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1987-05-14 第108回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年五月十四日(木曜日)     午後二時三十七分開議 出席委員   委員長 池田 行彦君    理事 大島 理森君 理事 熊川 次男君    理事 笹山 登生君 理事 中川 昭一君    理事 中村正三郎君 理事 野口 幸一君    理事 宮地 正介君 理事 玉置 一弥君       新井 将敬君    井上 喜一君       石破  茂君    石渡 照久君       江口 一雄君    遠藤 武彦君       金子 一義君    小泉純一郎君       笹川  堯君    杉山 憲夫君       高鳥  修君    戸塚 進也君       鳩山由紀夫君    村井  仁君       村上誠一郎君    山本 幸雄君       上田 卓三君    沢田  広君       中村 正男君    早川  勝君       堀  昌雄君    武藤 山治君       日笠 勝之君    森田 景一君       矢追 秀彦君    山田 英介君       中野 寛成君    工藤  晃君       正森 成二君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         大蔵政務次官  中西 啓介君         大蔵大臣官房総         務審議官    足立 和基君         大蔵省主計局次         長       角谷 正彦君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省関税局長 大橋 宗夫君         大蔵省理財局長 窪田  弘君         大蔵省証券局長 北村 恭二君         大蔵銀行局長 平澤 貞昭君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         国税庁直税部長 門田  實君  委員外出席者         経済企画庁総合         計画局計画官  柳沢  勝君         外務省経済協力         局政策課長   林   暘君         通商産業省通商         政策局米州大洋         州課長     渡辺  修君         通商産業省貿易         局長期貿易保険         課長      井上  毅君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 委員の異動 五月十四日  辞任         補欠選任   杉山 憲夫君     石渡 照久君   安倍 基雄君     中野 寛成君 同日  辞任         補欠選任   石渡 照久君     杉山 憲夫君   中野 寛成君     安倍 基雄君     ————————————— 五月十四日  昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保  を図るための特別措置に関する法律案内閣提  出第一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第七一号)  多数国間投資保証機関への加盟に伴う措置に関  する法律案内閣提出第七二号)  商品名称及び分類についての統一システムに  関する国際条約実施のための関係法律整備  に関する法律案内閣提出第九四号)  昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保  を図るための特別措置に関する法律案内閣提  出第一号)      ————◇—————
  2. 池田行彦

    池田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案、多数国間投資保証機関への加盟に伴う措置に関する法律案及び商品名称及び分類についての統一システムに関する国際条約実施のための関係法律整備に関する法律案の各案を一括して議題といたします。  順次趣旨説明を求めます。宮澤大蔵大臣。     —————————————  国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案  多数国間投資保証機関への加盟に伴う措置に関する法律案  商品名称及び分類についての統一システムに関する国際条約実施のための関係法律整備に関する法律案     〔本号(その二)に掲載〕     —————————————
  3. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま議題となりました国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案、多数国間投資保証機関への加盟に伴う措置に関する法律案及び商品名称及び分類についての統一システムに関する国際条約実施のための関係法律整備に関する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  国際開発協会、いわゆる第二世銀は、低所得開発途上国に対し、極めて緩和された条件による融資を行っておりますが、今般、本年七月以降三カ年の融資約束に充てる資金を賄うため、第八次の増資として総額百二十四億ドルの資金を補充することが合意されました。我が国は、低所得開発途上国社会経済開発における国際開発協会の役割の重要性にかんがみ、同協会活動を積極的に支援するため、昭和六十二年度以降三年間にわたり追加出資を行うこととしております。  本法律案内容は、政府が同協会に対し、四千三百四十二億二千四百二十六万円の範囲内において追加出資ができるよう所要措置を講ずるものであります。なお、追加出資の三分の一に当たる千四百四十七億四千百四十二万円については、我が国国際復興開発銀行出資シェア引き上げ条件とする条件つき出資としております。  次に、多数国間投資保証機関への加盟に伴う措置に関する法律案につきまして御説明申し上げます。  この法律案は、別途本国会において御承認をお願いしております多数国間投資保証機関を設立する条約に基づき、我が国が多数国間投資保証機関加盟するために必要な措置を講ずることを目的とするものであります。  多数国間投資保証機関は、国際復興開発銀行グループの一員として、開発途上国への民間対外投資を促進するため、これに係る戦争、収用等の非商業的危険を保証する国際機関として設立されることとなっております。同機関活動は、累積債務問題への対応、我が国経済国際化に資するとの観点から、政府といたしましては、我が国主要先進国及び開発途上国とともに同機関加盟いたしたいと考えております。  本法律案内容は、加盟に伴い、政府が同機関に対し、五千五百十二万七千九百ドルの範囲内において出資ができることとする等所要措置を講ずるものであります。  次に、商品名称及び分類についての統一システムに関する国際条約実施のための関係法律整備に関する法律案につきまして御説明申し上げます。  本法律案は、各国関税率表に採用されている商品分類について、その国際的統一を図るとともに近年の技術の進歩及び貿易構造の変化に対応したものとする必要があることにかんがみ、商品名称及び分類についての統一システムに関する国際条約いわゆるHS条約実施するため、関係法律整備を行おうとするものであります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、関税率表等の全面的組みかえであります。  HS条約で定められた商品分類に基づき、関税定率法で定める関税率表及び関税暫定措置法で定める暫定関税率表特恵関税率表等の全面的組みかえを行うことといたしております。組みかえに当たりましては、原則として個別品目ごと現行関税率を維持することといたしております。  第二は、関係法律規定整備であります。  関税率表等の組みかえに伴い、関税率表等品目番号を引用している法律規定整備を行うことといたしております。  以上が、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案、多数国間投資保証機関への加盟に伴う措置に関する法律案及び商品名称及び分類についての統一システムに関する国際条約実施のための関係法律整備に関する法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 池田行彦

    池田委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 池田行彦

    池田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  6. 堀昌雄

    堀委員 ただいま提案をされました国際金融及び関税に関する法律内容審議に入ります前に、昨日の夕刊を拝見いたしますと、何だか十年ほど歴史がひっくり返ったのではないかという強い感じを受けたわけでございます。私ども関係の皆さんの御協力をいただいて、今国際金融をできるだけ自由化をし、各国との関係においてフェアで開かれた市場をつくるために、昨日も実はイギリスのロイズ銀行グリーンさんをお招きして、いろんな日本金融の諸問題についてのお話を聞きました。そのときに日本為替関係についても、実需原則が撤廃をされ為替管理もだんだん取り除かれて、大変望ましい状態になっておるというお話グリーンさんからもございました。ところがその後、部屋に帰りまして夕刊を見ましたら、一体これはどういうことだろうかという夕刊記事が出ていたわけであります。「金融界首脳に異例の要請 大蔵省取引内容報告も」、こういう大きな見出しで問題が出ているのであります。  そこで、まず大臣にお聞きをしたいのでありますけれども、私も、もともとは旧制高等学校以来のいわゆるマルクスボーイでございまして、それなりの道を通ってきたわけでありますけれども昭和三十五年に当委員会に参りまして金融その他の経済問題を勉強する中で、実はどうもこの競争原理というのは体制の問題ではないのではないかということに気がつくようになりました。というのは、資本主義体制であれ社会主義体制であれ、生産性拡大をして国民生活水準が向上しなければ、おのおのの理想の目的は達成できないと考えたものでありますから、社会主義の国においても当然生産性拡大するような道がとられなければ、マルクスの言ったような第二段階社会主義への移行は困難であろう、こう思ったわけであります。  いろいろと勉強いたしてみますと、マルクスゴータ綱領批判の中で、既に第一段階社会主義というのは資本主義の模範を引き継いでいるので、その段階では能力に応じて働き、能力に応じて取るということがやむを得ないのだ、しかし、やがてその時代が長く続いていく過程を通じて、能力に応じて働き、必要に応じて取れるようになるだろう。要するに、生産能力が非常に拡大をしてきてそういう時代が来ることを、実はマルクスゴータ綱領批判の中に述べているわけであります。  私ども社会党としては、私がこう言ったといってもなかなか物事は通りませんけれどもマルクスがこう言っているといいますと、これは大変通りがいいわけでございまして、私の競争原理市場経済論というのは、ですからソ連リーベルマンが一九六二年にプラウダに利潤概念導入に関する論文を発表いたします前から、私はそれなりに将来の社会主義というものが競争原理導入、そしてやがて同じような商品経済をとっておる国であるから、これはやはり市場経済を使うことなくして、消費物資市場経済を使うことなくしては、資源配分はうまくいかないであろうというのが当時からの考えでございまして、今日、中国においてはだんだんと市場経済導入が行われるようになり、ソ連でも今その方向に進みつつあるというふうに思っておるわけであります。  そこで、その長い経過を通じて、私は宮澤大蔵大臣とは経済のいろいろな物の考え方について余り相違がないように実は感じておりまして、それはまさに今の資本主義経済、これは自由経済であって、市場を通じて問題が処理をされるシステムだ、ここで宮澤大蔵大臣と私は基本的な認識は一致をしておる、こう考えておるわけであります。  そこで、きのうの問題の後で、けさ、今度は日経新聞社説で「「投機の小鬼」対策より総合政策調整を」というのを書いております。私は、もう大蔵大臣とも昨年十二月十二日にいろいろ議論をさせていただいて、減税先行でいきましょう、それでなければアメリカとの関係がうまくいきませんと、ニューヨーク・タイムズの記事も引用しながらここで問題を提起させていただいておるのでありますけれども、残念ながら宮澤大蔵大臣というよりも、私はこれは大蔵省だと思うのでありますけれども大蔵省は増減税同年同額などという、全く私ども総合経済政策として対米関係考えられないようなことを決めて、そういう表現が適切であるかどうか知りませんが、大蔵大臣、これでお願いしますと言って押しつけた、私はこう見ておるわけでありますね。  それでなければ、宮澤大蔵大臣がああいう政策をよしとおっしゃるはずはないのでありまして、総務会長時代におっしゃっていることは私と全く同一なんでありますから、それを大臣にこれでひとつお願いしますなんて押し込むという、この大蔵官僚の頑固というのか、何とも言いようがないこのやり方については、私は官僚諸君に厳しく反省をしてもらわなければいかぬ、こう思っておるのであります。ここに書かれておるのも、大事なところはほったらかしになっていて、小手先でこんなことをやったって大して意味がない。私も昨日そう思いましたけれども社説を含めて恐らく日本経済に関心を持っておる人は、みんな私と同じ気持ちになっているのではないだろうか、こういう感じがいたします。  そこで、最初に今のこういう処置と、日本が現在の資本主義自由主義経済市場経済、そして現在の非常に拡大してきた為替取引の中での資本の移動の諸問題について、今度のこの問題というのはどういう位置づけがされるべきなのかという点について、大蔵大臣としては大変お答えになりにくい問題かもしれませんが、大蔵大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  7. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる市場経済にはメリットもございますしデメリットもございますけれどもメリットの方が圧倒的に大きいというふうに私ども考えまして、市場経済というものを中心に経済運営をしてまいりました。その点につきましては、堀委員がしばしば私どもにも有益な御示唆を賜って、今日に及んでおります。また、国際経済において戦後の我が国が徐々に開放体制に進みまして、まず自由化を推進してまいりましたことも、私もその一人の主唱者でございました。堀委員のこの点のお考えとしばしば私も同感を申し上げて、今日に及んだわけでございます。したがいまして、今回の措置というものがそういう基本的な考え方に反するものであってはならないことは、私としても当然そのように考えております。  後ほど政府委員から御説明を申し上げますけれども、今度いたしましたことは、いわゆる投機というものも広い意味では自由経済一つビヘービアであろうとは思います。そして、投機投資とがしばしば分けがたいということも時として事実でございます。ただ、この為替市場におきまして見ておりますと、いわゆるディーリングと称するものは、極めて短期間と申しますよりは短時間と申した方がよろしいかもしれませんが、その間にさやを稼ぐというそういう行為でございます。私は、いわゆる実需原則に返れとか、あるいはヘッジというのは当然事故の危険を担保するわけでございますから、これなどを投機だと決して思っておりませんが、それらと分けられる意味での投機というものが現実に存在するというふうに思います。ただ、これが自由経済一つビヘービアであったとしても、それは例えば大手亡であるとか生糸であるとかそういうものを投機対象にするのと、通貨そのもの為替そのもの投機対象とするのとでは、国民的な影響が非常に違う。そういうディーリングが入りますことによって為替上昇下降が非常にアクセレレートして、それによって国民生活そのものに脅威を与える。中小企業などでまじめに努力をしている人の努力が挫折をする、あるいはそこから雇用問題が生じる、また、場合によっては人生の設計そのものが壊れてしまうというような、そういう波及をするおそれのある行為でございますので、どうかそういうことは自粛をしていただけないかということを、私はこれはごくごく平明なことであると思いますけれども、昨日大蔵通産両省から関係者要請をいたしたということでございます。  翻りまして、堀委員が先ほど、けさ日本経済新聞社説を御引用になりました。この社説の申すことはまことに一面もっともでありまして、このようないわば不安定な為替状態をつくり出している基本の原因は何なのか、それについて政府にもいろいろ至らざるところがあり、これからなすべきこともあるではないかという指摘は、私は基本的に間違っていないと思います。それはまさにそのとおりでございますが、またそれなり努力はこれからも一生懸命いたさなければならないと思いますが、さりとて現実にございますこういう事態に対して、幾らかでも自粛を求めることによって国民生活国民経済に与える影響を小さくすることができるならばそれは望ましいことではないか。逆に申しますと、大変俗な言葉で言えば、こういうディーリングのようなことが広く行われている、それに対して政府は何もしないでいいのかという声に対して、できることとできないこと、していいこととしてよくないこととがございます中から、この程度のことはしてよろしいし、あるいは政府としてむしろしなければならないのではないかと思う範囲のことをしてもらったつもりでおるわけでございます。
  8. 堀昌雄

    堀委員 かなりの部分において、大臣の今の御答弁は私も理解をするところでございます。  ただ、問題なのは、基本的に為替変動に対して日本銀行が介入をいたしますけれども介入という問題についても、確かに今お話しのように投機投資というのは、どこまでが投機でどこまでが投資ということはなかなか区別がつきません。それは、金額的な問題だけではなくて諸般の問題の判断が必要ですからつかないのでありますが、通貨当局為替変動調整のために介入をしておる、こういうことでありますから、異常な変動についての介入はやむを得ないと私も思うのであります。しかし、見ておりますと、為替介入についても少しでも円が高くならないように、ドルが安くならないようにするような介入のように私は受け取れる介入の方が多いように、実は過去にも見てきているわけであります。ですから、さっき申し上げましたように私は市場経済論という立場に立っておりますので、もし日銀が介入をしておれば、その範囲では投機をする諸君はそれに売り向かう、安心して売り向かえるというプラスの面もあるでありましょうけれども、マイナスの面もあるのだ、だから私は、そういう意味介入をすることはむだだというのが基本原則でございます。  私は昨年、今の内海国金局長公使をしておられるころにアメリカへ参りまして、その前の年に行きましたときに財務省の次官補でございましたマニュエルジョンソンさんから例の三段階税制のレクチャーを受けたわけでございます。実は、六十年二月の予算委員会における五〇%、五段階税制というもののベースは、マニュエルジョンソンさんの話を聞いて私なりに考えての提案だったわけであります。昨年四月に参りましたときにマニュエルジョンソンさんはFRBの理事になっておられまして、内海公使にまた面会の労をとっていただいてお会いをいたしました。そこで私は、為替に関する基本的な私の認識お話しいたしましたら、マニュエルジョンソンさんは全く同感です、私もそう思うという意思表示があっただけでなく、マーチンさんがやめてその後にウェインエンジェルという理事が就任しています、それがマーチンさんのかわりに日本へ四月二十日ごろ行きますから、ぜひ日本ウェインエンジェルさんに会ってください、私からエンジェルさんに言っておきますということで、日本エンジェル理事にもお会いいたしました。いろいろお話しいたしまして、エンジェルさんも、堀さんの意見については私も全く同感だということでございまして、私はこの前の委員会で何回かごの問題についても申し上げてきましたけれども介入効果がないという大体の考えの持ち主でございます。  そこで、今大蔵省が何もしない方がいいか、この際した方がいいか、これは今後わかるのですね。為替がどう動くかということではっきりわかります。こういうことをやってそれだけの効果があれば、大蔵省がやらなかったよりやった方がいいということになるのです。これらの経済行為というのは、時間がたてばはっきりそれの評価は決まるわけでございまして、各新聞にも書いておりますけれども関係者はこれを見た瞬間に一時的には大蔵省敬意を表するでありましょう。しかし、その敬意を表する期間は極めて短いだろう。なぜかと申しますと、今資本主義経済というのは最大利潤を追求してすべてが動くというシステムなんですね。自分のところはもうけなくても国のためにやりましょうなんという企業があったら、これはもうつぶれてしまうわけです。ですから、そういう意味最大利潤を追求してその中でバランスがとれる。  ただ、日本の場合にはちょっと過当競争があり過ぎますので、すべての業界について、残念ながら世界的に信用を失うような立場にありますけれども、しかしそれもやはりこの狭い国にこれだけの人間がいて、ひしめき合って競争すれば、ある面ではやむを得ないかなという気がするのでありますが、そういう状態の中で物事が動いているものですから、利潤の追求に制限を公的に加えるなどということができるはずがない、私はこう考えているわけであります、まず第一点は。  第二点、今度の問題で、スペキュレーションについては私も理解をしますが、ヘッジについても注文がついているわけですね。後でどういうことを言っているのか、新聞に書いてあるのを読みますと、「同時に投機的な為替売買に走らないよう、また差損を避けるためのヘッジについても「集中すると波乱が生じるので、配慮して欲しい」と述べた。」こう書いてあるわけですね。それは集中しない方がいいでありましょう。  しかし、あるAという企業が、ここでやはりこれだけ物を、アメリカ国債を買うのならこういうヘッジをしておかなければいかぬ。買う時期が同じなら、Bの会社もこれだけアメリカ国債を買うのならこれだけここでヘッジをしておかなければいかぬ。ABCDEFGがずっと、ある日にアメリカ国債をどんと買うときには、当然私は、ヘッジは集中するのが当たり前であって、ヘッジをするのを気をつけろと言ったらどういう現象が起きてくるかといえば、民間企業でありますから、そして彼らが動かしている金というのは会社の金ではありません、国民から預かっておる金を動かしているのでありますから、それに対するリスクについてヘッジが制限されるようなら肩たたきがあってもやめておこう、私は、資本主義社会日本なら当然のことだと思うのですね。  これは大変な問題を今度大蔵省は投げかけた。やがて三カ月先に、またアメリカ国債入札が来ます。今度の入札を見ていてはっきりしていることは、要するにアメリカ自身が何をしなければならないかということを世界が求めているにもかかわらず、アメリカ自身がやってないために結局肩たたきをやる。肩たたきをやるということになると、それのヘッジの問題は当然出てくる、それも気をつけろなんということになれば、私は、今からもう三カ月先のアメリカ国債入札というものは大変困難な状態になる。残されている期間あと三カ月の間にアメリカがどう対応するか、それ以外にない、こういう気持ちでございます。もう今や日本の問題じゃなくなって、アメリカ経済の問題になっていると私は考えておりますので、その点についての大臣の御見解を承りたいと思います。
  9. 内海孚

    内海(孚)政府委員 まず、昨日関係の方々に要請いたしました内容、特に今御質問のヘッジについて私どもから申し上げました内容につきまして、御説明申し上げたいと思います。  御要請いたしました内容は二点。  第一点は、大臣から先ほどお話があったとおりでございます。短期の、いわば差益をターゲットとしての短期のディーリングということが、最近の為替市場の状況を見ておりますと、大きく、いわば為替市場変動を起こすトリガーになっているということが見られたということにかんがみまして、日本経済がここまで、雇用問題まで来ているという事実を考えますと、その辺は慎重にお願いできないかという自粛の御要請でございます。  それから第二に、ヘッジの点は基本的に堀委員のおっしゃるとおりでして、ヘッジ自体は投資のリスクを避けるための全く正常な行為でございます。その点も申し上げました。  ただ、最近の状況を見ておりますと、既に投資されたもののヘッジをあるときに集中して、しかも皆さんがされますと、結局はそのときに大きな為替変動の引き金になり、それがどういう結果をもたらすかといいますと、結局既往に行いました投資、ドル資産の大きな評価減になって、またいわば御自分の首を絞めるような結果にもなっているということがあるわけでございます。その点につきまして、マーケットで見られるそのような現象のことを申し上げて、これは基本的には御経営の判断に係ることでございます、ただ、やり方によってはむしろみずからの足を引っ張られることになりますので、その辺は御留意いただいたらいいのではないでしょうかというお願いをしたわけでございます。
  10. 堀昌雄

    堀委員 大臣の方で、今の私の考え、プラスかマイナスかの問題。
  11. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは確かに現状、為替が不安定であることの根本的な原因は、我が国も十分な経済対策をとれていない、アメリカもまた財政赤字、貿易赤字ともども、まことにどうも実績が上がっていないということが基本にございますことは、私はそのとおりであると思いますが、そうであるといたしましても、現実為替相場がああいう状況になっておりますと、やはりこれは我が国の場合には国民生活、雇用にまで影響を及ぼす。それを、いわゆる投機的な行為が増幅をするということについて、根本的に基本策がちゃんといっていればこういう問題はもともと起こらぬではないかとおっしゃることについては異存がありませんが、現実の状況ではそういうことになっているときに、政府市場に対して何も要請することがないのかということになりまして、していいこと、あるいはむしろやらなければならないことといいますか、最小限それは何であるかということを私ども実は考えて、いたしたつもりであるのでございます。
  12. 堀昌雄

    堀委員 結果的には、これから一週間なり二週間なりの経過でこれはどういうふうになるかがわかると思うのですが、今の新聞を見ますと、要するに為替の処理について日々報告をとるということのようでありますね。これは今の為替管理法でできることなんでしょうか、それとも行政指導という、法律に基づく行為ではないのか、ちょっとそこらのところが私もはっきりしないので、それは事務当局で答えてください。
  13. 内海孚

    内海(孚)政府委員 お答え申し上げます。  現在でも時々は、状況によりまして市場参加者に対しまして、いろいろ電話等でお聞きしていることはあるわけでございますが、今回も、お尋ねの点につきましては、法的な根拠というよりもいわば任意的に関係者から伺うということでございますので、これは事柄の性格上ある程度、何といいますかフレキシブルで、余りリジッドにこういうもので必ず報告をしてくれというものでもございませんし、また、マーケットの状況によってあるいは詳しく伺いたいということもありますし、そうでないときもありますし、そのような極めてフレキシブルで、かつできる限りお手数をかけないようなものを実際においては考えているということでございます。
  14. 堀昌雄

    堀委員 実はこの前私、下田会議というのが大磯で開かれまして、その席上で大河原座長から、アメリカの議員もいろいろ言っていられるから、私にもちょっと発言しろということでございました。そこで私は、一九八五年の九月に石橋ミッションでモスクワに参りまして、ゴルバチョフ書記長と四時間にわたって会談をいたしました。そのときのことを話をいたしまして、今ソ連が軍縮をやっているのは、軍縮のための軍縮をやっているのではありません、彼が私たちに、まずソ連経済の近代化をしなければソ連国民の生活の向上はありません、ソ連経済の近代化をするためにはまず第一に工作機械を近代化しなければならないということで、御承知のようなコンピューターを導入した工作機械というようなものをひとつ徹底してつくって、ソ連経済の近代化をやりたい、こういう話でございました。それで私が、それをやるのには大変な資本が必要ではないですか、スクラップ・アンド・ビルドを行うのですから大変な資本が必要ではないですかという質問に対して、最もむだなところの費用を大量に削ってこの経済の近代化をやり抜かなければなりませんと、強い口調でゴルバチョフ書記長が答えているのであります。  私は四時間の会談を通じて、人間としての信頼性、高い文化的な教養のある立派な政治家だという認識を受けました。今ソ連が、いろいろな面にわたって大胆な軍縮の提案をしておることは、それは平和のためでもありましょう、しかし最大の目的は、軍備を削減することによってソ連経済の近代化を図りたいということだと私は確信をしておりますので、そのことに触れて、ソ連もそういう経済のために軍縮をやっているのです、アメリカもどうかひとつ、現在のアメリカの財政赤字が世界に対して大きな影響を与えているのですから、このアメリカも軍縮を同じようにやってアメリカ経済における財政赤字を減らしてもらうことが、今日世界の平和のためだけではなくて世界経済のために必要だと思います、こういう問題提起をいたしました。  そうしましたら、アメリカ側の座長でありましたピーター・ピーターソンさんが引き続き、私も昨年モスクワへ行ってモスクワで関係者と会いました、そして私も堀さんの言われるように、ソ連側の軍縮というものが経済を近代化するために必要だという点から問題の処理が行われているという点については全く同感である、こういうふうにピーター・ピーターソンも言われましたので、私もそういう認識がこの場所で、日米の間で、それは個人と個人の関係ではありましたけれども、共通の認識に立てたというのは大変よかった、こう思っているのであります。  ですから、そういう意味では今のアメリカの財政赤字の問題が改善されない限り、既に日本は相当なアメリカ国債を持っていて、さっき内海局長が申しましたように、だんだんと円高になるにつれてそれの大きな差損が出ていると思うのであります。準備があるかどうかわかりませんけれども、平澤銀行局長、生命保険がこれまで、この一年はこの間何か新聞で見ましたら一兆何千億かの差損があるように出ておりますが、これはかなり前から累積投資をやっているわけですから、今日までの累積投資分に対する生命保険業界の差損というのはどれぐらいになっておるのか、ラウンドナンバーで結構ですからお答えいただけませんか。
  15. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 突然の御質問ですのでおおよその感じになるかと思いますが、過去一年間に恐らく二兆円前後と思います。それから、その前に恐らく一兆円弱という数字ではないかと思います。
  16. 堀昌雄

    堀委員 トータルで約三兆円弱ぐらいですね。
  17. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 三兆を切る数字ではないかと思いますが、正確な数字は後ほどまた……。
  18. 堀昌雄

