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1987-03-24 第108回国会 衆議院 内閣委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和六十一年十二月二十九日)( 月曜日)(午前零時現在)における本委員は、次 のとおりである。   委員長 石川 要三君    理事 北口  博君 理事 竹中 修一君    理事 戸塚 進也君 理事 船田  元君    理事 宮下 創平君 理事 上原 康助君    理事 鈴切 康雄君 理事 和田 一仁君       有馬 元治君    内海 英男君       江藤 隆美君    大村 襄治君       河野 洋平君    鴻池 祥肇君       佐藤 文生君    武部  勤君       月原 茂皓君    前田 武志君       宮里 松正君    谷津 義男君       大原  亨君    角屋堅次郎君       田口 健二君    野坂 浩賢君       井上 和久君    竹内 勝彦君       川端 達夫君    児玉 健次君       柴田 睦夫君 ――――――――――――――――――――― 昭和六十二年三月二十四日(火曜日)委員長の指 名で、次のとおり小委員及び小委員長選任した 。  恩給等に関する小委員       内海 英男君    大村 襄治君       竹中 修一君    武部  勤君       月原 茂皓君    宮里 松正君       宮下 創平君    上原 康助君       角屋堅次郎君    鈴切 康雄君       川端 達夫君    児玉 健次君  恩給等に関する小委員長    宮下 創平君  在外公館に関する小委員       有馬 元治君    江藤 隆美君       北口  博君    河野 洋平君       佐藤 文生君    船田  元君       谷津 義男君    角屋堅次郎君       田口 健二君    井上 和久君       和田 一仁君    児玉 健次君  在外公館に関する小委員長   北口  博君  地域改善対策に関する小委員       鴻池 祥肇君    竹中 修一君       月原 茂皓君    戸塚 進也君       前田 武志君    宮里 松正君       谷津 義男君    大原  亨君       野坂 浩賢君    竹内 勝彦君       和田 一仁君    柴田 睦夫君  地域改善対策に関する小委員長 戸塚 進也君 ――――――――――――――――――――― 昭和六十二年三月二十四日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 石川 要三君    理事 北口  博君 理事 竹中 修一君    理事 戸塚 進也君 理事 船田  元君    理事 宮下 創平君 理事 上原 康助君    理事 鈴切 康雄君 理事 和田 一仁君       有馬 元治君    江藤 隆美君       大村 襄治君    河野 洋平君       鴻池 祥肇君    佐藤 文生君       武部  勤君    月原 茂皓君       前田 武志君    宮里 松正君       大原  亨君    角屋堅次郎君       田口 健二君    野坂 浩賢君       井上 和久君    竹内 勝彦君       川端 達夫君    経塚 幸夫君       児玉 健次君    柴田 睦夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 倉成  正君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 山下 徳夫君  出席政府委員         総務政務次官  近岡理一郎君         総務庁長官官房         長       古橋源六郎君         総務庁長官官房         審議官     勝又 博明君         総務庁長官官房         地域改善対策室         長       熊代 昭彦君         外務大臣官房長 小和田 恒君         外務大臣官房領         事移住部長   妹尾 正毅君         外務省アジア局         長       藤田 公郎君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省欧亜局長 長谷川和年君         外務省経済局長 渡辺 幸治君         外務省経済局次         長       池田 廸彦君         外務省経済協力         局長      英  正道君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         外務省国際連合         局長      中平  立君         外務省情報調査         局長      新井 弘一君  委員外出席者         法務省人権擁護         局調査課長   落合 紹之君         外務大臣官房審         議官      林  貞行君         国税庁長官官房         参事官     細田 浩司君         文部省初等中等         教育局小学校課         長       熱海 則夫君         文部省教育助成         局財務課長   井上 孝美君         文部省教育助成         局海外子女教育         室長      中西 釦治君         労働大臣官房参         事官      竹村  毅君         内閣委員会調査         室長      石川 健一君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十九日  辞任         補欠選任   有馬 元治君     宇野 宗佑君   月原 茂皓君     海部 俊樹君   宮里 松正君     松野 幸泰君   谷津 義男君     相沢 英之君   井上 和久君     大久保直彦君 同日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     谷津 義男君   宇野 宗佑君     有馬 元治君   海部 俊樹君     月原 茂皓君   松野 幸泰君     宮里 松正君   大久保直彦君     井上 和久君 三月三日  辞任         補欠選任   柴田 睦夫君     不破 哲三君 同月五日  辞任         補欠選任   有馬 元治君     武藤 嘉文君   鴻池 祥肇君     越智 通雄君   月原 茂皓君     細田 吉藏君   不破 哲三君     柴田 睦夫君 同日  辞任         補欠選任   越智 通雄君     鴻池 祥肇君   細田 吉藏君     月原 茂皓君   武藤 嘉文君     有馬 元治君 同月二十四日  辞任         補欠選任   児玉 健次君     経塚 幸夫君 同日  辞任         補欠選任   経塚 幸夫君     児玉 健次君     ――――――――――――― 二月二日  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第二号) 同月十三日  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  三五号) 三月十七日  地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別  措置に関する法律案内閣提出第三四号) 二月二十日  国家機密法制定反対に関する請願中路雅弘君  紹介)(第二号)  同(矢島恒夫紹介)(第三号)  同(浦井洋紹介)(第二九号)  同(児玉健次紹介)(第三〇号)  同(柴田睦夫紹介)(第三一号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第三二号)  同(金子満広紹介)(第九三号)  同(児玉健次紹介)(第九四号)  国家秘密法案の再提出反対に関する請願(岩垂  寿喜男紹介)(第八〇号)  同(安田修三紹介)(第八一号)  同(安藤巖紹介)(第九五号)  同(石井郁子紹介)(第九六号)  同(岩佐恵美紹介)(第九七号)  同(浦井洋紹介)(第九八号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第九九号)  同(金子満広紹介)(第一〇〇号)  同(経塚幸夫紹介)(第一〇一号)  同(工藤晃紹介)(第一〇二号)  同(児玉健次紹介)(第一〇三号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一〇四号)  同(柴田睦夫紹介)(第一〇五号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第一〇六号)  同(田中美智子紹介)(第一〇七号)  同(辻第一君紹介)(第一〇八号)  同(寺前巖紹介)(第一〇九号)  同(中路雅弘紹介)(第一一〇号)  同(中島武敏紹介)(第一一一号)  同(野間友一紹介)(第一一二号)  同(東中光雄紹介)(第一一三号)  同(不破哲三紹介)(第一一四号)  同(藤田スミ紹介)(第一一五号)  同(藤原ひろ子紹介)(第一一六号)  同(正森成二君紹介)(第一一七号)  同(松本善明紹介)(第一一八号)  同(村上弘紹介)(第一一九号)  同(矢島恒夫紹介)(第一二〇号)  同(山原健二郎紹介)(第一二一号)  国家機密法案に関する請願工藤晃紹介)(  第九二号) 同月二十三日  国家機密法制定反対に関する請願瀬長亀次郎  君紹介)(第一六七号)  同(岩佐恵美紹介)(第一九七号)  同(柴田睦夫紹介)(第一九八号)  同(江田五月紹介)(第二二六号)  同(坂上富男紹介)(第二二七号)  同(正森成二君紹介)(第二二八号)  同(柴田睦夫紹介)(第三〇三号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第三〇四号)  国家秘密法案の再提出反対に関する請願(嶋崎  譲君紹介)(第一六八号)  同(安田修三紹介)(第一六九号)  同(金子みつ紹介)(第一七四号)  同外二件(川俣健二郎紹介)(第一七五号)  同(佐藤敬治紹介)(第一七六号)  同(安田修三紹介)(第一七七号)  同(菅直人紹介)(第一九九号)  同(楢崎弥之助紹介)(第二〇〇号)  同(安田修三紹介)(第二〇一号)  同(山花貞夫紹介)(第二〇二号)  同(江田五月紹介)(第二二九号)  同(田邊誠紹介)(第二三〇号)  同(楢崎弥之助紹介)(第二三一号)  同(阿部昭吾紹介)(第三〇五号)  同(大出俊紹介)(第三〇六号)  同(嶋崎譲紹介)(第三〇七号)  同(楢崎弥之助紹介)(第三〇八号)  同(野坂浩賢紹介)(第三〇九号)  同外三件(馬場昇紹介)(第三一〇号)  同(松本善明紹介)(第三一一号) 三月五日  国家機密法制定反対に関する請願上原康助君  紹介)(第三五二号)  同(安藤巖紹介)(第四一〇号)  同(石井郁子紹介)(第四一一号)  同(浦井洋紹介)(第四一二号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第四一三号)  同(金子満広紹介)(第四一四号)  同(経塚幸夫紹介)(第四一五号)  同(工藤晃紹介)(第四一六号)  同(児玉健次紹介)(第四一七号)  同(佐藤祐弘紹介)(第四一八号)  同(柴田睦夫紹介)(第四一九号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第四二〇号)  同(田中美智子紹介)(第四二一号)  同(辻第一君紹介)(第四二二号)  同(寺前巖紹介)(第四二三号)  同(中路雅弘紹介)(第四二四号)  同(中島武敏紹介)(第四二五号)  同(野間友一紹介)(第四二六号)  同(東中光雄紹介)(第四二七号)  同(不破哲三紹介)(第四二八号)  同(藤田スミ紹介)(第四二九号)  同(藤原ひろ子紹介)(第四三〇号)  同(正森成二君紹介)(第四三一号)  同(松本善明紹介)(第四三二号)  同(村上弘紹介)(第四三三号)  同(矢島恒夫紹介)(第四三四号)  同(山原健二郎紹介)(第四三五号)  同(工藤晃紹介)(第四七六号)  同(中路雅弘紹介)(第四七七号)  国家秘密法案の再提出反対に関する請願岩佐  恵美紹介)(第三五三号)  同(江田五月紹介)(第三五四号)  同外五件(河上民雄紹介)(第三五五号)  同(菅直人紹介)(第三五六号)  同外一件(山口鶴男紹介)(第三五七号)  同(阿部昭吾紹介)(第三八二号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第三八三号)  同(江田五月紹介)(第三八四号)  同(金子みつ紹介)(第三八五号)  同(川俣健二郎紹介)(第三八六号)  同(佐藤敬治紹介)(第三八七号)  同(岩佐恵美紹介)(第四三六号)  同(江田五月紹介)(第四三七号)  同(小川国彦紹介)(第四三八号)  同(渋沢利久紹介)(第四三九号)  同(野坂浩賢紹介)(第四四〇号)  同外一件(有島重武君紹介)(第四七八号)  同(江田五月紹介)(第四七九号)  同(柴田睦夫紹介)(第四八〇号)  同外一件(中村茂紹介)(第四八一号)  同外一件(沼川洋一紹介)(第四八二号)  同外一件(薮仲義彦紹介)(第四八三号)  旧軍人の恩給欠格者に対する特別法制定に関す  る請願外一件(近江巳記夫紹介)(第四七四  号)  旧軍人恩給欠格者に対する特別給付金支給法制  定に関する請願沼川洋一紹介)(第四七五  号) 同月十日  国家秘密法制定反対に関する請願伊藤茂君  紹介)(第五六六号)  同外四件(上原康助紹介)(第五六七号)  同(加藤万吉紹介)(第五六八号)  同(江田五月紹介)(第六六四号)  同(田川誠一紹介)(第六六五号)  同(角屋堅次郎紹介)(第七一五号)  同(田川誠一紹介)(第七一六号)  国家秘密法案の再提出反対に関する請願外一件  (石橋大吉紹介)(第五六九号)  同(江田五月紹介)(第五七〇号)  同(江田五月紹介)(第六〇〇号)  同(江田五月紹介)(第六一五号)  同(金子満広紹介)(第六一六号)  同(串原義直紹介)(第六一七号)  同(清水勇紹介)(第六一八号)  同(江田五月紹介)(第六五七号)  同(佐藤徳雄紹介)(第六五八号)  同(新村勝雄紹介)(第六五九号)  同(森田景一君紹介)(第六六〇号)  同(吉浦忠治紹介)(第六六一号)  同(薮仲義彦紹介)(第六六二号)  同(安田修三紹介)(第六六三号)  同(江田五月紹介)(第七一一号)  同(児玉健次紹介)(第七一二号)  同外一件(清水勇紹介)(第七一三号)  同(高沢寅男紹介)(第七一四号)  国家機密法制定反対に関する請願矢島恒夫君  紹介)(第六一四号)  同外三件(工藤晃紹介)(第七一〇号) 同月十三日  国家秘密法案の再提出反対に関する請願江田  五月君紹介)(第七三〇号)  同外一件(串原義直紹介)(第七三一号)  同外四件(土井たか子紹介)(第七三二号)  同(戸田菊雄紹介)(第七三三号)  同(中村巖紹介)(第七三四号)  同(村山富市紹介)(第七三五号)  同(安田修三紹介)(第七三六号)  同(山下洲夫君紹介)(第七三七号)  同(上田卓三紹介)(第八二五号)  同(江田五月紹介)(第八二六号)  同(嶋崎譲紹介)(第八二七号)  同(坂上富男紹介)(第八二八号)  同外一件(安田修三紹介)(第八二九号)  国家秘密法制定反対に関する請願田川誠一  君紹介)(第七三八号)  同(田川誠一紹介)(第八三〇号) 同月十九日  引揚者在外財産補償法的措置に関する請願  (武藤嘉文紹介)(第八七九号)  同外一件(遠藤武彦紹介)(第一〇〇九号)  同(砂田重民紹介)(第一〇一〇号)  国家機密法制定反対に関する請願鈴切康雄君  紹介)(第八八〇号)  国家秘密法案の再提出反対に関する請願(阿部  未喜男君紹介)(第八八一号)  同(山下洲夫君紹介)(第八八二号)  同外一件(柴田弘紹介)(第九六一号)  同(嶋崎譲紹介)(第九六二号)  同(田川誠一紹介)(第九六三号)  同(薮仲義彦紹介)(第九六四号)  同(関山信之紹介)(第一〇〇五号)  同(田川誠一紹介)(第一〇〇六号)  同(田口健二紹介)(第一〇〇七号)  同外一件(山花貞夫紹介)(第一〇〇八号)  国家秘密法制定反対に関する請願田川誠一  君紹介)(第八八三号)  元従軍看護婦に対する慰労給付金に関する請願  (吹田愰君紹介)(第九六〇号) 同月二十三日  国家機密法制定反対に関する請願安藤巖君紹  介)(第一〇三〇号)  同(金子満広紹介)(第一〇三一号)  同(東中光雄紹介)(第一〇三二号)  同(松本善明紹介)(第一〇三三号)  同(矢島恒夫紹介)(第一〇三四号)  同(石井郁子紹介)(第一一一三号)  同(岩佐恵美紹介)(第一一一四号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第一一一五号)  同(金子満広紹介)(第一一一六号)  同(工藤晃紹介)(第一一一七号)  同(児玉健次紹介)(第一一一八号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一一一九号)  同(柴田睦夫紹介)(第一一二〇号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第一一二一号)  同(中島武敏紹介)(第一一二二号)  同(辻第一君紹介)(第一一二三号)  同(野間友一紹介)(第一一二四号)  同(不破哲三紹介)(第一一二五号)  同(松本善明紹介)(第一一二六号)  引揚者在外財産補償法的措置に関する請願  (長谷川峻紹介)(第一〇三五号)  同(宮里松正紹介)(第一〇三六号)  同(伊藤宗一郎紹介)(第一一七六号)  国家秘密法案の再提出反対に関する請願田川  誠一紹介)(第一〇三七号)  同(薮仲義彦紹介)(第一〇三八号)  同(池端清一紹介)(第一一二七号)  同(田川誠一紹介)(第一一二八号)  同(山下洲夫君紹介)(第一一二九号)  同外一件(上田利正紹介)(第一一七四号)  国家秘密法制定反対に関する請願田川誠一  君紹介)(第一一七五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十一日  国家機密法案の再提出反対に関する陳情書外六  件  (第一号)  防衛秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法  律案国会提出反対に関する陳情書外十一件  (第二号)  防衛費の対国民総生産比一パーセント枠遵守に  関する陳情書  (第三号)  地域改善対策特別措置法期限後の特別立法措置  に関する陳情書外一件  (第四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  小委員会設置に関する件  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第二号)  地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別  措置に関する法律案内閣提出第三四号)      ――――◇―――――
  2. 石川要三

    石川委員長 これより会議を開きます。  まず、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  国政に関する調査を行うため、本会期中  行政機構並びにその運営に関する事項  恩給及び法制一般に関する事項  公務員制度及び給与に関する事項  栄典に関する事項以上の各事項について、衆議院規則第九十四条の規定により、議長に対して承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 石川要三

    石川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  4. 石川要三

    石川委員長 次に、小委員会設置の件についてお諮りいたします。  恩給等調査のため小委員十二名からなる恩給等に関する小委員会  在外公館にかかわる諸問題を調査するため小委員十二名からなる在外公館に関する小委員会及び  地域改善対策調査のため小委員十二名からなる地域改善対策に関する小委員会を、それぞれ設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 石川要三

    石川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、小委員及び小委員長選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 石川要三

    石川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  小委員及び小委員長は、追って指名の上、公報をもってお知らせいたします。  なお、小委員及び小委員長辞任の許可及び補欠選任につきましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 石川要三

    石川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  8. 石川要三

    石川委員長 次に、去る一月二十六日、総務庁長官に就任されました山下徳夫君から発言を求められておりますので、これを許します。山下総務庁長官
  9. 山下徳夫

    山下国務大臣 本年の一月に総務庁長官を拝命いたしました山下徳夫でございます。  私は、社会経済情勢の変化に対応した総合的かつ効率的な行政を実現するため、総合調整官庁として総務庁が果たすべき役割を十分認識し、行政改革の推進を初め各般の課題に誠心誠意取り組んでまいる所存であります。  委員長初め皆様方の格別の御指導、御鞭撻を心からお願い申し上げる次第でございます。(拍手)      ――――◇―――――
  10. 石川要三

    石川委員長 この際、御報告申し上げます。  総務庁長官であられた玉置和郎君が、去る一月二十五日、逝去されました。  ここに、委員各位とともに故玉置和郎君の御冥福をお祈りし、謹んで黙祷をささげたいと存じます。  全員御起立を願います。――黙祷。     〔総員起立黙祷
  11. 石川要三

    石川委員長 黙祷を終わります。御着席を願います。      ――――◇―――――
  12. 石川要三

    石川委員長 次に、内閣提出在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨の説明を求めます。倉成外務大臣。     ―――――――――――――  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  13. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま議題となりました在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について御説明いたします。  この法律案におきましては、まず、今般実施した生計費調査の結果等に基づいて、五十八年度に設定された在勤基本手当基準額改正することとしております。  次に、右生計費調査の際、家族同伴者独身者のそれぞれの生計費調査し、古生計費から算定した在外給与を比較したところ、家族同伴者在外給与独身者在外給与の一・二倍となっていることが明らかになったので、この法律案におきまして、配偶者手当支給額を現行の在勤基本手当の四割から同二割に変更することとしております。なお、右変更は、生計費調査から算定された家族同伴者在外給与総額を変更せずにその構成割合のみを変更するものであるので、本改正によって家族同伴者の生活を圧迫することはありません。  最後に、子女教育手当加算に関する一部改正であります。在外職員在勤地によっては、子女を就学させることのできる適当な教育施設がない地がありますが、かかる場合、在外職員はやむを得ず子女在勤地及び本邦以外の地、すなわち第三国等で就学させざるを得ないことがあります。これら子女は親元を離れて就学することになるため施設の備わった一般に経費の高い学校に就学することとなり、これが在外職員にとって大きな経済的負担となっています。よって、これを救済するため、子女教育手当の定額の一万八千円に加えて、加算限度額の上限である三万六千円まで支給し得るように制度改正するものであります。  以上が、この法律案の提案理由及びその概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  14. 石川要三

    石川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     ―――――――――――――
  15. 石川要三

    石川委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上原康助君。
  16. 上原康助

    上原委員 今、在外公館の法案について改正の趣旨説明がございましたが、法案については最後に二、三点お尋ねをすることとしまして、せっかく外務大臣が御出席になっていらっしゃいますので、当面しているであろう外交案件の幾つかについてお尋ねをさせていただきたいと存じます。  御承知のようにこの一〇八国会は予算委員会初め各委員会ともなかなか審議がはかどっておりません。これはなぜかということを指摘するまでもありませんが、そういう意味で、外交案件についても私たちがお尋ねしたい点、あるいはまた政府の立場でいろいろ明らかにしたいことなども国民の前に映らない、こういう経緯があろうかと思います。  そこで、倉成先生は外務大臣に御就任なされてかなりの期間たったわけですが、当面の外交課題というか、あるいはどういう基本姿勢で我が国の外交を取り仕切っていかれようとするのか、そういうことについてまず御所見を賜りたいと存じます。
  17. 倉成正

    倉成国務大臣 日本の外交の基本姿勢は、申すまでもなく、日本国憲法に基づき、平和国家として世界の平和のために、また人類の繁栄のために、経済大国となりました日本がいかに貢献していくかということがその基本であろうかと思います。  同時に、自由経済と民主主義という共通の価値観を有する西側の一員として、また日本の防衛に関しましては、日米安保条約を軸といたしまして日本の防衛を補完いたしてまいりたいと思っております。  なお、日本はアジア・太平洋の国家でございますから、アジア・太平洋国の一員として、これらの地域との連携を深めつつこれからの外交を展開していくことが大切ではないかと思います。もちろん、ヨーロッパの諸国あるいはアフリカあるいは中南米、その他南太平洋の諸国、そういう国々との友好関係も大切なことであることはもちろんのことでございます。
  18. 上原康助

    上原委員 極めてこれまでのありきたりの御答弁で、いわゆる倉成外交をどう進めていかれようとするのか、そういった焦点が少しわからないわけですが、そのことは別といたしまして、端的にお尋ねいたします。  外相は去る三月十二日から十五日ごろの予定でワシントン訪問をしようとしておられたわけですね。そういう計画をなさっておった。しかし国会の不確定状況で結局中止をなさったわけですが、ただ、今もおっしゃったように、対外外交は日米関係を重視をする、そういう面からしますと、円高問題あるいは貿易摩擦、特に米国議会における対日感情等々を考えた場合に、外相が訪米を中止をしたということは、私は外交儀礼の面からもあるいは対外に与える影響というのは大きいと思うのですね。そのことはどういう御認識を持っておられるのか。また、日米関係なり、この中止による米側の日本側に対するいろいろな認識、感情というものをどのようにお考えなのか、その点をまずお聞かせいただきたいと思います。
  19. 倉成正

    倉成国務大臣 日米関係は、申すまでもなく日本の外交の基軸と申してもいい重要な関係でございます。その日米関係におきまして貿易摩擦の問題が非常に重要な問題になっていることは上原委員御承知のとおりでございまして、これは日本とアメリカとの関係の貿易収支、また経常収支のアンバランスの問題で日本の出超が続いておる、こういうことを背景にいたしまして、アメリカの議会あるいは政府筋におきまして大変日本に対する批判が高まっておる。特にアメリカの国会におきましては、下院、上院等におきまして日本の貿易に対する報復と申しますか、そういう法案がいろいろと準備されつつある、またそういう法案が数限りなく出されておるということは御承知のとおりでございます。  そういう状況の中で、私といたしましては、国会の事情が許せばアメリカに参りまして肌でこれらの問題を感じまして、そしてまた我が国の立場もいろいろと説明をしたいという気持ちでございましたけれども、これは内々これらのことを先方と相談をしておったわけでございまして、正式にこれを申し入れておったわけではございません。しかし、内々とは申しながらいろいろ先方の方でアレンジをしていただいた向きもございますので、大変御迷惑をおかけしたことを残念に思っておるわけでございますが、アメリカ側も日本の今日置かれている立場を十分理解しておられるものと思うのでございまして、この点はアメリカ側の理解を得られているものと思うわけでございます。  しかしながら、日米関係を総覧する立場の外務大臣としましては、今後とも機会があれば訪米したい気持ちには変わりはございません。しかし、今のところ具体的にいつどうするかということについては計画がございません。
  20. 上原康助

    上原委員 そうしますと、マスコミで取りざたされておりますように、あるいは首相官邸からは既に外務省に指示をしたというような報道などもあるわけですが、中曽根首相の四月末日から五月の連休にかけての訪米というのは、これは決定というか、そういう訪米するという前提で今米側と話し合いをしているのかどうか、首相訪米についてひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  21. 倉成正

    倉成国務大臣 御承知のとおり、ベニス・サミットが六月に開かれるわけでございますので、このベニス・サミット前に友好国であるアメリカと日本の総理大臣と、またレーガン大統領といろいろ懇談をするということは大切なことだと考えておりますけれども、現在のところ具体的な計画はまだ定まっていないというのが実情でございます。
  22. 上原康助

    上原委員 まだ具体的な計画は固まっていないというお答えですが、しかし、四月末日から五月にかけて訪米をしたいと官邸筋から盛んにアドバルーンを上げておりますね。  首相訪米の目的は何ですか、もし訪米するとすると。それと、その見通しですね。また、首相が訪米するときには貿易摩擦緩和のためのいわゆる具体策というのは持ち合わせて行くのかどうか、こういう面ももっと明らかにしていただかないと、ただ、ベネチア・サミット前にレーガン大統領と会って日米間の意見調整をするという漠然とした形では、今の日米関係はいかない面が、課題が多いんじゃないですか。いま少し具体的に明確にしてください。
  23. 倉成正

    倉成国務大臣 日米関係の諸問題については、ただいまベニス・サミットを前にして両国の首脳が会談することが有意義であると申し上げましたけれども、その中には、世界経済全体について相互の首脳がどういう認識を持ちどういう対応を考えるかという基本的な問題があることは当然のことでございます。  そういう意味で申し上げたわけでございますが、同時に、日米関係に限って申しますと、また、日米関係の先ほど申しましたような貿易上のインバランスの問題、個々のいろいろなアイテムについての米側の主張と日本側の対応とについて相当のギャップがある、したがって、その問題についてアメリカ側でかなりのフラストレーションが起こっておるということは御承知のとおりでございます。  それともう一つは、やはり基本的には、マクロの政策として、日本が経常収支について八百六十億ドル程度の黒字が全体としてあるという事実、こういうものがいつまでも続くということは、世界全体のバランスの上からいってなかなか許されるべきことではない、そういうこともございますから、やはりそういうマクロの政策と、それからミクロの個々のいろいろな問題についての対応ということは、もし総理がおいでになるということになれば当然対象になろうかと思うわけでございまして、そういう問題については、総理が訪米されるされないのいかんにかかわらず、私どもとしてはいろいろと勉強させていただいておるところでございます。
  24. 上原康助

    上原委員 もちろんそういった貿易摩擦の問題等々が主要なテーマになることは間違いないと思うのですが、ただ、今中曽根内閣を取り巻いている政治環境ということ、あるいは米側にしてもイランゲートその他で大変苦境に立っている、そういった国内事情を考えてみますと、首相訪米というのは、これまでのように日本の総理が訪米をするということとは非常に政治的な重みにおいて違うと思うのですね。だから、訪米するのかしないのか、するならばどういう目的で行くのか、そのことをはっきりさせようということを私はお尋ねしているわけです。  同時に、一方において与党の首脳というかあるいは重要な地位にあられる方々から、今のような状況で訪米は見合わすべきである、内政問題、そういったことを優先をして、それぞれの国内事情がもう少し整った段階で訪米すべきじゃないかという有力な御意見が出ていることも私たちはマスコミを通して知っております。こういうことについては、外務大臣、外務省はどういう御認識なんですか。
  25. 倉成正

    倉成国務大臣 先ほど、今アメリカの議会の空気の中で貿易問題が非常に大きいウエートを占めておるものですから貿易問題についてお答えをいたしましたけれども、もし中曽根総理とレーガン大統領が会談するということになれば、東西問題について突っ込んだ話し合いをするということは非常に重要な要素の一つであることは、これはもう当然のことでございますからあえて申し上げなかったわけでございます。  なお、今新聞紙上で伝えられているといういろいろなお話でございますけれども、私もそれぞれの関係の方々とお目にかかっておりますけれども、積極的に総理が行くべきでないとか、そういう話は私自身は承知しておりません。
  26. 上原康助

    上原委員 大分逃げの御答弁ですが、そういう有力な御発言があることは否定できませんね。  そこで、恐らく訪米ということになる可能性が強いと思うのですが、その場合に一体どういう話し合いをするかというのが私たちの関心の持たれることなんですね。もう売上税問題でにっちもさっちもいかなくなっている。これは恐らくそのままの形では通らぬでしょう。そうしますと、米国の包括的貿易法案等の米議会における取り扱い等々によって、日本側に対するプレッシャーというのはますます大きくなることはもう否定できないと思うのです。  これまでだって中曽根首相は非常にスタンドプレー、パフォーマンスがうまかった、だから今大きなツケが回ってきていると私たちは見ているわけですが、例えば首相が行かれて、関西新空港建設で米国の企業のいろいろな進出、参入問題が出ておりますが、それは全部認めなさいというような話が出たとする、あるいは農産物の自由化拡大の問題、特にお米の問題ですね、こういうことが強力に持ち出された場合に、今の中曽根内閣というか、中曽根首相の下降ぎみの状況の中でまた重い荷物を背負わされるのじゃないかという懸念を持たざるを得ないわけですが、こういうことはどのようにお考えなのか。  そして、米国の議会における包括的貿易法案に対する我が方の、首相を含めて政府側の認識と、そしてその対応はどういうふうにやっていくのか、そういうことを具体的に国会なり国民の前により明らかにして行っていただかないと、ただでさえ売上税問題その他のことで異常な国内課題が多いだけに、外交は得意とはいえ必ずしも従来どおりにはいかないという状況にあるんじゃないかと思うのですね。  今私が指摘をしたこと、具体的に挙げたことについて、米側ともし話し合いをする段階においてはどのようにやろうとするのか。恐らく総理大臣だって外務大臣や外務省の意向を全く無視してはできないと思うのですね。おぜん立てはやはり外務省がやるんじゃないですか。どうも最近は官邸、官房に外務省が移動したような感を受けないこともないのですが、そこいらどうなんですか、もう少しきちっとしたお答えをいただきたいと思います。
  27. 倉成正

