免こうむる、受け入れ切れない、そういうムードにあることは、大臣も選挙区が農村であるからよもやお忘れでないでしょう。  私は長崎だから、私のところは自給自足体制ができないぐらいの消費県だ。生産県ではない。だから、私は選挙目当てにこんなことを言っておるのじゃない。今の日本列島における農政がこれでいいかどうかということだ。食糧は自給自足体制でなければならぬ、そういう前提に立ってこの問題点を私は言及しておるわけです。今後の農政は一体どうなっていくのですか。私は、もっと勇断を持って大臣に頑張っていただきたい。五・九五%をあなたが適正な価格でございますと言う真意は本当なのか、残念だけれども客観情勢上この数字はやむを得なかった次第であるということなのか、堂々と胸を張って五・九五は正しかったという見解をあなたがお持ちかどうかをもう一回聞いておきたい。そうでなければ、日本の農民は今後安心して営農がやられぬ、農業をやることはできない。農民が農村から出たときに失業者があふれる。農民というのはコンピューターもいじり切らぬ、機械もいじり切らぬ、そろばん勘定もできない、帳簿もいじり切れない、筋肉労働者だ。そういう者が離農して一体どこに職があるか。失業者があふれるでしょう。失業対策を考えたことがありますか、大臣。私より造詣の深い大臣だ。よもやそんなことをしていないとは言わないだろう。お答え願いたい。
  28. 加藤六月

    加藤国務大臣 我が国のカロリー自給率あるいは穀物自給率等を考えた場合に、まさに憂うべき状況にあるわけでございます。そして、我が国は世界最大の農産物の輸入国であり、我が国農地の約二・六倍の農産物を輸入しておる国である。一つの厳しい、そして悲しい現実が今日我々の前にあるわけであります。  そういう中で、今日内外価格差の是正という問題もまた国民各界から起こってきておるところでございます。こういう内外の農政に対する厳しい現状を直視しながら、私たちは今後の農民、農家の皆さん方が将来に不安のないようにしていくためにはどういうことが必要であるかという政府としての一つの大命題があるわけでございます。私は、そういう点を踏まえ、米の自給は一〇〇%これを実現していくことと食管制度の基本は堅持していく、この二つの大きな問題をはっきり鮮明にしながら今後我が国の農政を展開していく。そして、水田稲作につきましては、御存じのような水田農業確立対策を決定いたしまして、水田の効能その他もろもろの問題に配慮しながらやっていかなくてはならぬ。そして、我が国農政全体は生産性向上の立ちおくれ、経営規模拡大の停滞という大きな苦しみも逆に抱えておるわけでございます。こういう点を配慮しながら、いわゆる食管法に従いまして生産者米価を決定していくというのが我が国の法治国としての一つの大きな点でございます。今後、この食管法並びに米価算定要素というものをいかに考慮していくかというのはこれからの我が国の一つの大きな重要な問題にはなると思います。  そして、今回の生産者米価に対する諮問案を決定するに当たりまして、私としては、そういったもろもろの事情を考えながら、先ほど来申し上げましたが、昨年の生産者米価決定の経緯並びにその後の米、食管問題における内外の議論あるいはまた内外価格差解消の声あるいは農政審の報告、こういったものを十分念頭に置き、さらに米の需給状況というもの等も考えながら決定していったわけでございます。  そして最後に、農村における雇用問題を考えたことがあるかという御意見もありました。真剣に考えております。政府並びに政府・党との連絡あるいは調整会議等の席におきまして、私は労働省並びに総理府に対しまして、今やここまで来たら、農村における雇用問題はまことに厳しいものがある、農村工業導入法その他いろいろな方策を考えてきたけれども、これに対しても限界がある。さらに週休二日、労働時間の短縮という一般労働者に対する処置を行っていく、これらがさらに我が国の農業の二種兼業農家化を促進するようなふうに進んでいっておるのではないか。農民に対する職業の再訓練あるいは雇用問題も政府を挙げて真剣に取り組んでもらうときが来ておる、こういった面を強く主張しておるところでございます。  今回の諮問案が農民の皆さん方にとってはまことに厳しいものであると私も認識はしております。しかし、この厳しいものをぜひ乗り越えて農民の皆さんに頑張ってもらいたい、そして日本の農業を守り、日本の国民に対する食糧の安定供給というものを維持してもらいたい、この念願、このいちずを込めて今回の諮問案を決定した次第でございます。
  29. 松田九郎

    松田(九)委員 時間が一分ばかり過ぎて質疑時間が終わったというメモを実は事務局からもらっているのだけれども、委員各位及び委員長にお願いしたいのですが、数分間ひとつ締めくくりをしておきたいと思いますからお許しを願います。  そこで、これは大臣の考えを聞いたけれども、委員会として後藤田官房長官あたり、これはいわゆる政府考え方だと思うから、やはり後藤田官房長官に必要だったら来てもらって、政府考え方を明確に聞くということも大事なことになってきておる、私はこのように思うわけです。というのは、我が党は、自民党の中でさえも百名をはるかに突破する皆さん方が、この一気がせいの拙速的な五・九五はまことに適切ではない、絶対米価引き下げてはならぬとは言わぬけれども、少なくとも関係者のコンセンサスあるいは理解、そうして今後のあり方、特に関連する農村関係の諸事業、そういうものについてどのように具体的に事業というものをやっていくかということ等の関連事業、そういうものについても我々は確かめたい、そしてさらに五%以下であれば我々は不本意ながら同意せざるを得ないという意味の決議もまた自民党内にはなされておる。その数実に百名を突破する議員がおるのに、恐らく野党の諸君は全部反対じゃないかと思う、そういう中に何で五・九五というとてつもない数字がまかり通って政府が責任を持って今後の日本列島農政をやり得ると言い得るのか、私はここらに問題点があると思う。  まだ私は時間があると思う。だからぜひひとつ委員長においてはこの間の空気を十分御検討いただいて、私はいま少しく突っ込んだ意見、そういう意見開陳の場所を設けていただきたい。納得いかない。  以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
  30. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 田中恒利君。
  31. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 初めに、委員長に別途理事会で御検討をいただきたいと思いますが、毎年この米価の問題で相当白熱をした議論をこれまでも展開をしてきたわけですが、私ども国会、農林水産委員会の意向がその年の米価になかなか反映しておるようには思えません。今、松田さんの方からもああいう意味の御提言があったわけですが、きょうの委員会はまた異常な事態で、世上、もう米価はほぼ決まった、こういう状況の中で持たれるわけであります。  当委員会としても、今後こういう重要な農村の問題については、いわゆる委員会の意向が米価審議会なり農林大臣に具体的に反映できるような方途をさまざまな形で一遍理事会で検討していただいてよろしく御高配をいただきますように私は冒頭にお願いをしておきたいと思います。よろしいですか。
  32. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 理事会で検討いたします。
  33. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 大臣、この審議が始まるまでに実は一昨日、私どもこの委員会をやるという予定であったわけですが、とうとう待ちぼうけを食ってやれませんでした。で、きょうになりました。米価審議会も御承知のように一日空転いたしました。これは諮問米価をめぐって自民党と政府との間の調整がつかなかったということのようでありますが、この事態について大臣はどういうお考えですか。
  34. 加藤六月

    加藤国務大臣 政府諮問案を決定するに際しまして一日繰り延べたことに際しまして、私は米審においておわびをいたした次第でございます。  また、ある面で申し上げますと米審無視論という声もございましたが、決してそうではございません。米審の存在を意識するがゆえにある面では一日空転につながったのではないかと考えておるところでございます。
  35. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 米審の皆さんは必ずしもそういうふうに受けとめていない。あらかじめ日程が決まって、そしてそのための準備が進められて、特にことしの米価算定については昨年の方式をそのまま守っていくというような政府・与党内の話し合いもできておったはずであります。そういう事態の中でこういうことが起きてくる、これは余りよろしいことじゃないのです。こういうことはもう二度と起こさない、こういうようにここでおっしゃられますか。
  36. 加藤六月

    加藤国務大臣 今後こういうことのないように十分配慮していきたいと考えております。
  37. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 先ほどお話がありましたように、諮問米価は五・九五%の大幅な引き下げ、三十一年ぶり、こういうことで私どもも非常に大きな衝撃を受けておりますし、このことの及ぼすこれからの農村の経済の動向というものについて、不況というものが特に農村地域に深刻でありますだけに大変憂慮しておるわけでありますが、この五・九五%の引き下げについて大臣は今適正である、こういう意味の御答弁をされたわけでありますが、なぜ適正であるのか、このことについてお答えをいただきたい。
  38. 加藤六月

    加藤国務大臣 今回の諮問案は、将来にわたって我が国の稲作の健全な発展を図り、国民の主食である米の安定供給を図っていくことができるという基本方針のもとに昨年の生産者米価決定の経緯及び、先ほどもお答えしましたが、その後の米、食管制度をめぐる内外の諸事情あるいは生産性の向上を図りつつ内外価格差の縮小に努める、あるいは昨年の農政審議会の報告の趣旨等を念頭に置いて決定したものでございますが、さらに具体的には潜在需給ギャップ拡大傾向に示される米需給の趨勢あるいは単取水準上昇投下労働時間の減少等現に進みつつある生産性の向上や生産コストの低減あるいは物価金利水準低下労賃上昇率鈍化等、最近の経済情勢等を的確に反映させたという点でございまして、本年産生産者米価については国民の理解と納得と支援が得られるような考えに立って算定したものでございます。
  39. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 この米価稲作農家のどの程度まで生産費をカバーすることができますか。
  40. 山田岸雄

    山田説明員 お答えいたします。  この米価でどの程度生産費をカバーする農家があるか、こういうふうな御質問であろうと思うのでございますが、六十二年産価格、今、諮問米価ということで私ども算定さしていただいておるわけでございますが、六十二年産生産費等まだはっきりいたしませんので、直接カバーする農家数等を推定することが困難でございますが、仮に、六十二年産生産費が六十一年産と同じだ、こういうふうに仮定いたしまして大まかな試算をいたしますと、第一次生産費では農家戸数の五一%、販売数量では七三%がカバーされるのではないだろうか。なお、第二次生産費におきましては農家戸数の一九%、販売数量の三七%がカバーされることになるのではないか、こういうふうに考えております。  また、こうした生産費と買い入れ価格、こういうもので対峙さしてみることにつきましては、政府米の買い入れ価格水準ということで一応今も比較し申し上げたわけでございますけれども、御案内のように農家が販売しますお米の中には政府米とほぼ同じぐらいの、今四四%でございますが自主流通米もあるわけでございまして、この価格水準政府米の価格水準よりは若干高い水準にあるというふうなこともございますので、先ほど申し上げましたカバーする率は、実態といたしましては少し上の方に上がるのではないか、このように考えられるわけでございます。
  41. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 第二次生産費稲作生産農家の一九%、そして販売量の三七%しか生産費をカバーできない。このことは、これまでのカバーの水準からいくと一番厳しいですね。そして、この十年来の私どもの数字の傾向を見ると、たしか五十年代にはほぼ決定米価というものが七、八〇%の稲作農家生産費をカバーしておったと思うのです。それが毎年毎年急激にこういう形で落ち込んできております。これは、豊作と不況、そういう大きな出来事ごとに政府生産費所得補償方式なるものの中身をいじり回しておる、そのことによって米価が操作されておるわけですね。そして、結局二割を割る稲作農家しか生産費をカバーできない、こういう状態になっておるわけです。そして、たしか五十年産米所得よりも今の稲作所得は十アール当たり減っておるはずであります。つまり、米をつくっても昔よりもずっと悪くなってきておる、こういうことなんですよ。これで稲作の将来像というものが展望できるのか、米価を下げれば地価が下がる、こんなことが短絡的に今の日本の農村の中で一体通用すると思っておるのか、こういう点を明らかにしていただきたい。米価を下げれば農業の新しい展望が開ける、こういう立場に立って今の米価政策というものは進められておると私は思うのですが、果たしてそうなのかどうか、ここが分かれ目なんですよ。  今度の価格政策は米価だけじゃありませんね。ことしに入ってからも一連の農産物価格をずたずた切ってきた、引き下げてきた、そしてこの米価で総仕上げをしてくる。そして、来年もまたそういう方向に走ろうとしておる。つまり、価格政策というものを放棄してしまっておるわけです。しかし、これで日本の農業というものが、農業所得というものが維持されるのかどうか。そんなに甘い現実ではない。私は、ここで農林省のお役人の皆さんとひざを交えて個人的に話せばあなた方の理論もわからぬことない面ありますよ。ありますが、田舎に帰って農村の田んぼに立ったら、やっぱり百姓はどうしたらいいのかとみんなもう真剣になって、真剣というよりはあきらめておるのですよ。今度の減反とこの米価影響というのは日本の三百七、八十万戸の稲作農家については決定的なダメージを与えますよ。これで果たして日本の農業の再建や稲作農家の立て直しができるかどうか、ここのところであります。ここのところについて、私は大臣がどういうふうにお考えになっておるか明確にお示しをいただきたいと思うのです。
  42. 加藤六月

    加藤国務大臣 将来にわたって我が国稲作の健全な発展を図っていく指針というのは、各界、各方面からいただいておるわけでございますけれども、昨年十一月にいただきました農政審の報告についてはこのように触れておられます。「今後の米価政策については、需給のすう勢をより的確に反映させるとともに、今後の我が国水稲作担い手の育成と生産性向上を的確に反映した生産者米価水準の実現を目指した新しい運用方向を志向すべきである。」このように指摘されておるところでございますが、今後の米価政策の適切な運用とあわせて生産政策、構造政策等各般の政策を積極的に展開しまして、二十一世紀に向けて我が国の稲作をより力強く、足腰の強いものにしていく考えでございます。  そうして、私は、意欲ある農家、農民あるいは中核農家というものは、米価政策が税金の固まりであるとか保護の固まりであるということを言われるのを何よりも憂え、そして何よりも関係する人々が悲しんでおるということをも配慮していかなくてはならぬと考えております。
  43. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 言葉ではきれいにさっとそういう御答弁をしばしばいただいておるのですけれども、なかなかそうなってないというのが現実の姿じゃありませんか。例えば米の問題に関していえば、ともかく過剰、あなたの頭の中には三度目の異常過剰を生み出して何兆円とまた国の金をぶち込むことは断る、これは何としてもせきとめなければいかぬ、こういうかたい決意がありますね、ことしの米価決定に当たって食糧庁を中心とした皆さん方の頭の中には。しかし、そのためには確かに大幅な減反もやった、米価もこういう状態で落とした、しかしそれだけでは事は済まぬ。つまり過剰を生み出したもの、これは食わないということですから、食わす、米の消費拡大、こういうことを今まで何遍も言ってきたでしょう。我々も言った。あなた方も答弁をしてきた。しかし現実問題として米の消費拡大というのは思うように伸びていない。特にそれは学校給食というところに焦点を置いてやってきた。確かに農水省と文部省との間でいろいろな御協議もされて、計画もできて、例えば昭和六十年代は週三日学校給食をやるぞ、こういう計画はあったけれども、できてないじゃないですか。給食の予算だってどんどん減っておるじゃありませんか。それが現実ですよ。基盤整備だってそうじゃありませんか。基盤整備をやる、やると言っておるけれども、実は基盤整備をやれないような状況が末端にはできておるのですよ。そういう実態をわかってもらわないと、いわゆるきれいな言葉での答弁では事は済まない、こういうことを私は申し上げたいわけなんですよ。  そういう意味では、今担い手の養成ということを言われたけれども、例えば米価というものは、農政審答申のあの報告書を読む限りにおいては特に担い手対象とした米価をつくれ。かつて農林水産省は――かつてじゃない、この米価の始まるちょっと前ごろの一つの世論形成の手段かどうか知りませんが、五町規模農家とか十町とか、こういうものは一つの単位というげな情報が流れたことがありますが、しかしそんなものがそう簡単にできるような状況ではない、こういうことを指摘しておきたいわけでありますが、これからの米価の政策決定、価格政策に当たって、担い手というものを対象とした方向づけをこれからさらに強く進めていく、こういう考えですか。
  44. 加藤六月

    加藤国務大臣 そのとおりでございまして、農家が高齢化し、あるいはさらに過疎化し、後継者難という現状を見るときに、この担い手、中核農家、その中で意欲ある農家というものが生産性を向上し、経営規模拡大してもらうということが、我が国における農業の大きな希望の星になってくると私は考えております。
  45. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 もう一つ聞きますが、来年の米価算定方式というのはことしのこの形でいくのか、担い手などの要素がさらに強まった新しい算定方式で考えていくのか、その辺はどうですか。
  46. 加藤六月

    加藤国務大臣 先生御存じのように、米審におきまして、昭和五十九年の小委員会において米価算定基準、算定要素の一つの答申をいただきました。また、本年五月、米審懇談会を開きまして、算定に対するいろいろな考え方の御意見を承りました。そして、昨日行われました初日目の米価審議会におきまして、委員の先生方から中核農家生産性向上に一生懸命励んでいる農家等の努力が米価算定に反映されるような方向を考えるべきではないかというような御意見も出ております。もちろん、今後米審の意見をいろいろ承り、来年の生産者米価決定までに米審の方でそういう算定基準、算定要素の御意見等が確立されるならば、それに従っていきたいと考えておるところでございます。
  47. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 米価審議会というのが非常に都合のいい隠れみののような立場に立っておるような気がしてならぬわけですが、それにしても、米審の審議を待つという姿勢を大臣としてはとらざるを得ないと思いますが、しかし、きょうの農業新聞を見ると、六十三年産米価については政府・自民党の間でことしと同じような方法でやるという覚書が既にもうなされておる、こういう報道がなされておるのですが、これは事実ですか。
  48. 加藤六月

    加藤国務大臣 昨日の参議院農水委員会においてそういう御質問がございました。まず覚書があるかないかという御質問から来ました。私は、覚書を交わすことには合意しておる、こうお答えしました。そうしたらどういう内容だという御質問がございましたから、昨年の覚書における昭和六十二年産米価の算定方式は現行方式どおりとするというのが、昭和六十三年というように二を三に書きかえるようになるでしょう、それから同じくその際に、伊東政調会長メモというのが昨年ございまして、そのときになお米価審議会において算定方式等が変わればそれをも含むというのがありましたが、それを同じく六十二年というのを六十三年というように書きかえる覚書が交わされるだろうと思う、ただし、まだ私のところに回ってきておりません、こういう御説明をしておいたところでございます。
  49. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 そうしたら、大臣はこういう覚書を交わすということを了解しておるということなんですね。
  50. 加藤六月

    加藤国務大臣 了解いたしております。  なお、昨日、米審が開かれたのでありますが、今回の五・九五に対する算定要素の変更に対しては米審委員の先生方から相当厳しい御意見が出てきておるということもつけ加えて申させていただきます。
  51. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 今までの米価の決定を見れば、大体現実的に、政府・与党で決められたことは実際問題としてほぼそういう形で進んでおると私は思うのですよ。ですから、来年の生産者米価生産費所得補償方式、その生産費所得補償方式算定要素については、先ほど御説明があったようにことしも要素の改善は相当やっておるわけでありますが、そういう形で行われる、こういうふうに理解してよろしいですか。
  52. 加藤六月

    加藤国務大臣 食管法がある限り、それに、法的根拠に従ってやっていくわけでございます。
  53. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 食管法は再生産を償い、所得を補償する、こういう建前ですからね。ただ、その中身の内容とり方については、これはさまざまな形になっておるわけでありまして、例えば私どもから言わせれば、滞在需給ギャップ反映必要量比率方式、こういうのをあなた方の方は採用しておる。これがことしは三%程度ですか、引き下げ幅からいえば三%ぐらいになっておりますね。それからいえば七九ですね、今説明を受けた。七九だから二一の農家というのは見れぬということになるわけですね。そういう算定方式をとられましたね。これは五十七年からとりましたね。これなどは私どもとしてはわからないというか、意味がないように思うのですよね。その一つは、潜在生産量というものが現実に架空のものであるということ。潜在生産力というもの、これは確定されたものじゃない。定着が幾らであるとか、いろいろ大まかなマイナスをやっておるけれども、実際に稲作潜在生産力というのはどれほどあるかということははっきりしてない、これが一つ。  それから、今日既に米はあなたのところの計画に基づいて大幅な減反、ととしは七十七万ヘクタール、どれだけの減反をやっておるわけでありますから、そこで需給調整はできておる。できておるのにさらに需給ギャップ方式なるものを採用して数%の生産者米価引き下げを図る。しかも、ことしはその上に百五十万トンの政府在庫を超した米は農協あるいは農民にこれを管理させる、こういう方式ができたわけでしょう。この経費は政府は一銭も見ない。一俵当たり六十四円ですか、これが農協なり農民の負担になる、こういうことになっておるわけでありますから、私はそういう必要性はなくなっておる、こういうふうに思うのですよ。それでもなおこの潜在需給ギャップ反映必要量比率方式といったような難しい算式をつくって、実質やはり米価引き下げをやっていらっしゃるわけですね。こんなものはのけるべきだ、こう思うのですね。いかがですか。
  54. 山田岸雄

    山田説明員 潜在需給ギャップ反映必要量比率方式でございますが、これにつきましては、現在におきますところの潜在需給ギャップがだんだん拡大していっておる、こういった実態を価格にどのように反映させるかということで、いろいろ米価審議会算定委員会におきましても御協議いただきまして、先ほど申し上げましたような五十九年の五月の小委員会におきますところの報告をいただいたわけでございますが、潜在需給ギャップを反映させる一つの考え方といたしましては、生産費対象農家とり方についてやっていくということが妥当ではないだろうか、その方式につきましては現在採用しておるというのが妥当な方式ではないかという御指摘もいただいておるわけでございまして、何らかの方法で需給事情ということを反映させなければならない。確かに先生御指摘のように、現在七十七万ヘクタールの生産調整をやっていただいておりまして、それで需給は一応均衡される方向に計画的にはなっておりまして、その方向で生産者の方々からの主体的な御努力なり御協力もいただいてやっておるわけでございますが、なおその実施に当たりましては巨額の財政負担によりまして初めて需給均衡が図られておる、こういう実態にも相なるわけでございます。  一部には価格によって直接需給均衡を図るべきじゃないか、こういうふうな御意見もあるわけでございますけれども、価格で直接需給均衡化を志向いたしますと、価格水準は相当下落するというふうなことにもなりますし、それによっては稲作担い手、こういったものに直接大きな打撃を与えることにもなるのではないか、こうも考えられるわけでございますので、構造的な需給ギャップを比較的安定的に反映させる手法といたしまして潜在需給ギャップ反映必要量比率方式、こういうものを今採用させていただいておるようなわけでございまして、国民が必要とする米の生産につきましては、生産費の高い農家も低い農家もすべて含まれた全販売農家対象とするのではなく、その年の生産予定量につきましてはできるだけ生産性の高い農家に担ってもらおうとの観点に立ちまして、私ども今のような比率方式を採用させていただいておるわけでございますので、どうか御理解いただきたいと思います。
  55. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 今、次長さん、おっしゃったようなことをあなたのところから出しておる資料にるる書いておりますね。私も何遍も読ましてもらいましたが、しかし今も言われたが、米がだぶついておるから直接価格でやれば大幅に下がるなんかというようなことを堂々と言われたり書かれたりすることは問題があると思うんだ。それこそさっき大臣言われたように、食糧管理制度というもので価格は決定しておるわけですから、食糧管理制度の中には市場の需要供給の関係米価が決まるなんかというのはどこにも書いてないのですから、米価はこういうふうに決まっていくという第三条第二項の規定に基づいてなされておるわけですからね。そういう文章を正式の農林水産省の説明書の中にるるこう書かれておるというところも私は何か意図的なものを感ぜざるを得ない。  ともかく、価格政策を大きく後退をさせてこの自立農家、中核農家というものをやる、こう言っておるのだが、しかし自立農家、中核農家というのはもう農業基本法以来あなたら言い続けてきたんだ。できてないんじゃないですか。できてないんでしょう。そういう意味で農政の転換を言っておるのですよ。できつつあればいいですよ。しかし、これはどう見ても自立農家や――言葉は変えておりますよ、中核農家と言っておるが、これは見通しがない、今見ればこういう現状ですよ。  ですから、私どもはそういうもので取り上げるべきではない、こういうふうに思っておるのです。特に、今言われた減反七十七万ヘクタールの三百六十五万トンですか、これが今与えておる影響というのは非常に大きいのですよ。しかも、これは私どもの地域もほとんど全部そうですが、全国全部そうだと思うが、米を売らない農家、つまり飯米農家までやらなきゃいけないというふうな実態になっておるのですね。これ大臣御承知ですか。
  56. 加藤六月

    加藤国務大臣 存じております。
  57. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 それで、どう思われますか。いたし方ないのですか。
  58. 浜口義曠

    ○浜口説明員 先生お話しの飯米農家に対する水田農業確立対策の問題でございます。飯米農家のお立場に立って考えますと、米をすべて百家消費をしておりまして他人に迷惑をかけない、飯米農家に対して転作面積を配分することはならないんじゃないかという御意見、そういうお気持ちは、その立場に立ちますれば理解できるところであります。一方、先ほどから御議論がありますように、稲作の中核農家からは、将来に向かって日本の農業の稲作を担うものといたしまして、生産性を上げていくためには転作面積をできるだけ少なくすべきであるという強い御意見が出されているところでもあります。  現在の米の需給ギャップといった状態を考えていきます場合に、米の需給均衡確保を図るためには稲作生産者全体の問題として幅広く稲作生産に散り組んでいただくことがどうしても必要であります。したがいまして、飯米農家におきましても、飯米農家の方々を含む地域において十分御議論を賜って応分の負担をしていただき、今まで以上に自主的、積極的に水田農業確立対策といった現在の喫緊の課題に取り組んでもらうことが私どもといたしましては必要だというふうに考えているところでございます。
  59. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 米の生産量全体の量を縮小するために、米を自分のうちだけで食べる零細な農家にまで米をつくらせないなんというようなことをだれも言う権利もない。これはまたそんな考えで米政策というものを打ち立てるべきではないと思うのですよ。これは基本的な憲法の問題につながるし、人権の問題につながる。本来作付自由というのは基本なんですからね。しかし、お互い農村で生きて米をつくっている者として、いろいろありますよ。ありますが、だからそこは話し合いでということなんで、あなた方の方は話し合いで決まったことだということで逃げられるだろうが、法律的にも、いろいろな規則、規約からいってこんなことはできるはずはないのですよ。ところが全国的にこれはできておる。そして自分たちで米を買わなければいけないという状況になっておる。これはやはり間違っていると私は思う。これは直してもらう必要があると思いますよ。こういうことはさせるべきではないと思いますよ。させていいのですか。
  60. 浜口義曠

    ○浜口説明員 ただいまお話し申し上げましたように、飯米農家のお気持ちの関係から、自分がやはりつくっていきたいという気持ちは十分わかるわけでございますが、一つは地域におきまして、飯米農家であるから今から水田農業確立対策といったものにおいても例外的にいくべきだというふうに先験的に思っていただきますと、現在の需給ギャップの方から、その点については直に地域の専業的な稲作農家の方に響くわけでございます。そういう意味で先生今御指摘のとおり、地域地域におきます話し合いを通じまして、その中におきます。あるべき水田農業の確立の仕方、そういう意味で私ども従来の水田農業再編対策といったようなことから方向を変えまして、水田とあるいは転作と、そういったようなものをにらみながら、その地域地域におきます水田農業のあるべき姿を希求していただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。  そういう意味におきまして、確かに飯米農家の方々につきましていろいろな問題点というものがあることは十分承知しておりますけれども、現在日本の農業が直面しております問題の解決のために、話し合いを通じて水田農業の確立を皆さんと一緒に図っていただきたい、そういうふうに考えるところでございます。
  61. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 これは納得できません。もう少し細かく詰めなければいけませんが、時間がありません。そういう形にまで生産調整というか減反というものを押しつけておりながら、米価を決めるときにはほとんど大半の農家価格水準対象から外れざるを得ないというような米価が決まっていく、こういう内部矛盾をこの米価決定の中には示しておるということだけ私は一つつけ加えておきたいと思います。  あと五分でありますから、消費者米価の問題と農産物の開放問題と、二つだけ私の方から一括して御質問させてもらいますが、消費者米価については先ほど御質問があって、米審などの議論を踏まえながらというお答えがありましたが、担当大臣として今の立場から言えばそういうことでありましょうが、しかし、今までの加藤大臣のこの問題についての御意向は、私ども仄聞するところなかなか積極的であった、こういうふうに漏れ承っておるし、訪ソなどの際の報道は二度やるんだ、こういう大変思い切った報道も国内には流されて、どういうことかとみんな心配したわけですね。事実、こういう米価になっていくと、正直言ってこれは逆ざやどころか順ざやということになるし、御承知のように千円上回るような差が出るわけでありますから、これはこのままにしておったら米の不正規流通をふやしていくということになるので、一番心配されておる食管に穴があく、こういう心配はあるわけですから、これはやはり消費者米価生産者米価引き下げに伴って当然下げる、こういう方向が出ないと理屈に合わぬ、こう思うのですよ、私は。こういうことについて大臣はどういうふうにお考えになるか。  それからいま一つ、これも大きな問題でありますけれども、やはりこの問題の背景には日本農業をめぐる非常に大きな外圧というか、外国の声が米価そのものにも反映しておる。きょうの委員会のいろいろな政府の御答弁を聞いてもそういう節節があちこちに出ておるわけでありますね。ですから、米についてはいわゆる二国間協議もやらない、それから自由化、米の輸入はやらない、こういうことはしばしば言明されておるわけでありますから、今度もそういう姿勢で臨むというふうに閣議でも大体方針を決められたというふうに聞いておりますから、もう一遍再確認をさせていただきたい。  同時に、この九月に十二品目についてのガットの裁定もなされる、こういうふうに聞いておる。引き続いてオレンジ、牛肉の自由化交渉も始まる、こういうふうに聞いておるわけでありますが、これらについてはやはり我々がこれまで主張したとおり、輸入も輸入枠の拡大も今日の段階でやれない、こういうふうに私どもは理解をいたしておりますが、大臣の方から改めてこの問題についての確たる御所信のほどを承っておきたいと思います。
  62. 加藤六月

    加藤国務大臣 ただいまは米審に対しまして諮問いたしております生産者米価問題で精いっぱいでございます。また昨日、米審におきまして売買逆ざやあるいはコスト道ざやの資料要求、あるいは御意見等も出てきておりますが、生産者米価の答申をいただき、それを適正に決定した後、考えるべき問題である。また、法規上は生産者米価消費者米価は関連するようには何らなっていないというのは田中委員御存じのとおりでございますけれども、私としましては、我が国の農政、あるいは特に米という問題について国民に理解し納得し支援していただくという立場から考えた場合、そういうことが念頭にないと言えばうそになる、こう思うわけでございます。  それから、今週の火曜日の閣議におきまして私は発言を求めまして、米の自給方針は断固貫いていく、そうして食管制度の根幹は守っていくということを発言いたしまして、複数の閣僚から激励を受け、他にどなたも異議を唱える方はなかったという認識を持っておるわけでございます。したがって、二国間協議に対しては絶対応ずることはいたしません。  それから、十二品目は御指摘のとおりでございまして、ただいまガットという国際正式機関においてパネルが設けられ、過去二回審議をされておるところでございまして、この動向に十分注意しながらも二国間協議というもののパイプを切らずにやっていかなくてはならない、私はこう考えております。  また、牛肉、オレンジにつきましては来年三月末に期限が切れるわけでございますので、ことしのある時期におきまして多国間と協議の開始をいたしたいと考えておるところでございます。  十二品目といい、あるいは牛肉、オレンジといい自由化を求める声がありますけれども、我が国の実情をよく説明し、納得してもらう努力をさらにさらに深めていきたいと考えておるところでございます。
  63. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 終わりますが、一言だけ大臣に申し上げておきます。自由化はだめなんですけれども、私どもこの委員会では枠の拡大もこれ以上は難しい、こういう申し合わせをいたしておりますから、念のために申し上げておきます。
  64. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 武田一夫君。
  65. 武田一夫