    堀委員 今銀行局長が答えられましたように、私もたしか三兆弱に既になっているのではないか、こう見ているのであります。ですから、生命保険の関係者が既にそれだけの累積損がありながら、株式の評価益で処理をしたりいろいろしているんだと思うのでありますけれども、彼らも、これ以上ドル安になるというのはまたまた差損がふえることでありますから、今さっきの内海さんのお話ではありませんが、そういうことをみずからやるはずはないのでありまして、自己防衛のために一番確実なのは、これ以上アメリカ国債を買わないということだと思うのですね。そうすれば、これは一番安全です。もう差損の範囲で、それが下がったにしても差が小さいのですね。二百四十円から百六十円までというのは大変大きな差損が出ているわけですが、この間からの百五、六十円から二、三十円というのは、差損にすれば前段の大きな差損に比べれば随分小さいわけでありますから、そういう意味民間企業にとりましても、これはもう皆さんがお考えになっている以上に、民間企業は真剣にこの為替の向背というものをにらんでいる、それがまさに彼らの企業の収益になるか損失になるかの分かれ目でありますから。私はそういう意味で、もう少し民間企業を信頼していただいていいのではないか。  ただ問題は、そういうところを通じて、例えば新聞で見ていますと、名古屋あたりの鉄工業の方ですか、こういうのが為替ディーリングをやってもうけているとか、こういうのは単純なスペキュレーションですから、こういうのはコントロールできればいいのですが、そういうふうにこことこことここをコントロールするというようなことは今のシステムではできないでしょう。だから、そうすると中曽根さん流に言うと投網をかけるようにやらざるを得ない、こうなっちゃう。投網をかけたんではこれはまずいのは、もう皆さん今度御経験のとおりです。投網というのはよくないのですよ。ですから、そう考えてくるとこの対応というのは非常に難しい。  そうすると、問題は一体どこなんだろうか。一種のアナウンスメントエフェクトか、こういう感じがするのですが、それも必ずしもプラスではない、私はこう見ているものですから、どうも私にするとおっしゃっておることは、この前から為替介入の問題についても変動調整したいとおっしゃっておるし、私もそのことについては反対ではありません。今度も、投機をできるだけ抑制したいとおっしゃる。そのことについては私も反対ではありません。しかし、それで投機が抑制できるのか、変動を抑えることで水準が安定できるのかというと、効果の面では私は全然信用していないというのが現状なんでございますね。  それで、今度やっちゃったことでありますから、このことをいつまでも私は声高に言う気はないのでありますけれども、要するに、じゃそうすればこれから一体何が一番日本がやらなければならないことなのか、アメリカに何を要求しなければならないのか。本当に為替の安定というのは、大臣がおっしゃるように国民生活、特に今の日本の輸出関連産業の特に小さいところが実は大変大きな影響を受けているわけでありますから、私も為替が安定をし、できればもう少し円安になってほしいと思うのですけれども、これはどうやっても経済的なファンダメンタルズなりアメリカの財政赤字なり日本の貿易黒字なり、ここを調整できなければ幾らこう言ってみても始まらない問題のような気がいたして仕方がありません。ですから、今まではこれまでの話でありますが、今度はこれから一体何をなすべきかということを経済にお詳しい宮澤大蔵大臣からひとつ明快な御答弁をいただきたい、こう思うのでございます。
  19. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはなかなか難しいことだと思います。やはり理屈からいえば一番の原因は、アメリカの財政赤字だというふうに私は思います。国には国々の事情がございますので、問題を指摘することはできても、こうやれ、ああやれと言うことはできませんので、客観的に見たままを申し上げるにとどまりますが、やはり財政赤字というものが大統領の努力、言明にもかかわらず、なかなか現実には縮まっていかないということであると思います。それから貿易赤字ということになるわけでございますけれども、これはこれだけドルが下がりましてなおJカープが続いているということは、そうそうあることではないように私は思いますので、財政赤字の縮小ということが出てまいりますと、その辺に多少の違いがあるのではないかと期待をいたします。  我が国の場合は、申し上げるまでもなく内需拡大、それもいろいろ財政再建中ではありますが、財政がかなり思い切ってリードをするつもりでありませんと、民間の設備投資、殊に製造業の設備投資には多くを期待できません。在庫投資にも多くの期待ができませんから、やはり財政がかなり思い切ったリードをしなければならない、それがやはり我が国として一番緊急にすべきことではないかと思います。
  20. 堀昌雄

    堀委員 そこで、内需拡大というのは、私は何もアメリカのためにやってもらう気はないのでありまして、日本の国内の経済を、内需を拡大することによって今のふえてくる失業者を救済をし、国民生活の不安を取り除くために実は減税先行をお願いをしておるわけなのでして、ちょっとここで私、一言はっきりしておかなければいけないと思いますのは、アメリカでもECの諸君でも皆、内需拡大ということを言うのですが、私はこの前ECの皆さんにはっきり言ったのですけれども日本で内需拡大をしたらECの品物がどっと日本に輸出できると思ったら間違いです、我々は既にアメリカに比べるとECからたくさんの商品を輸入しているというわけですね。自動車を例にとってみましても、ECからの自動車の輸入というのはアメリカの自動車の輸入に比べて、アメリカはかつてもっと多かったのですが、今は減ってきているわけですけれども、ECのは年々実はふえているわけですね。ですから、既に入っているというわけです。だから、内需が拡大できたらそれがうんとふえるかといったらそうはいきませんよ、だから皆さん錯覚を持たないでください、日本に品物を売るためには皆さんの努力が大切ではないか、こういうふうに言っているのですね。  ロバート・C・クリストファーという方が「日本に勝てれば世界に勝てる」、その前に「ジャパニーズ・マインド」という本を実は出しておられて、私はその「日本に勝てれば世界に勝てる」の方を読んで、今この「ジャパニーズ・マインド」を読んでいるところでありますけれども、このクリストファーさんというのは、本当に日本理解をして、日本立場を正しく実はアメリカで提起をしていただいておる非常に我々にとって有力な味方だ、私はこういう認識なのでありますけれども、その「日本に勝てれば世界に勝てる」という中で、例のハンバーガーのマクドナルドとかあるいはかみそりのシックとか、日本で成功しておるアメリカ企業の代表者といろいろ話をされながら、その人たちの努力と苦労をこの本に書いておられるわけですね。  だから私は、そのアメリカ関係者もそれからECの関係者も、努力をされれば日本で十分市場拡大できる。特に私自身もそうでありますけれども、もう長い年月にわたって私はブラウンのかみそりを使っております。そのブラウンのかみそりが、初めごろに使っていたのから今のかみそりに至るまでもうずっと進歩を重ねて、最近、朝丁寧にひげをそってそしてその後で院内の散髪屋に行きますと、先生、これはもうそる必要がないのですがと言うのですね。かみそりでそるよりはさらに精緻に、実は今のブラウンのかみそりは非常に当たりやわらかくそれる品物ができているわけですね。  ですから、いい品物なら日本人は買うわけです。だから、そういう意味でたくさんの欧州のいい商品、このごろは車もBMWだとか、ボルボは徹底して今、日本で売ってますね。この間もボルボの広告を見ながら、二百九十万円でボルボが日本で買えるというのなら、これはボルボという車はぶつけたときの安全性では日本車の比ではありませんから、世界で一番安全な車というのは私はボルボだと思っているのですが、何さま値段が高いからと思っていたのですが、この間新聞の広告を見ると二百九十万円というなら、トヨタの今のロイヤルサルーンよりは安いのですね。これなら今度はひとつボルボを買おうか、こういう気持ちになっているのですけれども、そのぐらいにいい品物は日本に売れているので、それを、内需拡大したらそれが何か急にふえるような錯覚を私はアメリカや欧州の皆さんに持ってもらいたくない。  そうではなくて、品物をふやすためには、そういうマーケットサーべーを徹底してやって、日本人がどういう品物を好むか、それに合わせた商品を持ってこられれば、今日本ジョンソン・アンド・ジョンソンですか、いろいろなものが大変たくさん入っている。シックなんというのは、恐らく日本人はあれは日本の品物だくらいに思っておりましょうけれども日本の替え刃の七〇%はシックがやっているというようなことでありますから、そういうことを考えますと、内需拡大というのは日本国民のためにやっているのですというふうな認識に立っていただいて、そうして貿易のバランスを直すのは皆さん方の努力です。どうかひとつ、このクリストファーさんの書いている「日本に勝てれば世界に勝てる」、私はまさにそうだと思うのですね。ですから、そういう認識でひとつ政府も対応してほしいと思うのですが、大臣の御見解を承りたいと思います。
  21. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはまさしく私もそう思います。今堀委員のお挙げになられましたものの多くがいわば消費財等々でございましたが、我が国の社会資本を見ましても、実は甚だ貧弱な状態でございますから、これを充実することは何もよその国のためではないのでございまして、殊に老齢化する日本でございますから、今のうちにどうしてもしなければならないと思っておりまして、内需充実というのは決してよその国のためではないということは、もうつくづく私もそう思っております。
  22. 堀昌雄

    堀委員 そこで、この問題は一応ちょっとここまでにしまして、一つ、スペキュレーションというのかどうかわかりませんが、きのうの新聞でしたか、日本銀行が国債の取り扱いの問題について、これまで一日と十五日決済であったのを一日、十日、二十日と三回の決済にするということで、回転売買によって今、国債がどんどん上がって金利がどんどん下がってきているわけでございますね。大体、原則的には長期金利が高くて短期金利が安いというのが金融の常識なんでありますけれども、今や日本では長期金利が安くて短期金利が高いわけですね。この短期金利、特にCDなんかが高いというのには少し理由があると思います。  その理由一つは、国鉄——今、JRですか、どうも横文字になると、日本国有鉄道なら簡単だけれども、ちょっと違いますが、JR東日本とか西日本とかいろいろなところが民営になったものですから、各金融機関がともかくここのメーンバンクになろうと思って、大口定期は金利自由化でありますから、そこでこれをつり上げてひとつ自分がここのメーンバンクになろうといって全国でやるものですから、それでCDも上がってくるということで、それ以外の問題もいろいろあるのですが、短期金利が上がっている、ところが長期金利の方はどんどん下がってくる、こういう格好ですね。  これはまさに今の回転売買の行き過ぎで、一日、十日、二十日にしただけでは、御承知のように決済が現状は三日、四日ですか、正確には事務当局に伺いたいのですが、そうするときょう売ってあした買う、あるいはきょう買ってあした売るということで回転していくと金がなくても取引ができる、これはちょっと幾らなんでも適切でないなというのが私の率直な感じで、日本銀行が一日、十日、二十日ですか、二回を三回に分けたというのは大変賢明なんですが、それだけでカバーできるというふうにはちょっと感じないのですね。理財局長、その点についてのあなたの見解をちょっと承っておきたいと思います。
  23. 窪田弘

    ○窪田政府委員 現在の国債相場がいわゆるディーリング相場と言われているような面がございまして、活発なディーリング活動の結果、非常に低い利回りになっていることは御指摘のとおりでございますが、国債の発行者としてはこれはありがたい面もございまして、市場実勢を尊重する立場でございますから、それが異常とかなんとかという批判は差し控えたいと思うのでございますが、ただ、御指摘のように、この国債の利回りが本当に長期金利の実勢を反映しているかどうかという批判があることも事実でございます。  今御指摘の国債の決済日は去年、御指摘のように月二回を三回に、十日ごとにいたしました。これ自体は証券局の所掌事務なのでございますが、こういうものも含めまして、秩序ある市場形成のためにどうしたらいいのかということは、今後関係者の意見を聞いて真剣に研究してみたいと思っております。
  24. 堀昌雄

    堀委員 証券局所管のようでありますから来ていただきませんけれども、今理財局長が言われたように、国債が高く売れることは大変いいことですけれども、高ければいいという話でもないので、一つの水準というものがあるだろうと思って、その点については、じゃ証券局も理財局も、銀行局も関係しますか、各局でひとつ、余り金もなくて売買ができるなどという話はどう考えてもちょっと行き過ぎだなという面で、決済日のときに処理すればいいということのようでありますから、そこはぜひ処理していただきたいと思います。  当分、私質問させていただく機会がありませんから、もう一つ、今度は最近の海外における金融機関のオーバープレゼンスの問題というのを取り上げさせていただきたいと思います。  さっきちょっと私が触れましたように、日本企業というのは、例えば自動車であれ電機であれ、あらゆる分野で国内において実は厳しい過当競争が行われています。国内で厳しい過当競争を行っているということは、もしこの人たちが輸出をすれば海外市場でも同じように激しい競争を行うということになりますから、私はそのことが貿易の面においても、海外で今非常にひんしゅくを買っている面が多かろうと思っておるのであります。  御承知のように、最近イギリス中央銀行とアメリカのFRBで、金融機関の自己資本規制の問題が取り上げられるようになっているわけであります。これはずっと見ていまして、金融機関日本流にわっと出ていって、出ていった先でスプレッドの競争をやって、あそこがこのくらいの幅にするならばうちはこれでいきますよ、日本金融機関同士でこうやるとそれは向こうの金融機関に全部はね返って、日本がそのスプレッドなら向こうもこれぐらいにしてくれという話が出てきますから、それは私は英国の金融機関なりアメリカ金融機関に対してもいろいろな影響を与えていると思う。どうもこれは、日本の銀行の自己資本比率がきっちり規制されていないためにああいうことをやるのじゃないかということで、イングランド銀行とFRBで、何か新しい自己資本規制の問題を日本もやれとなっているわけでありますね。  この問題は、いろいろな関係者の話を聞いてみますと、これまでスプレッドについてはゴー・アンド・ストップというようなことをやってきた経過があるようでありますけれども、必ずしもうまくいかないようであります。ここはひとつ、今度金融委員会でも開いていただいて、金融関係者に直接来ていただいて要請をしたいと私は思うのでありますが、貿易と同じで、これは金融機関が自主規制を皆さんでやっていただくことが必要な段階に来ているのではないだろうか。これ以上そういうスプレッドの競争をやれば、私は日本金融機関は締め出されるおそれが十分にある、実はこういう不安に駆られているわけでございます。ですから、これは大蔵省や日銀がおっしゃるべき筋合いのものではありませんから、私ども国民を代表する立場から、ひとつここへ金融界の代表に来ていただいて、皆さん自主規制をしてくれませんか、それは単に日本金融機関というのではなくて、世界の金融秩序を守るために、今日本がやらなければならないことはここではないか。  貿易の問題は、私はこの前稲山さんといろいろなお話をしておるときに、ここでも申し上げたかと思いますが、稲山哲学というのを理解することができました。稲山さんはこう言われるわけですね。十九世紀までの世界の生産というのは、主たるものは農業生産であった。農業生産というのは、幸いにして豊作のときもあるけれども凶作もある、要するに自然がコントロールしてくれた。しかし、二十世紀になって機械生産のものが主体になってきたら、この機械生産というのは本来的にコントロールできないのだ。製品の量は力のある者がだんだんふやしていく。そこで一定のところで自主規制をやるというのは、要するに凶作がないのなら人間の知恵でやる以外にないではないかというのが、私の自主規制論ですというお話を稲山さんから聞きました。  自動車を、百万台のときにここで自主規制をしようと私が言ったけれども、自動車業界は聞かなかった。それが今日の貿易摩擦の最大の原因じゃないだろうか。堀さん、どう思いますかと稲山さんに聞かれて、私は稲山さんのお考え、よくわかります。自主規制は、そのときがよかったかどうかは別としても、今日対米の貿易をコントロールするのはやはり業界の皆さんが——私もさっきから申し上げておるように、自由競争原則はわかりますけれども、国際間の問題としては、行き過ぎたものは自分たちで自主規制するということなくして世界の理解は得られない、私はこう考えておるわけであります。  そういう意味では、この貿易摩擦が金融摩擦に来ておる今日、当然金融機関、特に外へ出ておる——国内でなら少々やってもらってもいいのですが、外へ出ておるものはそういうスプレッドについての自主規制をきちっとしてもらいたいということを、委員長にもお願いして閉会中審査で当委員会関係者に来ていただいて要請するつもりでありますけれども、私のこの物の考え方についての大蔵大臣のお感じを承っておきたいと思います。
  25. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私も、どうもこの次は金融に来るのじゃないかということをひそかに以前から思っておりまして、今までのところ、向こうの金融人に聞いてみますとどうということはないな、こう申しますが、さっきおっしゃいました含み資産、株式を保有しているとかいうこともございまして、資金力は圧倒的に日本の銀行が大きいわけでございます。そうしますと、いわば金に物を言わせてというようなことに大変なりやすい。ゆえに、日本の銀行というのは倒れないということがございますし、テークオーバーもないし、役員の中の表立っての暗闘なんということもないのでございますから、それは競争力が強うございますね。それだけに、どうもこの次は言われるのではないかということをひそかに思います。仮にこれが自動車であり、テレビでございますと、品物がいいということで向こうの消費者は、保護主義に対しての一種の防壁になってくれるのですが、金融というものはそういう点がございませんから余計注意をしなければいけないなということを、これも感じだけを言えとおっしゃるものですから、どうしてとおっしゃると私も申せませんけれども、ときどき日本金融界の方にはそういう感じを申し上げております。
  26. 堀昌雄

    堀委員 それではあと二十分ばかりになりましたので、法案の関係についての質問をいたします。  この前、中曽根総理が訪米されまして、最初百億ドルぐらいの資金還流をやりたいということを日本においでになったときは言っておられたように思うのですが、結果的には三百億ドルの資金還流をするというお約束をしてこられたようであります。これを国際金融局の方から、大綱で結構ですから、簡単に説明してください。
  27. 内海孚

    内海(孚)政府委員 お答え申し上げます。  ことしの初めにおきまして、我が国がいわば追加的に今後三年間にわたりまして約百億ドルの資金還流をするというプランができたわけでございます。  これはまず第一には、ただいま御審議いただいておりますIDAの二十六億ドルがございます。それから、外為特別会計よりIMFに二百三十六億ドルの貸し付けを行いまして、国際収支で困っている国に対してIMFが貸し付けることにした資金がございます。それから、IDAと同様なものがアジア開発銀行にもありまして、これが十三億ドルございます。それから一番最後のものといたしまして、世界銀行にジャパン・スペシャル・ファンドというものを約二十億ドル設けたわけでございますが、これがいわば官民資金によって成るわけでございます。  内容は、後のプランに関係しますので若干詳しく申し上げますと、まず政府から約三百億円を今後三年間一般会計で世界銀行に拠出いたします。その初年度は、今年度ただいま御審議いただいております予算に六十億円ついております。これによりまして世界銀行が開発途上国に対しまして、いろいろその途上国が経済上の計画あるいは開発計画をつくることをそのお金を使って協力をする。そうしますと、プロジェクトができて世銀からお金を借りたいということになって追加的な資金需要になる。そういった資金需要の追加的なものについては、従来世界銀行が我が国のマーケットで調達しておりますのに加えまして、民間が約三年間で三千億円応ずるという形で、いわば財政資金のこの場合は十倍ぐらいでございますが、これが触媒になって民間資金がリスクのないところに自然に流れていくというメカニズムだったわけでございます。実は、今度追加的にさらに二百億ドルといいますのは、我が国の置かれておりますこのような状況にかんがみまして、一体どこまでそういうことがさらに三年間追加的に可能かということを詰めてみたわけでございます。  そのカテゴリーは三つに分かれるわけでございますが、第一は、先ほどの世界銀行に対してやったようなことをさらに世界銀行に対して拡大できないか、あるいはアジア開発銀行ないし米州開発銀行にもできるのではないかということで約八十億ドル。それから第二のカテゴリーは、輸出入銀行とかあるいは経済協力基金でございますが、これらが世界銀行その他の地域開発機関といわば協調融資という形でLDCに対して資金協力をする。さらにその場合には、輸出入銀行と一緒に民間資金が協調融資という格好で出ますので、これを合わせまして約九十億ドル。それから最後に第三のカテゴリーといたしまして、輸出入銀行が約三十億ドル程度は従来の流れに加えまして、バンクローンという形で開発途上国資金が出せる。いずれもこの三百億ドルは、大事なことは全部アンタイにいたしまして、それによって世界のいずれかからも財貨やサービスが購入できるということにした点でございます。
  28. 堀昌雄

    堀委員 今のお話で、確かに最初の百億ドルの中の世界銀行のファンドの二十億ドルというのは、政府の無償資金が三百億円で民間資金調達が三千億円、まあこれはいいんでありますけれども、今度は新しい二百億ドルの分の方へ来ると、これは大体世銀、アジ銀その他の国際金融機関や何かに財政資金プラス民間資金合わせて八十億ドルとなっているんですが、これは一体その財政資金と民間資金の割り振りというのはどうなるのですか、大体の見通しは。
  29. 内海孚

    内海(孚)政府委員 これは、基本的には来年度の予算要求の段階で、財政資金でどのくらい出せるか、それに応じて民間資金がどのようにタイアップできるかということを今後詰めていくことになると思います。ただ、多くの部分は先ほどのジャパン・スペシャル・ファンドの例で見ていただくように、民間資金がそういうリスクがない形で安心して流れるというメカニズムをつくるというところにねらいがあるというふうにお受け取りいただいたらと思います。
  30. 堀昌雄

    堀委員 何しろいろいろな問題がある中で、LDCに対する協力というのは、私は、やはり先進国である日本ができるだけの対応をしなければならないと思うのですが、この際、大蔵大臣、民間資金を活用することが、日本では今単に国際金融の問題だけではなくて、国内でも非常に重要な問題だと私は思います。何としても財政資金には限りがあるわけでありまして、今日のこの膨大な民間資金を有効に活用することなくして、私は日本経済なり国際関係の改善はできないと思います。そのためにやはり非常に重要なのは、しかし根っこになる財政資金が一定のものがないと、これは民間側にしますとリスクを負わされるのじゃかなわない。もう今の為替関係でかなりリスクは出ているわけでございますね、この円高を通じてリスクは出ているわけですから。  ひとつこのLDC協力というのは、安心して協力していけるんだというシステムをつくるためには、来年度予算以降、今の二百億ドルの中の八十億ドルもそうでありますし、あるいは経済協力基金や輸銀の追加的な処置で九十億ドル以上とか、いろいろなファクターが書いてありますが、いずれ三年間でございますから、今後の予算、一般会計の予算を含め財政資金を含めた予算をこの部分にはかなり思い切って使っていただくということが、やはり今日日本の置かれておる位置を世界の、特にLDCにも理解を求め、その他の先進国にも、日本が率先してLDCに協力をしておるということは、それなりに世界経済に貢献をしておる、日本は随分貿易でもうけておるけれども、やることも少しはやるな、これまで余り大してやっていませんからね、少しはやるなという認識をつくるためには、やはり六十三年度予算についてのこういう問題についてひとつお考えをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  31. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、仰せのとおりのことを私も実は考えております。対外的にもそれから国内でも、この財政資金を何か上手に使いますと、うまく民間の資金、民活のようなものを動員できるんではないかという、国の内外やはり同じ問題がございますので、これはよく考えてやらせていただきたいと思っております。
  32. 堀昌雄

    堀委員 ちょっとまだ時間がありますので、これには直接関係をしませんが、非常に重要な問題をちょっと提起をさせていただきたいのですが、いよいよこれから六十三年度予算の編成に入る時期が近づいてくると思うのでありますけれども、その前に新聞で見ると補正予算が組まれるようであります。私、大蔵省の若い方の話を聞いておりますと、公共事業というのは何かもう過去からシェアがずっと決まっていて、五兆円ついたらどこに幾ら行ってどこに幾ら行くというのは決まっているようなことのようでありますね。きょうは主計の皆さん入って——ああ、角谷さんがいますか。ちょうどよかった。角谷次長、ちょっとそこのところ答弁してください、決まっているのかどうか。
  33. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 私、公共事業の担当でございませんので正確にはお答えできませんが、過去の結果的にできましたところの公業事業予算を見ますと、かなりの程度シェアというものが固定しているような状況があることは、御指摘の点は否定できない事実であろうと思います。
  34. 堀昌雄

    堀委員 大臣、今モスクワでゴルバチョフさんが、ペレストロイカというので世直しをやろう、こういうことでございますね。私も、実は大体この世直し大賛成でありまして、いろいろなところでこれまでのシステムをひっくり返す問題を提起をして今日に至っておるのでありますけれども、それは長い一つの力関係といろいろなものによってでき上がった一つのそういうシェアかもしれませんが、まず第一点は、補正予算についてはそういうシェアの問題は全然ないと。補正予算の公共事業というのは、最も限られた財源を効率的に、そうしてそれが要するに乗数効果に役立ち、日本経済の活性化に役立っために補正予算を組むのでございますから、今度の補正予算はそのシェアはひとつ横へどけて、新しい優先順位でシェアを考えて、国民の税金で賄うなり、あるいは国債の発行で後年度の国民の負担でやるのでありますから、ひとつ真剣に新しい公共事業の配分問題を過去の例にとらわれず御検討いただきたいと思うのでございますが、大蔵大臣いかがでございましょうか。
  35. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私も大蔵省という役所へ行ってみまして、いろいろ知らないことがわかってきたことの一つなんでございます、ただいまのお話は。やはり前からそういうことが幾らかあったのだと思いますけれども、この五年間いわゆる一般歳出をフリーズしたといいますか、あるいは一般会計は公共事業を減らしてきたわけでございます。そうしますと、それを可能ならしめるためには、いわば一律削減分を配分する現状をそのままにしておきまして、それしかやりようがないということを長年やってきたことの一つの結果であろう、そういうことでなければやれなかったということなのだと思います。  しかし、五年間にはいろいろな社会的なニーズは変わってまいりましょうし、補正予算となればまたそうでございましょう。これは一つの財政再建、全体としては私は大変いいことをやってきたと思っておるのでございます。しかし、そういった弊害もあるのはあるな。ですから、優先度というのはやはり物を考えながらしなければいけないんだとは思いますが、ただ、これはうっかり私がそういうことを軽々しく申してはいかぬ要素がいろいろあるようなんでございます。それはそれなりに長年そういう仕事を大事に応援してこられた、あるいは育ててこられた方々がおられまして、それはそれなりの御功績があるわけです。理想も持っていらっしゃるのですから、そこはよほどそういう方々とよくお話ししながらいたしませんといけない要素らしいということを、私もこのごろ少しずつわかってまいりました。  堀委員のおっしゃることはもとよりよくわかっておりますので、よくみんなで相談しながら、弊害を少しずつ直してまいりたいと思っております。
  36. 堀昌雄