    倉成国務大臣 今、日米関係、貿易関係をめぐって非常に厳しい状況にあることは上原委員御指摘のとおりでございまして、これにどういう対応をするかということでございますが、一つはマクロの政策についての対応、これは御承知のとおり、シュルツ国務長官がプリンストン大学でスピーチをいたしまして基本的な考え方を申しております。そういうことを踏まえて、マクロの対策についてどういう対応を日本が考えているかということを、しっかりした考え方をやはり示す必要があろうかと思います。  しかし、現実の問題としては、やはり個々の問題について、今、関西空港の問題についてお触れになりましたけれども、あるいは農産物の問題についてお触れになりましたけれども、そういう問題についてどういう対応をするかということについての具体的ないろいろな案をやはり我々としては用意しなければならないと思います。  しかし、これにつきましては私は、アメリカはアメリカの主張があろうかと思いますけれども、日本は日本としての国益を踏まえてのやはり物の考え方がございますから、それはおのずから双方で、日本は日本の立場をちゃんと主張すべきところは主張し先方の理解を求めるという態度で臨みたいと思うわけでございまして、外務省としましてはそれらの問題について鋭意取り組んでおるというのが実態でございまして、私どもがそういう問題について確信を得ましたら、これはやはり総理とも十分打ち合わせをしたいということでございます。
  28. 上原康助

    上原委員 もちろんマクロの問題を含めて、日米ですから、米ソの関係とかあるいはいろいろなことを話し合うのはこれは首脳同士ですから当然で、そのことは時間があればお尋ねしますが、しかし同時に、日米関係でいいますと貿易摩擦、いわゆるG5,G7で、この間の約束だけじゃなくして、この二、三年来貿易摩擦の解消というものは内需の拡大をどう日本が図るかということが、これは対米約束だけじゃなくして対外約束なんですね、欧州、ヨーロッパ諸国も含めて。だが一向にそれが進展していないことに非常にいら立ちを相手さんは感じるのではないでしょうか。私たちは国内干渉的なことについてはいかがかと思うこともあるわけですが、しかし、約束したことについては、やはり内需拡大は図らなければいかぬということは否定できないですね。  そこで、米政府は、今政府が進めようとする税制改革、売上税等についてはどういう認識を持ち、どのように受けとめているのか、これはどうお考えですか。
  29. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 米政府の売上税に対する態度としては、この問題については基本的に日本の国内問題であるという態度をとっているというように承知しております。
  30. 上原康助

    上原委員 そんな紋切り型で片づけられることじゃないんじゃないですか。米政府首脳のいろいろなコメントは出ているわけでしょう。  倉成外務大臣は元経企庁長官もなさって非常に経済に明るい方ですが、この売上税問題あるいは内需拡大についてどのようにお考えですか。売上税は本当に内需の拡大につながっていくのか、あるいはまた対外貿易摩擦、対米貿易摩擦を解消するための一つの経済財政政策として可能とアメリカ側は受けとめていると見ておられるのか。これは経済局長が答える答弁じゃないですね。外務大臣どうなんですか、あなたの御認識は。
  31. 倉成正

    倉成国務大臣 その前に、一つ私は申し落としましたけれども、やはりアメリカ側にも我々要求したいことがあるわけですね。例えば財政赤字を減らしてほしい、またアメリカの産業の競争力をもっとしっかりつけてほしいと、これはアメリカ自身も考えておることでございますから、我々から言わなくても当然やることでございますけれども、日本側としてもアメリカ側に言うべきことはちゃんと言うつもりでございます。  なお、売上税の問題については、御案内のとおり、所得税、住民税の減税というのが先行するわけでございまして、その後売上税という問題が、どういう形で通るか別といたしまして、これが後から出てくる。経済企画庁がモデルで計算したところによりますと、大体これは一年ということじゃなくて、少し期間を経まして一・六%程度の物価の上昇につながるということが出ているようでございます。  それから、景気に対する影響ということでございますけれども、所得税が減税になれば、また住民税等が減税になれば、これによって購買力が増す、可処分所得が増すことは間違いないわけでございますから、これは景気の浮揚に役立つわけでございますし、また一面において売上税において若干のブレーキがかかるということを考えますと、この売上税が全体の景気に対してどういう影響を及ぼすかという判断はなかなか難しいと思いますけれども、私の判断では、これは政府全体が正確に計算し、また経済企画庁のモデル等でやったわけではございませんけれども、まあニュートラルに考えていいのじゃないかと思っております。  しかし、少なくとも住民税あるいは所得税、法人税というのが先行するわけでございまして、これは国会の審議が早く進んで四月からということになれば随分国民の方も助かるわけでございますし、売上税の方は来年の一月、そして徴収は五月ということでございますから、そのタイムラグもあるわけでございます。そういう意味で、まあ大ざっぱに申し上げればニュートラルというように私自身は考えておりますけれども、企画庁や大蔵省の諸君はまだいろいろ意見があろうかと思います。しかし、上原先生のお話でございますから率直に私の考えを申し上げたわけでございます。
  32. 上原康助

    上原委員 大臣御自身の御認識もいいわけですが、私が聞いているのは、アメリカ側はどのように受けとめていると見ているのかということが主なんです。外務大臣、ニュートラルはだめですよ。車は、ギアはニュートラルに入れたら動きませんよ、おわかりのように。とまっておったんでは内需拡大できないじゃないですか。そんな御認識ではちょっといかがかと思うのです。  そこで、米政府は、日本政府の新税制改革は、財源対策のみを念頭に置き減税効果を相殺させる結果となっておると言い、内需の拡大にも極めて不十分であると批判をしていますね、昨年末に税制改革大綱が出されたときに。しかも、米政府部内の試算ではこの税制改革による内需拡大分は国民総生産、GNPの〇・一%にしかならず、パセチック、みじめとしか言いようがないと酷評しておるのですよ。こういう認識。売上税導入が六十三年一月に実施と決まったことについても、内需拡大が軌道に乗ってからの、例えば二年後の導入ならともかく、景気の足取りがおぼつかない時点に導入すれば消費抑制効果を強めるだけと、これまた極めて批判的ですね。したがって、今日本政府がやろうとしていることに対しては米側は批判的見解を持っている。  しかも、内需拡大という公約も、これは今公約問題が大問題になっているわけですが、国民への公約も守らない、対外公約も守らない、これでは政治に対する信頼が失墜するだけじゃないですか。こういうことをどう是正するかというのが、もし訪米するとすると私たちが最も知りたいところなんです。そのことに対するお答えがないのは極めて遺憾と言わざるを得ません。これについても御見解があればお聞かせください。  もう一つ大事なことは、今度行かれるときに上下両院合同会議で何か首相は演説をしたいというような意向を持っているようですが、一国の総理ですから演説することは結構なんだが、この上下両院合同会議での演説も予定をされているのかどうかということと、また、そこでどのような演説をするかというのも関心の持たれるところであり、あわせて懸念も抱かざるを得ません。そういう点はどうなのか。  もう一つは、昨年の首相の知的水準発言というものは米国内においては鎮静化したと見ているのか。これに対する影響は今度の訪米においてはないのかどうか。ここらは米国世論の動きなどをどのように御認識しているのか。三点についてお答えください。
  33. 倉成正

    倉成国務大臣 三点御質問があったと思います。  売上税についてアメリカ政府がどう考えるか。これは、あくまで税というものは日本の国内の問題でございますから、これについてアメリカ政府からとやかく言われる筋合いのものではない、日本の政府が独自の判断でやるべきことであろうかと思います。したがって、減税だけやって、それによって内需振興ということになりましても大変な財政赤字が出てくる、そういうことによってインフレが出てきたりいろいろな問題や財政欠陥が出てきたりするわけでございますから、これは日本政府の責任でやるべきことでございまして、アメリカ政府が公式の立場でいろいろなことを私どもに言ってきたことは記憶にありません。  また、今アメリカに行ってどうするかどうかというお話でございますが、総理の訪米の問題についてはまだ何も確定しておるわけでございませんから、上下両院で演説するかどうかとかいう問題については一切まだ考えていないというのが実情でございます。  それから、知的水準の問題は、確かにまだくすぶっている問題があろうかと思います。したがって、これらの問題についてはできるだけ誤解を解くように、これらの対応については最大の努力をいたしたいと思っております。
  34. 上原康助

    上原委員 そうしますと、確認をしておきたいわけですが、今のところ、公式というか、外務省として、四月の米あるいは報じられておりますように四月末、五月の連休を利用して中曽根首相が訪米をするという計画は持っていない、その準備もしていない、こう理解していいのですか。
  35. 倉成正

    倉成国務大臣 外交でございますから、いろいろ世の中動いておるわけでございますから、あらゆる場合を考えながらいろいろな下調べをしたり話し合いをすることはしておりますけれども、そういうことが確定をしてないということを率直に申し上げておる次第でございます。
  36. 上原康助

    上原委員 それともう一点、首相が訪米する前に外務大臣が訪米なさるのかどうか、この点も……。
  37. 倉成正

    倉成国務大臣 その点も含めまして、これはもう動いておるわけでございますから、私が行った方が本当に効果があれば参りますし、またそうでなければ行く必要はないわけでございます。  しかし、いずれにしましても、私は国内におりましてもとにかくできる限りのことを今やっておる。どういうアメリカ側のフラストレーションに対応する施策があるのかという勉強、あるいは国内におりましてもやれることがたくさんあるわけでございますから、また先方からもいろいろな人がいろいろな形で参りますから、そういう方々とも懇談をするということで、外務大臣としては最大の努力をいたしておるつもりでございます。
  38. 上原康助

    上原委員 首相訪米についてはこの程度にしておきますが、いずれにしても、余り明確にはなりませんでしたが、もし行かれるという段階においては、新たな荷物を背負ったり、また、いうところの起死回生の何か外交成果を上げるというようなことでますます深みにはまらないように、ひとつ十分外務省としても配慮をしていただきたいことを注文をつけておきたいと思います。  次に、在日米軍基地の件についてお尋ねをさせていただきます。  最近の在日米軍基地の有事即応化態勢というのは余りにも異常さがあるような感がしてなりません。これは沖縄基地だけではなくして、横田にしても岩国にしても三沢あるいは横須賀、佐世保、そういった主要基地を含めて、特に今チームスピリット87が展開をされているということもあってのことかと思うのですが、総体的に在日米軍基地のこの動きというのが非常に活発化している。日米の軍事演習、合同演習というものも非常に頻繁に行われている。  私たちは、一体この背景は何なのかということを注目しなければならないと思っているのですが、これは日米間で何か新たな話し合いなどもあったのかどうか。それが一つと、いま一つは、推測できることは、五十三年十一月に日米防衛協力指針、ガイドラインが合意を見て、そのガイドラインに基づくいわゆる有事研究その他のことと関連をして、連動をして、それが具体的行動に移ってきたと見ておる、私はこの二、三年の在日米軍基地、日米合同演習などを見てそう感ずるわけなんですが、そこいらについてひとつ政府の御認識、今私が指摘をしたことについてどのようにお考えなのか、お答えをいただきたいと思います。
  39. 倉成正

    倉成国務大臣 御案内のとおり、日本の防衛は日米安保条約を一つの基軸としていることは御承知のとおりでございます。したがって、米国の国防政策は抑止を旨とした、あくまで防衛的なものであると我々は確信をしておりますが、米政府としては、ソ連の顕著なかつ一貫した軍事力増強の趨勢にかんがみて、みずからの抑止力確保のため軍事バランスの改善に努力をしておる、さように承知しておるわけでございまして、一般的に申しますと、八〇年代に入りまして、七〇年代との比較におきまして我が国周辺地域における米軍のプレゼンスは強化されております。御指摘のとおりでございます。  右も、抑止力の維持強化のためにかかるアメリカが努力をしておるものと理解しておるわけでございまして、我が国周辺地区における米国のプレゼンスの強化はアジア・太平洋における平和と安定にとり有意義なものである、また、日米安保体制の信頼性を高めるものと考えておる次第でございます。また、日米間におきましていろいろな取り決めがそういう前提のもとに行われておるわけでございますから、そういう意味で、日米間で緊密な連絡をするのは当然のことだと思います。
  40. 上原康助

    上原委員 恐らくそういう域を超えるお答えは出ないとはこっちも思ってはいるわけですが、しかし外務大臣、そうは言っても、それではいけないという立場の国民もいるわけですね。それは、政府は何でもオールマイティーに米側と安保条約を締結をしているからやっていいという専権じゃないはずなんだ。国民の声、世論というものを聞かなければいかぬと思うのですね。  そこで、今私が指摘をしたこと、否定をなさらなかった、我が国初め周辺地域における米側のプレゼンスというものは強化をされてきた、こう見ておる、これは具体的に言うとどういう面が強化されたのですか、お答えください。
  41. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 在日米軍の数等について、基本的にそれは変わっているということではございませんが、委員御指摘のように、日米間の訓練の頻度あるいはその内容の向上等々、それから三沢におけるF16、これは若干、数年来のことでございますけれども、そういう情勢はございます。  しかし、いずれにしましてもそれが飛躍的に強化されているということではございませんし、それは、先ほど大臣がお答え申し上げましたように、ソ連のこの地域における軍事力の強化、これに対応して抑止力の強化を行うという程度のものであるというふうに了解しております。
  42. 上原康助

    上原委員 きょうは防衛論議じゃありませんので深くはできませんが、私たち抑止論というのも大変架空の、これはもちろんそういう立場の防衛論、軍事論を言う方もおられるし、全面的に否定はしませんが、抑止を旨とした立場、あるいは二言目にはソ連の軍事力の強化、だから必要なんだという従来の論議だけではいかないと思うのですね。  具体的にお尋ねをしますが、さっき私が指摘をした日米防衛協力指針に基づくこととのかかわりも暗に認めたと、私は先ほどの大臣なり今の北米局長の答弁で思うわけです。特に極東有事研究という場合に、これまでは具体的には朝鮮半島有事の際の米軍への日本側の便宜供与ということ、あるいは自衛隊の協力範囲というのが対象とされてきたわけですが、最近のアメリカの軍事戦略の変更というか、そういう面でも再び前線基地に出動部隊を展開をさせるという方向に変わってきていますね。それが今言う三沢へのF16の配備であったし、あるいは佐世保、横須賀に入港している原子力空母なり、そういうこの二、三年来の動き。  一方においては、沖縄基地の例なんか見ますとより明確になるわけですが、復帰時、日米安保条約上もいかがかと思うといった特殊部隊は撤退をしましたね。最近問題になっております、これは極めて重要な問題だと思うのですが、再びミサイル部隊を配備をするということで、その先遣隊は既に配置をされている。きょうは防衛庁は呼んでいないのであれなんですが、これは復帰時点の久保・カーチス協定や何かとのかかわりもあって、そういうものは安保条約上もはみ出るかもしらぬ、問題ないという意見もあったけれども、しかし住民感情なり基地の整理縮小という面から考えても問題だということで撤退をしたのが、新たに配備をされているということは、これは再編強化であることは間違いないわけですよね、ハリアー問題を含めて。  ですから、こういうことは根っこは極東有事を想定をしたいわゆる日米間の申し合わせによってそういうことになっていると私は推測できる、またその方が正しいんじゃないかということを思うわけなんですが、こういうことについて、連動しているのかどうかということと、さらに、極東有事研究というものがどの程度進んでおるのかどうか、あわせてお答えをいただきたい。
  43. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいまの委員御指摘の点でございますけれども、第一点は、日米の共同研究と最近の情勢と何らか連動しているかという御質問でございます。  その点につきましては、特に連動しておるということではないというふうに考えます。日米間でいろいろ話し合って、アメリカの日本における配備について、アメリカがそれに従って配備を行っているということではないということ、これは従来から全く変わりのない点でございます。  それから第二の点でございますけれども、いわゆる極東有事研究がどのように進展しているかという御指摘でございます。  御存じのとおり、シーレーンの共同研究につきましては一応その研究ができておるわけでございますけれども、いわゆる極東有事研究につきましては、昭和五十七年の十一月に第一回の会合をいたしまして以来、関係各省の間で二回程度開かれておりますが、何分にも非常に膨大な関係各省の作業を要することでございまして、現在のところ余り進展していないという状況でございます。
  44. 上原康助

    上原委員 これはまた別の機会に十分議論をしなければいかない問題ですが、一点だけ確かめておきたいことは、極東有事研究という場合に、従来の国会論議などを見てみますと、朝鮮半島有事の際の米軍への日本の便宜供与、自衛隊との協力範囲が主たるものだというふうに答弁もあり、また議論されてきておるわけです。しかし、極東の範囲は安保論議から今日まで非常にあいまいもこというかエスカレートしておるわけですね。極東有事研究の中には、朝鮮半島有事だけでなくして、政府がこれまで言った極東の範国会体にまたがる研究を考えているのかどうか。これはお答えできると思うので、その点ひとつ明確にしておいてください。
  45. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 極東有事研究と申しますのは、ただいま委員御指摘のように、いわゆる六条事態の研究でございまして、すなわち日本が武力攻撃を受けていない状態におきまして極東における有事と申しますか、それに対する我が国の便宜供与ということでございます。この際の極東と申しますのは、もちろん安保条約に言う極東ということと概念的にはほぼ変わらないものかと思いますけれども、この点につきましては研究を進めていく過程で明らかになってくることでございますけれども、何分にも先ほど申し述べましたように研究はまだ緒についたばかりであるという状況でございますので、その過程において明らかになってくる問題であるというふうに存じております。
  46. 上原康助

    上原委員 そうなりますと、いわゆる研究をするにもあの指針には前提条件があるわけですよ、それはもう具体的に言いませんが。六条の適用ということで従来政府が言ってきた極東の範囲云々のようなことを考えますと、恐らくシーレーン防衛、シーレーンということでの合意を見た、これはもう極秘どころか機密のようだからなかなか表には出てこないかもしれませんが、大変な中身だと推測できるわけですね。そうなると、その前提条件そのものも崩れかねませんよ。その点は指摘をしておきたいと思います。  そこで、この基地の動きについて、先ほど在日米軍基地全体的に米側プレゼンスは強化されてきた、極東有事のこととは直接は連動していないと言うのですが、しかし、これは連動していないと言ったって、五条であろうが六条であろうが、有事を想定しているからこそプレゼンスが強化されているのであって、連動していないという言い方は私は当たらないと思うのですね。  例えば沖縄基地の場合でも、皆さんは恐らくみんな安保の範囲だとおっしゃるでしょうが、八七年、ことしになってからの動きを見ても、この一月にはハリアー訓練施設の建設問題が北部訓練場で起きていますね。これはもう国頭村初め県議会全体が反対をしている。また、砲撃演習の空中爆発事故が県道一〇四号線を挟んであった。二月には軍用地の二十年強制使用裁決。これは強い反対によって、まあ言葉は悪いがインチキ裁決というか、十年と五年ということになっておるわけですが、これが出ている。同じく二月に海上自衛隊のASWOCの問題、対潜作戦センター建設問題が表ざたにされた。この三月だけでも、海兵隊のホークミサイル、先ほど言いました配備問題ですね、恩納通信所、あるいは米原潜の寄港問題、ホワイト・ビーチ、同時にチームスピリットとの関連があると思うのだが、NBC、核・生物・化学兵器の防御訓練を嘉手納基地ではもう堂々とやっている。さらにはF4ファントム米戦闘機のフィリピンからの退去、移動というものが報道されておる。  この一連の動きというものは、皆さんからするとそれは安保条約上問題ないと言うかもしれませんが、そういう地域に置かれている県民なり住民からすると、これは耐え得るものではないのですね。余りにも異常さがある。しかも、三年前にはグリーンベレーというものが、先ほど御指摘しましたように読谷に新たに配備をされた。これは倉成大臣はよく御存じと思うのだが、藤井さんは覚えていらっしゃると思うが、沖縄国会で問題になったでしょう、グリーンベレーとかミサイル部隊というのは。なぜ今ごろ、安保条約上はみ出るかもしれないということで撤退をしたのに、新たに配備をするかということについては、そこはいかに日米基軸であろうが、安保条約を認めようが、地域住民感情というものを受けて対米交渉なりあるいは基地行政、またこういった安保条約の運用というものをやるのが、私は政府のとるべき立場だと思う。いかがですか、大臣。
  47. 倉成正

    倉成国務大臣 御案内のとおり、日米安保条約に基づいて日本の安全が確保されておる。したがって、日本の安全をどうやって確保するかという命題と、そして基地を持っておられる、特に沖縄のように多くの地域に基地を持っておられる方々の住民感情、これをどういう形で調和させていくかということは非常に難しい問題であろうかと思います。特に上原委員のように沖縄の地域でそういう具体的な問題にぶつかっておられる方々のお気持ちは私も十分理解できるところでございます。  したがって、この調和をどういう形でやっていくかということがこれからの問題であろうかと思いますけれども、やはり日本の安全を確保しなければ、日本全体が防衛がなくなればどうしようもないことでございますから、そういうことを踏まえながら、現地の住民感情というものを尊重し、そしてそういう方々の御意見を取り入れながら、どういう調和点を見出していくかというために政府としては最善の努力をいたす所存でございます。
  48. 上原康助

    上原委員 それではなかなか納得しにくいんですよね。  そこで、特にこのNBC戦争の防御訓練やハリアー機の飛来というのは新たな動きですね。同時に、ミサイル部隊の配備は、私はミサイル部隊の再配備というのは五・一五メモから考えてもおかしいと思いますよ。それとのかかわりはどうなっているかということ。特に我々が懸念することは、明らかに核戦争、化学戦争を想定して米側なり自衛隊というものは共同訓練をやっている。そうしますと、地域住民というのは何も知らされないわけでしょう。米側なり軍隊というものはそういう訓練をして、有事の場合に対応する。だが、地域住民にはどういう事態ではどうなっていくということは全くおぼつかないことで、不安があるのは当然じゃないですか。そういう場合にどうするのか。この点はどのように対応しようとするのか。さっき言いました五・一五メモと再配備の関係。  そこで、もう一つ明らかにしていただきたいことは、嘉手納基地内には降下放射能避難センターというものが建設されたと言われております。そのことは恐らく核攻撃を受けた場合の米軍並びに米軍人軍属の避難なり放射能を浴びた場合にどういうふうに対処していくかという具体的な訓練であり、また米国民へのガイダンスだと思うのですね。そうしますと、周辺にいる沖縄県民は一体どうするというのですか。これは嘉手納基地だけではなくて、横田にもそういうのがあるでしょう。あるいは三沢、岩国、佐世保、横須賀、そういう地域だってそういうものがないとは言えない。ここいらのことは我々県民、国民は何も知らされないで、堂々とNBC訓練をされておって、これは日米安保条約上必要なんだということだけでは納得できないじゃないですか。余りにもおめでたいと言えばおめでたい。お粗末と言えばお粗末。ぜひお考えと、では米側とはこういうことについては外務省の皆さんはどういうふうに話し合っているのか、ひとつ明らかにしてください。
  49. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 さまざまな問題についての御指摘があったわけでございますが、まず第一の点でございますけれども、一般論といたしまして、米軍がその運用、いかなるときにいかなる軍隊をどこに配備するかということは、当然のことでございますけれども、その情勢に応じて臨機応変と申しますか弾力性を持つということが必要でございます。安保条約の立て方からいたしまして、それに対して、事前協議を要する特定の場合を除きまして、日本政府として、この運用につきましてあるいは配備につきまして日本政府としての意見と申しますか意向をアメリカ側に表明し、それを変更していくという立場には条約上ないわけでございます。  しかしながら、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、地元住民とのかかわり合い、その環境に及ぼす影響等々について十分なる配慮を行っていくべきであるということが我が国政府の考え方でございまして、特定の問題につきまして、その都度できるだけ地元住民の感情、利益等を配慮しながら、米軍と話し合えるものについては話し合っていくという姿勢をとってきておるわけでございまして、ただいま委係員御指摘のハリアーパッドの問題などにつきましても、そういう見地からできるだけの努力をしているというのが現状でございます。  さらに、具体的な御指摘でございますが、NBC戦争云々の件でございますけれども、確かにそういう事実があった、訓練が行われたということは、我々も報道等で承知しております。約三十人の兵士が十五分間ぐらい訓練を行ったということでございますけれども、一々の米軍の訓練についてその内容を詳細に承知する立場には日本政府としてないわけでございますが、一般論として申し述べますれば、米軍がその抑止力を効果的に維持するためにいかなる事態にも対応するということはいわば当然でございまして、有事の際に所要の要員を相手国の攻撃から守るということは、それがNBCであれ、それ自体は軍隊としての一つの特性ということでございますので、それ自体を安保条約上問題であるというふうに言うことはできない、困難であるというふうに思います。  それから、ホークミサイル大隊の沖縄に対する配備でございますけれども、この件と五・一五メモとの関係についてどうだという御指摘でございます。  五・一五メモにおける恩納通信所の使用目的である通信所及び事務所に抵触しないかという御指摘ではないかと想像いたしますけれども、この大隊が現在は一時的にキャンプ・ハンセンに設置される予定でございますけれども、最終的にどこにその司令部を設置するかということは、米側にも照会いたしましたけれども現在のところまだ決まっていないということでございますので、五・一五メモとの抵触というものはないのではないかというふうに我々は感じておる次第でございます。
  50. 上原康助

    上原委員 そんなむにゃむにゃした答弁では理解できますか。  そうしますと、ここは、恩納ポイントはホームベースじゃないわけですね。五・一五メモのことは後でまたどこかで議論しましょう。ホームベースではないのかということと、大臣、いろいろ言っていますが、今具体的に挙げたわけですが、これだけ再編強化されている。あなたもプレゼンスの方は強化されていることは認めますと。もう少しこういったことについて、我々が具体的に疑問を提起するものについては、誠意を持ってまじめに――基地の整理縮小というのはあなた方の復帰の公約なんだよ。どんどん強化をされている実態、これは日本全国の基地を含めて。これに対しては合点がいかぬですよ、こういう局長の答弁では。もう少し外務大臣として、私が今指摘をしたものについて、あなたも住民感情というものはよく理解をしてやりたいということまでは言っておられるわけだから、米側にハリアーパッドは建設させないと言うとか、あるいはミサイル部隊は復帰時点にも問題になったがどうなのかとか、こういうことについてはよく話し合ってみますね。
  51. 倉成正

    倉成国務大臣 いずれにいたしましても、防衛というものは相対的なものでございますから、やはり相手側の脅威がどの程度のものであるか、これに対してどういう対応をするかということにかかっておると思います。  そういう意味において、沖縄の基地がいろいろな意味において住民の感情にいろいろな問題を起こしておるということも承知しております。しかし、その詳細な米軍の行動あるいは意図、そういう一々の計画について我々が知り得る立場にはございません。したがって、ただいま上原委員がおっしゃった精神を我々は外しまして、できるだけ住民感情について配慮をしながら、さらに日本の防衛が全うできるような見地で努力をしたいというのが私の基本的な考えでございます。
  52. 上原康助

    上原委員 一々アメリカ側に注文をつけたり物を言えない、さっきの局長の答弁でも、条約上日本側の意向を言う立場にはない、これはこれまでも議論されてきましたね。それでは基地の全くの自由使用ですよ。だからこそ安保条約というものがいかに諸悪の根源になるかということがいみじくもまた明らかになったわけですが、復帰時点の五・一五メモを含めて、私たちは最近のこういう具体的な基地の強化については納得できない。また、これは私だけじゃなくして県議会、市町村議会――今売上税が自民党員や自民党の県知事からも反対があるように、これはみんなそうですよ、嘉手納町議会にしても国頭にしても恩納にしても宜野座にしてもそうなんだ、県議会にしても。これを全く無視して、条約上そういう立場にないというだけで、精神だけ理解しますということでは、これはもう何をか言わんやですね。  この点についてはぜひ十分な、十分というか、もう少し日本政府の外務大臣らしく、国民の生命、安全というのがアメリカの安全よりは大事なんだから、それを十分受けとめてやっていただきたいと思います。  そこで、さっきありましたが、ハリアーパッドについてはよく理解をしてやっているというわけですが、新たにこのハリアーパッドを強行建設するということはやらないということですね。その点確かめておきましょう。
  53. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ハリアーパッドにつきましては、委員御存じのとおり、現在米軍がその計画を実施してないということでございます。  我が政府といたしましては、米軍の施設区域内に建設をするということでございますので、地位協定上これは米軍として認められた権利であるということでございます。したがいまして、本件についての建設計画の撤回を米軍に求めるという考えはございませんが、地元の方々の御意見などを十分聴取しながらアメリカとも必要な調整を行っていきたい、そのために努力もしてきておりますし、今後とも努力をしていきたいということでございます。
  54. 上原康助

    上原委員 次へ移ります。  次はゴルバチョフソ連書記長の軍縮提案についてどうお考えかということです。  時間がありませんから簡単にお尋ねいたしますが、ゴルバチョフ書記長の提案というのをどう評価をしているのかということが一つ。それと、ジュネーブで目下行われている、第七ラウンドは終わって四月段階からまた第八ラウンドに入るということですが、この軍縮交渉の進展の見通しをどうごらんになっているのか。それと、いろいろ見方があるようですが、日本政府としては、ソ連のSDIに関する態度の変化として評価しておられるのかどうか。このことについてまずお聞かせをください。
  55. 倉成正

    倉成国務大臣 レイキャビクにおきましては、御案内のとおりワンパッケージで軍備管理交渉が行われまして、最後にSDIを契機としてこの交渉が壊れたわけでございますけれども、今回のINFを他の交渉分野から分離するというソ連の案、これは基本的にレイキャビクの前のソ連の立場に返ったものでございまして、レイキャビクのソ連側の主張を撤回してINFを独立した解決の方向として打ち出したことは、本問題のグローバルな解決の第一歩として評価しておるところでございます。  我が国としては、ソ連側の提案を契機に、今後の米ソの軍備管理・軍縮交渉において、INF交渉を初めとして具体的な進展があることを期待しておる次第でございます。また、INFにつきましては、日本側としてはいろいろな機会をとらえましてゼロオプションということを基本的に主張しておる次第でございます。
  56. 上原康助

    上原委員 SDIに対する態度の変化と見るのかどうかはどうなんですか。
  57. 倉成正

    倉成国務大臣 SDIについては、ABMの解釈をめぐっていろいろ米ソ間に話し合いが行われておると聞いておる次第でございます。御案内のとおり、ABM条約というのは攻撃的な兵器と防御的な兵器、そういうもののバランスの上に立っての条約であると考えておりまして、米ソ両国間の条約でございますから我々がこれにコメントする立場にはございませんけれども、今後そういうABM条約の解釈と相まって、SDIの問題はいろいろ米ソ間で交渉されると思います。したがいまして、この前途について予断を私どもがすることは今のところ差し控えさせていただきたいと思います。
  58. 上原康助

    上原委員 それと、ジュネーブの包括軍縮交渉の今後の見通しはどう受けとめておられますか。
  59. 倉成正

    倉成国務大臣 少なくともジュネーブの軍備管理交渉が、レイキャビクにおいてはああいう結果になりましたけれども、INFの切り離し、あるいはその後のジュネーブの軍縮交渉が継続されてきておるということは、私は喜ばしいことであろうかと思いますし、また、シュルツ国務長官がソビエトを訪問するというようなことも伝えられておるわけでございますから、そういう意味においては、私はこれらの交渉が成功することを期待しておる次第でございます。
  60. 上原康助