    ○武田委員 大臣に尋ねます。  大臣も随分農業に携わりまして時間も経過しておりますから、昨年来ずっといろんな農業事情も御存じだと思います。  今の特に稲作農家は三重、四重苦で大変な苦労をしている。減反に随分協力をしながらいつ減反がとまるのかわからぬ。ことしはまた七十七万ヘクタールと、宮城県などのいわゆる優秀な米をつくる地帯でさえも平均して一七%、全国的には二七、八%。こういう中で大変な減収でございます。これは地域経済に与える影響がまことに大きい。そういう苦労がさっぱり実らぬ。何のために苦労しているのかわからぬ。その中にあって米価の抑制、そして今回は余りにも大幅な引き下げ、これで二重の苦しみ。所得の、収入の目減りをどうやって、どこでカバーしたらいいのかという悩みまでそれに付随してくる。さらに一向に米の消費の減退はとまらない。一生懸命努力していると言うけれども、やはり減っている。減反しても消費が進まなければまたその分ふえる。そこに生産性向上を図れ、一生懸命努力して米をたくさんとると、これはまたそのためにかえって農家の方の収入が減ってくる。そういう地域を抱えている経済は今どうかというと、円高不況によって雇用の問題でも非常に失業者等が出ている。特に兼業で農外所得で辛うじて生活を支えている方々はもろに打撃を受けている。パートの皆さん方も解雇される。レイオフ等々で企業にいた皆さんも首を切られて帰ってくる。収入はどこからも入ってこないというような三重、四重の苦。  こういう環境を考えたときに、たとえいかなる理由があろうとも今回のような大幅な引き下げということは、特に東北、北海道あるいは北陸という米を中心として一生懸命頑張る地域ほど打撃が大きいことを考えますと、五・九五というのは余りにも、日本の稲作農業を壊滅的な方向へ追いやる、そういう米価になるのではないかと私は思うのですが、大臣はいかがお考えでございますか。
  66. 加藤六月

    加藤国務大臣 今回の諮問案を決定するに当たった経緯あるいは考え方等は既にたびたび申したわけでございますけれども、一言で申し上げますと、日本農業が生き残れるか全滅するかというぎりぎりの選択の中で何としても生き残らせなくてはならない、そして米作農家の皆さん方が意欲を持って、将来への不安を取り除いてもらわなくてはならないというぎりぎりの線を選んだのが今回の諮問であるということを冒頭申し上げておくわけでございます。  先生御指摘のような二重苦、三重苦ということは、今回各界各方面から諮問案を決めるに対して承った意見の中で最も大きいものでありました。さらに、地域経済に与える打撃の大きさという問題を含んでの大きな問題であったことを私はよく認識しております。しかし、そういう中で、最近の米をめぐる状況について見ますと、米の潜在的な需給ギャップというものは拡大する方向にあります。また、水田の生産性向上は立ちおくれております。したがいまして、本年度から、生産者団体の主体的責任を持った取り組みを基礎に、水田農業の体質強化や需要の動向に応じた米の計画生産を図る水田農業確立対策を実施しております。こういったことを考えながら水田農業に明るい展望を開いていくためには、水田農業確立対策の着実かつ的確な推進が必要不可欠であることにつきましては武田委員も御存じのとおりだと思います。また、この対策の推進とあわせまして、生産性が高く足腰の強い稲作を確立していく必要があるわけでございます。このためには生産者がみずから努力するとともに、国としても各般の施策を積極的に推進していくことが重要であると考えております。そして、稲作について見ましても、徐々に経営規模生産規模拡大が進み、規模の大きい層ほど高い生産性を実現しておるところでございます。  こうした動きを助長しまして、本格的な稲作農業を確立するため、生産の基礎となる土地基盤の整備、賃貸借や作業受託の促進、高生産稲作営農体系確立のための新技術の開発普及というようなものを総合的に推進していく必要があると考えておるところでございます。
  67. 武田一夫

    ○武田委員 るる説明されたのですが、それでは、その責任が農家の皆さんにあるのかと反論せざるを得ないと思うのであります。やはり国の農政のいわゆる失政と言われてもしようがない。農家自体は一生懸命の努力をしている。減反といえば減反に協力して、努力をして、大体どこでも目標面積以上の減反をしていますよ。毎回打ち出されたらそれ以上の、何%かは余分にやっているのですよ。そういう中で奨励金がカットされるなどということも出てくる。ことしはまた備蓄米の調整なども努力をしよう、こういうやさきです。水田農業確立対策が六カ年にわたって行われるわけですが、これが本当に日本の稲作農業を守り、発展させていけるかどうかのかぎは、ことしの米価の取り組み、国の姿勢によって間違いなく決まりますよ。もう減反はやめた、自分の食う分だけつくればいい、そういう投げやりな空気さえも感じます。  田んぼというのは、日本のあらゆる資産、財産の中では最大の資産である。先ほど話があったように水の問題あるいは緑の問題、国土保全、環境保全等々あらゆる問題を考えたら、その価値というのは金額で数えたら一兆、二兆などというものではない。そういうものがどんどん失われていき、それをしっかり守ろうとする生産農家、特に若い方々が離れていってもいいのか。そこもまた国のねらいなのか。外国から安く入れろと言われているその米を入れるために、そうさせる方向への誘導策としての今回の米価であり、水田農業の確立対策なのかと言わざるを得ない。私は、そういうことを言わせるような農政というのは問題だと思う。  今、三十一年ぶりの米価引き下げということは、自信喪失症候群という重い病気を農村に残した、こう言わしめているのです。どう思いますか、大臣
  68. 加藤六月

    加藤国務大臣 米といえども消費者にとっては商品であると私は考えております。今まで米に対する認識は、上がることはあっても下がることはないという一つの問題が生産者の間にあったと思うわけでございます。しかし、消費者にとっては、米を食べるか、パンを食べるか、うどんを食べるかといういろいろな選択も生まれてきておるわけでありますから、商品の一つであります。  そこで、先ほど来申し上げておりますように今回初めての下げということで、農民の皆さん方に与える打撃はおっしゃるとおり大きいと思います。しかし、私は、米作にいそしみ、農業に生き、農業に死のうという意気込みの皆さん方にこの際奮起していただいて生産性の向上に努め、経営規模拡大に頑張っていただきまして、こういう事態を切り抜けていただくことを心から期待し、また政府としては、今も申し上げましたようにそれに対してあらゆる手段、方法を講じて応援していきたい、こう思うわけでございます。そういう点を総括して内外とも厳しい状態にあるという表現をし、そしてその中で、先ほど来お答えしておりますように何とかして日本農業を守り、国民に安定的に国民の主食である米を供給していきたいという一念であるということをぜひ御理解いただき、中堅農家の皆さん方がその意欲を失わないことを私は心からこいねがっております。
  69. 武田一夫

    ○武田委員 奮起せよといったって、奮起すればそれじゃ次に新しい希望がある、そういうものが目の前にあるかといえば、今のところありますか。何かあったら示してもらいたい。そして目減りした分の補償はどういう形でやればいいんだという一つの具体的なやり方を農家の方々に示してください。宮城県の場合などは大体五・九五%で九十億です。大変なものですよ、これは。その分、農家の手取りが少なくなる。それはどこでそれを補えばいいのか、それをひとつ示してもらいたい。減反でまた減る分、どうすればいいのか具体的なことをひとつ示してもらいたい。大臣は青空交渉のときに、農村のいわゆる地域経済に与える影響は非常に大きい、これはわかっている、減反とか米価引き下げで相当地域経済が影響を受ける、そういうのは十分認識しているから補正予算で地方の活性化を図ると答えているのだ。これは活性化を図る、どういうところで活性化を図るのか、それが即農家の生活にプラスとしてまたいい方向に向いてくるというそういう具体的なものがあれば、まず簡潔にひとつ示してほしい、こう思います。
  70. 加藤六月

    加藤国務大臣 今回の諮問案を決定する前にも各界各方面の御意見を随分承ったわけでございますが、ただいま先生御指摘のように、各県別の手取りが減るという御議論等も随分ありました。私もそこら辺は随分心配いたしております。  例えば宮城県は、農家所得が一戸当たり六百八十九万八千円でございます。稲作所得推計は九十四万二千円でございます。比率は一三・七%になっております。     〔委員長退席、保利委員長代理着席〕そして、そういう過程で農業総生産額で見ますと、おっしゃるように三千四百九十九億の中に占める米の比率は二千九十三億で、五九・七%になっております。したがって三割の、まあ宮城県は三割ではございませんが、三割の減反並びに今回の引き下げ価格において我が県はこれほどの打撃がある、こういう御説明がありました。それに対して私もいろいろ申してきたわけでございますが、一つは水田農業確立対策推進するための補償金は計算されておりますかということ、二番目はそれによって他の農作物をおつくりになりますと、その販売額というのは計算されておりますかという問題等も一対一のときには逆に御質問申し上げ、そこら辺の計算を一度してみてくださいというお願いもしておいたわけでございます。  そしてまた、ある面で申し上げますと、政府としては緊急経済対策並びにそれに伴って来るべき臨時国会で提出します補正予算におきまして地域の活性化ということを大いに図り、そしてその中においても農業基盤の整備あるいはまた非公共的なものではございますけれどもライスセンターあるいはカントリーエレベーターといったものも大いにふやすような努力をしておりますということの御説明も申し上げ、さらには世界的趨勢でありますが、先生御存じのデカップリングの理論が国際的に今大激論を交わしておるところであります。農家生産物による価格政策というものと農家所得というもの、今まではカップルに考えておったけれども、これからは分けて考えなくてはいけない時代に世界的趨勢として来ております。OECDにおきましてもベネチア・サミットにおきましても、そういう議論が出てきたのは御存じのとおりだろうと思います。こういう説明をいたしたわけでございますが、それにしましても今回の諮問米価というものは農民の皆さん方に大変厳しい数字になるということは、もう十二分に存じております。したがいまして、それをより打撃を少なくしていくためのあらゆる方法、努力を重ねていかなくてはならない、強く心に期して、農林省挙げてこの問題に取り組もうと決意をしておるところでございます。
  71. 武田一夫

    ○武田委員 いろいろ長々と答弁していただいたのですが、それじゃ農村の皆さん方は、そういう対応を十分にやってもらえるという期待をしていいのですね、大臣
  72. 加藤六月

    加藤国務大臣 関連事業におきまして、あるいはまた地域の活性化対策におきましてあらゆる方法を講じてまいりたいと決意を固めており、実行する所存でございます。
  73. 武田一夫

    ○武田委員 例えば先日も古川という、これはササニシキの最大の本場でありますが、そこの方々が農村総合整備モデル事業について、何とかこれは早日に対応してくれ。聞いてみましたら、五十八年度から着工、六十四年で完了をめどに総事業大体十六億六千万の計画でやってきたのですが、いまだ一二、三%ですよ、一例を申し上げますと。ですから、例えば農道整備にしたって一一・四%。集落道路整備でようやく五一%。それから集落防災安全施設設備なんというのは全く五・六%。これで果たして補正の中で、またこれから国会が開かれる中でこういうものが本当にやってもらえるのかという切実な要望、これは一例です。たくさんあります。大臣が今決意もかたく実行するという、こういうことを私は大いに期待して、それを結局は農村のこうした不況と大変な沈滞の中に活性化を与える一つのよすがにぜひしてもらいたい。これは約束をしていただいて実行してもらわなければならぬと思うのです。  そこで、時間も余りないものですから最後に一つ。  要するに、生産費が下がったからということで米価を下げるという短絡的な考え方が非常に問題だと私は思うのです。現実問題として、農家生産費が下がったといっても所得の向上に一向につながってない。例えば労働時間が昭和四十年十アール当たり百四十一時間、六十年には五十七時間。ところがその所得の絶対額を見ますと、五十九年が九万一千五百三十四円、六十年が八万三百八十八円、一万円近く減っている。これは絶対問題です。ですから要するに単位当たり投下労働は減っても規模拡大が遅々として進まない等々総体としての所得減少しておる。サラリーマンが週休二日になったからといって給料が大幅に下がるというケースなんかありませんよね。それなのに、なぜ農家がそういう努力をして所得が下がらなくちゃいけないのか。全くナンセンスです。農家の皆さん方はその怒りのやり場がない。五・九五%の引き下げの中にそういうものを今回ちょっと加味したようであったけれども、それは農家の、農民の心を本当に理解したそういう中身ではなかったと思う。そういう意味で、浮いた労働力で規模拡大、経営の多角化、複合化など農業内の就業率が高められるような努力をもっともっとしなくてはならない。余った労働力によっていかにして新しい所得を生み出すかという構造政策が必要ではないかと思う。  大臣は、国土庁長官をなされた経験がありましたね。だから三全総、四全総というのは非常に関心を持っていると思うのです。四全総が策定されましたね。それが出ました。これを見ますと、例えば担い手の問題がさっき出ていましたが、担い生育成ということがちょこっとあります。中核農家の育成ということをうたっている、これが大事だと、私もそれは認めます。それでは生産性向上を図りながら、規模拡大化を図りながら、構造政策を進めていく中にあって、それを一生懸命そのとおりにやろうとする農家の方々の中で農業を離れなければならない方々が出てくるはずですね。農村をあるいは離れなければならない、土地は放さないかもしらぬけれども農業というものから身を引かざるを得ないという方々が出てくるわけです。そういう農家の方々に対する雇用、受け入れの態勢というものはどういうふうにするんだという具体的なことはここに一つもない。いわゆる産業構造としての農村における雇用、産業という産業構造レベルの話が一つもないというのは問題じやないですか。これで水田農業確立対策を進めようといったってとてもとても進まないと私は思う。  今回のこの四全総を見た場合、失望の限りでありますが、大臣はこの点をどう考えているのか。本気になって農村のことを考えるとすれば、この問題、いわゆる構造政策として、産業構造レベルの取り組みを、農村でどうあるべきか、これを大きな問題として問題提起をしながら、四全総等の中にしかと位置づけをすべきではないか。そうでなければこれから米はどんどん下がって収入がどんどんなくなり、その中で生産性向上のために規模拡大をして、中核農家――農林省は将来は五ヘクタールなどと言っているわけでありますから、もう一・五ヘクタールを基準にやっていく、こういうことがもし現実に進むとしたときに、この農村における雇用、受け入れ態勢をどうするか、時間が来ましたので、この点について最後大臣の考えと取り組みを聞きたい。
  74. 加藤六月

    加藤国務大臣 まず、今週火曜日の閣議におきまして四全総の閣議決定をいたしたわけでございます。それに対しまして、国土庁長官から、各省庁は今後この四全総の線に沿って整合性を持って中長期計画を立ててもらい、そして誠実に推進してもらいたいという御発言がありました。  その次の、四全総の中における農林水産業の位置づけという問題については、おっしゃるとおりまあまあ全部入れることができたかなと私は思っております。  最後に御指摘になりました雇用問題につきましては、先ほど来お答えいたしておりますように、私は閣議あるいは経済対策閣僚会議において農村における雇用問題を真剣に考えてもらいたい、あるいは農民における職業の再訓練のような問題まで考えなければならないときに来ておりますよという点に対して注意を喚起し、そういう発言をし、今後農村における雇用不安という問題を政府全体が取り上げて解消していくべきである、もちろん農林水産省としても真剣に取り組み、そして雇用不安のないようにしていく第一次的責任があるということを主張しておるところでございます。よろしく先生も御支援のほどお願い申し上げます。
  75. 武田一夫

    ○武田委員 もっと具体的な話を聞きたかったのですが、時間もなくなりましたので、また改めてこの問題は議論したいと思います。  以上で私の質問を終わります。
  76. 保利耕輔

    ○保利委員長代理 神田厚君。
  77. 神田厚

    ○神田委員 本年度の米価諮問が大変残念な形でありますが、五・九五%下げという形で諮問案が出されました。そのことにつきまして、農林水産大臣考え方をお聞きしたいと思うのであります。  まず最初に、米審委員の中でも米審が一日空転をしたということについて非常に米審軽視である、あるいは米審無用論というようなことが言われております。私はやはり前広に米審がきちんと行われて、しかも米審委員を招集しておきながら米審が一日空転をしたという事態は非常に大きな問題だと思っております。大臣は、その米審にたえるような諮問案をつくるために時間をかけたというような言い方をしているようでありますが、それは一つの理屈でありまして、自民党との調整が済めばそれですべて米審は通過するんだというような印象を非常に強く今回は国民の皆さん方にも印象づけたという意味では、まさに米審無用論という声が非常に大きく出てきております。この点について、大臣考え方をお聞きしたいと思います。
  78. 加藤六月

    加藤国務大臣 米審においても昨日おわびを申し上げますとともに、私としたら米審を尊重するがゆえに一日かかったという点について御説明申し上げ、理解を得たところでございます。米審軽視ではございません。また、米審無用論が出るというようなこともありましたが、米審無用論というのは少なくとも米審委員の先生方の中には出ておりません。ただいまも御審議を願っておる最中でございますが、逆に、米審委員の先生方の中には算定要素の変更に対する怒りの方が多いように私は感じ取っております。
  79. 神田厚

    ○神田委員 我々は従来から、米審の構成についてはもう少し生産者の立場を代表する委員を増員すべきであるということを常にずっと主張してきたわけであります。そういう意味では、私どもとしましては、引き続き米審委員の構成の改組を要求していきたい、こういうふうに思っておるわけであります。  ところで、五・九五%の引き下げという、いわゆる算定要素の変更を含めまして、そういう諮問が出されたわけでありますが、これは従来からの考え方をずっと見てまいりますと、どうも生産者米価というのは政治的な米価になっている。したがって、生産者の考え方やそういうものをずっと尊重していくという立場の内閣であるならば、米価についてもう少し生産者の納得のできるような米価をつくっていく。そういうことを見ますと、今回は前年度比五・九五%の引き下げだということは、中曽根内閣加藤農政というものが生産者に対して非常に冷酷なといいますか、理解が乏しいといいますか、そういう政治米価をつくったと評価されると思うのでありますが、その点はいかがでありますか。
  80. 加藤六月

    加藤国務大臣 生産者に対して冷酷と言われますと心外でございますけれども、私はたびたび申し上げておりますように、米の自給を貫き、食管制度の基本を守っていくという一念、そして日本の農政を守り、そして意欲ある農家、中堅農家が希望を持っていただけるようにするためのぎりぎりの案であり、今回の価格であると考えております。
  81. 神田厚

    ○神田委員 今回の大幅な米価の値下げは、日本の農業の基幹であります稲作農家の将来にとりまして非常に大きな問題を残すものだと思っております。先ほどからほかの委員からも御指摘がありましたように、日本の農民は政府の言うとおりに行政に協力をして現在の農政を迎えている。したがって、減反政策にしろ政府が要求をする以上の協力体制をとりながら農業経営に当たってきた。こういう状況から見ますと、それに報いる米価であったのかどうか、あるいはこういう米価の決め方をしておいて、果たして日本の稲作農業を守ることができるのかどうか、希望のあるそういう農政が展開できるのかという面では、非常に私どもは心配をしております。この点について、将来的な問題についてどういうふうにお考えになりますか。     〔保利委員長代理退席、委員長着席〕
  82. 加藤六月

    加藤国務大臣 先ほど来いろいろお答えいたしておりますように、水田農業を確立し、そして生産性を向上し、規模拡大を行って中堅農家が着実に育っていただくことが、我が国のこれからの農業並びに水田農業にとって一番大切であるし、これに向かって省を挙げて頑張っていきたいと考えておるところでございます。  農民の皆さんにとっては、私はいつも申し上げておるわけでございますが、今まで戦後四十数年の農政を考えてみると、米と葉たばこが一番安心してつくれる農作物であるという観念が定着しております。しかし、それ以外の酪農においても野菜においても果樹においても、あらゆるものがある面では市場メカニズムが左右しておるわけでございます。そういう中で、消費者の側からとりましたら、やはり米も商品の一つであるという感じがあります。しかし、食管法というのが現に存在しておるわけでございます。しかし、食管法のもとにおいても安くておいしい米をつくるという意欲を農家の皆さん方に持ってもらいたい、そのための関連事業その他に対し、農林水産省としても政府としても一生懸命やっていきますから、ひとつ希望を持って頑張るように努力していただきたい、こう思っておるところでございます。
  83. 神田厚

    ○神田委員 基本米価引き下げというのが、今大臣が答えたようないわゆる中堅農家、中核農家を非常に直撃している。基本米価引き下げというのは、そういう意味では中核農家に対する打撃が非常に大きいということであって、これはやはり大臣の答弁とは矛盾するというふうに考えざるを得ないのでありまして、私どもはその点について考え方を変えていただきたいと思うわけであります。  ところで、きょうの農業新聞で、六十三年産米価の問題で、政府・自民党が覚書を持っている、こういうことでありますが、これは先ほどの答弁ではそういう事実があるということでありますが、文書として残されているのかどうか、その点はいかがでありますか。
  84. 加藤六月

    加藤国務大臣 まだ私は署名いたしておりませんけれども、一昨日の夜、最終の申し合わせのときに、先ほど来お答えいたしたような覚書をつくり、そして関係者全員署名するという申し合わせが行われたところでございます。
  85. 神田厚

    ○神田委員 そうすると、文書として存在しているわけですね。
  86. 加藤六月

    加藤国務大臣 文書として存在するようになります。
  87. 神田厚

    ○神田委員 私は、米価の決定権というのは農林水産大臣にあるわけで、農林水産大臣がそういう意味で自民党やあるいはいろいろな形の影響を非常に受けて決定権を行使できないということ自体は非常に問題だと思っておるわけであります。そしてしかも、政府・自民党の中で覚書をつくってそれを拘束をする、来年度にわたって拘束をするということ自体も非常に問題だと思うのでありますが、その内容としまして、したがってことしの生産者米価最初試算九・八%、それが五・九五%に圧縮をされましたけれども、来年度は、この九一八%を基本として五・九五%に圧縮をした積み残しの分を来年度の米価のときに考えるというようなことも含めた微妙なニュアンスでの答弁が昨日参議院農林水産委員会であったというふうに聞いておりますが、その点は大臣、どうでありますか。
  88. 加藤六月

    加藤国務大臣 昨日の参議院農水委員会において言葉足らずであったらおわび申し上げますが、覚書ともう一つ伊東政調会長メモも確認するわけでありますけれども、現行の算定方係式には、今後、米価審議会において検討の結果、採用すべきものとされた方式を含むということがあるわけでございまして、米価米審において、そしてまたその算定方式米審において審議してお決めいただくようになっておるわけでございます。したがいまして、本年度の九・八を五・九五にした、その積み残し分を来年度に含みを残したということをおっしゃいますと、ある面では米審の権威にもかかわる問題でございます。  ただ、算定要素の中にいろいろな要素があるのは御存じのとおりでございますし、またことしの作況並びに出来高等を見ながら、ある面では米審の方で全般的な目配りをしながらこういう問題をお考えいただき決定いただくものであると思っております。そういう中で、数字上の無理をしておきますと次年度にその影響があらわれてくるという考え方があるのは事実でございます。
  89. 神田厚

    ○神田委員 そうすると、積み残しということはないというふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  90. 加藤六月

    加藤国務大臣 算定要素に取り入れる数字そのものが諮問数字になってくるわけでございまして、積み残しがあるとかないとかという問題ではないと考えております。
  91. 神田厚

    ○神田委員 最後にちょっと緊急な問題で、農業問題とは違うのですが、鯨の問題で、一問だけ大臣に捕鯨問題で御質問申し上げます。  六月二十六日に終了しましたIWC本会議では、問答無用という状況のもとで我が国に対しまして、調査捕鯨の実施を自粛するよう勧告する決議が採択をされました。これは玉沢委員長、大変御苦労なさったのでありますが、私は、この条約自体を否定するこの勧告決議には従うべきではないというふうに考えております。大臣として、今回の結果に対する見解並びにこの決議に従うのかあるいは条約の権利を行使をして調査捕鯨を実施をするのか、現段階での考えをお聞かせいただきたいのであります。
  92. 加藤六月

    加藤国務大臣 先ほど水産庁長官からも他の委員にお答えいたさせたところでございますが、本年度のIWC年次総会は反捕鯨色の濃い会合であり、特に我が国の調査捕鯨に対し自粛勧告が行われたことは極めて遺憾であると考えております。また、我が国の小型捕鯨の一部を生存捕鯨として認知することを求めた件につきましては、極めて厳しい事態でありましたが継続審議となり、これが全く否定される事態は阻止し得たと考えております。玉沢委員長ほか国会の先生方の御努力、民間の皆様方の御努力には心から敬意を表する次第でございます。  今後の捕鯨の存続につきましては、六十年三月の当農林水産委員会の御決議を外し、広く関係者の意見を聞いて対処してまいる考えでございます。
  93. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  94. 玉沢徳一郎

  95. 山原健二郎

    ○山原委員 今回の五・九五%の引き下げというのは実に三十一年ぶり、こうなっておりますけれども、三十一年前は〇・九%の微調整が行われたわけですが、そういう意味では大幅な引き下げという意味で戦後初の重大な出来事が起ころうとしておるわけでございます。その意味では私はこれは悔いを千載に残すものであり、しかも今まで質問がありましたように稲作農民にとりまして深刻な打撃、米価の抑制あるいは減反の強行、さらには奨励金のカットと、ダブルパンチではなくてトリプルパンチという事態が起ころうとしているわけでございまして、そういう意味では営農意欲を一挙に奪い去る、そういう中身を持っておるという意味で断じて許すことのできないものだということで、まず私は撤回を要求したいと思います。  そして同時に質問といたしましては、この引き下げが日本の米づくりの将来にとって明るい展望を示すのかどうかということでございますけれども、これは政府の主張から考えましても非常に重大な中身を持っています。先ほどから例えば規模拡大の問題あるいは中核農家の問題あるいは二十一世紀に向けて生産性の高い農業をということで、大臣諮問の言葉の中にもこの言葉が入っておりますね。また巷間、米価を下げれば規模拡大が進んで生産性の高い農業がつくり出されるというような単純な議論があるわけでございますけれども、そういう中で今回の米価引き下げで打撃を受けるのは、中小の農家の皆さんは算定対象からも外されておりますが、直接打撃を受けるのは大きな規模の特に専業農家ですね。そういう点から考えますと、規模を増大するなどということがあなた方の主張からいっても出てくるはずがないのです。この点についてまずどういうお考えを持っておるか伺っておきたいのです。
  96. 加藤六月

    加藤国務大臣 先ほど来お答えいたしておるわけでございますが、本年産生産者米価につきましては、将来にわたって我が国稲作の健全な発展を図り、国民の主食である米の安定を図っていくという方針のもとに昨年の生産者米価決定の経緯及びその後の米、食管制度をめぐる内外の諸論議、諸事情、そして生産性の向上を図りつつ内外価格差の縮小に努める必要性並びに昨年の農政審議会の報告の趣旨等を念頭に、置いたところでございます。そして具体的には潜在需給ギャップ拡大傾向に示される米需給の趨勢、単取水準上昇投下労働時間の減少等、現に進みつつある生産性の向上や生産コスト低減の状況物価金利水準低下労賃上昇率鈍化等、最近の経済実勢等を的確に反映させるという基本的視点に立ったものでございます。そして本年産生産者米価におきましては、このように国民の理解と支援が得られるものとなるよう算定したものであり、適正な諮問価格であると考えております。  そしてまた、米価引き下げ稲作農家に及ぼす影響あるいは地域経済に及ぼす影響等につきましても種々考えまして、生産者米価というものは生産費及び所得補償方式に基づき算定されることになっております。これに基づく価格水準のもとで国民の必要とする米は安定的に供給され、農家所得確保されているものと理解しております。したがって、今回の生産者米価引き下げ農家経済に打撃を与え、米の再生産確保に支障が及ぶことはないものと考えております。  また、稲作というものが地域経済に占める地位は地域によってさまざまであります。今回の生産者米価引き下げが地域経済に与える影響は一概には申し上げられないところであります。また、地域経済の振興あるいは農村の活性化対策等につきましては、先ほど来お答え申し上げておるように公共投資の拡充策を講じていく必要があると考えており、このような観点から本年度補正予算における対応も含め、所要の施策を鋭意検討し、具体化してまいりたいと考えております。  また、経営規模拡大生産性の向上は逆におくれておるのではないかという御質問もありましたが、地区地区によって若干のニュアンスは違いますけれども、経営規模拡大生産性の向上はそれぞれの農民、皆さん方が必死に頑張って上昇傾向にあると私は考えております。
  97. 山原健二郎

    ○山原委員 私がまだ質問していないことまで答えてくれましたが、私の持ち時間は十二分しかありませんので、簡明にお願いしたいと思います。  政府みずからが内需拡大と、これにも私ども問題は感じておりますけれども、緊急経済対策で述べているわけです。それから見ましても、恐らく千四百億円の減収になると思いますが、そういうことが地域経済にとっていかに大きな影響を与えるかということも私は実例を挙げて申し上げたかったのですが、時間の関係で申し上げられませんけれども、これにも大きな影響が出てまいりますね。  私の県では今ショウガが少しいいのです。フィリピンと台湾が今ちょっと不作でショウガがいいために、町が今潤っているのです。もう目に見えているのですね。私、今度寺前議員にかわりまして農水の委員をやらせていただくことになりまして、委員長以下皆さんにまたいろいろよろしくお願いしたいわけですけれども、そのあいさつを兼ねて農協中央会の会長と会ったのです。そのときにショウガの話が出まして、これだけ違うのです、今度米価を下げられたならば非常に大きな影響が地域経済にも出てくるということを言っているのです。ショウガとはもうけたが違いますからね。二百六十万の農家戸数を考えましても、家族を含めて一千万の購買力が減るという問題も絡めて、この問題はその意味でも重大な中身を持っておるということを指摘しておきたいと思います。  それからもう一つは、去年の算定方式によると九・八%だ、それを今回五・九五%にしたのだから何か農家に対していささかの配慮をしたかのごときことか言われておりますけれども、しかし過去不況の際に値上げをしなければならぬときに、恣意的に算定方式を変えましてそして据え置いてきた経過から見ますと、全く手前勝手な計算が行われてきておると言わざるを得ません。  そういう意味で、これは次長に伺いますけれども、こういうことのなかった、米価を極端に抑制する以前、五十二年の段階で計算をしますと米価は幾らになるか。これは資料をいただいておりますが、あなたの口から述べていただきたいと思います。
  98. 山田岸雄