    堀委員 私は、かつて政策審議会長をしておりましたときに櫻内さんが政調会長でございましたから、もう何年くらい前になるかわかりませんけれども、NHKのテレビ討論で予算の問題の論議をいたしました。そのとるに、私はこういうことを申したのでございます。日本の予算編成というのは東南アジア型予算編成だ、こう言ったわけでございます。そうしたら岡村さんが、東南アジア型予算編成というのはどういうことですかと。私はまだ行っていないのですが、話を聞くと、実は東南アジアで買い物をするときに、値段がついているそうですね。この値段は必ず値切るように値段がつけられている。だから、上手に値切れば値切るだけ適切な買い物ができる、こういうことだというのです。大蔵省も値切られていいようなベースをつくらせておいて、それを今度は大蔵省が値切るわけですね。値切って値切ってある一定のところへ押し込む、だから東南アジア型予算だ、こう言ったのです。  予算編成の根本を変えるべきではないですか、どうすべきか。一定の予算の枠がその程度に決まったら、その一定の予算の枠の中で調整費だけは大蔵省が枝へぼんと取りましょう。そうして、自民党の内部のいろいろな部会の皆さんと論議をして、今の割合を与党の中でしっかり論議をし枠を決めたら、その枠をそっくりその省に任せたらどうですか。そこでは、あなた方の自主的に何に予算つけてもいいですよ。そういう提案をしておるのは、一回ついた予算はずっとつくことになっているのですね。どこかを削ったからといって、新しいものが要求できるかというとそうはなってない。そういうことでは日本の財政というものの進歩発展はない。だから、各省に一定の枠を任せて、自分のところでここを減らして新しくここをやりたいというならそれは自由にやらせる、一種の請負制ですね。各省請負制で、最後に調整財源を持っていて調整をするということにしたらどうですか、こういう話をいたしました。  そうして、私が見ていると、自由民主党が予算に介入しておられるというのは、最初に予算大綱とかいうのはどうやら自由民主党でつくられるけれども、後は大蔵省に完全にやられちゃっているじゃないですかと言ったら、櫻内さんがそのときに、いやそんなことはありませんと答えられたのです。ところが、テレビ討論が終わって雑談になったら、堀さん、あなたの言うとおりなんだよ、こう櫻内さんがおっしゃったので、それはそうだからああ言って公式にやったんだ、こう言っているのであります。これがいや実は、大蔵省の幹部の諸君は今日マイナスシーリング、マイナスシーリングで、ちょっと先生の言っておられたような格好になりましたよと言うのですが、なったのかどうかわかりませんが、今大臣のおっしゃるように、シェアが固定してしまって全然進歩発展がないという気がいたします。  私はしょっちゅう下水道、下水道と言って、ばかの一つ覚えのように言っておりますけれども、(「新幹線」と呼ぶ者あり)新幹線、あと五分あるから。下水道というのは、実は世界で先進国と言うに値しない水準なんですね。  東京都でも、調べてみましたら、世田谷なんというのも一〇〇%じゃないのですからね、九十何%しか実はなってない。私は、東京都の下水道の普及率を見て驚きました。東京ぐらいは全部できるかと思ったら、そうではない。私どもの阪神間では芦屋市だけが一〇〇%でございまして、あとは皆水準が低い。尼崎は今一生懸命ぜんまいを巻いて、地盤沈下地帯で全部ポンプで水を揚げなければいかぬというオランダと同じ地域なものですから、どうしても下水道を早く完成して、浄化槽できれいにしたものを川に出さなければ周辺を汚染するものですから、一生懸命下水道をやっているのであります。これは土地に関係しませんから、穴を掘って処理するだけですから最も効率的な環境整備であるし、同時に波及効果もあるだろうと思うのです。どうか今度の補正予算は、ひとつそういう意味でお願いをしたいと思うのです。  今、大島さんから新幹線と出たので、あと五分ありますから一言だけ言っておきますと、この前も言っているのですが、アメリカとの貿易収支の改善をやるのに一つの非常にいい道は、今新幹線と言われておるところ——私、大島さんのところには同情しているのですよ。あそこまで行って後がつかぬというのには、率直に言ってちょっと同情しておるのです。しかし、ほかのところの新たにつけるところというのは、どう考えても余り納得しないのです。飛行場を沿線にきっちりつくって、そしてコミューターで次々に運んであげれば、新幹線をつけるよりはもっと早く人々は動けるわけですね。そして在来線も生かして使える。飛行場をつくるくらいの費用は知れておりますから、そこへコミューターをずっと飛ばせば新幹線以上に交通事情はいい。このコミューターを全部アメリカからどんどんと買いますからね。そうすると、今の新しいJRは赤字負担にもならないで、それこそ駅が五つか十ごとに飛行場をどんどんつくればいいのですから。そして、東京からでもどこからでも飛行機をやれば、新幹線どころじゃない効率的な時代ができて、対米貿易の黒字改善にも大いに役立つ。私、ここで何回か言っていて、彼には大分しょっちゅうにらまれているのですが、きょうは彼の立場も少し尊重して、しかし何とかそういうことで処理をしたいと思っておりますので、大臣もひとつ頭のどこかに置いておいていただきたいと思います。  以上で質問を終わります。どうもありがとうございました。
  37. 池田行彦

    池田委員長 宮地正介君。
  38. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうは、IDA、MIGA、HSの三法案についての質疑でございますが、大蔵大臣が途中で商工委員会の方に採決で行かれるということで、最初に大臣お話をしておきたいと思います。  このIDAへの加盟措置改正法及びMIGAの加盟措置法の問題については、日本が先進国としていわゆる発展途上国に対しての経済協力等について、今非常に大事な時期にあると思います。特に、日米貿易摩擦あるいは円高問題、世界経済の中で日本の果たす役割というものが非常に注目されているわけでございまして、今回のOECDの閣僚理事会においても、発展途上国に対する先進国、特に北の南に対する経済協力問題が大きな課題になってまいりまして、ODAを初め日本経済協力も、年々予算措置も大変にふやしてきているわけでございます。  今回は幸いに円高ということで、当初予定よりも日本経済協力の額、率の面でも相当評価されてきている。しかし、政府間援助とか民間援助というものをもう少しきめ細かに見てまいりますと、もっと努力をする大事な時期に来ているのではないか。そういうことで、今回のこのIDAあるいはMIGAの問題は、大変に私は時期的にも当を得ていると評価をしているわけでございますが、大蔵大臣として、今後総理を目指す大事なお立場大臣として、こうした日本の国の果たすこれからの役割の重要性に対し、どういう努力をさらにされていくか、その点についてまずお伺いをしておきたいと思います。
  39. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、我が国は軍事的には世界の平和に大きな貢献をすることはできない国でございますから、それにかえましてこういう方面で、殊に南の国々の繁栄、世界の平和のために尽くさなければならない、この道が我が国としては一番有効に尽くすことのできる道だというふうに考えておりますし、広い意味ではこれが我が国自身の平和に対する貢献、安全保障ということであろうと思います。したがって、苦しくても、これは今後とも心がけてやってまいらなければならないと思っております。  ただいまのところ、ただ、我が国の財政が非常に御承知のようなことでございますものですから、一般会計から大きな金をどかっと出すということがなかなか急には難しゅうございまして、そういう意味でいろんな工夫をしながらこれだけの外貨は、とにかく日本経済としては持っておるわけでございます。政府が貧乏だ、こういう状況の中でできるだけ民間の力もかりながら、それに政府がある意味で民間に安心をしてもらうような形で、政府も何がしか参画をしながらバイラテラルに、または国際機関を通じてこういう努力を続けていくべきである、ふやしていくべきであるというふうに考えております。
  40. 宮地正介

    ○宮地委員 ただお金だけふやしていたのでは能がないと思いますね。実際にこれからは、物金だけではなくして中身を精査していかなければならない、私はやはりそういう一つの変革期に来ていると思うのですね。  そういう中で、今回アメリカが二〇%のシェアを切りまして、日本に約五%近いいわゆる割り当てを放出してこられた、これから日本がIDAの中においても発言力が増してくるわけでございますね。そういうときに、やはり第二世銀として、特に発展途上国に対しての融資、その意思決定あるいはどういうプロジェクトを中心に本当に発展途上国のためになる融資をするか、そうしたチェック、そういう点について、これからはただお金だけ出す、お金の額だけがふえていけば何とかその役割を果たしているという面から、私はむしろ質的に、内面的に政策決定、意思決定まで日本理事会の中で発言力を持っていくわけですから、公正な融資あるいは本当に発展途上国の発展のために実効力のある融資、よく昔はインドネシア等、何か特定の方に対するわいろ的なものに回ったり、きな臭い話も過去には大分あったわけですね。そういうものはもう払拭をされてきておりますけれども、南北問題の解決で日本が先進国として名実ともにその役割を果たしていく大事な時期が来ているのではないか。  特に六十二年度の予算を見ましても、出資国債等の償還財源のための国債整理基金特会への繰り入れなども約一千四百三十九億、だんだんふえてきているわけでございまして、そういう点、大蔵省としても金だけ出していればというようなことでなくして、外務省あるいは関係の通産、農林ともいろいろ連携をとりながら、そうした質的な日本としての経済協力、また発展途上国に対しての貢献、こういうものをしていく時期ではないか、こう考えておるわけですが、大臣としてはその点どういうふうな所見を持っておられるか、お伺いをしておきたい。
  41. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはまことに私は同感でございます。  四十年前には援助を受けておった国でございましたのですから、無理もないといえば無理もないかもしれませんが、とにかく今そこから世界第二の援助をする国、金額としてはアメリカの半分ぐらいしかございませんが、になりましたが、まあそれはいわばそういう経済力をとにかく持ったということであって、それ以外のいろいろ心構えであるとか、あるいは人的な貢献であるとか、そういうことはまだまだこれからである。随分急激にはそういうことを心がけて育てつつございますけれども、とてもとてもそれは本当の行き届いた、あるいは純粋なと申しますか、意味での心のこもった援助ということになりますと、まだまだいろいろ時間がかかることでございますけれども、金だけ出しておけばいいというものではないということは私もつくづく感じております。
  42. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、特にアフリカ会議に当委員会で一度派遣委員としてお邪魔をさせていただきました。そのときにアフリカ開銀の総裁はブラックの方でございましたが、こういう日本に対して非常に感謝の言葉があったのです。かんがい用水を実際に私たちは見させていただきました。本来アフリカの、要するに南の諸国の方々は、昔はイギリスやフランスの植民地であった。地理的にも地中海のちょっと北のところでございますから非常に近い。本来なら、フランスやイギリスや欧米先進国に非常に積極的に経済協力をしてもらえる、こういう意識を持っておった。ところが全く地球の裏側の、要するに彼らの世界地図で見ると右の端にわずかにある日本の国がアメリカに次いで二番目の出資をしてくれている。そして、我々のこうしたかんがい用水やビート工場をつくっていただいている。そこに、日本の国会の大蔵委員会のメンバーに現地を見に来ていただいた。大変感慨深く、大変な喜びようで我々を迎えてくれたのが今から約十年前ですが、私は大変印象に残っているわけです。そういう心のこもった、また彼らは、そういう地理的に地球の裏側の本当に小さなこの四つの島の日本の民族が、おれたちのこんな国までも本当に考えてくれているのか。私は、こういうものがこれからの日本の果たす、世界に貢献する大きな役割かなと、あの象牙海岸まで行き、本当に行ってよかったなという感じがしたわけです。やはりそうしたところが、彼らも非常に心に感じるわけですね。  ですから私は、これからこうしたIDAあるいはMIGAの問題を日本が積極的に応援していく。これからこうしてアメリカも放出をして、日本に発言力もだんだん与えてくる。こういうチャンスがだんだん与えられてくるわけですから、やはりこれから本気になって日本の国が南北問題のリーダーシップをとるぐらいな気概で、お金も出すけれども、これからその国の発展のためには日本も技術協力をするぞ、また政策的な意思決定をする場合にも、きめ細かな日本のノウハウというものでどんどん応援をして対応していくぞ、こういう魂の入った経済協力があって、これからの日本は、経済大国であると同時に非常に心の豊かな精神的な大国でもある、こういうふうになっていかなくてはならない。そういう点では大蔵省がしっかりとその点の配慮をして、外務省等とも連携をとりながらやっていく時代が来たのかな、私はこう思っております。そういう点をぜひ強く要望しておきたいと思います。  大臣、商工委員会へ行くようですから、どうぞ行ってください、お時間のようですから。  そこで具体的に、MIGAの加盟措置法について今回、民間の投資がしやすいように多数国間投資保証機関というものを設置して対応する、この辺の基本的な考え方、また日本のこれに対する取り組み、事務当局で結構ですから、御説明していただきたいと思います。
  43. 内海孚

    内海(孚)政府委員 お答え申し上げます。  ただいまお示しのようにMIGAは、先進国から開発途上国に向けて直接投資が行われますときに、これが戦争あるいは送金停止といういわゆる非商業的なリスクがあるということでは、なかなか安心してまいれないわけでございます。ただいま委員より、LDCに対する我が国の役割について大変示唆深い御発言があったわけでございますが、特に直接投資はLDCにとってはいわば借金という形ではなくて、そこにお金が入ってきて、物をつくり、雇用を創設し、その物によってまた経済が活性化するとともに、さらに輸出もふえるという形でいろいろな相乗的な効果を生むわけでございます。  そういった形のものがまた今度世銀につくられるということの意味は、これは一種の保険でございますので、簡単に保険事故にされるようなことがあってはならないわけですが、世界銀行がこれをやっておりますと、その国は、どういう政治体制になりましても、いずれは世界銀行からお金を借りなければいけない、こういうときにはうっかりデフォルトにする、借金を返済しないということはやりにくいということもありまして、それなりに非常にメリットがあるということで、これについては私ども、当初より積極的な支持を表明してまいりましたし、これについて署名をした上で今回その承認をお願いしているということでございます。
  44. 宮地正介

    ○宮地委員 これは、例えば最近で言えば、三井のイランのああいう戦争に巻き込まれて多大な被害が出ている。当事国がMIGAに加盟していないと保証もなかなか厳しいようでございますが、ああいう今回のイランの政変に伴う三井の問題等は、MIGAによって今後どういうふうに救済されていくのか、この点についてお伺いしておきたい。
  45. 内海孚

    内海(孚)政府委員 確かにお示しのように、関係のLDCの国自体がこれに加盟していない場合には、そういう問題があるわけです。ですから、あくまでも投資をする側と投資をされる側が、両方で合意のもとに署名をし、批准書を寄託した場合にのみ効果を持つわけですので、ただいまお話のイランは実はこれには入っておりませんし、この案件自身もこの条約の発効前に起こっておりますので、これ自体には直ちに役に立つということにはなかなかなりません。しかし、今後あのようなことが開発途上国に対する我が国企業の自主的な判断による協力、そういう意欲を鈍らせてはならないわけでして、そういう意味では、こういうものができると安心して投資ができることになるであろうと思います。したがって、既往のものはちょっといかんともしがたい点はあるわけでございますが、今後に向けて大きな効果を期待しているということであろうかと思います。
  46. 宮地正介

    ○宮地委員 通産省としても、輸出保険の法律においていろいろ担保してきたわけで、今回戦争とか内乱とか、世銀がかんだということで民間の海外に対する投資が非常に促進されるのではないか。この点についてどういう見通しを持っておるか、お伺いしておきたい。
  47. 井上毅

    井上説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のとおり、私ども日本政府においても、通産省が海外投資保険制度というものを運用いたしておるわけですが、今回このMIGAの制度が国際的組織としてでき上がりますれば、私ども通産省の投資保険によって引き受けができないような、例えば大規模なプロジェクトについてMIGAと私どもが共同して、協調保険という形式で企業の要望にこたえていくようなことが可能になるわけでございまして、私ども機関とMIGAとが、そういった意味で共同歩調をとりながら民間の海外投資の促進に役立つもの、こういうふうに確信しております。
  48. 宮地正介

    ○宮地委員 次に、このHS法案について少しお伺いをしてまいりたいと思います。  このハーモナイズドシステムという新たなHS方式によりまして関税商品分類を統一化する。ここで、このHS方式に今までのCCCN方式から変えることによりまして、分類が現行の三千税目から約一万二千税目に変わる。この変化に対応して、例えば税関職員などの現場における人手不足問題、こうしたものの手当ての担保というものがこの法案の裏づけとしてあるのか、また考えておられるのか。来年の一月元旦からこれが施行されまして、あと六カ月後になるわけですから、現在の税関職員に対しての教育訓練もしなきゃならぬし、大変きめ細かな分類になるわけでございますので、この辺の対応はどういうふうに考えておられるか、まず伺っておきたいと思います。
  49. 大橋宗夫

    ○大橋政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘の、HSを採用することによりまして品目の数がふえる、これは三千から今一万二千というふうに先生御指摘でございましたのですが、実はそのままにしておきますと一万二千になるわけでございますが、なるべく数がふえないようにいろいろな課目の統合をいたしまして、単一税率を設定するという方法によりまして七千にまでは減らしたわけでございますけれども、それにしましても三千から七千というふうにふえるわけでございます。  そういう意味におきまして、また今までの完全に使いこなしている分類表ではなくなるという意味におきまして、税関におきましても周到な準備作業が必要となるわけでございますし、また職員の専門的知識も充実していく必要がございます。したがいまして、導入に目がけてこれから先法律を通していただいた後の準備期間中、また導入の当初におきまして通関の事務上若干の事務負担増となるということは、これは先生御指摘のとおり避けられないことであろうと思います。  しかし、HS関税率表は、幸いなことに現行のCCCN関税率表分類体系をベースとして作成された、いわば改定版でございます。したがいまして、CCCNに長年なれ親しんでまいりました税関職員にとりましては習得しやすい体系でございますので、一定の期間を過ぎました後は通常の業務量の中で処理できるようになるというふうに考えているわけでございます。しかしながら、税関の業務全般について考えますと、貿易の伸展、出入国旅客の増加に加えまして、覚せい剤、銃砲等の社会悪物品の密輸取り締まりの強化等によりまして、年々増大かつ複雑化してきているわけでございます。  このような税関業務の増大、複雑化に対処するため、従来から事務の重点化、効率化に努めてきているところでございますけれども、先般の当委員会の附帯決議の御趣旨も踏まえまして、厳しい行財政事情のもとではございますが、税関職員の定員の確保につきましては、関係当局の理解が得られるよう最大限の努力を払ってまいりたいと考えております。  また、教育訓練につきましては、既に内部の問題といたしましては分類表の案を配り、またこれに関しまして、分類に関するいろいろな注釈のようなものがあるわけでございますが、これの原文を税関に配付し、さらにその翻訳を今つくっておりますので、これもでき上がったところから配付するような形で、内部の問題としては準備を進めているところでございます。  ただ、この法律を幸いにして成立させていただき、また条約の承認をしていただきますれば、今度は外部に対しましてもきちっとした事前の準備がしていけるというふうに考えておりますので、鋭意支障のないように努めてまいりたいと思っております。
  50. 宮地正介

    ○宮地委員 局長さんのお話を聞いていて、要するに現行の税関職員で対応をする、HS法案が国会で成立した後、来年一月元旦からの施行については何ら増員計画はとってない。これはもっと積極的に、こうした法案を国会で審議をする以上その仕事の負担が職員の皆さんに行くようなことがないように、私は、何らかの人員増について本来強く要請をし、予算化をしておくべきではなかったのかな、大変危惧をしているわけです。  今局長おっしゃるように、関税定率法審議の中で、税関職員の増員については附帯決議もしました。附帯決議で満足しては困るので、これは来年度の予算要求のときの一つの大事な我々の矛先でありまして、あの附帯決議はこういう法案よりもむしろ現状の税関職員の皆さんの仕事、大変な質的な多様化、量、また麻薬とか武器とか大変な仕事の中で現状の定員では足りないぞ、もっと仕事に見合った定員増をすべきである、こういう大蔵委員会の附帯決議だと思うのですね。それとは別個に新たなこういう、法律の成立に伴って今お話でも現実問題、三千種類から七千種類に分類が大変ふえるわけですね。それも今までの四けたから六けたになる。分類の中身を見ましても、大変きめ細かになっているわけです。それと、今までのCCCN分類にはなかったような光ファイバーとか人工衛星とかアイソトープとか、新しい時代に伴う新しい関税商品が新たに出てきているわけです。この法律の施行とともに、現状の人員では大変です。当然もう少し何とか増員をするようによろしくお願いしたい、これが局長の本音じゃないか、私はこう思うのです。この点についてどうですか。
  51. 大橋宗夫

    ○大橋政府委員 先生御指摘のとおり税関の職員は今でも、ただですらかなり精いっぱいの仕事をしているわけでございます。その中でHSの導入に関する事務を処理するということは、ある程度の負担増を強いることになるかと思うのでございますけれども、これは税関の組織全体の立場考えますと、このHSの導入によりまして輸入の件数が増加するということではなくて、その当てはめるための知識を一時切りかえる作業を自分たちそれぞれがしなければいけない。そういう意味におきまして、結局長い目で見ますと事務量というよりは、新しいHSを十分理解するというための質の内容、職員の専門能力の向上ということが、重要になるというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、HSの導入に関しましては、私どもそれに備えまして研修のための旅費でありますとかさらに資料の印刷というような意味で、職員の能力を向上するための経費は要求してつけていただいておるわけでございますが、人員については、理屈の問題としましてはやっていけるはずではないかというのが一つ考え方であろうと思います。  ただ、先生御指摘のように私どもも、このHSの導入によって事務負担が恒久的な形で残らないかという点については、それは施行してみた上で本当に負担になるということであれば、これは定員増をお願いしていかなければならない、こういうふうに考えておりますので、施行後の状況については先生の御指摘も十分念頭に置きまして、よく現場を見ていきたいと思っております。
  52. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうは角谷主計局次長、担当かどうかわかりませんが、六十三年度予算のときには篤と今の御意見、国会審議の意見を尊重して考えていただきたい、こう思うのですが、この点について一言コメントをいただいておきたい。
  53. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 お答えいたします。  定員につきましては、国全体として定員削減計画をつくっておりまして、その中で所要の削減措置を行い、必要なところはまた増員していくというふうな措置をとっておるわけでございますけれども、税関につきましては、このところ数年間純減になっておると思いますが、本年度につきましては若干の純増になっているというふうに理解をいたしておるわけであります。今後とも定員の実情につきましては、その実態に即しまして適正に査定してまいりたいというふうに考えております。
  54. 宮地正介

    ○宮地委員 大蔵大臣、来るのを待っておりまして、このHS法案、これが今国会で成立しますと来年の一月一日から実際に活動するわけでございまして、現場の税関職員、これは今局長に伺いますと三千分類、CCCNの分類が今度HSになりますと七千になりますので、いろんな知識の教育とか手間、やはり事務的に相当の負担は免れないようです、局長さんのお話を伺いますと。六十三年度の予算のとき、このHS法案に伴っての事務量の負担に伴う人手問題については、大臣としてもぜひ積極的にお取り組みをいただきたい、こう思っておりますが、所見を伺っておきたいと思います。
  55. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このHSの円滑な実施確保いたしますために、本年後半、研修、指導等につきましては周到な準備で対応をいたすつもりでありますが、なおただいま御指摘の点は、実施後の状況をよく見守りまして、それによりまして考えさせていただきます。
  56. 宮地正介

    ○宮地委員 途中の審議を聞いてなかったもので大臣答弁しにくいでしょうが、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  もう一つ、このHS法案の第八条に売上税法の一部改正というのが入っているのですね。これは今国会で廃案になるわけですね。こうなったとき、これはどういう形で削除になるのでしょう。
  57. 大橋宗夫

    ○大橋政府委員 売上税法案といいますか、法がもう成立したように書いてあるわけでございますけれども、私どものHS法案は、既に提出してまだ御審議いただいておりません売上税法の後から出したものでございますから、そういう形で売上税法に引いております税番を直すような規定が入っておるわけでございます。しかし、この売上税法が成立していないただいまの状況で、仮にあした公布になるということがあるといたしますと、その規定は売上税法が現実に成立してくるまでは生きてこない規定になる、こういうふうに理解しているわけでございます。
  58. 宮地正介

    ○宮地委員 そこのところで、売上税の関係の六法案はこの二十七日で廃案、こうなるわけですね。ところがこのHS法案が成立しても、第八条の中には売上税法一部改正として残るわけですね、法律は。これはやはりいずれかの機会に削除の手続を国会でやらなければいけないのでしょう、局長。それはいつやるのですか、こう聞いておるのです。
  59. 水野勝

    ○水野政府委員 税制改革につきましては現在協議機関で検討をいただくということになっておりまして、税制改革協議機関の結論を待って処理させていただくことになっておるわけでございます。  他の法律の中に売上税関係部分がございましても、その部分につきましては、売上税関係部分が仮にそのまま成立するといたしましても一成立するまではそれはその法律としてはいわば空白の部分でございますし、協議機関の御結論に従いまして何らかの措置をするとすれば、その点を含めまして恐らく税法上の措置が手当てされるものと、これは従来からのやり方ではないかと思うわけでございます。
  60. 宮地正介

    ○宮地委員 だけれども、それは主税局長おかしいじゃないですか。協議機関というのは、これは全く売上税と関係ない、これからの税制改革を協議する機関でしょう。この売上税法というのは、今国会に提出されている大関係売上税法案に伴って成立したと仮定して、このHS法案の中に盛り込まれているのでしょう。その本体が廃案でだめになるんだから。確かに、HS法案の中にあるこの売上税法一部改正案の条項、第八条は事実上は死滅していますけれども、条文は残っているんだから、これはいずれかの機会、例えば次の臨時国会あるいは来年の通常国会、いずれかにやはりHS法案の第八条削除に関しての国会においての議決が必要じゃないんですか。
  61. 水野勝

    ○水野政府委員 大筋おっしゃるとおりの措置でされるわけでございまして、法律の提出の先後におきましてそういう事例はよくあることでございまして、もし矛盾することが起これば、次の法律措置するときに政府提案なりあるいは国会での御修正なりで処理される。それはもう考え方としては、委員のおっしゃるとおりのことでございます。
  62. 宮地正介