    上原委員 期待だけではいかないんであってね。  そこで、INF交渉、いわゆる中距離核戦力の交渉の問題点は、大ざっぱに言うと、今後の問題点というか交渉で一番難しいであろうと見られているのは、一つは検証、査察の方法、そういうことをどうなのかと聞いているのです。あなた今ゼロオプションと言ったが、ゼロオプションというのは、米ソ双方が欧州に配備しないというのがたしかレーガン大統領がかつて言ったゼロオプション構想じゃないですか。この問題点の二点目は、アジアに残される百弾頭の配置場所の確定はどうなるかということ、アジアに残されるという問題はどうなるのか。三点目は、きのうあたりから報道されておるように、英国やフランスは、この欧州の短距離核ミサイル、いわゆる戦術核の取り扱いがどうなっていくか、こういうことが、この後の交渉の中であるいはこれは米ソ間で取り決めても、ヨーロッパの関係諸国あるいは日本、アジア、中国等々の関係もあるわけですね。  こういうことについて日本側として、米ソの話し合いが、INF交渉が成果を生むように、交渉が成立するように、合意点に達するように努力をするということが日本側のとるべき態度じゃないのですか、外務大臣。そのことをどういう認識でどういう見通しを持ってどうなさろうとするのかを聞いているわけですよ。いかがですか。
  61. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいまもお答え申し上げましたとおり、米ソ間で話し合われておりますグローバルな枠の百弾頭案、これは全体のパッケージからINF交渉を切り離したということは前進であると評価しておるわけでございますが、今、相当な大量のINFにつきまして、欧州をゼロにして、そしてアジアに百、それからアメリカに百弾頭という暫定的な経過措置として提案されておることは御承知のとおりでございます。  したがって、これは私どもとしてはあくまで暫定的な経過措置として、従来たくさんあったものを百弾頭ずつに非常に減らすという意味では評価する。しかし、我々はあくまでもアジアにおける百弾頭もゼロにしてほしい、そういうことをあらゆる機会をとらえて、例えばシュルツ国務長官が先般日本に参りまして私と会談したときにもそれを主張しておるわけでございます。  したがいまして、これからどういうことになろうかということは、ヨーロッパの場合におきましては短距離のSRINFの問題もありましょうし、通常兵力のバランスの問題もありましょうし、いろいろな問題がこれと絡んでおることも御指摘のとおりでございますから、そういう問題を含めましてこれからジュネーブの交渉が行われると思っておるわけでございます。  しかし、いずれにしましても、米ソ両国がテーブルに着いて、そしてまじめに軍備管理交渉をしておるということは評価すべきであって、これについては我々注意深く見守っておるというのが今の状況でございます。
  62. 上原康助

    上原委員 これはソ連も米国もそれなりの国内事情もあって今回は期待をする方向に向かうと思うのですが、ただ注意深く見守るというだけではなくして、特にアジアに配備をされている中距離核が残るということ等を含めて、もう少し日本側の主体的外交姿勢というか話し合いというものを進めてもらいたいと思います。  時間ですので、これとの関連で、ゴルバチョフ書記長の来日問題をどう今外務省としてやっているのかということと、いま一点、米側の朝鮮民主主義人民共和国に対する対応が幾分変化をしたということもあるようですが、このことについてどう受けとめ、また日本側として、特に朝鮮半島の緊張を緩和するという立場からもっと積極的に外交姿勢を転換すべきだと思うのですが、お答えをいただきたいと思います。
  63. 倉成正

    倉成国務大臣 第一点はゴルバチョフ書記長の来日の問題についてでございますけれども、ボールは依然としてソ連側にあると思います。したがいまして、ソ連側からの提案を待っているという状況でございまして、いろいろなルートを通じましてソ連側と対話を重ねていくということを今やっておる次第でございます。  第二点のいわゆる朝鮮半島の問題につきましては、私は、第一義的には南北両国が、南北両当事者が直接対話によって平和的に解決されなければならないと考えておるわけでございます。そういう対話づくりの環境づくりを日本としてもできるだけいたしたいと思っております。  なお、外交関係が北朝鮮との間でないわけでございますから、経済、文化等の面における民間レベルの交流を積み重ねるという方向でいっておるわけでございます。  なお、今お尋ねの米国のとった措置につきましては、米国の実質的な政策の変化を意味するものではないと承知しておるわけでございまして、米国のとりました今回の措置程度は我が国も従来より行っているものでありまして、現時点で特別我が国が北朝鮮に対する政策を変える考えはございません。
  64. 上原康助

    上原委員 これで終えますが、法案については我が党も賛成であり、また、お尋ねしたかった点は附帯決議等に盛られておりますので、そういう面で御了解を賜りたいと思います。  終わります。
  65. 石川要三

  66. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いわゆる在勤法の改正の審議に当たりまして、この際、我が国外交全般をめぐる諸問題について外務大臣にお伺いしたいと思います。  先ほども同僚議員から質問がありましたけれども、やはり総理の訪米について今大変に話題になっております。外務大臣の訪米は急遽取りやめになったというふうに伝えられておりますけれども、当初外務大臣の訪米が意図された目的は、四月にもと言われている総理の訪米の地ならしとも伝えられています。このところ、売上税の問題が今のままである限り、せっかくの総理の訪米の御希望も難しいのではないかとの観測もありますけれども、総理の訪米について今アメリカ側とは外交チャンネルでどのような打ち合わせを行っているのか、実現の可能性、見通しはどうなっているのか、また訪米の目的は何を目的として行かれようとしておられるのか、その点について御答弁願いたいと思います。
  67. 倉成正

    倉成国務大臣 御案内のとおり、日米関係の首脳者があらゆる機会をとらえてお互いに意見の交換をするということは有意義なことだと思うわけでございます。先ほども上原委員にお答え申し上げましたとおり、サミットが開かれるわけでございますから、その前に日米の首脳者が腹を割って国際情勢あるいは日米間の経済問題あるいは世界経済全体の問題について話し合うことは有意義なことだと考えておるわけでございますけれども、現在のところ具体的な計画はございません。しかし、いずれにしましても、いろいろなルートを通じまして話し合いはしていることは事実でございます。  なお、私がアメリカに行くという問題につきましては、これは非公式にそういうことをいろいろ計画したことはございますけれども、正式に先方に申し入れたわけではございません。国会の事情が許せばという前提のもとであったわけでございます。  私が考えましたのは、御案内のとおり、最近アメリカの国会でいろいろな日本に対する包括的な貿易法案等々が出ておりますし、非常に厳しい経済問題についての環境、日本に対する風当たりが非常に強いわけでございますから、そういうものをアメリカ政府だけではなくしてアメリカの議会の皆様方ともよく御懇談申し上げたいという意図でおったわけでございまして、矢野委員長がおいでになったのもそういう意味合いを持っておると思いますし、また春日顧問等、民社党が行かれたのもやはりそういう意味合いを持っておったものだと思うわけでございまして、私もまさにそういう意味でアメリカの実情を十分承知をして、そして対応に遺憾がないようにしたい、そういう気持ちだったわけでございます。
  68. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、外務大臣の訪米の問題は非公式であったが、今回総理の訪米についての考え方というのはかなり前向きであると同時に、当然総理が行かれるということになれば外交チャンネルで事は進めているんじゃないかと思うのですが、その点はどうなのか。  それから、日米の最高レベルが話し合うことは私は有意義だ、そうは思うのです。思いますが、ベネチア・サミットなんかもございますし、その前に、八百六十億ドルの対米黒字の問題とか貿易摩擦の問題とか、あるいは東西の問題、国際情勢あるいはまた米ソのINF等の削減の問題と極東の問題等、いろいろあると思いますけれども、それに対してただ単に、今まだ何にも決まっていないと言うのでしょうけれども、しかし、そういう御意図があるならば、国民の皆さん方にそういう問題についてどうなのかということについてもやはり明らかにしなくてはならぬのではないかと私は思うのですが、その点いかがでしょうか。
  69. 倉成正

    倉成国務大臣 率直に申しまして、まだ何も決まっていないというのが実情でございます。  しかし、御承知のとおり外交でございますから、いろいろなルートを通じてアメリカの国内の事情あるいはその他の問題についていろいろ先方と話し合いをしていることも事実でございます。しかし総理の訪米を決めたわけではございません。
  70. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 対日貿易赤字は一向に減らないという中でアメリカの対日批判は高まるばかりでありますね。先日私もちょうどNHKのテレビを見ておりまして、ベンツェン議員とボルドリッジ商務長官は相変わらずの強気の主張を繰り返しておったのを聞いておりました。こういう状況の中では、先日私どもの矢野委員長が訪米して議論をしてきたように、アメリカ側にも財政赤字の解消や競争力強化のための努力が必要であることを堂々と述べなければならないというふうに私は思います。  そこで、先日、三月六日でしたでしょうか、シュルツ国務長官が来日したけれども、外務大臣はこの対日批判の問題についてシュルツ国務長官とどのような論議をされたのか、その点についてお伺いいたします。
  71. 倉成正

    倉成国務大臣 シュルツ国務長官とはニューヨークでもお目にかかりましたし、またブラッセルでもお目にかかりましたし、今回三月六日に来られたときが三回目でございまして、国務長官と私との間では、すべての外交問題、経済問題についていろいろとお話を申し上げたわけでございます。INFの問題についてもお話し合いをいたしましたし、また貿易上の問題についてもお話をいたしました。また、アメリカがとるべき財政赤字あるいは競争力の問題等々につきましても、お互い、それぞれの外交の責任者でございますから、それぞれの問題についてはお話をいろいろいたしておりますけれども、その詳細をここで申し上げるというのは差し控えさせていただきたいと思います。
  72. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 外務大臣、やはりある程度明らかにしませんと、ただあなたは盛んに抑えたがっているようですけれども、やはり保護主義に対しては少なくとも日米が協力していかなければならないんだということと同時に、当然日本の方にもシュルツさんはそれなりに要望しておられるというように思うのですよね。また、あなたとしては当然それなりにやはり今度シュルツさんの方にもお話はされていると思うのですね。例えて言うならば、関西空港の問題なんかはどうなのかという問題もあるでしょうし、あるいは半導体の問題も今大変に問題になっている協定違反の問題等も出てきておりますし、あるいは自動車の電話など、そういういろいろの問題が恐らく私は話し合われたと思うのですよ。それに対して何にもお話しにならない。それはもう外交問題ですからというわけにはいかないと私は思うのですね。明確に答弁してください。
  73. 倉成正

    倉成国務大臣 シュルツ長官と私と意見が一致したことは、保護主義ということがあってはならない。したがって保護主義と闘うために最大の努力をシュルツ長官もしたいし、また日本政府としても、自由貿易主義の恩恵を最大に受けておるのは日本でございますから、保護主義とは闘っていかなければならない。しかしそれにはやはり保護主義と闘うだけの材料、こういうものをアメリカとしては欲しいというのがシュルツさんの考え方でございまして、それに対して個々のいろいろなアイテムがあったことは御承知のとおりでございます。  しかしその一々についてどういう問題ということはここで申し上げるのはいかがかと思うわけでございますが、関西空港にしましてもその他の問題についても、それは個々の問題についてアメリカの空気を伺ったことは事実でございます。
  74. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今私は具体的な問題を申し上げましたね。それは関西空港の参加の問題あるいは半導体の言うならば協定違反の問題あるいはまた自動車電話等、そういうふうなグローバルないろいろの問題はやはり話し合われたと思うのですが、その点について、やたらにお隠しになるようですけれども、やはりそれは明白にそういうものは話題になったんだということは申された方がいいんじゃないかと思うのですが、その点がまず第一点。  それからもう一つは、我が国に対する関係で最も問題なのは、言うまでもなく米議会で審議中の貿易法案であろうと私は思います。大臣は本法案について議会の動きをどのように掌握をしておられるのか、また我が国としてはどのような手を打つつもりなのか、その点についてはいかがでしょうか。
  75. 倉成正

    倉成国務大臣 シュルツさんと私との話は、率直に申しまして、個々の問題についでこれはこうだ、あれはこうだと言わなくても、大体ツーカーで話が通ずるわけでございますから、一々――私とシュルツさんとのお話の間では、関西空港の問題、半導体その他の問題は出ておりません。  それから、日米関係の経済問題につきましてどういう認識をするかということにつきましては、詳細は時間の関係上申し上げませんけれども、下院で包括の貿易法案が審議されまして、御案内のとおり三月十三日に貿易小委員会を通過しております。それから、その後本会議でありまして、四月二十八日ごろ本会議を通過するのではないかと言われておるわけでございます。また、上院が包括貿易法案の審議をすることになろうかと思いますが、現在上院が日本を阻害貿易国、アドバーサリアルトレードという、ちょっと何というか訳が非常に難しい、国として決めつけて現在公聴会を開いている、そういうことでございまして、議会一般としては、とにかくこれだけの貿易赤字、経常収支の赤字というのは耐え切れない、そういう非常に強いエモーションというか感情が、日本に対して、議会筋においてもまた政府筋においてもあるということは事実でございます。  しかし、この保護主義というものは日米関係のみならず世界経済全体を大変混乱に陥れるものでありますから、これを避けるためにどうしたらよいかということについてひとつお互いに知恵を絞ろう、日本としてはやるべきことはしっかりやろうということで、今勉強というか検討を進めておるというのが実情でございます。  また、アメリカに対しましても、先ほど委員御指摘のとおり、財政赤字の削減あるいは競争力の強化、そういう問題について十分やっていただきたいということについては当然我々が申しておるわけでございます。ただ、即効的にすぐそれが効果が出ないということになりますと、やはり具体的な目に見える形のものが何かないと、そういう感情を抑えるということは難しいのじゃないかという感じが私の率直なる意見でございます。
  76. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今の御答弁を聞いておりますと、貿易法案に対する先行きといいますか、これは大変に厳しいのだ、厳しいということと同時に、動きについては常に掌握をしていかなければならないわけでしょうけれども、やはりこの問題等についても、シュルツさんとこの間あなたがお会いしたときは、やはりこういうような議会の動き等の情勢分析も当然あったでしょうし、それに対してこういうふうにひとつやろうかというような形で話し合われたかどうかの問題はどうでしょうか。
  77. 倉成正

    倉成国務大臣 シュルツさんは非常に頭のいい方ですから、私も個々の問題についてこれこれこれという言葉の説明でなくして、現在どういう形で日本の輸出が量的には減っておるのか、しかしドルベースではどうであるかとか、いろいろな問題については一つのペーパーをつくりまして、それをシュルツさんに渡してこういうことですという話をしました。  そういうことで、もちろんシュルツさんとの間の話ですから、いろいろな問題について話をしたことは事実でございますけれども、私は、やはり基本的には保護主義というのは両国にとって好ましいことではない、しかし、日本としてはやはりやべきことはやってほしいというのがシュルツさんの貿易についての基本的な考え方であったと思います。それと同時に、やはり国際情勢全般についてのお話もしたということでございます。
  78. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 SDIについてちょっとお伺いいたしますけれども、SDI、米国の戦略防衛構想について、我が国政府は研究計画に参加するという決定を昨年の九月九日にいたしましたね。  過日、米国からラウニー大統領軍縮顧問が来日しましたけれども、これはSDIの進展状況、ABM条約の解釈問題について米側の考え方を説明するためのものと言われてきましたけれども、ラウニー氏の訪日の際の会談内容については、いかなる説明がありましたのか、その点についてお伺いします。
  79. 倉成正

    倉成国務大臣 ラウニー顧問は先般も参りまして、二回ほど来られまして、今のお尋ねは二月末のことだと思います。  ラウニー顧問が参りました際には、日米間で継続的に行われている軍備管理・軍縮問題についての意見交換の一環として来られたわけでございまして、ABM条約の解釈問題をめぐる米国政府内の検討状況及びそのSDIとの関連についての説明があったわけでございます。問題間は、SDIの早期段階的配備の問題については、米国政府関係者が種々の発言を行っているけれども、配備の決定が近い将来行われることはなく、また現在、問題とはなっているわけではない旨申しました。また、ABM条約の解釈問題については、現在、米国政府内で検討中であり、結論はまだ出ていない旨を私に表明をいたした次第でございます。  なお、当方からは、SDI研究計画参加問題に関する昨年九月の政府の方針の決定が研究計画に関するものであることを改めてその際に明らかにした次第でございまして、我が国の基本的立場、なかんずくABM条約には違反しないこと、それから開発・配備に先立って同盟国との協議を行うことを、改めてラウニー顧問との間で確認をした次第でございます。
  80. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先日、公明党の矢野委員長を団長といたします訪米団が精力的に米国の要人との間において会談をして帰ってきたわけでございますけれども、その際、ワインバーガー国防長官などとの会談の結果は、米政府内でもSDIについてはぼ考え方が一致しているようでありますが、その内容としては、SDIの早期部分配備ということはない。しかし、配備については、一つはある程度のミサイル阻止能力が備わった段階、二番目にはさらに精度が向上した段階、三番目は完全に信頼性のある段階の三つの段階での配備を考えていること。また、SDIの研究は極めて順調に進展しているというものであったのですが、政府はSDIについて、これらの点について米側からどのような説明を受けておられるのか明らかにしていただきたいわけであります。  なぜならば、政府がこのSDIの研究参加ということについて踏み切られた以上は、それはやはり無関心ではいられないから私はその点についてお伺いをするわけでございます。
  81. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 SDIの研究がその一部におきまして予想以上の進展を見ているということは、そういうことであるということで政府も説明を受けております。  それから、いわゆる早期配備につきましては、先ほど大臣が御答弁なさいましたように、配備の決定は近い将来行われることはなく、また現在、問題となってはいないという説明を受けておるわけでございます。  先ほど御指摘の矢野委員長に対する米側の説明、ワインバーガーの説明につきましては、一般的に我々もそれを仄聞しておりますけれども、いかなる状況において将来配備をするかという問題について、米政府が公式に意見を表明しているということは必ずしも現段階ではないというふうに存じております。
  82. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 アメリカ政府はABM条約の拡大解釈をとりたいということでありますけれども、この点についてラウニー氏から何らかの説明がございましたか。
  83. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ラウニー顧問からは、SDI研究計画も三年目を迎えまして、広範なSDI関連技術のうちの一部の分野、特に運動エネルギーでございますけれども、について研究が当初より順調に進んできた、遠からず実験が可能となる部門があるけれども、その実験との関連でABM条約の関係について検討する必要がある、それが行われているという説明を受けたわけでございますが、いずれにしましても、ABM条約の解釈について米政府内で意見が固まっているわけではないという説明を受けております。
  84. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今ちょっと御答弁がありましたけれども、アメリカ政府はなぜABM条約の拡大解釈が必要であると考えているのか。要するに拡大解釈を行うということは、このままではSDIの実験とか開発は困難であるということではないかと思うのですが、その点の感触はどうでしょうか。
  85. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいま御説明申し上げましたように、ある一部の研究でございますけれども、につきまして、ABM条約の広い解釈、狭い解釈ございますけれども、その狭い解釈で困難になるのかどうかも含めまして米政府では現在検討中でございまして、その実験との関連で、広い解釈、これは御存じのとおり一九八五年にこの広い解釈というものは正当化し得る解釈であるという立場をとっておりますけれども、この広い解釈というものを採用するかどうかということを検討しておるということでございまして、その実験が広い解釈でなければ行えないということが明確になっておるというわけでもないということでございます。  いずれにしましても、その関連での検討が行われている、解釈についての検討が行われているということでございまして、それについては結論が出ていないということでございます。
  86. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先ほどからの御答弁、米国ではSDIの研究はかなり進展をしており、既に配備を前提とした実験、開発の段階に来ているということですね。その段階に来ているんだ。すなわち、日本政府に説明してきた研究計画の段階を既に超えているんじゃないだろうか、私どもがアメリカの要人といろいろと話し合っている中で今そういう感じを受けるわけでございますが、もし仮に実験、開発という段階であれば、日本は改めて相談されることになっているのか、また改めて交渉することになるのか。研究計画に参加ということだけで配備を前提とした実験、開発への参加をすることは、私はおかしいなというふうに思うのですけれども、その点は政府としてはどういうふうにお考えでしょうか。
  87. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 先ほど申し述べました一部の実験でございますけれども、これが行われるかどうかもわからないわけでございますが、その関連で解釈が検討されているというその実験が仮に行われたといたしましても、それはSDI計画がいわゆる開発の段階に入ったということではございませんで、それはあくまでABM条約の解釈の問題でございまして、SDI研究計画が研究計画であるということの性格を変えるものではございません。  それから、その次につきましては、一般論でございますけれども、ただいま委員御質問の点につきまして先ほど大臣から明確に御答弁申し上げましたとおり、ラウニー顧問に対しましても、大臣から、日本が参加しているのはSDIの研究計画であるということは明確に伝えておるわけでございまして、その後の段階に将来SDI構想が進展したといたしまして、その際日本政府がそれとどういうかかわり合いを持つかということについては、現在のところは全く日本政府はそれについて意図を表明していないというのが現状でございます。
  88. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いわゆる研究という段階で日本の国としては参加したわけですけれども、それより先に進むということになれば、これは時が来れば必ずそういう問題が出てくるわけですから、当然外務省としてはこの問題についてアメリカとも話し合っていかなくてはならない。もう既にSDIの研究というものは、皆さん方が外交チャンネルを通じていろいろとキャッチはされていると思いますけれども、今回矢野委員長が行ったことによりまして、相当進展をしている、このままではその問題でデッドロックに上がってしまうのではないかということもあるものですから、その点について後でちょっと御答弁いただければと思うわけであります。  去る二月二十八日、ソ連のゴルバチョフ書記長は新しい軍縮提案を行ったわけです。これは欧州配備の中距離核兵器、INFに関する交渉を、ほかの戦略核兵器、宇宙兵器と切り離し合意するような内容となっております。これはレイキャビクでの一括、包括ということと比べれば随分前進した。これに対して米側でもこれを歓迎する意を表明し、ジュネーブでの軍縮交渉の進展が期待されるわけでありますけれども、今回のゴルバチョフ提案について外務大臣の評価はどういうものであるのか。また、米ソ核軍縮交渉の前途、米ソ首脳会談の年内開催という点についての見通しについてはどうお考えになっておりましょうか、外務大臣。
  89. 倉成正

    倉成国務大臣 米ソのINF削減交渉につきましては、我が国は、SS20の特性にもかんがみまして、従来より一貫してINFはグローバルかつ究極的に全廃しなければならない、こういう立場をとっておるわけでございます。しかし、暫定的な解決を図る場合でも欧州との対比においてアジアの安全保障に適切な配慮が払われねばならないということを基本方針として主張しておるところでございまして、この方針には変わりはございません。このような基本方針にのっとりまして米側の完全な理解を得ておると私は確信をいたしております。  ソ連が今回パッケージ方式から、INFを他の交渉分野から切り離すとの提案は、基本的にはレイキャビク前のソ連の立場に戻ったものであると思いますけれども、レイキャビクでのソ連側の主張を撤回してINFの独立した解決の方向を打ち出したことは、本問題のグローバルな解決への第一歩として評価をいたしております。  我が国といたしましては、今回のソ連御提案を契機に、米ソ間の軍備管理・軍縮交渉においてINF交渉を初めとして具体的な進展が見られることを強く期待するものでございます。従来から我が国が主張いたしておりますアジアの安全保障を十分考慮に入れた解決が実現するように、INFのグローバルな解決に向けて米国の交渉努力を支持してまいりたいと思うわけでございまして、この点についてはしばしば米側にも我々の立場を説明しているところでございます。
  90. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 四月十三日にはシュルツ米国務長官が訪ソして、米ソの間の外相会談で交渉が本格化されることになるわけでございますが、欧州諸国ではゴルバチョフ提案について、INFの全廃は、東側が短距離ミサイル、通常戦力で圧倒的に優勢であるということもあり、INFは一部残した方がよいなどとの意見もあり、必ずしも一致したものとはなっておらず、今後の課題になっているのじゃないかと思います。  一方、ゴルバチョフ提案、これはレイキャビクでの合意に基づいているわけでありますが、結局アジアへのソ連のSS20は弾頭数として百発分残る、いわゆる米国本土の中距離核弾頭数も百発、欧州は全廃ということになるわけでありますが、この問題に対して、やはり極東である日本の国としては大変な関心事じゃないかと思いますが、政府としてはどのような方針でこの問題については臨まれるのでしょうか。
  91. 倉成正

    倉成国務大臣 もう既に先ほどお話し申し上げましたとおりに、日本といたしましては、INF核弾頭が百弾頭アジアに残るということについては、これは暫定的で、今まで随分たくさんあったものを百弾頭にするということでございますから、そういう意味においては評価する、しかし、あくまでゼロオプションと申しますか、全部なくしてしまうのが我々の基本的な考え方である、また、百弾頭を残すにいたしましても、アジアの安全に十分配慮してほしいということを繰り返し繰り返し申しておるわけでございます。シュルツ国務長官がソビエトに参りましたときにも、その我々の主張を十分頭の中に入れて交渉に臨んでいただけるものと確信をいたします。  もちろんヨーロッパの側におきましてはそれぞれ事情があろうかと思います。近接した地域で通常兵力の問題等の問題があろうかと思います。したがって、簡単な交渉ではないと思いますけれども、その関係をどうやってお互いに話し合っていくかというのが交渉事でありますから、そういう交渉を注意深く見守っておる、また、日本は日本の立場をアメリカ側に強く伝えておるというのが実情でございます。
  92. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 確かに軍縮の方向に進むということは望ましいことであります。だけれども、百発という弾頭というのは、これはもう危険といいますか、その恐怖というものは、これは相も変わらず取り去られるものじゃございません。  この問題について、西欧諸国あるいはアメリカ政府と話し合うことも考えておられるのかどうか、あるいは六月にはベネチア・サミットが予定されておりますけれども、そのINFの米ソ交渉の問題は議題とされるのかどうか、その点についてはどうでしょうか。
  93. 倉成正

    倉成国務大臣 軍備管理・軍縮の問題は当然一つの議題になろうかと思いますが、ベネチア・サミットでどういうことを議題にするかということはまだ、各国間の話し合いのことでございますので、決まっておりません。  今、委員がお話しのように、ゼロにするのが望ましいけれども、百発でも残れば非常にこれは脅威だという点については、全く私も同じ気持ちを持っておるわけでございます。したがって、先般フランスのレイモン外相が参りまして私と六時間ほどいろいろな経済問題あるいは国際問題等について話し合いをいたしましたけれども、そういう際にも日本のINFに対するゼロオプションの立場ということは強く伝えておる次第でございます。したがって、アメリカのみならず、いろいろな機会をとらえまして日本の立場というのは伝えておるわけでございます。
  94. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ゴルバチョフ書記長の訪日について若干お伺いいたしますが、中曽根総理が久しく懸案としておりますゴルバチョフ書記長の来日は、確かに私は重要なことだと思っておりますが、その見通しはどうなんでしょうか。また、INFをめぐる動きはどのように影響するか、大臣の見解を伺いたいわけでございます。  なかんずく見通しについては、ソ連の国内情勢、すなわち、今現在ソ連としては選挙制度の改革とかあるいはゴルバチョフ政権の安定度とかということが言われている、そういうふうな問題とか、あるいは米ソ関係の改善は、今もありましたようにINFの話し合い、これは当然レイキャビク後のINFの話し合いの問題があるでしょうし、また、日ソの話し合われる政治課題としては、北方領土の問題あるいは平和維持と経済協力の問題等々がありますし、また、日本の国内情勢というものについては向こうとしてもかなり関心のあることだと思っておりますが、今現在、鹿取大使とシェワルナゼ外務大臣の詰めの進展に期待されていると思いますけれども、そういうふうないろいろの問題等を考えたときに、見通しというものはどうなのか、この点についてちょっとお伺いします。
  95. 倉成正

    倉成国務大臣 鹿取大使は、先般二十一日にシェワルナゼ外相を訪れまして会談を一時間十五分にわたっていたしたわけでございますけれども、本会談は非常に友好的な雰囲気の中で行われたという報告を受けております。この会談では、日本側の従来の立場を十分先方にも伝え、そして先方もじっくり鹿取大使の日本側の説明を耳を傾けて聞いたということでございます。  今後、ゴルバチョフの来日問題についてはこれから非公式な形でモスコーにおいて重ねていくことになろうかと思うわけでございますけれども、現在のところどういう形になるのかということは、依然としてボールは先方にあるわけでございますから、これは米ソ関係も影響しましょうし、あるいはソビエトの中の国内事情も影響しましょうし、あるいは先方が日本の国内事情をどう見るかというような問題もありましょうし、いろいろなものが絡み合っておろうかと率直に思います。したがって、ボールは向こう側にあるわけでございますので、ゴルバチョフ書記長が日本に来られるということになれば、それなりの成果があるようにこれは迎えたいと思うわけでございます。ただし、日本といたしましては、北方領土の問題があるという基本的な姿勢は我々としては十分心得て対処すべきだと思っております。
  96. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 対中政策についてお伺いいたしましょう。  日中関係というのは、歴史的、文化的に見ても一層の強化を図っていくということが望ましいと思います。最近中国側は我が国に対して、資本協力の強化ばかりでなく、科学技術面での共同研究や高度技術の供与を要請してきているというふうに聞いております。我が国としてはこのような動きにどういう対応をするのか、まずその点をお伺いしたいと思います。  もう一つはポスト胡耀邦の問題です。胡耀邦の辞任後の中国情勢については我が党としても大変に注目をいたしておりますけれども、一部には鄧小平の影響力の低下ということなんかも言われておるわけでございますが、大臣としては当面の中国情勢をどう見ておられるのか、また、これに対して対中政策をどのように進めていくのか、見解をお伺いいたします。
  97. 倉成正