    山田説明員 お答えいたします。  今先生御質問の五十二年当時の問題でございますが、当時といたしましても需給事情につきましてはやはり過剰の傾向にありまして、御案内のように第二次過剰は五十一年産、五十二年産、五十三年産、こういうことで蓄積されたような次第でございます。したがいまして、過剰の状態におきますところの価格算定、こういった問題もあったと思うのでございますが、その年度におきますところの算定方式計算すればどうかという御質問でございますので、私ども算定してみました結果を申し上げますと、基本米価で六十キログラム当たり二万八百四十九円になります。六十一年産の決定価格に対しまして一一・七%のアップ、こういうふうな計算結果になります。
  99. 山原健二郎

    ○山原委員 二万八百四十九円、これが生所方式基本の姿なんです。それをさまざまな形で変えてきたところに問題があるわけでして、この点も指摘にとどめたいと思います。  最後に、かつてある首相が、私は農民を骨まで愛するという言葉を使ったことがあります。けれども、中曽根首相になりましてから、日本の米はアメリカ産の十倍も高いということを言い始めたわけです。そして、農業改革に同調しないならば早晩国鉄の民営・分割と同じになるという恫喝を加えてくる。そして中曽根さんのブレーンを通じてさまざまな農民に対する攻撃、米に対する攻撃が加えられてまいりました。中曽根さんが満潮主義と言っています。潮が満ちてくるような状態をつくって断行するんだ、そういう情勢が今日までつくられてきまして、一般の消費者の中にもアメリカの米は安くてうまいという宣伝がなされるわけでございますけれども、実態はどうなのかということを調べてみるとそうはいかないのです。これはホプキンス大学のピアソン教授ですが、日本が自由化すると米価は今の二倍にはね上がる、こう言っております。全米精米協会でも、日本に輸入させればトン当たり二百三ドル価格が上がり、もうけは二倍になる、こう言っています。  こういう点から考えましても、本当に日本の国民というのはアメリカとは違います。全土が水田でしょう。アメリカは小麦の一割にも当たらない。全農産物の生産の一%。野菜なんですよ。それとの比較をするということ自体がナンセンス。しかも、そういうことで果たして一億国民の食糧を安定的に確保することができるか。不可能なんです。そういうことは過去においても歴史上ないわけです。一億の国民の食糧を確保するということ、今でさえ穀物の自給率が三二%、そんな国が他国に依存して安定が保たれるなどということはまさにあり得ないことなんです。そういうことに期待をかけること自体が間違いなんですね。でも、さまざまな財界からの宣伝もなされる中で、いつの間にか安い米を入れなければいけないということで日本の農業と米作に対する攻撃が醸し出されてきているわけです。  そこで、私は農林省にお伺いしたいのですけれども、本当にこれに対して真実を国民に知らす必要がありますよ。そういう意味では、農業、農民を守る立場にある専門の省である農林省がこんな俗論に対して本格的に国民の立場、農民の立場に立ってこれを爆砕していく、そういう気迫がなければ大変なことになります。そういう意味で、米価を下げたからといって自由化の波を阻止でき得るものではないと思いますし、また農業を守ることはできない、また食管制度を守ることはできないと私は思うのですが、この点についてどうお考えか。農林水産省として本当にこの問題に対して取り組んでいく、今の間違った世論を構成しようとしているこのやり方に対しても正確な数字を出してこれに反論していく、そういう気構えが今農水省に必要だと思いますし、農林大臣に今それが求められておると思いますが、この点について加藤大臣の見解を伺って私の質問を終わります。
  100. 加藤六月

    加藤国務大臣 山原委員の後段におっしゃった点は全く同感でございまして、私も外国に対しては言うべきことは歯に衣を着せずに堂々と言わなくてはならないという点で言ってきております。  また、農産物価格を比較する場合に、生産価格で比較するのがいいのか、消費価格で比較するのがいいのかという問題につきましても、はっきりした線を出さなくてはならないときに来ておるのではないかと思います。  また、昨年の米価決定後、各界各層からいろいろな農政、米、食管制度に対する御提言あるいは批判あるいは新しい方策等か言われております。正しい御提言に対しては謙虚に耳を傾け、今後実施していく糧にしなくてはならない。しかし、基本的に誤解した数字、間違った考え方によって非難、攻撃される場合には断固戦っていかなくてはならない。そのことがある面では我が国の国民生活を守り、そしてまた米を中心とする国民の主食というものを守っていく道に通ずると考え、省内いつもこの点について議論し、また実行に移しておるところでございます。
  101. 山原健二郎

    ○山原委員 終わります。
  102. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時十七分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十分開議
  103. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石橋大吉君。
  104. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 大臣がおられなくて少し残念ですが、最初に、ことしの米価決定と米価審議会関係についてお尋ねをしておきたいと思います。  御承知のような経過で米価審議会にかける前に事実上六十三年米の米価が決まる。大臣は再々答弁の中で、決して米価審議会を無視したり軽視したりするものではない、むしろ米価審議会を尊重するがゆえにこういう経過をたどって諮問をした、こういうことを繰り返し言われておるわけですが、私どもの常識からすれば、米価審議会にかける前に事実上決まるということはどこから見ても米価審議会無視、こう言わざるを得ないと思うのです。それにもかかわらず、米価審議会を尊重するとか重視をするとか。具体的な納得のいく説明をお願いしたいと思います。
  105. 衛藤征士郎

    ○衛藤説明員 石橋委員にお答えを申し上げます。  既に午前中、大臣のお答えがあったと思うのでございますが、御案内のとおり、ただいま米審が行われておるところでございます。きのうきょうということで恐らく答申が出てくるものと拝察するわけでございますが、大臣お答えのとおりでございまして、米審を従来以上に最大限に尊重するという立場で、今石橋先生の御指摘のようなことではありますが、あくまでも米審を尊重するということで大臣がおとりになった措置でございまして、私も過去十年間この生産者米価問題につきましてはいろいろと議員の立場から取り組みをさしていただいたのでありますが、生産者米価諮問について、ことしほど米価審議会を尊重した取り組みは過去十年間の中でなかったのではないか、私もこのように考えておる一人であります。何も自分が政務次官だからそのように言うのではありません。まさしくそのような措置がなされた、そういうことでございましたので、御理解をいただきたいと思います。
  106. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 事実上そういうことがないということを前提に、恐らくある意味ではたかをくくっておられると思うのですが、そういうことであれば、米審諮問米価と非常に違った結果が出てもそれは米審の結果の方を尊重する、形としてはそうだとお答えになるかもしれませんが、そのとおり間違いないですか。
  107. 衛藤征士郎

    ○衛藤説明員 もう御案内のとおりでございまして、必ず米価審議会の審議を経て答申をいただき、その後に大臣が決定をすることでございますから、最大限に尊重するのでございます。
  108. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 余り実質がないお答えじゃないかと思いますが、これはこれでおきます。  続いて、午前中から各委員の方からも指摘されておりますように、三十一年ぶりの大幅な米価引き下げ、これも私をして言わせますと、もう初めに値下げありき、こういう基本方針があって、その上に立って数字のつじつま合わせをして五・九五%の引き下げをする、こういうのが率直なところ実態ではないか、こういうふうに言わざるを得ないように思うのです。  と申し上げますのは、御承知のように第二次臨時行政調査会の第一次答申五十六年七月十日、第三次答申五十七年七月三十日等を通じまして、「今後は、米の需給均衡を図る等、国際化の進展の下で需給に即した農業生産の再編成を行うとともに、生産性向上を図り、内外価格差を縮小し、産業として自立し得る農業を確立することが重要である。」また、「生産者米価については、米需給の構造的不均衡にかんがみ生産抑制的に定める。」こういう形で米価引き下げの方向が明確にされておることは御承知のとおりです。また、昭和五十六年二月十日と五十七年一月十九日の経団連の農政提言でも、価格は市場原理に基づいて国際水準並みに下げる、こういうふうに政府に提言をしている。  こういう臨調の答申や財界の提言を非常に色濃く反映をした去年十一月の農政審答申、これでも基本的には中長期にわたって農産物、なかんずく米価引き下げ、こういう方向が明らかにされておると私は思うのです。そういう意味で、去年の十一月の農政審答申は、答申の全文挙げて構造政策、価格政策、輸入政策、あらゆる面からコストの切り下げ、価格引き下げに向けて目標を集中する、そういう意味では非常にすさまじい方向を目指しているこれからの農政だな、こう思わざるを得ないような状況です。そういう意味で言えば、米価引き下げという方針は四年も五年も前にきちっと決まっている、こう言わざるを得ないと私は思うのです。  しかし、現実はどうなっているかと言えば、構造政策は遅々として進まず、規模拡大によって安心して豊かな生活ができるような農業経営は確立されない、米価引き下げだけが現実問題として急ピッチで先行する、農家はますます農業に対する情熱を失っていく、こういう状況になっておると私は思うのです。特に、先ほども指摘がありましたように中核農家と称されるところに対する打撃が非常に大きいわけであります。こういう状況が続けば、規模拡大によって優良な農家が育つよりも先に農業破壊の方が先行する、こうやはり言わざるを得ないわけでありますが、この点についてどういうようにお考えになっておるか、お伺いしたいと思います。
  109. 衛藤征士郎

    ○衛藤説明員 石橋先生の御質問の中にもございましたように、構造政策が進まない中で米価引き下げが先行するばかりである、このことが農民の意欲を失わせるのではないかというような趣旨かと思うのでございますが、御指摘のとおり臨調答申また財界サイドの提言等々もございましたが、昨年十一月私どもがちょうだいいたしました二十一世紀に向けての農業のあり方等につきましては、あくまでも農政審は中長期的、まさに二十一世紀に向けての日本の農業のあるべき姿を位置づけたもの、このように考えておるわけでありまして、その立場から私どもとしましては、御指摘の生産者米価については生産費及び所得補償方式に基づき算定されることになっておりますので、これに基づく価格水準のもとで国民の必要とする米は安定的に供給され、農家所得確保されていくものと理解をしているわけでありまして、したがって今回の生産者米価引き下げが農業者の意欲を損ない、米の再生産確保に支障が及ぶことができるだけないように配慮したものだと考えているわけであります。  なお、将来にわたって我が国稲作の健全な発展を図っていくためには、稲作担い手を育成し、生産性の向上を図ることが最大の課題であると考えておりまして、委員御指摘の構造政策の推進にも一段と積極的に取り組んでまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  110. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 政府の農政に対する農家の皆さんの不信は既に相当なものがあると私は思っておるわけでありますが、そういう不信のあらわれが、いわば政府の農政が目標としてきましたところの利用権の設定や借地による規模拡大よりも、むしろ不作付地や耕作放棄という形で農地の荒廃をこそ急速に進める結果になっているんじゃないか、こういう心配をしておるわけであります。御承知のように、「八〇年代の農政の基本方向」以降、農地の貸借、流動に非常に大きな政策的な意義が与えられているわけですが、八〇年の農林業センサスでは、不作付地は十八万四千ヘクタール、耕作放棄地が九万千七百ヘクタール、合計二十七万六千ヘクタール、実質三十万ヘクタールを超える不作付地や耕作放棄地がある。一方で、五十七年末の利用権設定面積十万五千ヘクタールぐらい。こういうふうに規模拡大よりも農地の荒廃の方がぐんぐんふえている。これは八五年センサスでどうなっているか、ちょっと実態を伺いたいと思います。
  111. 鴻巣健治

    ○鴻巣説明員 八五年の農業センサスによりますと、全国で不作付地は十四万ヘクタールでございます。それから耕作放棄地は九万七千ヘクタールとなっております。
  112. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 優良な農地がどんどんつぶれていく、これはさっき申したように農民の皆さんが農業に対して情熱を失っていくということの一つのあらわれだと思うわけでありまして、そういうことがいつまでも先行しないように農政のあり方をぜひ御検討いただきたい、こういうことをまず申し上げて、次に移ります。  去年の十一月の農政審の答申では、御承知のように「稲作をはじめとする土地利用型農業部門における農業構造の改善を可能な限り加速することが基本的に重要であり、これに焦点を合わせた諸施策の運営が必要である」として、先ほどから言いましたように規模拡大、コストの削減を最大の目標にされております。問題なのは、一体どこまで規模拡大をしたら安心して農業経営に専念できるのか、暮らしが成り立っていくのか、こういう目標がはっきりしているようではっきりしていないことが最大の問題点の一つじゃないか、こう私は思うわけです。長距離マラソンをやっても、ゴールがはっきりしておれば少々くたびれても元気を出して頑張るけれども、ゴールが全くはっきりしていないものだから、疲れがたまってへとへとに衰弱するばかり、あげくの果てはとにかく倒れる、こういう状況になっているんじゃないかと私は思うのです。そういう意味でいうと、ここまでやれば安心して農業経営できますよという規模拡大の目標をどこに持っておるのか、この機会にぜひ農家の皆さんが安心できるようにひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  113. 浜口義曠

    ○浜口説明員 ただいま石橋先生からのお話は、農政審議会の昨年の答申に関連しての御提起でございます。  先生御案内のとおり、農政審議会におきます今回の答申におきましては、高水準水田農業における生産性の水準試算というものを掲げているわけでございます。これは前提といたしまして一応昭和七十年を前提に置きまして、現行におきます高速度田植え機あるいは汎用コンバイン等々を前提にいたしまして、さらにことしから実施に移しております水田農業確立対策という観点をとらまえまして、畑作物を水田の中にもできる、つくろう、こういうような輪作体系の考え方も入れたものでございます。それによりますと、それぞれ一毛作あるいは二年三作といったようなところでございますが、この点におきましては、作付の規模でございますが、例えば水稲については二十二ヘクタールというものを掲げさせていただいております。もちろんこれは、これによりまして費用が現行の大体半分ぐらいのものができるということの試算でございまして、これの実態等におきましては、先生既に御指摘のとおりでございます現下におきます日本農業の構造改善の立ちおくれといったようなものに起因いたしまして、これが具体的にどういう形で、手順で行われるかという問題もございます。さらに、もちろん農業という自然的な制約の多いものでございますので、地域地域の条件を吟味しなければいけないというふうに考えておるものでございます。そういった意味におきまして、一つの高水準水田農業生産性の水準という試算を掲げているところでございますが、その適用等につきましては十分慎重にやっていかなければいけないというふうに考えるものでございます。  さらに、規模拡大の場合におきまして我々がこの報告において提示を受けております部分については、もう一つあわせまして、それぞれの規模に達していない農家群が中核農家中心に一つの集団組織をつくっていくべきであるという路線も提示されているわけでございます。  そういう意味におきまして、結論的に申し上げますと、先生のおっしゃる具体的なイメージでございますが、中核農家規模拡大等々に関連いたしましては、地域の多様な自然条件あるいは社会的、経済的条件においてさまざまな経営の転換という姿が見込まれるわけでございまして、そういう意味においては一律にこれを提示することはなかなか困難ではないかというふうに考えるものでございます。
  114. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 今、二十二ヘクタールというようなことを言われましたが、やはり政府が責任を持って目標を示す。これはもう米価も下げるし規模拡大をしていくということで農家の皆さんが非常に深刻な状態に陥るということであれば、やはり目標というものは政府の責任である程度明確にして、地域によって条件の違いが若干あるならあっても、それぞれの条件をある程度考えて一定の目標をはっきりさせて、そして政府が設けた目標である以上はどういうことがあろうとも責任を持って農家の生活を見ていく。米価は、農産物の価格政府が責任を持っていく。これがある意味で食管制度の本来の意味でもあろうと思うのです。やはりそういう目標がはっきりしていないことが非常に深刻な農業の荒廃を招く原因の一つだと思いますから、ぜひひとつ今後検討していただきたいと思います。  次に、価格政策に関連して二、三お伺いしておきたいと思います。  さっき言いましたようにいろいろな答申を通じて全体として米価引き下げの方向でいく、また、農水省としても今後米価は段階的に下げる、こういう方向のようですが、この基本的な考え方については、ちょっと確認をしたいのですが間違いありませんか。
  115. 山田岸雄

    山田説明員 段階的に下げるということを具体的にまだ私ども申し上げておるわけでございませんが、できるだけ生産性を向上することによりまして内外価格差の縮小等に努めていかなければならない、こういうふうには考えておるわけでございまして、生産性の向上も何もなしに段階的に下げればいいというふうなわけにはまいらないと考えております。
  116. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 だから、生産性向上も含めて規模拡大や経営の一つの目標を明らかにするということと同時に、価格政策を関連させて、できれば将来的な目標をはっきりさせてほしい、それは大事業になると思いますが、一遍そういう議論をしてある程度合意を形成することなしには、どこまでも、農家の皆さんはやはり希望が持てないままにやる気を失っていく、こういうことになるのではないか、こう思うわけであります。  国民の納得し得る米価というようなことも再々言われるわけですが、一体、今日段階で国民の納得し得る米価とはどういうものを考えておられるのか。当面は今米審にかかっている五・九五%が国民が納得し得る米価だ、こう言われるかもしれません。しかし、内外価格差が非常に大きいことだとか何だとか、いろいろなことを言われると、もうアメリカの米価水準まで持っていくという気なのか、タイ米のところに持っていく気なのか、やはり農家の皆さんからすれば本当に深刻な問題ですよ。一体どこまで持っていくつもりですか。
  117. 衛藤征士郎

    ○衛藤説明員 委員御指摘の、いわゆる国民の納得する米価価格はどのように考えておるのか、こういうようなことであろうと思うのでありますが、国民の理解と納得と支持を得て将来にわたって我が国の稲作の健全な発展を図っていくためには、先ほどお答え申し上げましたように、昨年の農政審議会の報告を踏まえて水田農業確立対策の的確な実施により、米需給均衡の回復を図るとともに、稲作担い手を育成して生産性の向上を図ることが現下の最大の課題だ、このように考えておるわけでございます。  今回の諮問米価はこのような状況を踏まえまして、米需給の趨勢とかあるいは現に進みつつある生産性向上や生産コスト低減の状況、さらには最近の経済実勢等を的確に反映して算定したものでありまして、国民の理解と納得と支持を得られるものである、このように考えておる次第でございます。
  118. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 もう一つお伺いしておきたいのですが、去年の十一月の答申では、価格決定に当たって、先ほどから答弁の中でもそういうことを言われておりますが、育成すべき担い手の農業経営の発展が可能となるような生産性向上に資するという観点で決める、こういうふうに言われておるわけでありますし、きょうの諮問についての説明の中でも、稲作の中核的な担い手となる農家や、これら農家中心とする集団を育成し、将来にわたって我が国稲作の健全な発展を図る、こういう方向で価格を決めるということが言われておるわけでありますが、私はやはり現在の状況から、さらに規模拡大をしたりして育成すべき担い手の農業経営の発展が可能となるような価格、こういうことになると引き下げよりもむしろ引き上げなければならぬような感じがしておるわけでありますが、考え方として中核農家の経営の発展に資する価格、これは中核農家と目される経営農家が情熱を持てる、意欲を持てるような価格でなければならぬと思います。そして、借地によるか、耕地を買うか別にしまして、そういう規模拡大が積極的に進められるような、ある程度投資可能な価格、こういうことでなければならぬと思うのですが、この点、どうですか。
  119. 山田岸雄

    山田説明員 先生今御指摘のとおりでございまして、中核的な農家規模拡大が可能になるようなということにつきましては、やはり農家地代負担力なりが十分満たされまして、それによって土地の集積等も可能な方向に価格政策が運用されることを私どもは考えておるわけでございます。
  120. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 時間がありませんので、予定をしたことを大分はしょって次に進みますが、御承知のように八〇年の農政審の答申、そして八二年の「「八〇年代の農政の基本方向」の推進について」、この二つの答申では、食料安保の観点から自給率の強化拡大ということが非常に大きくスペースを割いて強調されておりましたし、そういう立場を追求する、こういうふうに言われておりましたが、去年の十一月の答申ではこの前の答申ほど安全保障論は強調されておりませんし、大きく後退をしているように思いますが、やはり食料を外交の武器に使う国がある以上は、食料の安全保障という観点は絶対に捨ててはならぬ、私はこう思っておりますが、この点についていかがですか。
  121. 甕滋

    ○甕説明員 一億二千万人に及ぶ国民に対しまして食料の安定供給を図るということは、これは生産サイドといたしましても責務でございますし、農政の最重要課題の一つというふうに心得ておるわけでございます。  今回の農政審答申におきまして、自給力といった観点がちょっと薄れているのじゃないかという御指摘があったわけでございますが、全体としてやはり国内の自給力を強化していくという観点が変わったものでは必ずしもないというのが私どもの受け取り方でございます。  ただ、その自給といった場合に、例えば際限もなくコストをかけてもいい、こういうこともまた大方の国民の御理解が得がたいという状況の中で考えてみますると、極力生産性の向上を図りまして、国民に安く安定的な食料の供給に努める、こういう観点もより重要となっておりますので、そういった考え方が盛り込まれまして、国内供給力の維持、確保というような表現が随所に出てまいっておるのではないかというふうに解しておるところでございます。
  122. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 もう一つ、今の食料安全保障論に関連をして、国内自給力の拡大と同時に、日本型食生活の定着ということが非常に強調されておりましたが、これも今度の答申では大きく後退をしておる、こういうふうに思いますし、予算の面でも、五十七年、八年は日本型食生活普及浸透対策ということで一定の予算がありましたが、その後予算上の措置もないように思いますが、この点はどうですか。
  123. 谷野陽

    ○谷野説明員 ただいま御指摘がございましたように、我が国の食生活は長い歴史の中で培われてまいっておるわけでございまして、現在の状態は、たんぱく質、脂質、炭水化物等の組み合わせのバランスがとれたいわゆる日本型食生活というふうになっておると理解をいたしております。このような食生活につきましては、健康的でバラエティーに富んだものとして最近では諸外国からも大変評価をされておるというふうに考えておるわけでございます。  我が国の食料消費は、カロリーの水準が既に頭打ちになっておりまして、このような大変健康的な日本型食生活が今後とも継続をしていくということは大変重要なことであるというふうに考えておるわけでございます。  ただいま御指摘がございましたこれの定着・普及に関する施策でございますが、食生活というのはそのものの性質上強制というようなことはなかなか困難なわけでございます。いろいろな情報の提供でございますとかそのようなPRというような観点を通じまして、その定着・普及を図っていくのがその筋ではないかというふうに考えております。  具体的な施策の御指摘がございましたが、予算の組み方につきましては多少変わってきておるわけでございますが、食料消費、食生活情報、啓発交流事業でございますとか、あるいは食料消費関係の行動の調査、啓発の事業、食生活改善実践活動モデル事業、こういうような諸事業を組みまして、その中で日本型食生活の定着に関する啓発活動を行ってきておるわけでございます。また、「食と緑の博覧会」でございますとか、あるいは農林水産省の中に設けております「消費者の部屋」の展示等を通じまして、このような日本型食生活の意義、その定着の方向につきまして努力をしてまいっておるわけでございまして、今後ともそのような努力を続けてまいりたいというふうに考えております。
  124. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 次に、農業生産資材の価格引き下げについて、ちょっとお伺いをしておきたいと思います。  どうも農家の皆さんの立場からすると、米価引き下げだけは集中的にいろいろと議論をされるし、世間でも袋だたきにされるほど連日のようにあれこれ言われておる。しかし、肝心の農業生産のための資材の問題などについては、ほとんど批判の対象にされないといいますか、値下げの対象に余りされない。少なくとも世上袋だたきにされるような状況がない。まことにもって片手落ちきわまる話ではないかという気持ちが私は非常にあると思うのです。  そこで、農業生産資材の価格の問題について、ちょっとお聞きしたいのです。農水省の八五年の日米の米生産費の比較などを見ましても、日本の米生産における農機具の償却費は、アメリカなどに比べて非常に高いわけであります。最近では、六月三十日の朝日新聞の「米価引き下げ」というシリーズ物の記事が載っていましたが、あの記事をちょっと見ましても、日本の機械費はカリフォルニアの十七倍、テキサスの九倍強。また、日本の肥料費はタイの六百十五倍、カリフォルニア州の七倍、農薬費はそれぞれ十三倍、八倍、こういうふうに書かれております。肥料は最近少し下がったのではないかと思いますけれども、それにしても農機具肥料、農薬など、輸出をする価格に比べて国内の価格はまだまだ非常に高いように思うわけでありますが、米価引き下げということであれば、当然これらの農業生産に要する資材の引き下げについても、農水省としてはひとつ真剣にやっていただきたいと思いますが、どうですか、この考え方
  125. 浜口義曠

    ○浜口説明員 石橋先生お話しのとおり、農産物の生産コストの中に占める農業機械、肥料等の生産資材というのは、極めて大きな位置を占めておるわけでございます。そういう意味におきまして、生産性の向上を図るためには、構造政策の推進に加えまして、これら生産資材の低減が喫緊の課題であるというふうに考えております。  生産資材の価格でございますが、ただいま先生が国際比較等もお話しになりましたけれども、日本におきます機械あるいはアメリカにおきます機械等は、それぞれの農業の歴史あるいは生産構造に起因するわけでございまして、例えばアメリカの場合が畑作であるとか、あるいは日本の場合が水田が中心であるとか、そういったようなことを勘案していかなければいけないという点がございます。そういう意味で、我々はアメリカ農務省の発行しております平均的な数値とか、私どもの持っております統計等を十分比較考量しまして検討を行っておるところでございます。  最近におきまして、先ほど申し上げました観点に立ちまして、具体的にその価格交渉を行っております全農あるいは相手方のメーカーとの間で、先生御指摘の生産資材の低減が行われております。  一つ申し上げますと、肥料の場合でございます。肥料におきましては、全農と肥料生産の業者の代表との間で六月と申しますか、あるいは四月くらいから六月までずっと交渉が行われておりまして、これは毎年の例でございます。六十一年の肥料年度、これは六十一年の七月から六十二年の六月にかけてでございますが、主要十品目の平均につきまして一〇・三%の大幅な値下げが行われたところでございます。その後、六十二年、今年の一月以降さらに二・二%の引き下げが行われまして、年間で一一・四%の引き下げが行われております。また、六十二年度の肥料年度におきましても、一層の合理化の努力というものを企業に対しても見込んでもらいまして、五・六%の値下げが行われたところでございます。  機械につきましても、この点につきましては交渉が行われております。円高の反映等々に関連いたしまして、外国から輸入される大型の機械につきましては二%前後から十何%の差におきまして、平均五%の値下げが行われておるという実情でございます。さらに、安全フレームの観点においても、私どもの指導等によりましてこの点の値下げが行われております。  また、型式をシンプルにするといったような観点から、一つのメーカーでございますので特に名前を引きませんけれども、七月一日から、トラクターの中型のものにつきまして一五%から一三%といった値下げが行われておるところでございます。  以上のような状況でございますので、私どもといたしましては、この農業機械あるいは肥料等の生産資材等が農業生産についての中心的な不可欠の資材である、こういう観点に立ちまして、これらのものが適切な価格で安定的かつ円滑に供給されることが必要であろうというふうに考えますので、今後とも関係省庁とも連携を図りながら系統団体あるいは業界、そういったものの指導に努めてまいる所存でございます。
  126. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 最後に、輸入農産物の安全性の確保について幾つかやりとりをしたいわけですが、時間がありませんので幾つか問題点を申し上げますから、まとめてお答えをいただきたいと思います。  御承知のように、米も含めて農産物が非常に過剰生産に陥っている。だから米価引き下げざるを得ないんだ、こういう説明が一貫して行われておるわけですが、しかし考えてみると、米など国内の農業生産拡大については、毎年ぎりぎりとバルブが締められておる。一方で、輸入農産物はもうバルブをあけっ放しにして、とにかく流れ込みほうだい流れ込んでくる。こういう状態がある限りは、どこまでいってもこれはやはり食糧はだぶつく、こういうことになるわけだと私は思うのです。  特に、飼料穀物を含めまして年間大体三千万トンぐらいのものが入っていると思いますが、そのほかではいわゆる食品工業が生産をした食品の輸入などもありますから、恐らく四千万トン近くの飼料穀物を含めて輸入があるんじゃないかと思いますけれども、この安全に関連をして、残された時間で端的に伺っておきたいと思います。  まず一つ、輸入農産物がいわば荷揚げをされたところで、すぐ業者によってあちこちの県に運ばれてその地域の特産品に化ける、こういうようなことがよく言われておるわけですね。例えば中国やソ連産のワラビ、ゼンマイ、ソバ、こういうものが全部特産品に化けて、また消費者に出ていく、こういう事実があるのかどうか、どれか一つ。  それから二つ目は、膨大な輸入食品が波止場に野積みにされて相当長期間にわたって放置をされる。結果、腐敗その他安全性に非常に問題があるような状態がある。こういう事実、実態はどうか、これが二つ目。  それから輸入食品の検査に関連をして、御承知のように現行、民間機関による自主検査と厚生省による行政の検査と二つあるわけでありますが、こういう現在の検査の状況に非常に問題がある。特に、輸入業者による自主検査なども現状認められておるようでありますが、こういうことは検査という名に値しない実態だと思いますが、こういう点は、やはりあるとすれば早急に改めるべきだと思いますが、この点どうか。  それからもう一つは、厚生省の検査体制、食品監視員の人数その他を含めまして、体制に非常に問題があると言われておるわけですが、この現状どうか。こういうふうに輸入食品が拡大をしていけば、ますます。ある意味では危険の度合いも増すわけでありますから、もっとしっかりと検査をやってもらわなければいかぬ、この点一体どうなのかということ。  最後に、先般輸入たばこの汚染問題、残留農薬の問題が非常に問題になりました。どうもいろいろ話を聞いてみると、本来大蔵省の所管だけれども、大蔵省は検査はやはり厚生省だ、こう言っているようでありますが、厚生省の立場からいうとたばこは食品じゃないからうちの所管じゃない、こういうふうに言われておるようにも聞くわけであります。農水省は農水省でこれはまた余り責任がないような感じの話だ、こういうふうに聞くわけでありますが、こういうことでは非常に困るわけであります。最後にこの輸入たばこの農薬汚染の問題、一体どういう処理をされたのか、あるいはこういう残留農薬の問題などについて、他の食品検査も含めて現状どういうふうになっているのか。以上の点だけ伺っておきたいと思います。
  127. 大澤進