    ○宮地委員 ここまで言っておけば、頭のいい主税局長ですから理解できたものとして速やかに、お葬式を済ませた法案が現在の法律の中に条文として残っておるということは、これは大変不合理なことでございますから、やはりきちっと削除するように手続を、次の臨時国会ぐらいまでには何とか私は措置をしてもらいたい、十分検討してもらいたい。これ以上議論しても、時間ばかりたっちゃいますので留保しておきたい、こう思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。  そこで、三法案に少し関連して、当面する重要な事項について何点か大蔵大臣にお伺いしておきたいと思います。  まず、昨日のOECDの閣僚会議、ここで半導体の問題について、大蔵大臣、今通産大臣代理ですから、おれの問題じゃないなんて思わないで、今商工委員会に行ってちゃんと大臣のかわりをやってきたのですから。この日本製の半導体に対しての制裁措置、この撤回、何か田村通産大臣とベーカー財務長官との間で、中曽根総理がベネチア・サミットに行くまでに何とか解除できるようにという要請をしたようでございました。一連の中曽根・レーガン会談、また今回のOECD閣僚会議、こういう流れを見ておりますと、何とか近々に解除になるのかな、こんな感じを私ども抱いているのですが、大臣、この辺の感触はどんな感じでございますか。
  63. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 田村大臣がベーカー財務長官と話をされた、あるいはアメリカのスマート商務次官が一部解除ということを言ったというような報道を私聞いておりますのですが、お答えいたしますのに事務当局の方から、その辺のことを知っておりましょうから、お聞き取りください。
  64. 渡辺修

    ○渡辺説明員 お答え申し上げます。  今先生御指摘の田村大臣とベーカー財務長官との話し合い、現地時間の十三日の朝行われまして、その場におきまして田村大臣の方から、サミットを控えて早期撤回を強く要請いたしたわけでございます。これに対しまして、我々連絡を受けておりますのは、ベーカー財務長官は、先般の首脳会談において中曽根総理大臣から早期撤回を強く要請され、レーガン大統領も現在進行中のデータの結果を見て、できるだけ早く解除したいという希望を表明されたという事実、及び現在アメリカの上院においてトレードビルがかかっておりますが、その間の事情、この二つの情勢をよく頭に置いて対処する必要がある。ついては、これから予定されておりますデータのレビューについてぜひ説得的ないい結果が出て、早期解除に結びつくことを強く希望しておる、このような答えがあった、こういうふうに聞いております。
  65. 宮地正介

    ○宮地委員 この日本製の半導体に対する制裁措置の撤回問題、聞くところによりますと、一つは一億三千五百万ドルぐらいのダンピング問題、もう一つが約一億六千五百万ドルの日本国内の市場開放問題、この二つが柱で約三億ドルの、今大体一〇〇%関税状態にある。これが実際に日米突き合わせを、いろいろ資料を出し合って決着がつくのは、大体再来週ごろからその事務作業に入るんですか。大体どの辺を目途に決着をつけようという考え方日本政府側にあるのか、この点どうですか。
  66. 渡辺修

    ○渡辺説明員 日米におきます作業でございますが、現在日米双方とも四月分のデータにつきまして、双方それぞれデータ収集に努めておるところでございます。聞くところによりますと、アメリカでは来週にアメリカ分のデータを入手でき、それの分析に入る、こういうようなことでございますので、実は日米双方でまだ具体的な、最終的な日取りは決めておりません。調整中でございますが、来週の後半さらには再来週あたりが具体的なデータの突き合わせに入る時期になるのではなかろうか、かように考えております。  他方、データ突き合わせの前提になります例えばコスト計算の場合に、償却費をどう割り掛けるかとか極めてテクニカルな問題があるわけでございますが、これにつきましては、先週の金曜日から今週の月曜日まで専門家レベルで第一回目の協議を既に終えております。その双方をこれから詰めていきたい、かように考えておるわけでございます。
  67. 宮地正介

    ○宮地委員 大蔵大臣、私はこの問題は背景、バックグラウンドが非常にシビアではないか、こう思うのですね。一つは、アメリカがなぜここまで日本製半導体をターゲットにしてきたか。やはりこの日本製の半導体が、アメリカの安全保障にかかわるいろんな軍事的な面に相当入り込んできている。そういう点の相当根深いところにあると思うのですね。結局そのあおりを受けるのが、日本の半導体の中小企業の方ですね。特に名古屋、愛知を中心にした半導体をつくっている中小のメーカーは、今大変な思いをしておる。僕は大変遺憾に思うのは、電動工具まで、関係のないものまであおりを食っているという実態もあるわけですね。ですから、そういう政府間の大変シークレットな安全保障あるいは世界戦略、そうしたものに日本のそうした企業が巻き込まれてきている、そんな感じもバックグラウンドの中にはシビアに見るとあると思う。ですから、この問題は非常に慎重に対処すると同時に、やはり政府が本格的に取り組んで、何らかの措置をして、早く解除できるようにする。この解除が延びるようであれば、やはり国内的にもそうした企業に対して今後何らかの手当てをしなきゃならないのかな、こんな感じもしているのですが、この辺の大臣としてのお考えをちょっとお伺いしておきたいと思う。
  68. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私も詳しくはありませんけれども、確かに二五六はもとより、だんだんメガビットの方に入っていきましたときに、チップというものを日本が事実上独占するといいますか、アメリカ企業がもう立ち行かないということになれば、それは国防にしても宇宙にしても、アメリカの産業の一番大事な部分が日本からチップをもらわなければならないということになりますから、そういう意味での実態的な問題と、それから先端産業についてはまず負けないと考えておったその先端産業でどうもおくれをとりそうだということとが重なりまして、それが議会の保護主義の法律案を非常に強いものにするということになればいけないので、行政府としてはこの問題をちょっと先取りをして、いや、それはそう心配しなくても行政府もちゃんと対処しているということで、保護主義の動きを先取りをして牽制をしたのだという説明を聞くわけでございます。  しかし、いずれにしても、そういう大きな関心がアメリカにあるということには変わりはないわけでございます。確かに電動工具、マキタとかリョービとかというところは半導体のメーカーでも何でもないわけでございますから、ちょっとあおりを食っちゃったという感じはいたしますね。そういうようなこともあって、正直言って、これがそういう行政府目的であったにしても十分に私なんかには理解のできにくいことだ、そう思っております。しかし、一度そういうことになったのですから、早くデータのレビューをやりまして、もうその心配なくなりましたということでやめてもらうということだと私は思っております。
  69. 宮地正介

    ○宮地委員 最後に、大蔵大臣もいよいよ六月にはベネチア・サミットで中曽根総理とイタリアに行かれると思いますが、今回のOECD閣僚会議等を見ておりましても相当日本に対してのプレッシャー、特に名指しで日本、西ドイツ、アメリカに対して、日本には内需拡大とか相当シビアな要請もあったようですが、やはり相当な覚悟とこれからの取り組み、もう約束だけではノーだ、これからは実行あるのみ、こういう機運があるようですが、大蔵大臣として、また現閣僚の中の経済、財政の中心閣僚としてどういう御決意でベネチアに赴かれるのか、その辺についての御見解を伺って終わりにしたいと思います。
  70. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これだけ大きな貿易黒字を持ち、経済が輸出依存体質になってまいりますと、これが半年や一年で直るものではございませんし、前川報告もまたそれを考えておるわけではありません。この点は平静に考えればだれでもわかることでございますけれども、いかにも現状が著しいものでございますから、とかく、まだ遅い、何もやっていないというようなことを言われやすい。それは、ある意味で静かに考えればわかることですけれども、そうばかりも言っておれませんから、例えばこの間総理がレーガン大統領と話をしてこられたようなことは、我が国としてできるだけ早く実現をいたしまして、とにかく最大限の努力が継続して行われているということを、やはり外に対してもわかるようにいたさなければいけないのだろうと思っております。
  71. 宮地正介

    ○宮地委員 終わります。
  72. 池田行彦

    池田委員長 玉置一弥君。
  73. 玉置一弥

    ○玉置委員 今回の三法案は、内容的には非常に適切なものであるというふうに思います。それから、今までは、例えば国際金融機関出資して、その発言力が出資の割合以下の感じを受けていたわけでございまして、我々も再三にわたって指摘してきたわけでございますが、今回珍しくちゃんと法案の中に織り込まれておりまして、非常に納得したわけでございます。  しかし、先ほどのお話の中にもございましたように、日本経済大国という、これは自負しているのか諸外国からそういうふうに見られているのか、どうもいまだにわからないところでございますが、いろいろな面で日本資金力に対する期待感、これは諸外国を通じてあるようでございますし、また日本もそれに対応していかなければいけない、こういうふうに思うわけです。一方では、今まで相当な金額が援助に使われてきているわけでございます。先ほどのお話のように、確かに地域によっては大変評価をされておるところもあるわけでございますが、我々が調査した、特に南太平洋諸国のお話を聞いてみても、本当に日本がやったのと、むしろそういうふうなところもございまして、まだ統一的な評価には至っていない、こういうふうにも思うわけでございます。  そこで、これからの海外援助についてどういう姿勢でいくのか、こういう問題点を含めてお聞きしたいと思います。  まず、今回の法案とは若干離れておりますけれども、海外協力の部分、これは外務省の分野になると思いますけれども、御存じのように昨年マルコス疑惑という話がございまして、国会の中でもいろいろ追及されたわけでございます。その後、どちらかというと、解散があったりあるいは間接税問題が出てきたりということで、アキノ政権になってから、日本政府としてのいろいろな調査がどういうふうに進んできたのか、またこれが今後の海外協力にどう生かされていくのか、この辺をお聞きしたいと思います。具体的に申し上げまして、このマルコス疑惑をとらえてみての反省点、そういう意味で、海外協力のチェックをどのように調査されて、今後どう反映させていくのか、この辺についてお伺いをしたいと思います。
  74. 林暘

    ○林説明員 お答え申し上げます。  政府といたしましては、従来より援助が適正かつ効果的、効率的に行われていると考えておりますし、そのために諸種の措置をとってきているわけでございます。しかしながら、先生御指摘のように、昨年いわゆるマルコス疑惑というような問題がございまして、その際に種々の指摘がございました。そういったことを踏まえまして、我々といたしましては、経済協力一般について、より一層適正かつ効果的、効率的に行うための改善策を種々検討し実施に努めてきているところでございます。特にフィリピン援助につきましては、先生御案内のとおり、昨年四月から六月にかけまして、有識者の方を団長といたしまして、四分野について評価のための調査団を派遣いたしまして、フィリピン側の関係者の参加も得て、過去に日本が行いました援助がどういうふうに評価されているかということを調査して、報告書も発表した次第でございます。  それから、本年の一月からJICAの中に特別にフィリピンのためのパネルをつくりまして、そこで現在のフィリピンの置かれている状況のもとで、どういうところにニーズ、需要があるかという点についても、有識者の方々の間で議論をしていただいて、その報告書も得ている次第でございます。  そういったものも踏まえまして、政府といたしましては今後、大来元外務大臣を団長とする調査団を派遣することも考えておりますが、そういったフィリピン側の需要を正確に把握して、それに見合った援助をやっていきたいというふうに考えている次第でございます。
  75. 玉置一弥

    ○玉置委員 前回問題になりましたのはフィリピンだけでございますけれども、その当時から、インドネシアとかタイとかそのほかの国々もいろいろ問題視されていた、こういうことが言われております。今の、いろいろな調査団が出した結果は、一つシステムとしてチェック機能を持つのかどうか、その辺の検討はなされておりますか、お伺いしたいと思います。
  76. 林暘

    ○林説明員 お答え申し上げます。  先ほど御説明申し上げましたような調査団を派遣すること、それと同時に、数年前より各援助案件について毎年その評価、過去に行った援助案件がどのように運用されて、どのように使われているかということを評価するため、いろいろな方法で評価を行っております。そういったものの評価の結果を今後の援助に反映させるため、システムとして、その評価結果を今後の援助に反映させるような方法を我々としても検討しておりますし、過去の反省を今後の援助に反映させるようなことを十分やっていきたいというふうに考えております。
  77. 玉置一弥

    ○玉置委員 去年の論議の中では、事前調査が非常に不的確であったというような話もあったと思いますし、実施された後のフォローが十分できていなかった、こういう問題点がたしか委員会等の中で指摘をされたと思います。  それと同時に、各省、外務、通産、大蔵経済企画庁、関係四省庁が本格的に調査を始めるということをお聞きしたのでございますが、その後、四省庁が調べた結果を発表したというのは聞いたことないのですけれども、窓口としての外務省にその調査結果、例えば大蔵関係でいきますと国税庁、これは国内の分だと思いますけれども、マルコス文書に登場する商社を中心に一部税務調査に着手するとか、あるいはリベート、コミッションの申告があったかなかったかのチェックをするとか、こういう形でございますけれども、この辺の問題点と、あと各企業にそれぞれ状況を聞くとか、あるいは海外協力基金の関係書類の洗い直しとかいろいろあるようでございますが、その辺についてその後の話が全然公表されないのですけれども、調査結果としてどうなっているか、お伺いをしたいと思います。
  78. 林暘

    ○林説明員 先生御指摘の四省庁で企業の事情調査をしました結果につきましては、昨年国会の場で通産省の方から結果を発表したことがございます。その内容は、ソラーズ文書に出てきた企業について事情聴取を行った結果、基本的に企業の方で手数料の支払いの事実関係とか、その手数料の資金の使途というものを聞いた結果、そういう企業それぞれはそういう意識でやったことはございませんという結果でございましたということを、当時通産省の方から報告したことがございます。
  79. 玉置一弥

    ○玉置委員 中身がどうこうということじゃなくて、いろいろな調査をした結果どういうことに欠陥があってこういう問題が起きたか、だからどういうふうにすればいいのか、こういうお話を聞きたいのでございまして、いただいた資料の中に改善措置とかいろいろあるわけでございますが、例えば海外協力事業団に対するチェックでありますとか、あるいは相手国との事前協議、これに対するチェックとか、あるいは申請されている金額、この中身に対するチェックとか、それぞれの項目があると思うのですけれども、これをある程度組織的にチェックする機構ができているのかどうか、その辺についてお答え願いたいと思います。
  80. 林暘

    ○林説明員 お答え申し上げます。  御指摘のように、当時大きく分けて二つのことがいろいろ議論をいたされたと思います。  一つは、御指摘のように事前調査をもっとしっかりやるべきだという点と、事後の評価をきちんとやるべきだという点があったと記憶いたしております。事前調査の方につきましては、御案内のとおり過去の評価等の結果を見ましても、きちんとした十分な事前調査をやった案件というのが非常に相手国において評価を得ているという結果が出ておりますので、そういったことから我々としては、今、国会の方で御審議をいただいております六十二年度予算におきましても、事前調査を強化するということで種々の予算措置をお願いしている次第でございますし、評価の点につきましては、先ほども申し上げましたとおりに評価の対象件数をなるべくふやし、かつなるべく客観的な、つまり我々実施をやっておる者ではなくて第三者、ないしは場合によっては相手国、ないしは第三国の評価の専門家の方々に案件を見ていただいて、その結果を今後の援助に反映させていくという措置をとろうというふうに考えておる次第でございます。  それから、相手国との関係について申し上げますれば、例えば問題になりましたフィリピンにつきましては、昨年フィリピン側ともいろいろ相談をいたしまして、オンピン大蔵大臣日本に来ましたときにも今後きちんとやりますということも言っておられますし、アキノ大統領が昨年の秋日本に来られました際にも、今後フィリピンが日本から受ける援助の案件について心配要りませんというようなことも申されているということでございます。
  81. 玉置一弥

    ○玉置委員 二国間の経済協力という面から見て、これが相手国に評価されるということが非常に大事でございまして、国際金融機関を通じてやる場合には資金国際金融機関から流れていく。だから国際金融機関に対する発言力を持たなければ、最終的に日本出資した意義を持たない、こういうことになるわけでございまして、そういう面でそちらを重視しながらなおかつ二国間協力もやっていかなければいかぬ、こういうところがありまして、これは大変なことだと思うのです。ところが、いろいろなまず国内的にチェックできる機構がなければ大変なむだ遣いになりますし、また、疑惑を招いた事件が起きてしまいますと相手国からも非難をされる、こういう問題があるので、ぜひこの間の事件につきまして、それを今後そういうことの再発がないようにチェック機能の充実を努めていただきたい、かように思うわけでございます。  二国間のあれを見てもそうなんでございますが、いずれにしても累積債務国の状況が依然としてよくならない、こういうことがずっと続いてきております。今では一兆ドルを超える累積債務残高がある、こういうことでございまして、今までの例えば国際金融機関を通じたいろいろな援助、この援助のやり方が余りよくないのじゃないかと思うのですけれども、ただ、余りにも逆に相手国の自主性を尊重してやってきたから、相手国が立ち直れなければそれまで、こういうところもあるように感ずるわけです。そういう面で、今回資金の流れを見てみますと、累積債務国の状況悪化という面から民間の資金が最近やや減り始めてきておる、こういう傾向がございまして、今回の特に保証機関になりますMIGA、これが設立されて融資をするということは非常にいいことでございますが、まずこれからのいろいろな資金の流れを見て、今まで減ってきた民間機関資金が果たしてこのMIGA創設によってどの程度出回ってくるのか、この辺をどういうふうに予測されておるか。  それから続けて言いますと、累積債務国の今の債務の状況からいきますと、よほど具体的な累積債務国を助ける問題点といいますか、政策にもタッチするぐらいの深く突っ込んだ追求がされていかないとこの累積債務の問題というのは解決していかない、こういうふうに思うわけです。この辺をどういうふうに思っておられるか、お聞きをしたいと思います。
  82. 内海孚

    内海(孚)政府委員 ただいま玉置委員御指摘のように、累積債務は約一兆ドルに達しようとしているわけでございます。この中で先ほど御指摘のMIGA、こういうもので直接投資がどの程度流れていくかということはなかなか計量的には難しいわけでございますけれども、今一番ある基本的な問題意識といたしましては、よくデット・エクイティー・スワップという言葉が聞かれるわけでございますが、つまり一兆ドルもある債務の一部でも直接投資に振りかえられないか。そのテクニックとしていろいろな提案があるわけですけれども、例えば市中に銀行が累積債務国に対して貸し付けている債権がある程度割引で売られているというような事実もあるわけですから、これから直接投資をしようとする会社がそういう債権を持っている、例えば銀行からディスカウントで債権を譲り受ける。譲り受けるとともにその債務国の中央銀行は、全額の投資があったものとしてローカルカレンシーを渡す。そうしますと、直接投資をしようとする人は割安に投資ができる。それから、金融機関の方はそれだけ肩の荷が軽くなりますから、また必要な業況あるいは業況が改善したときにニューマネーも出しやすくなる。  それから、直接投資を受ける方の債務国にありましては、いわゆる債務は減りまして、それが今度直接投資に振りかえることによりまして新しい企業活動がそこで起こり、その生産活動が起こり、雇用が造出され、輸出の力にもなってくるという、いわば一つ行為によりまして何重もの効果が出てくるというようなことを進めていこうという動きがあるわけですが、今回のMIGAはまさにそういう時期と軌を一にしておるという意味で、私はこれを速やかに御承認いただき、また順調に発足した場合にはかなりの効果があるものと思っております。  また、御質問の後半の方で、国際機関あるいは二国間の経済協力あるいはその資金協力というものが今までどういう問題があったかということについての御指摘がございましたが、それは私どもも共感するところが多いわけですし、国際機関においてもそういう認識が強くなってきておりまして、例えば世界銀行等の例で言いましても、一つ一つのプロジェクトができてからそれに融資するというだけではなくて、ある程度その国の経済構造自体の変革に資するような形でのローンが必要じゃないかというふうな方向が打ち出されているわけでございますが、それはまさに委員御指摘のような方向に沿ったものだというふうに理解されるわけでございます。
  83. 玉置一弥

    ○玉置委員 大蔵大臣、OECDなり、あるいはECとか七カ国とか閣僚会議十五カ国とかいろいろありますけれども、そういう経済閣僚が集まった中でこの累積債務の問題がいろいろあると思うのですけれども、その中で我々がいつも考えますのは、発展途上国が今さら工業化をしても技術的な面で非常に難しいのじゃないか、こういう気がします。いろいろな意見の中に、十分自国の資源を利用したり、あるいは人材を活用したりという意見もあるようでございますけれども一つの流れとしては、持ち味を生かすという意味では国際分業というような形で、いわゆる先進国が面倒を見るような形での分業化、こういう方向を打ち出していかなければ、今までみたいに、さっきお話し申し上げた自分のところで何か考えたら援助していこうということでは、今までの状態から一向によくならないのじゃないか、こういうふうに思うわけです。  各国の蔵相会議とか経済閣僚の会議とがそれぞれに行かれたときにそういうお話が出るのか、あるいは基本的な累積債務についての取り組みを変えていこうじゃないか、あるいはそんなのは国際機関に任せておいたらいいんだとか、そういうような方向の論議がされているのか、あるいは大蔵大臣としての、というよりもむしろ経済に明るい宮澤議員としてこの累積債務を見た場合に、今までのままじゃだめだ、こういうふうにした方がいい、私は例として国際分業の話を申し上げましたが、そういうのがございましたらちょっとお聞かせをいただきたいと思います。今まで聞かれた中での一つの流れと、それから大臣の御意見。
  84. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは問題が難しいものでございますから、とても私程度の経験であれこれ申せることではないと思いますが、一種の各国間の分業みたいなことを考えることはできるだろうかという試みは、御記憶かと思いますが、一度東南アジアのASEANの国々の間で我が国も一緒になりましてやったことがございます。みんなが同じ物をつくってもいけないわけでございますから、この国は尿素であるとかこの国は何々であるとか鉄鋼であるとか、そういうふうに分けたらどうだということでASEANで一遍やったことがございましたけれども、結論としては余りうまくいかなかった。それは、どうしてもおのおのの国にナショナリズムというものがございまして、やはりあれこれ一そろえ持ちたいという、そこはどうも指導者の一種の個人的な欲望であるばかりでなく、国全体のやはり気持ちらしゅうございます。でございますから、なかなかその分業というのがうまくいくようでいかないという経験を我々は一度東南アジアでいたしたわけでございますが、さあ、それが今でも同じであるかどうか。恐らくしかし、各国ともそういうナショナリズムを持つわけでございましょうから、そういうことはやはり言えるのではないだろうか。  そういたしますと、現実的な方法は、やはりIMFのようなものが間へ、これは国際機関でございますから特定国から影響力を行使されるという感じを受けずに済みますから、国際機関が入りまして、そうしてある意味での、これはどうしたって厳しい案になりやすいわけでございますけれども、再建案のようなものを当該国と一緒に相談をいたしまして、そしてそれに従って、それができますと各国もいわゆるニューマネーを出すというようなやり方、どうも遅いようでも、それが比較的今まで成功している率が多いように思うわけでございます。  ただ、玉置委員もよく御承知のとおり、そういう国々は生活程度がどっちみちそんなに高いわけではございませんから、その上に一種の耐乏生活を強いられるということで民衆がとても辛抱できない、あるいは政治がそれに耐えられないという御承知のように難しい問題がございますから、IMFも厳しい一方というわけにはまいりません。厳しい一方というわけにはまいらないので、やはりその国その国に受容し得る限度みたいなものをつくっていくしか方法がないので、それに対して各国が、その相談がまとまりますと援助体制に入る、どうもこの方法が今までのところ比較的成功しておるように私は見ております。
  85. 玉置一弥

    ○玉置委員 時間が参りましたので終わりますけれども、今アメリカのというよりも世界の金利が大分下がっておりまして、債務国にとってはまさに天の恵みでございますけれども、片方では経済が変化している、こういう問題がございます。ただ、金利が下がっている間に何か大きな手が打てないかということが一つと、それから今回出資比率の中で発言力を増していこう、こういうことでございますが、やはり国際金融機関なりあるいは援助の当事国に対しての人材派遣あるいは重要ポストの確保、これが非常に大きな効果を持ってくると思いますので、ぜひその辺でまた大臣の発言によって大きなポストをとっていただくようにお願いを申し上げたいと思います。では、終わります。
  86. 池田行彦

    池田委員長 工藤晃君。
  87. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 MIGA法案、IDA法案、HS法案、三法案について伺います。  最初にMIGAについてです。  多数国間投資保証機関を設立するそのねらいというのは、要するに工業国から発展途上国への直接投資という形での資金の移動、投資を促進する、それが最大のねらいである、こう理解してよろしいかどうか。それからその場合、もちろんリスクカバーということがありますが、それを除いてもう一つ書いてあるのは投資促進活動と言っておりますね。MIGAが投資促進活動をするというのは、要するに発展途上国に対してもっと外資導入に努めなさいとか自由化政策をとりなさいとか開放政策をとりなさい、そういうことも促進する活動意味するのか、この点について伺いたいと思います。
  88. 内海孚

    内海(孚)政府委員 まず第一の点でございますが、これは委員御指摘のとおり、特に単なる資金の流れというよりも直接投資、すなわちそこで実際にビジネスを興し、生産を興し、雇用を興しという活動についての保証機能でございます。  それから第二の点でございますが、これが具体的に意味するところは、こういった開発途上国に対して技術的情報の提供とかいったものを含むわけでございます。
  89. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 そのねらいということはおきまして、我が国経済にとってあるいは国民生活にとって、MIGAに加盟することはどういう意味があるのか、なぜどうしても加盟しなければならないのか。加盟の結果、一体どういうことが起きるのか、その辺が十分検討されたのかどうか。  例えばジェトロの新しい報告書によりますと、今や我が国の直接投資は年間百億ドル時代を迎え、そうして例えば八〇年から八四年の世界の海外直接投資のフロー額の比率では一二・五%、アメリカ、イギリスに次ぐ第三国になっている。今もっと多いかもしれませんが、それほど直接投資がふえているのに、なおかつこういうことがどうして必要なのか。そしてまた、今その結果失業者がふえ、空洞化が進むということが懸念され、現に起きているのに、その影響も検討した上でやはり加盟しなければならない、こういう判断なのか。
  90. 内海孚