    倉成国務大臣 委員の御質問は二点でございますが、第一の科学技術の協力の問題でございますが、科学技術分野での協力については、今後とも中国の近代化建設の努力にできる限りの協力を行っていきたいと思っておるわけでございまして、既に中国の関係の方々がいろいろな企業等にあるいは大学等に、研究者としてあるいは研修に参っていろいろな勉強をしておられることは御承知のとおりでございます。したがって、我々はそういう意味において中国の近代化について御協力をしていくというのが基本方針でございまして、特に、ちなみに政府間ベースではJICAによる技術協力、日中科学技術協力協定のもとでの共同研究、人材交流を推進しておるところでございますし、また、民間ベースにおいても科学技術分野での協力がいろいろ進められておる。技術移転の促進のための環境整備を行うことが大切だと考えておる次第でございます。  それから第二点の、ポスト胡耀邦と申しますか、ただいま御質問の中国の情勢につきましては、中国と日本との友好協力関係というのは、これはもうアジア、ひいては世界の平和と安定にとって緊要な問題でありまして、日中関係は、日中平和友好条約に基づき、また日中の共同声明に基づきまして、永久に平和な安定的な関係をつくっていかなければならないと思っておる次第でございます。  なお、胡耀邦総書記が辞任されましたが、ちょうどその直後、田紀雲副総理が日本においでになりまして、私も相当長時間にわたりましていろいろ御懇談申し上げましたけれども、中国の指導部は日中関係を含む中国の対外方針にはいささかの変更もないということ、近代化路線についての変更はないということを申されておった次第でございます。したがって、政府といたしましては、先ほど申しました日中共同声明、日中平和友好条約及び日中関係を律する四原則、平和友好、平等互恵、相互信頼、長期安定という精神に基づきまして日中関係の発展を図っていく所存でございます。
  98. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 フィリピンの若王子事件について若干お聞きしますけれども、三井物産マニラ支店長の若王子氏の誘拐事件は再び手がかりを失ったように見えるわけでございます。御家族の気持ちになれば、早くしかも無事に解決することを祈るのみでありますけれども、一方、在留邦人の安全の保護を任務とする現地大使館においても一層の努力を願いたいと考えているわけでございます。  ところで、一部新聞報道では、フィリピンのカトリック教会のシン枢機卿が、部下の司祭が若王子さんと接触しておりマニラの日本大使館に情報を入れていると語った、そのように伝えられておりますが、外務省では若王子さんの安否をどう掌握しており、また解放についてはどのような見通しなんでしょうか。この点は非常に関心があるので、御答弁願いたい。
  99. 倉成正

    倉成国務大臣 若王子事件が発生しまして既に四カ月以上経過しておりまして、若王子氏の御家族の御心痛を思うと、本当に国民の皆様方とともに胸が締めつけられる思いでございます。  現時点では若王子氏の安否については断定的なことを申し上げることはできませんけれども、政府としては若王子氏が無事救出されるためにあらゆる努力を払っておる次第でございまして、我々のところには各種のあらゆる情報が入っております。しかし、その一々についてこれを申し上げる段階ではございません。したがいまして、今後とも早期解決のために全力を尽くしていく所存でございますし、アキノ大統領を中心といたしましてこの救出に最善の努力をしていただいておるということは確実でございますので、この点について我々も今後とも最大の努力を払って、一日も早く若王子氏が無事救出されるために努力をいたしたいと思っておる次第でございます。
  100. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 若王子さんの件については、人命の問題ですから、お元気であるという情報は入っているかもしれませんけれども、やはり一刻も早い救出ということはもう最大限やらなくてはならない。もう既に精神的なショックとかあるいは肉体的な限界というものは恐らく突破していることでしょうから、そういうふうな安全第一ということから、私はやはりアキノ大統領等にさらに要請をする必要があると思うわけです。その点についてはぜひ外務大臣としても改めてまたやっていただきたい、こう思います。  あと朝鮮半島の問題をちょっと聞きましょう。  一つは、アメリカと北朝鮮の関係ですが、八八年オリンピックを控えて南北朝鮮の対話再開の動きが見られるようになりました。既にアメリカは、対話促進の見地から自国外交官と北朝鮮外交富の接触を解禁したと伝えられております。我が国もこれを支持したと聞くけれども、この点についてはどういうふうになっているのか。我が国の外交官については、朝鮮半島緊張緩和に貢献する見地から現在どのような方針であるのかというのがまず一つの質問であります。  それからもう一つは、南北朝鮮の対話は平和維持の観点から私は望ましいことであると思います。我が国としては朝鮮民主主義人民共和国との間の人的あるいは経済、文化面の民間レベルの交流を増大することによって朝鮮半島の緊張緩和に資することができるとの考え方もありますが、大臣の見解はどのようでしょうか。
  101. 倉成正

    倉成国務大臣 二点の御質問だと思いますが、第一点は、今般アメリカ政府が北朝鮮との公的接触要領を改定しまして、第三国の主催する社交の場において、先方よりアプローチがある場合には米国の外交官は会話を行って差し支えない旨の変更を行ったものと承知しておる次第でございます。我が国といたしましては、南北対話促進が朝鮮半島の緊張緩和及び同半島の平和と安定にとり重要であると認識しておりまして、米国の今般の措置は南北対話促進のための環境づくりという観点から評価し得るものと考えておる次第でございます。  なお、我が国の北朝鮮との接触要領については、事柄の性質上その詳細については明らかにすることは差し控えたいと思いますけれども、米国が今度とりました措置程度のことは従来も行っておるところでございます。  なお、北朝鮮との文化、経済の交流を増大することについての委員の御質問でございますけれども、朝鮮半島の平和と安定は我が国の安全と東アジアの安定にとって重要でございます。こういう観点から、朝鮮半島の緊張緩和が促進されることが望ましいと考えておる次第でございまして、政府といたしましては、朝鮮半島の緊張緩和のために南北の両当事者間の実質的な対話が早期に再開され、双方の建設的な努力により対話を積み重ねていくということが一番望ましいというふうに考えておる次第でございまして、今後とも対話促進のための環境づくりが重要である、そういう観点に立って関係国と緊密に協力して、できることがあれば貢献したいと考えておる次第でございます。  北朝鮮との関係については、今申し述べました基本方針のもとで、経済、文化等の分野における民間レベルの交流を積み重ねるという従来の方針を維持していきたいと考えておる次第でございます。
  102. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 大変に限られた時間に多くのことの御質問を申し上げましたけれども、法案の内容につきましては、在勤法の改正でございますからいずれにしても私どもは賛成でございますし、また、附帯決議等にも十分に内容的には盛り込まれていることでございますので、その点については十分配慮していただければ結構であると思います。  以上でもって質問を終わります。
  103. 石川要三

  104. 和田一仁

    和田委員 在外公館の法案が提出されまして大臣に御出席いただいておりますので、できるだけ当面する重要な外交問題についてお尋ねしたいと思っております。  初めに、ただいまも審議に上がりました問題ですけれども、やはり在留邦人の保護ということが在外公館の大事な一つの使命であろうと思います。そういう意味で、フィリピンにおける若王子さんの事件は大変心を痛めておられると思いますが、国民といたしましても非常にこの問題には関心が高くて、事人命に関するだけに何とか一日も早く救出ができないだろうかという思いを持っておるわけでございます。  ただいま大臣の御答弁をお聞きしておりましても、全機能を挙げて、総力を挙げて、一日も早い救出を今努力しているというお話でございました。当然なことでございますけれども、四カ月、大変長い期間になりました。在外公館からの御報告等を総合して、この救出が全力を挙げれば大丈夫かどうか、見通しについてお答えいただきたい。今大臣は救出に全力と言われたのですから、生存しておられることは確信しておられると思うのですね。四カ月こうしてどこかへ拉致されておるということであれば、そう急に事態が変わることはないとお考えであろうと思うのですが、その見通しをどういうふうに当局として持っておられるのか。アキノ大統領に全幅の信頼を寄せて、協力し合ってやっているということですが、どのようなお考えでしょうか、お尋ねしたいと思います。
  105. 倉成正

    倉成国務大臣 今私から申し上げることは、本当に四カ月もたって、御家族のお気持ちを察し、また国民の側から見ると、どうしてこんなに長くかかるのだろうかという気持ちを持っておられることは本当に事実だと思います。私自身も、本当に何とか一刻でも一秒でも早くこの問題を解決するためにいい方法がないものかという気持ちでいっぱいでございます。  これは領事部が担当し、領事二課が担当して、少人数でほとんどもう連日連夜あらゆる情報を入手しながら努力しているというのが今の実情でございます。しかし、残念ながら現在まだ解決に至っていないわけでございまして、あらゆるいろいろな情報、いろいろなものが私どものところに参っておりますけれども、しかしその一々がどういう確度のものであるか、いろいろな問題がございます。したがいまして、その一々をここで御披露することはできません。しかし、最大の努力を払って一日も早く救出したいということで全力を注いでおるということで御理解賜りたいと思います。これはもう本当に、外務省領事部が担当しておりますけれども領事部だけに任せることなく、省を挙げてこの問題に真剣に取り組んでおるということだけはひとつ御信頼賜りたいと思っておる次第でございます。
  106. 和田一仁

    和田委員 この問題についてはどうぞひとつ御答弁のように全力を挙げて、一刻も早く救出をしていただきたい、お願いをいたします。  二月二十八日にゴルバチョフ・ソ連書記長が欧州のINF問題について声明を発表いたしまして、新しい提案をしてまいりました。内容はもう御案内のように、従来のソ連の主張でありましたワンパッケージ、一括解決というその枠を外して、まず欧州におけるINFについて個別的な合意を図っていきたい、こういうことのようでございます。  これは昨年の十月のあのレイキャビクでの米ソ首脳会談の様子とは違ったわけでございまして――欧州のINFと戦略核兵器の大幅削減については一時はどうやら合意ができておったと聞いておるのですけれども、それがSDIの問題で全く相入れないような決裂になってしまいました。どうしても一括のワンパッケージでなければならない、こういう主張があったために、米国は、SDIにおいて譲歩するわけにいかない、制限等についてはこれを拒否するということでああいう決裂になったわけでございます。  先ほど来、この問題について大臣の評価はという御質問に対して、評価している、こういうお答えでございました。私は、大臣がこの問題をごらんになっていただいてどういう意味で評価をされたか。ソ連が変わったことについて、レイキャビク以前の状態に戻った、こういうふうにおっしゃっておられる。これは譲歩とごらんになるのか、そうではなくて、単なる変更というか、レイキャビク以前に戻った、こういうふうに考えて評価をされるのか。一たん国際的に大きな外交交渉の場としてあれだけ強硬にワンパッケージを主張していたソ連が、凍結していた核実験を解除して、すぐその直後にこういう提案をしてきた、こういうことについて、譲歩と見るのかそれとも単にレイキャビク以前に戻っただけなんだというふうにごらんになっているか、その辺をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  107. 倉成正

    倉成国務大臣 大変難しい御質問でございますけれども、私は、レイキャビクでワンパッケージで交渉が壊れた、それが、ワンパッケージからINF交渉が外れてレイキャビクの前の状況に戻ったということは、やはりそれなりに意義があると思います。もちろん交渉事でございますから、いろいろな駆け引きがあったり、SDIに関する思惑があったり、いろいろ米ソ間にあろうかと思いますけれども、しかし、少なくともINF交渉がレイキャビク前に戻ったという点は評価していいのではなかろうかと思うわけでございます。  それと同時に、私はやはりこれは戦略核の削減交渉、ジュネーブの軍備管理交渉、そういうものとやはり関連づけて考える必要があろうかと思うわけでございますので、今回のソ連提案を契機に、米ソ間の軍備管理交渉、軍縮交渉においてINF交渉を初めとして具体的な進展が見られることを強く期待しておる次第でございます。現在、地球上に人類を何百回と殺すような核兵器が存在しているというばかげたことを米ソの両指導者がお互いに虚心に考えて、そしてその削減について話し合いをしていくということは意義深いものであろうかと思うわけでございまして、ジュネーブの軍備管理交渉を注目して見ておるというのが現状でございます。
  108. 和田一仁

    和田委員 私は、レイキャビク以前に戻っただけではないと見ているんですね。レイキャビクのときの合意よりもっと譲歩している、もっと変わっているんじゃないか、こういうふうに思います。  今度の提案の骨子を見ましても、まず、SDIと切り離すということ。それから、今後五年間に全廃する。しかし、ソ連は百弾頭は残すんです。百弾頭は残していく。それからもう一つは、欧州のINF全廃に関する協定が調印されれば、ソ連は東ドイツ、チェコスロバキアに西側INFへの対抗措置として配備しているいわゆる戦術(短距離)ミサイルを撤去する、これはレイキャビクのときにはここまでは来てなかったと思うのですが、ここまで来ているということはレイキャビク前に戻ったという理解だけではないと思うのですね。  ここまで下がったというか、譲歩をしたのか、あるいは変わったと言った方がいいのか。これに対して、こうなってきた背景を外務大臣はどんなふうに理解していらっしゃいますか。私は、軍事的にも、国内経済的ないわゆる政策課題の問題についても、あるいはSDIに対するいろいろな対応の仕方等についても、いろいろな思惑があってここまで変わったんだ、こういう理解を私なりにしているんですが、外務大臣はどういう背景があったからこう変わったとお考えになっているか、お聞かせいただきたいのです。
  109. 中平立

    ○中平政府委員 お答えいたします。  確かに昨年、レイキャビク後にソ連のセミョーノフという大使が東京へ参りまして、そのときに我々に盛んに説明といいますか宣伝といいますかしておりましたのは、ソ連は極東においても五百幾つの弾頭があるんだ、それを百にしようとしておったんだ、それから、全体として千三百余りの弾頭を百にするというようなことは非常に大譲歩である、だからパッケージにしたんだ、こういう説明をしておりました。ですから、その数字的大譲歩をして、ソ連の見方で言いますと、譲歩した上にパッケージを外したという意味は、ある意味ではソ連が譲歩したということが言えるかもしれません。しかしながら、そういう意味では、パッケージということでしばらくはこの進展がないかなと我々が判断しておったところ、この包括から外すという意味においては、それは世界の国々が歓迎するところであるだろう、こう思います。  そこで、なぜソ連がそういう一見譲歩であるかもしれないという措置をとったかということでございますけれども、これはだれも断言はできませんが、私たちが見ておるところは、やはり西欧諸国が結束いたしましてこのパッケージを外すべきであるということを主張し続けてきたということが大きな理由であるだろうと思います。現にソ連側は、これはソ連の全体の意見を代表しているかどうかわかりませんが、ソ連の筋の意見といたしまして、やはり解決できるものから解決すべきではないかという西側の意見というものに耳を傾けたんだというような見解もございますし、かつ、基本的にはパーシングⅡ、それから地上発射のクルーズミサイル、この二つはソ連に届くということがございまして、それを欧州から撤退させるということはソ連の安全保障上も大きなメリットがあるんじゃないかというふうにも判断されるわけでございます。ソ連は理由なしに譲歩するはずはないわけでございまして、西側の結束で自分の思惑どおり世の中が動かなかったということが大いにあずかったものではないか、こういうふうに考えている次第でございます。
  110. 和田一仁

    和田委員 これは非常に大事な問題なのでぜひ大臣の御見解を聞きたいと思うわけでございますが、要するにSDIを一括でなければいかぬと主張していたソ連ですから、私は今度の新提案に対して合意ができ上がってきても、最後にもう一回振り出しに戻る可能性も残っているのではないか、こんな気もしてならないわけでございます。そうではないのだ、こういう背景があるからソビエトとしてはやらざるを得なくなってきたという理解があるならば、この新提案に対する見通しというものもある程度可能性が高いというふうに、あるいは年内合意というようなことをしきりに言っておりますけれども、それが信憑性の高いものになるかどうかの一つの判断の材料になる、こう思うものですからお聞きをいたしておるわけですが、SDIと絡んでソ連の考え方が本当に変わったとお考えになるかどうか、大臣の御所見を伺いたいのです。
  111. 倉成正

    倉成国務大臣 非常に難しい問題でございまして、これはゴルバチョフ書記長さんに聞かなければわからないことではないかと思いますけれども、率直に申しまして、SDIというものがやはり頭の中にあるという感じはいたしております。しかし、これはあくまで推測にすぎないわけでございますから、ソビエトがどういうふうに変わったのかあるいはどういうふうな展開をこれから示すだろうかということを予断することは、私の能力を超えております。  ただ、言えることは、少なくともINFについてワンパッケージから外して、その進展が見られるということは一歩前進である。したがって、これと並行してジュネーブにおける軍備管理交渉が進展することを心から期待をしておる、またそういう雰囲気について我々も努力をしたいということでございます。
  112. 和田一仁

    和田委員 きょう私に与えられた時間は非常に少ないものですから、この問題だけでまた一遍外務委員会等で時間をいただいてゆっくり御意見を伺いたいわけなんですが、もう少し別のところからお尋ねしたいのです。  アメリカはこの提案に対して歓迎の意を表して、そしてこれに対応するべく提案をまたいたしましたね。米ソ双方のINFの核弾頭を百個までに削減しよう、それから二段階で全廃しよう、こういうことで、ソ連に残る百個のSS20の配備場所まで、ここら辺に置け、うちの方はここへ置く、こういうようなことを言ったようでございまして、在米の日本の当局にこの対案を提示して説明をされたというふうに報道されております。そのソ連側に残る三十三基のSS20、この配備場所は地名まで挙がっているようですが、いずれにしても射程距離五千キロの中に東京は入るんだ、了解してほしい、こういう説明があったというふうに新聞報道されておりますが、これはそのとおりでしょうか。
  113. 中平立

    ○中平政府委員 お答えいたします。  日本政府とアメリカ政府とはこの問題につきまして間断なき協議をしているわけでございまして、アメリカといたしましては我が国の立場を十分頭の中に入れて対ソ交渉をしているわけでございます。  このINFの草案につきましても、今申し上げましたように、アメリカとしましては従来からの協議を踏まえましてつくったものと我々は承知しているわけでございまして、ワシントンで説明を受けたというようなお話でございましたけれども、我々といたしましては間断なき日米対話の過程におきましてこの説明を受けたわけでございまして、その残る百弾頭の配備場所につきましては、アメリカといたしましては具体的な場所を指定するというようなところまではいっていないと承知しているわけでございます。
  114. 和田一仁

    和田委員 シュルツ国務長官がおいでになったのはたしか三月六日ごろだったと思いますが、大臣お会いになられましたね。この問題については当然お話があったと思うのです。大臣はもちろん全文十五条をごらんになって説明を聞かれたと思うのですけれども、その中で具体的には出てこなかったのでしょうか。  私は、その提示された対案、草案なるもの十五条をぜひ国会の方に見せていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  115. 中平立

    ○中平政府委員 これはアメリカとソビエトの交渉事でございまして、我々としては、非常に関連のある同盟国といたしましてアメリカの考え方を知らされたわけでございますが、二国間で交渉している間にそういうことを部外に出すということは外交慣例上非常にまずいことでございまして、それは避けたいと思います。
  116. 和田一仁

    和田委員 大臣、SS20の全廃が段階的といって二段階で全廃になるにしても、この百弾頭というものが日本を射程内にして残されるということは、私は国民にとっては大変なことだと思うのです。本来ならSS20は欧州に向けてあったものが、逆に百も極東の方へ来るということですから、これは当然そういう草案、対案に対して日本の了解も求めてきたはずだと思うのですが、外務大臣あるいは中曽根総理はこの間シュルツ国務長官にお会いになったときに、それは仕方がないという程度の御了解を与えたのか、それとも、そういうことでは困るんだ、これは一日も早く全廃してもらわないといけない。とにかくヨーロッパはゼロになったけれどもアジアではゼロでないということは、これはアジアにとっても大変でございますけれども、同時にアジアの中における西側の一員として、これはただ、はいそうですかと言って聞いておくような問題ではないと思うのです。そのときの対応はどのようであったのか、お聞かせいただきたい。
  117. 倉成正

    倉成国務大臣 シュルツさんに対しましては、あくまでゼロオプションが日本の立場であるということを私は強く伝え、そういう方向でひとつぜひ交渉に臨んでいただきたいということを強く申し上げております。  ただ、一言言えることは、今INFのSS20、またこれに対抗する幾つかのそういう核兵器につきましては、御案内のとおり全廃が望ましいわけですけれども、随分たくさんあるのをとにかくその過渡的な経過で百弾頭まで減らすということが議論されてきたということは、それなりに評価していいんじゃなかろうかと思うわけでございます。まあ交渉事でございますから、オール・オア・ナッシング、すなわち、もうゼロでなければ一切の交渉は我々としては認めないというのはいかがかと思うわけでございまして、日本の立場としてはゼロオプションが日本の立場である、したがってアメリカもぜひこの考え方を理解して交渉に臨んでいただきたいということを伝えておる次第でございます。
  118. 和田一仁

    和田委員 日本の立場のとにかくゼロオプションということは、ぜひ曲げずに強く主張していただきたいと思うのです。  先ほど来のお話の中で、四月下旬から五月にかけて中曽根総理の訪米が実現するようなことでございますけれども、こういう大事な時期ですから、訪米されて、ぜひ今大臣の言われるような方向へ、ソビエトが譲歩した、譲歩というか変わったんだという認識であれば、アメリカが、百弾頭残すというようなことでなくて、もっと一気に、いきなりゼロオプションに持っていくという提案もそこで強く出してくれという要求ができるのではないか、こう思うわけなんです。パーシングⅡの命中精度が高いとかNATOとワルシャワ・パクトとの戦略的な配備等があってなかなか一気にはいかないかもしれません。しかし、日本の立場からいえば、やはりアジアへの百弾頭というのは何とかもう一回強い交渉で全廃に持っていってほしい、こういう気がしてなりませんので、総理の訪米の可能性とあわせて、そういう要請をぜひ訪米した場合にしていただけるかどうか、大臣の御答弁をお願いいたします。
  119. 倉成正

    倉成国務大臣 総理の訪米は決まっておりませんので、この点は御理解いただきたいと思います。  それから、先ほどゼロオプションと申しましたけれども、もう少し正確に申しますとグローバル・ゼロオプションと言った方が正確であるかもしれません。  したがって、アメリカは十分日本の立場は理解していただいておると思います。ただ、交渉事でございますから完全に日本の立場が通るかどうかという問題はあろうかと思いますけれども、日本の立場を十分踏まえた上でアメリカは交渉に臨んでもらえる、同盟国であるアメリカを信頼して交渉に臨んでもらうということが私どもの立場でございます。
  120. 和田一仁

    和田委員 もう時間が参りましたが、最後にもう一言だけ。  そうしますと、四月末から五月初めの総理訪米はまだ確定の段階ではない、何ともわからぬ、こういうことでございましょうか。これは非常に大事なことだと思うので、その辺の見通しがいまだに立たないというのは、いささか外交として交渉が甘いのではないかという気がいたしますけれども、これが国内的ないわゆる党内事情でできないというのかどうか、はっきりしないというのか、その辺を含めて最後に大臣の御答弁をいただいて、終わりたいと思います。
  121. 倉成正

    倉成国務大臣 外交交渉でございますから、いろいろなことをいろいろお話し合いをしていることは事実でございます。しかし、総理がいつ訪米するかということは決まっていないというのが現在の状況でございます。
  122. 和田一仁

    和田委員 ありがとうございました。
  123. 石川要三

  124. 児玉健次

    児玉委員 今回提案された在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案、これは、外務公務員が海外で勤務をなさる、さまざまな困難があると思うのですが、その困難の実態に迫られて改善を図ろうとされる努力だ、こういうふうに理解をしております。  そこで、このこととの関連で一、二お伺いしたいのですが、外務公務員、この方々が家族同伴、とりわけ御夫人とともに任地で活動される、これは外務公務員勤務の特性という点でどのような意義を持つのか、まずその点をお伺いします。
  125. 小和田恒

    ○小和田政府委員 御指摘のように、在外での外交活動におきましては、配偶者が果たしておる役割というものが通常の職業とはまた別な意味で重要なわけでございます。したがって、原則としては、単身赴任で在外公館に赴くよりも配偶者を同伴して在外公館に行って、そこで二人で力を合わせて我が国の外交に協力をするという形が望ましいということは事実であると思います。  外務省といたしましても、できるだけ配偶者が同伴をして在外公館の活動を助けるという形になるように職員に慫慂しているということでございます。
  126. 児玉健次

    児玉委員 今度出されている法律案の中身を検討させていただきましても、今お話しのあった外務公務員の夫婦の同居、任地でともに力を合わせて努力をする、そのことについてのやはり困難が生まれているという面もあるかと思うのです。今、夫婦の同居が外務公務員で困難になる要因として、主たるものとしてどのようなものがあるか、この点について伺います。
  127. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほど申し上げましたように、外務公務員の在外勤務に際しましては、配偶者ができるだけ同伴するように慫慂しておりますし、職員も基本的にはそういう方向で勤務に従事しているわけでございますけれども、現実問題としていろいろな障害がございます。  具体的には、一つの問題として子女の教育問題というものがございます。それから家族の健康というような問題もございます。それから、任地によりましては任地の治安状況というようなこともございます。大きく申しましてそういうような事情が、やむを得ざる事情ということで家族を残して赴任するというケースの背景になっているかと思います。
  128. 児玉健次

    児玉委員 今官房長がお答えになった問題の中で、子女の教育の問題に絞って私はさらにお伺いしたいのですが、伺うところによりますと、外務省の旅費の取り決めの中で、外務公務員子女が中学校二年から予備校の年代になった場合に御夫人を帰国させる、そういう部分があると承っているのですけれども、それはどういうねらいからそうなったのでしょうか。
  129. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほども申しましたように、子女教育問題というのが家族の本邦在留の主たる原因の一つになっているということは事実でございます。ただこの問題は、実は我が国の教育制度の問題、それから勤務地における教育制度の問題というようないろいろな客観的な条件のもとにおきまして、やむを得ない状況のもとで子女を本邦に残留させて教育を受けさせるというような、全くやむを得ない状況のもとで行われているということでございまして、特に受験期にある子女についてそういう残留のケースが多いように思われるわけでございます。  したがって、どうしてもそういうような事情でやむを得ず子女を残留させるようなケースにつきましては、二つの対策を講じております。一つは、子女呼び寄せを認めて、年に一回外地に勤務しております父母のところへ呼び寄せることができるという形。もう一つは、同じようにやむを得ない状況のもとで本国にいる子女のところへ母親が帰ってその面倒を見たり必要な訓育を施すというようなことに対して、先ほど御指摘のあったような旅費の面での対応をするということでございます。
  130. 児玉健次

    児玉委員 文部省においでいただいているのですが、外務公務員に限らずに、今海外で活動している邦人の学齢期の子女はそろそろ四万人に近づいている。しかもその学齢が、文部省の場合は小学校の一年から中学校の三年ということで整理をされておりますが、文部省のようにくくると、予備校まで、十八、十九までではこの数はもっともっとふえると思うのです。それで、今回政府が提起されたこの問題、とりわけ海外における子女の教育、これは外務公務員だけにとどまらず、海外で活動している邦人の子女全体の教育をどうするか、そのこととも深くかかわっているように思うのです。  そこで文部省にお伺いしますが、現在、海外で育っている日本人の子女の教育の中で、小中学校の段階まではいろいろと不十分さはあるけれども一定の努力がされている。いわゆる後期中等教育と言われる部分、そこについてどのようになっているか、その点について伺います。
  131. 中西釦治

    ○中西説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、義務教育段階の子女につきましては、日本人学校あるいは日本人学校補習授業校という形で、日本と同じようなあるいは日本人として基礎、基本を得るに足るだけの教育の手だてを行っているわけでございます。  御指摘の後期中等教育段階における子供たちの教育はどうなっているかという問題でございますけれども、このことにつきましては、実は臨時教育審議会第二次答申におきまして、高等学校段階の子女に対する適切な教育施策を講ずるようにという御指摘をいただいております。私どももこの点につきましては海外子女教育振興の課題の一つであると認識しておりまして、検討が必要であるというふうに考えております。
  132. 児玉健次

    児玉委員 先ほどの話にもありましたが、大体中学校から高校の段階というのは一生の人間形成の中で一番大切な部分である。そこで、実際に外務公務員が自分の子女を現地で家族とともに育てていくという場合に、学校教育についてどのような選択があるのか。これは開発途上国やヨーロッパの諸国などでそれぞれ違いはあると思いますけれども、一般的にどのような選択があるか、その点について伺いたい。
  133. 小和田恒

    ○小和田政府委員 御指摘になりましたように、その任地の状況によりましていろいろなケースがございます。一般的に類型的に申し上げれば、一つは、現地の公立学校が完備をしておりまして、そこに入れるというケースがございます。それから、現地の言葉が例えば非常に特殊な言葉であって、現地の公立の学校に入れることは必ずしも適当でないというような場合におきましては、現地にある私立の例えばアメリカンスクールであるとかあるいはフランス系の学校であるとかというようなところに入れるというケースがございます。それから、先ほど文部省の方からお答えがありましたように、もちろん現地に日本人学校、これも全日制の日本人学校と補習授業校とございますけれども、そういう全日制の日本人学校がある場合にはそこに入れて教育を施す、そういうケースがございます。補習校の場合は現地の学校との組み合わせということになると思います。しかし、そういう現地の公立学校あるいは私立の学校で適当なものがないような地域もございますので、その場合は第三国に送ってそこで教育を受けさせるというケースもございます。
  134. 児玉健次

    児玉委員 昨年の五月、外務省と文部省が後援をなさって第七回国際人育成シンポジウムというのが行われました。そのシンポジウムの論議をまとめた東京宣言の中に、海外での全日制日本人高校の新設、これが海外邦人のほほ共通した願望である。もちろん、今外務省からお答えがあったように、現地の公立学校に入るという選択は当然許されるべきですけれども、選択肢がない、一つの選択しか許されないというのは、これはまずいと思うのです。  そこで、海外での全日制日本人高校の新設、この願望を実現するために文部省としてはどのような努力をされたか、そして今どのような努力をされようとしているか、この点について伺います。
  135. 中西釦治

    ○中西説明員 海外における教育の問題、海外子女教育の問題と申しますのは、一義的にはやはり海外勤務者が自分たちの子女のためにどのような教育を選択するかというところに任されているものでございます。したがいまして、先ほど申しましたように臨時教育審議会の指摘もあることでございますし、我々としては、どのような教育施策が今海外勤務者に望まれているのかということを見きわめて、それらの意見を聞きながら一番いい方法を何とか対策として立てたいというふうに考えておりまして、これらの検討を始めているところでございます。
  136. 児玉健次

    児玉委員 臨教審の議論がちょっと出ていますが、臨教審はどうも日本として海外教育に何をなさねばならぬかという見地よりも、海外で活動している邦人の子女、とりわけ高校段階でいえば、現地校に入れるというニュアンスの論議の方がどちらかといえば前に出ていると思うのですね。  その点はさておき、文部省にもう少し伺いますが、海外に日本人の全日制高校をつくる、そこに接近していく具体的な道筋ですね、その点でどうか。
  137. 中西釦治

    ○中西説明員 海外における後期中等教育段階の教育について、日本人学校に高等部を設けるのがいいのか、あるいは現地校を利用しながら補習的な形での教育を行うのがいいのか、あるいは最近ヨーロッパを中心にできております私立の在外教育施設、こういうものを利用していくのがいいのか、あるいは日本における受け入れ態勢を整備することによってそれらの問題を解決するのがいいのか、いろいろな考え方があると思います。  したがいまして、我々はそのような考え方を、いろいろなオプションがあるわけでございますので、在外勤務者あるいは実際に外国にいる子女たちのためにどのような方法が一番いいのかということをこれから検討したいと考えている段階でございます。
  138. 児玉健次