    ○大澤説明員 ただいま御指摘が幾つかの点ありましたが、私ども厚生省が関係している点についてお答えいたしたいと思います。特に輸入食品の安全確保の問題、これにつきましては先生から御指摘なりいろいろ御心配があったわけでございますが、まず全体の概要を先に申し上げまして、あるいは自主検査の問題等についても触れていきたいと思います。  輸入食品、輸入農産物の安全性確保のための検査体制でございますが、現在全国二十カ所に検査をする体制をとっている海と空の港がございます。もちろんそこからしが輸入品は入ってこないわけでございますが、そこの検疫所において食品衛生に関する専門家である食品衛生監視員を配置し、輸入食品が入ってくるたび届け出が義務づけられておりますが、そのたびに食品衛生上の問題がないかどうか、届け出の書類上のチェックから始まりまして、必要なものについては化学的なあるいは細菌学的な検査、こういうものを施し、食品衛生法上違反のあるものについては当然水際で廃棄あるいは積み戻しの指示をし、食品衛生の安全確保に努めているところでございます。今後ともこの体制については十分に整備をしていくつもりでまいりたいと思います。  全般的にそういう形でやっておりますが、御指摘の検査の問題でございますが、今御指摘がありましたように、具体的な検査の場合に行政当局が直接やるものと、もう一つ行政の指導により業者自身が検査をやる、いわゆる自主検査、こういう形で検査を行っておるわけでございます。御承知のとおり、食品衛生法そのものは、食品を取り扱う者、つまり食品営業者、これは輸入から始まってそれを加工したり製造したり販売したり、いろいろな段階がございますが、人間が食べる食品にかかわる業者、この場合輸入業者でございますが、それらを含めて営業者自身が食品の安全なり衛生なりを自分で確認し、本来輸入しあるいは製造し販売しなければならぬ、こういう法体系になっております。そういうことで、自主検査とは、言葉のことはともかくとして、適宜必要なものについては私どもが指示し、しかもその検査機関そのものは食品衛生法に基づく厚生大臣の指定した検査機関、つまり検査機関といってもいろいろなレベルのものがあるわけでございますが、一定のこういう食品の検査をきちんとやれるという特定の機関において客観的にやるよう、こういう指導をしてやっておるわけでございますが、いずれにしましても、今後とも、そういう批判、指摘というものがあるとすれば、私どもも、厳正に、公正に検査がとり行われるよう今後とも指導、指示をしてまいりたいと思います。  それから、残留農薬等の問題でございますが、たばこの問題は、今お話ありましたように、直接食品というものではございませんが、一般に野菜類、農作物について農薬が残っている場合があり得るわけでございますので、私ども、輸入品につきましても、もちろん国内のものにつきましても、残留農薬の基準を一定の作物に定めておりまして、しかも、どういう農薬についてどういう基準かという、農薬ごとにまた規格基準を定めております。それらの基準をきちんと担保されているかどうか監視し、指導し、あるいは検査をして安全に努めているところでございます。  いずれにしましても、私どもが毎日食べている食料の三分の一強は外国から入ってきている、こういうことから、今後とも輸入食品の安全体制、検査体制、監視体制というものの整備充実に努めていきたい、かように考えておりますので、よろしくお願いします。
  128. 浜口義曠

    ○浜口説明員 石橋先生が御質問のたばこの農薬の関連でございますが、私も農林水産省の中で農薬の管理を担当しておりますので、一言御報告を申し上げたいと思います。  この対象の農薬の問題はアメリカたばこに関連するものでございまして、俗称商品名でダイカンバと言われているものでございます。一種の植物生長調整剤的なものでございますが、我が国におきましては、過ぐる国会、四十年代の公害国会のいろいろの御議論を賜りまして、日本の農薬の規制というのはかなり厳しゅうなっております。このダイカンバにおきましては、芝の雑草防除だけに使用できるというきつい規制になっております。そういう意味で、外国から入りますたばこ等のダイカンバの問題、農薬等の問題につきましては、私どもの立場といたしましては、やはりたばこの製品を所管する、具体的には大蔵省でございますが、その今後の対応の推移を見守りたいという態度でございます。
  129. 山田岸雄

    山田説明員 お答えいたします。  私ども食糧庁におきましては、輸入について米麦等は一元輸入ということでやらしていただいているわけでございますが、現在、輸入の大宗をなしておりますのは、御案内のように小麦であり、大麦でございます。大麦は主としてえさ用でございますけれども、こうしたものの食品衛生法上の規制に合致したものが輸入されているかどうかという点につきましては、食品衛生法上規定されております基準の定まっているものが基準以下であるかどうか、輸入されるもののサンプルをとりまして、そうしたチェックを常時行うことによって国内には安全なものを輸入する、こういうことで対応をさしていただいております。
  130. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 時間が来ましたから終わりますが、日本農業新聞の六月五日号の「論説」によりますと、このたばこの農薬汚染の問題について「日本の政府当局は、この問題を極秘に扱うようアメリカ側に要請した」、こういうようなことも書かれておるわけであります。一体政府のどこがそういう要請をされたのか私はちょっとわかりませんが、そういうことをされたのでは、本当にたばこに限らず他の直接口にする食料等の安全検査の問題についても起こり得る、こういう心配を国民としてはせざるを得ないわけでありまして、ぜひひとつそういうことがないように、特にきょう大臣おられませんが、次官等、政治的にそういうことが起こらないようにしてもらいたいと思いますが、あわせて、さっき言いました輸入農産物が地域の特産物に化けるようなことも、これは現行法上野放しになっているのかどうか、もしそうだとすれば、そういうことがないような、やはり立法なり法改正をしなければいかぬ、こう思っておりますので、最後にこの点についての御検討を強く要請いたしまして私の質問を終わります。
  131. 玉沢徳一郎

  132. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 最初に、衛藤政務次官にお伺いいたしますが、きょうも午前中大臣がちょっと触れていたところですが、六月三十日の閣議で加藤農水大臣が発言をした。そうして、断固として米の国内自給方針を堅持する、あるいは食管制度の基本は今後とも堅持する、こう発言して、閣議として了承を得たというようなぐあいに我々は伝え聞いているのでありますが、これはそういうぐあいに、つまり閣議で了承を得たというふうに受け取ってよろしゅうございますね。
  133. 山田岸雄

    山田説明員 お答えいたします。  私どもの農林水産大臣が閣議の席上におきまして、自給を堅持していく、こういうことと食管制度の基本は維持していく、こういう大臣のお考えを発言されまして、それについて他の大臣からの激励の言葉があったということはお聞きしておりますし、また、そのほかに反対された大臣はおられなかった、こういうふうには聞いておるわけでございます。
  134. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ちょっとあやふやじゃないですか。これは閣議で了承を得たのかどうかはっきりしてくださいよ。ただ言いっ放しですか。それはやはり閣議で了解を得たということとは大きな違いがあるわけです。明確にしてください。
  135. 山田岸雄

    山田説明員 閣議の了解がどうかという点につきましては、一般的に閣議了解という点でございますと正式の手続があるように私も聞いておりますし、そういう手続を踏んだ上での御発言ということではなかったわけでございます。
  136. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 衛藤さん、あなたは大臣の代理で来ているわけだが、どうも伝えられているのと今の話と合わせてみると大分違うでしょう。しかし、農水大臣が言うということだけでなくて閣議として明確にするということは大事だと思うのです。  この間、我々も農水大臣といろいろ話をした。大臣はこれに言及して、やはり後藤田官房長官の談話ででも、ひとつ閣議で言ってもらおうかというような話をちょっとしていたように僕は聞いたのですけれども、今の話を聞くとどうもそうでない。やはり近い閣議でやってくださいよ、正式に。あなたに言っても無理かもしれないけれども、しかし、そういう進言をすべきだというふうに思いませんか、どうですか。
  137. 衛藤征士郎

    ○衛藤説明員 ただいま次長から経緯は説明申し上げましたが、五十嵐先生御指摘のとおりでありまして、加藤大臣は六月三十日の閣議におきまして、大臣としての適正な米価の決定についての方針あるいはこのことについての生産者の方々を初め国民全体の理解と納得と支援をいただくためにその姿勢を強く明確に表現した、こういうことは聞いております。また、このことにつきましては、私の手元大臣のこの発言要旨はあるわけでありますが、要するに大臣は閣議で発言し、その後いわゆるメモを記者会見で発表した、こういうことであります。御指摘のとおりまだ閣議のいわゆる正式な決議事項ではないわけでありますから、米の自給方針並びに食管制度の基本の堅持については大臣がかねてから強く主張しておることでございますので、その旨についてしかと大臣にお伝えし、また閣議でのそういう取り運びができるように私の方から大臣に伝えます。
  138. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 よろしくお願いします。  それからもう一つ、ちょっとあらかじめ聞いておきたいのですが、食糧庁は今度決まった生産者米価は、いわば激変緩和というか、きょうも少し質問があったが、後にツケを残すというか、そういうような決め方なのかそうでないのか。これは去年の三・八%で、算定基礎なしなんという投げやりのことではなくて、今度はともかくもああいうぐあいに算定の基礎を一応づけているわけだから、それなりに、午前中も適正な、これは我々は適正とは思わぬが、大臣は適正な米価だという答えをしていたが、つまりそれなりに今年は適正な算定によって決めたものであって、下げ要因の一部を、実はいろいろやかましいことがあったから後に、翌年にツケ回ししたのだというようなことはないのでしょうね。
  139. 山田岸雄

    山田説明員 お答えいたします。  けさほど大臣からも御答弁いただきましたように、私どもとしては年々の需給事情なり経費の実態なり諸要素についてそれを算定方式に入れて算定しているわけでございまして、今回の引き下げ幅を小さくしなければならないために翌年にツケ回しをするとか、そういうふうな配慮はしておりません。それなしに年々適正な米価算定するということで努力しているつもりでございます。
  140. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 米の流通は政府米と自主流通米と自由米という三通りの流通になるわけでありますが、まず政府米約三百五十万トンの買い入れ価格が今回五・九五%ダウンということになったわけであります。そうなりますと、生産者の収入は総体で何百億ぐらい減少することになるのか。
  141. 山田岸雄

    山田説明員 お答えいたします。  政府買い入れ価格マイナス五・九五%の改定ということに伴いまして、粗収入の減については計算上六百五十億円に相当するというふうに私ども計算しております。
  142. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そこで、次に自主流通米、これはおよそ政府米と同じぐらい、約三百五十万トンぐらいになるかと言われているわけであります。それに加えていわゆる自由米がほぼ百万トン、あるいはもっとということであろうと思いますが、これは当然政府米と連動して価格についても動いていくということは考えられる。  これはけさの東京のある新聞ですが、大きな見出しで「政府米が大暴落」と出ているのですよ。在庫負担に耐え切れなくなった一部業者が自由米市場で換金売りに出ている。生産者米価引き下げや今月末の早場米出荷控えで、小売業者も余り引き取る力がない。食味の落ちる夏にはさらに換金売りもふえて、卸売業者の中では倒産も出かねないのではないかということが出たりしているわけだが、いずれにしてもこれは敏感に連動していくことになるだろう。  そうしますと、私の試算ですが、政府米も含めると、今度の米価引き下げに関連して生産者の粗収入の減は全体で千三百億から千四百億ぐらいかな。これは目見当でありますが、そんな感じなのであります。今度の三十一年ぶりの大幅な米価引き下げというのは農家の経済や地域経済に与える影響が極めて大といものがあるというふうにも思いますが、細かい数字は別として、おおよそこういうような傾向がどうか、どうですか。     〔委員長退席、月原委員長代理着席〕
  143. 山田岸雄

    山田説明員 政府米につきましては先ほど御説明させていただいたわけでございますが、自主流通米につきまして、今先生大ざっぱに言って政府米と同じような価格の推移をするのではないかという御指摘でございました。  多少細かく内部を見てまいりますと、銘柄米につきましては、政府米の価格を据え置きましたときにも、自主流通米は価格がどんどん上がっていったというふうな実態もございますし、特に良質米、食味のいいもの、こういったものは政府米とは違った傾向をとるのではなかろうかということも考えられるわけでございます。一方、自主流通米の中でも、政府米と同じようなといいましょうか、代替し得るような品質のものにつきましては政府米と同じような価格の推移をたどるものもあるだろう、こうも考えられるわけでございまして、今先生がざっと御試算なさいました額よりは多少総額が少なくなるのではなかろうかというふうに私は目見当をつけておる次第でございます。
  144. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 いずれにしても、そういうところの大きな減収になる。しかも問題なのは、今年は大幅な米価引き下げということだけではなくて、そのこと以外に実は水田農家の大変大きな所得減の要素がある。今大体私が言った数字よりは少し少ないのではないですかという、今年の五・九五%値下げの影響額全体を上回るような、実は米価以外の農家所得要素がある。そうしますと、まさに二重の大きな打撃になる。今年いわば二回の大きな米価引き下げを一挙に受けたも同様の打撃を水田農家は受ける結果になっているのではないかと思うわけです。私が特に言いたいのは、どうもその辺のところを国民によく知っていただいていない。皆さん方もそういう点について十分にお話しいただいておらぬ。マスコミも余りそういう点については報道しない。米価といったら大騒ぎだけれども、実は米価を超えるような農家の収入減の要素があることをやはり国民によく認識をしてもらわなければ、農家の方だってかなわぬと思うのです。  そこで、私は私なりの試算をしてみて、さっき資料を差し上げたわけです。それをごらんください。  まず第一に、大幅な転作面積の拡大強化がある。今年からの水田農業確立対策によって前年に比べて十七万ヘクタール増の七十七万ヘクタールの転作について、今農家は大変苦しみながら、その目標達成に涙ぐましい努力をしているわけであります。この拡大強化された十七万ヘクタールで去年は米をつくっていたわけです。ことしは米以外の他作物をつくっているわけです。米と米以外の作物の収益格差が当然あるのです。その収益格差は十七万ヘクタールで総額どのくらいになるかということです。  おたくの方から少し資料をもらって見てみますと、これは昨年の実績でありますが、転作の作付の状況というのは、去年は転作対象面積が六十万ヘクタール、このうち水田の預託あるいは土地改良、それに他用途米、他用途米は五万六千ヘクタールくらいでありますけれども、これを除いた転作実施面積が五十万ヘクタール。その作付内訳は、飼料作物で十二万ヘクタール、野菜で十一万六千ヘクタール、麦で九万八千ヘクタール、大豆で八万ヘクタール、ソバで一万三千ヘクタール、永年性作物で九千ヘクタール、その他、豆類とかてん菜とかいろいろなもので七万ヘクタール。  こういうことで見ると、これも日見当の話であるわけだが、米をつくる場合と米以外の作物をつくる場合の収益格差は一ヘクタール当たり大体五十万円くらいかなという感じがするわけなんです。しかし、さっきのような作付の内訳を見ると、これはちょっと人に話したのですが、もっと開くのじゃないかという説もあります。しかし、仮にこれを五十万円程度格差ということで見てみますと、十七万ヘクタールで八百五十億円という計算になる。  その次のところに書いてあるのが、これは転作奨励補助金の問題です。これも細かい内訳は別にして大づかみにつかむためには、昭和六十一年における政府予算額は二千三百二十四億円であった、今年は千八百二十六億円だから、これを差し引きますと減少額が四百九十八億円、前年に比べておおよそ五百億円の農家所得減ということになるわけだ。  三番目には、農協による調整保管の問題がある。四十万トンの調整保管米に対する金利や倉敷料を農家がそれぞれ拠出するわけでありますが、お聞きするところによると、その額が約百五十億円という話だ。  そして四番目には、他用途米の助成は、去年は七万円でことしは五万円で二万円の減額だから、これが二十七万トンと考えるとこれだけで五十四億円ということになる。  それだけの要素を一応そこに書いたのです。そのほかの要素もいろいろないわけではないと思うが、気がついたものを書くとそれだけある。合わせると千五百五十億円余りになる。どうですか、この数字はすごく違っていますか。
  145. 浜口義曠

    ○浜口説明員 五十嵐先生の御試算につきまして、私の方から二、三申し上げさせていただきたいと思います。  まず第一点は、②の「転作奨励金の減額」でございますが、先生の御指摘の点は国家予算に計上された部分ということだと思います。これは具体的な数字を申し上げますと、このほかに畜産振興事業団等からのものが七十五億円計上されておりまして、全農の系統を通じまして今回の水田農業確立対策のお金として農家に入る前提になっております。さらにまた、この水田農業確立対策というのは極めて大きな事業でございまして、これから水田に対しまして米専作の農業から多様な作物をつくっていこうという、生産的といいましょうかあるいは構造政策的なもので、これに関連いたしまして、農林予算の上では特に関連対策事業を約三百三十億円やっております。そういったようなことが一つございます。  それから、先生既に御指摘の第一段のところにおきまして、従来の米と転作作物の格差を反当にして五万円ということでございますが、各地域においていろいろだと思います。北海道におきましても、時系列的に見ますとぐっと差が縮まったときもあります。そういう意味で、これからつくっていく作物の値段といったようなものによるものだろうと思います。  また、もう一点言わせていただきますと、この反当五万円、そういうようなことが一つ頭にありまして、私どもの今回の補助金については、基準額二万円、加算額二万円、さらに一万円、計五万円を計上させていただいておるところでございます。
  146. 山田岸雄

    山田説明員 続きまして、「農協による調整保管経費負担」といたしまして、先生の方で御試算なさった百五十億、これは農家の拠出金の総額であろうと思うのでございますが、御案内のとおり、この調整保管をやらざるを得なくなりましたのは、昨年の豊作一〇五に基づいてそういうことが起こったわけでございまして、その一ポイントが約十万トンということになりますれば五十万トンくらいだろう。五十万トンがトン三十万円ということでございますれば千五百億、こういうことにもなりますし、この辺をどのように考えて評価すればいいかという問題もあろうかと思うわけでございます。  さらに、「他用途利用米の助成の減額」でございますが、この点につきましては、確かに私どもの助成はトン七万円から五万円にさせていただいたわけでございますが、この他用途利用米は、実需者と生産者団体との間の交渉で一応値段が決まるものでございまして、最終的には、この助成の減額されたものの一定の部分は実需者サイドの負担ということにもなりまして、六十キロ当たりで七百九十円くらいの減になっておるのではなかろうか、こう考えられるわけでございます。そういたしますと、この五十四億円という計算につきましても、三十五億円か何か、それくらいの概算ではなかろうかというふうに計算されるわけでございます。
  147. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 時間がないから余り細かい話はしておられないし、今またこうしてお話ししているというのは、余り細かいことについてどうこうと言うよりは、少しマクロに、全体の輪郭をよくつかんで、そして日本農業の方向だとかいうようなものを論じていかなければいけないわけだから、余りに小さなことばかり言っておったってしようがないわけです。そういう意味で言っているのだから、まあそう聞いてください。  僕の計算では千五百五十億くらいになる。お話によれば、もちろんそれぞれ金額が若干違うという点もあるでしょう。しかし、いずれにしたって大変な金額になることは間違いがない。今、米価引き下げ、しかも大幅な引き下げというので大騒ぎしているが、考えてみると、実はそれを上回るような農家所得減の要素が今年同時に出てきておる。しかも、今言いましたそこに出した四項目の千五百五十億というものは、そのほとんどは正味ストレートの所得減だから、米価の粗収入減というよりはもっときついわけですね。そういう要素も考えれば、全体で言うと、仮にそれを全部米価に換算をすれば十数%、いや、二〇%近いような数字にならないものではないのだ。これは大変なことですよ。  今年の米価引き下げの非常に大きな問題は、そういう前段の農家所得減というものを踏まえておきながらこういう六%近い大幅な生産者米価引き下げというものを行ったこと、これはやはり暴挙と言わなければだめだと思うのですよ。仮に給与所得者の皆さんに十何%、ことしから給料を引き下げるなんということを言ったらどういうことになりますか。これはそういう事の重大性というものをひとつよく認識をしてほしい。これで法の言う再生産所得の補償の米価なんということが言えるわけですか。まあ、答弁を求めたって決まった答弁しか出ないのだろうから求めてもしようがないようだが、しかし、答えたそうな顔をしているから、余り細かいことはいいから、気持ちのところをひとつ言ってください。
  148. 山田岸雄

    山田説明員 私どもといたしましては、生産者米価につきましては御案内のとおり、食管法規定されるところによりまして生産費物価その他の経済事情基本にいたしまして、さらには農家の再生産確保する、こういうことで算定させていただいているような次第でございまして、確かに先生御案内のように、米作をめぐる周辺部分に厳しい事情のあることは私どもも十分理解の上で、さらに今後の長期的な価格政策のあり方、こういうふうなことにも意をいたしながら今回算定させていただいた次第でございます。
  149. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そこで、これではとにかく専業農家が参っちゃう。私は北海道ですけれども、多額の負債の償還をしょいながら専業農家の方が先に参っちゃう。あなた方の思惑とは違って、中核農家の育成どころか中核農家から参ってしまう。私はこれが一番大変だと思う。そういう危機感はお持ちでしょう。
  150. 山田岸雄

    山田説明員 先生御指摘のように、中核農家ないしは専業農家のうちで稲作所得に依存する部分が多い農家におきましては、米価引き下げられることによる減収分と粗収入の減というのは確かに大きいわけでございます。あと考えられますところの問題といたしましては、そうした大規模農家におかれましては一般的に生産費等も安い、こういうふうなこともございまして、単位当たりで見ればその所得等は多いわけでございますけれども、それに依存する度合いが――他産業から得られる収入寺少ないわけでございますので、そうした影響の大きいことは私どもも十分理解しております。
  151. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そこで、こういう物すごい厳しい中で、しかし農家の皆さんはとにかくもう土にしがみつくようにして毎日働いているわけですね。きょう午前中、加藤農水大臣の言葉をかりて言えば、土に生き、土に死ぬというような農民をという言葉があったが、本当にそうだと思う。やはり、こういう一生懸命土にしがみついて何ぼ苦しくても何とかしていこうと思って頑張っている農家の皆さんを政府は見殺しにしてはならぬということだ。十分な配慮というものをこの際しなければならないのではないか。それは、政策価格を下げるなら、当然そのコストを下げることの裏づけになる政策が同時に、あるいは同時というよりは先行して行われなかったらおかしい話だと僕は思う。  きのう、参議院の農水委員会加藤農水大臣が答弁で、生産資材の引き下げについて、いやしくも輸出価格と国内の農家価格に差があるのは絶対に許さない、こう答弁したと新聞は伝えておる。きょうも同僚議員が質問していたところでありますが、大臣はこう言っているのだが、問題は食糧庁だ。あなた方が本気になってこれらの問題に取り組むかどうかということだ。私はさっき同僚議員の質問に対する答弁を聞いていたけれども、何だかどうも、機械の種類が向こうとこっちでは違うんだ、最近はこんなぐあいになっている、まるでメーカーの代弁をしているような話が主でないですか。格差がないというのですか。それは最近大分直ってきたというのは、つまり今までそれだけあったからでしょう。しかもそれで解消になったのですか。これははっきり責任を持ってもらいたいと思う。生産資材を引き下げていくことのための責任を持ってもらいたい。関係のところとよく話をして行政的に明確に責任を持ってもらいたい。お答えください。
  152. 浜口義曠

    ○浜口説明員 先ほどもお答え申し上げたわけでございますが、第一点に生産コストの中で占める割合、これの農業資材の割合は極めて高こうございます。こういう点につきまして、構造政策の実施に加えまして、生産資材の節減が重要な課題であるという認識を十分持っております。この対応といたしまして、具体的な生産資材の交渉におきましては、農家の代表であります全農とメーカーというものが第一義的に行いますけれども、私どもそれを前提にいたしまして、さらに一層の削減のための努力をしてまいりたいというふうに考えます。
  153. 衛藤征士郎

    ○衛藤説明員 五十嵐先生御指摘のとおりでございまして、また午前中も大臣がそのように確たる御答弁をされたわけでありますが、政務次官の私としましても、関係各局督励しまして大臣の御指摘のとおり、御答弁のとおり、運びをさせていただきたい、そのように考えております。
  154. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ぜひひとつ本気になってやってほしい、毎年問題になることなんだから。そうして、それはやはり我々側だって農家の人たちだって実際にはなかなかわからないですよ。それはおたくの方は専門なんだから、よく調べて違うところは農家の立場でしっかりそれを是正するようにやってください。責任を持ってほしいと思います。  次に、同じようにコストを下げていくということのためには基盤整備事業の問題が大きい。殊に、これの負担軽減についてお伺いしたいと思うのです。  どこ近年、政府予算のマイナスシーリングなど大変厳しい財政制約というようなこともあって、予算額の減少、それから補助率のカットが強いられてきている。あるいは甚だしく整備期間が延長する、薄く延ばすから。そのために工事額が高騰する。ですから受益者の負担が著しく増加を見ているわけであります。  ついこの間の米審で、農水省が米審委員の要求に応じて提出した資料を見せていただきましたが、これによりましても、十アール当たり圃場整備事業の事業費は昭和五十年に四十万四千円、これが年々増加して、六十二年では九十四万二千円と二・三倍になっているわけであります。あるいは工期も、五十年には九年でありましたのが六十二年には十四年と大幅に、その資料によりましても延びていることが明らかになっているわけです。私の地域のところなんかを見ましてもそういうことがいっぱいあるんですね。ついこの間もいろいろ事情を聞いたんですが、工期が十三年もかかっておる、事業費は当初計画に比べて二・七倍、したがってまた受益者負担も二・七倍の負担を余儀なくされている。こういう例は枚挙にいとまがないわけであります。年々の償還でも回ないし五ヘクタールくらいのところで、元利償還でやはり百万を超えるというようなところもざらに出てきているわけであります。  先月、北海道の水田発祥の地の大野町というところがあるのでありますが、ここで八十六戸の農家がついに事業の返上を決めた。工事の一部が中止に追い込まれまして今問題化をしているわけであります。これも事業が着工後十五年間過ぎても完成しない。しかも四割を超す減反や米価抑制の中で、もう負担に耐えられぬということがその大きな理由になっているわけであります。私は北海道、旭川なんでありますが、道北地域なんかを見てみましても、もうあそこらで御承知のように宗谷線なんかへ入っていきますと、七割くらいの減反になっている。そういう中で農家が負担に耐えかねて農協の組勘の償還返済をやめさせるというようなことで、土地改良団体も基金が底をついてしまったということで困っているところもあちこちあるようなんであります。  既にこういうような状況の中で、前段申し上げましたような今年は著しい農家所得減がある、米価引き下げがあるということになっては、もうこの負担に耐えられないというところが続発してくるのは当然のことだと思わなくちゃならないというふうに思うわけなんです。  そこでこの際、毎年問題になっているところではあるが、今年はこういう事情なんだから、こういうときにやはり皆さんは農家の皆さんにその施策を明らかに講じてほしい。例えばこの際、政府は長期低利での既往債の借りかえ措置などができないか、あるいは期限の延長や利子補給などを検討してはどうか。また新規事業実施についても、言われておりますように工事内容の再検討、そしてできるだけ施工費を低減する、あるいは工期を短縮する、金利をできるだけ安くしていくなどの償還負担の緩和がなければ、これは幾ら予算がついたって受け入れるものでないということになるのではないかというふうに思うが、この際、ぜひ前向きのお答えをいただきたいというふうに思います。
  155. 鴻巣健治

    ○鴻巣説明員 今御指摘のあったような事情に加えまして、やはりかって私どもがやっていました圃場整備ですと、沖積平野のど真ん中をやっていたから比較的安上がりにできたのですが、最近はかなり傾斜地の多い山にかかっていますので、動かす土地の土の量も多いというようなこともございますし、それから兼業化や老齢化が進むものですから、かつてはみんなで道普請をすれば済む、あるいは溝さらいもみんなで共同でやれば済むところが、最近はなかなか人が集まらないので道路も水路も舗装するとか、あるいはもうコック一つひねれば水が出るパイプラインにするというような選択が多くて、かなり整備の水準が高くなったことも一つその要因にあると思っております。   そこで、私ども二つ、三つ考えておりますが、負担金を軽減するために、まずやはり圃場整備をするときに、なるべく等高線沿いにずっと圃場をつくっていくというようなことでできるだけ事業のコストの低減を図りたいということが一つ。それからもう一つは、やはり整備水準といいますか、整備の内容も今申し上げましたように幹線道路も支線道路も舗装するかしないか、あるいは用水路や排水路を舗装するかしないかで大分違うのです。私ども試算いたしますと、今の県営の圃場整備の公庫資金、補助残融資を借りますと、四・七五%で計算しますと、今大体平均反当、つまり十アール当たり二万円ぐらいでできるのが、全く道路も水路も舗装しないと大体その半値ぐらいでできちゃうのです。そこで、これからは土地改良区に整備の水準を示して、水路を舗装するかしないか、幹線道路を舗装するかしないか、支線道路を舗装するかしないか、それによって、いろいうな組み合わせてその事業費なり農家の負担がこんなに変わる、どれをとるのかということを示したいと思っています。これはできるだけ早くやりたいと思っています。きょうにも出したいと思っています。というのは、もう既に六十三年度の地区のヒアリングが現地で始まりますから、できるだけ早く構造改善局長通達で整備水準の選択制を導入したいと思っております。  それから三つ目は、おっしゃるようにどうも新入生というか新規採択が多いので、在学生つまり今までやっている地区がどうしてもおくれるので、市町村長や土地改良区の理事長さんから見れば、できるだけ新規地区に入れてもらいたいという御希望がありますが、そこはできるだけ我慢していただいて、既存の着工地区の方の卒業を早めるように何とかしたいと思っているのが三つ目でございます。  それから最後に、借りかえはどうかというお尋ねがありました。これは本当に難しいと思います。  実は、お隣に座っています辻一彦先生の多年の御主張がございまして、福井県の某地区の国営農用地開発の負担金が重いものですから、昨年償還条件の改正を持ち出したのです。大蔵省はなかなかうんと言いません。ついに私も腹に据えかねまして、それならもっと安い金を系統からでも借りて理財局に返しちゃう、受け取ってくれ、こう言ったのです。これはたしか二、三十億の金だったと思います。そうしたら大蔵省が、それだけは絶対困る、それをやられるとほかに波及する。じゃ、ほかに波及しなくても、おれも辻先生にここで数年怒られているんだから、この辻先生の地区だけでも返すから受け取ってくれ、それも困る。なぜ困るかというと、どうも聞いてみると、御承知のとおり、これは釈迦に説法ですけれども、財投資金の原資はもともと郵便貯金。郵便貯金は当然郵便貯金を預けている預金者がいる。それにかつてかなり高い金利で約束して預かっている。今返されてもこの低金利時代、今度高い金利をその預金者に払えなくなる、そういう問題がある。絶対困るという話で、結局それができなくて、最後に償還条件の改正というか緩和でようやく問題を乗り切ることができたわけです。  そういう意味で、財投資金の借りかえというのは本当に私どもやりたいと思っていたが、これが今言ったような事情があるので一番難しいと思います。しかし、やはり負担の大きな地区の問題をどうするか、何かいい方法はないかという御提言でもございますので、非常に難しい問題でございますが、なお慎重に検討させていただきたいと思っています。
  156. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 いろいろ御検討いただいているようで、ぜひひとつ頑張ってほしいというふうに思うわけであります。  新規事業についてはおおむねお話しのようなことでひとつ頑張ってほしい。問題は既往債務の問題で、ただ考えてみると、そう例はないだろうが、国鉄に対するものだとか、国有林もそうですね、そういうものについてなどは利子補給の例がある。最近終わったような事業は大抵六分五厘ぐらいで借りているわけですな、最近は四分七厘五毛ですか。とにかく何か方法はないか。この間も大臣といろいろこの話をしているときに、やはり個別対応でならば考えていかなければいかぬだろうなというような話はしておりましたが、しかし、そんなことだけでなくて検討しなければいけないなということでもありました。少なくとも返還が非常に困難な条件、例えば非常に転作率の高いところ、せっかく投資しているのにそれも使えないというところなどは配慮が必要ではないか。あるいは事業に特別な事情があるというようなことで、特に受益者の負担が多いというところについては何か考えるべきではないかというふうに思うのであります。  今局長のお話では、何か考えられないかと思うというようなお話がありましたけれども、重ねて、ぜひひとつ前向きに取り組む。これもしかし、今のようにみんなが非常に動揺している時期ですから、やる以上は早くなければならないわけで、大体いつごろまでにこの際検討をしてみたいというようなことについて、いま一つ踏み込んだお答えがいただければありがたいというふうに思うわけなんです。これらの手厚い施策というものがなければ、構造改革を助成する政策とはなり得ないわけです。単に国家財政を幾らか負担を軽減するということだけの問題に終わる。農家を見殺しにするという結果に終わってくるわけで、ぜひ将来に対する展望を持ち得るような政策判断をこの際強く要望したい。そんな意味で、もう一度お答えをいただけないでしょうか。
  157. 鴻巣健治