    内海(孚)政府委員 我が国の直接投資のここ数年の傾向を見ておりますと、どちらかというと北米への直接投資というのは大変ふえております。これは一つは貿易摩擦という関係もありまして、生産拠点を向こうに移して多角化しようという動き、あるいは金融資本自由化に伴い金融保険業の進出が多いわけでございますが、例えば私どもの近辺のアジア地域あるいはLDC全体に対する直接投資という目で見ますと、これがそんなにふえておりません。そういった問題意識は私どもも持っておりまして、これは先ほど来各委員の方々からも御指摘がありましたけれども我が国は今や恐らく私どもが意識するよりも、世界におけるプレゼンスというのはずっと大きくなっているのだろうと思います。このような状況において、我が国開発途上国に対してできるだけ直接投資を行っていくということは、やはりその責務を果たすものであると思います。  もちろん我が国だけのことを考えますと、今委員御指摘のように、あるいはそこまでいくかどうかわかりませんけれども我が国での生産が一部そういった国々に移るということもあるかと思います。しかし、今や世界における先進工業国同士だけではなくて、先進工業国と開発途上国との間では相互依存関係がこれだけ深くなっておりますので、このところは総合的に見ると、やはり我が国の直接投資をふやしていくことが世界のためでもあり、またひいては我が国のためでもあるという結論に到達したものでございます。
  91. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 空洞化という言葉は使われませんでしたが、そういうこともあるかもしれないということも含んだ答弁だというふうに伺いました。  それはさておきまして、大臣、私の認識として、日本で大企業が直接投資の中心になっているのですが、それを促進する上で政府から非常に手厚い援助が各方面で与えられている。国からの助成制度が非常に手厚いと思っております。  例えばDACの統計を見ますと、ODA以外の政府資金の中で直接投資金融というのが断然日本が多いわけで、少なくとも七七年から八三年にかけて、例えば八三年はDAC加盟国全体の中で日本一国が五一%を占めてしまう、こういう勢いです。中心は輸銀だと言われておりますが、輸銀が直接投資にも随分使われているという。なぜ日本がこのように飛び抜けて多いのか、この点について意見を伺いたいと思います。
  92. 内海孚

    内海(孚)政府委員 ただいま委員御指摘のように、我が国は直接投資のための金融の割合が国際的に見ると大きな水準になっております。これは、各国によっていろいろなやり方があるわけでございます。例えばアメリカ、英国、カナダ、フランス等では、民間貸し付けを海外投資保険でカバーするという方が一般的でございまして、これは実はリスクは公的にカバーされるわけですが、分類上は民間資金ということで集計されるわけでございます。これに対して我が国の場合には政府関係機関、輸銀とか石油公団等がこれを直接ファイナンスするために、そういう統計上の形にあらわれるということであると思っております。
  93. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今の説明は、十分な説明になっていないと思うのです。直接投資に対して政府金融機関から直接金が流れるという場合と、リスクを保証するというのはまた別の事柄で、それはそれで日本は別の制度があるわけですから、それを混同しては統計上の問題にはならないと思います。  私が申し上げたいのは、このほか、いつも私が取り上げてまいりました外国税額控除につきましても、例えばみなし外国税額控除、これは大蔵省の提出資料によると、一九八五年だけでも五百五十億円あるということですが、タックス・スペアリング・クレジットというのは例えばアメリカはやらない、しかし日本は大々的にやってきている。今、租税条約十四カ国あると思いますが、こういう問題もあります。  それから海外投資保険の問題につきまして、この中に今言った投資に対する保険があるわけですが、通産省の貿易局の審議官である緒方謙二郎氏に言わせると、MIGAの機能はこれと非常に似ているということであります。  それとは別に、「通産ジャーナル」に通産省の貿易局輸出保険課の桐山正敏氏が書いているところによりますと、事業の規模からいっても世界各国の輸出保険機関の中で最大規模である、保険料の水準からいっても欧米諸国よりも相当程度低いということを誇らしげに書いておられますが、このように直接投資するのに政府資金がかなり使える。そうすれば、当然これはリスクの肩がわりになりますし、また投資した先に万一のことがあれば、当然国が援助してくれることが前提になりますから大変ありがたい。それから、タックス・スペアリング・クレジットとかそういうのも大量に使える。そしてまた、投資に対する保険制度が非常に行き渡っているという、かなり至れり尽せりで、むしろこういうことの再検討を今しなければならないというときに、これに加えてMIGAに加盟することになると一層手厚くなる。一層手厚くなるということは、今の直接投資の流れを一層急速に促進することになっていくであろう。この辺のことを考えできますと、同時に今問題になっている空洞化問題というのに突き当たることになります。  先ほど内海さんの方からは、アジアや途上国には最近は直接投資は余りいっていないのだということですが、少なくともアジア地域に関して言うと、この急速な円高の中で決してそういうことは言えないのであって、最近も野村総研が出している調査によると、大企業が本格的な多国籍企業化という道を進んでいる。その場合、アメリカなどの現地生産では、最も進んだ機種の主要な製品をここで生産する。日本でももちろんするけれども、そこへの部品を流す。それからもう一つは、東南アジアを中心にして低級ないし中級機種のものを生産する、あるいは部品を生産する。そしてこれはアジアからアメリカ日本へ供給する、大体そういうタイプになっていっているのであって、結局やはりアジアへの投資というのはますます促進されるということであります。  これは、最近出されました三菱銀行の一つの調査によりましても、今のままの直接投資がそのまま進むと一体どうなるかということで一つの試算を行っておりますが、大体八六年から九〇年にかけて年率二〇%程度の伸びと考えると、製造業で三十六万人あるいは全産業で五十二万人雇用が減るであろう。これは、かつて産業構造審議会の昨年出した少し分厚い報告の中で、二十一世紀まで、二〇〇〇年までたしか一五%の伸びで雇用機会が九十七万人減るであろうというよりか、もっと短期にとって、もう目の前のあと四年間、五年間にこれだけ減るということも予想しておるわけです。  私がここではっきりさせたいのは、海外直接投資をふやすのだ、ふやすのだということを言いながら、実は雇用がどんどん減るということは、これほど予想されているのにこれをあえて促進するということがあっていいのか。少なくとも国の経済政策というのは、雇用機会をふやすというのは最大限の項目にいつも挙げられてきたし、挙げられなければならないのに、雇用がどんどん減るということがわかっていながら、それに資するような政策をここでつけ加えるということがいいのか。私は、絶対にこれはおかしいと思うのですが、この点について宮澤大臣答弁していただきたいと思います。
  94. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど、アジアに対する投資がこのところそんなに多くないという意味のことを政府委員が申し上げたとしますと、それは、今工藤さんのおっしゃっていらっしゃいますのは最近の円高、これはたかだか十数カ月過去のことでございますから、その結果として企業が非常に今のそういうことを強く感じるようになっておる。したがって、それは実績としても統計としてもまだそんなに出ていないかもしれません。ただ、そういうふうなことがこの円高の結果としてここでかなり論じられるようになったことは確かだと思います。  そこで、これは時間をかけてゆっくりであれば、お互いにいいことである。我が国もこれだけ賃金が高こうございますから、アジアの国々にある種の製造業が出かけていってその国々がみんなよくなってくれる、分業が行われるということは、私は決して悪いことではないと思うのでございます。急速に起こりますと今おっしゃいましたようなことがございますけれども、一定の時間の間に計画的にぼつぼつ行われていけば、傾向としては決して悪いことではないと私は思います。それを空洞化と考えるか、あるいは雇用の問題としてとらえるかというあたりは前川報告が言っているところでございまして、ゆっくり時間をかけてそういうことが行われていって我が国の産業がいわば高度化すると申しますか、そういう分業が行われるということであれば、そんなにそれは大きな目で心配することではない。  心すべきことは、その場合にどうしても我が国に広い意味での第三次産業が残りやすうございますが、その第三次産業というものが、雇用条件とか賃金水準なんかでも製造業に比べるとどうしてもしっかりしてない場合がございますから、その点をよく心しておけばいいのではないかと思います。
  95. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今この議論をやったら大変切りがないわけですが、大蔵委員長も関心があると思いますが、亡くなられた池田首相のブレーンの下村治氏が最近いろいろ論陣を張っている中で、全部私が賛成しているわけではないけれども、何かもう国際化とか自由化とかそれが大前提でいいんだ、いいんだというのはおかしい、国民経済という立場を忘れたらとんでもないことになるという警告は、私は大変当たっていると思います。国民経済とは何か、やはりそこの国の経済の雇用機会をいかにふやすかということを抜きにして論じてはならない。だとすると、少なくとも過去の政府政策も何らかの形で雇用をふやすということが、実効面であったかどうか別として、掲げられたのが、最近はあえて雇用が減るということがわかった方向の選択ということが、前川レポートも含めて急速に進み出しているということだけ私指摘して、もう一つ、MIGAで私が大変関心を持っている問題について伺っておきたいと思います。  これは、先ほど挙げました緒方謙二郎氏がMIGAのいきさつについて、アメリカの強力な支持があってこれがつくられていったということです。そこで私もいろいろ調べてみましたけれども、結局アメリカの強力な支持でなぜMIGAがつくられるような方向に向かったかというと、一つアメリカにとって累積債務問題、アメリカの銀行にとっての累積債務問題になっている。特に、中南米諸国の大きな累積債務がある。これは下手をすると大きな銀行に波及しかねない、こういう問題で、いやブラジルだ、メキシコだという問題が非常に取り上げられてきた。これが一つ大きくある。  それからもう一つ非常に重要なことなんですが、特に中南米においてのアメリカの直接投資がどうなっているかという、アメリカの直接投資の非常に詳細な報告があります。七七年の報告と八二年の報告があります。この二つを突き合わせてみますと、出てくるのは、このカリブ海地域にはタックスヘーブンがいっぱいあります。あれを除いた中南米について言いますと、発展途上国に対するアメリカの直接投資、その投資残高としてはこの間五五・三%から六三・三%にふえているけれども、直接投資所得ということからいうと二七・五から一九・三ということで著しく減って、かわりにアジアでの直接投資の所得が一七%から四二・一%というようにふえているということなんです。ということはアメリカにとって、アメリカの銀行にとって、中南米のこの累積債務問題で一つの大きな破綻をこうむってはならないということ。そこで、そういう国々に対してもっと引き締め政策をやりなさいということになると、そこへ進出しているアメリカの多国籍企業にとっては投資はしているけれども所得はますます減る、こういうジレンマになってきて、その結果これを救済するのに何とかこういう多国間の機構ができないかということになったと私は判断しておりますが、その点いかがでしょうか。
  96. 内海孚

    内海(孚)政府委員 中南米を中心としたいわゆる債務累積国の問題は、アメリカの銀行にとっても大問題かもしれませんが、それは似たような程度において我が国の銀行あるいはヨーロッパの銀行も、同じ問題を有しておるわけでございます。また、もっと深刻なものは、そういった国々がしっかりと経済を立て直してもらうということが世界経済にとっての利益であるわけでございますので、特にこのMIGAについてアメリカがそういった観点から推し進めたというふうには、私ども理解しておらないわけでございます。  また、先ほどアメリカが既に中南米に対して投資しているものについてと、それから今回のMIGAとの関係について御言及がありましたけれども、MIGAの保証の対象となるのは新規の案件でございますので、私はその点は直接は関連づけは難しいのではないかと思っております。
  97. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 それは新規だということはよく知っていますけれども、その新規の中にはこれまでの投資がさらに新しい近代化投資すれば対象になるわけですから、全く無関係ではないということは御存じだと思います。  しかし、私のそういう観測というのはただ私個人のものだけでなしに、例えばこれは東京銀行の出した「東銀週報」の八六年一月十六日号にこのMIGAの問題点をいろいろ指摘して、この中で「MIGAを通じて特にアメリカの権益が他国の負担のもとで保護されることになるのではないかとの懸念が存在する」、こういうポイントの指摘もあります。  それからもう一つは、結局いわゆるリスク。リスク、非商業リスクという場合、収用されるとかいろいろあったときに、ある国の政府が正しくない侵略行動に出て、結局そういうことになってそういうものが対象になると責任はこっち側にあるのに、しかしこれが保証されてしまうような、そういうことになりはしないか、その場合周りの国々の負担においてされやしないか、これに近いような指摘もありました。ということは、さっき言ったアメリカの意図でということを私は描いてみたわけですが、それは私一人の疑問とか問題点の意識ではなしに、東銀のこういう中にも若干の疑問が見られると思うわけですが、こういう点につきましてはどうでしょうか。
  98. 内海孚

    内海(孚)政府委員 MIGAの協定上保証枠というのがありまして、保証枠は各国のシェアの範囲内でございますので、アメリカの権益をほかの国のいわば出資その他によってカバーをするということは、私はないものと思っております。
  99. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 これ、議論したら切りがないのですが、結局こういうMIGAをつくって、今の動向から見ますと、発展途上国に対する直接投資といっても、結局アメリカ日本も収益の高いアジアに集中してしまって、ここは多国籍企業の下請生産地帯みたいに変えられているというのが今の現状でありまして、それで日本企業の多国籍企業化の課題も一つはここに拠点をつくるということはさっき指摘したとおりなので、MIGAをつくるそもそもの意図として、何かこれによって民間資本が直接投資という形で途上国へ順調に流れるというよりも、結果としては東南アジアに集中するという形で、偏った形でしかいかない。一番求められているところには必ずしもいかないということになるであろうという判断を加えまして、時間もだんだんなくなってきましたので——まだ終わっておりませんよ。今度はIDAについて一言だけ伺っておきたいと思います。  それで、IDAの問題について言いますと、これはIDA融資とそれから世銀の貸し付けというのは一体にやられている。世銀グループと言うこともできる。ところが、歴史的につくられた経過を見ても、その後の発展を見ましても、結局アメリカの対外援助政策というのが非常に強い影響を及ぼしている。アメリカの対外援助政策というのは、二国間をまず重視する。二国間の方がアメリカの意図を相手側に伝えやすい。アメリカに反対するような国には金を出さないよということにもなるわけであります。今度のニカラグア干渉に見られるようなことにもなっていくわけですが、同時に国際機関に対しても、そういうアメリカの戦略が貫かれるような立場から絶えず見直しをやってきた、こういう事実があると思います。  なぜ、世銀なんかのこういう多国間の機関がそういう役割を果たせるかというと、機構の上においてもアメリカアメリカと非常に近い立場をとる日本、イギリス、西ドイツなんかを合わせると、投票権が非常に多いということによって保証されるわけです。こういうことで、アメリカだけだと思いますが、非常に露骨な安全保障援助計画というのを持って、これが国防報告に毎年出てきて、国防報告上の安全保障援助という形からこれがやられていく。それと同時に、世銀なんかのあり方についても、これに沿っているか沿っていないかということが絶えず見直されてきた、検討されてきた、これが事実だと思いますが、いかがでしょうか。
  100. 内海孚

    内海(孚)政府委員 IDAの関係で申し上げますと、今度IDA第八次増資につきまして御承認をお願いしておるわけでございますが、今度の増資に際しまして我々加盟国の頭に一番ありましたのはサブサハラ、アフリカ諸国の御存じのような経済困難というものが背景にあるわけでございまして、そういった国々に対し融資を重点的に配分するということが、我が国、欧州諸国を含む全拠出国で合意されているということを申し上げておきたいと思います。
  101. 池田行彦

    池田委員長 工藤君、時間が参っておりますので簡潔に願います。
  102. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 はい。  今の答弁は大分そらした答弁で、アメリカの戦略的意図が入っているかどうかということと、今度とういうことが議論されたということはまた別の問題なんですが、時間が来たということなのでそろそろ締めくくるわけですが、最後にHS法案について一言だけ我が党の立場について述べておきたいと思います。  商品分類国際的統一でHS制度をとるということにある合理性があるということははっきり認めた上でありますが、同時に関税税率表がこれにくっついて、それに盛られた税率については、我々が従来反対してきたという内容のものが多いわけであるということから、この法案に賛成できませんよということを申しまして、私の質問を終わります。
  103. 池田行彦

    池田委員長 これにて各案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  104. 池田行彦

    池田委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、順次採決に入ります。  まず、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  105. 池田行彦

    池田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、多数国間投資保証機関への加盟に伴う措置に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  106. 池田行彦

    池田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、商品名称及び分類についての統一システムに関する国際条約実施のための関係法律整備に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  107. 池田行彦

    池田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 池田行彦

    池田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  109. 池田行彦

    池田委員長 次に、本日付託になりました内閣提出昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案議題といたします。  趣旨説明を求めます。宮澤大蔵大臣。     —————————————  昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案     〔本号(その二)に掲載〕     —————————————
  110. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま議題となりました昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  御承知のとおり、我が国財政を取り巻く環境には一段と厳しいものがあります。このため、政府は、昭和六十二年度予算におきまして、引き続き財政改革を一層推進するため、歳出の徹底した節減合理化を行うとともに、現下の経済情勢にかんがみ、景気の着実な拡大に資するためできる限りの努力を行うこととしているところであります。  まず、歳出面におきましては、既存の制度、施策の改革を行うなどあらゆる分野にわたり経費の節減合理化に努め、全体としてその規模を抑制する一方、社会経済情勢の推移に即応するため、公共事業の事業費確保、雇用対策の充実を行うほか、限られた財源を重点的、効率的に配分するよう努めることといたしました。これらにより、一般歳出の規模は、三十二兆五千八百三十四億円と前年度に比べて八億円の減額となっております。これは、昭和五十八年度以降五年連続の対前年度減額であります。  他方、歳入面におきましては、最近における社会経済情勢の著しい変化に即応し、税制全般にわたる抜本的見直しを提案するとともに、税外収入につきましては、可能な限りその確保を図ることとしております。  しかしながら、六十二年度におきましては、なお財源が不足するため、特例公債の発行を行うこととするほか、国債費定率繰り入れ等の停止などの措置をとらざるを得ない状況にあります。  本法律案は、以上申し述べましたうち、特例公債の発行等、昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置を定めるものであります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、特例公債の発行であります。  昭和六十二年度の一般会計の歳出の財源に充てるため、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で特例公債を発行できることとしております。  第二は、国債費定率繰り入れ等の停止であります。  昭和六十二年度における国債の元金の償還に充てるべき資金の一般会計から国債整理基金特別会計への繰り入れについて、国債総額の百分の一・六に相当する金額の繰り入れ及び割引国債に係る発行価格差減額の年割り額に相当する金額の繰り入れは行わないこととしております。  第三は、政府管掌健康保険事業に係る繰り入れの特例であります。  昭和六十二年度における一般会計から厚生保険特別会計健康勘定への繰り入れについては、健康保険法に規定する国庫補助に係る額から千三百五十億円を控除して繰り入れるものとするなどの措置を講ずることとしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  111. 池田行彦

    池田委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  112. 池田行彦

    池田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。早川勝君。
  113. 早川勝

    ○早川委員 いわゆる財確法案につきまして質問させていただきます。  たしか昨年の秋にも私は同様な法案につきまして大臣に質問した記憶がございますが、そのときに、いわゆる特例国債が出されてからもう十年を超えてしまっている、その間に、特例国債脱却、財政再建のための財政運営とその手だてについて大臣の所感を伺った記憶があります。たしか、五十年代の前半には積極財政運営をやりながら自然増収期待の財政再建で、後半に至りましては行革で歳出削減、そういう形でやってきたわけですけれども、今日の事態を見るとどうもうまくいってないのじゃないかなというふうな私の理解を披瀝しまして大臣に見解を伺ったときに、長い時間をかけて判断する必要がある、まだ十年しかたっていないのでという答弁をいただいたことを記憶しておりますが、まだ半年しかたっておりませんけれども、再度伺いたいと思います。  今までの財政再建に対する政府・自民党の取り組みについて、どうもうまくいかなかったのじゃないか、失敗したのじゃないかというようなことが私の考え方なんですけれども、それについてのお考えです。
  114. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一般会計の国債依存率は着実に減少してまいりましたから、この点を見ますと、確かに歳出削減、いわゆるゼロシーリング、マイナスシーリングというものは効果を生んでおるし、また、そうやっております間にいろいろな制度の改善も行われました。また、受益者負担というような思想もかなりはっきり世の中で認識されるようになりまして、これらは私は非常に大きな成果であったと思っております。  ただ、おっしゃいますように特例公債、建設国債もそういう意味ではそうかもしれませんが、特例公債を思ったほどのテンポで減少させることができずにおりますから、国債費というものはふえるばかりである。これが非常につらいわけでございまして、これがまた一般会計の二割ということでございますから、そういう意味ではなかなか財政の弾力性というものは生まれてきていないと考えざるを得ません。しかも、六十五年には脱却するという目標は、これはなかなか年とともに難しくなっておりますから、成果は上げてまいりましたが、なお道半ばだというふうに私は申し上げるべきかと思います。
  115. 早川勝

    ○早川委員 歳入に占める公債依存度の割合が若干低下して、例えばことしの場合二〇%を切った、こう言われるのですが、この間、ことしを入れてそうなんですけれども、六年間定率繰り入れを停止しているわけです。これを従来からの方針どおり繰り入れていきますと、繰り入れるいうことはそれだけの財源が必要でまた特例国債の増発ということになると思うのですけれども、仮に定率繰り入れを停止しないでそのまま計算してみますと、おっしゃられるような、もちろん率は下がるんですけれども、一〇%を切るとか二〇%を切るとかそういうことは一切生じないと思うのですね。例えば、今度の六十二年度予算で見ましても、二三・七%ぐらい、依然として約四分の一、それぐらいに上がってしまう。こういうふうに考えますと、やはりそれほど改善してないんじゃないか。この背景については、NTTの株の売却だとかそういう手だてが講じられた成果ではあると思うのですが、よく考えてみますと、財政そのものを本来の姿というような形でとらえた場合、余り改善されていない、こういうふうに思います。  それともう一つ、財政再建に当たって、歳出カット、行革路線の今言われたような見直し、それから受益者負担の問題だとかあるいは健保への繰り入れの停止だとかいろいろ講じられているんですが、同時に予算編成のあり方を見ますと、とにかく当初予算ではゼロシーリングを含めてむだを削る、でも、結果的に一年を通じて補正予算を一体として見ると、補正予算は、御存じのように予期しない事態が発生したので補正予算を編成するんだ、これが本来の趣旨だと思うのですけれども、実際を見てますと、そうじゃなくて、どうも景気が当初見込んだような形では浮揚しないというような形で、いわゆる政策的に補正予算を組むわけですね。そういうやり方をした結果、先ほど受益者負担が定着した、こう言われたんですけれども、先ほど本会議でも指摘しましたように、福祉と教育のところに物すごくしわ寄せして、そこの部分がカットされていっている。そして補正予算のところで景気浮揚をする、こういうやり方を続けてきているわけですね。今の状況からしますと、また六十二年度予算も同じようなことが行われようとしているのですけれども、どうもそういう手法というんですかそういう予算編成のあり方についてもそろそろ転換をしなければいけないのじゃないかと思うのですが、この点はいかがでしょう。
  116. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 ただいまの御指摘のように、このところ数年間、五年間連続一般歳出をゼロにする、そのために若干の無理は承知でそれなりに各省それぞれの立場における内なる改革あるいは制度改革を進めてきたわけでございまして、それはそれなりに重要な役割を果たしてきたと私ども理解しておるわけでございます。  補正予算につきましては、災害その他その時点におきます緊要な歳出の需要に充てるためにそれぞれ必要な施策を講じておるわけでございますが、それらを通じました決算ベースで見ましても、先ほど大蔵大臣お話ししましたように、例えば公債依存度は一番ピーク時は三五%近くあったものが既に一九・四ということで二割を割るような状況になっておりますし、特例公債につきましても、七兆円を超えていたものが五兆円を割るようなところまで改善してきている。そういったことで、私どもは、当初予算の厳しい編成態度というものが財政歳出の改善に十分な役割、十分とは申せないにしても、相当な役割を果たしたものと考えておる次第でございます。
  117. 早川勝

    ○早川委員 ただ、そういう財政主導主義的な発想に立つと若干改善したというとらえ方ができると思うのですけれども経済全体の中で財政の役割というふうに考えますと、その点はどうも不十分だったんじゃないかなという感じを持つんですけれども、そういう観点からの認識はいかがですか。
  118. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 大臣がたびたび申し上げますように、財政がむしろ経済社会の実態に十分対応できるような状況にまで財政体質を改善するということが先決でございまして、むしろそういった状況にないということが今の問題を非常に複雑にしている原因の一つではないだろうかというふうに思うわけでございます。  ただ、そういった中におきましても、それぞれの年度の予算編成に当たりましては、経常経費等につきましては、年金、医療等を含めていろいろと改革をしていくという努力で着実に一定の成果をおさめておりますし、それから、それぞれの年度に予想される財政需要については限られた財源の中で重点的に配分をしている。例えば、本年度におきましても、不十分という評価はあるいはあろうかと思いますけれども、国費は抑制しつつも、例えば公共事業につきましては五・二%程度の事業費の拡大を図っている、あるいは三十万人雇用プログラム、あるいは産業基盤整備基金等、社会経済の構造調整のために必要な施策はそれなりに十分な対策を講じているつもりでございます。そういった限られた中で、必ずしも完全に十分とは申せないという面は否定できませんけれども、それぞれ必要な対処法はしているつもりでございます。
  119. 早川勝

    ○早川委員 ただ、今日の時点では、例えばOECDの理事会ですか、そこでも財政出動を公約して、前川レポートにおいても、こういう状況であるけれども財政が前に出なくちゃいけない、こういう報告なりそういう認識が、そしてその必要性が高まっているわけですね。そうすると、今までの手法、そして若干財政体質の改善に役立ったという面と、これから財政が前に出ていかなければいけないという事態を迎えたこのバランスをどういうふうにとろうとされておるのか、伺いたいと思います。
  120. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 過去二、三年を振り返ってみまして、「経済の中期展望と指針」あたりで考えているところと違いますのは、やはり名目成長率、成長率がもう一つ思ったほどでない。したがって、そこから来ます税の自然増が思ったほどでない。成長率の問題については、実質と名目の差が、物価が超安定、卸売物価のようにマイナスというようなことになりましたことから来る点も私はあると思いますが、概してどっちが先、どっちが結果となかなか言いにくいことですけれども経済全体がほかの事情もあって思ったほどの成長をしないということから、それが財政にはね返ってくる税の自然増収が思ったほどない、そういう要素もあると思います。ですから、ここへ来まして内外からこういう要請もございますから、やはりこれから後の財政、かなり思い切った努力をいたしまして内需振興に出ていかなければならない、今そういう時期になっておる。さっき申しましたように財政再建が道半ばでございますから、それを忘れていいというわけにはまいらないのでございますが、もうちょっとやはり財政が努力をしなければならない状況になってきているのではないかというふうに私は思っております。
  121. 早川勝