    児玉委員 その面の急速な具体化の努力を強く要望しておきたいと思うのです。  この点で最後に外務大臣に伺いたいのですが、外務省として、外務公務員の活動を活気ある、そして国民の期待にこたえるものにしていく、その場合に、先ほどから議論しております子女の教育、この点で今焦眉の課題になっている海外での日本人高校、そういう点で外務省としても努力をすべきだと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  139. 倉成正

    倉成国務大臣 先生から御指摘のとおり、外国に赴任する外交官の方々の最大の悩みの一つは子女の教育、特に高校から大学に進むような場合についての心配というのが大変なものだと思います。  したがって、この点については先ほどからるる政府委員からお答え申しましたとおりに我々は最大の配慮をすべきだと思いますし、同時にまた、帰ってまいりました子女が日本の大学あるいは高校等に受け入れられるのがなかなか簡単でないというような点もございますので、これは一外務省だけでなくて、文部省あるいはその他の方と十分話し合いをする必要がございますけれども、そういう面についてもきめ細かくやはり対応することが大切だと考えております。
  140. 児玉健次

    児玉委員 この機会に、日本の外交政策のあり方、そういった観点から、軍事費の国民総生産、GNP一%枠突破の問題に絞ってさらに二、三質問いたします。  まず最初に大臣にお伺いしたいのですが、安倍前外務大臣、この方が三回目に外務大臣に就任なさったとき、昭和五十九年の十一月九日のことですが、国会で、「日本は平和外交を基本としておるわけであります」、こう発言されました。この点で倉成外務大臣、現在も変わりありませんか。
  141. 倉成正

    倉成国務大臣 平和外交を中心としてやっていくという基本方針は変わりございません。
  142. 児玉健次

    児玉委員 さらに安倍前外務大臣は昭和五十九年の九月二十九日、ロサンゼルスで行った演説の中で、今の平和外交の基本ということに触れつつ、「日本は隣国にとって脅威となるような軍事大国への道は絶対に歩まず、」――「絶対に歩まず、」こう述べているわけです。そしてこの演説を受けての国会における論議の中で安倍前外務大臣は、一%の枠を守るという問題は、アジアの国民をして日本が軍事大国にならない決意を示す象徴であり、かつ、あかしである、このように述べているわけです。象徴であり、あかしであるというのは軽い言葉ではありません。  その「象徴」と「あかし」が、一%の軍事費枠突破で失われたのではないか、その点についてお伺いします。
  143. 倉成正

    倉成国務大臣 安倍外務大臣が、ただいま委員のお話しのようなお答えをしているということは私もよく承知をしております。そしてまた、日本がアジアの近隣諸国、過去の不幸な歴史にかんがみまして、特に近隣諸国に対する脅威にならないように最大の努力をすべきであるということも私の基本的な考え方でございます。  ただ安倍外務大臣が、今御引用になりましたけれども、六十年の五月二十八日に同じく共産党の立木委員への答弁におきまして、「我が国がみずから防衛費をGNP一%といった低い水準に抑えるべくぎりぎりの努力を重ねる姿勢をとっておること自体が、軍事天国にならないとの我が国の決意を示す一つの例として、アジア諸国民に受けとめられていることを述べたものである」ということを申しましたと同時に、「そうした立場から防衛費に関する三木内閣の閣議決定は守っていきたい。しかし、防衛費を実際にGNP一%という数字に抑えるか否かが直ちに軍事大国になるとかならないとかいう議論に結びつくものではないと思う」ということを申しておるわけでございます。これは立木委員昭和六十年五月二十八日にお答えをいたしておる次第でございまして、私も安倍外務大臣と同じような考え方を持っております。
  144. 児玉健次

    児玉委員 図らずも今お話があったのですが、私は、現行憲法のもとでGNP一%以内ならいい、こういう立場にはもちろん立ちません。しかし、この間、一%枠が設定されてきたということが大軍拡に対する一定の歯どめとしての役割を果たしてきた、これは事実であったと思うのです。  そこで、私は倉成外務大臣に先ほどのことに戻って伺いたいのですが、「あかし」と言い、「象徴」と言う、そして外務大臣は中曽根内閣の現職閣僚として一%の枠を突破する閣議にも御参加なさっている、そのことに対する近隣諸国や外国の受けとめはどうであったか。安倍外務大臣が当時述べたそのとおりの形で受けとめられているかというと、例えばニューヨーク・タイムズは、「日本の防衛予算、象徴的一%枠を超える」、こういうふうに見ております。そして朝鮮日報は、「「一%の範囲内」は、日本の平和維持と軍拡否定の象徴。これが崩壊することによって、軍国主義に対する反省も、あらまし終ったものとみることができる。」こうなりますと、安倍外務大臣が三たび外務大臣に就任したとき外務委員会で述べた「象徴」と「あかし」という言葉は、それはそれなりに非常に適切な言葉であって、それが崩されたと現に周辺の国は見ている、そのことについて一半の責任をお持ちの外務大臣としてどうなのか、重ねてお伺いします。
  145. 倉成正

    倉成国務大臣 御案内のとおり、我が国がみずからの防衛費をGNP一%といった低い水準に抑えるべくぎりぎりの努力を重ねるという姿勢をとっておること自体が、軍事大国にならないとの我が国の決意を示す一つの例として、アジア諸国民に安倍外務大臣の発言は受けとめられたものと思うわけでございます。  しかし、防衛費を実際にGNPの一%という数字に抑えるか否かが直ちに軍事大国になるとかならないとかいう議論に結びつくものではないと私は思います。GNPは、御承知のとおり、もう専門の児玉委員に申し上げることもございませんけれども、一〇%伸びることもあれば〇%のこともございます。高度成長のときもありますし、低成長のこともありますし、日本はマイナス成長はまだ経験しておりませんけれども、そういうこともございますから、一つの数字で軍事大国になるかならないかということを言うのはいかがなものであろうかと私は考えます。  いずれにしましても、専守防衛に徹し、近隣諸国に脅威を与えるような軍事大国とならないという基本方針を堅持しつつ、必要最小限の防衛力を整備するということが我が国の基本的な考え方でございまして、この考え方についてはアジア諸国の理解を得られているものと考えておる次第でございます。なお、もし誤解があるとすれば、今後ともアジア諸国の一層の理解を深めていくようにさらに努力していく所存でございます。
  146. 児玉健次

    児玉委員 外務大臣、今の御議論は私は若干のすりかえだと思います。一%の枠を堅持するということがアジア周辺諸国に対して軍事大国にならない象徴であり、あかしであると述べたのですよ。それは、一%そのことについて私たちは議論は持っているわけだけれども、一%の枠というのを踏み越えてならない一つのメルクマールとして設定してきたということなんですよ。  そこが突破されたということでいろいろな反応がありますが、私が非常に興味を持っているのは、外務大臣も御存じだと思いますが、一月二十九日のワシントン・ポストでキッシンジャー元国務長官が何と言っているか、この一%突破を一つの言ってみれば踏み台として、日本が遠くない将来、一つの主要な軍事勢力、ア・メジャー・ミリタリー・パワー、そういうものとして浮かび上がることは不可避である、キッシンジャーさんという人は日米関係について深く知り尽くしている人物ですが、この一%突破の問題をとらえてそういうふうに見ているのです。この点はどうですか。
  147. 倉成正

    倉成国務大臣 キッシンジャーさんのお話が出ましたけれども、私もキッシンジャーさんとはしばしば会談をしたり、お目にかかってよく承知している間でございます。したがいまして、キッシンジャーさんがいろいろなことを言っておられるということを聞きましたので、先般、ちょうど日にちは三月の二日でございますか、キッシンジャーさんと一時間ぐらい懇談をいたしました。  その際に、私から、一%枠の撤廃を決めたのは、我が国が自主的に防衛問題を考え、平和憲法を遵守し、近隣諸国に脅威を与えないこと及びシビリアンコントロールの原則等を考慮したことである、防衛費自体大きな数字にはならず、むしろその中身から問題を論すべきであり、その角度から対処したものであるということをキッシンジャーさんに申し上げました。  これに対しましてキッシンジャーさんからは、大臣の意見には賛成であり、他の国が日本の防衛について圧力をかけるのは適当でないというお答えをいただいたわけでございまして、キッシンジャーさんの御引用がありましたので、私が直接キッシンジャーさんと話した内容を御披露した次第でございます。
  148. 児玉健次

    児玉委員 そろそろ時間ですが、残念ながらそのお話し合いに私は立ち会っておりませんので何とも申せませんが、少なくとも活字になっているものについて、私は先ほどから引用して言っているのですよ。  そして、その中でキッシンジャー氏は、同時に、米国の指導者が持っている考えの一つの傾向として、日本の防衛努力の拡大が日本の産業競争力の弱体を招く、こういう見方もある、政府の指導者の見解としてそれを紹介しつつ、それに対しては同時にこの中で、そうはいかないということも述べているわけなんです。  私は話を出発点に戻したいのですが、倉成外務大臣が日本の外交政策の基本をあくまで平和政策、アジア諸国との平和と友好、そこに基礎を求めようとされるのであれば、隣国にとって脅威となるような軍事大国への道を絶対に歩まない、この決意を現職の外務大臣として新たにされるべきだ。周りの国々は、一%を超えたということが日本の軍事大国への、言ってみれば道が既に踏み始められた、こういうふうに見ている。だから、安倍外務大臣がいみじくも昭和五十九年に言ったように、それが象徴であり、あかしであって、そこが崩れているということについて私は強い危惧を表明いたしますし、一%枠突破については撤回されるべきだということを求めて、私の質問を終わります。
  149. 石川要三

    石川委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  150. 石川要三

    石川委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  151. 石川要三

    石川委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  152. 石川要三

    石川委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、船田元君外三名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。船田元君。
  153. 船田元

    船田委員 ただいま議題となりました自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合の各派共同提案に係る附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について引き続き検討の上、適切な措置を講ずべきである。  一 我が国が世界の平和と繁栄に積極的な外交をもって貢献していくため、外交実施体制、特に在外公館の基盤の整備・強化に努めるこ   と。  一 在外職員、特に自然環境等の厳しい地域に在勤する職員が、活発な外交領事活動を展開しうるよう、勤務環境の整備・処遇の改善等に努めること。  一 我が国外交の第一線拠点にふさわしい在外公館事務所及び公邸の確保に努めるとともにその国有化を推進し、併せて在外職員宿舎の整備に努めること。  一 在外公館における外交活動の能率促進のために通信施設・事務機器等の近代化に努めること。  一 治安状況の悪い地域に勤務する在外職員がその職務と責任を十分果たせるよう警備対策の強化に努めること。  一 在外邦人の医療対策に配慮するとともに、緊急事態における邦人の救援保護を含む安全確保に努めること。  一 海外子女教育の一層の充実を期するため、在外日本人学校及び補習授業校の拡充強化、子女教育費の負担軽減、帰国子女教育の制度の改善及び施設の整備等の対策を総合的に推進すること。  本案の趣旨につきましては、当委員会における質疑を通じて既に明らかになっておることと存じます。  よろしく御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  154. 石川要三

    石川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  155. 石川要三

    石川委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。倉成外務大臣
  156. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を御可決いただきまして、まことにありがとうございました。また、本法案の御審議の過程におきまして、外交活動の基盤強化につき深い御理解と貴重な御提案を賜ったことに対して厚く御礼を申し上げる次第でございます。  法律案とともに可決されました附帯決議の内容につきましては、御趣旨を踏まえ、適切に対処してまいる所存でございます。まことにありがとうございました。     ―――――――――――――
  157. 石川要三

    石川委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  158. 石川要三

    石川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  159. 石川要三

    石川委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時二十四分休憩      ――――◇―――――     午後二時二分開議
  160. 石川要三

    石川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律案議題といたします。  趣旨の説明を求めます。山下総務庁長官。     ―――――――――――――  地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  161. 山下徳夫

    山下国務大臣 ただいま議題となりました地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  昭和五十七年に制定された現行の地域改善対策特別措置法は、本年三月末日をもってその有効期限を迎えようとしております。  顧みますと、同和対策事業特別措置法及びそれに引き続く地域改善対策特別措置法の施行と、過去十八年間にわたる関係施策の推進の結果、現在では、生活環境の改善を初めとして、対象地域の実態は相当改善が進んできております。  今後の地域改善対策は、これまでの対策の成果等を踏まえ、事業の基本的な見直しを行い、可能な限り一般対策への移行を図っていくことが必要であります。  しかしながら、地域改善対策事業のうち、物的な事業については、一部に事業の取り組みがおくれている地域が見られること等により昭和六十二年度以降の事業量も見込まれております。また、人権尊重の立場で粘り強く啓発事業を推進すべき状況にあります。  このような問題の解決を図っていくためには、地域改善対策事業が実施された対象地域について、国の財政上の特別措置を講じ、引き続き実施することが特に必要と認められる事業の円滑かつ迅速な実施を図っていくことが必要であり、このため、地域改善対策に関する最終の特別法として、この法律案を提案することといたした次第であります。  次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。  第一に、地域改善対策特別措置法による地域改善対策事業が実施された対象地域について実施する地域改善対策特定事業を政令で定めるとともに、国及び地方公共団体は、地域改善対策特定事業を円滑かつ迅速に実施するよう努めなければならないことといたしております。  第二に、現行の地域改善対策特別措置法と同様に、地域改善対策特定事業に要する経費について、地方公共団体の財政負担を軽減するため国の財政上の特別措置を講ずることとし、同事業に係る国の負担または補助については、原則として、予算の範囲内で三分の二の割合をもって算定するものとするとともに、地方公共団体の起債について特例を設け、その元利償還金を地方交付税の額の算定に用いる基準財政需要額に算入することといたしております。  第三に、この法律の有効期間を五年間とするとともに、現行の地域改善対策特別措置法の失効に伴い必要な経過措置等を設けることといたしております。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げる次第でございます。
  162. 石川要三

    石川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     ―――――――――――――
  163. 石川要三

    石川委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大原亨君。
  164. 大原亨

    大原(亨)委員 山下総務庁長官に、あなたの部落解放問題、同和問題に対する基本的な態度についてまずお聞きしたいのですが、その前に、けさ本委員会におきまして玉置前総務庁長官に対する皆さんの黙祷がございました。玉置長官は、私どもが社会党、公明党、民社党、社民連で数回お会いしているわけですが、最後にお会いしたのは十二月二十日でございまして、その一週間後にはもう亡くなられたわけであります。  そのときに私どもは、予算査定の最終段階に当たりまして、意見具申等では威しく規制をしておりますが、個人的な給付の問題でも、雇用とかあるいは教育は、いわゆる環境やソフト面の差別の悪循環を断ち切る、こういう意味においてぜひとも残してもらいたい、あるいは、住宅の貸付金の利子につきましても、二%を一度に三・五%に引き上げるのではなしに、二・八%にとどめる改善措置をとってもらいたいということ等を要請すると一緒に、政府が考えておりました新しい法律、新法の三カ年間の期限を五カ年間に延長してもらいたい、そうしないと、せっかく法律をつくってもじっくりと根本的かつ速やかに問題を解決することができない、こういう点について最終的に要望いたしたわけであります。昭和六十二年度の予算案と同和新法との関係は深い関係がございますので、要望いたしました。  もちろん、同和対策事業特別措置法あるいは地域改善対策特別措置法等の立法の歴史が示しておりますように、この法律は多分に議員立法的な性格を持っておるわけでございまして、政府の方は、これが最後だ最後だと言いながら、しかし、実際には十八年間続いてきたわけでございます。だから、この同和新法をこれから審議するに当たって、玉置長官は私どもに、同和問題の解決は私の一生の政治生命をかけた課題である、必ずこの部落差別については解消のめどをつけたい、こういう決意を述べられると一緒に、そういう点で中曽根総理の委託を受けておる、一任を受けておる、こういうお言葉でございまして、ともにこの問題の解決に私どもも全力を尽くしてやりましょうということを最後に言って別れたことを想起するわけでございます。  山下新長官は就任をされまして本法律案の審議の責任者でございますが、こういう経過を踏まえて、玉置長官の遺志を踏まえて、同和問題の解決について基本的な長官の考え方をお聞きをしたいと思います。
  165. 山下徳夫

    山下国務大臣 同和問題の解決を図るという熱意につきましては、私自身決して人後に落ちるものではない、かように私はみずからに言い聞かせ、またそう思っておる次第でございます。  この問題につきまして、過去十八年間、立法当初から、後年二回にわたって改正をいたしまして、対象地域の生活環境を初め、いろいろと改善がなされてまいりました。したがって、これらの実績に基づいて相当この間に実績も上がり、いろいろと事情がその後変わっておりますので、それらを踏まえながら、心を新たにしてこれらの根本的解決のために私は微力を注いでまいりたい、かように存じておる次第でございます。
  166. 大原亨

    大原(亨)委員 外務省来ていますね。――次の質問は、これは国務大臣としての山下さんがお答えになってもいいのですが、これは外務省の担当ですが、人種差別撤廃条約、いわゆる人種差別ですが、これは原文を直訳いたしますと、人種差別のあらゆる形態の除去に関する国際条約というふうになっておるわけでございまして、宗教や性別を除くすべての人間差別につきまして適用するということになっておることは御承知のとおりです。第一条では「門地」という言葉がございまして、ディセントですが、その解釈をめぐりまして議論がありますけれども、当然に部落差別の問題も含まれておるということになります。  人種差別撤廃条約は全世界で百二十四カ国が既に批准をいたしておるわけであります。条約を批准をいたしますと、当然、政府の方針もそうですが、それに抵触する事実が国内にあったならば、国内法を整備をいたしまして条約を批准するということになるわけであります。新法は、同和新法というふうに簡略に申し上げますが、そういう新法も国内法の一つであるというふうに私は思うわけでありますが、外務省は、政府は人種差別撤廃条約の批准について何回も約束をしながら、いまだこれはめどがついていないという状況ですが、これに対する基本的な見解を簡潔に答弁してもらいたい。
  167. 林貞行

    ○林説明員 お答え申し上げます。  人種差別撤廃条約につきましては、その趣旨にもかんがみまして、できるだけ早期に締結すべく引き続き検討作業を行っておる次第でございます。しかしながら、先生御承知のように、本条約四条には処罰規定がございまして、その処罰規定と表現の自由等憲法の保障する基本的人権との関係をいかに調整していくかという非常に難しい困難な問題が残っておりまして、本条約締結の具体的な見通しについてははっきり申し上げられない段階でございます。  それから、冒頭先生から御指摘になりました人種差別条約の対象となる人種差別をいかに理解するかということでございますが、この問題につきましても現在鋭意検討中ということでございます。
  168. 大原亨

    大原(亨)委員 もうそういう問題はいつまで議論をしておっても片がつかないのであって、決断の問題なんですよ。私は予算委員会へ出る機会がありましたらこの点は明らかにしたいというふうに思います。解釈は国際的にもう既に明らかになっている。しかも外務省は英文の正式の翻訳も発表していない。審議する際には当然要るわけですから、仮翻訳だけではまことにけしからぬと思うのです。  つまり国連憲章あるいは世界人権宣言、それから一九六三年十一月の人種差別撤廃宣言、それから一九六五年の人種差別撤廃条約、こういうふうに国連は、平和の基礎はあるいは民主主義の基礎は人権の問題であって、人権に対する不当な差別は一切排除しなければならない、これが国際的な平和の基礎であるということを重ねて宣言をいたし、条約を結んでおるわけですから、中曽根総理の先般の知的水準という発言が大きな波紋をアメリカその他に及ぼしましたが、この問題については、日本は平和憲法を持っておる国家といたしましてこの条約を批准いたしまして国内法を整備をする、そして人権の問題についてはあらゆる問題の基礎として重要に考えていくということが必要であります。  これは一官僚で答弁することはできません。国務大臣といたしましての山下長官の御答弁、決意をお願いいたします。
  169. 山下徳夫

    山下国務大臣 おっしゃるとおり、既に世界の百二十数カ国が批准をいたしておるということでございます。日本とアメリカ等がまだ若干残っておるということでございますが、問題は、人種差別の定義の中にどういう問題が一体含まれるか。先生おっしゃるとおり、いつまでそういうことをやっているんだという御指摘もありますが、国内法になじまない面があるのかどうかというような点も十分検討いたしまして、速やかなる決定をしなければならぬことは当然でございますが、現在、外務省を中心といたしまして関係省庁で鋭意協議をいたしておりますので、いましばらくお時間をいただきたいと思います。
  170. 大原亨

    大原(亨)委員 条約を批准する際には、国内法を整備しなければ国際機関において条約を正式に批准したことにならない。アメリカは調印しているんですよ、批准は保留しているんですけれども。日本は調印も批准もしていないということで、全然前へ進んでいないわけです。  それは部落差別の問題があると私は思うのです。だから同対審答申を受けまして以来、この問題については平和憲法との関係において慎重に真剣にやってきたのであります。  この問題の発端は、我が党の八木一男委員が岸内閣のときに岸総理に対しまして、安保の大騒動のときでありましたが、しかしそういう問題とは離れて、国民的な国策上の問題であるということで質問をいたしましたことに対して、当時の岸総理大臣は、山口県の出身でございますから差別の実態はよく知っておられるわけでございましたので、この差別というのは政治の責任である。士農工商、その下に部落を置く。俗に、この人々は血統が違うんであるとか血が違うんであるとかいうことを公然と長い間やって、武士が農工商を搾っていく、支配をしていく、統治をしていく、その手段として部落を使ったわけであります。数百年の課題であります。つい戦前までは、師範学校とか士官学校とか兵学校へ行く場合には県庁が身元調査をしておった。そういう者が先生になったら困るということで公然とやっておったわけです。しかし戦後は、憲法ができて、そして審議会の答申も出て、憲法の趣旨を実行するということでこの部落の問題の完全、根本的な早期の解決を念願として、国民的な課題としてやってきたわけであります。  本法律案の第一条の「趣旨」について、今までの地対法や特別措置法やその他の法律、同対審設置法の目的などの法律の目的と比べて、非常に焦点がぼけておるではないか。部落の完全解放について玉置さんは最後に私どもに言葉を残して、そして私どもと握手をして、ともにやりましょうと言って別れましたが、この差別の実態を把握をして、これを国民的な課題として――差別をされた者だけの問題ではないわけです。住環境の問題ではない。これは差別をしている一般の、マジョリティーの問題でもあるわけです。人権の問題でもあるわけです。そういう問題を含めて徹底的にやろうということで発足したわけでありますから、第一条の「趣旨」がぼけておるということは非常に遺憾なことでございます。  しかし、この法律も憲法のもとに、あるいは今までの経過のもとにあるわけですから、根本的なそういう点については私はいささかも変化はないというふうに思いますが、長官の御意見をお聞きをいたします。
  171. 山下徳夫

    山下国務大臣 事人権に関する問題でございまして、極めて大切であるということは先ほど来申し上げているとおりでございますが、国際条約というのは、私も今までILOその他若干のものに携わってまいりましたけれども、やはり国内法を整備し、国内法と条約との関係等を十分考慮してやらなければならぬというところでなかなか時間的に速急にいかない面を私も幾つか体験をいたしました。  そういう意味において、今外務省も決してこれをずるけているとか、いたずらに延ばしているということでなくて、関係省庁、総務庁であるとかあるいは法務省等とも十分協議を今重ねておるというふうに私も理解をいたしておりますので、大切であることは今申し上げたとおりでございまして、基本的人権の問題でございますから、ひとつ煮詰まるまで若干の時間をちょうだいしたいと思います。
  172. 大原亨

    大原(亨)委員 これは法務省。法務省は人権擁護局というのを持っているわけですね。部落差別の問題についてはいろいろな国民からの反応があるはずであります。現在の状況において、いわゆる悪質な差別事件がたくさんあると思いますね。いまだに結婚とか就職とかあるいは身元調査とか地名総鑑とか――なくなったはずの地名総鑑がどこかに隠されて、部落差別の問題を商売、金もうけの材料に使っている人がたくさんいるわけです。それは差別を受けた側の問題ではないんだ、マジョリティーの、一般の国民の問題です。人権の問題です。その実態についてひとつ報告してもらいたい。それに対する対応策について、何をしているのかということを報告してもらいたい。
  173. 落合紹之

    ○落合説明員 お答えします。  私ども法務省の人権擁護機関では、部落差別の事象を悪質な人権侵犯事件としてこれまでも調査、処理をやってきております。ただ、残念ながら差別事件はいまだに後を絶たない状況にございます。  この差別事件の傾向を見てみますと、差別言動のほか、結婚、就職等先生のおっしゃるような差別事象が依然として後を絶っておりません。また最近、逆差別意識やねたみ意識によると思われる陰湿な差別落書きや差別文書等が目立ってきておる、そのように認識しております。
  174. 大原亨

    大原(亨)委員 法務省は何しているんだ。法務省はそれに対してどういうことをやっているの。
  175. 落合紹之

    ○落合説明員 私どもは差別意識の解消のためには、人権擁護機関は啓発機関でございますので、粘り強く啓発をやっていくという方針で啓発に努めております。
  176. 大原亨

    大原(亨)委員 努めても、差別事件が十八年もたってなおかつ深刻な状況にあるということは、それは一体どういうふうに理解しているんだ、どうしたらいいと思っているんだ。
  177. 落合紹之

    ○落合説明員 差別意識の問題は社会の国民全般の中にある心理的な土壌の問題にあろうかと思いますので、我々はその心理的な土壌を改めていくように啓発に努めていきたい、このように考えております。
  178. 大原亨

    大原(亨)委員 そういうことを考えておるだけじゃだめでしょう。具体的にどういうふうに解決するのかということをやらないと、せっかく十八年間にわたって、国だけでも二兆数千億円の金を使って環境改善したわけですよ。環境改善したわけですけれども、部落差別の問題は、そういう環境改善しますと非常に劣悪な条件にあったところはよくなるのですが、その周辺の地域から見ると、庶民感情として、私はこの間も中曽根総理に言ったのですけれども、庶民感情としては隣の家に蔵が建てば腹が立つというふうなねたみの根性があるんだよ。だから一般地域に対する啓発、教育を徹底的にやって、こういうことがあってはならぬのだということをきちっとしないと、この差別事件というものは三百数十年にわたって深刻に続いてきた事態でありますから、私が申し上げたとおりであって、そのことは繰り返しませんけれども、そういうことは解決はできないと私は思うのですよ。できないのにできたような格好をするということはおかしいと私は思う。  文部省にお尋ねするのですが、これは教育の問題ですね。地対協というのは何も国会以上の機関ではないわけです。政府機関でもない。諮問機関で、意見を聞く機関だ。本質的にはそれと変わらない。これは合議制の執行機関でも意思決定機関でもない。ないのですが、意見具申やその他ではこの同和問題に対する特別措置とか個人給付についてはやらないというふうなことを原則的に決めておるわけです。しかし文部省はこれにはかなり積極的に取り組んできて、同和地区における加配の問題とか奨学金の問題等について、昨年末、玉置長官その他とお話をいたしまして復活折衝をいたしましたが、個人給付を規制をしておるけれども、復活したわけです。  例えば加配の教員が、部落問題、同和問題、同和教育を担当する教員が職場にいますと、そうすると、その学校で差別問題が起きますと、あれは部落の子であるとかあれとつき合うなとか遊ぶなとか、いじめが起きてきますと、そういう問題のときに、家へ帰って親子が泣いて、そして子供が行かなくなるというふうなことではなしに、加配の担当の教員がいますと、そのことを子供が訴えるようにしてやろう、みんなに言ってやろう、そしてその先生がクラスの者や父兄を集めて、この問題は憲法の趣旨からいっても、そして本当の民主主義からいっても、こうあってはならないんだ、間違っているんだということを十分議論をしてやる。そうすると、その学校がそういういじめとか学校暴力の温床になっておるような事態というものをそういう局面で解決する。だから、教員が加配になっておる学校ではいじめとか暴力とかいうふうなものが非常に少なくなっているという実態も私は聞いておるし、実際に現場で聞いたわけであります。  ですから、そういう特別措置を粘り強くやって全体のこの問題の解決をやるということが必要であると思うが、文部省は標準法等で、教員の定員等で非常に努力をいたしておりまして、昨年末に百五十名の人員をカットするかどうかというときも私どもは一緒に復活折衝をしたことを記憶いたしますが、文部省としてはそういう教育の問題について、短時間で終わるものではない、粘り強くやって解決をすることが教育の民主化の根本である、そういう理解を持っておるかどうか、お答えください。
  179. 井上孝美

    井上説明員 お答え申し上げます。  同和加配教員制度につきましては、先ほど先生御案内のとおり、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律に基づきまして、同和地域に所在する学校におきましてより充実した学習指導等を行い得るよう、特別に教員の加配措置を行っているものであります。  この同和加配教員の配置改善は昭和四十四年度から始められまして、昭和五十五年度を初年度とする第五次の教職員定数改善計画におきまして千六百二十人の加配教員の増員を行うこととしておりまして、五十五年度以降六十一年度まで毎年度百五十人ずつ改善を行い、六十二年度予算案におきましても百五十人の増員を図っているところでございます。したがいまして、昭和四十四年度から六十二年度までの加配教員数は二千七百四十六人でございます。また、現在進行中の第五次の教職員定数改善計画では、昭和六十三年度から六十六年度までに四百二十人の改善を予定しているところでございます。  また、そのような同和加配教員の効果という点につきましても、先生がおっしゃいましたように、同和地域に所在する学校にこのように特別に教員の加配措置を行っておりますのは、これらの学校におきましてより充実した学習指導、生活指導等を行い得るよう配慮しているものでございます。教員が実際に加配された学校におきましては、家庭との連携の充実等を通じまして、学習指導、生活指導の両面において成果を上げているというように承知いたしております。
  180. 大原亨

    大原(亨)委員 文部省の関係で、これは個人給付として意見具申その他で議論になっておるわけですけれども、奨学金の問題が年末にも問題になったわけであります。高等学校の奨学金というのがなくなりますと、奨学金は一般財源で今度は給付を貸与にそろえたわけでしょうが、貸与にいたしましても免除の制度は、一般財源ですから、貸与であるのは自立して返すということが目標ですが、そのことを含めて貸与制度制度として一般財源でやっておるわけです。  これは、高等学校の進学率が三十数%から今八十何%になって、一般よりも、平均的なものよりも一〇%程度低いわけですけれども、しかし、この奨学金の制度というものは、子弟の将来において雇用とか生活の問題に直接つながっておる重要な問題ですから、差別の悪循環を断ち切るためには、個人給付を一律に削除するということではなしに、特別な必要な事業については、確固たる方針を持って、全体を見ながら、よくなっている面もあるわけですから、そのことを見ながら、途中で切るということをしないで継続していく必要があると思うのですが、文部省はどういうふうに理解していますか。
  181. 熱海則夫