    ○鴻巣説明員 先生の段々の御指摘のとおりの問題があると思います。  今まで数年この問題が言われでなかなか実施ができてないのには、いろいろ背景があると思いますが、主なものとして、先ほど先生もおっしゃったように、今この財政のきつい時代は、むしろ今まで事業費を伸ばすために補助率をカットしてきたような時代に、ある特定の償還ができなくなった地区については、むしろ補助率をいわば結果的に高めて事業費を圧縮するような話をやるわけですからすごく難しいなという感じと、それから、これが数年言われてなかなかできなかったのは、例えば私ども今国費で八千億ぐらいの事業費を預かっておりますけれども、最後に百億、あるいは十億でもいいですが残ったときに、それをどうするかといいますと、やはり新規の圃場整備がいいとか農道の新規の地区をとってくれということにするか、それとも非常に困った何地区かのそういう利子補給に使うかというような話になると、最後の土壇場は、やはり新規の地区が欲しいと市町村長さんもおっしゃるし、土地改良区の方もおっしゃるものですから、どうしてもそちらの方に貴重な金を使ってきたというのが今までの経緯だろうと私は思っています。  そういう意味で、段々の御主張でございますが、今のような非常に難しい背景がございますが、今のお話のようないろいろ厳しい事情でもございますので、私どもの方も慎重に検討させていただきたいと思っています。
  158. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 どうもありがとうございました。
  159. 月原茂皓

    ○月原委員長代理 辻一彦君。
  160. 辻一彦

    ○辻(一)委員 既に各委員からいろいろと質疑がありましたので重複を避けていきたいと思いますが、基本的に一点だけただしたいと思います。  私は、ほかの委員も触れましたが、米審を丸一日空転させたという例は今まで余りなかったのではないかと思うのです。その点では、前広米審も二十四日に早くから取り組みながら、なお米審を招集して一日空白をもたらしたということは非常に遺憾であったと思っております。  そこで、今回政府米審諮問する過程を見ると、今までは米審の答申後にいろいろ政治加算が行われているのが常であったわけでありますが、今回は諮問前に事前協議の名のもとに引き下げ幅の圧縮が事実として行われた。私たちの立場からすれば、引き下げ幅の圧縮ということは結構なことです。しかし、こういう過程を経て諮問案が固まっていくということを見ると、米審が形骸化をするおそれはないか、こういう懸念を持つのであります。米審のあり方とあわせ考えて、米審形骸化のおそれはないかどうか、この点について基本的に伺っておきたいと思います。
  161. 衛藤征士郎

    ○衛藤説明員 先ほどもお答えしたところでございますが、辻先生御案内のとおり、本年は答申をいただいた後に政治加算はしない、そういうふうに進んでおるように思うのでございます。昨年ああいう形で答申をいただきましたけれども、結果としては三・八%圧縮ということで政治加算が行われた。この件につきましては米審の諸先生方から、先生御指摘のようにこれは完全に米審を無視し、また形骸化の方向に進んでいるのではないか、そういうような強い不満やあるいはおしかりを受けたところでございます。その反省に立ちまして、本年につきましては、前広米審後事前に十分に各方面との折衝をいたしまして諮問米価を決定し、御審議をお願いすることの方がむしろ米価審議会そのものを最大限に尊重することになるのではないか、こういうようなことでございましたので、御理解をいただきたいのでございます。
  162. 辻一彦

    ○辻(一)委員 いろいろと論議をされておりますから、時間の点から多くは触れませんが、米審を尊重していく、形骸化の懸念が起こらないような努力をぜひひとつしてほしいと思います。  そこで、米価算定の基準について、時間の点から多くは伺えませんから、一つだけお伺いしたいのです。  昨年私は、八月五日でありますが、この委員会で、状況を見ると来年はさらに米価引き下げの方向が強まることを直感いたしました。したがって、この引き下げ幅を極力圧縮する一つとして、かつて取り上げておった企画管理労働を導入するということは一つの大事な要素ではないかと考えたわけであります。したがって、このためにどのくらい稲作労働の中で企画管理労働費がかかっているかということをただしたのでありますが、具体的な実態調査昭和四十三年に行った数字以外ないということでありました。したがって、この管理労働稲作に附帯する労働であって当然組み入れるべきである、しかし数字がはっきりしない、実態がはっきりしなくてはこれはなかなか問題があるであろうから、ぜひ農林省、政府において調査を行って具体的な実態を把握すべきではないかということをただした。それに対して、そこにお見えになっている山田次長は、農林省の統計情報部と相談して協議をしたい、こういうことであったのですが、先ほど統計情報部長から経緯については概略ちょっと伺いましたが、一応正式にひとつどういう経緯であったかということを伺っておきたい。
  163. 山田岸雄

    山田説明員 お答えいたします。  昨年の本委員会におきまして先生から御質問があり、答弁させていただいたことを私も記憶しております。お答えさせていただきました以降におきまして統計情報部の方と相談をさせていただいたわけでございますが、いろいろ問題があるという点につきましては、今までの生産費等は圃場主義で行われておりまして、それ以降のものにつきましてどういう中身のものをどのように調査するか、こういう問題もありますし、また私どもがその調査をしていただいた結果につきまして、それを米価算定に織り込み得るか、この辺もなおはっきりしていなかったような状態でございます。  といいますのは、従来からの算定の中身といいますれば、必ずしも大規模な経営者報酬が払われてしかるべしといった規模生産者を対象として私ども米価算定をやっていないことは御案内のとおりでございまして、今の生産費対象農家に全部企画管理労働といったものを織り込んで算定すべきかどうかなお問題がある、こういうふうなこともございますし、私ども最終的には統計情報部の方にぜひやってくださいというところまでは申し入れかねたような実態でございます。  さはさりながら、今年の場合におきまして、今の実態といいますものが、なお将来に向かいましては規模拡大の必要性なり、また大型の経営をやっておられる方々が周辺部分の小規模の方々の面積を集積していただきながら規模拡大をしていただいておる、そういった問題なり、今後は企画管理的な労働といったものもそういう方々にとってはますます重要になってくるのではないか、こういう点にも配慮いたしまして、今回の算定におきましては、古いデータではございましたけれども、私どもの持っておりますところの調査結果を採用させていただきまして、それに生産比率でございますか、一・五ヘクタール以上規模層生産比率を掛けさせていただきまして、企画管理労働を今回の米価算定に織り込ませていただいているというのが経過でございます。
  164. 辻一彦

    ○辻(一)委員 いろいろな御判断があったわけでありますが、実態はまあ把握されていないということになると思います。私は、農林省に本当に農民に対する思いやりがあれば、去年から来年の米価はどうも下がる懸念がある、だから算定要素をひとつよく考えて、こういうものが導入されれば米価が大幅に下がることは少しでもとめられるのではないか、こういう思いやりがあれば、それを使うか使わぬかの結論は今日判断されるのでありますけれども、調査はされてしかるべきでなかったか、こういうふうに思いますが、それはそれとしておきましょう。  そこで、一時間という算定の基準は今ちょっと伺ったのですが、例えば私が去年指摘したのですが、全国農協中央会では今も約一・九、二時間という数字を挙げております。それから、私のところの福井県の農業会議所が二・三ヘクタールの農家についてかなり詳しい調査をしていますが、その中身を見ると、合わせて五・七時間という数字を一応出しておるのです。これは集会への参加一・九時間、技術習得一・二時間、資金調達〇二一時間、雇用調達は別として、経営設計〇・四時間、それから簿記記帳に二時間、合わせて五・七時間。全中が言っていも二時間とはかなり開きがあるのでありますが、二・三ヘクタール程度というと、これはなかなか熱心な、これから一生懸命やっていこうという農家になる。小面積の農家の場合、兼業農家の場合は必ずしも毎日厳密な記帳をやったり、冬じゅう稲作の勉強にあちこち研修に行ったりということは時間の点からなかなかできない場合が多いのです。しかし一定規模以上の農家は、むしろこの困難な稲作の中でこれを克服したいというので相当時間をかけていると思います。したがって、私はこの全中が言う二時間は全体をならしての時間であると思いますが、もし二ヘクタール以上とか、そういう相当な規模農家に限って言うならば、より多くの時間を企画管理労働にかけている、このように推察できる。その時間がどれぐらいかということがわからないから、去年しっかりそめ調査をしてくれ、こう言ったのです。それがされていないとすれば、この全中で出している農業団体の二時間、その半分を見ているのですが、私はむしろ上の方の大きな規模の方に目を向けるならば、より多くの時間がかかっている。したがって、この一時間の評価は寡少に過ぎると思いますが、いかがですか。
  165. 山田岸雄

    山田説明員 お答えさせていただきます。  今先生御指摘の農業団体の方の調査結果につきましては、平均が一・九時間とかいうふうに聞いておりまして、中身は相当個票におきましては振れがある、こういうふうに伺っておるわけでございます。といいますのは、多分この企画管理労働の定義づけなり、また同じ名前の会合でありましても、それが果たして正式にどういうふうな時間の使い方になっておろうかとか、この調査につきましては非常に難しい調査技術的な問題もあろうかと思います。そういうこともございますので、私どもといたしましては、現在四十三年産米調査していただいておった結果につきまして、一応生産性相当分、こういうことで一・五ヘクタール以上の生産性相当分ということで計算させていただいておるような次第でございます。  なおこの問題につきましては、稲作担い手に焦点を置いた米価算定方式のあり方というものも、今後早急に検討していかなければならないというふうに米価審議会でも指摘を受けておりますし、私どももこうした問題を今後どのように取り扱うかということは、十分研究してまいりたいと考えております。
  166. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は、この数字をもう少し大きく見れば、一俵千円以下の下げ幅に抑えることも可能であったと思うのですが、しかしそれは何時間要ったかということは水かけ論になりますね、実態を知らない限りは。そういう意味で、この企画労働費調査については、農林省としてことしは厳密な調査を正確にやってほしいと思いますが、いかがですか。
  167. 山田岸雄

    山田説明員 先ほど申し上げましたように、価格算定方式につきましても米価審議会で十分検討するように、こういう御指摘もいただいておるところでございますし、統計情報部の方とも協議しながら前向きに検討してみたいと思っております。
  168. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今度はやるのでしょうね。
  169. 山田岸雄

    山田説明員 私のところで直接ではございませんので、今先生の御指摘の点も十分踏まえまして前向きに検討させていただきます。
  170. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それでは第三に、実は私この間しばらくの時間でありましたが、パリのOECDへ行ってビアット農業局長に会ってまいりました。農林省から会談を申し入れていろいろと便宜を計らってもらって、その点は感謝をしたいと思います。時間は必ずしも十分じゃなかったので、残した質問は文書によってOECDの日本代表部から電報で外務省、農林省にもたらされて私も手元に入手をしておりますが、中身は、詳しいことは別としまして、こういう問題を五、六点出しておきました。  それは、ほかの主要な諸国が食糧の自給率を向上させている中で、我が国のみがそれを大幅に低下させてきた。現在程度の自給率の維持は重要なる国家目標であり、特に米の完全自給は譲ることができない、そういうことについてOECDの農業局長としてどういう見解と理解を持つか、こういうことを幾つかの項目とあわせて尋ねました。それに対してビアット農業局長は、諸外国において自給率が向上している中にあって、日本においては自給率が比較的低く、さらに徐々に減少していることは承知している、この傾向が他国土比べて異なっていることは認識をしており云々と、あと述べております。  これを見ると、私は、加藤農相もOECDに出ていろいろと奮闘してもらったのですが、日本の食糧自給率がほかの国に比べて低いということ、しかもそれが下がる傾向にあるということ、こういうことについて日本の特殊性はOECDにおいてもかなり理解をしている、認識をしているという感じで受けとめたわけですね。したがって、こういう中で我が国の実態を考えてみると、小麦はかつて、戦後四九%自給をしておった。それが輸入小麦によって四%に自給率が落ち込んでいた。転作によってようやく一二%まで引き上げた。米に市場開放の道を開けば、私は、小麦と同じような方向をたどるのではないかと思うのですね。我が国が独立した国家として、その国家目標として食糧自給率をこれ以上は下げないという決意があるならば、その自給率を守る最大の力は米の完全自給である、こういうふうに考えますが、この点から考えて、米の国内自給、輸入をしないという断固たる決意をもって外国に対してもあくまでも主張すべきであるし、頑張っていくべきである、こういうように思います。再三繰り返すことでありますが、あえて政府の見解をこの際もう一度明らかにしていただきたいと思います。
  171. 衛藤征士郎

    ○衛藤説明員 辻先生にお答えを申し上げます。  先ほども他の委員にお答えを申し上げたのでありますが、六月三十日に加藤大臣が閣議で特に発言を求めての御発言があったわけであります。それは米の自給並びに食管制度の基本の堅持についての発言でありましたが、米は我が国の主食、国民の主食でありますし、また農業の根幹をなすものでありますし、また、水田稲作は国土や自然環境の保全上不可欠の役割を果たしておるのみならず、我が国の伝統的文化の形成とも深く結びついておる重要な基幹作物でもあります。このような米の重要性にかんがみまして、昨年十一月の農政審報告を尊重し、生産性向上を図りつつ、今後とも国内産で自給する方針を断固堅持していくつもりでありますし、また、大臣の仰せのとおり、食管の根幹についてはこれまた断固堅持していくということを申し上げたいと思います。
  172. 辻一彦

    ○辻(一)委員 政府の決意のほどは承知いたしました。  そこで、委員長、当然この委員会でも米の自給、輸入をしないということについてはしかるべき決議を行うべきであると思います。いろいろ御勉強いただいておるようでありますが、ぜひひとつこれは取り計らっていただきたいと要望いたしたいと思います。いいですか。
  173. 月原茂皓

    ○月原委員長代理 要望を承っておきます。
  174. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それから、この間OECDで聞いてみると、ビアット農業局長も、農業保護の削減であるとか農業助成の削減は漸進的に徐々に行うということと、バランスのとれた、言うならば輸出国と輸入国とは立場が違う、こういうバランスを考えてやるということと、もう一つは、多国間ベースでやらなくてはいけないということを言っておるのですが、アメリカはどうも今の状況を見ると、多国間でやっておるとらちが明かぬ、さっぱり進まない、こう見て、二国間協議を強力に、執拗に申し入れてくる、迫ってくる可能性が十分にあると私は思うのです。こういうアメリカの要求ははっきりと拒否すべきである、このように私は思いますが、政府の見解はいかがか、ひとつお尋ねしたい。
  175. 衛藤征士郎

    ○衛藤説明員 お答え申し上げます。  アメリカが要求してくるであろういわゆる米の二国間協議でありますが、この米問題についての二国間協議は、政府としては全く考えておりません。
  176. 辻一彦

    ○辻(一)委員 米の話が出たので、ちょっとこれは食糧庁に要望といいますかただしたいのですが、おととしアメリカへ貿易摩擦、農業問題というので十日ほど行ったときに、最後に駐米の日本大使館へ行きまして、久しぶりだから日本食をと言って出してくれた米はカリフォルニア米です。食べられるでしょうと言うんですね。食べてみました。私は福井ですから、コシヒカリがあるから、それに比べれば味は問題にならない、こう思いましたが、とにかく食べられるんですね。今度はOECDへ行って、日本代表部が晩に、せっかくだからというのでいろいろな話を聞かしてくれて、同時に和食を出してくれた。それも加州米なんですね。行ったところの在外公館は全部アメリカの米をみんなに食べさせている。なぜ日本の米を、日本の米はこれだけ味がいいんだということで、久しぶりに来た日本のお客さんあるいは外国の人に食べさせることができないのか。これは米の輸出を禁止しているから法律的に米が出ないということで、今のままならやむを得ないのですが、せめて各国公館の大使が会食に消化するぐらいは日本の米を、日本の一番いいコシヒカリやササニシキ、名前を言えばいろいろ問題があると思いますが、味のいい米を少し送って、外国に日本の一番いい米はこんなだということで紹介することができないか。そういう意味で在外公館の大使ぐらいには米を少し渡せないかどうか、これについては法律的に難しさがあると思いますが、いかがですか、何か方法はありませんか。
  177. 山田岸雄

    山田説明員 お答えいたします。  食管法の問題としましては、これは私十分調べておるわけではございませんが、多分そう問題はないのではなかろうか、このように思うわけでございます。在外公館の接待用といいましょうか、そういうふうなものについて外務省の方で十分予算が確保され、私どもから見れば国産のお米を利用していただけるかどうか、この点につきましては外務省の予算執行上の問題もいろいろあろうかと思います。したがいまして、ここでその辺について確たる見通しを私から申し上げることはできないのでございますが、よろしく御理解いただきたいと思います。
  178. 辻一彦

    ○辻(一)委員 食管法上問題がないとすれば、ひとつ農林省としては外務省と協議をして、在外公館にもそういう希望が、気持ちがちらちらあるのではないかという感じもしましたから、これは一遍農林省と外務省、ここに外務省の代表がおられれば聞くのでありますが、それは今できませんから一遍協議をしていただきたいと思います。いかがですか。
  179. 衛藤征士郎

    ○衛藤説明員 辻先生の御指摘の件もよくわかりますし検討はいたしますが、ただ何もかもいわゆるメード・イン・ジャパンをそれぞれ外国に持ち出して、すべてそれをということになりますといかがなものかなという面もあると思います。例えば我が国の乗用車を全部日本から持っていって、日本の国産車ばかり外国で乗るということにもちょっと問題もあるような気がしますし、その辺のところも深く考えながら検討してみたいと思っております。
  180. 辻一彦

    ○辻(一)委員 より大きな摩擦を起こしては意味がないわけですが、これは十分検討してもらいたいと思います。  次に、幾つかお尋ねしたいことがありますが、かなり時間が限られておりますから、今の状況で米の値上げ、据え置きもなかなか容易でない、難しい。ことしは現に、残念ながら五・九五%引き下げにならざるを得ぬ状況にありますね。非常に残念です。その中で米の生産費のコストダウンを図るということは非常に大事なので、一つは、今もお話がありましたように生産資材の引き下げ、それから基盤整備に力を入れるということが非常に大事だろうと思いますけれども、それらのことはきょうは時間の点から割愛して、米の生産費引き下げていくために大型の乾燥施設がどういう役割を果たしておるか、これは要望は非常に多いのでありますが、いろいろな見方があるようであります。  私は、一戸一戸の農家が乾燥設備を自分の納屋につくって重油を夜中じゅうたく、そういう設備をつくっておるよりも、大型の施設でまとめてやるならば生産費のダウン、下げることになるのじゃないか、こう思いますが、それらについての見解と、それからどういうふうに大型乾燥設備がこの要望にこたえて進んでいるか、実態についてちょっとお伺いをいたしたい。
  181. 浜口義曠

    ○浜口説明員 先生御指摘のカントリーエレベーター等の大型乾燥調製施設の導入の問題でございます。  まず、先生御指摘のとおりでございまして、直接の効果がどういうものであるかということを考えてみまするに、個別農家におきます乾燥機あるいはもみすり機といった機械設備の過剰投資の抑制が一つできるんではないかと考えられます。またこれは、米の生産を担っていただく大型、中型の担い手層と考えられます農家層におきまして、乾燥調製作業と収穫作業との競合によりまするところの頻出事故、あるいは過重労働の回避ができるんではないかと考えられます。このほか、消費者の立場に立って考えますと、高品質かつ均質な米の安定供給にも資するのではないかというような点が挙げられようかと思われます。  また、この施設の機械は大型のものでございますし、受益面積もかなり規模が広いわけでございます。そういった際に、この大型乾燥施設を導入する際に導入地区において十分御議論を賜りまして、品質の調製あるいは作業の計画化、そういったような御議論をしていただいて、農業の収穫作業を初めとする生産の組織化がこれから促進されるのではないかというのが間接的なメリットとして挙げられようと思います。  あわせまして、ばら貯蔵あるいはばら出荷をあわせて行うということになりますれば、保管、出庫、流通の面においても大幅な合理化への寄与、促進が図られようかと思います。新しい導入の際におきましていろいろ問題がございましたが、最近におきましては、各地域でこの大型乾燥施設の導入についての一つの方式が確立されておりますし、御希望もかなり高こうございます。現在のところ、農業生産体質強化総合推進対策事業、これはちょっと長い補助事業の名前でございますが、その事業とかあるいは新農業構造改善事業によりまして、この大型乾燥施設が導入を図られております。その数は現在までのところ、カントリーエレベーターといたしまして全国で三百十七機、それからライスセンターについて考えますと、約三千機が全国に設置をされているわけでございます。そういう状況でございまして、米の点についての処理のシェアは、この全体の数の約二割という数字になっております。  以上申しました状況でございますけれども、繰り返すようでございますが、各地域におきましての御希望が相当多うございます。今後とも今申し上げました農業生産体質強化総合推進対策事業を初めといたします施策によりまして、本日大臣からもお話を申し上げましたが、本年の補正予算を含めましてこれらの施設の計画的な整備を進めてまいりたいというふうに考えております。
  182. 辻一彦

    ○辻(一)委員 構造改善局長に、実は土地改良や構造改善局におけるカントリーエレベーター、ライスセンターのことをお尋ねしたいと思ったのですが、緊急に捕鯨問題が出ておりますので、これに若干時間が必要なのでこれは割愛させてもらいます。  調査捕鯨の実施に関することについて一、二質問いたしたいと思います。  IWC第三十九回の年次総会の結果についてですが、六月二十日から英国で行われた国際捕鯨委員会第三十九同年次総会において、我が国は南氷洋捕鯨並びに沿岸大型捕鯨については、鯨資源の包括的調査の実施、また沿岸小型捕鯨については生存捕鯨として継続することを提案したわけであります。マスコミを通して知る範囲では、調査捕鯨は拒否、生存捕鯨については次期開催まで継続審議とされていますが、実質的には非常に難しい公算が強い、こういうように思われるのであります。また伝えられるところでは、我が国と同様の立場で調査捕鯨を提案したアイスランドは提案を拒否されて、IWC脱退の意思を表明しているということも聞いておりますが、これが事実であるかどうか、政府のこれについての見解を承りたい。時間が余りありませんので、要点だけで結構であります。
  183. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 ただいまの御指摘は実質的にほぼそのとおりでございますが、ただ、正確に申し上げますと、日本が提案した調査捕獲につきましては、調査の実施を延期せよ、科学小委員会で提起された問題点が解明されるまで延期せよということでございまして、この点、韓国、アイスランドに対する勧告が中止勧告であったのとはやや趣きを異にしているわけでございます。  それから、生存捕鯨についてはお話しのとおりでございまして、定義について明確にするための作業グループが設けられたわけでございますが、これを実現いたしますためには四分の三の同意をとる必要がございますので、その実現は相当難しいことは御指摘のとおりでございます。  それからアイスランドにつきましては、私どももそのような発言が会議の公式の席上であるか非公式の席上であるかはつまびらかにいたしません。アイスランドからあったということは承知しておりますが、現在入手している情報では、アイスランド政府が正式にそのようなことを決定したというふうには承知しておりません。
  184. 辻一彦

    ○辻(一)委員 第二はアメリカとの関係ですが、捕鯨問題について政府はすべて対米国との漁業関係で処理をしてきた感じが強い。つまり、捕鯨を犠牲にしても米国水域での日本漁船の操業を確保したいという理由から切り捨てられたという感じがかなり強い。しかし、アメリカ水域での日本漁船に対する漁業割り当て量は削減の一途をたどり、将来の望みはないというのが業界一般の見方のようであります。しかもベーリング公海における母船式サケ・マス漁業も禁止をされるというありさまで、少なくも捕鯨は国際捕鯨取締条約を尊重して操業を行ってきたのであって、基本的にはアメリカの国内法に影響されないように思いますが、これについての政府の見解はいかがですか。
  185. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 その点につきましては、米国側もかつては今御指摘のように日米間の交渉で捕鯨問題について一定の了解に達したわけでございますが、今後は、あくまで捕鯨の問題についてはIWCの枠組みの中で解決する、これを二国間の交渉として取り上げるつもりはないということを明言しておるわけでございます。
  186. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今後の対策について一、二点伺いたい。  調査捕鯨は条約締約国の主権のもとに実施することが保障されている。今回のIWCにおける事態は日本たたきとしか理解のしようがない。日本にとってまことに遺憾な成り行きに終始しているという感じがいたします。政府は、条約上の主権を確保するためにも毅然とした態度で調査捕鯨を実施すべきではないかと考える。  まず第一に、あらゆる努力を払って政府調査捕鯨を実施すべきだと思うが、今回の勧告決議によって調査捕鯨を断念するのかどうか。さきに撤回の意思表示をしたIWCに対する異議の申し立てを復活すべきではないか。この点どうか。  小さな二として、これはアイスランドがそういうことを明確に決めていないということであればまだ確認できないわけでありますが、場合によればアイスランドのようにIWCを脱退することが考えられないか。  我が国が捕鯨に対する米国の理不尽な圧力に対抗するために、国際司法裁判所に提訴する考えはないか。  大きな四として、さきにも国会で全野党で提案しました、そして継続審議となっているいわゆる対抗法、本邦漁業者漁業生産活動確保に関する法律案の成立を図ることは必要であると思うがどうか。  これらについていろいろな措置を講じ、調査捕鯨、生存捕鯨は実施すべきであると考えるが、政府の決意のほどを伺いたいと思います。
  187. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 調査捕獲が条約八条に基づく権利であることはアメリカ自身も否定できないところでございます。問題はその行使の仕方でございまして、いわゆるキャリオ提案に基づく日本に対する勧告が延期の勧告ということになっているわけでございます。したがいまして、その辺も若干検討する必要があろうかと思うわけでございまして、私どもは調査捕獲を実施することは条約上の権利の行使であって、だれはばかることのない問題であることは現在においても変わりない、そういうふうに考えていることについては変わりないわけでございます。  次に、異議申し立ての撤回の撤回というような御意見がございましたけれども、これにつきましては、条約の解釈の問題でございますので外務省とも相談しないとお答えできないわけでございますが、現実問題として撤回の撤回をやったという例はございませんで、法律的にもまた現実問題としても非常に難しいのではないか、かように考えるわけでございます。  それから、IWCの脱退についてどう考えるかということでございますが、これは確かに、脱退すれば何らの制約なく捕鯨は継続できるわけでございますけれども、およそ反捕鯨国との対話の一切の可能性をこれは否定してしまうことになるわけでございますので、現在時点で、大変大きな政策判断の問題でございますので、私一水産庁長官の立場からは何とも申し上げられないということで、政府部内の今後の検討の際の、抽象的に言えば確かに一つの選択肢であろうかと思いますが、検討にお任せいただき、私の答弁はひとつ御勘弁いただきたいと思います。  それから、司法裁判所への提訴でございますが、これは私どもはあらゆる可能性を探って調査捕獲の実現に努力すべきであるというように考えておりますので、そのような方途があるのかどうか、私どももこの国際司法裁判所の法手続はつまびらかでございませんので研究してみたいと思いますが、日本の国内法の体系から申しますと、本件は司法手続の裁判にはちょっとなじみにくいのではないか、さような感じがいたしております。  それから、対抗法案について、このこととの関係でどう考えるかということでございますが、今後私どものとるべき対策につきましては、かつて捕鯨に関連しまして当委員会で御決議いただきました日米漁業対策に関する件の趣旨を踏まえて今後の対応方針を検討したいというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、現在の段階では直ちに対抗法との関係をどう考えるか、まだそれだけの用意はございませんから、今後本問題について最終的に政府としての態度を決定する際に、今御指摘の問題との関係もはっきりさせたい、かように考えております。
  188. 辻一彦

    ○辻(一)委員 非常に難しい問題ですが、実は私、和歌山県の太地、日本捕鯨の何百年か昔の発祥地へ委員会視察で行きまして、捕鯨に携わる人が歴史的にいかに長い間生活をかけてきたかということ、その実情を非常に詳しく聞きました。だから、やはりああいう切実な声にもこたえることをぜひひとつ考えていかなければいかぬのではないか、そういう意味で、この問題について政務次官から一言伺って終わりたいと思います。
  189. 衛藤征士郎

    ○衛藤説明員 基本的な問題は水産庁長官からお答えしたとおりでございます。ただ、従来からの原住民の捕鯨はよろしいが、そうでない文明人はだめだというような立場に立っておるようでございます。そういうような理解に苦しむ点も多々あるわけでございまして、こういうような問題点をよく精査しながら政府としての基本的な取り組みの姿勢を打ち出してまいりたい、また、辻先生の御指摘をいただきました点は十分踏まえまして検討してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  190. 辻一彦

    ○辻(一)委員 では終わります。
  191. 月原茂皓

    ○月原委員長代理 水谷弘君。
  192. 水谷弘

    ○水谷委員 三十一年ぶりの引き下げ諮問、これによりまして今日本列島も、特に米作中心地帯は大変な衝撃を受けていることは事実だと思います。このような急激な価格引き下げ、これは我が国の今後の農政を考える上からいきますと大変重大な問題であります。  そこで、米価中心に質問させていただくわけでございますが、そこに入る前に、先ほど来各委員からも米の輸入問題についてのいろいろな発言がございます。また、先般大臣が、米の輸入は断じて行わないということ並びに食管の根幹を堅持する、閣議においてそういう発言があったわけでございますが、衆参両院にもこの米の自給という問題についての決議がなされております。しかし、政府としての正式な、いわゆる公式見解として米の輸入自由化は行わないというこの決定を今の時点で明確にしていく必要がある、私はこのように考えるわけであります。  アメリカ議会も、日本に対する輸入自由化の問題について本格的なプレッシャーがかかってくるとすれば、休み明けの八月末ごろからいよいよ本格的に我が国に対する諸要求がぶつけられてくることが考えられるわけであります。そういう意味からも、我が国政府として毅然たる姿勢というものを内外に示していかなければならない、このように考えるわけでございます。大臣がおいでになりませんから、政務次官にそれについてのお答えをまず冒頭いただきたいと存じます。
  193. 衛藤征士郎

    ○衛藤説明員 水谷先生にお答えをいたします。  先ほども他の委員にお答え申し上げたのでありますが、加藤大臣も去る六月三十日の閣議の席でわざわざ発言を求めて、米の自給並びに食管堅持についての力強い姿勢と発言をしたのでございます。その線に沿いまして私ども農林水産省としての取り組みが行われておるところでありますが、御案内のとおり、先刻アメリカ議会におきましても我が国に対する米の開放を求める決議をしたところでもあります。だんだんとこの外圧というものが厳しくなってくるでありましょうが、あくまでも大臣の仰せのとおり、また国会の両院の決議がございますとおり、米の自給とそして食管の堅持についてははっきりとした明確な位置づけをなすために、御指摘の政府あるいは閣議でのそういうしっかりとした決議をなすべきであるという水谷委員の御指摘はよくわかりますし、この点につきましては私からも大臣にしっかりとお伝え申し上げ、水谷委員の意がかないますように努力をしてまいりたい、このように考えております。
  194. 水谷弘