    ○早川委員 新しい財政運営の転換期を迎えているんだなということを私も感じますし、そういう状況だと思います。  ただ、もう一つ、いわゆる行革路線に基づいた財政運営、予算編成が行われてきた中で、予算の構成、歳出の中身を見ますと、先ほど指摘されましたような国債費のウエートが物すごく上がってきている。一方一般歳出の方は抑えられているわけですが、同時に防衛費のウエートが若干上がってきているし、こういうところが、国債費が物すごくふえて、それから社会保障費のところがかなり抑えられていて、公共事業費も一般会計の方での支出のところは抑えられている。防衛費がふえてきている。どうも財政支出の構造のところに変化が起きてきている。見ておりますとどうも余りいい方向じゃないんじゃないかという感じを持つのですけれども、その点についてはどんな考えをお持ちですか。
  122. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 一般歳出を厳しく抑制している中で主として伸びている経費を見てみますと、社会保障、それから防衛あるいは経済協力といったところが主として伸びているわけでございます。国債費が一番伸びているわけでございますが、それは別といたしまして、一般歳出で申しますとそうなっているわけでございます。  社会保障につきましては、これは御案内のように高齢化社会を控えまして、年金、医療といったものがありますので、かなりの制度改革をし給付と負担のバランスをとりながらも、やはり相当程度伸びざるを得ない。防衛等につきましては、やはり中期防衛力整備計画の着実な実施を図っていくと同時に、防衛費につきましては後年度負担等が多いものですから、そういったもの等も勘案しながらふえていく。経済協力につきましては、ODAの中期計画、それに即して国際的責務を果たしていく、そういった面はどうしてもふえざるを得ないわけでございますし、また人件費等もふえざるを得ないものでございますが、その他の経費につきましては、極力やはり行政の体質をスリムにしていくというふうな観点で、農林予算あるいは中小企業予算、文教等につきましてもそれぞれ相当程度減額になっているわけでございまして、こういった中でやはり行政の体質の改善は相当程度進んでいるんではないだろうかというふうに私ども認識しているわけでございます。
  123. 早川勝

    ○早川委員 大臣は、予算を、あるいは補正予算を含めてそうですけれども、これから若干内容的に変えていかなければいけない、そういう局面だという答弁を先ほど伺ったのですが、それに関連しまして、財政再建のいわゆる目標の六十五年度特例国債脱却というのはなかなか困難な状況にあるということも言われているんですが、これは新聞報道のものですからどうかとは思うのですけれども、新しい目標を設定する、そしてその中で建設国債なりをもっと活用してもいいんじゃないかという考え方、構想が一部にあるわけですね。その目標というのは、あるいは基準というのは、国債の残高を対GNP比で押さえていくようにしたらどうかという一つ考え方があるんですけれども、これについてはどのような考え方をとられますか。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは私も最近一新聞の報道で読んだ記憶がございますけれども、少なくとも私の考えではございません。世の中にそういう御説があるかもしれませんけれども、私はそういうことを考えたことはございませんで、正直を申しまして、まだ六十五年度までに多少の日がございますものですから、どういうことにしていいか、新しい目標を掲げるとすればそれなりの財政経済あるいは国際経済等の展望に立ったものでございませんと、ただ何年か延ばせばいいというようなわけにはまいりませんので、その作業をやはりかなりきめ細かくいたしませんといけないだろう、またそういう準備もまだいたしておりませんものでございますから、今のところ、どういうかわりの案があり得るかということは、特にこれといった考えを持っておりません。したがいまして、せんだって以来、六十五年というのは難しくはなってまいりましたけれども、しかし、これにかわるべきものがまだ見つかっておりませんので、にわかに看板をおろすわけにいかないと申し上げておりますのは、文字どおりそういう意味でございます。
  125. 早川勝

    ○早川委員 財政運営の新しい方向転換の一つでは、先ほどの質疑にもございましたように、減税の実施の問題、いわゆる先行して減税を行えという問題があると思うのです。そのときの財源はということの一つに、NTTが当初予定した以上の高い価格で売却されている。それがどうも余裕があるのじゃないかということで、それを充てていったらどうなんだろうかというのが一つ考え方としては成り立つのです。私などは、御存じのようにいつまでもNTTの株を売却できるわけじゃなくて減税に当たっては恒常的な財源が必要だということを言われるのですけれども、どうもそれはその先行という意味そのものを消してしまうわけですから、そうじゃなくて、やはり財源はそういう形で補てんしながら、同時に並行して抜本的な、あるいは現行不公平税制なりをきちっと整理しながら、年次的に計画的にやっていく中でバランスできていくのじゃないか、こういうことを考えているのですね。  そういう意味で、新聞等で拝見しますと、大臣は、NTTの株は国民の資産であり、そして何らかの資産形成のために役立てたい、こう言われているのですが、そういうことよりも、今やはり減税先行だ、いわば総理の公約でもあるわけですから、それを実現するための手だてとして考える必要があるのじゃないかと思うのですけれども、この点についてはいかがですか。
  126. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはこれから協議機関でいろいろ御検討いただくことになると思っておるのでございますけれども、私がおそれておりますのは、仮に減税だけが協議機関で御議論になりまして御検討の対象になりましてこれで行けというふうにおっしゃいますと、財源はここにNTTがあるじゃないかということになりますと、NTTはいっときの財源でございますし、私どもとしては、減税があればそれは税制全体の中で行く行くはこういうことになって税収はこういう方法で確保されるのだということでございませんと、減税だけが、いっときの先行でなく、減税だけが結局決められてしまって、それに見合う増税なり新税の方は全く忘れられてしまうということになりますと、これは財政がもたないものでございますから、それで御協議が行われます際に、少なくとも全体の展望に立って、あるときからはこういう新税がある、こういう増税がある、したがって結局は歳入中立的になるのだ、ただしそのうちこれは急ぐから先行させるということでございますと、またそれはそれである時期には全部が中立になるということで理解ができるわけでございますが、不幸にしてそういうことになりませんと、減税だけが決まってしまって、しかもNTTがその見合い財源であるということになりますと、先に行ってNTTの財源がなくなりましたときにはこれはどうにもならぬということになりますものですから、協議機関におかれて全体の展望のもとにひとつお考えをいただきたいということを実は申し上げておるわけでございます。
  127. 早川勝

    ○早川委員 それは、これから具体的な人選を含めてつくられます協議機関ですか、協議機関に対する信頼性の問題じゃないかと思うのですね。もう一つは、その協議機関でどれだけの範囲のものが、議長裁定の中身、それこそ税体系を含めて全般に議論しようということを考えますと、時間の要素も入ると思うのですね。こういう時間の問題と、その機関そのものに対する信頼があれば、今大臣が心配されたようなことは起こり得ないのじゃないかなという感じ一ついたします。  それともう一つ、NTTの問題について、今の計画ですと、例えばことし売ってしまって、あと来年以降もないというわけのものでもないわけですね。やはり二年なり三年なりと、まあ株価の問題ですからなかなか将来予測というのは難しいのですけれども、少なくとも二年なり三年なりの余裕は与えられていると考えますと、余り心配なさらずに、また機関に対して率直にその考えられている意図なり希望を述べられることによって、そして信頼すれば、そういう問題は解決すると思うのですけれども、減税が国際公約となっているということを考えますと、先ほど国際関係の法案が議論されましたけれども、やはり信頼性の問題があると思うのですね。これは約束したことを着実にやっていくということが、そういう貿易摩擦問題等含めて長期的には解決の道につながるというふうに考えますと、まず国会の中の協議機関に対する信頼、不信をぜひ払拭されて考えていただきたいと思います。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは決して信頼を申し上げていないという意味ではございませんで、一つの見解の問題になるかと思うのでございます。NTTも財源じゃないかとおっしゃればそれは一つの見方、考え方でございますから、そういうことで信頼の有無ということを、失礼なことを申し上げておるわけではありませんで、私どもの見方ではやはり減税財源というものは恒久的なものにお願いしたいということを申し上げようとしているわけでございます。
  129. 早川勝

    ○早川委員 将来に残る資産というふうに大臣考えられた問題についてまた考えますと、先ほど議論がありましたように、例えば土地の買収に使われないという保証はない。NTTの財源が社会資本投資というふうに仮に振り向けられる、その場合の社会資本投資の中身をどうするかといったときに、土地の買収に食われてしまう、例えば三割も四割もそういう形で使われると、結局は同じような形になってしまうのですね。例えば資産形成、資産配分のために使おうと思っている部分が結局は土地所有者のところへ移転するだけだというふうに考えますと、どうもそういうところへ行くよりも、減税という形で広くそれこそ対象を多くして使っていくことが今必要な内需拡大につながるのじゃないか、またそれが今必要な財政における所得の再配分機能に役立つのじゃないか、こういうふうに考えるものですから、百歩譲って資産形成といった場合に、その中身をかなり限定なり精査していただく必要があると思います。ただ、それ以上に減税の方をぜひ考えていただきたいと思っております。  次に、財政再建と非常に深いかかわりのあるのが税制改革の問題だと思います。  実は、昨年の秋にやはり私が質問した一つ内容が、税制改正をやるときにもっと時間をかけてやるべきじゃないか、そういうことをお話しした記憶がございます。それで、中曽根首相がレーガン政権、レーガン大統領個人を含めて深いつながりがあるならば、税制改正でその時間の問題、段取りの問題もぜひ吸収すべきだということを私は話した記憶がございます。  その点で考えますと、今回の税制改正の諸法案が御存じのような結果になるわけですが、これからの改革への取り組みについて、たしかその際、主税局長も、レーガンの取り組みについて私が指摘したときに、いや、日本もそれぐらい十分時間をかけてやっているよということをお話しされたのですけれども、もう一度その点を伺いたいと思います。  例えばアメリカの税制改革の経過を見ますと、八四年の一月二十五日ですかレーガン大統領が一般教書で税制改革に取り組むということを明らかにして、十一月下旬に財務長官が税制改革案を大統領に渡す、翌年の五月二十八日にレーガン大統領が税制改革案を発表するということで、そして昨年の十月ですか、こういうふうに考えますと、大ざっぱに言いますと、大統領がこういう税制改革をやりたいんだということを国民の前に明らかにして、成立したのが一年半後だというふうに考えますと、昨年も指摘しましたように、どうも日本の場合には半年ぐらいで決着をつけようというのはまずいのじゃないかという話をしたことを覚えているのですが、今、今日の時点でどんな考えを持たれているか、ちょっと伺いたいと思います。
  130. 水野勝

    ○水野政府委員 それでは時目的関係につきまして私どもの方からまず御答弁申し上げたいと思います。  アメリカにおきますところの経過はただいま委員御指摘のような経過をたどっておるわけでございますが、八四年の一月大統領が教書で示されてから約一年間、その年の十一月末までいわば財務省の中で検討をして、当方で申し上げれば大蔵省なり主税局で検討をしておって、主税局案と申しますか大蔵省案を約十カ月かけて取りまとめたということではないかと思うわけでございます。それから今御指摘の翌年の五月に大統領が大統領案としてのものを取りまとめられた。これはその間約半年でございますが、これも全く大統領の手元と申しますか、いわば内閣としてと、日本流に申し上げればそういうことかと思うわけでございます。アメリカは、専ら勧告は大統領なりがいたすわけでございますけれども、立案はそれぞれ上院なり下院で行われる。その作業が始まりましたのが、八五年の六月に下院歳入委員会審議が始められた。公聴会と申しますか、要するに審議が始まって、それから約一年上院、下院を通じて審議が行われて去年の十月に成立したという経過ではないかと思うわけでございまして、国会と申しますか議会で審議が始まってから約十六カ月間の審議が行われているということでございます。  そういう点から申しますと、日本の場合は、おととしの九月二十日に内閣総理大臣から諮問が出されまして、去年の十月末までいわば税制調査会で検討が行われたということでございまして、それから与党関係方面との調整が行われまして、ことしの一月に政府としての税制改正要綱を決定さしていただき、これを法案化して二月に政府案として御提出さしていただいたということでございます。そこからまさにアメリカの八五年六月からの一年半と申しますかこの審議の過程に入っておる、そういうことではないかと思うわけでございまして、アメリカと比べまして御提案までの時間等々につきましては日本の方が短いというようなことはないのではないかと思うわけでございます。
  131. 早川勝

    ○早川委員 ただ、国民の前に税制改正の税率から含めて明らかにされた期間を比べますと、十六カ月と六カ月ぐらいのものですか、格段の差があるわけですね。アメリカの下院で公聴会が開かれて、確かに我が国アメリカの議会との違いがあるわけですが、少なくとも下院の歳入委員会での公聴会は資料を見ますと二十八日間に及んでいる。それから上院の財政委員会の公聴会が七日間。日本の場合どうなるのか、今となってはわかりませんけれども、通常、税法における公聴会というと、参考人というのですかね、一日ぐらい大蔵委員会で、そしてせいぜい予算委員会でも二日ぐらいが最長じゃないかというふうなことがこれまでの慣例だと思いますね。  そういうふうに考えますと、国民の前に全体像をとにかく明らかにして、そして国民が本当にどういう考えを持っていて。積極的に公聴会に出ていってしゃべろうじゃないか。たしか下院の公聴会の議事録が、ページ数で言うのはなんですが、八千何ページに及ぶ議事録が出ているとか、それこそ何人という公述人じゃなくて、二十八日間もやれば何百人という公述人が参加しているわけですね。そういうことはやはりぜひ参考にして、せっかくシャウプ以来の税制改革、抜本的な、根本的な改革をやるんだというその意気込みがあるわけですから、それぐらいの時間的余裕を持って参加してもらう、国民の意見を聴取する、これが、不幸にして今現在税に対する国民の不満なり不信が非常に高まっているわけですが、それを払拭する一つの手だてじゃないか、どうしても欠かせない過程じゃないかと思うのですが、そういう取り組む姿勢をお持ちかどうか、伺いたいと思います。
  132. 水野勝

    ○水野政府委員 例えば政府税調でございますと、おととしの九月二十日に審議が始められまして、去年の四月に中間報告を取りまとめて中間的に世の中にお示しをしたわけでございます。それからまた去年の夏以来審議が再開されまして、十月二十八日に最終答申が取りまとめられたわけでございまして、その間百二十七回の審議が行われまして、二百四十時間ぐらいの審議が行われておるところでございます。それによりまして原案を取りまとめまして御提案申し上げているわけでございまして、まさにこれから国会でよろしく御審議をお願い申し上げているところでございます。
  133. 早川勝

    ○早川委員 百二十七日ですか二百四十時間ということもさることながら、やはり広い各界各層の意見を、今確かに国会、そういう意味で私は国会でやればいいと思うのですね。つまり、政府税制調査会でどれだけ時間をかけたかということよりも、レーガンの税制改革について私が指摘したように、とにかく大統領案が出て国民にオープンになってから十六カ月かかっているわけですね。つまりその前段の過程でどれだけ時間をかけたかということが僕は違うと思うのですね。そういう意味で、協議機関のこれからのあり方にもかかわるのですけれども政府として時間は十分にとるんだという決意がおありかどうか、伺いたいと思います。
  134. 水野勝

    ○水野政府委員 今回の税制調査会の審議におきましては、今まで余り例のなかった方式として、税制調査会それ自体におきましても参考人においでいただいて御意見も聞きましたが、地方にも三回ぐらい出てまいりまして地方公聴会を行いまして幅広く御意見を伺うようにされておったわけでございます。アメリカにおきましては、下院におきまして審議が始まりましてから十数カ月でございますけれども我が国の場合におきましては、当面の問題としては内需拡大という観点からの減税の問題としてはかなり急がれている面もあるわけでございますので、ここのところは協議機関の御協議を早く開始され、早い機会に結論をいただいて国会で本格的に御審議を願えれば幸いであると考えておるわけでございます。
  135. 早川勝

    ○早川委員 ぜひ十分な時間をかけて議論していただいて、国民の納得を得られるような、そういうそれこそ時間的ゆとりを持って臨んでいただきたいということを強く要望いたします。  それで、国債整理基金の問題についてちょっと伺いたいと思うのですが、この一月三十日に、いわゆる「財政の中期展望」、再々変わるものですからあれなんですが、出されているわけでして、これはいわゆる一つの見通しにしかすぎないということを言われているのですが、その際の試算の前提になっている税収は、名目成長率が六%で弾性値は一・一という前提で計算されているのです。  その前に、経済企画庁の方に来ていただいているのですが、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」というのと六十一年度リボルビング報告ということで毎年度点検されるわけですが、その率をちょっと見ますと、八〇年代の「展望と指針」から名目成長率でもやはり六十一年度の場合下がるわけですね。一%ぐらい下がるということが出ているわけですが、今現在の状況で、六十二年度スタートしてまだ間がありませんけれども経済見通し、名目成長率、実質成長率の問題についてどのような見通しを持っておられるか伺いたいと思います。
  136. 柳沢勝

    ○柳沢説明員 お答えいたします。  御指摘のとおり、六十一年度リボルビング報告におきましては、実質成長率につきまして見通しを出しておりますが、実質成長率につきましては六十二年度以降平均的な姿といたしまして年平均四%程度、また名目成長率につきましては、物価の安定等がございますので、五ないし六%程度を見込んでおります。当面円高のマイナス効果が強く出ておりますから、六十二年度につきまして輸出産業を中心にかなり厳しい局面にあるというふうに受けとめております。  しかしながら、リボルビング報告におきましては、円高のマイナス面が大きい期間については、財政再建の基本理念を踏まえながら必要に応じ適切かつ機動的な経済政策要請いたしております。これに即しまして現在強力な経済対策について検討が進められているというふうに承知いたしております。このような経済政策効果を踏まえてみますと、期間平均といたしましてはリボルビング報告で述べておりますような四%程度の成長は可能であるというふうに考えております。このような実質経済成長率が達成されますならば、物価安定基調の中で、名目成長率につきましても、六十三年度以降六%程度、期中平均全体といたしましても六%程度の成長が可能であるというふうに考えております。
  137. 早川勝

    ○早川委員 円高が恐らくこの時点、当初経済見通しの時点よりは強まっているということが一つあると思います。もう一つ同時に春闘の問題、ベアの問題ですね、これらのことを考えますと、これから施策を講じれば四%の実質成長が可能、そしてそれによって名目成長率も六%ぐらいのものであろう、こういうことを言われたのですが、どうもそういう状況ではないのじゃないか。まさに期待はしたいと思うのですけれども。例えばリボルビングは、六十三年度、来年度から三年間平均六%程度の名目成長率だろうということを言われているのですが、どうもそうはいかないのじゃないかなという感じの方がいろいろな要素を考えますと非常に強いのです。それを考えますと、収支見通しをやったときの、税収は名目成長率六%で弾性値一・一というのも、どうも崩れていくのじゃないか、こういうことを考えざるを得ないのですけれども、この点はどうですか。
  138. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 「財政の中期展望」につきましては、これは歳出につきましても同様でございますが、現在の制度、施策を前提に後年度負担推計という形でかなり機械的な前提を置いて計算しておるわけでございます。税収につきましても同様でございまして、これをどうするかという問題、いろいろ御議論あろうかと思いますけれども、やはり何がしかの一定の名目成長率を前提とし、そこから経験的に得られる弾性値を掛け合わせたところで税収を見込まざるを得ない。そこで、提出いたしました「財政の中期展望」におきましては、「経済社会の展望と指針」で見込まれておりますリボルビング後の成長率六%、それまでは実は昨年までは六ないし七%という名目成長率を見込みましてその中間値である六・五というのをとっておったわけでございますが、今回は、先ほど企画庁からお話がございましたように、若干円高とか石油価格の低下等を反映いたしましてデフレーターが下がっているといったふうな実態を反映しておりまして、そういったことを踏まえて、今後は六%程度の成長、六十三年以降は六%程度の名目成長ではないか、こういうふうな推計がございますので、これに過去における税収の弾性値一・一を掛けまして六・六という数字を出したわけでございますが、これはまさに今後の経済の実態がどうなるかといったふうなことによって現実にはもちろん変わり得るわけでございますが、一応の私どもの推計の前提としてはそれ以外の数値はちょっととり得ないといった状況にあることも御理解いただきたいというふうに思います。
  139. 早川勝

    ○早川委員 それで、国債整理基金の繰り入れの問題をちょっと伺いますが、定率繰り入れが六年停止で、試算を見てみますと、どうもここ当分、まあここ当分というのも、出された資料を拝見しますと、NTTの株の売却がきちんと進む間ぐらいは整理基金にゆとりがあって支障を来さないというような数字が出てくるわけですけれども、それも六十五年度には余裕金残高試算を見ますと一千五百億円しかない。果たしてそういった事態に支障が起きないのかどうか、この点だけちょっと伺いたいと思います。
  140. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 ただいま委員御指摘の点は、「財政の中期展望」とあわせて提出いたしました「国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算例」、これは実は二通り提出しております。ケースAというのは定率繰り入れを引き続き行いなおかつNTTの株式売却も償還財に充てるケースでございますが、今御指摘の点は恐らくケースBで、定率繰り入れをNTTの株式によって償還財が確保できる間は停止しておく、NTT株を主体として償還財に充てるケースということであろうかと思います。  確かに、この前提におきましては、昭和六十五年におきましては余裕金残高が千五百億ということになっておるわけでございますけれども、これは売却株数及び価格につきまして一定の前提を置いております。つまり、昭和六十一年から六十五年まで百九十五万株ずつ売却していくという前提を置いておりまして、その価格というのは実は昨年の秋に値決めいたしました百十九万七千円というものを基準にしてその株数と単価を掛けましたものに安全率を見ましてさらに八掛けしているというふうなことを前提にこれを計算しているものでございまして、現実に今後株価が、六十二年の株につきましてはこれから株式を売却するわけでございますが、この株価は先ほど御指摘のように時価からいえばもっと高いではないかという御意見もあろうかと思いますし、これまた売ってみなければわからぬわけでございますが、こういった価格状況いかんによってこの数字は変わってくるわけでございます。  また、この千五百億という数字は今申し上げた機械的な仮定計算の上に行われた数字でございますので、現実にその時点で余裕金残高をどれだけ持つべきであるか、あるいは持つべきであるというふうな意味での定量的な判断を踏まえたものではない、したがってそこら辺は一応の仮定計算としての数字であることを御理解いただきたいというふうに思います。
  141. 早川勝

    ○早川委員 余り時間がございませんのであれしますが、例えば定率繰り入れを来年から行うということはまず期待できないわけですね。そういうことを考えますと、どうも今政府が掲げている六十五年特例国債脱却目標という意味はいろいろな意味がそこには含まれている。逆に言えば、一つの転換期を示している数字ではないかなという感じを持ちます。  国債整理基金の仮定試算を見ましても、NTTの売却益を今の予算どおり計算していきますと、やはり六十五年度で千五百億円しか残らない。まあぎりぎりじゃないかなという感じを持つわけですね。そういう意味で、一方で六十五年度で特例国債の脱却はなかなか困難だということがもうはっきりしているわけですが、同時に、少なくともその間に、先ほど大臣にも伺いました新しい財政再建目標値をつくり上げて新しいステップで財政再建、日本の財政構造の変革に取り組まなきゃいけない時期じゃないかなと思います。少なくとも、ことし六十二年ですから六十五年というとあと四年ですかございますけれども、実質三年ぐらいだと思うのですが、それぐらいの間に税制改革の問題も含めて検討する時間があると言えばありますし、ないと言えばないのですけれども、そういう意味での大きな改革を迎えていると思うのです。ぜひそういう局面にあるだけに大臣に大いに気概を持ってやっていただきたいなということでお気持ちを伺わせていただきたいと思います。
  142. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 やはり恐らくそのころの大きな作業になるであろうと私も思っております。
  143. 早川勝

    ○早川委員 最後になりますけれども、国税庁にちょっと伺いたい問題がございます。新聞等に報道されているのですが、いわゆる豊田商事事件です。  御存じのように四月三十日に大阪地裁で、いわゆる不当利得返還請求訴訟、これに対して判決が出たわけですが、また昨日、一昨日ですか、弁護団の弁護士の方たちあるいは被害者も一緒だと思うのですけれども大臣に陳情されたと伺っております。豊田商事事件というのは、御存じのように非常に多くの被害者が出て、その額も非常に巨額に達しているという事件であります。また、それだけ社会的な影響も関心も強いという事件であります。御存じのように昭和五十六年に豊田商事が設立されて、そして五十八年に国税庁が調査に入られて、そして六十年五月ですか破産したという会社にかかわる問題でありますが、この訴訟の問題でいえば、国税庁が源泉徴収をしたいわゆる歩合給というのですか、不当に高額な報酬が与えられていた、それにかかわる源泉徴収税額は戻してほしいというのが弁護団の要求でございますけれども、これについて国税庁はどんな考えを持たれていますか、伺いたいと思います。
  144. 門田實

    ○門田政府委員 ただいまお話にございましたように、大阪地裁の判決が出されているわけでございます。この判決は特定の外交員の特定の期間に受けた極めて高額な外交員報酬につきまして判示しておりまして、個々の外交員の勤務期間、社内の経歴、セールスの方法、支給額、そういったものから違法性を基礎づける主要な事実についての認識の有無というものを個別に認定した上で、その歩合報酬契約が公序良俗に違反し無効であるから不当利得に当たるとしているものでございます。  一方で、税務上の処理でございますが、これは租税を徴収する場合にもあるいは還付する場合にいたしましても、法律規定に従って適正に行わなければならないものでございます。したがいまして、一般的に申しまして、既に徴収されている源泉所得税を還付できるのは、源泉徴収の対象となった所得の支払いが誤りであったために返還された場合あるいはその所得が源泉徴収の対象とならないことが法的に明確にされたような場合などに限られるものというふうに考えております。  また、これも一般論で申し上げるわけでございますが、こういう判決が出ました場合における訴外の外交員あるいは返還の対象とされていない期間の報酬あるいは支給済みの給与との関連につきましては、一般的には判決の影響を直接受けるものではないというふうに考えられるところでございます。  いずれにしましても、判決で示された権利義務関係あるいは経済的事実につきまして詳細に検討する必要がございますので、現在その作業を進めているところであり、できるだけ早く結論を出すことといたしたいと考えております。
  145. 早川勝

    ○早川委員 この問題につきましては、六十年の十一月二十七日の法務委員会質疑がされております。先輩議員が質問したことに対して国税庁が答えている内容を拝見しますと、「私ども国税局といたしましては、この従業員報酬の民事上の効力、これがあるのかどうか、その判断を裁判の結果を待ちまして、そこで確定いたしました権利義務あるいは経済的事実、そういうものに基づきまして適切な対処、対応をしてまいりたい」、こういう答弁をされているわけですが、問題は、質問者の方の考えなり期待するところは、ぜひその被害者救済という大事な点を念頭に入れてほしい、それから豊田商事というその会社の質が若干違うんだという観点で質問しているわけですね。そういうことで、今回の事件の持つ複雑さというのですか、そういう点をぜひ理解していただいて、被害者救済を第一に置いた対応をお考えいただきたいということをお願いしたいと思います。簡単で結構です。
  146. 門田實