    ○熱海説明員 お答え申し上げます。  高校の奨学金が進学率の向上に果たしてきた役割は、御指摘のように大きいように我々も認識しておるわけであります。  今回地域改善対策事業全体の見直しの中で奨学金も給付制から貸与制に切りかえるという方針になったわけでありますが、ただ、経済的に困難な場合につきましては、例えば返還免除制度といったものを導入することなども検討しながら、貸与制への切りかえによって進学意欲に支障を来さないように今後とも配慮してまいりたいと考えております。
  182. 大原亨

    大原(亨)委員 たくさん問題があるのですが、やっていけばいいのですが、時間の関係もあるし、後の質問者の皆さん方もそれぞれあるわけですから、私は以上のことを質疑応答しながら、山下総務庁長官にひとつ基本的な問題について改めてお聞きをしたいわけであります。  申し上げましたように、やはり人間の尊厳を侵し社会的に許されないような差別問題の実態を把握しまして、すべての国民が法のもとにおける平等、基本的な人権の享有という憲法の精神に従って、最初に私が申し上げましたように、国際的にも、世界人権宣言や国連憲章ですから改めて引用しませんが、そういう趣旨に従って同和問題の根本的かつ速やかな――私どもの基本法は、いつまでもあっていいのじゃなしに、根本的かつ速やかに、国の政治として国の責任を明らかにしながら、被差別部落だけの問題じゃない、国民の課題として、人権の問題として取り組んでいく必要がある。  そういう意味において、本法律案も第一条の「趣旨」の問題でとかくの議論がありますが、しかし、この法律の前提としては、法の適用に当たっては昭和四十年八月に出された同和対策審議会の答申の今までの精神を踏まえて法律の運用をやるんだ、こういうことについて改めて長官の決意をお伺いしたいと思います。
  183. 山下徳夫

    山下国務大臣 私も全く同感でございまして、だらだらやってはいけない、可及的速やかにこの問題については適切なる結論をつけ、また事業その他についても遂行すべきであるという気持ちは先生と全く同じであります。  ただ、過去の実績を見てみますと、いろいろな努力が積み重ねられまして一般地域との差がかなりなくなってきつつあるということは先生も御承知のとおりであります。したがいまして、今後ともこの問題の解決を積極的に図るためには、私ども総務庁としても十分な決意を持ってこの問題に対処していかなければならぬ。昨年地対協から意見の具申がなされておりますので、これをさらに私自身拳々服膺いたしまして、そしてこの趣旨にのっとり、また私の信ずることもあわせ考えましてさらに実施に移してまいりたい、かように思っております。
  184. 大原亨

    大原(亨)委員 今、同和問題の問題の中でいわゆる公益法人というのがあります。これは民法上の公益法人です。だから財団、社団ということでしょう。予算が計上してございますが、予算が通っていないのに、総務庁の一部から公益法人の、未定稿と称しておるのですが、そういう議案が出回っておりまして、公益法人の設立の準備が進んでおるわけですが、これは一体どういうことなんですか。
  185. 山下徳夫

    山下国務大臣 私も就任いたしまして日が浅くして、総務庁の事務方からそういう話が出ているということはまだ十分承知をいたしておりません。よく調べてみたいと思います。
  186. 大原亨

    大原(亨)委員 それで大臣、これは政治家の質疑応答ですから、必ずしも公益法人をつくるのが悪いと言っているのではありませんよ。しかし、公益法人を未定稿で各方面にばらまかれているのを見てみますと、構成団体とか委員とかいうものは、自治体が入っているのはそれはいいでしょう、それから経営者団体だけが入っておりまして、三千万円余りのところへ一億数千万円の寄附を集めましてそして啓発団体をつくる、こういうのです。しかし、これはつくり方によりましたら、マジョリティーの差別をする方の側が何とかこれをおさめようというふうな、昔の融和的な問題の蒸し返しになるのではないか。  例えば部落解放同盟というのがあります。同和会というのがあります。同和会は利権問題その他で幹部の中でいろいろな事件を起こしたりいたしまして事実上解体をいたしまして、良心的な人がたくさんおるわけですけれども、それは非常に大きな意見を持っているということでありまして、自由同和会を今何とかするということの話のようでありますが、解放同盟があります。共産党系の全解連というものもございます。これはいわく因縁がございまして、最初のときから「国策樹立」についてたもとを分かった団体であります。  そこで、解放同盟を中心としまして、労働団体とか、それから問題提起をいたしました企業で、地名総鑑等をやって就職その他をやったようなところで、これはいけないということになって、協力している団体が、特にこれは平等観の上に立つわけですから、キリスト教を初め全宗教、宗派の中にあって、そして会長は西本願寺の大谷光真門主がやられておる、あなたも築地聞真会のメンバーでございまして、私もそうです、百何人おるのです。それは基本法制定中央実行委員会というのをつくりまして、そしてお互いの問題としてこの問題を解決しようという自主的な運動の団体であります。そういうものと公益法人が対決するような形でこの問題の啓発はできない。問題の処理はできない。それは理事長という人は一千万円ぐらい月給があるんだそうですが、しかし職員は七名ぐらいのことで、これはとてもじゃないがそういう啓発団体というような役割を果たすことはできないと私は思うのです。  自民党なんかに聞きましても、自民党の中にも、基本法に賛成だ、基本法というのは根本的かつ抜本的に早期に解決するという五カ年計画を中心とした計画でございますから、エンドレスではないわけです。出口がないのじゃないのです。そういうことに賛成だという自民党の皆さん方の署名を含めて、膨大な署名が出ておるのです。あなたの署名があるかどうか見てみるか。――これは暇がないから見ないけれども、あるわけですよ。だからそういう大きな運動体になっているのに、そういう運動体と真っ向から対決するようなことで、財界から金を集めるというだけで公益法人の役割を果たすことは私はできないと思う。あなたはどういう判断をしますか。
  187. 山下徳夫

    山下国務大臣 御案内のとおり、この公益法人につきましては、昨年の地対協の意見具申の精神に立った啓発を推進するということで、これは当然のことだと思っております。  先ほど御指摘なさいました三千万対一億のことでございますが、国のは年度の予算でございまして、一億は基金だと私は承っておりますが、金額の比較は別といたしまして、私は善意の各団体と協力し合いながらこの問題は啓発を推進していくべきであると考えておりますから、決して両々相まってやるということに私自身何らの矛盾は感じておりません。
  188. 大原亨

    大原(亨)委員 まだ議論があるわけですけれども、私の持ち時間が若干余っておりますが、少し私の頭を整理しましてもう一回所定の時間の中で審議をしたいということで、若干の時間を残しておきまして、次の質問者の野坂委員にかわりたいと思います。
  189. 石川要三

    石川委員長 関連して、野坂浩賢君。
  190. 野坂浩賢

    野坂委員 今回提出をされました新法に対する意見を述べ、質問を申し上げて、中身を強化充実していきたい、そういうふうに考えております。  今、大原委員の質問に答えて山下長官は、部落問題の解決については人後に落ちるものではないと明言されましたので、やや安心はしておりますが、この法律を見ますと、従来と変わって、第一条は「趣旨」ということになっております。今までは「目的」というふうに明記されておったわけであります。  最近の同和問題についての歴史をひもといてみますと、昭和四十年八月十一日に同和対策審議会の答申が行われております。四十四年七月十日には同和対策事業特別措置法が制定された。五十七年四月一日には地域改善対策特別措置法。そして今度新たな新法が出てきたということであります。  そこで、私は確認の意味も含めて問題を明らかにしておきたいと思いますのは、今までの法律について十分理解をしておるという長官でありますからさらに重複を避けたいと思いますが、今後の問題として重要だと考えておりますので。  審議会答申は前文でこのように述べております。「同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題である。したがって、審議会はこれを未解決に放置することは断じて許されないことであり、その早急な解決こそ国の責務であり、同時に国民的課題であるとの認識に立って対策の探究に努力した。」そして末尾に結びとして、「あるべからざる差別の長き歴史の終止符が一日もすみやかに実現されるよう万全の処置をとられることを要望し期待するものである。」こういうふうに述べております。  それを受けまして同和対策事業特別措置法は昭和四十四年七月十日に制定されておりますが、第一条に、「この法律は、すべての国民に基本的人権の享有を保障する日本国憲法の理念にのっとり、歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されている地域について国及び地方公共団体が協力して行なう同和対策事業の目標を明らかにするとともに、この目標を達成するために必要な特別措置を講ずることにより、対象地域における経済力の培養、住民の生活の安定及び福祉の向上等に寄与することを目的とする。」五十七年四月一日の地域改善対策特別措置法も全く今申し上げましたとおりの法律内容ということになっておるわけであります。  今回の法律案はそれとは若干違ってはおりますけれども、内容としては全く同じ意味であるというふうに私は理解しておりますが、総務庁長官としては、私が読み上げたとおりの認識で部落問題解決に対処、対応していくというふうに考えてよろしゅうございますか。
  191. 山下徳夫

    山下国務大臣 先生のおっしゃるとおり、新法案の事業というものが憲法の理念を踏まえながら実施されなければならないことは当然のことでございます。  また、このことも先生がお触れになりましたように、同対法が施行されまして既に十八年、その間、後年二回の改正をいたしましていろいろな施策を積み重ねてまいりました。その成果は相当上がっているということ、これまた先生も御承知のとおりでありまして、一般地域との差もかなりなくなってきているということでございますから、ここらあたりで一般対策へ移行すべきである。  したがって、こういった法律は今度が最終段階、最終法であるという観点に立って今回の立法がなされたといってとでございますから、当然今回のものは財政特別措置法的な性格を持っている、私はこのように存じております。したがいまして、そういう趣旨から簡素な趣旨規定となっておることを申し添えておきたいと思います。
  192. 野坂浩賢

    野坂委員 憲法の理念にのっとってこれからの部落問題解決については進めるが、十八年間に一応の成果を見た、それを評価して進めたいと考えておられるようでありますが、それについては、今後は国の責任において国民的課題としてこの問題については早急に解決するために最大の努力をするというお考え方に間違いないわけですね。
  193. 山下徳夫

    山下国務大臣 そのとおりでございます。
  194. 野坂浩賢

    野坂委員 第二条については、「旧地域改善対策特別措置法第一条に規定する地域改善対策事業が実施された同条に規定する」云々と書いてありますね。言うなれば、前の同和対策事業特別措置法の第一条、今長官が確認された、それを具体的にこれから進めていくということを明らかにしておるわけです。特に、「生活環境の改善、産業の振興、職業の安定、教育の充実、人権擁護活動の強化、社会福祉の増進等に関する事業」は政令で定めると書いてあります。  この法案が通ってから政令というものは定められる、このように理解してよろしいわけですか。
  195. 山下徳夫

    山下国務大臣 そのとおりに御理解いただいて結構でございます。
  196. 野坂浩賢

    野坂委員 それでは、この法案が通過すれば政令作業に入るということでありますが、私どもが聞く範囲では、政令はこれからでありますが、今までの事業の内容でございますね、従来は八十二件あったわけですね、これについて、継続は三十四件で修正継続は二十件、廃止は二十八件というふうにありますが、これは政令の中でこのように作業をするということではなかろうかと心配しております。山下長官の御答弁によりますとこれからだということでありますから、あえて私は聞いておかなければならぬ、こういうふうに思います。  その第一は、大原議員からも教育問題について指摘がありましたから多くを申し上げませんが、例えば今日の労働問題、極めて雇用は不安の状態であります。この雇用の中でも、この三十二項に地域改善対策対象地域雇用促進給付金支給専業というのがあります。部落における被雇用者中の不安定雇用率を各府県別に見てみますと、鹿児島県は四六・五%であります。これは雇用が非常に不安だ、安定したところにはいない。その次には、私の出身県である鳥取県は三七・二%ということであります。非常に雇用の不安がある。先ほども話がありましたように、高等学校の奨学金の問題にしても、給付を貸与にして、貸与でもなかなか厳しいときには免除するという話もありましたが、今の労働事情等から考えて容易ならざる事態だなと私どもは認識しております。  そういう意味で、これらの問題は個人の問題は切り離すという提案がありますけれども、大所高所に立って考えていかなければ、部落における就職の問題、いわゆるソフトの問題としては結婚の問題、こういう問題が部落問題の一番の解決すべき中心的な課題でなければならぬ、そういうふうに思うのです。そういう意味で、これらの問題についてはどのようにお考えであろうか、どのように対処しなければならぬと考えておるのか、その点を明らかにしてもらいたい。
  197. 山下徳夫

    山下国務大臣 失業率が三%に達したということで、今後のことを憂えながら、私どもこれらの対策に内閣を挙げて取り組んでいかなければならぬということは十分に承知をいたしております。そういう中にあって、今御指摘のように地域改善対策というものも特に真剣に考えていく、おっしゃるとおりでございます。  具体的な内容につきましては、作業を進めております室長から御答弁を申し上げたいと思います。
  198. 熊代昭彦

    熊代(昭)政府委員 先ほどの六十二年度の予算の見直しにおきまして、労働省関係のもので、一部は「一般対策へ移行」あるいは「一般対策で対処」ということで整理されまして、一部今後とも引き続き地域改善対策で実施する必要のあるものは残されました。その地域改善対策特定事業として新法案に残されましたものにつきまして積極的に進めていくということでございます。  それから、一般対策へ移されたものにつきましては、一般対策の中で、その一環としまして雇用の促進を積極的に進めていただくということでございますが、具体的には労働省さんからお答えをいただきたいと思います。
  199. 竹村毅

    ○竹村説明員 お答えいたします。  先生御指摘のように、最近におきましては雇用失業情勢が全国的に非常に深刻な状態にございます。翻って、そういう状況の中で、一般的な助成措置といいますか、我々が現在持っております。そういうものに対して非常に充実された内容になっております。したがいまして、同和関係住民の皆様方の雇用促進におきましても、一般的な施策を活用することにより、十分対応が可能であると基本的には考えております。  しかしながら、同和地区の皆様方特有の問題もございます。そういうものにつきましては、今回の見直しの基準に沿いまして私どもとしては真に必要なものは残していく、そして同和対策としてそういうものを活用しながらきめ細かな施策を推進してまいりたいと思っております。
  200. 野坂浩賢

    野坂委員 時間がありませんから、それは少し残して、次の質問を終わってからさらに時間があればやらせていただきたいと思っております。  今も冒頭に申し上げましたように、昭和四十年に答申をしました同和対策審議会、今は地域改善対策協議会、こういうことになっております。これは国家行政組織法に基づく協議会を改めて設置をするというふうにお考えだと思いますが、いかがですか。第八条に基づく措置なのかどうか。
  201. 山下徳夫

    山下国務大臣 地対協を設置いたします。
  202. 野坂浩賢

    野坂委員 設置をされるわけでありますが、今も同僚議員から話がありましたように、公益法人問題と同じように、この協議会の構成について、第八条で、意見具申もすれば諮問することもできる、そのための合議制の機関を置くことができると書いてある。この国家行政組織法に基づく協議会の設置については、言うなれば良識のある方々ということになろうかと思いますが、今まではこの協議会にはいわゆる被害者の代表というものがない。  今度山下長官が御就任になって十分考えていただかなければならぬと思います。やはり加害者の側、そういうことの話はちょっと行き過ぎかもしれませんが、一般の方々が中心で協議会を設置される、そして意見具申をされた。被差別の方たちの代表がいない。例えば労働問題でも、中立も出れば資本側も出る、労働側も出る、そういう三者構成でありますが、今回の協議会は出てない。かつて、民間運動団体には三つあって、話がつかないので入れないというような経緯もありますが、今度長官が御就任になりまして、協議会の設置に当たりましては、いわゆる被害者の側といいますか、差別をされる側の代表を入れていかなければ本当の意味の部落の解放、問題解決にはならないと思っておりますが、それについてはどのようにお考えでしょうか。入れていただけますか。
  203. 山下徳夫

    山下国務大臣 同和関係者で組織されております民間運動団体、これは地域改善対策における直接の利害関係者である、こういう立場から、従来同協議会に委員として参加するにはこの同和の関係を代表する各団体が同時に参加をされておった、そして建設的な議論ができる状態にある、こういう必要条件であったと思っておるのでありますが、今回は新たに発足する一つの協議会でございます。したがいまして、これまでの経験等も踏まえまして、新たなる協議会という立場からこの委員構成については検討をされるべきである、かように理解をいたしております。
  204. 野坂浩賢

    野坂委員 新たな立場から御検討になるだろうと思います。その御検討の中の大きなファクターとして、いわゆる被害者団体といいますか、差別される側の代表を入れなければ真の解放ということはできない、部落問題に終止符を打つことができない、そういうふうに考えるわけですが、そのように理解をしてよろしゅうございますか。
  205. 山下徳夫

    山下国務大臣 今申し上げましたように、従来の協議会につきましてはそのような見地からこれらの団体こぞってお入りいただいて御検討いただいたということでございますが、繰り返し申し上げますように、今度は全く新たな団体でございます。したがいまして、全く新たな見地からどのような構成にすべきかということが検討されなければならぬ。  私、個人的な立場から、個人的というのはどうかと思いますが、申し上げるならば、やはり中立的な立場の方が中心となってこの委員会は運営されるべきである、かように理解いたしております。
  206. 野坂浩賢

    野坂委員 私は、中立的な立場といいますか、中立というのがあるだろうかよくわかりませんが、いわゆる損する者と損じない者との側ということは、そういうことは部落問題についてはないと思っております。いわゆる被害者か加害者かという立場、ここにある。あとは学識経験者。言うなれば学識経験者を中心にして進めたいという意向だろうと思いますが、その場合にはいわゆる差別される側の皆さん方が入っていかなければ、本当の意味の協議会の精神、同対審の精神を生かすことはできぬじゃないのか、これが第一点です。だから、新たな見地といえば、この者を外す考えなのか外さない考えなのか、このことを一つ聞きたい。  さらに、この国家行政組織法というものの八条に基づいた審議会あるいは協議会というものは、従来から野党の推薦というものを十分検討されたのですよ。いいですか。例えば新行革審で今大槻文平さんが宙ぶらりんになっておりますけれども、これらの問題についても十分国会等で話し合いをしながら、野党の側からは例えば江田虎臣さんが出る、あるいは同盟からも出る、こういう格好で一つ一つ進めてきたのです。そして満場一致なりこれらの問題についてはどうするかというぎりぎりのところまでやってきたのです。  そういう意味で、野党側の推薦人も十分配慮する、そういう新たな視点というものが考えられるのかどうか、その点について明確な御答弁をいただきたい。
  207. 山下徳夫

    山下国務大臣 国会同意人事でございます新行革審と一様にはまいらないと思いますが、公正な立場から選ぶという点については、これらの人事は基本的には同じだと私は思っております。  先ほどからるる申し上げますように、ひとつ新たな見地から今度は選ぶということであり、私も従来のいきさつはよく存じておりませんが、従来それぞれの各党の意見を酌んだということでございます。各党の意見を酌んで、先ほど申し上げました、いわゆる先生のおっしゃる被害者的な団体でございますか、それら三団体が幾つかお入りになって運営がうまくいったかどうかということも、私はまだ十分さかのぼって検討いたしておりません。  それは別といたしまして、先生の御質問にございました中立とは何かということは、先生もおっしゃったように被害者及び加害者を除いたものが広い意味における中立かなと私はそのように考えております。したがって、今後はこの中立、今申し上げましたような意味の中立という立場の方が中心となって運営していただくことが一番いいのではないか。もちろんこの協議会が、被害者的な立場、加害者的な立場の方々の御意見を十分尊重して、御意見に耳を傾けるということは当然であろうと思っております。
  208. 野坂浩賢

    野坂委員 私は、協議会を設置して意見の具申をする場合は被害者側に立つ、差別をされる側、その方たちの意見を十分に聞かなければ、本当の意味の効率のある運営が不十分になるであろうということを指摘しておきます。  したがって、新たな見地というのは、いろいろこれから意見はあるであろうけれども、差別される側もその新たな見地の対象となる、そして各党の意見も十分に尊重していきたい、これは新たな見地から検討するという対象に入るか入らないか、明確にしてもらいたい。
  209. 山下徳夫

    山下国務大臣 この委員の選考につきましては、これから行われるべき問題でございますが、私は中立的な立場、中立とは何かということにつきましては先ほど御答弁申し上げたとおりでありますが、そういう見地から選考すべきである。おっしゃるとおり、民間運動団体に属する有識者の御意見につきましては、今後とも十分地対協において参考にされるよう、これは十分配慮されなければならぬ、かように理解いたしております。
  210. 野坂浩賢

    野坂委員 答弁は納得できませんが、私は、今の問題については民間運動団体の代表を入れるべし、それから各党の意見も十分聴取をされまして誤りのない協議会の構成員を設置してもらうように強く要望しておきます。  私は、先ほど申し上げましたように今度の法案の第二条については政令で定められる、この法案が通った後に政令で具体的な事業内容が決まるわけでありますが、今も労働省からのお話がありました。例えば住宅の問題等につきましても、今度は一〇〇%の補助基準の補助率が、起債が一〇〇%あったものが八五%になるわけであります。これらの一つ一つを考えていきますと、この第二条に明記してありますように、具体的にこれを進めていかなければならぬということははっきりしておるわけであります。  六十二年度の予算、この中では対象にはなっていなかったけれども、この同和新法、今度の法律は五年間の有効でありますから昭和六十七年まで影響があるわけであります。したがって、例えば公営住宅建設事業、簡易水道等施設整備事業、地域し尿処理施設整備事業、あるいは高等学校等進学に伴う奨励金給付に関する問題、今申し上げました地域改善対策対象地域雇用促進給付金支給事業、児童館整備・運営事業、母子健康センター整備事業等は、最も特定な地域の中でやっていかなければ全体的な部落問題解決ができない、そういうふうに思料し判断されるわけでございますし、ここの第二条に明記してある各項目ごとにすべてに適用される問題でありますから、これについては十分配慮して政令等で考えていただかなければならぬと思いますが、最終的に長官の御答弁をお聞きして、私の質問を終わりたい、そう思います。
  211. 山下徳夫

    山下国務大臣 基本的な理念と申しますか方針はまさにおっしゃるとおりでございます。したがいまして、昨年度の予算からかなり手直しもいたしてきておるところでございますけれども、今後とも最善を尽くしてこれらの事業に取り組んでまいりたいと思っております。  もし先生さらに詳細にお尋ねならば、非常に多岐にわたっておりまして私も一々補助率等は承知いたしておりませんので、政府委員から答弁をさせたいと思います。
  212. 野坂浩賢

    野坂委員 私の持ち時間はもうありませんのでこれ以上進めることはできませんが、今長官から、基本的にはただいま提起した問題等は部落問題解決について必要事項であるから十分に配意して対処、対応していきたい、こういうふうに御答弁があったということを確認をしていただいて終わりたいと思うのですが、それでよろしゅうございますか。
  213. 山下徳夫

    山下国務大臣 若干私の理解の違いがございまして、今先生がおっしゃったのは予算から外れた部分でございまして、これらの問題を重要課題として組み入れるかのごとき答弁をいたしましたのは若干私の答弁の誤りでございますが、先ほど申し上げましたように非常に多岐にわたっておりますので、今後各項目について十分検討いたしたいと思っております。
  214. 野坂浩賢

    野坂委員 私が申し上げておりますのは、この法律が通って、それから政令はつくります。政令はその事業内容を決める。したがって、六十二年度の予算に例えば上げていなくても、準備をしておる各都道府県というのはたくさんある、しかも第二条に明記されておる根本的な部落問題解決のための事業である、これらの問題はハードの面もソフトの面も含まれておるわけであります。  後で読んでいただきたいと思いますが、「部落差別」というこの写真集をごらんになっても、例えば結婚が一般地域と六〇%程度やられておるという結果だけの報告でありますが、それには数多くの異常なほどの努力と問題点がありながら六〇%の結婚が成立しておるということを、ぜひ分析、検討していただきたいと思うわけであります。  そういう意味で、五年間にわたるこの政令、法律というものについて、十分生かしていかなければならぬ、意義あるものにしていかなければならぬ。そのためには、切って捨てるということではなしに、十分検討し分析をし課題として取り上げていかなければならぬではないかということを今私は提言しておるわけです。だから意見を申し上げろと言っておるわけです。それらについて十分御検討の上、対処、対応をしてもらいたいということを申し上げておるわけでありますから、最後に一言だけ御答弁をいただいて、終わりたいと思います。
  215. 山下徳夫

    山下国務大臣 従来からやってまいりました各種の事業の中で、おおよそその目的を達して一般対策に移すべきものと、新しい今度の法律の中で残事業として取り上げていくものと仕分けして今後やっていくわけでございますが、昭和六十二年度につきましては、予算に計上した分について事業を行う、このようにいたしたいと思います。
  216. 野坂浩賢

    野坂委員 もうこれで終わりますが、六十二年度の分を言っているわけじゃないのです。法案の有効期間は五年間です。したがって、それらについての政令については十分対応していただきますように強く要請をして、これで質問を終わります。
  217. 石川要三

  218. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 同和問題に関しまして、その解決の第一義的な責任、こういったものは国にあるということはもう異論はないわけでございますけれども、昭和四十年八月十一日の同和対策審議会答申にも、「いうまでもなく同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題である。したがって、審議会はこれを未解決に放置することは断じて許されないことであり、その早急な解決こそ国の責務であり、同時に国民的課題であるとの認識に立って対策の探究に努力した。」云々と述べられてございますですね。その後政府の答弁いろいろとございました。  そういう中で、今後も、昭和四十年のこの答申に述べられてきたものにつきまして、この精神というものは変わりないのかどうなのか、その方針に変わりはないのかどうなのか、まず最初にお尋ねしておきたいと思います。
  219. 山下徳夫

    山下国務大臣 同和問題の解決のための行政の役割につきましては、昨年の地対協の意見具申においても、「行政の基本的な役割は、同和関係者の自主的な努力を支援し、その自立を促進することである。今後の地域改善対策の在り方は、この視点から見直さなければならない。」このように明確な御意見をちょうだいいたしているところでございます。この行政の役割を果たすためには、国と地方公共団体が一致協力して地域改善対策の推進に当たる必要がある。その場合、国は、指導的役割を果たすことが重要であるということも意見の具申で御提言をいただいておるところであります。  この意見具申の御提言を尊重して、国は同和問題の解決のため十分責任を果たしてまいりたい所存でございます。
  220. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 同和対策審議会が「同和地区に関する社会的及び経済的諸問題を解決するための基本方策に関する答申」を出しましてから二十年余り経過しました。その二十有余年の間に、昭和四十四年の同和対策事業特別措置法及び昭和五十七年の地域改善対策特別措置法に基づく同和対策事業及び地域改善対策事業の推進等により、「同和地区住民の社会的経済的地位の向上を阻む諸要因の解消という目標に次第に近づいてきたといえる。」これは昭和五十九年の意見具申ですが、こういったものもございます。そういう中で、いろいろとこれは意見のあるものでございまして、だんだんと私もその中身に関して質問をさせていただきたいと考えております。  まず最初に、二十年余り経過したわけでございますけれども、この間いろいろな課題が出ていると思います。そういう中で一体どういう問題が改善され、そしてまたどんな問題が今解決の方向へと進んでいっておるのか。全部は無理でございますけれども、その中の重要なものをここで明らかにしていただきたいと思います。
  221. 山下徳夫

    山下国務大臣 それぞれ具体的な問題でございますから、政府委員から答弁いたさせます。
  222. 熊代昭彦

    熊代(昭)政府委員 同対審答申以来二十年を経過いたしまして、この間、同対法及び地対法に基づく対策の推進によりまして、生活環境を初め同和地区の実態は同対審当時と比べまして大幅に改善されてきているということでございまして、先生御引用の五十九年意見具申、あるいは六十一年の意見具申では、「同和地区と一般地域との格差は、平均的にみれば相当程度是正されたといえる。」状態になっているというふうに御指摘をいただいているところでございます。  さらに、高等学校等への進学率も同対審当時と比べまして飛躍的に向上いたしております。同和関係者と一般住民の間の婚姻の増加等も、特に若年層を中心に非常に大きいものがあると思います。また、内外におきます人権尊重の風潮の高まりや各種の啓発施策及び同和教育の実施、実態面の劣悪さの改善等によりまして心理的差別の解消もかなり進んできておりまして、解決の方向に向かいつつあるということは、六十一年の意見具申でも御指摘いただいたとおりであるというふうに考えております。
  223. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 そこで、まず最初にお伺いしておきたいのは、今回のこの新法、いわゆる地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律案、この新法を出された経緯を、これは概略で結構でございます、簡単に御説明いただきたいと思います。
  224. 熊代昭彦

    熊代(昭)政府委員 昨年の十二月十一日でございましたが、地対協で今後の地域改善対策のあり方ということで御検討いただきまして意見具申をいただいたところでございますが、ただいま申し上げましたような実態面の改善等あるいは改善に向かいつつある状況を踏まえまして、今後の同和問題の解決のためには何が必要であるかという観点から、時限新法の御提言をいただいたわけでございます。  それで、今後一般対策へ移行できる展望もあることから従来の継続ではいけないということでございますので、従来のあり方を根本的に反省しての新法を、それから速やかに一般対策へ移行するというのが地域改善対策の特性でございますので、法の前の平等という観点から一般対策へ移るということが望ましいことでございますので、時限立法をというような御提言をいただきまして、それを踏まえまして、総務庁で関係各省庁の御了解を見まして十二月二十七日に「今後の地域改善対策に関する大綱」を定めたわけでございます。適正化措置を含めまして事業の見直し等々を積極的に推進するとともに、最終の特別法としての今回の法律を検討するという決定をいたしたわけでございますが、それに基づきまして検討いたしまして政府案を提出させていただいた、かような経緯でございます。
  225. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 そこで、先ほど野坂委員からもるる御指摘がございましたこの協議会の委員の構成問題、これに関してちょっとお伺いしておきたい点は、まず一つは、この同和問題に関する公益法人の設立に当たっては、これは地方自治体やあるいは企業、民間運動団体からも異論が出ておることでございます。そういうことを考えますと、その関係団体等の合意を抜きにしてこれを拙速でやっては問題がございます。そういった意味で、十分なその合意が得られるような、そういう慎重なものでなければならないと思います。  それから、長官が先ほど答弁しておりましたけれども、この協議会委員の構成問題に関して、差別される人と、いわゆる被害者と加害者、それ以外の中立なんだという中立の考え方、私は、個人的見解でございますが、そういう考え方というのはちょっとおかしいのじゃないかと思います。  これはやはり被害者がおるわけです。差別されておる人がおるわけですね。それとそれ以外の人という考えでいいのではないか。この二通りです。その中にこの同和問題に関して理解のある人、学者、文化人ですね、そういった理解のある人――つまり大きくは二つに分かれるのではないか。これは被害者がございます。それから、あとはそれ以外の人、この二通り、その中にこの問題に関して理解ある人、そういった人たちをやはり構成のメンバーの中に考えていく、そういった点が大事ではないか。中立という考え方は、これは余りにも傍観者的なものになっておかしいのではないか、こういうように考えますが、もう一度長官の御答弁をお願いしたいと思います。
  226. 山下徳夫