    ○水谷委員 ぜひ御努力をしていただいてそのように決定をしていただきたい、申し上げておきます。  それに関連することでございますけれども、現在いろいろな形でいろいろなルートを通じて加州米が加工された形、または変装された形で我が国に流入しているということがもう事実になってきております。それからまたいわゆる加工業者の中からも、こういう大変厳しい経済事情の中で加工用原料米、加工米ぐらいは何とか輸入をしてもらいたいというような声、また一部政治家の中にも最終的に全然入れないというわけにはいかないだろう、三十万トンぐらいの加工米ぐらいはやむを得ないのではないか、こういうふうな、私にしてみれば大変無責任な発言があちらこちらで日立っているわけでございます。現在七十七万ヘクタールという大変な転作をしております。この七十七万ヘクタールの転作の中心になってきているのがいわゆる他用途米であります。加工用原料米が三十万トンも我が国になだれ込んできたのでは、この転作という政策は全くつぶれてしまうわけであります。  そういう意味で、農水省としてもぼやかしておくのではなくて、加工米たりとも一切輸入はさせることはできない、そういう明確な態度を決定しておかなければならないと考えるわけであります。七十七万ヘクタールの転作には大変な努力を払って、そしてまた同一のお米をつくりながら一物二価という大変な現在の他用途利用米の価格というのは、農家の皆さんにとっては納得はなさっていらっしゃらないが、しかし転作の一つの大事な柱として真剣に努力をされているわけであります。そういう意味で、今私が申し上げたことについて農水省はどのように考えておられるのか、明確にお尋ねをいたしたいと思います。
  195. 山田岸雄

    山田説明員 お答えいたします。  米につきましては、私から申し上げるまでもなく、国民にとりましてもまた農業サイドにとりましても最も重要な食糧であり、作物でございます。また、先生今御指摘のように生産調整も非常に大きな面積についてやっていただいておるわけでございまして、それを多少なりとも緩和するという方向、また加工原材料用を安定的に供給するといったことから、生産者の方々におかれましても五十九年から御協力いただきまして、他用途利用米ということで安定的な供給を図っていただいておるような次第でございます。  したがいまして、今先生御指摘のように、今後とも私どもといたしましては、国会におきますところの米の需給安定に関する決議等の趣旨を体しまして国内産で自給する、こういう立場で臨んでまいりたいと考えております。
  196. 水谷弘

    ○水谷委員 加工用米も含めて一切自給をするというその基本をどこまでも守り通していっていただきたい。今までのいろいろな我が国の対外的な経過を見ていきますと、だんだんなし崩しに本質が削られていってしまうという経過があるわけでありまして、どうかこれだけはしっかりと守っていっていただきたいと思います。  さて、米価の問題でございますけれども、昭和五十三年から六十一年までの九年間で、米価はわずか八・一%の上昇しか見ていないわけであります。この九年間のそのほかの物価上昇等について具体的には申し上げませんけれども、豊作、凶作を問わず、あの凶作のときにも本来ならば米価は引き上がらなければならなかったわけでありますけれども、いろいろないわゆる算定要素を変えまして、例えば賃金を地方労賃に変えてしまったり、需給ギャップをいろいろな形で数字を動かしたりして長い間米価を据え置いてきた。そういう経過があるにもかかわらず、今回の五・九五というこの大変大きな数字米価引き下げというのは重大な問題があると私は思うわけであります。  先ほどからいろいろな委員から指摘がございますように、米価だけではない、もうことしに入ってあらゆる農産物価格がどんどん引き下げられ、そして先日、六十一年度の農業所得の実態について、農村経済の内容について報告が出されておりますけれども、冷害で苦しんでおられたあの五十年代当時の農業所得に比べて三%も農業所得減少している。こういう状況の中で今回のこの米価の大幅な引き下げが行われるわけでありますが、冒頭私が申し上げましたように、この大幅な米価引き下げ、この生産者米価は、我が国の今後の農業の将来展望の中に一体どういうふうに位置づけてこういうものが出されてきたのか、その基本的な考え方についてまずお尋ねをしておきたいと思います。
  197. 衛藤征士郎

    ○衛藤説明員 水谷先生にお答えをいたします。  昨年の農政審の報告におきまして、委員御案内のとおり、稲作の中核的な担い手となる農家等が「生産シェアを高め得るよう配慮した米価水準で、かつ、全体としては需給均衡化の観点に立った水準に設定することを基本として、国民全体の支持を受けられる価格政策の運用を目指すべきである。」との方向が示されております。  今次の諮問米価算定はこの方針に沿いまして、国民の理解と納得と支援を得ながら将来にわたって我が国稲作の健全な発展を図っていかなければならない、この考え方に立ったものでありまして、また、来の需給の趨勢や現に進みつつある生産性向上や生産コスト低減の状況、さらには最近の経済実勢等を的確に反映して算定したものでございまして、今後とも米価政策の適切な運用とあわせて生産政策、構造政策等各般の政策を積極的に展開し、二十一世紀へ向けて我が国の稲作をより力強く足腰の強いものにしていかなければならない、この基本的な考え方に立ちまして今次の諮問米価算定を見たものでございます。
  198. 水谷弘

    ○水谷委員 政務次官のお答えを聞いておりますと、非常に論旨明快ですばらしい答弁でございますが、しかし、そういうふうにはいかぬのです。  それは確かに、担い手となる農家を育てていくことは、私どもも当然そう思っておるわけです。しかし、今回の五・九五%の大幅な引き下げというのは、その担い手にこれから育てていこうとする農家に一番大きな打撃を与えるわけです。これから育てようとするところに打撃を与えるような急激な米価引き下げをやっておいて、どうして農政審の報告書のように農政が動いていくのですか。私は、そんな考え方は改めていかなければいけないと思います。  先ほどから議論がありますように、今度の第二次生産費をカバーできる農家は、戸数で一九%、販売数量でも三七%にしか達していない。まして面積規模からいくと、二から二・五ヘクタール層しかこれはカバーできない。一・五ヘクタール以上層の作付戸数というのはわずか八・七%、販売数量の四三・九%しかない、現状はそうなっている。それ以下の農家の方々が、国民の食糧として、米を主食として安定的に現在供給をなさっていらっしゃる。第二種兼業農家、二兼農家の数が年々ふえてくるわけでございますけれども、そういう現状を政策誘導しながら、構造政策を進めていきながら、さらにはまた、その構造政策がより実効ある形で進む、その中で価格政策というのは手をつけていかなければならない。まず引き下げありき、もう一番最初から下げるんだ、こういう考え方では、幾ら価格政策で引き下げをしたからといって構造政策は進まない。  前にも私は申し上げたことがありますが、確かにあの農政審の報告書の中には、先ほど政務次官がおっしゃったとおり書いてあります。価格をより低くすることによって構造政策が推進できるというふうな考え方、いわゆる飯米農家の方々や二兼農家の方々がどんどんとその農地を提供なさるであろう、コストが下がってコスト割れになってしまえば、御苦労されて一生懸命米はおつくりにならないだろう、専業的な農家の方に農地、耕地の集積が起こるであろうということは、我が国においてはそういう論理は成り立たない。急激な引き下げがあったとしても、どうしても米づくりを傘とする農家の伝統的な感情、また、農地の資産保有、米はつくりやすい作物である、兼業労働と非常に調和するんだ、こういう我が国の米づくりを考えた場合には、低米価政策が決して農地の集積には結びつかない。さらに、零細農家の方々から言わせれば、コストという感覚はほとんどない。種苗や肥料代など直接支出されるものだけで、あとは、自分の労働費だとかいろいろなものはコストと考えない。  ですから、いわゆる零細農家規模の小さい農家ほど、どちらかというと低米価に対する抵抗力というのはあるわけです。これから担い手となっていかれる方、そして専業的に米を一生懸命つくっておられる農家の方というのは、お米に農業所得の大半を依存しております。そこがどんどん下がってしまったならば、まず規模拡大の意欲がなくなってくるのです。そしてまた今指摘しましたように、幾ら低米価でも対抗できるような方々が農地を出さない。そういう政策の整合性というものを、食糧庁や農水省の皆様方が本当に真剣に一生懸命取り組んでおられることはよくわかりますけれども、では、具体的にそういうものをどういうふうに今までと違う形で構造政策、生産体制を組んでいくか。こういうふうにしますよ、今までとは違いますよ、例えば基盤整備についても従来の予算措置とは違うぞ、またそれぞれが持っていらっしゃる農家の自己負担分に対する金利もこんなふうに考えますよ等々総合的な政策を提示なさって、価格政策はこのようにやってまいりますという姿があって初めて生産者は御納得をされ、そしてまた消費者も国民も納得をしてくださるものだと私は考えるわけです。今申し上げました生産価格の大幅な引き下げというのは、地代を負担する負担力の低下に真っすぐつながっていくわけです。この地代負担力の低下というのが構造政策の推進に大きなブレーキをかけていく、こういうふうに私は感ずるわけであります。これについてどのようにお考えになっていらっしゃるか、これが一つ。  それからもう一つは、農家負担が大きい土地改良基盤整備事業、これはいろいろな資料がございますけれども、土地改良工事費が年々高くなってきているわけであります。昭和六十年には十アール当たり九十万を超えてきている。昭和五十年当時の二倍以上にもなっているわけであります。十アール当たり稲作所得に対する工事費の単価を見ますと、昭和五十年で四・四倍、六十年には十一・六倍、土地改良に関する農家の負担、こんなにも大きくなっておるわけです。また農業機械、いわゆる農機具費、機械化のためにより大型なより機能の高い農機具を導入することによって、これもまた農家負担というのはもう限界に来ている。そういうことをしながら結果的には労働時間が圧倒的に減ってきた。こういうふうな形で、農家がそれこそ血のにじむような思いをして生産性の向上をされてきている、その生産性の向上のメリットを全部生産者はよこせとはおっしゃっておりませんね。生産者団体の要求は二分の一、ぜひ我々にそのメリットは返してほしい、このように要求がなされている。私はそれは当然のことだと考えているわけでありますけれども、それが今回の諮問米価の中にどういうふうに生かされているのか、この二点、まずお尋ねをしておきたいと思います。
  199. 山田岸雄

    山田説明員 お答えいたします。  今先生が御指摘のように、米価引き下げ稲作規模の小さい農家よりはむしろ大きい農家の方に影響するところが大きいのではないか、こういうふうな御指摘でございますが、確かに経営面積の小さい農家におかれましては、家計費を全部他産業からの収入に依存されておられる方もございますし、そうした方々の農家経済に及ぼす影響というのは小さいのではなかろうか、こうも思うわけでございますが、私ども現在いろいろと規模別生産費等を調べてみますと、やはり規模の大きい層は生産費が安くなっておりますし、生産を行うに当たりまして、現在の米価でも生産費をカバーされておる、また、所得は相当大きいものを確保されておる、こういう実態もあるわけでございます。  今土地の問題を先生御指摘いただいたわけでございますが、土地純収益等について規模別に見てみましても、土地の純収益が支払い小作料よりも上回っておる実態もあるわけでございます。全部ではございませんが、規模の大きい方では上回っておるということは今後の規模拡大にもつながる問題であろう、こうも思われるわけでございます。また、大規模農家の土地純収益等と小さい規模稲作所得とを比べてみますと、土地の純収益の方が大きい、こういう面も見られますし、小規模農家にあっては、お米をつくって所得を得るよりは自分の田んぼを貸して、そこからの小作料を取った方がいい、計算上でございますが、そういった実態もあるようなわけでございまして、規模拡大は、徐々にではございますが現実にも進んでおる、こういう実態になっておるわけでございます。  私ども、地代に関しましてどのような評価をしておるか、こういうことについて申し上げますと、一応自作地の地代といたしましては土地資本利子という評価の方法をとっておることは御案内のとおりでございまして、元本は固定資産税評価額をとらしていただいておりますが、利率の方につきましては、今年その利率が史上最低といったところまで落ち込んでおるという実態でもございますし、また自分の土地の地代評価というものにつきましては、家族労働費と同じように農家所得浮揚部分にもなっておるということでもございますし、この部分におきまして大きく変動するということはいかがなものであろうか、こうも考えられまして、私ども利率をとるに当たりましては、けさほども御説明させていただきましたように、より長期の利率の平均をとっておる、こういうふうにやらしていただいておる次第でございます。  あと一点の、生産性の向上をされたものの生産者への還元という問題について御説明させていただきます。  この点につきましては、現在の生産費所得補償方式におきまして、家族労働費につきましては都市均衡労賃評価がえをさせていただいておるわけでございますが、この都市均衡労賃につきましては、製造業賃金ということでとらしていただいておりますし、製造業におきます生産性向上に伴う賃金上昇は、農家家族労働費にも反映をさせていただいておるわけでございます。したがいまして、生産性の向上部分はそういった面において反映されておりますから、それをさらに生産性向上ということで評価することには問題があるのではなかろうか、こう考えるわけでございます。  また、これも算定技術上の問題でございますが、御案内のように生産費所得補償方式におきましては、労働時間なら労働時間の実績の過去三カ年間の平均値をとらしていただいておりますので、傾向的に労働生産性が上がっている、こういうことに相なりますれば、三カ年の平均値はその年央でございましょうし、今回でございますれば、三カ年を平均したものは六十年の実績程度のものであろう。それを六十二年の米価に織り込んでおるわけでございますので、生産性の向上の二年間部分くらいは反映されておるのではないか、こういうふうにも考えられるわけでございまして、この点についての生産性の向上を生産者に還元するということは、理論的に非常に難しい問題があるのではなかろうかと思うわけでございます。なお、生産性の向上につきましては、単収にもそのような議論がなされるのではなかろうかと思うわけでございます。  以上でございます。     〔月原委員長代理退席、委員長着席〕
  200. 水谷弘

    ○水谷委員 要するに、僕が言っているのは、所得のメリットを返してあげなさい、こういう意味なんです。価格にしっかり返っているのは知っています、価格がそれだけ下がっているわけですから。そうじゃなくて、手取りがふえなければいかぬのですよ。生産性が向上している陰には、今私が申し上げたようないろいろな要因があるのだから、そういうバックがあって生産性が向上してきている。そこをしっかり見ていかなければ、その努力は一体どうなるんだということになります。  それからもう一つ、一番目の質問ですが、おっしゃるとおり規模が大きければ大きいほどコストは低くて済むのは当然です。しかし今農水省、我が国の農政があの報告を受けてこれから誘導しようとしているのは、現在一・五ヘクタールとか二ヘクタール、二・五ヘクタール、この辺の農家の方々がこれから国内においては五ヘクタール規模を目指して集積を図り経営の規模拡大していこう、こういうことなんです。そのクラスが一番打撃を受けると私は指摘しているわけです。ですから、考え方をよくひとつ、次長は本当に頭脳明晰な方でございますから私が何度も申し上げる必要はないわけですが、おっしゃっていることが私が質問している趣旨と大分変わっております。土地の純収益、これは小作料等いろいろ検討してみますと、実際支払われている小作料というのは年々上がっているわけです。そういうところを本当によく分析していきませんと、どんなに立派な絵をかかれても規模拡大は進まないし、農地の集積は行われていかないのです。そういうところをしっかり取り組んだ上で価格政策を導入していかなければいけないんだ、そのことを何度も申し上げているわけであります。  構造改善局長にお尋ねをいたしますが、このような急激な米価引き下げ諮問に対して、生産者団体の皆さん方はまさかこんなに過激だとは思っていらっしゃらなかった。今回の米価闘争の特色は、ある程度引き下げはやむを得ないという感触で生産者団体の皆さん方はずっとおいでになった。しかし、もう一つ強い要請は、では生産環境を国はどういうふうに本格的にてこ入れをして整備を推進してくれるんだ。現在のように、十年計画の土地改良事業が十四年も十五年も十七年もかかっても完成しないというような総体的な基盤整備の立ちおくれ、特に土地改良事業の推進については、第三次計画があっても進捗率は全く低い。このような過激な米価引き下げに対して農水省としては、政府としては今後そのかわりこういう形で、例えば土地改良事業についてはスピードアップしていきますよ、さらにまた大変おくれている――我が国の耕地は大体六割ぐらいが傾斜地にあるわけでありますが、そういう地域というのは規模が非常に小さい、そういうところで強い要請があるのは小規模の土地改良の促進という問題であります。  さらに、先ほどもちょっと触れましたが、補助残、いわゆる受益者負担の部分でありますけれども、この土地改良資金の利率、これはほかの例えば住宅金融公庫資金とか中小企業金融関係のいろいろな施策を見ますと、利率は適切に現在の低金利に合って、さらにはそれを誘導するような形でどんどん引き下げられている。今土地改良事業をやろうとしても、今回のようにまた米価引き下げられる、ことしの諮問の姿を見ていると、米価が来年もまたもっと大幅な引き下げになるのではないか、将来展望が全然ない、ところが基盤整備をやっていくためには負担がある、だれが乗ってくれますか。そこで、そういうものについても金利引き下げていく方向で検討していますよというくらいな誠意ある姿はお出しになるべきだと私は考えております。  あわせて、これは経済局長の方になると思いますが、経営規模拡大をするためにまず自己資金の蓄積がどうしても必要なのです。しかし、規模拡大をしようという中核農家の初度投資の段階での蓄積というのは非常に難しい。そういう初度出動のときにまで、いわゆる無利子資金である経営規模拡大資金の貸付対象というものを拡大してほしい。これも生産者団体の皆さん方が強く望まれているものでありますが、あわせてお尋ねをしたいと思います。
  201. 鴻巣健治

    ○鴻巣説明員 今回の米価とも関連いたしまして、私どもこれから中核農家といいますか担い手農家生産基盤を早急に整備する必要がございますので、現在作業中の補正予算で今御指摘の点についてはかなり意を用いたところでございます。  基盤整備、今回の補正では全体で農業基盤整備で千六百九十五億円を補正予算としていただくつもりでございます。御承知のように私とおの農業基盤整備事業費は六十二年度当初が約八千五百五億でございますから、前の年に比べますと九八%で、二%ほど落ち込んでいたのですが、今回いただきます予定の千六百九十五億円の補正を加えますと全部で一兆二百億になりますので、前の年に比べますと一一五%の増というようになります。特に今御指摘のような圃場整備については、今の基盤整備事業全体の中でも特にアクセントをつけるつもりでおりまして、全体として基盤整備費が一兆二百億になると対前年比、前の年の当初予算と補正を加えたものに対してですけれども、一一五%ですが、それよりもアクセントをつけるように今作業をいたしておるわけでございます。  それから非常におくれが指摘をされましたかんがい排水事業につきましても対前年比、前の年の当初予算と補正を加えました額に対しては一一〇%を超えるように今いろいろな意味で予算の作業をいたしておるわけでございます。同時に、恐らく六十三年度以降、私ども工期のおくれは大変気にいたしておりますので、やはり新規地区というのはいろいろ御要望があっても、できるだけ新規地区の採択は抑えてでも継続地区の方へ予算を重点的に振り向けるということをしなければいけないと思っております。  それから土地改良資金の金利も下げたらどうかというお話でございますが、ごく最近ですが、六月に御承知のような形で農林漁業金融公庫の土地改良資金につきましても金利を下げておりますし、これからの金利全体の動向をよく注目しながら、全体としての負担の状況等を照らしながら、金利体系全体の中でまたいろいろ検討させていただきたいと思っております。ただ、今冒頭お話しのように、土地改良の負担金が高い――高いといいますか昔に比べますとかなり増高いたしておりますので、これからは新規に採択をする地区、特に圃場整備などではもう少し工夫しようかと思っています。やはり最近の圃場整備が山にかかっているために、動かす土の量も多いとか兼業化が進むとか老齢化が進んでいて、道路も舗装してくれとか水路も全部舗装してくれ、もう道普請に出てくる人もいない、溝さらいに出てくる人もいないからそういうことにしてくれと言われますと、どうしてもコストが高くなるわけでございます。  そういうことでございますが、こういう状況でございますので、例えば水路も舗装するかしないか、道路も幹線あるいは支線を舗装するかしないかということによって事業費あるいは農家負担がいろいろ違う、その中でどれをとるのかということを土地改良区に示して、その中から自分たちの負担能力に応じた整備水準というのを選択してもらうということはすぐやりたいと思っています。六十三年度の地区は、もう既に地元でのヒアリングも始まっておりますので、今すぐにでもこういうことをやりたいと思っております。  それから取得資金についてどうだというお話でございますが、私どもの方は、確かにできるだけ自作農をつくるという趣旨で昔から農地取得資金というのをお預かりいたしております。この金利は、釈迦に説法ですけれども、国民金融公庫とか中小企業金融公庫の金利のように長期プライムレートに連動するというのではなくて、相当の補給金という名前での補助金を国から入れて、三・五%とかなり低いというか、ほかの制度資金の中では一番低い利率を今までつくってやってきたわけでありまして、しかも今のように自作地よりも借地農といいますか、土地を借りたりある農作業の受委託というような形が出ていますと、取得資金そのものの需要もやや頭打ちというか、少し意欲が減っているのかなという傾向も見られるところでございます。  しかし、おっしゃるように、これからできるだけ自分の土地を買って経営を拡大していくという傾向は今でも北海道あるいは東北などの地域を中心にございますので、金利体系全体のこれからの方向というものの中で、なお私どものお預かりしています金利体系といいますか償還条件も含めまして、これからその規模拡大にいかにプラスすることができるかというような方向でなお検討させていただきたいと思っています。
  202. 浜口義曠

    ○浜口説明員 今、水谷先生がお話しの中核農家の初度的投資に関する問題でございますが、これにつきましては農業改良資金というものがございます。この農業改良資金は、先生御案内のとおりでございまして、農業者が自主的に創意を生かして農業経営基盤の強化を図る目的で、農業の生産方式の改善であるとか農家の生活の改善等を行うものでございます。無利子の資金でございまして、都道府県が農業者に貸し付けを行うものでございます。いわば返還条件つき補助金といったようなものでございます。  この資金につきましては、農業経営規模拡大、土地の農業上の効率的利用を図る観点から、経営の改善に積極的な意欲を有する中核農家の機械とか施設の導入に要する経費、それから先生お話しのような初度的経費等につきまして、融資といいますか資金の交付ができることになっておりまして、六十一年度、昨年でございますが、例えば側条施肥田植え機といったようなものについては全体で十五億円の枠を設定いたしました。それから本年御審議賜りました予算等に基づきまして、水田農業生産高度化資金というのを設けております。それで、今お話しの初度的経費であるとか農業の機械、乾燥機等々、五十五億円の規模を設定したばかりでございます。今後とも先生のお話のとおり、制度の充実、融資枠の確保に努めてまいりたいと思っております。
  203. 水谷弘

    ○水谷委員 時間が間もなく参りますので、米の消費拡大の問題について具体的にお尋ねをしようと思ったのでございますが、また後の機会にさせていただきます。特に学校給食について力を入れようということと、予算が減ってくるということ、表にあらわれている姿が全く逆でございまして、これは予算の確保をしっかりやっていただきたいと思います。やはり我が国の水田は米をつくるのが一番適しているわけでありまして、水位を下げるといっても莫大なお金が必要になってきますし、特に東北方面ではそういう形でいわゆる田畑輪換の体制をつくるということは非常に難しい、そうなってくれば一番大事なのは米の消費をどう拡大していくか、他用途にどのようにこれを開発し、利用していくか、これは非常に大事な問題になってまいります。わざわざおいでいただいて恐縮でございますけれども、時間がございませんので省かしていただきます。  それから、先ほど来からも議論がございますけれども、加藤農水大臣も明確にはおっしゃっておりませんが、生産者米価をここまで下げる、そこには当然消費者米価引き下げというものも念頭に置いていかなければならぬというような発言もまたこれあり、今の段階で消費者米価をこうします、ああしますということを発言できないのは私もよくわかっておりますけれども、いわゆる内外価格差の議論が起きてぐるとかいろいろな問題が起きて、直接国民的にそれが取り上げられるのは消費者米価の問題であります。私は消費者米価が極端に高いというふうな実感を持っておられる国民はそんなにいらっしゃらないのじゃないのかなと自分では感じております。大体標準世帯四人の家族で一日のお米が八百ぐらいですか、値段に直して四千円のものにしても三百二十円。お米の値段は一日三百二十円で、コーヒー一杯飲んでも三百五十円ぐらいだ。それが、消費者米価は高過ぎる、日本の国民経済の中でお米の値段が極端に高いという議論を真っ正面からなさる方は余りいらっしゃらない。しかし、消費者米価というのはすべての価格にいろいろな影響を与えていく、非常に精神的な影響を与える基本的な価格であります。これが上下の変動を起こすということはほかの物価にもそのまま連動して影響が起きていく。そういうことから考えていきますと、これだけ激減をし、生産者米価を下げようとしているその基本には、当然消費者米価引き下げていくんだ、そういう方向性ぐらいはお持ちになっていらっしゃるのだろうな、こう考えておりますが、最後にそれを政務次官に伺って私の質問を終わらせていただきます。
  204. 衛藤征士郎

    ○衛藤説明員 お答えを申し上げます。  午前中、大臣から既にお答えがあったかと思いますが、まだ具体的なことは決めてはおりませんけれども、いずれにいたしましても、今水谷先生御示唆のとおりでありまして、そういう方向であるということだけを今段階ではお答えしておきたいと思います。
  205. 水谷弘

    ○水谷委員 ありがとうございました。終わります。
  206. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 武田一夫君。
  207. 武田一夫

    ○武田委員 午前中大臣に質問しましたが、大臣おりませんから、これから政務次官を中心にお尋ねをいたします。  最初に農業の体質強化という問題、特に米の再生、産業として自立できる、そういう農業を構築する方策といいますか、これをどういうふうに考えているのか。水田農業確立対策がいよいよ始まります。これと絡めまして説明をしていただければ、こう思います。
  208. 衛藤征士郎

    ○衛藤説明員 武田先生にお答えを申し上げます。  御案内のとおり米は農業総生産額の三三%を占める農産物でありまして、我が国農業生産の基幹をなすものでありますし、また、国民一人当たりの供給熱量の二八%を占めておる重要な食糧であります。しかしながら、稲作をめぐる状況を見ますと、米の潜在的な需給の不均衡は今後も拡大する傾向にあるとともに、経営規模拡大の停滞、担い手の脆弱化等により水田の生産性向上は立ちおくれております。このため、米需給均衡化を強力に推進するとともに、稲作生産性向上と稲作転作作物等を組み合わせた水田の有効利用を図り、水田全体の生産性向上を図ることが急務だと考えております。  昨年十一月の農政審報告におきましては、生産基盤等の整備を推進するとともに、経営規模拡大担い手の育成等構造政策を強力に推進し、地域の実情に応じた効率的な生産システムを確立することによりまして地域全体としての生産性の向上を図ることの重要性が指摘されたところであります。このため、地域の農業生産担い手として中核となる農家に農地流動化の促進により利用権を集積する等経営規模拡大するとともに、さらにこれらの農家中心として生産組織を育成していただき、作業の受託、委託を含めまとまりのある効率的な作業単位を形成することによりまして生産性の高い農業の生産システムを確立していくことが重要であります。またこれとあわせて、このような効率的なシステムを展開し得るところの生産基盤等の整備を推進していくことが必要である、かように考えておる次第でございます。
  209. 武田一夫

    ○武田委員 今回大幅に米価が下がりました。この中で構造政策が進むかどうか、進むと思うのか、その見通し、進むとすればこういう理由で進むというものをひとつ示してもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  210. 鴻巣健治

    ○鴻巣説明員 現在の米の担い手農家といいますのは、私ども中核農家と呼んでおりますが、三十二万戸ほどおります。その人々は、経営規模平均的に見ますと田畑でたしか三・二ヘクタールで、うち水田が二・八ヘクタールほどございますが、分布しておりますのは一町ぐらいの人から三町、四町、ヘクタールで言わなくて恐縮ですが、かなり大きいものまであるわけです。それぞれ一人ずつが個別に担い手として活躍しているケースもございますし、担い手農家と、それから今お話しのような兼業農家とが手を結んで一緒になって一つの営農集団をやっている場合もございますし、それからほとんど二種兼農家だけで営農集団を形成するようなパターンもあります。さらに東海地方とか西日本の方へ行きますと、農協自身がオペレーターを雇って基幹的な稲作部分を担当して、軽労働といいますか補助的なところを第二種兼業農家がやっているというようなケースとか、地域によっていろいろな形での稲作担い手というのがあらわれてきているわけであります。  今回の米価は、おっしゃるようにまだそれほど構造そのものが変化しておりませんから、労働生産性の向上なりあるいは円高なり金利とかといったものの変動に合わせた程度の改善といいますか算定でありまして、おっしゃるようにこれから規模拡大が進み、構造改善の進捗の程度に応じて米価そのものを考えていくというような議論からすれば、まだまだ構造そのものが流動的といいますかこれから動いていく段階で、構造の将来の変革を想定しながらことしの米価が決まっているというわけではありません。今言いましたように、金利とか労働生産性、あるいは円高というようなものが反映されたほぼ現在の農業構造を前提として算定されたものとして私は考えております。
  211. 武田一夫

    ○武田委員 農家の経営は、米単作地帯もありますが、そこから脱皮しようということで、要するに米を中心とした複合経営というものに一生懸命努力している。これまた農林水産省は奨励しているところでしょう、そういう方向が望ましい、米一辺倒では大変だぞと。そういう方々は大体専業です。その人たちが専業農家として複合経営をやっていくというときの支えは、今のところやはり米です。ですから、米を中心に畜産、野菜等々、こういうことで一生懸命努力をしてきている。その歴史は非常に浅いし、これから一生懸命やってそういうものを完成の方向といいますか、経営がしっかりできる方向へ持っていくというときですから、そういうときに土台となる米がこのように大きく値下げをさせられれば、構造政策の面からいっても零細な、いわゆる小規模農家の農地がそういう方々に集まってくる以前にそういう中核農家はダウンしてしまうのではないか、またそうなるということをはっきり言う方々が多いわけです。この点はどういうふうに考えますか。また、どういうふうに対応するか。  それからもう一つは、見ているとやはり土地というのはなかなか集積、流動化しませんね。非常に遅々としています。特に東北なんか見ていますとそれが非常にはっきりわかります。特に山間僻地等の土地は基盤整備も十分でない、収量も十分にとれない、それを、それじゃ専業農家の皆さんあるいは一種兼業農家の皆さんでどうぞひとつ受け取ってやってくださいといったって、それは受け取れませんといって断る地域もあるのを御存じでしょう。そういうところをどうするかということになれば、これは大変な今後の問題ではないかということもあわせて申し上げたいと思うのです。この点も含めてひとつ次官から答えてもらいたいと思います。
  212. 鴻巣健治

    ○鴻巣説明員 今私がお答えいたしました中核農家三十二万戸といいます中で、たしか半分が単作でございまして、あとの半分が要するに米と畜産とか、米と果樹とかあるいは米と花といったような複合経営でございます。おっしゃるようにいわば米を基盤として花とか畜産に入っていった人たちでございまして、今日では、既に例えば施設野菜あるいは花とかいうような労働集約的な部門に相当経営の重心が移行しまして、むしろ水田はほかの人に耕作を任せたいというような人も出てきているわけであります。  その中で見ておりますと、全体的にいいますとかなり生産性の高い稲作をやっておりますので、一般的に、あるいは平均的に見る限りにおいては株当の土地収益も出ておりますので、かなり人に地代的なものを支払ってもなおかつ借り入れたり、あるいは農作業を請け負ったりということが可能な人たちが、今申しましたように十五、六万戸出てきていると私は考えております。そういう人たちのこれからの成長を伸ばしていく意味でも、基盤整備なり近代化施設の導入、つまり農作業のような大型の機械というものについて手に入れやすいように、例えば近代化資金といったような形でその人たちの規模拡大を援助していかなければならないことは申すまでもないことであると思います。  それから後段の方も、いずれにしても基盤整術をやることによって人に借りてもらいやすい、あるいは人が借りやすいようにして、借りた人が大型機械を駆使して生産性の高い稲作を展開できるようにというためには、地下水位を下げる、あるいは圃場の区画を大きくするというような形での圃場整備が大事だと考えておりまして、先ほど申しましたように、前の年の当初予算と補正予算を足したものに対して、ことしの当初予算と補正予算を足した農業基盤整備全体は一一五%というふうにかなり伸ばしておりまして、その中で圃場整備等を柱にかなり大きなアクセントをつけた形で補正予算を組む作業をいたしているところでございます。
  213. 衛藤征士郎