    ○門田政府委員 ただいま御指摘のような経緯もかつてあったわけでございます。確かになかなか複雑な事案でございますし、いろいろと勉強し検討しなければならない点もございます。私どもとしても鋭意検討を進めましてできるだけ早期に結論を出したい、こう考えております。
  147. 早川勝

    ○早川委員 そういう期待を持って検討をお待ちしていますし、国民が非常に関心を持っている、また同情を持っている事件でもありますので、ぜひ善処をお願いしたいと思います。  私の質問はこれで終わります。
  148. 池田行彦

    池田委員長 矢追秀彦君。
  149. 矢追秀彦

    ○矢追委員 大変遅くまで恐縮でございますが、最初に財源確保法の質問をいたします。  この質問についても私は何回も繰り返してやってまいりました。きょうも、本会議、また先ほど来もいろいろ議論が出ておりましたが、政府の財政再建計画は目標を大きく下回っておることは事実でございます。五十九年度を初年度に毎年一兆円の赤字国債を削減し六十五年度でゼロにする、この財政再建計画はどこまで進んだとお考えですか。
  150. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 甚だ難しいお尋ねでございますけれども、私どもこのところ各年度の予算編成を通じまして特に歳出削減を中心といたしまして財政の対応力を一刻も早く回復するための一生懸命な努力をしてまいりました。その結果としまして、例えば昭和五十七年におきましては公債発行額は十四兆四百四十七億あったわけでございますが、六十二年度当初予算におきましては十兆五千十億という形でございますし、特例公債も七兆だったものが五兆円を割るというところまで削減を図ってまいりました。また、公債依存度につきましても、六十二年度当初予算ベースにおきましては一九・四ということで、特例公債を発行して以来初めて二〇%を下回る水準まで引き下げることができました。しかしながら、一方においてはなお四兆九千八百十億とかなり多額の公債に依存していることも事実でございまして、今後六十五年脱却へ向けての道のりはなお甚だ厳しいものがあるというのが率直な認識でございます。     〔委員長退席、大島委員長代理着席〕
  151. 矢追秀彦

    ○矢追委員 計画では六十二年度は三兆円になっておるわけでございますけれども、実際は今言われたように五兆円近くあるわけです。実質毎年一兆円の減額ができなくて、平均いたしますと実績では約五千億程度になっております。これから六十五年度までに目標を実現するためには、六十三年度以降の三カ年は毎年一兆六千六百三億円という実績の三倍余りの巨額になるわけでして、これを三年間続けてやらなければならないという計算になるわけです。これは非常に厳しい実情であると思います。先ほど大蔵大臣は道半ばという言葉をお使いになりましたが、道半ばどころか、もう破綻を来しておると言っても過言ではないと私は思うわけであります。最初は財政再建を三カ年あるいは五カ年として、これは短かったということで七年に延ばされたわけですが、それでもうまくいっていないというのが実情であります。この毎年度一兆円の赤字国債の削減ができなかった原因、これはどうお考えになっておりますか。
  152. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 全体としまして予算はやはり歳入と歳出と両方ございます。歳出面におきましては、先ほどから申しましたように五年間連続一般歳出をゼロ以下にするという懸命な努力をいたしております。また、国債費あるいは交付税というのは国債の残高あるいは税収の結果として出てくる数字でございます。他方、歳入面におきましては、税収、税外収入あるいは国債発行といったところで財源を調達しているわけでございますけれども、そういった面について見ますと、私どもが当初想定していました経済成長率ほどいかなかった、特に最近の物価の安定等によりまして税収等がそこまでいかなかったといったことも一つの原因であろうかと思います。
  153. 矢追秀彦

    ○矢追委員 今の原因ではちょっと私も物足りないと思うわけです。というのは、やはりこれだけ相当、私は決して努力していないとは申し上げません、ゼロシーリングあるいはマイナスシーリングまでやられて今日まで来られたこと、また歳入、税収を上げるためにも努力をされてきたとは思いますが、結局もう少し原因を徹底的に究明をして、それでなくては再建もできないわけでありますから、私はこの点についてもっともっと徹底的な原因究明をやっていただきたい。  これとともに、財政再建を本気でやっていないとは私申し上げませんが、結局結果としてこうなってしまった、それはしようがなかったのだ——私はかつて毎年予算委員会等でも総理にも財政の実情というものは非常に厳しいということを申し上げました。総理は、しかしまだ心臓はしっかりしておるし脳波もはっきりしておる、まだ心配ないのだというふうな、そういう答弁から伺いますと、かなり甘いといいますか、そういう御判断であったと言わざるを得ないわけでありまして、そういうことで、これからの財政再建に本気で取り組まれる決意といいますか、それとこの六十五年、もう私は新たにつくり直さなければいけない、その点は大蔵大臣もしばしば示唆をされておりますが、この二点について大臣にお伺いしたいと思います。
  154. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 六十五年度までの達成が極めて難しくなっておりますことは矢追委員のおっしゃるとおりでございます。この看板を早くおろせという話もあちこちにございますが、しかし、おろします限りは、今度は新しくこういう目標でまいりますということでなければ財政の再建はなかなかできない。そういう目標を立てますためには、これからの経済あるいは財政、なかんずく国際経済がこのごろは非常に影響いたしますから、その展望というものを持って新しい目標に置きかえませんと、ただ漫然と看板をおろすわけにはまいらないという問題がございまして、その作業は実はかなり慎重を要する、国の中期経済計画とも関係をするかと思われるわけでございますから、幸いに時間がありますのでしばらくそれを考えさせていただきたい、こういうことでございます。  それからもう一つ、これはいろいろな見方がございますけれども、財政がもう少し精を出しましてそれによって経済成長率がもうちょっと引き上げられないかということを私としてはあれこれ考えております。それは税収に関することでございますが、先ほども税収弾性値あるいは名目成長率について政府委員が前の御質問にお答えしておりましたけれども、そういうあたりのところで自然増収というものがもうちょっと経済がうまく動きますと出てきてもいいという、そんなこともあわせて考えていきたいと思っております。
  155. 矢追秀彦

    ○矢追委員 大蔵省は一月三十日国会に「中期財政事情の仮定計算例」を提出されたわけでございますが、これは六十五年度に赤字国債を脱却する財政見取り図と見てよろしいですか。
  156. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 毎年国会に提出しておりますところの「財政の中期展望」あるいは「仮定計算例」につきましては、現在の制度、施策を前提としたもので歳出上推計していく、あるいは一般歳出を極端にゼロ、三%、五%に抑える、歳入についても先ほど来申し上げておりますように一定の仮定を置きました計算をしておるわけでございまして、そこで出てきます要調整額についてどう処理するかということは、それは結局においては歳出の削減あるいは歳入の確保という形で毎年度の予算編成におきましてそれぞれ対応すべきものでございます。そういった意味では、そういうことを行いますための一つの手がかりといいますか、国会の参考資料としてお出ししておるわけでございまして、いわば将来の予算編成をストレートに拘束するような財政計画とは必ずしも言えないわけでございますが、そういったことに対する道筋を示す一つの足がかりにはなろうかといったふうな意味で提出しておるわけでございます。
  157. 矢追秀彦

    ○矢追委員 「中期財政事情の仮定計算例」を作成し国会に提出する目的、今少しお触れになりましたけれども、それ自体を本当は議論しなければならないと思いますが、きょうはこの点は別といたしまして、この仮定計算でいきまして六十五年度に赤字国債がゼロになるのはどの場合でありますか。
  158. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 「仮定計算例」においてお示ししておりますように、定率繰り入れを六十五年度まで引き続き停止するという場合におきまして、一般歳出をゼロに抑えました場合には六十五年度において若干の財政余剰が出る、こういう姿になっております。
  159. 矢追秀彦

    ○矢追委員 この仮定計算で見る限り、六十五年度赤字国債脱却のためには、まず一般歳出伸び率ゼロ、二番目に定率繰り入れ停止の続行、三番目に税収伸び率六・六%という条件になるわけでありますけれども、これで六十三年度から六十五年度の三カ年間連続して予算を組むことができるのかどうか、これは大変難しいことになるかと思いますが、その点はいかがですか。
  160. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 今申し上げましたように、NTTの株式の売却が非常に順調に行われる、それによって公債償還財源確保されるということが一つでございます。それによって定率繰り入れの停止が引き続き可能になるという前提がございます。それからもう一つ、税収につきましても今申し上げた前提において歳入が確保される、それから六十五年まで一般歳出ゼロを続ける、この三つの前提があるわけでございますけれども、まず第一の前提について申しますと、実際に株式の売却が順調に行われることが可能かどうかといったことは、株式の市況の動向とか国債整理基金の資金繰り状況といったものを見きわめる必要がございます。それから税収、歳出の実情につきましても、毎年度の要調整がどのように解消していくかということでそれぞれ工夫を凝らさなければならないといった問題がございますし、そういった意味では六十五年まで一般歳出の伸びを引き続きゼロにするといった過程には大変困難な問題が含まれていることも事実でございます。しかしながら、私どもとしましては、なお引き続き六十五年の脱却目標に向かって歳出歳入両面にわたりましていろいろ汗をかきながら財政体質の改善のための努力を続けていく必要性は残されているというふうに考えているわけでございます。
  161. 矢追秀彦

    ○矢追委員 毎年財政当局がこの仮定計算を出してこられておるわけでございますが、今まで一カ年でも仮定計算に沿って赤字国債が削減されたことは残念ながらないわけです。六十二年度までの実績は先ほど申し上げましたように平均して五千億円。この財確法の審議に当たりまして政府の財政再建計画または仮定計算等の何を我々は目安にしていくのか、何を根拠といいますか目標としてやっていくのか非常にはっきりしないわけですね。もちろん仮定計算でありますからと言われてしまえばそれまでかもわかりませんけれども、もう少しはっきりした目安といいますか、我々が根拠とできるものがなければならぬのじゃないか。  私は、財政の健全化、また対応力の拡大というものを願ってまいりましたし、しばしば委員会等でも主張してきたわけでございますが、言うなればこの財確法を提出しないでもいいような体制ができることが理想であるわけですね。そういう財政再建の見取り図というのは、先ほど大蔵大臣言われたように、確かに今の国際経済の動き等で非常に難しいことは私もわかりますけれども、それならそれでそういう流動した中にあってもやはり財政再建の指針となる見取り図というものができなければならぬのじゃないか。先ほど申し上げましたように三年が五年になって七年になって、短いからだめだというので長くなった、しかし、今度は、変動が多いとむしろ短くても私は構いませんから、私たちがこういうふうなことを目安にしていけばこうなるんだということができてもいいのじゃないか、こう思うわけです。そうしないと、この財確法の審議というのは毎年出てきてもう相当になるわけですね。最初は特例公債という名前で来ました。そのうち財確法に変わり、一度戻りましたけれどもまた財確法になり、何かこうマンネリみたいになってきているわけですね。そういう意味においても、私はもう少し正確に、これはきちっとしたことはなかなか難しいと思いますけれども、もう少し我々が根拠にできるといいますか頼りにできるというような指針、見取り図は必要と思うのですが、大蔵大臣いかがですか。
  162. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに毎年同じ法律を出しまして御審議を願ってお許しをいただいておるという、来年はどうなんだというお尋ねがありますと来年のことは申し上げられないというようなことを何度も繰り返しておるということは、私、いいことでないと思います。それは、やはり基本的に、先ほどから矢追委員がおっしゃっていらっしゃいますように、六十五年度云々という問題がございまして、ここのところを新しい展望に立って考え直すということと一体の問題として考えなければならないのではないかと思っておりまして、その点はやがてそういうことを考えてみなければならない、六十五年といいましてもそう遠いことではございませんので、やはりそういう大きな作業が必要になるのではないかと思っておりますが、それにいたしましてももう少し経済運営を何とかうまく回るようにいたしまして、自然増収などが正常に期待できる程度のことをやってみなければならぬなということも思っております。     〔大島委員長代理退席、中川(昭)委員長代理着席〕
  163. 矢追秀彦

    ○矢追委員 いいことではないと言われましたので大臣もこういう点は御理解していただいていると思いますが、結局これがずっと続いていきますと、あと三年間も辛抱してくれと言われますと随分長くなるわけですね。結局国会審議を甘く見ておられると言われてもやむを得ないと思うわけでございまして、何年でも同じような計算結果を示されながら予算の実行というのは大きくかけ離れたところで行われている。やはり実行可能な計画というのはある程度きちっといかなくても出さないと、財政再建に協力してくれと言われても、いつも政府の出された計画とあるいはまた指針と実際は全然違うところで行われるということになると、協力しようと思っても国民はやりにくくなってくるわけですね。そういう点をやはり深刻に反省もし、今三年間時間があるからとおっしゃいますけれども、六十五年になってきてから完全に装いも新たにしたのがぽんと出てくるというのでは、その時点で何か起こるとまたおかしなことになってしまうので、むしろこの三年の間に、そういうことも踏まえて、ではどうするのかということをしなければならぬのじゃないかと私は思うわけです。  中曽根内閣になりましてから出発当時は考えられなかったプラス要因というのがあったわけです。それは、一つは私は定率繰り入れの停止であると思います。五十七年度の補正予算で定率繰り入れ停止を臨時異例の措置として行いました。それ以来ずっとこの措置は恒常化してきているわけです。最近ではNTTの株の異常高値処分に助けられて財政運営には大きく寄与していると思います。私の大まかな計算でも、五十七年から六十一年の定率繰り入れ停止は約八兆円に上っておるわけです。六十二年から六十五年度までの定率繰り入れ停止をそのままやるといたしますと約十兆円になるわけでして、これは、中曽根内閣がつくった財政再建計画、すなわち毎年一兆円の赤字国債の減額ですね、これでは一般会計から国債整理基金特別会計に繰り入れることになっていたわけですから、定率繰り入れ分だけでも五十九年度から六十五年度に削減するといった赤字国債七兆円を大きく超えるわけですね。要するに、定率繰り入れ分だけでも五十九年から六十五年までに削減するという計画であった赤字国債七兆円を上回ってしまっておりますね。そういったプラス要因があってなおかつまだこういうふうな財政再建がうまくいかぬ。だからもしこれはやらなかったらもっと大変なことになっているわけですけれども、ちょっと救われた、それでもなおかつこんな状況である、これはどういったところに原因があるのか、先ほど次長がおっしゃいましたことと同じようなことになろうかと思いますが、大蔵大臣、お答えをいただきたいと思います。
  164. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは先ほど政府委員が申し上げたようなことにやはりなるわけでございますね。確かにNTTというような思わざるいい条件を持っておるわけでございますけれども、それでもなかなか特例公債というものを消し切らぬということでございますから、この計画そのものがきつくなっておるということはもうおっしゃるとおりだと思います。
  165. 矢追秀彦

    ○矢追委員 それだけきつくなっているとお認めになりながらなかなか旗はおろされないわけです。  例えば、借換債の問題につきましても、このままいったら全額借りかえしなければだめなのじゃないかということは私は再三指摘をしました。いや、それだって、絶対現金で返すのです、現金償還ですと頑張り続けられて、あるときから、全額借りかえ、こういうふうになってきているわけですね。だから、私は、六十五年の赤字国債脱却はもう無理だ、だからその旗をおろして、じゃ三年間、とにかく目標は目標としておきながらもこれから三年間はこうします、財政再建はこれくらい延びます、国民はそこできちんと誠意を持って示せば納得をされると私は思うのですね。だから内閣総辞職だなんて、そんなことまで私は言い出さない。やはり事実を踏まえた上で、実現可能なということが大事である、私はこう思うわけですね。  最近の円高不況、そして異常な国際収支黒字の状況下で、内需拡大、積極財政を言われているわけですね。そして財政再建期間の延長ということもやかましく言われてきておる。今まではそれなりに頑張ってこられた面も私は評価をいたしますけれども、やはり財政運営あるいは経済運営に問題はなかったか。本当で言えば大変な責任になると私は思うわけでございますが、平均五千億しか赤字国債の削減はできなかった。だから、私先ほど言いましたように、この財確法というものが要らなくなるのはいつなのか。三年間たってもしなかったらその時点でまたやる。やはりそれまでにきちんとした方針を示してもらいたいと私は思うのですが、まず財確法が要らなくなるお見通しというものはあるのかないのか。あるいはこれはこのまま続けていかれるのか。私先ほど言っておりますように、六十五年の旗をおろされるなら、仮に一応おろさなくても、次へのステップを考えた、この三年間どうするかということを、きちんとした青写真を、実現可能な青写真をお出しいただきたいと思うのです。その点はいかがですか。
  166. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはそうせざるを得ないと先ほど申し上げましたように思っております。  NTTといいましても、これはもういつまでもあるわけのものではございませんし、三年たちますとそれはもう新しい財源にはならぬと一応考えておかなければなりませんから、そういうこともありまして、国債の発行、それから管理をどうするか、減債をどうするかといったようなことを全部合わせまして、ならば新しい見通しのもとに特例公債をいつゼロにするかということを、どうしてもその仕事はいたしませんとこれは私ども自身が一番困るわけでございますから、三年といってもそう長い年月じゃございませんので、できるだけ早くそういう見通しを、作業を始めなければならないと思います。
  167. 矢追秀彦

    ○矢追委員 また来年のことで恐縮ですが、じゃ、六十三年度予算編成に当たってやはりまた同じ手法でやろうとされるわけですか。やはり中期展望が出て、仮定計算が出て、それでまた財確法が出てくる、こういうことなのか。今度の内閣も、一応常識論的にはこの秋で政権もかわるというふうなことでありますし、今一つのチャンスだと私は思うのですが、いかがですか。
  168. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは実は中期展望、仮定計算というものが長い間の慣例になりまして予算委員会に御提出を申し上げておるのでございますけれども、矢追委員がおっしゃっていらっしゃいますように、年とともに現実性を正直を言って失ってまいりました。そのことは御承知の上でごらんいただいておりますし、またそういうことも御説明申し上げてごらんいただいておりますのですが、かつて持っておったような意味を実はあれらの資料は失いつつあるように私も正直実は思っておるわけでございます。そうしますと、しかし、これはやめた、それなら今度はどうするつもりかということにはお答えするすべがないものでございますので、勢いああいうことをさせていただいておる。したがいまして、全体の見直しの作業ができますと、今度はそういう資料にかえさせていただくわけでございますけれども、それまでの間はまあこういう前提のもとにこうでございますというものをごらんいただくということを繰り返しておるということでございますね、結局。
  169. 矢追秀彦

    ○矢追委員 今言われた点も私わからぬではございませんが、ただ、マンネリにならないように何か一工夫、二工夫されたものを来年度はお出しをいただきたいと思うわけでございます。  次に、今年度の六十二年度の財確法におきましても厚生保険特別会計への一般会計からの繰り入れ分五千八百六十八億円を減額する措置をとることにしておりますが、五十九年度から各年度の厚生保険への繰り入れをやめた金額を言っていただきたいと思います。
  170. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 厚生年金の繰り入れの特例等ということで、私学共済等、厚生年金以外のものも若干入っておりますけれども、五十九年度は二千六百八十二億、六十年度は三千三百十五億、六十一年度は三千四十億、六十二年度が三千六百億でございます。  それから、ちょっと補足させていただきますと、新しい計画をどう工夫するかという問題につきましては、これはいろいろな不確定要因があるわけでございますが、財政計画、各国の例を見てみましても、やはり歳入歳出全体につきましてそれぞれの項目についてかくあるべきだといったふうな数値でそういった計画をつくるということは、実際の政治経済の状況が不確定な状況のもとにおいては極めて限界がある。したがいまして、いろいろ工夫は凝らさせていただきますけれども、本来そういった私どものお示しする財政の将来展望につきましては、そういった規範的な財政計画をつくるというわけにはなかなかいかないような情勢にある、実情にあるということは御理解いただきたいと思います。
  171. 矢追秀彦

    ○矢追委員 四年間合計で幾らになりますか。
  172. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 ちょっと今、概算でございますが、一兆四千億強だと思います。
  173. 矢追秀彦

    ○矢追委員 特別会計設置の目的、また一般会計と分離をしてその収支を明確にしていく必要性といった財政運営システムからしても、こうした一般会計が苦しいからということを理由に保険特会のお金に手を突っ込むやり方には私はちょっと賛同しかねるわけです。これはたしか前にも指摘をしたと思います。こうしたやり方は今後とも続けていかれるのかどうか。非常に安易ではないのか、こう思うのですが、その辺いかがですか。
  174. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 失礼しました。先ほどは一兆四千億強と申しましたが、一兆三千億弱でございますので、ちょっと訂正させていただきます。  それから、厚生年金等の繰り入れの特例につきましては、実は昭和五十七年からの行革特例法以降ずっと継続しているものでございます。これは、実際問題といたしまして、財政改革を今後非常に強力に推進していく、そしてその中で財政体質の改善を図っていくというためには制度、施策の見直しがどうしても必要になってくるわけでございまして、その歳出削減の過程の中でどうしてもやむを得ない結果の一つとして厳しい財政事情を踏まえて行っているわけでございます。そういった中で、単に繰り延べするというだけではなくて、中長期的な展望にも立ちながら経費の節減合理化の一環として行っているといったふうなことでございまして、その実施に当たりましてはそれぞれの制度につきましてその運営に支障のないような配慮を加えつつ行っている、そういったやむを得ない事情にあるということを御理解いただきたいと存じます。
  175. 矢追秀彦

    ○矢追委員 先ほど来、六十五年度財政再建計画達成は難しい、これに関連いたしまして、今指摘をいたしました、厚生保険特会を一つの例に挙げましたが、こういった繰り入れが今後の財政運営に大きな負担になってくる、重圧になってくる、こう思うわけでございます。さらに、そのほかの住宅金融公庫への利子補給繰り延べ等、六十二年度で大体十一兆を超えると聞いておるわけですが、細かい数字を全部言うと大変でしょうから、大まかな合計だけでも結構ですが、十一兆と見ていいですか。
  176. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 十一兆ということになるかどうか、ちょっとその先生の内訳まで私詳細に承知しておりませんが、厚生年金は先ほど申し上げたような数字でございます。住宅金融公庫の補給金の繰り延べにつきましては、昭和五十七年から六十二年までの累計におきまして五千三百十五億でございますが、他方、返済の分が八百十億ございますので、約四千五百億程度のものでございます。国民年金の平準化措置につきましては一兆二千百二十七億でございます。それから、自賠責からの繰り入れは二千五百六十億ございますが、六十一年度、六十二年度におきまして百二十二億返済いたしておりますので、現在では二千四百億強となっております。それから、政管健保の繰り入れにつきましては、本年度もこの財確法で御審議をお願いいたしておりますけれども、六十年から六十二年までの累計で三千五百八十九億円。それから、外航船舶利子補給等につきましては、現在までの累計が二百四十四億円。それから、道路整備特会の借入金につきましは、六十年から六十二年まで累計七千六百九十七億円ございますが、千二百億円の返済もございますので約六千四百億円強。その他、地財の借入金等が五兆八千二百七十八億円等々ございます。全部足しまして十一兆になるかどうかちょっと計算しておりませんけれども、大きなものはそういうものでございます。
  177. 矢追秀彦

    ○矢追委員 私の計算によりますと、返した分を引きましても大体十一兆くらいに五十七年からなっておるわけですね。この後年度繰り延べ分、約十一兆円といたしまして、これは言うなれば隠れた赤字、こう言ってもいいと思うわけですね。そうなりますと、中曽根政権になってから赤字国債の削減は約二兆円しかできなかった、その五倍余りの後送りの赤字が残された、こう考えられると思うのですが、この点はそういうふうな考えはよろしいですか。
  178. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 毎年度の予算編成におきましてぎりぎり歳出削減の努力を図っていく、その中におきまして一般会計の財政事情の中で必要な施策には必要最小限度のものは充てなければいけない、こういった状況のもとで、今申し上げたようなものにつきましては、それぞれの制度についての運営につきましては十分な配慮を加えつつも、必要やむを得ない措置としてやっているというふうな事情があることを御理解いただきたいということでございます。
  179. 矢追秀彦

    ○矢追委員 だから、赤字国債の削減も一兆円毎年やるというのはできない。それにせよ一生懸命減らしてこられたことは私も認めますが、表面的に赤字国債を削っても、結局財政体質というものは強化をされていない。今言ったようなことはやむを得なかったと言われていますけれども、これは一つ政策として、おる程度減らすことによってその会計が自分たちで何とかしようというふうになるというある程度のインパクトもあった、仮にそういう点を引いたとしても、隠れた赤字と見ていいわけでして、しかも後送りをした繰り延べ分の大半のものは六十五年度の財政再建完了を条件に一般会計は返済をしていく、こういう考え方に立っていたと思うのですが、その点はいかがですか。     〔中川(昭)委員長代理退席、委員長着席〕
  180. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 この特別会計等から一般会計へ繰り入れましたものをどういうふうに繰り戻すかということにつきましては、はっきり法律で決まっているもの、あるいは覚書等で決まっているものいないもの、いろいろございますけれども考え方といたしましては、苦しい特例公債発行下を乗り切って今後財政に余力ができた段階におきまして漸次これを返していくというふうな考え方で行われていることは間違いございません。
  181. 矢追秀彦

    ○矢追委員 住宅金融公庫の利子補給を繰り延べ、財政投融資のお金でその穴埋め策を講じるといったやりくり算段が結局住宅金融公庫の運営を苦しくしておる。さらに、住宅対策が内需拡大の柱だと言われながらも、市中金利よりも高とまりしている等々の現実の弊害があるわけです。これは一例でありますが、繰り延べに伴う弊害はあると私は思うんですね。さっきいずれ返していくのだと言われますが、私は先ほどからも主張しておりますように、財政再建は破綻を来しつつある。しかも赤字国債の削減は目標どおりいかない。しかも、表は削りながらも、逆に裏といいますか、隠された赤字がもう十一兆にも上ろうとしておるという問題。実際これも六十五年にゼロになったと仮定しても、六十六年度から繰り延べ分の返済にすぐ移れるか、なかなかこれは移れないと私は思うんですね。そういうことを考えますと、この問題もちょっといいかげんにしておけないのじゃないか、こう思うわけですが、大蔵大臣はいかがお考えですか。
  182. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今までお話しになっていらしたことは、私は大筋で真相をついておられると思いますですね。いろいろ苦労をしてあれこれあちこちでちょっと借りというようなことをやって一生懸命一般会計を何とかつくり上げてきておるわけでございますから、裏ではいろいろ苦労があって、それはみんな言ってみれば財政再建のほころびを押し入れに入れてあるだろうとおっしゃられれば、苦労は苦労といたしまして、やはりそういうふうに申し上げざるを得ないと思います。しかし、これは大変な苦労であったこともお認めいただきたいのですが、その分だけ表に見える財政再建のおくれプラスこれだろうとおっしゃられれば、それは素直にそうだと申し上げざるを得ないかと思いますですね。
  183. 矢追秀彦