    山下国務大臣 先ほど野坂先生も被害者及び加害者というお言葉がございましたし、決して私はそれにとらわれて言ったわけじゃございませんが、被害者があれば加害者がある、そういう立場から、この両者を除いた方々、広い意味におけると申し上げた。広い意味における中立というもの、そういう範囲内ではないかということを申し上げたつもりでございます。私が申し上げた中立という意味はそういうことで御理解をいただきたいと思います。
  227. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 ですから、私が申し上げているのは、この問題に理解ある人ということを考えていくべきである、こう言っているわけです。中立という考えではなくして、そういう理解のある人たちでその構成をしていく、こういうことの方が大事じゃないか。えらいくどいようですが、もう一度、その私の考えはどうですか。
  228. 山下徳夫

    山下国務大臣 やはり中立という中における理解者、そういう立場から選考すべきであって、今おっしゃるような民間運動団体に属する方々の有識者、こういう方々はもちろん御意見は十分吐いていただく、その御意見の場というものは別途つくる、それがいわゆる地対協にいろいろと御意見をおっしゃっていただくという場であって、この委員としてという意味でなくて、そういう場でひとつ御意見をちょうだいするというふうにしていったらどうか、このように申し上げたつもりでございます。
  229. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 この問題はまた次の機会に、それからまた、この後まだ同僚委員の質問がございますので、そちらに譲りたいと思います。  総務庁長官官房地域改善対策室が「同和問題の現況」として発表している中に、昭和五十九年六月十九日の地域改善対策協議会意見具申、これが載っておりますね。その中に、「心理的差別の解消も、実態的差別の全般的な減少、人権意識の普及高揚及び各種啓発施策の実施等により、ある程度まで進んできたといえる。」こうございます。そういう中で、心理的な問題点としてはいかなる解消が図られたのか、どういうものだったのか、そういった面をお伺いしておきたいと思います。
  230. 熊代昭彦

    熊代(昭)政府委員 先生お尋ねの心理的差別の解消の事例でございますが、総務庁昭和六十年の十一月に実施いたしました実態把握の結果を見ますと、心理的差別の解消が進んできたことを示す事例といたしまして、まず若年層を中心に同和関係者の一般住民との婚姻の増加が見られた、先ほど申し上げたところでございますが、三十歳以下だけをとりますと、約六割は同和関係者と一般住民の間の婚姻であるということでございます。それから、第二点でございますが、国民の大多数が同和問題を知るようになっているということ。それから、第三点といたしまして、結婚に対する態度を聞いた調査項目がございますけれども、子供の意思を優先するとする親が、積極的優先と消極的な優先を合わせますと、消極的な優先というのは本人の意思がかたければ仕方がないというものでございますが、約八割になっておるというような事例がございます。
  231. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 さらに、政府はこの地域改善対策特別措置法失効後のあり方について、昨年十二月十一日の地域改善対策協議会の意見具申を踏まえて地域改善対策の見直しを行い、そして昭和六十二年度予算案を決定した、こういうように聞いております。  この見直しについての基本的な考え方及びその概要についてお伺いするのと、また、本新法案に基づく政令案の概要及び政令案と予算案の関係について、そういったものもお伺いしておきたいと思います。
  232. 熊代昭彦

    熊代(昭)政府委員 今回の見直しの基本的な考え方でございますが、これも先ほど申し上げました地対協意見具申、昨年の地対協意見具申でございますけれども、非常に詳しい見直しのよって立つ基準という御提言をいただきました。  現在の状況にかんがみまして、可能な限り一般対策へ移行する。それから、既に目的を達した事業、社会的ニーズが乏しくなった事業につきましては廃止する。それから、個人給付的施策につきましては、原則として廃止する。ただし、自立、向上に役立つものは残しまして、しかし段階的に廃止を検討する。それから、人的事業につきましても、段階的に一般対策で対処、あるいは廃止の方向で検討するというような御意見をいただいたところでございます。  それに基づきまして、先ほどお答えいたしました「今後の地域改善対策に関する大綱」を総務庁で政府関係省庁の合意を得まして定めまして、その意見具申を踏まえ、そして大綱を踏まえまして予算編成がなされたところでございます。  五十四項目が残されまして、二十八項目が廃止されました。その残された五十四項目のうち二十項目につきましては必要な修正がなされたというところでございます。この予算案に盛り込まれまして、今後の地域改善対策事業とされる五十四項目が、今後法律が成立いたしますと、制定を予定されております政令の中に地域改善対策特定事業ということで盛り込まれる、その予定であるということでございます。  法律案と政令の関係につきましては以上でございますが、政令につきましては、なお現在の政令と同様に三分の二の例外規定あるいは経過規定等所要の措置を定めることを予定しておるところでございます。
  233. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 今も御説明ございました「今後の地域改善対策に関する大綱」に定められている事業の見直しの一つとして、可能な限り一般対策へ移行、今も御説明があったわけでございますが、現在行われている特別対策をなぜ一般対策に移行しなければならないのか、まずその理由をお伺いしておきたいと思います。
  234. 熊代昭彦

    熊代(昭)政府委員 地域改善対策は、対象地域の劣悪な実態の早急な改善を図るために特別財政措置に裏づけられました特別対策を同和地区や同和関係者に対して講ずるものでございまして、これまで講じてきたところでございます。  しかし、国民に対します行政施策の公平な適用、法の前の平等ということでございますので、行政施策の公平な適用という原則からすれば、意見具申でもいただいておりますとおり、可及的速やかに一般対策の中で対処するということが望ましいことは言うまでもないところであります。  現行地域改善対策につきましては、十八年間にわたります諸施策の推進によりまして同和地区の実態が改善されまして、「一般地域との格差は相当程度是正」という昨年六十一年の意見具申でも御指摘いただいた状況になっております。このような状況を踏まえまして、いつまでも地域改善対策を著しく優遇して、一般対策と不均衡を生ずるようでは容易に国民的合意は得がたいということが同じく意見具申の御指摘でございますが、かつ同和問題の解決にとって望ましくないということでございます。  以上が現行事業の見直しに当たりまして可能な限り一般対策へ移行することを基本とする考え方でございます。
  235. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 本法案の第二条に、「生活環境の改善、産業の振興、職業の安定、教育の充実、人権擁護活動の強化、社会福祉の増進」等々、ずっと述べられております。この同和地区の住環境がかなり改善はされてきたという面もございます。しかし、なお厳しい実態に放置されておる、そういう同和地区が存在していることも事実でございます。  したがいまして、これらの地区を放置しておいては完全な解決ということにならないわけでございますので、以上のそういった考え方を踏まえて、今後こういった問題に対してどう改善の方策を考えておるのか、明らかにしておいてください。
  236. 熊代昭彦

    熊代(昭)政府委員 対象地域につきましては、過去十八年間にわたります特別法に基づく対策の推進によりまして、生活環境を初め生活実態は相当改善向上が図られたというふうに理解しているところでございますが、御指摘のような実態の対象地域が残されているというようなこともございまして、本法案を提出いたしまして、お認めいただきますれば、地域改善対策特定事業を円滑かつ迅速に実施いたしまして、そのような実態の解消に努めたい、かように考えているところでございます。
  237. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 この昭和五十九年六月十九日の地域改善対策協議会意見具申の中にございますが、特に、「第二には、いわゆるえせ同和団体の横行を排除することである。」云々とあり、「これらえせ同和団体の横行を現状のままで放置することはできない。」こういうようにもございますが、この問題に関してどう取り組んでおるのか、御説明をいただきたいと思います。
  238. 熊代昭彦

    熊代(昭)政府委員 えせ同和行為の横行は、同和問題解決のための長年の関係機関の努力の成果を踏みにじるということでございまして、同和問題に関する啓発活動の効果を一挙に覆すということでございますので、意見具申にもございますように、同和問題の解決のためには断固排除しなければならないものでございます。また、えせ同和行為につきましては、五十九年の意見具申及び六十一年の意見具申におきまして、新たな差別意識を生む要因の一つといたしましてその排除を御提言いただいているところでございます。  同意見具申を踏まえまして、昨年の十二月二十七日に総務庁において定めました「今後の地域改善対策に関する大綱」におきましても、適正化の課題の一つとしてえせ同和行為の排除対策を取り上げているところでございます。  具体的対策といたしましては法務省さんを中心に推進されておりまして、後ほど法務省さんから御説明をいただきたいと思いますが、昨年九月、法務省、総務庁、警察庁の三省庁の構成によるえせ同和行為対策連絡会議が設置されまして、総務庁といたしましても同和問題の解決のための重点課題であるということで参加させていただいているところでございます。今後は、この問題の重要性にかんがみまして、三省庁を中心に全省庁に拡大するというような方向で調整を進めたいと考えているところでございます。
  239. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 時間が余りありませんので、ちょっとまとめて質問させていただきたいと思います。  まず、昨年十二月十一日の地域改善対策協議会よりの意見具申に対し、地域改善対策事業の厳しい見直しを行った、こう伺っておりますけれども、具体的にはどうなのか、また、市町村の財政負担との関係性、こういったものをいかに考えておるのか、さらに、本新法は五年の時限立法とされ、聞くところによると、これが最終の立法となるやに伺っておりますけれども、今後、この五年後、法失効後の対策はどのように考えておるのか、方向性でも結構でございます、お伺いしておきたいと思います。
  240. 熊代昭彦

    熊代(昭)政府委員 昨年暮れの見直しの結果が昭和六十二年度予算に含まれているところでございますが、その見直しに当たりましても、市町村に対する財政負担等も十分考慮いたしまして、市町村の財政負担の過重にならないということに相当に配意されたところでございます。  一つは、国で廃止されました事業につきまして、都道府県、市町村でも行政の主体性を発揮されまして廃止されるということが同和問題の解決につながるのではないかというふうに考えているところでございます。  それから、例えば三分の二の補助が二分の一の一般法の補助に落ちたというところにつきましては、確かに市町村の負担がその限りではふえるわけでございますが、他の同和地区を有しない一般の市町村と同じ条件になるということでございますので、今の段階で可能なものを一般対策に移したということでございますので、その点については御理解をいただきたいと思います。  それから、法失効後の問題でございますが、まず五年間の法の有効期間内におきましてできるだけ事業を完遂するということが第一番でございまして、鋭意努力をいたしたいと考えているわけでございますが、最終の特別法でございますので、仮に法失効後に物的事業等が残されました場合には、特別措置法に基づく対策ではなくて一般対策として事業を実施していくということになろうかと考えております。
  241. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 時間ですので、最後にこの問題をお伺いしておまます。  まず、今後の対応として未指定地域の問題がございます。この未指定地域についても事業実施を認める必要があると思いますが、政府としてどう考えるのか。  さらにまた、この同和問題を本当に重要な問題として、基本的人権にかかわる問題として、今後の対応についての長官の御決意を最後にお伺いしておきたいと思います。
  242. 山下徳夫

    山下国務大臣 先ほど来御答弁申し上げましたように、地域の調査につきましては昭和三十八年、四十二年、四十六年そして五十年、こういうふうに実施をいたしまして、その後も適宜補完調査を行ってきたところでございます。  そこで、これが施行されましてから地対法の期限までには十八年間という期間があったということで、この間に確認すべきものは、もうおおよそ――おおよそと申しますか、あるいはもうすべて確認されてきたと言っても差し支えないかと思います。したがって、この十八年間の実績を踏まえまして、この地対法の期間中に対象地域として事業が実施された地域のみを本法案で実施をする地域と定めておるわけでございまして、この方針には変わりございません。  しかしながら、今後またやらなければならぬ事業があるとするならば、それは一般対策として継続してやることもまた可能である、かように存じております。
  243. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 終わります。
  244. 石川要三

  245. 川端達夫

    川端委員 このたび提案をされました地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律案について御質問を申し上げたいと思います。  過去十八年間にわたって継続されてきました同封及び地対関係の物的事業について期限が切れるという状況の中で、物的事業についての財政上の措置が講じられるに至ったことについては、いろいろな経緯を含めて関係各位の御努力には一定の評価を申し上げたいというふうに思います。  つきましては、今回のこの法案はいわゆる財政上の特別措置ということで、まさに財政上の措置に限定をされたような法案の表現になっているわけですけれども、先ほどから各委員の方がるる述べられましたように、部落解放の運動、差別問題の解消ということは、憲法で保障された人権擁護というものを全うするという観点から見ましたときに、ハードの部分にお金をつぎ込んでいくという部分の必要性と、それから国の責任も含めた国民の総意として、心の問題としても差別をなくすということが究極の目的としてあると思います。まさに四十年八月の同対審の答申で述べられていますように、「いうまでもなく同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題である。」「その早急な解決こそ国の責務であり、同時に国民的課題である」、こういう基本精神にのっとって今までやられてきたというふうに理解をいたしております。  そういう中で、今回財政的な特別措置という新法として提案された中で、現行の地対特別措置法の第一条、いわゆる目的として明らかにうたってあります「すべての国民に基本的人権の享有を保障する日本国憲法の理念にのっとり、」云々といういわゆる精神条項が、財政上の特別措置という観点から表現としてはなくなっているわけですけれども、先ほどからの各委員の御質疑の中でも明らかなように、私も、当然ながら、国の責務としての憲法に保障された基本的人権を享有するということを全うするために、いろいろな手段、いろいろな方法でやっていかなければならない、その中の財政に係る手当てをされるという位置づけであって、全体的には先ほどから申し上げた精神にのっとっておやりになっているというふうに理解をしているのですけれども、これからの進め方を含めて、総務庁長官としての御決意の御披露をお願いしたいと思います。
  246. 山下徳夫

    山下国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、今日まで長い歴史の間に幾たびか法律等も改正しながら改善を積み重ねてまいりまして、一般対策への移行まであと一歩というところまで来ていると私は理解をいたしております。そういう見地から、現行の地域改善対策事業の中でなお一定期間引き続き実施することが特に必要と認められる事業、その事業についてのみこの法律で規定しているということでございまして、他の財政上の特別措置法に倣いまして、目的規定ではなく趣旨規定ということにいたしたわけであります。
  247. 川端達夫

    川端委員 そういう意味でこの財政特別措置というのは理解をするわけですけれども、今までの積み重ねの部分、先ほども御議論がありましたいわゆる人権条約の批准も含めて、そういうふうな位置づけの中で、国内法的にもすべての人権を国の責任として、国民の総意として守っていくんだといういわゆる精神条項としての法案をやるべきではないかと考えるわけです。そういう部分に関してのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  248. 山下徳夫

    山下国務大臣 今回の法案の趣旨は今申し上げたとおりでございます。しかし、そういう法案の趣旨であっても、教育の充実あるいは人権擁護活動の強化というような問題に関する事業につきましては、本法案の第二条第一項に規定されておりますように、同項に基づく政令で地域改善対策特定事業として定められる予定でございまして、今後とも積極的に取り上げてまいりたい所存でございます。
  249. 川端達夫

    川端委員 時間が限られておりますので、中身についての御質問をさせていただきたいと思うのですが、歴史的にもそれから周りからの差別の実態から見ても、明らかに被差別地帯といいますか同和地区という地区であるけれども、いわゆる指定地域になっていないという地区あるいは事業指定を受けていないという地区があるというふうに理解しておりますけれども、その点はどういうふうに認識されているのか。  それから、現実にそういう地区があるというふうに認識されているのであれば、どういう理由で地域指定を受けておられないというふうに判断しておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  250. 熊代昭彦

    熊代(昭)政府委員 長官からもお答えしたところでございますけれども、対象地域の調査につきましては、昭和三十八年、四十二年、四十六年、そして五十年にも実施いたしておりまして、その後も補完調査という形で随時間別に報告されてきたところでございます。同対法施行時からだけでも地対法の期限までには十八年間ございまして、この十八年間は対象地域として確認されるべきものはすべてされていると判断しても差し支えない期間であると思料されるわけでございます。  したがって、明らかに同和地区であるにもかかわらずいわゆる地区指定が行われていない地区が仮にあるといたしますと、その地区についてはいわゆる地区指定が行われなかったそれなりの合理的理由、すなわち地域住民が地対事業実施を選択しなかったなどの理由があると判断せざるを得ないものであるというふうに考えているところでございます。  本法案は、十八年の実績を踏まえまして、地対法の期間中に対象地域として事業が実施された地域のみを地域改善対策特定事業を実施できる地域とするということでございますので、その他の地域はすべて一般地域として一般法に基づく対策を実施していくということになるものでございます。御理解いただきたいと思います。
  251. 川端達夫

    川端委員 地域住民の意思として選択しなかったというのがあるかもしれないというふうな御答弁だったのですけれども、その理由というのを何か御推察されるようなことがございますか。
  252. 熊代昭彦

    熊代(昭)政府委員 地域住民の合意といたしまして、他の一般地区の住民と全く同じでいい、我々は一般国民と全く同じ対策で、特別の優遇施策の存在は知っているけれども、そういう施策は我々は地域の合意としてはとらないという地域住民の御選択があったのではないかということで、一例として申し上げたわけでございます。
  253. 川端達夫

    川端委員 私が聞き及んでいる部分でもそういう事例があるのですけれども、そういう中に、いわゆる同和の看板をつけるということだけでも差別を受けるのではないかというふうな非常に内向した実際の差別という問題、あるいは地域のいろいろな団体等々との問題とかで、非常に複合した理由でいろいろな事象が生じている地区があるというふうに存じております。  そういう中で、今回の五年の時限立法の中では、既に指定を受けた地区のみに限定をした立法であるというふうに言われるわけですけれども、実際、周辺の環境整備等々進んできた中で、歴史的にも差別の実態としても明らかに同和地区であって、今までたまたま指定を受けていなかったというところを改善したいというふうな意思をこれから持たないということは断言はできないわけでして、そういう事象があらわれたときには、そこのまさに住民の意思によって地区指定という部分が、あるいは事業の実施というものが、いや、それは一般事業でしかあり得ないということでない判断というのが、先ほど申し上げました基本的に財政的な措置をとるという観点のそのベースとしては、まさに基本的人権を守るために差別をなくすということが本来の趣旨であるならば、そのために後から地域を指定してくださいと言われる人を除外するというのは基本的におかしいのじゃないかというふうに思うのですけれども、その点についての御見解をお願いしたいと思います。
  254. 熊代昭彦

    熊代(昭)政府委員 先ほども申し上げましたように、いずれかの時点で地域改善対策一般対策に移すべき性格のものであるという地対協の意見具申もいただいておりますし、私どももそのように考えておりますが、いずれかの時点で線を引かなければならないということで、今回線を引きまして、既に指定された地域につきまして残された事業につきまして、一般対策に移すために必要な事業を実施するという最終の特別法を立案したところでございます。  それから、対象地域の指定は事業実施についての指定でございますので、その合意が十八年間なされなかったということで、ここで線を引くということはやむを得ないのじゃないだろうか、十八年間に出てこなかったところは一般地域でということで実施すべきではないか、かように考えているところでございます。
  255. 川端達夫

    川端委員 若干すれ違いの議論になるので余りあれですけれども、住民の意思によって事業推進の申請をするという方式のときに、いろんな事業が、残事業が完結して、これでもう終わりだというふうになるのがもちろん当初の目的でありますし、一日も早くそうなっていただきたいというふうに我々は思っているわけですけれども、そういう中で、これから五年の間にそういうふうな事業をしていただきたい、今まで言っていなかったけれども、十八年の間は言わなかったけれどもというのが出てきたときに、それがどんどんいっぱい出てくるということではないと思うのですね、確かにおっしゃるとおり。そういうことでいいますと、地域の自主的な判断のもとで五年間の中でそういう希望が出てきたときというのは、いわゆる部落解放の基本的な精神からいえば、そこが同和地区であることは間違いないということであれば、それを除外するというのはいかがなものかなというふうに思いますが、御意見を申し上げて、次の質問に移りたいと思います。  今回の見直しの中で個人給付事業については大幅な見直しというものをされてきているわけですけれども、今回の個人給付事業についての見直しについての基本的な姿勢、考え方というのをお伺いしたいと思います。
  256. 熊代昭彦

    熊代(昭)政府委員 地域改善対策は、御承知のように、対象地域の劣悪な実態の早急な改善ということのための特別財政措置に裏づけられました特別対策でございます。しかし、国民に対する行政施策の公平な適用という原則からいたしますと、可及的速やかに一般対策で対応するということは、物的事業等で申し上げましたことと全く同じでございます。個人給付的事業につきましても全く同じでございます。  現在、六十一年の意見具申でもいただきましたように、「一般地域との格差は相当程度是正された」というようなことでございますので、このような現状を踏まえまして、いつまでも地域改善対策を優遇しまして、一般対策と不均衡を生ずるようでは容易に国民的合意は得がたいという判断に立ったところでございます。特に六十一年意見具申では、個人給付的施策につきましては、「個人給付的施策の安易な適用や、同和関係者を過度に優遇するような施策の実施は、むしろ同和関係者の自立、向上を阻害する面を持っているとともに、国民に不公平感を招来している。」との御指摘がございます。かかる観点から見直しを行ったところでございます。
  257. 川端達夫

    川端委員 基本的な姿勢として、まさに時代の流れの中で時代おくれになって不必要なものを整理をしていく、あるいは、まさに自立、向上の精神涵養を本来図るべきものがもう十分であるという、これ以上というのはかえって自立を阻害するんじゃないかというふうなものを整理していくということは、流れとしては理解をいたします。そうあるべきだと思います。しかしその中で、判断として、いや、この施策に関してはまだまだ非常に有効であるし、かつ効果的であるというふうなものについてはむしろ拡充をする、そういう中でバランスをとってその地区特有の問題についての施策を講じていくというのがあるべき姿だというふうに思います。  そういう中で、具体的な個別の例について一、二お伺いしたいのですが、例えば高等学校等進学奨励費補助事業ということで、十八年間の中でこの給付を行うことによって進学率はかなり大幅に向上したということが意見具申でも出ております。しかし、一般の地域と比べたときに、伸び率は確かに上がったけれども実際の部分ではやはり一般地域との格差というのはなお残存しているというふうに理解をしているのですが、その部分に関しての進学率の差というものについてどのように把握をしておられるのか、文部省の方にお伺いしたいと思います。
  258. 熱海則夫

    ○熱海説明員 お答え申し上げます。  文部省が高等学校の進学奨励事業を始めたのが昭和四十一年でございます。昭和三十八年の実態を見ますと、一般の地区が約六七%の進学率であったのに対して、同和地区が三〇%という半分以下の状況であったわけでございます。文部省としては、こういった実情に対応して、この進学奨励事業というものの充実の必要性を痛感し、今日まで実施してまいったわけでありますが、その結果として、昭和六十一年度で見ますと全国平均が九三・八%ありますが、対象地域が八七・九%ということになっておりますから、その格差が五・九%、約六%弱になっているわけであります。  このような進学奨励事業については、今回の全体的な見直しの中で、やはり個人給付的施策でございますから、原則としてこれは廃止し、同和関係者の自立、向上に真に役立つものに限定するという今回の見直しの方針、先ほど室長の方からもお話のありましたような方針のもとにそのあり方についていろいろ検討を加えたわけでありますが、やはりなお格差があるということと、こういったものが自立、向上に役立つものである、こういう判断のもとに、これを今後継続して実施する、ただし、貸与という形で実施することにしたわけであります。  ただ、文部省としても、貸与制度に切りかえするに当たりまして、このような進学奨励事業がこれまで果たしてきた役割というものを十分考えて今後対応しなければなりませんし、そのためには学校などにおける進路指導の充実なども今後考えてまいりませんと、やはりこういったものに影響もあります。そのほかに、返還免除制度、例えば今後返還が困難な場合に、そういった者に対する免除制度もある程度導入しなければならないとか、いずれにせよこういったいろいろな施策をあわせながら、就学が困難な者の進学意欲をそぐことのないようにいろいろな形で配慮してまいりたい、そういうふうに考えておる次第でございます。
  259. 川端達夫

    川端委員 今の御答弁でも明らかなように、給付制度というのは非常に効果があった。そして、その制度のおかげで現在五%まで、もう少しで一般と差がないところまでいった。それは給付というものに支えられて存在をしているということで、給付から貸与にしたということで、せっかくのここまでの積み上げがまた進学率の低下になるんじゃないかということを非常に危惧をしております。真に自立に役立つものを除いて一般事業に移すという場合に、まさにこれは真に自立に役立つという部分で、可能であれば何とか現行のままにしていただきたかったというふうに思うのですが、そういう意味で、今の貸与制度になる場合に、返還の免除制度の充実、返還期間の延長等々、実質的に進学率の維持向上に役立つように、そして自立に役立つような制度面での政令の運用というものを特にお願いをしておきたいと思います。  それから、先ほどからもるる御指摘がありましたけれども、部落差別の場合のもう一つの非常に大きな問題としては、やはり就職の困難性、それから職業の不安定性というのがついて回り、これがなかなか解決できない。そういう中で、今まで、自分で技能を身につけて自立をしていくということで、雇用の場の確保ということで非常に効果のあったいわゆる自動車運転訓練の補講事業等があるわけですけれども、これの見直しも予定をされているというふうに伺っているのですけれども、これは実際はどういうふうにおやりになるのかということについてお伺いしたいと思います。
  260. 竹村毅

    ○竹村説明員 お答え申し上げます。  一般的に自動車運転訓練事業につきましては個人給付的事業は原則として廃止するというものの中に入りまして、一応見直し基準では廃止ということになっております。しかしながら、先ほど先生御指摘がありましたような、本当に技能として役立つもの、例えば大型、大型特殊とかいうものにつきましては、実施するやり方を再検討いたしまして、国が直接やるという形で対応することにいたしております。  具体的には、まず対象者を絞り込む、これは本当にそういう訓練をすることが必要な者に絞っていくということと、もう一つは、実施主体を市町村から国が直轄として実施するという形で、いわば補助事業から国の直轄事業ということに変えまして、全国統一した基準で行えるようにしております。そして、それらの予算を六十二年度予算案に盛り込んで御検討、御審議を願っておるところでございます。
  261. 川端達夫

    川端委員 この事業は非常に効果のある大事な制度だと思います。そういう意味で、国の直轄となった途端に非常に条件が厳しくてなかなか受けられないとかいうことになりますと、せっかくの制度が台なしになりますので、実態に即した運用をされるように特にお願いをしておきたいと思います。  それから、時間が来ましたので、最後に、同対審の意見具申と政府の大綱の中でも述べられていますえせ同和団体対策についてでありますが、いわゆる同和問題が複雑になり、あるいは国民的な誤解を招くというふうな部分に、えせ同和団体の問題があるということはいろいろな方面から指摘をされているところでありますけれども、政府としては、いわゆるえせ同和団体というものをどのように定義をされ、どういうふうに認識をされているのか。それから、取り締まり、予防措置等についてはどういうふうにしようとしておられるのか。それから、どこがおやりになるのかということをお伺いしたいと思います。
  262. 熊代昭彦

    熊代(昭)政府委員 えせ同和行為対策につきましては、先ほどお答え申し上げましたように、法務省、警察庁、総務庁と三省庁がそれぞれの観点から参画して会議を持っておるところでございますが、現在中心になって進めておられるのは法務省さんでございます。
  263. 川端達夫

    川端委員 もう時間が来てしまったんですけれども、私、先ほどお伺いした中で、えせ同和団体あるいはえせ同和行為というものをどういうふうに定義されているのかということについて、もう少し明確にしていただきたいと思います。
  264. 熊代昭彦

    熊代(昭)政府委員 えせ同和行為は、同和問題を口実にしまして何らかの利権をとる行為ということでございます。  御承知のように、五十九年の意見具申では「えせ同和団体の排除」ということになっておりましたが、六十一年の意見具申におきましては「えせ同和行為」ということでございまして、真実な同和団体であるかどうかを問わない、同和問題を口実にして利権等をとろうとする行為ということを「えせ同和行為」と定義いたしたわけでございます。これは、これが行われますと、長年啓発で積み重ねました同和問題解消のための努力が一挙に覆るということでございますので、これの排除につきましては法務省さんを中心に全省庁挙げて体制をとりたいということで考えているところでございます。
  265. 川端達夫

    川端委員 本当に今まで御努力をされてきた運動が一つの事例によって無に帰すような重要な問題であります。そういう意味でかねてから指摘はあったわけですので、遅きに失していると思いますが、具体的に実効の上がる対策をとっていただきたいと切にお願いをして、時間が参りましたので、質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  266. 石川要三

  267. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 初めに、地対協の意見具申に関連してお伺いします。  今回の政府提出法案の前提となっております昨年十二月提出されました地対協の「今後における地域改善対策について」と題する意見具申につきまして、我が党は、行政の主体性の確立を求めるなど同和問題解決にとって積極面はあるが、啓発問題の公益法人設立などの弱点もあると指摘してまいりました。同時に、積極面を行政が実効ある措置をとって推進する必要があるということも指摘いたしました。  意見具申の積極面を生かして実効ある措置をとる上で、政府の責任は極めて重大であります。意見具申について政府はどのように評価し、今後、行政レベルにどう反映させていくのか、この政府の基本的姿勢をまずお伺いしたいと思います。
  268. 山下徳夫

    山下国務大臣 昨年の十二月の地対協の意見具申は、さきに報告されました基本問題検討部会報告書を踏まえて、現行地対法失効後の対策のあり方に関して御提言をいただいたものでございます。同和問題の今日的な状況についての認識に立脚しながら、同和問題解決のため今後何が必要かという視点に立って、基本的かつ幅広い内容を持った貴重な御意見であると私どもは評価をいたしておる次第でございます。  政府といたしましては、この意見具申を踏まえまして「今後の地域改善対策に関する大綱」というものを取りまとめるとともに、現行事業について基本的な見直しを行いまして、今国会に新法案を提案いたしているところでございます。  なお、意見具申で御指摘いただいております地域改善行政の適正化につきましても、今後積極的に推進してまいる所存でございます。
  269. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 我が党はこれまで、同和問題の解決のために公正で民主的な同和行政を推進することが不可欠であるということを一貫して主張してまいりました。同和行政における窓口一本化問題や教育介入事件を初め、国を含む行政の主体性放棄の問題などを国会の場でも具体的に指摘し、繰り返しその是正を求めてきたところであり事す。  意見具申は、同和問題の現状の基本認識について、同特法施行以来十八年間に同和地区の環境と生活実態が大きく改善された、しかし反面で、行政機関の姿勢や民間運動団体の行動形態等に起因する新しい諸問題が同和問題の解決を困難にしていることを指摘しております。  同和行政の適正化問題は、これまで総務庁自身がもろもろの通達などを出されて繰り返し是正の方向を示してこられました。にもかかわらずその実行が阻まれてきた経過があるのであります。今度はこれを確実に実効あるものにしていくことが必要でありますが、そのためにどのような措置を考えておられるのか、お伺いいたします。
  270. 熊代昭彦