    ○衛藤説明員 お答えを申し上げます。  構造政策また周辺対策を含めまして、稲づくり農家所得補償並びに再生産に取り組めるように、あくまでもこの基本に立ちまして、私どもとしましては委員御指摘のようにあらゆる努力をしてまいりたい、またしなければならない、このように考えておる次第であります。
  214. 武田一夫

    ○武田委員 ことしから行われる水田農業確立対策は、今回の米価引き下げがそのスタートであるというふうに考えている人がいるのですが、この米価引き下げ水田農業の一つの大きな柱になってくる、このことをどう考えますか、次官。
  215. 衛藤征士郎

    ○衛藤説明員 昨年の米価決定のときを振り返ってみますれば委員も御了解いただけると思うのでございますが、いわゆる算定要素等々いろいろとったわけでありまして、また御案内のとおり米価審議会におきましても算定要素を基準にして審議され、答申が出てまいりました。また、その後私どもとしまして政治加算という場面にも遭遇したのでありますが、昨年の諸要素を導入し、算定どおりの方程式に入れてみますと九・八%ということになってしまったのであります。これにつきましては、私どもも委員と同じように米つくり農家生産農家の置かれておる状況をつぶさに精査しておるだけに大変心配をいたしまして、試算ではそのようになったのでありますが、あらゆる努力をいたしまして五・九五%の諮問をした。  この経緯につきましては御案内のとおりでありますが、関係各方面とのあらゆる調整努力をいたしまして、あくまでも農林水産省が稲づくり農家生産農家を守るという立場で試算米価の決定を見たものと私は考えておるわけでございまして、今委員御指摘の点は当たらないのではないか、このように考えておるわけであります。
  216. 武田一夫

    ○武田委員 そこで、算定要素の件でちょっとお尋ねしますが、昨年の生産者米価のときは、当初六・六、それが三・八と出て最後は据え置きとなりました。いろいろ苦労して頑張った、こう言ったのでありますが、ゼロにした、据え置きにしたのは、米価決定における算定要素とり方ということで中央会が出している資料では、昭和五十一年から六十一年とずっとある中で、算定基礎なしというのは五十七年と六十一年の二回なんです。六十年も据え置きですが、算定要素はちゃんとあるわけです。何で六十一年だけ算定基礎なしということになったのか、そこのところをちょっと説明してもらいたいと思うのです。
  217. 山田岸雄

    山田説明員 お答えいたします。  昨年、私ども米価審議会諮問いたしました算定諮問値は、御案内のようにマイナス三・八%という数字諮問いたしたわけでございますが、それにつきましては、米価審議会におきます最終的な答申といたしましては、両論併記の格好で適正に米価を決定するように、このようなことに相なりまして、いろいろと関係各方面と協議、調整をさせていただいた結果、最終的に据え置きという結果に相なった次第でございまして、据え置きということになりましたときに、算定という基礎をもって据え置きなら据え置き、ゼロということになります場合と、算定の根拠なしに最終的な決定を見ている、こういった年もあるわけでございます。
  218. 武田一夫

    ○武田委員 それでは非常に無責任だと私は思うのです。今回でもその論理からいったら、こんな苦労をしながら農家がさっぱり喜びもしない――国民は何と思っているか。国民の方も非常に不信を持っていますよ。皆さん方がやったことは、それは農家の方に風当たりが強くなるのですよ。ゼロになったらゼロになったときのアフターケアをちゃんとやるのが親切で、しかもだれにも疑問を持たせない本当のやり方だと私は思うのです。それが算定基礎があったりなかったりするようなことだったら、何もそんなに苦労してやる必要はない。そう思いませんか。きちっとしたものを食糧庁がやらなかったところに一つの大きな問題がある。これは責任放棄です。私はそう思いますよ。次官、どう思いますか。
  219. 山田岸雄

    山田説明員 先生御案内のように昨年の米価決定の経過等を顧みまして、算定根拠をゼロにするという根拠について十分なる御審議をして決定というふうな取り運びの時間的な経過もなかったような次第でございまして、過去におきましてもそういったケースはございます。なお、昨年の米価決定時におきましては、今年の米価決定に当たっては算定どおりにというふうなことも一応確認されておりまして、そういった点にも配慮しながら今年はいろいろと検討させていただいたような次第でございます。
  220. 武田一夫

    ○武田委員 だから、それが終わった後に今日まで時間的な経過の中で、ちゃんと基礎算定はこういうふうにして、ゼロに持っていったのはこういうわけだというのをこの資料の中に出せるはずなんですよ。そうじゃないですか。マイナス三・八からゼロに持っていく、その間の時間は確かになかったかもわからない。だけれども、ゼロにした理由がそれなりにあったわけでしょう。ただ圧力があってゼロにしたわけですか。だったら、ことしは自民党の圧力が余り強くなかったということを国民の前にはっきり言うことになるわけですね。その圧力がもっと強ければこの五・九五は四か三になったのだけれども、ことしは自民党さんも三百とったものだから安心して手抜きしたということになったら、農家の皆さん方はどう思いますか。また、一般の消費者がどう思いますか。時間的な経過は決定した後にたくさんあるのだから、その後今日を迎えるまでにきちっとした、算定要素はこういう必要量をとりました、あるいは五人から九百九十九人の地方の労賃をとりましたというものを出しておけばいいんじゃないですか。出せるはずでしょう。それをぶん投げておいたのはまことにアバウト的な、一山何ぼというような形で米価は動くのか、そういうことを思わせるようなやり方は私はいかぬと思うのです。どうですか。
  221. 山田岸雄

    山田説明員 昨年の米価決定におきましては、関係方面といろいろ協議、検討していただきました結果据え置きというふうなことに相なったわけでございます。先生今御指摘のように、その際においても算定基礎というふうなものをちゃんとつくったらどうか、こういう御指摘ではなかろうかと思うのでございますが、私どもだけで、算定は大体こんなことになります、こういうふうな説明をいたしましても、従来からあります各年産ごとの算定の基礎と違った性格のものでございまして、食糧庁独自で何ら米価審議会等にかけずに、これが算定基礎でございますと申し上げましても十分なる御理解を得られないのではなかろうか、このように考える次第でございます。
  222. 武田一夫

    ○武田委員 米価審議会を開いて御理解をいただくようなことをやったらいいじゃないですか。この方々にだって前広米審、その場に来てちゃんと資料を集めて説明をやるんでしょう。ことしもやったんでしょう。きちっとやればいいじゃないですか、そういうことはお願いをして。今回だって、せっかく一日からおいでになった方々を、一日も審議をさせないで失礼なことをした。そのくらいの厚かましい食糧庁が、この次のために大事な基礎算定のことですのでと、そういう話をちゃんとしてきちんと出しておいた方がよほどすっきりするじゃないですか。また算定方式なし、こんなことをやっていると――今一番大事なのは、農家の人たちは要するに自分たちがやっていることが圧力でもって、政治力とかあるいは自民党さんの力をかりてということでから取った米価だと言われるのが一番嫌なんですわ。正当な、我々が生産を意欲を持って、また所得が償われるような価格として出してもらえるようなものでありたい、こう願っているわけです。  消費者も今米の輸入は絶対反対だ、消費者団体も特に婦人団体を中心に、外国の米なんか入れちゃならぬ、安全な米を安心して供給できるように日本の国内の米を食べようと一緒になって米を、あるいは農業を守ろうとしているときに、そういう強い味方に不信を持たせて、またその二つの仲を裂くようなことをやるのはこれは私は政府の、食糧庁のやることではないと思うのですよ。またぞろこれは新聞等でもあるいはまた巷間そういうことを言われて、苦労するのは農家の一生懸命頑張っている皆さん方ですからね。そこをよく考えた納得のいくような方式でやったんだ、これは合理的で妥当の線だと自民党の上の方の方々が今回のこの数を出したとき言っているそうであります。きちっと理論的にも納得いくものだと言っているわけですね。だったら、この前の年のときもそういうものだということを、こういう数値でもってこうなったんだと、そういうものを後から出してアフターケアすべき責任があると思うのですよ。  そういう点で、米価の決め方というか算定要素とり方等々にもまことに御都合主義的な、先ほどうちの水谷議員も言ったように、六十キロ当たりこのくらいだったら引き下げしてもいいんじゃないか、このくらいまでなら我慢しようということをちゃんと決めておいて、それが食管の赤字の解消に、六百何ぼになる、このくらいを覚悟しておけばまあいいんじゃないかというようなところから始まって、農家のためということを忘れた、財政というかお金のことだけで考えようという、そこだけの頭が強過ぎるのではないか。また、それは結局はアメリカ等々の外国に対する気兼ねというか、マスコミにまたやられるんじゃないかという気兼ねとか、そういう要素だけで農家の生活の重要な源泉となる米価が決められるということは私はいかぬと思う。再生産所得確保ということを考えたときに、特にこれから米というのは水田農業確立対策の中で非常に重要な部門としてしっかりした基盤をつくっていこうというときなんでしょう。そのことを反省して、農家の皆さん方に要らぬ負担をかけない、心配をかけない、そういうしっかりした対応をお願いしたい、私はこう思うのです。答弁はちょうだいいたしませんが、その点ひとつ大臣にもお話をしてもらいたい。  次に、生産性向上の問題ですね。生産性の高い米づくりというのを目指していく、これは果たして可能なのかどうか。確かに、遅々としてではありますが、生産性の高い農家が随分出ていることは事実ですが、スピードが非常に遅いですね。これはそれだけになかなか難しいということです。私の住む宮城県を中心に東北は特にスピードが遅いですね、残念ながら。日本の食糧基地と言われる東北です。米による依存度というのは、恐らく全国的に見ても各県五〇%から七〇%というのがたくさんあるでしょう。東北六県はほとんどそういうところにランクされているでしょう。こういうところでそれがなかなかいかないというのは、やはりもう少し考えなければいかぬと思うのですね。どういうところにその原因があると当局はお考えでしょうか。
  223. 鴻巣健治

    ○鴻巣説明員 確かに構造改善のテンポというのは非常に遅々たるものがあると思います。農地を資産として持っていて、なかなか手放したがらない。御先祖様の土地は簡単に人に貸さない。それこそ貸したら本当に四分けたと言われたくないという気持ちとか、それから今の稲作の技術は相当高度平準化いたしておりますので、極端な話で言えば、土曜、日曜日に稲作をやればあとは第二種兼業農家として、サラリーマンとして十分勤めてもいられるということもあるわけであります。それから、自分の食べる飯米ぐらいは自分でつくった方がいい、そういう精神もまだ牢固としてある。そういうことがいろいろ重なっているわけであります。ただ実際には、そういう中で、先ほど言いましたように稲作担い手と呼ばれるにふさわしい農家は三十二万戸ぐらいは確実にありますし、それから規模の小さい農家から規模の大きい農家中心にして農作業の受託をする、耕うんをするとか防除をするとか収穫作業をやるとかいうような集団が確実にふえているというところがこれからの構造政策の展開の一つのよりどころだと考えております。
  224. 武田一夫

    ○武田委員 コストを下げる可能性につきましては、やはり経営面積が非常に狭い、そういう狭いところはいろいろな条件が非常に悪い、これはそのとおりですが、悪い条件のところも含めないと、日本は、現状では一千万トンの米はなかなか確保はできないだろう。となれば、先ほども話があったように、こういう地域、山間僻地の田んぼというものに対する対応が、平たん地における土地の集積と同時にこれからの大きな課題ですね。これは農業政策の中でこれから日本にとっては一番の泣きどころであろうと思うし、これをうまくやればまた日本農業というのは非常に生き生きしてくるだろうというだけに、それに対する取り組みは重要な問題だと思うわけです。聞くところによると、そういうことでいろいろ苦労しているヨーロッパ等の地域におきましては、農業政策のほかに山村対策ですか、何かそういうものをやって特別に手当てをしているということでございますが、日本もこれはそれ以上に重要な対応として考えなければならない一つのケースではないか、こう思うのですが、この点についてはどういうふうに取り組んでいこうとお考えですか。  それからもう一つ、同じ田んぼでも東北というのは湿田地帯が非常に多いですね。田んぼが深いです。新幹線でずっと多かれると皆さんわかりますが、栃木県や群馬県の田んぼを見ていると非常に浅いです。いつでも畑にかえられるような地域です。こういう地域は田畑輪換は非常にしやすいでしょう。ところが東北に入りまして、特に古川等々をごらんになると、もう九十センチか一メートルぐらいある、あるいは浅くても六十センチというところがあります。こういうところで田畑輪換をする経費を考えた場合、そういう湿田地帯はそのままもっと米をたくさんつくらせてきちっと基盤整備をさせていけば、もっと収量が上がって安い米をつくることも可能である。生産性向上によって規模収量もどんどん上がっている地域があるということを考えると、こういう地域による対応というものをきめ細かにやることによって、いわゆる適地適作といいますか、そのことによって米の値段をもっと安くしながら農家の収入ももっと上げられる、そういうようなきめの細かい対応も、これからの水田農業確立対策の中でなすべき重要な方向ではないかと私は思うのですが、あわせて御見解を聞かせていただきたい、こう思います。
  225. 鴻巣健治

    ○鴻巣説明員 山間部の規模の小さい土地基盤整備でございますが、これは今非公共事業でいいますと農業構造改善事業、これは二ヘクタール以上まとまればやっております。それから、山村振興対策事業で、これも受益戸数が三戸以上まとまればやります。それから農村地域定住促進対策事業、この農村地域定住促進対策事業というのは昔過疎対策事業と呼んでいたものですが、これも受益戸数が三戸以上ということでかなり小さいものも小まめに拾ってやっておりまして、六十一年度の実績でいいますと、農業椎造改善事業による土地基盤整備は二百六十五億円の事業費でございます。それから山村振興対策では、六十一年度は九十二億円の事業費を投入いたしました。同じく、農村地域定住促進対策事業では、六十一年度四十億円の事業費を投入いたしてやっております。  なお、そのほかに公共事業では在来からあります小規模排水対策特別事業というものに加えまして、六十二年度から水田農業の確立対策と関連いたしまして小規模な土地改良事業を実施するという制度をつくりまして、またその拡充を図っております。今回作業中の補正予算でも、こうした小規模土地基盤整備を積極的に推進いたしております。なお、農蚕園芸局の中にもそういう小規模土地改良を通じての水田農業確立対策に資する事業がございます。  それから、もう一つお尋ねの田畑輪換を進めたらどうだということでございますが、今田畑輪換が可能な水田といいますと、冬の間に地下水位が七十センチよりも低い水田でございますが、その田畑輪換が可能な水田の面積は百九十万ヘクタール、現在水田面積が全部で二百九十三万ヘクタールございますので、全国の水田二百九十三万ヘクタールの中のちょうど三分の二の六六%に当たる百九十二万ヘクタールが私どもは田畑輪換が可能なくらい地下水位は低くなっていると考えております。そのうちで、機械が入って能率の高い農作業ができますように区画が大体三十アール、つまり三反区画程度に整形済みのものは百九万ヘクタール、これは全体の水田面積の三七%に当たると考えております。  こういった田畑輪換をやるための基盤整術につきましては、水田農業確立排水対策特別事業といったような事業のほかに、圃場整備とか土地改良の総合整備事業などを重点的に推進しております。今お話しいたしましたことしの補正予算におきましても、こういった圃場整備等で水田の汎用化に役立てる事業を積極的に推進するつもりで現在補正予算の最終的な作業をいたしておるところでございます。
  226. 武田一夫

    ○武田委員 時間も参りましたから以上で終わらせていただきますが、いずれにしましても、米というのは我が国の基幹作物でございます。そして、国民の食生活の基本を支える大事なものでございます。先ほど次官がおっしゃいましたように、食糧自給率が極端に低い我が国において、国民の供給熱量の二八・二%というものが米から供給されているということを考えたときに、世界の食糧事情も長期的に見れば非常に不安定だということもございますし、そういうことを考えたときにしっかりと米を守り、その安定確保のための方策について万全を期すように要望して、ちょうど今時間終了ということでございますので質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  227. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 神田厚君。
  228. 神田厚

    ○神田委員 午前中の大臣への質問に続きまして、政務次官及び農林水産省に対して質問を申し上げます。  まず政務次官にお尋ねをしますが、大変残念な結果でありますけれども、五・九五%引き下げ、大幅な引き下げ諮問案がつくられたわけであります。率直にこの数値につきまして衛藤政務次官はどのような御感想をお持ちになりますか。
  229. 衛藤征士郎

    ○衛藤説明員 この数字につきましては先ほどもお答えを申し上げたのでありますが、九・八%が事前に諮問米価の段階で各方面との折衝によりまして五・九五となったのでありますが、これにつきましては適正な米価である、このように確信を持っておる次第であります。
  230. 神田厚

    ○神田委員 三十一年ぶりの本格的な大幅引き下げ、そういう歴史的な農政史上の一つの大きな問題といたしまして、その担当の政務次官といたしまして五・九五%の引き下げが適正水準であるという答弁は、私はいささか問題のある答弁ではないかと思っているわけであります。  昨年の算定方式計算をした場合の米価は確かに九・八%になる、こういうわけでありますが、しかしながら、米価算定に当たっては、そのときの農林水産大臣を初め農林省及び政府考え方が色濃く反映をされるというのが今までの米価決定の様式でありまして、そういう意味からいえば、先ほど申し上げましたけれども、米価というのは政治米価だ。したがって、時の農林水産大臣及び農林省、政府が今の時点における米価というものをどのように認識をしているのかという政治的な考え方というものが反映をされるわけであります。したがって、三十一年ぶり、五・九五%の大幅引き下げということは、今の政府及び農林省がそういう水準でも、大幅な引き下げでもやむを得ないのだ、むしろそのことが適正だという判断に立ったというふうに私ども考えるわけでありますが、それでよろしいのでありましょうか。
  231. 衛藤征士郎

    ○衛藤説明員 私ども農林水産省といたしましては、米づくり農家また農村の活性化、こういうことに観点を置きまして、生産者米価につきましては農家所得補償並びに再生産確保する、そういう観点に立ちまして、またただいま委員御指摘のございました農林大臣を初めあらゆる関係各方面との折衝を加味した諮問米価の数値である、私はこのように思っておるわけであります。  これにつきましては、農林水産省といたしましては、御案内のごとく農政審の答申を踏まえ、また今日における農業あるいは農村の置かれている状況等も十分に勘案をいたしまして、政府といたしまして五・九五%という数字諮問いたしたことは、これについては適正である、このように考えておる次第でございます。
  232. 神田厚

    ○神田委員 過去日本の農家というのは、政府の指導する農政に素直に従ってきた。したがって、減反政策その他の困難な状況も、その減反割り当てを超える形でそれにこたえてきた。ところが、そういうふうに農政に協力をしながらも、農業の展望は開けない。まさに日本の農業の基幹でありますところの稲作農家が、このように大幅な値下げの中でこれから営農を続けていくということは、まことに困難な状況がたくさんあるだろうと思うのであります。  そこで私は、仮に五・九五%でこの米価引き下げが決定をされた場合、これから先の農政に対しまして非常な混乱が起こることをおそれている者の一人であります。いわゆる転作に対する協力の度合いはどうなるのか、また食管問題がそれによって崩れる兆しはないのかというようなことを含めまして、五・九五%というものが仮に決定をされました後は非常に農政の混乱が起こる、私はこういうふうに思っておりますが、政務次官はそういう問題についてどういうふうなお考え方を持って、またどういうふうな対処をしようとなさっているのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  233. 衛藤征士郎

    ○衛藤説明員 ことしの生産者米価は、御案内のとおりOECD閣僚理事会等々、いわゆる国際的な日本の米価に対する熱い視線というものもあったのも事実でございます。しかるに、生産農家、また全中、全農、各団体を初め、何としてでも米の自給の根幹を守り、さらには食管を堅持する、この二つが米の自由化、輸入を完全にシャットアウトする中心的な、中核的な役割を果たしてくれる、何としてでも米の輸入を完全に阻止しなければならない、こういうようなものであったのだと思っております。五・九五%というこの生産者米価諮問というものは、国際的にもあるいは国内的にもそれはあくまでも生産農家を原点とした我が国の農政、また農業の展開、そういうものを考えた上でのことしの生産者米価の決定であった、このように考えております。  先ほどもその生産者米価決定の際のいわゆる要素とり方等々が毎年変わってきておる、これはどういうことだというような御意見もございました。この点につきましても、私も過去十年間議員の立場からこの生産者米価に取り組んできたのでありますが、それは農林水産省としては常に生産者の立場に立って基本的には取り組みをしてきたように思います。もちろん食糧庁としては、生産者または消費者両にらみであることは論をまたないところではあります。しかし、農林水産省としては、基本的には生産農家所得補償並びに再生産確保するという基本に立って取り組みをしてきたものでありますし、またことしの生産者米価もまさにこの基本線のしっかりとした延長に立っておった、このように考えておるところでありまして、五・九五%のこの数字、これが波及する諸問題等につきましては、既に補正予算等々で、構造改善対策あるいは各種の周辺対策等々におきまして、できる限りその生産者米価がもたらす引き下げのデメリットというものをカバーする、補う、そういうことにしなければならない、またそういうあらゆる努力をしていくつもりでございます。
  234. 神田厚

    ○神田委員 三割減反ですね。私のところなんかは、古田は二八%、新田は三七%、大体平均すると三割五分ぐらいの減反をしているわけであります。さらに、転作奨励金は削減をされる、こういう状況の中で、ここでまた五・九五%の大幅な米価引き下げということになりますと、いわゆる稲作中心としてやっております中核農家は大変な打撃を与えられる、こういうことをもっとしっかりと認識をしてもらいたいと思っているのであります。したがって、生産者の立場に立って生産者米価を決めるという方針を貫き通したというのであるならば、再生産所得確保されるという大原則が満たされなければならないわけでありまして、そういう意味では、この五・九五%の値下げというのは、今政務次官が答弁をしたような形で生産者の立場に立って決められた米価だというふうには必ずしも理解をしないのであります。  私は、大臣との交渉やその他の中で、農林水産大臣消費者米価に対して大変気を使っておられた。したがって、消費者米価も同時に下げなければならない。生産者米価が下がった段階において消費者米価も下げることによって消費者の理解を得て、そして食管制度を守っていくんだ、こういうことを何回も答弁をなさった。私は、農林水産省の中にも消費者米価引き下げには反対の意見が多いのではないか、さらに、大蔵省はもちろんでありますけれども、その消費者米価引き下げに対する環境は非常に厳しいはずだ、こういうことを申しましたらば、反対する官僚がいれば罷免をしてでも私は消費者米価引き下げを断行したい、我々の申し入れに対してこういうことを言っている。したがって、消費者米価引き下げるためには生産者米価をある程度引き下げの幅を大きくしておかなければならない、こういうふうな考え方が仮にあったとするならば、私は、今政務次官がおっしゃったような形での、生産者の立場に立って生産者米価の決定を農林水産省は一貫してやってきたという答弁は、非常に矛盾をするものだというふうに考えております。したがって、消費者米価の問題は、政務次官にお尋ねするよりは農林水産大臣に直接写ねなければならない問題でありますからおいておきますけれども、この五・九五%の大幅な引き下げということが適正な、生産者の立場に立った米価の決定だということについては、私としては容認ができないということをお伝えしておきたいと思うのであります。  そこで、今触れられました周辺整備の問題でありますけれども、これだけ米価が下がった段階で、農家の人たちがそれぞれ強力に申し入れをしたり運動をしております問題に、いわゆる生産資材の引き下げの問題が出ております。この生産資材の引き下げの問題につきましてはどのような考え方に立って今後行政指導をなさるのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  235. 浜口義曠

    ○浜口説明員 先生御指摘の生産資材の問題でございますが、私ども、米の生産費調査あるいはその他の生産費調査を見る場合におきまして、肥料であるとか農機具であるとか、こういった生産資材の占めるウエートは極めて高こうございます。農機具におきまして、今度の調査におきましても米の場合三〇%を超えております。また、肥料につきましても七%以上、こういうことでございます。そういう意味におきまして、この生産費の低減が構造政策の推進に加えまして重要な課題であるという認識を私どもも持っておるところでございます。こういう意味におきまして、この一、二年の間にそういう対策をとらなければいけない、生産費低減の対策を進めなければいけないという考えに立ちまして対応してまいったわけでございますが、最近におきます円高の傾向といったものに関連をいたしまして、円高メリットが出てきている部分については、この一年の間に一つの大きな低減の具体的な対策がとられたわけでございます。  一つは肥料でございまして、肥料につきましては、肥料価格安定臨時措置法に基づきまして販売業者の代表である全農と肥料生産団体との間で主要な肥料につきまして、私ども集計しておりますのは十品日でございますが、価格の取り決めが行われまして、この価格が目安になりまして商系を含めました小売価格が形成されております。先生御案内のとおりでございます。  それで、六十一年の肥料年度におきましては、これは六十一年の七月から六十二年の六月にかかる問題でございますが、この交渉を昨年の七月の前に十品目で一〇・三%の大幅な引き下げが行われまして、さらにことしの一月から二・二%の引き下げが行われたわけでございます。都合一一・四%の引き下げとなったわけでございます。ただし、この肥料価格の低減につきましては、午前中、多分統計情報部長からもお話し申し上げたと思いますが、六十一年の米の調査には反映しておりません。タイムラグになっておるわけでございます。ただ、その後を受けまして、昨月から、六十二年の肥料年度におきましても一層の合理化努力、これは円高だけではございませんで、合理化努力をメーカーの方にもしていただきまして、五・六%の値下げが行われたところでございます。  農機具につきまして簡単に申し上げます。  農機具について、円高メリット等の関係で外国から入ってまいっておりますいわば大型の農機具につきましては、これは引き下げ平均五%、一・八%から一五・七%の引き下げが行われております。もう一つは、機械化審議会の御提言によりまして一千五百ccを超える安全フレームの問題がございました。これを契機といたしまして、安全フレームを装てんするトラクターというものにつきましては、この七月一日から一%から三・四%の引き下げが行われたところでございます。メーカーにありましては低コスト化の要請、私どもの要請等々を受けまして、トラクターの車体等をシンプル化するということで、これまた一つの企業でございまして、全体じゃありませんのでここで申し上げるべきでないかもしれませんが、約一三%から一五%の低コスト化の努力がされたということになっております。  以上のような実績ではございますが、私どもとしては、神田先生が今御指摘のとおりでございまして、生産資材の生産費に占める比率が高いということから、これからの稲作のコストダウンを図っていくためにどうしてもこれは重要だというふうに考えております。そういう意味で、これから適切な価格で安定かつ円滑に供給される必要があると考えておりますので、今後とも関係省庁と連絡を図りながら全農等々メーカー団体等の指導に努めてまいる所存でございます。
  236. 神田厚

    ○神田委員 それから同時に土地改良、この農家の負担の軽減というのが避けられないことでありますが、この点についてはどういうふうに考えておられますか。
  237. 甕滋

    ○甕説明員 御指摘のように圃場整備事業等に伴います地元負担金を軽減していくべきである、こういう御意見も当然あるわけでございます。これは今後の話といたしまして、やはり経済的な工法の開発、あるいは地元のニーズに応じましたより工費を節減した選択的やり方の導入、そういったことについても現在実施に移すべく検討しておるところでございます。  また、過去において償還金の金利問題等から割高感がある、こういう地元の実態もあるわけでございますが、これは先ほど来御答弁申し上げておりますように、直ちにこれを借りかえ等の措置によって図ることもなかなかままならぬというような事情もございまして、今後そういった点については慎重な検討を要する課題であると心得ておる次第でございます。
  238. 神田厚

    ○神田委員 せっかくの答弁でありますから、その周辺整備ということについて、さらに努力をお願いをしたいと思っておるわけであります。  さて、算定要素の問題でありますが、今回幾つか算定要素が変えられました。特に企画管理労働、私といたしましても、長年の要求でありましたから、それが採用されましたことについては大変評価をしたいと思うのでありますが、来年度の米価の問題では、ことしの算定の変更というものを、来年度の場合にもこういう要素を引き継いでいくのかどうか、この点はどうでありますか。
  239. 山田岸雄

    山田説明員 お答えいたします。  来年度につきましては、米価審議会等からの意見として出ておりますところでも、早急に今後の算定方式のあり方について検討しろ、こういうふうな御意見をいただいておりまして、私どもはいかなる算定方式が適当であるか、御案内のように農政審でも、需給動向なり、また生産性の向上を的確に反映させるとか、担い手のシェアが今後拡大されるような方向の価格政策の運営、こういう御意見もいただいておるわけでございますので、こういったもろもろの点を踏まえまして、今後の算定方式のおり方につきましては十分検討を深めていかなければならないと考えておりますし、その結果どのような算定方式が与えられるか、また集約されるかということにつきましては今見通しがつかないようなわけでございますが、今年度の算定方式につきましては、先般の前広米審、さらにはその前に行いました米価審議会委員懇談会におきまして、今年の算定方式は五十九年に米価審議会算定委員会から報告をいただいておりましたところの方式、それをベースにしてやるのもやむを得ないのじゃないか、こういう御意見の集約をしていただいておりましたので、その考え方で今回算定させていただいた次第でございます。
  240. 神田厚

    ○神田委員 都合のいいように算定方式改定・米価引き下げられるというようなことの繰り返しが米価決定に対する国民の不信感というのを助長させているわけでありますから、そういう意味では算定方式についての問題は慎重に取り扱っていただきたい。と同時に、少なくとも今回取り入れた企画管理労働のようなものが、一たん取り入れられまたすぐ今度は採用されない、そういう形では非常にまずいと思いますので、その点のところは引き続き御検討をいただきたいということを申し上げておきたいと思います。  米の輸入問題がアメリカから不当な圧力として来ております。我々としましては米は断じて輸入自由化すべきではないという立場に立って申し上げたいのでありますが、過日の日本農業新聞でアメリカの米の安全性の問題が提起をされておりました。小麦などについては非常に厳しい農薬等の使用制限があるわけでありますが、米につきましては大変それが緩やかである、規制が緩和をされている、つまり輸出商品に対しては非常に規制が緩やかだ、こういうふうな問題が指摘をされております。私どもとしましては、このような意味で――この間はアメリカからの葉たばこの問題がありました。時間があれば葉たばこもやりたいのでありますけれども、たばこの問題も、輸出向けのたばこに対して大変毒性を持ったものが使われているという大きな問題がありましたが、米もそういうふうな形で安心ができないし、どういうふうな米に対する農薬の使用基準がなされているのか、農林省としてはどの程度その情報なり正確な事実を把握しているのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  241. 浜口義曠