    ○矢追委員 この間のOECDの閣僚理事会における声明でも、日本には内需拡大を強要されてきて、そうでなくてもこれから積極財政だ何だと言ってこられるわけでございまして、そうなると直ちに財源問題が出てきます。だからといってまた売上税というのは困るわけですけれども、問題は、先ほど大蔵大臣も言われた、これから経済の成長率を上げていかなければならぬ、その問題は結局どうやっていくのか。一つは、公共事業ということをやかましく言われておりますが、OECDでも財政の出動ということを言われておりますよね。しかし、財政の出動で急に成長率が上がるような時代はぼつぼつ過去の、少なくもこの十年ぐらい、オイルショック以降はなかなか難しくなってきたのじゃないか。昔は財政を発動すれば効果はすぐ出た。しかし、今は、土地の問題もございますし、いろいろあると思います。もちろん公共投資もしなければいかぬと思います。そうでなくても日本は下水道や公園といったような社会資本がおくれておることは事実でありますから、やっていかなければいけませんが、それだけでは結局また土地の値段が上がってそれに食われて終わりということになってしまうのじゃないか。だから、内需拡大の一番の柱である公共事業をするにしても、今までと同じやり方ではだめなんじゃないか、これが一点。  もう一つは、民活、民活と言われておりますけれども、この民活が果たしてどういう民活なのか。私は政府のお金を全然使わないで自分たちの土地を提供してあるグループがそこの市街地の再開発をやったような例も幾つか知っております。そういうのは私はいいと思いますけれども、そういうことを初めといたしまして、特に公共事業がすぐさま経済成長につながる時代は終わった。それをどう新しい知恵を出そうとされておるのか。  もう一つは、民間活力というものをやかましく言われておりますが、現実はなかなかそこまでいっていない。民間にあるお金は土地とか株あるいは為替といった方に走っておる。本当の民活は、中曽根総理はお題目だけはすごいのですけれども現実にただデレギュレーションぐらいのことで、これだけではちょっとだめなんじゃないかと思うのですが、大蔵大臣はいかがですか。
  184. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは私も実はそういう問題意識を持っておりますものですから、しばらく前から役所の中で、ごく非公式ではございますけれども、全国各地にいろいろな民活のプロジェクトというものがある。それは、都道府県が持っておりますものはすぐ公になりますけれども、そうでなくて、金融機関であるとかあるいはいろいろな事業体が自分のビジネスとしてひそかにいろいろ各地方のプロジェクトを調べておるというようなことがございますね。そういうものを、もちろんこれは秘密は保持するということで、少し聞かせておるわけでございます。そういうものの中に案外にいわば本当の、これは企業考えるようなものでございますから採算的にもあるいは合うのかもしれません。しかし、少なくとも何かの形で政府が応援をすればこれは実際のかなり経済的な効果のある民活のプロジェクトかもしれないと思いまして、それを非公式に少し調べてもらっております。  私が終局的に思っておりますのは、そういうものがもし各地方に幾つかございまして、それに対して国が何かの支援をすればそういうものが民活として育っていくというようなことであれば、これは新しい一つのそれこそ成長要因になっていくのではないか。地方でもそれは非常に歓迎してくれると思うのでございますけれども。ただ、これは全くまた非公式にそういうことをやっておりますものでどういう発展になりますかはっきりいたしませんけれども、おっしゃいましたような問題意識は実は私も持っておりまして、しばらく前からそういう検討は役所にしてもらっておるわけでございます。
  185. 矢追秀彦

    ○矢追委員 さっきの公共事業の件はどうですか。
  186. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは一つには公共事業も大変大事だと思うのでございますけれども、これにはこれで一つのパターンがやはりできておりますから、それはそれとして、殊に先々の予算編成のときには建設国債も出さなければならぬと思っておりますけれども、それプラス何かができればさらにいいんではないかなという感じは持っております。
  187. 矢追秀彦

    ○矢追委員 次に、財政投融資の問題に移ります。  政府は一般会計あるいは一般歳出といった狭い枠にとらわれて歳出の圧縮を図ってきておられますけれども、このような小手先のやり方では真の財政再建とは言えないんじゃないか、むしろ財政全体をゆがめてしまっておるのじゃないかと思うわけです。  一般会計の歳出圧縮の実態を調べてみますと、財政投融資への負担のツケ回し、いわゆる財投による負担の肩がわりが随所で行われているわけです。一般会計ベースの経費削減を財投へのしわ寄せで対処するという最近の予算編成、これは財政再建に逆行するのじゃないかと思うのですが、これはやむを得ない措置としてやむを得ないのか、逆行するのか、その点いかがですか。
  188. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 国の一般会計予算と財政投融資というのはいわば表裏一体のものとして編成しております。そういった中ではあるいは御指摘のような問題について具体的にどういうことかというはっきりしたことについて申し上げにくいわけでございますが、例えば先ほどお話がありました住宅金融公庫の利子補給金につきまして一部を財政投融資の方で対応しまして繰り延べ措置をとっているというふうなことであるといたしますと、そういった点につきましてはこれはそれなり理由があるわけでございます。これも望ましいかどうかということは別といたしまして、それは何らかの理由があるわけでございまして、これは昭和五十七年でございますか、たしか住宅金融公庫の金利につきまして段階金利ということを導入いたしました。ただ、それまではやはりコスト金利と貸付金利の間に大きな差があったといったふうなことから負担が累増していく。しかし、段階の金利を設定する、あるいは貸付手数料を設定する、そういったふうなことを通じまして、将来におきましては利子補給金の負担は平準化していく。そういったための一つの平準化措置の一環といたしまして、法律をつくりまして、期限を決め、一般会計の補てんにつきましてのルールをつくりながらやっていく、こういったふうなことをやっておるわけでございまして、必ずしも単なるツケ回してはないというふうに御理解いただきたいと思います。  なお、先ほどちょっと数字を間違えましたので、訂正させていただきたいと思います。  地方財政の借入金につきまして五兆八千二百七十八億と申しましたが、実は昨年、六十一年度におきまして税収の減ったものを補てんする措置を借入金で行いましたので、六十一年度の補正を含めましたところの数字では六兆一千四百四十四億円ということになりますので、改めて訂正させていただきます。
  189. 矢追秀彦

    ○矢追委員 今いろいろ御答弁ございましたけれども、私は財政のしわ寄せという面で見ますと、この公共事業費の場合で見ますと、一般会計ベースでは六十二年度は二・三%の減少、五十九年度以降四年連続の削減になっておるわけですね。しかし、財投計画を含めた総事業費ベースは、六十一年度四・三%増、六十二年度は五・二%増とふえておるわけです。これは、そういう内需拡大という要請があったからやむを得なかったというその点のことは別といたしまして、やはり財投への負担のしわ寄せになっていると言わざるを得ないわけです。  また、一般会計の中小企業対策費をとりましても同様のことが言えるわけです。一般会計からの中小企業信用保険公庫出資金を見ますと、六十二年度は二百億円で、前年度の二百九十億円から九十億円が削減されております。しかし、産投会計からの同公庫への出資金は、六十二年度は百八十億円と前年度の百億円から八十億円、つまり一般会計出資金の削減分にほぼ見合う金額が増額されておるわけでして、一般会計の削減部分を産投特会からの出資という財投に肩がわりをさしておるわけです。  また、一般会計から商工中金への出資金を見ますと、五十九年度百億円であったのが六十年度以降ゼロとなっております。一方、産投会計からの商工中金への出資金は、六十年度二十億円、六十一年度四十億円、六十二年度四十七億円となっており、完全に一般会計の負担の肩がわりを行っておるわけです。  このような実態から見て、先ほど来それなりのルール、理由があるとは言われますが、やはりこういう形による予算編成というのは財政再建という目標からいって果たしてどうなのか、そういう点を指摘をしたいわけなんですが、いかがですか。
  190. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 まず、公共事業の点について申し上げますと、六十二年度の公共事業の国費ベースにつきましては二%程度の減になっておると思います。しかしながら、最近の経済情勢を見ますと、内需拡大要請それなりにこたえていく必要があるというふうなことから、今御指摘のように事業費ベースにおきましては五・二%の増ということになっておるわけでございます。その過程におきまして、これもいろいろ議論があったわけでございますが、地方団体につきまして公共事業費につきましての補助率の引き下げを行わせていただきましたが、それに対応する部分につきましてはそれなりの地方財政対策を講じまして事業費の確保を図っていく、この一部が地方債という形で地方の負担になっているわけでございますけれども、これはこういったふうな事情等を踏まえた措置でございます。  それかも、一般会計の負担にならない道路公団等の公共事業関係の公団等につきましては、できる限りにおきましてできるだけの配慮を財投面においてしたということでございまして、これは、こういった内需拡大要請にこたえながら事業費をふやしていくために当然行うべき措置でございまして、これは財投へのツケ回しという性格のものではないと私ども理解いたしております。  それから、中小企業対策費につきまして二つお話がございました。一つは、確かに御指摘のように中小企業信用保険公庫の融資資金につきまして一般会計から財投へ計上がえをいたしております。商工中金の出資金につきましても一般会計から財投への計上がえを行っておりますが、これは、先生御承知のように、昭和六十年度におきまして産業投資特別会計につきまして制度改正を行いまして、従来よりも運用対象といいますか投資対象といいますか、そういったものを広げたという措置をとりました。その結果としまして、従来は産投会計の出資対象にできなかったこれらの中小企業信用保険公庫の融資資金あるいは商工中金につきましても今度は産投会計から出資ができることになったものでございますので、それに対応して所要措置をとらしていただいたということでございまして、こういったことはさっきからおっしゃっておりますような意味での負担の肩がわりというものとは若干性格を異にする、それぞれの制度改正に即した措置であると理解いたしております。
  191. 矢追秀彦

    ○矢追委員 そう言われますけれども、あとまだもうちょっと具体的な例を挙げさせていただきます。  エネルギー対策費も同様でありまして、石油税収の低迷という要因もありまして一般会計のエネルギー対策費は六十二年度二一・四%減と大幅な削減が行われましたが、そのしわ寄せで石油公団は六百四十億円の政府保証借り入れを余儀なくされたわけです。ほかにも、六十一年度補正予算における交付税特別会計の資金運用部資金の借り入れ、六十年度以降行われている道路整備特別会計の資金運用部資金借り入れ、それから先ほどちょっと言われましたが一般会計からの住宅金融公庫利子補給金の財投資金による一部肩がわり措置等、こういうふうに並べていきますと、いろいろ理由はおっしゃっておりますが、一般会計削減の負担の転嫁を財投へのしわ寄せでやっておると言わざるを得ないんじゃないか。しかも、財投資金は有償の資金でありますから、結局下手をすると借金が雪だるま式にふえてくる。下手をすると、今度JRになりましたが、かつての国鉄のようなことになってしまうんじゃないか、このように思うわけであります。  もう一つ具体的に言いますと、国有林野事業特別会計の収支を見ますと、五十五年度の債務残高四千七百三十六億円が六十二年度には一兆六千九百七十二億円と急激に増加をしております。巨額の財投資金をつぎ込んでも現在の木材をめぐる厳しい環境からなかなか改善されていない。  だから、今申し上げたように安易に財投資金に依存することは第二の国鉄になるおそれがある。したがってこの辺は戒めていかなければならぬのじゃないか、こういうことでいろいろな例を挙げたわけでございます。いかがですか。
  192. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 いろいろな例を挙げられましたけれども、住宅金融公庫あるいは地方財政につきましては先ほど申し上げましたので省略させていただきます。  今お話のあった一番大きいのはエネルギー対策費でございます。エネルギー対策費は、御承知のように石油税財源を特定財源としてこれを繰り入れる、こういうシステムになっておるわけでございますが、たしか石油税につきましては従価税という制度になっておりますので、最近におきますところの円高及び石油価格の低下を反映いたしまして従価税である石油税収は大幅に落ち込むといったことになったわけでございます。たしか六十一年当初予算では四千百五十億円の一般会計繰り入れを予定していたわけでございますけれども、六十二年度におきましては本来の石油税収だけでは千九百億円程度しか見込めない。半分以下になってしまった。それから過去において一般会計から借りておりましたいわゆる北方領土と称するもの、これもたしか千三百五十億円程度だと思いましたが、両方足しましても三千二百五十億円程度しか財源全体として見込めない。制度的にはそれが目いっぱいでございます。一方、石油特会におきましては、歳出規模そのものが全体として石油税の繰り入れを含めまして石油勘定におきまして四千八百億円程度期待されたわけでございますが、これを大幅に削減して制度の合理化を図るといたしましても、約四千億円程度の歳出需要はどうしても必要になってくるといった状況にございました。その差額をいわば財投において借り入れするといったような措置をとったわけでございます。  しかし、これはどういうことでやったかと申しますと、これはちょっと話がくどくなりますけれども、実は備蓄のための石油原油の購入に要する資金は本来財政投融資措置し、それを利子補給するという措置をとっておるわけでございます。ただ、たしか昭和五十三年ないし四年だと私は記憶しておりますが、一時備蓄した原油を放出いたしまして千四百億円程度利益を上げたことがございます。その利益を上げた部分につきましては借入金を行わずにこれをいわば自己資金という形で原油備蓄の購入資金に充てていた。したがって、そのうちの一部を振りかえて行うといった形で、やむを得ざる措置でございますが、本来財政投融資で備蓄原油を購入するということは認められておりますので、そういった制度の一環として従来自己資金で持っていた部分を借入金に振りかえるといった措置をとったものでございまして、やむを得ざる措置ではございますが、これは単なる振りかえとかなんとかそういうふうな性格のものではないと私ども考えているわけでございます。  それから、国有林野特会につきましては、これはまさに国有林野自身が現在の材価の低迷等によりまして大きな赤字を出しておりまして、それに対しまして経営改善計画等を立てまして必死にその再建の努力を行っております。そういう中で、一時的な資金繰りを補てんするために財政投融資に依存していることは事実でございますけれども、これは決して一般会計の負担の肩がわりといった性格ではないというふうに思っております。
  193. 矢追秀彦

    ○矢追委員 次に、住宅金融公庫の経営も急激に悪化しておるわけですが、この点はどうお考えになりますか。五十七年から行われている一般会計からの利子補給金の一部カットを財投資金の借り入れで賄っておりますが、この間の累積投入額は五千三百十五億円になっておるわけです。これも第二の国鉄になる可能性もゼロではないと思うのですが、いかがですか。
  194. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 住宅金融公庫につきましては御指摘の繰り延べを行ってきております。これは、先ほど申しましたように、五十七年度に段階制金利の導入を行いました。それから六十年から手数料制度を創設することによりまして中長期的には住宅金融公庫の経営はそれなりに補給金が急激に増加することなく安定すると見込まれるわけでございますが、当面は貸付残高の増加に伴いまして利子補給金の急増が見込まれるといった状況にある。他方、現在の財政事情から見ますと、特例公債発行下においては公庫の補給金をそれほど大きくふやすわけにはいかないといった、この両方のバランスを考えながら、やはり住宅政策につきましても安定的な歳出を確保していくということのために一部繰り延べ、平準化措置をとったわけでございます。  そういったふうなことでございますが、公庫法によりまして繰り延べ金額の範囲あるいは後年度におきますところの一般会計での措置をはっきり書いておりますので、その間の資金繰りを財政投融資で行うということにしておりますので、これはある意味では若干の後年度への負担の繰り延べではございますけれども、歯どめのある措置であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  195. 矢追秀彦

    ○矢追委員 今の住宅金融公庫の利子補給金の繰り延べ策につきまして、臨調の最終答申では、「経常経費、例えば、一般会計の利子補給分を肩代わりするような措置は、今後、長期的に常態化させることのないよう厳しく運用する。」こういうふうに言っております。これはもう御承知と思います。ところが、今申し上げたように、住宅金融公庫の利子補給金一部繰り延べ策は五十七年度以降五年連続行われて常態化しておるわけです。今、歯どめがある、見通しがあると言っておられますが、この臨調の最終答申から見るとよくない状況であるわけですね。  それからもう一つ。もう時間の関係でまとめてやりますけれども、さらに臨調答申では、財投事業については徹底的な見直しを行うべきであるといたしまして、「新規の事業は、真に必要なものに厳しく限定することとし、スクラップ・アンド・ビルドやサンセットの考え方を積極的に導入する。」しかし、最近の財投対象機関というのは相当ふえてきておるわけですね。これも臨調の考え方に反しておる、こう思うわけでございます。この一々の機関名等はきょうはやめておきますけれども、この二つの問題、臨調の答申に違反しておると言えると思いますが、大蔵大臣はいかがお考えですか。
  196. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 前段の住宅金融公庫利子補給金についてお答え申し上げます。  確かに御指摘のように、昭和五十八年の臨調の最終答申におきましては、「一般会計の利子補給分を肩代わりするような措置は、今後、長期的に常態化させることのないよう厳しく運用する。」となっております。そういったことも踏まえまして、実は法律等におきまして範囲等を限定したわけでございますが、御指摘の臨調の答申を今後とも尊重いたしまして適切に対応していく必要があろうかと考えております。
  197. 窪田弘

    ○窪田政府委員 後段の臨調の答申との関係でございますが、臨調の最終答申におきましては、「財投事業について徹底的に見直しを行うべきであり、」「新規の事業は、真に必要なものに厳しく限定することとし、スクラップ・アンド・ビルドやサンセットの考え方を積極的に導入する。」こう御指摘を受けております。その後の昨年六月の行革審答申におきましても、「運用及び対象事業について徹底した見直しを行う。」こういう指摘をいただいております。  毎年財投計画の編成のときはこれに即しまして見直しを行っている次第でございまして、例えば開銀について見ましても、六十二年度には二十四件について縮小の措置をとっております。他方、内需拡大とか産業構造の変革とか、最近の必要の面については拡充をするというふうに、スクラップ・アンド・ビルドを図っている次第でございます。
  198. 矢追秀彦

    ○矢追委員 実際、スクラップ・アンド・ビルドと言われますが、数はふえておるわけです。いろいろな財投機関数は六十二年度で六十五になっております。確かに外れたのも多くなってきておりますけれども、いろいろふえていることも事実です。  そこで、大蔵大臣、今私が指摘をいたしました臨調の答申を中心とした財投の問題といわゆる後送りですね、肩がわりの措置、こういった点はどういうふうにお考えでありますか。今後どういうふうにしていかれますか。
  199. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどから、繰り延べあるいはツケ回し等幾つかの事項、それから財投関連、いろいろ御指摘がありまして、中には制度を変えたものもございますけれども、多くのものが便宜的にと申しますか、いわば非常に苦しいものでございますから、そういういろんなことをしておる、苦労をしておるのでございますけれども、いわば外に見えないようになっておる処理でもございます。その点を臨調も指摘をしておられるので、正直を申しまして、臨時行政調査会が言っておられることは、こういうことを長期的に常態化させてはならない、もうそのとおりだと申し上げざるを得ません。  そこで、これも冒頭から矢追委員が言っていらっしゃいますような財政再建路線というものが必ずしも思うようにまいりませんで、特例公債を抑えながらこういうところでいろいろな意味でいわば一時的な処理をしておるということでございますから、結局この財政再建というものを、これから三年はもうないのでございますけれども、その間にもう一度考え直すという時期には、これらのものをやはり外へ出しまして、そしてこういう変則的な処理はやはり本当に常態化してはいかぬわけでございますから、区切りをつけなければならないだろうと思います。つまり、そうでございませんと再建の対象になる財政というものの本当の姿は出てこないことになりますから、やはりこれを全部表へ出しまして、これらを全部常態化するとして、常態というのはノーマルという意味でございますが、ノーマルにするのにどれだけの経費が必要か、そういうことを全部見ました上で、それなら特例公債はいつまではどうしてもやめられない、いつになったらやめられるかといったようなこと、あるいは経済運営をもう少しどうこうするということも私はぜひありたいと思うのでございますけれども、それに税制改正ということはこれから協議機関で御協議願うことでございますけれども、それらのことを全部総合的に考え、もう一遍レビューしなければならない時期に来ておると思います。  一つ一つのことを御指摘いただきまして、私も実は大蔵大臣になりまして予算を編成してみまして初めて知ったようなことが多うございまして、この委員会委員の皆様の方が長く御在籍でございますからむしろ詳しく御存じであるということを今になって思うわけでございますけれども、なかなかそれは大変に苦労をして、いろいろなことがあるものだ、しかし、財政再建を本格的にもう一度考え直すとすれば、これらのものを全部表に出して、そしてこういういわば便宜の措置というのは今後長く常態化しないようにということを考えなければならないだろう、こういうふうに思っております。
  200. 矢追秀彦

    ○矢追委員 ぜひ財政再建にはとにかく必死になってやらないと、今はいいかもわかりませんけれども、我々の次の世代を考えますと大変なことになるわけです。そのいい例が今のアメリカにある。アメリカの財政赤字というのは、今回OECDも指摘しておりますけれども、とにかくひどいものでありますし、レーガン大統領がレーガノミックスを唱えてからもなかなかできていない。こういう現状にありますので、要するにカンフル注射とか応急処置ばかりで毎年毎年乗り切っていけばいいというふうなことにはもうしてはならぬ、そういうのは限界が来たのじゃないか、私はこう思いますから、ぜひ大臣、先ほど来いろいろ私の主張もお認めになりながら大臣のお考えというのは伺いましたので、国民が納得できるような、また将来安心できるような、そういう財政再建策とともに経済運営をお願いしたいと思うわけでございます。  最後に、きょうは私まだあと一時間近くございますけれども、皆さんもお疲れだと思いますし、もうあとわずかで終わりますが、昨日大蔵省、通産省が、為替投機的な売買の自粛、これを金融界に要請をされたということでございます。その効果が円が百四十円後半になった、少し効果が出てきたということでございますが、ただ、長期的にはこれぐらいのことでいいのかどうか、その点をどうお考えになるか、これがまず第一点。  その次に、円高の問題でございますけれども、こういうことを言うと非常に失礼な言い方になるかもわかりませんけれども大蔵大臣は非常に苦労されてG5あるいはG7で頑張ってきておられるのですが、ちょうどそういう会談をやるごとに何か円が上がってきておる。私、矢野委員長のお供をしてワシントンへ行っておりましたときに、ちょうどG5、G7をやっておられまして、ニュースが入りまして、うまくいったのかなと思っておりましたらまた上がってきた、こういうふうなことでございまして、何か皮肉な結果になっております。実際、そういうことをやると、これからやらぬ方がいいのかなと思ったりもするわけです。  本当に円の安定、これは投機の面も一つありますけれども、この問題も、次はサミットがございますが、これは日本だけの問題ではございません、アメリカにも大きな責任もあると思いますし、また世界全体が協力しなければならぬ状況でございます。実際問題これは本当にどの辺までいくのか、大変難しい問題でもございますし、今まで百八十円までやってくれなければ困ると言っていたのが、百五十円になった、百四十円になった、また百二十円までいくとか百円までいくとかいろいろな予想、議論がございますけれども、これから、サミットにせよ、G5、G7にせよ、やはり環境づくりというものをどうやって、どういうふうに持っていくのか。今回は、OECDの要請のように、内需拡大、総理は五兆円の大型補正というようなことになっておりますけれども一つは、私はまず公約を実行しなければいけないということ。それからもう一つは、まだまだ日本もやらなければならぬかわりに、相手国もやってもらわなければならぬと思いますが、今後G5に臨まれる方針といいますか、そういうものもあわせてお聞かせいただければありがたいと思います。  以上です。
  201. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨日、大蔵通産両省から関係者に対して要請いたしました問題につきましては、先刻堀委員からお尋ねがございまして詳しく申し上げましたので簡略に申し上げますが、要するに私ども市場経済メリットというものを信じて経済運営をしてまいりました。ただ、それにしても、投機というのは、殊に為替について投機が起こりますと、やはりこれは国民生活国民の雇用、中小企業の人がとにかく一生懸命まじめに案をつくりましても挫折をするというようなことになりかねないので、どうかそのいわゆる投機というものは自粛をしてほしい、もちろんヘッジというのはもともと投機ではございません。これは自分自身の投資を保護するのでございますから、そういうことをかれこれ言うつもりはないし、実需原則とか言うつもりもございません。ただ、短時間の間にディーリングでその差益をもうけるという話は、これはどうもいかにも大豆や生糸をいじるのとは違うのでというごくごく当たり前のことをお伝えをしたわけでございますが、こういうこと自身、あるいは介入もそうでございますけれども、もともと為替相場そのものは各国政策協調ということが私は基本でなければならないと思うのでございます。介入というようなことはそのときどきの変動を小さくするという補助的な役割しか持っておらないわけでございますから、政策協調ということが必要である。  それにいたしましても、ここのところの展望でございますが、この間中曽根総理大臣とレーガン大統領の共同声明の中で、アメリカの大統領がこれ以上のドルの下落がアメリカ自身のためによくないということを言われましたのは、ここへ来ましてドルの下落、急落というものがアメリカ国民にやはりある程度かかわり合いを持ってきたというふうに私は考えております。それは、御承知のように非常に金利が上がり始めまして、それも玄人のビジネスの金利と申しますよりは、一人一人の住宅の御承知のようにモーゲージの金利がまた二けたになるというようなことになりますと、これはもう政治家として選挙をする者が関心を持たざるを得ない国民的な、いわば国民生活に関することである。そういうことがかなり顕著になってまいりましたので、アメリカ自身がかなりこれについては本気になったと申しますか自分のこととして心配をし始めだということが、これがこの間の大統領のあの言明にもあらわれておるのではないかと思っております。  そういうこともございまして、まだかなりプラザ合意からも時間がたっておりますので、やがてアメリカの国際収支も好転をする時期ではないかとあれこれ考えまして、ここへ来まして米国自身がかなり事を心配し始めたということもございまして、そこから相場が安定をし、円に対して好転をするということを私ども期待をしておるわけでございますが、御指摘のように基本はやはり政策協調ということにありますことは間違いがございません。
  202. 矢追秀彦

    ○矢追委員 以上です。
  203. 池田行彦

    池田委員長 次回は、明十五日金曜日午後三時五十分理事会、午後四時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時四分散会