    熊代(昭)政府委員 地域改善対策の適正化につきましては、五十九年の意見具申でも、そして昨年十二月の地対協意見具申でも、それを上回る密度で非常に厳しい綿密なる御提言をいただいたところでございます。その意見具申を踏まえまして「今後の地域改善対策に関する大綱」を総務庁で関係各省庁の合意を得まして定めたところでございます。これまで通達等で指導いたしましたが、一つの大綱といたしまして政府のレベルに上げまして政策として実施していくということで、大綱を定めたところでございます。今後も、同和問題の解決にとって非常に重要な問題であるということで強力に推進していきたいというふうに考えているところでございます。  具体的には、地域改善対策の適正化を推進するために、意見具申、大綱等で諸問題につきましていろいろ御指摘がございますが、具体的な是正措置を一つ一つ講じていくということが必要であると考えております。中央政府及び地方公共団体に対する適切な指導、通達を出す、あるいは積極的な助言指導を行っていくというようなことが重要でございますので、関係各省庁、みずからの姿勢も含めまして現在鋭意検討しているところでございます。
  271. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 ところで、行政の主体性の確立という問題につきましては、まず政府自身の姿勢を正す必要があります。意見具申で政府自身の主体性確立が求められていることによってもそのことの重要性は明らかであろうと思います。政府自身の同和行政の主体性を確立するために、どのようにしようとしているのか、お伺いします。
  272. 熊代昭彦

    熊代(昭)政府委員 行政機関が確固たる主体性を堅持しまして適正な行政運営を行うべきことは行政一般に当然求められるべきことでございまして、特に御指摘の中央政府、国が行政の主体性を確立するということが基本であるというふうに考えているところでございます。行政の主体性といたしましては、法令に基づきます適正な運営ということでございますので、あらゆる圧力に屈しないで適正な決定をし、適正な実施を進めていくということが基本でございます。職員一人一人が姿勢を堅持していくとともに、政府全体としてもそのような方針をとってまいりたいということでございます。  このたび、六十一年意見具申及びその前提となりました部会報告におきまして非常にすぐれた御提言をいただきましたので、これらを踏まえまして民間運動団体との関係の正しいあり方を確立する等、今後とも行政の主体性を確立する行政運営を図るということで努力してまいりたいと考えているところでございます。
  273. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 次は地方公共団体の主体性の確立の問題ですが、意見具申では国に積極的な助言指導を行うように指摘しております。昨年十二月、総務庁では「今後の地域改善対策に関する大綱」を決定されております。この中で、「地方公共団体に対し、適切な助言指導を行う。」こうしております。  今後、この大綱をどのように具体化して実行に移していくのか、今後の計画はどういうものであるか、お伺いします。
  274. 熊代昭彦

    熊代(昭)政府委員 意見具申及びそれを受けました大綱に基づきまして、地方公共団体への指導助言ということにつきましては、既に関係課長会議会議の機会あるいはその指導のための出張等の機会をとらえまして積極的に取り組んでいるところでございますが、新法案が制定されましたときには、それにあわせまして指導、通達等、今後必要なものにつきまして十二分に検討してまいりたいと考えているところでございます。
  275. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 大綱は今総務庁の大綱になっておりますが、これを政府の大綱にする、すなわち閣議決定をして政府の大綱にする、そういうお考えは、そういう計画はないのでしょうか。
  276. 熊代昭彦

    熊代(昭)政府委員 昨年の十二月二十七日に総務庁が大綱を定めましたときには関係各省庁の合意を得ておりまして、関係各省庁の事実上の合意を得ているということでございます。  この中身を実施していくにつきましてどういう方法がいいのか、先ほど申し上げましたように、通達等いろいろ検討しているところでございますが、今後十分検討してまいりたいと考えております。
  277. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 適正化対策の具体的な問題について幾つかお伺いします。  まず、大綱でも「えせ同和行為の排除対策」ということがうたわれております。この点につきましては先ほどから質問がありましたが、この適正化についてどのような排除対策の内容が検討されているのか、排除対策の内容をお伺いしたいと思います。
  278. 熊代昭彦

    熊代(昭)政府委員 えせ同和行為につきましては、同和問題解決のために非常にその排除が重要であるということでございまして、意見具申でも、必要な場合は警察の協力を求めまして「厳格に対処」という御指摘をいただいているところでございます。  総務庁は、主として啓発の観点から、えせ同和行為というのが部落問題解消のために非常に有害であるということで、ぜひ排除する必要があるという啓発を進めたいと考えているところでございます。  先ほどもお答えいたしましたように、法務省、警察庁、総務庁で三省庁の会議を開きまして法務省さんで中心になって進められておりまして、法務省さんの地方の出先を中心にいたしましてえせ同和行為排除のための連絡会議を持つ等、具体的な施策が進められているところでございます。あるいは法務省さんでもポスター等、独自の啓発を進められているところでございます。  今後とも有効なえせ同和行為排除のための方策を検討して推進してまいりたいと考えております。
  279. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 大蔵省の方にお伺いしたいと思いますが、意見具申では、「国税において、一部にみられるような特別な納税行動については、その是正につき行政機関の適切な指導が望まれる。」と指摘されております。この問題は我々も繰り返しその是正を要求してきたところでありますが、ここで言っております「特別な納税行動」とは具体的にどういう行動を言っているという認識であるかということと、国税の納税については所管が大蔵省で、この地対協の委員の中には大蔵省の吉野事務次官も入っておりまして、当然次官も認めている指摘ということになるわけですが、大蔵省はこの「特別な納税行動」の是正措置をどのように講じようとしているのか、この二点についてお伺いします。
  280. 細田浩司

    細田説明員 国税庁でございます。  ただいま先生御指摘の点でございますが、地対協の審議の過程におきまして、同和団体の中に所得税の確定申告書を税務署ではなくて国税局に一括提出しているものがあるという問題が指摘されたというふうに聞いておりまして、私どもといたしましては、この意見具申に言うところの「特別な納税行動」とはそのことを指すものと理解しております。  それで、それをどういうふうに是正していくのかという御指摘でございますが、所得税の確定申告書、これは法律上御案内のように住所地を所轄する税務署長に提出されることになっております。おりますが、多数の納税者の中にはほかの税務署に提出したりあるいは国税局に提出するという方もおられるわけでございます。同和団体が申告書を一括して国税局に持参してくる例、これもありますが、いずれにしましても、国税局に持参してきたものを受け付けを拒否するというのもいかがなものかということで、便宜預かりまして、これを直ちに所轄の税務署に移送してきたところでございます。したがいまして、同和関係者についてのみの特別扱いという趣旨ではございませんが、所得税申告書を国税局に提出するというのは法律の建前からいいまして本来の姿ではございませんので、所轄の税務署に提出するようにこれまでも指導をしてきたところでございます。  各国税局におきましてこの是正に向けて指導を重ねた結果、先般終わりましたことしの確定申告期におきましてはこれが大幅に改善され、大半の地域で所轄の税務署に提出されたというふうに聞いております。  以上でございます。
  281. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうすると、わかっていて国税局の方に出すというのは、普通の人が出すように税務署の方に出すように、そういう是正措置をやるということでいいんですね。  では次に法案についてお聞きしますが、我が党は昨年の十一月に、十二項目にわたる現行地対法の期限切れに伴う措置に関する申し入れを総務庁長官あてに行いました。その中心点は、残事業の早期完了のための新たな時限立法の制定、公正で民主的かつ公開と国民合意のもとでみずからの判断と責任で行う同和行政の確立、えせ同和行為や同和を口実とした暴力と不正、腐敗の一掃などであります。我が党のほかにも、地対法の期限切れに当たりまして、事業の全面打ち切りだとかあるいは現行法の強化改正、基本法の制定などの主張が政党や運動団体などからありました。  そういう中で政府が今回新規の時限立法として提案されたわけでありますけれども、その根本的な理由をお伺いしたいと思います。
  282. 熊代昭彦

    熊代(昭)政府委員 本法律案は、先ほども申し上げましたように、地対協六十一年意見具申を踏まえ、新規時限立法として提出いたしたものでございます。  同意見具申は御承知のとおりでございますが、「今後の地域改善対策は、これまでの行政運営の反省と、現行事業の基本的な見直しの上に立脚したものであることを明確にし、幅広い国民の支持を得るためには、現行地対法の漫然とした延長をとるべきではなく、新規立法とすべき」こと。第二点といたしまして、「地域改善対策は、永続的に講じられるべき性格のものではなく、迅速な事業の実施によって、できる限り早期に目的の達成が図られ、可及的速やかに一般対策へ全面的に移行されるべき性格のものであることを明らかにするため、限時法とすべき」ことと提言しておられるところでございます。この意見具申を踏まえて新規時限立法といたしたということでございます。
  283. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今回の政府提出法案は、全体としては同和対策事業の一面的肥大化に歯どめをかけつつ、引き続き五年間の財政上の特別措置をとって事業を行おうとするものであります。しかしながら、法案には、意見具申でも強調しております行政の適正化を図る法的措置がとられていないわけであります。これは私どもから見れば政府提出法案の弱点であると思うわけであります。政府はなぜ地対協でも指摘され国民の強い批判ともなっております不公正な同和行政の是正措置を法案に盛り込まれなかったのか、この点をお伺いします。
  284. 山下徳夫

    山下国務大臣 同和行政の適正化につきましては、現行の関係法令や今後立法される関係法令の適正な実施により是正さるべきものである、かように思料いたしております。  総務庁におきましては、地対協六十一年意見具申を踏まえまして、昨年十二月二十七日に関係各省庁の合意を得まして「今後の地域改善対策に関する大綱」を定めたところであります。同大綱及び地対協六十一年意見具申の具体的な提言を踏まえつつ、今後とも地域改善対策行政の適正化を積極的に推進していく所存でございます。
  285. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 不公正な行政に対する歯どめが法律に必要であるという考えであります。地対協の意見具申でも指摘しております新たな要因ということに関係するのですが、現行の地対法二条二項では、「地域改善対策事業を実施するに当たっては、対象地域とその周辺地域との一体性の確保を図り、公正な運営に努めなければならない。」と規定して、事業のあるべき姿を法文で示しているわけであります。この規定は一般行政との均衡、事業の公正を図ることにその目的がありまして、公平性を確保する上で大事な規定であります。  しかしながら、政府提案の今度の法案にはこの規定が入っていないのですが、新法ではこの考え方を否定する、まさかそういうことではないと思いますが、そういうことであれば、これは大変な問題になるわけです。この点について伺います。
  286. 熊代昭彦

    熊代(昭)政府委員 今回の立法の趣旨は、地域改善対策一般対策への移行を進めるための最終の特別法として必要な措置を定めるということでございまして、立法の内容も財政措置を中心としたいわゆる財特法と位置づけられておりますので、現行法第二条第二項のように、対象地域とその周辺地域との一体性の確保及び公正な運用に努めるなどの趣旨を規定することは法の性格になじまないことから、法案に盛り込まなかったところでございます。  新法に基づきます地域改善対策特定事業が、現行の地域改善対策事業と同様に現行法第二条第二項に規定している理念を踏まえて実施されることは当然であるというふうに考えております。この点につきましては、本法案第二条第一項におきまして、地対法の地域改善対策事業と本法案の地域改善対策特定事業との関係、地域改善対策事業のうちの今後とも必要なものを特定事業とするということでございますので、関係を明確にしていることからも十分担保できるものであるというふうに考えておるところでございます。
  287. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 時間が参りましたので最後に、法案では、今後特別措置を行う事業は「特に必要と認められる事業」ということになっております。それとの関連で各種事業の見直しが行われるということになります。  そこで、行政の主体性ということを理由にして、必要な事業についても一方的に切り捨てたり、これまで公開していた資料を一方的に非公開にしたりするのではないかということの私ども心配があるわけであります。行政の主体性の確保ということは、何でもかんでも一方的に行政が決めてそれを押しつけるということではないということはもう明らかであります。この点について総務庁はどのように考えておられるのか、大臣の御見解を承って、質問を終わりたいと思います。
  288. 山下徳夫

    山下国務大臣 この問題につきましては、国が必要に応じてリーダーシップをとって行政を運営していくということが大変大切なことであると私は思いますが、今御指摘ございましたように、逆に今度はそのことで一方的に国民に行政を押しつけるということになってはいけないということは十分配慮しなければならないと思います。  そこで、総務庁が取りまとめました「今後の地域改善対策に関する大綱」の中でも、「今後の地域改善対策は、国民的合意に立脚して実施する」、こういうことに相なっておりまして、今後とも国民的合意の形成に十分配慮しながら、行政の主体性の確立のための対策を推進してまいりたいと思っております。
  289. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 終わります。
  290. 石川要三

    石川委員長 大原亨君。
  291. 大原亨

    大原(亨)委員 所定の時間を守りまして、協力しまして最後の質問をいたします。  今まで同対審の答申以来二十年、その前に同対審が法律でできて答申ができるまで非常に長い期間を経て、答申以来二十年で、特別措置法を十八年やったわけですが、その間において政府側の態度の一貫していびつなといいますか、足りない点はどういうことかといいますと、長官、十年間同和対策の特別措置法をやりまして、それで三年間延長したのですね。そのときには、延長すべきではないという意見が自民党の中にもあったわけです。それは二年ということの原案が国会で出たわけです。二年ではもう時間がないではないか、すぐ次のことが問題になるではないかということで、最後の土壇場で一年延長したのです。三年になったわけですね。それだけで最後だということになったわけです。政府の方はですよ。与党の方はですよ。最後だということになった。そこで今度は地域対策の特別措置法で五年ということで、名前を変えて五年延長したわけですね。  そういう割合いびつな形で、ちょっとやり、ちょっとやりという形でありますが、しかし長い間を振り返ってみますと、ハードの面を中心にして、住環境の改善を中心として一定の成果を得たわけですよ。今度はそれを踏まえて総合的に、つまり人権の問題として、国民的課題として啓発や教育を含めてどうするかという問題がずっと残っておって、いろいろな問題が出ていることは事実です。  そこで、私どもが基本法だといって主張してきたのは、言われているようにエンドレスではないわけですよ。出口がない立法ではないのです。五カ年ごとに実態調査をしながら、五年ごとに根本的かつ総合的な解決を進めていこうということであります。それは住環境を中心としたハードの面もさることながら、教育や啓発を中心とした国民的課題としての、人権問題としての解決をすることが必要ではないかということで、これを総合的にどう解決していくかというめどをつけていこうじゃないか。  いつまでもやるべき問題ではないのです。これを解決することが目標である。期限を切ってここで打ち切ることが目標ではなしに、解決をすることが目標である。解決をしたならばこの基本法の精神が達成できる、これが人権問題としての特殊性とその扱い方ではないか、対応の仕方ではないかということで議論をしてきたわけでございます。  ですから、今度は、そういう経過があって新財特法というふうに皆さん方が言っているような形で一般対策に移行するという問題については、ハードな面のウエートは少なくなっただろう、一定の実績があるのですから。しかしながら、ソフトを含めて、国民的な課題として差別の問題は人権問題として解決しなければならぬ課題であると考えるならば、この点は一致しているのですから、もう少し総合的に、政府全体の問題として、あるいは国民の側も国民全体の問題として解決することが必要ではないか。そういう観点でこれからの集約と締めくくりをしていく必要があるのではないか。  亡くなられました玉置長官とも個人的に私どもはいろいろ四党の間で議論を重ねたということを言いましたが、堀内委員長との間においても、これは国民的な課題ですから党派を超えて議論をしようということで議論をしてきたわけでございます。そこで、これから五年間の法律があるのだけれども、五年間たってなおかつ残事業を含めて総合的に全体に差別を残さないような解決のめどがつくものだろうかという議論をしばしばいたしたのであります。しかしながら、例えば堀内議員は奈良県ですからよく実態を知っています、それはたくさん実態がございまして残事業があるわけですから。玉置さんも和歌山ですからよく実態を知っておられたわけであります。ですからそういう点では、観点が変わる議論でありながら、しかしこの問題を解決しなければならぬという使命感においては一致して、そしてこの五年間で全力を尽くすけれども、これで解決できない問題については、なおかつその実績の上に立って完全解決まで努力をすることが必要ではないかということであります。  そういう前提の上に立って法の運営をしてもらいたい。そうでなかったら、小さなことだけで、これで終わりだ終わりだということだけでやっておりますと、目標を失うのではないかということを恐れるのです。ただし、いろいろな運動団体とか行政の中に欠陥があることは事実ですよ。しかしながら、自己規制をしながら進んでいくという中でこの問題の解決ができるのではないかということです。  そこで、時間も本当に限られておりますが、今までの議論の中で私が確かめておきたい点は、言葉のやりとりの問題でもあると思いますが、例えば中立的という言葉が言われる。しかし、差別をする者と差別をされる者との間の中立的ということは、この場合は労使の関係とは違うわけですから、私はないと思うのです。差別をする者は、これは地対協にいたしましても議論になっておる公益法人にいたしましても、そういう者ではない。そういう者は本当の委員を構成したりメンバーを構成して政策を立てる者ではない。中立的というのは、被差別部落ではないけれども、人権問題、部落差別の問題について正しい認識を持っている人のことである。  ですから、この問題は中心は差別をされた側の人権問題なんですから、この問題に対する正しい認識なしにこの問題の解決はあり得ないのですから、地対協の委員選任に当たって、中立的ということは、学識経験者などということは、この問題について正しい理解をしている人が委員となってこの問題の解決に当たりいろいろな答申や意見を出していくということが必要である、そういうふうに考えるべきであると思うが、これは大臣、今まで質疑応答をしたわけですから、だんだんと自分の意見をお持ちになっていると思いますので、お答えいただきたいと思います。
  292. 山下徳夫

    山下国務大臣 先ほど来いろいろと御説を拝聴いたしておりまして、玉置長官のお話その他いろいろ具体的なお名前が挙がりまして、それぞれこの問題が大変重要な問題として取り上げられておる地域の、特に前長官等は具体的な事業内容については私よりもはるかに詳しかったかもしれません。しかしながら、冒頭に申し上げましたように、一日も早く解決しなければいかぬという熱意においては私も決して劣るものではないとみずからに言い聞かせながら、ただいま一生懸命努力をいたしておるつもりでございます。  そこで、今後五年間という時限立法にしながら、この内容につきましては、長い一つの期間を経て、その中でいろいろ改正すべきは改正し、そして一般地域とだんだん差が縮まってきて、あと残された期間にこれだけはということを、残事業はこれだけであるということを念頭に置いてこの法律を組み立てて実施していかなければならぬということでございますが、そういうときに、今お話がございました地対協というものもその一翼を担ってやらなければなりませんけれども、先ほどから申し上げましたように、いわゆる民間運動団体は利害関係者であるというふうに私は理解をいたしておりますので、中立的な立場の方々を主として運営される方が、利害関係者の方々の御意見等によって運営するよりもより妥当ではなかろうか、私は率直に申し上げてそんな気持ちを持っております。  だからといって、利害関係者の御意見を伺わないというわけではありません。それは、地対協がそういう御意見を十分伺う場というものをちゃんと考えていかなければならぬというふうに私は理解しておるつもりでございます。
  293. 大原亨

    大原(亨)委員 あなたの意見と私の意見はちょっと違うのです。大体あなたはこの問題については正しく理解されておるはずなんだけれどもな。だれかそばにおるのが悪いんじゃないかな。  中立的というのはつまり利害関係者というふうな――利害関係者といったら、これは差別を受ける側が利害関係者ですか。そんなことはないですよ。差別を受けている側の人権問題ということは、それが利害関係者の中へ入りますか。利害関係者ということはどういうことですか。  そういう議論をしておるとまた時間がたつから私の意見を申し上げておくのですが、つまり中立的というのは、この差別の実態について実態を知ると一緒に、人権に対する重要性について認識を持った人ということなんです。持っていない人を入れて、利害関係者で反対と賛成だというふうな立場で、利益が相互に反するというふうな形の中の中立てはないわけです。意識的に差別をする、あるいは同和の名前を使って悪いことをする、そういうふうなのはこの問題の議論をする場合における土俵の中の問題では全然ないわけですから、差別をされるというのは人権問題ですから、そのことをやっておるのですから、そのことが重要だ。これが長い間続いて、意識としても非常に温存されて今まで残っておるということを解決することが、これはハード面、ソフト面、総合的に意識改造を含めてやることが必要である。  そこで長官、問題は地対協の構成等について、一生懸命やっておるのですからいろいろな野党の意見も聞き、あるいは与党の意見も聞き、あるいは国民的な合意を得るような形の本当の学識経験者も入れて、そしてみんなが納得できるようなメンバーで内容を詰めていかなければ、これは政策としては全く落第であると私は思うのです。――私が言っておることがわかりますか。わかるかわからぬか、ちょっと言ってみてください。
  294. 山下徳夫

    山下国務大臣 この利害関係者というのは、その語義のとおり、利益を受ける人、害を与える人のことだと私は理解をいたしております。したがって、この利害関係者というのには、いわゆる民間運動団体も利害関係者の範疇の中に入るのではないかというふうに思っております。先ほどからるる申し上げますように、そういう方々は別の場でもっていろいろと御意見を述べていただく、そして、今後どうすべきかというこの地対協の委員は、いわゆる中立的な立場によって運営されていく、こういう考え方はいけないのでしょうか。私はそれでいいのじゃないかと思うのでございますが。
  295. 大原亨

    大原(亨)委員 最初に原稿を読み違えて、それでずっと同じことを言ってはいかぬですよ。議論をしたらやはりある程度発展しなければいかぬですよ。それが審議じゃないですか。時間がつぶれたらいいものじゃないですよ。  もう一回申し上げますよ。つまり、この人権問題としての差別問題は、長い間武士階級が政権を維持するためにやった一つの政策なんですね。士農工商の下に部落をつくって、そして低劣な条件の中へ閉じ込めておいて、これを一つの手段として封建時代が続いてきて、その名残がずっと続いておる。いろいろな学説があるけれども、事実はそうなんですよ。権力闘争の激しかったところに、この深刻な部落の実態があるわけです。  ですから、環境を改善するということで被差別部落の意識の一つの面について解決すると一緒に、意識の改革というのは、差別をされた者の側の人権に対する自覚を呼び覚ましていくという行政を進めていくということと一緒に、その差別の上に自分が支配をされておった当時のことを含めて、一般の人々が人権の問題として差別を撤廃していこうという、そういう点についての認識、意識をつくっていかなければいけない。そのことについて正しい認識を持っておる人がいわゆる中立的であるとか学識経験者であるとか言われておるのであって、俗に言う利害関係者の対立をした中間の者が中立ということではない、そういうことは絶対にないということであります。  ですから、申し上げましたように、繰り返しませんが、公益法人でも、この問題は下手をいたしましたら何の役にも立たない、かえって障害になる。あなたは基本法制定の実行委員会の会長をしておられる人をよく知っておられると思うのですよ。これは本当の人権とか平等の上に立ってこの問題を解決しようという熱意でやっておるわけです。運動の中で協力してやっておるわけです。ですから、これらの問題についてはその実態を十分尊重しながらやっていただきたい。  この第二条ではいろいろな政策について一応述べておるわけですが、しかしながらそういう差別の実態がどこから出ておるかということに対する分析というものが少し足らない。そういう面において、きょうの議論を十分に参考にしてもらって、長官が政治家といたしまして、大切なこれから五年間の法律を進めていかれるわけですから、人権の問題として差別がなくなるように全力を尽くしてやっていただく。  そのあなたの気持ちについては疑いはないわけですが、いろいろなことでこの問題は雑音が入っておるわけですから。皆さん方の党の中でも賛成する人があるわけです。署名している人がたくさんある。この内閣委員の中はほとんど署名しておられる、基本法については。あなたもその署名者の一人である。そういうことから考えて、この問題について偏見のないように、そして問題を解決するんだ、そのことが目標だ、打ち切るのが目標ではない、そういう点で、本当に誠心誠意を持って対処をしてもらいたいということを最後に私は要望をいたしますが、簡単に所見をお述べいただきたいと思います。
  296. 山下徳夫

    山下国務大臣 従来は、先生御承知のとおり同和関係を代表する各団体こぞってお入りいただいて運営をしてまいりましたが、一定期間はそういう方々がお入りにならないで運営された期間もあると承知をいたしております。それはそれなりに、過去のこれらの問題をよく振り返りながら、今回は新たな一つの性格のもとに発足される協議会でございますから、先生のおっしゃる気持ちもよくわかりますけれども、この委員の構成につきましては、これまでのいろいろないきさつ等も踏まえながら慎重に検討してまいりたいと思います。
  297. 大原亨

    大原(亨)委員 一言。新たな見地からということは、常に締めくくっては前進するのですから、そういう意味においては私はわかるのですよ。わかるのですが、これはつまり国民的な課題としてみんなが納得できるような人権の問題としての処理がなされるということが、これが法律の趣旨である、憲法の趣旨である、人種差別撤廃条約を批准する精神である、国連憲章の精神である、そういう点を理解をして賢明な長官が前向きに取り組んでいただくことを強く要求をいたしておきまして、私の質問は終わります。  以上です。
  298. 石川要三

    石川委員長 これにて、本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  299. 石川要三

    石川委員長 この際、本案に対し、柴田睦夫君外一名から、日本共産党・革新共同提案に係る修正案が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。柴田睦夫君。     ―――――――――――――  地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  300. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 日本共産党・革新共同を代表して、ただいま議題となっております地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律案に対して、修正案の提案理由とその内容の概要を御説明申し上げます。  同和対策特別措置法施行以来、十八年間にわたってとられてきた同和対策特別事業に対する財政上の特別措置は、全体として対象地域の環境と対象地域住民生活の改善に大きく寄与してきました。しかし、今日なお少なくない地域に同和対策事業が一定量残されており、この特別措置は引き続き一定期間継続する必要があります。その際、この十八年間に生み出されてきた特定団体の暴力的圧力やえせ同和行為などによる同和行政をめぐるさまざまなゆがみと問題点を確実に正す措置をとることが不可欠であります。これは政府の審議機関である地域改善対策協議会が昨年提出した意見具申でも、同和行政のゆがみを特に指摘し、同和問題の解決にとって極めて重要な課題でるることを強調しているのであります。  政府提出法案は、同和対策事業の一面的肥大化に歯止めをかけつつ、これまでの特別措置をさらに五年間続けるなどの前進面を持っていますが、同時に法案は、我が党がこれまで一貫して主張し、今や広範な国民世論となっている公正・民主・公開・国民合意の同和行政を実現するという見地を欠いているのであります。  我が党は、同和行政十八年間の総括に立ち、公正・民主・公開・国民合意の同和行政実現のための制度的保障を確立するとともに、法の期間内に残事業を計画的に完結させ、対象地域住民の自立を助長し、対象地域以外の住民との融合を促進して、同和問題の迅速な解決に寄与するために、政府提出法案の不備、弱点を基本的に正す立場から、修正案を提出するものであります。  次に、修正案の概要を申し上げます。  第一は、法の目的を、「同和問題の迅速な解決に寄与すること」とし、目的達成のために「同和対策事業の目標を明らかに」して「計画的に推進すること」により、対象地域住民の「生活の安定及び福祉の向上」と「自立の助長」を図りつつ、「あわせて同和行政の適正にして公正かつ民主的な運営を確保」することとしております。また、法律名称も目的にふさわしく「同和対策事業に係る特別措置及び同和行政の適正化等に関する法律」に改めます。同和対策事業の目標は、規定を新たに設け、対象地域住民の「社会的経済的地位の向上を不当に阻む諸要因を解消する」ことにあることを明記しました。  第二は、適正にして公正かつ民主的な同和行政を確立するために、「国及び地方公共団体の責務」並びに「同和行政の運営の原則」について規定を新設し、国と地方公共団体に、「自らの判断と責任において、適正にして公正かつ民主的に行わなければならない。」こと、「対象地域とその周辺地域との一体性の確保」を図ること、「対象地域の住民が思想、信条等によって差別されることなく等しく受益できるように」することなどを義務づけております。  第三は、すべての国民が、不公正、乱脈な同和行政の適正化を関係する行政機関等に対して請求する権利を保障するとともに、国民の請求があった場合には、当該行政機関に対して、会計検査や予算執行の監督、行政監察の実施を義務づけることとします。  第四は、行き過ぎた密室的な同和行政の運営については、国や地方公共団体に対し、同和行政の方針や計画及びその実施状況等の公表義務を課すとともに、国会や地方議会のチェック、同和対策協議会の関与など、国民による監視を制度化し、同和行政公開の原則を確立することとします。  第五は、同和問題を迅速に解決するために、国の第一義的責務を明確にし、政策全般にわたる施策の実施を義務づけ、地方自治体には事業を計画的に推進する義務を課すこととします。また、国に同和対策事業を法の有効期間内に円滑かつ迅速に完結させるための「基本方針」策定を義務づけ、地方自治体にもこの方針に基づく「実施計画」の策定を義務づけることとします。財政力の弱い市町村に対しては国の補助率を引き上げる措置をとることとします。  第六は、地域改善対策協議会の名称を「同和対策協議会」に改め、その設置根拠を本法に置き、民主的で公正な運営を確保する新たな規定を設けます。さらに、内閣総理大臣の諮問にこたえるだけでなく、みずからの判断で必要に応じて同和行政とその運営の実態を調査、点検し、内閣総理大臣に随時意見を申し出ることができるなどの強い権限を持たせる規定を設けることとします。  以上が修正案の提案理由とその概要であります。  なお、本修正によるかさ上げ補助などの経費増は、約五十九億円と見込んでおります。  委員各位の御賛同をいただき、速やかに可決されますよう要望いたしまして、修正案の趣旨説明を終わります。
  301. 石川要三

    石川委員長 これにて修正案についての趣旨の説明は終わりました。  この際、本修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。山下総務庁長官
  302. 山下徳夫

    山下国務大臣 ただいまの修正案につきましては、遺憾ながら賛成いたしかねます。     ―――――――――――――
  303. 石川要三

    石川委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、柴田睦夫君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  304. 石川要三

    石川委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  305. 石川要三

    石川委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  306. 石川要三

    石川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――    〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  307. 石川要三

    石川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三分散会      ――――◇―――――