    ○浜口説明員 神田先生御指摘のアメリカの米に対する農薬の問題でございます。  アメリカの農業等についての農林水産省の勉強はかなり進んでいると思っておりますけれども、率直に申し上げまして、米自体につきまして調査が具体的に行われたということはございません。今までやっていないわけでございます。ただ、ただいま先生が御指摘の新聞等に即しまして、現時点におきまして私どもが把握しておりますデータ、そういったようなもの等から二、三申し上げてみたいと思います。  アメリカの水田稲作におきます害虫の防除等につきましては、具体的に農薬が例示されておりまして、そういったものにつきましては私ども十分承知しているところでございます。例えば、カリフォルニアにつきましては、シュリンプと申しますか、エビみたいなものが主要害虫でございまして、それについては硫酸銅あるいはパラチオンというようなもので対応されているというようなこともございます。あるいはイネミズゾウムシに対しましてはいろいろの農薬が使われている。イネミギワバエというものについては、今申し上げましたパラチオンであるとかマラチオンといったようなものが使われているわけでございます。それからミシシッピーにつきましても、マラチオンとかメチルパラチオンというものが使われておるという事態を私どもは把握しております。  最後に、こういった農薬等におきまして、我が国とアメリカとの規制等について申し上げてみたいと思います。  これは新聞等に出てきたものでございますので、それに即して申し上げてみますと、アメリカの環境保護庁の農薬基準というのは、私どもも当然のことながら入手しておりますし準備しているところでございますが、それ等々によりますと、今申し上げましたパラチオン、日本におきましてはかっては使われておりましたけれども、先生御案内のとおりでございまして、使う人の安全等々からこれは四十六年に禁止しております。そういう意味で、パラチオンについてはNDといいますか検出してはならないというものでございますが、米国におきましては一ppmは使ってもよろしいということになっております。それからマラソンでございますが、日本におきましてはO・一ppmという規制でございますが、アメリカにおきましては、環境保護庁あるいは国際的なFAO、WHO等との連携の上と思いますけれども、八ppmといった数字になっているところでございます。  以上、少しく新聞等について掲示されたものにつきまして、やや誤解のある部分もございますけれども、例えば2・4・5Tの場合、これも先生御案内のとおりでございまして、日本においては食品用としては登録されておりませんが、アメリカにおいてはされているというような形になっておりますが、現在では2・4・5Tにつきましてはアメリカにおいても使われていないということもございます。そういったような準備といいますか調査水準でございます。米の残留基準等については以上のようなことでございますが、先生のお話等もございますので、私どもの職員がアメリカに参りましたときにはそういった調査も行ってまいりたいというように考えるものでございます。
  242. 神田厚

    ○神田委員 非常に大事な問題でありますので、ひとつ事実を正確につかんでいただきたい、このように思っております。  最後になりましたが鯨の問題で、これは場合によりましたら臨時国会中に農林水産委員会を開いて鯨の話をしたいということでありますから、きょうは時間もありませんので、ただ一問水産庁の考え方をお聞かせいただきたいのであります。  条約第六条に基づく勧告の意味でありますが、条約第八条は調査捕鯨を行う締約国の権利を決めておりますので、この点がどういうふうになるのか。あるいはそういうことで、どうしてもIWCの中で日本の主張が認められなければ国際司法裁判所に訴えるような考え方があるのかどうか。さらに、今後この捕鯨問題について水産庁として基本的にどういう考え方に立っていくのか。時間の関係で簡単で結構ですから、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  243. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 調査捕獲は条約八条に基づく権利でございまして、六条の勧告があったからといってその権利の行使が条約上制限されるものではないものと理解しておるわけでございます。  それから、国際司法裁判所への提訴でございます。この点につきましては。私どもあらゆる方途を探りまして調査捕獲の実現に努力しなければならないと考えておりますので、そのような方途があればそれは当然検討していかなければならないと考えておりますが、私どもの国内法の常識から考えますと、これはちょっと司法手続にはなじまないものではないかというふうに考えておるわけでございますが、なお検討してみたいと思います。  それからもう一点は……。
  244. 神田厚

    ○神田委員 今後どうするのか。
  245. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 この点につきましては、私ども、ただいま申し上げましたように、調査捕獲は条約上の権利であるというふうには考えておるわけでございますが、今回のIWC総会の勧告決議が韓国あるいはアイスラントに対するものと違いまして、延期勧告というようなことになっておる点も考慮しなければならないと思います。いずれにいたしましても、当委員会が六十年三月に日米の漁業関係について御決議いただいております。その御決議を踏まえまして、さらに広く関係者の意見も聞いた上で政府としての方針を決定したい、かように考えております。
  246. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  247. 玉沢徳一郎

  248. 山原健二郎

    ○山原委員 最初に、六十一年度産米の生産費カバー率について伺いたいと思います。質問があったかもしれませんが、よろしくお願いします。  言うまでもなく生産費所得補償方式基本は、生産費を償うとともに家族労働費を都市と均衡した労賃で評価するということでございますが、まず昨年の米価一万八千六百六十八円につきまして、これは一昨年と同様の据え置きであったわけですが、この米価生産費が償われていたかどうか、こういう点でございます。  昭和六十一年産米生産費、六月二十二日に公表されておるものを見ますと、六十キロ当たり第二次生産費が一万九千七百三十五円でございまして、平均的に見ても一万八千六百六十八円の米価では生産費が償われていないということになるわけでございます。しかも、昨年は作況が一〇五という豊作であったわけでございまして、豊作でも生産費を償えない米価だったということを示しておるのではないかと思いますが、その点はどうお考えでしょうか。
  249. 山田岸雄

    山田説明員 お答えいたします。  今先生、米価生産費をカバーしてないじゃないか、こういう御指摘でございます。  確かに、統計情報部で調査をしていただきました第二次生産費につきましては、地代評価がえ、これは自作地地代でございますが、そういうものとか金利、家族労賃、こういったものは統計上の連続性等もございまして一定のルールで評価されておるわけでございます。したがいまして、この生産費と、私どもが価格政策上生産費所得補償方式算定しておりますものとは若干考え方も異なるわけでございますし、さらには政府の買い入れ価格、それが今主食用の約半分強でございますし、四三、四%の自主流通米もあるわけでございまして、政府の買い入れ価格水準につきましても、自主流通米の価格というふうなものとの関係をどのように見るか、こういう点もあるのではなかろうかと思っておるわけでございます。  御案内のように、自主流通米につきましては、良質なものにつきましては政府売り渡し価格よりもメリットとして一俵当たり三千円ぐらい高いものもあるわけでございますし、こうしたものにつきましては、政府買い入れ価格との対比という面では一応捨象されておるわけでございます。
  250. 山原健二郎

    ○山原委員 私も全く素人で、お答えになっていることが理解できない面もあるわけでございますけれども、正面から言うならば、今私が言いましたような問題を含んでおると思うのですね。現在の生産費所得補償方式資本利子地代を含めた生産費を償うということになっておりますから、そういう意味ではこの点はカバーされていないと言えると思うのです。平均でなく実際にどれだけの農家生産費を償っていたのか。つまり、米価生産費カバー率ですが、米審委員の要求資料を見てみますと、農家数で見たカバー率は六十一年度は二七%となっておりまして、七三%の農家にとっては昨年の一万八千六百六十八円の米価より実際の生産費の方が高かったということでございますが、そういう理解でよろしいでしょうか。
  251. 山田岸雄

    山田説明員 先生御指摘のとおり、カバー率といたしましては、戸数カバー率で二七%、販売数量カバー率で四九%と相なっております。
  252. 山原健二郎

    ○山原委員 そうしますと、米の販売数量で見るとカバー率は四九%とおっしゃいましたから、残りの五一%は生産費が償われていないということになるわけで、つまりコスト割れの価格で販売されているということでございますが、これでは生産費所得補償方式の名に値しないのではないかと思わざるを得ません。その点はどう解釈しておられますか。
  253. 山田岸雄

    山田説明員 今の第二次生産費でございますが、これは統計情報部の方で、ずっと規模別にも一番小さい方から一番大きい方まですべての階層について調査をしていただきまして、それの平均であるわけでございます。私ども、生産費所得補償方式算定しております際の対象農家といたしましては、御案内のとおり今年におきましては潜在需給ギャップ必要量比率、こういう比率を用いまして七九%のところまで――この七九%といいますのは、生産費の低い農家からずっとその生産量の累積を出しまして、その累積の比率が七九%までの農家対象としてとっておるわけでございます。したがいまして、全部の平均したものとの間には当然差が出ることも事実でございますが、なお先ほど申し上げましたように、この政府買い入れ価格水準というものは、米全体の農家が販売する価格水準とは若干異なっておることもあるわけでございます。
  254. 山原健二郎

    ○山原委員 この点で昭和五十年の場合には、農家にいたしまして八〇、数量にいたしまして九二、これがカバーされていたわけでございます。現在は、先ほどの答弁によりますと数量では半分がコスト割れの値で売られているという状態ですね。五十年の場合は今私が言いましたような状態であったわけです。本来生所方式というのはこういうものではないのかと思いますが、そうではないのですか。
  255. 山田岸雄

    山田説明員 今先生御指摘の点につきましては、過去におきます潜在需給ギャップというものは小さかったわけでございまして、その後におきまして潜在需給ギャップがだんだんと拡大してきておる、こういう実態も踏まえまして、私ども生産費所得補償方式によりますところの政府買い入れ価格算定にはそういう事情も反映させていただいておる次第でございます。
  256. 山原健二郎

    ○山原委員 この潜在需給ギャップ反映必要量比率方式、これは本当に舌をかみそうな長い言葉ですけれども、六十一年度の場合、豊作であってもなおかつ多数の農家生産費が償われないという理由はどこにあるかといいますと、それは算定方式そのものに根本問題があって、その算定方式というのは、今おっしゃったように最大の問題が、減反なかりせばという架空の需給ギャップを前提に最初からコストの高い米販売農家米価算定対象から除外しまして、しかも残りの平均米価算定するという、いわゆる潜在需給ギャップ反映必要量比率方式そのものが大多数の農家生産費を償わない方式になっているというのではないでしょうか。
  257. 山田岸雄

    山田説明員 今御指摘の点につきましては、一つの要因になっておるものと思っております。
  258. 山原健二郎

    ○山原委員 六十一年度は、今お話がありましたように、必要量比率を八二%としまして、コストの低い方から順に並べ、その生産数量の累積が総生産数量の八二%となるまでの農家平均生産費算定をする。それから、総生産量の八二%までの農家の戸数の累積は六五%ということでございますから、結局三五%に相当する農家算定から除外している。しかも対象となった農家平均生産費だから、平均以下の農家生産費は償われないという結果になるのも計算上当然ではないかと思いますが、そういうことでよろしいのかという点をお伺いしたいのです。
  259. 山田岸雄

    山田説明員 六十一年の場合におきますところの今先生御指摘の数字につきましては、全販売農家戸数に占める米価算定対象農家戸数の割合は六三%になっております。もう一つの点でございますが、生産費が償われるかどうか、こういう点でございます。この点につきましては、御案内のように家族の労働費につきましては私ども製造業賃金評価がえに使っておるわけでございます。また生産費の場合にありましては、生産費調査におきましては大体採用されておりますものが近傍の労賃、こういうふうなものでございまして、直接生産費調査の体系の数字と、米価算定に使っております評価に織り込んでおります数字との間には差があるわけでございます。
  260. 山原健二郎

    ○山原委員 米価算定で減反面積が大幅に拡大された結果、必要量比率が昨年の八二%から先ほどおっしゃったようにさらに七九%ということになっているわけで、この結果、最初から算定対象外の農家が約四〇%に達すると思われます。しかも、残りの平均算定するのでございますから、今年平年作だった場合、第二次生産費をカバーできる戸数は二割を切るのではないかということが考えられますが、この点はいかがでしょうか。
  261. 山田岸雄

    山田説明員 お答えいたします。  六十二年産米価に対しますところの今のカバー率を推計することは甚だ困難な問題があるわけでございます。と申し上げますのは、六十二年産米生産費というものにつきましては、現在生産活動のさなかにあるわけでございまして、最終結果は来年にならなければわからないというふうなことでもございますし、これを六十一年の生産費と比較いたしますれば、大体先生御指摘のような戸数カバー率で二〇%程度、また販売数量カバー率で約四〇%程度、こんなものになろうかと思うのでございますが、その辺につきましては経費の問題なり、また生産性がどのように今後向上されるか、こういうふうな問題もございまして、正確な数字を今推計することは困難ではなかろうかと思うわけでございます。
  262. 山原健二郎

    ○山原委員 この際確認したいのですが、まず、米価算定対象外となった米は国民にとって必要のない光なのかもう既に先ほどからたくさん質問の中で出ておりますように、必死の思いで努力をして、減反率一〇〇%を超すというような努力がなされているわけですね。これはただごとではないわけでございますが、この米は国民にとって必要不可欠の米ではないのかと思いますが、この点は農水省、どうお考えでしょうか。
  263. 山田岸雄

    山田説明員 米価算定上の数字は先ほど申し上げましたようなことに相なっておるわけでございますが、生産していただいております農家にありましては、いろいろの規模の方といいましょうか、大規模の方もおられれば小規模の方もおられるわけでございますし、こうしたもののうちの特に小規模農家生産対応と申しますものは、米価との関連の度合いが非常に低い方々もおられるわけでございます。そういった方々につきましては、経営的な採算性というふうなことももちろん全然関心がないというわけではございませんけれども、第一次生産費とか、または経営から生産に要する支出額、そういうふうなものとの見合いでもって生産をしていただいている方々も相当おられるのではないか、このようにも見られるわけでございます。供給数量全体につきましては、今年の場合でございますれば千十万トンを生産予定量としておりまして、その中には小さい規模の方々の生産もあるというふうには私どもも認識しております。
  264. 山原健二郎

    ○山原委員 この潜在需給ギャップ方式というのは、減反が拡大されればされるだけ算定から除外されるコスト高の農家の戸数がふえまして、それだけ米価は低い水準になるという方式なんですね。すなわち減反拡大、低米価という仕掛けになっているわけでして、その意味では二重の意味で米つぶしの算定方式ではないのか、見る限りにおいてはそういうふうに考えざるを得ないのですが、この点はどうですか。
  265. 山田岸雄

    山田説明員 需給事情米価算定にいかに反映させるかということにつきまして、五十九年五月の米価審議会算定委員会におきましてもいろいろと御議論いただいた結果、今ここで議論していただいております必要量比率、こういった比率を設けて、コストの低い方からその累積生産比率が同じになるところまでをとってやるのも妥当な案ではないか、こういうふうに御指摘もいただいておるわけでございます。米価算定方式といたしましては、稲の生産活動に要する諸経費なり、また需給事情なり財政事情なりいろいろの観点に配慮していかなければならないわけでございます。そういった配慮事項をすべて網羅して方程式といいましょうか方式を編み出すことはなかなか困難な面もあるわけでございまして、現在の生産費所得補償方式、そういった方式におきまして需給事情を反映させるとすれば一つの妥当な方式ではないか、こういうふうな御意見もいただいておりまして、私どもその方式を現在採用させていただいておる次第でございます。
  266. 山原健二郎

    ○山原委員 来年度以降、政府の考えとして米価についての算定方式を、私に言わせればさらに悪く変えていくことを検討している。それは中核的担い手に焦点を当てた米価算定ということで、将来的には五ヘクタール以上の規模、当面は一・五ヘクタール以上の農家生産費対象にして米価算定をする、こういうこと。しかも、米審懇談会に五月に提出されました米価のあり方についての農水省の資料によりますと、五ヘクタール以上の農家はわずかに〇・五%、一・五ヘクタール以上でも九%にすぎない。そうしますと、残り九割の農家を除外して算定をするというこの方式を考えるということ自体が、九割の農家にはもはや米づくりをあきらめなさいよということになるのではないかと思うのですけれども、その点はいかがなんですか。
  267. 山田岸雄

    山田説明員 昨年十一月の農政審議会の報告に書かれておりますところの、今後の担い手等につきましても米価政策の運用上十分頭に置いて運営すべきではないか、こういう御指摘もありまして、その後私ども今後の米価政策を運営していく場合の算定のあり方、こういうことで庁内でいろいろ検討もしてまいったわけでございます。その検討の成果の一つといたしまして、米価政策上の担い手規模がどのようなものであるだろうがという点でどのようなイメージが描かれるか、こういうことで検討した規模でございます。  もちろん、その規模につきましては、機械化体系の問題なり現在の家族労働力の質の問題なりいろいろの面を考えまして、一応担い手としては五ヘクタールぐらいが考えられるのではないか、また、そこまではいかないにいたしましてもそういう規模のところにまで到達していただく、ないしはそれに近い生産組織というふうなものをつくっていただきまして今後アプローチしていただく、こういった面について配慮いたしますと、担い手予備群的な規模として考えられるものが一・五ヘクタールぐらいではないだろうか、こういうことで私ども勉強の成果を説明させていただいたようなわけでございまして、これが直ちに担い手規模である、したがってそれ以下は切り捨てるとか、こういった価格算定にいかように反映していくか、また反映する場合の規模がそれでいいのかどうかということにつきましては、今後米価審議会等の意見も十分聞きながら検討し、また結論を得なければならない問題だと考えておりまして、その規模を今の生産費所得補償方式でやる場合の生産費調査対象農家規模として直ちに採用いたしまして現行の方式算定するということを申し上げているわけではございませんので、御理解いただきたいと思います。
  268. 山原健二郎

    ○山原委員 ここまで来ると、いわゆる生産費所得補償方式というものではもはやないのではないかという感じがするわけでございますが、きょうは時間もありませんし随分遅くなっておりますので、次へ移らせていただきます。  内外価格差の縮小問題です。これは加藤農水大臣も縮小の努力をしなければと言っておりますし、コストを下げるための努力というのはもちろん必要でございますけれども、国民の理解を得られる価格ということで内外価格差縮小に努めなければならないということが非常に喧伝され、先行しております。しかし、はっきりさせなければならないのは、実務為替レートでドルに換算して何倍だなどと比較して内外価格差が拡大しているというような言い方は、まさにナンセンスだと私は思います。  内外価格差問題については米生産の社会的あるいは歴史的、自然的、民族的な条件まであるわけですが、そのことはおきまして、コストの問題につきまして、少なくとも水田利用再編対策がスタートした昭和五十三年以降、日本の米価は極端に抑制をされてきております。一方アメリカは、目標価格ではありますが、物価上昇等もあって逆に大幅に引き上げられてきております。一九七七年すなわち昭和五十二年を一〇〇としまして、一九八六年、昭和六十一年、昨年度ですね、日本が一〇八という指数です。わずか八%のアップです。アメリカは一四四という指数が出ておりまして、四四%のアップというわけでございます。ですから、為替レートが比較的安定していた一九八五年までは、ドル換算した価格差は七八年の五・八倍から四倍に年々縮小してきておるという状態なのでございます。ところが昨年、日本の米価もアメリカの米価も据え置きでした。ドルに換算して内外価格差は前年の四・〇倍から五・六倍に拡大してしまったと皆さんの文書も書いております。まさに異常な円高の結果ですね。つまり、ドルで表示をしますと昨年の米価は一昨年の米価の一・四倍になったということになるわけです。農家にとっては全く米価は上がっていないにもかかわらず、ドルで換算をするとこういう結果になるわけですね。ことしも同様でして、昨年の為替レートは約百七十円です。現在は百四十五円前後で推移をしておりますから、米価を据え置いてもドル表示の価格は一七%、二割近くもはね上がる結果になるわけでございまして、内外価格差を縮小するということは、ことしの米価を一七%も引き下げねばならぬという議論に発展をしていく可能性があるわけですね。すなわち、ドルの換算による数字のマジックで日本の米価が割高だと大騒ぎをして米価引き下げようとする宣伝、キャンペーンがなされるのはまさに不当ではないかと考えますが、この点についてはどうお考えでしょうか。
  269. 山田岸雄

    山田説明員 先生が今御指摘の内外価格差の比率等につきましては、私どもの持っている統計も大体同じ傾向でございます。この内外価格差につきましてはいかなるレベルの数字を使うか、今先生御指摘の点は多分生産価格ではなかったかと思うのでございますが、生産価格のほかにまた消費価格もあるわけでございますし、そうしたものにつきましても、どのレベルで形成された価格であるか、また品質はどういうものであるか、いろいろ問題のあることは事実でございます。さらに双方の国の価格水準は変わらなくても、例えば月本とアメリカといった対外的な比較においては、為替レートの変動によりましてその倍率も変わってくる、こういうことも事実でございます。そういった点から見まして、この内外価格差、例えば私どもの持っております一九八六年の数字では、アメリカの目標価格との比較におきましては五・六倍ぐらいの差であったわけでございますが、これも為替の変動によりまして幾らでも――幾らでもといいましょうか、ある程度変動はあることは事実でございます。  そこで、どのような比率、倍率というふうなのが正しいかということにつきましても、今申し上げましたように定かに品質、その他条件を一緒にして比較するということはなかなか困難な問題であるわけでございます。それで、私どもが今内外価格差の縮小なり是正ということで考えておりますのは、この比率を何%ずつ下げていこう、こういうふうな非常に短絡的な比率の今後の引き下げ、こういうことではなしに、一般的に日本の場合とアメリカの米、またタイの米、こういうものを比較いたしましたときに相当の差のあることは事実でございまして、私どもも、生産性の向上を懸命にしていただきながら、その成果を米価の中にも反映することによりまして少しでも実質的な内外の価格差が引き下げられる方向にいけば、国民の理解と共感を得るためにも非常に好ましいことではないか、このように考えておる次第でございます。
  270. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に政務次官にもお尋ねしたいんですが、私は最近における米、農業に対するいわば攻撃といいますか不当な宣伝が余りにも多くなされている。テレビを見てもそうですね。かつて三K赤字といって、健保、国鉄、米ということで、健保はもう制圧して、次には国立の療養所までつぶすというところまで来ていますね。それから国鉄は分割・民営ということで、そして今度は米と、三K赤字のあのときからもうずっと米に対するねらいがつけられてきまして、中曽根首相は、先ほど大臣にも申し上げたんですが、日本の米はアメリカ産の十倍も高い、一国の首相が自分の国の国民の主食の問題でこんな軽々しい発言をするなんてとんでもないことです。恐らく世界じゅうないと思いますね。そういう考え方。そして、農業改革に同調しないならば早晩国鉄の分割・民営と同じになるということを、これは五月八日のテレビで言っています。これはもう国民に対する恫喝ですね。おれの言う農業改革に対して賛成しないならばもう分割・民営と一緒だぞというものと一緒なんです。  それから、中曽根さんが非常に称賛してやまない大前研一さんの「新・国富論」、あの中には農民を敵にしたって選挙には勝てるんだという言葉がありますね。私は、これは冗談でなくて、中曽根首相の持っている考え方と彼を取り巻くブレーン連の動きというものを見ましたときに、今日の米問題の背景がそこにあると思うのです。自分の国民の食糧は自国で生産をしていくという構えを日本の国の宰相が捨てたらこれは大変だ。このときには本当に農水省は命がけで闘わなければいかぬ。それまで守れなかったら一体何のために農水省はあるのかと言われるものなんですね。  私、先ほど言いましたけれども、一億の人口がおりますよ。しかも、今穀物の自給率が三二%しかない国が、食糧の供給をさらに外国に、他国に依存することで安定が達成されるなどという例はどの民族の歴史でも古今東西ないんです。そういうことを考えますと、先ほどからも各党の議員さんが質問しておりますように、この自由化に対しては断固として阻止せよというのは当然なんです。財界はどうかというと、ことしの一月に財界四団体の首脳が異例の年頭記者会見をしまして、ことしは米、食管制、農業改革の年だ、こう言っていますね。経団連は米問題に関する提言をことしの一月にしております。それから前川リポートが出ておりまして、市場メカニズムの農業への取り入れを言っております。そういう経過から見ますと、今度の農業、米に対する誹謗、中傷といいますか、キャンペーンのあり方というのはこれは異常な事態だ。  私はそういう意味ではこれに対して反論をすべきだと思いますし、実は我が党のアメリカの米事情調査がなされておったわけですが、そこでこういう質問を数カ所でやっているわけですね。自由化をした場合に、日本人好みの米を量質ともに保証できる見通しがありますかという質問に対しまして、ほとんど明快な答弁がないのですね。ある政府当局者はこう言っています。自由化の窓をあけてくれ、窓をあけさえすれば、たとえそこにタイの米が入ってもいいのだというのが我々の気持ちだ、こういう言葉まで出てくるのです。そしてしばしば出てくる言葉は採算という言葉ですね。採算がとれれば日本に送る米を生産拡大をするけれども、採算がとれなければやめます。大体アメリカ人にとって米は野菜なんです。野菜にすぎない。農業総生産の一%にも当たらないものと、全国土で米をつくっておる日本の民族、まさに豊葦原の瑞穂の国ですよ。この国の感情と全く違うんですね。それと比較して、あっちは安くてうまいなどという宣伝の仕方は農水省としては許してはならぬ。あらゆる宣伝機関を通じて、日本の米を守るための宣伝を正当な数字に基づいてやっていただきたいということを私はお願いしたいと思うのです。これがなかったら負けますよ。負けたらどうなりますか。  民族の主権さえ守り切れないのが食糧問題でしょう。この間のたばこの問題だってそう、今お話がありましたけれども、この前の大豆の問題だって禁輸が出たときに大慌てでしょう。米は一体どうなるのですかということを考えますと、ただごとではない事態を迎えて今米価審議会が行われ、皆さんが諮問されておるというこの重大な時点というものを、本当に三十一年ぶりのマイナス米価ですからまさに歴史的な瞬間だと私は思いますが、このときに当たりまして、大臣いらっしゃいませんから政務次官の方から、先ほどから的確な答弁をされておりますが、どうかひとつ決意を込めまして私の質問に対する御答弁をいただきたいと思います。
  271. 衛藤征士郎

    ○衛藤説明員 山原委員にお答えを申し上げます。  既にお答えを申し上げたとおり、米は日本国民の主食でありまして、我が国農業の基幹をなすものでありますし、また水田稲作は国土や自然環境の保全上不可欠の役割を果たしておりますし、また我が国の伝統的文化の形成とも深くかかわり合っていることは御案内のとおりであります。このような米の重要性にかんがみまして、昨年十一月の農政審報告を尊重し、生産性の向上を図りつつ今後とも国内産で自給する方針を堅持してまいるところであります。  また加藤農林大臣におかれましては、六月三十日、閣議の席におきましてわざわざ発言を求めておりますように、米の自給方針並びに食管の堅持、これは六月三十日の加藤大臣の所信表明どおりでございますので、この大臣の決意に沿いまして、私どもも米の自給並びに食管の原則を守ってまいりたい、このように考えておる次第であります。
  272. 山原健二郎

    ○山原委員 終わります。
  273. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 串原義直君。
  274. 串原義直

    ○串原委員 本日、当農林水産委員会は長い時間をかけまして、昭和六十二年産生産者米価引き下げは賛成できないという立場から、熱心に日本農業の将来、食糧自給等について質疑が行われてまいりました。  日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合、日本共産党・革新共同は、昭和六十二年産生産者米価決定に関する決議案をまとめ、政府に具体的な施策の実施方を要求したいと考えましたが、残念ながら、自由民主党の賛成を得られませんでした。まさに三十一年ぶりの生産者米価の大幅引き下げという異常な事態と我々は受けとめておりまして、この機における決議に自由民主党の同意を得られなかったことは遺憾至極であります。  そこで、日本農業の将来にわたる向上発展農家経済の健全化を心より期待しつつ、四党共同提案の決議文を朗読し、記録にとどめ、我々の意思を明らかにいたします。     昭和六十二年産生産者米価決定に関する件(案)   政府は、昨日、米価審議会に対し、昭和六十二年産生産者米価について、五・九五%の大幅な引下げ諮問を行った。   この諮問米価は、減反政策の強化や米価抑制、累積債務等により農業経営がますます苦しくなり、将来への展望を持ち得ないまま生産意欲を失いつつある生産農家の厳しい実情を全く無視したものである。また、わが国農業の特殊事情を踏まえず、内外価格差の縮小をはかることは、稲作農家の再生産確保することにならず、小規模農家のみではなく中核農家の経営をも破綻に追い込むものであり、極めて遺憾である。   よって、政府は、昭和六十二年度生産者米価の決定に当たっては、算定要素の改善を行い、再生産所得確保する価格で決定すべきであり、引き下げを行うべきではない。   あわせて、生産基盤整備の促進と農家負担の軽減、流通施設の整備、生産資材価格の引下げ等稲作農業の体質強化と生産性の向上に資する各種施策を拡充強化すること。   また、食糧管理制度の根幹を堅持するとともに、米の市場開放要請に対しては、第百一国会の衆参両院における米の完全自給等を確認した本会議決議により、断固としてこれを拒否すること。   右、決議する。 以上です。  この四党提案の決議に対し、最後政府の御所見を承りたく存じます。  以上で終わります。(拍手)
  275. 衛藤征士郎

    ○衛藤説明員 昭和六十二年産生産者米価についてのただいまの御意見につきましては、本日の委員会におきましても種々御論議があったところでありますが、現在米価審議会で審議中でございますので、その答申を待って適正に決定してまいりたいと考えております。  なお、その他の点につきましては、本日の委員会におきまして種々御答弁を申し上げたところでございます。      ――――◇―――――
  276. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 この際、保利耕輔君外四名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合及び日本共産党・革新共同の共同提案による食糧管理制度根幹堅持・米の市場開放阻止等に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。水谷弘君。
  277. 水谷弘

    ○水谷委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合及び日本共産党・革新共同を代表して、食糧管理制度根幹堅持・米の市場開放阻止等に関する件の決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     食糧管理制度根幹堅持・米の市場開放阻止等に関する件(案)  最近の我が国農業・農村を取り巻く環境は、農産物価格の低迷に加え、雇用の不安定と地方経済の停滞等誠に厳しいものがある。  特に、稲作農家は、七十七万ヘクタールに及ぶ転作の実施と海外からの米市場開放要請等により、稲作の将来に対し大きな不安を抱いている。  また、米は我が国の主食であり、国民生活の安定にとって極めて重要な食糧である。  よって政府は、左記事項の実現に万全を期し、稲作農家の不安を解消し将来展望を拓くとともに、国民に安定的な食生活を保障するため、確固たる米穀政策を確立すべきである。      記  一 国民の基本的食料である米の安定供給を図るため、食糧管理制度の根幹を堅持すること。  二 米の市場開放要請に対しては、第百一回国会の本院における米の自給等を確認した本会議決議を外し、断固として、国内生産による自給方針を堅持すること。  三 昭和六十二年産生産者米価については、再生産所得確保される適正な価格を実現すること。  四 稲作農家の体質強化と生産性の向上を図るための各種施策を強化拡充すること。  右決議する。  以上の決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  278. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  保利耕輔君外四名提出の動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  279. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 起立総員。よって、本動議のごとく決しました。  この際、ただいまの決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。衛藤農林水産政務次官。
  280. 衛藤征士郎

    ○衛藤説明員 ただいま御決議をいただきましたが、農林水産大臣が閣議で発言しましたように、米の市場開放要請に対しては断固として国内自給方針を堅持していくとともに、食管制度についても、事情の変化に即応して適切な運営面での改善を図りつつ、その基本は今後とも堅持していくことにしております。  また、その他の事項につきましても、十分検討の上、適切に対処してまいりたいと存じます。
  281. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 なお、ただいまの決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付の取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  282. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  283. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 この際、お諮りいたします。  先般、和歌山県及び奈良県の農林水産業の実情を調査するため委員を派遣いたしました。  派遣委員からの報告書は、本日の会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  284. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  285. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十九分散会      ――――◇―――――